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特表2025-500606高度に官能化された安定なジヒドロカルビルオキシシリルポリジエン及びポリジエンコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】高度に官能化された安定なジヒドロカルビルオキシシリルポリジエン及びポリジエンコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/44 20060101AFI20241226BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241226BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20241226BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C08C19/44
C08K3/36
C08K3/34
B60C1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540756
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 US2023060320
(87)【国際公開番号】W WO2023133557
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/297,375
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェルキー,ジェフリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイアー,ガブリエル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン,テレンス イー.
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA08
3D131AA11
3D131AA14
3D131AA15
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC51
4J002AC111
4J002DA036
4J002DA047
4J002FD016
4J002FD147
4J002GN01
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100CA04
4J100DA09
4J100DA25
4J100FA03
4J100FA06
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100FA34
4J100HA62
4J100HC48
4J100HC78
4J100HC80
4J100JA29
(57)【要約】
【解決手段】 複数のヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含むポリマー組成物であって、ポリマー組成物が、約40~約105のエージング後ムーニー(100℃でのML1+4)を有し、ポリマー組成物が、約10~約95モル%の当該ヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含み、当該ヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーをジヒドロカルビルオキシシリル末端停止剤と反応させることによって形成される、ポリマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
複数のヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含み、前記ポリマー組成物が、約40~約105のエージング後ムーニー(100℃でのML1+4)を有し、前記ポリマー組成物が、約10~約95モル%の前記ヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含み、前記ヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを、式:
【化1】
(式中、R、R、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基であり、Rは、ジヒドロカルビル基である)によって定義される末端停止剤と反応させることによって形成される、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを末端停止剤と反応させる前記工程の後に、前記複数のヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーを安定化剤で処理することによって、前記ヒドロカルビルオキシシリル末端ポリマーが更に形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記安定化剤が、アルキルヒドロカルビルオキシシランである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、リチウム系開始剤を用いて調製され、前記複数のヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、前記リチウム開始剤に関連するリチウム1モル当たり6モル未満の安定化剤で処理される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーポリマー組成物を調製するための方法であって、反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを、式:
【化2】
(式中、R、R、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基であり、Rは、ジヒドロカルビル基である)によって定義される末端停止剤と反応させて、それによって官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーを形成することを含む、方法。
【請求項6】
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを末端停止剤と反応させる前記工程の後に、前記官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、安定化剤で処理される、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
リチウム系開始剤の存在下で、1,3-ブタジエンを、任意選択で、それと共重合可能なモノマーと一緒にアニオン重合して、前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを形成することによって、前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アニオン重合する前記工程が、約-10℃~約200℃のピーク重合温度に達する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、重合混合物を形成し、前記重合混合物が、ポリジエン又はポリジエンコポリマーの総量に基づいて、75モル%超の反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記末端停止剤が、前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーと、約0.60:1~約1:1のモル比で反応させられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記安定化剤が、低分子量のヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランのモル数対前記リチウム系開始剤に関連するリチウムのモル数のモル比が、5:1未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを末端停止剤と反応させる前記工程が、70モルパーセント超の前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーの変性をもたらす、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー組成物が、約35~約120のエージングされていないムーニー(100℃でのML1+4)を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、約160~約280kg/molのMpを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、200kg/mol超のMnを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
用いられる官能化剤の量が、前記リチウム含有開始剤中のリチウム1モル当たり0.5モル超の官能化剤である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
用いられる官能化剤の量が、前記リチウム含有開始剤中のリチウム1モル当たり0.95モル未満の官能化剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
加硫性ゴム組成物であって、
(i)請求項1~18のいずれか一項に記載の官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーと、
(ii)シリカ充填剤と、
(iii)硬化剤と、を含む、加硫性ゴム組成物。
【請求項20】
前記加硫性ゴム組成物が、加硫性ゴム構成成分を含み、前記加硫性ゴム構成成分が、10重量%超の前記官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記加硫性ゴム組成物が、前記ゴム構成成分100重量部当たり40重量部超のシリカ充填剤を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記加硫性ゴム組成物が、前記加硫性組成物内の任意のシランカップリング剤によって生成される任意のアルコールを除いて、ゴム1キログラム当たり110mmol未満のエタノールを生成することによって調製される、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の加硫性組成物を加硫化することによって調製される、加硫物。
【請求項24】
前記加硫物が、タイヤトレッドである、請求項1~23のいずれか一項に記載の加硫物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高い官能価及び有害なムーニー増加(growth)に対する長期安定性を特徴とするジヒドロカルビルオキシシリル官能化ポリジエン及びポリジエンコポリマーを対象とする。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、特にタイヤトレッドの製造では、末端官能化を含むものなどの変性ポリマーを用いることが知られている。これらの変性ポリマーを用いて調製されたゴム加硫物は、ヒステリシス損失の低減を呈し、充填剤のデアグロメレーションに起因する機械的エネルギーの損失であるペイン効果の低減を示すことが観察された。
【0003】
ポリマー変性は、多くの場合、リビングポリマー種を、ポリマー鎖の末端に官能基を付与することができる化合物と反応させることによって達成される。例えば、米国特許第6,369,167号は、ブタジエンとスチレンとのランダムコポリマーなどのジエンポリマーをアニオン重合技術によって調製し、次いで、当該ポリマーをイミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物で末端停止することを教示している。末端変性剤とも称される末端停止化合物は、アニオン重合を開始させるために使用される有機リチウム化合物1モル当たり0.25~3モルの量で用いられる。
【0004】
同様の末端変性剤が米国特許第7,683,151号に開示されており、これは、見かけの活性部位に基づいて0.3モル当量以上を使用することを教示している。変性反応に続いて、この特許は、縮合促進剤(例えば、スズカルボキシレート)を添加して、ポリマー鎖末端におけるヒドロカルビルオキシシラン残基を縮合させる(これにより、ポリマーカップリングが生じる)ことを教示している。完成した後、得られた変性ポリマーは、10~150のムーニー粘度(100℃でのML1+4)を有する。
【0005】
ヒドロカルビルオキシシラン残基は、エージング後ムーニー粘度を増加させることが見出されており、この増加は、水の存在下において官能性ポリマー間で生じるカップリングに起因すると考えられる。このカップリングは、水がヒドロカルビルオキシシラン置換基を加水分解してシロキシ置換基を形成するときに開始され、次いで、それぞれのポリマーのシロキシ置換基が縮合してカップリングすると考えられる。米国特許第6,255,404号は、変性ポリマーをアルキルアルコキシシラン(例えば、オクチルトリエトキシシラン)で処理して、それによって、ヒドロカルビルオキシシラン末端基を安定化させることによる、このムーニー粘度増加に対する対策を教示している。アルキルアルコキシシランは、開始剤1モル当たり1~20モルの量で添加され得るが、アルコキシシラン官能基の当量を超える量で存在する場合、アルキルアルコキシシランの可塑化効果(すなわち、過剰なアルキルアルコキシシランが油として作用する)に起因してポリマー粘度の減少が観察される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つ以上の実施形態は、複数のヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含むポリマー組成物であって、ポリマー組成物が、約40~約105のエージング後ムーニー(100℃でのML1+4)を有し、ポリマー組成物が、約10~約95モル%の当該ヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含み、当該ヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを、式:
【0007】
【化1】
