(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】エポキシ基を含む1,3-双極子化合物及びその合成中間体
(51)【国際特許分類】
C07D 303/23 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
C07D303/23 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538159
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022086556
(87)【国際公開番号】W WO2023117844
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト-ディ-ドミニク フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】イヴァノフ セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ナシブリン ルスラン
(57)【要約】
本発明は、以下の式(I)の化合物及び以下の式(I)の化合物を合成する方法に関する。
【化1】
(式中:
- Tは、-CHO、-CH=NOH、及び-CN
+-O
-からなる群から選択される化学基を表し;
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【化2】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物。
【化1】
(式中:
- Tは、-CHO、-CH=NOH、及び-CN
+-O
-からなる群から選択される化学基を表し;
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す:
【化2】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
【請求項2】
R
1が、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択される化学基を表し;R
2が-OR
3である、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Tが-CHOである、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
Tが-CH=NOHである、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
Tが-CN
+-O
-である、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
Eが、C1-C12アルカンジイル、好ましくはC1-C10アルカンジイル、より優先的にはC1-C9アルカンジイルを表し;更により優先的には、Eが、メタンジイル、エタンジイル、及びプロパンジイルからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
X
1、X
2、X
3が、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、及びフェニルからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
X
1、X
2、X
3が、同一であり、水素原子である、請求項1~7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
式(Ia)の化合物を調製する方法であって、以下の反応スキームに従った、少なくとも1種の有機溶媒SL1の存在下での、式(Ib)の化合物と酸化剤との少なくとも1種の反応を含む、方法。
【化3】
(式中、
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【化4】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
【請求項10】
前記酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウム、塩基の存在下でのN-ブロモスクシンイミド、塩基の存在下でのN-クロロスクシンイミド、及び触媒の存在下での過酸化水素水溶液から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒SL1が、塩素系溶媒、並びにエステル種、エーテル種、及びアルコール種の溶媒から選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
以下の反応スキームに従った、式(Ic)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応のステップを更に含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【化5】
(式中、R
1及びR
2は請求項9で定めた通りである)
【請求項13】
塩基の存在下で、ヒドロキシルアミン塩の形態で、前記ヒドロキシルアミンを式(Ic)の前記化合物に接触させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
以下の反応スキームに従った、少なくとも1種の相間移動剤の存在下での、10℃~120℃、優先的には30℃~100℃の範囲の温度での、式(IV)の化合物と式(III)の化合物との反応のステップを更に含む、請求項12又は13に記載の方法。
【化6】
(- 式(IV)の前記化合物について:
・ R
4は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OHからなる群から選択される化学基を表し;
・ R
5は、-OCH
3及び-OHからなる群から選択される化学基を表し;
・ 但し、R
4又はR
5は-OHであり;
- 式(III)の前記化合物について:
・ Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ Zは離核性基を表し;
- 式(Ic)の前記化合物について:R
1及びR
2は請求項9で定めた通りである)
【請求項15】
前記相間移動剤が、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、及びその混合物の中からのものである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、不飽和ポリマー、すなわち、その分子鎖中に不飽和炭素-炭素結合を有するポリマーを官能化するための修飾剤(modifying agents)の分野である。より正確には、これらの修飾剤は、エポキシ基を有する1,3-双極子化合物である。本発明はまた、これらの化合物を合成する方法及びその合成中間体に関し、こうした修飾剤の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの構造を修飾することは、ポリマー及び補強充填剤を共に合わせて組成物を形成することが望まれる場合に特に求められる。この修飾により、例えば、ポリマーマトリックスにおける補強充填剤の分散を改善することが可能になり、故により均一な材料を得、最終的に組成物の特性を改善することが可能になる。
ポリマーの構造を修飾することは、特に、こうして修飾されたポリマーと補強充填剤、ここで補強充填剤がカーボンブラックであっても補強無機充填剤であっても、との間の良好な相互作用を得る目的で、特に、官能化剤(若しくは修飾剤)、カップリング剤又は星型分枝化剤又は後重合剤によって実施され得る。多くの官能化剤は、この相互作用を改善するために提案されてきた。
例えば、文献国際公開第2019/102128A1号は、官能化剤として、エポキシ環を含む芳香族ニトリルオキシド化合物であって、エポキシ環が、ニトリルオキシド官能基を有する芳香環に、ニトリルオキシド官能基に対してメタ位の2価の-OCH2-基によって結合されており;ニトリルオキシド官能基を有する芳香環がまた、更に、オルト位、メタ位、及びパラ位においてメチルで置換されている、エポキシ環を含む芳香族ニトリルオキシド化合物を開示する。この官能化剤、2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシドは、スチレン/ブタジエンコポリマーにグラフトされると、未修飾スチレン/ブタジエンコポリマーを含むエラストマー組成物と比較して、こうした修飾コポリマーを含有するエラストマー組成物のヒステリシスを改善することが可能になる。
【0003】
