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特表2025-500617光音響イメージングデバイス及び変換器取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】光音響イメージングデバイス及び変換器取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/13 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A61B8/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540873
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2022050721
(87)【国際公開番号】W WO2023134859
(87)【国際公開日】2023-07-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524254257
【氏名又は名称】ピーエー イメージング ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン メールデルフォールト,ラトガー,ピーター,ポンペ
(72)【発明者】
【氏名】アリンク,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】オプト ルート,ティモテウス,ヨハネス,ペトリュス,マリア
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD08
4C601DE16
4C601GA01
4C601GB09
4C601GB43
(57)【要約】
光音響イメージングデバイスは複数の音響電子変換器を使用する。変換器は胸部カップのベイスンの表面の一部を形成する受音表面を有する。変換器は、各々がその受音表面に接着接続された箔と、箔のベイスン側に提供された反射コーティングと、を有する。反射(例えば金)コーティングは、変換器の表面における光音響音生成を最小限にするために使用され、この音がベイスン内から反射されるときイメージアーチファクトにつながり得る。変換器表面に接着された銅箔又はポリマー箔の平滑な箔上にコーティングを提供することにより、光音響イメージアーチファクトの著しい減少のために十分な表面における光音響音生成の減少が達成可能である。箔は、変換器がベイスン上に取り付けられた後にパッチの形で変換器上に取り付けられ得、パッチは、変換器とベイスンの表面との間のギャップ内の光音響音生成を減少させるために変換器からベイスンの周辺へと延在し得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージングされるべき組織を受け取るためのベイスンと、
前記ベイスンの内部に光を供給するように構成された光源と、
複数の音響電子変換器であって、前記複数のうちの各変換器は、前記ベイスンの前記表面内のそれぞれ異なる位置において前記ベイスンの前記表面の一部を形成する受音表面を有し、各々が、前記受け取り表面に接着接続された箔及び前記箔の前記ベイスン側に提供された反射コーティングを伴う、複数の音響電子変換器と、
を備える、光音響イメージングデバイス。
【請求項2】
前記箔は、金属箔であり、
前記反射コーティングは、前記光源からの前記光について前記金属箔の材料よりも反射性の材料である、請求項1に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項3】
前記ベイスンの前記表面は、開口を備える基本構造によって形成され、
前記音響電子変換器は、前記基本構造の前記開口を介して延在し、
デバイスは、前記箔のそれぞれのパッチを備え、各々が前記複数の音響電子変換器のそれぞれ1つを介する、請求項1又は2に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項4】
前記パッチの各々は、前記音響電子変換器の前記受け取り表面から、前記音響電子変換器が延在する際に介する前記開口の周辺の前記基本構造の前記表面へと、延在する、請求項3に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項5】
前記反射コーティングは、金コーティングである、請求項1から4のいずれか一項に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項6】
前記金コーティングは、0.1から2マイクロメートルの間の厚みを有する、請求項3に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項7】
