IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイの特許一覧

特表2025-500668交換可能なスパークユニット、システム、及び較正方法
<>
  • 特表-交換可能なスパークユニット、システム、及び較正方法 図1
  • 特表-交換可能なスパークユニット、システム、及び較正方法 図2
  • 特表-交換可能なスパークユニット、システム、及び較正方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】交換可能なスパークユニット、システム、及び較正方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/67 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G01N21/67 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541687
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2023051368
(87)【国際公開番号】W WO2023156131
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】22156761.3
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598083577
【氏名又は名称】ヘレーウス エレクトロ-ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro-Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B-3530 Houthalen,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブランククス,ルック
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルホーフェン,ジャン-ポール
(72)【発明者】
【氏名】コダッチ,ヴィタリー
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA01
2G043CA05
2G043EA09
2G043FA03
2G043JA00
2G043MA06
(57)【要約】
本発明は、発光分光分析装置のための交換可能なスパークユニット、発光分光分析を使用して試料を分析するためのシステム、及び交換可能なスパークユニットを較正するための方法に関するものである。発光分光分析装置(12)のための交換可能なスパークユニット(10)は、分析される試料を位置決めするための試料平面(22)を画定している試料キャリア(20)であって、当該試料キャリア(20)は、アパーチャ(24)を有する、試料キャリア(20)と、電極(26)であって、光を発するために、電極(26)と試料平面(22)に位置決めされた試料との間にスパークが発生し得るように、アパーチャ(24)の領域における試料平面(22)に対してある距離(D)に配置されている、電極(26)と、を備えている。交換可能なスパークユニット(10)は、交換可能なスパークユニット(10)を発光分光分析装置(12)と機械的に結合するための結合インターフェース(30)と、発された光に影響を及ぼすための光学構成要素(44)と、を更に備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光分光分析装置(12)のための交換可能なスパークユニット(10)であって、
分析される試料を位置決めするための試料平面(22)を画定する試料キャリア(20)であって、前記試料キャリア(20)が、アパーチャ(24)を有する、試料キャリア(20)と、
電極(26)であって、光を発するために、前記電極(26)と前記試料平面(22)に位置決めされた試料との間にスパークが発生し得るように、前記アパーチャ(24)の領域における前記試料平面(22)に対してある距離(D)に配置されている、電極(26)と、
前記交換可能なスパークユニット(10)を前記発光分光分析装置(12)と機械的に結合するための結合インターフェース(30)と、を備えており、
前記交換可能なスパークユニット(10)が、発された前記光に影響を及ぼすための光学構成要素(44)を更に備えていることを特徴とする、交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項2】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、前記光学構成要素(44)として鏡(45)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項3】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、発生する前記スパークから前記鏡(45)へと光が通るための第1の中空空間(41)と、前記鏡(45)から前記交換可能なスパークユニット(10)の光出口(46)に向かって光が通るための第2の中空空間(42)と、を含み、前記第1の中空空間(41)の長手方向延長と前記第2の中空空間(42)の長手方向延長との間の角度αが、45°~120°、具体的には90°~110°であることを特徴とする、請求項2に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項4】
前記鏡(45)が、前記試料平面(20)に対して5°~20°の角度βを有する入射光を反射するように構成されていること、及び/又は前記鏡(45)が、前記鏡(45)によって反射された光が本質的に垂直下向きに進むように配置されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項5】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、光が前記交換可能なスパークユニット(10)を通過するための中空空間(41、42)を閉じながら、光が前記発光分光分析装置(12)に向かって通ることを可能にするための窓(47)を備えていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項6】
前記窓(47)が、更なる光学構成要素として、具体的には、前記入射光の一部だけが前記発光分光分析装置(12)を通ることを可能にするフィルタ(48)として構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項7】
