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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電気トモグラフィー測定装置の改良
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0507 20210101AFI20241226BHJP
【FI】
A61B5/0507 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538336
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 FR2022052441
(87)【国際公開番号】W WO2023118732
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114482
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524236770
【氏名又は名称】タッチ・センシティ
【氏名又は名称原語表記】TOUCH SENSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】フレイタ・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】プガッチ・ガナ
(72)【発明者】
【氏名】パセ・シャルル
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA06
4C127CC06
4C127DD03
4C127EE03
4C127FF01
4C127FF02
4C127KK03
4C127KK05
(57)【要約】
【課題】固体基材用の電気プロセストモグラフィー測定装置の提供
【解決手段】本発明装置10は、電流源又は電圧源12と、測定対象の固体基材24に接続されるように構成された複数の電極22と、2つの測定入力+,-と基準入力rとを有し、該基準入力rにより定まる電圧レベルに比例する、2つの測定入力+,-の電圧差に応じたデジタル信号を出力するように設けられたAD変換器26と、を備える。電流源又は電圧源の、複数の電極のうちの任意の電極対との接続は、該電流源又は電圧源からの電流が測定対象の前記基材へと指定の通電順序に従って流れていくように制御可能であり、AD変換器の2つの測定入力+,-が、それぞれ、複数の電極のうちの前記通電順序に従い選択された任意の電極対における一方の電極と接続可能である。本装置は、電流源または電圧源がAD変換器の基準入力に接続されることを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基材用の電気プロセストモグラフィー測定装置であって、
電流源または電圧源(12)と、
測定対象の固体の基材(24)に接続されるように構成された複数の電極(22)と、
2つの測定入力(+,-)と、基準入力(r)とを有し、該基準入力(r)により定まる電圧レベルに比例する、該2つの測定入力(+,-)の電圧差に応じたデジタル信号を出力するように設けられたAD変換器(26)と、を備え、
前記電流源または電圧源(12)の、前記複数の電極(22)のうちの任意の電極対との接続は、該電流源または電圧源(12)からの電流が測定対象の前記基材へと指定の通電順序に従って流れていくように制御可能であり、
前記AD変換器(26)の前記2つの測定入力(+,-)が、それぞれ、前記複数の電極(22)のうちの前記通電順序に従い選択された任意の電極対における一方の電極と接続されることが可能である、装置において、
前記電流源または電圧源(12)が、前記AD変換器(26)の前記基準入力(r)に接続され、
当該装置は、さらに、
前記電流源または電圧源(12)の下流側に接続されているとともに前記複数の電極(22)に接続されている第1のマルチプレクサ(14)と、
前記電流源または電圧源(12)の上流側に接続されているとともに前記複数の電極(22)に接続されている第2のマルチプレクサ(16)と、
を備えることで、前記通電順序を実現し、
当該装置は、さらに、
出力が前記AD変換器(26)の前記基準入力(r)に接続されているとともに各入力が前記複数の電極(22)のうちの前記通電順序に応じた前記電極対の各電極に接続されるオペアンプ(34)、を備え、
当該装置は、さらに、
前記第1のマルチプレクサ(14)の出力と前記オペアンプ(34)の一方の前記入力との間に接続された第3のマルチプレクサ(30)と、
前記第2のマルチプレクサ(16)の出力と前記オペアンプ(34)の他方の前記入力との間に接続された第4のマルチプレクサ(32)と、
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、さらに、
前記AD変換器(26)の一方の前記測定入力(+)に接続されているとともに前記複数の電極(22)に接続されている第5のマルチプレクサ(18)と、
前記AD変換器(26)の他方の前記測定入力(-)に接続されているとともに前記複数の電極(22)に接続されている第6のマルチプレクサ(20)と、
を備え、前記通電順序に従い選択された前記接続が形成されるのを可能にする、装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置において、さらに、
