(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】筋消耗性障害を治療するための治療用核酸とサポニンとを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/704 20060101AFI20241226BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241226BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241226BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241226BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20241226BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20241226BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20241226BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
A61K31/704
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/7125
A61K31/712
A61K31/711
A61K31/713
A61K48/00
A61P25/00
A61P21/00
A61P43/00 121
A61P9/00
A61P43/00 105
A61P43/00 123
A61K47/64
A61K47/54
A61K47/65
C12N15/113 Z ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538257
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 NL2022050735
(87)【国際公開番号】W WO2023121445
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521271727
【氏名又は名称】サプリーム テクノロジーズ,ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】SAPREME TECHNOLOGIES B.V.
【住所又は居所原語表記】Antonie van Leeuwenhoeklaan 9 Building A12-1 3721 MA Bilthoven NETHERLANDS
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブイニー,ミリアム ヴェレナ
(72)【発明者】
【氏名】ポステル,ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ヘアマンス,ガイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC26
4C076DD66
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
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4C084ZA011
4C084ZA361
4C084ZA941
4C084ZB211
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZA94
4C086ZB21
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA27
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、筋消耗性障害、詳細には、筋細胞への治療用核酸の送達によって標的化することのできる遺伝的因子が関わる筋消耗性障害の治療及び予防の分野に関する。後者の態様を踏まえて、本明細書には、サイトゾル及び/又は核など、そこに治療用核酸が到達してその遺伝子標的に作用することのできる筋細胞の正しい細胞内区画への治療用核酸の有効な送達及び放出を実質的に促進する医薬組成物及びその有利な成分が開示される。本明細書に開示されるとおり、送達及び放出のこの実質的な促進は、治療用核酸と、任意選択で、それにコンジュゲートした筋細胞標的化用リガンドとを含む本明細書に開示される医薬組成物にエンドソーム脱出促進性サポニンを提供することにより実現する。本明細書において初めて実証されるとおり、こうした種類のサポニンは、意外にも、そのエンドソーム脱出促進特性を完全に分化した筋細胞で保持しているのみならず、コンジュゲートされていない状態でも、治療用核酸と併せたそこへの送達に成功することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋消耗性障害の治療又は予防における使用のための医薬組成物であって、
核酸、及び
サポニン
を含む組成物において、
前記サポニンが、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、組成物。
【請求項2】
前記筋消耗性障害が、好ましくは先天性ミオパチー又は筋ジストロフィー
(好ましくは、前記先天性ミオパチーは、ネマリンミオパチー又は先天性筋線維タイプ不均等症ミオパチーから選択され、及び/又は前記筋ジストロフィーは、ジストロフィノパチー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー1B、先天性筋ジストロフィーから選択される);又は家族性拡張型心筋症である筋細胞関連遺伝性障害であり;
最も好ましくは、前記筋消耗性障害が、ジストロフィノパチーである、好ましくはデュシェンヌ型筋ジストロフィーである筋細胞関連遺伝性障害である、
請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記筋消耗性障害の前記治療又は予防に、好ましくはエクソンスキッピングが関わるアンチセンス療法が関わる、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位にある前記アルデヒド基が、遊離アルデヒド基であるか、又はヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下で切断により外れる切断可能な共有結合性の結合で前記C-23位に結び付いたマレイミド含有部分によって置換されているアルデヒド基であって、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下で前記切断に伴い回復する、前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位にあるアルデヒド基であるかのいずれかであり;
好ましくは前記切断可能な共有結合性の結合が、セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、又はヒドラジド結合から選択され;より好ましくは、セミカルバゾン結合及びヒドラゾン結合から選択され;最も好ましくは、ヒドラゾン結合である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記マレイミド含有部分が、セミカルバゾン結合の形成時に前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付く4-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル)ピペラジン-1-カルボヒドラジドを含むか又はそれからなる分子の一部であり(以下SC-マレイミドと称する)、又は前記マレイミド含有部分が、ヒドラゾン結合の形成時に前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付くN-ε-マレイミドカプロン酸ヒドラジドを含むか又はそれからなる分子の一部である(以下EMCHと称する)、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記サポニンが、核酸又はリガンドなど、巨大分子との直接の又は間接的な共有結合性のコンジュゲーションを欠いている1つ以上のサポニン分子からなるものとして定義される遊離サポニンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記サポニンアグリコンコア構造が、キラ酸、ギプソゲニン、及びその誘導体のいずれか1つ以上から選択され、好ましくは前記サポニンアグリコンコア構造が、キラ酸又はギプソゲニン、より好ましくはキラ酸である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記サポニンが、末端グルクロン酸残基を含む第1の糖鎖を含み、且つ少なくとも4つの糖残基を分岐した配置で含む第2の糖鎖を含む少なくともビデスモシド型サポニンであり;
好ましくは前記第1の糖鎖が、Gal-(1→2)-[Xyl-(1→3)]-GlcAであり、及び/又は少なくとも4つの糖残基の前記分岐した第2の糖鎖が、末端フコース残基及び/又は末端ラムノース残基を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記サポニンが、前記サポニンアグリコンコア構造のC-3位に前記第1の糖鎖及び/又は前記サポニンアグリコンコア構造のC-28位に前記第2の糖鎖を含み;
好ましくは前記第1の糖鎖が、前記サポニンアグリコンコア構造のC-3β-OH基における炭水化物置換基であり、及び/又は前記第2の糖鎖が、前記サポニンアグリコンコア構造のC-28-OH基における炭水化物置換基である、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記サポニンが、
a)リストA:
-キラヤ(Quillaja saponaria)サポニン混合物、又はキラヤ(Quillaja saponaria)から単離されたサポニン、例えば、Quil-A、QS-17-api、QS-17-xyl、QS-21、QS-21A、QS-21B、QS-7-xyl;
-サポニナム・アルバム(Saponinum album)サポニン混合物、又はサポニナム・アルバム(Saponinum album)から単離されたサポニン;
-サボンソウ(Saponaria officinalis)サポニン混合物、又はサボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニン;及び
-キラヤ樹皮サポニン混合物、又はキラヤ樹皮から単離されたサポニン、例えば、Quil-A、QS-17-api、QS-17-xyl、QS-21、QS-21A、QS-21B、QS-7-xyl
のいずれか1つ以上から選択されるサポニン;又は
b)リストB:
SA1641、ギプソシドA、NP-017772、NP-017774、NP-017777、NP-017778、NP-018109、NP-017888、NP-017889、NP-018108、SO1658及びフィトラッカゲニン
から選択される、ギプソゲニンアグリコンコア構造を含むサポニン;又は
c)リストC:
AG1856、AG1、AG2、アグロステモシドE、GE1741、カスミソウサポニン1(Gyp1)、NP-017674、NP-017810、NP-003881、NP-017676、NP-017677、NP-017705、NP-017706、NP-017773、NP-017775、SA1657、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862、SO1904、QS-7、QS-7 api、QS-17、QS-18、QS-21 A-apio、QS-21 A-xylo、QS-21 B-apio及びQS-21 B-xylo
から選択される、キラ酸アグリコンコア構造を含むサポニン
のいずれか1つ以上であるか;又は
好ましくは、前記サポニンが、リストB又はCから選択されるサポニン、より好ましくは、リストCから選択されるサポニンのいずれか1つ以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記サポニンが、AG1856、GE1741、キラヤ(Quillaja saponaria)から単離されたサポニン、Quil-A、QS-17、QS-21、QS-7、SA1641、サボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニン、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1658、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862及びSO1904のいずれか1つ以上であり;
好ましくは前記サポニンが、QS-21、SO1832、AG1856、SO1861、SA1641及びGE1741のいずれか1つ以上であり;より好ましくは前記サポニンが、QS-21、SO1832又はSO1861であり;
最も好ましくはSO1861である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記サポニンが、サボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニンであり、好ましくは前記サポニンが、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1658、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862及びSO1904のいずれか1つ以上であり;
より好ましくは前記サポニンが、SO1832、SO1861及びSO1862のいずれか1つ以上であり;
更により好ましくは前記サポニンが、SO1832及びSO1861であり;
最も好ましくはSO1861である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記核酸が、150ntを超えない核酸として定義されるオリゴヌクレオチドであり、好ましくは前記オリゴヌクレオチドが、5~150ntのサイズであり、好ましくは8~100ntであり、最も好ましくは10~50ntであり、より好ましくは前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、更により好ましくは突然変異特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、最も好ましくはエクソンスキッピングを誘導するように設計されたオリゴヌクレオチドである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記核酸が、プラスミド又は別の環状遺伝子コンストラクトである、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記核酸が、以下のうちのいずれか1つ:モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー(PMO)、2’-O-メチル(2’-OMe)ホスホロチオエートRNA、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)RNA{2’-O-メトキシエチル-RNA(MOE)}、ロックド核酸又は架橋型核酸(BNA)、2’-O,4’-アミノエチレン架橋型核酸(BNANC)、ペプチド核酸(PNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノ核酸(FANA)、3’-フルオロヘキシトール核酸(FHNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、サイレンシングRNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンタゴmir(miRNAアンタゴニスト)、アプタマーRNA又はアプタマーDNA、一本鎖RNA又は一本鎖DNA、二本鎖RNA(dsRNA)又は二本鎖DNAを含むか、又はそれからなり;
好ましくは前記核酸が、モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー(PMO)又は2’-O-メチル(2’-OMe)ホスホロチオエートRNAを含むか、又はそれからなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記核酸が、ヒトジストロフィン遺伝子転写物のエクソンスキッピングを誘導するように設計され、好ましくは前記エクソンスキッピングには、エクソン51スキッピング又はエクソン53スキッピング又はエクソン45スキッピングが関わり;
より好ましくは前記核酸が、前記エクソン51スキッピング又は前記エクソン53スキッピング又は前記エクソン45スキッピングを誘導するように設計される2’O-メチル-ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド又はホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、
更により好ましくは前記核酸が、エテプリルセン、ドリサペルセン、ゴロディルセン、ビルトラルセン、及びカシメルセンから選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記組成物が2つ以上の異なる核酸を含み、好ましくは2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドであり、より好ましくは前記2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記核酸が、筋細胞上のエンドサイトーシス受容体のリガンドとコンジュゲートしている、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記リガンドが結合する筋細胞上の前記エンドサイトーシス受容体が、トランスフェリン受容体(CD71)、インスリン様成長因子1(IGF-1)受容体(IGF1R)、テトラスパニンCD63;筋特異的キナーゼ(MuSK)、グルコース輸送体GLUT4、カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体(CI-MPR)から選択される、請求項18に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記リガンドが、
インスリン様成長因子1(IGF-I)又はその断片;
インスリン様成長因子2(IGF-II)又はその断片
マンノース6リン酸
トランスフェリン(Tf)、
ザイモザンA、及び
前記エンドサイトーシス受容体への結合に特異的な抗体又はその結合断片であって、前記エンドサイトーシス受容体が、好ましくは、トランスフェリン受容体(CD71)、インスリン様成長因子1(IGF-I)受容体(IGF-IR)、テトラスパニンCD63、筋特異的キナーゼ(MuSK)、グルコース輸送体GLUT4、カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体(CI-MPR)、及びLDL受容体から選択される、抗体又はその結合断片
のいずれか1つから選択され;
好ましくは前記リガンドが、トランスフェリン受容体への結合に特異的な抗体又はその結合断片であり、
より好ましくは前記リガンドが、トランスフェリン受容体への結合に特異的なモノクローナル抗体又はFab’断片又は少なくとも1つのシングルドメイン抗体であり、更により好ましくは、前記リガンドが、トランスフェリン受容体への結合に特異的なモノクローナル抗体である、請求項18又は19に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記リガンドが、1分子の前記リガンドにつき2~5分子の前記核酸とコンジュゲートされ;
好ましくは1分子の前記リガンドにつき3~4分子の前記核酸であり;
より好ましくは前記リガンドは、1分子の前記リガンドにつき平均して4分子の前記核酸とコンジュゲートされる、請求項18~20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
前記リガンドが、少なくとも1つのシステイン残基及び/又は少なくとも1つのリジン残基を含むアミノ酸残基の鎖を含み、及び前記核酸による前記リガンドとの前記共有結合性の連結が、少なくとも1つのシステイン残基及び/又は少なくとも1つのリジン残基との共有結合性の結合を含み;
好ましくは2分子以上の前記核酸が、1分子の前記リガンドに別個のシステイン残基及び/又は別個のリジン残基を介して連結され;
より好ましくは前記リガンドが、場合によっては配列HRWCCPGCCKTF(配列番号4)によって表されるテトラシステインリピートであるマルチシステインリピートを含むアミノ酸残基の鎖を含み、及び前記核酸による前記リガンドとの前記共有結合性の連結が、前記マルチシステインリピートの前記システイン残基のいずれか1つ以上との共有結合性の結合を含み;
最も好ましくは2分子以上の前記核酸が、1分子の前記リガンドに前記マルチシステインリピートの別個のシステイン残基を介して連結される、請求項18~21のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
前記核酸による前記リガンドとの前記共有結合性の連結が、前記核酸が共有結合的に結合しているリンカーを介して行われ;
好ましくは前記リンカーが、リンカー3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸スクシンイミジル(SPDP)を含むか、又はそれからなり;場合によっては前記リンカーが、前記核酸を前記リガンドのリジン残基に、又はグリカン残基、好ましくは部分的にトリミングされたグリカンに共有結合的に連結する、請求項18~22のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記リンカーが、酸性条件下、還元条件下、酵素条件下及び/又は光誘起条件下で切断を受けることになる切断可能なリンカーであり;
好ましくは前記リンカーが、
・セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、イミン結合、1,3-ジオキソラン結合を含めたアセタール結合、ケタール結合、エステル結合、及び/又はオキシム結合など、酸性条件下で切断を受けることになる結合;
・好ましくはカテプシンBによるタンパク質分解を受けることになる、タンパク質分解されやすい結合、例えばアミド又はペプチド結合;
・ジスルフィド結合など、酸化還元切断可能な結合、又はチオエーテル結合など、チオール交換反応しやすい結合
から選択される切断可能な結合を含み;
好ましくは、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する、好ましくはpH≦6.5、好ましくはpH≦6、より好ましくはpH≦5.5の酸性条件下でインビボ切断を受けることになる酸感受性結合であり、
より好ましくは、セミカルバゾン結合及びヒドラゾン結合から選択される酸感受性結合であり;最も好ましくは、ヒドラゾン結合である、請求項23に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記サポニンが、SO1861、SO1861-EMCH、又はSO1861-SC-マレイミド、好ましくはSO1861-EMCH又はSO1861-SC-マレイミドのいずれかの少なくとも1分子であるか、又はそれを含み、前記核酸が、ドリサペルセン又はエテプリルセンであり、前記核酸とコンジュゲートする前記リガンドが、抗CD71抗体又はその結合断片である、請求項1~24のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
ヒト対象への静脈内又は皮下投与における使用のための、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は薬学的に許容可能な希釈剤を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
2~6μMの前記サポニンを含み、好ましくは3~5μMであり、より好ましくは3.5~4.5μMであり、及び最もは約4μMである前記サポニンを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
治療的組み合わせであって、
(a)核酸、及び
(b)サポニン
を含む治療的組み合わせにおいて、
前記サポニンが、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、治療的組み合わせ。
【請求項30】
前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位にある前記アルデヒド基が、遊離アルデヒド基であるか、又はヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下で切断により外れる切断可能な共有結合性の結合で前記C-23位に結び付いたマレイミド含有部分によって置換されているアルデヒド基であって、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下で前記切断に伴い回復する、前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位にあるアルデヒド基であるかのいずれかであり;
好ましくは前記切断可能な共有結合性の結合が、セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、又はヒドラジド結合から選択され;より好ましくは、セミカルバゾン結合及びヒドラゾン結合から選択され;最も好ましくは、ヒドラゾン結合である、請求項29に記載の治療的組み合わせ。
【請求項31】
前記マレイミド含有部分が、セミカルバゾン結合の形成時に前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付く4-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル)ピペラジン-1-カルボヒドラジドを含むか又はそれからなる分子の一部であり(以下SC-マレイミドと称する)、又は前記マレイミド含有部分が、ヒドラゾン結合の形成時に前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付くN-ε-マレイミドカプロン酸ヒドラジドを含むか又はそれからなる分子の一部である(以下EMCHと称する)、請求項30に記載の治療的組み合わせ。
【請求項32】
前記サポニンが、核酸又はリガンドなど、巨大分子との直接の又は間接的な共有結合性のコンジュゲーションを欠いている1つ以上のサポニン分子からなるものとして定義される遊離サポニンである、請求項29~31のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項33】
前記サポニンアグリコンコア構造が、キラ酸、ギプソゲニン、及びその誘導体のいずれか1つ以上から選択され、好ましくは前記サポニンアグリコンコア構造が、キラ酸又はギプソゲニン、より好ましくはキラ酸である、請求項29~32のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項34】
前記サポニンが、末端グルクロン酸残基を含む第1の糖鎖を含み、且つ少なくとも4つの糖残基を分岐した配置で含む第2の糖鎖を含む少なくともビデスモシド型サポニンであり;
好ましくは前記第1の糖鎖が、Gal-(1→2)-[Xyl-(1→3)]-GlcAであり、及び/又は少なくとも4つの糖残基の前記分岐した第2の糖鎖が、末端フコース残基及び/又は末端ラムノース残基を含む、請求項29~33のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項35】
前記サポニンが、前記サポニンアグリコンコア構造のC-3位に前記第1の糖鎖及び/又は前記サポニンアグリコンコア構造のC-28位に前記第2の糖鎖を含み;
好ましくは前記第1の糖鎖が、前記サポニンアグリコンコア構造のC-3β-OH基における炭水化物置換基であり、及び/又は前記第2の糖鎖が、前記サポニンアグリコンコア構造の前記C-28-OH基における炭水化物置換基である、請求項34に記載の治療的組み合わせ。
【請求項36】
前記サポニンが、
a)リストA:
-キラヤ(Quillaja saponaria)サポニン混合物、又はキラヤ(Quillaja saponaria)から単離されたサポニン、例えば、Quil-A、QS-17-api、QS-17-xyl、QS-21、QS-21A、QS-21B、QS-7-xyl;
-サポニナム・アルバム(Saponinum album)サポニン混合物、又はサポニナム・アルバム(Saponinum album)から単離されたサポニン;
-サボンソウ(Saponaria officinalis)サポニン混合物、又はサボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニン;及び
-キラヤ樹皮サポニン混合物、又はキラヤ樹皮から単離されたサポニン、例えば、Quil-A、QS-17-api、QS-17-xyl、QS-21、QS-21A、QS-21B、QS-7-xyl
のいずれか1つ以上から選択されるサポニン;又は
b)リストB:
SA1641、ギプソシドA、NP-017772、NP-017774、NP-017777、NP-017778、NP-018109、NP-017888、NP-017889、NP-018108、SO1658及びフィトラッカゲニン
から選択される、ギプソゲニンアグリコンコア構造を含むサポニン;又は
c)リストC:
AG1856、AG1、AG2、アグロステモシドE、GE1741、カスミソウサポニン1(Gyp1)、NP-017674、NP-017810、NP-003881、NP-017676、NP-017677、NP-017705、NP-017706、NP-017773、NP-017775、SA1657、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862、SO1904、QS-7、QS-7 api、QS-17、QS-18、QS-21 A-apio、QS-21 A-xylo、QS-21 B-apio及びQS-21 B-xylo
から選択される、キラ酸アグリコンコア構造を含むサポニン
のいずれか1つ以上であるか;又は
好ましくは、前記サポニンが、リストB又はCから選択されるサポニン、より好ましくは、リストCから選択されるサポニンのいずれか1つ以上である、請求項29~35のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項37】
前記サポニンが、AG1856、GE1741、キラヤ(Quillaja saponaria)から単離されたサポニン、Quil-A、QS-17、QS-21、QS-7、SA1641、サボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニン、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1658、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862及びSO1904のいずれか1つ以上であり;
好ましくは前記サポニンが、QS-21、SO1832、AG1856、SO1861、SA1641及びGE1741のいずれか1つ以上であり;より好ましくは前記サポニンが、QS-21、SO1832又はSO1861であり;
最も好ましくはSO1861である、請求項29~36のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項38】
前記サポニンが、サボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニンであり、好ましくは前記サポニンが、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1658、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862及びSO1904のいずれか1つ以上であり;
より好ましくは前記サポニンが、SO1832、SO1861及びSO1862のいずれか1つ以上であり;
更により好ましくは前記サポニンが、SO1832及びSO1861であり;
最も好ましくはSO1861である、請求項29~37のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項39】
前記核酸が、150ntを超えない核酸として定義されるオリゴヌクレオチドであり、好ましくは前記オリゴヌクレオチドが、5~150ntのサイズであり、好ましくは8~100ntであり、最も好ましくは10~50ntであり、より好ましくは前記オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、好ましくは突然変異特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、最も好ましくは、エクソンスキッピングを誘導するように設計されたオリゴヌクレオチドである、請求項29~38のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項40】
前記核酸が、プラスミド又は別の環状遺伝子コンストラクトである、請求項29~39のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項41】
