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特表2025-500662プレビューベース車両システム制御における出力飽和回避のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】プレビューベース車両システム制御における出力飽和回避のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 23/00 20060101AFI20241226BHJP
   B60G 17/00 20060101ALI20241226BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60G23/00
B60G17/00
B60G17/015 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541642
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 US2023010397
(87)【国際公開番号】W WO2023133313
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/297,873
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512321121
【氏名又は名称】クリアモーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ユー
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァナルディ,マルコ
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301AA11
3D301AA13
3D301AA17
3D301CA01
3D301DA01
3D301DA25
3D301DA31
3D301EA04
3D301EA08
3D301EA82
3D301EA86
3D301EB01
3D301EC01
3D301EC05
3D301EC16
3D301EC17
3D301EC37
3D301EC67
3D301EC68
(57)【要約】
車両が道路面に沿って走行する間の車両システムの制御に関係する方法が開示される。いくつかの実装形態では、車両の前方の路面に関係するデータは第1の周波数範囲及び第2の周波数範囲へ分離される。次に、車両システムの命令が様々な周波数範囲に関して判断され得、そして車両システムは別個の周波数範囲の別個の命令に少なくとも部分的に基づき制御され得る。いくつかの実装形態では、これは組み合わされたシステム命令を別個の周波数範囲の別個の命令に少なくとも部分的に基づき判断することを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたシステムを前記車両が路面に沿って走行している間に操作する方法であって:
前記車両の前方の路面に関連する路面プロファイルデータを前記車両内のマイクロプロセッサにおいて受信すること;
第1のフィルタリングされた出力を生成するために下側周波数帯域通過フィルタにより前記路面プロファイルデータをフィルタリングすることであって、前記下側周波数帯域通過フィルタは第1の周波数に等しい第1の下側周波数限度及び第2の周波数に等しい第1の上側周波数限度を有する、フィルタリングすること;
下側周波数命令信号を生成するために前記第1のフィルタリングされた出力を下側周波数伝達関数へ供給すること;
第2のフィルタリングされた出力を生成するために上側周波数帯域通過フィルタにより前記路面プロファイルデータをフィルタリングすることであって、前記上側周波数帯域通過フィルタは前記第2の周波数に等しい第2の下側周波数限度及び第3の周波数に等しい第2の上側周波数限度を有し、前記上側周波数帯フィルタは前記下側周波数帯域通過フィルタと並列に動作する、フィルタリングすること;
上側周波数命令信号を生成するために前記第2のフィルタリングされた出力を上側周波数伝達関数へ供給すること;
前記下側周波数命令信号及び前記上側周波数命令信号に基づき全命令信号を判断すること;及び
前記全命令信号に少なくとも部分的に基づき前記システムを操作すること
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の周波数は0.3Hz以上~0.8Hz以下の周波数の範囲内にあり得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の周波数は8Hz以上~0.8 12Hz以下の周波数の範囲内にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の周波数及び前記第3の周波数は予め判断される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記データは、リモートデータベース、クラウド内のデータベース、前記車両内に配置されたローカルデータベースからなるグループから選択されたソースから前記車両内のマイクロプロセッサにおいて受信される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の下側周波数限度は前記下側周波数帯域通過フィルタの下側-3dBの点において判断され、前記第1の上側周波数限度は前記下側周波数帯域通過フィルタの上側-3dBの点において判断される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の下側周波数限度は前記上側周波数帯域通過フィルタの下側-3dBの点において判断され、前記第2の上側周波数限度は前記上側周波数帯域通過フィルタの上側-3dBの点において判断される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記システムはアクティブサスペンションアクチュエータである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アクティブサスペンションコントローラにより前記アクティブサスペンションを制御することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記下側周波数命令信号は前記車両の一部分に前記道路の少なくとも第1の垂直運動を追随させる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記上側周波数命令信号は前記車両の一部分を前記道路の少なくとも垂直運動から絶縁させる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記全命令信号は前記下側周波数命令信号及び前記上側周波数命令信号を合算することにより判断される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記下側周波数命令信号は第1系列のフォース命令である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記上側周波数命令信号は第2系列のフォース命令である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記車両が路面に沿って走行している間に前記第2の周波数を判断することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