(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】皮膚吸収増進のための陽イオン性リポソーム、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/14 20060101AFI20241226BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/68 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241226BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241226BHJP
B01J 13/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K8/14
A61K8/55
A61K8/68
A61K8/63
A61K8/73
A61Q19/00
B01J13/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540895
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2022021511
(87)【国際公開番号】W WO2023132553
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0002164
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517039760
【氏名又は名称】コスマックス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス ジ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュン ベ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミョン サム
【テーマコード(参考)】
4C083
4G005
【Fターム(参考)】
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC542
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD321
4C083AD322
4C083AD352
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD632
4C083CC01
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD45
4C083EE12
4C083EE16
4C083FF05
4G005AA07
4G005AB02
4G005AB03
4G005BB06
4G005BB08
4G005BB17
4G005DB30Z
4G005DC15W
4G005DE05Z
4G005EA03
(57)【要約】
高圧乳化装置を利用し、陽イオン性リポソームを製造する方法、該方法によって製造された陽イオン性リポソーム、該陽イオン性リポソームを含む化粧料組成物、食品組成物及び薬学的組成物を提供する。該陽イオン性リポソームを製造する方法によれば、高圧乳化装置を利用し、毒性有機溶媒を使用せずに皮膚に安全なリポソームを製造し、リポソームの量産が可能である。また、該方法によって製造された陽イオン性リポソームは、剤形安定性にすぐれ、正電荷を帯びるので、内部に担持された有効成分の皮膚吸収能を増進させうる。従って、該陽イオン性リポソームを化粧品、食品、医薬品などに使用しうる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質、セラミド及びコレステロールを含む第1溶液を製造する段階と、
陽イオン供与物質を含む第2溶液と、前記第1溶液との混合物を撹拌する段階と、
高圧乳化装置を利用し、前記撹拌された混合物から、陽イオン性リポソームを製造する段階と、を含む、陽イオン性リポソームを製造する方法。
【請求項2】
前記リン脂質は、水添レシチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リン脂質及び前記コレステロールの重量比は、4.5:1ないし1.5:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コレステロールは、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.1ないし5.0重量%で含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記陽イオン供与物質は、キトサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記陽イオン供与物質は、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.01超過ないし5.0重量%で含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高圧乳化装置の圧力条件は、800ないし1,500barである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の方法によって製造された、陽イオン性リポソーム。
【請求項9】
前記陽イオン性リポソームの粒子サイズは、50ないし300nmである、請求項1に記載の陽イオン性リポソーム。
【請求項10】
前記陽イオン性リポソームのゼータ電位は、20ないし50mVである、請求項1に記載の陽イオン性リポソーム。
【請求項11】
前記陽イオン性リポソームは、二重層または多重層の構造を有する、請求項1に記載の陽イオン性リポソーム。
【請求項12】
