(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】インドールアルカロイドとフェノール酸を有する抗菌系及びそれらを含んでいる組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20241226BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241226BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241226BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20241226BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241226BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/36
A61Q19/00
A61Q15/00
A61Q5/00
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538712
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2022086584
(87)【国際公開番号】W WO2023126226
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ハリキアン,ビヤン
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,デイドリー・リー
(72)【発明者】
【氏名】リエンツォ,マシュー・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ローザ,ホセ・ギルレモ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC471
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD532
4C083AD621
4C083AD631
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC23
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE31
(57)【要約】
天然由来成分を有している抗菌系及びそれらを含んでいる組成物が記載されている。該系は、インドールアルカロイドを含んでいる第1の成分とフェノール酸を含んでいる第2の天然成分を有しており、そして、該系及び組成物は、優れた抗菌利益を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌系であって、
(a)インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分;及び、
(b)フェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分;
を含んでおり;
ここで、該フェノール酸は、式:
【化1】
で表され、さらにここで、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ、独立して、水素又はC
1-C
4アルキルであり;及び、
該インドールアルカロイドは、式:
【化2】
で表され、ここで、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、H又はC
1-C
2アルキル基であり、並びに、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、C
1-C
2アルキル基であり;
ここで、
該フェノール酸は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸(シリング酸)を包含し、該フェノール酸塩は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸の塩を包含し;
及び、
該インドールアルカロイドは、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミン(グラミン)を包含し、該インドールアルカロイド塩は、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミンの塩を包含する;
前記抗菌系。
【請求項2】
前記抗菌系が、前記フェノール酸及び/又は前記インドールアルカロイドの塩を含んでいる、請求項1に記載の抗菌系。
【請求項3】
前記組成物が、さらに、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸であるフェノール酸(ここで、R
1、R
2及びR
3は、Hである)又は3,4,5-トリメトキシ安息香酸であるフェノール酸(ここで、R
1、R
2及びR
3の各々は、CH
3である)又はそれらの混合物を含んでいる、先行する請求項のいずれかに記載の抗菌系。
【請求項4】
前記インドールアルカロイドとフェノール酸及び/又はそれらの塩が、0.5:9~2:10の重量比、好ましくは、0.6:7~4:9の重量比、最も好ましくは、0.75:4~5:8の重量比で存在している、先行する請求項のいずれかに記載の抗菌系。
【請求項6】
前記抗菌系の8~75重量%、好ましくは、10~65重量%、最も好ましくは、12~50重量%が、インドールアルカロイドとフェノール酸(それらの任意の塩を含んでいる)の総重量に基づいた、インドールアルカロイド又はその塩である、先行する請求項のいずれかに記載の抗菌系。
【請求項7】
抗菌系を含んでいる最終使用組成物であって、該抗菌系が、
(a)インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分;
(b)フェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分;及び、
(c)化粧品的に許容される担体
を含んでおり;
ここで、該フェノール酸は、式:
【化3】
で表され、さらにここで、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ、独立して、水素又はC
1-C
4アルキルであり;及び、
該インドールアルカロイドは、式:
【化4】
で表され、ここで、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、H又はC
1-C
2アルキル基であり、並びに、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、C
1-C
2アルキル基であり;
ここで、
該フェノール酸は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸(シリング酸)を包含し、該フェノール酸塩は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸の塩を包含し;
及び、
該インドールアルカロイドは、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミン(グラミン)を包含し、該インドールアルカロイド塩は、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミンの塩を包含する;
