(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】構成的サイトカイン受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20241226BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20241226BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241226BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241226BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20241226BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20241226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241226BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241226BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241226BHJP
A61K 35/17 20250101ALN20241226BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C07K14/71
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/13
C07K16/28
C07K14/725
C07K14/47
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P25/28
A61P37/06
A61P37/08
A61K39/395 N
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538173
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 GB2022053359
(87)【国際公開番号】W WO2023118878
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522164226
【氏名又は名称】クウェル セラピューティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス‐ローデラ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】トゥン、シム
(72)【発明者】
【氏名】マックロスキー、ベサニー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
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4C087ZB08
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4C087ZB32
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA51
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
少なくとも一部分がEPORの細胞外領域に由来するエキソドメインを含む組換えタンパク質が提供され、前記エキソドメインは、シグナル誘導物質分子の非存在下で前記組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化と前記T細胞へのシグナルの提供とを可能にする二量体化ドメインを含む。また、このような組換えタンパク質をコードする核酸分子、組換え構築物、ベクター、および該核酸分子を含有する細胞、このような細胞の作製方法、ならびに治療目的のそれらの使用も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えタンパク質を含むT細胞であって、前記組換えタンパク質が、少なくとも一部分がEPORの細胞外領域に由来するエキソドメインを含み、前記エキソドメインが、シグナル誘導物質分子の非存在下で前記組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化と前記T細胞へのシグナルの提供とを可能にする二量体化ドメインを含む、T細胞。
【請求項2】
前記エキソドメインの前記少なくとも一部分が、配列番号3または配列番号5に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のT細胞。
【請求項3】
EPORの細胞外領域に由来する前記エキソドメインの前記少なくとも一部分が前記二量体化ドメインを含む、請求項1または2に記載のT細胞。
【請求項4】
前記二量体化ドメインがロイシンジッパーまたはシステイン残基である、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項5】
前記二量体化がジスルフィド結合二量体化である、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項6】
前記二量体化がホモ二量体化またはヘテロ二量体化である、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項7】
前記シグナル誘導物質分子がEPOである、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項8】
前記エキソドメインが、配列番号2に示すアミノ酸配列、もしくは配列番号2に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ130位にシステイン残基を有するバリアントを含むか、またはそれからなり、あるいは、配列番号4に示すアミノ酸配列、もしくは配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ154位にシステイン残基を有するバリアントを含むか、またはそれからなる、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項9】
前記T細胞がT制御性細胞またはその前駆体である、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項10】
前記第2のタンパク質が前記組換えタンパク質と異なる、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項11】
前記T細胞が前記第2のタンパク質をさらに含む、請求項10に記載のT細胞。
【請求項12】
前記T細胞が、キメラ抗原受容体、異種TCR、安全スイッチポリペプチド、異種FOXP3ポリペプチド、および/または変異カルシニューリンタンパク質をさらに含む、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項13】
前記エキソドメインが、EPORに対して異種の1つ以上のドメインまたは配列を含む、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項14】
前記エキソドメインが、1つ以上のタグペプチド、自殺部分、および/または誘導性二量体化ドメインを含む、請求項13に記載のT細胞。
【請求項15】
前記EPORの細胞外領域がEPOに結合可能である、請求項1から14のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項16】
前記組換えタンパク質がエンドドメインを含む、請求項1から請求項15のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項17】
前記組換えタンパク質が、エンドドメインを含むシグナル伝達タンパク質と会合可能である、請求項1から15のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項18】
前記エンドドメインが、JAK1結合モチーフおよび/またはJAK2結合モチーフを含むチロシンキナーゼ活性化ドメインと、JAK1および/またはJAK2によってリン酸化され得る1つ以上のチロシン残基を含むチロシンエフェクタードメインとを含む、請求項16または17に記載のT細胞。
【請求項19】
前記チロシンエフェクタードメインが、少なくとも1つのSTAT会合モチーフ、好ましくはSTAT5会合モチーフを含む、請求項18に記載のT細胞。
【請求項20】
前記エンドドメインが、JAK3結合モチーフをさらに含む、請求項16から19のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項21】
前記エンドドメインが、配列番号8に示すEPORエンドドメイン、もしくは配列番号8に対して少なくとも40%の配列同一性を有するEPORエンドドメインバリアントを含むか、またはそれからなる、請求項16から20のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項22】
前記EPORエンドドメインバリアントが、EPORエンドドメイン配列へのSHP1の結合を減少させるための少なくとも1つの改変を含み、特に、前記改変が、配列番号8のY181および/またはY183に対する改変である、請求項21に記載のT細胞。
【請求項23】
前記EPORエンドドメインバリアントが、前記EPORエンドドメインのうち少なくとも、配列番号8のY181および/またはY183を含む部分がトランケートされたトランケート型EPORエンドドメインを含むか、またはそれからなり、例えば、前記トランケート型EPORエンドドメインが、配列番号62、配列番号106、もしくは配列番号107の配列、または配列番号62、配列番号106、もしくは配列番号107に対して少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含むか、またはそれからなる、請求項21または22に記載のT細胞。
【請求項24】
前記バリアントEPORエンドドメインバリアントが、少なくとも配列番号108の配列または配列番号8との差異がアミノ酸2個以内である配列の挿入を含み、例えば、前記バリアントが、少なくとも配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、もしくは配列番号113の配列、または配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、もしくは配列番号113との差異がアミノ酸1個以内もしくは2個以内である配列の挿入を含む、請求項21から23のうちのいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項25】
前記EPORエンドドメインバリアントが、配列番号114、配列番号115、もしくは配列番号116の配列、または配列番号114、配列番号115、もしくは配列番号116に対して少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含むか、またはそれからなる、請求項24に記載のT細胞。
【請求項26】
請求項1から25のうちのいずれか一項で定義される組換えタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸分子を含むT細胞。
【請求項27】
請求項26で定義される核酸分子と1つ以上のさらなる塩基配列とを含む構築物を含むT細胞。
【請求項28】
前記さらなる塩基配列が、(i)調節配列であり、かつ/または、(ii)目的のタンパク質をコードし、かつ/あるいは、前記目的のタンパク質が、(iii)治療用タンパク質、(iv)抗原受容体、(v)CARもしくはTCR、(vi)安全スイッチポリペプチド、または(vii)FOXP3ポリペプチドである、請求項27に記載のT細胞。
【請求項29】
請求項26から28で定義される核酸分子または構築物を含むベクターを含むT細胞。
【請求項30】
請求項1から29のうちのいずれか一項で定義されるT細胞を含む細胞集団。
【請求項31】
請求項26から29のうちのいずれか一項で定義される核酸分子、構築物、またはベクターを細胞に導入する工程を含む、請求項1から29のうちのいずれか一項に記載のT細胞の作製方法。
【請求項32】
請求項26から29のうちのいずれか一項で定義される核酸分子、構築物、またはベクターを細胞に導入することを含む、細胞の生存または持続を促進する方法。
【請求項33】
EPOの存在下で前記細胞を培養する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1から30のうちのいずれか一項で定義される細胞または細胞集団を含む、医薬組成物。
【請求項35】
治療法に使用するための、請求項1から30のうちのいずれか一項に記載のT細胞もしくは細胞集団、または請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
癌、感染性疾患、神経変性疾患、もしくは炎症性疾患を治療するための、または免疫抑制を誘導するための、請求項1から30のうちのいずれか一項に記載のT細胞もしくは細胞集団、または請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項37】
対象において、移植に対する寛容の誘導、移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫疾患、またはアレルギー性疾患の治療および/または予防、組織修復および/または組織再生の促進、あるいは炎症の改善に使用するための、請求項36に記載のT細胞、細胞集団、または医薬組成物であって、好ましくは前記細胞がTreg細胞である、請求項36に記載のT細胞、細胞集団、または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示および本発明は、組換えタンパク質および養子細胞療法(ACT)におけるその使用に関する。特に、組換えタンパク質は、当該タンパク質を発現する細胞に、所望の構成的シグナル、例えば構成的STAT媒介シグナルを提供することができる。シグナルは、細胞に、所望の効果または特性(例えば、機能、活性、活力、または生存(例えば、移植された宿主対象における持続性)の増加)を付与し得る。また、そのような組換えタンパク質をコードする核酸分子、組換え構築物、ベクター、および上記核酸分子を含有する細胞、そのような細胞の作製方法、ならびに治療目的のそれらの使用も提供される。
【0002】
背景
機能的な免疫細胞を対象に投与する養子細胞療法(ACT)は、特に悪性疾患や感染性疾患を含む様々な医学的状態に対する確立された、かつ発展を続ける免疫療法的アプローチとなっている。当初、腫瘍浸潤リンパ球が転移性黒色腫の治療に有効であることが示され、その後、様々な細胞標的分子を標的とするためにキメラ抗原受容体(CAR)または異種T細胞受容体(TCR)を発現するリダイレクトされた(re-directed)T細胞またはNK細胞が開発され、臨床使用に採用されている。当初のアプローチは、細胞傷害性を有する免疫細胞、例えば、細胞傷害性T細胞またはNK細胞を用いて、体内の不要または有害な細胞を標的にして死滅させていたが、より最近では、ACT用に制御性T細胞(Treg)が開発されている。Tregは免疫抑制機能を有する。Tregは、細胞変性免疫応答を制御するように作用し、免疫寛容の維持に必須である。Tregの抑制性は、例えば、炎症性障害や自己免疫疾患、移植などにおける免疫介在性の器官損傷を改善および/または防止するためなど、治療目的に利用できる。
【0003】
ACTにおいて有用であるためには、移植または投与された細胞は、有用な治療効果を発揮するのに十分な期間、機能的な状態でレシピエント(ACT治療の対象)の中で生存し、持続する必要がある。さらに、治療目的の使用に十分な数の細胞を調製するためには、細胞をインビトロで生成(例えば操作)、培養、および増殖する必要がある。
【0004】
増殖因子インターロイキン-2(IL-2)は、特にTregを含む免疫細胞の恒常性(発生、増殖、生存)、およびその抑制機能と表現型安定性に、必須である。活性化された通常T細胞(Tcon)は、インビボでのIL-2の主要な発生源である。一方で、TregはIL-2を産生することができず、微小環境に存在するTconが産生したIL-2への傍分泌アクセスに依存している。
【0005】
IL-2の獲得は、インビトロで増殖されて患者に移植されるTregの治療効果への影響が大きい。これは、1)インビトロの増殖プロトコルは、概して、高濃度のIL-2を必要とし、このためTregはこのサイトカインへの依存度が高く、2)免疫抑制剤投与の結果、患者体内でIL-2の濃度が低下することが多く、3)炎症組織の微小環境内では、IL-2へのアクセスが限られていることが多いためである。炎症を起こしている肝臓ではIL-2のレベルが下がることが知られており、カルシニューリン阻害薬の常用でさらにそれが悪化し、TconがIL-2を産生する能力を実質的に減少させることを考えると、肝臓移植は特に困難な徴候を示す。低用量の外因性IL-2の投与は、カルシニューリン阻害薬によって誘発されるTreg機能障害を回復させ、Tregの肝臓における蓄積を促進する。しかしながら、低用量IL-2の治療目的の使用については、同時にTconを活性化させ、これが組織損傷を助長しうる危険性が懸念される。
【0006】
WO2020/044055には、外因性IL-2投与の必要性を回避するためのアプローチが記載されている。この場合は、標的抗原に結合すると生産的IL-2シグナルを細胞に提供することができるように改変されたCARを発現するように、Treg細胞が操作されている。換言すると、CARの細胞内シグナル伝達ドメインであるエンドドメインがIL受容体由来の配列またはドメインを含み、これらが、内因性IL-2の非存在下で、IL-2結合を必要とせずに、「IL-2シグナル」を伝達することを可能にする。IL-2は、転写因子STAT5(シグナル伝達兼転写活性化因子5)を介してシグナルを伝達する。STAT5は、インターロイキン(例えば、IL-2)が受容体に結合すると通常活性化されるキナーゼJAK1および/またはJAK2によって、活性状態でリン酸化される。したがって、WO2020/044055におけるCARは、STAT5会合モチーフとJAK1結合モチーフおよび/またはJAK2結合モチーフとを含むエンドドメインを含んでいる。
【0007】
同様に、ACT用の他の免疫細胞、例えば細胞傷害性T細胞や、CAR-T細胞を含む他のTエフェクター細胞も、生存または機能の持続性を高めるために追加のシグナル伝達能力が提供されることを必要とするか、その恩恵を受ける可能性がある。したがって、ACT用細胞の生存または持続性を高めるためであれ、その機能的活性または治療効果を改善するためであれ、追加のシグナル伝達、より具体的には操作されたシグナル伝達が必要であることは、Treg細胞に限定されない。
【0008】
WO2020/04405は重要な進歩をもたらしたが、ACTの分野においては、新しい改良されたアプローチ、特に、標的ごとに改変されたCARを開発する必要性を回避または低減する、より普遍的に応用され得るアプローチが引き続き必要とされている。
【0009】
エリスロポエチン(EPO)は、胎児の肝臓によって、または成人では腎臓の血管周囲間質線維芽細胞によって作られる糖タンパク質である。EPO産生は、インビボで、主に、低酸素誘導因子(HIF)-1α転写因子の安定化およびその後のEPOの転写をもたらす低酸素によって刺激される。EPOは、赤血球前駆体細胞上のエリスロポエチン受容体(EPOR)に結合することによって赤血球産生を誘導するが、さらに非造血組織においても発現される。EPORは、508個のアミノ酸からなる膜貫通受容体であり、WSXWSモチーフを含む細胞外ドメインと、1つの膜貫通疎水性領域と、細胞質ドメインとを含む。EPORは、EPOと結合するとホモ二量体を形成し、JAK2、MAPK、およびPI3の各キナーゼの活性化とSTAT5のリン酸化とを介してシグナル伝達することができる。EPORはCD131とのヘテロ二量体化が可能であり得ることも文献に示唆されている。
【0010】
WO2019/169290には、薬剤の存在下で二量体化が可能な二量体化ドメインを含むキメラ受容体を用いて、細胞にシグナルを誘導的に導入するためのアプローチが記載されている。WO2019/169290に開示されているある構築物は、EPOR由来のドメインまたはIL2RB由来のドメインを含んでいたが、シグナル伝達はリガンドの存在下でのみ誘導された。誘導性は、細胞内のシグナル伝達の制御を可能にし、ある特定の疾患状態において有用であり得るが、リガンドが存在しないかまたは低レベルで存在するような条件下では、そのような構築物からのシグナル伝達が減少する場合があり、その結果、細胞の持続性が欠如する。したがって、誘導性が可能でないおよび/または望ましくない条件下で有用な、細胞に構成的シグナルを提供することができるサイトカイン受容体を開発することが求められている。
【0011】
概要
本発明者らが同定した組換えタンパク質は、リガンドの非存在下で、ホモ二量体化が可能であり、かつ、当該組換えタンパク質を発現する細胞に構成的シグナルを提供することが可能である。特に、この組換えタンパク質は、サイトカイン受容体の改変された細胞外ドメインに由来するエキソドメインを有しており、当該改変は、サイトカイン受容体に対する天然のリガンドの非存在下でホモ二量体化および構成的シグナル伝達を促進するものである。この組換えタンパク質は、特に、エンドドメインをさらに含んでもよく、いくつかの細胞タイプにおいて使用されて、一貫したシグナル、例えばSTATシグナルを提供することができ、当該一貫したシグナルは、特にACTの状況下で、サイトカイン受容体リガンドが制限されているかまたは制限され得る環境での細胞の生存を可能にすることができる。このような環境では、細胞に生存シグナルを提供するための誘導性タンパク質の使用が適切でない場合があり、本発明は、ここに特定の有用性を有し、この特定の問題に対処するものである。
【0012】
特に、本発明者らが使用するために同定した組換えタンパク質は、EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインを含み得るが、EPOの非存在下で当該受容体を介した構成的シグナル伝達を可能にする改変をさらに含み得る。細胞外領域は、EPOが環境中に存在する場合にはEPOに結合する能力も保持し得るため、改変されたサイトカイン受容体を介したシグナル伝達を増加させる可能性がある。したがって、有利なことに、上記組換えタンパク質は、二量体化して細胞に構成的シグナルを提供することが可能であり、また、環境リガンドが利用可能な場合には環境リガンドに結合することが可能でもあり得、シグナル伝達増強の可能性をもたらす。ただし、所望の機能性/生存優位性を有する組換えタンパク質を発現する細胞を提供するには、リガンドの非存在下での構成的シグナル伝達だけで十分である。一実施形態において、組換えタンパク質は、154位の残基のシステインへのアミノ酸置換を有するEPORの改変されたヒト細胞外領域を含み得、これは、EPO非存在下での単量体組換えタンパク質鎖のホモ二量体化と構成的シグナル伝達とを促進する。
【0013】
本発明で使用するための組換えタンパク質は、当該組換えタンパク質を発現する細胞に任意のシグナルを提供し得るが、この組換えタンパク質は、特に細胞療法の状況下で、細胞が対象への投与後に生存または持続することを可能にして、ある治療法が病気の対象において有効となるための最良の機会を提供するために利用され得ることが特に想定される。特に、組換えタンパク質を介したシグナル伝達には、チロシンキナーゼ活性とタンパク質リン酸化とが関与し、より具体的には、ヤヌスキナーゼ(JAK)のリン酸化および活性、例えば、JAK1および/またはJAK2が関与するJAK-STATシグナル伝達経路の活性化が関与する。したがって、特に、本明細書で述べる組換えタンパク質のエンドドメインは、エキソドメインと同じタンパク質(JAK2結合モチーフとSTAT5会合モチーフとを含むEPOR)に由来または部分的に由来してもよく、あるいは、1種以上の異なるタンパク質に由来してもよく(組換えタンパク質がキメラ組換えタンパク質であってもよく)、上記1種以上の異なるタンパク質は、EPORと同じもしくは類似のシグナルの伝達を可能にする。または、天然のEPOR受容体とは異なる細胞シグナルの提供を可能にする可能性もある。有利なことに、本発明者らは、組換えタンパク質のエンドドメインがEPOR由来である場合は、活性化されるとJAK2のリン酸化を阻害し得るのに加えてIL2Rなどの他の内因性受容体に影響を与える能力も有するSHP1への結合能力が低下した、改変されたエンドドメインを利用することが可能であることをさらに確認した。また、本発明者らは、組換えタンパク質のエンドドメインがEPOR由来である場合は、EPORのエンドドメインに由来する上記エンドドメインの部分のC末端において細胞質テールなどのアミノ酸配列を挿入すると、組換えタンパク質の細胞表面発現を増加または安定化させ得、かつ/またはEPOに対する感受性を増加させ得ることをさらに確認した。
【0014】
本明細書に記載の組換えタンパク質は、投与後に対象内で一定期間持続することが必要とされ得るT細胞において特に有用であり、より具体的には、生存するためにSTAT5シグナル伝達を必要とし(通常は内因性IL2Rを介して)、そのようなシグナル伝達を誘発するために外因性リガンドの供給に完全に依存するTregにおいて特に有用である。受容体の構成的シグナル伝達能力、Tregが一定のSTAT5シグナル伝達を必要とすること、および特定の疾患状態(例えば、I型糖尿病)における天然に利用可能なリガンド(例えば、IL2)の不足を考慮すると、組換えタンパク質をTreg内で使用することは特に有利である。本発明者らは、有利なことに、本明細書に記載の組換えタンパク質を発現するTregがそれらの通常の表現型と抑制機能を維持し、そのため細胞の安定性が保持され得ることを示した。
【0015】
したがって、本発明は、組換えタンパク質を含むT細胞であって、該組換えタンパク質が、EPORの細胞外領域に少なくとも一部分が由来するエキソドメインを含み、該エキソドメインが、シグナル誘導物質分子の非存在下で、該組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化と該T細胞へのシグナルの提供とを可能にする二量体化ドメインを含む、T細胞を提供する。
【0016】
上記二量体化ドメインは、シグナル誘導物質分子の非存在下での組換え分子の第2のタンパク質との結合と、細胞へのシグナル伝達とを可能にする二量体化ドメインであればよい。よって、上記二量体化ドメインは、細胞への構成的シグナルの提供を可能にする。上記二量体化ドメインは、上記EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの部分の外(すなわち、エキソドメインにおけるこの部分とは異なる位置)にあってもよく、または特には、上記EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの部分の中に含まれていてもよい。
【0017】
したがって、この点において、本発明は、組換えタンパク質を含むT細胞であって、該組換えタンパク質が、EPORの細胞外領域に少なくとも一部分が由来するエキソドメインを含み、該部分が、EPORの細胞外領域に対して、シグナル誘導物質分子の非存在下での該組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化および該T細胞へのシグナルの提供を可能にする改変を含む、T細胞を提供する。
このため、T細胞内に存在する組換えタンパク質は、T細胞内で当該細胞または前駆体細胞に形質導入された核酸分子から発現されてもよく、遺伝子編集技術を用いて改変された内因性核酸配列から発現されてもよい。
【0018】
特定の実施形態において、上記組換えタンパク質は、該組換えタンパク質と第2のタンパク質とのジスルフィド結合二量体化を可能にするエキソドメインを含む。したがって、組換えタンパク質は、特にジスルフィド結合二量体化を可能にする少なくとも1つの二量体化ドメインを含む。
【0019】
二量体化は、本明細書に記載のように組換えタンパク質が別の組換えタンパク質と結合するホモ二量体化であってもよく、組換えタンパク質が異なるタンパク質と二量体化するヘテロ二量体化であってもよいことが、当業者にはさらに理解されるであろう。ヘテロ二量体化が起こるためには、上記第2のタンパク質が、組換えタンパク質内に存在する二量体化ドメインに結合可能な同族二量体化ドメインを含んでいる必要があることが理解されるであろう。T細胞へのシグナルの産生を可能にするのは、典型的には、組換えタンパク質の二量体化である。本発明の特定の実施形態では、上記二量体化はホモ二量体化であり、この点において、本発明は、組換えタンパク質を含むT細胞であって、該組換えタンパク質が、EPORの細胞外領域に少なくとも一部分が由来するエキソドメインを含み、該エキソドメインが、シグナル誘導物質分子の非存在下での該組換えタンパク質のホモ二量体化および該T細胞へのシグナルの提供を可能にする二量体化ドメインを含む、T細胞を提供する。特に、上述したように、EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの少なくとも一部分は、EPORの細胞外領域に対して、シグナル誘導物質の非存在下での上記組換えタンパク質のホモ二量体化および上記T細胞へのシグナルの提供を可能にする改変を含み得る。
【0020】
上記組換えタンパク質の二量体化は、第2のタンパク質の存在下で自然に起こり、シグナル誘導物質分子、例えばエリスロポエチンの存在を必要とせず、より詳細には、いかなるシグナル誘導物質分子(リガンドも二量体化誘導物質分子も含む)の存在も必要としない。
【0021】
この点において、本発明は、組換えタンパク質を含むT細胞であって、該組換えタンパク質が、EPORの細胞外領域に少なくとも一部分が由来するエキソドメインを含み、該エキソドメインが、EPOの非存在下での該組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化および該T細胞へのシグナルの提供を可能にする二量体化ドメインを含む、T細胞をさらに提供する。特に、上述したように、EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの少なくとも一部分は、EPORの細胞外領域に対して、EPOの非存在下での上記組換えタンパク質のホモ二量体化および上記T細胞へのシグナルの提供を可能にする改変を含み得る。
【0022】
特に、本発明は、組換えタンパク質を含むT細胞であって、該組換えタンパク質が、EPORの細胞外領域に少なくとも一部分が由来するエキソドメインを含み、該エキソドメインが、EPOの非存在下での該組換えタンパク質のホモ二量体化および該T細胞へのシグナルの提供を可能にする二量体化ドメインを含む、T細胞を提供する。特に、上述したように、EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの少なくとも一部分は、EPORの細胞外領域に対して、EPOの非存在下での上記組換えタンパク質のホモ二量体化および上記T細胞へのシグナルの提供を可能にする改変を含み得る。
【0023】
上記EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの部分は、EPORの細胞外領域の全長、またはその一部分もしくはバリアント配列を含み得る。特に、存在するEPOR細胞外領域配列は、シグナル誘導物質分子、特にEPOの非存在下での組換えタンパク質の二量体化および構成的シグナル伝達を可能にする少なくとも1つの改変を含み得る。したがって、上記少なくとも1つの改変は、組換えタンパク質の構成的シグナル伝達をもたらす任意の改変であり得る。上記組換えタンパク質内に存在するEPOR細胞外領域配列は、シグナル誘導物質分子、特にEPOの非存在下での組換えタンパク質の二量体化および構成的シグナルの提供を可能にする少なくとも1つの改変に加えて、他の改変を含んでもよい。特に、上記EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの部分は、配列番号1に由来するものであってもよく、より具体的には、配列番号1の1位から250位のアミノ酸(配列番号5)に由来するものであってもよい。上記少なくとも1つの改変は、EPORの細胞外領域のアミノ酸配列に対して、二量体化、特にジスルフィド結合二量体化を可能にする変異であってもよく、かつ/または、シグナル誘導物質分子の非存在下で二量体化を可能にする配列、例えばロイシンジッパーの挿入であってもよい。より具体的には、上記組換えタンパク質は、配列番号5の154位のアルギニンのシステインへの改変(R154C)を含む。最も具体的な実施形態では、上記エキソドメインは、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなっていてもよい。
【0024】
したがって、別の実施形態において、本発明は、組換えタンパク質を含むT細胞であって、該組換えタンパク質が、シグナル誘導物質分子、特にEPOの非存在下で、該組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化を可能にし、該T細胞においてシグナルを提供するように改変されたEPORの細胞外領域またはその一部分もしくはバリアントを含むエキソドメインを含む、T細胞を提供する。
【0025】
EPORの細胞外領域の部分またはバリアントは、一実施形態において、EPOR細胞外領域の機能を保持し得、したがってEPOに結合可能であり得る。このようにして、前述のように、EPOの存在下で細胞に提供されるシグナルを増加させることが可能となり得る。あるいは、またはさらに、このような部分またはバリアントは、EPOR細胞外領域に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有し得る。特定の実施形態において、バリアントおよび部分は、二量体化ドメインを提供する少なくとも1つの改変を含み得、これにより、シグナル誘導物質分子、例えばEPOの非存在下で、組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化および発現細胞へのシグナルの提供を可能にする。
【0026】
さらなる実施形態において、本発明は、組換えタンパク質を含むT細胞であって、該組換えタンパク質が、配列番号2もしくは配列番号4を含むエキソドメイン、または配列番号2もしくは配列番号4に対して少なくとも90%の同一性を有し、かつ配列番号2の130位にシステインを含むかもしくは配列番号4の154位にシステインを含む配列番号2もしくは配列番号4の一部分もしくはバリアントを含むエキソドメインを含み、該組換えタンパク質が、シグナル誘導分子、特にEPOの非存在下で、第2のタンパク質と二量体化することが可能であり、該T細胞においてシグナルを提供することが可能である、T細胞を提供する。
【0027】
組換えタンパク質のエキソドメインは、EPORの細胞外領域に由来する部分に加えて、二量体化に関連しない追加の異種ドメインまたは領域(すなわち、野生型EPORに存在しない非二量体化ドメインまたは領域)、例えば自殺モチーフまたはタグを含んでもよく、したがって、エキソドメインは、EPORの細胞外領域に由来する部分のみからなるわけではない場合もある。
【0028】
上述したように、本明細書に記載の組換えタンパク質のエキソドメインは、シグナル誘導物質分子の非存在下での二量体化および構成的シグナル伝達を可能にする少なくとも1つの二量体化ドメイン(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つの)二量体化ドメインを含む。特に、二量体化ドメインは、例えば、アミノ酸配列に1つ以上の改変(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つの改変)を加えることによって、EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの部分に導入することができる。したがって、本明細書に記載の組換えタンパク質を含む細胞においてシグナル伝達が起こるのに、シグナル誘導物質分子(例えば、EPO)は必要とされない。特に、上記組換えタンパク質は、EPORの天然のリガンドであるEPOの非存在下で、二量体化し、構成的シグナルを提供することが可能である。そのため構成的シグナル伝達には必要ないが、本明細書に記載の組換えタンパク質のエキソドメインは、組換えタンパク質と第2のタンパク質との誘導性二量体化を可能にする1つ以上の二量体化ドメインを含んでもよい。このような「誘導性二量体化ドメイン」は、二量体化するために二量体化誘導物質分子の存在を必要とする。一実施形態において、少なくとも1つの誘導性二量体化ドメインの存在は、以下に詳述するように、組換えタンパク質を介したシグナル伝達の増強または増加を可能にし得る。典型的には、上記1つ以上の誘導性二量体化ドメインは、EPORに対して異種(すなわち、野生型EPORには存在しない)であり得る。当業者には、上記1つ以上の誘導性二量体化ドメインが、組換えタンパク質内の任意の場所(任意のエンドドメイン内またはエキソドメイン内を含む)に含まれ得るが、特に、エキソドメイン内、例えば、EPORの細胞外領域に由来するエキソドメインの部分内、またはエキソドメイン内ではあるがEPORの細胞外領域に由来する部分内ではない場所に、例えば別個のドメインもしくは領域として、含まれ得ることが、理解されるであろう。
【0029】
本発明の組換えタンパク質は、エキソドメインを細胞膜内につなぎ留めるための膜貫通ドメインを含んでもよい。上記膜貫通ドメインは、例えば、EPOR、IL2RB、CD28、CD8などを含む、膜貫通ドメインを有する任意のタンパク質に由来するものであり得る。一実施形態では、上記膜貫通ドメインは、別のタンパク質の膜貫通ドメインと会合してもよく、例えば、上記膜貫通ドメインは、DAP10/12と会合可能なTREMタンパク質に由来するものであってもよい。
【0030】
組換えタンパク質によって提供され得るシグナルは、細胞の機能的特性または活性を改善または増加させるシグナルであり得る。したがって、細胞の機能または効果が増加し得、この機能または効果は、インビトロまたはインビボでの、すなわち、ACT用に調製されている途中の細胞の生成もしくは増殖中または細胞が対象に投与された後の、機能または効果であり得る。これは、例えば、細胞の生存、細胞の持続、細胞の機能の持続、活力、機能的効果(例えば、免疫抑制効果もしくは細胞傷害性効果)、記憶表現型を含む細胞の表現型、増殖能力、および/または細胞の治療有効性であり得る。その増加は、組換えタンパク質を含む細胞において、組換えタンパク質を含まない細胞と比較して、認められ得る。上述のシグナルは、特に構成的シグナルである。
【0031】
特定の実施形態において、シグナルは、生存促進シグナルであり、培養中および培養後に細胞が生存することおよび機能する能力を維持することを助け、治療の過程で対象に投与された後も細胞が持続しその機能的能力を維持することを助ける。これは持続性シグナルと呼ばれることもある。したがって、組換えタンパク質は、誘導性生存促進シグナル伝達能力を細胞に付与するために細胞内で発現され得る。このタンパク質は、ACT治療に使用するために調製された細胞において特に有用であり、このような細胞においてTCRまたはCARまたは任意のキメラ受容体などの抗原受容体と一緒に発現されてもよい。したがって、このタンパク質はACT用の細胞の操作において有用である。
【0032】
一実施形態では、シグナルは、STAT媒介シグナル(例えば、STAT3媒介シグナルまたはSTAT5媒介シグナル)であり、より具体的には、STAT5媒介シグナルであり、これは通常、IL-2などのインターロイキンによって、またはEPOによって細胞内で誘導され得る。
【0033】