前記箔は、銅箔である、請求項1から6のいずれか一項に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項8】
前記金コーティングと前記銅箔との間にニッケル層を備え、
前記ニッケル層は、好ましくは、少なくとも2マイクロメートルの厚みを有する、請求項7に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項9】
前記銅箔は、1から200マイクロメートルの間の厚みを有する、請求項7又は8に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項10】
前記箔は、アクリルのり又はシリコンベースのりによって前記受け取り表面に接着接続される、請求項1から9のいずれか一項に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項11】
前記音響電子変換器は、前記受け取り表面の垂直軸の周りに導電ハウジングを有し、
前記箔は、金属箔であり、
前記導電ハウジングは、前記金属箔に電気的に接続される、請求項1から10のいずれか一項に記載の光音響イメージングデバイス。
【請求項12】
光音響イメージングデバイス内に音響電子変換器を取り付ける方法であって、前記光音響イメージングデバイスは、イメージングされるべき組織を受け取るためのベイスンの表面を定義する基本構造を備え、前記基本構造は、前記基本表面内に開口を定義し、前記方法は、
前記音響電子変換器の受音表面が前記ベイスンの前記表面の一部を形成するように、前記音響電子変換器が前記開口を介して延在する位置に前記音響電子変換器を取り付けること、及び、続いて、
前記受音表面に箔を接着取り付けすることであって、前記箔は、前記ベイスンの内部に面する前記箔の側面上に反射コーティングを有すること、
を含む、方法。
【請求項13】
前記箔は、前記音響電子変換器の前記受け取り表面から、前記音響電子変換器のうちの第一が延在する際に介する前記開口の周辺の前記基本構造の前記表面へと延在する、箔のパッチである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属箔は、前記受音表面に面する更なる側面上に接着剤の事前貼付層を有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
それぞれの箔パッチは、すべての前記開口を介して延在するそれぞれの音響電子変換器の前記受音表面に取り付けられ、
前記それぞれの金属箔パッチの各々は、前記ベイスンの前記内部に面する前記箔の側面上に反射コーティングを有する、請求項12、13、又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響イメージングデバイス、及び、例えば、光音響イメージングデバイスが組み立てられるときに、光音響イメージングデバイス内に音響電子変換器を取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光音響イメージングは、光パルスを組織内に送ること、及び、組織内への光の吸収に起因する音生成のイメージ(通常は3Dイメージ)の形成に関与する(本明細書で使用される場合、「音」は「超音波」をカバーする)。組織は、水などの音響接触液も含むベイスン(basin)内に提示される。
【0003】
パルスは、好ましくは、ベイスンの壁上に出力又は分散光出力を有する光源によって提供される、非常に短い(ナノ秒)、強力な(近)赤外線パルスである。
【0004】
組織において、光パルスは光吸収を生じさせ、これが熱膨張を生じさせる温度の上昇を引き起こし、次にこれが、低強度音波(特に血液からの)を生じさせる圧力過渡につながる。ベイスンの壁を介した超高感度広帯域音響から開口内の電子変換器へのアレイは、これらの波を検出する。
【0005】
検出結果は、高空間分解能を伴うイメージ、例えば完全な3D血管系を再構築するために使用可能である。
【0006】
特に、光が供給される表面位置(皮膚)から更に離れる組織のより深い部分における光音響変換から検出される音波強度は、非常に小さい。
【0007】
これにより、(より)深くに横たわる血管のような組織からのわずかな光音響応答と、これらの血管の3Dイメージ再構築における雑音及びアーチファクトと、を区別することを可能にする必要がある。これが、小さな超音波信号を妨げるアーチファクトの抑制を要求する。妨害アーチファクトは、音響電子変換器の受音表面に達し、その表面において光音響変換を引き起こす、光に起因する可能性があることがわかっている。
【0008】
こうした光音響変換からの直接(超)音波信号は、この直接信号が、組織内での光音響変換の位置から進行しなければならない組織からの音波の到着に先行するため、タイムウィンドウイングによって容易に消去可能である。
【0009】