燃料節約及び環境を保護する必要性が優先事項になってきたので、可能な限り低い転がり抵抗を有するタイヤ、すなわち可能な限り低いヒステリシスを有するエラストマー組成物を含むタイヤを製造する必要性が立証されてきた。
可能な限り低いヒステリシスを有するエラストマー組成物を得ながら、同時に、他の特性、例えば補強性及び剛性の良好な性能レベルを維持することは、タイヤ製造業者にとって進行中の課題である。確かに、エラストマー組成物のヒステリシスの低減は、硬化剛性の低下を伴うことが知られている。しかし、トレッドは、タイヤの良好なレベルの路面挙動を確実にするのに十分なほど硬くなければならない。
それ故に、この改善が剛性特性を犠牲にして得られることなく、先行技術のエラストマー組成物と比較して更に改善されたヒステリシス特性を有するエラストマー組成物を得る目的で、ポリマーの構造、とりわけジエンエラストマーの構造を修飾することを可能にする、利用可能な新規の官能化剤を有する、常時の必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の一目的は、これらのポリマーにグラフトされると、改善された転がり抵抗/剛性性能の折り合いを示すエラストマー組成物を得ることを可能にする、新規のポリマー修飾剤を提案することである。
その研究を追究し、出願者は、驚くべきことに、ニトリルオキシド官能基に対してパラ位又はメタ位にエポキシ環を有し、このニトリルオキシド官能基に対してオルト位に置換基を有しない芳香族ニトリルオキシドが、不飽和炭素-炭素結合を含むポリマー、特にエラストマーにグラフトされると、転がり抵抗/剛性の折り合いにおける改善を示すエラストマー組成物を得ることができると見出した。有利なことには、この新規の修飾剤はまた、これらの組成物の補強特性を改善することも可能にする。
【0005】
したがって、本発明の第1の主題は、以下の式(I)の化合物に関する。
【化1】
(式中:
- Tは、-CHO、-CH=NOH、及び-CN
+-O
-からなる群から選択される化学基を表し;
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0006】
【化2】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す。))
【0007】
優先的には、式(I)の化合物において、T基は-CHOである。
優先的には、式(I)の化合物において、T基は-CH=NOHである。
優先的には、式(I)の化合物において、T基は-CN+-O-である。
優先的には、式(I)の化合物において、E基は、C1-C12アルカンジイル、好ましくはC1-C10アルカンジイル、より優先的にはC1-C9アルカンジイルを表し;更により優先的には、Eは、メタンジイル、エタンジイル、及びプロパンジイルからなる群から選択される。
優先的には、式(I)の化合物において、X1、X2、X3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、及びフェニルからなる群から選択される。
優先的には、式(I)の化合物において、X1、X2、X3は、同一であり、水素原子である。
【0008】
有利なことには、式(I)の好ましい化合物は、式(Ia)の化合物である。
【化3】
(式中:
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0009】
【化4】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す。))
【0010】
本発明の別の主題は、式(Ia)の化合物を調製する方法であって、反応スキームに従った、少なくとも1種の有機溶媒SL1の存在下での、式(Ib)の化合物と酸化剤との少なくとも1種の反応を含む、方法に関する。
【化5】
(式中:
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0011】
【化6】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す。))
【0012】
優先的には、上記酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウム、塩基の存在下でのN-ブロモスクシンイミド、塩基の存在下でのN-クロロスクシンイミド、及び触媒の存在下での過酸化水素水溶液から選択される。
優先的には、有機溶媒SL1は、塩素系溶媒、並びにエステル種、エーテル種、及びアルコール種の溶媒から選択される。
優先的には、方法は、以下の反応スキームに従った、式(Ic)の化合物とヒドロキシルアミンとの反応のステップを更に含む。
【化7】
(式中、R
1及びR
2は上記で定めた通りである)
【0013】
優先的には、塩基の存在下で、ヒドロキシルアミン塩の形態で、ヒドロキシルアミンを式(Ic)の化合物に接触させる。
優先的には、方法は、以下の反応スキームに従った、少なくとも1種の相間移動剤(phase transfer)の存在下での、10℃~120℃、優先的には30℃~100℃の範囲の温度での、式(IV)の化合物と式(III)の化合物との反応のステップを更に含む。
【化8】
(- 式(IV)の化合物について:
・ R
4は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OHからなる群から選択される化学基を表し;
・ R
5は、-OCH
3及び-OHからなる群から選択される化学基を表し;
・ 但し、R
4又はR
5は-OHであり;
- 式(III)の化合物について:
・ Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ Zは離核性基を表し;
- 式(Ic)の化合物について:R
1及びR
2は上記で定めた通りである)
【0014】
優先的には、相間移動剤は、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、及びその混合物の中からのものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前述されたように、本発明の第1の主題は、以下の式(I)の化合物に関する。
【化9】
(式中、
- Tは、-CHO、-CH=NOH、及び-CN
+-O
-からなる群から選択される化学基を表し;
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0016】
【化10】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
【0017】
本発明及びその利点は、以下の記述及び例示的な実施形態を鑑みて容易に理解されるであろう。本文において、明らかに別段の指示がなければ、示された全てのパーセント(%)は質量パーセント(%)である。
更に、表現「a~bの間」によって示される、値の任意の間隔は、aを超えるものからb未満までに及ぶ値の範囲を表し(すなわち、限界a及びbは排除される)、その一方で表現「a~b」で示される、値の任意の間隔は、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(すなわち、厳密な限界a及びbを含む)。
明細書において述べられた化合物は、化石起源のもの又はバイオベースのものであってもよい。後者において、化合物は、バイオマスに部分的に、若しくは完全に由来してもよく、又はバイオマスに由来する再生可能な原材料から得られてもよい。勿論、挙げられた化合物は、既に使用された材料の再利用に由来してもよく、すなわち、化合物は、部分的に、若しくは完全に、再利用プロセスから生じてもよく、又はそれ自体が再利用プロセスから生じる原材料から得られてもよい。これは、中でもポリマー、可塑剤、充填剤等に関する。
【0018】
表現「~に基づいた組成物」は、使用される多様な構成成分の混合物及び/又は使用される多様な構成成分のin situ反応の生成物を含む組成物であって、これらの構成成分の一部が、組成物の製造の様々な段階の間に、少なくとも部分的に、互いに反応することができ、及び/又は互いに反応することが意図されており;故に組成物が、完全な、又は部分的な、架橋状態に、又は非架橋状態にあることが可能である組成物を意味すると理解されるべきである。
表現「エラストマー100質量部当たりの質量部」(又はphr)は、本発明において、エラストマー100質量部当たりの質量部を意味するものとして理解されるべきである。
用語「1,3-双極子化合物」は、IUPACによって与えられる定義に従って理解される。定義によって、1,3-双極子化合物は双極子を含む。TがCN+-O-である場合、双極子はニトリルオキシドである。