前記最終使用組成物。
【請求項8】
前記組成物が、前記フェノール酸及び/又はインドールアルカロイドの塩を含んでいる、請求項7に記載の最終使用組成物。
【請求項9】
R
1及びR
3はCH
3であり、及び、R
2はHであり、そして、前記酸は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸であり、又は、R
1、R
2及びR
3の各々はHであり、そして、前記酸は、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸であり、又は、R
1、R
2及びR
3の各々はCH
3であり、そして、前記酸は、3,4,5-トリメトキシ安息香酸であり、又は、それらの混合物であり、及び、R
4及びR
5は水素であり、並びに、R
6及びR
7はCH
3であり、そして、前記インドールアルカロイドは、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミンである、請求項7~8に記載の最終使用組成物。
【請求項10】
前記インドールアルカロイドとフェノール酸又はそれらの塩が、0.5:9~2:10の重量比、好ましくは、0.6:7~4:9の重量比、最も好ましくは、0.75:4~5:8の重量比で存在している、請求項7~9に記載の最終使用組成物。
【請求項11】
前記組成物が、シャンプー、クリーム、ローション、漿液(serum)、ゲル、バルム(balm)、デオドラント、制汗剤、口腔ケア組成物、コンディショナー、クレンジングバー又は液体洗浄製品である、請求項7~10に記載の最終使用組成物。
【請求項12】
前記組成物が、パラベン、ホルムアルデヒド供与体、フェノキシエタノール、シリコーン、硫酸塩又はそれらの混合物を実質的に含まない、請求項7~11に記載の最終使用組成物。
【請求項13】
さらに、テルピネオール、チモール、12-ヒドロキシステアリン酸、ナイアシンアミド、レチノール、レゾルシノール又はそれらの混合物を含んでいる、請求項7~12に記載の最終使用組成物。
【請求項15】
最終使用組成物を保存するための、又は、対象物に前記抗菌系を有する組成物を接触させることによりその対象物に抗菌利益を提供するための、請求項1~6のいずれかに記載の抗菌系の非治療的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然由来の成分を含んでいる抗菌系を対象とする。より詳細には、本発明は、化粧品組成物、医薬組成物、ホームケア組成物及び洗浄組成物を包含する最終使用製剤に含有させることができる抗菌系を構成するインドールアルカロイド及びフェノール酸及び/又はそれらの塩に関する。本発明の抗菌系の成分は、果実及び植物において天然に見出されるものであり、予期せぬことに、このような最終使用組成物に添加した場合、優れた相乗的な抗菌利益をもたらす。本発明の抗菌系を含んでいる最終使用組成物は、パラベン、ホルムアルデヒド供与体、トリクロサン及び他の慣習的な抗菌成分(例えば、硫酸化抗菌成分、及び、ハロゲン化抗菌成分)を実質的に含まないように製剤することができる。
【背景技術】
【0002】
DMDMヒダントイン、パラベン、メチルイソチアゾリノン及びメチルクロロイソチアゾリノンは、消費者製品において見られる一般的に使用される防腐剤(即ち、抗菌成分)である。そのような成分は、長年使用されており、そして、特定の最終使用組成物の保全性及び安定性を維持するのに有効に働くことが知られている。それにもかかわらず、あらゆる消費者製品にわたって良好に機能するのに適した天然由来の成分を含んでいる抗菌系の開発が望まれている。天然由来の微生物系は、製品の保存に効果的であるべきであり、皮膚感作性であってはならず、及び、消費者製品(特に、局所適用される製品)の官能特性に悪影響を与えてはならない。
【0003】
該系は、優れた抗菌利益をもたらすことに加えて、環境に対して有害であってはならず、そして、最も傷つきやすい消費者である乳幼児に使用できるほど充分に優しくなければならない。
【0004】
効果的で、皮膚感作性がなく、環境的に持続可能な抗菌系を開発することへの関心が高まっている。従って、本発明は、天然由来の成分を有している抗菌系及びそれを含んでいる組成物を対象とする。この抗菌系は、インドールアルカロイド及びフェノール酸及び/又はそれらの塩を含んでいる。そのような系は、予想外に、それらが使用される最終使用組成物に優れた相乗的な抗菌利益をもたらす。
【0005】
追加情報
防腐剤系を製造するための努力が開示されている。米国公開特許出願第2012/0190744A1号には、化粧品製剤用の防腐剤系が記載されている。
【0006】
防腐剤系を製造するためのさらに他の努力が開示されている。米国特許第7,754,774B2号には、1,2-オクタンジオールを用いた防腐殺菌剤が記載されている。
【0007】
防腐剤系を製造するためのさらに他の努力も開示されている。米国特許第7,582,681B2号には、1,2-アルカンジオールを含んでいる抗菌活性化合物が記載されている。
【0008】
炎症反応を調節するためのさらなる努力が開示されている。世界出願第2021/202982A1号において、例えば、感染症によって引き起こされる1つ以上の有害反応を予防するための、又は、そのような有害反応の症状を改善するための、キノコ菌糸体及び/又は子実体混合物の水性画分又は固体画分を含んでいる組成物が記載されている。
【0009】
上記のいずれの追加情報にも、本明細書中において記載され、特許請求されているような抗菌系及びそのような系を含んでいる最終使用組成物については、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0190744A1号
【特許文献2】米国特許第7,754,774B2号
【特許文献3】米国特許第7,582,681B2号
【特許文献4】国際出願第2021/202982A1号
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、
(a)インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分;及び、
(b)フェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分;
を含んでいる抗菌系を対象とする。
【0012】
第2の態様において、本発明は、
(a)インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分;及び、
(b)フェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分;
を含んでいる最終使用組成物を対象とする。
【0013】
第3の態様において、本発明は、インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分とフェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分を有する抗菌系を有している組成物を保存するための使用又は方法を対象とする。
【0014】
第4の態様において、本発明は、インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分とフェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分を有する組成物を皮膚に接触させることにより、消費者に抗菌利益を提供するための使用又は方法を対象とする。
【0015】
