(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】抗CD84抗体およびキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241226BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241226BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20241226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241226BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241226BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241226BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20241226BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241226BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20241226BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241226BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K35/76
G01N33/574 A
C07K14/705
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/0783
C12P21/08
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540878
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2023050194
(87)【国際公開番号】W WO2023131657
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524254372
【氏名又は名称】ギャラ セラピューティクス ソシエダ リミタダ
(71)【出願人】
【識別番号】523030500
【氏名又は名称】フンダシオ デ レセルカ クリニック バルセロナ-インスティテュート ディンベスティガシオンス ビオメディケス アウグスト ペイ イ スニェー
(71)【出願人】
【識別番号】524254383
【氏名又は名称】ホスピタル クリニク デ バルセロナ(エイチシービー)
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレイン,ゴンザレス,ネラ
(72)【発明者】
【氏名】フアン オテロ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレラ プイグ,ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ペレス アミル,ロレーナ
(72)【発明者】
【氏名】リベイロ ドス サントス,クラウディオ ジョアオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
CD84に結合する抗原結合ドメイン、抗体またはキメラ抗原受容体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列:CDR1-NYWIN(配列番号1);CDR2-DIYPVSGTTNYNEKFKR(配列番号2);およびCDR3-GTGRFAY(配列番号3);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号4);CDR2-FASNLES(配列番号5);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号6);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
b)配列:CDR1-NYWLG(配列番号7);CDR2-DIYPGGGYTNYIEKFKG(配列番号8);およびCDR3-YEGGYYGNYDAMDY(配列番号9)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASESVDNYGISFMN(配列番号10);CDR2-AASNQGS(配列番号11);およびCDR3-QQSKAVPRT(配列番号12)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
c)配列:CDR1-GFTFSSYA(配列番号13);CDR2-ISGSGGST(配列番号14);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号15)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-NIESKD(配列番号16);CDR2-DDA(配列番号17);およびCDR3-QVWDSSSDHVV(配列番号18)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
d)配列:CDR1-GFTFSSYP(配列番号19);CDR2-ISYHGRNK(配列番号20);およびCDR3-ARDRDATPGGTGVGNHGMAV(配列番号21)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-QSLLHSSGYNY(配列番号22);CDR2-MGS(配列番号23);およびCDR3-MQGLQTPPT(配列番号24)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
e)配列:CDR1-GFTFSDNA(配列番号25);CDR2-ISGTGRTT(配列番号26);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号27)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-QSLVYSDGDTY(配列番号28);CDR2-KVS(配列番号29);およびCDR3-MQGTHWPPNT(配列番号30)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
f)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号31);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号32);およびCDR3-MRTSYYFDY(配列番号33)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIFSSLA(配列番号34);CDR2-NAKTLAE(配列番号35);およびCDR3-QHHYATPFT(配列番号36)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
g)配列:CDR1-SYWIN(配列番号37);CDR2-DIYLGSGSTNYNEKFKS(配列番号38);およびCDR3-SGGYLGY(配列番号39)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号40);CDR2-FASNLES(配列番号41);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号42)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
h)配列:CDR1-NYWIG(配列番号43);CDR2-DIYPGGGYTNYNENFKG(配列番号44);およびCDR3-STTYYSSYWCFDV(配列番号45)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-KSSQSLLNSGNQANYLA(配列番号46);CDR2-GASTRES(配列番号47);およびCDR3-QNDHSYPFT(配列番号48)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
i)配列:CDR1-RYWMS(配列番号49);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号50);およびCDR3-PGPTVVATYWYFDV(配列番号51)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号52);CDR2-KVSSRFS(配列番号53);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号54)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
j)配列:CDR1-RYWIN(配列番号55);CDR2-DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号56);およびCDR3-DTTIAY(配列番号57)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVTTSRYSYMH(配列番号58);CDR2-FASNLES(配列番号59);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号60)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
k)配列:CDR1-GYNMN(配列番号131);CDR2-NIDPYYGGTNYNQKFKG(配列番号132);およびCDR3-GLLSGSFPY(配列番号133)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIYSYLA(配列番号134);CDR2-NAKTLAE(配列番号135);およびCDR3-QHHYGSPLT(配列番号136)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
l)配列:CDR1-RSWMS(配列番号137);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号138);およびCDR3-FYDGYSIYWYFDV(配列番号139)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RSSQSIVHSNGDTYLE(配列番号140);CDR2-KVSNRFS(配列番号141);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号142)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
m)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号143);CDR2-HIWWDDVKRYNPALRS(配列番号144);およびCDR3-IAVTYFFDF(配列番号145)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIFSSFA(配列番号146);CDR2-NARTLAE(配列番号147);およびCDR3-QHHYASPFT(配列番号148)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
n)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号149);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号150);およびCDR3-MSTSYYFDY(配列番号151)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-KASQSLFTSVA(配列番号152);CDR2-SASYRYT(配列番号153);およびCDR3-QQHYSSPFT(配列番号154)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);または
o)配列:CDR1-IYAMN(配列番号155);CDR2-RIRSKSNNYARFYADSVKD(配列番号156);およびCDR3-PLRSYFSMDY(配列番号157)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-KASENVDTYVS(配列番号158);CDR2-GASNRYT(配列番号159);およびCDR3-GQTYSYPWT(配列番号160)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含んでなる抗原結合ドメインを含んでなるキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、
a)配列番号61配列を有するVHドメイン;および配列番号62または108の配列を有するVLドメイン;
b)配列番号63の配列を有するVHドメイン;および配列番号64または109の配列を有するVLドメイン;
c)配列番号65の配列を有するVHドメイン;および配列番号66の配列を有するVLドメイン;
d)配列番号68の配列を有するVHドメイン;および配列番号69の配列を有するVLドメイン;
e)配列番号71の配列を有するVHドメイン;および配列番号72の配列を有するVLドメイン;
f)配列番号74の配列を有するVHドメイン;および配列番号75の配列を有するVLドメイン;
g)配列番号76の配列を有するVHドメイン;および配列番号77の配列を有するVLドメイン;
h)配列番号78の配列を有するVHドメイン;および配列番号79の配列を有するVLドメイン;
i)配列番号80の配列を有するVHドメイン;および配列番号81の配列を有するVLドメイン;
j)配列番号82の配列を有するVHドメイン;および配列番号83の配列を有するVLドメイン;
k)配列番号161の配列を有するVHドメイン;および配列番号162の配列を有するVLドメイン;
l)配列番号163の配列を有するVHドメイン;および配列番号164の配列を有するVLドメイン;
m)配列番号165の配列を有するVHドメイン;および配列番号166の配列を有するVLドメイン;
n)配列番号167の配列を有するVHドメイン;および配列番号168の配列を有するVLドメイン;または
o)配列番号169の配列を有するVHドメイン;および配列番号170の配列を有するVLドメイン;
またはそれぞれそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体
を含んでなる、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
a)CARがscFv CARであり;
b)CARがCD8a膜貫通ドメインを含み;
c)CARが4-1BBまたはCD28共刺激ドメインを含み;かつ/または
d)CARがCD3-ζシグナル伝達ドメインを含んでなる、
請求項1または2に記載のCAR。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のCARをコードする1以上のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のポリヌクレオチドまたは請求項5に記載のベクターを含んでなる細胞。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載のCARを含んでなる細胞。
【請求項8】
第1のCARおよび第2のCARを含み、第1のCARが請求項1~3のいずれか一項に記載のCARであり、場合により、第2のCARが抗CD19 CAR、抗CD20 CAR、抗CD22 CAR、抗CD33 CAR、抗CD123 CAR;または抗CD7 CARである、細胞。
【請求項9】
T細胞またはNK細胞であり、場合により、自己または同種細胞である、請求項6~8のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載のCAR、請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5に記載のベクター、または請求項6~9のいずれか一項に記載の細胞を含んでなる医薬組成物。
【請求項11】
療法、場合により癌の治療である療法において使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のCAR、請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5に記載のベクター、請求項6~9のいずれか一項に記載の細胞、または請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
癌が血液悪性腫瘍、場合により、CD84を発現する血液悪性腫瘍であり、および/または癌が慢性リンパ球性白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、慢性骨髄増殖性症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、樹状細胞新生物および組織球性肉腫からなる群から選択される、請求項11に記載の使用のためのCAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または医薬組成物。
【請求項13】
a)配列:CDR1-NYWIN(配列番号1);CDR2-DIYPVSGTTNYNEKFKR(配列番号2);およびCDR3-GTGRFAY(配列番号3);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号4);CDR2-FASNLES(配列番号5);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号6);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
b)配列:CDR1-NYWLG(配列番号7);CDR2-DIYPGGGYTNYIEKFKG(配列番号8);およびCDR3-YEGGYYGNYDAMDY(配列番号9)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASESVDNYGISFMN(配列番号10);CDR2-AASNQGS(配列番号11);およびCDR3-QQSKAVPRT(配列番号12)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
c)配列:CDR1-GFTFSSYA(配列番号13);CDR2-ISGSGGST(配列番号14);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号15)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-NIESKD(配列番号16);CDR2-DDA(配列番号17);およびCDR3-QVWDSSSDHVV(配列番号18)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
d)配列:CDR1-GFTFSSYP(配列番号19);CDR2-ISYHGRNK(配列番号20);およびCDR3-ARDRDATPGGTGVGNHGMAV(配列番号21)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-QSLLHSSGYNY(配列番号22);CDR2-MGS(配列番号23);およびCDR3-MQGLQTPPT(配列番号24)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
e)配列:CDR1-GFTFSDNA(配列番号25);CDR2-ISGTGRTT(配列番号26);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号27)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-QSLVYSDGDTY(配列番号28);CDR2-KVS(配列番号29);およびCDR3-MQGTHWPPNT(配列番号30)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
f)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号31);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号32);およびCDR3-MRTSYYFDY(配列番号33)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIFSSLA(配列番号34);CDR2-NAKTLAE(配列番号35);およびCDR3-QHHYATPFT(配列番号36)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
g)配列:CDR1-SYWIN(配列番号37);CDR2-DIYLGSGSTNYNEKFKS(配列番号38);およびCDR3-SGGYLGY(配列番号39)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号40);CDR2-FASNLES(配列番号41);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号42)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
h)配列:CDR1-NYWIG(配列番号43);CDR2-DIYPGGGYTNYNENFKG(配列番号44);およびCDR3-STTYYSSYWCFDV(配列番号45)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-KSSQSLLNSGNQANYLA(配列番号46);CDR2-GASTRES(配列番号47);およびCDR3-QNDHSYPFT(配列番号48)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
i)配列:CDR1-RYWMS(配列番号49);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号50);およびCDR3-PGPTVVATYWYFDV(配列番号51)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号52);CDR2-KVSSRFS(配列番号53);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号54)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);または
j)配列:CDR1-RYWIN(配列番号55);CDR2-DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号56);およびCDR3-DTTIAY(配列番号57)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVTTSRYSYMH(配列番号58);CDR2-FASNLES(配列番号59);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号60)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
k)配列:CDR1-GYNMN(配列番号131);CDR2-NIDPYYGGTNYNQKFKG(配列番号132);およびCDR3-GLLSGSFPY(配列番号133)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIYSYLA(配列番号134);CDR2-NAKTLAE(配列番号135);およびCDR3-QHHYGSPLT(配列番号136)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
l)配列:CDR1-RSWMS(配列番号137);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号138);およびCDR3-FYDGYSIYWYFDV(配列番号139)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RSSQSIVHSNGDTYLE(配列番号140);CDR2-KVSNRFS(配列番号141);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号142)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
m)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号143);CDR2-HIWWDDVKRYNPALRS(配列番号144);およびCDR3-IAVTYFFDF(配列番号145)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIFSSFA(配列番号146);CDR2-NARTLAE(配列番号147);およびCDR3-QHHYASPFT(配列番号148)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
n)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号149);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号150);およびCDR3-MSTSYYFDY(配列番号151)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-KASQSLFTSVA(配列番号152);CDR2-SASYRYT(配列番号153);およびCDR3-QQHYSSPFT(配列番号154)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);または
o)配列:CDR1-IYAMN(配列番号155);CDR2-RIRSKSNNYARFYADSVKD(配列番号156);およびCDR3-PLRSYFSMDY(配列番号157)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-KASENVDTYVS(配列番号158);CDR2-GASNRYT(配列番号159);およびCDR3-GQTYSYPWT(配列番号160)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含んでなる抗原結合ドメイン。
【請求項14】
請求項13に記載の抗原結合ドメインを含んでなる抗体。
【請求項15】
サンプルのCD84発現レベルを決定するため、場合により、対象由来のサンプルのCD84発現レベルを分析するための、請求項13に記載の抗原結合ドメイン、または請求項14に記載の抗体の使用。