(式中、R、R、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基であり、Rは、ジヒドロカルビル基である)によって定義される末端停止剤と反応させることによって形成される、ポリマー組成物を提供する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーポリマー組成物を調製するための方法であって、反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを、式:
【0009】
【化2】
(式中、R、R、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基であり、Rは、ジヒドロカルビル基である)によって定義される末端停止剤と反応させて、それによって官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーを形成することを含む、方法を提供する。
【0010】
本発明の更に他の実施形態は、加硫性ゴム組成物であって、(i)反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを、式:
【0011】
【化3】
(式中、R、R、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基であり、Rは、ジヒドロカルビル基である)によって定義される末端停止剤と反応させることによって形成される、官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーと、(ii)シリカ充填剤と、(iii)硬化剤と、を含む、加硫性ゴム組成物を提供する。
【0012】
本発明のなお他の実施形態は、加硫物であって、(i)反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを、式:
【0013】
【化4】
(式中、R、R、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基であり、Rは、ジヒドロカルビル基である)によって定義される末端停止剤と反応させることによって形成される、官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーと、(ii)シリカ充填剤と、(iii)硬化剤と、を含む、加硫性組成物を加硫化することによって調製される、加硫物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、望ましいレオロジー特性(例えば、ムーニー粘度)を特徴とし、有利な動的特性を有するゴム加硫物を生じる、ヒドロカルビルオキシシリル官能化ポリジエン及びポリジエンコポリマーを生成するためのプロセスの発見に少なくとも部分的に基づく。先行技術は、ヒドロカルビルオキシシリル官能化ポリジエン及びポリジエンコポリマー、並びにゴム加硫物におけるそれらの使用を企図しているが、これらの官能化ポリマーの有用性は、それらの時間依存的なレオロジー特性によって妨げられており、安定化剤の使用を必要としてきた。(例えば、イミン含有ヒドロカルビルオキシシランを使用する)官能化の程度は、必要とされる安定化剤(例えば、オクチルトリエトキシシランの使用)の量に正比例すること、及び官能化と安定化使用との間のトレードオフは、ポリマー加工の観点から、官能化のレベルを低下させることに傾くことが観察されている。しかしながら、より低いレベルの官能化では、加硫物特性における潜在的な利点が損なわれると考えられる。本発明は、従来使用されていた技術を上回る、望ましいレオロジー特性及び改善された動的特性という予想外の利点を提供する。
【0015】
ジヒドロカルビルオキシシリル官能化ポリジエンの調製
1つ以上の実施形態では、官能化ヒドロカルビルオキシシリルポリジエン及びポリジエンコポリマーとも称され得るヒドロカルビルオキシシリル官能化ポリジエン及びポリジエンコポリマーは、(i)反応性ポリジエン及び/又はポリジエンコポリマーをアニオン合成することと、(ii)反応性ポリジエン及び/又はポリジエンコポリマーをジヒドロカルビルオキシシリル官能化剤と反応させて、それによって官能化ヒドロカルビルオキシシリルポリジエン及び/又はポリジエンコポリマーを形成することと、(iii)任意選択で、官能化ヒドロカルビルオキシシリルポリジエン及び/又はポリジエンコポリマーを安定化剤で処理することと、(iv)官能化ヒドロカルビルオキシシリルポリジエン及び/又はポリジエンコポリマーを単離することと、によって調製される。本明細書で使用される場合、ヒドロカルビルオキシシリル官能化ポリジエン若しくはヒドロカルビルオキシシリル末端ポリジエン又はコポリマーは、ジヒドロカルビルオキシシリル官能化剤で官能化されたポリジエン及び/又はコポリマーを指す。
【0016】
反応性ポリジエンのアニオン合成
1つ以上の実施形態では、反応性ポリジエン及びポリジエンコポリマーは、ジエンモノマーを、任意選択で、それと共重合可能なモノマーと一緒にアニオン重合することによって調製される。1つ以上の実施形態では、重合は、溶液中で共役ジエンモノマー(例えば、ブタジエン)とビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)とをアニオン重合させて、反応性ポリマー鎖末端を有するポリジエンポリマー及びコポリマーを含む重合混合物を提供することを含む。
【0017】
アニオン性重合技術を用いることによるポリマーの調製は、一般的に知られている。アニオン重合の重要な機構的特徴は、書籍(例えば、Hsieh,H.L.;Quirk,R.P.Anionic Polymerization:Principles and Practical Applications;Marcel Dekker:New York,1996)及び論説(例えば、Hadjichristidis,N.;Pitsikalis,M.;Pispas,S.;Iatrou,H.;Chem.Rev.2001,101(12),3747-3792)に記載されている。アニオン性開始剤は、有利なことに、クエンチング前に、更なる連鎖成長のために追加のモノマーと反応可能であるか、又はある特定の官能化剤と反応して官能化ポリマーを与えることが可能である、反応鎖末端を有するポリマー(例えば、リビングポリマー)を生成させることができる。反応性ポリマー鎖末端を有するポリマーを単に反応性ポリマーと称する場合もある。当業者には理解されるように、これらの反応性ポリマーは反応性鎖末端を含み、この反応性鎖端はイオン性であると考えられ、この反応性鎖端において官能化剤とポリマーの反応性鎖末端との間の反応が起こり、それによって、ポリマー鎖末端に官能性若しくは官能基を付与することができ、又は複数のポリマーを互いにカップリングさせることができる。
【0018】
アニオン重合されてこれらのポリマーを形成することができるモノマーとしては、共役ジエンモノマーが挙げられ、共役ジエンモノマーは、任意選択で、ビニル置換芳香族モノマーなどの他のモノマーと共重合され得る。共役ジエンモノマーの例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、及び2,4-ヘキサジエンが挙げられる。2つ以上の共役ジエンの混合物もまた、共重合に利用されてよい。共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーの例としては、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びビニルナフタレンなどのビニル置換芳香族化合物が挙げられる。
【0019】
本発明の実施は、いずれかの特定のアニオン性開始剤を選択することによって限定されることはない。例示的なアニオン性開始剤としては、有機リチウム化合物が挙げられる。1つ以上の実施形態では、有機リチウム化合物には、ヘテロ原子が含まれていてもよい。これら又は他の実施形態では、有機リチウム化合物には、1つ以上の複素環基が含まれていてもよい。有機リチウム化合物のタイプとしては、アルキルリチウム化合物、アリールリチウム化合物、及びシクロアルキルリチウム化合物が挙げられる。有機リチウム化合物の具体例としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、n-アミルリチウム、イソアミルリチウム、及びフェニルリチウムが挙げられる。なお他のアニオン性開始剤としては、フェニルナトリウム及び2,4,6-トリメチルフェニルナトリウムなどの有機ナトリウム化合物が挙げられる。
【0020】
アニオン性重合は、極性溶媒、非極性溶媒、及びこれらの混合物内で行われてもよい。1つ以上の実施形態では、開始剤を重合系に送達するのを容易にするために、溶媒を担体として用いて、開始剤を溶解するか又は懸濁させてもよい。
【0021】
1つ以上の実施形態では、好適な溶媒としては、有機化合物として、触媒の存在下でモノマーを重合する間に伝搬ポリマー鎖への重合も取り込みも受けないものが挙げられる。1つ以上の実施形態では、これらの有機種は、周囲温度及び圧力で液体である。1つ以上の実施形態では、これらの有機溶媒は、触媒に対して不活性である。例示的な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素などの低い又は比較的低い沸点を有する炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びメシチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、及び石油スピリットが挙げられる。また、脂環式炭化水素の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びメチルシクロヘキサンが挙げられる。上記の炭化水素の混合物を使用することもできる。低沸点の炭化水素溶媒は、典型的には、重合が終了した際、ポリマーから分離される。有機溶媒の他の例としては、パラフィン系油、芳香族油、又は一般に油展ポリマーに使用される他の炭化水素油など、高分子量の高沸点炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は不揮発性であるため、それらは、典型的には分離する必要がなく、ポリマー内に取り込まれたままである。
【0022】
アニオン重合は、ランダマイザ(極性コーディネーターと称される場合もある)又はビニル変性剤の存在下で実施してよい。当業者には理解されるように、2重の役割を果たし得るこれらの化合物は、ポリマー鎖全体にわたるコモノマーのランダム化を支援し得る及び/又はジエン由来のマー単位(mer units)のビニル含有量を調節し得る。ランダマイザとして有用な化合物としては、酸素又は窒素ヘテロ原子及び非結合電子対を有するものが挙げられる。例には、直線状及び環式オリゴマーオキソラニルアルカン;モノ及びオリゴアルキレングリコールのジアルキルエーテル(グリムエーテルとしても知られている);「クラウン」エーテル;三級アミン;直鎖状THFオリゴマー;などが挙げられる。直線状及び環式オリゴマーオキソラニルアルカンは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,429,091号及び同第9,868,795号に記載されている。ランダマイザとして有用な化合物の具体例としては、2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン、1,2-ジメトキシエタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(tetramethylethylenediamine、TMEDA)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、1,2-ジピペリジルエタン、ジピペリジルメタン、ヘキサメチルホスホルアミド、N-N’-ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、トリ-n-ブチルアミン、及びこれらの混合物が挙げられる。他の実施形態では、スチレン分布をランダム化するために、カリウムアルコキシドが使用され得る。
【0023】
用いるべきランダマイザの量は、所望のポリマー微細構造、モノマー対コモノマーの比率、重合温度、及び用いる特定のランダマイザの性質などの様々な要因に依存する場合がある。1つ以上の実施形態では、用いられるランダマイザの量は、アニオン性開始剤1モル当たり0.01~100モルの範囲であってもよい。
【0024】
アニオン性開始剤及びランダマイザを重合系に導入することを、様々な方法によって行うことができる。1つ以上の実施形態では、アニオン性開始剤及びランダマイザを重合すべきモノマーに別個に添加することを、段階的又は同時に行ってもよい。
【0025】
上述したとおり、有効な量の開始剤の存在下において、共役ジエンモノマーを、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーと一緒に重合させるによって、反応性ポリマーが生成される。開始剤、共役ジエンモノマー、コモノマー、及び溶媒の導入によって、重合混合物が形成され、その中で反応性ポリマーが形成される。溶媒内で重合させると、ポリマー生成物が溶媒に溶解又は懸濁している重合混合物が生成される。この重合混合物は、ポリマーセメントと称される場合もある。
【0026】
用いるべき開始剤の量は、用いる開始剤のタイプ、成分の純度、重合温度、所望の重合速度及び重合転化率、所望の分子量、及び多くの他の要因などの様々な要因の相互作用に依存する場合がある。1つ以上の実施形態では、用いられる開始剤の量は、モノマーの重量当たりの開始剤のミリモル数として表現され得る。1つ以上の実施形態では、開始剤負荷は、モノマー100グラム当たり約0.05~約50ミリモル、他の実施形態では約0.1~約25ミリモル、なお他の実施形態では約0.2~約2.5ミリモル、及び他の実施形態では約0.4~約0.7ミリモルの開始剤で変化し得る。
【0027】
1つ以上の実施形態では、重合は、当該技術分野において公知の任意の従来の重合容器内で行ってよい。例えば、従来の撹拌槽型反応器内で重合を行うことができる。1つ以上の実施形態では、重合に対して使用する成分を全て単一容器(例えば、従来の撹拌タンク反応器)内で混合することができ、重合プロセスの全ての工程をこの容器内で行うことができる。他の実施形態では、成分のうちの2つ以上を1つの容器内で事前に組み合わせてから別の容器に移し、そこでモノマー(又は少なくともその大部分)の重合を行うことができる。本発明の様々な実施形態は、複数の反応器又は反応ゾーンの使用を含むため、重合が行われる容器(例えば、槽型反応器)は、第1の容器又は第1の反応ゾーンと称される場合がある。
【0028】