しかし、音響電子変換器の受音表面において発生する音は、組織内へも進行し、そこから音響電子変換器へと反射する可能性もある。こうした反射に起因するアーチファクトは、信号処理によって消去することがかなり困難であることがわかっている。代わりに、発明者等は、音響電子変換器の表面の光音響自動応答を減少させることを試行してきた。この表面からの光音響応答を減少させる可能な手法は、近赤外線光を反射する光反射層を用いて表面をコーティングし、組織から音響電子変換器の表面への音響透過を大幅に少なくすることなく、光音響が発生する可能性のあるコーティング及びコーティングの下部の表面内に達する光を最小限にすることである。
【0010】
例えば、金のコーティングが使用され得る。金は、特に酸素に対して不活性であり、それによって反射表面を保護するという、追加の有益な特性を有する。金は、(近)赤外線光に対して非常に効果的な反射体であることが知られている。参考文献[1]BASS.M(eic.)Handbook of Optics, Volume II Devices, Measurements, and Properties, Chapter 35, pages 35.1-35.74, McGraw-Hill Professional, New York, second edition(1995);ISBN 0-07-047974-7, TABLE 3 Reflectance of Selected Metals at Normal Incidence(page 35.33-34)における、Paquin,R.E.「Properties of Metals」を参照されたい。参考文献[2]Weber, M.J.(ed.),CRC Handbook of Laser Science and Technology, IV, Optical Materials, Part 2:Properties, CRC Press, Boca Raton, Florida(2003);ISBN 0-8493-3512-4, Section 1.3, Fig.4.2.8における、Lynch, D.W.,「Mirror and Reflector Materials」も参照されたい。
【0011】
原則として、非常に薄い(サブマイクロメートル(例えば、数百ナノメートル))反射性金コーティングは、音響電子変換器の下にある表面への著しい光透過を防止するのに十分であり得る。これは、金の層が、例えば反射に起因する、透過した超音波強度の損失を回避するのに十分薄いことを保証するために使用可能であるため、有利である。
【0012】
しかし、金の層は十分に反射性の最小厚みを有するが、音響電子変換器の下にある表面に起因する同様のアーチファクトが依然として生じることがわかっている。反射に必要な厚みより著しく厚い金のコーティングなしに、音響電子変換器の表面上の金のコーティングは、音響電子変換器の表面における光音響変換のそれと同様のアーチファクトを、わずかに減少させるのみであることがわかっている。
【0013】
変換器の受音表面の粗さを克服するコーティングを得るため、及び金の十分に厚い層を用いて全体域をカバーするために、このコーティングの十分な厚みが必要となる。このような金の層を堆積させるために蒸着又はスパッタリングが使用されるとき、層は、シャドーの影響を受けることになり、処理された表面が完全に平滑でないとき、結果として、表面内の隙間及び圧痕がいずれの場所でも金の(十分な)厚みを有さない現象が生じ、これが結果として、光が依然として(十分に)カバーされていない区域内の表面上で吸収される可能性がある状況を生じさせる。結果として、望ましくない光音響信号が依然として発生する可能性があり、これがシステムの信号対雑音比(SNR)に悪影響を与えることになる。
【0014】
これを克服するために、受音表面は、十分に平滑な表面及びしたがって均一な反射層を取得するために事前処理可能であるか、又は、反射性材料の相対的に厚い層を印加する必要があり、他方でこの層は超音波を完全に透過させるのに十分薄いものとする。
【0015】
US2019/275562号は、変換器の受け取り表面の上の膜上に接地電極を伴い、接地電極は変換器の金属ハウジングに接続される、超音波変換器を開示している。これは、例えば、サンプルを加熱することによってサンプルから音響信号を作成するために使用されるRFフィールドからの電磁干渉を防止するために使用される。メタルラバーシートは、導電膜として機能可能であることがわかっている。原則として、導電層を伴う膜は、光音響イメージングシステム内の超音波変換器にも使用可能であり、この場合、膜上の接地電極は、音響電子変換器の表面に達することが可能な光の一部を反射可能である。しかしながら、こうした膜構造は、サンプルからの弱い光音響信号の高透過性及び光パルスからの光の高反射性の組み合わせを保証するものではない。
【発明の概要】
【0016】
光音響イメージングデバイス内で(例えば、マンモグラフィ適用例のために)使用される変換器における、光音響変換に起因するアーチファクトを減少させることが目的である。
