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特表2025-500570フラッシュガラス及びその製造方法、並びに電子機器筐体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】フラッシュガラス及びその製造方法、並びに電子機器筐体
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20241226BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C03C15/00 B
G09F9/00 313
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539289
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 CN2022137990
(87)【国際公開番号】W WO2023134355
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210049208.7
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD Company Limited
【住所又は居所原語表記】No. 3009, BYD Road, Pingshan, Shenzhen, Guangdong 518118, P. R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲経▼杰
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼富▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】袁涛
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼▲蘭▼
【テーマコード(参考)】
4G059
5G435
【Fターム(参考)】
4G059AA06
4G059AB05
4G059AC01
4G059BB04
4G059BB16
5G435AA01
5G435HH04
5G435LL07
5G435LL08
(57)【要約】
フラッシュガラスを提供し、該フラッシュガラスは、ガラス本体(10)を含み、ガラス本体(10)の第1表面(10a)は、間隔を置いて分布した複数の第1フロスト領域(101)を含み、隣接する2つの第1フロスト領域(101)は、第2フロスト領域(102)により接続され、第1フロスト領域(101)と第2フロスト領域(102)は、直線的細長片状であり、第1フロスト領域(101)は、複数の第1突起構造(11)を有し、第2フロスト領域(102)は、複数の第2突起構造(12)を有し、第1突起構造(11)と第2突起構造(12)は、独立して少なくとも1本の稜を含み、第2突起構造(12)の高さ及び長さは、いずれも第1突起構造(11)より小さい。また、フラッシュガラスの製造方法及び該フラッシュガラスを含む電子機器筐体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス本体(10)を含むフラッシュガラスであって、前記ガラス本体(10)は、第1表面(10a)を有し、前記第1表面(10a)は、間隔を置いて分布した複数の第1フロスト領域(101)を含み、隣接する2つの前記第1フロスト領域(101)は、第2フロスト領域(102)により接続され、前記第1フロスト領域(101)及び前記第2フロスト領域(102)は、直線的細長片状であり、各第1フロスト領域(101)は、複数の第1突起構造(11)を有し、前記第2フロスト領域(102)は、複数の第2突起構造(12)を有し、各第1突起構造(11)と各第2突起構造(12)は、独立して少なくとも1本の稜を含み、前記第2突起構造(12)の高さ及び長さは、いずれも前記第1突起構造(11)の高さ及び長さより小さい、ことを特徴とするフラッシュガラス。
【請求項2】
前記第1突起構造(11)と前記第2突起構造(12)の形状は、それぞれ、角柱、角錐台、立方体、角錐のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のフラッシュガラス。
【請求項3】
前記第1突起構造(11)は、長さが100μm~150μmの範囲内にあり、高さが10μm~16μmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフラッシュガラス。
【請求項4】
前記第2突起構造(12)は、長さが30μm~60μmの範囲内にあり、高さが3μm~6μmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフラッシュガラス。
【請求項5】
前記第1フロスト領域(101)の幅は、100μm~500μmであり、前記第2フロスト領域(102)の幅は、100μm~500μmである、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のフラッシュガラス。
【請求項6】
前記第1フロスト領域(101)は、ヘイズが80%~90%の範囲内にあり、光透過率が75%~93%の範囲内にあり、前記第2フロスト領域(102)は、ヘイズが90%~95%の範囲内にあり、光透過率が75%~93%の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のフラッシュガラス。
【請求項7】
前記第1フロスト領域(101)の粗さRaは、1.5μm~4μmの範囲内にあり、前記第2フロスト領域(102)の粗さRaは、0.3μm~1μmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のフラッシュガラス。
【請求項8】
ガラス本体(10)の第1表面(10a)に対して1回目のフロストエッチングを行って、前記第1表面(10a)に、それぞれが少なくとも1本の稜を含む複数の第1突起構造(11)を形成するステップと、
前記1回目のフロストエッチングの後の第1表面(10a)に、平行で間隔を置いて分布した複数の細長片状のフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンがある第1表面(10a)に対して2回目のフロストエッチングを行って、前記第1表面(10a)の前記フォトレジストパターンにより被覆されない部分を、複数の第2突起構造(12)を有する第2フロスト領域(102)に変換し、次に、前記フォトレジストパターンを除去して、隣接する前記第2フロスト領域(102)の間に、表面に複数の第1突起構造(11)を有する第1フロスト領域(101)を得るステップとを含み、
各第2突起構造(12)は、少なくとも1本の稜を含み、前記第2突起構造(12)の高さ及び長さが、いずれも前記第1突起構造(11)の高さ及び長さより小さい、ことを特徴とするフラッシュガラスの製造方法。
【請求項9】
前記1回目のフロストエッチングと前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液は、それぞれ、メタアルミン酸塩、硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素アンモニウム及び水を含み、前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩の質量百分率は、前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩の質量百分率より大きい、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液は、重量部で、1~3部のメタアルミン酸塩、25~40部の硝酸、1~3部の塩酸、0.5~1.5部の硫酸、20~40部のフッ化水素アンモニウム、1~3部の酒石酸及び水を各成分として含み、
前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液は、重量部で、5~10部のメタアルミン酸塩、25~40部の硝酸、1~3部の塩酸、0.5~1.5部の硫酸、20~40部のフッ化水素アンモニウム、1~3部の酒石酸及び水を各成分として含む、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記メタアルミン酸塩は、メタアルミン酸マグネシウム、メタアルミン酸ナトリウム、メタアルミン酸カリウム、メタアルミン酸カルシウムのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩は、メタアルミン酸マグネシウムであり、前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩は、メタアルミン酸ナトリウム又はメタアルミン酸カリウムである、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記1回目のフロストエッチングは、25℃~30℃で2min~5min静置してエッチングを行うことであり、前記2回目のフロストエッチングは、25℃~30℃で2min~5min静置してエッチングを行うことである、ことを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載のフラッシュガラス、又は