前記核酸が、以下のうちのいずれか1つ:モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー(PMO)、2’-O-メチル(2’-OMe)ホスホロチオエートRNA、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)RNA{2’-O-メトキシエチル-RNA(MOE)}、ロックド核酸又は架橋型核酸(LNA又はBNA)、2’-O,4’-アミノエチレン架橋型核酸(BNANC)、ペプチド核酸(PNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノ核酸(FANA)、3’-フルオロヘキシトール核酸(FHNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、サイレンシングRNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンタゴmir(miRNAアンタゴニスト)、アプタマーRNA又はアプタマーDNA、一本鎖RNA又は一本鎖DNA、二本鎖RNA(dsRNA)又は二本鎖DNAを含むか、又はそれからなり;
好ましくは前記核酸が、モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー(PMO)又は2’-O-メチル(2’-OMe)ホスホロチオエートRNAを含むか、又はそれからなる、請求項29~40のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項42】
前記オリゴヌクレオチドが、ヒトジストロフィン遺伝子転写物のエクソンスキッピングを誘導するように設計され、好ましくは前記エクソンスキッピングに、エクソン51スキッピング又はエクソン53スキッピング又はエクソン45スキッピングが関わり;
より好ましくは前記オリゴヌクレオチドが、前記エクソン51スキッピング又は前記エクソン53スキッピング又は前記エクソン45スキッピングを誘導するように設計される2’O-メチル-ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチド又はホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、
更により好ましくは前記オリゴヌクレオチドが、エテプリルセン、ドリサペルセン、ゴロディルセン、ビルトラルセン、及びカシメルセンから選択される、請求項39~41のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項43】
前記組成物が2つ以上の異なる核酸を含み、前記2つ以上の異なる核酸が好ましくは2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドであり、より好ましくは前記2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項29~42のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項44】
前記核酸が、筋細胞上のエンドサイトーシス受容体のリガンドとコンジュゲートされる、請求項29~43のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項45】
前記リガンドが結合する筋細胞上の前記エンドサイトーシス受容体が、トランスフェリン受容体(CD71)、インスリン様成長因子1(IGF-I)受容体(IGF-IR)、テトラスパニンCD63;筋特異的キナーゼ(MuSK)、グルコース輸送体GLUT4、カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体(CI-MPR)から選択される、請求項44に記載の治療的組み合わせ。
【請求項46】
前記リガンドが、
インスリン様成長因子1(IGF-I)又はその断片;
インスリン様成長因子2(IGF-II)又はその断片
マンノース6リン酸
トランスフェリン(Tf)、
ザイモザンA、及び
前記エンドサイトーシス受容体への結合に特異的な抗体又はその結合断片であって、前記エンドサイトーシス受容体が、好ましくは、トランスフェリン受容体(CD71)、インスリン様成長因子1(IGF-I)受容体(IGF-IR)、テトラスパニンCD63、筋特異的キナーゼ(MuSK)、グルコース輸送体GLUT4、カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体(CI-MPR)、及びLDL受容体から選択される、抗体又はその結合断片
のいずれか1つから選択され;
好ましくは前記リガンドが、トランスフェリン受容体への結合に特異的な抗体又はその結合断片であり、
より好ましくは前記リガンドが、トランスフェリン受容体への結合に特異的なモノクローナル抗体又はFab’断片又は少なくとも1つのシングルドメイン抗体であり、更により好ましくは、前記リガンドが、トランスフェリン受容体への結合に特異的なモノクローナル抗体である、請求項44又は45に記載の治療的組み合わせ。
【請求項47】
前記リガンドが、1分子の前記リガンドにつき2~5分子の前記核酸とコンジュゲートされ;
好ましくは1分子の前記リガンドにつき3~4分子の前記核酸であり;
より好ましくは前記リガンドが、1分子の前記リガンドにつき平均して4分子の前記核酸とコンジュゲートされる、請求項44~46のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項48】
前記リガンドが、少なくとも1つのシステイン残基及び/又は少なくとも1つのリジン残基を含むアミノ酸残基の鎖を含み、及び前記核酸による前記リガンドとの前記共有結合性の連結が、少なくとも1つのシステイン残基及び/又は少なくとも1つのリジン残基との共有結合性の結合を含み;
好ましくは2分子以上の前記核酸が、1分子の前記リガンドに別個のシステイン残基及び/又は別個のリジン残基を介して連結され;
より好ましくは前記リガンドが、場合によっては配列HRWCCPGCCKTF(配列番号4)によって表されるテトラシステインリピートであるマルチシステインリピートを含むアミノ酸残基の鎖を含み、及び前記核酸による前記リガンドとの前記共有結合性の連結が、前記マルチシステインリピートの前記システイン残基のいずれか1つ以上との共有結合性の結合を含み;
最も好ましくは2分子以上の前記核酸が、1分子の前記リガンドに前記マルチシステインリピートの別個のシステイン残基を介して連結される、請求項44~47のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項49】
前記核酸による前記リガンドとの前記共有結合性の連結が、前記核酸が共有結合的に結合しているリンカーを介して行われ;
好ましくは前記リンカーが、リンカー3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸スクシンイミジル(SPDP)を含むか、又はそれからなり;場合によっては前記リンカーが、前記核酸を前記リガンドのリジン残基に、又はグリカン残基、好ましくは部分的にトリミングされたグリカンに共有結合的に連結する、請求項44~48のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項50】
前記リンカーが、酸性条件下、還元条件下、酵素条件下及び/又は光誘起条件下で切断を受けることになる切断可能なリンカーであり;
好ましくは前記リンカーが、
・セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、イミン結合、1,3-ジオキソラン結合を含めたアセタール結合、ケタール結合、エステル結合、及び/又はオキシム結合など、酸性条件下で切断を受けることになる結合、
・好ましくはカテプシンBによるタンパク質分解を受けることになる、タンパク質分解されやすい結合、例えばアミド又はペプチド結合;
・ジスルフィド結合など、酸化還元切断可能な結合、又はチオエーテル結合など、チオール交換反応しやすい結合
から選択される切断可能な結合を含み、
好ましくは、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する、好ましくはpH≦6.5、好ましくはpH≦6、より好ましくはpH≦5.5の酸性条件下でインビボ切断を受けることになる酸感受性結合であり、
より好ましくは、セミカルバゾン結合及びヒドラゾン結合から選択される酸感受性結合であり;最も好ましくは、ヒドラゾン結合である、請求項49に記載の治療的組み合わせ。
【請求項51】
前記サポニンが、SO1861、SO1861-EMCH又はSO1861-SC-マレイミド、好ましくはSO1861-EMCH又はSO1861-SC-マレイミドのいずれかの少なくとも1分子であるか、又はそれを含み、前記核酸が、ドリサペルセン又はエテプリルセンであり、前記核酸とコンジュゲートする前記リガンドが、抗CD71抗体又はその結合断片である、請求項29~50のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項52】
薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は薬学的に許容可能な希釈剤を含む、請求項29~51のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項53】
2~6μMの前記サポニンを含み、好ましくは3~5μMであり、より好ましくは3.5~4.5μMであり、及び最もは約4μMである前記サポニンを含む、請求項29~52のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ。
【請求項54】
請求項29~53のいずれか一項に記載の治療的組み合わせの前記成分(a)及び(b)を含むキット。
【請求項55】
前記成分(a)及び(b)が、別個のバイアルの中にある、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
医薬としての使用のための、請求項29~53のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ又は請求項54又は55に記載のキット。
【請求項57】
請求項1~3又は26~28のいずれか一項に記載の使用のための、請求項29~53のいずれか一項に記載の治療的組み合わせ又は請求項54又は55に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋消耗性障害、詳細には、筋細胞への治療用核酸の送達によって標的化することのできる遺伝的因子が関わる筋消耗性障害の治療及び予防の分野に関する。後者の態様を踏まえて、本明細書には、サイトゾル及び/又は核など、そこに治療用核酸が到達してその遺伝子標的に作用することのできる筋細胞の正しい細胞内区画への治療用核酸の有効な送達及び放出を実質的に促進する医薬組成物及びその有利な成分が開示される。本明細書に開示されるとおり、送達及び放出のこの実質的な促進は、治療用核酸と、任意選択で、それにコンジュゲートした筋細胞標的化用リガンドとを含む本明細書に開示される医薬組成物にエンドソーム脱出促進性サポニンを提供することにより実現する。本明細書において初めて実証されるとおり、こうした種類のサポニンは、意外にも、そのエンドソーム脱出促進特性を完全に分化した筋細胞で保持しているのみならず、コンジュゲートされていない状態でも、治療用核酸と併せたそこへの送達に成功することができる。
【背景技術】
【0002】
筋消耗性障害は、世界的にヒト疾患の主な原因となっている。筋消耗性障害は、とりわけ、各種の筋ジストロフィー又は先天性ミオパチーに見られるとおり、根底にある遺伝子病態によって引き起こされることもあり[Cardamone,2008]、又はサルコペニアとして公知の加齢による筋量低下のように加齢が関係するか、若しくは外傷性筋傷害の結果として生じることもある。
【0003】
遺伝性及び非遺伝性の両方の筋消耗性障害とも、主徴は、全身の酸素供給、代謝バランス、及び歩行運動にとりわけ関与する組織である横紋筋組織が弱まり又は失われることによる衰弱である。横紋筋組織は、2種類の横紋筋細胞、即ち、骨格筋細胞と心筋細胞とにより構成されている[Shadrin,2016]。骨格筋はヒトの全体重の30~40%を占め、衛星細胞(satellite cell:SC)と呼ばれる常在筋幹細胞が存在するおかげで、それが傷害時に活性化し、増殖し、及び融合して筋繊維の損傷を修復し、又はそれを新しく形成することにより[Dumont,2016]、運動又は日常活動の間に起こる筋断裂に応答して再生することができる。対照的に、心筋は心筋原幹細胞プールを持たず、再生能力がほとんど乃至全くないため、傷害されると線維性瘢痕が形成され、最終的にはポンプ機能が損なわれることになる[Uygur,2016]。
【0004】
これらの細胞型は、両方とも最終分化していて、構造的及び機能的に高度に特殊化しており、このような特徴は通常、ペイロードをかかる細胞の内部区画に標的化することの困難さの増大と相関する。詳細には、筋細胞は、筋鞘と称される、ニューロンと全く同じような興奮性を持つ特異な種類の細胞膜によって覆われている。更には、こうした細胞には、特に、収縮性、伸展性、及び弾力性によって特徴付けられる復元力があり、これらの特徴は、筋組織におけるその主要な機能、即ち、緊張が生じることにより筋細胞を収縮させる力が発生し、それによって種々の身体部位の随意又は不随意運動を生じさせるという機能を果たすために必要な鍵となる特色である。
【0005】
これを踏まえて、ある種の治療用ペイロードは筋細胞に送達されたときに有益な効果を生み出し得ることが広く認められているにもかかわらず、こうした細胞を標的化することは、例えば国際公開第2021142227号パンフレットが認めているとおり、悪名高い難題であると判明していることもまた極めて良く知られている。これは、薬物のいかなるオンターゲット及びオフターゲット活性も重大な安全上の不利益を引き起こす心筋細胞について特に当てはまる[Slordalm 2006]。特異的に筋肉を標的とする治療薬であっても、その心臓への全身送達は有効性が極めて限られていることが公知であり、心臓に直接筋肉内注射したとしても、心臓曝露は限局的であることが示されている[Ebner,2015]。
【0006】
上記の制限に加えて、後天性の進行期にある又は遺伝的な筋消耗性障害の罹患者については、利用可能な治療選択肢及び戦略が極めて少ない。実際、その大多数には利用可能な薬物がなく、往々にして姑息的治療が、そうした罹患者の苦痛を和らげる唯一の適用可能な解決法である。
【0007】
詳細には、現在までに、驚くほど広範囲にわたる筋細胞関連の遺伝性障害(時に、まとめて遺伝性ミオパチーとも称される)の記載があり、有病率が比較的低いため、その大多数は目録上「希少疾患」として整理されるが、様々な形態を総体として見れば、これらの障害は、往々にして死亡につながる衰弱性の合併症を引き起こす、世界的に何百万人もの患者の生活の質に影響を及ぼす比較的よく見られる健康上の問題となる[Gonzalez-Jamett,2017]。
【0008】
筋細胞関連遺伝性障害のよく見られる分類の一つは、筋細胞から発生する突然変異タンパク質産物の位置に基づく。つまり、先天性ミオパチーは、筋細胞内にある収縮装置の遺伝的欠陥によって引き起こされると見なされ、筋生検上の特有の静的組織化学変化又は超微細構造変化によって定義される。対照的に、筋ジストロフィーは、筋膜又はその支持タンパク質の疾患として記載され、概して、進行中の筋変性及び筋再生の病理学的エビデンスによって特徴付けられる[Cardamone,2008]。
【0009】
端的には、収縮装置には、筋フィラメントを形成するアクチンとミオシンとで構成される筋原線維が含まれ、それらの筋フィラメントが互いに滑り合うことにより、筋細胞の形状を変化させる緊張が生じる。収縮装置の機能は、補強された筋細胞の細胞骨格と、人体にある多くの細胞膜と異なり、筋細胞周囲の基底膜と接触するグリコカリックスと称される多糖材料に重度に覆われている筋鞘内及びその周囲の高度に特殊化した構造とによるその相互作用に頼るところが大きい。この基底膜には、多数のコラーゲン原線維及びラミニンなど、特殊化した細胞外マトリックスタンパク質が含まれている。マトリックスタンパク質は、筋繊維が付着することのできる足場を提供する。筋細胞内部のアクチン骨格は、筋鞘の膜貫通タンパク質を通じて基底膜及び細胞の外部につながっている。このようなアンカリングされた多数の筋細胞が筋組織を作り上げており、筋細胞が同期した制御された形で緊張を生じることにより、大きな力が発生し得る。
【0010】
その細胞内収縮装置、筋鞘の特殊な機能及び構成を補強し及びそれを説明するタンパク質網、並びにその外側の多成分足場を含めた、筋細胞のこの構造的及び機能的複雑性は、大型の筋細胞特異的プロテオームの産物である。
【0011】
このプロテオームの実質的な部分は、広範な選択的スプライシングイベントが起こりがちな、往々にして極めて大型の多エクソン遺伝子から発生する純粋に筋細胞特異的な転写物から翻訳される大型の構造タンパク質である[Savarese,2020]。実際、特に、DMD、TTN、NEB、RYR1を含め、ヒトゲノムの中でも特に大型の一部の遺伝子に沿って散在する様々な突然変異が、とりわけ十分に特徴付けがなされている筋細胞関連遺伝性障害の根底にある原因であると認識されている。
【0012】
恐らく間違いなく、最も研究が進んでいる遺伝性筋細胞関連障害はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)であり、これは、ジストロフィンタンパク質をコードするDMD遺伝子の突然変異が原因となって、筋ジストロフィンアイソフォーム(Dp427m)の産生が妨げられることにより生じる。DMDは、特に重症度の高い疾患であり、進行性の衰弱及び骨格筋が線維状、骨性、又は脂肪質の組織に置き換わることを特徴とし、最終的には、通常心筋又は呼吸不全が原因で死亡に至る。DMDは、劣性且つX染色体連鎖性(X連鎖性)である。従って、ほとんどの患者が男性である。平均して2~3歳頃に初発症状が発生し、10~12歳頃には車椅子生活になり、最適なケアを行ったとしても、20~40歳で死亡する。スペクトラムの違いは、DMDがDMD遺伝子の正確に定義された部位特異的突然変異又は単一のホットスポット突然変異によって引き起こされるのではないという事実によって説明することができる。その逆に、DMDは、大型の多エクソン遺伝子における様々な異なる突然変異によって引き起こされる他の多くの筋細胞関連遺伝性障害と同様に、転写物のリーディングフレームがどの程度影響を受けたかに応じて表現型の重症度が決まる一連の障害のスペクトラムと見なすことができる。DMD症例は、通常は、非機能性の不安定なジストロフィンにつながる中途でのトランケーションを引き起こすフレームシフト突然変異又はナンセンス突然変異を内包している。これと対照的に、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)と呼ばれる軽症型のジストロフィノパチーは、DMD遺伝子のインフレーム突然変異、即ち、リーディングフレームを維持していて、単に内部でトランケートされるに過ぎないジストロフィン突然変異体タンパク質の産生につながる突然変異によって引き起こされる。
【0013】
ほとんどのフレーム外突然変異で重症のDMDになる一方、インフレーム突然変異では、圧倒的多数がより軽症のBMDになるという観察に基づき、ジストロフィン転写物のリーディングフレームを回復させることによって少なくとも部分的に機能性のタンパク質の産生を生じさせることを目標として、DMDに対して様々な異なるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)ベースの治療薬が試験され、開発されている。これらのASOは、短い(20~30ヌクレオチド)、往々にして化学的に修飾された核酸又は核酸類似体であって、プレmRNAスプライシングの間に標的エクソンに特異的に結合することによって欠陥のあるエクソンのいわゆるスキッピングを生じさせ、即ちmRNAへのそのインクルージョンを防ぐものである。エクソンスキッピングASO手法は、突然変異位置に応じた様々な異なるエクソンをスキップする必要があるため、突然変異特異的である。しかしながら、ある種のエクソンのスキッピングは、エクソン51(14%)、エクソン45(8%)、エクソン53(8%)、及びエクソン44(6%)のスキッピングを含め、より大きい患者群に適用することが可能である[Bladen,2013]。現在までのところ、エクソン51(エテプリルセン)、エクソン53(ゴロディルセン及びビルトラルセン)、又はエクソン45(カシメルセン)をスキップするように設計された4つの異なるモルホリノ型ASOが、少数の患者コホートでジストロフィンの回復を誘導したというエビデンスを何らか示しており、ある種の全身性副作用を呈するにもかかわらず、FDAの承認が与えられた。2’-O-メチルホスホロチオエート修飾を有する別のエクソン51スキッピングASO(ドリサペルセン)がプラセボ対照試験で評価されたが、例えば、注射部位反応の発生、タンパク尿、及び一部の患者の血小板減少が原因で、結局のところFDAの承認は下りなかった[Goemans,2018]。エクソンスキッピングを誘導する別の組成物については、国際公開第2018129384号パンフレットを参照することができる。
【0014】
DMDにおける他の核酸ベースの手法としては、高用量のベクターでマイクロジストロフィンcDNAを送達する試みがあった。これについては臨床試験が実施中であり、既にマイクロジストロフィン発現の成功を報告したものもあるが、一部の患者には、一過性腎不全を含め、自然免疫応答が原因と見られる重篤な有害作用の観察がないわけではない[Mendell,2020]。或いは、フォリスタチンなど、筋量を向上させることのできるタンパク質[Mendell,2020]又はSERCA2aなど、疾患機構を標的とするタンパク質[Wasala,2020]f)をコードする遺伝子のcDNAを送達する取り組みもまた進行中である。更なる考慮点には、覚醒した筋細胞の成長及び/又は再生を刺激するのためのマイクロRNA、miRNA模倣産物、アンチmiR、アンタゴmiRなどの、単独又は他の核酸ベースの療法との共投与のいずれかでの使用が関わる[Aranega,2021]。例えば、国際公開第2018080658号パンフレットは、DMD治療用のLNAベースのASO治療薬としてmiR-128-1を開示している。例えばエクソン欠失によるか、又はスプライス部位を無効にすることによってリーディングフレームを回復させるように設計されたガイドRNAを伴うCRISPR/Cas9技術に基づく更に別の代替的な手法が提案されており、その概念実証がDMD細胞株及び動物モデルで試行された[Chemello,2020;Nelson 2017]。しかしながら、ゲノム編集作業はいずれも未だ前臨床段階であり、それをヒトにおいて体系的に適用するには、ゲノム編集成分の最適な送達を含め、複数の難題を克服する必要がある。
【0015】
DMD又はBMD患者には、DMDの様々な異なる突然変異が何千と見付かっている[Blanden,2015]。遺伝子突然変異標的が同定されている他の多くの遺伝性筋細胞関連障害についても、同様の状況が存在する。それらとしては、限定はされないが、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(疾患遺伝子:DUX4/ダブルホメオボックス4)、筋強直性ジストロフィー(DMPK)、エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー(疾患遺伝子:EMD/エメリン及びLMNA/ラミンA/C)、肢帯型筋ジストロフィー1(疾患遺伝子:MYOT/ミオチリン、LMNA/ラミンA/C等)、先天性筋ジストロフィー(疾患遺伝子:LAMA2/メロシン又はラミニンα2鎖/コラーゲン6AをコードするCOL6A遺伝子のいずれか)を含めた他の筋ジストロフィー;又は家族性拡張型心筋症(疾患遺伝子:LMNA/ラミンA/C)、並びに特にネマリンミオパチー(nemalin myopathy)(疾患遺伝子:NEB/ネブリン、ACTA/骨格筋αアクチン、TPM3/αトロポミオシン-3、TPM2/βトロポミオシン-2、TNNT1/トロポニンT1、LMOD3/レイオモジン-3、MYPN/ミオパラジン等)又は先天性筋線維タイプ不均等症ミオパチー(疾患遺伝子:TPM3/αトロポミオシン-3、CTA/骨格筋αアクチン、RYR1/リアノジン受容体チャネル)を含む先天性ミオパチー、並びに例えばTTN遺伝子(タイチン)における突然変異が関わる任意の症候群が挙げられる。従って、多くの異なる筋消耗性障害の根底にある定義された遺伝子標的であっても、その突然変異にはばらつきがあるため、治療用核酸、かかるASO又はアンタゴmir[Cerro-Herreros,2020]の使用は、様々な筋消耗性障害に対する新規療法の開発のための理に適った実際的な方法であるように見える。
【0016】
しかしながら、上記で既に説明したとおり、多大な利点にもかかわらず、かかる核酸ベースの治療薬を、例えば、アンチセンス療法のため筋細胞サイトゾルに持ち込むか、又は直接遺伝子編集するため、そこから核内に持ち込むといったような、筋細胞内部の適切な区画に効率的に持ち込むことは、各種の送達システムと組み合わせたときであっても困難である。インビボでの筋細胞トランスフェクションのこの効率の低さにより、必然的にその標的部位での核酸ベースの治療薬の濃度は、有効な持続性のあるアウトカムを実現するには低過ぎることになる。これにより、ひいては投与用量を増加させる必要が生じ、次にはオフターゲット効果が引き起こされる。最もよく見られるかかる副作用には、補体カスケードの活性化、凝固カスケードの阻害、及びトール様受容体の媒介による免疫系の刺激がある。当然ながら、これらの作用は極めて望ましくないものであり、臓器不全を含め、患者の健康を脅かす、又は生命さえも脅かす副作用を誘発するリスクをはらんでいる。このような、及び同様の有害事象の発生により、DMDエクソンスキッピングASOドリサペルセンのように、多くの核酸ベースの治療薬が臨床試験で失敗に終わってきた。
【0017】
従って、筋細胞消耗性障害の治療用の新規核酸ベース薬物製剤を提供することが強く望まれており、それは、詳細には、インビボで筋細胞への効率的な核酸送達率を示すものとなるであろう。従って、治療用核酸の効果が、数ある中でも特に、(1)筋細胞消耗性障害に関係があるとされる、又はそれを引き起こすその遺伝子標的に高度に特異的であり、(2)十分に安全であり、(3)効果があり、(4)筋細胞に特異的に向かうものであって、他の細胞に対するオフターゲット活性がほとんど乃至全くなく、(5)十分に時宜を得た作用様式を呈し(例えば、投与された薬物が、ある一定の時間枠内にヒト患者の標的化した部位に到達しなければならず、且つある一定の時間枠にわたって標的化した部位に残っていなければならない)、及び/又は(6)患者の体内で十分に長く続く治療活性を有することになるであろう製剤が求められている。
【0018】
横紋筋細胞への様々な異なる薬物送達手法の包括的レビューについては、DC Ebner et al.,2015,Curr Pharm Des,21(10):1327-36.doi:10.2174/1381612820666140929095755を参照することができ、これは、筋標的化用ペプチド、マイクロバブル、ナノ粒子、ウイルスベースの、輸送体ベースの、及び抗体ベースの標的化技法に言及しているとともに、一般に筋細胞では細胞取込みが依然として大きな問題であるという事実も浮き彫りにしている。輸送体ベースの、及び抗体ベースの標的化技法に関しては、リガンドの媒介によって筋細胞表面上のエンドサイトーシス(又はインターナリゼーション)受容体を標的化することによる核酸の送達が、例えば、国際公開第2018/129384号パンフレット又は国際公開第2020/028857号パンフレットに示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、本発明者らの知識及び経験の限りでは、公知の筋特異的送達手法のいずれも、上記に概要を示した有益な特徴(1)~(6)の全て又は少なくとも実質的な部分を実現するものではない。従って、本分野の幾つかの領域で個々に長年にわたって徹底した研究及び進歩がなされてきたにもかかわらず、筋消耗性障害に罹患している患者の筋細胞への核酸ベースの治療薬の送達効率を改善することがなおも喫緊に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この必要性に対処するため、本発明者らは、筋細胞標的型治療用核酸を12,13-デヒドロオレアナン型のトリテルペノイドサポニンと組み合わせて含む新規の医薬組成物を開発したとともに、本明細書に記載する。こうした特異的サポニン型については、例えば国際公開第2020/126620号パンフレットに開示される多成分コンジュゲートに記載されており、そこでそれらのサポニン型は、幾つかの癌細胞型において様々な抗体-薬物コンジュゲート(ADC)に対してエンドソーム脱出促進活性を備えているものとして記載された。
【0021】
更に腫瘍細胞の文脈で、こうしたサポニンについて例えば国際公開第2020126609号パンフレットに言及がなされており、そこでは、サポニンと、HSP27をサイレンシングするためのBNAとの組み合わせによるか、又は腫瘍細胞マーカーに向けられるモノクローナル抗体のコンジュゲートでのサポニンと、HSP27をサイレンシングするためのBNAとの組み合わせによる様々な腫瘍モデルにおけるHSP27遺伝子のサイレンシングが記載されている。
【0022】
しかしながら、最終分化した筋細胞、詳細には心筋細胞は、代謝の点、並びに細胞膜構成及びエンドサイトーシス活性の点で、遺伝的に不安定な常に分裂している腫瘍細胞とはかなり異なる。更には、細胞シグナル伝達経路の乱れ及び無秩序な増殖活性に起因して、腫瘍は、透過性且つ漏出性の血管新生によって供給されることが公知であり[Hanahan and Weinberg,2011]、これは、筋組織に供給する健常なタイトジャンクションに富む血管とは大きく異なる。
【0023】
このような違いにもかかわらず、本発明者らは、筋エンドサイトーシス受容体リガンドコンジュゲート型ASOを12,13-デヒドロオレアナン型トリテルペノイドサポニンと組み合わせると、ヒト及びマウスDMD転写物において、エクソンスキッピング効率に意外なロバストな効果があることを観察した。いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、これらの知見が、前記の特異的な一群のエンドソーム脱出促進性サポニンに、治療用核酸が筋細胞のエンドソームから適切な筋細胞内部区画へと(治療薬にとって非常に望ましい、しかし十分には解明されていない、エンドソーム脱出と称される現象で)効率的に抜け出るのを刺激する非常に高い能力があることを指し示していると仮定した。
【0024】
本発明者らの知る限りでは、サポニンを筋細胞消耗性障害の治療用核酸と組み合わせる唯一の例が、Wangらによって試みられた [Wang,2018,Molecular Therapy:Nucleic Acids;Wang,2018-Drug Design,Development and Therapy]。しかしながら、これらの報告では、著者らは、公知のインビトロトランスフェクション剤ジギトニンなど、主にステロイド性のサポニンとの非共有結合的に結合した非標的型核酸複合体の膜穿孔トランスフェクション活性に集中した。しかしながら、Wangらによって研究されたとおりのサポニンはいずれも、12,13-デヒドロオレアナン型のエンドソーム脱出促進性サポニンではなかったとともに、これらの複合体はいずれも、エンドサイトーシス受容体リガンドを介して筋細胞を特異的に標的化するものではなかった。
【0025】
まとめると、先行技術の欠点に対処するため、本明細書では、筋消耗性障害、詳細には筋細胞関連遺伝性障害の治療又は予防における使用のための新規医薬組成物であって、12,13-デヒドロオレアナン型のエンドソーム脱出促進性サポニンと、有利には筋特異的エンドサイトーシス受容体標的化用リガンドがコンジュゲートした治療用核酸とを含む組成物を提示する。本発明者らは、本明細書に記載されるサポニンが、恐らくは核酸のエンドソーム脱出を標的筋細胞において特異的に容易にすることにより、治療用核酸を横紋筋細胞へと効率的に送達する独特な能力を有することを観察した。本明細書に提示する知見は、筋消耗性障害に罹患している患者のための、潜在的に治療負荷の低い、ひいてはより安全な新規の治療方法を開発する道を開くものである。これら及び他の利点については、続く部分に更に提示する。
【0026】
上述の有望な知見を踏まえて、本明細書には、核酸と、サポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を持つ遊離形態の(即ち、巨大分子とコンジュゲートされていない)エンドサイトーシス脱出促進性12,13-デヒドロオレアナン型サポニンとを含む改良された生物学的に活性な化合物及び医薬組成物が開示される。
【0027】
本明細書に開示されるコンジュゲートは、特に心筋細胞を含めた、分化した筋細胞、詳細には横紋筋細胞へのアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの治療用核酸の送達が促進され、有効に行われるという極めて望ましい特性を呈する特別な利点を備えている。
【0028】
本明細書に提示される革新的概念を詳細な実施形態を基に説明するが、それらの実施形態は説明と見なされるべきであり、特許請求の範囲に記載されるものを超えて限定するものと見なされてはならない。本明細書に記載されるとおりのこれらの実施形態は、特に指定されない限り、組み合わせで協働して機能することができる。
【0029】
