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特表2025-500677乾癬を治療するための抗-IL-23抗体及びコルチコステロイドを含む併用療法
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  • 特表-乾癬を治療するための抗-IL-23抗体及びコルチコステロイドを含む併用療法 図1
  • 特表-乾癬を治療するための抗-IL-23抗体及びコルチコステロイドを含む併用療法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】乾癬を治療するための抗-IL-23抗体及びコルチコステロイドを含む併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241226BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/06
A61K31/573
A61P43/00 121
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/70 401
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/08
A61K39/395 U
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541832
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 IB2023050294
(87)【国際公開番号】W WO2023135554
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】63/299,181
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503422000
【氏名又は名称】サン ファーマシューティカル インダストリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUN PHARMACEUTICAL INDUSTRIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ベーグル,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァーク,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,エリーゼ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA72
4C076CC18
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA28
4C084MA32
4C084MA43
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG04
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA43
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、尋常性乾癬の治療に使用するための、コルチコステロイドと組合わせた、抗-IL-23抗体チルドラキズマブの組合わせに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、前記方法が、
12以上のPASIスコア、
乾癬の影響を受ける10%以上の体表面積(BSA)、及び/又は
3以上のPGAスコア、を有する患者を選択するステップと、
0週目、4週目、及び16週目に、皮下注射により、約100ミリグラムの用量で、前記患者に、IL-23阻害剤を投与するステップと、
16週目に、3%超のBSAを有する前記患者に、コルチコステロイドを、1日2回、4週間適用し、その後、前記コルチコステロイドなしで、更に4週間フォローアップを継続するステップと、
BSA、PGA、PGAxBSA、PSAI、及びDLQIの、ベースラインからの変化が記述されるステップとを含み、前記コルチコステロイドを受けている前記患者が、20週目で、BSA1%以下~3%以下を達成し、24週目まで、応答レベルを維持する、方法。
【請求項2】
平均BSA、PGA、及びPGA×BSAの、ベースラインからの前記減少率が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、前記応答が、コルチコステロイド療法が4週間停止した後の、24週目で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PSAI(75、90、及び100)の、ベースラインからの前記減少率が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、前記応答が、コルチコステロイド療法が4週間停止した後の、24週目で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
DLQIの、ベースラインからの前記減少が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、前記応答が、コルチコステロイド療法が4週間停止した後の、24週目で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コルチコステロイドが、局所用調製物として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記局所用調製物が、軟膏、粉末、ゲル軟膏、エモリエント、クリーム、接着パッチ若しくはストリップ、シャンプー、スプレー、発泡体、ゲル、液体、又は溶液の形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コルチコステロイドが、軟膏として投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