前記電流源または電圧源(12)と前記AD変換器(26)の前記基準入力(r)との間に配置されたバッファ(29)、を備える、装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置において、前記電流源または電圧源(12)が、直流電流源または直流電圧源である、装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置において、前記電流源または電圧源(12)が、交流電流源または交流電圧源である、装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置において、当該測定装置(10)が、ヒューマンマシンインターフェース計測を実施する、装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置において、当該測定装置(10)が、構造ヘルスモニタリングまたは非破壊検査計測を実施する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気プロセストモグラフィー(EPT)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電気プロセストモグラフィーには、各手法で物質のどの具体的特性を主な検出対象とするかによって電気容量トモグラフィー(ECT), 電気インピーダンストモグラフィー(EIT)および電気抵抗トモグラフィー(ERT)が含まれる。
-EITは、連続的な導電相を具備したプロセスに有用である。
-電気抵抗トモグラフィー(ERT)は、電気インピーダンスの実数成分が物質の優勢的特性である場合の、EITの具体的なケースの一つである;そして
-ECTでは、連続的な非導電相を具備したプロセス中に分布した物質の誘電率分布を検出する。
【0003】
EPTの用途としては、流体計測、特に、工業的プロセスの際の流体計測が知られている。EITの場合のセンサは、プロセスの流体と接するが該流体に介入しない、同プロセスのタンク又は配管の内壁の周縁に配置された複数の電極で構成される。一部の電極への交流電流の印加および残りの電極からの電圧の測定が、所定の検出戦略に従って行われる。そして、これらの電圧測定を用いて、特定の逆アルゴリズムにより、タンク内部のインピーダンス分布を再構成する。
【0004】
測定対象の基材が固体である(すなわち、液体でも気体でもない)場合の開発は、それほど多くない。固体の基材にEITを適用した場合には、該基材の導電部位の電場を再構成することになる。この非侵襲的な手法は、患者の皮膚表面に電極を適用して電場の変化を測定することによって身体の内部を検出するという医用画像化で利用されている。
【0005】
医療分野のほかに、固体の基材にEITを適用する用途としては、圧力検出の分野が知られている。つまり、Kato et al. (「触覚領域に導線や感知素子を持たないEITに基づく触覚センサ(Tactile sensor without wire and sensing element in the tactile region based on eit method)」, IEEE Sensors, pages 792-795, 2007)(非特許文献1)や, Yao and Soleimani (「導電布帛の電気インピーダンストモグラフィーに基づく圧力マッピング画像化装置(A pressure mapping imaging device based on electrical impedance tomography of conductive fabric)」, Sensor Review, 32(4): 310-317, 2012)(非特許文献2)といった論文では、EITを利用した触覚センサ(圧力センサ)が提案されている。Nagakubo et al. (「変形可能な変形感知触覚分布センサ(A deformable and deformation sensitive tactile distribution sensor)」, IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics, ROBIO, pages 1301-1308, 2007)(非特許文献3)、Alirezaei et al. (「滑らかな表面のヒューマノイド用の高伸縮性触覚分布センサ(A highly stretchable tactile distribution sensor for smooth surfaced humanoids)」, 7th IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots, pages 167-173, 2007)(非特許文献4)、Alirezaei et al.(「高動的伸縮下で安定した測定を可能にする触覚分布センサ(A tactile distribution sensor which enables stable measurement under high and dynamic stretch)」, IEEE Symposium on 3D User Interfaces (3DUI), pages 87-93, 2009)(非特許文献5)、およびTawil et al. (「複数の内部電極によるEITベースの感知皮膚の画像再構成の改良(Improved image reconstruction for an eit-based sensitive skin with multiple internal electrodes)」, IEEE Transactions on Robotics, 27(3): 425-435, 2011)(非特許文献6)といった論文では、ロボット用の「人工皮膚」型触覚装置が提案されている。