請求項8に記載の陽イオン性リポソームを含む、化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年1月6日に出願された大韓民国特許出願第10-2022-0002164号を優先権として主張し、前述の明細書全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、有効成分の皮膚吸収増進のための陽イオン性リポソーム、それを含む化粧料組成物、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚障壁は、角質層細胞間の細胞外空間を充填する脂質分子によって構成されていることにより、皮膚の恒常性維持、並びに多様な外部物理的刺激、及び水和/脱水などに係わる変化からの皮膚の保護に非常に重要な役割を行う。しかしながら、有効成分を皮膚内に伝達するとき、そのような皮膚障壁は、若干不利に作用する。特に、該有効成分は、最も普遍的に、細胞内経路(inter cellular pathway)を介して皮膚内に伝達されると知られているが、親水性有効成分の場合、脂質分子によって構成されているそのような経路を通過することは、さらに困難である。従って、それを克服するためには、生体親和性皮膚伝達システムが必要である。
【0004】
リポソームは、有効成分の皮膚吸収増進のために使用される代表的な皮膚伝達体であり、生体内物質であるリン脂質(phospholipid)によって構成されており、生体親和性が高く、化粧品分野においても、活用度が高い方である。特に、親水性物質と親油性物質とを同時に担持することができる特徴を有しており、多様な効能成分の皮膚伝達に有利である。また、該有効成分を、二重層(bi-layer)構造内または多重層(multi-layer)構造内に安定して担持することができ、乳化剤形だけではなく、外観が透明な可溶化剤形まで、多様な化粧品剤形に適用が可能である。リポソームは、膜の構成成分により、弾性リポソーム、高分子コーティングリポソーム、陽イオンリポソームなどに製造されうる。そのうち、陽イオンリポソームは、正のゼータ電位を有するリポソームであり、負電荷を帯びる皮膚表面との静電気的引力により、皮膚への接近がさらに容易であり、該有効成分の皮膚吸収増進に役に立つ。
【0005】
リポソームの原料化のためには、安定性と、実際の剤形に適用されたとき、担持された有効成分の効能発揮が良好になされるか否かの評価が最も重要である。リポソームは、薄膜水和法(thin film hydration method)を介して製造されることが、最も基本的な方法であるが、安定性や量産化などにおいては、限界がある。最近では、リポソーム製造のために、マイクロフルイダイザ(MF:microfluidizer)を活用する製造方法が報告されている。しかしながら、該マイクロフルイダイザを介して製造するとき、リポソーム特有粒子形態である二重層(bi-layer)形態または多重層(multi-layer)形態の粒子が生成され難いという側面がある。従って、そのように製造されたリポソームの形態確認時、及び剤形内への適用時、有効成分の皮膚伝達に実際に一助となるか否かということに係わる効能評価を介して確認する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は、高圧乳化装置を利用し、陽イオン性リポソームを製造する方法を提供する。
【0007】
他の態様は、前記方法によって製造された陽イオン性リポソームを提供する。
【0008】
さらに他の態様は、前記陽イオン性リポソームを含む化粧料組成物を提供する。
【0009】
さらに他の態様は、前記陽イオン性リポソームを含む皮膚外用剤組成物を提供する。
【0010】
さらに他の態様は、前記陽イオン性リポソームを含む薬学的組成物を提供する。
【0011】
さらに他の態様は、前記陽イオン性リポソームを含む食品組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様は、高圧乳化装置を利用し、陽イオン性リポソームを製造する方法を提供する。
前記方法は、リン脂質(phospholipid)、セラミド及びコレステロールを含む第1溶液を製造する段階と、陽イオン供与物質を含む第2溶液と、前記第1溶液との混合物を撹拌する段階と、高圧乳化装置を利用し、前記撹拌された混合物から、陽イオン性リポソームを製造する段階と、を含む。
【0013】
従来のリポソーム製造方法において、薄膜水和法は、有機溶媒が使用され、量産が困難であるという問題点がある。それと異なり、前述の一態様による陽イオン性リポソームの製造方法は、高圧乳化装置を利用して製造されるために、有機溶媒の使用が不要であり、量産も容易である。
【0014】
前記方法は、リン脂質、セラミド及びコレステロールを含む第1溶液を製造する段階を含む。
【0015】
前記第1溶液は、第1溶液に含まれる成分を加温溶解させることによって製造されうる。前記加温溶解時の温度は、60ないし90℃、60ないし85℃、60ないし80℃、65ないし90℃、65ないし85℃、65ないし80℃、70ないし90℃、70ないし85℃、または70ないし80℃であり得る。
【0016】
前記リン脂質は、極性を帯びるリン酸塩と、非極性である脂肪酸と、を含む脂質の一種であり、生体膜の主要成分である。前記リン脂質は、天然リン脂質または合成リン脂質であり得る。前記リン脂質は、レシチン(lecithin)、水添(hydrogenated)レシチン、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチド酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、卵ホスファチジルグリセロール(EPG)、卵ホスファチジルエタノールアミン(EPE)、卵ホスファチジルセリン(EPS)、卵ホスファチド酸(EPA)、卵ホスファチジルイノシトール(EPI)、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、大豆ホスファチジルグリセロール(SPG)、大豆ホスファチジルエタノールアミン(SPE)、大豆ホスファチジルセリン(SPS)、大豆ホスファチド酸(SPA)、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ヘキサデシルホスホコリン(HEPC)、水添大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、パルミトイルステアロイルホスファチジルグリセロール(PSPG)、モノオレオイルホスファチジルエタノールアミン(MOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(POPC)、ポリエチレングリコールジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン(DOPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジパルミトイルホスファチド酸(DPPA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチド酸(DOPA)、ジミリストイルホスファチド酸(DMPA)、ジステアロイルホスファチド酸(DSPA)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルイノシトール(DOPI)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、またはその組み合わせであり得るが、それらに制限されるものではない。前記リン脂質は、水添レシチンであり得る。
【0017】
前記リン脂質は、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.1ないし5.0重量%、0.1ないし4.0重量%、0.1ないし3.0重量%、0.1ないし2.0重量%、0.1ないし1.0重量%、0.1ないし0.7重量%、0.3ないし5.0重量%、0.3ないし4.0重量%、0.3ないし3.0重量%、0.3ないし2.0重量%、0.3ないし1.0重量%、0.3ないし0.7重量%、0.4ないし2.0重量%、0.4ないし1.0重量%、0.4ないし0.7重量%、または0.4ないし0.6重量%で含まれるものであり得る。
【0018】
前記セラミドは、セラミドNS、セラミドAS、セラミドEOS、セラミドNDS、セラミドADS、セラミドEODS、セラミドNP、セラミドAP、セラミドEOP、セラミドNH、セラミドAH、セラミドEOH、またはその組み合わせであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0019】
前記セラミドは、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.001ないし0.5重量%、0.001ないし0.1重量%、0.005ないし0.5重量%、0.005ないし0.1重量%、0.01ないし0.5重量%、0.01ないし0.1重量%、または0.01ないし0.05重量%で含まれるものであり得る。前記セラミドの含量は、生体皮膚との類似性を高めるために、通常の技術者が、適切な範囲のうちから選択しうる。
【0020】
前記リン脂質及び前記コレステロールの重量比は、5:1ないし1:1、4.5:1ないし1.5:1、4:1ないし1.5:1、3.5:1ないし1.5:1、3:1ないし1.5:1、2.5:1ないし1.5:1、4.5:1ないし2:1、4:1ないし2:1、3.5:1ないし2:1、3:1ないし2:1、2.5:1ないし2:2、または2:1であり得る。前記コレステロールの含量が、リン脂質含量に比べ、過度に少ない(例:リン脂質及びコレステロールの重量比が5:1である)か、あるいはリン脂質含量と同等以上に多い(例:リン脂質及びコレステロールの重量比が1:1である)場合、相が分離されるか、あるいは懸濁現象が生じうる。従って、前記リン脂質及び前記コレステロールの重量比は、5未満:1、ないし1超過:1であり得る。前記重量比のリン脂質及びコレステロールを使用することにより、高圧乳化装置を介するリポソーム製造方法を使用しても、リポソーム特有の粒子形態である二重層(bi-layer)形態または多重層(multi-layer)形態の粒子を得ることができる。一実施例において、リン脂質及びコレステロールの重量比が2:1である場合、常温において5週以上、粒子サイズ及びゼータ電位(zeta potential)が変化せずに安定していることを確認した。
【0021】
前記コレステロールは、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.1ないし5.0重量%、0.1ないし4.0重量%、0.1ないし3.0重量%、0.1ないし2.0重量%、0.1ないし1.0重量%、0.1ないし0.5重量%、0.1ないし0.4重量%、0.1ないし0.3重量%、0.2ないし5.0重量%、0.2ないし4.0重量%、0.2ないし3.0重量%、0.2ないし2.0重量%、0.2ないし1.0重量%、0.2ないし0.5重量%、0.2ないし0.4重量%、または0.2ないし0.3重量%で含まれるものであり得る。該コレステロールの含量が前記範囲を外れる場合、リポソームの膜安定性が低下されうる。
【0022】
前記第1溶液は、リン脂質、コレステロール及びセラミドを溶解させうる溶媒を含むものであり得る。前記第1溶液は、ポリオールをさらに含むものであり得る。前記第1溶液は、ジプロピレングリコールをさらに含むものであり得る。前記ジプロピレングリコールは、脂質部または油状物質を溶解させるために使用されうる。前記ジプロピレングリコールは、陽イオン性リポソーム総重量につき、5ないし20重量%、5ないし15重量%、5ないし12重量%、8ないし20重量%、8ないし15重量%、8ないし12重量%、または10重量%で含まれるものであり得るが、それらに制限されるものではない。
前記第1溶液は、前記陽イオン性リポソームの物性に実質的な影響を及ぼさない追加成分をさらに含むものであり得る。前記追加成分の含量は、目的とするところにより、陽イオン性リポソームの物性に実質的な影響を及ぼさない範囲内において、通常の技術者が適切に選択しうる。
【0023】
前記第1溶液は、水添レシチン、コレステロール、セラミド及びジプロピレングリコールによって構成されうるが、それらに制限されるものではない。
前記方法は、陽イオン供与物質を含む第2溶液と、前記第1溶液との混合物を撹拌する段階を含む。
【0024】
