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特表2025-500527大面積ガラス基板のコーティング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】大面積ガラス基板のコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/00 20060101AFI20241226BHJP
   B05D 1/38 20060101ALI20241226BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20241226BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B05D7/00 E
B05D1/38
B05D3/12 E
C03C23/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538661
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2022025596
(87)【国際公開番号】W WO2023131389
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】22150159.6
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522475177
【氏名又は名称】ビューラー アルツェナウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク、マーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュタルダー、ベルンハルト
【テーマコード(参考)】
4D075
4G059
【Fターム(参考)】
4D075AD03
4D075AE06
4D075AE14
4D075BB03Y
4D075DA06
4D075DB13
4D075DC13
4D075DC24
4D075EA05
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC30
(57)【要約】
大面積ガラス基板をコーティングするための方法であって、a)ガラス基板の表面の少なくとも1つの第1の所定領域に水溶性層を塗布する工程であって、ガラス基板の表面の少なくとも1つの第2の所定領域が水溶性層を含まないままである工程と、b)ガラス基板の表面を少なくとも1つの非水溶性層でコーティングする工程と、c)水溶性層を除去する工程と、を含み、工程a)~c)は連続して複数回実施されることを特徴とする方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大面積のガラス基板(10)をコーティングする方法であって、
a)ガラス基板(10)の表面の少なくとも1つの第1の所定領域に水溶性層(20)を塗布する工程であって、前記ガラス基板(10)の表面の少なくとも1つの第2の所定領域は、前記水溶性層(20)を含まないままである工程と、
b)前記ガラス基板(10)の表面を少なくとも1つの非水溶性層(30)でコーティングする工程と、
c)前記水溶性層(20)を除去する工程と、
を含み、
工程a)~c)は連続して複数回実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガラス基板(10)は、1m~60m、好ましくは19m~60m、特に好ましくは19m~39mの面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング工程は、前記水溶性層(20)を塗布する工程の直後に行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶性層(20)の塗布は、印刷法によって、特にスクリーン印刷法、オフセット印刷法、輪転印刷法又はデジタル印刷法によって行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶性層(20)は、疎水性ガラス基板特性が生じるように、前記ガラス基板の表面エネルギーと比較してより高い表面張力を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性層(20)は、水溶性インク、好ましくは溶解した着色剤を有する水溶性インク、特に好ましくは水中に分散した顔料インクを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)の前に、前記ガラス基板(10)の表面の表面エネルギーを低減する工程を有し、前記ガラス基板(10)の表面の表面エネルギーを低減する前記工程は、好ましくはヘキサメチルジシロキサンのプラズマ重合を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ガラス基板(10