(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】肝臓標的物質及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20241226BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241226BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241226BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241226BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20241226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241226BHJP
C07K 14/605 20060101ALN20241226BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P1/16
A61K47/68
A61P3/10
A61P3/08
A61K39/395 Y
A61K39/395 C
A61K39/395 D
C07K14/605 ZNA
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538418
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2022021129
(87)【国際公開番号】W WO2023121370
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185351
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン クク
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョン スク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム サン ユン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB29
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC16
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4C076EE41
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4C076FF31
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
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4C084BA23
4C084CA59
4C084MA05
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZC211
4C084ZC212
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4C085AA13
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4C085CC22
4C085EE05
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA40
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、肝臓標的薬物及びその肝臓における薬物作用が必要な疾患に対する治療的用途に関する。また、本発明は、グルカゴンに対して活性を有する物質を用いて肝組織への標的化又は体内投与後に肝組織における分布増大を誘導する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓標的薬物を含む、投与された個体の体内臓器中、前記薬物の肝臓における分布度が高い、薬学的組成物であって、
前記肝臓標的薬物は、下記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドである、薬学的組成物:
Y-Aib-QGTF-X7-SD-X10-S-X12-Y-L-X15-X16-X17-R-A-X20-X21-F-V-X24-W-L-M-N-T-X30(一般式2、配列番号:47)
前記一般式2において
X7はスレオニン(T)、バリン(V)又はシステイン(C)であり;
X10はチロシン(Y)又はシステイン(C)であり;
X12はリシン(K)又はシステイン(C)であり;
X15はアスパラギン酸(D)、又はシステイン(C)であり;
X16はグルタミン酸(E)又はセリン(S)であり;
X17はリシン(K)又はアルギニン(R)であり;
X20はグルタミン(Q)又はリシン(K)であり;
X21はアスパラギン酸(D)、又はグルタミン酸(E)であり;
X24はバリン(V)又はグルタミン(Q)であり;
X30はシステイン(C)であるか、存在しない
(ただし、前記一般式2のアミノ酸配列が配列番号12と同一な場合は除く)。
【請求項2】
前記ペプチドは持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は下記化学式1で示される、請求項1に記載の薬学的組成物:
[化学式1]
X-L-F
ここで、
Xは、前記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドであり;
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
Fは、免疫グロブリンFc領域であり、
-は、XとLとの間、LとFとの間の共有結合連結を示す。
【請求項3】
前記体内臓器は、肝臓、心臓、肺、大腸、脾臓、すい臓、脂肪組織、小腸、胃、筋肉、腎臓及び脳であり、前記各臓器中、肝臓における分布度が最も高いものである、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的組成物は、肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療に使用するための、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記肝臓標的薬物は、投与後の肝臓におけるT/S比率(tissue-to-serum ratio)が下記から選択された一つ以上である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物:
(a)投与後40時間~50時間でT/S比率が20%~40%;及び
(b)投与後160時間~180時間でT/S比率が25%~40%。
【請求項6】
前記肝臓標的薬物は、投与後の肝臓におけるT/S比率が下記から選択された一つ以上である、請求項5に記載の薬学的組成物:
(a)投与後2日でT/S比率が25%~35%;及び
(b)投与後7日でT/S比率が27%~37%。
【請求項7】
前記肝臓標的薬物は、投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比が1:2~4である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記肝臓標的薬物は、投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比が1:2.2~3.2である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記分布比は、投与後40時間~180時間における分布比である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記分布比は、投与後2日~7日における分布比である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記肝臓標的薬物は、
(a)投与後40時間~50時間で心臓に比べた肝臓における分布比が1:1.6~3.0であり;及び
(b)投与後160時間~180時間で心臓に比べた肝臓における分布比が1:2.8~7.0である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記肝臓標的薬物は、肝臓疾患、低血糖又は先天性高インスリン症に治療的活性を有する、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記肝臓における薬物作用が必要な疾患は、肝臓疾患、低血糖又は先天性高インスリン症である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記低血糖は、急性低血糖又は慢性低血糖である、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
一般式2のX16とX20のアミノ酸間に環を形成する、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記ペプチドは、配列番号13、15、19、33、及び36~45からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記ペプチドは、配列番号33、及び36~44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記ペプチドは、そのC末端がアミド化するか、又は遊離カルボキシル基(-COOH)を有する、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記ペプチドは、そのC末端がアミド化された、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記ペプチドのC末端は、変形されていない、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記Lは、ポリエチレングリコールである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にある、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記Fは、IgG Fc領域である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の薬学的組成物をそれを必要とする個体に投与し、前記肝臓標的薬物の肝臓標的化を誘導する方法。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか一項に記載の薬学的組成物をそれを必要とする個体に投与し、肝組織内で前記肝臓標的薬物の分布増大を誘導する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓標的薬物及びその肝臓における薬物作用が必要な疾患に対する治療的用途に関する。また、本発明は、肝臓標的薬物を用いて肝組織への標的化又は体内投与後に肝組織における分布増大を誘導する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、人間の身体で最も大きい臓器の一つであり、多様で総括的な代謝過程で重要な役割を担当する。人間が摂取する多くの植物性あるいは動物性物質、そして生体機能遂行による代謝産物中には身体に有益なものもあるが、害になる物質も多い。肝臓は、このような物質中、有益なものに対しては正しい生体利用を助ける化学的過程を行い、害になる物質に対しては化学的代謝過程を通じて尿や便を通じて安全に体外に排出されるように助ける。肝臓は、人間の身体に必要な数種のタンパク質、脂肪、炭水化物を合成して分泌させることにより生体機能に必須の役割をする。従って、肝機能が悪くなると、種々の機能異常が現われることができる。血液の凝固に関与する凝固因子の生成が不足すると、出血がよく起こり、弱い歯茎などで頻繁な出血が現れ、肝硬変症患者の場合、インスリン分解がうまくいかず、肝臓のグリコーゲン貯蔵量も不足して空腹による低血糖がもたらされたりする。また、肝臓は、細菌侵入に対する防御作用に中枢的な役割もする。特に、肝臓内の細胞中、クッパー(Kupffer)細胞が主に異質物あるいはバクテリアを捕食する大食作用をし、体内に入ってきたウイルスを免疫体系に露出させて体内の自然な免疫作用を誘導する役割もする。また、肝細胞で合成して分泌する主な物質である胆汁は、一日に約800-1000cc程度形成されるが、主成分は、水、電解質、胆汁酸、コレステロール、リン脂質、ビリルビンで構成されている。胆汁の主な機能を見ると、胆汁内の胆汁酸は、小腸で脂肪と脂溶性ビタミンを消化して吸収するのに重要な役割をし、胆汁自体が体内で生産される多くの老廃物を糞便として排泄する役割をする。多様な原因により引き起こされ、肝臓における薬物作用が必要な疾患として肝疾患、低血糖又は先天性高インスリン症など多様な疾患が存在する。
【0003】
一方、上述の肝疾患を治療するために、薬物を高濃度で肝臓に到達して分布させることは重要な技術的課題の一つである(韓国特許公開番号KR10-2013-0131227)。
【0004】
肝臓標的薬物は、既存の医薬品の副作用を最小化し、効能及び効果を最大化させて必要な量の薬物を効率よく伝達できるようにして薬物治療を最適化することができる。これは、目的部位に到達する薬物の量を高めて生体利用率を高め、より効果的な治療を可能にし、目的部位以外の所に伝達されないようにして副作用を減らすことができ、患者の薬物に対する反応を良くして患者の順応度の増進に大きい役割をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許公開番号KR10-2013-0131227
【特許文献2】国際公開特許WO 2016/108586
【特許文献3】国際公開特許WO 2017/003191
【特許文献4】国際特許公開第WO97/34631号
【特許文献5】国際特許公開第96/32478号
【特許文献6】国際公開特許WO 2020/263063
【特許文献7】国際公開特許WO2007/021129
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pearson et al(1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444
【非特許文献2】Rice et al.、2000,Trends Genet. 16:276-277
【非特許文献3】Needleman and Wunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453
【非特許文献4】Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387(1984)
【非特許文献5】Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403(1990)
【非特許文献6】Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994
【非特許文献7】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48:1073
【非特許文献8】Smith and Waterman,Adv. Appl. Math(1981)2:482
【非特許文献9】Schwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358(1979)
【非特許文献10】Gribskov et al(1986)Nucl. Acids Res. 14:6745
【非特許文献11】H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York、1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肝臓における薬物作用が必要な疾患の治療効果を高めるために、治療効果を有しながらも投与された個体の体内臓器中、前記薬物の肝臓における分布度が高い優れた肝臓標的薬剤の開発が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの目的は、肝臓標的薬物を含む薬学的組成物、具体的には、肝臓標的薬物を含む投与された個体の体内臓器中、前記薬物の肝臓における分布度が高い薬学的組成物を提供することにある。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、肝臓標的薬物を含む薬学的組成物、具体的には、肝臓標的薬物を含む肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記薬学的組成物又は肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療用薬剤の製造に使用するための、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質の用途を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与して肝臓標的化を誘導する方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与して肝組織内で前記生理活性物質の分布増大を誘導する方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0014】