請求項8~13のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたフラッシュガラスを含む、ことを特徴とする電子機器筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年1月17日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202210049208.7であり、出願名称が「フラッシュガラス及びその製造方法、並びに電子機器筐体」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、ガラス加工の技術分野に関し、具体的には、フラッシュガラス及びその製造方法、並びに電子機器筐体に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、ノートパソコンなどの電子機器の継続的な発展に伴い、ユーザの電子機器筐体の外観効果に対する要求もますます高くなっている。ガラスは、電子機器によく用いられる筐体材料であり、例えば、カバープレート、バックプレートなどとして用いることができる。しかしながら、現在、市場におけるガラスは、外観が単調であり、ユーザの多様な美的ニーズに応えることができず、製品競争力が弱い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本願は、フラッシュガラスを提供し、該フラッシュガラスは、フラッシュ程度が異なる様々なフラッシュ効果を呈することができ、該フラッシュガラスを用いた電子機器筐体の外観表現力を向上させ、製品競争力を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
具体的には、第1態様において、本願に係るフラッシュガラスは、ガラス本体を含み、前記ガラス本体は、テクスチャを有する第1表面を含み、前記第1表面は、間隔を置いて分布した複数の第1フロスト領域を含み、隣接する2つの前記第1フロスト領域は、第2フロスト領域により接続され、前記第1フロスト領域及び前記第2フロスト領域は、直線的細長片状であり、前記第1フロスト領域は、複数の第1突起構造を有し、前記第2フロスト領域は、複数の第2突起構造を有し、前記第1突起構造と前記第2突起構造は、独立して少なくとも1本の稜を含み、前記第2突起構造の高さ及び長さは、いずれも前記第1突起構造より小さい。
【0006】
上記フラッシュガラスの第1表面は、フロスト効果を有し、かつ交互に設けられた2種の直線的細長片状のフロスト領域を有し、この2種のフロスト領域を構成する突起構造の高さ及び長さが異なり、光線が該フラッシュガラスの第1表面に照射されると、少なくとも1つの稜を有する2種の突起構造は、光を異なる方向に反射することができ、それにより、きらきらと光るという外観効果を生じ、かつフラッシュ程度が異なる様々なフラッシュ効果を呈することができ、外観効果を大幅に向上させる。
【0007】
第2態様において、本願に係るフラッシュガラスの製造方法は、
前記ガラス本体の第1表面に対して1回目のフロストエッチングを行って、前記第1表面に、それぞれが少なくとも1本の稜を含む複数の第1突起構造を形成するステップと、
前記1回目のフロストエッチングの後の第1表面に、平行で間隔を置いて分布した複数の細長片状のフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンがある第1表面に対して2回目のフロストエッチングを行って、前記第1表面の前記フォトレジストパターンにより被覆されない部分を、複数の第2突起構造を有する第2フロスト領域に変換し、次に、前記フォトレジストパターンを除去して、隣接する前記第2フロスト領域の間に、表面に複数の第1突起構造を有する第1フロスト領域を得るステップとを含み、前記第2突起構造は、少なくとも1本の稜を含み、高さ及び長さがいずれも前記第1突起構造より小さい。
【0008】
上記フラッシュガラスの製造方法は、操作が簡単であり、該方法で製造されたフラッシュガラスは、フロスト効果を有し、かつ光が照射されると、フラッシュ程度が異なる様々なフラッシュ効果を呈することができ、ユーザの視覚的印象を改良する。
【0009】
第3態様において、本願に係る電子機器筐体は、本願の第1態様に記載のフラッシュガラス、又は本願の第2態様に記載の製造方法で製造されたフラッシュガラスを含む。
【発明の効果】
【0010】
上記フラッシュガラスを含む電子機器筐体は、スタイリッシュでかっこいいという外観効果を有し、電子機器の外観表現力及び製品競争力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願の一実施例に係るフラッシュガラスの金属顕微鏡写真である。
図2】本願の実施形態に係るフラッシュガラスの断面概略図である。
図3】本願の一実施例に係るフラッシュガラスの製造のフローチャートである。
図4】本願の実施例1に係る1回目のフロストエッチングの後のガラス本体の金属顕微鏡写真である。
図5図4のガラス本体の表面にフォトレジストパターンが形成された後の金属顕微鏡写真である。
図6図5のガラス本体に対して2回目のフロストエッチングを行った後に得られたフラッシュガラスの金属顕微鏡写真である。
図7】本願の実施例1のフラッシュガラスの外観効果図である。
図8図4のガラス本体の外観効果図である。
図9】本願の実施例5におけるフラッシュガラスの外観効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、本願の例示的な実施形態であり、説明すべきこととして、当業者にとって、本願の原理から逸脱することなく、さらにいくつかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本願の保護範囲にあると見なされる。
【0013】
図1は、本願の一実施例に係るフラッシュガラスの金属顕微鏡写真である。図2は、本願の実施形態に係るフラッシュガラスの断面概略図である。図1及び図2に示すように、本願の実施例に係るフラッシュガラス100は、ガラス本体10を含み、ガラス本体10は、第1表面10aを有し、第1表面10aは、間隔を置いて分布した複数の第1フロスト領域101を含み、隣接する2つの第1フロスト領域101は、第2フロスト領域102により接続され、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102は、直線的細長片状であり、第1フロスト領域101は、複数の第1突起構造11を有し、第2フロスト領域102は、複数の第2突起構造12を有し、第1突起構造11と第2突起構造12は、独立して少なくとも1本の稜を含み、第2突起構造12の高さ及び長さは、いずれも第1突起構造11より小さい。本願において、第1突起構造を「大突起」、第2突起構造を「小突起」と呼んでもよい。
【0014】
上記フラッシュガラスの第1表面10aは、交互に設けられた2種の直線的細長片状のフロスト領域を有し、この2種のフロスト領域を構成する突起構造の高さ及び長さが異なり、該第1表面は、フロスト効果を有し、光線が該フラッシュガラスの第1表面に照射されると、少なくとも1つの稜を有する2種の突起構造は、各稜の側面に照射された光を反射することができ、各稜の側面の角度が異なるため、異なる方向への反射光を発生させることができ、それにより、きらきらと光るという外観効果を生じ、反射光のこの2種の突起構造における複合重畳により、フラッシュ程度が異なる様々なフラッシュ効果を呈することができ、フラッシュ効果の多階調性及び柔軟性を向上させ、該フラッシュガラスの視覚効果を豊かにし、外観の美感を向上させる。また、複数の第1突起構造11を有する第1フロスト領域101と複数の第2突起構造12を有する第2フロスト領域102が交互に直線的細長片状に配置されることにより、ガラスの装飾効果を向上させ、該フラッシュガラスの市場における応用の見通しを向上させることができる。さらに、複数の第1突起構造11及び複数の第2突起構造12が存在することにより、人の指と該ガラス表面との接触面積を減少させ、指紋付着防止効果を向上させ、該ガラスの乱反射効果を向上させ、防眩効果を向上させることができる。
【0015】
本願において、第1表面10aは、光線が照射されると、第1突起構造11及び第2突起構造12においてフラッシュポイントを形成し、具体的には、各突起構造の稜の側面にフラッシュポイントを形成する。
【0016】
本願において、「突起構造は、少なくとも1本の稜を含む」とは、突起構造が方向が異なり、かつ交差する少なくとも2つの面を含み、2つの面の交差する(又は接続されると呼ばれる)位置が稜を構成することを指し、該突起構造は、ダイヤモンドに類似する形状を有し、鏡面反射を効果的に行うことにより、きらきらと光るという外観効果を生じることができる。具体的には、少なくとも1本の稜を有する突起構造の形状は、角柱(例えば、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱など)、角錐台(例えば、三角錐台、四角錐台、五角錐台など)、立方体、角錐(例えば、三角錐、四角錐)又はそれらの類似構造などを含むが、これらに限定されない。本願のいくつかの実施形態において、第1突起構造11及び第2突起構造12の形状は、独立して角柱、角錐台などを含み、具体的には、三角柱、三角錐台などを含んでもよい。
【0017】