コルチコステロイドが、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸ベータメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾンブチレート、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸クロコルトロン、ピバル酸クロコルトロン、コルチコステロン、コルチゾン、エソキシメタゾン酢酸フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン酢酸塩、ヒドロコルチゾンブチレート、ヒドロコルチゾンプロブテート、ヒドロコルチゾンホスフェート、ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、又はプレドニゾンから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記IL-23阻害剤が、グセルクマブ、リサンキズマブ、又はチルドラキズマブから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記IL-23拮抗薬が、チルドラキズマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
IL-23拮抗薬での治療を継続することを含む、前記IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を開始するステップと、前記コルチコステロイドを含有する前記局所用調製物を用いた治療を、4週間以下継続するステップと、その後、前記局所用調製物を用いた治療を中止するステップとを含み、BSA3%以下を達成した前記患者の割合が、IL-23拮抗薬単独に対して十分な応答を達成しなかった者に追加のコルチコステロイドを適用した、わずか4週間後に増加し、前記改善が、コルチコステロイド治療が停止した後4週間維持される、方法。
【請求項12】
平均BSA、PGA、及びPGA×BSAの、ベースラインからの減少率が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、PSAI(75、 90、及び100)の、ベースラインからの減少率が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、DLQIの、ベースラインからの減少が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、前記応答が、コルチコステロイド療法が4週間停止した後の、24週目で維持される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、少なくとも約16週間、前記IL-23拮抗薬を用いた前記治療を継続する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記IL-23拮抗薬が、グセルクマブ、リサンキズマブ、又はチルドラキズマブである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記IL-23拮抗薬が、チルドラキズマブである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記コルチコステロイドが、局所用調製物として投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記局所用調製物が、軟膏、粉末、ゲル軟膏、エモリエント、クリーム、接着パッチ若しくはストリップ、シャンプー、スプレー、発泡体、ゲル、液体、又は溶液の形態である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コルチコステロイドが、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸ベータメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾンブチレート、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸クロコルトロン、ピバル酸クロコルトロン、コルチコステロン、コルチゾン、エソキシメタゾン酢酸フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン酢酸塩、ヒドロコルチゾンブチレート、ヒドロコルチゾンプロブテート、ヒドロコルチゾンホスフェート、ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、又はハルシノニドから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記コルチコステロイドが、ハルシノニド軟膏である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2022年1月13日に出願された米国仮特許出願第63/299,181号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、IL-23拮抗薬及びコルチコステロイドを含む併用療法を提供する。本発明の併用療法は、尋常性乾癬の、治療、予防、又は緩和に有用である。IL-23阻害剤療法へのコルチコステロイドの添加は、IL-23阻害剤の抗乾癬治療効果を増強する。
【背景技術】
【0003】