記アクティブサスペンションアクチュエータに関連する費用関数を最適化するために垂直運動プランナを操作することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記費用関数を最適化することは、前記全命令信号が前記アクティブサスペンションアクチュエータが実装する能力を越える命令を含む程度を最小化することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記垂直運動プランナは第1のサイクルタイムで動作し、及び前記コントローラは第2のより速いサイクルタイムで動作する、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のサイクルタイムは0.1秒以上~1秒以下のサイクルタイムの範囲内にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のサイクルタイムは0.0005秒以上~0.02秒以内のサイクルタイムの範囲内にある、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
路面に沿って走行する間に車両を操作する方法であって、前記方法は:
(a)所与の持続時間の第1の期間の開始後、第1のサイクルタイムで動作するマイクロプロセッサを含むコントローラにより第1の運動計画に従って車両システムを操作することであって、前記運動計画は、第2のサイクルタイムで動作する運動プランナマイクロプロセッサにより前記第1の期間の前記開始に先立って用意される、操作すること;
(b)工程(a)中に、前記車両に搭載された少なくとも1つのセンサにより前記車両の運動に関連するデータを収集すること;及び
(c)前記第1の期間の終了に先立って、前記運動プランナにより用意された第2の運動計画に従って、前記コントローラにより車両システムを操作すること;
を含み、
前記第1の計画から前記第2の計画への遷移中の少なくとも1つの車両システムパラメータの値は工程(b)中に収集された前記データに少なくとも部分的に基づき判断される、方法。
【請求項22】
前記第1のサイクルタイムは50Hz以上~2000Hz以下の範囲内にある、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のサイクルタイムは2Hz以上~20Hz以下の範囲内にある、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記車両システムはアクティブサスペンションシステムである、請求項21乃至23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記運動計画は、前記第1の期間の前記開始に先立って前記車両の前方にある前記道路のセグメントの道路プロファイルに少なくとも基づく垂直運動計画である、請求項21乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の垂直運動計画は、第1の周波数を越えた周波数の第1の範囲内の車両運動の第1の計画及び前記第1の周波数未満の周波数の第2の範囲内の車両運動の第2の計画を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の周波数は、前記第1の期間の開始に先立って前記車両の前方にある前記道路の前記セグメントの道路プロファイルに少なくとも部分的に基づき前記運動プランナにより判断される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記道路の前記セグメントの前記道路プロファイルに関する情報はクラウド内のデータベースから前記車両において受信される、請求項25乃至27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
路面に沿って走行する間に車両を操作する方法であって、前記車両は垂直運動プランナ及び垂直運動コントローラを含み、前記方法は:
前記車両の前方の道路セグメントの路面プロファイルデータを前記垂直運動プランナにおいて受信すること;
前記路面プロファイルに基づき及び第1の周波数を越えた周波数の範囲に関し、アクティブサスペンションシステムの少なくとも1つのアクチュエータの第1の垂直フォースプロファイルを開発するために前記垂直運動プランナを使用することであって、前記第1の垂直フォースプロファイルは前記車両が前記道路セグメントに沿って走行する間に前記車両の少なくとも一部分を路面擾乱から絶縁するように構成される、使用すること;
前記路面プロファイルに基づき及び前記第1の周波数未満の周波数の範囲に関し、前記アクティブサスペンションシステムの前記少なくとも1つのアクチュエータの第2の垂直フォースプロファイルを開発するために前記垂直運動プランナを使用することであって、前記第2の垂直フォースプロファイルは前記車両が前記道路セグメントに沿って走行する間に前記車両の前記少なくとも一部分の運動を前記路面プロファイルに追随させるように構成される、使用すること;
前記第1のフォースプロファイルと前記第2のフォースプロファイルとの組み合わせである全フォースプロファイルを前記コントローラへ提供すること;及び
前記車両が前記道路セグメントに沿って走行する間に、前記全フォースプロファイルに従って前記車両の前記少なくとも一部分に対しフォースを適用するように少なくとも1つのアクチュエータを操作すること
を含む方法。
【請求項30】
前記第1のフォースプロファイル及び/又は前記第2のフォースプロファイルは前記車両の状態パラメータに少なくとも部分的に基づく、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の周波数を修正することにより前記アクチュエータに関連する費用関数を最小化することを更に含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記費用関数は、フォース飽和の量、走行飽和の範囲の量及び前記第1の周波数の前記値からなる群から選択されるパラメータに基づく、請求項29乃至31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
アクティブサスペンションシステムのアクチュエータのコントローラシステムであって、
第1の周波数未満の範囲内の周波数の車両の第1の最適運動計画と前記第1の最適運動計画と異なる、前記第1の周波数を越える周波数の第2の最適運動計画とを開発するように構成されたマイクロプロセッサベース垂直運動プランナであって、前記第1及び第2の最適運動計画は、前記車両の前方の前記道路のセグメントの道路運動プロファイルに少なくとも部分的に基づく、マイクロプロセッサベース垂直運動プランナ;及び
前記第1の最適運動計画及び前記第2の最適運動計画に基づきアクティブサスペンションコントローラにより車両の垂直運動を制御するように構成されたマイクロプロセッサベースコントローラ、
を含むコントローラシステム。
【請求項34】
車両に搭載されたシステムを前記車両が路面に沿って走行している間に操作する方法であって、前記方法は:
前記車両の前方の前記道路のセグメントの路面プロファイルのプレビューを受信すること;
路面プロファイルを、第1の周波数未満の周波数の範囲を含む第1の成分及び前記第1の周波数を越えた周波数の範囲を含む第2の成分とへ分離すること;
第1の伝達関数を前記第1の成分へ及び前記第1の伝達関数と異なる第2の伝達関数を前記第2の成分へ適用すること;及び
