(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G01N3/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541827
(86)(22)【出願日】2023-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2023095865
(87)【国際公開番号】W WO2024119726
(87)【国際公開日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】202211548562.0
(32)【優先日】2022-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521017642
【氏名又は名称】山東大学
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.17923, Jingshi Road, Lixia District Jinan, Shandong 250061, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 利平
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲術▼才
(72)【発明者】
【氏名】周 宗青
(72)【発明者】
【氏名】▲チュー▼ 開維
(72)【発明者】
【氏名】孫 子正
(72)【発明者】
【氏名】劉 洪亮
(72)【発明者】
【氏名】王 利戈
(72)【発明者】
【氏名】劉 知輝
(72)【発明者】
【氏名】白 松松
(72)【発明者】
【氏名】▲ジン▼ 高漢
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA13
2G061BA01
2G061CA06
(57)【要約】
本発明は、粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法及びシステムを提供し、掘削流体の3次元パイプラインでの流れを計算流体力学によりシミュレーションし、衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩盤への噴射過程を数値標高モデルによりシミュレーションし、岩層モデル内のパラレルボンド結合の破断に基づいて岩盤の破砕程度の特徴付けを実現し、ジェットパイプ内の応力分布状況に基づいてパイプラインの磨耗範囲を表し、ジェットパイプ内の粒子堆積位置に基づいてジェットパイプ内の目詰まり状況を表し、現在のシミュレーションパラメータの下での、粒子衝撃砕岩プロセスによる岩盤破壊効果を取得し、分析の結果に基づいて、実際の作業条件に適合した粒子衝撃砕岩プロセスの最適化プログラムを決定する。本発明は、パラメータ特徴付けにおける従来の粒子衝撃砕岩シミュレーション方法の欠点を解消し、粒子衝撃砕岩プロセスを最適化し、生産効率を高めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩層の空間的データを取得し、岩層の構造情報を取得し、岩層のモデルを構築するステップと、
目標坑底の岩石試料のマクロ力学的パラメータを取得するステップと、
粒度分布曲線に応じて粒子を構築された岩層モデルに充填し、粒子同士の間がパラレルボンドモデルを介して力とモーメントを伝達するようにし、また、生成された岩層モデルの強度指標が取得された岩石試料と一致するように、マクロ力学的パラメータに基づいてパラメータ校正を行うステップと、
作業現場で使用される砕岩用ジェットパイプを基にして、3次元パイプラインモデルを構築するステップと、
掘削流体の3次元パイプラインでの流れを計算流体力学によりシミュレーションし、衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩盤への噴射過程を数値標高モデルによりシミュレーションするステップと、
岩層モデル内のパラレルボンド結合の破断に基づいて岩盤の破砕程度の特徴付けを実現し、ジェットパイプ内の応力分布状況に基づいてパイプラインの磨耗範囲を表し、ジェットパイプ内の粒子堆積位置に基づいてジェットパイプ内の目詰まり状況を表し、現在のシミュレーションパラメータの下での、粒子衝撃砕岩プロセスによる岩盤破壊効果を取得するステップと、
砕岩パラメータを変更して、シミュレーション過程を複数回行い、種々の砕岩パラメータとシミュレーション結果との間の応答関係を計算し、分析の結果に基づいて、実際の作業条件に適合した粒子衝撃砕岩プロセスの最適化プログラムを決定するステップと、