【0017】
一態様によれば、変換器の光音響応答に起因するアーチファクトの減少は、下記を備える光音響イメージングデバイスによって達成される。
イメージングされるべき組織を受け取るためのベイスン
ベイスンの内部に光を供給するように構成された光源
複数の音響電子変換器であって、複数のうちの各変換器は、ベイスンの表面内のそれぞれ異なる位置においてベイスンの表面の一部を形成する受音表面を有し、各々が、受け取り表面に接着接続された箔及び箔のベイスン側に提供された反射コーティングを伴う、複数の音響電子変換器。金属箔などの箔、又はより具体的には、金コーティングなどの反射コーティングを伴う銅箔の使用、及び接着剤は、光音響イメージングデバイスのコンテキストにおけるアーチファクトの抑制の高需要を達成する様式で、光音響イメージングシステムの設置及び修理を容易にする。こうした箔は、初期の組み立て又は修理の間、変換器がベイスン内に取り付けられた後であっても設置可能である。
【0018】
好ましくは、金などの堅固な高反射性材料が反射コーティングに使用される。
【0019】
銅箔などの平滑柔軟金属箔のベイスン側表面上で、金コーティングなどの、光源からの(例えば、近赤外における)光に対して反射性の反射コーティングが使用されるとき、反射コーティングは、反射性表面が音響電子変換器の表面上で直接使用されるときに比べて、敏感な光音響イメージングをより良く可能にする様式で、アーチファクトを減少させるのに十分であることがわかっている。これは、コーティングが変換器表面上に直接印加されるときに比べて、金属箔が反射コーティングの平滑性を向上させることを可能にするためであり、次に、反射コーティングによる多重反射の結果として、反射コーティングによる光吸収に起因して光音響変換を減少させることが想定される。好ましくは、コーティング表面が、そのRMS勾配値が0.42未満であり、より好ましくは、最大でも0.1であるように平滑である場所で、パッチが使用される。好ましくは、コーティングの下にある箔表面も、0.42未満であり、より好ましくは最大でも0.1であるRMS勾配値を有する。例えば冷間圧延を使用して製造される金属箔の平滑性は、反射コーティングの平滑性を向上させるのに十分であり得る。代替として、同等な平滑性を伴うポリマー箔が使用され得る。
【0020】
好ましくは、銅層上に金コーティングが使用される。金は、良好な赤外光及び近赤外光反射体である。更に、金及び銅の層は、超音波変換器への超音波透過をほとんど減少させず、これらの層は音透過の減少を最小限にするように薄くすることが可能である。更に、金は、光反射の劣化に耐性があり、銅は平滑さをより堅固にする。
【0021】
一実施形態において、平滑な箔は、変換器の受音表面に箔が貼付される前に、箔の変換器側表面上に提供され得る接着層を用いて変換器の受音表面に付着され得る。接着剤は、貼付が容易になるために選択され、箔又は変換器のいずれかの交換が必要なとき、コーティングされた箔を変換器から容易に除去することが可能なように選択される。平滑な箔は、粘着テープの形で提供され得る。
【0022】
音響電子変換器は、各々、受け取り表面に対して垂直な軸の周りに導電性ハウジングを有する。一実施形態において、導電性ハウジングは、金属箔に電気的に接続される。したがって、金属箔は、光音響信号の生成の低減、及び変換器における電磁場の遮蔽という、2つの機能を実行することができる。
【0023】
機能的な恩恵に加えて、箔上に反射性材料を印加することは、変換器上に印加するよりも安価であるため、反射性材料の印加のコストも著しく低減される。箔を蒸着チャンバ内に位置決めすることは、完全な変換器要素に比べてかなり容易であり効果的である。
【0024】
変換器がベイスンの基本構造の開口を介して延在する実施形態において、銅箔は、音響電子変換器の受け取り表面から、音響電子変換器が延在する際に介する開口の周辺の基本構造の表面へと延在する、複数の音響電子変換器の各々上のパッチ内に提供される。変換器と基本構造との間のギャップは、ベイスン又は他の材料からの水漏れを防止するためのOリングを含み得る。しかしながら、ギャップ又はギャップ内の材料が、光音響雑音生成に寄与し得ることがわかっている。変換器の受音表面からギャップを介して変換器周辺の基本構造の表面へと延在する、金コーティングされた銅パッチの使用は、ギャップ内の音響雑音生成の光生成を防止するか、又は少なくとも減少させることができる。
【0025】
パッチのエッジは何らかの光音響雑音生成を生じさせる可能性もあるが、こうした音の強度はギャップからのものよりも小さいことがわかっている。
【0026】
好ましくは、複数の音響電子変換器のうちの異なる変換器は各々、相互に分離したパッチの形の反射コーティングを伴う、それら自体の箔を有する。例えば、変換器が取り付けられた測定ベイスンの壁を消毒した後、変換器の表面が浅く損傷したとき、又はこうしたクリーニングから摩耗したとき、パッチを交換するよりも大幅に費用が掛かり、大幅な労働時間を要する、完全な変換器要素を取り外して交換する必要なしに、パッチは容易に除去可能であり、別のパッチに交換可能である。
