(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】細胞改変のための系及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241226BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241226BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241226BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20241226BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20241226BHJP
A61K 35/15 20250101ALI20241226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241226BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20241226BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
A61K31/7088
A61K31/713
A61K48/00
A61K35/17
A61K35/28
A61K35/15
A61P43/00 105
C12N15/09 110
C12N15/12
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N5/078
C12N15/86 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538695
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2022141874
(87)【国際公開番号】W WO2023125396
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/141667
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524123034
【氏名又は名称】グラセル バイオテクノロジーズ(シャンハイ)カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRACELL BIOTECHNOLOGIES(SHANGHAI)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】12th Floor,Building 1,926 Yishan Road,Xuhui District,Shanghai 200233,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ホア
(72)【発明者】
【氏名】シー,ホワン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,リエンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
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4C084MA52
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4C084ZB211
4C084ZB212
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4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA58
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA58
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA06
4C087NA14
4C087ZB21
(57)【要約】
細胞を改変するための系が提供される。細胞を改変するための系を使用する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ガイド核酸と、
b)遺伝子改変部分と、
c)少なくとも1つの発現配列及び少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含み、環状であるキメラポリヌクレオチドと
を含む系。
【請求項2】
a)ガイド核酸と、
b)遺伝子改変部分と、
c)少なくとも1つの発現配列、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及び少なくとも1つの共有結合閉環型末端を含むキメラポリヌクレオチドと
を含む系。
【請求項3】
前記キメラポリヌクレオチドは、線状DNAである、請求項2に記載の系。
【請求項4】
前記キメラポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)又は一本鎖DNA(ssDNA)を含む、請求項1又は2に記載の系。
【請求項5】
前記キメラポリヌクレオチドは、ベクターである、請求項1に記載の系。
【請求項6】
前記キメラポリヌクレオチドは、小環である、請求項1に記載の系。
【請求項7】
前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端にある、請求項2に記載の系。
【請求項8】
前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、前記キメラポリヌクレオチドの3’末端にある、請求項2に記載の系。
【請求項9】
前記キメラポリヌクレオチドは、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端における前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端と、3’末端における前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端とを含む、請求項2に記載の系。
【請求項10】
前記キメラポリヌクレオチドは、環状一本鎖DNAである、請求項1に記載の系。
【請求項11】
前記キメラポリヌクレオチドは、線状一本鎖DNAである、請求項2又は3に記載の系。
【請求項12】
前記キメラポリヌクレオチドは、改変末端を有する線状一本鎖DNAである、請求項2又は3に記載の系。
【請求項13】
前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、テロメア末端を含む、請求項2若しくは3又は7~12のいずれか一項に記載の系。
【請求項14】
前記キメラポリヌクレオチドは、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端付近に前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む、請求項2若しくは3又は7~13のいずれか一項に記載の系。
【請求項15】
前記キメラポリヌクレオチドは、前記キメラポリヌクレオチドの3’末端付近に前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む、請求項2若しくは3又は7~13のいずれか一項に記載の系。
【請求項16】
前記キメラポリヌクレオチドは、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端付近の前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと、前記キメラポリヌクレオチドの3’末端付近の前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントとを含む、請求項2若しくは3又は7~13のいずれか一項に記載の系。
【請求項17】
前記ガイド核酸は、細胞中のゲノム配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて同一である核酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の系。
【請求項18】
前記ゲノム配列は、前記細胞のゲノム遺伝子座を含む、請求項17に記載の系。
【請求項19】
前記ゲノム遺伝子座は、T細胞受容体アルファ鎖定常(TRAC)、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)、分化抗原群38(CD38)、サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質(CISH)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、分化抗原群70(CD70)を含む、請求項18に記載の系。
【請求項20】
前記ゲノム遺伝子座は、TRAC又はB2Mを含む、請求項19に記載の系。
【請求項21】
前記ガイド核酸は、前記遺伝子改変部分と複合体化し、且つそれを前記細胞中の前記ゲノム配列に誘導する、請求項17~20のいずれか一項に記載の系。
【請求項22】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約10ヌクレオチド塩基対(bps)~約100ヌクレオチドbpsを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の系。
【請求項23】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記ガイド核酸と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて同一である核酸配列を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の系。
【請求項24】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記ガイド核酸と比較して少なくとも1つのミスマッチ、少なくとも2つのミスマッチ、少なくとも3つのミスマッチ、少なくとも4つのミスマッチ、少なくとも5つのミスマッチ、少なくとも6つのミスマッチ、少なくとも7つのミスマッチ、少なくとも8つのミスマッチ、少なくとも9つのミスマッチ又は少なくとも10のミスマッチを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の系。
【請求項25】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記遺伝子改変部分と複合体化し、それにより前記遺伝子改変部分を前記キメラポリヌクレオチドに近接させる、請求項1~24のいずれか一項に記載の系。
【請求項26】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記遺伝子改変部分と複合体化されるとき、前記遺伝子改変部分の酵素活性を誘発しない、請求項1~25のいずれか一項に記載の系。
【請求項27】
前記遺伝子改変部分は、Casタンパク質又は前記Casタンパク質をコードするmRNAを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の系。
【請求項28】
前記遺伝子改変部分は、Cas/RNPを含む、請求項27に記載の系。
【請求項29】
前記遺伝子改変部分は、Cas9/RNPを含む、請求項28に記載の系。
【請求項30】
前記少なくとも1つの発現配列は、キメラ受容体をコードする、請求項1~29のいずれか一項に記載の系。
【請求項31】
前記キメラ受容体は、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44v6、CD47、CD52、CD56、CD57、CD58、CD70、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD86、CD99、CD117、CD123、CD133、CD135、CD137、CD151、CD171、CD276、BAFF-R、BCMA、B7H4、CEA、CEACM6、Claudin18.2、CLL-1、c-Met、CS-1、CTLA-4、EGFRvIII、GPC2、GPC3、GPRC5、HER2、HER3、HER4/ErbB4、HVEM、MAGE-A、MAGE3、MSLN、MUC-1、MUC-16、NY-ESO-1、OX40、PD-1、PD-L1、PD-L2、PMSA、ROR1、TCRa、TCRb、TLR7、TLR9、VEGFR-2、WT-1又はこれらのフラグメントに結合する抗原結合ドメインを含む、請求項30に記載の系。
【請求項32】
前記キメラ受容体は、膜貫通ドメインを含む、請求項30又は31に記載の系。
【請求項33】
前記キメラ受容体は、シグナル伝達ドメインを含む、請求項30~32のいずれか一項に記載の系。
【請求項34】
前記細胞は、免疫細胞又は幹細胞を含む、請求項17~33のいずれか一項に記載の系。
【請求項35】
前記免疫細胞は、リンパ球である、請求項34に記載の系。
【請求項36】
前記リンパ球は、B細胞である、請求項35に記載の系。
【請求項37】
前記リンパ球は、T細胞である、請求項35に記載の系。
【請求項38】
前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、アルファ・ベータT細胞、ガンマ・デルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、調節性T細胞及びTヘルパー細胞からなる群から選択される、請求項37に記載の系。
【請求項39】
前記免疫細胞は、ILCを含む、請求項34に記載の系。
【請求項40】
前記免疫細胞は、iPSC由来である、請求項34に記載の系。
【請求項41】
前記免疫細胞は、iPSC由来T細胞である、請求項34に記載の系。
【請求項42】
前記免疫細胞は、iPSC由来ナチュラルキラーT細胞である、請求項34に記載の系。
【請求項43】
前記免疫細胞は、iPSC由来マクロファージである、請求項34に記載の系。
【請求項44】
前記幹細胞は、造血幹細胞である、請求項34に記載の系。
【請求項45】
前記幹細胞は、iPSCである、請求項34に記載の系。
【請求項46】
ポリマーを更に含み、前記ポリマーは、全体アニオン電荷を含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の系。
【請求項47】
前記ポリマーは、ポリグルタミン酸(PGA)又はポリアスパラギン酸(PASA)を含むアニオン性ポリヌクレオチドを含む、請求項46に記載の系。
【請求項48】
請求項1~47のいずれか一項に記載の系を含む組成物。
【請求項49】
請求項17~48のいずれか一項に記載の細胞を含む細胞株。
【請求項50】
請求項1~47のいずれか一項に記載の系又は請求項49に記載の細胞を含む医薬組成物。
【請求項51】
単位用量形態を含む、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
髄腔内、眼内、硝子体内、網膜、静脈内、筋肉内、心室内、大脳内、小脳内、脳室内、実質内、皮下、腫瘍内、肺内、気管内、腹腔内、膀胱内、膣内、直腸内、経口、舌下、経皮、吸入により、吸入噴霧化形態により、腔内消化管経路により又はこれらの組み合わせにおいて、それを必要とする対象に投与するように製剤化される、請求項50又は51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
少なくとも1つの追加の活性剤を更に含む、請求項50~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記少なくとも1つの追加の活性剤は、サイトカイン、成長因子、ホルモン、酵素、小分子、化合物又はこれらの組み合わせを含む、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
請求項1~47のいずれか一項に記載の系、請求項49に記載の細胞又は請求項50~54のいずれか一項に記載の医薬組成物及び容器を含むキット。
【請求項56】
細胞を、請求項1~47のいずれか一項に記載の系と接触させることを含む方法であって、前記系は、前記細胞中のゲノム配列において前記キメラポリヌクレオチドをノックインし、それにより前記キメラポリヌクレオチドによってコードされたキメラ受容体を前記細胞中で発現する、方法。
【請求項57】
細胞集団を、請求項1~47のいずれか一項に記載の系と接触させることを含む方法であって、前記系は、前記細胞集団中のゲノム配列において前記キメラポリヌクレオチドをノックインし、それにより前記キメラポリヌクレオチドによってコードされたキメラ受容体を前記細胞集団中で発現する、方法。
【請求項58】
請求項1~47のいずれか一項に記載の系は、前記細胞集団における前記キメラポリヌクレオチドのノックイン効率を、同等の細胞集団における前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での前記キメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックイン効率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項1~47のいずれか一項に記載の系は、前記細胞集団における前記キメラポリヌクレオチドの発現を、Casタンパク質によって同等の細胞集団中にノックインされた前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での前記キメラポリヌクレオチドの発現と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
請求項1~43のいずれか一項に記載の系は、前記細胞集団の生存率を、前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での前記キメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックインによって改変された同等の細胞集団の生存率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
細胞を、
a)請求項1~47のいずれか一項に記載の系を含む第1の系であって、第1の遺伝子改変部分と複合体化された第1のガイド核酸と、前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む第1のキメラポリヌクレオチドとを含む第1の系、及び
b)請求項1~47のいずれか一項に記載の系を含む第2の系であって、第2の遺伝子改変部分と複合体化された第2のガイド核酸と、前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む第2のキメラポリヌクレオチドとを含む第2の系
と接触させることを含む方法であって、前記第1の系は、前記第1のキメラポリヌクレオチドを前記細胞中の第1のゲノム配列に導入し、及び前記第2の系は、前記第2のキメラポリヌクレオチドを前記細胞中の第2のゲノム配列に導入する、方法。
【請求項62】
細胞集団を、
a)請求項1~47のいずれか一項に記載の系を含む第1の系であって、第1の遺伝子改変部分と複合体化された第1のガイド核酸と、前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む第1のキメラポリヌクレオチドとを含む第1の系、及び
b)請求項1~47のいずれか一項に記載の系を含む第2の系であって、第2の遺伝子改変部分と複合体化された第2のガイド核酸と、前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む第2のキメラポリヌクレオチドとを含む第2の系
と接触させることを含む方法であって、前記第1の系は、前記第1のキメラポリヌクレオチドを前記細胞集団中の第1のゲノム配列に導入し、及び前記第2の系は、前記第2のキメラポリヌクレオチドを前記細胞集団中の第2のゲノム配列に導入する、方法。
【請求項63】
前記第1の系及び前記第2の系は、前記細胞集団中の前記第1のキメラポリヌクレオチド及び前記第2のキメラポリヌクレオチドのノックイン効率を、同等の細胞集団における前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での第1及び第2のキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックイン効率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記第1の系及び前記第2の系は、前記細胞集団中の前記第1のキメラポリヌクレオチド及び前記第2のキメラポリヌクレオチドの発現を、Casタンパク質によって同等の細胞集団中にノックインされた前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での前記第1及び第2のキメラポリヌクレオチドの発現と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の系及び前記第2の系は、前記細胞集団の生存率を、前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での第1及び第2のキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックインによって改変された同等の細胞集団の生存率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
細胞を、
a)ガイド核酸、
b)遺伝子改変部分、並びに
c)少なくとも1つの発現配列及び少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含み、環状であるキメラポリヌクレオチド
と接触させることを含む方法。
【請求項67】
細胞を、
a)ガイド核酸、
b)遺伝子改変部分、並びに
c)少なくとも1つの発現配列、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及び少なくとも1つの共有結合閉環型末端を含むキメラポリヌクレオチド
と接触させることを含む方法。
【請求項68】
前記キメラポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)又は一本鎖DNA(ssDNA)を含む、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
前記キメラポリヌクレオチドは、ベクターである、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記キメラポリヌクレオチドは、小環である、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端にある、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、前記キメラポリヌクレオチドの3’末端にある、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
前記キメラポリヌクレオチドは、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端における少なくとも1つの共有結合閉環型末端と、3’末端における前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端とを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、テロメア末端を含む、請求項66又は71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記キメラポリヌクレオチドは、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端付近に前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む、請求項66又は71~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記キメラポリヌクレオチドは、前記キメラポリヌクレオチドの3’末端付近に前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む、請求項66又は71~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記キメラポリヌクレオチドは、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端付近の前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと、前記キメラポリヌクレオチドの3’末端付近の前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントとを含む、請求項66又は71~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約10ヌクレオチド塩基対(bps)~約100ヌクレオチドbpsを含む、請求項66~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記ガイド核酸と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて同一である核酸配列を含む、請求項66~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記ガイド核酸と比較して少なくとも1つのミスマッチ、少なくとも2つのミスマッチ、少なくとも3つのミスマッチ、少なくとも4つのミスマッチ、少なくとも5つのミスマッチ、少なくとも6つのミスマッチ、少なくとも7つのミスマッチ、少なくとも8つのミスマッチ、少なくとも9つのミスマッチ又は少なくとも10のミスマッチを含む、請求項66~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記遺伝子改変部分と複合体化し、それにより前記遺伝子改変部分を前記キメラポリヌクレオチドに近接させる、請求項66~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記遺伝子改変部分と複合体化されるとき、前記遺伝子改変部分の酵素活性を誘発しない、請求項66~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
a)少なくとも1つの発現配列と、
b)少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと
を含み、環状であるキメラポリヌクレオチド。
【請求項84】
ベクターである、請求項83に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項85】
小環である、請求項83に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項86】
a)少なくとも1つの発現配列と、
b)少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと、
c)少なくとも1つの共有結合閉環型末端と
を含むキメラポリヌクレオチド。
【請求項87】
前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、前記キメラポリヌクレオチドの5’末端にある、請求項86に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項88】
前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、前記キメラポリヌクレオチドの3’末端にある、請求項86に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項89】
前記キメラポリヌクレオチドの5’末端における前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端と、3’末端における前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端とを含む、請求項86に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項90】
前記少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、テロメア末端を含む、請求項86~89のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項91】
二本鎖DNA(dsDNA)又は一本鎖DNA(ssDNA)を含む、請求項83~90のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項92】
前記キメラポリヌクレオチドの5’末端付近に前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む、請求項83~91のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項93】
前記キメラポリヌクレオチドの3’末端付近に前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む、請求項80~91のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項94】
前記キメラポリヌクレオチドの5’末端付近の前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと、前記キメラポリヌクレオチドの3’末端付近の前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントとを含む、請求項83~91のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項95】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約10ヌクレオチド塩基対(bps)~約100ヌクレオチドbpsを含む、請求項83~94のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項96】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化し、それにより前記遺伝子改変部分を前記キメラポリヌクレオチドに近接させる、請求項83~95のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
【請求項97】
前記少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、前記遺伝子改変部分と複合体化されるとき、前記遺伝子改変部分の酵素活性を誘発しない、請求項83~96のいずれか一項に記載のキメラポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その出願全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年12月27日出願のPCT/CN2021/141667号明細書の利益を主張する。
【0002】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許又は特許出願が具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示された場合と同程度に本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が、本明細書に含まれる開示と矛盾する限り、本明細書は、かかる矛盾した内容に取って代わり、且つ/又はそれに優先することが意図される。
【背景技術】
【0003】