前記第2溶液は、陽イオン供与物質を含むことにより、最終的に製造されるリポソームが、正電荷(+)を帯びるようにしうる。前記陽イオン供与物質は、ラウルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解小麦タンパク質(laurdimonium hydroxypropyl hydrolyzed wheat protein)、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(guar hydroxypropyltrimonium chloride)、ポリクアテルニウム-7(polyquaternium-7)、ポリクアテルニウム-10(polyquaternium-10)、ポリクアテルニウム-11(polyquaternium-11)、ポリクアテルニウム-22(polyquaternium-22)、ポリクアテルニウム-51(polyquaternium-51)、ポリクアテルニウム-67(polyquaternium-67)、ポリクアテルニウム-80(polyquaternium-80)、コカミドプロピルアミンオキシド(cocamidopropylamine oxide)、ステアルアミドプロピルジメチルアミン(stearamidopropyl dimethylamine)、ベヘントリモニウムクロリド(behentrimonium chloride)及びキトサンによってなる群のうちから選択された1種以上であり得るが、それらに制限されるものではない。前記陽イオン供与物質は、陽イオン性多糖類であり得る。前記陽イオン性多糖類は、天然多糖類または合成多糖類であり得る。前記陽イオン供与物質は、キトサンであり得る。
【0025】
前記陽イオン供与物質は、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.01重量%超過、0.01超過ないし5.0重量%、0.01超過ないし4.0重量%、0.01超過ないし3.0重量%、0.01超過ないし2.0重量%、0.05重量%以上、0.05ないし5.0重量%、0.05ないし4.0重量%、0.05ないし3.0重量%、0.05ないし2.0重量%、0.05ないし1.5重量%、0.05ないし1.0重量%、0.05ないし0.5重量%、0.05ないし0.2重量%、または0.05ないし0.1重量%で含まれるものであり得る。前記陽イオン供与物質が陽イオン性リポソーム総重量につき、0.01重量%以下で含まれる場合、リポソームのゼータ電位がマイナス(-)でもあり、それにより、陰イオン性リポソームが得られる。従って、前記陽イオン供与物質は、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.01重量%超過で含まれることが望ましい。前記陽イオン供与物質が陽イオン性リポソーム総重量につき、0.05重量%以上含まれる場合、ゼータ電位20mV以上の陽イオン性リポソームを得ることができる。
前記第2溶液は、陽イオン供与物質を溶解させうる溶媒を含むものであり得る。前記第2溶液は、親水性溶媒を含むものであり得る。例えば、前記親水性溶媒は、水(例:蒸留水)であり得るが、それに制限されるものではない。
【0026】
前記第2溶液は、ブチレングリコールをさらに含むものであり得る。前記ブチレングリコールを含めることにより、リポソーム内に担持される成分の溶解度を向上させ、かつ/あるいは皮膚保湿力が向上されうる。前記ブチレングリコールは、陽イオン性リポソーム総重量につき、5ないし20重量%、5ないし15重量%、5ないし12重量%、8ないし20重量%、8ないし15重量%、8ないし12重量%、または10重量%で含まれるものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0027】
前記第2溶液は、親水性有効成分をさらに含むものであり得る。前記親水性有効成分は、皮膚機能性有効成分であり得る。前記皮膚機能性は、皮膚美白、保湿、皮膚障壁強化、抗酸化、抗炎、抗老化、しわ改善、皮膚鎮静などであり得るが、それらに制限されるものではない。前記親水性有効成分は、公知されたものでるならば、その種類を制限するものではなく、使用しうる。例えば、前記親水性有効成分は、ニアシンアミドであり得る。
前記親水性有効成分の含量は、成分の種類及び目的を考慮し、陽イオン性リポソームの物性に実質的な影響を及ぼさない範囲内において、通常の技術者が適切に選択しうる。具体的には、前記親水性有効成分は、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.001ないし30重量%、0.001ないし20重量%、または0.001ないし10重量%で含まれるものであり得る。例えば、前記親水性有効成分がニアシンアミドである場合、前記ニアシンアミドは、陽イオン性リポソーム総重量につき、0.001ないし30重量%、0.001ないし20重量%、0.001ないし15重量%、0.01ないし30重量%、0.01ないし20重量%、0.01ないし15重量%、0.1ないし30重量%、0.1ないし20重量%、0.1ないし15重量%、1ないし30重量%、1ないし20重量%、または1ないし15重量%で含まれるものであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0028】
前記第2溶液は、前記陽イオン性リポソームの物性に実質的な影響を及ぼさない追加成分をさらに含むものであり得る。前記追加成分の含量は、目的とするところにより、陽イオン性リポソームの物性に実質的な影響を及ぼさない範囲内において、通常の技術者が適切に選択しうる。
【0029】
前記撹拌は、前記第2溶液に、前記第1溶液を徐々に投入または混合しながら行われうる。
【0030】
前記撹拌は、室温、例えば、15ないし35℃、15ないし30℃、20ないし35℃、または20ないし30℃で行われうる。
【0031】
前記撹拌は、1,500ないし3,500rpm、1,500ないし3,000rpm、2,000ないし3,500rpm、または2,000ないし3,000rpmで行われうる。前記撹拌は、30秒ないし30分、30秒ないし20分、30秒ないし10分、30秒ないし5分、1分ないし30分、1分ないし20分、1分ないし10分、または1分ないし5分間行われうる。
【0032】
前記撹拌は、一般的な方法によって行われ、例えば、ホモミキサを使用して行われうる。
