(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】無線信号を反射するためのパッシブリフレクタ
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20241226BHJP
H04B 7/145 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H04B7/145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541834
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2023050657
(87)【国際公開番号】W WO2023135221
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】102022100772.3
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517386309
【氏名又は名称】テヒニシェ ウニヴェルズィテート ドルトムント
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィートフェルド,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ステファン
【テーマコード(参考)】
5J020
5K072
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA07
5J020BA14
5J020BC00
5J020CA05
5J020DA03
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072GG01
5K072GG05
(57)【要約】
【課題】追加電源なしで機能し、街並みに組み込むことができる無線信号を反射する装置を提供する。
【解決手段】本発明のパッシブリフレクタは、無線信号を反射するためのパッシブリフレクタであって、前記パッシブリフレクタは、構造化表面を持つ平板エレメントとして構成され、前記表面は導電性材料を含み、前記表面は複数の反射面を有し、各反射面は、第1の方向から入射した無線信号を前記第1の方向とは異なる第2の方向に反射し、前記無線信号が反射されるそれぞれの前記第2の方向は少なくとも2つの反射面について異なるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を反射するためのパッシブリフレクタであって、
前記パッシブリフレクタは、構造化表面を持つ平板エレメントとして構成され、
前記表面は導電性材料を含み、
前記表面は複数の反射面を有し、各反射面は、第1の方向から入射した無線信号を前記第1の方向とは異なる第2の方向に反射し、前記無線信号が反射されるそれぞれの前記第2の方向は少なくとも2つの反射面について異なるように構成される
パッシブリフレクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のパッシブリフレクタであって、
前記導電性材料は導電性コーティングを含む
パッシブリフレクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパッシブリフレクタであって、
前記パッシブリフレクタは単一ピースに構成されている
パッシブリフレクタ。
【請求項4】
請求項の1乃至3の何れか一項に記載のパッシブリフレクタであって、
前記構造化表面は、複数のセミキャビティモールドのハニカム状配列を含む
パッシブリフレクタ。
【請求項5】
請求項の1乃至4の何れか一項に記載のパッシブリフレクタであって、
前記反射面は、使用時に地面を向く反射側と、使用時に地面から離れる方向を向く非反射側とを有する
パッシブリフレクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のパッシブリフレクタであって、
使用時に前記地面から離れる方向を向く前記非反射側は、光起電力エレメント及び/又は植栽エレメントからなる
パッシブリフレクタ。
【請求項7】
請求項の1乃至6の何れか一項に記載のパッシブリフレクタであって、
前記平板エレメントは、断熱材を含む
パッシブリフレクタ。
【請求項8】
無線ネットワークのカバレッジを拡張するための、請求項1乃至7の何れか一項に記載のパッシブリフレクタの使用。
【請求項9】
無線ネットワークのカバレッジを拡張するための、請求項1乃至7の何れか一項に記載のパッシブリフレクタの使用。
【請求項10】
無線ネットワーク用の請求項1乃至7の何れか一項に記載のパッシブリフレクタの製造方法であって、