【0027】
これら及び他の目的並びに有利な態様は、以下の図面を参照しながら例示の実施形態の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】光音響イメージングデバイスのベイスンを示す図である。
図2】光音響イメージングデバイスのベイスンの一部を概略的に示す図である。
図3】音響電子変換器を概略的に示す上面図である。
図4】パッチの断面を示す図である。
図5】正規化されたRMS超音波信号振幅を例示的に示す図である。
図6】導電層の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、生体内(in vivo)で胸部(図示せず)を受け取るための内部を有する半球形ボウル1の形の、光音響イメージングデバイスのベイスンを示す。ボウル1の表面は、光をボウル1内に供給するための光源の1つ以上の出力12及び音響電子変換器14のための開口を伴う基本構造10によって画定される。例として、胸部を受け取るための半球形ボウル1が示されているが、他の種類の組織がイメージングされ得ること、及び、異なる形状のベイスンが使用され得ることを理解されたい。
【0030】
図2は、開口を介して延在する音響電子変換器を伴う(図を簡略化するために平らに示された)基本構造10を含む、光音響イメージングデバイスのベイスンの一部を概略的に示す。
【0031】
図3は、音響電子変換器14の上面図を概略的に示す。金コーティングされた銅箔のパッチ16が、少なくとも音響電子変換器14の上方に提供される。パッチ16は、音響電子変換器14の受音表面をカバーする。好ましくは、パッチ16は、図に示されるように、音響電子変換器14を含む開口の周辺の基本構造10上に延在する。
【0032】
銅箔40、銅箔40のベイスン側表面上の金コーティング42、及び、パッチ16の変換器側表面上の接着層44を備える、パッチ16の断面を示す(一定の縮尺ではない)。例示の実施形態では、0.5マイクロメートル厚みの金コーティングを伴う、18マイクロメートル厚みの銅箔が使用された。好ましくは、銅層と金層との間にニッケル拡散バリア層が、又はニッケル拡散バリアの代わりにNiCr、Cr層が使用され得る。他の例は、コバルト、パラジウム、銅スズ合金、及びこうした材料の合金を含む。銅箔の底部は、32マイクロメートル厚みのアクリル接着剤によって、音響電子変換器14の表面に付着された。しかしながら、1から100マイクロメートルの間の銅箔厚み、並びに0.1から2マイクロメートルの間、より好ましくは0.2から2マイクロメートルの間の金コーティング厚みが使用され得る。コーティング層は、例えば、電気めっき、あるいは、スパッタリング又は蒸着などの他の堆積法によって、印加され得る。金属箔の代わりに、同様の平滑さを伴うポリマー箔が使用され得る。一例では、25マイクロメートル厚みのポリイミド箔が、0.4マイクロメートル厚みの金コーティングと共に使用された。任意選択として、薄いTi層が、ポリイミドとポリイミド箔上部の金との間で、接着促進剤として使用され得、箔の下部には45マイクロメートル厚みのシリコン接着剤によって、音響電子変換器14の表面が付着される。
【0033】
接着層の厚みは重要ではなく、異なる位置間でわずかに変動し得るが、接着層は、例えば、接着層を変換器表面上の層と組み合わせることによって、超音波整合のために最適化可能である(Callens等による、「Matching ultrasonic transducer using two matching layers where one of them is glue」in NDT&E International 37 (2004) 591-597を参照されたい)。
【0034】
コーティング、金属層、及び接着層の組み合わせの厚みは、好ましくは、組み合わせによる超音波の吸収及び反射が、変換器における超音波信号強度を大幅に減少させないように、低く維持される。例えば、組み合わせの厚みは、100マイクロメートル未満であり得、例えば、約1マイクロメートルの金、2マイクロメートルのニッケル、18マイクロメートルの銅、及び32マイクロメートルのアクリル接着剤の、約50マイクロメートルの層である。
【0035】
各音響電子変換器14がそれ自体の分離パッチを有する実施形態を説明しているが、ベイスン壁内の2つ以上の音響電子変換器14、また更には、これらの音響電子変換器14のすべてをカバーする、代わりのパッチが使用され得ることを理解されたい。
【0036】
