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特表2025-500502少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法
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  • 特表-少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法 図1
  • 特表-少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法 図2A
  • 特表-少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法 図2B
  • 特表-少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/00 20250101AFI20241226BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241226BHJP
【FI】
C01G45/00
H01M4/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538386
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 FR2022052499
(87)【国際公開番号】W WO2023118771
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114373
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524017168
【氏名又は名称】アンペア エス.ア.エス.
(71)【出願人】
【識別番号】510021203
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ド・ラ・ルシェルシェ・シアンティフィーク(セーエヌエールエス)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
(71)【出願人】
【識別番号】520403761
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ エスト クレテイユ ヴァル デ マルヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エメリー, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】グエン, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ-ラモス, ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, ヤンロン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA01
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050GA10
5H050GA15
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法に関し、当該方法は、以下の工程:a)少なくとも1つの酸化剤を、当該リチウム遷移金属窒化物と混合する工程、及びb)工程a)の終わりに得られた材料を回収する工程を含むものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1つの酸化剤を、当該リチウム遷移金属窒化物と混合する工程、
b)工程a)の終わりに得られた材料を回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
1又は複数の遷移金属が、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から選択される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リチウム遷移金属窒化物が、式LiMnN、LiFeN、Li2.6Co0.4N、Li2.0Ni0.67N、及びLi2.57Cu0.43Nの材料から選択される、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属窒化物が、式LiMnN又は式LiFeNのものである、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤が、コバルトセニウム塩から、好ましくは、コバルトセニウムヘキサフルオロホスフェート、コバルトセニウムテトラフルオロボレート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルトヘキサフルオロホスフェート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルトテトラフルオロボレートヘキサフルオロホスフェート、及びこれらの混合物から選択される、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤と、前記リチウム遷移金属窒化物とのモル比率が、0.5~3の範囲、好ましくは1~2の範囲にある、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)が、少なくとも1つの溶媒の存在下で行われる、