【請求項16】
抗CD84 CARまたは抗体による治療に適した対象を特定するための方法であって、対象から単離されたサンプルのCD84発現レベルを決定することを含み、CD84発現レベルが請求項13に記載の抗原結合ドメイン、または請求項14に記載の抗体を用いて決定される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗CD84抗体およびキメラ抗原受容体(CAR)、ならびに療法、特に、癌療法におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、サンプルのCD84レベルを決定するため、および抗CD84抗体またはCARによる治療に適した対象を特定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトCD84タンパク質は、1993年に初めて同定された「分化抗原群」である。CD84の塩基配列決定により、それはSlam(シグナル伝達リンパ球活性化分子(Signaling Lymphocyte Activation Molecule)ファミリーのメンバーと同定された。
【0003】
CD84受容体の細胞外部分は、非カノニカルなIgV遠位ドメインとIgC2g近位ドメインを含み、これはSLAMファミリーの全メンバーに共通し、CD2にも似た構造である。CD84はホモフィリック結合分子として機能し、受容体:リガンド相互作用にはIgVドメインが関与し、細胞質ドメインとは独立しており、ホモフィリック界面にはCD84とSLAMファミリーの他の分子との結合を妨げる特異的な違いがある。
【0004】
ヒトCD84は、様々な種類の免疫細胞で発現される。発現レベルは細胞の種類およびその分化または活性化の状態によって異なる。CD84は造血分化のごく初期に骨髄前駆細胞に見られ、ほとんどのT細胞およびB細胞に発現するが、メモリーT細胞およびBリンパ球、濾胞性ヘルパーT細胞、および胚中心B細胞ではより発現が高い。単球および単球由来樹状細胞(DC)などの骨髄性抗原提示細胞もCD84陽性である。顆粒球もかなりのレベルのCD84を発現し、好塩基球および肥満細胞での発現が最も高い。全ての造血細胞の中で、血小板が最も高いレベルのCD84を発現し、当初は血小板-血小板相互作用の安定化に関与する凝集誘導シグナル伝達受容体として提唱された。しかしながら、CD84欠損マウスを用いた研究では、CD84は止血および血栓機能において重要な役割を果たしていないことが示されている。CD84の発現はナチュラルキラー細胞(NK)では低く、赤血球では見られない。
【0005】
CD84シグナルは、細胞の種類およびその活性化または分化の段階に応じて、白血球の機能を活性化したり抑制したりすることができる。CD84を介したシグナル伝達は、T細胞のサイトカイン分泌、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性、単球の活性化、自己貪食、同族T:Bの相互作用、および胚中心レベルでのB細胞寛容を包含する多様な免疫学的プロセスを調節する。
【0006】
CD84の変異は自己免疫障害と関連している。例えば、CD84の特定の対立遺伝子変異は、全身性紅斑性狼瘡および関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患と関連している。このような自己免疫疾患の典型的な治療は多くの場合、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDS)を含み、これらの薬物は治癒的ではないが、症状および/または病勢進行を停止したり遅延させたりする。
【0007】
CD84は特定の癌、特に慢性リンパ性白血病(CLL)などの血液悪性腫瘍で発現している。
【発明の概要】
【0008】
血液悪性腫瘍は多くの場合、化学療法または放射線療法で治療されるが、有害な副作用が知られている。従って、血液悪性腫瘍に対する治療法の改善が依然として強く求められている。
【0009】
発明の概要
本発明者らは、CD84がバーキットリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)および組織球性リンパ腫を包含する悪性血液疾患に由来する一定範囲の癌細胞株で過剰発現されることを決定付けた。
【0010】
本発明者らは、CD84と結合する一定範囲の抗体およびキメラ抗原受容体(CAR)を研究および開発した。
【0011】
特に、本発明者らは、CARの細胞発現の特性評価を行い、例えば、CAR-T細胞の増殖、サイトカイン産生、および一定範囲の標的癌細胞株に対する細胞傷害性の測定を通じて、CAR-T細胞を機能的に特徴付けた。さらに、本発明者らは、本発明のキメラ抗原受容体が、CD84を発現する癌細胞において細胞傷害性を誘導できることを実証した。
【0012】
よって、本発明は、
a)配列:CDR1-NYWIN(配列番号1);CDR2-DIYPVSGTTNYNEKFKR(配列番号2);およびCDR3-GTGRFAY(配列番号3);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号4);CDR2-FASNLES(配列番号5);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号6);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
b)配列:CDR1-NYWLG(配列番号7);CDR2-DIYPGGGYTNYIEKFKG(配列番号8);およびCDR3-YEGGYYGNYDAMDY(配列番号9)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASESVDNYGISFMN(配列番号10);CDR2-AASNQGS(配列番号11);およびCDR3-QQSKAVPRT(配列番号12)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
c)配列:CDR1-GFTFSSYA(配列番号13);CDR2-ISGSGGST(配列番号14);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号15)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-NIESKD(配列番号16);CDR2-DDA(配列番号17);およびCDR3-QVWDSSSDHVV(配列番号18)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
d)配列:CDR1-GFTFSSYP(配列番号19);CDR2-ISYHGRNK(配列番号20);およびCDR3-ARDRDATPGGTGVGNHGMAV(配列番号21)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-QSLLHSSGYNY(配列番号22);CDR2-MGS(配列番号23);およびCDR3-MQGLQTPPT(配列番号24)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
e)配列:CDR1-GFTFSDNA(配列番号25);CDR2-ISGTGRTT(配列番号26);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号27)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-QSLVYSDGDTY(配列番号28);CDR2-KVS(配列番号29);およびCDR3-MQGTHWPPNT(配列番号30)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
f)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号31);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号32);およびCDR3-MRTSYYFDY(配列番号33)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIFSSLA(配列番号34);CDR2-NAKTLAE(配列番号35);およびCDR3-QHHYATPFT(配列番号36)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
g)配列:CDR1-SYWIN(配列番号37);CDR2-DIYLGSGSTNYNEKFKS(配列番号38);およびCDR3-SGGYLGY(配列番号39)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号40);CDR2-FASNLES(配列番号41);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号42)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
h)配列:CDR1-NYWIG(配列番号43);CDR2-DIYPGGGYTNYNENFKG(配列番号44);およびCDR3-STTYYSSYWCFDV(配列番号45)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-KSSQSLLNSGNQANYLA(配列番号46);CDR2-GASTRES(配列番号47);およびCDR3-QNDHSYPFT(配列番号48)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
i)配列:CDR1-RYWMS(配列番号49);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号50);およびCDR3-PGPTVVATYWYFDV(配列番号51)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号52);CDR2-KVSSRFS(配列番号53);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号54)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
j)配列:CDR1-RYWIN(配列番号55);CDR2-DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号56);およびCDR3-DTTIAY(配列番号57)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVTTSRYSYMH(配列番号58);CDR2-FASNLES(配列番号59);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号60)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
k)配列:CDR1-GYNMN(配列番号131);CDR2-NIDPYYGGTNYNQKFKG(配列番号132);およびCDR3-GLLSGSFPY(配列番号133)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIYSYLA(配列番号134);CDR2-NAKTLAE(配列番号135);およびCDR3-QHHYGSPLT(配列番号136)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
l)配列:CDR1-RSWMS(配列番号137);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号138);およびCDR3-FYDGYSIYWYFDV(配列番号139)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RSSQSIVHSNGDTYLE(配列番号140);CDR2-KVSNRFS(配列番号141);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号142)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
m)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号143);CDR2-HIWWDDVKRYNPALRS(配列番号144);およびCDR3-IAVTYFFDF(配列番号145)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASENIFSSFA(配列番号146);CDR2-NARTLAE(配列番号147);およびCDR3-QHHYASPFT(配列番号148)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
n)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号149);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号150);およびCDR3-MSTSYYFDY(配列番号151)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-KASQSLFTSVA(配列番号152);CDR2-SASYRYT(配列番号153);およびCDR3-QQHYSSPFT(配列番号154)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);または
o)配列:CDR1-IYAMN(配列番号155);CDR2-RIRSKSNNYARFYADSVKD(配列番号156);およびCDR3-PLRSYFSMDY(配列番号157)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-KASENVDTYVS(配列番号158);CDR2-GASNRYT(配列番号159);およびCDR3-GQTYSYPWT(配列番号160)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含んでなる抗原結合ドメインを提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、
a)配列番号61の配列を有するVHドメイン;および配列番号62または108の配列を有するVLドメイン;
b)配列番号63の配列を有するVHドメイン;およびン配列番号64または109の配列を有するVLドメイ;
c)配列番号65の配列を有するVHドメイン;および配列番号66の配列を有するVLドメイン;
d)配列番号68の配列を有するVHドメイン;および配列番号69の配列を有するVLドメイン;
e)配列番号71の配列を有するVHドメイン;および配列番号72の配列を有するVLドメイン;
f)配列番号74の配列を有するVHドメイン;および配列番号75の配列を有するVLドメイン;
g)配列番号76の配列を有するVHドメイン;および配列番号77の配列を有するVLドメイン;
h)配列番号78の配列を有するVHドメイン;および配列番号79の配列を有するVLドメイン;
i)配列番号80の配列を有するVHドメイン;および配列番号81の配列を有するVLドメイン;
j)配列番号82の配列を有するVHドメイン;および配列番号83の配列を有するVLドメイン;
k)配列番号161の配列を有するVHドメイン;および配列番号162の配列を有するVLドメイン;
l)配列番号163の配列を有するVHドメイン;および配列番号164の配列を有するVLドメイン;
m)配列番号165の配列を有するVHドメイン;および配列番号166の配列を有するVLドメイン;
n)配列番号167の配列を有するVHドメイン;および配列番号168の配列を有するVLドメイン;もしくは
o)配列番号169の配列を有するVHドメイン;および配列番号170の配列を有するVLドメイン;
またはそれとそれぞれ少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体
を含んでなる。
【0014】
適切には、抗原結合ドメインは、CD84結合ドメインである。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、scFvである。
【0016】
別の態様において、本発明は、本発明の抗原結合ドメインを含んでなる抗体を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、本発明の抗原結合ドメインを含んでなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0018】
適切には、本発明の抗原結合ドメイン、抗体またはCARは、CD84に結合する。
【0019】
いくつかの実施形態では、CARは、scFv CARである。
【0020】
いくつかの実施形態では、CARは、CD8aまたはCD28膜貫通ドメインを含んでなる。好ましい実施形態では、CARは、CD8a膜貫通ドメインを含んでなる。
【0021】
抗原結合ドメインおよび膜貫通ドメインは、スペーサーにより連結されてよい。いくつかの実施形態では、スペーサーは、CD8aヒンジまたはCD28ヒンジを含む。好ましい実施形態では、CARは、CD8aヒンジを含む。
【0022】
CARは、1つ以上、例えば、2つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。好ましい実施形態では、CARは、CD3-ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0023】
CARは、1つ以上、例えば、2つまたは3つの共刺激ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、CARは、4-1BB共刺激ドメイン、CD28共刺激ドメイン、OX40共刺激ドメインおよびICOS共刺激ドメインからなる群から選択される1つ以上の共刺激ドメインを含む。
【0024】
好ましい実施形態では、CARは、4-1BB共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD28共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、OX40共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、ICOS共刺激ドメインを含む。
【0025】
好ましい実施形態では、CARは、4-1BB共刺激ドメインおよびCD3-ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0026】
好ましい実施形態では、CARは、本発明の抗原結合ドメイン、CD8a膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメインおよびCD3-ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0027】
別の態様において、本発明は、本発明の抗原結合ドメイン、抗体またはCARをコードする1以上のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター、好ましくは、レンチウイルスベクターである。
【0030】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞を提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、本発明の抗原結合ドメインまたはCARを含む細胞を提供する。
【0032】
細胞は、さらなる(第2の)CARを含んでもよい。
【0033】
別の態様において、本発明は、第1のCARおよび第2のCARを含み、第1のCARが本発明のCARである細胞を提供する。
【0034】
別の態様において、本発明は、第1の細胞および第2の細胞を含み、第1の細胞が第1のCARを含み、第2の細胞が第2のCARを含み、第1のCARが本発明のCARである組成物を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1のCARと第2のCARは異なる。いくつかの実施形態では、第1のCARと第2のCARは異なる抗原に結合する。
【0036】
別の態様において、本発明は、タンデムCARを含んでなり、タンデムCARが第1の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)および第2の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含み、第1の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)が本発明の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)である細胞を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)と第2の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)は異なる。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)と第2の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)は異なる抗原に結合する。
【0038】
いくつかの実施形態では、第2のCARは、抗CD19 CAR、抗CD20 CARまたは抗CD22 CAR(例えば、B細胞悪性腫瘍の治療のため);抗CD33 CARまたは抗CD123 CAR(例えば、AMLの治療のため);または抗CD7 CAR(例えば、T-ALLの治療のため)である。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)は、抗CD19抗原結合ドメイン(例えば、scFv)、抗CD20抗原結合ドメイン(例えば、scFv)または抗CD22抗原結合ドメイン(例えば、scFv)(例えば、B細胞悪性腫瘍の治療のため);抗CD33抗原結合ドメイン(例えば、scFv)または抗CD123抗原結合ドメイン(例えば、scFv)(例えば、AMLの治療のため);または抗CD7抗原結合ドメイン(例えば、scFv)(例えば、T-ALLの治療のため)である。
【0040】
いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞またはNK細胞、好ましくは、T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、自己または同種T細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、自己または同種NK細胞である。
【0041】
NK細胞は、例えば、いずれの好適な組織サンプル、細胞株または幹細胞供給源に由来してもよい。いくつかの実施形態では、NK細胞(好ましくは、同種NK細胞)は、臍帯血(CB)、誘導多能性幹細胞(iPSC)、骨髄(BM)、ヒト胚性幹細胞(hESC)、細胞株(例えば、NK92またはYT)、または末梢血(PB)(例えば、自己または同種)に由来する。好ましくは、NK細胞は、CBに由来する。
【0042】
別の態様において、本発明は、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0043】
別の態様において、本発明は、療法において使用するための本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態では、療法は、癌の治療である。
【0045】
別の態様において、本発明は、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む疾患を治療するための方法を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、疾患は、癌である。
【0047】
別の態様において、本発明は、薬剤の製造のための本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0048】
いくつかの実施形態では、薬剤は、疾患、好ましくは、癌を治療するためのものである。
【0049】
好ましい実施形態では、癌は、血液悪性腫瘍である。
【0050】
好ましい実施形態では、癌細胞は、CD84を発現し、例えば、血液悪性腫瘍は、CD84を発現する血液悪性腫瘍であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、慢性骨髄増殖性症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、樹状細胞新生物および組織球性肉腫からなる群から選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞 リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)および組織球性肉腫からなる群から選択される。
【0053】
好ましい実施形態では、癌は、CLL、B細胞リンパ腫、B-ALL、T-ALLおよびAMLからなる群から選択される。
【0054】
別の態様において、本発明は、AMLの治療において使用するための本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0055】
別の態様において、本発明は、T-ALLの治療において使用するための本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0056】
別の態様において、本発明は、B細胞リンパ腫の治療において使用するための本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0057】
別の態様において、本発明は、バーキットリンパ腫の治療において使用するための本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0058】
別の態様において、本発明は、サンプルのCD84発現レベルを決定するため、場合により、対象由来のサンプルのCD84発現レベルを分析するための本発明の抗原結合ドメインまたは抗体の使用を提供する。
【0059】
別の態様において、本発明は、抗CD84 CARまたは抗体による治療に適した対象を特定するための方法であって、対象から単離されたサンプルのCD84発現レベルを決定することを含み、CD84発現レベルが本発明の抗原結合ドメインまたは抗体を用いて決定される方法を提供する。
【0060】
いくつかの実施形態では、サンプルは、血液サンプルである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1. 全ての腫瘍サンプルおよび対となる正常組織のCD84(別名LY9B、SLAMF5、hCD84、mCD84)遺伝子発現プロファイルを表す棒グラフ。棒の高さは、特定の腫瘍種または正常組織の発現中央値を表す。http://gepia.cancer-pku.cn/detail.php?gene=CD84から。
【
図2】