乾癬は、米国の成人の約3%に見られる、慢性炎症性皮膚疾患である (JAMA Dermatol. 2021; 157(8):940-946)。これは、活性化T細胞の皮膚への浸潤、並びに角化細胞の異常な増殖及び分化から生じる、顕著な炎症及び上皮厚の増加を特徴とする。中程度から重度の乾癬は、代謝症候群、心血管疾患及び脳血管疾患、うつ病、並びに不安を含む、多くの併存疾患と関連している(Acad Dermatol. 2017; 76(3):377-390)。患者はまた、精神的な健康状態を発症し得、生活の質が低下し得る(Patient Relat Outcome Meas. 2015; 6167-177)。
【0004】
治療選択肢としては、限定された乾癬に対する局所療法、並びに広範な乾癬に対する光線療法、全身薬剤、及び生物薬剤が挙げられる(J Am Acad Dermatol. 2008; 58(5):826-850)。尋常性乾癬については、米国乾癬財団(National Psoriasis Foundation)は、3カ月間の治療後の、罹患体表面積(BSA)が3%以下である許容可能な治療応答、及びBSAの標的応答が1%以下であることを示唆している(J Am Acad Dermatol. 2017; 76(2):290-298)。
【0005】
TNF-aを阻害する薬剤は、生物製剤である、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、及びエタネルセプト(ENBREL(登録商標))を含み、乾癬の治療用に承認されている。インフリキシマブ(Inflixmab)、及びアダリムマブは、各々、ヒトTNF-aに結合する、キメラ抗体、及び完全ヒト抗体である。エタネルセプトは、抗体のFe部分に融合されたヒトp75 TNF受容体の細胞外領域からなる、融合タンパク質であり、これは、現在、中程度から重度の尋常性乾癬の全身治療として使用されている。
【0006】
生物製剤の中でも、チルドラキズマブは、インターロイキン-23(IL-23)に選択的に結合し、その受容体相互作用を阻害する、ヒト化IgG1モノクローナル抗体である。無作為化、対照試験では、チルドラキズマブ単独療法が、乾癬治療についてプラセボと比較して有効であり、慢性の中程度から重度の尋常性乾癬を有する患者において、忍容性良好であることが示された。しかしながら、コホート研究では、患者のほぼ半数が、16週目に、チルドラキズマブ単独療法でBSA3%を達成しなかった。
【0007】
驚くべきことに、本発明の発明者らは、局所用ハルシノニド軟膏の4週間の補助的使用が、これらの患者における全ての転帰を効果的に改善し、平均BSA、PGA、及びBSA×PGAの減少、並びに16週目から20週目までにBSA3%以下を有する全ての患者の割合の増加に反映されたことを見出した。更に、強化された応答は、追加のハルシノニド軟膏が4週間停止された後、24週目まで維持される。更に、発明者らは、チルドラキズマブ用量を増加させる必要なく、又は新しい生物学的薬剤に切替える必要なく、チルドラキズマブに対する患者の応答を、ハルシノニド軟膏の追加により増強することができることを見出した。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、IL-23拮抗薬、及びコルチコステロイドを含む、併用療法を提供する。本発明の併用療法は、尋常性乾癬の、治療、予防、又は緩和に有用である。IL-23阻害剤療法へのコルチコステロイドの追加は、IL-23阻害剤の抗乾癬治療効果を増強する。
【0009】
したがって、本発明は、以下の実施形態の1つ以上を提供する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、方法が、
12以上のPASIスコア、
乾癬の影響を受ける10%以上の体表面積(BSA)、及び/又は
3以上のPGAスコア、を有する患者を選択するステップと、
0週目、4週目、及び16週目に、皮下注射により、約100ミリグラムの用量で、前記患者に、IL-23阻害剤を投与するステップと、
16週目に、3%超のBSAを有する患者にコルチコステロイドを、1日2回、4週間適用し、その後、コルチコステロイドなしで、更に4週間フォローアップを継続するステップと、
BSA、PGA、PGAxBSA、PSAI、及びDLQIの、ベースラインからの変化が記述されるステップとを含み、コルチコステロイドを受けている患者が、20週目で、BSA1%以下~3%以下を達成し、24週目まで、応答レベルを維持する、方法を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、平均BSA、PGA、及びPGA×BSAの、ベースラインからの減少率が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、応答が、コルチコステロイド療法が4週間停止した後の、24週目で維持される、方法を提供する。
【0012】
更に別の実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、PSAI(75、90及び100)の、ベースラインからの減少率が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、応答が、コルチコステロイド療法が4週間停止した後の、24週目で維持される、方法を提供する。
【0013】
なおも更に別の実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、DLQIの、ベースラインからの減少が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、応答が、コルチコステロイド療法が4週間停止した後の、24週目で維持される、方法を提供する。
【0014】