本願の実施形態において、上記第1突起構造11及び第2突起構造12の形態は、独立して六方晶系結晶形態、立方晶系結晶形態、三方晶系結晶形態、正方晶系結晶形態及び直方晶系結晶形態のうちの少なくとも1種に属する。上記結晶形態を有する突起構造は、光が照射される条件下で改良されたフラッシュ効果を有し、外観の美しさの向上に有利である。立方晶系は、等軸晶系とも呼ばれる。直方晶系は、「斜方晶系」とも呼ばれる。なお、上記「突起構造の形態は、六方晶系結晶形態、立方晶系結晶形態、三方晶系結晶形態、正方晶系結晶形態及び直方晶系結晶形態のうちの少なくとも1種に属する」とは、広義に理解されるべきであり、すなわち、突起構造の形態は、必ずしも六方晶系結晶形態、立方晶系結晶形態、三方晶系結晶形態及び正方晶系結晶形態と完全に一致するとは限らず、上記結晶系結晶形態とほぼ一致すればよく、一定のずれを許容する。
【0018】
理解できるように、ガラス本体10の少なくとも1つの表面は、上記第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有する。続いて図1に示すように、ガラス本体10は、反対側に設けられた第1表面10a及び第2表面10bを有し、図1では、第1表面10aが第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有することを例示したが、理解できるように、第2表面10bは、上記第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有してもよく、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有しなくてもよく、これに限定されない。また、本願において、「第1」、「第2」は、説明のためのものに過ぎない。
【0019】
本願において、第1突起構造11の高さは、第2突起構造12の高さより大きく、第1突起構造11の長さは、第2突起構造12の長さより大きい。本願の実施形態において、第1突起構造11は、長さが100μm~150μmの範囲内にあってもよく、高さが10μm~16μmの範囲内にあってもよい。本願の実施形態において、第2突起構造12は、長さが30μm~60μmの範囲内であってもよく、高さが3μm~6μmの範囲内にあってもよい。
【0020】
第1突起構造11の長さを上記範囲に制御することにより、その切断面がダイヤモンドに類似する突起形状を有することができ、優れた光反射効果及び乱反射効果を有し、かつ第1フロスト領域が良好なフロスト手触りを有することができる。第1突起構造11の高さを上記範囲に制御することにより、第1突起構造11が適切な立体感を有し、第1フロスト領域の外観効果を改良し、指紋付着防止、防眩を強化するとともに、握り心地を保証することができ、かつそれに影響を与えない。本願の実施形態において、第1突起構造11の長さと高さの比は、6~15の範囲内にあり、いくつかの実施形態において、該長さと高さの比は、8~15の範囲内にある。
【0021】
第2突起構造12の長さ及び高さを上記範囲に制御することにより、第1突起構造11と区別することができ、2種の異なる突起構造により、ガラスのフラッシュ効果を豊かにできることを保証する。第2突起構造12の長さにより、第2フロスト領域に緊密に配置された多くの第2突起構造があり、ガラス表面のフラッシュポイントの輝度が高く、かつフラッシュ効果が細やかであることを保証し、また指紋付着防止効果を向上させることができ、より狭い高さ範囲により、第2突起構造12の形態の高い均一性、及び第2突起構造12によるフラッシュ効果の均一性を保証することができる。本願の実施形態において、第2突起構造12の長さと高さの比は、5~20の範囲内にある。この場合、高さの変化は、第2突起構造11の形態の均一性にあまり影響を与えない。いくつかの実施形態において、該長さと高さの比は、6~15の範囲内にあり、具体的には6~10の範囲内にあってもよい。
【0022】
第1突起構造11は、長さが第2表面10bへのその正投影の輪郭線上の任意の2点の間の間隔の最大値であり、高さがその先端とその頂部との間の距離である。具体的には、第1突起構造11の長さは、105μm、110μm、115μm、120μm、130μm、140μm、145μm、150μmなどであってもよい。第1突起構造11の高さは、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μmなどであってもよい。
【0023】
同様に、第2突起構造12は、長さが第2表面10bへのその正投影の輪郭線上の任意の2点の間の間隔の最大値であり、高さがその先端とその頂部との間の距離である。具体的には、第2突起構造12の長さは、32μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μmなどであってもよい。第2突起構造12の高さは、3μm、3.5μm、4μm、5μm、5.5μm、6μmなどであってもよい。
【0024】
本願において、隣接する第1突起構造11の間又は隣接する第2突起構造12の間には、シームレスに接続(すなわち、隣接)されてもよく、一定の間隔があってもよい。本願の実施形態において、隣接する第1突起構造11は、互いに隣接し、隣接する第2突起構造12は、互いに隣接する。それにより、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有する第1表面の豊かなフラッシュ効果及び良好な握り心地を保証することができる。
【0025】
本願の実施形態において、第1フロスト領域101の幅は、100μm~500μmであり、第2フロスト領域102の幅は、100μm~500μmである。各第1フロスト領域101は、第1方向に沿って平行に配置され、換言すれば、第1方向に沿って延在する。該第1方向は、ガラス本体10の長さ方向、幅方向又は他の直線方向であってもよい。この場合、第1フロスト領域101の幅は、第2表面10bへのその正投影領域の第1方向と垂直な方向に沿ったサイズである。第2フロスト領域102の幅の定義は、これと同様である。理解できるように、第2フロスト領域102の幅は、2つの隣接する第1フロスト領域101の間の間隔であり、第1フロスト領域101の幅は、2つの隣接する第2フロスト領域102の間の間隔である。前述した第1突起構造11の高さ及び長さがいずれも第2突起構造12より大きいため、それに応じて、第1フロスト領域を「突起領域」と称し、第2フロスト領域を「凹み領域」と称してもよい。第1フロスト領域101の幅は、第2フロスト領域102の幅と等しくても、等しくなくてもよい。
【0026】
第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102の幅を上記範囲に制御することにより、この2種のフロスト領域を離間させ、両者内の対応する突起構造の数が多いことを保証し、さらにフラッシュガラスが豊かなフラッシュ効果及び防眩効果を有することを保証し、かつ良好な立体感、握り心地、指紋付着防止効果などを提供することができる。いくつかの実施例において、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102の幅は、独立して100μm、110μm、130μm、140μm、150μm、200μm、250μm、300μm、400μm、450μm又は500μmなどである。
【0027】
本願の実施形態において、前記第2フロスト領域のヘイズは、前記第1フロスト領域のヘイズより大きい。本願のいくつかの実施形態において、第1フロスト領域101は、ヘイズが80%~90%の範囲にあり、光透過率が75%~93%の範囲にあり、第2フロスト領域102は、ヘイズが90%~95%の範囲にあり、光透過率が75%~93%の範囲にある。
【0028】
2つのフロスト領域のヘイズが上記範囲にある場合、ガラスは、ぼんやりとした視覚効果を生じ、美感を向上させ、良好な防眩、指紋付着防止効果を実現することができるとともに、きらきらと光るという外観効果を兼ね備えることにより、強い視覚衝撃を提供することができる。2つのフロスト領域の光透過率が上記範囲にある場合、これらのフロスト領域は、マット効果を有するとともに、それぞれの透過率が向上し、透過性が改良され、外観表現力が向上する。
【0029】
本願のいくつかの実施形態において、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102の光透過率は、独立して80%~90%の範囲内にあり、いくつかの実施形態において、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102の光透過率は、独立して85%~90%の範囲内にある。
【0030】
本願のいくつかの実施形態において、第1フロスト領域101の粗さRaは、第2フロスト領域102の粗さRaより大きい。いくつかの実施形態において、第1フロスト領域101の粗さRaは、1.5μm~4μmの範囲内にあり、第2フロスト領域102の粗さRaは、0.3μm~1μmの範囲内にある。粗さの大きい第1フロスト領域101は、フラッシュ効果を向上させ、かつ防眩効果を向上させるとともに、手触りが明らかであり、指紋付着防止及び滑り止め効果を向上させ、粗さの小さい第2フロスト領域102は、フロスト効果を向上させ、かつフラッシュ効果が細やかで、均一である。具体的には、第1フロスト領域101の表面粗さRaは、1.8μm、2μm、2.1μm、2.3μm、2.5μm、2.7μm、2.8μm、3μm、3.2μm、3.5μm又は3.9μmなどであってもよいが、これらに限定されない。第2フロスト領域102の表面粗さRaは、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm又は0.95μmなどであってもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、第1フロスト領域101の粗さRaは、2μm~3μmの範囲内にあり、第2フロスト領域102の粗さRaは、0.45μm~0.8μmの範囲内にあり、いくつかの実施形態において、第2フロスト領域102の粗さRaは、0.45μm~0.6μmの範囲内にある。
