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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】フローセル及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241226BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20241226BHJP
   C40B 40/06 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
C12Q1/6806 Z
C40B40/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538184
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 US2022082280
(87)【国際公開番号】W WO2023122755
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/293,494
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/323,890
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/371,165
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/380,878
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョハン・セバスティアン・バスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・マーク・ボーテル
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エス・フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ルイーズ・ジェーン・フレーザー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・エヌ・ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ナイル・アンソニー・ゴームリー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】シャオユ・マ
(72)【発明者】
【氏名】マリア・イネス・マーティンス・ヴィトリアノ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・メイ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ジョン・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・プライス
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ゲオルグ・ガブリエル・リコールト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッキー・エス・トムソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリーン・シー・ウィアー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイフア・チャン
(72)【発明者】
【氏名】フイ・ハン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB20
4B029DG10
4B029GA08
4B029GB10
4B063QA13
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS03
(57)【要約】
フローセルの一例は、間隙領域によって分離された凹部を有する基材を含む。第1の及び第2のプライマーは、凹部内に固定される。第1のトランスポソーム複合体は、凹部内に固定され、第1のトランスポソーム複合体は、第1の増幅ドメインを含む。第2のトランスポソーム複合体も、凹部内に固定され、第2のトランスポソーム複合体は、第2の増幅ドメインを含む。第1のトランスポソーム複合体の一部、又は第2のトランスポソーム複合体の一部、又は第1の及び第2のトランスポソーム複合体の両方の一部は、タグメント化効率を低下させる修飾を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
前記凹部の各々の中に固定された、第1のプライマー及び第2のプライマーと、
前記凹部の各々の中に固定され、第1の増幅ドメインを含む第1のトランスポソーム複合体と、
前記凹部の各々の中に固定され、第2の増幅ドメインを含む第2のトランスポソーム複合体と、を備え、
i)前記第1のトランスポソーム複合体の一部、又はii)前記第2のトランスポソーム複合体の一部、又はiii)前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の両方の一部が、タグメント化効率を低下させる修飾を含む、フローセル。
【請求項2】
前記タグメント化効率を低下させる修飾が、i)前記第1のトランスポソーム複合体の一部、又はii)前記第2のトランスポソーム複合体の一部、又はiii)前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の両方の一部の、非転移鎖の5’末端におけるリン酸基の排除である、請求項1に記載のフローセル。
【請求項3】
前記タグメント化効率を低下させる修飾が、i)前記第1のトランスポソーム複合体の一部、又はii)前記第2のトランスポソーム複合体の一部、又はiii)前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の両方の一部の、非転移鎖の5’末端に結合したフルオロフォアである、請求項1に記載のフローセル。
【請求項4】
前記タグメント化効率を低下させる修飾が、i)前記第1のトランスポソーム複合体の一部、又はii)前記第2のトランスポソーム複合体の一部、又はiii)前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の両方の一部の、非転移鎖の3’末端に結合したフルオロフォアである、請求項1に記載のフローセル。
【請求項5】
前記タグメント化効率を低下させる修飾が、i)前記第1のトランスポソーム複合体の一部、又はii)前記第2のトランスポソーム複合体の一部、又はiii)前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の両方の一部の、転移鎖の3’末端に結合したジデオキシシトシン、チミン、又はシトシンである、請求項1に記載のフローセル。
【請求項6】
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
前記凹部の各々の中に固定された、第1のプライマー及び第2のプライマーと、
第1の増幅ドメインを含む第1のトランスポソーム複合体と、
第2の増幅ドメインを含む第2のトランスポソーム複合体と、を備え、
i)前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体が、前記凹部の各々の異なる領域に、各々固定され、又は
ii)前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体が、前記凹部の各々の内部、及び前記間隙領域の各々の上に、各々固定され、又は
iii)前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体が、前記間隙領域の異なる領域に、各々固定されている、フローセル。
【請求項7】
前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の各々が、
トランスポゾン末端と、
前記トランスポゾン末端に非共有結合したトランスポザーゼ酵素と、を含む、請求項6に記載のフローセル。
【請求項8】
デオキシリボ核酸(DNA)試料のインサートサイズを増加させる方法であって、
DNA試料をフローセルに導入するステップであって、前記フローセルが、
間隙領域によって分離された複数の凹部と、
前記凹部の各々の中に固定された第1のプライマー及び第2のプライマーと、
前記凹部の各々の中に、又は前記間隙領域上に固定され、第1の増幅ドメインを含む第1のトランスポソーム複合体と、
前記凹部の各々の内に、又は前記間隙領域上に固定され、第2の増幅ドメインを含む第2のトランスポソーム複合体と、を含む、ステップと、
前記DNA試料に縮合剤又はタグメント化阻害剤を導入するステップであって、前記縮合剤が、ポリカチオン性アミン、ポリエチレングリコール、及びヒストンからなる群から選択されるか、又は前記タグメント化阻害剤が、カチオン、pH調整剤、及びクロマチンアセンブリキットからなる群から選択される、ステップと、
前記縮合剤又は前記タグメント化阻害剤の存在下で、前記フローセル内で前記DNA試料をインキュベーションすることによって、前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の一部で、前記DNA試料のタグメント化を起こすステップと、を含む方法。
【請求項9】
前記タグメント化の後に、
洗浄溶液を前記フローセルに導入するステップと、
前記洗浄溶液を含む前記フローセルを、約60℃に加熱するステップと、次いで
伸長増幅ミックスをフローセルに導入するステップと、を更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
トランスポソーム複合体を緩衝溶液に導入するステップであって、前記トランスポソーム複合体が、
非転移鎖の一部にハイブリダイズした転移鎖の一部を含むトランスポゾン末端であって、前記転移鎖が5’末端アルキン官能基を含む、トランスポゾン末端と、
前記トランスポゾン末端に非共有結合したトランスポザーゼ酵素と、を含む、ステップと、
前記トランスポソーム複合体を含有する前記緩衝溶液を、間隙領域によって分離された凹部を含むフローセルに導入するステップであって、前記凹部が、末端アジド又はテトラジン基を有するポリマーヒドロゲルをその中に有する、ステップと、
前記フローセル内で前記緩衝溶液をインキュベーションすることによって、前記トランスポソーム複合体の少なくとも一部の前記5’末端アルキン官能基を各々、前記末端アジド又はテトラジン基の少なくとも一部に結合させるステップと、を含む方法。
【請求項11】
5’末端アルキン官能基が、ビシクロ[6.1.0]ノニンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記緩衝溶液が硫酸ナトリウムであり、
前記インキュベーションが約37℃で約2時間実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
トランスポソーム複合体をフローセルに導入するステップであって、
前記トランスポソーム複合体が、
非転移鎖の一部にハイブリダイズした転移鎖の一部を含むトランスポゾン末端であって、前記転移鎖が5’ビオチン化末端を含む、トランスポゾン末端と、
前記トランスポゾン末端に非共有結合した、トランスポザーゼ酵素と、を含み、
前記フローセルが、
間隙領域によって分離された凹部と、
前記凹部内のビオチン化ポリマーヒドロゲルと、を含む、ステップと、
ストレプトアビジンを前記フローセルに導入するステップと、
前記トランスポソーム複合体及び前記ストレプトアビジンを、前記フローセル中でインキュベーションすることによって、前記ストレプトアビジンが各々、前記トランスポソーム複合体の少なくとも一部の前記5’ビオチン化末端を、前記ビオチン化ポリマーヒドロゲルに結合させるステップと、を含む方法。
【請求項14】
ポリマーヒドロゲルの末端アジド又はテトラジン基に、ビシクロ[6.1.0]ノニン-ビオチンをグラフト化するステップによって、ビオチン化ポリマーヒドロゲルを調製するステップを更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ストレプトアビジンが、各トランスポソーム複合体の5’ビオチン化末端に予め結合し、したがって、各トランスポソーム複合体の一部として導入される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記トランスポソーム複合体が前記フローセルに導入される前に、前記ストレプトアビジンが前記フローセルに導入される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
前記トランスポソーム複合体が、又は前記ストレプトアビジンが、又は前記トランスポソーム複合体及び前記ストレプトアビジンの両方が乾燥され、
前記方法が、
前記トランスポソーム複合体を前記フローセルに導入する前に、前記トランスポソーム複合体を緩衝液中で再構成するステップ、又は
前記ストレプトアビジンを前記フローセルに導入する前に、前記ストレプトアビジンを緩衝液中で再構成するステップ、又は
前記トランスポソーム複合体及び前記ストレプトアビジンの各々を、前記フローセルに導入する前に、各々の緩衝液中で各々再構成するステップを更に含む、請求項13、14、16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
前記凹部内のビオチン化ポリマーヒドロゲルと、
前記凹部の各々の中に固定された第1のビオチン化プライマー及び第2のビオチン化プライマーと、
前記凹部の各々の中に固定され、第1の増幅ドメインを含む第1のビオチン化トランスポソーム複合体と、
前記凹部の各々の中に固定され、第2の増幅ドメインを含む第2のビオチン化トランスポソーム複合体と、を含む再使用可能なフローセル。
【請求項19】
前記第1のビオチン化プライマー及び前記第2のビオチン化プライマーが、ストレプトアビジンを介して、前記ビオチン化ポリマーヒドロゲルに固定されている、請求項18に記載の再使用可能なフローセル。
【請求項20】
前記第1のビオチン化トランスポソーム複合体が、ストレプトアビジンを介して、前記ビオチン化ポリマーヒドロゲルに固定され、
前記第2のビオチン化トランスポソーム複合体が、ストレプトアビジンを介して、前記ビオチン化ポリマーヒドロゲルに固定されている、請求項18又は19に記載の再使用可能なフローセル。
【請求項21】
プロテアーゼ、2mM未満のエチレンジアミン四酢酸、カオトロピック剤、及び水を含み、無機塩を含まない溶解緩衝液中で、前記プロテアーゼの活性温度で、全血、骨髄穿刺液、組織試料、血液スポット、及び唾液からなる群から選択される試料を、前記無機塩を含まない溶解緩衝液に曝露することによって、前記試料からデオキシリボ核酸を抽出し、粗溶解物を生成するステップと、
熱又は阻害剤を使用して、前記粗溶解物中の前記プロテアーゼを不活性化するステップと、
前記カオトロピック剤のキレート剤を前記粗溶解物に添加して、複合体粗溶解物を生成するステップと、を含む方法。
【請求項22】
フローセル内の表面に固定されたトランスポソーム複合体及びプライマーを含むフローセルに前記複合体粗溶解物を導入するステップを更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抽出されたデオキシリボ核酸を、タグメント化に曝露するステップを更に含み、前記タグメント化が、
前記複合体粗溶解物が導入される際に、前記フローセルにタグメント化緩衝液を導入するステップと、
前記フローセルを30℃以上の温度にするステップと、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
洗浄溶液を前記フローセルに導入するステップと、
前記洗浄溶液を含む前記フローセルを、約60℃に加熱するステップと、次いで、
伸長増幅ミックスを前記フローセルに導入するステップと、を更に含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記曝露するステップ、前記不活性化するステップ、及び前記添加するステップが、前記フローセルに搭載されていない溶解チューブ又はチャンバ内で実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記複合体粗溶解物をライブラリ調製技術に曝露するステップを更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記カオトロピック剤のキレート剤が、アルファシクロデキストリン、ベータシクロデキストリン、及びメチルベータシクロデキストリンからなる群から選択される、シクロデキストリンである、請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記キレート剤が乾燥形態であり、
前記乾燥形態のキレート剤が、前記乾燥形態のキレート剤の周囲のコーティング材料を含むカプセル化複合体の一部であり、
前記キレート剤を添加するステップが、
前記カプセル化複合体を前記粗溶解物に添加するステップと、
次いで、前記カプセル化複合体からの前記乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップと、
前記乾燥形態のキレート剤を再水和するステップと、を含む、請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティング材料が温度感受性ワックスであり、
前記乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップが、粗溶解物を温度感受性ワックスの融解温度まで加熱するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティング材料が温度感受性ポリマーであり、
前記乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップが、粗溶解物を温度感受性ポリマーの可溶化温度まで加熱するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティング材料がpH感受性ポリマーであり、
前記乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップが、粗溶解物のpHを調整するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティング材料が時間感受性ポリマーであり、
前記乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップが、前記カプセル化複合体を、粗溶解物中で所定の時間インキュベーションするステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記無機塩を含まない溶解緩衝液がトリプシンを含み、
前記粗溶解物中のトリプシンを不活性化するステップが、前記粗溶解物を前記阻害剤に曝露するステップを含み、
前記阻害剤が、4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオリドである、請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記無機塩を含まない溶解緩衝液中の前記プロテアーゼが、プロテインキナーゼであり、
前記粗溶解物中の前記プロテインキナーゼを不活性化するステップが、前記粗溶解物を前記熱に曝露するステップを含み、
前記熱が、約80℃である、請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記無機塩を含まない溶解緩衝液中の前記プロテアーゼが、プロテインキナーゼであり、
前記粗溶解物中の前記プロテインキナーゼを不活性化するステップが、前記粗溶解物を前記阻害剤に曝露するステップを含み、
前記阻害剤が、テトラペプチジルクロロメチルケトンである請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記試料を前記無機塩を含まない溶解緩衝液に曝露する前に、前記無機塩を含まない溶解緩衝液を乾燥させ、
前記乾燥した無機塩を含まない溶解緩衝液を前記水で再構成するステップを更に含む請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
DNA試料及び表面結合トランスポソーム複合体を使用してタグメント化反応を行い、それによって、複数の部分的に適合されたDNA断片を生成するステップと、
カオトロピック剤を導入して、前記表面結合トランスポソーム複合体のトランスポザーゼを除去するステップと、
前記カオトロピック剤のキレート剤を導入して、前記カオトロピック剤を分離するステップと、
伸長反応を実施して、前記部分的に適合されたDNA断片に追加のアダプターを付加するステップと、を含む方法。
【請求項38】
前記カオトロピック剤が、ドデシル硫酸ナトリウムであり、
前記カオトロピック剤のキレート剤が、アルファシクロデキストリン、ベータシクロデキストリン、及びメチルベータシクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
DNA試料をフローセルに導入するステップであって、前記フローセルが、
間隙領域によって分離された複数の凹部と、
前記凹部の各々の中に固定された、第1のプライマー及び第2のプライマーと、
前記凹部の各々の中に、又は前記間隙領域上に固定され、第1の増幅ドメインを含む第1のトランスポソーム複合体と、
前記凹部の各々の中に、又は前記間隙領域上に固定され、第2の増幅ドメインを含む第2のトランスポソーム複合体と、を含み、
前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の一部において、前記DNA試料のタグメント化が実施されて、複数の部分的に適合されたDNA断片が生成される、ステップと、
カオトロピック剤を前記フローセルに導入して、前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体のトランスポザーゼを除去するステップと、
前記カオトロピック剤のキレート剤を導入して、前記カオトロピック剤を分離するステップと、
伸長反応を実施して、前記部分的に適合されたDNA断片に追加のアダプターを付加するステップと、を含む方法。
【請求項40】
前記カオトロピック剤が、ドデシル硫酸ナトリウムであり、
前記カオトロピック剤のキレート剤が、アルファシクロデキストリン、ベータシクロデキストリン、及びメチルベータシクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
フローセルであって、
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
前記凹部の各々の中に固定された、第1のプライマー及び第2のプライマーと、
複数の第1のトランスポソーム複合体であって、前記複数の第1のトランスポソーム複合体の各々が、第1のトランスポソーム複合体の非転移鎖の3’末端によって、前記凹部の1つの中に固定されている、複数の第1のトランスポソーム複合体と、
複数の第2のトランスポソーム複合体であって、前記複数の第2のトランスポソーム複合体の各々が、第2のトランスポソーム複合体の転移鎖の5’末端によって、前記凹部の1つの中に固定されている、複数の第2のトランスポソーム複合体と、を備え、
前記複数の第1のトランスポソーム複合体と前記複数の第2のトランスポソーム複合体が、1:1超から5:1までの範囲の比で前記フローセル中に存在する、フローセル。
【請求項42】
前記複数の第1のトランスポソーム複合体の各々が、
前記第1のトランスポソーム複合体の転移鎖の一部にハイブリダイズした前記第1のトランスポソーム複合体の非転移鎖の一部を含む第1のトランスポゾン末端と、
前記第1のトランスポゾン末端に非共有結合した第1のトランスポザーゼ酵素と、を含む、請求項41に記載のフローセル。
【請求項43】
前記複数の第2のトランスポソーム複合体の各々が、
第2のトランスポソーム複合体の非転移鎖の一部にハイブリダイズした前記第2のトランスポソーム複合体の転移鎖の一部を含む第2のトランスポゾン末端と、
前記第2のトランスポゾン末端に非共有結合した第2のトランスポザーゼ酵素と、を含む、請求項41又は42に記載のフローセル。
【請求項44】
前記複数の第1のトランスポソーム複合体:前記複数の第2のトランスポソーム複合体の比が、4:1である、請求項41から43のいずれか一項に記載のフローセル。
【請求項45】
前記凹部の各々がその中にポリマーヒドロゲルの層を含み、
前記3’末端が前記ポリマーヒドロゲルに結合し、
前記5’末端が前記ポリマーヒドロゲルに結合している、請求項41から44のいずれか一項に記載のフローセル。
【請求項46】
前記凹部の各々がその中にビオチン化ポリマーヒドロゲルの層を含み、
前記3’末端及び前記5’末端の各々がビオチン化され、
ビオチン化された前記3’末端及び前記5’末端の各々が、ストレプトアビジンを介して、前記ビオチン化ポリマーヒドロゲルに結合している、請求項41から44のいずれか一項に記載のフローセル。
【請求項47】
DNA試料及びタグメント化緩衝液をフローセルに導入するステップであって、前記フローセルが、
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
前記凹部の各々の中に固定された、第1のプライマー及び第2のプライマーと、
複数の第1のトランスポソーム複合体であって、前記複数の第1のトランスポソーム複合体の各々が、第1のトランスポソーム複合体の非転移鎖の3’末端によって、前記凹部の1つの中に固定されている、複数の第1のトランスポソーム複合体と、
複数の第2のトランスポソーム複合体であって、前記複数の第2のトランスポソーム複合体の各々が、第2のトランスポソーム複合体の転移鎖の5’末端によって、前記凹部の1つの中に固定されている、複数の第2のトランスポソーム複合体と、を含み、
前記複数の第1のトランスポソーム複合体及び前記複数の第2のトランスポソーム複合体が、1:1超~5:1の範囲の比で、前記フローセル中に存在する、ステップと、
前記DNA試料及び前記タグメント化緩衝液を、前記フローセル内でインキュベーションすることによって、前記DNA試料のタグメント化が、前記第2のトランスポソーム複合体の転移鎖の少なくとも一部、及び前記第1のトランスポソーム複合体の転移鎖の少なくとも一部に結合したDNA試料断片を生成するステップと、を含む方法。
【請求項48】
前記フローセルを約60℃に加熱することによって、前記複数の第1のトランスポソーム複合体及び前記複数の第2のトランスポソーム複合体のトランスポザーゼを放出させるステップと、
前記フローセルを通して洗浄溶液を流すことによって、前記放出されたトランスポザーゼを除去するステップと、
伸長増幅ミックスを前記フローセルに導入するステップと、を更に含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記フローセルにドデシル硫酸ナトリウム又はプロテイナーゼを導入することによって、前記複数の第1のトランスポソーム複合体及び前記複数の第2のトランスポソーム複合体のトランスポザーゼを放出させるステップと、
前記フローセルを、前記第1のトランスポソーム複合体及び前記第2のトランスポソーム複合体の脱ハイブリダイゼーション温度に加熱するステップと、
前記フローセルを通して洗浄溶液を流すことによって、前記第2のトランスポソーム複合体の前記放出されたトランスポザーゼ及び放出された非転移鎖を除去するステップと、
伸長増幅ミックスを前記フローセルに導入するステップと、を更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項50】
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
各凹部の第1の部分に配置された第1のポリマーヒドロゲルと、
各凹部の第2の部分に配置された第2のポリマーヒドロゲルと、
オルソゴナルに切断可能な結合を介して前記第1のポリマーヒドロゲル上に固定されたトランスポソーム前駆体と、
前記第2のポリマーヒドロゲル上に固定された捕捉プライマーと、
前記第1のポリマーヒドロゲル及び前記第2のポリマーヒドロゲルの各々に固定された増幅プライマーセットの第1のプライマー及び第2のプライマーと、を含むフローセル。
【請求項51】
前記トランスポソーム前駆体が、前記第1のプライマーと同一の配列を有する第1の増幅ドメインを含み、
前記捕捉プライマーが、プレアセンブルトランスポソーム複合体の非転移鎖に相補的な配列を含む、請求項50に記載のフローセル。
【請求項52】
前記第1のポリマーヒドロゲル上に固定された前記第1のプライマー及び前記第2のプライマーが、切断不可能な第1のプライマー及び切断可能な第2のプライマーを含み、
前記第2のポリマーヒドロゲル上に固定された前記第1のプライマー及び前記第2のプライマーが、切断可能な第1のプライマー及び切断不可能な第2のプライマーを含み、
前記切断可能な第2のプライマーの切断部位、前記切断可能な第1のプライマーの切断部位、及び前記オルソゴナルに切断可能な結合の各々は、異なる切断化学に応答性である、請求項50に記載のフローセル。
【請求項53】
フローセルであって、
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
各凹部の第1の部分に配置された第1のポリマーヒドロゲルと、
各凹部の第2の部分に配置された第2のポリマーヒドロゲルと、
オルソゴナルに切断可能な結合を介して前記第1のポリマーヒドロゲル上に固定されたトランスポソーム前駆体と、
前記第2のポリマーヒドロゲル上に固定された捕捉プライマーと、
前記第1のポリマーヒドロゲル及び前記第2のポリマーヒドロゲルの各々に固定された増幅プライマーセットの第1のプライマー及び第2のプライマーと、を含むフローセルと、
トランスポソーム前駆体とトランスポソーム複合体を構築するためのトランスポザーゼ酵素及び非転移鎖を含む第1の流体と、
前記捕捉プライマーにハイブリダイズするプレアセンブルトランスポソーム複合体を含む第2の流体と、を備えるキット。
【請求項54】
前記トランスポソーム前駆体が、前記第1のプライマーと同一の配列を有する第1の増幅ドメインを含み、
前記プレアセンブルトランスポソーム複合体が、前記捕捉プライマーの配列に相補的な非転移鎖と、前記第2のプライマーと同一の配列を有する第2の増幅ドメインを含む転移鎖と、を含む、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
前記第1のポリマーヒドロゲル上に固定された前記第1のプライマー及び前記第2のプライマーが、切断不可能な第1のプライマー及び切断可能な第2のプライマーを含み、
前記第2のポリマーヒドロゲル上に固定された前記第1のプライマー及び前記第2のプライマーが、切断可能な第1のプライマー及び切断不可能な第2のプライマーを含み、
前記切断可能な第2のプライマーの切断部位、前記切断可能な第1のプライマーの切断部位、及び前記オルソゴナルに切断可能な結合の各々が、異なる切断化学に応答性である、請求項53に記載のキット。
【請求項56】
複数のトランスポザーゼ酵素及び複数の非転移鎖を含む第1の流体を、フローセルに導入するステップであって、前記フローセルが、
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
各凹部の第1の部分に配置された第1のポリマーヒドロゲルと、
各凹部の第2の部分に配置された第2のポリマーヒドロゲルと、
各々のオルソゴナルに切断可能な結合を介して前記第1のポリマーヒドロゲル上に固定された複数のトランスポソーム前駆体と、
前記第2のポリマーヒドロゲル上に固定された複数の捕捉プライマーと、
前記第1のポリマーヒドロゲル及び前記第2のポリマーヒドロゲルの各々に固定された増幅プライマーセットの第1のプライマー及び第2のプライマーであって、前記第1のプライマーの各々が、前記複数のトランスポソーム前駆体の各々の第1の増幅ドメインと同一の配列を有する、第1のプライマー及び第2のプライマーと、を含み、
前記複数のトランスポソーム前駆体、前記複数の非転移鎖及び前記複数のトランスポザーゼ酵素の少なくとも一部が相互作用して、前記第1のポリマーヒドロゲル上に固定された複数のトランスポソーム複合体を形成するステップと、
複数のプレアセンブルトランスポソーム複合体を含む第2の流体を前記フローセルに導入することによって、前記複数のプレアセンブルトランスポソーム複合体の少なくとも一部の非転移鎖が、前記複数の捕捉プライマーの少なくとも一部に各々ハイブリダイズする、ステップと、
前記フローセル中でDNA試料をインキュベーションすることによって、前記DNA試料のタグメント化が、前記複数のトランスポソーム複合体の転移鎖、及び前記複数のプレアセンブルトランスポソーム複合体の転移鎖に結合したDNA試料断片を生成するステップと、を含む方法。
【請求項57】
前記複数のプレアセンブルトランスポソーム複合体の転移鎖が、前記第2のプライマーと同一の配列を有する第2の増幅ドメインを含み、
前記複数のトランスポザーゼ酵素及び前記複数のプレアセンブルトランスポソーム複合体の各々のトランスポザーゼ酵素を、除去するステップと、
鎖置換反応を開始して、前記複数のトランスポソーム複合体及び前記複数のプレアセンブルトランスポソーム複合体の転移鎖の相補的コピーを生成し、前記第2のポリマーヒドロゲルから前記DNA試料断片を分離することによって、前記複数のプレアセンブルトランスポソーム複合体の転移鎖の相補的コピーの少なくとも1つが、前記複数のトランスポソーム複合体の転移鎖の少なくとも1つを介して、前記第1のポリマーヒドロゲルに結合したままとなるステップと、
前記複数のプレアセンブルトランスポソーム複合体の転移鎖の相補的コピーのうちの少なくとも1つを、前記第1のポリマーヒドロゲル又は前記第2のポリマーヒドロゲル上の前記第2のプライマーの少なくとも1つにハイブリダイズさせるステップと、
前記相補的コピーのハイブリダイズした少なくとも1つに結合した前記DNA試料断片に沿って、ポリメラーゼ伸長を開始して、前記第1のポリマーヒドロゲル又は前記第2のポリマーヒドロゲル上の前記第2のプライマーの少なくとも1つに結合した少なくとも1つのアンプリコンを生成するステップと、
ジオール切断剤を導入して、前記オルソゴナルに切断可能な結合を介して前記第1のポリマーヒドロゲルに結合した前記DNA試料断片を切り離すステップと、を更に含む請求項56に記載の方法。
【請求項58】
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
各凹部の第1の部分に配置された第1のポリマーヒドロゲルと、
オルソゴナルに切断可能な結合を介して前記第1のポリマーヒドロゲル上に固定されたトランスポソーム前駆体と、
各凹部の第2の部分に配置され、前記第1のポリマーヒドロゲルが含まないトランスポソーム捕捉官能基を含む第2のポリマーヒドロゲルと、
前記第1のポリマーヒドロゲル及び前記第2のポリマーヒドロゲルの各々に固定された増幅プライマーセットの第1のプライマー及び第2のプライマーと、を備えるフローセル。
【請求項59】
約18℃~約25℃の範囲の温度で、細胞試料を酸化亜鉛ナノ材料に曝露することによって、前記細胞試料からの、デオキシリボ核酸又はリボ核酸の、界面活性剤を含まない抽出を開始し、粗溶解物を生成するステップと、
前記粗溶解物中の抽出されたデオキシリボ核酸又はリボ核酸を、タグメント化に曝露するステップと、を含む方法。
【請求項60】
前記酸化亜鉛ナノ材料が、プロテアーゼと組み合わされ、
前記粗溶解物中の抽出されたデオキシリボ核酸又はリボ核酸を、タグメント化に曝露する前に、熱を使用して前記プロテアーゼを不活性化するステップを更に含む請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記プロテアーゼが、熱分解性プロテインキナーゼである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記粗溶解物中の前記抽出されたデオキシリボ核酸又はリボ核酸を、タグメント化に曝露するステップが、フローセル内の表面に固定されたトランスポソーム複合体及びプライマーを含むフローセルに、粗溶解物を導入するステップを含む、請求項59から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記粗溶解物が導入される際に、前記フローセルにタグメント化緩衝液を導入するステップと、
前記フローセルを30℃以上の温度にするステップと、を更に含む請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記フローセルを約60℃まで加熱するステップと、
洗浄溶液を前記フローセルに流すステップと、
増幅ミックスを前記フローセルに導入するステップと、を更に含む請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記タグメント化緩衝液が、前記トランスポソーム複合体のトランスポザーゼのための金属補因子を含む、請求項63又は64に記載の方法。
【請求項66】
前記粗溶解物が溶解チューブ中で生成され、前記粗溶解物中の抽出されたデオキシリボ核酸又はリボ核酸を、タグメント化に曝露するステップが、タグメント化緩衝液と、表面結合トランスポソーム複合体及び表面結合プライマーを含む固体支持体とを、前記溶解チューブに導入するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記タグメント化緩衝液が、前記表面結合トランスポソーム複合体のトランスポザーゼのための金属補因子を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記粗溶解物が試料収集デバイス内で生成され、前記酸化亜鉛ナノ材料が前記試料収集デバイスの表面上で乾燥される、請求項59に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞試料を前記酸化亜鉛ナノ材料に曝露するステップが、約2分間~約30分間の範囲の時間にわたって実施される、請求項59から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞試料と前記酸化亜鉛ナノ材料が、1:1の体積比で存在する、請求項59から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記タグメント化が、溶液中で実施される、請求項59に記載の方法。
【請求項72】
フローセルと試薬カートリッジとストレプトアビジンとを含むタグメント化キットであって、
前記フローセルが、
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
