(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】管内の水素の流量計測
(51)【国際特許分類】
G01F 1/00 20220101AFI20241226BHJP
【FI】
G01F1/00 K
G01F1/00 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540849
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2022084987
(87)【国際公開番号】W WO2023134930
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】102022100779.0
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524253618
【氏名又は名称】ビンダー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー,ロバート
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CC11
2F030CF01
(57)【要約】
【課題】計測装置の取付条件にかかわらず、校正するのが簡単で、そのため確実に再現性のある計測値を出すことのできる、水素の流量を計測するための計測装置を提供する。
【解決手段】それぞれ第1内径D1(接続呼び径)を有し、管への接続用に設けられている第1の上流側長手方向端部分(31)および第2の下流側長手方向端部分(32)と、D1より大きい第2内径D2を有する中央長手方向部分(37)と、それぞれの場合において変化する内径を有し、長手方向端部分(31,32)と中央長手方向部分(37)との間に設けられている長手方向移行部分(34,35)とに区画される管部材(12)と、第1の長手方向端部分(31)から中央長手方向部分(37)まで走行し、半径方向内側に延びている複数の偏向板(40)と、中央長手方向部分(37)の上流端に設けられている流れ調整器要素(50)と、中央長手方向部分(37)の下流端に配置されて、管部材(12)と同心状になるようにするとともに、流れが通過できる環状の隙間(76)を規定する円形バッフル要素(70)と、流量を計測するための計測点(21)が、第2内径D2に対応する距離の分だけ、円形バッフル要素(70)から離れて管部材(12)の中央長手軸(L)上に位置する、センサ要素(22)と、を備える計測装置。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管を流れる水素の流量を計測するための計測装置であって、
それぞれ第1内径D1(接続呼び径)を有し、管への接続用に設けられている第1の上流側長手方向端部分(31)および第2の下流側長手方向端部分(32)と、D1より大きい第2内径D2を有する中央長手方向部分(37)と、それぞれの場合において変化する内径を有し、前記長手方向端部分(31,32)と前記中央長手方向部分(37)との間に設けられている長手方向移行部分(34,35)とに区画される、管部材(12)と、
前記第1の長手方向端部分(31)から前記中央長手方向部分(37)まで走行し、半径方向内側に延びている複数の偏向板(40)と、
前記中央長手方向部分(37)の上流端に設けられている流れ調整器要素(50)と、
前記中央長手方向部分(37)の下流端に配置されて、前記管部材(12)と同心状になるようにするとともに、流れが通過できる環状の隙間(76)を規定する円形バッフル要素(70)と、
計測点(21)で流量を計測するためのセンサ要素(22)であって、前記計測点(21)が、前記第2内径D2に対応する距離の分だけ、前記円形バッフル要素(70)から離れて前記管部材(12)の前記中央長手軸(L)上に位置する、センサ要素(22)と、
を備える計測装置。
【請求項2】
前記流れ調整器要素(50)は多孔板(52)として形成されている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記偏向板(40)が4枚設けられており、前記管部材の周方向に互いに均一な間隔で配置されている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記バッフル要素(70)は、特に平らな半球に類似した曲面を有しており、その湾曲は流れの方向の反対を向いている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記2つの長手方向端部分(31,32)には、管への接続用フランジ(14,16)がそれぞれ備えられている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