第5の態様において、本発明は、インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分とフェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分を有する組成物を対象物(例えば、テーブルの表面)に接触させることにより、その対象物に抗菌利益を提供するための使用又は方法を対象とする。
【0016】
本発明の他の全ての態様は、後続の説明及び実施例から、より容易に明らかになるであろう。
【0017】
「抗菌系」は、本明細書中で使用されている場合、組成物中の防腐剤で見られるような抗菌利益及び表面(例えば、皮膚、又は、ホームケア表面、例えば、テーブルの表面)に局所的に適用される場合の抗菌利益を包含する、相乗的な微生物(antimicrobial)の低減を示すのに適した、少なくとも2成分の天然系を意味する。本発明の系により驚くほど相乗的に低減される微生物(antimicrobial)としては、パラベンに対して多くの場合耐性を示すグラム陰性の桿状細菌であるPluralibacter gergoviae科のEnterobacter gergoviae ATCC 33028又はそのような細菌、及び、Aspergillus属の真菌であるAspergillus brasiliensis ATCC 16404などがある。「少なくとも2成分系」は、インドールアルカロイドである少なくとも1の成分とフェノール酸である少なくとも1の成分を含んでいることを意味する(即ち、最終使用組成物に添加するための別個の添加剤組成物として販売することができるか、又は、最終所望の最終使用組成物を製造するための成分とともに別個に添加することができる)。「天然由来」は、合成製造を必要とせず、果実、植物及び/又は根から(少なくとも一形態で)回収するのに適したものを意味する。従って、天然由来には、天然資源から抽出又は単離されたものとしてすぐに使用できる成分の任意の類似体/誘導体が包含される。例えば、フェノール酸の場合、天然由来には、シーバックソーンの実のような果実から天然に回収されるシリング酸のような成分及びそこから作られる任意のエーテル変異体又はエステル変異体が包含される。本明細書中においてフェノール酸に関連して使用される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び/又はアンモニウムの陽イオンを有していること意味する。
【0018】
「皮膚」は、本明細書中で使用されている場合、足、顔、首、胸、腕(腕の下を含む)、手、脚、臀部、背中及び頭皮(毛髪を含む)の皮膚を包含する。本明細書中に記載されている最終使用組成物(即ち、直ぐに使用又は適用することができる組成物)は、クリーム、ローション、漿液(serum)、ゲル、バルム(balm)、デオドラント及び制汗剤、口腔ケア組成物、シャンプー、コンディショナー、バー(bar)及び液体洗浄製品、並びに、ホームケア組成物、例えば、硬質表面クリーナー及び窓クリーナー、便器クリーナー及び洗濯洗剤などを包含する。一実施形態では、本発明の最終使用組成物は、洗浄組成物(cleaning composition)、洗浄製品(wash product)又はリーブオン製品、例えば、顔、身体若しくは手に適用されるクリーム若しくはローションなどである。別の実施形態では、該最終使用組成物は、しわの外観を低減させる及び/又は皮膚に潤いを与えるなど、皮膚の属性を美容的に改善するのに適した化粧用リーブオン製品である。そのような組成物は、また、均一な色又は色調を有する皮膚をもたらす組成物、並びに、環境因子、老化プロセス又はその両方によって引き起こされる色素沈着斑の減少をもたらす組成物であることもできる。
【0019】
明示的に別途示されていない限り、本明細書中に記載されている全ての範囲は、そこに包含されている全ての範囲を含んでいることが意図されている。用語「含んでいる(comprise)」は、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を包含することが意図されている。不確かさを避けるために、シリング酸とグラミンを有する防腐剤部分を含んでいる組成物は、シリング酸とグラミンから本質的になる組成物及びシリング酸とグラミンからなる組成物を包含することが意図されている。本明細書中で使用されているパーセンテージに関しては、別途示されていない限り、重量基準であることが意図されている。実施例及び比較例における場合を除き、又は、他に明示的に示されている場合を除き、本明細書中で使用されている、材料の量若しくは比率及び/又はその使用を示す全ての数値は、単語「約」によって修飾されているものとして理解すべきである。本明細書中で使用されている場合、実質的に含まないとは、最終使用組成物の総重量に対して1.5重量%未満又は0.35重量%未満を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において使用するのに適切なフェノール酸又はその塩を包含する成分に関しては、その回収が好ましくは最も持続可能な方法で達成されることを除いて、そのような成分がどのように天然に調達されるかに関して制限はない。フェノール酸を含んでいる成分の天然供給源は、オリーブ、ナツメヤシ、カボチャ及びブドウを包含する果実、並びに、香辛料、アサイーヤシ、蜂蜜及び赤ワインである。フェノール酸は、エタノール、メタノール、酢酸エチル又はエチルエーテルなどの溶媒による抽出、さらには、フェノール酸が水にわずかに溶けることから水による抽出を包含する、当該技術分野で認められている技術を用いて、このような供給源から回収することができる。
【0021】
本発明において使用するのに適しているフェノール酸の例示は、以下のように表される:
【0022】
式I
【化1】
ここで、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ、独立して、水素又はC
1-C
4アルキルである。
【0023】
本発明の一実施形態では、R1及びR3はCH3であり、R2はHであり、そして、該酸は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸であり、一般に、シリング酸と称される。別の実施形態では、R1、R2及びR3の各々はHであり、そして、該酸は、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸であり、一般に、没食子酸と称される。さらに別の実施形態では、R1、R2及びR3の各々はCH3であり、そして、該酸、は3,4,5-トリメトキシ安息香酸であり、一般に、オイデスミン酸と称される。そのような酸の混合物は、その塩と同様に使用に適している。同一物の誘導体及び類似体に関しては、これらは、天然に存在する該酸を当技術分野で認められているアルキル化処理工程及び脱アルキル化処理工程に付すことによって、調製することができる。
【0024】
本発明において使用されるインドールアルカロイドを含んでいる成分がどのように天然に供給されるかについては、その同一の成分を得ることが好ましくは最も持続可能な方法で達成されることを除き、特に限定されない。例えば、水による固相抽出は、多くの場合、ルピナス属の植物からそのようなインドールを回収するための所望される技術である。本発明で使用するのに適しているインドールアルカロイドは、ダンチク、シルバーメープル、及び、Hordeum属やPhalaris属などのイネ科植物からも見いだされ、回収されている。そのような化合物を陽イオン交換基で抽出するために、より高い選択性と感度を達成するように設計された市販の混合モード高分子吸着剤を使用することも選択肢の一つである。インドールアルカロイド誘導体については、そのような誘導体を調製するために使用される1つの方法は、Fisher-Indole型プロセスである。