細胞移植又は治療薬送達などの細胞ベースの療法が成功を収めつつある。しかしながら、細胞ベースの療法に用いられる細胞は、先天性免疫を誘発する細胞表面マーカーを発現し得る。例えば、CAR-T細胞療法は、有望な治療効果を示しているが、患者の重篤な炎症性副作用と関連している。別の例は、細胞移植であり、これは、移植片対宿主病(GVHD)をもたらす。その結果、現行の臨床試験の大半は、細胞ベースの療法の主要細胞源として自家細胞に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした自家細胞への依存は、費用が高く、且つ面倒である。細胞を細胞ベースの療法に適するように改変して、改変した細胞が、それを必要とする対象に投与された後に先天性免疫応答を誘発しないように、この細胞が主要組織適合遺伝子複合体(MHC)などの細胞表面分子のノックダウン又はノックアウト発現を有することができるような系及び方法に対する必要性が依然として存在する。改変細胞によって治療剤を発現するように細胞を改変するための系及び方法に対する必要性も依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの態様では、ガイド核酸と、遺伝子改変部分と、少なくとも1つの発現配列及び少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含み、環状であるキメラポリヌクレオチドとを含む系が本明細書で説明される。いくつかの態様では、ガイド核酸と、遺伝子改変部分と、少なくとも1つの発現配列及び少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含むキメラポリヌクレオチドとを含む系であって、(i)キメラポリヌクレオチドは、少なくとも1つの共有結合閉環型末端を更に含み、及び/又は(ii)キメラポリヌクレオチドは、線状DNAである、系が本明細書で説明される。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)又は一本鎖DNA(ssDNA)を含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、ベクターである。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、小環である。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、キメラポリヌクレオチドの5’末端にある。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、キメラポリヌクレオチドの3’末端にある。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端における少なくとも1つの共有結合閉環型末端と、3’末端における少なくとも1つの共有結合閉環型末端とを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、環状一本鎖DNAである。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、線状一本鎖DNAである。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、改変末端を有する線状一本鎖DNAである。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、テロメア末端を含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端付近に少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの3’末端付近に少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端付近の少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと、キメラポリヌクレオチドの3’末端付近の少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントとを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、ガイド核酸は、細胞中のゲノム配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて同一である核酸配列を含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、ゲノム配列は、細胞のゲノム遺伝子座を含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、ゲノム遺伝子座は、T細胞受容体アルファ鎖定常(TRAC)、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)、分化抗原群38(CD38)、サイトカイン誘導性SH2含有タンパク質(CISH)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、分化抗原群70(CD70)を含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、ゲノム遺伝子座は、TRAC又はB2Mを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、ガイド核酸は、遺伝子改変部分と複合体化し、且つそれを細胞中のゲノム配列に誘導する。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約10ヌクレオチド塩基対(bps)~約100ヌクレオチドbpsを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、ガイド核酸と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて同一である核酸配列を含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、ガイド核酸と比較して少なくとも1つのミスマッチ、少なくとも2つのミスマッチ、少なくとも3つのミスマッチ、少なくとも4つのミスマッチ、少なくとも5つのミスマッチ、少なくとも6つのミスマッチ、少なくとも7つのミスマッチ、少なくとも8つのミスマッチ、少なくとも9つのミスマッチ又は少なくとも10のミスマッチを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化し、それにより遺伝子改変部分をキメラポリヌクレオチドに近接させる。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化されるとき、遺伝子改変部分の酵素活性を誘発しない。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードするmRNAを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、Cas/RNPを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、Cas9/RNPを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの発現配列は、キメラ受容体をコードする。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラ受容体は、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44v6、CD47、CD52、CD56、CD57、CD58、CD70、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD86、CD99、CD117、CD123、CD133、CD135、CD137、CD151、CD171、CD276、BAFF-R、BCMA、B7H4、CEA、CEACM6、Claudin18.2、CLL-1、c-Met、CS-1、CTLA-4、EGFRvIII、GPC2、GPC3、GPRC5、HER2、HER3、HER4/ErbB4、HVEM、MAGE-A、MAGE3、MSLN、MUC-1、MUC-16、NY-ESO-1、OX40、PD-1、PD-L1、PD-L2、PMSA、ROR1、TCRa、TCRb、TLR7、TLR9、VEGFR-2、WT-1又はこれらのフラグメントに結合する抗原結合ドメインを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラ受容体は、膜貫通ドメインを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラ受容体は、シグナル伝達ドメインを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、細胞は、免疫細胞又は幹細胞を含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、免疫細胞は、リンパ球である。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、リンパ球は、B細胞である。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、リンパ球は、T細胞である。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、T細胞は、細胞傷害性T細胞、アルファ・ベータT細胞、ガンマ・デルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、調節性T細胞及びTヘルパー細胞からなる群から選択される。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、免疫細胞は、ILCを含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、免疫細胞は、iPSC由来である。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、免疫細胞は、iPSC由来T細胞である。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、免疫細胞は、iPSC由来ナチュラルキラーT細胞である。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、免疫細胞は、iPSC由来マクロファージである。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、幹細胞は、造血幹細胞である。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、幹細胞は、iPSCである。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、本明細書で説明される系は、ポリマーを更に含み、ポリマーは、全体アニオン電荷を含む。本明細書で開示される系のいずれか1つのいくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリグルタミン酸(PGA)又はポリアスパラギン酸(PASA)を含むアニオン性ポリヌクレオチドを含む。
【0006】
いくつかの態様では、本明細書で説明される系を含む組成物が本明細書で説明される。
【0007】
いくつかの態様では、本明細書で説明される系を含む細胞又は細胞株が本明細書で説明される。
【0008】
いくつかの態様では、本明細書で説明される系又は本明細書で説明される細胞を含む医薬組成物が本明細書で説明される。本明細書で開示される医薬組成物のいずれか1つのいくつかの実施形態では、医薬組成物は、単位用量形態を含む。本明細書で開示される医薬組成物のいずれか1つのいくつかの実施形態では、医薬組成物は、髄腔内、眼内、硝子体内、網膜、静脈内、筋肉内、心室内、大脳内、小脳内、脳室内、実質内、皮下、腫瘍内、肺内、気管内、腹腔内、膀胱内、膣内、直腸内、経口、舌下、経皮、吸入により、吸入噴霧形態により、腔内消化管経路により又はこれらの組み合わせにおいて、それを必要とする対象に投与するように製剤化される。本明細書で開示される医薬組成物のいずれか1つのいくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの追加の活性剤を含む。本明細書で開示される医薬組成物のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の活性剤は、サイトカイン、成長因子、ホルモン、酵素、小分子、化合物又はこれらの組み合わせを含む。
【0009】
いくつかの態様では、本明細書で説明される系、本明細書で説明される細胞又は本明細書で説明される医薬組成物及び容器を含むキットが本明細書で説明される。
【0010】
いくつかの態様では、細胞を、本明細書で開示される系のいずれか1つと接触させることを含む方法であって、系は、細胞中のゲノム配列においてキメラポリヌクレオチドをノックインし、それによりキメラポリヌクレオチドによってコードされたキメラ受容体を細胞中で発現する、方法が本明細書で説明される。いくつかの態様では、細胞集団を本明細書で説明される系と接触させることを含む方法であって、系は、細胞集団中のゲノム配列においてキメラポリヌクレオチドをノックインし、それによりキメラポリヌクレオチドによってコードされたキメラ受容体を細胞集団中で発現する、方法が本明細書で説明される。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、本明細書で説明される系は、細胞集団におけるキメラポリヌクレオチドのノックイン効率を、同等の細胞集団における少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下でのキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックイン効率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、本明細書で説明される系は、細胞集団におけるキメラポリヌクレオチドの発現を、Casタンパク質によって同等の細胞集団中にノックインされた少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下でのキメラポリヌクレオチドの発現と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる)。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、本明細書で説明される系は、細胞集団の生存率を、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下でのキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックインによって改変された同等の細胞集団の生存率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。
【0011】
いくつかの態様では、細胞を、本明細書で開示される系のいずれか1つを含む第1の系であって、第1の遺伝子改変部分と複合体化された第1のガイド核酸と、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む第1のキメラポリヌクレオチドとを含む第1の系、及び本明細書で開示される系のいずれか1つを含む第2の系であって、第2の遺伝子改変部分と複合体化された第2のガイド核酸と、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む第2のキメラポリヌクレオチドとを含む第2の系と接触させることを含む方法であって、第1の系は、第1のキメラポリヌクレオチドを細胞中の第1のゲノム配列に導入し、及び第2の系は、第2のキメラポリヌクレオチドを細胞中の第2のゲノム配列に導入する、方法が本明細書で説明される。
【0012】
いくつかの態様では、細胞集団を、本明細書で開示される系のいずれか1つを含む第1の系であって、第1の遺伝子改変部分と複合体化された第1のガイド核酸と、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む第1のキメラポリヌクレオチドとを含む第1の系、及び本明細書で開示される系のいずれか1つを含む第2の系であって、第2の遺伝子改変部分と複合体化された第2のガイド核酸と、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む第2のキメラポリヌクレオチドとを含む第2の系と接触させることを含む方法であって、第1の系は、第1のキメラポリヌクレオチドを細胞集団中の第1のゲノム配列に導入し、及び第2の系は、第2のキメラポリヌクレオチドを細胞集団中の第2のゲノム配列に導入する、方法が本明細書で説明される。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、第1の系及び第2の系は、細胞集団中の第1のキメラポリヌクレオチド及び第2のキメラポリヌクレオチドのノックイン効率を、同等の細胞集団における少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での第1及び第2のキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックイン効率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、第1の系及び第2の系は、細胞集団中の第1のキメラポリヌクレオチド及び第2のキメラポリヌクレオチドの発現を、Casタンパク質によって同等の細胞集団中にノックインされた少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での第1及び第2のキメラポリヌクレオチドの発現と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、第1の系及び第2の系は、細胞集団の生存率を、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での第1及び第2のキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックインによって改変された同等の細胞集団の生存率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。
【0013】
いくつかの態様では、細胞を、ガイド核酸、遺伝子改変部分並びに少なくとも1つの発現配列及び少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含み、環状であるキメラポリヌクレオチドと接触させることを含む方法が本明細書で説明される。いくつかの態様では、細胞を、ガイド核酸、遺伝子改変部分並びに少なくとも1つの発現配列、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及び少なくとも1つの共有結合閉環型末端を含むキメラポリヌクレオチドと接触させることを含む方法が本明細書で説明される。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)又は一本鎖DNA(ssDNA)を含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、ベクターである。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、小環である。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、キメラポリヌクレオチドの5’末端にある。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、キメラポリヌクレオチドの3’末端にある。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端における少なくとも1つの共有結合閉環型末端と、3’末端における少なくとも1つの共有結合閉環型末端とを含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、テロメア末端を含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端付近に少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの3’末端付近に少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端付近の少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと、キメラポリヌクレオチドの3’末端付近の少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントとを含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約10ヌクレオチド塩基対(bps)~約100ヌクレオチドbpsを含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、ガイド核酸と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて同一である核酸配列を含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、ガイド核酸と比較して少なくとも1つのミスマッチ、少なくとも2つのミスマッチ、少なくとも3つのミスマッチ、少なくとも4つのミスマッチ、少なくとも5つのミスマッチ、少なくとも6つのミスマッチ、少なくとも7つのミスマッチ、少なくとも8つのミスマッチ、少なくとも9つのミスマッチ又は少なくとも10のミスマッチを含む。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化し、それにより遺伝子改変部分をキメラポリヌクレオチドに近接させる。本明細書で開示される方法のいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化されるとき、遺伝子改変部分の酵素活性を誘発しない。
【0014】
いくつかの態様では、少なくとも1つの発現配列及び少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含み、環状であるキメラポリヌクレオチドが本明細書で説明される。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、ベクターである。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、小環である。
【0015】
いくつかの態様では、少なくとも1つの発現配列、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及び少なくとも1つの共有結合閉環型末端を含むキメラポリヌクレオチドが本明細書で説明される。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、キメラポリヌクレオチドの5’末端にある。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、キメラポリヌクレオチドの3’末端にある。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端における少なくとも1つの共有結合閉環型末端と、3’末端における少なくとも1つの共有結合閉環型末端とを含む。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの共有結合閉環型末端は、テロメア末端を含む。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)又は一本鎖DNA(ssDNA)を含む。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端付近に少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの3’末端付近に少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端付近の少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと、キメラポリヌクレオチドの3’末端付近の少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントとを含む。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約10ヌクレオチド塩基対(bps)~約100ヌクレオチドbpsを含む。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化し、それにより遺伝子改変部分をキメラポリヌクレオチドに近接させる。本明細書で開示されるキメラポリヌクレオチドのいずれか1つのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化されるとき、遺伝子改変部分の酵素活性を誘発しない。
【0016】
本開示の例示的な実施形態のみが示され、記載される下記の詳細な説明から、本開示の更なる態様及び利点が当業者に容易に明らかになるであろう。理解されるように、本開示は、他の異なる実施形態も実施可能であり、そのいくつかの詳細は、本開示から逸脱することなく様々な明白な点における修正が可能である。したがって、本図面及び説明は、本質的に例示的であり、限定的であるとみなされない。
【0017】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許又は特許出願が具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示された場合と同程度に本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が、本明細書に含まれる開示と矛盾する限り、本明細書は、かかる矛盾した内容に取って代わり、且つ/又はそれに優先することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本明細書で説明される系による、ニューヨーク食道扁平上皮癌1(NY-ESO-1)標的化TCRの細胞へのノックインを例示する。ノックインは、細胞を、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを5’末端及び3’末端の両方に含むキメラポリヌクレオチドと接触させることによって媒介した。キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端の両方で共有結合閉環していなかった。ノックインにより、TRAC遺伝子座でTCRノックイン(TCRVβ13.1)を発現する34.4%の細胞集団を得た。「カラム由来のテンプレート」とは、カラム精製から得られたキメラポリヌクレオチドを表す。「ビーズ由来のテンプレート」とは、磁気ビーズ精製から得られたキメラポリヌクレオチドを表す。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.25μg、0.50μg、0.70μg又は1.00μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。フローサイトメトリ分析は、94.9%の細胞中でCD3がノックアウトされ、0.18%の細胞がTCRVβ13.1及びCD3の両方で陽性であったことを示した。
【
図2】本明細書で説明される系による、CD19又はメソテリン標的化CARの細胞中へのノックインを示す。ノックインは、細胞を、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを5’末端及び3’末端の両方に含むキメラポリヌクレオチドと接触させることによって媒介した。キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端の両方で共有結合閉環していなかった。ノックインにより、TRAC遺伝子座でCD19標的化CAR(CD-19-CAR)を発現する31.4%の細胞集団、TRAC遺伝子座でヒト化CD19標的化CAR(HCD-19-CAR)を発現する33.4%の細胞集団及びTRAC遺伝子座でメソテリン標的化CAR(Meso-CAR-T)を発現する33.8%の細胞集団がもたらされた。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.20μg又は0.40μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図3】本明細書で説明される系による、細胞のTRACゲノム遺伝子座へのデュアルCAR(GC020として示される、同じ細胞中でCD19及びCD20を標的化する2つの異なるCAR;又はGC012Lとして示される、同じ細胞中でCD19及びBCMAを標的化する2つの異なるCAR)のノックインを示す。ノックインは、細胞を、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを5’末端及び3’末端の両方に含むキメラポリヌクレオチドと接触させることによって媒介した。キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端の両方で共有結合閉環していなかった。ノックインにより、TRACゲノム遺伝子座でのノックインを介してCD19及びCD20のデュアルCARを発現する41.1%の細胞集団(82.7%の細胞は、TRACノックアウトを示す)並びにTRACゲノム遺伝子座でのノックインを介してCD19のデュアルCARを発現する22.5%の細胞集団(90.1%の細胞は、TRACノックアウトを示す)がもたらされた。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.20μg又は0.40μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図4A】本明細書で説明される系による、細胞中へのHLA-Eのノックインを示す。ノックインは、細胞を、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを5’末端及び3’末端の両方に含むキメラポリヌクレオチドと接触させることによって媒介した。キメラポリヌクレオチドを、共有結合閉環した5’末端及び共有結合閉環した3’末端の両方を含むように更に改変した。両方の末端に本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを含むが、共有結合閉環した5’末端及び3’末端を有しないキメラポリヌクレオチドによって媒介したノックインでは、HLA-Eを発現する37.7%の細胞集団が得られた(HLA-E KI)。両方の末端に本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを含み、共有結合閉環した5’末端及び3’末端を有するキメラポリヌクレオチドによって媒介したノックインでは、HLA-Eを発現する54.9%の細胞集団が得られた(ds-HLA-E KI)。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.20μg、0.30μg又は0.40μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図4B】両方の末端に改変部分標的化フラグメントを含み、共有結合閉環した5’末端及び3’末端を有するキメラポリヌクレオチドで改変した細胞が、8日間にわたり、両方の末端に本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを含むが、共有結合閉環した5’末端及び3’末端を有しないキメラポリヌクレオチドで改変した細胞以上の生存度を有していたことを示す細胞生存度の測定値を図示する。
【
図5A】本明細書で説明される系による、細胞への、CD19及びBCMAを標的化するデュアルCAR(GC012HL、Dual-CAR-T)のノックインを示す。ノックインは、細胞を、5’末端及び3’末端の両方における改変部分標的化フラグメント並びに共有結合閉環した5’末端及び共有結合閉環した3’末端を含むキメラポリヌクレオチド(0.5μg、1.0μg、1.5μg又は2.0μgの量で)と接触させることによって媒介した。34.6%の細胞がデュアルCARを発現した。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.50μg、1.0μg、1.5μg又は2.0μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図5B】ノックインされた細胞の3日後の細胞生存度を示す。
【
