(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】トリフルオロエチレンの調製及び精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/38 20060101AFI20241226BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20241226BHJP
C07C 19/08 20060101ALI20241226BHJP
B01D 71/82 20060101ALI20241226BHJP
B01D 71/66 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C07C17/38
C07C21/18
C07C19/08
B01D71/82 500
B01D71/66
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538236
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 FR2022052341
(87)【国際公開番号】W WO2023118697
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラビー, セドリック
(72)【発明者】
【氏名】レタリ, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ヒスラー, ケビン
【テーマコード(参考)】
4D006
4H006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA01
4D006MA03
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC58
4D006MC65
4D006MC72
4D006PB63
4D006PB66
4D006PB68
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB93
4H006AD19
4H006EA02
4H006EA03
(57)【要約】
本発明は、フルオロカーボンと水素を含む混合物からのフルオロカーボンの精製方法であって、前記混合物を膜M1と接触させて、フルオロカーボンを含む流れF1と水素を含む流れF2を形成する段階を含む、方法に関する。本発明はまたトリフルオロエチレンの製造方法に関する。本発明はまた膜分離による窒素からのハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンの分離方法に関する。本発明はまたクロロトリフルオロエチレン又はハイドロフルオロカーボンからのトリフルオロエチレンの分離方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロフルオロオレフィンと窒素を含む混合物の分離方法であって、前記混合物を膜M3と接触させて、前記ハイドロフルオロオレフィンを含む流れF7と窒素を含む流れF8を形成する段階を含み、前記膜M3がシロキサン官能基を含む材料から作製されている、方法。
【請求項2】
前記膜M3が、式-[-(R)(R')Si-O]
n-の官能基を含む材料から作製されており、R及びR'は、水素、C
1-C
20アルキル、C
3-C
10シクロアルキル、C
6-C
12アリールからなる群から独立して選択され、nは50を超え、好ましくは100を超え、特に1000を超える整数であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜M3が、ポリアルキルシロキサンから作製されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記膜M3が、ポリジメチルシロキサンから作製されていることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハイドロフルオロオレフィンが、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、3,3,3-トリフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3-トリフルオロプロペン、1,1,2-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2,3-トリフルオロプロペン、2,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジフルオロプロペン、1,2-ジフルオロプロペン、2,3-ジフルオロプロペン及び3,3-ジフルオロプロペンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ハイドロフルオロオレフィンが、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン及び3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
ハイドロフルオロアルカンと窒素を含む混合物の分離方法であって、前記混合物を膜M3'と接触させて、前記ハイドロフルオロアルカンを含む流れF7'と窒素を含む流れF8'を形成する段階を含み、前記膜M3'がポリオレフィンから作製されている、方法。
【請求項8】
前記膜M3'が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリヘキセン、ポリペンテン及びポリブテンからなる群から選択される材料から作製されていることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ハイドロフルオロアルカンが、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン及び3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロフルオロオレフィンの製造及び精製方法に関する。特に、本発明は、トリフルオロエチレン(VF3)の製造方法と後者の精製に関する。
【背景技術】
【0002】
VF3などのフルオロオレフィンは知られており、注目すべき特性、特に優れた耐薬品性及び良好な耐熱性を示すフルオロカーボンポリマーの製造のためのモノマー又はコモノマーとして使用されている。
【0003】
トリフルオロエチレンは、標準の圧力及び温度条件下で気体である。この生成物の使用に伴う主なリスクは、他のハロゲン化オレフィンと同様に、その可燃性、安定化されていない場合のその自己重合傾向、その化学的不安定性によるその爆発性、及び過酸化に対するその推定される感受性と関連している。トリフルオロエチレンは、爆発下限界(LEL)が約10%、爆発上限界(UEL)が約30%で、極めて引火性が高いという際だった特徴を示す。しかし、主な危険性は、酸素が存在していなくともエネルギー源が存在している場合、VF3が所定の圧力条件下で激しく爆発的に分解する傾向と関連している。
【0004】
上記の主なリスクを考慮すると、VF3の合成とまた貯蔵が特定の問題を引き起こし、これらのプロセス全体にわたって厳格な安全規則が課される。トリフルオロエチレンを調製するための既知の経路では、触媒の存在下で気相中においてクロロトリフルオロエチレン(CTFE)と水素が出発材料として使用される。大気圧及び比較的低温において第VIII族金属に基づく触媒の存在下で気相中においてCTFEを水素化分解することによりトリフルオロエチレンの製造方法が、国際公開第2013/128102号から知られている。この文献では、反応から生じ、トリフルオロエチレンを含む粗混合物の精製が、一連の洗浄及び蒸留段階から構成されている。特に、水素と窒素などの気体が、エタノールが供給される吸収塔を使用してVF3から分離される。水素と窒素が塔頂から排出される一方、反応生成物(VF3、CTFEなど)はエタノールに溶解され、それらをエタノールから分離するために脱着セクションに向けられる。この段階では多量のエタノールの使用が必要となり、これが、プロセス全体の環境バランスに影響を及ぼす(使用される溶媒の処理、高いエネルギーコストが必要となる)。加えて、トリフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンなどの化合物は分離が難しい場合がある。よって、より効率的でより環境に優しいプロセスを採用する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
第一の態様によれば、本発明は、フルオロカーボンと水素を含む混合物からのフルオロカーボンの精製方法であって、前記混合物を膜M1と接触させて、フルオロカーボンを含む流れF1と水素を含む流れF2を形成する段階(a)を含む、方法に関する。
【0006】
本発明により、より効率的でより環境に優しいプロセスを用いることが可能になる。これは、本特許出願に記載された膜の使用が、フルオロカーボンを水素から分離するために通常使用される吸収溶媒が不要であることから、効率と環境適合性の優位性を示すためである。本発明はまた、製造コスト(廃溶媒の処理が不要)とプロセスの簡素化の点でも優位性を示す。
【0007】
好ましい実施態様によれば、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン-テトラフルオロエチレン及びSO3H基で置換されていてもよいテトラフルオロエチレン/パーフルオロビニルエーテルコポリマーからなる群から選択される材料から作製されている。
【0008】
好ましい実施態様によれば、フルオロカーボンは、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、3,3,3-トリフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン、3-クロロ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3-トリフルオロプロペン、1,1,2-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2,3-トリフルオロプロペン、2,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジフルオロプロペン、1,2-ジフルオロプロペン、2,3-ジフルオロプロペン及び3,3-ジフルオロプロペンからなる群から選択される。
【0009】
好ましい実施態様によれば、前記フルオロカーボンは、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、3-クロロ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン及び1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される。
【0010】
好ましい実施態様によれば、前記フルオロカーボンは、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン及び1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される。
【0011】
好ましい実施態様によれば、前記膜M1は5を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M1を通る前記フルオロカーボンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって計算される。
【0012】
好ましい実施態様によれば、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0013】
好ましい実施態様によれば、前記混合物と前記流れF1はまた窒素を含み、前記方法は、前記流れF1を膜M1'と接触させて、前記フルオロカーボンを含む流れF3と窒素を含む流れF4を形成する段階(b)を含む。
【0014】
好ましい実施態様によれば、前記膜M1'は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、又はポリアルキルシロキサンからなる群から選択される材料から作製されている。
【0015】
第二の態様によれば、本発明は、ハイドロフルオロオレフィンと窒素を含む混合物の分離方法であって、前記混合物を膜M3と接触させて、前記ハイドロフルオロオレフィンを含む流れF7と窒素を含む流れF8を形成する段階を含み、前記膜M3がシロキサン官能基を含む材料から作製されている、方法を提供する。
【0016】
好ましい実施態様によれば、前記膜M3は、式-[-(R)(R')Si-O]n-の官能基を含む材料から作製されており、R及びR'は、水素、C1-C20アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリールからなる群から独立して選択され、nは50を超え、好ましくは100を超え、特に1000を超える整数である。
【0017】
好ましい実施態様によれば、前記膜M3は、ポリアルキルシロキサンから作製されている。
【0018】
好ましい実施態様によれば、前記膜M3は、ポリジメチルシロキサンから作製されている。
【0019】
好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロオレフィンは、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、3,3,3-トリフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3-トリフルオロプロペン、1,1,2-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2,3-トリフルオロプロペン、2,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジフルオロプロペン、1,2-ジフルオロプロペン、2,3-ジフルオロプロペン及び3,3-ジフルオロプロペンからなる群から選択される。
【0020】
好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロオレフィンは、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン及び3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される。
