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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】一種の起毛糸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/42 20060101AFI20241226BHJP
   D03D 15/49 20210101ALI20241226BHJP
【FI】
D02G3/42
D03D15/49
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541862
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2022129391
(87)【国際公開番号】W WO2023173762
(87)【国際公開日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】202210255947.1
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518015734
【氏名又は名称】江蘇恒力化繊股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】範 紅衛
(72)【発明者】
【氏名】湯 方明
(72)【発明者】
【氏名】王 山水
(72)【発明者】
【氏名】王 麗麗
(72)【発明者】
【氏名】郁 秀峰
(72)【発明者】
【氏名】魏 存宏
(72)【発明者】
【氏名】張 元華
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲キ▼
(72)【発明者】
【氏名】王 小雨
【テーマコード(参考)】
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L036MA04
4L036MA05
4L036MA09
4L036MA10
4L036MA33
4L036MA35
4L036PA33
4L036PA41
4L036RA15
4L036UA01
4L048AA08
4L048AA13
4L048AA20
4L048AB07
4L048AB11
4L048AB25
4L048CA15
(57)【要約】
30~50本のモノフィラメントを含むマルチフィラメントの定速輸送中に、高圧気流を用いてマルチフィラメントの輸送通路内に短繊維を導入して起毛糸を製造する起毛糸の製造方法を提供する。高圧気流は1~2MPaであり、短繊維の導入方向は、マルチフィラメントの輸送方向に対して85~90°の角度をなす。得られた起毛糸は、マルチフィラメントの最も外側のモノフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さが3.5mmである。該起毛糸を原料の全部または一部は、静電植毛または毛切り工程を含まない汎用の加工工程によって加工される。この方法により、起毛糸を直接的に製造でき、起毛織物の製造工程を簡略化できる。また、得られた起毛糸は毛羽分布が均一で毛羽堅牢度が高く、起毛織物は保温性と通気性に優れる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30~50本のモノフィラメントを含むマルチフィラメントの定速輸送中に、高圧気流を用いてマルチフィラメントの輸送通路内に短繊維を導入して起毛糸を製造する起毛糸の製造方法であって、
前記高圧気流は1~2MPaであり、
前記短繊維の導入方向は、マルチフィラメントの輸送方向に対して85~90°の角度をなすことを特徴とする、
起毛糸の製造方法。
【請求項2】
前記マルチフィラメントは、規格が100~150D/30~50FのDTY(Drawn Textured Yarn)であることを特徴とする請求項1に記載の起毛糸の製造方法。
【請求項3】
前記定速輸送は速度が20~40m/minであることを特徴とする請求項1に記載の起毛糸の製造方法。
【請求項4】
前記短繊維は、導入総量が80~130本/sであり、平均長さが15~25mmであることを特徴とする請求項1に記載の起毛糸の製造方法。
【請求項5】
前記短繊維は、綿糸、レーヨン、ポリエステル繊維または羊毛であることを特徴とする請求項4に記載の起毛糸の製造方法。
【請求項6】
前記マルチフィラメント輸送通路には、前記マルチフィラメント輸送通路の長手方向に沿って、間隔をあけてn組の短繊維導入点が配列され、前記nは4~5であり、各組それぞれ5~8個の短繊維導入点を含み、同一組の短繊維導入点は、前記マルチフィラメントの輸送通路の中心軸のまわりに均一に分布し、隣接する2組の短繊維導入点の距離は25~30mmであることを特徴とする請求項4に記載の起毛糸の製造方法。
【請求項7】
前記導入は連続導入または不連続導入であることを特徴とする請求項1に記載の起毛糸の製造方法。
【請求項8】
主に前記マルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、前記毛羽は、一端が自由端で、他端が相互に挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式で前記マルチフィラメントに結合する短繊維であり、前記マルチフィラメント長手方向に沿う前記毛羽の分布密度は120~390本/mであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって製造された起毛糸。
【請求項9】
前記マルチフィラメントの最も外側のモノフィラメントの表面より露出する前記短繊維の平均長さは、3.5mmであることを特徴とする請求項8に記載の起毛糸。
【請求項10】
請求項8または9に記載の起毛糸の原料の全部または一部が、静電植毛または毛切り工程を含まない汎用の加工工程によって加工され、起毛織物を製造することを特徴とする起毛織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸製品と糸加工技術分野に属し、特に、一種の起毛糸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
起毛生地はふくよかな毛羽に覆われて、ふわふわした手触り、良い滑らかさと弾力性、柔らかな光沢感、さらに優れた保温性があるのが特徴である。一般的な起毛加工方法は静電植毛と毛切りとの二つである。
【0003】
静電植毛は、生地に予め接着剤を塗布した後、高圧電場により静電気を帯電させて毛羽を植え付けることであり、業界の慣行製法としているが、化学処理に関する環境問題と高コストの欠点がある。
【0004】
毛切り加工における織物は二種類の緯糸、すなわち地組織を作る緯糸及びパイルになる緯糸があって、パイル緯糸はカットされると毛羽が形成する。該方法の制織工程は比較的複雑であり、さらに、織物の機械的性質、外観と手触り、毛羽の堅牢度及び毛切りの遂行は地組織の制織品質と直接関係している。
【0005】
それゆえ、起毛糸及びその製造と応用における簡便な技術法案は重要の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の静電植毛と毛切りに関する問題を解決してそれらの限界を突破するために、一種の起毛糸及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題に対して、本発明は以下の解決手段を選択する。
【0008】
30~50本のモノフィラメントを含むマルチフィラメントの定速輸送中に、高圧気流を用いてマルチフィラメントの輸送通路内に短繊維を導入して起毛糸を製造する起毛糸の製造方法であって、高圧気流は1~2MPaであり、短繊維の導入方向は、マルチフィラメントの輸送方向に対して85~90°の角度をなす。
【0009】
本発明においては、マルチフィラメントの定速輸送中に、高圧気流を用いてマルチフィラメントの輸送通路内に短繊維を導入する。マルチフィラメントの輸送通路内のモノフィラメントは気流の作用で互いに絡まって、移動し、絡み合いと移動の過程において、短繊維と結合して起毛糸を形成する。毛羽の形成の鍵は気流の作用にあり、マルチフィラメントの輸送通路内の高圧気流は、モノフィラメントをマルチフィラメントの中で分散させてさらに互いに絡ませる一方で、導入した短繊維をマルチフィラメントの中のモノフィラメントに吹き出し及び絡ませる過程でものフィラメントに点在させ、且つ、短繊維をマルチフィラメントの中心軸を回転させ、短繊維とマルチフィラメントは固く結合して堅牢な毛羽立ちが形成される。したがって、短繊維の導入方向、すなわち気流方向とマルチフィラメントの輸送方向との間の角は所定の条件に設定する必要がある。角度が小さすぎると、短繊維のマルチフィラメントへの挿通が不十分で、それらの結合堅牢度が不足して起毛品質が低下し、角度は大きすぎると、短繊維の運動方向とマルチフィラメントの運動方向が反対で、起毛効果があまり達成できない。本発明においては、短繊維の導入方向とマルチフィラメントの運動方向との角度を85~90°にする。同様に、高圧気流の圧力も一定の条件を満たす必要がある。圧力が小さすぎると、マルチフィラメント中のモノフィラメントと短繊維が受ける気流作用力は弱くて、それらの絡み合いが不十分で、毛羽の堅牢度が不足して起毛品質が低下し、圧力が大きすぎると、エネルギー消費が高くて製造コストが向上する。