図2.異なる腫瘍種から得られた細胞株において、RNAシークエンシングケンス(上)またはAffymetrixマイクロアレイ(下)で測定されたCD84 mRNA発現の箱ひげ(10~90パーセンタイル)表示。https://portals.broadinstitute.org/ccleから。図は、最も高いCD84発現を示す20の腫瘍種のみを示す。
【
図3】
図3.異なる細胞株のCD84発現。薄いグレーのヒストグラムは、アイソタイプ適合対照抗体による染色を表し、濃いグレーのヒストグラムは、特異的CD84抗体による染色を表す。
【
図4】
図4.フローサイトメトリーにより評価された、慢性リンパ球性白血病と診断された患者に由来する9サンプルにおけるCD84発現。薄いグレーのヒストグラムは、アイソタイプ適合対照抗体による染色を表し、濃いグレーのヒストグラムは、特異的CD84抗体による染色を表す。
【
図5】
図5.急性骨髄性白血病と診断された患者由来の10サンプルのCD84発現をフローサイトメトリーにより評価した。CD84発現が中等度の患者P04に関して代表的な一例とCD84の発現が高い患者P10に関する一例を示す。薄いグレーのヒストグラムは、アイソタイプ適合対照抗体による染色を表し、濃いグレーのヒストグラムは、特異的CD84抗体による染色を表す。
【
図6】
図6.CD84 CAR配列が挿入されていることを示すpCCL-EF1α_CAR84プラスミドベクターのマップ(上)。抗CD84第二世代CAR構築物のスキーム(下)。
【
図7】
図7.エフェクター:標的比2:1でRamos細胞と共培養したCD84標的化CAR-T細胞による、24時間のインキュベーション後のIFN-γ分泌。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性をクラスカル・ウォリス(UTに対する多重比較)で決定した。4回の試験の平均±SEMを示す。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図8】
図8.エフェクター:標的比2:1でRamos細胞と共培養したCD84標的化CART細胞による、24時間のインキュベーション後のIL-2分泌。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性をクラスカル・ウォリス(UTに対する多重比較)で決定した。4回の試験の平均±SEMを示す。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図9】
図9.エフェクター:標的比2:1でRamos細胞と共培養したCD84標的化CART細胞による、24時間のインキュベーション後のグランザイムB分泌。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性をクラスカル・ウォリス(UTに対する多重比較)で決定した。4回の試験の平均±SEMを示す。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図10】
図10.エフェクター:標的比2:1でRamos細胞と共培養したCD84標的化CART細胞による、24時間のインキュベーション後のTNF-γ分泌。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性をクラスカル・ウォリス(UTに対する多重比較)で決定した。4回の試験の平均±SEMを示す。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図11】
図11.エフェクター:標的比2:1で、インキュベーション期間24時間の後の、Ramos-GFP
+細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。8回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を通常の一元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
**p<0.001、
*p<0.01。
【
図12】
図12.エフェクター:標的比2:1で、インキュベーション期間24時間の後の、K562-GFP
+細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。8回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を通常の一元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
**p<0.001、
*p<0.01。
【
図13】
図13.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、Ramos-GFP
+細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。5回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を通常の一元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
*p<0.05。
【
図14】
図14.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、K562-GFP
+細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。UT:非形質導入T細胞。5回の独立した実験の平均±SEM。統計的有意性を通常の一元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
**p<0.01、
*p<0.05、n.s.:有意差なし。
【
図15】
図15.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、MOLM-13-GFP
+細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。3回の独立した実験の平均±SEM、UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を通常の一元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図16】
図16.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、NALM6-GFP
+細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。3回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を通常の一元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図17】
図17.エフェクター:標的比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、MOLT4-GFP
+細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。4回の独立した実験の平均± SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を通常の一元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
**p<0.01、
*p<0.05、ns:有意差なし。
【
図18】
図18.フローサイトメトリーにより評価した末梢血単核細胞(PBMC)におけるCD84発現。薄いグレーのヒストグラムは、アイソタイプ適合対照抗体による染色を表し、濃いグレーのヒストグラムは、特異的CD84抗体による染色を表す。PBMCは、CD4、CD8、CD19、およびCD14に対する特異的抗体で染色された。
【
図19】
図19.インキュベーション期間16時間の後の、CFSE
+で標識されたPBMCおよびRamos-GFP
+細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。3名の異なるドナーからの3回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を対応のあるt検定(UTと比較)で決定した:
**p<0.01、n.s.=有意差なし。
【
図20】
図20.CD84抗原のSDS PAGEゲル画像。クーマシーブルー染色を施した還元SDS PAGE。
【
図21】
図21.T-ALLと診断された2名の患者(P01およびP02)からの末梢血に由来する白血病細胞に対するフローサイトメトリーにより評価したCD84発現。ヒストグラムは、CD34にゲートを設定した芽細胞上のCD84発現を表し、薄いグレーのヒストグラムは、アイソタイプ適合対照抗体による染色を表し,濃いグレーのものは、特異的CD84抗体による染色を表す。
【
図22】
図22.形質導入6~7日後のCAR T細胞の拡大増殖を、培養0日目のT細胞数に対する増加倍率として示す。図は、それぞれ異なる健常ドナー由来の細胞尾用いた5~12回の独立した拡大増殖を表す。UT:非形質導入T細胞。
【
図23】
図23.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、Ramos-GFPffLuc細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。5回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA検定(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図24】
図24.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、MOLM-13 GFPffLuc細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。少なくとも5回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA検定(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図25】
図25.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、U937 GFPffLuc細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。少なくとも3回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA検定(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図26】
図26.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、MOLT-4 GFPffLuc細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。少なくとも5回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA検定(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図27】
図27.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、CFSEで染色した初代AML細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA検定(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図28】
図28.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間および48時間の後の、CFSEで染色した初代T-ALL細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA検定(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図29】
図29.エフェクター:標的比2:1で、24時間のインキュベーション後の、示されるようにRamos、MOLM-13またはMOLT-4細胞と共培養したCD84標的化CAR-T細胞によるIFN-γ分泌。UT:非形質導入T細胞。統計分析は、球面性を仮定する二元配置ANOVA混合効果分析および多重比較(UTに対する)のためのダネット事後検定で決定した。少なくとも3回の実験の平均±SDを示す。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図30】
図30.エフェクター:標的比2:1で、24時間のインキュベーション後の、示されるようにRamos、MOLM-13またはMOLT-4細胞と共培養したCD84標的化CAR-T細胞によるグランザイムB分泌。UT:非形質導入T細胞。統計分析は、球面性を仮定する二元配置ANOVA混合効果分析および多重比較(UTに対する)のためのダネット事後検定で決定した。少なくとも3回の実験の平均±SDを示す。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図31】
図31.エフェクター:標的比2:1で、24時間のインキュベーション後の、示されるようにRamos、MOLM-13またはMOLT-4細胞と共培養したCD84標的化CAR-T細胞によるTNF-γ分泌。UT:非形質導入T細胞。。統計分析は、球面性を仮定する二元配置ANOVA混合効果分析および多重比較(UTに対する)のためのダネット事後検定で決定した。少なくとも3回の実験の平均±SDを示す。
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図32】
図32.4日の時点で、CFSEアッセイによりin vitroで測定されたCART細胞の増殖(フローサイトメトリー画像)。0日目と、培地のみ(対照)、IL-2で刺激した場合またはMOLM-13 AML細胞の存在下で4日後の増殖。UT:非形質導入T細胞。
【
図33】
図33.同種幹細胞移植のために健常ドナーのアフェレーシス産物から単離されたCD34
+HPSCに対するフローサイトメトリーにより評価したCD84、CD33およびCD123発現。薄いグレーのヒストグラムは、アイソタイプ適合対照抗体による染色を表し、濃いグレーのものは、特異的抗体による染色を表す。
【
図34】
図34.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1および2:1で、インキュベーション期間24時間の後の、5つの異なる臍帯血ユニットから単離されたCD34
+HPSCに対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。5回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図35】
図35.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間の後の、同種幹細胞移植のために健常ドナーのアフェレーシス産物から単離されたCD34
+HPSCに対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的細胞単独)に対する標的生存細胞のパーセンテージを示す。3回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図36】
図36.エフェクター:標的(E:T)細胞比4:1、2:1、1:1および0.5:1で、インキュベーション期間24時間の後の、同じドナーから単離されたCD3
+T細胞に対する種々のCD84標的化CART細胞の細胞傷害性アッセイ。非処理細胞(標的T細胞単独)に対する標的生存T細胞のパーセンテージを示す。5回の独立した実験の平均±SEM。UT:非形質導入T細胞。統計的有意性を二元配置ANOVA(UTに対する多重比較)で決定した:
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【
図37】
図37.種々のCART84と共培養する前の標的T細胞および共培養した後の生存標的T細胞に関する種々のT細胞サブセットのフローサイトメトリーによる分析。以下のT細胞サブセットを検討した:CD45RA+/CD62L+ナイーブ(白)、CD45RA-/CD62L+セントラルメモリー(濃いグレー)、CD45RA-/CD62L-エフェクターメモリー(黒)、およびCD45RA+/CD62L-エフェクターT細胞(薄いグレー)。
【
図38】
図38.in vivoにおけるMOLM-13細胞に対するCART84細胞の有効性。OLM-13の病勢進行を毎週、生物発光によりモニタリングした。生物発光定量(A)および動物生存率(B)。生物発光定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる二元配置ANOVAモデルで行った。生存率の統計的有意性は、3比較に関してp値を補正したログランク検定で決定した。
【
図39】
図39.in vivoにおけるMOLM-13細胞に対するCART84細胞の有効性。MOLM-13の病勢進行を毎週、生物発光によりモニタリングした。生物発光定量(A)および動物生存率(B)。実験の終了時にマウスの骨髄(上)および脾臓(下)でフローサイトメトリーにより評価されたMOLM-13 GFP-ffLuc細胞(C)、CD3
+T細胞(D)およびCART細胞(E)の総数。生物発光定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる二元配置ANOVAモデルで行った。生存率の統計的有意性は、3比較に関してp値を補正したログランク検定で決定した。MOLM-13およびCD3
+T細胞定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる一元配置ANOVAモデルで行い、CART細胞定量の分析は、テューキーの多重比較を用いる一元配置ANOVAモデルで行った。
【
図40】
図40.in vivoにおけるMOLM-13細胞に対するCD84 CART細胞の有効性。MOLM-13の病勢進行を、毎週、生物発光により追跡した。生物発光定量(A)および動物生存率(B)。実験の終了時にマウスの骨髄(上)および脾臓(下)でフローサイトメトリーにより評価されたMOLM-13 GFP-ffLuc細胞(C)、CD3
+T細胞(D)およびCART細胞(E)の総数。生物発光定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる二元配置ANOVAモデルで行った。生存率の統計的有意性は、3比較に関してp値を補正したログランク検定で決定した。MOLM-13およびCD3
+細胞定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる一元配置ANOVAモデルで行い、CART細胞定量の分析は、テューキーの多重比較を用いる一元配置ANOVAモデルで行った。
【
図41】
図41.in vivoにおけるMOLT-4細胞に対するCD84 CART細胞の有効性。MOLT-4の病勢進行を、毎週、生物発光によりモニタリングした。生物発光定量(A)および動物生存率(B)。生物発光定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる二元配置ANOVAモデルで行った。生存率の統計的有意性は、3比較に関してp値を補正したログランク検定で決定した。
【
図42】
図42.in vivoにおけるMOLT-4細胞に対するCD84 CART細胞の有効性。MOLT-4の病勢進行を、毎週、生物発光によりモニタリングした。生物発光定量(A)および動物生存率(B)。実験の終了時にマウスの骨髄(上)および脾臓(下)でフローサイトメトリーにより検出されたMOLT-4 GFP-ffLuc細胞(C)、CD3
+T細胞(D)およびCART細胞(E)の総数。生物発光定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる二元配置ANOVAモデルで行った。生存率の統計的有意性は、3比較に関してp値を補正したログランク検定で決定した。MOLT-4およびCD3
+細胞定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる一元配置ANOVAモデルで行い、CART細胞定量の分析は、テューキーの多重比較を用いる一元配置ANOVAモデルで行った。
【
図43】
図43.フローサイトメトリーにより評価したヒト初代細胞上のCD84発現。薄いグレーのヒストグラムは、アイソタイプ適合対照抗体による染色を表し、濃いグレーのヒストグラムは、特異的CD84抗体による染色を表す。
【
図44】
図44.XCELLigence装置を用い、細胞培養にCART/UTを添加(矢印)した後72時間に測定された、ヒト初代細胞に対するCART84細胞152.3、153.5およびUTの細胞傷害性アッセイ。UT:非形質導入T細胞。
【
図45】
図45.in vivoにおけるRamos細胞に対するCD84 CART細胞の有効性。(A)Ramosの病勢進行を、毎週、生物発光によりモニタリングした。生物発光定量の統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる二元配置ANOVAモデルで行った。(B)終了時にマウスの骨髄のフローサイトメトリーにより評価されたRamos GFP-ffLuc細胞の総数。統計分析は、UT処置マウスと比較したダネットの多重比較を用いる一元配置ANOVAモデルで行った。UT:非形質導入T細胞。
*p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0062】
発明の詳細な説明
「を含む(comprising)」、「を含む(comprises)」および「から構成される(comprised of)」という用語は、本明細書で使用される場合、「包含する(including)」もしくは「包含する(includes)」または「含有する(containing)」もしくは「含有する(contains)」と同義であり、包含またはオープンエンドを示し、列挙されていない付加的メンバー、要素または工程を除外しない。「を含む(comprising)」、「を含む(comprises)」および「から構成される(comprised of)」という用語にはまた、「からなる(consisting of)」という用語も含まれる。
【0063】
CD84
CD84(LY9BおよびSLAMF5としても知られる)は、シグナル伝達リンパ球活性化分子(signalling lymphocyte activation molecule)(SLAM)ファミリーのメンバーである膜糖タンパク質であり、それ自体は、Igスーパーファミリーのより大きなCD2細胞表面受容体サブグループのサブセットである。
【0064】
CD84受容体の細胞外部分は、非カノニカルなIgV遠位ドメインとIgC2g近位ドメインを含み、これはSLAMファミリーの全メンバーに共通する構造である。CD84はホモフィリック結合分子として機能し、多くの免疫細胞種で発現される。受容体:リガンド相互作用にはIgVドメインが関与し、細胞質ドメインとは独立している。ホモフィリック界面にはCD84とSLAMファミリーの他の分子との結合を妨げる特異的な違いがある。
【0065】
本発明者らは、CD84が、バーキットリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)および組織球性リンパ腫を包含する悪性血液疾患に由来する様々な細胞株で過剰発現されていることを決定付けた。
【0066】
研究によれば、CD84は慢性リンパ球性白血病(CLL)で過剰発現されることが示唆されている。
【0067】
【0068】
抗原結合ドメイン
抗原結合ドメインは、抗原を認識してそれと結合する能力を有するタンパク質またはペプチドであり得る。抗原結合ドメインとしては、目的の抗原に対する天然、合成、半合成のまたは組換え産生された結合相手が含まれる。
【0069】
例示的抗原結合ドメインとしては、抗体もしくは抗体フラグメントもしくは誘導体、受容体(例えば、TCR)の細胞外ドメイン、細胞表面分子/受容体のリガンド、またはその受容体結合ドメインが含まれる。
【0070】
好ましい実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体であるか、または抗体に由来する。抗体由来ドメインは、抗体のフラグメント、または抗体の1以上のフラグメントの遺伝子操作された産物であり得、そのフラグメントは、抗原との結合に関与する。例としては、可変領域(Fv)、相補性決定領域(CDR)、Fab、一本鎖可変フラグメント(scFv)、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびラクダ科動物抗体(VHH)が挙げられる。
【0071】
抗原結合ドメインは、非ヒト(例えば、マウス)、キメラ、ヒト化または完全ヒト型であり得る。
【0072】
好ましい実施形態では、抗原結合ドメインは、一本鎖可変フラグメント(scFv)である。scFvは、例えば、マウス、ヒトまたはヒト化scFvであり得る。
【0073】
抗体またはその抗原結合フラグメントに関して「相補性決定領域」(CDR)という用語は、抗体の重鎖または軽鎖の可変領域中の変動の大きいループを指す。CDRは、抗原のコンフォメーションと相互作用し、抗原との結合をほぼ決定することができる(ただし、いくつかのフレームワーク領域が結合に関与することが知られている)。重鎖可変領域と軽鎖可変領域はそれぞれ3つのCDRを含んでいる。
【0074】
「重鎖可変領域」(VH)とは、抗体の重鎖の可変フラグメントを指し、フレームワーク領域として知られる隣接するストレッチ間に挿入された3つのCDRを含み、フレームワーク領域は、CDRよりも高度に保存され、CDRを支持する足場を形成している。
【0075】
「軽鎖可変領域」(VL)とは、抗体の軽鎖の可変フラグメントを指し、フレームワーク領域間に挿入された3つのCDRを含んでいる。
【0076】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を保持する抗体の最小フラグメントを指す。Fvは、1本の軽鎖の可変領域と1本の重鎖の可変領域が結合したものからなる。
【0077】
「一本鎖可変フラグメント」(scFv)とは、軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)が互いに直接またはペプチドリンカー配列を介して連結したものからなる操作抗体を指す。
【0078】
抗原結合ドメインは、抗原と特異的に結合することができ、例えば、その抗原には結合するが、他のペプチドには結合しないか、または他のペプチドにはより低い親和性でしか結合しない。
【0079】
2つの分子(例えば、抗原結合ドメインと抗原)の間の結合親和性は、例えば、解離定数(KD)の決定により定量することができる。KDは、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)などの技術を用いて、抗原結合ドメインと抗原の間の複合体形成および解離の速度を測定することで決定することができる。複合体の会合および解離に対応する速度定数は、それぞれ会合速度定数ka(またはkon)および解離速度定数kd(またはkoff)として表される。式KD=kd/kaから、KDは、kaおよびkdと関係がある。
【0080】
適切には、抗原結合ドメインは、CD84結合ドメインである。