本発明において、用語「炭化水素鎖」は、1個又は複数の炭素原子及び1個又は複数の水素原子を含む分子鎖を意味する。
【0019】
表現「Ci-Cjアルキル」は、i~j個の炭素原子を含む、直鎖状、分枝鎖状、又は環状の炭化水素基を示し;i及びjは整数である。
表現「Ci-Cjアリール」は、i~j個の炭素原子を含む芳香族基を示し;i及びjは整数である。
用語「Ci-Cjアルカンジイル」は、上記で定められたCi-Cjアルカンから誘導され、2個の水素原子が取り除かれた炭化水素基を意味すると理解される。それ故に、アルカンジイルは、2価の基である。
本発明及びその利点は、以下の記載及び例示的な実施形態を鑑みて容易に理解されるであろう。
【0020】
式(I)の化合物において、化学基Tは、-CN
+-O
-;-CH=NOH、及び-CHOからなる群から選択され、また以下のように表され、記号(**)は芳香環の結合点を表す。
【化11】
【0021】
有利なことには、式(I)の化合物の中でも、式(Ia)の化合物は、これらがポリマー修飾剤である故に特に好ましい。
【化12】
(式中:
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0022】
【化13】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
【0023】
より有利なことには、式(Ia)の化合物の中でも、より詳細に好ましい化合物は、式(Ia1)の化合物である。
【化14】
(式中:
- R
1は、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択される化学基を表し;より優先的には、R
1は-OCH
3を表し;
- Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
- X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表す)
【0024】
有利なことには、式(I)の化合物の中でも、式(Ib)の化合物は、式(Ia)の化合物の合成中間体であるので特に好ましい。
【化15】
(式中:
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0025】
【化16】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
【0026】
より有利なことには、式(Ib)の化合物の中でも、より詳細に好ましい化合物は、式(Ib1)の化合物である。
【化17】
(式中:
- R
1は、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択される化学基を表し;より優先的には、R
1は-OCH
3を表し;
- Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
- X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表す)
【0027】
式(Ib1)の上記化合物はまた、式(Ia1)の好ましい化合物の合成中間体であるので特に興味のあるものである。
【0028】
有利なことには、式(I)の化合物の中でも、式(Ic)の化合物は、式(Ib)の化合物の合成中間体であるので特に好ましい。
【化18】
(式中:
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0029】
【化19】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
【0030】
より有利なことには、式(Ic)の化合物の中でも、より詳細に好ましい化合物は、式(Ic1)の化合物である。
【化20】
(式中:
- R
1は、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択される化学基を表し;より優先的にはR
1は-OCH
3を表し;
- Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
- X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表す)
【0031】
式(Ic1)の上記化合物はまた、式(Ib1)の好ましい化合物の合成中間体であるので特に興味のあるものである。
したがって、特に好ましい式(I)の化合物群は、R1が-OCH3及び-OCH2CH3からなる群から選択される化学基を表し、R2が-OR3である化合物である。言い換えれば、この化合物群は、好ましい式(Ia1)の化合物、式(Ib1)の化合物、及び式(Ic1)の化合物によって構成されるセットに対応するものである。
優先的には、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ib)の化合物、及び式(Ic)の化合物において、条件「R1又はR2が-OR3である」は、R1が-OCH3若しくは-OCH2CH3であり、R2が-OR3である場合、又はR1が-OR3であり、R2が-OCH3である場合を意味する。これらの化合物において、必然的に、置換基R1として又は置換基R2としてのいずれかで、1種(1)(及びただ1種のみ)の-OR3が存在する。
【0032】
式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含有してもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表す。本発明において、用語「2価の炭化水素基」は、芳香環に結合した酸素原子とX1基、X2基、X3基を有するエポキシ環との間にブリッジを形成するスペーサー基(又は連結基)を意味すると理解され;このスペーサー基Eは、1~12個の炭素原子を含み、例えば、N、O、及びS等の1種又は複数のヘテロ原子を含有してもよい。このスペーサー基は、例えば、N、O、及びS等の1種又は複数のヘテロ原子を含有してもよい、好ましくは飽和の、直鎖状又は分枝鎖状のC1-C12炭化水素鎖であってもよい。上記炭化水素鎖は、置換基が上記で定められた化学基T及びエポキシ環と反応しないという条件で、置換されていてもよい。
優先的には、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、Eは、例えば、N、O、及びS等の1種又は複数のヘテロ原子を含有してもよい、2価のC1-C10炭化水素基、好ましくは2価のC1-C9炭化水素基を表す。
【0033】
より優先的には、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、Eは、C1-C12アルカンジイル、好ましくはC1-C10アルカンジイル、より優先的にはC1-C9アルカンジイルを表す。更により優先的には、Eは、メタンジイル、エタンジイル、及びプロパンジイルからなる群から選択される。
優先的には、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、X1、X2、X3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、及びC6-C14アリールからなる群から選択される。
優先的には、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、X1、X2、X3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、及びフェニルからなる群から選択される。
【0034】
優先的には、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、X1、X2、X3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C3アルキル、及びフェニルからなる群から選択される。
本発明の好ましい一実施形態によれば、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、X1、X2、X3は、同一であり、水素原子を表す。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、X1及びX2は水素原子を表し、X3はフェニルを表す。
本発明の別の実施形態によれば、式(I)の化合物、式(Ia)の化合物、式(Ia1)の化合物、式(Ib)の化合物、式(Ib1)の化合物、式(Ic)の化合物、及び式(Ic1)の化合物において、X3は水素原子であり、X1及びX2は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子又はメチルを表す。
