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特表2025-500583局所変形が可能なシール区画を有するろう付け板熱交換器
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  • 特表-局所変形が可能なシール区画を有するろう付け板熱交換器 図1
  • 特表-局所変形が可能なシール区画を有するろう付け板熱交換器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】局所変形が可能なシール区画を有するろう付け板熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/00 20060101AFI20241226BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20241226BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20241226BHJP
   B23P 15/26 20060101ALI20241226BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F28F3/00 311
F28D9/02
F28F3/08 311
B23P15/26
F28F9/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539981
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2022085326
(87)【国際公開番号】W WO2023126163
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】2114689
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524247020
【氏名又は名称】フィヴ クリオ
【氏名又は名称原語表記】FIVES CRYO
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】アヴル,ダヴィ
(72)【発明者】
【氏名】クローデル,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ノーデ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ヒルト,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】レニエ,ティボー
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103DD52
(57)【要約】
熱交換器(1)であって:-流体が流れることができる複数の区画(10)と、少なくとも1つのシール区画(11)と、-区画(10、11)の間に配置され、区画(10、11)を互いに気密に分離するように意図された分離壁(5)とを備える本体(3)と、-流体を区画(10)に分配するための、又は当該区画(10)から出る流体を収集するための少なくとも1つの分配又ヘッドは収集ヘッド(9)と、を備え、熱交換器(1)において、分配ヘッド又は収集ヘッド(9)は溶接作業によって本体(3)に固定され、当該少なくとも1つのシール区画(11)は溶接作業に続いて変形することができる、熱交換器(1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(1)であって、
流体が流れることができる複数の区画(10)と、少なくとも1つのシールされた区画(11)と、前記区画(10、11)の間に配置され、前記区画(10、11)を互いに気密に分離するように意図された分離壁(5)とが設けられた本体(3)と、
前記区画(10)内に流体を分配するための、又は前記区画(10)から出る流体を収集するための少なくとも1つの分配ヘッド又は収集ヘッド(9)と、を備え、
前記熱交換器(1)において、前記分配ヘッド又は収集ヘッド(9)が、溶接作業によって前記本体(3)に固定され、前記少なくとも1つのシール区画(11)は、前記溶接作業に続いて変形可能である、熱交換器(1)。
【請求項2】
前記熱交換器(1)が、端部区画(6)内に配置された端部閉鎖バー(13)を備え、前記端部閉鎖バー(13)が、前記端部区画(6)への流体の進入を遮断することができ、前記溶接部が、一方の側が前記分配ヘッド(9)によって、他方の側が前記端部閉鎖バー(13)によって横方向に画定されたオリフィス(14)内に形成される、請求項1に記載の熱交換器(1)。
【請求項3】
前記熱交換器(1)が、少なくとも部分的に変形可能な区画(16)を備え、前記区画(16)が前記端部区画(6)に隣接している、請求項2に記載の熱交換器(1)。