)の前記表面のコーティングは、指向性コーティング法、好ましくはスパッタリング又はイオンビームコーティングを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶性層(20)の除去は、前記水溶性層(20)及び前記水溶性層(20)上に位置する前記非水溶性層(30)の除去を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶性層(20)の除去は、溶媒、好ましくは水含有液体を使用して行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非水溶性層(30)は、前記コーティング後に前記水溶性層(20)の少なくとも一部にも位置し、前記水溶性層(20)が前記溶媒を用いて除去されるときに前記溶媒と混合し、前記水溶性層(20)を除去する工程は、前記非水溶性層(30)を前記溶媒中で濾過する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶性層(20)の除去は、機械的方法、好ましくはブラッシングによってサポートされる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶性層(20)を塗布する前に、前記ガラス基板(10)の表面を洗浄する工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複数の構造、好ましくは光学フィルタを互いに隣接して配置するために、工程a)~c)の後続の実行における前記第1及び第2の所定領域が、工程a)~c)の先行する実行と少なくとも部分的に異なる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、大面積ガラス基板をコーティングするための反復法に関する。
【0002】
フォトレジストを使用するいわゆるリフトオフ法(フォトリソグラフィ)は、電子工学で知られている。これらの方法では、フォトレジストが基板に塗布され、マスクを使用して、マスクによって画定された位置で露光され、現像される。次いで、フォトレジストの露光されていない場所は、対応する溶媒を用いて除去される。さらなる工程では、基板又はフォトレジストが材料でコーティングされる(あるいは、材料を除去するためにエッチング法を使用することができる)。最後の工程として、フォトレジストは、対応する溶媒を用いて基板から除去され、したがって、フォトレジストに塗布された材料層も除去される。したがって、基板は、コーティング中にフォトレジストが存在しなかった位置で材料層と共に残る。
【0003】
既知の方法における複雑な作業工程(フォトレジストによるコーティング、露光、現像)のために、これらの方法は、大面積コーティングには適していない。
【0004】
代替的なマスキング技術は、自動車業界において適用されている。マスキング層は、ここではスクリーン印刷によって塗布される。さらなる工程において、スパッタリングプロセスの前に、マスキング層がオーブン内で乾燥され、続いて低放射率(low-e)層が設けられる。コーティングの後、マスキング層はある時間溶解され、続いて上にある層と共に洗い流される。
【0005】
本開示の目的は、既知の方法と比較して、特に大面積ガラス基板の効率的なコーティングを可能にする方法を提供することである。
【0006】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項は有利な実施形態に関する。
【0007】
本開示の一態様によれば、大面積ガラス基板をコーティングするための方法であって、a)ガラス基板の表面の少なくとも1つの第1の所定領域に水溶性層を塗布する工程であって、ガラス基板の表面の少なくとも1つの第2の所定領域は、水溶性層を含まないままである工程と、b)ガラス基板の表面を少なくとも1つの非水溶性層でコーティングする工程と、c)水溶性層を除去する工程と、を含み、工程a)~c)は連続して複数回実施されることを特徴とする方法が提供される。
【0008】
自動車分野における上述の方法は、構造化されたコーティングのみが実現されることを可能にする。換言すれば、基板の部分領域には、工程c)の後にスパッタ(又はイオンビーム)コーティングが施されるが、マスクされた部分領域はコーティングされないままである。本開示の一態様に従って方法が繰り返される場合(反復法)、複数の異なるスパッタ層(反復回数に応じて)を基板上に配置することができる(例えば、3回の反復後、赤色、緑色、及び青色フィルタ(RGB))。
【0009】
異なる実施形態は、好ましくは、以下の特徴を実装することができる。
【0010】
水溶性層は、好ましくはフォトレジストではない。
【0011】
水溶性層は水溶性であることが好ましい。あるいは、さらなる溶媒(例えばアルコール)を使用して、水溶性層を除去することができる。換言すれば、水溶性層は、水溶性に限定される必要はない。
【0012】
ガラス基板は、好ましくは1m~60m、好ましくは19m~60m、特に好ましくは19m~39mの面積を有する。