【0035】
上記のように、式(I)の化合物の中でも、特に好ましいものは、式(Ia)の化合物である。
【化21】
(式中:
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0036】
【化22】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基;好ましくはC1-C12アルカンジイル、好ましくはC1-C10アルカンジイル、より優先的にはC1-C9アルカンジイルを表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表し;
より優先的には、EがC1-C9アルカンジイルを表すものは、より優先的には、メタンジイル、エタンジイル、及びプロパンジイルからなる群から選択され;X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C3アルキル、及びフェニルからなる群から選択され、より優先的にはX
1、X
2、X
3は、同一であり、水素原子である))
【0037】
驚くべきことに、ニトリルオキシド官能基に対してオルト位の置換を有さず、メタ位又はパラ位に、エポキシ基に加えて-OCH3基又は-OCH2CH3基を保有する式(Ia)の化合物は、ポリマー、好ましくは、エラストマー、とりわけジエンエラストマーにグラフトされると、先行技術のエラストマー組成物と比較して、改善された補強特性を有する、上記グラフトポリマーに基づいた組成物を与える。驚くべきことに、これらの特性における改善は、転がり抵抗/剛性の折り合いを犠牲にして実現されるものではない。この折り合いは、更に有利に改善される。式(Ia)の化合物の中でも、R1が、-OCH3及び-OCH2CH3からなる群から選択される化学基を表し、Eが、C1-C12アルカンジイル、好ましくはC1-C10アルカンジイル、より優先的にはC1-C9アルカンジイルを表し、X1、X2、X3が、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C3アルキル、及びフェニルからなる群から選択され、より優先的には、X1、X2、X3が、同一であり、水素原子である、式(Ia1)の化合物が好ましい。更により優先的には、より詳細に好ましい式(Ia1)の化合物は、R1が-OCH3を表し、EがC1-C12アルカンジイル、好ましくはC1-C10アルカンジイル、より優先的にはC1-C9アルカンジイルを表し、X1、X2、X3が、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C3アルキル、及びフェニルからなる群から選択され、より優先的には、X1、X2、X3が、同一であり、水素原子である化合物である。更により優先的には、特により好ましい式(Ia1)の化合物は、R1が-OCH3を表し、EがC1-C9アルカンジイルを表し、X1、X2、X3が、同一であり、水素原子である化合物である。更により優先的には、より詳細に好ましい式(Ia1)の化合物は、R1が-OCH3を表し、Eが、メタンジイル、エタンジイル、及びプロパンジイルからなる群から選択され、X1、X2、X3が、同一であり、水素原子である化合物である。式(Ia1)の化合物の中でも、特により好ましいものは、式(Ia2)の化合物である。
【0038】
【0039】
本発明の別の主題は、式(Ia)の化合物を調製する方法であって、以下の反応スキームに従った、少なくとも1種の有機溶媒SL1の存在下での、式(Ib)の化合物と酸化剤との少なくとも1種の反応(d)を含む、方法に関する。
【化24】
(式中:
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0040】
【化25】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
上記の通り、R
1、R
2、E、X
1、X
2、及びX
3の好ましい形態は、式(Ib)の化合物から式(Ia)の化合物を調製する方法にも適用される。
【0041】
優先的には、式(Ia1)の化合物を調製する方法は、以下の反応スキームに従った、少なくとも1種の有機溶媒SL1の存在下での、式(Ib1)の化合物と酸化剤との少なくとも1種の反応(d1)を含む。
【化26】
(式中、E、X
1、X
2、及びX
3は、その好ましい形態を含めて上記の通りであり、R
1は、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択される化学基を表し、好ましくは、R
1は-OCH
3である)
【0042】
好ましくは、これらの方法において、上記酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウム、塩基の存在下でのN-ブロモスクシンイミド、塩基の存在下でのN-クロロスクシンイミド、及び触媒の存在下での過酸化水素水溶液から選択される。より優先的には、酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウム、及び塩基の存在下又は塩基の不在下でのN-ブロモスクシンイミドからなる群から選択される。優先的には、塩基はトリエチルアミンであってもよい。更により優先的には、酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムである。
有利なことには、酸化剤の量は、式(Ib)の化合物のモル量、好ましくは式(Ib1)の化合物のモル量に対して、1~5モル当量、優先的には1~2モル当量である。
優先的には、有機溶媒SL1は、塩素系溶媒、並びにエステル種、エーテル種、及びアルコール種の溶媒から選択され、より優先的には、ジクロロメタン、トリクロロメタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、イソプロパノール、及びエタノールから選択され、更により優先的には、酢酸エチル、トリクロロメタン、ジクロロメタン、及び酢酸ブチルから選択される。
好ましくは、式(Ib)の化合物、より優先的には式(Ib1)の化合物は、式(Ib)の上記化合物、好ましくは、形態(Ib1)の化合物、上記有機溶媒SL1、及び上記酸化剤を含む組み合わせの全質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは1質量%~20質量%を占める。
【0043】
優先的には、本発明の方法は、反応(d)の後(好ましくは、反応(d1)の後)、式(Ia)の化合物(好ましくは、式(Ia1)の化合物)を回収するステップを含む。
式(Ib)の化合物は、注目すべきことに、以下の反応スキームに従った、式(Ic)の化合物とヒドロキシルアミンNH
2OHとの少なくとも1種の反応(c)を含む、調製する方法から得ることができる。
【化27】
(式中:
- R
1は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- R
2は、-OCH
3及び-OR
3からなる群から選択される化学基を表し;
- 但し、R
1又はR
2が-OR
3であるという条件であり;
- R
3は、式(II)の化学基を表す
【0044】
【化28】
(・ 式中、Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ 記号*は、酸素原子への式(II)の基の結合点を表す))
上記の通り、R
1、R
2、E、X
1、X
2、及びX
3の好ましい形態は、式(Ic)の化合物から式(Ib)の化合物を調製する方法にも適用される。
【0045】
優先的には、式(Ib1)の化合物は、注目すべきことに、以下の反応スキームに従った、式(Ic1)の化合物とヒドロキシルアミンNH
2OHとの少なくとも1種の反応(c1)を含む、調製する方法から得ることができる。
【化29】
(式中、E、X
1、X
2、及びX
3は、その好ましい形態を含めて上記の通りであり、R
1は、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択される化学基を表し、好ましくは、R
1は-OCH
3である)
【0046】
優先的には、反応(c)における、好ましくは反応(c1)における、ヒドロキシルアミンの添加は、1℃~100℃の範囲の温度、より優先的には20℃~70℃の間の温度で実行される。