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、非プロトン性有機溶媒から、好ましくはアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びこれらの混合物から、好ましくはアセトニトリルから選択される、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びこれらの混合物から選択される、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載された方法により得られる材料の、リチウムイオン電池用負極活物質としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の材料、リチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法に関する。本発明はまた、当該方法によって得られる材料の、リチウムイオン電池用の負極材料としての使用に関する。
【0002】
従来、リチウムイオン電池は、1又は複数の正極、1又は複数の負極、電解質、及びセパレータを備える。
【0003】
リチウムイオン電池は、特に電動モビリティと関連した用途で、自律エネルギー源としてますます使用されている。この傾向は特に、質量エネルギー及び体積エネルギーの密度がいずれも、従来のニッケル・カドミウム(Ni-Cd)電池及びニッケル・金属水素化物(Ni-MH)電池よりも著しく高いこと、メモリー効果がないこと、他の電池に比べて自己放電が少ないこと、及びこの技術と関連したキロワット時あたりのコストが低いことによって説明される。
【0004】
リチウムイオン電池は、充電及び放電プロセスの間に、リチウムイオンを挿入及び脱挿入可能な電極活物質を含む。これらの挿入及び脱挿入は、電池が数回のサイクルにわたってエネルギーを貯蔵することができるように、可逆的である必要がある。
【0005】
構造におけるリチウムイオンの良好な移動性、及び電極材料の良好な導電性は、これらの電池を高充電で使用可能にするとともに、高電力を可能にする放電速度を可能にする、必要不可欠な特性である。電池の比電力は、自動車用用途にとって重要な問題である。同じ量の仕事に対してより軽量な電池を使用可能にすることを意味し、また当該電池が、より安全な条件で使用可能なことを意味するからである。
【0006】
リチウムイオン電池の急速充電もまた、ハイブリッド自動車又はその他の電気自動車の開発における重要な要素である。
【0007】
現在、リチウムイオン電池で使用される正極材料は、リチオ化された遷移金属酸化物、例えばLiCoO、LiNi0.6Mn0.2Co0.2、LiFePO、又はLiMnである。負極材料は、挿入材料、例えば黒鉛又はチタン酸リチウム(LiTi12)である。
【0008】
充電プロセスの間、リチウムイオンLiは、正極材料から脱インターカレートされ、負極材料の層内に(黒鉛の場合)、又は結晶学的部位に(チタン酸リチウムの場合)、インターカレートされる。
【0009】
充電電流が高く、負極材料の電位が低すぎる場合、リチウムが負極に堆積する可能性が高くなり、これによってバッテリセルの容量が低下し、場合によってはセパレータの貫通及び深刻な安全問題につながることがある。
【0010】
チタン酸リチウムは、リチウム析出を避けるために作用電位が高い(1.5V対Li/Li)ため、高電力バッテリにとって興味深い材料である。しかしながらその容量は、黒鉛の容量と比較して、まだ限られている。黒鉛の容量は、チタン酸リチウムの容量の2倍以上である。
【0011】
窒化物系の電極材料も開発されており、特にリチウム遷移金属窒化物、例えばLiMnN及びLiFeNがある。これらの材料は、チタン酸リチウムのほぼ二倍の容量を有するとともに、作用電位はそれぞれ、LiMnNについては1.18V対Li/Liであり、LiFeNについては1.25V対Li/Liであり、高電流性能が良好である。
【0012】
これらの材料(LiMnN及びLiFeN)は、米国特許第5702843号(US patent 5702843)に、二次電池用の電極材料として記載されている。これらの材料を電極材料として使用する利点は、電極に利用可能な材料を直接、適用可能なことである。しかしながら、米国特許第5702843号に示されているように、セルにおいて使用するための、これらの材料の作用電位は、限られている。よって、セル内での性能は、満足のいくものではない。
【0013】
このように、上述の欠点を克服する電極材料を開発する必要が、なおも存在する。
【0014】
よって、本発明の目的は、リチウムイオン電池のための負極活物質として使用可能な材料を得るために、リチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法を開発することである。
【0015】
本発明の開示
よって本発明の主題は、少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法であって、当該方法は、以下の工程:
a)少なくとも1つの酸化剤を、当該リチウム遷移金属窒化物と混合する工程、
b)工程a)の終わりに得られた材料を回収する工程
を含むものである。
【0016】
本発明による方法により、脱リチオ化された材料を得ることが可能になる。このような材料により、従来技術で一般的に使用されている材料(例えば式LiMnN又はLiFeNの材料)を用いたセルで慣用的に行われる、初期放電工程を回避することが可能になる。従来技術による上記材料は、脱リチオ化された材料ではない。よって、これらの材料をセルで使用すると、バッテリセルの初期放電工程が必要となる。
