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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】段差状径拡張部を有するファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/54 20060101AFI20241226BHJP
   F04D 29/32 20060101ALI20241226BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F04D29/54 D
F04D29/54 G
F04D29/32 E
F04D29/66 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541105
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 DE2022200313
(87)【国際公開番号】W WO2023134823
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】102022200382.9
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510334790
【氏名又は名称】ジール・アベッグ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レルヒャー、 フリーダー
(72)【発明者】
【氏名】グロス、 アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB50
3H130AB52
3H130AC01
3H130BA13A
3H130BA13C
3H130BA66A
3H130BA66C
3H130CA05
3H130CA07
3H130CB17
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130EA06A
3H130EA07A
3H130EA08A
3H130EB04A
3H130ED01A
3H130ED01C
(57)【要約】
本発明は、ハウジングと、該ハウジング内に配置されていて電気モーターによって駆動される羽根車と、を備え、ハブリングとカバーリングとの間で延在している羽根を有するファン、特に軸流ファンまたは斜流ファンであって、流れ方向において流れ断面が急激に拡張している形状の段差状径拡張部が、前記羽根車の流れ方向下流および前記カバーリングの出口領域の後に形成されている、ファンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジング内に配置されていて電気モーターによって回転駆動される羽根車と、を有し、羽根がハブリングとカバーリングとの間で延在しているファン、特に軸流ファンまたは斜流ファンであって、
流れ断面が急激に拡張している形状の段差状径拡張部が、流れ方向において前記羽根車の下流および前記カバーリングの出口領域の下流に形成されている、ファン。
【請求項2】
前記段差状径拡張部の断面段差が、110%以上の面積比によって特徴付けられていることを特徴とする、請求項1に記載されたファン。
【請求項3】
前記ハウジングの内側輪郭が、ほぼ円筒形であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載されたファン。
【請求項4】
前記カバーリングの輪郭が、主流および二次的な流れに関して前記ハウジングの内側輪郭と相互作用し、
前記カバーリングの輪郭の仮想的な下流への延長線が、前記ハウジングの内側輪郭と交差していないことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項5】
前記主流が、入口ノズルを通って前記羽根車に流入し、内側貫通流領域および外側貫通流領域を介して前記ハウジングを流れ、
前記二次的な流れが、前記羽根車から流出する前記空気の部分流として、前記カバーリングと前記ハウジングの内側輪郭との間を逆流し、前記入口ノズルと前記カバーリングとの間の半径方向の隙間を介して再び前記羽根車の前記領域に流入することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項6】
前記段差状径拡張部の領域の流れに影響を及ぼす再方向付け支持装置が、流れ方向において前記羽根車の下流に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項7】
前記再方向付け支持装置が、前記ハウジングに一体化され、
前記ハウジングが、プラスチック射出成形によって製造されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項8】
前記電気モーターおよび前記羽根車に用いる前記支持機能が、鋼鉄または他の金属材料で作られているサスペンションによって担われていることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項9】
