(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】微生物群
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20241226BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241226BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20241226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241226BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241226BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20241226BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P1/16
A61P3/06
A61P35/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P9/12
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K35/741
C12N1/20 E ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538964
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2022087841
(87)【国際公開番号】W WO2023126384
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524240319
【氏名又は名称】エムアールエム・ヘルス・ナームローゼ・ベンノートシャープ
(71)【出願人】
【識別番号】500454769
【氏名又は名称】ウニフェルジテイト・ヘント
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Gent
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・デ・ウィーレ,トム
(72)【発明者】
【氏名】ピニェイロ,アイリス
(72)【発明者】
【氏名】ポセミアーズ,サム
(72)【発明者】
【氏名】ボルカ,セリン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,ジョアナ
(72)【発明者】
【氏名】パンダ,スチタ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087BC31
4C087BC55
4C087BC56
4C087CA09
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA42
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC33
4C087ZC35
4C087ZC75
(57)【要約】
少なくとも2つの以下の属:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、又はアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する2つ以上の細菌株を含む組成物が本明細書に記載される。本明細書に記載の態様は、肝臓の疾患又は状態、その症状の治療に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓の疾患若しくは状態又はその症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒する方法に使用するための、少なくとも2つの以下の属:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)、ローズブリア(Roseburia)、アッカーマンシア(Akkermansia)、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)の2つ以上の細菌株を含む組成物。
【請求項2】
少なくとも2つの以下の種:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)の2つ以上の細菌株を含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
酪酸塩を産生できる少なくとも1つの細菌株と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも1つの細菌株を含む、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも1つの追加の細菌株をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つの追加の細菌株をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる3つの追加の細菌株をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる前記1つ又は複数の追加の細菌株が、フォカエイコラ(Phocaeicola)属、ベイロネラ(Veillonella)属、又はブラウティア(Blautia)属、好ましくはフォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)種、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)種、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)種、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)種、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)種、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)種に属する、請求項3~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
-フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus);
-ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及び
-ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記組成物が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、肝硬変、及び/又は肝臓新生物を治療、遅延、改善、予防、又は治癒する方法で使用するためのものであり、前記肝臓新生物が、好ましくは肝細胞癌(HCC)又はその症状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記症状が、体重増加、インスリン抵抗性、肝炎症、脂肪症、肝細胞風船様肥大、肝内血管抵抗(IHVR)、門脈圧亢進症、内皮機能障害、及び/又は線維症を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
NAFLの疾患進行を遅延させる又は予防する方法、好ましくはNAFLからNASHへの進行、NASHから肝線維症への進行、肝線維症から肝硬変への進行、及び/又は肝硬変からHCCへの進行を遅延させる方法で使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属し、好ましくは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)種、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)種、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)種、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)種、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)種、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)種に属する細菌株を含み、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つの追加の細菌株をさらに含む組成物。
【請求項13】
プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる3つの追加の細菌株をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる前記2つ以上の追加の細菌株が、フォカエイコラ(Phocaeicola)属、ベイロネラ(Veillonella)又はブラウティア(Blautia)属に属し、好ましくはフォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)種、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)種、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)種、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)種、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)種、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)種に属する、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
-フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus);
-ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及び
-ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)をさらに含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の態様及び実施形態は、ヒト及び動物の健康のための微生物組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は最も一般的な慢性肝疾患であり、その世界的な有病率は約25%と推定され、中東と南アメリカがほとんどの症例を報告し、アフリカは有病率が最も低い。(1)NAFLDは、メタボリックシンドロームの肝臓の兆候とされ、一般的な併存疾患には、肥満、2型糖尿病、高脂血症、及び高血圧が含まれる。(2)NAFLD及び関連する併存疾患の有病率が増加しており(1,3)、その結果、NAFLDは、経済的及び社会的に急激に大きな負担となっている。(4)NAFLDは、単純性脂肪症としても知られる非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、肝炎症の存在を特徴とする非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とにさらに分類することができる。NASHは、肝線維症、肝硬変、肝不全、肝細胞癌(HCC)に進行し得る侵攻型の疾患である。(2)代謝調節異常は、NAFLDの顕著な特徴である。インスリン抵抗性、高脂血症、又は脂質異常症は一般的な特徴であるため、チアゾリジンジオン(TZD)などの脂質調節剤は、NAFLDの治療のための臨床試験に成功している。しかしながら、体重増加、体液貯留、及び心筋梗塞のリスクなどの重大な副作用が報告されている。(6~8)加えて、これまでのところ、NASHには承認された薬物療法はない。
【0003】
痩せたラットから採取した糞便物質の、高脂肪グルコース/フルクトース食(HFGFD)を与えられたNASHラットへの移植が報告されている(9)。しかしながら、組織学的に有意な変化は認められなかった。糞便移植又は糞便微生物移植(FMT)が十分に特徴付けられていない手順であるという事実から、感染症の伝染リスクを伴い、それほど急性ではなく生命を脅かすほどではない病状への適用性については疑義が生じる。実際、FMTは、特にこの疾患の慢性的且つ進行性の性質を考慮すると、長期的な治療選択肢になる可能性は低い。
【0004】
国際公開第2017/134240号パンフレットは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、ローズブリア・ホミニス(Roseburia hominis)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)から本質的になる集団(consortium)並びに胃腸障害におけるその使用について記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を考慮すると、肝臓の病状又は関連する状態や症状の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に使用することができ、既存の治療法の欠点が全くない改善された手段及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、細菌の特定の組み合わせは、動物とヒトの健康に特別で驚くべき有益な効果をもたらすことが見出された。特に、本明細書の他の箇所及び実験のパートで詳述されているように、本明細書に記載される組成物は、少なくとも以下の有益な効果を発揮することが見出された:特に、体重増加の減少、インスリンレベルの低下、グルコースレベルの低下、インスリン抵抗性の低下、門脈圧及び肝内血管抵抗の低下、内皮機能障害の緩和、肝炎症の減少、脂肪症の軽減、肝細胞風船様肥大の軽減、及び線維症の軽減。
【0007】
したがって、本明細書に記載の態様及び実施形態は、本明細書で論じられる問題及びニーズの少なくとも一部を解決する。
【0008】
ある態様では、肝臓の疾患若しくは状態又はその症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒する方法で使用するための、少なくとも2つの以下の属:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)、ローズブリア(Roseburia)、アッカーマンシア(Akkermansia)、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)の2つ以上の細菌株を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、使用のための組成物は、少なくとも2つの以下の種:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)の2つ以上の細菌株を含む組成物である。いくつかの実施形態では、使用のための組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも1つの細菌株と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも1つの細菌株を含む組成物である。いくつかの実施形態では、使用のための組成物は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つの追加の細菌株をさらに含む組成物である。いくつかの実施形態では、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる1つ又は複数の追加の細菌株は、フォカエイコラ(Phocaeicola)属、ベイロネラ(Veillonella)属、又はブラウティア(Blautia)属、好ましくはフォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)種、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)種、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)種、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)種、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)種、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)種に属する。いくつかの実施形態では、使用のための組成物は:
-フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus);
-ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及び
-ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)をさらに含む組成物である。
【0009】
いくつかの実施形態では、組成物は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、肝硬変、及び/又は肝臓新生物を治療、遅延、改善、予防、又は治癒する方法で使用するためのものであり、肝臓新生物は、好ましくは肝細胞癌(HCC)又はその症状である。好ましくは、症状は、体重増加、インスリン抵抗性、肝炎症、脂肪症、肝細胞風船様肥大、肝内血管抵抗(IHVR)、門脈圧亢進症、内皮機能障害、及び/又は線維症を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、NAFLの疾患進行を遅延又は予防する方法、好ましくは、NAFLからNASHへの進行、NASHから肝線維症への進行、肝線維症から肝硬変への進行、及び/又は肝硬変からHCCへの進行を遅延させる方法で使用するためのものである。
【0010】
別の態様では、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属、好ましくはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)種、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)種、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)種、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)種、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)種、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)種に属する細菌株を含み、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つの追加の細菌株をさらに含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる3つの追加の細菌株をさらに含む。いくつかの実施形態では、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる2つ以上の追加の細菌株は、フォカエイコラ(Phocaeicola)属、ベイロネラ(Veillonella)属、又はブラウティア(Blautia)属、好ましくはフォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)種、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)種、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)種、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)種、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)種、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)種に属する。いくつかの実施形態では、組成物は:
-フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus);
-ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及び
-ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)をさらに含む。
【0011】
生物学的材料の寄託
本出願に記載の微生物株LMG P-29362、LMG P29360、LMG P-29365、LMG P-29361、LMG P-29366、及びLMG P29359の精製培養物が、寄託者Prodigest(Technologiepark 3,9052 Zwijnaarde,Belgium;current address:Technologiepark 82,9052 Zwijnaarde,Belgium)with によって、ブダペスト条約及び世界知的所有権機関によって国際寄託機関として認められているBCCM/LMG Laboratorium voor Microbiologie,Universiteit Gent(UGent),K.L.Ledeganckstraat 35,B-9000 Gent,Belgiumに寄託された。最初の寄託は、2016年1月18日に行われた。
【0012】
説明
組成物
ある態様では、少なくとも2つの以下の属:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)、ローズブリア(Roseburia)、アッカーマンシア(Akkermansia)、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)の2つ以上の細菌株を含む組成物が提供される。言い換えれば、これは、組成物が、両方がフィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)、ローズブリア(Roseburia)、アッカーマンシア(Akkermansia)、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)から選択される異なる属からの少なくとも2つの細菌株を含むことを意味する。したがって、例えば、3つの細菌株を含む組成物は、1つの属からの2つの菌株と異なる属からの第3の菌株、或いは異なる属からの3つの菌株を含み得る。
【0013】
好ましくは、前記組成物は、肝臓の疾患若しくは状態又はその症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒する方法で使用するためのものである。肝臓の疾患及び状態並びにその症状は、本明細書の他の箇所でより詳細に説明される(「方法及び使用」のセクションを参照されたい)。
【0014】
ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属は、以前はラクトバチルス(Lactobacillus)属に含まれていた(Zheng et al.Int J Syst Evol Microbiol 2020;70(4):2782-2858)。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つの以下の属:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)、ローズブリア(Roseburia)、アッカーマンシア(Akkermansia)、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)の3つ以上、好ましくは4つ以上、又はより好ましくは5つ以上の細菌株を含み得る。
【0016】