本発明の組換えタンパク質は、細胞にシグナルを提供するために、特に、エンドドメインを含むか、またはエンドドメインを含むさらなるシグナル伝達タンパク質と会合可能である。したがって、エンドドメインは、本明細書に記載の組換えタンパク質の一部であってもよく、または、例えば、組換えタンパク質と例えばそれぞれの膜貫通ドメインを介して会合するシグナル伝達タンパク質内に含まれていてもよく、ここで、例えば、組換えタンパク質の膜貫通ドメインは、骨髄受容体由来であってもよく、シグナル伝達タンパク質の膜貫通ドメインは、DAP10由来またはDAP12由来であってもよい。
【0034】
特定の実施形態において、上記エンドドメインは、少なくとも1つのJAK1結合モチーフおよび/またはJAK2結合モチーフと、少なくとも1つのSTAT会合モチーフ(例えば、STAT3会合モチーフおよび/またはSTAT5会合モチーフ)とを含む。特に、上記エンドドメインは、少なくとも1つのJAK2結合モチーフと少なくとも1つのSTAT5会合モチーフ、または少なくとも1つのJAK1結合モチーフと少なくとも1つのSTAT5会合モチーフを含み得る。上記エンドドメインはさらなるドメインを含んでいてもよく、例えば、少なくとも1つのJAK3結合モチーフを含んでいてもよい。
【0035】
本発明は、本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸分子(ポリヌクレオチドとも呼ばれる)を含むT細胞をさらに提供する。
【0036】
上記核酸分子は、構築物の形態であってもよく、より具体的には、核酸分子と1つ以上の他の塩基配列(目的の塩基配列)とを含む組換え構築物の形態であってもよい。例えば、上記構築物は、核酸分子と共に、調節配列(例えば、発現制御配列)および/または別の機能性タンパク質(より一般的には、目的のタンパク質)(例えば、CARまたはTCRなどの受容体)をコードする配列を含み得る。エンドドメインがさらなるシグナル伝達タンパク質内に存在する場合は、組換えタンパク質をコードする塩基配列とシグナル伝達タンパク質をコードする塩基配列とが同じ構築物中に提供されてもよい。あるいは、組換えタンパク質とシグナル伝達タンパク質のために別個の核酸分子または構築物が提供されてもよい。上記構築物は、核酸分子を1つ以上の他のコード塩基配列と連結する1つ以上の共発現配列を含んでもよい。
【0037】
本明細書で定義される核酸分子または構築物は、ベクター内に含まれていてもよい。別個の組換えタンパク質と他の発現タンパク質(例えば、機能性タンパク質またはシグナル伝達タンパク質)とが別個の分子または構築物にコードされている場合、それらはそれぞれ別個のベクターに含まれていてもよい。したがって、別個の所望のタンパク質をコードする配列をそれぞれが含む一組のベクターが存在してもよい。
【0038】
ベクターは、ウイルス性ベクターであってもよく、非ウイルス性ベクターであってもよい。一実施形態では、ベクターは、本明細書で定義される核酸分子と、目的のタンパク質、特に、CARまたはTCRなどの受容体をコードするさらなる塩基配列と、を含み得る。
【0039】
上記細胞(T細胞)は、その細胞膜上に組換えタンパク質を発現する。
【0040】
また、本発明によれば、本明細書で定義される細胞を含む細胞集団、例えばT細胞集団も提供される。
【0041】
一実施形態では、上記細胞は、CD4+ T細胞もしくはCD8+ T細胞またはそれらの任意の前駆体を含む、T細胞である。したがって、細胞は、幹細胞、より具体的には、造血幹細胞(HSC)または多能性幹細胞(PSC)、例えば人工多能性幹細胞(iPSC)、すなわちT細胞への分化または転換前の細胞であってもよい。特に、T細胞は、Treg細胞であり得る。細胞は、初代細胞であってもよく、細胞株由来であってもよい。
【0042】
本発明は、本明細書で定義されるT細胞(すなわち、組換えタンパク質を含む細胞または組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む細胞)の調製方法であって、本明細書で定義される核酸分子、構築物、またはベクターをT細胞に導入する(例えば、細胞に形質導入または遺伝子導入する)ことを含む方法をさらに提供する。本方法は、組換えタンパク質を細胞内で発現させることを含んでもよい。これには、例えば、細胞を培養することが含まれ得る。
【0043】
このような方法は、当該方法で使用する細胞を、単離、富化、用意、または生成する先行工程をさらに含んでもよい。さらに、細胞の単離または富化または生成を核酸分子導入工程の後に行ってもよい。例えば、核酸分子を前駆体細胞または前駆細胞、例えば幹細胞に導入し、その後、当該細胞のT細胞への分化または変化を誘導するかまたは起こさせてもよい。例えば、iPSC細胞をTreg細胞または他のT細胞に分化させてもよく、Tcon細胞をTreg細胞に転換させてもよい。
【0044】
この態様はまた、本明細書で定義される組換えタンパク質の調製方法であって、本明細書で定義される核酸分子、構築物、またはベクターをT細胞に導入することと、該細胞によってキメラタンパク質を発現させることと、必要に応じて、該キメラタンパク質を検出および/または回収することと、を含む方法も含み得る。
【0045】
本発明は、本明細書で定義されるT細胞の調製方法であって、EPORをコードする内因性核酸を、発現されたEPORがEPOの非存在下でホモ二量体化する細胞外領域を含み、したがってT細胞にシグナルを提供するような改変を含むように遺伝子操作することを含む方法をさらに提供する。特に、本方法は、T細胞への分化前のiPSCなどのT細胞前駆体を用いて実施されてもよく、より具体的には、上記遺伝子操作された内因性核酸から発現されたEPORは、154位にRからCへのアミノ酸置換を含む。
【0046】
本発明は、細胞の生存または持続を促進する方法であって、本明細書で定義される核酸分子、構築物、またはベクターを細胞に導入すること、あるいは上記のように内因性核酸を遺伝子操作すること、を含む方法をさらに提供する。
【0047】
この態様は、本明細書で定義される細胞を対象に投与し、必要に応じてシグナル誘導物質分子(例えば、構成的シグナルを増加させることが望まれる場合はEPO)を対象に投与する、追加の工程を含んでもよい。細胞の投与前、投与中、または投与後に、任意の誘導物質を投与することができる。したがって、この態様では、本方法をインビボで実施することができる。あるいは、本方法は、インビトロ/エクスビボで実施してもよい。
【0048】
別の観点からは、本発明は、本明細書に記載の組換え分子の使用であって、該組換え分子を発現する細胞の生存または持続を促進するための使用を提供する。
【0049】
上記のように、組換えタンパク質は、有利には、治療の状況において細胞内で発現され得る。上記細胞は、治療目的の使用のためにさらに遺伝子操作されていないという意味で、未改変の細胞、例えば、対象から単離されたT細胞や、そのような単離された細胞に由来する細胞であってもよい(もっとも、当然ながらこの細胞は本方法によって組換えタンパク質を発現するように改変されるが)が、典型的には、上記細胞は、さらなる分子(すなわち、さらなるタンパク質)、特に、CARまたはTCRなどの受容体を発現するようにさらに改変または操作された細胞である。
【0050】
したがって、本発明は、養子細胞移入療法(ACT)に使用するための細胞の調製方法であって、本明細書で定義される組換えタンパク質を上記細胞に提供することを含む方法をさらに提供する。より具体的には、本方法は、本明細書で定義される核酸分子、構築物、またはベクターを上記細胞に導入することを含み得る。本方法はまた、細胞に、別個の核酸分子、構築物、またはベクター、例えば、別個の(例えば第2の)タンパク質、もしくは治療用タンパク質、特に受容体、例えばCARもしくTCRをコードする塩基配列を含む核酸分子、構築物、またはベクターを導入することを含み得る。
【0051】
さらに、本発明は、本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む細胞、細胞集団、またはベクターを、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、上記細胞またはベクターは、さらなるタンパク質、特にキメラタンパク質、または受容体、例えばCARもしくはTCRをコードする追加の塩基配列を含む。別の実施形態では、上記細胞は、さらなるタンパク質、特にキメラタンパク質、またはCARもしくはTCRなどの受容体をコードする塩基配列を含む別個の核酸分子、構築物、またはベクターを含む。
【0052】
さらに、本発明は、治療法に使用するための、本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む細胞もしくは細胞集団、または本明細書で定義される医薬組成物、または本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。特に、上記細胞、細胞集団、または上記細胞もしくは細胞集団を含む医薬組成物は、ACT用であり得る。上記ベクターまたは上記ベクターを含む医薬組成物は、遺伝子治療用であってもよい。上記ACTまたは遺伝子治療は、ACTまたは遺伝子治療、特に、ACTまたは遺伝子治療による免疫療法、に応答する任意の状態を治療または予防するためのものであってもよい。
【0053】
本発明は、癌、または感染性疾患、神経変性疾患、炎症性疾患、自己免疫性疾患、もしくはアレルギー性疾患、または不要もしくは有害な免疫応答に関連する任意の状態の治療または予防に使用するための、本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む細胞、細胞集団、もしくはベクター、または本明細書で定義される医薬組成物をさらに提供する。特に、上記細胞がTregまたは他の免疫抑制細胞である場合、その細胞は、例えば、炎症性障害、自己免疫疾患もしくは状態、またはアレルギー性疾患もしくは状態において、また移植において、免疫介在性臓器障害を改善および/または予防するために、免疫抑制を誘導するため(すなわち、不要または有害な免疫応答を抑制するため)に使用され得る。
【0054】
この態様はまた、養子細胞移入療法の方法であって、該治療法を必要とする対象に、本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む細胞もしくは細胞集団、または本明細書で定義される医薬組成物、特に、有効量の該細胞、細胞集団、または医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0055】
また、癌、または感染性疾患、神経変性疾患、炎症性疾患、自己免疫性疾患、もしくはアレルギー性疾患、または不要もしくは有害な免疫応答に関連する状態を、治療または予防する方法であって、該方法を必要とする対象に、本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む細胞、細胞集団、もしくはベクター、または本明細書で定義される医薬組成物、特に、有効量の該細胞、細胞集団、ベクター、または医薬組成物を投与することを含む方法も提供される。
【0056】
さらに、癌、または感染性疾患、神経変性疾患、炎症性疾患、自己免疫性疾患、もしくはアレルギー性疾患、または不要もしくは有害な免疫応答に関連する状態の治療または予防に使用するための医薬の製造における、本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む細胞、細胞集団、またはベクターの使用が提供される。
【0057】
こうした治療目的の態様のいくつかの実施形態では、上記使用は、移植に対する寛容の誘導における使用;細胞性および/または体液性移植拒絶反応の治療および/または予防における使用;移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫疾患、またはアレルギー疾患の治療および/または予防における使用;組織修復および/または組織再生の促進のための使用;あるいは炎症の改善のための使用であり得る。特に、このような実施形態では、上記細胞はTreg細胞であり得る。
【0058】
上記の様々な治療目的の態様において、上記細胞、細胞集団、ベクター、または医薬組成物は、シグナル誘導物質分子(特にEPO)と組み合わせて、または一緒に使用するためのものであってもよい。
【0059】
したがって、さらなる態様は、治療法、特にACT療法または遺伝子治療において使用するための、(a)本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする核酸分子を含む細胞、細胞集団、もしくはベクター、または本明細書で定義される医薬組成物と、(b)シグナル誘導物質分子(特にEPO)と、を含む組み合わせ製品を提供する。上記治療法は、上記で定義され、本明細書中にさらに記載される任意の治療法であり得る。
【0060】
上記組み合わせ製品の各成分(a)および(b)は、別々に、逐次的に、または同時に使用するためのものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、EPOの存在下でEPOR鎖のホモ二量体化を示す野生型マウスEPORを示す。受容体がEPOによって活性化されると、JAK2が受容体のエンドドメインと会合でき、その結果、Y343がリン酸化され、STAT5が動員され二量体化される。SHP1は、EPORを介したシグナル伝達の制御のための負のフィードバックループを提供し、JAK2を直接阻害することができる。
【
図2A】
図2は、本明細書に記載の様々な組換えタンパク質を示す。
図2Aは、129位がシステイン(マウスの配列番号付け)に改変されたEPOR由来のエキソドメインと、EPORの膜貫通ドメインと、Y343(マウスの配列番号付け)を含むEPORのエンドドメインと、を含む組換えタンパク質を示す。この組換えタンパク質は、ホモ二量体化し、STAT5を介して細胞に構成的シグナルを提供することができる。
【
図2BC】
図2Bは、129位がシステイン(マウスの配列番号付け)に改変されたEPOR由来のエキソドメインと、EPORの膜貫通ドメインと、SHP1の結合部位を除去することにより、JAK2に対するSHP1の負のフィードバックを除去し、STAT5シグナル伝達を増強する、EPORのトランケート型(truncated)エンドドメインと、を含む組換えタンパク質を示す。
図2Cは、129位がシステイン(マウスの配列番号付け)に改変されたEPOR由来のエキソドメインと、EPORの膜貫通ドメインと、JAK1結合モチーフおよびSTAT5会合モチーフ(Y510を有する)を保持するIL2RB由来のトランケート型エンドドメインを含むエンドドメインと、を含む組換えタンパク質を示す。
【
図3-1】
図3は、実施例5で試験した構築物を示す。EPORエキソドメイン由来のエキソドメインにより、タンパク質を発現する細胞をEPOR抗体を用いて同定することができた。
【
図4A】
図4Aは、様々な構築物を形質導入した新鮮なTregの形質導入効率を示すFACSプロットを示す。形質導入効率は、HLA-A2デキストラマーおよびEPOR発現を用いて測定した。
【
図4B】
図4Bは、様々な構築物を形質導入した凍結Tregの形質導入効率を示すFACSプロットを示す。形質導入効率は、HLA-A2デキストラマーおよびEPOR発現を用いて測定した。
【
図5】
図5は、EPO処理を行った細胞と行わなかった細胞の形質導入画分および非形質導入画分についてのpSTAT5 MFIを示す。
【
図6A】
図6Aは、IL2有りの場合とIL2無しの場合の、6日間の、細胞集団における形質導入細胞(A2 CARの存在によって判定)の割合(%)を示す。
【
図6B】
図6Bは、IL2有りの場合とIL2無しの場合の、6日間の、細胞の形質導入画分(A2 Dex+)および非形質導入画分(A2 Dex-)のFoxP3発現を示す。
【
図6C】
図6Cは、658構築物または786構築物のいずれかを形質導入したTregの、5日間および7日間の増殖倍率を示す。
【
図7-1】
図7は、細胞の形質導入画分および非形質導入画分ならびにモック形質導入細胞における、様々なTregマーカーの発現を示す。
【
図8-1】
図8は、aCD3/CD28ビーズ、HLA-A2- B細胞、およびHLA-A2+ B細胞という異なる刺激を用いたTエフェクター細胞の増殖に対するTregの抑制率(%)を示す。
【
図9】
図9は、異なる構築物を形質導入したTregの標的細胞に対する細胞傷害性を示す、死滅標的細胞の割合(%)を示す。
【
図10】
図10は、モックTregと658構築物または786構築物を形質導入したTreg(形質導入細胞画分および非形質導入細胞画分の両方)とにおける、様々な細胞内サイトカインのレベルを示す。
【0062】
詳細な説明
本明細書における製品、方法、および使用の主題は、組換えタンパク質であって、それが発現される細胞の機能性または生存または実際には任意の特性を促進するために使用することができる組換えタンパク質である。したがって、このタンパク質は、養子細胞移入に有用であり、ACT用の細胞の調製を補助し、かつ/または、対象への移入後に細胞を生存状態に保ち機能的に保つのに役立つ。細胞の治療効果が改善され得る。
【0063】
本明細書に記載の組換えタンパク質は、EPORの細胞外領域に少なくとも一部分が由来するエキソドメインの存在に基づくものであり、エキソドメインは、シグナル誘導物質分子、特にEPOの非存在下で組換えタンパク質と別のタンパク質(第2のタンパク質)との二量体化と組換えタンパク質を含む細胞へのシグナルの提供とを可能にする二量体化ドメイン(例えば、少なくとも1つの二量体化ドメイン)を含む。本明細書に記載の組換えタンパク質は、第2のタンパク質(例えば、別の組換えタンパク質)と自発的に二量体化することができ、組換えタンパク質が発現された細胞に構成的シグナルを提供することができる。特に、シグナルは、エンドドメインを介して細胞に伝達され得、このエンドドメインは、特定の実施形態では、組換え分子内に含まれてもよく、別の実施形態では、別個のタンパク質(「シグナル伝達タンパク質」)上に提供されてもよい。
【0064】
したがって、本発明は、細胞に構成的シグナルを提供する組換え分子の能力に基づく。特に、本明細書に記載の組換えタンパク質の二量体化は、特にJAK1活性またはJAK2活性を含む、JAKキナーゼ活性によって媒介されるシグナル伝達経路、特にJAK1-STATシグナル伝達経路またはJAK2-STATシグナル伝達経路を活性化する。このようにして、組換えタンパク質は、天然のサイトカイン受容体、例えば、EPORまたはインターロイキン(例えば、IL-2)受容体の活性化によって誘導されるシグナル伝達を模倣し得る。「模倣する」とは、本開示の組換えタンパク質によって活性化されるシグナル伝達カスケードは、天然のサイトカイン受容体によって活性化されるシグナル伝達カスケードと類似しているが、一方において、本開示の組換えタンパク質によって誘導される活性化の規模は、天然のサイトカイン受容体のものとは異なり得ることを意味する。
【0065】
本明細書に記載されるように、組換えタンパク質は、エキソドメインを含む。本明細書における「エキソドメイン」とは、膜結合タンパク質として発現された場合に細胞の外側に見出され得る組換えタンパク質の一部分または一部をいう。したがって、典型的には、エキソドメインは、細胞膜内でも細胞質内でもなく細胞外に見出されるタンパク質の部分を指す。当業者には、組換えタンパク質の発現がまず細胞内で起こり、その過程においてタンパク質の全体が細胞内に見出されることが理解されるであろう。さらに、組換えタンパク質は、(例えば、EPOなどのリガンドの結合に応答して、)周期的に内部移行および循環され得る。しかしながら、発現後の通常の形態では、組換えタンパク質は、典型的には膜結合タンパク質であり、このタンパク質の一部としてのエキソドメインが、細胞膜および細胞の外側に見出され得る。「エキソドメイン」、「細胞外ドメイン」、および「細胞外領域」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0066】
組換えタンパク質のエキソドメインは、EPORの細胞外領域に由来する配列を含む。例えば、組換えタンパク質のエキソドメインは、EPORの細胞外領域に由来する配列からなってもよい。本明細書における「に由来する」は、組換えタンパク質のエキソドメインが、EPORの細胞外領域に対して少なくとも70%の同一性を有する配列、より具体的には、EPORの細胞外領域に対して少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含むことを意味する。組換えタンパク質のエキソドメイン内に含まれるEPORの細胞外領域に由来する配列は、EPORの野生型細胞外領域に対して、少なくとも1つの改変(例えば、少なくとも1つのアミノ酸置換、挿入、欠失、または転座)を含み得る。この点において、一実施形態では、組換えタンパク質のエキソドメインは、EPORの野生型細胞外領域、例えば、配列番号3または配列番号5に示すものを含まないことがある。したがって、エキソドメイン内に含まれるEPOR細胞外領域配列は、1つの改変を含むものであってもよく、2つ以上の改変、例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、10個、15個、または20個の改変を含むものであってもよい。特に、改変の少なくとも1つは、二量体化ドメインの導入をもたらし得、任意のシグナル誘導物質分子の非存在下で(特にEPOの非存在下で)、組換えタンパク質が二量体化、特にホモ二量体化し、組換えタンパク質を発現する細胞にシグナルを提供する能力をもたらし得る。エキソドメイン内に含まれるEPOR細胞外領域配列は、さらに、またはあるいは、二量体化ドメインの導入をもたらさず、したがって、任意のシグナル誘導物質分子の非存在下で二量体化しかつ/またはシグナル伝達する組換えタンパク質の能力をもたらさない改変を含んでもよい。しかしながら、二量体化ドメインがエキソドメインの他の場所(すなわち、EPORの細胞外ドメインに由来する部分内ではない)に設けられる場合は、エキソドメイン内のEPOR細胞外領域配列は、野生型配列を含むかまたはそれからなってもよく、二量体化ドメインの導入をもたらさない1つ以上の改変を含んでもよい。
【0067】
EPORは、天然のコンフォメーションでエリスロポエチン(EPO)に結合する受容体であり、EPOとの結合により、二量体化およびJAK2/STAT5シグナル伝達カスケードが誘発される。したがって、野生型EPORは、当該受容体を発現する細胞に対して構成的シグナルではなく誘導性シグナルを提供する。野生型ヒトEPORは、508個のアミノ酸を含んでなり、シグナルペプチド(配列番号6、配列番号1の1~24位のアミノ酸からなる)、細胞外領域(配列番号3(シグナルペプチドを含まない)、配列番号1の25~250位のアミノ酸残基からなる)、膜貫通ドメイン(配列番号7、配列番号1の251~273位のアミノ酸残基からなる)、および細胞質ドメイン(配列番号8、配列番号1の274~508位のアミノ酸残基からなる)を含む。EPORのヒト全長野生型配列を配列番号1に示す。
【0068】
本明細書における「EPORの細胞外領域」とは、EPORの細胞外、すなわち細胞の外側に通常見出されるEPORの領域をいう。特に、ヒトEPORまたはマウスEPORを考えた場合、「EPORの細胞外領域」は、配列番号3もしくは配列番号5(ヒトの場合)に示す配列または配列番号11(マウスの場合)に示す配列を指し得る。したがって、EPORの細胞外領域は、シグナルペプチドを含んでいてもよく、シグナルペプチドがなくてもよい。
【0069】
前述のように、本明細書に記載の組換えタンパク質のエキソドメインは、EPORの細胞外領域に由来する配列を含み、この配列は1つ以上の改変を含み得る。特に、改変の少なくとも1つは、組換えタンパク質が、シグナル誘導分子の非存在下で、第2のタンパク質と二量体化し、組換えタンパク質を含む細胞にシグナルを提供することを可能にし得る(より具体的には、組換えタンパク質は、シグナル誘導物質分子(特にEPO)の非存在下で第2のタンパク質と二量体化する能力が、シグナル誘導物質分子(特にEPO)の非存在下の野生型EPORと比較して増加し得、かつ/または、組換えタンパク質を含む細胞にシグナルを供給する能力が、シグナル誘導物質分子(特にEPO)の非存在下の野生型EPORと比較して増加し得る)。したがって、組換えタンパク質は、シグナル誘導物質分子(例えば、EPO)の非存在下で、野生型EPORと比較して、二量体化する能力および/またはシグナルを提供する能力が、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%増加し得る。二量体化および/またはシグナル伝達の増加は、以下にさらに述べるように判定することができる。
【0070】
典型的には、上記機能(シグナル誘導物質分子の非存在下でのシグナル伝達、すなわち構成的シグナル伝達)をもたらす1つ以上の改変が、本発明におけるEPORの細胞外領域に対して行われ得る。そのような1つ以上の改変は、近接した場合に会合、例えば、結合または何らかの形で相互作用する同族二量体化ドメインに基づいて、組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化を可能にし得る。したがって、EPORの細胞外領域の改変により、シグナル誘導物質分子の非存在下での二量体化を可能にする二量体化ドメインが導入され得る。
【0071】
特定の一実施形態において、上記1つ以上の改変は、組換えタンパク質と第2のタンパク質とのジスルフィド結合による二量体化(ジスルフィド結合二量体化)を可能にしてもよく、より具体的には、ジスルフィド結合ホモ二量体化を可能にしてもよい。典型的には、この効果を達成するために、天然由来ではない1つ以上のシステイン残基を、EPORの細胞外領域に挿入または置換することができる。この点において、EPORの細胞外領域に由来するエキソドメイン内に含まれる配列は、配列番号3の130位、配列番号5の154位、または配列番号11の129位にアミノ酸改変を有し得る。より具体的には、改変は、アルギニンからシステインへのアミノ酸置換であってもよく、したがって、配列番号3、配列番号5(もしくは配列番号1)、または配列番号11(もしくは配列番号9)において、それぞれ、R130C、R154C、またはR129Cと呼ばれる場合がある。当業者には、この実施形態が、特に、組換えタンパク質鎖間のジスルフィド結合を可能にし、組換えタンパク質のホモ二量体化をもたらすことが理解されるであろう。したがって、組換えタンパク質のエキソドメインは、130位においてRからCへのアミノ酸置換を有する配列番号3、154位においてRからCへのアミノ酸置換を有する配列番号5、または129位においてRからCへのアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなってもよい。
【0072】
別の見方をすると、エキソドメインは、配列番号2、配列番号4、または配列番号10の配列を含むかまたはそれからなってもよい。
【0073】
本明細書における「二量体化ドメイン」とは、第2のドメインに結合可能な第1のドメインを指し、これら第1および第2のドメインは、同じであってもよく(ホモ二量体化ドメイン)、異なっていてもよい(ヘテロ二量体化ドメイン)。本発明の二量体化ドメインは、シグナル誘導物質分子(例えば、二量体化誘導物質分子)の非存在下で二量体化がその同族パートナーに対して起こるため、構成的二量体化ドメインと称される場合もある。上述したように、二量体化ドメインは、エキソドメインの任意の部分内に存在し得、例えば、EPORの細胞外領域に由来する部分内に、またはエキソドメイン内の他の場所に、存在し得る。したがって、二量体化ドメインは、上記のようにEPORの細胞外領域に加えられる改変によって形成されてもよく、後述するように、当該技術分野で公知の他の構成的二量体化システム(EPORの細胞外領域に由来する配列内、EPORの細胞外領域のN末端もしくはC末端、またはエキソドメイン内の他の場所に位置し得る)に基づくものであってもよい。
【0074】
これに関して、当該技術分野において広く知られ記載されているロイシンジッパーを特に挙げることができる。ロイシンジッパードメインは、転写因子によく見られるタンパク質-タンパク質相互作用ドメインの一種であり、ロイシン残基がa-ヘリックスを介して等間隔に並んでいるのが特徴である。したがって、一実施形態では、本明細書における二量体化ドメインは、ロイシンジッパー配列であるか、またはロイシンジッパー配列を含む。これらは、使用されるロイシンジッパー配列に応じて、ヘテロ二量体化またはホモ二量体化に使用され得る。Fosタンパク質分子またはJunタンパク質分子に由来するロイシンジッパードメインは、Patel et al., 1996, J. Biol. Chem. 271(8), 30386-30391およびStuhlmann-Laeisz et al., 2006, Mol. Biol. Cell 17, 2986-2995に記載されている。ヒトc-Junに基づく代表的なロイシンジッパー配列を配列番号20に示し(これはN末端にGGを含み得る)、Fosロイシンジッパー配列を配列番号21に示す。
【0075】
JunロイシンジッパーおよびFosロイシンジッパーをそれぞれ含むヘテロ二量体化ドメインを用いてもよい。あるいは、Junロイシンジッパーを含むホモ二量体化ドメインを用いてもよい。
【0076】
当該技術分野で公知の他のロイシンジッパー二量体化ドメインとしては、転写因子の1つのクラスであるZIPタンパク質に基づくものが挙げられる。ZIPドメインは、ロイシンジッパーモチーフを形成するように並んだロイシンを含むアルファ-ヘリックスの領域である。ZIPドメインは、他のZIPドメイン上のロイシンと相互作用して、アルファ-ヘリックスを可逆的に結合させる(すなわち、二量体化させる)ことができる。したがって、本明細書における二量体化ドメインは、bZIPロイシンジッパードメインまたはaZIPロイシンジッパードメインを含み得る。例えば、ヘテロ二量体化ドメインは、AZIP(EE)ドメインとヘテロ二量体化するBZIP(RR)ドメインであるかまたはそれを含んでもよい。ロイシンジッパーは、二量体化ドメインを作製するために使用され得るコイルドコイル構造タンパク質モチーフの例である。bZIPおよび合成コイルドコイルペプチドに基づくヘテロ二量体化ドメインが、Reinke et al. 2010, J. Am. Chem. Soc. 132(17), 6025-6031に記載されており、これらのいずれも使用することができる。例えば、適切なロイシンジッパードメインとしては、SYNZIP1~SYNZIP48が挙げられる。ロイシンジッパードメインの他の例としては、BATF、ATF4、ATF3、BACH1、JUND、NFE2L3、およびHEPTADが挙げられる。BZip(RR)ロイシンジッパードメインの配列を配列番号22に示す。AZip(EE)ロイシンジッパードメインの配列を配列番号23に示す。
【0077】
いくつかの実施形態では、好適なロイシンジッパードメイン対は、1000nM以下、例えば、100nM以下、10nM以下、または1nM以下の解離定数(Kd)を有する。
【0078】
二量体化ドメイン対のさらなる例としては、PSD95-Dlgl-zo-1(PDZ)ドメイン、またはストレプトアビジンドメインおよびストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)ドメインが挙げられる。他の二量体化ドメインは、互いに相互作用または結合することが知られている他のタンパク質から得られるかまたはそれらに由来し得る。例えば、あるヘテロ二量体化ドメイン対は、CD80およびPDL-1を含み得る。
【0079】
ホモ二量体化ドメインのさらなる例としては、免疫グロブリンGのFc領域が挙げられる。Fc領域は、例えば二量体化ドメインを提供するために、融合タンパク質において広く使用されており、二量体化可能なFc領域の様々な断片および変異体、例えば、Fc領域の最初の5個のアミノ酸を欠く断片が、文献に記載されている。
【0080】
上述したように、エキソドメイン内に含まれるEPOR由来の細胞外領域配列は、シグナル誘導物質分子の非存在下で二量体化してシグナル伝達する組換え分子の能力に寄与するかしないかを問わず、追加の改変を含んでいてもよい。特に、本発明者らは、組換えタンパク質が、自発的に二量体化し(すなわち、二量体化が可能な第2のタンパク質と共に位置する場合にシグナル誘導物質分子の非存在下で二量体化し)、組換えタンパク質(および、第2のタンパク質が組換えタンパク質と異なる場合は第2のタンパク質)を含む細胞にシグナルを提供するという、所望の能力を有する限り、EPORの細胞外領域のバリアントまたは断片を本発明において利用し得ると想定している。上記に示したように、特に、そのようなバリアントまたは断片/部分は、EPORの野生型細胞外領域(例えば、配列番号3、配列番号5、または配列番号11)に対して少なくとも70%の配列同一性を有し得る。したがって、例えば、追加のアミノ酸置換、欠失、付加、または転座、例えば、少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換、欠失、付加、または転座を含む、EPORのさらに改変された細胞外領域を本発明において使用することができる。この点において、組換えタンパク質が、シグナル誘導物質分子の非存在下で、第2のタンパク質と二量体化し、組換えタンパク質を発現する細胞にシグナルを提供するという望ましい機能を有することを条件として、エキソドメインは、配列番号2、配列番号4、または配列番号10のバリアントまたは断片(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号10に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%の同一性を有するバリアントまたは断片)を含むかまたはそれからなってもよい。そのようなバリアントまたは断片を含む組換えタンパク質は、配列番号2、配列番号4、または配列番号10を含むエキソドメインを含む組換えタンパク質と同じまたは類似の、第2のタンパク質と二量体化する能力および/またはシグナルを提供する能力を有し得るか、あるいは、変化した、第2のタンパク質と二量体化する能力を有し得ることが理解されるであろう。特に、上記バリアントまたは断片を含む組換えタンパク質は、二量体化および/またはシグナル伝達能力が、配列番号2を含むエキソドメインを含む組換えタンパク質の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、120%、150%、170%、190%、または200%であってもよい。二量体化は、以下にさらに説明するように検出および測定することができる。
【0081】
より具体的には、エキソドメインは、配列番号2、配列番号4、または配列番号10のバリアントまたは断片(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号10に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%の同一性を有するバリアントまたは断片)を含むかまたはそれからなってもよいが、ただし、配列番号2のバリアントまたは断片はR130Cを含み、配列番号4のバリアントまたは断片はR154Cを含み、配列番号10のバリアントまたは断片はR129Cを含むものとする。さらに、上記バリアントまたは断片は、組換えタンパク質に、シグナル誘導分子の非存在下で、第2のタンパク質と二量体化し、組換えタンパク質を含む細胞にシグナルを提供する能力を与える必要がある。
【0082】
当該技術分野で報告されているEPORの細胞外領域に対する改変としては、T114A、S115A、S116A、F117A、F117L、F117W、F117Y、V118A、L120A、E121A、R165A、M174A、S176A、H177A、およびR179Aが挙げられる。これらの改変のいずれか1つ以上が、本発明におけるEPORの細胞外領域に由来するエキソドメイン配列と共に存在してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では好ましいが、組換えタンパク質のエキソドメインと共に含まれるEPORの細胞外領域に由来する配列がEPOに結合する能力を保持することは必須ではない。したがって、EPOに結合する能力を低下させる(例えば、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、または90%超低下させる)かまたは除去するためのEPORの細胞外領域のEPO結合部位に対する改変は、本発明の範囲内である。あるいは、上述したように、一実施形態では、エキソドメイン(したがって、EPORの細胞外領域)が、その領域に加えられた改変に鑑みて提供される構成的シグナルを上回る追加のシグナルを細胞に提供するためにEPOに結合可能であることが望ましい場合もある。本発明はさらに、未改変の野生型EPOR細胞外領域と比較してEPOに対する結合が増強されるようにEPO結合部位が特異的に改変されているEPORの細胞外領域を提供することを包含する。この点において、EPO結合部位の改変は、結合部位に対するEPOの親和性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%増加させることを可能にしてもよい。EPO結合部位は、配列番号1または配列番号5の117位に見出され、したがって、この位置の改変は、本発明に包含される。
【0084】
エキソドメインは、EPORの細胞外領域に由来する配列に加えて、かつ/または任意の構成的二量体化ドメインに加えて、他の異種ドメインまたはタグをさらに含んでもよい。したがって、本明細書において、EPORの細胞外領域に少なくとも一部分が由来するエキソドメインへの言及は、このエキソドメインがEPORの細胞外領域に由来するアミノ酸配列を含むものの、追加の異種配列(すなわち、野生型EPORに存在しない配列)が存在してもよいことを意味する。例えば、エキソドメインは、細胞治療の投与中または投与後の有害事象の発生時などに必要となるかまたは望ましい可能性がある細胞死の誘導を可能にするために、自殺部分をさらに含んでもよい。考えられる自殺部分の例としては、CD20エピトープが挙げられ、その場合、リツキシマブの投与によって細胞死を誘導することができる。WO2013/15339には、このように使用できるCD20エピトープが記載されている。使用され得る他のドメインとしては、組換え分子を発現する細胞を同定および選別するために使用できるタグ、例えば、Strepタグまたはmycタグが挙げられる。
【0085】
さらに、場合によっては、組換え分子のエキソドメイン内に1つ以上のさらなる誘導性二量体化ドメインを含むことが、シグナル伝達の考えられる増強(例えば、同じアミノ酸配列を有しているが1つ以上のさらなる誘導性二量体化ドメインを含まない組換え分子と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%のシグナル伝達の増加)を可能にするために、望ましい場合がある。別の見方をすると、1つ以上のさらなる誘導性二量体化ドメインの存在は、さらなる誘導性二量体化ドメインを含まない組換えタンパク質と比較して、本明細書で定義される組換えタンパク質と第2のタンパク質との間のより多くの量の二量体化(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%の増加)を可能にし得る。追加の誘導性二量体化ドメインは任意の手段による二量体化を可能にし得る。例えば、二量体化は、直接的または間接的な会合であり得、2つの二量体化ドメインが直接に結合しているかまたは連結されていることを意味するものではないが、これが除外されるわけではない。典型的には、誘導性二量体化ドメインはそれぞれ二量体化誘導物質分子に結合し得る。当業者は、任意のさらなる誘導性二量体化ドメイン間の二量体化に二量体化誘導物質分子が必要とされる場合、シグナル伝達の増加または得られる二量体の割合の増加は、二量体化誘導物質分子の存在下でのみ起こり得ることを理解するであろう。このようなさらなる誘導性二量体化ドメインは、EPORの細胞外領域に由来する配列内のEPO結合部位の存在に加えて存在してもよく、そのようなEPO結合部位の喪失に置き換わるために存在してもよい。
【0086】
様々な二量体化誘導物質分子と二量体化のための異なるタンパク質ドメインとを用いた化学的に誘導される二量体化システムが、当該技術分野で知られており、以下にさらに説明する。