図6】HLA-Eを発現する21.7%の細胞及びデュアルCARを発現する50.1%の細胞をもたらす、それぞれTRAC遺伝子座及びB2M遺伝子座におけるデュアルCAR(Dual-CAR-T、GC012HL)及びHLA-Eの両方のノックインを示す。このノックイン実験のために、1000万個の細胞(100μlの最終容量中)を1.0μg、1.25μg又は1.50μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図7】HLA-E Rを発現する31.8%の細胞をもたらす、それぞれB2M遺伝子座及びTRAC遺伝子座におけるデュアルCAR(Dual-CAR-T)及びHLA-Eの両方のノックインを示す。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図8】TRAC遺伝子座及びB2M遺伝子座におけるデュアルCAR(Dual-CAR-T)及びHLA-Eの両方のノックインが、96.57%でのTRACのノックアウト及び92.48%でのB2Mのノックアウトをもたらしたことを示す。このノックイン実験のために、1000万個の細胞(100μlの最終容量中)を1.0μg、1.25μg又は1.50μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図9】キメラポリヌクレオチドが、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを含む二本鎖DNA(dsDNA)であり、5’及び3’末端の両方で共有結合閉環していた(テロメア末端、上部)、5’及び3’末端の両方で共有結合閉環していなかった(中央)及び環状であった(小環、下部)キメラポリヌクレオチドのノックインを示す。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.20μg、0.40μg又は0.80μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図10】一本鎖(センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか)DNA(ssDNA)であったキメラポリヌクレオチドのノックインを示す。8日目に47.2%の細胞がデュアルCAR(GC012HL)を発現した。このノックイン実験のために、1000万個の細胞(100μlの最終容量中)を1.0μg、1.25μg又は1.50μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【
図11A】本明細書で説明される系による、細胞中へのデュアルCAR(CD19及びBCMAの両方を標的化する)及びHLA-Eの両方のノックインを示す。
【
図11B】本明細書で説明される系によってノックインされたデュアルCARを有する細胞の殺細胞活性を示す。8日目に、CD19又はBCMAを標的化するCARを有する細胞は、B細胞前駆体白血病細胞(Nalm6、CD19を発現した)及び癌細胞(MM.1S、RPMI-8226及びJeKo-1細胞、全てBCMAを発現した)を殺傷するための殺細胞活性を示した。
【
図12-1】CAR-T細胞(CD19及びBCMAを標的化するDual-CAR-T)を生成するための、本明細書に記載されるキメラポリヌクレオチドの非ウイルス性ノックインを示す。
図12Aは、2日目にCAR提示が陽性であった改変細胞を示す。
図12Bは、ノックイン提示が陽性であった改変細胞の変化の割合を示す。
図12Cは、3日間にわたるノックインで改変した細胞(左側)及び細胞凍結から解凍された後の細胞(右側;1.0:1.0μgのキメラポリヌクレオチドに接触させた細胞;KO:TRACをノックアウトしたのみの対照T細胞;T:非改変T細胞)の細胞生存度を示す。
図12Dは、細胞凍結から解凍されてから1日目の、ノックイン提示が陽性であった改変細胞の生存度及び変化の割合を示す。NT-Ctrl:テンプレートなし対照。上:CD19標的化CARを示す改変細胞。下:CD3を示す改変細胞。
図12Eは、CD19(Nalm6細胞)又はBCMA(JeKo-1及びMM.1S細胞)を発現する細胞に対する改変細胞(Dual-CAR-T、ZAP-CAR-T)の殺細胞活性を示す。
【
図12-2】CAR-T細胞(CD19及びBCMAを標的化するDual-CAR-T)を生成するための、本明細書に記載されるキメラポリヌクレオチドの非ウイルス性ノックインを示す。
図12Aは、2日目にCAR提示が陽性であった改変細胞を示す。
図12Bは、ノックイン提示が陽性であった改変細胞の変化の割合を示す。
図12Cは、3日間にわたるノックインで改変した細胞(左側)及び細胞凍結から解凍された後の細胞(右側;1.0:1.0μgのキメラポリヌクレオチドに接触させた細胞;KO:TRACをノックアウトしたのみの対照T細胞;T:非改変T細胞)の細胞生存度を示す。
図12Dは、細胞凍結から解凍されてから1日目の、ノックイン提示が陽性であった改変細胞の生存度及び変化の割合を示す。NT-Ctrl:テンプレートなし対照。上:CD19標的化CARを示す改変細胞。下:CD3を示す改変細胞。
図12Eは、CD19(Nalm6細胞)又はBCMA(JeKo-1及びMM.1S細胞)を発現する細胞に対する改変細胞(Dual-CAR-T、ZAP-CAR-T)の殺細胞活性を示す。
【
図12-3】CAR-T細胞(CD19及びBCMAを標的化するDual-CAR-T)を生成するための、本明細書に記載されるキメラポリヌクレオチドの非ウイルス性ノックインを示す。
図12Aは、2日目にCAR提示が陽性であった改変細胞を示す。
図12Bは、ノックイン提示が陽性であった改変細胞の変化の割合を示す。
図12Cは、3日間にわたるノックインで改変した細胞(左側)及び細胞凍結から解凍された後の細胞(右側;1.0:1.0μgのキメラポリヌクレオチドに接触させた細胞;KO:TRACをノックアウトしたのみの対照T細胞;T:非改変T細胞)の細胞生存度を示す。
図12Dは、細胞凍結から解凍されてから1日目の、ノックイン提示が陽性であった改変細胞の生存度及び変化の割合を示す。NT-Ctrl:テンプレートなし対照。上:CD19標的化CARを示す改変細胞。下:CD3を示す改変細胞。
図12Eは、CD19(Nalm6細胞)又はBCMA(JeKo-1及びMM.1S細胞)を発現する細胞に対する改変細胞(Dual-CAR-T、ZAP-CAR-T)の殺細胞活性を示す。
【
図13A】本明細書で説明される系による、TRACの単一遺伝子座におけるCD19又はCD20を標的化するためのデュアルCARのノックインを示す。41.1%の細胞は、CD19又はCD20を標的化するためのデュアルCARの陽性発現を示した。
【
図13B】本明細書で説明される系による、TRACの単一遺伝子座におけるCD19又はBCMAを標的化するためのデュアルCARのノックインを示す。41.1%の細胞は、CD19又はBCMAを標的化するためのデュアルCARの陽性発現を示した。
【
図14】本明細書で説明される系によるキメラポリヌクレオチドのノックインを示し、TRAC又はB2Mなどの遺伝子座においてノックインされたキメラポリヌクレオチドは、5,000塩基対(bps)を超えていた。約20%の改変細胞がノックイン提示に関して陽性であった。フローサイトメトリ研究は、25.2%の細胞がCD19 CARを発現したことを示す。5.77%の細胞がCD19 CAR及びHLA-Eの両方を発現した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本開示の特徴及び利点のよりよい理解は、例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明を参照することによって得られるであろう。
【0020】
概要
いくつかの態様では、細胞を改変するための系が本明細書で説明される。いくつかの実施形態では、系は、細胞のゲノム遺伝子座においてキメラポリヌクレオチドをノックインすることによって細胞を改変し、キメラポリヌクレオチドは、キメラ受容体をコードする。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、キメラ受容体をコードする代わりに、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質をコードする。改変細胞によるMHCタンパク質の発現は、対象における改変細胞による先天性免疫応答の誘発を低減させ得る。いくつかの実施形態では、系は、ガイド核酸を含む。いくつかの実施形態では、系は、遺伝子改変部分を含み、遺伝子改変部分は、ガイド核酸と複合体化する。ガイド核酸と複合体化すると、遺伝子改変部分は、キメラポリヌクレオチドのノックインを媒介するためにゲノム遺伝子座に誘導される。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含み、少なくとも1つの遺伝子改変標的フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化することができる。少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントと遺伝子改変部分との複合体化により、遺伝子改変部分と少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントとが互いに緊密に近接することが可能となる。遺伝子改変部分と少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントとの間のこうした緊密な近接により、キメラポリヌクレオチドのノックイン効率の増加がもたらされ得る。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、環状である。いくつかの実施形態では、環状キメラポリヌクレオチドは、ベクターである。いくつかの実施形態では、環状キメラポリヌクレオチドは、小環である。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、線状である。いくつかの実施形態では、線状キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれかに少なくとも1つの共有結合閉環型末端を含む。いくつかの実施形態では、線状キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端の両方に共有結合閉環型末端を含む。環状であるか又は少なくとも1つの共有結合閉環型末端を有するキメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの分解(例えば、改変される細胞中のヌクレアーゼによる)を減少させ得る。キメラポリヌクレオチドの分解の減少は、ゲノム遺伝子座におけるノックインのためのキメラポリヌクレオチドの存在量の増加をもたらし得る。いくつかの実施形態では、環状であるか又は少なくとも1つの共有結合閉環型末端を有するキメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドのノックイン効率を増加させる。
【0021】
いくつかの態様では、本明細書で説明される系で改変された細胞が本明細書で説明される。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞は、細胞株中の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞は、組成物、医薬組成物、キット又はこれらの組み合わせの中で製剤化され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞、組成物、医薬組成物、キット又はこれらの組み合わせを用いて、疾患又は状態の治療を必要とする対象における疾患又は状態を治療することができる。いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、新生物又は癌である。
【0022】
いくつかの態様では、細胞を改変する方法が本明細書で説明される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、本明細書で説明される系と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、本明細書で説明される系の構成要素の1つ又は任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、本明細書で説明される第1の系及び第2の系と接触させることを含み、第1の系及び第2の系は、それぞれキメラポリヌクレオチドをノックインする。こうした構成では、2つのキメラポリウロニド(それぞれが同じ又は異なるキメラ受容体をコードする)が同じ細胞にノックインされ得る。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞の導入遺伝子(例えば、キメラポリヌクレオチドによってコードされたキメラ受容体)のノックイン効率を、他の方法によって媒介された同じ導入遺伝子のノックイン効率と比較して増加させる。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞の導入遺伝子(例えば、キメラポリヌクレオチドによってコードされたキメラ受容体)のノックイン効率を、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドを使用しない他の方法によって媒介されたノックイン効率と比較して増加させる。いくつかの実施形態では、本方法は、説明される系によって改変された細胞の生存度(生存率によって決定される)を、他の手段(例えば、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドを使用しない他の系)によって改変された細胞の生存度と比較して増加させる。
【0023】
系
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される細胞を改変するための系が本明細書で説明される。いくつかの実施形態では、系は、キメラポリヌクレオチド中のノックインによって細胞を改変し、キメラポリヌクレオチドは、少なくとも1つの発現配列を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの発現配列は、導入遺伝子又はそのフラグメントをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、キメラ受容体を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、主要ヒストン適合複合体(MHC)タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、MCH-Iタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、MCH-IIタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも第1の系及び少なくとも第2の系によって改変することができ、第1の系及び第2の系のキメラポリヌクレオチドは、それぞれ導入遺伝子をコードする。導入遺伝子は、同じであるか又は異なり得る。例えば、第1の系は、第2の系によってノックされる第2のキメラ受容体と同じであるか又は異なる第1のキメラ受容体をノックインし得る。いくつかの実施形態では、細胞は、第1の系、第2の系又は任意の更なる番号の系によって改変され得、改変された細胞は、続いて第1の導入遺伝子、第2の導入遺伝子又は任意の更なる番号の導入遺伝子を発現し得る。いくつかの実施形態では、系は、全体アニオン電荷を含むポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリグルタミン酸(PGA)又はポリアスパラギン酸(PASA)であり得る。アニオン性ポリマーを含むことで、系の他の構成要素の過剰なカチオン電荷を遮断し、それによりキメラポリヌクレオチドのノックイン効率を増加させることができる。
【0024】
ガイド核酸
いくつかの実施形態では、系はガイド核酸を含む。いくつかの実施形態では、ガイド核は、ダブルガイド核酸と称される場合のある2つの別個の核酸分子又はシングルガイド核酸と称される場合のある単一の核酸分子(例えば、sgRNA)を含む。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、融合CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)を含むシングルガイド核酸である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、crRNAを含むシングルガイド核酸である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、crRNAを含むがtracRNAを含まないシングルガイド核酸である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、非融合crRNA及びtracrRNAを含むダブルガイド核酸である。例示的なダブルガイド核酸は、crRNA様分子及びtracrRNA様分子を含み得る。例示的なシングルガイド核酸は、crRNA様分子を含み得る。例示的なシングルガイド核酸、融合crRNA様分子及びtracrRNA様分子を含み得る。crRNAは、ガイド核酸の核酸標的化セグメント(例えば、スペーサー領域)と、ガイド核酸のCasタンパク質結合セグメントの二本鎖デュプレックスの半分を形成することのできるヌクレオチドのストレッチとを含み得る。tracrRNAは、gRNAのCasタンパク質結合セグメントの二本鎖デュプレックスのもう半分を形成するヌクレオチドのストレッチを含み得る。crRNAのヌクレオチドのストレッチは、tracrRNAのひと続きのヌクレオチドに相補的であり、且つそれとハイブリダイズして、ガイド核酸のCasタンパク質結合ドメインの二本鎖デュプレックスを形成することができる。crRNA及びtracrRNAは、ハイブリダイズしてガイド核酸を形成することができる。crRNAは、標的核酸認識配列(例えば、プロトスペーサー)とハイブリダイズする一本鎖核酸標的化セグメント(例えば、スペーサー領域)も提供し得る。スペーサー領域を含むcrRNA又はtracrRNA分子の配列は、ガイド核酸が使用される種に特異的となるように設計され得る。いくつかの実施形態では、ガイド核酸の核酸標的化領域は、18~72ヌクレオチド長であり得る。ガイド核酸の核酸標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、約12ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの長さを有し得る。例えば、ガイド核酸の核酸標的化領域(例えば、スペーサー領域)は、約12ヌクレオチド(nt)~約80nt、約12nt~約50nt、約12nt~約40nt、約12nt~約30nt、約12nt~約25nt、約12nt~約20nt、約12nt~約19nt、約12nt~約18nt、約12nt~約17nt、約12nt~約16nt又は約12nt~約15ntの長さを有し得る。代わりに、DNA標的化セグメントは、約18nt~約20nt、約18nt~約25nt、約18nt~約30nt、約18nt~約35nt、約18nt~約40nt、約18nt~約45nt、約18nt~約50nt、約18nt~約60nt、約18nt~約70nt、約18nt~約80nt、約18nt~約90nt、約18nt~約100nt、約20nt~約25nt、約20nt~約30nt、約20nt~約35nt、約20nt~約40nt、約20nt~約45nt、約20nt~約50nt、約20nt~約60nt、約20nt~約70nt、約20nt~約80nt、約20nt~約90nt又は約20nt~約100ntの長さを有し得る。核酸標的化領域の長さは、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30又はそれを超えるヌクレオチドであり得る。核酸標的化領域(例えば、スペーサー領域)の長さは、最大で5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30又はそれを超えるヌクレオチドであり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、ガイド核酸の核酸標的化領域(例えば、スペーサー)は、20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸の核酸標的化領域は、19ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸の核酸標的化領域は、18ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸の核酸標的化領域は、17ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸の核酸標的化領域は、16ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸の核酸標的化領域は、21ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド核酸の核酸標的化領域は、22ヌクレオチド長である。
【0026】
標的核酸のヌクレオチド配列(標的配列)に相補的であるガイド核酸のヌクレオチド配列は、例えば、少なくとも約12nt、少なくとも約15nt、少なくとも約18nt、少なくとも約19nt、少なくとも約20nt、少なくとも約25nt、少なくとも約30nt、少なくとも約35nt又は少なくとも約40ntの長さを有し得る。標的核酸のヌクレオチド配列(標的配列)に相補的であるガイド核酸のヌクレオチド配列は、約12ヌクレオチド(nt)~約80nt、約12nt~約50nt、約12nt~約45nt、約12nt~約40nt、約12nt~約35nt、約12nt~約30nt、約12nt~約25nt、約12nt~約20nt、約12nt~約19nt、約19nt~約20nt、約19nt~約25nt、約19nt~約30nt、約19nt~約35nt、約19nt~約40nt、約19nt~約45nt、約19nt~約50nt、約19nt~約60nt、約20nt~約25nt、約20nt~約30nt、約20nt~約35nt、約20nt~約40nt、約20nt~約45nt、約20nt~約50nt又は約20nt~約60ntの長さを有し得る。
【0027】
標的のポリヌクレオチドのプロトスペーサー配列は、関心領域内のPAMを同定し、PAMの上流又は下流の所望のサイズの領域をプロトスペーサーとして選択することによって同定され得る。対応するスペーサー配列は、プロトスペーサー領域の相補配列を決定することによって設計することができる。
【0028】
スペーサー配列は、コンピュータプログラム(例えば、機械可読コード)を用いて同定することができる。コンピュータプログラムは、予測融解温度、二次構造形成及び予測アニーリング温度、配列同一性、ゲノムコンテキスト、クロマチンのアクセシビリティ、GC%、ゲノム出現の頻度、メチル化状態、SNPの存在などの変数を使用することができる。
【0029】
ガイド核酸のCasタンパク質結合セグメントは、互いに相補的な2つのヌクレオチドのストレッチ(例えば、crRNA及びtracrRNA)を含み得る。互いに相補的な2つのヌクレオチドのストレッチ(例えば、crRNA及びtracrRNA)は、介在ヌクレオチド(例えば、シングルガイド核酸の場合にはリンカー)によって共有結合で連結され得る。互いに相補的な2つのヌクレオチドのストレッチ(例えば、crRNA及びtracrRNA)は、ハイブリダイズして、Casタンパク質結合セグメントの二本鎖RNAデュプレックス又はヘアピンを形成して、ステム-ループ構造をもたらし得る。crRNAとtracrRNAとは、crRNAの3’末端及びtracrRNAの5’末端を介して共有結合により連結され得る。代わりに、tracrRNAとcrRNAとは、tracrRNAの5’末端及びcrRNAの3’末端を介して共有結合により連結され得る。
【0030】
ガイド核酸のCasタンパク質結合セグメントは、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、例えば約10ヌクレオチド(nt)~約20nt、約20nt~約30nt、約30nt~約40nt、約40nt~約50nt、約50nt~約60nt、約60nt~約70nt、約70nt~約80nt、約80nt~約90nt又は約90nt~約100ntの長さを有し得る。例えば、ガイド核酸のCasタンパク質結合セグメントは、約15ヌクレオチド(nt)~約80nt、約15nt~約50nt、約15nt~約40nt、約15nt~約30nt又は約15nt~約25ntの長さを有し得る。
【0031】
ガイド核酸のCasタンパク質結合セグメントのdsRNAデュプレックスは、約6塩基対(bp)~約50bpの長さを有し得る。例えば、タンパク質結合セグメントのdsRNAデュプレックスは、約6bp~約40bp、約6bp~約30bp、約6bp~約25bp、約6bp~約20bp、約6bp~約15bp、約8bp~約40bp、約8bp~約30bp、約8bp~約25bp、約8bp~約20bp又は約8bp~約15bpの長さを有し得る。例えば、Casタンパク質結合セグメントのdsRNAデュプレックスは、約8bp~約10bp、約10bp~約15bp、約15bp~約18bp、約18bp~約20bp、約20bp~約25bp、約25bp~約30bp、約30bp~約35bp、約35bp~約40bp又は約40bp~約50bpの長さを有し得る。
【0032】
本開示のガイド核酸は、追加の所望の特徴(例えば、改変又は調節された安定性、細胞内の標的化、蛍光標識による追跡、タンパク質又はタンパク質複合体のための結合部位など)を提供する改変又は配列を含み得る。そのような修飾の例としては、例えば、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレートキャップ(m7G))、3’ポリアデニル化テール(3’ポリ(A)テール)、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及び/又はタンパク質複合体によって調節された安定性及び/又は調節されたアクセシビリティを可能にするための)、安定性制御配列、dsRNAデュプレックス(ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内位置(例えば、核、ミトコンドリア、クロロプラストなど)に標的化させる改変又は配列、追跡を可能にする改変又は配列(例えば、蛍光分子への直接コンジュゲーション、蛍光検出を促進する部分へのコンジュゲーション、蛍光検出を可能にする配列など)、タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ及びそれらの組み合わせを含む、DNAに作用するタンパク質)に結合部位を提供する改変又は配列が挙げられる。ガイド核酸は、核酸に新しい特徴又は強化された特徴(例えば、改良された安定性)を提供するために、1つ以上の改変(例えば、塩基改変、主鎖改変)を含み得る。ガイド核酸は、核酸親和性タグを含み得る。ヌクレオシドは、塩基-糖の組み合わせであり得る。ヌクレオチドの塩基部分は、複素環塩基であり得る。こうした複素環塩基の2つの最も一般的なクラスは、プリン及びピリミジンである。ヌクレオチドは、リン酸基を更に含むヌクレオシドであり得、このリン酸基は、ヌクレオシドの糖部分に共有結合的に連結されている。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドの場合、リン酸基は、糖の2’、3’又は5’ヒドロキシル部分に連結され得る。ガイド核酸を形成する際、リン酸基は、隣接するヌクレオシドを互いに共有結合的に連結して、線状ポリマー化合物を形成することができる。次に、この線状ポリマー化合物のそれぞれの末端を更に接合して、環状の化合物を形成することができる。しかしながら、一般的に、線状化合物が好適である。加えて、線状化合物は、内部ヌクレオチド塩基相補性を有し得、したがって完全に又は部分的に二本鎖の化合物が生成するように折り畳まれ得る。更に、ガイド核酸内では、リン酸基は、一般に、ガイド核酸のヌクレオシド間主鎖を形成すると称され得る。ガイド核酸の結合又は主鎖は、3’→5’のホスホジエステル結合であり得る。
【0033】
ガイド核酸は、改変主鎖及び/又は改変ヌクレオシド間結合を含み得る。改変主鎖としては、主鎖中にリン原子を保持しているもの及び主鎖中にリン原子を有しないものを挙げることができる。その中にリン原子を含有する好適な改変ガイド核酸主鎖としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及び他のアルキルホスホネート、例えば3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、キラルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホラミデート及びアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、ホスホロジアミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート及び通常の3’-5’結合を有するボラノホスフェート、2’-5’連結類似体並びに逆極性を有し、1つ以上のヌクレオチド間結合が3’→3’、5’→5’又は2’→2’結合であるものが挙げられ得る。逆極性を有する好適なガイド核酸は、最も3’側のヌクレオチド間結合における単一の3’→3’結合(例えば、核酸塩基が欠けているか、又はその代わりにヒドロキシル基を有する単一の逆ヌクレオシド残基)を含み得る。様々な塩(例えば、塩化カリウム又は塩化ナトリウム)、混合塩及び遊離酸型も含まれ得る。
【0034】
ガイド核酸は、1つ以上の置換糖部分を含み得る。好適なポリヌクレオチドは、OH;F;O-、S-若しくはN-アルキル;O-、S-若しくはN-アルケニル;O-、S-若しくはN-アルキニル;又はO-アルキル-O-アルキルから選択される糖置換基を含み得、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、置換又は非置換のC1~C10アルキル又はC2~C10アルケニル及びアルキニルであり得る。特に好適であるのは、O((CH2)nO)mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2及びO(CH2)nON((CH2)nCH3)2であり、式中、n及びmは、1~約10である。糖置換基は、C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリール又はO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基、レポーター基、インターカレーター、ガイド核酸の薬物動態特性を改善するための基又はガイド核酸の薬力学的特性質を改善するための基及び同様の性質を有する他の置換基から選択することができる。好適な改変としては、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3、2’-O-(2-メトキシエチル)又は2’-MOE、アルコキシアルコキシ基としても知られる)を挙げることができる。
【0035】
ガイド核酸は、核酸塩基(又は「塩基」)改変又は置換も含み得る。本明細書で使用するとき、「未改変」又は「天然」核酸塩基としては、プリン塩基(例えば、アデニン(A)及びグアニン(G))並びにピリミジン塩基(例えば、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U))が挙げられ得る。改変核酸塩基としては、他の合成及び天然核酸塩基、例えば5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニル(-C=C-CH3)ウラシル及びシトシン並びにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン並びに3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンが挙げられ得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、細胞のゲノム遺伝子座のゲノム配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて同一の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、細胞のゲノム遺伝子座のゲノム配列と100%同一の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、細胞のゲノム遺伝子座のゲノム配列に少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて相補的な核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、細胞のゲノム遺伝子座のゲノム配列に100%相補的な核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞のゲノム遺伝子座は、T細胞受容体アルファ鎖定常(TRAC)遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、細胞のゲノム遺伝子座は、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、ゲノム遺伝子座は、CD38、CISH、PD-1又はCD70のゲノム遺伝子座も含み得る。
【0037】
遺伝子改変部分