本開示の実施形態の幾つかの目的のうちの一つは、筋消耗性障害に罹患した、核酸ベースの治療薬を必要としているヒト患者にかかる治療薬を投与したときに直面する、核酸がその標的細胞の適切な区画に十分に送達されないこと、及びそれに関連する非特異性の問題の解決法を提供することである。
【0030】
これらの実施形態の幾つかの目的のうちの更なる一つは、現行の核酸ベースの薬物について、それを必要としているヒト患者に対して詳細には副作用が誘導されるような過剰用量で投与したときの不十分な安全特性の問題の解決法を提供することである。
【0031】
本発明の実施形態の幾つかの目的のうちのなおも更なる一つは、現行の核酸ベースの療法が、それを必要としているヒト患者に投与したとき、非罹患細胞に対するオフターゲット活性はほとんど乃至全くなしに罹患筋細胞に到達し及び/又はその中に入る能力が十分でないことに起因して、それを必要としているヒト患者に投与したとき、所望されるよりも効果が低いという問題の解決法を提供することである。
【0032】
上記の目的のうちの少なくとも一つは、筋消耗性障害、詳細には、先天性ミオパチー又は特にデュシェンヌ型筋ジストロフィーを含めた筋ジストロフィーなど、筋細胞関連遺伝性障害である筋消耗性障害の治療又は予防における使用のための医薬組成物であって、
核酸、及び
サポニン、
を含む組成物において、
サポニンが、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、組成物を提供することにより実現する。
【0033】
更なる態様では、上記の目的のうちの少なくとも一つは、筋細胞関連遺伝性障害の治療又は予防のための治療的組み合わせであって、
(a)核酸、及び
(b)サポニン
を含む治療的組み合わせにおいて、
サポニンが、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、治療的組み合わせを提供することにより実現する。
【0034】
更なる態様では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物の、及び/又は本開示に係る治療的組み合わせの更なる実施形態が提供され、これらの実施形態は、上述の目的のうちの1つ以上に更に対処するものである。
【0035】
特に有利な態様では、好ましいサブタイプのエンドソーム脱出促進性サポニンと、例えば、消耗性筋細胞障害関連遺伝子転写物の欠陥のあるエクソンのスキッピングを誘導するように構成された、アンチセンスオリゴヌクレオチドなど、異なる治療用核酸と、前記核酸を筋細胞上のエンドサイトーシス受容体へと標的化するのに有利なリガンド又はその組み合わせとから選択されるものなど、有利な成分を含み、並びにリガンドを核酸とつなぐための、好ましくはヒトエンドソームに存在する条件下で切断可能であるように構成された共有結合性のリンカーも含む本開示の様々な異なる実施形態が提供される。
【0036】
本開示のこれら及び他の態様については、続きの部分に詳細に提示する。
【0037】
定義
用語「サポニン」は、その通常の確立された意味を有し、本明細書では、サポゲニンと称される親油性アグリコンコアと組み合わせになった1つ以上の親水性糖鎖を含む一群の両親媒性配糖体を指す。サポニンは、天然に存在するものであっても、又は合成のもの(即ち、天然に存在しないもの)であってもよい。用語「サポニン」には、天然に存在するサポニン、天然に存在するサポニンの機能性誘導体並びに化学的及び/又は生物工学的合成経路を通じてデノボ合成されるサポニンが含まれる。本明細書のコンジュゲートに係るサポニンは、サポゲニン又はアグリコンとも称される、五環性C30テルペン骨格であるトリテルペン骨格を有する。本発明のコンジュゲート内では、サポニンはエフェクター分子とは見なされず、また本発明に係るコンジュゲートのエフェクター部分とも見なされない。従って、サポニンとエフェクター部分とを含むコンジュゲートにおいて、エフェクター部分とは、コンジュゲートしたサポニンとは異なる分子である。本発明のコンジュゲートの文脈では、用語サポニンとは、ヒト細胞など、哺乳類細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在するとき、本発明のコンジュゲートに含まれる、且つ前記エンドソーム/リソソームにサポニンと一緒に存在するエフェクター部分に向けてエンドソーム/リソソーム脱出促進活性を発揮するようなサポニンを指す。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「サポニン誘導体」(「修飾されたサポニン」としても知られる)は、官能基の酸化、官能基の還元及び/又は別の分子との共有結合性の結合の形成(「コンジュゲーション」又は「共有結合性コンジュゲーション」とも称される)など、1つ以上の化学修飾によって誘導体化された天然に存在するサポニン(好ましくは、哺乳類細胞のエンドソーム又はリソソームに一緒に存在するとき、核酸など、治療用分子に向けてエンドソーム/リソソーム脱出促進活性がある)に対応する化合物を指すと理解されるものとする。好ましい修飾としては、アグリコンコアのアルデヒド基の誘導体化、糖鎖のカルボキシル基の誘導体化、又は糖鎖のアセトキシ基の誘導体化が挙げられる。典型的には、サポニン誘導体は、天然の対応物を有さず、即ちサポニン誘導体は、例えば植物又は木によって天然に生成されない。用語「サポニン誘導体」には、天然に存在するサポニンを誘導体化することによって得られる誘導体、並びに天然に存在するサポニンが1つ以上の化学修飾によって誘導体化されたものに対応する化合物を生じさせる化学的及び/又は生物工学的合成経路を通じてデノボ合成された誘導体も含まれる。本発明の文脈におけるサポニン誘導体は、サポニン機能性誘導体と理解されるべきである。サポニン誘導体の文脈における「機能性」は、サポニン又はサポニン誘導体と一緒に細胞と接触するエフェクター分子のエンドソーム脱出をサポニン又はサポニン誘導体が促進する能力又は活性と理解される。
【0039】
用語「アグリコンコア構造」は、サポニンのアグリコンコアから、そこに結合している炭水化物アンテナ又は糖鎖(グリカン)を除いたものを指すと理解されるものとする。例えば、キラ酸は、SO1861、QS-7及びQS21のアグリコンコア構造である。典型的には、サポニンのグリカンは、直鎖又は分岐グリカンなど、単糖又はオリゴ糖である。
【0040】
用語「糖鎖」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、グリカン、炭水化物アンテナ、単一の糖部分(単糖)又は複数の糖部分を含む鎖(オリゴ糖、多糖)のいずれかを指す。糖鎖は、糖部分のみからなることができ、又は、例えばQS-21に存在するなどの、4E-メトキシ桂皮酸、4Z-メトキシ桂皮酸、及び5-O-[5-O-Ara/Api-3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-オクタノイル]-3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-オクタン酸)のいずれか1つなど、更なる部分もまた含み得る。
【0041】
糖鎖の名称という文脈における用語「Api/Xyl-」又は「Api-又はXyl-」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、アピオース(Api)部分を含むか、又はキシロース(Xyl)部分を含むか、いずれかの糖鎖を指す。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、互いに同義語であり、任意のポリマー分子であって、核酸塩基(又は単に「塩基」、例えば、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、又はウラシル(U)のような標準的な核酸塩基であるか、又は5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、7-メチルグアニン;5,6-ジヒドロウラシル等のような任意の公知の非標準的な、修飾された、若しくは合成の核酸塩基である)又はそれと機能的に等価な、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)などの天然に存在する核酸(この天然に存在する核酸とは、ヌクレオチドである単位でできているポリマー分子であると理解されるべきである)と適切なハイブリダイゼーション条件下で水素結合ベースの核酸塩基対合(ワトソン・クリックの塩基対合など)によって会合する能力を前記ポリマー分子に与える等価体が単位に含まれる場合の、それらの単位でできているポリマー分子を包含すると解釈されるべきである。
【0043】
従って、化学的観点からは、ここでの定義に基づく核酸という用語は、化学的にDNA又はRNAであるポリマー分子、並びにゼノ核酸(XNA)又は人工核酸としても知られる、核酸類似体であるポリマー分子であって、1つ以上の(又は全ての)単位が修飾ヌクレオチドであるか、又はヌクレオチドの機能等価体であるポリマー分子を包含すると解釈することができる。核酸類似体は当該技術分野において周知であり、向上した特異性及び/又は親和性、その標的に対するより高い結合強度及び/又はインビボでの安定性の増加など、様々な特性に起因して、核酸類似体は研究及び医療に幅広く用いられている。核酸類似体の典型的な例としては、限定はされないが、ロックド核酸(LNA)(これは架橋型核酸(BNA)としても知られる)、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO、別名モルホリノ)、ペプチド核酸(PNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ヘキシトール核酸(HNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノ核酸(FANA又はFNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロリボ核酸(2’-F RNA又はFRNA);アルトリトール核酸(ANA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)等が挙げられる。
【0044】
規則に従い、核酸の長さは、本明細書では、核酸の一本鎖を構築する単位の数で表される。各単位が、1つの塩基対合イベントで会合する能力を有する厳密に1つの核酸塩基に対応するため、長さは、問題の核酸が一本鎖(ss)核酸か、それとも二本鎖(ds)核酸かにかかわらず、往々にしていわゆる「塩基対」又は「bp」で表される。天然に存在する核酸では、1bpが、1ntと略される1ヌクレオチドに対応する。例えば、1000ヌクレオチドでできている一本鎖核酸(又は各相補鎖が1000ヌクレオチドでできている2本の相補鎖でできている二本鎖核酸)は、1000塩基対又は1000bpの長さを有すると記載され、この長さはまた、1000nt又は1kbと略される1キロベースとも表すことができる。2キロベース又は2kbは、2000ヌクレオチドの一本鎖RNA又はDNAと同じと見なされる2000塩基対の長さに等しい。しかしながら、混用を避けるため、本明細書に定義するとおりの核酸が、化学的にヌクレオチドであるのみならず、またその機能等価体でもある単位を含み得る又はそれからなり得るという事実を考慮して、核酸の長さは、本明細書では、当該技術分野において同様によく見られる表記「nt」よりむしろ、「bp」又は「kb」で優先的に表すものとする。
【0045】
本明細書に開示されるとおりの有利な実施形態では、核酸は1kbを超えず、好ましくは500bpを超えず、最も好ましくは250bpを超えない。
【0046】
特に有利な実施形態では、核酸は、150bpを超えない核酸として定義されるオリゴヌクレオチド(又は単にオリゴ)であり、即ち、上記に提供される定義に従えば、核酸塩基又はそれと機能的に等価な、DNA又はRNAと適切なハイブリダイゼーション条件下で水素結合ベースの核酸塩基対合によって会合する能力を前記オリゴヌクレオチドに与える等価体が各単位に含まれる場合の、150単位以下でできている任意のポリマー分子であるオリゴヌクレオチドである。前記定義の範囲内では、本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドが、ヌクレオチドであるのみならず、またその合成等価体でもある単位を含み得る又はそれからなり得ることは直ちに認識されるであろう。換言すれば、化学的観点からは、本明細書で使用されるときの用語オリゴヌクレオチドは、RNA、DNA、又は核酸類似体、限定はされないが、LNA(BNA)、PMO(モルホリノ)、PNA、GNA、TNA、HNA、FANA、FRNA、ANA、CeNAなどを含む又はそれからなる可能性があると解釈されることになる。
【0047】
本明細書で使用されるとき、用語「筋細胞上のエンドサイトーシス受容体」は、その特異的リガンドが筋細胞の筋鞘の外側又は表面から接触可能な、且つ、例えばリガンドが受容体に結合するなど、外部刺激があったとき、エンドサイトーシス経路を経るインターナリゼーションを起こす能力を有する受容体又は輸送体であり得る表面分子を指すと理解されるべきである。一部の実施形態では、筋細胞上のエンドサイトーシス受容体はクラスリン媒介性エンドサイトーシスによってインターナライズされるが、またクラスリン非依存的な経路、例えば、食作用、マクロピノサイトーシス、カベオラ媒介性及びラフト媒介性取込み又は構成的クラスリン非依存的エンドサイトーシスなどによってもインターナライズされることができる。一部の実施形態では、筋細胞上のエンドサイトーシス受容体は、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/又は(例えば、及び)任意選択でリガンド結合ドメインを更に含み得る細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、筋細胞上のエンドサイトーシス受容体は、リガンド結合後に筋細胞によってインターナライズされるようになる。一部の実施形態では、リガンドは、筋標的化剤又は筋標的化抗体であってもよい。一部の実施形態では、インターナリゼーション細胞表面受容体は、トランスフェリン受容体(CD71)又は例えば、テトラスパニンファミリーに属するCD63(別名LAMP-3)である。
【0048】
用語「抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲート」又は「AOC」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、IgG、Fab、scFv、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、1つ又は複数のVHドメイン、シングルドメイン抗体、VHH、ラクダ科動物VHなどの抗体の任意のコンジュゲート、並びにBNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO、AON)、短鎖又は低分子干渉RNA(siRNA;サイレンシングRNA)、アンチセンスDNA、アンチセンスRNAなど、一本鎖分子又は二本鎖分子の体裁の、DNA、修飾されたDNA、RNA、mRNA、修飾されたRNA、合成核酸を包含する天然又は合成の一続きの核酸から選択されるオリゴヌクレオチドなど、ヒト患者などの対象の細胞と接触したときに治療効果を発揮することのできる任意のポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチド)分子を指す。
【0049】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体又はその結合断片」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン又は少なくとも1つの抗原決定基、例えば、抗原に特異的に結合するパラトープを含むポリペプチドを指す。一部の実施形態では、抗体は、完全長抗体である。一部の実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。しかしながら、一部の実施形態では、抗体は、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)2断片、Fv断片又はscFv断片である。一部の実施形態では、抗体は、ラクダ科動物抗体に由来するナノボディ又はサメ抗体に由来するナノボディである。一部の実施形態では、抗体は、ダイアボディである。一部の実施形態では、抗体は、ヒト生殖系列配列を有するフレームワークを含む。別の実施形態では、抗体は、IgG、IgG1、IgG2、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、IgG4、IgAl、IgA2、IgD、IgM、及びIgE定常ドメインからなる群から選択される重鎖定常ドメインを含む。一部の実施形態では、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと省略する)、及び/又は(例えば、及び)軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)を含む。一部の実施形態では、抗体は、定常ドメイン、例えば、Fc領域を含む。免疫グロブリン定常ドメインとは、重鎖又は軽鎖定常ドメインを指す。ヒトIgG重鎖及び軽鎖定常ドメインアミノ酸配列及びその機能的変異は公知である。重鎖に関して、一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体の重鎖は、アルファ(a)、デルタ(D)、イプシロン(e)、ガンマ(g)又はミュー(m)重鎖であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体の重鎖は、ヒトアルファ(a)、デルタ(D)、イプシロン(e)、ガンマ(g)又はミュー(m)重鎖を含み得る。詳細な実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒトガンマ1 CHI、CH2、及び/又は(例えば、及び)CH3ドメインを含む。一部の実施形態では、VHドメインのアミノ酸配列は、当該技術分野において公知のいずれかなど、ヒトガンマ(g)重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。ヒト定常領域配列の非限定的な例については、当該技術分野において記載されており、例えば、米国特許第5,693,780号明細書及びKabat E A et al,(1991)、前掲を参照のこと。一部の実施形態では、VHドメインは、本明細書に提供される可変鎖定常領域のいずれかと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体は修飾され、例えば、グリコシル化、リン酸化、SUMO化、及び/又は(例えば、及び)メチル化によって修飾される。一部の実施形態では、抗体は、1つ以上の糖又は炭水化物分子にコンジュゲートしているグリコシル化された抗体である。一部の実施形態では、1つ以上の糖又は炭水化物分子は、N-グリコシル化、O-グリコシル化、C-グリコシル化、GPI化(GPIアンカーの取付け)、及び/又は(例えば、及び)ホスホグリコシル化によって抗体にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、1つ以上の糖又は炭水化物分子は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、又はグリカン類である。一部の実施形態では、1つ以上の糖又は炭水化物分子は、分岐オリゴ糖又は分岐グリカンである。一部の実施形態では、1つ以上の糖又は炭水化物分子は、マンノース単位、グルコース単位、N-アセチルグルコサミン単位、N-アセチルガラクトサミン単位、ガラクトース単位、フコース単位、又はリン脂質単位を含む。一部の実施形態では、抗体は、本開示の1つ以上の抗原結合断片を含むポリペプチドがリンカーポリペプチド又は免疫グロブリン定常ドメインに連結したものを含むコンストラクトである。リンカーポリペプチドは、ペプチド結合によってつなぎ合わされた2つ以上のアミノ酸残基を含み、1つ以上の抗原結合部分の連結に使用される。リンカーポリペプチドの例は、報告されている(例えば、Holliger,P,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照のこと)。なおも更に、抗体は、抗体又は抗体部分と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドの共有結合性又は非共有結合性の会合によって形成された、より大きい免疫接着分子の一部であってもよい。かかる免疫接着分子の例としては、ストレプトアビジンコア領域を使用した四量体scFv分子の作成(Kipriyanov,S.M.,et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)並びにシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグを使用した二価のビオチン化scFv分子の作成(Kipriyanov,S.M.,et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047-1058)が挙げられる。
【0050】
用語「シングルドメイン抗体」、又は略して「sdAb」、又は「ナノボディ」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、例えば二価sdAbの文脈において、かかる単量体可変抗体ドメインの2つをタンデムで含むものなど、2つ以上の単量体可変抗体ドメインと称しない限り、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片を指す。二価ナノボディは、細胞上に存在する細胞表面分子の細胞外ドメイン上のエピトープなど、細胞の細胞外側に存在する分子上のエピトープを標的とする2つのシングルドメイン抗体を含む分子である。好ましくは細胞表面分子は細胞表面受容体である。二価ナノボディはまた、二価シングルドメイン抗体との名称でも呼ばれる。好ましくはこれらの2つの異なるシングルドメイン抗体は、共有結合的に直接結合しているか、又は2つの異なるシングルドメイン抗体に共有結合的に結合する中間分子を通じて共有結合的に結合している。好ましくは二価ナノボディの中間分子は、10,000ダルトン未満、より好ましくは5,000ダルトン未満、更により好ましくは2,000ダルトン未満、最も好ましくは1,500ダルトン未満の分子量を有する。
【0051】
本明細書で使用されるとき、用語「共有結合的に連結した」は、2分子以上が少なくとも1つの共有結合性の結合によって一体に、即ち直接連結されているか、又は共有結合性の結合の鎖を介して、即ち少なくとも1つ以上の原子を含むリンカーを介して連結されているという特徴を指す。
【0052】
本明細書で使用されるとき、用語「コンジュゲート」は、共有結合的に結合された、及び共有結合的に結合している2つ以上の異なる分子の組み合わせと解釈されるべきである。例えば、本明細書に開示されるとおりのコンジュゲートを形成する異なる分子としては、1つ以上の核酸又はオリゴヌクレオチド分子、及び筋細胞の表面上に存在するエンドサイトーシス受容体に結合する1つ以上のリガンドであって、好ましくは、IgG、モノクローナル抗体(mAb)、VHHドメイン又は別のナノボディ型、2つのシングルドメイン抗体を含む二価ナノボディ分子等など、抗体又はその結合断片であるリガンドを挙げることができる。一部の態様では、本明細書に開示されるコンジュゲートは、例えば中央リンカー又は更なるリンカーへの連結を介するなど、リンカーなどの1つ以上の中間分子を介して異なる分子を共有結合的に連結することによって作られてもよい。コンジュゲートにおいては、3つなど、2つ以上の異なる分子全てが互いに直接共有結合的に結合している必要はない。コンジュゲート中の異なる分子が共有結合的に結合しているというのはまた、両方が同じリンカーなどの中間分子に共有結合的に結合することによってもよく、又は各々が更なるリンカー若しくは中央リンカーなどの中間分子に共有結合的に結合していて、2つの(異なる)リンカーなど、それらの2つの中間分子が互いに共有結合的に結合しているものによってもよい。この定義によれば、コンジュゲート中の2つの異なる分子の間には、共有結合的に結合した原子の鎖が間にある限りは、更に多くのリンカーなどの中間分子が存在し得る。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「投与すること」又は「投与」は、(例えば、対象の病態を治療するのに)生理学的に及び/又は(例えば、及び)薬理学的に有用な方法で対象に複合体を提供することを意味する
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「近似的に」又は「約」は、1つ以上の目的とする値に適用されるとき、明記された基準値と同様の値を指す。特定の実施形態では、用語「近似的に」又は「約」は、特に明記されない限り、又はその他文脈上明らかでない限り、明記された基準値からいずれの向きにも(それより大きいか、又はそれより小さい)15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満の範囲内にある値の範囲を指す(かかる数字が可能な値の100%を超えることになる場合を除く)。
【0055】
本明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、例えば同様の要素、組成物、組成物中の成分、又は別個の方法ステップの間を区別するために使用され、必ずしも逐次的又は時間的順序を記載するために使用されるわけではない。これらの用語は適切な状況下で交換可能であり、本発明のそれらの実施形態は、特に指定されない限り、本明細書に記載又は例示されている以外の他の順番でも機能し得る。
【0056】
本明細書に記載されるとおりの実施形態は、特に指定されない限り、組み合わせで協働して機能することができる。更に、様々な実施形態は、「好ましい」又は「例えば(e.g.)」又は「例えば(for example)」又は「詳細には」などと称されるが、限定するものではなく、本発明に開示される概念を実施し得る例示的な方法と解釈されるべきである。
【0057】
特許請求の範囲で使用される用語「含む(comprising)」は、例えば、その後に列挙される要素又は方法ステップ又はある組成物の構成成分に限定されると解釈されてはならず;この用語は、他の要素又は方法ステップ又はある特定の組成物における構成成分を排除しない。この用語は、明記されている特徴、完全体、(方法)ステップ又は成分の存在を指定していると解釈される必要があるが、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ若しくは成分、又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。従って、「ステップA及びBを含む方法」という表現の範囲は、ステップA及びBのみからなる方法に限定されるべきではなく、むしろ本発明に関しては、その方法の唯一列挙されているステップがA及びBであるというに過ぎず、更には特許請求の範囲には、それらの方法ステップの均等物が含まれると解釈されなければならない。従って、「成分A及びBを含む組成物」という表現の範囲は、成分A及びBのみからなる組成物に限定されるべきではなく、むしろ本発明に関しては、その組成物の唯一列挙されている成分がA及びBであるというに過ぎず、更には特許請求の範囲には、それらの成分の均等物が含まれると解釈されなければならない。
【0058】
加えて、ある要素又は成分が不定冠詞「ある(a)」又は「ある(an)」で言及されても、文脈上その要素又は成分がただ1つしかないことが明確な要件でない限り、2つ以上の要素又は成分が存在する可能性を除外するものではない。従って、不定冠詞「ある(a)」又は「ある(an)」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0059】
用語「サポニナム・アルバム(Saponinum album)」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、SA1657及び主にSA1641を含有する、ギプソフィラ・パニキュラタ(Gypsophila paniculata)及びギプソフィラ・アロスティ(Gypsophila arostii)由来のサポニンを含有するMerck KGaA(Darmstadt、Germany)によって製造されるサポニンの混合物を指す。
【0060】
用語「キラヤサポニン」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、キラヤ(Quillaja saponaria)のサポニン画分、従って、主にQS-18及びQS-21を含有する、他の全てのQSサポニンの供給源を指す。
【0061】
「QS-21」又は「QS21」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、QS-21 A-apio(約63%)、QS-21 A-xylo(約32%)、QS-21 B-apio(約3.3%)、及びQS-21 B-xylo(約1.7%)の混合物を指す。
【0062】
同様に、「QS-21A」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、QS-21 A-apio(約65%)及びQS-21 A-xylo(約35%)の混合物を指す。
【0063】
同様に、「QS-21B」は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、QS-21 B-apio(約65%)及びQS-21 B-xylo(約35%)の混合物を指す。
【0064】
用語「Quil-A」は、キラヤ(Quillaja saponaria)由来の市販されている半精製抽出物を指し、ばらつきのある分量の50種を超える異なるサポニンを含有していて、その多くは、QS-7、QS-17、QS-18及びQS-21に見られるトリテルペン-三糖の部分構造Gal-(1→2)-[Xyl-(1→3)]-GlcA-をC-3β-OH基に組み込んでいる。Quil-Aに見られるサポニンは、van Setten(1995)の表2に列挙されている[Dirk C.van Setten,Gerrit van de Werken,Gijsbert Zomer and Gideon F.A.Kersten,Glycosyl Compositions and Structural Characteristics of the Potential Immuno-adjuvant Active Saponins in Quillaja Saponaria Molina Extract Quil A,RAPID COMMUNICATIONS IN MASS SPECTROMETRY,VOL.9,660-666(1995)]。Quil-Aは、またキラヤサポニンも、キラヤ(Quillaja saponaria)由来のサポニンの画分であり、両方とも、大部分が重複する含有内容である多種多様な異なるサポニンを含有する。これらの2つの画分は異なる精製手順によって得られるため、2つの画分は、その具体的な組成の点で異なる。
【0065】
用語「QS1861」及び用語「QS1862」は、QS-7及びQS-7 apiを指す。QS1861は1861ダルトンの分子量を有し、QS1862は1862ダルトンの分子量を有する。QS1862は、Fleck et al.(2019)の表1の第28行に記載されている[Juliane Deise Fleck,Andresa Heemann Betti,Francini Pereira da Silva,Eduardo Artur Troian,Cristina Olivaro,Fernando Ferreira and Simone Gasparin Verza,Saponins from Quillaja saponaria and Quillaja brasiliensis:Particular Chemical Characteristics and Biological Activities,Molecules 2019,24,171;doi:10.3390/molecules24010171]。記載されている構造は、QS-7のapiバリアントQS1862である。分子量は1862ダルトンであり、この質量が、グルクロン酸にプロトンを含む正式な質量となるとおりである。中性pHでは、分子は脱プロトン化される。陰イオンモードで質量分析法により測定したとき、測定される質量は1861ダルトンである。
【0066】
用語「SO1861」及び「SO1862」は、サボンソウ(Saponaria officinalis)の同じサポニンを指し、但し、それぞれ脱プロトン化形態又はapi形態である。分子量は1862ダルトンであり、この質量が、グルクロン酸にプロトンを含む正式な質量となるとおりである。中性pHでは、分子は脱プロトン化される。質量を質量分析法を用いて陰イオンモードで測定したとき、測定される質量は1861ダルトンである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】非DMD(健常)ドナー(KM155)からの分化したヒト筋管における(A)SO1861-EMCHの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのDMD-ASO及び(B)SO1861-EMCHの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのDMD-PMOを使用したエクソンスキップ
【
図2A】hCD71-PEG4-SPDP前駆体の合成