【請求項4】
前記変形可能な区画(16)が、変形可能な変形可能領域(18)を備える、請求項3に記載の熱交換器(1)。
【請求項5】
前記変形可能領域(18)が、前記本体(3)の前記入口(17)から、前記本体(3)の長手方向で測定して少なくとも3センチメートルの距離(d)にわたって延びる、請求項4に記載の熱交換器(1)。
【請求項6】
前記本体(3)が、前記変形可能な区画(16)に隣接して、流体が流れることができる補強区画(19)を備える、請求項3~5のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項7】
流体流路を画定する変形可能な波長板(30)が、前記変形可能な区画(16)の前記変形可能な領域(18)内に配置され、流体流路を画定する補強波長板(40)が、前記補強区画(19)内に配置され、前記変形可能な区画(16)の前記波長板(30)が、前記補強波長板(40)の臨界座屈荷重よりも低い前記臨界座屈荷重を有する、請求項6に記載の熱交換器(1)。
【請求項8】
前記補強波長板(40)が、前記補強区画(19)の補強領域(22)内に配置され、前記補強領域(22)が、前記本体(3)の前記入口(17)から測定された距離(r)にわたって、前記本体(3)の長手方向に測定された最小距離3センチメートルにわたって延びる、請求項7に記載の熱交換器(1)。
【請求項9】
前記分配ヘッド又は収集ヘッド(9)の断面が、前記本体(3)の断面と実質的に等しい、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項10】
前記本体(3)が、物理/化学反応を開始するように意図された粉末を収容する、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項11】
前記粉末が、流体が循環することができる前記区画(10)内に配置される、請求項10に記載の熱交換器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の技術分野に属する。本発明は、より具体的には、物理/化学反応を開始するように設計された粉末が充填された板熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ろう付け板熱交換器は、従来、ガス分離及び液化のための低温産業において、エネルギー及び石油化学部門において使用されている。
【0003】
主要なCO2排出量削減目標を伴うエネルギー移行の一環として、多くの国が新しいエネルギー源に対する関心の高まりを示している。これに関連して、ろう付け板熱交換器は、新しい工業規模のプロセスに適合されている。これは、水素移動性の発達に関連する水素液化プロセスの場合である。
【0004】
例えば、水素は、オルト水素状態よりもパラ水素状態において低温でより安定である。低温、特に液化温度では、オルト水素は自発的にパラ水素に変換する傾向があり、望ましくない熱を放出する。
【0005】
水素をその液体状態に保つためには、2つの選択肢がある。第1の選択肢は、オルト水素のパラ水素への変換によって放出される熱を連続的に抽出することである。実際には、この技術は特にエネルギー集約的であり、工業規模では不経済であることが判明している。
【0006】
第2の選択肢は、オルト水素をパラ水素に変換することによってオルト水素を除去することである。冷却と組み合わされた発熱触媒反応は、大部分のオルト水素をパラ水素に変換する。次いで、オルト水素からパラ水素への自発的変換が低減される。
【0007】
この第2の選択肢は、本発明を適用することができる領域の1つである。
【0008】
ろう付け作業後に熱交換器に挿入される、しばしば粉末形態の触媒を使用するために、断面が当該熱交換器の断面と実質的に等しい大きな開口部を有する水素分配ヘッドを使用する必要がある。これは、交換器区画における均一な粉末分布を確実にする。
【0009】
これは、分配ヘッドが特に大きく、熱交換器に影響を及ぼすことを意味する。
【0010】
従来の熱交換器は、典型的には、気密分離壁によって互いに分離された区画を画定する長手方向バー及び端部バーを備える。
【0011】
断面が熱交換器の断面とほぼ等しい分配ヘッドの場合には、触媒収容区画内に端部バーが存在しないが、それは、端部バーが粉末形態の触媒の挿入を妨げるからである。しかしながら、端部バーが熱交換器の機械的強度及び溶接応力の分散に寄与するので、熱交換器の全体構造は弱められる。
【0012】
組立作業中、分配ヘッドは当該熱交換器に溶接される。溶接冷却、材料膨張、及び材料収縮は、熱交換器の主構造を変形させ得る機械的応力を引き起こし、その効率を低下させる。更なる欠点は、これらの変形が、熱交換器を粉末触媒で充填することをより困難にし、ユニットの性能に有害である触媒の不均一分布をもたらすことである。