【0081】
【0082】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-NYWIN(配列番号1);CDR2-DIYPVSGTTNYNEKFKR(配列番号2);およびCDR3-GTGRFAY(配列番号3);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号4);CDR2-FASNLES(配列番号5);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号6);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-NYWLG(配列番号7);CDR2-DIYPGGGYTNYIEKFKG(配列番号8);およびCDR3-YEGGYYGNYDAMDY(配列番号9)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RASESVDNYGISFMN(配列番号10);CDR2-AASNQGS(配列番号11);およびCDR3-QQSKAVPRT(配列番号12)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-GFTFSSYA(配列番号13);CDR2-ISGSGGST(配列番号14);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号15)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-NIESKD(配列番号16);CDR2-DDA(配列番号17);およびCDR3-QVWDSSSDHVV(配列番号18)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-GFTFSSYP(配列番号19);CDR2-ISYHGRNK(配列番号20);およびCDR3-ARDRDATPGGTGVGNHGMAV(配列番号21)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-QSLLHSSGYNY(配列番号22);CDR2-MGS(配列番号23);およびCDR3-MQGLQTPPT(配列番号24)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-GFTFSDNA(配列番号25);CDR2-ISGTGRTT(配列番号26);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号27)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-QSLVYSDGDTY(配列番号28);CDR2-KVS(配列番号29);およびCDR3-MQGTHWPPNT(配列番号30)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号31);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号32);およびCDR3-MRTSYYFDY(配列番号33)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RASENIFSSLA(配列番号34);CDR2-NAKTLAE(配列番号35);およびCDR3-QHHYATPFT(配列番号36)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-SYWIN(配列番号37);CDR2-DIYLGSGSTNYNEKFKS(配列番号38);およびCDR3-SGGYLGY(配列番号39)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号40);CDR2-FASNLES(配列番号41);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号42)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-NYWIG(配列番号43);CDR2-DIYPGGGYTNYNENFKG(配列番号44);およびCDR3-STTYYSSYWCFDV(配列番号45)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-KSSQSLLNSGNQANYLA(配列番号46);CDR2-GASTRES(配列番号47);およびCDR3-QNDHSYPFT(配列番号48)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-RYWMS(配列番号49);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号50);およびCDR3-PGPTVVATYWYFDV(配列番号51)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号52);CDR2-KVSSRFS(配列番号53);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号54)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-RYWIN(配列番号55);CDR2-DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号56);およびCDR3-DTTIAY(配列番号57)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RASQSVTTSRYSYMH(配列番号58);CDR2-FASNLES(配列番号59);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号60)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-GYNMN(配列番号131);CDR2-NIDPYYGGTNYNQKFKG(配列番号132);およびCDR3-GLLSGSFPY(配列番号133)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RASENIYSYLA(配列番号134);CDR2-NAKTLAE(配列番号135);およびCDR3-QHHYGSPLT(配列番号136)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-RSWMS(配列番号137);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号138);およびCDR3-FYDGYSIYWYFDV(配列番号139)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RSSQSIVHSNGDTYLE(配列番号140);CDR2-KVSNRFS(配列番号141);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号142)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号143);CDR2-HIWWDDVKRYNPALRS(配列番号144);およびCDR3-IAVTYFFDF(配列番号145)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-RASENIFSSFA(配列番号146);CDR2-NARTLAE(配列番号147);およびCDR3-QHHYASPFT(配列番号148)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号149);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号150);およびCDR3-MSTSYYFDY(配列番号151)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-KASQSLFTSVA(配列番号152);CDR2-SASYRYT(配列番号153);およびCDR3-QQHYSSPFT(配列番号154)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列:CDR1-IYAMN(配列番号155);CDR2-RIRSKSNNYARFYADSVKD(配列番号156);およびCDR3-PLRSYFSMDY(配列番号157)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに配列:CDR1-KASENVDTYVS(配列番号158);CDR2-GASNRYT(配列番号159);およびCDR3-GQTYSYPWT(配列番号160)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号61の配列を有するVHドメイン;および配列番号62もしくは108の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号63の配列を有するVHドメイン;および配列番号64もしくは109の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号65の配列を有するVHドメイン;および配列番号66の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号68の配列を有するVHドメイン;および配列番号69の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号71の配列を有するVHドメイン;および配列番号72の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号74の配列を有するVHドメイン;および配列番号75の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号76の配列を有するVHドメイン;および配列番号77の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号78の配列を有するVHドメイン;および配列番号79の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号80の配列を有するVHドメイン;および配列番号81の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号82の配列を有するVHドメイン;および配列番号83の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号161の配列を有するVHドメイン;および配列番号162の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号163の配列を有するVHドメイン;および配列番号164の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号165の配列を有するVHドメイン;および配列番号166の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号167の配列を有するVHドメイン;および配列番号168の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号169の配列を有するVHドメイン;および配列番号170の配列を有するVLドメイン、またはそれぞれそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む。
【0112】
CD84結合ドメインはscFvであり得る。scFvは、例えば約10~25アミノ酸の短いリンカーペプチドで連結された抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含み得る。scFvは、配向(N末端からC末端へ)VH-VLまたはVL-VHであり得る。いくつかの実施形態では、scFvは、配向(N末端からC末端へ)VH-VLである。いくつかの実施形態では、scFvは、配向(N末端からC末端へ)VL-VHである。
【0113】
VHドメインとVLドメインを連結するためのリンカー配列の例としては、以下が挙げられる:
【0114】
抗原結合ドメインは、配列番号61、63、112~125もしくは181~184のいずれか1つの配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含み得る、またはからなり得る。
【0115】
適切には、変異体は、少なくともCD84、ならびに配列番号61、63、112~125または181~184として示される対応する抗原結合ドメインに結合し得る。例えば、変異体は、配列番号61、63、112~125または181~184として示される対応する抗原結合ドメインとCD84の間の結合親和性と少なくとも同等の親和性でCD84と特異的に結合し得る。
【0116】
【0117】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号61の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくはCD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号63の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号112の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号113の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号114の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号115の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号116の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号117の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号118の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号119の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号120の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号121の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号122の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号123の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号124の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号125の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号181の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号182の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号183の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、配列番号184の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有し、好ましくは、CD84との結合能を保持するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0137】
抗原結合ドメインは、キメラ抗原受容体(CAR)に含まれてよい。
【0138】
キメラ抗原受容体(CAR)
「キメラ抗原受容体」(CARまたはCARs)は、本明細書で使用される場合、細胞(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞またはそれらの組合せなどのT細胞)に抗原特異性を付与することができる操作された受容体を指す。CARは、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体またはキメラ免疫受容体としても知られる。CARはまた、NK細胞(例えば、臍帯血(CB)、誘導多能性幹細胞(iPSC)、骨髄(BM)、ヒト胚性幹細胞(hESC)、細胞株(例えば、NK92もしくはYT)、または末梢血(PB)由来)などの他の免疫細胞にも抗原特異性を付与することができる(Mehta et al. (2018) Front. Immunol. 9: 283; Liu et al. (2020) N. Engl. J. Med. 382: 545-553)。NK細胞で使用するCARは、他の膜貫通ドメイン(NKG2DまたはDAP12など)および他の共刺激ドメイン(NKG2Dまたは2B4など)を有してもよく、CAR-NK細胞にサイトカインのサポートを常に提供するために、それらにCAR構築物内にIL-2またはIL-15の遺伝子を組み込んでもよい。
【0139】
CARは、例えば、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)を含んでもよい。
【0140】
いくつかの実施形態では、CARは、CD84結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含んでなる。CARは、1以上の共刺激ドメインを含み得る。
【0141】
CARの抗原結合ドメイン(例えば、CD84結合ドメイン)は、本明細書に開示されるような抗原結合ドメインであり得る。
【0142】
別の態様において、本発明は、配列番号172~180のいずれか1つの配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0143】
適切には、変異体は、配列番号172~180として示される対応するCARと少なくとも同様に機能し得る。例えば、変異体は、配列番号172~180として示される対応するCARとCD84の間の結合親和性と少なくとも同等の結合親和性でCD84と特異的に結合し得る。
【0144】
別の態様において、本発明は、配列番号172の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0145】
別の態様において、本発明は、配列番号173の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0146】
別の態様において、本発明は、配列番号174の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0147】
別の態様において、本発明は、配列番号175の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0148】
別の態様において、本発明は、配列番号176の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0149】
別の態様において、本発明は、配列番号177の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0150】
別の態様において、本発明は、配列番号178の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0151】
別の態様において、本発明は、配列番号179の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0152】
別の態様において、本発明は、配列番号180の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0153】
膜貫通ドメイン
CARは、膜貫通ドメインを含み得る。
【0154】
膜貫通ドメインは、I型、II型またはIII型膜貫通タンパク質のいずれかを含む膜貫通ドメインを有する任意のタンパク質に由来する膜貫通配列を含み得る。CARの膜貫通ドメインはまた、人工疎水性配列も含み得る。CARの膜貫通ドメインは、二量体化しないように選択され得る。
【0155】
CAR構築物で使用される膜貫通(TM)領域の例としては、a)CD28 TM領域(Pule et al., Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41; Brentjens et al., CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35; Casucci et al., Blood, 2013, Nov 14;122(20):3461-72);b)OX40 TM領域(Pule et al., Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41);c)4-1BB TM領域(Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13 (18 Pt 1):5426-35);d)CD3-ζ TM領域(Pule et al., Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41; Di Stasi et al. Blood, 2009, Jun 18;113(25):6392-402);e)CD8a TM領域(Maher et al., Nat Biotechnol, 2002, Jan;20(1):70-5; Imai C et al., Leukemia, 2004, Apr;18(4):676-84; Brentjens et al., CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1) :5426-35; Milone et al., Mol Ther, 2009, Aug;17(8):1453-64);f)DAP12 TM領域(Mueller, N. et al. J. Immunother. 2015, June 01; 38, 197));g)2B4 TM領域(Altvater, B. et al. Clin. Cancer Res, 2009, July 22; (15) 4857-4866)およびh)NKG2D TM領域(Li, Y et al, Cell Stem Cell, 2018, Aug 2; (23):181-192)がある。
【0156】
さらなる膜貫通ドメインは、当業者に自明である。
【0157】
CD8a膜貫通ドメインのアミノ酸配列例は、
である。
【0158】
CD28膜貫通ドメインのアミノ酸配列例は、
である。
【0159】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号127もしくは128の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0160】
シグナルペプチド
CARは、CARが細胞内で発現された際に、そのタンパク質が小胞体に、その後、細胞表面に向けられるようなシグナルペプチドを含み得る。
【0161】
シグナルペプチドは、トランスロケーション中またはトランスロケーション後にシグナルペプチダーゼにより認識され、切断されて成熟タンパク質を生成し得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、CD8aシグナルペプチドである。
【0163】
スペーサー
CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインに連結するスペーサーを含み得る。
【0164】
スペーサー配列は、例えば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジまたはヒトもしくはマウスCD8スタークを含み得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、CARは、CD8aスタークを含んでなる。
【0166】
細胞内シグナル伝達ドメイン
細胞内ドメインは、CARにおけるシグナル伝達を提供することができる。
【0167】
細胞内シグナル伝達ドメインは、1以上の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)(ITAM)を含んでなってもよく、ITAMは、免疫系の特定の細胞表面タンパク質の細胞質テールで2回繰り返される4つのアミノ酸の、保存された配列である。このモチーフは、ロイシンまたはイソロイシンから任意の2つの他のアミノ酸によって隔てられてチロシンを含む(YxxL/I)。これらのモチーフのチロシン残基は、受容体分子とそれらのリガンドとの相互作用後にリン酸化され、シグナル伝達経路に関与する他のタンパク質との結合部位を形成し得る。
【0168】
細胞内シグナル伝達ドメインは、3つのITAMを含むCD3-ζエンドドメインを含み得る、またはからなり得る。CD3-ζエンドドメインは、抗原が結合した後、T細胞に活性化シグナルを伝達し得る。
【0169】
CARは、1以上の共刺激ドメインを含み得る。例えば、4-1BB(CD137としても知られる)は、CD3-ζとともに使用することができ、またはCD28、OX40および/もしくはICOSは、増殖/生存シグナルを伝達するためにCD3-ζとともに使用することができる。また、NKG2D、2B4(CD244としても知られる)、DAP12および/またはDAP10も、増殖/生存シグナルを伝達するためにCD3-ζとともに使用することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、CARは、CD3-ζシグナル伝達ドメインを含み、共刺激ドメインを欠く。いくつかの実施形態では、CARは、CD3-ζシグナル伝達ドメインと1以上の共刺激ドメインを含んでなる。
【0171】
いくつかの実施形態では、CARは、4-1BB共刺激ドメイン、CD28共刺激ドメインおよびOX40共刺激ドメインからなる群から選択される1以上の共刺激ドメインを含んでなる。
【0172】
好ましい実施形態では、CARは、4-1BB共刺激ドメインを含んでなる。いくつかの実施形態では、CARは、CD28共刺激ドメインを含んでなる。いくつかの実施形態では、CARは、OX40共刺激ドメインを含んでなる。
【0173】
好ましい実施形態では、CARは、4-1BB共刺激ドメインとCD3-ζシグナル伝達ドメインを含んでなる。
【0174】
CD3-ζシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列例は、
である。
【0175】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、配列番号129の配列、またはそれとなくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0176】
4-1BB共刺激ドメインのアミノ酸配列例は、
である。
【0177】
CD28共刺激ドメインのアミノ酸配列例は、