【0013】
ガラス基板用のいわゆる巻き尺(コーティング産業における標準寸法)のサイズは、好ましくは3.21m×6.00mである。あるいは、ガラス基板は、3.21m×12m又はさらに3.21m×18mのサイズであってもよい。下方寸法は、搬送ローラーの間隔によって制限することができる。ガラス基板の典型的な最小寸法は、1m×1mである。
【0014】
コーティング工程は、好ましくは水溶性層を塗布する工程の直後に行われる。
【0015】
換言すれば、好ましくは、例えば露光及び現像などのさらなる方法工程は、水溶性層の塗布後及びコーティング前に行われない。これはまた、フォトレジスト及び現像剤化学物質の使用及び廃棄を不要にする。しかしながら、水溶性層を塗布した後及びコーティングする前に、水溶性層を乾燥させるために特定の乾燥工程を行うことができる。換言すれば、好ましくは、少なくとも露光及び/又は現像工程は、水溶性層の塗布後及びコーティング前に実施されない。
【0016】
水溶性層の塗布は、好ましくは印刷法によって、特にスクリーン印刷法、オフセット印刷法、輪転印刷法又はデジタル印刷法によって行われる。
【0017】
水溶性層は、疎水性ガラス基板特性が生じるように、ガラス基板の表面エネルギーと比較してより高い表面張力を有することが好ましい。例えば、精製ソーダガラスの表面エネルギーは、約47mJ/mの範囲である。したがって、水溶性コーティングの表面張力は、好ましくは>60mJ/mの範囲内であり得る。本開示は、この好ましい例に限定されず、表面張力の他の比率も可能である。
【0018】
さらに、表面張力は、対応する添加剤を用いて広い範囲内で最適化することができる。
【0019】
水溶性層は、好ましくは水溶性インク、好ましくは着色剤が溶解した水溶性インク、特に好ましくは水に分散した顔料インクを含有する。
【0020】
好ましくは、本方法は、工程a)の前に、ガラス基板の表面の表面エネルギーを低減する工程を有し、ガラス基板の表面の表面エネルギーを低減する工程は、好ましくはヘキサメチルジシロキサンのプラズマ重合を含む。
【0021】
ガラス基板の表面のコーティングは、好ましくは指向性コーティング法、好ましくはスパッタリング又はイオンビームコーティングを含む。
【0022】
水溶性層の除去は、好ましくは、水溶性層、及び水溶性層上に位置する非水溶性層の除去を含む。
【0023】
水溶性層の除去は、好ましくは溶媒、好ましくは水含有液体を用いて行う。
【0024】
非水溶性層はまた、好ましくは、コーティング後に水溶性層の少なくとも一部の上に位置し、水溶性層が溶媒を使用して除去されるときに溶媒と混合する。
【0025】
水溶性層を除去する工程は、好ましくは、溶媒中の非水溶性層を濾過する工程を含む。
【0026】
水溶性層の除去は、好ましくは機械的方法、好ましくはブラッシングによってサポートされる。
【0027】
好ましくは、本方法は、水溶性層を塗布する前にガラス基板の表面を洗浄する工程を有する。
【0028】
工程a)~c)の後続の実行における第1及び第2の所定領域は、複数の構造、好ましくは光学フィルタを互いに隣接して配置するために、工程a)~c)の先行する実行と少なくとも部分的に異なることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
上述の態様は、例示的な実施形態及び図面を参照して以下でより詳細に説明される。以下のものが示されている。
図1a-d】本開示の一実施形態による方法の方法工程の概略図である。
図1e-h】本開示の一実施形態による方法のさらなる方法工程の概略図である。
図2】本開示の実施形態によるフローチャートである。
【0030】
図1a)~d)は、本開示の一実施形態による方法の工程を示す。図1a)に見られるように、印刷インク20は、第1の工程において、ガラス基板10の所定の位置に塗布される。図1b)によれば、材料30が塗布される。したがって、材料30は、ガラス基板10上(露出した位置)及び印刷インク20上に配置される。図1c)によるさらなる工程において、印刷インク20は、水又は別の溶媒によってガラス基板10から分離される。その際、印刷インク20上に位置する材料30も剥がされる。ガラス基板10上に位置する材料30は、ガラス基板10上に残り、したがって、図1d)に示すように、ガラス基板10上に所望の構造を形成する。
【0031】
図1a)~d)の上述の工程のさらなる詳細及び例を以下に説明する。
【0032】
本開示によれば、構造化光学層30は、例えば、マイクロリソグラフィ工程を、大きな基板10(例えば、3.21m×6m)上への水溶性インクの直接印刷に置き換えることによって、大面積(ガラス基板10)上に製造される。ガラス基板10を洗浄した後、水溶性層20が、光学層30が望ましくない領域上に(例えば、スクリーン印刷、デジタル印刷などによって)印刷される。マスキング工程の後、プリント基板10に光学層30が設けられる(例えば、スパッタリング、蒸着など)。コーティング後、基板10は再び洗浄され、それによって、光学コーティング30の下にあるマスキング層20が水に溶解し、その上に位置する光学層30が同様に除去される。ここで、光学層30は、以前に印刷されていない領域上の基板10上に位置する。基板10上の以前にマスクされた領域には、光学コーティング30がない。