ヒドロキシルアミンは、水溶液において、又は塩の形態のいずれかで添加される。ヒドロキシルアミンは、塩の形態である場合、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン(hydroxylamine chloride)、及びその混合物からなる群から選択されてもよい。塩の形態のヒドロキシルアミンの使用の場合、塩基は、優先的には、反応媒体に添加され得る。塩基の例として、酢酸ナトリウム又はトリエチルアミンを挙げることができる。添加される塩基の量は、生成されたヒドロキシルアミンに対して1~2モル当量に及ぶ範囲内であってもよく、優先的には、生成されたヒドロキシルアミンに対して1~1.2モル当量に及ぶ範囲内であってもよい。用語「生成されたヒドロキシルアミン」は、上記塩を水に接触させるときに遊離される、ヒドロキシルアミン塩のカチオン(NH3
+OH)を意味すると理解される。塩基が使用される場合、上記塩基は、ヒドロキシルアミン塩と混合され、次いで混合物は水中に溶解する。優先的には、ヒドロキシルアミンは、塩基、例えば酢酸ナトリウム又はトリエチルアミンの存在下で、ヒドロキシルアミン塩の形態で、式(Ic)の化合物に接触させる。
【0047】
優先的には、本発明の方法は、反応(c)の後(好ましくは反応(c1)の後)、式(Ib)の生成物(好ましくは式(Ib1)の生成物)を回収するステップを含むことができる。
式(Ic)の化合物は、以下の反応スキームに従った、少なくとも1種の相間移動剤の存在下での、10℃~120℃、優先的には20℃~100℃の範囲の温度での、式(IV)の化合物と式(III)の化合物との少なくとも1種の反応(b)を含む、調製する方法によって得ることができる。
【0048】
【化30】
(- 式(IV)の化合物について:
・ R
4は、-OCH
3、-OCH
2CH
3、及び-OHからなる群から選択される化学基を表し;
・ R
5は、-OCH
3及び-OHからなる群から選択される化学基を表し;
・ 但し、R
4又はR
5は-OHであり;
- 式(III)の化合物について:
・ Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ Zは離核性基を表し;
- 式(Ic)の化合物について:R
1及びR
2は上記で定めた通りである)
【0049】
R1、R2、E、X1、X2、及びX3の好ましい形態は、式(IV)の化合物及び式(III)の化合物から式(Ic)の化合物を調製する方法にも適用される。
優先的には、式(Ic1)の化合物は、以下の反応スキームに従った、少なくとも1種の相間移動剤の存在下での、10℃~120℃、優先的には20℃~100℃の範囲の温度での、式(IV)の化合物と式(III)の化合物との少なくとも1種の反応(b1)を含む、調製する方法によって得ることができる。
【0050】
【化31】
(式中、
- 式(Ic1)の化合物について、E、X
1、X
2、X
3は、上記で定めた通りであり、R
1は、-OCH
3及び-OCH
2CH
3からなる群から選択される化学基を表し;好ましくは、R
1は-OCH
3であり;
- 式(IV)の化合物について:
・ R
4は、-OCH
3又は-OCH
2CH
3、好ましくは-OCH
3であり、
・ R
5は-OHであり、
- 式(III)の化合物について:
・ Eは、1種又は複数のヘテロ原子を含んでもよい、2価のC1-C12炭化水素基を表し;
・ X
1、X
2、X
3は、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、C1-C6アルキル、又はC6-C14アリールを表し;
・ Zは離核性基を表す)
【0051】
用語「離核性基」は、脱離基(leaving group)を意味すると理解される。Z基は、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、メシレート基、トシレート基、アセテート基、及びトリフルオロメチルスルホネート基から選択され得る。好ましくは、Zは臭素又は塩素である。
相間移動剤は、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、及びその混合物から選択され得る。優先的には、相間移動剤は、テトラブチルアンモニウムブロミドである。
優先的には、相間移動剤のモル量は、式(III)の化合物のモル量に対して、0.01~1モル当量、好ましくは0.05~0.5モル当量である。
優先的には、本発明の方法は、反応(b)の後(好ましくは反応(b1)の後)、式(Ic)の生成物(好ましくは、式(Ic1)の生成物)を回収するステップを含むことができる。
上記で定められた式(IV)の化合物は、Sigma-Aldrich、Merck等の供給元から市販されている。式(IV)の化合物は、化学合成によって、又はバニリンの場合、バニラのさやからの抽出によって、又はイソバニリンの場合、キャッサバからの抽出によって得られ、又は微生物による発酵から、特にフェルラ酸から進む発酵によって得られ得る。
【0052】
式(III)の化合物は、市販されているものでもよく、又は以下の反応スキームに従った、式(V)の対応するハロアルケンのエポキシ化によって得られてもよい。その対応するアルケンからのエポキシド環を含む化合物の合成は、周知されている。例えば、このエポキシ化は、過酸、例えば、メタ-クロロ過安息香酸、過酢酸、又は過ギ酸の存在下で実施され得る。別の周知の技術が、ジメチルジオキシランの使用である。
【化32】
【0053】
式(V)の化合物は、Sigma-Aldrich及びABCR等の供給元から市販されている。
上記で説明されたように、式(Ia)の化合物及びその好ましい実施形態、特に式(Ia1)の化合物、更により詳細には式(Ia2)の化合物は、ポリマー修飾剤として使用される。それらは、少なくとも1種の不飽和炭素-炭素結合を含む、1種又は複数のポリマーにグラフトすることができ;特に、このポリマーは、エラストマーであってもよく、より詳細にはジエンエラストマーであってもよい。本発明の化合物は、有利なことには、グラフトポリマー(修飾ポリマーとも称される)、特にエラストマー、とりわけグラフトジエンエラストマーを得ることを可能にし、ポリマーの初期の微細構造に関係なく、唯一の条件は、ポリマーが、少なくとも1種の不飽和炭素-炭素結合、好ましくは炭素-炭素二重結合を含むことである。
【0054】
少なくとも1種の不飽和炭素-炭素結合を含むポリマーのグラフト化は、元のポリマーと、式(Ia)の化合物及びその好ましい実施形態、特に式(Ia1)の化合物、更により詳細には式(Ia2)の化合物との反応によって実行され得る。これらの化合物のグラフト化は、ポリマー鎖の不飽和炭素-炭素結合への、上記化合物のニトリルオキシド官能基の[3+2]付加環化によって実施される。この付加環化のメカニズムは、中でも、文献国際公開第2012/007441号で説明される。
式(Ia)の化合物及びその好ましい実施形態、特に式(Ia1)の化合物、更により詳細には式(Ia2)の化合物のグラフト化は、例えば、内部混合機若しくは外部混合機、例えばオープンミルにおいて、又は溶液中で大量に実行され得る。グラフト化方法は、溶液中でも、連続的に又は回分式で実施され得る。修飾ポリマーは、当業者に公知のあらゆる種類の手段によって、特にスチームストリッピング操作によって、その溶液から分離され得る。
【0055】
式(Ia)の化合物及びその好ましい実施形態、特に式(Ia1)の化合物、更により詳細には式(Ia2)の化合物は、エラストマー組成物に統合され得る。これらのエラストマー組成物は、少なくとも1種のジエンエラストマーに、補強充填剤に、且つ少なくとも1種の架橋剤に基づくことができる。ジエンエラストマーへの、式(Ia)の化合物及びその好ましい実施形態、特に式(Ia1)の化合物、更により詳細には式(Ia2)の化合物のグラフト化は、組成物への上記エラストマーの導入前に実行することができるか、又は組成物の製造中の式(Ia)の上記化合物との反応によってグラフトすることができる。エラストマー組成物はまた、添加剤を含んでもよい。使用され得る添加剤は、可塑剤(例えば、可塑化油及び/又は可塑化樹脂)、非補強充填剤、顔料、保護剤、例えば、耐オゾン性ワックス、化学的オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、抗疲労剤、補強用樹脂(例えば、特許出願国際公開第02/10269号に記載)であってもよい。これらのエラストマー組成物は、タイヤの半完成品の製造のために、又はタイヤの製造のために使用され得る。
以下の実施例により、本発明を説明することができるが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
1. 方法
1.1. エラストマーの数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)並びに多分散指数の測定