なおも更に別の実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドが、局所用調製物として投与される、方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、局所用調製物が、軟膏、粉末、ゲル軟膏、エモリエント、クリーム、接着パッチ若しくはストリップ、シャンプー、スプレー、発泡体、ゲル、液体、又は溶液の形態である、方法を提供する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドが、軟膏、好ましくは、0.1%軟膏として投与される、方法を提供する。
【0017】
更に別の実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドが、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸ベータメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾンブチレート、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸クロコルトロン、ピバル酸クロコルトロン、コルチコステロン、コルチゾン、エソキシメタゾン酢酸フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン酢酸塩、ヒドロコルチゾンブチレート、ヒドロコルチゾンプロブテート、ヒドロコルチゾンホスフェート、ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、又はプレドニゾンから選択される、方法を提供する。一実施形態では、コルチコステロイドは、ハルシノニドである。別の実施形態では、コルチコステロイドは、プレドニゾンである。
【0018】
なおも更に別の実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、IL-23阻害剤が、グセルクマブ、リサンキズマブ、又はチルドラキズマブから選択される、方法を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、IL-23拮抗薬が、チルドラキズマブである、方法を提供する。
【0020】
更に別の実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬での治療を継続することを含む、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を開始するステップと、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を、4週間以下継続するステップと、その後、局所用調製物を用いた治療を中止するステップとを含み、BSA3%以下を達成した患者の割合が、IL-23拮抗薬単独に対して十分な応答を達成しなかった者に追加のコルチコステロイドを適用した、わずか4週間後に増加し、前記改善が、コルチコステロイド治療が停止した後4週間維持される、方法を提供する。
【0021】
更に別の実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、平均BSA、PGA、及びPGA×BSAの、ベースラインからの減少率が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、PSAI(75、 90、及び100)の、ベースラインからの減少率が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、DLQIの、ベースラインからの減少が、4週間の補助的コルチコステロイド療法後、20週目で有意に増加し、前記応答(全ての転帰)が、コルチコステロイド療法(corticostreoid)が4週間停止した後の、24週目で維持される、方法を提供する。
【0022】
更に別の実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって 、患者が、少なくとも約16週間、IL-23拮抗薬による治療を継続する、方法を提供する。
【0023】
更に別の実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、IL-23拮抗薬が、グセルクマブ、リサンキズマブ、又はチルドラキズマブである、方法を提供する。
【0024】
更に別の実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、IL-23拮抗薬が、チルドラキズマブである、方法を提供する。
【0025】
なおも更に別の実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドが、局所用調製物として投与される、方法を提供する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、局所用調製物が、軟膏、粉末、ゲル軟膏、エモリエント、クリーム、接着パッチ若しくはストリップ、シャンプー、スプレー、発泡体、ゲル、液体、又は溶液の形態である、方法を提供する。
【0027】
更に別の実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドが、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸ベータメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾンブチレート、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸クロコルトロン、ピバル酸クロコルトロン、コルチコステロン、コルチゾン、エソキシメタゾン酢酸フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン酢酸塩、ヒドロコルチゾンブチレート、ヒドロコルチゾンプロブテート、ヒドロコルチゾンホスフェート、ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム、酢酸メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、又はハルシノニドから選択され、好ましくは、ハルシノジン(halcinodine)である、方法を提供する。