【0087】
小分子誘導物質によって媒介される化学誘導二量体化の概念は、長年知られており、誘導物質結合ドメインに融合された目的のタンパク質同士の二量体化を制御するためのツールとして使用されてきた。そのようなシステムは、細胞生物学における、例えばシグナル伝達経路や他の生物学的メカニズムを調査するためにタンパク質を近接させるための、様々な用途への使用、病原性タンパク質を分解または不活性化するための医学における使用、ならびに遺伝子治療および細胞治療における使用が記述されている。典型的な化学的二量体化誘導物質(CID)、または本明細書中の用語を使用すると二量体化誘導物質は、分子の両側で1つずつ、2つのタンパク質またはタンパク質ドメインと相互作用または結合することができるという特徴を有する。したがって、二量体化誘導物質は、2つの結合部位または結合面(またはより一般的には、相互作用部位)を有する。ヘテロ二量体化の場合、二量体化誘導物質は、2つの異なるタンパク質または二量体化ドメインと相互作用または結合することができる。ホモ二量体化の場合、二量体化誘導物質は、同じ二量体化ドメインの2つのコピーまたは分子と相互作用または結合することができる。元のシステムは、マクロライドであるFK506およびラパマイシンに基づくものであった。これらのマクロライドは、ヘテロ二量体化ドメイン対およびCIDの組み合わせを実現するために異なる組み合わせで使用することができる、FK506結合タンパク質(FKBP)、mTORのFKBP-ラパマイシンドメイン(FRB)、カルシニューリン、およびシクロフィリンを含む、種々の異なるタンパク質またはタンパク質ドメインに結合し、そのヘテロ二量体化を誘導することができる。そのようなシステムは、カルシニューリンまたはシクロフィリンに結合するシクロスポリンの使用を含む場合もある。その後、異なる分子に基づく他のCIDヘテロ二量体化システムが開発されており、文献に記載されている。さらに、2つのFKBP分子に結合することができるFK506誘導体に基づくホモ二量体化システムが開発されている。すなわち、同じ二量体化ドメインに対する2つの結合部位を含む対称なまたは二量体の誘導物質に基づくホモ二量体化システムである。
【0088】
一実施形態では、二量体化誘導物質分子はラパマイシンまたはその類似体であり、二量体化ドメインはそれに結合するタンパク質ドメインである。ラパマイシンおよびラパマイシン類似体は、mTORのFRBドメインとFK506結合タンパク質(FKBP)との間に界面を生成することによってヘテロ二量体化を誘導する。この会合により、FKBPは、mTOR活性部位へのアクセスをブロックし、その機能を阻害する。mTORは非常に大きなタンパク質であるが、ラパマイシンとの相互作用に必要なmTORの正確な小さなセグメントは知られており、それを利用することができる。
【0089】
マクロライドであるラパマイシンおよびFK506は、細胞タンパク質のヘテロ二量体化を誘導することによって作用する。各薬剤は、FKBP12タンパク質に高い親和性で結合し、薬剤-タンパク質複合体を形成し、この複合体は、その後、それぞれmTOR/FRAPおよびカルシニューリンに結合し、それらを不活性化する。mTORのFKBP-ラパマイシン結合(FRB)ドメインは、目的のタンパク質に融合され得る、89個のアミノ酸からなる単離されたタンパク質部分として定義され、応用されている。そして、ラパマイシンは、FKBP12またはFKBP12と融合したタンパク質へのFRB融合体の接近を誘導することができる。
【0090】
「FRB」および「FKBP」という用語は、それらのバリアントを含む。そのようなバリアントは、天然の配列に対して1つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、付加、および/または欠失)を有するアミノ酸配列を含み得る。「FKBP」という用語はFKBP12を含む。
【0091】
ラパマイシンは、理想的な誘導性二量体化剤のいくつかの特性を有している。すなわち、ラパマイシンは、FKBPに結合したときにFRBに対して高い親和性(KD<1nM)を有し、mTORのFRBドメインに対して高い特異性を有する。ラパマイシンは、哺乳動物において好ましい薬物動態学的および薬力学的プロファイルを有する有効な治療的免疫抑制剤である。エベロリムス、テムシロリムス、およびデフォロリムスなどの、異なる薬物動態学的特性および動的特性を有するラパマイシンの薬理学的類似体(Benjamin et al, Nature Reviews, Drug Discovery, 2011)も、臨床環境に応じて使用され得る。
【0092】
ラパマイシンが内因性mTORに結合して内因性mTORを不活性化させるのを防ぐために、FRBと接触するラパマイシンの表面を改変することができる。「突起を持たせた(bumped)」ラパマイシンを収容する表面を形成するためのFRBドメインの補償的な変異(compensatory mutation)は、内因性mTORタンパク質とではなく、FRB変異体とのみ二量体化相互作用を回復させる。
【0093】
Bayle et al.(Chem Bio; 2006; 13; 99-107)は、様々なラパマイシン類似体、つまり「ラパログ(rapalog)」と、それらに対応する改変されたFRB結合ドメインとを記載している。例えば、Bayle et al.(2006)は、ラパログとして、
図2に示すように、C-20-メチルリルラパマイシン(C-20-methyllyrlrapamycin)(MaRap)、C16(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BS-Rap)、およびC16-(S)-7-メチルインドールラパマイシン(AP21976/C16-AiRap)を、それぞれの相補的結合ドメインと組み合わせて記載している。他のラパマイシン/ラパログとしては、シロリムスおよびタクロリムス(FK506)が挙げられる。
【0094】
したがって、そのような実施形態では、本明細書に記載の組換えタンパク質内の誘導性二量体化ドメインがFKBPを含み、第2のタンパク質が同族二量体化ドメインFRBを含んでもよく、あるいは、その逆であってもよい。FKBP/FRBは、配列番号15から配列番号19のいずれか1つに示す配列またはそのバリアントを有し得るかまたは含み得る。
【0095】
本明細書において互換的に使用される「シグナル誘導物質分子」または「シグナル誘導分子」とは、エキソドメインと膜貫通ドメインとエンドドメインとを含むタンパク質または受容体を介して、そのようなタンパク質または受容体を含む細胞へのシグナル伝達を誘導することができる分子をいう。シグナル誘導物質分子は、任意の種類のシグナルを誘導可能であり得、当業者は、誘導されるシグナルがタンパク質または受容体内に存在するエンドドメインに依存することを理解するであろう。典型的には、シグナル誘導物質分子はタンパク質または受容体に結合してシグナルを誘導する。1つの態様において、シグナル誘導物質は、タンパク質または受容体に結合して二量体化または多量体化を誘導し、その結果、タンパク質または受容体のエンドドメインを介したシグナルの伝達をもたらし得る。この態様では、シグナル誘導物質分子は二量体化誘導物質分子であってもよい。しかしながら、シグナル誘導物質が受容体またはタンパク質に結合し、コンフォメーション変化を誘導することも可能であり、これによって、タンパク質または受容体のエンドドメインによって移動される(translocated)シグナルの産生がもたらされる。この点において、シグナル誘導物質分子は、既に二量体化した受容体またはタンパク質(例えば、シグナル伝達をしないかまたは弱いシグナル伝達をする)に結合して、細胞内でエンドドメインを介してシグナルを産生することもある。本発明において、組換えタンパク質は、このようなシグナル誘導物質分子の非存在下で細胞にシグナルを提供することができる。したがって、組換えタンパク質は、細胞にシグナルを提供するのに(かつ/または第2のタンパク質と二量体化するのに)シグナル誘導物質分子の存在を必要としない。特に、シグナル誘導物質分子はEPOであり得る。
【0096】
本明細書における「EPO」は、エリスロポエチンを指し、配列番号14のアミノ酸配列を含む。EPOは、典型的には、配列番号1のアミノ酸位置117でEPORに結合する。詳述したように、本発明の組換えタンパク質は、組換えタンパク質を含む細胞へのシグナルを産生するのにEPOの存在を必要としない。
【0097】
本明細書における「二量体化誘導物質分子」とは、2つの誘導性二量体化ドメイン(例えば、組換えタンパク質内と第2のタンパク質内)の間に界面を形成してそれらを二量体として結合させてもよく、2つの誘導性二量体化ドメイン(例えば、組換えタンパク質内と第2のタンパク質内)の間の化学的架橋を可能にして二量体の形成を可能にするものであってもよい。本明細書で何度も述べるように、組換えタンパク質は、二量体化誘導物質分子の非存在下を含む、シグナル誘導物質分子の非存在下で、第2のタンパク質と二量体化することができ、組換えタンパク質を含む細胞においてシグナルを提供することができる。ただし、1つ以上の他の誘導性二量体化ドメインが組換え分子内に存在し得ることが除外されるわけではない。二量体化誘導物質分子としては、例えば、上述したラパマイシンが挙げられる。
【0098】
本明細書に記載の組換えタンパク質の第2のタンパク質との二量体化(本明細書に記載の改変による、かつ/または1つ以上の誘導性二量体化ドメインの存在による)は、当該技術分野で周知の非変性SDS PAGEまたは動的光散乱技術によって判定または測定することができる。したがって、二量体化は、一般に、タンパク質(本発明では組換えタンパク質)の単量体形態と二量体形態のサイズの差によって検出することができる。したがって、組換えタンパク質が第2のタンパク質と二量体化する(特に、ホモ二量体化する)能力は、細胞内または細胞集団内の組換えタンパク質の二量体の存在を検出することによって測定(または判定)することができる。本明細書に記載の組換えタンパク質は、シグナル誘導物質分子、特にEPOの非存在下で、第2のタンパク質と二量体化する能力を有する。したがって、この二量体化能力は、細胞内で発現(ホモ二量体化の場合は単独で、またはヘテロ二量体化の場合は異なる第2のタンパク質と一緒に)された場合の組換えタンパク質の二量体形態の検出によって判定することができる。典型的には、本発明の組換えタンパク質は、シグナル誘導物質分子の非存在下で、野生型EPORがEPOの存在下で二量体化するのと同じ程度または類似の程度まで二量体化し得る。あるいは、組換えタンパク質は、EPOの存在下での野生型EPORと比較して、変化した、第2のタンパク質と二量体化する能力を有し得る。したがって、変化した二量体化能力とは、ある基準と比較した場合の、例えば、EPOの存在下での野生型EPORと比較した場合の、または配列番号2のバリアントもしくは断片については配列番号2と比較した場合の、細胞または細胞集団における二量体形態または単量体形態の組換えタンパク質の相対量の増加または減少(例えば、二量体形態の組換えタンパク質の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%の増加または減少)を指し得る。当業者は、EPOの非存在下での組換えタンパク質の二量体化/シグナル伝達がEPOの存在下での野生型EPORと比較して減少(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%減少)していてもなお、所望の結果(例えば、持続性)を提供するのに十分なシグナルが細胞に伝達され、特定の実施形態において好ましい場合があることを理解するであろう。
【0099】
本明細書でいう「第2のタンパク質」との二量体化は、組換えタンパク質が第2のタンパク質と二量体を形成できる(すなわち、組換えタンパク質の単量体が、第2のタンパク質の単量体と会合して二量体(各単量体の1つのコピーを含む)を形成することができる)ことを意味する。1つの態様において、第2のタンパク質は組換えタンパク質であり、したがってこの場合、組換えタンパク質は、ホモ二量体化、例えば、それ自体と二量体化することが可能であり、その場合、二量体は、2つの組換えタンパク質単量体を含む。したがって、この実施形態では、二量体化が起こるためには、組換えタンパク質が細胞内で発現すれば十分であり(異なるタンパク質の発現は二量体化に不要である)、前述のように、シグナル誘導物質分子は必要ない。二量体化は上記のように検出することができる。
【0100】
あるいは、またはさらに、本明細書で定義される組換えタンパク質は、本発明の組換えタンパク質ではない異なる第2のタンパク質とヘテロ二量体化することが可能であってもよい。したがって、第2のタンパク質は、組換えタンパク質とは異なるドメインまたは部分を含んでもよい。ただし、第2のタンパク質は、シグナル誘導物質分子の非存在下で、組換えタンパク質と二量体化し、シグナルを提供することが可能である必要がある。したがって、第2のタンパク質は、シグナル誘導物質分子の非存在下での会合およびシグナル伝達が可能な組換えタンパク質の二量体化ドメインと同族の二量体化ドメインを含んでいる必要がある。例えば、組換えタンパク質がEPORの改変された細胞外領域を含むエキソドメインを含み、その改変がシステインへのアミノ酸残基の挿入または置換(ジスルフィド結合二量体化の目的のため)を含む一実施形態においては、第2のタンパク質は、シグナル誘導物質分子の非存在下での二量体化を可能にするために適切な位置に同族システイン残基を含んでいる必要がある。あるいは(またはさらに)、組換えタンパク質がロイシンジッパーを有するエキソドメインを含む場合、第2のタンパク質は、シグナル誘導物質分子の非存在下での二量体化を可能にするために同族ロイシンジッパーを含み得る。例えば、組換えタンパク質がJunロイシンジッパーまたはFosロイシンジッパーを含み、第2のタンパク質がJunロイシンジッパーを含んでもよい(あるいは、その逆であってもよい)。当業者は、本明細書に記載の組換えタンパク質はホモ二量体化およびヘテロ二量体化が可能であることを理解するであろう。したがって、組換えタンパク質と異なる第2のタンパク質とを発現する細胞は、組換えタンパク質のホモ二量体とともに組換えタンパク質と異なる第2のタンパク質とのヘテロ二量体も含み得る。
【0101】
したがって、一実施形態では、第2のタンパク質は、組換え分子のバリアントまたは一部分であってもよく、特に、第2のタンパク質は、組換え分子のエキソドメインのバリアントまたは一部分である(例えば、それに対して少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有し得る)エキソドメインを含んでもよい。あるいは、第2のタンパク質は、組換え分子のエンドドメインのバリアントまたは一部分である(例えば、それに対して少なくとも70%、80%、90%、または95%の同一性を有し得る)エンドドメインを含んでもよい。第2のタンパク質は、シグナル誘導物質分子の非存在下で組換えタンパク質に結合することが可能でなければならない。特に、追加の誘導性二量体化ドメイン、例えば誘導性ヘテロ二量体化ドメインを含む組換えタンパク質の場合には、組換えタンパク質内に存在する追加の誘導性二量体化ドメインは、第2のタンパク質に存在する追加の誘導性二量体化ドメイン(例えば、FRB/FKBPまたはその機能的バリアント)とは異なり得る(この実施形態では、組換えタンパク質がFRBをさらに含み、第2のタンパク質がFKBPを含んでもよく、あるいは、その逆であってもよい)。
【0102】
さらに、またはあるいは、組換えタンパク質および第2のタンパク質は、異なるタグを含んでもよく、例えば、組換えタンパク質がstrepタグを含み、第2のタンパク質がmycタグを含んでもよく、または、その逆であってもよい。当業者には、第2のタンパク質は、典型的には組換えタンパク質であってもよく、本発明は、細胞中で本発明の組換えタンパク質と一緒に第2の組換えタンパク質を発現させることをさらに必要とする場合があることが、理解されるであろう。したがって、本発明は、第2のタンパク質をコードする塩基配列を含む第2の核酸分子を、例えば、本明細書で定義される組換えタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸と一緒に、細胞に導入することをさらに可能にする。
【0103】
本明細書で提示される任意のアミノ酸配列のバリアントは、別段の記載がない限り、参照配列(すなわち、本明細書中で指定される参照配列番号)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有し得る。特に、そのようなバリアントは、それが由来する親分子、すなわち参照配列の所望のまたは必要な特性を保持している。したがって、バリアント配列は、そのバリアント配列が有効な二量体化システムおよびシグナルを提供することを条件として、記載された配列同一性(%)を有し得る。
【0104】
本発明のタンパク質またはポリペプチドに関連して本明細書において互換的に使用される「誘導体」または「バリアント」という用語は、結果として生じるタンパク質またはポリペプチドが所望の機能を保持していることを条件として、配列からの、または配列への、1つ(または複数)のアミノ酸残基の任意の置換(substitution)、変異、改変、置換(replacement)、欠失、および/または付加を含む。例えば、誘導体またはバリアントがエンドドメインである場合、上記所望の機能とは、そのドメインがシグナル伝達する(例えば、下流の分子を活性化または不活性化する)能力であってもよく、誘導体またはバリアントが二量体化ドメインである場合は、上記所望の機能とは、同族二量体化ドメインとの(直接的または間接的な)相互作用である。別の見方をすると、本明細書でいうバリアントまたは誘導体は、典型的には、機能的バリアントまたは機能的誘導体である。例えば、上記バリアントまたは誘導体は、対応する参照配列と比較して、少なくとも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の機能を有していてもよい。上記バリアントまたは誘導体は、対応する参照配列と比較して、近いレベル、または同じレベルの機能を有していてもよく、または、対応する参照配列よりも高いレベル(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)の機能を有していてもよい。
【0105】
典型的には、アミノ酸の置換は、それにより改変された配列が求められる活性または能力を保持するなら、例えば1個、2個または3個から10個または20個の置換からなっていてもよい。アミノ酸置換は、天然由来ではない類似体の使用を含んでいてもよい。例えば、上記バリアントまたは誘導体は、対応する参照配列と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の活性または能力を有していてもよい。上記バリアントまたは誘導体は、対応する参照配列と比較して、近いレベル、または同じレベルの活性または能力を有していてもよく、または、対応する参照配列よりも高いレベル(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)の活性または能力を有していてもよい。
【0106】
タンパク質またはペプチドは、また、サイレントな変化を生じ(produce a silent change)、かつ機能的に同等のタンパク質となる、アミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を有してもよい。内在的な機能が保持される限り、上記残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または、両親媒性に基づいて、意図的なアミノ酸置換を行ってもよい。例えば、負帯電アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸などがあり、正帯電アミノ酸としては、リジンおよびアルギニンがあり、同様の親水性値をもつ非荷電の極性先端基を有するアミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、およびチロシンがある。
【0107】
例えば下記表1にしたがい、同類置換を行ってもよい。
【表1】
【0108】
上記誘導体は、相同体でもよい。本明細書における「相同体」という用語は、野生型アミノ酸配列および野生型塩基配列と、特定の相同性を有した実体を意味する。「相同性」という用語は、「同一性」と同等視することができる。
【0109】
相同配列またはバリアント配列は、上記対象配列に対して少なくとも80%、85%、または90%、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよいアミノ酸配列を含んでもよい。典型的には、上記バリアントは、対象のアミノ酸配列と同じ活性部位などを含んでもよい。相同性は、類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考えることもできるが、本明細書の文脈においては、配列同一性の観点から相同性を表すことが好ましい。
【0110】
相同性の比較は、目視で、またはより一般には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて実施することができる。これら市販のコンピュータプログラムは、二つ以上の配列間の百分率相同性または同一性の比率を算出できる。
百分率相同性または配列同一性は、連続した配列にわたって算出され得る。すなわち、一方の配列を他方の配列と整列させ、一方の配列中の各アミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と一残基ずつ直接比較する。これは、「非ギャップ(ungapped)」アライメントと呼ばれる。典型的には、そのような非ギャップアライメントは、比較的短い数の残基にわたってのみ行われる。
【0111】
これは非常に単純で一貫した方法であるが、例えば、1個の挿入または欠失を除いては同一の配列対において、該塩基配列中のその挿入または欠失が、その後に続くコドンがアラインメントから外される原因となり得る、すなわちグローバルアライメントが行われた場合に%相同性の大幅な減少を潜在的に生じるということが考慮されていない。結果として、ほとんどの配列比較方法は、全体的な相同性スコアを過度に不利にすることなく、考えられる挿入および欠失を考慮に入れた最適アライメントを作製するように設計される。これは、配列アライメントに「ギャップ」を挿入して局所相同性を最大にすることによって達成される。
【0112】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、アライメント中に生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当て、同じ数の同一アミノ酸について、できるだけ少ないギャップの配列アラインメント(2つの比較した配列間の類似性が高いことを反映する)が、多くのギャップを持つスコアよりも高いスコアを達成するようにする。ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、ギャップ内のそれぞれ後続の残基に対してより小さいペナルティを課す「アフィンギャップコスト」が通常使用される。これは、最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、当然ながら、ギャップのより少ない最適化アライメントを作製する。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティを修正することを可能にする。しかしながら、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する際は、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する際、アミノ酸配列のデフォルトのギャップペナルティは、ギャップについては-12、それぞれの延長については-4である。
【0113】
最大百分率相同性/配列同一性の算出は、したがって、ギャップペナルティを考慮に入れ、最適アライメントの作製を最初に必要とする。そのようなアラインメントを実行するのに好適なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A.; Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例には、限定されないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999) ibid-Ch.18を参照)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)およびGENEWORKS比較ツール一式が挙げられる。BLASTおよびFASTAの両方が、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(Ausubel et al. (1999) ibid, pages 7-58 to 7-60を参照)。しかしながら、いくつかのアプリケーションについては、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST2 Sequencesと呼ばれる別のツールも、タンパク質および塩基配列を比較するために利用できる。(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174:247-50; FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177:187-8参照)。
【0114】
最終的な百分率相同性は同一性の観点から測定することができるが、アライメントプロセス自体は、典型的には、オールオアナッシング対比較に基づくものではない。その代わりに、化学的類似性または進化距離に基づいて各対ごとの比較にスコアを割り当てるスケール化類似性スコアマトリクスが一般的に使用される。一般に使用されるそのようなマトリクスの一例は、BLOSUM62マトリクス(一連のBLASTプログラムのデフォルトマトリクス)である。GCG Wisconsinプログラムでは、一般的には、パブリックデフォルト値または供給されるのであればカスタムシンボル比較表のいずれかが使用される(さらに詳しくはユーザーマニュアルを参照されたい)。しかしながら、いくつかのアプリケーションについては、GCGパッケージではデフォルト値を使用することが好ましく、他のソフトウェアの場合は、BLOSUM62のようなデフォルトマトリクスを使用することが好ましい。好適には、百分率同一性は、参照配列および/または問い合わせ配列の全体にわたって判断される。
【0115】
ソフトウェアが最適アライメントを作製すると、百分率相同性、好ましくは百分率配列同一性を計算することが可能である。ソフトウェアは、典型的にはこれを配列比較の一部として行い、数値結果を与える。
【0116】
「断片」は、典型的には、機能の点で着目の、例えば機能的であるかまたは機能的断片をコードする、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域のことである。したがって、「断片」は、全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部分(または一部)であるアミノ酸または核酸の配列のことである。
【0117】
そのようなバリアント、誘導体、および断片は部位特異的変異誘発などの標準的な組換えDNA技術を使用して調製されてもよい。挿入が作製される場合には、挿入位置のどちらか一方の側で天然に発生する配列に対応する5’および3’隣接領域とともに挿入部分をコードする合成DNAが作製されてもよい。上記隣接領域は、上記配列が適切な酵素(または複数の酵素)で切断され合成DNAが切断場所に連結(ligated)され得るように、天然に発生する配列における部位に対応する適当な制限酵素部位を含む。上記DNAは次に、コードされるタンパク質を作製するために本発明に従って発現される。これらの方法はDNA配列操作のための当該技術分野において周知の多数の標準的手法の実例となるだけであり、他の公知の手法もまた使用されてもよい。
【0118】
本明細書に記載の組換えタンパク質は、特に、典型的には組換えタンパク質のエキソドメインを細胞膜につなぎ留める膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、I型膜貫通タンパク質、II型膜貫通タンパク質、またはIII型膜貫通タンパク質などの、膜貫通ドメインを有するタンパク質のいずれに由来するものであってもよい。
【0119】
キメラタンパク質の膜貫通ドメインはまた、人工疎水性配列を含んでもよい。さらなる膜貫通ドメインは、当業者に明らかであろう。TMドメインは、例えば、組換え膜貫通タンパク質において典型的に使用されるもののいずれかから選択されてもよい。使用され得る膜貫通(TM)領域の例を、下記に示す。1)CD28 TM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov; 12(5):933-41; Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35; Casucci et al, Blood, 2013, Nov 14;122(20):3461-72.);2)OX40 TM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41);3)41BB TM領域(Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35);4)CD3ゼータTM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41; Savoldo B, Blood, 2009, Jun 18;113(25):6392-402.);5)CD8a TM領域(Maher et al, Nat Biotechnol, 2002, Jan;20(1):70-5.; Imai C, Leukemia, 2004, Apr;18(4):676-84; Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35; Milone et al, Mol Ther, 2009, Aug;17(8):1453-64.)。使用され得る他の膜貫通ドメインとしては、CD4、CD45、CD9、CD16、CD22、CD33、CD64、CD80、CD86、またはCD154に由来する膜貫通ドメインが挙げられる。膜貫通ドメインはさらに、IL2RB由来またはEPOR由来であってもよい。
【0120】
例として、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインに由来してもよく、配列番号34として示すアミノ酸配列、または配列番号24に対して少なくとも80%の同一性を有するバリアントを含むかまたはそれからなってもよい。上記バリアントは、配列番号24に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。
【0121】
特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、EPOR膜貫通ドメインに由来してもよく、配列番号7として示すアミノ酸配列、または配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有するバリアントを含むかまたはそれからなってもよい。上記バリアントは、配列番号7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。
【0122】
あるいは、膜貫通ドメインは、IL2RB膜貫通ドメインに由来してもよく、 配列番号25として示すアミノ酸配列、または配列番号25に対して少なくとも80%の同一性を有するバリアントを含むかまたはそれからなってもよい。上記バリアントは、配列番号25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。
【0123】
あるいは、組換えタンパク質は、CD8α膜貫通ドメインに由来するドメインを含んでもよい。したがって、膜貫通ドメインは、ヒトCD8αの183位から203位のアミノ酸を表す配列番号26として示すアミノ酸配列、または配列番号26に対して少なくとも80%の同一性を有するバリアントを含むかまたはそれからなってもよい。好適には、上記バリアントは、配列番号26に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。
【0124】
あるいは、膜貫通ドメインは、骨髄受容体タンパク質の膜貫通ドメイン、例えば、TREM1またはTREM2などのTREMタンパク質に由来してもよい。したがって、組換えタンパク質は、配列番号27もしくは配列番号28に示すアミノ酸配列、または配列番号27もしくは配列番号28に対して少なくとも80%の同一性を有するバリアントを含むかまたはそれからなる膜貫通ドメインを含んでもよい。好適には、上記バリアントは、配列番号27または配列番号28に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。
【0125】
本明細書に記載の組換えタンパク質は、組換えタンパク質を発現(ホモ二量体化の場合は単独で、またはヘテロ二量体化の場合は第2のタンパク質と一緒に)する細胞にシグナルを提供することができる。シグナルは、典型的には、エンドドメインによって細胞に提供される。したがって、一実施形態では、本発明の組換えタンパク質は、エンドドメインをさらに含む。代替的な実施形態では、エンドドメインは、組換えタンパク質とは別個のタンパク質であるシグナル伝達タンパク質によって提供され得る。この態様では、組換えタンパク質とシグナル伝達タンパク質とが一緒になってシグナルを細胞に提供する。したがって、本明細書に記載の組換えタンパク質は、直接的(例えば、それ自体のエンドドメインを介して)または間接的(シグナル伝達タンパク質のエンドドメインを介して)に、シグナルを細胞に提供し得る。
【0126】
したがって、本明細書に記載の「シグナル伝達タンパク質」とは、本明細書で定義される組換えタンパク質と会合することができ、細胞にシグナルを伝達することができるタンパク質を指す。したがって、典型的には、シグナル伝達タンパク質は、膜貫通ドメインとエンドドメインとを含み、組換えタンパク質(および/または第2のタンパク質)と一緒に細胞内で発現され得る。この実施形態では、シグナル伝達タンパク質が組換えタンパク質とそれぞれの膜貫通ドメインを介して会合してもよく、そのような会合がシグナル伝達タンパク質のエンドドメインを介したシグナルの伝達をもたらし得ることが、特に想定される。1つの特定の実施形態において、シグナル伝達ドメインは、配列番号もしくはに示すDAP10もしくはDAP12に由来する膜貫通ドメイン、または配列番号27もしくは配列番号28に対して少なくとも80%の同一性を有するバリアントを含み得る。好適には、上記バリアントは、配列番号27または配列番号28に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。当業者には、シグナル伝達タンパク質の膜貫通ドメインがDAP10またはDAP10に由来する場合、組換えタンパク質の膜貫通ドメインは、骨髄受容体、特に、上述したようなTREM受容体に由来してもよいことが理解されるであろう。
【0127】
本明細書に記載の「エンドドメイン」は、上述したように、組換えタンパク質内に提供されてもよく、別個のシグナル伝達タンパク質内に提供されてもよい。しかしながら、特に、組換えタンパク質がエンドドメインを含み得る。エンドドメインは、少なくともJAK1結合モチーフおよび/またはJAK2結合モチーフを含むチロシンキナーゼ活性化ドメインと、JAK1キナーゼおよび/またはJAK2キナーゼによってリン酸化され得るチロシンエフェクタードメインとを含む。チロシンエフェクタードメインのリン酸化は、シグナル伝達カスケードを生じさせることを可能にし、例えば、シグナル伝達カスケード中の他のタンパク質がエフェクタードメインに結合すること、および/または細胞中でシグナルを伝達するように活性化されることを可能にする。換言すれば、チロシンエフェクタードメインは、リン酸化されると、シグナル伝達因子を動員することができる。本明細書で述べるように、組換えタンパク質は、シグナル誘導物質分子の非存在下で、組換えタンパク質を含む細胞にシグナルを提供することができ、したがって、別の見方をすると、構成的シグナルを産生する。構成的シグナルとは、細胞が組換えタンパク質からのシグナルを常に受け取っていることを意味する。シグナルは、野生型EPORと比較して多くても少なくてもよいが、組換えタンパク質は、シグナルを常に提供することができる。「エンドドメイン」、「細胞内ドメインまたは領域」、および「細胞質ドメインまたは領域」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0128】
チロシンキナーゼ活性化ドメインは、いくつかの実施形態において、JAK3結合モチーフも含み得る。特に、JAK1結合モチーフとJAK3結合モチーフとを含み得る。
【0129】
一実施形態において、例えば、組換えタンパク質がエンドドメイン中にJAK3結合モチーフを含まない場合、組換えタンパク質は、JAK3結合モチーフを含むエンドドメインドメインを含む第2のタンパク質と組み合わせて使用されてもよい。
【0130】
エンドドメインは、JAK-STATシグナル伝達経路を介してシグナル伝達してもよく、換言すれば、シグナルは、JAK-STATシグナル伝達経路の活性化によって媒介されてもよい。
【0131】
STATタンパク質は、活性化された受容体に動員される転写因子であり、したがって、特にチロシンエフェクタードメインは、STATの結合部位であるSTAT会合モチーフを含んでもよい。STATは、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5、もしくはSTAT6、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。STAT会合モチーフは、サイトカイン受容体および受容体チロシンキナーゼ(RTK)を含む受容体から得られるかまたはそれらに由来し得る。チロシンエフェクタードメインは、1つ以上、例えば2つ以上、例えば3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のSTAT会合モチーフを含んでもよく、これらのSTAT会合モチーフは同じであっても異なっていてもよい。
【0132】
例として、STAT5は、IL-2シグナル伝達経路に関与する転写因子であり、FOXP3、IL2RAおよびBCLXLなどの遺伝子の発現を促進することによって、Tregの機能、安定性、および生存において鍵となる役割を果たす。機能し、かつ核移行するためには、STAT5はリン酸化する必要がある。IL-2ライゲーションの結果、IL-2Rβ鎖およびIL-2Rγ鎖のそれぞれに存在する特異的なシグナル伝達ドメインを介してJak1/Jak2およびJak3キナーゼを活性化することにより、STAT5がリン酸化する。JAK1(またはJAK2)は、JAK3を必要とせずにSTAT5をリン酸化できるが、JAK1/JAK2とJAK3との両方のトランスリン酸化によりSTAT5の活性を増加することができ、これにより活性が安定する。
【0133】
本明細書における「STAT会合モチーフ」とは、チロシンを含みSTATポリペプチドと結合することのできるアミノ酸モチーフのことである。タンパク質-タンパク質相互作用を判定するための当該技術分野において周知の方法を用いて、会合モチーフがSTATと結合できるかどうか判定してもよい。例えば、共免疫沈降の後にウエスタンブロットを行ってもよい。
【0134】
STAT会合モチーフは、例えば、リン酸化するとSTAT5ポリペプチド(その他のSTATポリペプチドについても同様である)に結合することができるSTAT5会合モチーフであってもよい。
【0135】
一実施形態において、STAT会合モチーフはSTAT5会合モチーフである。