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)が使用される。SECにより、多孔質ゲルで充填されたカラムを通して、溶液中の高分子をそのサイズに応じて分離することができる。高分子は、その流体力学的体積に応じて分離され、最もかさ高いものが最初に溶出される。
絶対法でなければ、SECにより、エラストマーの分子量の分布を理解することが可能になる。様々な数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)は、市販の標準物質から決定することができ、多分散指数(PDI=Mw/Mn)は、「モーレ(Moore)」較正を介して計算され得る。
【0057】
試験されるエラストマー試料の調製
分析前のエラストマー試料の特別な処理はない。エラストマー試料は、およそ1g/lの濃度で、クロロホルムにおいて、又は以下の混合物:テトラヒドロフラン+ジイソプロピルアミン1vol%+トリエチルアミン1vol%+蒸留水1vol%(vol%=体積%)において容易に溶解する。次いで、溶液は、注入前に多孔性0.45μmを有するフィルターでろ過される。
SEC分析
使用される装置は、Waters Allianceクロマトグラフである。溶出溶媒は、エラストマーの溶解で使用される溶媒に従って、以下の混合物:テトラヒドロフラン+ジイソプロピルアミン1vol%+トリエチルアミン又はクロロホルム1vol%である。流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。販売名Styragel HMW7、Styragel HMW6E、及び2個のStyragel HT6Eの、直列の4個のWatersカラムのセットが使用される。
注入されたエラストマー試料の溶液の体積は、100μlである。検出器は、波長810nmのWaters2410示差屈折計である。クロマトグラフィーデータを処理するためのソフトウェアは、Waters Empowerシステムである。計算された平均分子量は、PSS Ready Cal-Kit市販のポリスチレン標準物質から生成された較正曲線と比較される。
【0058】
1.2. 分子の特性決定
合成された分子の構造解析及びモル純度の決定は、NMR分析によって実施される。スペクトルは、「5mm BBFO Z-gradブロードバンド」プローブを備えたBruker Avance3 400mHz分光計で取得される。定量的1H NMR実験は、30°単一パルスシーケンス及び64の取得のそれぞれの間での繰り返し時間3秒を使用する。試料は、別段の指示がなければ、重水素化溶媒、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO)において溶解させる。重水素化溶媒はまた、「ロック」シグナルのために使用される。例えば、較正は、0ppmのTMS標準に対して、2.44ppmの重水素化DMSOのプロトンのシグナルで実施される。2D1H/13C HSQC実験及び1H/13C HMBC実験と連結された1H NMRスペクトルは、分子の構造決定(アサインメント表参照)を可能にする。モル定量化は、定量的1D1H NMRスペクトルから実行される。
質量分析による分析は、直接噴射式エレクトロスプレーイオン化法(DI/ESI)によって実行される。分析は、Bruker HCT分光計(流量600μl/分、ネブライザーガスの圧力10psi、ネブライザーガスの流量4l/分)で実行された。
【0059】
1.3. ジエンエラストマーにグラフトされた化合物の特性決定
ジエンエラストマーにグラフトされた化合物のモル含量の決定は、NMR分析によって実施される。スペクトルは、「5mm BBFO Z-gradクライオプローブ」プローブを備えたBruker500mHz分光計で取得される。定量的1H NMR実験は、30°単一パルスシーケンス及び各取得の間の繰り返し時間5秒を使用する。「ロック」シグナルを得る目的で、試料を、重水素化クロロホルム(CDCl3)中に溶解させる。2D NMR実験は、炭素原子及びプロトンの化学シフトによって、グラフト単位の性質を確かめることを可能にした。
【0060】
1.4. エラストマー組成物の動力学的特性
動力学的特性G*及びtan(δ)maxは、規格ASTM D5992-96に準じて、粘度分析機(Metravib VA4000)で測定される。周波数10Hzで、温度60℃で、単純な交互の正弦波せん断応力を施された、加硫組成物の試料(円筒形の試験試料、厚さ4mm及び断面積400mm2)の応答が記録される。歪み振幅掃引は、0.1%から100%までのピーク-ピーク(往路サイクル(outward cycle))、次いで100%から0.1%までのピーク-ピーク(復路サイクル(return cycle))で実行される。
利用される結果は、50%歪みでの複素動的せん断弾性率G*(G*
50%復路)及び60℃での動的損失係数tan(δ)である。復路について、G*
50%復路60℃を示す、歪み50%での複素動的せん断弾性率G*の値、及びtan(δ)max60℃を示す、観測された動的損失係数tan(δ)の最大値が記録される。
結果は、基準100で示され、tan(δ)max60℃及びG*
50%復路60℃を計算し、その後比較するために、任意の値100は対照群に対応付けられる。
tan(δ)max60℃について、試験される試料の基準100での値は、演算:(試験される試料のtan(δ)max60℃値/対照群のtan(δ)max60℃値)×100に従って計算される。このように、100未満の結果は、ヒステリシスの低減を示し、それは転がり抵抗性能の改善に対応する。
G*
50%復路60℃について、試験される試料の基準100での値は、演算:(試験される試料のG*
50%復路60℃値/対照群のG*
50%復路60℃値)×100に従って計算される。このように、100を超える結果は、複素動的せん断弾性率G*
50%復路60℃の向上を示唆し、それは材料の剛性の向上を確実なものにする。
【0061】
1.5. 引張試験
これらの引張試験により、弾性応力を測定することが可能である。別段の指示がなければ、それらは、1988年9月のフランス規格NF T46-002に準じて実施される。引張の記録を処理することにより、伸びの関数で係数の曲線をプロットすることも可能である。初めの伸びで、試験片の初めの断面積に規格化することによって計算された、呼称セカント係数(又は見かけ応力(MPa))は、MSA100を示す伸び100%で測定され、MSA300を示す伸び300%で測定される。全ての、これらの引張測定は、規格NF T46-002に従った、標準の温度条件(23±2℃)で、且つ温度100℃で実施される。
MSA300/MSA100比は、補強指数である。試験される試料の基準100での値は、演算:(試験される試料のMSA300/MSA100値/対照群のMSA300/MSA100値)×100に従って計算される。このように、100を超える結果は、補強指数の改善を示唆する。
【0062】
2. 化合物の合成
2.1. 3-メトキシ-4-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシド(化合物A、本発明による化合物)の合成
化合物Aは、以下の反応スキームに従って合成される。
【化33】
バニリンは、Sigma-Aldrich社から得られ、参照「W310700-1KG」で販売される。
【0063】
2.1.1. ステップ1:3-メトキシ-4-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドの合成
バニリン(20g;131mmol)のエピクロロヒドリン(278ml;3.56モル、すなわち27eq.(eq.=モル当量))中溶液に、テトラブチルアンモニウムブロミド(4.24g;13.15mmol、すなわち0.1eq.)を添加する。次いで、反応媒体を温度90℃で60~70分間撹拌する。室温に戻した後、反応混合物を酢酸エチル(150ml)で希釈し、塩水(3×75ml)で洗浄し、最後に蒸留水(75ml)で洗浄する。次いで、有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させる(T槽=50℃;13mbar)。得られた油状物は、氷冷イソプロピルアルコール(i-PrOH)(50ml)で粉砕され、急速に結晶化させる。沈殿物は、ろ過され、氷冷i-PrOH(3×35ml)で洗浄し;次いで空気中で乾燥させる。
【0064】
白色固体(23.16g;111mmol)を収率85%で得る。モル純度は90%よりも高い(
1H NMR)。
【化34】
【0065】
【0066】
2.1.2. ステップ2:3-メトキシ-4-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドオキシムの合成