追跡可能なアンテナによって送信される無線信号の無線ネットワークカバレッジを、無線信号を供給対象エリアのモデルに基づいて決定し、
前記送信された無線信号を受信することができない、前記供給対象エリアの前記モデル内の少なくとも1つのサブエリアを決定し、
前記供給対象エリアの前記モデルにおけるパッシブリフレクタの位置を決定し、前記追跡可能なアンテナが前記パッシブリフレクタを特に制御することができ、前記パッシブリフレクタが前記追跡可能なアンテナによって送信された前記無線信号を反射することができるように、前記位置が選択され、
前記パッシブリフレクタの表面構造を決定し、前記追跡可能なアンテナによって送信された前記無線信号が決定されたサブエリアに反射されるように、前記表面構造が選択され、
前記決定された表面構造に基づいて前記パッシブリフレクタを作製し、
前記決定された位置に基づいて、前記パッシブリフレクタを前記供給対象エリアに設置する
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線ネットワークにおいて無線信号を反射するためのパッシブリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話ネットワークのような従来の無線ネットワークは、特に、電子的に追跡可能なアンテナを使用しており、このアンテナは、ビームフォーミング技術の助けを借りて、いわゆるフェーズドアレイに基づいて、アンテナの主ビーム方向を、ニーズに基づいた無線カバレッジがモバイルエンドデバイスの位置で提供されるように動的に整列させることができる。無線信号が供給対象エリア内では、高い建物や樹木などのさまざまな干渉要因によって、無線信号が届かない、あるいは無線信号の受信率が低いエリアが生じることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような無線信号の届きにくい地域を確実にカバーするために、通常、無線信号を受信、増幅、再送信するアンテナや中継器を追加する。しかし、この方法には、アンテナや中継器などの追加コンポーネントが独自の電源を必要とするため、アンテナや中継器を配置する際に十分な電源を確保するよう注意しなければならず、ネットワーク計画が複雑になるという欠点がある。また、アンテナや中継器は、その大きさや見た目の問題から、都市景観に溶け込みにくい。つまり、アンテナや中継器の増設は、ネットワーク計画を複雑にするだけでなく、迷惑な存在として認識される。計画中又は既存のアンテナシステムのすぐ近くに住む住民が、放射による健康被害を恐れたり、魅力的な都市景観を損なわないために苦情を申し立てたりすることも珍しくない。
【0004】
現状で知られている装置では、特に簡単な方法で無線ネットワークに統合できる無線ネットワーク拡張用装置を提供することはまだ可能ではない。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の客観的な技術的課題は、無線信号の範囲を拡大するための装置、特に、非直接的な視線接続を介して無線信号を転送するための装置であり、追加の電源なしで機能し、許容可能な方法で街並みに組み込むことができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、請求項1の目的によって解決される。好ましいさらなる実施形態は、従属請求項に見出すことができる。
【0007】
本発明の一実施形態に係るパッシブリフレクタは、
無線信号を反射するためのパッシブリフレクタであって、
前記パッシブリフレクタは、構造化表面を持つ平板エレメントとして構成され、
前記表面は導電性材料を含み、
前記表面は複数の反射面を有し、各反射面は、第1の方向から入射した無線信号を前記第1の方向とは異なる第2の方向に反射し、前記無線信号が反射されるそれぞれの前記第2の方向は少なくとも2つの反射面について異なるように構成される。
【0008】
この場合の「パッシブ」とは、無線信号が能動的に操作されないことを意味する。したがって、リフレクタは、無線信号を能動的に送信することなく機能する。従って、パッシブリフレクタには電源を必要とする部品は含まれていない。パッシブリフレクタは有線通信や電力ネットワークに接続されることなく機能する。
【0009】
この場合、「平板」とは、リフレクタが板状であり、円筒形のロッドアンテナとは対照的に、リフレクタの全体的な形状に対して大きく、少なくともほぼ平板面、又はわずかに湾曲しただけの面から構成されていることを意味する。その結果、設置時の設置深さが非常に低くなる。反射の法則によれば、パッシブリフレクタは、予想される入射角と所望の反射角に関して、ネットワーク計画に基づいてカスタマイズされなければならない。好ましくは、平坦なリフレクタ表面の法線ベクトルは、入射無線信号の角度と反射無線信号の角度のちょうど中間に位置する。
