(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】固定化酵素及び連続生産におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 11/087 20200101AFI20241226BHJP
C12N 9/06 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
C12N11/087 ZNA
C12N9/06 Z
C12N15/53
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541947
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2022076232
(87)【国際公開番号】W WO2023133957
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210033913.8
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519153028
【氏名又は名称】アシムケム ライフ サイエンス (ティエンジン) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LIFE SCIENCE (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,イー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ナー
(72)【発明者】
【氏名】パン,ローン
(72)【発明者】
【氏名】マー,リートン
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,ユイシア
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,イエンイエン
【テーマコード(参考)】
4B033
【Fターム(参考)】
4B033NA23
4B033NB34
4B033NB36
4B033NC03
4B033ND02
4B033NE05
4B033NF02
(57)【要約】
固定化酵素及び連続生産におけるその使用を提供する。固定化酵素は、ポリエチレンイミン修飾固定化酵素であり、アミンデヒドロゲナーゼ及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを含む酵素と、塩化シアヌルで活性化されたアミノ系担体である担体と、を含む。固定化酵素の性能が悪いという従来技術の問題を解決し、固定化酵素の触媒活性及び再利用性を向上させ、酵素固定化の分野に適している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンイミン修飾固定化酵素であり、
アミンデヒドロゲナーゼ及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを含む酵素と、
塩化シアヌルで活性化されたアミノ系担体である担体と、を含む、ことを特徴とする固定化酵素。
【請求項2】
前記アミンデヒドロゲナーゼは、配列番号1の配列で示される如きアミンデヒドロゲナーゼを含み、
好ましくは、前記ギ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号2の配列で示される如きギ酸デヒドロゲナーゼを含み、
好ましくは、前記アミノ系担体は、ECR8409、LX-1000HA又はLX-1000EPHAを含み、
好ましくは、前記ポリエチレンイミンの分子量が、1.8KDa~10KDaである、ことを特徴とする請求項1に記載の固定化酵素。
【請求項3】
アミノ系担体を塩化シアヌルで活性化し、活性化担体を得るステップと、
酵素を前記活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、その後、固定化生成物をポリエチレンイミンで修飾し、前記固定化酵素を得るステップと、を含み、
前記酵素は、アミンデヒドロゲナーゼ及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを含む、ことを特徴とする固定化酵素の製造方法。
【請求項4】
アミノ系担体を前記塩化シアヌルで活性化し、活性化担体を得るステップは、
前記アミノ系担体を有機溶媒に分散させて、担体懸濁液を得るステップと、
前記塩化シアヌルと前記担体懸濁液を反応させることで前記アミノ系担体を活性化し、前記活性化担体を得るステップと、を含み、
好ましくは、前記有機溶媒は、極性有機溶媒であり、
好ましくは、前記極性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのうちのいずれか1種又は複数種を含み、
好ましくは、前記活性化の温度は、0℃~30℃で、より好ましくは0℃~5℃であり、
好ましくは、前記活性化の時間は、2h~5hであり、
好ましくは、前記活性化した後、前記活性化担体を前記有機溶媒で洗浄して、未反応の前記塩化シアヌルを除去し、
好ましくは、前記洗浄の後、前記活性化担体を窒素ガスで吹き乾かすステップをさらに含み、
好ましくは、前記アミノ系担体は、乾燥担体であり、
好ましくは、前記アミノ系担体は、ECR8409、LX-1000HA又はLX-1000EPHAを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記固定化の前に、前記活性化担体を緩衝液で洗浄することで前記有機溶媒を置換するステップをさらに含み、
好ましくは、前記酵素は、前記緩衝液を用いて調合したものであり、
好ましくは、前記緩衝液は、リン酸塩緩衝液、グリシン緩衝液又はホウ砂緩衝液を含み、
好ましくは、前記リン酸塩緩衝液の濃度は、20mM~50mMであり、
好ましくは、前記リン酸塩緩衝液のpHは、6.5~9.0であり、
好ましくは、前記固定化の温度は、0℃~30℃で、より好ましくは4℃~30℃であり、
好ましくは、前記固定化の時間は、2h~5hである、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酵素を前記活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、その後、固定化生成物をポリエチレンイミンで修飾し、前記固定化酵素を得るステップは、
前記酵素を前記活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、予備固定化酵素を得るステップと、
前記予備固定化酵素を前記ポリエチレンイミンで後修飾し、前記固定化酵素を得るステップと、を含み、
好ましくは、前記アミンデヒドロゲナーゼは、配列番号1の配列で示される如きアミンデヒドロゲナーゼを含み、
好ましくは、前記ギ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号2の配列で示される如きギ酸デヒドロゲナーゼを含み、
好ましくは、前記後修飾は、前記予備固定化酵素に前記ポリエチレンイミンの溶液を加えることにより行われ、
好ましくは、前記ポリエチレンイミンの分子量は1.8KDa~10KDaであり、
好ましくは、前記ポリエチレンイミンの溶液のpHは5~8であり、
好ましくは、加えられる前記ポリエチレンイミンの最終濃度は0.5%W/V~3%W/Vであり、
好ましくは、前記後修飾の温度は、0℃~30℃で、より好ましくは10℃~30℃であり、
好ましくは、前記後修飾の時間は、8h~24hである、ことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
連続反応における、請求項1又は2に記載の固定化酵素、又は請求項3~6のいずれか1項に記載の製造方法により製造される前記固定化酵素の使用。
【請求項8】
前記連続反応は、充填層反応器中で前記連続反応を行うことを含み、
好ましくは、前記充填層反応器は、前記固定化酵素を空のクロマトグラフィーカラム又はステンレス鋼製のクロマトグラフィーカラムに充填することにより製造され、
好ましくは、前記充填層反応器の容積は5mL~50mLであり、
好ましくは、前記充填層反応器の充填方法は湿式充填である、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記連続反応は、
基質を含有する反応系を下から上へ前記充填層反応器にポンプで圧送し、反応生成物を前記反応系に再混合することを含み、
前記ポンプは定流量ポンプであり、好ましくは、前記定流量ポンプの圧力が≦20MPaであり、
好ましくは、前記連続反応の流速は0.01mL/min~10mL/minである、ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記固定化酵素は、固定化アミンデヒドロゲナーゼ、又は、アミンデヒドロゲナーゼとギ酸デヒドロゲナーゼとの共固定系を含み、
好ましくは、前記アミンデヒドロゲナーゼは、配列番号1の配列で示される如きアミンデヒドロゲナーゼを含み、
好ましくは、前記ギ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号2の配列で示される如きギ酸デヒドロゲナーゼを含み、
好ましくは、前記反応系は、基質又は基質と前記ギ酸デヒドロゲナーゼとの混合物を含み、
好ましくは、前記固定化酵素は、前記固定化アミンデヒドロゲナーゼであり、前記反応系は、基質と前記ギ酸デヒドロゲナーゼとの混合物を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素固定化の分野に関し、具体的には、固定化酵素及び連続生産におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キラルアミンは、キラル薬物、農薬品、及びファインケミカルの合成のための重要な中間体である。近年、肝心な化合物を製造するための多くの化学合成プロセスを避け、グリーンケミストリーの要件を満たすために、アミンデヒドロゲナーゼ(AmDH)の使用がますます増えている。アミンデヒドロゲナーゼは、ケトン系化合物のキラルアミンへの還元を触媒できる酵素を指す。トランスアミナーゼとは異なり、アミンデヒドロゲナーゼは、アンモニア源として安価なアンモニウム塩を使用し、イソプロピルアミンやアラニンなどの高価なアンモニア供与体に依存していない。通常、還元プロセスでは水素を移動させるために還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が必要となるため、製造コストを削減するためにアミンデヒドロゲナーゼとギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)が組み合わせられることがよくある。化学触媒合成と比較して、アミンデヒドロゲナーゼは、反応条件が穏やかであるだけでなく、より高い触媒活性、選択性、及び基質特異性も備えている。しかし、水溶性遊離酵素は、安定性が悪い、再利用できない、生成物の分離や精製の問題など、製造や応用の際に多くの問題に直面している。
【0003】
酵素固定化の主な任務は、適切な固定化方法を選択して、ある一つ応用の触媒需要(選択性、安定性)と非触媒需要(コスト、分離プロセス)の両方を満たす生体触媒を設計することである。現在、生産応用において多く使用されるのは、共有結合法固定化酵素であり、用いられた市販の担体としてはアミノ系担体とエポキシ系担体を含む。アミノ系樹脂を例にとると、通常、二官能性架橋剤によって活性化させ、架橋剤の末端官能基を介して酵素と結合する必要がある。最も一般的に使用される活性化方法は、アミノをグルタルアルデヒドで活性化し、次に活性アルデヒド基を使用して酵素分子に連結することで固定化を達成することである。グルタルアルデヒドを使用して酵素を固定化した後、アミノ酸又はNaBH4などの小分子化合物で後修飾することにより、固定化酵素の安定性を高めるという報告もある。
【0004】