いくつかの実施形態では、系は、少なくとも1つの遺伝子改変部分を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、本明細書で説明される少なくとも1つのガイド核酸と複合体化し得る。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、ガイド核酸と複合体化するときにゲノム遺伝子座に誘導され、遺伝子改変部分がゲノム遺伝子座を開裂させる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分によって媒介された開裂は、細胞のゲノム遺伝子座における二本鎖切断をもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分によって媒介された開裂は、細胞のゲノム遺伝子座における一本鎖切断又はニッキングをもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分によって媒介された開裂は、続いて内因性修復機構によって修復され得、修復中、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドは、細胞の開裂したゲノム遺伝子座に導入又はノックインされる。例えば、遺伝子改変部分によって媒介された開裂は、改変対象の細胞中で相同組換え修復(HDR)を誘発することができ、HDRは、細胞の開裂したゲノム遺伝子座にキメラポリヌクレオチドを挿入する。
【0038】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、核酸ガイドヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、CRISPR-Casポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、例えば、クラス1CRISPR関連(Cas)ポリペプチド、クラス2CasポリペプチドCasタイプIポリペプチド、CasタイプIIポリペプチド、CasタイプIIIポリペプチド、CasタイプIVポリペプチド、CasタイプVポリペプチド及びタイプVI、CRISPR関連RNA結合タンパク質又はこれらの機能的フラグメントであり得る。本開示と共に使用するのに好適なCasポリペプチドとしては、Cas9、Cas12、Cas13、Cpf1(若しくはCas12a)、C2C1、C2C2(若しくはCas13a)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2C3、Casl、CaslB、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a、Cas8al、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Csnl、Csxl2、Cas10、Cas10d、CaslO、CaslOd、CasF、CasG、CasH、Csyl、Csy2、Csy3、Csel(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3、Csxl7、Csxl4、CsxlO、Csxl6、CsaX、Csx3、Csxl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4若しくはCul966、これらの任意の誘導体、これらの任意のバリアント又はこれらの任意のフラグメントが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、Cas13としては、Cas13a、Cas13b、Cas13c及びCas13d(例えば、CasRx)が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、Cas/RNPを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、Cas9/RNPを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードするmRNAを含む。
【0039】
任意の好適なヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)が遺伝子改変部分として使用され得る。好適なヌクレアーゼとしては、CRISPR関連(Cas)タンパク質又はCasヌクレアーゼ、例えばCRISPRタイプI関連(Cas)ポリペプチド、CRISPRタイプII関連(Cas)ポリペプチド、CRISPRタイプIII関連(Cas)ポリペプチド、CRISPRタイプIV関連(Cas)ポリペプチド、CRISPRタイプV関連(Cas)ポリペプチド及びCRISPRタイプVI関連(Cas)ポリペプチド;ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);転写アクティベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN);メガヌクレアーゼ;RNA結合タンパク質(RBP);CRISPR関連RNA結合タンパク質;リコンビナーゼ;フリッパーゼ;トランスポゼース;アルゴノート(Ago)タンパク質(例えば、原核生物アルゴノート(pAgo)、古細菌アルゴノート(aAgo)、真核生物アルゴノート(eAgo)及びナトロノバクテリウム・グレゴリー(Natronobacterium gregoryi)アルゴノート(NgAgo));RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR);CIRT、PUF、ホーミングエンドヌクレアーゼ又はこれらの任意の機能的フラグメント、これらの任意の誘導体、これらの任意のバリアント及びこれらの任意のフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを介して、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドと複合体化することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化する際、キメラポリヌクレオチドと遺伝子改変部分との緊密な近接を可能にする。こうした配置のために、遺伝子改変部分によってゲノム遺伝子座が開裂する際、キメラポリヌクレオチドをゲノム遺伝子座に挿入することが容易となる。
【0041】
キメラポリヌクレオチド
いくつかの実施形態では、系は、キメラポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)を含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、一本鎖DNA(ssDNA)を含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、二本鎖DNA(dsDNA)と一本鎖DNA(ssDNA)との組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、遺伝子改変部分と複合体化する少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、少なくとも1つの発現配列を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの発現配列は、少なくとも1つの導入遺伝子又はそのフラグメントをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、本明細書で説明されるキメラ受容体のいずれか1つをコードし得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの発現配列は、少なくとも1つの相同性アームと隣接し得、相同性アームは、TRAC遺伝子座又はB2M遺伝子座などのゲノム遺伝子座の核酸配列と相同性のある核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ゲノム遺伝子座は、CD38、CISH、PD-1又はCD70のゲノム遺伝子座も含み得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、約1,000塩基対~約6,500塩基対を含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、約1,000塩基対~約1,500塩基対、約1,000塩基対~約2,000塩基対、約1,000塩基対~約2,500塩基対、約1,000塩基対~約3,000塩基対、約1,000塩基対~約3,500塩基対、約1,000塩基対~約4,000塩基対、約1,000塩基対~約4,500塩基対、約1,000塩基対~約5,000塩基対、約1,000塩基対~約5,500塩基対、約1,000塩基対~約6,000塩基対、約1,000塩基対~約6,500塩基対、約1,500塩基対~約2,000塩基対、約1,500塩基対~約2,500塩基対、約1,500塩基対~約3,000塩基対、約1,500塩基対~約3,500塩基対、約1,500塩基対~約4,000塩基対、約1,500塩基対~約4,500塩基対、約1,500塩基対~約5,000塩基対、約1,500塩基対~約5,500塩基対、約1,500塩基対~約6,000塩基対、約1,500塩基対~約6,500塩基対、約2,000塩基対~約2,500塩基対、約2,000塩基対~約3,000塩基対、約2,000塩基対~約3,500塩基対、約2,000塩基対~約4,000塩基対、約2,000塩基対~約4,500塩基対、約2,000塩基対~約5,000塩基対、約2,000塩基対~約5,500塩基対、約2,000塩基対~約6,000塩基対、約2,000塩基対~約6,500塩基対、約2,500塩基対~約3,000塩基対、約2,500塩基対~約3,500塩基対、約2,500塩基対~約4,000塩基対、約2,500塩基対~約4,500塩基対、約2,500塩基対~約5,000塩基対、約2,500塩基対~約5,500塩基対、約2,500塩基対~約6,000塩基対、約2,500塩基対~約6,500塩基対、約3,000塩基対~約3,500塩基対、約3,000塩基対~約4,000塩基対、約3,000塩基対~約4,500塩基対、約3,000塩基対~約5,000塩基対、約3,000塩基対~約5,500塩基対、約3,000塩基対~約6,000塩基対、約3,000塩基対~約6,500塩基対、約3,500塩基対~約4,000塩基対、約3,500塩基対~約4,500塩基対、約3,500塩基対~約5,000塩基対、約3,500塩基対~約5,500塩基対、約3,500塩基対~約6,000塩基対、約3,500塩基対~約6,500塩基対、約4,000塩基対~約4,500塩基対、約4,000塩基対~約5,000塩基対、約4,000塩基対~約5,500塩基対、約4,000塩基対~約6,000塩基対、約4,000塩基対~約6,500塩基対、約4,500塩基対~約5,000塩基対、約4,500塩基対~約5,500塩基対、約4,500塩基対~約6,000塩基対、約4,500塩基対~約6,500塩基対、約5,000塩基対~約5,500塩基対、約5,000塩基対~約6,000塩基対、約5,000塩基対~約6,500塩基対、約5,500塩基対~約6,000塩基対、約5,500塩基対~約6,500塩基対又は約6,000塩基対~約6,500塩基対を含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、約1,000塩基対、約1,500塩基対、約2,000塩基対、約2,500塩基対、約3,000塩基対、約3,500塩基対、約4,000塩基対、約4,500塩基対、約5,000塩基対、約5,500塩基対、約6,000塩基対又は約6,500塩基対を含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、少なくとも約1,000塩基対、約1,500塩基対、約2,000塩基対、約2,500塩基対、約3,000塩基対、約3,500塩基対、約4,000塩基対、約4,500塩基対、約5,000塩基対、約5,500塩基対又は約6,000塩基対を含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、最大で約1,500塩基対、約2,000塩基対、約2,500塩基対、約3,000塩基対、約3,500塩基対、約4,000塩基対、約4,500塩基対、約5,000塩基対、約5,500塩基対、約6,000塩基対又は約6,500塩基対を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、環状である。いくつかの実施形態では、環状キメラポリヌクレオチドは、ベクターである。いくつかの実施形態では、環状キメラポリヌクレオチドは、小環である。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、線状である。いくつかの実施形態では、線状キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれかに少なくとも1つの共有結合閉環型末端を含む。いくつかの実施形態では、線状キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端の両方に共有結合閉環型末端を含む。いくつかの実施形態では、共有結合閉環型末端は、テロメア末端を含む。いくつかの実施形態では、線状キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端にテロメア末端を含む。いくつかの実施形態では、線状キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの3’末端にテロメア末端を含む。いくつかの実施形態では、線状キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端及びキメラポリヌクレオチド3’末端の両方にテロメア末端を含む。環状であるか又は少なくとも1つの共有結合閉環型末端を有するキメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの分解(例えば、改変される細胞中のヌクレアーゼによる)を減少させ得る。キメラポリヌクレオチドの分解の減少は、ゲノム遺伝子座におけるノックインのためのキメラポリヌクレオチドの存在量の増加をもたらし得る。いくつかの実施形態では、環状であるか又は少なくとも1つの共有結合閉環型末端を有するキメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドのノックイン効率を増加させる。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、線状キメラポリヌクレオチドの5’末端付近に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、線状キメラポリヌクレオチドの5’末端に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、線状キメラポリヌクレオチドの5’末端から少なくとも約10塩基対(bps)、少なくとも約50塩基対(bps)、少なくとも約100塩基対(bps)、少なくとも約200塩基対(bps)、少なくとも約500塩基対(bps)、少なくとも約1000塩基対(bps)又は少なくとも約1500塩基対(bps)に位置する。
【0045】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、線状キメラポリヌクレオチドの3’末端付近に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、線状キメラポリヌクレオチドの3’末端に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、線状キメラポリヌクレオチドの3’末端から少なくとも約10塩基対(bps)、少なくとも約50塩基対(bps)、少なくとも約100塩基対(bps)、少なくとも約200塩基対(bps)、少なくとも約500塩基対(bps)、少なくとも約1000塩基対(bps)又は少なくとも約1500塩基対(bps)に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、線状キメラポリヌクレオチドの5’末端及び線状キメラポリヌクレオチドの3’末端の両方の付近に位置し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、キメラ受容体をコードするキメラポリヌクレオチドの発現配列の近傍に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、キメラ受容体をコードする環状キメラポリヌクレオチドの発現配列の近傍に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、キメラポリヌクレオチドの発現配列から少なくとも約10塩基対(bps)、少なくとも約50塩基対(bps)、少なくとも約100塩基対(bps)、少なくとも約200塩基対(bps)、少なくとも約500塩基対(bps)、少なくとも約1000塩基対(bps)又は少なくとも約1500塩基対(bps)に位置する。
【0046】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約5塩基対~約200塩基対を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約5塩基対~約10塩基対、約5塩基対~約20塩基対、約5塩基対~約30塩基対、約5塩基対~約40塩基対、約5塩基対~約50塩基対、約5塩基対~約60塩基対、約5塩基対~約70塩基対、約5塩基対~約80塩基対、約5塩基対~約90塩基対、約5塩基対~約100塩基対、約5塩基対~約200塩基対、約10塩基対~約20塩基対、約10塩基対~約30塩基対、約10塩基対~約40塩基対、約10塩基対~約50塩基対、約10塩基対~約60塩基対、約10塩基対~約70塩基対、約10塩基対~約80塩基対、約10塩基対~約90塩基対、約10塩基対~約100塩基対、約10塩基対~約200塩基対、約20塩基対~約30塩基対、約20塩基対~約40塩基対、約20塩基対~約50塩基対、約20塩基対~約60塩基対、約20塩基対~約70塩基対、約20塩基対~約80塩基対、約20塩基対~約90塩基対、約20塩基対~約100塩基対、約20塩基対~約200塩基対、約30塩基対~約40塩基対、約30塩基対~約50塩基対、約30塩基対~約60塩基対、約30塩基対~約70塩基対、約30塩基対~約80塩基対、約30塩基対~約90塩基対、約30塩基対~約100塩基対、約30塩基対~約200塩基対、約40塩基対~約50塩基対、約40塩基対~約60塩基対、約40塩基対~約70塩基対、約40塩基対~約80塩基対、約40塩基対~約90塩基対、約40塩基対~約100塩基対、約40塩基対~約200塩基対、約50塩基対~約60塩基対、約50塩基対~約70塩基対、約50塩基対~約80塩基対、約50塩基対~約90塩基対、約50塩基対~約100塩基対、約50塩基対~約200塩基対、約60塩基対~約70塩基対、約60塩基対~約80塩基対、約60塩基対~約90塩基対、約60塩基対~約100塩基対、約60塩基対~約200塩基対、約70塩基対~約80塩基対、約70塩基対~約90塩基対、約70塩基対~約100塩基対、約70塩基対~約200塩基対、約80塩基対~約90塩基対、約80塩基対~約100塩基対、約80塩基対~約200塩基対、約90塩基対~約100塩基対、約90塩基対~約200塩基対又は100塩基対~約200塩基対を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、約5塩基対、約10塩基対、約20塩基対、約30塩基対、約40塩基対、約50塩基対、約60塩基対、約70塩基対、約80塩基対、約90塩基対、約100塩基対又は約200塩基対を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、少なくとも約5塩基対、約10塩基対、約20塩基対、約30塩基対、約40塩基対、約50塩基対、約60塩基対、約70塩基対、約80塩基対、約90塩基対又は約100塩基対を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、最大で約10塩基対、約20塩基対、約30塩基対、約40塩基対、約50塩基対、約60塩基対、約70塩基対、約80塩基対、約90塩基対、約100塩基対又は約200塩基対を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及びガイド核酸は、約60%~約100%の核酸配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及びガイド核酸は、約60%~約70%、約60%~約75%、約60%~約80%、約60%~約85%、約60%~約90%、約60%~約95%、約60%~約96%、約60%~約97%、約60%~約98%、約60%~約99%、約60%~約100%、約70%~約75%、約70%~約80%、約70%~約85%、約70%~約90%、約70%~約95%、約70%~約96%、約70%~約97%、約70%~約98%、約70%~約99%、約70%~約100%、約75%~約80%、約75%~約85%、約75%~約90%、約75%~約95%、約75%~約96%、約75%~約97%、約75%~約98%、約75%~約99%、約75%~約100%、約80%~約85%、約80%~約90%、約80%~約95%、約80%~約96%、約80%~約97%、約80%~約98%、約80%~約99%、約80%~約100%、約85%~約90%、約85%~約95%、約85%~約96%、約85%~約97%、約85%~約98%、約85%~約99%、約85%~約100%、約90%~約95%、約90%~約96%、約90%~約97%、約90%~約98%、約90%~約99%、約90%~約100%、約95%~約96%、約95%~約97%、約95%~約98%、約95%~約99%、約95%~約100%、約96%~約97%、約96%~約98%、約96%~約99%、約96%~約100%、約97%~約98%、約97%~約99%、約97%~約100%、約98%~約99%、約98%~約100%又は約99%~約100%の核酸配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及びガイド核酸は、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%の間の核酸配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及びガイド核酸は、少なくとも約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の間の核酸配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及びガイド核酸は、最大約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%の間の核酸配列同一性を共有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、ガイド核酸と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はそれを超えて同一である核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、ガイド核酸と比較して少なくとも1つのミスマッチ、少なくとも2つのミスマッチ、少なくとも3つのミスマッチ、少なくとも4つのミスマッチ、少なくとも5つのミスマッチ、少なくとも6つのミスマッチ、少なくとも7つのミスマッチ、少なくとも8つのミスマッチ、少なくとも9つのミスマッチ又は少なくとも10のミスマッチを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化し、それにより遺伝子改変部分をキメラポリヌクレオチドに緊密に近接させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分と複合体化されるとき、遺伝子改変部分の酵素活性を誘発しない。例えば、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントは、遺伝子改変部分によって媒介される開裂事象を誘発することなく、(例えば、遺伝子改変部分と複合体化するガイド核酸と類似した方法で)遺伝子改変部分と複合体化できる。
【0049】
いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、導入遺伝子をコードする少なくとも1つの発現配列を含む。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、本明細書に記載のキメラ受容体を含む導入遺伝子をコードする。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、本明細書に記載のMHCタンパク質を含む導入遺伝子をコードする。いくつかの実施形態では、MHCタンパク質としては、HLA-A、HLA-E、HLA-DM、HLA-DO、HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DP又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
キメラ受容体
いくつかの態様では、キメラポリヌクレオチドによってコードされる導入遺伝子をノックインするための本明細書で説明される系によって改変された細胞が本明細書で説明される。いくつかの実施形態では、細胞は、2つの別個の導入遺伝子をノックインするための第1の系及び第2の系によって改変され得、この2つの別個の導入遺伝子は、同じであるか又は異なり得る。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドによってコードされた導入遺伝子は、キメラ受容体である。いくつかの態様では、キメラ受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞は、導入遺伝子を発現し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞は、本明細書で説明されるキメラ受容体を発現し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞は、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子を発現し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞は、本明細書で説明される第1のキメラ受容体及び第2のキメラ受容体を発現し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞は、第1の導入遺伝子、第2の導入遺伝子又は任意の更なる番号の導入遺伝子を発現し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系によって改変された細胞は、本明細書で説明される第1のキメラ受容体、第2のキメラ受容体又は任意の更なる番号のキメラ受容体を発現し得る。
【0051】
いくつかの態様では、本明細書で提供される細胞は、1つ以上のCAR含有キメラ受容体を含む。CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン又は細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。細胞外ドメインは、標的特異性の結合要素(抗原結合ドメインとしても知られる)を含み得る。細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域及びゼータ鎖部分を含み得る。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要とされ得る、抗原受容体又はそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間又はCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサードメインが組み込まれ得る。
【0052】
本明細書で使用するとき、「スペーサードメイン」という用語は、一般的に、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖の細胞外ドメイン又は細胞質ドメインのいずれかに連結させる役割を果たす任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを意味する。スペーサードメインは、最大で300個のアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸、最も好ましくは25~50個のアミノ酸を含み得る。膜貫通ドメインに関連して、CARは、CARの細胞外ドメインに融合される膜貫通ドメインを含むように設計され得る。一実施形態では、CARのドメインの1つと天然に会合する膜貫通ドメインが使用される。場合により、アミノ酸置換によって膜貫通ドメインを選択又は改変して、同一の又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのこうしたドメインの結合を回避し、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にすることができる。
【0053】
膜貫通ドメインは、天然の供給源又は合成の供給源のいずれかから誘導され得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質から誘導され得る。本開示における特定の用途の膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来するもの又はIgG4などの免疫グロブリンに由来するもの(例えば、少なくともそれらの膜貫通領域を含む)であり得る。代わりに、膜貫通ドメインは、合成であり得、その場合、それは、主にロイシン及びバリンなどの疎水性残基を含む。好ましくは、合成膜貫通ドメインの各末端にフェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが見られる。任意選択的に、好ましくは長さが2~10個のアミノ酸の短いオリゴペプチド又はポリペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結部を形成し得る。特に好適なリンカーは、グリシン-セリンダブレットによってもたらされる。本開示のCARの細胞質ドメイン又は他の細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置された免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担い得る。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊な機能を指す。
【0054】
T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能のシグナルを伝達し、細胞に特殊な機能を実施させるように指示するタンパク質の部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用し得るが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分が用いられる限り、かかる切断部分は、それがエフェクター機能のシグナルを伝達する限り、無傷の鎖の代わりに用いることができる。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能のシグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。
【0055】
本開示のCARに用いるための細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体の係合後に協調してシグナル伝達を開始するTCR及び共受容体の細胞質配列並びにこれらの配列の任意の誘導体又はバリアント及び同一の機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。TCRのみを介して生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分な場合があり、且つ二次及び/又は共刺激シグナルが含まれ得る。したがって、T細胞の活性化は、TCRを介して抗原依存性の一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)及び抗原に依存しない様式で作用し、二次又は共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)の2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列によって媒介され得る。
【0056】