【0010】
ここで「導電性材料」という用語を使用する場合、当該用途に十分な導電性を有する材料を指す。
【0011】
「反射面」という用語は、パッシブリフレクタを形成するために並べられたり、独立してに組み合わされたりする個々のモジュールを指す。特に、使用するモジュールの数Nが多いほど、リフレクタの総体積が1/N2に比例するため、材料の消費量が少なくなる。反射角は、特に反射面の傾斜及び/又は仰角で調整することができる。好ましくは、方位角及び/又は仰角の反射特性は、水平方向及び/又は垂直方向の反射面の傾きを介して調整される。
【0012】
従って、平坦な導電性表面のために無線信号が能動的に操作されることなくリフレクタが無線信号を反射することができ、電源を必要とする部品が不要であることが本発明の本質的な点である。このことは、パッシブリフレクタの設置可能位置を電源に関係なく選択できることを意味する。従って、パッシブリフレクタは、ネットワークの運用を変更することなく、特に容易に無線ネットワークに設置及び統合することができ、材料及びコスト効率に優れた方法で製造することができる。
【0013】
本発明の好ましいさらなる形態によれば、前記導電性材料は導電性コーティングを含む。導電性コーティングにより、金属のような反射特性を得るために導電性コーティングを非導電性材料に施すことによって、任意の非導電性材料からパッシブリフレクタに適した材料を製造することが可能になる。このようにして、例えば安価なプラスチックからリフレクタを製造し、導電性コーティングを施すことができる。好ましくは、リフレクタは、3Dプリンタを使用して個別に製造される非導電性材料から作られた3Dプリントで構成される。好ましくは、非導電性材料は、材料コストを最小限に抑えることができるように、充填密度の低い材料からなる。好ましくは、導電性コーティングは、導電性材料によるスプレー、電気メッキ又は塗装からなる。特に好適な導電性コーティングは、ハウジングのシールド性を向上させるためにも使用されるもので、例えばMG Chemicals 841 Super Shield Nickelや843AR Super Shield Silver Coated Copperなどがある。
【0014】
本発明の好ましいさらなる形態によれば、前記パッシブリフレクタは単一ピースに構成される。本実施例における「単一ピース」とは、パッシブリフレクタが一体で製造されることを意味する。好ましくは、単一ピースの製造は、3Dプリントプロセスによって、又は3D建築物プリントプロセスの一部として実施され、パッシブリフレクタとして使用されるファサード形状は、建築物のファサードプリントに直接組み込まれる。複数のパッシブリフレクタを組み合わせて表面積を増やすこともできる。
【0015】
本発明の好ましいさらなる形態によれば、前記構造化表面は、複数のセミキャビティモールドのハニカム状配列を含む。本態様における「ハニカム状」とは、個々のセミキャビティモールドが、ハニカム(蜂の巣)の態様で互いに隣り合って、好ましくは直接隣り合って数列に配置され、数列が好ましくは互いにオフセットして配置されることを意味する。「セミキャビティモールド」とは、特に、異なる底面積を有し、対称又は非対称の可撓性表面形状を指す。適用エリア及び所望の反射特性に応じて、セミキャビティモールドは、セミキャビティ球、セミキャビティピラミッド、セミキャビティキューブ、又は異なる底面を有する他のセミキャビティ体とすることができる。ベース面は長さ、幅及び/又は半径を異ならせることができるので、セミキャビティモールドの様々な異なる設計オプションを組み合わせることができる。異なるセミキャビティ形状は、不均一に配置することも、均質に分布させることもできる。任意の反射面に入射する平面電磁波を考えた場合、表面が平坦でなければ拡散反射が得られる。特に、リフレクタに埋め込まれた円の断面は、一様に分布した反射ビームを生成する。
【0016】
本発明の好ましいさらなる形態によれば、前記反射面は、使用時に地面を向く反射側と、使用時に地面から離れる方向を向く非反射側とを有する。その結果、表面は、表面から少なくとも部分的に突出する複数の反射面から構成され、パッシブリフレクタが垂直に配置される場合、各々は、上方(すなわち地面から離れる方向)を向く側から構成され、各々は、下方(すなわち地面に向かう方向)を向く側から構成される。そして、地面を向く側は、電気的に追跡可能なアンテナによって無線信号を反射するように特に制御され、地面から離れる方向を向く側は、他の目的のために構成することができる。本発明の好ましいさらなる形態によれば、使用時に前記地面から離れる方向を向く前記非反射側は、光起電力エレメント及び/又は植栽エレメントからなる。このようにして、反射に使用されない面を付加的な機能に使用することができる。特に、無線信号が十分に届かない地域が多く存在する密集した都市部では、パッシブリフレクタの非反射側を都市の垂直庭園や再生可能エネルギーの生成に利用することができる。