前記凹部の各々の中に固定された第1のプライマー及び第2のプライマーと、
前記凹部の各々の中に固定されたビオチン含有リンカーと、を含み、
前記試薬カートリッジが、
流体入力ポートと、
トランスポソーム緩衝液とタグメント化緩衝液とを各々含む複数のレセプタクルと、を含み、
前記トランスポソーム緩衝液が、第1の増幅ドメイン及び5’ビオチン化末端を各々有する複数の第1のトランスポソーム複合体と、第2の増幅ドメイン及び5’ビオチン化末端を各々有する第2のトランスポソーム複合体と、を含み、
前記ストレプトアビジンが、ビオチン含有リンカーに結合しているか、又は前記試薬カートリッジのレセプタクル内に含まれるかのいずれかである、タグメント化キット。
【請求項73】
前記試薬カートリッジが、前記レセプタクルの1つの中に、無機塩を含まない溶解緩衝液を更に含み、前記無機塩を含まない溶解緩衝液が、プロテアーゼ、2mM未満のエチレンジアミン四酢酸、及びカオトロピック剤を含む、請求項72に記載のタグメント化キット。
【請求項74】
i)前記無機塩を含まない溶解緩衝液が液体であり、前記無機塩を含まない溶解緩衝液が水を更に含む、又は
ii)前記無機塩を含まない緩衝液が乾燥固体であり、前記試薬カートリッジが前記複数のレセプタクルのうちの他の1つの中に再構成流体を更に含む、請求項73に記載のタグメント化キット。
【請求項75】
前記試薬カートリッジが、前記レセプタクルの他の1つに前記カオトロピック剤の阻害剤を更に含む、請求項73又は74に記載のタグメント化キット。
【請求項76】
フローセルと試薬カートリッジとを含むタグメント化キットであって、
前記フローセルが、
間隙領域によって分離された複数の凹部を含む基材と、
前記凹部の各々の中に固定された、第1のプライマー及び第2のプライマーと、を含み、
前記試薬カートリッジが、
流体入力ポートと、
ビオチン含有リンカーとトランスポソーム緩衝液とを各々含む複数のレセプタクルと、を含み、
前記トランスポソーム緩衝液が、第1の増幅ドメイン及び5’ビオチン化末端を各々有する複数の第1のトランスポソーム複合体と、第2の増幅ドメイン及び5’ビオチン化末端を各々有する複数の第2のトランスポソーム複合体と、を含む、タグメント化キット。
【請求項77】
前記試薬カートリッジが、前記複数のレセプタクルのうちの1つの中に、無機塩を含まない溶解緩衝液を更に含み、前記無機塩を含まない溶解緩衝液が、プロテアーゼ、2mM未満のエチレンジアミン四酢酸、及びカオトロピック剤を含む、請求項76に記載のタグメント化キット。
【請求項78】
i)前記無機塩を含まない溶解緩衝液が液体であり、前記無機塩を含まない溶解緩衝液が水を更に含む、又は
ii)前記無機塩を含まない緩衝液が乾燥固体であり、前記試薬カートリッジが、前記複数のレセプタクルのうちの他の1つの中に再構成流体を更に含む、請求項77に記載のタグメント化キット。
【請求項79】
前記試薬カートリッジが、前記複数のレセプタクルのうちの他の1つの中に前記カオトロピック剤の阻害剤を更に含む、請求項77又は78に記載のタグメント化キット。
【請求項80】
フローセルであって、
間隙領域によって分離された複数の深さの凹部を有する基材であって、各複数の凹部が、深部と浅部とを含む、基材と、
前記深部及び前記浅部の各々の内部の表面上に配置された、ポリマーヒドロゲルと、
前記浅部の表面に固定された第1のプライマーセットと、
前記浅部の表面に固定された第1のトランスポソーム複合体であって、第1の増幅ドメインを含む、第1のトランスポソーム複合体と、
前記深部の表面に固定された第2のプライマーセットと、
前記深部の表面に固定された第2のトランスポソーム複合体であって、第2の増幅ドメインを含む、第2のトランスポソーム複合体と、を含むフローセル。
【請求項81】
間隙領域によって分離された複数の深さの凹部を有する基材の上に、ポリマーヒドロゲルを施すステップであって、各複数の凹部が深部と浅部とを含む、ステップと、
前記間隙領域から前記ポリマーヒドロゲルを除去するステップと、
フォトレジストを現像して前記深部に不溶性フォトレジストを生成することによって、前記浅部を露出されたままにするステップと、
前記不溶性フォトレジストが前記深部にある間に、前記浅部の表面上に第1のプライマーセット及び第1のトランスポソーム複合体を固定するステップと、
前記不溶性フォトレジストを除去するステップと、
前記浅部の表面上に第2のプライマーセット及び第2のトランスポソーム複合体を固定するステップと、を含む方法。
【請求項82】
前記ポリマーヒドロゲルが、研磨を使用して前記間隙領域から除去される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記フォトレジストがネガティブフォトレジスト、又はポジティブフォトレジストである、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
第1の非転移鎖にハイブリダイズした第1の転移鎖の一部と共に、第1のトランスポゾン末端を各々含む複数の第1のタイプのトランスポソーム複合体を使用して、溶液中でDNA試料をタグメント化するステップであって、前記第1の転移鎖が、第1の増幅ドメイン及びインデックス配列を含むことによって、最初に転移された鎖の3’末端に、5’末端でそれぞれ結合した二本鎖DNA断片を生成するステップと、
前記二本鎖DNA断片を含む溶液を、フローセルの表面に固定された複数の第2のタイプのトランスポソーム複合体を含むフローセルに導入するステップであって、前記第2のタイプのトランスポソーム複合体が、第2の非転移鎖にハイブリダイズした第2の転移鎖の一部を有する第2のトランスポゾン末端を含み、前記第2の転移鎖が、第2の増幅ドメインを含み、インデックス配列を含まないことによって、二本鎖DNA断片をタグメント化して、第2の転移鎖の3’末端に、5’末端でそれぞれ結合した新たな二本鎖DNA断片を生成するステップと、を含む方法。
【請求項85】
前記フローセルが、前記表面に固定された第1のプライマー及び第2のプライマーを更に含み、
前記第1の増幅ドメイン及び前記第1のプライマーが同一の配列を有し、
前記第2の増幅ドメイン及び前記第2のプライマーが同一の配列を有する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記第1の非転移鎖及び前記第2の非転移鎖を脱ハイブリダイズするステップと、
前記新たな二本鎖DNA断片に追加のアダプターを付加するために、伸長反応を実施するステップと、を更に含む請求項84又は85に記載の方法。
【請求項87】
表面に結合した複数の第1のタイプのトランスポソーム複合体を使用して、フローセルの表面に二本鎖DNA断片を生成するステップであって、前記第1のタイプのトランスポソーム複合体が、第1の非転移鎖にハイブリダイズした第1の転移鎖の一部を有する第1のトランスポゾン末端を含み、前記第1の転移鎖が、第1の増幅ドメインを含み、前記二本鎖DNA断片が、各々、5’末端で前記第1の転移鎖の3’末端に結合するステップと、
複数の第2のタイプのトランスポソーム複合体を、前記フローセルに導入するステップであって、前記第2のタイプのトランスポソーム複合体が、第2の非転移鎖にハイブリダイズした第2の転移鎖の一部を有する第2のトランスポゾン末端を含み、第2の転移鎖が、第2の増幅ドメインを含むことによって、前記二本鎖DNA断片をタグメント化して、各々5’末端で前記第2の転移鎖の3’末端に結合した新しい二本鎖DNA断片を生成するステップと、を含む方法。
【請求項88】
前記二本鎖DNA断片を生成するステップが、
DNA試料及びタグメント化緩衝液を前記フローセルに導入するステップと、
前記第1のタイプのトランスポソーム複合体を使用して、前記DNA試料のタグメント化を実行するステップと、を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記第1のタイプのトランスポソーム複合体及び前記第2のタイプのトランスポソーム複合体の各々のトランスポザーゼ酵素を除去するステップと、
前記新たな二本鎖DNA断片に追加のアダプターを付加するために、伸長反応を実施するステップと、を更に含む請求項87又は88に記載の方法。
【請求項90】
第1のタイプのトランスポソーム複合体を、フローセルの凹部に導入するステップであって、前記第1のタイプのトランスポソーム複合体が、非転移鎖にハイブリダイズした転移鎖の一部を有するトランスポゾン末端を含み、前記転移鎖が、第1の増幅ドメインを含む、ステップと、
DNA試料を前記フローセルに導入することによって、前記第1のタイプのトランスポソーム複合体が前記DNA試料をタグメント化して、5’末端で前記転移鎖の3’末端に結合し、3’末端では結合していない第1の鎖と、3’末端及び5’末端の両方で結合していない第2の鎖とを有する二本鎖DNA断片を生成するステップと、
第2のタイプのトランスポソーム複合体を前記フローセルに導入するステップであって、前記第2のタイプのトランスポソーム複合体が、第2の非転移鎖にハイブリダイズした第2の転移鎖の一部を有する第2のトランスポゾン末端を含み、前記第2の転移鎖が、第2の増幅ドメインを含むことによって、前記二本鎖DNA断片の第2の鎖の5’末端が、前記第2の転移鎖に結合するステップと、を含む方法。
【請求項91】
前記第1のタイプのトランスポソーム複合体及び前記第2のタイプのトランスポソーム複合体の各々のトランスポソーム酵素を除去するステップと、
前記二本鎖DNA断片に追加のアダプターを付加するために、伸長反応を実施するステップと、を更に含む請求項90に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/293494号、2022年3月25日に出願された米国仮特許出願第63/323890号、2022年8月11日に出願された米国仮特許出願第63/371165号、2022年10月25日に出願された米国仮特許出願第63/380878号の利益を主張するものであり、これらは各々、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表の参照)
本明細書に添付して提出された配列表は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。ファイルの名称は「ILI228BPCT_IP-2481-PCT_Sequence_Listing_ST25.txt」であり、ファイルのサイズは12,576バイトであり、ファイルの作成日は2022年12月16日である。
【背景技術】
【0003】
二本鎖DNA(dsDNA)標的分子を断片化及びタグ付けして、より小さい一本鎖DNA分子(ssDNA)のライブラリを生成することができる。これらのより小さい一本鎖DNA分子は、DNA配列決定反応における鋳型として、使用され得る。鋳型は、短いリード長を得ることを可能にし得、次いで、データ分析の間に、重複する短い配列リードを整列させて、より長い核酸配列を再構築することができる。二本鎖DNAの断片化及びタグ付けのためのいくつかの方法は、過剰な廃棄物を生成し、断片化のための高価な機器を伴い、時間がかかる。
【0004】
断片化及びタグ付けの前に、dsDNA標的分子は、全血試料、骨髄穿刺液、組織試料、血液スポット、又は唾液から抽出され得る。いくつかの抽出プロセスは、断片化及び/又はタグ付けの間に起こる酵素反応を阻害する、1つ以上の試薬を利用する。したがって、抽出されたdsDNA標的分子は、更なる調製技術に曝露される前に、精製プロセスに曝露され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
フローセル内の表面に結合したトランスポソーム複合体及びプライマーを含む、いくつかのフローセルが本明細書に開示される。第1のタイプのトランスポソーム複合体がフローセルの第1の部分上でアセンブルされ、第2のタイプのトランスポソーム複合体(例えば、プレアセンブルされたトランスポソーム複合体)がフローセルの第2の部分に結合することを可能にする、他のフローセルが本明細書に開示される。これらの他のフローセルでは、プライマーは、第1の及び第2の部分の両方に結合する。これらのフローセルの各々の表面化学の一部として、トランスポソーム複合体及びプライマーは、DNA試料タグメント化及び伸長増幅がフローセル表面上で起こることを可能にし、したがって、オフフローセルライブラリ調製(例えば、オフフローセルDNA試料タグメント化)の必要性を排除する。
【0006】
本明細書に開示されるフローセルのいくつかは、フローセル内の表面に非対称的に結合する、トランスポソーム複合体を含む。「非対称的に結合する」とは、一方のトランスポソーム複合体が、その5’末端を介してフローセル表面に結合し、他方のトランスポソーム複合体が、その3’末端を介してフローセルに結合することを意味する。これらの例では、非対称的に結合したトランスポソーム複合体の比率は、より多くの3’末端結合トランスポソーム複合体が存在するように歪められる。非対称結合及びその比は、伸長増幅の結果として、3’末端及び5’末端の両方に同一の増幅ドメインを有する、断片化鎖の発生を減少させる。これらの特定の断片化された鎖の発生を減少させることは、フィルタを通過するリードのパーセンテージ(すなわち、チャスティティ閾値を通過し、配列決定データの更なる処理及び分析のために使用される、クラスタを記載するために使用される指標)を増加させ得る。
【0007】
本明細書に開示されるフローセルの更に他の例は、フローセル内の表面に結合した、1つのタイプのトランスポソーム複合体のみを含む。これらの例では、第2のタグメント化ステップは、フローセルから離れて、又はワークフローのある時点でフローセルに追加のトランスポソーム複合体を導入するステップによって、形成することができる。
【0008】
トランスポソーム複合体をフローセル表面に結合させるための方法も、本明細書に開示される。これらの方法は効率的であり、フローセル製造中に、又はフローセルの初期設定の一部として、実施することができる。
【0009】
タグメント化DNA試料のインサートサイズを増加させる方法も、本明細書に開示される。プラス鎖リード及びマイナス鎖リード(例えば、リード1及びリード2)は更に離れるので、より大きなインサートは、リードを参照に整列させるときに役立つ。より大きなインサートはまた、リード1及びリード2の重複の機会を減少させ、これは、GCバイアスを助け、そうでなければ扱いにくい領域(例えば、ショートタンデムリピート(STR)、ホモポリマーなど)の、配列決定精度を改善することができる。
【0010】
タグメント化を行った後、カオトロピック剤を導入して、トランスポソーム複合体からトランスポザーゼを除去してもよい。本明細書に開示される方法のいくつかは、カオトロピック剤の導入後に、カオトロピック剤のキレート剤の導入を含む。キレート剤は、カオトロピック剤を隔離することができ、したがって、伸長反応及び増幅反応などの、下流プロセスにおいて使用される酵素(例えば、リガーゼ、ポリメラーゼ)の変性を防止する。
【0011】
全血試料、骨髄穿刺液、組織試料、血液スポット、又は唾液からなる群から選択される試料から、DNAを抽出するための、更なる方法が本明細書に開示される。この方法は、DNAを抽出するための特定の溶解緩衝液、及び溶解緩衝液中のカオトロピック剤を隔離するための前述のキレート剤を利用する。この方法は、複合体化された粗溶解物を生成し、これは、最初に精製プロセスに曝露される必要なく、本明細書中に開示されるオンフローセルDNA試料タグ付断片化を含む、種々のライブラリ調製方法において使用され得る。したがって、この方法は、DNAを抽出してから、抽出されたDNAからライブラリ断片を生成するまでの間に含まれる、時間の量を減少させ得る。
【0012】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかになろう。図面において、同様の参照番号は、同一ではないかもしれないが類似のものである構成要素に対応している。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが現れる他の図面と関連させて説明される場合も、説明されない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】ポリマーヒドロゲルにグラフトされた、二量体形態のトランスポソーム複合体を含む、本明細書に開示されるフローセルの一例の、1つの凹部の概略図である。
図1B】ポリマーヒドロゲルにグラフトされた単一のトランスポソーム複合体を含む、本明細書に開示されるフローセルの一例の、1つの凹部の概略図である。
図1C】DNA試料がタグメント化を受けた後の、図1Bの凹部の概略図である。
図1D】トランスポザーゼ除去及び伸長反応後の、図1Cの凹部の概略図である。
図2A】ビオチン含有リンカーを介してポリマーヒドロゲルに結合した、トランスポソーム複合体を含む、本明細書に開示されるフローセルの他の例の、1つの凹部の概略図である。
図2B】ビオチン含有リンカーを介してポリマーヒドロゲルに結合した、トランスポソーム複合体及びプライマーを含む、本明細書に開示されるフローセルの更に他の例の、1つの凹部の概略図である。
図3A】空間的に分離されたトランスポソーム複合体及びプライマーを含む、本明細書に開示されるフローセルの一例の、1つの凹部の概略図である。
図3B】空間的に分離されたトランスポソーム複合体及びプライマーを含む、本明細書に開示されるフローセルの一例の、1つの多深度凹部の概略図である。
図4】空間的に分離されたトランスポソーム複合体及びプライマーを含む、本明細書に開示されるフローセルの他の例の、1つの凹部の概略図である。
図5】空間的に分離されたトランスポソーム複合体及びプライマーを含む、本明細書に開示されるフローセルの更に他の例の、1つの凹部の概略図である。
図6】スペルミジンがDNA試料と共に添加された場合の、対照及び実施例のタグメント化後の、X軸上に示されるインサートサイズ(塩基対)を有する、リード(Y軸)のパーセンテージを示すグラフである。
図7】対照(非修飾トランスポソーム複合体を使用)、及びトランスポソーム複合体が非転移鎖から5’リン酸を除去するステップによって修飾される場合の実施例の、タグメント化後の、X軸に示されるインサートサイズ(塩基対)を有する、リード(Y軸)のパーセンテージを示すグラフである。
図8】対照(チューブ中のイルミナPCRフリーDNA調製物)、並びにi)非転移鎖から5’リン酸を除去し、3’色素を非転移鎖に添加するステップ、ii)非転移鎖に3’色素を添加するステップ、及びiii)非転移鎖から5’リン酸を除去するステップによって、トランスポソーム複合体を修飾した場合の、4つの異なる例の、タグメント化後の、X軸に示されるインサートサイズ(塩基対)を有する、リードのパーセンテージ(Y軸)を示すグラフである。
図9】対照(非修飾トランスポソーム複合体を使用)、及びトランスポソーム複合体が3’ジデオキシシトシンを転移鎖に付加するステップによって修飾される場合の、5つの異なる例の、タグメント化後の、X軸に示されるインサートサイズ(塩基対)を有する、リード(Y軸)のパーセンテージを示すグラフである。
図10】2つの異なる対照方法を使用して生成されたライブラリ断片、及び本明細書に開示される例示的な方法を使用して全血試料から生成されたライブラリ断片について、i)インサートサイズ(塩基対)、ii)Q30塩基のパーセンテージ、iii)マッピングされたリードのパーセンテージ、iv)カバレッジ、及びv)フィルタを通過するリードのパーセンテージ(%PF)を示すグラフである。
図11図11A図11B図11C図11Dは各々、2つの異なるポリメラーゼによるポリメラーゼ連鎖反応(PCT)中に、ベータシクロデキストリンがドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に対して有する効果を示す、自動電気泳動ゲル画像(白黒で再現)を示す。
図12】2つの異なる対照試料及び実施例試料について、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)収率(nM、Y軸)、対ギャップ充填ライゲーションステップで使用したベータシクロデキストリンのパーセンテージを示すグラフである。
図13A】陥没内に非対称に結合したトランスポソーム複合体を含む、本明細書に開示されるフローセルの一例の、1つの凹部の概略図である。
図13B】DNA試料がタグメント化を受けた後の、図13Aの凹部の概略図である。
図13C】トランスポザーゼ除去後で伸長反応前の、図13Bの凹部の概略図である。
図13D】脱ハイブリダイゼーション後の、図13Bの凹部の概略図である。
図14A図13Aの非対称的に結合したトランスポソーム複合体の一例を、概略的に示す。
図14B図13Aの非対称的に結合したトランスポソーム複合体の他の例を、概略的に示す。
図15A】本明細書に開示されるフローセルの他の例の1つの凹部の概略図であり、凹部は、フローセルの第1の部分上に第1のタイプのトランスポソーム複合体をアセンブルするため、及びフローセルの第2の部分に第2のタイプのトランスポソーム複合体(すなわち、プレアセンブルされたトランスポソーム複合体)を結合させるための、異なる化学を含む。
図15B】第1の部分上にアセンブルされた第1のタイプのトランスポソーム複合体、及び第2の部分に結合したプレアセンブルされたトランスポソーム複合体を有する、図15Aの凹部の概略図である。
図15C】DNA試料のタグメント化後の、図15Bの凹部の概略図である。
図15D】トランスポザーゼ除去後の、図15Cの凹部の概略図である。
図15E】鎖置換反応後の、図15Dの凹部の概略図である。
図15F】洗浄後の、図15Eの凹部の概略図である。
図15G】ハイブリダイゼーション後の、図15Fの凹部の概略図である。
図15H】ポリメラーゼ伸長後の、図15Gの凹部の概略図である。
図15I】オルソゴナルに切断可能な結合の切断後の、図15Hの凹部の概略図である。
図15J】クラスタリング後の、図15Iの凹部の概略図である。
図16A図15Bのアセンブルされたトランスポソーム複合体の一例を、概略的に示す。
図16B図15Bのプレアセンブルされたトランスポソーム複合体の一例を、概略的に示す。
図17】本明細書に開示されるフローセルのいくつかの例では使用することができる、例示的なプライマーセットの概略図である。
図18】手動で抽出された、又は自動化プロセスを介して抽出された、血液試料についてのDNA収量を示す棒グラフであり、プロテイナーゼKが溶解緩衝液に添加されたか、又は試料収集チップ上で予め乾燥された。
図19】本明細書に開示される3つの例示的な方法を使用して全血試料から生成されたライブラリ断片について、i)インサートサイズ(塩基対)、ii)Q30塩基のパーセンテージ、iii)マッピングされたリードのパーセンテージ、iv)カバレッジ、及びv)フィルタを通過するリードのパーセンテージ(%PF)を示すグラフである。
図20】i)インサートサイズ(塩基対)、ii)Q30塩基のパーセンテージ、iii)マッピングされたリードのパーセンテージ、iv)カバレッジ、並びにv)液体ストレプトアビジン、及び凍結乾燥及び再構成されたストレプトアビジンを使用して調製されたフローセルを使用して、DNA試料から生成されたライブラリ断片についての、フィルタを通過するリードのパーセンテージ(%PF)を示すグラフである。
図21】i)インサートサイズ(塩基対)、ii)Q30塩基のパーセンテージ、iii)マッピングされたリードのパーセンテージ、iv)カバレッジ、並びにv)液体溶解緩衝液、及び凍結乾燥及び再構成された溶解緩衝液を使用して調製された全血試料から生成された、ライブラリ断片についての、フィルタを通過するリードのパーセンテージ(%PF)を示すグラフである。
図22】i)インサートサイズ(塩基対)、ii)Q30塩基のパーセンテージ、iii)マッピングされたリードのパーセンテージ、iv)カバレッジ、並びにv)液体タグメント化緩衝液、及び凍結乾燥及び再構成されたタグメント化緩衝液中で調製されたDNA試料から生成された、ライブラリ断片についての、フィルタを通過するリードのパーセンテージ(%PF)を示すグラフである。
図23】i)インサートサイズ(塩基対)、ii)Q30塩基のパーセンテージ、iii)マッピングされたリードのパーセンテージ、iv)ライブラリ断片のためのフィルタを通過するリードのパーセンテージ(%PF)、並びにv)市販のNextSeq(登録商標)2K配列決定キット、及び本明細書中に記載される例示的なワークフローを使用して調製及び配列決定されたDNA試料から生成された、カバレッジを示すグラフである。
図24】タグメント化キットの一例の、概略図である。
図25】結合化学(BCN-ビオチン-ストレプトアビジン)が異なる方法を介して導入されたフローセルを使用して、調製及び配列決定されたDNA試料から生成された、ライブラリ断片について、i)インサートサイズ(塩基対)、ii)占有率又は占有率%、iii)Q30塩基のパーセンテージ、iv)マッピングされたリードのパーセンテージ、及びv)フィルタを通過するリードのパーセンテージ(%PF)を示すグラフである。
図26A】例示的な方法を示す概略図であり、ポリマーヒドロゲルが導入された複数の深さの凹部を示す。
図26B】例示的な方法を示す概略図であり、複数の深さの凹部の一方の部分への第1のトランスポソーム及びプライマーセットの導入を示し、複数の深さの凹部の他方の部分は不溶性フォトレジストでマスクされている。
図26C】例示的な方法を示す概略図であり、複数の深さの凹部の他方の部分への第2のトランスポソーム及びプライマーセットの導入を示す。
図26D】例示的な方法を示す概略図であり、複数の深さの凹部にわたるタグメント化を示す。
図27】フローセル凹部において1つのタイプのトランスポソーム複合体から始まる、異なる例示的な方法を示す、概略フロー図である。
図28】連結化学(BCN-ビオチン-ストレプトアビジン)が異なる方法を介して導入されたフローセルを使用して、調製及び配列決定されたDNA試料から生成された、ライブラリ断片について、i)インサートサイズ(塩基対)、ii)占有率又は占有率%、iii)Q30塩基のパーセンテージ、iv)マッピングされたリードのパーセンテージ、及びv)フィルタを通過するリードのパーセンテージ(%PF)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示されるフローセルの例は、フローセルの表面に固定された、トランスポソーム複合体を含む。フローセル表面にトランスポソーム複合体を組み込むことによって、DNA試料のタグ付けをフローセル表面で実施することができる。フローセルでは、タグメント化は、断片の増幅及び配列決定が実施される同一の表面上に、DNA試料断片(又はより大きなDNA試料のライブラリ断片)を生成する。これは、ライブラリ断片を生成するためのオフフローセルDNA試料調製の必要性が排除され、したがって、より流れに沿った効率的なプロセスが提供される。
【0015】
いくつかの例では、トランスポソーム複合体及び/又はタグメント化において使用される試薬は、断片化産物のインサートサイズを増加させるために修飾され、これは望ましい場合がある。
【0016】
本明細書に開示される方法のいくつかにおいて、タグメント化が実施された後にカオトロピック剤を隔離するために、カオトロピック剤のキレート剤が使用される。本明細書に記載される様式での隔離は、カオトロピック剤を、下流プロセスにおいて使用される酵素(例えば、リガーゼ、ポリメラーゼ)を変性させないままにし、また、タグメント化後の洗浄の必要性を排除する。ビーズベースのタグメント化プロセスが使用される場合、本明細書に記載される様式での隔離はまた、タグメント化緩衝液からビーズを分離するための、磁石の必要性を排除する。
【0017】
いくつかの例では、DNA試料断片を生成するために使用されるDNA試料は、最初に精製に曝露されることなく、ライブラリ調製に直接曝露されることを可能にする様式で、全血試料から調製される。
【0018】
更に他の例では、タグメント化において使用されるトランスポソーム複合体は、3’末端及び5’末端の両方に同一の増幅ドメインを有する断片鎖の発生を減少させるために、非対称的に結合する。
【0019】
定義
本明細書で使用される用語は、別段の指定がない限り、関連技術の通常の意味をとるものと理解されるであろう。本明細書で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味は、以下に記載される。
【0020】
本明細書で使用されるとき、単数形での記載は、文脈上明確に別段の指示がない限り、単数形並びに複数形の両方を指す。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「包含する」、「含有する」又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非限定的であり、更なる列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0021】
「一例」、「別の例」、「例」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、組成、構成、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在していても、存在していなくともよいことを意味している。加えて、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載の要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせられ得ることを理解すべきである。
【0022】
特許請求の範囲を含む本開示全体で使用される「実質的に」及び「約」という用語は、処理における変動などに起因するような小さな変動を記載及び説明するために使用される。例えば、これらの用語は、表示値から±5%以下を指すことができ、例えば、表示値から±2%以下、記載値から±1%以下、表示値から±0.5%以下、表示値から±0.2%以下、表示値から±0.1%以下、表示値から±0.05%以下を指すことができる。
【0023】
アダプター:例えば、ライゲーション又はタグメンテーションによって核酸分子に融合され得る直鎖状オリゴヌクレオチド配列。好適なアダプターの長さは、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、又は約12ヌクレオチド~約60ヌクレオチド、又は約15ヌクレオチド~約50ヌクレオチドの範囲であり得る。アダプターは、ヌクレオチド及び/又は核酸の任意の組み合わせを含み得る。いくつかの例では、アダプターは、鋳型増幅及びクラスタ生成のための開始点として機能し得る、例えば、P5又はP7配列などのユニバーサルヌクレオチド配列を有する、増幅ドメインを含み得る。他の例では、アダプターは、フローセル表面結合プライマー(ユニバーサルヌクレオチド配列を含む)の少なくとも一部に、相補的な配列を含み得る。後者の実施例では、アダプター配列は、増幅及びクラスタ生成の間に、相補的フローセル表面結合プライマーに、ハイブリダイズすることができる。いくつかの例では、アダプターはまた、配列決定プライマー配列(すなわち、配列決定結合部位)、又は配列決定試料インデックス(すなわち、バーコード配列)を含み得る。異なるアダプターの組み合わせを、タグメント化を介して生成したDNA断片などの、核酸分子に組み込むことができる。
【0024】
増幅ドメイン:鋳型増幅及びクラスタ生成のための開始点として役立ち得る、P5又はP7配列などのユニバーサルヌクレオチド配列を有する、アダプターの部分。
【0025】
非対称的に結合する:トランスポソーム複合体の群内で、一部は非転移鎖の3’末端を介してフローセル表面に結合し、他の一部は転移鎖の5’末端を介してフローセル表面に結合する。
【0026】
複合体粗溶解物:全血試料、骨髄穿刺液、組織試料、血液スポット、及び唾液からなる群から選択される試料を、i)無機塩を含まない溶解緩衝液、ii)無機塩を含まない溶解緩衝液中に含まれるプロテアーゼの不活性化、及びiii)無機塩を含まない溶解緩衝液中のカオトロピック剤のキレート剤に、曝露するステップによって生成される、生成物。この産物は、最初に精製方法に曝露されることなく、下流のライブラリ調製技術において使用され得る。
【0027】
堆積:手動又は自動のものであってよく、場合によっては表面特性の変更をもたらす、任意の適切な施用技術。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して実行され得る。いくつかの特定の例としては、化学気相堆積(chemical vapor deposition、CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、液滴分配(puddle dispensing)、フロースルーコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0028】
凹部:基材又は層の間隙領域(複数可)によって少なくとも部分的に囲まれた、表面開口部を有する、基材又は基材の層(例えば、パターン化された樹脂)における、別個の凹状の特徴。凹部は、表面の開口部において、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を持つ)などの、様々な形状のいずれかをとることができる。表面と直交するようにとられた凹部の断面は、湾曲形状、正方形、多角形、双曲線、円錐、角のある形状などであることができる。凹部は、畝、段差など、より複雑なアーキテクチャを有してもよい。
【0029】
DNA試料:RNA(リボ核酸)試料に由来する、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド類似体、又は相補的デオキシリボヌクレオチドを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態。DNA試料は、二本鎖である。DNA試料は、窒素含有ヘテロ環塩基(アデニン、チミン、シトシン、及び/又はグアニンなどの核酸塩基)、糖(具体的には、デオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基を欠く糖)、及びホスホジエステル結合を含有する骨格を含む、天然に存在するDNAを含み得る。類似体構造は、当技術分野で知られている様々なもののいずれかを含む代替骨格結合を有することができる。
【0030】
DNA試料は、1つ以上の細胞、体液(例えば、全血、血液スポット、唾液)又は組織から単離することができる、ゲノムDNA(gDNA)であってもよい。gDNAは、DNAを含有する細胞を溶解するステップによって、調製することができる。細胞は、細胞のgDNAの完全性を実質的に保存する条件下において溶解してもよい。特定の一例では、熱溶解を使用して、細胞を溶解してもよい。別の特定の例では、細胞のアルカリ性pHへの曝露を使用して、gDNAへの損傷を比較的わずかにしながら細胞を溶解することができる。例えば水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムなどを含む、様々な塩基性化合物のいずれかを、溶解に使用することができる。加えて、比較的損傷していないgDNAは、細胞壁を分解する酵素によって溶解された細胞から得ることができる。天然又は酵素的除去に起因するかのいずれかである細胞壁を欠く細胞もまた、浸透ストレスへの曝露によって溶解することができる。細胞を溶解するために使用することができる他の条件としては、洗剤への曝露、機械的破壊、超音波処理熱、フレンチプレス装置などの圧力差、又はダウンス型ホモジナイゼーション(Dounce homogenization)が挙げられる。gDNAを安定化する剤は、例えば、ヌクレアーゼ阻害剤、キレート剤、塩、及び緩衝剤などを含む、細胞溶解物又は単離されたgDNA試料に含まれ得る。いくつかの例では、gDNAを含有する粗細胞溶解物は、gDNAを更に単離することなく直接使用され得る。一例では、全血試料は、無機塩を含まない溶解緩衝液を使用して溶解されてもよく、粗溶解物は、本明細書で定義される複合体粗溶解物を生成するために、特定の処理ステップに曝露されてもよい。この複合体化した粗溶解物はまた、更なる単離又は精製なしに、DNA試料として使用され得る。
【0031】
各々:アイテムのコレクションを参照して使用される場合、各々が、コレクション内の個々のアイテムを識別するが、必ずしもコレクション内のすべてのアイテムを指すわけではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外が生じ得る。
【0032】
フローセル:反応を実行できる流路と、チャンバに試薬(複数可)を送達するための入口と、チャンバから試薬(複数可)を除去するための出口とを有する容器。いくつかの例では、フローセルは、そこで発生する反応の検出を可能にする。例えば、フローセルは、アレイ、光学的標識分子などの光学的検出を可能にする1つ以上の透明な表面を含み得る。
【0033】
流路:液体試料を選択的に受け取ることができ、結合又はその他の方法で結合した、2つの構成要素間に画定された領域。いくつかの例では、流路は、2つの、パターン化された又はパターン化されていない配列決定表面の間に画定され得、したがって、配列決定表面(複数可)の1つ以上の構成要素と流体連通し得る。
【0034】
断片:DNA試料の一部又は小片。「部分的に適合された断片」は、タグメント化されたDNA試料の一部又は断片であり、したがって、DNA断片の5’末端にライゲーションされたアダプターを含む。「完全に適合された断片」は、DNA断片の3’末端及び5’末端の両方に組み込まれたアダプターを有する、DNA試料の一部又は断片である。
【0035】
無機塩を含まない溶解緩衝液:例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び炭酸ナトリウムなどのナトリウム塩、塩化カリウムなどのカリウム塩、及び塩化リチウムなどのリチウム塩、などの無機塩を含有しない、溶解緩衝液。無機塩を含まない溶解緩衝液は、キレート剤又は界面活性剤として機能するものを含む、有機塩を含んでもよい。
【0036】
プライマー:断片に結合したアダプターなど、標的配列にハイブリダイズし得る、一本鎖核酸分子。一例として、フローセル表面は、断片増幅及びクラスタ生成の開始点として、機能し得る。他の例として、断片又は断片アンプリコンに相補的な新しい鎖の合成をプライミングするために、断片又は断片アンプリコンにハイブリダイズすることができる、プライマー(例えば、配列決定プライマー)を導入することができる。任意のプライマーは、ヌクレオチド又はそれらの類似体の任意の組み合わせを含むことができる。一部の例では、プライマーは、一本鎖のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。プライマーの長さは、任意の数の塩基長であり得る。一例では、フローセル表面の各々は、プライマーに結合しており、捕捉プライマー又は配列決定プライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の、一本鎖である。
【0037】