【0025】
本発明において使用するのに適している例示的なインドールアルカロイドは、以下のように表される:
【0026】
式II
【化2】
ここで、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、H又はC
1-C
2アルキル基であり、並びに、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、C
1-C
2アルキル基である。好ましい実施形態では、R
4及びR
5は水素であり、並びに、R
6及びR
7はCH
3であり、そして、該インドールアルカロイドは、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミンであり、一般に、グラミンと称される。インドールアルカロイドの塩(即ち、第四級アンモニウム塩又は第三級アミン塩)を含んでいることは本発明の範囲内であり、特に、最終使用組成物のpHが5~7である場合である。適切な対アニオンに使用される成分に関しては、これらは、消費者によって使用される最終使用組成物、特に、皮膚に局所的に使用される最終使用組成物において、適合する範囲のみに限定される。使用に適した対アニオンの例示的な非限定的な例としては、ハロゲン(例えば、Cl
-)、リン酸アニオン、硫酸アニオン、炭酸アニオン及び有機カルボン酸アニオン(例えば、YCOO
-、ここで、Yは、C
1-C
17の直鎖の、分枝鎖の、飽和の、不飽和の又は置換されている炭化水素であり得る)などがある。
【0027】
インドールアルカロイドとフェノール酸の好ましい重量比は、多くの場合、0.5:9~2:10であり、好ましくは、0.6:7~4:9であり、最も好ましくは、0.75:4~5:8である(それらの任意の塩を含んでいる)。
【0028】
本発明の一実施形態では、該抗菌系の8~75重量%、好ましくは、10~65重量%、最も好ましくは、12~50重量%が、インドールアルカロイドとフェノール酸(その塩を含んでいる)の総重量に基づいた、インドールアルカロイドである。
【0029】
典型的には、本発明の抗菌系を用いて製造された最終使用組成物は、最終使用組成物の総重量に基づいて、0.001~12%の抗菌系(即ち、インドールアルカロイド及びフェノール酸)の総重量を有する。本発明の一実施形態では、該組成物は、最終使用組成物の総重量に基づいて、0.01~10重量%の抗菌系を有し、さらに別の実施形態では、0.1~8重量%の抗菌系を有する。さらに別の実施形態では、最終使用組成物は、最終使用組成物の総重量に基づいて、1~6重量%、又は、1.25~6重量%、又は、1.5~5重量%、又は、2~4.5重量%の総重量の抗菌系を有する。
【0030】
本発明の抗菌系を含み得る最終使用組成物のタイプに関しては、一般に制限はない。本発明の抗菌系を使用するのに適した最終使用組成物は、典型的には、化粧品的に許容される担体成分を含んでいる。水が最も好ましい担体である。水の量は、最終使用組成物の総重量に基づいて、1~96重量%、好ましくは、5~90重量%、最も好ましくは、35~80重量%、最適には、40~75重量%の範囲であることができる。通常、本発明の最終使用組成物は、水と油のエマルションであり、最も好ましくは、水中油型のエマルションである。しかしながら、油中水型エマルション、特に、一般に油中水型及び高内相エマルションとして分類されるものも選択肢である。本発明の抗菌系を含有するのに適している高内相エマルションの例は、一般に所有されている米国特許出願公開第2008/0311058号及び米国特許第8,425,882号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
本発明における使用に適した他の化粧品的に許容される担体としては、鉱油、シリコーン油、合成又は天然のエステル、及び、アルコールなどを挙げることができる。これらの材料の量は、最終使用組成物の、0.1~50%重量の範囲、好ましくは、0.1~30重量%の範囲、最も好ましくは、1~20重量%の範囲であることができ、これは、そこに包含される全ての範囲を包含する。さらに別の実施形態では、そのような担体は、最終使用組成物の1~12重量%又は1~8重量%を集合的に構成する。
【0032】
シリコーン油は、揮発性の種類と不揮発性の種類に分けることができる。本明細書中で使用されている用語「揮発性」は、周囲温度で測定可能な蒸気圧を有する材料を示している。揮発性シリコーン油は、好ましくは、3~9個、さらに好ましくは、4~5個のケイ素原子を含んでいる、環状又は直鎖状のポリジメチルシロキサンから選択される。
【0033】
直鎖状揮発性シリコーン材料は、一般に、25℃で5センチストークス未満の粘度を有するが、環状材料は、典型的には、10センチストークス未満の粘度を有する(Brookfield Viscometer、RV No.3スピンドル、20RPMで測定、鉱油に対して標準化)。
【0034】
担体材料として有用な不揮発性シリコーン油としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン及びポリエーテルシロキサンコポリマーなどがある。本明細書中で有用な本質的に不揮発性のポリアルキルシロキサンとしては、例えば、25℃で5~100,000センチストークスの粘度を有するポリジメチルシロキサン(ジメチコンのような)などがある。
【0035】
多くの場合に好ましいシリコーン源は、シクロペンタシロキサンとジメチコノールの溶液である。
【0036】
適切なエステルとしては、以下のものなどがある:
(1)10~20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルエステル又はアルキルエステル、例えば、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸オレイル、及び、オレイン酸オレイル;
(2)エーテルエステル、例えば、エトキシ化脂肪アルコールの脂肪酸エステル;
(3)多価アルコールエステル、例えば、エチレングリコールモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200-6000)モノ-及びジ-脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ-及びジ-脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリプロピレングリコール2000、モノステアリン酸ポリプロピレングリコール2000、エトキシ化プロピレングリコールモノステアレート、グリセリルモノ-及びジ-脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ脂肪エステル、エトキシ化グリセリルモノステアレート、1,3-ブチレングリコールモノステアレート、1,3-ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及び、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;
(4)ワックスエステル、例えば、蜜蝋、鯨蝋、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル;及び、