肝細胞の受容体と結合する物質を含む本発明の薬物(例、生理活性タンパク質あるいはペプチド誘導体)は、血管から肝組織に、より効果的に到達し、生体内投与後、体内臓器中、肝臓に相対的に多く分布する生理活性物質、具体的には、グルカゴン受容体と結合力を有することにより、肝組織に相対的に多く分布する生理活性物質として提供されるだけでなく、約7日以内にも肝臓における分布度が高く、患者の投薬に対する不便を減少させながら、肝臓疾患、低血糖、又は先天性高インスリン症などをはじめとする肝臓における薬物作用が必要な疾患などの治療に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を具現する一態様は、肝臓標的薬物を含む薬学的組成物、具体的には、投与された個体の体内臓器中、前記薬物の肝臓における分布度が高い、薬学的組成物である。一つの具体例として、前記肝臓標的薬物は、下記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチド又はそれを含む持続型結合体の形態であることを特徴とする。もう一つの具体例として、前記肝臓標的薬物は、下記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチド又はそれを含む持続型結合体の形態であることを特徴とする。
【0016】
一つの具体例として、前記肝臓標的薬物は、下記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴とする:
【0017】
X1-X2-QGTF-X7-SD-X10-S-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-F-X23-X24-W-L-X27-X28-X29-X30(一般式1、配列番号:46)、
【0018】
前記式において、
X1はヒスチジン(H)、デスアミノ-ヒスチジル(desamino-histidyl)、ジメチル-ヒスチジル(N-dimethyl-histidyl)、ベータ-ヒドロキシイミダゾプロピオニル(beta-hydroxy imidazopropionyl)、4-イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)、ベータ-カルボキシイミダゾプロピオニル(beta-carboxy imidazopropionyl)、トリプトファン(W)、又はチロシン(Y)であるか、存在せず;
X2はアルファ-メチル-グルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)、Aib(aminoisobutyric acid)、D-アラニン、グリシン(G)、Sar(N-methylglycine)、セリン(S)又はD-セリンであり;
X7はスレオニン(T)、バリン(V)又はシステイン(C)であり;
X10はチロシン(Y)又はシステイン(C)であり;
X12はリシン(K)又はシステイン(C)であり;
X13はチロシン(Y)又はシステイン(C)であり;
X14はロイシン(L)又はシステイン(C)であり;
X15はアスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)又はシステイン(C)であり;
X16はグルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、セリン(S)、アルファ-メチル-グルタミン酸、又はシステイン(C)であるか、存在せず;
X17はアスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、アルギニン(R)、セリン(S)、システイン(C)、又はバリン(V)であるか、存在せず;
X18はアラニン(A)、アスパラギン酸(D)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、アルギニン(R)、バリン(V)、又はシステイン(C)であるか、存在せず;
X19はアラニン(A)、アルギニン(R)、セリン(S)、バリン(V)、又はシステイン(C)であるか、存在せず;
X20はリシン(K)、ヒスチジン(H)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、アスパラギン酸(D)、アルギニン(R)、アルファ-メチル-グルタミン酸、又はシステイン(C)であるか、存在せず;
X21はアスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、ロイシン(L)、バリン(V)、又はシステイン(C)であるか、存在せず;
X23はイソロイシン(I)、バリン(V)、又はアルギニン(R)であるか、存在せず;
X24はバリン(V)、アルギニン(R)、アラニン(A)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、リシン(K)、グルタミン(Q)、アルファ-メチル-グルタミン酸、又はロイシン(L)であるか、存在せず;
X27はイソロイシン(I)、バリン(V)、アラニン(A)、リシン(K)、メチオニン(M)、グルタミン(Q)、又はアルギニン(R)であるか、存在せず;
X28はグルタミン(Q)、リシン(K)、アスパラギン(N)、又はアルギニン(R)であるか、存在せず;
X29はリシン(K)、アラニン(A)、グリシン(G)、又はスレオニン(T)であるか、存在せず;
X30はシステイン(C)であるか、存在しない。
【0019】
本発明を具現する一態様は、肝臓標的薬物を含む、投与された個体の体内臓器中、前記薬物の肝臓における分布度が高い薬学的組成物である。一つの具体例として、前記肝臓標的薬物は、下記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴とする:
【0020】
Y-Aib-QGTF-X7-SD-X10-S-X12-Y-L-X15-X16-X17-R-A-X20-X21-F-V-X24-W-L-M-N-T-X30(一般式2、配列番号:47)
【0021】
前記一般式2において
X7はスレオニン(T)、バリン(V)又はシステイン(C)であり;
X10はチロシン(Y)又はシステイン(C)であり;
X12はリシン(K)又はシステイン(C)であり;
X15はアスパラギン酸(D)、又はシステイン(C)であり;
X16はグルタミン酸(E)又はセリン(S)であり;
X17はリシン(K)又はアルギニン(R)であり;
X20はグルタミン(Q)又はリシン(K)であり;
X21はアスパラギン酸(D)、又はグルタミン酸(E)であり;
X24はバリン(V)又はグルタミン(Q)であり;
X30はシステイン(C)であるか、存在しない
(ただし、前記一般式2のアミノ酸配列が配列番号12と同一な場合は除く)。
【0022】
他の具体例として、前記ペプチドは持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は下記化学式1で示される、薬学的組成物であることを特徴とする:
【0023】
[化学式1]
X-L-F
【0024】
ここで、
Xは、前記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドであり;
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
Fは、免疫グロブリンFc領域であり、
-は、XとLとの間、LとFとの間の共有結合連結を示す。
【0025】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記体内臓器は、肝臓、心臓、肺、大腸、脾臓、すい臓、脂肪組織、小腸、胃、筋肉、腎臓及び脳であり、前記各臓器中、肝臓における分布度が最も高いことを特徴とする。
【0026】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記組成物は、肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療に使用するためのものであることを特徴とする。
【0027】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓標的薬物は、投与後の肝臓におけるT/S比率(tissue-to-serum ratio)が下記から選択された一つ以上であることを特徴とする:(a)投与後の約40時間~約50時間でT/S比率が約20%~約40%;及び(b)投与後の約160時間~約180時間でT/S比率が約25%~約40%。
【0028】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓標的薬物は、投与後の肝臓におけるT/S比率が下記から選択された一つ以上であることを特徴とする::(a)投与後の約2日でT/S比率が約25%~約35%;及び(c)投与後の約7日でT/S比率が約27%~約35%。
【0029】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓標的薬物は、投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比が1:約2~約4であることを特徴とする。
【0030】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓標的薬物は、投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比が1:約2.2~約3.2であることを特徴とする。
【0031】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比は、投与後の約40時間~約180時間における分布比であることを特徴とする。
【0032】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比は、投与後の約2日~約7日間における分布比であることを特徴とする。
【0033】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓標的薬物は、(a)投与後40時間~50時間で心臓に比べた肝臓における分布比が1:1.6~3.0であり;及び(b)投与後160時間~180時間で心臓に比べた肝臓における分布比が1:2.8~7であることを特徴とする。
【0034】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓標的薬物は、投与後、体内臓器中、肝臓に相対的に多く分布するペプチド又はそれを含む持続型結合体の形態であることを特徴とする。
【0035】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓標的薬物は、肝臓における薬物作用が必要な疾患に治療的活性を有することを特徴とする。
【0036】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓における薬物作用が必要な疾患は、肝臓疾患、低血糖又は先天性高インスリン症であることを特徴とする。
【0037】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記低血糖は急性低血糖又は慢性低血糖であることを特徴とする。
【0038】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記肝臓標的薬物は、グルカゴン受容体に対して結合力を有するペプチドの配列を含むタンパク質あるいはペプチドであることを特徴とする。
【0039】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記一般式2のX16とX20のアミノ酸間に環を形成することを特徴とする。
【0040】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号13、15、19、33、及び36~45からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0041】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号33、及び36~44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0042】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号20、22、23、27、33、35、37、38、40、41、42、及び44のいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0043】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号20、22、23、27、33、37、38、及び44のいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0044】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記一般式1のX10とX14、X12とX16、X16とX20、X17とX21、X20とX24、及びX24とX28のアミノ酸対中、少なくとも一つのアミノ酸対のアミノ酸のそれぞれが環を形成できるグルタミン酸又はリシンで置換されたことを特徴とする。
【0045】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記X12とX16のアミノ酸対、X16とX20のアミノ酸対、又はX17とX21のアミノ酸対のアミノ酸のそれぞれが環を形成できるグルタミン酸又はリシンで置換されたことを特徴とする。
【0046】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記一般式1において、X10とX14、X12とX16、X16とX20、X17とX21、X20とX24、及びX24とX28のアミノ酸対中、少なくとも一つのアミノ酸対においてそれぞれのアミノ酸間に環を形成することを特徴とする。
【0047】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記ペプチドは、配列番号:1~44からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0048】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記ペプチドは、そのC末端がアミド化するか、又は遊離カルボキシル基(-COOH)を有することを特徴とする。
【0049】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記ペプチドのC末端がアミド化したことを特徴とする。
【0050】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記ペプチドのC末端は変形されていないことを特徴とする。
【0051】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は1~100kDaの範囲にあることを特徴とする。
【0052】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記化学式1の構造は、下記化学式3の構造であることを特徴とする:
【0053】
【0054】
ここで、X及びFは、化学式1で定義した通りである。
【0055】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記エチレングリコール繰り返し単位は[OCH2CH2]nであり、nは自然数で、前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が1~100kDaになるように定められることを特徴とする。
【0056】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記nの値は、前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が10kDaになるように定められることを特徴とする。
【0057】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記Lはポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0058】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記Xはペプチド内のシステインの硫黄原子を通じて連結されたことを特徴とする。
【0059】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記FはIgG Fc領域であることを特徴とする。
【0060】
前述した具体例のいずれか一つによる薬学的組成物として、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4由来であることを特徴とする。
【0061】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記Fは2個のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を通じてのみ連結されたことを特徴とする。
【0062】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記Fは配列番号70のアミノ酸配列であるモノマーを含むことを特徴とする。
【0063】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記Fは配列番号70のアミノ酸配列であるモノマーのホモ二量体であることを特徴とする。
【0064】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記Fは配列番号71のアミノ酸配列を含むホモ二量体であることを特徴とする。
【0065】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記FはそのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたことを特徴とする。