【0033】
電子工学における方法とは対照的に、本方法は、著しく大きい基板サイズ(平方メートル)で実行され、異なる構造精度(約100μm)が要求される。さらに、本発明の方法では、マスキングは直接印刷され、フォトレジストによるコーティング、露光及び現像による複雑な方法で製造する必要がない。
【0034】
コーティング後のインク20の分離を改善するために、マスキングインク、基板材料及びコーティング方法に関して、以下の有利な実施形態を使用することができる。
【0035】
できるだけ急勾配のエッジを実現するために、印刷インク20は、ガラス基板10を濡らすのではなく、疎水性を有することが可能である。物理的に、これは、印刷インク20が高い表面張力を有することを意味する。この特性の結果として、印刷中に高い接触角が達成され、したがって、後続のコーティング中にコーティング材料30で覆われない急勾配の「マスキングエッジ」が達成される。加えて、マスキングインク20は、水溶性であることができ、コーティングプロセス中に、特に真空コーティング法(圧力<10-3mbar)、プラズマの作用、UV照射、及び50℃~80℃の温度によって、この特性を失ってはならない。特に適しているのは、水に分散された顔料インクであり、この顔料インクは、水の蒸発後にチョーク状の層を残し、このチョーク状の層は、コーティング後に水で分離することができる。十分な不透明度を達成するために、インク20による基材10の十分な程度の被覆が達成されるまで、印刷インク20の顔料又は増量剤含有量を増加させることが有利である。あるいは、同じ特性(不透明度、表面張力)を有する、溶解された着色剤を有する水溶性インクも考えられる。
【0036】
あるいは又は追加で、言及された高い接触角を達成するために、コーティングされる表面の表面エネルギーは、適切なコーティングによって(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)のプラズマ重合によって)低減され得る。
【0037】
マスキングの急勾配に形成された縁部がコーティングされない状況を回避するために、「強い指向性」コーティング方法、好ましくはスパッタリング又はイオンビームコーティングが適している。原子層堆積(atomic layer deposition、ALD)又はプラズマ化学気相成長(plasma-enhanced chemical vapor deposition、PECVD)などの等方性コーティング方法は、あまり適していない。
【0038】
印刷インク20(図1c)を、その上に位置するコーティング30と共に分離するプロセス工程に対しても、同様に高い要求がなされることが好ましい。一方では、印刷インク30は、その上に位置するコーティング20が基材10から完全に分離されるように、完全に溶解されるべきである。これが機械的支持(例えば、ブラッシング)を用いて行われる場合、インク20は、下にある基板10及び基板10上に残っているコーティング30を機械的に損傷することなく(コーティング構造の縁部におけるスクラッチ、ブレークアウト)、又はそれらを分離することさえなく、除去されるべきである。
【0039】
分離のプロセス工程は、例えば、以下を含むことができる。1、溶媒(好ましくは水)は、基板10上に噴霧又は注入される。プロセスを加速するために、溶媒は温かい(例えば30℃)ことができる。2、溶媒は、コーティング20の下の印刷インク30が可能な限り溶解されるまで、基材10上に残る。3、部分的に溶解した印刷インク30及びその上にあるコーティング20を有する溶媒は、さらなる溶媒ですすがれ、残留物は、柔らかいローラーブラシ(長く細い剛毛)で完全に除去される。
【0040】
基材10からの印刷インク20の除去が成功した後、印刷インクは溶媒に溶解される。加えて、コーティング30の溶媒部分には、基材10からの印刷インク20の溶解によって分離されたものがある。これらの非常に小さい部分(~約10μmから100μm)は、基板10に堆積又は乾燥(付着)しないように、基板10に到達すべきではない。溶媒中にあるこれらのコーティング粒子の高濃度を回避するために、それらは、好ましくは溶媒から連続的に濾過され得る。水溶性物質に加えて、代替溶媒(例えば、アルコールなど)もまた、リフトオフ工程(図1c))のために使用することができる。
【0041】
図1による例示的な実施形態に示されるように、第1の工程(図1a))において、ガラス基板10は、水溶性物質20で部分的に印刷される(マスキング)。第2の工程(図1b))において、部分的に印刷された基板10は、層30(例えば干渉層システム)でコーティングされる。この干渉層システム30は、様々な機能(low-e、AR、ダイクロイックフィルタ又はミラー等)を果たすことができる。コーティング後(図1c))、印刷された物質30は、洗浄プロセスにおいて溶解され、その上に堆積された干渉層システムと共に除去される(リフトオフ)。干渉層システムで部分的にコーティングされた基板が残る(図1d))。