彼らのアプローチは、電流を注入し、導電布帛の縁に接続した電極から電圧を測定し、逆問題解析を適用することで、圧力による抵抗率の局所的な変化を再構成するというものである。最後に、Pugach et al. (「物理的なヒューマンロボットインタラクション用の低コスト触覚センサ装置の電子ハードウェア設計(Electronic hardware design of a low cost tactile sensor device for physical human-robot interactions)」, IEEE XXXIII International Scientific Conference Electronics and Nanotechnology, ELNANO, pages 445-449, 2013)(非特許文献7)、Pugach et al. (「自己組織化マップによる人工皮膚の触覚的感覚トポグラフィー情報のニューラル学習(Neural learning of the topographic tactile sensory information of an artificial skin through a self-organising map)」, Advanced Robotics, 29(21): 1393-1409, 2015)(非特許文献8)およびPugach et al. (「人工皮膚のニューラル学習によるロボットアームの接触ベースのアドミッタンス制御(Touch-based admittance control of a robotic arm using neural learning of an artificial skin)」, in 2016 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS), pages 3374-3380, 2016)(非特許文献9)といった論文では、ニューラルネットワークを用いて、導電フィルム内の抵抗分布を再構成して圧力点を特定する技術が記載されている。
【0006】
それ以外の用途としては、セメントの構造的欠陥の検出が挙げられる。つまり、Milad Hallaji et al. (「コンクリート損傷の定量的画像化に用いる電気インピーダンストモグラフィーベースの感知表皮(Electrical impedance tomography-based sensing skin for quantitative imaging of damage in concrete)」 2014 Smart Mater. Struct. 23 085001)(非特許文献10)やKimmo Karhunen (「コンクリートの電気抵抗トモグラフィー画像化(Electrical resistance tomography imaging of concrete)」, 2013, Publications of the University of Eastern Finland Dissertations in Forestry and Natural Sciences No. 122)(非特許文献11)の論文には、導電率の測定が組織や皮膚よりも複雑な物質へのEITの拡張の研究とともに、このような計測の限界が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kato et al. “Tactile sensor without wire and sensing element in the tactile region based on eit method”, IEEE Sensors, pages 792-795, 2007
【非特許文献2】Yao and Soleimani “A pressure mapping imaging device based on electrical impedance tomography of conductive fabric”, Sensor Review, 32(4): 310-317, 2012
【非特許文献3】Nagakubo et al. “A deformable and deformation sensitive tactile distribution sensor”, IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics, ROBIO, pages 1301-1308, 2007)
【非特許文献4】Alirezaei et al. “A highly stretchable tactile distribution sensor for smooth surfaced humanoids”, 7th IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots, pages 167-173, 2007
【非特許文献5】Alirezaei et al. “A tactile distribution sensor which enables stable measurement under high and dynamic stretch”, IEEE Symposium on 3D User Interfaces (3DUI), pages 87-93, 2009