である。
【0178】
いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、配列番号130もしくは171の配列、またはそれと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体を含む、またはそれからなる。
【0179】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNA、好ましくはDNAを含み得る。それらは一本鎖または二本鎖であり得る。好ましくは、ポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。当業者ならば、遺伝コードの縮重の結果として多くの異なるポリヌクレオチドが同じポリペプチドをコードし得ることを理解するであろう。さらに、当業者ならば、通常の技術を用いて、本発明のポリペプチドを発現させる任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映させるために、本発明のポリヌクレオチドによりコードされているポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行えることも理解されるであろう。
【0180】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能ないずれの方法によって修飾されてもよい。このような修飾は、本発明のポリヌクレオチドin vivo活性を高めるため、または寿命を延ばすために行うことができる。
【0181】
DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドは、組換え的、合成的に、または当業者に利用可能ないずれの手段によって生産してもよい。それらはまた標準的な技術によってクローニングしてもよい。
【0182】
より長いポリヌクレオチドは一般に、組換え手段を用いて、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を用いて生産される。これは、クローニングが望まれる標的配列に隣接するプライマー対(例えば、約15~30ヌクレオチド)を作製すること、それらのプライマーを動物またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させること、所望の領域の増幅が起こる条件下でPCRを実行すること、増幅されたフラグメントを単離すること(例えば、反応混合物をアガロースゲルで精製することによる)および増幅されたDNAを回収することを含む。これらのプライマーは、増幅されたDNAが適したベクターにクローニングできるように適切な制限酵素認識部位を含むように設計することができる。
【0183】
ポリヌクレオチドは、本発明の抗原結合ドメイン、抗体またはCARをコードする1以上のヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサーを含み得る。「作動可能に連結された」という用語は、本明細書で使用される場合、2つの構成要素が、両方が実質的に障害なくそれらの機能を遂行できる様式で相互に連結されていることを意味し得る。例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、抗原結合ドメイン、抗体またはCARの発現を促進および/または増強し得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、EF1αプロモーターである。
【0185】
ベクター
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ベクターである。
【0186】
好ましくは、ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたはアデノウイルスベクターなどのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルスゲノムである。
【0187】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含んでなるウイルスベクターを提供する。
【0188】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、ウイルスベクター粒子の形態である。
【0189】
ベクターは、ある環境から別の環境へと実体の移動を可能にするか、または容易にするツールである。本発明によれば、一例として、組換え核酸技術で使用されるいくつかのベクターは、核酸のセグメント(例えば、異種cDNAセグメントなどの異種DNAセグメント)のような実体を標的細胞に移入することを可能にする。ベクターは、異種核酸(DNAまたはRNA)を細胞内に維持し、核酸セグメントを含んでなるベクターの複製を促進し、および/または核酸セグメントによってコードされるタンパク質の発現を促進するという目的を果たすことができる。
【0190】
本発明で使用されるポリヌクレオチドを含んでなるベクターは、トランスフェクション、形質導入および形質転換などの当技術分野で公知の様々な技術を用いて細胞に導入することができる。
【0191】
トランスフェクションは、核酸を細胞に組み込む一般的プロセスを指し、非ウイルスベクターを用いて細胞にポリヌクレオチドを送達するプロセスを含む。形質導入は、ウイルスベクターを用いて細胞に核酸を組み込むプロセスを指し得る。
【0192】
レトロウイルスおよびレチウイルスベクター
レトロウイルスベクターは、いずれの適切なレトロウイルスから誘導されてもよく、または誘導可能である。多数の異なるレトロウイルスが特定されている。例としては、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、エイブルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、鳥類骨髄細胞腫症ウイルス-29(MC29)および鳥類赤芽球症ウイルス(AEV)が挙げられる。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, Cold Spring Harbour Laboratory Press, 758-63に乱すことができる。
【0193】
レトロウイルスは、「単純型」と「複雑型」の2つのカテゴリーに大別される。レトロウイルスはさらに7つのグループに分けられる。このうち5つのグループは発癌性を持つレトロウイルスである。残りの2つのグループはレンチウイルスとスプーマウイルスである。
【0194】
レトロウイルスゲノムとレンチウイルスゲノムの基本構造には、5’ LTRおよび3’ LTRなどの多くの共通の特徴がある。これらの間またはこれらの中には、ゲノムのパッケージングを可能にするパッケージングシグナル、プライマー結合部位、宿主細胞ゲノムへの組み込みを可能にする組み込み部位、ならびにパッケージング構成要素をコードするgag、pol、およびenv遺伝子(これらはウイルス粒子の組み立てに必要なポリペプチドである)が配置されている。レンチウイルスには、HIVのrevおよびRRE配列などの付加的な特徴があり、組み込まれたプロウイルスのRNA転写物を核から感染標的細胞の細胞質へ効率的に輸送することができる。
【0195】
プロウイルスでは、これらの遺伝子の両末端に長い末端反復配列(long terminal repeats)(LTR)と呼ばれる領域が隣接している。これらのLTRは、プロウイルスの組込みおよび転写を担う。LTRはまた、エンハンサー-プロモーター配列としても働き、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。
【0196】
LTR自体は同一の配列で、U3、R、およびU5の3つの要素に分けられる。U3はRNAの3’末端に特有の配列に由来する。Rは、RNAの両端の繰り返し配列に由来する。U5は、RNAの5’末端に特有の配列に由来する。これらの3つの要素の大きさはレトロウイルスによってかなり異なる。
【0197】
欠陥レトロウイルスベクターゲノムでは、gag、polおよびenvは存在しないか、または機能しないかであり得る。
【0198】
典型的なレトロウイルスベクターでは、複製に必須の1以上のタンパク質コード領域の少なくとも一部がウイルスから除去されてよい。これによりウイルスベクターは複製欠陥型となる。
【0199】
レンチウイルスベクターは、より大きなレトロウイルスベクター群の一部である。レンチウイルス詳細なリストは、Coffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, Cold Spring Harbour Laboratory Press, 758-63に見出すことができる。要するに、レンチウイルスは、霊長類群と非霊長類群に分けることができる。霊長類レンチウイルスの例としては、限定されるものではないが、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体であるヒト免疫不全ウイルス(HIV);およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルスの例としては、プロトタイプの「スローウイルス」であるビスナ/メディウイルス(VMV)、ならびに関連のヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、および最近報告されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。
【0200】
レンチウイルス科は、レンチウイルスが分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染能がある(Lewis, P et al. (1992) EMBO J. 11: 3053-8; Lewis, P.F. et al. (1994) J. Virol. 68: 510-6)という点でレトロウイルスとは異なる。対照的に、MLVなどの他のレトロウイルスは、非分裂細胞または分裂の遅い細胞、例えば、例えば、筋肉、脳、肺および肝臓組織を構成している細胞に感染能がない。
【0201】
レンチウイルスベクターは、本明細書で使用される場合、レンチウイルスから誘導可能な少なくとも1つの構成要素部分を含んでなるベクターである。好ましくは、その構成要素部分は、ベクターが細胞に感染するか、遺伝子を発現するか、または複製される生物学的機序に関与する。
【0202】
レンチウイルスベクターは、「霊長類」ベクターであり得る。レンチウイルスベクターは、「非霊長類」ベクターであってもよい(すなわち、霊長類、特にヒトに基本的に感染しないウイルスに由来する)。非霊長類レンチウイルスの例は、霊長類には本来感染しないレンチウイルス科の任意のメンバーであり得る。
【0203】
レンチウイルス系ベクターの例として、HIV-1系およびHIV-2系ベクターを以下に記載する。
【0204】
HIV-1ベクターは、単純レトロウイルスにも見られるシス作用エレメントを含む。gagオープンリーディングフレームにわたる配列がHIV-1のパッケージングに重要であることが示されている。従って、HIV-1ベクターは多くの場合、翻訳開始コドンが変異したgagの関連部分を含む。さらに、ほとんどのHIV-1ベクターはRREを含むenv遺伝子の一部も含む。RevはRREに結合し、核から細胞質への全長または単一スプライシングmRNAの輸送を可能にする。Revおよび/またはRREが存在しないと、全長HIV-1 RNAは核内に蓄積する。あるいは、メイソンファイザーサルウイルスなどのある種の単純レトロウイルスからの構成的輸送エレメントを用いて、RevとRREの必要性を緩和することもできる。HIV-1 LTRプロモーターからの効率的な転写には、ウイルスタンパク質Tatが必要である。
【0205】
ほとんどのHIV-2系ベクターは、HIV-1ベクターに構造上よく似ている。HIV-1系ベクターと同様に、HIV-2ベクターも、全長または単一スプライシングウイルスRNAの効率的な輸送にRREを必要とする。
【0206】
好ましくは、本発明で使用されるウイルスベクターは、最少量のウイルスゲノムを含む。
【0207】
「最少量のウイルスゲノム」とは、目的のヌクレオチド配列を標的宿主細胞に感染、導入、および送達するために必要な機能を提供するために、ウイルスベクターが非必須要素を除去し、必須要素を保持するように操作されていると理解されるべきである。この戦略についてのさらなる詳細は、WO1998/017815に見出すことができる。
【0208】
好ましくは、宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを生産するために使用されるプラスミドベクターは、パッケージング構成要素の存在下で、RNAゲノムのウイルス粒子へのパッケージングを可能とするのに十分なレンチウイルス遺伝情報を有し、これらのウイルス粒子は、標的細胞に感染することはできるが、最終標的細胞内で独自に複製して感染力のあるウイルス粒子を生産することはできない。好ましくは、ベクターは、機能的なgag-pol遺伝子および/またはenv遺伝子および/または複製に必須な他の遺伝子を欠く。
【0209】
しかしながら、宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを生産するために使用されるプラスミドベクターは、宿主細胞/パッケージング細胞内でゲノムの転写を命令するためにレンチウイルスゲノムに作動可能に連結された転写調節制御配列も含む。これらの調節配列は、転写されるウイルス配列(すなわち、5’ U3領域)に会合した天然配列であってもよいし、または別のプロモーター(例えば、CMVプロモーター)などの異種プロモーターであってもよい。
【0210】
ベクターは、ウイルスのエンハンサーおよびプロモーター配列が欠失した自己不活性化(SIN)ベクターであってもよい。SINベクターは、in vivoにおいて野生型ベクターと同程度の有効性で生成され、非分裂細胞に形質導入することができる。SINプロウイルスの長い末端反復配列(LTR)の転写不活性化は、複製コンピテントウイルスによる動員を防ぐはずである。これはまた、LTRのシス作用効果を排除することにより、内部プロモーターからの遺伝子の調節された発現を可能にするはずである。
【0211】
ベクターは、組込み欠陥型であってもよい。組込み欠陥型レンチウイルスベクター(IDLV)は、例えば、ベクターに触媒的に不活性なインテグラーゼ(触媒部位にD64V変異を有するHIVインテグラーゼなど;Naldini, L. et al. (1996) Science 272: 263-7; Naldini, L. et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 11382-8; Leavitt, A.D. et al. (1996) J. Virol. 70: 721-8)をパッケージングすること、またはベクターLTRの必須のatt配列を修飾するか、もしくはベクターLTRから必須のatt配列を削除すること(Nightingale, S.J. et al. (2006) Mol. Ther. 13: 1121-32)、または上記の組合せによって生産することができる。
【0212】
細胞
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、抗原結合ドメインまたはCARを含んでなる細胞を提供する。
【0213】
いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、リンパ球または幹細胞、例えば、造血幹細胞、臍帯血幹細胞(CB)または誘導多能性幹細胞(iPSC)である。
【0214】
例えば、細胞は、CD4細胞、CD8細胞、Th0細胞、Tc0細胞、Th1細胞、Tc1細胞、Th2細胞、Tc2細胞、Th17細胞、Th22細胞、γ/δ T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ダブルネガティブT細胞、ナイーブT細胞、メモリー幹T細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、エフェクターT細胞、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、造血幹細胞および誘導多能性幹細胞(iPSC)からなる群から選択され得る。
【0215】
いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞またはNK細胞、好ましくは、T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、自己または同種T細胞である。
【0216】
細胞は、対象から単離されたものであってよい。
【0217】
本発明の細胞は、養子細胞移入に使用するために提供され得る。本明細書で使用される場合、「養子細胞移入」という用語は、患者への細胞集団の投与を指す。一般に、細胞は、対象から単離された後に遺伝的に修飾され、患者に投与される前にin vitroで培養されたT細胞である。
【0218】
養子細胞移入は、同種異型または自己であり得る。
【0219】
「自己細胞移入」とは、出発細胞集団(その後本発明によるポリヌクレオチドまたはベクターで形質導入される)が、形質導入された細胞集団が投与される対象と同じ対象から得られることと理解される。自己移入は、免疫学的不適合に関連する問題を回避し、遺伝的に一致したドナーが利用可能かどうかに関係なく対象に利用可能であるので有利である。
【0220】
「同種細胞移入」とは、出発細胞集団(その後本発明によるポリヌクレオチドまたはベクターで形質導入される)が、形質導入された細胞集団が投与される対象とは異なる対象から得られることと理解される。好ましくは、免疫学的不適合のリスクを最小化するために、ドナーは細胞が投与される対象と遺伝的に一致している。あるいは、ドナーは不一致で患者とは無関係でもよい。
【0221】
治療方法
別の態様において、本発明は、療法において使用するための本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0222】
いくつかの実施形態では、療法は、癌の治療である。
【0223】
好ましい実施形態では、癌は、血液悪性腫瘍である。
【0224】
好ましい実施形態では、癌細胞は、CD84を発現し、例えば、血液悪性腫瘍は、CD84を発現する血液悪性腫瘍であり得る。
【0225】
いくつかの実施形態では、癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、慢性骨髄増殖性症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、樹状細胞新生物および組織球性肉腫からなる群から選択される。
【0226】
いくつかの実施形態では、癌は、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)および組織球性肉腫からなる群から選択される。
【0227】
好ましい実施形態では、癌は、CLL、B細胞リンパ腫、B-ALL、T-ALLおよびAMLからなる群から選択される。
【0228】
好ましい実施形態では、癌は、B細胞リンパ腫、B-ALL、T-ALLおよびAMLからなる群から選択される。
【0229】
別の態様において、本発明は、AMLの治療において使用するための、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0230】
別の態様において、本発明は、T-ALLの治療において使用するための、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0231】
別の態様において、本発明は、B細胞リンパ腫の治療において使用するための、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0232】
別の態様において、本発明は、バーキットリンパ腫の治療において使用するための、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物を提供する。
【0233】
いくつかの実施形態では、癌は、T細胞リンパ腫でない。いくつかの実施形態では、癌は、成熟T細胞リンパ腫でない。いくつかの実施形態では、癌はCLLでない。いくかの実施形態では、癌は,固形腫瘍でない。
【0234】
哺乳動物、特にヒトの治療が好ましい。ヒトの治療および獣医学的治療の両方が本発明の範囲内にある。
【0235】
医薬組成物および注射溶液
本発明で使用するための薬剤は単独で投与することができるが、特にヒトの療法では、一般に、医薬担体、賦形剤または希釈剤と混合して投与される。
【0236】
本発明の薬剤、例えば、細胞またはベクター粒子は、医薬組成物として製剤してよい。これらの組成物は、薬剤に加えて、薬学上許容される担体、希釈剤、賦形剤、バッファー、保存剤または当技術分野で周知のその他の材料を含んでなってよい。このような材料は、非毒性であるべきで、有効成分の有効性に干渉してはならない。担体またはその他の材料の厳密な性質は、投与経路、例えば、静脈内であるか動脈内であるかによって当業者に決定可能である。
【0237】
医薬組成物は一般に、液体の形態である。液体医薬組成物は一般に、水、石油、動物もしくは植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水溶液、塩化マグネシウム、デキストロースもしくはその他の糖類溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールも含み得る。いくつかの場合、プルロニック(登録商標)アシッド(PF68)0.001%などの界面活性剤が使用可能である。いくつかの場合、血清アルブミンが組成物に使用可能である。
【0238】
注射のためには、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する水溶液の形態であり得る。当業者ならば、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液または乳酸加リンゲル注射液などの等張性ビヒクルを用いて適切な溶液を調製することが十分可能である。必要に応じて、保存剤、保存剤、バッファー、抗酸化剤および/またはその他の添加剤を含めてもよい。
【0239】
遅延放出のためには、薬剤は、当技術分野で公知の方法によって、生体適合性ポリマーから形成されたマイクロカプセル、またはリポソーム担体系など、緩徐放出のために調剤された医薬組成物中に含まれてよい。
【0240】
細胞療法製剤の取り扱いは、細胞療法に関するFACT-JACIE国際基準に準拠して行うことが好ましい。
【0241】
投与
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物は、対象に全身投与される。
【0242】
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物は、対象に局所投与される。
【0243】
「全身送達」または「全身投与」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、薬剤の広域分布を達成するために、本発明の薬剤が循環系に投与されることを意味する。対照的に、局所または局部投与は、薬剤の送達を限局された領域に制限する。
【0244】
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物は、血管内、静脈内または動脈内に投与される。
【0245】
好ましい実施形態では、本発明の抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または医薬組成物は、静脈内に投与される。
【0246】
用量
当業者ならば、対象に投与する本発明の薬剤の適切な用量を容易に決定することができる。一般に、医師が個々の患者に最も適した実際の用量を決定し、それは、採用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用時間、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与の様式および時間、排泄速度、薬剤の組合せ、特定の病態の重症度、および治療を受ける個人を包含する様々な要因に依存する。当然のことながら、より高用量または低用量範囲が妥当な個々の例もあり得、そのような場合も本発明の範囲内にある。
【0247】
対象
「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトまたは非ヒト動物を指す。
【0248】
非ヒト動物の例としては、脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、イヌ、齧歯類(例えば、マウス、ラットまたはモルモット)、ブタおよびウシが挙げられる。非ヒト動物は、伴侶動物であり得る。
【0249】
好ましくは、対象はヒトである。
【0250】
変異体、誘導体、類似体、ホモログおよびフラグメント
本明細書で述べられる特定のタンパク質およびヌクレオチドに加え、本発明はまた、それらの変異体、誘導体、類似体、ホモログおよびフラグメントも包含する。
【0251】
本発明の文脈で、所与の配列の「変異体」は、残基の特定の配列(アミノ酸残基であれ核酸残基であれ)が、対象とするポリペプチドまたはポリヌクレオチドがその内因性機能のうち少なくとも1つを保持するように修飾されている配列である。変異体配列は、天然ポリペプチドまたはポリヌクレオチド中に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、置き換えおよび/または変動によって得ることができる。
【0252】
「誘導体」という用語は、本明細書で本発明のタンパク質またはポリペプチドに関して使用される場合、結果として生じるタンパク質またはポリペプチドがその内因性の機能のうち少なくとも1つを保持する限り、配列からのまたは配列への1(または複数の)アミノ酸残基のいずれの置換、変動、修飾、置き換え、欠失および/または付加も包含する。
【0253】
「類似体」という用語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して本明細書で使用される場合、任意の模倣剤、すなわち、それが模倣するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの内因性の機能のうち少なくとも1つを有する化学化合物を包含する。
【0254】
一般に、アミノ酸置換は、修飾された配列が必要とされる活性または能力を保持する限り、例えば、1、2または3から10または20の置換を行うことができる。アミノ酸置換は、非天然類似体の使用を含み得る。
【0255】
本発明で使用されるタンパク質はまた、サイレント変異を生じ、機能的に同等のタンパク質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有し得る。意図的なアミノ酸置換は、内因性機能が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似性に基づいて行うことができる。例えば、負電荷を有するアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ;正電荷を有するアミノ酸としては、リシンおよびアルギニンが挙げられ;類似の親水性値を有する非電荷極性頭基を有するアミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニンおよびチロシンが挙げられる。