【0066】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域であるFとXが糖鎖化されていないことを特徴とする。
【0067】
本発明を具現する他の一態様は、肝組織に標的化された生理活性物質、具体的には、肝臓に存在する受容体と結合力を有する物質を含み、肝組織に標的化された生理活性物質である。
【0068】
本発明を具現する他の一態様は、前記薬学的組成物又は肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療方法である。
【0069】
本発明を具現する他の一態様は、前記肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療用薬剤の製造に使用するための、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質の用途である。
【0070】
本発明を具現する他の一態様は、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与して肝臓標的化を誘導する方法である。
【0071】
本発明を具現する他の一態様は、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与して肝組織内で前記生理活性物質の分布増大を誘導する方法を提供することである。
【0072】
本発明を行うための具体的な内容を説明すると、次の通りである。一方、本願において開示されるそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本願において開示された多様な要素の全ての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な記述により本発明の範疇が制限されるとは見られない。
【0073】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本発明の特定の様態に対する多数の等価物を認知又は確認することができる。また、このような等価物は、本発明に含まれることが意図される。本明細書に記載された文献は、全体が参照として本願に組み込まれることができる。また、本明細書の全体にわたって多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体として本明細書に参照として組み込まれ、本出願が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【0074】
本明細書全体を通じて、天然に存在するアミノ酸に対する通常の一文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(α-アミノイソブチル酸)、Sar(N-methylglycine)、アルファ-メチル-グルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)などのような他のアミノ酸について一般的に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書で略語として言及されたアミノ酸はIUPAC-IUB命名法により記載された。
【0075】
アラニンAla、A アルギニンArg、R
アスパラギンAsn、N アスパラギン酸Asp、D
システインCys、C グルタミン酸Glu、E
グルタミンGln、Q グリシンGly、G
ヒスチジンHis、H イソロイシンIle、I
ロイシンLeu、L リシンLys、K
メチオニンMet、M フェニルアラニンPhe、F
プロリンPro、P セリンSer、S
スレオニンThr、T トリプトファンTrp、W
チロシンTyr、Y バリンVal、V
【0076】
本明細書において「Aib」は、「2-アミノイソブチル酸(2-aminoisobutyric acid)」又は「アミノイソブチル酸(aminoisobutyric acid)」と混用されてもよく、2-アミノイソブチル酸(2-aminoisobutyric acid)とアミノイソブチル酸(aminoisobutyric acid)は、混用されてもよい。
【0077】
本発明を具現するための一態様は、肝臓標的薬物を含む組成物、例えば、薬学的組成物を提供する。具体的には、本発明を具現するための一態様は、肝臓標的薬物を含む、投与された個体の体内臓器中、前記薬物の肝臓における分布度が高い、薬学的組成物に関する。
【0078】
体内臓器中、肝臓における分布度が高いということは、肝臓、心臓、肺、大腸、脾臓、すい臓、脂肪組織、小腸、胃、筋肉、腎臓及び脳からなる体内臓器中、肝臓標的薬物が体内に投与された後、肝臓標的薬物の分布が肝臓で最も高いことを意味するが、これに制限されない。
【0079】
前記薬学的組成物は、肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療に使用するための薬学的組成物であってもよい。
【0080】
本出願において用語、「肝臓標的薬物」とは、肝組織に標的化され得る薬物を意味する。肝組織に標的化とは、前記薬物が投与された後、他の臓器に比べて肝臓における分布が高いことを意味するが、これに制限されない。前記肝臓標的薬物は、肝臓における薬物作用が必要な疾患に対する治療的活性を有する。
【0081】
前記肝臓標的薬物は、投与後の肝臓におけるT/S比率(tissue-to-serum ratio)が下記から選択された一つ以上であってもよいが、それに制限されない:(a)投与後の約40時間~約50時間でT/S比率が約20%~約40%、約24%~約40%、約25%~約40%、約25%~約38%、約25%~約35%、約25%~約34%、約25%~約33%、約26%~約33%、約26%~約32%、約27%~約32%、約28%~約32%、約29%~約31%、又は約29.5%~約30.5%;及び(b)投与後の約160時間~約180時間でT/S比率が約25%~約40%、約26%~約38%、約27%~約35%、約27%~約34%、約27%~約33%、約28%~約33%、約29%~約33%、約29%~約32%、約30%~約32%、又は約30.5%~約31.5%。前記特徴は、(a)又は(b)から選択された1個以上、又は2個の両方であってもよいが、これに制限されない。
【0082】
前記肝臓標的薬物は、投与後の肝臓におけるT/S比率が下記から選択された一つ以上であってもよいが、それに制限されない:(a)投与後の約2日でT/S比率が約25%~約35%、約26%~約34%、約27%~約33%、約28%~約32%、約29%~約31%、約29.5%~約30.5%、又は約29.8%;及び(c)投与後の約7日でT/S比率が約27%~約35%、約27%~約34%、約28%~約33%、約29%~約32%、約30%~約31.5%、又は約31%。前記特徴は、(a)、又は(b)から選択された1個以上、又は2個の両方であってもよいが、これに制限されない。
【0083】
T/S比率(tissue-to-serum ratio)は、組織対血清の濃度割合であり、%で換算され、公知の方法を通じて測定することができる。その例として、T/S比率(tissue-to-serum ratio)、T/S ratio(%)は、組織濃度/血清濃度×100で計算される。濃度測定は、臓器を摘出した後、ELISA方法などにより物質濃度を測定する。
【0084】
T/S比率が高いほど前記組織で投与された物質が低いT/S比率を有する組織に比べて分布が高いことを意味する。一般に、薬物が体内に投与される場合、薬物の分布度が多い臓器が肺及び心臓であるところ、肺組織及び心臓組織における分布度を肝組織と比較し、肺組織及び心臓組織に比べて肝組織における分布が多くなると、これは、本発明の肝臓標的薬物が効果的に肝組織に標的化されることを意味する。それ以外にも肝臓標的薬物が効果的に肝組織に標的化するということを確認できるT/S比率を測定し、肝組織のT/S比率と比較できる組織は、制限なく含まれ得る。
【0085】
前記肝臓標的薬物は、投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比が1:約2~約4.0、1:約2~約3.5、1:約2.1~約3.4、1:約2.2~3.2、1:約2.2~約3.3、1:約2.3~約3.2、1:約2.4~約3.2、1:約2.4~約3.1、1:約2.4~約3.0、1:約2.5~約2.95、1:約2.5~2.9、1:2.55~約2.87、1:又は2.6~2.9、1:約2.5~3.9であってもよいが、これに制限されない。
【0086】
前記分布比は、T/S(%)を基に測定することができ、肺のT/S(%)を基準である1とすると、肝臓におけるT/S(%)がどのような倍数であるかにより確認することができる。
【0087】
前記投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比は、投与後の約40時間~約180時間、約45時間~約170時間、又は約2日~約7日であってもよいが、これに制限されない。
【0088】
前記投与後の肺組織に比べた肝臓における分布比は、投与後の約2日で1:約2.4~約2.7、1:約2.4~約2.7、1:約2.5~約2.6、又は1:約2.5~3.7、約7日で1:約2.5~3、1:約2.7~約3、1:約2.8~約3.0、1:約2.8~約2.9、又は1:約2.8~約3.9の分布比であってもよいが、これに制限されない。
【0089】
前記投与後に心臓に比べた肝臓における分布比は、(a)投与後の約40時間~約50時間で心臓に比べた肝臓における分布比が1:約1.6~約3.0であり;及び(b)投与後の約160時間~約180時間で心臓に比べた肝臓における分布比が1:約2.8~約7.0であってもよいが、これに制限されない。
【0090】
前記投与後に心臓に比べた肝臓における分布比は、((a)投与後の約40時間~約50時間、約45時間~約50時間、又は約2日で心臓に比べた肝臓における分布比が1:約1.6~3.0、1:約1.6~2.5、1:約1.6~約2.2、1:約1.7~約2.1、1:約1.7~約2.0、1:約1.8~2.0、1:約1.8~2.0、1:約1.89~2.0、1:約1.8~2.0、又は1:約1.8~2.9であり;及び(b)投与後の約160時間~約180時間、約160時間~約180時間、又は約7日で心臓に比べた肝臓における分布比が1:約2.8~約4、1:約2.9~約3.8、1:約3.0~約3.8、1:約3.0~約3.6、1:約3.0~約3.5、1:約3.0~約3.4、1:約3.1~約3.4、1:約3.2~約3.4、1:約3.2~約3.3、1:約2.8~約7.0、又は1:約3.3~約6.6であってもよいが、これに制限されない。
【0091】
前記分布比は、T/S(%)を基に測定することができ、心臓のT/S(%)を基準である1とする時、肝臓におけるT/S(%)がどのような倍数であるかにより確認することができる。
【0092】
本出願において用語、「約」は±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、±0.05などを全て含む範囲であり、約という用語に続く数値と同等又は類似の範囲の数値を全て含むが、これに制限されない。
【0093】
前記肝臓標的薬物は、肝組織に標的化され得る物質を含むことができる。具体的には、前記肝臓標的薬物は、肝臓標的化を誘導できるグルカゴン又はその誘導体を含むペプチドあるいはタンパク質であり、グルカゴン受容体に対して活性を有するペプチド配列を含むものであってもよい。その例として、前記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチド又はそれを含む持続型結合体の形態、又は前記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチド又はそれを含む持続型結合体の形態であってもよいが、これに制限されない。前記ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性を有するペプチドであり、具体的には、グルカゴン誘導体であってもよいが、これに制限されない。
【0094】
一方、本発明において肝臓標的薬物であるグルカゴン又はその誘導体は、当該薬物を動物の血液内に伝達した時に血液から肝臓に標的化できる程度にグルカゴン受容体に結合力を有することをいう。より具体的には、当該薬物を動物の血液内に伝達した後、少なくとも6時間、30時間、少なくとも48時間、又は少なくとも168時間で前記薬物の臓器分布比率を確認した時、心臓、肺、大腸、脾臓、すい臓、脂肪組織、小腸、胃、筋肉、腎臓、又は脳のような少なくとも一つの他の臓器に比べて肝臓に分布した比率が、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約30%以上、又は約40%以上高いことを意味するが、比較対象臓器に比べて分布比率が高い限り、特にこれに制限されない。
【0095】
前記グルカゴン受容体に対する活性を有する物質は、グルカゴン受容体に対して有意なレベルの活性を有する多様な物質、例えば、化合物又はペプチド形態の物質を含む。
【0096】
特にこれに限定されるものではないが、前記グルカゴンに対して有意なレベルの活性を有する物質は天然型グルカゴンだけでなく、グルカゴン受容体に対してin vitro活性が当該受容体の天然型リガンド(天然型グルカゴン)に比べて0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上を示すものであってもよい。
【0097】
このようなグルカゴン又はグルカゴン誘導体のin vitro活性を測定する方法は、本願明細書の実験例1を参照することができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0098】
前記グルカゴン受容体に対する活性を有する物質の例として、天然型グルカゴン、そのアゴニスト(agonist)、又はその誘導体があるが、特にこれに限定されるものであってもよい。
【0099】
本発明によるグルカゴン誘導体は、天然型グルカゴンと比較してアミノ酸配列に一つ以上の差があるペプチド、天然型グルカゴン配列を改質(modification)を通じて変形させたペプチド、天然型グルカゴンのようにグルカゴン受容体を活性化させる天然型グルカゴンの模倣体を含み、投与された個体の体内臓器中、前記ペプチドの肝臓における分布度が高ければ、本発明の範囲に属することができる。
【0100】
前記グルカゴン誘導体の種類として、国際公開特許WO 2016/108586及び国際公開特許WO 2017/003191に記載された種類が挙げられ、前記国際公開特許の明細書全体は、本願に参考資料として全て含まれる。また、前記グルカゴン誘導体ペプチドの持続型結合体の製造方法はWO 2017/003191に記載されており、前記国際公開特許の明細書全体も本願に参考資料として含まれることは明らかである。
【0101】
このようなグルカゴン誘導体は、天然型グルカゴンに対して変化したpIを有して改善された物性を示すものであってもよい。また、前記グルカゴン誘導体は、グルカゴン受容体を活性化させる活性を有しながら溶解度が改善されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0102】
また、前記グルカゴン誘導体は、非自然な(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0103】
一方、天然型グルカゴンは、次のアミノ酸配列を有することができる:
【0104】
His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr(配列番号:1)
【0105】
本発明において用語「等電点(isoelectric point)」又は「pI」とは、あるポリペプチドあるいはペプチドのような分子においてその全体純荷電(net charge)がなくなる(0)pH値を意味する。多様な荷電された官能基が存在するポリペプチドの場合、pIにおいてこれら荷電の和はゼロである。pIより高いpHにおいてポリペプチドの全体純荷電は陰性になるはずであり、pIより低いpH値においてポリペプチドの全体純荷電は陽性になるはずである。
【0106】
pIは、ポリアクリルアミド、澱粉又はアガロースで構成される固定されたpH勾配ゲル状で等電点電気泳動により、又は、例えば、ExPASyサーバーでpI/MWツール(http://expasy.org/tools/pi_tool.html;Gasteiger et al.、2003)を用いてアミノ酸配列からpIを推算することにより決定され得る。
【0107】
本発明において用語「変化したpI」とは、天然グルカゴンのアミノ酸配列で一部の配列が負電荷及び正電荷を帯びたアミノ酸残基で置換されて天然グルカゴンのpIとは異なる、即ち、これより減少又は増加したpIを有することを意味する。このように変化したpIを有するペプチドは、グルカゴン誘導体として中性pHで改善された溶解度及び/又は高い安定性を示すことができる。しかし、特にこれに限定されるものではない。
【0108】
その例として、前記グルカゴン誘導体は、天然型グルカゴンのpI値(6.8)ではなく変化したpI値を有するものであってもよく、6.8未満、6.7以下、6.5以下、また、6.8超過、7以上、7.5以上であってもよいが、これらに限定されるものではなく、天然型グルカゴンと相違するpI値を有すれば、本発明の範疇に含まれる。特に、天然型グルカゴンと相違するpI値を有することにより、天然型グルカゴンに比べて中性pHで改善された溶解度を示すことで凝集(aggregation)される程度が低ければ、本発明の範疇に含まれてもよいが、これに制限されない。
【0109】
その例として、4~6.5及び/又は7~9.5、7.5~9.5、8.0~9.3のpI値を有するものであってもよいが、これに制限されない。この場合、天然型グルカゴンに比べて高いか、又は低いpIを有するため、中性pHで天然型グルカゴンに比べて改善された溶解度及び高い安定性を示すことができる。しかし、これに限定されるものではない。