前記羽根車のハブリングが、前記電気モーターのローターに向かう大きい中央開口部を冷却の目的で有していることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項10】
前記ハウジングの流出側端部における出口直径の、前記羽根車のカバーリングの内側の出口直径に対する比が、1.05より大きいことを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項11】
前記羽根車のカバーリングが、前記羽根車の軸にほぼ平行な領域を超えて、または前記羽根車の軸に対して小さなピッチ角を有して、延在しており、
前記羽根車のハブリングが、流れ方向に直径が増加している顕著な円錐形状を有していることを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項12】
前記流出側端部の近傍で半径方向外側を向いている前記カバーリングが、前記ファン軸に対して、例えば、5°から15°の角度で、より大きなピッチ角を有していることを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項13】
前記入口ノズルの出口直径が、前記羽根車のカバーリングにおける出口直径よりも少なくともわずかに小さく、好ましくは、前記ハウジングの出口直径の、前記入口ノズルの出口直径に対する比が、1.05より大きいことを特徴とする、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項14】
前記ハウジング内に形成されている複数の開口部が、前記入口ノズルまたは前記羽根車のカバーリングと前記ハウジングとの間の前記二次的な流れに関連する領域を、前記ハウジングの外側領域に流体的に接続していることを特徴とする、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載されたファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン、特に、軸流ファンまたは斜流ファンに関する。
そして、このファンは、ハウジングとこのハウジング内に配置して電気モーターによって回転駆動される羽根車とを有している。
また、この羽根車は、ハブリングとカバーリングとの間で延在している羽根を有している。
【背景技術】
【0002】
一般的なタイプのファンは、実用上非常に多様な設計で知られている。
例えば、カバーリングを有さず、ハウジング内で動作する軸ホイールを有するファンが存在する。
この場合、ハウジング内の圧力上昇または圧力損失により、騒音のレベルが急激に上昇する可能性がある。
圧力が上昇すると、騒音のレベルは、大きく増加する。
【0003】
自由に回転する斜流ホイールを有するファンの場合、横方向に使用可能なスペースがほとんどない場合に問題が発生する。
さらに、このようなファンは、圧力がかなり低い場合、電力および騒音のレベルの観点で問題がある。
【0004】
一般的な先行技術に関しては、特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/015792(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の欠点または問題を解消または少なくとも軽減することを目的としている。
特に、騒音の発生および圧力の上昇の観点で、圧力が上昇しても敏感な反応を示さない、特に、静かで効率的なファンを提供することを目的としている。
さらに、本発明のファンは、競合製品とは異なるものであることを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、請求項1の特徴によって達成される。
請求項1の特徴によるファンの場合、流れ断面が急激に拡張している形状の「段差状径拡張部」が、流れ方向において、前記羽根車の下流および前記カバーリングの出口領域の下流に形成されている。
本発明によると、流れ断面が急激に拡張している形状の段差状径拡張部を設けることにより、従来技術で発生する欠点が実質的に解消される。
この解決方法は、単純であり、圧力が上昇した場合に効果的である。
【0008】
実験によれば、段差状径拡張部に関連する断面段差が、105%以上、特に、110%以上の面積比を有する場合に効果的である。
このようにすることで、羽根車の下流の流路における断面が拡張していることになる。
【0009】
本発明によるファンは、円筒形のハウジングを有し、段差状径拡張部は、カバーリングの流出口の下流で実施可能である。
【0010】
特に、前記カバーリングの輪郭が、ファン内の主流および二次的な流れの両方に関して前記ハウジングの輪郭と相互作用し、カバーリングの輪郭の仮想的な下流への延長線が、前記ハウジングの内側輪郭と交差していない。
【0011】
さらに、本発明のファンの場合、前記主流が、入口ノズルを通って羽根車に流入している。
前記主流が、内側貫通流領域および外側貫通流領域を介してハウジングを流れる。