本発明者らは、アミンデヒドロゲナーゼの固定化に関して研究した結果、従来のグルタルアルデヒドで活性化されたアミノ系担体又はエポキシ系担体では、アミンデヒドロゲナーゼの固定化をとても良く行うことができないことを発見した。得られる固定化酵素は、触媒活性が低く、再利用性が悪いという欠点がある。固定化プロセス中にマンニトールなどの保護剤を追加したり、得られた固定化酵素を小分子で後修飾したりしても、上記の欠点を克服することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、固定化酵素の触媒活性及び再利用性を向上させるために、固定化酵素及び連続生産におけるその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本発明の第1態様によれば、ポリエチレンイミン修飾固定化酵素であり、アミンデヒドロゲナーゼ及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを含む酵素と、塩化シアヌルで活性化されたアミノ系担体である、酵素を固定する担体と、を含む、固定化酵素を提供する。
【0007】
さらに、アミンデヒドロゲナーゼは、配列番号1の配列で示される如きアミンデヒドロゲナーゼを含み、好ましくは、ギ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号2の配列で示される如きギ酸デヒドロゲナーゼを含み、好ましくは、アミノ系担体は、ECR8409、LX-1000HA又はLX-1000EPHAを含み、ポリエチレンイミンは、好ましくは、ポリエチレンイミンの分子量が1.8~10KDaである。
【0008】
上記の目的を達成させるために、本発明の第2態様によれば、アミノ系担体を塩化シアヌルで活性化し、活性化担体を得るステップと、酵素を活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、その後、固定化生成物をポリエチレンイミンで修飾し、固定化酵素を得るステップと、を含み、上記の酵素は、アミンデヒドロゲナーゼ及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを含む、固定化酵素の製造方法を提供する。
【0009】
さらに、アミノ系担体を塩化シアヌルで活性化し、活性化担体を得るステップは、アミノ系担体を有機溶媒に分散させて、担体懸濁液を得るステップと、塩化シアヌルと担体懸濁液を反応させることでアミノ系担体を活性化し、活性化担体を得るステップと、を含み、好ましくは、有機溶媒は、極性有機溶媒であり、好ましくは、極性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのうちのいずれか1種又は複数種を含み、好ましくは、活性化の温度は、0~30℃で、より好ましくは0~5℃であり、好ましくは、活性化の時間は、2~5hであり、好ましくは、活性化した後、活性化担体を有機溶媒で洗浄して、未反応の塩化シアヌルを除去し、好ましくは、洗浄の後、活性化担体上の有機溶媒を窒素ガスで吹き乾かすステップをさらに含み、好ましくは、アミノ系担体は、乾燥担体であり、好ましくは、アミノ系担体は、ECR8409、LX-1000HA又はLX-1000EPHAを含む。
【0010】
さらに、酵素を活性化担体と混合してインキュベートする前に、製造方法は、活性化担体を緩衝液で洗浄することで有機溶媒を置換するステップをさらに含み、好ましくは、酵素は、緩衝液を用いて調合したものであり、好ましくは、緩衝液は、リン酸塩緩衝液、グリシン緩衝液又はホウ砂緩衝液を含み、好ましくは、リン酸塩緩衝液の濃度は、20~50mMであり、好ましくは、リン酸塩緩衝液のpHは、6.5~9.0であり、好ましくは、固定化の温度は、0~30℃で、より好ましくは4~30℃であり、好ましくは、固定化の時間は、2~5hである。
【0011】
さらに、酵素を活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、その後、固定化生成物をポリエチレンイミンで修飾し、固定化酵素を得るステップは、酵素を活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、予備固定化酵素を得るステップと、予備固定化酵素をポリエチレンイミンで後修飾し、固定化酵素を得るステップと、を含み、好ましくは、酵素は、アミンデヒドロゲナーゼ及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを含み、好ましくは、アミンデヒドロゲナーゼは、配列番号1の配列で示される如きアミンデヒドロゲナーゼを含み、好ましくは、ギ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号2の配列で示される如きギ酸デヒドロゲナーゼを含み、好ましくは、後修飾は、予備固定化酵素にポリエチレンイミンの溶液を加えることにより行われ、好ましくは、ポリエチレンイミンは、ポリエチレンイミンを含み、好ましくは、ポリエチレンイミンの分子量は1.8~10KDaであり、好ましくは、ポリエチレンイミンの溶液のpHは5~8であり、好ましくは、加えられるポリエチレンイミンの最終濃度は0.5~3%W/Vであり、好ましくは、後修飾の温度は、0~30℃で、より好ましくは10~30℃であり、好ましくは、後修飾の時間は、8~24hである。
【0012】
上記の目的を達成させるために、本発明の第3態様によれば、連続反応における上記の固定化酵素、又は上記の製造方法により製造される固定化酵素の使用を提供する。
【0013】
さらに、連続反応は、充填層反応器中で連続反応を行うことを含み、好ましくは、充填層反応器は、固定化酵素を空のクロマトグラフィーカラム又はステンレス鋼製のクロマトグラフィーカラムに充填することにより製造され、好ましくは、充填層反応器の容積は5~50mLであり、好ましくは、充填層反応器の充填方法は湿式充填である。
【0014】
さらに、連続反応は、基質を含有する反応系を下から上へ充填層反応器にポンプで圧送し、反応生成物を反応系に再混合することを含み、ポンプは定流量ポンプであり、好ましくは、定流量ポンプの圧力は≦20MPaであり、好ましくは、連続反応の流速は0.01~10mL/minである。
【0015】
