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特表2025-500485プラズマアシストセラミック焼結装置及びセラミック焼結方法
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  • 特表-プラズマアシストセラミック焼結装置及びセラミック焼結方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】プラズマアシストセラミック焼結装置及びセラミック焼結方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/64 20060101AFI20241226BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C04B35/64
H05H1/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538271
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2022126623
(87)【国際公開番号】W WO2023116162
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111573492.X
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524235717
【氏名又は名称】清華大学深▲セン▼国際研究生院
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】王 希林
(72)【発明者】
【氏名】晏 子楊
(72)【発明者】
【氏名】張 若兵
(72)【発明者】
【氏名】周 宏揚
(72)【発明者】
【氏名】賈 志東
(72)【発明者】
【氏名】王 黎明
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA15
(57)【要約】
本出願は、プラズマアシストセラミック焼結装置及びセラミック焼結方法を提供する。プラズマアシストセラミック焼結装置は、密閉容器と、プラズマジェット装置と、ガス供給装置と、電源装置とを備える。密閉容器は、セラミックグリーン成形体を収納し、排気口が開設されている。プラズマジェット装置は、作動電源と、ガス入口とガス出口とを開設したプラズマ発生室とを備え、ガス入口は密閉容器内に位置し、プラズマ発生室内には作動電極が設けられており、作動電極は、第1端と第2端とを有し、第1端は、作動電源と電気的に接続され、第2端はガス出口に近接する。ガス供給装置は、ガス出口と連通し、プラズマ発生室に作動ガスを供給する。電源装置は、セラミックグリーン成形体に電気的に接続して、セラミックグリーン成形体に電圧を印加して焼結してセラミックを得る。本出願が提供する焼結装置は、プラズマ提供して焼結をアシストし、セラミック材料の性能最適化をより好適に実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマアシストセラミック焼結装置であって、密閉容器と、プラズマジェット装置と、ガス供給装置と、電源装置とを備え、
前記密閉容器は、セラミックグリーン成形体を収納し、排気口が開設されており
前記プラズマジェット装置は、作動電源と、ガス入口とガス出口とを開設したプラズマ発生室とを備え、
前記ガス入口は前記密閉容器内に位置し、
前記プラズマ発生室内には作動電極が設けられており、
前記作動電極は第1端と第2端とを有し、
前記第1端は前記作動電源と電気的に接続され、
前記第2端は前記ガス出口に近接し、
前記ガス供給装置は、前記ガス出口と連通し、前記プラズマ発生室に作動ガスを供給し、
前記電源装置は、前記セラミックグリーン成形体に電気的に接続して、前記セラミックグリーン成形体に電圧を印加して焼結してセラミックを得ることを特徴とするプラズマアシストセラミック焼結装置。
【請求項2】
前記電源装置は、電圧測定装置および/または電流測定装置を含むことを特徴とする請求項1に記載のプラズマアシストセラミック焼結装置。
【請求項3】
前記プラズマ発生室は有機ガラス管であることを特徴とする請求項1記載のプラズマアシストセラミック焼結装置。
【請求項4】
前記作動電極はタングステン線であることを特徴とする請求項1記載のプラズマアシストセラミック焼結装置。
【請求項5】
前記ガス出口の位置は、前記セラミックグリーン成形体の位置に対応することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプラズマアシストセラミック焼結装置。
【請求項6】
前記作動ガスは、窒素ガスまたはヘリウムガスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプラズマアシストセラミック焼結装置。
【請求項7】
セラミック焼結方法であって、
セラミックグリーン成形体を提供するステップと、