好ましい実施形態では、以下の属の6つ以上の細菌株を含む組成物が提供される:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)、ローズブリア(Roseburia)、アッカーマンシア(Akkermansia)、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)。したがって、このような組成物は、前記6つの属のそれぞれのうちの少なくとも1つの細菌株を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、前記6つの属のそれぞれの1つの細菌株を含むか、又は本質的にそれからなり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、それらが、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属に属する少なくとも1つの細菌株と、アナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する少なくとも1つの細菌株を含む組成物である。
【0018】
細菌株は、本明細書で使用される場合、微生物の遺伝的変異体又はサブタイプを指すことを理解できよう。いくつかの異なる菌株が、同じ細菌種に属し得る。本開示全体を通して、「細菌株」という用語は、「細菌」又は「細菌メンバー」という用語で置き換えることもできる。本明細書で提供される組成物のいずれにおいても、細菌株は、例えば、培養物又は微生物叢試料(例えば、糞便物質)などの供給源から単離又は精製することができる。本明細書で使用される場合、「単離された」及び「精製された」という用語は、別の細菌若しくは細菌株、増殖培地の1つ以上の成分、及び/又は糞便試料などの試料の1つ以上の成分などの、調製物を製造するために使用される任意のプロセスにおいて供給源物質又は細菌に関連する任意の材料に見出される1つ以上の関連物質から分離された細菌若しくは細菌株若しくは細菌メンバー又はその組成物を指す。いくつかの態様では、細菌は、例えば、供給源の他の成分が検出されないように、供給源から「実質的に単離」又は「実質的に精製」される。
【0019】
上述したように、本明細書で提供される組成物は、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株を含み得る。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株は、前記属内の特定の種から選択される。フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)の好ましい種は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)である。ブチリシコッカス(Butyricicocccus)の好ましい種は、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)である。ローズブリア(Roseburia)の好ましい種は、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)である。アッカーマンシア(Akkermansia)の好ましい種は、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)である。ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)の好ましい種は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)である。アナエロスティペス(Anaerostipes)の好ましい種は、アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)である。
【0020】
上記の種は、当業者には周知である。特に、細菌種フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)(Duncan et al.Int J Syst Evol Microbiol.2002;52:2141-2146)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム((Butyricicoccus pullicaecorum))(Eeckhaut et al.Int J Syst Evol Microbiol 2008;58:2799-2802)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)(Duncan et al.Int J Syst Evol Microbiol.2006;56:2437-2441)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(Derrien et al.Int J Syst Evol Microbiol.2004;54:1469-1476)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)(Walter.Appl Environ Microbiol 2008;74:4985-4996)及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)(Schwiertz et al.Syst Appl Microbiol 2002;25:46-51)は、当業者には周知の細菌種である。ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)種は、以前はラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)種として知られていた(Zheng et al.Int J Syst Evol Microbiol 2020;70(4):2782-2858)。
【0021】
したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも2つの以下の種:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)の2つ以上の細菌株を含む組成物が提供される。
【0022】
上述したように、本明細書で提供される組成物は、いくつかの実施形態では、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属に属する少なくとも1つの細菌株と、アナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する少なくとも1つの細菌株を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)種に属する少なくとも1つの細菌株と、アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)属に属する少なくとも1つの細菌株を含む組成物である。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つの以下の種:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)に属する3つ以上、好ましくは4つ以上、又はより好ましくは5つ以上の細菌株を含み得る。
【0024】
好ましい実施形態では、以下の種に属する6つ以上の細菌株を含む組成物が提供される:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)。
【0025】
したがって、このような組成物は、前記6つの種のそれぞれの少なくとも1つの細菌株を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、前記6つの種のそれぞれの1つの菌株を含むか、又はそれから本質的になり得る。
【0026】
上述したように、本明細書で提供される組成物は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)種、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)種、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)種、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)種、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)種、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)種に属する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株を含み得る。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株は、前記種内の特定の細菌株から選択される。
【0027】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)の好ましい菌株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)LMG P-29362及びフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)DSMZ 17677、並びに少なくとも1つの前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列、例えば配列番号4に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する菌株である。
【0028】
ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicoccus pullicaecorum)の好ましい菌株は、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicoccus pullicaecorum)LMG P-29360及びブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicoccus pullicaecorum)LMG24109、並びに少なくとも1つの前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列、例えば配列番号6に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する株である。
【0029】
ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)の好ましい菌株は、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)LMG P-29365及びローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)DSMZ 16841、並びに少なくとも1つの前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列、例えば配列番号1に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する菌株である。
【0030】
アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の好ましい菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)LMG P-29361及びアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)DSMZ 22959、並びに少なくとも1つの前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列、例えば配列番号2に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する菌株である。
【0031】
ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)の好ましい菌株は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)LMG P-29366及びラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)ZJ316、並びに少なくとも1つの前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列、例えば配列番号5に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する菌株である。
【0032】
アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)の好ましい菌株は、アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)LMG P-29359及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)DSMZ 14662、並びに少なくとも1つの前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列、例えば配列番号3に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する菌株である。
【0033】
いくつかの実施形態では、特定の16S rRNA又はrDNA配列(配列番号1~6など)に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する上述の菌株は、前記16S rRNA又はrDNA(配列番号1~6など)に対して97.5%、98%、98.5%、99%、又は99.5%の配列同一性を示し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「16SリボソームRNA」又は「16S rRNA」という用語は、小さい原核生物のリボソームサブユニット(30S)の構成要素である核酸配列を指す。16S rRNAは、リボソームタンパク質の位置を規定する足場として機能することが公知である。それをコードする遺伝子は、16S rRNA遺伝子又は16S rDNAと呼ばれ、高度に保存された配列であることが公知であるため、系統発生的研究に一般的に使用される。
【0035】
当業者には、16S rRNA又はrDNA配列が、オンライン配列データベース、例えばGenBank(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)に寄託され得ること、及び16S rRNA又はrDNA配列を、例えばEeckhaut et al.Int J Syst Evol Microbiol 2008;58:2799-2802に記載されているように、配列相同性の評価における参照16S rRNA又はrDNA配列として使用するために、それらの固有のアクセッション番号に基づいて検索できることは周知である。本明細書で提供されるいくつかの細菌株の16S rRNA配列のGenBankアクセッション番号を以下に列挙する。これらのアクセッション番号は、配列相同性を評価するために、http://www.ncbi.nlm.nih.qov/genbank/からそれぞれの16S rRNA配列を検索するために使用することができる:
ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)DSMZ 16841:AJ270473.3(配列番号1)
アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)DSMZ 22959:AY271254.1(配列番号2)
アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)DSMZ 14662:AJ270487.2(配列番号3)
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)DSMZ 17677:AJ270469.2(配列番号4)
ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)ZJ316:JN126052.1(配列番号5)
ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicoccus pullicaecorum)LMG 24109 HH793440.1(配列番号6)。
【0036】
アクセッション番号LMG P-29362、LMG P29360、LMG P-29365、LMG P-29361、LMG P-29366、及びLMG P29359を有する上記の菌株は、BCCM/LMG Laboratorium voor Microbiologie,Universiteit Gent(UGent),K.L.Ledeganckstraat 35,B-9000 Gent,Belgiumに寄託されている。
【0037】
アクセッション番号DSMZ 17677、LMG24109、DSMZ 16841、DSMZ 22959、ZJ316、及びDSMZ 14662を有する上記の菌株は、公共のコレクションに寄託され、詳しく記述され、世界中の当業者が容易に入手可能である。
【0038】
酪酸塩の産生
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも1つの細菌株を含む組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの細菌株を含む組成物である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるような、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株のいずれかは、酪酸塩を産生できる細菌株であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるような、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属の2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上は、酪酸塩を産生できる細菌株であり得る。いくつかの態様では、本明細書の他の箇所に記載されるような、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株の全ては、酪酸塩を産生できる細菌株であり得る。
【0040】
フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する細菌株は、酪酸塩を産生できることが公知である。特に、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)は、酪酸塩の産生できることが公知である種である。
【0041】
ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)は、酪酸塩とプロピオン酸塩の両方を産生することが公知である。
【0042】
いくつかの実施形態では、酪酸塩を産生できるさらなる細菌株が添加された上記のような組成物が本明細書で提供される。これに関連して、酪酸塩を産生できる共生腸内細菌が好ましい。
【0043】
本明細書で使用される場合、酪酸塩を産生できる細菌株は、そのゲノム中に酪酸塩の産生のための経路の少なくとも1つを有する細菌株を指すと理解できよう。細菌には4つの主要な酪酸塩の産生経路が存在する(例えば、Vital et al.mBio 2014;5(2):e00889-14の
図1を参照されたい)。これらの経路は、4つの基質、即ちピルビン酸塩、グルタル酸塩、4-アミノ酪酸塩、及びリジンの1つを利用する。すべての経路は、クロトニルCoAがブチリルCoAに変換され、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ電子伝達フラボタンパク質複合体(Bcd-Etfαβ)によって触媒される中心エネルギー生成ステップで統合される。酪酸塩の最終産物は、ブチリル-CoA:酢酸CoAトランスフェラーゼ(But)又は酪酸キナーゼ(Buk)のいずれかによって触媒される。
【0044】
当業者は、任意の所与の実験セットアップにおいて、本明細書に記載される酪酸塩を産生できる細菌株が、例えば増殖培地を含む試験条件によって、酪酸塩を産生できるか又は否かを理解されよう。
【0045】
細菌におけるこれらの経路の存在は、当業者に公知の遺伝的方法、例えばReichardt et al.The ISME Journal 2014;8:1323-1335に記載される方法によって評価することができる。一例として、マーカー遺伝子の存在は、PCR又は配列決定に基づく方法によって、又はin silico系統発生ツールを用いて検出することができる。酪酸キナーゼ経路の存在に適したマーカー遺伝子は、酪酸キナーゼ(Buk)である。ブチリルCoA:酢酸CoA-トランスフェラーゼ経路の存在に適したマーカー遺伝子は、ブチリル-CoA:酢酸CoA-トランスフェラーゼ(BCoAT又はBut)である。
【0046】
或いは、又はそれに加えて、酪酸塩の産生は、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴(NMR)、及びキャピラリー電気泳動(CE)を含む、当業者に公知の方法を用いて、in vitro、in vivo、又はin situ試料の化学分析によって評価することができる。
【0047】
プロピオン酸塩の産生
実験のパートで示されるように、驚くべきことに、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも1つの追加の細菌株の本明細書で既に記載した組成物への添加が特定の利点と関連していることが見出された。
【0048】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも1つの細菌株を含む組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、又はより好ましくは少なくとも5つの細菌株を含む組成物である。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるような、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株のいずれかは、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる細菌株であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるような、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属の2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる細菌株であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるような、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の細菌株のすべては、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる細菌株であり得る。
【0050】
ローズブリア(Roseburia)属及びアッカーマンシア(Akkermansia)属に属する細菌株は、プロピオン酸を産生できることが公知である。特に、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)とアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)は、プロピオン酸を産生できることが公知である種である。
【0051】
ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)は、酪酸塩とプロピオン酸塩の両方を産生することが公知である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも1つの細菌株と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも1つの細菌株を含む組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも2つの細菌株と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つの細菌株を含む組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも3つの細菌株と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも3つの細菌株を含む組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも4つの細菌株と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも4つの細菌株を含む組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも4つの細菌株と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも5つの細菌株を含む組成物である。