さらに、酵素は、主酵素、又は主酵素と補酵素との混合酵素であり、好ましくは、主酵素は、アミンデヒドロゲナーゼから選択され、相応して、補酵素は、ギ酸デヒドロゲナーゼから選択され、好ましくは、固定化酵素は、固定化アミンデヒドロゲナーゼ、又はアミンデヒドロゲナーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼの共固定系を含み、好ましくは、アミンデヒドロゲナーゼは、配列番号1の配列で示される如きアミンデヒドロゲナーゼを含み、好ましくは、ギ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号2の配列で示される如きギ酸デヒドロゲナーゼを含み、好ましくは、反応系は、基質又は基質と補酵素との混合物を含み、好ましくは、固定化酵素は、固定化アミンデヒドロゲナーゼであり、反応系は、基質とギ酸デヒドロゲナーゼとの混合物を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の技術方案によれば、塩化シアヌルで活性化されたアミノ系担体を利用して、触媒活性が高く、操作安定性が良い固定化アミンデヒドロゲナーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼを製造する。この固定化アミンデヒドロゲナーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼは、従来の固定化方法で製造される固定化酵素と比較して、より高い触媒活性及び再利用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の一部を構成する明細書の添付図面は、本発明の更なる理解を提供するために使用され、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するために使用され、本発明の不当な限定を構成するものではない。図面は、下記の通りである。
【
図1】本発明の実施例5による連続反応装置の模式図を示す
【発明を実施するための形態】
【0018】
なお、本願の実施例及び実施例の特徴は、矛盾することなく互いに組み合わされてもよい。以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0019】
背景技術に言及された通り、従来のグルタルアルデヒドで活性化されたアミノ系担体やエポキシ系担体では、アミンデヒドロゲナーゼの固定化をとても良く完成することができなかった。得られた固定化酵素は、触媒活性が低く、再利用性が悪いという欠点がある。同様に、固定化プロセス中にマンニトール等の保護剤を添加したり、得られた固定化酵素を小分子で後修飾しても、上記の欠点を克服することはできない。
【0020】
したがって、本願において、本発明者らは、固定化酵素について深く研究し、グルタルアルデヒド活性化アミノ担体の代替案を多く試みた結果、塩化シアヌルで活性化された代替案のみの効果が優れていることを見出した。すなわち、塩化シアヌル担体活性化剤を用いて活性化されたアミノ系担体を見出し、これを用いて、触媒活性が高く、操作安定性が良い固定化アミンデヒドロゲナーゼを製造した。この固定化アミンデヒドロゲナーゼは、従来の固定化方法で製造された固定化アミンデヒドロゲナーゼと比較して、より高い触媒活性及び再利用性を有する。これまで塩化シアヌル活性化樹脂の利用は報告されているが、酵素の固定化の分野では、前世紀七十年代にのみ、多糖系担体などヒドロキシを持つ担体を塩化シアヌルで活性化して酵素固定化を行うことが少数の文献で報告されているが、アミノ樹脂を塩化シアヌルで活性化して酵素固定化を行うことに関する報告はない。したがって、本願の一連の保護方案が提案された。
【0021】
本発明の第1実施形態では、ポリエチレンイミン修飾固定化酵素であり、アミンデヒドロゲナーゼ及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを含む酵素と、塩化シアヌルで活性化されたアミノ系担体である酵素を固定する担体と、を含む、固定化酵素を提供する。
【0022】
塩化シアヌルでアミノ担体のアミノを活性化することができ、従来のグルタルアルデヒド活性化アミノ樹脂とは異なる樹脂構造を提供することができ、構造等の理由によりグルタルアルデヒド活性化アミノ樹脂に効果的に固定化できない酵素のための新しい担体を提供する。酵素を活性化担体と結合させて固定化酵素を形成した後、固定化酵素の操作安定性をさらに向上させるために、固定化酵素をポリエチレンイミンで修飾し、それによって、ポリマーを利用して酵素を「縛る」か、又は保護して、より安定した固定化を実現する。これにより、触媒活性と再利用性が向上した固定化酵素が得られる。
【0023】
上記の固定化酵素の中の酵素は、グルタルアルデヒド活性化アミノ担体による固定化が困難な酵素を主に対象とした。具体的には、アミンデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、又は他の酵素、及びこれらの複数の酵素の組み合わせが含まれる。上記の塩化シアヌル活性化アミノ系担体の活性化原理は次の通りである。塩化シアヌルが3つのハロゲン活性部位を有していることを利用し、活性化の際に、まずその中の1つの活性部位を利用してアミノと結合し、続いて残りの活性部位を酵素分子上のアミノ、ヒドロキシなどの官能基と反応させて固定化を完成することができる。好ましくは、アミンデヒドロゲナーゼは、アミンデヒドロゲナーゼAmDHを含むが、これに限定されるものではなく、本願におけるAmDHは、特にアミノ酸配列が配列番号1であるアミンデヒドロゲナーゼを指し、多種類のアミンデヒドロゲナーゼを指していない。好ましくは、ギ酸デヒドロゲナーゼは、ギ酸デヒドロゲナーゼAIY34662.1を含むが、これに限定されるものではない。好ましくは、具体的に活性化されたアミノ系担体は、LX-1000EPHA、ECR8409又はLX-1000HAを含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ポリエチレンイミンの分子量は1.8~10KDaである。
【0024】
上記のアミンデヒドロゲナーゼAmDHのアミノ酸配列である配列番号1の配列は以下の通りである。
上記のギ酸デヒドロゲナーゼは、AIY34662.1野生型である。アミノ酸配列である配列番号2の配列は以下の通りである。