前記電極(26)が、軸受面(50)を備えていること、及び前記交換可能なスパークユニット(10)が、位置決め要素(52)を備え、前記位置決め要素(52)は、前記電極(26)と前記試料平面(22)との間の前記距離(D)が前記位置決め要素(52)によって決定されるように、前記交換可能なスパークユニット(10)の前記軸受面(50)を位置決めするためのものであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項8】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、前記第2の中空空間(42)に配置されたガス入口(55)を備えていることを特徴とする、請求項3~7のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項9】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、前記電極(26)が通って延在する第3の中空空間(43)に配置されたガス出口(56)を備えていることを特徴とする、請求項3~8のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項10】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、機械的に結合された状態で、前記交換可能なスパークユニット(10)を発光分光分析装置(12)に機械的に固定するための、具体的には1本以上のねじ(62)を含む固定手段(60)を備えていること、及び/又は前記交換可能なスパークユニット(10)が、前記発光分光分析装置(12)に対して前記交換可能なスパークユニット(10)を位置決めするための位置決めピン(64)若しくは位置決めピン(64)を受容するための受容空間(65)を備えていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項11】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、機械的に結合された状態にあるときに、前記交換可能なスパークユニット(10)と前記分光分析装置(12)との間の画定された角度配向に到達するための配向手段を備えていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項12】
前記試料キャリア(20)が、導電性材料から作製されており、前記試料キャリア(20)を介して、前記試料キャリア(20)に位置決めされた前記試料に電位を印加するための電気接点を備えていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項13】
発光分光分析を使用して試料を分析するためのシステム(15)であって、前記システム(15)が、請求項1~12のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)と、発光分光分析装置(12)、具体的にはCzerny-Turner分光分析装置(13)と、を備えており、前記発光分光分析装置(12)が、前記交換可能なスパークユニット(10)の前記結合インターフェース(30)が機械的に結合することができる結合インターフェース(32)を備えている、システム(15)。
【請求項14】
交換可能なスパークユニット(10)を較正するための方法であって、前記方法が、
請求項1~12のいずれか一項に記載の交換可能なスパークユニット(10)を提供することと、
前記電極(26)と前記試料平面(22)との間の前記距離(D)を検出し、前記距離(D)が所望の距離から逸脱している場合、前記電極(26)の装着位置を調整することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記方法が、前記交換可能なスパークユニット(10)の高さ(H)を検出し、前記高さ(H)が所望の高さから逸脱している場合、前記交換可能なスパークユニット(10)の前記高さ(H)を調整することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光分光分析装置のための交換可能なスパークユニット、発光分光分析を使用して試料を分析するためのシステム、及び交換可能なスパークユニットを較正するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冶金鋼処理、例えば、転炉処理の異なる段階中に、試料は、化学組成を決定するために、溶融鋼から採取され、分析される。これにより、プロセス段階を制御して、生成される鋼の特性を調整することが可能となる。典型的には、鋼試料の化学組成を決定するためには、スパーク発光分光法(optical emission spectroscopy、OES)が使用される。この方法では、例えば米国特許第5285251号に記載されているように、電気エネルギーを使用して、固体鋼試料と電極との間にスパークを発生させる。これを通して、試料の原子又はイオンが励起され、化学元素ごとに固有の発光スペクトルを有する放電プラズマを作成する。このスペクトルのスペクトル線の光学処理及び分析は、現在の化学元素の存在を決定することを可能にする。好適に較正されたシステムを使用することにより、試料の量も、したがって、化学組成も決定することができる。かかる方法は、米国特許第4592655(A)号、同第7911606(B2)号、及び独国特許第3344944(A1)号に開示されている。
【0003】
初期の方法では、試料は、冷却して、研削することによって機械的に調製した。加えて、分析は、試料採取場所、すなわち、製鋼プラントから空間的に離れて行われていた。したがって、試料採取と結果の受け取りとの間には長い所要時間が生じていた。このプロセスを加速するためのデバイス及び方法が開発されている。
【0004】
表面調製の必要性を排除することは、分析時間を短縮し、また、金属生産者にとって経済的に有利である。この問題に対する様々な解決策は、欧州特許第3336511(A1)号、同第3336512(A1)号、同第3336513(A1)号、同第3336514(A1)号、同第3581913(A1)号、及び同第3581914(A1)号に記載されている。これらの文書は、直接分析(Direct Analysis、DA)試料を生成する、あるタイプの溶融金属浸漬サンプラである、DAサンプラに関する。DA試料は、分析する前にいかなる種類の表面調製も必要とせず、したがって、スパーク-OES分析法を利用することによって、タイムリーな化学物質結果の入手可能性、並びに研究室時間の節約の両方に関して大きな経済的利益をもたらすことができる。
【0005】