【0028】
なおも更に別の実施形態では、本発明は、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドが、ハルシノニド軟膏、好ましくは、0.1%軟膏である、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】全ての患者の中で(A)、並びに16週目にハルシノニドを受けた、3%超のBSAを有する患者の中で(B)、16週目、20週目、及び24週目に、BSA3%以下、及びBSA1%以下を達成した患者の割合。
図2】全ての患者、16週目にBSA3%以下の患者、及び16週目にBSA3%超の患者についての、異なる時点での、平均BSA関与(nは、各試験訪問に対して、利用可能なデータを有する患者数を示す)。
図3】全ての患者、16週目にBSA3%以下の患者、及び16週目にBSA3%超の患者についての、異なる時点の、平均PGAスコア(nは、各試験訪問に対して、利用可能なデータを有する患者数を示す)。
図4】全ての患者、16週目にBSA3%以下の患者、及び16週目にBSA3%超の患者についての、異なる時点での、平均PGA×BSA(nは、各試験訪問に対して、利用可能なデータを有する患者数を示す)。
図5】16週目、20週目、及び24週目に、全ての患者の中で、PASI75、PASI90、及びPASI100応答を達成した患者の割合。
図6】生活の質の改善。(A)0、又は1の、DLQIを達成した患者の割合、及び(B)全ての患者、16週目にBSA3%以下の患者、及び16週目にBSA3%超の患者についての、異なる時点での、平均DLQI(nは、各試験訪問に対して、利用可能なデータを有する患者数を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の前述の態様及び実施形態、並びにその他の態様、目的、特徴、利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
発明の詳細な説明
【0031】
コホート研究では、患者のほぼ半数が、16週目では、チルドラキズマブ単独療法で、BSA3%を達成しなかった。したがって、補助療法、又は新しい療法への切替えを伴う、新しい療法の開発に対するニーズがある。本発明では、BSA3%以下、及びPASI75を達成した、全ての患者の割合は、チルドラキズマブ単独に対して十分な応答を達成しない者に適用される、追加のハルシノニド軟膏の、わずか4週間後に増加する。全ての疾患活動転帰、及び患者の生活の質は、チルドラキズマブ単独療法で改善され、更に、ハルシノニド軟膏の追加で改善される。重要なことに、改善は、ハルシノニド軟膏が停止した後4週間維持される。更に、チルドラキズマブ単独、又はハルシノニド軟膏との併用は、忍容性良好であり、SAEは観察されない。
【0032】
したがって、中程度から重度の尋常性乾癬に罹患している患者を治療するための方法であって、方法が、a)12以上のPASIスコア、10%以上の乾癬によって影響される体表面積(BSA)、及び/又は3以上のPGAスコアを有する、患者を選択するステップと、b)0週目、4週目、及び16週目に、皮下注射により、約100ミリグラムの用量で、前記患者に、IL-23拮抗薬、好ましくは、チルドラキズマブを投与するステップと、c)16週目に、BSA3%超を有する患者に、4週間にわたり、ハルシノニドを1日2回適用し、次いで、更に4週間のフォローアップ期間にわたり、ハルシノニドなしで継続し、BSA、PGA、PGAxBSA、PSAI、及びDLQIの、ベースラインからの変化が記述されるステップとを含み、
a. ハルシノニドを受けている患者が、20週目で、BSA1%以下~3%以下を達成し、
b. 平均BSA、PGA、及びPGA×BSAの、ベースラインからの減少率が、4週間の補助的ハルシノニド療法後、20週目で有意に増加し、
c. PSAI(75、90及び100)の、ベースラインからの減少率が、4週間の補助的ハルシノニド療法後、20週目で有意に増加し、
d. DLQIの、ベースラインからの減少が、4週間の補助的ハルシノニド療法後、20週目で有意に増加し、
e. 反応が、ハルシノニド軟膏が4週間停止した後、24週目に維持される、方法が提供される。
【0033】
別の実施形態では、IL-23拮抗薬での治療を継続することを含む、IL-23拮抗薬を受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を開始するステップと、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を、4週間以下継続するステップと、その後、局所用調製物を用いた治療を中止するステップとを含み、BSA3%以下、及びPASI(75、 90、又は100)を達成した患者の割合が、IL-23拮抗薬単独に対して十分な応答を達成しなかった者に追加のコルチコステロイドを適用した、わずか4週間後に増加し、前記改善が、コルチコステロイド治療が停止した後4週間維持される、方法が提供される。
【0034】
次に、本明細書で使用される以下の定義は、別段の明記がない限り、適用される。例えば、「IL-23拮抗薬又は阻害剤」という用語は、炎症を誘発するシグナル伝達経路において役割を果たす、IL-23と呼ばれるサイトカインの一種を標的とする。IL-23阻害剤は、IL-23の作用を遮断し、これは、乾癬症状を引き起こす炎症を制限するのに役立ち得る。IL-23阻害剤は、乾癬が影響する皮膚の量を低減し、また、掻痒、疼痛、及び皮膚の張りなどの症状を軽減するのに役立ち得る。FDAは、成人における、中程度から重度の乾癬の治療のために、3つのIL-23阻害剤を承認した。これらは、グセルクマブ(TREMFYA)、リサンキズマブ-rzaa(SKYRIZI)、及びチルドラキズマブ-asmn(ILUMYA)である。