【非特許文献6】Tawil et al. “Improved image reconstruction for an eit-based sensitive skin with multiple internal electrodes”, IEEE Transactions on Robotics, 27(3): 425-435, 2011
【非特許文献7】Pugach et al. “Electronic hardware design of a low cost tactile sensor device for physical human-robot interactions”, IEEE XXXIII International Scientific Conference Electronics and Nanotechnology, ELNANO, pages 445-449, 2013
【非特許文献8】Pugach et al. “Neural learning of the topographic tactile sensory information of an artificial skin through a self-organising map”, Advanced Robotics, 29(21): 1393-1409, 2015
【非特許文献9】Pugach et al. “Touch-based admittance control of a robotic arm using neural learning of an artificial skin”, in 2016 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS), pages 3374-3380, 2016)
【非特許文献10】Milad Hallaji et al. “Electrical impedance tomography-based sensing skin for quantitative imaging of damage in concrete” 2014 Smart Mater. Struct. 23 085001
【非特許文献11】Kimmo Karhunen “Electrical resistance tomography imaging of concrete”, 2013, Publications of the University of Eastern Finland Dissertations in Forestry and Natural Sciences No. 122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
つまり、EITの適用対象となる固体の基材は、観測が可能なインピーダンス変化が十分に大きい導電物質でなければならないとともに、計測のための電極の接続能力に優れたものである必要がある。インピーダンスの変化が小さい物質や電極との接続が煩雑な物質の場合には、測定データから情報を得るための十分な分解能での取得が複雑になり、EITやEPTは一般的に適用不可となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、この状況を改善する。この目的のために、本発明は、固体の基材用の電気プロセストモグラフィー測定装置であって、
電流源または電圧源と、
測定対象の固体の基材に接続されるように構成された複数の電極と、
2つの測定入力と基準入力とを有し、該基準入力により定まる電圧レベルに比例する、該2つの測定入力の電圧差に応じたデジタル信号を出力するように設けられたAD変換器と、
を備え、
前記電流源または電圧源の、前記複数の電極のうちの任意の電極対との接続は、該電流源または電圧源からの電流が測定対象の前記基材へと指定の通電順序に従って流れていくように制御可能であり、
前記AD変換器の前記2つの測定入力が、それぞれ、前記複数の電極のうちの前記通電順序に従い選択された任意の電極対における一方の電極と接続されることが可能である、装置において、
前記電流源または電圧源が、前記AD変換器の前記基準入力に接続されることを特徴とする、装置を提供する。
【0010】
本装置は、EPT、特に、EITの、ヒューマンマシンインターフェース、非破壊検査などの用途や構造モニタリングへの応用を、通常EPTやEITには向いていない物質が対象となる場合も含め可能とするので、極めて有利である。
【0011】
実際に、前記電流源または電圧源から派生した信号を前記AD変換器の基準信号にすると、刺激信号自体で測定内のノイズを相殺することが可能になる。これにより、計測の分解能を極めて大幅に向上させることができるとともに、これまで適用不可であった場面でEPTを適用することが可能となる。
【0012】
各実施形態において、本発明は、下記の構成を1つ以上備え得る:
-前記装置が、さらに、
前記電流源または電圧源の下流側に接続されているとともに前記複数の電極に接続されている第1のマルチプレクサと、
前記電流源または電圧源の上流側に接続されているとともに前記複数の電極に接続されている第2のマルチプレクサと、
を備えることで、前記通電順序を実現する;
-前記装置が、さらに、
前記AD変換器の一方の前記測定入力に接続されているとともに前記複数の電極に接続されている第3のマルチプレクサと、