前記第1の成分及び前記第2の成分の合計に基づきマイクロプロセッサベースコントローラにより前記システムを制御すること
を含む方法。
【請求項35】
前記システムは前記車両のバネ上質量の部分とバネ下質量の部分との間に挿入されたアクティブサスペンションシステムアクチュエータである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の伝達関数の出力は、前記アクティブサスペンションアクチュエータに追随フォースを前記第1の周波数未満の周波数の範囲内の前記バネ上質量の前記部分へ適用させる一系列の命令である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の伝達関数の出力は、前記アクティブサスペンションアクチュエータに絶縁フォースを前記第1の周波数を越えた周波数の範囲内の前記バネ上質量の部分へ適用させる一系列の命令である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記アクティブサスペンションアクチュエータのフォース飽和度を最小化することにより前記第1の周波数の値を判断することを更に含む請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体を参照により本明細書に援用する2022年1月10日申請の米国仮特許出願第63/297,873号の合衆国法典第35巻119条下の便益を主張する。
【0002】
分野
開示される実施形態は、車両が道路に沿って走行している間の車両の前方の道路のセグメントに関する情報に少なくとも部分的に基づく車両制御に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
車両に搭載のシステムは、車両の前方の道路の一部分を定義するプレビュー又は先験的情報に基づき操作され得る。このように操作され得るシステムは、ADAS(最先端運転者支援システム:Advanced Driver-Assistance System)、アクティブ又はセミアクティブサスペンションシステム、ブレーキシステム、操舵システム、推進システムなどを含み得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示のいくつかの態様によると、車両に搭載されたシステムを車両が路面に沿って走行している間に操作する方法が提供される。本方法は、車両の前方の路面に関連する路面プロファイルデータを車両内のマイクロプロセッサにおいて受信すること;第1のフィルタリングされた出力を生成するために下側周波数帯域通過フィルタにより路面プロファイルデータをフィルタリングすることであって、下側周波数帯域通過フィルタは第1の周波数に等しい第1の下側周波数限度及び第2の周波数に等しい第1の上側周波数限度を有する、フィルタリングすること;下側周波数命令信号を生成するために、第1のフィルタリングされた出力を下側周波数伝達関数へ供給すること;第2のフィルタリングされた出力を生成するために上側周波数帯域通過フィルタにより路面プロファイルデータをフィルタリングすることであって、上側周波数帯域通過フィルタは第2の周波数に等しい第2の下側周波数限度及び第3の周波数に等しい第2の上側周波数限度を有し、上側周波数帯フィルタは下側周波数帯域通過フィルタと並列に動作する、フィルタリングすること;上側周波数命令信号を生成するために第2のフィルタリングされた出力を上側周波数伝達関数へ供給すること;下側周波数命令信号及び上側周波数命令信号に基づき全命令信号を判断すること;及び全命令信号に少なくとも部分的に基づき本システムを操作することを含み得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、第1の周波数は0.3Hz以上~0.8Hz以下であり得る。いくつかの実施形態では、第3の周波数は8Hz以上~0.8 12Hz以下の範囲内にある。いくつかの実施形態では、第1の周波数及び第3の周波数は予め判断される。いくつかの実施形態では、データは、リモートデータベース、クラウド内のデータベース、車両内に配置されたローカルデータベースから車両内のマイクロプロセッサにより受信され得る。いくつかの実施形態では、第1の下側周波数限度は下側周波数帯域通過フィルタの下側-3dBの点において判断され得、そして第1の上側周波数限度は下側周波数帯域通過フィルタの上側-3dBの点において判断され得る。いくつかの実施形態では、第2の下側周波数限度は上側周波数帯域通過フィルタの下側-3dBの点において判断され得、そして第2の上側周波数限度は上側周波数帯域通過フィルタの上側-3dBの点において判断され得る。いくつかの実施形態では、本システムはアクティブサスペンションコントローラにより制御され得るアクティブサスペンションアクチュエータであり得る。いくつかの実施形態では、下側周波数命令信号は車両の一部分に道路の少なくとも第1の垂直運動に追随させ得る。いくつかの実施形態では、上側周波数命令信号は車両の一部分を道路の少なくとも垂直運動から絶縁させ得る。いくつかの実施形態では、全命令信号は下側周波数命令信号及び上側周波数命令信号を合算することにより判断され得る。いくつかの実施形態では、下側周波数命令信号は第1系列のフォース命令であり得る。いくつかの実施形態では、上側周波数命令信号は第2系列のフォース命令であり得る。いくつかの実施形態では、本方法は車両が路面に沿って走行している間に第2の周波数を判断することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、アクティブサスペンションアクチュエータに関連する費用関数を最適化するために垂直運動プランナを操作することを含み得る。いくつかの実施形態では、費用関数を最適化することは、全命令信号がアクティブサスペンションアクチュエータの生成又は実装する能力を越える命令を含む程度を最小化することを含み得る。いくつかの実施形態では、垂直運動プランナは第1のサイクルタイムで動作し得、そしてコントローラは第2のより速いサイクルタイムで動作する。いくつかの実施形態では、第1のサイクルタイムは0.1秒以上~1秒以下のサイクルタイムの範囲内にある。いくつかの実施形態では、第2のサイクルタイムは0.0005秒以上~0.02秒以下のサイクルタイムの範囲内にある。
【0006】
本開示のいくつかの態様によると、路面に沿って走行する間に車両を操作する方法が提供される。本方法は:第1のサイクルタイムで動作するマイクロプロセッサを含むコントローラにより所与の持続時間の第1の期間の開始後に第1の運動計画に従って車両システムを操作することであって、運動計画は第1の期間の開始に先立って用意されおり、運動プランナマイクロプロセッサは第2のサイクルタイムで動作する、操作すること;車両に搭載された少なくとも1つのセンサにより第1の期間中に車両の運動に関連するデータを収集すること;及び第1の期間の終了に先立って第2の運動計画に従ってコントローラにより車両システムを操作することを含み得;第1の計画から第2の計画への遷移中の少なくとも1つの車両システムパラメータの値は上記期間中に収集されたデータに少なくとも部分的に基づき判断される。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1のサイクルタイムは50Hz以上~2000Hz以下の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態では、第2のサイクルタイムは2Hz以上~20Hz以下の範囲内にあり得る。いくつかの実施形態では、車両システムはアクティブサスペンションシステムであり得る。いくつかの実施形態では、運動計画は、第1の期間の開始に先立って車両の前方にあり得る道路のセグメントの道路プロファイルに少なくとも基づく垂直運動計画であり得る。いくつかの実施形態では、第1の垂直運動計画は、第1の周波数を越えた周波数の第1の範囲内の車両運動の第1の計画及び第1の周波数未満の周波数の第2の範囲内の車両運動の第2の計画を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の周波数は、第1の期間の開始に先立って車両の前方にある道路のセグメントの道路プロファイルに少なくとも部分的に基づき運動プランナにより判断され得る。いくつかの実施形態では、道路のセグメントの道路プロファイルに関する情報はクラウド内のデータベースから車両において受信される。
