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  • 特表-骨髄腫の骨病変の画像化 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】骨髄腫の骨病変の画像化
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/04 20060101AFI20241226BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K51/04 200
G01T1/161 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539504
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 GB2023050028
(87)【国際公開番号】W WO2023131800
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/297,374
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519249930
【氏名又は名称】ブルー アース ダイアグノスティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】テオ,ユージーン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C188
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085JJ01
4C085KA29
4C085KB20
4C085KB45
4C085LL18
4C188EE02
4C188FF07
(57)【要約】
本開示は、骨髄腫の骨病変の画像化、診断、および/またはモニタリングのために、[18F]-FACBCを投与する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可能性のある病変が、骨髄腫の骨病変であるかどうかを判定することにおける使用のための抗-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブタン-1-カルボン酸であって、使用が、以下のステップ:
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCを投与するステップ、
b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位に関する、対象の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を取得するステップ、
c)前記部位の周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みを比較するステップ、および
d)ステップc)の解析に基づいて、可能性のある病変が骨髄腫の骨病変であるかどうかを判定するステップ
を含む、抗-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブタン-1-カルボン酸([18F]-FACBC)。
【請求項2】
18F]-FACBCを使用する方法であって、
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCを投与するステップ、
b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位に関する、対象の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を取得するステップ、
c)前記部位の周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みを比較するステップ、および
d)ステップc)の解析に基づいて、可能性のある病変が骨髄腫の骨病変であるかどうかを判定するステップ
を含む方法。
【請求項3】
前記可能性のある病変による[18F]-FACBC取り込みが、その周囲の骨髄の[18F]-FACBC取り込みより高い、請求項1から2のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項4】
ステップc)が、骨髄腫の骨病変がないことを判定することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項5】
前記対象に投与される[18F]-FACBCの用量が、370MBq(+/-20%)である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項6】
前記対象に投与される[18F]-FACBCの用量が、370MBq(+/-10%)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項7】
前記対象に投与される[18F]-FACBCの用量が、370MBq(+/-5%)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項8】
前記対象に投与される[18F]-FACBCの用量が、370MBqである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項9】