【0021】
第三の態様によれば、本発明は、ハイドロフルオロアルカンと窒素を含む混合物の分離方法であって、前記混合物を膜M3'と接触させて、前記ハイドロフルオロアルカンを含む流れF7'と窒素を含む流れF8'を形成する段階を含み、前記膜M3'がポリオレフィンから作製されている、方法を提供する。
【0022】
好ましい実施態様によれば、前記膜M3'は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリヘキセン、ポリペンテン及びポリブテンからなる群から選択される材料から作製されている。
【0023】
好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロアルカンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン及び3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される。
【0024】
第四の態様によれば、本発明は、触媒を含む固定触媒床を備えた反応器におけるトリフルオロエチレンの製造方法であって、気相中において触媒の存在下でクロロトリフルオロエチレンを水素と反応させて、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及び未反応水素を含む流れを生成する段階A)と、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及びおそらく水素を含む流れを膜M2と接触させて、トリフルオロエチレン及びおそらく水素を含む流れF5と、クロロトリフルオロエチレン及びおそらく水素を含む流れF6を形成する段階B)を含む、方法を提供する。
【0025】
好ましい実施態様によれば、前記膜M2は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、セルロース及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される材料から作製されている。
【0026】
好ましい実施態様によれば、前記膜M2は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリイミド、及びセルロースアセテートからなる群から選択される材料から作製されている。
【0027】
好ましい実施態様によれば、前記膜M2は9を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M2を通るトリフルオロエチレンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって計算され、かつ前記膜M2は20を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M2を通るトリフルオロエチレンの透過係数に対するクロロトリフルオロエチレンの透過係数の比によって計算される。
【0028】
特定の実施態様によれば、前記膜M2は、ポリプロピレン又はポリメチルペンテンから作製されている。
【0029】
別の好ましい実施態様によれば、前記膜M2は100を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M2を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって計算され、かつ前記膜M2は10を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M2を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比によって計算される。
【0030】
特定の実施態様によれば、前記膜M2はポリイミド又はセルロースアセテートから作製されている。
【0031】
好ましい実施態様によれば、前記触媒は、0.01重量%から5重量%のアルミナ担持パラジウムを含み;好ましくは、アルミナは少なくとも90%のα-アルミナを含む。
【0032】
好ましい実施態様によれば、前記段階A)は、50℃と250℃の間の固定触媒床温度で実施される。
【0033】
好ましい実施態様によれば、段階B)は、0℃から150℃、有利には0℃から125℃、好ましくは5℃から100℃の温度で実施される。
【0034】
この第四の態様によれば、本発明は、トリフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンを含む混合物の分離方法であって、前記混合物を膜M2と接触させて、トリフルオロエチレンを含む流れF5とクロロトリフルオロエチレンを含む流れF6を形成する段階を含み、前記膜M2が、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、セルロース、及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される材料から作製されている、方法を提供する。
【0035】
好ましい実施態様によれば、前記膜M2は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリイミド、及びセルロースアセテートからなる群から選択される材料から作製されている。
【0036】
第五の態様によれば、本発明は、トリフルオロエチレンとハイドロフルオロカーボンを含む混合物の分離方法であって、前記混合物を膜M4と接触させて、トリフルオロエチレンを含む流れF9と前記ハイドロフルオロカーボンを含む流れF10を形成する段階を含む、方法を提供する。
【0037】
好ましい実施態様によれば、前記膜M4は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン-テトラフルオロエチレン、及びSO3H基で置換されていてもよいテトラフルオロエチレン/パーフルオロビニルエーテルコポリマーからなる群から選択される材料から作製されている。
【0038】
好ましい実施態様によれば、前記膜M4は、フィルム、積層構造、中空繊維、及び被覆繊維から選択される。
【0039】
好ましい実施態様によれば、前記膜M4は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、及びセルロースからなる群から選択される材料から作製されている。
【0040】
好ましい実施態様によれば、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。
【0041】
好ましい実施態様によれば、前記膜M4は、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンからなる群から選択される材料から作製されている。
【0042】
好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及び1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンである。
【0043】
好ましくは、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン及び1,1,2-トリフルオロエタンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンである。
【0044】
好ましくは、前記膜M4は、10を超え、有利には15を超え、好ましくは20を超え、より優先的には25を超え、特に30を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M4を通る前記ハイドロフルオロアルカンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比によって計算される。
【0045】
特に好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンであり、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。
【0046】
特に好ましい好適な実施態様によれば、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンであり、前記膜M4は、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンからなる群から選択される材料、好ましくはポリメチルペンテンから作製されている。
【0047】
この第五の態様によれば、本発明は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンの脱フッ化水素化又はクロロジフルオロメタンとクロロフルオロメタンの間の反応段階により、トリフルオロエチレンと1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む流れを形成する段階A1)と、膜M4を用いて本発明の第五の態様に従ってトリフルオロエチレンとハイドロフルオロカーボンを含む流れを分離して、トリフルオロエチレンを含む流れF9'と前記ハイドロフルオロカーボンを含む流れF10'を形成する段階B1)を含む、トリフルオロエチレンの製造方法をまた提供する。
【0048】
好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンであり、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。
【0049】
好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロカーボンは1,1,1,2-テトラフルオロエタンであり、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[フルオロカーボンからの水素の分離]
第一の態様によれば、本発明は、フルオロカーボンと水素を含む混合物からのフルオロカーボンの精製方法に関する。前記方法は、前記混合物を膜M1と接触させて、フルオロカーボンを含む流れF1と水素を含む流れF2を形成する段階(a)を含む。
【0051】
好ましくは、前記混合物は、混合物の全モル量に基づいて、50%未満、好ましくは25%未満のモル含有量のH2を含む。好ましくは、前記混合物は、混合物の全モル量に基づいて、1%を超え、好ましくは5%を超え、特に10%を超えるモル含有量のH2を含む。
【0052】
好ましくは、前記混合物は気体状である。
【0053】
従って、本方法は、膜と接触させる前の初期混合物に対して、フルオロカーボンに富んでいる流れF1を生成することを可能にする。好ましくは、前記流れF1は、前記混合物に対して低減されたモル含有量の水素を有する。好ましい実施態様によれば、前記流れF1は、前記流れF1の全重量に基づいて、少なくとも25重量%のフルオロカーボン、有利には少なくとも30重量%のフルオロカーボン、好ましくは少なくとも35重量%のフルオロカーボン、より優先的には少なくとも40重量%のフルオロカーボン、特に少なくとも45重量%のフルオロカーボン、より特定的には少なくとも50重量%のフルオロカーボンを含む。
【0054】
好ましくは、前記流れF1は、前記流れF1の全重量に基づいて、20重量%未満の水素を含む。有利には、前記流れF1は、前記流れF1の全重量に基づいて、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に5重量%未満、より特定的には1重量%未満の水素を含む。
【0055】
本方法では、流れF2は水素に富んでいる。好ましい実施態様によれば、前記流れF2は、前記混合物に対して、増加したモル含有量の水素を有する。好ましくは、前記流れF2は、前記流れF2の全重量に基づいて、少なくとも25重量%の水素、より優先的には少なくとも50重量%の水素、特に少なくとも75重量%の水素、より特定的には少なくとも80重量%の水素、好ましくは少なくとも95重量%の水素を含む。
【0056】
フルオロカーボンとは、少なくとも一個のフッ素原子と少なくとも一個の炭素原子を含む化合物を指す。フルオロカーボンは、例えば、ハイドロフルオロアルカン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロアルカン、又はハイドロクロロフルオロオレフィンでありうる。ハイドロフルオロアルカンという用語は、炭素原子の置換基として、水素原子と一又は複数個のフッ素原子を含むアルカン化合物を指す。ハイドロフルオロオレフィンという用語は、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合と、炭素原子の置換基として、水素原子と一又は複数個のフッ素原子を含むオレフィンを指す。ハイドロクロロフルオロアルカンという用語は、炭素原子の置換基として、水素原子、一又は複数個の塩素原子及び一又は複数個のフッ素原子を含むアルカン化合物を指す。ハイドロクロロフルオロオレフィンという用語は、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合と、炭素原子の置換基として、水素原子、一又は複数個の塩素原子及び一又は複数個のフッ素原子を含むオレフィンを指す。
【0057】
好ましくは、前記フルオロカーボンは、1、2、3、又は4個の炭素原子を含む。
【0058】
好ましくは、前記フルオロカーボンは、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、3,3,3-トリフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン、3-クロロ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3-トリフルオロプロペン、1,1,2-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2,3-トリフルオロプロペン、2,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジフルオロプロペン、1,2-ジフルオロプロペン、2,3-ジフルオロプロペン及び3,3-ジフルオロプロペンからなる群から選択される。
【0059】