【0013】
本発明は、これらの欠点に対処することを目的とする。
【発明の概要】
【0014】
この目的のために、熱交換器であって、
流体が流れることができる複数の区画と、少なくとも1つのシールされた区画とが設けられた本体と、
区画の間に配置され、区画を互いに気密に分離するように意図された分離壁と、
区画内に流体を分配するための、又は当該区画から出る流体を収集するための少なくとも1つの分配ヘッド又は収集ヘッドと、を含み、
熱交換器において、分配ヘッド又は収集ヘッドは、溶接作業によって本体に固定され、当該少なくとも1つのシール区画は、溶接作業に続いて変形可能である、熱交換器。
【0015】
このような熱交換器は、交換器構造が溶接部の冷却に固有の機械的応力を吸収することを可能にする。これにより、粉末を充填することがより容易になる。
【0016】
様々な追加の特徴を、以下に示すとおり、単独で又は組み合わせて提供することができる。
【0017】
熱交換器は、端部区画内に配置された端部閉鎖バーを備え、当該端部閉鎖バーは、端部区画内への流体の進入を遮断することができ、溶接部は、一方の側が分配ヘッドによって、他方の側が端部閉鎖バーによって横方向に画定されたオリフィス内に形成され、
熱交換器は、少なくとも部分的に変形可能な区画を備え、当該区画は、端部区画に隣接し、
変形可能な区画は、変形されることが可能な変形可能領域を備え、
変形可能領域は、本体の長手方向で測定して、3センチメートルの最小距離にわたって本体の入口から延び、
本体は、変形可能な区画に隣接して、流体が循環することができる補強区画を備え、
流体流路を画定する変形可能な波長板が、変形可能な区画の変形可能領域内に配置され、流体流路を画定する補強波長板が、補強区画内に配置され、変形可能な区画の波長板が、補強波長板の臨界座屈荷重よりも低い臨界座屈荷重を有し、
補強波長板は、補強区画の補強領域内に配置され、当該補強領域は、本体の長手方向で測定して、3センチメートルの最小距離にわたって本体の入口から測定した距離にわたって延び、
分配ヘッド又は収集ヘッドの断面は、本体の断面と実質的に等しく、
本体は、物理的/化学的反応を開始するように意図された粉末を含み、
-粉末は、流体が循環することができる区画内に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して理解できる以下の詳細な説明から、明らかになるであろう。
図1】本発明による熱交換器の一部の概略斜視図である。
図2】本発明による熱交換器の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1]は、本発明による熱交換器1を示す。まず、熱交換器1の最大寸法に対応する熱交換器1の長さに沿って延びる長手方向軸Xが画定される。第2に、長手方向軸Xに実質的に垂直であり、熱交換器1の幅に沿って延びる第1の横方向軸Yが画定される。X軸及びY軸は平面XYを形成する。最後に、X軸及びY軸に実質的に垂直であり、熱交換器1の高さに沿って延びる第3の横軸Zが画定される。Z軸はX軸と共に平面ZXを形成し、Y軸と共に平面ZYを形成する。
【0020】
熱交換器1は、流体が循環することができる区画4が設けられた本体3を共に画定するいくつかの長手方向バー2を備える。各区画4は、長手方向バー2によってY軸に沿って横方向に境界付けられている。区画4は互いに隣接している。換言すれば、区画4は、一方が他方の上に並置される。
【0021】
熱交換器1は、隔壁5を備える。各区画4の間には分離壁5が配置されている。したがって、分離壁5は、Z軸に沿って区画4を互いに分離する。
【0022】
Z軸に沿った熱交換器1のいずれかの側において、熱交換器は、横方向端部7に位置する端部区画6を備える。閉鎖壁8は、各端部区画6に配置され、したがって、熱交換器1を閉鎖する。
【0023】
図1]に示すように、熱交換器1は、熱交換器1の入口17に位置する流体分配ヘッド9を備える。分配ヘッド9は、ZY平面において、熱交換器1の本体3の断面と実質的に等しい断面を有する。
【0024】
このように分配ヘッド9によって分配された流体は、Z軸に沿って配置されたアクセス可能な区画4に分配される。
【0025】
熱交換器1は、分配ヘッド9に対向して配置された収集ヘッド(図示せず)を更に備える。収集ヘッドは、区画から出る流体を収集する。
【0026】
図2を参照すると、熱交換器1は、流体が循環することができる開放区画10と、流体が少なくとも部分的に循環することができないバー12、13によって閉鎖された区画11とを備える。
【0027】
区画11は、その中の流体の循環を少なくとも部分的に防止するようにシールされている。有利には、シール区画11は、Y軸に沿って延びる横断閉鎖バー12、13によってシールされる。
【0028】