プラズマジェット装置で発生されたプラズマを前記セラミックグリーン成形体の表面に噴射して処理を行い、前記セラミックグリーン成形体に電圧を印加し、前記電圧を目標電圧まで徐々に上昇させ、予め設定された時間範囲内において前記セラミックグリーン成形体に流れる電流密度を予め設定された範囲内に維持して、焼結してセラミックを得るステップ、又は、
前記セラミックグリーン成形体に電圧を印加し、前記電圧を目標電圧まで徐々に上昇させた後、予め設定された時間範囲内で前記セラミックグリーン成形体に流れる電流密度を予め設定された範囲内に維持し、前記プラズマジェット装置から発生したプラズマを予め設定された時間範囲内でセラミックグリーン成形体の表面に噴射して処理を行い、焼結してセラミックを得るステップ、とを含むことを特徴とするセラミック焼結方法。
【請求項8】
前記電圧の上昇速度は0.1~5kV/sであり、
前記セラミックグリーン成形体に流れる電流密度は10~150mA/mm2に維持されることを特徴とする請求項7に記載のセラミック焼結方法。
【請求項9】
前記目標電圧は3~4kVであることを特徴とする請求項7に記載のセラミック焼結方法。
【請求項10】
前記セラミックグリーン成形体と電源装置との接続方法は、前記セラミックグリーン成形体に第1電極および第2電極を設け、前記第1電極および前記第2電極と、前 記電源装置とを接続することを特徴とする請求項7に記載のセラミック焼結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、セラミック材料の製造技術分野に関し、特に、プラズマアシストセラミック焼結装置及びセラミック焼結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料は、電子、化学工業、宇宙および医療等の分野で広く使用されている。焼結は、セラミック材料の製造における重要な一環である。高温焼結により製造されたセラミック材料は、結晶粒子が大きく、エネルギーが多い等の欠点を有する。小さな結晶粒子はセラミックの力学的および電気的性能を高めることができるため、高性能セラミックを製造することは重要な現実的意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、上記課題を解決できるセラミック焼結装置及びセラミック焼結方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願の第1態様により提供するプラズマアシストセラミック焼結装置は、密閉容器と、プラズマジェット装置と、ガス供給装置と、電源装置とを備え、
前記密閉容器は、セラミックグリーン成形体を収納し、排気口が開設されており、
前記プラズマジェット装置は、作動電源と、ガス入口とガス出口とを開設したプラズマ発生室とを備え、前記ガス入口は前記密閉容器内に位置し、前記プラズマ発生室内には作動電極が設けられており、前記作動電極は、第1端と第2端とを有し、前記第1端は、前記作動電源と電気的に接続され、前記第2端は前記ガス出口に近接し、
前記ガス供給装置は、前記ガス出口と連通し、前記プラズマ発生室に作動ガスを供給し、
前記電源装置は、前記セラミックグリーン成形体に電気的に接続して、前記セラミックグリーン成形体に電圧を印加して焼結してセラミックを得る。
【0005】
本出願の実施形態によるプラズマアシストセラミック焼結装置は、作動電極を用いて作動ガス中に放電してプラズマを発生させる。発生したプラズマにより密閉容器内のセラミックグリーン成形体を処理してセラミック性能を最適化する。ガス供給装置は、ガス入口を介してプラズマ発生室と連通して、出力されたガスは、プラズマの発生に作動ガスを供給する一方、ガス出口から密閉容器内に入り、セラミックグリーン成形体の焼結に焼結雰囲気を提供することができる。発生した排ガスは、密閉容器の排気口から排出することができる。また、プラズマ発生室のガス出口を密閉容器内に設けて、発生したプラズマを密閉容器内に入れて、セラミックグリーン成形体を処理することができる。本出願が提供する焼結装置により、プラズマを提供して焼結をアシストすることができ、セラミック材料の性能最適化をより好適に実現することができる。
【0006】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記プラズマ発生室は前記密閉容器内に収容されている。
【0007】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記作動電源は、高周波ジェット電源である。作動電源は、プラズマを発生させるために用いられる。
【0008】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記電源装置は高圧交流電源であり、必要に応じて異なる大きさの電流を供給することができる。電源装置は、セラミックグリーン成形体に電圧を印加し、焼結するために用いられる。