【0008】
本開示のいくつかの態様によると、路面に沿って走行する間に車両を操作する方法が提供され、車両は垂直運動プランナ及び垂直運動コントローラを含む。本方法は:車両の前方の道路セグメントの路面プロファイルデータを垂直運動プランナにおいて受信すること;アクティブサスペンションシステムの少なくとも1つのアクチュエータの第1の垂直フォースプロファイルを路面プロファイルに基づきそして第1の周波数を越えた周波数の範囲に関し開発するために垂直運動プランナを使用することであって、第1の垂直フォースプロファイルは車両が道路セグメントに沿って走行する間に路面擾乱から車両の少なくとも一部分を絶縁するように構成される、使用すること;アクティブサスペンションシステムの少なくとも1つのアクチュエータの第2の垂直フォースプロファイルを路面プロファイルに基づきそして第1の周波数未満の周波数の範囲に関し開発するために垂直運動プランナを使用することであって、第2の垂直フォースプロファイルは車両の少なくとも一部分の運動を車両が道路セグメントに沿って走行する間に路面プロファイルに追随させるように構成される、使用すること:第1のフォースプロファイルと第2のフォースプロファイルとの組み合わせである全フォースプロファイルをコントローラへ提供すること;及び、車両が道路セグメントに沿って走行する間に、全フォースプロファイルに従って車両の少なくとも一部分に対しフォースを適用するように少なくとも1つのアクチュエータを操作することを含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のフォースプロファイル及び/又は第2のフォースプロファイルは車両の状態パラメータに少なくとも部分的に基づく。いくつかの実施形態では、本方法は第1の周波数を修正することによりアクチュエータに関連する費用関数を最小化することを含み得る。いくつかの実施形態では、費用関数はフォース飽和の量又は程度、走行飽和の量又は程度範囲、及び/又は第1の周波数の値に基づき得る。
【0010】
本開示のいくつかの態様によると、アクティブサスペンションシステムのアクチュエータのコントローラシステムが提供される。コントローラシステムは以下のものを含み得る:第1の周波数未満の範囲内の周波数の車両の第1の最適運動計画と第1の周波数を越える周波数の第1の最適運動計画と異なる第2の最適運動計画とを開発するように構成されたマイクロプロセッサベース垂直運動プランナであって、第1及び第2の最適運動計画は、車両の前方の道路のセグメントの道路運動プロファイルに少なくとも部分的に基づく、マイクロプロセッサベース垂直運動プランナ;及び第1の最適運動計画及び第2の最適運動計画に基づき又はそれに従ってアクティブサスペンションコントローラにより車両の垂直運動を制御するように構成されたマイクロプロセッサベースコントローラ。
【0011】
本開示のいくつかの態様によると、車両に搭載されたシステムを車両が路面に沿って走行している間に操作する方法が提供される。本方法は:車両の前方の道路のセグメントの道路プロファイルのプレビューを受信すること;路面プロファイルを、第1の周波数未満の周波数の範囲を含む第1の成分及び第1の周波数を越えた周波数の範囲を含む第2の成分へ分離すること;第1の伝達関数を第1の成分へそして第1の伝達関数と異なる第2の伝達関数を第2の成分へ適用すること、;及び第1の成分及び第2の成分の合計に基づきマイクロプロセッサベースコントローラにより本システムを制御することを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、本システムは、車両のバネ上質量の部分とバネ下質量の部分との間に挿入されたアクティブサスペンションシステムアクチュエータであり得る。いくつかの実施形態では、第1の伝達関数の出力は、アクティブサスペンションアクチュエータに追随フォースを第1の周波数未満の周波数の範囲内のバネ上質量の部分へ適用させる一系列の命令であり得る。いくつかの実施形態では、第2の伝達関数の出力は、アクティブサスペンションアクチュエータに絶縁フォースを第1の周波数を越えた周波数の範囲内のバネ上質量の部分へ適用させる一系列の命令であり得る。いくつかの実施形態では、本方法はアクティブサスペンションアクチュエータのフォース飽和度を最小化することにより第1の周波数の値を判断することを含み得る。
【0013】
本開示はこの点に関し制限されないので前述の概念及び以下に論述される追加概念は任意の好適な組み合わせで配置され得るということが認識されるべきである。更に、本開示の他の利点及び新規フィーチャは添付図面と併せて考察されると様々な非限定的実施形態の詳細説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
図1】車両の前方の道路の一部分が長さLのセグメントである路面に沿って走行する車両を示す。
図2】コントローラ及びプランナを含み得る車両に搭載された車両制御システムの例示的実施形態を示す。
図3】車両に搭載されたシステムへ提供され得る時間の関数としての例示的命令フォースプロファイルの飽和度を示す。
図4】本システムの出力限度を越える部分がクリップされる図3の命令フォースプロファイルを示す。
図5】一定期間にわたる命令フォースプロファイルが飽和度が削除されるように縮小され得る代替例示的戦略を示す。
図6】一定期間にわたる命令フォースプロファイルの下側周波数だけが飽和度が削除されるように縮小される代替例示的戦略を示す。
図7】車両の前方の路面に関する情報(道路プロファイルデータを低周波成分及び高周波成分へ分離する道路プロファイルデータを含む)を受信するシステムの例示的実施形態のブロック線図を示す。
図8】バネ上質量とバネ下質量との間に挿入された例示的アクティブサスペンションシステムを示す。
図9】オンボード車両システムのコントローラと併せて動作し得るプランナの例示的実施形態のブロック線図を示す。
図10】実際の所望フォース命令と一定期間にわたりアクチュエータにより印可される飽和又はクリップされたフォースとの比較を示す。
図11】一定ピッチ角速度を経験する例示的車両を示す。
図12】前方アクチュエータがフォース飽和を経験する図11の例示的車両を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