【0031】
本願の実施例は、上記いずれかの実施形態に記載のフラッシュガラスを製造することができるフラッシュガラスの製造方法をさらに提供する。
【0032】
図3及び図4に示すように、本願の実施例に係るフラッシュガラスの製造方法は、以下のステップS10、S20及びS30を含む。
【0033】
S10では、ガラス本体10の第1表面10aに対して1回目のフロストエッチングを行って、第1表面10に、それぞれが少なくとも1本の稜を含む複数の第1突起構造11を形成し、
S20では、1回目のフロストエッチングの後の第1表面10aに、平行で間隔を置いて分布した複数の細長片状のフォトレジストパターン30を形成し、
S30では、フォトレジストパターン30がある第1表面10aに対して2回目のフロストエッチングを行って、第1表面のフォトレジストパターン30により被覆されない部分に複数の第2突起構造12を形成し(すなわち、複数の第2突起構造12を有する第2フロスト領域102に変換する)、次に、フォトレジストパターン30を除去して、フラッシュガラスを得る。フラッシュガラスの第1表面10aは、前記第2フロスト領域102と、複数の第1突起構造11を有する第1フロスト領域101とを含み、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102は、直線的細長片状であり、かつ間隔を置いて分布し、隣接する2つの第1フロスト領域101は、第2フロスト領域102により接続され、第2突起構造12は、少なくとも1本の稜を含み、高さ及び長さがいずれも第1突起構造11より小さい。
【0034】
本願のいくつかの実施形態において、1回目のフロストエッチングを行う前に、ガラス本体のフロストエッチング処理を行わない表面に、フロスト液との接触を防止するために保護層を設けるステップをさらに含んでもよい。例えば、図3に示すように、ガラス本体10の第1表面10aの反対側に設けられた第2表面10bに耐酸性保護層20を設けてもよい。それに応じて、ステップS03の2回目のフロストエッチングが完了した後、耐酸性保護層20を除去する必要がある。耐酸性保護層20は、耐酸性ポリマーフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、インキ層などであってもよい。好ましくは、耐酸性保護層20の厚さは、20μm~50μmであってもよい。耐酸性保護層20の除去方式は、サンドミル、研磨などの物理的除去方式であってもよく、アルカリエッチングなどの化学的除去方式であってもよい。
【0035】
ステップS10では、1回目のフロストエッチングの後に、第1表面10a全体は、フロストであり、複数の第1突起構造11を有する。いくつかの実施形態において、第1表面10aは、緊密に配置された複数の第1突起構造11を含む。この場合、第1表面10aは、「フロスト面」と呼ばれてもよい。
【0036】
前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液(以下、「第1フロスト液」と総称される)は、メタアルミン酸塩、硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素アンモニウム及び水を含む。いくつかの実施形態において、第1フロスト液は、有機酸をさらに含む。
【0037】
上記第1フロスト液において、硝酸、塩酸及び硫酸は、主に水素イオンを生成して強酸環境を提供し、フッ化水素アンモニウムは、強酸環境下でガラス表面をエッチングし、ガラス中のケイ素元素とともにフルオロケイ酸ラジカルを形成し、フルオロケイ酸ラジカルは、ガラス中の金属イオン(例えばNa、K、Li、Mg2+、Al3+、Ca2+など)と結合してフルオロケイ酸塩を形成し、難溶性又は不溶性のフルオロケイ酸塩は、微結晶核が成長する方式でガラス表面に堆積し付着されて、多角形の遮蔽結晶を形成することができ、それにより遮蔽結晶が形成されたガラス表面に対するエッチングは阻害され、遮蔽結晶が付着されない領域は、継続してエッチングされ、フロスト液は、遮蔽結晶の周囲に沿って徐々に内へエッチングを行い、すなわちフロスト液は、遮蔽結晶の輪郭に沿ってエッチングを行い、フロストエッチングが完了した後、洗浄プロセスによりガラス表面に付着された遮蔽結晶を除去して、表面に複数の突起構造を有するエッチングガラスを得ることができ、それによりガラス本体の元の滑らかで透明な表面は、フロスト効果及びフラッシュ効果を有する。メタアルミン酸塩は、フルオロケイ酸塩の遮蔽結晶のサイズ及び分布を調整して、第1突起構造のサイズ及び分布を制御することにより、ガラス表面のフロスト効果及びフラッシュ効果を調整することができる。塩酸及び硫酸は、水素イオンの濃度を調整することにより、結晶の析出速度を制御することができる。有機酸の存在により、前記フロスト液の酸性を安定させ、フロスト液中の各成分の系における分散性を向上させ、フロスト液が長時間貯蔵できることを保証することができ、またフルオロケイ酸結晶がガラス表面に均一に分布することを促進し、さらに第1突起構造の分布の均一性を保証することができる。
【0038】
本願のいくつかの実施形態において、第1フロスト液は、重量部で、1~3部のメタアルミン酸塩、25~40部の硝酸、1~3部の塩酸、0.5~1.5部の硫酸、20~40部のフッ化水素アンモニウム、1~3部の有機酸及び水を各成分として含む。いくつかの実施形態において、第1フロスト液に含まれる水の重量部は、10~30部であってもよい。適切な水の含有量により、各成分の十分な溶解を保証することができるだけでなく、エッチングプロセスで生成されたフルオロケイ酸塩をガラス本体に付着し、結晶し成長させて、遮蔽作用を果たすことができる。
【0039】
第1フロスト液中のメタアルミン酸塩の含有量を上記低い範囲に制御することにより、エッチングプロセスで形成されたフルオロケイ酸塩の結晶のサイズを大きくし、さらに長さ及び幅が大きい第1突起構造の形成に役立つことができ、またフルオロケイ酸塩の結晶がガラス表面に規則的に凝集し堆積し、かつシート状に接続されることを保証し、さらに第1突起構造の分布の規則性及び緊密さを保証することができる。また、フッ化水素アンモニウムの含有量が上記範囲にある場合、フッ化水素アンモニウムとメタアルミン酸塩との質量比が適切であり、フルオロケイ酸塩の結晶の規則的な配置に役立ち、またフッ化水素アンモニウムがフロスト液に十分に溶解して析出しないことを保証して、フルオロケイ酸塩の結晶に影響を与えるため、ガラス表面の異なる位置でのフラッシュ効果の差異が大きいことを防止することができる。
【0040】
具体的には、第1フロスト液において、メタアルミン酸塩の重量部は、1.1部、1.2部、1.5部、1.8部、2部、2.5部、2.8部又は3部などであってもよい。フッ化水素アンモニウムの重量部は、22部、25部、30部、32部、35部又は38部などであってもよい。硝酸の重量部は、25部、27部、30部、32部、35部又は38部などであってもよい。硫酸の重量部は、0.8部、1部、1.2部又は1.4部などであってもよい。塩酸又は有機酸の重量部は、独立して1.1部、1.2部、1.5部、1.8部、2部、2.5部、2.8部又は3部などであってもよい。いくつかの実施形態において、第1フロスト液において、フッ化水素アンモニウムの重量部は、30~38部であり、硝酸の重量部は、30~38部である。
【0041】
前記メタアルミン酸塩は、メタアルミン酸マグネシウム、メタアルミン酸ナトリウム、メタアルミン酸カリウム、メタアルミン酸カルシウムのうちの少なくとも1種を含んでもよい。本願のいくつかの実施形態において、前記第1フロスト液中のメタアルミン酸塩は、メタアルミン酸マグネシウムである。メタアルミン酸マグネシウムを含むフロスト液は、エッチングプロセスにおけるフルオロケイ酸塩の遮蔽結晶のサイズが大きいことを保証し、ガラス表面にサイズの大きい突起構造を形成することに役立つことができる。前記有機酸は、酒石酸、クエン酸、ソルビン酸、スルファミン酸及びマレイン酸のうちの少なくとも1種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、有機酸は、酒石酸である。
【0042】
本願の実施形態において、前記1回目のフロストエッチングは、25~30℃で2~5min静置してエッチングを行うことであってもよい。静置条件は、均一で効果的な遮蔽作用を果たすために、フルオロケイ酸の結晶をガラス表面に均一に安定して付着し、成長させることに役立つ。具体的には、1回目のフロストエッチングの温度は、25℃、27℃、28℃又は30℃などであってもよい。1回目のフロストエッチングは、温度に対する要求が高くなく、ガラスに対するエッチングを常温で行うことができ、プロセスコストを低減する。1回目のフロストエッチングの時間は、2min、2.5min、3min、4min又は4.5minなどであってもよい。
【0043】
ステップS20では、間隔を置いて分布したフォトレジストパターン30をフォトリソグラフィプロセスにより形成してもよく、具体的には、ステップS201及びステップS202を含む。
【0044】
ステップS201では、1回目のフロストエッチングの後の第1表面にフォトレジスト層を形成し、
ステップS202では、上記フォトレジスト層に対して露光及び現像を行うことにより、フォトレジスト層の一部を除去して、平行で間隔を置いて分布した複数の細長片状のフォトレジストパターンを得る。
【0045】