特に、フルオロカーボンは、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、3-クロロ-1,1,1,3-テトラフルオロプロパン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン及び1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される。
【0060】
より特定的には、フルオロカーボンは、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、ジフルオロメタン及びトリフルオロメタンからなる群から選択される。
【0061】
本特許出願において、膜という用語は、一又は複数種の化合物に対して選択的に透過性であり、異なる化合物が異なる流量で膜を通って移動することを可能にする膜を指す。膜は、膜を通過する分子の動きを制限し、一部の分子は他の分子よりもゆっくりと移動するか、又は完全に排除される(つまり、不透過性である)。例えば、膜はフルオロカーボンに対して選択的に透過性であり、かつ水素に対して不透過性(又は弱い透過性)でありうる。
【0062】
膜の透過係数は、膜を通るこれらの化合物の拡散を制限するか又は制限しないその能力に依存する。膜は、高分子材料から単純なイオン性又は共有結合性化合物までの、広範囲の溶解度パラメーター及び分子サイズにわたって成分を選択的に分離することができる。膜の性能品質を決定する特性は主に選択率である。膜分離プロセスは、供給流が二つの流れ(保持流と透過流)に分割されることを特徴とする。保持流は、膜を通過しない(又は僅かだけ通過する)供給流部分であり、透過流は膜を通過する供給原料部分である。
【0063】
本特許出願では、保持流は、使用される膜及び考慮下の化合物に応じて記述される流れの一つでありうる。
【0064】
蒸留プロセスとは異なり、膜分離は相分離を必要とせず、このため一般に蒸留プロセスと比較してエネルギーの大幅な節約が可能となる。膜分離プロセスには一般に可動部分がなく、複雑な制御スキームがなく、当該技術分野で知られている他の分離プロセスと比較して付属装置品目が少ないため、資本コストをまた削減できる。
【0065】
膜は、分離される成分に対して極めて高い選択率を持つように製造できる。一般に、選択率の値は、蒸留操作の相対揮発性の典型的な値よりも遙かに高くなる。膜分離プロセスでは、エネルギーコストを大幅にかけずに、主要な流れから微量だが価値のある成分を回収することもできる。膜分離プロセスは、膜アプローチでは比較的単純で無害な材料を使用する必要があるため、潜在的に環境に優しい。
【0066】
好ましい実施態様によれば、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン-テトラフルオロエチレン、及びSO3H基で置換されていてもよいテトラフルオロエチレン/パーフルオロビニルエーテルコポリマーからなる群から選択される材料から作製されている。
【0067】
好ましくは、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、セルロース、及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される材料から作製されている。
【0068】
本特許出願において、ポリオレフィンという用語は、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルプロペン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン、ポリヘキセン、ポリメチルペンテン、及びポリエチルブテンを指す。
【0069】
本特許出願において、ポリエーテルという用語は、特に、モノマー単位-[-O-Ar-]-又は-[-Ar1-O-Ar2-]-を含むポリアリールエーテルを指し、ここで、Ar、Ar1及びAr2は、互いに独立して、一つ又は複数のC1-C10アルキル官能基によって置換されていてもよい6から12個の炭素原子を含む芳香族環であり;好ましくは、Arは、一つ、二つ、三つ又は四つのC1-C3アルキル官能基によって置換されていてもよいフェニル基である。特に、ポリエーテルは、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]又はポリ(フェニレンオキシド)である。
【0070】
本特許出願において、セルロースは、好ましくはセルロースアセテートである。
【0071】
選択率が2を超える場合、水素と前記フルオロカーボンとの分離があると考えることができる。選択率が高いほど、分離はより効率的である。本方法は、選択率が5を超え、好ましくは9を超え、特に20を超える場合、特に効率的である。
【0072】
水素に対する前記膜M1の透過係数が前記フルオロカーボンに対する前記膜M1の透過係数より大きい場合、選択率は、前記膜M1を通る考慮下の前記フルオロカーボンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって計算され、すなわち、選択率=[水素の透過係数]/[前記フルオロカーボンの透過係数]である。或いは、フルオロカーボンに対する前記膜M1の透過係数が、水素に対する前記膜の透過係数より大きい場合、選択率は、前記膜を通る水素の透過係数に対する考慮下のフルオロカーボンの透過係数の比によって計算され、すなわち、選択率=[前記フルオロカーボンの透過係数]/[水素の透過係数]である。
【0073】
好ましくは、前記膜M1は、4を超え、有利には5を超え、好ましくは6を超え、より優先的には7を超え、特に8を超え、より特定的には9を超える選択率を有し、該選択率は、膜を通る前記フルオロカーボンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって計算される。特に、前記膜M1の選択率は、10を超え、又は12を超え、又は14を超え、又は16を超え、又は18を超え、又は20を超え、又は22を超え、又は24を超え、又は26を超え、又は28を超え、又は30を超え、又は32を超え、又は34を超え、又は36を超え、又は38を超え、又は40を超えることができ、該選択率は、前記膜M1を通る前記フルオロカーボンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって計算される。
【0074】
或いは、前記膜M1は、4を超え、有利には5を超え、好ましくは6を超え、より優先的には7を超え、特に8を超え、より特定的には9を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M1を通る水素の透過係数に対する前記フルオロカーボンの透過係数の比によって計算される。特に、前記膜M1の選択率は、10を超え、又は12を超え、又は14を超え、又は16を超え、又は18を超え、又は20を超え、又は22を超え、又は24を超え、又は26を超え、又は28を超え、又は30を超え、又は32を超え、又は34を超え、又は36を超え、又は38を超え、又は40を超えることができ、該選択率は、前記膜M1を通る水素の透過係数に対する前記フルオロカーボンの透過係数の比によって計算される。
【0075】
段階(a)は、広い温度及び圧力範囲にわたって実施されうる。
【0076】
好ましくは、前記混合物を前記膜M1と接触させる段階(a)は、0.1baraから30bara、有利には0.2baraから25bara、好ましくは0.3baraから20bara、より優先的には0.4baraから15bara、特に0.5baraから10bara、より特定的には0.5baraから5baraの圧力で実施される。
【0077】
好ましくは、前記混合物を前記膜M1と接触させる段階(a)は、0℃から150℃、有利には0℃から125℃、好ましくは5℃から100℃、より優先的には10℃から75℃、特に10℃から50℃の温度で実施される。
【0078】
本方法の実施中、膜の入口と膜の出口との間に圧力差が観察される。ここで表される差圧は、前記膜の入口と出口との間に存在する圧力差に相当する。好ましくは、差圧は、1から3000kPa、好ましくは50から2000kPa、特に100から1000kPa、より特定的には100から500kPaである。
【0079】
特定の実施態様によれば、前記フルオロカーボンはトリフルオロエチレンである。好ましくは、前記フルオロカーボンがトリフルオロエチレンである場合、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており;特に、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0080】
別の特定の実施態様によれば、前記フルオロカーボンは2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである。好ましくは、前記フルオロカーボンが2,3,3,3-テトラフルオロプロペンである場合、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており;特に、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロースアセテート及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0081】
別の特定の実施態様によれば、前記フルオロカーボンはペンタフルオロエタンである。好ましくは、前記フルオロカーボンがペンタフルオロエタンである場合、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており;特に、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロースアセテート及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0082】
別の特定の実施態様によれば、前記フルオロカーボンはヘキサフルオロプロペンである。好ましくは、前記フルオロカーボンがヘキサフルオロプロペンである場合、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており;特に、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロースアセテート及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0083】
別の特定の実施態様によれば、前記フルオロカーボンは1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペンである。好ましくは、前記フルオロカーボンが1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペンである場合、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており;特に、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロースアセテート及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0084】
別の特定の実施態様によれば、前記フルオロカーボンは1,1-ジフルオロエチレンである。好ましくは、前記フルオロカーボンが1,1-ジフルオロエチレンである場合、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており;特に、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロースアセテート及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0085】
別の特定の実施態様によれば、前記フルオロカーボンは1,2-ジフルオロエチレン(E及び/又はZ)である。好ましくは、前記フルオロカーボンが1,2-ジフルオロエチレン(E及び/又はZ)である場合、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており;特に、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロースアセテート及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0086】
別の特定の実施態様によれば、前記フルオロカーボンはクロロトリフルオロエチレンである。好ましくは、前記フルオロカーボンがクロロトリフルオロエチレンである場合、前記膜M1は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており;特に、前記膜M1は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロースアセテート及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0087】
好ましい実施態様によれば、本方法において、水素は好ましくは無水形態である。好ましい実施態様によれば、フルオロカーボンは好ましくは無水形態である。無水という用語は、水の重量含有量が、考慮下の化合物の全重量に基づいて、1000ppm未満、有利には500ppm、好ましくは200ppm未満、特に100ppm未満であることを意味する。
【0088】
この方法において使用され、前記膜M1と接触させられる前記混合物は、窒素をまた含みうる。この混合物が本方法の段階(a)に供せられる場合、前記流れF1はまた窒素を含む。前記流れF1は、第二の膜精製段階に供せられうる。前記方法は、前記流れF1を膜M1'と接触させて、前記フルオロカーボンを含む流れF3と窒素を含む流れF4を形成する段階(b)を含む。
【0089】
第一の実施態様によれば、前記膜M1'は、窒素に対してよりも前記フルオロカーボンに対してより透過性でありうる。従って、前記膜M1'は、2を超え、有利には3を超え、好ましくは4を超え、より優先的には5を超え、特に6を超え、より特定的には7を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M1'を通る窒素の透過係数に対する前記フルオロカーボンの透過係数の比によって計算される。
【0090】
好ましくは、この実施態様では、前記フルオロカーボンは、ハイドロフルオロオレフィン又はハイドロクロロフルオロオレフィンである。特に、前記フルオロカーボンは、ハイドロフルオロオレフィンである。より特定的には、段階b)は、フルオロカーボンからの窒素の分離方法に従って、実施態様1で以下に記載される条件下で実施されうる。