【0035】
インターロイキン-23遮断薬であるグセルクマブは、ヒト免疫グロブリンG1ラムダ(IgG1λ)モノクローナル抗体である。グセルクマブは、組換えDNA技術を使用して、哺乳類細胞株で産生される。TREMFYA注射液は、滅菌され、防腐剤不含有、透明、無色から淡黄色の溶液であり、小さな半透明粒子を含有し得る。皮下使用のための各単回用量プレフィルドシリンジは、1mL中、100mgのグセルクマブを含有する。TREMFYAは、受動的針ガード送達システムに組立てられた、27G、半インチ固定針を有する、1mLガラスシリンジ中の、単回投与溶液として供給される。標準用量は、治療開始時に、1回の注射、治療の4週目に、1回の注射、及びその後8週間毎に、1回の注射である。各TREMFYAプレフィルドシリンジは、グセルクマブ(100mg)、Lヒスチジン(0.6mg)、L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物(1.5mg)、ポリソルベート80(0.5mg)、スクロース(79mg)、及びpH5.8で注射用水を含有する、1mLの溶液を送達する。
【0036】
別の実施形態では、グセルクマブでの治療を継続することを含む、グセルクマブを受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を開始するステップと、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を、4週間以下継続するステップと、その後、局所用調製物を用いた治療を中止するステップとを含み、BSA3%以下、及びPASI(75、 90、又は100)を達成した患者の割合が、グセルクマブ単独に対して十分な応答を達成しなかった者に追加のコルチコステロイドを適用した、わずか4週間後に増加し、前記改善が、コルチコステロイド治療が停止した後4週間維持される、方法が提供される。
【0037】
インターロイキン-23拮抗薬であるリサンキズマブ-rzaaは、ヒト化免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体である。リサンキズマブ-rzaaは、組換えDNA技術を使用して、哺乳類細胞株で産生される。SKYRIZI(リサンキズマブ-rzaa)注射液は、皮下使用のための、滅菌、防腐剤不含有、無色~わずかに黄色、及び透明~わずかに乳白色の溶液である。各プレフィルドシリンジは、75mgのリサンキズマブ-rzaa、コハク酸二ナトリウム六水和物(0.88mg)、ポリソルベート20(0.17mg)、ソルビトール(34mg)、コハク酸(0.049mg)、及び注射用水USPを含有する、0.83mLを送達する。
【0038】
更に別の実施形態では、リサンキズマブでの治療を継続することを含む、リサンキズマブを受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を開始するステップと、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を、4週間以下継続するステップと、その後、局所用調製物を用いた治療を中止するステップとを含み、BSA3%以下、及びPASI(75、 90、又は100)を達成した患者の割合が、リサンキズマブ単独に対して十分な応答を達成しなかった者に追加のコルチコステロイドを適用した、わずか4週間後に増加し、前記改善が、コルチコステロイド治療が停止した後4週間維持される、方法が提供される。
【0039】
ヒト化IgG1/k抗体であるチルドラキズマブ-asmnは、インターロイキン-23(IL-23)のp19サブユニットに、特異的に結合する。チルドラキズマブ-asmnは、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株で産生され、およそ147キロダルトンの分子量を有する。ILUMYA(チルドラキズマブ-asmn)注射液は、皮下使用のための、滅菌、透明~わずかに乳白色、無色~わずかに黄色の溶液である。ILUMYAは、ガラスバレルと、29ゲージの固定1/2インチの針を備えた、単回投与プレフィルドシリンジで供給される。シリンジには、受動的針ガード、及び針カバーが取付けられている。各1mLの単回投与プレフィルドシリンジは、Lヒスチジン(0.495mg)、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物(1.42mg)、ポリソルベート80(0.5mg)、スクロース(70.0mg)、及びpH5.7~6.3の注射用水USPに製剤化された、100mgのチルドラキズマブ-asmnを含有する。
【0040】
特定の実施形態では、本発明は、チルドラキズマブでの治療を継続することを含む、チルドラキズマブを受けている乾癬患者を治療するための方法であって、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を開始するステップと、コルチコステロイドを含有する局所用調製物を用いた治療を、4週間以下継続ステップと、その後、局所用調製物を用いた治療を中止するステップとを含み、BSA3%以下、及びPASI(75、 90、又は100)を達成した患者の割合が、チルドラキズマブ単独に対して十分な応答を達成しなかった者に追加のコルチコステロイドを適用した、わずか4週間後に増加し、前記改善が、コルチコステロイド治療が停止した後4週間維持される、方法を提供する。
【0041】