【
図2B】hCD71-PEG4-SPDP前駆体によるhCD71-DMD-ASOの作製
【
図2C】hCD71-PEG4-SPDP前駆体によるhCD71-DMD-PMOの作製
【
図3】非DMD(健常)ドナー(KM155)からの分化したヒト筋管における(A)SO1861-EMCHの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-DMD-ASO(DAR2.1)及び(B)SO1861-EMCHの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-DMD-PMO(DAR3.2)を使用したエクソンスキップ;
図7もまた参照のこと
【
図4】DMD罹患ドナー(DM8036)からの分化したヒト筋管における(A)SO1861-EMCHの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-DMD-ASO及び(B)SO1861-EMCHの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-DMD-PMOを使用したエクソンスキップ;注、(A、右のパネル)において、0.013nMの最初の試料(アスタリスク)は空のレーンを示す
【
図5】分化したマウスC2C12筋管におけるSO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのmCD71-M23D PMOを使用したエクソンスキップ
【
図6】SO1861-EMCH及びSO1861-SC-マレイミド、概略表現。
【
図7】非DMD(健常)ドナー(KM155)からの分化したヒト筋管における(A)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-DMD-ASO(DAR2.2)及び(B)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-DMD-PMO(DAR3.1)を使用したエクソンスキップ評価
【
図8】DMD罹患ドナー(DM8036)からの分化したヒト筋管における(A)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-DMD-ASO(DAR2.2)及び(B)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-DMD-PMO(DAR3.1)を使用したエクソンスキップ評価
【
図9A】治療後4日目、14日目、及び28日目の腓腹筋における単回用量mCD71-M23D(群2)及び媒体対照(群1)からのマウスのエクソンスキップ分析
【
図9B】治療後4日目、14日目、及び28日目の横隔膜における単回用量mCD71-M23D(群2)及び媒体対照(群1)からのマウスのエクソンスキップ分析
【
図9C】治療後4日目、14日目、及び28日目の心臓における単回用量mCD71-M23D(群2)及び媒体対照(群1)からのマウスのエクソンスキップ分析
【
図10】mCD71-M23D(群2)及び媒体対照(群1)での単回用量研究からの4日目、14日目、28日目における(A)血清クレアチニン及び(B)血清ALT分析
【
図11A】中間体3の(中間体1及び2を経る)合成
【
図11C】中間体4とM23D-SH(還元型)のカップリングにより中間体5の合成を実現すること
【
図11D】中間体3及び5のカップリングにより所望の最終産物DBCO-(M23D)
2、即ち、2つのM23D PMOオリゴヌクレオチドペイロードを担持する分岐した足場を得ることが関わる合成スキームによるDBCO-(M23D)
2の合成。
【
図12A】mCD71-M23D及びmCD63-M23Dなど、mAb-M23Dのコンジュゲーション手順の概略表現。トリミングされ及びアジド修飾されたmAbグリカンの調製。
【
図12B】mCD71-M23D及びmCD63-M23Dなど、mAb-M23Dのコンジュゲーション手順の概略表現。歪み促進型アジド-アルキンクリック反応による、トリミングされ及びアジド修飾されたmAbグリカンとDBCO-(M23D)
2との間のコンジュゲーション、mAb-(M23D)
4が得られる。注:概略表現を明確にするため、mAb-M23DはDAR4で示す。
【
図12C】mCD71-M23D及びmCD63-M23Dなど、mAb-M23Dのコンジュゲーション手順の概略表現。記号的に表現したグリカン残基を説明する凡例。
【
図12D】mCD71-M23D及びmCD63-M23Dなど、mAb-M23Dのコンジュゲーション手順の概略表現。記号的に表現した分子を説明する凡例。
【
図13】分化したマウスC2C12筋管における(A)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのmCD71-M23D、及び(B)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのmCD63-M23Dのエクソン23スキップ分析。
【
図14A】活性化リジン(Lys)残基におけるPEG4-SPDPによるhAb官能化が関わる、hCD71-5’-SS-DMD-ASO、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)、及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1~5)など、hAb-DMD-オリゴのコンジュゲーション手順の概略表現。注:概略表現を明確にするため、hAb-DMD-オリゴはDAR4で示す。
【
図14B】保護されたDMD-オリゴの活性化が関わる、hCD71-5’-SS-DMD-ASO、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)、及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1~5)など、hAb-DMD-オリゴのコンジュゲーション手順の概略表現。注:概略表現を明確にするため、hAb-DMD-オリゴはDAR4で示す。
【
図14C】活性化DMD-オリゴ-SHとhAb-PEG4-SPDPとの間のジスルフィド結合形成が関わる、hCD71-5’-SS-DMD-ASO、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)、及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1~5)など、hAb-DMD-オリゴのコンジュゲーション手順の概略表現。注:概略表現を明確にするため、hAb-DMD-オリゴはDAR4で示す。
【
図14D】図の凡例が関わる、hCD71-5’-SS-DMD-ASO、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)、及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1~5)など、hAb-DMD-オリゴのコンジュゲーション手順の概略表現。注:概略表現を明確にするため、hAb-DMD-オリゴはDAR4で示す。
【
図15】非DMD(健常)ドナー(KM155)からの分化したヒト筋管における、(A)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-5’-SS-DMD-ASO(DAR2.1)、及び(B)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)(DAR2.2)のエクソン51スキップ分析。
【
図16A】非DMD(健常)ドナー(KM155)からの分化したヒト筋管における、SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1)(DAR2.1)のエクソン51スキップ分析。
【
図16B】非DMD(健常)ドナー(KM155)からの分化したヒト筋管における、SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)(DAR3.0)のエクソン51スキップ分析。
【
図16C】非DMD(健常)ドナー(KM155)からの分化したヒト筋管における、SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-3’-SS-DMD-PMO(3)(DAR2.6)のエクソン51スキップ分析。
【
図17】非DMD(健常)ドナー(KM155)からの分化したヒト筋管における、(A)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-3’-SS-DMD-PMO(4)(DAR2.3)、及び(B)SO1861-SC-Malの共投与無し(左のパネル)又は有り(右のパネル)でのhCD71-3’-SS-DMD-PMO(5)(DAR2.1)のエクソン53スキップ分析。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本明細書には、エンドサイトーシス脱出促進性サポニンと、好ましくは筋細胞表面エンドサイトーシス受容体標的化用リガンドに連結された治療用核酸とを含む改良された生物学的に活性な医薬組成物が開示される。本明細書に開示される組成物は、特に心筋細胞を含めた、分化した筋細胞、詳細には横紋筋細胞へのアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの治療用核酸の送達が促進され、有効に行われるという極めて望ましい特性を呈する特別な利点を備えている。
【0069】
本明細書に提示される革新的概念を本開示の詳細な実施形態又は態様を基に説明するが、それらは説明と見なされるべきであり、特許請求の範囲に記載されるものを超えて限定するものと見なされてはならない。本明細書に記載されるとおりの詳細な態様は、特に指定されない限り、組み合わせで協働して機能することができる。本発明をいくつかの実施形態を参照して記載しているが、当業者には、本明細書を読めば、並びに図面及びグラフを検討すれば、その代替例、改良例、変形例及び均等物が明らかになるであろう。本発明は、いかなる形であれ、例示されている実施形態に限定されることはない。添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、変更を加えることができる。
【0070】
本開示の実施形態の幾つかの目的のうちの一つは、筋消耗性障害に罹患した、核酸ベースの治療薬を必要としているヒト患者にかかる治療薬を投与したときに直面する送達の非効率性の問題の解決法を提供することである。本実施形態の幾つかの目的のうちの更なる一つは、現行の核酸ベースの療法が、それを必要としているヒト患者に投与したとき、非罹患細胞に対するオフターゲット活性はほとんど乃至全くなしに罹患筋細胞に到達し及び/又はその中に入る能力が十分でないことに起因して、それを必要としているヒト患者に投与したとき、所望されるよりも効果が低いという問題の解決法を提供することである。
【0071】
いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、本明細書に開示される新規の医薬組成物は、エンドサイトーシス受容体媒介性エンドサイトーシスによって筋細胞へと標的化される核酸ベースの治療薬について、特異的な一群のトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンが強力なエンドソーム脱出促進特性を呈するように見えるという観察に基づいて企図された。
【0072】
エンドサイトーシス経路は複雑であり、十分には分かっていない。現在では、エンドサイトーシス経路に、小胞輸送によってつながる安定した区画が関わるという仮説が立てられている。区画とは、細胞に必須の特定の一連の機能に特化した、複雑で多機能の膜オルガネラである。小胞は、組成が単純な一過性のオルガネラであると考えられ、既存の区画から出芽することによってデノボで形成される膜に囲まれた入れ物と定義される。区画とは対照的に、小胞は、生理学的に不可逆な一連の生化学的変化である成熟を起こすことができる。初期エンドソーム及び後期エンドソームが、エンドサイトーシス経路における安定な区画に相当する一方、一次エンドサイトーシス小胞、ファゴソーム、多小胞体(エンドソーム担体小胞とも呼ばれる)、分泌顆粒、及び更にリソソームが小胞に相当する。
【0073】
エンドサイトーシス小胞は、原形質膜において、最も顕著にはクラスリン被覆ピットから生じるものであり、初めに、約pH6.5の主要な選別区画である初期エンドソームと融合する。インターナライズされたカーゴ及び膜の大部分は、リサイクリング小胞(リサイクル経路)を通じて原形質膜にリサイクルされる。分解されるべき成分は、多胞体を介して酸性の後期エンドソーム(6未満のpH)に輸送される。リソソームは、成熟リソソーム酵素を貯蔵し、必要に応じてそれを後期エンドソーム区画に送達することのできる小胞である。得られたオルガネラは、ハイブリッドオルガネラ又はエンドリソソームと呼ばれる。リソソームは、リソソーム再形成と称される過程でハイブリッドオルガネラを出芽する。後期エンドソーム、リソソーム、及びハイブリッドオルガネラは、非常に動的なオルガネラであり、これらの間の区別は難しい場合が多い。エンドサイトーシスで取り込まれた分子の分解は、エンドリソソームの内部で起こる。
【0074】
エンドソーム脱出は、エンドサイトーシス経路、好ましくは、クラスリン媒介性エンドサイトーシス、又はリサイクリング経路からの任意の種類の区画又は小胞の内腔から物質が能動的又は受動的に細胞質に放出されることである。従って、エンドソーム脱出は、中間体及びハイブリッドオルガネラを含めた、エンドソーム、エンドリソソーム又はリソソームからの放出を含むが、これらに限定されない。細胞質ゾルに入った後、前記物質は、核など、他の細胞単位に移動する可能性がある。
【0075】
本明細書に提示されるデータによって実証されることになるとおり、サポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンを本開示の治療用組成物に含めると、治療用核酸が筋細胞のエンドソームから適切な筋細胞内部区画へと効率的に抜け出るのが刺激されるように見えた。
【0076】
これらの有望な観察及び知見を踏まえて、第1の一般的態様では、本発明は、筋消耗性障害の治療又は予防における使用のための医薬組成物であって、
核酸、及び
サポニン
を含む組成物において、
サポニンが、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、組成物を提供する。
【0077】
換言すると、一般的な態様では、本発明は、筋消耗性障害の治療又は予防における使用のための医薬組成物であって、
核酸、及び
サポニン、
を含む組成物において、
サポニンが、サポニンアグリコンコア構造のC-23位に、
アルデヒド基;又は
酸性条件下で切断されるように適合された、前記切断に伴いサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基が生成されるか、又は回復するような酸感受性の切断可能な共有結合性の結合
のいずれかを含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンであり、
ひいては、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、組成物を提供する。
【0078】
次の一般的態様では、本発明はまた、例えば筋細胞関連遺伝性障害の治療又は予防のための、治療的組み合わせであって、
(a)核酸、及び
(b)サポニン
を含む治療的組み合わせにおいて、
サポニンが、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、治療的組み合わせも提供する。
【0079】
従って、次の一般的態様では、本発明は、好ましくは筋細胞関連遺伝性障害の治療又は予防のための、治療的組み合わせであって、
(a)核酸、及び
(b)サポニン
を含む治療的組み合わせにおいて、
サポニン サポニンアグリコンコア構造のC-23位に、
アルデヒド基;又は
酸性条件下で切断されるように適合された、前記切断に伴いサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基が生成されるか、又は回復するような酸感受性の切断可能な共有結合性の結合
のいずれかを含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニン、
ひいては、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンである、治療的組み合わせを提供する。
【0080】
本明細書で使用されるとき、文脈から、治療を目的とする本明細書に開示される組成物の一部を形成する核酸及び治療的組み合わせが、選択された筋消耗性障害を治療し又はその予防を実施するための治療活性を備えるように選択されることが理解されるであろう。換言すると、本明細書に開示されるとおりの組成物/組み合わせに含まれるとおりの核酸は、ある障害に対する治療用核酸であることになるが、一方、別の障害に対しては、それはいかなる利益ももたらさないものであり得る。選択された障害の特異的治療を実施することを目指す当業者は、有望な治療用核酸の選択をどのように実施すればよいか分かっているであろうとともに、かかる障害を引き起こす突然変異に関する自身の知識、又は所与の患者の遺伝子突然変異スクリーニング結果のいずれかに基づいて、改良された治療を実施するためには、本明細書に開示されるとおりの新規組成物/組み合わせにどの治療用核酸を含めるべきかを決断することが可能であろう。
【0081】
好ましい実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物が提供され、ここで筋消耗性障害は、好ましくは先天性ミオパチー又は筋ジストロフィー(好ましくは先天性ミオパチーは、ネマリンミオパチー又は先天性筋線維タイプ不均等症ミオパチーから選択され、及び/又は筋ジストロフィーは、ジストロフィノパチー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー1B型、先天性筋ジストロフィーから選択される);又は家族性拡張型心筋症である筋細胞関連遺伝性障害であり;最も好ましくは筋消耗性障害は、ジストロフィノパチーである、好ましくはデュシェンヌ型筋ジストロフィーである筋細胞関連遺伝性障害である。
【0082】
特に有利な実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物が提供され、ここで筋消耗性障害の治療又は予防には、好ましくはエクソンスキッピングが関わるアンチセンス療法が関わる。
【0083】
本明細書に開示される組成物及び治療的組み合わせにおける適用に好適なサポニンは、トリテルペン骨格の基本構造が五環性C30テルペン骨格(サポゲニン又はアグリコンとも称される)であり、且つその天然の非誘導体状態でC-23位にアルデヒド基を更に含むようなトリテルペン12,13-デヒドロオレアナン型骨格を有する。かかる公知のサポニンの例を表1に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
これらのサポニンの注目すべき特徴は、サポニンアグリコンコア構造のC-23位にあるアルデヒド基である。いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、サポニンのアグリコンコア構造(ここでは「アグリコン」とも称される)に前記アルデヒド基が存在することは、本発明のコンジュゲートに含まれる治療用核酸のエンドソーム脱出をサポニンが刺激し及び/又は増強する能力に特に有益であることが観察された。
【0091】
エンドソーム脱出促進特性には、サポニンアグリコンコア構造のC-23位にあるアルデヒド基が一たびエンドソームの内部に入ると遊離アルデヒド基となり、ひいては、表1にその天然形態が示される本明細書に開示される好適なサポニンに対し、原則的には、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位においてその位置の遊離アルデヒド基のキャップを取る、又はそれを回復させる任意の化学修飾を適用できることが特に有益であるように見える。
【0092】
本明細書に開示されるとおり、かかる化学修飾には、酸性条件下で切断されるように適合された、前記切断に伴いサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基が生成されるか、又は回復するような酸感受性の切断可能な共有結合性の結合となるようにC-23位のアルデヒド基を変換すること、又は置き換えることが含まれ、その結果、アルデヒドでキャッピングされた(又はアルデヒドで保護された)サポニン誘導体が生成されることになり、これは、哺乳類(例えばヒト)細胞のエンドソーム区画内に入った後、サポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含むサポニンとなる。このように設計された結合について、C-23位におけるアルデヒド基の回復は、哺乳類/ヒトエンドソーム及び/又はリソソームの区画に存在する酸性条件に反応して、酸性であることによって前記酸感受性の共有結合性の結合の切断が引き起こされる結果である。
【0093】
上記を踏まえて、更なる実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は治療的組み合わせが開示され、ここで酸感受性の切断可能な共有結合性の結合は、セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、イミン結合、1,3-ジオキソラン結合を含めたアセタール結合、及び/又はオキシム結合のいずれか1つ以上から選択され、好ましくは酸感受性の切断可能な共有結合性の結合は、セミカルバゾン結合又はヒドラゾン結合のいずれかである。
【0094】
有利な実施形態では、かかる切断可能な共有結合性の結合は、セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、又はイミン結合から選択することができる。
【0095】
例えば、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下において切断により外れる切断可能な共有結合性の結合で前記C-23位に結び付いたマレイミド含有部分によってアルデヒド基が例えば置換されているとき、それによってサポニンアグリコンコア構造のC-23位にある前記アルデヒド基が、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下での前記切断に伴い回復するため、かかるサポニンのエンドソーム脱出促進特性はなおもまた極めて明白であることが観察された。
【0096】
従って、次の実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は治療的組み合わせが提供され、ここでは酸感受性の切断可能な共有結合性の結合がマレイミド含有部分をサポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付けている。
【0097】
例えば、更なる可能な実施形態では、マレイミド含有部分は、セミカルバゾン結合の形成時にサポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付く4-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル)ピペラジン-1-カルボヒドラジドを含むか又はそれからなる分子の一部であることができ(以下SC-マレイミドと称する)、又はここでマレイミド含有部分は、ヒドラゾン結合の形成時にサポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付くN-ε-マレイミドカプロン酸ヒドラジドを含むか又はそれからなる分子の一部である(以下EMCHと称する)。
【0098】
従って、可能な実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は治療的組み合わせが開示され、ここでサポニンアグリコンコア構造のC-23位にあるアルデヒド基は、遊離アルデヒド基であるか、又はヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下で切断により外れる切断可能な共有結合性の結合で前記C-23位に結び付いたマレイミド含有部分によって置換されているアルデヒド基であって、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下での前記切断に伴い前記サポニンアグリコンコア構造のC-23位にあるアルデヒド基が回復するようなアルデヒド基であるか、いずれかであり;好ましくはここで切断可能な共有結合性の結合は、セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、又はイミン結合から選択され;より好ましくはセミカルバゾン結合及びヒドラゾン結合から選択され;最も好ましくは、ヒドラゾン結合である。
【0099】
別の実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでマレイミド含有部分は、セミカルバゾン結合の形成時にサポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付く4-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル)ピペラジン-1-カルボヒドラジドを含むか又はそれからなる分子の一部であり(以下SC-マレイミドと称する)、又はここでマレイミド含有部分は、ヒドラゾン結合の形成時にサポニンアグリコンコア構造のC-23位に結び付くN-ε-マレイミドカプロン酸ヒドラジドを含むか又はそれからなる分子の一部である(以下EMCHと称する)。
【0100】
次に、更なる具体的な実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンは、核酸又はリガンドなど、巨大分子との直接の又は間接的な共有結合性のコンジュゲーションを欠いている1つ以上のサポニン分子からなるものとして定義される遊離サポニンである。
【0101】
好ましい実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここで組成物は、2~6μMのサポニン、好ましくは3~5μMであり、より好ましくは3.5~4.5μMであり、及び最もは約4μMであるサポニンを含む。
【0102】
その自然のままの又はコンジュゲートされていない形態でC-23位にアルデヒド基を天然で含む公知の12,13-デヒドロオレアナン型サポニンの多くは、そのアグリコンコア構造がキラ酸又はギプソゲニンのいずれかであるサポニンである。例示的なかかるサポニンは、サポニンAとして描かれ、以下の構造によって例示される:
【0103】
【0104】
これを踏まえて、キラ酸アグリコン又はギプソゲニンアグリコンコア構造を含むサポニンが、本開示の目的上、特に好適であることが観察された。
【0105】
従って、更なる実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンアグリコンコア構造は、キラ酸、ギプソゲニン、及びその誘導体のいずれか1つ以上から選択され、好ましくはここでサポニンアグリコンコア構造は、キラ酸又はギプソゲニン、より好ましくはキラ酸である。
【0106】
上記を踏まえて、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンアグリコンコア構造は、
・キラ酸、
・キラ酸のC-23位のアルデヒド基がキラ酸のC-23位の酸感受性の切断可能な共有結合性の結合に変換されているキラ酸誘導体;
・ギプソゲニン、及び
・ギプソゲニンのC-23位のアルデヒド基がギプソゲニンのC-23位の酸感受性の切断可能な共有結合性の結合に変換されているギプソゲニン誘導体
のいずれか1つ以上から選択され;
好ましくはここでサポニンアグリコンコア構造は、キラ酸又はキラ酸のC-23位のアルデヒド基がキラ酸のC-23位の酸感受性の切断可能な共有結合性の結合に変換されているキラ酸誘導体である。
【0107】
サポニンは、アグリコンコア構造に結び付いた1つ以上の糖鎖を含むことができる。本開示の組成物又は治療的組み合わせの好ましいサポニンは、C-23位にアルデヒド基を含むトリテルペン12,13-デヒドロオレアナンアグリコンコア構造に結び付いた単一の鎖を含むか(即ち、モノデスモシド型である)又は2つの鎖を含む(即ち、ビデスモシド型である)。
【0108】
糖鎖はまた、エンドソーム脱出促進特性においても役割を果たすと仮定された。
【0109】
上記を踏まえて、更なる実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンは、末端グルクロン酸残基を含む第1の糖鎖を含み、且つ少なくとも4つの糖残基を分岐した配置で含む第2の糖鎖を含む少なくともビデスモシド型サポニンであり;好ましくはここで第1の糖鎖は、Gal-(1→2)-[Xyl-(1→3)]-GlcAであり、及び/又はここで少なくとも4つの糖残基の分岐した第2の糖鎖は、末端フコース残基及び/又は末端ラムノース残基を含む。
【0110】
関連する実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンは、サポニンアグリコンコア構造のC-3位に第1の糖鎖及び/又はサポニンアグリコンコア構造のC-28位に第2の糖鎖を含み;好ましくはここで第1の糖鎖は、サポニンアグリコンコア構造のC-3β-OH基における炭水化物置換基であり、及び/又はここで第2の糖鎖は、サポニンアグリコンコア構造のC-28-OH基における炭水化物置換基である。
【0111】
別の実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンは、
a)リストA:
-キラヤ(Quillaja saponaria)サポニン混合物、又はキラヤ(Quillaja saponaria)から単離されたサポニン、例えば、Quil-A、QS-17-api、QS-17-xyl、QS-21、QS-21A、QS-21B、QS-7-xyl;
-サポニナム・アルバム(Saponinum album)サポニン混合物、又はサポニナム・アルバム(Saponinum album)から単離されたサポニン;
-サボンソウ(Saponaria officinalis)サポニン混合物、又はサボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニン;及び
-キラヤ樹皮サポニン混合物、又はキラヤ樹皮から単離されたサポニン、例えば、Quil-A、QS-17-api、QS-17-xyl、QS-21、QS-21A、QS-21B、QS-7-xyl
のいずれか1つ以上から選択されるサポニン;又は
b)リストB:
SA1641、ギプソシドA、NP-017772、NP-017774、NP-017777、NP-017778、NP-018109、NP-017888、NP-017889、NP-018108、SO1658及びフィトラッカゲニン
から選択される、ギプソゲニンアグリコンコア構造を含むサポニン;又は
c)リストC:
AG1856、AG1、AG2、アグロステモシドE、GE1741、カスミソウサポニン1(Gyp1)、NP-017674、NP-017810、NP-003881、NP-017676、NP-017677、NP-017705、NP-017706、NP-017773、NP-017775、SA1657、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862、SO1904、QS-7、QS-7 api、QS-17、QS-18、QS-21 A-apio、QS-21 A-xylo、QS-21 B-apio及びQS-21 B-xylo
から選択される、キラ酸アグリコンコア構造を含むサポニン
のいずれか1つ以上であり;
好ましくは、サポニンは、リストB又はCから選択されるサポニン、より好ましくは、リストCから選択されるサポニンのいずれか1つ以上である。
【0112】
詳細な実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンは、AG1856、GE1741、キラヤ(Quillaja saponaria)から単離されたサポニン、Quil-A、QS-17、QS-21、QS-7、SA1641、サボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニン、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1658、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862及びSO1904のいずれか1つ以上であり;好ましくはここでサポニンは、QS-21、SO1832、AG1856、SO1861、SA1641及びGE1741のいずれか1つ以上であり;より好ましくはここでサポニンは、QS-21、SO1832又はSO1861であり;最も好ましくはSO1861である。
【0113】
より詳細な実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンは、サボンソウ(Saponaria officinalis)から単離されたサポニンであり、好ましくはここでサポニンは、サポナリオシドB、SO1542、SO1584、SO1658、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862及びSO1904のいずれか1つ以上であり;より好ましくはここでサポニンは、SO1542、SO1584、SO1658、SO1674、SO1700、SO1730、SO1772、SO1832、SO1861、SO1862及びSO1904のいずれか1つ以上であり、更により好ましくはここでサポニンは、SO1832、SO1861及びSO1862のいずれか1つ以上であり;更により好ましくはここでサポニンは、SO1832及びSO1861であり;最も好ましくはSO1861である。