しかしギャップについては、ボウルの基本構造10の表面及び音響電子変換器14の上部表面は、基本構造10と音響電子変換器14の上部表面との間にほぼ段差のない(例えば、0.1mm高さ未満の段差を伴う)、準連続表面を形成する。音響電子変換器14と基本構造10との間には、最大でも小さなギャップ(例えば、0.1mm幅未満)が存在する。ベイスンからの水漏れを防ぐために、Oリング又は他の手段がギャップ内に提供され得る。音響電子変換器14の上部表面は、受音表面として働く。
【0037】
音響電子変換器は、音響電子変換器が開口を介して延在する位置に各音響電子変換器を取り付けることによって、光音響イメージングデバイス内に設置され得るため、音響電子変換器の受音表面はベイスンの表面の一部を形成することになる。続いて、受音表面に箔が取り付けられ得る。これは、音響電子変換器のすべてに行われ得る。箔(のパッチ)には、箔を音響電子変換器に取り付けるために、金コーティングを伴う表面の反対側の表面上に接着層が提供され得る。
【0038】
受音層上に音響整合層を伴う変換器が使用され得る。何らかの音響整合層上での効率的な金堆積は可能ではないが、箔に金コーティングを付着させることによって、これを克服することができる。音響整合層を伴う受音表面に箔を付着させるとき、これは、変換器全体、又は少なくともその能動要素が、全体として、反射性材料を変換器の受音表面全体に直接印加するような処理を必要とすることを回避する。
【0039】
必要であれば、1つ以上の音響電子変換器にわたる金コーティングを伴う箔は、後に除去され得、新しい箔に交換され得る。箔が(初期に、又は交換として)受音表面に付着されるとき、箔は好ましくは、1つ以上の音響電子変換器の受け取り表面から、1つ以上の音響電子変換器14が延在する際に介する開口周辺の基本構造の表面へと延在するように、付着され得る。
【0040】
動作中、光源は光パルスをその出力12を介してボウル1内へと透過させ、音響電子変換器14は、生成された音をボウル1の内部で受け取る。生成された音は、光パルスの吸収に起因して生成された音を含む。音響電子変換器14は、音響電子変換器14の受音表面を介して音を受け取り、受け取った音を電子信号に変換する。音響電子変換器14は、このために圧電材料を使用し得る。光音響イメージングデバイスは、音響電子変換器14の電子出力に結合され、生成される音の振幅をボウル1の内部における位置の関数として計算するように構成された(例えば、プログラミングされた)、データ処理システム(図示されていないが、例えばコンピュータ)を備える。こうした計算を実行するための方法は、それ自体知られている。位置の関数として生成される音の結果として生じる振幅は、3D又は2Dイメージの形で表され得る。
【0041】
図5は、異なる例示の表面構成を有する変換器の表面での実験の結果を示す。変換器の表面における光音響変換に起因する超音波信号レベルが示されている。変換器は、ベイスンとよく似たホルダ内に取り付けられた。変動する近赤外波長の光パルスが、ホルダ内の変換器に供給された。変換器を照射することによって誘発された超音波信号を測定するために、3D光音響イメージャが使用された。
【0042】
信号レベルは、変換器の表面の中央を中心とし、パッチから生成される信号のすべてをキャプチャするために、変換器表面の5mm半径よりも大きいパッチの半径(例えば、6mm)にわたって放射状に(7.2mm)延在する、薄い(2.4mm)円柱堆積にわたって、再構築された初期の圧力レベルの2乗平均平方根(RMS)を計算することによって、3D光音響再構築イメージ内で決定された。信号レベルは、各波長について、直接堆積された表面の平均信号レベル(b)へと正規化されている。
【0043】
異なる曲線は、金コーティングを伴う銅箔のパッチによってカバーされた音響電子変換器14(c)、音響電子変換器14の表面上に直接金コーティングを伴う音響電子変換器14(b)、及び、金コーティングを伴わない音響電子変換器14(a)を用いて、取得される。
【0044】
図を見るとわかるように、金コーティングされた銅箔のパッチ16(c)は、結果として、著しい光音響振幅減少を生じさせる。反射層のない(すなわち、受音層は照射光に直接さらされる)変換器は、1マイクロメートルの金層がスパッタ堆積を介して直接堆積された表面を伴う変換器に比べて、2.6倍大きい信号レベルを介して生成する。金コーティングされた銅パッチが印加された変換器は、更に平均2.8倍減少される信号レベルを生成する。
【0045】
こうした減少を実施するために論理的説明は必ずしも必要ではないが、暫定的に、光音響振幅の減少は、金コーティングが音響電子変換器14上に直接ではなく銅箔上に提供されるとき、金コーティングの平滑さが向上する結果として、金コーティングからの多重反射(及びその関連付けられた吸収)の減少に起因するものと想定され得る。次に、金コーティングの向上した平滑さは、銅箔が、音響電子変換器14よりも金コーティングのためのより平滑な基板を提供することを容易にするという事実に起因する。
【0046】