一次細胞質シグナル伝達配列は、刺激的方法か又は抑制的方法のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を調節することができる。刺激的様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。本開示における特定の用途の一次細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3エプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66d由来のものが挙げられる。本開示のCAR内の細胞質シグナル伝達分子は、CD3ゼータ由来の細胞質シグナル伝達配列を含むことが特に好ましい。いくつかの実施形態では、CARの細胞質ドメインは、それ自体でCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むように設計され得るか、又は本開示のCARに関連して有用な任意の他の望ましい細胞質ドメインと組み合わされ得る。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ゼータ鎖部分及び共刺激シグナル伝達領域を含み得る。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分を指す。
【0057】
共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要とされ得る、抗原受容体又はそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。こうした分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3及びCD83と特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。したがって、本開示は、場合により、共刺激シグナル伝達要素としての4-1BBを用いて例示されているが、他の共刺激性要素も本開示の範囲内にある。
【0058】
本開示のCARの細胞質シグナル伝達部分内の細胞質シグナル伝達配列は、互いにランダムに又は特定の順序で結合され得る。任意で、好ましくは長さが2~10アミノ酸の短いオリゴペプチドリンカー又はポリペプチドリンカーが、結合部を形成し得る。グリシン-セリンダブレットが、特に好適なリンカーを提供する。いくつかの実施形態では、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインとCD28のシグナル伝達ドメインとを含むように設計される。別の実施形態では、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインと4-1BBのシグナル伝達ドメインとを含むように設計される。更に別の実施形態では、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインとCD28及び4-1BBのシグナル伝達ドメインとを含むように設計される。
【0059】
本明細書で提供されるCARは、1つ以上の抗原結合ドメインを含み得る。場合により、本明細書で提供されるCARは、免疫細胞抗原(例えば、T細胞又はNK細胞の殺滅活性を阻害するための)及び疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原)の両方を標的化することのできる抗原結合ドメインを含む。例えば、免疫細胞抗原及び癌抗原の両方を標的化する抗原結合ドメインとしては、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD30、CD38、CD45、CD48、CD50、CD52、CD56、CD69、CD100、CD122、CD132、CD137、CD161、CD159a、CD159c、CD279、CD314、CD319(CS1)及びTCRが挙げられるが、これらに限定されない。場合により、本明細書で提供されるCARは、個々の1つのCARが2つの異なる抗原を標的化する二重特異性CARであるように、2つの抗原結合ドメインを含む。二重特異性CARの場合、一方の抗原結合ドメインは、免疫細胞抗原を標的化することができ、もう一方の抗原結合ドメインは、疾患関連抗原を標的化することができる。二重特異性CARの2つの抗原結合ドメインは、タンデム構造、並列構造又はループ構造を有し得る。例えば、CARは、腫瘍細胞マーカー及びCD3を標的化することができる。CARは、式I:L-scFyl-I-scFv2-H-TM-C-CD3(I)の構造を有し得、式中、各「-」は、独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり、Lは、任意選択的にシグナル伝達ペプチド配列であり、Iは、可動性リンカーであり、Hは、任意選択的にヒンジ領域であり、TMは、膜貫通ドメインであり、Cは、共刺激ドメインであり、CD3は、CD3t由来の細胞質シグナル伝達配列であり、scFv1及びscFv2の一方は、腫瘍細胞マーカーを標的化する抗原結合ドメインであり、もう一方は、CD3を標的化する抗原結合ドメインである。CARは、式II又はII’:L-VL-scFv-VH-H-TM-C-CD3(II)、L-VH-scFv-VL-H-TM-C-CD3(II’)の構造を有し得、式中、各「-」は、独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり、要素L、H、TM、C及びCD3は、上記の通りであり、scFvは、腫瘍細胞マーカーを標的化する抗原結合ドメインであり、VHは、抗CD3抗体重鎖可変領域であり、VLは、抗CD3抗体軽鎖可変領域であるか、又はscFvは、CD3を標的化する抗原結合ドメインであり、VHは、抗腫瘍細胞マーカー抗体重鎖可変領域であり、VLは、抗腫瘍細胞マーカー抗体軽鎖可変領域である。場合により、CARは、構造EGFRt-CD3 scFv-CD19 scFv-ヒンジ-TM-CD28/41BB-CD3を含み得、式中、EGFRtは、安全スイッチとしての切断されたEGFRであり(例えば、誘導性細胞死部分)、CD3 scFvは、GSリンカーによって連結されたモノクローナル抗体OKT3又はUCHT1の重鎖及び軽鎖可変領域のsvFCvフラグメントであり、CD19 scFvフラグメントは、GSリンカーによって連結されたモノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域である。このCARの構造は、ヒンジ、膜貫通領域、CD28若しくは41BBの共刺激シグナル伝達領域及び/又はCD3細胞内ドメインを更に含み得る。本開示では、EGFRt-CD3 scFv-CD19 scFv-ヒンジ-TM-CD28/41BB-CD3の核酸コンストラクトは、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に挿入することができる。このベクターは、293T細胞にパッケージ化され得る。T細胞は、PBMCから選別することができ、活性化後、TCR及びPD-1遺伝子は、CRISPR/CAS技術によってノックアウトされ得る。続いて、CARを発現させるためにT細胞をベクターに感染させ得る。調製されたCAR-T細胞は、フローサイトメトリによってCARの感染効率及び遺伝子編集効率を検出するために使用され得る。
【0060】
上記の実施例の免疫細胞マーカー、例えばCD3は、他の免疫細胞マーカー、例えばCD7及びCD137などで置き換えられ得る。場合により、2つの抗原結合ドメインを含むCARがタンデム形態で配置される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、アミノ末端からカルボキシル末端に、(i)VL2-VH2-VL1-VH1;(ii)VL2-VH2-VH1-VL1;(iii)VL1-VH1-VL2-VH2;(iv)VL1-VH1-VH2-VL2;(v)VH2-VL2-VL1-VH1;(vi)VH2-VL2-VH1-VL1;(vii)VH1-VL1-VL2-VH2;又は(viii)VH1-VL1-VH2-VL2として配置され、式中、VH1は、第1の抗原結合ドメインの重鎖可変ドメインであり、VL1は、第1の抗原結合ドメインの軽鎖可変軽ドメインであり、VH2は、第2の抗原結合ドメインの重鎖可変ドメインであり、VL2は、第2の抗原結合ドメインの軽鎖可変ドメインである。例えば、CARは、下記の式IV又はIV’:L3-scFv1-R-scFv2-H3-TM3-C3-CD3(IV);L3-scFv2-R-scFv1-H3-TM3-C3-CD3(IV’)によって表される構造を有し得、式中、各「-」は、独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり、L3は、任意選択的なシグナルペプチド配列であり、scFv1は、腫瘍細胞マーカーを標的化する抗原結合ドメインであり、Rは、剛性(rigid)結合部又は可動性結合部であり、scFv2は、T細胞及びNK細胞コンセンサスマーカーを標的化する抗原結合ドメイン(例えば、抗体一本鎖可変領域配列)であり、H3は、任意選択的なヒンジ領域であり、TM3は、膜貫通ドメインであり、C3は、共刺激ドメインであり、CD3は、CD3由来の細胞質シグナル伝達配列である。場合により、2つの抗原結合ドメインを含むCARがループ形態で配置される。場合により、第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、アミノ末端からカルボキシル末端に、(i)VL2-VH1-VL1-VH2;(ii)VH2-VL1-VH1-VL2;(iii)VL1-VH2-VL2-VH1;(iv)VH1-VL2-VH2-VL1;(v)VL2-VL1-VH1-VH2;(vi)VH2-VH1-VL1-VL2;(vii)VL1-VL2-VH2-VH1;又は(viii)VH1-VH2-VL2-VL1として配置され、VH1は、第1の抗原結合ドメインの重鎖可変ドメインであり、VL1は、第1の抗原結合ドメインの軽鎖可変軽ドメインであり、VH2は、第2の抗原結合ドメインの重鎖可変ドメインであり、VL2は、第2の抗原結合ドメインの軽鎖可変ドメインである。例えば、CARは、以下の式VI、VI’、VI’’又はVI’’’L8-VL1-VH2-I-VL2-VH1-H8-TM8-C8-CD3(VI);L8-VH1-VL2-I-VH2-VL1-H8-TM8-C8-CD3(VI’);L8-VL2-VH1-I-VL1-VH2-H8-TM8-C8-CD3(VI’’);L8-VH2-VL1-I-VH1-VL2-H8-TM8-C8-CD3(VI’’’)の構造を有し得、式中、各「-」は、独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり、L8は、任意選択的なシグナルペプチド配列であり、VH1は、抗腫瘍細胞マーカー抗体重鎖可変領域であり、VL1は、抗腫瘍細胞マーカー抗体軽鎖可変領域であり、VH2は、抗T細胞及びNK細胞コンセンサスマーカー(CD7又はCD2など)抗体重鎖可変領域であり、VL2は、抗T細胞及びNK細胞コンセンサスマーカー(CD7又はCD2など)抗体軽鎖可変領域であり、Iは、可動性結合部であり、H8は、任意選択的なヒンジ領域であり、TM8は、膜貫通ドメインであり、C8は、共刺激ドメインであり、CD3は、CD3由来の細胞質シグナル伝達配列である。
【0061】
場合により、2つの抗原結合ドメインを含むCARが、並列形態で配置される。並列形態は、第2の抗原結合ドメインを有する第2のCARの完全コンストラクトに結合した第1の抗原結合ドメインを有する第1のCARの完全コンストラクトを含み得る。並列形態の例は、tEGFR-CD19 scFv-CD28-CD3-CD3 scFv-41BB-CD3であり得る。ここで示されるtEGFRは、安全スイッチとして機能することができ、これは、本開示で説明される他の安全スイッチで置き換えられ得る。本明細書で説明されるように、CD19 scFv及びCD3 scFvは、抗原結合ドメインの2つの例であり、これらは、本開示で説明される様々な抗原結合ドメインで置き換えられ得る。CD28は、膜貫通ドメインの一例であり、これは、本明細書で説明される他の膜貫通ドメインで置き換えられ得る。41BBは、共刺激ドメインの一例であり、これは、本明細書で説明される他の共刺激ドメインで置き換えられ得る。場合により、第1のCARと第2のCARとを結合するためにリンカーが用いられる。リンカーは、開裂可能なリンカーであり得る。開裂可能なリンカーは、自己開裂ペプチド、例えば2A自己開裂ペプチドであり得る。
【0062】
更に、CAR又は二重特異性CARをコードする核酸分子も本開示で検討される。核酸は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第1の配列を含み得、本明細書では、このCARは、結合部分を含み得、この結合部分は、(i)対象に投与されたときに本明細書で説明される細胞に対する対象の免疫応答を抑制又は低減する第1の抗原結合ドメインと、これが結合した、(ii)疾患関連抗原に結合することが可能な第2の抗原結合ドメインとを含み、1つ以上のCARの各CARは、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを更に含み得る。第1の抗原結合ドメインは、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD16a、CD16b、CD25、CD27、CD28、CD30、CD38、CD45、CD48、CD50、CD52、CD56、CD57、CD62L、CD69、CD94、CD100、CD102、CD122、CD127、CD132、CD137、CD160、CD161、CD178、CD218、CD226、CD244、CD159a(NKG2A)、CD159c(NKG2C)、NKG2E、CD279、CD314(NKG2D)、CD305、CD335(NKP46)、CD337、CD319(CS1)、TCRα、TCRβ及びSLAMF7からなる群から選択される免疫細胞抗原を標的化することができる。第2の抗原結合ドメインは、CD19などの疾患関連抗原を標的化することができる。疾患関連抗原の他の非限定的な例としては、BCMA、VEGFR2、CD19、CD20、CD30、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD52、CD56、CD80、CD86、CD81、CD123、cd171、CD276、B7H4、CD133、EGFR、GPC3;PMSA、CD 3、CEACAM6、c-Met、EGFRvIII、ErbB2、ErbB3 HER-2、HER3、ErbB4/HER-4、EphA2、IGF1R、GD2、O-アセチルGD2、O-アセチルGD3、GHRHR、GHR、Fltl、KDR、Flt4、CD44V6、CEA、CA125、CD151、CTLA-4、GITR、BTLA、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、ルイス、TNFR1、TNFR2、PD1、PD-L1、PD-L2、HVEM、MAGE-A、メソテリン、NY-ESO-1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、CD40、CD137、TWEAK-R、LTPR、LIFRP、LRP5、MUC1、TCRa、TCRp、TLR7、TLR9、PTCH1、WT-1、Robl、Frizzled、OX40、CD79b、クローディン18.2、葉酸受容体α、葉酸塩受容体(3、GPC2、CD70、BAFF-R及びノッチ-1-4が挙げられる。
【0063】
核酸分子は、エンハンサー部分をコードする第2の配列を更に含み得、このエンハンサー部分は、細胞中で発現したときにCARの1つ以上の活性を強化し得る。エンハンサー部分は、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-23、PD-1、PD-L1、CD122、CSF1R、CTAL-4、TIM-3、CCL21、CCL19、TGFRベータ、その受容体、それらの機能性フラグメント、それらの機能性バリアント及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。核酸分子は、誘導性細胞死部分をコードする第2の配列を更に含み得、この誘導性細胞死部分は、細胞中で発現したとき、細胞死アクティベーターに接触すると、その細胞の死をもたらし得る。誘導性細胞死部分は、rapaCasp9、iCasp9、HSV-TK、ACD20、mTMPK、ACD19、RQR8及びEGFRtからなる群から選択され得る。
【0064】
核酸分子は、第1の配列及び第2の配列が隣接する第3の配列を更に含み得、第3の配列は、開裂可能なリンカーをコードし得る。開裂可能なリンカーは自己開裂ペプチドであり得る。核酸分子は、第1の配列及び/又は上記第2の配列の発現を調節する調節配列を更に含み得る。本開示では、本明細書で説明される核酸分子を含むキットも検討される。場合により、本明細書で説明されるCARをコードする核酸は、CARを発現して操作された細胞を生成するために、免疫細胞中に送達され得る。
【0065】
細胞を改変する方法
いくつかの態様では、本明細書で説明される系で細胞を改変する方法が本明細書で説明される。いくつかの態様では、細胞は、少なくとも1つの本明細書で説明されるキメラ受容体を発現させるために改変される。いくつかの態様では、細胞は、少なくとも1つの本明細書で説明されるMHCタンパク質を発現させるために改変される。いくつかの態様では、細胞は、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドをノックインすることによって改変され、キメラポリヌクレオチドは、キメラ受容体又はMHCタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも第1の系及び少なくとも第2の系によって改変され得、第1の系及び第2の系のキメラポリヌクレオチドは、それぞれ導入遺伝子をコードする。第1の系及び第2の系の導入遺伝子は、同じであるか又は異なり得る。例えば、第1の系は、キメラ受容体又はMHCタンパク質を含む第1の導入遺伝子をノックインすることができ、第2の系は、第1のキメラ受容体又は第1のMHCタンパク質と異なるキメラ受容体又はMHCタンパク質を含む第2の導入遺伝子をノックインすることができる。いくつかの実施形態では、細胞は、第1の系、第2の系又は任意の更なる番号の系によって改変され得、改変された細胞は、続いて第1のキメラ受容体、第2のキメラ受容体又は任意の更なる番号のキメラ受容体を発現し得る。
【0066】
いくつかの態様では、方法は、本明細書で説明される細胞を、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせと接触させることを含む。いくつかの態様では、方法は、細胞をキメラポリヌクレオチドと接触させることを含み、キメラポリヌクレオチドは、ノックイン後、キメラ受容体又はMHCタンパク質をコードするか又は発現する。いくつかの態様では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせは、当技術分野の任意の方法により、容易に細胞、例えば哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞又は昆虫細胞中に導入され得る。例えば本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせは、物理的、化学的又は生物学的手段によって細胞中にトランスフェクトされ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせは、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、遺伝子銃、エレクトロポレーションなどの物理的な方法で細胞中に送達され得る。
【0067】
本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを細胞中に導入するための物理的な方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、遺伝子銃、エレクトロポレーションなどが挙げられ得る。本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを細胞に導入する方法の1つは、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0068】
本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを細胞中に導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、例えば巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ及び脂質ベースの系、例えば水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、球状核酸(SNA)、リポソーム又は脂質ナノ粒子が挙げられ得る。送達ビヒクルとしてインビトロ及びインビボで用いるための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。他の従来技術の核酸の標的化送達法、例えば標的化ナノ粒子を用いた遺伝子改変部分をコードする非天然ポリヌクレオチド又はベクターの送達が利用可能である。
【0069】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルは、リポソームである。本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを細胞に導入するための脂質製剤の使用(インビトロ、エクスビボ又はインビボ)が検討される。別の態様では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせは、脂質に関連付けられ得る。脂質と会合した本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせは、リポソームの水性内部に封入され得、リポソームの脂質二重層内に散在し得、リポソーム及び遺伝子改変部分又は遺伝子改変部分をコードする異種ポリヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに付着し得、リポソームに包括され得、リポソームと複合体化し得、脂質を含有する溶液中に分散され得、脂質と混合され得、脂質と組み合わされ得、脂質中に懸濁液として含有され得、ミセルを含有するか又はミセルと複合体化し得、又は他の方法で脂質と会合し得る。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクターを伴う組成物は、溶液中のいずれの特定の構造にも限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、これらは、二層構造において、ミセルとして又は「崩壊」構造で存在する。代わりに、これらは、溶液中に単に散在して、場合により大きさ又は形状が均一でない凝集体を形成し得る。脂質は、いくつかの実施形態では、天然又は合成の脂質である脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質内に天然に存在する脂肪小滴並びに脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪族アミノアルコール及び脂肪族アルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体を含有する化合物のクラスが挙げられる。
【0070】
使用に好適な脂質は商業的供給源から入手される。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質の貯蔵液は、約-20℃で保存される場合が多い。「リポソーム」は、密閉された脂質二重層又は凝集体を生成することによって形成される様々な単層膜及び多重膜脂質ビヒクルを包含する一般名称である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部水性媒体を有するベシクル構造を有することを特徴とする場合が多い。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質を過剰の水溶液に懸濁させると自発的に形成される。脂質構成要素は、自己再構成を経た後に閉鎖構造を形成し、脂質二重層の間に水及び溶解溶質を包括する。しかし、通常のベシクル構造と異なる溶液中の構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、いくつかの実施形態ではミセル構造を取るか、又は単に脂質分子の不均一な凝集体として存在する。リポフェクタミン-核酸複合体も検討される。
【0071】
場合により、非ウイルス送達法には、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、エキソソーム、ポリカチオン又は脂質:カーゴコンジュゲート(又は凝集体)、裸のポリペプチド(例えば、組換えポリペプチド)、裸のDNA、人工ビリオン及び薬剤で強化したポリペプチド又はDNAの取り込みが含まれる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせは、DNA及びRNAベクターの使用などの生物学的方法を介して細胞に送達され得る。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物、例えばヒトの細胞に挿入するために最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、いくつかの実施形態では、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例示的なウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)、ポックスベクター、パルボウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター又は単純ヘルペスウイルスベクター(HSV)が挙げられる。場合により、レトロウイルスベクターとしては、ガンマレトロウイルスベクター、例えばモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV、MMLV、MuLV又はMLV)又はマウススチーム細胞ウイルス(MSCV)ゲノム由来のベクターが挙げられる。場合により、レトロウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ゲノム由来のものなどのレンチウイルスベクターも挙げられる。場合により、AAVは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12又はこれらの組み合わせを含む血清型を含む。これらの初期血清型に基づき、各血清型のAAVカプシドを操作して、生物学的機能、組織又は細胞選択により適したものにすることができる。
【0073】
いくつかの態様では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせは、CRISPR、RNA干渉技術、TALEN(転写活性化因子様(TAL)エフェクターヌクレアーゼ)及びジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)など、本明細書で説明される細胞を改変するために本開示で使用する様々な遺伝子編集法を含む。
【0074】
場合により、免疫細胞の遺伝子を編集するためにCRISPR/Cas9系が使用される。例えば、CRISPR/Cas9系は、T細胞療法のために本明細書で説明される細胞を生成するために、免疫細胞の内因性TCR又は細胞表面マーカー(例えば、CS1、CD7、CD137)をノックアウトするために使用され得る。CRISPR/Cas9(クラスター化等間隔短鎖回文リピート)/Cas(CRISPR関連)系は、ウイルス又は外因性プラスミド耐性のある原核生物に固有の天然の免疫系である。CRISPR/Cas系タイプIIは、直接ゲノム志向ゲノム編集ツールとして多くの真核生物及び原核生物に適用されてきた。CRISPR/Cas9系の開発により、DNA配列を編集し、標的遺伝子の発現レベルを調節する能力に革命がもたらされ、生物の正確なゲノム編集のための強力なツールを提供した。簡略化されたCRISPR/Cas9系は、Cas9タンパク質及びgRNAを含み得る。その作用原理は、gRNAがそれ自体のCas9ハンドルを介してCas9タンパク質とCas9-gRNA複合体を形成し、Cas9-gRNA複合体中のgRNAの塩基相補性対合配列が、塩基相補性対合の原理によって標的遺伝子の標的配列と対合されるというものである。Cas9は、それ自体のエンドヌクレアーゼ活性を用いて標的DNA配列を開裂する。従来のゲノム編集技術と比較すると、CRISPR/Cas9系は、使いやすさ、単純性、低コスト、プログラミング性及び複数の遺伝子を同時に編集する能力といういくつかの明確な利点を有する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変部分は、Casと複合体化してCas/RNPを形成するgRNAを含む。いくつかの態様では、遺伝子改変部分はCas9/RNPである。
【0075】
ガイドRNAに結合し、ガイドRNAによって配列特異的開裂を誘導するようにガイドされるか、さもなければ配列特異的な方法で核酸配列に結合して、非特異的な開裂を誘発する、タンパク質は、本開示との整合性を有する。こうしたタンパク質としては、プログラム可能エンドヌクレアーゼ、例えばプログラム可能Casエンドヌクレアーゼが挙げられる。本開示と整合するプログラム可能Casエンドヌクレアーゼの例としては、Cas12a(又はCpf1)、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas12f、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas13a、Cas13b、Cas14、Cas9などが挙げられる。場合により、部位特異的エンドヌクレアーゼとしては、その任意の誘導体、その任意のバリアント又はその任意のフラグメントを含む、Cas12a(Cpf1)を挙げることができる。Cas12aは、約1,300アミノ酸を有する、クラスII、タイプVのCRISPR/Casエフェクタータンパク質と分類されている。Cas12aはCas9よりも小さい。Cas12aは、REC及びRuvCドメインなど、2つの主ドメインを含む。Cas12aは、Cas9のようにHNHエンドヌクレアーゼドメインを有さない。Cas12aは、T-豊富(5’-TTTN-3’)PAMのすぐ下流側で二本鎖DNA(dsDNA)を開裂させる。Cas12aは、T-豊富PAMから20ヌクレオチド離れた位置で長さ4-5ntの5’-オーバーハングを生成する。場合により、Cas12aによって産生された付着末端が、HR中のDNA置換効率を向上させる。場合により、部位特異的エンドヌクレアーゼとしては、Cas13a(C2c2)が挙げられ得る。代わりに、場合により、部位特異的エンドヌクレアーゼとしては、Cas13bが挙げられ得る。Cas13は、標的を認識すると無差別なRNA活性の副作用を示す、RNA標的化エンドヌクレアーゼである。
【0076】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせと接触させることを含み、細胞は、免疫細胞又は幹細胞を含む。いくつかの態様では、細胞は、本明細書で説明される免疫細胞(例えば、リンパ球、B細胞又はT細胞)である。場合により、T細胞は、細胞傷害性T細胞、アルファ・ベータT細胞、ガンマ・デルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、調節性T細胞又はTヘルパー細胞であり得る。いくつかの態様では、免疫細胞は、ILCを含む。いくつかの態様では、幹細胞は、造血幹細胞又はiPSCである。いくつかの態様では、iPSCは、免疫細胞又はT細胞から誘導され得る。
【0077】