前記偏向板(40)は、前記管部材の長手軸(L)に少なくとも一部平行に延びている半径方向内縁(42)を有する、請求項1または請求項3に記載の計測装置。
【請求項7】
前記管部材(12)は、その管壁に、センサチップ(22)をセンサ要素として挿入することのできる開口(18)を有する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項8】
第1内径D1に対する第2内径D2の比は1.17から1.3の範囲にあり、好ましくは1.25である、請求項1に記載の計測装置。
【請求項9】
前記流れ調整器要素(50)は、30個から85個の数の開口を有する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項10】
前記流れ調整器要素(50)は円形開口および長孔形開口の両方を有し、前記円形開口は5mmから8mmの直径を有する、請求項9に記載の計測装置。
【請求項11】
前記中央長手方向部分(37)の総断面積に対する前記流れ調整器要素(50)の前記開口の総面積の比は、40%から50%の間である、請求項9または請求項10に記載の計測装置。
【請求項12】
前記バッフル要素(70)は、好ましくはドイツ規格DIN 28011に準拠した、皿形鏡板として形成されている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項13】
前記中央長手方向部分(37)の前記内径D2に対する前記バッフル要素(70)の直径の比は、45%から60%までの範囲内にある、請求項12に記載の計測装置。
【請求項14】
前記バッフル要素(70)は、複数の、好ましくは4枚の、半径方向に配置されている支持板(72)によって前記管部材に接続されている、請求項1、請求項12または請求項13のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項15】
前記管部材(12)の長さは、前記第1内径D1の7倍から12倍、好ましくは10倍されている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項16】
前記流れ調整器要素(50)は、流れの方向で見たときに、前記中央長手方向部分(37)の始まりから0.5×D2の間隔をあけて配置されている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項17】
流れの方向に内側斜めに張り出している複数の、好ましくは4枚の、板(60)が前記第1長手方向端部分(31)に設けられている、請求項1に記載の計測装置。
【請求項18】
管を流れる水素の流量を計測するための、請求項1による計測装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内の水素の流量を計測するための計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素の流量を計測するための計測装置はすでに市場に存在するが、これらは申し分なく機能するというわけではない。これは、とりわけ、水素の物質特性および物理的特性のために、計測装置を校正することが難しいためである。危険性の低い媒体、たとえばヘリウムまたは他の代用ガスを使用することは、高価であるか、または有意義な価値が限られる結果となる。
【0003】
加えて、計測装置外の流れ関連の影響、たとえば、先行または後続の制御弁、計測装置前後の管における急な曲がり等により生じるものなどが、計測結果に大きな影響をもつとともに、校正中に再現するのが極めて難しいことからも、校正がさらに難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景において、本発明の目的は、計測装置の取付条件に関係なく、校正するのが簡単で、そのため確実に再現性のある計測値を出すことのできる、水素の流量を計測するための計測装置を提供することである。
【0005】
この目的は、以下に開示する水素の流量を計測するための計測装置により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本計測装置は、それぞれ第1内径D1(接続呼び径)を有し、管への接続用に設けられている第1の上流側長手方向端部分および第2の下流側長手方向端部分と、D1より大きい第2内径D2を有する中央長手方向部分と、それぞれの場合において、変化する内径を有し、長手方向端部分と中央長手方向部分との間に設けられている長手方向移行部分とを有する管部材を備える。
【0007】