【0136】
好適には、エンドドメインは、本明細書で定義される、2個(例えば、少なくとも2個)以上のSTAT5会合モチーフを含んでもよい。例えば、シグナル伝達ドメインは、本明細書で定義される、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のSTAT5会合モチーフを含んでもよい。一実施形態において、シグナル伝達ドメインは、本明細書で定義される、2個または3個のSTAT5会合モチーフを含んでもよい。
【0137】
好適には、上記STAT5会合モチーフは、本明細書においてエンドドメインを提供するために使用され得る膜貫通タンパク質の細胞質ドメイン中に内因的に存在し得る。例えば、上記STAT5会合モチーフは、インターロイキン受容体(IL)受容体エンドドメインまたはホルモン受容体由来であってもよい。
【0138】
上記エンドドメインは、STAT5が下流成分であるインターロイキン受容体の鎖のいずれかから選択されたアミノ酸配列を含んでもよく、例えば、IL-2受容体β鎖のアミノ酸番号266~551(米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)標準配列(REFSEQ):NP_000869.1、配列番号31)、IL-9R鎖のアミノ酸番号292~521(NCBI REFSEQ:NP_002177.2、配列番号33)、IL-4Rα鎖のアミノ酸番号257~825(NCBI REFSEQ:NPJD00409.1、配列番号34)、IL-3RB鎖のアミノ酸番号461~897(NCBI REFSEQ:NP_000386.1、配列番号35)、および/またはIL-17Rβ鎖のアミノ酸番号314~502(NCBI REFSEQ:NP_061195.2、配列番号36)を含む細胞質ドメインが使用されてもよい。これらの配列のいずれか1つ以上を使用できることが、当業者には理解されるであろう。インターロイキン受容体鎖の細胞質ドメインの領域全体が使用されてもよい。
【0139】
上記シグナル伝達ドメインは、配列番号31~37として示すアミノ酸配列、または配列番号31~37に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するバリアントを含む、1つ以上のSTAT5会合モチーフを含んでいてもよい。例えば、上記バリアントは、配列番号31~37の1つとして示すアミノ酸配列のSTAT5との結合のレベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のレベルで、STAT5と結合できればよい。上記バリアントまたは誘導体は、配列番号31~37の1つのレベルに近いレベル、または同じレベルでSTAT5と結合できてもよく、または、配列番号31~37の1つとして示すアミノ酸配列よりも高いレベル(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)でSTAT5と結合できてもよい。
【0140】
例えば、上記STAT5会合モチーフは、IL2Rβ、IL-3Rβ(CSF2RB)、IL-9R、IL-17Rβ、エリスロポエチン受容体(EPOR)、トロンボポエチン受容体、成長ホルモン受容体、およびプロラクチン受容体のいずれか1つ以上に由来するものであってもよい。エンドドメインは、例えば、IL2RBおよびEPORの両方に由来するSTAT会合モチーフを含んでいてもよい。
【0141】
上記STAT5会合モチーフは、アミノ酸モチーフYXXF/L(配列番号38)(Xは任意のアミノ酸)を含んでいてもよい。
【0142】
好適には、上記STAT5会合モチーフは、アミノ酸モチーフYCTF(配列番号39)、YFFF(配列番号40)、YLSL(配列番号41)、またはYLSLQ(配列番号42)を含んでいてもよい。
【0143】
上記エンドドメインは、アミノ酸モチーフYCTF(配列番号39)、YFFF(配列番号40)、YLSL(配列番号41)、および/またはYLSLQ(配列番号42)を含む上記STAT5会合モチーフを1個以上含んでいてもよい。
【0144】
上記エンドドメインは、アミノ酸モチーフYLSLQ(配列番号42)を含む第1のSTAT5会合モチーフと、アミノ酸モチーフYCTF(配列番号39)またはYFFF(配列番号40)を含む第2のSTAT5会合モチーフとを含んでいてもよい。
【0145】
上記エンドドメインは、以下のSTAT5会合モチーフを含んでいてもよい:YLSLQ(配列番号42)、YCTF(配列番号39)、およびYFFF(配列番号40)。
【0146】
他のSTATポリペプチドに対する会合モチーフが当該技術分野において知られており、使用されてもよい。例えば、細胞(特にTcon細胞)にSTAT3シグナルを提供するために、エンドドメインのチロシンエフェクタードメインが、YXXQ(配列番号57)を含んでいてもよく、ここで、Xは任意のアミノ酸であり、例えばYRHQ(配列番号58)である。STAT3会合モチーフは、例えばIL-6R、IL10R、およびIL21Rなどの、シグナル伝達タンパク質に存在する。一実施形態では、本明細書で定義されるエンドドメインは、JAK1との会合に必要な、IL21Rα鎖の細胞質ドメイン(例えばIL-21Rα鎖(NCBI RefSeq:NP_068570.1)のアミノ酸番号256~538を含む)、またはボックス1モチーフ(NCBI RefSeq:NP_068570.1のアミノ酸番号266~274)を含むそのトランケート型断片と、STAT1/3会合に必要な、チロシン残基500(NCBI RefSeq:NP_000869.1のアミノ酸番号519)およびチロシン残基500のC末端側の隣接する3残基、すなわちYLRQ(配列番号59)を含むSTAT会合モチーフと、を含んでいてもよい。あるいは、STAT1またはSTAT4シグナル伝達が同様の方法で提供されてもよい。例えば、以下の配列によって表されるように、IL2Rb(サブドメインAci2)のアミノ酸335~365にSTAT1会合モチーフが見出され得る。
QLLLQQDKVPEPASLSSNHSLTSCFTNQGYF(配列番号60)
【0147】
本明細書における「JAK1結合モチーフ」とは、チロシンキナーゼJAK1会合を可能にするBOXモチーフをいう。同様に、本明細書における「JAK2結合モチーフ」とは、チロシンキナーゼJAK2会合を可能にするBOXモチーフをいう。好適なJAK1結合モチーフおよびJAK2結合モチーフは、例えば、Ferrao & Lupardus(Frontiers in Endocrinology; 2017; 8(71);この参照により本明細書に援用される)により記載されている。
【0148】
上記のように、JAK1および/またはJAK2結合モチーフは、膜貫通タンパク質の細胞質ドメイン内に内在的に発生してもよい。
【0149】
例えば、JAK1および/またはJAK2結合モチーフは、インターフェロンラムダ受容体1(IFNLR1)、インターフェロンアルファ受容体1(IFNAR)、インターフェロンガンマ受容体1(IFNGR1)、IL10RA、IL20RA、IL22RA、インターフェロンガンマ受容体2(IFNGR2)、またはIL10RB由来であってもよい。
【0150】
JAK1結合モチーフは、JAK1と結合できる、配列番号43~49として示すアミノ酸モチーフまたはそのバリアントを含むかまたはそれからなっていてもよい。
KVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDK(配列番号43)
NPWFQRAKMPRALDFSGHTHPVATFQPSRPESVNDLFLCPQKELT(配列番号44)
GYICLRNSLPKVLNFHNFLAWPFPNLPPLEAMDMVEVIYINR(配列番号45)
PLKEKSIILPKSLISVVRSATLETKPESKYVSLITSYQPFSL(配列番号46)
RRRKKLPSVLLFKKPSPFIFISQRPSPETQDTIHPLDEEAFLK(配列番号47)
YIHVGKEKHPANLILIYGNEFDKRFFVPAEKIVINFITLNISDDS(配列番号48)
RYVTKPPAPPNSLNVQRVLTFQPLRFIQEHVLIPVFDLSGP(配列番号49)
【0151】
配列番号43~49のバリアントは、配列番号21~27のいずれかと比較して1個、2個、または3個のアミノ酸の差異を含んでいてもよく、JAK1と結合する能力を保持し得る。
【0152】
上記バリアントは、配列番号43~49のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有していてもよく、JAK1と結合する能力を保持し得る。
【0153】
好ましい実施形態において、JAK1結合ドメインは、JAK1と結合できる、配列番号43またはそのバリアントを含むかまたはそれからなる。
【0154】
例えば、上記バリアントは、対応する参照配列の結合レベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のレベルで、JAK1と結合できればよい。上記バリアントまたは誘導体は、対応する参照配列のレベルに近いレベル、または同じレベルでJAK1と結合できてもよく、または、対応する参照配列よりも高いレベル(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)でJAK1と結合できてもよい。
【0155】
JAK2結合モチーフは、JAK2と結合できる、配列番号50~52として示すアミノ酸モチーフまたはそのバリアントを含んでもよい。
NYVFFPSLKPSSSIDEYFSEQPLKNLLLSTSEEQIEKCFIIEN(配列番号50)
YWFHTPPSIPLQIEEYLKDPTQPILEALDKDSSPKDDVWDSVSIISFPE(配列番号51)
YAFSPRNSLPQHLKEFLGHPHHNTLLFFSFPLSDENDVFDKLSVIAEDSES(配列番号52)
【0156】
配列番号50~52のバリアントは、配列番号50~52のいずれかと比較して1個、2個、または3個のアミノ酸の差異を含んでいてもよく、JAK2と結合する能力を保持し得る。
【0157】
例えば、上記バリアントは、対応する参照配列の結合レベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のレベルで、JAK2と結合できればよい。上記バリアントまたは誘導体は、対応する参照配列のレベルに近いレベル、または同じレベルでJAK2と結合できてもよく、または、対応する参照配列よりも高いレベル(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)でJAK2と結合できてもよい。
【0158】
タンパク質-タンパク質相互作用を判定するための当該技術分野において周知の方法を用いて、JAK1結合モチーフまたはJAK2結合モチーフがJAK1またはJAK2と結合できるかどうか判定してもよい。例えば、共免疫沈降の後にウエスタンブロットを行ってもよい。
【0159】
好適には、上記エンドドメインは、配列番号31として示すIL2Rβエンドドメイン、または、配列番号31に対して少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含んでいてもよい。
【0160】
上記バリアントは、配列番号31に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。
【0161】
好適には、上記エンドドメインは、配列番号53もしくは54のいずれか1つとして示すトランケート型IL2Rβエンドドメイン、または配列番号53もしくは54のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含んでいてもよい。配列番号53は、Y510変異を有するIL2RBトランケート型バリアントを表す。配列番号54は、Y510変異およびY392変異を有するIL2RBトランケート型バリアントを表す。
【0162】
上記バリアントは、配列番号53または54に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。
【0163】
この実施形態において、本発明は、組換えタンパク質を提供し、該組換えタンパク質は、(i)EPORの細胞外領域に少なくとも一部分が由来するエキソドメインであって、該部分が、EPORの細胞外領域に対して、シグナル誘導物質分子の非存在下での該組換えタンパク質と第2のタンパク質との二量体化および該T細胞へのシグナルの提供を可能にする改変を含む、エキソドメインと、(ii)配列番号53もしくは配列番号54のトランケート型IL2Rβエンドドメインまたはそれに対して少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含む、エンドドメインとを含む。
【0164】
特定の実施形態では、組換えタンパク質は、EPOR(配列番号8)のエンドドメイン(細胞質)領域に少なくとも一部分が由来するエンドドメインを含む。特定の実施形態では、上記エンドドメインは、配列番号8に示すEPORエンドドメイン、または配列番号8に対して少なくとも40%の配列同一性を有するバリアントを含んでいてもよい。例えば、上記バリアントは、配列番号8に対して少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%の同一性を有してもよい。
【0165】
エンドドメインの改変は、STAT5シグナルの所望のレベルに応じて選択され得る。
【0166】
上記バリアントは、配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有してもよい。上記バリアントは、配列番号8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。いずれのバリアントも、機能的バリアントであってもよく、したがって組換えタンパク質が発現される細胞にシグナルを供給する能力を保持し得る。特に、組換えタンパク質のエンドドメインがバリアントEPORエンドドメイン以外の他の機能的(シグナル伝達)エンドドメインを含まない実施形態、例えば、組換えタンパク質のエンドドメインがバリアントEPORエンドドメインからなる実施形態では、上記バリアントは機能的バリアントであり、したがって、組換えタンパク質が発現される細胞にシグナルを供給する能力を保持する。シグナルは、特に、JAK-STATシグナル伝達経路、特にJAK2-STAT5シグナル伝達経路を介してシグナル伝達してもよく、したがって、本明細書に記載されるように、少なくとも1つのJAK結合モチーフ(例えば、JAK2結合モチーフ)と少なくとも1つのSTAT会合モチーフ(例えば、STAT5会合モチーフ)とを含んでいてもよい。上記バリアントEPORエンドドメインは、例えば、少なくとも配列番号1の368位のチロシン(Y)残基(配列番号8のY95)および/または少なくとも配列番号1の426位のチロシン(Y)残基(配列番号8のY153)を保持し得る。例えば、上記バリアントEPORエンドドメインは、配列番号1の368位のチロシン(Y)残基(配列番号8のY95)および配列番号1の426位のチロシン(Y)残基(配列番号8のY153)の一方のみを保持してもよく、両方を保持してもよい。
【0167】
好適には、上記バリアントは、SHP1のEPORエンドドメイン配列への結合を低減(例えば、排除)し、ひいてはJAK2に対するSHP1の負の効果を低減するために、少なくとも1つの改変を含み得る。SHP1は、SHIP1とも呼ばれており、SH2ドメインを含み、配列番号61に示すアミノ酸配列を有するチロシンホスファターゼタンパク質である。SHP1は、活性化されたEPORと会合し、JAK2によるリン酸化によって誘導されるシグナル伝達を負に調節することが知られている。SHP1は、配列番号8のEPORエンドドメインのY181およびY183と会合することができる。したがって、本発明は、配列番号8のY181および/またはY183が、SHP1の負の効果を低減(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%、例えば、最大で100%)するように改変されたEPORエンドドメイン配列の使用を包含する。別の見方をすると、配列番号8のY181および/またはY183の改変は、細胞へのシグナル伝達を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%増加させ得る。特に、Y181および/またはY183は、本明細書のエンドドメイン内で使用されるEPORエンドドメイン配列から欠失されてもよく、異なるアミノ酸で置換されてもよい。例えば、上記バリアントEPORエンドドメインは、配列番号8のY181およびY183を包含する連続したアミノ酸の配列の欠失を含んでいてもよい。配列番号8のY181およびY183を包含する連続したアミノ酸の配列は、少なくとも3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、またはそれ以上のアミノ酸長であってもよい。例えば、配列番号8のY181およびY183を包含する連続したアミノ酸の配列は、少なくとも55アミノ酸長、例えば、少なくとも60アミノ酸長、65アミノ酸長、70アミノ酸長、または75アミノ酸長であってもよい。例えば、配列番号8のY181およびY183を包含する連続したアミノ酸の配列は、最長で140アミノ酸長、135アミノ酸長、130アミノ酸長、125アミノ酸長、120アミノ酸長、115アミノ酸長、110アミノ酸長、105アミノ酸長、100アミノ酸長、95アミノ酸長、90アミノ酸長、85アミノ酸長、または80アミノ酸長までであってもよい。例えば、上記バリアントEPORエンドドメインは、配列番号8のアミノ酸181~235(配列番号1のアミノ酸454~508)の欠失を含むかまたはそれからなっていてもよい。例えば、上記バリアントEPORエンドドメインは、配列番号8のアミノ酸106~235(配列番号1のアミノ酸379~508)の欠失を含むかまたはそれからなっていてもよい。例えば、上記バリアントEPOエンドドメインは、配列番号8のアミノ酸161~235(配列番号1のアミノ酸434~508)の欠失を含むかまたはそれからなっていてもよい。あるいは、Y181および/またはY183は、特に、細胞へのシグナルの増大が必要とされなければ、改変されていない場合もある。
【0168】
あるいは、エンドドメインは、配列番号62として示すトランケート型EPORエンドドメイン、または配列番号62に対して少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含むかまたはそれからなっていてもよい。上記バリアントは、配列番号62に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。したがって、典型的には、トランケート型EPORエンドドメインは、少なくとも、配列番号8のY181およびY183を含むエンドドメインの部分が、トランケートされ得る。上記バリアントは、例えば、配列番号62と同じトランケーションを含み、したがって、配列番号62との差異が、配列番号62の配列内の欠失、置換、または挿入のみであってもよい。上記のように、いずれのバリアントも、機能的EPORエンドドメインバリアントであってもよい。
【0169】
組換えタンパク質のエンドドメインは、配列番号106として示すトランケート型EPORエンドドメイン、または配列番号106に対して少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含むかまたはそれからなっていてもよい。上記バリアントは、配列番号106に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。上記バリアントは、少なくとも、配列番号8のY181およびY183を含むエンドドメインの部分が、トランケートされ得る。上記バリアントは、例えば、配列番号106と同じトランケーションを含み、したがって、配列番号106との差異が、配列番号106の配列内の欠失、置換、または挿入のみであってもよい。上記のように、いずれのバリアントも、機能的EPORエンドドメインバリアントであってもよい。
【0170】
組換えタンパク質のエンドドメインは、配列番号107として示すトランケート型EPORエンドドメイン、または配列番号107に対して少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含むかまたはそれからなっていてもよい。上記バリアントは、配列番号107に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。上記バリアントは、少なくとも、配列番号8のY181およびY183を含むエンドドメインの部分が、トランケートされ得る。上記バリアントは、例えば、配列番号107と同じトランケーションを含み、したがって、配列番号107との差異が、配列番号107の配列内の欠失、置換、または挿入のみであってもよい。上記のように、いずれのバリアントも、機能的EPORエンドドメインバリアントであってもよい。
【0171】
上記バリアントEPORエンドドメインは、例えば、1個以上のアミノ酸の挿入を含んでいてもよい。特定の実施形態では、挿入は、バリアントEPORエンドドメインのC末端においてであってもよく、これは、バリアントEPORエンドドメインが組換えタンパク質のC末端に位置する場合は、組換えタンパク質のC末端であってもよい。しかしながら、挿入は、バリアントEPORエンドドメイン内の他の場所であってもよい。例えば、バリアントEPORエンドドメインは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のアミノ酸の挿入を含んでいてもよい。例えば、バリアントEPORエンドドメインは、1~30個のアミノ酸、例えば2~20個、例えば5~15個のアミノ酸の挿入を含んでいてもよい。例えば、バリアントEPORエンドドメインは、例えばそのC末端に、少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸の挿入を含んでいてもよい。上記少なくとも5個のアミノ酸は、配列MDTVP(配列番号108)、または配列番号108との差異がアミノ酸1個以内もしくは2個以内(例えば、欠失および/または置換)である配列を有してもよい(含んでいてもよい、またはそれからなっていてもよい)。上記少なくとも6個のアミノ酸は、配列SMDTVP(配列番号109)、または配列番号109との差異がアミノ酸1個以内もしくは2個以内(例えば、欠失および/または置換)である配列を有してもよい。上記少なくとも7個のアミノ酸は、配列ASMDTVP(配列番号110)、または配列番号110との差異がアミノ酸1個以内もしくは2個以内(例えば、欠失および/または置換)である配列を有してもよい(含んでいてもよい、またはそれからなっていてもよい)。上記少なくとも8個のアミノ酸は、配列LASMDTVP(配列番号111)、または配列番号111との差異がアミノ酸1個以内もしくは2個以内(例えば、欠失および/または置換)である配列を有してもよい(含んでいてもよい、またはそれからなっていてもよい)。上記少なくとも9個のアミノ酸は、配列ALASMDTVP(配列番号112)、または配列番号112との差異がアミノ酸1個以内もしくは2個以内(例えば、欠失および/または置換)である配列を有してもよい(含んでいてもよい、またはそれからなっていてもよい)。上記少なくとも10個のアミノ酸は、配列PALASMDTVP(配列番号113)、または配列番号113との差異がアミノ酸1個以内もしくは2個以内(例えば、欠失および/または置換)である配列を有してもよい(含んでいてもよい、またはそれからなっていてもよい)。例えば、バリアントEPORエンドドメインは、例えばそのC末端に、5個のアミノ酸(例えば配列番号108)、6個のアミノ酸(例えば配列番号109)、7個のアミノ酸(例えば配列番号110)、8個のアミノ酸(例えば配列番号111)、9個のアミノ酸(例えば配列番号112)、または10個のアミノ酸(例えば配列番号113)の挿入を含んでいてもよい。特定の実施形態では、バリアントEPORエンドドメインは、例えばそのC末端に、少なくとも10個、例えば10個のアミノ酸の挿入を含んでいてもよく、例えば、それら少なくとも10個のアミノ酸は、配列番号113の配列、または配列番号113との差異がアミノ酸と1個以内もしくは2個以内である配列を有する。上記挿入されたアミノ酸は、野生型EPORエンドドメインのC末端(すなわち、配列番号8のC末端)に位置してもよく、他の改変も有するEPORエンドドメインのC末端に位置してもよく、例えば、本明細書に記載のトランケート型EPORエンドドメインのC末端(例えば、配列番号62、配列番号106、または配列番号107のC末端)に位置してもよい。あるいは、挿入は、その挿入がなければ野生型EPORエンドドメイン(当該挿入以外)であるEPORエンドドメイン内、または他の改変も有するEPORエンドドメイン内、例えば、トランケート型EPORエンドドメイン内(例えば、配列番号62、配列番号106、もしくは配列番号107内)に位置してもよい。
【0172】
バリアントEPORエンドドメインのC末端に挿入された1個以上のアミノ酸は、例えば、組換えタンパク質の細胞表面発現を増加もしくは安定化させることができ、かつ/または、EPOに対する感受性を増加させることができ、かつ/または、細胞(例えば、Treg細胞)において発現された場合、挿入されていない同じ組換えタンパク質を発現する同じ細胞と比較して、JAK-STATシグナル伝達経路の活性化を増加させることができる。増加は、少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%であり得る。したがって、バリアントEPORエンドドメインのC末端に挿入された1個以上のアミノ酸は、本明細書の例示的な実施形態に記載されるように、EPORの細胞外ドメインに由来するエキソドメインの部分がEPOに結合する能力を保持する実施形態において特に有用であり得る。EPOに対する感受性の増加は、本明細書の他の箇所に記載されるように、JAK-STATシグナル伝達の活性化を測定することによって判定することができる。EPOに対する感受性が増加した組換えタンパク質は、同じEPO濃度において(特に、約0.1U/ml以下、例えば、約0.01U/ml以下、または約0.001U/ml以下などの、低いEPO濃度において)、より大きなJAK-STATシグナルを提供する。
【0173】
組換えタンパク質のエンドドメインは、例えば、配列番号114、配列番号115、もしくは配列番号116に示すバリアントEPORエンドドメイン、または配列番号114、配列番号115、もしくは配列番号116に対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアントを含むかまたはそれからなっていてもよい。上記バリアントは、配列番号114、配列番号115、または配列番号116に対してそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。上記バリアントは、少なくとも、配列番号8のY181およびY183を含むエンドドメインの部分が、トランケートされ得る。上記のように、いずれのバリアントも、機能的EPORエンドドメインバリアントであってもよい。
【0174】
JAK1/JAK2とJAK3との両方のトランスリン酸化により、STAT、例えばSTAT5の活性が増加し、これにより活性が安定する。上記のように、エンドドメイン、より具体的にはそのチロシンキナーゼ活性化ドメインは、JAK3結合モチーフをさらに含んでもよい。本明細書における「JAK3結合モチーフ」とは、チロシンキナーゼJAK3をもたらすBOXモチーフのことである。好適なJAK3結合モチーフは、例えば、Ferrao & Lupardus(Frontiers in Endocrinology; 2017; 8(71);この参照により本明細書に援用される)により記載されている。
【0175】
タンパク質-タンパク質相互作用を判定するための当該技術分野において周知の方法を用いて、モチーフがJAK3と結合できるかどうか判定してもよい。例えば、共免疫沈降の後にウエスタンブロットを行ってもよい。
【0176】
JAK3結合モチーフは、膜貫通タンパク質の細胞質ドメイン内に内在的に発生してもよい。
【0177】
例えば、上記JAK3結合モチーフは、IL-2Rγポリペプチド由来であってもよい。機能的なトランケート型またはバリアントIL2Rγポリペプチドをエンドドメイン内で使用してもよく、ここで、機能的なトランケート型またはバリアントIL2Rγポリペプチドは、JAK3結合活性(例えば、IL2Rγの結合活性の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%)を保持する。特に、JAK3結合モチーフを含むトランケート型IL2RγおよびSTAT5会合モチーフを含むトランケート型IL2Rβ、ならびにJAK1結合モチーフが、本明細書で定義されるエンドドメインに含まれてもよい。機能的トランケート体は、発現のための構築物サイズを小さくするという利点を提供し得る。
【0178】
JAK3結合モチーフは、配列番号55もしくは配列番号56として示すアミノ酸モチーフ配列、またはJAK3に結合できるそのバリアント(例えば、配列番号55もしくは56に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、もしくは99%の同一性を有する機能的バリアントもしくは断片)を含むかまたはそれからなっていてもよい。
【0179】
上記バリアントは、配列番号55または配列番号56に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有してもよい。
【0180】
特定の実施形態において、シグナル伝達ドメインは、1つ以上のJAK1結合ドメインと少なくとも1つのJAK3結合ドメイン/モチーフ(例えば、少なくとも2つまたは3つのJAK3結合ドメイン/モチーフ)とを含む。
【0181】
当業者には、JAK3結合ドメインをコードするポリヌクレオチド配列は、チロシンエフェクタードメイン、例えば、STAT5などのSTAT会合モチーフならびにJAK1および/またはJAK2結合モチーフをコードするポリヌクレオチド配列の上流または下流(5’または3’)に位置してもよいことが理解されるであろう。典型的には、JAK1および/またはJAK2結合モチーフは、チロシンエフェクタードメイン、例えばSTAT/STAT5の上流(5’)にあるが、これは変化し得る。特に、JAK3結合ドメインをコードするポリヌクレオチドは、STAT会合モチーフおよびJAK1/JAK2結合モチーフをコードするポリヌクレオチドの下流(3’)に位置し得る。したがって、別の見方をすると、本明細書に記載のエンドドメインにおいて、JAK3結合ドメインは、チロシンエフェクタードメイン(例えば、STAT会合モチーフ)ならびにJAK1および/またはJAK2結合ドメインに対してN末端またはC末端、好ましくはC末端であり得る。一実施形態では、JAK3結合ドメインおよびSTAT会合モチーフ/JAK1/2結合ドメインは、互いに直接隣接して位置する(すなわち、配列によって遠位に分離されていない)。特定の実施形態では、JAK3結合ドメインは、逆向きに翻訳され、したがって、JAK3結合モチーフは、配列番号55または配列番号56と逆向きの配列(例えば、配列番号63に示す配列)を含んでもよい。したがって、シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドは、5’-3’JAK1、5’-3’STAT会合モチーフ、3’-5’JAK3の順序で塩基配列を含んでもよい。
【0182】
特定の実施形態では、JAK3結合モチーフとSTAT会合モチーフ/JAK1またはJAK2結合モチーフとの間にリンカーまたはヒンジが存在してもよい。上記リンカーまたはヒンジは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、または30個のアミノ酸、例えば、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のグリシン残基を含むかまたはそれらからなっていてもよい。最も具体的な実施形態では、エンドドメインは、JAK3結合ドメイン(例えば、配列番号55または配列番号56)を含むIL2Rγに由来する第1のアミノ酸配列と、STAT5会合モチーフおよびJAK1結合モチーフ(例えば、配列番号43または配列番号44)を含むIL2Rβに由来する第2のアミノ酸配列とを含み、第1および第2のアミノ酸配列は、リンカーまたはヒンジによって接続または接合される。
【0183】
エンドドメインは、他のシグナル伝達機能(例えば、STATシグナルを提供する以外に、細胞の表現型を維持するかまたは活性化もしくは機能を誘導するシグナルである生存促進または持続シグナルを提供することができるシグナル伝達機能)を提供してもよく、したがって、そのようなシグナル伝達機能を提供することができるさらなるドメインを含んでいてもよい。
【0184】
エンドドメインは、例えば、T細胞受容体またはその相同体(例えば、η鎖、FcεR1γおよびβ鎖、MB1(Igα)鎖、B29(Igβ)鎖など)のζ鎖エンドドメイン、CD3ポリペプチドドメイン(Δ、δ、およびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70、など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、ならびに、CD2、CD5、およびCD28などのT細胞形質導入に関与する他の分子などの、細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含んでいてもよい。上記細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖エンドドメイン、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質側末端、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞質受容体、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0185】
したがって、エンドドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよく、これは、一実施形態では、以下の配列を含むかまたはそれからなる。
UNIPROT:P20963、CD3Z_ヒト、31~143位
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号64)
【0186】
一実施形態において、エンドドメインは、配列番号64に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0187】
キメラタンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインは、下記のCD28シグナル伝達ドメインを含んでもよい。
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号65)
【0188】
一実施形態において、上記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号65に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有するシグナル伝達モチーフを含む。
【0189】
エンドドメインの細胞内シグナル伝達ドメインは、下記のCD27シグナル伝達ドメインを含んでもよい。
QRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP(配列番号66)
【0190】
一実施形態において、上記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号66に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有するシグナル伝達モチーフを含む。
【0191】
さらなる細胞内シグナル伝達ドメインは、当業者に明らかであり、本発明の代替の実施形態と関連して用いられてもよい。
【0192】
この態様では、エンドドメインは、そのエンドドメインが発現される細胞に転写因子活性、例えば、細胞の表現型または機能にとって重要な転写因子を提供する追加のドメインまたは配列含んでいてもよい。例えばTregの場合、シグナル伝達ドメインはさらに、FOXP3、c-Rel、Runx、Ets-1、CREB、NFAT、および/またはJunBを(直接的または間接的に)細胞に提供することができる。特に、エンドドメインは、FOXP3活性化または誘導シグナルを細胞に提供することが可能であってもよい。1つの態様では、エンドドメインは、FOXP3(またはその任意の機能的バリアント、トランケート体、もしくはアイソフォーム)を含んでいてもよく、ここで、FOXP3は、CIDによる誘導(例えば、Notch系を使用)時にキメラタンパク質から切断可能であってもよい。この場合は、任意の切断可能部分(例えば、FOXP3)がエンドドメインのC末端に存在する。上記のように、様々なドメイン、およびドメインの個々の部分(例えば、エンドドメイン内のモチーフ)は、リンカーによって互いに連結されてもよい。
【0193】
本明細書でいうリンカーとは、タンパク質の1つのドメインまたは部分を別のドメインまたは部分に連結するアミノ酸配列である。リンカー配列は、2つのドメイン同士またはその一部分同士を、それらが機能を発揮し得るように連結または接続する機能を有する任意のアミノ酸配列であり得る。したがって、リンカーは、連結されている要素を間隔を空けて配置することができる。
【0194】
リンカーの性質は、そのアミノ酸組成および/またはアミノ酸の配列に関して、様々であり、限定されない。しかしながら、リンカーはフレキシブルリンカーであってもよい。したがって、リンカーは、(剛性リンカーとは対照的に、)リンカーにフレキシブル性を付与することが知られているアミノ酸を含むかまたはそれらからなっていてもよい。
【0195】
フレキシブルリンカーは、当該技術分野においてよく知られ、記載されているリンカー配列のカテゴリーである。リンカー配列は、一般に、例えば、融合タンパク質もしくはキメラタンパク質または多機能タンパク質もしくはポリペプチドを作製するために、タンパク質またはタンパク質ドメインを連結または接合するために使用され得る配列として知られている。それらは、異なる特徴を有し、例えば、フレキシブルであったり、剛性であったり、切断可能であったりし得る。タンパク質リンカーについては、例えば、Chen et al., 2013, Advanced Drug Delivery Reviews 65, 1357-1369において概説されており、フレキシブルリンカーのカテゴリーが剛性リンカーおよび切断可能なリンカーのカテゴリーと比較されている。フレキシブルリンカーについては、Klein et al., 2014, Protein Engineering Design and Selection, 27(10), 325-330;van Rosmalen et al., 2017, Biochemistry, 56,6565-6574;およびChichili et al., 2013, Protein Science, 22, 153-167にも記載されている。
【0196】
フレキシブルリンカーは、連結されたドメインまたは成分間のある程度の動きを可能にするリンカーである。フレキシブルリンカーは、一般に、小さな、非極性(Glyなど)または極性(SerまたはThrなど)のアミノ酸残基で構成される。アミノ酸のサイズが小さいことにより、フレキシブルであり、接続された部分(ドメインまたは成分)の可動性が可能になっている。極性アミノ酸を組み込むと、水分子と水素結合を形成することによって、水性環境下でのリンカーの安定性を維持することができる。最も一般的に使用されているフレキシブルリンカーは、主にSer残基およびGly残基で構成される配列を有する(いわゆる「GSリンカー」)。しかしながら、他の多くのフレキシブルリンカーも記載されており(例えば、Chen et al, 2013、前掲)、これらは、溶解性を改善し得る追加のアミノ酸(例えば、Thrおよび/またはAlaならびに/あるいはLysおよび/またはGlu)を含み得る。当該技術分野で公知であり報告されている任意のフレキシブルリンカーを使用することができる。