18F]-FACBCが、静脈内ボーラスとして前記対象に注射される、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項10】
18F]-FACBC投与の後に静脈内生理食塩水フラッシュを行う、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項11】
前記PETスキャンが始まる前に、対象が、両腕を体側に置いた仰臥位で配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項12】
前記PETスキャンが、対象の頭頂から開始し、対象の下肢末端まで続行する、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項13】
前記PETスキャンが、[18F]-FACBC投与の3~5分後に始まり、最大30分間の合計スキャン時間の間継続する、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項14】
前記PETスキャンが、[18F]-FACBC投与の4分後に開始する、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項15】
前記対象が、
i)[18F]-FACBCの投与前の少なくとも4時間、透明な水および医薬品を除く、食物やカロリーを含有する飲み物を摂取せず、かつ
ii)PETスキャン前の少なくとも1日間、著しい運動を避けた
請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項16】
a)前記対象に、用量が370MBq(+/-20%)である[18F]-FACBCを、静脈内ボーラス注射として投与し、続いて静脈内生理食塩水フラッシュを行うこと、
b)前記対象の1つまたは複数のPETスキャン画像を取得すること、および
c)骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みを、その周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みと比較することであり、
前記PETスキャンが始まる前に、対象は、両腕を体側に置いた仰臥位で配置され、該スキャンは、対象の頭頂から開始し、対象の下肢末端まで続行し、かつ該スキャンは、[18F]-FACBC投与の3~5分後に始まり、最大30分間の合計スキャン時間の間継続し、
前記対象が、
i)[18F]-FACBCの投与前の少なくとも4時間、透明な水および医薬品を除く、食物やカロリーを含有する飲み物を摂取せず、かつ
ii)PETスキャン前の少なくとも1日間、著しい運動を避けており、ならびに
骨髄腫の可能性のある骨病変による[18F]-FACBC取り込みが、その周囲の骨髄の[18F]-FACBC取り込みより高いことは、骨髄腫の存在を示唆する、比較すること、
を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項17】
PETと磁気共鳴画像法(MRI)スキャン画像またはPETとX線コンピュータ断層撮影法(CT)スキャン画像が、ステップb)で取得される、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数のPETスキャン画像が、1回目の1つまたは複数のPETスキャン画像であり、前記方法が、
e)一定期間後にステップa)からd)を繰り返し、後の1つまたは複数のPETスキャン画像を、1回目の1つまたは複数のPETスキャン画像と比較して、骨髄腫の可能性のある骨病変による[18F]-FACBC取り込みが、増加しているか、一定を維持しているか、または減少しているかを判定するステップ
をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項19】
前記一定期間が、少なくとも6か月である、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物または方法。
【請求項20】
18F]-FACBCを使用する方法であって、以下のステップ:
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCを投与するステップ、および
b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位に関する、対象の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を取得するステップであり、
可能性のある病変が骨髄腫の骨病変であるかどうかを判定するために、骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みは、その周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みと比較され、
前記PETスキャンが始まる前に、対象は、両腕を体側に置いた仰臥位で配置され、該スキャンは、対象の頭頂から開始し、対象の下肢末端まで続行し、かつ該スキャンは、[18F]-FACBC投与の3~5分後に始まり、最大30分間の合計スキャン時間の間継続し、
前記対象は、
i)[18F]-FACBCの投与前の少なくとも4時間、透明な水および医薬品を除く、食物やカロリーを含有する飲み物を摂取しないこと、かつ