(5)ステロールエステル、例えば、ダイズステロール及びコレステロール脂肪酸エステル。
【0037】
乳化剤(又は、界面活性剤)は、本発明の抗菌系を含んでいる最終使用組成物の中に存在させることができる。乳化剤の総濃度は、該最終使用組成物の、0.1~30重量%の範囲、好ましくは、2~20%重量の範囲、最も好ましくは、1~8重量%の範囲であることができる。該乳化剤は、アニオン性成分、非イオン性成分、カチオン性成分及び両性成分からなる群から選択することができる。特に好ましい非イオン性成分は、疎水性成分1モル当たり2~100モルのエチレンオキシド又はプロピレンオキシドと縮合したC10-C20脂肪アルコール又は酸疎水性成分;2~20モルのアルキレンオキシドと縮合したC2-C10アルキルフェノール;エチレングリコールのモノ-及びジ-脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセリド;ソルビタン、モノ-及びジ-C8-C20脂肪酸;及び、ポリオキシエチレンソルビタン、及び、これらの組み合わせである。アルキルポリグリコシド及びサッカリド脂肪アミド(例えば、メチルグルコンアミド)も、適切な非イオン性乳化剤である。
【0038】
使用することが可能な適切なアニオン性乳化剤としては、アルキルエーテルスルフェート及びスルホネート、アルキルスルフェート及びスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキル及びジアルキルスルホスクシネート、C8-C20アシルイセチオネート、C8-C20アルキルエーテルホスフェート、アルキルエーテルカルボキシレート及びそれらの組み合わせなどがある。
【0039】
使用することが可能なカチオン性乳化剤としては、例えば、パルミタミドプロピルトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド及びそれらの混合物などがある。有用な両性乳化剤としては、ココアミドプロピルベタイン、C12-C20トリアルキルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム及びラウロジアンホ酢酸ナトリウム又はそれらの混合物などがある。
【0040】
他の一般的に好ましい乳化剤としては、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリコール、ステアラミドAMP、ステアリン酸PEG-100、セチルアルコール、並びに、乳化/増粘添加剤、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレート共重合体/スクアレン及びそれらの混合物などがある。
【0041】
必須ではないが、潜在的に有害な微生物の増殖に対して補助するために、本発明の抗菌系を含んでいる最終使用組成物に従来の防腐剤を場合によりに組み込むことができる。本発明の最終組成物において場合により使用するのに適した従来の防腐剤としては、パラヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルなどがる。別の防腐剤としては、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩及び種々の第4級アンモニウム化合物などがある。多くの場合に好ましい防腐剤は、安息香酸ナトリウム、ヨードプロピニルブチルカルバメート、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、イミダゾリジニル尿素、デヒドロ酢酸ナトリウム及びベンジルアルコールである。本発明において場合により使用され得る従来の防腐剤の存在下又は非存在下で使用するのに適した特に好ましい添加剤は、1,2-アルカンジオール(例えば、1,2-オクタンジオール及び1,2-ヘキサンジオール)である。
【0042】
オイゲノール、クマリン、チモール、テルピネオール、酢酸リナリル、シトロネラール、アイリス濃厚物、酢酸テルピニル、ピネン類(αピネン及びβピネン)及びシトロネロールのような従来の香料成分(最終使用組成物中の香料とは、別に、又は、香料とともに添加される)を場合によりに添加することができる。
【0043】
使用する場合、従来の防腐剤、ビシナルジオール及び/又は香料成分は、本発明の最終使用組成物の、2重量%以下、好ましくは、1重量%以下、最も好ましくは、0.6重量%以下、さらには、0.2重量%以下を構成する。本発明の一実施形態では、最終使用組成物の総重量に基づいて、0.0001~0.85重量%の場合によるの防腐剤、ビシナルジオール及び/又は香料成分を使用することができる。該最終使用組成物は本発明の抗菌系を含んでいるので、本発明の好ましい実施形態では、従来の防腐剤、ビシナルジオール及び/又は香料成分(該最終使用組成物中に使用される香料中に提供され得るものを除く)は、最終使用組成物において使用されない。本発明の別の実施形態では、該最終使用組成物は、パラベン、ホルムアルデヒド供与体及び/又はフェノキシエタノールを有さない(0.0重量%)。本発明のさらに別の実施形態では、該最終使用組成物は、シリコーン及び/又は硫酸塩含有成分(例えば、界面活性剤又は乳化剤)を実質的に含まない。さらに別の実施形態では、本発明の最終使用組成物は、シリコーンを含有せず、及び/又は、硫酸塩を含んでいる成分を含有しない(即ち、0.0重量%)。
【0044】
本発明の最終使用組成物には、場合により、増粘剤を含ませることができる。特に有用なのは、多糖類である。例としては、柑橘類繊維、澱粉、天然/合成ガム及びセルロースなどがある。デンプンの代表的なものは、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸ナトリウム及びオクテニルコハク酸アルミニウムデンプンなどの化学的に修飾されたデンプンである。多くの場合、タピオカ澱粉が好ましい。適切なガム類としては、キサンタン、スクレロチウム、ペクチン、カラヤ、アラビア、寒天、グアー、カラギーナン、アルギネート及びそれらの組み合わせなどがある。適切なセルロース類としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなどがある。合成ポリマーは、効果的な増粘剤のさらに別のクラスである。このカテゴリーには、架橋ポリアクリレート、例えば、Carbomers、ポリアクリルアミド、例えば、Sepigel(登録商標) 305及びタウレートコポリマー、例えば、Simulgel EG(登録商標)及びAristoflex(登録商標) AVCが含まれ、ここで、該コポリマーは、それぞれのINCI命名法により、アクリル酸ナトリウム/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレート及びアクリロイルジメチルタウレート/ビニルピロリドンコポリマーとして識別される。増粘に適した別の好ましい合成ポリマーは、Seppic社によって市販され、Simulgel IN100の名称で販売されているアクリレートベースのポリマーである。
【0045】
増粘剤を使用する場合、その増粘剤の量は、最終使用組成物の、て0.001~5重量%の範囲、好ましくは、0.1~2重量%の範囲、最も好ましくは、0.2~0.5重量%の範囲であり得る。
【0046】
本発明の抗菌系を含んでいる最終使用組成物においては、場合により、香料、固定剤及び研磨剤を使用することができる。これらの物質は、それぞれ、最終使用組成物の総重量の、0.05~5重量%の範囲、好ましくは、0.1~3重量%の範囲、最も好ましくは、0.2~1重量%の範囲であり得る。