【0010】
好ましくは、前記起毛糸の製造方法において、
モノフィラメントが100~150D/30~50FのDTY(Draw Textured Yarn)であり、
定速輸送は速度が20~40m/minであり(マルチフィラメントの輸送速度は、起毛糸の毛羽密度と均一性及び生産量などに関し、20~40m/minにすると起毛品質制御と生産量の両立ができる。)、
短繊維は、導入総量が80~130本/sであり(短繊維導入量は起毛糸の毛羽密度に直接影響して、このように設定されると、小さすぎる導入量が引き起こす毛羽不足と、大きすぎる導入量が引き起こす通路閉塞とを避けられる。)、かつ、短繊維の平均長さが15~25mmであり、
短繊維が綿糸、レーヨン、ポリエステル繊維または羊毛であり、
マルチフィラメント輸送通路には、マルチフィラメント輸送通路の長手方向に沿って、間隔をあけてn組の短繊維導入点が配列され、nは4~5であり、各組それぞれ5~8個の短繊維導入点を含み、同一組の短繊維導入点は、マルチフィラメントの輸送通路の中心軸のまわりに均一に分布し、隣接する2組の短繊維導入点の距離は25~30mmであり、前述の導入総量は全ての導入点の短繊維導入量の和であり、
短繊維の導入は連続導入または不連続導入であり、連続導入時に起毛糸の毛羽が連続分布し、不連続導入時に起毛糸の毛羽が離散分布する。
【0011】
本発明は、前記のいずれか一項に記載の方法によって製造した起毛糸も提供する。該起毛糸は主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、毛羽は一端が自由端で、他端が相互に挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり、マルチフィラメントの長手方向に沿う毛羽の分布密度は120~390本/mである。
【0012】
好ましくは、上記のような起毛糸は画像法により測定され、起毛糸を撮影して処理し、マルチフィラメントの最も外側のモノフィラメントの表面より露出する短繊維の長さを分析し、その平均値を測定し、マルチフィラメントの最も外側のモノフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは、3.5mmである。
【0013】
本発明は、起毛糸の原料の全部または一部が、静電植毛または毛切り工程を含まない汎用の加工工程によって加工され、起毛織物を製造する起毛織物の製造方法も提供する。
【0014】
好ましくは、前記起毛織物の製造方法において、機織技術を採用すると、起毛糸は緯糸しか用いない。表面に毛羽がある起毛糸は経糸とすれば、綜絖と筬の作用のために毛羽が互いに交絡しやすくて、開口不良が生じて織り品質が低下してしまう。そこで、起毛糸は一般的に緯糸とする。
【0015】
本発明は、ジェットノズル、高圧気流噴射装置、短繊維輸送装置及びマルチフィラメント輸送装置を含む起毛糸製造設備も提供する。詳しくは、
ノズルは内筒、外筒及び二つの環状シールリングを含む筒状のものであり、そのうちに、内筒は同軸かつ両端揃えで外筒に嵌められ、さらにそれらの頂部とも底部ともそれぞれ環状シールリングを介して接続され、
外筒には貫通孔Iと貫通孔IIが設けられ、貫通孔Iと貫通孔IIの一端は外筒の外壁と点a及び点bで交差し、他端は外筒の内壁と点d及び点eで交差し、貫通孔Iと貫通孔IIは外筒の高さ方向に沿って下から上に一定の間隔で配列され、
内筒にはn(n=4~5)組の貫通孔が設けられ、いずれかの組の貫通孔IV7の数は5~8個であり、各貫通孔IVの一端は内筒の外壁と点pで交差し、他端は内筒の内壁と点qで交差し、内筒の高さ方向に沿って点pは点qの下方に位置し、第1~n組の貫通孔IVは内筒の高さ方向に沿って下から上に一定の間隔で配列され、各貫通孔IVの中心軸と内筒の中心軸とのする角は85~90であり、
貫通孔Iの入口すなわち点a及び貫通孔IIの入口すなわち点bはいずれも高圧気流を提供する高圧気流噴射装置に接続され、気流の圧力及びジェットノズル寸法の協力によって貫通孔IV内の圧力は1~2MPaになり、