「コルチコステロイド」という用語は、副腎皮質によって分泌されるホルモンの群、及びその類似体を指す。「コルチコステロイド」は、グルココルチコイド、アルドステロンなどのミネラルコルチコイド、及び性ステロイドを包含する。グルココルチコイドは、コルチゾールによって典型化されるように、グルココルチコイド受容体に結合し、抗炎症、代謝、及び免疫調節効果を有し、主要な恒常性機能を調節する。例えばコルチゾンなどの、いくつかのコルチコステロイドは、グルココルチコイドとミネラルコルチコイドの両方の効果を有し、他のコルチコステロイドは、主にグルココルチコイドの効果を有する。
【0042】
「コルチコステロイドを含有する局所用調製物」は、軟膏、粉末、ゲル軟膏、エモリエント、クリーム、接着パッチ若しくはストリップ、シャンプー、スプレー、発泡体、ゲル、又は液体の形態であり得る。
【0043】
コルチコスレオイド(corticostreoid)の例としては、限定されるものではないが、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸ベータメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾンブチレート、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸クロコルトロン、ピバル酸クロコルトロン、コルチコステロン、コルチゾン、エソキシメタゾン酢酸フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン酢酸塩、ヒドロコルチゾンブチレート、ヒドロコルチゾンプロブテート、ヒドロコルチゾンホスフェート、ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム、酢酸メチルプレドニゾロン(又はジナトリウムホスフェート、ナトリウムスクシネート、又はアセポネート)、プレドニゾロン、ハルシノニド、又はプレドニゾンなどが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ハルシノニド」という用語は、アセトンを有する21-クロロ-9-フルオロ-11β,16α,17-トリヒドロキシプレグン-4-エン-3,20-ジオン環状16,17-アセタールとして化学的に指定される、HALOGを指す。0.1% HALOG(ハルシノニドクリーム、USP)の各グラムは、セチルアルコール、ジメチコン350、モノステアリン酸グリセリルNF XII、パルミチン酸イソプロピル、ポリソルベート60、プロピレングリコール、精製水、及び二酸化チタンからなる、特別に製剤化されたクリームベース中に、1mgのハルシノニドを含有する。
【0045】
0.1% HALOG溶液(ハルシノニド局所用溶液、USP)の各mLは、1mgのハルシノニド、エデト酸二ナトリウム、ポリエチレングリコール300、及び精製水、抗酸化剤としてブチル化ヒドロキシトルエンを含有する。
【0046】
0.1% HALOG軟膏(ハルシノニド軟膏、USP)の各グラムは、1mgのハルシノニドのPlastibase(登録商標)(Plasticized Hydrocarbon Gel)、鉱油及びポリエチレンゲルベース、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1450、並びにポリエチレングリコール6000ジステアレート、抗酸化剤としてブチル化ヒドロキシトルエンを含有する。
【0047】
本明細書で使用される「約」という用語は、値の最大±15%までの変動によって定義される範囲内にある、任意の値を指す。
【0048】
本発明を、以下の実施例を参照することによって、以下に例示する。しかしながら、当業者であれば、本発明の趣旨、及び範囲から逸脱することなく、これらの実施形態、及び原理の、無数の変形、修正、適用、拡張がなされることが可能であり、論じられた特定の方法、及び結果は、単に本発明の例示であることを理解するであろう。
【0049】
実施例1
【0050】
乾癬患者における、チルドラキズマブ+局所用ハルシノニド軟膏の有効性及び安全性を評価した、前向き、非盲検試験
【0051】
方法
【0052】
試験デザイン及び参加者
【0053】
これは、中程度から重度の尋常性乾癬を治療するための、チルドラキズマブ(ILUMYA(登録商標)[チルドラキズマブ-asmn]と、ハルシノニド軟膏(HALOG(登録商標)軟膏[ハルシノニド軟膏]、USP、0.1%)との組合わせの、有効性及び安全性を評価するための、単一施設、前向き、非盲検試験であった。試験プロトコルは、機関の審査委員会によって承認され、試験は、倫理ガイドラインに従って実施された。書面によるインフォームドコンセントは、治療を開始する前に、全ての患者が取得した。
【0054】
光線療法、及び/又は全身療法の候補である、慢性、中程度から重度のプラーク型乾癬(BSAが、10%以上、医師の全般的評価[PGA]が、3以上、及び乾癬の面積重症度指数[PASI]が、12以上)を有する、成人(18歳以上)を募集した。除外基準には、乾癬の活性非プラーク型、試験中の患者の安全性に影響を与え得る臨床検査異常又は医学的状態、活性又は未治療の潜伏性結核、以前の又は同時の悪性腫瘍、B型肝炎、UVB又はPUVAによる光線療法、経口全身薬、生物製剤、又は局所療法を用いた乾癬の最近の治療、抗生物質又は任意の治験薬の最近の使用、妊娠又は授乳、及び治験薬の賦形剤に対する過敏症が含まれた。ベースライン前の4週間以内に生ワクチンを投与されている患者、又は試験中に生ワクチンを投与する予定がある患者も除外した。
【0055】
治験薬
【0056】
全ての登録患者は、0週目、4週目、及び16週目に、皮下注射により、チルドラキズマブ(100mg)を受けた。16週目にBSA3%超を有する患者は、ハルシノニド軟膏を、1日2回、4週間適用し、次いで、更に4週間のフォローアップ期間にわたって、ハルシノニドなしで継続した。16週目にBSA3%以下を有する患者も、24週目まで、フォローアップした。全ての患者を、4週目、8週目、16週目、20週目、及び24週目で、安全性及び有効性について評価した。