重合は、バッチプロセス、連続プロセス、又は半連続プロセスとして行うことができる。半連続プロセスでは、モノマーを必要に応じて断続的に充填して、すでに重合したモノマーと置き替える。1つ以上の実施形態では、重合の熱を取り除くことを、熱的に制御された反応器ジャケットによる外部冷却、反応器に接続された還流凝縮器の使用によるモノマーの気化及び凝縮による内部冷却、又は2つの方法の組み合わせによって行ってもよい。また、約0.1気圧~50気圧、他の実施形態では約0.5気圧~約20気圧、及び他の実施形態では約1気圧~約10気圧の圧力下で重合を行うように条件を制御してもよい。1つ以上の実施形態では、重合を行い得る圧力には、大部分のモノマーが確実に液相となる圧力が含まれる。これら又は他の実施形態では、重合混合物を嫌気条件下で維持してもよい。
【0029】
重合温度
1つ以上の実施形態では、重合が進行する条件は、重合混合物のピーク重合温度を30℃超、他の実施形態では50℃超、及び他の実施形態では70℃超に維持するように制御され得る。これら又は他の実施形態では、重合が進行する条件は、重合混合物のピーク重合温度を120℃未満、他の実施形態では110℃未満、及び他の実施形態では100℃未満に維持するように制御され得る。1つ以上の実施形態では、重合が進行する条件は、重合混合物の温度を約-10℃~約200℃、他の実施形態では、約0℃~約150℃、及び他の実施形態では、約20℃~約110℃の範囲内に維持するように制御され得る。
【0030】
変性前のポリマー特性
反応性ポリマーは、それらの分子量を特徴とし得、分子量には、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びピーク分子量(Mp)が含まれ得る。当業者が理解するように、分子量は、屈折率及び/又は紫外線検出器などの好適な検出器を備えた適切な較正標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)を使用することによって決定することができる。本明細書の目的のために、GPC測定では、特に指定しない限り、ポリスチレン標準及びポリスチレンマーク-フウィンク定数を用いる。カップリングパーセントはまた、ベースピーク下の面積(A)及びGPC曲線下の総面積(B)を測定することによる、GPCによって決定することができる。次いで、カップリングパーセントは、カップリングパーセント=(B-A)/A×100%として計算される。
【0031】
本発明の実施形態によれば、本発明の官能化剤が、より少ないカップリング、特に3つ以上の鎖を一緒にカップリングすることをもたらすことが観察されたことを考慮すると、所望のレオロジー特性(例えば、ムーニー粘度)内に維持しながら、ベースポリマーの分子量を増加させることができる。
【0032】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、160kg/mol超、他の実施形態では180kg/mol超、他の実施形態では200kg/mol超、他の実施形態では215kg/mol超、他の実施形態では230kg/mol超、他の実施形態では240kg/mol超、他の実施形態では250kg/mol超、他の実施形態では260kg/mol超、及び他の実施形態では270kg/mol超の、ベースMpとも称され得るMpを有する。これら又は他の実施形態では、反応性ポリマーは、370kg/mol未満、他の実施形態では360kg/mol未満、他の実施形態では350kg/mol未満、他の実施形態では330kg/mol未満、他の実施形態では310kg/mol未満、他の及び他の実施形態では280kg/mol未満、及び他の実施形態では250kg/mol未満のMpを有する。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、約160~約280kg/mol、他の実施形態では約170~約260kg/mol、他の実施形態では約200~約370kg/mol、他の実施形態では約215~約360kg/mol、他の実施形態では約230~約350kg/mol、及び他の実施形態では約180~約250kg/molのMpを有する。
【0033】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、130kg/mol超、他の実施形態では140kg/mol超、他の実施形態では150kg/mol超、他の実施形態では170kg/mol超、他の実施形態では200kg/mol超、他の実施形態では210kg/mol超、他の実施形態では220kg/mol超、及び他の実施形態では230kg/mol超の、ベースMnとも称され得るMnを有する。これら又は他の実施形態では、反応性ポリマーは、350kg/mol未満、他の実施形態では340kg/mol未満、他の実施形態では330kg/mol未満、他の実施形態では320kg/mol未満、他の実施形態では300kg/mol未満、他の実施形態では280kg/mol未満、及び他の実施形態では260kg/mol未満のMnを有する。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、約130~約300kg/mol、他の実施形態では約140~約280kg/mol、他の実施形態では約170~約350kg/mol、他の実施形態では約200~約340kg/mol、他の実施形態では約210~約330kg/mol、及び他の実施形態では約150~約260kg/molのMnを有する。
【0034】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、180kg/mol超、他の実施形態では190kg/mol超、他の実施形態では200kg/mol超、他の実施形態では230kg/mol超、他の実施形態では245kg/mol超、他の実施形態では260kg/mol超、他の実施形態では275kg/mol超、及び他の実施形態では285kg/mol超の、ベースMwとも称され得るMwを有する。これら又は他の実施形態では、反応性ポリマーは、650kg/mol未満、他の実施形態では600kg/mol、他の実施形態では550kg/mol未満、他の実施形態では500kg/mol未満、及び他の実施形態では450kg/mol未満のMwを有する。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、約180~約650kg/mol、他の実施形態では約190~約600kg/mol、他の実施形態では約200~約550kg/mol、他の実施形態では約230~約500kg/mol、他の実施形態では約250~約500kg/mol、及び他の実施形態では約200~約400kg/molのMwを有する。
【0035】
本発明の態様に従って生成される反応性ポリマーは、ビニル含有量を特徴とすることができ、これは、ポリマー鎖内の全不飽和に対する1,2-微細構造での不飽和の数として説明することができる。当業者には理解されるように、ビニル含有量は、FTIR分析によって求めることができる。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、10重量%超、他の実施形態では20重量%超、及び他の実施形態では35重量%超のビニルを含む。これら又は他の実施形態では、反応性ポリマーは、80重量%未満、他の実施形態では60重量%未満、及び他の実施形態では46重量%未満を含む。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、約10~約80%、他の実施形態では約20~約60%、及び他の実施形態では約35~約46%のビニルを含む。
【0036】
反応性ポリマーは、反応性鎖末端を有するポリマーのモル%を表す比較的高活性な(high live)(反応性とも称される)末端含有量を特徴とし得、官能化剤と反応することができる。1つ以上の実施形態では、重合混合物中のポリマーの60%超、他の実施形態では70%超、他の実施形態では80%超、他の実施形態では85%超、他の実施形態では90%超、及び他の実施形態では90%超が、活性又は反応性鎖末端を含有する。
【0037】
ポリマー変性
上述したとおり、重合に続いて、反応性ポリマーは、官能化とも称され得る変性を受ける。すなわち、イミン含有ジヒドロカルビルオキシシラン化合物を重合混合物に導入することによってポリマーの反応性末端が変性され、これは、官能化とも称され得る。ポリマー鎖末端は、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン(本明細書の目的のために、官能化剤又は変性剤と称される場合もある)と反応して、ポリマー鎖末端に官能化剤の残基を提供すると考えられる。特に、官能化反応のかなりの部分がケイ素原子で起こり、それによって、イミン含有ジヒドロカルビルオキシシラン化合物上のヒドロカルビルオキシ基が置き換えられると考えられる。したがって、ポリマーと官能化剤との間の反応によって、イミン含有ジヒドロカルビルオキシシラン由来の末端基を含む1つ以上のポリマー鎖を含むポリマー組成物が生成される。官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応からもポリマーカップリングが生じる場合があることを理解されたい。いずれの場合も、鎖末端官能基を有するポリマー及び官能化剤の残基とカップリグしたポリマーはいずれも、特に指定しない限り、変性ポリマー又は官能化ポリマーと称される。
【0038】
1つ以上の実施形態では、ポリマー組成物内の10モル%超、他の実施形態では30モル%超、他の実施形態では35モル%超、及び他の実施形態では40モル%超のポリマー鎖が、末端官能基を含む。これら又は他の実施形態では、ポリマー組成物内の95モル%未満、他の実施形態では90モル%未満、及び他の実施形態では85モル%未満のポリマー鎖が、末端官能基を含む。1つ以上の実施形態では、ポリマー組成物内の約10~約95モル%、他の実施形態では約30~約90モル%、及び他の実施形態では約35~約85モル%のポリマー鎖が、末端官能基を含む。
【0039】
ジヒドロカルビルオキシ官能化剤
上述したとおり、アニオン合成された反応性ポリジエンは、イミン含有ジヒドロカルビルオキシシリル官能化剤、イミノジヒドロカルビルオキシシラン、又は単にジヒドロカルビルオキシシラン若しくはジヒドロカルビルオキシシリル官能化剤とも称され得るイミン含有ジヒドロカルビルオキシシランで官能化される。最も一般的なヒドロカルビルオキシ基は、アルコキシ基であるので、本発明で用いられる官能化剤は、概して、アルコキシ名(例えば、イミン含有ジアルコキシシラン)を使用することも指し得る。
【0040】
1つ以上の実施形態では、イミン含有ジヒドロカルビルオキシシラン官能化剤は、式:
【0041】
【化5】
(式中、R、R、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基であり、Rは、ジヒドロカルビル基である)によって定義され得る。
【0042】
このようなイミノ基含有アルコキシシラン化合物の例としては、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジメトキシ)メチルシラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(ジメトキシ)メチルシラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(ジエトキシ)メチルシラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(ジエトキシ)メチルシラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(ジメトキシ)メチルシラン、3-(1-ピロリジニル)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-(1-ピロリジニル)プロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-(1-ヘプタメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-(1-ドデカメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジメトキシ)エチルシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(ジエトキシシリル)メチル-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(ジエトキシシリル)メチル-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(ジエトキシシリル)メチル-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(ジエトキシシリル)メチル-1-プロパンアミン、N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(ジエトキシシリル)メチル-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(ジエトキシシリル)メチル 1-プロパンアミン、(ジメトキシ)プロピルシリル化合物、(ジエトキシ)プロピルシリル化合物、(ジエトキシ)エチルシリル化合物、(ジメトキシ)メチルシリル化合物、及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応する(ジメトキシ)ブチルシリル化合物、1-[3-(ジエトキシメチルシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-[3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-[10-(ジエトキシメチルシリル)デシル]-4-オキサゾリン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(ジメトキシ)メチルシラン、N-(3-(ジエトキシ)メチルシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、及びN-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールが挙げられる。
【0043】
使用されるジアルコキシ官能化剤の量