貫通孔Iは短繊維の導入通路であり、貫通孔Iへ短繊維を輸送する短繊維輸送装置は貫通孔Iの側方に位置し、底部が入口、頂部が出口である内筒の中の空洞はマルチフィラメントの輸送通路であり、マルチフィラメントの輸送装置は内筒の中の空洞へマルチフィラメントを輸送するものであり、マルチフィラメントの含むモノフィラメントの本数は30~50であり、貫通孔IIは、外筒、内筒及び二つの環状シールリングの組み合わせる気室へ高圧気流を噴射して室内気流の一定の速度と圧力を維持することに用いる補給通路である。
【0016】
前記貫通孔Iと貫通孔IIに対する設定は、短繊維が気流により短繊維輸送装置を経て一定の方向を持つ速度で気室に導入され、さらに気流により気室に沿って回転し前に進め、そして貫通孔IVを経てマルチフィラメントの輸送通路に入り、なお、マルチフィラメントの輸送通路を経るマルチフィラメントのモノフィラメントは気流により相互に交絡し転移し、そして短繊維と結合して起毛糸になる、ことの遂行を保証できる。
【0017】
また、ジェットノズルにおける貫通孔Iがマルチフィラメントの輸送通路に直接接続しなくて気室に接続する設定の目的は、短繊維の輸送通路とする貫通孔Iがマルチフィラメントの輸送通路に直接接続すると、繊維の不均一分散は生じて毛羽の分布均一性の制御は困難になるため、短繊維はまず気室に入り、そして複数の貫通孔IVにより分散しマルチフィラメントの輸送通路に入ると、毛羽の均一性は向上できる一方で、短繊維は気室内で十分な加速が得られるので、毛羽の堅牢度は向上できることである。
【0018】
好ましくは、前記起毛糸製造設備において、
貫通孔Iの中心軸は、貫通孔IIの中心軸と平行し(それで貫通孔Iと貫通孔IIより導入された気流の方向が一致して、短繊維の気流加速がもっと著しくになる。)、かつ、外筒の中心軸と交わらない(すなわち貫通孔Iの延長線は外筒の中心軸に向いてない、それで短繊維は良い加速が得られる。)、
点a及び点dを通る直線は、点a及び(外筒の中心軸に位置する)点gを通る直線と、5~10°の角をして外筒の中心軸に垂直する同じ平面に位置し、
短繊維が貫通孔IVを塞ぐことを防ぐのに外筒には貫通孔IIIも設けられ、貫通孔IIIの一端は外筒の外壁と点cで交差し、他端は外筒の内壁と点fで交差し、貫通孔Iと貫通孔IIと貫通孔IIIは外筒の高さ方向に沿って下から上に一定の間隔で配列され、
貫通孔IIIの入口すなわち点cは、貫通孔I、貫通孔II、貫通孔IIIへそれぞれ1~2MPa、0.5~0.8MPa、0.2~0.3MPaの気流を提供する高圧気流噴射装置に接続し、
外筒の内径は0.2~0.5L、肉厚は1.2~2L、高さは4~6Lとし(Lは短繊維の平均長さである)、貫通孔I、貫通孔II、貫通孔IIIはすべて円形であり、貫通孔Iの直径は3~5mm、貫通孔IIの直径は3~5mm、貫通孔IIIの直径は1~3mmとし、点d、点e、点fの中心と外筒の底部との距離は、それぞれ6~10mm、46~50mm、86~106mmとし、
内筒の内径は0.2~0.5L、肉厚は1.2~2Lとし、n組の貫通孔IVはすべて円形でありかつそれらの直径はすべて1~2mmであり、隣接する二つの組の貫通孔IVの中心点の距離は20~30mmとし、第1組の貫通孔IVの中心点と内筒の底部との距離は10~15mmとし、貫通孔Iと貫通孔IIと貫通孔III、貫通孔III内の気流圧力、貫通孔I~IIIの直径、および内筒の内径の協力によって貫通孔IV内の気流圧力は1~2MPaになり、
貫通孔IIIは第n組の貫通孔IVに対して同数かつ同軸であり(気室内に導入した短繊維は、第n組の前の各組の貫通孔IVにより、ほとんどマルチフィラメントの輸送通路へ転移してしまうが、こんなにすると、残った短繊維は貫通孔IIIの気流圧力によりもっと順調に貫通孔IVに入って、気室の渋滞が防止できる。)、
同じ組の貫通孔IVは内筒の中心軸の周りに沿って均一に分布し、
貫通孔Iより導入した短繊維の貫通孔IVへの転移を遂行するために、内筒及び外筒の高さ方向に沿って、第1組の貫通孔IVは貫通孔Iの上方に位置し、
短繊維輸送装置は、繊維の運動方向に沿って後、中、前という三つのローラーおよびそれらにそれぞれ対する三つのゴムローラーが構成するものであって、短繊維糸条に5~30倍の総延伸率および5~8g/10mの輸送量を与え、なお、線速度の8~15m/minの前ローラーの出し側から貫通孔Iまでの間に高圧気流噴射装置は設けられ、したがって、短繊維輸送装置の前ローラーの出し側より来た短繊維はすぐに高圧気流噴射装置の気流の作用で貫通孔Iに入り、