タグメント化:分析のために、DNA試料が切断/断片化され、(例えば、アダプターで)タグ付けされるプロセス。タグメント化は、インビトロ転移反応である。
【0038】
転移鎖及び非転移鎖:「転移鎖」という用語は、トランスポゾン末端の転移した部分を含む、配列を指す。同様に、「非転移鎖」という用語は、トランスポゾン末端の非転移部分を含む、配列を指す。転移鎖の3’末端は、タグメント化の間に、二本鎖断片に、連結又は転移される。非転移鎖は、タグメント化の間に、二本鎖断片に、連結又は転移されない。一例では、転移鎖及び非転移鎖は、互いに共有結合している、少なくとも部分的に相補的な部分を含む。
【0039】
トランスポザーゼ:トランスポゾン末端含有組成物(例えば、トランスポゾン、トランスポゾン末端、トランスポゾン末端組成物)を含む機能複合体を形成し、例えば、インビトロ転移反応(すなわち、タグメント化)で、それがインキュベーションされる二本鎖DNA試料への、トランスポゾン末端含有組成物の、挿入又は転位を触媒することができる、酵素。本明細書に提示されるトランスポザーゼはまた、レトロトランスポゾン及びレトロウイルスからのインテグラーゼを含み得る。本明細書に記載の多くの実施例は、Tn5トランスポザーゼ、及び/又は過活性Tn5トランスポザーゼに言及するが、意図された目的でDNA試料に5’タグを付けて断片化するのに十分な効率で、トランスポゾン末端を挿入できる、任意のトランスポザーゼを使用し得ることが理解される。
【0040】
トランスポソーム複合体:トランスポザーゼと、トランスポザーゼ組み込み認識部位を含む二本鎖核酸との間で形成される、複合体。例えば、トランスポソーム複合体は、非共有結合複合体形成をサポートする条件下で二本鎖トランスポゾンDNAとプレインキュベートされたトランスポザーゼ酵素であり得る。二本鎖トランスポゾンDNAとしては、例えば、Tn5 DNA、Tn5 DNAの一部、トランスポゾン末端組成物、トランスポゾン末端組成物の混合物、又は過活性Tn5トランスポザーゼなどのトランスポザーゼと相互作用することができる他の二本鎖DNAが挙げられ得る。
【0041】
トランスポゾン末端:タグメント化で機能するトランスポザーゼとの複合体を形成するために必要なヌクレオチド配列(「トランスポゾン末端配列」)のみを示す、二本鎖核酸鎖。トランスポゾン末端の二本鎖核酸鎖は、トランスポザーゼと機能的複合体を形成するのに適した、任意の核酸又は核酸類似体を含むことができる。例えば、トランスポゾン末端は、天然DNA、又はDNA類似体(修飾された塩基、又は骨格を含む)を含み得、一方の鎖又は両方の鎖にニックを含み得る。
【0042】
参照番号のいずれか、例えば、プライマー36’、増幅ドメイン26’などに対する、プライム(’)記号は、対応するエレメントプライマー36、増幅ドメイン26に対する、相補的配列を指すのではなく、むしろエレメントの更なる例であることが、理解されるべきである。特異的プライマー、例えば、P5’又はP7’を記載するために使用される場合、プライム(’)は相補的配列を指す。
【0043】
トランスポソーム複合体
図1A図1B図1C、及び図1Dは、フローセル凹部12内に固定された、本明細書に開示される、トランスポソーム複合体10、10’のいくつかの例を示す。トランスポソーム複合体10、10’の単一セットがこれらの図の各々に示されているが、トランスポソーム複合体10、10’のいくつかのセットが単一の凹部12内に結合してもよいことが、理解されるべきである。図1Aのトランスポソーム複合体10、10’のセットは二量体形態で示され、図1B図1Dに示されるトランスポソーム複合体10、10’のセットは、単一トランスポソーム複合体10、10’として示される。図1A図1Dに示す例では、トランスポソーム複合体10、10’は、凹部12内に固定されている。トランスポソーム複合体10、10’はまた、図3A図5を参照して本明細書において以下に記載されるように、空間的に分離された様式で固定されてもよい。
【0044】
トランスポソーム複合体10、10’(又は図13A図13D図14A及び図14Bを参照して本明細書に記載される10A、10B、又は図15A図15Jを参照して記載される10C、10D)の例は、別個の実体であるが、溶液中及びフローセル表面に結合した場合に、二量体を形成する。簡略化のために、単一のトランスポソーム複合体を図1B図5に示すことを理解されたい。トランスポソーム例のいくつかの二量体形態は、例えば、図1A、並びに図13及び図15シリーズのいくつかの図に示されている(例えば、図13A及び図15Bを参照)。
【0045】
言及され、図1A及び図1Bに示すように、トランスポソーム複合体10、10’は、トランスポゾン末端16、16’に非共有結合した、トランスポザーゼ酵素14、14’を含む。各トランスポゾン末端16、16’は二本鎖核酸鎖であり、その一方の鎖30、30’は転移鎖18、18’の一部であり、その他方の鎖32、32’は非転移鎖20、20’の一部である。換言すれば、トランスポゾン末端16、16’は、非転移鎖20、20’の一部(例えば、鎖32、32’)にハイブリダイズされる、転移鎖18、18’の一部(鎖30、30’)を含む。
【0046】
転移鎖18は、フローセル凹部12内のポリマーヒドロゲル24の表面官能基に、直接又は間接的に、共有結合又は非共有結合することができる、5’末端官能基22、第1の増幅ドメイン26、及びトランスポゾン末端16の一方の鎖30に結合した配列決定プライマー配列28を含む。トランスポゾン末端16の鎖30は、転移鎖18の3’末端に位置する。転移鎖18と同様に、転移鎖18’は、フローセル凹部12内のポリマーヒドロゲル24の表面官能基に、共有結合することができる、5’末端官能基22’、第2の増幅ドメイン26’、及びトランスポゾン末端16’の一方の鎖30’に結合した配列決定プライマー配列28’を含む。トランスポゾン末端16の鎖30’は、転移鎖18’の3’末端に位置する。
【0047】
5’末端官能基22、22’は、ポリマーヒドロゲル24の表面官能基に、直接又は間接的に、共有結合又は非共有結合することができる、任意の官能基であってよく、したがって、ポリマーヒドロゲル24の表面官能基に依存する。一例では、ポリマーヒドロゲル24は、アジド又はテトラジン表面基を含み、5’末端官能基22、22’は、末端アルキン(例えば、ヘキシニル)又は内部アルキンを含み、アルキンは、環状化合物(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN))の一部である。他の例では、ポリマーヒドロゲル24は、ビオチン表面基で官能化され(本明細書では、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’と呼ぶ)、5’末端官能基22、22’もビオチンを含む。これらの例では、追加のストレプトアビジン又はアビジンを添加して、ビオチン基を互いに間接的に結合させる。
【0048】
第1の及び第2の増幅ドメイン26、26’は、互いに異なる配列を有するが、各々、ポリマーヒドロゲル24に結合した、第1及び第2のプライマー36、36’と同一の配列を有する。第1の増幅ドメイン26及びプライマー36は、第2の増幅ドメイン26’及びプライマー36’と共に、タグメント化中に生成された、DNA試料断片の増幅を可能にする。
【0049】
第1の増幅ドメイン26/プライマー36、及び第2の増幅ドメイン26’/プライマー36’に適した配列の例としては、P5及びP7プライマー配列が挙げられる。P15及びP7プライマー配列;又は本明細書に記載される、PAプライマー配列、PBプライマー配列、PCプライマー配列、及びPDプライマー配列の任意の組み合わせ。P5及びP7プライマーの例は、例えば、HiSeq(登録商標)、HiSeqX(登録商標)、MiSeq(登録商標)、MiSeqDX(登録商標)、MiNISeq(登録商標)、NextSeq(登録商標)、NextSeqDX(登録商標)、NovaSeq(登録商標)、iSEQ(登録商標)、Genome Analyzer(登録商標)及び他の装置プラットフォーム上での配列決定のために、Illumina Inc.により販売されている、市販のフローセルの表面上で使用される。
【0050】
P5プライマー配列は、以下の通りである:
P5 #1:5’→3’
AATGATACGGCGACCACCGAGAnCTACAC(配列番号1)
ここで、「n」は、配列中のウラシルである。
P5 #2:5’→3’
AATGATACGGCGACCACCGAGAnCTACAC(配列番号2)
ここで、「n」は、配列中のアルケン-チミジン(すなわち、アルケン-dT)である。
【0051】
P7プライマー配列は、以下のいずれかであり得る:
P7 #1:5’→3’
CAAGCAGAAGACGGCATACGAnAT(配列番号3)
P7 #2:5’→3’
CAAGCAGAAGACGGCATACnAGAT(配列番号4)
ここで、「n」は、各配列中の8-オキソグアニンである。
【0052】
P15プライマー配列は、以下の通りである:
P15:5’→3’
AATGATACGGCGACCACCGAGAnCTACAC(配列番号5)
式中、「n」はアリル-Tである。
【0053】
上記の他のプライマー(PA-PD)には、以下のものが含まれる:
PA 5’→3’
GCTGGCACGTCCGAACGCTTCGTTAATCCGTTGAG(配列番号6)
PB 5’→3’
CGTCGTCTGCCATGGCGCTTCGGTGGATATGAACT(配列番号7)
PC 5’→3’
ACGGCCGCTAATATCAACGCGTCGAATCCGCAACT(配列番号8)
PD 5’→3’
GCCGCGTTACGTTAGCCGGACTATTCGATGCAGC(配列番号9)
【0054】
PA-PDについての例示的な配列には示されていないが、これらの配列のいずれも、鎖の任意の点に、切断部位(例えば、ウラシル、8-オキソグアニン、アリル-Tなど)を含み得ることが、理解されるべきである。第1の増幅ドメイン26/プライマー36、及び第2の増幅ドメイン26’/プライマー36’の配列は、オルソゴナルな切断部位(すなわち、一方の切断部位は、他方の切断部位に使用される切断剤に対して感受性ではない)を有するように選択され得、その結果、増幅後、順方向鎖又は逆方向鎖が切断され得、配列決定のために逆方向鎖又は順方向鎖の他方を残す。
【0055】
プライマー36、36’はまた、プライマー配列の5’末端に、ポリT配列を含み得る。いくつかの例では、ポリT領域は、2個のT塩基~20個のT塩基を含む。具体例として、ポリT領域は、3、4、5、6、7、又は10個のT塩基を含み得る。
【0056】
配列決定プライマー配列28、28’は、タグメント化及び増幅後にフローセルに導入された、配列決定プライマーに各々結合する、互いに異なる配列を有する。例として、配列決定プライマー配列28は、フ順方向鎖断片/断片アンプリコンに相補的である新しい鎖の合成をプライミングする、配列決定プライマーに結合してもよく、配列決定プライマー配列28’は、逆方向鎖断片/断片アンプリコンに相補的である新しい鎖の合成をプライミングする、配列決定プライマーに結合してもよい。
【0057】
各トランスポソーム複合体10、10’のトランスポゾン末端16、16’は、鎖32、32’に各々ハイブリダイズした鎖30、30’を含む。したがって、鎖30及び32は相補的であり、鎖30’、32’は相補的である。二本鎖トランスポゾン末端16、16’は各々、トランスポザーゼ14、14’と複合体を形成することができる。例として、トランスポゾン末端16、16’の鎖30、32及び30’、32’は、Tn5トランスポザーゼの活性の基質として機能する、関連するが同一でない19塩基対(bp)の外側末端(例えば、鎖30、30’)及び内側末端(例えば、鎖32、32’)配列、又は野生型若しくは変異体Tn5トランスポザーゼによって認識されるモザイク末端、又はMuAトランスポザーゼによって認識されるR1末端(例えば、鎖30、30’)及びR2末端(鎖32、32’)であり得る。
【0058】
図1Cは、DNA試料が導入された後の、凹部12を示す。DNA試料は、水、任意選択的に共溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)、トランスポザーゼのための金属補因子(例えば、酢酸マグネシウム)、及び緩衝塩(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス又はトリス)酢酸塩、pH7.6)を含み得る、タグメント化緩衝液と共に導入され得る。一例では、任意選択の共溶媒は、最大約11%の量で存在してもよく、金属補因子は、約3mM~約5.5mMの範囲の濃度で存在してもよく、緩衝塩は、約7mM~約12mMの範囲の濃度で存在してもよい。
【0059】
DNA試料(参照番号34で断片化されて示される)がトランスポソーム複合体10、10’を含むフローセルに導入されると、DNA試料は断片化され、二本鎖断片34の両方の鎖35、37の5’末端は、トランスポソーム複合体10、10’の転移鎖18、18’の各々の3’末端に、ライゲーションされる。断片化及びライゲーションは、30℃以上の温度で起こり得る。一例では、温度は、約30℃~約55℃の範囲であり得る。他の例では、温度は、約35℃~約45℃の範囲であり得る。二本鎖断片34の3’末端は、非転移鎖20、20’の5’末端にライゲーションされない。したがって、DNA断片鎖35の3’末端と非転移鎖20’の5’末端との間に、ギャップ39が存在し、DNA断片鎖37の3’末端と非転移鎖20’の5’末端との間に、ギャップ39’が存在する。一例では、各ギャップ39、39’は、9塩基対長である。
【0060】
図1Dに示すように、次いで、トランスポザーゼ14、14’が複合体10、10’から除去され、ここで、複合体10、10’は、転移鎖18、18’を介して断片に結合する。トランスポザーゼ14、14’の除去は、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)若しくはプロテイナーゼを使用して、又はフローセルを約60℃に加熱するステップによって、達成され得る。したがって、タグメント化の後、いくつかの例示的な方法は、洗浄溶液をフローセルに導入するステップと、洗浄溶液を含有するフローセルを約60℃に加熱するステップと、次いで、伸長増幅ミックスをフローセルに導入するステップとを含む。伸長増幅ミックスを導入する前に、温度を約38℃に低下させてもよい。
【0061】
タグメント化後のフローセルの加熱は、更なる緩衝液又は試薬を含まずに、トランスポザーゼ14、14’を変性させるのに十分であり得ることが、見出されている。例示的な伸長増幅ミックスは、リコンビナーゼ、ポリメラーゼ、及びアクセサリータンパク質を含む。例示的な洗浄溶液は、緩衝剤(例えば、トリス)、塩(例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)、界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)ポリソルベート)、及び/又はキレート剤(例えば、EDTA)を含む、水溶液である。一例では、洗浄溶液は、水、約25mM~約50mMの範囲の濃度の塩、約0.01重量%~約0.1重量%の範囲の量の界面活性剤、及び任意選択的に、キレート剤を含む。洗浄溶液は、比較的高いpH(例えば、約7~約10の範囲)を有し得る。
【0062】
トランスポザーゼ14、14’の除去が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、又は他のカオトロピック剤を使用して達成される場合、この試薬の存在は、例えば、リコンビナーゼ、リガーゼ、ポリメラーゼなどが関与するその後の酵素反応の、阻害剤として作用し得る。したがって、カオトロピック剤の存在は、その後のライブラリ調製反応、及び/又は増幅反応に、有害な影響を及ぼし得る。この例示的な方法では、カオトロピック剤のキレート剤を添加して、カオトロピック剤を分離することができる。使用されるキレート剤は、使用されるカオトロピック剤に依存する。一例では、カオトロピック剤は、ドデシル硫酸ナトリウムであり、カオトロピック剤のキレート剤は、アルファシクロデキストリン、ベータシクロデキストリン、及びメチルベータシクロデキストリンからなる群から選択される、シクロデキストリンである。約1重量%~約4重量%のシクロデキストリンを含有する水溶液を、使用することができる。他の例では、水溶液は、約1重量%~約2重量%のシクロデキストリンを含み得る。シクロデキストリンは、親水性の外部及び疎水性のコアを有する、カップ型構造である。これらの化合物は、親水性分子(例えば、SDS又はトランスポザーゼ14、14’を除去するために使用される他のカオトロピック剤)と、複合体を形成する能力を有する。特に、SDSの長い疎水性尾部は、シクロデキストリンのカップに引き込まれ、これは、トランスポザーゼ14、14’除去後にSDSを効果的にロックし、下流のライブラリ調製及び/又は増幅において使用されるものを含む、酵素を変性させることを防止する。
【0063】
熱又はカオトロピック剤のいずれが使用されても、トランスポザーゼ14、14’の除去は、転移鎖18、18’及びそれに各々結合したDNA断片35、37を含む、部分的に適合されたDNA断片を遊離させる。トランスポザーゼ14、14’を除去するためのこの精製工程に続いて、非転移鎖20、20’が脱ハイブリダイズされ、排除増幅試薬(例えば、Illumina Inc.から入手可能なExAmp試薬)を使用する伸長反応によって、部分的に適合された断片の3’末端に、追加の配列(アダプター)が付加される。SDS又は他のカオトロピック剤がシクロデキストリンでキレート化されている例では、フローセルから、SDS又は他のカオトロピック剤を除去するために、1回以上の洗浄サイクルを実施する必要なく、伸長反応を実施することができることを理解されたい。伸長反応は、各々の転移鎖18’、18’を鋳型として使用して、DNA断片35、37の3’末端から鋳型依存的に、ヌクレオチドを付加するステップを含む。したがって、DNA断片35は、セクション30’、28’、及び26’に沿って伸長されて、DNA断片35に結合した相補的セクション30’C、28’C、及び26’Cを生成し、そしてDNA断片37は、セクション30、28、及び26に沿って伸長されて、DNA断片37に結合した相補的セクション30C、28C、及び26Cを生成する。
【0064】
要するに、図1C及び図1Dに示される方法の一例は、間隙領域38によって分離された凹部12を含むフローセルに、DNA試料を導入するステップと、各凹部12内に固定された第1のプライマー36及び第2のプライマー36’と、第1のトランスポソーム複合体10は、各凹部12の各々の中に、又は間隙領域38上に固定され、第1のトランスポソーム複合体10は、第1の増幅ドメイン26を含み、第2のトランスポソーム複合体10’は、凹部12の各々の中に、又は間隙領域38上に固定され、第2のトランスポソーム複合体10’は、第2の増幅ドメイン26’を含み、DNA試料のタグメント化が第1のトランスポソーム複合体10及び第2のトランスポソーム複合体10’の一部で起こり、複数の部分的に適合されたDNA断片を生成するステップと、フローセルにカオトロピック剤を導入して、第1のトランスポソーム複合体10及び第2のトランスポソーム複合体10’の、トランスポザーゼ14を除去するステップと、カオトロピック剤のキレート剤を導入して、カオトロピック剤を分離するステップと、伸長反応を実施して、部分的に適合されたDNA断片に追加のアダプターを付加するステップとを含む。
【0065】
カオトロピック剤及びキレート剤の導入はまた、トランスポソーム複合体10、10’がビーズ(例えば、磁気ビーズ)などの、他の基材表面に結合する方法において、使用されてもよい。この例示的な方法は、より一般的には、DNA試料及び表面結合トランスポソーム複合体10、10’を使用して、タグメント化反応を実施し、それによって、複数の部分的に適合されたDNA断片を生成するステップと、カオトロピック剤を導入して、トランスポソーム複合体10、10’の、トランスポザーゼ14、14’を除去するステップと、カオトロピック剤のキレート剤を導入して、カオトロピック剤を分離するステップと、伸長反応を実施して、部分的に適合されたDNA断片に追加のアダプターを付加するステップとを含む。この方法は、フローセルから離れて実施され得、次いで、ビーズ(それに結合した完全に適合されたDNA断片を有する)が、捕捉部位(ビーズを結合させるための)、及びプライマー36、36’を含むフローセルに、添加され得る。ビーズは捕捉部位に結合することができ、次いで、完全に適合されたDNA断片がビーズから放出され、フローセル表面上のプライマーを使用する増幅に曝露され得る。
【0066】
図1Cに戻って参照すると、伸長反応から得られた配列は、部分的に適合された断片を完全に適合させ、更なる増幅及びクラスタ生成の準備を整える。
【0067】
クラスタ生成の一例では、図1Dに示される完全に適合された断片は、互いから変性され、そして、隣接する相補的プライマー36、36’にハイブリダイズするようにループし、そして、ポリメラーゼは、コピーされた鋳型をコピーして二本鎖架橋を形成し、これは、変性されて2つの一本鎖を形成する。これらの2本の鎖は、ループオーバーして、隣接する相補的なプライマー36、36’にハイブリダイズし、再度伸長して、2つの新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスを、等温変性及び増幅のサイクルによって各鋳型コピーに対して繰り返して、密集したクローンクラスタを作り出す。二本鎖ブリッジ構造の各クラスタが変性される。一例では、逆方向鎖は、逆方向鎖が結合しているプライマー36又は36’の切断部位に適した、切断剤によって除去され(例えば、特異的塩基切断)、順方向鋳型鎖/アンプリコンが残る。他の例では、順方向鎖は、順方向鎖が結合するプライマー36又は36’の切断部位に適した、切断剤によって除去され(例えば、特異的塩基切断)、逆方向鋳型鎖/アンプリコンが残る。クラスタ化は、凹部12上に固定された、いくつかの鋳型鎖の形成をもたらす。
【0068】
トランスポソーム複合体10、10’の各々のいくつかが、フローセルの単一の凹部12内に存在し得るので、複数の完全に適合された断片が、タグメント化及び伸長後に、単一の凹部12内に存在し得る。複数の完全に適合された断片の増幅は、凹部12内のポリクローナル性(すなわち、各完全に適合された断片の複数のアンプリコン)をもたらし、これは、任意の1つのタイプのアンプリコンのシグナル分解を、より困難にし得る。本明細書に開示される例のいくつかでは、トランスポソーム複合体10及び/又は10’は、複合体10及び/又は10’のタグメント化効率を低下させるように、修飾される。これらの修飾は、フローセルにわたる1つ以上の凹部12内のトランスポソーム複合体10及び/又は10’の一部を、タグメント化に完全に関与できないようにすることができ、したがって、生成されるDNA断片のインサートサイズを増加させ、所与の凹部12内の完全に適合された断片の数を減少させることもできる。
【0069】
トランスポソーム複合体10及び/又は10’修飾の一部は、非転移鎖20、20’の3’末端で実施される。
【0070】
一例では、タグメント化効率を低下させるための修飾は、i)第1のトランスポソーム複合体10の一部、又はii)第2のトランスポソーム複合体10’の一部、又はiii)第1及び第2のトランスポソーム複合体10、10’の両方の一部の、非転移鎖20、20’の3’末端に結合した、フルオロフォアである。適切なフルオロフォアの例としては、Molecular Probes,Inc.から入手可能なALEXA FLUOR(登録商標)ファミリーのフルオロフォア(例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)647など)、Thermo Fisher Scientificから入手可能なTET(商標)Dye Phosphoramiditeなどが挙げられる。フルオロフォアは、その合成中に、且つトランスポソーム複合体10及び/又は10’がフローセル表面に結合する前に、非転移鎖20、20’の3’末端に付加することができる。この修飾は、トランスポソーム複合体10又は10’を部分的に不活性化し、これは、より少ないタグメント化イベントをもたらすか、又はDNA試料結合をもたらすがタグメント化をもたらさない。
【0071】
トランスポソーム複合体10及び/又は10’修飾の他のものは、非転移鎖20、20’の5’末端で実施される。
【0072】
一例では、タグメント化効率を低下させるための修飾は、i)第1のトランスポソーム複合体10の一部、又はii)第2のトランスポソーム複合体10’の一部、又はiii)第1及び第2のトランスポソーム複合体10、10’の両方の一部の、非転移鎖20、20’の5’末端における、リン酸基の排除である。非転移鎖20、20’は、5’リン酸なしで合成され得る。この修飾は、トランスポソーム複合体10又は10’を部分的に不活性化し、これは、より少ないタグメント化イベントをもたらすか、又はDNA試料結合をもたらすがタグメント化をもたらさない。
【0073】
他の例では、タグメント化効率を低下させるための修飾は、i)第1のトランスポソーム複合体10の一部、又はii)第2のトランスポソーム複合体10’の一部、又はiii)第1及び第2のトランスポソーム複合体10、10’の両方の一部の、非転移鎖20、20’の5’末端に結合した、フルオロフォアである。フルオロフォアは、トランスポソーム複合体10、10’の作製中に、非転移鎖20、20’の5’末端に付加されてもよい。
【0074】
更に他の例では、タグメント化効率を低下させるための修飾は、i)第1のトランスポソーム複合体10の一部、又はii)第2のトランスポソーム複合体10’の一部、又はiii)第1及び第2のトランスポソーム複合体10、10’の両方の一部の、非転移鎖20、20’の5’末端から、最後の1つ又は複数の塩基を、変更又は除去するステップを含む。例として、5’末端塩基CAT又はCACは、例えば、CAGと比較して、タグメント化効率を低下させ得る。
【0075】
トランスポソーム複合体10及び/又は10’修飾の更に他のものは、転移鎖18、18’の3’末端で実施される。タグメント化効率を低下させるためのこの修飾の一例は、i)第1のトランスポソーム複合体10の一部、又はii)第2のトランスポソーム複合体10’の一部、又はiii)第1及び第2のトランスポソーム複合体10、10’の両方の一部の、転移鎖18、18’の3’末端に結合した、ジデオキシシトシン、チミン、又はシトシンである。転移鎖18及び/又は18’の3’末端におけるジデオキシシトシンの存在は、トランスポソーム複合体10又は10’を完全に不活性化し、これは、DNA試料結合をもたらすが、タグメント化はもたらさない。転移鎖18及び/又は18’の3’末端にチミン又はシトシンが含まれると、タグメント化の効率が低下する。
【0076】
更に、非転移鎖(複数可)20、20’の5’末端で実施することができる修飾のいずれも、非転移鎖(複数可)20、20’の3’末端で実施することができる修飾のいずれか、又は転移鎖18、18’の3’末端で実施することができる修飾のいずれかと、組み合わせることができる。更に、非転移鎖20、20’の3’末端で実施することができる修飾のいずれかを、転移鎖18、18’の3’末端で実施することができる修飾のいずれかと、組み合わせることができる。
【0077】
図13A図13B図13C、及び図13Dは、フローセル凹部12内に固定された本明細書に開示されるトランスポソーム複合体10A、10Bの他の例を示す。
【0078】
トランスポソーム複合体10A、10Bの各々の実施例を、各々、図14A及び図14Bにより詳細に示す。図示すように、各複合体10A、10Bは、トランスポゾン末端16A、16Bに非共有結合した、トランスポザーゼ酵素14A、14Bを含む。各トランスポゾン末端16A、16Bは、二本鎖核酸鎖であり、その一方の鎖30A、30Bは、転移鎖18A、18Bの一部であり、その他方の鎖32A、32Bは、非転移鎖20A、20Bの一部である。換言すれば、トランスポゾン末端16A、16Bは、非転移鎖20A、20Bの一部(例えば、鎖32A、32B)にハイブリダイズされる、転移鎖18A、18Bの一部(鎖30A、30B)を含む。
【0079】
トランスポソーム複合体10Aのこの例では、転移鎖18Aは、第1の増幅ドメイン26Aと、トランスポゾン末端16Aの一方の鎖30Aに結合した配列決定プライマー配列28Aとを含む。トランスポゾン末端16Aの鎖30Aは、転移鎖18Aの3’末端に位置する。
【0080】
転移鎖18Aと同様に、トランスポソーム複合体10Bの転移鎖18Bは、第2の増幅ドメイン26Bと、トランスポゾン末端16Bの一方の鎖30Bに結合した配列決定プライマー配列28Bとを含む。トランスポゾン末端16Bの鎖30Bは、転移鎖18Bの3’末端に位置する。
【0081】
トランスポソーム複合体10、10’の、第1の及び第2の増幅ドメイン26、26’と同様に、トランスポソーム複合体10A、10Bの、第1の及び第2の増幅ドメイン26A、26Bは、互いに異なる配列を有するが、ポリマーヒドロゲル24、24’(以下に記載するように、ビオチン化されていてもよい)に結合した、第1の及び第2のプライマー36A、36Bと各々同一の配列を有する。第1の増幅ドメイン26A及びプライマー36Aは、第2の増幅ドメイン26B及びプライマー36Bと共に、タグメント化中に生成された、DNA試料断片の増幅を可能にする。第1の増幅ドメイン26/プライマー36、及び第2の増幅ドメイン26’/プライマー36’について、本明細書に記載される配列のいずれも、各々、第1の増幅ドメイン26A/プライマー36A、及び第2の増幅ドメイン26B/プライマー36Bについて使用され得る。
【0082】
配列決定プライマー配列28、28’と同様に、配列決定プライマー配列28A、28Bは、タグメント化及び増幅後にフローセルに導入された配列決定プライマーに各々結合する、互いに異なる配列を有する。
【0083】
各トランスポソーム複合体10A、10Bのトランスポゾン端16A、16Bは、鎖32A、32Bに各々ハイブリダイズした、鎖30A、30Bを含む。したがって、鎖30A及び32Aは相補的であり、鎖30B、32Bは相補的である。二本鎖トランスポゾン末端16A、16Bは、各々、トランスポザーゼ14A、14Bと、複合体を形成することができる。例として、トランスポゾン末端16A、16Bの鎖30A、32A及び30B、32Bは、Tn5トランスポザーゼの活性の基質として機能する、関連するが同一でない19塩基対(bp)の、外側末端(例えば、鎖30、30’)及び内側末端(例えば、鎖32、32’)配列、又は野生型若しくは変異体Tn5トランスポザーゼによって認識されるモザイク末端、又はMuAトランスポザーゼによって認識されるR1末端(例えば、鎖30、30’)及びR2末端(鎖32、32’)であり得る。
【0084】
トランスポソーム複合体10A、10Bは、フローセル表面への非対称結合のために構成される(図13Aに示すように)。したがって、複合体の一方、例えば、複合体10Aは、フローセル表面への結合のための3’末端基22Aを含み、複合体の他方、例えば複合体10Bは、フローセル表面への結合のための5’末端基22Bを含む。したがって、図13A図14A、及び図14Bに示すように、複合体10Aの非転移鎖20Aは、3’末端基22Aを含み、複合体10Bの転移鎖18Bは、5’末端基22Bを含む。3’末端基22A及び5’末端基22Bは、ポリマーヒドロゲル24、24’の表面官能基に直接又は間接的に共有結合又は非共有結合することができる、任意の官能基であってもよく、したがって、ポリマーヒドロゲル24、24’の表面官能基に依存する。一例では、ポリマーヒドロゲル24は、アジド、又はテトラジン表面基を含み、3’末端基22A及び5’末端基22Bは、各々、末端アルキン(例えば、ヘキシニル)、又は内部アルキンを含み、アルキンは、環状化合物(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN))の一部である。他の例では、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’は、フローセルの凹部12内に存在し、3’末端基22A及び5’末端基22Bの各々は、ビオチンである。これらの例では、追加のストレプトアビジン又はアビジンを添加して、ビオチン基を互いに間接的に結合させる。
【0085】
図13Aに戻って参照すると、トランスポソーム複合体10A、10Bをフローセルに導入することができ、フローセルは、間隙領域38によって分離された凹部12と、凹部12内のポリマーヒドロゲル24又は24’(後者は、図2A及び図2Bを参照して詳細に記載する)の例とを含む。
【0086】
トランスポソーム複合体10A、10Bはまた、約0.1μM~約1μMの範囲の濃度で、キャリア液中に含まれてもよい。トランスポソーム複合流体のこの例のキャリア液体は、水であってもよい。高分子ヒドロゲル24が使用される場合、トランスポソーム複合体10A、10Bを、ポリマーヒドロゲル24の適切な官能基にグラフト化するために、緩衝液及び/又は塩をキャリア液に添加してもよい。緩衝液は、5~12の範囲のpHを有する。本明細書に記載される、中性緩衝液及び/又は塩のいずれも、トランスポソーム複合流体のこの例に添加することができる。
【0087】
グラフト化のために、トランスポソーム複合体流体を、フローセルに導入する。トランスポソーム複合流体は、フロースルー堆積を使用して、導入することができる。グラフト化は、約35℃~約45℃の範囲の温度で、約30時間~約120時間の範囲の時間にわたって、実施することができる。グラフト化の間、トランスポソーム複合体10A、10Bは、ポリマーヒドロゲル24の、アジド又はテトラジン基の少なくとも一部に結合し、フローセルの間隙領域38又は縁部分に対して、親和性を有さない。
【0088】
ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’が使用される場合、トランスポソーム複合体10A、10Bのフローセル表面への結合は、図2A図5を参照してより詳細に本明細書に記載される、例のいずれかを使用して、実施することができる。簡潔には、アビジン又はストレプトアビジンを使用して、3’及び5’末端22A、22B(この例では、ビオチン化されている)を、本明細書中の「フローセル」の節に記載されるような、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’に結合し得ることが、理解されるべきである。実施例として、アビジン又はストレプトアビジンは、複合体10A、10Bがフローセルに導入され、インキュベーションされる前に、3’及び5’ビオチン化末端22A、22Bに予め結合してもよく、又は、アビジン又はストレプトアビジンを、3’及び5’ビオチン化トランスポソーム複合体10A、10Bと共にフローセルに導入し、インキュベーションしてもよく、又は、アビジン又はストレプトアビジンをフローセルに導入し、ポリマーヒドロゲル24と共にインキュベーションし、次いで、3’及び5’ビオチン化トランスポソーム複合体10A、10Bを添加し、インキュベーションしてもよく、あるいは、アビジン又はストレプトアビジン及びビオチンを互いに予め結合させ、次いで、フローセルに導入し、そこで、ビオチンをR基の一部を介して(直接又はリンカーを介して)ポリマーヒドロゲル24の表面に結合させ、次いで、ビオチン化トランスポソーム複合体10A、10Bを、ポリマーヒドロゲル24’の一部としてストレプトアビジン-ビオチン結合対を含有する、フローセルに導入してもよい。上述したように、これらの方法の各々の更なる詳細は、図2図5を参照して本明細書に記載される。
【0089】
図13Aに示されるフローセルはまた、プライマー36A、36Bを含む。本明細書に記載される、プライマー36、36’及びポリマーヒドロゲル24又は24’へのプライマー36、36’の好適な結合機構のいずれも、プライマー36A、36Bに使用され得る。
【0090】
この例では、複数の第1のトランスポソーム複合体(例えば、本明細書において3’結合トランスポソーム複合体10Aと呼ぶことができる、トランスポソーム複合体10A)、及び複数の第2のトランスポソーム複合体(例えば、本明細書において5’結合トランスポソーム複合体10Bと呼ぶことができる、トランスポソーム複合体10B)は、1:1超~5:1の範囲の比で、フローセル内に存在する。他の例では、3’ビオチン化トランスポソーム複合体10A、及び5’ビオチン化トランスポソーム複合体10Bは、4:1の比で、フローセルに導入される。図13C及び図13Dを参照してより詳細に説明されるように、フローセル表面に導入され、したがって、所与の範囲内の比で、フローセル表面に存在する、非対称的に結合した複合体10A、10Bは、通過フィルタパーセンテージを改善し得る。
【0091】
図13Bは、DNA試料が導入された後の、凹部12を示す。DNA試料は、水、任意選択的に共溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)、トランスポザーゼのための金属補因子(例えば、酢酸マグネシウム)、及び緩衝塩(例えば、トリス酢酸塩、pH7.6)を含み得る、タグメント化緩衝液と共に導入され得る。一例では、任意選択の共溶媒は、最大約11%の量で存在してもよく、金属補因子は、約3mM~約5.5mMの範囲の濃度で存在してもよく、緩衝塩は、約7mM~約12mMの範囲の濃度で存在してもよい。
【0092】
DNA試料(参照番号34で断片化されて示される)が、3’及び5’結合トランスポソーム複合体10A、10Bを含むフローセルに導入されると、DNA試料は断片化され、二本鎖断片34の両方の鎖35、37の5’末端は、トランスポソーム複合体10A、10Bの転移鎖18A、18Bの各々の3’末端に、ライゲーションされる。断片化及びライゲーションは、30℃以上の温度で起こり得る。一例では、温度は、約30℃~約55℃の範囲であり得る。他の例では、温度は、約35℃~約45℃の範囲であり得る。二本鎖断片34の3’末端は、非転移鎖20A、20Bの5’末端に、ライゲーションされない。したがって、DNA断片鎖37の3’末端と非転移鎖20Aの5’末端との間に、ギャップ39Aが存在し、DNA断片鎖35の3’末端と非転移鎖20Bの5’末端との間に、ギャップ39Bが存在する。一例では、各ギャップ39A、39Bは、9塩基対長である。
【0093】
次いで、トランスポザーゼ14A、14Bは、複合体10A、10Bから除去され、ここで、複合体10A、10Bは、転移鎖18A、18Bを介して、断片35、37に結合する。トランスポザーゼ除去14A、14Bは、フローセルを加熱するステップによって、達成することができる。この例では、洗浄溶液が、フローセルに導入される。洗浄溶液を含有するフローセルを約60℃に加熱し、次いで、伸長増幅ミックスを、フローセルに導入する。伸長増幅ミックスの導入前に、温度を約38℃に低下させてもよい。
【0094】