ii)PETスキャン前の少なくとも1日間、著しい運動を避けること、を指導されており、
骨髄腫の可能性のある骨病変による[18F]-FACBC取り込みが、その周囲の骨髄の[18F]-FACBC取り込みより高いことは、骨髄腫の存在を示唆する、
ステップ
を含む方法。
【請求項21】
18F]-FACBCを使用する方法であって、
骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を得るステップであり、前記1つまたは複数のPETスキャン画像は、対象が、両腕を体側に置いた仰臥位で配置されている間に取得され、該スキャンは、対象の頭頂から開始し、対象の下肢末端まで続行し、かつ該スキャンは、対象への[18F]-FACBC投与の3~5分後に始まり、最大30分間の合計スキャン時間の間継続する、ステップ、
骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みを、その周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みと比較することによって、前記1つまたは複数のPETスキャン画像を解析するステップ、および
この解析に基づいた骨髄腫の可能性のある骨病変の状態を判定するステップであり、骨髄腫の可能性のある骨病変による[18F]-FACBC取り込みが、その周囲の骨髄の[18F]-FACBC取り込みより高いことは、骨髄腫の存在を示唆する、ステップ
を含む方法。
【請求項22】
骨髄腫の可能性のある骨病変の判定された状態に基づいて、対象に対する治療レジメンを処方するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、[18F]-FACBCを投与する方法に関する。本発明は、骨髄腫の骨病変の画像化および診断のための方法における[18F]-FACBCの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
18F]-FACBC、FACBC、または抗-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブタン-1-カルボン酸としても知られているフルシクロビン(18F)は、アミノ酸トランスポーターによって取り込まれる合成アミノ酸造影剤であり、ポジトロン放出断層撮影法(PET)のために使用される。PETは、画像診断目的のためにヒト組織における代謝活性を評価することに比類なく適している。[18F]-フルオロ-2-デオキシ-グルコース(FDG)は、多くの形態の癌の検出および位置確認のためのPET造影剤である。しかし、FDG-PETは、いくつかの種類の癌、例えば、骨髄腫の評価に対する感度および/または特異性が低いことが確認されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
疑わしい骨髄腫における画像化による巣状骨病変の検出は、患者の最終診断と、続く対処に直接影響を及ぼす。このため、骨における骨髄腫の検出およびモニタリングのための、再現可能で、信頼性が高い画像化を可能にする画像化の方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、改良されたPET画像化および信頼性がより高い癌またはその再発の診断のために、[18F]-FACBCを投与することによって対象における骨髄腫の骨病変を診断する方法に関する。具体的には、本開示は、改良されたPET画像化ならびに信頼性がより高い骨髄腫の骨病変およびその再発の診断のために[18F]-FACBCを投与する方法に関する。本開示は、前記PET造影剤である[18F]-FACBCを使用して、骨髄腫の骨病変およびその再発を診断する方法にさらに関する。骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する可能性のある病変における[18F]-FACBC取り込みといった取り込みの比較は、前記病変のより正確な診断を可能にする場合がある。
【0005】
本開示の態様において、対象における骨髄腫の骨病変を診断する方法であって、
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCを投与するステップ、
b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位(1つまたは複数の目的の領域を含む部位)に関する、対象の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を取得するステップ、および
c)前記部位の周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みを比較するステップであって、
病変の[18F]-FACBC取り込みは、その周囲の骨髄の[18F]-FACBC取り込みより高い、
ステップ
を含む方法が提供される。
【0006】
本開示の態様において、[18F]-FACBCを使用する方法であって、
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCを投与するステップ、
b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位に関する、対象の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を取得するステップ、