マルチフィラメント輸送装置は、内筒の下方に位置するフィードローラーと、内筒の上方に位置するガイドローラーとを含み、さらに、フィードローラーとガイドローラーとの線速度比は1.01~1.05とし(それで、マルチフィラメントが気流に当たる時には、その中のモノフィラメントが互いに絡み合うだけでなく、マルチフィラメント自身も転がったり揺れたりするため、マルチフィラメントと短繊維との交絡堅牢度が向上して良い起毛効果が得られる。)、フィードローラーの線速度は20~40m/minとする(フィードローラーの線速度は短繊維輸送量に関して、起毛糸の毛羽密度に影響を及ぼす。)。
【0019】
本発明の原理は以下のとおりでである。輸送通路によって移動するマルチフィラメントは、気流に当たるためその中のモノフィラメントが互いに絡まり、その時に、貫通孔IVより短繊維も導入される。それから一定の初期速度を持つ短繊維は気流によりマルチフィラメントと共に移動し、そのうちに、短繊維はマルチフィラメントと互いに交絡して、すなわち、短繊維は、マルチフィラメントを巻いたり、一端がマルチフィラメント中のモノフィラメントと互い絡み合い他端がマルチフィラメントの表面に露出したりして、起毛糸が形成する。織物の表面に毛羽を静電気で植え付ける静電植毛加工、織物のパイル緯糸をカットする毛切り加工などの従来技術と違う本発明は、起毛糸を作って、起毛糸を緯糸として、起毛織物を織り上げることである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の利点としては、1.起毛糸がマルチフィラメントと短繊維から直接的に紡ぎ出し、簡単で適用範囲が広い;2.起毛糸が緯糸として織物に毛羽立ち効果を直接的に与え、後処理が必要ない;3.起毛織物の毛羽堅牢度が向上し、加工流れが短くなる;4.従来技術より製造方法が簡単であり、毛切りによる起毛織物より長い毛羽が得られ、静電植毛による起毛織物より良い通気性と環境配慮性ができる(接着剤が使用されて毛羽立ちを固定するため、静電植毛による起毛織物の通気性は少々よくない。)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のマルチフィラメントと短繊維糸条のフィード装置の配置図である。
図2】本発明のジェットノズルの構造を示す模式図である。
図3】本発明の貫通孔Iの断面を示す模式図である。
図4】本発明のある1組の貫通孔IVの断面を示す模式図である。
図5】本発明のジェットノズルの貫通孔IIIの断面を示す模式図である。注)1-マルチフィラメント、2-フィードローラー、3-ガイドローラー、4-ジェットノズル、5-マルチフィラメント輸送通路、6-気室、7-貫通孔IV、8-貫通孔I、9-貫通孔II、10-貫通孔III
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、本発明の内容を読んだこの分野の技術者のいろいろな本発明を改正することを許されても、それは本発明の等価形として、本発明の請求の範囲内にも限定されている。
【0023】
実施例1
起毛糸の製造方法とは、具体的に、30m/minの速度で移動するマルチフィラメントの輸送通路へ高圧気流により短繊維を導入して起毛糸を製造することであり、その中に、マルチフィラメントは100D/30FのDTYとし;高圧気流の圧力は1MPaとし;短繊維の導入方向とマルチフィラメントの輸送方向とのする角は87°であり;短繊維はレーヨンであり、その輸送総量は95本/sとし、その平均長さは18mmとし;4組の導入位は27mmの間隔でマルチフィラメント導糸管の長手方向に沿って設けられ、いずれかの導入位は導糸管の中心軸のまわりに沿って均一分布する7個の導入点で構成される。
得られた起毛糸は主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、毛羽とは一端が自由端で、他端が相互の挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり、毛羽密度は190本/mであり、マルチフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは3.5mmである。
得られた起毛糸を緯糸とし32Sの綿糸を経糸として、機織り工程によって、経糸密度が120本/10cmで緯糸密度が150本/10cmである平織りの起毛織物は製造される。
【0024】
実施例2
起毛糸の製造方法とは、具体的に、25m/minの速度で移動するマルチフィラメントの輸送通路へ高圧気流により短繊維を導入して起毛糸を製造することであり、その中に、マルチフィラメントは100D/30FのDTYとし;高圧気流の圧力は1MPaとし;短繊維の導入方向とマルチフィラメントの輸送方向とのする角は86°であり;短繊維は綿であり、その輸送総量は85本/sとし、その平均長さは18mmとし;4組の導入位は26mmの間隔でマルチフィラメント導糸管の長手方向に沿って設けられ、いずれかの導入位は導糸管の中心軸のまわりに沿って均一分布する6個の導入点で構成される。