二次的な流れが、羽根車から流出する空気の部分流として、カバーリングとハウジングの輪郭との間を逆流し、前記入口ノズルとカバーリングとの間の半径方向の隙間を介して再び羽根車の領域に流入する。
そして、この二次的な流れは、羽根車から流出する空気と比較すると小規模な部分流であり、周囲のカバーリングに近い領域で主流に影響を及ぼし、そこでの流れを安定させることができる。
また、二次的な流れは、羽根車の回転運動の影響を受けるため、定期的に強い渦流を付与される。
【0012】
追加で支持特性を有していてもよい再方向付け支持装置を、流れ方向において羽根車の下流に配置してもよい。
そして、この再方向付け支持装置が、前記段差状径拡張部の領域の流れに影響を及ぼす。
また、再方向付け支持装置と段差状径拡張部とは、二次的な流れに影響を及ぼすように相互作用し、これにより、ハウジングの内側輪郭への主流の「吸引」が生じる。
さらに、羽根車から流出する流れに渦流が付与されている。
さらに、再方向付け支持装置の中間リングの設計が、段差状径拡張部の領域の流れに影響を及ぼしてもよく、中間リングは、軸方向に対して平行ではなく、事項方向に対してピッチ角を有して配置されている。
このようにすることで、圧力が回復した結果、低騒音で高効率のファンを得られる。
【0013】
さらに、再方向付け支持装置が、ハウジングの一体部品として提供されていてもよく、このハウジングが、プラスチック射出成形によって製造されていると好ましい。
そして、このハウジングをこのように製造すると、軽量設計が可能であり、ハウジングを好ましく製造可能である。
【0014】
さらに、前記モーターおよび前記羽根車用の前記支持機能が、鋼鉄または他の金属材料で作られている、特別なサスペンションによって担われていてもよい。
機械的特性、特に、安定性が、ここで特別な役割を果たす。
【0015】
前記羽根車のハブリングが、前記電気モーターのローターに向かう大きい中央開口部を、冷却の目的で有していてもよく、その結果、モーターの冷却が特に促進される。
【0016】
さらに、ハウジングの流出側端部における出口直径の、カバーリングの内側出口直径に対する比が、特定の最小値を下回ってはならず、言い換えると、この比は、1.05より大きい必要がある。
このことにより、羽根車の下流の流路の断面が拡張していることが特徴づけられる。
ハウジングの円筒形の内側輪郭と相まって、羽根車の下流に主流用の段差状径拡張部が生成されている。
【0017】
前記羽根車のカバーリングが、羽根車の軸にほぼ平行な領域を超えて、または、羽根車の軸に対して小さなピッチ角を有して、延在していてもよい。
さらに、前記羽根車のハブリングが、流れ方向に直径が増加しているという顕著な特徴を有していてもよい。
この構成によっても、流れが促進される。
【0018】
さらに、入口ノズルの出口直径は、羽根車のカバーリングにおける出口直径よりもわずかに小さい。
この構成は、ハウジングの出口直径の、入口ノズルの出口直径に対する比が、1.05より大きいと好ましい。
【0019】
さらに、前記ハウジング内に複数の開口部が形成されていてもよく、この開口部は、前記入口ノズルまたは羽根車のカバーリングと前記ハウジングとの間の前記二次的な流れに関連する前記領域を、前記ハウジングの外側の領域に流体的に接続している。
【0020】
したがって、本発明を具体化し、発展させるための様々な態様がある。
この目的のために、請求項1に従属する請求項、および、図面を参照した本発明によるファンの実施形態の以下の説明を参照されたい。
図面を参照した本発明の実施形態の説明に関連して、一般的な改良態様および発展態様についても説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ハウジング内で周囲を取り囲んでいるカバーリングを有する羽根車と、再方向付け支持装置と、を有する本発明によるファンを、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図である。
図2図1のファンを流入側から見た斜視図である。
図3図1および図2のファンを流出側から見た斜視図である。
図4図1図2および図3のファンおよびハウジングの、ファン軸を通る平面による断面での側面図であり、重要な直径が示されている。
図5】本発明によるファンのさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、ハウジングに開口部が設けられている。
図6】本発明によるファンのさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、ハウジングに渦流補正要素が設けられている。
図7】本発明によるファンのさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、ハウジング上の渦流補正要素が軸方向に羽根車を超えて延在している。
図8図1から図4のファンを流出側から見た平面図である。
図9】本発明による別のファンを流出側から見た平面図であり、支持要素が交互に傾斜している。