c)前記部位の周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みを比較するステップ、および
d)ステップc)の解析に基づいて、可能性のある病変が骨髄腫の骨病変であるかどうかを判定するステップ
を含む方法が提供される。
【0007】
例示的な方法において、病変の[18F]-FACBC取り込みは、その骨髄における[18F]-FACBCの活性と視覚的に比較される。前記骨髄より高い[18F]-FACBC取り込みは、骨髄腫の疑いありとみなされる。前記骨髄と同様か、またはより少ない[18F]-FACBC取り込みは、骨髄腫の疑いなしとみなされる。
【0008】
本開示の別の態様において、骨髄腫の画像化、診断、および/またはモニタリングのためのキットであって、a)[18F]-FACBCトレーサー、およびb)本明細書に開示される方法に従った投与説明書を含むキットが提供される。
【0009】
本開示の態様において、PET/MRIまたはPET/CTスキャナーを使用した画像の取得が提供される。PET/MRIもしくはPET/CTスキャナーにおける画像の同時取得または連続取得は、個別の機器における画像の生成を通して、診断の正確さを向上させることがある。CTまたはMRIとの連携使用(conjoint use)は、例えば、小さい骨髄腫の骨病変の場合、病変、特に、小さい(例えば、最も大きい断面<1cm)病変の位置確認を向上することがある。投与の方法は、本明細書に記載される方法であり得る。
【0010】
本開示の態様において、[18F]-FACBCを使用する方法であって、以下のステップ:
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCを投与するステップ、および
b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位に関する、対象の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を取得するステップであり、
可能性のある病変が骨髄腫の骨病変であるかどうかを判定するために、骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みは、その周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みと比較され、
PETスキャンが始まる前に、対象は、両腕を体側に置いた仰臥位で配置され、該スキャンは、対象の頭頂から開始し、対象の下肢末端まで続行し、かつ該スキャンは、[18F]-FACBC投与の3~5分後に始まり、最大30分間の合計スキャン時間の間継続し、
前記対象は:
i)[18F]-FACBCの投与前の少なくとも4時間、透明な水および医薬品を除く、食物やカロリーを含有する飲み物を摂取しないこと、かつ
ii)PETスキャン前の少なくとも1日間、著しい運動を避けること
を指導されており、
骨髄腫の可能性のある骨病変による[18F]-FACBC取り込みが、その周囲の骨髄の[18F]-FACBC取り込みより高いことは、骨髄腫の存在を示唆する、
ステップ
を含む方法が提供される。
【0011】
本開示の態様において、[18F]-FACBCを使用する方法であって、
骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を得るステップであり、前記1つまたは複数のPETスキャン画像は、対象が、両腕を体側に置いた仰臥位で配置されている間に取得され、該スキャンは、対象の頭頂から開始し、対象の下肢末端まで続行し、かつ該スキャンは、前記対象への[18F]-FACBC投与の3~5分後に始まり、最大30分間の合計スキャン時間の間継続する、ステップ、
骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みを、その周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みと比較することによって、前記1つまたは複数のPETスキャン画像を解析するステップ、および
この解析に基づいた骨髄腫の可能性のある骨病変の状態を判定するステップであり、骨髄腫の可能性のある骨病変による[18F]-FACBC取り込みが、その周囲の骨髄の[18F]-FACBC取り込みより高いことは、骨髄腫の存在を示唆する、ステップ
を含む方法が提供される。
【0012】
本開示の態様において、可能性のある病変が、骨髄腫の骨病変であるかどうかを判定することにおける使用のための抗-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブタン-1-カルボン酸であって、使用が、以下のステップ:
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCを投与するステップ、
b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位に関する、対象の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を取得するステップ、
c)前記部位の周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する骨髄腫の可能性のある骨病変における[18F]-FACBC取り込みを比較するステップ、および