【0256】
保存的置換は、例えば、下表に従って行うことができる。第2列の同じブロック、好ましくは第3列の同じ行のアミノ酸は、互いに置換することができる。
【0257】
【0258】
「ホモログ」という用語は、本明細書で使用される場合、野生型アミノ酸配列または野生型ヌクレオチド配列と特定の相同性を有する実体を意味する。「相同性」という用語は、「同一性」と同等と見なすことができる。
【0259】
本文脈において、相同配列とは、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%、96%または97%または98%または99%同一であり得るアミノ酸配列を包含するものとする。一般に、ホモログは、対象のアミノ酸配列と同じ活性部位などを含んでなる。相同性は類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)という観点で考えることもできるが、本発明の文脈では、配列同一性という観点で相同性を表すことが好ましい。
【0260】
本文脈において、相同配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%、96%または97%または98%または99%同一であり得るヌクレオチド配列を包含すると見なされる。相同性は類似性の観点から考えることもできるが、本発明の文脈では、配列同一性の観点から相同性を表現することが好ましい。
【0261】
好ましくは、本明細書において詳述される配列番号のいずれか1つに対する同一性パーセントを有する配列という場合には、言及される配列番号の全長にわたって記載の同一性パーセントを有する配列を指す。
【0262】
相同性比較は目視により、またはより通常には、容易に入手可能な配列比較プログラムの助けで行うことができる。これらの市販のコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間の相同性または同一性のパーセントを計算することができる。
【0263】
相同性パーセントは、連続する配列にわたって計算することができ、すなわち、一方の配列を他方の配列とアラインし、一方の配列の各アミノ酸またはヌクレオチドを、他方の配列の対応するアミノ酸またはヌクレオチドと、1残基ずつ直接比較する。これは「ギャップなし」アラインメントと呼ばれる。通常、このようなギャップなしアラインメントは、比較的短い残基数の場合にのみ行われる。
【0264】
これは非常に簡単で一貫性のある方法であるが、例えば、それ以外は同一の配列ペアにおいて、アミノ酸またはヌクレオチド配列に1つの挿入または欠失があると、それに続く残基またはコドンがアラインメントから外れてしまうことがあり、その結果、グローバルアラインメントを実行した際に、相同性パーセントが大きく減少する可能性があることを考慮することができない。結果として、ほとんどの配列比較法は、全体の相同性スコアに過度のペナルティを与えることなく、可能性のある挿入および欠失を考慮した最適なアラインメントを生成するように設計されている。これは、配列アライメントに「ギャップ」を挿入し、局所的な相同性を最大化しようとすることで達成される。
【0265】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、同じ数の同一アミノ酸またはヌクレオチドに対して、比較する2配列間のより高い関連性を反映して、できるだけギャップの少ない配列アラインメントは、ギャップの多いものよりも高いスコアとなるように、アラインメントで発生する各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てる。ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、ギャップ内のそれに続く各残基に対してより小さなペナルティを課す「アフィンギャップコスト」が一般に使用される。これは最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、当然のことながらギャップの少ない最適化されたアラインメントを生成する。ほとんどのアラインメントプログラムでは、ギャップペナルティを変更することができる。しかし、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する場合は、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のデフォルトのギャップペナルティは、ギャップが-12、各エクステンションが-4である。
【0266】
従って、最大相同パーセントの計算には、まずギャップペナルティを考慮した最適なアラインメントの生成が必要である。このようなアラインメントを行うのに適したコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(ウィスコンシン大学,USA;Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Research 12: 387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例としては、限定されるものではないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999) ibid - Ch. 18参照)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)および比較ツールのGENEWORKSスーツが挙げられる。BLASTもFASTAも、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(Ausubel et al. (1999) ibid, pages 7-58~7-60参照)。しかしながら、用途によっては、GCG Bestfitプログラムを使用するのが好ましい。別のツール、BLAST 2 Sequencesもタンパク質およびヌクレオチド配列を比較するために利用可能である(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174: 247-50; FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177: 187-8)。
【0267】
最終的な相同性パーセントは同一性の観点から評価することもできるが、アラインメントプロセス自体は通常、オール・オア・ナッシングのペア比較に基づいていない。その代わりに、化学的類似性または進化的距離に基づいて各対の比較にスコアを割り当てる、スケール化された類似性スコアマトリックスが一般に使用される。一般に使用されるこのようなマトリックスの例としては、BLOSUM62マトリックス(BLASTプログラムスーツのデフォルトマトリックス)がある。GCG Wisconsinプログラムでは一般に、公開デフォルト値または提供されている場合にはカスタムシンボル比較テーブルのいずれかを使用する(さらなる詳細はユーザーマニュアルを参照)。アプリケーションによっては、GCGパッケージの公開デフォルト値、または他のソフトウェアの場合にはBLOSUM62などのデフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0268】
ソフトウェアが最適なアラインメントを作成したら、相同性パーセント、好ましくは配列同一性パーセントを計算することができる。ソフトウェアは通常、配列比較の一部としてこれを行い、数値結果を生成する。
【0269】
「フラグメント」もまた変異体であり、この用語は通常、機能性または例えばアッセイにおいて注目するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を指す。従って、「フラグメント」とは、全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸または核酸配列を指す。
【0270】
このような変異体は、部位特異的突然変異誘発などの標準的な組換えDNA技術を用いて作製することができる。挿入が行われる場合、挿入部位の両側の天然に存在する配列に対応する5’および3’隣接領域とともに挿入配列をコードする合成DNAを作製すればよい。隣接領域には、天然に存在する配列の部位に対応する便利な制限部位が含まれているので、適切な酵素で配列を切断し、その切断部位に合成DNAを連結すればよい。その後、DNAは本発明に従って発現され、コードされたタンパク質が作られる。これらの方法は、DNA配列の操作に関して当技術分野で知られている多くの標準的技術を例示したに過ぎず、他の既知の技術を使用してもよい。
【0271】
コドンの最適化
本発明で使用されるポリヌクレオチドはコドンの最適化を行ってもよい。コドンの最適化は、これまでにWO1999/41397およびWO2001/79518に記載されている。細胞が異なれば、特定のコドンの使用が異なる。このコドンの偏りは、細胞種における特定のtRNAの相対存在量の偏りに対応する。対応するtRNAの相対存在量に合うように配列中のコドンを変更することで、発現を増加させることができる。同様に、特定の細胞種では対応するtRNAが稀であることが知られているコドンを意図的に選択することで、発現を減少させることもできる。このように、さらに高度な翻訳制御が可能になる。コドン使用頻度表は、哺乳動物細胞だけでなく、他の様々な生物についても当分野で知られている。
【0272】
当業者は、開示された本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明の全ての特徴を組み合わせることができることを理解するであろう。
【0273】
以下、本発明の好ましい特徴および実施形態を限定されない例として説明する。
【0274】
本発明の実施には、特に断りのない限り、化学、生化学、分子生物学、微生物学および免疫学の従来技術を用いるが、これらは当業者の能力の範囲内にある。このような技術は文献で説明されている。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F.M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13 and 16, John Wiley & Sons; Roe, B., Crabtree, J. and Kahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; Polak, J.M. and McGee, J.O’D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press; Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; and Lilley, D.M. and Dahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照のこと。これらの一般的なテキストのそれぞれは参照により本明細書の一部とされる。
【実施例】
【0275】
実施例1:血液悪性腫瘍におけるCD84の発現
本発明者らは、CD84が様々な悪性血液疾患で過剰発現していることを認めた。TCGAおよびGTExプロジェクトからの9,736の腫瘍および8,587の正常サンプルのRNAシーケンシング発現データを解析するための対話型ウェブサーバーであるGEPIAを使用して(http://gepia.cancer-pku.cn/index.html; Tang et al. GEPIA: a web server for cancer and normal gene expression profiling and interactive analyses. Nucleic Acids Res. 2017; 10.1093/nar/gkx247)、以下のことを見出した。
・CD84発現は、47のリンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(
図1では、DLBCとして表す)では、337の血液サンプルの4.2倍。
・CD84発現は、173の急性骨髄性白血病(
図1では、LAMLとして表す)では、70の骨髄サンプルの10.1倍。
【0276】
本発明者らはまた、様々なタイプの固形および血液腫瘍に由来する1,100を超える細胞株パネルのmRNA発現データを含むCancer Cell Line Encyclopaedia(CCLE)データセットも調査した(https://portals.broadinstitute.org/ccle)。mRNA発現のRNAseqとAffymetrix解析の両方から、CD84はバーキットリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞リンパ腫、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、およびT細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)由来の細胞株では高レベルで発現しているが、T細胞性リンパ腫または固形腫瘍でそうではないことが示された(
図2)。
【0277】
本発明者らは、次に、異なる血液悪性腫瘍に由来する細胞株の表面におけるCD84発現を評価した。表1に、使用した細胞株、それが由来する血液悪性腫瘍、および
図3に示したサイトメトリー解析に基づくCD84発現の定性的評価を示す。
【0278】
【0279】
本発明者らは、CLL患者からの9サンプルにおけるCD84の発現をフローサイトメトリーで解析した。表2に、
図4に示したサイトメトリー解析に基づくCD84発現の定性的評価を示す。白血病細胞におけるCD84の発現を、リンパ球(CD84
moderate)および単球(CD84
high)におけるCD84の発現と比較した。薄いグレーのヒストグラムはアイソタイプ適合対照抗体による染色を表し、濃いグレーのヒストグラムは特異的CD84抗体による染色を表す。
【0280】
【0281】
ある種のゲノムデータベースは、AMLにおいてCD84がmRNAレベルで過剰発現していることを示唆しているが、本発明者らは、AMLと診断された患者(n=10)の悪性細胞の表面にCD84が発現しているかどうかを確認しようとした(表3)。
【0282】
【0283】
フローサイトメトリーデータの2つの代表例を
図5に示す:患者04と患者10のサンプルは、それぞれCD84の発現が中と高を示す。
【0284】
実施例2:CD84抗体
マウスモノクローナル抗体
本発明者らは、2つの抗CD84マウスモノクローナル抗体(152-1D5と153-4D9; Engel et al. B-cell antigens section report, in Schlossman S (ed): Leucocyte Typing V. Oxford, UK, Oxford University Press, 1995, page 483; Palou et al. Genomic characterization of CD84 reveals the existence of five isoforms differing in their cytoplasmic domains. Tissue Antigens. 2000; 55(2):118-27)の配列を研究および決定した。
【0285】
さらに、本発明者らは、ヒトCD84タンパク質でBALB/cマウスを免疫することにより、方法に記載されているように、多数の新しい抗CD84マウスモノクローナル抗体を作製した。表3に、方法に記載されたように特性評価を行ったこれらの抗体の特徴をまとめる。300.19-CD84+、RajiおよびRamos細胞、リンパ球および単球への結合は、等量/等濃度の抗CD84抗体を添加したハイブリドーマ上清を用いて行った。
【0286】
【0287】
軽鎖の可変領域(VL)に相当する配列と重鎖の可変領域(VH)に相当する配列は、Mouse Ig-Primer Set(Novagen)を用いて異なるハイブリドーマから決定した。この領域のサンガーシーケンシングは、AbsoluteAntibody(英国)により行われた。相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)は、Abysis(配列はKabatナンバリングスキームで定義)、IMGTおよびIgBLASTデータベースを用いて同定した。
【0288】
表5は、これらの抗体のVH配列およびVL配列を示す。各配列の3つのCDRが太字および下線で強調されている。
【0289】
【0290】
ヒトscFv
ファージディスプレースクリーニングを用いて、CD84に結合する新規なヒトscFvを同定した。3つの異なるscFvが同定され(R3-B3、R3-G7およびR3-H3);重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変ドメインのCDRおよびFRの配列を表6に示す。
【0291】
【0292】
実施例3:CD84 CARの作製
本発明者らは、いくつかの抗CD84 CAR構築物(CAR84)を作製した。完全なCAR84配列を、EF1αプロモーターの制御下にシグナルペプチド、CD84に特異的なscFv、CD8aのヒンジ領域と膜貫通領域、共刺激ドメイン4-1BB、およびシグナル伝達ドメインCD3-ζを包含する第三世代レンチウイルスベクターpCCL(Dull et al. A Third-Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. J. Virol. 1998:72:8463-8471)にクローニングした(
図6)。
【0293】
scFvドメインの様々な変種が、上述の抗体に基づいて設計された。これらのscFvは、VH配列とVL配列の順序(VH鎖のみを有する変種もある)、およびVHとVLの間に使用されるリンカーが異なり、3つ(S3)または4つ(S4)のモチーフ(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)が使用されている。各CAR変種に付けられた名称は、scFvの設計を反映している。合成され、pCCLベクターにクローニングされた種々のscFvドメインの配列を表7に示す。
【0294】
【0295】
完全なCAR配列を表8に示す。
【0296】
【0297】
CD84 CARTの生産
pCCL-EF1α-CD84ベクターの種々の変種を含むレンチウイルス(LV)をHEK293-T細胞で産生し、限界希釈法によって導入ユニット数を決定した。次に、これらのレンチウイルスを用いて全血から単離したT細胞に形質導入した。その後、これらのCAR-T細胞を6~8日間、拡大培養した。
【0298】
下表(表9~11)は、種々のCARTに関して3回の独立した形質導入の後に得られたT細胞の数、ならびにこれらのT細胞のうち表面にCD84 CARを発現したもののパーセンテージをまとめたものである。
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
以下のCAR LVは、CAR陽性T細胞:152.1、153.1、153.2、B3.4およびB3.5の効率的な拡大増殖をもたらさなかった。152.1および153.1 CARはさらなる実験に使用しなかった。
【0303】
実施例4:in vitroサイトカイン生産におけるCD84 CART
各CART細胞のサイトカイン放出能を評価するために、エフェクター-標的細胞の共培養の上清を採取した。CD84
high細胞株Ramosを標的細胞として、2:1のエフェクター:標的細胞比で使用した。上清中のIFN-γ(
図7)、IL-2(
図8)、グランザイム-B(
図9)およびTNF-α(
図10)のレベルを、24時間の共培養後に酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定した。非形質導入T細胞(UT)を陰性対照として使用した(標的細胞と共培養)。4回の独立した実験を行った。
【0304】
これらの結果は、R3-B3 scFv CAR結合ドメインを有するCART細胞がサイトカイン放出活性を欠くことを示し、従って、次の実験には使用しなかった。他方、R3-H3 scFv CAR結合ドメインを有するCART細胞は、多量のサイトカインを放出し、これら2つのCART細胞(H3.4およびH3.5)は、最大の炎症性プロファイルを有するものであり(TNF-α分泌に基づく)、次いで、152-1D5抗体CAR結合ドメインを有するCART細胞であり、これも高いサイトカイン放出プロファイルを示す。152-1D5 CART細胞は、scFvの設計(VH-VLの順およびリンカー長)とは関わらず類似のプロファイルを示した。153-4D9およびR3-G7抗体に基づくCART細胞は類似のプロファイルを有し、サイトカインをほとんど分泌しない153.3 CART細胞を除き、R3-H3および152-1D5 CART細胞に比べて低いサイトカイン放出を示した。
【0305】
実施例5:抗CD84 CARTのin vitro細胞傷害性
in vitroにおけるCART84細胞の有効性を評価するために、本発明者らは、CD84発現レベルが異なり、リンパ起源(Ramos、NALM6およびMOLT-4細胞株)と骨髄起源(K562およびMOLM-13細胞株)の両方のいくつかのGFP発現標的細胞株に対して、各CART細胞の細胞傷害性アッセイを行った。CART細胞傷害性は、24時間の共培養の後に、サイトメトリーにより生GFP陽性細胞のパーセンテージを決定することで評価した。エフェクター:標的細胞比 4:1、2:1、1:1および0.5:1を試験した。
【0306】
まず、本発明者らは、CD84
high Ramos細胞株に対して全てのCARを試験した(
図11)。エフェクター:標的比 2:1の結果を示す。R3-H3および152-1D5 CART細胞は、この細胞株に対して最も高い細胞傷害活性を示したが、153-4D9およびR3-G7 CART細胞は、それより低い細胞傷害活性を示した。153.3 CART細胞は、153-4D9構築物に基づく全てのCARで最も低い細胞傷害活性を示した。
【0307】
次に、本発明者らは、CD84発現の低い骨髄細胞株であるK562に対して全てのCARを試験した(
図12)。エフェクター:標的比 2:1の結果を示す。152-1D5および153-4D9抗体に基づくCARは、UT細胞に比べて統計的に有意な細胞傷害活性を示した。
【0308】
RamosおよびK562に対する細胞傷害性に基づいて、本発明者らは、さらなる特性評価のために以下のCART細胞:152.3、153.4、153.5、G7.5およびH3.5を選択した。本発明者らは、いくつかの細胞株に対して、24および48時間の共培養の後に、4種類のエフェクター:標的比(4:1、2:1、1:1および0.5:1)で、これらのCART細胞の細胞傷害性を評価した。Ramosは、急速進行性B細胞リンパ腫細胞株であり(
図13)、K562は、CD84発現の低い急性骨髄性白血病細胞株であり(
図14)、一方、MOLM-13は、CD84発現が中程度の急性骨髄性白血病細胞株である(
図15)。NALM-6は、B細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株であり(
図16)、MOLT-4は、T細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株である(
図17)。
【0309】
2:1比に関して示されるように(
図11)、選択されたCARは、各エフェクター:標的比について、UT細胞に比べ、Ramos細胞に対して統計的に有意な細胞傷害活性を示した(
図13)。K562の場合、
図12で示されたものと同じパターンが見られ、152-1D5および153-4D9抗体に基づくCARは、UT細胞に比べて統計的に有意な細胞傷害活性を示した(
図14)。
【0310】
選択された全てのCARが、MOLM-13に対して細胞傷害活性を示し、152.1D5および153.4D9抗体に基づくCARが、R3-G7およびR3-H3抗体に基づくものよりも高い細胞傷害効果を示した(
図15)。
【0311】
152.1D5および153.4D9抗体に基づくCARは、R3-G7およびR3-H3 scFvに基づくCARよりも、NALM-6細胞株に対して高い細胞傷害活性を示した(
図16)。MOLT-4細胞株では、152-1D5抗体に基づくCARがUT細胞に比べて最も高い統計的に有意な細胞傷害活性を示し、次いで153-4D9およびR3-G7抗体に基づくCARであった(
図17)。
【0312】
実施例6:末梢血単核細胞(PBMC)におけるCD84発現
本発明者らは、種々のPBMC細胞集団におけるCD84発現をフローサイトメトリーにより評価し、得られた結果はこれまでに記載されたものと同様であった。単球は、Ramos細胞株で見られたものと同様の高いCD84発現を示す。B細胞は、中程度のCD84発現を示しす。CD4およびCD8の両T細胞には、CD84発現に関して明瞭に異なる亜集団(陽性および陰性)があり、陽性集団では中程度のCD84発現レベルであった(
図18)。
【0313】
実施例7:PBMCに対するCD84 CARTのin vitro細胞傷害性
本発明者らは、PBMCに対するCD84 CARTの細胞傷害活性を評価した。各実験で、エフェクター細胞(すなわち、CART84細胞)と標的細胞(PBMC)の両方を同じドナーから得た。3名の異なるドナーの3回の独立した実験の平均を示す。CART細胞は、それら固有のPBMCに対して統計的に有意な細胞傷害活性を示さなかった。しかしながら、これらのCART細胞は、並行実験でRamos細胞に対しては統計的に有意な細胞傷害活性を示した(
図19)。
【0314】
実施例8:実施例1~20の方法
マウスモノクローナル抗CD84抗体の作製
BALB/cマウスを3週間隔で3~4回、CD84全長DNAで安定にトランスフェクトされた300.19細胞で免疫した(de la Fuente MA et al. CD84 leukocyte antigen is a new member of the Ig superfamily. Blood. 1997; 15;90(6):2398-405)。1回目の腹腔内(i.p.)注射は、300μlのPBS中、20×106細胞からなり、2回目は、300μlのPBS中、20×106細胞からなり、最後の注射は、300μlのPBS中、 30×106細胞からなった。最後の追加免疫後3日目にマウスを安楽死させ、脾細胞を採取して細胞融合を行った。
【0315】
NS1骨髄腫細胞(European Collection of Cell Cultures, Salisbury, UK)と脾臓細胞を、4:1(脾細胞:NS1)の比で37℃にてインキュベートし、室温で10分間遠心分離し、絶えず撹拌しながら細胞ペレットに1mLの温PEG溶液を加えることによって融合させた。細胞をRPMI培養培地にゆっくり再懸濁させ、遠心分離し、加湿インキュベーター内、37℃、5%CO2でインキュベートした。
【0316】
融合10日後に、50μlのハイブリドーマ上清を、非トランスフェクト300.19細胞を陰性対照として用い、300.19-CD84細胞とフローサイトメトリーで分析することによりスクリーニングを行った。300.19-CD84細胞に陽性、300.19細胞に陰性と判定されたハイブリドーマを24ウェルプレートに移し、コンフルエントになるまで増殖させた後、T75フラスコに移した。次に、目的の抗体を産生する単一のハイブリドーマクローンを限界希釈により単離した。各ハイブリドーマについて、10個の単一クローンを300.19-CD84細胞を用いてフローサイトメトリーで再検査した。このクローニングプロトコールを陽性クローンの1つで繰り返した。