本発明の実施において用いられる官能化剤(すなわち、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン)の量は、開始剤に関連するリチウム又は金属カチオンに関して説明され得る。1つ以上の実施形態では、重合混合物に導入される官能化剤の量は、開始剤中のリチウム1モル当たり0.40超、他の実施形態では0.50超、他の実施形態では0.60超、他の実施形態では0.65超、他の実施形態では0.70超、及び他の実施形態では0.75モル超の官能化剤である。これら又は他の実施形態では、リチウム1モル当たり0.98未満、他の実施形態では0.95未満、他の実施形態では0.90未満、他の実施形態では0.85未満、他の実施形態では0.80未満、他の実施形態では0.75未満、及び他の実施形態では0.70モル未満の官能化剤が重合混合物に導入される。1つ以上の実施形態では、リチウム1モル当たり約0.60~約0.90、他の実施形態では約0.65~約0.85、及び他の実施形態では約0.70~約0.80モルの官能化剤が重合混合物に導入される。
【0044】
1つ以上の実施形態では、本発明の実施において用いられる官能化剤(すなわち、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン)の量は、反応性ポリマーのモルに対して説明され得る。1つ以上の実施形態では、官能化剤対反応性ポリマー(すなわち、ポリジエン又はポリジエンコポリマー)のモル比は、開始剤中のリチウム1モル当たり0.50:1超、他の実施形態では0.60:1超、他の実施形態では0.65:1超、他の実施形態では0.70:1超、及び他の実施形態では0.75:1モル超の官能化剤である。これら又は他の実施形態では、官能化剤対反応性ポリマーのモル比は、1:1未満、他の実施形態では0.98未満、他の実施形態では0.95未満、他の実施形態では0.90未満、及び他の実施形態では0.88未満である。1つ以上の実施形態では、官能化剤対反応性ポリマーのモル比は、約0.60:1~約1:1、他の実施形態では約0.7:1~約0.98:1、及び他の実施形態では約0.75:1~0.95:1である。
【0045】
1つ以上の実施形態では、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、約10℃~約150℃、及び他の実施形態では約20℃~約100℃の温度で行われ得る。官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応が完了するのに必要な時間は、反応性ポリマーの調製に使用される触媒又は開始剤のタイプ及び量、官能化剤のタイプ及び量、並びに官能化反応が行われる温度など、様々な要因に依存する。1つ以上の実施形態では、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、約10~60分間、行われ得る。
【0046】
1つ以上の実施形態では、官能化剤は、ポリマーが溶媒内に溶解又は懸濁している間にポリマーセメント(すなわち、重合混合物)に導入される。当業者には理解されるように、この溶液は、ポリマーセメントと称される場合もある。1つ以上の実施形態では、その濃度などのポリマーセメントの特徴は、官能化前のセメントの特徴と同じ又は同様である。
【0047】
1つ以上の実施形態では、ポリマーの変性(すなわち、官能化剤のポリマーセメントへの導入)は、重合が行われた同じ容器内で行われる。他の実施形態では、重合が行われる反応容器の外側でポリマーの変性が行われる。例えば、下流の容器又は下流の移送導管内において重合混合物(すなわち、ポリマーセメント)に官能化剤を導入することができる。
【0048】
ポリマー安定化
上述したとおり、変性に続いて、変性ポリマーが安定化され得る。1つ以上の実施形態では、当該技術分野において既知の安定化剤が使用され得る。例えば、安定化剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,255,404号に開示のアルキルヒドロカルビルオキシシラン(例えば、アルキルアルコキシシラン)を含み得る。例示的なアルキルアルコキシシランとしては、オクチルトリエトキシシランが挙げられる。他の実施形態では、安定化剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,279,632号に開示の長鎖アルコールを含み得る。例示的な長鎖アルコールとしては、ステアリン酸ソルビタン又はモノオレイン酸ソルビタンが挙げられる。なお他の実施形態では、ポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,546,237号に開示のように、アルキルアルコキシシランで処理し、続いてメチルトリクロロシランなどの加水分解時に酸性種を形成する加水分解性基を含むシランで処理することによって、安定化され得る。
【0049】
1つ以上の実施形態では、変性ポリマーは、変性ポリマーを含む重合混合物にアルキルヒドロカルビルオキシシランを導入することによって、安定化され得る。アルキルヒドロカルビルオキシシランは、末端官能基と反応すると考えられる。また、鎖末端官能基とアルキルヒドロカルビルオキシシランとの間の反応は、2つの分子の導入時又は組成物のエージング後に起こると考えられる。アルキルヒドロカルビルオキシシランと末端基との間の反応は、イミン含有ジヒドロカルビルオキシシラン及びその後のアルキルヒドロカルビルオキシシランとの反応に由来する末端基を含む、1つ以上のポリマー鎖を含むポリマー組成物を生成する。
【0050】
1つ以上の実施形態では、安定化剤は、式I:
【0051】
【化6】
(式中、Rは、ヒドロカルビル基であり、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である)によって定義され得るヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン(すなわち、安定化剤)である。特定の実施形態では、R、R、及びRは、ヒドロカルビル基である。他の実施形態では、R及びRは、ヒドロカルビル基であり、Rは、ヒドロカルビルオキシ基である。他の実施形態では、Rは、ヒドロカルビル基であり、R及びRは、ヒドロカルビルオキシ基である。ある特定の実施形態では、R、R、及びRは、全てヒドロカルビルオキシ基である。
【0052】
1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランのヒドロカルビル基としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、又はアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない。置換ヒドロカルビル基は、1つ以上の水素原子がアルキル基などの置換基で置き換えられているヒドロカルビル基を含む。1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビル基は、1つ又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子から20個までの炭素原子を含んでいてよい。これらのヒドロカルビル基は、これに限定されないが、窒素、ホウ素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリン原子などのヘテロ原子を含有し得る。
【0053】
1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランのヒドロカルビルオキシ基としては、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、置換シクロアルコキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルケニルオキシ基、置換シクロアルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アリルオキシ基、置換アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルカリールオキシ基、又はアルキニルオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。置換ヒドロカルビルオキシ基としては、炭素原子に結合している1つ以上の水素原子がアルキル基などの置換基で置き換えられているヒドロカルビルオキシ基が挙げられる。1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビルオキシ基は、1つ又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子から20個までの炭素原子を含んでいてよい。ヒドロカルビルオキシ基は、窒素、ホウ素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリンの原子などであるがこれらに限定されないヘテロ原子を含有し得る。
【0054】
1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランのタイプとしては、トリヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン、ジヒドロカルビルジヒドロカルビルオキシシラン、ヒドロカルビルトリヒドロカルビルオキシシラン、及びテトラヒドロカルビルオキシシランが挙げられる。
【0055】
ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、プロピルトリフェノキシシラン、オクチルトリフェノキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、デシルトリフェノキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、エチルジエトキシメトキシシラン、プロピルジエトキシメトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン、オクチルジエトキシメトキシシラン、デシルジエトキシメトキシシラン、メチルジフェノキシメトキシシラン、エチルジフェノキシメトキシシラン、プロピルジフェノキシメトキシシラン、フェニルジフェノキシメトキシシラン、オクチルジフェノキシメトキシシラン、デシルジフェノキシメトキシシラン、メチルジメトキシエトキシシラン、エチルジメトキシエトキシシラン、プロピルジメトキシエトキシシラン、フェニルジメトキシエトキシシラン、オクチルジメトキシエトキシシラン、デシルジメトキシエトキシシラン、メチルジフェノキシエトキシシラン、エチルジフェノキシエトキシシラン、プロピルジフェノキシエトキシシラン、フェニルジフェノキシエトキシシラン、オクチルジフェノキシエトキシシラン、デシルジフェノキシエトキシシラン、メチルジメトキシフェノキシシラン、エチルジメトキシフェノキシシラン、プロピルジメトキシフェノキシシラン、フェニルジメトキシフェノキシシラン、オクチルジメトキシフェノキシシラン、デシルジメトキシフェノキシシラン、メチルジエトキシフェノキシシラン、エチルジエトキシフェノキシシラン、プロピルジエトキシフェノキシシラン、フェニルジエトキシフェノキシシラン、オクチルジエトキシフェノキシシラン、デシルジエトキシフェノキシシラン、メチルメトキシエトキシフェノキシシラン、エチルメトキシエトキシフェノキシシラン、プロピルメトキシエトキシフェノキシシラン、フェニルメトキシエトキシフェノキシシラン、オクチルメトキシエトキシフェノキシシラン、及びデシルメトキシエトキシフェノキシシランが挙げられる。
【0056】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーと官能化剤との間の反応を完了させるのに十分な時間が提供された後に、安定化剤をポリマーセメントに添加する。1つ以上の実施形態では、官能化剤をポリマーセメントに導入した時間から30分後、他の実施形態では15分後、及び他の実施形態では10分後に、安定化剤をポリマーセメントに導入する。
【0057】
本発明の実施において用いられる安定化剤(すなわち、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン)の量は、開始剤に関連するリチウムのモル数に関して説明され得る。1つ以上の実施形態では、開始剤中のリチウム1モル当たり0.5モル超、他の実施形態では1モル超、他の実施形態では2モル超、及び他の実施形態では3モル超の安定化剤が重合混合物に導入される。これら又は他の実施形態では、リチウム1モル当たり8未満、他の実施形態では7未満、他の実施形態では6未満、他の実施形態では5未満、他の実施形態では4.5未満、他の実施形態では4未満、及び他の実施形態では3.5モル未満の安定化剤が重合混合物に導入される。1つ以上の実施形態では、リチウム1モル当たり約0~約7、他の実施形態では約2~約6、及び他の実施形態では約3~約5モルの安定化剤が重合混合物に導入される。1つ以上の実施形態では、安定化剤(例えば、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン)は、用いられない。
【0058】
他の実施形態では、本発明の実施において用いられる安定化剤(すなわち、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン)の量は、用いられる官能化剤のモル数に対するモル比として説明され得る。1つ以上の実施形態では、用いられる安定化剤のモル数対官能化剤のモル数の比は、約0:1~約16:1、他の実施形態では約0.5:1~約10:1、及び他の実施形態では約2:1~約8:1である。これら又は他の実施形態では、用いられる安定化剤のモル数対官能化剤のモル数の比は、16:1未満、他の実施形態では10:1未満、他の実施形態では8:1未満、他の実施形態では5:1未満、及び他の実施形態では4.5:1未満である。
【0059】
1つ以上の実施形態では、ポリマーの安定化(すなわち、安定化剤の導入)は、重合が行われた同じ容器内で行われる。これらの実施形態では、これは、変性が行われた同じ容器を含む。他の実施形態では、ポリマーの安定化(すなわち、安定化剤の導入)は、重合が行われた容器の外側で行われる。同様に、1つ以上の実施形態では、ポリマーの安定化は、ポリマーの変性が行われた容器の外側で行われる。例えば、1つ以上の実施形態では、重合が行われた容器の下流にありかつポリマー変性が行われた容器の下流にある容器又は移送ラインにおいて、安定化剤は、重合混合物(すなわち、ポリマーセメント)に添加され得る。本明細書の目的のために、重合容器に対して、安定化剤が導入される容器又は導管は、第2の容器又は第2の反応ゾーンと称される場合もある。他の実施形態では、安定化剤は、ポリマーがモノマー内に懸濁又は溶解している間にポリマーに導入され得る。