【0114】
更なる詳細な実施形態では、本明細書に開示されるとおりの組成物又は治療的組み合わせは、サポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含む好適なトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンと共に調製することができ、ここで、以下のうちの1つ以上、好ましくは1つ、即ち、
i.少なくとも1つのサポニンのアグリコンコア構造にあるアルデヒド基は、存在するとき誘導体化されている、
ii.少なくとも1つのサポニンの第1の糖鎖にあるグルクロン酸部分のカルボキシル基は、少なくとも1つのサポニンに存在するとき誘導体化されている、及び
iii.少なくとも1つのサポニンの第2の糖鎖にある少なくとも1つのアセトキシ(Me(CO)O-)基は、存在する場合には誘導体化されている。
【0115】
より詳細な実施形態では、開示されるとおりの組成物又は治療的組み合わせを提供することができ、ここでサポニンアグリコンコア構造のC-23位にアルデヒド基を含む少なくとも1つのトリテルペノイド12,13-デヒドロオレアナン型サポニンは、以下を更に含む:
i.アグリコンコア構造であって、
-アルコールへの還元;
-N-ε-マレイミドカプロン酸ヒドラジド(EMCH)との反応を通じたヒドラゾン結合への変換(ここで、EMCHのマレイミド基は、任意選択で、メルカプトエタノールとのチオエーテル結合の形成によって誘導体化される);
-N-[β-マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド(BMPH)との反応を通じたヒドラゾン結合への変換(ここで、BMPHのマレイミド基は、任意選択で、メルカプトエタノールとのチオエーテル結合の形成によって誘導体化される);又は
-N-[κ-マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド(KMUH)との反応を通じたヒドラゾン結合への変換(ここで、KMUHのマレイミド基は、任意選択で、メルカプトエタノールとのチオエーテル結合の形成によって誘導体化される)
によって誘導体化されているアルデヒド基を含むアグリコンコア構造;又は
ii.2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)又はN-(2-アミノエチル)マレイミド(AEM)との反応を通じたアミド結合への変換によって誘導体化されているカルボキシル基、好ましくはグルクロン酸部分のカルボキシル基を含む第1の糖鎖;又は
iii.脱アセチル化によるヒドロキシル基(HO-)への変換によって誘導体化されているアセトキシ基(Me(CO)O-)を含む第2の糖鎖;又は
iv.2つ又は3つの誘導体化i.、ii.及び/又はiii.の任意の組み合わせ、好ましくはi.、ii.及び/又はiii.のうちの2つの誘導体化の任意の組み合わせ
を含む。
【0116】
具体的な実施形態では、組成物及び治療的組み合わせが提供され、ここで少なくとも1つのサポニンは第1の糖鎖と第2の糖鎖とを含み、ここで第1の糖鎖は2つ以上の糖部分を含み、第2の糖鎖は2つ以上の糖部分を含み、及びここでアグリコンコア構造はキラ酸又はギプソゲニンであり、より好ましくはキラ酸であり、ここで、以下のうちの1、2又は3つ、好ましくは1又は2つ、即ち、
i.アグリコンコア構造にあるアルデヒド基は誘導体化されている、
ii.第1の糖鎖にあるグルクロン酸部分のカルボキシル基は誘導体化されている、及び
iii.第2の糖鎖にある少なくとも1つのアセトキシ(Me(CO)O-)基は誘導体化されている。
【0117】
ある実施形態は本発明のコンジュゲートであり、ここで以下のうちの1つ、2つ又は3つ、好ましくは1つ又は2つ、より好ましくは1つ、即ち、
iv.少なくとも1つのサポニンのアグリコンコア構造にあるアルデヒド基は、存在するとき誘導体化されている、
v.少なくとも1つのサポニンの第1の糖鎖にあるグルクロン酸部分のカルボキシル基は、少なくとも1つのサポニンに存在するとき誘導体化されている、及び
少なくとも1つのサポニンの第2の糖鎖にある少なくとも1つのアセトキシ(Me(CO)O-)基は、存在する場合には誘導体化されている。
【0118】
具体的な実施形態では、本開示に係る組成物又は治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンのアグリコンコア構造のC-23位におけるアルデヒド官能基は、EMCHキャップに共有結合的に結合している。サポニンのアグリコンのアルデヒド基にEMCHが結合すると、ヒドラゾン結合が形成されることになる。かかるヒドラゾン結合は、エンドソーム及びリソソーム内部の酸性条件下でサポニンアグリコンコア構造のC-23位にあるアルデヒド基が回復する切断可能な結合の典型的な例である。
【0119】
本明細書に提示される有利な組成物の開発は、本発明の組成物にエンドソーム脱出促進性サポニンが含まれるおかげで、核酸を向上した高い効率で筋細胞に送達することができるため、筋消耗性障害の治療及び/又は予防の助けとなるという意外な認識に基づいた。
【0120】
これを踏まえて、有利な実施形態では、核酸は、ある特定の筋細胞関連遺伝性障害の影響を受ける突然変異した転写物又は遺伝子内にあるゲノム突然変異に適合された治療用核酸である。かかる潜在的に標的化可能な遺伝子標的及びそれに関連する筋細胞関連遺伝性障害のリストについては、例えば、Cardamone M,et al.,2008を参照することができる。
【0121】
詳細な実施形態では、かかる遺伝子標的は、その発現がDMDなどのジストロフィノパチーの原因となる突然変異したヒトジストロフィン転写物であり、本明細書に開示される組成物の潜在的能力を実証するこれについての概念実証実験を、続く部分に提示する。しかしながら、公知の遺伝子における他の突然変異もまた、限定はされないが、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの根底にあるDUX4/ダブルホメオボックス4、又は筋強直性ジストロフィー1型の根底にあるDMPK、又はエメリ・ドレフュス型筋ジストロフィーの根底にあるEMD/エメリン及びLMNA/ラミンA/C、又は肢帯型筋ジストロフィー1の根底にあるMYOT/ミオチリン、LMNA/ラミンA/Cにおけるものなど、アンチセンス療法により標的化することができる。更なる例、先天性筋ジストロフィーにおいて突然変異した状態となるLAMA2/メロシン若しくはラミニンα2鎖/コラーゲン6AをコードするCOL6A遺伝子のいずれか又は家族性拡張型心筋症におけるLMNA/ラミンA/C。本明細書に開示されるコンジュゲート及び組成物に存在する核酸によって標的化することのできる更なる突然変異は、NEB/ネブリン、ACTA/骨格筋αアクチン、TPM3/αトロポミオシン-3、TPM2/βトロポミオシン-2、TNNT1/トロポニンT1、LMOD3/レイオモジン-3、MYPN/ミオパラジン等(ネマリンミオパチー(nemalin myopathy))又はTPM3/αトロポミオシン-3、CTA/骨格筋αアクチン、RYR1/リアノジン受容体チャネル(先天性筋線維タイプ不均等症ミオパチー)のような遺伝子又は有利にはTTN遺伝子(タイチン)に見出すことができる。
【0122】
可能な実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここで核酸は、以下のうちのいずれか1つ:モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー(PMO)、2’-O-メチル(2’-OMe)ホスホロチオエートRNA、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)RNA{2’-O-メトキシエチル-RNA(MOE)}、ロックド核酸又は架橋型核酸(BNA)、2’-O,4’-アミノエチレン架橋型核酸(BNANC)、ペプチド核酸(PNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノ核酸(FANA)、3’-フルオロヘキシトール核酸(FHNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、サイレンシングRNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンタゴmir(miRNAアンタゴニスト)、アプタマーRNA又はアプタマーDNA、一本鎖RNA又は一本鎖DNA、二本鎖RNA(dsRNA)又は二本鎖DNAを含むか、又はそれからなり;好ましくはここで核酸オリゴヌクレオチドは、モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー(PMO)又は2’-O-メチル(2’-OMe)ホスホロチオエートRNAを含むか、又はそれからなる。
【0123】
更なる実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は治療的組み合わせが提供され、ここで核酸は、ヒトジストロフィン遺伝子転写物のエクソンスキッピングを誘導するように設計され、好ましくはここでエクソンスキッピングには、エクソン51スキッピング又はエクソン53スキッピング又はエクソン45スキッピングが関わり;
より好ましくはここで核酸は、エクソン51スキッピング又はエクソン53スキッピング又はエクソン45スキッピングを誘導するように設計される2’O-メチル-ホスホロチオエート(phosporothioate)アンチセンスオリゴヌクレオチド又はホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、
更により好ましくはここで核酸は、エテプリルセン、ドリサペルセン、ゴロディルセン、ビルトラルセン、及びカシメルセンから選択される。
【0124】
特に有利な実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここで核酸は、150ntを超えない核酸として定義されるオリゴヌクレオチドであり、好ましくはここでオリゴヌクレオチドは5~150ntのサイズであり、好ましくは8~100ntであり、最も好ましくは10~50ntである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、更により好ましくは突然変異特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、最も好ましくは、エクソンスキッピングを誘導するように設計されたオリゴヌクレオチドである。
【0125】
本明細書で使用されるとき、用語オリゴヌクレオチドとは、天然に存在するヌクレオチドでできている、ひいては化学的にはオリゴヌクレオチドであるオリゴマー、並びに修飾オリゴヌクレオチドその類似体を含むオリゴマーの両方を包含すると理解されるものとする。例えば、合成オリゴマーは、2’-フルオロ(2’-F)、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-0-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP),2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-0-DMAE0E)、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン架橋型核酸(ENA)、及び(S)-拘束エチル架橋型核酸(cEt)等から選択することができる2’修飾型ヌクレオシドを含み得る。これを踏まえて、可能な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、構造的又は機能的に、デオキシリボ核酸(DNA)オリゴマー、リボ核酸(RNA)オリゴマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO、AON)、低分子干渉性RNA(siRNA)、抗マイクロRNA(抗miRNA)、DNAアプタマー、RNAアプタマー、mRNA、ミニサークルDNA、ペプチド核酸(PNA)、ホスホルアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、ロックド核酸(LNA)、架橋型核酸(BNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノ核酸(FANA)、2’-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、3’-フルオロヘキシトール核酸(FHNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、BNAベースのsiRNA、及びBNAベースのアンチセンスオリゴヌクレオチド(BNA-AON)、化学的に修飾されたsiRNA、代謝的に安定しているsiRNA及び化学的に修飾された、代謝的に安定しているsiRNAから選択される、BNAベースのsiRNAなど、siRNA、又は当該技術分野において公知の任意の他のカテゴリーのいずれとしても定義することができる。
【0126】
機能的観点から、有利な実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでオリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、好ましくは突然変異特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、最も好ましくはエクソンスキッピングを誘導するように設計されたオリゴヌクレオチドである。
【0127】
関連する実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでオリゴヌクレオチドは、以下のうちのいずれか1つを含むか、又はそれからなる:モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー(PMO)、2’-O-メチル(2’-OMe)ホスホロチオエートRNA、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)RNA{2’-O-メトキシエチル-RNA(MOE)}、ロックド核酸又は架橋型核酸(BNA)、2’-O,4’-アミノエチレン架橋型核酸(BNANC)、ペプチド核酸(PNA)、2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノ核酸(FANA)、3’-フルオロヘキシトール核酸(FHNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、サイレンシングRNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンタゴmir(miRNAアンタゴニスト)、アプタマーRNA又はアプタマーDNA、一本鎖RNA又は一本鎖DNA、二本鎖RNA(dsRNA)又は二本鎖DNA。
【0128】
特に好ましい実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示に係るコンジュゲートが提供され、ここでオリゴヌクレオチドは、モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー(PMO)又は2’-O-メチル(2’-OMe)ホスホロチオエートRNAを含むか、又はそれからなる。
【0129】
詳細な且つDMDに有利な具体的実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでオリゴヌクレオチドは、ヒトジストロフィン遺伝子転写物のエクソンスキッピングを誘導するように設計され、好ましくはここでエクソンスキッピングには、エクソン51スキッピング又はエクソン53スキッピング又はエクソン45スキッピングが関わり、より好ましくはここでオリゴヌクレオチドは、エクソン51スキッピング又はエクソン53スキッピング又はエクソン45スキッピングを誘導するように設計される2’O-メチル-ホスホロチオエート(phosporothioate)アンチセンスオリゴヌクレオチド又はホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0130】
直前の実施形態を踏まえた極めて詳細な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、エテプリルセン、ドリサペルセン、ゴロディルセン、ビルトラルセン、及びカシメルセンから選択される。
【0131】
有利な実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここで組成物は2つ以上の異なる核酸を含み、2つ以上の異なる核酸は好ましくは2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドであり、より好ましくはここで2つ以上の異なるオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0132】
2つ以上の治療用核酸のかかる組み合わせは当該技術分野において公知であり、例えば筋消耗性障害向けには、ミオスタチン及びジストロフィンにおける二重エクソンスキッピング用の2つのAONに基づく組み合わせ手法がデュシェンヌ型筋ジストロフィーの管理のために提案された[Kemaladewi el al,2011]。
【0133】
特に好ましい実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここで核酸は、筋細胞上のエンドサイトーシス受容体のリガンドとコンジュゲートされている。
【0134】
筋細胞上のエンドサイトーシス受容体のリガンドについて、筋細胞の表面上に発現する多くのエンドサイトーシス受容体は公知であることに留意しなければならず、トランスフェリン受容体(CD71)又は筋特異的キナーゼ(MuSK)のようなその一部については、国際公開第2018129384号パンフレット又は国際公開第2020028857号パンフレットに記載されている。好適な受容体の更なる例としては、筋膜貫通輸送体、例えばGLUT4又はENT2(他多数と共にEbner,2015に記載されている)、又は例えばテトラスパニンCD63[Baik,2021]を挙げることができる。実際、これまでに筋細胞の表面上に存在する多くのエンドサイトーシス受容体が特徴付けられており、トランスフェリン受容体(CD71)及び恐らくはインスリン様成長因子1(IGF-I)受容体(IGF1R)が、最も研究の進んでいるものである。これらの受容体のリガンドは、CD71の天然リガンドであるトランスフェリン(Tf)、又はLDL受容体のリガンドであるLDLなど、天然リガンドから選択することができる。或いは、受容体は、各種の抗体又はその結合断片など、天然に存在しないリガンドであってもよく、又は代わりに、エンドサイトーシスマンノース受容体に結合するザイモザンAのような合成リガンドであるか、若しくはIGF1RのリガンドであるIGF-Iの断片又はCI-MPR(別名IGF2R)のリガンドであるIGF-IIの断片など、天然に存在するリガンドの合成断片であってもよい。
【0135】
好ましい実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここで核酸とコンジュゲートしているリガンドが結合する筋細胞上のエンドサイトーシス受容体は、トランスフェリン受容体(CD71)、インスリン様成長因子1(IGF-1)受容体(IGF1R)、テトラスパニンCD63;筋特異的キナーゼ(MuSK)、グルコース輸送体GLUT4、カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体(CI-MPR)から選択される。
【0136】
更に好ましい実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここで核酸とコンジュゲートしているリガンドは、
インスリン様成長因子1(IGF-I)又はその断片;
インスリン様成長因子2(IGF-II)又はその断片
マンノース6リン酸
トランスフェリン(Tf)、
ザイモザンA、及び
エンドサイトーシス受容体への結合に特異的な抗体又はその結合断片であって、エンドサイトーシス受容体が、好ましくは、トランスフェリン受容体(CD71)、インスリン様成長因子1(IGF-I)受容体(IGF-IR)、テトラスパニンCD63、筋特異的キナーゼ(MuSK)、グルコース輸送体GLUT4、カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体(CI-MPR)、及びLDL受容体から選択される、抗体又はその結合断片
のいずれか1つから選択され;
好ましくはここでリガンドは、トランスフェリン受容体への結合に特異的な抗体又はその結合断片であり、より好ましくはここでリガンドは、トランスフェリン受容体への結合に特異的なモノクローナル抗体又はFab’断片又は少なくとも1つのシングルドメイン抗体であり、更により好ましくはここでリガンドは、トランスフェリン受容体への結合に特異的なモノクローナル抗体である。
【0137】
関連する特に有利な実施形態では、核酸とコンジュゲートしているリガンドは、トランスフェリン受容体への結合に特異的なモノクローナル抗体又はFab’断片又は少なくとも1つのシングルドメイン抗体であり、更により好ましくはここでリガンドは、トランスフェリン受容体への結合に特異的なモノクローナル抗体である。
【0138】
更に有利な実施形態では、核酸とコンジュゲートしているリガンドは、ヒト化又はヒトモノクローナル抗体などのモノクローナル抗体、IgG、シングルドメイン抗体を含むか又はそれからなる分子、少なくとも1つのVHHドメイン、好ましくはラクダ科動物VH、可変重鎖新規抗原受容体(VNAR)ドメイン、Fab、scFv、Fv、dAb、F(ab)2及びFcab断片である。
【0139】
特定の有利な実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでリガンドは、1分子のリガンドにつき2~5分子の核酸とコンジュゲートされ;好ましくは1分子のリガンドにつき3~4分子の核酸であり;より好ましくはここでリガンドは、1分子のリガンドにつき平均して4分子の核酸とコンジュゲートされる。
【0140】
ある実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでリガンドは、少なくとも1つのシステイン残基及び/又は少なくとも1つのリジン残基を含むアミノ酸残基の鎖を含み、及びここで核酸によるリガンドとの共有結合性の連結は、少なくとも1つのシステイン残基及び/又は少なくとも1つのリジン残基との共有結合性の結合を含み;
好ましくはここで2分子以上の核酸が1分子のリガンドに別個のシステイン残基及び/又は別個のリジン残基を介して連結され;
より好ましくはここでリガンドは、場合によっては配列HRWCCPGCCKTF(配列番号4)によって表されるテトラシステインリピートであるマルチシステインリピートを含むアミノ酸残基の鎖を含み、及びここで核酸によるリガンドとの共有結合性の連結は、マルチシステインリピートのシステイン残基のいずれか1つ以上との共有結合性の結合を含み;
最も好ましくはここで2分子以上の核酸は、1分子のリガンドにマルチシステインリピートの別個のシステイン残基を介して連結されている。
【0141】
関連する実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここで核酸によるリガンドとの共有結合性の連結は、核酸が共有結合的に結合しているリンカーを介して行われ;
好ましくはここでリンカーは、リンカー3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸スクシンイミジル(SPDP)を含むか、又はそれからなり;場合によってはここでリンカーは、核酸をリガンドのリジン残基に、又はグリカン残基、好ましくは部分的にトリミングされたグリカンに共有結合的に連結する。
【0142】
特定の適用では、核酸分子、例えばオリゴヌクレオチド分子の1つ以上が切断可能な結合を介してリガンドに結合している場合に有利であってよく、ここで切断可能な結合は、例えば、酸性条件下、還元条件下、酵素条件下及び/又は光誘起条件下で切断を受けることになる。ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する酸性条件下で切断を受けることになる切断可能な結合が好ましい。
【0143】
上記を踏まえて、関連する有利な実施形態において、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでリンカーは、酸性条件下、還元条件下、酵素条件下及び/又は光誘起条件下で切断を受けることになる切断可能なリンカーであり;
好ましくはここでリンカーは、
・セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、イミン結合、1,3-ジオキソラン結合を含めたアセタール結合、ケタール結合、エステル結合、及び/又はオキシム結合など、酸性条件下で切断を受けることになる結合、
・好ましくはカテプシンBによるタンパク質分解を受けることになる、タンパク質分解されやすい結合、例えばアミド又はペプチド結合;
・ジスルフィド結合など、酸化還元切断可能な結合、又はチオエーテル結合など、チオール交換反応しやすい結合
から選択される切断可能な結合を含み;
より好ましくはここでリンカーは、
・セミカルバゾン結合、ヒドラゾン結合、又はイミン結合など、酸性条件下で切断を受けることになる結合、
及び/又は
・タンパク質分解されやすい、例えばカテプシンBによってタンパク質分解されやすい結合、及び/又は
・ジスルフィド結合など、還元条件下で切断されやすい結合
から選択される切断可能な結合を含む。
【0144】
有利には、結合は酸感受性結合であり、即ち、ヒト細胞のエンドソーム及び/又はリソソームに存在する、好ましくはpH≦6.5、好ましくはpH≦6、より好ましくはpH≦5.5の酸性条件下でインビボ切断を受けることになり、より好ましくは、セミカルバゾン結合及びヒドラゾン結合から選択される酸感受性結合であり;最も好ましくは、ヒドラゾン結合である。
【0145】
かかる切断可能な結合は、リガンドが筋細胞上のその標的エンドサイトーシス受容体に結合することによってコンジュゲートがエンドサイトーシス受容体と会合した後に核酸リガンドコンジュゲートが細胞の外側にあるか又はエンドサイトーシス小胞にあるなど、細胞のエンドソーム及びリソソームの外側に存在するとき、切断されにくい、又は切断が僅かな程度に過ぎないことが好ましい。例えば、切断可能な結合は、コンジュゲートがヒト対象の循環中に存在するとき、及び/又はヒト対象の臓器の細胞外に存在するとき、本明細書では筋細胞である標的細胞のエンドソーム又はリソソームにコンジュゲートがあるときの結合の切断されやすさと比較して、好ましくはあまり切断されにくい。
【0146】
詳細な実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示に係るコンジュゲートが提供され、ここでリンカーはリガンドに直接又は間接的に共有結合的に連結している。
【0147】
更なる詳細な実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供され、ここでサポニンは、SO1861、SO1861-EMCH、又はSO1861-SC-マレイミド、好ましくはSO1861-EMCH又はSO1861-SC-マレイミドのいずれかの少なくとも1分子であるか、又はそれを含み、核酸は、ドリサペルセン又はエテプリルセンであり、核酸とコンジュゲートするリガンドは、抗CD71抗体又はその結合断片である。本明細書に開示される治療的又は予防的使用について、使用は、ヒト対象への静脈内又は皮下又は筋肉内投与における使用であり、好ましくは筋肉内投与における使用である。
【0148】
別の実施形態では、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物、使用は、ヒト対象への静脈内又は皮下又は筋肉内投与における使用であり、好ましくは筋肉内投与における使用である。
【0149】
更に別の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は薬学的に許容可能な希釈剤を含む、本明細書に開示される治療的又は予防的使用のための組成物又は本開示の治療的組み合わせが提供される。
【0150】
関連する態様では、治療的組み合わせの成分(a)及び(b)を含むキットが更に提供され、場合によってはここで成分(a)及び(b)は、別個のバイアルの中にあり、好ましくはここで成分(a)及び(b)は、皮下又は筋肉内注射に好適な混合物中に提供される。
【0151】
最後に付け加えると、詳細な実施形態では、本開示に係る治療的組み合わせ及び/又はキットは、医薬としての使用のために提供される。
【実施例】
【0152】
SO1861は、Extrasynthese、France及び/又はAnalyticon Discovery GmbH、Germanyにより、サボンソウ(Saponaria officinalis L)から得られた未加工の植物抽出物から単離され、精製された。
【0153】
配列5’-UCAAGGAAGAUGGCAUUUCU-3’[配列番号1]のアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び同じ配列でチオール修飾を有するASO(それぞれ、DMD-ASO及び5’-チオール-DMD-ASO)は、Hanugen Therapeutics Pvt Ltd.に特注して購入した。配列5’-CTCCAACATCAAGGAAGATGGCATTTCTAG-3’のPMO(DMD-PMO又はDMD-PMO(1))[配列番号2]、及びジスルフィドアミド修飾を有する同じ配列のPMO(5’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO又は5’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO(1))は、Gene Tools,LLC.に特注して購入した。配列5’-CTCCAACATCAAGGAAGATGGCATTTCTAG-3’のPMO(DMD-PMO(1))[配列番号2]及び3’にジスルフィドアミド修飾があるもの(3’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO(1))は、Gene Toolsに特注して購入した。配列5’-GGCCAAACCTCGGCTTACCTGAAAT-3’のPMO(M23D)[配列番号3]、及びジスルフィドアミド修飾を有する同じ配列のPMO(3’-ジスルフィドアミド-M23D)は、Gene Tools,LLC.に特注して購入した。配列5’-GTGTCACCAGAGTAACAGTCTGAGTAGGAG-3’のPMO(DMD-PMO(2))[配列番号16]及び3’にジスルフィドアミド修飾があるもの(3’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO(2))は、Gene Toolsに特注して購入した。配列5’-GGCAGTTTCCTTAGTAACCACAGGTTGTGT-3’のPMO(DMD-PMO(3))[配列番号17]及び3’にジスルフィドアミド修飾があるもの(3’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO(3))は、Gene Toolsに特注して購入した。配列5’-GTTGCCTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’のPMO(DMD-PMO(4))[配列番号18]及び3’にジスルフィドアミド修飾があるもの(3’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO(4))は、Gene Toolsに特注して購入した。配列5’-CCTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’のPMO(DMD-PMO(5))[配列番号19]及び3’にジスルフィドアミド修飾があるもの(3’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO(5))は、Gene Toolsに特注して購入した。
【0154】
ヒトCD71を標的とする抗CD71抗体(クローンOKT9)(hCD71)及びマウスを標的とする抗CD71抗体(クローンR17 217.1.3)(mCD71)は、両方ともBioXCellから購入した。マウスを標的とする抗CD63抗体(クローンNVG-2)(mCD63)は、Biolegendから購入した。IGF-1リガンドは、PeproTechから購入した。
【0155】