【0317】
各抗体について、アイソタイプ(クラスおよびサブクラス)は、抗IgGコートプレートに抗体を加えた後、抗マウスHRP抗体とともにプレートをインキュベートするELISA法により決定した。2つのCD84細胞外ドメインのどちらが抗体によって認識されるかを決定するために、ドメイン1(D1)と2(D2)の配列がヒトまたはマウスであるキメラCD84細胞外ドメインを発現するCOS細胞を用いてフローサイトメトリー解析を行った。
【0318】
完全ヒト抗CD84 scFvの同定
哺乳動物細胞によって産生されたヒトCD84(SDS-PAGEにより確認;
図20)を抗原として使用し、5.37×10
10 scFv変異体という高い多様性を有するヒトナイーブファージディスプレーLiAb SFMaxライブラリー(Proteogenix、フランス)のパンニングを行った。
【0319】
バイオパンニングラウンドでは、チューブを抗原でコーティングし、ブロッキングし、洗浄し、およびファージライブラリーとともにインキュベートした。洗浄後、グリシンHClでファージ結合剤の溶出を行い、次いで中和した。
【0320】
溶出したファージの濃度を決定するために、これらを大腸菌(E. coli)TG1細胞に加え、次いでプレートに注ぎ、逆さまにして培養した。PFU(プラーク形成単位)の計算は、プレート上のプラーク(すなわち、死滅したTG1)の数に基づいた。
【0321】
溶出したファージを増幅するために、これらを大腸菌TG1細胞に加え、次いでヘルパーファージを感染させ、培養した。PEG/NaClでファージを沈降させた後、再懸濁させ、増幅したファージをELISA分析の次のバイオパンニングラウンドに使用した。
【0322】
この分析では、ラウンドを重ねるごとに有意な濃縮が示され(表12)、ラウンド3の産出量がすでに優れた濃縮を示していたため、ファージの多様性の低下を防ぐためにさらなるバイオパニングラウンドは行わなかった。
【0323】
【0324】
ラウンド3のファージをモノクローナルELISA分析のために選択した。単一の大腸菌TG1クローンを採取し、ヘルパーファージとともに培養した。遠心分離の後、ファージを含む上清を回収した。
【0325】
プレートを抗原またはバッファーのいずれかでコーティングし、洗浄し、ブロッキングし、再び洗浄した。次に、ファージをプレートに加え、インキュベートした。プレートを洗浄し、次いで、抗ファージセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗体を加えた後、洗浄し、TMB、次いでHClでインキュベートした。プレートを450nmで読み取った。
【0326】
陽性クローンのシークエンシングの後、3つの異なるユニークな配列が同定された。同定された3つのユニークなクローンを次に、クローンの特異性を保証するためにELISAにより再検定した。全てのファージを同じ濃度で検定した。プレートを抗原(Ag)またはバッファー(NC)のいずれかでカバーした。これらの結果から、3つのクローンがCD84抗原と特異的に結合することが明らかになった(表13)。
【0327】
【0328】
ドナー、細胞株
健康なドナーの血液バフィーコートは、基準血液バンクBanc de Sang i Teixits、バルセロナ(スペイン)から入手した。
【0329】
Ramos、Raji、NALM6、K562、MOLM-13、Kasumi-6、THP-1、およびU937は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。Ramos、Raji、NALM6、K562、NS1およびTHP-1細胞株は、10%ウシ胎仔血清(FBS、Merck)およびペニシリン-ストレプトマイシン(Labclinics)を添加したRPMI培地(ThermoFisher)で培養し、300.19細胞には、1%L-グルタミン(Gibco)および0.1%2-β-メルカプトエタノール(Sigma)も添加した。HEK293TおよびCOS細胞株は、10%FBS(Merck)およびペニシリン-ストレプトマイシン(Labclinics)を1%L-グルタミン(Gibco)とともに添加したDMEM培地(Gibco)で培養した。全ての細胞株を37℃および5%CO2で増殖させた。
【0330】
レンチウイルスの生産
直鎖ポリエチレンイミン(PEI、分子量25000、Polysciences Inc 23966-1)を用い、HEK293-T細胞を、パッケージングプラスミドpRSV-Rev(Addgene、12253)、pMDLg/Prre(Addgene、12251)、およびエンベローププラスミドpCMV-VSV-G(Addgene、12259)とともに本発明者らのトランスファーベクターpCCL-EF1α-CD84でトランスフェクトした。48時間後にレンチウイルス上清を回収し、LentiX-Concentrator(Clontech、Takara)を用い、製造舎のプロトコールに従って濃縮した。濃縮したレンチウイルスは使用まで-80℃で保存した。
【0331】
レンチウイルスの力価測定
形質導入単位の数(TU/mL)は、限界希釈法で決定した。
【0332】
HEK293T細胞を形質導入の24時間前に播種し、1:10希釈のウイルス上清を調製し、8mg/mLでポリブレン(Sigma-Aldrich)を添加したDMEM培地(Gibco)に加えた。48時間後に細胞をトリプシンで処理し、AffiniPure F(ab’)2フラグメントヤギ抗マウス免疫グロブリンG(IgG)アロフィコシアニン(APC)結合体(JacksonImmuno Research Laboratories、115-136-072)で標識した。2%~20%の陽性細胞に相当する希釈率を用いてウイルス力価を計算した。
【0333】
T細胞形質導入およびCART拡大培養
T細胞は、Ficoll-Paque(商標)での密度勾配遠心分離中の全血から、RosetteSep(商標)(StemCellからのRosetteSep Human T cell Enrichmentカクテル)により単離した。T細胞は、5%ABヒト血清(Sigma H4522)、ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher、100mg/mL),および50IU/mLのIL-2(Miltenyi)を添加したX-Vivo 15 Serum Free Cell Medium(Lonza)で培養した。次に、細胞を、CD3およびCD28 mAb(Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28 Gibco、11131D)を結合させたビーズを用いて活性化した。24時間後、これらの細胞に、8ug/mLのポリブレン(Sigma-Aldrich)の存在下、レンチウイルスで形質導入を行った。実験を行う前に6~8日間の拡大培養を要した。
【0334】
フローサイトメトリー
CAR84を、組換えCD84-Hisタンパク質(R&D、1855-CD)および二次His Tag APC結合抗体(R&D、IC050A)およびビオチンSP結合AffiniPure F(ab’)2-フラグメントヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories、115-065-072)またはビオチンSP結合AffiniPure F(ab’)2-フラグメントヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories、109-065-006)とBV421結合ストレプトアビジン(BD Horizon、563259)で検出した。ヒトタンパク質に対する以下のmAbを使用した:CD3-APC、CD4-PE-Cy7、CD4-Alexa Fluor-488、CD19-PE、CD8-APC-H7、PD-1-PE-Cy7、TIM-3-BB515、CD69-PerCP-Cy(商標)5.5、LAG-3-BV-605、CD62L-FITC、CCR7-PerCP-Cy(商標)5.5、CD84-PE、CD4- PE-Cy(商標)7、CD45RA-APC(Becton Dickinson)、CD84-APCおよびCD84-PE(BioLegend)。サンプルをフローサイトメーターBD FACSCanto II(BD Biosciences)、LSR II Fortessa 4L with HTS(BD)、およびAttune NxT 4Lサイトメーター(ThermoFisher)にかけた。ELISAには、以下のmAbを使用した:抗マウスIgG-HRP(ヤギで作製した抗マウスIgG-ペルオキシダーゼ抗体、Sigma、カタログ:A3673-1ML)およびヤギで作製した抗マウスIgGコーティング(抗マウスIgG抗体(sigma、カタログ:M2650-1ML)。データは、FlowJo ソフトウェア10.7.1を用いて解析した。
【0335】
in vitro細胞傷害性アッセイ
CART細胞の細胞傷害性を、種々のエフェクター:標的比を用い、種々の時点で評価した。これらのアッセイに使用した標的細胞は、従前に記載されているように(Shah et al. Antigen Presenting Cell-Mediated Expansion of Human Umbilical Cord Blood Yields Log-Scale Expansion of Natural Killer Cells with Anti-Myeloma Activity. PLoS One. 2013; 8(10))、GFP-ホタルルシフェラーゼ(GFP-ffLuc)を過剰発現させるためにレンチウイルスベクターで改変した。
【0336】
生存GFP+腫瘍細胞の残存率をフローサイトメトリーにより分析し、下式:生細胞の%=100×(x時点のT細胞とともにあるGFP+細胞の数/x時点のGFP+細胞単独の数)を用いて計算した。
【0337】
in vitro増殖アッセイ
CD84抗原に応答したCART84細胞の増殖を、CFSEアッセイ(Castella, M. et al. (2019) Mol. Ther. - Methods Clin. Dev. 12: 134-144)を用いて測定した。CART細胞をCellTrace CFSE(Invitrogen、ThermoFisher、15598431)で染色した後、刺激有りまたは無しで96時間共培養した。増殖をフローサイトメトリーにより分析し、増殖指数(PI)を計算した(PI=異なる世代の細胞数の合計/細胞の数)。
【0338】
in vitroサイトカイン産生
IFN-γ、TNF-α、IL-6、IL-1βサイトカインを酵素結合免疫吸着アッセイ(DuoSet ELISA、R&D systems)により、製造者のプロトコールに従って定量した。
【0339】
上記明細書に記載されている全ての刊行物は、参照により本明細書の一部とされる。開示されている本発明の抗原結合ドメイン、抗体、キメラ抗原受容体、使用および方法の種々の改変および変形は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者には自明であろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関して開示してきたが、特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないと理解されるべきである。実際、当業者には自明である、本発明を実施するための開示された態様の様々な改変は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0340】
実施例9:CD84 CARの操作
本発明者らは、抗体GYCD84.1-7、GYCD84.1-226およびGYCD84.3-89に基づくいくつかの抗CD84 CAR構築物を作製した。完全なCAR84配列を、EF1αプロモーターの制御下にシグナルペプチド、CD84に特異的なscFv、CD8αヒンジおよび膜貫通領域、共刺激ドメイン4-1BBおよびシグナル伝達ドメインCD3-ζを包含する第三世代レンチウイルスベクターpCCL(Dull et al. A Third-Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. J. Virol. 1998:72:8463-8471)にクローニングした(
図6)。
【0341】
抗体GYCD84.1-7に基づき、VH配列とVL配列の順序が異なる2つの異なるscFvを設計した。これらのCARは全て、4(S4)モチーフ(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)のリンカーを含む。各CAR変種に付けられた名称は、scFvの設計を反映している。合成され、pCCLベクターにクローニングされた種々のscFvドメインの配列を表14に示す。
【0342】
【0343】
実施例10:血液悪性腫瘍におけるCD84の発現
本発明者らは、AMLまたはT-ALLと診断された患者の白血病細胞のCD84発現をフローサイトメトリーにより分析した。表15および16に、それぞれAML細胞およびT-ALL細胞上でのCD84発現の定性評価をまとめる。AMLサンプルの初代白血病細胞のフローサイトメトリー分析の2つの代表例を
図5に示す。T-ALLサンプル(患者01および患者02)の分析を
図21に示す。
【0344】
【0345】
【0346】
実施例11:CD84 CARTの生産
CART84 1.7.3、1.226.5および3.89.5 pCCL-EF1α-CD84ベクターを含むレンチウイルス(LV)をHEK293-T細胞で生産し、1mL当たりの形質導入単位の数を限界希釈法で決定した。レンチイルスを用いて全血から単離したT細胞に形質導入し、次に、これらのCAR-T細胞を6~8日間拡大培養した。
【0347】
表17に、3回の独立した形質導入の後に得られたT細胞の数、ならびに表面にCD84 CARを発現したT細胞のパーセンテージをまとめる。
【0348】
【0349】
形質導入6~7日後のCART84 1.7.3、1.226.5および3.89.5の拡大培養、ならびに152.3、153.5およびH3.5の拡大培養のさらなる分析を
図22に示し、0日目のT細胞数に対する増加倍率として表される。
【0350】
実施例12:CD84 CART in vitro細胞傷害性
細胞傷害性に基づき、Ramos、K562、MOLM-13、NALM6およびMOLT-4細胞、CART84 152.3、153.5およびH3.5に対して得られた結果を、さらなる特性評価のために選択し、1.7.3および1.226.5および3.89.5と比較した。本発明者らは、エフェクター:標的細胞比 4:1、2:1、1:1および0.5:1で、24時間または48時間の共培養の後の、Ramos、MOLM-13、U937およびMOLT-4細胞に対するそれらの細胞傷害性を、サイトメトリーにより生GFP陽性細胞のパーセンテージを決定することにより評価した。これらの細胞上のCD84発現を
図3に示す。
【0351】
全てのCART84がRamos細胞(CD84
high)に対して高い細胞傷害効果を示し、これはUTと比較して統計的に有意であった(
図23)。細胞傷害効果は、全てのCART細胞で経時的に増加したが、この効果は、H3.5および1.226.5の場合、特に低比率(1:1および0.5:1)では低かった。
【0352】
MOLM-13(CD84
moderate)およびU937(CD84
low)AML細胞に対して、CART84 152.3、153.5、1.7.3、1.226.5および3.89.5は高い細胞傷害効果を示し、これはUTと比較して統計的に有意であった(それぞれ
図24および25)。CART84 H3.5は、両細胞株の白血病細胞に対して、他のCART細胞よりも低い細胞傷害活性を示した。細胞傷害効果は、全てのCARTで経時的に増加した。H3.5を除く全てのCART細胞が、それらの低いCD84発現にもかかわらずU937細胞に対して高い細胞傷害性を示した。
【0353】
最後に、本発明者らは、MOLT-4細胞(CD84
high)に対するCART84 152.3、153.5、1.7.5、1.226.5および3.89.5の細胞傷害性を評価したところ、U937細胞で見られたものと同じパターンが見られ、すなわち、H3.5を除く全てのCART細胞が高い細胞傷害効果を示し、これは経時的に増加し、UTと比較して統計的に有意であった(
図26)。
【0354】
実施例13:AMLおよびT-ALL由来初代白血病芽細胞に対するCD84 CARTのin vitro細胞傷害性
本発明者らは、Haematology Department of Hospital Clinic de Barcelona(HCB)から得た患者サンプル由来の初代AML細胞に対するCART84細胞152.3、153.5、G7.5およびH.3.5の細胞傷害性を評価した。CD84発現を初代芽細胞で評価し、次にこれをCFSEで染色し、エフェクター細胞(CART/UT)とエフェクター:標的細胞比 4:1、2:1、1:1および0.5:1で24時間および48時間共培養した。この期間の後、細胞をLIVE/Dead(商標)Fixable Aquaで染色して生/死細胞を区別した。CART細胞152.3および153.5は、AML芽細胞に対して最も高い細胞傷害活性を示し、これはUTの効果と比較して統計的に有意であった。CART H3.5およびG7.5は、低い細胞傷害効果を示した。細胞傷害効果は、全てのCARTにより誘導され、経時的に増加した(
図27)。
【0355】
本発明者らはまた、Haematology Department of Hospital Clinic de Barcelona(HCB)から得た初代T-ALL患者サンプルに対するCART84細胞152.3、153.5、1.7.3、1.226.5および3.89.5の細胞傷害性も評価した。実験はAMLサンプルに関して上記したように行った。CART 152.3、153.5および1.7.3の細胞傷害性は、CART 1.226.5および3.89.5より高かった(
図28)。
【0356】
実施例14:CD84 CARTのin vitroサイトカイン産生
各CART細胞のサイトカイン放出能を評価するために、エフェクター-標的細胞共培養の上清を回収した。Ramos、MOLM-13およびMOLT-4を標的細胞として、2:1のエフェクター:標的細胞比で使用した。上清中のIFN-γ(
図29)、グランザイム-B(
図30)およびTNF-α(
図31)のレベルを、24時間の共培養の後に酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で決定した。非形質導入T細胞(UT)を陰性対照として使用した(標的細胞と共培養)。4回の独立した実験を行った。IFN-γおよびグランザイムBは、細胞傷害性サイトカインであり、TNF-αは炎症性サイトカインである。CART84 H3.5は、Ramosと共培養した場合、全ての供試CART84のサイトカイン産生に最高値を示した。MOLM-13およびMOLT-4細胞と共培養した後のCART84 1.7.3のサイトカインプロファイルは、H3.5と同様であった。他の全ての供試CART細胞は、同様のレベルのサイトカインを産生した。これらの結果からは、H3.5と1.7.3の両CART細胞は、持続性のシグナル伝達、すなわちリガンド不在下で構成的または慢性的に活性化を示す可能性が示唆される。
【0357】
実施例15:CD84 CARTのin vitro増殖
各CART84細胞の、抗原CD84の結合実施例に特異的に増殖する能力を評価するために、CFSE増殖アッセイを行った。簡単に述べれば、0日目にCART細胞をCellTrace(商標)CFSEで染色した。0日目の細胞(UTまたはCART細胞);培地で単独培養した4日目の細胞;IL-2(50UI/mL)の非特異的刺激で刺激した4日目の細胞;および特異的抗原、すなわち、MOLM-13細胞で、エフェクター:標的比 0.5:1で刺激した4日目の細胞、の4つの条件を試験した。本発明者らは、CD84抗原に曝露した場合、培地のみまたはIL-2とともにインキュベートした場合よりも、CART84 152.3、153.5および1.226.5がより増殖することを証明できた(
図32)。一方、CART H3.5、1.7.3および3.89.5は、MOLM-13またはIL-2で刺激した際に同様に増殖したことから、これらのCART84は持続的シグナル伝達を示す可能性が示唆された。
【0358】
実施例16:造血始原幹細胞に対するCD84 CARTのin vitro細胞傷害性
CD84は、数種の血液悪性腫瘍由来の悪性細胞上で発現する。これらにはAMLがあり、CD84の発現は、骨髄性白血病芽細胞間で、程度は低いが造血前駆幹細胞(HPSC)間で共有されている。CD33とCD123も同様で、どちらもAML治療用に開発中のCART製剤の標的である。
図33はアフェレーシス産物からのHPSCにおけるCD84、CD33およびCD123の発現を示している。
【0359】
CART84の潜在的な骨髄毒性を評価するために、HPSCに対するそれらの細胞毒性を、2つの異なる供給源:臍帯血ユニット(CBU、BST製)および同種幹細胞移植のためにG-CSFで動員された健康なドナーからのアフェレーシス産物(同じくBST製)から得られたCD34+HPSCで検討した。アフェレーシス産物からのCD34+細胞は、骨髄毒性を研究する理想的なモデルであるが、この種のオンターゲット/オフ腫瘍毒性を研究するためには、CBUからのCD34+細胞を用いるのがより一般的である。
【0360】
CBUからの精製CD34
+細胞を、エフェクター:標的細胞比 4:1および2:1で、CART84 152.3、153.5、1.7.3、1.229および3.89.5と24時間共培養した。CART84 152.3、153.5、1.7.3および1.226.5は、CBUからのCD34
+細胞に対して低~中の細胞傷害活性を示し、CART84 3.89.5が最も高かった。
図34は、5回の独立した実験からの結果をまとめたものである。
【0361】
アフェレーシス産物由来のCD34
+HPSCに対する細胞傷害性アッセイでは、CART84を作製するために3つの異なるドナーのバフィーコートを使用した。意外にも、これらの細胞に対するCART84の細胞傷害性は比較的低かった。48時間後、CARTの細胞傷害性は増加したが、非特異的なUTの細胞傷害性も増加した(
図35)。
【0362】
実施例17:CD84 CARTのin vitro T細胞毒性
CD84はT細胞で発現することから、本発明者らはCART84のT細胞に対する潜在的毒性を調べた。T細胞はドナーの全血から直接単離し、その半分は活性化し、形質導入を行ってCART細胞を生成し、残りの半分はCART細胞が利用可能になるまで(すなわち6~7日間)凍結保存した。T細胞をCFSEで染色した後、CART84と共培養した。
図36は、5回の独立した実験の結果を示す。CART84 152.3、153.5、1.7.3および3.89.5は、自身のT細胞に対して中程度の細胞傷害効果を示した。一方、1.226.5によって誘導された細胞傷害活性は低く、UTと比較して統計的に有意ではなかった。
【0363】
どの特定のT細胞画分がCART84の標的とされているかをさらに理解するために、以下のT細胞サブセットナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、およびエフェクターCD4/CD8 T細胞:に対する効果を分析した。異なるT細胞亜集団をフローサイトメトリーにより調べた:1)アッセイ前の標的T細胞、および2)
図37に示すように、異なるCART84と共培養した後の生存T細胞。CD84はメモリーT細胞に多く発現していることから予想されるように、セントラルメモリーT細胞分画がCART84、特に152.3、153.5および1.7.3によって最も影響を受けることが観察された。さらに、全てのT細胞サブセットがCART84との共培養後も存在した。
【0364】
実施例18:AMLモデルにおける抗CD84 CARTのin vivo有効性
GFP-ホタルルシフェラーゼ(GFPffLuc)を発現するように改変したMOLM-13 AML細胞を用いて、NOD scid gamma(NSG)免疫不全マウスでの3回の独立した実験で、数種のCART84細胞の有効性を試験した。in vitroでの有効性と安全性プロファイルが最も優れていたCART84が、in vivoでの試験用に選択された:152.3、153.5、H3.5、1.7.3および1.226.5。
【0365】
1回目と2回目の実験で、0日目に1×10
6または0.25×10
6のMOLM-13 GFP-ffLuc細胞をそれぞれNSGマウスの静脈内(i.v.)に注射した(
図38および39)。6日後、4×10
6~5×10
6のUT、CART84細胞152.3、153.5、H3.5または1.7.3をマウスにi.v.注射した。CART 152.3、153.5および1.7.3で処置したマウスは、UTで処置したマウスと比較して生存率に統計的に有意な増大を示した。
【0366】
図40で示した実験において、0日目に1×10
5のMOLM-13 GFP-ffLuc細胞をi.v.注射し、2日後と11日後にUT、CART 152.3、153.5および1.226.5をそれぞれ5×10
6および3×10
6細胞の用量で注射した。CART 152.3および153.5は、生物発光によりモニタリングされる腫瘍進行を抑制し、これはUTで処置したマウスと比較して統計的に有意であった。さらに、CART 152.3および153.5で処置したマウスは、UTで処置したマウスと比較して生存率に統計的に有意な増大を示した。
【0367】
実験の終了時に安楽死させたマウスの骨髄および脾臓を回収し、腫瘍細胞(MOLM-13-GFPffLuc)、ヒトCD3
+T細胞またはCART細胞の存在を定量するためにフローサイトメトリーにより分析した。両実験で、CART84処置マウスは、UT処置マウスと比較して骨髄および脾臓の両方で腫瘍細胞数が有意に少なかった(
図39Cおよび40C)。ヒトT細胞は、UTで処置したマウスの骨髄と脾臓の両方で増殖したが、これはおそらく異種移植片対宿主病(xeno-GvHD)のためであろう(
図39Dおよび40D)。CART84細胞は骨髄と脾臓の両方に見られ、CART84 152.3の場合に最も顕著であった(
図39Eと40E)。
【0368】
要約すると、152.3および153.5はAMLの病勢進行を一貫して抑制することができ、処置した動物の生存率を増加させた。
【0369】
実施例19:T-ALLモデルにおけるCART84のin vivo有効性
GFP-ffLucを発現するように改変したMOLT-4 T-ALL細胞を用い、NOD scid gamma(NSG)マウスでの2回の独立した実験でCART84細胞の有効性を調べた。以下のCART84を試験した:152.3、153.5、1.7.3および1.226.5。
【0370】
図41に示した実験では、0日目にNSGマウスに0.75×10
6のMOLT-4 GFP-ffLuc細胞を注射し、5日後に3×10
6のCARTまたはUTをi.v.注射した。CART84 152.3は、生物発光によりモニタリングされる腫瘍進行を、UTで処置したマウスと比較して統計的に有意に抑制した。さらに、CART 152.3および153.5で処置したマウスは、UTで処置したマウスと比較して生存に率統計的に有意な増大を示した。
【0371】
図42に示す実験では、0日目に4×10
5のMOLT-4 GFP-ffLuc細胞をi.v.注射し、2日後に5×10
6のCARTまたはUTを注射した。CART84 152.3および153.5による処置は、生物発光によりモニタリングされる腫瘍進行の抑制と生存率の増大の両方にUTと比較して統計的に有意な有効性を惹起した。
【0372】