【0091】
好ましくは、この実施態様では、前記膜M1'はポリオレフィン、ポリエーテルから作製されているか、又はシロキサン官能基を含んでいる。好ましくは、前記第二の膜はポリプロピレン、ポリメチルペンテン又はポリアルキルシロキサンから作製されている。ポリアルキルシロキサンは好ましくはポリジメチルシロキサンである。
【0092】
或いは、第二の実施態様によれば、前記膜M1'はフルオロカーボンに対してよりも窒素に対してより透過性である。従って、前記膜M1'は、2を超え、有利には3を超え、好ましくは4を超え、より優先的には5を超え、特に6を超え、より特定的には7を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M1'を通る前記フルオロカーボンの透過係数に対する窒素の透過係数の比によって計算される。特に、前記膜M1'の選択率は、10を超え、又は12を超え、又は14を超え、又は16を超え、又は18を超え、又は20を超え、又は22を超え、又は24を超え、又は26を超え、又は28を超え、又は30を超え、又は32を超え、又は34を超え、又は36を超え、又は38を超え、又は40を超えることができ、該選択率は、前記膜M1'を通る窒素の透過係数に対する前記フルオロカーボンの透過係数の比によって計算される。好ましくは、この実施態様では、前記フルオロカーボンは、ハイドロフルオロアルカン又はハイドロクロロフルオロアルカン、特にハイドロフルオロアルカンである。より特定的には、段階b)は、フルオロカーボンからの窒素の分離方法に従って、実施態様2において以下に記載される条件下で実施することができる。特に、この実施態様では、前記膜M1'はポリオレフィンから作製されている。より特定的には、前記膜M1'は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルプロペン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン、ポリヘキセン、ポリメチルペンテン及びポリエチルブテンからなる群から選択される材料から作製されている。望ましくは、前記膜M1'は、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンからなる群から選択される材料から作製されている。
【0093】
或いは、第三の実施態様によれば、前記混合物が窒素、水素及びフルオロカーボンを含む場合、本方法の段階(a)は、窒素と水素をフルオロカーボンから同時に分離することを可能にする。従って、この実施態様では、本方法は、前記混合物を膜M1"と接触させて、フルオロカーボンを含む流れF1'と水素及び窒素を含む流れF2'を形成する段階(a)を含む。前記膜M1"は、前記膜M1"を通る窒素の透過係数に対する前記フルオロカーボンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、5を超え、有利には10を超え、好ましくは15を超え、より優先的には20を超え、特に25を超え、より特定的には30を超える選択率を有し得、かつ前記第一の膜は、前記膜M1"を通る水素の透過係数に対する前記フルオロカーボンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、5を超え、有利には10を超え、好ましくは15を超え、より優先的には20を超え、特に25を超え、より特定的には30を超える選択率を有しうる。或いは、前記膜M1"は、前記膜M1"を通る前記フルオロカーボンの透過係数に対する窒素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、5を超え、有利には10を超え、好ましくは15を超え、より優先的には20を超え、特に25を超え、より特定的には30を超える選択率を有し得、かつ前記膜M1"は、前記膜M1"を通る前記フルオロカーボンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、5を超え、有利には10を超え、好ましくは15を超え、より優先的には20を超え、特に25を超え、より特定的には30を超える選択率を有しうる。
【0094】
或いは、第四の実施態様によれば、前記混合物が窒素、水素及びフルオロカーボンを含む場合、本方法の段階(a)の前に、窒素をフルオロカーボン及び水素から分離することができる。この場合、本方法は、前記混合物を膜M1'と接触させて、フルオロカーボン及び水素を含む流れF1"と窒素を含む流れF2"を形成する段階を含む。前記流れF1"は、その後、本方法に係る段階(a)に供せられ、すなわち、前記流れF1"は、本発明の第一の態様に従って上に記載した前記膜M1と接触させられる。
【0095】
この場合、前記膜M1'は、膜を通る窒素の透過係数に対する前記フルオロカーボンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、2を超え、有利には3を超え、好ましくは4を超え、より好ましくは5を超え、特に6を超え、より特定的には7を超える選択率を有し得、かつ前記膜M1'は、膜を通る窒素の透過係数に対する水素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、2を超え、有利には3を超え、好ましくは4を超え、より好ましくは5を超え、特に6を超え、より特定的には7を超える選択率を有しうる。或いは、この第四の実施態様によれば、前記膜M1'は、膜を通る前記フルオロカーボンの透過係数に対する窒素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、2を超え、有利には3を超え、好ましくは4を超え、より優先的には5を超え、特に6を超え、より特定的には7を超える選択率を有し得、かつ前記膜M1'は、膜を通る水素の透過係数に対する窒素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、2を超え、有利には3を超え、好ましくは4を超え、より優先的には5を超え、特に6を超え、より特定的には7を超える選択率を有しうる。従って、この実施態様では、前記膜M1'は、考慮下の前記フルオロカーボンに応じて、第一又は第二の実施態様において上に記載したような材料から作製されうる。
【0096】
本発明のこの第一の態様では、前記膜M1、前記膜M1'及び膜M1"は、互いに独立して、フィルム、積層構造、中空繊維及び被覆繊維から選択される。膜は、分離される化合物に関するその選択率に応じて選択される。膜は、不活性担体上に提供されうる。
【0097】
以下、本特許出願は、フルオロカーボンからの窒素の分離方法を説明する。本発明のこの態様において記載される特定の実施態様は、本発明の第一の態様と組み合わせることができる。
【0098】
一般に、段階b)は、0.1baraから30bara、有利には0.2baraから25bara、好ましくは0.3baraから20bara、より優先的には0.4baraから15bara、特に0.5baraから10bara、より特定的には0.5baraから5baraの圧力で実施される。好ましくは、段階b)は、0℃から150℃、有利には0℃から125℃、好ましくは5℃から100℃、より優先的には10℃から75℃、特に10℃から50℃の温度で実施される。この段階の実施中、膜の入口と膜の出口との間に圧力差が観察される。ここで表される差圧は、膜の入口と出口との間に存在する圧力差に相当する。好ましくは、差圧は、1から3000kPa、好ましくは50から2000kPa、特に100から1000kPa、より特定的には100から500kPaである。
【0099】
[フルオロカーボンからの窒素の分離]
[実施態様1]
本発明の別の態様によれば、ハイドロフルオロオレフィンと窒素を含む混合物の分離方法が提供される。好ましい実施態様によれば、前記方法は、前記混合物を膜M3と接触させて、前記一種のハイドロフルオロオレフィンを含む流れF7と窒素を含む流れF8を形成する段階を含む。好ましくは、前記膜M3はシロキサン官能基を含む材料から作製されている。
【0100】
好ましくは、前記膜M3は、式-[-(R)(R')Si-O]n-の官能基を含む材料から作製されており、R及びR'は、水素、C1-C20アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C12アリールからなる群から独立して選択され、nは50を超え、好ましくは100を超え、特に1000を超える整数である。
【0101】
好ましくは、前記膜M3はポリアルキルシロキサンから作製されている。本発明によれば、ポリアルキルシロキサン化合物において、アルキルという用語は、C1-C10アルキルタイプの基を指す。
【0102】
特に、前記膜M3は、ポリジメチルシロキサンから作製されている。
【0103】
好ましい実施態様によれば、前記膜M3は、フィルム、積層構造、中空繊維、及び被覆繊維から選択される。
【0104】
好ましくは、前記ハイドロフルオロオレフィンは、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、3,3,3-トリフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3-トリフルオロプロペン、1,1,2-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2,3-トリフルオロプロペン、2,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジフルオロプロペン、1,2-ジフルオロプロペン、2,3-ジフルオロプロペン及び3,3-ジフルオロプロペンからなる群から選択される。
【0105】
特に、前記ハイドロフルオロオレフィンは、トリフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン及び3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群から選択される。
【0106】
好ましくは、本方法は、0.1baraから30bara、有利には0.2baraから25bara、好ましくは0.3baraから20bara、より優先的には0.4baraから15bara、特に0.5baraから10bara、より特定的には0.5baraから5baraの圧力で実施される。好ましくは、この段階は、0℃から150℃、有利には0℃から125℃、好ましくは5℃から100℃、より優先的には10℃から75℃、特に10℃から50℃の温度で実施される。この方法の実施中、膜の入口と膜の出口との間に圧力差が観察される。ここで表される差圧は、前記膜の入口と出口との間に存在する圧力差に相当する。好ましくは、差圧は1から3000kPa、好ましくは50から2000kPa、特に100から1000kPa、より特定的には100から500kPaである。
【0107】
好ましくは、前記膜M3は、5を超え、有利には6を超え、好ましくは7を超え、より優先的には8を超え、特に9を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M3を通る窒素の透過係数に対する前記ハイドロフルオロオレフィンの透過係数の比によって計算される。
【0108】
特に好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロオレフィンはトリフルオロエチレンであり、前記膜M3はポリジメチルシロキサンから作製されている。
【0109】
別の特に好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロオレフィンは2,3,3,3-テトラフルオロプロペンであり、前記膜M3はポリジメチルシロキサンから作製されている。
【0110】
別の特に好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロオレフィンはヘキサフルオロプロペンであり、前記膜M3はポリジメチルシロキサンから作製されている。
【0111】
別の特に好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロオレフィンは1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペンであり、前記膜M3はポリジメチルシロキサンから作製されている。
【0112】
別の特に好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロオレフィンは1,1-ジフルオロエチレンであり、前記膜M3はポリジメチルシロキサンから作製されている。
【0113】
別の特に好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロオレフィンは1,2-ジフルオロエチレンであり、前記膜M3はポリジメチルシロキサンから作製されている。
【0114】
この実施態様では、本方法により、出発混合物に対して、流れF7をハイドロフルオロオレフィンに富んでいるものにすることが可能になる。流れF8は、それに関する限り、初期混合物に対して、窒素に富んでいる。
【0115】
[実施態様2]
本発明の別の態様によれば、ハイドロフルオロアルカンと窒素を含む混合物の分離方法が提供される。
【0116】
好ましい実施態様によれば、前記方法は、前記混合物を膜M3'と接触させて、前記ハイドロフルオロアルカンを含む流れF7'と窒素を含む流れF8'を形成する段階を含む。
【0117】
好ましくは、前記膜M3'はポリオレフィンから作製されている。
【0118】
好ましい実施態様によれば、前記膜M3'は、フィルム、積層構造、中空繊維、及び被覆繊維から選択される。
【0119】
好ましくは、前記膜M3'は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルプロペン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン、ポリヘキセン、ポリメチルペンテン、及びポリエチルブテンからなる群から選択される材料から作製されている。特に、前記膜はポリプロピレン又はポリメチルペンテンから作製されている。
【0120】
好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロアルカンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及び1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される。