いくつかの実施形態では、車両が道路に沿って走行するにつれ、車両に搭載の1つ又は複数のコントローラ(例えばマイクロプロセッサベースコントローラ)が道路固有プレビュー情報又は車両の前方の道路又は道路の一部分に関する先験的情報を受信し得る。この情報はオンボード又はリモートデータベース(例えばクラウド内のリモートデータベース)から受信され得る。このような情報は、1つ又は複数の道路状況に又は道路のいくつかの態様との相互作用に適切に反応するために車両に搭載の1つ又は複数のシステム(例えばアクチュエータ、アクティブサスペンションアクチュエータ)を操作するために1つ又は複数のマイクロプロセッサベースコントローラにより使用され得る。道路固有プレビュー情報は、例えば路面プロファイル及び/又は路面特性に関する情報を含み得る。本明細書で使用されるように、用語「路面プロファイル」は路面のフィーチャに関連する名目路面からの垂直方向偏位を指す。このようなフィーチャは自然発生異常又は作製された異常であり得る。このようなフィーチャは、離散的(すなわち車両の同じスケール上で縦方向に又はより小さいスケール上で縦方向に離散的)であり得、制限しないが道路穴、バンプ、クラック、排水溝、伸縮継手、凍上、などを含む、及び/又は分散され得る(この場合、このようなフィーチャは車両の長さより長い距離まで延伸し得る(例えば壊れた舗装又は表面起伏)。道路又は道路の一部分の路面プロファイルの態様との相互作用は、加速又は他の擾乱(例えば垂直方向の加速又は垂直方向成分を有する加速)を誘発し得る。誘発される加速は、車両が道路の表面又は道路の一部分に沿って走行する間に誘発され得る車両又は車両の一部分(例えば車両ボディ、車両シャーシ、車両ホイール、車両のバネ上質量、又は車両のバネ下質量など)の加速であり得る。本明細書で使用されるように、用語「路面特性」は、車両タイヤのトラクションに影響を与え得る路面の特性(例えば表面粗度、表面組成など:例えばアスファルト、コンクリート、砂利、汚れ)又は表面カバー(例えば氷、水、及び又は雪)を指す。しかし本開示はそのように制限されないので他のタイプの道路固有プレビュー情報が企図される。
【0016】
図1は路面12に沿って走行する車両10を示す。道路の一部分(セグメント14)は長さLのものである。いくつかの実施形態では、道路セグメント14に関する道路固有プレビュー情報はデータベース(例えばクラウド16内のデータベース及び/又は車両に搭載されたデータベース(図1に示さない))から受信され得る。道路セグメント14は、制限されないが表面亀裂12a、マンホールカバー12b、道路穴12c、及び/又は凍上12dを含む異常などの様々な態様を含み得る。車両10及び/又は車両10に搭載の1つ又は複数のシステムは道路セグメント14に関する情報及び/又は車両10の状態に関する情報に基づき操作され得る。
【0017】
図2はコントローラ22a及びプランナ22bを含み得る車両10に搭載されたコントローラシステム20の例示的実施形態を示す。コントローラ22a及びプランナ22bは、いくつかの実施形態では、同じサイクルタイムで単一マイクロプロセッサ又は複数のプロセッサ上で動作し得るアルゴリズムを含み得る。代替的に、以下に更に説明されるように、いくつかの実施形態では、コントローラ22a及びプランナ22bのアルゴリズムは様々なサイクルタイムにおいて様々なプロセッサ上で動作し得る。いくつかの実施形態では、プランナはコントローラより遅いサイクルタイムで動作し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、コントローラ22aは、プランナ22b及び/又は車両の様々な部分(例えばバネ上質量、又は車両に関連する1つ又は複数のバネ下質量)へ作動可能に取り付けられ得るセンサ45(例えば加速度計、IMU、変位センサ、ブレーキ圧力センサ、操向角度センサ、など)から受信される情報に基づき1つ又は複数のオンボードシステム24を制御し得る。プランナ22bにより受信される入力データは、例えば道路固有データソース28(例えば、リモートクラウドデータベース34及び/又はオンボード車両データベース36)、環境データソース30(例えば天気データセンタ46)、及び/又は(例えば、車両負荷情報38、乗員関係データ、乗員活動データ42、車両状態情報44(例えば車速)40)を供給する車両固有データソース32から受信され得る。いくつかの実施形態では、プランナ22bは、コントローラが実装又は実行し得るコントローラ22aへ提供されることになる計画を作成し得る。いくつかの実施形態では、プランナは、車両バネ上質量(例えば車両ボディ)の垂直運動の態様を制御するためにアクティブサスペンションアクチュエータによりコントローラへ提供され得る運動計画(垂直運動計画であり得る)を作成し得る。いくつかの実施形態では、プランナはプランナにより選択された時点で計画をコントローラへ提供し得る。代替的に、コントローラは必要なときに(例えば、以前の計画又は以前の計画の所定部分が実装されている場合に)計画を要求し得る。
【0019】
本発明者らは、いくつかの実施形態において、いくつかの動作条件下で、車両の前方の道路に関する情報に基づき、命令をシステム(例えば車両に搭載のアクティブサスペンションアクチュエータシステム)へ提供するように構成されたコントローラはシステムにシステムの容量を越える出力を生成することを命じ得る、ということを認識した。例えば、コントローラは、図3の例示的グラフ50により表わされる時間の関数としてフォース出力を生成することをアクティブサスペンションアクチュエータシステムに要求又は命令し得る。この例では、線52a及び52bは圧縮及び拡張におけるフォース限度をそれぞれ表わす。クロスハッチエリアは、所与のアクチュエータが生成することができない場合がある所望又は命令フォースを表わす。限度52a及び52bは等しい大きさのフォース限度を表わすように図3に示されるが本開示はそのように制限されないので等しくないフォース限度も企図されるということに留意すべきである。クロスハッチエリア54a~54eが大きければ大きいほど命令フォース50の飽和度は大きくなる。フォース飽和は、命令フォースがシステム(例えばアクチュエータ)が生成し得るフォースより大きい又はフォースの範囲外にあると発生する。本明細書で使用されるように、用語「飽和度」は、システム容量又は能力限度外にある所定期間にわたる「フォース命令対時間」曲線の積分の割合を指す。
【0020】
図3のグラフ50は時間の関数として要求又は命令されたフォース出力を表わすように示されるが、同様な曲線が任意の他の適切なシステム出力(例えばトルク又は動力)を表わすために生成され得る。したがって、本開示はそのように制限されないので他のシステム出力の飽和度もまた企図される。
【0021】
コントローラがシステム(例えば(フォース限度52a及び52bにより制約される)アクティブサスペンションアクチュエータ)にフォース出力50を時間の関数として生成するように要求又は命令する実施形態では、例えばアクチュエータにより生成される実際のフォースは要求フォースがシステムの容量を越える場合は常に定期的にクリップされ得る。このようなクリップされたフォース出力が図4のグラフ60に示される。本発明者らは、その能力より大きな出力を生成するようにコントローラにより命令されたシステムがその最大出力閾値に到達すると劣悪な性能又は他の望ましくない影響が生じ得るということを認識した。例えば、アクチュエータシステムがグラフ50により表わされるフォースを生成するように命令されたが図4に示すクリップされた出力を生成すれば、又は代替的に、クリップされた出力を生成するように命令されれば、アクチュエータは、バネ上質量(例えば車両ボディ)の望ましくない知覚可能雑音及び/又は振動を誘発し得る。加えて、システムは、その最大容量より大きい出力を生成するように要求される期間中、制御することが非効率的又は困難であり得る。
【0022】