【0047】
本発明の最終使用組成物においては、従来の保湿剤を使用することができる。これらは、一般に、多価アルコールタイプの材料である。代表的な多価アルコールとしては、グリセロール(即ち、グリセリン(glycerine)又はグリセリン(glycerin))、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、エトキシ化グリセリン、プロポキシ化グリセリン及びこれらの混合物などがある。最も好ましいのは、グリセリン、プロピレングリコール又はそれらの混合物である。使用される保湿剤の量は、最終使用組成物の、0.5~20重量%の範囲、好ましくは1~15重量%の範囲、最も好ましくは2~10重量%の範囲であり得る。
【0048】
本発明の最終使用組成物は、ビタミンを含むことができる。例示的なビタミンは、ビタミンA(レチノール)及びレチノールエステル(例えば、パルミチン酸レチノール及びプロピオン酸レチノール)、ビタミンB2、ビタミンB3(ナイアシンアミド)、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸及びビオチンである。また、ビタミンの誘導体も使用することができる。例えば、ビタミンCの誘導体としては、テトライソパルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム及びアスコルビルグリコシドなどがある。ビタミンEの誘導体としては、酢酸トコフェリル、パルミチン酸トコフェリル及びリノール酸トコフェリルなどがある。DL-パンテノール及びその誘導体も使用することができる。存在する場合、ビタミンの総量は、最終使用組成物の、0.001~10重量%の範囲、好ましくは0.01~5重量%の範囲、最適には0.1~2重量%の範囲である。
【0049】
本発明において使用するのに適している他の場合による添加物としては、レゾルシノール、例えば、4-エチルレゾルシノール、4-ヘキシルレゾルシノール、4-フェニルエチルレゾルシノール、ジメトキシトルイルプロピルレゾルシノール、4-シクロペンチルレゾルシノール、4-シクロヘキシルレゾルシノール、α-及び/又はβ-ヒドロキシ酸、ペトロセリン酸、共役リノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、チアミドール、それらの混合物などがある。さらに他の場合による添加剤、例えば、エタノール、第4級アンモニウム化合物(例えば、塩化セトリモニウム、塩化ベンザルコニウムなど)及びレシチンなども、も含ませることができる。そのような添加剤は、使用される場合、集合的に、最終使用組成物の、0.001~12重量%、好ましくは、0.01~6重量%、最も好ましくは、0.1~4重量%を構成する。本発明の一実施態様では、これらの場合による添加剤は、個々に、そして、使用される場合、最終使用組成物の0.01~1重量%を構成する。本発明の別の実施態様では、最終使用組成物において使用される場合による添加剤としては、ナイアシンアミド、12-ヒドロキシステアリン酸、レゾルシン(例えば、チアミドールのような)又はそれらの混合物などがある。
【0050】
本発明の最終使用組成物中において、落屑促進剤を存在させることができる。例示的なものは、α-ヒドロキシカルボン酸、β-ヒドロキシカルボン酸である。用語「酸」は、遊離酸のみを意味するのではなく、その塩及びC1-C30アルキルエステル又はアリールエステル、及び、水を除去して環状又は直鎖ラクトン構造を形成して生成したラクトンも包含することが意図されている。代表的な酸は、グリコール酸及びその誘導体、乳酸及びリンゴ酸である。サリチル酸はβ-ヒドロキシカルボン酸の代表である。存在する場合、これらの材料の量は、最終使用組成物の、0.001~15重量%の範囲、好ましくは0.01~6重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲であり得る。
【0051】
本発明の最終使用組成物には、場合により、様々なハーブ抽出物を任意に含ませることができる。該抽出物は、水溶性でも水不溶性でもよく、そして、それぞれ親水性又は疎水性である溶媒中に保持される。水及びエタノールは、好ましい抽出溶媒である。例示的な抽出物としては、緑茶、ノコギリソウ、カモミール、甘草、アロエベラ、ブドウ種子、柑橘類ウンシュウ、ヤナギの樹皮、セージ及びローズマリーから取り出されたものなどがある。
【0052】
さらにまた、使用するのに場合により適しているのは、以下のような材料である:キレート剤(例えば、EDTA)、不透明化剤(例えば、TiO2、粒径50~1200nm、好ましくは、50~350nm)、C8-22脂肪酸置換糖類、リポ酸、レチノキシトリメチルシラン(Clariant Corp.から、Silcare 1M-75の商品名で入手可能)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)及びそれらの組み合わせ。セラミド(セラミド1、セラミド3、セラミド3B及びセラミド6を包含する)及び疑似セラミドも、場合により含ませることができる。これらの材料の量は、それらが使用される場合、最終使用組成物の、0.0001~8重量%の範囲、好ましくは、0.001~6重量%の範囲、最も好ましくは、0.001~3重量%の範囲であることができる。
【0053】
本発明の最終使用組成物には、場合により、日焼け止め活性剤も含ませることができる。特に好ましいのは、Parsol MCX(登録商標)として入手可能なp-メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、Parsol 1789(登録商標)として入手可能なAvobenzene、及び、Oxybenzoneとしても知られるベンゾフェノン-3などの材料である。無機日焼け止め活性剤、例えば、極微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、ポリエチレン及び様々な他のポリマーなどを使用することもできる。存在する場合、日焼け止め剤の量は、一般的に、0.1~30重量%の範囲、好ましくは、0.5~20重量%の範囲、最適には、0.75~10重量%であり得る。
【0054】
慣習的な緩衝剤/pH調節剤を使用することができる。これらのものとしては、一般的に使用される添加剤、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、クエン酸、トリエタノールアミン、クエン酸塩/クエン酸緩衝液又はそれらの混合物などがある。本発明の実施形態では、最終使用組成物のpHは、4~8、好ましくは、4.25~7.75、最も好ましくは、5.6~7.5である。別の実施形態では、最終使用組成物のpHは、5~7である。
【0055】
本発明のさらに別の実施形態では、及び、該最終使用組成物が慣習的なクレンジング組成物又は洗浄組成物である場合は、そのようなクレンジング組成物又は洗浄組成物は、多くの場合、4~45重量%、又は、6~28重量%、又は、8~22重量%のC8-C20、好ましくは、C10-C20又はC12-C18の脂肪酸又は脂肪酸石鹸、及び、5重量%未満の合成界面活性剤、好ましくは、1~3重量%の合成界面活性剤(合成洗剤)を含んでいる。本発明の一実施形態では、該クレンジング組成物又は洗浄組成物は、0~5重量%、好ましくは、0.01~4重量%の12-ヒドロキシステアリン酸(12-HSA)及び0.01~25重量%のグリセロールを含んでいる。さらに別の実施形態では、本発明の最終使用組成物は、0~6重量%のスルフェート系界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を含んでいるが、好ましくは、スルフェート系界面活性剤を含まない(0.0重量%)。