次いで、伸長ミックスを添加して、両端にアダプターを有する、完全に伸長された断片を形成する。伸長反応の2つの実施例を、図13C及び図13Dに示す。両方の実施例では、断片35、37の伸長は、DNA断片35、37の3’末端からの鋳型依存様式での、ヌクレオチドの付加を含む。図13Cは、トランスポザーゼ除去14A、14B後に、鎖18A、20A及び18B、20Bの少なくとも一部がハイブリダイズされたままである場合の、伸長を示す。この例では、伸長反応は、非転移鎖20A、20Bを置換し、転移鎖18A、18Bがコピーされることを可能にし、したがって、完全に伸長された(完全に適合された)断片を形成することができる(図1Dに示される例と同様に)。図13Dは、トランスポザーゼ除去14A、14Bの間に、鎖18A、20A及び18B、20Bの少なくとも一部が脱ハイブリダイズする場合の、伸長を示す。非転移鎖20A、20Bは比較的短いので、それらの溶融温度は、低くてもよい(例えば、約40℃~約50℃)。したがって、トランスポザーゼ除去温度は、トランスポゾン末端の少なくとも一部を脱ハイブリダイズするのに、十分であり得る。対照的に、より長い断片35、37は、ハイブリダイズされたままであり得る。より長い断片35、37は、より低い融解温度を有する領域(例えば、ATリッチ領域)で脱ハイブリダイズし得るが、全体的なインサートサイズは、脱ハイブリダイズしない、より高い融解温度を有する領域を含むことが、理解されるべきである。これらの領域は、より長い二本鎖断片35、37が四散しないようにする。トランスポザーゼ除去温度が60℃を超えて上昇する場合、インサートサイズはシフトし得、これは二本鎖断片35、37の一部の脱ハイブリダイゼーションをもたらし得る。
【0095】
他の例では、トランスポザーゼ除去14A、14Bは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、又はプロテイナーゼを使用して達成され、その後、洗浄溶液の導入、非転移鎖20Bの脱ハイブリダイゼーション、及び伸長増幅反応が続く。
【0096】
本明細書に開示される実施例のいずれにおいても、ランダムタグメント化は、タグメント化プロセス中に実施することができることを、理解されたい。「ランダムタグメント化」とは、二本鎖断片の両方の鎖の5’末端が、同一のタイプのトランスポソーム複合体10A又は10B(あるいは10又は10’)の各々の3’末端に、ライゲーションされることを意味する。ランダムタグメント化の実施例が図13Bに示されており、ここでは、鎖35’、37’の各々が、(複合体10Aの)転移鎖18Aの3’末端に、各々ライゲーションされる。伸長増幅反応の後、これらの完全に適合された断片は、両方の末端(例えば、元の転移鎖18A及び相補的部分)に、同一の増幅ドメイン26Aを有する。示されていないが、二本鎖断片の両方の鎖が、代替的に、(複合体10Bの)転移鎖18Bの各々の3’末端にライゲーションされ得ることが、理解されるべきである。伸長反応後、これらの完全に適合された断片は、両端に、同一の増幅ドメイン26Bを有する(例えば、元の転移鎖18B及び相補的セクションにおいて)。
【0097】
両方の末端に同一の増幅ドメイン26A又は26Bを有する、完全に適合された断片は、フィルタを通過することができるリードの、パーセンテージを低減することができる。しかしながら、トランスポソーム複合体10A、10Bの非対称結合、及び5’結合トランスポソーム複合体10Bに対する3’結合トランスポソーム複合体10Aの比は、末端に異なる増幅ドメイン26A、26Bを有する、完全に適合した断片のより高い収率を生成する。
【0098】
フローセル
本明細書に開示される、トランスポソーム複合体10、10’、10A、10B、10C、10Dは、修飾されていようと非修飾であろうと、フローセル表面に固定される。図1A図1Dに示すように、一例では、トランスポソーム複合体10、10’は、フローセルの凹部12内の、ポリマーヒドロゲル24に結合する。図13A図13Dに示すように、別の実施例では、トランスポソーム複合体10A、10Bは、フローセルの凹部12内の、ポリマーヒドロゲル24、24’に非対称に結合している。これらの凹部12が、これらの例の各々に示されているが、複数の凹部12が、本明細書で記載されるように、基材表面にわたってアレイ状に形成されてもよいことを、理解されたい。
【0099】
本明細書に開示される、フローセルの各例は、間隙領域38(図1A図1Dを参照)によって分離された凹部12を有する基材40と、凹部12内のポリマーヒドロゲル24とを含む。このタイプの基材は、パターン化基材と称されてもよく、フローセルは、一緒に結合した2つのパターン化基材を含んでもよく、又は蓋に結合した単一のパターン化基材を含んでもよい。
【0100】
流路は、基材(複数可)と蓋との間に、画定される。流路12の深さは、マイクロコンタクト、エアロゾル、又はインクジェット印刷を使用して、材料を堆積させて、基材(複数可)と蓋とを結合させる場合、単層の厚さと同程度であり得る。他の例では、流路の深さは、約1μm、約10μm、約50μm、約100μm、又はそれ以上であり得る。一例では、深さは、約10μm~約100μmの範囲であり得る。別の例では、深さは、約10μm~約30μmの範囲であり得る。更に別の例では、深さは、約5μm以下である。流路の深さは、上で指定した値よりも大きくてもよく、それよりも小さくてもよく、又はそれらの間であってもよいことを、理解すべきである。
【0101】
各流路は、入口及び出口(図示せず)と、流体連通している。入口及び出口は、フローセルの対向する端部に、配置されてもよい。各々の流路の入口及び出口は、望ましい流体の流れを可能にする、流路の長さ及び幅に沿った、任意の場所に配置されてもよい。
【0102】
入口は、流体が流路内に導入されることを可能にし、出口は、流体が流路から抜き出されることを可能にする。入口及び出口の各々は、流体の導入及び排出を制御する流体制御システム(例えば、リザーバ、ポンプ、バルブ、廃棄物容器などを含む)に流体接続される。
【0103】
基材40は、そこに画定された凹部12を有する、単層のベース支持体であってもよいし、又はその上に配置された他の層を含み、そこに画定された凹部12を有する、多層構造であってもよい。
【0104】
好適な単一層ベース支持体の例としては、エポキシシロキサン、ガラス、修飾又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(ChemoursのTEFLON(登録商標)など)、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(cyclic olefins/cyclo-olefin polymer、COP)(ZeonのZEONOR(登録商標)など)、ポリイミドなどを含む)、ナイロン(ポリアミド)、セラミック/酸化セラミック、シリカ、溶融シリカ、シリカベースの材料、ケイ酸アルミニウム、シリコン及び修飾シリコン(例えば、ホウ素ドープp+シリコン)、窒化シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、五酸化タンタル(Ta)又は他の酸化タンタル(TaO)、酸化ハフニウム(HfO)、炭素、金属、無機ガラスなどが挙げられる。
【0105】
多層構造の例は、ベース支持体、及びベース支持体上の少なくとも1つの他の層を含む。
【0106】
他の層は、酸化タンタル(例えば、Ta)、酸化アルミニウム(例えば、Al)、酸化ケイ素(例えば、SiO)、酸化ハフニウム(例えば、HfO)などの無機酸化物であってもよい。無機酸化物は、凹部12及び隙間領域38を形成するために、例えば、蒸着、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を介して、選択的に施用され得る。
【0107】
あるいは、他の層は、ベース支持体に施用し、次いでパターン化することができる、ポリマー樹脂であってもよい。好適な樹脂のいくつかの例としては、多面体オリゴマーシルセスキオキサン系樹脂、非多面体オリゴマーシルセスキオキサンエポキシ樹脂、ポリ(エチレングリコール)樹脂、ポリエーテル樹脂(例えば、開環エポキシ)、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、非晶質フルオロポリマー樹脂(例えば、BellexからのCYTOP(登録商標))、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な堆積技術としては、化学蒸着、ディップコーティング、ダンクコーティング(dunk coating)、スピンコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンシング、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷などが挙げられる。好適なパターン形成技術としては、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)、スタンピング技術、エンボス加工技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術などが挙げられる。
【0108】
一例では、基材40は、約2mm~約300mm、例えば、約200mm~約300mmの範囲の直径を有する、円形シート、パネル、ウェハ、ダイなどであってもよいか、又は最大約10フィート(約3メートル)の最大寸法を有する、長方形シート、パネル、ウェハ、ダイなどであってもよい。寸法の実施例を提供してきたが、任意の好適な寸法を有する基材40が使用できることを、理解されたい。
【0109】
凹部12は、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)、スタンピング技術、エンボス加工技術、成形技術、マイクロエッチング技術などの、任意の適切なパターン形成技術を使用して、基材40に形成することができる。
【0110】
規則的、反復的、及び非規則的なパターンを含む、凹部12及び間隙領域38の多くの異なるレイアウトが、想定され得る。一例では、凹部12又は間隙領域38は、密に充填して密度を向上させるために、六角形の格子を生成するように、配置される。他のレイアウトは、例えば、長方形のレイアウト、三角形のレイアウトなどを含んでもよい。いくつかの例では、レイアウト又はパターンは、行及び列をなしているx-yフォーマットであり得る。いくつかの他の例では、レイアウト又はパターンは、凹部12及び間隙領域38の繰り返し配置とすることができる。更に他の例では、レイアウト又はパターンは、凹部12及び間隙領域38のランダムな配置とすることができる。
【0111】
レイアウト又はパターンは、画定された領域内の、複数の凹部12の密度(数)に関して、特徴付けることができる。例えば、凹部12は、1mm当たり、約200万の密度で存在してもよい。例えば、1mm当たり約100、1mm当たり約1,000、1mm当たり約10万、1mm当たり約100万、1mm当たり約200万、1mm当たり約500万、1mm当たり約1000万、1mm当たり約5000万、又はそれ以上若しくはそれ以下の密度を含む、異なる密度に調整され得る。密度は、上記の範囲から選択される、下限値のうちの1つと上限値のうちの1つとの間であり得、又は他の密度(所与の範囲外)が使用され得ることを更に理解すべきである。実施例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離された、複数の凹部12を有するものとして特徴付けることができ、中密度アレイは、約400nm~約1μmで分離された、複数の凹部12を有するものとして特徴付けることができ、低密度アレイは、約1μm超で分離された、複数の凹部12を有するものとして特徴付けることができる。
【0112】
複数の凹部12のレイアウト又はパターンは、平均ピッチ、又は1つの凹部12の中心から隣接する凹部12の中心までの間隔(中心間間隔)、又は1つの凹部12の右縁部から隣接する凹部12の左縁部までの間隔(縁部間間隔)に関して、更に又は代替的に特徴付けられてもよい。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さくなるように規則的である場合もあれば、パターンが不規則である場合もあり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、約50nm、約0.15μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、又は約100μm、又はそれ以上若しくはそれ以下とすることができる。の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択される、低い方の値のうちの1つと高い方の値のうちの1つとの間であり得る。一例では、凹部12は、約1.5μmのピッチ(中心間間隔)を有する。平均ピッチ値の例を提供してきたが、他の平均ピッチ値も使用され得ることを理解されたい。
【0113】
各凹部12のサイズは、その容積、開口部面積、深さ、並びに/又は直径(凹部12が円形の場合)、若しくは長及び幅によって、特徴付けられ得る。例えば、容積は、約1×10-3μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約1×10-2μm、約0.1μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。別の例では、開口部面積は、約1×10-3μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約1×10-2μm、約0.1μm、約1μm、少なくとも約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。更に別の例では、深さは、約0.1μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約0.5μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。別の例では、深さは、約0.1μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約0.5μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。更に別の例では、直径又は長さ及び幅の各々は、約0.1μm~約100μmの範囲に及び、例えば、約0.5μm、約1μm、約10μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。
【0114】
基材40は、流路の長さに延在し、及び1つの流路を隣接する流路から分離する、間隙様領域を画定する、縁部領域を含んでもよい。縁部領域は、2つの基材40を互いに取り付けることができる、又は1つの基材40を蓋に取り付けることができる、結合領域を提供する。
【0115】
凹部12は、ポリマーヒドロゲル24のための、指定領域を提供する。本明細書に開示の一例では、ポリマーヒドロゲル24は、アクリルアミドコポリマーを含む。この例では、アクリルアミドコポリマーは、以下の構造を有し:
【0116】
【化1】
【0117】
式中、
は、アジド、又はテトラジン、又はアルキンに結合することができる任意の他の官能基であり、
はH又は任意選択で置換アルキルであり、
、R、及びRは各々、H及び任意選択で置換アルキルからなる群から独立して選択され、
-(CH-の各々は、任意選択で置換され得、
pは1~50の範囲の整数であり、
nは1~50,000の範囲の整数であり、且つ
mは、1~100,000の範囲の整数である。
【0118】
構造(I)によって表されるアクリルアミドコポリマーの一具体例は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド、PAZAM)である。
【0119】
当業者は、構造(I)における繰り返される「n」及び「m」個の特徴の配置が代表的なものであり、モノマーサブユニットがポリマー構造(例えば、ランダム、ブロック、パターニング、又はそれらの組み合わせ)中に任意の順序で存在し得ることを認識する。
【0120】
アクリルアミドコポリマーの分子量は、約5kDa~約1500kDa又は約10kDa~約1000kDaの範囲であり得るか、あるいは特定の例では、約312kDaであり得る。
【0121】
いくつかの例では、アクリルアミドコポリマーは、線状ポリマーである。他のいくつかの例では、アクリルアミドコポリマーは、軽度に架橋されたポリマーである。
【0122】
いくつかの例では、ゲル材料は、構造(I)の変形であり得る。一例では、アクリルアミドユニットはN,N-ジメチルアクリルアミド
【0123】
【化2】
【0124】
で置き換えられ得る。他の実施例では、構造(I)中のアクリルアミドユニットは、
【0125】
【化3】
【0126】
で置換され得、式中、R、R、及びRは、各々、H、又はC1~C6アルキルであり、R、及びRは、各々、C1~C6アルキルである(アクリルアミドの場合のようにHではない)。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。別の例では、アクリルアミドユニットに加えて、N,N-ジメチルアクリルアミドが使用され得る。この例では、構造(I)は、繰り返される「n」及び「m」個の特徴に加えて、
【0127】
【化4】
【0128】
を含み得、式中、R、R、及びRは、各々H又はC1~C6アルキルであり、R及びRは、各々C1~C6アルキルである。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。
【0129】
ポリマーヒドロゲルの別の例として、構造(I)における繰り返される「n」個の特徴は、構造(II)を有する複素環アジド基を含むモノマーで置換され得て:
【0130】
【化5】
【0131】
式中、Rは、H又はC1~C6アルキルであり、Rは、H又はC1~C6アルキルであり、Lは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子を含む線状鎖を含むリンカーであり、その鎖中の炭素原子及び任意の窒素原子上に10個の任意選択の置換基を含み、Eは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子を含む線状鎖であり、その鎖中の炭素原子及び任意の窒素原子上に任意選択の置換基を含み、Aは、H又はC1~C4アルキルがNに付着したN置換アミドであり、Zは、窒素含有複素環である。Zの例としては、単環構造又は縮合構造として存在する5~10炭素含有環員が挙げられる。Zのいくつかの具体的な例としては、ピロリジニル、ピリジニル、又はピリミジニルが挙げられる。
【0132】
更に別の例として、ゲル材料は、構造(III)及び(IV)の各々の繰り返し単位を含み得て:
【0133】
【化6】
【0134】
式中、R1a、R2a、R1b及びR2bの各々は、水素、任意選択で置換アルキル又は任意選択で置換フェニルから独立して選択され、R3a及びR3bの各々は、水素、任意選択で置換アルキル、任意選択で置換フェニル、又は任意選択で置換C7~C14アラルキルから独立して選択され、L及びLの各々は、任意選択で置換アルキレンリンカー又は任意選択で置換ヘテロアルキレンリンカーから独立して選択される。
【0135】
いくつかの例では、ポリマーヒドロゲル24は、ビオチン化されている。これらの例では、ビオチンは、R基の一部(すなわち、アジド、テトラジン、又はアルキンに結合することができる他の官能基)を介して、ポリマーヒドロゲル24の表面に結合する。ビオチンは、R基の一部かに共有結合することができる、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)などのリンカーに結合する。ビオチンとリンカーとの組み合わせは、少なくとも図2A及び図2Bにおいて参照番号42で示される、ビオチン含有リンカーの一例である。
【0136】
他の例では、ストレプトアビジン及びビオチンは互いに結合しており、ビオチンは、R基の一部(すなわち、アジド、テトラジン、又はアルキンに結合することができる他の官能基)を介して、ポリマーヒドロゲル24の表面に結合する。ビオチンは、R基の一部に共有結合することができる、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)などのリンカーに結合してもよい。この例では、ビオチン含有リンカーは、リンカー、ビオチン、及びストレプトアビジンを含む。
【0137】
更に他の例では、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)リンカーは、ポリマーヒドロゲル24のR基の一部に結合することができ、ビオチンは結合しない。これらの例では、ビオチンは、ポリマーヒドロゲル24が凹部12に施用された後に、添加され得る。
【0138】
ポリマーヒドロゲル24を凹部12に導入するために、ポリマーヒドロゲル24の混合物を生成し、次いで、基材40に施用することができる。一例では、ポリマーヒドロゲル24は、(例えば、水との、又はエタノール及び水との)混合物中に存在してもよい。次いで、混合物は、スピンコーティング、又は浸漬若しくはディップコーティング、又は陽圧若しくは陰圧下での材料の流れ、又は他の好適な技術を使用して、基材表面に施用することができる。これらのタイプの技術は、ポリマーヒドロゲル24を、凹部12内に、及び間隙領域38上に、被せて堆積させる。他の選択的堆積技術(例えば、マスク、制御された印刷技術などを伴う)は、ポリマーヒドロゲル24を、凹部12内に特異的に堆積させ、間隙領域38上には堆積させないように、使用することができる。
【0139】
いくつかの例では、基材40を活性化してもよく、次いで、混合物(ポリマーヒドロゲル24を含む)を、基材表面に施用してもよい。一例では、シラン又はシラン誘導体(例えば、ノルボルネンシラン)は、蒸着、スピンコーティング、又は他の堆積方法を使用して、基材40の表面に堆積され得る。他の例では、基材40は、ポリマーヒドロゲル24に結合することができる、表面活性化剤(複数可)(例えば、-OH基)を生成するために、プラズマアッシングに曝露されてもよい。
【0140】
施用された混合物は、ポリマーヒドロゲル24を硬化させるために、硬化プロセスに曝露されてもよい。一例では、硬化は、室温(例えば、約25℃)~約95℃の範囲の温度で、約1ミリ秒~約数日の範囲の時間にわたって行うことができる。
【0141】
一部の例では、次いで、凹部12内のポリマーヒドロゲル24を少なくとも実質的に無傷のまま残しながら、間隙領域38からポリマーヒドロゲル24を除去するために、研磨が実施されてもよい。研磨プロセスは、それらの領域38において、下にある基材に悪影響を及ぼすことなく、ポリマーヒドロゲル24、26を間隙領域38から除去することができる化学スラリー(例えば、研削剤、緩衝液、キレート剤、界面活性剤、及び/又は分散剤を含む)を使用して実行され得る。代替的に、研磨は、研磨剤粒子を含まない溶液により実行してもよい。
【0142】
化学的スラリーは、化学機械研磨システムで使用されて、間隙領域38の表面を研磨し得る。研磨ヘッド(複数可)/パッド(複数可)、又は他の研磨ツール(複数可)は、間隙領域38上に存在し得るポリマーヒドロゲル24を、ポリマーヒドロゲル24を凹部12内に少なくとも実質的にそのまま残したまま、研磨することができる。一例として、研磨ヘッドは、Strasbaugh ViPRR II研磨ヘッドであってもよい。
【0143】
クリーン化及び乾燥プロセスは、研磨後に実行され得る。クリーン化プロセスは、水浴及び超音波処理を利用し得る。水浴は、約22℃~約30℃の範囲の、比較的低温にて維持されてもよい。乾燥プロセスは、スピン乾燥、又は別の好適な技術を介した乾燥を伴い得る。
【0144】
フローセルの各例はまた、プライマー36、36’、及びトランスポソーム複合体10、10’を含む。プライマー36、36’は、第1の及び第2の増幅ドメイン26、26’について本明細書に記載された、プライマー配列のいずれか2つを含む。プライマー36、36’の5’末端は、ポリマーヒドロゲル24の化学に依存して変化する。図1A図2A図2B図3A図3B図4、及び図5を参照して、プライマー36、36’及びトランスポソーム複合体10、10’が、フローセル内でどのように結合し得るかの、異なる例を記載する。
【0145】
図1Aに示すように、プライマー36、36’の両方、及びトランスポソーム複合体10、10’の両方は、凹部12内のポリマーヒドロゲル24に結合している。一例では、プライマー36、36’及びトランスポソーム複合体10、10’の5’末端は、ポリマーヒドロゲル24の、アジド、及び/又はテトラジン官能基に共有結合することができる、官能基を含む。例として、5’末端官能基22、22’は、末端アルキン(例えば、ヘキシニル)、又は内部アルキンであってもよく、アルキンは、環状化合物(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN))の一部である。
【0146】
プライマー36、36’は、約0.5μM~約100μMの範囲の濃度で、キャリア液体中に含まれ得る。一例では、プライマー濃度は、約5μM~約25μMの範囲である。
【0147】
プライマー流体のキャリア液体は、水であってもよい。ポリマーヒドロゲル28の適切な官能基に、プライマー36、36’をグラフト化するために、緩衝液及び/又は塩を、キャリア液体に添加してもよい。緩衝液は5~12の範囲のpHを有し、使用される緩衝液は、プライマー36、36’の5’末端のアルキンに依存する。中性緩衝液及び/又は塩を、BCN末端プライマーをグラフト化するためのプライマー流体に添加してもよく、一方、アルカリ性緩衝液を、銅アシストグラフト化法(例えば、クリック反応)のための、プライマー流体に添加してもよい。銅アシストグラフト化法で使用されるプライマー流体のいずれも、銅触媒を含んでもよい。中性緩衝液の例としては、トリス-HCl、若しくはトリス-EDTAなどの、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris又はTRIS)緩衝液、又は炭酸緩衝液(例えば、0.25M~1M)が挙げられる。硫酸ナトリウム(例えば、1M~2M)は、使用され得る適切な塩である。アルカリ性緩衝液の例としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(CHES)、3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(CAPS)、及びアルカリ性緩衝液(Sigma-Aldrich製)が挙げられる。
【0148】
グラフト化のために、プライマー流体を、フローセルに導入する。プライマー流体は、フロースルー堆積を使用して、導入されてもよい。グラフト化は、約55℃~約65℃の範囲の温度で、約20時間~約60時間の範囲の時間にわたって、実施することができる。一例では、グラフト化は、60℃で約30分間又は60分間実施される。より低い温度及びより長い時間、又はより高い温度及びより短い時間も使用され得ることが、理解されるべきである。テトラジン単位へのBCNグラフト化を含むものなどの、いくつかのプライマーグラフト化技法は、室温(例えば、18℃~約25℃)で実施され得る。グラフト化の間、プライマー36、36’は、ポリマーヒドロゲル24のアジド基又はテトラジン基の、少なくとも一部に結合し、間隙領域38又はフローセルの縁部分に対して、親和性を有さない。
【0149】
トランスポソーム複合体10、10’はまた、約0.1μM~約1μMの範囲の濃度で、キャリア液中に含まれてもよい。
【0150】
トランスポソーム複合体流体のキャリア液は、水であってもよい。トランスポソーム複合体10、10’をポリマーヒドロゲル24の適切な官能基にグラフト化するために、緩衝液及び/又は塩を、キャリア液に添加してもよい。緩衝液は、5~12の範囲のpHを有する。本明細書に記載の、中性緩衝液及び/又は塩のいずれかを、トランスポソーム複合流体に添加してもよい。
【0151】
グラフト化のために、トランスポソーム複合体流体を、フローセルに導入する。トランスポソーム複合流体は、フロースルー堆積を使用して、導入することができる。グラフト化は、約35℃~約45℃の範囲の温度で、約30時間~約120時間の範囲の時間にわたって、実施することができる。一例では、グラフト化は、37℃で約90分間又は120分間実施される。グラフト化の間、トランスポソーム複合体10、10’は、ポリマーヒドロゲル24の、アジド又はテトラジン基の少なくとも一部に結合し、間隙領域38又はフローセルの縁部分に対して、親和性を有さない。
【0152】
図1Aに示すように、別々のトランスポソーム複合体10、10’は、溶液中で二量体を形成し、これらの二量体は、ポリマーヒドロゲル24に結合する。図1B図1Cは、説明を簡単且つ容易にするために、1つの二量体からの1つのトランスポソーム複合体10、及び他の二量体からの1つのトランスポソーム複合体10’を示すことを、理解されたい。
【0153】
トランスポソーム複合体10、10’のグラフト化は、フローセル製造中に、実施することができる。あるいは、トランスポソーム複合体流体は、試薬カートリッジに含有されてもよく、トランスポソーム複合体10、10’のグラフト化は、試料調製の前に、配列決定機器上で実施されてもよい。
【0154】
図1Aと同様に、図2A及び図2Bは、凹部12内のポリマーヒドロゲル24に結合した、プライマー36、36’の両方、及びトランスポソーム複合体10、10’の両方を示す。図2A及び図2Bの結合機構は、ビオチンとストレプトアビジンとの間の、非共有結合相互作用を利用する。
【0155】
図2A及び図2Bに示す例では、ポリマーヒドロゲル24は、ビオチン化されている。ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’は、ポリマーヒドロゲル24の表面にグラフト化された、ビオチン含有リンカー42を含有する。ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’は、ポリマーヒドロゲル24の、末端アジド又はテトラジン基の一部にビシクロノニン-ビオチン(BCN-ビオチン)をグラフト化するステップによって、調製され得る。ビオチン含有リンカー42は、ポリマーヒドロゲル24がフローセル表面に添加される前に、又はポリマーヒドロゲル24がフローセル表面に添加された後に、ポリマーヒドロゲル24にグラフト化され得る。
【0156】
1つの例示的な方法では、ポリマーヒドロゲル24は、図1Aを参照して記載されるように凹部12に施用され、次いで、ビオチン含有リンカー42が、ポリマーヒドロゲル24の表面にグラフトされる。この例では、ビオチン含有リンカー42は、キャリア流体(例えば、本明細書に記載される、中性緩衝液及び/又は塩を含む水)に添加されてもよく、流体は、フローセルに導入され、インキュベーションされてもよい。グラフト化反応は、約50℃~約70℃の範囲の温度で、約30時間~約120時間の範囲の時間にわたって、実施することができる。一例では、ビオチン含有リンカー42のグラフト化は、60℃で約120分間実施される。グラフト化中、ビオチン含有リンカー42は、ポリマーヒドロゲル24の、アジド又はテトラジン基の少なくとも一部に結合し、間隙領域38又はフローセルの縁部分に対して、親和性を有さない。一旦グラフト化されると、ビオチン含有リンカー42のビオチン44は、表面にあり、したがって、続いて導入されるストレプトアビジン46との相互作用に、利用可能である。
【0157】
図2Aに示される例では、プライマー36、36’は、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’の、末端アジド又はテトラジン基の一部の他のものにグラフト化される。プライマーグラフト化は、図1Aを参照して本明細書に記載されるように、実行され得る。
【0158】
図2Aに示される例では使用されるトランスポソーム複合体10、10’は、5’末端官能基22、22’としてビオチンを含むことが、理解されるべきである。したがって、これらの例示的なトランスポソーム複合体10、10’の転移鎖18、18’は、5’ビオチン化末端を含む。
【0159】
一例では、これらのビオチン化トランスポソーム複合体10、10’は、間隙領域38によって分離された凹部12と、凹部12内のビオチン化ポリマーヒドロゲル24’とを含む、フローセルに導入される。この例示的な方法はまた、ストレプトアビジン46をフローセルに導入するステップと、トランスポソーム複合体10、10’及びストレプトアビジン46をフローセル中でインキュベーションするステップとを含み、それによって、ストレプトアビジン46は、トランスポソーム複合体10、10’の少なくとも一部の5’ビオチン化末端22、22’を、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’に各々結合させる。フローセル内でのトランスポソーム複合体10、10’及びストレプトアビジン46のインキュベーションは、室温(例えば、約18℃~約25℃)で、約15分~約60分の範囲の時間、実施されてもよい。一例では、このインキュベーションは、約22℃で約30分間実施される。
【0160】
この例では、トランスポソーム複合体10、10’及びストレプトアビジン46は、トランスポソーム複合体10、10’をビオチン含有リンカー42にグラフト化するために、十分な量のストレプトアビジンが存在するように、約1:1~約1:2の範囲の重量比で、添加されてもよい。
【0161】
図2Aに示すように、ストレプトアビジン46は、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’の表面で、ビオチンと相互作用し、5’末端ビオチン官能基22、22’と相互作用する。
【0162】
図2Bに示される例は、プライマー36、36’もビオチン化されることを除いて、図2Aに示される例と同様である。アルキンを含有するプライマー36,36’の5’末端の代わりに、5’末端は、ビオチン44’を含有する。これらのプライマー36、36’は、ビオチン化プライマーと呼ばれる。
【0163】
この例では、ビオチン化トランスポソーム複合体(すなわち、5’末端ビオチン官能基22、22’を有する、複合体10、10’)、及びビオチン化プライマー(すなわち、5’末端ビオチンを有する、プライマー36、36’)は、各々、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’のビオチン含有リンカー42に結合する。この例では、ストレプトアビジン46は、所望のビオチン44-ストレプトアビジン46-ビオチン22、22’相互作用を達成するために、ビオチン化トランスポソーム複合体と共にフローセルに導入され、ストレプトアビジン46は、所望のビオチン44-ストレプトアビジン46-ビオチン44’相互作用を達成するために、ビオチン化プライマーと共にフローセルに導入される。したがって、この例では、第1の及び第2のビオチン化プライマー(36、36’と44’)は、ストレプトアビジン46を介して、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’に固定される。第1のビオチン化トランスポソーム(ビオチン5’末端官能基22を有する10’)は、ストレプトアビジン46を介してビオチン化ポリマーヒドロゲル24’に固定され、第2のビオチン化トランスポソーム複合体(ビオチン5’末端官能基22’を有する10’)は、ストレプトアビジン46を介してビオチン化ポリマーヒドロゲル24’に固定される。
【0164】
ビオチン-ストレプトアビジン相互作用は可逆的であるため、図2Bに示されるフローセルの例は、再利用可能であり得る。例えば、DNA試料タグメント化、断片増幅、クラスタリング、及び配列決定の後、ビオチンストレプトアビジン切断組成物を、フローセルに導入することができる。ビオチンストレプトアビジン切断組成物の例としては、約95%ホルムアミド及び約10mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又は約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬、及び残部の塩緩衝液が挙げられる。適切な反応温度において、これらの切断組成物は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を破壊し、したがって、ビオチン22、22’、44’に結合したもの(例えば、DNA断片、新生鎖など)を放出する。あるいは、ビオチン及び/又はデスチオビオチンによる熱洗浄は、新たに添加されたビオチン及び/又はデスチオビオチンを、既に結合したビオチンと競合させる。
【0165】
したがって、図2Bに示される例は、間隙領域38によって分離された凹部12を含む基材40と、凹部12内のビオチン化ポリマーヒドロゲル24’と、凹部12内に固定された第の1及び第2のビオチン化プライマー(36、36’及び44’)と、凹部12内に固定された第1のビオチン化トランスポソーム複合体(ビオチン5’末端官能基22を有する10’)であって、第1の増幅ドメイン26を含む、第1のビオチン化トランスポソーム複合体と、凹部12内に固定された第2のビオチン化トランスポソーム複合体(ビオチン5’末端官能基22’を有する10’)であって、第2の増幅ドメイン26’を含む、第2のビオチン化トランスポソーム複合体とを含む、再利用可能なフローセルである。
【0166】
他の例では、ストレプトアビジン46は、ビオチン化トランスポソーム複合体10、10’がフローセルに導入される前に、フローセルに導入されてもよい。ストレプトアビジン46は、室温でフローセルに導入されてもよく、ポリマーヒドロゲル24’のビオチン44へのストレプトアビジン46の結合は、30分未満で生じてもよい。次いで、ビオチン化トランスポソーム複合体10、10’をフローセルに導入し、インキュベーションして、プレアセンブルされたストレプトアビジン46に結合させることができる。
【0167】
更に他の例では、ストレプトアビジン46は、フローセルに導入される前に、ビオチン化トランスポソーム複合体10、10’と混合されてもよい。ストレプトアビジン46、及びビオチン化トランスポソーム複合体10、10’は、室温で、約30分以下インキュベーションされてもよい。これは、ビオチン化トランスポソーム複合体10、10’上に、ストレプトアビジンをプレアセンブルする。次いで、ストレプトアビジン-ビオチン化トランスポソーム複合体10、10’をフローセルに導入し、インキュベーションして、ポリマーヒドロゲル24’のビオチンに結合させることができる。
【0168】
更に他の例では、ストレプトアビジン46及びビオチン44は、ストレプトアビジン-ビオチン結合対を形成するために互いに予め結合し、次いで、ストレプトアビジン-ビオチン結合対のビオチン44は、R基のうちのいくつかを介してポリマーヒドロゲル24の表面に結合する(すなわち、アジド、テトラジン、又はアルキンに結合することができる他の官能基)。ストレプトアビジン-ビオチン結合対のビオチン44は、R基の一部に共有結合することができる、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)などのリンカーに結合していてもよい。この例では、ビオチン化トランスポソーム複合体10、10’を、ポリマーヒドロゲル24’の一部としてストレプトアビジン-ビオチン結合対を含有する、フローセルに導入することができる。