を含む、ことを特徴とする粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法。
【請求項2】
前記マクロ力学的パラメータは、粒度分布曲線、一軸圧縮強度、引張強度、弾性率、ポアソン比、摩擦角、凝集力及び摩擦係数のうちの複数のパラメータを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法。
【請求項3】
3次元パイプラインモデルを構築する具体的な過程は、現場の掘削作業で使用されるジェットパイプを基にして、同じ寸法比で3次元モデルを構築し、ジェットパイプの入口から出口までの長さを設定するステップと、
管壁ユニットを3次元モデルに充填し、ジェットパイプの入口から出口までの長さに基づいて、適合したジェットパイプの出口から岩盤までの距離を設定するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法。
【請求項4】
掘削流体の3次元パイプラインでの流れを計算流体力学によりシミュレーションし、衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩盤への噴射過程を数値標高モデルによりシミュレーションするステップは、具体的には、
計算流体力学-数値標高モデルがカップリングされるパラメータ及び境界条件を設定するステップと、
構築された3次元パイプラインモデルの空間的寸法に基づいて、掘削流体のパイプラインでの流れをシミュレーションするために、パイプラインの同じ空間的位置で適切な流体計算格子を分割するステップと、
設定された、計算流体力学-数値標高モデルがカップリングされるパラメータに基づいて、体積分率に応じてパイプラインの入口で衝撃粒子を生成し、衝撃粒子の砕岩中の物理過程をシミュレーションするために、粒子のx方向における生成位置を設定し、衝撃粒子と衝撃粒子の間、衝撃粒子とパイプラインの管壁の間、衝撃粒子と岩層の間をいずれも線形接触モデルとするステップと、
流体計算ドメインのタイムステップ、数値標高モデルの計算ドメインのタイムステップを設定し、シミュレーションの合計時間を満たすまで、設定されたステップに応じて計算を行うステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法。
【請求項5】
前記パラメータは、衝撃粒子の粒径、粒子の密度、粒子のポアソン比、粒子の静止摩擦係数、粒子の転がり摩擦係数、粒子の生成速度、粒子の反発係数、粒子の体積分率、及びパイプライン管壁の摩擦係数を含み、
境界条件は、入口を速度境界とし、粒子及び掘削流体の初速度を設定することと、ジェットパイプの出口を圧力境界とし、出口の圧力値を設定することと、含む、ことを特徴とする請求項4に記載の粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法。
【請求項6】
粒子衝撃砕岩のシミュレーション効果を分析する具体的な過程は、パラレルボンド結合の破裂状況を記録し、パラレルボンド結合の破裂状況で岩盤の破砕程度を表すステップと、
カップリング中のパイプライン及びノズルのx方向、y方向、z方向における応力分布状況を取得し、パイプライン内の応力の大きさでパイプラインの磨耗程度を表すステップと、
現在のシミュレーションパラメータの下での岩層破壊効果及び3次元高圧ジェットパイプの磨耗程度を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法。
【請求項7】
砕岩パラメータを変更して、シミュレーション過程を複数回行う具体的な過程は、掘削流体の速度、粒子の体積分率、パイプラインの圧力及び/又は粒子の粒径を変更して、計算流体力学-数値標高モデルのカップリングシミュレーション計算を複数回行い、異なる砕岩パラメータの下での岩盤破砕程度、パイプライン磨耗範囲及び/又はノズル破損範囲のシミュレーション結果を得て、砕岩パラメータとシミュレーション結果の間の応答関係を得るステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法。
【請求項8】
岩層の空間的データを取得し、岩層の構造情報を取得し、岩層のモデルを構築するように構成された岩層モデル構築モジュールと、
目標坑底の岩石試料のマクロ力学的パラメータを取得するように構成されたマクロ力学的パラメータ取得モジュールと、