フォトレジスト層は、塗布及び乾燥の後に形成されてもよく、それは、1回目のフロストエッチングの後のガラス本体の第1表面を完全に被覆する。好ましくは、フォトレジスト層の厚さ(すなわち、フォトレジストパターンの厚さ)は、3μm~10μmであり、具体的には、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm又は9μmなどであってもよい。いくつかの実施形態において、該厚さは、6μm~8μmである。塗布の方式は、ブラシ塗布、スプレー塗布、ナイフ塗布又はスピン塗布などであってもよい。乾燥により、フォトレジスト層を形成するためのフォトレジスト中の溶媒を揮発させ、その流動性を低下させることができる。好ましくは、乾燥処理の温度は、80~120℃、例えば90℃、100℃、110℃などであってもよい。
【0046】
露光により、フォトレジスト層中の感光成分を架橋反応させて架橋構造を形成することができ、それにより、後に、露光対象の領域が現像液により溶解されるか(フォトレジストがポジホトレジストである場合)、又は露光しない領域が現像液により溶解される(フォトレジストがネガホトレジストである場合)。露光の方式は、従来の露光(紫外線を所定のマスク板を介してフォトレジスト層に照射する)であってもよく、LDI(Laser Direct Imaging、レーザーダイレクトイメージング技術)であってもよい。LDIは、マスク板を用いて露光する必要がなく、所望の画像をレーザー走査方式で直接的に形成し、現像後に表示された画像は、精細であり、形状が多様である。
【0047】
現像に用いられる現像液は、通常、アルカリ性溶液である。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水などの無機塩基の溶液を用いてもよく、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基を用いてもよい。いくつかの具体的な実施例において、現像液は、導電率が30~50mS/cmのKOH溶液であってもよく、濃度が2.38%のTMAH溶液であってもよい。現像プロセスにおいて、現像液をガラス本体の一側にスプレーしてもよく、ガラス本体を現像液に浸漬してもよい。現像処理の時間は、2~10minであってもよい。いくつかの実施形態において、フォトレジストパターンの硬化を改良し、その付着力、硬度などを向上させるために、現像後にポストベーク処理を行ってもよい。ポストベーク処理は、140℃~180℃(例えば150℃又は160℃など)の温度で20min~50min(例えば30min、45minなど)行われてもよい。
【0048】
本願において、ガラス本体10の第2表面10bへのフォトレジストパターン30の投影の形状は、細長片状である。本願の実施形態において、フォトレジストパターン30の最大横断面幅Wは、100μm~500μmであり、隣接する2つのフォトレジストパターン30の間の間隔距離Wは、100μm~500μmである。ここでいう最大横断面幅とは、フォトレジストパターン30の最大横方向サイズを指し、フォトレジストパターン30の延在方向と垂直な方向(すなわち、幅方向)での断面の最大幅を指し、具体的には、ガラス本体の第2表面10bへのフォトレジストパターン30の正投影の輪郭線上の任意の2点の間の距離の最大値を指し、「隣接する2つのフォトレジストパターン30の間の間隔距離」とは、ガラス本体上の隣接する2つのフォトレジストパターン30の正投影の輪郭線上の2点の間の距離の最小値を指す。
【0049】
フォトレジストパターン30の最大横断面幅及び間隔を上記範囲に制御することにより、2回目のフロストエッチングを経て幅が大きく、間隔が大きい第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を形成し、かつこの2つのフロスト領域がそれぞれ多くの突起構造を有することを保証して、ガラスのフラッシュ効果を豊かにし、指紋付着防止効果などを向上させることができる。具体的には、フォトレジストパターン30のW及びWは、それぞれ独立して100μm、110μm、130μm、140μm、150μm、200μm、300μm、400μm又は500μmなどである。
【0050】
本願の実施形態において、ステップS30では、前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液(以下、「第2フロスト液」と総称される)は、メタアルミン酸塩、硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素アンモニウム及び水を含む。いくつかの実施形態において、第1フロスト液は、有機酸をさらに含む。本願の実施形態において、第2フロスト液中のメタアルミン酸塩の質量百分率は、前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩の質量百分率より大きい。それにより、2回目のフロストエッチングを行う場合に、1回目のフロストエッチングで形成された第1突起構造をエッチングして、多くの小突起構造(すなわち、第2突起構造)に変換することができる。
【0051】
本願のいくつかの実施形態において、第2フロスト液は、重量部で、5~10部のメタアルミン酸塩、25~40部の硝酸、1~3部の塩酸、0.5~1.5部の硫酸、20~40部のフッ化水素アンモニウム、1~3部の有機酸及び水を各成分として含む。いくつかの実施形態において、第2フロスト液に含まれる水の重量部は、10~30部であってもよい。適切な水の含有量により、各成分の十分な溶解を保証することができるだけでなく、エッチングプロセスで生成されたフルオロケイ酸塩をフロスト液からスムーズに析出させてガラス本体に付着して、遮蔽作用を果たすことができる。
【0052】
第2フロスト液の作用メカニズムは、上記第1フロスト液の作用メカニズムと同じであり、ここでは説明を省略する。第2フロスト液中のメタアルミン酸塩の含有量を上記高い範囲に制御することにより、エッチングプロセスで形成されたフルオロケイ酸塩の結晶のサイズを小さくし、すなわち、反応により生成された遮蔽物の面積を小さくし、さらに長さ及び幅が小さい第2突起構造の形成に役立ち、ガラス表面のフラッシュポイントの輝度を高くし、フラッシュ効果を細やかにすることができる。
【0053】
第2フロスト液中のメタアルミン酸塩は、メタアルミン酸マグネシウム、メタアルミン酸ナトリウム、メタアルミン酸カリウム、メタアルミン酸カルシウムのうちの少なくとも1種を含んでもよい。本願のいくつかの実施形態において、前記第2フロスト液中のメタアルミン酸塩は、メタアルミン酸ナトリウム又はメタアルミン酸カリウムである。メタアルミン酸ナトリウム又はメタアルミン酸カリウムは、高い溶解度を有するだけでなく、フロスト液に良好な安定性を持たせることができ、メタアルミン酸ナトリウムを用いる場合、フロスト液によりガラス表面に形成された突起構造の粒径は、メタアルミン酸カリウムを用いる場合より小さく、ガラス表面のフラッシュ程度は、メタアルミン酸カリウムを用いる場合より高い。いくつかの具体的な実施例において、前記第2フロスト液中のメタアルミン酸塩は、メタアルミン酸ナトリウムである。メタアルミン酸カリウムに比べて、メタアルミン酸ナトリウムを含むフロスト液を用いた場合、エッチング速度がわずかに遅く、構造が精細である突起構造のエッチング形成により役立ち、第1突起構造11のフォトレジストパターン30により被覆されない部分を第2突起構造12にエッチングする場合の構造の崩壊発生確率を減少させる。
【0054】
具体的には、第2フロスト液において、メタアルミン酸塩の重量部は、5部、5.5部、6部、7部、8部、9部、9.5部又は10部などであってもよい。フッ化水素アンモニウムの重量部は、22部、25部、30部、32部、35部又は38部などであってもよい。硝酸の重量部は、25部、27部、30部、32部、35部又は38部などであってもよい。硫酸の重量部は、0.8部、1部、1.2部又は1.4部などであってもよい。塩酸又は有機酸の重量部は、独立して1.1部、1.2部、1.5部、1.8部、2部、2.5部、2.8部又は3部などであってもよい。いくつかの実施形態において、第2フロスト液において、フッ化水素アンモニウムの重量部は、30~38部であり、硝酸の重量部は、30~38部である。
【0055】
上記1回目のフロストエッチングと同様に、前記2回目のフロストエッチングは、25~30℃で2~5min静置してエッチングを行うことであってもよい。静置条件は、均一で効果的な遮蔽作用を果たすために、フルオロケイ酸の結晶をガラス表面に均一に安定して付着し、成長させることに役立つ。具体的には、2回目のフロストエッチングの温度は、25℃、27℃、28℃又は30℃などであってもよい。フロスト液は、温度に対する要求が高くなく、ガラスに対するエッチングを常温で行うことができ、プロセスコストを低減する。2回目のフロストエッチングの時間は、2min、2.5min、3min、4min又は4.5minであってもよい。
【0056】
ステップS30では、第1フロスト領域は、ガラス表面に1回目のフロストエッチングが行われた後に形成されたものであり、前記第2フロスト領域は、ガラス表面に1回目のフロストエッチング及び2回目のフロストエッチングが順に行われた後に形成されたものである。第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102の材料は、ガラス本体10の材料と同じである。
【0057】