図5は、一定期間にわたるフォース命令70が、本システム(例えばアクティブサスペンションシステム)がその容量を越える出力を生成するようにいかなる時点でも命令されないように縮小され得る、代替戦略を示す。しかし、この手法は、所望フォースがシステムの限度を越えないかもしれない期間中にシステムの出力を低減するだろう。したがって、命令出力をスケーリングすることは、利用可能な予備容量があるときにシステムの出力を不必要に軽減し得る。
【0023】
本発明者らは、いくつかの実施形態ではいくつかの状態下で出力は或る周波数範囲にわたって命令され得るということを認識した。本発明者らは、いくつかの実施形態において、いくつかの動作条件下で、いくつかの周波数範囲(例えば下側周波数)内の出力が他の周波数範囲(例えば上側周波数)における出力よりシステムに大きな要求を突き付け得る、ということを更に認識した。
【0024】
図6は、一定期間にわたり図3のフォース命令50の下側周波数は車両システム(例えばアクティブサスペンションシステム)が曲線80により表わされる出力フォースを生成すように縮小され得る代替戦略を示す。この例示的実施形態では、制御されているシステムは、限度52a及び52bを越えるフォースを命令しないし、図6に示す期間中のいかなる時点でも命令されない。しかし、図6に示すフォース命令グラフでは、図5のフォース命令とは異なりフォース命令は上側周波数において縮小されない。この戦略により、本システムは上側周波数において十分に効果的であり得る一方で、全要求出力は下側周波数における出力が制限されるのでシステムの閾値限度を越えない。
【0025】
本発明者らは、周波数に基づき道路プロファイルを分離しそして様々な周波数範囲に様々なやり方で応答することは例えば閾値を越える出力(例えばフォース、トルク、動力)を生成するようにそして同時に道路擾乱からの許容絶縁レベルを生成するようにシステム(例えばアクティブサスペンションアクチュエータ)に要求又は命令することを回避し得る、ということを認識した。
【0026】
例えば、いくつかの実施形態では、車両の前方の道路に関する情報は、道路の一部分の表面道路プロファイル(例えば公称値に対する垂直方向道路変位又は垂直方向速度)を含み得る。本発明者らは、所与の道路プロファイルを有する路面全体にわたって走行する車両の運動は車両ボディの垂直運動が閾値周波数未満の周波数において道路プロファイルに追随する一方で車両は閾値を越える周波数において運動から絶縁されるように制御され得るということを認識した。いくつかの実施形態では、追随と絶縁との間の適切な遷移周波数を選択することにより、アクティブサスペンションアクチュエータに対する要求だけでなく飽和度に対する要求も低減され得る。いくつかの実施形態では、これは、サスペンションシステムが車両ボディに遷移周波数未満の道路プロファイルに追随させる一方で車両ボディは遷移周波数より高い擾乱周波数から絶縁されるように車両又は車両の一部分の垂直運動を制御することにより実現され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、追随-絶縁遷移周波数は、受容可能乗り心地を実現する一方でサスペンションシステムアクチュエータにその容量より大きい出力(例えばフォース、トルク、動力)を生成するように命令することを回避するように車両をチューニングすることにより選択され得る。本明細書で使用されるように、用語「追随-絶縁遷移周波数(TITF:tracking-to-isolation transition frequency)」は、この周波数を越えるとコントローラは1つ又は複数のサスペンションシステムアクチュエータを道路擾乱から絶縁するように操作し得るがこの周波数未満ではコントローラは車両ボディが路面に追随するようにサスペンションシステムを操作し得る周波数を指す。
【0028】
図7は、車両の前方の路面に関する情報をリモート(例えばクラウドベースデータベース)又はローカル(例えば車両に搭載されたデータベース)道路プロファイルデータソース91から受信するシステム90の例示的実施形態のブロック線図を示す。システム90は、上側周波数限度fを有する低周波数帯域通過(LFBP)フィルタ92(例えばバターワースフィルタ)とfの下側周波数限度を有する高周波数帯域通過(HFBP)フィルタ94(例えばバターワースフィルタ)とを使用することにより道路プロファイルデータを低周波数成分及び高周波数成分へ分離する。図7に示す実施形態では、周波数fは本システムのTITFであり得る。特定アクティブサスペンションアクチュエータに関して、LFBPフィルタの出力は追随命令(例えばフォース命令)を生成するためにブロック96において処理される一方でHFBPフィルタの出力は絶縁命令(例えばフォース命令)を生成するためにブロック98において処理される。図8はバネ上質量102とバネ下質量104との間に挿入されたアクティブサスペンションシステム100の一実施形態を示す。サスペンションシステムはバネ素子106、減衰素子108及びアクティブサスペンションアクチュエータ110を含み得る。バネ素子106及び/又は減衰素子108はアクチュエータ110と部分的に又は完全に一体化され得るということに留意すべきである。アクチュエータ110のコントローラは、図7に示すシステム90により、最適化された命令フォースプロファイルを提供され得る。いくつかの実施形態では、ブロック96において生成されたフォース命令の追随部分は、以下の式を使用することにより、垂直方向道路速度に等しいボディ基準に基づき判断され得る:
フォース命令(追随)=質量*垂直方向道路加速度
ここで、質量はアクチュエータ110により支援又は加速されるバネ上質量102に等しい。いくつかの実施形態では、垂直方向道路加速度は質量104の垂直方向加速度を使用することにより近似され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ブロック98において生成されるアクチュエータ110のフォース命令の絶縁部分は、以下の式を使用することにより、零速度に等しいボディ基準に基づき判断され得る:
フォース命令(絶縁)=-K*垂直方向道路変位-B*垂直方向道路速度
ここで、Kはアクチュエータに平行なバネ素子106のばね定数であり、そしてBは減衰素子108の減衰係数の大きさである。いくつかの実施形態では、垂直方向道路速度は質量104の垂直方向速度を使用することにより近似され得る。いくつかの実施形態では、垂直方向道路速度は、質量104の垂直方向速度、アクチュエータフォース110、及びサスペンション行程106を使用することにより近似され得、そして精度を改善するために他の信号を含むように更に拡張され得る。
【0030】
次に、ブロック96及び98からの出力は調整された全フォース命令を生成するためにブロック99において合算され得る。任意の他の適切な帯域通過フィルタ又は等価物(例えばBesselfフィルタ、チェビシェフフィルタ、楕円フィルタ、四次IIRフィルタ及び有限インパルス応答(FIR:finite impulse response)フィルタ)もまたブロック92及び/又はブロック94において使用され得るということに留意されたい。
【0031】
図7における帯域通過フィルタ組み合わせを定義するために使用され得るパラメータはブロック92内のフィルタの下側周波数限度(LML)及びブロック94内のフィルタの上側周波数限度(UFL)を含み得る。
【0032】
本発明者らはいくつかの実施形態ではこれらのパラメータの値は本システムの較正中に判断されそしてその後の使用中に維持され得るということを認識した。本発明者らは、システム90のTITFの値もまた初期チューニングプロセス中に選択されそしてその後の使用中に維持され得るということを更に認識した。
【0033】