d)ステップc)の解析に基づいて、可能性のある病変が骨髄腫の骨病変であるかどうかを判定するステップ
を含む、抗-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブタン-1-カルボン酸([18F]-FACBC)が提供される。
【0013】
このような方法は、骨髄腫の可能性のある骨病変の判定された状態に基づいて、対象に対する治療レジメンを処方するステップをさらに含む場合がある。
本明細書に開示される方法は、診断ではない目的のために使用されてもよい。
【0014】
本明細書に明記される量、範囲、および割合の任意の上限ならびに下限は、独立して組み合わせられ得る。したがって、本発明の特定の技術的特徴と関連し、本明細書に明記される量、範囲、および割合の任意の上限ならびに下限は、本発明の1つまたは複数の他の特定の技術的特徴と関連し、本明細書に明記される量、範囲、および割合の任意の上限ならびに下限と、独立して組み合わせられ得る。さらに、本発明の任意の特定の技術的特徴、およびそのすべての好ましい変形体は、任意の他の特定の技術的特徴、およびそのすべての好ましい変形体と、このような特徴が好ましいものであろうとなかろうと、独立して組み合わせられ得る。
【0015】
また、本発明の各態様の好ましい特徴は、本発明のありとあらゆる態様の好ましい特徴とみなされることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】腰椎の[18F]-FACBC PET(左)冠状断像およびPET/CT(右)融合画像を示す図である。右の画像中の矢印は、病変として診断された領域を示し、この領域は、その周囲の骨髄(四角で示される)より高い[18F]-FACBC取り込みを有する。このPETスキャンの取得は、319MBqの[18F]-FACBC投与の5分後に開始された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「約」という用語は、言及された数字または値とほぼ同じであることを指し、概して、所定の量または値の±5%を包含すると理解されるべきである。
本発明者らは、より信頼性が高い骨病変の画像化を可能にするプロトコールであって、例えば、骨髄腫の骨病変および骨髄腫の骨病変であることが疑われる領域をより正確に診断し、かつ/またはより正確にモニターするために、PETスキャン画像からのデータを解析し、比較することを可能にするプロトコールを確立した。可能性のある病変の周囲の骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する可能性のある病変における[18F]-FACBC取り込みといった取り込みの比較は、該病変のより正確な診断を可能にする場合がある。
【0018】
対象(例えば、患者)における病変を検出する方法であって、該対象に[18F]-FACBCを投与するステップ、ならびにPETおよびMRIの連携画像および/またはPETおよびCTの連携画像を得るために、PET/MRIまたはPET/CTスキャナーで該対象を画像化するステップを含む方法が開示される。前記病変は、骨髄腫の骨病変であってもよい。投与および/またはPET画像化の方法は、下記のとおりであってもよい。
【0019】
本開示の態様において、対象における骨髄腫の骨病変を診断する方法であって、
(a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCを投与するステップ、
(b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の部位に関する、対象の1つまたは複数のポジトロン放出断層撮影法(PET)スキャン画像を取得するステップ、
(c)対象の前記部位の骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する可能性のある病変における[18F]-FACBC取り込みを比較するステップであり、
骨髄の[18F]-FACBC取り込みより高い病変の[18F]-FACBC取り込みが、骨髄腫の骨病変の存在を示唆する、
ステップ
を含む方法が提供される。
【0020】
ステップa)において、[18F]-FACBCは、静脈内ボーラス注射として注射されてもよい。この注射後に、生理食塩水フラッシュ、例えば、約10mL以下の生理食塩水フラッシュを行ってもよい。
【0021】
アミノ酸は、病変の成長のために重要な栄養素である。注射後、病変細胞は、[18F]-FACBCを取り込むと理解されており、このトレーサーを取り込んだ細胞は、続いて、例えば、PET画像化を介して視覚化され得る。PETスキャン画像の取得は、前記注射終了の3~5分後、例えば、前記注射終了の4分後に開始し得る。いくつかの例において、取得は、前記注射終了の3、4、または5分後に開始し得る。[18F]-FACBCは、異なる取り込み機構を有する他のPET放射性トレーサーと比較して、相対的に速やかに病変細胞によって取り込まれ得る。例えば、FDG-PET画像化において、取得は、注射の少なくとも45分後に通常開始する。
【0022】
18F]-FACBCの「検出可能な量」は、病変細胞によって取り込まれ、PET画像化によってこれらの細胞の検出が可能になる[18F]-FACBCの用量を指す。いくつかの例において、[18F]-FACBCの用量は、370±20%MBq、例えば、370MBq(+/-10%)または370MBq(+/-5%)である。前記用量は、10mLまで希釈されてもよい。