さらに、第1の長手方向端部分から中央長手方向部分まで走行している半径方向内側に延びる複数のバッフル板が設けられており、中央長手部分の上流端に設けられている流れ調整器要素、および中央長手方向部分の下流端に配置されて、管部材と同心状になるようにするとともに、流れが通過できる環状の隙間を規定する円形バッフル要素が設けられている。
【0008】
さらに、計測点で流量を計測するセンサ要素であって、計測点が、第2内径D2に対応する距離の分だけ、バッフル要素から離れて管部材の中央長手軸上に位置し、すなわち、言い換えると、計測点がバッフル要素の前のよどみ点として知られるところに配置されたセンサ要素が設けられている。
【0009】
本発明によるこの計測装置の利点は、流入する水素ガスが完璧に調整されるので、管の先行要素または後続要素によって生じる影響が効果的に阻止されることである。特に、外部の影響を阻止することで計測装置を効果的に校正することが可能になる。
【0010】
このようにして、目的は完全に達成される。
【0011】
本発明の好適な展開において、流れ調整器要素は、多孔板または長孔板として形成されている。多数の貫通開口を有するこの種の多孔板は簡単かつコスト効果的に設けることができる。水素用に、拡大径D2を有する中央長手方向部分で使用されるとき、非常に低い圧力低下も得られることになる。この点において、「多孔板」という用語は、多孔板および長孔板の両方を意味するために使用されることに留意されたい。言い換えると、多孔板の貫通開口の幾何学形状は異なっていてもよく、すなわち、貫通開口は円形、長孔形等であってもよく、好ましくはその組合せであってもよい。
【0012】
原則として、多孔板の機能は、たとえば、異なる直径を有する穴および外側領域の長孔によって、次の部分にできるだけ同質性の流れプロファイルを有する流れを生むことである。穴および長孔、ならびにその位置および自由な貫通流面積は、近似化法を使用してCFD(数値流体力学)フローシミュレーションによって決定してもよい。第二優先事項としてのみ、自由断面をできるだけ大きくするように、たとえば、中央部分の断面積の40~50%になるように確保するべきであり、これは接続断面積の約70~80%に相当する。
【0013】
好適な展開において、4枚の偏向板が設けられており、管部材の円周方向に互いに均一な間隔で配置されている。4枚の偏向板の使用は、接線方向の流れを均質化するのに特に効果的であることが分かっている。
【0014】
好適な展開において、バッフル要素は、特に平らな半球に類似した曲面を有しており、その湾曲は流れと反対の方向を向いている。この種のコンポーネントは、コスト効果的に設けることができ、管部材内に再現性のある均質化された環状流を生む、効果的な流れの調整を実現する。バッフル要素は特に2つの機能、すなわち、一方で計測のためのよどみ点を生む機能と、他方で後続のコンポーネントによって生じる流れ関連の影響が計測点で作用するのを防止する機能とを有する。
【0015】
好適な展開において、2つの長手方向端部分は管への接続用フランジがそれぞれ備えられている。この手段は、計測装置を既設の管システムに非常に簡単に取り付けられるという利点を有する。
【0016】
好適な展開において、偏向板は、管部材の長手軸に少なくとも一部平行に延びている半径方向内縁を有する。この構成は、同様に、有利であることが分かっている。
【0017】
好適な展開において、計測要素は1以上の計測チップの形で設けられている。計測チップはこれらが計測点に位置するように配置されている。
【0018】
前述の流れの調整、特に流速の低下の結果として、計測結果は歪まず、計測チップは過度な冷却を受けず、いくつかの計測方法、たとえば、サーマル法を利用した質量流量計測では、計測スパンが有利に長くなる。
【0019】
好適な展開において、内径D2およびD1は、1.17から1.3の比(D2/D1=1.17~1.3)、好ましくは約1.25となるように選択される。内径D1がたとえば約80mmの場合、第2内径D2はおよそ約100mmである。
【0020】
好適な展開において、バッフル要素は、ドイツ規格DIN 28011に準拠した皿形鏡板として形成されている。この手段は、それが標準コンポーネントであるために、バッフル要素をコスト効果的に設けることができるという利点を有する。しかし、この点において、このDIN規格から逸脱した他の皿形鏡板もあり、同様に使用してもよいことに留意されたい。
【0021】
好適な展開において、管部材の長さは、第1内径D1の7倍から12倍である。流れ調整器要素は、流れの方向で見たときに、中央長手方向部分の端からD2の0.5倍の分だけ離れて配置されている。
【0022】
好適な展開において、流れの方向に内側斜めに張り出している複数の、好ましくは4枚の、板またはタブが第1の長手方向端部分に設けられている。この手段は、旋回流を和らげるように流れをさらに調整することができるという利点を有する。
【0023】