【0060】
抗酸化剤
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーに官能化剤を導入した後、任意選択でクエンチング剤及び/又は抗酸化剤を添加した後、任意選択で安定化剤の後又は一緒に、任意選択で官能化ポリマーの回収又は単離後に、抗酸化剤を重合混合物に添加してよい。例示的な抗酸化剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールが挙げられる。
【0061】
1つ以上の実施形態では、ポリマーの形成後、加工助剤、及び油などの他の任意選択の添加剤が、ポリマーセメントに添加され得る。
【0062】
任意選択のクエンチング
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーと官能化剤との間の反応が達成又は完了した後に、任意の残留している反応性ポリマー鎖及び触媒又は触媒構成成分を不活化するために、クエンチング剤を重合混合物に添加してよい。クエンチング剤としては、プロトン性化合物を挙げることができ、これには、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。用いられるクエンチング剤の量は、重合を開始するために使用されるリチウム1モル当たり0.5~10モルのクエンチング剤の範囲内であってよい。
【0063】
縮合促進剤
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーに官能化剤を導入した後、任意選択でクエンチング剤及び/又は抗酸化剤を添加した後、任意選択で安定化剤の後又は一緒に、任意選択で官能化ポリマーの回収又は単離後に、縮合促進剤を重合混合物に添加してよい。有用な縮合促進剤には、スズ及び/又はチタンカルボキシレート並びにスズ及び/又はチタンアルコキシドが挙げられる。一具体例は、チタン2-エチルヘキシルオキシドである。有用な縮合触媒及びその使用は、米国特許出願公開第2005/0159554号(米国特許第7,683,151号)に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、有機酸を縮合促進剤として使用することができる。有用なタイプの有機酸としては、脂肪族、脂環式、及び芳香族のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及びテトラカルボン酸が挙げられる。有用な有機酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、及び安息香酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の実施において用いられる縮合促進剤の量は、開始剤に関連するリチウムのモル数に関して説明することができる。1つ以上の実施形態では、リチウム1モル当たりの縮合促進剤の量は、開始剤中のリチウム1モル当たり1.0超、他の実施形態では1.5超、及び他の実施形態では1.8モル超の縮合促進剤である。これら又は他の実施形態では、リチウム1モル当たり4.0未満、他の実施形態では3.3未満、及び他の実施形態では3.0モル未満の縮合促進剤が重合混合物に導入される。1つ以上の実施形態では、リチウム1モル当たり約1.0~約4.0、他の実施形態では約1.5~約3.3、及び他の実施形態では約1.8~約3.0モルの縮合促進剤が重合混合物に導入される。
【0065】
ポリマーの脱溶媒
上述したとおり、任意選択の安定化に続いて、並びに任意選択の縮合促進剤及び/又は抗酸化剤の導入に続いて、ポリマー生成物(例えば、安定化された官能化ポリマー)は、脱溶媒と称され得る、溶媒からの分離を受ける。換言すれば、上記のように、有機溶媒中でポリマーを合成し、脱溶媒工程中に、有機溶媒をポリマーから分離する。
【0066】
特定の実施形態では、脱溶媒は、熱水及び/又は蒸気凝固を含む。例えば、変性ポリマーを含む重合混合物は、蒸気又は熱水流と合わせられ得る。蒸気又は熱水流に関連する熱が、溶媒及び任意の未反応モノマーを揮発させる。次いで、ポリマー生成物が、例えば、ポリマークラムの形態で水相内に分散する。ポリマークラムの性質及びサイズは、概して、(例えば、ミキサーの形態の)機械的エネルギーの導入によって操作することができる。
【0067】
1つ以上の実施形態では、ポリマークラムは、以下に記載される後続の乾燥工程まで、水内でクラム分散体として一時的に保存される。クラム分散体は、概して、ポリマー粒子又はクラムと水との混合物である。凝固ポリマーと称される場合もあるポリマー粒子は、概して、マクロスケールであり、少なくとも1mmを超える寸法を有する。このクラム分散体は、連続撹拌槽型反応器などの従来の反応器槽などの槽内に収容され得る。
【0068】
1つ以上の実施形態では、残留溶媒を除去し、ポリマーを乾燥させる(すなわち、ポリマーを水から分離する)ために、ポリマークラムは、更に加工され得る。本発明の実施では、ポリマーは、濾過、圧搾、及び加熱のうちの1つ以上を含み得る従来技術を使用して乾燥させることができる。脱溶媒及び乾燥後、乾燥ポリマーの揮発分は、ポリマーの2.0重量%未満、他の実施形態では1.0重量%未満、及び他の実施形態では0.5重量%未満であり得る。
【0069】
他の実施形態では、ポリマー生成物は、熱及び/又は真空と連動して動作することができる押出機型装置である脱揮装置を用いることによって脱溶媒することができる。更に他の実施形態では、重合混合物は、直接ドラム乾燥させてもよい。
【0070】
ポリマーを脱溶媒し、乾燥させるために使用される方法にかかわらず、完成したポリマー生成物を乾燥ポリマーと称する場合もある。従来の技術を使用して、乾燥ポリマーを成形するか、又は他の方法で操作してベール(bale)にすることができる。
【0071】
乾燥ポリマーのポリマー特性
1つ以上の実施形態では、本発明の乾燥させたエージングされていない官能化ポリマーは、有利なムーニー粘度(100℃でのML1+4)を特徴とする。具体的には、1つ以上の実施形態では、ポリマーは、脱溶媒及び乾燥の24時間以内に、95未満、他の実施形態では90未満、及び他の実施形態では85未満のムーニー粘度(100℃でのML1+4)を有する。これら又は他の実施形態では、ポリマーは、脱溶媒及び乾燥の24時間以内に、約35~約120、他の実施形態では約55~約95、他の実施形態では約60~約90、及び他の実施形態では約65~約85のムーニー粘度(100℃でのML1+4)を有する。本明細書の目的のために、乾燥させたエージングされていないムーニー粘度(100℃でのML1+4)は、ベールムーニー粘度と称され得る。
【0072】
エージング後のポリマーのポリマー特性
上述したとおり、本発明の官能化ポリマーは、有利なエージング後ムーニー粘度(100℃でのML1+4)を特徴とする。具体的には、1つ以上の実施形態では、ポリマーは、脱溶媒及び乾燥後2年間エージングさせた場合、120未満、他の実施形態では105未満、及び他の実施形態では95未満のムーニー粘度(100℃でのML1+4)を有する。1つ以上の実施形態では、ポリマーは、脱溶媒及び乾燥後2年間エージングさせた場合、約70~約120、他の実施形態では約80~約105、及び他の実施形態では約85~約95のムーニー粘度(100℃でのML1+4)を有する。本明細書の目的のため、具体的には、2年間エージング後のムーニー粘度と比較して、2年間の室温エージングの代わりに100℃での加速エージングを2日間行ってもよい。換言すれば、本明細書の目的のために、2つのエージング方法は、得られる粘度に対して同等に処理される。
【0073】
産業上の利用可能性
1つ以上の実施形態では、本発明の官能化ポリジエン及びポリジエンコポリマーは、例えば、タイヤ構成成分の調製において有用であり得る加硫性ゴム組成物を配合する際に使用され得る。ゴム配合技術及び当該技術で用いられる添加物は、概して、Rubber Technology(2nd Ed.1973)のThe Compounding and Vulcanization of Rubberに開示されている。
【0074】
概して言えば、これらの加硫性ゴム組成物は、加硫性ゴム構成成分、補強充填剤、及び硬化剤又は硬化剤系を含む。これらの組成物はまた、任意選択で、金属活性化剤、樹脂、及び加工油、並びにこれらの加硫性ゴム組成物中に従来含まれ得る様々な成分を含み得る。
【0075】
加硫性組成物の成分
1つ以上の実施形態では、本発明の安定化された官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーは、加硫性組成物のゴム構成成分の全て又は一部を形成し得る。すなわち、ゴム構成成分は、エラストマー性ポリマー又は単にエラストマーとも称され得る他の加硫性ゴムを含み得る。
【0076】
ゴム組成物は、本発明のポリマーを単独で又は他のエラストマー(すなわち、ゴム又はエラストマー特性を有する組成物を形成するために加硫処理され得るポリマー)とともに使用することによって調製され得る。使用してもよい他のエラストマーには、天然及び合成ゴムが含まれる。合成ゴムは、典型的には、共役ジエンモノマーの重合、共役ジエンモノマーとビニル置換芳香族モノマーなど他のモノマーとの共重合、又はエチレンと1つ以上のα-オレフィン及び任意選択で1つ以上のジエンモノマーとの共重合から得られる。
【0077】
例示的なエラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのエラストマーは、直鎖状、分枝状、及び星形構造を含む無数の巨大分子構造を有することができる。
【0078】
ゴム組成物には、無機及び有機充填剤などの充填剤が含まれていてもよい。有機充填剤の例としては、カーボンブラック及びデンプンが挙げられる。無機充填剤の例としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、及びクレイ(水和アルミニウムシリケート)が挙げられる。カーボンブラック及びシリカは、タイヤの製造において使用される最も一般的な充填剤である。ある特定の実施形態では、異なる充填剤の混合物を有利に用いてもよい。
【0079】
1つ以上の実施形態では、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及びランプブラックが挙げられる。カーボンブラックのより具体的な例としては、超摩耗ファーネスブラック、中間超摩耗ファーネスブラック、高摩耗ファーネスブラック、高速押出ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、半強化ファーネスブラック、中級加工チャンネルブラック、ハード加工チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられる。
【0080】
特定の実施形態では、カーボンブラックは、表面積(EMSA)が、少なくとも20m/g、及び他の実施形態においては、少なくとも35m/gであってもよく、表面積値は、ASTM規格D-1765によって、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(cetyltrimethylammonium bromide、CTAB)技法を使用して決定することができる。カーボンブラックは、ペレット化された形態であっても、ペレット化されていない綿状形態であってもよい。カーボンブラックの好ましい形態は、ゴム化合物を混合するために使用される混合機器のタイプに左右され得る。
【0081】
使用され得るいくつかの市販のシリカとしては、Hi-Sil(商標)215、Hi-Sil(商標)233、及びHi-Sil(商標)190(PPG Industries,Inc.;Pittsburgh,PA)が挙げられる。市販のシリカの他の供給業者としては、Grace Davison(Baltimore,MD)、Degussa Corp.(Parsippany,NJ)、Rhodia Silica Systems(Cranbury,NJ)、及びJ.M.Huber Corp.(Edison,NJ)が挙げられる。
【0082】
1つ以上の実施形態では、シリカは、その表面積を特徴とすることができるが、表面積は、その補強特性の尺度となるものである。ブルナウアー、エメット、及びテラー(Brunauer,Emmet and Teller、「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,1939,vol.60,2 p.309-319に記載されている)は、表面積を求めるための認められている方法である。シリカのBET表面積は、概して450m/g未満である。表面積の有用な範囲としては、約32~約400m/g、約100~約250m/g、及び約150~約220m/gが挙げられる。
【0083】
シリカのpHは、概して、約5~約7であり、又はわずかに7よりも高く、又は、他の実施形態では、約5.5~約6.8である。
【0084】
1つ以上の実施形態では、シリカを充填剤として(単独で又は他の充填剤と組み合わせて)用いる場合、混合中にカップリング剤及び/又は遮蔽剤をゴム組成物に添加して、シリカとエラストマーとの相互作用を高めてもよい。有用なカップリング剤及び遮蔽剤は、以下に開示されている:米国特許第3,842,111号、同第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,674,932号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号、同第6,608,145号、同第6,667,362号、同第6,579,949号、同第6,590,017号、同第6,525,118号、同第6,342,552号、及び同第6,683,135号、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
1つ以上の実施形態では、本発明の加硫性組成物は、1つ以上の樹脂を含んでもよい。当業者には理解されるように、樹脂は、可塑化樹脂及び硬化性又は熱硬化性樹脂を含み得る。有用な可塑化樹脂としては、脂環式樹脂、脂肪族樹脂、芳香族樹脂、テルペン樹脂、及びこれらの組み合わせなどの炭化水素樹脂が挙げられる。有用な樹脂が、様々な商標名で、様々な企業から市販されており、そうした企業には、例えば、Chemfax、Dow Chemical Company、Eastman Chemical Company、Idemitsu、Neville Chemical Company、Nippon、Polysat Inc.、Resinall Corp.、Pinova Inc.、Yasuhara Chemical Co.、Ltd.、Arizona Chemical、and SI Group Inc.、及びZeonが挙げられる。