【0110】
具体的には、天然型グルカゴンの誘導体は、天然型グルカゴンで一部アミノ酸が置換(substitution)、追加(addition)、除去(deletion)及び修飾(modification)のいずれか一つの方法又はこのような方法の組み合わせを通じて変形させることができる。
【0111】
前記方法の組み合わせにより作製されるグルカゴンの誘導体の例として、天然型グルカゴンとアミノ酸配列が少なくとも1つ異なり、N末端アミノ酸残基に脱アミノ化(deamination)した、グルカゴン受容体に対する活性化機能を有するペプチドなどがあるが、これに限定されず、誘導体の製造のための複数の方法の組み合わせにより本発明に適用される天然型グルカゴンの誘導体を製造することができる。
【0112】
また、天然型グルカゴンの誘導体の製造のためのこのような変形は、L-型あるいはD-型アミノ酸、及び/又は非-天然型アミノ酸を用いた変形;及び/又は天然型配列を改質、例えば、側鎖官能基の変形、分子内共有結合、例えば、側鎖間環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノヘキサン化、ビオチン化などのように改質することにより変形することを全て含む。また、前記変形は非天然型化合物での置換を全て含む。
【0113】
また、天然型グルカゴンのアミノ及び/又はカルボキシ末端に一つ又はそれ以上のアミノ酸が追加されたことを全て含む。
【0114】
前記置換又は追加されるアミノ酸は、ヒトタンパク質から通常観察される20個のアミノ酸だけでなく非定型又は非自然的発生アミノ酸を用いることができる。非定型アミノ酸の商業的出典にはSigma-Aldrich、ChemPepとGenzyme pharmaceuticalsが含まれる。このようなアミノ酸が含まれたペプチドと定形的なペプチド配列は商業化されたペプチド合成会社、例えば、米国のAmerican peptide companyやBachem、又は韓国のAnygenを通じて合成及び購買可能である。
【0115】
アミノ酸誘導体も同様の方式で入手することができるが、その例を一部だけ挙げると、4-イミダゾ酢酸(4-imidazoacetic acid)などを用いることができる。
【0116】
グルカゴンは、約7のpIを有しており、生理学的pH(pH 4-8)の溶液中で不溶性であり、中性pHでは沈殿する傾向がある。pH 3以下の水溶液中で、グルカゴンは初期には溶解するが、1時間以内にゲル形成により沈殿する。ゲル化したグルカゴンは、主にβ-シートフィブリルからなり、このように沈殿したグルカゴンはゲルが注射針や、静脈に投与される場合、血管を詰まらせるため、注射剤として用いるのに適しない。沈殿過程を遅延させるために、酸性(pH 2-4)の剤形を用いることが通常であるが、これを通じて短時間で、相対的に無凝集状態でグルカゴンを維持することができる。しかし、グルカゴンのフィブリル形成が低いpHで非常に速かになされるため、このような酸性剤形は、調剤後に直ちに注射されなければならない。
【0117】
本発明のグルカゴン誘導体は、天然型グルカゴンのpIを負電荷及び正電荷を帯びたアミノ酸残基の置換により変化させて延長された作用プロファイルを有することに開発されたものを含み、このような誘導体は、天然型グルカゴンに比べて変化したpIを有することにより、中性pHで改善された溶解度及び/又は高い安定性を示すことを特徴とする。
【0118】
一つの具体的な様態として、前記グルカゴン又はグルカゴン誘導体は、下記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。
【0119】
X1-X2-QGTF-X7-SD-X10-S-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-F-X23-X24-W-L-X27-X28-X29-X30(一般式1、配列番号:46)
【0120】
前記式において、
X1はヒスチジン、デスアミノ-ヒスチジル(desamino-histidyl)、ジメチル-ヒスチジル(N-dimethyl-histidyl)、ベータ-ヒドロキシイミダゾプロピオニル(beta-hydroxy imidazopropionyl)、4-イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)、ベータ-カルボキシイミダゾプロピオニル(beta-carboxy imidazopropionyl)、トリプトファン、又はチロシンであるか、存在せず;
X2はアルファ-メチル-グルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)、Aib(aminoisobutyric acid)、D-アラニン、グリシン、Sar(N-methylglycine)、セリン又はD-セリンであり;
X7はスレオニン、バリン又はシステインであり;
X10はチロシン又はシステインであり;
X12はリシン又はシステインであり;
X13はチロシン又はシステインであり;
X14はロイシン又はシステインであり;
X15はアスパラギン酸、グルタミン酸又はシステインであり;
X16はグルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、アルファ-メチル-グルタミン酸、又はシステインであるか、存在せず;
X17はアスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン、アルギニン、セリン、システイン、又はバリンであるか、存在せず;
X18はアラニン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、バリン、又はシステインであるか、存在せず;
X19はアラニン、アルギニン、セリン、バリン、又はシステインであるか、存在せず;
X20はリシン、ヒスチジン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アルギニン、アルファ-メチル-グルタミン酸、又はシステインであるか、存在せず;
X21はアスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、バリン、又はシステインであるか、存在せず;
X23はイソロイシン、バリン、又はアルギニンであるか、存在せず;
X24はバリン、アルギニン、アラニン、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルファ-メチル-グルタミン酸、又はロイシンであるか、存在せず;
X27はイソロイシン、バリン、アラニン、リシン、メチオニン、グルタミン、又はアルギニンであるか、存在せず;
X28はグルタミン、リシン、アスパラギン、又はアルギニンであるか、存在せず;
X29はリシン、アラニン、グリシン、又はスレオニンであるか、存在せず;
X30はシステインであるか、存在しなくてもよい。
【0121】
より具体的には、
前記一般式1において、
X1がヒスチジン、トリプトファン、又はチロシンであるか、存在せず;
X2がセリン又はAib(aminoisobutyric acid)であり;
X7はスレオニン、バリン又はシステインであり;
X10はチロシン又はシステインであり;
X12はリシン又はシステインであり;
X13はチロシン又はシステインであり;
X14はロイシン又はシステインであり;
X15はアスパラギン酸、又はシステインであり;
X16はグルタミン酸、セリン又はシステインであり;
X17はアスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、セリン、システイン、又はバリンであり;
X18はアスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、又はシステインであり;
X19はアラニン、又はシステインであり;
X20はグルタミン、アスパラギン酸、リシン、又はシステインであり;
X21はアスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、バリン、又はシステインであり;
X23はイソロイシン、バリン又はアルギニンであり;
X24はバリン、アルギニン、アラニン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、又はロイシンであり;
X27はイソロイシン、バリン、アラニン、メチオニン、グルタミン又はアルギニンであり;
X28はグルタミン、リシン、アスパラギン又はアルギニンであり;
X29はスレオニンであり;
X30はシステインであるか、存在しなくてもよい。
【0122】
その例として、前記ペプチドは、配列番号:1~44からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号:1~44からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。他の具体例として、本発明のペプチドは、配列番号2~45からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、又は配列番号2~45からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0123】
また、本願において「特定の配列番号で構成されるペプチド」と記載されているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドと同一又は対応する活性を有する場合であれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列の付加又は自然に生じ得る突然変異、あるいはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除くものではなく、このような配列の追加もしくは突然変異を有する場合にも、本願の範囲内に属することが自明である。即ち、一部の配列の差があっても、一定レベル以上の相同性又は同一性を示し、投与された個体の体内臓器中、前記ペプチドの肝臓における分布度が高ければ、本発明の範囲に属することができる。
【0124】
その例として、特定の配列番号で構成されるペプチド、又は特定の配列番号を含むペプチドと少なくとも60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、又は95%以上の配列同一性を有するペプチドも含むことができ、投与された個体の体内臓器中、前記ペプチドの肝臓における分布度が高ければ、特定の配列に制限されない。
【0125】
本出願において用語、「相同性(homology)」又は「同一性(identity)」は、二つの与えられたアミノ酸配列又は塩基配列と相互間の関連した程度を意味し、百分率で表すことができる。用語の相同性及び同一性は、しばしば互換的に使用することができる。
【0126】
任意の二つのペプチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al(1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444でのようなデフォルトパラメータを用いて「FASTA」プログラムなどの既知のコンピュータアルゴリズムを使用して決定することができる。又は、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.、2000,Trends Genet. 16:276-277)(バージョン5.0.0又は以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453)を使用して決定することができる。(GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387(1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA(Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403(1990);Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994、及び[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48:1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST又はClustalWを用いて相同性、類似性又は同一性を決定することができる。
【0127】
ペプチドの相同性、類似性又は同一性は、例えば、Smith and Waterman,Adv. Appl. Math(1981)2:482において公知となっているように、例えば、Needleman et al.(1970)、J Mol Biol.48:443のようなGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(即ち、アミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)一進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)及びSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358(1979)により開示されているように、Gribskov et al(1986)Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス(又はEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(又はギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。従って、本発明で使用されたものとして、用語「相同性」又は「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0128】
以上の内容は、本発明の他の具体例あるいは他の様態にも適用され得るが、これに限定されるものではない。
【0129】
また、一例として、前記ペプチドは、配列番号:3、11~17、19~27、29、31、33、35~44からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号:3、11~17、19~27、29、31、33、35~44からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0130】
また、一例として、前記ペプチドは、配列番号:12、14、17、19~25、27、29、33、35~38、40~42、及び44からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号:12、14、17、19~25、27、29、33、35~38、及び40~42、44からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0131】
また、一例として、前記ペプチドは、配列番号2~13、15、17、20~24、26~30、及び32~44からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号2~13、15、17、20~24、26~30、及び32~44からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0132】
また、一例として、前記ペプチドは、配列番号20、22、23、27、33、35、37、38、40、41、42、及び44からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号20、22、23、27、33、35、37、38、40、41、42、及び44からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0133】
また、一例として、前記ペプチドは、配列番号20、22、23、27、33、37、38、及び44からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号20、22、23、27、33、37、38、及び44からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0134】
また、一例として、前記ペプチドは、配列番号:14、16、18、19、25、及び31からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号:14、16、18、19、25、及び31からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0135】
一つの具体例として、肝臓標的薬物を含む、投与された個体の体内臓器中、前記薬物の肝臓における分布度が高い、薬学的組成物として、
前記肝臓標的薬物は、下記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい:
【0136】
Y-Aib-QGTF-X7-SD-X10-S-X12-Y-L-X15-X16-X17-R-A-X20-X21-F-V-X24-W-L-M-N-T-X30(一般式2、配列番号:47)
【0137】
前記一般式2において
X7はスレオニン(T)、バリン(V)又はシステイン(C)であり;
X10はチロシン(Y)又はシステイン(C)であり;
X12はリシン(K)又はシステイン(C)であり;
X15はアスパラギン酸(D)、又はシステイン(C)であり;
X16はグルタミン酸(E)又はセリン(S)であり;
X17はリシン(K)又はアルギニン(R)であり;
X20はグルタミン(Q)又はリシン(K)であり;
X21はアスパラギン酸(D)、又はグルタミン酸(E)であり;