【0053】
好ましい組成物は、酪酸塩を産生できる少なくとも4つの細菌と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つの細菌を含む。より好ましい組成物は、酪酸塩を産生できる4つの細菌と、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる3つ、好ましくは4つ、さらに好ましくは5つの細菌を含む。
【0054】
一般に、プロピオン酸塩又は酪酸塩を糖残基から産生する能力は、異なる種に存在することが観察されているが、いくつかの例外が知られている。酪酸塩とプロピオン酸塩の両方を産生できる注目すべき例外は、例えば、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)の細菌株である。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるような、少なくとも2つの以下の属:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、又はアナエロスティペス(Anaerostipes)属の2つ以上の細菌株を含む任意の組成物は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも1つの追加の細菌株をさらに含む組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つの追加の細菌株をさらに含む組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも3つの追加の細菌株をさらに含む組成物である。好ましい実施形態では、本明細書に記載される組成物は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる3つの追加の細菌株をさらに含む組成物である。
【0056】
これに関連して、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる共生腸内細菌が好ましい。
【0057】
いくつかの実施形態では、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる追加の細菌株は、ベイロネラセアエ(Veillonellaceae)科、アッカーマンシア(Akkermansiaceae)科、ラクノスピラ(Lachnospiraceae)科、又はバクテロイデス(Bacteroidetes)科に属し、好ましくはベイロネラセアエ(Veillonellaceae)科、ラクノスピラ(Lachnospiraceae)科、又はバクテロイデス(Bacteroidetes)科に属する。
【0058】
ベイロネラセアエ(Veillonellaceae)科の好ましい属は、ベイロネラ(Veillonella)である。好ましい種は、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)及びベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)である。
【0059】
アッカーマンシア(Akkermansiaceae)科の好ましい属は、アッカーマンシア(Akkermansia)である。好ましい種は、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)である。
【0060】
ラクノスピラ(Lachnospiraceae)科で好ましい属は、ブラウティア(Blautia)とローズブリア(Roseburia)である。ブラウティア(Blautia)内で好ましい種は、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、ブラウティア・ルティ(Blautia luti)である。ローズブリア(Roseburia)内の好ましい種は、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)である。
【0061】
バクテロイデス(Bacteroidetes)科の好ましい属は、フォカエイコラ(Phocaeicola)である。
【0062】
フォカエイコラ(Phocaeicola)内の好ましい種は、フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)である。
【0063】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなプロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる追加の細菌株は、ベイロネラ(Veillonella)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ブラウティア(Blautia)属、ローズブリア(Roseburia)属、又はフォカエイコラ(Phocaeicola)属の細菌株である。
【0064】
好ましい実施形態では、本明細書に記載されるようなプロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる追加の細菌株は、フォカエイコラ(Phocaeicola)属、ベイロネラ(Veillonella)属、又はブラウティア(Blautia)属の細菌株である。
【0065】
好ましい実施形態では、本明細書に記載されるようなプロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる追加の細菌株は、フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)種、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)種、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)種、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)種、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)種、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)種の細菌株である。
【0066】
ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)株及びブラウティア・ルティ(Blautia luti)株は、プロピオン酸塩前駆体のコハク酸塩を産生することが公知である。
【0067】
より好ましい実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されるような、少なくとも2つの以下の属:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、又はアナエロスティペス(Anaerostipes)属の2つ以上の細菌株を含む組成物は:
-フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus);
-ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及び
-ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)をさらに含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicoccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属に属し、好ましくは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)種、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)種、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)種、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)種、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)種、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)種に属する細菌株を含み、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つの追加の細菌株をさらに含む組成物である。このような組成物は、合計8株(各属/種の1株が含まれる場合)を含んでもよいし、又は合計8株超(例えば、1つの属/種の複数株がさらに含まれる場合)を含んでもよいことを理解されよう。
【0069】
いくつかの実施形態では、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる少なくとも2つの追加の細菌株は、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる3つの追加の細菌株であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる2つ以上の追加の細菌株は、フォカエイコラ(Phocaeicola)属、ベイロネラ(Veillonella)属、又はブラウティア(Blautia)属、好ましくはフォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)種、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)種、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)種、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)種、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)種、又は、ブラウティア・ルティ(Blautia luti)種に属し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、及びアナエロスティペス(Anaerostipes)属、好ましくはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)種、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)種、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)種、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)種、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)種、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)種に属する細菌株を含む組成物であり、この組成物は:
-フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus);
-ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及び
-ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)をさらに含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ブチリシコッカス(Butyricicoccus)属、ローズブリア(Roseburia)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、アナエロスティペス(Anaerostipes)属、及びフォカエイコラ(Phocaeicola)属、並びにベイロネラ(Veillonella)属又はブラウティア(Blautia)属の少なくとも1つに属する細菌株を含む組成物である。好ましくは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)種、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)種、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)種、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)種、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)種、アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)種、及びフォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)種、並びにベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)種、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)種、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)種、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)種、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)種の少なくとも1つに属する細菌株を含む組成物である。場合によっては、細菌メンバーには、ベイロネラ(Veillonella)、好ましくはベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)が含まれ得る。他の例では、細菌メンバーには、ブラウティア(Blautia)、好ましくはブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)が含まれ得る。さらに他の例では、細菌メンバーには、ベイロネラ(Veillonella)及びブラウティア(Blautia)の両方、好ましくはベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及びブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)の両方が含まれ得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなプロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる追加の細菌株は、上述の種の特定の菌株から選択される。フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)の好ましい菌株は、フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)LMG17767、及び前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列(配列番号7)に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する菌株である。
【0074】
ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)の好ましい菌株は、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)DSM 2007、及び前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列(配列番号8)に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する菌株である。
【0075】
ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)の好ましい菌株は、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)DSM 25238、及び前記菌株の16S rRNA又はrDNA配列(配列番号9)に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する菌株である。
【0076】
いくつかの実施形態では、特定の16S rRNA又はrDNA配列(配列番号7~9など)に対して少なくとも97%の配列同一性を示す16S rRNA又はrDNA配列を有する上述の菌株は、前記16S rRNA又はrDNA(配列番号7~9など)に対して97.5%、98%、98.5%、99%、又は99.5%の配列同一性を示し得る。
【0077】
アクセッション番号LMG17767、DSM 2007、及びDSM 25238を有する上記の菌株は、公共のコレクションに寄託され、詳しく記述され、世界中の当業者が容易に入手可能である。
【0078】
本明細書で使用される場合、プロピオン酸塩を産生できる細菌株は、そのゲノム中にプロピオン酸塩産生の経路、例えば、アクリル酸経路、プロパンジオール経路、及びコハク酸経路の少なくとも1つを有する細菌株を指すと理解できよう(Reichardt et al.The ISME Journal 2014;8:1323-1335の
図1を参照されたい)。
【0079】
本明細書で使用される場合、プロピオン酸塩前駆体を産生できる細菌株は、そのゲノム中にプロピオン酸塩前駆体の産生経路の少なくとも1つを有する細菌株を指すと理解できよう。プロピオン酸塩前駆体は、プロピオン酸塩産生の様々な経路のいずれか1つにおける任意の前駆体又は代謝中間体であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるプロピオン酸塩前駆体は、アクリル酸塩、アスパラギン酸、フマル酸塩、リンゴ酸塩、2-オキソグルタル酸塩、リンゴ酸塩、オキサロ酢酸、及びコハク酸塩からなる群から選択することができる。好ましい実施形態では、本明細書に記載されるプロピオン酸塩前駆体はコハク酸塩である。
【0080】
当業者は、任意の所与の実験セットアップにおいて、本明細書に記載されるプロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる菌株が、例えば増殖培地を含む試験条件によって、プロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できるか否かを理解されよう。これは、例えば、いくつかのプロピオン酸塩産生経路が特定の基質を必要とすることが原因であり得る。例えば、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)などの一部のブラウティア(Blautia)株は、フコースからプロピオン酸塩を産生する。
【0081】
細菌におけるプロピオン酸経路の存在は、当業者に公知の遺伝的方法、例えばReichardt et al.The ISME Journal 2014;8:1323-1335に記載されるような方法によって評価することができる。一例として、マーカー遺伝子の存在は、PCR又は配列決定に基づく方法によって、又はin silico系統発生ツールを用いて検出することができる。アクリル酸経路の存在に適したマーカー遺伝子は、ラクトイル-CoAデヒドラターゼ(lcdA)である。コハク酸経路の存在に適したマーカー遺伝子は、メチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ(mmdA)である。プロパンジオール経路の存在に適したマーカー遺伝子は、プロピオンアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はプロパノールデヒドロゲナーゼ(pduP、pduQ)である。
【0082】
或いは、又はそれに加えて、プロピオン酸塩(又はプロピオン酸塩前駆体)の産生は、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴(NMR)、及びキャピラリー電気泳動(CE)を含む、当業者に公知の方法を用いて、in vitro、in vivo、又はin situ試料の化学分析によって評価することができる。
【0083】
総じて、本明細書に記載される酪酸塩を産生できる任意の細菌株は、以下の属:フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ブチリシコッカス(Butyricicocccus)、ローズブリア(Roseburia)、及びアナエロスティペス(Anaerostipes);及び以下の種:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricicocccus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、及びアナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)から選択することができる。
【0084】
同様に、本明細書に記載されるプロピオン酸塩又はプロピオン酸塩前駆体を産生できる任意の細菌株は、以下の科:ベイロネラセアエ(Veillonellaceae)、アッカーマンシア(Akkermansiaceae)、ラクノスピラ(Lachnospiraceae)、及びバクテロイデス(Bacteroidetes);以下の属:ローズブリア(Roseburia)、アッカーマンシア(Akkermansia)、ベイロネラ(Veillonella)、ブラウティア(Blautia)、及びフォカエイコラ(Phocaeicola);及び以下の種:ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、及びブラウティア・ルティ(Blautia luti)から選択することができる。
【0085】
さらなる成分
さらなる態様では、本明細書に記載の組成物は、1つ以上のプレバイオティクスをさらに含み得る。「プレバイオティクス」という用語は、宿主の健康に寄与する微生物(例えば、細菌)の増殖又は活性を誘導することができる化学物質を指す。したがって、プレバイオティクスは、腸内細菌叢の生物の組成に影響を与える、又は変化させ得る。しかしながら、原則として、プレバイオティクスは、体の他の領域も指し得るより一般的な用語である。典型的には、限定されるものではないが、プレバイオティクスは、消化管の上部を少なくとも部分的に消化されずに通過し、それらの基質として作用することによって大腸にコロニーを形成する有利な細菌の増殖又は活性を刺激する非消化性繊維化合物である。
【0086】
さらなる態様では、本明細書に記載の組成物は、1つ以上の治療薬をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、前記治療薬は、スタチン(例えば、シンバスタチン)、他の脂質低下療法、非脂質低下療法、GLP-1受容体アゴニスト(例えば、セマグルチド、デュラグルチド、リラグルチド)、SGLT1/2阻害剤(例えば、リコグリフォジン(licoglifozin))、SGLT2阻害剤、DPP-4阻害剤(例えば、イタグリプチン(itagliptin)、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン)、FXRアゴニスト(例えば、OCA、トロピフェキソール、シロフェキソール)、アポトーシス阻害剤(例えば、セロンセルチブ、エムリカサン)、抗炎症薬(例えば、ペントキシフィリン)、アンジオテンシン受容体遮断薬などの降圧薬、CCR2/5拮抗薬(例えば、セニクリビロック)、ACC阻害剤(例えば、フィルソコスタット)、抗酸化ストレス薬(例えば、ビタミンE、UDCA)、及びチアゾリジンジオン(TZD)などのPPARアゴニスト(例えば、ピオグリタゾン)から選択される。
【0087】
好ましい実施形態では、前記治療薬は、スタチン(例えば、シンバスタチン)、GLP-1受容体アゴニスト(例えば、セマグルチド、デュラグルチド、リラグルチド)、SGLT2阻害剤、及びチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)などのPPARアゴニストから選択される。GLP-1受容体アゴニストの好ましい例はリラグルチドである。好ましい実施形態では、前記治療薬は、チアゾリジンジオン(グリタゾンとしても知られる)(例えば、ピオグリタゾン)などのPPARアゴニストである。