【0057】
試験結果
【0058】
本試験の主要エンドポイントは、16週目で、BSA3%以下を有する患者の割合であった。副次的エンドポイントには、BSA1%以下、皮膚科の生活の質指標(DLQI)が0又は1の患者の割合、並びに20週目、及び24週目で、BSA3%以下の患者の割合に加えて、16週目、20週目、及び24週目で、ベースラインから75%、90%、及び100%(各々、PASI75、PASI90、及びPASI100)の、PASIスコアの減少が含まれた。PGA、複合PGA×BSA尺度、及びDLQIの改善も、副次的エンドポイントとして評価した。安全性アウトカムには、有害事象(AE)、及び重篤な有害事象(SAE)が含まれた。
【0059】
統計解析
【0060】
約25人の参加者のコホートを、本試験への登録のために計画した。BSA、PGA、PGA×BSA、PASI、及びDLQIのベースラインからの変化を、4週目、8週目、16週目、20週目、及び24週目で、記述的に要約した。サンプルサイズを考慮して、正式な統計解析は行われなかった。AE、及びSAEを、頻度及び重症度によって記述的に要約し、治療に対するそれらの因果関係を評価した。
【0061】
結果
【0062】
患者の状態及び人口統計学的特性
【0063】
合計25人の患者が登録され、19人が試験を完了し、1人は治療に対する応答がないため試験を中止し、5人はフォローアップ不能となった。
【0064】
患者の大部分は男性(68%)、及び白人(76%)であり、平均年齢は、52.6歳であった。患者は、平均で18.9年間、乾癬を有した。平均ベースラインBSAは19.1%であり、平均ベースラインスコアは、PGAでは3.5、PASIでは16.7、DLQIでは16.5であった。16週目に、12人の患者が、BSA3%以下を有し、11人は、BSA3%超を有し、4週間、追加のハルシノニド軟膏を受けた。
【0065】
BSA及びPGA応答
【0066】
チルドラキズマブで、BSA3%以下になった全ての患者の割合は、16週目で、52.2%であった。全ての患者(16週目に、3%以下、及び3%超BSAの両方)に対するこの割合は、20週目(16週目に不満足な応答を有する患者において、4週間の追加のハルシノニド軟膏が適用された後)に73.7%に増加し、患者が4週間ハルシノニド軟膏を使用していない後24週目に、84.2%に達した(図1A)。16週目にハルシノニド療法を追加した患者において、4人は、20週目で、BSA3%以下を達成し、24週目まで応答レベルを維持し、1人は、20週目で、BSA3%以下を達成したが、24週目で応答を失い(BSA6%)、1人は、24週目で、BSA3%以下を達成し、その結果、この群の計62.5%は、試験終了時にBSA3%以下を達成した(図1B)。16週目にBSA3%以下(ハルシノニド使用なし)を有し、試験を完了したほとんどの患者は、20週目、及び24週目に、BSA3%以下を維持した。1人の患者のBSAは、20週目に、4%に増加したが、24週目に、3%に再び低下した。BSA1%以下を有する全ての患者の割合も、16週目で21.7%から、20週目で42.1%に増加し、24週目で36.8%であった(図1A)。ハルシノニドを使用した患者において、22.2%は、20週目で、12.5%は、24週目で、BSA1%以下を達成した(図1B)。
【0067】
全ての患者の平均BSA関与は、ベースラインで19.1%から、16週目で5.0%に減少し(74%減少)、20週目で2.6%に、及び24週目で2.7%に減少した(両方で、86%減少)(図2)。全ての患者の平均PGA、及びPGA×BSAも、治療で改善した。16週目にBSAが3%超であった患者において、平均BSA、PGA、及びPGA×BSAの、ベースラインからの減少は、16週目に、各々55%、29%、及び64%であり、4週間の補助的ハルシノニド療法後、20週目に、各々78%、51%、及び88%であり、これらの応答は、ハルシノニド軟膏が4週間停止された後、24週目に維持された。16週目にBSA3%以下を有し、ハルシノニドを使用しなかった患者において、BSA、PGA、及びPGA×BSAの平均スコアは、ベースラインから16週目までに、各々89%、60%、及び95%減少し、応答は、24週目まで維持された(図2~4)。
【0068】
PASI応答
【0069】
チルドラキズマブ単独療法に応答して、16週目で、全患者の60.9%が、PASI75(ベースラインと比較して、PASIスコアの75%以上の減少)を達成し、割合は、20週目、及び24週目で、73.7%に増加した。また、PASI90を達成した全患者の割合も、16週目で17.4%から、24週目で52.6%に増加した。PASI100(完全消失)は、16週目で全ての患者の4.3%、20週目で21.1%で、達成されたが、この割合は、ハルシノニド療法が停止してから4週間後に、5.3%に低下した(図5)。
【0070】
生活の質
【0071】
チルドラキズマブ単独療法の16週間では、DLQIスコア0又は1を報告する全ての患者の割合は、ベースラインで4.0%から、16週目で39.2%に増加し、20週目で、増加し続けた(42.1%)が、24週目で、31.6%に減少した(図6A)。
【0072】
全ての患者の平均DLQIは、ベースラインから16週目まで68%減少し、改善は、24週目まで維持された。BSA3%超を有し、追加のハルシノニド軟膏を使用した患者において、ベースラインからの平均DLQIの減少は、16週目で50%から、20週目で65%に、24週目で61%に増加した。16週目にBSA3%以下を有し、ハルシノニド軟膏を使用しなかった患者において、平均DLQIは、ベースラインから16週目まで84%改善し、20週目、及び24週目に同様のレベルのままであった(図6B)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】