X24はバリン(V)又はグルタミン(Q)であり;
X30はシステイン(C)であるか、存在しない
(ただし、前記一般式2のアミノ酸配列が配列番号12と同一な場合は除く)。
【0138】
その例として、前記ペプチドは、配列番号13、15、19、33、及び36~45からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号13、15、19、33、及び36~45からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0139】
具体的には、前記一般式2において
X7はスレオニン、バリン又はシステインであり;
X10はチロシン又はシステインであり;
X12はリシンであり;
X15はアスパラギン酸であり;
X16はグルタミン酸又はセリンであり;
X17はリシン又はアルギニンであり;
X20はグルタミン又はリシンであり;
X21はアスパラギン酸又はグルタミン酸であり;
X24はグルタミンであり;
X30はシステインであるか、存在しなくてもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0140】
その例として、前記ペプチドは、また、一例として、前記ペプチドは、配列番号33、及び36~44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むもの、具体的には、配列番号33、及び36~44からなる群から選択されるアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0141】
上述のグルカゴン誘導体は、分子内架橋(intramolecularbridge)を含むことができ(例えば、共有結合的架橋又は非共有結合的架橋)、具体的には、環を含む形態であってもよい。例えば、グルカゴン誘導体の16番目及び20番目のアミノ酸間に環が形成された形態であってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0142】
前記環の非制限的な例として、ラクタム架橋(又はラクタム環)を含むことができる。
【0143】
また、前記グルカゴン誘導体は環を含むように、目的とする位置に環を形成できるアミノ酸を含むように変形したものを全て含む。
【0144】
このような環は、前記グルカゴン誘導体内のアミノ酸の側鎖の間に形成されてもよく、その例としてリシンの側鎖とグルタミン酸の側鎖との間にラクタム環が形成される形態であってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0145】
例えば、前記一般式1又は一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドは、一般式1又は一般式2のX10とX14、X12とX16、X16とX20、X17とX21、X20とX24、及びX24とX28のアミノ酸対において、各アミノ酸対のアミノ酸がそれぞれグルタミン酸又はリシンで置換されたものであってもよいが、これに制限されない。前記、Xn(nは自然数)においてnは提示されたアミノ酸配列のN末端からのアミノ酸の位置を示す。
【0146】
また、前記一般式1又は一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドは、X12とX16のアミノ酸対、X16とX20のアミノ酸対、又はX17とX21のアミノ酸対のアミノ酸のそれぞれが環を形成できるグルタミン酸又はリシンで置換されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0147】
また、前記一般式1又は一般式2において、X10とX14、X12とX16、X16とX20、X17とX21、X20とX24、及びX24とX28のアミノ酸対中、少なくとも一つのアミノ酸対において各アミノ酸対のそれぞれのアミノ酸間に環(例えば、ラクタム環)を形成したものであってもよいが、これに制限されない。
【0148】
また、前記一般式1又は一般式2において、X16がグルタミン酸であり、X20はリシンであり、X16とX20の側鎖がラクタム環を形成しているものであってもよいが、これに制限されない。
【0149】
また、前記ペプチドは、天然型グルカゴンに比べて体内半減期が延長したものであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0150】
また、本発明によるペプチドは、N末端及び/又はC末端が変形されないものであってもよいが、生体内のタンパク質切断酵素から保護し、安定性を増加させるために、そのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾されたり有機基で保護されたり、又はペプチド末端などにアミノ酸が追加されて変形された形態も本発明によるペプチドの範疇に含まれる。C末端が変形されていない場合、本発明によるペプチドの末端はカルボキシル基を有するが、特にこれに限定されるものではない。
【0151】
又は化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているため、このような電荷を除去するためにN末端をアセチル化(acetylation)及び/又はC末端をアミド化(amidation)してもよいが、特にこれに制限されない。
【0152】
本明細書において特に指すところがなければ、本発明による「ペプチド」又はこのようなペプチドが免疫グロブリンFc領域に共有結合で連結された「結合体」に関する明細書の詳細な説明や請求の範囲の記述は、当該ペプチド又は結合体はもちろんのこと、当該ペプチド又は結合体の塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、又はその溶媒和物の形態を全て含む範疇にも適用される。従って、明細書に「ペプチド」又は「結合体」とだけ記載されていても当該記載内容は、その特定の塩、その特定の溶媒和物、その特定の塩の特定の溶媒和物にも同様に適用される。このような塩の形態は、例えば、薬学的に許容される任意の塩を用いた形態であってもよい。
【0153】
前記塩の種類は、特に制限されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全で効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0154】
前記用語、「薬学的に許容される」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、又はアレルギー反応などを誘発することなく所望の用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0155】
本出願において用語、「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、又は塩基から誘導された塩を含む。適した酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適した塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含み得る。
【0156】
また、本発明で用いられた用語「溶媒和物」は、本発明によるペプチド、結合体、又はその塩が溶媒分子と複合体を形成したものをいう。
【0157】
本発明によるペプチドのC末端はアミド化するか、又は遊離カルボキシル基(-COOH)を有するペプチドであるか、又はC末端が変形されていないペプチドを含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0158】
一つの具体例として、前記ペプチドは、C末端がアミド化しているものであってもよいが、これに制限されない。
【0159】
一つの具体例として、前記ペプチドは、非グリコシル化したものであってもよいが、これに制限されない。
【0160】
本発明のペプチドは、Solid phase合成法を通じて合成されてもよく、組換え方法でも生産可能であり、商業的に依頼して製造してもよいが、これに制限されない。
【0161】
また、本発明のペプチドは、その長さに応じてこの分野でよく知られている方法、例えば、自動ペプチド合成器により合成することができ、遺伝子操作技術により生産することもできる。
【0162】
具体的には、本発明のペプチドは、標準合成方法、組換え発現システム、又は任意の他の当該分野の方法により製造され得る。従って、本発明によるペプチドは、例えば、下記を含む方法を含む多数の方法で合成することができる:
【0163】
(a)ペプチドを固相又は液相法の手段で段階的に又は断片組立により合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法;又は
(b)ペプチドをエンコードする核酸作製物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法;又は
(c)ペプチドをエンコードする核酸作製物の無細胞試験管内の発現を行い、発現生成物を回収する方法;又は
(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせによりペプチドの断片を得、続いて、断片を連結させてペプチドを得、当該ペプチドを回収する方法。
【0164】
また、前記一般式1又は一般式2のアミノ酸配列を含むペプチド、又はグルカゴン誘導体は、その生体内半減期を増加させる生体適合性物質部に結合された、持続型結合体の形態であってもよいが、これに制限されない。本明細書において、前記生体適合性物質部はキャリアと混用され得る。
【0165】
前記持続型結合体の形態の一般式1又は一般式2のアミノ酸配列を含むペプチド(結合体形態)、又は一般式1又は一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドそれ自体は肝臓標的薬物であり、投与された個体の体内臓器中、前記薬物の肝臓における分布度が高い、薬学的組成物の有効成分である。
【0166】
本出願において用語、「持続型結合体」は、生理活性物質(例えば、グルカゴン誘導体)に生体適合性物質部又はキャリアが結合された形態であり、具体的には、前記結合体は、ペプチド部位及び前記ペプチド部位に共有結合で連結された生体適合性物質部を含み、前記ペプチド部位は、前記一般式1又は一般式2のアミノ酸配列又は配列番号2~11、及び13~45と同一の配列であるか、又はこれを含む配列であってもよい。前記持続型結合体において生体適合性物質部又はキャリアは、生理活性物質に共有結合で連結されたものであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0167】
本発明において前記ペプチドの結合体は、キャリアが結合されていない前記ペプチドに比べて増加した効力の持続性及び/又は血中半減期の増大を示すことができ、本発明では、このような結合体を「持続型結合体」と称する。
【0168】
一方、このような結合体は、非自然な(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0169】
本発明の具体的な実施形態において、前記持続型結合体は、グルカゴン誘導体に免疫グロブリンFc領域が互いに連結された形態を指す。具体的には、前記結合体は、グルカゴン誘導体に免疫グロブリンFc領域がリンカーを通じて共有結合で連結されたものであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0170】
一つの具体例として、前記免疫グロブリンFc領域とXはグリコシル化されていなくてもよいが、これに制限されない。
【0171】
本発明の一つの具体例において、前記持続型結合体は、下記化学式1で示される、結合体である:
【0172】
[化学式1]
X-L-F
【0173】
ここで、
Xは、前記ペプチドであり;
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
Fは、免疫グロブリンFc領域であり、
-は、XとLとの間、LとFとの間の共有結合連結を示す。
【0174】
前記化学式1の持続型結合体のXは、上述のグルカゴン誘導体であってもよいが、これに制限されない。
【0175】
一つの具体例として、前記化学式1の持続型結合体のXは、前記一般式2のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。
【0176】
具体的には、前記Xは、配列番号13、15、19、33、及び36~45からなる群から選択されるいずれか一つの配列番号のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよく、又は配列番号33及び36~44からなる群から選択されたいずれか一つの配列番号のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよいが、これに制限されない。
【0177】
また、一例として、前記Xは一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよく、又は、前記Xは配列番号2~45のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチド、又は配列番号2~11及び13~45のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチドであってもよく、又は、前記Xは配列番号20、22、23、27、33、35、37、38、40、41、42、及び44からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであってもよいが、これに制限されない。
【0178】
前記結合体においてFはX、即ち、肝臓標的薬物、具体的には、グルカゴン受容体に対して活性を有するペプチドであり、本発明の前記結合体を構成するモイエティの一構成に該当する。前記肝臓標的薬物は、前述したことが全部適用される。
【0179】
前記Fは、Xと共有化学結合又は非共有化学結合で互いに結合されるものであってもよく、共有化学結合、非共有化学結合又はそれらの組み合わせによりLを通じてFとXとが互いに結合されるものであってもよい。
【0180】
本発明において用語「化学式1の持続型結合体」は、グルカゴン誘導体及び免疫グロブリンFc領域が互いにリンカーで連結された形態であり、前記結合体は、免疫グロブリンFc領域が結合されていないグルカゴン誘導体に比べて増加した効力の持続性を示すことができる。
【0181】
前記持続型結合体においてFはX、即ち、グルカゴン誘導体の半減期を増加させる物質であり、本発明の前記結合体を構成するモイエティの一構成に該当する。
【0182】
化学式1の持続型結合体においてグルカゴン誘導体であるペプチドであるXと免疫グロブリンFc領域の連結は、物理又は化学結合であるか、非共有又は共有結合であってもよく、具体的には、共有結合であってもよいが、これに制限されない。
【0183】
また、化学式1の持続型結合体のグルカゴン誘導体であるXと免疫グロブリンFc領域の連結方法は、特に制限されないが、リンカーを通じてグルカゴン誘導体と免疫グロブリンFc領域が互いに連結されたものであってもよい。
【0184】
前記化学式1において共有結合でLを通じてXとFが互いに結合される。
【0185】
より具体的には、XとL、及びLとFは共有結合で互いに連結されてもよく、その時、前記結合体は、化学式1の順序で、X、L、及びFが共有結合を通じてそれぞれ連結された結合体であってもよい。
【0186】
また、前記Xは、Fはリンカー(L)を通じて連結されたものであってもよい。
【0187】
一方、前記Lは、非ペプチド性リンカー、例えば、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであってもよい。
【0188】
本発明において「非ペプチド性リンカー」は、繰り返し単位が二つ以上結合された生体適合性ポリマーを含む。前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなく任意の共有結合を通じて互いに連結される。前記非ペプチド性リンカーは、本発明の結合体のモイエティをなす一構成であってもよく、前記化学式1においてLに該当する。本発明で使用できる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のあるポリマーであれば、制限なく使用できる。本発明において、前記非ペプチド性リンカーは、非ペプチド性ポリマーと混用されてもよい。
【0189】
特にこれに制限されないが、前記非ペプチド性リンカーはエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカー、例えば、ポリエチレングリコールであってもよく、また、当該分野に既に知られているこれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に製造できる誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0190】
前記非ペプチド性リンカーの繰り返し単位はエチレングリコール繰り返し単位であってもよく、具体的には、前記非ペプチド性リンカーはエチレングリコール繰り返し単位を含みながら、結合体として構成される以前には結合体の製造に用いられる官能基を末端に含むものであってもよい。本発明による持続型結合体は、前記官能基を通じてXとFが連結された形態であってもよいが、これに制限されない。本発明において、前記非ペプチド性リンカーは二つ又は三つ以上の官能基を含むことができ、各官能基は同一又は相異してもよいが、これに制限されない。
【0191】
具体的には、前記リンカーは下記化学式2で表されるポリエチレングリコール(PEG)であってもよいが、これに限定されるものではない:
【0192】
【0193】
ここで、n= 10~2400、n= 10~480、又はn = 50~250であるが、これに制限されない。