前記AD変換器の他方の前記測定入力に接続されているとともに前記複数の電極に接続されている第4のマルチプレクサと、
を備え、前記通電順序に従い選択された前記接続が形成されるのを可能にする;
-前記装置が、さらに、
前記電流源または電圧源と前記AD変換器の前記基準入力との間に配置されたバッファ、
を備える;
-前記装置が、さらに、
出力が前記AD変換器の前記基準入力に接続されているとともに各入力が前記複数の電極のうちの前記通電順序に応じた前記電極対の各電極に接続されるオペアンプ、
を備える;
-前記装置が、さらに、
前記第1のマルチプレクサの出力と前記オペアンプの一方の前記入力との間に接続された第5のマルチプレクサと、
前記第2のマルチプレクサの出力と前記オペアンプの他方の前記入力との間に接続された第6のマルチプレクサと、
を備える;
-前記電流源または電圧源が、直流電流源または直流電圧源である;
-前記電流源または電圧源が、交流電流源または交流電圧源である;
-前記測定装置が、ヒューマンマシンインターフェース計測を実施する;
-前記測定装置が、構造ヘルスモニタリングまたは非破壊検査計測を実施する。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点については、図面から派生した本発明を限定するものではない例示の実施例から導き出される以下の説明を参酌することで、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】EPT装置の実施方式の概要を示す図である。
図2】本発明に係る測定装置の第1の実施形態を示す図である。
図3】本発明に係る測定装置の第2の実施形態を示す図である。
図4】本発明に係る測定装置の第3の実施形態を示す図である。
図5】本発明に係る測定装置の第4の実施形態を示す図である。
図6】本発明に係る測定装置の第5の実施形態を示す図である。
図7】本発明に係る測定装置の第6の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面および下記の説明には、本質的に、特定の性質の構成/構成要素を含めている。つまり、それらは、本発明のより良い理解に役立つだけでなく、適宜、本発明の定義にも貢献し得る。
【0016】
本発明は、EPTやEIT計測の、例えばSHM構造、NDT構造、HMI構造等の状態の監視への適用に関する。このようなシステムは、特定の物理的要素の経時的な変化を監視するように意図されている。
【0017】
図1に示すように、このようなシステムは、刺激副系統2、監視対象となる要素又は基材4、AD変換器を組み込んだデータ取得副系統6、および前記特定の物理的要素の経時的な変化を求めるデータ処理系統8によって一般的に構成される。データ処理系統8は、本発明の主な目的ではない。取得副系統6までの、測定の取得を可能にする全てが、本発明の主な目的である。変形例として、データ取得副系統6が、AD変換に先立って、増幅及びフィルタリング処理を含んでいてもよい。
【0018】
刺激副系統2は、電気的な刺激信号を生成し、物理的な要素又は基材4にこの刺激を適用することで、物理的な要素又は基材4からの応答である電気的信号を、取得副系統6に測定させるように意図されている。前記刺激信号は、様々な種類(すなわち、電圧や電流)があるほか、一定値(直流)の形態で適用されてもよいし、例えば正弦波、矩形波、パルス波等の経時的に可変な値(交流)の形態で適用されてもよい。前記刺激信号と測定信号との間には大半の時間で線形的関係が成り立ち、つまり、測定される前記応答は前記刺激信号に比例する。
【0019】
前記システム内に現れる変動、すなわち、ノイズは、主に、前記測定信号のレベルが極めて小さく、例えば、数マイクロボルト未満である場合に、該測定信号から前記システムが取り出そうとする標的情報を隠してしまう可能性がある。実際に、前記システムが取得するデータは、本電子システム全体により提供される電圧源又は電流源に左右される。同源は、最大限の正確性、最大限の安定性および最小限のノイズになるように設計されているものの、内在的に変動やノイズを有している。よって、これらは、あらゆる従属変数にそのまま注入される結果、前記取得系統によって測定されてしまう。
【0020】
EIT計測は、試料や基材に配置された各種電極で刺激源を逐次的に導通させることで複数箇所の電気インピーダンスを測定した後、該電極の全部又は一部に亘る複数の測定を処理にかけるという仕組みに基づくものである。このようなシステムの最も単純な実施形態では、信号をマルチプレクサに通し、該マルチプレクサが、どの電極を刺激し、どの電極を測定するのかを選択する。最後に、データ処理によって、前記試料のインピーダンスのマッピングがプロットされる。前述のように、この処理は本発明の中心的要素でない。
【0021】
本発明は、刺激副系統2とデータ処理副系統6とを物質に最大限近付けて接続することによって上記の課題を解決する。つまり、電気プロセストモグラフィー測定装置10は、図2に示すように、電流源12、マルチプレクサ14,16,18,20、測定対象の基材24に配置された8個の電極22、および測定信号28をデジタルで出力するAD変換器26を備える。
【0022】
本明細書で説明する例では、各電極22が、基材24上に略一様に分布している。略円形の形状は、系統8による再構成に極めて適している。変形例として、装置10が備える電極の数は少なくてもよく、例えば4個以上、例えば16個以上であってもよい。また、各電極は、用途に応じて円状以外の別の形状に従って非一様に配置されてもよい。