好適な展開において、流れ調整器要素は、約30個から85個の数の開口を有し、この開口の数は、とりわけ、使用する接続呼び径に依存する。流れ調整器要素が円形開口および長孔形開口の両方を有するとさらに好ましく、円形開口は約5mmから10mm、好ましくは5mmから8mmの直径を有する。
【0024】
好適な展開において、中央長手方向部分の総断面積に対する流れ調整器要素の開口の総面積の比は、40%から50%の間である。
【0025】
前述の特徴は、流れの直線化に関して特に有利であることが分かっている。
【0026】
本発明の基礎となる目的も、上記述べた計測装置を水素の流量を計測するため管で使用することによって達成される。
【0027】
上記述べた特徴および以下に説明する特徴は、それぞれの事例で指定される組合せだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組合せまたは単独でも使用してもよいことは理解される。本発明のさらなる利点および構成は、本明細書および添付の図面で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1a】
図1aは、本発明による計測装置の長手方向に沿った側断面図を示す。
【
図1b】
図1bは、
図1aの計測装置を流れ上流側から見た平面図を示す。
【
図2a】
図2aは、
図1aの計測装置のB-B面から上流側を見た端面図を示す。
【
図2b】
図2bは、
図1aの計測装置のC-C面から上流側を見た端面図を示す。
【
図3】
図3は、寸法を記載した
図1aの計測装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、水素の流量を計測するための、本発明による計測装置を長手方向断面で示しており、装置は参照符号10で表されている。計測装置10は、管(図示せず)に挿入できるように構成されている管部材12を備えている。このために、計測装置10または管部材12はその両端のそれぞれにフランジ14,16を有しており、各端で隣接する管に接続できるようになっている。
【0030】
計測装置10を方向または流れに依存して管に挿入する必要があるため、以下、「上流」および「下流」という用語を使用しており、フランジ14は管部材12の上流端に位置し、フランジ16は下流端に位置する、すなわち、言い換えると、計測するガス、たとえば、このケースでは水素は、矢印Pで表されるように、フランジ14の領域で管部材12に流入し、フランジ16の領域で管部材12から流出する。
【0031】
流量を計測するために、計測装置10は計測器20を備え、その構造および配置を以下詳細に説明する。
【0032】
管部材12は、空洞または内部13を有する細長い構造要素であり、さまざまな長手方向部分に分割される。これらのさまざまな長手方向の部分は、
図1aでは参照符号31,32,34,35および37で表されている。
【0033】
部分31は管部材12の端部分31であり、この端部分は上流端に配置されている。
図1aに図示されるように、フランジ14はこの端部分31に設けられている。
【0034】
管部材12の反対端で、部分32も端部分32を形成しており、これはしたがって下流端に位置し、フランジ16が設けられている。
【0035】
端部分31および端部分32は、それぞれ入口開口15、出口開口17を有し、その開口径は同一である。以下において、この内径をD1で表す。
【0036】
端部分31は、流れの方向で見たときに、移行部分34に隣接しており、その内径はD1からより大きな内径D2へと増大する。
図1aに図示されるように、D1からD2へのこの増大は好ましくは線形である。
【0037】
この移行部分34は、流れの方向で見たときに、中央部分37に隣接しており、ここに流量計測用の計測路を備える。中央部分37の内径は全長にわたり一定であり、値D2に対応する。
【0038】
内径D2を出口開口17の内径D1に縮小するために、移行部分35が中央部分37と端部分32との間に設けられている。流れの方向で見たときに、移行部分35は、最初は内径D2を有するが、次第に好ましくは線形に値D1へと減少する。
【0039】
図1aに図示されるように、前述の長手方向部分31,34,37,35および32は共通の長手軸Lを中心に同心状に延びている。中央部分37の長手方向の範囲は、他の長手方向部分のそれぞれの長手方向の範囲よりも数倍大きい。相対的な割合は、
図3を参照して以下詳細に説明する。
【0040】
管部材12は、有効な、特に再現性のある流量の計測を実現するために、流れを調整するように作用するさまざまな要素を備える。管部材12内にこれらのさまざまな要素がなければ、管部材内の流れの状態は、管部材12の前と後で、管の幾何学形状によって大幅に変わるであろう。
【0041】
