IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィブ フィリング アンド シーリングの特許一覧

特表2025-500486筐体に加圧流体を充填し、次に、この筐体を空にし、流体を回収するデバイス及び方法
<>
  • 特表-筐体に加圧流体を充填し、次に、この筐体を空にし、流体を回収するデバイス及び方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】筐体に加圧流体を充填し、次に、この筐体を空にし、流体を回収するデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20241226BHJP
   F17C 13/12 20060101ALI20241226BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/12 301Z
F17C13/02 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538276
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2022087625
(87)【国際公開番号】W WO2023118513
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114512
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524235887
【氏名又は名称】フィブ フィリング アンド シーリング
【氏名又は名称原語表記】FIVES FILLING & SEALING
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】アゲダ,シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァト,セバスチャン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB11
3E172AB15
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA47
3E172EA02
3E172EA30
3E172KA03
3E172KA21
(57)【要約】
本発明は、標的圧力に到達するまで筐体(30)に流体を充填し、次に、適切な時に前記筐体を空にする方法において、前記充填は、第1の複数の槽(R3、R4、R5、R6、R7、R8)から、様々な圧力で最低圧力の槽(R2)から開始して最高圧力の槽(R8)で終了するまで連続的に実施され、前記空にすることは、前記筐体(30)の中身を第2の複数の槽(R2、R3、R4、R5、R6、R7)に連続的に移送し、最高圧力の槽(R7)で開始して最低圧力の槽(R2)で終了することによって実施されることを特徴とする、方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的圧力に到達するまで筐体(30)に流体を充填し、次に、適切な時に前記筐体を空にする方法において、前記充填は、第1の複数の槽(R3、R4、R5、R6、R7、R8)から、様々な圧力で最低圧力の槽(R3)から最高圧力の槽(R8)まで連続的に実施され、前記空にすることは、前記筐体(30)の中身を第2の複数の槽(R2、R3、R4、R5、R6、R7)に連続的に移送し、最高圧力の槽(R7)で開始して最低圧力の槽(R2)で終了することによって実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記空にすることは、前記第1の複数の槽の槽から構成される第2の複数の槽内に向けて実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空にすることの後、流体は、前記第2の複数の槽に追加され、次に、前記第2の複数の槽は、別の筐体に充填するための前記第1の複数の槽として使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に加圧流体を一次的に充填することを必要とする方法に関し、この方法では、筐体を空にした後、流体の全て又は一部を回収する必要がある。例えば、流体は、流体が危険である、汚染する又は高価であるため、回収されることがある。
【0002】
筐体は、任意の種類のものであってよく、例えば、電気車両のための水素貯蔵槽であってよい。方法は、任意の性質のものであってよく、例えば、前記水素貯蔵槽の気密性を試験する方法であってよい。
【0003】
本発明は、液体であれ、気体であれ、ガスと液体との混合物から構成されるものであれ、任意の種類の流体に適用される。
【0004】
トレーサ・ガスを使用して水素槽の気密性を試験する方法の特定のケースについて以下で説明するが、このことは、本発明の適用分野を限定するものではない。
【背景技術】
【0005】
本発明により対処される技術的問題
トレーサ・ガスによる水素槽の気密性試験は、600バールの圧力下、水素槽にトレーサ・ガス、例えば、2%のヘリウムを伴う窒素とヘリウムとの混合物を充填することからなる。次に、槽の気密性は、センサが、漏れがある場合に槽の近傍に存在するヘリウムを検出することにより確認される。
【0006】