得られた起毛糸は主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、毛羽とは一端が自由端で、他端が相互の挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり、毛羽密度は204本/mであり、マルチフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは3.5mmである。
得られた起毛糸を緯糸とし28Sの綿糸を経糸として、機織り工程によって、経糸密度が110本/10cmで緯糸密度が150本/10cmである平織りの起毛織物は製造される。
【0025】
実施例3
起毛糸の製造方法とは、具体的に、30m/minの速度で移動するマルチフィラメントの輸送通路へ高圧気流により短繊維を導入して起毛糸を製造することであり、その中に、マルチフィラメントは100D/30FのDTYとし;高圧気流の圧力は1MPaとし;短繊維の導入方向とマルチフィラメントの輸送方向とのする角は87°であり;短繊維はレーヨンであり、その輸送総量は95本/sとし、その平均長さは18mmとし;4組の導入位は27mmの間隔でマルチフィラメント導糸管の長手方向に沿って設けられ、いずれかの導入位は導糸管の中心軸のまわりに沿って均一分布する7個の導入点で構成される。
得られた起毛糸は主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、毛羽とは一端が自由端で、他端が相互の挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり、毛羽密度は190本/mであり、マルチフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは3.5mmである。
得られた起毛糸を緯糸とし32Sの綿糸を経糸として、機織り工程によって、経糸密度が120本/10cmで緯糸密度が150本/10cmである平織りの起毛織物は製造される。
【0026】
実施例4
起毛糸の製造方法とは、具体的に、35m/minの速度で移動するマルチフィラメントの輸送通路へ高圧気流により短繊維を導入して起毛糸を製造することであり、その中に、マルチフィラメントは100D/30FのDTYとし;高圧気流の圧力は2MPaとし;短繊維の導入方向とマルチフィラメントの輸送方向とのする角は88°であり;短繊維はポリエステルであり、その輸送総量は100本/sとし、その平均長さは20mmとし;5組の導入位は28mmの間隔でマルチフィラメント導糸管の長手方向に沿って設けられ、いずれかの導入位は導糸管の中心軸のまわりに沿って均一分布する8個の導入点で構成される。
得られた起毛糸は主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、毛羽とは一端が自由端で、他端が相互の挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり、毛羽密度は171本/mであり、マルチフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは4mmである。
得られた起毛糸を原料として、よこ編み工程によって、横密度が15個/5cmで縦密度が8個/5cmである平編みの起毛編物が製造される。
【0027】
実施例5
起毛糸の製造方法とは、具体的に、40m/minの速度で移動するマルチフィラメントの輸送通路へ高圧気流により短繊維を導入して起毛糸を製造することであり、その中に、マルチフィラメントは100D/30FのDTYとし;高圧気流の圧力は2MPaとし;短繊維の導入方向とマルチフィラメントの輸送方向とのする角は89°であり;短繊維は羊毛であり、その輸送総量は115本/sとし、その平均長さは25mmとし;5組の導入位は29mmの間隔でマルチフィラメント導糸管の長手方向に沿って設けられ、いずれかの導入位は導糸管の中心軸のまわりに沿って均一分布する7個の導入点で構成される。
得られた起毛糸は主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、毛羽とは一端が自由端で、他端が相互の挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり、毛羽密度は173本/mであり、マルチフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは5mmである。