アミンデヒドロゲナーゼは、ケトン系化合物のキラルアミンへの還元を触媒できる酵素を指し、アンモニア源として安価なアンモニウム塩を使用し、高価なアンモニア供与体に依存していない。通常、還元プロセスでは水素を移動させるために還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が必要となるため、製造コストを削減するためにアミンデヒドロゲナーゼとギ酸デヒドロゲナーゼが組み合わせられることがよくある。化学触媒合成と比較して、アミンデヒドロゲナーゼは、反応条件が穏やかであるだけでなく、より高い触媒活性、選択性、及び基質特異性も備えている。上記の活性化担体を用いることにより、遊離酵素、特に水溶性の遊離酵素を固定化して固定化酵素を形成することができ、それによって、遊離酵素の安定性が悪い、再利用できない、生成物の分離、精製が困難である等の問題を解決する。固定化を行う酵素は1種であってもよいし、複数の酵素を同時に固定化して併用の目的に達してもよい。
【0025】
従来の固定化酵素担体の製造方法では、アミノ系樹脂を例にとると、通常、二官能性架橋剤によって活性化させ、架橋剤の末端官能基を介して酵素と結合する必要がある。最も一般的に使用される活性化方法は、アミノをグルタルアルデヒドで活性化し、次に活性アルデヒド基を使用して酵素分子に連結することで固定化を達成することである。グルタルアルデヒドを使用して酵素を固定化した後、アミノ酸やNaBH4などの小分子化合物で後修飾することにより、固定化酵素の安定性を高めるという報告もある。塩化シアヌルは、アミノ樹脂に対して活性化作用を有し、アミノ樹脂担体に好適に用いられ、従来のグルタルアルデヒド活性化とは異なる樹脂構造を提供する。アミノ樹脂を塩化シアヌルで活性化すると、塩化シアヌル基上に残存する活性ハロゲン(塩素)部位が酵素分子と反応することができ、異なる酵素に対する異なる樹脂構造の結合能が大きく異なる。担体活性化剤を用いることにより、従来の固定化酵素担体との結合が困難であった酵素の固定化を支援する。アミノ担体はPurolite社製ECR8409樹脂、西安藍暁科技社製LX-1000HA樹脂など多くの市販アミノ樹脂を含んでもよい。
【0026】
ポリエチレンイミン(PEI)は、適当な濃度の水溶液として調製して使用することができ、使用時の最終濃度が、固定化酵素の性質、含有量などの要素により調節することができ、0.5~3%W/Vであってもよい。異なる固定化酵素の性質に対して、異なる分子量のポリエチレンイミンを選択して用いて修飾保護することも可能であり、PEIの分子量は1.8~10KDaであってもよい。
【0027】
本発明の第2実施形態では、アミノ系担体を塩化シアヌルで活性化し、活性化担体を得るステップと、酵素を活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、その後、固定化生成物をポリエチレンイミンで修飾し、固定化酵素を得るステップと、を含み、酵素は、アミンデヒドロゲナーゼ及び/又はギ酸デヒドロゲナーゼを含む、固定化酵素の製造方法を提供する。
【0028】
塩化シアヌルを用いて製造された活性化アミノ系担体は、従来の活性化担体とは異なる構造及び結合部位を有し、固定化酵素の製造のための新たな選択可能な担体を提供し、従来の固定化酵素担体との結合が困難であった酵素の固定化を支援する。固定化酵素は、酵素を活性化担体と適切な温度、回転速度等で固定化することにより得ることができる。
【0029】
上記の製造方法では、アミノ系担体を塩化シアヌルで活性化し、活性化担体を得るステップは、アミノ系担体を有機溶媒に溶解して、担体懸濁液を得るステップと、塩化シアヌルを担体懸濁液と混合することでアミノ系担体を活性化し、活性化担体を得るステップと、を含み、好ましくは、有機溶媒は、極性有機溶媒であってもよく、好ましくは、極性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのうちのいずれか1種又は複数種を含み、好ましくは、活性化の温度は、0~30℃で、より好ましくは0~5℃であり、好ましくは、活性化の時間は2~5hであり、好ましくは、活性化した後、活性化担体を有機溶媒で洗浄して、未反応の塩化シアヌルを除去し、好ましくは、洗浄の後、活性化担体を窒素ガスで吹き乾かし、すなわち、担体上の有機溶媒を吹き乾かすステップをさらに含み、好ましくは、アミノ系担体は、乾燥担体であり、好ましくは、アミノ系担体は、ECR8409、LX-1000HA又はLX-1000EPHAを含むが、これらに限定されるものではない。
【0030】
アミノ系担体の分散にはテトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒を使用し、アミノ系担体の活性化には塩化シアヌルを使用する。異なる酵素、担体など要因に応じて、活性化の温度は0~30℃で、より好ましくは0~5℃であり、活性化の時間は2~5hであってもよい。低温活性化は、担体の活性を保護することができ、活性化速度を遅くすることもでき、これによって、活性化速度が速すぎて多量の熱を作り出し担体活性化効果に影響を与えることを防ぐ。活性化時間は、酵素、担体又は活性化温度等の条件に応じて適宜調整することにより、より良好な活性化効果を得ることができる。活性化前のアミノ系担体を乾燥担体とすることで、担体中の残存水分などの液体が反応有機系の組成に与える影響を軽減することができ、残存液体が担体上のアミノ基と接触したり、担体上のアミノ基を包み込んだりすることも、活性化効率に影響を及ぼす。活性化後、活性化担体を同じ有機溶媒で洗浄し、未反応の塩化シアヌルを除去し、さらに活性化担体上の有機溶媒を窒素ガスで吹き乾してもよく、それによって、塩化シアヌル及び有機溶媒が残存して、後続の固定化ステップで酵素活性に影響を与え、固定化酵素の調製収量と性能に悪影響を及ぼすことを回避する。
【0031】
上記の製造方法では、酵素を活性化担体と混合してインキュベートする前、すなわち固定化前に、活性化担体を緩衝液で洗浄することで有機溶媒を置換するステップをさらに含み、好ましくは、酵素は、緩衝液を用いて調合したものであり、好ましくは、緩衝液は、リン酸塩緩衝液、グリシン緩衝液又はホウ砂緩衝液を含むが、これらに限定されるものではなく、好ましくは、リン酸塩緩衝液の濃度は、20~50mMであり、好ましくは、リン酸塩緩衝液のpHは、6.5~9.0であり、好ましくは、固定化の温度は、4~30℃であり、好ましくは、固定化の時間は2~5hである。