【0194】
前記持続型結合体においてPEGモイエティは、-(CH2CH2O)n-構造だけでなく、連結要素とこの-(CH2CH2O)n-との間に介在する酸素原子も含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0195】
一つの具体例として、前記エチレングリコール繰り返し単位は、その例として、[OCH2CH2]nで表されることができ、n値は自然数で前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が0超~約100kDaになるように定められるが、これに制限されない。もう一つの例として、前記n値は自然数で前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が約1~約100kDa、約1~約80kDa、約1~約50kDa、約1~約30kDa、約1~約25kDa、約1~約20kDa、約1~約15kDa、約1~約13kDa、約1~約11kDa、約1~約10kDa、約1~約8kDa、約1~約5kDa、約1~約3.4kDa、約3~約30kDa、約3~約27kDa、約3~約25kDa、約3~約22kDa、約3~約20kDa、約3~約18kDa、約3~約16kDa、約3~約15kDa、約3~約13kDa、約3~約11kDa、約3~約10kDa、約3~約8kDa、約3~約5kDa、約3~約3.4kDa、約8~約30kDa、約8~約27kDa、約8~約25kDa、約8~約22kDa、約8~約20kDa、約8~約18kDa、約8~約16kDa、約8~約15kDa、約8~約13kDa、約8~約11kDa、約8~約10kDa、約9~約15kDa、約9~約14kDa、約9~約13kDa、約9~約12kDa、約9~約11kDa、約9.5~約10.5kDa、又は約10kDaであってもよいが、これに制限されない。
【0196】
また、一つの具体的な実施形態において前記化学式1の持続型結合体は、一般式2のアミノ酸配列を含むペプチド(X)と免疫グロブリン領域(F)がエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーを通じて共有結合で連結された構造であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0197】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコールホモポリマー、PEGコポリマー、又はモノメチル置換されたPEGポリマー(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0198】
前記非ペプチド性ポリマーの分子量は、1~100kDaの範囲、具体的には1~20kDaの範囲、又は1~10kDaの範囲であるが、これに制限されない。また、前記Fに該当するポリペプチドと結合される本発明の非ペプチド性リンカーは一種類のポリマーだけでなく、相違した種類のポリマーの組み合わせが使用されてもよい。
【0199】
一つの具体例として、前記リンカーの両末端は、免疫グロブリンFc領域のチオール基、アミノ基、ヒドロキシル基及びペプチド(X)のチオール基、アミノ基、アジド基、ヒドロキシル基に結合してもよいが、これに制限されない。
【0200】
具体的には、前記リンカーは、両末端にそれぞれ免疫グロブリンFc領域及びペプチド(X)と結合できる反応基、具体的には、免疫グロブリンFc領域のシステインのチオール基;N末端、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンに位置したアミノ基;及び/又はC末端に位置したヒドロキシル基と結合され、ペプチド(X)のシステインのチオール基;リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンのアミノ基;アジドリシンのアジド基;及び/又はヒドロキシル基と結合できる反応基を含んでもよいが、これに制限されない。
【0201】
より具体的には、前記リンカーの反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0202】
前記において、アルデヒド基(アルデヒドグループ)としてプロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を例として挙げられるが、これに制限されない。
【0203】
前記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジル吉草酸、スクシンイミジルメチルブタン酸、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタン酸、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチル又はスクシンイミジルカーボネートが用いられるが、これに制限されない。
【0204】
前記リンカーは、前記のような反応基を通じて免疫グロブリンFc領域であるF及びペプチド(グルカゴン誘導体)であるXに連結され、リンカー連結部に転換される。
【0205】
また、アルデヒド結合による還元性アミノ化(又は還元性アルキル化)で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものより遥かに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH 9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成できるが、これに制限されない。
【0206】
また、本発明のリンカーの両末端の反応基は互いに同一又は互いに異なってもよい。前記リンカーは、末端にアルデヒド基の反応基を有するものであってもよく、また、前記リンカーは、末端にそれぞれアルデヒド基及びマレイミド反応基を有するか、又は末端にそれぞれアルデヒド基及びスクシンイミド反応基を有してもよいが、リンカーの各末端にF、具体的には、免疫グロブリンFc領域とXが結合されれば、これに制限されない。
【0207】
例えば、一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有することができる。また、一例として、一方の末端にはスクシンイミジル基を、他方の末端にはプロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有することができる。
【0208】
プロピオン側の末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールをリンカーとして用いる場合には、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前記多様な反応基で活性化するか、又は商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて本発明の結合体を製造することができる。
【0209】
一つの具体的な実施形態において前記リンカーの反応基がペプチド(X)のシステイン残基、より具体的には、システインの-SH基に連結されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0210】
もし、マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基はペプチドの-SH基とチオエーテル(thioether)結合で連結し、アルデヒド基は免疫グロブリンFcの-NH2基と還元的アルキル化反応を通じて連結できるが、これに限定されず、これは一例に該当する。
【0211】
このような還元的アルキル化を通じてPEGの一方の末端に位置する酸素原子に免疫グロブリンFc領域のN末端アミノ基が-CH
2CH
2CH
2-の構造を有するリンカー官能基を通じて互いに連結され、-PEG-O-CH
2CH
2CH
2NH-免疫グロブリンFcと同様な構造を形成することができ、チオエーテル結合を通じてPEGの一方の末端がペプチドのシステインに位置する硫黄原子に連結された構造を形成することができる。上述のチオエーテル結合は、
の構造を含むことができる。
【0212】
しかし、上述の例に特に制限されるものではなく、これは一例に該当する。
【0213】
また、前記結合体において、リンカーの反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置する-NH2と連結されたものであってもよいが、これは一例に該当する。
【0214】
また、前記結合体において、本発明によるペプチドは反応基を有するリンカーとC末端を通じて連結されてもよいが、これは一例に該当する。
【0215】
本発明において「C末端」は、ペプチドのカルボキシ末端を意味することであり、本発明の目的上、リンカーと結合できる位置をいう。その例として、これに制限されないが、C末端の最末端のアミノ酸残基だけでなくC末端周囲のアミノ酸残基をいずれも含めんでよく、具体的には、最末端から最初~20番目のアミノ酸残基を含んでもよいが、これに制限されない。
【0216】
一つの具体例として、前記化学式1の結合体は、下記化学式3の構造を有することができる。
【0217】
【0218】
前記化学式3において、Xは前記で説明したペプチド(グルカゴン誘導体)であり;
Fはヒト免疫グロブリンFc領域であり;
nは自然数であってもよい。この時、nに関する説明は前記で説明した通りである。
【0219】
一つの具体例として、前記化学式3の持続型結合体は、ペプチドXとヒト免疫グロブリンFc領域Fがエチレングリコール繰り返し部を介在し、共有結合で連結された構造であり、それぞれXは化学式3のスクシンイミド環に、Fは化学式3のオキシプロピレン基に連結される形態であってもよい。
【0220】
前記化学式3において、前記nの値は、前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が1~100kDa、又は1~20kDa又は10kDaになるように定められるものであってもよいが、これに制限されない。
【0221】
ある実施形態において化学式3のスクシンイミド環にXが連結される部位は、XのC末端システインの硫黄原子であってもよい。
【0222】
F内において前記オキシプロピレン基に連結される部位は、特に限定されない。本発明のある実施形態において前記オキシプロピレン基に連結されるFの部位は、N末端の窒素又はF内部残基の窒素原子(例えば、リシンのイプシロン窒素)であってもよい。本発明のある具体的な実施形態において、Fが前記オキシプロピレン基に連結される部位は、FのN末端プロリンであってもよいが、これに制限されない。
【0223】
また、前記結合体において、非ペプチド性ポリマーの反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置する-NH2と連結されたものであってもよいが、これは一例に該当する。
【0224】
具体的な例として、前記化学式1のFは免疫グロブリンFc領域である。その例として、前記免疫グロブリンFc領域はIgG由来であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0225】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除いた、重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の持続型結合体のモイエティをなす一構成であってもよい。前記免疫グロブリンFc領域は、「免疫グロブリンFc断片」と混用され得る。
【0226】
本明細書において、Fc領域と言えば、免疫グロブリンのパパイン消化から得る天然型配列だけでなくその誘導体、例えば、天然配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより変換されて天然のものとは異なる配列など変形体も含まれる。前記誘導体、置換体、変形体はFcRnに結合する能力を保有することを前提とする。本発明において、Fはヒト免疫グロブリン領域であってもよいが、これに制限されない。前記Fは、二つのポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を介してのみ連結されている構造であってもよいが、これに制限されるものではない。前記窒素原子を介する連結は、リシンのイプシロンアミノ原子やN末端のアミノ基に還元的アミノ化により連結されるものであってもよい。
【0227】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(即ち、還元的アミノ化が可能な官能基)と反応してアミンを生成し、次いで還元反応によりアミン結合を形成させる反応を意味し、当該技術分野で周知の有機合成反応である。
【0228】
一つの具体例として、前記Fは、そのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0229】
このような免疫グロブリンFc領域は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0230】
本発明における免疫グロブリンFc領域は、N末端に特定のヒンジ配列を含んでもよい。
【0231】
本発明の用語、「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)により免疫グロブリンFc領域の二量体を形成する部位を意味する。
【0232】
本発明における前記ヒンジ配列は、下記のアミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して一つのシステイン残基のみ有するように変異したものであってもよいが、それに制限されるものではない:
【0233】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号50)。
【0234】
前記ヒンジ配列は、配列番号50のヒンジ配列中の8番目又は11番目システイン残基が欠失して一つのシステイン残基のみ含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、一つのシステイン残基のみ含む、3~12個のアミノ酸からなるものであるが、これに制限されるものではない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は次のような配列を有することができる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号51)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号52)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号53)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号54)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号55)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号56)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号57)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号58)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号59)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号60)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号61)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号62)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号63)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号64)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号65)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号66)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号67)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号68)、Ser-Cys-Pro(配列番号69)。
【0235】
より具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号60(Pro-Ser-Cys-Pro)又は配列番号69(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0236】
本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列の存在により免疫グロブリンFc鎖の二つの分子が二量体を形成した形態であってもよく、また、本発明の化学式1の結合体はリンカーの一方の末端が二量体の免疫グロブリンFc領域の一つの鎖に連結された形態であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0237】