【0009】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記電源装置は、電圧測定装置および/または電流測定装置を含む。本出願の電源装置は、電圧測定装置のみを用いてもよく、電流測定装置のみを用いてもよく、または電圧測定装置と電流測定装置とを同時に用いてもよい。
【0010】
電圧測定装置として電圧計が挙げられ、電流測定装置として電流計が挙げられ、電圧測定装置および電流測定装置を用いて、セラミックグリーン成形体に印加する電圧および電流を測定および制御することができる。
【0011】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記プラズマ発生室は有機ガラス管である。
【0012】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記作動電極はタングステン線である。
【0013】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記ガス出口の位置は、前記セラミックグリーン成形体の位置に対応しており、ガス出口から出力されたプラズマを、セラミックグリーン成形体の表面に吹き付ける処理が容易になる。
【0014】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記作動ガスは、窒素ガスまたはヘリウムガスである。
【0015】
本出願の第2態様により提供されるセラミック焼結方法は、
セラミックグリーン成形体を提供するステップと、
プラズマジェット装置を用いてプラズマを発生して、プラズマジェット装置で発生されたプラズマを前記セラミックグリーン成形体の表面に噴射して処理し、前記セラミックグリーン成形体に電圧を印加し、前記電圧を目標電圧まで徐々に上昇させ、予め設定された時間範囲内において前記セラミックグリーン成形体に流れる電流密度を予め設定された範囲内に維持して、焼結してセラミックを得るステップ、又は、
前記セラミックグリーン成形体に電圧を印加し、前記電圧を目標電圧まで上昇させた後、予め設定された時間範囲内で前記セラミックグリーン成形体に流れる電流密度を予め設定された範囲内に維持し、前記プラズマジェット装置から発生したプラズマを予め設定された時間範囲内でセラミックグリーン成形体の表面に噴射して処理し、焼結してセラミックを得るステップ、とを含む。
【0016】
本出願の実施形態によるセラミック焼結方法は、セラミックグリーン成形体に電圧を印加し、徐々に電圧を目標電圧まで上昇させる。目標電圧まで昇圧されると、セラミックグリーン成形体に沿面放電が発生し、セラミックグリーン成形体の導電率が変化し、セラミックグリーン成形体が沿面フラッシュオーバーを経て内部の導電パスを形成できる。ジュール熱効果によりセラミックの急速焼結を実現し、室温でのセラミック材料の急速緻密化が図られる。また、本出願では、プラズマを印加して補助焼結を行うことによりセラミックの性能を最適化することができ、プラズマの印加過程を2段階で行うことが可能である。1つは、セラミックグリーン成形体に目的電圧まで印加電圧を上げてセラミックグリーン成形体に沿面放電を発生させる前に、プラズマを利用して放電を誘導し、プラズマの補助を利用してセラミックのフラッシュ開始電圧を低下させる。もう一つは、目標電圧まで上昇してセラミックグリーン成形体の電気伝導度が変化した後の段階において、プラズマを利用してセラミックの表面を処理して、セラミックグリーン成形体を焼結中の高温状態において、プラズマ中の活性粒子と相互作用させて、セラミック表面の改質を行い、セラミックの性能を制御し、セラミックの性能を最適化する目的を達成する。
【0017】
本出願の幾つかの実施例によれば、前記電圧の上昇速度は0.1~5kV/sであり、前記セラミックグリーン成形体に流れる電流密度は10~150mA/mm2に維持される。昇圧速度が0.1kV/sより小さい場合、焼結過程が遅すぎて、フラッシュ焼結の発生に不利である。昇圧速度が5kV/sより大きい場合、昇圧が速くなり過ぎてセラミックグリーン成形体の両端が直接破壊アークが発生して、セラミックグリーン成形体の両端に接続されたリード線が溶断される。セラミックグリーン成形体に流れる電流密度は10~150mA/mm2に維持され、低すぎる電流密度ではセラミックグリーン成形体の急速な緻密を保つことができず、高すぎる電流はセラミックが急激に収縮し、局部的に過熱して破断するおそれがある。
【0018】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記目標電圧は3~4kVである。沿面フラッシュオーバー電圧が常圧で3~4kVとなるように電圧を徐々に上げていき、セラミックグリーン成形体の導電率を変化させて電流パスを生じさせ、焼結を急速に緻密化してセラミックを得る。目標電圧はセラミックグリーン成形体の長さに関係しており、目標電圧まで昇圧したとき、セラミックグリーン成形体に流れる電流密度が10~150mA/mm2となるように目標電圧値を制御することにより、セラミックグリーン成形体の急速な緻密化を図ることができる。