粒度分布曲線に応じて粒子を構築された岩層モデルに充填し、粒子同士の間がパラレルボンドモデルを介して力とモーメントを伝達するようにし、また、生成された岩層モデルの強度指標が取得された岩石試料と一致するように、マクロ力学的パラメータに基づいてパラメータ校正を行うように構成されたパラメータ校正モジュールと、
作業現場で使用される砕岩用ジェットパイプを基にして、3次元パイプラインモデルを構築するように構成された3次元パイプラインモデル構築モジュールと、
掘削流体の3次元パイプラインでの流れを計算流体力学によりシミュレーションし、衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩盤への噴射過程を数値標高モデルによりシミュレーションするように構成された衝撃シミュレーションモジュールと、
岩層モデル内のパラレルボンド結合の破断に基づいて岩盤の破砕程度の特徴付けを実現し、ジェットパイプ内の応力分布状況に基づいてパイプラインの磨耗範囲を表し、ジェットパイプ内の粒子堆積位置に基づいてジェットパイプ内の目詰まり状況を表し、現在のシミュレーションパラメータの下での、粒子衝撃砕岩プロセスによる岩盤破壊効果を取得するように構成された計算モジュールと、
砕岩パラメータを変更して、シミュレーション過程を複数回行い、種々の砕岩パラメータとシミュレーション結果との間の応答関係を計算し、分析の結果に基づいて、実際の作業条件に適合した粒子衝撃砕岩プロセスの最適化プログラムを決定するように構成されたプログラム決定モジュールと、
を含む、ことを特徴とする粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化システム。
【請求項9】
端末機器のプロセッサにより読み込まれて請求項1から7のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するのに適するコマンドが複数記憶されている、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
各コマンドを実現するためのプロセッサと、プロセッサにより読み込まれて請求項1から7のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するのに適するコマンドを複数記憶するためのコンピュータ可読記憶媒体と、を含む、ことを特徴とする端末機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2022年12月5日に中国特許局に出願された、出願番号が202211548562.0で、発明の名称が「粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法及びシステム」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が引用によって本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高速粒子衝撃砕岩シミュレーションの技術分野に属し、粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
この部分の陳述は、単に本発明に関連する背景技術の情報を提供するものに過ぎず、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0004】
石油、天然ガス等のエネルギーの早期採取過程において、深部の岩盤が比較的硬いため、採取範囲が浅部の岩層に限られており、工業業界の発展に伴い、浅層地表における石油・天然ガス資源では次第に工業的需要を満足できなくなり、深部の岩層における石油資源の開発は既に石油・天然ガス探査分野の重要なタスクになった。しかし、採取の過程において、岩層の硬度及び採取の難易度は、いずれも採取地層が深くなるにつれて増加する。そのため、どのように硬い岩層での砕岩速度を高めるかは、現在早急な検討が必要な難題である。
【0005】
現在、砕岩プロセスは、メカニズムによって水圧砕岩、機械砕岩、及び粒子衝撃砕岩の3つのタイプに分けられ得、そのうち、水圧砕岩とは、20Mpaを超える高圧水噴流により岩石を破砕して砕岩を達成する技術であり、機械砕岩とは、特殊な切削ドリルにより地層中の掘進を達成する技術であり、粒子衝撃砕岩とは、掘削流体をポンピングした後に、粒子を粒子注入システムによって高速液体に注入して高圧ラインを経て坑底のドリルに輸送し、粒子を最終的に掘削流体の速度まで加速してから専用のPIDドリルノズルから噴出して、地層を衝撃して岩石を破砕する目的を達成し、最後に坑口に戻された掘削流体から完全な粒子を分離し、粒子のリサイクルを実現する技術である。粒子衝撃砕岩は、一般に掘削速度が通常の掘削速度の3~4倍であり、且つ掘り屑が発生せず、集中制御を実現しやすく、且つ掘削周期を大幅に短縮し、深部の硬い地層への応用において巨大な潜在力を持っている。