【0197】
GSリンカー、より具体的にはリンカー中のGS(「Gly-Ser」)ドメインの使用は、GSドメインの反復数を変化させることによってリンカーの長さを容易に変化させることを可能にし得るため、そのようなリンカーは、リンカーの1つの好適なクラスを代表するものである。しかし、フレキシブルリンカーは、「GS」反復に基づくものに限定されず、リンカー配列全体に分散したSer残基およびGly残基を含む他のリンカーが、Chen et al.(前掲)をはじめとして報告されている。
【0198】
一実施形態では、リンカー配列は、Ser残基およびGly残基のみから構成される少なくとも1つのGly-Serドメインを含む。そのような実施形態では、リンカーは、15個以下の他のアミノ酸残基、例えば、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、6個以下、7個以下、5個以下、または4個以下の他のアミノ酸残基を含んでもよい。
【0199】
Gly-Serドメインは、下記の式を有し得る。
(S)q-[(G)m-(S)m]n-(G)p
ここで、qは0または1であり、mは1~8の整数であり、nは1以上の整数(例えば1~8、より具体的には1~6)であり、pは0または1~3の整数である。
【0200】
より具体的には、Gly-Serドメインは、下記の式を有し得る。
(i)S-[(G)m-S]n;
(ii)[(G)m-S]n;または
(iii)[(G)m-S]n-(G)p
ここで、mは2~8(例えば3~4)の整数であり、nは1以上の(例えば1~8、より具体的には1~6)の整数であり、pは0または1~3の整数である。
代表的な例では、Gly-Serドメインは、下記の式を有し得る。
S-[G-G-G-G-S]n
ここで、nは1以上の(好ましくは1~8、または1~6、1~5、1~4、または1~3)の整数である。上記式中、配列GGGGSは配列番号70である。
【0201】
しかし、全てのリンカーがフレキシブルである必要はなく、場合によってはリンカー配列がフレキシブルリンカー配列ではないこともある。リンカーが相互作用ドメイン、またはD1/Ht1もしくはD2/Ht2をシグナル伝達ドメインに接続する場合は、フレキシブルリンカーであることが好ましい。
【0202】
リンカーの長さは重要ではないが、どのドメインなどが連結されているかに応じて、より短いリンカー配列、またはより長いリンカー配列を有することが望ましい場合もある。
【0203】
いくつかの場合において、リンカーは、アミノ酸長が、2、3、4、5、または6のいずれか1つから、24、23、22、または21のいずれか1つまでであってもよい。他の場合には、アミノ酸長が、2、3、4、5、または6のいずれか1つから、21、20、19、18、17、16、または15のいずれか1つまでであってもよい。他の場合には、これらの範囲の中間、例えば、6~21、6~20、7~20、8~20、9~20、10~20、8~18、9~18、10~18、9~17、10~17、9~16、10~16などであってもよい。したがって、上記の整数のいずれかからなる範囲内であってもよい。
【0204】
他の場合には、リンカーは、より長い長さであってもよく、例えば、アミノ酸長が、4、5、6、7、8、9、10、12、15、または20のいずれか1つから、100、90、80、70、60、50、45、40、30、28、25、または24のいずれか1つまでであってもよい。他の場合には、この範囲と上記に示した範囲のいずれかとの間の中間であってもよい。したがって、上記の整数のいずれかからなる範囲内であってもよい。
【0205】
GSリンカー、より具体的にはリンカー中のGS(「Gly-Ser」)ドメインの使用は、GSドメインの反復数を変化させることによってリンカーの長さを容易に変化させることを可能にし得るため、そのようなリンカーは、使用に有利なリンカーのタイプを代表するものである。しかしながら、フレキシブルリンカーは、「GS」反復に基づくものに限定されず、リンカー配列全体に分散したSer残基およびGly残基を含む他のリンカーが、Chen et al.(前掲)をはじめとして報告されている。
【0206】
リンカー配列は、上記に記載または定義されたような1つ以上のGly-Serドメインのみから構成されてもよい、つまり、それ(それら)からなっていてもよい。しかしながら、上記のように、リンカー配列は、1つ以上のGly-Serドメインと追加のアミノ酸を含んでもよい。追加のアミノ酸は、Gly-Serドメインの一方または両方の末端に存在していてもよく、Gly-Serドメインの反復区間の一方または両方の末端に存在していてもよい。したがって、他のアミノ酸であり得る追加のアミノ酸は、リンカー配列の一方または両方の末端に位置してもよく、例えば、Gly-Serドメイン(1つまたは複数)を挟んでいてもよい。他の実施形態において、追加のアミノ酸は、Gly-Serドメイン間に存在していてもよい。例えば、2つのGly-Serドメインがリンカー配列中のひと続きの他のアミノ酸を挟んでいてもよい。さらに、上記のように、他のリンカーでは、GSドメインが反復されていなくてもよく、G残基および/またはS残基、またはGSなどの短いドメインが、長さまたは配列に沿って分布しているだけであってもよい。
【0207】
代表的なリンカー配列の例を以下に示す。
ETSGGGGSRL(配列番号68)
SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号69)
S(GGGGS)1-5(ここで、GGGGSは、配列番号70である)
(GGGGS)1-5(ここで、GGGGSは、配列番号70である)
SGGGGSGGGGS(配列番号71)
S(GGGS)1-5(ここで、GGGSは、配列番号67である)
(GGGS)1-5(ここで、GGGSは、配列番号67である)
SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号72)
SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号73)
S(GGGGGS)1-5(ここで、GGGGGSは、配列番号74である)
(GGGGGS)1-5(ここで、GGGGGSは、配列番号74である)
S(GGGGGGS)1-5(ここで、GGGGGGSは、配列番号75である)
(GGGGGGS)1-5(ここで、GGGGGGSは、配列番号75である)
G6(配列番号76)
G8(配列番号77)
KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号78)
EGKSSGSGSESKST(配列番号79)
GSAGSAAGSGEF(配列番号80)
SGGGGSAGSAAGSGEF(配列番号81)
SGGGLLLLLLLLGGGS(配列番号82)
SGGGAAAAAAAAGGGS(配列番号83)
SGGGAAAAAAAAAAAAAAAAGGGS(配列番号84)
SGALGGLALAGLLLAGLGLGAAGS(配列番号85)
SLSLSPGGGGGPAR(配列番号86)
SLSLSPGGGGGPARSLSLSPGGGGG(配列番号87)
GSSGSS(配列番号88)
GSSSSSS(配列番号89)
GGSSSS(配列番号90)
GSSSSS(配列番号91)
SGGGGS(配列番号92)
【0208】
シグナル伝達ドメイン内のモチーフの連結用には、以下のリンカーを挙げることができる。
GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号93)
GGGGG(配列番号94)
GGGGSGGGGS(配列番号95)
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号96)
GGGGGGG(配列番号97)
【0209】
本明細書における「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、互いに同義であることを意図している。
【0210】
当業者には、遺伝コードの縮重の結果として多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が同じポリペプチドをコードし得ることが理解されるであろう。さらに、当業者は、常用の技術を用いて、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を与えないヌクレオチド置換を行い、ポリペプチドが発現される特定の宿主生物のコドン使用を反映することができることが理解されるべきである。本明細書に記載の様々なドメインおよびモチーフなどをコードする塩基配列は、当該技術分野において公知であって入手可能であり、これらのいずれも本明細書における使用のために使用または改変することができる。
【0211】
本発明に係る核酸は、DNAまたはRNAを含み得る。それらは、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。また、合成または改変ヌクレオチドを内部に含むポリヌクレオチドであってもよい。多くの異なるタイプの改変が当該技術分野で知られている。これらには、メチルホスホネート骨格およびホスホロチオエート骨格、分子の3’末端および/または5’末端へのアクリジン鎖またはポリリシン鎖の付加が含まれる。本明細書に記載の使用の目的のために、ポリヌクレオチドは、当該技術分野で利用可能な任意の方法によって改変され得ることが理解されるべきである。そのような改変は、目的のポリヌクレオチドのインビボ活性または寿命を向上させるために行われてもよい。塩基配列に関連する「バリアント」、「相同体」、または「誘導体」という用語は、配列からの、または配列への、1個(または複数個)の核酸の任意の置換(substitution)、変異、改変、置換(replacement)、欠失、または付加を含む。
【0212】
DNA核酸分子/ポリヌクレオチド/配列などの、核酸分子/ポリヌクレオチド/塩基配列は、遺伝子組換え、合成、または当業者が利用可能な任意の手段によって作製することができる。標準的な技術でそれらのクローンを作ってもよい。
より長い核酸分子/ポリヌクレオチド/塩基配列は、一般的に、遺伝子組換え手段を使用して、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を使用して作製されるだろう。これは、クローンを作りたい標的配列の横に並べた一対のプライマー(例えば、約15~30個のヌクレオチドのもの)を作り、上記プライマーを動物またはヒトの細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域の増幅をもたらすような条件でポリメラーゼ連鎖反応を行い、増幅された断片を単離し(例えば、アガロースゲルで反応混合物を精製することにより)、増幅されたDNAを回収することを含むだろう。上記プライマーは、増幅されたDNAが好適なベクターにクローニングされるように、好適な制限酵素認識部位を含むように設計されてもよい。
【0213】
核酸構築物は、核酸分子を、1つ以上の他の塩基配列、例えば、発現制御配列などの調節配列、および/または他のコード配列と一緒に含んでもよい。特に、上記他のコード配列は、目的のタンパク質をコードしてもよい。これは、治療用タンパク質であってもよい。
【0214】
上記のように、組換えタンパク質が、別の目的タンパク質、例えば、第2のタンパク質または受容体、特に、抗原受容体、例えば、CARもしくはTCRまたはその誘導体(例えば、TCR-CAR構築物、または単鎖TCR構築物など)と共発現されてもよい。そのようなさらなるタンパク質、例えば受容体、のコード配列は、上記の構築物内に含まれてもよい。
【0215】
組換えタンパク質は、安全スイッチポリペプチドと共発現されてもよい。安全スイッチポリペプチドは、それが発現される細胞に自殺部分を提供する。これは、対象に投与された細胞を、必要が生じた場合に、または実際にはより一般的には、要望もしくは必要性に応じて、例えば、細胞がその治療効果を発揮または完了した後に、除去することを可能にする安全機構として有用である。あるいは、上述したように、組換えタンパク質は、自殺部分を含んでもよい。
【0216】
自殺部分は、細胞死、またはより一般的には細胞の排除もしくは欠失をもたらす誘導能を有する。自殺部分の一例は、自殺遺伝子によってコードされる自殺タンパク質であり、これは、所望の導入遺伝子、この場合、組換えタンパク質(および任意に、細胞によって本組換えタンパク質と共発現されるCARまたは他の受容体)と一緒に細胞内または細胞上で発現され得、発現されると、細胞を除去(deleted)させて、導入遺伝子(CAR)の発現をオフにする。本明細書において自殺部分とは、許容条件下、すなわち、誘導されたかまたはオンにされた条件下で、細胞を除去させることができるポリペプチドである自殺ポリペプチドである。
【0217】
自殺部分は、対象に投与される活性化剤によって活性化されて細胞除去活性を発揮し得るか、または対象に投与され得る基質の存在下で活性であって細胞除去活性を発揮する、ポリペプチドまたはアミノ酸配列であってもよい。特定の実施形態では、自殺部分が、対象に投与される別個の細胞除去剤の標的となってもよい。細胞除去剤は、自殺部分に結合することによって、除去させる細胞を標的とすることができる。特に、自殺部分が抗体に認識されてもよく、細胞表面に発現された場合の安全スイッチポリペプチドに抗体が結合すると、細胞が排除または除去される。
【0218】
自殺部分は、当該技術分野で知られているように、HSV-TKまたはiCasp9であってもよい。しかしながら、他の例では、自殺部分は、細胞除去抗体または細胞の除去を誘発できる他の結合分子によって認識されるエピトープであるかまたはそれを含んでいてもよい。
【0219】
細胞除去の文脈において本明細書で使用される「除去(delete)」という用語は、「除去(remove)」または「除去(ablate)」または「排除(eliminate)」と同義である。この用語は、対象における細胞の数が減少するような細胞死滅または細胞増殖阻害を包含するために使用される。100%完全な除去が望ましいが、必ずしも達成されるわけではない。対象において細胞数を減少させるかまたは細胞増殖を阻害することは、有益な効果を有するのに十分であり得る。
【0220】
特に、自殺部分は、抗体リツキシマブによって認識されるCD20エピトープであってもよい。したがって、安全スイッチポリペプチドにおいて、自殺部分は、抗体リツキシマブによって認識されるCD20由来のエピトープに基づく最小エピトープを含んでいてもよい。より具体的には、ポリペプチドは、リンカーLによって間隔を空けて配置された2つのCD20エピトープR1およびR2を含んでいてもよい。
【0221】
リツキシマブエピトープに基づく安全スイッチがWO2013/15339に記載されている。リツキシマブによって認識されるエピトープを模倣するペプチド(いわゆるミモトープ)が開発されており、これらは、WO2013/15339で、マーカー部分としてのCD34最小エピトープも含む自殺・マーカー複合ポリペプチド構築物における自殺部分として用いられている。詳細には、WO2013/15339は、配列番号99に示す配列を有するRQR8と呼ばれるポリペプチドを開示しており、このポリペプチドは、スペーサー配列および介在CD34マーカー配列によって互いに分離され、かつ、ポリペプチドが発現される細胞の表面からポリペプチドが突出することを可能にするストーク配列にさらに連結された、2つのCD20最小エピトープを含む。安全スイッチポリペプチドは、RQR8であってもよく、RQR8に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、RQR8に対して少なくとも85%、88%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するバリアントであってもよい。安全スイッチドメインのベースとして使用され得る他の安全スイッチポリペプチドとしては、本発明者らの同時係属中のPCT特許出願第PCT/EP2021/064053号(WO2021/239812)に記載されているものが挙げられる。
【0222】
本明細書に記載のキメラタンパク質または組換えタンパク質と共発現され得る他のポリペプチドには、転写因子、増殖因子、または細胞の生存の機能性の増強を支援し得る他の因子が含まれる。例えば、転写因子FOXP3は、Treg細胞の抑制表現型を維持するために使用され得る。「FOXP3」は、フォークヘッドボックスP3タンパク質の略称である。FOXP3は、転写因子のFOXタンパク質ファミリーのメンバーであり、制御性T細胞の発生(development)と機能において調節経路のマスターレギュレーターとして機能する。本明細書における「FOXP3」は、FOXP3のバリアント、アイソフォーム、および機能的断片を包含する。「FOXP3ポリペプチド」は、FOXP3活性を有するポリペプチド、すなわち、FOXP3標的DNAに結合し、Tregの発生および機能を調節する転写因子として機能することができるポリペプチドである。本明細書に記載の組換えタンパク質と一緒にFOXP3をTregに発現させることは、Treg表現型を維持するさらなる助けとなり得る。
【0223】
FOXP3を構成的に活性な組換え受容体と共発現させることは、細胞内のFOXP3発現を増加させ、Treg細胞または調節表現型を有する細胞の抑制表現型を維持する助けとなり得る。
【0224】
「FOXP3発現を増加させる」とは、細胞(または細胞の集団)中のFOXP3 mRNAおよび/またはタンパク質のレベルを、核酸分子またはベクターの導入による改変を受けていない対応する細胞(または細胞の集団)と比較して、増加させることを意味する。例えば、本発明に従って改変された細胞(またはそのような細胞の集団)におけるFOXP3 mRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、本発明に従って改変されていない対応する細胞(またはそのような細胞の集団)におけるレベルの少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍に増加し得る。好ましくは、上記細胞はTregであり、上記細胞の集団はTregの集団である。
【0225】
好適には、改変された細胞(またはそのような細胞の集団)におけるFOXP3 mRNAおよび/またはタンパク質のレベルは、そのように改変されていない対応する細胞(またはそのような細胞の集団)におけるレベルの少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍に増加し得る。好ましくは、上記細胞はTregであり、上記細胞の集団はTregの集団である。
【0226】
特定のmRNAおよびタンパク質のレベルを測定するための技術は、当該技術分野で周知である。Tregなどの細胞の集団におけるmRNAレベルは、アフィメトリクス社(Affymetrix)のebioscience prime flow RNAアッセイ、ノーザンブロッティング、遺伝子発現連続分析(SAGE)、または定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)などの技術によって測定することができる。細胞集団中のタンパク質レベルは、フローサイトメトリー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)、ウェスタンブロッティング、または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などの技術によって測定することができる。
【0227】
「FOXP3ポリペプチド」は、FOXP3活性を有するポリペプチド、すなわち、FOXP3標的DNAに結合し、Tregの発生および機能を調節する転写因子として機能することができるポリペプチドである。特に、FOXP3ポリペプチドは、野生型FOXP3(配列番号129)と同じまたは類似の活性を有してもよく、例えば、野生型FOXP3ポリペプチドの活性の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、または150%を有してもよい。したがって、本明細書に記載の核酸またはベクター中の塩基配列によってコードされるFOXP3ポリペプチドは、野生型FOXP3と比較して、活性が増加していてもよく、減少していてもよい。転写因子活性を測定するための技術は、当該技術分野でよく知られている。例えば、転写因子DNA結合活性は、ChIPによって測定することができる。転写因子の転写調節活性は、それが調節する遺伝子の発現レベルを定量することによって測定することができる。遺伝子発現は、ノーザンブロッティング、SAGE、qPCR、HPLC、LC/MS、ウェスタンブロッティング、またはELISAなどの技術を用いて、遺伝子から産生されるmRNAおよび/またはタンパク質のレベルを測定することによって定量することができる。FOXP3によって調節される遺伝子には、IL-2、IL-4、およびIFN-γなどのサイトカインが含まれる(Siegler et al. Annu. Rev. Immunol. 2006, 24: 209-26、参照により本明細書に援用される)。以下に詳述するように、FOXP3またはFOXP3ポリペプチドには、その、例えば配列番号32の、機能的断片、バリアント、およびアイソフォームが含まれる。
【0228】
「FOXP3の機能的断片」とは、全長FOXP3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと同じまたは類似の活性を有する、FOXP3ポリペプチドまたはFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(すなわち、塩基配列)の一部分または一領域を指し得る。上記機能的断片は、全長FOXP3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%を有してもよい。当業者であれば、FOXP3の既知の構造的特徴および機能的特徴に基づいて機能的断片を生成することができるであろう。これらは、例えば、Song, X. et al., 2012. Cell reports, 1(6), pp. 665-675;Lopes, J.E. et al., 2006. The Journal of Immunology, 177(5), pp. 3133-3142;およびLozano, T. et al., 2013. Frontiers in oncology, 3, p. 294に記載されている。さらに、例えば、後述するように配列番号37の配列を有するN末端およびC末端トランケート型FOXP3断片が、WO2019/241549(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0229】
「FOXP3バリアント」は、FOXP3ポリペプチドまたはFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号129に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の同一性、好ましくは、少なくとも95%または少なくとも97%または少なくとも99%の同一性を有してもよいアミノ酸配列または塩基配列を含み得る。FOXP3バリアントは、野生型FOXP3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと同じまたは類似の活性を有してもよく、例えば、野生型FOXP3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、または150%を有してもよい。当業者であれば、FOXP3の既知の構造的特徴および機能的特徴に基づいて、かつ/または、保存的置換を用いて、FOXP3バリアントを生成することができるであろう。FOXP3バリアントは、野生型FOXP3と比較して、Treg細胞内での代謝回転時間(または分解速度)が類似または同じ、例えば、Treg内での野生型FOXP3の代謝回転時間(または分解速度)の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%であってもよい。いくつかのFOXP3バリアントは、野生型FOXP3と比較して減少した代謝回転時間(または分解速度)を有してもよく、例えば、WO2019/241549(参照により本明細書に援用される)に記載されているように、配列番号32のアミノ酸418および/または422にアミノ酸置換、例えば、S418Eおよび/またはS422Aを有するFOXP3バリアントが挙げられる。
【0230】
好適には、本明細書に記載の核酸分子またはベクターによってコードされるFOXP3ポリペプチドは、UniProtKBアクセッション番号Q9BZS1(配列番号32)などのヒトFOXP3のポリペプチド配列、またはその機能的断片もしくはバリアントを含むかまたはそれからなっていてもよい。
【0231】
本発明のいくつかの実施形態において、FOXP3ポリペプチドは、配列番号32に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的断片を含むかまたはそれからなる。好適には、FOXP3ポリペプチドは、配列番号32に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列、またはその機能的断片を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、FOXP3ポリペプチドは、配列番号32またはその機能的断片を含むかまたはそれからなる。
【0232】
いくつかの実施形態では、上述したように、FOXP3ポリペプチドは、配列番号32の残基418及び/または422に変異を含んでもよい。
【0233】
本発明のいくつかの実施形態では、FOXP3ポリペプチドがN末端および/またはC末端でトランケートされることにより機能的断片が産生されてもよい。特に、N末端およびC末端でトランケートされたFOXP3の機能的断片は、配列番号37のアミノ酸配列、または配列番号37に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、もしくは99%の同一性を有する機能的バリアントを含むかまたはそれからなっていてもよい。
【0234】
好適には、FOXP3ポリペプチドは、配列番号32のバリアント、例えば天然のバリアントであってもよい。好適には、FOXP3ポリペプチドは、配列番号32のアイソフォームである。例えば、FOXP3ポリペプチドは、配列番号32に対して、72位~106位のアミノ酸の欠失を含んでもよい。あるいは、FOXP3ポリペプチドは、配列番号32に対して、246位~272位のアミノ酸の欠失を含んでもよい。
【0235】
本核酸分子または構築物は、選択可能なマーカーをコードする核酸配列を、さらに含んでもよい。好適に選択可能なマーカーは、当該技術分野において周知であり、GFPなどの蛍光蛋白質を含むが、これらに限定されるわけではない。好適には、上記選択可能なマーカーは、例えばGFP、YFP、RFP、tdTomato、dsRed、またはこれらのバリアントなどの蛍光蛋白質であってもよい。いくつかの実施形態において、上記蛍光蛋白質は、GFP、またはGFPバリアントである。
【0236】
好適には、上記選択可能なマーカー/レポータードメインは、ルシフェラーゼ系レポーター、PETレポーター(例えば、ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)、または膜タンパク質(例えば、CD34、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR))であってもよい。
【0237】
選択可能なマーカーを使用することにより、核酸分子、構築物、またはベクターが首尾よく(コードされているキメラタンパク質またはその他のコードされているタンパク質もしくはポリペプチドが発現するように)導入された細胞(例えば、Treg)を、例えばフローサイトメトリーなどの一般的な方法を使用して開始細胞集団から選択し単離できるので、選択可能なマーカーの使用が有利である。
【0238】
なおさらなる実施形態では、組換えタンパク質は、少なくとも1つのカルシニューリン阻害薬に対して耐性がある変異体カルシニューリンタンパク質、特に、少なくとも1つのカルシニューリン阻害薬に対して耐性があり、かつ少なくとも1つのカルシニューリン阻害薬に対して感受性がある変異体カルシニューリンタンパク質と、共発現されてもよい。このようなカルシニューリン変異体については、さらに後述する。そのような実施形態において、核酸分子または構築物は、そのような変異体カルシニューリンをコードする塩基配列をさらに含んでもよい。
【0239】
2つ以上のコード配列が単一の核酸分子または構築物から発現される場合、当該2つ以上のコード配列はそれらの共発現を可能にする配列によって連結されてもよい。特に、この共発現配列(共発現部位とも呼ばれる)は、コードされたタンパク質またはポリペプチドを個別の実体として発現することを可能にし得る。例えば、上記構築物は、内部プロモーター、配列内リボソーム進入配列(IRES)配列、または切断部位をコードする配列を含んでもよい。
【0240】
特に、共発現配列は、コードされたポリペプチド間に、自己切断配列をコードしてもよい。特に、自己切断配列は、自己切断ペプチドであってもよい。そのような配列は、タンパク質産生中に自己切断する。使用され得る自己切断ペプチドは、当該技術分野で公知であり、例えばDonnelly et al., Journal of General Virology, 2001, 82, 1027-1041(参照により本明細書に援用される)に記載されている、2Aペプチドまたは2A様ペプチドである。2Aペプチドおよび2A様ペプチドは、リボソームスキッピングを引き起こし、リボソームが2Aペプチドの末端と下流のアミノ酸配列との間のペプチド結合の形成をスキップする切断の形態をもたらすと考えられている。「切断」は、2AペプチドのC末端のグリシン残基とプロリン残基との間で起こる。つまり、上流のシストロンは、末端にいくつかの追加の残基が付加され、下流のシストロンは、プロリンから開始することになる。
【0241】
好適な自己切断ドメインとしては、配列番号100~103にそれぞれ示すP2A配列、T2A配列、E2A配列、およびF2A配列が挙げられる。これらの配列は、2AペプチドのN末端にアミノ酸GSGを含むように改変されてもよい。したがって、配列番号100~103に対応するがN末端にGSGを有する配列も、可能な選択肢として挙げられる。そのような改変された代替的な2A配列は、当該技術分野で公知であり、報告されている。使用され得る代替的な2A様配列は、Donnelly et al(前掲)に示されており、例えばTaV配列である。
【0242】
核酸分子に含まれる自己切断配列は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0243】
自己切断配列は、細胞に存在する一般的な酵素によって切断され得る追加の切断部位を含んでもよい。これは、翻訳後の2A配列の完全な除去の達成を支援し得る。そのような追加の切断部位は、例えば、フューリン切断部位を含んでいてもよい。そのような切断部位は、当該技術分野で公知であり、例えば、RXXR(配列番号104)、例えばRRKR(配列番号105)が含まれ得る。
【0244】
本明細書で使用される核酸分子/ポリヌクレオチドは、コドン最適化されていてもよい。コドン最適化は、以前より、WO1999/41397およびWO2001/79518に記載されている。細胞が異なっていれば、特定のコドンの使用も異なる。このコドンバイアスは、細胞タイプにおける特定のtRNAの相対的存在量の偏りに対応している。配列中のコドンを変えて、対応するtRNAの相対的存在量に合うようにコドンを適合させることにより、発現を増加させることが可能である。同様に、対応するtRNAが特定の細胞タイプにおいて少ないとわかっているコドンを故意に選択することによって、発現を減少させることが可能である。このように、翻訳調節の度合いをさらに増やすこともできる。
【0245】
組換えタンパク質をコードする塩基配列、およびその他のコード塩基配列は、それらがプロモーターに動作可能に連結されている構築物中に提供されてもよい。場合によっては、異なる塩基配列が同じプロモーターに動作可能に連結されてもよい。「プロモーター」とは、遺伝子の転写を開始させるDNAの領域である。プロモーターは、遺伝子の転写開始部位の近くでDNAにおける上流側(センス鎖の5’領域寄り)に位置する。任意の適切なプロモーターを使用することができ、その選択は当業者によって容易になされ得る。プロモーターは、いかなる供給源に由来してもよく、ウイルスプロモーターであってもよく、哺乳動物プロモーターまたはヒトプロモーター(すなわち、生理学的プロモーター)をはじめとする真核生物プロモーターであってもよい。一実施形態では、プロモーターはウイルスプロモーターである。特定のプロモーターとして、LTRプロモーター、EFS(またはその機能的トランケート体)、SFFV、PGK、およびCMVが挙げられる。一実施形態では、プロモーターは、SFFVまたはウイルスLTRプロモーターである。「同じプロモーターに動作可能に連結された」とは、各ポリヌクレオチド配列の転写が同じプロモーターから開始され得ること、および転写がプロモーターから開始されるように各塩基配列が配置および配向されることを意味する。プロモーターに動作可能に連結されたポリヌクレオチドは、プロモーターの転写調節下にある。
【0246】
ベクターは、1つの環境から別の環境へのある実体の移入を可能にする、または容易にするツールである。本明細書において、例として、組換え核酸技術に使用されるいくつかのベクターは、核酸のセグメント(例えば、異種cDNAセグメントなどの異種DNAセグメント)などの実体を、標的細胞に移入することができる。ベクターは、非ウイルスベクターであってもよく、ウイルスベクターであってもよい。組換え核酸技術に使用されるベクターとしては、例えば、プラスミド、mRNA分子(例えば、インビトロ転写mRNA)、染色体、人工染色体、およびウイルスが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ベクターはまた、例えば、ネイキッド核酸(例えば、DNA)であってもよい。最も単純な形態では、ベクターそれ自体が、目的の塩基配列であってもよい。
【0247】
本明細書で使用されるベクターは、例えば、プラスミド、mRNA、またはウイルスベクターであってもよく、核酸分子/ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター(上記)、場合によってはそのプロモーターのレギュレーターを含んでもよい。
【0248】
一実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである。
【0249】
ベクターは、追加のプロモーターをさらに含んでもよく、例えば、一実施形態では、プロモーターは、LTR、例えば、レトロウイルスLTRまたはレンチウイルスLTRであってもよい。長末端反復(LTR)とは、レトロトランスポゾンやレトロウイルスRNAの逆転写によって形成されるプロウイルスDNAの両端に見られる、数百回または数千回繰り返すDNAの同一配列である。LTRは、ウイルスが宿主ゲノムに遺伝物質を挿入するために使用する。LTRには以下の遺伝子発現のシグナルが存在する:エンハンサー、プロモーター(転写エンハンサーまたは調節エレメントの両方を有し得る)、転写開始(キャッピングなど)、転写ターミネーター、およびポリアデニル化シグナル。
【0250】
好適には、ベクターは、5’LTRおよび3’LTRを含み得る。
【0251】
ベクターは、転写前または転写後に作用し得る1つ以上の追加の調節配列を含んでもよい。「調節配列」とは、ポリペプチドの発現を促進する任意の配列であり、例えば、転写物の発現を増加させたり、mRNA安定性を高めたりする働きをする。好適な調節配列としては、例えば、エンハンサーエレメント、転写後調節エレメント、およびポリアデニル化部位が挙げられる。好適には、追加の調節配列はLTR中に存在し得る。
【0252】
好適には、ベクターは、例えばプロモーターに動作可能に連結された、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含み得る。
【0253】
本核酸分子/ポリヌクレオチドを含むベクターを、形質転換や形質導入など、当該技術分野で周知の様々な技術を使用して細胞に導入してもよい。いくつかの技術が当該技術分野で知られており、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターなどの組換えウイルスベクターを使用した感染、核酸の直接注入や、遺伝子銃形質転換が挙げられる。
【0254】
非ウイルス送達システムには、DNA導入法などがあるが、これらに限定されるわけではない。なお、遺伝子導入は、遺伝子を標的細胞へ送達するための非ウイルスベクターを使用したプロセスを含む。非ウイルス送達システムは、リポソームまたは両親媒性細胞浸透性ペプチド、好ましくは、核酸分子または構築物と複合されたものを含むことができる。
【0255】
典型的な遺伝子導入法としては、エレクトロポレーション、DNA遺伝子銃、脂質媒介トランスフェクション、圧縮DNA媒介トランスフェクション、リポソーム、イムノリポソーム、リポフェクション、カチオン性薬剤媒介トランスフェクション、カチオン性表面両親媒性物質(CFAs)(Nat. Biotechnol. (1996)14: 556)、および、これらの組み合わせがある。
【0256】
場合によっては、本核酸分子は、組換えタンパク質およびその他のポリペプチド(例えば、受容体またはマーカーまたは他の機能的ポリペプチドまたは目的のタンパク質)をコードする単一の構築物として使用されるように設計されてもよく、この構築物は単一のベクターに含有されるであろうが、例えばやはり細胞に導入することが所望され得る他のポリペプチドをコードする他のベクターと組み合わせて細胞に導入されることを除外するものではない。
【0257】
上記のように、組換えタンパク質は、CARと組み合わせて細胞内または細胞上に共発現させてもよい。本明細書における「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、細胞(例えば、Treg)に抗原特異性を付与することができる操作された受容体のことである。CARはまた、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、またはキメラ免疫受容体として知られている。CARは、典型的には、本明細書において抗原結合ドメインと呼ばれる抗原特異的標的化領域を含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、1つ以上の共刺激ドメインを任意に含む細胞内ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。抗原結合ドメインは、典型的には、ヒンジドメインによって膜貫通ドメインに連結される。CARの設計、およびそれらが含有し得る様々なドメインは、当該技術分野で周知である。
【0258】
CARが標的抗原と結合すると、その結果、CARが発現する細胞に活性化シグナルが伝達される。このように、CARは、操作された細胞の特異性を、標的抗原、特に標的抗原を発現する細胞へ向ける。
【0259】
CARの抗原結合ドメインは、所望の標的抗原、より一般的には所望の標的分子に結合する(すなわち、親和性を有する)任意のタンパク質またはポリペプチドに由来するかまたはそれから得られてもよい。これは、例えば、リガンドもしくは受容体、または標的分子に対する生理学的結合タンパク質、もしくはその一部、または合成タンパク質もしくは誘導体タンパク質であってもよい。標的分子は、一般に、細胞、例えば、標的細胞または標的細胞近傍の細胞(バイスタンダー効果のため)などの表面に発現され得るが、そうでなくてもよい。CARは、抗原結合ドメインの性質および特異性に応じて、可溶性分子を認識し得る。これは、例えば、抗原結合ドメインが細胞受容体に基づくかまたは由来する場合である。