ステップS30の2回目のフロストエッチングプロセスにおいて、ガラス表面のフォトレジストパターン30により被覆された部分は、2回目のフロスト液によるエッチングの影響をほとんど受けず、該フォトレジストパターン30が酸エッチングに対する耐性を有することを示す。したがって、該フォトレジストパターンは、アルカリ性溶液により除去することができる。いくつかの実施例において、フォトレジストパターンの除去方法は、濃度が8~20wt%の強アルカリ性溶液を用いて、40~90℃で超音波によるめっき層除去を2~8分間行うことを含む。強アルカリは、NaOH又はKOHであってもよい。
【0058】
本願のいくつかの実施形態において、ステップS30の2回目のフロストエッチングが完了した後、ガラス本体に対して強化処理を行ってもよい。強化処理後の具体的な処理は、一般的な技術(例えばイオン交換法など)に従って行うことができ、ここでは説明を省略する。それにより、ガラスの表面応力を高め、その機械的強度を改良することができる。
【0059】
本願の上記実施例に係るフラッシュガラスの製造方法は、簡単であり、様々な材質のガラス本体の処理に適し、かつ全体の製造/処理時間が短く、コストが低い。上記製造方法で製造されたフラッシュガラスの一側の表面のフロスト面は、交互に分布した2種のフロスト領域を有し、各フロスト領域は、サイズが異なる2種の突起構造を有し、該フラッシュガラスは、豊かなフラッシュ効果を有し、外観表現力が強く、また良好な指紋付着防止及び防眩効果を有する。
【0060】
また、上記第1突起構造11を有する第1フロスト領域101と第2突起構造12を有する第2フロスト領域102は、材質がガラス本体と同じであり、すなわち、最終的に得られたフラッシュガラスは、一体成形されたものであり、材質がガラスと異なる追加のフィルムを積層してフラッシュ効果を生じると、フィルムが脱落しやすく、きらきらと光るという外観効果を持続的に生じることができないという問題を回避する。
【0061】
本願の実施例は、本願の前述したフラッシュガラス、又は本願の前述した製造方法で製造されたフラッシュガラスを含む電子機器筐体をさらに提供する。
【0062】
上記フラッシュガラスを含む電子機器筐体は、スタイリッシュでかっこいいという外観効果を有し、電子機器の外観表現力及び製品競争力を向上させることができる。
【0063】
本願のいくつかの実施形態において、本願のフラッシュガラスを電子機器筐体に適用する場合、さらに該フラッシュガラスに対して指紋付着防止フィルムをめっきする処理を行ってもよく、例えば、指紋付着防止フィルムを第1フロスト領域及び第2フロスト領域がある第1表面に設ける。
【0064】
また、上記電子機器筐体は、筐体の外観効果を満たすために、ガラス本体10の第2表面10bに設けられた装飾層をさらに含んでもよい。具体的には、装飾層は、光学フィルム層、保護層及び隠しインキ層のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0065】
上記電子機器筐体は、電子機器のディスプレイカバープレート、リアカバー、ミドルフレーム、又はリアカバーとミドルフレームとが一体成形された複合筐体などであってもよい。上記電子機器筐体を用いる電子機器は、様々な消費型電子製品、例えば、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコン、ウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートブレスレット)、仮想現実(Virtual Reality、VR)端末機器、拡張現実(Augmented Reality、AR)端末機器、電子リーダー、テレビ、ビデオカメラ、プロジェクターなどの電子製品であってもよい。
【0066】
電子機器が携帯電話、タブレットコンピュータ、ウェアラブル製品などの携帯電子機器であることを例として、該電子機器筐体は、具体的には、ディスプレイモジュールに被覆され、該電子機器の前側に組み立てられたディスプレイカバープレートであってもよく、該電子機器の後側に組み立てられたリアカバーであってもよい。いくつかの実施形態において、該電子機器が撮像機能を有する電子機器(例えば、携帯電話、デジタルカメラ)である場合、該電子機器筐体は、カメラ保護カバープレートであってもよい。
【0067】
以下、具体的な実施例により本願の技術手段を継続して説明する。
【実施例1】
【0068】
フラッシュガラスの製造方法であり、製造フローは、図3に示すように、以下のステップを含む。
【0069】
(1)第1フロスト液の調製:酒石酸(C)とフッ化水素アンモニウム(NHHF)を均一に混合し、撹拌しながら硝酸を加えて均一に撹拌し、その中に塩酸、水及びメタアルミン酸マグネシウム(Mg(AlO)を順に加えて撹拌し、最後に硫酸を加えて均一に撹拌し、4h静置した後、第1フロスト液を得た。該第1フロスト液は、質量百分率で、2%のメタアルミン酸マグネシウム、36%の硝酸、2%の塩酸、1%の硫酸、36%のフッ化水素アンモニウム、2%の酒石酸及び21%の水を各成分として含む。
【0070】
まず、厚さが0.6mmのガラス本体(具体的には、リチウムアルミノケイ酸ガラス板であり、グレードがパンダ-1681である)の一側の表面(「裏面」と呼ばれてもよい)に厚さが35μmの耐酸性インキ層を塗布し、該ガラス本体を上記第1フロスト液に浸漬し、25℃で2min静置することにより、該ガラス本体の裏面の反対側に設けられた他側の表面(「正面」又は「第1表面」と呼ばれてもよい)をエッチングし、次に、ガラス本体を取り出し、浄水できれいに洗浄して、1回目のフロストエッチングの後のガラス本体(図4に示す)を得て、その正面には、少なくとも1本の稜を含む複数の第1突起構造(「砂粒状の大突起」と呼ばれてもよい)が形成され、正面が元の平滑面からフロスト状になり、「フロスト面」と呼ばれてもよい。
【0071】
(2)1回目のフロストエッチングの後の表面にフォトレジストパターンを形成した。
【0072】
上記フロスト面に厚さが約7μmのフォトレジストを一層塗布し、かつオーブンで100℃で4minベークしてフォトレジストを乾燥させ、次に、露光パターンを直線的細長片状のパターンとし、幅を150μmとし、かつ露光パターンを間隔を置いて分布させ、間隔距離を約165μmとするようにLDI露光を行い、そして、導電率が50mS/cmのKOH溶液(質量濃度が12wt%である)を用いて浸漬現像を3min行って、露光領域のフォトレジストを除去し、最後に、ポストベーク処理をオーブンで150℃で30min行って、フォトレジストを硬化し続けた。それにより、フロスト面に複数の平行で間隔を置いて分布した細長片状のフォトレジストパターンが現れ、図5に示すとおりである。
【0073】
(3)2回目のフロストエッチングを行った。
【0074】
第2フロスト液の調製:フッ化水素アンモニウムと硝酸を均一に混合し、酒石酸を加えて均一に撹拌し、その中に塩酸、水及びメタアルミン酸ナトリウム(NaAlO)を順に加えて撹拌し、最後に硫酸を加えて均一に撹拌し、4h静置した後、第2フロスト液を得た。該第2フロスト液は、質量百分率で、7%のメタアルミン酸ナトリウム、37%の硝酸、2%の塩酸、1%の硫酸、32%のフッ化水素アンモニウム、2%の酒石酸及び19%の水を各成分として含む。
【0075】
上記ガラス本体を第2フロスト液に浸漬し、25℃で2min静置して、フロスト面領域のフォトレジストパターンにより被覆されない部分に対して2回目のエッチングを行って、複数の第2突起構造(図6に示すように、「砂粒状の小突起」と呼ばれてもよい)を形成し、次に、ガラス本体を取り出し、浄水できれいに洗浄し、そして、フォトレジストパターン及び上記耐酸性インキ層を除去して(具体的な除去方式としては、20wt%のNaOH溶液を用いて80℃で超音波によるめっき層除去を10min行い、浄水できれいに洗浄する)、図6及び図1に示すようなフラッシュガラスを得た。
【0076】
図1及び図6は、実施例1で得られたフラッシュガラスの異なる拡大倍率での金属顕微鏡写真である。図1及び図6から分かるように、該フラッシュガラスの一側の表面は、複数の第1突起構造(砂粒状の大突起)を有する第1フロスト領域101と、複数の第2突起構造(砂粒状の小突起)を有する第2フロスト領域102とを含み、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102は、直線的細長片状であり、かつ間隔を置いて分布し、隣接する2つの第1フロスト領域101は、第2フロスト領域102により接続され、第2突起構造の高さ及び長さは、いずれも第1突起構造より小さい。第1フロスト領域101の幅は、約140μm~165μmであり、第2フロスト領域102の幅は、約150μm~180μmであった。
【0077】
図1図4及び図6からさらに分かるように、1回目のフロストエッチングで形成された砂粒状の大突起は、長さが約120μm~140μmであり、高さが約10μm~16μmであった。図6及び図1から分かるように、2回目のフロストエッチングで形成された砂粒状の小突起は、長さが約30μm~60μmであり、高さが約3μm~6μmであった。
【0078】
また、ステップ(1)の後、図4に示す1回目のフロストエッチングの後のガラス本体に対してヘイズ、透過率及び粗さを測定して、第1フロスト領域の関連結果を得た。また、図4のガラスに対してフォトレジストマスクを行わず、そのまま2回目のフロストエッチングを行って、表面全体に砂粒状の小突起があるフロストガラスを得て、それに対してヘイズ、透過率及び粗さを測定して、第2フロスト領域の関連結果を得た。当然のことながら、第1フロスト領域及び第2フロスト領域の粗さパラメータは、図1又は図6のガラスを直接的に測定することにより得られてもよい。
【0079】