【0033】
前記方法は、高圧乳化装置を利用し、前記撹拌された混合物から、陽イオン性リポソームを製造する段階を含む。
【0034】
前記陽イオン性リポソームを製造する段階において、高圧乳化装置を利用し、前記撹拌された混合物を高圧乳化(high pressure emulsification)処理しうる。
前記高圧乳化装置は、公知されたものであるならば、その種類を制限するものではないが、例えば、マイクロフルイダイザ(MF:microfluidizer)または高圧均質機(high pressure homogenizer)であり得る。
【0035】
前記高圧乳化装置の圧力条件は、800ないし1,500bar、800ないし1,200bar、800ないし1,100bar、800ないし1000bar、900ないし1,500bar、900ないし1,200bar、900ないし1,100bar、900ないし1,000bar、1,000ないし1,500bar、1,000ないし1,200bar、1,000ないし1,100bar、または1,000barであり得る。前記圧力が過度に低い場合、ナノ粒子が正しく形成されないのである。前記圧力が過度に高い場合、物理的力が過度に適用されて、安定度が下落しうる。
【0036】
前記高圧乳化装置は、2サイクル(cycle)以上、3サイクル以上、2サイクルないし5サイクル、2サイクルないし4サイクル、3サイクルないし5サイクル、または3サイクルの条件で適用されうる。
【0037】
前記高圧乳化装置の圧力条件及びサイクル条件において陽イオン性リポソームを製造する場合、剤形安定性にすぐれる陽イオン性ナノリポソームを得ることができる。
前記高圧乳化装置の圧力条件及びサイクル条件において、前記陽イオン性リポソームを製造する場合、リポソーム特有の粒子形態である二重層(bi-layer)形態または多重層(multi-layer)形態の粒子を得ることができる。
【0038】
前記陽イオン性リポソームは、高圧乳化装置を利用して製造されるので、製造過程において、毒性有機溶媒を使用せずに安全であり、リポソームの量産が可能である。
【0039】
他の態様は、前記一態様による方法によって製造された陽イオン性リポソームを提供する。
【0040】
前記方法によって製造された陽イオン性リポソームは、製造過程において、毒性有機溶媒を使用しないので、無毒性であり得る。一実施例において、前記方法によって製造された陽イオン性リポソーム、及びそれを含む化粧料組成物は、皮膚刺激指数評価結果、無刺激であり、皮膚に安全であることを確認した。従って、前記陽イオン性リポソームは、化粧品、食品、医薬品などに安全に使用されうる。
【0041】
前記陽イオン性リポソームの粒子サイズは、50ないし300nm、50ないし250nm、100ないし300nm、100ないし250nm、150ないし300nm、150ないし250nm、200ないし300nm、または200ないし250nmであり得る。前記陽イオン性リポソームの平均粒子サイズは、200ないし250nmであり得る。従って、前記陽イオン性リポソームは、ナノリポソームであり得る。前記陽イオン性リポソームは、ナノサイズであるので、皮膚透過効能にすぐれてもいる。
【0042】
前記陽イオン性リポソームのゼータ電位は、20ないし50mV、20ないし45mV、25ないし50mV、または25ないし40mVであり得る。前記陽イオン性リポソームは、正電荷(+)を帯びるために、負電荷(-)を帯びる皮膚表面に、静電気的引力を利用し、効果的に吸着され、それにより、リポソーム内に担持された皮膚効能成分の皮膚吸収能を向上させうる。
【0043】
前記陽イオン性リポソームは、室温において5週以上保管しても、粒子サイズ及びゼータ電位が良好に維持されるので、剤形安定性にすぐれてもいる。
【0044】
前記陽イオン性リポソームは、二重層(bi-layer)または多重層(multi-layer)の構造を有することであり得る。前記陽イオン性リポソームは、二重層(bi-layer)構造のリポソーム、及び多重層(multi-layer)構造のリポソームが混合されたものであり得る。一実施例において、前記陽イオン性リポソームは、高圧乳化装置を利用して製造したにもかかわらず、二重層(bi-layer)または多重層(multi-layer)のリポソーム特有形態を有することを確認した。
【0045】
前記陽イオン性リポソームは、リポソーム内に、皮膚機能性有効成分が担持されたものであり得る。前記皮膚機能性有効成分は、親水性有効成分であり得る。前記皮膚機能性有効成分は、ニアシンアミドであり得るが、それに制限されるものではない。一実施例において、前記陽イオン性リポソーム内にニアシンアミドを担持し、皮膚に伝達する場合、前記陽イオン性リポソームを使用せず、組成物内にニアシンアミドを含め、皮膚に伝達する場合に比べ、皮膚明度変化量、メラニン変化量及び肝斑変化量が有意に増大することを確認した。従って、前記陽イオン性リポソームは、リポソーム内に担持された皮膚機能性有効成分の皮膚吸収能が増進されたものであり得る。
【0046】
他の態様は、陽イオン性リポソームを含む組成物を提供する。
【0047】
前記組成物は、陽イオン性リポソームに担持された有効成分を伝達するための組成物であり得る。具体的には、前記組成物は、陽イオン性リポソームに担持された有効成分を皮膚に伝達するための組成物であり得る。
【0048】
前記組成物は、組成物総重量につき、陽イオン性リポソームを0.001ないし50重量%、0.001ないし40重量%、0.001ないし30重量%、0.001ないし20重量%、0.01ないし50重量%、0.01ないし40重量%、0.01ないし30重量%、0.01ないし20重量%、0.1ないし50重量%、0.1ないし40重量%、0.1ないし30重量%、または0.1ないし20重量%で含むものであり得る。
一具体例において、前記組成物は、化粧料組成物であり得る。
【0049】
前記化粧料組成物は、本明細書に開示された有効成分以外に、化粧料組成物に一般的に利用される成分、機能性添加物などを追加して含むものでもあり、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保湿剤、防腐剤、ビタミン、顔料、香料のような一般的な補助剤、そして化粧品学的に許容可能な担体を含むものであり得る。