得られた起毛糸を原料として、よこ編み工程によって、横密度が20個/5cmで縦密度が16個/5cmであるリプ編みの起毛編物が製造される。
【0028】
実施例6
起毛糸の製造方法とは、具体的に、40m/minの速度で移動するマルチフィラメントの輸送通路へ高圧気流により短繊維を導入して起毛糸を製造することであり、その中に、マルチフィラメントは100D/30FのDTYとし;高圧気流の圧力は2MPaとし;短繊維の導入方向とマルチフィラメントの輸送方向とのする角は90°であり;短繊維は羊毛であり、その輸送総量は130本/sとし、その平均長さは25mmとし;6組の導入位は30mmの間隔でマルチフィラメント導糸管の長手方向に沿って設けられ、いずれかの導入位は導糸管の中心軸のまわりに沿って均一分布する6個の導入点で構成される。
得られた起毛糸は主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、毛羽とは一端が自由端で、他端が相互の挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり、毛羽密度は195本/mであり、マルチフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは5mmである。
得られた起毛糸を原料として、たて編み工程によって、横密度が18個/5cmで縦密度が14個/5cmであるたて編みの起毛編物が製造される。
【0029】
実施例7
起毛糸の製造方法とは、ほとんど実施例1と同じであり、異なる点は連続ではなく不連続の方式で短繊維をマルチフィラメントの輸送通路へ輸送することのみであり、そのうちに、実施例1と同じの導入総量の短繊維は1sに1回輸送される。
得られた起毛糸は、長手方向に交互に配列された無毛部分と毛羽立ち部分を含み、その中に、無毛部分が主にマルチフィラメントで構成され、毛羽立ち部分が主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され;毛羽とは一端が自由端で、他端が相互の挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり;長手方向によって、毛羽立ち部分の毛羽密度は240本/mであり、かつ、マルチフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは3mmである。
得られた起毛糸を緯糸とし32Sの綿糸を経糸として、機織り工程によって、経糸密度が120本/10cmで緯糸密度が150本/10cmである平織りの起毛織物は製造される。
【0030】
前記実施例1~7における起毛糸の製造には複数の種類の設備が採用できるが、本発明は例としてただ一種の製造設備を提供する。図1乃至図7を参照すると、本発明の製造設備は、ジェットノズル4、高圧気流噴射装置、短繊維輸送装置及びマルチフィラメント輸送装置を含み;
短繊維輸送装置は、繊維の運動方向に沿って後、中、前という三つのローラーおよびそれらにそれぞれ対する三つのゴムローラーが構成するものであり、前ローラーの線速度が8~15m/minとして短繊維糸条に5~30倍の総延伸率および5~8g/10mの輸送量を与え;
マルチフィラメント輸送装置は、内筒の下方に位置するフィードローラーと2、内筒の上方に位置するガイドローラーと3を含み、さらに、フィードローラー2とガイドローラー3との線速度比は1.01~1.05とし、フィードローラー2の線速度は20~40m/minとし;
ジェットノズル4は内筒、外筒及び二つの環状シールリングを含む筒状のものであり、さらに、内筒は同軸かつ両端揃えで外筒に嵌められ、内筒と外筒は頂部とも底部ともそれぞれ環状シールリングを介して接続されて気室を構成し;
外筒には貫通孔I8、貫通孔II9及び貫通孔III10が設けられ、貫通孔I8と貫通孔II9と貫通孔III10の一端は外筒の外壁とそれぞれ点a、点b、点cで交差し、他端は外筒の内壁とそれぞれ点d、点e、点fで交差し、貫通孔I8、貫通孔II9及び貫通孔III10は外筒の高さ方向に沿って下から上に一定の間隔で配列され;
内筒にはn(n=4~5)組の貫通孔IV7が設けられ、いずれかの組の貫通孔IV7の数は5~8個であり、各貫通孔IV7の一端は内筒の外壁と点pで交差し、他端は内筒の内壁と点qで交差し、内筒の高さ方向に沿って点pは点qの下方に位置し、第1~n組の貫通孔IV7は内筒の高さ方向に沿って下から上に一定の間隔で配列され、各貫通孔IV7の中心軸と内筒の中心軸とのする角は85~90であり;