【0023】
いくつかの態様において、前記対象(例えば、患者)は、[18F]-FACBCの投与前に、少なくとも4時間、例えば、4~6時間絶食する。例えば、投与説明書は、前記対象に、[18F]-FACBCの投与前の少なくとも4時間絶食するよう指導することがあり、かつ/または医療関係者は、前記対象に、[18F]-FACBCの投与前の少なくとも4時間絶食するよう指導することがある。「絶食」という用語は、食物やカロリーを含有する飲み物を摂取しないことを意味する。例えば、水(例えば、透明な水)もしくは他のカロリーを含有しない液体または医薬品(例えば、処方された医薬品)に限り、投与前の4時間以内に摂取されてもよい。
【0024】
加えて、または代替として、前記対象は、PETスキャン前の少なくとも1日間、著しい運動を避ける場合がある。
前記PET画像化技術は、フッ素-18の放射性崩壊後に放出される511keV消滅光子を検出するスキャン装置を利用してもよい。加えて、高い空間分解能を有する「micro-PET」スキャナーは、小動物の画像化のために使用され得る。PETスキャナーに加えて、18F-放射能は、1つまたは複数の放射線検出器プローブを使用して、さらにモニターされ得る。
【0025】
本明細書における例示的な方法のステップb)において、前記取得時間/スキャン時間は、前記注射終了の3~5分後、例えば、前記注射終了の4分後に開始し得る。
いくつかの例において、PETスキャンは、対象の頭頂(対象の頭の天辺)から開始し、該対象の下肢の末端(対象の足底)まで続行する。このため、例えば、前記PETスキャンは、対象の身体の実質的にすべてを含む場合がある。
【0026】
別の態様において、対象における骨髄腫を画像化する方法であって、
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCの1回目の用量を投与し、対象内の目的の1つまたは複数の領域に[18F]-FACBCが蓄積する時間を確保するステップ、
b)骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象の1つまたは複数の目的の領域のための対象の1回目のPETスキャン画像を得るステップ、
c)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCの2回目の用量を投与し、対象内の目的の1つまたは複数の領域に[18F]-FACBCが蓄積する時間を確保するステップ、
d)目的の1つまたは複数の領域に関する対象の2回目のPETスキャン画像を得るステップ、
e)1回目および2回目のPETスキャン画像に関して、目的の1つまたは複数の領域の骨髄における[18F]-FACBC取り込みに対する可能性のある病変における[18F]-FACBC取り込みを比較するステップであり、
1回目および2回目のスキャン画像が、[18F]-FACBCの位置および強度を示し、[18F]-FACBCの位置が、対象における病変組織の存在を示唆する、
ステップ
を含む方法が提供される。
【0027】
さらなる態様において、対象における骨髄腫を診断するか、またはモニターする方法であって、
a)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCの1回目の用量を投与し、骨髄腫の可能性のある骨病変を含む対象内の目的の1つまたは複数の領域に[18F]-FACBCが蓄積する時間を確保するステップ、
b)[18F]-FACBCの位置および強度を示す、対象の1回目のPETスキャン画像を得るステップ、
c)対象に検出可能な量の[18F]-FACBCの2回目の用量を投与し、対象内の目的の1つまたは複数の領域に[18F]-FACBCが蓄積する時間を確保するステップ、
d)[18F]-FACBCの位置および強度を示す、対象の2回目のPETスキャン画像を得るステップ、
e)1回目および2回目のスキャンを比較し、[18F]-FACBCの位置および/または強度が、増加したか、一定を保っているか、または減少したかどうかを判定するステップ
を含む方法が提供される。
【0028】
第2または第3の態様の少なくとも一実施形態において、PETと磁気共鳴画像法(MRI)またはX線コンピュータ断層撮影法(CT)のいずれのスキャン画像も、例えば、PET-MRIまたはPET-CTの組合せシステムの使用によって、ステップb)およびd)で取得される。
【0029】
少なくとも一実施形態において、[18F]-FACBCは、上記で検討された本開示の態様に従って投与される。
上記の態様のステップa)およびc)において、[18F]-FACBCが病変細胞に蓄積するために十分な時間は、[18F]-FACBCが投与された後の約5分間以下である。いくつかの例において、[18F]-FACBCが蓄積するために要した時間は、3~5分間、例えば、約4分間である。したがって、このことは、投与の3~5分後、例えば、[18F]-FACBC投与の約4分後に画像取得の開始を可能にする。
【0030】
データが、1回目のPETスキャンから収集された時点で、その画像は視覚化が可能であり、対象内の病変[18F]-FACBC取り込みのレベル、体積、および/または位置を検討するために使用され得る。画像は、通常、核医学医師または放射線専門医によって視覚的に解釈され、SUVmaxおよびSUVmeanのような標準化取り込み値(SUV)が測定されることがある。