【0050】
前記化粧料組成物は、一般的に製造されるいかなる剤形にも製造されうる。例えば、前記化粧料組成物は、化粧水、クリーム、エキス、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、アンプル、ボディローション、ボディオイル、ボディゲル、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアゲル、ファウンデーション、リップスティック、マスカラまたはメーキャップベースの化粧料剤形を有するものであり得る。
【0051】
一具体例において、前記組成物は、皮膚外用剤組成物であり得る。
【0052】
前記皮膚外用剤は、クリーム、ゲル、軟膏、皮膚乳化剤、皮膚懸濁液、経皮伝達性パッチ、薬物含有包帯、ローション、またはその組み合わせであり得る。前記皮膚外用剤は、通常化粧品や医薬品のような皮膚外用剤に使用される成分、例えば、水性成分、油性成分、粉末成分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、美白剤、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤、香料、色剤、各種皮膚栄養剤、またはそれらの組み合わせと、必要によって適切に配合されうる。
【0053】
一具体例において、前記組成物は、食品組成物であり得る。前記食品組成物は、健康機能食品組成物であり得る。
【0054】
前記健康機能食品組成物は、前記陽イオン性リポソーム単独、あるいは他の食品または食品成分と共に使用され、一般的な方法によって適切に使用されうる。有効成分の混合量は、使用目的(予防的、健康的または治療的な処置)により、適して決定されうる。前記健康機能食品の種類には、特別な制限はない。健康機能食品の種類において、飲料組成物は、通常の飲料と共に、さまざまな香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むものであり得る。前記天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド;マルトース、ショ糖のようなジサッカライド;及びデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド;並びにキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用しうる。前記健康機能食品組成物は、また栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤、またはその組み合わせを含むものであり得る。前記健康機能食品組成物は、また、天然果物ジュース、果物ジュース飲料、野菜飲料の製造のための果肉、またはその組み合わせを含むものであり得る。
【0055】
一具体例において、前記組成物は、薬学的組成物であり得る。
【0056】
前記薬学的組成物は、薬剤学的に許容可能な希釈剤または担体を追加して含むものであり得る。前記希釈剤は、乳糖、とうもろこし澱粉、大豆油、微晶質セルロースまたはマンニトール、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはその組み合わせであり得る。前記担体は、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、またはその組み合わせであり得る。前記賦形剤は、微晶質セルロース、乳糖、低置換度ヒドロキシセルロース、またはその組み合わせであり得る。前記崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、無水リン酸一水素カルシウム、またはその組み合わせであり得る。前記結合剤は、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはその組み合わせであり得る。前記滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク、またはその組み合わせであり得る。
前記薬学的組成物は、経口投与剤形または非経口投与剤形に剤形化されうる。該経口投与剤形は、顆粒剤、散剤、液剤、錠剤、カプセル剤、乾燥シロップ剤、またはその組み合わせであり得る。該非経口投与剤形は、注射剤であり得る。
【0057】
重複される内容は、本明細書の複雑性を考慮し、省略し、本明細書において、取り立てて定義されない用語は、本発明が属する技術分野において一般的に使用される意味を有するのである。
【発明の効果】
【0058】
一態様による陽イオン性リポソームを製造する方法によれば、高圧乳化装置を利用し、毒性有機溶媒を使用せずに、皮膚に安全なリポソームを製造し、リポソームの量産が可能である。
【0059】
また、前記方法によって製造された陽イオン性リポソームは、剤形安定性にすぐれ、正電荷を帯びるので、内部に担持された有効成分の皮膚吸収能を増進させうる。従って、前記陽イオン性リポソームを化粧品、食品、医薬品などに使用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】製造後5週間、実施例2-2の陽イオン性リポソームの粒子サイズ(nm)変化を測定した結果である。
【0061】
【
図2】製造後5週間、実施例2-2の陽イオン性リポソームのゼータ電位(mV)変化を測定した結果である。
【0062】
【
図3】実施例2-2の陽イオン性リポソームの粒子構造を示した結果である。
【0063】
【
図4】比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚明度(L-value)を示したグラフである。
【0064】
【
図5】比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚明度変化量を示したグラフである。
【0065】
【
図6】比較例及び製造例のエキス剤形使用後のメラニン指数(M.I:melanin index)を示したグラフである。
【0066】
【
図7】比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚メラニン変化量を示したグラフである。