【0019】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記セラミックグリーン成形体と電源装置との接続方法は、前記セラミックグリーン成形体に第1電極および第2電極を設け、前記第1電極および前記第2電極と、前記電源装置とを接続している。
【0020】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記第1電極および前記第2電極の材質は、金、導電性銀ペーストから選択される一つである。セラミックグリーン成形体上に金を吹き付けたり、導電性銀ペーストを塗布したりして電極を形成し、電源装置と電気的に接続できるようにしてもよい。
【0021】
本出願のいくつかの実施例によれば、前記セラミックグリーン成形体は、円柱体、直方体、ドッグボーン形状のうちの少なくとも1種である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本出願の一実施形態によるプラズマアシストセラミック焼結装置の構造を示す模式図である。
図2】本出願の第1実施例によるセラミック焼結方法における電圧電流のトレンドグラフであり、セラミックグリーン成形体はプラズマ表面処理を行っている。
図3】本出願の比較例によるセラミック焼結方法における電圧電流のトレンドグラフであり、セラミックグリーン成形体はプラズマ表面処理を行っていない。
図4】本出願の第2実施例によるセラミック焼結方法によって得られたセラミックの走査型電子顕微鏡(SEM)図である。ここで、aは、プラズマ表面処理を行い、フラッシュ焼結時間が90sで作製したセラミックのSEM図を示す。bは、プラズマ表面処理をしておらず、フラッシュ焼結時間が120sで作製したセラミックのSEM図を示す。cは、プラズマ表面処理をしておらず、フラッシュ焼結時間が90sで作製したセラミックのSEM図を示す。dは、プラズマ表面処理をしておらず、フラッシュ焼結時間が60sで作製したセラミックのSEM図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、以下の詳細な説明において上記の図面と併せてさらに説明される。
【0024】
本出願の実施形態における技術的解決手段は、本出願の実施形態における図面を参照して以下に明確かつ完全に説明される。なお、記載された各実施形態は、本出願の実施形態の一部に過ぎず、すべての実施形態ではないことは明らかである。創造的な努力なしに本出願の実施形態に基づいて当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本出願の範囲内である。
【0025】
本明細書において用いられる技術および科学の用語は、特に定義されない限り、本開示の技術分野に属する当業者が通常理解する意味合いと同義である。本願明細書において使用される用語は、具体的な実施例を記述する目的のみであり、本願を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1を参照すると、本出願の一実施形態によるプラズマアシストセラミック焼結装置は、密閉容器100と、プラズマジェット装置200と、ガス供給装置300と、電源装置400とを備える。密閉容器100は、セラミックグリーン成形体500を収容するためのものであり、密閉容器100には、ガス排気口110が開設している。プラズマジェット装置200は、作動電源210と、プラズマ発生室220とを含む。プラズマ発生室220には、ガス入口221とガス出口222が開設している。ガス出口222は密閉容器100内に位置しており、ガス出口222から出力されるプラズマやガスが密閉容器100内に入り、その中のセラミックグリーン成形体500を処理する。本実施形態において、プラズマ発生室220は、密閉容器100に収容されている。プラズマ発生室220内には作動電極230が設けられており、作動電極230は第1端231と第2端232とを有し、第1端231は作動電源210に電気的に接続され、第2端232はガス出口222に近接している。ガス供給装置300は、プラズマ発生室220のガス入口221と導気管を介して連通し、プラズマ発生室220に作動ガスを供給する。作動電源210がオンされると、作動ガスのアシスト下作動電極230が第2端232で放電してプラズマが発生し、発生したプラズマがガス排出口222から出力してセラミックグリーン成形体500の表面に噴射される。また、ガス出口222が密閉容器100内に位置するため、ガス送出装置300から出力された作動ガスは、ガス出口222を介して密閉容器100に出力され、焼結雰囲気を提供することができ、焼結によって生じた排気ガスは、密閉容器100に開設された排気口110を介して排出される。電源装置400は、セラミックグリーン成形体500と電気的に接続して、セラミックグリーン成形体500に電圧および電流を印加する。使用時には、電源装置400とセラミックグリーン成形体500とを電気的に接続して電源を入れて、セラミックグリーン成形体500に沿面放電又は内部放電が生じるまで、セラミックグリーン成形体500に印加される電圧を徐々に上げていく。