【0086】
1つ以上の実施形態では、有用な炭化水素樹脂は、約30~約160℃、他の実施形態においては約35~約60℃、及び他の実施形態においては約70~約110℃のガラス転移温度(Tg)を特徴としてもよい。1つ以上の実施形態では、有用な炭化水素樹脂はまた、その軟化点がそのガラス転移温度(Tg)よりも高いことを特徴としてもよい。ある特定の実施形態では、有用な炭化水素樹脂は、約70~約160℃、他の実施形態においては約75~約120℃、及び他の実施形態においては約120~約160℃の軟化点を有する。
【0087】
ある特定の実施形態では、1つ以上の脂環式樹脂が、脂肪族樹脂、芳香族樹脂、及びテルペン樹脂のうちの1つ以上と組み合わせて使用される。1つ以上の実施形態では、1つ以上の脂環式樹脂が、樹脂の総量に対して、主重量構成成分(例えば、50重量%を超える)として用いられる。例えば、用いられる樹脂は、少なくとも55重量%、他の実施形態では少なくとも80重量%、及び他の実施形態では少なくとも99重量%の1つ以上の脂環式樹脂を含む。
【0088】
1つ以上の実施形態では、脂環式樹脂は、脂環式ホモポリマー樹脂と脂環式コポリマー樹脂との両方を含み、脂環式コポリマー樹脂には、任意選択で1つ以上の他の(非脂環式)モノマーと組み合わせた脂環式モノマー由来のものが含まれる(ただし、全てのモノマーの量の大部分を占めるのは脂環式である)。好適で有用な脂環式樹脂の非限定的な例としては、シクロペンタジエン(「cyclopentadiene、CPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びジシクロペンタジエン(「dicyclopentadiene、DCPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。環式脂肪族コポリマー樹脂の非限定例としては、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、CPD/テルペンコポリマー樹脂、DCPD/テルペンコポリマー樹脂、CPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C5留分コポリマー樹脂)、DCPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5留分コポリマー樹脂)、CPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C9留分コポリマー樹脂)、DCPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C9留分コポリマー樹脂)、CPD/芳香族-脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C5及びC9留分コポリマー樹脂)、DCPD/芳香族-脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5及びC9留分コポリマー樹脂)、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂)、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/スチレンコポリマー樹脂)、CPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/CPDコポリマー樹脂)、及びDCPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/DCPDコポリマー樹脂)が挙げられる。ある特定の実施形態では、脂環式樹脂は、上記の脂環式樹脂のうちの1つの水素添加形態(すなわち、水素添加脂環式樹脂)を含んでもよい。他の実施形態では、脂環式樹脂は、いずれの水素添加脂環式樹脂も除外する。言い換えれば、脂環式樹脂は水素添加されていない。
【0089】
ある特定の実施形態では、1つ以上の芳香族樹脂が、脂肪族樹脂、脂環式樹脂、及びテルペン樹脂のうちの1つ以上と組み合わせて使用される。1つ以上の実施形態では、1つ以上の芳香族樹脂が、樹脂の総量に対して、主重量構成成分(例えば、50重量%を超える)として用いられる。例えば、用いられる樹脂は、少なくとも55重量%、他の実施形態では少なくとも80重量%、及び他の実施形態では少なくとも99重量%の1つ以上の芳香族樹脂を含む。
【0090】
1つ以上の実施形態では、芳香族樹脂は、芳香族ホモポリマー樹脂と芳香族コポリマー樹脂との両方を含み、芳香族コポリマー樹脂には、1つ以上の芳香族モノマーに、1つ以上の他の(非芳香族)モノマーを組み合わせたもの(ただし、いかなるタイプのモノマーもその最大量を占めるのは芳香族である)に由来のものが含まれる。有用な芳香族樹脂の非限定例としては、クマロン-インデン樹脂及びアルキル-フェノール樹脂、並びにビニル芳香族ホモポリマー又はコポリマー樹脂を含み、例えば、これらの樹脂は、アルファ-メチルスチレン、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分若しくはC8~C10留分から得られるビニル芳香族モノマーのうちの1つ以上に由来するものである。ビニル芳香族コポリマー樹脂の非限定例としては、ビニル芳香族/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/C5留分樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂、及びDCPD/スチレンコポリマー樹脂)が挙げられる。アルキル-フェノール樹脂の非限定例としては、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(低重合度を有する樹脂など)などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂が挙げられる。ある特定の実施形態では、芳香族樹脂は、上記の芳香族樹脂のうちの1つの水素添加形態(すなわち、水素添加芳香族樹脂)を含んでもよい。他の実施形態では、芳香族樹脂は、いずれの水素添加芳香族樹脂も除外する。言い換えれば、芳香族樹脂は水素添加されていない。
【0091】
ある特定の実施形態では、1つ以上の脂肪族樹脂が、脂環式樹脂、芳香族樹脂、及びテルペン樹脂のうちの1つ以上と組み合わせて使用される。1つ以上の実施形態では、1つ以上の脂肪族樹脂が、樹脂の総量に対して、主重量構成成分(例えば、50重量%を超える)として用いられる。例えば、用いられる樹脂は、少なくとも55重量、他の実施形態では少なくとも80重量%、及び他の実施形態では少なくとも99重量%の1つ以上の脂肪族樹脂を含む。
【0092】
1つ以上の実施形態では、脂肪族樹脂は、脂肪族ホモポリマー樹脂と脂肪族コポリマー樹脂との両方を含み、脂肪族コポリマー樹脂には、1つ以上の脂肪族モノマーに、1つ以上の他の(非脂肪族)モノマーを組み合わせたもの(ただし、いかなるタイプのモノマーもその最大量を占めるのは脂肪族である)に由来のものが含まれる。有用な脂肪族樹脂の非限定的な例としては、C5留分のホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分/C9留分コポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、C5留分/脂環式コポリマー樹脂、及びC5留分/C9留分/脂環式コポリマー樹脂、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。環式脂肪族モノマーの非限定例としては、シクロペンタジエン(「CPD」)及びジシクロペンタジエン(「DCPD」)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、脂肪族樹脂は、上記の脂肪族樹脂のうちの1つの水素添加形態(すなわち、水素添加脂肪族樹脂)を含んでもよい。他の実施形態では、脂肪族樹脂は、いずれの水素添加脂肪族樹脂も除外する。言い換えれば、このような実施形態では、脂肪族樹脂は水素添加されていない。
【0093】
1つ以上の実施形態では、テルペン樹脂は、テルペンホモポリマー樹脂とテルペンコポリマー樹脂との両方を含み、テルペンコポリマー樹脂には、1つ以上のテルペンモノマーに、1つ以上の他の(非テルペン)モノマーを組み合わせたもの(ただし、いかなるタイプのモノマーもその最大量を占めるのはテルペンである)に由来のものが含まれる。有用なテルペン樹脂の非限定的な例としては、アルファ-ピネン樹脂、ベータ-ピネン樹脂、リモネン樹脂(例えば、L-リモネン、D-リモネン、更にはL-異性体及びD-異性体のラセミ混合物であるジペンテン)、ベータ-フェランドレン、デルタ-3-カレン、デルタ-2-カレン、ピネン-リモネンコポリマー樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び芳香族変性テルペン樹脂、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態では、テルペン樹脂は、上記のテルペン樹脂のうちの1つの水素添加形態(すなわち、水素添加テルペン樹脂)を含んでもよい。他の実施形態では、テルペン樹脂は、いずれの水素添加テルペン樹脂も除外する。言い換えれば、このような実施形態では、テルペン樹脂は水素添加されていない。
【0094】
1つ以上の実施形態では、本発明の加硫性組成物は、エクステンダー油とも称され得る加工油を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、加工油を欠いているか、又は実質的に欠いている。
【0095】
特定の実施形態では、用いられる油としては、従来からエクステンダー油として使用されるものが挙げられる。使用してもよい有用な油類又は展延剤としては、芳香族油、パラフィン系油、ナフテン系油、植物油(ヒマシ油以外)、MES、TDAE、及びSRAEを含む低PCA油、及び重ナフテン系油が挙げられるが、これらに限定されない。好適な低PCA油としてはまた、野菜、木の実、及び種子から採取できるものなど、様々な植物起源の油も挙げられる。非限定的な例としては、ダイズ油、ヒマワリ油、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野において一般的に理解されているように、油は、樹脂などの加硫性組成物の他の成分と相対的に比較される粘度を有する化合物を指す。
【0096】
1つ以上の実施形態では、油は、1分子当たり15超、他の実施形態では20超、他の実施形態では25超、他の実施形態では30個超の炭素原子、他の実施形態では35個超の炭素原子、及び他の実施形態では40個超の炭素原子を有する炭化水素化合物を含む。これら又は他の実施形態では、油は、1分子当たり250未満、他の実施形態では200未満、他の実施形態では150未満、他の実施形態では120未満、他の実施形態では100未満、他の実施形態では90未満、他の実施形態では80未満、他の実施形態では70未満、他の実施形態では60未満、他の実施形態では50個未満の炭素原子を有する炭化水素化合物を含む。1つ以上の実施形態では、油は、1分子当たり約15~約250、他の実施形態では約20~約200、他の実施形態では1分子当たり約25~約100個の炭素原子、他の実施形態では1分子当たり約25~約70個の炭素原子、他の実施形態では1分子当たり約25~約70個の炭素原子、他の実施形態では1分子当たり約25~約60個の炭素原子、及び他の実施形態では1分子当たり約25~約40個の炭素原子を有する炭化水素化合物を含む。
【0097】
1つ以上の実施形態では、油は、25℃で、5超、他の実施形態では10超、他の実施形態では15超、他の実施形態では20超、他の実施形態では25超、他の実施形態では30超、他の実施形態では35超、及び他の実施形態では40mPa・s超の動的粘度を有する炭化水素化合物を含む。これら又は他の実施形態では、油は、25℃で、3000未満、他の実施形態では2500未満、他の実施形態では2000未満、他の実施形態では1500未満、他の実施形態では1000未満、他の実施形態では750未満、他の実施形態では500未満、他の実施形態では250未満、他の実施形態では100未満、及び他の実施形態では75mPa・s未満の動的粘度を有する炭化水素化合物を含む。1つ以上の実施形態では、油は、25℃で、約5~約3000、他の実施形態では約15~約2000、他の実施形態では約20~約1500、他の実施形態では約25~約1000、他の実施形態では約30~約750、他の実施形態では約35~約500、及び他の実施形態では約50~約250mPa・sの動的粘度を有する炭化水素化合物を含む。
【0098】
硫黄又は過酸化物系硬化系を含む、多数のゴム硬化剤(加硫剤とも呼ばれる)が用いられてもよい。硬化剤は、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.20,pgs.365-468,(3rdEd.1982)、特に、Vulcanization Agents and Auxiliary Materials,pgs.390-402、及びA.Y.Coran,Vulcanization,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,(2nd Ed.1989)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0099】
ゴム配合において典型的に用いられる他の成分も、ゴム組成物に添加することができる。これらには、促進剤、促進活性剤、油、可塑剤、蝋、スコーチ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着付与樹脂、強化用樹脂、ステアリン酸などの脂肪酸、解こう剤、並びに抗酸化剤及びオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤が含まれる。特定の実施形態では、用いられる油としては、従来からエクステンダー油として使用されるものが挙げられる。これは、前述したとおりである。
【0100】
成分量
上述したとおり、加硫性組成物は、加硫性ゴム構成成分を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、組成物の全重量に基づいて、20超、他の実施形態では30超、及び他の実施形態では40重量パーセント超の(単にゴム構成成分と称され得る)加硫性ゴム構成成分を含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、加硫性組成物の全重量に基づいて、90未満、他の実施形態では70未満、及び他の実施形態では60重量パーセント未満のゴム構成成分を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、加硫性組成物の全重量に基づいて、約20~約90、他の実施形態では約30~約70、及び他の実施形態では約40~約60重量パーセントのゴム構成成分を含む。