スパークOES中に、スパークによって試料からはがれた粒子により、分光分析装置のスパークチャンバ及び隣接する領域に汚染が生じる。かかる粒子は、窓、鏡、レンズ、又は検出器などの光学素子に蓄積し得、また、分析の一貫した質を確実にするために除去しなければならない。かかる清浄化には時間がかかるので、交換可能なスパークユニットを備えたOESシステムが提供された。したがって、スパークユニットは、数分以内に次の分析の準備を完了するために、1回以上の測定後に取り換えることができる。かかるシステムは、同じファミリに由来する国際公開第2021/048382(A2)号及び英国特許第2592853(A)号、並びに米国特許公開第2021/0285820(A1)号に開示されている。分光分析のためのハンドヘルド装置は、米国特許第4411524(A)号によって知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既知の分光分析装置は、信頼性の高い結果を取得するために、スパークユニットの取り換え後に、較正又は再較正しなければならない。分析の性質のため、所望の値からの僅かな偏差でも、分析される光の、したがって、分析結果の有意な差異につながる。例えば、電極と試料との間の所望の距離、又はスパークと発された光を処理するための光学構成要素との間の所望の距離からの僅かな偏差は、光強度の大幅な低減に、及び該当する場合は、光組成の変化につながる。異なる偏差は積み重なり得る。しかしながら、スパークユニットの取り換え及び再較正は、時間がかかり、かつ労働集約的である。
【0007】
解決すべき問題は、スパークユニットの高速かつ簡単な取り換えを可能にするスパークユニット、システム、及び較正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
問題は、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット、並びに追加の請求項に記載のシステム及び方法によって解決される。実施形態は、従属請求項から生じる。
【0009】
発光分光分析装置のための交換可能なスパークユニットは、問題を解決する役割を果たす。交換可能なスパークユニットは、分析される試料を位置決めするための試料平面を画定する試料キャリアを備えている。当該試料キャリアは、アパーチャを有する。交換可能なスパークユニットは、電極であって、光を発するために、電極と試料平面に位置決めされた試料との間にスパークが発生し得るように、アパーチャの領域における試料平面に対してある距離に配置されている、電極を備えている。交換可能なスパークユニットは、交換可能なスパークユニットを発光分光分析装置と機械的に結合するための結合インターフェースと、発された光に影響を及ぼすための光学構成要素と、を更に備えている。
【0010】
好ましくは、電極及び光学構成要素は、交換可能なスパークユニットの同じ区画内に含まれ、すなわち、電極及び光学構成要素は、交換可能なスパークユニットの単一の区画内に配置される。したがって、これら構成要素を一緒に交換することができ、スパークユニットの取り換えが容易になる。追加的に、交換可能なスパークユニットは、設置及び/又は取り換える前に較正することができる。
【0011】
具体的には、交換可能なスパークユニットの試料キャリア、電極、及び結合インターフェースは、金属から作製されている。具体的には、電極は、タングステンから作製されている。電極は、試料キャリアから電気的に絶縁され得る。
【0012】
本発明による交換可能なスパークユニットは、光が発光分光分析装置に進入する前に光に影響を及ぼす光学構成要素を備えている。したがって、試料の組成を決定するために分光分析装置の光スペクトルを分析するのに必要とされる光学的な影響及び処理の一部は、交換可能なスパークユニットにおいて既に実行されている。スパークユニットを交換するときに、スパーク位置と光学構成要素との間の光路には影響は及ばない。この光路は、交換可能なスパークユニットにおいて正確に調整することができる。したがって、本発明による交換可能なスパークユニットは、スパークと分光分析装置との間の光が進行する経路の一部を、スパークユニット内に固定的に画定することを可能にする。したがって、汚染された交換可能なスパークユニットを、全く同じ光路を画定する既に較正された新しいものと交換することが可能である。光路の大部分は、スパークユニットを交換することによって影響を受けない。したがって、本発明によるスパークユニットを交換した後に、器具全体を再較正する必要がない。
【0013】
具体的には、交換可能なスパークユニット及び発光分光分析装置は、転炉に近い鉄鋼プラントにおいて製鋼プロセス中に試料を分析する役割を果たす。したがって、デバイスは、熱及び汚染を含む過酷な状態の下で確実に機能しなければならない。したがって、交換可能なスパークユニットの迅速かつ簡単な取り換えが必要とされる。加えて、この環境では、試料は、30~45分の時間間隔で規則的に分析しなければならない。この理由から、スパークユニットの取り換えは、20分未満で完了する必要がある。これは、再較正が必要でないため、本発明による交換可能なスパークユニットによって可能である。分光分析装置の長期にわたる動作は、スパークユニットの定期的な取り換えによって達成することができる。
【0014】
スパークユニットは、試料を分析するために、スパークを発生させることができるデバイスである。スパークは、具体的には、試料と電極との間に印加された電気エネルギーによって発生する。試料キャリアは、分析のために試料を位置決めすることができる構成要素である。アパーチャは、試料キャリア上に配置された試料と、電極、具体的には電極先端部との間に自由空間があるように、試料平面に配置され、試料キャリアを完全に通過する、試料キャリアのアパーチャである。したがって、自由空間内にスパークが発生することができる。電極と試料平面との間の距離は、具体的には、1mm~4mm、より具体的には1.5mm~2.5mm、及び好ましくは約2mmである。
【0015】
電極は、アパーチャ領域に配置されている。これは、電極と試料平面に位置決めされた試料との間にスパークが発生することを可能にする。具体的には、電極は、アパーチャと同軸的に配置されている。電極は、柱体形状及び/又は円錐形状を備え得る。好ましくは、電極は、電極本体と、電極先端部と、を有し、電極先端部の直径は、電極本体の直径よりも小さい。電極先端部は、安定したスパーク位置を確実にするために、尖頭及び/又は鋭利であり得る。電極本体は、本質的に柱体状、具体的には円柱状であり得る。電極は、電極先端部を有する電極ヘッドを備え得、当該電極ヘッドは、ピラミッド状及び/又は尖頭である。1つの構成では、電極は、本質的に垂直に配置されている。具体的には、電極は、略細長く、及び/又はピン形状である。アパーチャは、円形断面を有し得る。電極の中心軸は、アパーチャを貫通し得、具体的にはアパーチャの中心を貫通し得る。特許請求される設計は、試料キャリアと電極との間でのスパークの発生を防止する。加えて、電気絶縁のために、電極と交換可能なスパークユニットのハウジングとの間に絶縁要素が提供され得る。
【0016】
好ましい構成では、試料平面は、水平である。したがって、試料は、好都合なように位置決めすることができ、該当する場合は固定することができる。好ましくは、試料キャリアは、試料平面を画定する平らな表面を有する。試料平面、具体的には平らな表面は、交換可能なスパークユニットの上面を形成し得る。試料は、具体的には金属試料である。