セラミックグリーン成形体500の電気伝導度は変化し、セラミックグリーン成形体500に流れる電流密度を制御して、フラッシュ焼成法による電界焼結により一定の密度のセラミックを形成することができる。プラズマジェット装置200が発生するプラズマは、上述したセラミックの焼結過程を補助してセラミックの性質を最適化するために用いられる。プラズマの印加過程を2段階で行うことが可能である。1つは、セラミックグリーン成形体500に沿面放電を発生させる前に、作動電源210を入れてプラズマを発生し、セラミックグリーン成形体の放電を誘導し、セラミックのフラッシュ焼結開始電圧を低下させる。もう一つは、セラミックグリーン成形体500の電気伝導度が変化した後の段階において、作動電源210を入れてプラズマを発生し、発生したプラズマがプラズマはセラミックの表面に噴射され、セラミックの性能を制御する。
【0027】
幾つかの実施形態では、電源装置400は、セラミックグリーン成形体500に印加される電圧を測定して制御する電圧測定装置410と、セラミックグリーン成形体500を流れる電流を測定する電流測定装置420とを含む。印加する電圧とセラミックグリーン成形体500を通過する電流値を制御することにより、セラミックグリーン成形体500はフラッシュ焼結によりセラミックとなり、セラミックの急速緻密化を図ることができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、プラズマ発生室220は有機ガラス管であり、作動電極230はタングステン線である。
【0029】
幾つかの実施形態では、ガス供給装置300が出力する作動ガスは、窒素ガス又はヘリウムガスであり、プラズマの発生及び密閉容器100へのガス雰囲気の供給に用いられる。
【0030】
幾つかの実施形態では、ガス供給装置300には、流量計310が接続されており、作動ガスの流量を制御する。
【0031】
幾つかの実施形態では、ガス出口222の位置は、セラミックグリーン成形体500の位置に対応しており、発生したプラズマがガス出口222からセラミックグリーン成形体500の表面に噴射することが容易になる。例えば、ガス出口222の位置は、具体的には、セラミックグリーン成形体500の上方位置し、セラミックグリーン成形体500の上方からプラズマを噴射することができる。
【0032】
本出願の第1実施例は、さらに上記プラズマアシストセラミック焼結装置を用いたセラミック焼結方法を提供する。セラミック焼結方法は、以下のステップを含む。
【0033】
ステップS1:セラミックグリーン成形体を提供する。
【0034】
幾つかの実施形態では、以下の方法を採用してセラミックグリーン成形体を製造する。酸化亜鉛粉体を選択し、酸化亜鉛粉体をボールミル、乾燥、造粒、篩過、打錠、焼成によりバインダーを除去する等の工程を経て、後の試験に用いることができるセラミックグリーン成形体500を得る。高温銀ペーストをセラミックグリーン成形体の両側に刷毛塗付し、適切な温度で乾燥して第1電極および第2電極を形成する。セラミックグリーン成形体は、略ドッグボーン形状であり、そのうちドッグボーン全体の長さは21mm、全体の幅は3.3mm、中間部分の厚さは1.7mmである。
ステップS2:セラミックグリーン成形体500を密閉容器100に入れ、セラミックグリーン成形体500の両端の第1電極および第2電極にリード線を巻き付け、リード線を介してセラミックグリーン成形体500と電源装置400の両端を電気的に接続し、セラミックグリーン成形体500が浮くようにリード線を固定ホルダーに固定し、電源装置400を高圧交流電源とし、電源装置400をOFF状態に保持する。
ステップS3:プラズマジェット装置を用いてプラズマを発生する。具体的には、ガス供給装置300のバルブを開けて、出力される作動ガス体積流量が10L/minになるまで流量計310を調整し、このとき作動電源210をオンにする。作動電極230は、作動ガスの補助下で放電して安定したプラズマジェットを発生し、発生したプラズマ電流をセラミックグリーン成形体500の表面に噴射して処理する。本実施例においてガス供給装置300は窒素ガスボンベであり、作動電源210は高周波ジェット電源である。
【0035】
ステップS4:30分(min)プラズマ処理した後、プラズマジェットをオフにし、電源装置400をオンにして、0.2kV/sの速度で目標電圧まで均一に昇圧してセラミックグリーン成形体500表面に沿面フラッシュオーバーを発生させ、この電圧値をフラッシュ焼結開始電圧とする。その後セラミック両端電圧が急降下して電流が瞬間的に大きくなり、その後電流密度を所定範囲内に維持してグリーン内部に安定した導電パスが発生し、安定焼成段階に入る。所定時間焼成(例えば1分)後に電源をオフし電圧電流実験データを記録する。電圧電流トレンドグラフを図2に示している。
【0036】
ステップS5:作動電源210をオフし、新しいセラミックグリーン成形体を交換し、ステップS2、S4を繰り返してもう1組の電圧電流比較実験データを得る。比較実験データの電圧電流トレンドグラフを図3に示している。すなわち、セラミックグリーン成形体500をプラズマで表面処理することなく、そのままフラッシュ焼成してもう一組の比較実験データを得る。図2図3とを比較すると、セラミックグリーン成形体が沿面放電を起こす前にプラズマを印加して、セラミックのフラッシュ焼結開始電圧を効果的に低減できることが分かる。