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP、98%、Sigma-Aldrich)、5,5-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB、エルマン試薬、99%、Sigma-Aldrich)、Zeba(商標)スピン脱塩カラム(2mL、Thermo-Fisher)、NuPAGE(商標)4-12%ビス-トリスタンパク質ゲル(Thermo-Fisher)、NuPAGE(商標)MES SDSランニング緩衝液(Thermo-Fisher)、Novex(商標)Sharp事前染色済みタンパク質標準液(Thermo-Fisher)、PageBlue(商標)タンパク質染色用溶液(Thermo-Fischer)、Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキット(Thermo-Fisher)、N-エチルマレイミド(NEM、98%、Sigma-Aldrich)、1,4-ジチオスレイトール(DTT、98%、Sigma-Aldrich)、Sephadex G25(GE Healthcare)、Sephadex G50M(GE Healthcare)、Superdex 200P(GE Healthcare)、イソプロピルアルコール(IPA、99.6%、VWR)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス、99%、Sigma-Aldrich)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(トリス.HCL、Sigma-Aldrich)、L-ヒスチジン(99%、Sigma-Aldrich)、D-(+)-トレハロース脱水物(99%、Sigma-Aldrich)、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(TWEEN(登録商標)-20、Sigma-Aldrich)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Thermo-Fisher)、塩酸グアニジン(99%、Sigma-Aldrich)、エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム塩二水和物(EDTA-Na2、99%、Sigma-Aldrich)、滅菌フィルタ0.2μm及び0.45μm(Sartorius)、Vivaspin T4及びT15コンセントレーター(Sartorius)、Superdex 200PG(GE Healthcare)、テトラ(エチレングリコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO、99%、Sigma-Aldrich)、N-(2-アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸塩(AEM、98%、Sigma-Aldrich)、L-システイン(98.5%、Sigma-Aldrich)、脱イオン水(DI)は実験室用超純水システム(MilliQ、Merck)から取ったばかりのものであった、ニッケル-ニトリロ三酢酸アガロース(Ni-NTAアガロース、Protino)、グリシン(99.5%、VWR)、5,5-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸(エルマン試薬、DTNB、98%、Sigma-Aldrich)、S-アセチルメルカプトコハク酸無水物フルオレセイン(SAMSA試薬、Invitrogen)重炭酸ナトリウム(99.7%、Sigma-Aldrich)、炭酸ナトリウム(99.9%、Sigma-Aldrich)、Sephadex G-25樹脂のPD MiniTrap脱塩カラム(GE Healthcare)、PD10 G25脱塩カラム(GE Healthcare)、0.5、2、5、及び10mLのZebaスピン脱塩カラム(Thermo-Fisher)、Vivaspin遠心フィルタT4 10kDa MWCO、T4 100kDa MWCO、及びT15(Sartorius)、Biosep s3000 aSECカラム(Phenomenex)、Vivacell限外ろ過ユニット10及び30kDa MWCO(Sartorius)、Nalgene Rapid-Flowフィルタ(Thermo-Fisher)、ジクロルメタン(Sigma-Aldrich)、メタノール(Sigma-Aldrich)、ジエチルエーテル(Sigma-Aldrich)、アセトニトリル(Sigma-Aldrich)、ピリジン2-チオン(Sigma-Aldrich)、ヤギ抗ヒトIgG-HRP(Southern Biotech)、ヤギ抗ヒトκ-HRP(Southern Biotech)、濃縮トリス(Thermo-Fisher)、MOPSランニング緩衝液(20×、Thermo-Fisher)、LDS試料緩衝液(4×、Thermo-Fisher)、TBSブロッキング緩衝液(Thermo-Fisher)、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、Merck)、トリスHCl(Sigma-Aldrich)、Minisart RC15 0.2μmフィルタ(Sartorius)、Minisart 0.45μmフィルタ(Sartorius)、PD Minitrap G25(Cytiva)、TNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸、Sigma-Aldrich)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、Sigma-Aldrich)、SMCC(4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル、Thermo-Fisher)、THPP(トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、Sigma-Aldrich)、DBCO-NHS(CAS 1353016-71-3、BroadPharm)、PEG4-SPDP(2-ピリジルジチオール-テトラオキサテトラデカン-N-ヒドロキシスクシンイミド、Thermo-Fisher)、Novex(商標)TBE-尿素ゲル、15%(Thermo-Fisher)、TBE緩衝液(ris-Borat-EDTA、Thermo-Fisher)、GlyCLICK(商標)(10mg)アジド活性化キット(Genovis)、及び固定化GlycINATOR(商標)カラム(GlyCLICK(商標)アジド活性化キットから)(Genovis)を使用した。
【0156】
【0157】
略語
Ab 抗体
Ac アセチル
AON アンチセンスオリゴヌクレオチド
ASO アンチセンスオリゴヌクレオチド
BCA ビシンコニン酸
BGG ウシガンマグロブリン
aSEC 分析用サイズ排除クロマトグラフィー
DAR 薬物抗体比
DBCO ジベンゾシクロオクチン
DBCO-NHS ジベンゾシクロオクチン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPBS ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
DTME ジチオビスマレイミドエタン
DTNB 5,5’-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)
DTT ジチオスレイトール
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EDCI.HCl 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド
EMCH.TFA N-(ε-マレイミドカプロン酸)ヒドラジド、トリフルオロ酢酸塩
Equiv.当量
EtBr 臭化エチジウム
FBS ウシ胎仔血清
GalT ガラクトース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IPA イソプロピルアルコール
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析法
LDS ドデシル硫酸リチウム
LRMS 低分解能質量分析法
NEM N-エチルマレイミド
NHS N-ヒドロキシスクシンイミドエステル
mAb モノクローナル抗体
min 分
MOPS 3-(モルホリン-4-イル)プロパン-1-スルホン酸
MPLC 中圧液体クロマトグラフィー
MWCO 分子量カットオフ
NMM 4-メチルモルホリン
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PBS-T Tween-20含有リン酸緩衝生理食塩水
PEG4-SPDP 2-ピリジルジチオール-テトラオキサテトラデカン-N-ヒドロキシスクシンイミド
PMO ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー
PDT ピリジン2-チオン
rpm 毎分回転数
RT 室温
r.t.保持時間
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
SMCC 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル
TBEU (トリス-ヒドロキシメチル)-アミノメタン)-ホウ酸-EDTA-尿素(rea)
TBS トリス緩衝生理食塩水
TCEP トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩
TCO4-NHS trans-シクロオクテン-N-ヒドロキシスクシンイミド
Temp 温度
TFA トリフルオロ酢酸
THPP トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン
TMB 3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン
TNBS 2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸
トリス トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
UDP-GalNAz ウリジン二リン酸-N-アジドアセチルマンノサミン
【0158】
実施例1~4の方法
SO1861-マレイミド、SO1861-NHS合成
SO1861は、サボンソウ(Saponaria officinalis L)に由来し(Analyticon Discovery GmbH、独国)、Symeres(オランダ)により当該技術分野において公知の方法に従いそれぞれのハンドルにカップリングされた。
【0159】
抗体への5’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO、5’-チオール-DMD-ASO、及び3’-ジスルフィドアミド-M23Dのコンジュゲーション
mCD71-M23D、mCD71-M23D-SO1861、及びhCD71-DMD-ASO、hCD71-DMD-PMO、hCD71-DMD-ASO-SO1861、及びhCD71-DMD-PMO-SO1861の注文生産は、Fleet Bioprocessing(UK)により実施された。
【0160】
分析及び調製方法
LC-MS方法1
装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:UPISMFTN SO付属;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:ACQ-SQD2 ESI、質量範囲は生成物の分子量に依存:
1500~2400又は2000~3000の範囲内でneg又はneg/pos;ELSD:ガス圧40psi、ドリフトチューブ温度:50℃;カラム:Acquity C18、50×2.1mm、1.7μm 温度:60℃、流量:0.6mL/分、直線グラジエントは生成物の極性に依存:
At0=2%A、t5.0min=50%A、t6.0min=98%A
Bt0=2%A、t5.0min=98%A、t6.0min=98%A
ポストタイム:1.0分、溶出液A:アセトニトリル、溶出液B:水中10mM重炭酸アンモニウム(pH=9.5)。
【0161】
LC-MS方法2
装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:UPISMFTN SO付属;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:ACQ-SQD2 ESI、質量範囲は生成物の分子量に依存:pos/neg100~800又はneg2000~3000;ELSD:ガス圧40psi、ドリフトチューブ温度:50℃;カラム:Waters XSelect(商標)CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:25℃、流量:0.5mL/分、グラジエント:t0min=5%A、t2.0min=98%A、t2.7min=98%A、ポストタイム:0.3分、溶出液A:アセトニトリル、溶出液B:水中10mM重炭酸アンモニウム(pH=9.5)。
【0162】
LC-MS方法3
装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:UPISMFTN SO付属;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:ACQ-SQD2 ESI、質量範囲は生成物の分子量に依存 pos/neg 105~800、500~1200又は1500~2500;ELSD:ガス圧40psi、ドリフトチューブ温度:50℃;カラム:Waters XSelect(商標)CSH C18、50×2.1mm、2.5μm、温度:40℃、流量:0.5mL/分、グラジエント:t0min=5%A、t2.0min=98%A、t2.7min=98%A、ポストタイム:0.3分、溶出液A:アセトニトリル中0.1%ギ酸、溶出液B:水中0.1%ギ酸。
【0163】
LC-MS方法4
装置:Waters IClass;バイナリポンプ:UPIBSM、SM:UPISMFTN SO付属;UPCMA、PDA:UPPDATC、210~320nm、SQD:ACQ-SQD2 ESI、質量範囲は生成物の分子量に依存:pos/neg100~800又はneg2000~3000;ELSD:ガス圧40psi、ドリフトチューブ温度:50℃ カラム:Waters Acquity Shield RP18、50×2.1mm、1.7μm、温度:25℃、流量:0.5mL/分、グラジエント:t0min=5%A、t2.0min=98%A、t2.7min=98%A、ポストタイム:0.3分、溶出液A:アセトニトリル、溶出液B:水中10mM重炭酸アンモニウム(pH=9.5)。
【0164】
分取MP-LC方法1
機種:Reveleris(商標)分取MPLC;カラム:Waters XSelect(商標)CSH C18(145×25mm、10μm);流量:40mL/分;カラム温度:室温;溶出液A:水中10mM炭酸水素アンモニウムpH=9.0;溶出液B:水中99%アセトニトリル+1% 10mM炭酸水素アンモニウム;グラジエント:
At0min=5%B、t1min=5%B、t2min=10%B、t17min=50%B、t18min=100%B、t23min=100%B
At0min=5%B、t1min=5%B、t2min=20%B、t17min=60%B、t18min=100%B、t23min=100%B;検出UV:210、235、254nm及びELSD。
【0165】
分取MP-LC方法2
機種:Reveleris(商標)分取MPLC;カラム:Phenomenex LUNA C18(3)(150×25mm、10μm);流量:40mL/分;カラム温度:室温;溶出液A:水中0.1%(v/v)ギ酸、溶出液B:アセトニトリル中0.1%(v/v)ギ酸;グラジエント:
At0min=5%B、t1min=5%B、t2min=20%B、t17min=60%B、t18min=100%B、t23min=100%B
Bt0min=2%B、t1min=2%B、t2min=2%B、t17min=30%B、t18min=100%B、t23min=100%B
Ct0min=5%B、t1min=5%B、t2min=10%B、t17min=50%B、t18min=100%B、t23min=100%B
Dt0min=5%B、t1min=5%B、t2min=5%B、t17min=40%B、t18min=100%B、t23min=100%B;検出UV:210、235、254nm及びELSD。
【0166】
分取LC-MS方法3
MS機種:Agilent Technologies G6130B四重極;HPLC機種:Agilent Technologies 1290 分取LC;カラム:Waters XSelect(商標)CSH(C18、150×19mm、10μm);流量:25mL/分;カラム温度:室温;溶出液A:100%アセトニトリル;溶出液B:水中10mM重炭酸アンモニウムpH=9.0;グラジエント:
At0=20%A、t2.5min=20%A、t11min=60%A、t13min=100%A、t17min=100%A
Bt0=5%A、t2.5min=5%A、t11min=40%A、t13min=100%A、t17min=100%A;検出:DAD(210nm);検出:MSD(ESI pos/neg)質量範囲:100~800;DADに基づくフラクション収集。
【0167】
分取LC-MS方法4
MS機種:Agilent Technologies G6130B四重極;HPLC機種:Agilent Technologies 1290 分取LC;カラム:Waters XBridge Protein(C4、150×19mm、10μm);流量:25mL/分;カラム温度:室温;溶出液A:100%アセトニトリル;溶出液B:水中10mM重炭酸アンモニウムpH=9.0;グラジエント:
At0=2%A、t2.5min=2%A、t11min=30%A、t13min=100%A、t17min=100%A
Bt0=10%A、t2.5min=10%A、t11min=50%A、t13min=100%A、t17min=100%A
Ct0=5%A、t2.5min=5%A、t11min=40%A、t13min=100%A、t17min=100%A;検出:DAD(210nm);検出:MSD(ESI pos/neg)質量範囲:100~800;DADに基づくフラクション収集
【0168】
フラッシュクロマトグラフィ
Grace Reveleris X2(商標)C-815 Flash;溶媒送達システム:自吸式3ピストンポンプ、1回のランで最大4種の溶媒の4つの独立したチャネル、溶媒が空になったときのライン自動切替え;最大ポンプ流量250ml/分;最大圧力50バール(725psi);検出:UV200~400nm、最大4種のUVシグナルの組み合わせ及び全UV範囲スキャン、ELSD;カラムサイズ:ルアーデバイス型4~330g、オプションのホルダー取付け時750g~最大3000g。
【0169】
紫外可視分光光度法
濃度は、Thermo Nanodrop 2000分光計又はPerkin Elmer Lambda 365分光光度計のいずれか及び以下の質量吸光係数(EC)値を使用して決定した:
実験的に決定されたモルε495=58,700M-1cm-1及びRz280:495=0.428をSAMSA-フルオレセインに使用した。
M23D-SS-アミド;質量EC265=259,210M-1cm-1
エルマン試薬(TNB);モルEC412=14,150M-1cm-1
DMD-PMO;モルEC265=318,050 135,027M-1cm-1
DMD-ASO;モルEC265=310,000 252,512M-1cm-1
ピリジン2-チオン(PDT);モルε363=8,080M-1cm-1
【0170】
TNBSアッセイ
グリシン標準(0、2.5、5、10、15及び20μg/ml)をDPBS pH7.5を使用して新鮮に調製した。TNBS(40μl)とDPBS pH7.5(9.96ml)とを組み合わせることにより、TNBSアッセイ試薬を調製した。DI水を使用して調製した10%w/v SDS。このアッセイには、60μlの各試料(シングルケート)及び標準(トリプリケート)をプレートアウトした。各ウェルにTNBS試薬(60μl)を加え、プレート振盪機を用いて37℃及び600rpmで3時間インキュベートした。その後、50μlの10%SDS及び25μl 1M HClを加え、プレートを340nmで分析した。非修飾タンパク質と比べたコンジュゲートのリジン濃度の枯渇によりSO1861-ヒドラゾン-NHS取込みを決定した。
【0171】
SEC
Akta purifier 10システム及びBiosep SEC-s3000カラムを使用したDPBS:IPA(85:15)で溶出するSECによりコンジュゲートを分析した。コンジュゲート純度を不純物/凝集体形態と比べたコンジュゲートピークの積分により決定した。
【0172】
SDS-PAGE及びウエスタンブロッティング
未変性のタンパク質及びコンジュゲートをSDS-PAGEにより4~12%ビス-トリスゲル及びランニング緩衝液としてMOPSを使用してタンパク質ラダーに対し熱変性非還元及び還元条件下で分析した(200V、約40分)。LDS試料緩衝液及びMOPSランニング緩衝液を希釈液として含む試料を0.5mg/mLに調製した。還元試料については、50mMの最終濃度となるようにDTTを加えた。試料を90~95℃で2分間熱処理し、各ウェルに5μg(10μl)を加えた。タンパク質ラダー(10μl)は前処理なしにロードした。空の列に1×LDS試料緩衝液(10μl)を満たした。ゲルに流した後、それをDI水(100mL)で3回、振盪しながら(15分、200rpm)洗浄した。ゲルをPAGEBlueタンパク質染色剤(30mL)と共に振盪インキュベートすることにより(60分、200rpm)、クーマシー染色を実施した。過剰な染色溶液を除去し、DI水(100ml)で2回リンスし、DI水(100ml)で脱染した(60分、200rpm)。得られたゲルをImageJ(ImageJ(Rasband、W.S.、ImageJ、米国国立衛生研究所(U.S.National Institutes of Health)、Bethesda、Maryland、USA)及びMyCurveFit(タンパク質ラダーの2点間相関)を用いて画像化し、処理した。
【0173】
ウエスタンブロッティング
SDS-PAGEから、X-Cellブロットモジュールを以下のセットアップ((-)BP-BP-FP-ゲル-NC-BP-BP-BP(+))及び条件(30V、60分)で使用して、調製したてのトランスファー緩衝液を使用してゲルをニトロセルロース膜に転写した。BP-ブロッティングパッド;FP-フィルタパッド;NC-ニトロセルロース膜。その後、NCをPBS-T(100ml)で振盪しながら(5分、200rpm)2回洗浄し、非特異的部位をブロッキング緩衝液(50ml)で振盪しながら(30分、200rpm)ブロックし、次に活性部位を、ブロッキング緩衝液で希釈したヤギ抗ヒトκ-HRP(1:2000)とヤギ抗ヒトIgG-HRP(1:2000)(50ml)との組み合わせで振盪しながら(30分、200rpm)標識した。その後、NCをPBS-T(100ml)で振盪しながら(5分、200rpm)1回洗浄し、複合体化した抗体を調製したて、ろ過したてのCN/DAB基質(25ml)で検出した。発色を目視で観察し、2分後にNCを水で洗浄することにより発色を停止させて、得られたブロットの写真を撮った。
【0174】
TBEU-PAGE
オリゴヌクレオチドコンジュゲート及びオリゴヌクレオチド標準物質をTBE-尿素PAGEにより15%TBE-尿素ゲル及びランニング緩衝液としてTBEを使用してオリゴラダーに対し熱変性非還元条件下で分析した(180V、約60分)。それぞれ、試料を0.5mg/mlに調製し、標準物質を50~5μg/mlに調製し、全てがTBE尿素試料緩衝液及び希釈剤として精製H2Oを含んだ。試料及び標準物質を70℃で3分間熱処理し、各ウェルに10μlを加えて、各レーンにつき5μgのタンパク質及びコンジュゲート試料、並びに0.5/0.2/0.1/0.5μg(DMD-ASO)又は0.2/0.1/0.05μg(DMD-PMO)のオリゴヌクレオチドに等しくなるようにした。TE pH7.5(2μl)中0.1μg/バンド/mlに再構成したオリゴラダーを前処理なしにロードした。ゲルに流した後、それを調製したてのエチジウムブロマイド溶液(1μg/mL)で振盪しながら(40分、200rpm)染色した。得られたゲルを紫外線落射照明(254nm)によって可視化し、ImageJ(Rasband、W.S.、ImageJ、米国国立衛生研究所(U.S.National Institutes of Health)、Bethesda、Maryland、USA)を用いて画像化し、処理した。
【0175】
mCD71-M23D
mCD71のアリコート(42.9mg、4.20ml)をDPBS pH7.5で緩衝液交換し、2.5mg/mlに標準化した。mCD71のアリコート(34.4mg、0.23μmol、2.53mg/ml)に、調製したてのSMCC溶液のアリコート(2.0mg/ml、3.53モル当量、0.81μmol)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次にローラー式混合により20℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、調製したてのグリシン溶液のアリコート(2.0mg/ml、約20モル当量、4.05μmol)を加えることにより反応をクエンチし、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃で15分超インキュベートした。コンジュゲートをSuperdex 200カラムによりTBS pH7.5で溶出して精製し、紫外可視により分析して、精製mCD71-SMCCを得た(31.7mg、収率:96%、0.942mg/ml、SMCC対mCD71比=2.1)。
【0176】
別途、TBS pH7.5を使用して再構成したM23D-SS-アミドのアリコート(17.2mg、1.99μmol、10.0mg/ml)を調製したてのTHPP溶液(50mg/ml、10モル当量、19.9μmol、82.8μl)に加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、オリゴをPD10 Sephadex G25MカラムによりTBS pH7.5で溶出して精製すると、M23D-SHがもたらされた(14.8mg、収率:86%、チオール対M23D比=0.98)。
【0177】
mCD71-SMCCのアリコート(31.7mg,0.21μmol,0.942mg/ml)に、M23D-SHのアリコート(4.122mg/ml、4.0モル当量、0.85μmol、1.771ml)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃でインキュベートした。約72時間後、コンジュゲート混合物を濃縮し、Superdex 200PGカラムによりDPBS pH7.5で溶出して精製することにより、精製mCD71-M23Dコンジュゲートを得た。アリコートをBCA比色アッセイにより分析し、コンジュゲートに新しいEC値を割り当て、次に濃縮して2.5mg/mlに標準化し、0.2μmでろ過し、次に特性評価用のアリコート及び生成物試験用のアリコートに分配した。結果は、mCD71-M23Dコンジュゲートであった(全収率=25.7mg、73%、M23D対mCD71比=1.2)。
【0178】
hCD71-DMD-ASO
hCD71のアリコート(60mg、4.20ml)をDPBS pH7.5で緩衝液交換し、2.5mg/mlに標準化した。hCD71のアリコート(58mg、0.38μmol、2.53mg/ml)に、調製したてのPEG4-SPDP溶液のアリコート(10mg/ml、10モル当量、3.8μmol)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、調製したてのグリシン溶液のアリコート(2.0mg/ml、50モル当量、19μmol)を加えることにより反応をクエンチし、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃で15分超インキュベートした。コンジュゲートをZeba 40Kスピン脱塩カラムによりTBS pH7.5で溶出して精製し、紫外可視により分析して、精製hCD71-PEG4-SPDPを得た(51.3mg、収率:88%、0.95mg/ml、PEG4-SPDP対hCD71比=4.5)。
【0179】
別途、TBS pH7.5を使用して再構成したDMD-ASO-SHのアリコート(14.4mg、2μmol、10.0mg/ml)を調製したてのTHPP溶液(50mg/ml、10モル当量、20μmol、82.8μl)に加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、オリゴをPD10 Sephadex G25MカラムによりTBS pH7.5で溶出して精製すると、還元DMD-ASO-SHがもたらされた(13.2mg、収率:92%、チオール対DMD-ASO比=0.91)。
【0180】
hCD71-PEG4-SPDPのアリコート(25 mg、0.16 μmol、0.95 mg/ml)に、DMD-ASO-SHのアリコート(4mg/ml、4.0モル当量、0.65 μmol、1.17 ml)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃でインキュベートした。反応の進行は、PDTの移動量により測定した。16時間後、コンジュゲート混合物を濃縮し、Superdex 200PGカラムによりDPBS pH7.5で溶出して精製することにより、精製hCD71-DMD-ASOコンジュゲートを得た。アリコートをBCA比色アッセイにより分析し、コンジュゲートに新しいEC値を割り当て、次に濃縮して2.5mg/mlに標準化し、0.2μmでろ過し、次に特性評価用のアリコート及び生成物試験用のアリコートに分配した。結果は、hCD71-DMD-ASOコンジュゲートであった(全収率=23.1mg、82%、DMD-ASO対hCD71比=3.5)。第2の合成において、hCD71-DMD-ASOコンジュゲートを上述と同じ方法で合成した、DMD-ASO対hCD71比=2.1)。
【0181】
hCD71-DMD-PMO
hCD71(60mg、4.20ml)のアリコートをDPBS pH7.5で緩衝液交換し、2.5mg/mlに標準化した。hCD71のアリコート(58mg、0.38μmol、2.53mg/ml)に、調製したてのPEG4-SPDP溶液のアリコート(10mg/ml、10モル当量、3.8μmol)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、調製したてのグリシン溶液のアリコート(2.0mg/ml、50モル当量、19μmol)を加えることにより反応をクエンチし、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃で15分超インキュベートした。コンジュゲートをZeba 40Kスピン脱塩カラムによりTBS pH7.5で溶出して精製し、紫外可視により分析して、精製hCD71-PEG4-SPDPを得た(51.3mg、収率:88%、0.95mg/ml、PEG4-SPDP対hCD71比=4.1)。
【0182】
別途、TBS pH7.5を使用して再構成したDMD-PMO-SS-アミドのアリコート(20.2mg、2μmol、10.0mg/ml)を調製したてのTHPP溶液(50mg/ml、10モル当量、20μmol、82.8μl)に加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、オリゴをPD10 Sephadex G25MカラムによりTBS pH7.5で溶出して精製すると、DMD-PMO-SHがもたらされた(16.4mg、収率:81%、チオール対DMD-PMO比=0.97)。
【0183】
hCD71-PEG4-SPDPのアリコート(25mg、0.16μmol、0.95mg/ml)に、DMD-PMO-SHのアリコート(4.1mg/ml、4.0モル当量、0.65μmol、1.59ml)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃でインキュベートした。反応の進行は、PDTの移動量により測定した。約16時間後、コンジュゲート混合物を濃縮し、Superdex 200PGカラムによりDPBS pH7.5で溶出して精製することにより、精製hCD71-DMD-PMOコンジュゲートを得た。アリコートをBCA比色アッセイにより分析し、コンジュゲートに新しいEC値を割り当て、次に濃縮して2.5mg/mlに標準化し、0.2μmでろ過し、次に特性評価用のアリコート及び生成物試験用のアリコートに分配した。結果は、hCD71-DMD-PMOコンジュゲートであった(全収率=28.2mg、92%、DMD-PMO対hCD71比=3.9)。第2の合成において、hCD71-DMD-PMOコンジュゲートを同じ方法で合成した、及びDMD-PMO対hCD71比=3.2)。
【0184】
細胞培養(ヒト)
固定化した非DMDドナー(KM155)からのヒト筋芽細胞及びDMD罹患ドナー(DM8036)からの筋芽細胞を、サプリメントパック入りの骨格筋細胞成長培地(PromoCell、Germany)で、更に15%ウシ胎仔血清(Gibco、United Kingdom)及び0.5%ゲンタマイシン(Sigma-Aldrich、USA)を補足した上で、製造者の指示に従い培養した。分化のため、0.5%ゼラチンコート表面上に細胞を播種し、約70~80%のコンフルエンスになったところで、増殖培地を、2%FBS(Gibco)、2%GlutaMAX、及び1%グルコース(Sigma-Aldrich)及び0.5%ゲンタマイシンを補足したDMEM(Gibco)に交換した。3日間以上、最長でも5日間以内の分化の後に(分化した筋管の存在に基づく)、処理を開始した。
【0185】