【0169】
更に他の例では、トランスポソーム複合体10、10’は、ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチンを使用して完全にアセンブルすることができ、ビオチンは、他のビオチン44に結合したストレプトアビジン46に結合した、リンカー22、22’である。この例では、完全にアセンブルされたトランスポソーム複合体10、10’のビオチン44に結合することができる、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)などの表面基又は表面結合リンカーを含む、ポリマーヒドロゲル24が使用される。
【0170】
図1A図2A、及び図2Bに示されるフローセルの1つの特定の例は、間隙領域38によって分離された凹部12を有する基材40と、凹部12内に固定された第1の及び第2のプライマー36,36’と、凹部12内に固定された第1のトランスポソーム複合体10であって、第1の増幅ドメイン26を含む、第1のトランスポソーム複合体と、凹部12内に固定された第2のトランスポソーム複合体10’であって、第2の増幅ドメイン26’を含む、第2のランスポソーム複合体10’とを含み、i)第1のトランスポソーム複合体10の一部、又はii)第2のトランスポソーム複合体10’の一部、又はiii)第1及び第2のトランスポソーム複合体10、10’の両方の一部は、タグメント化効率を低減するための修飾を含む。本明細書に記載されるトランスポソーム複合体修飾のいずれかを使用することができ、図1A図2A、及び図2Bを参照して記載される、結合機構のいずれかを使用することができる。
【0171】
フローセルの他の例は、空間的に分離された配置で、基材表面に結合したトランスポソーム複合体10、10’を含む。いくつかの例を、図3A図3B図4、及び図5に示す。フローセルのこれらの例は、間隙領域38によって分離された凹部12を有する基材40と、凹部12内に固定された第1の及び第2のプライマー36,36’と、第1の増幅ドメイン26を含む第1のトランスポソーム複合体10と、第2の増幅ドメイン26’を含む第2のトランスポソーム複合体10’とを含み、i)第1の及び第2のトランスポソーム複合体10、10’は、各々、凹部12の異なる領域A、Bに固定され(図3A及び図3B)、又はii)第1の及び第2のトランスポソーム複合体10、10’は、各々、凹部12内及び間隙領域38上に固定され(図4)、又はiii)第1及び第2のトランスポソーム複合体10、10’は、各々、間隙領域38の異なる領域C、Dに固定される(図5)。
【0172】
図3Aに示される例では、ポリマーヒドロゲル24は、2つの領域A、Bを含む。一方の領域Aには、第1のプライマー36及び第1のトランスポソーム複合体10が結合しており、他方の領域Bには、第2のプライマー36’及び第2のトランスポソーム複合体10’が結合している。
【0173】
一例では、ポリマーヒドロゲル24は、領域A、B全体にわたって化学的に同一であり、適切な技法を使用して、プライマー36、36’及びトランスポソーム複合体10、10’を、各々の領域A、Bに固定することができる。例えば、両方の領域A、Bにわたるポリマーヒドロゲル24は、アルキン(例えば、BCN)に結合することができる、アジド及び/又はテトラジンを含むことができる。適切な技術の一例は、フォトレジストの使用を含んでもよい。この例では、フォトレジストを現像して、一方の領域Aをマスクし、表面化学(例えば、プライマー36、36’及びトランスポソーム複合体10、10’)を他方の領域Bに加える。次いで、フォトレジストを除去し、領域B又はその表面化学に悪影響を及ぼさない条件下で、領域Aに表面化学を加える。適切な技術の他の例は、アルミニウムなどの犠牲層の使用を含むことができる。この例では、犠牲層は、凹部12の一部(例えば、半分)をマスクするように、基材40に施用される。凹部12の他の部分(例えば、他の半分)は、露出したままである。凹部の露出部分は、例えば、適切なシランを堆積させる(例えば、CVDを使用してノルボルネンシランを堆積させる)ことによって、活性化されてもよい。この例では、ポリマーヒドロゲル24、Aは、犠牲層の上、及び凹部12の露出され活性化された部分の上に施用される。次いで、犠牲層がリフトオフされ、これにより、上にあるポリマーヒドロゲル24が除去され、凹部12の以前に覆われていた部分が露出される。凹部12の他の部分上のポリマーヒドロゲル24、Aは、そのままである。プライマー36及びトランスポソーム複合体10は、次いで、ポリマーヒドロゲル24、Aにグラフト化され得る。一例では、プライマー36グラフト化は、ポリマーヒドロゲル24、Aのアジド還元、その後の、NHS-テトラジン剤の適用、その後の、BCN末端トランスポソーム複合体10及びBCN末端プライマー36のグラフト化を含む。ポリマーヒドロゲル24、Aは、任意の未反応テトラジン基を不活性化するために、キャッピング試薬に曝露されてもよい。基材40は、プライマー36及び複合体10に対して親和性を有さないので、凹部12の露出部分は、影響を受けない。次に、基材40を、例えば、ノルボルネンシランの溶液に曝露することによって、活性化することができる。次いで、ポリマーヒドロゲル24、Bは、領域A又はその表面化学に悪影響を及ぼさない条件下(例えば、高イオン強度下(例えば、10×PBS、NaCl、KClなどの存在下))で施用され得る。プライマー36’及びトランスポソーム複合体10’を、ポリマーヒドロゲル24、Bにグラフト化することができる。適切な技法の更に他の例は、事前グラフトされたプライマー36、36’及びトランスポソーム複合体10、10’を含み、事前グラフト化ポリマー材料を、領域A、Bに、逐次的且つ選択的に適用するステップを含み得る。いくつかの例示的な方法が提供されているが、プライマー36、36’及びトランスポソーム複合体10、10’を、各々の領域A、Bに固定するために、任意の他の方法が使用され得ることが、理解されるべきである。
【0174】
更に他の例では、ポリマーヒドロゲル24の領域A、Bは、化学的に異なっていてもよい(すなわち、一方の領域Aがプライマー36をグラフトすることができ、他方の領域Bがプライマー36’をグラフトすることができるように、オルソゴナルであってもよい)。一例では、各々のプライマー36、36’及びトランスポソーム複合体10、10’の結合のために、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24を、領域Aとして施用することができ、アジド又はテトラジン末端ポリマーヒドロゲル24を、領域Bとして施用することができる。他の例では、領域Aのポリマーヒドロゲル24は、テトラジン末端基を有し、領域Bのポリマーヒドロゲル24は、アルキン(非BCN)末端基を有する。この例では、トランス-シクロオクテン(TCO)で終端された、プライマー36及び複合体10と、ピコリルアジドで終端された、プライマー36’及び複合体10’とを、ポリマーヒドロゲル24の領域A及び領域Bに、各々同時にグラフト化することができる。更に他の例では、領域Aのポリマーヒドロゲル24は、テトラジン末端基を有し、領域Bのポリマーヒドロゲル24は、ジベンゾシクロオクチン末端基を有する。この例では、トランス-シクロオクテン(TCO)で終端された、プライマー36及び複合体10と、ピコリルアジドで終端された、プライマー36’及び複合体10’とを、ポリマーヒドロゲル24の領域A及び領域Bに、各々同時にグラフト化することができる。いくつかの例が提供されているが、オルソゴナルな化学の任意の組み合わせが、プライマー36及び36’を各々グラフトするために、領域A及びBにおいて使用され得ることが、理解されるべきである。
【0175】
図4に示される例では、ポリマーヒドロゲル24は、2つの領域A、Bを含む。一方の領域Aには、第1のプライマー36及び第1のトランスポソーム複合体10が結合しており、他方の領域Bには、第2のプライマー36’が結合している。この例では、第2のトランスポソーム複合体10’は、間隙領域38に結合している。図3Aを参照して記載される方法を使用して、プライマー36及び第1のトランスポソーム複合体10を、領域Aに結合させ、プライマー36’を、領域Bに結合させることができる。この例では、間隙領域38は、第2のトランスポソーム複合体10’をそこに結合させることができる材料48を、そこに選択的に添加することができる。間隙領域38上に材料48を選択的に施用するために、選択的堆積技術又は塩排除法を使用することができる。
【0176】
図5に示す例では、ポリマーヒドロゲル24は、2つの領域A、Bを含む。一方の領域Aには、第1のプライマー36が結合しており、他方の領域Bには、第2のプライマー36’が結合している。この例では、第1の及び第2のトランスポソーム複合体10、10’は、間隙領域38の領域に結合する。図3Aを参照して記載した方法を使用して、プライマー36を領域Aに結合させ、プライマー36’を領域Bに結合させることができる。トランスポソーム複合体10、10’のリンカー22、22’は、間隙領域38に施用された材料48、又は基材40(材料48が使用されない場合)に、結合するように、選択することができる。
【0177】
本明細書に開示されるプライマー36、36’及びトランスポソーム複合体10、10’の任意の例は、図3A図4、及び図5を参照して記載される、フローセルにおいて使用され得る。
【0178】
更に他の例では、トランスポソーム複合体10、10’の空間的に分離された配置は、複数の深さの凹部12’を使用して達成される。凹部12’を、図3Bに示す。空間的な分離を可能にするステップに加えて、この特定の凹部12’の使用はまた、増加したインサートサイズをもたらし得る。
【0179】
複数深さの凹部12’は、浅部84及び深部86を含む。浅部84及び深部86の深さは、凹部12について本明細書に記載された範囲内であるが、深部86は、浅部84よりも大きい深さを有する。
【0180】
図3Bに示すように、ポリマーヒドロゲル24は、複数の深さの凹部12’内の表面上に施用される。図3Bには示されていないが、間隙領域38がポリマーヒドロゲル24を含まないままである限り、ポリマーヒドロゲル24は、複数深さの凹部12’内の表面(底面及び側壁を含む)のすべてに沿って、共形的にコーティングされてもよいことを理解されたい。本明細書に記載のポリマーヒドロゲル24の任意の例が、この例で使用され得る。
【0181】
図3Bに示すように、第1のプライマーセット(切断可能な第1のプライマー36C、及び切断不可能な第2のプライマー36Dを含む)は、浅部84内の表面上に固定され、第1のトランスポソーム複合体10は、浅部84内の表面上に固定され、第1のトランスポソーム複合体10は、本明細書に記載される第1の増幅ドメイン26を含み、深部86の表面に固定された第2のプライマーセット(切断不可能な第1のプライマー36C、及び切断可能な第2のプライマー36D)と、深部86の表面に固定された第2のトランスポソーム複合体10’であって、第2の増幅ドメイン26’を含む第2のトランスポソーム複合体10’と含む。切断可能な第1のプライマー36C、切断不可能な第2のプライマー36D、切断不可能な第1のプライマー36C、及び切断可能な第2のプライマー36Dは、図17を参照してより詳細に記載される。これらの例では、第1の増幅ドメイン26は、例えば、切断不可能な第1のプライマー36C及び切断可能な第1のプライマー36Cと同一の配列を有し、第2の増幅ドメイン26は、例えば、切断可能な第2のプライマー36D及び切断不可能な第2のプライマー36Dと同一の配列を有する。
【0182】
プライマー36C、36D、36C、36D、及びトランスポソーム複合体10、10’は、それらをポリマーヒドロゲル24に結合させることを可能にする、5’官能基を含む。本明細書に記載の例のいずれか、例えば、末端アルキン(例えば、ヘキシニル)又は内部アルキン、を使用することができ、アルキンは、環状化合物(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN))の一部である。
【0183】
図3Bに示される構成を作製するための方法の例が、図26A図26Dに概略的に示される。単一の多重深さの凹部12’が示されているが、本方法は、基材40内に多重深さ凹部12’のアレイを生成してもよいことを、理解されたい。
【0184】
本方法は、概して、間隙領域38によって分離された複数の深さの凹部12’を有する基材40上に、ポリマーヒドロゲル24を施用するステップであって、各複数の深さの凹部12’は、深部86及び浅部84を含む(図26A)、ステップと、間隙領域38からポリマーヒドロゲル24を除去するステップと(図26B)、フォトレジストを現像して、深部86に不溶性フォトレジスト82を生成するステップであって、それによって、浅部84が露出したままである、ステップと(図26B)、不溶性フォトレジスト82が深部86にある間に、第1のプライマーセット及び第1のトランスポソーム複合体10を浅部84の表面上に固定するステップと(図26B)、不溶性フォトレジストを除去するステップと(図26C)、第2のプライマーセット及び第2のトランスポソーム複合体10’を浅部84の表面に固定するステップと(図26C)を含む。
【0185】
方法の最初に、複数の深さの凹部12’が、基材40に形成される。複数の深さの凹部12’は、ナノインプリントリソグラフィを使用して、形成されてもよい。一例として、基材材料が軟質である間に、ワーキングスタンプが基材40(例えば、単一層ベース支持体、又はベース支持体上に配置された層)に押し込まれ、これにより、基材40内に、ワーキングスタンプフィーチャのインプリント(ネガティブレプリカ)が作成される。次いで、基材40は、ワーキングスタンプが所定の位置にある状態で、硬化され得る。
【0186】
硬化は、放射線硬化性樹脂材料が使用される場合、可視光線若しくは紫外(ultraviolet、UV)線などの化学線への曝露によって、又は熱硬化性樹脂材料が使用される場合、熱への曝露によって、達成され得る。硬化は、重合及び/又は架橋を促進し得る。一例として、硬化は、ソフトベーク(例えば、樹脂を堆積させるために使用され得る任意の液体担体を駆動するための)及びハードベークを含む複数の段階を含み得る。ソフトベークは、より低い温度(例えば、約50℃~約150℃の範囲)で、0秒間超~約3分間の範囲にわたる時間、実施されてもよい。ハードベークの持続時間は、約100℃~約300℃の範囲の温度で約5秒~約10分間続けてもよい。ソフトベーキング及び/又はハードベーキングに使用することができるデバイスの例としては、ホットプレート、オーブンなどが挙げられる。
【0187】
硬化後、作業スタンプが取り外される。これにより、基材40に、トポグラフィー特徴を作り出す。
【0188】
次に、ポリマーヒドロゲル24を、基材40上に施用する。ポリマーヒドロゲル24は、任意の好適な堆積技術を使用して施用され得る。最初に施用されるとき、ポリマーヒドロゲル24は、複数の深さ凹部12’の表面間隙領域38を含む、基材40全体を、共形的に被覆する。
【0189】
間隙領域38の上に位置付けられているポリマーヒドロゲル24は、例えば、研磨プロセスを使用して除去される。研磨プロセスは、それらの領域38において、下にある基材40に悪影響を及ぼすことなく、ポリマーヒドロゲル24を間隙領域38から除去することができる、化学スラリー(例えば、研削剤、緩衝液、キレート剤、界面活性剤、及び/又は分散剤を含む)を使用して実行され得る。代替的に、研磨は、研磨剤粒子を含まない溶液により実行してもよい。化学的スラリーは、化学機械研磨システムで使用されて、間隙領域38の表面を研磨し得る。研磨ヘッド(複数可)/パッド(複数可)、又は他の研磨ツール(複数可)は、間隙領域38の上に存在し得るポリマーヒドロゲル24を、ポリマーヒドロゲル24を凹部(複数可)12内に少なくとも実質的にそのまま残したまま、研磨することができる。一例として、研磨ヘッドは、Strasbaugh ViPRR II研磨ヘッドであってもよい。クリーン化及び乾燥プロセスは、研磨後に実行され得る。クリーン化プロセスは、水浴及び超音波処理を利用し得る。水浴は、約22℃~約30℃の範囲の、比較的低温にて維持されてもよい。乾燥プロセスは、スピン乾燥、又は別の好適な技術を介した乾燥を伴い得る。
【0190】
複数の深さの凹部12’内のポリマーヒドロゲル24を、図26Aに示す。
【0191】
次に、フォトレジストが、ポリマーヒドロゲル24上に施用される。フォトレジストは、ネガティブフォトレジストであってもよいし、ポジティブフォトレジストであってもよい。好適なポジティブフォトレジストの例としては、MICROPOSIT(登録商標)S1800シリーズ又はAZ(登録商標)1500シリーズが挙げられ、それらの両方が、Kayaku Advanced Materials,Inc.から入手可能である。好適なポジティブフォトレジストの別の例は、SPR(商標)-220(DuPont製)である。好適なネガティブフォトレジストとしては、SU-8シリーズ及びKMPR(登録商標)シリーズ(両方ともKayaku Advanced Materials,Inc.から入手可能)、UVN(商標)シリーズ(DuPontから入手可能)、又はNR(登録商標)シリーズフォトレジスト(Futurrexから入手可能)が挙げられる。ポジティブ又はネガティブフォトレジストは、本明細書に開示される任意の好適な堆積技術を使用して、施用され得る。
【0192】
ポジティブフォトレジストが使用される場合、深部86内のポジティブフォトレジストの部分は、不溶性フォトレジスト82を形成するために、特定の波長の光に露光されない。露光された部分は可溶性のままであり、適切な現像液で除去することができる。ポジティブフォトレジスト38のための好適な現像液の例としては、希釈水酸化ナトリウム、希釈水酸化カリウム、又は金属イオンフリー有機TMAH(テトラメチルアミノヒドロキシド)の水溶液などの、水性アルカリ溶液が挙げられる。
【0193】
ネガティブフォトレジストが使用される場合、深部86におけるネガティブフォトレジストの部分は、不溶性フォトレジスト82を形成するために、特定の波長の光に露光される。露光されなかった部分は可溶性のままであり、適切な現像液で除去することができる。ネガティブフォトレジストのための好適な現像液の例としては、希釈水酸化ナトリウム、希釈水酸化カリウム、又は金属イオンフリー有機TMAH(tetramethylammoniumhydroxide、テトラメチルアミノヒドロキシド)の水溶液などの水性アルカリ溶液が挙げられる。
【0194】
いずれの例でも、マスクを使用して、フォトレジストを、所望の方法で光に選択的に露光することができる。ネガティブフォトレジストが使用される場合、光が基材40を透過して深部86に到達し、基材40を透過して浅部84に到達するのが阻止される限り、裏面露光(例えば、基材40を通して)が使用されてもよい。この特定の例では、深部86及び浅部84における基材40の厚さは、各々、光透過性及び光遮断性であるように、選択することができる。
【0195】
可溶性フォトレジストを除去すると、図26Bに示すように、間隙領域38及び浅部84の高分子ヒドロゲル24が露出され、不溶性フォトレジスト82が深部に残る。
【0196】
不溶性フォトレジスト82が深部86にある間に、第1のプライマーセット及び第1のトランスポソーム複合体10は、浅部84においてポリマーヒドロゲル24の表面上に固定される(図26B)。固定のために、トランスポソーム複合体10及びプライマー36C、36Dは、約0.1μM~約1μMの範囲の濃度で、キャリア液中に含まれてもよい。キャリア液体は、水であってもよい。トランスポソーム複合体10及びプライマー36C、36Dを、ポリマーヒドロゲル24の適切な官能基にグラフトするために、緩衝液及び/又は塩を、キャリア液に添加してもよい。緩衝液は、5~12の範囲のpHを有する。本明細書に記載される中性緩衝液及び/又は塩のいずれかが、使用され得る。
【0197】
トランスポソーム複合体10及びプライマー36C、36Dを含有する流体は、フロースルー堆積を使用して、導入することができる。グラフト化は、約35℃~約45℃の範囲の温度で、約30時間~約120時間の範囲の時間にわたって、実施することができる。グラフト化の間、トランスポソーム複合体10及びプライマー36C、36Dは、ポリマーヒドロゲル24の、アジド又はテトラジン基の少なくとも一部に結合し、間隙領域38に対する親和性を有さない。
【0198】
洗浄溶液をフローセルに流して、グラフト化されていないトランスポソーム複合体10及び/又はプライマー36C、36Dを、除去することができる。
【0199】
次いで、不溶性フォトレジスト82’を、除去してもよい。不溶性ポジティブフォトレジストは、超音波処理を使用したメチルスルホキシド(DMSO)などの除去剤で、又はアセトン洗浄液で、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート洗浄液で、又はNMP(N-メチル-2-ピロリドン)ベースのストリッパ洗浄液で、リフトオフされてもよい。不溶性のネガティブフォトレジストは、超音波処理を使用したメチルスルホキシド(DMSO)などの除去剤で、アセトンで、又はNMP(N-メチル-2-ピロリドン)ベースのストリッパで、リフトオフされてもよい。
【0200】
次いで、図26Cに示すように、第2のプライマーセット及び第2のトランスポソーム複合体10’を、深部86の表面に固定する。固定のために、トランスポソーム複合体10’及びプライマー36C、36Dは、約0.1μM~約1μMの範囲の濃度で、キャリア液中に含まれてもよい。トランスポソーム複合体10’及びプライマー36C、36Dを含有するキャリア液体は、水であってもよく、緩衝液及び/又は塩を含んでもよい。このキャリア流体は、フロースルー堆積を使用してフローセルに導入されてもよく、グラフト化は、本明細書に記載されるように実施されてもよい。
【0201】
第2のプライマーセット及び第2のトランスポソーム複合体10’は、トランスポソーム複合体10及びプライマー36C、36Dの存在により、浅部84におけるポリマーヒドロゲル24へのグラフト化から、実質的にブロックされる。
【0202】
洗浄溶液をフローセルに流して、グラフト化されていないトランスポソーム複合体10’及びプライマー36C、36Dを、除去することができる。
【0203】
次いで、DNA試料34をフローセルに導入し、タグメント化及び伸長に曝露して、完全に適合したDNA断片を生成することができる。断片をトランスポソーム複合体10、10’から切断し、プライマー36C、36D、36C、36Dの1つを播種し、両方のプライマーセットにわたる増幅に曝露することができる。増幅は、深部86及び浅部84の両方において、順方向鎖及び逆方向鎖を生成する。しかしながら、切断可能なプライマー36C、36Dの各々における、切断部位(図17を参照して記載される)は、順方向鎖が深部86又は浅部84のいずれかから切断されること、及び逆方向鎖が浅部84又は深部86の他方から切断されることを、可能にする。したがって、逆方向鎖は部分86又は84に残り、順方向鎖は部分84又は86に残る。これにより、ペアエンド配列決定を、同時に実施することができる。
【0204】
図3Aに示される例では、クラスタ生成は、3つの異なるタイプの架橋及び完全伸長(完全適応)断片アンプリコンを、形成し得る。ポリマーヒドロゲル24、A上に形成された、完全適応フラグメントアンプリコンは、同一のトランスポソーム10及び同一のプライマー36が、ポリマーヒドロゲル24、A上に存在するため、両端に同一の増幅ドメイン26を有する(例えば、P5-P5)、同様に、ポリマーヒドロゲル24、B上に形成された、完全適応フラグメントアンプリコンは、同一のトランスポソーム10’及び同一のプライマー36’が、ポリマーヒドロゲル24、B上に存在するため、両端に同一の増幅ドメイン26’を有する(例えば、P7-P7)対照的に、高分子ヒドロゲル24、A及び24、Bの両方に形成された、完全に適合したフラグメントアンプリコン(すなわち、ヒドロゲル24、A及び24、Bを橋渡しするもの)は、対向する末端に、異なる増幅ドメイン26、26’を有する(例えば、P5-P7)。これは、両方のポリマーヒドロゲル24、A及び24、Bにわたって実施される、タグメント化及び増幅が、両方のトランスポソーム10、10’及び両方のプライマー36、36’を含むためである。
【0205】
完全適合断片アンプリコンの増幅ドメイン26、26’における、オルソゴナルな切断基に起因して、特異的塩基切断が実施される場合、一方のタイプの架橋された完全適合断片アンプリコン(例えば、ポリマーヒドロゲル24上に形成されたもの、A)は除去されるが、他方のタイプの架橋された完全適合断片アンプリコン(例えば、ポリマーヒドロゲル24上に形成されたもの、B)は架橋されたままである。例として、特異的塩基切断は、増幅ドメイン26中の切断基を標的とする。この例では、特異的塩基切断はまた、対向する末端に異なる増幅ドメイン26、26’を有する、完全適合断片アンプリコンを線状化し、これは、この例では、それらをポリマーヒドロゲル24、Bに結合させたままにする。これらの線状化された完全適合断片アンプリコンは、配列決定され、次いで、配列決定された産物が除去される。
【0206】
次いで、クラスタ化は、以前に線状化された完全適合断片アンプリコン(例えば、ポリマーヒドロゲル24、B上に形成されたもの)、及び他のポリマーヒドロゲル24、A上のプライマー36を使用して、再び実施される。配列決定の第1ラウンド後に架橋されたままである完全適合断片アンプリコン(例えば、ポリマーヒドロゲル24、B上に形成されたもの)は、クラスタ化に関与しない。この例では、残存する架橋された完全適合断片アンプリコン(例えば、ポリマーヒドロゲル24、B上に形成されたもの)が除去されるように、特異的塩基切断が実施される。この特定の例では、特異的塩基切断は、増幅ドメイン26’中の切断基を標的とする。この特異的な塩基切断は、対向する末端に異なる増幅ドメイン26、26’を有する新たに生成された完全適合断片アンプリコンを線状化し、これは、この例では、それらをポリマーヒドロゲル24、Aに結合させたままにする。これらの線状化された完全適合断片アンプリコンは、配列決定され、次いで、配列決定された産物が除去される。
【0207】
図3Aの例では、異なる増幅ドメイン26、26’を有する完全適合断片が、2つのポリマーヒドロゲル24、A及び24、Bにわたる領域に限定されるため、配列決定中の強度が影響を受ける可能性がある。フローセル及び方法の他の例を使用して、形成される対向する末端に異なる増幅ドメイン26、26’を有する、完全適合断片の数を増加させることができる。この例示的なフローセルを図15Aに示し、例示的な方法を、図15A図15Jに概略的に示す。
【0208】
図15Aに示されるフローセルは、間隙領域38によって分離された凹部12を有する基材40と、各凹部12の第1の部分に配置された第1のポリマーヒドロゲル24、Aと各凹部12の第2の部分に配置された第2のポリマーヒドロゲル24,Bと、オルソゴナルな開裂可能な結合54を介して第1のポリマーヒドロゲル24、A上に固定されたトランスポソーム前駆体52と、第2のポリマーヒドロゲル24、B上に固定された捕捉プライマー56と、第1及び第2のポリマーヒドロゲル24A、24Bの各々上に固定された増幅プライマーセットの第1及び第2のプライマー36C、36Dとを含む。
【0209】
基材40は、本明細書に記載の例のいずれかであってもよい。
【0210】
増幅プライマーセットのプライマー36C、36Dは、それらがオルソゴナルな切断部位を有する限り、プライマー36、36’について本明細書に記載される例のいずれかであり得る。図17を参照して更に記載される他の例では、増幅プライマーセットの第1の及び第2のプライマーの各々は、切断可能プライマー及び切断不可能プライマーの両方を含む。
【0211】
捕捉プライマー56は、プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dにハイブリダイズすることができるが、増幅プライマーセット中のプライマー36C、36Dにオルソゴナルであるため、他の方法では増幅に関与しない。本明細書で更に詳細に論じられるように、捕捉プライマーは、プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dの非転移鎖20D(図15B及び図16B)に、相補的な配列を含む。一例として、捕捉プライマー56(PX)の配列は、以下の通りであり得る:
PX 5’→3’
AGGAGGAGGAGGAGGAGGAGGAGG(配列番号10)
【0212】
捕捉プライマー56はまた、プライマー配列の5’末端に、ポリT配列を含み得る。捕捉プライマー56は、切断部位を含まない。
【0213】
トランスポソーム前駆体52は、その5’末端からその3’末端に向かって、オルソゴナルに切断可能な結合54、増幅ドメイン26C、配列決定プライマー配列28C、及びトランスポゾン末端16Cを形成することができる鎖30Cを含む(図16A参照)。図16Aに示すように、トランスポソーム前駆体52は、フローセル表面上にアセンブルされるトランスポソーム複合体10Cの、転移鎖18Cになる。
【0214】
オルソゴナルに切断可能な結合54は、増幅プライマーセットのプライマー36C、36Dに対する、オルソゴナルな切断化学を有する。したがって、オルソゴナルに切断可能な結合54は、プライマー36C、36Dの切断部位のいずれかに使用される切断剤に感受性ではなく、プライマー36C、36Dの切断部位は、オルソゴナルに切断可能な結合54に使用される切断剤に感受性ではない。切断部位を含むことに加え、オルソゴナルに切断可能な結合54は、その3’末端で増幅ドメイン26Cに共有結合することができ、その5’末端でポリマーヒドロゲル24、Aの表面官能基に共有結又は非共有結合することができるという点で、二官能性である。オルソゴナルに切断可能な結合54は、ビシナルジオール結合(過ヨウ素酸塩試薬による処理などの、酸化によって切断され得る)、ジスルフィド結合(例えば、還元条件下(例えば、ジチオスレイトール(DTT)の存在下)、又はホスフィンの存在下で切断可能)、オルト-ニトロベンジル基(例えば、光分解によって切断可能)、アゾベンゼン結合(例えば、Naの存在下で切断可能)、アルキル-セレン結合(例えば、過酸化水素による処理などの、酸化によって切断可能)、シリルエーテル結合(例えば、フッ化物イオン、酸、又は塩基によって切断可能)、又はアリルカルバメート結合(例えば、パラジウム錯体の存在下で切断可能)であってもよい。オルソゴナルに切断可能な結合54のいくつかの例としては、ビシナルジオールを有する脂肪族リンカー、ジスルフィドを有するポリ(エチレングリコール)リンカーなどが挙げられる。
【0215】
トランスポソーム前駆体52はまた、増幅ドメイン26Cも含む。トランスポソーム前駆体52の増幅ドメイン26Cは、増幅ドメイン26Cが第1のプライマー36Cの切断部位を含まないことを除いて、第1のプライマー36Cと同一の配列を有する。
【0216】
トランスポソーム前駆体52はまた、配列決定プライマー配列28Cも含む。配列決定プライマー配列28Cは、タグメント化及び増幅後にフローセルに導入された、配列決定プライマーに結合することができる。
【0217】
トランスポソーム前駆体52はまた、鎖30Cも含む。鎖30は、鎖32Cとトランスポゾン末端16Cを形成することができ、これは続いて、トランスポザーゼ14Cと共にフローセルに導入される(図15B参照)。したがって、鎖30Cは、鎖32Cと相補的である。鎖30の例は、鎖30Cに使用することができる。
【0218】
図3Aに示される例と同様に、ポリマーヒドロゲル24は、2つの領域A、Bを含む。一方の領域Aは、トランスポソーム前駆体52及びそれに結合したプライマー36C、36Dを有し、他方の領域Bは、捕捉プライマー56及びそれに結合したプライマー36C、36Dを有する。
【0219】
一例では、ポリマーヒドロゲル24は、領域A、B全体にわたって化学的に同一である。この例では、ポリマーヒドロゲル24は、図1A図1Dを参照して本明細書に記載されるように施用してよく、例えば、ブランケット堆積を使用し、次いで研磨して、間隙領域38からポリマーヒドロゲル24を除去する。この例では、ブランケットグラフト化技術を使用して、プライマー36C、36Dを領域A、Bの両方に固定してもよく、又はプライマー36C、36Dをポリマーヒドロゲル24に予めグラフト化してから、凹部12に施用してもよい。次いで、技術を使用して、トランスポソーム前駆体52を領域Aに、捕捉プライマー56を領域Bに、選択的に固定することができる。適切な選択的固定技術は、図3Aを参照して記載される。ポリマーヒドロゲル24が領域A、B全体にわたって化学的に同一である例では、プライマー36C、36Dの5’末端官能基、及びオルソゴナルに切断可能な結合54の5’末端官能基は、実体36C、36D、54の切断部位がオルソゴナルである限り、同一であり得る。
【0220】
他の例では、ポリマーヒドロゲル24は、領域A、Bにおいて化学的に異なる。この例では、一方の領域Aは、プライマー36C、36D及びトランスポソーム前駆体52の一部をグラフト化するように構成され、他方の領域Bは、プライマー36C、36D及び捕捉プライマー56の他の一部をグラフトするように構成される。したがって、プライマー36C、36Dの一部は、化学的に異なる領域A、Bへの所望の結合を達成するために、プライマー36C、36Dの他の一部とは異なる、5’末端官能基を有してもよい。プライマー36C、36D及びトランスポソーム前駆体52の一部がポリマーヒドロゲル24、Aに結合し、プライマー36C、36D及び捕捉プライマー56の他の一部がポリマーヒドロゲル24、Bに結合する限り、本明細書に記載の共有結合又は非共有結合機構のいずれを使用してもよい。この例では、プライマー36C、36D及びトランスポソーム前駆体52の一部を、ポリマーヒドロゲル24、Aに予めグラフト化し、ポリマーヒドロゲル24、Aを、凹部12の第1の部分に選択的に施用し、プライマー36C、36D及び捕捉プライマー56の他の一部を、ポリマーヒドロゲル24、Bに予めグラフト化し、ポリマーヒドロゲル24、Bを、凹部12の第2の部分に選択的に施用してもよい。あるいは、ポリマーヒドロゲル24、A及び24、Bは、選択的に施用され得、次いで、プライマー36C、36D、トランスポソーム前駆体52、及び捕捉プライマー56の結合は、それらがポリマーヒドロゲル24の領域A及びBに各々結合するように構成されるので、同時に起こり得る。
【0221】
図15Bは、トランスポソーム複合体10Cのオンフローセルアセンブリ、及びプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dのオンフローセル結合を示す。
【0222】
トランスポソーム複合体10Cのオンフローセルアセンブリは、複数のトランスポザーゼ酵素14C及び複数の非転移鎖20Cを含む、第1の流体を、図15Aに示すフローセルに導入するステップによって、達成することができる。
【0223】
第1の流体では、トランスポザーゼ酵素14Cは、トランスポザーゼ14、14’について本明細書に記載される例のいずれかであってもよい。また、第1の流体において、非転移鎖20Cは鎖32Cであり、これは、ポリマーヒドロゲル24Aに結合している鎖30Cと、トランスポゾン末端16Cを形成することができる。したがって、非転移鎖20C、32Cは、鎖30Cと相補的である。鎖32の例は、鎖32C、20Cに使用することができる。第1の流体中のトランスポザーゼ酵素14C及び非転移鎖20C、32Cの各々の濃度は、ポリマーヒドロゲル24に結合したトランスポソーム前駆体52の数に依存し得る。トランスポソーム前駆体52に対して、過剰なトランスポザーゼ酵素14C及び非転移鎖20C、32Cの各々を使用して、所望の数のトランスポソーム複合体10Cが形成されることを確実にし得る。任意の非反応トランスポザーゼ酵素14C及び非転移鎖20C、32Cは、洗浄溶液中で除去することができる。
【0224】
第1の流体はまた、水であってもよい、キャリア液体を含む。
【0225】
図15Aのフローセルに導入されると、第1の流体は、複数のトランスポソーム前駆体52、複数の非転移鎖20C、32C、及び複数のトランスポザーゼ酵素14Cの、少なくとも一部が相互作用して、ポリマーヒドロゲル24A上に固定された複数のトランスポソーム複合体10Cを形成するように、フローセル内でインキュベーションされる。第1の流体は、第1の流体中の非転移鎖20C、32Cと、(トランスポソーム前駆体52の)鎖30Cとの、ハイブリダイゼーションに適した温度で、インキュベーションされる。ハイブリダイズした鎖30C、32Cはトランスポゾン末端16Cを形成し、これに、トランスポザーゼ酵素14Cが非共有結合することができる。得られたトランスポソーム複合体10Cを、図15B及び図16Aの両方に示す。
【0226】
図16Aに詳細に示すように、トランスポソーム複合体10Cは、トランスポゾン末端16Cで非転移鎖20C、32Cにハイブリダイズした、転移鎖18Cを含む。転移鎖18Cは、増幅ドメイン26C、及びオルソゴナルに切断可能な結合54(ポリマーヒドロゲル24、Aに結合する)を含む。上述のように、増幅ドメイン26Cは、切断部位を除いて、第1のプライマー36Cと同一の配列を有する。これにより、トランスポソーム複合体10Cは、プライマー36C、36Dを使用した増幅に関与し、プライマー36C、36Dとは別に切断されることが可能となる。
【0227】
トランスポソーム複合体10Cをフローセル上でアセンブルした後、プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dを、フローセル内のポリマーヒドロゲル24、Bに結合させることができる。
【0228】
プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dを、図15B(ポリマーヒドロゲル24、Bへの結合後、及び図16B(ポリマーヒドロゲル24、Bへの結合前)に示す。プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dは、トランスポゾン末端16Dに非共有結合したトランスポザーゼ酵素14Dを含む。トランスポゾン末端16Dは二本鎖核酸鎖であり、その一方の鎖30Dは、転移鎖18Dの一部であり、その他方の鎖32Dは、非転移鎖32Dの一部である。各々トランスポザーゼ酵素14、鎖30、鎖32の任意の例は、トランスポザーゼ酵素14D、鎖30D、鎖32Dに使用することができる。
【0229】
転移鎖18Dは、トランスポゾン末端16Dの鎖30Dに結合した、分岐アダプターを含む。分岐アダプターは、増幅ドメイン26D、及び配列決定プライマー配列28Dを含む。分岐アダプターは、ポリマーヒドロゲル24、Bと結合しない。増幅ドメイン26Dは、第2のプライマー36Dと同一の配列を有し、配列決定プライマー配列28Dは、下流の配列決定中に、配列決定プライマーに結合することができる。
【0230】