【0088】
特定の組成物及び誘導生成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、医薬組成物、則ち、薬学的に許容され得る成分をさらに含む組成物であり得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る成分」には、薬学的に許容され得る担体、充填剤、防腐剤、可溶化剤、ビヒクル、希釈剤、及び/又は賦形剤が含まれる。したがって、1つ又は複数の薬学的に許容され得る成分は、薬学的に許容され得る担体、充填剤、防腐剤、可溶化剤、ビヒクル、希釈剤(例えば、デンプン、セルロース誘導体、又は糖誘導体)、及び/又は賦形剤からなる群から選択することができる。そのような薬学的に許容され得る担体、充填剤、防腐剤、可溶化剤、ビヒクル、希釈剤、及び/又は賦形剤は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacy,23rd edition.Elsevier(2020)で確認することができる。
【0090】
本明細書に記載の組成物は、迅速且つ効率的な治療効果を提供するように製剤化することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、腸への送達のために製剤化することができ、例えば、直腸投与用又は経口投与用、好ましくは経口投与用の組成物として製剤化することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、カプセル剤、マイクロカプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、トローチ剤、丸剤、栄養補助食品、懸濁剤、坐剤又はシロップ剤など、好ましくは粉末剤、懸濁剤、錠剤、又は栄養補助食品として製剤化することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、懸濁剤形で提供することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の(医薬)組成物は、直腸投与用の組成物として製剤化することができる。この点に関して、本明細書に記載の組成物のいずれも、坐剤などの直腸投与用の(医薬)剤形として提供することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の(医薬)組成物は、カプセル剤、マイクロカプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、トローチ剤、丸薬、栄養補助食品、懸濁剤、又はシロップ剤などの経口投与用の組成物として製剤化することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、凍結乾燥細菌又は活性培養形態で提供される細菌を含み得る。好ましい実施形態では、細菌は凍結乾燥させることができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、食品、飲料、栄養補助食品、又は栄養補給食品に含めることができる。したがって、本開示の態様は、本明細書に記載の組成物のいずれかを含む食品、飲料、栄養補助食品、及び栄養補給食品も提供する。また、本明細書に記載の細菌株のいずれか(組み合わせ)を含む食品、飲料、栄養補助食品、及び栄養補給食品は本開示の範囲内に含まれる。
【0096】
「食品」は、典型的には、主に1つ又は複数のタンパク質、炭水化物、及び脂肪からなる食用材料である。食品にはまた、ビタミンやミネラルなどの1つ又は複数の微量栄養素も含まれ得る。組成物が組み込まれ得る食品の例には、スナックバー、シリアル、パン、マフィン、ビスケット、ケーキ、ペストリー、加工野菜、甘い食べ物、ヨーグルトを含むプロバイオティクス製剤、飲料、植物油ベースの液体、動物性脂肪ベースの液体、冷凍菓子、及びチーズが含まれる。好ましい食品には、ヨーグルト、チーズ、及びその他の乳製品が含まれる。
【0097】
飲料の例には、ソフトドリンク、シロップ、スカッシュ、ドライドリンクミックス、及び栄養飲料などが含まれる。
【0098】
栄養補給食品とは、疾患の予防及び治療を含む、医学的又は健康上の利点を提供すると考えられている食品成分、栄養補助食品、又は食品である。栄養補給食品は、「機能性食品」、即ち、消費者に純粋な栄養を供給する以上の健康上の利点を提供するものとして一般的に販売されている食品と呼ばれることもある。
【0099】
本開示はまた、本明細書で論じる組成物を含むプロバイオティクスを提供する。プロバイオティクスは、典型的には、腸内細菌叢を強化できる生きたサプリメントである。このようなプロバイオティクスは、特にヒトだけではなく、農場動物、家畜、水生生物にも投与することができる。プロバイオティクスは、ヒト又は動物による摂取に適している1つ又は複数の許容可能な賦形剤又は香料を追加で含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、少なくとも102、好ましくは少なくとも103、より好ましくは少なくとも104、さらにより好ましくは少なくとも105のCFUの細菌を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、102~1014、好ましくは103~1013、より好ましくは104~1012、さらにより好ましくは105~1011の細菌のコロニー形成単位(CFU)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、少なくとも105の細菌のコロニー形成単位、例えば105~1011の細菌のコロニー形成単位を含む。
【0101】
本開示全体を通して提供される組成物のいずれかに関して、「含む」という用語は、「~から本質的になる」又は「~からなる」という用語に置き換えできることを理解されよう。換言すれば、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、提供される細菌株から本質的になる、又は提供される細菌株からなる。
【0102】
本明細書に記載される組成物に加えて、本開示の好ましい態様は、本明細書で後述する方法のいずれかに使用するための同一の組成物にも関する(「方法及び使用」のセクションを参照されたい)。
【0103】
組成物を得るための方法;及びそれにより得られた組成物
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、本セクションで記載される方法によって得ることができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、本セクションで記載される方法によって取得可能であり得る。換言すれば、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物に含まれる細菌株は、本セクションで記載される方法に前もって供されている。これに関連して、細菌株は、本セクションで記載される方法のいずれかによって「前適応されている」又は「調整されている」とも言える。
【0104】
本セクションで提供される方法は、本開示の組成物に一定の有利な特性を付与する。特に、宿主に対する組成物の効果の発現は、より速くなり、且つ/又は有効性は、より高くなり得る、則ち、この組成物は、迅速且つ効率的な治療効果を提供する。
【0105】
より具体的には、「前適応された」又は「調整された」組成物は、バイオ医薬品発現の時間を有意に短縮することができる、則ち、前適応されることによって、微生物のセットは、大まかに集められた同じ菌株のセットと比較して、(時間的尺度で)少なくとも5%速く、好ましくは少なくとも10%速く、より好ましくは少なくとも20%速く、最も好ましくは少なくとも30%速くそれらの機能を発揮できることを意味する。「前適応された」又は「調整された」組成物はまた、処置の効果を有意に増加させることもできる、則ち、前適応されることによって、微生物のセットは、少なくとも5%高い有効性、好ましくは少なくとも10%高い有効性、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%高い有効性でそれらの機能を発揮できることを意味する。有効性は、微生物のセットが設計されたエンドポイントによって決まる。可能な機能性には、限定されるものではないが、特に、体重増加の減少、インスリンレベルの改善、グルコースレベルの低下、インスリン抵抗性の低下、門脈圧及び肝内血管抵抗の低下、内皮機能障害の緩和、肝炎症の減少、脂肪症の軽減、肝細胞風船様肥大の軽減、及び線維症の軽減が含まれる。
【0106】
一態様では、反応器内で細菌株を一緒に増殖させることを含む、本明細書に記載される組成物を得るための方法が提供される。
【0107】
いくつかの実施形態では、前記反応器は、胃腸管を表す標準化された条件下にある。
【0108】
標準化された条件を特徴付けるパラメーターには、限定されるものではないが、pH(1.5~8の範囲);炭素源(炭水化物又はタンパク質、又はそれらの組み合わせ)の利用可能性;特定の反応器での保持時間(10分~200時間の範囲);酸素の利用可能性(0~8g/Lの範囲);微量栄養素の利用可能性;抗生物質の有無;胆汁塩の濃度(0~20mMの範囲);重金属の存在;免疫分子としての宿主因子の存在が含まれる。好ましい実施形態では、標準化された条件を特徴付けるパラメーターには、すべて本明細書で既に定義されたように、pH、特定の反応器での保持時間、及び胆汁塩の濃度が含まれる。集団の複雑さに応じて、機能的に安定した集団を得るには、1~15日の期間が適し得る。平均して、7~14のメンバーで構成される集団を得るには、3~10日の期間が機能的に安定した集団を得るのに適している(環境条件によって異なる)。したがって、本明細書で定義される組成物は、pH、特定の反応器での保持時間、及び胆汁塩の濃度が本明細書で定義されるように設定された条件下で、3~10日間の期間中に訓練又は培養された後に得ることができる。このようなプロセスにより、機能的に安定した組成物又は集団の製造が可能になる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「機能的に安定した集団」は、少なくとも3日間又は5日間又は10日間の培養後でも最初の異なる数の細菌種を含む本明細書に記載の組成物であり得る。
【0110】
さらなる態様では、1.5~8のpH範囲;炭素源の利用可能性;10分~200時間の保持時間;0~8g/Lの酸素の利用可能性;微量栄養素の利用可能性;抗生物質の有無;0~20mMの胆汁塩の濃度;重金属の存在;免疫分子としての宿主因子の存在を含む、GI管を表す標準化された条件下で動作する反応器が提供される。一実施形態では、前記反応器は、標準化された条件を特徴付けるパラメーターが、pH、特定の反応器での保持時間、及び前の段落で定義された胆汁塩の濃度を含むような反応器である。一実施形態では、このような反応器は、5~20の異なる細菌メンバー、又は6~14の異なる細菌メンバー、又は5~15の異なる細菌メンバーの組成物を含む。好ましい実施形態では、このような組成物は、機能的に安定した集団を得るために、このような反応器で3~14日間又は3~10日間存在する。
【0111】
したがって、本明細書に記載される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、治療は、本明細書に記載されるような、より速い生物学的効果の発現及び/又は有効性の増大、則ち迅速で効率的な治療効果をもたらし得る。
【0112】
方法及び用途
実験のパートで詳述したように、驚くべきことに、上記の組成物は肝臓にいくつかの直接的及び間接的な有益な効果を及ぼすことが見出された。具体的には、本明細書に記載される組成物は、少なくとも以下の有益な効果:特に、体重増加の減少、インスリンレベルの低下、グルコースレベルの低下、インスリン抵抗性の低下、門脈圧及び肝内血管抵抗の低下、内皮機能障害の緩和、肝炎症の減少、脂肪症の軽減、肝細胞風船様肥大の軽減、及び線維症の軽減を発揮する。したがって、本明細書で提供される組成物は、肝臓の多様な疾患及び状態、並びにその症状、基礎疾患若しくは状態、及び肝外症状の治療、遅延、改善、予防、又は治癒において幅広い適用性を有することになる。
【0113】
したがって、さらなる態様では、本明細書に記載される組成物は、医学の分野での使用のために提供される。好ましくは、本明細書に記載される組成物は、肝臓の疾患又は状態を治療、遅延、改善、予防、又は治癒する方法で使用される。また、肝臓の疾患又は状態の症状、肝臓の疾患又は状態の根底にある疾患又は状態、並びに肝臓の疾患又は状態の肝外症状を治療することも本明細書に包含され、その態様のそれぞれは、本明細書の他の箇所でより詳細に説明される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、肝臓の疾患若しくは状態又はその症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒する方法で使用するために提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、肝臓の疾患若しくは状態又はその症状、基礎疾患若しくは状態、又は肝外症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒する方法で使用するために提供される。
【0114】
さらなる態様では、本明細書に記載される組成物を投与することを含む、肝臓の疾患若しく状態を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することを含む、肝臓の疾患若しくは状態又はその症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することを含む、肝臓の疾患若しくは状態、その症状、基礎疾患若しくは状態、又は肝外症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、組成物を投与することは、それを必要とする対象などの対象に前記組成物を投与することを意味する。好ましい実施形態では、有効な量又は治療的に有効な量の組成物が投与される。
【0115】
さらなる態様では、肝臓の疾患又は状態を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される組成物の使用が提供される。いくつかの実施形態では、肝臓の疾患若しくは状態又はその症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される組成物の使用が提供される。いくつかの実施形態では、肝臓の疾患若しくは状態、その症状、基礎疾患若しくは状態、又は肝外症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための薬剤の製造のための、本明細書に記載される組成物の使用が提供される。
【0116】
さらなる態様では、肝臓の疾患又は状態を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための、本明細書に記載される組成物の使用が提供される。いくつかの実施形態では、肝臓の疾患若しくは状態又はその症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための、本明細書に記載される組成物の使用が提供される。いくつかの実施形態では、肝臓の疾患若しくは状態、その症状、基礎疾患若しくは状態、又は肝外症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための、本明細書に記載される組成物の使用が提供される。
【0117】
本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、有効な量又は治療上有効な量の本明細書に記載される組成物を投与することができる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「有効な量」は、有益な又は所望の結果を発揮するのに十分な量である。したがって、「治療的に有効な量」は、それを必要とする対象に投与した場合に、未治療の対象と比較して、限定されるものではないが、体重増加の減少、インスリンレベルの改善、グルコースレベルの低下、インスリン抵抗性の低下、門脈圧及び肝内血管抵抗の低下、内皮機能障害の緩和、肝炎症の減少、脂肪症の軽減、肝細胞風船様肥大の軽減、及び線維症の軽減などの本明細書に記載される何らかの治療効果又は予防効果を発揮するのに十分である量である。「治療的に有効」である量は、例えば、年齢、疾患の進行、又は個人の全体的な全身状態に応じて、対象ごとに異なり得る。任意の個々の症例における適切な「治療的に有効な」量は、本明細書で後述する方法及び/又は本明細書の実験パートの方法などのルーチン実験を用いて当業者が決定することができる。「有効な量」及び「治療的に有効な量」は、組成物中の細菌株の組み合わせ合計量を指すことを理解されたい。最終適用例に応じて、組み合わせ合計量は、等量の各細菌株又は不等量の各細菌株の結果であり得、各単一菌株は、組み合わせ合計量の0.0001%の最小存在量、好ましくは組み合わせ合計量の0.001%の最小存在量、より好ましくは、組み合わせ合計量の0.01%の最小存在量を有する。
【0119】
最終適用例に応じて、前記有効な量又は治療的に有効な量(細菌の組み合わせ合計量を指すと理解される)は、少なくとも102、好ましくは少なくとも103、より好ましくは少なくとも104、さらにより好ましくは少なくとも105の細菌のコロニー形成単位(CFU)であり得る。いくつかの実施形態では、前記有効な量又は治療的に有効な量(細菌の組み合わせ合計量を指すと理解される)は、102~1014、好ましくは103~1013、より好ましくは104~1012、さらにより好ましくは105~1011の細菌のコロニー形成単位(CFU)であり得る。いくつかの実施形態では、前記量は、日用量、則ち、毎日投与される量である。
【0120】
本明細書に記載される組成物は、任意の投与計画に従って投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、唯1回の投与として投与することができる。好ましい実施形態では、組成物は、定期的又は周期的に対象に投与することができ、例えば、組成物は、12時間ごと、24時間ごと、又は48時間ごとに1回、則ち、1日2回、1日1回、又は2日に1回、対象に投与することができる。好ましい実施形態では、組成物は、毎日投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、少なくとも1週間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年間、又はそれ以上の期間投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、生涯にわたって投与される。
【0121】
本明細書で使用される「対象」又は「必要とする対象」は、ヒト(好ましい)又は非ヒト動物であり得る。いくつかの実施形態では、対象(必要とする)は、特に本明細書に記載されるような肝臓の疾患若しくは状態又はその症状を予防する文脈において、健康な対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象(必要とする)はまた、本明細書に記載の疾患及び状態のいずれかに罹患しているか、又は発症するリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、対象(必要とする)は、NASHに罹患している対象であり得る。
【0122】
本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、組成物は、本明細書に記載される必要とする対象に投与することができる。
【0123】
本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、組成物は、異なる投与様式によって投与することができる。いくつかの実施形態では、投与様式は、直腸又は経口であり得る。経口投与が好ましい。
【0124】
本明細書で提供される組成物は、当該技術分野で公知の適切な手段を用いて直接的又は間接的に投与することができる。したがって、これまでに既に達成された進歩を考慮すると、本明細書に記載される組成物を個人に提供するための手段の改善が予想される。もちろん、本明細書に記載される所望の効果を達成するためにそのような将来の改善を組み込むことができる。
【0125】
本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、本明細書に記載される組成物は、1つ又は複数の治療薬と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、前記治療薬は、スタチン(例えば、シンバスタチン)、他の脂質低下療法、非脂質低下療法、GLP-1受容体アゴニスト(例えば、セマグルチド、デュラグルチド、リラグルチド)、SGLT1/2阻害剤(例えば、リコグリフォジン(licoglifozin))、SGLT2阻害剤、DPP-4阻害剤(例えば、イタグリプチン(itagliptin)、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン)、FXRアゴニスト(例えば、OCA、トロピフェキソール、シロフェキソール)、アポトーシス阻害剤(例えば、セロンセルチブ、エムリカサン)、抗炎症薬(例えば、ペントキシフィリン)、アンジオテンシン受容体遮断薬などの降圧薬、CCR2/5拮抗薬(例えば、セニクリビロック)、ACC阻害剤(例えば、フィルソコスタット)、抗酸化ストレス薬(例えば、ビタミンE、UDCA)、及びチアゾリジンジオン(TZD)などのPPARアゴニスト(例えば、ピオグリタゾン)から選択される。
【0126】
好ましい実施形態では、前記治療薬は、スタチン(例えば、シンバスタチン)、GLP-1受容体アゴニスト(例えば、セマグルチド、デュラグルチド、リラグルチド)、SGLT2阻害剤、及びチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン)などのPPARアゴニストから選択される。GLP-1受容体アゴニストの好ましい例はリラグルチドである。好ましい実施形態では、前記治療薬は、チアゾリジンジオン(グリタゾンとしても知られる)(例えば、ピオグリタゾン)などのPPARアゴニストである。
【0127】
本明細書で提供される組成物及び1つ又は複数の治療薬は、単一の組成物で投与してもよいし、又は別々に投与してもよい。
【0128】
肝臓の疾患及び状態
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、肝臓の疾患又は状態は、腸内毒素症(disbyosis)に関連する肝臓の疾患又は状態であり得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、肝臓の疾患又は状態は、アルコール関連肝疾患(ARLD)、胆汁うっ滞性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、肝硬変、及び/又は肝臓新生物若しくはその症状であり得る。アルコール関連肝疾患(ARLD)には、アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝炎、及び(アルコール関連)肝硬変が含まれる。胆汁うっ滞性肝疾患の非限定的な例は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)及び原発性硬化性胆管炎(PSC)である。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、肝臓の疾患又は状態は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、肝線維症、肝硬変、及び/又は肝臓新生物若しくはその症状であり得る。
【0131】
NAFLDは現在、メタボリックシンドロームの肝症状として認識されている。したがって、本開示で使用される「NAFLD」は、「メタボリックシンドロームの肝臓部分」、「メタボリックシンドロームの肝症状」、又は「代謝(機能不全)関連脂肪肝疾患」(MAFLD)などの用語に置き換えることができる(Eslam M et al.A new definition for metabolic dysfunction-associated fatty liver disease:an international expert consensus statement.J Hepatol.2020;73:202-209で提案されているように)。