図10】本発明によるファンのさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、案内装置が設けられておらず、サスペンションが支持機能を担っている。
図11】本発明によるファンのさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、内側方向装置が設けられており、サスペンションが支持機能を担っている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、ハウジング2を有している本発明によるファン1を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図を示す。
再方向付け支持装置、すなわち、案内装置15は、プラスチック射出成形によってハウジング2と一体的に製造され、ハブリング4、中間リング5、その間に延在している案内羽根3、および中間リング5とハウジング2の内側輪郭11との間に延在している支持羽根3aによって、基本的に構成されている。
【0023】
羽根車19は、ハブリング21、周囲を取り囲んでいるカバーリング16、および、その間に延在している羽根22から構成されている。
そして、この羽根22は、モーター34(ここでは、外部ローター式モーターが有利)のローター35上の固定装置30(図2)によってハブリング21に固定されている。
動作中、モーター34によって駆動される羽根車19は、ファン軸を中心に回転し、空気または他の搬送媒体を流入側から流出側に(図1ではほぼ左から右に)搬送する。
【0024】
流入側には、入口ノズル9があり、その流出側端部37は、羽根車19のカバーリング16の半径方向内側に位置し、入口ノズル9とカバーリング16との間には半径方向の隙間が形成されている。
入口ノズル9は、ハウジング2に固定され、ハウジング2と一体の構成要素として形成されている。
案内装置15は、空気ダクト(外側貫通流領域)6と共にハウジング2内で羽根車19の下流に配置され、この案内装置15の中間リング5とハウジング2の内側輪郭11との間に空気流が形成される。
羽根車19から流れる空気の一部は、空気ダクト6を通って流れる。
羽根車19から流れる空気の他の部分は、内側貫通流領域7を通って流れる。
そして、この内側貫通流領域7は、ファン軸に向かうスパン幅方向に見ると、案内装置15のハブリング4によって区切られ、外側貫通流領域6に向かうスパン幅方向で見ると中間リング5によって区切られている。
内側貫通流領域7には、(実施形態では17個の、有利には、9個から23個の)案内羽根、すなわち、案内要素3が点在している。
軸付近を流れ、渦流が付与され、羽根車19から流出し、かつ、案内装置15に流入する流れは、案内羽根、すなわち、案内要素3がその流れ内の渦流とハブ領域での逆流とを低減することで、安定化する。
このことにより、効率が向上する。
【0025】
案内装置15のハブリング4と中間リング5とは、軸の周りのほぼ全周にわたって延在している。
ハブリング4は、内側受容領域8を囲んでおり、その中に、例えば、ステータ36を有するファン1の駆動モーター34を配置可能である。
流れは、内側受容領域8を通らないか、または、モーター34が生成した廃熱を除去できるように、(全空気流量の0.1%から2%の)少量の空気流が、内側受容領域8を流れる。
そして、流れが流出側と流入側との間の圧力差によって引き起こされる場合、内側受容領域8を通る流れは、主搬送方向とは逆方向にも発生する可能性がある。
【0026】
外側貫通流領域6には、中間リング5とハウジング2との静的接続を担う、より少数の(3個から8個の)支持要素3aがある。
支持要素3aの数が少ないため、羽根車19から流出する流れと支持要素3aとが相互作用しても、この外側貫通流領域6で新たな騒音は、ほとんど発生しない。
不図示の別の実施形態では、支持要素である支持羽根3aは、羽根車19から最大距離、つまり、ハウジング2の出口端部のほぼ近く、または、案内装置15の中間リング5の流出端部に比較的近い位置に配置されていてもよい。
【0027】
さらに、支持羽根3a、中間リング5を有している案内装置15、案内羽根3、および、ハブリング4を含むハウジング2を、プラスチック射出成形によって一体的に製造可能である。
その場合、入口ノズル9は、別個の部品であり、羽根車19を挿入した後にハウジング2に取り付けられる。
逆に、入口ノズル9をハウジング2に一体化することもできる。
その場合、支持羽根3aを有する再方向付け装置15は、羽根車19をハウジング2内に配置するときにハウジング2に固定される別個の部品である。
【0028】
ファン1の動作中、主流は、図1において入口ノズル9を通って羽根車19内へと概ね左から右に流れ、その後、外側貫通流領域6と内側貫通流領域7とに分かれ、ハウジング2の流出側端部25でハウジング2から、つまり、ファン1から再び流出する。
同時に、二次的な流れが存在する。
この二次的な流れは、羽根車19の流出側端部32から流出し、羽根車19の周囲のカバーリング16とハウジング2の内側輪郭11との間を逆流し、その後、入口ノズル9とカバーリング16との間の半径方向の隙間を通って再び羽根車19に流入する、比例的小さい空気の部分流である。