【0260】
抗原結合ドメインは、抗体可変鎖に由来するのが最も一般的である(例えば、scFvの形態をとるのが一般的である)が、T細胞受容体可変ドメイン、または、上述したように、リガンドもしくは他の結合分子に対する受容体などの他の分子から生成されてもよい。
【0261】
CARは、典型的には、シグナル配列(リーダー配列としても知られる)、特にCARを細胞の原形質膜に標的化するシグナル配列も含む、ポリペプチドとして発現される。シグナル配列は、一般に、抗原結合ドメインの隣または近くで、一般には抗原結合ドメインの上流側に、位置する。したがって、CARの細胞外ドメイン、つまり外部ドメイン(ectodomain)は、シグナル配列と抗原結合ドメインとを含み得る。
【0262】
抗原結合ドメインは、CARに、結合相手の所定の抗原と結合する能力を提供する。抗原結合ドメインは、好ましくは、臨床的に関心が持たれる抗原または疾患部位の抗原を標的とする。
【0263】
上記のように、抗原結合ドメインは、生体分子(例えば、細胞表面受容体またはその構成部分)を特異的に認識しそれと結合する能力を有するタンパク質またはペプチドであってもよい。抗原結合ドメインは、結合相手の生体分子用の、天然由来、合成、半合成、または遺伝子組換えにより作製した結合パートナーを含む。抗原特異的標的ドメインの例としては、抗体または抗体断片または誘導体、受容体の細胞外ドメイン、細胞表面分子/受容体用のリガンド、またはその受容体結合ドメイン、および腫瘍結合タンパク質などがある。後述するように、上記抗原特異的標的ドメインは、好ましくは、抗体または抗体由来であってもよいが、他の抗原特異的標的ドメイン、例えば、移植、炎症、または疾患の部位で活性なTcon細胞のTCRと結合することが可能な抗原ペプチド/MHCまたはHLAの組み合わせからなる抗原特異的標的ドメインなども含まれる。
【0264】
CARは、任意の所望の標的抗原または標的分子に向けられ得る。これは、意図する治療法や治療したい状態に応じて選択することができる。例えば、特定の状態に関連する抗原もしくは分子、またはその状態を治療するために標的としたい細胞に関連する抗原もしくは分子であってもよい。典型的には、上記抗原または分子は、細胞表面抗原または細胞表面分子である。
【0265】
「に対して向けられる(directed against)」という用語は、「に特異的な」または「抗」と同義である。換言すれば、CARは標的分子を認識する。したがって、この用語は、CARが、特定のまたは所与の抗原つまり標的に特異的に結合することができることを意味する。特に、CARの抗原結合ドメインは、標的分子または標的抗原に特異的に結合することができる(より具体的には、CARが細胞、特に免疫エフェクター細胞の表面に発現されている場合)。特異的な結合は、非標的分子または非標的抗原に対する非特異的な結合とは区別され得る。したがって、CARを発現する細胞は、標的分子または標的抗原を発現する標的細胞、特に、細胞表面上に標的抗原または標的分子を発現する標的細胞に特異的に結合するように向けられる(directed)、またはリダイレクトされる(re-directed)。
【0266】
当該CARによって標的とされる抗原には、移植された臓器、自己免疫疾患、アレルギー疾患、および炎症性疾患(例えば、神経変性疾患)に関連する細胞上に発現する抗原があるが、これらに限定されるわけではない。CARを発現するように操作された細胞がTreg細胞またはその前駆体である場合は、Treg細胞のバイスタンダー効果のため、移植部位、炎症部位、または疾患部位に抗原が単に存在する、および/または発現するということは、当業者に理解されるであろう。
【0267】
神経変性疾患に関連する細胞上に発現する抗原としては、グリア細胞上に提示される抗原、例えばMOGが挙げられる。
【0268】
臓器移植に関連する抗原、および/または移植された臓器に関連する細胞としては、移植された臓器に存在するが患者には存在しないHLA抗原や、移植拒絶の間に発現が増加する抗原、例えばCCL19、MMP9、SLC1A3、MMP7、HMMR、TOP2A、GPNMB、PLA2G7、CXCL9、FABP5、GBP2、CD74、CXCL10、UBD、CD27、CD48、CXCL11などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0269】
一実施形態では、CARは、HLA抗原、特にHLA-A2抗原に対して向けられる。
【0270】
このような抗原に対する抗体は当該技術分野で公知であり、好都合なことに、scFvは公知の抗体または入手可能な抗体に基づいて取得または生成され得る。この点において、そのような抗体結合ドメインの調製を助けるためのVH配列およびVL配列、ならびにCDR配列が公開されている。例えば、WO2020/044055に開示されており、その開示は参照により本明細書に援用される。WO2020/044055に開示されている抗原結合ドメイン、またはCDR配列、VH配列、および/もしくはVL配列のいずれを用いてもよい。
【0271】
例としては、CARは、HLA-A2(HLA-A2は、本明細書においてHLA-A*02、HLA-A02、およびHLA-A*2とも称される)と結合可能な抗原結合ドメインを含んでいてもよい。HLA-A*02は、HLA-A座にある、ある特定のクラスI主要組織適合複合体(MHC)対立遺伝子群である。
【0272】
抗原認識ドメインは、HLA-A2内の1個以上の領域またはエピトープと結合してもよく、好適には特異的に結合してもよい。エピトープは抗原決定基としても知られ、抗原認識ドメイン(例えば抗体)によって認識される抗原の一部である。つまり、エピトープは抗体が結合する抗原の特定の部分である。好適には、抗原認識ドメインは、HLA-A2内の1個の領域またはエピトープと結合し、好適には特異的に結合する。
【0273】
ウイルスベクターを用いた形質導入や、DNAまたはRNAを用いた遺伝子導入などの多数の手段のうちのひとつによって、本明細書で定義された核酸分子、構築物、またはベクターを導入することにより、操作された細胞、特にT細胞が生成されてもよい。
【0274】
本細胞は、本明細書で定義された核酸分子、構築物、またはベクターを細胞に(例えば、形質導入または遺伝子導入によって)導入することにより、作製される。
【0275】
好適な細胞についてはさらに後述するが、細胞は、対象から単離されたサンプルに由来するものであってもよい。対象は、ドナー対象であってもよく、治療の対象であってもよい(すなわち、細胞は、自己細胞であってもよく、別のレシピエントに導入するためのドナー細胞、例えば、同種細胞であってもよい)。
【0276】
細胞は、以下の工程を含む方法によって生成され得る。
(i)対象から細胞含有サンプルを単離する、または細胞含有サンプルを得る工程、および
(ii)本明細書で定義される核酸分子、構築物、またはベクターを細胞含有サンプルに導入し(例えば、形質導入または遺伝子導入により)、操作された細胞の集団を得る工程。
【0277】
核酸分子、構築物、またはベクターが導入される細胞を標的細胞と呼ぶ場合もある。上記方法の工程(ii)の前および/または後に、標的細胞富化サンプルを、細胞含有サンプルから単離し、富化し、および/または細胞含有サンプルから生成してもよい。例えば、Treg(または他の標的細胞)の単離、富化、および/または生成を工程(ii)の前および/または後に行って、Treg富化サンプルを単離、富化、または生成してもよい。細胞含有サンプルからの単離および/または富化を工程(ii)の後に行って、本明細書に記載のCAR、核酸分子/ポリヌクレオチド、構築物、および/またはベクターを含む細胞および/またはTreg(または他の標的細胞)を富化してもよい。
【0278】
Treg富化サンプルは、当業者に周知のいずれかの方法によって、例えばFACSおよび/または磁性ビーズ分離によって、単離または富化されてもよい。Treg富化サンプルは、当業者に周知のいずれかの方法によって、細胞含有サンプルから生成されてもよく、例えば、FOXP3をコードするDNAまたはRNAを導入することによりTcon細胞から生成されてもよく、かつ/または、誘導性前駆細胞もしくは胚性前駆細胞のエクスビボ分化から生成されてもよい。他の標的細胞を単離および/または富化するための方法は、当該技術分野で公知である。
【0279】
標的細胞は、Treg細胞、またはその前駆体もしくは前駆細胞であってもよい。
【0280】
「操作された細胞」は、細胞によって自然にコードされたわけではないポリヌクレオチドを含むか、または発現するように改変された細胞を意味する。細胞を操作する方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、細胞の遺伝子改変があり、それは、例えば、レトロウイルス形質導入またはレンチウイルス形質導入などの形質導入、リポフェクション法、ポリエチレングリコール法、リン酸カルシウム法およびエレクトロポレーション法などの遺伝子導入(DNAまたはRNAの一過性形質転換など)によるものであるが、これらに限定されるわけではない。核酸配列を細胞に導入するために、いずれかの適切な方法が使用されればよい。核酸を導入するために両親媒性細胞浸透性ペプチドなどの非ウイルス性技術を使用してもよい。細胞はまた、例えば、本明細書に記載のヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または核酸配列をゲノムに挿入するために任意の公知の遺伝子編集技術を用いて、例えばCRISPR、Talen、またはZnフィンガーを用いて、遺伝子改変されてもよい。
【0281】
したがって、本明細書に記載の核酸分子は、対応する未改変の細胞によって自然に発現されるわけではない。実際、組換えタンパク質をコードする核酸分子は人工的な構築物であり、自然に存在したり発現したりすることはできない。好適には、操作された細胞は、例えば形質導入または遺伝子導入により改変された細胞である。好適には、操作された細胞は、例えば形質導入または遺伝子導入によって、改変またはゲノム改変された細胞である。好適には、操作された細胞は、レトロウイルス形質導入によって、改変またはゲノム改変された細胞である。好適には、操作された細胞は、レンチウイルス形質導入によって、改変またはゲノム改変された細胞である。
【0282】
本明細書における「導入された」という用語は、外来の核酸、例えばDNAまたはRNAを細胞に挿入するための方法のことである。本明細書における「導入された」という用語は、形質導入法、遺伝子導入法の両方を含む。遺伝子導入は、非ウイルス法により核酸を細胞内に導入するプロセスである。形質導入は、ウイルスベクターを介して細胞に外来のDNAまたはRNAを導入するプロセスである。ウイルスベクターを用いた形質導入や、DNAまたはRNAを用いた遺伝子導入などの多数の手段のうちのひとつによって、本明細書に記載の核酸を導入することにより、操作された細胞が生成されてもよい。
【0283】
本明細書に記載の核酸の導入前または導入後に、例えば、抗CD3モノクローナル抗体での処理、または抗CD3モノクローナル抗体と抗CD28モノクローナル抗体の両方での処理により、細胞を活性化および/または増殖させてもよい。また、IL-2と組み合わせた抗CD3モノクローナル抗体および抗CD28モノクローナル抗体の存在下で細胞を増殖させてもよい。好適には、IL-2はIL-15と置き換えられてもよい。細胞(例えば、Treg)増殖プロトコルで使用されてもよい別の成分としては、ラパマイシン、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、およびTGFβがあるが、これらに限定されるわけではない。本明細書における「活性化される」とは、細胞が刺激されて、細胞の増殖が起こることを意味する。本明細書における「増殖される」とは、細胞または細胞の集団の増殖が誘導されることを意味する。細胞の集団の増殖は、例えば、集団に存在する細胞の数をカウントすることにより測定してもよい。細胞の表現型は、フローサイトメトリーなど当該技術分野で周知の方法によって判定してもよい。一実施形態において、細胞は、EPOの存在下で培養および/または活性化されてもよい。
【0284】
細胞は、免疫細胞であってもよく、その前駆体であってもよい。前駆体細胞(precursor cell)は、前駆細胞(progenitor cell)であってもよい。したがって、代表的な免疫細胞としては、T細胞、特に細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+ T細胞)、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+ T細胞)、および制御性T細胞(Treg)が挙げられる。T細胞の他の集団、例えばナイーブT細胞やメモリーT細胞もまた本明細書において有用である。他の免疫細胞としては、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、MDSC、好中球、およびマクロファージが挙げられる。免疫細胞の前駆体としては、多能性(pluripotent)幹細胞、例えば人工多能性幹細胞(iPSC)、または、多分化能性(multipotent)幹細胞つまりある系統に拘束された細胞を含む、より拘束された前駆細胞が挙げられる。前駆体細胞は、インビボまたはインビトロで免疫細胞に分化するように誘導することができる。1つの態様において、前駆体細胞は、目的の免疫細胞への分化形質転換が可能な体細胞であってもよい。
【0285】
最も注目すべきことに、上記免疫細胞は、NK細胞、樹状細胞、MDSC、または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)もしくはTreg細胞などのT細胞であってもよい。
【0286】
特に、上記免疫細胞は、Treg細胞であってもよい。「制御性T細胞(Treg)またはT制御性細胞」は、細胞変性免疫応答を制御し、免疫寛容の維持に必須である、免疫抑制機能を有する免疫細胞である。本明細書において、Tregという用語は、免疫抑制機能を有するT細胞のことである。
【0287】
本明細書で使用されるT細胞は、アルファベータT細胞(例えばCD8またはCD4+)、ガンマデルタT細胞、メモリーT細胞、Treg細胞などの任意のタイプのT細胞を含むリンパ球である。
【0288】
好適には、免疫抑制機能とは、病原体、同種抗原、または自己抗原など刺激に応答する免疫系によって促進される生理的な細胞の現象が多数ある内の1つ以上を低減または阻害するTregの能力を表してもよい。かかる現象の例には、通常T細胞(Tcon)の増殖の増加、および炎症性サイトカインの分泌などがある。かかる現象はいずれも、免疫応答の強さの指標として使用してもよい。Tregの存在下でTconvによる免疫応答が相対的に弱いことは、Tregの免疫応答を抑制する能力を示すといえる。例えば、サイトカインの分泌が相対的に低下することは、免疫応答の弱まりを示し、したがって、Tregの免疫応答を抑制する能力を示す。Tregは、B細胞、樹状細胞、およびマクロファージなど抗原提示細胞(APC)の共刺激分子の発現を調節することにより、免疫応答を抑制することもできる。CD80およびCD86の発現レベルは、共存培養後のインビトロでの活性化されたTregの抑制能を調査するために使用できる。
【0289】
免疫応答の強度の指標を測定し、それによってTregの抑制能を測定するためのアッセイが、当該技術分野で周知である。特に、抗原特異的なTconv細胞は、Tregと共存培養してもよく、対応する抗原のペプチドを上記共存培養に加えてTconv細胞からの応答を刺激してもよい。Tconv細胞の増殖の度合い、および/または上記ペプチドの追加に応答してTconv細胞が分泌したサイトカインIL-2の量を、共存培養したTregの抑制能の指標として使用してもよい。
【0290】
本明細書で言及されるTregと共存培養された抗原特異的なTconv細胞の増殖は、Tregの非存在下で培養された同じTconv細胞の増殖と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、90%、95%、または99%少なくてもよい。例えば、本Tregと共存培養された抗原特異的なTconv細胞の増殖は、操作されていないTregの存在下で培養された同じTconv細胞の増殖と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、90%、95%、または99%少なくてもよい。本明細書で定義される核酸、発現構築物、またはベクターを含む細胞、例えば、Tregは、操作されていないTregと比較して、抑制活性が増加していてもよい(例えば、抑制活性が少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%増加していてもよい)。
【0291】
本明細書のTregと共存培養された抗原特異的なTconv細胞は、Tregの非存在下(例えば、操作されていないTregの存在下)で培養された対応するTconv細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%少ないエフェクターサイトカインを発現してもよい。上記エフェクターサイトカインは、IL-2、IL-17、TNFα、GM-CSF、IFN-γ、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、およびIL-13から選択されてもよい。好適には、上記エフェクターサイトカインは、IL-2、IL-17、TNFα、GM-CSF、およびIFN-γから選択されてもよい。
異なる、または異なるレベルの、特定のマーカーを発現し得るTregのいくつかの異なる亜集団が同定されている。Tregは、一般に、CD4、CD25、およびFOXP3というマーカーを発現(CD4+CD25+FOXP3+)するT細胞である。
【0292】
Tregはまた、CTLA-4(細胞障害性Tリンパ球関連分子4)またはGITR(グルココルチコイド誘導TNF受容体)を発現する。
【0293】
Treg細胞は末梢血、リンパ節、および組織に存在し、本明細書で使用されるTregには、胸腺由来の天然のTreg(nTreg)細胞と、末梢で生成されたTregと、誘導されたTreg(iTreg)細胞とがある。
【0294】
細胞表面マーカーCD4およびCD25を、表面タンパク質CD127の非存在下で、または表面タンパク質CD127の低発現と組み合わせて(CD4+CD25+CD127-またはCD4+CD25+CD127low)、使用して、Tregを同定してもよい。かかるマーカーをTregの同定のために使用することは、当該技術分野において周知であり、例えば、Liu et al(JEM; 2006; 203; 7(10); 1701-1711)に記載されている。
【0295】
Tregは、CD4+CD25+FOXP3+ T細胞、CD4+CD25+CD127- T細胞、またはCD4+CD25+FOXP3+CD127-/low T細胞であってもよい。
【0296】
好適には、Tregは、天然Treg(nTreg)であってもよい。本明細書において、「天然Treg」という用語は、胸腺由来Tregという意味である。天然Tregは、CD4+CD25+FOXP3+Helios+ニューロピリン1+である。iTregと比較して、nTregは、PD-1(プログラム細胞死-1、pdcd1)、ニューロピリン1(Nrp1)、Helios(Ikzf2)、およびCD73を高発現する。Heliosタンパク質またはニューロピリン1(Nrp1)の発現にそれぞれ基づいて、nTregをiTregsから区別してもよい。
【0297】
TregはTreg特異的な脱メチル化領域(TSDR)を有してもよい。TSDRは、Foxp3の発現を制御する、重要なメチル化感受性のあるエレメントである(Polansky, J.K. et al., 2008. European journal of immunology, 38(6), pp. 1654-1663)。
【0298】
さらなる好適なTregとしては、Tr1細胞(Foxp3を発現せず、IL-10を高産生する)、CD8+FOXP3+ T細胞、およびγδFOXP3+ T細胞が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0299】
Tregには、ナイーブTreg(CD45RA+FoxP3low)、エフェクター/メモリーTreg(CD45RA-FoxP3high)、およびサイトカイン産生Treg(CD45RA-FoxP3low)など、様々な亜集団が存在することが知られている。「メモリーTreg」とは、CD45ROを発現し、CD45RO+であるとみなされるTregである。これらの細胞は、ナイーブTregと比較してCD45ROのレベルが高く(例えば、CD45ROが少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%多い)、好ましくは、CD45RA(mRNAおよび/またはタンパク質)を発現しないか、またはナイーブTregと比較してCD45RAのレベルが低い(例えば、ナイーブTregと比較してCD45RAが少なくとも80%、90%、または95%少ない)。「サイトカイン産生Treg」とは、CD45RA(mRNAおよび/またはタンパク質)を発現しないか、またはナイーブTregと比較してCD45RAのレベルが非常に低く(例えば、ナイーブTregと比較してCD45RAが少なくとも80%、90%、または95%少ない)、かつ、メモリーTregと比較してFOXP3のレベルが低い(例えば、メモリーTregと比較してFOXP3が50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、または90%未満である)Tregである。サイトカイン産生Tregは、インターフェロンガンマを産生し得、ナイーブTregと比較してインビトロでの抑制性が低い(例えば、ナイーブTregと比較して抑制性が50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、または90%未満である)場合がある。本明細書における発現レベルとは、mRNAまたはタンパク質の発現を指し得る。特に、CD45RA、CD25、CD4、CD45ROなどの細胞表面マーカーについては、発現は、細胞表面発現、すなわち、細胞表面に発現されるマーカータンパク質の量または相対量を指し得る。発現レベルは、当該技術分野における任意の公知の方法によって判定することができる。例えば、mRNA発現レベルは、ノーザンブロッティング/アレイ分析によって判定することができ、タンパク質発現は、ウェスタンブロッティングによって、好ましくは細胞表面発現に対する抗体染色を用いたFACSによって、判定することができる。
【0300】
特に、TregはナイーブTregであってもよい。本明細書において互換的に使用される「ナイーブ制御性T細胞、ナイーブT制御性細胞、またはナイーブTreg」は、CD45RAを発現する(特に、CD45RAを細胞表面に発現する)Treg細胞を指す。したがって、ナイーブTregはCD45RA+と記載される。ナイーブTregは、一般に、ペプチド/MHCによって内因性TCRを介して活性化されていないTregを表し、一方、エフェクター/メモリーTregは、内因性TCRを介した刺激によって活性化されたTregに関する。典型的には、ナイーブTregは、ナイーブではないTreg細胞(例えば、メモリーTreg細胞)に比べて、CD45RAを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%多く発現してもよい。別の見方をすると、ナイーブTreg細胞は、非ナイーブTreg細胞(例えば、メモリーTreg細胞)と比較して、CD45RAを少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、または100倍の量で発現してもよい。CD45RAの発現レベルは、当該技術分野の方法、例えば、市販の抗体を用いたフローサイトメトリーによって、容易に判定することができる。典型的に、非ナイーブTreg細胞は、CD45RAを発現しないか、またはCD45RAの発現レベルが低い。
【0301】
特に、ナイーブTregは、CD45ROを発現しない場合があり、CD45RO-とみなされる場合がある。したがって、ナイーブTregは、メモリーTregと比較して、CD45ROを少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%少なく発現してもよく、別の見方をすると、メモリーTreg細胞に比べて、CD45ROの発現が少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、50分の1、または100分の1であってもよい。
【0302】
ナイーブTregは上述したようにCD25を発現するが、ナイーブTregの起源によっては、CD25の発現レベルがメモリーTregにおける発現レベルよりも低い場合がある。例えば、末梢血から単離されたナイーブTregに関しては、CD25の発現レベルがメモリーTregよりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低い場合がある。そのようなナイーブTregは、CD25の発現が中レベルから低レベルであるとみなされ得る。しかしながら、当業者は、臍帯血から単離されたナイーブTregはこのような差を示さない場合があることを理解するであろう。
【0303】
典型的には、本明細書で定義されるナイーブTregは、CD4+、CD25+、FOXP3+、CD127low、CD45RA+であり得る。
【0304】
本明細書におけるCD127の低発現とは、同じ対象またはドナー由来のCD4+非制御性またはTcon細胞と比較してCD127の発現レベルが低いことをいう。特に、ナイーブTregは、同じ対象またはドナー由来のCD4+非制御性またはTcon細胞と比較して、CD127の発現が90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満であってもよい。CD127のレベルは、抗CD127抗体で染色された細胞のフローサイトメトリーをはじめとする当該技術分野で標準的な方法によって評価することができる。
【0305】
典型的には、ナイーブTregは、CCR4、HLA-DR、CXCR3、および/またはCCR6を発現しないか、またはその発現レベルが低い。特に、ナイーブTregは、CCR4、HLA-DR、CXCR3、およびCCR6の発現レベルがメモリーTregよりも低い場合があり、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低い発現レベルである場合がある。
【0306】
ナイーブTregは、CCR7+およびCD31+を含む追加のマーカーをさらに発現し得る。
【0307】
単離されたナイーブTregは、単離された細胞の細胞表面における上記のマーカーのいずれか1つ以上のパネルの存在の有無を判定する方法をはじめとする当該技術分野で公知の方法によって同定することができる。例えば、ある細胞がナイーブTregであるかどうかを判定するためにCD45RA、CD4、CD25、およびCD127lowを使用することができる。単離された細胞がナイーブTregであるかどうか、または所望の表現型を有するかどうかを判定する方法は、実施され得る追加の工程に関して以下で説明するように実施することができ、細胞マーカーの存在および/または発現レベルを判定するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、市販の抗体を用いたフローサイトメトリーが挙げられる。
【0308】
好適には、Tregなどの細胞は、対象から得られた末梢血単核細胞(PBMC)から単離される。好適には、PBMCが得られる対象は、哺乳動物であり、好ましくはヒトである。好適には、上記細胞は、操作された細胞が投与される対象に適合(例えば、HLA適合)しているか、または、対象自身のものである。好適には、治療される対象は、哺乳動物であり、特にヒトである。上記細胞は、患者本人の末梢血(第一者)から、またはドナー末梢血(第二者)由来の造血性幹細胞移植の環境において、または無関係のドナー(第三者)由来の末梢血からのいずれかで、エクスビボ(生体外)で生成されてもよい。好適には、上記細胞は、操作された細胞が投与される対象自身のものである。
【0309】
好適には、上記Tregは、細胞の集団の一部である。好適には、Tregの集団は、Tregが少なくとも70%であり、例えばTregが少なくとも75%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%である。かかる集団を、「富化されたTreg集団」と称してもよい。
【0310】
いくつかの態様で、Tregは、誘導性前駆細胞(例えば、iPSC)または胚性前駆細胞の、Tregへのエクスビボ分化から由来してもよい。本明細書に記載の核酸分子、構築物、またはベクターは、Tregへの分化前または分化後に誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞へ導入されてもよい。分化のための好適な方法は、当該技術分野で公知であり、Haque et al, J Vis Exp., 2016, 117, 54720(参照により本明細書に援用される)に開示されている方法を含む。別の態様において、組換えタンパク質が、シグナル誘導物質分子の非存在下での二量体化およびシグナル伝達を可能にする改変を有するEPORである場合、内因性EPOR核酸が遺伝子編集技術(例えば、CRISPR)によって改変されて本発明の細胞を提供してもよい。
【0311】
本明細書における「通常T細胞」またはTconもしくはTconv(本明細書において互換的に使用される)という用語は、αβT細胞受容体(TCR)と、分化抗原群4(CD4)または分化抗原群8(CD8)であってもよい共受容体とを発現し、免疫抑制機能をもたないTリンパ球細胞を意味する。通常T細胞は末梢血、リンパ節、および組織に存在する。好適には、操作されたTregは、FOXP3をコードする配列を含む核酸を導入することによってTconから生成されてもよい。あるいは、操作されたTregは、IL-2およびTGF-βの存在下でCD4+CD25-FOXP3-細胞のインビトロ培養によってTconから生成されてもよい。
【0312】
組換えタンパク質が発現されると、本明細書のTregは、組換えタンパク質を含まないTreg細胞と比較して、持続性が増加し得る。本明細書における「持続性」は、Tregが特定の環境、例えばインビボ(例えば、ヒト患者または動物モデルの中)で生存できる時間の長さを定義する。本明細書に開示されるTregは、本明細書の組換えタンパク質を発現しないTregと比較して、持続性が少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%増加し得る。持続性は、例えば、本発明の組換えタンパク質を発現する細胞を、組換えタンパク質を発現しない同等の細胞タイプと比較するか、操作されていない細胞と比較するかして、経時的に対象または患者内の投与細胞の量または数を特定することによって測定することができる。マーカータンパク質、例えば、RQR8安全性スイッチも発現する細胞の場合にはCD34を用いて、投与細胞を追跡することが可能である。
【0313】
別の実施形態では、核酸分子、構築物、またはベクターが導入される標的細胞は、治療を目的とした細胞ではない。一実施形態では、細胞は、産生宿主細胞である。細胞は、核酸の産生、例えばクローニング用、またはベクターの産生用、またはポリペプチドの産生用であってもよい。
【0314】
本明細書で定義または記載される細胞を含む細胞集団もまた本明細書において提供される。細胞集団は、本明細書で定義される核酸分子、構築物、またはベクターを含む本細胞と、核酸分子、構築物、またはベクターを含まない細胞、例えば非形質導入細胞または非遺伝子導入細胞との両方を含んでもよいことが理解されるであろう。特定の実施形態では、集団中の全ての細胞が核酸、発現構築物、またはベクターを含んでもよいが、核酸、発現構築物、またはベクターを含む細胞が少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%である細胞集団が提供される。
【0315】
本明細書で定義または記載される細胞または細胞集団、本明細書で定義されるベクターを含む医薬組成物も提供される。ベクターは、遺伝子治療に使用することができる。したがって、細胞を投与するのではなく、ベクターを投与し、導入された核酸分子を発現するように対象中の内因性細胞を改変してもよい。遺伝子治療における使用に適したベクターは、当該技術分野で公知であり、ウイルスベクターが含まれる。
【0316】
医薬組成物は、治療上有効量の医薬的に活性な薬剤、すなわち上記細胞(例えば、Treg)、細胞集団、もしくはベクターを含むかまたはそれからなる組成物である。好ましくは、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤(それらの組み合わせを含む)を含む。治療目的の使用のために許容される担体または希釈剤は、薬学的技術分野で周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro編、1985)に記載されている。薬学的担体、賦形剤、または希釈剤の選択は、意図する投与経路と標準的な薬務とを考慮して選択できる。上記医薬組成物は、担体、賦形剤、または希釈剤として、またはそれらに加えて、適した結合剤、滑剤、懸濁化剤、コーティング剤、または可溶化剤を含んでもよい。
【0317】
「薬学的に許容される」とは、製剤が滅菌済であり、発熱物質(pyrogen)を含まないという意味を含む。担体、希釈剤および/または賦形剤は、上記細胞またはベクターと親和性があり、レシピエントに対して有害ではないという意味において、「許容可能」でなければならない。典型的には、担体、希釈剤および/または賦形剤は、滅菌済であり、発熱物質を含まない生理的媒体または輸液媒体であるが、他の許容可能な担体、希釈剤、賦形剤を用いてもよい。
【0318】
薬学的に許容される担体の例としては、例えば、水、塩類溶液、アルコール、シリコーン、蝋、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、珪酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ペトロエスラル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどがある。
【0319】
上記細胞、細胞集団、または医薬組成物は、所望の疾患または状態の治療および/または予防に適した方法で投与することができる。投与量および投与頻度は、対象の状態ならびに対象の疾患または状態の種類および重症度などの要因によって決定されるが、適切な投与量は、臨床試験によって決定されてもよい。上記医薬組成物は、それに応じて製剤化され得る。
【0320】
本明細書に記載の細胞、細胞集団、または医薬組成物は、非経口投与、例えば静脈内投与でき、または輸液技術により投与してもよい。上記細胞、細胞集団、または医薬組成物は、血液と等張にするために、例えば十分な塩類やグルコースなど、他の物質を含んだ滅菌済水溶液の形態で投与してもよい。上記水溶液は、好適には緩衝してもよい(好ましくはpH3~9)。上記医薬組成物は、それに応じて製剤化され得る。滅菌条件のもとでの好適な非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な薬学的技術によって容易に成しえる。
【0321】
上記医薬組成物は、輸液媒体、例えば滅菌済等張溶液中に細胞を含んでもよい。上記医薬組成物は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、使い捨て注射器、または複数回投与バイアルに封入してもよい。
【0322】
上記細胞、細胞集団、または医薬組成物は、単回または複数回で投与されてもよい。特に、上記細胞、細胞集団、または医薬組成物は、単回の使い切りで投与されてもよい。上記医薬組成物は、それに応じて製剤化され得る。
【0323】
上記医薬組成物は、さらに、1つ以上の活性な薬剤を含んでもよい。上記医薬組成物はさらに、リンパ球枯渇剤(例えば、サイモグロブリン、campath-1H、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、シクロホスファミド、フルダラビン)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス)、共刺激経路を阻害する薬剤(例えば、抗CD40/CD40L、CTAL4Ig)、および/または特異的なサイトカイン(IL-6、IL-17、TNFアルファ、IL18)を阻害する薬剤などの、1つ以上の他の治療薬を含んでいてもよい。
【0324】
治療する疾患/状態や対象、投与経路によって、上記細胞、細胞集団、または医薬組成物が様々な投与量(例えば、細胞数/kg、または細胞数/対象、などで測定)で投与されてもよい。いずれにしても、医師が個体対象にとって最も適した実際の投与量を判定するものであり、それはその対象の年齢、体重、および反応に応じて変わるであろう。しかしながら典型的には、本明細書の細胞については、投与量として一個の対象につき5x107~3x109個の細胞、または108~2x109個の細胞が投与されてもよい。
【0325】
上記細胞は、医薬組成物に使用するために適切に変更されてもよい。例えば、細胞は、対象に注入される前に、凍結保存されて適切な時間に解凍されてもよい。
【0326】
本明細書の細胞、細胞集団、および/もしくは医薬組成物を含むキットまたは組み合わせ製品の使用が、本明細書においてさらに提供される。好ましくは、当該キットは、本明細書に記載の上記方法および使用、例えば、本明細書に記載の治療方法に用いられるためのものである。好ましくは、当該キットは、キットの構成要素の使用についての指示書を含む。キットまたは組成物は、誘導物質、例えばラパマイシンまたはその類似体をさらに含んでもよい。
【0327】
本明細書の細胞、細胞集団、組成物、およびベクターは、治療法、すなわち疾患または状態の治療または予防に使用するためのものであってもよい。上記のように、組換えタンパク質が発現される細胞は、典型的には、さらなる分子(例えば、さらなるタンパク質)、特に受容体、例えばCARまたはTCRを発現するように改変または操作された細胞である。したがって、上記治療法は、受容体、例えばCARを発現する細胞によって、またはそれを用いて、治療され得る疾患または状態の予防または治療のためのものであってもよい。上記細胞および上記細胞を含有する組成物は、養子細胞療法(ACT)のためのものである。本開示によるCARを発現する細胞(特にTreg細胞を含む)の投与によって様々な状態が治療され得る。上記のように、これは、免疫抑制、特に、Treg細胞の免疫抑制効果に応答する状態であってもよい。したがって、本明細書に記載の細胞、細胞集団、組成物、およびベクターは、対象において免疫抑制を誘導または達成するために使用されてもよい。投与されるTreg細胞、またはインビボで改変されるTreg細胞は、受容体、例えばCARの発現によって標的化され得る。このような治療に適した状態としては、感染性疾患、神経変性疾患、もしくは炎症性疾患、またはより広範には、あらゆる望まれないもしくは不要なもしくは有害な免疫応答に関連する状態が挙げられる。
【0328】
治療または予防される状態としては、炎症、あるいは、炎症に関連するかまたは炎症を伴う状態が挙げられる。炎症は、慢性であっても急性であってもよい。さらに、炎症は、低レベルの炎症であっても全身性の炎症であってもよい。例えば、炎症は、代謝障害、例えばメタボリックシンドロームの状況下、またはインスリン抵抗性、II型糖尿病、もしくは肥満などの状況下で起こる炎症であり得る。
【0329】