【0032】
緩衝液を用いて活性化担体を洗浄したことも、活性化担体中に残存する有機溶媒を置換し、残存有機溶媒が酵素活性に影響を与えることを防止ようにするためである。酵素は緩衝液を用いて調合したものであり、緩衝液は、一般的に使用されるリン酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、その他の一般的に使用される緩衝液であってもよく、少量の酸やアルカリを添加した時に溶液のpHを比較的安定に保つことができ、反応により生成される二酸化炭素などの生成物が溶液のpHに影響を及ぼすことを防止して、酵素活性を維持することができる。固定化の時間は、酵素、担体、固定化温度等の条件に応じて適宜調整することにより、より良好な固定化効果を得ることができる。
【0033】
上記の製造方法では、酵素を活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、その後、固定化生成物をポリエチレンイミンで修飾し、固定化酵素を得るステップは、酵素を活性化担体と混合してインキュベートし固定化し、予備固定化酵素を得るステップと、予備固定化酵素をポリエチレンイミンで後修飾し、固定化酵素を得るステップと、を含み、好ましくは、酵素は、アミンデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ又は他の酵素類のうちの1種又は複数種を含み、好ましくは、アミンデヒドロゲナーゼは、配列番号1の配列で示される如きアミンデヒドロゲナーゼAmDHを含み、好ましくは、ギ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号2の配列で示される如きギ酸デヒドロゲナーゼAIY34662.1を含み、好ましくは、後修飾は、予備固定化酵素にポリエチレンイミンの溶液を加えることにより行われ、好ましくは、ポリエチレンイミンの分子量は1.8~10KDaであり、好ましくは、ポリエチレンイミンのpHは5~8であり、好ましくは、ポリエチレンイミンの最終濃度は0.5~3%W/Vであり、好ましくは、後修飾の温度は、10~30℃であってもよく、好ましくは、後修飾の時間は8~24hであってもよい。
【0034】
酵素を活性化担体と混合してインキュベートし固定化すると、予備固定化酵素を得ることができる。使用する酵素は選択される1種又は複数種であってもよく、異なる種類の酵素を任意の割合で混合して複数の酵素の予備共固定化系を調製してもよい。固定化酵素の安定性を向上させるために、さらに予備固定化酵素をポリエチレンイミンで後修飾することができ、ポリマーによる酵素の「縛り」又は保護により、固定化酵素の操作安定性をさらに向上させることができる。予め溶解、調製されたポリエチレンイミン溶液を予備固定化酵素に一定体積添加することにより、効率的に混合してポリエチレンイミンの最終濃度を効果的に制御することができ、予備固定化酵素とポリエチレンイミンとの均一な接触にも有利で、得られた固定化酵素の性能を向上させることができる。ポリエチレンイミンの分子量は、より良好な保護性能を得るために、異なる担体及び酵素に応じて調整することができる。ポリエチレンイミンは、10%W/V水溶液とし、また、1M塩酸溶液で調節してもよい。予備固定化酵素にポリエチレンイミン水溶液を適量添加し、最終濃度が0.5~3%W/Vとなるようにする。
【0035】
本発明の第3実施形態では、連続反応における上記の固定化酵素、又は上記の製造方法により製造される固定化酵素の使用を提供する。上記の固定化酵素は、遊離酵素や従来のプロセスによる固定化酵素に比べて、触媒活性や再利用性が格段に向上しており、連続化装置での連続反応に用いることができ、バッチ反応に比べて操作が簡便で生産効率が高い。
【0036】
連続反応における上記の固定化酵素の使用では、連続反応は、充填層反応器中で連続反応を行うことを含み、好ましくは、充填層反応器は、固定化酵素を空のクロマトグラフィーカラム又はステンレス鋼製のクロマトグラフィーカラムに充填することにより製造され、好ましくは、充填層反応器の容積は5~50mLであり、好ましくは、充填層反応器の充填方法は湿式充填である。
【0037】
固定化酵素は、空のクロマトグラフィーカラム、ステンレス製クロマトグラフィーカラム等の耐電圧・耐腐食性の充填層反応器内で連続反応を行わせることができ、充填量が多すぎると触媒用の固定化酵素が無駄になったり、充填層反応器の底部の固定化酵素への圧力が過剰になって、固定化酵素の機械的構造や酵素活性に影響を及ぼしたりすることを防止するために、充填層反応器の容積を5~50mLとすることができる。固定化酵素の活性及び充填均一性を確保するために、固定化酵素を充填反応器に充填するために湿式充填を選択することができる。
【0038】
上記の使用では、連続反応は、基質を含有する反応系を下から上へ充填層反応器にポンプで圧送し、反応生成物を反応系に再混合することを含み、ポンプは定流量ポンプであり、好ましくは、定流量ポンプの圧力が≦20MPaであり、好ましくは、連続反応の流速は0.01~10mL/minである。
【0039】
基質を含有する反応系を下から上へ充填層反応器にポンプで圧送することにより、重力の作用により反応器内で反応系の流速が速くなりすぎて転化収率が低くなるのを防止する。反応生成物を反応系に再混合することは、一次触媒の収率が高くない反応に対して、循環触媒を行うことができ、反応系の均一性を常に維持し、充填層反応器中の固定化酵素が置かれてある環境の比較的安定化に有利であり、また、反応系の検査測定にも有利であり、ギ酸アンモニウムなどの原料の補充にも便利であり、最終生成物の収集にも便利であり、バッチ反応に必要な最終生成物と固定化酵素を分離するプロセスを省略した。連続反応に用いるポンプは、充填層反応器と流速の要求、及び固定化酵素の圧力に対する耐性に応じて、中圧定流量ポンプ又は低圧定流量ポンプを合理的に選択することができ、提供する圧力の範囲は0~20MPaとしてもよい。
【0040】