ヘイズ及び透過率は、ドイツのBYKヘイズメーターBYK-4725で測定され、粗さは、SJ411表面粗さメーターで測定され、測定結果を以下の表1に示す。粗さを表すパラメータは、R、R及びRを含み、ここで、Rは、算術平均値であり、Rは、ピークと谷の深さの平均値であり、Rは、輪郭ピークの最大値と輪郭谷の最小値の和である。
【表1】
【0080】
表1から分かるように、ガラスの一側の表面は、粗さがはっきりと異なる2つのフロスト領域を有し、それらは、いずれも高いヘイズ及び光透過率を有し、ぼんやりとした視覚効果及び良好な透過性を有し、外観表現力が強い。
【0081】
また、本願の実施例1のフラッシュガラスを撮影して、図7に示すような外観効果図を得た。さらに、実施例1のフラッシュガラスの製造過程において、1回目のフロストエッチングの後のガラス本体(すなわち、図4のガラス)を撮影し、その外観効果を図8に示す。上記外観効果図は、具体的には、ガラスのマクロでの視覚効果を指す。
【0082】
図7及び図8から分かるように、ガラス本体に対して1回目のフロストエッチングが行われた後、その表面が一定のフラッシュ効果を有するが、そのフラッシュ効果が単一である。本願の実施例の方法で製造されたフラッシュガラスは、明らかなフラッシュ効果を有し、かつフラッシュ程度が異なる様々なフラッシュ効果を有する。小突起を有する領域は、突起構造のサイズが小さく、数が多いため、細やかにフラッシュし、細やかなフラッシュ効果を有すると言える。
【実施例2】
【0083】
フラッシュガラスの製造方法であり、それと実施例1とは、以下の点で相違する。前記第2フロスト液中のメタアルミン酸ナトリウムをメタアルミン酸マグネシウムに置き換え、すなわち、第1フロスト液と第2フロスト液に含まれるメタアルミン酸塩の種類が同じである。
【実施例3】
【0084】
フラッシュガラスの製造方法であり、それと実施例1とは、以下の2点で相違する。1)第1フロスト液は、質量百分率で、3%のメタアルミン酸マグネシウム、37%の硝酸、1%の塩酸、0.5%の硫酸、38%のフッ化水素アンモニウム、2.5%の酒石酸及び18%の水を各成分として含み、
2)第2フロスト液は、質量百分率で、10%のメタアルミン酸ナトリウム、39%の硝酸、2%の塩酸、1%の硫酸、35%のフッ化水素アンモニウム、3%の酒石酸及び10%の水を各成分として含む。
【実施例4】
【0085】
フラッシュガラスの製造方法であり、それと実施例1とは、以下の2点で相違する。1)第1フロスト液は、質量百分率で、1%のメタアルミン酸マグネシウム、32%の硝酸2%の塩酸、1%の硫酸、32%のフッ化水素アンモニウム、2%の酒石酸及び30%の水を各成分として含み、
2)第2フロスト液は、質量百分率で、5%のメタアルミン酸カリウム、35%の硝酸、2%の塩酸、1%の硫酸、30%のフッ化水素アンモニウム、2%の酒石酸及び25%の水を各成分として含む。
【実施例5】
【0086】
フラッシュガラスの製造方法であり、それと実施例1とは、以下の点で相違する。ステップ(2)では、フォトレジストパターンの最大横断面幅が約400μmであり、隣接するフォトレジストパターンの間隔が約450μmである。
【0087】
実施例5で得られたフラッシュガラスと実施例1とは、主に、以下の点で相違する。第1フロスト領域及び第2フロスト領域の幅は、実施例1とは異なる。実施例5で得られたフラッシュガラスの第1フロスト領域の幅は、390~420μmの範囲内にあり、第2フロスト領域の幅は、450~480μmの範囲内にある。
【0088】
図9は、本願の実施例5のフラッシュガラスの外観効果図である。図9から分かるように、その2つのフロスト領域の幅が実施例1より広いため、肉眼では実施例1より2つのフロスト領域を区別しやすく、より暗い領域は、小突起を有する第2フロスト領域であり、そのフラッシュ効果が第1フロスト領域より細やかである。
【0089】
以下の表2は、実施例2~4のフラッシュガラスの突起構造のサイズパラメータをまとめたものである。以下の表3は、実施例2~5のフラッシュガラスのヘイズ、透過率及び粗さの測定結果をまとめたものである。
【表2】
【表3】
【0090】
表3から分かるように、本願の上記実施例のフラッシュガラスの表面は、粗さが異なる2つのフロスト領域を有し、それらは、いずれも高いヘイズ及び適切な光透過率を有し、これは、本願の実施例のフラッシュガラスが良好なフロスト効果及び良好な透過性を有し、特別な外観効果を達成できることを示す。さらに、粗さが異なる2つのフロスト領域の存在により、該フラッシュガラスが豊かで柔軟なフラッシュ効果、良好な防眩効果、指紋付着防止効果などを有することができる。
【0091】
また、実施例1と実施例2とを対比すると分かるように、第1フロスト液及び第2フロスト液中のメタアルミン酸塩の種類が異なる場合、1回目のフロストエッチングで形成された第1フロスト領域に比べて、2回目のフロストエッチングで形成された第2フロスト領域の小突起構造がより緊密に配列され、粗さRaがより小さく、ヘイズがより高い。
【0092】
以上は、本願のいくつかの例示的な実施形態を示すものに過ぎず、その説明が具体的で詳細であるが、本願の特許請求の範囲を限定するものと理解してはならない。なお、当業者であれば、本願の構想から逸脱することなく、さらにいくつかの変形及び改良を行うことができ、これらはいずれも本願の保護範囲にあると見なされるべきである。
【符号の説明】
【0093】
10 ガラス本体
10a 第1表面
101 第1フロスト領域
102 第2フロスト領域
11 第1突起構造
12 第2突起構造
10a 第1表面
10b 第2表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス本体(10)を含むフラッシュガラスであって、前記ガラス本体(10)は、第1表面(10a)を有し、前記第1表面(10a)は、間隔を置いて分布した複数の第1フロスト領域(101)を含み、隣接する2つの前記第1フロスト領域(101)は、第2フロスト領域(102)により接続され、前記第1フロスト領域(101)及び前記第2フロスト領域(102)は、直線的細長片状であり、各第1フロスト領域(101)は、複数の第1突起構造(11)を有し、第2フロスト領域(102)は、複数の第2突起構造(12)を有し、各第1突起構造(11)と各第2突起構造(12)は、独立して少なくとも1本の稜を含み、前記第2突起構造(12)の高さ及び長さは、いずれも前記第1突起構造(11)の高さ及び長さより小さい、ことを特徴とするフラッシュガラス。
【請求項2】
前記第1突起構造(11)と前記第2突起構造(12)の形状は、それぞれ、角柱、角錐台、立方体、角錐のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のフラッシュガラス。
【請求項3】
前記第1突起構造(11)は、長さが100μm~150μmの範囲内にあり、高さが10μm~16μmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項に記載のフラッシュガラス。
【請求項4】
前記第2突起構造(12)は、長さが30μm~60μmの範囲内にあり、高さが3μm~6μmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項に記載のフラッシュガラス。
【請求項5】
前記第1フロスト領域(101)の幅は、100μm~500μmであり、前記第2フロスト領域(102)の幅は、100μm~500μmである、ことを特徴とする請求項に記載のフラッシュガラス。
【請求項6】
前記第1フロスト領域(101)は、ヘイズが80%~90%の範囲内にあり、光透過率が75%~93%の範囲内にあり、前記第2フロスト領域(102)は、ヘイズが90%~95%の範囲内にあり、光透過率が75%~93%の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のフラッシュガラス。
【請求項7】
前記第1フロスト領域(101)の粗さRaは、1.5μm~4μmの範囲内にあり、前記第2フロスト領域(102)の粗さRaは、0.3μm~1μmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のフラッシュガラス。
【請求項8】
ガラス本体(10)の第1表面(10a)に対して1回目のフロストエッチングを行って、前記第1表面(10a)に、それぞれが少なくとも1本の稜を含む複数の第1突起構造(11)を形成するステップと、
前記1回目のフロストエッチングの後の第1表面(10a)に、平行で間隔を置いて分布した複数の細長片状のフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンがある第1表面(10a)に対して2回目のフロストエッチングを行って、前記第1表面(10a)の前記フォトレジストパターンにより被覆されない部分を、複数の第2突起構造(12)を有する第2フロスト領域(102)に変換し、次に、前記フォトレジストパターンを除去して、隣接する前記第2フロスト領域(102)の間に、表面に複数の第1突起構造(11)を有する第1フロスト領域(101)を得るステップとを含み、
各第2突起構造(12)は、少なくとも1本の稜を含み、前記第2突起構造(12)の高さ及び長さが、いずれも前記第1突起構造(11)の高さ及び長さより小さい、ことを特徴とするフラッシュガラスの製造方法。
【請求項9】