【0132】
NAFLDは、非アルコール性脂肪性肝(NAFL)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に分類できる肝疾患のスペクトルの総称と見なされている(参照により本明細書に組み込まれるLackner C.(2018)Nonalcoholic Fatty Liver Disease.Practical Hepatic Pathology: a Diagnostic Approach,167-187を参照されたい)。
【0133】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、肝臓の疾患又は状態は、非アルコール性脂肪性肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、肝硬変、及び/又は肝臓新生物、その症状、又は基礎疾患若しくは状態であり得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「肝臓新生物」という用語は、肝臓新生物及び肝内胆管腫瘍の両方を指すと理解され得る。したがって、いくつかの実施形態では、「肝臓新生物」などの用語は、「肝臓又は肝内胆管腫瘍」などの用語に置き換えることができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される肝臓新生物は肝臓癌であり得る。好ましい実施形態では、肝臓癌は、肝細胞癌(HCC)である。
【0136】
本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、肝臓の疾患又は状態を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するための方法は、NAFLの疾患進行、好ましくはNAFLからNASHへの進行、NASHから肝線維症への進行、肝線維症から肝硬変への進行、及び/又は肝硬変からHCCへの進行、より好ましくはNAFLからNASHへの進行又はNASHから肝線維症への進行を遅延又は予防する方法であり得る。
【0137】
本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、本明細書で使用される「治療、遅延、改善、予防、又は治癒する」は、組成物を投与する前に、疾患、状態、又は症状と比較して、前記疾患、状態、又は症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒すると理解され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「治療、遅延、改善、予防、又は治癒する」は、プラセボを投与された疾患、状態、又は症状に罹患した対象において、同じ疾患、状態、又は症状と比較して、前記疾患、状態、又は症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒すると理解され得る。同様に、本明細書の他の箇所に記載の効果のいずれかの発生は、同じ方法で比較することができる。
【0138】
症状
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される肝臓の疾患又は状態の症状には、体重増加、インスリン抵抗性、肝炎、脂肪症、肝細胞風船様肥大、肝内血管抵抗(IHVR)、門脈圧亢進症、内皮機能障害、及び/又は線維症が含まれる。
【0139】
本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、本明細書に記載される組成物及び/又は薬剤は、好ましくは、以下の効果の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又はすべてを示す:
・体重増加の減少:
・インスリンレベルの改善:
・グルコースレベルの低下:
・インスリン抵抗性の低下:
・門脈圧の低下:
・肝内血管抵抗の低下:
・内皮機能障害の緩和:
・肝炎症の減少:
・脂肪症の軽減:
・風船様肥大の軽減:及び
・線維症の軽減。
【0140】
これらの症状及び効果を測定するための手段及び方法は、当該技術分野で周知である。これらの症状及び効果を測定するための方法の非限定的な例は実験のセクションに示される。
【0141】
この文脈において、「減少させる」(それぞれ「改善する」)などは、実験のパートで行われるアッセイなどの当業者に公知のアッセイを用いる少なくとも検出可能な減少(それぞれ検出可能な改善)を意味する。減少は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも100%の減少であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することは、任意選択によりプラセボを投与された同等の肝臓の疾患又は状態を有する対象と比較して、体重増加の減少、門脈圧亢進症の改善、又はインスリン感受性の改善をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することは、任意選択によりプラセボを投与された対象と比較して、治療の2週間以内に空腹時血中インスリンレベルの約40%の減少をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することは、任意選択によりプラセボを投与された対象と比較して、治療の10週間以内に肝内血管抵抗(IHVR)の約80%の減少をもたらし得る。
【0142】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)活動性スコア(NAS)は、NASH臨床研究ネットワーク(NASH Clinical Research Network)の病理委員会(Pathology Committee)によって、脂肪症(0~3の範囲)、小葉炎症(0~3の範囲)、及び風船様肥大(0~2の範囲)のスコア値の重み付けされていない合計として定義されているため、0~8の範囲のNASスコアが提供される(参照により本明細書に組み込まれるKleinen et al.,Design and Validation of a Histological Scoring System for Nonalcoholic Fatty Liver Disease,Hepatology,Vol.41,No.6,2005,pp.1313-1321を参照されたい。特にその中の表1を参照されたい)。0~4の範囲の線維化スコアも、Kleinenらによって定義され、特にその中の表1を参照されたい。
【0143】
本明細書で提供される使用のための組成物、方法、及び使用の文脈において、本明細書に記載される組成物及び/又は薬剤は、NAFLD活動性スコア(NAS)、脂肪症スコア、小葉炎症スコア、風船様肥大スコア、又は線維症スコア、好ましくはNASスコア、脂肪症スコア、風船様肥大スコア、又は線維症スコア、より好ましくは線維症スコアの低下をもたらし得る。この低下は、好ましくは、少なくとも1のスコアレベル、或いは少なくとも2又は3のレベルの低下である。
【0144】
いくつかの実施形態では、記載された効果のいずれかが、少なくとも1週間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、1年間以上の治療後に観察され、前記治療は、任意選択により、本明細書の他の箇所で記載される量及び投与計画を含む。
【0145】
基礎疾患及び状態
本明細書に記載される肝臓の疾患及び状態又はその症状は、基礎疾患及び状態と呼ばれ得る多数の疾患及び状態で見られ得る。したがって、本開示は、本明細書で提供される組成物が、あらゆる基礎疾患及び状態を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するために使用できることも包含することを理解されたい。
【0146】
例えば、NAFLDは、表1に要約されているように、基礎疾患及び状態と呼ばれ得る多数の疾患及び状態で見られる。
【0147】
【0148】
さらに、門脈圧亢進症は、原発性硬化性胆管炎(PSC)及び慢性膵炎を含む胃腸障害に起因し得る。
【0149】
したがって、本開示は、本明細書で提供される組成物が、表1に記載される疾患又は状態のいずれかを治療、遅延、改善、予防、又は治癒するために使用できることも包含することを理解されたい。したがって、本開示は、肥満症、遺伝性疾患又は代謝性疾患、薬物又は毒素誘発性の状態、肝外状態、栄養障害、ウイルス感染、肝虚血、又は老化の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に使用するために本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。
【0150】
したがって、本開示は、インスリン抵抗性の代謝障害(メタボリックシンドローム、X症候群、インスリン抵抗性症候群、2型糖尿病、アルストレーム症候群、バルデ・ビードル症候群、リポジストロフィー症候群、PPARγ変異など)、レプチン欠損又はレプチン抵抗性、視床下部肥満症、又はプラダー・ウィリー症候群の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に使用するための本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。本開示はまた、ウィルソン病、ウェーバー・クリスチャン病、ウォルマン病、コレステロールエステル蓄積症、無βリポ蛋白血症、家族性低βリポ蛋白血症、Dorman-Chanarin症候群、偽新生児副腎白質ジストロフィー、ガラクトース血症、チロシン血症、遺伝性果糖不耐症、シスチン尿症、サンドホフ病、下垂体機能不全、又は甲状腺機能低下症の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に使用するための本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。本開示はまた、コルチコステロイド、エストロゲン、NSAID、カルシウム拮抗薬、アミオダロン、タモキシフェン、テトラサイクリン、クロロキン、マレイン酸ペルヘキシリン、抗レトロウイルス薬、工業用溶剤ジメチルホルムアミド、塗料用シンナー及び溶剤、石油化学暴露、菜種食品、又はコカインに関連する毒性又は過剰摂取の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に使用するための本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。本開示はまた、心不全、炎症性腸疾患及び他の腸疾患、腸内細菌過剰症候群、嚢胞性線維症、頭蓋咽頭腫、又は妊娠関連肝疾患の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に使用するための本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。本開示はまた、空腸回腸バイパス、胃バイパス、胃形成術、胆膵バイパス、小腸切除術、完全非経口栄養、長期飢餓、急速な体重減少、タンパク質栄養不良、高炭水化物食、又はシュバッハマン症候群の肝臓関連状態の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に用いるための本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。本開示はまた、C型、B型、又はD型肝炎ウイルス感染の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に用いるための本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。また、本開示は、肝虚血又は老化の治療、遅延、改善、予防、又は治癒における使用のための本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。また、本開示は、原発性硬化性胆管炎(PSC)及び慢性膵炎を含む胃腸障害の治療、遅延、改善、予防、又は治癒に使用するための本明細書で提供される組成物のいずれかを包含する。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、表1の上記の状態のいずれかにおいて肝症状を管理する方法で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、表1の上記の状態のいずれかにおいて肝機能を改善する方法で使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、表1の上記の状態のいずれかにおいて肝臓の悪化(detoriation)の遅延に使用するためのものである。
【0152】
肝外症状
肝外症状は、本明細書に記載される肝臓の疾患又は状態の結果である肝外障害及び/又は症状を指すと理解され得る。したがって、本開示は、本明細書で提供される組成物を、本明細書に記載される肝臓の疾患又は状態の任意の肝外症状を治療、遅延、改善、予防、又は治癒するために使用できることも包含することを理解されたい。
【0153】
肝外症状は、肝臓以外の臓器、組織、又は細胞に対する影響によるものであり得る。肝外症状は、例えば、脳に対する影響、血管系又は血管外への影響によるものであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される肝外症状は、肝性脳症、静脈瘤、又は腹水であり得、好ましくは肝性脳症である。
【0154】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、上記の組成物並びにそれらの使用及び方法は、以下のメカニズムに基づくことができると考えられる:
(a)腸管内の1つ又は限られた数の有益な細菌の増殖及び/又は活性を刺激する、
(b)腸管内の1つ又は限られた数の病原細菌の増殖及び/又は活性を阻害する、
(c)消化管表面の粘膜への非病原細菌の付着を相対的に増加させる、
(d)腸による抗原、炎症誘発性の細菌又は細菌産物の無制御の取り込みを減少させる、
(e)腸表面に抗炎症活性を提供する、
(f)腸バリア機能を増加させる、
(g)細菌代謝産物を産生する、
(h)有害な腸代謝産物の産生を減少させる、
(i)創傷修復を誘発する、
又は(j)(a)から(i)の任意の組み合わせ。
【0155】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、或いは、又はそれに加えて、或いは、又はそれに加えて、上記の組成物並びにそれらの使用及び方法は、以下の肝臓関連メカニズムに基づくことができる:
(a)肝インスリンシグナル伝達を回復させる、
(b)肝臓の線維化促進マーカーを減少させる、
(c)肝臓の脂質蓄積を減少させる、
又は(d)(a)から(c)の任意の組み合わせ。
【0156】
本開示のいくつかの特定の態様及び実施形態を以下に列挙する。
【0157】
一態様では、本開示は、精製された細菌メンバーを含む組成物を提供し、この細菌メンバーには、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricococcus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)、及びフォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)、並びにベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)の少なくとも1つが含まれる。場合によっては、細菌メンバーには、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)が含まれ得る。他の例では、細菌メンバーには、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)が含まれ得る。さらに他の例では、細菌のメンバーには以下が含まれ得る;
-ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及び
-ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)。
【0158】
有利には、細菌メンバーの組成物は、肝臓の特定の望ましくない状態、例えば肝臓の炎症を治療又は予防するのに有用であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、組成物は、細菌メンバーの特定の菌株を含み得る。例えば、場合によっては、細菌メンバーには、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)株LMG P-29362が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricococcus pullicaecorum)株LMG P-29360が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)株LMG P-29365が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)株LMG P-29361が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)株LMG P-29366が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)株LMG P-29359が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)株LMG17767が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)株DSM 2007が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)株DSM 25238が含まれ得る。
【0160】
組成物は、迅速且つ効率的な治療効果を提供するように製剤化することができる。場合によっては、組成物は、腸への送達のために製剤化することができる。例えば、組成物は、粉末、懸濁剤、錠剤、及び栄養補助食品などとして製剤化することができる。場合によっては、例えば、細菌メンバーを凍結乾燥させることができる。例えば、細菌メンバーは、フリーズドライさせることができる。場合によっては、細菌メンバーの組成物は、懸濁剤形で提供することができる。組成物は、少なくとも105の細菌のコロニー形成単位を含み得、例えば、組成物は、105~1011の細菌のコロニー形成単位を含み得る。本明細書に記載されるように、細菌は、凍結乾燥させるか、又は活性培養形態で提供することができる。
【0161】
別の態様では、本開示は、肝臓の状態を改善するための方法を提供し、この方法は、細菌メンバーを含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含み、この細菌メンバーには、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricococcus pullicaecorum)、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)、及びフォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)、並びにベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)、ベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)の少なくとも1つを含み、この組成物を投与すると、任意選択によりこの組成物を投与する前の肝臓の状態と比較して、肝臓の状態が改善される。場合によっては、細菌メンバーには、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)が含まれ得る。場合によっては、細菌メンバーには、ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)が含まれ得る。他の例では、細菌メンバーには以下が含まれ得る:
-ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)又はベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica);及び
-ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)、又はブラウティア・ルティ(Blautia luti)。
【0162】
この方法は、肝臓の状態を治療するのに有用であり得る。この状態は、例えば、肝臓の炎症、肥満症、遺伝性疾患又は代謝性疾患、薬物又は毒素誘発性の状態、肝外状態、栄養障害、ウイルス感染、肝虚血、又は老化のいずれか1つであり得る。例えば、場合によっては、この状態は、肝臓の炎症を含み得、組成物を投与することにより、対象のNAFLD活動性スコア(NAS)の低下によって証明されるように、肝臓の炎症を改善することができる。NASは、臨床及び実験の場で受け入れられているNAFLDの組織学的病変の特徴に基づいたスコアリングの方法である。場合によっては、例えば、対象のNASは、任意選択によりプラセボを投与された対象と比較して、組成物を投与してから9週間以内に約1.0の数値が低下し得る。場合によっては、この状態は、NASHを含み得る。例えば、組成物は、NASHを有する対象に投与することができ、それにより、任意選択により組成物の代わりにプラセボを投与されたNASHに罹患した対象と比較して、NASHの進行を遅延させることができる。
【0163】
場合によっては、対象に組成物を投与すると、任意選択によりプラセボを投与された同等の肝臓の状態を有する対象と比較して、体重増加、門脈圧亢進症の改善、又はインスリン感受性の改善をもたらし得る。場合によっては、組成物を投与すると、任意選択によりプラセボを投与された対象と比較して、治療してから2週間以内に空腹時血中インスリンレベルが約40%低下し得る。さらなる例では、組成物を投与すると、任意選択によりプラセボを投与された対象と比較して、治療してから10週間以内に肝内血管抵抗(IHVR)が約80%低下し得る。組成物は、任意の投与計画に従って投与することができ、例えば、組成物は、唯1回の投与として投与することができ、又は組成物は、定期的又は周期的に対象に投与することができ、例えば、組成物は、12時間ごと、24時間ごと、又は48時間ごとに1回、少なくとも7日間、8日間、9日間、又は10日間以上対象に投与することができる。場合によっては、組成物は腸への送達のために製剤化される。場合によっては、細菌メンバーを凍結乾燥させることができる。場合によっては、組成物は、懸濁剤形で提供することができる。
【0164】
場合によっては、組成物は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)株LMG P-29362、ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricococcus pullicaecorum)株LMG P-29360、ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)株LMG P-29365、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)株LMG P-29361、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)株LMG P-29366、アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)株LMG P-29359、フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)株LMG17767、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)株DSM 2007、及びブラウティア・オベウム(Blautia obeum)株DSM 25238を含む。組成物は、105~1011の細菌のコロニー形成単位を含み得る。
【0165】
一般情報
別段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって慣習的に及び通常理解される意味、及び本開示を考慮して解釈される意味と同じ意味を有する。
【0166】
配列同一性
本開示の文脈において、16S rRNA遺伝子をコードする核酸分子などの核酸分子は、16s rRNAをコードする核酸又はヌクレオチド配列によって表される。
【0167】