【0017】
スパークにより、試料の組成の特性である光が発される。交換可能なスパークユニットは、発された光を分析するための発光分光分析装置と結合される。以下では、発光分光分析装置は、分光分析装置と称される。スパークユニットは、分光分析装置から機械的に結合解除することができ、本発明による別のスパークユニットを分光分析装置に機械的に結合することができるように交換可能である。
【0018】
結合インターフェースは、分光分析装置に接触し、したがって、分光分析装置に対する交換可能なスパークユニットの位置を画定する。典型的には、結合インターフェースは、少なくとも、交換可能なスパークユニットの高さ位置(高さ方向又はz方向の位置)を画定する。具体的には、分光分析装置及び交換可能なスパークユニットは、少なくともいかなる外力も印加されていないときに、結合状態において互いに対して移動することができない。結合インターフェースは、分光分析装置の対応する表面に隣接して位置決めすることができる1つ以上の表面を備え得る。具体的には、交換可能なスパークユニットは、光学的な検出のための構成要素が取り囲まれる、分光分析装置のハウジングに結合することができる。結合インターフェースは、結合平面を画定し得る。結合平面は、交換可能なスパークユニットの底面であり得る。これは、交換可能なスパークユニットの特に好都合で誤差のない設置を可能にする。
【0019】
具体的には、交換可能なスパークユニットは、光出口を備えている。光出口は、光学構成要素によって影響を及ぼされた光が分析のために分光分析装置に進入するようにスパークユニットを出て行くことができる、出口である。
【0020】
光学構成要素は、入射光の少なくとも1つの特性に影響を及ぼす、又はそれを変化させる構成要素である。光学構成要素は、とりわけ、レンズ、鏡、フィルタ、ビームスプリッタ、プリズム、光学スリット、又は回折格子であり得る。したがって、入射光の強度、方向、焦点、分散、組成、及び/又は更なる特性のうちの1つ以上に影響を及ぼすことができる。ガス状媒体又は光ファイバは、本発明による光学構成要素ではない。具体的には、交換可能なスパークユニットの光学構成要素は、光を10%以上減衰させない。
【0021】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、発生するスパークから光学構成要素へと光が通るための第1の中空空間と、光学構成要素から交換可能なスパークユニットの光出口に向かって光が通るための第2の中空空間と、を含む。交換可能なスパークユニットの電極及び光学構成要素を含む区画は、第1及び第2の中空空間を含み、すなわち、第1及び第2の中空空間は、区画の容積の少なくとも一部を形成する。具体的には、第1の中空空間の長手方向延長と第2の中空空間の長手方向延長との間の角度αは、45°~120°、より具体的には90°~110°である。
【0022】
中空空間は、光を透過する役割を果たす。典型的には、第1及び/若しくは第2の中空空間は、略柱体形状を有し、並びに/又は管として実現される。角度αは、光が通る中心線を画定し得る、それぞれの中空空間の中心長手方向軸に沿って測定される。45°未満では、中空空間が電極から遠く離れて位置決めされるので、非常に大きい構造空間が必要になる。具体的には、試料平面がいかなる妨害構成要素をも含まないようにするために、角度は、90°超である。90°~110°で、空間の最適な使用が可能になる。1つの構成では、角度αは、約100°である。具体的には、第2の中空空間は、少なくとも本質的に垂直である。
【0023】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、光学構成要素として鏡を備えている。具体的には、光学構成要素は、発された光を反射するための鏡である。したがって、光は、発された光を分光分析装置によって分析することができるように、所定の経路に沿って及び/又は1つ以上の更なる光学構成要素に向かって指向させることができる。この実施形態は、光を電極の近くの分光分析装置に向かって指向させることができるので、コンパクトな構造を可能にする。
【0024】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、発生するスパークから鏡へと光が通るための第1の中空空間と、鏡から交換可能なスパークユニットの光出口に向かって光が通るための第2の中空空間と、を含む。具体的には、第1の中空空間の長手方向延長と第2の中空空間の長手方向延長との間の角度αは、45°~120°、より具体的には90°~110°である。
【0025】
1つの実施形態では、鏡は、試料平面に対して5°~20°の、好ましくは8°~12°の角度βを有する入射光を反射するように構成されている。角度がより小さい場合は、試料平面が鏡によって妨げられる。より大きい角度では、スパークを、発された光で完全に表すことができない。加えて、高温試料スパーク領域からの黒体放射が、次いで分光分析装置に進入することになり、これは、迷光レベルの増加につながる。すなわち、βは、約10°が好ましくあり得る。
【0026】
1つの実施形態では、鏡は、鏡によって反射された光が本質的に垂直下向きに進むように配置されている。試料平面は、典型的には水平に整列されている。したがって、鏡によって反射された光は、典型的には、試料平面に対して垂直に進む。これは、特に小さい構造空間を可能にする。
【0027】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、光が交換可能なスパークユニットを通過するための中空空間を閉じながら、光が発光分光分析装置に向かって通ることを可能にするための窓を備えている。
【0028】
窓は、光学構成要素によって影響を及ぼされた光の光出口として作用する。閉じることは、不活性ガスをそれぞれの中空空間内部に保つことに寄与する。具体的には、窓は、第2の中空空間を閉じながら、光が第2の中空空間から発光分光分析装置へと通ることを可能にする。第2の中空空間を閉じることに寄与するために、Oリングが、例えば更なる光学構成要素、例えばフィルタの周りに配置され得る。
【0029】
1つの実施形態では、窓は、光学構成要素として構成されている。具体的には、窓は、入射光の一部だけが発光分光分析装置へと通ることを可能にするフィルタとして、又はレンズとして構成されている。換言すれば、フィルタは、光強度を低減する。したがって、全体的な光強度を、分光分析装置の分析に適した量に適合させることができる。フィルタは、減光フィルタであり得る。好ましくは、フィルタは、入射光の50%未満、より好ましくは30%未満を通すように構成されている。1つの構成では、フィルタは、光強度を10分の1に減衰させる。1つの構成では、追加の光学構成要素が交換可能なスパークユニットに配置され得る。追加の光学構成要素は、レンズ又はフィルタであり得る。したがって、フィルタは、窓として作用するレンズの上に配置され得る。