【0006】
コンピュータ技術の進歩及び計算理論の完備化に伴い、数値シミュレーション技術は既に工学課題を研究するための手段の主流の1つとなっている。従来の粒子衝撃砕岩シミュレーションは、有限要素法、有限差分法等に基づくことが多いが、実際の工事では、高速粒子と高速掘削流体は複雑な二相流体系を形成しており、従来の単一のシミュレーション計算方法では、掘削流体と衝撃粒子との相互作用をシミュレーションできず、砕岩プロセスパラメータに対して理論的な指導を行うことが困難である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法及びシステムを提案し、本発明は、衝撃粒子の粒径分布、掘削流体の流速、パイプラインの圧力、粒子の体積分率等のパラメータの特徴付けにおける従来の粒子衝撃砕岩シミュレーション方法の欠点を解消し、粒子衝撃砕岩プロセスを最適化し、生産効率を高めることができる。
【0008】
いくつかの実施例によると、本発明は次の技術的解決手段を使用する。
【0009】
粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法であって、
岩層の空間的データを取得し、岩層の構造情報を取得し、岩層のモデルを構築するステップと、
目標坑底の岩石試料のマクロ力学的パラメータを取得するステップと、
粒度分布曲線に応じて粒子を構築された岩層モデルに充填し、粒子同士の間がパラレルボンドモデルを介して力とモーメントを伝達するようにし、また、生成された岩層モデルの強度指標が取得された岩石試料と一致するように、マクロ力学的パラメータに基づいてパラメータ校正を行うステップと、
作業現場で使用される砕岩用ジェットパイプを基にして、3次元パイプラインモデルを構築するステップと、
掘削流体の3次元パイプラインでの流れを計算流体力学によりシミュレーションし、衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩盤への噴射過程を数値標高モデルによりシミュレーションするステップと、
岩層モデル内のパラレルボンド結合の破断に基づいて岩盤の破砕程度の特徴付けを実現し、ジェットパイプ内の応力分布状況に基づいてパイプラインの磨耗範囲を表し、ジェットパイプ内の粒子堆積位置に基づいてジェットパイプ内の目詰まり状況を表し、現在のシミュレーションパラメータの下での、粒子衝撃砕岩プロセスによる岩盤破壊効果を取得するステップと、
砕岩パラメータを変更して、シミュレーション過程を複数回行い、種々の砕岩パラメータとシミュレーション結果との間の応答関係を計算し、分析の結果に基づいて、実際の作業条件に適合した粒子衝撃砕岩プロセスの最適化プログラムを決定するステップと、を含む。
【0010】
選択的な実施形態として、前記マクロ力学的パラメータは、粒度分布曲線、一軸圧縮強度、引張強度、弾性率、ポアソン比、摩擦角、凝集力及び摩擦係数のうちの複数のパラメータを含む。
【0011】
選択的な実施形態として、3次元パイプラインモデルを構築する具体的な過程は、現場の掘削作業で使用されるジェットパイプを基にして、同じ寸法比で3次元モデルを構築し、ジェットパイプの入口から出口までの長さを設定するステップと、
管壁ユニットを3次元モデルに充填し、ジェットパイプの入口から出口までの長さに基づいて、適合したジェットパイプの出口から岩盤までの距離を設定するステップと、を含む。
【0012】
選択的な実施形態として、掘削流体の3次元パイプラインでの流れを計算流体力学によりシミュレーションし、衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩盤への噴射過程を数値標高モデルによりシミュレーションするステップは、具体的には、
計算流体力学-数値標高モデルがカップリングされるパラメータ及び境界条件を設定するステップと、
構築された3次元パイプラインモデルの空間的寸法に基づいて、掘削流体のパイプラインでの流れをシミュレーションするために、パイプラインの同じ空間的位置で適切な流体計算格子を分割するステップと、