貫通孔I8は短繊維の導入通路であり、貫通孔I8へ短繊維を輸送する短繊維輸送装置は貫通孔I8の側方に位置し、底部が入口、頂部が出口である内筒の中の空洞はマルチフィラメント輸送通路5であり、マルチフィラメントの輸送装置は内筒の中の空洞へマルチフィラメントを輸送するものであり、マルチフィラメントの含むモノフィラメントの本数は30~50であり;
貫通孔I8の中心軸は貫通孔II9の中心軸と平行しかつ外筒の中心軸と交わらない、点a及び点dを通る直線は、点a及び(外筒の中心軸に位置する)点gを通る直線と、5~10°の角をして外筒の中心軸に垂直する同じ平面に位置し;
貫通孔III10は第n組の貫通孔IV7に対して同数かつ同軸であり、同じ組の貫通孔IV7は内筒の中心軸の周りに沿って均一に分布し、
外筒の内径は2.5~4L、肉厚は1.2~2L、高さは4~6Lとし(Lは短繊維の平均長さである)、貫通孔I8、貫通孔II9、貫通孔III10はすべて円形であって直径がそれぞれ3~5mm、3~5mm、1~3mmとし、点d、点e、点fの中心と外筒の底部との距離は、それぞれ6~10mm、46~50mm、86~106mmとし;
内筒の内径は0.2~0.5L、肉厚は1.2~2Lとし、n組の貫通孔IV7はすべて円形でありかつそれらの直径はすべて1~2mmであり、隣接する二つの組の貫通孔IV7の中心点の距離は20~30mmとし、第1組の貫通孔IVの中心点と内筒の底部との距離は10~15mmとし;
内筒及び外筒の高さ方向に沿って、第1組の貫通孔IV7は貫通孔I8の上方に位置し;
貫通孔I8の入口すなわち点a、貫通孔IIの入口すなわち点b、貫通孔III10の入口すなわち点cは、いずれも高圧気流を提供する高圧気流噴射装置に接続されるので、それぞれ、1~2MPa、0.5~0.8MPa、0.2~0.3MPaの気流を受け、さらに、気流の圧力及びジェットノズル4の寸法の協力によって貫通孔IV7内の圧力は1~2MPaになる。
以下、実施例1を挙げてさらに詳細に前記設備で起毛糸を製造することを説明する。
該設備における工程パラメータ、以下のとおりである。
前ローラーの線速度は15m/minとし、短繊維糸条の総延伸率は10倍で輸送総量は8g/10minであり、フィードローラー2とガイドローラー3との線速度比は1.01とし、フィードローラー2の線速度は20m/minとし;貫通孔IV7とは、組数nが4とし、1組の孔数は5個とし、中心軸が内筒の中心軸により85°の角とし;点a及び点dを通る直線は、点a及び点gを通る直線と、5°の角をして外筒の中心軸に垂直する同じ平面に位置し;
外筒の内径は2.5L、肉厚は2L、高さは6Lとし(Lは短繊維の平均長さの15mmである);貫通孔I8、貫通孔II9、貫通孔III10はすべて円形であって直径がそれぞれ5mm、5mm、3mmとし;点d、点e、点fの中心と外筒の底部との距離は、それぞれ10mm、50mm、106mmとし;
内筒の内径は0.5L、肉厚は2Lとし;n組の貫通孔IV7はすべて直径の2mmの円形であり;隣接する二つの組の貫通孔IV7の中心点の距離は25mmとし、第1組の貫通孔IVの中心点と内筒の底部との距離は12mmとし;貫通孔I8の入口すなわち点a、貫通孔IIの入口すなわち点b、貫通孔III10の入口すなわち点cは、いずれも高圧気流を提供する高圧気流噴射装置に接続されて、それぞれ、2MPa、0.8MPa0.3MPaの気流を受け、さらに、気流の圧力及びジェットノズル4の寸法の協力によって貫通孔IV7内の圧力は1MPaになる。
起毛糸の製造工程は、マルチフィラメント輸送装置でマルチフィラメントを内筒の中の空洞(すなわちマルチフィラメント輸送通路5)へ輸送し、短繊維輸送装置で短繊維を貫通孔I8へ輸送し、さらに、高圧気流噴射装置提供する高圧気流で短繊維をマルチフィラメント輸送通路5に連続導入して起毛糸を得ることである。
その中に、マルチフィラメントは100D/30FのDTYとし、短繊維は綿糸はとしてマルチフィラメント輸送通路5への輸送総量が80本/sである。
得られた起毛糸は主にマルチフィラメントとその表面の毛羽で構成され、毛羽とは一端が自由端で、他端が相互の挿通、巻き付け及び/または絡み合いの方式でマルチフィラメントに結合する短繊維であり、毛羽密度は240本/mであり、マルチフィラメントの表面より露出する短繊維の平均長さは3mmである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】