本発明の用語、「N末端」とは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味し、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個以上のアミノ酸まで含むものであってもよい。本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列をN末端に含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0238】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然のものと実質的に同等又は向上した効果を有するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域のみを除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。さらに、CH2及び/又はCH3に相当する非常に長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。
【0239】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインの少なくとも1個又は2個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ(例、CH2ドメイン及びCH3ドメインとヒンジ領域又はその一部との組み合わせ、そして上述の組み合わせを有するポリペプチド二つの二量体形態)、6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0240】
本発明において、前記免疫グロブリンFc領域は、同一の起源のドメインからなる単鎖免疫グロブリンで構成された、二量体又は多量体形態であってもよいが、これに制限されない。
【0241】
また、一つの具体例として、前記免疫グロブリンFc領域は、二量体形態(dimeric form)であってもよく、二量体形態の一つのFc領域にXの一分子が共有結合的に連結され、この時、前記免疫グロブリンFcとXは非ペプチド性ポリマーにより互いに連結される。一方、二量体形態の一つのFc領域にXの二分子が対称的に結合することも可能である。この時、前記免疫グロブリンFcとXは、非ペプチド性リンカーにより互いに連結される。しかし、前記例に制限されるものではない。
【0242】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の少なくとも一つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。
【0243】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番目のアミノ酸残基が変形のために適当な部位として用いられてもよい。
【0244】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去されるか、または天然型FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去されるか、又は天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されるなど、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を作製する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0245】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野で公知である(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York、1979)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0246】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させたものであってもよい。
【0247】
また、このようなFc領域は、ヒト、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット又はモルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得られてもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法は、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して得られる方法であってもよい。パパインを処理する場合にはFab及びFcで切断され、ペブシンを処理する場合にはpF’c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。より具体的な実施形態では、ヒト由来のFc領域を微生物から得られた組換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0248】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を用いた遺伝工学的方法などの通常の方法が用いられてもよい。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が減少又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、薬物のキャリアとしての本来の目的に、より符合する形態は、糖鎖が除去されるか、または非グリコシル化された免疫グロブリンFc領域であると言える。
【0249】
本発明において「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、非グリコシル化(Aglycosylation)とは、原核動物、より具体的な実施形態においては、大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFc領域を意味する。
【0250】
一方、免疫グロブリンFc領域はヒト又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、より具体的な実施形態においてはヒト起源である。
【0251】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来又はそれらの組み合わせ(combination)又はそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。より具体的な実施形態においては、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来のものであり、さらに具体的な実施形態においては、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来のものである。一層具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であるが、これらに限定されるものではない。
【0252】
また、一つの具体的な実施形態において、免疫グロブリンFc領域はヒトIgG4 Fcの領域として、各モノマー(monomer)の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain形態)により2個のモノマーが連結されたホモ二量体(homodimer)の形態であってもよく、この時、ホモ二量体の各モノマーは、独立に35番の及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合、即ち、二つの内部のジスルフィド結合(intra-chain形態)を有するものである/有するものであってもよい。各モノマーのアミノ酸数は、221個のアミノ酸からなり、ホモ二量体を形成するアミノ酸は、全体で442個のアミノ酸からなるが、これらに制限されるものではない。具体的には、免疫グロブリンFc領域は、配列番号70のアミノ酸配列(221個のアミノ酸からなる)を有するモノマー2個が各モノマーの3番目のアミノ酸であるシステイン間にジスルフィド結合を通じてホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体のモノマーは、それぞれ独立して35番目の及び95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番目及び199番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成するものであるが、これに制限されるものではない。
【0253】
前記化学式1のFは、配列番号70のアミノ酸配列であるモノマーを含むものであってもよく、前記Fは配列番号70のアミノ酸配列のモノマーのホモ二量体であってもよいが、これに制限されない。
【0254】
一例として、免疫グロブリンFc領域は、配列番号71のアミノ酸配列(442個のアミノ酸で構成される)を含むホモ二量体であってもよいが、これに制限されない。
【0255】
一方、本発明において「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する時、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが相違する起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。即ち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなるグループから選択された2個以上の断片から二量体又は多量体の製造が可能である。
【0256】
また、上述した結合体は、効力の持続性が天然型グルカゴンに比べて、又はFが修飾されていないXに比べて増加したものであってもよく、このような結合体は上述した形態だけでなく、生分解性ナノパーティクルに封入された形態などを全て含む。
【0257】
前記肝臓標的薬物を含む組成物、例えば、前記ペプチド(例えば、前記ペプチド自体又はこれに免疫グロブリンFc領域が結合された持続型結合体の形態)を含む組成物は、肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療用であってもよい。
【0258】
本発明において用語「予防」とは、前記肝臓標的薬物を含む組成物の投与により肝臓における薬物作用が必要な疾患の発病を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味し、「治療」とは、前記肝臓標的薬物を含む組成物の投与により肝臓における薬物作用が必要な疾患の症状が好転又は有益になるあらゆる行為を意味する。
【0259】
本発明において用語「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は特にこれに制限されないが、前記組成物が生体内標的に到達できる任意の一般的な経路を通じて投与され、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、又は直腸内投与などであってもよい。
【0260】
本出願において用語、「肝臓における薬物作用が必要な疾患」は、本発明による肝臓標的薬物が治療的活性を示す疾患であり、肝組織に投与された薬物の分布度が高くなることにより、予防又は治療効果を示す疾患を言う。例えば、肝臓疾患、低血糖又は先天性高インスリン症であってもよいが、特にこれに限定されるものではなく、本発明の肝臓標的薬物が標的化して治療できる疾患は制限なく含まれる。
【0261】
国際公開特許WO 2020/263063で開示されたように、グルカゴン受容体に活性を有するペプチド又はその持続型結合体は、代謝性肝疾患、単純脂肪症、非アルコール性脂肪肝、肝臓炎症、非アルコール性脂肪肝炎、胆汁うっ滞性肝疾患、肝線維症、肝硬変、肝不全及び肝臓癌など、肝臓疾患に効果が優れる。これに対し、本発明の肝組織への標的化が優れた肝臓標的薬物である、グルカゴン受容体に活性を有するペプチド又はその持続型結合体は、前記肝疾患に予防又は治療効果も存在し、肝臓疾患治療剤としても効果的に提供されることができる。
【0262】
本発明において、「肝疾患」とは、肝臓で発病する疾患を意味し、非アルコール性脂肪肝臓疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)、肝線維症(liver fibrosis)、肝臓炎症(liver inflamation)、肝硬変(liver cirrhosis)、肝不全(liver decompensation)、肝臓癌(hepatocellular carcinoma)、及び胆汁うっ滞性肝疾患(cholestasis liver disease)からなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。その例として、前記非アルコール性脂肪肝疾患は、肝細胞に脂肪の過度な蓄積のみがある単純脂肪症(simple steatosis)、非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver)、肝細胞壊死と炎症と線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis,NASH)などを含む一連の疾患群であり、前記胆汁うっ滞性肝疾患は、原発性胆汁性硬変症(Primary biliary cirrhosis)、原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis)又はそれらの組み合わせであってもよいが、肝臓の組織及び機能に異常が生じる限り、肝疾患が前記疾病に制限されるものではない。
【0263】
本発明において用語「低血糖」は、血中糖量が正常な人より低い状態をいう。通常、血糖が50mg/dl以下である時を言うが、特にこれに限定されるものではない。低血糖症が生じる一般的な原因は、経口用血糖降下剤やインスリンを用いる人が普段より食べ物摂取量が少ないか、活動量や運動量が過剰な場合である。それ以外にも飲酒や一部の血糖値を下げる薬物の使用、重症の身体的疾患、副腎皮質ホルモンやグルカゴンなどのホルモン欠乏、インスリン生成すい臓腫瘍、インスリンに対する自己免疫疾患がある場合、胃切除術患者、遺伝性炭水化物代謝酵素異常疾患などによっても低血糖が発生し得る。
【0264】
本発明において前記低血糖は、急性低血糖及び慢性低血糖の両方を含む。
【0265】
低血糖の症状は、元気がなく身体の震えがあり、青白、冷や汗、めまい、興奮、不安感、動悸、空腹感、頭痛、疲労感などを含む。低血糖が長く続くと痙攣や発作があり、ショック状態がもたらされて意識を失うこともある。
【0266】
より具体的には、前記低血糖は、遺伝的欠陥による持続性高インスリン症により引き起こされ得る。遺伝的欠陥による高インスリン症の原因としては、11p15.1染色体にあるSUR又はKir6.2遺伝子の突然変異、7p15-p13染色体にあるGK(glucokinase)遺伝子の突然変異によりGK活性度が増加、GDH(Glutamate dehydrogenase)遺伝子の突然変異によりGDHが活性化され、これによりベータ島細胞内のATPの増加などが知られている。
【0267】
一方、先天性高インスリン症(congenital hyperinsulnism)は、新生児と小児で発生する深刻で持続的な低血糖を引き起こす原因疾患の一つである。低体重出生児あるいは糖尿妊婦の出生児で一時的なインスリン分泌の増加、遺伝子の突然変異によるすい臓細胞の異常機能などにより引き起こされ得る。
【0268】
一方、肝臓は、貯蔵しているグリコーゲン(glycogen)の分解(glycogenolysis)及びブドウ糖新生合成(gluconeogenesis)を通じてグルコースを生産し得ることが知られている。したがって、低血糖発生時、肝臓でのグリコーゲン分解及びブドウ糖新生合成を誘発できる薬学的組成物、例えば、グルカゴン及びこれを含む結合体などを肝臓に標的することができれば、より効果的な低血糖の改善及び血糖正常化を期待できるものである。
【0269】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含み得る。このような薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤は、非自然なものであってもよい。
【0270】
本発明において用語「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示すことができる程度の十分な量と副作用を引き起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合又は同時用いられる薬物など、医学分野によく知られている要素に応じて当業者により容易に決定され得る。
【0271】
本発明のペプチドを含む薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。前記担体は、特にこれに制限されないが、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いることができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを用いることができる。
【0272】
本発明の組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容可能な担体と混合して多様に製造され得る。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプル又は多数回投薬形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0273】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート又は鉱油などが用いられる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含み得る。
【0274】