【0067】
【
図8】比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚肝斑(mm
2)を確認した結果である。
【0068】
【
図9】比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚肝斑変化量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものでり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1.キトサン含量による陽イオン性リポソームの物性評価
キトサン含量を異ならせ、陽イオン性リポソームを製造し、そのゼータ電位(zeta potential)を測定する実験を行った。
【0071】
まず、下記表1の成分及び含量(重量%)でもって、陽イオン性ナノリポソームを製造した。実施例1-1ないし1-5の陽イオン性リポソームは、キトサンの含量だけに違いがある。
【0072】
具体的な製造方法は、以下の通りである。レシチンとジプロピレングリコールとによって構成されたA相を70~80℃に加温溶解させた。キトサンが含まれた室温の水相部B相にA相を徐々に投入しながら、ホモミキサでもって、2,000ないし3,000rpmで5分間撹拌した。一次撹拌後、1,000bar,3サイクル条件で、高圧乳化処理し、最終的にリポソームを製造した。
【0073】
【0074】
次に、キトサンの含量による陽イオン性リポソームのゼータ電位(zeta potential)を測定した。測定装置として、動的光散乱装置(DLS:dynamic light scattering(SZ-100 HORIBA))を使用した。キトサン含量による陽イオン性リポソームのゼータ電位測定結果は、表2に示した。
【0075】
【0076】
前記表2に示されているように、キトサンが含まれていない陽イオン性リポソーム(実施例1-1)のゼータ電位は、-34.9mVであった。キトサンの含量が増大するほど、ゼータ電位も増大したが、キトサン含量0.1重量%以上からは、ゼータ電位がそれ以上大幅に増大しなかった。それにより、陽イオン性リポソーム製造において、キトサンの含量は、0.05重量%に設定し、追って実験を進めた。
【0077】
実施例2.コレステロール含量による陽イオン性リポソームの物性評価
キトサンの含量を一定に固定させ、コレステロールの含量を異ならせ、陽イオン性リポソームを製造し、その粒子サイズ及びゼータ電位を測定し、安定度を評価した。
【0078】
まず、実施例1と同一の方法を使用し、下記表3の成分及び含量(重量%)でもって、陽イオン性リポソームを製造した。実施例2-1ないし2-3の陽イオン性リポソームは、コレステロールの含量だけに違いがある。生体との類似性、及び皮膚安全性を高めるために、セラミドとコレステロールとを使用した。コレステロールの場合、リポソームの膜安定性向上に一助になると知られているために、コレステロールの含量を異ならせて製造した。
【0079】
【0080】
次に、製造直後と、室温保管3日後とにおいて、肉眼評価を介し、安定度を確認した。肉眼評価結果、レシチンよりコレステロールの含量がはるかに少ないか、あるいはそれと同一である場合(実施例2-1及び2-3)、相が分離されるか、あるいは色がぼやけるようになる懸濁現象が生じた。なお、実施例2-2の陽イオン性リポソームは、相が分離されておらず、懸濁現象も生じていない。
【0081】
従って、動的光散乱装置を利用し、製造直後、及び室温保管5週間、毎週、実施例2-2の陽イオン性リポソームの粒子サイズ及びゼータ電位を測定した。
【0082】
図1は、製造後5週間、実施例2-2の陽イオン性リポソームの粒子サイズ(nm)変化を測定した結果である。
【0083】
図2は、製造後5週間、実施例2-2の陽イオン性リポソームのゼータ電位(mV)変化を測定した結果である。
【0084】
図1及び
図2に示されているように、レシチンとコレステロールとの重量比が2:1である実施例2-2の陽イオン性リポソームは、粒子サイズ及びゼータ電位が5週間安定している。
【0085】
なお、前記実施例1の製造方法において、高圧乳化条件だけを異ならせ、実施例2-1ないし2-3の陽イオン性リポソームをそれぞれ製造し、その粒子サイズを測定する実験を別途に進めた。該高圧乳化条件は、以下のように、3種に設定した:(i)1,000bar、1サイクル、(ii)1,000bar、3サイクル、(iii)1,000bar、5サイクル。
【0086】
統計プログラムを利用し、粒子サイズを比較した結果、1サイクルと3サイクルは、有意な違いがあったが、3サイクルと5サイクルは、有意な違いがなかった。従って、高圧乳化条件(ii)が最も適しているということ確認した。
【0087】
実験例1.陽イオン性リポソームの粒子構造分析
実施例2-2の陽イオン性リポソームの粒子構造分析を行った。
製造された陽イオン性リポソーム粒子の構造分析のために、Cryo-TEM(cryogenic transmission electron microscopy)を利用した。Cryo-TEMは、サンプルを超低温状態に維持し、本来の形態構造観察が可能であるために、リポソーム粒子の二重層(bi-layer)構造または多重層(multi-layer)構造の確認に適する。具体的な分析方法は、以下の通りである。実施例2-2の陽イオン性リポソーム5μLを、200メッシュcarbon lacey film Cu-gridにローディングした後、Vitrobotによって液化されたエタン(約-170℃)に浸し、落下凍結させた(plunge freeze)。作られた凍結試料を、加速電圧200kV以下において、Cryo-TEM(Tecnai F20(FEI))で観察した。
【0088】
図3は、実施例2-2の陽イオン性リポソームの粒子構造を示した結果である。
【0089】
図3に示されているように、実施例2-2の陽イオン性リポソームは、粒子サイズが約100ないし300nmほどであった。また、リポソームの特徴と言うことができる二重層(bi-layer)構造と多重層(multi-layer)構造とが混合されて形成されているところを確認することができた。