従来技術によれば、充填は、第1の槽から実施し得、第1の槽のトレーサ・ガスの圧力は、試験槽内で望ましい圧力より高く、第1の槽の容量は、試験槽の圧力が標的圧力に到達した際に、第1の槽の圧力が試験槽の圧力より高いままでいるのに十分なものである。空にする間、ガスは、試験槽から第2の槽に移送される。次に、圧縮器は、トレーサ・ガスを第2の槽から第1の槽に戻し、トレーサ・ガスのつぎ足しを第1の槽内で行う。
【0007】
この解決策は、トレーサ・ガスの圧力の著しい増大を必要とするため、エネルギー効率の良いものではない。この解決策は、試験槽への充填及び空にする間のトレーサ・ガスの大幅な拡張のために、弁及び管の周囲に重大な霜の生成ももたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、こうした問題に新たな解決策をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、標的圧力に到達するまで筐体に流体を充填し、次に、適切な時に前記筐体を空にする方法が提案され、充填は、第1の複数の槽から様々な圧力で連続的に実施され、最低圧力の槽で開始して最高圧力の槽で終了し、空にすることは、筐体の中身を第2の複数の槽に連続的に移送され、最高圧力の槽で開始して最低圧力の槽で終了することによって実施されることを特徴とする。
【0010】
本発明は、新たな充填サイクルのために、流体の大部分を回収し、流体を再利用することによって流体の消費量を制限することを可能にする。本発明は、充填方法をエネルギー的に最適化することも可能にし、流体が加圧されて回収され、したがって、充填が完了した際に流体の圧力を所望のレベルに上昇させるのに必要なエネルギーを制限する。
【0011】
空にした後、第2の複数の槽内に流体をつぎ足し得る。次に、第2の複数の槽は、別の筐体に充填するための第1の槽として使用される。
【0012】
有利には、前記の空にすることは、第1の複数の槽の槽から構成される第2の複数の槽内に向けて実施される。同じ複数の槽内に向けて空にすることを実行すると、槽の数を制限し、したがって、機械の費用及びサイズを低減可能にする。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、標的圧力に到達するまで筐体に流体を充填し、次に、適切な時に前記筐体を空にする機械が提案され、機械は、様々な圧力で筐体の充填を実施する第1の複数の槽と、空にする間、流体が筐体から移送される第2の複数の槽とを備え、前記機械は、本発明の第1の態様による方法の実施に適している。
【0014】
好ましくは、第2の複数の槽は、第1の複数の槽の槽から構成される。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読む間に明らかになるであろう。詳細な説明は、更なる理解のために添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の例示的な実施形態による機械の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
試験される水素槽(hydrogen reservoir)30は、最初、水中耐圧試験を受ける。次に、水素槽30を乾燥させ、窒素で流し、槽中に微量の酸素があれば除去する。この動作の終了時、水素槽30は、約5バールの窒素の残留圧力下にある。
【0018】
次に、所望の圧力に到達するまで水素槽30にトレーサ・ガスを充填する。気密性試験を実施する間、水素槽30をこの圧力で維持する。試験後、最後に槽を空にする。槽に充填し、槽を空にすることは、本発明による方法の実施によって、及び本発明による機械により実施される。
【0019】
図1]に示される機械1は、第1の槽R2を備え、第1の槽R2には、40バールの圧力下、ポンプ4と混合器5とを備える供給回路3から2%ヘリウムを伴う窒素とヘリウムとの混合物が供給され、混合物は、窒素回路6及びヘリウム回路7によって供給される。混合器出口におけるヘリウム含量は、分析器8によって測定され、窒素及びヘリウムの割合は、調整弁9、10により調節される。
【0020】
槽R2の充填段階の間、弁11、及び槽R2の出口に位置する弁13は、閉鎖される。
【0021】
機械1は、様々なより高い圧力でのトレーサ・ガスの受入れが意図される補足槽のセット、本実施形態では6つの槽R3からR8を備える。
【0022】
圧縮器12は、圧力を40バールから718バールまで上昇させることによって、槽R2内で利用可能なトレーサ・ガスからのトレーサ・ガスをこれらの補足槽へ供給することを可能にする。圧縮器12の出口に接続される入口弁14の開放によって、槽R3からR8にガスが供給され、入口弁14は、槽内で標的圧力に到達した際に閉鎖され、槽の圧力は、圧力計15によって測定される。
【0023】
例えば、最後の槽R8は、試験槽30の600バールの圧力より高い、718バールの名目圧力にあり、他の槽は、槽R2の40バールまで減少する中間名目圧力にある。
【0024】
600バールをめざして試験槽30にトレーサ・ガスを充填するため、試験槽30は、移送回路16を使用して槽R3からR8のそれぞれに連続的に接続され、移送回路16は、最低圧力の槽R3で開始して、関係する槽の出口弁17を開放することによって、槽R3からR8の出口に接続される。試験槽30内で所望の圧力に到達した後、関係する槽の弁17を閉鎖し、次の槽の弁を開放し、試験槽内の圧力を増大させる。最後の槽R8で718バールに到達した際、槽R8の出口弁17は、試験槽30内の圧力が600バールになるまで開放する。この圧力に到達した後、槽R8は、槽R8の出口弁17の閉鎖によって分離される。
【0025】
試験槽内のヘリウム含量は、分析器28で確認され、ヘリウムは、必要な場合にヘリウム緩衝槽18から750バールでつぎ足す。緩衝槽18には、ブースタ20により、ヘリウム供給槽19からヘリウムが供給される。