実験の終了時に安楽死させたマウスの骨髄および脾臓を、腫瘍細胞(MOLT-4)、ヒトCD3
+T細胞およびCART細胞の存在を定量するためにフローサイトメトリーにより分析した。この場合、異なる群の動物の骨髄および脾臓に見られる腫瘍細胞の数に統計的に有意な違いは無かった(
図42C)。ヒトT細胞は、UTで処置したマウスの骨髄と脾臓の両方で増殖したが、これはおそらくxeno-GvHDのためであろう(
図42D)。CART細胞は、特に152.3細胞の場合、骨髄と脾臓の両方に見られた(
図42E)。
【0373】
CART84 152.3および153.5は、両T-ALL実験でT-ALL疾患の抑制および生存の延長に最も有効であった。
【0374】
実施例20:ヒト初代細胞に対するCD84 CARTのin vitro傷害性
潜在的オンターゲット/オフ腫瘍傷害性を評価するため、ヒト初代細胞のCD84発現を調べ、その後CART84によって誘導される潜在的な細胞傷害性効果を調べた。以下のヒト細胞:ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)、ヒト小気道上皮細胞(HsaEpC)、ヒト心筋細胞(HCM)、ヒト腎上皮細胞(HREpC)およびヒト子宮線維芽細胞(HUF)を検討した。フローサイトメトリーを用いて、これらの細胞の表面にはCD84が発現していないことを証明することができた(
図43)。
【0375】
XCELLigenceアッセイで、本発明者らは、CART84 152.3および153.5がHsaEpC、HCM、HREpCまたはHUFに対して細胞傷害性を示さなかったことを見出した。しかしながら、HCAECに対しては、CD84発現がないにもかかわらずいくらかの細胞傷害性効果が見られ、この効果は抗原特異的でないことが示唆された。このことを確認するために、本発明者らは、CART84の細胞傷害活性を、CD123(この抗原が内皮細胞の表面で発現されるため)を標的とするCARTの細胞傷害活性と比較した。CD123に対するCART細胞により誘導された細胞傷害性は、CART84 152.3または153.5により誘導されたものより有意に高かった(
図44)。
【0376】
実施例21:実施例9~20の方法
CD123 CARの作製
本発明者らは、US2014/0271582からのIL3scfv-IgG4(L235E)-CD28gg-ζ(26292)CARに基づいて抗CD123 CAR構築物を作製した。CAR配列を、EF1αプロモーターの制御下にシグナルペプチド(GMCSFRα)、26292 scFv(VH-リンカー-VL)、IgG4-FcヒンジおよびCD28膜貫通領域、共刺激ドメインCD28およびシグナル伝達ドメインCD3-ζを包含する第三世代レンチウイルスベクターpCCL(Dull et al. A Third-Generation Lentivirus Vector with a Conditional Packaging System. J. Virol. 1998: 72:8463-8471)にクローニングした。
【0377】
フローサイトメトリー
T細胞の陽性CAR画分をビオチン-SP(ロングスペーサー)AffiniPureヤギ抗マウスIgG、F(ab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch)またはビオチンSP結合AffiniPure F(ab’)2-フラグメントヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)で検出し、洗浄した後、BV421/PE結合ストレプトアビジン(eBioscience)および以下に記載するような各タンパク質パネルを調べるために必要な抗体とともにインキュベートした。
【0378】
ヒトタンパク質に対する以下のmAbを用いてCAR T細胞表現型を調べた:CD197-BV510(CCR7)、CD62L-FITC、CD4-Pecy7、CD8-APCH7、CD45RA-APC(Becton Dickinson)。
【0379】
ヒトタンパク質に対する以下のmAbを用いて、AML/T-ALLサンプル中に存在する種々の集団細胞を調べた:CD11-APC、CD19-Fitc、HLA-DR-A450、CD45-PerCPCy5.5、CD34-PerCPCy5.5、CD3-APC、CD3-APCH7、CD33-Fitc、CD14-Fitc、CD14-APCH7、CD13-PE、CD13-BV421(Becton Dickinson)、CD84-APC、CD84-PE(BioLegend)、CD45-A750、CD117-PeCy7(Beckman Coulter)、CD123-PECy7(eBiosciences)。
【0380】
ヒトタンパク質に対する以下のmAbを用いて、末梢血中に存在する種々の単核細胞集団を調べた:CD3-BV421、CD14-APCH7、CD19-FITC、CD33-APC、CD34-PerCPCy5.5、CD38-APC、CD84-PE(BioLegend)、CD123-PECy7(eBiosciences)およびHLA-DR-BV450(Becton Dickinson)。
【0381】
タンパク質に対する以下のmAbをMOLM-13モデルで行うin vivo実験に使用した:抗ヒトCD3-APCH7、抗ヒトCD33-APC、抗ヒトCD45-PerCP-Cy5.5、抗マウスCD45-PECy7、ストレプトアビジン-BV421(Becton Dickinson)。タンパク質に対する以下のmAbをMOLT-4モデルで行うin vivo実験に使用した:抗ヒトCD3-APC、抗ヒトCD45-PerCP-Cy5.5、抗マウスCD45 Pe-Cy7、ストレプトアビジン-BV421(Becton Dickinson)。
【0382】
全てのサンプルをBD FACSCanto(商標)II、LSRFortessa(商標)4L(DB Biosciences)またはAttune(商標)NxT(Invitrogen)フローサイトメーターに流し、FlowJo v10.8.0ソフトウェア(BD Biosciences)で解析した。
【0383】
AMLおよびT-ALL患者からの初代白血病芽細胞に対するin vitro細胞傷害性アッセイ
初代芽細胞をCFSE(ThermoFisher)で染色し、エフェクター細胞(CART/UT)と、エフェクター:標的細胞比 4:1、2:1、1:1および0.5:1で24時間および48時間、共培養した。この期間の後、共培養細胞をLIVE/Dead(商標)Fixable Aqua(ThermoFisher)で染色して生/死細胞を区別した。残留している生芽細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより決定し、下式:生細胞%=100×(x時点のCART細胞とともにあるネガティブLIVE/Dead陽性CFSE細胞の数/x時点のネガティブLIVE/Dead陽性CFSE細胞単独の数)を用いて計算した。
【0384】
CD34+細胞の単離
造血始原幹細胞(CD34+)は、臍帯血ユニット(CBU、血液バンクBanc de Sang i Teixits de Barcelona、BST)および同種幹細胞移植のためにG-CSFで改変した健常ドナーからのアフェレーシス産物(これもBSTから入手)から入手した。
【0385】
CD34+細胞は、まず、Ficoll-Paque密度勾配遠心分離、次に、ヒトCD34マイクロビーズキットを用いた磁気分離(Miltenyi Biotec、陽性選択)によるCD34+造血始原幹細胞の精製によって、CBUから単離した。アフェレーシス産物からCD34+細胞を単離するために、細胞をそのままCD34磁性ビーズで精製した。
【0386】
CD34+細胞に対するin vitro細胞傷害性アッセイ
CD34+細胞に対するCD84 CART細胞傷害性を評価するために、CD34+細胞をエフェクター細胞(CART/UT)と、エフェクター:標的細胞比 4:1、2:1で、24時間および48時間、共培養した。この期間の後、共培養細胞をAPC結合CD3およびPE結合CD34抗体で染色してエフェクターを標的細胞から区別し、LIVE/Dead Fixable Aquaで標識して生/死細胞を区別した。
【0387】
精製T細胞に対するin vitro細胞傷害性アッセイ
T細胞は、ドナーバフィーコートからのFicoll-Paque密度勾配遠心分離中に、RosetteSep(商標)からの免疫細胞単離試薬を用いて単離した。このプロセスで得られたT細胞の半分を活性化し、形質導入を行ってCART細胞を生成し、残りの半分は、標的細胞として使用するために、CART細胞が利用可能になるまで(すなわち8日間)凍結保存した。細胞傷害性アッセイを行うために、T細胞を解凍し、CFSEで染色した後、CART細胞と、種々のエフェクター:標的比で共培養した。24時間後、エフェクターと標的細胞をどちらも固定し、LIV/Dead Fixable Aqua細胞染色キットで染色した。
【0388】
残留している生T細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーで決定し、下式:生細胞の%=100×(x時点のCART細胞とともにあるネガティブLIVE/Dead陽性CFSE細胞の数/x時点のネガティブLIVE/Dead陽性CFSE細胞単独の数)を用いて計算した。
【0389】
残留する生T細胞サブセットを調べるために、フローサイトメトリーの節に説明したように、これらを表現型パネルからのヒトmAbでも染色した。
【0390】
in vivo有効性アッセイ
8~12週齢の非糖尿病-Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(Charles River)を飼育し、バルセロナ大学医学健康科学部の動物施設で病原体のない条件下で収容した。0.1~1×106個のGFPffLuc発現MOLM-13またはGFPffLuc-MOLT-4細胞を生理食塩水に再懸濁し、0日目に各NSGマウスの静脈内(IV)に注入した投与した。腫瘍細胞注入から2~9日後に、3~5×106のUTまたはCD84 CARTを静脈内(i.v.)注入した。腫瘍の進行は、Xenogen IVIS 50 Imaging System(PerkinElmer)を用いて生物発光によりモニタリングした。生物発光を測定するために、XenoLight D-Luciferin(Perkin Elmer Ref.122799)100uLを各マウスの腹腔内に投与し、腫瘍量を毎週モニタリングした。Living Imageソフトウェア(PerkinElmer)を用いて可視化し、全発光束を算出した。マウスは、人道的エンドポイント基準の徴候を表した時点で安楽死させた。骨髄と脾臓を取り出し、フローサイトメトリーで腫瘍細胞、T細胞およびCART細胞の存在を定量した。
【0391】
全ての手順は、バルセロナ大学医学・健康科学部の所内動物飼育委員会に従って行われた。
【0392】
初代ヒト細胞
以下の初代ヒト細胞:ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)、ヒト小気道上皮細胞(HSAEpC)、ヒト子宮線維芽細胞(HUF)、ヒト心筋細胞(HCM)およびヒト腎臓上皮細胞(HREpC)をPromoCellから取得した。細胞は、データシートに示されるように、特定の培地および添加剤(これもPromoCellから)とともに37℃、5%CO2で培養した。
【0393】
接着細胞を用いたin vitro細胞傷害性アッセイ
接着細胞に対するCART細胞の傷害性を評価するために、インピーダンスにより生細胞増殖のリアルタイム測定を可能にするxCELLigence装置を使用した。xCELLigence用のRTCA E-プレート(16ウェル)に標的細胞を播種し、xCELLigence RTCAマルチプルプレートモニタリングシステムを用いて24時間、細胞指数をモニタリングした。この時点で、100mLの増殖培地またはT細胞(非形質導入T細胞またはCART細胞を4:1のエフェクター:標的比で)を各ウェルに加えた。各ウェルから取得したデータ(細胞指数)を1に対して正規化し、72時間、細胞増殖をモニタリングした。データは、xCELLigence RTCA Software Lite 2.0.0.1301を用いて解析した。
【0394】
実施例22:B細胞リンパ腫モデルにおけるCART84のin vivo有効性
いくつかのCART84細胞の有効性を、NOD scid gamma(NSG)マウスでのin vivo実験において、GFP-ffLucを発現するように改変したRamos(バーキットリンパ腫)細胞を用いて調べた。以下のCART84を調べた:152.3、153.5およびH3.5。
【0395】
図45に示される実験では、4×10
5個のRamos GFP-ffLuc細胞を0日目にNSGマウスにi.v.注射した。2日後に、5×10
6個のCARTまたはUT細胞をi.v.注射した。CART 152.3、153.5およびH3.5で処置したマウスは、より遅い増殖傾向を示した(
図45A)。実験の終了時に安楽死させたマウスの骨髄を回収し、腫瘍細胞の存在を定量するためにフローサイトメトリーにより解析した。CART84処置マウスは、UT処置マウスと比較した場合に、骨髄中のRamos GFP-ffLuc細胞の数が統計的に有意に低かった(
図45B)。
【0396】
実施形態
以下、本発明の様々な特徴および実施形態を、以下の番号を付けた段落を参照して説明する。
【0397】
1.a)配列:CDR1-NYWIN(配列番号1);CDR2-DIYPVSGTTNYNEKFKR(配列番号2);およびCDR3-GTGRFAY(配列番号3);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号4);CDR2-FASNLES(配列番号5);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号6);またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
b)配列:CDR1-NYWLG(配列番号7);CDR2-DIYPGGGYTNYIEKFKG(配列番号8);およびCDR3-YEGGYYGNYDAMDY(配列番号9)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-RASESVDNYGISFMN(配列番号10);CDR2-AASNQGS(配列番号11);およびCDR3-QQSKAVPRT(配列番号12)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
c)配列:CDR1-GFTFSSYA(配列番号13);CDR2-ISGSGGST(配列番号14);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号15)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);ならびに
配列:CDR1-NIESKD(配列番号16);CDR2-DDA(配列番号17);およびCDR3-QVWDSSSDHVV(配列番号18)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
d)配列:CDR1-GFTFSSYP(配列番号19);CDR2-ISYHGRNK(配列番号20);およびCDR3-ARDRDATPGGTGVGNHGMAV(配列番号21)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-QSLLHSSGYNY(配列番号22);CDR2-MGS(配列番号23);およびCDR3-MQGLQTPPT(配列番号24)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
e)配列:CDR1-GFTFSDNA(配列番号25);CDR2-ISGTGRTT(配列番号26);およびCDR3-AKWDCSDGRCYWAY(配列番号27)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-QSLVYSDGDTY(配列番号28);CDR2-KVS(配列番号29);およびCDR3-MQGTHWPPNT(配列番号30)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
f)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号31);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号32);およびCDR3-MRTSYYFDY(配列番号33)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-RASENIFSSLA(配列番号34);CDR2-NAKTLAE(配列番号35);およびCDR3-QHHYATPFT(配列番号36)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
g)配列:CDR1-SYWIN(配列番号37);CDR2-DIYLGSGSTNYNEKFKS(配列番号38);およびCDR3-SGGYLGY(配列番号39)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-RASQSVSTSSYSYMH(配列番号40);CDR2-FASNLES(配列番号41);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号42)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
h)配列:CDR1-NYWIG(配列番号43);CDR2-DIYPGGGYTNYNENFKG(配列番号44);およびCDR3-STTYYSSYWCFDV(配列番号45)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-KSSQSLLNSGNQANYLA(配列番号46);CDR2-GASTRES(配列番号47);およびCDR3-QNDHSYPFT(配列番号48)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
i)配列:CDR1-RYWMS(配列番号49);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号50);およびCDR3-PGPTVVATYWYFDV(配列番号51)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号52);CDR2-KVSSRFS(配列番号53);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号54)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);または
j)配列:CDR1-RYWIN(配列番号55);CDR2-DIYPGSGSTNYNEKFKS(配列番号56);およびCDR3-DTTIAY(配列番号57)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-RASQSVTTSRYSYMH(配列番号58);CDR2-FASNLES(配列番号59);およびCDR3-QHSWEIPYT(配列番号60)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
k)配列:CDR1-GYNMN(配列番号131);CDR2-NIDPYYGGTNYNQKFKG(配列番号132);およびCDR3-GLLSGSFPY(配列番号133)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-RASENIYSYLA(配列番号134);CDR2-NAKTLAE(配列番号135);およびCDR3-QHHYGSPLT(配列番号136)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
l)配列:CDR1-RSWMS(配列番号137);CDR2-EINPDSSTINYTPSLKD(配列番号138);およびCDR3-FYDGYSIYWYFDV(配列番号139)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-RSSQSIVHSNGDTYLE(配列番号140);CDR2-KVSNRFS(配列番号141);およびCDR3-FQGSHVPRT(配列番号142)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
m)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号143);CDR2-HIWWDDVKRYNPALRS(配列番号144);およびCDR3-IAVTYFFDF(配列番号145)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-RASENIFSSFA(配列番号146);CDR2-NARTLAE(配列番号147);およびCDR3-QHHYASPFT(配列番号148)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);
n)配列:CDR1-TSGMGVG(配列番号149);CDR2-HIWWDDVKRYNPALKS(配列番号150);およびCDR3-MSTSYYFDY(配列番号151)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-KASQSLFTSVA(配列番号152);CDR2-SASYRYT(配列番号153);およびCDR3-QQHYSSPFT(配列番号154)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL);または
o)配列:CDR1-IYAMN(配列番号155);CDR2-RIRSKSNNYARFYADSVKD(配列番号156);およびCDR3-PLRSYFSMDY(配列番号157)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
配列:CDR1-KASENVDTYVS(配列番号158);CDR2-GASNRYT(配列番号159);およびCDR3-GQTYSYPWT(配列番号160)、またはそれぞれ3個までのアミノ酸置換、付加もしくは欠失を有するその変異体を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL)
を含んでなる抗原結合ドメイン。
【0398】
2.a)配列番号61の配列を有するVHドメイン;および配列番号62または108の配列を有するVLドメイン;
b)配列番号63の配列を有するVHドメイン;および配列番号64または109の配列を有するVLドメイン;
c)配列番号65の配列を有するVHドメイン;および配列番号66の配列を有するVLドメイン;
d)配列番号68の配列を有するVHドメイン;および配列番号69の配列を有するVLドメイン;
e)配列番号71の配列を有するVHドメイン;および配列番号72の配列を有するVLドメイン;
f)配列番号74の配列を有するVHドメイン;および配列番号75の配列を有するVLドメイン;
g)配列番号76の配列を有するVHドメイン;および配列番号77の配列を有するVLドメイン;
h)配列番号78の配列を有するVHドメイン;および配列番号79の配列を有するVLドメイン;
i)配列番号80の配列を有するVHドメイン;および配列番号81の配列を有するVLドメイン;または
j)配列番号82の配列を有するVHドメイン;および配列番号83の配列を有するVLドメイン;
k)配列番号161の配列を有するVHドメイン;および配列番号162の配列を有するVLドメイン;
l)配列番号163の配列を有するVHドメイン;および配列番号164の配列を有するVLドメイン;
m)配列番号165の配列を有するVHドメイン;および配列番号166の配列を有するVLドメイン;
n)配列番号167の配列を有するVHドメイン;および配列番号168の配列を有するVLドメイン;または
o)配列番号169の配列を有するVHドメイン;および配列番号170の配列を有するVLドメイン;
またはそれぞれそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体
を含んでなる、段落1の抗原結合ドメイン。
【0399】
3.段落1または2の抗原結合ドメインを含んでなる抗体。
【0400】
4.場合により、
a)CARがscFv CARであり;
b)CARがCD8a膜貫通ドメインを含み;
c)CARが4-1BBまたはCD28共刺激ドメインを含み;かつ/または
d)CARがCD3-ζシグナル伝達ドメインを含んでなる、
段落1または2の抗原結合ドメインを含んでなるキメラ抗原受容体(CAR)。
【0401】
5.段落1もしくは2の抗原結合ドメイン、段落3の抗体、または段落4のCARをコードする1以上のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【0402】
6.段落5のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【0403】
7.段落5のポリヌクレオチドまたは段落6のベクターを含んでなる細胞。
【0404】
8.段落1もしくは2の抗原結合ドメイン、または段落4のCARを含んでなる細胞。
【0405】
9.第1のCARおよび第2のCARを含み、第1のCARが段落4のCARであり、場合により、第2のCARが抗CD19 CAR、抗CD20 CAR、抗CD22 CAR、抗CD33 CAR、抗CD123 CAR;または抗CD7 CARである、細胞。
【0406】
10.T細胞またはNK細胞であり、場合により、自己または同種細胞である、段落7~9のいずれか一項に記載の細胞。
【0407】
11.段落1もしくは2の抗原結合ドメイン、段落3の抗体、段落4のCAR、段落5のポリヌクレオチド、段落6のベクター、または段落7~10のいずれか1つの細胞を含んでなる医薬組成物。
【0408】
12.療法、場合により癌の治療である療法において使用するための、段落1もしくは2の抗原結合ドメイン、段落3の抗体、段落4のCAR、段落5のポリヌクレオチド、段落6のベクター、段落7~10のいずれか1つの細胞、または段落11の医薬組成物。
【0409】
13.癌が血液悪性腫瘍、場合により、CD84を発現する血液悪性腫瘍であり、および/または癌が慢性リンパ球性白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、慢性骨髄増殖性症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、樹状細胞新生物および組織球性肉腫からなる群から選択される、段落12に記載の使用のための抗原結合ドメイン、抗体、CAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または医薬組成物。
【0410】
14.サンプルのCD84発現レベルを決定するため、場合により、対象由来のサンプルのCD84発現レベルを分析するための、段落1もしく2の抗原結合ドメイン、または段落3の抗体の使用。
【0411】
15.抗CD84 CARまたは抗体による治療に適した対象を特定するための方法であって、対象から単離されたサンプルのCD84発現レベルを決定することを含み、CD84発現レベルが段落1もしくは2の抗原結合ドメイン、または段落3の抗体を用いて決定される、方法。
【配列表】
【国際調査報告】