3-メトキシ-4-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒド(4.253g;20.43mmol)のエタノール(100ml)中懸濁液に、室温(23℃)で、酢酸ナトリウム(2.51g;30.6mmol、すなわち1.5eq.)及び塩酸ヒドロキシルアミン(2.129g;30.6mmol、すなわち1.5eq.)の蒸留水(100ml)中溶液を添加する。40~50秒で完全に溶解した後、反応媒体内でわずかな発熱性が認められる。新規の沈殿物は数分以内で形成する。次いで、反応混合物は、室温で90分間撹拌される。次いで、砕いた氷(100g)を加え、砕いた氷が完全に融けるまで、媒体を撹拌し続ける。最後に、沈殿物をろ過し、過剰の水で洗浄し、空気中で乾燥させる。
【0067】
白色固体(3.604g;16.14mmol;収率79%)が得られる。モル純度は89%よりも高い(
1H NMR)。
【化35】
【0068】
【0069】
2.1.3. ステップ3:3-メトキシ-4-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルN-オキシドの合成
3-メトキシ-4-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドオキシム(10.15g;45.5mmol)の、0~3℃に冷却されたジクロロメタン(100ml)中懸濁液に、漂白剤(98.5ml;活性塩素4%)(漂白剤=次亜塩素酸ナトリウム)の溶液を20~25分かけて滴下添加する。次いで、反応媒体を0~5℃の間で80~90分間撹拌する。次いで、有機相を分離し、水(2×50ml)で洗浄し、最後に減圧下で蒸発させて(T槽=25℃;10mbar)ベージュ色の固体をもたらす。次いで、この固体をジクロロメタン(約100ml)中に再び溶かす。次いで、上記の得られた溶液をSiO2層(厚さ約4~5cm)でろ過し、ジクロロメタン(2×30ml)で溶出する。最後に浸透物を減圧下で濃縮し(T槽=25℃;10mbar)収率71%(7.126g;32.2mmol)で得られた白色固体をもたらす。モル純度は95%である(1H NMR)。
【0070】
【0071】
【0072】
2.2. 2-(グリシジルオキシ)-1-ナフトニトリルオキシド(化合物B、先行技術の化合物)の合成
2-(グリシジルオキシ)-1-ナフトニトリルオキシド、化合物Bは、特許出願米国特許出願公開第2012/0046418号段落[0033]~段落[0037]において記載された手順に従って合成される。
【化37】
【0073】
2.3. 2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシド(化合物C、先行技術の化合物)の合成
2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシド、化合物Cは、以下に記載の、且つ文献国際公開第2019102128号の例から得られる、反応スキーム及び合成方法に従って合成される。
【0074】
【0075】
2.3.1. 2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドの合成:
3-ヒドロキシ-2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド(40.00g;0.244モル)及びエピクロロヒドリン(56.35g;0.609モル)のアセトニトリル(100ml)中混合物に、炭酸カリウム(50.50g;0.365モル)を添加する。反応媒体を60℃で3時間撹拌し、次いで70℃で2.5~3時間撹拌する。40~50℃に戻した後、反応混合物を水(250ml)及び酢酸エチル(250ml)の混合物で希釈し、次いで撹拌しながら10分間維持する。有機相を分離し、水(125mlで4回)で洗浄する。溶媒を減圧下で蒸発させる(T槽37℃;40mbar)。赤い油(66.43g)が得られる。
反応の副生成物、3,3’-((2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(2,4,6-トリメチルベンズアルデヒド)は、シリカカラム(溶出剤:酢酸エチル/石油エーテル=1/4体積で)でのクロマトグラフィーによって、2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドから分離される。2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドを含有する分画の回収の後、溶媒を減圧下で蒸発させる(T槽36℃;21mbar)。石油エーテル(120ml)を残留物に添加し、懸濁液を-18℃で撹拌しながら2時間維持する。沈殿物をろ過し、石油エーテル(40/60)(3回25ml)を用いてフィルター上で洗浄し、最後に室温で、大気圧下で、10~15時間乾燥させる。融点52℃の白色固体(40.04g;収率75質量%)が得られる。モル純度は、99%よりも高い(1H NMR)。
【0076】
【0077】
【0078】
2.3.2. 2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドオキシムの合成:
2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒド(46.70g;0.212モル)のエチルアルコール(750ml)中溶液に、室温で、ヒドロキシルアミン(16.81g;0.254モル、水中50%、Aldrich)のエチルアルコール(75ml)中溶液を添加する。反応媒体を23℃で3時間撹拌する(T槽)。溶媒の蒸発後(T槽=24℃;35mbar)、石油エーテル(40/60)(150ml)を添加する。沈殿物をろ過し、石油エーテル(100ml)を用いてフィルター上で洗浄する。粗生成物を酢酸エチル(650ml)及び石油エーテル(650ml)の混合物中に室温で溶解させ、この溶液をシリカゲル層(φ9cm、SiO22.0cm)でろ過する。
【0079】
溶媒を蒸発させ(T槽=22~24℃)、2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドオキシムを室温で、大気圧下で乾燥させる。融点77℃の白色固体(43.81g;収率88質量%)が得られる。モル純度は99%よりも高い(
1H NMR)。
【化40】
【0080】
【0081】
2.3.3. 2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシド(化合物C)の合成:
2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンズアルデヒドオキシム(17.00g;0.072モル)の、3℃に冷却されたジクロロメタン(350ml)中溶液に、NaOClの水溶液(62.9g活性Cl/l)(126ml)を10~15分かけて滴下添加する。反応媒体の温度を3℃~5℃の間に保つ。その後、反応媒体を温度3~5℃で1時間撹拌する。水性相を分離し、ジクロロメタン(25ml)で抽出する。合わせた有機相を水(3回75ml)で洗浄する。溶媒を減圧下で蒸発させる(T槽=22℃、35mbar)。石油エーテル(40/60)(90ml)をこの残留物に添加し、懸濁液を撹拌しながら室温で10~12時間維持する。沈殿物をろ過し、石油エーテル(3回30ml)を用いてフィルター上で洗浄し、最後に室温で、大気圧下で、10~15時間乾燥させる。融点63℃の白色固体(15.12g、収率90質量%)が得られる。モル純度は99%よりも高い(1H NMR)。
【0082】
【0083】
【0084】
3. 修飾ジエンエラストマーの製造
3.1. 化合物Aで修飾された天然ゴム
段落2.1に記載の方法に従って得られた化合物A、89mol%を超えるNMR純度を有する3-メトキシ-4-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシド0.98phr(すなわち、モル分率0.3mol%)をオープンミル(30℃の外部混合機)で天然ゴム100g中に組み込む。混合物は、このミルで15回均質にされ、次いでスラブに成形され、その後、圧力10バールの加圧下で、100℃の熱処理を10分間施される。1H NMRによる分析によって、グラフト化のモル度0.100mol%未満及びモルグラフト化収率33%未満を求めることができた。
3.2. 化合物Bで修飾された天然ゴム
段落2.2の方法に従って得られた化合物B、NMR純度95mol%を有する2-(グリシジルオキシ)-1-ナフトニトリルオキシド1.06phr(すなわち、モル分率0.3mol%)をオープンミル(30℃の外部混合機)で天然ゴム100g中に組み込む。混合物は、このミルで15回均質にされ、次いでスラブに成形され、その後、圧力10バールの加圧下で、100℃の熱処理を10分間施される。1H NMRによる分析によって、グラフト化のモル度0.162mol%及びモルグラフト化収率54%を求めることができた。