【0101】
1つ以上の実施形態では、本発明の加硫性組成物のゴム構成成分は、10重量%超、他の実施形態では30重量%超、及び他の実施形態では50重量%超の本発明の官能化ポリマーを含み、残りは他の加硫性ゴムを含む。これら又は他の実施形態では、本発明の加硫性組成物のゴム構成成分は、100重量%未満、他の実施形態では90重量%未満、及び他の実施形態では80重量%未満の本発明の官能化ポリマーを含み、残りは他の加硫性ゴムを含む。1つ以上の実施形態では、本発明の加硫性組成物のゴム構成成分は、約10~約100重量%、他の実施形態では約30~約90重量%、及び他の実施形態では約50~約80重量%の本発明の官能化ポリマーを含み、残りは他の加硫性ゴムを含む。
【0102】
充填材
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(per 100 parts by weight rubber、phr)0超、他の実施形態では40超、他の実施形態では60超、他の実施形態では80超、他の実施形態では90超、他の実施形態では100超、及び他の実施形態では110重量部(parts by weight、pbw)超の充填剤を含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、200未満、他の実施形態では160未満、他の実施形態では150未満、及び他の実施形態では140pbw未満の充填剤phrを含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、約40~約200、他の実施形態では約60~約160、及び他の実施形態では約100~約150pbwの充填剤phrを含む。
【0103】
カーボンブラック
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)0超、他の実施形態では1超、他の実施形態では2超、他の実施形態では5超、他の実施形態では10超、及び他の実施形態では15重量部(pbw)超のカーボンブラックを含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、60未満、他の実施形態では40未満、及び他の実施形態では、30pbw未満のカーボンブラックphrを含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、約1~約60、他の実施形態では約5~約50、及び他の実施形態では約10~約40pbwのカーボンブラックphrを含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、カーボンブラックを欠いているか、又は実質的に欠いている。
【0104】
シリカ
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)5超、他の実施形態では40超、他の実施形態では60超、他の実施形態では70超、他の実施形態では80超、他の実施形態では90超、他の実施形態では100超、及び他の実施形態では110重量部(pbw)超のシリカを含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、140未満、他の実施形態では130未満、他の実施形態では120未満、他の実施形態では120未満、及び他の実施形態では100pbw未満のシリカphrを含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、約40~約140、他の実施形態では約60~約130、及び他の実施形態では約80~約120pbwのシリカphrを含む。
【0105】
充填剤比
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、シリカ対カーボンブラックなどの他の充填剤化合物の比を特徴とすることができる。1つ以上の実施形態では、シリカは、カーボンブラックなどの他の充填剤と比較して過剰に使用される。1つ以上の実施形態では、シリカ対カーボンブラックの量の比は、重量比に基づいて、1:1超、他の実施形態では2:1超、他の実施形態では3:1超、及び他の実施形態では5:1超である。1つ以上の実施形態では、シリカ対カーボンブラックの重量比は、約1:1~約30:1、他の実施形態では約2.1:1~約20:1、及び他の実施形態では約3:1~約10:1である。
【0106】
シリカカップリング剤
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、シリカ100重量部当たり1超、他の実施形態では2超、及び他の実施形態では5重量部(pbw)超のシリカカップリング剤を含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、シリカ100重量部当たり20未満、他の実施形態では15未満、及び他の実施形態では10pbw未満のシリカカップリング剤を含む。1つ以上の実施形態では、本加硫性組成物は、シリカ100重量部当たり約1~約20、他の実施形態では約2~約15、及び他の実施形態では約5~約10pbwのシリカカップリング剤を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、シリカカップリング剤を欠いているか、又は実質的に欠いている。
【0107】
可塑化樹脂
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)0.1、他の実施形態では0.5超、他の実施形態では1.0超、他の実施形態では1.5超、他の実施形態では15超、及び他の実施形態では25重量部(pbw)超の可塑化樹脂を含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、150、他の実施形態では120未満、他の実施形態では90未満、他の実施形態では80未満、他の実施形態では60未満、他の実施形態では45未満、他の実施形態では15未満、他の実施形態では10未満、及び他の実施形態では3.0pbw(phr)未満の可塑化樹脂(例えば、炭化水素樹脂)を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、約1~約150、他の実施形態では約0.5~約15、他の実施形態では約1~約10、他の実施形態では約1.5~約3、他の実施形態では約15~約100、及び他の実施形態では約25~約80pbw(phr)の可塑化樹脂(例えば、炭化水素樹脂)を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、可塑化樹脂を欠いているか、又は実質的に欠いている。
【0108】
加工/エクステンダー油
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)、0.1超、他の実施形態では0.5超、他の実施形態では1超、他の実施形態では1.5超、及び他の実施形態では2pbw超の加工油(ナフテン系油)を含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、20未満、他の実施形態では18未満、他の実施形態では15未満、他の実施形態では12未満、他の実施形態では10未満、及び他の実施形態では8未満、他の実施形態では5未満、及び他の実施形態では3pbw(phr)未満の加工油を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、約0.1~約20、他の実施形態では約0.5~約18、他の実施形態では約0.5~約15、他の実施形態では約1~約10、他の実施形態では約0.5~約18、他の実施形態では約1.5~約3.0、及び他の実施形態では約2~約12pbw(phr)の油を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、油を欠いているか、又は実質的に欠いている。
【0109】
可塑化添加剤
1つ以上の実施形態では、可塑化樹脂及び加工油は、集合的に可塑化添加剤、可塑化成分、可塑化成分、又は可塑化系と称され得る。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)0.5超、他の実施形態では1超、及び他の実施形態では1.5重量部(pbw)超の可塑化添加剤を含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、15未満、他の実施形態では12未満、他の実施形態では10未満、他の実施形態では5未満、及び他の実施形態では3pbw(phr)未満の可塑化添加剤を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、約0.5~約15、他の実施形態では約1~約10、及び他の実施形態では約1.5~約3pbw(phr)の可塑化添加剤を含む。
【0110】
硬化性樹脂
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、2未満、他の実施形態では1未満、他の実施形態では0.5pbw(phr)未満の硬化性樹脂を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、約0.1~約8、他の実施形態では約0.5~約6、及び他の実施形態では約2~約4pbw(phr)の硬化性樹脂を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、硬化性樹脂を欠いているか、又は実質的に欠いている。
【0111】
硫黄
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、硬化剤として硫黄を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、ゴム100重量部当たり(phr)0.1超、他の実施形態では0.3超、及び他の実施形態では0.9重量部(pbw)超の硫黄を含む。これら又は他の実施形態では、加硫性組成物は、6未満、他の実施形態では4未満、他の実施形態では3.0未満、及び他の実施形態では2.0pbw(phr)未満の硫黄を含む。1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、約0.1~約5.0、他の実施形態では約0.8~約2.5、他の実施形態では約1~約2.0、及び他の実施形態では約1.0~約1.8pbw(phr)の硫黄を含む。
【0112】
加硫性組成物の加工
1つ以上の実施形態では、加硫性組成物は、加硫性ゴムと充填剤とを混合してマスターバッチを形成ことによって調製され、次いで硬化剤が、マスターバッチにその後添加される。マスターバッチの調製は、1つ以上の補助的な混合工程を使用して行われてもよく、その混合工程では、例えば、2つ以上の成分を混合することによって最初の混合物を調製した後で、1つ以上の成分を順次、組成物に添加してもよい。また、従来技術を使用して、カーボンブラック、追加の充填剤、シリカ、シリカカップリング剤、シリカ分散剤、加工油、酸化亜鉛及び脂肪酸などの加工助剤、並びに抗酸化剤又はオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤などが挙げられるが、これらに限定されない追加的な成分が、加硫性組成物の調製に添加され得る。
【0113】
混合条件
1つ以上の実施形態では、ゴム構成成分の様々な成分(例えば、ゴム構成成分及び充填剤)は、任意選択で、カーボンブラック及びシリカ充填剤とともに、ゴムマスターバッチの形成における初期成分として加硫性ゴムに導入される。結果として、これらの成分は、高剪断、高温混合を受ける。1つ以上の実施形態では、このマスターバッチの混合工程は、110℃超、他の実施形態では130℃超、及び他の実施形態では150℃超の最低温度で行われる。1つ以上の実施形態では、高剪断、高温での混合は、約110℃~約170℃の温度で行われる。1つ以上の実施形態では、マスターバッチ混合工程、又はマスターバッチ混合工程の1つ以上の副工程は、混合中に組成物が到達するピーク温度を特徴とすることができる。このピーク温度は、落下温度とも称され得る。1つ以上の実施形態では、マスターバッチ混合工程中の組成物のピーク温度は、少なくとも140℃、他の実施形態では少なくとも150℃、及び他の実施形態では少なくとも160℃であってもよい。これら又は他の実施形態では、マスターバッチ混合工程中の組成物のピーク温度は、約140~約200℃、他の実施形態では約150~約190℃、及び他の実施形態では約160~約180℃であってもよい。
【0114】
最初の混合に続いて、組成物(すなわち、マスターバッチ)は、100℃未満、又は他の実施形態では80℃未満の温度まで冷却され、硬化剤が添加される。ある特定の実施形態では、約90~約110℃、又は他の実施形態では約95~約105℃の温度で混合を続け、最終的な加硫性組成物を調製する。マスターバッチ混合工程に続いて、硬化剤又は硬化剤系を組成物に導入し、混合を継続して、最終的に加硫性組成物を形成させる。この混合工程は、最終混合工程、硬化剤混合工程、又は産物混合工程と称されてもよい。この混合工程から得られる産物は、加硫性組成物と称されてもよい。
【0115】
1つ以上の実施形態では、最終混合工程は、最終混合中に組成物が到達するピーク温度を特徴とすることができる。当業者であれば認識するように、この温度は、最終落下温度とも称され得る。1つ以上の実施形態では、最終混合中の組成物のピーク温度は、最高で130℃、他の実施形態では最高で110℃、及び他の実施形態では最高で100℃であってもよい。これら又は他の実施形態では、最終混合中の組成物のピーク温度は、約80~約130℃、他の実施形態では約90~約115℃、及び他の実施形態では約95~約105℃であってもよい。
【0116】
シリカ充填タイヤ配合物に特に適用可能な混合手順及び条件は、米国特許第5,227,425号、同第5,719,207号、及び同第5,717,022号、並びに欧州特許第890,606号に記載されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、最初のマスターバッチの調製は、カップリング剤及び遮蔽剤が実質的にない状態でポリマー及びシリカを含めることによって行う。
【0117】
混合機器