また、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液、非水性溶剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有することができる。
【0275】
また、前記組成物は、薬学的分野において通常の方法により患者の身体内投与に適した単位投与形の製剤、具体的には、タンパク質医薬品の投与に有用な製剤形態に剤形化させて当業界において通常に用いる投与方法を用いて経口、又は皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内又は直腸経路を含む非経口投与経路により投与され得るが、これらに限定されるものではない。
【0276】
また、前記結合体は、生理食塩水又は有機溶媒のように薬剤として許容された種々の担体(carrier)と混合して用いられ、安定性や吸水性を増加させるために、グルコース、スクロース又はデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸(ascorbic acid)又はグルタチオンのような抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤、低分子タンパク質又は他の安定化剤(stabilizers)などが薬剤として用いられる。
【0277】
本発明の薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重及び疾患の重症度などの種々の関連因子と共に、活性成分である薬物の種類に応じて決定される。
【0278】
本発明の組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与され、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与され得る。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含量を異にすることができる。具体的には、本発明の結合体の好ましい全体用量は、一日に患者体重1kg当り約0.0001mg~500mgであってもよい。しかし、前記結合体の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食事及び排泄率など多様な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるため、このような点を考慮すると、当分野の通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定し得るものである。本発明による薬学的組成物は、本発明の効果を奏する限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【0279】
本発明の薬学的組成物は生体内持続性及び力価に優れ、本発明の薬学的製剤の投与回数及び頻度を顕著に減少させることができる。
【0280】
本発明を具現するもう一つの態様は、肝組織に標的化された生理活性物質、具体的には、グルカゴン受容体と結合力を有する物質を含み、肝組織に標的化された生理活性物質を提供する。
【0281】
前記肝組織に標的化された生理活性物質、グルカゴン受容体と結合力を有する物質などについては前述したことが全部適用される。
【0282】
本発明を具現するもう一つ態様は、前記薬学的組成物又は肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0283】
前記薬学的組成物、肝組織に標的化された生理活性物質、肝臓における薬物作用が必要な疾患、予防及び治療については前述したことが全部適用される。
【0284】
本発明において前記個体は、肝臓における薬物作用が必要な疾患が疑われる個体であり、前記肝臓における薬物作用が必要な疾患が疑われる個体は、当該疾患が発病しているか、又は発病し得るヒトを含むラット、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明の肝臓標的薬物を含む前記組成物で治療可能な個体は、制限なく含まれる。
【0285】
本発明の方法は、前記肝臓標的薬物を含む薬学的組成物を薬学的有効量で投与することを含むことができる。適した総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で処置医により決定され、1回又は数回に分けて投与できる。しかし、本発明の目的上、特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって他の製剤が用いられるかどうかをはじめとする具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に用いられたり同時に用いられる薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野によく知られている類似因子により異なって適用することが好ましい。
【0286】
本発明を具現するもう一つの態様は、前記肝臓における薬物作用が必要な疾患の予防又は治療用薬剤の製造に使用するための、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質の用途を提供することである。
【0287】
前記肝臓における薬物作用が必要な疾患、肝臓標的薬物、及び肝組織に標的化された生理活性物質については前述したことが全部適用される。
【0288】
本発明を具現するもう一つの態様は、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与して前記肝臓標的薬物の肝臓標的化を誘導する方法を提供することである。
【0289】
前記肝臓標的薬物、肝組織に標的化された生理活性物質、及び個体については前述したことが全部適用される。
【0290】
本発明を具現するもう一つの態様は、前記肝臓標的薬物、具体的には、肝組織に標的化された生理活性物質をそれを必要とする個体に投与して肝組織内で前記生理活性物質の分布増大を誘導する方法を提供することである。
【0291】
前記肝臓標的薬物、肝組織に標的化された生理活性物質、及び個体については前述したことが全部適用される。
【0292】
前記肝臓標的化を誘導する方法は、当該物質が肝臓に標的化されるように適切な投与経路を通じて投与され、例えば、皮下(s.c.)に投与されてもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0293】
以下、下記実施例により本発明をより詳しく説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0294】
実施例1:グルカゴン及びその誘導体ペプチドの製造
グルカゴン受容体に活性を示すグルカゴン及びその誘導体のペプチドを製造し、下記表1にその配列を示した。具体的には、配列番号:1の天然型グルカゴンのアミノ酸配列を負電荷及び正電荷を帯びたアミノ酸残基で置換し、下記表1のようなグルカゴン誘導体ペプチドを合成した。これに記載された相対的in vitro活性は、下記実験例1に記述された方法で測定した。
【0295】
【0296】
前記表1に記載された配列においてXと表記されたアミノ酸は、非天然型アミノ酸であるアミノイソブチル酸(Aib)を、アミノ酸記号の下線は、下線を引いた当該アミノ酸対の側鎖の間でラクタム環の形成を、そして「-」は、当該位置にはアミノ酸残基がないことを示す。また、環状性有無に関する列において「-」は当該配列には環が形成されていないことを示す。
【0297】
実施例2:グルカゴン誘導体ペプチドの持続型結合体の製造
代表的なグルカゴン誘導体ペプチドとして前記実施例1で製造した表1の誘導体ペプチド中、配列番号37のグルカゴン誘導体を選択し、結合体を次のような方法で製造した。
【0298】
両末端の水素がそれぞれ3-(3-マレイミドプロピオンアミド)プロピル基及び3-オキソプロピル基(プロピオンアルデヒド基)で置換された分子量10kDaの線状改質ポリエチレングリコールであるマレイミド-PEG-アルデヒド(日本NOF社)をシステインを有する配列番号37のグルカゴン誘導体ペプチド誘導体に反応させ、このグルカゴン誘導体ペプチドのシステイン残基をマレイミド-PEG-アルデヒドのマレイミド側末端にペグ化させた。
【0299】
具体的には、配列番号37のグルカゴン誘導体ペプチドとマレイミド-PEG-アルデヒドのモル比を1:1~5、タンパク質の濃度を3~10mg/mlにして低温で1~3時間反応させた。この時、反応は、50mM Tris緩衝液(pH 7.5)に20~60%のイソプロパノールが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、前記反応液をSP sepharose HP(GE healthcare、米国)に適用し、システインにモノ-ペグ化されたグルカゴン誘導体を精製した。
【0300】
免疫グロブリンFc切片は、N末端にPro-Ser-Cys-Pro配列(配列番号60)のヒンジ領域を有する免疫グロブリンFc切片(49.8kDa、配列番号70のモノマーである鎖の二つがジスルフィド結合で連結されたホモ二量体)を用いて国際公開特許WO2007/021129に記載された方法で製造した。
【0301】
次に、前記精製されたモノペグ化されたグルカゴン誘導体ペプチドと免疫グロブリンFc切片をモル比が1:2~10、タンパク質の濃度を10~50mg/mLにして4~8℃で12~18時間反応させた。反応液は、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH 6.0)に還元剤である10~50mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムと10~20%のイソプロパノールが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、前記反応液をButyl sepharose FF精製カラム(GE healthcare、米国)とSource ISO精製カラム(GE healthcare、米国)に適用し、前記モノペグ化されたグルカゴン誘導体ペプチドのアルデヒド側のポリエチレングリコール末端が免疫グロブリンFcホモ二量体の二鎖中の一鎖のN末端プロリン窒素に連結されたグルカゴン誘導体ペプチドの持続型結合体を精製した。
【0302】
製造後、逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーで分析した純度は、95%以上であった。
【0303】
ここで、グルカゴン誘導体ペプチド及び免疫グロブリンFc切片がPEGを通じて連結された結合体を、「グルカゴン誘導体ペプチドの持続型結合体」、「グルカゴン誘導体と免疫グロブリンFcを含む結合体」、「グルカゴン誘導体の持続型結合体」、又は「持続型グルカゴン誘導体」と命名し、これらは本願において混用され得る。
【0304】
実験例1:グルカゴン誘導体の持続型結合体のin vitro活性の測定
前記実施例1で製造されたグルカゴン誘導体の活性を測定するために、グルカゴン(GCG)受容体が各形質転換された細胞株を用いてin vitroで細胞活性を測定する方法を用いた。
【0305】
前記各細胞株は、CHO(chinese hamster ovary)にヒトGCG受容体遺伝子をそれぞれ発現するように形質転換されたものであり、GCGの活性を測定するのに適している。従って、GCG受容体に対する活性をそれぞれの形質転換細胞株を用いて測定した。
【0306】
具体的には、ヒトグルカゴン受容体遺伝子のcDNA(OriGene Technologies,Inc. USA)においてORFに該当する部分を鋳型とし、EcoRI切断部位とXhoI切断部位をそれぞれ含む下記配列番号:48及び49の正方向及び逆方向プライマーを用いたPCRを行った。
【0307】
この時、PCR反応は、95℃で60秒の変性、55℃で60秒のアニーリング及び68℃で30秒の伸張過程を30回繰り返した。これから増幅されたPCR産物を1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後450bpサイズのバンドを溶離して得た。
【0308】
正方向プライマー(配列番号:48):
5’-CAGCGACACCGACCGTCCCCCCGTACTTAAGGCC-3’
逆方向プライマー(配列番号:49):
5’-CTAACCGACTCTCGGGGAAGACTGAGCTCGCC-3’
【0309】
前記PCR産物を公知となった動物細胞発現ベクターであるx0GC/dhfrにクローニングして組換えベクターx0GC/GCGRを製造した。
【0310】
前記製造した組換えベクターx0GC/GCGRを10% FBS含有DMEM/F12培地で培養したCHO DG44細胞にリポフェクタミンを用いて形質転換し、1mg/mL G418及び10nMメトトレキサートを含む選別培地で選別培養した。これから制限希釈法でモノクローナル細胞株を選別し、この中からグルカゴンに対して優れた濃度依存的cAMP反応を示す細胞株を最終的に選別した。
【0311】
前記細胞株において実施例1で合成されたグルカゴン誘導体の活性を測定した。具体的には、前記形質転換細胞株を1週間に3回又は4回継代培養した後、384ウェルプレートに各ウェル当たり6×103個の継代培養された細胞株を分注し、24時間培養した。前記培養された細胞に0.5mM IBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine)、0.1% BSA(Bovine serum albumin)、5mM HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)を含むHBSS(Hank’s Balanced Salt Solution)緩衝液に天然型グルカゴンは200nMで、グルカゴン誘導体は1600nMでそれぞれ懸濁させた後、4倍ずつ10回連続的に希釈し、これをcAMPアッセイキット(LANCE cAMP 384 kit,PerkinElmer)に適用して前記細胞に添加した後、蛍光値を測定した。測定後、最も高い蛍光値を100%と選定した後、これからグルカゴン誘導体のEC50値を算出した後、天然型グルカゴンと互いに比較した。その結果を前記表1に示した。
【0312】
前記で製造したグルカゴン誘導体は、グルカゴン受容体に活性が高いため肝細胞への標的が増加し、また、グルカゴン受容体を活性化させ、肝臓で目的とする疾患の治療的物質として利用され得る。
【0313】
実験例2:グルカゴン誘導体のpIの測定
前記実施例1で合成されたグルカゴン誘導体の改善された物性を確認するために、ExPASyサーバーでpI/Mwツール(http://expasy.org/tools/pi_tool.html;Gasteiger et al.、2003)を用いてアミノ酸配列からpIを推算した。
【0314】
前記表1に示されるように、配列番号:1の天然型グルカゴンが6.8のpIを有する一方、本発明による一部のグルカゴン誘導体は、約4~6の範囲のpIを有した。このようなグルカゴン誘導体は、天然型グルカゴンに比べて低いか、高いpIを有するため、中性pHなどで天然型グルカゴンに比べて改善された溶解度及び高い安定性を示すことができる。
【0315】
このような本発明によるグルカゴン誘導体は、肝臓で目的とする疾患に対する治療剤として使用時、患者のコンプライアンスを高めることができる。
【0316】
実験例3:グルカゴン誘導体持続型結合体の組織分布の確認
3匹のSDラット(rat)でグルカゴン誘導体持続型結合体の代表例として選択した配列番号37持続型結合体の組織及び臓器内の分布を比較した。
【0317】
具体的には、グルカゴン誘導体持続型結合体を各1558μg/kgずつ皮下注射した後、4、48、及び168時間で臓器を摘出した後、ELISA法を通じて組織(血清、脳、すい臓、心臓、腎臓、胃、小腸、大腸、肺、肝、脾臓、脂肪組織及び筋肉)における各物質濃度を測定及び比較した。T/S ratio(%)は、組織濃度/血清濃度*100で計算し、例えば、下記表3の48時間データは、血清:15500.8±2686.9、肝臓:4625.4±1216.9であるが、T/S ratio(%)は4625.4/15500.8*100で約29.8%と算出した。濃度の測定は、臓器を摘出した後、ELISA法で物質濃度を測定した。
【0318】
その結果、グルカゴン誘導体持続型結合体は、投与後48時間で組織分布が最も強く検出され、特に肝臓で高い分布比率を示した。組織の分布は、肝臓、心臓、肺、大腸、脾臓、小腸、筋肉、胃、すい臓、脂肪組織、腎臓の順で高かった。投与後168時間にも依然として肝臓で最も高い割合で検出され、投与後7日目までも肝臓で高い割合で存在することが分かった。併せて、投与後168時間では肝臓で最も高い割合で存在し、48時間と比較し、心臓より肺で分布比率が高かった。前記実施例で確認した配列番号37持続型結合体の血清に比べた組織分布比率の結果を要約すると、下記表2の通りである。
【0319】
【0320】
前記のような結果は、本発明のグルカゴン誘導体の持続型結合体が他の組織に比べて肝臓で組織分布性に優れ、目的とする疾患の治療的物質として利用できることを示唆することである。従って、肝組織への標的化を誘導し、必要な量の薬物を効率よく伝達できるようにして薬物治療を最適化できる新たな用途でグルカゴン誘導体の持続型結合体を用いることができる。
【0321】
また、前記のような結果は、投与後7日目にも肝臓における分布が高いことを示唆することであり、1週に約1回投与できる製剤としての便宜性を裏付けることである。
【0322】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものでないことをで理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0323】
[国家支援研究開発に関する説明]
本研究は、科学技術情報通信部、産業通商資源部、保健福祉部の財源で国家新薬開発事業団の国家新薬開発事業支援により行われた(HN21C0601)。
【配列表】
【国際調査報告】