【0030】
1つの実施形態では、電極は、軸受面を備えており、交換可能なスパークユニットは、電極と試料平面との間の距離が位置決め要素によって決定されるように、交換可能なスパークユニットの軸受面を位置決めするための位置決め要素を備えている。
【0031】
軸受面は、典型的には、試料平面に適所に固定された交換可能なスパークユニットの少なくとも1つの他の一部に対して位置決めされる。換言すれば、位置決め要素は、特に、電極と交換可能なスパークユニットの少なくとも1つの他の一部との間の距離を画定する役割を果たす。
【0032】
位置決め要素の高さを調整/選択することによって、電極と試料平面との間の距離Dを調整することができる。このようにして、距離Dは、特に正確に設定することができる。具体的には、位置決め要素は、一定の距離Dを取得するために、交換可能なスパークユニットを分光分析装置に結合する前に選択することができる。具体的には、電極は、ねじのように回転させることによって高さを調整することができる。したがって、当該距離Dが正確であることを確実にすることができ、これは、特に、再較正せずに、スパークユニットを交換した後に正確な測定を可能にする。1つの構成では、電極は、装着した状態で固定することができる。
【0033】
位置決め要素は、例えば、当該距離Dを調整するために正確に測定されるように嵌合された高精度ワッシャであり得る。
【0034】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、第2の中空空間に配置されたガス入口を備えている。したがって、第2の中空空間は、及びその後の第1の中空空間もまた、アルゴンなどの、空気よりも重い不活性ガスで満たすことができる。具体的には、ガス入口は、第2の中空空間の低い位置に位置決めされている。
【0035】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、電極が通って延在する第3の中空空間に配置されたガス出口を備えている。これは、電極先端部からガス出口への、アルゴンなどの不活性ガスの下向きの流れを可能にする。第3の中空空間は、少なくとも断面においては本質的に柱体状であり得る。電極の少なくとも一部は、第3の中空空間内に配設されている。具体的には、ガス出口は、電極先端部よりも低い位置に配置されている。したがって、重力は、アブレートされた材料のガス出口への輸送をサポートすることができる。
【0036】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、機械的に結合した状態で、交換可能なスパークユニットを発光分光分析装置に機械的に固定するための固定手段を備えている。具体的には、固定手段は、1本以上のねじを含む。換言すれば、交換可能なスパークユニットは、結合状態で分光分析装置と機械的に固定することができる。具体的には、交換可能なスパークユニット及び分光分析装置の安定した接続が達成されるように、全ての自由度が拘束される。
【0037】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、発光分光分析装置に対して交換可能なスパークユニットを位置決めするための位置決めピン、又は位置決めピンを受容するための受容空間を備えている。位置決めピンは、交換可能なスパークユニット又は発光分光分析装置に取り付けられ得る。その場合、それぞれの他の物品は、位置決めピンを受容するための受容空間を備えている。また、位置決めピンは、交換可能なスパークユニットの受容空間及び分光分析装置の受容空間の内側に配置された別個の要素であることも可能でもある。具体的には、位置決めピンは、交換可能なスパークユニットの下面及び/又は発光分光分析装置の上面に対して垂直である。位置決めピンは、少なくとも当該表面に沿った相対位置を画定する。
【0038】
1つの実施形態では、交換可能なスパークユニットは、機械的に結合された状態にあるとき、交換可能なスパークユニットと分光分析装置との間の画定された角度配向に到達するための配向手段を備えている。配向手段は、交換可能なスパークユニットを分光分析装置上に、具体的には、x方向及びy方向と称され得る互いに対して垂直な少なくとも2つの方向に、正しく位置決めすることを確実にする。1つの構成では、位置決めピンは、配向手段としての役割を果たすように、中心から外れて配置され得る。換言すれば、位置決めピンは、オフセットを有する。それは、回転非対称に成形され得る。適切な位置決めピンは、交換可能なスパークユニットを分光分析装置に対して回転可能にかつ並進的に位置決めする役割を果たし得る。代替的又は追加的に、配向手段は、位置決めするために対応するフォーム要素と相互作用する構成要素の外輪郭の少なくとも一部などの、フォーム要素を備え得る。
【0039】
1つの実施形態では、試料キャリアは、導電性材料から作製されており、試料キャリアを介して、試料キャリアに位置決めされた試料に電位を印加するための電気接点を備えている。換言すれば、試料キャリアは、試料に接触し、したがって、電源と、電極と、試料との間に開いた電気回路の一部を形成し、電気回路は、試料を分析するためにスパークによって一時的に閉じられる。1つの構成では、試料平面は、使用中に、意図したとおりに本質的に水平に整列される。
【0040】
1つの構成では、交換可能なスパークユニットは、ハウジングを備えている。試料平面は、ハウジングの上面を画定し得る。1つの構成では、結合インターフェース、及び交換可能なスパークユニットの光出口は、下部ハウジングの側面に配置され得る。
【0041】
ハウジングは、金属から作製され得る。具体的には、交換可能なスパークユニットの試料キャリア、電極、結合インターフェース、及び/又はハウジングは、金属から作製され得る。電極は、ハウジング及び試料キャリアから電気的に絶縁され得る。
【0042】
具体的には、試料平面、及び結合インターフェースによって画定された平面は、互いに平行である。典型的には、2つの平面は、水平に配置されている。これは、交換可能なスパークユニットの分光分析装置への好都合で誤差のない設置を可能にし、同時に、試料インターフェース上の試料の好都合で誤差のない位置決めを可能にする。
【0043】
本発明の更なる態様は、発光分光分析を使用して試料を分析するためのシステムである。システムは、本発明による交換可能なスパークユニットと、発光分光分析装置と、備えている。発光分光分析装置は、交換可能なスパークユニットの結合インターフェースが機械的に結合することができる結合インターフェースを備えている。発光分光分析装置の結合インターフェースは、典型的には、分光分析装置のハウジングに配置されており、好ましくは、分光分析装置の上面を形成する。上述した全ての特徴、実施形態、及び交換可能なスパークユニットの利点はまた、システムにも有効であり、その逆も同様である。
【0044】
1つの実施形態では、システムは、分析される試料を試料キャリアに固定するための試料固定手段を備えている。