所与の配列識別番号(配列番号)によって本明細書で同定される各核酸分子又はタンパク質断片又はポリペプチド又はペプチド又は誘導ペプチド又は構築物は、開示されるこの特定の配列に限定されないことを理解されたい。本明細書で同定される各コード配列は、所与のタンパク質断片若しくはポリペプチド若しくはペプチド若しくは誘導ペプチド若しくは構築物をコードするか、又はそれ自体がタンパク質断片若しくはポリペプチド若しくは構築物若しくはペプチド若しくは誘導ペプチドである。
【0168】
本出願全体を通して、所与のタンパク質断片又はポリペプチド又はペプチド又は誘導ペプチド又はrRNAをコードする特定のヌクレオチド配列の配列番号(例として、配列番号Xを取る)に言及するたびに、これを以下によって置換することができる:
i.配列番号Xの少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列;
ii.その配列が遺伝子コードの縮重により、(i)の核酸分子の配列とは配列が異なるヌクレオチド配列;又は
iii.配列番号Xのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、若しくは99%のアミノ酸同一性又は類似性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列。
【0169】
配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは70%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは80%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは90%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは95%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは99%である。
【0170】
16S rRNA遺伝子の文脈において、その保存性が高いため、好ましい配列同一性のレベルは一般的に高い。したがって、16S rRNA遺伝子の配列同一性の好ましいレベルは、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、又は99.5%である。
【0171】
本出願全体を通して、特定のアミノ酸配列の配列番号(例として、配列番号Yを取る)に言及するたびに、これを以下によって置換することができる:アミノ酸配列の配列番号Yと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、若しくは99%の配列同一性又は類似性を有する配列を含むアミノ酸配列によって表されるポリペプチド。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは70%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは80%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは90%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは95%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは99%である。
【0172】
所与のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列それぞれとの同一性又は類似度パーセンテージによって本明細書に記載される各ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、さらに好ましい実施形態では、所与のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列それぞれと少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性又は類似性を有する。
【0173】
各非コードヌクレオチド配列(則ち、プロモーター又は別の調節領域の配列)は、特定の核酸配列の配列番号(例として、配列番号Aを取る)と少なくとも60%の配列同一性又は類似性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列によって置き換えることができる。好ましいヌクレオチド配列は、配列番号Aと少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有する。好ましい実施形態では、プロモーターなどのこのような非コードヌクレオチド配列は、当業者に公知であるプロモーターの活性などの、このような非コードヌクレオチド配列の活性を少なくとも示す、又は発揮する。
【0174】
「相同性」及び「配列同一性」などの用語は、本明細書では互換的に使用される。配列同一性は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチド又はタンパク質)配列間又は2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係として本明細書に記載される。好ましい実施形態では、配列同一性は、2つの所与の配列番号の配列の全長又はその一部に基づいて計算される。その一部は、好ましくは、両方の配列番号の配列の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は100%を意味する。当該技術分野において、「同一性」はまた、場合によっては、アミノ酸配列又は核酸配列の文字列間の一致によって決定される、アミノ酸配列間又は核酸配列間の配列関連性の程度を指す。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換物を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。「同一性」及び「類似性」は、限定されるものではないが、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれるBioinformatics and the Cell:Modern Computational Approaches in Genomics,Proteomics and transcriptomics,Xia X.,Springer International Publishing,New York,2018;and Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis,Mount D.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2004に記載される方法を含む公知の方法によって容易に計算することができる。
【0175】
「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じて、グローバル又はローカルアライメントアルゴリズムを用いて、2つのペプチド配列又は2つのヌクレオチド配列のアライメントによって決定することができる。類似した長さの配列は、全長にわたって配列を最適にアライメントするグローバルアライメントアルゴリズム(例えば、Needleman-Wunsch)を用いてアライメントすることが好ましく、一方、実質的に異なる長さの配列は、局所的アライメントアルゴリズム(例えば、Smith-Waterman)を用いてアライメントすることが好ましい。次いで、配列は、それらが(例えば、デフォルトパラメーターを使用するプログラムEMBOSS needle又はEMBOSS waterによって最適にアライメントされる場合)少なくとも特定の最小パーセンテージの配列同一性(以下で説明する)を共有する場合、「実質的に同一」又は「本質的に類似」と呼ぶことができる。
【0176】
グローバルアライメントは、2つの配列が同様の長さを有する場合に配列同一性を決定するために適切に使用される。配列が実質的に異なる全長を有する場合、Smith-Watermanアルゴリズムを使用するアライメントなどのローカルアライメントが好ましい。EMBOSS needleは、Needleman-Wunschグローバルアライメントアルゴリズムを使用して、2つの配列を全長(完全長)にわたって整列させ、一致数を最大化し、ギャップの数を最小化する。EMBOSS waterは、Smith-Watermanローカルアライメントアルゴリズムを使用する。一般に、デフォルトパラメーターがギャップオープンペナルティー=10(ヌクレオチド配列)/10(タンパク質)及びギャップ伸長ペナルティー=0.5(ヌクレオチド配列)/0.5(タンパク質)のEMBOSS needle及びEMBOSS waterが使用される。ヌクレオチド配列の場合、使用されるデフォルトのスコアリングマトリックスはDNAfullであり、タンパク質の場合、デフォルトのスコアリングマトリックスはBlosum62である(参照により本明細書に組み込まれるHenikoff & Henikoff,1992,PNAS 89,915-919)。
【0177】
或いは、類似性又は同一性パーセンテージは、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用して、公開データベースを検索することによって決定することもできる。したがって、本開示のいくつかの実施形態の核酸配列及びタンパク質配列は、例えば、他のファミリーメンバー又は関連する配列を同定するために、公開データベースの検索を実行するために「クエリ配列」としてさらに使用することができる。このような検索は、参照により本明細書に組み込まれるAltschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラムを、スコア=100、ワード長=12で実行して、本開示の酸化還元酵素核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、スコア=50、ワード長=3を使用するBLASTxプログラムを用いて行って、本開示のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップのあるアライメントを得るために、参照により本明細書に組み込まれるAltschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されているようにギャップ付きBLASTを利用することができる。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTx及びBLASTn)のデフォルトパラメーターを使用することができる。ワールドワイドウェブwww.ncbi.nlm.nih.gov/でアクセス可能なアメリカ国立生物工学情報センターのホームページを参照されたい。
【0178】
任意選択により、アミノ酸類似性の程度を決定する際に、当業者は、いわゆる保存的アミノ酸置換も考慮に入れることができる。本明細書で使用される場合、「保存的」アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。保存的置換のためのアミノ酸残基のクラスの例は、以下の表に示される。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリン及びスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;且つ硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンである。本明細書に開示されるアミノ酸配列の置換変異体は、開示される配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入された変異体である。好ましくは、アミノ酸変化は保存的である。天然に存在するアミノ酸のそれぞれに対する好ましい保存的置換は、以下の通りである:AlaとSer;ArgとLys;AsnとGln又はHis;AspとGlu;CysとSer又はAla;GlnとAsn;GluとAsp;GlyとPro;HisとAsn又はGln;IleとLeu又はVal;LeuとIle又はVal;LysとArg;GlnとGlu;MetとLeu又はIle;PheとMet、Leu、又はTyr;SerとThr;ThrとSer;TrpとTyr;TyrとTrp又はPhe;及びValとIle又はLeu。
【0183】
遺伝子又はコード配列
「遺伝子」という用語は、細胞内でRNA分子(例えば、mRNA)に転写され、適切な調節領域(例えばプロモーター)に機能的に連結された領域(転写領域)を含むDNA断片を意味する。遺伝子は通常、例えば、ポリアデニル化及び/又は転写終結部位を含む、プロモーター、5’リーダー配列、コード領域、及び3’-非翻訳配列(3’末端)などの機能的に連結されたいくつかの断片を含む。キメラ遺伝子又は組換え遺伝子は、例えばプロモーターが転写されたDNA領域の一部又はすべてと本質的に関連していない遺伝子などの自然界には通常見られない遺伝子である。「遺伝子の発現」は、適切な調節領域、特にプロモーターに機能的に連結されたDNA領域が、生物学的に活性である、則ち生物学的に活性なタンパク質又はペプチドに翻訳され得るRNAに転写されるプロセスを指す。
【0184】
タンパク質及びアミノ酸
「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「アミノ酸配列」という用語は、互換的に使用され、特定の作用機序、サイズ、3次元構造、又は起源を考慮せずに、アミノ酸の鎖からなる分子を指す。本明細書に記載されるアミノ酸配列において、アミノ酸又は「残基」は、3文字の記号で表記される。これらの3文字記号及び対応する1文字記号は、当業者に周知であり、以下の意味を有する:A(Ala)はアラニンであり、C(Cys)はシステインであり、D(Asp)はアスパラギン酸であり、E(Glu)はグルタミン酸であり、F(Phe)はフェニルアラニンであり、G(Gly)はグリシンであり、H(His)はヒスチジンであり、I(Ile)はイソロイシンであり、K(Lys)はリジンであり、L(Leu)はロイシンであり、M(Met)はメチオニンであり、N(Asn)はアスパラギンであり、P(Pro)はプロリンであり、Q(Gln)はグルタミンであり、R(Arg)はアルギニンであり、S(Ser)はセリンであり、T(Thr)はスレオニンであり、V(Val)はバリンであり、W(Trp)はトリプトファンであり、Y(Tyr)はチロシンである。残基は、任意のタンパク質を構成するアミノ酸であり得、翻訳後修飾によって形成されるD-アミノ酸及び修飾アミノ酸などの任意のタンパク質を構成しないアミノ酸、及び任意の非天然アミノ酸でもあり得る。
【0185】
本明細書及びその特許請求の範囲において、「~を含む」という動詞及びその活用形は、その語に続く項目が含まれ、具体的に述べられない項目が除外されないことを意味するようにその非限定的な意味で用いられる。加えて、「~からなる」という動詞は、「~から本質的になる」に置き換えることができ、本明細書に記載される組成物が、具体的に明らかにされた成分とは別の成分を含み得ることを意味し、前記追加の成分は、本開示の固有の特性を変化させない。加えて、「~からなる」という動詞は、「~から本質的になる」に置き換えることができ、本明細書に記載される方法が、具体的に明らかにされたステップとは別のステップを含み得ることを意味し、前記追加のステップは、本開示の固有の特性を変化させない。
【0186】
不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」による要素への言及は、文脈上明らかに要素が1つのみである必要がない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0187】
本明細書で使用される場合、「少なくとも」特定の値は、特定の値以上を意味する。例えば、「少なくとも2つ」は、「2つ以上」、則ち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、...、などと同じであると理解される。
【0188】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲において、第1、第2、及び第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順序又は時系列を説明するために用いられるものではない。このように使用される用語は、適切な状況下で互換可能であり、本明細書に記載される実施形態は、本明細書に記載又は例示される以外の順序で動作できることを理解されたい。
【0189】
「約」又は「およそ」という語は、数値(例えば、約10)と関連して使用される場合、好ましくは、その値は、プラスマイナス1%の(10の)所与の値であり得ることを意味する。
【0190】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、1つ又は複数の記載された事例が、単独で、又は記載された事例の少なくとも1つ、最大で記載された事例のすべてと組み合わせて生じ得ることを示す。
【0191】
様々な実施形態が本明細書に記載されている。本明細書で明らかにされる各実施形態は、特段の記載がない限り、一緒に組み合わせることができる。タイトル、サブタイトル、及び見出しなどは、読みやすくするためだけに使用されており、開示を一切限定又は制限することを意図するものではない。
【0192】
本明細書に引用されるすべての特許出願、特許、及び刊行物は、すべての定義、主題の否定又は否認を除き、また、組み込まれた資料が本明細書の明示的な開示と矛盾する(この場合、本開示の文言が優先される)範囲を除き、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0193】
当業者は、本発明の実施に使用できる、本明細書に記載のものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は、記載の方法及び材料に何ら限定されるものではない。また、本開示は、先行する開示に対する以下の実施例の態様の一般化を包含することも理解されたい。
【0194】
本発明は、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【
図1】実験デザイン。HFGFD-V:偽強制経口投与(ビヒクル)を受けたラット群;HFGFD-C:細菌集団を毎日投与されたラット群;HFGFD-Tr:痩せた対照ラットから採取した腸内細菌叢(IM)を投与されたラット群(1回の移植とそれに続く偽強制経口投与)。略語:HFGFD、高脂肪高グルコース/フルクトース食。
【
図2】体重増加及びインスリン抵抗性の評価。(A)介入の2週間後の体重増加。(B)介入の2週間後に測定された空腹時血中インスリンレベル。(C)インスリン抵抗性指数のホメオスタシスモデル評価の計算。略語:HFGFD、高脂肪高グルコース/フルクトース食。
【
図3】log2比で表される、定量的RT-PCRによる(A)α-SMA及び(B)COL1A1の相対的mRNA発現。β-アクチンを内在性対照として使用し、結果をHFGFD-V群に対して正規化した。略語:α-SMA、α-平滑筋アクチン;COL1A1、コラーゲンI型α1鎖;HFGFD、高脂肪高グルコース/フルクトース食。
【
図4-1】内皮機能障害の肝臓血行動態パラメーター及び肝内マーカー。(A)門脈圧(PP)。(B)肝内血管抵抗(IHVR)。(C~E)内皮機能障害の肝内マーカーのウェスタンブロット分析。棒グラフは、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)をローディング対照として使用し、HFGFD-V群に対して正規化したリン酸化(P)-Akt、P-eNOS、及びKLF2の定量を示している。略語:Akt、プロテインキナーゼB;eNOS、内皮一酸化窒素合成酵素;HFGFD、高脂肪高グルコース/フルクトース食;KLF2、クルッペル様因子2。
【
図4-2】内皮機能障害の肝臓血行動態パラメーター及び肝内マーカー。(A)門脈圧(PP)。(B)肝内血管抵抗(IHVR)。(C~E)内皮機能障害の肝内マーカーのウェスタンブロット分析。棒グラフは、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)をローディング対照として使用し、HFGFD-V群に対して正規化したリン酸化(P)-Akt、P-eNOS、及びKLF2の定量を示している。略語:Akt、プロテインキナーゼB;eNOS、内皮一酸化窒素合成酵素;HFGFD、高脂肪高グルコース/フルクトース食;KLF2、クルッペル様因子2。
【
図5】逆シンプソン多様性指数(Inverse Simpson diversity index)。数値は、外れ値R72を含めずに計算したt検定のp値を示す。
【
図6】多次元尺度構成法(MDS)。MDSは、Bray-Curtis距離に基づいている。
【
図7】sPLS-DA分類。(A)コントラスト(contrast)に対するBER。(B)上位10の識別分類群。(C)コントラスト特異的な分類群のオイラー図。判別分類群(discriminant taxa):菌株識別子は、CosmosIDによって行われるWMS分類学的組成分析(WMS taxonomic composition analysis)によって確認されたヒットに対応し、分析に使用されたデータベースの構成を反映する。これらは、各治療群に実際に存在する菌株のプロキシと見なされるべきである。オイラー図-数値は、次のように解釈されるべきである:HFGFD-Cの場合、47の誘導分類群は、HFGFD-V若しくはHFGFD-Tr、又はその両方と区別するための判別子であった。13の誘導分類群は、V-TrとV-Cのコントラストの両方でHFGFD-Vに対して判別子であった。12のHFGFD-V及びHFGFD-Tr関連分類群は、HFGFD-Cによって抑制された。91のHFGFD-V関連分類群は、HFGFD-C若しくはHFGFD-Tr、又はその両方によって抑制された。
【
図8】(A)空腹時血中インスリンレベル、(B)HOMA-IR指数、及び(C~D)肝臓血行動態に対する6株及び9株集団の効果。HFGFD-V:偽強制経口投与(ビヒクル)を受けたラット群;HFGFD-C1:6株集団を毎日投与されたラット群。HFGFD-C2:9株集団を毎日投与されたラット群;HFGFD-Tr:対照ラットから採取した腸内細菌叢(IM)を投与されたラット群(1回の移植とそれに続く偽強制経口投与)。
【
図9】内皮機能障害マーカーに対する6株及び9株集団の効果。(A)肝臓AKTリン酸化、(B)eNOSリン酸化、及び(C)KLF2。HFGFD-V:偽強制経口投与(ビヒクル)を受けたラット群;HFGFD-C1:6株集団を毎日投与されたラット群。HFGFD-C2:9株集団を毎日投与されたラット群。HFGFD-Tr:対照ラットから採取した腸内細菌叢(IM)を投与されたラット群(1回の移植とそれに続く偽強制経口投与)。凡例:AKT、AKTセリン/スレオニンキナーゼ;eNOS、内皮一酸化窒素合成酵素;KLF2、クルッペル様因子2。
【
図10】STAM(商標)研究デザイン。C57BL/6J雄マウスに、生後2日目に200μgのβ細胞毒素であるSTZを皮下注射した。4週齢の動物に高脂肪食(HFD)又は通常の対照食(CD)を与えた。5週齢で治療を開始し、対照食の動物とSTAMマウスに偽強制経口投与(それぞれCD+VEH及びSTAM+VEH)を合計4週間行った。2つの試験群において、STAM動物に、9株集団(10
9CFU/日)(STAM+CON)又はテルミサルタン(10mg/kg/日)(STAM+TLM)のいずれかも合計4週間投与した。9週齢で動物を屠殺した(安楽死1)。ビークル対照群又は集団群に属するSTAM動物の2つの群を、12週齢で屠殺するまでさらに3週間追跡した(安楽死2)。
【
図11】9株集団は、STAM(商標)マウスの疾患後期段階での体重増加を改善する。体重増加は、9株集団とテルミサルタン(TLM)の治療を開始したときに(則ち、HFD開始から1週間後)、5週齢で記録された体重と比較して示している。動物をいくつかの群に分け、異なる時点で屠殺した(則ち、脂肪症/脂肪性肝炎、早期線維症、及び後期線維症それぞれを標的とするために、7週齢、9週齢、及び12週齢)。TLM又は9株集団による治療は、5週齢で開始し、2週間(安楽死1まで)又は4週間(安楽死2まで)行った。9株集団及びビヒクルで処置された群のいくつかの動物は、12週齢まで追跡した(安楽死3)。凡例:CD、対照食群;Euth、安楽死;TLM、テルミサルタン;VEH、ビヒクル;CON、9株集団。
【
図12】9株集団は、全血HbA1cを改善する。全血HbA1c(%)をSTAM(商標)研究で測定した。全血を、ヘパリン化チューブで9週齢及び12週齢(それぞれ安楽死1及び2)で採取し、血流中の過剰なグルコースの存在を示すマーカーである糖化ヘモグロビンの分析に使用した。凡例:CD、対照食群;TLM、テルミサルタン;VEH、ビヒクル;CON、9株集団。