【0017】
本発明の主題はまた、本発明による方法により得られる材料の、リチウムイオン電池用の負極活物質としての使用である。
【0018】
本発明の他の利点及び特徴は、詳細な説明及び添付図面を検証することによって、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】LiMnN材料、及び本発明による方法の終わりに得られる材料の回折図を示す。
図2A】LiMnN材料の走査型電子顕微鏡画像である。
図2B】本発明による方法の終わりに得られる材料の走査型電子顕微鏡画像である。
図3】本発明による方法によって得られる材料のガルバノ静電曲線(galvanostatic curve)を、Li金属との対比で示すグラフである。
【0020】
本発明の明細書で使用される「~から~まで」という表現には、言及された端値がそれぞれ含まれると理解すべきことに留意されたい。
【0021】
「少なくとも1つ」という表現は、1又は複数を意味する。
【0022】
先に述べたように、本発明による方法の工程a)によれば、少なくとも1つの酸化剤が、リチウム遷移金属窒化物と混合される。
【0023】
1又は複数の遷移金属が、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びこれらの混合物から選択されることが、有利である。
【0024】
当該リチウム遷移金属窒化物は、式LiMnN、LiFeN、Li2.6Co0.4N、Li2.0Ni0.67N、及びLi2.57Cu0.43Nの材料から選択されるのが好ましい。
【0025】
当該リチウム遷移金属窒化物は、式LiMnN、又は式LiFeNのものが、より好ましい。
【0026】
当該酸化剤は、酸化形態のメタロセンの系統に属するものから選択されるのが好ましい。
【0027】
当該酸化剤は、コバルトセニウム塩から選択されるのが有利であり、好ましくは、コバルトセニウムヘキサフルオロホスフェート、コバルトセニウムテトラフルオロボレート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルトヘキサフルオロホスフェート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルトテトラフルオロボレートヘキサフルオロホスフェート、及びこれらの混合物から選択される。
【0028】
当該酸化剤は、より好ましくは、コバルトセニウムヘキサフルオロホスフェートから選択される。
【0029】
好ましい実施形態によれば、当該酸化剤と、当該リチウム遷移金属窒化物とのモル比率は、0.5~3の範囲、好ましくは1~2の範囲にある。
【0030】
好ましいやり方では、工程a)が、少なくとも1つの溶媒の存在下で行われる。
【0031】
溶媒は、非プロトン性有機溶媒から選択されるのが有利であり、好ましくは、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びこれらの混合物から、好ましくはアセトニトリルから、選択される。
【0032】
別の実施形態によれば、リチウムイオン電池の電解質で使用可能な溶媒も使用することができ、当該溶媒は好ましくは、エチレンカーボネート(「EC」とも呼ぶ)、プロピレンカーボネート(「PC」とも呼ぶ)、ジメチルカーボネート(「DMC」とも呼ぶ)、ジエチルカーボネート(「DEC」とも呼ぶ)、エチルメチルカーボネート(「EMC」とも呼ぶ)、及びこれらの混合物から選択される。
【0033】
別の実施形態によれば、非プロトン性有機溶媒(例えば上述のもの)から選択される溶媒は、リチウムイオン電池の電解質で使用可能な溶媒(例えば上述のもの)との混合物であり得る。
【0034】
好ましいやり方では、溶媒がアセトニトリルである。
【0035】
先に述べたように、本発明による方法の工程b)によれば、工程a)の終わりで得られる材料が回収される。
【0036】
有利には、この材料は遠心分離によって、又はろ過によって、回収され得る。
【0037】
その後、この材料を溶媒(好ましくは、前述の溶媒から選択されるもの)ですすぐことができ、複数回すすいでもよい。
【0038】
その後、この材料を真空乾燥することができる。
【0039】
このようにして、Li7-xMnN(0<x≦2)及びLi3-yFeN(0<y≦1.2)の材料を得ることができる。
【0040】
本発明の主題はまた、本発明による方法によって得られる材料の、リチウムイオン電池用の負極活物質としての使用である。
【0041】
先に述べたように、本発明による方法は、少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化する方法である。
【0042】
少なくとも1つのリチウム遷移金属窒化物を脱リチオ化するプロトコルは、以下の実施態様に従って記載され得る。
【0043】
有利には、酸化剤(例えば上述のもの)をまず、溶媒(例えば上述のもの)に添加して、当該酸化剤を含む溶液を得ることができる。
【0044】
この際、リチウム遷移金属窒化物(例えば、LiMnN又はLiFeN)を、当該溶液に添加することができる。当該リチウム遷移金属窒化物は、粉末形態であり得る。
【0045】
リチウム遷移金属窒化物の量は、当該酸化剤と当該リチウム遷移金属窒化物とのモル比率が、0.5~3の範囲、好ましくは1~2の範囲にあるように、調整することができる。
【0046】
この際に、リチウム遷移金属窒化物を、当該酸化剤を含む当該溶液中で混合することができる。
【0047】
この際に温度は、-5℃から50℃の範囲の温度に調整することができる。