この二次的な流れにより、カバーリング16に近い領域での主流が安定し、主流に大きな影響を及ぼす。
この二次的な流れは、羽根車19の回転運動から大きな影響を受け、定期的に渦流が付与される。
【0029】
主流は、羽根車19の流出側端部32から流出した後、流れ断面が急激に拡張している領域を流れる。
つまり、羽根車19の下流に段差状径拡張部が形成されている。
断面が拡張することにより、流速が減少し、静圧が追加で生成され、反動度が上昇し、静的効率が向上する。
流速が低いため、流れが通過する下流の構成要素、例えば、案内要素3(オプションで支持要素3aと中間リング5)を有している再方向付け支持装置15、またはサスペンションでの騒音の発生も減少する。
【0030】
このような段差状径拡張部は、運動エネルギーを圧力エネルギーに変換する効率が非常に悪いということが、専門家の間での一般的な仮定や実用上の先入観である。
しかし、段差状径拡張部がうまく機能する複数の要因がある。
第一に、二次的な流れの効果により、ハウジング2の内側輪郭11への主流の「吸引」が引き起こされる。
第二に、羽根車19から流出する流れに強い渦が付与されているという効果がある。
第三に、再方向付け支持装置15の中間リング5の設計によって、段差状径拡張部の領域の流れに特に影響を及ぼすことができる。
特に、中間リング5は、軸方向に平行ではなく、軸方向に対してピッチ角を有していると有利である。
【0031】
全体として、段差状径拡張部による圧力回復とそれに伴う流速の減少により、静かで高効率なファンが実現可能となる。
実施形態では、ハブ領域の逆流は、再方向付け支持装置15によってさらに大幅に減少する。
さらに、支持羽根3aの数が少ないため、低騒音が保証される。
【0032】
従来の径拡張部の代わりに、段差状径拡張部を設けることにより、ハウジング2の内側輪郭11は、ほぼ円筒形状にすることができ、通常の径拡張部の形状である円錐状である必要はない。
これにより、プラスチック射出成形において、また、板金設計においても、ハウジング2の製造性が、大幅に簡略化される。
【0033】
図2は、図1の本発明によるハウジング2を有しているファン1を、流入側から見た斜視図である。
図1の補足として、羽根車19のハブリング21が、モーター34のローター35に流入する空気が冷却を確実に行うように、中央領域で広い表面積にわたって開口していることが分かる。
したがって、ローター35の正面側の表面全体が、流入に対して実質的に覆われているのではない。
羽根車19の羽根22は、回転方向である時計回り方向と反対側の後方で鎌状になっている。
これは、半径方向外側の羽根領域が、半径方向内側の羽根領域に回転方向で追従していることを意味している。
しかし、羽根車19は、必要な動作環境に応じて、前方で鎌状になっていてもよい。
ハウジング2には、ファン1を空気処理システムまたは装置に、例えば、ネジで固定するための流入側固定装置24が設けられている。
同様に、ハウジング2には、ファン1を空気処理システムまたは装置に、この場合も、例えば、ネジで固定するための流出側固定装置23が設けられている。
【0034】
図3は、図1および図2の本発明によるハウジング2を有しているファン1を、流出側から見た斜視図である。
図1および図2に加えて、モーター34のステータ36が、再方向付け支持装置15のハブリング4内の内側受容領域8内に配置されていることが容易に見て取れる。
再方向付け支持装置15は、例えば、13枚から23枚の多数の内側案内羽根3を有し、内側案内羽根3は、ハブ付近で発生する可能性のある逆流を抑制するか、少なくとも低減する。
また、外側貫通流領域6には、例えば、4枚から9枚の少数の支持羽根3aが配置されている。
ここでも、羽根車19のカバーリング16の流出側端部32とハウジング2の内側輪郭11との距離を基に、段差状径拡張部が存在していることがわかる。
【0035】
図4は、図1図2および図3のファン1およびハウジング2の、ファン軸26を通る平面による断面での側面図である。
図1から図3に加えて、3つの直径DA12、DL13およびDD14並びにカバーリングの流出方向31が概略で示されている。
これらの寸法により、ハウジング2と羽根車19のカバーリング16とで形成される段差状径拡張部を、容易に特徴付け可能である。
DA12は、ハウジング2の出口直径、すなわち、ハウジング2の流出側端部25における直径である。
DL13は、周囲リング16の流出側端部32における内径である。
DD14は、入口ノズル9の流出側端部37における内径である。
比率DA/DLが、1.05より大きいと有利であり、その結果、羽根車19の下流の流路における断面拡張が特徴付けられる。
そして、ハウジング2のほぼ円筒形の内側輪郭11と相まって、羽根車19の下流に、主流用の段差状径拡張部が生成される。
【0036】
羽根車19は、カバーリング16を有し、このカバーリング16は、ファン軸26とほぼ平行に広い領域にわたって延在しているか、または、ファン軸26に対してわずかな角度を有して配置されている。
羽根車19のハブリング21は、流れ方向に向かって直径が増加する顕著な円錐形状を有している。