細胞培養及びインビトロ実験(マウス)
マウス筋芽細胞株C2C12を10%FBS DMEM培地+Pen/Strepに維持し、24ウェルプレートでは240,000細胞毎ウェル(cells per well:cpw)又は96ウェルプレート(well plate:wp)では40,000cpwで維持培地(DMEM培地+Pen/Strep中10%FBS)に播き、37℃にて5%CCO2でインキュベートした。播種から24時間後、細胞を分化培地(DMEM中2%ウマ血清)に切り替えて、3日間インキュベートした後、培地を交換した。更に24時間経った後、再び培地を交換し、化合物を加えて48時間インキュベートした。次に分化培地を交換し(化合物なし)、細胞を更に24時間インキュベートした。処理から合計72時間経った後、24wpの細胞をエクソンスキップ分析用に回収し、96wpで細胞生存能力を評価した。
【0186】
エクソンスキップ分析及び定量化(ヒト)
RNAをTRIsure単離試薬(Bioline)で単離し、当業者に公知のとおり水相からのRNAのクロロホルム抽出;イソプロパノール沈殿を実施した。cDNA合成には1000ngの全RNAを使用し、適量のRNアーゼフリー水に希釈して8μl RNA希釈を生じさせた。プライミングプレミックスは、1μl dNTPミックス(各10mM)及び1μl特異的リバースプライマー(KM155については、h53R 5’-CTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’[配列番号5];DM8036については、h55R 5’-ATCCTGTAGGACATTGGCAGTT-3’[配列番号6])を含有した。この混合物を70℃で5分間加熱し、次に氷上で少なくとも1分間冷却した。0.5μl rRNasin(Promega)、4.0μl RT緩衝液、1.0μl Tetro RT(Bioline)、及び4.5μl RNアーゼフリー水を含有する反応混合物を調製し、各反応につき20μlの総容積が生じるように冷却した混合物に加えた。RT-PCRを42℃で60分間、次に85℃で5分間実行し、氷上で冷却した。スキップ分析については、ネステッドPCR手法に従った。この目的上、1回目のPCRにて、2.5μl 10×SuperTaq PCR緩衝液、0.5μl dNTPミックス(各10mM)、0.125μl Taq DNAポリメラーゼTAQ-RO(5U/μl;Roche) 16.875μl RNアーゼフリー水の混合物に3μl cDNAを加え、及び1μl(10pmol/μl)の標的化したエクソンに隣接する各プライマー:KM155については、h48F 5’-AAAAGACCTTGGGCAGCTTG-3’[配列番号7]及びh53R 5’-CTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’[配列番号5];DM8036については、h47F2 5’-TGAAACTGGAGGACCCGTG-3’[配列番号8]及びh54R 5’-CCAAGAGGCATTGATATTCTC-3’[配列番号9]を使用した。これらの試料を94℃で5分、次に、94℃で40秒、60℃で40秒、72℃で180秒を25サイクル、その後72℃で7分間のPCRランに供した。2回目のPCRについては、5μl 10×SuperTaq PCR緩衝液、1μl dNTPミックス(各10mM)、0.25μl Taq DNAポリメラーゼTAQ-RO(5U/μl;Roche)、38.25μl RNアーゼフリー水の混合物に1.5μl PCR1試料を加え、及び2μl(10pmol/μl)の標的化したエクソンに隣接する各プライマー:KM155については、h49F 5’-CCAGCCACTCAGCCAGTG-3’[配列番号10]及びh52R2 5’-TTCTTCCAACTGGGGACGC-3’[配列番号11];DM8036については、h47F 5’-CCCATAAGCCCAGAAGAGC-3’[配列番号12]及びh53R 5’-CTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’[配列番号13]を使用した。これらの試料を、94℃で5分、次に94℃で40秒、60℃で40秒、72℃で60秒を32サイクル、その後72℃で7分間のPCRランに供した。エクソンスキッピングレベルをFemto PulseシステムでUltra Sensitivity NGSキット(Agilent)を製造者の指示に従い使用して定量化した。或いは、特異的PCR断片をBioanalyzer 2100をDNA1000チップ(ラボ・オン・チップ;Agilent)と共に使用して分析するか、又は2%アガロースゲルランで120Vで分離した。ゲルを画像化し、ImageJを使用してバンド強度を定量化した。それぞれ、予想される非スキップ産物はサイズが408bp(KM155)及び475bp(DM8036)であり、スキップ産物は175bp(KM155)又は242bp(DM8036)である。
【0187】
エクソンスキップ分析及び定量化(マウス生体外及び生体内)
マウス細胞株からのスキップの分析のため、細胞を回収し、各試料につき0.5ml TRIzol(商標)試薬(Thermo Scientific)を使用して、製造者の指示に従いRNAを単離した。組織の分析のため、初めに30~50mgの凍結組織を細かく切断し、TRIzol(商標)試薬(Thermo Scientific)及びTissueLyser LT(Qiagen)を製造者の指示に従い使用してmRNAを単離した。試料毎のcDNA合成のため、5.0μl中の0.5μg RNAに、各反応につき20.0μlの総容積が生じるように10.0μl ddH2O、4.0μl 5×iScript(商標)Reaction Mix及び1.0μl iScript(商標)逆転写酵素(BioRad)を加えた。RT-PCRを25℃で5分間、46℃で60分間、及び95℃で2分間実行した。スキップ分析については、SapphireAmp(商標)Fast PCRマスターミックス(TakaraBio)を製造者の指示に従い使用した。この目的上、9.7μl RNアーゼフリー水、12.5μlの2×マスターミックス、及び0.4μlの10μM FWプライマー5’-ACCCAGTCTACCACCCTATC-3’(配列番号14)、及び0.4μlの10μM RVプライマー5’-CTCTTTATCTTCTGCCCACCTT-3’(配列番号15)をPCRチューブに加え、混合し、その後、25μlの総容積が生じるように2μl cDNA(50ng)を加えた。これらの試料を、94℃で1分と、98℃で5秒、55℃で5秒、72℃で5秒を35サイクルと、続く72℃で1分のPCRランに供した。試料を2μl 6×ローディング緩衝液と混合し、次に2%アガロースゲルに16μlをロードして、80Vで60~90分泳動させた。ゲルを画像化し、バンド強度をChemiDoc(商標)XRS+システム及びImage Lab(商標)ソフトウェア(BioRad)で定量化した。それぞれ、予想される非スキップ産物は、サイズが788bpであり、スキップ産物は、575bpである。
【0188】
細胞生存能力(マウス生体外)
処理後、細胞生存能力をCellTiter-Glo(商標)2.0アッセイにより製造者の指示(Promega)に従い実施して決定した。発光シグナルをSpectraMax ID5プレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。定量化のため、「培地のみ」のウェルのバックグラウンドシグナルを他の全てのウェルから差し引いた後、処理ウェルのバックグラウンド補正済シグナルを未処理ウェルのバックグラウンド補正済シグナルで除すこと(×100)によって処理/未処理細胞の細胞生存率を計算した。
【0189】
インビボ研究
各群9匹の雄CD-1マウス、投与時年齢6~7週齢に、表A2に掲載する化合物又は媒体の単回静脈内(iv)注射を与えた。治療期間中、動物を定期的に秤量し(投与前日、及び投与後は週2回)、臨床所見があれば記録した。4日目、14日目、及び28日目に、それぞれ各群3匹のマウスを犠牲にして脱血致死させて、様々な異なる組織及び臓器からの試料を分析用に摘出した。血清を調製し、ALT(AU480、Beckman Coulter)及びクレアチニンレベル(比色法、Beckman Coulter)を分析した。組織をRNALaterに保存し、分析時まで急速凍結した。心臓、横隔膜及び腓腹筋試料において、ジストロフィンスキップレベルを決定した。
【0190】
【0191】
実施例5の方法
SO1861-SC-マレイミド
SO1861は、サボンソウ(Saponaria officinalis L)に由来し(Extrasynthese、仏国)、Symeres(オランダ)により当該技術分野において公知の方法に従いそれぞれのハンドルにカップリングされた。
【0192】
DBCO-(M23D)2の合成
DBCO-(M23D)2の合成は、Symeres(オランダ)により実施された。
【0193】
DBCO-(M23D)2と抗体のコンジュゲーション
mCD71-M23D及びmCD63-M23Dの特注のコンジュゲート生産は、Abzena(英国)により実施された。
【0194】
分析及び調製方法
分析方法
SEC方法1
反応分析装置:分析用SEC機器DIONEX Ultimate 3000 UPLC(DIONEX 6);カラム:Watersタンパク質BEH SECカラム、200Å、1.7μm、4.6mm×150mm;移動相:緩衝液A(0.2Mリン酸カリウム緩衝液、pH6.8、0.2M KCl、超純水中15%イソプロパノール);方法:イソクラティック緩衝液Aで10分間;流量:0.35ml/分;実行時間:10分;検出UV:214nm、248nm、260nm及び280nm;カラムオーブン:30℃;オートサンプラー:周囲;注入量:10μL;試料調製:最終的な試料は、試料をDPBSで1.0mg/mlに希釈することにより分析した。
【0195】
LC-MS方法1
質量分析(LC-MS)機器:XEVO-G2XS TOF;カラム:Agilent Poroshell 300SB-C3ガード、5μm RPカラム;移動相:緩衝液A(水、0.1%ギ酸)緩衝液B(MeCN、0.1%ギ酸);注入方法:0~2.0分、10%B 2.0~7.0分、10~80%B 7.0~8.0分、100%B 8.0~8.01分、10%B 8.01~10.0分、10%B;MS方法:キャピラリー電圧:3.0kV、コーン電圧:120V、コーン温度:140℃、脱溶媒和温度:450℃、:流量:0.4ml/分:実行時間:10分:検出:TIC;カラムオーブン:60℃;オートサンプラー:周囲;注入量:10μL;試料調製:a.最終試料、中間体、及び反応混合物は、試料をDPBSで0.05mg/mlに希釈することにより分析した。
【0196】
LC-MS方法2
機器:Agilent 1260 Infinity II、1260 G7112B バイナリポンプ、1260 G7167Aマルチサンプラー、1290MCT G7116Bカラムコンパートメント 1260 G7115A DAD(210、220及び210~320nm)、PDA(210~320nm)、G6130B MSD(ESI pos/neg)質量範囲90~1500、カラム:XSelect CSH C18(30×2.1mm 3.5μm)流量:1ml/分、カラム温度:40℃、溶出液A:水中0.1%ギ酸、溶出液B:アセトニトリル中0.1%ギ酸、グラジエント:t0min=5%B、t1.6min=98%B、t3min=98%B、ポストラン:1.3分。
【0197】
LC-MS方法3
機器:Agilent 1260 Infinity II、1260 G7112B バイナリポンプ、1260 G7167Aマルチサンプラー、1260MCT G7116Aカラムコンパートメント 1260 G7115A DAD(210、220及び210~320nm)、PDA(210~320nm)、G6130B MSD(ESI pos/neg)質量範囲90~1500、カラム:XSelect CSH C18(30×2.1mm 3.5μm)、流量:1ml/分、カラム温度:25℃、溶出液A:水中10mM炭酸水素アンモニウム(pH9.5);溶出液B:アセトニトリル、グラジエント:t0min=5%B、t1.6min=98%B、t3min=98%B、ポストラン:1.2分。
【0198】
LC-MS方法4
機器:Agilent 1260 Infinity II、1260 G7112B バイナリポンプ、1260 G7167Aマルチサンプラー、1290MCT G7116Bカラムコンパートメント 1260 G7115A DAD(210~320nm、210及び220nm)、PDA(210~320nm)、G6130B MSD(ESI pos/neg)質量範囲90~1500、カラム:Waters C4 BEH(50×2.1mm 3.5μm)流量:1ml/分;カラム温度:40℃、溶出液A:水中0.1%ギ酸、溶出液B:アセトニトリル中0.1%ギ酸、グラジエント:
At0min=5%B、t2.5min=98%B、t4min=98%B
Bt0min=5%B、t0.05min=5%B、t5min=98%B、t6min=98%B
ポストラン:1.5分。
【0199】
分取方法
分取MP-LC方法1
機種:Buchi Reveleris(商標)分取MPLC;カラム:Waters XSelect(商標)CSH C18(145×25mm、10μm);流量:40ml/分;カラム温度:室温;溶出液A:水中10mM炭酸水素アンモニウムpH=9.0;溶出液B:水中99%アセトニトリル+1%10mM炭酸水素アンモニウム;グラジエント:t0min=50%B、t4min=50%B、t16min=100%B、t21min=100%B;検出UV:220、254、270nm;UVに基づくフラクション収集。
【0200】
分取MP-LC方法2
機種:Buchi Reveleris(商標)分取MPLC;カラム:Phenomenex LUNA C18(3)(150×25mm、10μm);流量:40ml/分;カラム温度:室温;溶出液A:水中0.1%(v/v)ギ酸、溶出液B:アセトニトリル中0.1%(v/v)ギ酸;グラジエント:t0min=5%B,t1min=5%B,t2min=20%B,t17min=60%B,t18min=100%B,t23min=100%B;検出UV:220、240、280nm;UVに基づくフラクション収集。
【0201】
分取LC-MS方法
MS機種:Agilent Technologies G6120AA四重極;HPLC機種:Agilent Technologies 1200分取LC;カラム:Waters XBridge Protein(C4、150×19mm、10μ);流量:25ml/分;カラム温度:室温;溶出液A:水中0.1%ギ酸;溶出液B:100%アセトニトリル;グラジエント:t0=10%A,t2.5min=10%A,t11min=50%A,t13min=100%A,t17min=100%A;検出:DAD(220~320nm);検出:MSD(ESI pos/neg)質量範囲:100~1000;DADに基づくフラクション収集。
【0202】
フラッシュクロマトグラフィ
Grace Reveleris X2(商標)C-815 Flash;溶媒送達システム:自吸式3ピストンポンプ、1回のランで最大4種の溶媒の4つの独立したチャネル、溶媒が空になったときのライン自動切替え;最大ポンプ流量250ml/分;最大圧力50バール(725psi);検出;UV200~400nm、最大4種のUVシグナルの組み合わせ及び全UV範囲スキャン、ELSD;カラムサイズ:ルアーデバイス型4~330g、オプションのホルダー取付け時750g~最大3000g。
【0203】
DBCO-(M23D)2合成
中間体1(N-[2-(4-{2-アザトリシクロ[10.4.0.04,9]ヘキサデカ-1(12),4(9),5,7,13,15-ヘキサエン-10-イン-2-イル}-N-(2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}エチル)-4-オキソブタンアミド)エチル]カルバミン酸tert-ブチル)
DMF(1.00ml)中のDBCO酸(50.0mg、0.164mmol)の溶液にDIPEA(34.0μL、0.195mmol)及びHATU(62.3mg、0.164mmol)を加え、この混合物を15分間撹拌した。次に、(アザンジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ジカルバミン酸ジ-tert-ブチル(59.6mg、0.197mmol)を加え、この反応混合物を室温で撹拌した。30分後、反応混合物を水(10.0ml)に加えた。得られた濃厚な懸濁液を遠心すると(5000RPM、3分)、上に固体がある澄明な溶液が生じた。この溶液をピペットで取り除き、固体をアセトニトリル(10.0ml)に溶解させた。得られた溶液を真空中で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィ(DCM-メタノール/DCM(1/9,v/v)グラジエント100:0から0:50に上昇)により精製して、表題生成物(90.0mg、93%)を無色の固化油として得た。LC-MSに基づく純度100%。
LRMS(m/z):591[M+H]1+
LC-MS r.t.(分):2.121
【0204】
中間体2(N,N-ビス(2-アザニウムイルエチル)-4-{2-アザトリシクロ[10.4.0.04,9]ヘキサデカ-1(12),4(9),5,7,13,-15-ヘキサエン-10-イン-2-イル}-4-オキソブタンアミドジトリフルオロ酢酸塩)
N-[2-(4-{2-アザトリシクロ[10.4.0.04,9]ヘキサデカ-1(12),4(9),5,7,13,15-ヘキサエン-10-イン-2-イル}-N-(2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}エチル)-4-オキソブタンアミド)エチル]カルバミン酸tert-ブチル(90.0mg、0.152mol)をDCM(2.00ml)に溶解させて、0℃に冷却した。次に、TFA(2.00ml、26.0mmol)を加え、この反応混合物を0℃で40分間撹拌した。反応混合物を10分の間にわたって室温に達するまで放置した。次として、反応混合物を0℃に冷却し、トルエン(5ml)で希釈した。得られた溶液を真空中で濃縮し、DCM(2×5ml)と共蒸発させて、粗製の表題生成物をややピンク色がかった油として得て、これを次のステップに直接使用した。LC-MSに基づく純度88%。
LRMS(m/z):196[M+2]2+,391[M+1]1+
LC-MS r.t.(分):1.17(LC-MS方法2)
【0205】
中間体3 N-[2-(4-{2-アザトリシクロ[10.4.0.04,9]ヘキサデカ-1(12),4(9),5,-7,13,15-ヘキサエン-10-イン-2-イル}-N-[2-({[(1S,4E)-シクロオクタ-4-エン-1-イルオキシ]カルボニル}アミノ)エチル]-4-オキソブタン-アミド)エチル]カルバミン酸(1S,4E)-シクロオクタ-4-エン-1-イル
DMF(1.00ml)及びDIPEA(200μL、1.15mmol)中の粗製のN,N-ビス(2-アザニウムイルエチル)-4-{2-アザトリシクロ[10.4.0.04,9]ヘキサデカ-1(12),4(9),-5,7,13,15-ヘキサエン-10-イン-2-イル}-4-オキソブタンアミドジトリフルオロ酢酸塩(0.152mmol)の溶液にTCO4-NHS炭酸塩(102mg、0.380mmol)を加え、この混合物を室温で撹拌した。30分後、反応混合物を分取MP-LC(分取MP-LC方法1)にかけた。生成物に対応するフラクションを合わせて直ちにプールし、冷凍して一晩凍結乾燥させて、表題化合物(90.0mg、85%)をやや褐色がかった油として得た。LC-MSに基づく純度99%。
LRMS(m/z):696[M+1]1+
LC-MS r.t.(分):2.35(LC-MS方法3)
【0206】
中間体4 2-[4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル]-N-[2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)エチル]アセトアミド
DMF(800μL)中のメチルテトラジン-NHSエステル(50.0mg、0.153mmol)の溶液に、2-(2-ピリジニルジスルファニル)エタンアミン塩酸塩(40.8mg、0.183mmol)及びDIPEA(53.0μL、0.306mmol)を加えた。この反応混合物を室温で撹拌した。2時間後、反応混合物を分取MP-LCにかけた(分取MP-LC方法2)。生成物に対応するフラクションを合わせて直ちにプールし、冷凍して一晩凍結乾燥させて、表題化合物(53.6mg,88%)をピンク色の固体として得た。LC-MSに基づく純度100%。
LRMS(m/z):399[M+1]1+
LC-MS r.t.(分):1.87(LC-MS方法3)
【0207】
中間体5:M23D-mTz
水(15.0ml)中のM23D-DSA(294mg、34.0μmol)の溶液にDTT(100mg、648μmol)を加えた。この反応混合物を室温で撹拌した。2時間後、反応混合物を6等分のフラクションに分け、アセトニトリル(6×45ml)に注入した。得られた懸濁液を振盪し、30分間静置しておいた。次に、懸濁液を遠心した(7830RPM、20分)。溶液をデカントし、残渣をアセトニトリル(各バイアル20ml)で処理した。得られた懸濁液を遠心した(7830RPM、3分)。残渣を水に溶解させて(総量10.0ml)、これらの溶液を合わせた。次に、アセトニトリル(4.00ml)中の2-[4-(6-メチル-1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル]-N-[2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)エチル]アセトアミド(54.2mg、136μmol)の溶液を加えた。この反応混合物を室温で撹拌した。2時間後、反応混合物を等分し、アセトニトリル(6×45ml)に注入した。得られた懸濁液を振盪し、遠心した(7830RPM、3分)。溶液をデカントし、残渣を水/アセトニトリル(6×2ml、1/1、v/v)に溶解させた。得られた溶液をアセトニトリル(6×20ml)に注入した。次に、懸濁液を遠心した(7830RPM、3分)。溶液をデカントし、残渣を水/アセトニトリル(総量15ml、1/1、v/v)に溶解させて、一晩凍結乾燥することにより、表題化合物(340mg、定量的収率)をピンク色の固体として得た。LC-MSに基づく純度99%。
LRMS(m/z):1468[M+6]6+、1259[M+7]7+、1102[M+8]8+、979[M+9]9+、881[M+10]10+
LC-MS r.t.(分):1.75(LC-MS方法4A)
【0208】
DBCO-(M23D)2
水(1.00ml)及びアセトニトリル(0.400ml)中のM23D-mTz(16.4mg、1.86μmol)の溶液に、アセトニトリル(675μl)中のN-[2-(4-{2-アザトリシクロ[10.4.0.04,9]ヘキサデカ-1(12),4(9),5,7,13,15-ヘキサエン-10-イン-2-イル}-N-[2-({[(1S,4E)-シクロオクタ-4-エン-1-イルオキシ]カルボニル}アミノ)エチル]-4-オキソブタンアミド)エチル]カルバミン酸(1S,4E)-シクロオクタ-4-エン-1-イル(0.67mg、0.964μmol)のストック溶液を加え、この反応混合物を室温で撹拌した。加えた後には毎回、LC-MS3Aで反応の進行をモニタした。このようにして、表題生成物への完全な変換を観察した。ストック溶液は、以下のとおり加えた;400μl、10分後-100μl、10分後-100μl、10分後-25μl、10分後-25μl、10分後-25μl。次に、反応混合物を分取LC-MSにかけた。生成物に対応するフラクションを合わせて直ちにプールし、冷凍して一晩凍結乾燥させて、表題化合物(10.5mg、62%)を白色の固体として得た。LC-MSに基づく純度100%(幅広のピーク)。
LRMS(m/z):1142[M+16]16+、1075[M+17]17+、1015[M+18]18+、既知の断片の複数のm/z値を含む
LC-MS r.t.(分):2.84(LC-MS方法4B)
【0209】
マウス抗CD63(mCD63)mAbとDBCO-(M23D)2のコンジュゲーション
1.mCD63の調製
mCD63をVivaspin(50kDa MWCO)を使用してTBSで10.0mg/mlの最終濃度となるように緩衝液交換した。
【0210】
2.抗体-Fcドメイン上の炭水化物の修飾
固定化したGlycINATOR(商標)カラム(GlyCLICK(商標)アジド活性化キット、Genovisから)を販売業者の指示に従い平衡化し、調製した。次に試料をカラムにロードし、培地を再懸濁し、混合物をインキュベートして室温で1時間混合した。次にカラムを遠心し、試料を溶出させた。
【0211】
UDP-GalNAz(GlyCLICK(商標)アジド活性化キット、Genovisから)を販売業者の指示に従いTBSで再構成し、プール溶出物にGalT(GlyCLICK(商標)アジド活性化キット、Genovisから)と一緒に移した。この混合物を暗所下30℃で一晩インキュベートした。その後、プレコンディショニングした脱塩カラムに反応物をロードし(販売業者の指示に従う)、遠心して、アジド修飾されたmAbを含有するフロースルーを収集した。これを後にコンジュゲーションに使用するまで暗所下4℃で保存した。
【0212】
3.DBCO-(M23D)2とのコンジュゲーション
mCD63をVivaspin(50kDa MWCO)を使用してDPBSで最終濃度が10.0mg/ml DBCO-(M23D)2(5.0当量、DPBS中1mM、pH7.4)となるように緩衝液交換し、mAb溶液に加えた。この反応混合物を37℃で24時間インキュベートし、次に分取用SEC(HiLoad 26/600 Superdex 200pg、DPBS)により直接精製した。コンジュゲートをSEC-UVにより特徴付けた(DARの決定)。プールしたフラクションを前述のVivaspinを使用して10.0mg/mlより高い最終濃度となるように濃縮し、0.22μmフィルタユニットで滅菌ろ過し、更なる使用時まで4℃で保存した。
【0213】
【0214】
マウス抗CD71(mCD71)mAbとDBCO-(M23D)2のコンジュゲーション
1.mCD71の調製 mCD71をVivaspin(50kDa MWCO)を使用してTBSで10.0mg/mlの最終濃度となるように緩衝液交換した。
【0215】
2.抗体-Fcドメイン上の炭水化物の修飾
固定化したGlycINATOR(商標)カラム(GlyCLICK(商標)アジド活性化キット、Genovisから)を販売業者の指示に従い平衡化し、調製した。次に試料をカラムにロードし、培地を再懸濁し、混合物をインキュベートして室温で1時間混合した。次にカラムを遠心し、試料を溶出させた。
【0216】
UDP-GalNAz(GlyCLICK(商標)アジド活性化キット、Genovisから)を販売業者の指示に従いTBSで再構成し、プール溶出物にGalT(GlyCLICK(商標)アジド活性化キット、Genovisから)と一緒に移した。混合物を暗所下30℃で一晩インキュベートした。その後、プレコンディショニングした脱塩カラムに反応物をロードし(販売業の指示に従う)、遠心することにより、アジド修飾されたmCD71を含有するフロースルーを収集した。これを後のコンジュゲーションへの使用時まで暗所下4℃で保存した。
【0217】
3.DBCO-(M23D)2とのコンジュゲーション
mCD71をVivaspin(50kDa MWCO)を使用してDPBSで10.0mg/mlの最終濃度となるように緩衝液交換した。mCD71溶液にDBCO-(M23D)2(5.0当量、DPBS中1mM、pH7.4)を加え、この反応混合物を37℃で24時間インキュベートし、次に分取用SEC(HiLoad 26/600 Superdex 200pg、DPBS)により直接精製した。コンジュゲートをSEC-UVにより特徴付けた(DARの決定)。プールしたフラクションを前述のVivaspinを使用して10.0mg/mlより高い最終濃度となるように濃縮し、0.22μmフィルタユニットで滅菌ろ過し、更なる使用時まで4℃で保存した。
【0218】
【0219】
細胞培養及びインビトロ実験(マウス)
マウス筋芽細胞株C2C12を10%FBS DMEM培地+Pen/Strepに維持し、24ウェルプレートでは240,000細胞毎ウェル(cpw)で、又は96ウェルプレート(wp)では40,000cpwで維持培地(DMEM培地+Pen/Strep中10%FBS)に播き、37℃にて5%CO2でインキュベートした。播種から24時間後、細胞を分化培地(DMEM中2%ウマ血清)に切り替えて、3日間インキュベートした後、培地を交換した。更に24時間経った後、再び培地を交換し、化合物を加え、48時間インキュベートした。処理から合計48時間経った後、24wpの細胞をエクソンスキップ分析用に回収し、96wpで細胞生存能力を評価した。
【0220】
エクソンスキップ分析及び定量化(マウスインビトロ)
上記で「方法」(実施例1~4において実施されるとおり)に記載したとおり実施した。
【0221】
細胞生存能力(マウスインビトロ)
上記で「方法」(実施例1~4において実施されるとおり)に記載したとおり実施した。
【0222】
実施例6の方法
SO1861-SC-マレイミド
SO1861は、サボンソウ(Saponaria officinalis L)に由来し(Extrasynthese、仏国)、Symeres(オランダ)により当該技術分野において公知の方法に従いそれぞれのハンドルにカップリングされた。
【0223】
5’-チオール-DMD-ASO、5’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO(1)、及び3’-ジスルフィドアミド-DMD-PMO(1、2、3、4及び5)と抗体のコンジュゲーション
hCD71-5’-SS-DMD-ASO、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)、hCD71-3’-SS-DMD-PMO(1)、hCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)、hCD71-3’-SS-DMD-PMO(3)、hCD71-3’-SS-DMD-PMO(4)、及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(5)の特注のコンジュゲート生産は、Fleet Bioprocessing(英国)により実施された。
【0224】
紫外可視分光光度法
濃度は、Thermo Nanodrop 2000分光計又はPerkin Elmer Lambda 365分光光度計のいずれかを以下の質量吸光係数(EC)値で使用して決定した:
実験的に決定されたモルε495=58,700M-1cm-1及びRz280:495=0.428をSAMSA-フルオレセインに使用した。
エルマン試薬(TNB);モルε412=14,150M-1cm-1
ピリジン2-チオン(PDT);モルε363=8,080M-1cm-1
加えて、DMDオリゴヌクレオチド取込みを、紫外可視分光光度法及びBCA比色アッセイにより以下のε265文献値を使用して決定した:
DMD-PMO(1);モルε363=318,050(mg/ml)-1cm-1
DMD-PMO(2);モルε363=318,120(mg/ml)-1cm-1
DMD-PMO(3);モルε363=308,180(mg/ml)-1cm-1
DMD-PMO(4);モルε363=247,710(mg/ml)-1cm-1
DMD-PMO(5);モルε363=207,890(mg/ml)-1cm-1
DMD-ASO;モルε363=310,00(mg/ml)-1cm-1
【0225】
SEC
Akta purifier 10システム及びBiosep SEC-s3000カラムを使用した、DPBS:IPA(85:15)で溶出するSECによりコンジュゲートを分析した。コンジュゲート純度を不純物/凝集体形態と比べたコンジュゲートピークの積分により決定した。
【0226】
SDS-PAGE
未変性のタンパク質及びコンジュゲートをSDS-PAGEにより4~12%ビス-トリスゲル及びランニング緩衝液としてMOPSを使用してタンパク質ラダーに対し熱変性非還元及び還元条件下で分析した(200V、約40分)。LDS試料緩衝液及びMOPSランニング緩衝液を希釈液として含む試料を0.5mg/mLに調製した。還元試料については、50mMの最終濃度となるようにDTTを加えた。試料を90~95℃で15分間熱処理し、各ウェルに2.5μg(5μL)を加えた。タンパク質ラダー(10μl)は前処理なしにロードした。空の列に1×LDS試料緩衝液(10μl)を満たした。ゲルに流した後、それをDI水(100mL)で3回、振盪しながら(15分、200rpm)洗浄した。ゲルをPAGEBlueタンパク質染色剤(30mL)と共に振盪インキュベートすることにより(60分、200rpm)、クーマシー染色を実施した。過剰な染色溶液を除去し、DI水(100ml)で2回リンスし、DI水(100ml)で脱染した(60分、200rpm)。得られたゲルをImageJ(ImageJ(Rasband、W.S.、ImageJ、米国国立衛生研究所(U.S.National Institutes of Health)、Bethesda、Maryland、USA)及びMyCurveFit(タンパク質ラダーの2点間相関)を用いて画像化し、処理した。
【0227】
ウエスタンブロッティング