非転移鎖20Dは2つの鎖部分を含み、その一方はトランスポゾン末端16Dの鎖32Dであり、他方は鎖58である。図16Bに示すように、鎖58は、鎖32Dの3’末端に結合している。鎖58は、捕捉プライマー56に相補的な配列を有し、したがって、捕捉プライマー56が結合したポリマーヒドロゲル24、Bに結合するための、ハイブリダイゼーション機構を有する、プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dを提供する。
【0231】
プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dは、フローセルの外側の溶液中で調製されてもよい。最初に、鎖18D及び20Dが合成され得、次いで、鎖部分30D及び32Dが一緒にハイブリダイズされて、分岐アダプターを形成する。トランスポザーゼ酵素14Dを添加し、トランスポゾン末端16Dと複合体を形成する。
【0232】
プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dをキャリア流体に添加して、第2の流体を形成することができる。第2の流体中のプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dの濃度は、ポリマーヒドロゲル24、Bに結合した捕捉プライマー56の数に依存し得る。第2の流体のキャリア液体は、水であり得る。捕捉プライマー56に対して過剰のプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dを使用して、所望の数のトランスポソーム複合体10Dが結合することを、確実にすることができる。任意の未反応のプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dは、洗浄溶液中で除去することができる。
【0233】
プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dのオンフローセル結合は、トランスポソーム複合体10Cがアセンブルされた後に、複数のプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dを含む第2の流体を、フローセルに導入するステップによって達成されてもよい。第2の流体は、部分鎖58(図16B参照)と捕捉プライマー56とのハイブリダイゼーションに適した温度で、インキュベーションされる。これは、図15Bに示すように、トランスポソーム複合体10Dを、ポリマーヒドロゲル24、Bに結合させる。
【0234】
他の例示的な方法では、プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dは、複合体10Cのオンフローセルアセンブリの前に、ポリマーヒドロゲル24、Bに結合させることができる。
【0235】
次に、DNA試料を、図15Bのフローセルに導入する。DNA試料は、本明細書に開示されるタグメント化緩衝液の例と共に導入され得る。
【0236】
図15Cは、DNA試料が導入された後の凹部12を示す。DNA試料はDNA断片35、37に断片化され、その5’末端は、各々転移鎖18C又は18Dの一方の3’末端ライゲーションされる。より具体的には、この例では、DNA断片35A、37Aの5’末端は、トランスポソーム複合体10Cの転移鎖18Cの、各々の3’末端にライゲーションされる。DNA断片35B、37Bの5’末端は、プレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dの転移鎖18Dの各々の3’末端にライゲーションされ、DNA断片35C、37Cの5’末端は、トランスポソーム複合体10D、10Cの転移鎖18D、18Cの各々の3’末端にライゲーションされる。したがって、DNA断片35A、37Aは、ポリマーヒドロゲル24 Aに結合し、DNA断片35B、37Bはポリマーヒドロゲル24、Bに結合し、DNA断片35C、37Cはポリマーヒドロゲル24、A及び24、Bを架橋する。
【0237】
断片化及びライゲーションは、30℃以上の温度で起こり得る。一例では、温度は、約30℃~約55℃の範囲であり得る。
【0238】
図15Cに示すように、DNA断片35A、37A、35B、37B、35C、37Cの3’末端は、非転移鎖20C、20Dの5’末端にライゲーションされない。したがって、ギャップ39は、DNA断片鎖35A、35B、35Cの各々の3’末端と非転移鎖20C又は20Dの5’末端との間に存在し、ギャップ39’は、DNA断片鎖37A、37B、37Cの3’末端と非転移鎖20D又は20Cの5’末端との間に存在する。一例では、各ギャップ39、39’は、9塩基対長である。
【0239】
次いで、本方法は、複数のプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dの各々の、複数のトランスポザーゼ酵素14C及びトランスポザーゼ酵素14Dを除去するステップを含む。トランスポザーゼ酵素14C、14Dの除去は、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はプロテイナーゼ又は他の変性剤を使用して、達成することができる。図15Dは、トランスポザーゼ酵素除去後の、フローセル凹部12を示す。
【0240】
次いで、本方法のこの例は、鎖置換反応を開始して、複数のトランスポソーム複合体10C及び複数のプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dの転移鎖18C、18Dの、相補的コピー60、62を生成するステップを含む。鎖置換反応後のフローセルを、図15Eに示す。
【0241】
鎖置換伸長のために、ヌクレオチド及び鎖置換酵素を含むヌクレオチド混合物が、フローセルに導入される。ヌクレオチド混合物は、水及び/又はイオン性塩緩衝液、例えば、ミリモルからモル濃度のクエン酸生理食塩水、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸緩衝生理食塩水等、及び/又は他の緩衝液、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)若しくは(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)であり得る。液体担体はまた、Mg2+、Mn2+、等の、鎖置換伸長反応を意図した、触媒金属を含んでもよい。単一の触媒金属又は触媒金属の組み合わせを使用してもよく、総濃度は、約0.01mM~約100mMの範囲であってもよい。
【0242】
鎖置換反応に使用される酵素は、転移鎖18C、18Dを各々の鋳型鎖として使用して、混合物中のヌクレオチドで、DNA断片鎖35A、37A、35B、37B、35C、37Cの3’末端を伸長する。適切な鎖置換酵素の例としては、Bst DNAポリメラーゼ、又はBsu DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0243】
鎖置換反応の間、酵素は、非転移鎖20C、20Dを置換する。その結果、図15Eに示すように、DNA断片35B、37B、35C、37Cは、第2のポリマーヒドロゲル24、Bから分離されるようになる。これは、各々の表面結合捕捉プライマー56にハイブリダイズされた、非転移鎖20Dの鎖58が置換されているという事実による。捕捉プライマー56への結合がなければ、DNA試料断片35B、37B、35C、37Cは、もはやポリマーヒドロゲル24、Bに結合しない。トランスポソーム複合体10Cの非転移鎖20Cも、鎖置換反応中に置換される。
【0244】
次いで、分離及び置換された鎖は、変性及び洗浄プロセスに曝露され得る。一例では、変性及び洗浄は、ホルムアミド溶液を使用して実施される。このプロセスは、ポリマーヒドロゲル24に共有結合していない任意の鎖を、フローセルから除去する。
【0245】
図15Eには示していないが、変性及び洗浄プロセスはまた、架橋断片35A、37A、35B、37B、35C、37Cを変性し得ることが、理解されるべきである。架橋か又は一本鎖であるかにかかわらず、鎖置換反応及び洗浄後、図15Eに示すように、DNA試料断片35A、37A、37Cは、ポリマーヒドロゲル24、Aに結合したままである。これは、これらのDNA試料断片35A、37A、37Cが、捕捉プライマー56を介してではなく、オルソゴナルに切断可能な結合54を介して、ポリマー24に結合しているという事実に起因する。単一の残りのDNA試料断片37Cが図15Eに示されているが、ポリマーヒドロゲル24の領域A、Bを架橋するDNA試料断片37Cのいずれも、結合した転移鎖18Cを介して、フローセル表面に結合したままであることを、理解されたい。したがって、複数のプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dの転移鎖18Dの相補的コピー62の少なくとも1つは、複数のトランスポソーム複合体10Cの転移鎖18Cの少なくとも1つを介して、第1のポリマーヒドロゲル24、Aに結合したままである。
【0246】
本方法は、複数のプレアセンブルされたトランスポソーム複合体10Dの転移鎖18Dの相補的コピー62の少なくとも1つを、第1のポリマーヒドロゲル24、A又は第2のポリマーヒドロゲル24、B上の、第2のプライマー36Dの少なくとも1つにハイブリダイズさせるステップを含む。図15Gでは、相補的コピー62は、ポリマーヒドロゲル24、B上の第2のプライマー36Dの1つにハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーションは、フローセル、したがって、その内容物の温度を、好適なDNAハイブリダイゼーション温度(例えば、65℃)まで上昇させることによって開始され得る。
【0247】
次いで、図15Hに示すように、ポリメラーゼ伸長が、ハイブリダイズされた相補的コピー62のうちの少なくとも1つに結合する、DNA試料断片37Cに沿って開始されて、第1のポリマーヒドロゲル24、A又は第2のポリマーヒドロゲル24mB上の、第2のプライマー36Dのうちの少なくとも1つに結合する、少なくとも1つのアンプリコン64を生成する。
【0248】
ポリメラーゼ伸長のために、ヌクレオチド及びポリメラーゼを含むヌクレオチド混合物が、フローセルに導入される。ヌクレオチドを受け入れることができ、プライマー36Dの3’末端にヌクレオチドの塩基をうまく組み込むことができる、任意のポリメラーゼを使用することができる。ポリメラーゼの例としては、Bsu Polymerase、Bst Polymerase、Taq Polymerase、T7Polymerase、及び多数のものなどの、ファミリーAからのポリメラーゼ;Phi 29ポリメラーゼ及び他の高度にプロセッシブなポリメラーゼ(ファミリーB2)、Pfuポリメラーゼ(ファミリーB)、KODポリメラーゼ(ファミリーB)、9oN(ファミリーB)等のファミリーB及びB2からのポリメラーゼ;大腸菌(Escherichia coli)DNA Pol III等のファミリーCからのポリメラーゼ、及び他の多くのポリメラーゼ、及び多くの他のもの、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)DNA Pol II等のファミリーDからのポリメラーゼ、及び多くの他のもの;DNA Pol μ、DNA Pol β、DNA Pol σ、及び他の多く等のファミリーXからのポリメラーゼが挙げられる。ヌクレオチド混合物は、水及び/又はイオン性塩緩衝液、例えば、ミリモルからモル濃度のクエン酸生理食塩水、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸緩衝生理食塩水等、及び/又は他の緩衝液、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)若しくは(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)であり得る。液体担体はまた、Mg2+、Mn2+、等の、伸長反応を意図した触媒金属を含んでもよい。単一の触媒金属又は触媒金属の組み合わせを使用してもよく、総濃度は約0.01mM~約100mMの範囲であってもよい。
【0249】
フローセルの温度は、鋳型伸長反応を開始するように調節され得る。ポリメラーゼは、相補的コピー62、DNA断片37C、及び転移鎖18Cを鋳型として使用して、プライマー36Dの3’末端の伸長を可能にする。
【0250】
アンプリコン(複数可)64が生成された後、オルソゴナルに切断可能な結合54の切断剤が細胞に導入される。切断剤は、オルソゴナルに切断可能な部位54に応じて、化学的切断剤又は酵素的切断剤であってもよい。オルソゴナルに切断可能な結合54の切断は、転移鎖18Cを切断し、したがって、DNA断片35A、37A、37Cをポリマーヒドロゲル24、Aから切り離す。一例では、ジオール切断剤を導入して、結合54のジオール切断部位を介して、第1のポリマーヒドロゲル24、Aに結合したDNA試料断片35A、37A、37Cを切り離す。
【0251】
次いで、切り離された鎖35A、37Aは、本明細書に記載される洗浄溶液の例を使用して、フローセルから洗浄され得る。
【0252】
図15Iに示すように、オルソゴナルに切断可能な結合54の切断及び洗浄後、DNA試料断片37C及びそのアンプリコン64は、ポリマーヒドロゲル24、Bに結合したままである。これは、DNA試料断片37Cが、転移鎖18Cを介してではなく、プライマー36Dへの相補的部分62のハイブリダイゼーションを介して、ポリマー24(領域A又はB)に結合しているという、事実に起因する。単一の残りのDNA試料断片37C及びアンプリコン64が図15Iに示されるが、プライマー36DにハイブリダイズされたDNA試料断片37C及びアンプリコン64のいずれも、オルソゴナルに切断可能な結合54の切断後に残ることが、理解されるべきである。
【0253】
アンプリコン64は、プライマー36C、36Dを使用して凹部12にわたって増幅を受けることができる、完全に適合された断片(増幅ドメイン26C、26D又はその相補体を対向する末端に含む)である。図15Iに示す完全に適合したDNA試料断片37C(増幅ドメイン26C、26D又はそれらの相補体も両端に含む)は、変性を介して除去することができる。次いで、アンプリコン64を、クラスタ化に曝露する。特に、一本鎖アンプリコン64は、ループオーバーして隣接する相補的プライマー36Cにハイブリダイズし、ポリメラーゼがアンプリコン64をコピーして、他の二本鎖架橋を形成し、これが変性して、ポリマーヒドロゲル24(A又はB)に結合した2本の一本鎖を形成する。これらの2つの鎖は、隣接する相補的なプライマー36C、36D上でループを形成し、これらにハイブリダイズし、再び伸長されて、2つの新たな二本鎖ループを形成する。このプロセスを、等温変性及び増幅のサイクルによって、各鋳型コピーに対して繰り返して、図15Jに示すように、密集したクローンクラスタを作り出す。二本鎖ブリッジ構造の各クラスタが変性される。一例では、逆方向鎖は、逆方向鎖が結合しているプライマー36C又は36Dの切断部位に適した、切断剤によって除去され(例えば、特異的塩基切断)、順方向鋳型鎖/アンプリコンが残る。他の例では、順方向鎖は、順方向鎖が結合しているプライマー36C又は36Dの切断部位に適した、切断剤によって除去され(例えば、特異的塩基切断)、逆方向鋳型鎖/アンプリコンが残る。クラスタ化は、凹部12上に固定された、いくつかの鋳型鎖の形成をもたらす。
【0254】
図15A図15Jに示す例では、ポリマーヒドロゲル領域24、A、Bの間に間隙が存在する。間隙が含まれる場合、DNA断片35C、37Cの少なくとも1つが間隙を架橋するため、生成され得る断片アンプリコンのサイズに、下限が課される。他の例では、ポリマーヒドロゲル24の領域A、Bは、凹部12内で互いに当接してもよく、したがって、生成することができる断片アンプリコンのサイズに、下限が課されない。
【0255】
図15A図15Jを参照して記載される増幅プライマーセットは、連続的なペアエンド配列決定を可能にする。逐次的ペアエンド配列決定を使用して、ポリマーヒドロゲル24の両方の領域A、Bにわたって生成される、順方向鎖/断片アンプリコンを配列決定して除去することができ、次いで、ポリマーヒドロゲル24の両方の領域A、Bにわたって、逆方向鎖/断片アンプリコンを生成し、配列決定して除去することができる。他の例では、増幅プライマーセットは、同時ペアエンド配列決定を可能にする。この方法の例は、図17を参照して示され、記載される。
【0256】
図17に示されるプライマーセットは、2つのプライマーサブセット66、68を含む。これらのプライマーサブセット66、68は、単一の鋳型鎖(例えば、DNA断片35C)が、増幅され、両方のプライマーサブセット66、68にわたってクラスタ化されることを可能にし(図15A図15Jを参照して記載されるように)、順方向鎖のクラスタが、ポリマーヒドロゲル24の1つの領域Aにおいて生成され、逆方向鎖のクラスタが、ポリマーヒドロゲル24の他の領域Bにおいて生成されることも可能にする。後者を可能にするために、プライマーサブセット66、68は、切断(線状化)化学が、異なるポリマーヒドロゲル領域24、A及び24、Bで、オルソゴナルになるように制御される。
【0257】
より具体的には、プライマーサブセット66、68は、一方のセット66が、切断可能な第1のプライマー36C及び切断不可能な第2のプライマー36Dを含み、他方のセット68が、切断不可能な第1のプライマー36C及び切断可能な第2のプライマー36Dを含むという点で、関連している。したがって、プライマーセット68、66の、切断不可能な第1の及び第2のプライマー36C、36Dは、クラスタの線状化中に切断不可能である。
【0258】
プライマーサブセット66は、切断可能な第1のプライマー36C及び切断不可能な第2のプライマー36Dを含み、プライマーサブセット68は、切断不可能な第1のプライマー36C及び切断可能な第2のプライマー36Dを含む。
【0259】
切断可能な第1のプライマー36C及び切断不可能な第2のプライマー36Dは、例えば、切断可能な第1のプライマー36Cが順方向増幅プライマーであり、切断不可能な第2のプライマー36Dが逆方向増幅プライマーであるか、又は切断不可能な第2のプライマー36Dが順方向増幅プライマーであり、切断可能な第1のプライマー36Cが逆方向増幅プライマーである、オリゴヌクレオチド対である。プライマーサブセット66において、切断可能な第1のプライマー36Cは切断部位70を含むが、切断不可能な第2のプライマー36Dは切断部位を含まない。
【0260】
切断不可能な第1のプライマー36C及び切断可能な第2のプライマー36Dは、例えば、切断不可能な第1のプライマー36Cが順方向増幅プライマーであり、切断可能な第2のプライマー36Dが逆方向増幅プライマーであるか、又は切断可能な第2のプライマー36Dが順方向増幅プライマーであり、切断可能な第1のプライマー36Cが逆方向増幅プライマーである、オリゴヌクレオチド対である。プライマーセット68において、切断可能な第2のプライマー36Dは切断部位70又は70’を含むが、切断不可能な第1のプライマー36Cは切断部位を含まない。
【0261】
切断不可能な第1のプライマー36C及び切断可能な第1のプライマー36Cは、切断可能な第1のプライマー36Cが、プライマー配列又はプライマー配列に結合した連結分子に組み込まれた、切断部位70を含むことを除いて、同一のヌクレオチド配列を有する(例えば、両方とも順方向増幅プライマーである)ことが、理解されるべきである。同様に、切断可能な第2のプライマー36D及び切断不可能な第2のプライマー36Dは、切断可能な第2のプライマー36Dが、プライマー配列又はプライマー配列に結合した連結分子に組み込まれた切断部位70又は70’を含むことを除いて、同一のヌクレオチド配列を有する(例えば、両方とも逆増幅プライマーである)。
【0262】
第1のプライマー36C及び36Cが順方向増幅プライマーである場合、第2のプライマー36D及び36Dは逆方向プライマーであり、逆もまた同様であることを、理解すべきである。
【0263】
切断不可能なプライマー36D、36Cは、P5及びP7プライマー、P15及びP7プライマー、又はPA、PD、PC、PDプライマーの任意の組み合わせ(例えば、PA及びPB、又はPA及びPDなど)などの増幅目的のためのユニバーサル配列を有する、任意のプライマー配列であってもよく、切断部位70、70’(例えば、本明細書に記載の配列のいくつかにおけるU又は「n」)を含まない。
【0264】
対照的に、切断可能プライマー36C、36Dは、本明細書中に示されるプライマー配列のいずれか、例えば、P5及びP7プライマー、P15及びP7プライマー、又は他のユニバーサル配列プライマー(例えば、PA、PB、PC、PDプライマー)であり得、各々の切断部位70、70’(例えば、本明細書に記載の配列のいくつかにおけるU又は「n」)が、プライマー配列又はプライマー配列に結合した連結分子に、組み込まれている。切断部位70又は70及び70’がオルソゴナルに切断可能なリンカー54の切断部位に対してオルソゴナルな限り、切断部位70は、切断可能プライマー36C、36Dの各々において同一であってもよく、又は切断部位70、70’は、切断可能プライマー36C、36Dの各々において異なっていてもよい。
【0265】
加えて、図15A図15Jに示されるフローセルは、プレアセンブルされたトランスポソーム10Dのための、異なる結合機構を利用してもよい。この例では、フローセルは捕捉プライマー56を含まず、むしろ、ポリマーヒドロゲル24、Bは、第1のポリマーヒドロゲル24、Aが含まない(すなわち、第1のポリマーヒドロゲル24、Aが含まない)、トランスポソーム捕捉官能基を含む。一例では、ポリマーヒドロゲル24、Bは、トランスポソーム複合体10Dの5’末端に共有結合することができる官能基を含み、ポリマーヒドロゲル24、Aは、これらの特定の官能基を含まない。他の例では、ポリマーヒドロゲル24、Bは、ビオチン表面基で官能化されており(すなわち、ビオチン化ポリマーヒドロゲル24’である)、ポリマーヒドロゲル24、Aはビオチン表面基を含まない。トランスポソーム複合体10Dの5’末端官能基は、ビオチン表面基に結合することができる、本明細書に記載の例のいずれか(例えば、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン-ビオチンなど)であってもよい。
【0266】
インサートサイズを増大させる方法
本明細書で言及されるように、修飾トランスポソーム複合体10、10’(例えば、3’若しくは5’非転移鎖32、32’、又は転移鎖18、18’の3’末端に修飾を有する)の例を使用して、断片化産物のインサートサイズを増加させることができる。以下の説明は、インサートサイズを増大させるために使用することができる、いくつかの他の方法を提供する。これらの方法は、修飾又は非修飾の本明細書に開示されるトランスポソーム複合体10、10’のいずれかと併せて、使用することができる。
【0267】
一例では、デオキシリボ核酸(DNA)試料のインサートサイズを増加させるための方法は、本明細書に開示されるフローセルの任意の例にDNA試料を導入するステップと、縮合剤又はタグメント化阻害剤をDNA試料と共に導入するステップであって、縮合剤が、ポリカチオン性アミン(例えば、スペルミジン、キトサン、プロタミンなど)、ポリエチレングリコール、及びヒストンからなる群から選択されるか、又はタグメント化阻害剤が、カチオン(Zn2+)、pH調整剤(例えば、グルタミン酸)、及びクロマチンアセンブリキットからなる群から選択されるステップと、縮合剤又はタグメント化阻害剤の存在下で、フローセル内でDNA試料をインキュベーションするステップであって、それによって、DNA試料のタグメント化が、第1のトランスポソーム複合体10及び第2のトランスポソーム複合体10’の一部で実施されるステップとを含む。
【0268】
これらの例では、タグメント化に関与するトランスポソーム複合体10、10’のパーセンテージは、縮合剤又はタグメント化阻害剤が存在しないタグメント化に関与するトランスポソーム複合体10、10’のパーセンテージよりも低い。
【0269】
スペルミジン、キトサン、及びプロタミンは、DNA縮合剤の例である。一例では、約2mM~約10mMのスペルミジン又はキトサン又はプロタミンを、DNA試料と共に添加することができる。スペルミジン、キトサン及びプロタミンは、DNA試料と共に添加された場合に、コンパクトで丸い構造を作り出すカチオン性ポリマーである。コンパクトで丸い構造は、DNA試料からトランスポザーゼ14、14’の一部を遮断するのに、有効である。したがって、より少ないトランスポザーゼ14、14’が、タグメント化のためにDNA試料にアクセスすることができる。これは、タグメント化から生じるDNA断片のサイズを、増加させる。
【0270】
ポリエチレングリコールは、塩化ナトリウムの存在下で、DNA縮合剤の他の例である。一例では、ポリエチレングリコールは、25mM超のNaClと共に、2%(体積で)超の量で、DNA試料に添加され得る。いくつかの例では、ポリエチレングリコールは、25mM超のNaClと共に、5%(体積で)超の量で、DNA試料に添加され得る。ポリエチレングリコールは、DNA試料に組み込まれた場合にクラウディング剤として作用し、したがって、DNA試料からトランスポザーゼ14、14’の一部を遮断するのに、有効である。したがって、より少ないトランスポザーゼ14、14’が、タグメント化のためにDNA試料にアクセスすることができる。これは、タグメント化から生じるDNA断片のサイズを、増加させる。
【0271】
Zn2+などのカチオン、又はグルタミン酸などのpH調整剤を、タグメント化阻害剤として添加してもよい。これらの薬剤は、タグメント化の効率を低下させるために添加され得る。一例では、Zn2+カチオンは、約0.02mM~約5mMの範囲の濃度で、水溶液中に存在し得る。他の例では、グルタミン酸は、約0.25mM~約100mMの範囲の濃度で、水溶液中に存在し得る。
【0272】
クロマチンアセンブリキットは、DNA試料の存在下で、アセンブルされたクロマチンを生成することができる、試薬を含む。クロマチンはDNAの一部をパッキングし、したがって、トランスポザーゼ14、14’がタグメント化のためにDNA試料にアクセスするステップを防止する。これは、タグメント化から生じるDNA断片のサイズを、増加させる。
【0273】
試料調製
本明細書に記載されるように、DNA試料は、タグメント化が実施されるフローセルに導入される。本明細書に開示されるいくつかの例示的な方法は、DNA試料の調製を含む。1つの例示的な方法は、セリンプロテアーゼ、2mM未満のエチレンジアミン四酢酸、カオトロピック剤、及び水を含む、無機塩を含まない溶解緩衝液中の、プロテアーゼの活性温度で、全血、組織試料、血液スポット、及び唾液からなる群から選択される試料を、無機塩を含まない溶解緩衝液に曝露し、それによって、全血試料からデオキシリボ核酸を抽出し、粗溶解物を生成するステップと、熱又は阻害剤を使用して粗溶解物中のプロテアーゼを不活性化するステップと、カオトロピック剤のキレート剤を粗溶解物に添加して、複合体化された粗溶解物を生成するステップとを含む。
【0274】
この例示的な方法において、試料は、最初に、無機塩を含まない溶解緩衝液中のプロテアーゼが活性である温度で、無機塩を含まない溶解緩衝液に曝露される。溶解緩衝液への曝露中に、試料中の白血球から、gDNAが抽出される。本方法の一例では、試料の体積は、約20μL~約50μLの範囲である。
【0275】
無機塩を含まない溶解緩衝液は、プロテアーゼ(例えば、熱不安定性プロテイナーゼK、トリプシンなどの、セリンプロテアーゼ)、2mM未満のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、カオトロピック剤、及び水を含み、いくつかの例では、それらからなる。
【0276】
プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK、熱不安定性プロテイナーゼK、又はトリプシンなどの、セリンプロテアーゼ)は、抽出中にgDNAに悪影響を及ぼし得るタンパク質を消化するため、及び抽出されたgDNAをヌクレアーゼから保護するために、無機塩を含まない溶解緩衝液中に含まれる。プロテアーゼが活性である温度は、使用されるプロテアーゼに依存するであろう。プロテイナーゼKは、約25℃~約65℃の範囲の温度で活性であり、約80℃で完全に不活性化され得る。あるいは、プロテイナーゼKは、テトラペプチジルクロロメチルケトン(TCK)などの、プロテアーゼ阻害剤に曝露された場合に、不活性化され得る。熱不安定性プロテイナーゼKは、約20℃~約40℃の範囲の低温で活性であり、約55℃で完全に不活性化され得る。トリプシンは、約4℃~約65℃の範囲の温度で活性であり、4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオリドなどの、プロテアーゼ阻害剤に曝露された場合に、不活性化され得る。このタイプのプロテアーゼ阻害剤は、DNA夾雑物を含まず、したがって、ライブラリ調製の間、溶解物中に残り得る。プロテアーゼ、例えば、プロテイナーゼK、熱不安定性プロテイナーゼK、又はトリプシンを不活性化する能力は、より高温で実施される下流プロセス(例えば、より高温で実施されるその後のライブラリ調製プロセス)において使用される、酵素への損傷を最小限にするのに役立つ。無機塩を含まない溶解緩衝液は、1単位~5単位のプロテアーゼ、すなわち、約5単位/mL~約20単位/mLの範囲の濃度を含む。一例では、無機塩を含まない溶解緩衝液は、3.6単位の熱不安定性プロテイナーゼKを含む。他の例では、無機塩を含まない溶解緩衝液は、約0.8mg/mLのプロテイナーゼKを含む。
【0277】
無機塩を含まない溶解緩衝液は、2mM未満のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。全血試料からのDNA抽出のために、EDTAは、酵素の触媒活性を増加させる補因子として働く、酵素中に存在する金属イオンをキレート化するためのキレート剤として使用されてもよい。EDTAはDNアーゼ酵素(DNAを消化する)を容易に不活性化するが、EDTAによってキレート化された金属イオンの一部は、その後のライブラリ調製技術において起こる酵素活性にとって望ましい場合がある。無機塩を含まない溶解緩衝液中の比較的低いEDTA濃度は、ライブラリ調製の間にこれらの酵素の活性を阻害することなく、溶解手順の間の望ましい金属イオンキレート化を可能にする。一例では、EDTAの濃度は、約0.5mM~1.5mMの範囲である。他の例では、EDTAの濃度は、約1mMである。
【0278】
無機塩を含まない溶解緩衝液は、カオトロピック剤を含む。カオトロピック剤は、DNA抽出において有用であり得るが、ライブラリ調製の間に生じる酵素反応の阻害剤としても作用し得る。カオトロピック剤の一例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり、これは、タグメント化反応中に使用されるトランスポザーゼTn5を阻害する。カオトロピック剤の他の例は、塩酸グアニジンである。一例では、カオトロピック剤は、無機塩を含まない溶解緩衝液中に、約0.1%w/v~約0.5%w/vの量で存在する。1つの特定の例として、カオトロピック剤は、無機塩を含まない溶解緩衝液中に、約0.2%w/vの量で存在する。
【0279】
無機塩を含まない溶解緩衝液の残りは、脱イオン水又は他の形態の精製水などの、水である。
【0280】
いくつかの例では、無機塩を含まない溶解緩衝液は、中性緩衝剤、例えば、Tris-HCl(pH8)、及び非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)20(Croda,Inc.から市販されているポリオキシエチレンソルビトールエステル)などの、適切な溶解緩衝液添加剤も含む。中性緩衝剤は、約25mM~約100mMの範囲の濃度で存在してもよく、非イオン性界面活性剤は、約0.5%活性w/v~約0.75%活性w/vの範囲の量で、存在してもよい。一例では、無機塩を含まない溶解緩衝液は、約50mMのTris-HCl(pH8)、及び約0.5%活性w/vのTWEEN(登録商標)20を含む。
【0281】
本明細書に記載されるように、溶解緩衝液は、無機塩(複数可)を含まない。塩化ナトリウムを含む無機塩(複数可)は、DNA抽出中に有益であり得るが、それ/それらはまた、ライブラリ調製プロセスにおいて使用される1つ以上の酵素(複数可)の、阻害剤として機能し得る。無機塩の排除は、本明細書に開示される複合体粗溶解物が、ライブラリ調製において使用される前に精製を受ける必要がないという事実に寄与する。
【0282】
溶解温度での無機塩を含まない溶解緩衝液への全血試料の曝露は、粗溶解物を生成する。次いで、粗溶解物中のプロテアーゼを、熱又は阻害剤を使用して不活化する。使用される不活性化剤は、存在するプロテアーゼに依存する。
【0283】
他の例では、粗溶解物(及びその中に含有される内容物)の温度を約55℃に上昇させることができ、これは、熱不安定性プロテイナーゼKを不活性化する。他の例では、粗溶解物(及びその中に含有される内容物)の温度を約80℃に上昇させることができ、これは、プロテイナーゼKを不活性化する。不活性化温度は、使用されるプロテアーゼに応じて変動し得ることを理解されたい。
【0284】
他の例では、阻害剤を、粗溶解物に添加してもよい。1つの具体例として、無機塩を含まない溶解緩衝液がトリプシンを含む場合、粗溶解物中のトリプシンを不活性化するステップは、粗溶解物を阻害剤に曝露するステップを含み、阻害剤は、フッ化4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルである。他の具体例として、無機塩を含まない溶解緩衝液がプロテイナーゼKを含む場合、粗溶解物中のプロテイナーゼKを不活性化するステップは、粗溶解物を阻害剤に曝露するステップを含み、阻害剤はテトラペプチジルクロロメチルケトン(TPK)である。一例では、阻害剤:セリンプロテアーゼの比は、1:1:~50:1の範囲である。一例では、フローセルに導入される阻害剤(例えば、TPK)は、一例のタグメント化緩衝液中に、約0.04mg/mL~約0.1mg/mLの範囲の量で存在する。選択される任意の阻害剤は、阻害剤を含む粗溶解物が、最初に精製に曝されることなく、ライブラリ調製において使用され得るように、DNA夾雑物を含まないべきである。
【0285】
粗溶解物中のプロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK、熱不安定性プロテイナーゼK、又はトリプシン)が不活性化された後、又は不活性化される際に、カオトロピック剤のキレート剤が粗溶解物に添加されて、複合体粗溶解物が生成される。使用されるキレート剤は、使用されるカオトロピック剤に依存する。例として、カオトロピック剤のキレート剤は、アルファシクロデキストリン、ベータシクロデキストリン、及びメチルベータシクロデキストリンからなる群から選択される、シクロデキストリンである。上述したように、シクロデキストリンは、親水性外部及び疎水性コアを有する、カップ型構造である。これらの化合物は、溶解緩衝液中で、SDS又は他のカオトロピック剤などの親水性分子と、複合体を形成する能力を有する。特に、SDSの長い疎水性尾部は、シクロデキストリンのカップ内に引き込まれ、これは、溶解後にSDSを効果的に固定し、下流のライブラリ調製において使用されるものを含む、酵素を変性させることを防止する。したがって、複合体粗溶解物は、最初に精製に曝露されることなく、ライブラリ調製において直接使用され得る。
【0286】
いくつかの例では、キレート剤は乾燥形態であり、キレート剤の乾燥形態は、キレート剤の乾燥形態を取り囲むコーティング材料を含む、カプセル化複合体の一部である。キレート剤を凍結乾燥又は他の方法で乾燥させてマイクロスフェアを形成し、次いで、これをコーティング材料によってカプセル化してもよい。これらの例では、キレート剤を粗溶解物に添加するステップは、カプセル化された複合体を粗溶解物に添加し、次いで、カプセル化複合体からの乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップ、及び乾燥形態のキレート剤を再水和するステップを含む。キレート剤の再水和は、キレート剤の任意の活性に先行する。使用される放出機構は、乾燥形態のキレート剤を取り囲む、コーティング材料のタイプに依存する。
【0287】
一例では、コーティング材料は温度感受性ワックスであり、乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップは、温度感受性ワックスの融解温度を超えて、粗溶解物を加熱するステップを含む。好適な温度感受性ワックスのいくつかの例としては、パラフィンワックス、又は大豆ワックスが挙げられ、これらは、各々、約40℃~約50℃の範囲の温度で融解する。好適な温度感受性ワックスの他の例としては、蜜蝋、微結晶ポリエチレンワックス、又はカルナウバワックスが挙げられ、これらは、各々、約60℃~約80℃の範囲の温度で融解する。これらの例では、粗溶解物を所望の温度に加熱してワックスを融解させ、乾燥形態のキレート剤を放出させる。キレート剤は再水和され、カオトロピック剤を隔離して、複合体粗溶解物を形成することができる。再水和は、水又は他の水性再水和溶液を使用して、達成され得る。
【0288】
他の例では、コーティング材料は温度感受性ポリマーであり、乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップは、温度感受性ポリマーの可溶化温度を超えて、粗溶解物を加熱するステップを含む。適切な温度感受性ポリマーの例としては、ポリ(アクリルアミド-co-アクリロニトリル)、アガロース、又はゼラチンが挙げられ、これらの各々は、30℃より高い温度で可溶化する。適切な温度感受性ポリマーの他の例としては、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、メチルセルロース、又はポロキサマーが挙げられ、これらの各々は、30℃未満の温度で可溶化する。これらの例では、粗溶解物を所望の温度に加熱して、ポリマーを可溶化し、乾燥形態のキレート剤を放出する。キレート剤は、再水和され(例えば、水又は水溶液で)、カオトロピック剤を隔離して、複合体粗溶解物を形成することができる。
【0289】