【0056】
本発明のさらに別の実施形態では、及び、該最終使用組成物がクレンジング組成物又は洗浄組成物である場合は、該組成物は、8重量%未満の脂肪酸及び脂肪酸石鹸を含むことができる。その場合、合成洗剤は、本発明の抗菌系を有する最終使用組成物の2~30重量%、好ましくは、3~22重量%、最も好ましくは、4~15重量%を構成する。使用される合成洗剤は、典型的には、グリシネート、グルタメート、イセチオネート、タウレート、ベタイン又はそれらの混合物である。
【0057】
本発明の最終使用組成物の粘度は、典型的には、1,000~50,000cpsである。該ウォッシュオフ組成物は、好ましくは、9,000cps未満の粘度を有し、該リーブオン組成物は、好ましくは、6,000~15,000cpsの粘度を有する。粘度は、Brookfield Viscometer RVT, Model D220のような当技術分野で認められている機器を使用し、TバースピンドルDを用いて、25℃で、5RPM、60秒で、測定することができる。
【0058】
0.001~12重量%の本発明の抗菌系を含んでいるようにすることができる例示的な最終使用組成物を以下に記載する。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
そのような組成物を調製する場合、均質な組成物が得られるまで、大気圧下で適度に加熱して(50~70℃)撹拌を使用する。好ましくは均質化が包含される。該抗菌系は、組み合わされた成分として、又は、個々の成分として、所望の最終使用組成物に添加することができ、バランスさせるために水を添加する。
【0064】
本発明の抗菌系を含んでいる最終使用組成物を保存及び送達するために、多種多様な包装を使用することができる。包装は、多くの場合、製品の種類とその用途に依存する。例えば、リーブオンスキンローション及びクリーム、シャンプー、コンディショナー及びシャワージェルは、一般に、クロージャーで覆われた小分け端に開口部を有するプラスチック製容器を使用する。噴射剤で加圧され、スプレーノズルを有する金属製缶は、ムース及び他のパーソナルケア製品(例えば、制汗剤)を包装するのに使うことができる。多くの場合、ポストコンシューマー樹脂が好ましい。
【0065】
該抗菌系を濃厚物(即ち、前駆体最終使用組成物)に含ませることも本発明の範囲内であり、この場合、消費者はそのような濃厚物を入手し、そして、これに水を加えて所望の最終使用組成物を生成させる。
【0066】
以下の実施例は、本発明の理解を容易にするために提供される。この実施例は、「特許請求の範囲」の範囲を限定することを意図するものではない。
【0067】
本発明の抗菌系(microbial system)を使用した場合に得られる驚くべき相乗的な利益は、以下に記載されているものと同様の研究を行うことによって確認した。
【実施例】
【0068】
以下に示されているようにインドールアルカロイドとフェノール酸を合して、天然由来の抗菌系を作製した。2つのプールを設定し、各プールに1種類の菌を含ませた。対象とした菌株は、グラム陰性菌であるPluralibacter gergoviae科のEnterobacter gergoviae ATCC 33028とAspergillus brasiliensis ATCC 16404である。FIC試験範囲は、各試料の予測MICの16倍であった。第1及び第2の天然成分(成分A及び成分B)を合して天然成分の混合物及び抗菌系を作り、予想外の優れた結果が得られたことを実証した。
【0069】
分画濃度と分画阻害濃度(FIC)の概念を用いて、単体と混合物における阻害性抗菌剤の異なる挙動が広く研究されている。例えば、「JRW Lambert and R Lambert, J. Appl. Microbiol 95, 734 (2003)」、「T. Jadavji, CG Prober and R Cheung, Antibacterial Agents and Chemotherapy 26, 91 (1984)」及びWO 2004/006876を参照されたい。MICは、ある成分が微生物の目に見える増殖を阻止する最小阻害濃度である。FC及びFICパラメータは、以下のように定義することができる:
FC(成分A)=混合物中で試験した成分Aの濃度/MIC(単一活性剤として試験した成分A);
FIC(成分a)=MIC(混合物で試験した成分a)/MIC(単一活性剤として試験した成分a)。
【0070】
抗菌剤間の相互作用は、単独で試験した場合の個々の成分の同じ合計濃度で得られる効力と同等か、それを超えているか、又は、それより劣っているかに応じて、相加的であり得るか、相乗的であり得るか、又は、恐らく拮抗的であり得る。これらの関係は、当該混合物中に存在している全ての成分に関する分画MIC値を合計して「分画阻止指数(fractional inhibitory index)」を与えることにより、数学的に表現することができる:
ΣFIC=FIC(成分1)+FIC(成分2)
その結果、
0.5より大きいΣFICは、普通の活性、相加的活性又は拮抗的活性に相当する;
0.5以下のΣFICは、相乗的活性に相当する。
【0071】
これに匹敵する方法は、相乗効果指数(SI)を計算することで有り、これは、Kull, F.C.(Eisman, P.C.; Sylwestrowicz,H.D. and Mayer, R.L., in Applied Microbiology 9:538-541 (1961))によって記載されている工業的に認められた方法である。
【0072】
試験方法
液体ブロスアッセイ(MIC及びチェッカーボード)を実施して、天然防腐材料の単体及び2種類の組み合わせの最小濃度を確認した。ISO 20776-1:2006を修正した方法を用いて、以下のようにスクリーニングを行った。各200uL/細胞(又は、ウェル)の各保存化学物質のストック溶液と100uLのブロスを別々の96ウェルプレートで作成した。次いで、2種類の保存化学物質/ブロス混合液のそれぞれを種々の濃度で3番目の96ウェルプレートの中で合し、次いで、1-5×106個の微生物を接種し、30℃で24時間インキュベートし、その後、OD600nmでの光学濃度を測定した。MICは、保存化学物質を含んでいない陽性増殖対照と比較して、25%未満の増殖が観察された濃度として定義した。
【0073】
【0074】
相乗効果を示す組み合わせ
Enterobacter gergoviae
シリング酸とグラミン
シリング酸単独は、Enterobacter gergoviaeに対して、50mg/mLを超える最小増殖阻止濃度(MIC)を示した。グラミン単独は、6.25mg/mLのMICを示した。グラミンとシリング酸の組み合わせでは、当該阻害効果を達成するのに、0.098mg/mLのグラミンと0.781mg/mLのシリング酸が必要であった。これは、グラミンとシリング酸の有意な相乗効果を示している。
【0075】
Aspergillus brasiliensis
シリング酸とグラミン
シリング酸単独は、Aspergillus brasiliensisに対して、50mg/mLを超えるMICを示した。グラミン単独は、A.brasiliensisに対して、12.5mg/mLのMICを示した。グラミンとシリング酸の組み合わせでは、当該阻害効果を達成するのに、1,563mg/mLのグラミンと6.25mg/mLのシリング酸が必要であった。これは、グラミンとシリング酸の有意な相乗効果を示している。