本明細書で説明される細胞は、本明細書で説明される疾患又は状態の治療を必要とする対象ではないドナー由来の試料から単離され得る。試料は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸膜滲出、脾臓組織及び腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない体液又は組織であり得る。場合により、試料は、NK細胞、NKT細胞、T細胞又はT細胞前駆細胞を含む。例えば、場合により、試料は、臍帯血試料、末梢血試料(例えば、単核球分画)又は多能性細胞を含む対象由来の試料である。いくつかの実施形態では、対象由来の試料を培養して、人工多能性幹(iPS)細胞を生成することができ、これらの細胞は、NK細胞、NKT細胞又はT細胞を産生するために用いられる。細胞試料は、対象からそのまま培養され得、使用前に凍結保存され得る。いくつかの実施形態では、細胞試料の入手は、細胞試料の採集を含む。他の態様では、試料は、第三者から入手される。なお更なる態様では、対象由来の試料は、試料中のT細胞又はT細胞前駆体を精製又は濃縮するように処理され得る。例えば、試料は、勾配精製、細胞培養選択及び/又は細胞選別(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)を介した)に供され得る。細胞は、NK細胞であり得る。NK細胞は、末梢血、臍帯血又は本明細書で説明される他の供給源から入手され得る。NK細胞は、人工多能性幹細胞から誘導され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法で使用され得る細胞は、所与の因子に対して陽性又は陰性であり得る。いくつかの態様では、細胞は、細胞株から調製され得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、CD3+細胞、CD3-細胞、CD5+細胞、CD5-細胞、CD7+細胞、CD7-細胞、CD14+細胞、CD14-細胞、CD8+細胞、CD8-細胞、CD103+細胞、CD103-細胞、CD11b+細胞、CD11b-細胞、BDCA1+細胞、BDCA1-細胞、L-セレクチン+細胞、L-セレクチン-細胞、CD25+、CD25-細胞、CD27+、CD27-細胞、CD28+細胞、CD28-細胞、CD44+細胞、CD44-細胞、CD56+細胞、CD56-細胞、CD57+細胞、CD57-細胞、CD62L+細胞、CD62L-細胞、CD69+細胞、CD69-細胞、CD45RO+細胞、CD45RO-細胞、CD127+細胞、CD127-細胞、CD132+細胞、CD132-細胞、IL-7+細胞、IL-7-細胞、IL-15+細胞、IL-15-細胞、レクチン様受容体G1陽性細胞、レクチン様受容体G1陰性細胞又はこれらの分化細胞若しくは脱分化細胞であり得る。細胞によって発現される因子の例は、限定を意図するものではなく、当業者は、細胞が、当技術分野で既知の任意の因子に対して陽性又は陰性であり得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、細胞は、2つ以上の因子に対して陽性であり得る。例えば、細胞は、CD4+及びCD8+であり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、細胞は、2つ以上の因子に対して陰性であり得る。例えば、細胞は、CD25-、CD44-及びCD69-であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上の因子に対して陽性であり、1つ以上の因子に対して陰性であり得る。例えば、細胞は、CD4+及びCD8-であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞マーカーを用いて、細胞集団を選択、濃縮又は枯渇させることができる。いくつかの実施形態では、濃縮することは、単球分画を選択することを含む。いくつかの実施形態では、濃縮することは、単球分画から免疫細胞の集団を選別することを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上の所与の因子を有するか又は有さないことに関して選択することができる(例えば、細胞を、1つ以上の因子の有無に基づいて分離することができる)。いくつかの実施形態では、選択した細胞は、インビトロで形質導入及び/又は拡大することもできる。選択された細胞は、注入前にインビトロで拡大することができる。いくつかの実施形態では、選択された細胞は、本明細書で提供されるベクターを形質導入され得る。本明細書で開示される方法のいずれかで使用される細胞は、本明細書で開示される細胞のいずれかの混合物(例えば、2つ以上の異なる細胞)であり得ることを理解されたい。例えば、本開示の方法は、細胞を含み得、細胞は、CD4+細胞とCD8+細胞との混合物である。別の例では、本開示の方法は、細胞を含み得、細胞は、CD4+細胞とナイーブ細胞との混合物である。場合により、細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+及びIL-7Ra+からなる幹メモリーTSCM細胞であり得、幹メモリー細胞は、CD95、IL-2R13、CXCR3及びLFA-1も発現し得、メモリー細胞に特有の多くの機能的特性を示す。本明細書で提供される細胞は、L-セレクチン及びCCR7を含むセントラルメモリーTCM細胞でもあり得、セントラルメモリー細胞は、例えば、IL-2を分泌できるが、IFNγ又はIL-4を分泌できない。細胞は、L-セレクチン又はCCR7を含むエフェクターメモリーTEM細胞でもあり得、例えばIFNγ及びIL-4などのエフェクターサイトカインを産生することができる。
【0080】
いくつかの態様では、本明細書で説明される細胞は、免疫細胞又は幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞又はマクロファージなどのリンパ球である。いくつかの態様では、T細胞は、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、調節性T細胞又はTヘルパー細胞である。いくつかの実施形態では、改変対象の細胞は、自然リンパ球(ILC)を含む免疫細胞である。いくつかの態様では、本明細書で説明される方法によって改変される細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)由来免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞はiPSC由来T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞はiPSC由来ナチュラルキラーT細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法によって改変された細胞は、幹細胞である。いくつかの態様では、幹細胞は、造血幹細胞(HSC)又は人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される細胞は、細胞表面マーカーを含む。細胞表面マーカーは、免疫細胞抗原であり得る。本明細書で説明される細胞を調製するために用いられる免疫細胞の免疫細胞抗原をコードする遺伝子は、不活性化することが可能である。免疫細胞抗原の例としては、CD2、CD3、CD4、CDS、CD7、CD8、CD16a、CD16b、CD25、CD27、CD28、CD30、CD38、CD45、CD48、CD50、CD52、CD56、CD57、CD62L、CD69、CD94、CD100、CD102、CD122、CD127、CD132、CD137、CD160、CD161、CD178、CD218、CD226、CD244、CD159a(NKG2A)、CD159c(NKG2C)、NKG2E、CD279、CD314(NKG2D)、CD305、CD335(NKP46)、CD337、CD319(CS1)、TCRa、TCRf3及びSLAMF7が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、場合により、免疫細胞のCD7をコードする遺伝子は、不活性化されている。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを用いる方法は、細胞集団における本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドのノックイン効率を、同等の細胞集団における、環状であるか、少なくとも1つの共有結合閉環型末端を有するか、又は少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを有するキメラの不在下での同等のキメラポリヌクレオチドのヌクレアーゼ(例えば、Cas)タンパク質媒介性ノックイン効率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを用いる方法は、細胞集団における本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドのノックイン効率を、同等の細胞集団における少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での同じキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性ノックイン効率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを用いる方法は、細胞集団における本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドのうちのキメラポリヌクレオチドの発現を、同等の細胞集団における、環状であるか、少なくとも1つの共有結合閉環型末端を有するか、又は少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを有するキメラの不在下での同等のキメラポリヌクレオチドのうちのキメラポリヌクレオチドのヌクレアーゼ(例えば、Cas)タンパク質媒介性発現と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを用いる方法は、細胞集団における本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドのうちのキメラポリヌクレオチドの発現を、同等の細胞集団における少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での同じキメラポリヌクレオチドのうちのキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質媒介性発現と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを用いる方法は、細胞集団における本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドの生存率を、同等の細胞集団における、環状であるか、少なくとも1つの共有結合閉環型末端を有するか、又は少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを有するキメラの不在下での同等のキメラポリヌクレオチドのヌクレアーゼ(例えば、Cas)タンパク質が媒介した生存率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせを用いる方法は、細胞集団における本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドの生存率を、同等の細胞集団における少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントの不在下での同じキメラポリヌクレオチドのCasタンパク質が媒介した生存率と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超えて増加させる。
【0088】
場合により、本明細書で説明される細胞は、(i)異種T細胞、異種NK細胞及び異種T細胞と異種NK細胞との混合物が挙げられるが、これらに限定されない、本明細書で説明される細胞に対して異種である細胞の存在下でのインビトロの生存能力を維持することによる残存度の向上、(ii)拡大度の向上、又は(iii)TCR、MHC分子及び/若しくは免疫細胞抗原が不活性化されていない1つ以上のCARを含む追加の操作された免疫細胞と比較した、抗原を含む標的細胞に対する細胞傷害性の向上を示し得る。場合により、本明細書で説明される細胞は、(i)異種T細胞、異種NK細胞及び異種T細胞と異種NK細胞との混合物が挙げられるが、これらに限定されない、本明細書で説明される細胞に対して異種である細胞の存在下でのインビトロの生存能力を維持することによる残存度の向上、(ii)拡大度の向上、又は(iii)向上した細胞傷害性の2つ以上を示すことを特徴とし得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される細胞は、本明細書で説明される細胞の1つ以上の活性を向上させることが可能なエンハンサー部分も含み得る。エンハンサー部分は、本明細書で説明される細胞の1つ以上の細胞内シグナル伝達経路を構成的に上方調節するように構成され得る。1つ以上の細胞内シグナル伝達経路は、1つ以上のサイトカインシグナル伝達経路であり得る。エンハンサー部分は、自己オリゴマー化によって自己活性化性であり得る。エンハンサー部分は、自己二量体化によって自己活性化性であり得る。エンハンサー部分は、サイトカイン又はサイトカイン受容体であり得る。エンハンサー部分は、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-23、PD-1、PD-L1、CD122、CSF1R、CTAL-4、TIM-3、CCL21、CCL19、TGFRベータ、その受容体、それらの機能性フラグメント、それらの機能性バリアント及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0090】
いくつかの態様では、本明細書で説明される細胞は、誘導性細胞死部分を更に含み、これは、細胞死アクティベーターと接触すると本明細書で説明される細胞の自殺を生じさせ得る。誘導性細胞死部分は、rapaCasp9、iCasp9、HSV-TK、ACD20、mTMPK、ACD19、RQR8及びEGFRtからなる群から選択され得る。場合により、誘導性細胞死部分はEGFRtであり、細胞死アクティベーターは、EGFRtに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである。場合により、誘導性細胞死部分はHSV-TKであり、細胞死アクティベーターはGCVである。場合により、誘導性細胞死部分はiCasp9であり、細胞死アクティベーターはAP1903である。細胞死アクティベーターは、核酸、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物、小分子、酵素、リボゾーム、プロテアソーム、それらのバリアント又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0091】
いくつかの態様では、本明細書で提供される本明細書で説明される細胞は、(i)本明細書で説明される細胞の1つ以上の活性を向上させることが可能なエンハンサー部分と、(ii)キメラポリペプチドと細胞死アクティベーターとが接触すると本明細書で説明される細胞の死を生じさせることが可能な誘導性細胞死部分とを含むキメラポリペプチドを含み得、エンハンサー部分は、誘導性細胞死部分と結合している。場合により、エンハンサー部分と誘導性部分とは、リンカーによって結合され得る。リンカーは、開裂可能なリンカー、例えば自己開裂ペプチドであり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される細胞は、少なくとも1つの異種受容体を含む少なくとも1つの異種ポリペプチドを更に含み得る。いくつかの態様では、異種受容体は、結合部分を含むキメラポリペプチド受容体(CPR)であり、結合部分は、(i)対象に投与されると、本明細書で説明される細胞に対する対象の免疫応答を抑制又は低下させる、第1の抗原結合ドメインと、(ii)疾患関連抗原に結合することが可能な第2の抗原結合ドメインとを含む。1つ以上のCPRの個々のCPRは、(i)第1の抗原結合ドメイン、(ii)第2の抗原結合ドメイン、又は(iii)第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインの両方を含み得る。1つ以上のCPRのうちのCPRは、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達領域とを更に含み得る。場合により、本明細書で説明される細胞中の1つ以上のCPRは、1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)又は操作されたT細胞受容体(TCR)である。場合により、本明細書で説明される細胞は、CARと操作されたTCRとの両方を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種受容体は、少なくとも1つのキメラ抗原受容体(CAR)を含み、少なくとも1つのCARの各CARは、ヒンジと、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達領域と、細胞内シグナル伝達領域とを含む。
【0093】
操作されたTCRはTCR融合タンパク質であり得る。例えば、TCR融合タンパク質は、TCR複合体の1つ以上のサブユニットに融合した異種抗原結合ドメインを含み得る。場合により、TCR融合タンパク質は、TCR細胞外ドメインの少なくとも一部分及びTCR細胞内ドメインを含むTCRサブユニットと、抗原結合ドメインを含む抗体ドメインとを含み得、TCRサブユニットと抗体ドメインとは、結合している。TCR融合タンパク質は、T細胞中で発現すると、TCR複合体中に組み込まれ得る。場合により、TCR融合タンパク質は、TCR膜貫通ドメインを更に含み得る。TCR細胞外ドメイン、TCR細胞内ドメイン又はTCR膜貫通ドメインは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、TCRガンマ鎖、TCRデルタ鎖、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ又はCD3ゼータに由来し得る。場合により、操作されたTCRを含む本明細書で説明される細胞の内因性TCRは、不活性化されている。
【0094】
場合により、不活性化された内因性TCRを含む本明細書で説明される細胞は、GVHDを生じさせない場合がある。例えば、内因性TCRサブユニットをコードする遺伝子は、不活性化され得る。別の例では、内因性TCRサブユニットをコードする遺伝子は、内因性TCRが形成できないように突然変異され得る。
【0095】
CARは、細胞外抗原認識領域、例えばscFv(一本鎖可変フラグメント)、膜貫通領域及び細胞内共刺激シグナル領域を含み得る。CARの細胞外ドメインは、特定の抗原を認識し、続いて細胞内ドメインを介してシグナルを伝達して、T細胞の活性化及び増殖、細胞溶解傷害性及びサイトカインの分泌を生じさせることにより、標的細胞を消失させることができる。患者の自己T細胞(又は異種ドナー)を、最初に単離し、活性化し、遺伝子操作してCAR-T細胞を産生でき、これを続いて同じ患者に注入することができる。このようにして、移植片対宿主疾患の可能性を低下させることができ、MHCを制限しない方法で抗原をT細胞によって認識させることができる。更に、CAR-Tは、抗原を発現するあらゆる癌を治療することができる。
【0096】
いくつかの態様では、本明細書で説明される細胞は、二重特異性又は多価CARを介して、疾患関連抗原(例えば、腫瘍関連抗原又は腫瘍細胞マーカー)及び免疫細胞抗原(例えば、CD3、CD7又はCD137)の両方を標的化することができる。例えば、本開示は、腫瘍細胞マーカー及びCD3などの免疫細胞抗原を標的化することが可能な操作された免疫細胞を提供する。内因性TCRは、不活性化(例えば、破壊、阻害、ノックアウト又はサイレンシング)され得る。腫瘍細胞マーカー及び免疫細胞抗原を標的化する本開示のCAR-Tは、陽性腫瘍細胞を消失させ、且つ宿主免疫細胞抗原陽性T細胞及びNK細胞を除去することにより、宿主拒絶反応(HVG)を回避することができる。本開示では、本明細書で説明される細胞の内因性TCRをノックアウトすることができ、移植片対宿主疾患(GVHD)を予防することができ、それにより汎用の又は普遍的なCAR-T(UCAR-T)細胞を調製することができる。本明細書で説明される細胞は、自己T細胞又は同種異系T細胞に由来し得る。更に、本明細書で説明される細胞は、細胞自殺要素(例えば、誘導性細胞死部分)を含み得、CAR-Tは、副作用を低減させるために、任意の時点で不活性化/除去することができる。場合により、本明細書で説明される細胞は、エンハンサー部分を更に含み得る。エンハンサー部分は、本明細書で説明される細胞が対象に投与された時に、本明細書で説明される細胞の1つ以上の活性を調節することができる。例えば、エンハンサー部分は、サイトカイン(例えば、IL-5又はIL-7)又はサイトカイン受容体(例えば、IL-5R又はIL-7R)であり得る。エンハンサー部分は、本明細書で説明される細胞内のシグナル伝達経路、例えば、STAT5シグナル伝達経路を増強することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される細胞は、CD19及びCD3の両方を標的化する二重特異性CARを含む。この実施例で示される本明細書で説明される細胞は、切断された上皮成長因子受容体(EGFRt又はtEGFR、これらは本明細書で互換的に使用され得る)などの誘導性細胞死部分を更に含み得る。誘導性細胞死部分又はエンハンサー部分は、別個の発現ベクターを介して免疫細胞に導入することができる。場合により、誘導性細胞死部分及びエンハンサー部分は、両方の部分をコードする配列を含む発現ベクターを介して免疫細胞に導入することができる。場合により、誘導性細胞死部分とエンハンサー部分とは、結合され、キメラポリペプチドとして発現される。本明細書で説明される細胞の適用は、対象の疾患又は状態(例えば、癌)を治療するための細胞療法に使用することができ、GVHD及びHvGを回避し、治療コストを減らし、必要に応じて任意の時点でCAR-Tを不活性化し、免疫療法の副作用を減らし、製品の安全性を確保するために、事前に大規模に調製することができる。
【0097】
治療方法
いくつかの実施形態において、本明細書では、本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド又は本明細書で説明される改変細胞を使用する方法が開示される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物を対象に投与することにより、対象の疾患又は状態を治療することを含む。いくつかの実施形態では、投与は、任意の好適な投与方法、例えば全身投与(例えば、静脈内、吸入など)によるものであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物は、所定の期間内で少なくとも1回(例えば、2日に1回、1週間に2回、1週間に1回、毎週、1ヶ月に3回、1ヶ月に2回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、10ヶ月に1回、11ヶ月に1回、1年に1回)投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、所定の期間中に2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60,70、80、90、100回)投与される。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物は、例えば経口又は局所投与を含む様々な形態及び経路を介して、治療有効量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、大脳内、くも膜下、眼内、胸骨内、眼科的、内皮、局所、経鼻、肺内、直腸内、動脈内、髄腔内、吸入、病巣内、皮内、硬膜外、嚢内、被膜下、心臓内、経気管、表皮下、くも膜下又は脊髄内に投与、例えば注射又は注入され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、上皮又は粘膜ライニングを介した吸収(例えば、口腔粘膜、直腸、腸粘膜投与)によって投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、複数の投与経路を介して送達される。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物は、静脈内注入によって投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、長期間、例えば24時間超の緩徐な連続注入によって投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈注射又は短期注入として投与される。
【0101】
本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物は、例えば、任意選択的にデポー剤若しくは徐放性製剤又はインプラントで薬剤を臓器に直接注射することにより、局所的に投与され得る。組成物は、速放性製剤の形態、持続放出製剤の形態又は中間放出性製剤の形態で提供され得る。速放性形態は、即時放出を提供し得る。持続放出性製剤は、制御放出又は持続的遅延放出を提供し得る。いくつかの実施形態では、組成物の送達にポンプが使用され得る。いくつかの実施形態では、例えば本開示の組成物の皮下送達にペン型送達装置が使用され得る。
【0102】
本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物は、他の療法、例えば抗ウイルス療法、化学療法、抗生物質、細胞療法、サイトカイン療法又は抗炎症剤と併用して投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される環状ポリリボヌクレオチド又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、単独で又は混合物の構成要素としての1つ以上の治療剤と組み合わせて、使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される線状ポリリボヌクレオチド又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、単独で又は混合物の構成要素としての1つ以上の治療剤と組み合わせて使用され得る。
【0103】
本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物は、疾患又は状態の発生前、発生中又は発生後に投与することができ、治療剤を含む組成物を投与するタイミングは様々であり得る。場合により、細胞又は医薬組成物は、予防薬として使用することができ、病原体による感染症に対して感受性の高いか、又は病原体に関連する状態若しくは疾患の傾向がある対象(例えば、予防接種の対象又は治療の対象)に、連続的に投与することができる。予防的投与は、感染症、疾患若しくは状態が発生する可能性を減らすことができるか、又は感染症、疾患若しくは状態の重症度を低減させることができる。
【0104】
本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物は、症状が発現する前に対象に投与され得る。組成物は、対象(例えば、予防接種の対象又は治療の対象)に、試験結果、例えば診断を提供する試験結果、対象(例えば、予防接種の対象又は治療の対象)中のコロナウイルスの存在を示す試験又は状態の進行、例えば血中酸素濃度の低下を示す試験後に(例えば、その後、できるだけ速やかに)投与され得る。治療剤は、疾患又は状態の発現が検出されたか又は疑われた後に(例えば、その後、速やかに)投与され得る。治療剤は、コロナウイルスへの潜在的曝露後、例えば対象(例えば、予防接種の対象又は治療の対象)が、感染した対象と接触した後又は接触伝染性の可能性がある感染した対象と接触したことを知った後に(例えば、その後、速やかに)投与され得る。
【0105】
本開示の薬剤(例えば、本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物)の実際の投与量レベルは、対象(例えば、予防接種の対象又は治療の対象)に対する毒性を有することなく、特定の対象、組成物又は投与方法に対して望まれる治療応答を達成するだけの薬剤量を得るように変化し得る。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時期、排せつ速度、治療期間、使用される特定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬剤、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康及び過去の病歴並びに医療分野で周知される同種の要因を含む様々な薬物動態学的要因に応じて変化し得る。
【0106】
最適な所望の応答(例えば、治療的及び/又は予防的応答)をもたらすように、投薬レジメンを調節し得る。例えば、治療状況の緊急性に基づいて指示される通りに、単回ボーラスを投与し得るか、数回の分割用量を経時的に投与し得るか、又は用量を比例的に低減若しくは増加させ得る。投与を容易にし、且つ用量を均一にするために、非経口組成物を単位剤形で製剤化することは、特に有利である。本明細書で用いられる単位剤形は、対象(例えば、予防接種の対象又は治療の対象)への単位投与量として適した物理的に分離した単位を指し、各単位は、要求される医薬担体と協働して所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性剤を含む。本開示の単位剤形の仕様は、(a)活性剤の固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、並びに(b)個体の感受性を治療するためのこうした活性剤の配合の技術分野に固有の制限によって決定され、且つこれらに直接依存し得る。用量は、環状ポリリボヌクレオチド又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントの血漿濃度又は局所濃度を参照することにより決定することができる。用量は、線状ポリリボヌクレオチド又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントの血漿濃度又は局所濃度を参照することにより決定することができる。
【0107】