Bergstromによる、Journal of Applied Physics 103, 103515(2008):「The absorption of light by rough metal surfaces_a three-dimensional ray-tracing analysis」は、反射と表面の平滑さとの間の関係(表面粗さを用いて表される)のシミュレーション結果を示している。この関係を表すために、表面粗さは、表面の2乗平均平方根(RMS)勾配(dh/dx及びdh/dyの2乗の合計の空間平均値の平方根、hは表面の高さ、dh/dx及びdh/dyは表面上の異なる方向に沿った高さの導関数)を用いて特徴付け可能である。ガウス高さ分布を想定すると、RMS勾配は下記に等しい。
Sqrt(2)*sigma/L
【0047】
上式で、sigmaは高さhの2乗平均平方根であり、Lは高さの相関長である(Bergstromを参照)。RMS勾配は、プロフィロメータ、例えば、顕微鏡を介した光学プロフィロメータ観察によって決定可能である。例えば、RMS勾配は、[ISO 3287:1997]における定義及び方法に従い、プロフィロメータを使用して測定されたRΔqを介して決定可能である。RΔq値は、Bergstromで使用されるRMS勾配定義より2倍大きい平方根の倍数であることに留意されたい。
【0048】
下記の場合、垂直、又は近垂直な(垂直から30度未満外れた)入射光を伴うシミュレーションから、表面において光音響信号生成を生じさせることに関連する多重反射が、大幅に防止されるか、又は少なくとも大幅に減少されることがわかっている。
RMS勾配<0.42(およそ0.3*sqrt(2))
【0049】
多重反射に起因するこの値を超える光吸収は、大幅に増加する。金コーティングが使用される構成において約0.35の正規化されたRMS光音響信号を生じさせるために、0.42のRMS勾配が推定可能である。図5からわかるように、銅箔なしの変換器上に堆積される金層は、結果として光吸収に起因してかなり高い光音響信号を生じさせる。
【0050】
より好ましくは、このRMS勾配は最大でも0.1である。下にある箔上の薄いコーティング層の場合、この最大値は形式的にはコーティング層の表面に適用する。しかし、下にある箔が最大でもこの最大RMS勾配値を有する場合、これは通常、コーティングのRMS勾配もこの最大値より小さいことを保証する。薄いコーティング層のRMS勾配は、下にある箔のRMS勾配と実質的に同じか又はわずかに低く、コーティングの厚みが増加するにつれて、更に小さくなる。冷間圧延された銅箔(及び他の金属箔)のRMS勾配は、この要件を満たす。プリント回路板上で使用可能な銅箔は、0.42及び0.1より下のRMS勾配値を実現するために使用可能である。更に平滑な銅箔は、使用可能GHzレンジプリント回路板である。
【0051】
実験に基づいて、変換器表面上に直接堆積された金を伴うRMS勾配は、多重反射を防止するか、又は少なくとも著しく減少させるために必要な値よりもかなり高い、2.1であることがわかった。それに対して、銅箔の金コーティングは、多重を防止するか、又は多重反射を少なくとも著しく減少させるために、最大でも0.1の、十分に低いRMS勾配を生じさせた。
【0052】
ある実験において、音響電子変換器上及びその周辺の位置の関数としての光音響振幅は、ボウル1内で壁構造の部片を懸架することによって、その壁構造の部片を介する開口内の音響電子変換器を用いて、測定された。位置の関数としての光音響振幅は、ボウルの基本構造内の音響電子変換器14を用いる測定を使用して再構築された。結果として生じるイメージは、その壁構造の部片を介する開口内の音響電子変換器周辺に光音響振幅のリングを示す。このリングの2乗平均平方根(rms)振幅は、金コーティングされた銅箔のパッチが、開口内の音響電子変換器と壁構造の部片との間のギャップを介して延在するとき、約2倍減少した。この減少は、音響電子変換器と壁構造との間のギャップに光が到達することを防止することによるものとすることができる。光音響振幅の残りのより低いrms振幅リングは、パッチのエッジに関連付けられるように思われる。このrms振幅は、パッチのエッジを丸くすることによって減少させることができる。
【0053】
図6は、導電層50がパッチ16の接着剤と音響電子変換器14の表面との間に提供される、実施形態を示す。代わりに、導電層50は、パッチ16の接着層が導電性である、パッチの銅層とすることができる。導電層50又はパッチ16の接着層は、同じく導電性である、ボウルの基本構造10に電気的に接続される。これが、外部電磁干渉から変換器14を遮断するために、導電層50及び/又は銅箔を使用することを可能にする。
【0054】
音響電子変換器14は、受け取り表面の垂直軸の周りに導電ハウジング54を有し得る。導電ハウジング54。実施形態において、ハウジング54は導電層50に電気的に接続される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】