【0121】
好ましくは、前記膜M3'は、10を超え、有利には15を超え、好ましくは20を超え、より優先的には25を超え、特に30を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M3'を通る前記ハイドロフルオロアルカンの透過係数に対する窒素の透過係数の比によって計算される。
【0122】
特に好ましい実施態様では、前記ハイドロフルオロアルカンはペンタフルオロエタンであり、前記膜M3'はポリプロピレン又はポリメチルペンテン、好ましくはポリメチルペンテンから作製されている。
【0123】
好ましくは、本方法は、0.1baraから30bara、有利には0.2baraから25bara、好ましくは0.3baraから20bara、より優先的には0.4baraから15bara、特に0.5baraから10bara、より特定的には0.5baraから5baraの圧力で実施される。好ましくは、この段階は、0℃から150℃、有利には0℃から125℃、好ましくは5℃から100℃、より優先的には10℃から75℃、特に10℃から50℃の温度で実施される。この方法の実施中、膜の入口と膜の出口との間に圧力差が観察される。ここで表された差圧は、前記膜の入口と出口との間に存在する圧力差に相当する。好ましくは、差圧は1から3000kPa、好ましくは50から2000kPa、特に100から1000kPa、より特定的には100から500kPaである。
【0124】
この実施態様では、本方法は、出発混合物に対して、流れF7'をハイドロフルオロアルカンに富んでいるものにすることを可能にする。流れF8'は、それに関する限り、初期混合物に対して、窒素に富んでいる。
【0125】
好ましくは、実施態様1及び実施態様2において、窒素は無水形態である。好ましくは、実施態様1及び実施態様2において、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロフルオロアルカンは無水形態である。無水という用語は、水の重量含有量が、考慮下の化合物の全重量に基づいて、1000ppm未満、有利には500ppm、好ましくは200ppm未満、特に100ppm未満であることを意味する。
【0126】
[トリフルオロエチレンの製造方法]
本特許出願は、本発明の第一、第二及び第三の態様では、フルオロカーボンからの水素及び/又は窒素の分離方法を記載する。本方法は、トリフルオロエチレンなどのフルオロカーボンの精製方法において特に有利である。前述のように、トリフルオロエチレンが、特に優れた耐薬品性及び良好な耐熱性などの注目すべき特性を示すフルオロカーボンポリマーの製造において、モノマー又はコモノマーとして使用される。トリフルオロエチレンは冷媒としてもまた使用される。これらの用途では、効率的で環境に優しいプロセスを採用しながら、高いトリフルオロエチレン純度が求められる。
【0127】
従って、第四の態様によれば、本発明は、トリフルオロエチレンの製造方法を提供する。本発明は、触媒を含む固定触媒床を備えた反応器におけるトリフルオロエチレンの製造方法であって、気相中において触媒の存在下でクロロトリフルオロエチレンを水素と反応させて、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及び未反応水素を含む流れを生成する段階A)と、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及びおそらく水素を含む流れを膜M2と接触させて、トリフルオロエチレン及びおそらく水素を含む流れF5と、クロロトリフルオロエチレン及びおそらく水素を含む流れF6を形成する段階B)を含む、方法を提供する。好ましくは、段階B)で使用されるトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及び水素を含む流れは、段階A)で生成されたトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及び未反応水素を含む前記流れである。水素は、使用される膜M2に応じて、流れF5又は流れF6に存在しうる。
【0128】
驚くべきことに、両方とも本膜分離法における出発材料であるクロロトリフルオロエチレン及び/又は水素から、トリフルオロエチレンを分離することができることが、本特許出願によって実証された。
【0129】
前記膜M2は、本方法の段階A)における未反応出発反応物質の一つであるクロロトリフルオロエチレンの大部分を除去するのに特に効果的であることが実証された。トリフルオロエチレンに対する膜M2の透過係数は、クロロトリフルオロエチレンに対する透過係数と、おそらく水素に対する透過係数とも著しく異なる。従って、段階B)により、トリフルオロエチレンの流れ(流れF5)からクロロトリフルオロエチレン及びおそらく水素の相当量を除去することが可能となり、これにより後者の精製操作を容易にすることができる。例えば、トリフルオロエチレンは、一般に低温蒸留によってクロロトリフルオロエチレンから分離される。本方法の段階B)を実施することにより、その後の蒸留が容易になり、例えば、小型のプラントで実施できるようになる。段階B)は段階A)の直後に実施することができ、或いは段階A)から生じる前記流れを、段階B)を実施する前に、以下に記載される段階i)、ii)、及びiii)の後に処理することができる。この場合、段階B)に供される流れは、トリフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを含み、水素は以下に記載される段階iii)によって除去されている。
【0130】
従って、段階B)で用いられる流れに対して、前記流れF5はトリフルオロエチレンに富んでいる。前記流れF6は、段階B)で用いられた流れに対して、クロロトリフルオロエチレンに富んでいる。
【0131】
好ましくは、クロロトリフルオロエチレンとおそらく水素を含む前記流れF6は、回収され、段階A)にリサイクルされる。トリフルオロエチレンを含む流れF5は、以下で説明されるように精製することができる。前記段階B)により、クロロトリフルオロエチレンの全部又は一部と、任意選択的に段階A)で反応しなかった水素を除去することが可能になる。従って、この段階により、後続の精製段階での未反応出発材料の量を制限することが可能になり、よって上で説明したようにトリフルオロエチレンの精製が容易になる。
【0132】
好ましい実施態様によれば、本方法は連続モードで実施される。
【0133】
好ましい実施態様によれば、水素は無水形態である。好ましい実施態様によれば、クロロトリフルオロエチレンは無水形態である。無水水素及び/又はクロロトリフルオロエチレンの存在下で本方法を実施することにより、触媒の寿命を効果的に増大させ、よって本方法の全体的な生産性を向上させることができる。本特許出願において、無水という用語は、考慮下の化合物の全重量に基づいて、水の重量含有量が1000ppm未満、有利には500ppm、好ましくは200ppm未満、特に100ppm未満であることを意味する。
【0134】
トリフルオロエチレンの製造方法の段階A)は、触媒の存在下で実施される。好ましくは、触媒は、元素周期表の第8族から第10族の金属に基づく。特に、触媒は、Pd、Pt、Rh、及びRuからなる群から選択される金属に基づき;好ましくはパラジウムである。好ましくは、触媒は担持されている。担体は、好ましくは活性炭、アルミニウム系担体、炭酸カルシウム及びグラファイトからなる群から選択される。好ましくは、担体はアルミニウム系である。特に、担体はアルミナである。アルミナはα-アルミナでありうる。好ましくは、アルミナは少なくとも90%のα-アルミナを含む。アルミナがα-アルミナである場合、水素化分解反応の反応率が改善されたことが観察された。従って、触媒は、より特定的にはアルミナに担持されたパラジウム、有利には少なくとも90%のα-アルミナを含むアルミナに担持されたパラジウム、好ましくはα-アルミナに担持されたパラジウムである。好ましくは、パラジウムは、触媒の全重量に基づいて0.01重量%から5重量%、好ましくは触媒の全重量に基づいて0.1重量%から2重量%を占める。特に、前記触媒は、0.01重量%から5重量%のアルミナ担持パラジウムを含み;好ましくは、アルミナは少なくとも90%のα-アルミナを含み;より好ましくは、アルミナはα-アルミナである。
【0135】
前記触媒は、好ましくは、段階A)で使用される前に活性化される。好ましくは、触媒の活性化は、高温において還元剤の存在下で実施される。特定の実施態様によれば、還元剤は、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒド、C1-C6アルカン及びC1-C10ハイドロハロカーボン、又はこれらの混合物;好ましくは、水素及びC1-C10ハイドロハロカーボン、又はこれらの混合物;特に、水素、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエタン、トリフルオロエタン及びジフルオロエタン、又はこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、触媒の活性化は、100℃と400℃の間の温度、特に150℃と350℃の間の温度で実施される。特に、触媒の活性化は、還元剤としての水素の存在下で、100℃と400℃の間の温度、特に150℃と350℃の間の温度で実施される。
【0136】
本方法で使用される前記触媒は再生することができる。この再生段階は、90℃と450℃の間の触媒床の温度範囲で実施することができる。好ましくは、再生段階は水素の存在下で実施される。再生段階を実施することにより、再生前の初期収率と比較して反応収率を改善することが可能になる。好ましい実施態様によれば、再生段階は、90℃から300℃の触媒床温度、好ましくは90℃から250℃、より優先的には90℃から200℃、特に90℃から175℃の触媒床温度、より特定的には90℃から150℃の触媒床温度で実施することができる。特に、再生段階を低温、例えば90℃から200℃又は90℃から175℃又は90℃から150℃で実施すると、触媒の活性に有害な化合物の脱着が可能になり、及び/又は触媒の構造を変化させる相転移を制限することが可能になる。別の好ましい実施態様によれば、再生段階は、200℃を超え、有利には230℃を超え、好ましくは250℃を超え、特に300℃を超える触媒床温度で実施することができる。再生段階は、段階a)で得られた生産性又は反応率に応じて、定期的に実施することができる。再生段階は、有利には、200℃と300℃の間、好ましくは205℃と295℃の間、より優先的には210℃と290℃の間、特に215℃と290℃の間、より特定的には220℃と285℃の間、望ましくは225℃と280℃の間、より望ましくは230℃と280℃の間の触媒床温度で実施することができる。或いは、再生段階は、300℃と450℃の間、好ましくは300℃と400℃の間の温度で実施することができる。再生された触媒は、本方法の段階A)で再使用することができる。
【0137】
本方法は、上述のように、トリフルオロエチレンを含む流れを生成するために、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)の水素との反応段階を含む。この水素化分解段階は、気相中において触媒の存在下で実施される。好ましくは、水素化分解段階は、気相中において予め活性化された触媒の存在下で実施される。水素化分解段階は、気相中に、好ましくは活性化されている前記触媒の存在下で、水素、CTFE、及び任意選択的に窒素などの不活性気体を同時に導入することからなる。好ましくは、前記段階A)は、50℃と250℃の間の固定触媒床温度で実施される。前記段階A)は、50℃と240℃の間、有利には50℃と230℃の間、好ましくは50℃と220℃の間、より優先的には50℃と210℃の間、特に50℃と200℃の間の固定触媒床温度で実施することができる。前記段階A)は、60℃と250℃の間、有利には70℃と250℃の間、好ましくは80℃と250℃の間、より優先的には90℃と250℃の間、特に100℃と250℃の間、より特定的には120℃と250℃の間の固定触媒床温度で実施することもまたできる。前記段階A)は、60℃と240℃の間、有利には70℃と230℃の間、好ましくは80℃と220℃の間、より優先的には90℃と210℃の間、特に100℃と200℃の間、より特定的には100℃と180℃の間、望ましくは100℃と160℃の間、特に好ましくは120℃と160℃の間の固定触媒床温度で実施することもまたできる。
【0138】
H2/CTFEモル比は、0.5/1と2/1の間、好ましくは1/1と1.2/1の間である。段階A)において窒素などの不活性気体が存在する場合、窒素/H2モル比は0/1と2/1の間、好ましくは0/1と1/1の間である。段階A)は、好ましくは0.05MPaから1.1MPa、より好ましくは0.05MPaから0.5MPaの圧力で、特に大気圧で実施される。反応器の入口における、気体混合物の全流量(標準リットル/秒)に対する触媒の容積(リットル)の比として計算される、接触時間は、1秒と60秒の間、好ましくは5秒と45秒の間、特に10秒と30秒の間、より特定的には15秒と25秒の間である。本方法の水素化分解段階(段階A)では、トリフルオロエチレンを含む流れが生成される。前記流れは、未反応のクロロトリフルオロエチレン及び水素をまた含みうる。前記流れはまた窒素を含みうる。前記流れはまたHCl若しくはHF又はこれら二種の混合物を含みうる。前記流れはまた有機不純物(F143、F133、及び他の有機物など)を含みうる。
【0139】
段階B)では、トリフルオロエチレンとおそらく水素を含む流れF5と、クロロトリフルオロエチレンとおそらく水素を含む流れF6が形成される。
【0140】
好ましくは、前記膜M2は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン-テトラフルオロエチレン、及びSO3H基で置換されていてもよいテトラフルオロエチレン/パーフルオロビニルエーテルコポリマーからなる群から選択される材料から作製されている。
【0141】
好ましくは、前記膜M2は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、セルロース、及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される材料から作製されている。ポリオレフィン及びポリエーテルという用語は、本発明の第一の態様に関連して上で定義されている。好ましくは、セルロースはセルロースアセテートである。