本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド、本明細書で説明される改変細胞又は本明細書で説明される医薬組成物は、正確な投薬量を単回投与するのに適した単位剤形の形態であり得る。単位剤形中で、製剤は、適量の組成物を含む単位用量に分割され得る。単位剤形中で、製剤は、適量の1つ以上の線状ポリリボヌクレオチド、抗体若しくはその抗原結合フラグメント及び/又は治療剤を含む単位用量に分割され得る。単位剤形は、製剤の個別の量を含むパッケージの形態であり得る。非限定的な例は、パッケージ化注射液、バイアル及びアンプルである。本明細書で開示される水性懸濁液組成物は、単回用量の再密封不可能容器中にパッケージ化され得る。複数回用量のための再密封可能容器を例えば防腐剤と組み合わせるか又は組み合わせずに用い得る。本明細書で開示される注射用製剤は、単位剤形、例えば防腐剤を含むアンプル又は複数回用量容器中に存在し得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、用量は、対象の体重1キログラムあたりの細胞の数に基づき得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1000細胞/kg体重~約1000000000000細胞/kg体重の投薬量で投与され得る。約1,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重。いくつかの実施形態では、用量は、約1000細胞/kg体重~約1000000000000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約10,000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約100,000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約1,000,000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約10,000,000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約100,000,000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約1,000,000,000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約10,000,000,000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約100,000,000,000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重~約100,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重~約1,000,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重~約10,000,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重~約100,000,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重~約1,000,000,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重~約10,000,000,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重~約100,000,000,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重~約1,000,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重~約10,000,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重~約100,000,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重~約1,000,000,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重~約10,000,000,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重~約100,000,000,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重~約10,000,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重~約100,000,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重~約10,000,000,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重~約100,000,000,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000細胞/kg体重~約100,000,000細胞/kg体重、約10,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000細胞/kg体重~約10,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000細胞/kg体重~約100,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重、約100,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000細胞/kg体重、約100,000,000細胞/kg体重~約10,000,000,000細胞/kg体重、約100,000,000細胞/kg体重~約100,000,000,000細胞/kg体重、約100,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重、約1,000,000,000細胞/kg体重~約10,000,000,000細胞/kg体重、約1,000,000,000細胞/kg体重~約100,000,000,000細胞/kg体重、約1,000,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000,000細胞/kg体重~約100,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重又は約100,000,000,000細胞/kg体重~約1,000,000,000,000細胞/kg体重の投薬量で投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1000細胞/kg体重~約1000000000000細胞/kg体重、約1,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重、約10,000,000細胞/kg体重、約100,000,000細胞/kg体重、約1,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000,000細胞/kg体重、約100,000,000,000細胞/kg体重又は約1,000,000,000,000細胞/kg体重の投薬量で投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1000細胞/kg体重~約1000000000000細胞/kg体重、少なくとも約1,000細胞/kg体重、約10,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重、約10,000,000細胞/kg体重、約100,000,000細胞/kg体重、約1,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000,000細胞/kg体重又は約100,000,000,000細胞/kg体重の投薬量で投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1000細胞/kg体重~約1000000000000細胞/kg体重、最大で約10,000細胞/kg体重、約100,000細胞/kg体重、約1,000,000細胞/kg体重、約10,000,000細胞/kg体重、約100,000,000細胞/kg体重、約1,000,000,000細胞/kg体重、約10,000,000,000細胞/kg体重、約100,000,000,000細胞/kg体重又は約1,000,000,000,000細胞/kg体重の投薬量で投与され得る。いくつかの実施形態では、無核細胞が、少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、1日、2日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、2年、3年又は4年以内に2回対象に投与される。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法は、対象における疾患又は状態を治療するものであり、本方法は、治療される対象中で先天性免疫応答又はGVHDを誘発することなく、本明細書で説明される細胞又は医薬組成物を投与することを含む。一部の人では、本細胞又は医薬組成物は、癌である疾患又は状態の治療を必要とする対象において疾患又は状態を治療する。癌の非限定的な例としては、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、腺様嚢胞癌、副腎癌、副腎皮質癌、成人性白血病、AIDS関連リンパ腫、アミロイド症、肛門癌、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調症、非定型ほくろ症候群、非定型奇形腫/横紋筋様腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、バート・ホッグ・デュベ症候群、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(消化管)、原発不明癌腫、心(心臓)腫瘍、子宮頸癌、胆管癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性新生物、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚細胞性リンパ腫、腺管癌、胚芽腫、子宮内膜癌、上衣細胞腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、卵管癌、骨の線維性組織球腫、悪性腫瘍及び骨肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞癌、妊娠性絨毛性疾患、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、HER2陽性乳癌、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞腫、若年性ポリポーシス症候群、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、白血病口唇及び口腔癌、肝癌、小葉癌、肺癌(非小細胞及び小細胞)、リンパ腫、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、悪性神経膠腫、黒色腫、眼内黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌腫、中皮腫、悪性腫瘍、転移性癌、原発不明の転移性扁平上皮頸部癌、正中管癌腫、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍、慢性、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経芽細胞種神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、口唇及び口腔癌並びに口腔咽頭癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓癌、膵神経内分泌腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、腹膜癌、ポイツ・ジェガース症候群、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、真性赤血球増加症、妊娠及び乳癌、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、再発癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、固形腫瘍、皮膚の扁平上皮細胞癌、原発不明の扁平上皮頸部癌、転移、胃癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、喉の癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、小児希少癌、尿管及び腎盂、移行細胞癌、尿道癌、子宮(子宮内膜)癌、子宮肉腫、膣癌、血管の腫瘍、外陰癌、ウイルムス腫瘍又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される細胞(例えば、本明細書で説明される少なくとも1つの導入遺伝子を発現する改変細胞)は、対象における疾患又は状態を治療するための癌細胞又は腫瘍細胞を標的化することができる。本開示で用いられる癌細胞又は腫瘍細胞の非限定的な例としては、棘細胞腫、腺房細胞癌、聴神経腫、末端性黒子性黒色腫、先端汗腺腫、急性好酸球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性単球白血病、成熟急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄樹状細胞白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、エナメル質腫、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺様歯原性腫瘍、副腎皮質癌、成人性T細胞白血病、進行性NK細胞白血病、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮線維腫、肛門癌、未分化大細胞リンパ腫、未分化甲状腺癌、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫、血管筋脂肪腫、血管肉腫、虫垂癌、星状細胞腫、非定型奇形腫横紋筋様腫瘍、基底細胞癌、基底様癌腫、B細胞白血病、B細胞リンパ腫、ベリニ管癌、胆道癌、膀胱癌、芽細胞腫、骨癌、骨腫瘍、脳幹膠腫、脳腫瘍、乳癌、ブレンナー腫瘍、気管支腫瘍、細気管支肺胞上皮癌、褐色腫瘍、バーキットリンパ腫、原発部位不明癌、カルチノイド腫瘍、癌腫、上皮内癌、陰茎癌、原発部位不明癌、癌肉腫、キャッスルマン病、中枢神経系胚芽腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、子宮頸癌、胆管癌、軟骨腫、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、脈絡叢乳頭腫、慢性リンパ球性白血病、慢性単球白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、慢性好中球性白血病、明細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ドゴー病、隆起性皮膚線維肉腫、皮様嚢腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、びまん性大B細胞リンパ腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、胎児性癌腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜癌、子宮内膜子宮癌、子宮内膜性腫瘍、腸疾患関連T細胞リンパ腫、上衣芽細胞腫、上衣細胞腫、類上皮肉腫、赤白血病、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング腫瘍ファミリー、ユーイング肉腫ファミリー、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、乳房外ページェット病、卵管癌、封入奇形胎児、線維腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性甲状腺癌、胆嚢癌、胆嚢癌、神経節膠腫、神経節細胞腫、胃癌、胃リンパ腫、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、消化管間質性腫瘍、胚細胞癌、胚細胞腫妊娠性絨毛癌、妊娠性絨毛腫瘍、骨巨細胞腫、多形性膠芽腫、神経膠腫、大脳神経膠腫、グロムス腫瘍、グルカゴン産生腫瘍、性腺芽細胞腫、顆粒膜細胞腫、ヘアリー細胞白血病、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、頭頸部癌、心臓癌、血管芽細胞腫、血管周囲細胞腫、血管内皮腫、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、肝脾臓T細胞リンパ腫、遺伝性乳-卵巣癌症候群、ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部膠腫、炎症性乳癌、眼内黒色腫、島細胞癌、島細胞腫、若年性骨髄単球性白血病、カポジ肉腫、カポジ肉腫腎臓癌、クラッキン腫瘍、クルーケンベルク腫瘍、喉頭癌、喉頭癌、悪性黒子型黒色腫、白血病、白血病、口唇及び口腔癌、脂肪肉腫、肺癌、黄体腫、リンパ管腫、リンパ管肉腫、リンパ上皮腫、リンパ性白血病、リンパ腫、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、悪性線維性組織球腫、骨の悪性線維性組織球腫、悪性神経膠腫、悪性中皮腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、悪性横紋筋様腫瘍、悪性トリトン腫瘍、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肥満細胞白血病、縦隔胚細胞腫瘍、縦隔腫瘍、甲状腺髄様癌、髄芽細胞腫、髄芽細胞腫、髄様上皮腫、黒色腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌腫、中皮腫、中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮頸部癌、転移性尿路上皮癌、ミュラー管混合腫瘍、単球性白血病、口腔癌、粘液性腫瘍、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、菌状息肉腫、骨髄異形成疾患、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄性肉腫、骨髄増殖性疾患、粘液腫、鼻腔癌、上咽頭癌、鼻咽腔癌、新生組織形成、神経線維腫症、神経芽細胞種、神経芽細胞種、神経繊維腫、神経腫、結節型黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、眼腫瘍、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、好酸性顆粒細胞腫、視神経鞘髄膜腫、口腔癌、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣癌、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、乳房パジェット病、パンコースト腫瘍、膵臓癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、血管周囲類上皮細胞腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、中間分化型松果体実質腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体細胞腫、下垂体腺腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫、胸膜肺芽腫、多胎芽腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、原発性肝細胞癌、原発性肝癌、原発性腹膜癌、未分化神経外胚葉性腫瘍、前立腺癌、腹膜偽粘液腫、直腸癌、腎細胞癌、第15染色体上のNUT遺伝子が関与する気道癌、網膜芽細胞腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、リヒター形質転換、仙尾部奇形腫、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫症、脂腺癌、続発性新生物、精上皮腫、漿液腫瘍、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、性索間質腫瘍、セザリー症候群、固形腫瘍、印環細胞癌、皮膚癌、小青色円形細胞腫瘍、小細胞癌腫、小細胞肺癌、小細胞リンパ腫、小腸癌、軟部組織肉腫、ソマトスタチン産生腫瘍、煤煙性疣贅、脊髄腫瘍、脊髄腫瘍、脾性辺縁帯リンパ腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、表層進展性黒色腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、表面上皮間質性腫瘍、滑膜肉腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、T細胞白血病、T細胞リンパ腫、T細胞前リンパ球性白血病、奇形腫末期リンパ腺癌、精巣癌、莢膜細胞腫、咽喉癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、移行細胞癌、尿膜管癌、尿道癌、泌尿生殖器腫瘍、子宮肉腫、ブドウ膜黒色腫、膣癌、ヴァーナーモリソン症候群、疣状癌、視路神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウォーシン腫瘍、ウイルムス腫瘍並びにこれらの組み合わせを含む癌の細胞を挙げることができる。いくつかの実施形態では、標的の癌細胞は、癌幹細胞などの癌細胞集団内の亜集団を表す。いくつかの実施形態では、癌は、造血系の癌、例えばリンパ腫である。
【0111】
医薬組成物
治療剤を含む医薬組成物が本明細書で説明される(例えば、本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド又は本明細書で説明される改変細胞)。いくつかの態様では、医薬組成物は、薬学的に許容される、担体、賦形剤又は希釈剤を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、本明細書で説明される細胞以外の少なくとも1つの追加の活性剤を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加の活性剤は、化学療法剤、細胞毒性剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤、抗血管形成剤又はチェックポイント阻害剤である。
【0112】
本明細書で提供される治療法又は使用法を実践する際、治療有効量の本明細書で説明される医薬組成物は、治療される疾患、障害又は状態、例えば癌を有する哺乳動物に投与される。いくつかの態様では、哺乳動物は、ヒトである。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢及び相対的な健康状態、使用される治療剤の効力並びに他の要因に応じて大幅に変化し得る。本明細書で説明される治療剤及び場合により組成物は、単独で又は混合物の構成要素としての1つ以上の治療剤と組み合わせて使用され得る。
【0113】
本明細書で説明される医薬組成物は、静脈内、動脈内、経口、非経口、口腔内、局所、経皮、直腸内、筋肉内、皮下、骨内、経粘膜、吸入又は腹腔内投与経路が挙げられるが、これらに限定されない適切な投与経路によって対象に投与され得る。本明細書で説明される組成物としては、水性分散液、自己乳化性分散液、固溶体、リポソーム分散液、エアロゾル、固形剤形、粉末、即時放出製剤、制御放出製剤、速溶性製剤、錠剤、カプセル、丸薬、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤及び即時放出製剤と制御放出製剤との混合製剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0114】
治療剤を含む医薬組成物は、単に例として、従来式の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、封入又は圧縮プロセスなどによる従来の方法で製造され得る。
【0115】
医薬組成物は、遊離酸若しくは遊離塩基形態における又は薬学的に許容される塩形態の活性成分として少なくとも1つの外因性治療剤を含み得る。更に、本明細書で説明される方法及び組成物としては、N-酸化物(適切な場合)、結晶形態、非晶相及び同じ種類の活性を有するこれらの化合物の活性代謝産物の使用が挙げられる。いくつかの態様では、治療剤は、非溶媒和形態又は水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在する。治療剤の溶媒和形態も、本開示で開示されているものとみなされる。
【0116】
特定の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、微生物活性を阻害するための1つ以上の防腐剤を含む。好適な防腐剤としては、メルフェン及びチオメルサールなどの水銀含有物質、安定化二酸化塩素並びに塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム及び塩化セチルピリジニウムなどの第4級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0117】
いくつかの態様では、本明細書で説明される医薬組成物は、抗酸化剤、金属キレート剤、チオール含有化合物及び他の一般的な安定化剤の利益を享受する。こうした安定化剤の例としては、(a)約0.5w/v%~約2w/v%のグリセロール、(b)約0.1w/v%~約1w/v%のメチオニン、(c)約0.1w/v%~約2w/v%のモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、I約0.01w/v%~約2w/v%のアスコルビン酸、(f)約0.003w/v%~約0.02w/v%のポリソルベート80、(g)約0.001w/v%~約0.05w/v%のポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ポリ硫酸ペントサン及び他のヘパリン類似物質、(m)マグネシウム及び亜鉛などの二価カチオン、又は(n)これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
本明細書で説明される医薬組成物は、経口分散液、液剤、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁液、固形経口剤形、エアロゾル、制御放出製剤、速溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、粉末、丸薬、糖衣錠、カプセル、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤及び即時放出製剤と制御放出製剤との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な剤形に製剤化され得る。一態様では、本明細書で説明される治療剤、例えば治療剤は、筋肉内、皮下又は静脈内注射に好適な医薬組成物に製剤化され得る。一態様では、筋肉内、皮下又は静脈内注射に好適な製剤としては、生理学的に許容可能な滅菌水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液又はエマルション及び再水和して滅菌注射溶液又は分散液にするための滅菌粉剤が挙げられる。好適な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、クレモフォールなど)、これらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散体の場合には必要な粒度の維持及び界面活性剤の使用によって維持され得る。いくつかの態様では、皮下注射に好適な製剤は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分配剤などの添加剤も含む。微生物の増殖の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。場合により、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい。注射可能な医薬形態の長期間にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを用いて実現できる。
【0119】
静脈注射又は点滴又は輸液の場合、本明細書で説明される医薬組成物は、水溶液、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンガー溶液又は生理食塩水緩衝液に製剤化される。経粘膜投与の場合、浸透させる障壁に適した浸透剤が製剤中に使用される。他の非経口注射の場合、適した製剤としては、好ましくは、生理学的に適合性の緩衝液又は賦形剤を含む水性又は非水性溶液が挙げられる。
【0120】
非経口注射は、ボーラス注射又は持続注入を伴い得る。注射用医薬組成物は、単位剤形において、例えば防腐剤が添加されたアンプル又は複数回用量容器で提供され得る。本明細書で説明される医薬組成物は、油性又は水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液又はエマルションとして非経口注射に適した形態であり得、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化用薬剤を含み得る。一態様では、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば、パイロジェン非含有滅菌水を用いて構成するための粉剤形態である。
【0121】
吸入で投与する場合、治療剤は、エアゾール、ミスト又は粉剤として使用するように製剤化される。本明細書で説明される医薬組成物は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適な気体を使用して、加圧パック又はネブライザーからエアゾール噴霧剤形態で簡便に送達される。加圧エアゾールの場合、定量を送達するための弁を提供することにより投与量単位を決定することができる。吸入器又は注入器で使用するための、単に例として、ゼラチンなどのカプセル及びカートリッジは、本明細書で説明される治療剤と、ラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含むように製剤化することができる。組成物を含む製剤は、ベンジルアルコール若しくは他の好適な防腐剤、フッ化炭素及び/又は当技術分野で既知の他の可溶化剤若しくは分散剤を用いる塩水中の溶液として調製される。好ましくは、これらの組成物及び製剤は、好適な非毒性の薬学的に許容される成分を用いて調製される。好適な担体の選択は、所望される経鼻剤形(例えば、溶液、懸濁液、軟膏又はゲル)の厳密な性質による。経鼻剤形は、一般的に、活性成分の他に多量の水を含む。pH調整剤、乳化剤又は分散剤、防腐剤、界面活性剤、ゲル化剤又は緩衝剤並びに他の安定化剤及び可溶化剤などの少量の他の成分は、任意選択的に存在する。好ましくは、経鼻剤形は、鼻汁と等張であるべきである。
【0122】
経口のための医薬品は、1つ以上の固形賦形剤を本明細書で説明される組成物の1つ以上と混合し、任意選択的に得られた混合物を粉砕し、必要に応じて好適な助剤を添加した後、顆粒剤の混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠のコアを得ることにより得られる。好適な賦形剤としては、例えば、ラクトース、ショ糖、マンニトール又はソルビトールを含む糖類、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物などの充填剤又は他のもの、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP又はポビドン)又はリン酸カルシウムが挙げられる。必要であれば、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加する。いくつかの態様では、活性治療剤の用量の様々な組み合わせを識別又は特徴付けるために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠のコーティングに添加する。
【0123】
いくつかの態様では、外因性治療剤の医薬組成物は、ゼラチン製のプッシュフィット型カプセル並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で作製されたソフトシールドカプセルを含む、カプセル形態である。プッシュフィット型カプセルは、活性成分と混合したラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤並びに任意選択的に安定剤を含む。ソフトカプセル内において、活性治療剤は、脂肪油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁している。いくつかの態様では、安定剤が添加される。カプセルは、例えば、治療剤の製剤のバルクブレンドをカプセルの内部に配置することによって調製され得る。いくつかの態様では、製剤(非水性懸濁液及び溶液)がソフトゼラチンカプセル内に配置される。他の実施形態では、製剤は、標準のゼラチンカプセル内又はHPMCを含むカプセルなどの非ゼラチン性カプセル内に配置される。他の実施形態では、製剤がスプリンクルカプセル内に配置され、カプセル全体が呑み込まれるか、又はカプセルが開封され、その内容物が食前に食物上に散布される。
【0124】
経口投与のための医薬組成物は、こうした投与に好適な投与量であり得る。一態様では、固形経口剤形は、組成物を以下の1つ以上と混合することによって調製される:抗酸化剤、香味剤並びに担体物質、例えば結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、潤滑剤、湿潤剤及び希釈剤。いくつかの態様では、本明細書で開示される固形剤形は、錠剤(懸濁錠剤、速溶性錠剤、咬合崩壊型錠剤、急速崩壊型錠剤、発泡型錠剤又はカプレットを含む)、丸薬、粉剤、カプセル、固形分散体、固溶体、生体内分解性剤形、制御放出製剤、パルス放出製剤、多重粒子剤形、ビード、ペレット、顆粒剤の形態である。他の実施形態では、組成物は、粉剤の形態である。圧縮錠剤は、上記の製剤のバルクブレンドを圧縮成型することによって調製される固形剤形である。様々な実施形態では、錠剤は、1つ以上の香味剤を含む。他の実施形態では、錠剤は、最終圧縮錠剤を包囲するフィルムを含む。いくつかの態様では、フィルムコーティングは、製剤からの治療剤の遅延放出を提供することができる。他の実施形態では、フィルムコーティングは、患者の薬剤服用順守を補助する。フィルムコーティングは、典型的には、錠剤重量の約1%~約3%の範囲である。いくつかの態様では、固形剤形、例えば錠剤、発泡錠剤及びカプセルは、治療剤の粒子を1つ以上の医薬的賦形剤と混合して、バルクブレンド組成物を形成することによって調製される。このバルクブレンドは、等しく効果的な単位剤形、例えば錠剤、丸薬及びカプセルに容易に細分される。いくつかの態様では、個々の単位剤形は、フィルムコーティングを含む。これらの製剤は、従来の製剤技術によって製造される。
【0125】
別の態様では、剤形は、マイクロカプセル化製剤を含む。いくつかの態様では、1つ以上の他の適合性材料がマイクロカプセル化材料中に存在する。材料の非限定的な例としては、pH調整剤、浸食促進剤、消泡剤、酸化防止剤、香味剤並びに担体材料、例えば結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、潤滑剤、湿潤剤及び希釈剤が挙げられる。
【0126】