設定された、計算流体力学-数値標高モデルがカップリングされるパラメータに基づいて、体積分率に応じてパイプラインの入口で衝撃粒子を生成し、衝撃粒子の砕岩中の物理過程をシミュレーションするために、粒子のx方向における生成位置を設定し、衝撃粒子と衝撃粒子の間、衝撃粒子とパイプラインの管壁の間、衝撃粒子と岩層の間をいずれも線形接触モデルとするステップと、
流体計算ドメインのタイムステップ、数値標高モデルの計算ドメインのタイムステップを設定し、シミュレーションの合計時間を満たすまで、設定されたステップに応じて計算を行うステップと、を含む。
【0013】
さらに、前記パラメータは、衝撃粒子の粒径、粒子の密度、粒子のポアソン比、粒子の静止摩擦係数、粒子の転がり摩擦係数、粒子の生成速度、粒子の反発係数、粒子の体積分率、及びパイプライン管壁の摩擦係数を含む。
【0014】
境界条件は、入口を速度境界とし、粒子及び掘削流体の初速度を設定することと、ジェットパイプの出口を圧力境界し、出口の圧力値を設定することと、を含む。
【0015】
選択的な実施形態として、粒子衝撃砕岩のシミュレーション効果を分析する具体的な過程は、パラレルボンド結合の破裂状況を記録し、パラレルボンド結合の破裂状況で岩盤の破砕程度を表すステップと、
カップリング中のパイプライン及びノズルのx方向、y方向、z方向における応力分布状況を取得し、パイプライン内の応力の大きさでパイプラインの磨耗程度を表すステップと、
現在のシミュレーションパラメータの下での岩層破壊効果及び3次元高圧ジェットパイプの磨耗程度を取得するステップと、を含む。
【0016】
選択的な実施形態として、砕岩パラメータを変更して、シミュレーション過程を複数回行う具体的な過程は、掘削流体の速度、粒子の体積分率、パイプラインの圧力及び/又は粒子の粒径を変更して、計算流体力学-数値標高モデルのカップリングシミュレーション計算を複数回行い、異なる砕岩パラメータの下での岩盤破砕程度、パイプライン磨耗範囲及び/又はノズル破損範囲のシミュレーション結果を得て、砕岩パラメータとシミュレーション結果の間の応答関係を得るステップを含む。
【0017】
粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化システムであって、
岩層の空間的データを取得し、岩層の構造情報を取得し、岩層のモデルを構築するように構成された岩層モデル構築モジュールと、
目標坑底の岩石試料のマクロ力学的パラメータを取得するように構成されたマクロ力学的パラメータ取得モジュールと、
粒度分布曲線に応じて粒子を構築された岩層モデルに充填し、粒子同士の間がパラレルボンドモデルを介して力とモーメントを伝達するようにし、また、生成された岩層モデルの強度指標が取得された岩石試料と一致するように、マクロ力学的パラメータに基づいてパラメータ校正を行うように構成されたパラメータ校正モジュールと、
作業現場で使用される砕岩用ジェットパイプを基にして、3次元パイプラインモデルを構築するように構成された3次元パイプラインモデル構築モジュールと、
掘削流体の3次元パイプラインでの流れを計算流体力学によりシミュレーションし、衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩盤への噴射過程を数値標高モデルによりシミュレーションするように構成された衝撃シミュレーションモジュールと、
岩層モデル内のパラレルボンド結合の破断に基づいて岩盤の破砕程度の特徴付けを実現し、ジェットパイプ内の応力分布状況に基づいてパイプラインの磨耗範囲を表し、ジェットパイプ内の粒子堆積位置に基づいてジェットパイプ内の目詰まり状況を表し、現在のシミュレーションパラメータの下での、粒子衝撃砕岩プロセスによる岩盤破壊効果を取得するように構成された計算モジュールと、
砕岩パラメータを変更して、シミュレーション過程を複数回行い、種々の砕岩パラメータとシミュレーション結果との間の応答関係を計算し、分析の結果に基づいて、実際の作業条件に適合した粒子衝撃砕岩プロセスの最適化プログラムを決定するように構成されたプログラム決定モジュールと、を含む。
【0018】
コンピュータ可読記憶媒体であって、端末機器のプロセッサにより読み込まれて前記方法のステップを実行するのに適するコマンドが複数記憶されている。
【0019】
端末機器であって、各コマンドを実現するためのプロセッサと、プロセッサにより読み込まれて前記方法のステップを実行するのに適するコマンドを複数記憶するためのコンピュータ可読記憶媒体と、を含む。
【0020】
従来の技術に比べて、本発明の有益な効果は次のとおりである。
【0021】