【0031】
1回目と2回目のPETスキャン画像の取得の間、すなわち、上記の態様のステップb)とd)の間の期間は、1年間ほどであり得る。いくつかの例において、1回目と2回目のPETスキャンの間の期間は、約1か月~約12か月、例えば、6か月、5か月、4か月、3か月、2か月、もしくは1か月の期間、または約1か月よりも短い期間である。上記の第2および第3の態様のステップc)およびd)は、経時的に病変の発生をマッピングするために使用され得る複数のスキャン画像を得るために必要な回数繰り返され得る。
【0032】
画像データが、2回目のPETスキャンから収集された時点で、1回目および2回目の画像は、共に視覚化が可能であり、対象内の病変[18F]-FACBC取り込みの範囲および位置における変化を検討するために使用され、骨髄腫の診断またはモニタリングを可能にし得る。例えば、病変[18F]-FACBC取り込みのレベルが変化していた場合、その対象は、骨髄腫再発と診断されることがある。いくつかの実施形態において、2回目のスキャン画像は、1回目のPETスキャンとの比較に加えて、1回目のPETスキャンの前に撮影された以前のPETスキャンから収集されたデータの画像と比較され得る。加えて、2回目のPETスキャン画像の後に得られた任意のその後のPETスキャン画像は、1回目および/または2回目のPETスキャン画像と比較され得る。
【0033】
2つ以上の異なる時点からの画像を比較することによって、[18F]-FACBCの病変取り込みにおける差異が解析され得る。比較には、定性的画像比較(例えば、バックグラウンドに対する病変取り込みのレベル)および/または画像化または体外放射線検出データ(例えば、SUV)から得られた定量的指標が関係し得る。このため、すべての病変の発生、進行、または減少は、モニターされ、それに応じて診断され得る。次に、例えば、病変の部位における局所的治療の標的投与といった適当な治療が決定され得る。本明細書に記載される方法は、種々の治療レジメンに対する反応をモニターするためにも使用され得ることが理解されるであろう。
【0034】
上記の方法のステップb)およびd)で得られたPETスキャン画像は、コンピュータ断層撮影法(CT)の画像化、コンピュータ体軸断層撮影法(CAT)の画像化、またはMRIから選択される解剖的画像化と組み合わされるか、この解剖的画像化に先行されるか、または続いてこの解剖学的画像化を行われることがある。組み合わされた画像化に関して、その画像は、専用のPET-CT、PET-MRI、または個別のPETおよびCT/MRIスキャン装置を使用して取得され得る。個別のPETおよびCT/MRI画像化装置が使用される場合、PET画像を解剖学的画像と共に空間的に登録するために、画像解析技術が採用され得る。
【0035】
少なくとも一実施形態において、画像取得のステップb)およびd)は、組み合わされたPETスキャン画像とMRIスキャン画像を得ることを含む。PET-MRI画像は、専用のPET-MRIスキャン装置を使用して得られ得る。このようなスキャン装置は、Siemens(Biograph mMR)およびGE(SIGNA PET/MR)から入手可能である。MRIは、電離放射線を使用しないため、その使用は、CTよりも好まれる場合がある。PET-MRI取得の利点は、単回のスキャンのために、患者および医療スタッフが存在することのみ必要であり、結果として、より時間的かつ費用的な効率が良い工程となることである。
【0036】
別の実施形態において、画像取得のステップb)およびd)は、組み合わされたPETスキャン画像とCTスキャン画像を得ることを含む。PET-CT画像は、専用のPET-CTスキャン装置を使用して得られ得る。PET-CT取得の利点は、単回のスキャンのために、患者および医療スタッフが存在することのみ必要であり、結果として、より時間的かつ費用的な効率が良い工程となることである。
【0037】
本明細書に記載される方法は、骨髄腫の骨病変を検出することに適していることが意図される。
本明細書に記載される方法は、骨髄腫の骨病変の再発を検出することに適していることがある。
【0038】
例示的な実施形態において、本開示の方法は、骨髄腫の骨病変の再発を診断するために使用される。
本明細書における方法は、PETスキャン画像の解析に基づいて、他の治療選択肢中の、例えば、医薬品および/または外科的処置のような治療レジメンを処方することを含む場合がある。前記解析は、骨髄腫の可能性のある骨病変による[18F]-FACBC取り込みが、対象における骨髄腫の存在を示唆するかどうかの判定を含む場合がある。
【0039】
本開示の方法は、ヒトにおいて使用され、いくつかの方法は、ヒト以外の動物(例えば、イヌおよびネコ)において使用されることがある。
本開示の別の態様は、骨髄腫を画像化、診断、および/またはモニタリングのためのキットであって、a)[18F]-FACBCトレーサー;b)上記で検討した本開示の態様に従った投与説明書を含むキットを提供する。
【0040】
本開示は、特定の実施形態を参照して上記されているが、これは、本明細書に明記される特定の形態に限定されることを意図してない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限され、上記の特定のもの以外の他の実施形態が、これらの添付の特許請求の範囲内で同様に可能である。
図1
【国際調査報告】