【0017】
本発明の好ましいさらなる形態によれば、前記平板エレメントは、断熱材を含む。断熱材料により、パッシブリフレクタがさらなる付加的な機能を担うことができる。従って、パッシブリフレクタは、それが配置される表面の熱損失に対する保護として機能することができる。
【0018】
本発明によれば、無線ネットワークのカバレッジを拡張するための、上記パッシブリフレクタの使用が提供される。パッシブリフレクタは無線ネットワークに組み込まれ、ベースアンテナ又は基地局によって特に制御することができる。無線信号は、無線技術によって十分にカバーされていないエリアに反射され、無線ネットワークがこのエリアに拡張される。
【0019】
さらに、本発明によれば、無線ネットワークのカバレッジを拡張するための、上記パッシブリフレクタの使用が想定される。パッシブリフレクタは、周囲に没入できるようにファサードエレメントとして構成することができる。建物がパッシブリフレクタで覆われている場合、無線ネットワークを拡張することが可能であり、しかも邪魔に感じられない控えめなコンポーネントを使用することができる。パッシブリフレクタは、街並みに目立たないように組み込むことができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、
無線ネットワーク用の上記パッシブリフレクタの製造方法であって、
追跡可能なアンテナによって送信される無線信号の無線ネットワークカバレッジを、無線信号供給対象エリアのモデルに基づいて決定し、
前記送信された無線信号を受信することができない、前記供給対象エリアの前記モデル内の少なくとも1つのサブエリアを決定し、
前記供給対象エリアの前記モデルにおけるパッシブリフレクタの位置を決定し、前記追跡可能なアンテナが前記パッシブリフレクタを特に制御することができ、前記パッシブリフレクタが前記追跡可能なアンテナによって送信された前記無線信号を反射することができるように、前記位置が選択され、
前記パッシブリフレクタの表面構造を決定し、前記追跡可能なアンテナによって送信された前記無線信号が決定されたサブエリアに反射されるように、前記表面構造が選択され、
前記決定された表面構造に基づいて前記パッシブリフレクタを作製し、
前記決定された位置に基づいて、前記パッシブリフレクタを前記供給対象エリアに設置する。
【0021】
従来のネットワーク計画では、無線信号供給対象エリアの3次元モデルを作成する。この3次元モデルには、主に周囲の建物やその外部構造物、樹木などが含まれる。指定されたカバレッジターゲット、ベースアンテナの潜在的な位置、アンテナ特性を考慮し、カバーされるエリアにおける無線ネットワークの伝搬は、ネットワークプランニングアルゴリズムを使用してモデル化される。その結果、パッシブリフレクタなしの無線ネットワークカバレッジのデジタルモデルが得られる。このデジタルモデルに基づいて、パッシブリフレクタの潜在的な位置と最適な表面構造が決定され、無線信号が十分に届かないサブエリアに無線信号を反射させることが可能になる。パッシブリフレクタが無線ネットワークに与える影響は、3次元デジタルモデルでモデル化できる。結果が満足のいくものであれば、パッシブリフレクタは決定された特性に従って製造され、対応する位置に設置される。パッシブリフレクタを製造する際、まず個々のモジュール又は反射面が製造され、タイルの形で対応する位置に個別に設置される。好ましくは、導電性コーティングは、パッシブリフレクタが設置された後に施される。
【0022】
パッシブリフレクタの製造には、特に、例えば3Dプリンティングを用いた、構造化表面を持つ平坦なベースエレメントの製造と、その後の表面のコーティング、塗装、吹き付けが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の好ましい実施形態によるパッシブリフレクタの供給対象エリアを模式的に示す。
【
図2A】本発明の好ましい実施形態によるパッシブリフレクタの斜視図を模式的に示す。
【
図2B】本発明のさらに好ましい実施形態によるパッシブリフレクタの斜視図を模式的に示す。
【
図3】本発明の好ましい実施形態によるパッシブリフレクタの断面図を模式的に示す。
【