【0037】
本出願の第2実施例は、さらに上記プラズマアシストセラミック焼結装置を用いたセラミック焼結方法を提供する。
【0038】
セラミック焼結方法は、以下のステップを含む。
【0039】
ステップS1:セラミックグリーン成形体500を作製する。
【0040】
幾つかの実施形態では、以下の方法を採用してセラミックグリーン成形体を製造する。酸化亜鉛粉体を選択して試験を行い、粉体ボールミル、乾燥、造粒、篩過、打錠、焼成によりバインダーを除去する等の工程を経て、後の試験に用いることができるセラミックグリーン成形体500を得る。高温銀ペーストをセラミックグリーン成形体500の両側に刷毛塗りし、適温乾燥させて第1電極および第2電極を形成する。セラミックグリーン成形体は、略ドッグボーン形状であり、そのうちドッグボーン全体の長さは21mm、全体の幅は3.3mm、中間部分の厚さは1.7mmである。
【0041】
ステップS2:セラミックグリーン成形体500を密閉容器100に入れ、セラミックグリーン成形体500の両端の第1電極および第2電極にリード線を巻き付け、リード線を介してセラミックグリーン成形体500と電源装置400の両端を電気的に接続し、セラミックグリーン成形体500が浮くようにリード線を固定ホルダーに固定し、電源装置400を高圧交流電源とし、電源装置400をOFF状態に保持する。
【0042】
ステップS3:電源装置400をオンにして、0.2kV/sの速度で目標電圧まで均一に昇圧してセラミックグリーン成形体500表面に沿面フラッシュオーバーを発生させ、この電圧値をフラッシュ焼結開始電圧とする。その後セラミック両端電圧が急降下して電流が瞬間的に大きくなり、グリーン内部に安定した導電パスが発生し、安定焼結段階に入る。
【0043】
ステップS4:プラズマジェット装置を用いてプラズマを発生する。具体的には、ガス供給装置300のバルブを開けて、出力される作動ガス体積流量が10L/minになるまで流量計310を調整し、このとき作動電源210をオンにする。作動電極230は、作動ガスの補助下で放電して安定したプラズマジェットを発生し、発生したプラズマ電流を焼結中の試料の表面に噴射する。本実施例においてガス供給装置300は窒素ガスボンベであり、作動電源210は高周波ジェット電源である。
【0044】
ステップS5:1分間焼成後に電源装置400をオフにする。第2実施例において、セラミックグリーン成形体をフラッシュ焼結した時間は90sであり、作製したセラミック試料の走査電子顕微鏡図は、図4のaに示されている。第2実施形態と同様のステップSl、S2、S3、S5を用いてプラズマ表面処理を行っていないセラミック試料を得る。当該セラミック試料について電子顕微鏡走査試験を行ったところ、図4中bは、フラッシュ焼結時間が120sのセラミック試料の電子顕微鏡走査図となり、図4中cは、フラッシュ焼結時間が90sのセラミック試料の電子顕微鏡走査図となり、図4中dは、フラッシュ焼結時間が60sのセラミック試料の電子顕微鏡走査図となる。図4によれば、プラズマ処理後にセラミック試料の結晶子サイズは小さくなり、結晶子サイズ分布がより集中していることがわかる。
【0045】
第2実施例の試験結果からわかるように、セラミックグリーン成形体が安定焼結段階に入った後にプラズマを印加することにより、高温状態のセラミックグリーン成形体とプラズマ中の活性粒子とが相互作用して、結晶粒の大きさの分布がより均一になり、結晶粒の大きさが小さくなり、セラミック性能の最適化が図られる。
【0046】
幾つかの実施形態においては、セラミック焼結を行う過程における電圧の上昇率が0.1~5kV/sであり、電圧の上昇率を調整し、セラミックグリーン成形体500の電流密度が10~150mA/mm2となるように制御することで、フラッシュ焼結により異なる緻密度を有するセラミックを形式することができる。
【0047】
上記の実施形態は、本出願の好適な実施の形態にすぎず、いかなる形態においても本出願を限定するものではない。好適な実施の形態は、上記のように開示されているが、本出願を限定することを意図するものではない。本出願の技術案を逸脱しない限り、上記した開示の技術案を利用して幾つかの変更や修飾により作成された同等な実施形態は、本出願の技術案を逸脱しない限り、上述した実施の形態による任意の簡単な変更、均等の変化や修飾は、本出願の技術案に実質的に属する。
【符号の説明】
【0048】
100 密閉容器
110 排気口
200 プラズマジェット装置
210 作動電源
220 プラズマ発生室
221 ガス入口
222 ガス出口
230 作動電極
231 第1端
232 第2端
300 ガス供給装置
310 流量計
400 電源装置
410 電圧測定装置
420 電流測定装置
500 セラミックグリーン成形体
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】