経口投与のための液体製剤の剤形は、任意選択的に、薬学的に許容される水性経口分散剤、エマルション、溶液、エリキシル、ゲル及びシロップを含むが、これらに限定されない群から選択される水性懸濁液である。治療剤の他に、液体剤形は、任意選択的に、(a)崩壊剤、(b)分散剤、(c)湿潤剤、(d)少なくとも1つの防腐剤、(e)増粘剤、(f)少なくとも1つの甘味剤、及び(g)少なくとも1つの香味剤などの添加剤を含む。いくつかの態様では、水性分散液は、結晶形成阻害剤を更に含む。
【0127】
いくつかの態様では、本明細書で説明される医薬組成物は、自己乳化型薬物送達系(SEDDS)であり得る。エマルションは、1つの不混和相が、通常は液滴形態であるもう1つの不混和相中に分散したものである。一般に、エマルションは、激しい機械的分散によって生成される。SEDDSは、エマルション又はマイクロエマルションとは反対に、いかなる外部の機械的分散又は攪拌も必要とすることなく、過剰の水に添加すると自然にエマルションを形成する。SEDDSの利点は、穏やかに混合するのみで液滴を溶液全体に分布できることである。更に、水又は水相は、任意選択的に投与の直前に添加され、それにより不安定な又は疎水性の活性成分の安定性が確保される。したがってSEDDSは、疎水性活性成分を経口及び非経口送達するための効果的な送達系を提供する。いくつかの態様では、SEDDSは、疎水性活性成分のバイオアベイラビリティを改善する。
【0128】
口腔内製剤は、当技術分野で既知の様々な製剤を用いて投与される。更に、本明細書で説明される口腔内剤形は、剤形を口腔内粘膜に付着させる役割も果たす生体分解性(加水分解性)ポリマー担体を更に含み得る。口腔内又は舌下投与の場合、組成物は、従来の方法で製剤化される錠剤、トローチ又はゲルの形態を取り得る。
【0129】
静脈注射の場合、医薬組成物は、任意選択的に、水溶液、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンガー溶液又は生理食塩水緩衝液に製剤化される。経粘膜投与の場合、浸透させる障壁に適した浸透剤が製剤中に使用される。他の非経口注射の場合、適した製剤としては、好ましくは、生理学的に適合性の緩衝液又は賦形剤を含む水性又は非水性溶液が挙げられる。
【0130】
非経口注射は、任意選択的にボーラス注射又は持続注入を伴う。注射用製剤は、任意選択的に、単位剤形で、例えば、防腐剤が添加されたアンプル又は複数回用量容器で提供される。いくつかの態様では、本明細書で説明される組成物は、油性又は水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液又はエマルションとして非経口注射に適した形態であり、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化用薬剤を含む。非経口投与のための組成物は、水溶性形態で頚動脈小体の活性を調整する薬剤の水溶液を含む。更に、頚動脈小体の活性を調節する薬剤の懸濁液は、任意選択的に、必要に応じて調製される(例えば、油性注射の懸濁液)。
【0131】
いくつかの態様では、患者に経口投与するための、治療剤の粒子及び少なくとも1つの分散剤又は懸濁化剤を含む医薬組成物が提供され得る。製剤は、懸濁するための粉剤及び/又は顆粒剤であり得、水と混合すると、実質的に均一な懸濁液が得られる。
【0132】
更に、医薬組成物は、任意選択的に、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸及び塩酸などの酸、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム及びトリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基並びにクエン酸塩/デキストロース、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムなどの緩衝剤を含む1つ以上のpH調整剤又は緩衝剤を含む。こうした酸、塩基及び緩衝剤は、この組成物のpHを許容可能な範囲に維持するのに必要な量で含まれる。
【0133】
更に、医薬組成物は、任意選択的に、医薬組成物のオスモル濃度を許容可能な範囲にするのに必要な量で1つ以上の塩を含む。こうした塩としては、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムカチオン及び塩化物アニオン、クエン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、ホウ酸アニオン、リン酸アニオン、重炭酸アニオン、硫酸アニオン、チオ硫酸アニオン又は亜硫酸水素アニオンを有するものが挙げられ、好適な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0134】
一実施形態では、本明細書で説明される水性懸濁液及び分散液は、少なくとも4時間は均質状態を維持する。一実施形態では、水性懸濁液は、1分間未満続く物理的攪拌によって均質な懸濁液に再懸濁される。更に別の実施形態では、均質な水性分散液を維持するのに攪拌は必要ではない。
【0135】
キット
いくつかの態様において、本明細書では、本明細書で説明される方法を実践するために本明細書で説明される系、本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチド又は本明細書で説明される改変細胞を使用するキットが説明される。いくつかの態様では、本明細書で開示されるキットは、対象の疾患又は状態を治療するために使用され得る。いくつかの態様では、キットは、細胞とは別に材料又は構成要素の組み合わせを含む。
【0136】
いくつかの態様では、キットは、本明細書で説明される細胞によって表面上で合成及び/又は放出若しくは発現される生体分子(例えば、治療剤)の単位数をアッセイするための構成要素を含む。いくつかの態様では、キットは、酵素結合免疫測定法(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)、PCR及びqPCRなどのアッセイを実施するための構成要素を含む。キット中で構成される構成要素の厳密な性質は、その意図される目的に応じて変化する。例えば、いくつかの実施形態は、対象において本明細書で開示される疾患又は状態(例えば、癌)を治療する目的のために構成される。いくつかの態様では、キットは、特に哺乳動物対象を治療することを目的に構成されている。いくつかの態様では、キットは、特にヒト対象を治療することを目的に構成されている。
【0137】
キットには使用説明書が含まれ得る。いくつかの態様では、キットは、細胞を投与することを必要とする対象に細胞を投与するための説明書を含む。いくつかの態様では、キットは、組成物を更に操作して生体分子(例えば、治療剤)を発現させるための説明書を含む。いくつかの態様では、キットは、貯蔵又は輸送中に保存されていた可能性のある細胞を解凍するか又は他の方法で細胞の生物活性を回復させる説明書を含む。いくつかの態様では、キットは、その意図される目的のための効力(例えば、対象を治療するために用いられる場合には治療効力)を保証するために、保存された細胞の生存性を測定するための説明書を含む。
【0138】
任意選択的に、キットは、希釈剤、緩衝液、薬学的に許容される担体、シリンジ、カテーテル、塗布器、分注若しくは計量器具、包帯材又は他の有用な道具類などの他の有用な構成要素も含む。キット内に組み立てられた材料又は構成要素は、その操作可能性及び有用性を失わないようにする任意の便利且つ好適な方法で保管されて、施術者に提供され得る。例えば、構成要素は、溶解、脱水又は凍結乾燥された形態であり得、これらは室温、冷蔵温度又は凍結温度で提供され得る。構成要素は、典型的には、好適なパッケージ材料内に収容される。
【0139】
絶対的又は逐次的用語、例えば「するであろう」、「しないであろう」、「するものとする」、「しないものとする」、「しなければならない」、「してはならない」、「第1に」、「最初に」、「次に」、「その後」、「前に」、「後に」、「最後に」及び「最終的に」の使用は、本明細書に開示される本実施形態の範囲を限定することを意図するものではなく、例示的なものである。
【0140】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈が明らかに別の意味を示さない限り、複数形も含むことが意図される。更に、用語「包含している」、「包含する」、「有している」、「有する」、「備える」又はこれらの変形が、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、こうした用語は、用語「含む」と同様の方法で包括的であることが意図される。
【0141】
本明細書で使用するとき、「少なくとも1つ」、「1つ以上」及び「及び/又は」という語句は、接続的及び離接的のいずれにも作用するオープンエンドの表現である。例えば、「A、B及びCの少なくとも1つ」、「A、B又はCの少なくとも1つ」、「A、B及びCの1つ以上」、「A、B又はCの1つ以上」及び「A、B及び/又はC」という表現の各々は、Aのみであること、Bのみであること、Cのみであること、A及びBが共にあること、A及びCが共にあること、B及びCが共にあること又はA、B及びCが共にあることを意味する。
【0142】
本明細書で使用するとき、「又は」は、「及び」、「又は」又は「及び/又は」を指し得、排他的及び包括的の両方で用いられ得る。例えば、「A又はB」という用語は、「A又はB」、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」及び「A及びB」を指し得る。場合により、文脈が特定の意味を決定し得る。
【0143】
本明細書で説明される任意のシステム、方法、ソフトウェア及びプラットフォームは、モジュール式である。したがって、「第1の」及び「第2の」などの用語は、必ずしも優先順位、重要度の順位又は行為の順序を意味しない。
【0144】
数字又は数値範囲を引用する場合の「約」という用語は、引用される数字又は数値範囲が、実験上の変動性の範囲内(又は統計的実験誤差の範囲内)の近似値であり、その数字又は数値範囲は、例えば、定められた数字又は数値範囲の1%~15%で変動し得ることを意味する。例えば、「約」という用語は、定められた数字又は値の±10%を指す。
【0145】
「増加した」、「増加している」又は「増加する」という用語は、一般的に統計学的に有意な量の増加を意味するように本明細書で使用される。いくつかの態様では、「増加した」又は「増加する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベル、基準又は対照と比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%の増加、若しくは100%以下の増加又は10~100%の間の任意の増加を意味する。「増加する」の他の例は、参照レベルと比較して少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍又はそれよりも大きい増加を含む。
【0146】
「低減した」、「低減している」又は「低減する」という用語は、一般的に統計的に有意な量の低減を意味するように本明細書で使用される。いくつかの態様では、「低減した」又は「低減する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の低下、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%の低減、若しくは100%以下の低減(例えば、参照レベルと比較してレベルが存在しないか又は検出不可能なレベル)又は参照レベルと比較して10%~100%の間の任意の低減を意味する。マーカー又は症状に関連して、これらの用語は、こうしたレベルの統計的に有意な低減を意味する。低減は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれを超える場合があり、且つ好ましくは所与の疾患のない個体に対して正常の範囲内として許容されるレベルまで下がる。
【0147】
本発明の好ましい実施形態を本明細書で示し、説明したが、こうした実施形態が単に例として提供されていることは、当業者に明白であろう。本発明が本明細書内で提供される特定の実施例によって限定されることは意図されない。本発明が前述の本明細書を参照して説明されたが、本明細書の実施形態の説明及び図解は、限定的な意味で解釈されることを意味するものではない。ここで、本発明から逸脱することなく、多くの変形形態、変更形態及び代替形態が当業者に想到されるであろう。更に、本発明の全ての態様は、様々な条件及び変数に依存する、本明細書に記載の特定の描写、構成又は相対的な比率に限定されないことを理解されたい。本発明を実施する際、本明細書に記載した本発明の実施形態の様々な変形形態を使用できることを理解されたい。したがって、本発明は、そのような代替手段、修正形態、変形形態又は均等物も包含するものと考えられる。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これにより、これらの特許請求の範囲に含まれる方法及び構造並びにそれらの均等物が網羅されることが意図される。
【実施例】
【0148】
下記の例示的実施例は、本明細書に記載される刺激系及び方法の実施形態の代表的なものであるが、決して限定的であることを意図されない。
【0149】
実施例1.細胞の改変
キメラ受容体又はMHCタンパク質をノックインするために、本明細書で説明される細胞を、本明細書で説明される系又は系の任意の構成要素若しくは系の構成要素の任意の組み合わせと接触させた。キメラ受容体又はMHCタンパク質を発現する改変細胞を検査し、
図1~
図14に図示した。ノックイン又はノックアウト実験のために、改変対象の細胞を、0日目で最初に活性化させた。ノックイン又はノックアウト実験は、2日目に実施した。10日目にフローサイトメトリを実施して、ノックイン又はノックアウト実験の効率を判定した。表1は、本明細書で説明される系のRNPと細胞を改変するための様々な他の構成要素との間の比を示す。表2は、
図1~
図14のデータを生成するために細胞と接触させたキメラポリヌクレオチドの例示的な量を示す。表3は、本明細書で説明される方法を実践するための例示的な材料を示す。表4は、改変の対象である1,000万個の細胞と接触させたキメラポリヌクレオチドの例示的な量を示す。表5は、Lonza 4D-Nucleofectorプロトコルの例示的なエレクトロポレーションプロトコルを示す。表6は、例示的なmaxcyteのプログラムを示す。
【0150】
本明細書で説明されるキメラポリヌクレオチドをノックインするためにCRISPR/Cas9を使用することにより(相同組換え修復(HDR)を介して)、ノックイン(KI)単一CAR遺伝子のパーセンテージは、TRAC及びB2M遺伝子座におけるノックインのデータに基づけば約30%~50%であった。2つのキメラポリヌクレオチド(例えば、TRAC遺伝子座及びB2M遺伝子座)の同時ノックインは、20%超の効果があった。少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを備える二本鎖DNAを含むキメラポリヌクレオチドの使用を介した、TRAC遺伝子座におけるNY-ESO-1特異的TCRのノックインのパーセンテージは34.4%であった。少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを備える二本鎖DNAを含むキメラポリヌクレオチドを使用すると、TRAC遺伝子座におけるCD19特異的CAR遺伝子のノックイン効率は31.4%であり、TRAC遺伝子座におけるヒト化CD19特異的CAR遺伝子のノックイン効率は33.4%であり、TRAC遺伝子座におけるメソテリン特異的CAR遺伝子のノックイン効率は33.8%であった。TRAC遺伝子座におけるGC020のノックイン効率は41.1%であった。TRAC遺伝子座におけるGC012のノックイン効率は22.5%であった。少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを備える二本鎖DNAを含むキメラポリヌクレオチドを使用したB2M遺伝子座におけるHLA-Eのノックイン効率は、37.7%であり、少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメント及びテロメア末端を備える二本鎖DNAを含むキメラポリヌクレオチドを使用すると、効率は最大で54.9%であった。少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを備え、テロメア末端を備える二本鎖DNAテンプレートを含むキメラポリヌクレオチドを使用したTRAC遺伝子座におけるGC012HLのノックイン効率は、34.6%であった。TRAC遺伝子座におけるGC012HL及びB2M遺伝子座におけるHLA-Eの同時ノックインの効率は21.7%であり、GC012HLのノックインでは50.1%であった。TRAC遺伝子座におけるGC012HL及びB2M遺伝子座におけるHLA-Eの同時ノックインの効率は31.8%であった。本明細書で説明される系及び方法によってノックインされるキメラポリヌクレオチドは、大型のDNAテンプレートであり得る(例えば、5,000ヌクレオチド塩基対を超える)。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
実施例2.TRAC遺伝子座におけるNY-ESO-1標的化TCRのノックイン
TRAC遺伝子座におけるNY-ESO-1特異的TCRのノックイン効率を検出するために、T及びTRACノックアウトT細胞を陰性対照として使用した。「カラム由来のテンプレート」とは、カラム精製から得られたキメラポリヌクレオチドを表す。「ビーズ由来のテンプレート」とは、磁気ビーズ精製から得られたキメラポリヌクレオチドを表す。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.25μg、0.50μg、0.70μg又は1.00μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。フローサイトメトリ分析は、94.9%の細胞中でCD3がノックアウトされ、0.18%の細胞がTCRVβ13.1及びCD3の両方で陽性であったことを示した。
【0158】
図1に示すように、ノックイン効率をフローサイトメトリによってエレクトロポレーションより後の特定の日に検出し、CD3ノックアウト効率は、94.9%である一方、TCRVβ13.1及びCD3二重陽性のパーセンテージは、TRACノックアウト対照の0.18%であった。1μgのキメラポリヌクレオチドを使用したNY-ESO-1特異的TCRの最高ノックイン効率は34.4%であった。
【0159】
実施例3.TRAC遺伝子座におけるCD19標的化CARのノックイン
ノックインは、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを5’末端及び3’末端の両方に含むキメラポリヌクレオチドによって媒介した。キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端の両方で共有結合閉環していなかった。ノックインにより、TRAC遺伝子座でCD19標的化CAR(CD-19-CAR)を発現する31.4%の細胞集団、TRAC遺伝子座でヒト化CD19標的化CAR(HCD-19-CAR)を発現する33.4%の細胞集団及びTRAC遺伝子座でメソテリン標的化CAR(Meso-CAR-T)を発現する33.8%の細胞集団がもたらされた。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.20μg又は0.40μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【0160】
ノックイン効率をフローサイトメトリによってエレクトロポレーションより後の特定の日に検出した。
図2に示すように、CD19標的化CAR及びヒト化CD19CAR並びにメソテリンCARの最高ノックイン効率は、それぞれ31.4%、33.4%及び33.8%であった。
【0161】
実施例4.TRACにおけるGC020又はGC012のノックイン
ノックインは、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを5’末端及び3’末端の両方に含むキメラポリヌクレオチドによって媒介した。キメラポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端の両方で共有結合閉環していなかった。ノックインにより、TRACゲノム遺伝子座でのノックインを介してCD19及びCD20のデュアルCARを発現する41.1%の細胞集団(82.7%の細胞はTRACノックアウトを示す)並びにTRACゲノム遺伝子座でのノックインを介してCD19のデュアルCARを発現する22.5%の細胞集団(90.1%の細胞はTRACノックアウトを示す)がもたらされた。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.20μg又は0.40μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。ノックイン効率をフローサイトメトリによってエレクトロポレーションより後の特定の日に検出した。
図3に示すように、GC020のノックイン効率は41.1%であり、GC012では22.5%であり、ノックアウト効率はそれぞれ82.7%及び90.1%であった。
【0162】
実施例5.HLA-Eのノックイン
図4Aは、本明細書で説明される系による、細胞中へのHLA-Eのノックインを示す。ノックインは、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを5’末端及び3’末端の両方に含むキメラポリヌクレオチドによって媒介した。キメラポリヌクレオチドを、共有結合閉環した5’末端及び共有結合閉環した3’末端の両方を含むように更に改変した。両方の末端に本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを含むが、共有結合閉環した5’末端及び3’末端を有しないキメラポリヌクレオチドによって媒介したノックインでは、HLA-Eを発現する37.7%の細胞集団が得られた(HLA-E KI)。両方の末端に本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを含み、共有結合閉環した5’末端及び3’末端を有するキメラポリヌクレオチドによって媒介したノックインでは、HLA-Eを発現する54.9%の細胞集団が得られた(ds-HLA-E KI)。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.20μg、0.30μg又は0.40μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
図4Bは、両方の末端に改変部分標的化フラグメントを含み、共有結合閉環した5’末端及び3’末端を有するキメラポリヌクレオチドで改変した細胞が、8日間にわたり、両方の末端に本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを含むが、共有結合閉環した5’末端及び3’末端を有しないキメラポリヌクレオチドで改変した細胞以上の生存度を有していたことを示す細胞生存度の測定値を図示する。ノックイン効率をフローサイトメトリによってエレクトロポレーションより後の特定の日に検出した。
図4Aに示すように、キメラポリヌクレオチド濃度が0.4μgでのHLA-Eの最高ノックイン効率は37.7%であり、キメラポリヌクレオチド濃度が0.3μgのときのds-HLA-Eの最高ノックイン効率は最大54.9%であった。ノックインds-HLA-Eの生存度はHLA-Eよりも高かった(
図4B)。
【0163】
実施例6.TRAC遺伝子座におけるGC012HLのノックイン
ノックインは、5’末端及び3’末端の両方における改変部分標的化フラグメント並びに共有結合閉環した5’末端及び共有結合閉環した3’末端を含むキメラポリヌクレオチド(0.5μg、1.0μg、1.5μg又は2.0μgの量で、
図5A)によって媒介した。34.6%の細胞がデュアルCARを発現した。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.50μg、1.0μg、1.5μg又は2.0μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
図5Bは、ノックインされた細胞の3日後の細胞生存度を示す。
【0164】
実施例7.TRAC遺伝子座におけるGC012HL及びB2M遺伝子座におけるHLA-Eの同時ノックイン
図6は、HLA-Eを発現する21.7%の細胞及びデュアルCARを発現する50.1%の細胞をもたらす、それぞれTRAC遺伝子座及びB2M遺伝子座におけるデュアルCAR(Dual-CAR-T)及びHLA-Eの両方のノックインを示す。このノックイン実験のために、1000万個の細胞(100μlの最終容量中)を1.0μg、1.25μg又は1.50μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。
【0165】
実施例8.TRAC遺伝子座におけるGC012HL及びB2M遺伝子座におけるHLA-Eの同時ノックイン
図7は、HLA-E Rを発現する31.8%の細胞をもたらす、それぞれB2M遺伝子座及びTRAC遺伝子座におけるデュアルCAR(Dual-CAR-T)及びHLA-Eの両方のノックインを示す。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。500万又は1,000万個の活性化T細胞あたり100μlの反応あたり1μg~1.5μgの、一連の濃度のキメラポリヌクレオチドを使用した。RNPX1.2群は、RNP群と比較して1.2倍のRNPで使用した。実験の一般的操作は、sgRNA及びCas9タンパク質をPGAと混合することであった。
【0166】
ノックイン効率をフローサイトメトリによってエレクトロポレーション後の8日目に検出した。
図7に示すように、HLA-E+B2M(高)集団は、内因性HLA-Eであり、HLA-E+B2M(低)集団は、外因性、すなわちHLA-Eのノックインであった。1,000万個の細胞あたり1.5μgのキメラポリヌクレオチドと接触した細胞群が、31.8%の最高のノックイン効率を有した。
【0167】
実施例9.二重ノックインのノックアウト効率に対する影響はわずかであった
図8は、TRAC遺伝子座及びB2M遺伝子座におけるデュアルCAR(Dual-CAR-T)及びHLA-Eの両方のノックインが、96.57%でのTRACのノックアウト及び92.48%でのB2Mのノックアウトをもたらしたことを示す。このノックイン実験のために、1000万個の細胞(100μlの最終容量中)を1.0μg、1.25μg又は1.50μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。500万又は1,000万個の活性化T細胞あたり100μlの反応あたり1μg~1.5μgの、一連の濃度のキメラポリヌクレオチドを使用した。RNPX1.2群は、RNP群と比較して1.2倍のRNPで使用した。
【0168】
実施例10.テロメア末端を含むキメラポリヌクレオチド
図9は、キメラポリヌクレオチドが、本明細書に記載の改変部分標的化フラグメントを含む二本鎖DNAであり、5’及び3’末端の両方で共有結合閉環していた(テロメア末端、上部)、5’及び3’末端の両方で共有結合閉環していなかった(中央)及び環状であった(小環、下部)キメラポリヌクレオチドのノックインを示す。このノックイン実験のために、100万個の細胞(20μlの最終容量中)を0.20μg、0.40μg又は0.80μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。この実験では、T細胞が陰性対照としての役割を果たし、GC012HLがTRAC遺伝子座にノックインされた。ノックイン効率をフローサイトメトリによってエレクトロポレーションより後の特定の日に検出した。
図9に示すように、小環を含むキメラポリヌクレオチドのノックイン効率は、テロメア末端を備えていない少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含む線状キメラポリヌクレオチドと同様であったが、テロメア末端を備える少なくとも1つの遺伝子改変部分標的化フラグメントを含むキメラポリヌクレオチドよりは低かった。
【0169】
実施例11.キメラポリヌクレオチドとして一本鎖DNA(ssDNA)を用いたノックイン
図10は、一本鎖(センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか)であったキメラポリヌクレオチドのノックインを示す。8日目に47.2%の細胞がデュアルCAR(GC012HL)を発現した。このノックイン実験のために、1000万個の細胞(100μlの最終容量中)を1.0μg、1.25μg又は1.50μgのキメラポリヌクレオチドと接触させた。細胞をCas9/RNPと37℃で15分間インキュベートした後、様々な量のキメラポリヌクレオチドを添加して37℃で更に5分間インキュベートし、続いてエレクトロポレーションを行った(Lonza 4D-Nucleofector、プロトコルEH-115)。ノックイン効率をフローサイトメトリによってエレクトロポレーションより後の特定の日に検出した。8日目のssDNAセンス鎖ノックイン群のCAR陽性パーセンテージは47.2%であった。
【0170】
実施例12.TRAC遺伝子座におけるGC012HL及びB2M遺伝子座におけるHLA-Eのノックイン
図11Aは、本明細書で説明される系による、細胞中へのデュアルCAR(CD19及びBCMAの両方を標的化する)及びHLA-Eの両方のノックインを示す。
図11Bは、本明細書で説明される系によってノックインされたデュアルCARを有する細胞の殺細胞活性を示す。8日目に、CD19又はBCMAを標的化するCARを有する細胞は、B細胞前駆体白血病細胞(Nalm6、CD19を発現した)及び癌細胞(MM.1S、RPMI-8226及びJeKo-1細胞、全てBCMAを発現した)を殺傷するための殺細胞活性を示した。
【0171】
実施例13.CARの自家性ノックイン
図12A~Eは、CAR-T細胞(ZAR-CAR-T)を生成するための、本明細書に記載されるキメラポリヌクレオチドの非ウイルス性ノックインを示す。T細胞をエレクトロポレーション前に48時間活性化させ、エレクトロポレーション後1、2及び3日目にCAR陽性パーセンテージ及び生存度を検出した。解凍後のCARの発現及び生存度も検出した。解凍後、インビトロの殺腫瘍細胞アッセイを実施した。データは、ZAR-CAR-Tが、解凍後でも安定したCAR発現を有し、エレクトロポレーション後3日目の生存度が最大80%であったことを示す。CAR-Tは6時間後に十分な殺細胞性を示した。
図12Aは、2日目にCAR提示が陽性であった改変細胞を示す。
図12Bは、ノックイン提示が陽性であった改変細胞の変化の割合を示す。
図12Cは、3日間にわたるノックインで改変した細胞(左側)及び細胞凍結から解凍された後の細胞(右側)の細胞生存度を示す。
図12Dは、細胞凍結から解凍されてから1日目の、ノックイン提示が陽性であった改変細胞の生存度及び変化の割合を示す。NT-Ctrl:テンプレートなし対照。上:CD19標的化CARを示す改変細胞。下:CD3を示す改変細胞。
図12Eは、CD19(Nalm6細胞)又はBCMA(JeKo-1及びMM.1S細胞)に対する改変細胞(ZAP-CAR-T)の殺細胞活性を示す。
【0172】
実施例14.TRAC遺伝子座及びB2M遺伝子座におけるGC012HL及びHLA-Eのノックイン効率
図13Aは、本明細書で説明される系による、TRACの単一遺伝子座におけるCD19又はCD20を標的化するためのデュアルCARのノックインを示す。41.1%の細胞は、CD19又はCD20を標的化するためのデュアルCARの陽性発現を示した。
図13Bは、本明細書で説明される系による、TRACの単一遺伝子座におけるCD19又はBCMAを標的化するためのデュアルCARのノックインを示す。41.1%の細胞は、CD19又はBCMAを標的化するためのデュアルCARの陽性発現を示した。
図14は、本明細書で説明される系によるキメラポリヌクレオチドのノックインを示し、TRAC又はB2Mなどの遺伝子座においてノックインされたキメラポリヌクレオチドは、5,000bpsを超えていた。約20%の改変細胞がノックイン提示に関して陽性であった。フローサイトメトリ研究は、25.2%の細胞がCD19 CARを発現したことを示す。5.77%の細胞がCD19 CAR及びHLA-Eの両方を発現した。
【0173】
前述の本開示を、明瞭さ及び理解を目的としてある程度詳細に説明したが、本開示を読むことで、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に対する様々な変更形態がなされ得ることが当業者に明らかであろう。例えば、上記の全ての技術及び装置は、様々な組み合わせで用いられ得る。本出願で引用される全ての刊行物、特許、特許出願及び/又は他の文献は、それぞれの個々の刊行物、特許、特許出願及び/又は他の文献があらゆる目的のために参照により組み込まれると独立して且つ個別に示されるのと同程度にあらゆる目的のために参照によりその全体が組み込まれる。
【国際調査報告】