上記の使用では、酵素は、主酵素、又は主酵素と補酵素との混合酵素であってもよく、好ましくは、主酵素は、アミンデヒドロゲナーゼから選択されてもよく、相応して、補酵素は、ギ酸デヒドロゲナーゼから選択されてもよく、固定化酵素は、固定化アミンデヒドロゲナーゼ、又はアミンデヒドロゲナーゼ、及びギ酸デヒドロゲナーゼの共固定系を含み、好ましくは、アミンデヒドロゲナーゼは、配列番号1の配列で示される如きアミンデヒドロゲナーゼAmDHを含み、好ましくは、ギ酸デヒドロゲナーゼは、配列番号2の配列で示される如きギ酸デヒドロゲナーゼAIY34662.1を含み、好ましくは、反応系は、基質又は基質と補酵素との混合物を含み、好ましくは、固定化酵素は、固定化アミンデヒドロゲナーゼであり、反応系は、基質とギ酸デヒドロゲナーゼとの混合物を含む。
【0041】
連続反応における固定化酵素の使用では、酵素は、主酵素単独であってもよいし、主酵素と補酵素との混合酵素であってもよいので、補酵素の生成物を利用して主酵素の触媒反応に供給することができる。アミンデヒドロゲナーゼの還元プロセスでは、通常、水素を移動させるためにNADPH又はNADHが必要となるので、アミンデヒドロゲナーゼを使用する際には、NADHを産生できるギ酸デヒドロゲナーゼと併用することが多く、これによって、製造コストを削減させる。固定化酵素は、固定化アミンデヒドロゲナーゼ単独であってもよく、この場合、反応系にはギ酸デヒドロゲナーゼを追加する必要があり、固定化酵素はアミンデヒドロゲナーゼとギ酸デヒドロゲナーゼとの共固定系であってもよく、この場合、反応系は単純な基質溶液であってもよい。
【0042】
以下、具体的な実施例によって本願の有益な効果をさらに詳細に説明する。
【0043】
実施例1:ECR8409固定化アミンデヒドロゲナーゼ
反応式1
基質の調製:基質として反応式1で示される2-(1-アダマンチル)-2-オキシ酢酸メチルを用い、基質10gを100mLビーカーに計量し、精製水50mL及びK
2HPO
4・H
2O 1.6gを加え、均一に撹拌した後に、10M NaOH溶液でpHを8.0に調整した。活性炭1gを計量して、調製した溶液に加え、1h撹拌し、不純物及び色素を吸着した。ブフナー漏斗に濾紙を入れて珪藻土2.5gを加え、精製水を加えて、乾固まで吸引し、濾過ケーキを得た。調製した基質溶液を濾過ケーキで吸引濾過し、精製水20mLを補充して濾過ケーキを洗浄し、最後に、清澄濾液を得た。ギ酸アンモニウム5.6g及びジチオスレイトール(DTT)15mgを計量して濾液に加え、10M NaOH溶液でpHを8.0に調整した。精製水を82mLまで補充した。
【0044】
担体の活性化:乾燥したECR8409樹脂10gを四つ口フラスコに入れて、氷浴条件でアセトン250mLを加えて0.5h撹拌した。その後、塩化シアヌル5gを加え、氷浴下で撹拌反応を3h持続した。反応終了後、修飾担体を濾過し、アセトンで3回洗浄し、使用に備えた。
【0045】
酵素液の調製:冷凍保存したアミンデヒドロゲナーゼAmDH酵素液を室温で解凍した後、0.1M pH8.0リン酸塩緩衝液で8.5mg/mLに希釈し、使用に備えた。
【0046】
酵素の固定化:活性化した担体0.5gを0.1M pH8.0のリン酸塩緩衝液で3回洗浄した直後、調製した酵素液4mLを加え、シェーカーにおいて20℃、100rpmで2h固定化した。その後、予め調製したpH8.0の10%PEI(10KDa)溶液1mLを加えて、反応を夜通し持続した。最後に、固定化酵素を濾過して、緩衝液で3回洗浄し、固定化アミンデヒドロゲナーゼを得た。
【0047】
反応条件:固定化アミンデヒドロゲナーゼ0.15gを計量して、調製した基質溶液0.82mL、1mg/mL NAD+溶液25μL、及びFDH 50μLを加えた。40℃、100rpmシェーカーにて18h反応させた。反応系の上清液について、HPLCにより反応転化率を測定した。
【0048】
固定化アミンデヒドロゲナーゼの活性を検出した結果を表1に示す。反応バッチ毎に、固定化アミンデヒドロゲナーゼを濾過して分離し、0.1M pH8.0のリン酸塩緩衝液で3回洗浄した。
【表1】
実施例2:アミンデヒドロゲナーゼとギ酸デヒドロゲナーゼとのECR8409への共固定化
酵素固定化プロセスにギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)AIY34662.1粗酵素液50μLを追加する以外、担体活性化ステップ及び酵素液の調製は、実施例1と同様であった。次に、実施例1と同様な固定化方法及び後修飾工程により固定化を完成した。
【0049】
アミンデヒドロゲナーゼとFDHとをECR8409に共固定し、活性を検出した結果を表2に示し、反応系にFDH粗酵素液を添加しない以外、詳細な操作条件は、実施例1と同様であった。
【表2】
実施例3:LX-1000HA固定化アミンデヒドロゲナーゼ
担体活性化:乾燥したLX-1000HA樹脂10gを四つ口フラスコに入れて、氷浴条件下でテトラヒドロフラン200mLを加えて0.5h撹拌した。その後、塩化シアヌル2.5gを加え、氷浴下で撹拌反応を3h持続した。反応終了後、修飾担体を濾過して、テトラヒドロフランで3回洗浄し、使用に備えた。
【0050】
酵素液の調製、固定化プロセス及び活性検証は、実施例1と同様であった。
【0051】
固定化アミンデヒドロゲナーゼの活性を検証した結果を表3に示す。
【表3】
実施例4:LX-1000EPHA固定化アミンデヒドロゲナーゼ
担体活性化:乾燥したLX-1000EPHA樹脂10gを四つ口フラスコに入れて、氷浴条件下でテトラヒドロフラン200mLを加えて0.5h撹拌した。その後、塩化シアヌル2.5gを加え、氷浴下で撹拌反応を3h持続した。反応終了後、修飾担体を濾過して、テトラヒドロフランで3回洗浄し、使用に備えた。
【0052】
酵素液の調製、固定化プロセス及び活性検証は、実施例1と同様であった。
【0053】
固定化アミンデヒドロゲナーゼの活性を検証した結果を表4に示す。
【表4】
実施例5:連続生産における固定化アミンデヒドロゲナーゼの使用
反応系の調製:基質溶液80mLを計量し、基質溶液の詳細な調製ステップは実施例1を参照する。その後、基質溶液にNAD
+2.5mg及びFDH粗酵素液5mLを加えた。系をマグネティックスターラーで均一に混合し、反応プロセスに亘ってゆっくりと撹拌した。
【0054】