【0045】
発光分光分析装置は、例えばCzerny-Turner型分光分析装置であり得る。この場合、入射光を回折させる格子が第1の鏡(視準鏡)と第2の鏡(集束鏡)との間に配置され、異なるピーク(最大スペクトル)の入射光を合焦させる。光は、格子を通して、スペクトルを分析することができる場所に、例えばCCD検出器に指向させることができる。
【0046】
本発明の更なる態様は、交換可能なスパークユニットを較正するための方法である。方法は、本発明による交換可能なスパークユニットを提供することを含む。方法は、電極と試料平面との間の距離Dを検出し、距離Dが所望の距離から逸脱している場合、電極の装着位置を調整することを更に含む。電極の装着位置は、交換可能なスパークユニットのハウジングの内側における、当該ハウジング又は交換可能なスパークユニットの別の基準点に対する電極の位置である。距離を検出することは、較正測定によって及び/又は発光分光分析装置を使用して行われ得る。分析には、正確な距離Dを提供することが重要である。したがって、較正方法は、器具全体を再較正することを必要とせずにスパークユニットを交換することを可能にする。
【0047】
具体的には、距離が所望の距離から逸脱したかどうかを判定することは、検出した距離と所望の距離とを比較することによって行われ、その差が所定の閾値を超えた場合に又は所定の閾値未満になった場合に、その距離が所望の距離から逸脱したと判定される。これは、差が閾値を超えた場合にだけ又は閾値未満になった場合にだけ装着位置が調整されることを意味する。1つの構成では、所望の距離は2mmであり、及び/又は閾値は±0.05mmである。1つの構成では、閾値は、所望の距離の±5%未満、好ましくは所望の距離の±2.5%である。
【0048】
具体的には、電極の装着位置を調整することは、
電極の高さを、具体的にはねじることによって調整することと、
その高さに従って選択された位置決め要素を挿入して、電極の高さを固定することと、を含む。
【0049】
1つの実施形態では、方法は、交換可能なスパークユニットの高さHを検出し、高さHが所望の高さから逸脱している場合、交換可能なスパークユニットの高さHを調整することを更に含む。高さHは、交換可能なスパークユニットの一部又は全部の高さである。具体的には、高さは、試料平面と結合インターフェース、例えば結合インターフェースの最下点との間で測定される。また、高さHは、光路の長さに、したがって、分析に影響を及ぼす。したがって、この実施形態は、高精度の分析を可能にする。
【0050】
高さを調整することは、測定される高さに影響を及ぼす任意のステップを指す。高さを調整することは、具体的には、機械加工、例えば研削によって行われる。機械加工は、好ましくは、試料キャリアに行われる。
【0051】
上記と同様に、高さが所定の閾値を超えた場合に又は所定の閾値未満になった場合に、高さが所望の距離から逸脱したと判定され得る。
【0052】
1つの構成では、方法は、交換可能なスパークユニットを発光分光分析装置に機械的に結合することを更に含む。その場合、方法は、発光分光分析を使用して試料を分析するためのシステムを準備するための方法とも称することができる。結合ステップ及び距離を検出及び調整するステップは、原則として、任意の順序で行われ得る。しかしながら、検出及び調整するステップは、好ましくは、結合するステップの前に、具体的には、交換可能なスパークユニットを送達する前に行われる。任意選択の、高さを検出するステップは、具体的には、結合するステップの前に行われる。したがって、スパークユニットの交換は、特に迅速に行うことができる。
【0053】
1つの構成では、交換可能なスパークユニットは、典型的には金属で作製された装着ブロックを備えている。装着ブロックは、試料キャリア、光学構成要素、又は電極などの異なる構成要素のうちの少なくとも1つを直接的又は間接的に保持し得る。装着ブロックは、結合インターフェースなどの異なる構成要素のうちの少なくとも1つを構成し得る。1つの構成では、装着ブロックは、1回の単一の設定だけを使用して、CNC機械、具体的には多軸CNCミルで機械加工することによって製造される。換言すれば、金属片が機械に装着され、それは、最終装着ブロックが完了するまで解放されない。したがって、従来の機械加工ツールの使用では不可能である、距離、長さ、及び角度に関する特に低い許容限度が可能である。
【0054】
以下では、本発明の例示的な実施態様について、図を参照して詳細に説明する。例示的な実装態様の特徴は、別段の指示がない限り、特許請求された対象と個別に又は複数で組み合わされ得る。特許請求された保護範囲は、例示的な実装態様に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図は以下を示す。
図1】本発明によるシステムの断面図である。
図2図1の「A」の拡大詳細図である。
図3】本発明によるシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、本発明によるシステム15を示す。システムは、本発明による交換可能なスパークユニット10を備えており、これは、上で「A」と記された円内に示されている。交換可能なスパークユニット10は、発光分光分析装置12、例えばCzerny-Turner分光分析装置13と機械的に結合される。この目的のために、交換可能なスパークユニット10は、下側に、水平面として実現される結合インターフェース30を備えており、発光分光分析装置12は、上側に、同じく水平面として実現される対応する結合インターフェース32を備えている。図1に示される結合状態では、結合インターフェース30、32は、互いの上に重なっている。
【0057】
発光分光分析装置12は、光学スリット、視準鏡、回折格子、集束鏡などの光学構成要素、及び/又はCCD検出器などの検出器を備え得る。これらの構成要素、及び具体的には発光分光分析装置12の更なる要素もまた、1つ以上の部品からなり得る適切なハウジングに収容され得る。結合インターフェース32は、ハウジングによって形成され得る。
【0058】
交換可能なスパークユニット10は、分析される試料を位置決めすることができる試料平面22を画定する試料キャリア20を備えている。試料キャリア20は、交換可能なスパークユニット10のハウジング28の上壁によって形成されている。試料平面22は、交換可能なスパークユニット10の上面に対応する。試料キャリア20には、アパーチャ24が形成されている。交換可能なスパークユニット10は、アパーチャ24の中心下方において試料平面22に対してある距離に配置された電極26を更に備えている。試料と電極26との間に電位を印加することによって、電極26と試料平面22に位置決めされた金属試料との間にスパークが発生することができる。結果として、試料の組成に依存して構成された光が発される。光は、分析するために、スパーク位置から、交換可能なスパークユニット10を通って、及び発光分光分析装置12への窓47を通って下方向に進行する。