分配ヘッド9は、溶接によって本体3に取り付けられる。溶接が完了すると、金属15の冷却により、本体3に機械的応力が生じる。これらの機械的応力は、一般に「材料収縮」と呼ばれる。
【0029】
有利には、シール区画11の少なくとも1つは、少なくとも部分的に変形可能である。したがって、変形可能な区画11は、溶接作業によって引き起こされる機械的応力を吸収する。熱交換器1の構造は損傷されない。以下では、各隣接区画16について、変形可能なシール区画11を参照する。
【0030】
有利には、熱交換器1は、Y軸に沿って延び、端部区画6の内側に配置された端部閉鎖バー13を備える。端部閉鎖バー13は、端部区画6の入口17に配置される。したがって、端部閉鎖バー13は、端部区画6への流体の流入を遮断する。
【0031】
有利には、端部閉鎖バー13は、分配ヘッド9に面するその部分で面取りされる。したがって、端部閉鎖バー13は、分配ヘッド9と共にオリフィス14を画定する。オリフィス14は、一方の側で分配ヘッド9によって、他方の側で端部閉鎖バー13によって横方向に画定される。溶接は、オリフィス14内で行われる。換言すれば、溶接金属15はオリフィス14内に堆積する。
【0032】
端部閉鎖バー13は、溶接金属15の支持体として作用することに加えて、端部区画6の著しい変形を防止する。実際、端部区画6の変形は、分配ヘッド9又は収集ヘッドを弱める傾向がある。
【0033】
有利には、本体3は、少なくとも部分的に変形可能である隣接区画16を備える。区画16は、端部区画6に隣接して囲まれている。[図2]に見られるように、隣接区画16は、Z軸に沿って端部区画6に隣接する。溶接作業後の材料収縮の結果として、隣接する区画16が変形する。換言すれば、隣接する区画16の断面は、溶接作業の結果として減少する。隣接する区画16のこの変形は、材料収縮による機械的応力を吸収することを可能にし、したがって、熱交換器1の完全性を保つ。特に、これにより、溶接部が劣化して望ましくない漏れが生じることが防止される。
【0034】
有利には、隣接する区画16は、流体の通過を遮断するように設計された閉鎖バー12を備える。
【0035】
熱交換器1の本体3は、変形可能領域18を備える。隣接する区画16の変形可能領域18は、溶接作業によって生じる応力の影響下で変形する当該隣接する区画16の一部である。
【0036】
このように局所化された変形可能領域18は、材料の収縮後も熱交換器1の完全性を維持する。
【0037】
変形可能領域18は、X軸に沿って測定される距離dにわたって入口17から延びる。有利には、距離dは少なくとも3センチメートルである。
【0038】
有利には、熱交換器1の本体3は、補強区画19を備える。補強区画19は、変形可能区画16に隣接して配置される。補強区画19は開放されているので、流体はそれを通って流れることができる。補強区画19は、他の開放区画10の断面が減少するのを防止するために、変形可能領域18の変形を止める。溶接作業の終わりに、補強区画19は著しく変形しない。
【0039】
有利には、本体3は波長板20を備える。波長板20は、流体が流れることができる循環チャネルを画定する。波長板20は、開放区画10及び閉鎖区画11内に配置される。
【0040】
開放区画10において、波長板20は、チャネルを通して流体を案内する。触媒熱交換器1の場合、チャネルは、通常粉末形態の触媒剤で充填される。流体はチャネルを通過し、したがって触媒として作用する粉末を通過する。
【0041】
閉鎖区画11において、波長板20は「変形可能なダンパ」として作用する。このようにして、それらは、ろう付け又は溶接などの様々な作業中にそれらがあまりに容易に変形することを防止するために、これらのシールされた区画11に応力に対するある程度の抵抗を与える。
【0042】
有利には、流体循環チャネルを画定する変形可能な波長板30が、変形可能な区画16の変形可能な領域18内に配置される。流体循環チャネルを画定する補強波長板40は、補強区画19の補強領域22内に配置される。変形可能な区画16内の波長板30は、補強波長板40よりも低い臨界座屈荷重を有する。これにより、変形可能領域18の位置を特定することが可能になる。したがって、溶接作業後に変形するのは変形可能領域18であり、一方、補強領域22は大きく変形しない。このようにして、熱交換器にとって安全であると考えられる所望の点に変形を集中させることによって、変形を制御することができる。変形はランダムではない。変形とは、変形可能領域18が弾性的に変形し、溶接部15によって弾性変形位置内に保持されることを意味する。したがって、変形は、延性及び不可逆ではない。
【0043】
有利には、補強領域22は、入口17からX軸に沿って測定される距離rにわたって延びる。距離rは少なくとも3センチメートルである。これらの寸法を有する補強領域22は、熱交換器を強化し、補強区画19の下に位置する他の開放区画10の変形を防止する。
図1
図2
【国際調査報告】