【
図13-1】STAM(商標)研究で採取されたH&E染色肝臓切片の代表的な画像。肝臓切片は、9週齢及び12週齢の両方で採取した(それぞれ安楽死1及び2)。
【
図13-2】STAM(商標)研究で採取されたH&E染色肝臓切片の代表的な画像。肝臓切片は、9週齢及び12週齢の両方で採取した(それぞれ安楽死1及び2)。
【
図14】STAM(商標)研究におけるNAFLD活動性スコア(NAS)。H&E染色肝臓切片で病理組織を評価し、NASスコアをKleinerの基準に従って計算した。(22)構成要素(A)炎症、(B)脂肪症、(C)風船様肥大、及び(D)複合スコアを9週齢及び12週齢の両方で評価した(それぞれ安楽死1及び2)。ND:12週齢でのCD+VEH及びSTAM+TLM群では未定。
【
図15-1】STAM(商標)試験で採取した(A)ピクロ-シリウスレッド染色及び(B)F4/80免疫染色肝臓切片の代表画像。肝臓切片は、9週齢及び12週齢の両方で採取した(それぞれ安楽死1及び2)。
【
図15-2】STAM(商標)試験で採取した(A)ピクロ-シリウスレッド染色及び(B)F4/80免疫染色肝臓切片の代表画像。肝臓切片は、9週齢及び12週齢の両方で採取した(それぞれ安楽死1及び2)。
【
図16】STAM(商標)研究における肝線維症領域、F4/80陽性領域、及び血清CK-18レベル。(A)シリウスレッド染色肝臓切片で評価した線維症。(B)F4/80免疫染色切片で評価したマクロファージの免疫組織化学。(C)アポトーシス肝細胞のマーカーであるCK-18の血清レベル。すべてのマーカーは、9週齢及び12週齢の両方で評価した(それぞれ安楽死1及び2)。ND:12週齢でのCD+VEH及びSTAM+TLM群では未定。
【
図17-1】HV5培地中の短鎖脂肪酸(SCFA)プロファイル。(A)ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)株及びベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)株。(B)フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)株。(C)ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)株、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)株、及びブラウティア・ルティ(Blautia luti)株。
【
図17-2】HV5培地中の短鎖脂肪酸(SCFA)プロファイル。(A)ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)株及びベイロネラ・アティピカ(Veillonella atypica)株。(B)フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)株。(C)ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)株、ブラウティア・ウェクスレラエ(Blautia wexlerae)株、及びブラウティア・ルティ(Blautia luti)株。
【発明を実施するための形態】
【0196】
実施例
実施例1では、9つのヒト腸内共生系統からなる細菌集団の有効性を、関連するインビボ動物疾患モデル、則ち、門脈圧亢進症(PHT)のラットNASHモデルで試験した。結果を、痩せたラットから1回の糞便移植を受けた動物と比較した。細菌集団は、体重増加及び門脈圧亢進症を改善することが示され、さらに、インスリン感受性の回復により、内皮機能障害マーカーも改善した。加えて、肝臓トランスクリプトミクスは、良好に調節されている多数の線維形成促進経路を同定した。
【0197】
実施例2では、実施例1の9株集団を、ラットNASHモデルでの6株集団と比較した。9株集団には、6株集団の6株に加えて、プロピオン酸塩生産を増加させるために含められた3つの追加の種が含まれる。どちらの集団も効果的であった:9株集団は、複数のエンドポイントにわたって一貫した結果を示し、6株集団は、空腹時インスリンレベル、HOMA-IR指数、及び肝臓血行動態(PP、IHVR)を含むいくつかのエンドポイントに保護効果を誘発した。
【0198】
実施例3では、9株集団の有効性を、別の関連するインビボ動物疾患モデル、即ち、NASHのSTAM(商標)マウスモデルでさらに試験した。9株集団の投与により、12週齢まで抗線維化効果が確認された。加えて、F4/80免疫組織化学は、肝炎症の軽減を伴い、疾患の重症度と相関するアポトーシス性肝細胞の血液マーカーであるサイトケラチン-18(CK-18)の血清レベルは、処置の5週間後に有意に低下した。
【0199】
要するに、これらの結果は、微生物ベースのアプローチをNAFLDなどの肝臓の状態の管理に使用できること、及び腸内共生の集団が疾患の進行を遅らせるための安全で便利で長期的な解決策を患者に提供することを示している。
【0200】
試験した6株集団は、以下の細菌種を含む:
・フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)(LMG P-29362株)
・ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricococcus pullicaecorum)(LMG P-29360株)
・ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)(LMG P-29365株)
・アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(LMG P-29361株)
・ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)(LMG P-29366株)
・アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)(LMG P-29359株)。
【0201】
試験した9株集団は、以下の細菌種を含む:
・フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)(LMG P-29362株)
・ブチリシコッカス・ピュリカエコーラム(Butyricococcus pullicaecorum)(LMG P-29360株)
・ローズブリア・イヌリニボランス(Roseburia inulinivorans)(LMG P-29365株)
・アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(LMG P-29361株)
・ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)(LMG P-29366株)
・アナエロスティペス・カッカエ(Anaerostipes caccae)(LMG P-29359株)
・フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)(LMG17767株)
・ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)(DSM 2007株)
・ブラウティア・オベウム(Blautia obeum)(DSM 25238株)。
【0202】
6株集団は、国際公開第2017/134240号パンフレットにも記載されている。国際公開第2017/134/240号パンフレットでは、集団はロバストであり、各種に含まれる正確な株とは無関係であることが示された。したがって、当業者は、本明細書に提示された結果を例示された菌株以外を使用して得ることができることを理解する。
【0203】
実施例1:門脈圧亢進症(PHT)のラットNASHモデルでの6株集団の評価
1.1. 材料及び方法
1.1.1. 実験デザイン
1.1.2. モデル開発のために、Sprague-DawleyラットにHFGFD(高脂肪食と高グルコース/フルクトースシロップ)を8週間与えた(
図1)。その後、ラットを3つの群に無作為に割り付けた:HFGFD-ビヒクル(HFGFD-V、n=13)、9つのヒト共生細菌株のHFGFD集団(HFGFD-C、n=11)、及び痩せたラットの糞便物質を移植したHFGFD(HFGFD-Tr、n=11)。HFGFD-V個体は、経口プロービングビヒクル(無菌PBS)を投与されたが、HFGFD-C群及びHFGFD-Tr群の個体は、それぞれ細菌共生の経口投与と腸内細菌叢(IM)移植からなる異なる微生物叢ベースの処置を受けた。各処置については、以下のセクションで詳しく説明する。処置期間は2週間続き、その間、動物は元の飼料で維持した(
図1)。10週目に、肝臓血行動態及び血液生化学を行って、肝臓組織試料を、組織学的及び分子学的分析のために採取した。加えて、盲腸内容物を、腸内微生物のショットガン配列決定のために採取した。
【0204】
動物モデル及び食餌
実験開始時に体重が200~220gの雄Sprague-Dawley OFAラット(Charles River Laboratories,L’Arbresle,France)を、(9)で既に前述したように、食餌誘発性NASHモデルに使用した。ラットは、一定の温度(24±1℃)及び相対湿度(55±10%)で12時間の明暗サイクルの下で飼育した。動物は、コレステロール(1g/kg)が添加された、主に飽和脂肪酸(5.73kcal/g;Ssniff Spezialdiaeten GmbH,Soest,Germany)を含む脂肪分30%(バター、ココナッツオイル、パーム油、牛脂)からなる高脂肪高グルコース/フルクトース食(HFGFD)及び157.7kcal/Lを提供する高グルコース/フルクトース(42g/L、45%グルコース、及び55%フルクトース)含有量を含む飲料を不断給餌した。体重と食餌及び飲料の摂取量を週に1回モニタリングした。
【0205】
すべての手順は、ヴァル・デブロン・リサーチ研究所(Vall d’Hebron Institut de Recerca)(Barcelona,Spain)の動物管理委員会(Animal Care Committee)によって承認された、実験動物の倫理的管理に関する欧州連合ガイドライン(European Union Guidelines for Ethical Care of Experimental Animals)(動物実験に関するEC Directive 86/609/EEC)に従って、ヴァル・デブロン・リサーチ研究所の動物施設で行った。
【0206】
細菌集団処置
この集団処置は、8週間の食餌介入後に開始した。9つの細菌株を含む凍結乾燥バイアルを嫌気性条件(N2:CO2:H2:80:10:10)下で再懸濁した。嫌気性チャンバーとバイアルの蓋を除染した後、濃縮されて得られた菌株を、以前にろ過した20mlの嫌気性DPBS(塩化カルシウムと塩化マグネシウムを含まないダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、Sigma Aldrich)に穏やかに再懸濁した。バイアルの内容物を滅菌50mlファルコンチューブに注いで分割し、嫌気性チャンバーから取り出した。50mlファルコンを、10分間室温で、5,340gで遠心分離した。ファルコンを嫌気性チャンバーに戻し、次いで、上清を流して廃棄した。各ペレットを3mlの嫌気性DPBSに再懸濁し、次いで、3.5mlのDPBSを各チューブに添加して、バイアル当たり6.5mlの最終容量を得た。すべての試料を、最終的に嫌気性雰囲気のガラス製密閉滅菌バイアルに移した。集団が再構成されたら、使い捨て経口プローブ(Biochrom Ltd,Cambridge,UK)を使用して、1個体あたり1mlの懸濁液(2×109CFUの1日量に相当)を直ちに投与し、24時間ごとに10日間連続して手順を繰り返した。ビヒクル群に属する個体についても、同じ手順に従ったが、代わりに滅菌DPBSを投与した。細菌集団を投与されたラットは、二次汚染を避けるために、処置期間中、個別に飼育した。
【0207】
腸内細菌叢(IM)移植
IM移植を、8週間の食餌介入後に行った。移植手順でより高い均質性を達成するために、3匹の対照(痩せた)ラットドナーの糞便をプールしてIM移植に使用した。胃の酸性度を下げて微生物の生存率を高めることを目的として、オメプラゾールを、腸の除染前の3日間に50kg/日の用量で経口投与した。腸を空にすることを進めるために、ラットを高速グリルに引き続き隔離し、移植前に1ml及び2mlのCitraFleet(ピコ硫酸ナトリウム0.16mg/ml及び酸化マグネシウム51.2mg/ml)の2つの経口量をそれぞれ、24時間及び12時間投与した。これらの投与には、それぞれ2mlの水を用いた。再コロニー形成を、100mgの糞便プールを2mlの滅菌DPBSに溶解して、単一の強制経口投与によって行った。
【0208】
血液生化学
血液試料を、屠殺時に大静脈から採取した。グルコース、ビリルビン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、トリグリセリド、及びアルブミンを標準的な方法で測定した(Garcia-Lezana,T et al.Restoration of a Healthy Intestinal Microbiota Normalizes Portal Hypertension in a Rat Model of Nonalcoholic Steatohepatitis. HEPATOLOGY 2018;67(4)を参照)。製造元の指示に従ってELISAキットを使用してインスリンを測定した(EMD Millipore,Billerica,MA,United States)。インスリン抵抗性は、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR):(空腹時インスリン(ng/mL)×空腹時グルコース(mg/dL))/405の恒常性モデルを適用して推定した。
【0209】
組織学的分析
組織学的分析のために、肝臓試料を抽出し、4%ホルマリンに固定し、65℃で流動パラフィンに包埋し、厚さ4μmのスライドで切片にした。次いで、試料をヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色して肝実質を評価し、シリウスレッドで染色してコラーゲン繊維を検出した。染色されたすべての肝臓試料は、動物に対して行われた介入を知らされていない専門の肝臓病理学者によって検査された。
【0210】
NASHの診断は、脂肪症、小葉性炎症、肝細胞風船様肥大の共存を含む、この疾患の3つの特徴的なパターンすべての存在に基づいて確定された。NASH-CRN活動性スコア(NAS)を使用して、NASH活動性を定量化した。NASは、組織学的構成要素の重み付けされていない合計を含む:脂肪症(0~3)、小葉炎症(0~3)、及び肝細胞風船様肥大(0~2)。線維症も、NASH-CRNシステムに従って、F0(線維症なし)からF4(肝硬変)までの5段階に分類した。
【0211】
肝臓血行動態
血行動態測定を、ケタミン(100mg/Kg)及びミダゾラム(5mg/kg)を用いて、体温を37℃に維持した腹腔内麻酔下で空腹時ラットで行った。平均動脈圧(MAP)を、大腿動脈のカテーテル挿入によって測定し、門脈圧(PP)を、高感度圧力トランスデューサーを使用した回結腸静脈カテーテル法によって評価した(Harvard apparatus,Holliston,MA,USA)。上腸間膜動脈(SMA)血流(SMABF、mL/[分×100g])及び門脈血流(PBF、mL/[分×100g])を血管周囲超音波通過時間流量プローブ(直径1mm、Transonic systems Inc,Ithaca,NY,USA)で測定した。SMA抵抗(SMAR)及び肝内血管抵抗(IHVR、mmHg/mL×分×100g)をそれぞれ、([MAP-PP]/SMABF)及び(PP/PBF)として計算した。
【0212】
ウェスタンブロット
肝臓を放血のために生理食塩水で灌流させ、試料を液体窒素で直接凍結し、次の使用まで-80℃で保存した。次いで、肝臓試料を、手作業で粉末になるまで、解凍しないように冷却粉砕した。次いで、肝臓試料を、トリトン溶解緩衝液中でホモジナイズし、超音波処理し、4℃で10分間、14,000rpmで遠心分離した。上清の総タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher scientific,Waltham,MA,USA)によって定量した。40μgのタンパク質を、10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分析した。SDS-PAGEによって分離したタンパク質を、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(Thermo Fisher scientific,Waltham,MA,USA)に転写した。この膜をTTBS 1Xで数回洗浄し、PhosphoBLOCKER(商標)5%(Cell biolabs,San Diego,CA,USA)を用いてRTで1時間ブロックして、リン酸化タンパク質P-Akt(1/500,Cell signaling,Danvers,MA,USA)及びP-eNOS(Ser1177、1/250)を検出するか、又はスキムミルクを用いてクルッペル様因子2(KLF2)(1/200,Santa Cruz biotechnology,Dallas,TX,USA)を検出した。GAPDH抗体(1/5000、Ambion,Austin,TX,USA)をローディング対照として使用した。膜をECLキット(GE Healthcare;Little Chalfont,UK)を用いて開発し、タンパク質発現を、Image Studio Lite(Lincoln,NE,USA)を使用する濃度測定分析バンドによって最終的に決定した。
【0213】
リアルタイムPCR
肝臓試料及び回腸試料を、RNAlater(Thermo Fisher scientific,Waltham,MA,USA)中に少なくとも24時間保持し、その後、さらなる分析まで-80℃で保存した。RNeasyミニキット(QIAGEN,Venlo,Nederland)を使用して全RNAを抽出し、相補的DNA(大容量cDNA逆転写、Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)にレトロ転写した。20ngのcDNAを、TaqmanユニバーサルPCRマスターミックスに加え、α-SMA(α-平滑筋アクチン)及びCOL1A1(コラーゲンI型α1鎖)用の特異的なTaqmanプローブ(Life Technologies Ltd,Renfrew,UK)に添加し、384ウェルプレート(Thermo Fisher scientific,Waltham,MA,USA)にロードした。7900HT高速リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher scientific,Waltham,MA,USA)を使用して定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を行った。相対的な遺伝子発現をβ-アクチンに対して正規化した。データを、Thermofisher Cloudの相対定量qPCR Applicationを使用して分析した。
【0214】
盲腸全メタゲノムショットガン
ゲノムDNAを、製造元の指示に従ってZymobioMics DNA Miniprepキット(Zymo Research,Irvine,CA,USA)を使用して各ラットの約0.2gの盲腸内容物から抽出し、Qubit(商標)Flex Fluorometer(Thermo Fisher Scientific,Wilmington,DE,USA)を使用して定量し、これを全メタゲノムショットガン配列決定に使用した。ライブラリーの調製及び配列決定を、CosmosID(Rockville,MD,USA)によって行い、2×150bp Illuminaリードを生成した。組み立てられていない配列決定リード(≧12Mリード深度)を、分類学的及び機能的プロファイルのプロファイリングについてCosmosIDバイオインフォマティクスプラットフォームを使用して分析した。
【0215】
全メタゲノムショットガン(WMS)配列決定、分類学的及び経路プロファイリングを、CosmosID(Rockville,MD,USA)によって行った。2×150bpのIlluminaリードを、分類学的プロファイリング(Thoendel M et al.Journal of Clinical Microbiology 2020;58(3):e00981-19)では独自の微生物ゲノムデータベースにマッピングし、経路プロファイリング(Franzosa EA et al.Species-level functional profiling of metagenomes and metatranscriptomes.Nature Methods 2018;15(11):962-8)ではUniRef90及びMetaCycにマッピングした。処理誘発性微生物組成の調節を、それぞれRパッケージphyloseq(McMurdie PJ,Holmes S.PLoS ONE 2013;8(4):e61217)及びmixOmics(Rohart F.PLOS Computational Biology 2017;13(11):e1005752)を使用する教師なし分析(UniFrac距離を使用した多次元尺度法)及び教師あり分析(スパース部分最小二乗判別分析、sPLS-DA)の両方で評価した。後者の分類器の性能は、偽陽性率と偽陰性率の平均(BER:balanced error rate)によって評価した。
【数1】
【0216】
1.1.3. 肝臓トランスクリプトミクス
RNA抽出、RNAライブラリー調製、及び配列決定反応を、製造元(Qiagen,Hilden,Germany)の指示に従って以下の通り、GENEWIZ,LLC.(South Plainfield,NJ,USA)で行った:Qiagen RNeasy Plus Universalミニキットを使用して新鮮な凍結肝臓組織試料から全RNAを抽出した。RNA試料を、Qubit 2.0蛍光光度計(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を使用して定量し、RNAの完全性を、RNA Screen Tape on Agilent 2200 TapeStation(Agilent Technologies,Palo Alto,CA,USA)を使用して測定した。RNA配列決定ライブラリーを、製造元のプロトコル(Illumina,Cat# RS-122-2101)に従って、TruSeq Stranded mRNAライブラリー調製キットを使用して調製した。まず、mRNAを、オリゴd(T)ビーズで濃縮した。濃縮したmRNAを、94℃で8分間断片化した。続いて、第1鎖及び第2鎖cDNAを合成した。cDNAの第2鎖は、合成中にdUTPを組み込むことによってマークを付けた。cDNA断片を3’末端でアデニル化し、インデックス付きアダプター(indexed adapter)を、cDNA断片にライゲーションした。リミテッドサイクルPCR(limited cycle PCR)をライブラリーの濃縮に使用した。第2鎖cDNAに組み込まれたdUTPは、増幅をクエンチして鎖特異性を維持した。配列決定ライブラリーを、DNA Analysis Screen Tape on the Agilent 2200 TapeStation(Agilent Technologies,Palo Alto,CA,USA)を使用して検証し、Qubit 2.0 Fluorometer(Invitrogen,Carlsbad,CA)及び定量PCR(KAPA Biosystems,Wilmington,MA,USA)を使用して定量した。プールされたライブラリーを、フローセルの7レーンにクラスター化した。クラスター化の後、フローセルを製造元の指示に従ってIllumina HiSeq装置(4000又は同等品)にロードし、2×150bpのPaired End(PE)構成を使用して配列決定した。画像解析とベースコーリングを、HiSeq Control Software(HCS)によって行った。Illumina HiSeqから生成された生の配列データ(.bclファイル)をfastqファイルに変換し、Illuminaのbcl2fastq 2.17ソフトウェアを使用して逆多重化した。インデックス配列の同定では、1つの不一致は許容された。
【0217】