【0059】
図2は、図1の詳細「A」の拡大図を示す。図は、スパーク位置と、発された光に影響を及ぼし、本明細書に示される構成では鏡45である光学構成要素44との間の光ビームの中心線29を示す。しかしながら、光の方向が潜在的に逸脱する代替の構成では、光学構成要素はまた、例えば、レンズ、フィルタ、又は、プリズムとしても実現することができる。示された構成では、中心線29は、試料平面20に対して約10°の角度βを形成する。鏡45によって反射された光は、垂直下向きに光出口46に向かって進み、その光は、光出口を通って交換可能なスパークユニット10を出て、続いて、発光分光分析装置に進入する。
【0060】
光は、スパーク位置から第1の中空空間41の内側の鏡45へと通る。第1の中空空間41の大部分は、柱体状の管として構成されている。鏡45によって反射された光は、同じく大部分が柱体状の管として構成された第2の中空空間42を通過する。第1の中空空間41の長手方向延長と第2の中空空間42の長手方向延長との間の角度αは、約100°である。角度αはまた、第1の中空空間41の中心線29と第2の中空空間42の中心線29’との間でも測定することができる。
【0061】
光出口46は、第2の中空空間42を下向き方向において閉じる窓47として実現されている。窓47は、更なる光学構成要素として、すなわち、入射光の一部だけが発光分光分析装置を通ることを可能にするフィルタ48として構成され得る。
【0062】
ガス入口55は、第2の中空空間42の下端部の近くに配置されている。ガス出口は、電極26が配置された第3の中空空間43の底部に、又はその近くに配置されている。具体的には空気よりも重い不活性ガスを、例えばアルゴンをガス入口55に導入して、第2の中空空間42を底部から最上部まで徐々に満たすことができる。更なる不活性ガスが導入されると、第1の中空空間41、続いて第3の中空空間43も満たされる。ガスの一部は、アパーチャ24を通って交換可能なスパークユニット10を出得る。ガスの別の一部は、ガス出口56を通って交換可能なスパークユニット10を出得る。典型的には、分析中に、連続したガス流が発生する。スパークの発生中に、高い体積流が発生し得、及び/又はスパーク発生の合間に、低い体積流が発生し得る。したがって、試料からアブレートされた材料は、第1の中空空間41及び第2の中空空間42に進入すること妨げられ、むしろ、ガス出口56を通って出るように下向きに輸送される。
【0063】
電極26は、本質的にペン形状であり、垂直に整列されている。電極は、底部に、電極26と試料との間に電位を印加するための電気接続部2を備えている。電極は、最上部に、試料とともにスパークを発生させるために使用される電極先端部を備えている。電極先端部と試料平面24との、すなわち、同じく電極先端部と試料との間の距離Dは、2.0mmであり得る。電極26は、水平に整列された軸受面50を形成する周肩部51を備えている。電極26は、電極26の外周の又は外周の少なくとも一部の周りに配置され得る位置決め要素52に載置されている。したがって、位置決め要素52は、距離Dを画定する。位置決め要素52は、回転対称であり得る。電極26の下部は、電気絶縁体2によって取り囲まれている。
【0064】
具体的には、交換可能なスパークユニット10は、位置決め要素52を取り外して、別の位置決め要素52と取り換えることができるように構成されている。その場合、距離Dは、位置決め要素52を取り換えることによって調整することができる。このようにして、正確に所望の距離を調整することができるので、交換可能なスパークユニット10を交換した後であっても、測定する前にシステムを較正する必要がない。
【0065】
試料キャリア20は、金属から作製されており、また、試料キャリア20を介して試料に電位を印加するための電気接点を備えている。電気接点は、図2に示されるように、タングステンから作製されたスパークピンとして実現され得る。
【0066】
図2に示される構成では、交換可能なスパークユニット10のハウジング28は、装着ブロックを含む。装着ブロックは、異なる構成要素を直接的又は間接的に保持又は形成し得る。装着ブロックは、結合インターフェース30及び第2の中空空間42を形成し、また、鏡45及び任意選択で電極26を保持する。装着ブロックに加えて、ハウジング28は、試料キャリア20及び第1の中空空間41の少なくとも一部を含む最上部を備えている。最上部は、装着ブロックに固定的に取り付けられ得る別個の構成要素である。Oリングは、不活性ガスが漏れないように第3の中空空間43を密封するために、最上部と装着ブロックとの間の水平面に配置されている。交換可能なスパークユニット10の全体的な高さHは、最上部の高さに影響を及ぼすことによって調整され得る。これは、示されているように最上部に装着ブロックを取り付けた状態で、又は装着ブロックから最上部を分離した状態で行われ得る。
【0067】
交換可能なスパークユニット10を交換する場合は、電極26の電気接続部2を緩めることができる。具体的には、電気電源のケーブルを取り外して、取り換え用のスパークユニットに再度配置することができる。電気接続部2は、簡単な接続解除及び接続のためのプラグ又はソケットとして実現することができる。
【0068】
結合インターフェース30は、交換可能なスパークユニット10の底面によって形成されて、平面を形成する。それに応じて、発光分光分析装置12の結合インターフェース32が形成される。受容空間65は、位置決めピン64を受容して、発光分光分析装置に対して交換可能なスパークユニット10を正しく位置決めすることを容易にするように、交換可能なスパークユニット10に配置されている。
【0069】
図3は、交換可能なスパークユニット10と、発光分光分析装置12と、を備えている、システム15の斜視図を示す。固定手段60、すなわちねじ62によって互いに固定された、交換可能なスパークユニット10の下端部及び発光分光分析装置12の上端部のフランジ様の突起が示されている。同様の固定具が背面に提供されている。
【符号の説明】
【0070】
1 電気絶縁体
2 電気接続部
10 交換可能なスパークユニット
12 発光分光分析装置
13 分光分析装置
15 システム
20 試料キャリア
22 試料平面
24 アパーチャ
26 電極
28 ハウジング
29 中心線
29’ 中心線
D 距離
H 高さ
30 結合インターフェース
32 結合インターフェース
41 第1の中空空間
42 第2の中空空間
43 第3の中空空間
44 光学構成要素
45 鏡
46 光出口
47 窓
48 フィルタ
α 角度
β 角度
50 軸受面
51 肩部
52 位置決め要素
55 ガス入口
56 ガス出口
60 固定手段
62 ねじ
64 位置決めピン
65 受容空間
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光分光分析装置(12)のための交換可能なスパークユニット(10)であって、