管部材12の上流端に設けられているのは、複数の、好ましくは4枚の偏向板40で、管部材の周方向に均一な間隔で配置されている。偏向板40は、管部材12の内壁から半径方向内側に延びており、半径方向内縁42は長手軸Lに実質的に平行に走っている。偏向板40の2つの長手方向端部の縁44および46だけが長手軸Lに対して斜めに形成されている。
【0042】
図1aに図示されるように、偏向板40は入口開口15から下流に、端部分31および移行部分34にわたって延びており、中央部分37の領域で終わる。流れの方向で見たときに、この領域は中央部分37のほぼ最初の三分の一に位置する。
【0043】
複数の偏向板40の機能は、特に、流入する水素の旋回流として知られているものを低減することである。この種の旋回流は、管部材12の上流にあるエルボー等によって生じることがある。
【0044】
流れをさらに均質化するために、流れ調整器50が中央部分37の偏向板40の領域に設けられている。好ましくは、流れ調整器50は多孔板52として構成される。
図2cは、この種の多孔板52を詳細に示している。
【0045】
多孔板52は円の形をとり、その直径は中央部分37の内径D2よりも小さい。多孔板52は複数の半径方向の切欠き54を有し、1枚の偏向板40が各切欠きに嵌まり込むことができるように形成されている。このように、多孔板52は、偏向板40に固定することができる。その結果、切欠き54の数は、設けられた偏向板40の数に対応し、多孔板の直径は偏向板40の内縁42に沿った仮想円の直径よりも大きい。
【0046】
複数の貫通開口56が多孔板52の周辺領域に円形リング状に設けられており、各貫通開口は隣接する切欠き54間にある円形セグメントに沿って延びている。
【0047】
好ましくは複数の円形の貫通開口58が多孔板52の内側領域に設けられており、この内側領域は貫通開口56によって区切られている。30個から85個の貫通開口が特に有利であることが分かっている。円形貫通開口の直径は、5mmから10mm、好ましくは5mmから8mmの範囲内にある。特に好ましくは、中央部分37の総面積に対する貫通開口の総面積の比が40%から50%の間であり、これは端部分31の断面積の約70~80%に相当する。
【0048】
流れを調整するためのさらなる要素が、端部分31に設けられている。これは複数の、特に4枚の板60によって形成され、周方向に均一な間隔で端部分31の内壁に接続されている。板60は、長手軸Lに対して内側に斜めに張り出している台形板として設けられており、これらは流れの方向に傾いていて、言い換えると、板60は衝突流を流れの方向に、かつ、長手軸の方へ向きを変えさせる。
【0049】
図1aに図示されるように、4枚の板60が設けられている。後者は、これらが偏向板40に嵌合または接続されるように形成されている。しかし、この点において、板60は任意に設けられていること、すなわち、これらは本発明による構成の必須要素ではないことに留意されたい。
【0050】
流れを調整するためのさらなる要素が、中央部分37の他方端にバッフル要素70の形で設けられている。バッフル要素70は円形になるように形成され、複数の、好ましくは4個の保持要素72によって中央部分37の内壁に長手軸Lに対して同心状に保持されている。バッフル要素70の直径は内径D2よりも小さく、その結果、環状の隙間76が保持要素72と中央部分37の内壁との間に区画される。
【0051】
図1aに図示されるように、バッフル要素70は移行部分35の直前に位置付けられている。バッフル要素70は、好ましくは、計測路の直径、すなわち、中央長手方向部分37の内径D2よりも小さい2つの呼び径(two nominal diameters) を有する。中央長手方向部分37の内径D2に対するバッフル要素の直径の比は、好ましくは、45%から60%までの範囲内にある。
【0052】
バッフル要素70は、好ましくは、長手軸Lにほぼ平行な、角度のある縁領域78をもつ半球形またはドーム形になるように形成されている。バッフル要素70は湾曲が上流に向くようにも配置されていて、そのため、長手方向から見たときに、円形のバッフル要素の中心が最も上流である点を表す。バッフル要素70は、好ましくはドイツ規格DIN 28011に準拠した、好ましくは皿形鏡板として知られるものとして形成することもできるであろう。
【0053】
バッフル要素70の機能は背圧を蓄積することであり、そのためできるだけ高い安定性の流れプロファイルを生みながら、流れを環状の隙間76に押しやる。このように、内側部分37内の上流領域が流れを調整されるので、この領域内では流量を有利な形で計測することが可能である。
【0054】