カバーリング16の流出側端部32の内側輪郭は、ファン軸に対してピッチ角を有している。
したがって、羽根車19からの幾何学的な流出方向31は、軸方向に平行ではなく、平面断面で見ると、流れ方向に対してわずかに半径方向外側に向いており、約5°から15°の角度を有している。
このような角度を有していることは、特別な段差状径拡張部の動作に有利である。
さらに、カバーリング16の内側輪郭の接線の仮想的な延長線31(カバーリング16の流出側端部32における幾何学的流出方向)は、ハウジング2の内側輪郭11と交差しない。
その結果、カバーリング近傍の流れにハウジング2の内側輪郭11に向かう曲率が付与され、段差状径拡張部の効率的な動作に有利になる。
【0037】
入口ノズル9の出口直径DD14は、羽根車19のカバーリング16上の出口直径DL13よりもわずかに小さい。
より顕著な円錐形状を有するカバーリング16を有する、より顕著な斜流の羽根車19の場合、DD14は、DL13よりも明らかに小さくなることもある。
いずれの場合も、DD14は、出口直径DA12よりも全体的に明らかに小さく、特にDA/DD>1.05であると有利である。
これにより、入口ノズル9の輪郭を直径DD14とDA12との間の半径方向領域に収めることができる。
その結果、ハウジング2の内側輪郭11は、全体的にほぼ円筒形になり、入口ノズル9は、その半径方向内部に空間を有している。
【0038】
図5は、本発明によるファン1のさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、ハウジング2に複数の開口部17が設けられている。
さらに、本実施形態は、図1から図4の実施形態と同等のものである。
開口部17は、入口ノズル9とハウジング2との間、または、羽根車19のカバーリング16とハウジング2との間、の二次的な流れに関する領域を、ハウジング2の外側の領域と接続している。
ファンの取付態様によって、開口部17の領域のハウジング2の外側の領域の圧力レベルは、ファンの流入側や流出側の圧力レベルと一致させることができ、また、ファン1から、または、その流入側および流出側から分離されている場合は、独立した圧力レベルを有することもできる。
【0039】
ハウジング2の外側の開口部17の領域では、ファン軸に対する渦流がほとんどないか、または、全般的に流速が低い流れの状態であることが一般的である。
図1で示されており、羽根車19の出口から発生する再循環流(二次的な流れ)には、強い渦流が付与されている場合がある。
この点で、渦流が付与された再循環流と、開口部17を通って再循環領域に流入する渦度が低い渦流とが混合することにより、羽根車19の入口ノズル9とカバーリング16との間の半径方向の隙間を通って二次的な流れとして羽根車19に流入する渦流が、補正されたり、低減されたりする。
これは、カバーリング16または羽根22での剥離を回避するのに有利であり、したがって、低い騒音で高い効率を実現することに寄与可能である。
【0040】
図6は、本発明によるファン1のさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、ハウジング2に渦流補正要素20が設けられている。
渦流補正要素20は、羽根車19の入口ノズル9および/またはカバーリング16の領域に軸方向に形成されている。
軸方向に見ると、渦流補正要素20は、入口ノズル9とカバーリング16との間の半径方向の隙間と重なっている。
渦流補正要素20は、ハウジング2の内側輪郭11から半径方向内側に突出している。
あるいは、同様の要素を、ハウジング2に面する側の入口ノズル9に取り付けることもできる。
渦流補正要素20の形状は、図に示すように、直線状でファン軸と平行とすることができる。
曲線状または他の態様で最適化された形状も有利である場合がある。
渦流補正要素20の機能は、入口ノズル9と羽根車19のカバーリング16との間の半径方向の隙間を通って羽根車19に流入する二次的な流れである強い渦流を軽減することである。
このことは、カバーリング16または羽根22での剥離を回避するのに有利であり、したがって、低い騒音で高い効率を実現することに寄与可能である。
【0041】
図7は、本発明によるファン1のさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、ハウジング2上の比較的長い渦流補正要素20aが軸方向に羽根車19またはそのカバーリング16を超えて延在している。
比較的長い渦流補正要素20aは、渦流をより顕著に低減させ、羽根車19から流出した後に流出側端部25でハウジング2から流出する主流に良い影響を与えることができる。
特に、ハウジング2の内側輪郭11の領域で渦流成分が高くなりすぎるのを回避するために、主流を軸方向に平行に向けることができる。
【0042】
図8は、図1から図4のファン1を流出側から見た平面図である。
図1から図4の補足として、支持羽根3aは、その半径方向の形状に関する限り、ファン軸からの径方向の仮想直線と比較して、比較的強くねじれている/傾いていることが容易に見て取れる。