しかし、本発明者らはまた、代替的に、TITFの値は、測定又はチューニング中に当初選択され得るが図2に示すようなプランナ22bを使用することにより使用中にその後適応化され得るということを認識した。例えば、図2のいくつかの実施形態では、プランナは様々なソース(例えば道路固有データソース28、環境データソース30及び/又は車両固有データソースのような)からの情報に基づきTITFを選択するために使用され得る。TITFの最適値が選択されると、プランナは、車両の軌道計画(例えば垂直方向軌道計画)を生成し得、そして一定期間にわたり各時間ステップにおいて実施するために当該計画をコントローラ22aへ提供し得る。本明細書で使用されるように、用語「垂直方向軌道計画」は、垂直面内の車両ボディ又は車両ボディの一部分の所望運動を生成するために車両サスペンションシステム(例えばアクティブサスペンションシステム)の1つ又は複数のコントローラへ提供される一系列の命令を指す。いくつかの実施形態では、プランナ22bは情報(例えば車両の前方の道路、車両の環境、及び/又は車両自体に関する情報)に基づきTITFの最適値を判断し得る。例えば、車両の前方の道路セグメント、車両の質量及び速度、並びに1つ又は複数のアクチュエータの最大フォース出力に関する情報に基づき、プランナは、所与の道路セグメントを走行する間のうねり、ピッチ及び/又はロールにおける車両ボディの最大絶縁のための最適TITFを判断し得る。いくつかの実施形態では、プランナ22bは、1つ又は複数のアクチュエータの容量(例えばフォース飽和度)を越える命令フォース時間プロファイルの面積を最小化するためにTITFを最適化し得る。次に、プランナ22bは、1つ又は複数のサスペンションアクチュエータの一系列のフォース命令及び/又は基準を生成し得、そしてそれらの命令をコントローラへ提供し得る。次に、コントローラは垂直方向軌道計画の所定部分の所定部分が実施されると追加命令を要求し得る。代替的に又は追加的に、プランナは準備が整うと新しい軌道計画を配送し得る。
【0034】
図9は、コントローラ(図9に示さない)と併せて働き得るプランナ120の例示的実施形態のブロック線図を示す。プランナ120により受信される情報は、限定しないが、ブロック122における車両の前方の道路セグメントの道路プロファイルデータ、ブロック124におけるTITF推定、及びブロック126における少なくとも1つのアクチュエータのフォース限度を含み得る。ブロック128では、初期フォース命令プロファイルが車両の前方の道路セグメントに関して推定され得る。この第1の推定に基づき、最適化されたフォース命令がブロック130において判断され得る。いくつかの実施形態では、最適化は、アクチュエータのフォース限度を越えるフォース命令の積分が最小化されるまでTITFの値を増減することによりTITF推定を変更することを含み得る。ブロック132では、最適化されたフォース命令は、アクチュエータのフォース限度内に入るように制約され得る(例えば、最適化されたフォース命令をクリップ又はスケーリングすることにより)。いくつかの実施形態では、最適化プロセスがブロック132において時間内に収束しなかった又はそうでなければ失敗したということが判断されれば、プランナは、ブロック128において判断された初期フォース命令推定に戻り得る。したがって、ブロック132において、初期フォース命令はアクチュエータのフォース限度内に入るように制約され得る(例えば、初期フォース命令をクリップ又はスケーリングすることにより)。
【0035】
いくつかの実施形態において、いくつかの動作条件下で、プランナは、特定車両システム(例えばアクティブサスペンションアクチュエータ)のコントローラに計画(例えば車両が道路セグメントに沿って走行する間に1つ又は複数のアクチュエータにより適用される一系列のフォース命令)を提供するために使用され得る。いくつかの実施形態では、プランナは計画の準備が整うと計画をコントローラへ提供し得る。いくつかの実施形態では、コントローラは必要なときに新計画を要求し得る。命令プロファイルは時間の関数として適切な出力を命令するために使用され得る(例えばアクティブサスペンションアクチュエータにより)。一系列のフォース命令は、車両がプランナへ提供される道路プロファイルに遭遇すると所望垂直運動を生成するように構成され得る。いくつかの実施形態では、プランナはコントローラよりはるかに遅い(例えば10~100倍遅い)サイクルタイムにわたって動作し得る。コントローラは、コントローラの多くのサイクルにわたり実施され得るフォース計画を提供し得る。
【0036】
図10は、1500Nの最大フォース容量を有するアクティブサスペンションアクチュエータにより30秒の期間にわたり適用され得る飽和又はクリップされたフォース142と比較された実際の所望フォース命令140の比較を示す。
【0037】
図11は一定ピッチ角速度152及び零に近いピッチ角加速度154を経験する例示的車両150を示す。図11にまた示されるのは、車両の前部の線速度152a及び車両の後部の線速度152bである。図12は時間T1の前に一定角ピッチ速度162及び零に近いピッチ加速度164を再び経験する図11の例示的車両150を示す。図12にまた示されるのは、車両の前部の線速度162a及び車両の後部の線速度162bである。図12に示す動作状態では、前方アクチュエータは時間T1において圧縮のその最大出力に突然到達する。これが発生すると、車両の前部の線速度は零へ急速に(例えば1秒未満に)降下し得る。図12に示すように、時間T1において、ピッチ加速度は、車両の乗員により知覚され得る不愉快な又は好ましくない振動又は雑音を生成し得る不連続性を経験し得る。したがって、垂直面内の車両の運動は複数のアクティブサスペンションアクチュエータにより制御され得るので、いくつかの実施形態では、複数の垂直方向軌道プランナが車両内で使用され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプランナは、アクティブサスペンションアクチュエータに関連付けられ得る各コントローラに関連付けられ得る。しかし、いくつかの実施形態では、単一垂直方向軌道プランナが複数のコントローラ及びアクチュエータに関連付けられ得る。
【0038】
本明細書において説明される技術の上記実施形態は無数のやり方のうちの任意のやり方で実装され得る。例えば、いくつかの実施形態はハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせを使用して実装され得る。ソフトウェアで実装される場合、ソフトウェアコードが、単一コンピュータ内に提供されるか複数のコンピュータ間で分散されるかにかかわらず、任意の好適なプロセッサ又はプロセッサの集合上で実行され得る。このようなプロセッサは、集積化回路部品(CPUチップ、GPUチップ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はコプロセッサなどの名称により当該技術領域において知られている商用集積化回路部品を含む)内に1つ又は複数のプロセッサと共に集積回路として実装され得る。代替的に、プロセッサは、ASICなどのカスタム回路構成で又はプログラマブルロジックデバイスを構成することから生じるセミカスタム回路構成で実装され得る。さらなる代替案として、プロセッサは、商業的に入手可能か、セミカスタムか又はカスタムかに関わらずより大きな回路又は半導体デバイスの一部分であり得る。特別例として、いくつかの商用マイクロプロセッサは、それらのコアの1つ又はサブセットがプロセッサを構成し得るように複数コアを有する。しかし、プロセッサは任意の好適なフォーマットの回路構成を使用することにより実装され得る。