SDS-PAGEから、X-Cellブロットモジュールを以下のセットアップ((-)BP-BP-FP-ゲル-NC-BP-BP-BP(+))及び条件(30V、60分)で使用して、調製したてのトランスファー緩衝液を使用してゲルをニトロセルロース膜に転写した。BP-ブロッティングパッド;FP-フィルタパッド;NC-ニトロセルロース膜。後に、NCをPBS-T(100ml)で振盪しながら(5分、200rpm)2回洗浄し、非特異的部位をブロッキング緩衝液(50ml)で振盪しながら(30分、200rpm)ブロックし、次に活性部位を、ブロッキング緩衝液で希釈したヤギ抗ヒトκ-HRP(1:2000)とヤギ抗ヒトIgG-HRP(1:2000)(50ml)との組み合わせで振盪しながら(30分、200rpm)標識した。その後、NCをPBS-T(100ml)で振盪しながら(5分、200rpm)1回洗浄し、複合体化した抗体をUltra TMB-ブロッティング溶液(25ml)で検出した。発色を目視で観察し、NCを水で洗浄することにより発色を停止させて、得られたブロットの写真を撮った。
【0228】
尿素-PAGEゲル電気泳動
コンジュゲートのこの特徴付けは、オリゴヌクレオチド標準品及びオリゴヌクレオチド標準ラダー(レポート残基「フリー」オリゴヌクレオチド)と比較して、EtBr又はSYBRグリーン染色で変性非還元条件下にて行った。
【0229】
hAb-DMD-オリゴヌクレオチド
hCD71-5’-SS-DMD-ASO、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)、及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1-5)など、hAb標的型DMDオリゴヌクレオチドのコンジュゲーションの概要を以下に示す。括弧内に斜体で提示される分量は、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)について例として示すものである。
【0230】
hAbのアリコートをDPBS pH7.5で緩衝液交換し、2.5mg/mlに標準化した。hAbのアリコート(hCD71、20.0mg、1.33×10-4mmol、2.5mg/ml)に、調製したてのPEG4-SPDP溶液のアリコート(10.0mg/ml、10.0モル当量、1.33×10-3mmol、0.075ml)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、調製したてのグリシン溶液のアリコート(10mg/ml、50モル当量、6.65×10-3mmol、8.1μl)を加えることにより反応をクエンチし、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら20℃で15分超インキュベートした。コンジュゲートを精製し(Zeba 40Kスピン脱塩カラムを使用してTBS pH7.5で溶出し、0.45μmでろ過する)、次に紫外可視により分析して、精製hAb-SPDPを得た(hCD71-SPDP、21.2mg、2.04mg/ml、SPDP対hCD71比=3.9)。hAb-SPDPは、すぐに使用した。
【0231】
別途、所望のDMDオリゴヌクレオチド(DMD-PMO(1)-5’-アミド、20.2mg、1.99×10-3mmol、10.00mg/mll)をTBS pH7.5を使用して再構成し、単一のアリコートにプールし、及び紫外可視により分析して、ε280、ε260及びこれらの比ε260/ε280を確かめた。このアリコートに、調製したてのTHPP溶液のアリコート(50mg/ml、10モル当量、1.99×10-2mmol,83μl)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に回転混合しながら37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、オリゴヌクレオチドをPD10 Sephadex G25カラムを使用してTBS pH7.5で溶出して精製すると、還元DMDオリゴヌクレオチド-SHがもたらされた(DMD-PMO(1)-5’-SH、16.4mg、81%、チオール対DMD-PMO(1)比=1.02)。
【0232】
hAb-SPDP(hCD71-SPDP、10.2mg、6.79×10-5mmol、2.04mg/ml)のアリコートにオリゴヌクレオチド-SHのアリコート(DMD-PMO(1)-SH、2.73mg/ml、8.0モル当量、5.43×10-4mmol、2.01ml)を加え、この混合物を短時間ボルテックスし、次に20℃で回転混合しながら一晩インキュベートした。約16時間後、コンジュゲート混合物を紫外可視により分析して、PDTの移動によって取込みを確かめ、次に消毒済みの2.6×60cm Superdex 200PGカラムを使用してDPBS pH7.5で溶出して精製した。コンジュゲートを紫外可視及びBCA比色アッセイにより分析し、新しいε280を割り当てた。材料を濃縮し(Vivacell 100(30K MWCO)を使用、達成可能な最高濃度まで)、次に生成物試験用及び特性評価用にアリコートに分配した。結果は、例として、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)コンジュゲートであった(全収率=65%;DMD-PMO(1)対hCD71比=2.2)。他の結果は、以下であった:
hCD71-3’-SS-DMD-PMO(1)(全収率=58%、DMD-PMO(1)対hCD71比=2.1)
hCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)(全収率=70%、DMD-PMO(2)対hCD71比=3.0)
hCD71-3’-SS-DMD-PMO(3)(全収率=65%、DMD-PMO(3)対hCD71比=2.6)
hCD71-3’-SS-DMD-PMO(4)(全収率=68%、DMD-PMO(4)対hCD71比=2.3)
hCD71-3’-SS-DMD-PMO(5)(全収率=67%、DMD-PMO(5)対hCD71比=2.1)
hCD71-5’-SS-DMD-ASO(全収率=76%、DMD-ASO対hCD71比=2.1)
【0233】
細胞培養(ヒト)
非DMDドナー(KM155)からの固定化したヒト筋芽細胞を上記の「方法」(実施例1~4において実施されるとおり)に記載したとおり培養した。
【0234】
エクソンスキップ分析及び定量化(ヒト)
RNAをTRIsure単離試薬(Bioline)で単離し、当業者に公知のとおり水相からのRNAのクロロホルム抽出;イソプロパノール沈殿を実施した。cDNA合成には1000ngの全RNAを使用し、適切な量のRNアーゼフリー水に希釈して8μl RNA希釈を生じさせた。プライミングプレミックスは、1μl dNTPミックス(各10mM)及び1μl特異的リバースプライマー(KM155については、エクソン51:h53R 5’-CTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’[配列番号5];エクソン53:h55R 5’-ATCCTGTAGGACATTGGCAGTT-3[配列番号6]を含有した。この混合物を70℃で5分間加熱し、次に氷上で少なくとも1分間冷却した。0.5μl rRNasin(Promega)、4.0μl 5×RT緩衝液(Promega)、1.0μl M-MLV RT(Promega)、及び4.5μl RNアーゼフリー水を含有する反応混合物を調製し、各反応につき20μlの総容積が生じるように冷却した混合物に加えた。RT-PCRを42℃で60分間、次に85℃で5分間実行し、氷上で冷却した。スキップ分析については、ネステッドPCR手法に従った。この目的上、1回目のPCRにて、2.5μl 10×SuperTaq PCR緩衝液、0.5μl dNTPミックス(各10mM)、0.125μl Taq DNAポリメラーゼTAQ-RO(5U/μl;Roche)、16.875μl RNアーゼフリー水及び1μl(10pmol/μl)の標的化したエクソンに隣接する各プライマーの混合物に3μl cDNAを加えた。以下のプライマーを使用した:KM155については、エクソン51:h48F 5’-AAAAGACCTTGGGCAGCTTG-3’[配列番号7]及びh53R 5’-CTCCGGTTCTGAAGGTGTTC-3’[配列番号5];エクソン53:h50F 5’-AGGAAGTTAGAAGATCTGAGC-3’[配列番号20]及びh55R 5’-ATCCTGTAGGACATTGGCAGTT-3’[配列番号6]。これらの試料を94℃で5分、次に、94℃で40秒、60℃で40秒、72℃で180秒を25サイクル、その後72℃で7分間のPCRランに供した。2回目のPCRについては、5μl 10×SuperTaq PCR緩衝液、1μl dNTPミックス(各10mM)、0.25μl Taq DNAポリメラーゼTAQ-RO(5U/μl;Roche)、38.25μl RNアーゼフリー水及び2μl(10pmol/μl)の標的化したエクソンに隣接する各プライマーの混合物に1.5μl PCR1試料を加えた。以下のプライマーを使用した:KM155については、エクソン51:h49F 5’-CCAGCCACTCAGCCAGTG-3’[配列番号10]及びh52R2 5’-TTCTTCCAACTGGGGACGC-3’[配列番号11]、エクソン53:h52F 5’-CCCCAGTTGGAAGAACTCATT-3’[配列番号21]及びh54R 5’-CCAAGAGGCATTGATATTCTC-3’[配列番号9]。これらの試料を、94℃で5分、次に94℃で40秒、60℃で40秒、72℃で60秒を32サイクル、その後72℃で7分間のPCRランに供した。Ultra Sensitivity NGSキットを使用したFemto Pulseシステム(Agilent)を製造者の指示に従い使用して、エクソンスキッピングレベルを定量化した。或いは、Bioanalyzer 2100をDNA1000チップと共に使用して(ラボ・オン・チップ;Agilent)、特異的PCR断片を分析した。エクソン51スキッピングについては、予想される非スキップ産物はサイズが408bp(KM155)であり、スキップ産物は175bp(KM155)である。エクソン53スキッピングについては、予想される非スキップ産物はサイズが438bp(KM155)であり、スキップ産物は226bp(KM155)である。
【0235】
結果
実施例1.DMD-PMO+SO1861及びDMD-ASO+SO1861
DMD-ASO(ヒトジストロフィンのエクソン51スキッピングを誘導する、ドリサペルセンと同じ配列及び化学修飾を有する2’O-メチル-ホスホロチオエート(phosporothioate)アンチセンスオリゴヌクレオチド)及びDMD-PMO(ヒトジストロフィンのエクソン51スキッピングを誘導する、エテプリルセンと同じ配列を有するが5’-修飾は有しないホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーアンチセンスオリゴヌクレオチド)について、非DMD(健常)ドナー(KM155)に由来する分化したヒト筋管におけるエクソンスキッピング活性をエンドソーム脱出促進剤SO1861-EMCH(4μM)との組み合わせで評価した。意外にも、これにより、SO1861と組み合わせたときのみ72時間後にエクソン51のエクソンスキッピングが強力に促進されることが明らかになった(表A3):20μM DMD-ASO単独に曝露してもスキッピング活性は見られなかったが、0.08μM DMD-ASO+SO1861-EMCHで既に%のエクソンスキップが明らかになったことから、改善度が250倍を超えることが指摘される(
図1A)。同様に、20μM DMD-PMOに曝露すると4%のスキップが生じたが、一方、1.25μM DMD-ASO+SO1861-EMCHで既に5%のスキップが実現し、20μMでは34%が実現したことから、非標的SO1861-EMCHと併せた非標的型オリゴについて16倍の効力の増加が指摘される(
図1B)。
【0236】
結論として、SO1861-EMCHを共投与すると、DMD-ASO及びDMD-PMOのオンターゲット送達が強力に促進され、SO1861-EMCHが存在しない条件と比較して1~2桁低い曝露濃度で顕著なエクソン51スキッピングが誘導される。
【0237】
【0238】
実施例2.hCD71-DMD-ASO+SO1861-EMCH又はhCD71-DMD-PMO+SO1861-EMCH又はmCD71-M23D+SO1861-EMCH
DMD-ASO-SH及びDMD-PMO-SHを、それぞれ
図2B及び
図2Cに示されるとおり、PEG4-SPDP修飾ヒト抗CD71モノクローナル抗体(hCD71-PEG4-SPDP、
図2A)にコンジュゲートして、hCD71-DMD-ASO(DAR2.1)及びhCD71-DMD-PMO(DAR3.2)を作製した。得られた化合物は、4μM SO1861-EMCH無し、又はそれとの組み合わせのいずれかで、非DMDドナー(KM155)及びDMD罹患ドナー(DM8036)からの分化したヒト筋管における細胞質DMDオリゴ送達の促進及びジストロフィンエクソン51スキッピングの促進に関して試験した。これにより、4μM SO1861-EMCHと組み合わると、72時間の治療後に、それぞれhCD71-DMD-ASO単独、及びhCD71-DMD-PMO単独と比較して著しく低い濃度でエクソン51のエクソンスキッピングが強力に促進されたことが明らかになった(表A4及び表A5):hCD71-DMD-ASOでは、2181nMでKM155におけるスキップ率は低かったが(3%)(
図3A、左のパネル)、これは非標的型DMD-ASOと比較すると改善であり(表A3)、一方、hCD71-DMD-ASO+SO1861では、KM155において18.2~109nMで既にスキップが18~24%にまで更に増加した(
図3A、右のパネル)。同様に、hCD71-DMD-PMOでは、KM155において2022nMでスキップはなかったが(0%)(
図3B、左のパネル)、一方、SO1861-EMCHを加えると、2.8~16.9nMの濃度のhCD71-DMD-PMOでエクソンスキップが見えた(
図3B、右のパネル)。更に重要なことには、DMD罹患ドナー(DM8036)からの分化した筋管では、333nM hCD71-DMD-ASOで僅か17%のエクソン51スキップ率が観察されたに過ぎなかったが(
図4A、左のパネル)、一方、意外にも、720倍低い濃度の0.50nM hCD71-DMD-ASO+4μM SO1861-EMCHで既に同等のスキップが生じた(15%)。スキップ効率は、僅か18.2~109nMの曝露濃度のhCD71-DMD-ASOで最高64~68%まで際立って増加した(
図4A、右のパネル)。同様に、またDM8036筋管でも、hCD71-DMD-PMO単独では337nMで21%のスキップ率に達したが(
図4B、左のパネル)、一方、既に0.08~0.47nMの曝露濃度のhCD71-DMD-PMO+4μM SO1861-EMCHで明らかに測定可能なスキップが生じ(7~13%)、これは101nMでは最高33%にまで増加し(
図4B、右のパネル)、1~2桁の改善を実現した。
【0239】
まとめると、これは、標的型オリゴヌクレオチドhCD71-DMD-ASO及びhCD71-DMD-PMOにSO1861-EMCHを共投与すると、オンターゲット細胞質送達が、具体的には、DMD罹患ドナーからの分化した筋管など、関連性のある細胞システムにおいて著しく改善されることを示している。
【0240】
【0241】
【0242】
次に、SMCCリンカーで修飾されたマウスCD71を標的とする抗CD71モノクローナル抗体(mCD71-SMCC、
図2D)にM23D-SS-アミド(マウスジストロフィンのエクソン23スキッピングを誘導するホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーアンチセンスオリゴヌクレオチド)をコンジュゲートして、mCD71-M23D(DAR1.2)を作製した(
図2E)。mCD71-M23D+8μM SO1861-SC-Malの共投与を分化したC2C12筋管で試験し、これにより、SO1861-SC-Malとの組み合わせでは、少なくとも1桁低い濃度のmCD71-M23Dによるエクソンスキッピングの強力な促進が明らかになり(27nMまで明確なバンド、
図5、右のパネル)、一方、mCD71-M23D単独は、433nMまでの試験したいずれの濃度でも、活性を示さなかった(
図5、左のパネル)。
【0243】
これは、SO1861化合物の共投与が、様々な異なる標的化用配列(様々な異なるエクソン、様々な異なる配列)を持つ標的型PMOの効力を有効に増加させるために広範に適用可能な交差種であることを示している。
【0244】
実施例3.hCD71-DMD-ASO+SO1861-SC-Mal又はhCD71-DMD-PMO+SO1861-SC-Mal
ヒトCD71を標的とする抗CD71モノクローナル抗体(hCD71)にDMD-ASO-SH又はDMD-PMO-SHを(
図2B及び
図2Cに先述したとおり)コンジュゲートして、hCD71-DMD-ASO(DAR2.2)及びhCD71-DMD-PMO(DAR3.1)を生じさせた。コンジュゲートを、対照を含め、非DMDドナー(KM155)及びDMD罹患ドナー(DM8036)の分化したヒト筋管において試験した。予想どおり、これらの処理では、hCD71-DMD-ASOについて0.084nM~651nM(
図7A、左のパネル;表A6)及び0.078nM~610nM hCD71-DMD-PMO(
図7B、左のパネル;表A6)の濃度範囲でKM155筋管におけるエクソンスキップは投与の72時間後に0~2.4%の範囲と、全く又はごく僅かしかなかったことが明らかになった。しかしながら、4μM SO1861-SC-MalをhCD71-DMD-ASO(
図7A、右のパネル;表A7)又はhCD71-DMD-PMO(
図7B、右のパネル;表A7)のいずれかに共投与すると、分化したヒト筋管においてエクソンスキップの強力な促進が観察された:約0.5nMで既に、hCD71-DMD-ASO及びhCD71-DMD-PMOについてそれぞれ0~5%及び0~4%のエクソンスキップ率が観察された。これは、109nM hCD71-DMD-ASOでは29~40%にまで、及び102nM hCD71-DMD-PMOでは4~5%にまで、それぞれ増加し、SO1861-SC-Malを加えない条件と比較して数桁の効力の改善を成した。
【0245】
より関連性の高いことに、DMD罹患ドナーからの分化した筋管では、標的型コンジュゲートhCD71-DMD-ASO及びhCD71-DMD-PMOによる処理により、投与後72時間にやはり、651nM hCD71-DMD-ASO(
図7A、左のパネル;表A7)及び610nM hCD71-DMD-PMO(
図7B、左のパネル;表A7)でそれぞれ最大7~11%のスキップ率が明らかになった。しかしながら、際立つことに、hCD71-DMD-ASO又はhCD71-DMD-PMOのいずれも、それに4μM SO1861-SC-Malを共投与すると、DMD罹患ドナーからの分化したヒト筋管においてエクソンスキップの強力な促進:109nM hCD71-DMD-ASO+SO1861-SC-Malで92~96%のスキップ率(
図8A、右のパネル)及び102nM hCD71-DMD-PMO+SO1861-SC-Malで37~57%のスキップ率(
図8B、右のパネル)が観察された。効果は、少なくとも0.50nM hCD71-DMD-ASOまで下がっても、なおも測定可能であり、hCD71-DMD-PMO+SO1861-SC-Malについては0.013nMであってさえスキップが観察された。
【0246】
【0247】
【0248】
実施例4.mCD71-M23D(インビボ有効性)
CD-1雄マウスがmCD71-M23D(DAR1.2)の単回注射を受けた(
図2)。加えて、媒体対照群が含まれた。
【0249】
図9(A~C)が示すとおり、媒体(群1)又はmCD71-M23D(2.80mg/kg PMO;群2)を受けた動物は、試験した組織のいずれにおいても、又はいずれの時点でも(4日目も、14日目も、又は28日目も)エクソン23スキップを示さなかった。
【0250】
このデータは、標的型SO1861が存在しないコンジュゲートでは、試験した用量においていかなるスキップも実現しないことを示している。
【0251】
CD-1マウスにおけるmCD71-M23Dのインビボ忍容性
コンジュゲートmCD71-M23D(
図2)を表A2に詳述するとおり投与した。この試験の経過中、mCD71-M23Dで治療した1匹の動物(群2の残り6匹中)は、11日目に死亡しているのが見つかり、28日目にはまた、3匹中1匹のマウスについてもバイオマーカーデータが欠測値となった。14日目の犠牲死時点で、群2におけるmCD71-M23Dを投与した(3匹中)2匹のマウスに腎臓異常及び血清クレアチニンの上昇が見られた(
図10A)。腎臓バイオマーカーALTの顕著な又は持続性の変化は明らかでなかった(
図10B)。注目すべきことに、14日及び28日以降、ALTレベルは媒体対照(群1)と同等であった。
【0252】
実施例5.mCD71-M23D+SO1861-SC-Mal又はmCD63-M23D+SO1861-SC-Mal(インビトロ)
2つのM23D(マウスジストロフィンのエクソン23スキッピングを誘導するホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーアンチセンスオリゴヌクレオチド)オリゴヌクレオチドペイロードを担持する分岐した足場であるDBCO-(M23D)
2を
図11に示されるとおり作製した。DBCO-(M23D)
2をマウスCD71を標的とする抗CD71モノクローナル抗体又はマウスCD63を標的とする抗CD63モノクローナル抗体のいずれかにコンジュゲートして、それぞれmCD71-M23D(DAR3.5)及びmCD63-M23D(DAR3.4)を作製した(コンジュゲーション手順については、
図12を参照のこと)。mCD71-M23Dコンジュゲート又はmCD63-M23Dコンジュゲートのいずれかを一定濃度の8μMのエンドソーム脱出促進剤SO1861-SC-Malと共投与し、48時間の治療後に、分化したC2C12マウス筋管におけるジストロフィンエクソン23スキッピングに関して試験した。8μM SO1861-SC-Malの共投与によるエクソン23スキッピングの強力な促進が、mCD71-M23D(0.2nMまで明確なバンド、少なくとも3桁の改善)(
図13A、右のパネル)及びmCD63-M23D(6.0nMまで明確なバンド、2桁の改善)(
図13B、右のパネル)の両方について明らかになった。mCD71-M23D単独では、最高758nMまでの試験したいずれの濃度においても活性は見られず(
図13A、左のパネル)、及びmCD63-M23D単独では、755nMで僅か2%のスキップ率が見られたに過ぎなかった(
図13B、左のパネル)。CTGアッセイで決定したとき、治療は細胞生存能力に影響を及ぼさなかった。これらのデータは、SO1861-SC-Malを共投与すると、筋管におけるCD71及びCD63を標的化したM23D送達が少なくとも2~3桁改善することを示している。
【0253】
実施例6.hCD71-5’-SS-DMD-ASO+SO1861-SC-Mal又はhCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)+SO1861-SC-Mal又はhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1、2、3、4、又は5)+SO1861-SC-Mal(インビトロ)
ヒトCD71を標的とする抗CD71モノクローナル抗体に、DMD-ASO-SH(ヒトジストロフィンのエクソン51スキッピングを誘導し、ドリサペルセンと同じ配列及び化学修飾を有する活性型の2’O-メチル-ホスホロチオエート(phosporothioate)アンチセンスオリゴヌクレオチド)又はDMD-PMO(1)-SH(ヒトジストロフィンのエクソン51スキッピングを誘導する、エテプリルセンと同じ配列を有するが5’-修飾は有しない活性型のホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー[PMO]アンチセンスオリゴヌクレオチド)を5’へのジスルフィド結合形成を通じてコンジュゲートし、それぞれ、hCD71-5’-SS-DMD-ASO(DAR2.1)及びhCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)(DAR2.2)を作製した(コンジュゲーション手順については
図14A~
図14Dを参照のこと)。得られた化合物を、4μMのエンドソーム脱出促進剤SO1861-SC-Mal無し、又はそれとの組み合わせのいずれかで、非DMDドナー(KM155)からの分化したヒト筋管におけるジストロフィンエクソン51スキッピングに関して試験した。これにより、hCD71-5’-SS-DMD-ASO単独では、600nMでもエクソン51スキッピング率は低かったが(2.6%)(
図15A、左のパネル;表A8)、4μM SO1861-SC-Malと組み合わせると、72時間の治療後にエクソン51のスキッピングが強力に促進されることが明らかになり、0.46~100nM hCD71-5’-SS-DMD-ASO+SO1861-SC-Malで既に、13.4~43.6%のエクソン51スキッピング率が明らかになった(
図15A、右のパネル;表A9)。同様に、hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)に曝露したところ、16.6~600nMでエクソン51スキッピングは極めて少なかったが(0.4~1.1%)(
図15B、左のパネル;表A8)、6倍低い曝露濃度の2.78~100nM hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)+SO1861-SC-Malでエクソン51スキッピングは10.4~12.5%に増加し(
図15B、右のパネル;表A9)、SO1861-SC-Malのない条件と比較して効力の著しい改善を成した。このように、SO1861-SC-MalをhCD71-5’-SS-DMD-ASO及びhCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)、即ち、5’でhCD71にコンジュゲートしている標的型DMDオリゴヌクレオチドと共投与すると、オンターゲット送達が改善され、顕著なエクソン51スキッピングが誘導される。
【0254】
次に、3’で抗hCD71にコンジュゲートしている標的型DMD-PMOについて、ヒト筋管に対するエクソン51スキッピング活性を試験した。ヒトCD71を標的とする抗CD71モノクローナル抗体に、DMD-PMO(1)-SH、DMD-PMO(2)-SH(ヒトジストロフィンのエクソン51スキッピングを誘導する活性型のPMOアンチセンスオリゴヌクレオチド、Echigoya et al.(2017)に記載されるとおり )又はDMD-PMO(3)-SH(ヒトジストロフィンのエクソン51スキッピングを誘導する活性型のPMOアンチセンスオリゴヌクレオチド、Echigoya et al.(2017)に記載されるとおり)を3’へのジスルフィド結合形成を通じてコンジュゲートして、それぞれ、hCD71-3’-SS-DMD-PMO(1)(DAR2.1)、hCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)(DAR3.0)、及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(3)(DAR2.6)を作製した(コンジュゲーション手順については
図14A~
図14Dを参照のこと)。得られた化合物を、4μM SO1861-SC-Mal無し、又はそれとの組み合わせのいずれかで、非DMDドナー(KM155)からの分化したヒト筋管におけるジストロフィンエクソン51スキッピングに関して試験した。hCD71-5’-SS-DMD-PMO(1)について示されるとおり、これにより、4μM SO1861-SC-Malと組み合わせたhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1)について、72時間の処理後にエクソン51スキッピングが促進されることが明らかになった:hCD71-3’-SS-DMD-PMO(1)単独に曝露しても、0.077~600nMでエクソン51スキッピングは極めて少なかったが(0.4~2.2%)(
図16A、左のパネル;表A8)、2.78~100nMの曝露濃度のhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1)+SO1861-SC-Malでエクソン51スキッピングは8.2~9.7%に増加した(
図16A、右のパネル;表A9)。より際立つことには、4μM SO1861-SC-Malと組み合わせたhCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)について、エクソン51スキッピングが強力に促進された:hCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)+SO1861-SC-Malへの曝露は、0.013nMコンジュゲートで既にエクソン51スキッピングが明らかとなり(7.8%)、これは2.78~100nMコンジュゲートで75.6~80.4%にまで増加し(
図16B、右のパネル;表A9)、一方でhCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)単独への曝露では600nMコンジュゲートでも僅か5.7%のエクソン51スキッピングであったに過ぎず(
図16B、左のパネル;表A8)、SO1861-SC-Malのない条件と比較して4桁の改善を成した。また、4μM SO1861-SC-Malと組み合わせたhCD71-3’-SS-DMD-PMO(3)に曝露すると、エクソン51スキッピングが強力に促進されることになった:hCD71-3’-SS-DMD-PMO(3)+SO1861-SC-Malは、0.077nMコンジュゲートで既にエクソン51スキッピングが明らかとなり(9.6%)、これは2.78~100nMで28.3~29.2%にまで増加し(
図16C、右のパネル;表A9)、一方でhCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)単独への曝露では、試験した全ての濃度で(最高600nMまで)、エクソン51スキッピングはなかった(0.0%)(
図16C、左のパネル;表A8)。このように、SO1861-SC-MalをhCD71-3’-SS-DMD-PMO(1)、hCD71-3’-SS-DMD-PMO(2)、及びhCD71-3’-DMD-PMO(3)、即ち、3’でhCD71にコンジュゲートしている標的型DMDオリゴヌクレオチドと共投与すると、オンターゲット送達が改善され、顕著なエクソン51スキッピングが誘導される。
【0255】
また、ヒトジストロフィンのエクソン53スキッピングを誘導する標的型DMD-PMOもヒト筋管で試験した。ヒトCD71を標的とする抗CD71モノクローナル抗体に、DMD-PMO(4)-SH(ヒトジストロフィンのエクソン53スキッピングを誘導する、ゴロディルセンと同じ配列及び化学修飾を有する活性型のPMOアンチセンスオリゴヌクレオチド)又はDMD-PMO(5)-SH(ヒトジストロフィンのエクソン53スキッピングを誘導する、ビルトラルセンと同じ配列及び化学修飾を有する活性型のPMOアンチセンスオリゴヌクレオチド)を3’へのジスルフィド結合形成を通じてコンジュゲートして、それぞれ、hCD71-3’-SS-DMD-PMO(4)(DAR2.3)及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(5)(DAR2.1)を作製した(コンジュゲーション手順については
図14A~
図14Dを参照のこと)。得られた化合物を、4μM SO1861-SC-Mal無し、又はそれとの組み合わせのいずれかで、非DMDドナー(KM155)からの分化したヒト筋管におけるジストロフィンエクソン53スキッピングに関して試験した。これにより、SO1861-SC-Malと組み合わせたときのみ、72時間の処理後にエクソン53スキッピングが促進されることが明らかになった:600nM hCD71-3’-SS-DMD-PMO(4)単独への曝露では、僅か0.4%のエクソン53スキッピング率となるに過ぎなかったが(
図17A、左のパネル;表A8)、2.78nM hCD71-3’-SS-DMD-PMO(4)+SO1861-SC-Malで既に、5.4%のエクソン53スキッピング率となった(
図17A、右のパネル;表A9)。同様に、600nM hCD71-3’-SS-DMD-PMO(5)単独への曝露では、エクソン53スキッピング率は0.3%となったが(
図17B、左のパネル;表A8)、2.78nM hCD71-3’-SS-DMD-PMO(5)+SO1861-SC-Malで既に(
図17B、右のパネル;表A9)、6.0%のエクソン53スキッピング率となり、これは100nM hCD71-3’-SS-DMD-PMO(5)では8.4%にまで増加し、1~2桁の改善を実現した。これらのデータは、SO1861-SC-MalをhCD71-3’-SS-DMD-PMO(4)及びhCD71-3’-SS-DMD-PMO(5)、即ち、3’でhCD71にコンジュゲートしている標的型DMDオリゴヌクレオチドと共投与すると、そのオンターゲット送達が促進され、エクソン53スキッピングが誘導されることを示している。
【0256】
まとめると、これらのデータは、様々な異なる標的化用配列(様々な異なるエクソン、様々な異なる配列)及びコンジュゲーション方法(5’端側又は3’端側のいずれか)のhCD71標的型DMDオリゴヌクレオチドのヒト筋管における効力を有効に増加させるために、SO1861-SC-Malの共投与を幅広く適用可能であることを示している。
【0257】
【0258】
【0259】
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