【0142】
特に、前記膜M2は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、セルロースアセテート、ポリフッ化ビニリデン及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている。
【0143】
好ましくは、段階B)は、0.1baraから30bara、有利には0.2baraから25bara、好ましくは0.3baraから20bara、より優先的には0.4baraから15bara、特に0.5baraから10bara、より特定的には0.5baraから5baraの圧力で実施される。段階B)の実施中、膜の入口と膜の出口との間に圧力差が観察される。ここで表される差圧は、前記膜の入口と出口との間に存在する圧力差に相当する。好ましくは、差圧は1から3000kPa、好ましくは50から2000kPa、特に100から1000kPa、より特定的には100から500kPaである。差圧はクロロトリフルオロエチレンの透過係数の値に影響を及ぼす可能性があることが観察された。従って、クロロトリフルオロエチレンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比で選択率を計算した場合、5を超える選択率を得るには、差圧は約2.5barである。クロロトリフルオロエチレンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比で選択率を計算した場合、10を超える選択率を得るには、差圧は約3.5barである。
【0144】
好ましくは、段階B)は、0℃から150℃、有利には0℃から125℃、好ましくは5℃から100℃、より優先的には10℃から75℃、特に10℃から50℃の温度で実施される。
【0145】
好ましくは、前記膜M2は、前記膜M2を通るトリフルオロエチレンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、5を超え、有利には6を超え、好ましくは7を超え、より優先的には8を超え、特に9を超える選択率を有する。
【0146】
好ましくは、前記膜M2は、前記膜M2を通るトリフルオロエチレンの透過係数に対するクロロトリフルオロエチレンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、5を超え、有利には6を超え、好ましくは7を超え、より優先的には8を超え、特に9を超える選択率を有する。
【0147】
特に、前記膜M2は、前記膜M2を通るトリフルオロエチレンの透過係数に対するクロロトリフルオロエチレンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、10を超え、又は12を超え、又は14を超え、又は16を超え、又は18を超え、又は20を超え、又は22を超え、又は24を超える選択率を有する。
【0148】
従って、クロロトリフルオロエチレンと水素をトリフルオロエチレンから効率的に分離するために、前記膜M2は、膜を通過するトリフルオロエチレンの透過係数に対する水素の透過係数の比で選択率を計算した場合、5を超え、有利には6を超え、好ましくは7を超え、より優先的には8を超え、特に9を超える選択率を有し、かつ前記膜M2は、膜を通るトリフルオロエチレンの透過係数に対するクロロトリフルオロエチレンの透過係数の比で選択率を計算した場合、5を超え、有利には6を超え、好ましくは7を超え、より優先的には8を超え、特に9を超える選択率を有する。
【0149】
特に、前記膜M2は、膜を通過するトリフルオロエチレンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、5を超え、有利には6を超え、好ましくは7を超え、より優先的には8を超え、特に9を超える選択率を有し、かつ前記膜M2は、膜を通過するトリフルオロエチレンの透過係数に対するクロロトリフルオロエチレンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、10を超え、又は12を超え、又は14を超え、又は16を超え、又は18を超え、又は20を超え、又は22を超え、又は24を超える選択率を有する。
【0150】
従って、前記膜M2は、トリフルオロエチレンに対してよりも水素及びクロロトリフルオロエチレンに対してより透過性であり、これにより、段階A)から生じる流れの有利な分離が可能になる。この実施態様は、上に述べた選択率を有し、好ましくは、前記膜M2がポリオレフィンからなる材料、特にポリプロピレン又はポリメチルペンテンから作製されている場合に得られる。
【0151】
或いは、前記膜M2は、クロロトリフルオロエチレンに対してよりも水素及びトリフルオロエチレンに対してより透過性であり、これにより、段階A)から生じる流れの有利な分離が可能になる。この実施態様は、以下に述べられる選択率を有し、好ましくは、前記膜M2がポリイミド又はセルロースからなる材料、特にポリイミド又はセルロースアセテートから作製されている場合に得られる。
【0152】
好ましくは、前記膜M2は、前記膜M2を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、10を超え、有利には20を超え、好ましくは50を超え、より優先的には75を超え、特に100を超える選択率を有する。
【0153】
好ましくは、前記膜M2は、前記膜M2を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、5を超え、有利には6を超え、好ましくは7を超え、より優先的には8を超え、特に9を超える選択率を有する。
【0154】
特に、前記膜M2は、前記膜M2を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、10を超え、又は12を超え、又は14を超える選択率を有する。
【0155】
従って、クロロトリフルオロエチレンを水素とトリフルオロエチレンから効率的に分離するために、前記膜M2は、膜を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対する水素の透過係数の比で選択率を計算した場合、10を超え、有利には20を超え、好ましくは50を超え、より優先的には75を超え、特に100を超える選択率を有し、かつ前記膜M2は、膜を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比で選択率を計算した場合、5を超え、有利には6を超え、好ましくは7を超え、より優先的には8を超え、特に9を超える選択率を有する。
【0156】
特に、前記膜M2は、膜を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対する水素の透過係数の比によって選択率を計算した場合、10を超え、有利には20を超え、好ましくは50を超え、より優先的には75を超え、特に100を超える選択率を有し、かつ前記膜M2は、膜を通るクロロトリフルオロエチレンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比によって選択率を計算した場合、10を超え、又は12を超え、又は14を超える選択率を有する。
【0157】
好ましい実施態様によれば、前記流れF5は、前記流れF5の全重量に基づいて、少なくとも25重量%のトリフルオロエチレン、有利には少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、より優先的には少なくとも40重量%、特に少なくとも45重量%、より特定的には少なくとも50重量%のトリフルオロエチレンを含む。特に好ましい実施態様によれば、前記流れF5は、前記流れF5の全重量に基づいて、少なくとも55重量%のトリフルオロエチレン、有利には少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より優先的には少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%、より特定的には少なくとも95重量%のトリフルオロエチレンを含む。
【0158】
前記流れF5は、少量のクロロトリフルオロエチレンを含みうる。好ましくは、前記流れF5は、前記流れF5の全重量に基づいて、40%未満、好ましくは30%未満、より優先的には20%未満、特に10%未満、より特定的には5%未満の重量含有量のクロロトリフルオロエチレンを含む。
【0159】
本方法は、追加の段階i)からiv)を含みうる。これらの段階は、流れF5から開始して、又は段階A)から生じる前記流れから開始して、実施されうる。上で説明したように、段階B)は、段階A)から生じる前記流れから開始して、又は段階i)、ii)、及び任意選択的にiii)によって前処理されて所定の生成物が除去された段階A)から生じる前記流れから開始して、実施されうる。
【0160】
前記方法は、
i)HF及び/又はHClを除去して、気体混合物を形成する段階;
ii)段階i)から生じた気体混合物を乾燥させる段階;
iii)段階ii)で乾燥させた気体混合物を任意選択的に処理して、水素及び不活性気体を除去し、気体の流れF11を形成する段階;
iv)段階ii)で乾燥させた気体混合物、又は段階iii)から生じた前記気体の流れF11、又は前記流れF5を蒸留する段階
を含みうる。
【0161】
段階B)から生じる流れF5又は段階i)で用いられた段階A)から生じる前記流れは、好ましくは気体状である。HCl及びHFは、前記流れの何れかを洗浄塔内の水に通し、ついでNaOH又はKOHなどの希塩基で洗浄することによって除去される。反応物質(H2と存在する場合はCTFE)、希釈窒素(存在する場合)、トリフルオロエチレン及び有機不純物からなる気体混合物の残りは、洗浄水の痕跡を除去するためにドライヤーに向けられる。
【0162】
乾燥は、硫酸カルシウム、ナトリウム若しくはマグネシウム、塩化カルシウム、炭酸カリウム、シリカゲル又はゼオライトなどの生成物を使用して実施することができる。一実施態様では、乾燥にはシリポライトなどのモレキュラーシーブ(ゼオライト)が使用される。
【0163】
このようにして乾燥された気体混合物が水素又は不活性物質を含む場合、段階iii)が好ましくは実施される。これは、吸収/脱着又は膜分離などの様々な技術に従って実施されうる。
【0164】
このようにして乾燥させた気体混合物は、任意選択的に、吸収/脱着によって、大気圧と、吸収に対しては、周囲温度より低い温度、好ましくは10℃未満、更により好ましくは-25℃の温度において、1から4個の炭素原子を含むアルコール、好ましくはエタノールの存在下で、気体混合物中に存在する他の生成物の残りから水素及び不活性物質を分離する段階に供せられる。一実施態様では、有機物質の吸収は、-25℃に冷却されたエタノールを含む向流塔で実施される。エタノール流量は、吸収される有機物質の流量に応じて調整される。この温度においてエタノールに不溶性である水素及び不活性気体は、吸収塔の塔頂で除去される。その後、有機物質は、エタノールをその沸点まで加熱することによって、前記流れF11の形で回収される(脱着)。
【0165】
或いは、段階ii)で得られた乾燥気体混合物は、水素とおそらく窒素が存在する場合、本発明の第一の態様に係る段階(a)に供せられる。この実施態様により、水素とおそらく窒素を除去することが可能になる。段階ii)で得られた前記乾燥気体混合物は、次に、本発明の第一の態様で記載された条件下で前記膜M1と接触させられる。この実施態様は、好ましくは、本特許出願に記載され、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されており、特に、上で説明したように、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリフッ化ビニリデン、セルロース及びポリイミドからなる群から選択される材料から作製されている前記膜M1で得られる。得られた流れF11は、トリフルオロエチレンとおそらくクロロトリフルオロエチレンを含む。次に、流れF11は、段階iv)又は段階B)に供せられ、そこにおそらくは存在するクロロトリフルオロエチレンとトリフルオロエチレンが分離される。
【0166】
段階ii)で乾燥させた気体混合物が水素、不活性化合物を含んでいない場合、段階iii)を実施することはできず、段階ii)で乾燥させた気体混合物は段階iv)で蒸留される。
【0167】
上に述べたように、段階A)から生じる前記流れは、上に記載した段階B)を実施する前に、上に記載した段階i)、ii)、及び任意選択的にiii)で前処理することができる。この場合、トリフルオロエチレンを含む流れF5が回収され、段階iv)に供せられて、他の有機化合物が除去され、高純度のトリフルオロエチレンが得られる。流れF6は、回収され、段階A)にリサイクルされうる。
【0168】
段階iv)によれば、段階ii)で乾燥させた気体混合物、又は段階iii)が実施される場合はその段階で得られた前記気体の流れF11、又は段階B)で特に段階i)、ii)、及びiii)の後にこれが実施される場合はその段階で得られた流れF5が蒸留されて、トリフルオロエチレンを含む流れF12が形成され、回収される。好ましい実施態様によれば、蒸留段階iv)は、3bara未満の圧力、好ましくは0.5baraと3baraの間の圧力、特に0.9baraと2baraの間の圧力で実施される。3bara未満の圧力で蒸留を実施することにより、3baraを超えるとトリフルオロエチレンが爆発性となるため、プロセスをより安全にすることが可能になる。前記流れF12は、好ましくは蒸留塔の頂部で回収される。回収される前に、流れF12は、任意選択的に蒸留塔の頂部で分縮されうる。分縮が実施されると、流れF12は-50℃から-70℃の温度にされる。温度は、段階iv)で適用される圧力に応じて調整される。分縮により、流れF12中の追加の化合物の含有量を制限することで、蒸留効率を改善することが可能になる。段階iv)の蒸留により、水素化分解反応(段階A)から生じた残留クロロトリフルオロエチレン及び有機不純物をおそらくは含む流れF13がまた形成される。この流れF13は、一般に蒸留塔の塔底で回収される。前記流れF13は、任意選択的な精製処理の後に段階A)にリサイクルされうる。
【0169】