更に他の例では、コーティング材料はpH感受性ポリマーであり、乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップは、粗溶解物のpHを調整するステップを含む。適切なpH感受性ポリマーの例としては、EUDRAGIT(登録商標)L100(Evonik,Inc.からのメタクリル酸コポリマー、タイプB)、又はKOLLICOAT(登録商標)MAE-100(BASF Corp.からのメタクリル酸コポリマー、タイプA)が挙げられ、これらの各々は、6を超えるpHで可溶性である。適切なpH感受性ポリマーの他の例としては、EUDRAGIT(登録商標)RL/RS 100(Evonik,Inc.からのアンモニオメタクリレート)、又はカルボキシメチルセルロースが挙げられ、これらの各々は、8を超えるpHで可溶性である。好適なpH感受性ポリマーの更に他の例としては、EUDRAGIT(登録商標)E(Evonik,Inc.からのアミノジメチルメタクリレートコポリマー)、又はキトサンが挙げられ、これらの各々は、3未満のpHで可溶性である。これらの例では、粗溶解物のpHは、ポリマーが感受性であるpHより低くなるように(例えば、溶解度がpH X以下である場合)、又はポリマーが感受性であるpHより高くなるように(例えば、溶解度がpH X以上である場合)調整され、ポリマーは可溶化する。ポリマーの可溶化は、乾燥形態のキレート剤を放出する。キレート剤は、本明細書に記載されるように再水和され、カオトロピック剤を隔離して、複合体粗溶解物を形成することができる。
【0290】
更なる例では、コーティング材料は時間感受性ポリマーであり、乾燥形態のキレート剤の放出を誘発するステップは、カプセル化された複合体を粗溶解物中で、所定の時間インキュベーションさせることを含む。適切な時間感受性ポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(その市販例は、DuPontからのMETHOCEL(登録商標)である)、エチルセルロース(その市販例は、DuPontからのETHOCEL(登録商標)である)、酢酸セルロース(その市販例は、ColorconからのOPADRY(登録商標)CAである)、及びポリ(乳酸-co-グリコール酸)が挙げられる。これらの例では、カプセル化された複合体をその中に有する粗溶解物は、ポリマーのタイプ、ポリマーコーティングの厚さ、並びに生じる反応の温度及び構成(例えば、pH)に依存する、所定の時間インキュベーションされる。時間と共に、ポリマーは分解し、乾燥形態のキレート剤を放出する。キレート剤は再水和され、カオトロピック剤を隔離して、複合体粗溶解物を形成することができる。
【0291】
カプセル化された複合体は、コーティング材料の分散液を生成し、流動床中でキレート剤の乾燥形態上に分散液をスプレーコーティングし、複合体を乾燥させることによって形成され得る。他の適切なコーティング技術(例えば、パンコーティング、噴霧乾燥など)は、乾燥形態のキレート剤の上に、コーティング材料のフィルムを効果的に形成するために、使用され得る。
【0292】
キレート剤(カプセル化されていてもいなくても)は、Tris-酢酸塩、酢酸マグネシウム、及び水の組み合わせなどの、タグメント化緩衝液と混合されてもよい。タグメント化緩衝液の使用は、複合体粗溶解物がタグメント化ライブラリ調製プロセスにおいて使用される場合に、特に望ましい場合がある。タグメント化緩衝液は、乾燥形態のキレート剤の放出を開始し得、したがって、カプセル化キレート剤及びタグメント化緩衝液の組み込みは、カプセル化キレート剤のコーティング、その溶解特性、及び複合体形成を達成するための所望のタイミングに依存し得ることが、理解されるべきである。
【0293】
いくつかの例では、プロテアーゼの阻害剤及びカオトロピック剤のキレート剤(封入されているか否かにかかわらず)もまた、タグメント化緩衝液と混合され得る。この例では、プロテアーゼの不活性化及び複合体粗溶解物の生成は、同時に起こり得る。
【0294】
タグメント化緩衝液中に組み込まれる場合、キレート剤の量は、約2%w/v~約5%w/vの範囲であり得る。
【0295】
次いで、複合体粗溶解物は、ライブラリ調製技術に曝露され得る。複合体粗溶解物中の抽出されたDNA試料は、タグメント化が、又は遺伝子材料のより長い断片を断片化し、断片の末端に所望のアダプターを組み込む、任意のライブラリ調製技術に曝露され得る。
【0296】
一例では、本明細書に開示される複合体粗溶解物は、本明細書に開示されるフローセルの任意の例に導入されてもよく、フローセルタグメント化は、本明細書に記載されるように実施されてもよい。したがって、本方法のいくつかの例は、トランスポソーム複合体10、10’及びフローセル内の表面に固定されたプライマー36、36’を含むフローセルに、複合体粗溶解物を導入するステップを含む。この例では、抽出されたデオキシリボ核酸(複合体粗溶解物中に)は、複合体粗溶解物が導入される際にタグメント化緩衝液をフローセルに導入するステップ、及びフローセルを30℃以上の温度にするステップ(図1Cを参照して本明細書に記載されるように)によって、タグメント化に曝露される。この例では、トランスポザーゼ14、14’は除去されてもよく、増幅は、洗浄溶液をフローセルに導入するステップと、洗浄溶液を含有するフローセルを約60℃に加熱するステップと、次いで、伸長増幅ミックスをフローセルに導入するステップ(図1Dを参照してように)とによって、実施される。
【0297】
一例では、本明細書に開示されるDNA試料調製方法、すなわち、曝露するステップ、不活性化するステップ、及び添加するステップは、フローセルに搭載されていない溶解チューブ又はチャンバ内で実施される。
【0298】
溶解チューブが使用される場合、複合体粗溶解物は、溶解チューブから配列決定機器の試料入力ポートに投入され得る。次いで、配列決定機器の流体送達システムは、タグメント化及びその後の処理のために、複合体粗溶解物をフローセルに送達する。
【0299】
チャンバは、配列決定機器の構成要素である、DNA試料調製チャンバであってもよい。したがって、チャンバが使用される場合、複合体粗溶解物は、タグメント化及びその後の処理のために、チャンバからフローセルに輸送され得る。
【0300】
他の例示的な試料調製方法は、約18℃~約25℃の範囲の温度で、細胞試料を酸化亜鉛ナノ材料に曝露するステップと、それによって、細胞試料からのデオキシリボ核酸又はリボ核酸の界面活性剤を含まない抽出を開始し、粗溶解物を生成するステップと、粗溶解物中の抽出されたデオキシリボ核酸又はリボ核酸をタグメント化に曝露するステップとを含む。一例では、酸化亜鉛ナノ材料を、細胞試料に添加する。他の例では、酸化亜鉛ナノ材料を水中に分散させ、分散液を細胞試料に添加する。後者の例では、細胞試料は、酸化亜鉛ナノ材料分散液に添加される、細胞ペレットの形態であってもよい。
【0301】
細胞試料は、任意の真核生物細胞又は原核生物細胞、並びに真菌細胞由来であり得る。細胞試料のいくつかの例としては、全血、骨髄穿刺液、血清、血漿、組織、血液スポット、唾液、及び他の体液が挙げられる。
【0302】
酸化亜鉛ナノ材料は、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤなどの形態であってもよい。ナノ粒子は、約1nm~約1000nmの範囲の、平均粒径を有してもよい。ナノチューブ又はナノワイヤは、約1nm~約1000nmの範囲の、平均直径を有してもよい。一例では、酸化亜鉛ナノ粒子は、約10nm~約950nmの範囲の、平均粒径を有する。一例では、酸化亜鉛ナノ粒子は、約300nmの、平均粒径を有する。平均粒径は、分布計算(数、表面積、又は体積)の基礎と関連付けられ得る、粒子の分布の平均値を表し得る。したがって、いくつかの例では、平均粒径は、体積平均直径、数平均直径、又は表面平均直径を表し得る。平均粒径は、粒径分析器を使用して、又はX線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡法(SEM)、透過型電子顕微鏡法(TEM)などを使用して、決定することができる。酸化亜鉛ナノ材料の使用は、このDNA又はRNA抽出が界面活性剤を含まないことを、可能にする。
【0303】
この例示的な方法の最初に、細胞試料及び酸化亜鉛ナノ材料を、1.5:1~1:1.5の体積:体積で一緒に混合する。体積比又は体積:重量比。一例では、細胞試料及び酸化亜鉛ナノ材料は、1:1の体積で一緒に混合される。体積比又は体積:重量比。本方法の一例では、細胞試料及び酸化亜鉛ナノ粒子の各々の体積は、約20μL~約100μLの範囲である。細胞試料及び酸化亜鉛ナノ材料を一緒に混合し、約2分~約30分の範囲の時間インキュベーションする。インキュベーションの間、細胞は破壊され、これがDNA又はRNA抽出をもたらす。破壊が起こる機構は、酸化亜鉛ナノ材料から放出された過剰なZn2+が細胞膜表面に吸着し、次いで細胞壁を貫通して破壊を引き起こす化学的機構、及び/又は酸化亜鉛ナノ材料が、アポトーシス細胞死及び細胞構造の崩壊をもたらす活性酸素種(ROS)反応を誘発する生物学的機構であり得る。
【0304】
酸化亜鉛ナノ材料を使用するDNA(例えば、gDNA)又はRNA抽出は、室温、例えば、約18℃~約25℃で実施することができ、したがって、追加の加熱及び加熱装置は利用されない。
【0305】
一例では、粗溶解物は、試料収集デバイス(例えば、溶解チューブ、MITRA(登録商標)チップ、乾燥血斑カードなど)内で生成され、亜鉛ナノ材料は、試料収集デバイスの表面上で乾燥される。この例では、細胞試料の添加は、溶解を活性化する。
【0306】
いくつかの例では、酸化亜鉛ナノ材料は、プロテアーゼと混合される。プロテアーゼ(例えば、セリンプロテアーゼ、例えば、熱不安定性プロテイナーゼK)は、抽出中にDNA又はRNAに有害な影響を与え得るタンパク質を消化するため、及び抽出されたDNA又はRNAをヌクレアーゼから保護するために、含まれ得る。プロテアーゼは、1単位~5単位の範囲の量、すなわち、約5単位/mL~約20単位/mLの範囲の濃度で、添加され得る。プロテアーゼが活性である温度は、使用されるプロテアーゼに依存するであろう。熱不安定性プロテイナーゼKは、約20℃~約40℃の範囲の低温で活性であり、約55℃で完全に不活性化され得る。プロテアーゼ(例えば、熱不安定性プロテイナーゼK)を不活性化する能力は、より高温で実施される下流プロセス(例えば、より高温で実施されるその後のライブラリ調製プロセス)において使用される、酵素に対する損傷を最小限にするのに役立つ。
【0307】
細胞試料が血液試料である場合、ヘモグロビン干渉が起こり得る。ヘモグロビン干渉を回避するために、亜鉛ナノ材料は、HemogloBind(登録商標)(Biotech Support Group製)、及びEasySep(商標)Direct RapidSpheres(登録商標)(StemCell Technologies製)などの、ヘモグロビン捕捉剤と混合することができる。これらのヘモグロビン捕捉剤の各々は、製造業者によって指示するように使用され得る。
【0308】
本明細書で述べたように、酸化亜鉛ナノ材料は、活性酸素種の生成を誘導することができる。この種は、抽出されたDNA又はRNAを潜在的に損傷する可能性があり、したがって、抽出されたDNA又はRNA損傷の可能性を低減するために、ROSスカベンジャーを添加することが望ましい場合がある。ROSスカベンジャーの量は、存在する亜鉛の量に依存し得る。一例では、ROSスカベンジャーは、約2mM~約50mMの範囲の量で、添加される。
【0309】
細胞試料の酸化亜鉛ナノ材料への曝露は、粗溶解物を生成する。次いで、粗溶解物は、ライブラリ調製技術に曝露され得る。
【0310】
この方法のいくつかの例では、酸化亜鉛ナノ材料は、プロテアーゼと組み合わされ、粗溶解物中の抽出されたデオキシリボ核酸をタグメント化に曝露する前に、方法は、熱を使用してプロテアーゼを不活性化するステップを更に含む。例えば、粗溶解物(及びその中に含まれる内容物)の温度を約55℃に上昇させることができ、これは熱不安定性プロテイナーゼKを不活性化する。不活性化温度は、使用されるプロテアーゼに応じて変動し得ることが、理解されるべきである。
【0311】
ライブラリ調製のために、粗溶解物中の抽出されたDNA又はRNA試料は、タグメント化に、又は遺伝子物質のより長い片(複数可)を断片化し、断片の末端に所望のアダプターを組み込む、任意の他のライブラリ調製技術に、曝露され得る。
【0312】
一例では、方法のこの例を介して生成された粗溶解物は、本明細書に開示されるフローセルの任意の例に導入されてもよく、ここで、オンフローセルタグメント化は、本明細書に記載されるように実施されてもよい。したがって、本方法のいくつかの例は、トランスポソーム複合体10、10’及びフローセル内の表面に固定されたプライマー36、36’を含むフローセルに、粗溶解物を導入するステップを含む。この例では、(粗溶解物中の)抽出されたデオキシリボ核酸又はリボ核酸は、粗溶解物が導入される時にフローセルにタグメント化緩衝液を導入するステップ、及びフローセルを30℃以上の温度にするステップ(図1Bを参照して本明細書に記載されるように)によって、タグメント化に曝露される。この例では、タグメント化緩衝液は、水、任意選択的な共溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)、及び緩衝塩(例えば、トリス酢酸塩、pH7.6)を含む。このタグメント化緩衝液のいくつかの例は、金属補因子(例えば、酢酸マグネシウム)も含む。粗溶解物はZn2+を含むので、この例のタグメント化緩衝液は、代替的に、トランスポソーム複合体のトランスポザーゼのための、金属補因子(例えば、酢酸マグネシウム)を含まなくてもよい。この特定の例では、酸化亜鉛材料を、過剰に使用することができる。タグメント化の後、トランスポザーゼを除去し、フローセルを約60℃に加熱することよって増幅を実施し、(図1Cを参照して説明したように)洗浄溶液をフローセルに流し、増幅混合物をフローセルに導入することができる。
【0313】
一例では、酸化亜鉛ナノ材料を利用するDNA試料調製方法は、フローセルに搭載されていないチャンバ内で実施される。チャンバは、配列決定機器の構成要素である、DNA試料調製チャンバであってもよい。したがって、チャンバが使用される場合、粗溶解物は、オンフローセルタグメント化及びその後の処理のために、チャンバからフローセルに輸送され得る。
【0314】
他の例では、酸化亜鉛ナノ材料を利用するDNA試料調製方法、及びタグメント化は、溶解チューブ中で実施される。溶解チューブが使用される場合、ビーズベースのタグメント化、又は溶液ベースのタグメント化が使用されてもよい。
【0315】
ビーズベースのタグメント化のために、固体支持体(すなわち、ビーズ)は、表面結合トランスポソーム複合体(10、10’に類似)、及び表面結合プライマー(36、36’に類似)を有する。タグメント化は固体支持体の表面上で起こり、その結果、得られたDNA断片が、表面に結合する。タグメント化緩衝液、並びに表面結合トランスポソーム複合体及び表面結合プライマーを含む、固体支持体を、溶解チューブに導入し、そこで、タグメント化、ライゲーション、及び伸長が実施される(例えば、図1A図1Cに記載されるように)。この例では、タグメント化緩衝液は、水、任意選択的な共溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)、緩衝塩(例えば、トリス酢酸塩、pH7.6)、リコンビナーゼ、ポリメラーゼ、アクセサリータンパク質、及び任意選択的な金属補因子を含む。
【0316】
溶液ベースのタグメント化の場合、タグメント化は、浮遊トランスポソーム及びプライマーを使用して、溶液中で実施される。タグメント化緩衝液が溶解チューブに導入され、そこでタグメント化、ライゲーション、及び伸長が実施される(例えば、図1A図1Cに記載されるように)。この例では、タグメント化緩衝液は、トランスポソーム、プライマー、水、任意選択的な共溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)、緩衝塩(例えば、トリス酢酸塩、pH7.6)、リコンビナーゼ、ポリメラーゼ、アクセサリータンパク質、及び任意選択的な金属補因子を含む。
【0317】
乾燥試薬
本明細書に記載される例のいずれかにおいて、フローセル調製及び/又は試料調製のための試薬の1つ以上は、フローセル上に導入される前に、乾燥され、カートリッジ内に貯蔵されてもよい。乾燥は、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、又はマイクロ波乾燥を使用して、実施することができる。乾燥試薬の各々は、フローセル及び/又は試料を調製するために使用される前に、水中で再構成され得る。
【0318】
凍結乾燥は、試薬が凍結され真空下に置かれた後に、試薬から水を除去する、凍結乾燥プロセスである。凍結乾燥は、約-30℃~約-50℃の範囲の温度、及び約30MPa~約90MPaの範囲の圧力で、実施することができる。このプロセスは、試薬成分の固体微小球を生成し、したがって、(対応する液体よりも)より凝縮し、貯蔵及び輸送のためにより安定である。
【0319】
一例では、トランスポソーム緩衝液を、乾燥させる。トランスポソーム緩衝液は、トランスポソーム複合体10、10’、10A、10B、10C、10Dをフローセルに導入するために使用される。トランスポソーム緩衝液は、緩衝溶液中に、トランスポソーム10、10’、10A、10B、10C、10Dの任意の例を含む。乾燥前に、トランスポソーム緩衝溶液は、緩衝剤(例えば、トリス)、塩(例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)、界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)ポリソルベート)、場合によっては、凍結乾燥賦形剤(例えば、トレハロース)、及び水を含み得る。
【0320】
他の例では、ストレプトアビジンを、乾燥させる。本明細書に開示される方法のいくつかによれば、ストレプトアビジンは、トランスポソーム複合体10、10’、10A、10B、10C、10Dを、ビオチン化ポリマーヒドロゲルに結合させるために、使用される。乾燥前に、ストレプトアビジンは、緩衝剤(例えば、トリス)、塩(例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)、界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標)ポリソルベート)、場合によっては、凍結乾燥賦形剤(例えば、トレハロース)、及び水を含有する、緩衝液中に含有され得る。
【0321】
更に他の例では、本明細書に開示される無機塩を含まない溶解緩衝液が、乾燥され得る。無機塩を含まない溶解緩衝液の任意の例を、乾燥させてもよい。凍結乾燥が使用される場合、本明細書に開示される、無機塩を含まない溶解緩衝液の任意の例は、凍結乾燥が実施される前に、凍結乾燥賦形剤と混合される。
【0322】
更に他の例では、本明細書に開示されるタグメント化緩衝液が、乾燥され得る。タグメント化緩衝液の任意の例を、乾燥させてもよい。凍結乾燥が使用される場合、本明細書に開示されるタグメント化緩衝液の任意の例は、凍結乾燥が実施される前に、凍結乾燥賦形剤と混合される。
【0323】
凍結乾燥される試薬のいずれかにおいて、凍結乾燥賦形剤は、約200mM~約700mMの範囲の濃度で、存在し得る。
【0324】
配列決定機器
フローセルの任意の例を、配列決定機器に導入することができ、配列決定機器は、フローセルレセプタクルと、DNA試料(例えば、複合体粗溶解物)、洗浄溶液、伸長増幅ミックス、及び他の試薬を、フローセルレセプタクルに配置されたフローセルに、各々送達する送達流体を含む、流体制御システムと、フローセルレセプタクル内に位置決めされたフローセルを照明するように位置決めされた照明システムと、フローセルレセプタクル内に位置付けられたフローセルの画像をキャプチャするように位置付けられた検出システムと、流体制御システム、照明システム、及び検出システムと動作可能に通信する制御装置とを、含む。適切な位置にあるとき、フローセルは、流体制御システム(例えば、ポンプ、弁など)と流体連通し、照明システム及び検出システムと光通信状態にある。
【0325】
配列決定機器はまた、DNA試料調製チャンバを含み得、ここで、例えば、全血試料(例えば、複合体粗溶解物)又は他の同様の試料が導入され、溶解又は他の技術に曝露された後、タグメント化、増幅、及び配列決定のためにフローセルに導入される。DNA試料調製チャンバは、そこに導入された試料を所望の温度に加熱する位置に、ヒーターを有していてもよい。流体送達ラインは、DNA試料調製チャンバとフローセルとを接続してもよく、弁は、フローセルを開閉するために、フローセルの入力ポートに位置付けられてもよい。
【0326】
配列決定機器の流体システムはまた、試薬カートリッジ(その例が、参照番号76で、図24に概略的に示される)を受容するための、レセプタクルを含んでもよい。試薬カートリッジ76は、試料(例えば、血液試料、骨髄穿刺液など)を受容することができる、流体入力ポート78と、異なる試薬(液体又は乾燥形態)を貯蔵するために互いに隔離されている、流体レセプタクル80A、80B、80C、80Dとを含む。図24には示されていないが、各流体レセプタクル80A、80B、80C、80Dは、その中に含まれる試薬を、フローセル(図24の参照番号74)に送達される前の再構成のために、混合チャンバ(図示せず)に送達することができる、又は試薬カートリッジ76及びフローセル72の両方が配列決定機器内のそれらの各々の位置に挿入される時に、フローセル74に送達することができる、流体ラインに選択的に流体接続される。
【0327】
キット
本明細書に開示されるフローセル及び試薬のいずれかは、タグメント化キットに含まれ得る。例示的なキットを、図24に示す。一例では、キット72は、フローセル74、及び試薬カートリッジ76を含む。フローセル74は、本明細書に記載の例の、いずれかであってもよい。
【0328】
いくつかの例示的なキット72では、フローセル74は、本明細書に記載の固定されたトランスポソーム複合体10、10’又は10A、10Bを含み、キット72は、タグメント化緩衝液、無機塩を含まない溶解緩衝液、及び/又はカオトロピック剤の阻害剤を、更に含む。一例では、キット72は、組み合わされた、タグメント化緩衝液、及びカオトロピック剤の阻害剤を含む。これらの流体の各々は、試薬カートリッジ76の別個のレセプタクル、80A、80B、80C、80D内に含まれ得る。
【0329】
他の例示的なキット72では、フローセル74は、トランスポソーム複合体10Cをアセンブルするための、及びトランスポソーム複合体10Dを結合するための(本明細書に記載されるように)、異なる化学物質を含み、キット72は、トランスポソーム複合体10Cを形成するための成分を有するトランスポソーム緩衝液、トランスポソーム複合体10Dを有する第2のトランスポソーム緩衝液、及びタグメント化緩衝液を、更に含む。これらの流体の各々は、試薬カートリッジ76の別個のレセプタクル80A、80B、80C内に含まれ得る。この例示的キット72はまた、本明細書に開示される溶解緩衝液、阻害剤、又は他の流体のいずれかを含んでもよい。
【0330】
更に他の例示的なキット72では、フローセル74は、本明細書に開示されるトランスポソームのいずれも最初に含まない。
【0331】
このタイプのキット72の一例では、試薬カートリッジ76には、トランスポソーム10、10’を導入するための、試薬(複数可)が装填される。例えば、フローセル74は、間隙領域38によって分離された凹部12を有する基材40と、凹部12の各々の中に固定された第1の及び第2のプライマー36、36’と、凹部12の各々の中に固定された(例えば、ポリマーヒドロゲル24に結合した)ビオチン含有リンカー42とを含み得る。試薬カートリッジ76は、流体入力ポート78と、各々が第1の増幅ドメイン26及び5’ビオチン化末端22を有する第1のトランスポソーム複合体10と、各々が第2の増幅ドメイン26’及び5’ビオチン化末端22’を有する第2のトランスポソーム複合体10’とを含む、トランスポソーム緩衝液と、タグメント化緩衝液とを、各々含有する、レセプタクル80A、80B、80C、80Dとを含むことができる。
【0332】
このタイプのキット72の他の例では、試薬カートリッジ76は、トランスポソーム導入のためにフローセル表面を調製し、トランスポソーム10、10’を導入するために、試薬(複数可)が装填される。例えば、フローセル74は、間隙領域38によって分離された凹部12を有する基材40と、凹部12の各々の中に固定された第1の及び第2のプライマー36、36’と、試薬カートリッジ76であって、流体入力ポート78と、レセプタクル80A、80B、80C、80Dであって、ビオチン含有リンカー42と、各々が第1の増幅ドメイン26及び5’ビオチン化末端22を有する第1のトランスポソーム複合体10と、各々が第2の増幅ドメイン26’及び5’ビオチン化末端22’を有する第2のトランスポソーム複合体10’とを含むトランスポソーム緩衝液とを各々含有するレセプタクルとを含む、試薬カートリッジとを含むことができる。
【0333】
これらの例示的なキット72のいずれかにおいて、試薬カートリッジ76に導入される試料が、全血、組織試料、血液スポット、及び唾液からなる群から選択される場合、試薬カートリッジ76は、レセプタクル80A、80B、80C、80Dのうちの1つの中に、無機塩を含まない溶解緩衝液の、任意の例を更に含み得る。これらの例では、i)無機塩を含まない溶解緩衝液は液体であり、無機塩を含まない溶解緩衝液は水を更に含む、又はii)無機塩を含まない緩衝液は乾燥固体であり、試薬カートリッジ76は、レセプタクル80A、80B、80C、80Dの他の1つの中に、再構成流体(例えば、水)を更に含む。また、これらの例では、試薬カートリッジ76は、レセプタクル80A、80B、80C、80Dの他の1つの中に、カオトロピック剤の阻害剤を更に含んでもよい。
【0334】
最初に1つのトランスポソームタイプを使用する方法
本明細書に開示される例のうちのいくつかは、2つの異なるトランスポソーム複合体10、10’又は10A、10Bなどを利用する。図27に示される例示的な方法は、フローセルの凹部12内の1つのタイプのトランスポソーム複合体10又は10’(両方ではない)から始まり、その後、他のタイプのトランスポソーム複合体10’又は10が導入される。このようにして、トランスポソーム複合体10、10’が、順次に装填される。図27の方法の一例は、Aから、B、Cに移る。方法の他の例は、Aから、Dに移る。本方法の更に他の例は、Aから、E、Fに移る。
【0335】
次に、A、B、及びCを含む、図27の例示的な方法について記載する。図27のAには、凹部12の底面の一部が示されている。凹部12は、高分子ハイドロゲル24と、高分子ハイドロゲル24に固定された1つのタイプのトランスポソーム複合体10と、高分子ハイドロゲル24に固定されたプライマー36,36’とを含む。固定は、本明細書に記載される官能基のいずれかを使用して達成され得る。一例では、ポリマーヒドロゲル24は、アジド又はテトラジン表面基を含み、複合体10及びプライマー36、36’の5’末端基は、各々、末端アルキン(例えば、ヘキシニル)、又は内部アルキンを含み、アルキンは、環状化合物(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN))の一部である。
【0336】
本明細書に記載されるように、1つの(第1の)タイプのトランスポソーム複合体10は、非転移鎖20、32にハイブリダイズした転移鎖18の部分30を有するトランスポゾン末端16を含み、転移鎖18は、第1の増幅ドメイン26を含む。
【0337】
この例示的な方法は、表面に結合した複数の第1のタイプのトランスポソーム複合体10を使用して、フローセル表面に二本鎖DNA断片35、37を生成するステップであって、二本鎖DNA断片35、37は、各々、それらの5’末端で、第1の転移鎖18の3’末端に結合している(図27のB参照)ステップと、及び複数の第2のタイプのトランスポソーム複合体10’をフローセルに導入し、それによって、二本鎖DNA断片35、37をタグメント化して、第2の転移鎖18’の3’末端に各々5’末端で結合した、新たな二本鎖DNA断片35、37、及び35、37を生成する(図27のC参照)ステップとを含む。
【0338】
この例では、二本鎖DNA断片35、37を生成するステップは、DNA試料及びタグメント化緩衝液をフローセルに導入するステップと、第1のタイプのトランスポソーム複合体10を使用してDNA試料のタグメント化を実施するステップとを含む。タグメント化の詳細は、図1Cを参照して、本明細書に記載されている。タグメント化の後、フローセルは、本明細書に開示される洗浄溶液の例で、フラッシングされ得る。
【0339】
次に、第2のタイプのトランスポソーム複合体10’を、フローセルに導入する。既に断片化されたDNA断片35、37を再度断片化し、新たに断片化された鎖37、35の5’末端を、トランスポソーム複合体10’の転移鎖18’の各々の3’末端に、ライゲーションする。第二のタグメント化を、図27のCに示す。この例では、タグメント化の第2の発生は、30℃以上の温度で起こり得る。一例では、温度は、約30℃~約55℃の範囲であり得る。
【0340】
第2のタグメント化は、断片化された新しいDNA断片35、37、及び35、37をもたらす。35、37の5’末端は、各々、異なるトランスポソーム複合体10、10’の転移鎖18、18’に結合し、35、37の5’末端は、各々、異なるトランスポソーム複合体10’、10’の転移鎖18’、18に結合する。Cに示すように、新たに断片化された鎖35、37の3’末端は、(複合体10’からの)非転移鎖32’の5’末端に、ライゲーションされない。したがって、DNA断片鎖35、37の3’末端と、対応する非転移鎖32’の5’末端との間に、ギャップが存在する。
【0341】
次いで、本方法は、第1の及び第2のタイプのトランスポソーム複合体10、10’の、各々のトランスポザーゼ酵素14、14’、を除去するステップと、伸長反応を行って、新たな二本鎖DNA断片に追加のアダプターを付加するステップとを含む。
【0342】
トランスポザーゼ酵素14、14’は、本明細書に記載されるように、SDS若しくは他のカオトロピック剤、又は熱を使用して除去され得る。SDS又は他のカオトロピック剤がトランスポザーゼ除去のために使用された場合、洗浄溶液は、伸長反応を開始する前に、流路を通してフラッシングされ得る。これにより、下流の酵素活性を妨害し得る、カオトロピック剤が除去される。あるいは、カオトロピック剤のキレート剤は、本明細書に記載されるように、導入され得る。
【0343】
伸長反応を開始するために、伸長増幅ミックスを、フローセル中に入れる。例示的な伸長増幅ミックスは、リコンビナーゼ、ポリメラーゼ、及びアクセサリータンパク質を含む。フローセルは、伸長増幅ミックスが導入される時、約38℃であり得る。
【0344】
伸長反応の前に、非転移鎖32、32’は、最初に熱を使用して、脱ハイブリダイズされ得る。
【0345】
更なる配列(アダプター)が、排除増幅試薬(例えば、Illumina Inc.から入手可能なExAmp試薬)を使用する伸長反応によって、部分的に適合された断片の3’末端に付加される。伸長反応は、各々の転移鎖18、18’を鋳型として使用して、DNA断片35、37及び35、37の3’末端から、鋳型依存的にヌクレオチドを付加するステップを含む。伸長反応から得られる配列は、部分的に適合されたDNA断片35、37及び35、37を完全に適合させ、更なる増幅及びクラスタ生成の準備を整える。クラスタ生成は、図1Cを参照して本明細書に記載されるように、実行され得る。
【0346】
この例では、フローセル表面に導入されるトランスポソーム複合体10の密度は、(望ましくは)1つのトランスポソーム複合体10が1つの凹部12に装填されるように、低レベル(例えば、<0.05μM)に制御される。
【0347】
次に、A及びDを含む図27の例示的な方法について説明する。この例では、1つのタグメント化プロセスが、フローセルから離れて実行され、第2のタグメント化プロセスが、フローセル上で実行される。この方法は、転移鎖18’の一部が非転移鎖20’にハイブリダイズした、トランスポゾン末端16’を各々含む、複数のトランスポソーム複合体10’を使用して、溶液中でDNA試料をタグメント化するステップであって、転移鎖18’は増幅ドメイン26’及びインデックス配列86を含み、それによって、転移鎖18’の3’末端に各々5’末端で結合した、二本鎖断片35、37を生成するステップと、二本鎖DNA断片35、37を含む溶液を、その表面に固定された複数の他のタイプのトランスポソーム複合体10と、転移鎖18の一部が非転移鎖20にハイブリダイズしたトランスポゾン末端16を含む他のタイプのトランスポソーム複合体10とを含む、フローセルに導入するステップであって、非転移鎖20にハイブリダイズした転移鎖18は、増幅ドメイン26を含み、インデックス配列を含まず、それによって、二本鎖DNA断片35、37をタグメント化して、各々その5’末端で、転移鎖18の3’末端に結合した、新しい二本鎖DNA断片35、37、35、37を生成するステップとを含む。
【0348】
フローセルから離れて実行されるタグメント化プロセスは、図27のAとDとの間に示される。この例では、DNA試料及びトランスポソーム複合体10’を、反応容器中のタグメント化緩衝液に添加する。溶液中で、DNA試料は、タグメント化される。トランスポソーム複合体10’が示されているが、複合体10を、溶液中でのタグメント化に使用できることを、理解されたい。更に、フローセル表面に結合した複合体10は、インデックス/バーコード配列を含むこともできる。
【0349】
次いで、トランスポソーム複合体10’が結合したタグメント化二本鎖DNA断片35、37を、Aに示すフローセルに導入する。フローセル上で、既に断片化されたDNA断片35、37を再度断片化し、新たに断片化された鎖37、35の5’末端を、表面結合トランスポソーム複合体10の転移鎖18の、各々の3’末端にタグメント化する。第二のタグメント化を、図27のDに示す。この例では、断片化の第2の発生は、30℃以上の温度で起こり得る。一例では、温度は、約30℃~約55℃の範囲であり得る。
【0350】
第2のタグメント化は、断片化された新しいDNA断片35、37、及び35、37をもたらす。35、37の5’末端は、異なるトランスポソーム複合体10’、10’の転移鎖18’、18に各々結合し、35、37の5’末端は、異なるトランスポソーム複合体10、10’の転移鎖18、18’に各々結合する。Eに示すように、新たに断片化された鎖35、37の3’末端は、(複合体10からの)非転移鎖32の5’末端に、ライゲーションされない。したがって、DNA断片鎖35、37の3’末端と、対応する非転移鎖32の5’末端との間に、ギャップが存在する。
【0351】
次いで、本方法は、第1の及び第2のタイプのトランスポソーム複合体10、10’の、各々のトランスポザーゼ酵素14、14’、を除去するステップと、伸長反応を行って、新たな二本鎖DNA断片に追加のアダプターを付加するステップとを含む。
【0352】
トランスポザーゼ酵素14、14’の除去及び伸長反応は、本明細書に記載されるように、実施することができる。伸長反応から得られる配列は、部分的に適合されたDNA断片35、37、及び35、37を完全に適合させ、更なる増幅及びクラスタ生成の準備を整える。クラスタ生成は、図1Cを参照して本明細書に記載されるように、実行され得る。
【0353】
次に、A、E及びFを含む図27の例示的な方法について記載する。この方法は、単一タイプの1つのトランスポソーム複合体10をフローセルの凹部12に導入するステップであって、トランスポソーム複合体10は、非転移鎖20にハイブリダイズされた転移鎖18の部分30を有するトランスポゾン末端16を含み、転移鎖18は、第1の増幅ドメイン26を含むステップと、DNA試料をフローセルに導入し、それによって、1つのトランスポソーム複合体がDNA試料をタグメント化して、第1の鎖35が、その5’末端で転移鎖18の3’末端に結合し、その3’末端で結合しておらず、第2の鎖37がその3’末端及び5’末端の両方で結合していない、二本鎖DNA断片35、37を生成するステップと(図27のEを参照されたい)、第2の転移鎖18’の部分30’が第2の非転移鎖20’にハイブリダイズしている第2のトランスポゾン末端16’を含む、第2のタイプのトランスポソーム複合体10’をフローセルに導入するステップであって、第2の転移鎖18’が第2の増幅ドメイン26’を含み、それによって、二本鎖DNA断片の第2の鎖37の5’末端が、第2の転移鎖18’に結合するステップとを含む。
【0354】
この例では、フローセル表面に導入されるトランスポソーム複合体10の密度は、(望ましくは)1つのトランスポソーム複合体10が1つの凹部12に装填されるように、低レベル(例えば、<0.05μM)に制御される。したがって、タグメント化の間、DNA試料は緩く結合し、その結果、一方の末端は、凹部12内のトランスポソーム複合体10に結合し、他方の末端は、(Eで示すように)バルクタグメント化流体中に懸濁される。
【0355】
フローセルを洗浄溶液で洗浄した後、他のトランスポソーム複合体10’を、フローセルに導入してもよい。新たに導入されたトランスポソーム複合体10’の転移鎖18’の3’末端は、第2の鎖37の5’末端に結合する。これにより、第2の鎖37を、部分的に適合させる。
【0356】
次いで、本方法は、第1の及び第2のタイプのトランスポソーム複合体10、10’の、各々のトランスポザーゼ酵素14、14’、を除去するステップと、伸長反応を行って、新たな二本鎖DNA断片に追加のアダプターを付加するステップとを含む。
【0357】
トランスポザーゼ酵素14、14’の除去及び伸長反応は、本明細書に記載されるように、実施することができる。伸長反応から得られる配列は、部分的に適合されたDNA断片35、37を完全に適合させ、更なる増幅及びクラスタ生成の準備を整える。クラスタ生成は、図1Cを参照して本明細書に記載されるように、実行され得る。
【0358】
図27のA、E、及びFに示される実施例は、A、B、及びCに示される方法と組み合わせて配置されてもよく、E及びFに示されるタグメント化(複数可)は、DNA試料(例えば、次の固定トランスポソーム複合体10に到達するのに十分な長さではない)の末端又はその付近で生じてもよい。
【0359】
本開示を更に説明するために、本明細書に例を示す。これらの例は、例示の目的で提供され、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるものではないことを理解されたい。
【0360】
非限定的な実施例
実施例1
凹部にPAZAM並びにグラフトされたP5及びP7プライマーを含む、フローセルを使用した。
【0361】
3’モザイク末端及び5’BCNリンカーを有するP5プライマーを、等量の相補的モザイク末端(5’リン酸を含む)と混合した。混合物を約95℃で約2分間インキュベーションした後、-0.1℃/秒の速度で、10℃まで冷却した。これにより、トランスポゾンP5が形成された。トランスポゾンP5を緩衝溶液中で2倍量のTn5トランスポザーゼと混合し、混合物を、37℃で、12~24時間インキュベーションした。これにより、BCN-P5トランスポソームが形成された。3’モザイク末端を有するP7プライマーを使用して同一の手順を行って、BCN-P7トランスポソームを形成した。
【0362】
BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、2つの異なるフローセル中で、PAZAMにグラフト化した。BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、硫酸ナトリウムグラフト化緩衝液中で希釈して、トランスポソーム混合物を形成した。フローセルを脱イオン水で洗浄し、硫酸ナトリウム溶液でフラッシングし、37℃まで加熱した。トランスポソーム混合物を各フローセルに添加し、約2時間インキュベーションした。所望のインキュベーション期間の後、フローセルを緩衝液でフラッシングし、室温に冷却した。
【0363】
総投入量が300ng~800ngとなるように、DNA試料を水中で調製した。追加の水を、タグメント化緩衝液と共に加えた。
【0364】
対照として、DNA試料(約150μL)をフローセルの1つに導入し、タグメント化を生じさせた。対照は、2回行った。
【0365】
一例では、DNA試料(約150μL)を5mMスペルミジンと共に導入し、タグメント化を起こさせた。実施例は、2回行った。
【0366】
タグメント化対照DNA試料及びタグメント化実施例DNA試料のインサートサイズを、IlluminaのDynamic Read Analysis for Genomics(DRAGEN)ソフトウェアを使用して、データを配列決定及び整列するステップによって決定した。結果を、図6に示す。示すように、スペルミジンの存在は、インサートサイズを増加させた。
【0367】
実施例2
凹部にPAZAM並びにグラフトされたP5及びP7プライマーを含む、フローセルを使用した。
【0368】
対照として、実施例1からの、BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を使用した。それらを、実施例1に記載したのと同一の方法で、対照フローセルに導入した。
【0369】
例として、非転移鎖上に5’リン酸を有さないBCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、相補的モザイク末端が5’リン酸を含まないことを除いて、実施例1に記載されるように調製した。非転移鎖上に5’リン酸を含まないBCN-P5トランスポソーム複合体及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、実施例1に記載したのと同一の様式で、実施例のフローセルに導入した。
【0370】
DNA試料を実施例1に記載のように調製し、対照フローセル及び実施例フローセルの各々に導入し、タグメント化を生じさせた。
【0371】
IlluminaのDynamic Read Analysis for Genomics(DRAGEN)ソフトウェアを使用して、データを配列決定及び整列させることによって、対照フローセル中のタグメント化DNA試料、及び実施例フローセル中のタグメント化DNA試料の、インサートサイズを決定した。結果を、図7に示す。示すように、5’リン酸の排除は、インサートサイズを増加させた。これらの結果は、トランスポゾンに対する修飾が、インサートサイズに影響を及ぼし得ることを示す。
【0372】
実施例3
凹部にPAZAM並びにグラフトされたP5及びP7プライマーを含む、フローセルを使用した。
【0373】
第1の例として、実施例1からの、BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体(5’リン酸非転移鎖を有する)を使用した。それらを、実施例1に記載したのと同一の方法で、第1の例のフローセルに導入した。
【0374】
第2の例として、非転移鎖上に5’リン酸を有さず、非転移鎖上に3’ALEXA FLUOR(登録商標)647色素を有する、BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、相補的モザイク末端が5’リン酸を含まず、3’ALEXA FLUOR(登録商標)647色素を含むことを除いて、実施例1に記載されるように調製した。非転移鎖上に5’リン酸を有さず、3’ALEXA FLUOR(登録商標)647色素を有するBCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、実施例1に記載したのと同一の様式で、第2の例のフローセルに導入した。
【0375】
第3の例として、非転移鎖上に5’リン酸を有し、非転移鎖上に3’ALEXA FLUOR(登録商標)647色素を有する、BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、相補的モザイク末端が3’ALEXA FLUOR(登録商標)647色素を含むことを除いて、実施例1に記載されるように調製した。非転移鎖上に5’リン酸及び3’ALEXA FLUOR(登録商標)647色素を有する、BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、実施例1に記載したのと同一の様式で、第3の例のフローセルに導入した。
【0376】
第4の例として、非転移鎖上に5’リン酸を有さない、BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、相補的モザイク末端が5’リン酸を含まないことを除いて、実施例1に記載されるように調製した。非転移鎖上に5’リン酸を有さない、BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、実施例1に記載したのと同一の様式で、第4の例のフローセルに導入した。
【0377】
対照として、IlluminaのPCRフリーDNA調製をチューブ中で行った。対照試料をフローセルの1つに導入し、タグメント化を生じさせた。
【0378】
DNA試料を実施例1に記載したように調製し、第1のフローセル、第2のフローセル、第3のフローセル、及び第4のフローセルの各々に導入し、タグメント化を生じさせた。
【0379】
タグメント化対照DNA試料、並びに第1の、第2の、第3の、及び第4の例フローセルを使用したタグメント化DNA試料の、インサートサイズを、IlluminaのDynamic Read Analysis for Genomics(DRAGEN)ソフトウェアを使用して、データを配列決定及び整列させることによって決定した。結果を図8に示している。示すように、非転移鎖からの5’リン酸の除去は、単独で、又は非転移鎖への3’フルオロフォアの付加と組み合わせて、インサートサイズを増加させた。
【0380】
実施例4
凹部にPAZAM並びにグラフトされたP5及びP7プライマーを含む、フローセルを使用した。
【0381】
実施例1からの、BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体(5’リン酸非転移鎖を有する)を、活性トランスポソーム複合体として使用した。
【0382】
転移鎖上に3’ジデオキシシトシンを有する、不活性BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体もまた、P5プライマーがモザイク末端に結合した3’ジデオキシシトシンを有することを除いて、実施例1に記載されるように調製した。
【0383】
活性BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体を、異なる割合の不活性BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体と共に、異なるフローセルに導入した。不活性BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体の割合は、10%刻みで、20%~60%の範囲であった。
【0384】
DNA試料を実施例1に記載のように調製し、フローセルの各々に導入し、タグメント化を生じさせた。
【0385】
IlluminaのDynamic Read Analysis for Genomics(DRAGEN)ソフトウェアを使用して、データを配列決定及び整列することによって、様々なフローセル中の、DNA試料のインサートサイズを決定した。結果を図9に示し、試料は、フローセル中の不活性BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体のパーセンテージによって同定される。示すように、転移鎖上の3’ジデオキシシトシンの包含は、インサートサイズを増加させた。更に、インサートサイズは、不活性BCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体の割合が増加するにつれて増加した。
【0386】
実施例5
25μlの全血を、無機塩を含まない溶解緩衝液の例を含有する、溶解チューブに添加した。無機塩を含まない溶解緩衝液は、3.6単位の熱不安定性プロテイナーゼK(TLPK)、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム、50mM Tris HCl(pH8)、1mMEDTA、0.5%TWEEN(登録商標)20、及び脱塩水からなっていた。溶解を、37℃(ヒートブロックを使用)で約15分間実施して、粗溶解物を生成した。
【0387】
次いで、粗溶解物の温度を55℃に約10分間上昇させて、培養TLPKを不活性化した。
【0388】
アルファシクロデキストリン及びタグメント化緩衝液(水、5mM酢酸マグネシウム、及び10mMトリス酢酸塩からなる、pH7.6)の混合物を、溶解チューブに添加して、複合体粗溶解物を生成した。
【0389】
PAZAM、PAZAMにグラフト化されたP5及びP7プライマー、並びにPAZAMにグラフト化された実施例1からのBCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体(5’リン酸非転移鎖を有する)を含むフローセル上で、複合体粗溶解物をタグメント化に曝露した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0390】
第1の対照として、IlluminaのPCRフリーDNA調製をチューブ中で実施して、DNAライブラリを生成した。DNAライブラリを、NaOH及びTris HClを使用して変性し、PAZAM、並びにPAZAMにグラフト化されたP5及びP7プライマーを含む、フローセルに添加した。DNAライブラリを増幅して、フローセルの凹部にクラスタを生成した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0391】
第2の対照として、DNAを使用した。DNAを、複合体粗溶解物と同一の様式で調製した。
【0392】
タグメント化対照DNA試料、及びタグメント化複合体粗溶解物試料の、インサートサイズを、IlluminaのDynamic Read Analysis for Genomics(DRAGEN)ソフトウェアを使用して、データを配列決定及び整列することによって決定した。結果を、図10に示す。図示するように、タグメント化された複合体粗溶解物のインサートサイズはより小さく、より小さい断片に対してより大きなバイアスがあった。
【0393】
図10に提示される配列決定指標は、Q30塩基のパーセンテージ、マッピングされたリードのパーセンテージ、カバレッジ、及びフィルタを通過するリードのパーセンテージを含む。
【0394】
Q30は、1000回中1回の誤ったベースコールの確率と同等である。これは、塩基呼び出しの精度(つまり、正しい塩基呼び出しの確率)が99.9%であることを意味する。塩基呼び出しの精度が99%(Q20)と低いと、100分の1の誤った塩基呼び出し確率を有するステップになり、すなわち100塩基対の配列決定読み取りごとにエラーが含まれ得ることを意味する。配列決定の品質がQ30に達する場合、事実上すべての読み取りが完全であり、エラーやあいまいさがなくなる。
【0395】
マッピングされたリードパーセンテージは、参照ゲノムに対してアライメントされる、リードのパーセンテージを指す。
【0396】
カバレッジ深度は、配列決定された試料中の各塩基にアライメントするか、又は各塩基を「カバーする」、配列決定リードの平均数を指す。Lander/Waterman式は、リード長(L)、リード数(N)、及び半数体ゲノム長(G)に基づいて、カバレッジ(C)を計算するための方法である:C=LN/G。
【0397】
より高いマッピングされたリードパーセンテージ及びより高いカバレッジ深度は、配列決定の精度を示す。
【0398】
Passing filter(PF)は、chastity閾値をパスするクラスタを記述するために使用されるメトリックであり、配列決定データの更なる処理と分析に使用される。%PF計算は、各クラスタへのチャスティティフィルタの適用を含む。「チャスティティ」は、最も明るい塩基強度を、最も明るい塩基強度と第2の最も明るい塩基強度との合計で割ったものとして、定義される。クラスタは、1つ以下のベースコールが、第1の25サイクルにおいて0.6未満のチャスティティ値を有する場合には、「フィルタを通過する」。このフィルタリングプロセスは、画像分析結果から、最も信頼性の低いクラスタを除去する。したがって、より高い%通過フィルタ(%PF)結果は、使用可能な配列決定データの、収率の増加を示す。
【0399】
複合体粗溶解物試料についての、Q30スコア、マッピングされたリードパーセンテージ、及びカバレッジは、対照試料の両方と同等であった(ただし、試料のすべてがダウンサンプリングされたことに留意されたい)。複合体粗溶解物試料についての、%PF及びGCバイアスは、第2の対照試料と同等であったが、第1の対照試料はより高かった。
【0400】
本実施例は、30×ヒトゲノムが、オンボードタグメント化、増幅、及び配列決定を使用して、フローセル上の粗溶解物から得られ得ることを示す。
【0401】
実施例6
本実施例は、ポリメラーゼ連鎖反応中に、SDSの影響から2つの異なるポリメラーゼを保護する際の、ベータシクロデキストリンの効率を評価するために実施した。
【0402】
PCRを、350塩基対のラムダDNA標的に対して行った。使用したポリメラーゼは、Q5(登録商標)High-Fidelity DNAポリメラーゼ(NEBから)、及び低忠実度ポリメラーゼであった。各ポリメラーゼについて、16個の試料を、試験した。8つの試料を、SDSなしで、異なる濃度(0%~8%)のベータシクロデキストリンを使用して試験し、8つの試料を、5μLの1%SDS(最終濃度0.05%)、及び異なる濃度(0%~8%)のベータシクロデキストリンを使用して試験した。
【0403】
Agilent TapeStation(登録商標)システム、及びD1000 ScreenTape(登録商標)アッセイを使用して、PCR産物のサイズ分析を行った。i)SDSを含まないQ5(登録商標)高忠実度DNAポリメラーゼを含む試料、ii)SDSを含むQ5(登録商標)高忠実度DNAポリメラーゼを含む試料、iii)SDSを含まない低忠実度ポリメラーゼを含む試料、及びiv)SDSを含む低忠実度ポリメラーゼを含む試料についての、ゲル画像の白黒再現を、各々、図11A図11B図11C、及び図11Dに示す。
【0404】
図11A及び図11Cに示すように、SDSを使用しなかった場合の増幅産物が、すべてのレーンに示されている。図11B及び図11Dの結果は、SDSが0.05%で存在する場合、各ポリメラーゼは、ベータシクロデキストリンの非存在下又は低レベル(0.5%)のベータシクロデキストリンが含まれる場合に、DNAを増幅することができなかったことを示す。これらの結果は、SDSがポリメラーゼ活性に有害な影響を及ぼし得ることを示している。図11B及び図11Dの結果はまた、ベータシクロデキストリンのレベルが約1%(Q5(登録商標)高忠実度DNAポリメラーゼ試料について)、及び約2%(低忠実度ポリメラーゼについて)に増加した場合、ポリメラーゼ活性が回復したことを示す。これは、ベータシクロデキストリンがSDSに対して有する、封鎖効果を明確に示す。より高いベータシクロデキストリン濃度(例えば、約6%~約8%)では、増幅はいくらか阻害された。したがって、このカオトロピック剤キレート剤の上限は、6%又は8%であり得る。
【0405】
実施例7
本実施例は、IlluminaのPCRフリーDNA調製中に、ギャップフィルライゲーション酵素をSDSの影響から保護する際の、βシクロデキストリンの効率を評価するために実施した。
【0406】
第1の対照試料は、IlluminaのPCRフリーDNA調製のための、プロトコルに従った。DNAを以下のワークフローに曝露した:50μLのタグメント化緩衝液→10μLの1%SDS→洗浄1回→ベータシクロデキストリン滴定(濃度は0%~5%で変化)を使用した50μLのギャップフィルライゲーション→上清除去→NaOHの添加→DNAを可逆的に結合させるための固相可逆的固定(SPRI)ビーズの添加。
【0407】
第2の対照試料は、IlluminaのPCRフリーDNA調製のための修飾プロトコルに従い、試薬体積を調整した。DNAを以下のワークフローに曝露した:20μLのタグメント化緩衝液→5μLの0.6%SDS→洗浄1回→ベータシクロデキストリン滴定(濃度は0%~5%で変化)を使用した100μLのギャップ充填ライゲーション→上清除去→NaOHの添加→DNAを可逆的に結合させるためのSPRIビーズの添加。
【0408】
第3の試料は、IlluminaのPCRフリーDNA調製のための修飾されたプロトコルに従い、洗浄ステップは完全に除去された。DNAを以下のワークフローに曝露した:20μLのタグメント化緩衝液→5μLの0.6%SDS→ベータシクロデキストリン滴定(濃度は0%~5%で変化)を使用した100μLのギャップフィルライゲーション→上清除去→NaOHの添加→DNAを可逆的に結合させるためのSPRIビーズの添加。
【0409】
各試料を定量PCRに供し、結果を図12に示す。第1及び第2の対照試料における洗浄ステップを実施して、タグメント化中に使用されたSDS及びトランスポザーゼの両方を除去した。これは、その後のステップで使用される酵素(例えば、ギャップ充填ライゲーション酵素)の阻害を防止するために実施した。ベータシクロデキストリンを含まない第3の試料についての結果は、それが洗い流されない場合の、SDSの強い負の影響を示す。1%、2%、及び3%のベータシクロデキストリンを有する第3の試料についての結果は、ベータシクロデキストリンがSDSを相殺するステップを示す。これらの結果は、少量のベータシクロデキストリンの添加が、カオトロピック剤の有害な効果を再導入せず、洗浄ステップの除去を可能にし、したがって、ライブラリ調製プロセスを合理化するのに役立ち得ることを示す。
【0410】
実施例8
本実施例では、手動DNA抽出を行い、及びHAMILTON(登録商標)装置を使用して、自動DNA抽出を行った。両方の実験において、Mitraチップを、血液試料の収集のために使用した。第1の実験では、プロテイナーゼKを、溶解緩衝液(Illumina DNA PCR-free kitから)に添加し、第2の実験では、プロテイナーゼKを、血液収集前にMitraチップ上で予備乾燥させた。各実験からのDNA収量を決定し、結果を図18に示す。示すように、各処理タイプの結果は同等であったが、予備乾燥された実施例は特に有効であった。同様の結果は、プロテイナーゼKの代わりに、酸化亜鉛ナノ粒子使用しても達成され得ると考えられる。
【0411】
実施例9
この例では、3つの異なるワークフローを使用して、無機塩を含まない溶解緩衝液の異なる実施例、及び異なるプロテアーゼ不活性化技術を使用した、全血の溶解を比較した。
【0412】
第1のワークフローにおいて、25μlの全血を、無機塩を含まない溶解緩衝液の例を含有する、溶解チューブに添加した。無機塩を含まない溶解緩衝液は、3.6単位の熱不安定性プロテイナーゼK(TLPK)、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム、50mM Tris HCl(pH8)、1mMEDTA、0.5%TWEEN(登録商標)20、及び脱塩水からなっていた。溶解を、37℃(ヒートブロックを使用)で約15分間実施して、粗溶解物を生成した。次いで、粗溶解物の温度を55℃に約10分間上昇させて、培養TLPKを不活性化した。アルファシクロデキストリン(2.7%)、及びタグメント化緩衝液(水、5mM酢酸マグネシウム、及び10mMトリス酢酸塩、pH7.6からなる)の混合物を、溶解チューブに添加して、第1の複合体粗溶解物を生成した。
【0413】
第2のワークフローでは、25μlの全血を、無機塩を含まない溶解緩衝液の他の例を含有する、溶解チューブに添加した。無機塩を含まない溶解緩衝液は、0.8mg/mLプロテイナーゼK(PK)、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム、50mM Tris HCl(pH8)、1mM EDTA、0.5%TWEEN(登録商標)20、及び脱イオン水からなっていた。溶解を、37℃(ヒートブロックを使用)で約15分間実施して、粗溶解物を生成した。次いで、粗溶解物の温度を、80℃に、約10分間~約15分間上昇させて、PKを不活性化した。アルファシクロデキストリン(2.7%)、及びタグメント化緩衝液(水、5mM酢酸マグネシウム、及び10mMトリス酢酸塩、pH7.6からなる)の混合物を、溶解チューブに添加して、第2の複合体粗溶解物を生成した。
【0414】
第3のワークフローでは、25μlの全血を、無機塩を含まない溶解緩衝液の他の例を含有する、溶解チューブに添加した。無機塩を含まない溶解緩衝液は、0.8mg/mLプロテイナーゼK(PK)、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム、50mM Tris HCl(pH8)、1mM EDTA、0.5%TWEEN(登録商標)20、及び脱イオン水からなっていた。溶解を、37℃(ヒートブロックを使用)で約15分間実施して、粗溶解物を生成した。アルファシクロデキストリン(2.7%)、テトラペプチジルクロロメチルケトン(0.08mg/mL)、及びタグメント化緩衝液(水、5mM酢酸マグネシウム、及び10mMトリス酢酸塩からなる、pH7.6)の混合物を、溶解チューブに添加して、PKを不活性化し、第3の複合体粗溶解物を生成した。
【0415】
第1の複合体粗溶解物、第2の複合体粗溶解物、及び第3の複合体粗溶解物の各々を、PAZAM、PAZAMにグラフト化されたP5及びP7プライマー、並びにPAZAMにグラフト化された実施例1からのBCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体(5’リン酸非転移鎖を有する)を含む、フローセル上でのタグメント化に各々曝露した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0416】
インサートサイズ、及び配列決定指標(すなわち、Q30塩基のパーセンテージ、マッピングされたリードのパーセンテージ、カバレッジ、及びフィルタを通過するリードのパーセンテージ)を、実施例5に記載されるように決定した(ただし、試料はダウンサンプリングしなかった)。結果を、図19に示す。図19に示すように、第1の複合体粗溶解物のインサートサイズは、第2の及び第3の複合体粗溶解物よりも、わずかに小さかった。全体として、ワークフローの各々、並びにその溶解緩衝液及び不活性化技術、例えば、熱又は阻害剤としてのTCKは、適切なインサートサイズを生成し、同様の配列決定指標をもたらした。この例もまた、30×を超えるヒトゲノムが、オンボードタグメント化、増幅、及び配列決定を使用して、フローセル上で粗溶解物から得られ得ることを示す。
【0417】
実施例10
凍結乾燥しなかった試薬と比較した、凍結乾燥の効果を決定するために、本明細書に記載の、試薬(ストレプトアビジン、溶解緩衝液、タグメント化緩衝液、及びトランスポソーム緩衝液)のいくつかを、凍結乾燥した。
【0418】
ストレプトアビジン試薬は、2μMストレプトアビジン、100mMトリス(pH7.5)、60mM NaCl、0.2%TWEEN(登録商標)20、540mMトレハロース、及び脱イオン水を使用して、調製した。
【0419】
無機塩を含まない溶解緩衝液を、0.056mMプロテイナーゼK(PK)、0.4%ドデシル硫酸ナトリウム、100mM Tris HCl(pH8)、2mM EDTA、1%TWEEN(登録商標)20、440mMトレハロース、及び脱イオン水を使用して、調製した。
【0420】
タグメント化緩衝液は、10mM酢酸マグネシウム、20mMトリス酢酸塩(pH7.6)、571mMトレハロース、及び脱イオン水を使用して、調製した。
【0421】
非対称トランスポソーム複合体を使用して、トランスポソーム緩衝液を調製した。P7トランスポソーム複合体は、非転移鎖の3’末端にビオチンを含み、P5トランスポソーム複合体は、転移鎖の5’末端にビオチンを含んだ。最終トランスポソーム濃度は、各々、0.4μM及び0.5μM(80%のP7トランスポソーム複合体、及び20%のP5トランスポソーム複合体)であった。0.4μMトランスポソーム緩衝液は、0.64%グリセロール、63.36mM NaCl、101.68mMトリス(pH7.5)、0.034mM DTT、0.003%TRITON(登録商標)X-100、0.003mM EDTA、0.2%TWEEN(登録商標)20、及び18%トレハロースを含んでいた。0.5μMトランスポソーム緩衝液は、0.8%グリセロール、64.2mM NaCl、102.1mMトリス(pH7.5)、0.042mM DTT、0.004%TRITON(登録商標)X-100、0.004mM EDTA、0.2%TWEEN(登録商標)20、及び18%トレハロースを含んでいた。
【0422】
各試薬について、液体試料を調製し、凍結乾燥試料を調製した。凍結乾燥は、約-25℃~約-50℃の範囲の温度、及び約30MPa~約90MPaの範囲の圧力で実施した。得られたマイクロスフェア又は単一ブロック(ケーキ形式)中の、試薬成分の重量平均分子量及び/又は濃度を、表1~4に示す。
【0423】
【表1】
【0424】
【表2】
【0425】
【表3】
【0426】
【表4】
【0427】
凍結乾燥試料(マイクロスフェア又はブロック)の各々を、水で再構成した。
【0428】
ストレプトアビジンの結果
液体及び再構成された凍結乾燥ストレプトアビジン試料を、ビオチン化PAZAM(ビオチンが、BCNリンカーを介してPAZAMに結合している)、並びにビオチン-P5及びビオチン-P7トランスポソーム複合体を有する、PAZAMにグラフトされたP5及びP7プライマーを含む、各々のフローセル上に充填した。洗浄溶液をフローセルに流して、未結合ストレプトアビジン、及びトランスポソーム複合体を除去した。次に、タグメント化緩衝液中のDNA試料(500ng)を、各々のフローセルに導入した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0429】
インサートサイズ、及び配列決定指標(すなわち、Q30塩基のパーセンテージ、マッピングされたリードのパーセンテージ、カバレッジ、及びフィルタを通過するリードのパーセンテージ)を、実施例5に記載されるように決定した(ただし、試料はダウンサンプリングしなかった)。液体及び再構成された凍結乾燥ストレプトアビジン試料を使用して調製された、フローセル上で分析されたDNAについての、インサートサイズ及び配列決定指標を、図20に示す。示すように、トランスポソーム複合体を結合させるための、凍結乾燥され再構成されたストレプトアビジンの使用は、インサートサイズ又は配列決定指標に関して、下流のDNAプロセシングに悪影響を及ぼさなかった。
【0430】
溶解緩衝液の結果
25μlの全血を、液体試料及び再構成した凍結乾燥溶解緩衝液試料の、各々に添加した。溶解を、37℃(ヒートブロックを使用)で、約15分間実施して、各々の粗溶解物を生成した。次いで、粗溶解物の温度を、80℃に、約10分間~約15分間上昇させて、PKを不活性化した。アルファシクロデキストリン(2.7%)、及びタグメント化緩衝液(水、5mM酢酸マグネシウム、及び10mMトリス酢酸塩、pH7.6からなる)の混合物を、溶解チューブに添加して、複合体粗溶解物を生成した。PAZAM、PAZAMにグラフト化されたP5及びP7プライマー、並びにPAZAMにグラフトされた実施例1からのBCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体(5’リン酸非転移鎖を有する)を含む、フローセル上で、複合体粗溶解物(各々、液体溶解緩衝液及び再構成された凍結乾燥溶解緩衝液で形成された)の各々を、タグメント化に曝露した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0431】
インサートサイズ、及び配列決定指標(すなわち、Q30塩基のパーセンテージ、マッピングされたリードのパーセンテージ、カバレッジ、及びフィルタを通過するリードのパーセンテージ)を、実施例5に記載されるように決定した(ただし、試料はダウンサンプリングしなかった)。結果を、図21に示す。示すように、全血試料から粗溶解物を生成するための、凍結乾燥され再構成された溶解緩衝液の使用は、インサートサイズ又は配列決定指標に関して、下流のDNAプロセシングに悪影響を及ぼさなかった。
【0432】
タグメント化緩衝液結果
DNA試料(500ng)を、各々液体及び再構成した凍結乾燥タグメント化緩衝液に導入した。次いで、これらの試料を、PAZAM、PAZAMにグラフト化されたP5及びP7プライマー、並びにPAZAMにグラフト化された実施例1からのBCN-P5及びBCN-P7トランスポソーム複合体(5’リン酸非転移鎖を有する)を含む、各々のフローセルに導入した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0433】
インサートサイズ、及び配列決定指標(すなわち、Q30塩基のパーセンテージ、マッピングされたリードのパーセンテージ、カバレッジ、及びフィルタを通過するリードのパーセンテージ)を、実施例5に記載されるように決定した(ただし、試料はダウンサンプリングしなかった)。結果を、図22に示す。示すように、タグメント化中の、凍結乾燥及び再構成されたタグメント化緩衝液の使用は、インサートサイズ又は配列決定指標に関して、下流のDNAプロセシングに悪影響を及ぼさなかった。
【0434】
この例における結果は、凍結乾燥が、下流の配列決定に有害な影響を与えることなく、フローセル調製及び試料調製において使用される種々の試薬について、使用され得ることを示す。
【0435】
トランスポソーム結果
液体及び再構成された凍結乾燥トランスポソーム緩衝液試料を、ビオチン化PAZAM(ビオチンが、BCNリンカーを介してPAZAMに結合している)、並びにPAZAMにグラフト化されたP5及びP7プライマーを含む、各々のフローセル上にロードした。洗浄溶液をフローセルに流して、未結合ストレプトアビジン、及びトランスポソーム複合体を除去した。次に、タグメント化緩衝液中のDNA試料(500ng)を、各々のフローセルに導入した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0436】
インサートサイズ及び配列決定指標の一部(すなわち、Q30塩基のパーセンテージ、マッピングされたリードのパーセンテージ、及びフィルタを通過するリードのパーセンテージ)を、実施例5に記載されているように決定した(ただし、試料はダウンサンプリングしなかった)。この例では、占有率又は占有率%も決定した。本明細書で使用される場合、「占有率又は占有%」は、クラスタを含有する凹部対空の凹部のパーセンテージを指す。液体及び再構成された凍結乾燥ストレプトアビジン試料を使用して調製された、フローセル上で分析されたDNAについての、インサートサイズ及び配列決定指標、を図28に示す。示すように、異なる濃度での凍結乾燥及び再構成されたトランスポソームの使用は、インサートサイズ又は配列決定指標に関して、下流のDNAプロセシングに悪影響を及ぼさなかった。
【0437】
実施例11
対照として、IlluminaのPCRフリーDNA調製(NEXTSEQ(商標)2Kプロトコル)をチューブ内で実施して、gDNAライブラリを生成した。gDNAライブラリを、NaOH及びTris HClを使用して変性させ、PAZAM、並びにPAZAMにグラフト化されたP5及びP7プライマーを含む、フローセルに添加した。gDNAライブラリを増幅して、フローセルの凹部にクラスタを生成した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0438】
実施例のために、ビオチン化PAZAM(ストレプトアビジンがビオチンに結合しており、ビオチンがBCNリンカーを介してPAZAMに結合している)、並びにグラフト化P15及びP7プライマーを凹部に含む、フローセルを使用した。ビオチン-P15及びビオチン-P7トランスポソームを、緩衝液(50mM Tris(pH7.5)、30mM NaCl、0.1%Tween(登録商標)20、及び水)に取り込み、ストレプトアビジンを介して、ビオチン化PAZAMにグラフト化した。フローセルを、高塩濃度緩衝液で洗浄した。トランスポソーム混合物を、各フローセルに添加し、室温で、約30分間インキュベーションした。所望のインキュベーション期間後、対照フローセルを、緩衝液でフラッシングした。
【0439】
一例として、500ngのgDNAを、タグメント化緩衝液(水、5mM酢酸マグネシウム、及び10mMトリス酢酸塩、pH7.6からなる)に組み込んだ。gDNAを、フローセルの1つでタグメント化に曝露した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0440】
他の例では、300μLの複合体粗溶解物を使用した。全血を、無機塩を含まない溶解緩衝液の例を含有する溶解チューブに添加した。無機塩を含まない溶解緩衝液は、3.6単位の熱不安定性プロテイナーゼK(TLPK)、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム、50mM Tris HCl(pH8)、1mMEDTA、0.5%TWEEN(登録商標)20、及び脱塩水からなっていた。溶解を、37℃(ヒートブロックを使用)で約15分間実施して、粗溶解物を生成した。次いで、粗溶解物の温度を55℃に約10分間上昇させて、培養TLPKを不活性化した。アルファシクロデキストリン(2.7%)、及びタグメント化緩衝液(水、5mM酢酸マグネシウム、及び10mMトリス酢酸塩、pH7.6からなる)の混合物を、溶解チューブに添加して、複合体粗溶解物を生成した。複合体粗溶解物を、フローセルの他の1つ上で、タグメント化に曝露した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0441】
インサートサイズ及び配列決定指標(すなわち、Q30塩基のパーセンテージ、マッピングされたリードのパーセンテージ、カバレッジ、及びフィルタを通過するリードのパーセンテージ)を、実施例5に記載されるように、対照及び実施例について決定した(試料をダウンサンプリングした)。結果を、図23に示している。図23に示すように、実施例gDNA及び粗溶解物の、両方のインサートサイズは、対照gDNAよりもわずかに小さかった。全体として、配列決定指標は、対照と同等であった。
【0442】
実施例12
本実施例は、その後のビオチン化トランスポソーム複合体の導入のために、BCN-ビオチン及びストレプトアビジンを使用してフローセル表面を調製するための、2つの異なる方法を比較した。
【0443】
一例では、BCN-ビオチンを、凹部にPAZAMを含むフローセルに添加した。BCN-ビオチン-ストレプトアビジンを、60℃で、約2時間インキュベーションした。次いでストレプトアビジンを添加し、室温で、30分間インキュベーションした。
【0444】
他の例では、BCN-ビオチン(20μL)及びストレプトアビジン(20μL)を、20μLの緩衝液(50mM Tris(pH7.5)、30mM NaCl、0.1%Tween(登録商標)20、及び水)中で、30分間プレインキュベーションした。30分後、混合物を、140μLのNaSO緩衝液で希釈した。次いで、希釈したBCN-ビオチン-ストレプトアビジンを、凹部にPAZAMを含むフローセルに添加し、60℃で、約2時間インキュベーションした。
【0445】
500ngのgDNAを、タグメント化緩衝液(水、5mM酢酸マグネシウム、及び10mMトリス酢酸塩からなる、pH7.6)に組み込んだ。各々のgDNA試料を、各フローセル上で、タグメント化に曝露した。タグメント化から得られた断片を、プライマーを使用して増幅した。逆方向鎖を切断し、順方向鎖を配列決定した。
【0446】
インサートサイズ及び配列決定指標(すなわち、Q30塩基のパーセンテージ、マッピングされたリードのパーセンテージ、占有率、及びフィルタを通過するリードのパーセンテージ)を、実施例5及び10に記載されるように、実施例について決定した。結果を、図25に示す。図25に示すように、BCN-ビオチン-ストレプトアビジンを導入するための方法のいずれも、下流の指標に悪影響を及ぼすことなく使用することができる。
【0447】
追記事項
本明細書に開示される例のいずれにおいても、基材は、複数の凹部ではなく、その中に画定された単一のレーンを含んでもよい。レーン内で、ポリマーヒドロゲルを選択的に堆積させて、個々のパッドを形成することができる。パッドは、凹部内のポリマーヒドロゲルに類似しており、本明細書に開示される実施例のいずれにおいても使用することができる。
【0448】
以下により詳細に考察される、前述の概念及び更なる概念のすべての組み合わせが、(かかる概念が相互に矛盾しなければ)本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図されることを理解されたい。具体的には、本開示の終わりに現れる特許請求される主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図される。本明細書で明示的に用いられ、また参照により組み込まれる任意の開示においても出現し得る用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるものであることも理解されたい。
【0449】
「一つの例」、「別の例」、「一例」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在していても、存在していなくてもよいことを意味している。加えて、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載の要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせられ得ることを理解すべきである。
【0450】
いくつかの例を詳細に説明してきたが、開示された例は修正され得ることを理解されたい。したがって、これまでの説明は非限定的なものであると考えられるものである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図15I
図15J
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図27
図28
【配列表】
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【国際調査報告】