【0042】
図1e)~h)は、本開示の一実施形態による方法のさらなる工程を示す。図1e)~h)の工程は、図1a)~d)の工程の繰り返しに実質的に対応するが、好ましくは、図1e)~h)による印刷インク20及び/又は塗布材料31が塗布された領域は、図1a)~d)の工程の領域又は材料30と少なくとも部分的に異なる。
【0043】
図1e)に見られるように、印刷インク20は、図1d)の工程の後続工程において、ガラス基板10の所定の位置(ここでは第1の干渉層システム30の位置)に塗布される。図1f)によれば、材料31、好ましくは図1a)~d)の工程からの材料30とは異なる材料31が塗布される。したがって、材料31は、ガラス基板10上(露出した位置、例えば材料30が配置されていない位置)及び印刷インク20上に配置される。図1g)によるさらなる工程において、印刷インク20は、水又は別の溶媒によってガラス基板10から分離される。その際、印刷インク20上に位置する材料31も剥がされる。ガラス基板10上に位置する材料31は、ガラス基板10上に残り、したがって、図1h)に示すように、ガラス基板10上に所望の構造を形成する。好ましくは、材料31を有する領域は、材料30を有する領域に隣接している。しかしながら、材料31は、材料30から離れた領域にあってもよく、すなわち、材料31は、材料30に隣接することができない(又は部分的にのみ隣接し得る)。
【0044】
図1a)~d)を参照して上に挙げた工程及び条件は、図1e)~h)の工程に等しく適用され、この時点では繰り返さない。
【0045】
図2は、本開示の実施形態による大面積ガラス基板をコーティングするための方法の工程S101~S103を有するフローチャートを示す。図2による方法は、以下の工程を有する。
【0046】
S101:ガラス基板の表面の少なくとも1つの第1の所定領域に水溶性層を塗布し、ガラス基板の表面の少なくとも1つの第2の所定領域は水溶性層を含まないままである。
【0047】
S102:ガラス基板の表面を少なくとも1つの非水溶性層でコーティングする。
【0048】
S103:水溶性層を除去する。
【0049】
工程a)~c)は、好ましくは連続して複数回実施される。
【0050】
一実施形態では、ガラス基板は、1m~60m、好ましくは19m~60m、特に好ましくは19m~39mの面積を有する。
【0051】
一実施形態では、コーティング工程は、水溶性層を塗布する工程の直後に行われる。
【0052】
一実施形態では、水溶性層の塗布は、印刷法によって、特にスクリーン印刷法、オフセット印刷法、輪転印刷法又はデジタル印刷法によって行われる。
【0053】
一実施形態では、水溶性層は、疎水性ガラス基板特性が生成されるように、ガラス基板の表面エネルギーと比較してより高い表面張力を有する。
【0054】
一実施形態では、水溶性層は、水溶性インク、好ましくは溶解された着色剤を有する水溶性インク、特に好ましくは水中に分散された顔料インクを含有する。
【0055】
一実施形態では、本方法は、工程a)の前に、ガラス基板の表面の表面エネルギーを低減する工程を有し、ガラス基板の表面の表面エネルギーを低減する工程は、好ましくはヘキサメチルジシロキサンのプラズマ重合を含む。
【0056】
一実施形態では、ガラス基板の表面をコーティングすることは、指向性コーティング法、好ましくはスパッタリング又はイオンビームコーティングを含む。
【0057】
一実施形態では、水溶性層の除去は、水溶性層及び水溶性層上に位置する非水溶性層の除去を含む。
【0058】
一実施形態では、水溶性層の除去は、溶媒、好ましくは水含有液体を使用して行われる。
【0059】
一実施形態では、非水溶性層はまた、コーティング後に水溶性層の少なくとも一部の上に位置し、水溶性層が溶媒を使用して除去されるときに溶媒と混合する。
【0060】
一実施形態では、水溶性層を除去する工程は、溶媒中の非水溶性層を濾過する工程を含む。
【0061】
一実施形態では、水溶性層の除去は、機械的方法、好ましくはブラッシングによってサポートされる。
【0062】
一実施形態では、本方法は、水溶性層を塗布する前にガラス基板の表面を洗浄する工程を有する。
【0063】
一実施形態では、複数の構造、好ましくは光学フィルタを互いに隣接して配置するために、工程a)~c)の後続の実行における第1及び第2の所定領域は、工程a)~c)の先行する実行と少なくとも部分的に異なる。
【0064】
本開示は、図面及び関連する説明によって詳細に例示され、説明されているが、この図及びこの詳細な説明は、例証的かつ例示的なものとして理解されるべきであり、本開示を限定するものではない。以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者が変更及び修正を行い得ることが理解される。特に、本開示はまた、様々な態様及び/又は実施形態に関して上記で言及した、又は示した特徴の任意の組み合わせを有する実施形態を含む。