鎖特異的な遺伝子発現プロファイリングを、2×150bpのIlluminaリードをEnsembl Rattus norvegicus Rnor_6.0トランスクリプトームにマッピングし、subreadパッケージのfeatureCounts(Liao Y et al. Bioinformatics 2014;30(7):923-30)でアライメントを処理することで達成した.ラットEnsembl遺伝子IDを、Ensembl Biomartによって、ヒトEnsembl遺伝子同等物及びHUGOのヒトゲノム命名法委員会(HGNC)の記号にマッピングした。得られたユニークなマッピング断片数を、RパッケージDESeq2(Anders S,Huber W.Genome Biology 2010;11(10):R106)を用いる差次的遺伝子発現分析に入れて、p値がBenjamini & Hochberg偽発見率(FDR)で調整された差次的遺伝子発現を得た。外れ値分析を、Rパッケージroplsを使用した直交部分最小二乗分析で行った(Thevenot EA.Journal of Proteome Research 2015;14(8):3322-35)。同時に、sPLS-DAを行って変数重要度(VIP)を推定した。処置とビヒクルコントラストを判別する肝臓遺伝子は、VIP>1及び調整されたp値<0.05を有するとして保持した。これらの遺伝子の機能的過剰発現分析(ORA)を、WikiPathways機能的アノテーションデータベース(Martens M et al.Nucleic Acids Research 2021;49(D1):D613-21.)を使用してRパッケージclusterProfiler(Wu T et al.The Innovation 2021;2(3):100141)で行った。RパッケージRcisTarget(Aibar S et al.SCENIC:Single-cell regulatory network inference and clustering.Nature Methods 2017;14(11):1083-6)を用いて、低発現遺伝子又は過剰発現遺伝子に富む転写モチーフを予測した。これらのモチーフに関連する信頼性の高い転写因子を保持した。
【0218】
1.1.4. 生物学的パラメーター分析
連続変数を、平均±標準誤差(SEM)として記録した。統計分析を、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,San Diego,CA)を用いて行った。処置群の生物学的パラメーターを、スチューデントのt検定、又はダネットの多重比較検定を用いる一元配置分散分析によって比較した。P値<0.05は統計的に有意であると見なした。
【0219】
1.1.5. 結果
1.1.6. 集団処置は体重を有意に改善した
2週間の処置期間中、HFGFD-V群の動物は、
図2Aに見られるように、体重が大幅に増加した(22.08±3.18g)。しかしながら、HFGFD-Cが平均2.91±3.55gしか増加させなかったのに対し、HFGFD-Trは、平均5±3.47g減少させた。HFGFD-Vと比較すると、微生物叢ベースの処置を受けた両群とも、2週間の処置期間中に体重増加が有意に少なかった(
図2A)。
【0220】
集団処置は代謝プロファイルを有意に改善した
図2Bと
図2C及び表2に見られるように、両方の微生物叢ベースの処置は、HFGFD-V群に関して空腹時血中インスリンレベル及びHOMA-IR指数の重要な低下を示した。
【0221】
【0222】
線維化促進肝マーカー遺伝子の発現の低下
動物が屠殺された時点(HFGFDで10週間)では、線維化促進経路が既に活性化されており、集団処置群では、線維化促進肝マーカーα-SMA及びCOL1A1の遺伝子発現が、ビヒクル群と比較して有意に減少した(
図3)。これらの結果は、後述するゲノムワイドRNA-Seq分析結果によってさらに裏付けられる。
【0223】
集団処置により、門脈圧が大幅に低下し、肝臓血行動態が改善された
以前の所見(9)と一致し、組織学的線維症が存在しないにもかかわらず、10週間のHFGFD介入の動物は、平均して10.32mmHgの値の門脈圧(PP)の増加を示した(表3及び
図4A)。重要なことに、細菌集団処置及びIM移植の両方が、2週間の処置期間中にHFGFDを維持しても、ビヒクル処置群と比較してPPを有意に低下させた(表3及び
図4A)。HFGFD-C群で観察されたPPのこの減少は、HFGFD-Vと比較して肝内血管抵抗(IHVR)の有意な減少(80%の減少)に続発し、IM-Tr群で測定されたもの(104%の減少)と同程度であった(
図4B)。全身血行動態に関しては、関連する変化は群間で観察されなかった(表3)。
【0224】
【0225】
内皮機能障害(ED)の特徴は、集団処置を受けた後の動物で改善された
ED分子の特性を評価して、ビヒクル処置群に対して、微生物叢ベースの処置によって誘発されたIHVR及びPPで観察された変化をさらに特徴付けた。この目的のために、リン酸化プロテインキナーゼB(P-Akt)及び内皮一酸化窒素合成酵素(P-eNOS)を分析した。加えて、e-NOSの転写制御機構の可能性を評価するために、KLF2が機能的な内皮表現型の維持に不可欠であると考えられるためKLF2を評価した。
図4C~
図4Eに見られるように、微生物叢ベースの処置は、P-Aktの有意な増加を誘発した。P-eNOSは、HFGFD-Vと比較して、HFGFD-C及びHFGFD-Trの両方で増加する傾向を示した。興味深いことに、HFGFD-Cは、KLF2の顕著で有意な増加を示すという点でユニークであった。
【0226】
微生物叢ベースの処置は、盲腸種の多様性を改善し、重要な盲腸微生物叢組成の変化を促進する
phyloseqパッケージの逆シンプソン指数(
図5)が示すように、微生物叢ベースの処置は盲腸種の多様性を改善する。微生物集団処置群の1つの外れ値である第2のバッチのラットR72が同定された。
【0227】
CD群なしで適用された多次元スケーリングによって評価されるベータ多様性は、HGHFD-V群、HGFD-C群、及びHGFD-Tr群の良好な分離を示している(
図6)。
【0228】
HFGFD-Cコントラスト(0.03)のBERで評価される分類器の性能は、HFGFD-Trコントラスト(0.34)と比較して遜色がない(
図7A)。したがって、HFGFD-Cは、HFGFD-Trよりも明確な変化を誘導すると主張できるが、これは、生成菌株の添加によって支配される、又は限定され得る。しかしながら、対応する特徴の選択(VIP>1、n=123)は、細菌集団処置が72(観察可能な変化の58.5%)のビヒクル関連分類群の抑制を誘導し、48(41.5%)の非生成処置関連分類群の出現を促進したが、特徴の選択(n=178)による微生物叢移植は、135(75.8%)の分類群の抑制及びそれらの43(24.2%)の分類群での置換を誘導したことを示している。したがって、どちらの処置も、HGHFD-V関連微生物群集の重要な置換をもたらしたが、細菌集団は移植よりも明確で豊富な置換を達成し、移植は、この群では移植前に生着率を高めるために腸を空にする処置が行われたため本質的により抑制的であった。
図7Bは、分類器の推定変数重要度(VIP)及びその関連性に従って上位10の識別分類群を提供するが、
図7Cは、3つのV-C、V-Tr、及びC-Trコントラストを、各コントラストで選択された特徴の数に比例する単一のオイラー図にまとめている。
【0229】
細菌集団処置は、差次的肝臓遺伝子発現を誘導し、線維症関連遺伝子を下方制御する
32,552の肝臓遺伝子の発現をRNA-Seq分析によって記録した。これらのうち、732(2.2%)は、HFHGD-C(n=252)又はHFHGD-Tr(n=632)コントラストのいずれか又はその両方の判別子(VIP>1、FDR p値<0.05)であった。HGHFD-Cでは、処置関連遺伝子の上方制御(n=157、62.3%)の傾向が見られたが、HGHFD-Trでは、処置関連遺伝子の上方制御(n=315、49.8%)とビヒクル関連遺伝子の下方制御(n=317、50.4%)との間でバランスが取れていた。
【0230】
HFHGD-C又はHFHGD-Trのいずれか又は両方で上方制御された遺伝子に対して過剰表現分析(ORA:overrepresentation analysis)を行ったが、WikiPathwaysアノテーションデータベースに対して有意な経路過剰表現は全く検出されなかった。下方制御された遺伝子に対して行われた同じ分析では、線維症に関連するいくつかの経路が検出された。
【0231】
実施例2:門脈圧亢進症(PHT)のラットNASHモデルにおける6株集団と9株集団の比較
実施例2は、実施例1で説明したものと同じ材料及び方法を用いて行った。9株集団は、複数のエンドポイントに対して一貫した結果を示した。6株集団はまた、特に空腹時インスリンレベル、HOMA-IR指数、及び肝臓血行動態(PP、IHVR)に対して有意な保護効果を誘発した(
図8)。
【0232】
6株集団で処置された群では、リン酸化(p)-AKT及びp-eNOSは、実際には処置に応答して変化しなかった(
図9A及び
図9B)。これは、他のメカニズムが、インスリン抵抗性を改善し、それによって門脈圧亢進症を改善する役割を果たし得;加えて、KLF2の発現の増加は、9株集団に特異的であると考えられる(
図9C)。
【0233】
したがって、それらの類似した構成にもかかわらず、これら2つの集団の効果は、完全に比較可能ではなかった。特に、プロピオン酸塩を産生できる(別の)菌株の添加は有利であるように思われ、追加の有益なメカニズムを活性化し得る。
【0234】
実施例3:NASHのSTAM(商標)マウスモデル
1.2. 材料及び方法
1.2.1. 実験デザイン
STAM(商標)試験を、日本のSMCラボラトリーズ株式会社で行った。簡単に説明すると、生後2日目に200μgのストレプトゾトシン(STZ、Sigma-Aldrich、USA)溶液を単回皮下注射し、4週齢で高脂肪食(HFD、57kcal%脂肪、Cat#HFD32、CLEA Japan,Inc.,Japan)を導入することによって、NASHをC57BL/6J雄マウスで誘発させた。
【0235】
STAMマウスモデルは、NASHによるHCCの発生がヒト患者における既知の進行と同一であるという実質的な利点を有するが、プロセス全体が比較的短期間で完了する(Fujii,M.et al.Med.Mol.Morphol.2013;46:141-152)。このモデルでは、2日齢の雄C57BL/6マウスにストレプトゾトシン(STZ)を単回投与して、インスリン分泌能力を低下させる。生後4週で、マウスは、高脂肪食(HFD)の給餌を開始する。このモデルは、以下のように要約することができる(表4)。
【0236】
【0237】
生後2日目に、C57BL/6Jマウスにβ細胞毒素STZを注射する。これにより、動物はプライミングされるため、第2のヒットを4週齢で開始すると、即ち、継続的な高脂肪食(HFD)を開始すると、疾患が急速に進行する。生後5週齢までに肝脂質蓄積(脂肪症)が見られ、6週齢までに動物は組織学におけるNAFLD活動性スコア(NAS)が増加し、ALTレベルが上昇する。生後7~8週までに肝臓の炎症が明らかになり、9~12週で線維化が明らかになる。HCCは、生後約16週で観察することができる。このモデルは、脂肪肝、NASH、線維症、及び結果的に肝臓癌(HCC)に進行する後期T2Dと一致している。他のNASH-HCCモデルと比較して、疾患は、比較的短期間で進行し、肝臓癌は、20週齢までにすべての動物で発症する。このモデルの利点は、急速な疾患の発症と進行、及び表現型の完全浸透度である。疾患進行の標的段階に応じて、動物を、疾患の早期又は後期段階で安楽死させる。このモデルは、病理組織で線維化の顕著な兆候を示している。
【0238】
動物を、HFDを給餌する前日の体重に基づいて3つの処置群に無作為に割り付けた。無作為化は、Excelソフトウェアを用いた体重層別無作為抽出法により行った。5週齢(HFDで1週間後)の動物に、偽強制経口投与(STAM+VEH、n=16)、9株細菌集団(STAM+CON、n=18)、又はテルミサルタン(STAM+TLM、n=8)のいずれかを投与した。通常の食餌を給餌し、偽強制経口投与を受けた対照群(CD+VEH、n=8)もこの研究に含めた(
図10)。動物は、温度(23±3℃)、湿度(50±20%)、照明(12時間の人工的な明暗サイクル;光は8:00~20:00)、及び空気交換の制御条件下でSPF施設で維持した。この動物実験は、以下のガイドラインに従って行った:Act on Welfare and Management of Animals(Ministry of the Environment,Act No.105 of October 1,1973,Japan;Standards Relating to the Care and Management of Laboratory Animals and Relief of Pain(Notice No.88 of the Ministry of the Environment,April 28,2006,Japan))及びGuidelines for Proper Conduct of Animal Experiments(Science Council of Japan,June 1,2006)。
【0239】
処置管理
ビヒクル(滅菌PBS)及び細菌集団を200μl/マウスの容量で経口投与した:細菌集団を、109CFU/日の用量で合計4週間投与した。生成物懸濁液を、上記のように調製した。テルミサルタンをベンチマークとして使用し、10ml/kgの容量の10mg/kgの1日量で4週間経口投与した。そのために、テルミサルタンの1錠を乳鉢に移し、1mg/mlの均質な懸濁液が得られるまで純水を加えて乳棒で粉砕した。すべての処置は、投与前に新たに調製した。実験期間中、体重を毎日記録した。
【0240】
屠殺及び試料採取
対照群(CD+VEH)及びSTAM群(STAM+VEH、STAM+CON、及びSTAM+TLM)に属する動物を、処置の4週間後、即ち、脂肪性肝炎/早期線維症の段階に対応する9週齢で屠殺した。さらに、ビヒクルと集団群に属するSTAM動物の2つの群をさらに3週間追跡し、末期線維症の段階に対応する12週齢で屠殺した。これは、処置中止時に疾患の進行を遅らせる細菌集団の可能性を調べるために行った(
図10)。動物は、イソフルラン麻酔下での直接心臓穿刺による放血によって屠殺した(Pfizer Inc.)。非空腹時血液を、抗凝固剤を含むポリプロピレンチューブで顔面静脈から採取した(Novo-heparin,Mochida Pharmaceutical,Japan)。50μLの採血を、糖化ヘモグロビン(HbA1c)分析に使用した。非空腹時血液も、抗凝固剤を含まない別々のチューブで血清調製のために採取した。これらを室温で30分間インキュベートした後、3,500×g、4℃で5分間遠心分離した。残りの血清を回収し、血清CK-18レベルの定量及び生化学でさらに使用するまで、-80℃で保存した。肝臓全体を採取し、冷生理食塩水で洗浄した。肝臓検体は、免疫組織化学用のOCT(Optimal Cutting Temperature)(O.C.T.,Sakura Finetek Japan,Japan)化合物に-80℃で包埋するか、ブアン溶液(Sigma-Aldrich Japan,Japan)に24時間固定した。固定後、これらの検体を、H&E及びシリウスレッド染色のためにパラフィン包埋した。O.C.T.に包埋した標本は、F4/80免疫組織化学に使用した(以下を参照)。
【0241】
血液生化学
全血中のHbA1cを、DCN2000+(Siemens Healthcare Diagnostics,USA)によって定量した。血清CK-18レベルを、マウスサイトケラチン18-M30 ELISAキット(Cusabio Biotech Co.,Ltd,China)を使用して測定した。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びトリグリセリド濃度を、FUJI DRI-CHEM 7000(Fujifilm Corporation)によって測定した。血清総コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール、及び低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールのレベルを、Skylight Biotech Inc.(日本)のHPLCによって定量した。
【0242】
組織学的分析
回転式ミクロトーム(Leica Microsystems)を使用して肝臓組織のパラフィンブロックから切片を切り取った。切片作製後、各スライドをブラインド評価のために番号をコード化した。各番号は、ExcelソフトウェアのRAND機能を使用して生成し、昇順でソートし、スライドを割り当てた。組織スライドを以下の染色に使用し、実験によって評価した:H&E染色では、ブアン溶液に事前固定した肝臓組織のパラフィンブロックから切片を切り取り、Lillie-Mayerのヘマトキシリン(Muto Pure Chemicals Co.,Ltd.,Japan)とエオシン溶液(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation,Japan)で染色した。NAFLD活動性スコア(NAS)を、Kleinerの基準に従って計算した。(22)NASの採点のために、H&E染色切片の明視野画像を、デジタルカメラ(DFC295;Leica,Germany)を使用して50倍と200倍の倍率で撮った。1切片/マウス(50倍の倍率での代表的な1つの視野)の脂肪症スコア、1切片/マウス(200倍の倍率での代表的な1つの中心静脈周囲の視野)の炎症スコア、及び1切片/マウスの風船様肥大スコア(200倍の倍率での中心静脈周囲の代表的な1つの視野)の風船様肥大スコアを推定した。コラーゲン沈着を可視化するために、ブアン固定肝臓切片をピクロ-シリウスレッド溶液(Waldeck,Germany)で染色した。簡単に説明すると、切片を脱パラフィン化し、キシレン、100~70%アルコール系、及びRO水で親水化し、次いで0.03%ピクロ-シリウスレッド溶液(カタログ番号:1A-280)で60分間処置した。0.5%酢酸溶液とRO水で洗浄した後、染色部分を脱水し、70~100%アルコール系とキシレンで除去し、Entellan(商標)(Merck,Germany)で密封して観察に使用した。線維症領域の定量分析のために、シリウスレッド染色切片の明視野画像を、デジタルカメラ(DFC295;Leica,Germany)を使用して200倍の倍率で、中心静脈周囲で撮り、5つの視野/切片における陽性領域をImageJソフトウェア(米国国立衛生研究所)を使用して測定した。
【0243】
免疫組織化学のために、Tissue-Tek O.C.T.化合物に包埋された凍結肝臓組織から切片を切り取り、アセトンに固定した。内因性ペルオキシダーゼ活性を、0.03%H2O2を用いて5分間ブロックした後、Block Ace(日本の大日本住友製薬株式会社)と共に10分間インキュベートした。切片を抗F4/80抗体(モノクローナル抗体、T-2006、BMA Biomedicals)と共に4℃で一晩インキュベートした。二次抗体(VECTASTAIN ABC KIT,PK-4004,Vector Laboratories)と共にインキュベートした後、3,3’-ジアミノベンジジン/H2O2溶液(日本の株式会社ニチレイバイオサイエンス)を用いて酵素-基質反応を行った。F4/80免疫染色切片の明視野画像を、デジタルカメラ(DFC295;Leica,Germany)を使用して200倍の倍率で、中心静脈周囲で撮り、5つの視野/切片の陽性領域をImageJソフトウェア(米国国立衛生研究所)を使用して測定した。
【0244】
結果
NASHラットで行った肝臓トランスクリプトミクスは、試験した細菌集団が線維形成促進経路を良好に調節し得ることを示唆したため、病理組織で線維化の顕著な兆候を示すげっ歯類モデルに対して同じ集団を試験するように促した。そのために、STAM(商標)マウスモデルを使用した。このモデルでは、雄マウスに、軽度の膵島の炎症と破壊を誘発するβ細胞毒素であるSTZを生後すぐに皮下注射した。加えて、STZプライミングマウスは、4週齢で連続HFDを開始した。これにより、脂肪肝からNASH、線維症、そして最終的に腫瘍突出まで、連続した組織学的変化が誘発される。疾患は急速に進行し、浸透率はほぼ100%である。これにより、目的の疾患の病期に応じて、明確に定義された時点での薬物の保護効果を研究することができる。線維症を標的とする研究のために、8週齢から12週齢の動物を屠殺することができる。したがって、9株集団の効果は、4週間の処置期間の終了時、即ち、脂肪性肝炎/早期線維症の段階(9週齢)、及び後期線維症を伴う12週齢でも評価した。結果を、肝脂肪の蓄積を減少させ、肝星細胞の活性化を阻害し、従って肝線維形成を抑制するアンジオテンシンII受容体遮断薬であるベンチマークテルミサルタンと比較した。その効果を、病理組織学的レベルで評価し、生化学的分析のために血液を採取した。
【0245】
集団処置群では、研究の終了、即ち、9~12週齢までに体重増加を改善する傾向が観察された(
図11)。しかしながら、STAM動物は食餌誘発性NASHの他のモデルとは対照的に痩せているため、STAM(商標)モデルは、肥満の追跡には最も適しているわけではない。NASHラットと同様に、血液パラメーター、即ち、ALT及びコレステロールレベルに有意な変化は観察されなかった(エラー!参照元が見つかりません。)。
【0246】
また、研究終了時にはHbA1cv(糖化ヘモグロビン)の全血中濃度の低下が観察され、糖尿病に対する有益な効果が示された(
図12)。
【0247】
【0248】
腸内共生9集団は、9週齢の病理学組織でNASを改善した
NAFLDの特徴、即ち、肝炎症、脂肪症、及び風船様肥大を評価するために肝臓切片を採取した。H&E染色肝臓切片の代表的な画像を
図13に示し(エラー!参照元が見つかりません。);計算したスコアを示す(エラー!参照元が見つかりません。)。予想通り、ビヒクル処置STAM群の肝臓切片は、微滴性及び大滴性の脂肪沈着、肝細胞風船様肥大、及び炎症性細胞浸潤を示した。細菌集団処置STAMマウスは、9週齢の疾患群と比較してNASスコアの有意な低下を示した(エラー!参照元が見つかりません。D)。これは、脂肪症及び風船様肥大スコアの低下の結果であった(エラー!参照元が見つかりません。B及びC)。12週齢では、これはもはや観察されなかった。
【0249】
腸内共生9集団は、線維症を改善し、F4/80の肝発現及び血清CK-18レベルの低下を示した
コラーゲン沈着を評価するために、肝臓切片をピクロ-シリウスレッドで染色した。代表的な画像を図に示す(エラー!参照元が見つかりません。エラー!参照元が見つかりません。A)。計算した面積を示す(エラー!参照元が見つかりません。A)。予想通り、ビヒクル処置STAM群の肝臓切片は、対照食群と比較して、肝小葉の中心周辺領域でのコラーゲン沈着の増加を示した。細菌集団処置群は、12週齢の疾患群と比較して、線維症(シリウスレッド陽性)領域の有意な減少を示したが、9週齢ではそうではなかった。炎症をさらに評価するために、マクロファージF4/80免疫染色を肝臓切片で使用した。H&E染色切片では、全般的な炎症の有意な減少が観察されなかったにもかかわらず(エラー!参照元が見つかりません。A及び
図13)、F4/80染色切片は、9週齢で集団処置群におけるマクロファージ炎症浸潤の有意な減少を示し、12週齢で減少する傾向を示した(エラー!参照元が見つかりません。B及び図(エラー!参照元が見つかりません。B))。最後に、CK-18血清レベルもまた、9週齢で集団処置群で有意に低下し、12週齢までに減少する傾向が観察され(エラー!参照元が見つかりません。C)、結果は、組織学的活動と見事に相関している。
【0250】
これらの結果は、9株集団が実際にNASH疾患の線維化への進行を防止できることを裏付けている。
【0251】
実施例4
フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)(株LMG17767)、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)(株DSM 2007)、及びブラウティア・オベウム(Blautia obeum)(株DSM 25238)のSCFA産生を測定し、同じ種又は近縁種の代替株と比較した。
【0252】
【0253】
試験したすべての株は、健康なヒトドナーの糞便物質から分離された共生腸内細菌である。SCFAレベルを、ガスクロマトグラフィー(GC)によって定量した。
【0254】
試験した全ての株は、非常に類似したSCFAプロファイルを示し(
図17)、上記の集団の結果は、フォカエイコラ・バルガタス(Phocaeicola vulgatus)(株LMG17767)、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)(株DSM 2007)、及び/又はブラウティア・オベウム(Blautia obeum)(株DSM 25238)を、同一種又は近縁種の代わりの株に置き換えることによっても得ることができることを示している。
【0255】
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