実施例1で製造された固定化アミンデヒドロゲナーゼ3.5gを計量し、クロマトグラフィーカラム充填作業工程に従って5mL空のクロマトグラフィーカラムに充填し、クロマトグラフィーカラムを40℃の水浴に入れた。
【0055】
CP-M205精密定流量ポンプを反応システムに接続し、反応系を0.4mL/min流速で下から上へ固定化酵素を充填したクロマトグラフィーカラムにポンプで圧送し、流出液を反応系に返液し、閉回路を形成し、連続反応装置を
図1に示す。24h反応後、反応系の上清液をサンプリングして検出したところ、基質転化率は95%に達する。その後、調製したばかりの反応系に変更して、次のサイクル反応に連続して投入した。測定の結果、10サイクル後にも、反応の転化率は依然として89%に達した。
【0056】
上記の連続システムの使用により、生産や操作をより簡単にし、処理量をより大きくするだけではなく、固定化アミンデヒドロゲナーゼの操作安定性を向上させる。
【0057】
実施例6:連続生産における共固定化アミンデヒドロゲナーゼ及びFDHの使用
反応系の調製:基質溶液80mLを計量し、基質溶液の詳細な調製ステップは、実施例1と同様であった。その後、基質溶液にNAD+2.5mgを加えた。系をマグネティックスターラーで均一に混合し、反応プロセスに亘ってゆっくりと撹拌した。
【0058】
実施例2で製造された固定化アミンデヒドロゲナーゼ及びFDH3.8gを計量し、クロマトグラフィーカラム充填作業工程に従って5mL空のクロマトグラフィーカラムに充填し、クロマトグラフィーカラムを40℃の水浴に入れた。
【0059】
実施例5のように系を連続装置に接続した。24h反応後、基質転化率は94%に達し、また、10回繰り返しても、転化率は依然として84%に達した。
【0060】
上記の連続システムの使用により、生産や操作をより簡単にし、処理量をより大きくするだけではなく、固定化アミンデヒドロゲナーゼ及びFDHの操作安定性を向上させる。
【0061】
比較例1:グルタルアルデヒド活性化LX-1000HA固定化アミンデヒドロゲナーゼ
LX-1000HAのグルタルアルデヒド活性化:湿潤重量で1gのLX-1000HAを2%(w/v)グルタルアルデヒド溶液4mLに加えた。グルタルアルデヒド溶液は、20mM pH7.0のリン酸塩緩衝液で調製したものである。30℃のシェーカーにて1h活性化した。
【0062】
活性化担体を0.1M pH8.0のリン酸塩緩衝液で3回洗浄した後、調製した酵素液(実施例1と同様に調製した)4mLを加え、シェーカーにて20℃、100rpmで20h固定化した。最後に、固定化酵素を濾過して、緩衝液で3回洗浄し、固定化アミンデヒドロゲナーゼを得た。
【0063】
固定化アミンデヒドロゲナーゼの活性を検証した結果を表5に示す。
【表5】
比較例2:ヘキサメチレンジイソシアネート活性化LX-1000HA固定化アミンデヒドロゲナーゼ
LX-1000HA樹脂ヘキサメチレンジイソシアネート活性化:乾燥したLX-1000HA樹脂10gを四つ口フラスコに入れて、氷浴条件下でジメチルホルムアミド200mLを加えて0.5h撹拌した。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート2.3gを加え、氷浴で撹拌反応を3h持続した。反応終了後、修飾担体を濾過して、DMFで3回洗浄し、使用に備えた。
【0064】
酵素液調製、固定化プロセス及び活性検証は、実施例1と同様であった。
【0065】
固定化アミンデヒドロゲナーゼの活性を検証した結果を表6に示す。
【表6】
比較例3:p-ベンゾキノン活性化LX-1000HA固定化アミンデヒドロゲナーゼ
p-ベンゾキノンによるLX-1000HA樹脂活性化:湿潤重量で1gのLX-1000HAを0.02g/mLp-ベンゾキノンエタノール溶液4mLに加え、p-ベンゾキノンエタノール溶液は20%(V/V)エタノール水溶液である。30℃シェーカーにて1h活性化した。その後、活性化した担体を濾過して、20%(V/V)エタノール水溶液、0.1M pH8.0のリン酸塩緩衝液で順次洗浄し、p-ベンゾキノンで活性化されたLX-1000HAを得た。
【0066】
上記で活性化された担体を調製された酵素液(実施例1と同様に調製した)4mLに加え、シェーカーにて20℃、100rpmで20h固定化した。最後に、固定化酵素を濾過して、緩衝液で3回洗浄し、固定化アミンデヒドロゲナーゼを得た。
【0067】
固定化アミンデヒドロゲナーゼの活性を検証した結果を表7に示す。
【表7】
比較例4:LX-1000HA固定化アミンデヒドロゲナーゼ(後修飾無し)
担体活性化ステップ及び酵素液の調製は、実施例3と同様であったが、酵素固定化プロセスでは後修飾工程は行われず、固定化後直接濾過して緩衝液で3回洗浄し、予備固定化アミンデヒドロゲナーゼを得る点は実施例3と相違した。
【0068】
固定化アミンデヒドロゲナーゼの活性を検証した結果を表8に示す。
【表8】
比較例5:アミンデヒドロゲナーゼ及びFDHのECR8409への共固定化(後修飾無し)
担体活性化ステップ及び酵素液の調製は、実施例2と同様であったが、酵素固定化プロセスでは後修飾工程は行われず、固定化後直接濾過して緩衝液で3回洗浄し、アミンデヒドロゲナーゼとFDHとの予備共固定系を得る点は実施例2と相違した。
【0069】
固定化アミンデヒドロゲナーゼの活性を検証した結果を表9に示す。
【表9】
以上の説明から、本発明の上記実施例は次の技術的効果を実現していることが分かった。アミノ系担体を塩化シアヌルで活性化し、この担体を用いて、触媒活性が高く、操作安定性が良い固定化アミンデヒドロゲナーゼ及び固定化ギ酸デヒドロゲナーゼを製造した。この固定化アミンデヒドロゲナーゼ及び固定化ギ酸デヒドロゲナーゼは、従来の固定化方法で製造された固定化酵素と比較して、よりも高い触媒活性及び再利用性を有する。
【0070】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって本発明は様々な変更及び変化が可能である。本発明の精神及び原則を逸脱することなく行われる如何なる修正、均等置換、改良などは、すべて本発明の保護の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】