【0085】
3.3. 化合物Cで修飾された天然ゴム
段落2.3の方法に従って得られた化合物C、NMR純度99mol%を有する2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシド1.03phr(すなわちモル分率0.3mol%)をオープンミル(30℃の外部混合機)で天然ゴム100g中に組み込む。混合物は、このミルで15回均質にされ、次いでスラブに成形され、その後、圧力10バールの加圧下で、100℃の熱処理を10分間施される。1H NMRによる分析によって、グラフト化のモル度0.070mol%及びモルグラフト化収率23%を求めることができた。
3.4. 化合物Aで修飾された合成ポリイソプレン
段落2.1に記載された方法に従って得られた化合物A、89mol%を超えるNMR純度を有する3-メトキシ-4-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシド0.98phr(すなわちモル分率0.3mol%)を、オープンミル(30℃の外部混合機)で合成ポリイソプレン(cis-1,4-イソプレン単位99.35質量%及び3,4-イソプレン単位0.65質量%を含有する;上記の方法に従って測定されたMn=375000g/mol及びPDI=3.6)100g中に組み込む。混合物は、このミルで15回均質にされ、次いでスラブに成形され、その後、圧力10バールの加圧下で、100℃の熱処理を10分間施される。1H NMRによる分析によって、グラフト化のモル度0.150mol%及びモルグラフト化収率50%を求めることができた。
【0086】
3.5. 化合物Bで修飾された合成ポリイソプレン
段落2.2の方法に従って得られた化合物B、NMR純度95mol%を有する2-(グリシジルオキシ)-1-ナフトニトリルオキシド1.06phr(すなわちモル分率0.3mol%)を、オープンミル(30℃の外部混合機)で合成ポリイソプレン(cis-1,4-イソプレン単位99.35質量%及び3,4-イソプレン単位0.65質量%を含有する;上記の方法に従って測定されたMn=375000g/mol及びPDI=3.6)100g中に組み込む。混合物は、このミルで15回均質にされ、次いでスラブに成形され、その後、圧力10バールの加圧下で、100℃の熱処理を10分間施される。1H NMRによる分析によって、グラフト化のモル度0.145mol%及びモルグラフト化収率48%を求めることができた。
【0087】
3.6. 化合物Cで修飾された合成ポリイソプレン
段落2.3に従って得られた化合物C、NMR純度99mol%を有する2,4,6-トリメチル-3-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゾニトリルオキシド1.03phr(すなわちモル分率0.3mol%)を、オープンミル(30℃の外部混合機)で合成ポリイソプレン(cis-1,4-イソプレン単位99.35質量%及び3,4-イソプレン単位0.65質量%を含有する;上記の方法に従って測定されたMn=375000g/mol及びPDI=3.6)100g中に組み込む。混合物は、このミルで15回均質にされ、次いでスラブに成形され、その後、圧力10バールの加圧下で、100℃の熱処理を10分間施される。1H NMRによる分析によって、グラフト化のモル度0.200mol%及びモルグラフト化収率67%を求めることができた。
【0088】
4. エラストマー組成物において使用される成分
(1)Solvayによって販売されるシリカ、Zeosil 1165MP;
(2)Evonikによって参照Si69で販売されるビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TESPT)シラン;
(3)Cabot Corporationによって販売されるN234等級のカーボンブラック;
(4)Flexsysによって参照Santoflex 6-PPDで販売されるN-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン;
(5)Flexsys社によって販売される2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン;
(6)Umicore社によって販売される酸化亜鉛(工業等級);
(7)Uniqema社によって販売されるステアリンPristerene4031;
(8)Flexsysによって参照Santocure CBSで販売されるN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド;
(9)段落3.2に記載された方法に従って得られる、化合物Bで修飾された天然ゴム;
(10)段落3.3に記載された方法に従って得られる、化合物Cで修飾された天然ゴム;
(11)段落3.1に記載された方法に従って得られる、本発明の化合物Aで修飾された天然ゴム;
(12)段落3.5に記載された方法に従って得られる、化合物Bで修飾された合成ポリイソプレン;
(13)段落3.6に記載された方法に従って得られる、化合物Cで修飾された合成ポリイソプレン;
(14)段落3.4に記載された方法に従って得られる、本発明の化合物Aで修飾された合成ポリイソプレン
【0089】
5. 試験1
この試験の目的は、対照群のエラストマー組成物(組成物T1)及び2種の比較例のエラストマー組成物(組成物C1及び組成物C2)と比較して、本発明の化合物で修飾された天然ゴムを含むエラストマー組成物(組成物C3)の性能の折り合いにおける改善を示すことである。
【0090】
これらの組成物の様々な構成成分の含量は、phr、エラストマー100質量部当たりの質量部で表され、表7に示される。
【表7】
【0091】
エラストマー組成物T1及びエラストマー組成物C1~C3は、以下のように調製される:化合物Bで修飾された天然ゴム、又は化合物Cで修飾された天然ゴム、又は化合物Aで修飾された天然ゴム、又は未修飾天然ゴムを85cm3のPolylab内部混合機に導入し、70%まで満たし、その内部容器温度はおよそ100℃である。
次に、エラストマー組成物のそれぞれについて、補強充填剤、充填剤をジエンエラストマーとカップリングするための作用剤、次いで1~2分間混練した後、加硫系を除いた様々な他の構成成分が導入される。次いで、熱機械的作業(非生産段階)が、最高落下温度160℃に到達するまで、合計でおよそ5~6分間続くステップにおいて実行される。
【0092】
こうして得られた混合物は、回収され、冷却され、次いで、加硫系(硫黄及びスルフェンアミド型促進剤)が25℃の外部混合機(ホモフィニッシャー(homofinisher))に添加され、全体をおよそ5~6分間混合した(生産段階)。
こうして得られたエラストマー組成物は、その後、その物理特性及び機械特性の測定のためにスラブの形態(厚さ2~3mm)にカレンダー加工される。
これらの組成物のゴム特性は、150℃での硬化後30分間測定される。得られた結果を表8に示す。
【0093】
【0094】
本発明のエラストマー組成物C3は、対照群T1並びに比較例C1及び比較例C2のエラストマー組成物と比較して、補強指数(MA300/M100)における有意な改善及び転がり抵抗/剛性性能の折り合いにおける改善(tan(δ)max60℃の減少及びG*
50%復路60℃の増加)を同時に示す。
【0095】
5. 試験2
この試験の目的は、対照群のエラストマー組成物(組成物T2)及び2種の比較例のエラストマー組成物(組成物C4及び組成物C5)と比較して、本発明の化合物で修飾された合成ポリイソプレンを含むエラストマー組成物(組成物C6)の性能の折り合いにおける改善を示すことである。
これらのエラストマー組成物のそれぞれの構成成分の含量は、phr、エラストマー100質量部当たりの質量で表され、表9に示される。
【0096】
【0097】
エラストマー組成物T2及びエラストマー組成物C4~C6は、エラストマー組成物T1及びエラストマー組成物C1~C3についての上記の方法に従って調製される。
これらのエラストマー組成物のゴム特性は、150℃での硬化後30分間測定される。得られた結果を表10に示す。
【0098】
【0099】
本発明のエラストマー組成物C6は、対照群T2並びに比較例C4及び比較例C5のエラストマー組成物と比較して、補強指数(MA300/M100)における有意な改善及び転がり抵抗/剛性性能の折り合いにおける改善(tan(δ)max60℃の減少及びG*
50%復路60℃の増加)を同時に示す。
【国際調査報告】