【0076】
上記で提供されたデータは、驚くべきことに、本発明と一致するように天然抗菌成分を組み合わせた場合、Enterobacter gergoviaeとAspergillus brasiliensisに対する相乗的利益が予想外に観察されることを示している。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌系であって、
(a)インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分;及び、
(b)フェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分;
を含んでおり;
ここで、該フェノール酸は、式:
【化1】
で表され、さらにここで、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ、独立して、水素又はC
1-C
4アルキルであり;及び、
該インドールアルカロイドは、式:
【化2】
で表され、ここで、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、H又はC
1-C
2アルキル基であり、並びに、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、C
1-C
2アルキル基であり;
ここで、
該フェノール酸は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸(シリング酸)を包含し、該フェノール酸塩は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸の塩を包含し;
及び、
該インドールアルカロイドは、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミン(グラミン)を包含し、該インドールアルカロイド塩は、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミンの塩を包含する;
前記抗菌系。
【請求項2】
前記抗菌系が、前記フェノール酸及び/又は前記インドールアルカロイドの塩を含んでいる、請求項1に記載の抗菌系。
【請求項3】
前記組成物が、さらに、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸であるフェノール酸(ここで、R
1、R
2及びR
3は、Hである)又は3,4,5-トリメトキシ安息香酸であるフェノール酸(ここで、R
1、R
2及びR
3の各々は、CH
3である)又はそれらの混合物を含んでいる、請求項1又は2に記載の抗菌系。
【請求項4】
前記インドールアルカロイドとフェノール酸及び/又はそれらの塩が、0.5:9~2:10の重量比、好ましくは、0.6:7~4:9の重量比、最も好ましくは、0.75:4~5:8の重量比で存在している、請求項1又は2に記載の抗菌系。
【請求項5】
前記抗菌系の8~75重量%、好ましくは、10~65重量%、最も好ましくは、12~50重量%が、インドールアルカロイドとフェノール酸(それらの任意の塩を含んでいる)の総重量に基づいた、インドールアルカロイド又はその塩である、請求項1又は2に記載の抗菌系。
【請求項6】
抗菌系を含んでいる最終使用組成物であって、該抗菌系が、
(a)インドールアルカロイド、インドールアルカロイド塩又はその両方を含んでいる第1の成分;
(b)フェノール酸、フェノール酸塩又はその両方を含んでいる第2の成分;及び、
(c)化粧品的に許容される担体
を含んでおり;
ここで、該フェノール酸は、式:
【化3】
で表され、さらにここで、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ、独立して、水素又はC
1-C
4アルキルであり;及び、
該インドールアルカロイドは、式:
【化4】
で表され、ここで、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、H又はC
1-C
2アルキル基であり、並びに、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、C
1-C
2アルキル基であり;
ここで、
該フェノール酸は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸(シリング酸)を包含し、該フェノール酸塩は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸の塩を包含し;
及び、
該インドールアルカロイドは、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミン(グラミン)を包含し、該インドールアルカロイド塩は、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミンの塩を包含する;
前記最終使用組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記フェノール酸及び/又はインドールアルカロイドの塩を含んでいる、請求項6に記載の最終使用組成物。
【請求項8】
R
1及びR
3はCH
3であり、及び、R
2はHであり、そして、前記酸は、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ安息香酸であり、又は、R
1、R
2及びR
3の各々はHであり、そして、前記酸は、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸であり、又は、R
1、R
2及びR
3の各々はCH
3であり、そして、前記酸は、3,4,5-トリメトキシ安息香酸であり、又は、それらの混合物であり、及び、R
4及びR
5は水素であり、並びに、R
6及びR
7はCH
3であり、そして、前記インドールアルカロイドは、1-(1H-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルメタンアミンである、請求項6又は7に記載の最終使用組成物。
【請求項9】
前記インドールアルカロイドとフェノール酸又はそれらの塩が、0.5:9~2:10の重量比、好ましくは、0.6:7~4:9の重量比、最も好ましくは、0.75:4~5:8の重量比で存在している、請求項6又は7に記載の最終使用組成物。
【請求項10】
前記組成物が、シャンプー、クリーム、ローション、漿液(serum)、ゲル、バルム(balm)、デオドラント、制汗剤、口腔ケア組成物、コンディショナー、クレンジングバー又は液体洗浄製品である、請求項6又は7に記載の最終使用組成物。
【請求項11】
前記組成物が、パラベン、ホルムアルデヒド供与体、フェノキシエタノール、シリコーン、硫酸塩又はそれらの混合物を実質的に含まない、請求項6又は7に記載の最終使用組成物。
【請求項12】
さらに、テルピネオール、チモール、12-ヒドロキシステアリン酸、ナイアシンアミド、レチノール、レゾルシノール又はそれらの混合物を含んでいる、請求項6又は7に記載の最終使用組成物。
【請求項13】
最終使用組成物を保存するための、又は、対象物に前記抗菌系を有する組成物を接触させることによりその対象物に抗菌利益を提供するための、請求項1又は2に記載の抗菌系の非治療的使用。
【国際調査報告】