分析される試料を位置決めするための試料平面(22)を画定する試料キャリア(20)であって、前記試料キャリア(20)が、アパーチャ(24)を有する、試料キャリア(20)と、
電極(26)であって、光を発するために、前記電極(26)と前記試料平面(22)に位置決めされた試料との間にスパークが発生し得るように、前記アパーチャ(24)の領域における前記試料平面(22)に対してある距離(D)に配置されている、電極(26)と、
前記交換可能なスパークユニット(10)を前記発光分光分析装置(12)と機械的に結合するための結合インターフェース(30)と、を備えており、
前記交換可能なスパークユニット(10)が、発された前記光に影響を及ぼすための光学構成要素(44)を更に備えていることを特徴とする、交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項2】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、前記光学構成要素(44)として鏡(45)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項3】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、発生する前記スパークから前記鏡(45)へと光が通るための第1の中空空間(41)と、前記鏡(45)から前記交換可能なスパークユニット(10)の光出口(46)に向かって光が通るための第2の中空空間(42)と、を含み、前記第1の中空空間(41)の長手方向延長と前記第2の中空空間(42)の長手方向延長との間の角度αが、45°~120°、具体的には90°~110°であることを特徴とする、請求項2に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項4】
前記鏡(45)が、前記試料平面(20)に対して5°~20°の角度βを有する入射光を反射するように構成されていること、及び/又は前記鏡(45)が、前記鏡(45)によって反射された光が本質的に垂直下向きに進むように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項5】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、光が前記交換可能なスパークユニット(10)を通過するための中空空間(41、42)を閉じながら、光が前記発光分光分析装置(12)に向かって通ることを可能にするための窓(47)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項6】
前記窓(47)が、更なる光学構成要素として、具体的には、前記入射光の一部だけが前記発光分光分析装置(12)を通ることを可能にするフィルタ(48)として構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項7】
前記電極(26)が、軸受面(50)を備えていること、及び前記交換可能なスパークユニット(10)が、位置決め要素(52)を備え、前記位置決め要素(52)は、前記電極(26)と前記試料平面(22)との間の前記距離(D)が前記位置決め要素(52)によって決定されるように、前記交換可能なスパークユニット(10)の前記軸受面(50)を位置決めするためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項8】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、前記第2の中空空間(42)に配置されたガス入口(55)を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項9】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、前記電極(26)が通って延在する第3の中空空間(43)に配置されたガス出口(56)を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項10】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、機械的に結合された状態で、前記交換可能なスパークユニット(10)を発光分光分析装置(12)に機械的に固定するための、具体的には1本以上のねじ(62)を含む固定手段(60)を備えていること、及び/又は前記交換可能なスパークユニット(10)が、前記発光分光分析装置(12)に対して前記交換可能なスパークユニット(10)を位置決めするための位置決めピン(64)若しくは位置決めピン(64)を受容するための受容空間(65)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項11】
前記交換可能なスパークユニット(10)が、機械的に結合された状態にあるときに、前記交換可能なスパークユニット(10)と前記分光分析装置(12)との間の画定された角度配向に到達するための配向手段を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項12】
前記試料キャリア(20)が、導電性材料から作製されており、前記試料キャリア(20)を介して、前記試料キャリア(20)に位置決めされた前記試料に電位を印加するための電気接点を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)。
【請求項13】
発光分光分析を使用して試料を分析するためのシステム(15)であって、前記システム(15)が、請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)と、発光分光分析装置(12)、具体的にはCzerny-Turner分光分析装置(13)と、を備えており、前記発光分光分析装置(12)が、前記交換可能なスパークユニット(10)の前記結合インターフェース(30)が機械的に結合することができる結合インターフェース(32)を備えている、システム(15)。
【請求項14】
交換可能なスパークユニット(10)を較正するための方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の交換可能なスパークユニット(10)を提供することと、
前記電極(26)と前記試料平面(22)との間の前記距離(D)を検出し、前記距離(D)が所望の距離から逸脱している場合、前記電極(26)の装着位置を調整することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記方法が、前記交換可能なスパークユニット(10)の高さ(H)を検出し、前記高さ(H)が所望の高さから逸脱している場合、前記交換可能なスパークユニット(10)の前記高さ(H)を調整することを更に含む、請求項14に記載の方法。

【国際調査報告】