図4】本発明の好ましい実施形態によるパッシブリフレクタの製造方法を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、パッシブリフレクタ1の供給対象エリア8を模式的に示す。カバーされるエリア8は、無線信号2を送信する追跡可能なアンテナ7で構成される。建物6Bの影には、移動受信機10によって無線信号2が微弱にしか受信されないか、全く受信されないサブエリア9が形成される。無線信号2を確実に受信できるようにするため、隣接する建物6Aの正面11に2つのパッシブリフレクタ1が配置される。無線信号2は、パッシブリフレクタ1に特に送信され、能動的に操作されることなくサブエリア9に反射される。サブエリア9の外側では、無線信号2はアンテナ7と移動受信機10との間の直接接続12を介して受信される。サブエリア9の内部では、無線信号2は、アンテナ7と携帯端末10との間の接続を介して、パッシブリフレクタ13上での反射を介して携帯端末10によって受信される。パッシブリフレクタ1の位置とパッシブリフレクタ1の表面3は、無線信号2がサブエリア9に反射されるように選択される。パッシブリフレクタ1は、建物6Aのファサード11を被覆するためのファサードエレメントとして使用される。街並みに調和するように構成されているので、街並みに没入して一体化することができる。
【0025】
図2Aと
図2Bはそれぞれ、パッシブリフレクタ1を示す斜視図である。
図2Aのパッシブリフレクタ1は、一連の個々のモジュール、いわゆる反射面4から構成される。反射面は、
図2Aに示すように平面でもよいし、曲面でもよい。入射した無線信号2は反射面4で反射される。反射面4の法線ベクトルは、入射無線信号の角度と反射無線信号の角度のちょうど中間に位置する。方位角と仰角の両方の反射特性は、垂直方向と水平方向の両方の反射面4の傾斜によって調整される。このモジュール方式により、パッシブリフレクタ1の奥行きdをモジュール数Nに応じて小さくすることができ、目立たない設置が可能になる。
【0026】
図2Bのパッシブリフレクタ1は、構造化表面3'を有する。この構造は、複数のセミキャビティモールド5を並べることによって製造される。この具体例では、セミキャビティモールド5は不均一に配置される。つまり、セミキャビティモールド5は異なるベース表面を有する。セミキャビティモールド5は、角型でも丸型でもよく、規則的なパターンで配置されているわけではない。構造化表面3'は、無線信号2が反射される多数の反射面4を有する。無線信号2は、入射方向とは異なる方向に反射される。構造化表面3'は導電性である。この導電性は、パッシブリフレクタ1の材料として導電性材料を選択するか、非導電性材料に導電性コーティングを施すことによって形成される。
【0027】
図3は、
図2と同様のパッシブリフレクタ1のA-A断面線の断面図である。反射面4は、断面図に示される。反射面4は2つの側面を有する。一方の面4Aは反射性であり、反射体1の垂直配置において地面を向いている。他方の面4Bは非反射性で、リフレクタ1の垂直配置において地面から離れた方向を向いている。パッシブリフレクタ1は、無線信号信号2が反射側4Aに当たって反射するように、カバー対象エリア8に配置される。反射に使用されない非反射側4Bは、他の目的に使用される。太陽光発電エレメントや植栽エレメント14を配置することで、反射に使用されないエリアをエネルギー生成に使用したり、都市型庭園を提供したりすることができる。
【0028】
図4は、本発明の好ましい実施形態によるパッシブリフレクタ1の製造方法を示す。第1のステップS1において、追跡可能なアンテナ7によって送信される無線信号2の無線ネットワークカバレッジが決定される。無線ネットワークカバレッジの決定は、カバーされるエリア8のモデルに基づいて行われる。無線伝搬は、次のステップS2において、無線信号2が受信されにくい、又は全く受信されないサブエリア9を決定できるようにモデル化される。
【0029】
ステップS3、S4において、モデル及び決定されたサブエリア9に基づいて、モデルにおけるパッシブリフレクタ1の設置可能位置及びそれに依存する表面構造3'が決定される。
【0030】
ステップS5において、決定された位置と表面構造3'に基づいて、パッシブリフレクタ1が製造され、ステップS6において、実環境に設置される。
【符号の説明】
【0031】
1 パッシブリフレクタ
2 無線信号
3 表面
3' 表面構造
4 反射面
4A 地面を向く反射側
4B 地面から離れる方向を向く非反射側
5 セミキャビティモールド
6A 建物
6B 建物
7 追跡可能なアンテナ
8 供給対象エリア
9 カバー率が不十分なサブエリア
10 移動受信機
11 建物のファサード
12 直接無線信号接続
13 パッシブリフレクタを介した無線信号の接続
14 植栽エレメント
A-A 断面線
d 深さ
S1 無線ネットワークのカバレッジを決定
S2 送信された無線信号を受信できない少なくとも一部の範囲を決定
S3 パッシブリフレクタの位置を決定
S4 パッシブリフレクタの表面構造の決定
S5 パッシブリフレクタの製作
S6 パッシブリフレクタの取り付け
【国際調査報告】