図8の平面投影背面図において、支持羽根3aの流入側端部とファン軸からの径方向の仮想直線との間の角度が、全体的に、または、平均して25°より大きい。
支持羽根3aは、大きく傾斜している、または、鎌状である。
これにより、回転音の発生が、低減される。
実施形態では、支持羽根3aは、半径方向内側から外側への方向に反時計回りに傾斜しており、これは、羽根車19の回転方向と反対である。
しかし、支持羽根3aは、他の方向に傾斜していてもよい。
すべての支持羽根3aは、同じ方向に傾斜している。
この構成とは対照的に、内側案内要素3は、半径方向にわずかに傾斜している。
半径方向内側の領域では、周方向に発生する速度(羽根車19の羽根22の局所的な回転速度または流速)が低いため、回転音の発生は、ここでは、それほど重要ではない。
一方、内側案内要素3を径方向により近い角度で配置することは、内側案内要素3が支持機能も有するため、静的剛性にとって有利である。
【0043】
図9は、本発明によるファン1のさらなる実施形態を流出側から見た平面図であり、支持要素3aが、周方向において交互に傾斜している。
各支持要素3aは、前縁または後縁で見ると、半径方向に対して大きく傾斜している。
しかし、傾斜方向、すなわち、傾斜角の符号は、支持要素3aごとに異なる。
このようにすると、システムの剛性にとって有利にすることができる。
なぜなら、支持羽根3aは、ここでは、支持機能を有するように設計されており、すなわち、ハウジング2の外側に向かって、モーター34と羽根車19との静的接続を担っているからである。
支持羽根3aの傾斜方向が交互に変化していることにより、格子構造の場合と同様に、相互に補強がなされている。
上述の点以外の設計は、図1から図4および図8と一致している。
【0044】
図10は、本発明によるファン1のさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、案内装置15が設けられていない。
サスペンション27が、支持機能を担っている。
サスペンション27は、鋼鉄または他の金属材料で作られていると有利であり、このようにすると、小さな断面積で必要な剛性を達成し、それによって、騒音の発生を最小限に抑えられる。
このようなサスペンション27は、半径方向に対して傾斜していてもよいし、かつ/または、空気力学的に最適化されている断面形状を有していてもよい。
サスペンション27に接触保護格子を組み込むことも考えられる。
サスペンション27は、固定装置28によってハウジング2に固定され、ねじ止めされている。
羽根車19の周囲のカバーリング16の流出側端部32の下流では、流れの断面積が、ハウジング2の内側輪郭11のより大きな断面積までかなり急激に拡張しており、主流用の一種の段差状径拡張部が形成されている。
【0045】
図11は、本発明によるファン1のさらなる実施形態を、ファン軸を通る平面による断面で流出側から見た斜視図であり、内側案内装置15が設けられ、サスペンション27が支持機能を担っている。
したがって、支持羽根3aは、形成されていない。
この実施形態は、図10に示した実施形態と類似しているが、中間リング5および案内要素3とともに形成されている内側再方向付けホイール15が、ハブ領域での逆流を防止または低減し、それによって効率を向上させている点が異なる。
【0046】
本発明によるファンのさらに有利な改良に関しては、重複を避けるために、明細書の一般的部分および添付の特許請求の範囲を参照されたい。
【0047】
最後に、本発明によるファンの上述の実施形態は、本発明を教示するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 ・・・ファン
2 ・・・ハウジング
3 ・・・案内要素(内側案内羽根)
3a・・・支持要素(支持羽根)
4 ・・・案内装置のハブリング
5 ・・・案内装置の中間リング
6 ・・・外側貫通流領域(空気ダクト)
7 ・・・内側貫通流領域
8 ・・・ハブリングの内側受容領域
9 ・・・入口ノズル
10 ・・・案内装置のハブリング
11 ・・・ハウジングの内側輪郭
12 ・・・ハウジングの外側直径
13 ・・・羽根車の外側直径
14 ・・・入口ノズルの外側直径
15 ・・・再方向付け支持装置(案内装置)
16 ・・・羽根車の周囲を取り囲んでいるカバーリング
17 ・・・ハウジングの開口部
18 ・・・内側のサスペンション用固定装置
19 ・・・羽根車
20 ・・・渦流補正要素
20a・・・長い渦流補正要素
21 ・・・羽根車のハブリング
22 ・・・羽根車の羽根
23 ・・・流出側ハウジング固定装置
24 ・・・流入側ハウジング固定装置
25 ・・・ハウジングの流出側端部
26 ・・・ファンの軸
27 ・・・サスペンション
28 ・・・外側のサスペンション用固定装置
30 ・・・羽根車上のモーター固定装置
31 ・・・カバーリングの流出方向
32 ・・・カバーリングの流出側端部
34 ・・・モーター
35 ・・・モーターのローター
36 ・・・モーターのステータ
37 ・・・入口ノズルの流出側端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】