【0023】
マルチプレクサ14は電流源12の下流側に、マルチプレクサ16は電流源12の上流側にそれぞれ接続されているとともに、いずれも、各電極22に接続され得る。これにより、マルチプレクサ14,16に接続された各電極対が、電流源12とともに刺激回路を形成する。同じく、マルチプレクサ18がAD変換器26の入力「+」に、マルチプレクサ20がAD変換器26の入力「-」にそれぞれ接続されている。つまり、マルチプレクサ18,20に接続された各電極対が、前記刺激を測定する回路を形成し、その測定が、AD変換器26の端子「+」,「-」に送られる。
【0024】
本明細書で説明する例では、AD変換器26が、マルチプレクサ14,16,18,20を制御するように設けられた制御手段の一部に含まれる。変形例として、同制御は、それとは別であってもよい。このように、AD変換器26は、マルチプレクサ16,18に接続された各電極の端子で測定される電圧の、該AD変換器26の入力rを基準電圧としたデジタル形式への変換を実行する。
【0025】
本発明では、この入力rが、電流源12の下流側と接続される。よって、入力rは、マルチプレクサ14,16を用いて形成される前記刺激信号とほぼ同じ信号を受け取る。これにより、AD変換器26は、電流源12に影響を及ぼすノイズに関係のない信号28を出力する。
【0026】
上記アプローチは、EPT分野、特に、EIT分野で全く斬新なものである。また、これは、従来のレシオメトリック型の計測を用いた機器とは区別されるべきである。実際に、このような機器では、絶対的な強い基準となる物理的な要素を用いてレシオメトリック型の計測を行う。監視対象の要素とは別物であるこの基準は、ノイズの影響を受け難い系内での最小限の変化を検出するのに必要なものである。上記アプローチの方法および教示内容は、前記監視対象の要素を刺激するとともにレシオメトリック型の計測基準でもある該要素への同刺激による影響を利用するという本発明で行われているものと全く対照的である。また、従来のレシオメトリック型の計測では、監視対象の要素と系との接続が経時的に固定されている。これに対し、本発明は、監視対象の要素を基準に利用し、監視対象の要素との接続を複数の電極で逐次的に成立させることで、レシオメトリック型の計測原理をEPTに適した系にも拡張する。
【0027】
計測を実施するために、マルチプレクサ14,16,18,20により、EIT通電方式に従った逐次的な通電が行われる。「EIT通電方式」とは:
-隣りに位置する電極同士に通電電流を導入し、残りの電極で電圧降下を順次測定するという作業を、全ての電極対への逐次的な通電により行っていく隣接方式;
-正反対に位置する電極同士に通電電流を導入し、残りの電極で電圧を順次測定するという作業を、全ての電極対への逐次的な通電により行っていく対向方式;および
-決まった軸を挟んで向かい合わせに位置した電極同士に通電電流を導入し、残りの電極で電圧を順次測定するという作業を、全ての電極対への逐次的な通電により行っていく横断方式;
から選択される方式のことであると理解されたい。
【0028】
これら以外の通電方式も考えられる。
【0029】
本明細書で説明する例では、直流電流源を用いて刺激を実行するため、同時的に電極で測定電圧が測定される。この電流源が交流電流源である場合には、その交流電流に対して相対的に電圧の振幅やズレが測定される。
【0030】
図3に第2の実施形態を示し、相違点を説明する。同実施形態での源12は電圧源であり、直流電圧源とされても交流電圧源とされてもよい。
【0031】
同実施形態には、入力rおよびマルチプレクサ14,16の端子に同じ電圧がそのまま供給されるという利点がある。
【0032】
図4に第3の実施形態を示す。同実施形態は、図1の実施形態とほぼ似ているが、装置10がバッファ29をさらに備えている。バッファ29は、入力rによる電流源12への影響を最小限に抑え、電流源12を最大限クリーンかつ安定に維持するために用いられる。
【0033】
図5に第4の実施形態を示す。同実施形態では、刺激に相当する電圧に最大限忠実な電圧を入力rに送り込むために、マルチプレクサ30,32が設けられている。これらのマルチプレクサは、マルチプレクサ14の出力とマルチプレクサ16の出力とにそれぞれ接続されているとともに、オペアンプ34の各入力に接続されている。オペアンプ34は、これにより、入力rに加わる電圧が基材24に加わる刺激電圧と実際に正比例する電圧となることを確実にする。マルチプレクサ30はマルチプレクサ16と、マルチプレクサ32はマルチプレクサ14と、それぞれ対応して通電される。同実施形態には、強い電流が基材24に送り込まれることでマルチプレクサ14やマルチプレクサ16に起こり得る電圧降下の影響が抑制されるという利点がある。
【0034】
図6に第5の実施形態を示す。同実施形態では、マルチプレクサ30,32が、マルチプレクサ16,14の接続対象の電極22に直接接続される。同実施形態には、マルチプレクサ14,16により生じたノイズだけでなくマルチプレクサ14,16と基材24との間の相互作用によるノイズも組み込まれた電圧が入力rに供給されるという利点がある。つまり、電流源12と基材24との間に位置したマルチプレクサ14によって引き起こされるノイズや電圧降下である別の変動も、AD変換器26の基準電圧に注入される。
【0035】