(1)従来の岩層モデリングでは、岩層における節理、亀裂等の構造情報を正確に取得できないのに対して、本発明では、3次元レーザー走査技術及びデジタル写真測量技術によって作業岩層の空間的データを取得し、岩層の真実の状態を正確に取得し、岩層に対する高精度モデリングを実現することができる。
【0022】
(2)粒子噴流衝撃による砕岩の過程において、高速粒子と高速流体は複雑な二相流を形成しており、従来の粒子衝撃砕岩シミュレーションは、有限要素法、有限差分法等に基づくことが多く、単一のシミュレーション計算方法では掘削流体と衝撃粒子との相互作用をシミュレーションできないのに対して、本発明では、CFD-DEM(計算流体力学-数値標高モデル)カップリング方法に基づいて、CFDにより掘削流体の3次元パイプラインでの流れをシミュレーションし、DEMにより衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩層への噴射過程をシミュレーションし、粒子衝撃砕岩の物理過程を比較的真に反映することができる。
【0023】
(3)パラレルボンド結合の破断状況で岩盤の破砕程度を表し、応力分布状況でパイプライン及びノズルの磨耗範囲を表し、掘削流体の速度、粒子の体積分率、パイプラインの圧力、粒子の粒径等の砕岩パラメータに基づいてCFD-DEMカップリングシミュレーション計算を複数回行うことで、砕岩パラメータと砕岩効果との間の応答関係を得て、砕岩プロセスを最適化し、現場に対して理論的指導を行うことができる。
【0024】
本発明の一部を構成する明細書の図面は、本発明をさらに理解させるためのものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するためのものであり、本発明を不適切に限定する意図がない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の高速粒子衝撃砕岩のCFD-DEMシミュレーション過程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下において、図面と実施例を関連付けて本発明をさらに説明する。
【0027】
以下の詳細な説明は、本発明をさらに説明するための例示的なものであることを指摘すべきである。特に断らない限り、本明細書に用いられる全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0028】
本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明による例示的な実施形態を限定する意図がないことに注意されたい。例えば、文脈に別に明記しない限り、本明細書で使用される単数形態に複数形態をも含む意図があり、なお、本明細書で用語の「含有する」及び/又は「含む」を使用する時に、特徴、ステップ、操作、デバイス、アセンブリ及び/又はそれらの組合せが存在するのを示すことも理解されたい。
【0029】
図1に示すように、1つ又は複数の実施形態では、CFD-DEMカップリングに基づく粒子衝撃砕岩プロセスのシミュレーション最適化方法が開示され、具体的には、次のステップ1~ステップ8を含む。
【0030】
ステップ1では、3次元レーザー走査技術及びデジタル写真測量技術に基づいて作業岩層の高精度モデリングを実現し、具体的には、
3次元レーザー走査装置及びデジタル写真測量装置を作業坑底に搬送し、坑底の岩層作業面に対して3次元走査を行い、岩層の節理、亀裂等の構造情報を取得するステップ1.1と、
取得された作業岩層の空間的データをsolidworksソフトウェアに導入し、岩層の高精度3次元モデルを構築するステップ1.2と、
構築された3次元岩層モデルをDEM離散要素ソフトウェアに導入し、その後、粒子充填を行うステップ1.3と、を含む。
【0031】
ステップ2では、作業坑底の岩石試料を取得し、室内岩石力学試験を行い、作業岩層のマクロ力学的パラメータを取得し、具体的には、
穿孔機により7~9組の岩石試料を取得し、試験室に搬送して室内岩石力学試験を行うステップ2.1と、
取得された岩石試料に対して試験室でふるい分け試験を行い、岩石試料の粒度分布曲線を得て、また、岩石試料を標準試料にして、一軸圧縮試験、ブラジル分割試験、三軸圧縮試験を行い、岩石試料のポアソン比ε、一軸圧縮強度UCS、弾性率E、引張強度ten、摩擦角φ、凝集力θ、摩擦係数υ等のマクロ力学的パラメータを取得するステップ2.2と、を含む
【0032】
ステップ3では、DEMソフトウェアにおいて粒子を岩石の3次元モデルに充填し、DEM離散要素パラメータ校正を行い、具体的には、