【0065】
本開示はまた、図面の個々の特徴が他の特徴に関連して示されている場合、かつ/又は上述されていない場合であっても、それらの個々の特徴を含む。
【0066】
さらに、「を備える(comprise)」及びその派生語は、他の要素又はステップを除外するものではない。同様に、不定冠詞、「a」又は「an」並びにそれらの派生語は、複数を除外するものではない。特許請求の範囲に列挙されている複数の特徴の機能は、1つのユニットによって満たされ得る。また、「実質的に(substantially)」、「周囲に(around)」、「約(approximately)」などの用語は、特性又は値と連携した、特に、正確に特性を又は正確に値を定義する。特許請求の範囲における参照符号のいずれも、特許請求の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
図1a-d】
図1e-h】
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大面積のガラス基板(10)をコーティングする方法であって、
a)ガラス基板(10)の表面の少なくとも1つの第1の所定領域に水溶性層(20)を塗布する工程であって、前記ガラス基板(10)の表面の少なくとも1つの第2の所定領域は、前記水溶性層(20)を含まないままである工程と、
b)前記ガラス基板(10)の表面を少なくとも1つの非水溶性層(30)でコーティングする工程と、
c)前記水溶性層(20)を除去する工程と、
を含み、
工程a)~c)は連続して複数回実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガラス基板(10)は、1m~60m、好ましくは19m~60m、特に好ましくは19m~39mの面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング工程は、前記水溶性層(20)を塗布する工程の直後に行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶性層(20)の塗布は、印刷法によって、特にスクリーン印刷法、オフセット印刷法、輪転印刷法又はデジタル印刷法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶性層(20)は、疎水性ガラス基板特性が生じるように、前記ガラス基板の表面エネルギーと比較してより高い表面張力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性層(20)は、水溶性インク、好ましくは溶解した着色剤を有する水溶性インク、特に好ましくは水中に分散した顔料インクを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程a)の前に、前記ガラス基板(10)の表面の表面エネルギーを低減する工程を有し、前記ガラス基板(10)の表面の表面エネルギーを低減する前記工程は、好ましくはヘキサメチルジシロキサンのプラズマ重合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ガラス基板(10)の前記表面のコーティングは、指向性コーティング法、好ましくはスパッタリング又はイオンビームコーティングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶性層(20)の除去は、前記水溶性層(20)及び前記水溶性層(20)上に位置する前記非水溶性層(30)の除去を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶性層(20)の除去は、溶媒、好ましくは水含有液体を使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記非水溶性層(30)は、前記コーティング後に前記水溶性層(20)の少なくとも一部にも位置し、前記水溶性層(20)が前記溶媒を用いて除去されるときに前記溶媒と混合し、前記水溶性層(20)を除去する工程は、前記非水溶性層(30)を前記溶媒中で濾過する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶性層(20)の除去は、機械的方法、好ましくはブラッシングによってサポートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶性層(20)を塗布する前に、前記ガラス基板(10)の表面を洗浄する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
複数の構造、好ましくは光学フィルタを互いに隣接して配置するために、工程a)~c)の後続の実行における前記第1及び第2の所定領域が、工程a)~c)の先行する実行と少なくとも部分的に異なる、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】