【0039】
更に、コンピュータはラックマウントコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ又はタブレットコンピュータなどの多くの形式のうちの任意の形式で具現化され得るということが理解されるべきである。加えて、コンピュータは、コンピュータと概して見做されないが好適な処理能力を有するデバイス(パーソナルディジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン又は任意の他の好適なポータブル又は固定型電子デバイスを含む)内に埋め込まれ得る。
【0040】
また、コンピュータは1つ又は複数の入出力デバイスを有し得る。これらのデバイスはユーザインターフェースを提示するために特に使用され得る。ユーザインターフェースを提供するために使用され得る出力デバイスの例は、出力の視覚的提示のためのプリンタ又はディスプレイ画面と、出力の可聴提示のためのスピーカ又は他の音声生成デバイスとを含む。ユーザインターフェースのために使用され得る入力デバイスの例はキーボード及びポインティングデバイス(マウス、タッチパッド及びデジタイジングタブレットなど)を含む。別の例として、コンピュータは入力情報を音声認識を介し又は他の可聴フォーマットで受信し得る。
【0041】
このようなコンピュータは、ローカルエリアネットワーク又は広域ネットワーク(企業ネットワーク又はインターネットなど)を含む任意の好適な形式の1つ又は複数のネットワークにより相互接続され得る。このようなネットワークは、任意の好適な技術に基づき得、そして任意の好適なプロトコルに従って動作し得、そして無線ネットワーク、有線ネットワーク又は光ファイバネットワークを含み得る。
【0042】
また、本明細書において概説された様々な方法又はプロセスは、多種多様なオペレーティングシステム又はプラットフォームのうちの任意の1つを採用する1つ又は複数のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化され得る。加えて、このようなソフトウェアは、多くの好適なプログラミング言語及び/又はプログラミングツール又はスクリプト化ツールのうちの任意のものを使用することにより書かれ得、そしてまた、フレームワーク又は仮想マシン上で実行される実行可能機械語コード又は中間コードとしてコンパイルされ得る。
【0043】
この点に関し、本明細書において説明される実施形態は、1つ又は複数のコンピュータ又は他のプロセッサ上で実行されると上に論述された様々な実施形態を実装する方法を行う1つ又は複数のプログラムにより符号化されたコンピュータ可読ストレージ媒体(又は複数のコンピュータ可読媒体)(例えばコンピュータメモリ、1つ又は複数のフロッピーディスク、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、ディジタルビデオティスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ又は他の半導体デバイス内の回路構成、又は他の有形コンピュータストレージ媒体)として具現化され得る。前述の例から明らかなように、コンピュータ可読ストレージ媒体は、非一時的形式のコンピュータ実行可能命令を提供するために十分な時間の間情報を保持し得る。このようなコンピュータ可読ストレージ媒体又は媒体群は、その上に格納されたプログラム又はプログラム群が、上に論述されたように本開示の様々な態様を実装するために1つ又は複数の異なるコンピュータ又は他のプロセッサ上へロードされ得るように移植可能であり得る。本明細書で使用されるように、用語「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、製造物(すなわち製造品)又はマシンであると考えられ得る非一時的コンピュータ可読媒体だけを包含する。代替的に又は追加的に、本開示は、コンピュータ可読ストレージ媒体以外のコンピュータ可読媒体(伝搬信号など)として具現化され得る。
【0044】
用語「プログラム」又は「ソフトウェア」は、上に論述されたような本開示の様々な態様を実装するようにコンピュータ又は他のプロセッサをプログラムするために採用され得る任意のタイプのコンピュータコード又は任意の組のコンピュータ実行可能命令を指すために一般的意味で本明細書では使用される。加えて、この実施形態の1つの態様によると、実行されると本開示の方法を行う1つ又は複数のコンピュータプログラムは単一コンピュータ又はプロセッサ上に常在する必要はないが本開示の様々な態様を実装するために多くの異なるコンピュータ又はプロセッサの間でモジュール的やり方で分散され得る、ということが理解されるべきである。
【0045】
コンピュータ実行可能命令は、1つ又は複数のコンピュータ又は他のデバイスにより実行されるプログラムモジュールなどの多くの形式のものであり得る。一般的に、プログラムモジュールは、特定タスクを行う又は特定抽象データ型を実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、部品、データ構造などを含む。通常、プログラムモジュールの機能性は様々な実施形態において所望に応じ組み合わせられ得る又は分散され得る。
【0046】
また、データ構造は任意の好適な形式でコンピュータ可読媒体内に格納され得る。図解の簡潔性のために、データ構造はデータ構造内のロケーションを介し関係付けられるフィールドを有するように示され得る。このような関係性は同様に、フィールド間の関係性を搬送するコンピュータ可読媒体内のロケーションを有するフィールドのストレージを割り当てることにより実現され得る。しかし、データ要素間の関係性を確立するポインタ、タグ又は他の機構の使用を介することを含む任意の好適な機構が、データ構造のフィールド内の情報間の関係性を確立するために使用され得る。
【0047】
本開示の様々な態様は、単独で、組み合わせで使用され得る、又は先に説明した実施形態において特に論述されない多種多様な構成で使用され得、したがってそれらのアプリケーションでは、これまでの明細書に記載の又は添付図面に示された部品の詳細及び配置に限定されない。例えば、一実施形態において説明された態様は他の実施形態に於いて説明された態様と任意のやり方で組み合わせられ得る。
【0048】
また、本明細書において説明される実施形態は、その例が提供された方法として具現化され得る。方法の一部分として行われる行為は任意の好適なやり方で順序付けられ得る。したがって、例示的実施形態において連続行為として示されたとしても、示されたものとは異なる順序で行為が行われる実施形態であっていくつかの行為を同時に行うことを含み得る実施形態が構築され得る。
【0049】
更に、「ユーザ」により取られるいくつかの行為が説明される。「ユーザ」は単独個人である必要がないということといくつかの実施形態では「ユーザ」に起因する行為は、コンピュータ支援ツール又は他の機構と協同する個人のチーム及び/又は個人により行われ得るということとが認識されるべきである。
【0050】
本教示は様々な実施形態及び例と併せて説明されたが、本教示がこのようないくつかの実施形態又は例に制限されるということは意図されていない。逆に、本教示は、当業者により認識されることになるような様々な代替案、修正形態及び等価物を包含する。したがって、これまで述べた説明及び図面は例示目的のためだけものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】