【0026】
気密性試験の完了後、槽R7の出口弁17を開放し、移送回路16により槽R7を試験槽に接続する。試験槽30の圧力がより高いために、この試験槽30内にあったトレーサ・ガスの一部は、槽R7に移送される。試験槽30と槽R7との間の圧力が釣り合うまで待機することが可能であるが、このことは、長く時間がかかる場合があり、機械のサイクル時間を不利にする。したがって、2つの槽の間の圧力差が標的値に到達した際に2つの槽の間の移送を停止することが有利である。次に、槽R7は、槽R7の出口弁17の閉鎖によって分離され、試験槽30は、槽R6の出口弁17の開放によって移送回路16により槽R6に接続される。これら2つの槽の間の標的圧力差に到達した後、槽R6は、槽R6の出口弁17の閉鎖によって分離され、槽R5からR2で同じ工程が使用され、試験槽30内に収容されたトレーサ・ガスをこれらの槽内に連続的に移送させる。
【0027】
トレーサ・ガスの損失を制限し、機械のエネルギー効率を更に改善するため、機械1は、試験槽30及びポンプ4の吸引要素を接続する戻り回路24を含み得、槽30内の残りのトレーサ・ガスを槽R2に移送可能にする。弁22は、戻り回路24を分離するため、試験機械30の近くに配置される。このステップの間、混合器5は、弁25によって分離される。この動作の終了時、弁22を閉鎖した後、弁26は、槽30を機械から分離する前に槽30を大気圧に戻すことを可能にする。
【0028】
代替的に、前記機械は、戻り回路24を含まなくてよく、弁22の開放により、試験槽内に収容される試験ガスの残りを大気に単に排出し、試験槽の圧力を大気圧に戻してよい。
【0029】
その後、圧縮器12により圧力を槽R3からR8に加え、槽R3からR8をこれらの名目圧力に戻し、第2の試験サイクルを開始する前に新たな試験槽30を機械に接続する。槽R2の圧力計15が槽R2圧力が低閾値に到達したことを検出した際、トレーサ・ガスのつぎ足しは、槽R2内でも行われる。
【0030】
下記の表は、[図1]による機械の動作点の一例を示し、欄Aは、試験槽30の試験サイクル開始時の槽の名目圧力を含み、欄Bは、試験槽30に充填した後の槽の圧力を含み、欄Cは、各槽によって試験槽30に供給される容量を含み、欄Dは、試験槽からガスを回収した後の槽の圧力を含み、欄Eは、各槽による試験槽30から回収した容量を含み、欄Fは、最初の状態に戻し、新たな試験サイクルを開始するために槽に供給されるガスの容量を含む。
【0031】
【表1】
【0032】
試験槽30には、槽R3からR8まで合計容量142.8Nmのトレーサ・ガスを充填した。試験の完了後、127.7Nmのトレーサ・ガス又は89%のトレーサ・ガスを試験槽30から回収した。槽R2から、槽R3からR8までに75.6Nmのトレーサ・ガスのつぎ足しが必要であったが、混合ステーション5によって47.4Nmのみが供給された。この差は、試験槽を空にする際に槽R2内で回収してある。弁26の開放によって槽が大気に接続される場合、16.4Nmが失われるにすぎず、これは、空にした後に68バールが試験槽内に残ることに相当する。しかし、このガスを戻り回路24を介して回収することが有利である。
【0033】
様々な試験容量及び/又は圧力で試験槽30のいくつかのモデルを機械上で試験し得る。新たな試験槽のモデルに変更する際、新たな槽の試験圧力に応じて槽R3からR8内の圧力レベルを調節し得る。
【0034】
有利には、新たなモデルの第1の槽の試験の間、第1の槽の試験に必要な圧力に応じて、第1の槽へのトレーサ・ガスの充填は、槽R3からR8内で利用可能な圧力に従って規定される方策に従い得る。したがって、試験圧力が低い、例えば400バールである場合、第1の槽R3からR6のみが使用され、試験後のこれらの槽のためのガスのつぎ足しは、槽R7から実施し得る。同じことは、槽R7内の圧力がガスのつぎ足しを許す限り、後続の試験でも行われる。槽R7からのガスのつぎ足しが不十分になった場合、槽R3からR6は、槽R8からつぎ足される。槽R7及びR8の圧力がつぎ足しに不十分になった場合、それらは試験槽の充填に使用される槽の一群を統合する。これらの槽における圧力の分配は、新たな槽が、充填に使用される槽の一群に加わるたびに調節され、試験方法のエネルギー効率を最適化するようにする。
【0035】
槽R2からR8の数は、特に、槽の試験圧力に応じて、試験圧力及び容量の点での試験槽の種類に応じて、並びに槽の試験に必要なサイクル時間に応じて最適化される。回路内の圧力の損失及び弁のKv値も考慮される。前記弁は、トレーサ・ガスの流れに影響を与えるものである。Kvは、1バールの圧力降下に伴う弁内の流量を表す。弁が制御弁である場合、Kv値は、弁の開放レベルに応じて異なる。水素槽30は、概して、「オーバーフロー」型弁27を備える。安全性の理由で、この弁は、流量が規定値を超えた際に閉鎖する。したがって、試験槽を空にする際に許可される最大流量は、この弁によって制限され、機械のサイズを決定する際に考慮しなければならない。同様に、槽R2からR8の容量は、これらのパラメータに応じて選択され、全ての槽が必ずしも同じ容量を有するわけではない。
【0036】
これらの選択は、前記機械動作のデジタル・シミュレーションの後に行われ、機械の動作費用と機械の購入費用との間で最良の妥協点を選択するようにする。実際、槽の追加は、機械のエネルギー効率のために有利であり得るが、そのような解決策は、機械の動作上で達成される節約が、更なる槽から生じる更なる費用を補償しない場合、実用的ではない。

図1
【国際調査報告】