ステップ2で得られた岩石試料の粒度分布曲線に応じて、粒子を岩石の3次元モデルに充填し、粒子同士の間がパラレルボンドモデルを介して力とモーメントを伝達するようにし、また、生成された岩石モデルの強度指標が取得された岩石試料と一致するように、マクロ力学的・物理力学的パラメータに基づいてDEMパラメータ校正を行うステップ3.1と、
ステップ2で得られたポアソン比ε、一軸圧縮強度UCS、ヤング率E、引張強度ten、摩擦角φ、凝集力θ、摩擦係数υ等のマクロ力学的パラメータに基づいてDEMパラメータ校正を行い、弾性率EP、法線接着強度δp、接線接着強度τp、法線剛性kn、接線剛性ks、法線剛性と接線剛性比kn/ksを含むパラレルボンドモデルのパラメータを取得し、パラレルボンドモデルに応じて生成されたDEM岩石モデルの強度指標を現場と一致させるステップ3.2と、を含む。
【0033】
ステップ4では、solidworksにおいてジェットパイプの3次元モデルを構築し、モデルをDEMソフトウェアに導入し、また、管壁ユニットをモデルに充填し、具体的には、
現場の掘削作業で使用されるジェットパイプを基にして、同じ寸法比でsolidworksにおいて3次元モデルを構築し、ジェットパイプの入口から出口までの長さをLRとするステップ4.1と、
3次元ジェットパイプモデルをDEMソフトウェアに導入し、また、管壁ユニットをモデルに充填し、ジェットパイプの出口から岩盤までの距離LpをLR/10とするステップ4.2と、を含む。
【0034】
ステップ5では、CFD-DEMカップリングシミュレーションを行い、CFDにより掘削流体の3次元パイプラインでの流れをシミュレーションし、DEMにより衝撃粒子の掘削流体での流れ及び岩盤への噴射過程をシミュレーションし、具体的には、次のステップ5.1、ステップ5.2、ステップ5.3、及びステップ5.4を含む。
【0035】
ステップ5.1:CFD-DEMカップリングのパラメータ及び境界条件を設定し、初期値は、衝撃粒子の粒径d、粒子の密度ρp、粒子のポアソン比γp、粒子の静止摩擦係数μr、粒子の転がり摩擦係数μs、粒子の生成速度vs、粒子の反発係数μj、粒子の体積分率ωp、パイプライン管壁の摩擦係数μtを含み、境界条件の設定過程は、入口を速度境界とし、粒子と掘削流体の初速度をいずれもv1と設定し、ジェットパイプの出口を圧力境界とし、出口の圧力をP1とするとおりである。
【0036】
ステップ5.2:流体ドメインの生成
構築された3次元パイプラインモデルの空間的寸法に基づいて、掘削流体のパイプラインでの流れをシミュレーションするために、パイプラインの同じ空間的位置で適切な流体計算格子を分割する。
【0037】
ステップ5.3:衝撃粒子の生成
DEMソフトウェアにおいて、ステップ5.1で設定された、粒子の直径d、粒子の密度ρp、粒子のポアソン比γp、粒子の静止摩擦係数μr、粒子の転がり摩擦係数μs、粒子の反発係数μj、粒子の生成速度vs、粒子の体積分率ωp等を含む粒子のパラメータに基づいて、体積分率に応じてパイプラインの入口で衝撃粒子を生成し、衝撃粒子の砕岩中の物理過程をシミュレーションするために、粒子のx方向における生成位置を0<x<10dとし、衝撃粒子と衝撃粒子の間、衝撃粒子とパイプラインの管壁の間、衝撃粒子と岩層の間をいずれも線形接触モデルとする。
【0038】
ステップ5.4:CFD-DEMカップリング計算
流体計算ドメインのタイムステップをΔt1とし、DEM計算ドメインのタイムステップをΔt2とし、且つDEMタイムステップΔt2<Δt1であり、シミュレーション合計時間をTとし、CFD-DEMシミュレーション計算を行い、t>Tとなる場合、計算を停止する。
【0039】
ステップ6では、粒子衝撃砕岩のシミュレーション効果を分析し、具体的には、
DEMソフトウェアにおいて、DEMソフトウェアに搭載されている言語を用いてパラレルボンド結合の破裂状況を記録し、パラレルボンド結合の破裂状況で岩盤の破砕程度を表すステップ6.1と、
DEMソフトウェアにおいて、後処理機能を用いて、CFD-DEMカップリング中のパイプライン及びノズルのx方向、y方向、z方向における応力分布状況を取得し、パイプライン内の応力の大きさでパイプラインの磨耗程度を表すステップ6.2と、
後処理ソフトウェアにより現在のシミュレーションパラメータの下での岩層破壊効果及び3次元高圧ジェットパイプの磨耗程度を取得するステップ6.3と、を含む。
【0040】
ステップ7では、掘削流体の速度、粒子の体積分率、パイプラインの圧力、粒子の粒径等の砕岩パラメータを変更して、CFD-DEMカップリングシミュレーション計算を複数回行い、異なる砕岩パラメータの下での岩盤破砕程度、パイプライン磨耗範囲、ノズル破損範囲等のシミュレーション結果を得て、砕岩パラメータとシミュレーション結果の間の応答関係を得る。