【0048】
これらの工程は全て、制御された環境、例えばグローブボックス内で行うことができる。
【0049】
有利には、使用される酸化剤がコバルトセニウム塩であり得る。溶媒の色は、反応の間に変わり得る。これは、反応が進行中であることを示す。
【0050】
反応の終わりに、得られた材料を回収することができる。
【0051】
有利には、この材料を溶媒から、遠心分離又はろ過によって分離することができる。
【0052】
この材料をその後、溶媒で複数回すすいで、望ましくない生成物を除去することができる。その後、この材料を真空乾燥することができる。
【0053】
以下では本発明を、実施例を参照してより具体的に説明するが、当該実施例は決して、本発明の範囲を限定するものではない。しかしながらこれらの実施例は、本発明の特定の特徴、変法、及び好ましい実施態様について、サポートをもたらす。
【実施例
【0054】
実施例1:本発明による方法
式LiMnNのリチウム遷移金属窒化物を使用する。
【0055】
図1に示したように、回折図は、初期状態の材料から構成されている(曲線A、材料A)。LiMnNの特徴的なピークを、この回折図で特定することができる。
【0056】
図2Aに示したように、初期状態の材料の走査型電子顕微鏡画像を撮影する(材料A)。
【0057】
脱リチオ化は、グローブボックス内にて、20℃の温度で行う。当該酸化剤と、当該リチウム遷移金属窒化物とのモル比率は、1.5である。
【0058】
約320mg(0.002mol)のLiMnNを三角フラスコに入れ、その後、約7.5mLのアセトニトリル、及び磁気撹拌子(bar magnet)を、同じ三角フラスコに入れた。約1gのコバルトセニウムヘキサフルオロホスフェート(0.003mol)を、7.5mlのアセトニトリルに溶解させて、酸化溶液を調製する。この酸化溶液を、追加アンプルを用いて滴加した。合計で15mLのアセトニトリルを使用し、酸化溶液の濃度は、0.5mol/Lであった。酸化剤と窒化物とを反応させるため、添加後に一晩、強力な混合を維持した。
【0059】
その後、この混合物をデカンタし、遠心分離管に移した。遠心分離は、5000rpmの速度で5分間、遠心分離機により行った。遠心分離後に、粉末と溶液とを分離した。
【0060】
二回目の約5mLのアセトニトリルを、すすぎのために遠心分離管に導入し、その後、二度目の遠心分離を行った。
【0061】
このすすぎ遠心分離工程は、複数回(3回)繰り返した。最後に、粉末を炉(Buchi型)内に置き、真空下90℃で1時間、乾燥させた。
【0062】
脱リチオ化された材料が、乾燥後に得られた。
【0063】
こうして、本発明による方法の終わりに、材料が得られる。
【0064】
その後、図1に示したように、得られた材料の回折図を作成した(曲線B、材料B)。
【0065】
図2Bに示したように、本発明の方法により得られる材料の走査型電子顕微鏡画像も、撮影した(材料B)。
【0066】
式LiMnNの材料が変性されたことは、明らかである。
【0067】
より具体的には、式Li5.3MnNの材料が得られた。式Li5.3MnNの材料の存在は、この回折図から計算された格子パラメータ(9.35Å)により、確認された。
【0068】
こうして式LiMnNの材料の脱リチオ化が、本発明による方法によって達成された。
【0069】
実施例2;実施例1で得られた材料の、ハーフセルにおける使用
実施例1で得られた活物質を、複合電極の形で調製し、CR2032ボタン電池において金属リチウム片で試験した。
【0070】
複合電極は、実施例1で得られた活物質70重量%と、22重量%のアセチレンブラック及び8重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを混合することによって、調製した。
【0071】
使用したセパレータは、Whatmanから市販されているガラスマイクロファイバーセパレタ(CAT No. 1823-070(登録商標))であった。
【0072】
使用した電解質は、1mol/Lのリチウムヘキサフルオロホスフェートを、カーボネート溶媒の混合物(エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、及びジメチルカーボネート(DMC)が体積比で1:1:1)に溶解させたものである。
【0073】
その後、ハーフセルを組み立てた。ハーフセルは、グローブボックス内で組み立てた。
【0074】
電気化学的試験
ガルバノ静電サイクルは、BioLogic VMP3のポテンショスタットを用いて、C/20のサイクルレジームで行った(図3参照)。電位のウィンドウは、1.6Vと0.9Vとの間である。
【0075】
図3では、開始点x=0が、実施例1の終わりに得られる活物質に相当する。この点での電位は、E=1.7Vである。
【0076】
xが増加するにつれて、材料は電気化学的に減少し、材料の電位は低下する。電位がE=0.9Vに低下すると、LiMnNの初期形態が得られることが知られている。図3では、E=0.9Vのときに、xがおよそ1.7に等しいことが見て取れる。言い換えると、E=0.9Vのときに、およそ1.7のリチウムセルが、ハーフセルへと電気化学的に再びインターカレートされている。よってx=0のとき、式はLi5.3MNnであると決定することができる。
【0077】
よって、本発明による方法によって得られる材料は、式Li7-xMnN(ここでx=1.7)の材料であり、したがってこの材料は、脱リチオ化されている。
【0078】
この材料は、リチウム電池の負極のための活物質として使用できる。
図1
図2A
図2B
図3
【国際調査報告】