特に、上記細胞、細胞集団、ベクター、および医薬組成物は、移植に対する寛容を誘導するための手段;細胞性および/または体液性移植拒絶反応を治療および/または予防するための手段;移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫疾患、またはアレルギー疾患を治療および/または予防するための手段;組織修復および/または組織再生を促進するための手段;あるいは、炎症を改善するための手段を提供する。上記細胞、細胞集団、ベクター、および医薬組成物は、本明細書に記載の細胞、細胞集団、ベクター、または医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法において使用することができる。
【0330】
本明細書において、「移植に対する寛容を誘導する」とは、レシピエントに移植された臓器への寛容を誘導することをいう。換言すれば、移植に対する寛容を誘導するとは、ドナー移植臓器に対するレシピエントの免疫応答のレベルを下げることを意味する。移植臓器に対する寛容を誘導することで、移植レシピエントが必要とする免疫抑制剤の量を減らすか、または、免疫抑制剤の中断を可能にしてもよい。
【0331】
例えば、操作された細胞、例えばTregは、黄疸、暗色尿、かゆみ、腹部膨満もしくは腹部圧痛、倦怠、吐き気もしくは嘔吐、および/または食欲不振などの、疾患の少なくとも1つの症状を軽減、低減、または改善するために、疾患を有する対象に投与されてもよい。上記少なくとも1つの症状は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減、低減、または改善され得、あるいは、上記少なくとも1つの症状は、完全に緩和され得る。
【0332】
操作された細胞、例えばTregは、疾患の進行を遅延させるか、低減させるか、または妨げるために、疾患を有する対象に投与されてもよい。疾患の進行は、操作された細胞の投与を受けない対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%遅延されるか、低減されるか、または妨げられ得、あるいは、疾患の進行は、完全に停止され得る。
【0333】
一実施形態において、対象は免疫抑制治療を受けている移植レシピエントである。
【0334】
好適には、対象は哺乳動物である。好適には、対象はヒトである。
【0335】
移植は、肝臓移植、腎臓移植、心臓移植、肺移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、骨髄移植、血管柄付複合組織移植、および皮膚移植から選択され得る。
【0336】
好適には、細胞は、移植(graft/transplant)ドナーに存在するが、移植(graft/transplant)レシピエントには存在しないHLA抗原と特異的に結合できる抗原結合ドメインを含むCARを発現し得る。
【0337】
好適には、移植は肝臓移植である。移植が肝臓移植である実施形態において、抗原としては、移植された臓器に存在するが患者には存在しないHLA抗原や、NTCPなど肝臓特異的な抗原、または、拒絶の間に発現が増加する抗原、たとえばCCL19、MMP9、SLC1A3、MMP7、HMMR、TOP2A、GPNMB、PLA2G7、CXCL9、FABP5、GBP2、CD74、CXCL10、UBD、CD27、CD48、CXCL11などが挙げられる。
【0338】
上述したように、代表的な好ましい一実施形態において、抗原はHLA-A2である。
【0339】
疾患または状態を治療するための方法は、本明細書における細胞の、治療目的の使用に関する。この点において、疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状を軽減、低減、または改善するために、かつ/あるいは疾患の進行を遅延させるか、低減させるか、または妨げるために、既存の疾患または病状を有する対象に上記細胞を投与してもよい。
【0340】
好適には、細胞性および/または体液性移植拒絶反応を治療および/または予防するとは、移植レシピエントが必要とする免疫抑制剤の量が減少するように有効量の細胞(例えば、Treg)を投与することを指してもよく、免疫抑制剤の中断を可能にすることであってもよい。
【0341】
疾患または状態を予防することは、本明細書における細胞の予防目的の使用に関する。この点において、疾患または状態を予防するために、あるいは疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状の発症を低減または予防するために、疾患または状態にまだ罹患していないかまたは発症していない、かつ/あるいは疾患または状態の症状を示していない対象に上記細胞を投与してもよい。対象は、上記疾患または状態にかかりやすい体質であってもよく、上記疾患または状態を発症する危険性があると考えられるものであってもよい。
【0342】
自己免疫疾患またはアレルギー疾患は、乾癬や皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)などの炎症性皮膚疾患;炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)に関連する応答;皮膚炎;食物アレルギー、湿疹、喘息などのアレルギー状態;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE)(ループス腎炎、皮膚ループスを含む);真性糖尿病(例えば、I型真性糖尿病や、インスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;神経変性疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS);慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIPD);および若年型糖尿病から選択され得る。
上記に示したように、組換えタンパク質は、免疫抑制療法の状況下での使用に限定されず、癌または感染症などの状態の治療のためにこのタンパク質を細胞において発現させてもよい。このような状況下では、癌細胞または感染細胞を死滅させるかまたは除去(ablate)することが望ましい場合があり、そのような場合には、キメラタンパク質を、細胞傷害性T細胞もしくはNK細胞などの細胞傷害性細胞、またはその前駆体において発現させてもよい。そのような場合にキメラタンパク質と共発現される受容体(例えば、CARまたはTCR)は、癌抗原、または病原体などに由来する抗原に対して向けられてもよい。
【0343】
本明細書における医療上の使用または方法は、以下の工程を含み得る。
(i)細胞含有サンプルを単離する、または細胞含有サンプルを用意する工程、
(ii)本明細書で定義される核酸分子、構築物、またはベクターを細胞に導入する工程、および
(iii)(ii)で得られた細胞を対象に投与する工程。
上記細胞は、本明細書で定義されるTregであってもよい。上記方法の工程(ii)の前および/または後に、富化されたTreg集団を細胞含有サンプルから単離および/または生成してもよい。例えば、富化されたTregサンプルを単離および/または生成するために、工程(ii)の前および/または後に単離および/または生成を行ってもよい。本明細書に記載の組換えタンパク質、核酸分子、構築物、および/またはベクターを含む細胞および/またはTregについて富化を行うために、工程(ii)の後に富化を行ってもよい。
【0344】
好適には、上記細胞は、自家細胞である。好適には、上記細胞は、同種細胞である。
【0345】
好適には、細胞(例えば、操作されたTreg)は、リンパ球枯渇剤などの1つ以上の他の治療薬と組み合わせて投与され得る。操作された細胞、例えばTregは、上記1つ以上の他の治療薬と同時にまたは逐次的に(すなわち、上記1つ以上の他の治療薬の前後に)投与されてもよい。
【0346】
本明細書に記載の核酸分子の導入前または導入後に、例えば、抗CD3モノクローナル抗体での処理により、または抗CD3モノクローナル抗体と抗CD28モノクローナル抗体の両方での処理により、細胞、例えばTregを活性化および/または増殖させてもよい。増殖プロトロルは上述の通りである。
【0347】
上記方法の各工程後、特に増殖後に、細胞、例えばTregを洗浄してもよい。
【0348】
操作された細胞、例えばTreg細胞の集団は、当業者に周知のいずれかの方法によって、例えばFACSまたは磁性ビーズ分離によって、さらに富化されてもよい。
【0349】
作製方法の工程は、閉鎖された無菌の細胞培養系で行われてもよい。
【0350】
本発明はまた、本明細書で提供される核酸分子、発現構築物、またはベクターを細胞に導入する工程を含む、細胞の安定性および/または抑制機能を増加させるための方法を提供し得る。抑制機能の増加は、上述したように、例えば、活性化された抗原特異的Tconv細胞を本発明の細胞と共存培養し、例えば、Tconv細胞によって産生されるサイトカインのレベルを測定することによって、測定することができる。抑制機能の増加は、操作されていないTregと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の増加であり得る。
【0351】
本明細書で定義される細胞、例えばTregの安定性の増加とは、操作されていないTregと比較した場合の、それらの細胞の持続性もしくは生存の増加、または、ある期間にわたってTreg表現型を保持する細胞の割合(例えば、FOXP3やHeliosなどのTregマーカーを保持する細胞に対する)の増加をいう。安定性の増加は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の安定性の増加であり得、当該技術分野で公知の技術、例えば、細胞集団内のTreg細胞マーカーの染色とFACSによる解析によって測定することができる。
【0352】
本明細書で提供されるさらなる態様は、治療法、特にACTまたは遺伝子治療に使用するための、(a)本明細書で定義される細胞、細胞集団、ベクター、または医薬組成物と(b)EPOと、を含む組み合わせ製品である。治療法は、上記で定義され本明細書中でさらに記載される任意の治療法であり得る。
【0353】
上記組み合わせ製品の各成分(a)および(b)は、別々に、逐次的に、または同時に使用するためのものであってもよい。
【0354】
上記組み合わせ製品の各成分(a)および(b)は、典型的には、別々の組成物として提供される。すなわち、別々に製剤化される。したがって、組み合わせ製品は、キットと定義または呼称されてもよい。
【0355】
この開示は、本明細書に開示する上記例示の方法や材料によって制限されず、本明細書に記載された方法や材料と類似の、または等価の方法や材料を、この開示の実施形態の実施や試験に使用できる。数の範囲は、その範囲を定義する数を含む。特に断らない限り、核酸配列は左から右へ、5’から3’の方向に、アミノ酸配列は左から右へ、アミノからカルボキシの方向にそれぞれ書く。
【0356】
値の範囲が提供されている場合、文脈において明確に別段の指示がない限り下限値の単位の10分の1まで(to the tenth of the unit of the lower limit)、その範囲の上限値と下限値の間に介在する各値もまた特に開示されていると理解されたい。記載された範囲内のいずれかの記載された値または介在値と、当該記載された範囲内のいずれかの別の記載された値または介在値との間の、より狭い範囲の各々も、この開示に包含される。これらのより狭い範囲の上限値および下限値は、独立して、その範囲に含まれてもよく、または除外されてもよく、境界値のどちらかがより狭い範囲に含まれる場合、境界値のどちらも含まれない場合、またはどちらも含まれる場合の各範囲も本開示に包含される。但し、明確に除外された境界値が示された範囲内にある場合はその限りではない。示された範囲が境界値の一方または両方を含む場合、含まれる境界値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0357】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈において明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0358】
本明細書における「comprising(含む)」、「comprises(含む)」および「comprised of(含む)」という用語は、「including(含む)」、「includes(含む)」、または「containing(含有する)」、「contains(含有する)」の同義語で、包括的または非限定的であり、記載されていない追加の部材や要素、方法の工程を除外するものではない。「comprising(含む)」、「comprises(含む)」および「comprised of(含む)」という用語はまた、「consisting of(からなる)」という用語も含む。
【0359】
本明細書で論じられる刊行物は、本願の出願日の前の開示を単に提供する。本明細書のいずれの記載も、かかる刊行物が添付の特許請求の範囲に対する先行技術を構成していると認めるものとして解釈されはしない。本明細書で言及される全ての刊行物は、参照により本明細書に援用される。
配列表
配列番号1(野生型ヒトEPOR)
MDHLGASLWPQVGSLCLLLAGAAWAPPPNLPDPKFESKAALLAARGPEELLCFTERLEDLVCFWEEAASAGVGPGNYSFSYQLEDEPWKLCRLHQAPTARGAVRFWCSLPTADTSSFVPLELRVTAASGAPRYHRVIHINEVVLLDAPVGLVARLADESGHVVLRWLPPPETPMTSHIRYEVDVSAGNGAGSVQRVEILEGRTECVLSNLRGRTRYTFAVRARMAEPSFGGFWSAWSEPVSLLTPSDLDPLILTLSLILVVILVLLTVLALLSHRRALKQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLYQNDGCLWWSPCTPFTEDPPASLEVLSERCWGTMQAVEPGTDDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRNPPSEDLPGPGGSVDIVAMDEGSEASSCSSALASKPSPEGASAASFEYTILDPSSQLLRPWTLCPELPPTPPHLKYLYLVVSDSGISTDYSSGDSQGAQGGLSDGPYSNPYENSLIPAAEPLPPSYVACS
配列番号2(シグナルペプチドを含まないR130C改変ヒトEPOR細胞外領域)
APPPNLPDPKFESKAALLAARGPEELLCFTERLEDLVCFWEEAASAGVGPGNYSFSYQLE
DEPWKLCRLHQAPTARGAVRFWCSLPTADTSSFVPLELRVTAASGAPRYHRVIHINEVVL
LDAPVGLVACLADESGHVVLRWLPPPETPMTSHIRYEVDVSAGNGAGSVQRVEILEGRTE
CVLSNLRGRTRYTFAVRARMAEPSFGGFWSAWSEPVSLLTPSDLDP
配列番号3(シグナルペプチドを含まない野生型ヒトEPOR細胞外領域)
APPPNLPDPKFESKAALLAARGPEELLCFTERLEDLVCFWEEAASAGVGPGNYSFSYQLE
DEPWKLCRLHQAPTARGAVRFWCSLPTADTSSFVPLELRVTAASGAPRYHRVIHINEVVL
LDAPVGLVARLADESGHVVLRWLPPPETPMTSHIRYEVDVSAGNGAGSVQRVEILEGRTE
CVLSNLRGRTRYTFAVRARMAEPSFGGFWSAWSEPVSLLTPSDLDP
配列番号4(シグナルペプチドを含むR154C改変ヒトEPOR細胞外領域)
MDHLGASLWPQVGSLCLLLAGAAWAPPPNLPDPKFESKAALLAARGPEELLCFTERLEDLVCFWEEAASAGVGPGNYSFSYQLEDEPWKLCRLHQAPTARGAVRFWCSLPTADTSSFVPLELRVTAASGAPRYHRVIHINEVVLLDAPVGLVACLADESGHVVLRWLPPPETPMTSHIRYEVDVSAGNGAGSVQRVEILEGRTECVLSNLRGRTRYTFAVRARMAEPSFGGFWSAWSEPVSLLTPSDLDP
配列番号5(シグナルペプチドを含まない野生型ヒトEPOR細胞外領域)
MDHLGASLWPQVGSLCLLLAGAAWAPPPNLPDPKFESKAALLAARGPEELLCFTERLEDLVCFWEEAASAGVGPGNYSFSYQLEDEPWKLCRLHQAPTARGAVRFWCSLPTADTSSFVPLELRVTAASGAPRYHRVIHINEVVLLDAPVGLVARLADESGHVVLRWLPPPETPMTSHIRYEVDVSAGNGAGSVQRVEILEGRTECVLSNLRGRTRYTFAVRARMAEPSFGGFWSAWSEPVSLLTPSDLDP
配列番号6(野生型ヒトEPORシグナルペプチド)
MDHLGASLWPQVGSLCLLLAGAAW
配列番号7(野生型ヒトEPOR膜貫通ドメイン)
LILTLSLILVVILVLLTVLALLS
配列番号8(野生型ヒトEPOR細胞質ドメイン)
HRRALKQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLYQNDGCLWWSPCTPFTEDPPASLEV
LSERCWGTMQAVEPGTDDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRNPPSEDLPGPGGSVDIVAMDEGSEASSCSSALASKPSPEGASAASFEYTILDPSSQLLRPWTLCPELPPTPPHLK
YLYLVVSDSGISTDYSSGDSQGAQGGLSDGPYSNPYENSLIPAAEPLPPSYVACS
配列番号9(野生型マウスEPOR)
MDKLRVPLWPRVGPLCLLLAGAAWAPSPSLPDPKFESKAALLASRGSEELLCFTQRLEDLVCFWEEAASSGMDFNYSFSYQLEGESRKSCSLHQAPTVRGSVRFWCSLPTADTSSFVPLELQVTEASGSPRYHRIIHINEVVLLDAPAGLLARRAEEGSHVVLRWLPPPGAPMTTHIRYEVDVSAGNRAGGTQRVEVLEGRTECVLSNLRGGTRYTFAVRARMAEPSFSGFWSAWSEPASLLTASDLDPLILTLSLILVLISLLLTVLALLSHRRTLQQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLLQRDGCLWWSPGSSFPEDPPAHLEVLSEPRWAVTQAGDPGADDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRTPCSENLSGPGGSVDPVTMDEASETSSCPSDLASKPRPEGTSPSSFEYTILDPSSQLLCPRALPPELPPTPPHLKYLYLVVSDSGISTDYSSGGSQGVHGDSSDGPYSHPYENSLVPDSEPLHPGYVACS
配列番号10(シグナルペプチドを含むR129C改変マウスEPOR細胞外領域
MDKLRVPLWPRVGPLCLLLAGAAWAPSPSLPDPKFESKAALLASRGSEELLCFTQRLEDLVCFWEEAASSGMDFNYSFSYQLEGESRKSCSLHQAPTVRGSVRFWCSLPTADTSSFVPLELQVTEASGSPRYHRIIHINEVVLLDAPAGLLACRAEEGSHVVLRWLPPPGAPMTTHIRYEVDVSAGNRAGGTQRVEVLEGRTECVLSNLRGGTRYTFAVRARMAEPSFSGFWSAWSEPASLLTASDLDP
配列番号11(シグナルペプチドを含む野生型マウスEPOR細胞外領域)
MDKLRVPLWPRVGPLCLLLAGAAWAPSPSLPDPKFESKAALLASRGSEELLCFTQRLEDLVCFWEEAASSGMDFNYSFSYQLEGESRKSCSLHQAPTVRGSVRFWCSLPTADTSSFVPLELQVTEASGSPRYHRIIHINEVVLLDAPAGLLARRAEEGSHVVLRWLPPPGAPMTTHIRYEVDVSAGNRAGGTQRVEVLEGRTECVLSNLRGGTRYTFAVRARMAEPSFSGFWSAWSEPASLLTASDLDP
配列番号12(野生型マウスEPOR膜貫通領域)
LILTLSLILVLISLLLTVLALLS
配列番号13(野生型マウスEPOR細胞質領域)
HRRTLQQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLLQRDGCLWWSPGSSFPEDPPAHLEVLSEPRWAVTQAGDPGADDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRTPCSENLSGPGGSVDPVTMDEASETSSCPSDLASKPRPEGTSPSSFEYTILDPSSQLLCPRALPPELPPTPPHLKYLYLVVSDSGISTDYSSGGSQGVHGDSSDGPYSHPYENSLVPDSEPLHPGYVACS
配列番号14(EPO)
MGVHECPAWL WLLLSLLSLP LGLPVLGAPP RLICDSRVLE RYLLEAKEAE
NITTGCAEHC SLNENITVPD TKVNFYAWKR MEVGQQAVEV WQGLALLSEA
VLRGQALLVN SSQPWEPLQL HVDKAVSGLR SLTTLLRALG AQKEAISPPD
AASAAPLRTI TADTFRKLFR VYSNFLRGKL KLYTGEACRT GDR
配列番号15-天然のFKBP12ドメイン
MGVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKFDSSRDRNKPFKFMLGKQE VIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLE
配列番号16-mTORの野生型FRBセグメント
MASRILWHEMWHEGLEEASRLYFGERNVKGMFEVLEPLHAMMERGPQTLKETSFN QAYGRDLMEAQEWCRKYMKSGNVKDLTQAWDLYYHVFRRISKLES
配列番号17-2098におけるTからLへの置換を伴うFRB
MASRILWHEMWHEGLEEASRLYFGERNVKGMFEVLEPLHAMMERGPQTLKETSFN QAYGRDLMEAQEWCRKYMKSGNVKDLLQAWDLYYHVFRRISKLES
配列番号18-2098におけるTからHへの置換および残基2101におけるWからFへの置換を伴うmTORのFRBセグメント
MASRILWHEMWHEGLEEASRLYFGERNVKGMFEVLEPLHAMMERGPQTLKETSFN QAYGRDLMEAQEWCRKYMKSGNVKDLHQAFDLYYHVFRRISKLES
配列番号19は、残基2095におけるKからPへの置換を伴うmTORのFRBセグメントである
MASRILWHEMWHEGLEEASRLYFGERNVKGMFEVLEPLHAMMERGPQTLKETSFN QAYGRDLMEAQEWCRKYMKSGNVPDLTQAWDLYYHVFRRISKLES
配列番号20-c-Junロイシンジッパー
RIARLEEKVKTLKAQNSELASTANMLREQVAQLKQKVMN
配列番号21 Fosロイシンジッパー
LTDTLQAETDQLEDKKSALQTEIANLLKEKEKLEFILAAY
配列番号22-BZip(RR)ロイシンジッパードメイン
MDPDLEIRAAFLRQRNTALRTEVAELEQEVQRLENEVSQYETRYGPLGGGK
配列番号23-AZip(EE)ロイシンジッパードメイン
MDPDLEIEAAFLERENTALETRVAELRQRVQRLRNRVSQYRTRYGPLGGGK
配列番号24-CD28膜貫通ドメイン
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
配列番号25-IL2RB膜貫通ドメイン
IPWLGHLLVGLSGAFGFIILVYLLI
配列番号26 CD8a TMドメイン
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT
配列番号27:TREM1 TMドメイン
IVILLAGGFLSKSLVFSVLFA
配列番号28:TREM2 TMドメイン
ILLLLACIFLIKILAASALWA
配列番号29:DAP10 TMドメイン
LLAGLVAANAVASLLIVGAVF
配列番号30:DAP12 TMドメイン
GVLAGIVMGNLVLTVLIALAV
配列番号31(受容体β鎖(NCBI REFSEQ:NP_000869.1)のアミノ酸番号266から551
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLLQQDKVPEPASLSSNHSLTSCFTNQGYFFFHLPDALEIEACQVYFTYDPYSEEDPDEGVAGAPTGSSPQPLQPLSGEDDAYCTFPSRDDLLLFSPSLLGGPSPPSTAPGGSGAGEERMPPSLQERVPRDWDPQPLGPPTPGVPDLVDFQPPPELVLREAGEEVPDAGPREGVSFPWSRPPGQGEFRALNARLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
配列番号32(野生型FOXP3(UniProtKBアクセッションQ9BZS1)のアミノ酸配列)
MPNPRPGKPSAPSLALGPSPGASPSWRAAPKASDLLGARGPGGTFQGRDLRGGAHASSSSLNPMPPSQLQLPTLPLVMVAPSGARLGPLPHLQALLQDRPHFMHQLSTVDAHARTPVLQVHPLESPAMISLTPPTTATGVFSLKARPGLPPGINVASLEWVSREPALLCTFPNPSAPRKDSTLSAVPQSSYPLLANGVCKWPGCEKVFEEPEDFLKHCQADHLLDEKGRAQCLLQREMVQSLEQQLVLEKEKLSAMQAHLAGKMALTKASSVASSDKGSCCIVAAGSQGPVVPAWSGPREAPDSLFAVRRHLWGSHGNSTFPEFLHNMDYFKFHNMRPPFTYATLIRWAILEAPEKQRTLNEIYHWFTRMFAFFRNHPATWKNAIRHNLSLHKCFVRVESEKGAVWTVDELEFRKKRSQRPSRCSNPTPGP
配列番号33-IL9R(NP_002177.2のアミノ酸292から521)
KLSPRVKRIFYQNVPSPAMFFQPLYSVHNGNFQTWMGAHGAGVLLSQDCAGTPQGALEPCVQEATALLTCGPARPWKSVALEEEQEGPGTRLPGNLSSEDVLPAGCTEWRVQTLAYLPQEDWAPTSLTRPAPPDSEGSRSSSSSSSSNNNNYCALGCYGGWHLSALPGNTQSSGPIPALACGLSCDHQGLETQQGVAWVLAGHCQRPGLHEDLQGMLLPSVLSKARSWTF
配列番号34-IL4RA(NP_000409.1のアミノ酸257から825)
KIKKEWWDQIPNPARSRLVAIIIQDAQGSQWEKRSRGQEPAKCPHWKNCLTKLLPCFLEHNMKRDEDPHKAAKEMPFQGSGKSAWCPVEISKTVLWPESISVVRCVELFEAPVECEEEEEVEEEKGSFCASPESSRDDFQEGREGIVARLTESLFLDLLGEENGGFCQQDMGESCLLPPSGSTSAHMPWDEFPSAGPKEAPPWGKEQPLHLEPSPPASPTQSPDNLTCTETPLVIAGNPAYRSFSNSLSQSPCPRELGPDPLLARHLEEVEPEMPCVPQLSEPTTVPQPEPETWEQILRRNVLQHGAAAAPVSAPTSGYQEFVHAVEQGGTQASAVVGLGPPGEAGYKAFSSLLASSAVSPEKCGFGASSGEEGYKPFQDLIPGCPGDPAPVPVPLFTFGLDREPPRSPQSSHLPSSSPEHLGLEPGEKVEDMPKPPLPQEQATDPLVDSLGSGIVYSALTCHLCGHLKQCHGQEDGGQTPVMASPCCGCCCGDRSSPPTTPLRAPDPSPGGVPLEASLCPASLAPSGISEKSKSSSSFHPAPGNAQSSSQTPKIVNFVSVGPTYMRVS
配列番号35-IL3RB(NP_000386.1のアミノ酸461から897)
RFCGIYGYRLRRKWEEKIPNPSKSHLFQNGSAELWPPGSMSAFTSGSPPHQGPWGSRFPELEGVFPVGFGDSEVSPLTIEDPKHVCDPPSGPDTTPAASDLPTEQPPSPQPGPPAASHTPEKQASSFDFNGPYLGPPHSRSLPDILGQPEPPQEGGSQKSPPPGSLEYLCLPAGGQVQLVPLAQAMGPGQAVEVERRPSQGAAGSPSLESGGGPAPPALGPRVGGQDQKDSPVAIPMSSGDTEDPGVASGYVSSADLVFTPNSGASSVSLVPSLGLPSDQTPSLCPGLASGPPGAPGPVKSGFEGYVELPPIEGRSPRSPRNNPVPPEAKSPVLNPGERPADVSPTSPQPEGLLVLQQVGDYCFLPGLGPGPLSLRSKPSSPGPGPEIKNLDQAFQVKKPPGQAVPQVPVIQLFKALKQQDYLSLPPWEVNKPGEVC
配列番号36-IL17RB(NP_061195.2のアミノ酸314から502)
RHERIKKTSFSTTTLLPPIKVLVVYPSEICFHHTICYFTEFLQNHCRSEVILEKWQKKKIAEMGPVQWLATQKKAADKVVFLLSNDVNSVCDGTCGKSEGSPSENSQDLFPLAFNLFCSDLRSQIHLHKYVVVYFREIDTKDDYNALSVCPKYHLMKDATAFCAELLHVKQQVSAGKRSQACHDGCCSL
配列番号37 WO2019/241549に記載されたNおよびC末端トランケート型FOXP3フラグメントのアミノ酸配列
GGAHASSSSL NPMPPSQLQL PTLPLVMVAP SGARLGPLPH LQALLQDRPH FMHQLSTVDA HARTPVLQVH PLESPAMISL TPPTTATGVF SLKARPGLPP GINVASLEWV SREPALLCTF PNPSAPRKDS TLSAVPQSSY PLLANGVCKW PGCEKVFEEP EDFLKHCQAD HLLDEKGRAQ CLLQREMVQS LEQQLVLEKE KLSAMQAHLA GKMALTKASS VASSDKGSCC IVAAGSQGPV VPAWSGPREA PDSLFAVRRH LWGSHGNSTF PEFLHNMDYF KFHNMRPPFT YATLIRWAIL EAPEKQRTLN EIYHWFTRMF AFFRNHPATW KNAIRHNLSL HKCFVRVESE KGAVWTVDEL EF
配列番号38 STAT5会合モチーフ
YXXF/L
配列番号39 STAT5会合モチーフ
YCTF
配列番号40 STAT5会合モチーフ
YFFF
配列番号41 STAT5会合モチーフ
YLSL
配列番号42 STAT5会合モチーフ
YLSLQ
配列番号43 JAK1結合モチーフ
KVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDK
配列番号44 JAK1結合モチーフ
NPWFQRAKMPRALDFSGHTHPVATFQPSRPESVNDLFLCPQKELT
配列番号45 JAK1結合モチーフ
GYICLRNSLPKVLNFHNFLAWPFPNLPPLEAMDMVEVIYINR
配列番号46 JAK1結合モチーフ
PLKEKSIILPKSLISVVRSATLETKPESKYVSLITSYQPFSL
配列番号47 JAK1結合モチーフ
RRRKKLPSVLLFKKPSPFIFISQRPSPETQDTIHPLDEEAFLK
配列番号48 JAK1結合モチーフ
YIHVGKEKHPANLILIYGNEFDKRFFVPAEKIVINFITLNISDDS
配列番号49 JAK1結合モチーフ
RYVTKPPAPPNSLNVQRVLTFQPLRFIQEHVLIPVFDLSGP
配列番号50 JAK2結合モチーフ
NYVFFPSLKPSSSIDEYFSEQPLKNLLLSTSEEQIEKCFIIEN
配列番号51 JAK2結合モチーフ
YWFHTPPSIPLQIEEYLKDPTQPILEALDKDSSPKDDVWDSVSIISFPE
配列番号52 JAK2結合モチーフ
YAFSPRNSLPQHLKEFLGHPHHNTLLFFSFPLSDENDVFDKLSVIAEDSES
配列番号53(IL2RBトランケート-Y510)
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
配列番号54(IL2RBトランケート-Y510およびY392)
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLDAYCTFPSRDDLLLFSPSLLGGPSPPSTAPGGSGAGEERMPPSLQERVPRDWDPQPLGPPTPGVPDLVDFQPPPELVLREAGEEVPDAGPREGVSFPWSRPPGQGEFRALNARLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
配列番号55 JAK3モチーフ
ERTMPRIPTLKNLEDLVTEYHGNFSAWSGVSKGLAESLQPDYSERLCLVSEI
配列番号56 JAK3モチーフ
ERTMPRIPTLKNLEDLVTEYHGNFSAWSGVSKGLAESLQPDYSERLCLVSEIPPKGGALGEGPGASPCNQHSPYWAPPCYTLKPET
配列番号57:STAT3シグナル
YXXQ
配列番号58:STAT3シグナル
YRHQ
配列番号59-STAT3会合モチーフ
YLRQ
配列番号60-STAT1会合モチーフ
QLLLQQDKVPEPASLSSNHSLTSCFTNQGYF
配列番号6:SHP1
MVRWFHRDLSGLDAETLLKGRGVHGSFLARPSRKNQGDFSLSVRVGDQVTHIRIQNSGDF
YDLYGGEKFATLTELVEYYTQQQGVLQDRDGTIIHLKYPLNCSDPTSERWYHGHMSGGQA
ETLLQAKGEPWTFLVRESLSQPGDFVLSVLSDQPKAGPGSPLRVTHIKVMCEGGRYTVGG
LETFDSLTDLVEHFKKTGIEEASGAFVYLRQPYYATRVNAADIENRVLELNKKQESEDTA
KAGFWEEFESLQKQEVKNLHQRLEGQRPENKGKNRYKNILPFDHSRVILQGRDSNIPGSD
YINANYIKNQLLGPDENAKTYIASQGCLEATVNDFWQMAWQENSRVIVMTTREVEKGRNK
CVPYWPEVGMQRAYGPYSVTNCGEHDTTEYKLRTLQVSPLDNGDLIREIWHYQYLSWPDH
GVPSEPGGVLSFLDQINQRQESLPHAGPIIVHCSAGIGRTGTIIVIDMLMENISTKGLDC
DIDIQKTIQMVRAQRSGMVQTEAQYKFIYVAIAQFIETTKKKLEVLQSQKGQESEYGNIT
YPPAMKNAHAKASRTSSKHKEDVYENLHTKNKREEKVKKQRSADKEKSKGSLKRK
配列番号62:トランケート型EPORエンドドメイン
HRRALKQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLYQNDGCLWWSPCTPFTEDPPASLEV
LSERCWGTMQAVEPGTDDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRNPPSEDLPGPGGSVDIVAMDEGSEASSCSSALASKPSPEGASAASFEYTILDPSSQLLRPWTLCPELPPTPPHLK
配列番号63-JAK3逆向き
IESVLCLRESYDPQLSEALGKSVGSWASFNGHYETVLDELNKLTPIRPMTRE
配列番号64 CD3ゼータ
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号65 CD28細胞内シグナル伝達
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
配列番号66 CD27細胞内シグナル伝達
QRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP
配列番号67 リンカー配列
GGGS
配列番号68~98-リンカー
ETSGGGGSRL(配列番号68)
SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号69)
S(GGGGS)1-5(ここで、GGGGSは、配列番号70である)
(GGGGS)1-5(ここで、GGGGSは、配列番号70である)
SGGGGSGGGGS(配列番号71)
S(GGGS)1-5(ここで、GGGSは、配列番号67である)
(GGGS)1-5(ここで、GGGSは、配列番号67である)
SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号72)
SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号73)
S(GGGGGS)1-5(ここで、GGGGGSは、配列番号74である)
(GGGGGS)1-5(ここで、GGGGGSは、配列番号74である)
S(GGGGGGS)1-5(ここで、GGGGGGSは、配列番号75である)
(GGGGGGS)1-5(ここで、GGGGGGSは、配列番号75である)
G6(配列番号76)
G8(配列番号77)
KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号78)
EGKSSGSGSESKST(配列番号79)
GSAGSAAGSGEF(配列番号80)
SGGGGSAGSAAGSGEF(配列番号81)
SGGGLLLLLLLLGGGS(配列番号82)
SGGGAAAAAAAAGGGS(配列番号83)
SGGGAAAAAAAAAAAAAAAAGGGS(配列番号84)
SGALGGLALAGLLLAGLGLGAAGS(配列番号85)
SLSLSPGGGGGPAR(配列番号86)
SLSLSPGGGGGPARSLSLSPGGGGG(配列番号87)
GSSGSS(配列番号88)
GSSSSSS(配列番号89)
GGSSSS(配列番号90)
GSSSSS(配列番号91)
SGGGGS(配列番号92)
GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号93)
GGGGG(配列番号94)
GGGGSGGGGS(配列番号95)
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号96)
GGGGGGG(配列番号97)
GGGGGGGGG(配列番号98)
配列番号99 RQR8:
ACPYSNPSLCSGGGGSELPTQGTFSNVSTNVSPAKPTTTACPYSNPSLCSGGGGSPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRRRVCKCPRPVV
配列番号100 P2Aペプチド 切断ドメイン
ATNFSLLKQAGDVEENPGP
配列番号101 T2Aペプチド 切断ドメイン:
EGRGSLLTCGDVEENPGP
配列番号102 E2Aペプチド 切断ドメイン:
QCTNYALLKLAGDVESNPGP
配列番号103 F2Aペプチド 切断ドメイン:
VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP
配列番号104 フューリン切断部位
RXXR
配列番号105 フューリン切断部位
RRKR
配列番号106-トランケート型EPORエンドドメイン(配列番号1のアミノ酸274~378)
HRRALKQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLYQNDGCLWWSPCTPFTEDPPASLEV
LSERCWGTMQAVEPGTDDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPR
配列番号107-トランケート型EPORエンドドメイン(配列番号1のアミノ酸274~433)
HRRALKQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLYQNDGCLWWSPCTPFTEDPPASLEV
LSERCWGTMQAVEPGTDDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRNPPSEDLPGPGGSVDIVAMDEGSEASSCSSALASKPSPEGASAASFEYTILDPSS
配列番号108-EPOR由来のエンドドメインのC末端テール
MDTVP
配列番号109-EPOR由来のエンドドメインのC末端テール
SMDTVP
配列番号110-EPOR由来のエンドドメインのC末端テール
ASMDTVP
配列番号111-EPOR由来のエンドドメインのC末端テール
LASMDTVP
配列番号112-EPOR由来のエンドドメインのC末端テール
ALASMDTVP
配列番号113-EPOR由来のエンドドメインのC末端テール
PALASMDTVP
配列番号114-C末端に10アミノ酸テールを有するWT EPORエンドドメイン
HRRALKQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLYQNDGCLWWSPCTPFTEDPPASLEV
LSERCWGTMQAVEPGTDDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRNPPSEDLPGPGGSVDIVAMDEGSEASSCSSALASKPSPEGASAASFEYTILDPSSQLLRPWTLCPELPPTPPHLK
YLYLVVSDSGISTDYSSGDSQGAQGGLSDGPYSNPYENSLIPAAEPLPPSYVACSPALASMDTVP
配列番号115-C末端に10アミノ酸テールを有するトランケート型EPORエンドドメイン
HRRALKQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLYQNDGCLWWSPCTPFTEDPPASLEV
LSERCWGTMQAVEPGTDDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRPALASMDTVP
配列番号116-C末端に10アミノ酸テールを有するトランケート型たEPORエンドドメイン
HRRALKQKIWPGIPSPESEFEGLFTTHKGNFQLWLYQNDGCLWWSPCTPFTEDPPASLEV
LSERCWGTMQAVEPGTDDEGPLLEPVGSEHAQDTYLVLDKWLLPRNPPSEDLPGPGGSVDIVAMDEGSEASSCSSALASKPSPEGASAASFEYTILDPSSPALASMDTVP
【実施例】
【0360】
実施例
実施例1
材料および方法
クローニング:
図2に示す本発明の構築物を自社で設計した。pMP71骨格にクローニングすることができ、D5a高効率細菌をプラスミドで形質転換し、選択薬剤アンピシリンで増殖させることができる。DNAはMiniprep Kit(キアゲン社(Qiagen))を用いて抽出することができる。インサートはPCRクローニングによってレンチウイルス骨格に導入可能である。
【0361】
PBMCの採取:
白血球コーン(leukocyte cone)は英国NHS献血・臓器移植機構(NHS blood and transplant)から入手可能である。PBMCは密度遠心分離プロトコルを用いて単離することができる。簡単に述べると、血液を1xPBSで1:1に希釈し、Ficoll-Paque(GEヘルスケア社(GE Healthcare))に重層することができる。サンプルを遠心分離し、白血球層を取り出してPBSで洗浄することができる。
【0362】
TregおよびTconv単離プロトコル:
Treg集団およびTeff集団を誘導するために血液コーンを使用することができる。血液コーンは、RosetteSep(商標)Human CD4+ T Cell Enrichment Cocktailを用いたネガティブセレクションによるCD4富化に供することができる。その後、密度遠心分離によってCD4+細胞を単離することができる。次に、CD4+CD25+ T細胞を、CD25 MicroBeads II(ミルテニー社(Miltenyi))を用いたポジティブセレクションにより単離することができる。細胞のCD4+CD25-画分は、従来のT細胞(Tconv)集団として使用するために保持しておくことができる。CD4+CD25+画分を、フローサイトメトリー用抗体CD4 FITC(OKT4、バイオレジェンド社(Biolegend))、CD25 PE-Cy7(BC96、バイオレジェンド社)、CD127 BV421(A019D5、バイオレジェンド社)、CD45RA BV510(HI100、バイオレジェンド社)、およびLIVE/DEAD(商標)Fixable Near-IR-Dead Cell Stain(サーモフィッシャー社(Thermofisher))で染色した後、FACSソーティングすることができる。示されている場合、CD4+CD25+CD127low(バルクTreg)またはCD4+CD25+CD127low CD45RA+(CD45RA+ Treg)を選別して使用することができる。
【0363】
Tconv培養培地:
ヒトTconvは、10%熱不活性化ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、L-グルタミン(ギブコ社(Gibco))を添加したRPMI-1640(ギブコ社)中で増殖させることができる。
【0364】
Treg培養培地および増殖:
ヒト制御性T細胞は、IL-2を添加したTexmacs培地(ミルテニー社)中で培養し、Human T-Activator CD3/CD28 Dynabeads(商標)(ギブコ社)で活性化することができる。IL-2を添加したTreg培地を2~3日ごとに細胞に再供給することができる。Treg細胞のさらなる増殖を促進するために、Dynabeads(商標)による2回目の刺激を行うことができる。
【0365】
遺伝子導入およびウイルス粒子の作製
HEK293T細胞を、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)+10%ウシ胎児血清(FBS)に播種して24時間培養することができる。遺伝子導入試薬を室温に戻し、目的のDNA構築物/プラスミド、パッケージングプラスミド(pD8.91)、およびウイルスエンベロープ(pVSV-G)と混合することができる。希釈したDNAにPEIを加えて混合し、HEK293Tに添加することができる。遺伝子導入の48時間後に上清を採取し、濾過してウイルスを濃縮することができる。
【0366】
T細胞の形質導入
Tconvを、抗CD3および抗CD28 Dynabeads(ギブコ社)で活性化し、T細胞培養培地に再懸濁することができる。レトロネクチン(タカラバイオ株式会社(Takahara-bio)、大津、日本)でコーティングすることによって、組織培養用処理済みではない24ウェルプレートを準備することができ、細胞懸濁液をレンチウイルス上清と一緒に加えることができる。細胞をインキュベートすることができ、1日おきに培地交換を行うことができる。細胞は形質導入の7日後に実験に使用することができる。
【0367】
フローサイトメトリー染色
T細胞を培養物から取り出し、FACS緩衝液で洗浄し、まずPBS中でLIVE/DEAD(商標)Fixable Near-IR-Dead Cell Stain(サーモフィッシャー社)で染色し、次いでFACS染色緩衝液中の抗CD4 AF700(RPA-T4、BD社(BD))および抗CD3 PE-Cy7で染色することができる。FOXP3の細胞内染色のために、細胞を固定し、透過処理し、抗FoxP3 PE(150D/E4、サーモフィッシャー社)抗体で染色することができる。細胞は、BD LSRIIフローサイトメーターで解析することができる。
【0368】
形質導入細胞のフローサイトメトリー表現型解析
T細胞を培養物から取り出し、上記のようにLIVE/DEAD(商標)Fixable Near-IR-Dead Cell Stainを用いて染色して生細胞を識別することができる。細胞の表面染色は、抗CD4 AF700、抗CD25 PE-Cy7(BC96、バイオレジェンド社)、抗CD39 PerCPCy5.5(A1、バイオレジェンド社)、抗CD62L PE-CF594(DREG-56、BD社)、抗TIM3 BV786(7D3、BD社)、抗TIGIT BV605(A15153G、バイオレジェンド社)、抗CD45RO BUV395(UCHL1、BD社)、抗CD279 BUV737(EH12.1、BD社)、および抗CD223 BV711(11C3C65、バイオレジェンド社)を用いて実施することができる。細胞を透過処理し、抗FoxP3 PE(150D/E4、サーモフィッシャー社)で染色することができる。
【0369】
データ解析
フローサイトメトリーデータは、フローサイトメトリー解析ソフトウェアFlowJo(FlowJo,LLC社)を用いて解析することができる。全ての統計解析は、Graphpad Prism v.5(グラフパッドソフトウェア社(Graphpad,Software))を用いて実施することができる。
【0370】
実施例1a:Jurkatにおける発現
構築物は、上記のように、ピューロマイシン耐性遺伝子をコードするレンチウイルス骨格にクローニングすることができる。ウイルスベクターを作製し、Jurkat T細胞株の形質導入に使用することができる。形質導入の2日後、4μg/mlのピューロマイシンで1週間にわたってJurkat細胞を選択することが可能である。細胞を計数し、0.5×106個の細胞を抗EPOR抗体で染色して、細胞内で発現された組換えタンパク質のレベルを特定することができる。発現は上記のようにフローサイトメトリーによって評価することができる。
【0371】
実施例2:構築物のSTAT5シグナル伝達
組換えタンパク質の様々な構築物を、ピューロマイシン耐性遺伝子をコードするレンチウイルス骨格にクローニングする。ウイルスベクターを作製し、NFAT、NfkB、およびSTAT5 Jurkatレポーター細胞株の形質導入に使用する。ここで、NFAT応答エレメント、NfkB応答エレメント、またはSTAT5応答エレメントは、luc2レポーター遺伝子の活性を制御する。形質導入の2日後、4μg/mlのピューロマイシンで1週間にわたってJurkat細胞を選択する。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社(Promega))を用いて様々なレポーター細胞株においてルシフェラーゼを評価する。
【0372】
実施例3:キメラタンパク質を発現する制御性T細胞の生成
健康なドナー由来のCD4+CD25+CD127-細胞として、制御性T細胞を精製し、FACSソーティングする。インターロイキン-2(1000IU/ml)の存在下でX-Vivo培地(ロンザ社(Lonza))中でHuman T-Activator CD3/CD28 Dynabeads(商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(ThermoFisher Scientific))を用いて細胞を活性化する。48時間の活性化後、細胞に、組換えタンパク質構築物をコードするレンチウイルス粒子を形質導入する。細胞をさらに増殖させ、異なる条件間で増殖速度を比較する。14日目に細胞を回収し、計数する。0.5×106個の細胞を抗EPOR抗体で染色する。EPORの発現レベルと形質導入効率は、フローサイトメトリーで抗EPOR抗体の割合を見て評価した。Treg表現型は、固定および透過処理(Transcription Factor Staining Buffer Set、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)後、抗CD4、抗CD25、抗CD127、抗CD8、抗GITR、抗CD39、抗CD45RA、抗CD45RO、抗ICOSでの表面染色と、抗FOXP3および抗HELIOSでの細胞内染色とによって評価する。
【0373】
実施例4:IL2Rシグナル伝達の指標としてのSTAT5リン酸化解析
キメラタンパク質を形質導入したTregを、IL2を含まない培地中で一晩静置した。TregのSTAT5リン酸化は、培地のみでの培養またはラパマイシンとの培養の10分後と120分後にFACS解析によって評価した。
【0374】
実施例5:構築物783、784、785、786、787、および788の解析
材料および方法
クローニング:
図3に示す各構築物を自社で設計した。クローニングはレンチウイルスベクター骨格で行い、NEB Stable高効率細菌をプラスミドで形質転換し、選択剤カナマイシンで増殖させた。Miniprep KitおよびMaxiprep Kit(キアゲン社)を用いてDNAを抽出した。インサートは、PCRクローニングにより、他のレンチウイルス骨格またはレトロウイルス骨格に導入した。クローニングは、部位特異的変異誘発法またはPCRベースの方法によって実施した。
【0375】
構築物:
構築物pQTX 783(EPOR WT)は、HLA-A2特異的なCARとFoxP3(T2A自己切断ドメインとP2A自己切断ドメインによって分離)に動作可能に連結された野生型EPO受容体を含む。
構築物pQTX 784(EPOR mut)は、HLA-A2特異的なCARとFoxP3(T2A自己切断ドメインとP2A自己切断ドメインによって分離されている)に動作可能に連結された変異(mutated)EPO受容体を含む。上記変異EPORは、エキソドメインに変異を有する(配列番号1の154位でRがCに変異している)。上記変異EPORの膜貫通ドメインおよびエンドドメインは、それぞれ野生型EPORの膜貫通ドメインおよびエンドドメインである。
構築物pQTX 785(EPOR trunc V1)は、HLA-A2特異的なCARとFoxP3(T2A自己切断ドメインとP2A自己切断ドメインによって分離されている)に動作可能に連結された変異EPO受容体を含む。上記変異EPORは、エキソドメインに変異を有し(配列番号1の154位でRがCに変異している)、エンドドメインが配列番号1の378位の後でトランケートされている。膜貫通ドメインは野生型EPORの膜貫通ドメインである。
構築物pQTX 786(EPOR trunc V2)は、HLA-A2特異的なCARとFoxP3(T2A自己切断ドメインとP2A自己切断ドメインによって分離されている)に動作可能に連結された変異EPO受容体を含む。上記変異EPORは、エキソドメインに変異を有し(配列番号1の154位でRがCに変異している)、エンドドメインが配列番号1の433位の後でトランケートされている。膜貫通ドメインは野生型EPORの膜貫通ドメインである。
構築物pQTX 787(EPOR trunc V3 FS)は、HLA-A2特異的なCARとFoxP3(T2A自己切断ドメインとP2A自己切断ドメインによって分離されている)に動作可能に連結された変異EPO受容体を含む。上記変異EPORは、エキソドメインに変異を有し(配列番号1の154位でRがCに変異している)、エンドドメインが配列番号1の433位の後でトランケートされており、C末端に追加の10アミノ酸テールが挿入されている(PALASMDTVP)。膜貫通ドメインは野生型EPORの膜貫通ドメインである。
構築物pQTX 788(WT EPOR trunc V3 FS)は、HLA-A2特異的なCARとFoxP3(T2A自己切断ドメインとP2A自己切断ドメインによって分離されている)に動作可能に連結された変異EPO受容体を含む。エキソドメインおよび膜貫通ドメインは、それぞれ野生型EPORのエキソドメインおよび膜貫通ドメインである。エンドドメインは、配列番号1の433位の後でトランケートされており、C末端に追加の10アミノ酸テールが挿入されている(PALASMDTVP)。
【0376】
PBMCの採取:
ロイコパック(leukopak)をBioIVT社から入手した。ネガティブセレクションキット(ステムセルテクノロジーズ社(StemCell Technologies))を用いてPBMCを単離した。簡単に述べると、不要な画分を抗体複合体と磁気ビーズで標識して除去の標的とし、その後、磁石を用いて分離する。
【0377】
TregおよびTconv(Teff)単離プロトコル:
ロイコパックを使用して、Treg集団およびTconv集団を誘導した。ロイコパック由来のPBMCを、CD25ポジティブセレクションにかけた後、ネガティブセレクションによりCD4富化を行った。それぞれ、Human CD25 Positive Selection CocktailとHuman CD4+ T Cell Enrichment Cocktail(ステムセルテクノロジーズ社)を用いた。磁石を用いて目的の細胞を分離した。細胞のCD4+CD25-画分をTconv集団として使用するために保持した。CD127high Depletion Cocktail(ステムセルテクノロジーズ社)を使用して、CD4+CD25+CD127-/low細胞集団と磁石を用いて分離した目的の細胞をさらに分離した。各細胞画分を、フローサイトメトリー用抗体である、抗CD4 VioBlue(M-T466、ミルテニーバイオテク社(Miltenyi Biotec))、抗CD25 PE(3G10、ミルテニーバイオテク社)、抗CD127 APC(MB15-18C9、ミルテニーバイオテク社)、抗CD45RA FITC(T6D11、ミルテニーバイオテク社)、およびLD 7AAD(バイオレジェンド社)で染色した後、FACSソーティングした。示されている場合、CD4+CD25+CD127-/low(バルクTreg)またはCD4+CD25+CD127-/low CD45RA+(CD45RA+ Treg)を選別して使用した。
【0378】
Treg培養培地および増殖:
ヒト制御性T細胞を、5%ヒトAB血清(熱不活性化、メルク社(Merck))とIL-2(プロロイキン、クリニジェンヘルスケア社(Clinigen Healthcare))を添加したX-VIVO 15培地(ロンザ社(Lonza))で培養し、抗CD3/CD28ビーズで活性化した。細胞には、IL-2を添加したTreg培養培地を2~3日ごとに再供給した。Treg細胞のさらなる増殖を促進するために、抗CD3/CD28ビーズによる2回目の刺激を行った。
【0379】
遺伝子導入およびウイルス粒子の作製:
HEK293T細胞を、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)+10%ウシ胎児血清(FBS)に播種し、24時間培養した。遺伝子導入試薬を室温に戻し、目的のDNA構築物/プラスミド、パッケージングプラスミド(pMDLg pRRE)、調節プラスミド(PRSV-REV)、およびウイルスエンベロープ(pMD2.G)と混合した。希釈したDNAにFuGENE HD Transfection Reagent(プロメガ社(Promega))を加えて混合し、HEK293Tに添加した。遺伝子導入の48時間後に上清を採取し、濾過してウイルスを濃縮した。
【0380】
T細胞の形質導入:
Tregを抗CD3/CD28ビーズで活性化し、T細胞培養培地(X-Vivo 15培地(ロンザ社)、5%ヒトAB血清、およびIL2)に再懸濁した。レトロネクチン(タカラバイオ株式会社(Takahara-bio)、大津、日本)でコーティングすることによって、組織培養用処理済みではない24ウェルプレートを準備し、細胞懸濁液をレンチウイルス上清と一緒に加えた。細胞培養物をスピノキュレーションし、1日おきに培地交換を行った。形質導入の7日後以降に細胞を実験に使用した。
【0381】
形質導入効率:
Tregを、まず、HLA-A2 Dextramer- APC(Immudex社)で室温で15分間表面染色した。次いで、洗浄した細胞を、PBS中のLIVE/DEAD(商標)Fixable Near-IR-Dead Cell Stain(サーモフィッシャー社)で室温で20分間染色した。次いで、洗浄した細胞を、FACS染色緩衝液中の抗CD4 BV510(A161A1、バイオレジェンド社)、抗CD25 PE-Cy7(BC96、バイオレジェンド社)、および抗EPOR PE(38409、バイオテクニ社(Bio-Techne))で4℃で20分間染色した。細胞を洗浄した後、Attune(商標)NxTフローサイトメーターで取得を行った。FlowJoソフトウェアを用いて細胞表面発現を解析した。以下のゲーティング戦略を使用した:リンパ球>単一細胞>生存細胞>CD4+CD25+>HLA-A2 Dex+ EPOR+。
【0382】
pSTAT5アッセイ:
Treg単離後14日目に、形質導入したTregを、抗CD3/CD28ビーズの枯渇とIL2の除去により24~48時間休ませた後、アッセイのセットアップを行った。Tregを、1IU/mlのEPO(ステムセルテクノロジーズ社、英国)を用いて、または用いずに、37℃で30分間処理した後、染色を開始した。Tregを、まず、HLA-A2 Dextramer- APC(Immudex社)で室温で15分間表面染色した。次いで、洗浄した細胞を、PBS中のLIVE/DEAD(商標)Fixable Near-IR-Dead Cell Stain(サーモフィッシャー社)で室温で20分間染色した。次いで、洗浄した細胞を、FACS染色緩衝液中の抗CD4 BV510(A161A1、バイオレジェンド社)および抗CD25 PE-Cy7(BC96、バイオレジェンド社)で4℃で20分間染色した。次いで、PerFix Expose kit(ベックマン・コールター社(Beckman Coulter))を用いて細胞を固定し、透過処理した後、pSTAT5 PE-CF594(47/Stat5 pY694、BDバイオサイエンス社(BD Bioscience))で細胞内染色した。細胞を2回洗浄した後、Attune(商標)NxTフローサイトメーターで取得を行った。FlowJoソフトウェアを用いてpSTAT5の発現を解析した。以下のゲーティング戦略を使用した:リンパ球>単一細胞>生存細胞>CD4+CD25+>HLA-A2 Dex+>pSTAT5+。ただし、モックTregについては、以下のゲーティング戦略を使用した:リンパ球>単一細胞>生存細胞>CD4+CD25+>pSTAT5+。
【0383】
形質導入細胞の富化およびFOXP3発現の測定:
Treg単離後14日目に、形質導入したTregを、抗CD3/CD28ビーズの枯渇とIL2の除去により24時間休ませた後、アッセイのセットアップを行った。培地、CD3/CD28ビーズ、0IU/mlおよび300IU/mlのIL2からなる様々な条件を設定し、0日目、4日目、および6日目に読み取りを行った。Tregを、まずHLA-A2 Dextramer- APC(Immudex社)で表面染色し、次いでPBS中のLIVE/DEAD(商標)Fixable Near-IR-Dead Cell Stain(サーモフィッシャー社)で染色した。次いで、洗浄した細胞を、FACS染色緩衝液中の抗CD4 BV510(A161A1、バイオレジェンド社)および抗CD25 PE-Cy7(BC96、バイオレジェンド社)で4℃で30分間染色した。次いで、洗浄した細胞を、FOXP3/Transcription Factor Staining Buffer Set(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、英国)を用いて、製造業者の指示に従って透過処理した。透過処理した細胞を、抗FoxP3 BV421(206D、バイオレジェンド社)抗体で染色した。細胞を2回洗浄した後、Attune(商標)NxTフローサイトメーターで取得を行った。FlowJoソフトウェアを用いてFoxP3発現を解析した。以下のゲーティング戦略を使用した:リンパ球>単一細胞>生存細胞>CD4+CD25+>HLA-A2 Dex+>FoxP3+。ただし、モックTregについては、以下のゲーティング戦略を使用した:リンパ球>単一細胞>生存細胞>CD4+CD25+>FoxP3+。
【0384】
細胞生存率/増殖倍率の測定:
Treg単離後14日目に、形質導入されたTregを、抗CD3/CD28ビーズの枯渇とIL2の除去により24時間休ませた後、アッセイのセットアップを行った。培地、IL2非存在下でのA1+ K562細胞(A2-であった)またはA2+ K562細胞からなる様々な条件を設定し、0日目、5日目、および7日目に読み取りを行った。K562:Tregの比率は1:4とした。Tregを、抗EPOR PE(38409、バイオテクニ社)、抗CD34 FITC(QBEND10、ライフテクノロジーズ社(Life Technologies))、抗CD4 BV510(A161A1、バイオレジェンド社)、および抗CD25 PE-Cy7(BC96、バイオレジェンド社)で表面染色した。その後、洗浄した細胞を、Annexin V Apoptosis Detection Kit with 7-AAD(バイオレジェンド社)を用いて、Annexin V Binding Buffer中のAnnexin V BV421および7-AADで染色した。各ウェル中の生存形質導入細胞の公正な定量を可能にするために、全てのウェルにわたって等容量の細胞懸濁液を取得した。細胞をAttune(商標)NxTフローサイトメーターで取得した。FlowJoソフトウェアを用いて細胞生存率を解析した。以下のゲーティング戦略を使用した:リンパ球>単一細胞>アネキシンV-7-AAD-(生存細胞)>CD4+CD25+>CD34/QBEND+またはEPOR+。
【0385】
ディープフェノタイピング(deep phenotyping):
Treg単離後14日目に、形質導入したTregを、抗CD3/CD28ビーズの枯渇とIL2の除去により24時間休ませた後、染色を行った。Tregを、まず、HLA-A2 Dextramer APC(Immudex社)で室温で15分間表面染色した。次いで、洗浄した細胞を、PBS中のLIVE/DEAD(商標)Fixable eFluor455-Dead Cell Stain(サーモフィッシャー社)で室温で20分間染色した。次いで、洗浄した細胞を、Brilliant Stain Buffer Plus中の抗CCR4 BV480(1G1、BDバイオサイエンス社)、抗CCR7 BUV395(2-L1-A、BDバイオサイエンス社)、抗CD183/CXCR3 PE-Cy7(G025H7、バイオレジェンド社)で37℃で20分間染色した。次いで、洗浄した細胞を、Brilliant Stain Buffer Plus中の抗HLA-DR APC-Fire810(G46-6、BDバイオサイエンス社)、抗PD-1 BV650(EH12.2H7、バイオレジェンド社)、抗ICOS BV750(DX29、BDバイオサイエンス社)、抗CD8a BUV805(SK1、BDバイオサイエンス社)、抗TIM-3/CD366 BV711(7D3、BDバイオサイエンス社)、抗CD27 PE-AF700(0323、バイオレジェンド社)、抗CCR6 BV605(G034E3、バイオレジェンド社)、抗CD95 PE-Cy5(DX2、BDバイオサイエンス社)、抗TIGIT APC-Cy7(VSTM3、バイオレジェンド社)、抗CD70 BV786(Ki-24、BDバイオサイエンス社)、抗CD4 VioBlue(M-T466、ミルテニーバイオテク社)、抗CD34 PE(QBEND10、ライフテクノロジーズ社)、および抗CD25 BUV563(2A3、BDバイオサイエンス社)で4℃で30分間染色した。細胞の細胞内染色のために、FOXP3/Transcription Factor Staining Buffer Set(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、英国)を用いて、製造業者の指示に従って、細胞を固定し、透過処理した。透過処理した細胞を、透過処理緩衝液中の抗Helios PE-Dazzle594(22F6、バイオレジェンド社)、抗CTLA-4 BB700(BNI3、BDバイオサイエンス社)、および抗FOXP3 AF647(206D、BDバイオサイエンス社)で染色した。細胞を2回洗浄した後、フローサイトメーターで取得を行った。FlowJoソフトウェアを用いてマーカー発現を解析した。
【0386】
抑制アッセイ:
Treg単離後14日目に、形質導入したTregを、抗CD3/CD28ビーズの枯渇とIL2の除去により24時間休ませた後、アッセイのセットアップを行った。Tregの染色にはCellTrace(商標)Violet(CTV)Cell Proliferation Kit(サーモフィッシャー社)を、Tエフェクターの染色にはCellTrace(商標)Yellow(CTY)Cell Proliferation Kit(サーモフィッシャー社)を、製造業者のプロトコルに従って使用した。CTVで染色したTregを、示した異なる比率で、CTYで染色したTエフェクターと共に培養した。120Gyを照射したHLA-A2+ B細胞またはHLA-A2- B細胞を、B細胞:Tエフェクター=1:3.3の比率で共存培養した。あるいは、Human T-Activator CD3/CD28 Dynabeads(商標)(ギブコ社)を、ビーズ:Tエフェクター=1:1の比率で添加した。細胞培養物を、37℃、5%CO2で4日間インキュベートした後、染色した。細胞は、PBSで洗浄した後、PBS中のFixable Near IF-Dead Cell Stain(サーモフィッシャー社)で室温で20分間染色した。次いで、洗浄した細胞を、抗EPOR PE(38409、 バイオテクニ社)、抗CD34 FITC(QBEND10、ライフテクノロジーズ社)、およびHLA-A3(REA950、ミルテニーバイオテク社)で4℃で20分間染色した。細胞を洗浄した後、Attune(商標)NxTフローサイトメーターで取得を行った。FlowJoソフトウェアを用いてデータを解析した。以下のゲーティング戦略を使用した:リンパ球>単一細胞>生存細胞>HLA-A3->CTY+。
【0387】
細胞傷害性アッセイ:
CellTrace(商標)Violet(CTV)Cell Proliferation Kit(サーモフィッシャー社)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、標的細胞であるHLA-A2+ K562またはHLA-A2- K562を標識した。示したTregまたはナチュラルキラー細胞(NK)のエフェクター細胞を、示した様々な比率で、標的細胞と共存培養した。抗CD107a PE(H4A3、BDバイオサイエンス社)を培養物に添加し、37℃、5%CO2で合計4時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後、培養物にGolgiSTOP標準溶液(working solution)(BDバイオサイエンス社)を添加した。洗浄した細胞を、Attune(商標)NxTフローサイトメーターで取得した。FlowJoソフトウェアを用いてデータを解析した。
【0388】
細胞内サイトカイン染色:
Treg細胞またはT細胞を、Leukocyte Activation Cocktail with BD GolgiPlug(商標)で37℃で5時間活性化した。次いで、細胞を、PBS中のLIVE/DEAD(商標)Aquaで室温で20分間染色した。次いで、洗浄した細胞を、抗CD4 PerCPCy5.5(SK3、バイオレジェンド社)、抗EPOR PE(38409、バイオテクニ社)、および抗CD34 FITC(QBEND10、ライフテクノロジーズ社)で4℃で30分間染色した。次いで、洗浄した細胞を、FOXP3/Transcription Factor Staining Buffer Set(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、英国)を用いて、製造業者の指示に従って、固定し、透過処理した。次いで、透過処理した細胞を、抗IL-17A BV605(BL168、バイオレジェンド社)、抗TNFα APC-Cy7(Mab11、バイオレジェンド社)、抗IFN-γ PE-Cy7(4S.B3、バイオレジェンド社)、および抗IL2 PE-PE/Dazzle 594(MQ1-17H12、バイオレジェンド社)で染色した。細胞を洗浄した後、フローサイトメーターで取得を行った。
【0389】
データ解析:
フローサイトメトリーデータは、フローサイトメトリー解析ソフトウェアFlowJo(FlowJo,LLC社)を用いて解析することができる。全ての統計解析は、Graphpad Prism v.9.4.1(グラフパッドプリズムソフトウェア社(Graphpad Prism Software))を用いて実施することができる。
【0390】
結果
図4A-構築物は形質導入されたヒトTregにおいて良好に発現される
様々な構築物、すなわち658(no tech)、783、784、785、786、およびモックを形質導入した新鮮なTregの形質導入効率を示すFACSプロットも示す。形質導入効率は、HLA-A2デキストラマーおよびEPOR発現を用いて測定した。各構築物について類似した形質導入効率が得られた。これを下記の表にも示す。
【表2】
【0391】
図4B-構築物は形質導入されたヒトTregにおいて良好に発現される
様々な構築物、すなわち783、784、785、786、787、788、およびモックを形質導入した凍結Tregの形質導入効率を示すFACSプロットも示す。形質導入効率は、HLA-A2デキストラマーおよびEPOR発現を用いて測定した。各構築物について類似した形質導入効率が得られた。これを下記の表にも示す。
【表3】
【0392】
図5-EPOR由来タンパク質を形質導入したTregは、pSTAT5レベルを特異的にアップレギュレートする
形質導入したTregを、EPOを用いて、または用いずに、処理した後、pSTAT5発現レベルを調べるために染色した。細胞の、HLA-A2 CAR+と定義される形質導入画分をプレゲートした。一方、非形質導入画分はHLA-A2 CAR-である。構築物783、784、785、および786のうちの1つを発現する細胞の形質導入画分は、細胞の非形質導入画分と比較してpSTAT5のMFIレベルが高く、EPOR由来タンパク質がJAK-STATシグナル伝達を促進することを示している。構築物783、784、785、および786のうちの1つを発現する細胞の形質導入画分はまた、pSTAT5のより高いMFIレベルによって検出されたように、外因性EPOに特異的に応答したが、一方で、非形質導入画分は外因性EPOに応答せず、この非形質導入画分は、pSTAT5のMFIが類似した基底レベルのままであった。EPOR由来タンパク質を有さない構築物658を形質導入した細胞は、形質導入画分および非形質導入画分の両方においてpSTAT5のMFIレベルが類似していた。尚、EPOは血清中に存在するため、使用した培地(X-vivo+5%ヒト血清)はEPOを含有している可能性が高い。このことは、構築物783(WT EPOR)を形質導入した細胞のpSTAT5の増加と、さらにEPOを添加した場合のさらなる増加とを説明する。しかしながら、追加のEPOが使用されない場合、784、785、および786の形質導入画分は783よりもpSTAT5が高い。
【0393】
図6A-EPOR由来タンパク質を形質導入したTregは、時間の経過と共に富化し、対照Tregと比較して生存優位性が高い
形質導入したTregを、IL2と共に、またはIL2なしで、培養した。784、785、および786という構成的EPOR技術を用いて形質導入した細胞は、時間の経過と共に集団の割合が高まっている。対照的に、658(EPOR由来タンパク質を含まない)および783(WT EPOR)の各構築物は、時間の経過と共に優先的に富化するわけではない。構成的EPOR(784、785、および786)を形質導入した細胞は、IL2が存在しない場合、783(WT EPOR)および658(no tech)よりも高い生存優位性を示す。786(EPOR trunc V2)は、これらの形質導入細胞が非形質導入細胞と比較して時間の経過と共に割合が増加しているため、最も高い優位性を持つと思われる。IL2が存在する場合は、天然のIL2Rを介したシグナル伝達の結果として、細胞の非形質導入画分が増殖することができるため、構成的EPOR技術を用いて形質導入した細胞集団が富化することはない。
【0394】
図6B-EPOR由来タンパク質を形質導入したTregは、FoxP3発現を経時的に維持する
形質導入したTregを、IL2と共に、またはIL2なしで、培養した。FoxP3を発現する細胞の割合は、658と比較して、783、784、785、および786の全ての形質導入画分にわたって類似していた。細胞の非形質導入画分では、FoxP3発現の割合は、細胞の形質導入画分よりもやや低かった。EPOR由来タンパク質を形質導入した細胞は、FoxP3発現レベルを発現し、経時的に維持しており、Tregがその表現型を維持することを示している。
【0395】
図6C-786形質導入Tregは、同族A2抗原を認識し、658対照Tregと同様に応答する
A2+ K562細胞またはA2- K562(A1+ K562)細胞と共存培養した658形質導入Tregおよび786形質導入Tregを示す生存アッセイ。データは、細胞増殖倍率の変化によって、658形質導入Tregおよび786形質導入Tregの両方が、A2抗原を特異的に認識して応答することを示している。したがって、構成的EPOR技術(786)による形質導入は、細胞の機能に悪影響を及ぼさない。
【0396】
図7-EPOR由来タンパク質を形質導入したTregは、重要なTregマーカーの発現を維持した
形質導入したTregを、様々なTreg関連マーカーについてディープフェノタイピングした。グラフは、示したマーカーの、モックTreg、細胞の形質導入画分(HLA-A2 Dex+)、または非形質導入画分(HLA-A2 Dex-)内における発現の割合を示す。EPOR形質導入Treg(形質導入画分および非形質導入画分の両方)は、モック形質導入Tregと比較して、CD25、CD27、CD95、CTLA-4、CXCR3、およびFoxP3などの重要なTregマーカーの発現レベルを、類似した高いレベルに維持した。この結果は、EPOR由来タンパク質による形質導入がTregの表現型に対して有意な影響を及ぼさなかったことを示唆する。
【0397】
図8-EPOR由来タンパク質を形質導入したTregは、抑制能を維持した
形質導入したTregの抑制能を調べるために機能試験を行った。グラフは、aCD3/CD28ビーズ、HLA-A2- B細胞、およびHLA-A2+ B細胞という様々な刺激によるTエフェクター細胞の増殖に対する形質導入Treg(またはモックTreg)の抑制率を示す。結果は、EPOR技術を用いたTregがモックTregと類似した抑制能を有することを示している。
【0398】
図9-EPOR由来タンパク質を形質導入したTregは、標的細胞を死滅させない
形質導入したTregの標的細胞に対する細胞傷害性を試験した。HLA-A2- K562細胞またはHLA-A2+ K562細胞を様々な比率で形質導入Tregと共存培養した。HLA-A2+ ナチュラルキラー(NK)細胞を陽性対照として使用した。結果は、モックTregおよびEPOR形質導入Tregが標的細胞も非標的細胞も死滅させないこと、したがって調節表現型が維持されることを示している。
【0399】
図10-EPOR由来タンパク質を形質導入したTregは、対照Tregと類似の細胞内サイトカインプロファイルを有する
658形質導入Tregおよび786形質導入Tregの細胞内サイトカインの存在を試験した。細胞をPMA/イオノマイシンで刺激した後、細胞内サイトカインを検出した。Tエフェクター細胞を陽性対照として使用した。786形質導入Tregは、形質導入画分および非形質導入画分の両方で、細胞内サイトカインIL2、TNFα、IL-17、およびIFNγのレベルが658形質導入Tregと類似した低いレベルであった。このことは、786構築物が細胞に炎症反応を引き起こさず、細胞がその調節表現型を維持することを示唆する。
【配列表】
【国際調査報告】