加硫性組成物の全ての成分は、内蔵ミキサー(例えば、Banbury又はBrabenderミキサー)、押出機、捏和機、及び2ロールミルなどの標準的な混合機器を用いて、混合可能である。混合は、単独で又は並行して行うことができる。上述のように、成分は、単一の段階、又は他の実施形態では2段階以上で混合することができる。例えば、第1の段階(すなわち、混合段階)において、マスターバッチ(典型的にはゴム構成成分及び充填剤を含む)が調製される。マスターバッチが調製されると、最終混合段階において、加硫剤をマスターバッチ内に導入して混合してもよく、この最終混合段階は、典型的には、比較的低温で実施され、それにより加硫のタイミングが早くなりすぎる可能性を低減させる。リミル(remill)と呼ばれることもある追加の混合段階を、マスターバッチ混合段階と最終混合段階との間に採用することも可能である。
【0118】
本発明の実施形態によれば、本発明の官能化ポリマーの使用は、ゴム加工中の(揮発性物質としての)アルコール生成の低減、例えば、ゴム混合工程中に揮発性物質として生成されるエタノールがより少ないという予想外の利点を提供する。本発明の実施形態によれば、本発明の官能化ポリマーから遊離されるアルコール(例えば、エタノール)の量は、シランカップリング剤から生成される任意のアルコール(例えば、エタノール)を除いて、加工されるポリマー1キログラム当たり5.0未満、他の実施形態では4.0未満、他の実施形態では3.5未満、及び他の実施形態では3.0mmol未満のエタノールである。更に、本発明の官能化ポリマーを加工するために必要とされる安定化剤の充填量(すなわち、安定化剤として官能化ポリマーに導入されなければならないアルコキシシランの量)の低減を考慮すると、ポリマー加工中に放出される全体的な揮発性アルコールが更に低減される。本発明の実施形態によれば、ゴム混合中に生成される総揮発性アルコール(この揮発性アルコールは、官能化ポリマー及び安定化剤に由来する)は、シランカップリング剤から生成される任意のアルコール(例えば、エタノール)を除いて、加工されるポリマー1キログラム当たり110未満、他の実施形態では95未満、他の実施形態では80未満、及び他の実施形態では70mmol未満のエタノールである。
【0119】
タイヤの調製
本加硫性組成物は、標準的なゴムの成形、成型、及び硬化技術を含む、通常のタイヤ製造技術に従って、タイヤ構成成分に加工され得る。典型的には、加硫は、本加硫性組成物を成形型内で加熱することによって行われ、例えば、これは、約140℃~約180℃まで加熱され得る。硬化又は架橋されたゴム組成物は、加硫物と称されてもよく、この加硫物は、概して、熱硬化性の三次元ポリマー網状組織を含有する。充填剤及び加工助剤などの他の成分は、架橋された網状組織全体にわたって一様に分散してもよい。空気入りタイヤは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,866,171号、同第5,876,527号、同第5,931,211号、及び同第5,971,046号に記載されるように作製され得る。
【0120】
産業上の利用可能性
上述したとおり、本発明の加硫性組成物を硬化させて、様々なタイヤ構成成分を調製することができる。これらのタイヤ構成成分としては、タイヤトレッド、タイヤサイドウォール、ベルトスキム、インナーライナ、プライスキム、及びビード頂点が挙げられるが、これらに限定されない。これらのタイヤ構成成分は、乗用車用タイヤを含む様々な車両用タイヤに含まれ得る。
【0121】
本発明のポリマーから調製されたゴム組成物が特に有用であるのは、トレッド、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム、ビーズ充填剤などのタイヤ構成成分を形成する場合である。1つ以上の実施形態では、これらのトレッド又はサイドウォール配合物には、約10重量%~約100重量%、他の実施形態では約35重量%~約90重量%、及び他の実施形態では約50重量%~約80重量%(配合物内のゴムの総重量に基づく)の本発明のポリマーが含まれていてもよい。
【実施例
【0122】
本発明の実施を実証するために、以下の実施例を調製し、試験した。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとしてみなされるべきではない。特許請求の範囲が本発明を定義するものとする。
【0123】
加熱/冷却ジャケット及び撹拌器ブレードを備えた378.5リットルの反応器内で、サンプルを調製した。ブチルリチウムを使用して、約17重量%のモノマーを含む重合混合物内でブタジエン及びスチレンとヘキサンとのランダム重合をアニオン的に開始させた。標的とするベース分子量は215kg/mol(ポリスチレン標準)であり、ブチルリチウム投入に基づいて達成された。スチレンのブタジエンに対する比を調整して、10重量%のスチレンを有し、残りがブタジエンであるポリマーを得た。ビニル含有量は、ブタジエンマー単位の41.5重量%を標的とし、これはビニル変性剤として2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを使用することによって得られた。
【0124】
約64kgのヘキサン、ヘキサン中約35重量%の約11kgのスチレン、及びヘキサン中約23重量%の約155kgブタジエンを使用することによって反応性ポリマーセメントを調製し、最初に反応器に投入し、次いで1.5kgの3重量%のブチルリチウム、続いて0.012kgの2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパン及び0.013kgのカリウムtert-アミレートを添加した。モノマー及び溶媒を室温で反応器に投入し、撹拌し、33℃の安定化温度まで加熱した。次いで、外部加熱を中止し、ブチルリチウム開始剤を投入して、重合混合物を形成した。重合混合物によって、概してブチルリチウム投入から約23分で発熱ピークを生じさせ、冷却ジャケットを使用して重合混合物を約85℃で恒温処理した。ポリマーサンプルを重合混合物から引き出し、1リットルボトルに導入し、約10mLのイソプロパノール及び約10mLのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)の10%溶液と合わせた。
【0125】
ピーク重合温度の約5分以内に、表Iに提供されるタイプ及び量の官能化剤を反応器に投入した。重合混合物を約30分間連続的に撹拌し、次いでエチルヘキサン酸(ethylhexanoic acid、EHA)(約0.092kg)、続いてリチウム開始剤に関連するリチウム1当量当たり約4.0当量のOTESであるオクチルトリエトキシシラン(octyltriethoxysilane、OTES)を反応器に添加した。次いで、0.252kgのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、続いて約0.023kgのイソプロパノールを投入した。官能化剤は、3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシラン(3-EOS)及び3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルメチルジエトキシシラン(2-EOS)であった。プロセスのこの時点で、ポリスチレン標準物質及びポリスチレンMark Houwink定数(この分析は、カップリング%を決定するためにも使用した)を用いるGPCによってピーク分子量、並びにムーニー粘度(100℃でのML1+4)を分析するために、サンプルを抽出した。10℃/分の加熱速度で、-120℃~23℃の範囲にわたって、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry、DSC)によってガラス転移温度(T)を測定した。ブタジエン含有量のビニル微細構造(1,2-微細構造)及びスチレン含有量のビニル微細構造を、赤外線によって測定した。Mitsubishi Chemical Analytech NSX-2100 Elemental Analyzer Systemを使用して、凝固サンプルに対して総窒素分析を実施した(3回)。
【0126】
プロセスのこの時点で分析したポリマーは、「ブレンド槽」(例えば、ブレンド槽ムーニー)と称され得る。本明細書及び発明の目的のために、ブレンド槽ムーニー及び脱溶媒時のムーニーは、等価であるとみなされる。
【0127】
次いで、重合混合物を水系脱溶媒プロセスに移した。具体的には、水を含む槽を約82℃の温度まで加熱した。重合混合物をこの槽にゆっくりと添加し、ヘキサンを揮発させ、凝縮器内で揮発物を回収した。ポリマーは、水の存在下において凝固して、凝固したポリマー分散体を形成した。次いで、グラインダ(すなわち、穿孔ダイを備えた単軸押出機)にポリマー-水混合物を通すことによってポリマーを脱水した。次いで、脱水させたポリマーを71℃のオーブン内で1時間乾燥させ、次いで、乾燥する(例えば、約0.5重量%未満の含水量)まで60℃のオーブン内で加熱した。乾燥に続いて、ポリマーをベールにし、ムーニー粘度(100℃でのML1+4)を測定して、ベール未加工ムーニー(Bale Raw Mooney)を得た。ベールのサンプルを100℃のオーブン内に48時間置くことによって、エージングさせた。次いで、これらのエージングさせたサンプルのムーニー粘度(100℃でのML1+4)を測定した。
【0128】
ポリマームーニー粘度は、Monsanto Mooney粘度計を使用して決定した。100℃の大型ローター上で4分間、1分間のウォームアップ時間で、ML(1+4)値を決定した。
【0129】
【表1】
【0130】
加硫性組成物は、表IIに示される3段階混合手順を使用することによって、300g Brabenderミキサー内で調製した。リミル(remill)は、任意の成分の追加を含まなかった。マスターバッチ段階を、90℃のミキサー温度で50rpmで開始して混合し、5分間又はサンプルが160℃に達するまでのいずれか最初に生じたほうで混合した。リミル段階を、90℃のミキサー温度で50rpmで開始して混合し、3.0分間又はサンプルが160℃に達するまでのいずれか最初に生じたほうで混合した。最終段階を、60℃のミキサー温度で40rpmで開始して混合し、2.5分間又はサンプルが100℃に達するまでのいずれか最初に生じたほうで混合した。
【0131】
【表2】
【0132】
加硫性組成物にムーニー分析を施した。サンプルを145℃で33分間硬化させ、機械的及び動的特性の分析を施した。機械的特性は、ASTM D412に従って試験し、動的特性は、動的分析器を使用して試験した。分析の結果を表IIIに記載する。
【0133】
【表3】
【0134】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない様々な修正及び変更が当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態に正式に限定されるものではない。

【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーポリマー組成物を調製するための方法であって、反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを、式:
【化1】
(式中、R、R、R、R、及びRは、各々独立してヒドロカルビル基であり、Rは、ジヒドロカルビル基である)によって定義される末端停止剤と反応させて、それによって官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーを形成することを含む、方法。
【請求項2】
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを末端停止剤と反応させる前記工程の後に、前記官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーを安定化剤で処理し、前記末端停止剤を前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーと約0.60:1~約1:1のモル比で反応させ、前記ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランのモル数対リチウム系開始剤に関連するリチウムのモル数のモル比が、5:1未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リチウム系開始剤の存在下で、1,3-ブタジエンを、任意選択で、それと共重合可能なモノマーと一緒にアニオン重合して、前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを形成することによって、前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが形成され、
アニオン重合する前記工程が、約-10℃~約200℃のピーク重合温度に達し、
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、重合混合物を形成し、
前記重合混合物が、ポリジエン又はポリジエンコポリマーの総量に基づいて、75モル%超の反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを含み、
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーを末端停止剤と反応させる前記工程が、70モルパーセント超の前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーの変性をもたらす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、約35~約120のエージングされていないムーニー(100℃でのML1+4)を有し、
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、約160~約280kg/molのMpを有し、
前記反応性ポリジエン又はポリジエンコポリマーが、200kg/mol超のMnを有し、
用いられる末端停止剤の量が、前記リチウム含有開始剤中のリチウム1モル当たり0.5モル超の末端停止剤であり、
用いられる末端停止剤の量が、前記リチウム含有開始剤中のリチウム1モル当たり0.95モル未満の末端停止剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
加硫性ゴム組成物であって、
(i)請求項1~4のいずれか一項に記載の官能化ポリジエン又はポリジエンコポリマーと、
(ii)シリカ充填剤と、
(iii)硬化剤と、を含む、加硫性ゴム組成物。

【国際調査報告】