最後に、図7に第6の実施形態を示す。同実施形態では、各電極22と同じ構成の、ただし、各電極22から僅かに離れた追加の一連の電極を配置することにより、基材24の各電極22が二重化されている。つまり、各電極22には、前記追加の一連の電極のうちの一つの電極が対応付けられている。同実施形態では、マルチプレクサ30,32が、マルチプレクサ16,14と接続される電極22に対応付けられた電極と接続される。同実施形態には、基材24からみた実際の電圧が入力rに供給されるという利点がある。同実施形態は、その性質により、刺激信号がマルチプレクサ14,16、マルチプレクサ14,16と基材24との間、最後に、電極22と基材24との接触抵抗を通過することで発生するノイズを除去する。
【0036】
上記の説明での基材24としては、ヒューマンマシンインターフェース、NDTの実施が望ましい基材、または構造ヘルスモニタリング対象の基材が挙げられ得るという点を理解されたい。つまり、図示の例はEIT系の用途に関するものであるが、装置10のアプリケーションとして:
-物理的界面を刺激し、該物理的界面の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該界面内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、あらゆるヒューマンマシンインターフェースHMI;
-物理的界面を刺激し、該物理的界面の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該界面内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気インピーダンストモグラフィーに基づくあらゆるHMI;
-物理的界面を刺激し、該物理的界面の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該界面の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気抵抗トモグラフィーに基づくあらゆるHMI;
-物理的界面を刺激し、該物理的界面の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該界面内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気容量トモグラフィーに基づくあらゆるHMI;
-物理的試料を刺激し、その物理的成分の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該試料内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、あらゆる構造ヘルスモニタリング(SHM)システム;
-物理的試料を刺激し、その物理的成分の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該試料内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気インピーダンストモグラフィーに基づくあらゆるSHMシステム;
-物理的試料を刺激し、その物理的要素の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該試料内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気抵抗トモグラフィーに基づくあらゆるSHMシステム;
-物理的試料を刺激し、その物理的要素の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該試料内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気容量トモグラフィーに基づくあらゆるSHMシステム;
-物理的試料を刺激し、その物理的成分の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該試料内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、あらゆる非破壊検査(NDT)システム;
-物理的試料を刺激し、その物理的成分の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該試料内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気インピーダンストモグラフィーに基づくあらゆるNDTシステム;
-物理的試料を刺激し、その物理的要素の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該試料内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、連続的な又は可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気抵抗トモグラフィーに基づくあらゆるNDTシステム;および
-物理的試料を刺激し、その物理的要素の刺激によって生じた相関信号を測定することで、該試料内部の局所的インピーダンスの変化を測定するように意図されており、可変の電気的刺激源とAD変換器とを具備してなる、電気容量トモグラフィーに基づくあらゆるNDTシステム;
が挙げられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】