【0090】
実施例3.陽イオン性リポソームの製造
実施例1及び2を介し、安定度に最もすぐれる条件と確認された実施例2-2の陽イオン性リポソームに、ニアシンアミド10重量%を担持させた。具体的には、実施例1と同一の方法を使用し、下記表4の成分及び含量(重量%)でもって陽イオン性リポソームを製造した。
【0091】
【0092】
製造例及び比較例:陽イオン性リポソーム含有エキスの製造
製造例として、実施例3の陽イオン性リポソームを含むエキス剤形の化粧料組成物を製造した。実施例3の陽イオン性リポソームは、ニアシンアミド10重量%を含むので、前記陽イオン性リポソーム20重量%を含むエキス剤形の化粧料組成物は、最終的に、ニアシンアミド含量が約2重量%になる。
【0093】
比較例として、陽イオン性リポソームを含んでいない代わりに、ニアシンアミド2重量%を含むエキス剤形の化粧料組成物を製造した。
【0094】
製造例及び比較例のエキス剤形化粧料組成物の成分及び含量(重量%)は、下記表5に示されている。
【0095】
【0096】
実験例2.皮膚安全性評価
実施例3の陽イオン性リポソームと、製造例及び比較例のエキス剤形とに係わる皮膚安全性評価を行った。
【0097】
具体的には、皮膚疾患がない成人男女20名を対象にし、実施例3の陽イオン性リポソームと、製造例及び比較例のエキス剤形との刺激程度を以下のように評価した。試験者の腕前膊に20μLの試料を塗布した後、試験部位を密閉した後、24時間貼布した。貼布を除去した後、30分後及び24時間後、皮膚における反応をCTFA(The Cosmetic, Tioletry and Fragrance Association)ガイドラインに提示された用語(terminology)に基づいて検査した。判定基準によって得られた試験者の皮膚刺激指数(PII:primary irritation index)点数を平均し、1未満ならば、低刺激と評価し、2未満ならば、軽刺激と評価し、3.5未満ならば、中刺激と評価し、3.5以上ならば、強刺激と評価した。その結果は、下記表6に示した。
【0098】
【0099】
その結果、前記表6に示されているように、実施例3の陽イオン性リポソームと、製造例及び比較例のエキス剤形とのいずれも無刺激と、製品に安全に使用が可能であることを確認した。
【0100】
実験例3.美白効能の評価
製造例(陽イオン性リポソーム含有)及び比較例(陽イオン性リポソーム未含有)のエキス剤形は、美白有効成分であるニアシンアミドを、それぞれ2重量%含む。従って、各剤形を使用したとき、美白効果が高く示されるのは、皮膚内に、有効成分の伝達がさらに効率的になされたものであると見ることができる。前記製造例及び前記比較例のエキス剤形の美白効能評価のために、皮膚明度、皮膚メラニン及び皮膚肝斑の3種項目測定を実施した。
【0101】
具体的には、女性21名(満36~58歳、平均50.048歳)の被験者を対象に、顔半々に(half-test)、4週間1日2回(朝/夕方)、比較例と製造例との製品を、それぞれ使用するようにした。皮膚明度、メラニン及び肝斑の測定のために、使用2週後と使用4週後とのそれぞれの値が使用前対比で、どれほど変化したかということを測定した。
【0102】
(1)皮膚明度の改善効能
皮膚明度は、Mark-Vu(PSIPLUS CO., LTD、韓国)を利用し、顔面部正面を撮影し、撮影されたイメージにつき、I-Max plusプログラムを利用し、試験部位の皮膚明度値(L-value)を分析した。L-valueが増大するほど、皮膚明度が改善されることを意味する。
【0103】
図4は、比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚明度(L-value)を示したグラフである。
図5は、比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚明度変化量を示したグラフである。
【0104】
図4及び
図5に示されているように、製造例が比較例より、約1.5倍さらにすぐれた皮膚明度改善効果を示した。
【0105】
(2)皮膚メラニンの減少効能
皮膚メラニンは、Mexameter MX18(Courage Khazaka electroni、ドイツ)を利用し、色を示すメラニン値を測定した。M.I(melanin index)値が低減されるほど、皮膚メラニンが改善されることを意味する。
【0106】
図6は、比較例及び製造例のエキス剤形使用後のメラニン指数(M.I:melanin index)を示したグラフである。
図7は、比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚メラニン変化量を示したグラフである。
【0107】
図6及び
図7に示されているように、製造例が比較例より、皮膚メラニン低減効果がさらにすぐれている。
【0108】
(3)皮膚肝斑の改善効能
皮膚肝斑測定は、Antera 3D CS(Miravex、アイルランド)を利用し、Melanin-Hyperconcentration分析モードのaffected area(mm2)を評価した。肝斑が改善されるほど、面積affected area(mm2)値が低減される。
【0109】
図8は、比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚肝斑(mm
2)を確認した結果である。
図9は、比較例及び製造例のエキス剤形使用後の皮膚肝斑変化量を示したグラフである。
【0110】
図8及び
図9に示されているように、製造例が比較例より、さらに高い肝斑改善効果を示した。
【0111】
実験例3の結果を総合すれば、製造例の皮膚明度変化量、メラニン変化量及び肝斑変化量が、比較例対比で、使用2週後、使用4週後において、いずれも有意な違いを示した。それを介し、実施例3の陽イオン性リポソーム内に、ニアシンアミドを担持させたとき、美白効能がさらに良好に発揮されたと見ることができる。それは、陽イオン性リポソームが、有効成分を皮膚内にさらに良好に伝達したためであると見ることができる。従って、実施例3の陽イオン性リポソームは、担持された有効成分のすぐれた皮膚伝達効能を有するということを知ることができる。
【国際調査報告】