【0041】
ステップ8では、分析の結果に基づいて実際の作業条件に適合した粒子衝撃砕岩プロセスの最適化プログラムを得て、実際の現場に対して指導を行う。
【0042】
本発明の実施例を方法、システム又はコンピュータプログラム製品として提供可能であることは当業者に自明である。従って、本発明は、完全ハードウェア実施例、完全ソフトウェア実施例、又はソフトウェアとハードウェアを組み合わせた実施例の形態としてもよい。また、本発明は、コンピュータ利用可能プログラムコードを含む1つ又は複数のコンピュータ利用可能記憶媒体(磁気ディスク記憶装置、CD-ROM、光学記憶装置等を含むが、それらに限定されない)上で実行されるコンピュータプログラム製品の形態としてもよい。
【0043】
本発明は、本発明の実施例による方法、機器(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して説明している。フローチャート及び/又はブロック図におけるそれぞれのフロー及び/又はブロック、並びにフローチャート及び/又はブロック図におけるフロー及び/又はブロックの組合せはコンピュータプログラムコマンドによって実現できることを理解すべきである。これらのコンピュータプログラムコマンドは、機械を製造するために、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、組み込みプロセッサ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサへ提供されてもよく、それにより、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサによって実行されるコマンドは、フローチャートの1つ又は複数のフロー及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能を実現するための手段を創出する。
【0044】
これらのコンピュータプログラムコマンドは、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置を特定の方式で動作させるように指導可能なコンピュータ可読メモリに記憶されてもよく、それによって該コンピュータ可読メモリに記憶されたコマンドは、フローチャートの1つ又は複数のフロー及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能を実現するコマンドデバイスを含む製品を創出する。
【0045】
これらのコンピュータプログラムコマンドはコンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置にロードすることにより、コンピュータ実行処理を生成するように、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置において一連の動作ステップを実行させるようにしてもよく、それにより、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置において実行されるコマンドはフローチャートの1つ又は複数のフロー及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能を実現するためのステップを提供する。
【0046】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、当業者であれば、本発明に対して様々な変更及び変化を行うことができる。本発明の主旨と原理を逸脱せずに行った修正、同等な置換、改良等は、全て本発明の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0047】
以上、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明の特許請求の範囲を限定するのではなく、当業者であれば、本発明の技術的解決手段を基にして、当業者が創造的な労力を要することなくなされた様々な修正及び変化は、依然として本発明の特許請求の範囲に属するものとすることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0048】
1 ジェットパイプモデル
2 高速衝撃粒子
3 DEM岩盤モデル
4 破砕岩盤DEM粒子
【国際調査報告】