上で説明したように、この第四の態様では、本発明は、上に記載した段階B)に従ってクロロトリフルオロエチレンからトリフルオロエチレンを分離するための方法を提供する。従って、本発明は、トリフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンを含む混合物の分離方法であって、前記混合物を前記膜M2と接触させて、トリフルオロエチレンを含む流れF5とクロロトリフルオロエチレンを含む流れF6を形成する段階を含む、方法を提供する。
【0170】
好ましくは、前記膜M2は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、セルロース及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される材料から作製されている。好ましくは、前記膜M2は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリイミド、及びセルロースアセテートからなる群から選択される材料から作製されている。この方法は、上記の段階B)に対して記載した条件に従って実施される。この方法は、段階B)で記載した膜M2で実施される。
【0171】
従って、この第四の態様では、本発明は、様々な実施態様に係るトリフルオロエチレンの製造方法を提供する。例えば、本発明は、触媒を含む固定触媒床を備えた反応器におけるトリフルオロエチレンの製造方法であって、
- A)気相中において触媒の存在下でクロロトリフルオロエチレンを水素と反応させて、トリフルオロエチレン及び未反応水素及びクロロトリフルオロエチレンを含む流れを生成する段階;並びに
- B)段階A)から生じた前記流れを膜M2と接触させて、トリフルオロエチレンとおそらく水素を含む流れF5と、クロロトリフルオロエチレンとおそらく水素を含む流れF6を形成する段階;
- i)流れF5からHF及び/又はHClを除去して気体混合物を形成する段階;
- ii)段階i)から生じた気体混合物を乾燥させる段階;
- iii)段階ii)で乾燥させた気体混合物を任意選択的に処理して、水素及び不活性気体を除去し、気体の流れF11を形成する段階;
- iv)段階ii)で乾燥させた気体混合物又は段階iii)から生じた前記気体の流れF11を蒸留して、トリフルオロエチレンを含む流れF12を回収する段階
を含む、方法を提供する。
【0172】
本発明はまた、触媒を含む固定触媒床を備えた反応器におけるトリフルオロエチレンの製造方法であって、
- A)気相中において触媒の存在下でクロロトリフルオロエチレンを水素と反応させて、トリフルオロエチレン及び未反応水素及びクロロトリフルオロエチレンを含む流れを生成する段階;
- i)段階A)から生じた前記流からHF及び/又はHClを除去して、気体混合物を形成する段階;
- ii)段階i)から生じた気体混合物を乾燥させる段階;
- iii)段階ii)で乾燥させた気体混合物を任意選択的に処理して、水素及び不活性気体を除去し、気体の流れF11を形成する段階;
- B)前記気体の流れF11又は段階i)から生じた前記気体混合物を膜M2と接触させて、トリフルオロエチレンとおそらく水素を含む流れF5と、クロロトリフルオロエチレンとおそらく水素を含む流れF6を形成する段階;
- iv)前記流れF5を蒸留して、トリフルオロエチレンを含む流れF12を回収する段階
を含む、方法を提供する。
【0173】
[ハイドロフルオロカーボンからのトリフルオロエチレンの分離]
第五の態様によれば、本発明は、トリフルオロエチレンとハイドロフルオロカーボンを含む混合物の分離方法であって、前記混合物を膜M4と接触させて、トリフルオロエチレンを含む流れF9と前記ハイドロフルオロカーボンを含む流れF10を形成する段階を含む、方法を提供する。
【0174】
好ましくは、前記ハイドロフルオロカーボンはハイドロフルオロアルカンである。
【0175】
好ましくは、前記膜M4は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン-テトラフルオロエチレン、及びSO3H基で置換されていてもよいテトラフルオロエチレン/パーフルオロビニルエーテルコポリマーからなる群から選択される材料から作製されている。
【0176】
好ましくは、前記膜M4は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン及びセルロースからなる群から選択される材料から作製されている。
【0177】
好ましい実施態様によれば、前記膜M4は、フィルム、積層構造、中空繊維及び被覆繊維から選択される。
【0178】
ポリオレフィンという用語は、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルプロペン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン、ポリヘキセン、ポリメチルペンテン及びポリエチルブテンを指す。
【0179】
ポリエーテルという用語は、特に、モノマー単位-[-O-Ar-]-又は-[-Ar1-O-Ar2-]-を含むポリアリールエーテルを指し、ここで、Ar、Ar1及びAr2は、互いに独立して、一つ又は複数のC1-C10アルキル官能基によって置換されていてもよい6から12個の炭素原子を含む芳香族環であり;好ましくは、Arは、一つ、二つ、三つ又は四つのC1-C3アルキル官能基によって置換されていてもよいフェニル基である。特に、ポリエーテルは、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]又はポリ(フェニレンオキシド)である。
【0180】
好ましくは、セルロースはセルロースアセテートである。
【0181】
好ましくは、前記膜M4は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド及びセルロースからなる群から選択される材料から作製されている。
【0182】
特に、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。特に、前記膜M4はポリプロピレン又はポリメチルペンテンから作製されている。
【0183】
好ましい実施態様によれば、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及び1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンである。
【0184】
好ましくは、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン及び1,1,2-トリフルオロエタンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンである。
【0185】
好ましくは、前記膜M4は、10を超え、有利には15を超え、好ましくは20を超え、より優先的には25を超え、特に30を超える選択率を有し、該選択率は、前記膜M4を通る前記ハイドロフルオロカーボンの透過係数に対するトリフルオロエチレンの透過係数の比によって計算される。
【0186】
特に好ましい実施態様では、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンであり、かつ前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]又はポリ(フェニレンオキシド)から作製されている。
【0187】
特に好ましい実施態様では、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンであり、かつ前記膜M4は、ポリプロピレン又はポリメチルペンテン、好ましくはポリメチルペンテンから作製されている。
【0188】
従って、出発混合物に対して、流れF9はトリフルオロエチレンに富んでいる。一方、流れF10は、出発混合物に対してハイドロフルオロカーボンに富んでいる。
【0189】
好ましくは、本方法は、0.1baraから30bara、有利には0.2baraから25bara、好ましくは0.3baraから20bara、より優先的には0.4baraから15bara、特に0.5baraから10bara、より特定的には0.5baraから5baraの圧力で実施される。本方法の実施中、膜の入口と膜の出口との間に圧力差が観察される。ここで表されている差圧は、前記膜の入口と出口との間に存在する圧力差に相当する。好ましくは、差圧は1から3000kPa、好ましくは50から2000kPa、特に100から1000kPa、より特定的には100から500kPaである。好ましくは、本方法は0℃から150℃、有利には0℃から125℃、好ましくは5℃から100℃、より優先的には10℃から75℃、特に10℃から50℃の温度で実施される。
【0190】
ハイドロフルオロカーボンからトリフルオロエチレンを分離するためのこの方法は、トリフルオロエチレンの製造のための全体的方法に統合することができる。従って、本発明は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンの脱フッ化水素化又はクロロジフルオロメタンとクロロフルオロメタンとの反応により、トリフルオロエチレン及び1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む流れを形成する段階A1)と、膜M4を用いて、本発明の第五の態様に従ってトリフルオロエチレン及びハイドロフルオロカーボンを含む流れを分離して、トリフルオロエチレンを含む流れF9'と前記ハイドロフルオロカーボンを含む流れF10'を形成する段階B1)を含む、トリフルオロエチレンの製造方法をまた提供する。
【0191】
好ましくは、前記ハイドロフルオロカーボンは、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンからなる群から選択されるハイドロフルオロアルカンであり、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。
【0192】
特に、前記ハイドロフルオロカーボンは1,1,1,2-テトラフルオロエタンであり、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。
【0193】
トリフルオロエチレンの製造の段階A1)は、触媒の非存在下又は触媒の存在下での1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)の熱脱フッ化水素化でありうる。
【0194】
[HFC-134aの熱分解(触媒の非存在下での熱脱フッ化水素化)]
触媒の非存在下、1,1,1,2-テトラフルオロエタンの脱フッ化水素化は、500℃を超える温度、有利には550℃を超える温度、好ましくは600℃を超える温度、より優先的には650℃を超える温度、特に700℃を超える温度、より特定的には800℃を超える温度で実施される。滞留時間は、0.1秒と100秒の間、有利には0.1秒と75秒の間、好ましくは0.5秒と50秒の間、より優先的には0.5秒と10秒の間、特に0.5秒と5秒の間である。圧力は、1baraと50baraの間、好ましくは1baraと25baraの間、特に1baraと10baraの間でありうる。反応は、希釈剤、例えば窒素、ヘリウム又はアルゴン、好ましくは窒素の存在下で実施されうる。
【0195】
この実施態様では、好ましくは、段階A1)からの出力流れは、トリフルオロエチレンに加えて、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む。段階A1)からの出力流れは、テトラフルオロエチレン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンをまた含みうる。段階A1)からの出力流れには、HFがまた存在する。HFは、段階B1)を実施する前に除去することができる。HFは、水又はアルカリ又は苛性溶液の散布などの、当業者に知られている通常の技術によって除去することができる。
【0196】
この実施態様では、本方法の段階B1)は、トリフルオロエチレン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及びおそらくテトラフルオロエチレン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンを含む流れから開始して実施される。段階B1)は、上で定義された膜M4を用いて実施されて、トリフルオロエチレンを含む流れF9'と1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む流れF10'を形成する。好ましくは、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。段階B1)は、本発明の第五の態様に従ってハイドロフルオロカーボンからのトリフルオロエチレンの分離に関連して上に示したように実施される。好ましくは、1,1,1,2-テトラフルオロエタンは無水形態である。無水という用語は、本特許出願において上で定義している。
【0197】
[HFC-134aの触媒的脱フッ化水素化]
上記のように、別の実施態様では、段階A1)は、気相中において触媒の存在下で1,1,1,2-テトラフルオロエタンの脱フッ化水素化を用いる。このようにして、1,1,1,2-テトラフルオロエタンは、酸化物、ハロゲン化物、又はオキシハロゲン化物の形態の金属に基づく触媒と気相中で接触させられる。金属は、クロム、アルミニウム、コバルト、亜鉛、ニッケル、カリウム、銀、セシウム、ナトリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、スズ、鉛、マグネシウム、及びマンガンからなる群から選択される。より特定的には、触媒は、酸化物、フッ化物、又はオキシフッ化物の形態の金属に基づくことができ、前記金属は、クロム、アルミニウム、コバルト、亜鉛、ニッケル、カリウム、銀、セシウム、及びナトリウムからなる群から選択される。望ましくは、触媒は、酸化物、フッ化物又はオキシフッ化物の形態の金属に基づき、前記金属はクロム及びアルミニウムから選択される。触媒は、バルク(非担持)であってもよく、又は炭素(グラファイト、活性炭)又はアルミニウム(アルミナ、フッ化アルミナ、フッ化アルミニウム)に基づく担体上に担持されうる。HFC-134aの触媒的脱フッ化水素化は、好ましくは50℃から500℃、有利には100℃から450℃、好ましくは150℃から450℃、特に200℃から450℃の温度で実施される。HFC-134aの触媒的脱フッ化水素化は、好ましくは1baraから20bara、好ましくは1baraから15bara、特に3baraから10baraの圧力で実施される。HFC-134aの触媒的脱フッ化水素化は、好ましくは0.5秒から60秒、好ましくは1秒から45秒、特に5秒から30秒の接触時間で実施される。HFC-134aの触媒的脱フッ化水素化のこの実施態様では、段階A1)からの出力流れは、トリフルオロエチレンの他に、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及びHFを含む。出力流れは、次の化合物の一又は複数をまた含みうる:1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-133a)、又は2-クロロ-1,1-ジフルオロエチレン(HCFO-1122)。HFは、段階B1)を実施する前に除去することができる。HFは、水又はアルカリ又は苛性溶液の散布などの、当業者に知られている通常の技術によって除去することができる。