図1aにさらに図示されるように、計測器20の少なくとも1つの計測チップ22は、まさしくこの流れ調整領域の規定される計測点21(よどみ点)に位置している。特に、計測チップ22は、長手軸Lの領域、すなわち、中央部分37の中央に(半径方向で見たとき)に位置している。計測チップ22、すなわち、計測点21からバッフル要素70までの正確な距離は、以下、より詳細に説明する。
【0055】
この点において、この実施の形態では、1以上の計測チップを有する計測装置は流量を計測するために使用されることに留意されたい。しかし、計測を規定の計測点21で行うのであれば、この種の計測チップを必要としない他の計測方法も使用してもよいことは理解される。例として、考えられる方法には、サーマル法またはさらに超音波による方法も含まれる。
【0056】
計測器20は、管部材12の壁の開口を通って内部13の中まで張り出している管状要素24を有する。さらに、計測チップ22が管状要素24の端から張り出している。封止具19が、参照符号18で表される開口に設けられていることは理解される。この封止具19は、水素を確実に内部13から開口18を通って外部に逃げられないようにするが、それでも計測チップの交換は可能である。上記すでに指摘したように、計測器20は管部材12を流れる水素の流量を計測するように作用する。この種の流量計測器は原則的には知られているため、現時点ではその動作方式はこれ以上述べない。
【0057】
計測器20に関連して、付随する計測チップ22の冷却により、流速がサーマル計測法で最大閾値を絶対に超えないようにするために、D1からD2への内径の拡大が流速の低下を引き起こすことにも留意されたい。この手段は、結果的に、計測結果および計測範囲に対してもよい影響をもつ。
【0058】
図1bおよび
図1cは、管部材12の両端の平面図を示す。簡潔にするために、この2つの図面では、
図1aと同じ部品を表すのに同じ参照番号を使用する。
図1bは、長手軸Lに向かって半径方向内側に延びている板60を明確に示す。半径方向の範囲は、この場合には、入口開口15の半径の1/3以下である。
【0059】
図2aおよび
図2bは、管部材12を、それぞれ線B-Bおよび線C-Cの交線に沿った2つの異なる端面図で示す。この場合もまた、
図1aのものと同じ参照符号を使用する。
【0060】
管部材12の寸法および管部材12内のさまざまな要素の位置を、
図3を参照して説明する。
【0061】
すでに述べたように、出口開口17および入口開口15両方の直径は値D1を有する。この直径D1は、管部材12を接続する管の呼び径として知られるもの(一般に、DNという)に依存する。ここでは、DN 80の呼び径を例として引用する。DN 80の呼び径の場合、内径は約80mmである。そのため、この場合、内径D2はDN 100の呼び径、すなわち、約100mmを有する。
【0062】
管部材12の全長は、内径D1の7倍から12倍、好ましくは10倍である。バッフル要素70の中心と計測チップ22または一般に計測点21との間の距離はD2であり、または好ましくはD2に対応し、計測チップ22/計測点21から管部材12の出口端17までの距離はD2の約2.5倍である。
【0063】
図3は、流れ調整器50が好ましくは中央部分37の始まりからD2の0.5倍分離れて配置されていることも示す。最後に、偏向板40が中央部分37に半径方向内側にD2の約1/4倍の分だけ延びていることにも留意されたい。これらの寸法および互いに対する要素の位置は、特に有利であることが分かっている。
【0064】
動作時、管部材12を管に取り付けると、水素ガスが矢印Pに従って開口15を通って管部材12に流入し、さらに偏向板40、また任意で板60、および流れ調整器50によって直接調整される。水素は低密度および低粘性のため、流れ調整器50での圧力低下はわずか数ミリバールであり、実務上では容易に受け入れられる。しかし、他のガスの使用では非常に異なる結果になるので、本計測装置10は特に水素の流量を計測するために形成されるものであり、そのように使用されることが好ましい。
【0065】
内径の拡大により、流速は低下し、流れ自体が和らげられ、下流のバッフル要素70もこの目的を果たす。バッフル要素70のよどみ点に位置するのは、計測点21すなわち計測チップ22であり、したがって流速を計測することができる。環状の隙間およびバッフル要素70自体を通る流れは、下流の、すなわち、後続の要素または制御弁が計測プロセスに影響しないという利点も有する。この種の後続の制御弁の後方影響は、いわば、バッフル要素または環状の隙間によって阻止される。
【0066】
計測装置10が管における先行要素および後続要素とは独立しているということは、管部材12外の流れの状態を考慮する必要なく、計測装置をテストベンチで非常に正確に校正できるという大きな利点を有する。これらの影響は説明した要素によって大部分が阻止される。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】