前記1回目のフロストエッチングと前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液は、それぞれ、メタアルミン酸塩、硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素アンモニウム及び水を含み、前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩の質量百分率は、前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩の質量百分率より大きい、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液は、重量部で、1~3部のメタアルミン酸塩、25~40部の硝酸、1~3部の塩酸、0.5~1.5部の硫酸、20~40部のフッ化水素アンモニウム、1~3部の酒石酸及び水を各成分として含み、
前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液は、重量部で、5~10部のメタアルミン酸塩、25~40部の硝酸、1~3部の塩酸、0.5~1.5部の硫酸、20~40部のフッ化水素アンモニウム、1~3部の酒石酸及び水を各成分として含む、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記メタアルミン酸塩は、メタアルミン酸マグネシウム、メタアルミン酸ナトリウム、メタアルミン酸カリウム、メタアルミン酸カルシウムのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩は、メタアルミン酸マグネシウムであり、前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩は、メタアルミン酸ナトリウム又はメタアルミン酸カリウムである、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記1回目のフロストエッチングは、25℃~30℃で2min~5min静置してエッチングを行うことであり、前記2回目のフロストエッチングは、25℃~30℃で2min~5min静置してエッチングを行うことである、ことを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項に記載のフラッシュガラスを含む、ことを特徴とする電子機器筐体。
【請求項15】
請求項8に記載の製造方法で製造されたフラッシュガラスを含む、ことを特徴とする電子機器筐体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
理解できるように、ガラス本体10の少なくとも1つの表面は、上記第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有する。続いて図に示すように、ガラス本体10は、反対側に設けられた第1表面10a及び第2表面10bを有し、図では、第1表面10aが第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有することを例示したが、理解できるように、第2表面10bは、上記第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有してもよく、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102を有しなくてもよく、これに限定されない。また、本願において、「第1」、「第2」は、説明のためのものに過ぎない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
第2突起構造12の長さ及び高さを上記範囲に制御することにより、第1突起構造11と区別することができ、2種の異なる突起構造により、ガラスのフラッシュ効果を豊かにできることを保証する。第2突起構造12の長さにより、第2フロスト領域に緊密に配置された多くの第2突起構造があり、ガラス表面のフラッシュポイントの輝度が高く、かつフラッシュ効果が細やかであることを保証し、また指紋付着防止効果を向上させることができ、より狭い高さ範囲により、第2突起構造12の形態の高い均一性、及び第2突起構造12によるフラッシュ効果の均一性を保証することができる。本願の実施形態において、第2突起構造12の長さと高さの比は、5~20の範囲内にある。この場合、高さの変化は、第2突起構造12の形態の均一性にあまり影響を与えない。いくつかの実施形態において、該長さと高さの比は、6~15の範囲内にあり、具体的には6~10の範囲内にあってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
第1突起構造11は、長さが第2表面10bへのその正投影の輪郭線上の任意の2点の間の間隔の最大値であり、高さがその頂部と底部の間の距離である。具体的には、第1突起構造11の長さは、105μm、110μm、115μm、120μm、130μm、140μm、145μm、150μmなどであってもよい。第1突起構造11の高さは、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μmなどであってもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
同様に、第2突起構造12は、長さが第2表面10bへのその正投影の輪郭線上の任意の2点の間の間隔の最大値であり、高さがその頂部と底部との間の距離である。具体的には、第2突起構造12の長さは、32μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μmなどであってもよい。第2突起構造12の高さは、3μm、3.5μm、4μm、5μm、5.5μm、6μmなどであってもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
S10では、ガラス本体10の第1表面10aに対して1回目のフロストエッチングを行って、第1表面10aに、それぞれが少なくとも1本の稜を含む複数の第1突起構造11を形成し、
S20では、1回目のフロストエッチングの後の第1表面10aに、平行で間隔を置いて分布した複数の細長片状のフォトレジストパターン30を形成し、
S30では、フォトレジストパターン30がある第1表面10aに対して2回目のフロストエッチングを行って、第1表面のフォトレジストパターン30により被覆されない部分に複数の第2突起構造12を形成し(すなわち、複数の第2突起構造12を有する第2フロスト領域102に変換する)、次に、フォトレジストパターン30を除去して、フラッシュガラスを得る。フラッシュガラスの第1表面10aは、前記第2フロスト領域102と、複数の第1突起構造11を有する第1フロスト領域101とを含み、第1フロスト領域101及び第2フロスト領域102は、直線的細長片状であり、かつ間隔を置いて分布し、隣接する2つの第1フロスト領域101は、第2フロスト領域102により接続され、第2突起構造12は、少なくとも1本の稜を含み、高さ及び長さがいずれも第1突起構造11より小さい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
本願のいくつかの実施形態において、1回目のフロストエッチングを行う前に、ガラス本体のフロストエッチング処理を行わない表面に、フロスト液との接触を防止するために保護層を設けるステップをさらに含んでもよい。例えば、図3に示すように、ガラス本体10の第1表面10aの反対側に設けられた第2表面10bに耐酸性保護層20を設けてもよい。それに応じて、ステップS30の2回目のフロストエッチングが完了した後、耐酸性保護層20を除去する必要がある。耐酸性保護層20は、耐酸性ポリマーフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、インキ層などであってもよい。好ましくは、耐酸性保護層20の厚さは、20μm~50μmであってもよい。耐酸性保護層20の除去方式は、サンドミル、研磨などの物理的除去方式であってもよく、アルカリエッチングなどの化学的除去方式であってもよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
本願の実施形態において、ステップS30では、前記2回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液(以下、「第2フロスト液」と総称される)は、メタアルミン酸塩、硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素アンモニウム及び水を含む。いくつかの実施形態において、第フロスト液は、有機酸をさらに含む。本願の実施形態において、第2フロスト液中のメタアルミン酸塩の質量百分率は、前記1回目のフロストエッチングに用いられるフロスト液中のメタアルミン酸塩の質量百分率より大きい。それにより、2回目のフロストエッチングを行う場合に、1回目のフロストエッチングで形成された第1突起構造をエッチングして、多くの小突起構造(すなわち、第2突起構造)に変換することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
フラッシュガラスの製造方法であり、それと実施例1とは、以下の点で相違する。ステップS20では、フォトレジストパターンの最大横断面幅が約400μmであり、隣接するフォトレジストパターンの間隔が約450μmである。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
以下の表2は、実施例2~のフラッシュガラスの突起構造のサイズパラメータをまとめたものである。以下の表3は、実施例2~5のフラッシュガラスのヘイズ、透過率及び粗さの測定結果をまとめたものである。
【表2】
【表3】
【国際調査報告】