【0198】
この実施態様では、本方法の段階B1)は、トリフルオロエチレン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及びおそらく2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1-ジフルオロエチレン、又は1,1,2,2-テトラフルオロエタンを含む流れから開始して実施される。段階B1)は、上に記載した膜M4を用いて実施され、トリフルオロエチレンを含む流れF9'と1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む流れF10'を形成する。好ましくは、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。段階B1)は、本発明の第五の態様によるハイドロフルオロカーボンからのトリフルオロエチレンの分離に関連して上で示したように実施される。好ましくは、1,1,1,2-テトラフルオロエタンは無水形態である。無水という用語は、本特許出願において上で定義している。
【0199】
[HCFC-22とHCFC-31の反応]
或いは、段階A1)は、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)とクロロフルオロメタン(HCFC-31)との熱分解による反応段階である。HCFC-22/HCFC-31のモル比は、1:0.01から1:4.0、好ましくは0.1から1.5である。段階A1)は、400℃から1200℃、好ましくは600℃から900℃、特に710℃から900℃の温度で実施される。段階A1)は、1から3.0MPa、好ましくは1から1.5MPaの圧力で実施される。反応物質、すなわちHCFC-22及びHCFC-31は、反応を実施する前に加熱され、混合されうる。HCFC-22は、25℃から600℃、好ましくは100℃から500℃の温度に加熱することができる。HCFC-31は、25℃から1200℃、好ましくは100℃から800℃の温度に加熱することができる。接触時間は0.01から10秒、好ましくは0.2から3.0秒である。出力流れは、トリフルオロエチレンの他に、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む。出力流れは、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、又は2-クロロ-1,1-ジフルオロエチレンをまた含みうる。出力流れはまた未反応のHCFC-22及びHCFC-31を含みうる。HFは、段階A1)からの出力流れにまた存在しうる。HFは、段階B1)を実施する前に除去することができる。HFは、水又はアルカリ若しくは苛性溶液の散布などの、当業者に知られている通常の技術によって除去することができる。
【0200】
この実施態様では、本方法の段階B1)は、トリフルオロエチレン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及びおそらくペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、クロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、又は2-クロロ-1,1-ジフルオロエチレンを含む流れから開始して実施される。段階B1)は、上に記載した膜M4を用いて実施され、トリフルオロエチレンを含む流れF9'と1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む流れF10'を形成する。好ましくは、前記膜M4は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリ[オキシ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)]、及びポリ(フェニレンオキシド)からなる群から選択される材料から作製されている。段階B1)は、本発明の第五の態様に従って、ハイドロフルオロカーボンからのトリフルオロエチレンの分離に関連して、上で示したように実施される。好ましくは、HCFC-22及びHCFC-31は無水形態である。無水という用語は、本特許出願において上で定義している。
【0201】
段階B1)は、選択された反応段階(HFC-134aの触媒的脱フッ化水素化若しくは触媒の非存在下での脱フッ化水素化又はHCFC-31とのHCFC-22の反応)に関係なく、本発明の第五の態様に従って上に記載した膜M4を用いて実施される。
【0202】
一般に、本発明において、トリフルオロエチレンの製造方法は、(反応流れ中のHF又はHClの存在を考慮して)耐腐食性のある反応器で実施される。段階A)又はA1)は、モネル若しくはインコネル若しくはハステロイ製の反応器で、又はニッケル製の反応器で実施することができる。
【実施例】
【0203】
ポリマーを通る気体状化合物の透過係数は、フィルム状ポリマーの場合はEvonik METクロスフロー濾過セル(内径52mm、有効表面積14cm2)を使用し、繊維状ポリマーの場合は市販モジュールを使用して測定される。PPO繊維製のモジュールはParkerから販売されている(参照モジュールST304-厚さ50μm、表面積0.4m2)。ポリイミドフィルムはDupont Kapton HNフィルムであり、ポリメチルペンテンフィルムは参照MX004を有し、シリコーンは参照USPクラスVIを有する。フィルムはGoodfellowから提供されている。
【0204】
以下の実施例では、PPOを除き、試験した膜は有効表面積14cm
2のフィルム状であり、その厚さを以下の表1に示す。
【表1】
【0205】
透過係数は、次の式に従って計算される:P=Q×e×S-1×ΔP-1
ここで、
P:透過係数(cm2・s-1・Pa-1)
Q:透過流量(cm3/s)
e:膜厚(cm)
S:膜表面積(cm2)
ΔP:膜を通る圧力差(Pa)(つまり、本特許出願で言及されている差圧)
【0206】
透過係数は、一般に、次の換算式に従ってbarrer(10-10・cm3(STP)・cm・cm2・s-1・cm Hg-1)で表される:
Pbarrer=P×1010/(7.500615×10-4)
【0207】
従って、材料のデータ(表面積、厚さ)、膜を通る圧力差、及び膜を通る透過流量測定値から、材料を通る化合物の透過係数を計算することができる。透過係数は、よって、保持流側に出口がない状態で膜の上流で化合物を加圧状態に保ち、透過流側でこの同じ化合物の流量を大気圧で測定することによって測定される。試験は、シリコーンを除いて25℃の温度で実施され、その試験は35℃において実施された。より正確な透過係数の値を取得するためには、試験は数回、場合によっては異なる圧力で、繰り返される。特に明記されない限り、透過係数はΔP(つまり、膜を通る圧力差)に関係なく一定のままである。
【0208】
実施例1:水素/フルオロカーボンの分離
上に詳述した実験プロトコルを、考慮下の混合物の各化合物:すなわち水素とフルオロカーボン(トリフルオロエチレン(VF
3)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)又はペンタフルオロエタン(HFC-125))に対して独立して用いた。使用した膜は、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリイミド、PVDF、又はセルロースアセテートから作製されている。結果を以下の表2に示す。透過係数値はbarrerで表される。表に記載されている選択率は、考慮下の二つのエンティティに対して測定した透過係数の比に対応する。
【表2】
【0209】
上記のデータから分かるように、ポリオレフィン又はポリエーテル製の膜は、ハイドロフルオロオレフィンタイプとハイドロフルオロアルカンタイプの両フルオロカーボンに対してよりも、水素に対してより透過性である。従って、ポリオレフィン(ポリプロピレン若しくはポリメチルペンテン)又はポリエーテル(ポリ(フェニレンオキシド))タイプの膜は、ハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンなどのフルオロカーボンを水素から効率的に分離することを可能にする。
【0210】
実施例2:窒素/フルオロカーボンの分離
実施例1において上に詳述した実験プロトコルを、考慮下の混合物の各化合物:すなわち窒素とフルオロカーボン(トリフルオロエチレン(VF
3)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)又はペンタフルオロエタン(HFC-125))に対して独立して用いた。使用した膜は、シリコーン又はポリメチルペンテン製である。結果を以下の表3に示す。透過係数値はbarrerで表される。表に記載されている選択率は、考慮下の二つのエンティティに対して測定した透過係数の比に対応する。
【表3】
【0211】
上記のデータから分かるように、PMP膜を通るHFC-125の透過係数に対するPMP膜を通る窒素の透過係数の比によって計算したN2/HFC-125選択率(すなわち、選択率=9.1/0.2)は45.5であり、これにより、二種の化合物を効率的に分離することが可能になる。本発明によって実証されるように、ポリオレフィンタイプ(ポリメチルペンテンなど)の膜は、ハイドロフルオロアルカンを窒素から効率的に分離することを可能にする。加えて、シリコーン(ポリジメチルシロキサンなど)製の膜は、窒素に対してよりもハイドロフルオロオレフィンに対してより透過性である。窒素の透過係数と、VF3又はHFO-1234yfなどのハイドロフルオロオレフィンの透過係数の間には10倍の差が観察される。得られたVF3/N2及びHFO-1234yf/N2選択率から、シリコーン製の膜がハイドロフルオロオレフィン(HFO-1234yf及びVF3など)を窒素から効率的に分離することを確認することが可能になる。
【0212】
実施例3:トリフルオロエチレン(VF3)の製造方法
29%から44%のトリフルオロエチレン(VF3)、9%から16%のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)及び37%の水素を含む幾つかの組成物をポリオレフィン膜と接触させる。組成物は、本特許出願に記載された条件下で、アルミナ担持パラジウム触媒の存在下、気相中においてCTFEと水素の水素化分解反応を実施した後に得られる。組成物は有機不純物をまた含む。
【0213】
組成物の透過係数は、ポリメチルペンテン膜を用いて上に記載したプロトコルに従って評価される。結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0214】
上の結果は、ポリオレフィン膜が、トリフルオロエチレンに対してよりも水素及びクロロトリフルオロエチレンに対してより透過性であることを示している。従って、CTFEとH2との水素化分解反応から生じる組成物は、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンタイプの膜によって容易に分離される。多量のCTFEと多量の水素が反応流れから取り出され、リサイクルされる。こうして、トリフルオロエチレンに富んでいる流れが得られる。或いは、上の結果は、ポリイミドとセルロースアセテートから作製された膜が、クロロトリフルオロエチレンに対してよりも水素及びVF3に対してより透過性であることを示している。従って、CTFEとH2との水素化分解反応から生じる組成物は、ポリイミド又はセルロースタイプ、例えばセルロースアセテートなどの膜によって容易に分離される。多量のCTFEが反応流れから取り出され、リサイクルされる。トリフルオロエチレンに富んでいる流れがまた得られ、本特許出願で説明されている膜分離によって、又は本特許出願で上に記載された吸収/脱着段階によって、トリフルオロエチレンから水素を容易に分離することができる。
【0215】
CTFE/VF3の高選択率は、膜分離段階から生じるトリフルオロエチレンの流れ中にCTFEの量が少ないことから、その後のトリフルオロエチレンの精製がより容易に実施されるため、特に有利である。
【0216】
実施例4:VF
3/ハイドロフルオロアルカンの分離
実施例1において上に詳述した実験プロトコルを、考慮下の混合物の各化合物:すなわちトリフルオロエチレンとハイドロフルオロカーボン(ペンタフルオロエタン(HFC-125)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a))に対して独立して用いた。使用した膜はポリメチルペンテン製である。結果を以下の表5に示す。透過係数値はbarrerで表される。表に記載されている選択率は、考慮下の二つのエンティティに対して測定した透過係数の比に対応する。
【表5】
【0217】
上の結果は、ポリオレフィン膜が、ペンタフルオロエタン又は1,1,2,2-テトラフルオロエタンなどのハイドロフルオロアルカンに対してよりも、トリフルオロエチレンに対してより透過性であることを示している。従って、VF3は、HFC-125又はHFC-134aなどのハイドロフルオロアルカンから容易に分離できる。従って、ポリオレフィンタイプの膜は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンからのトリフルオロエチレンの製造方法又はその方法中に1,1,1,2-テトラフルオロエタンを生成する方法において使用できる。所望の生成物、つまりVF3は、HFC-134aから効率的に分離される。
【国際調査報告】