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特表2025-500692長期保存が可能な冷蔵加工食品およびその保存方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】長期保存が可能な冷蔵加工食品およびその保存方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 2/05 20250101AFI20241226BHJP
   A23B 2/40 20250101ALI20241226BHJP
   A23B 2/708 20250101ALI20241226BHJP
   A23B 2/80 20250101ALI20241226BHJP
   B65B 55/14 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A23L3/005
A23L3/16
A23L3/3418
A23L3/36 Z
B65B55/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024542018
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2023050318
(87)【国際公開番号】W WO2023135567
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】2022/5016
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(31)【優先権主張番号】2022/5017
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524263581
【氏名又は名称】コルース べヘール べーフェー
【氏名又は名称原語表記】COROOS BEHEER BV
【住所又は居所原語表記】Middenweg 1 4421 JG Kapelle Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100109793
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 惠理子
(72)【発明者】
【氏名】ティメルマンス,ダニエル テオドール アーノウト
【テーマコード(参考)】
4B021
4B022
【Fターム(参考)】
4B021LA07
4B021LA41
4B021LP01
4B021MC01
4B021MC06
4B021MC10
4B021MK13
4B022LA01
4B022LB09
4B022LP01
(57)【要約】
少なくとも4.6のpH値を有する長期保存可能な冷蔵加工食品(REPFED)であって、0℃~10℃の温度におけるREPFEDには、増殖性のリステリア・モノサイトゲネスおよび/または糞便連鎖球菌および/またはボツリヌス菌およびセレウス菌が存在せず、これらの菌は死滅しており、これらの菌の胞子は少なくとも致命的に損傷を受け、もはや該当菌に発育して増殖することができなくなっている。また、冷蔵庫内に保管される上記REPFEDを保存する方法(1)も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期保存が可能な冷蔵加工食品(REPFED)であって、REPFEDのpH値が4.6以上で、0℃から10℃の温度のREPFEDには、殺菌された栄養型のリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)および/または糞便連鎖球菌(faecal streptococci)および/またはボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびレウス菌(Bacillus cereus)が存在せず、それにより前記細菌の胞子が致命的に損傷されていて、もはや関連する細菌に栄養成長できない冷蔵加工食品。
【請求項2】
冷蔵庫内のREPFEDには栄養性の低温性セレウス菌が存在せず、その胞子が少なくとも致命的に損傷されていることを特徴とする請求項1に記載のREPFED。
【請求項3】
冷蔵庫内のREPFEDのpH値が4.6~7.0、最も好ましくは4.6~6.0であることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のREPFED。
【請求項4】
REPFEDは防腐剤を含まないことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載のREPFED。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の「長期保存可能な冷蔵加工食品(REPFED)」を保存する方法(1)であって、少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)保存するREPFED(2)を予熱する;
b)保存するREPFED(2)を110℃~115℃で10~60秒間加熱する;
c)加熱されたREPFED(3)を0℃~12℃に冷却する;
d)REPFED(4)を密封可能な包装材(5)に入れて酸素濃度1%未満で無菌包装または超クリーン包装またはクリーン包装する。
ここで、ステップcとステップdは逆の順序で実行することもできる。
【請求項6】
冷却されたREPFED(4)の無菌包装(D)の間に、冷却されたREPFED(4)上に窒素ガス(N)を噴霧または吹き付けて、冷却されたREPFED(4)上の空気を置換することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
冷却されたREPFED(4)の無菌包装(D)の間に、窒素ガス(N)が冷却されたREPFED(4)上に噴霧または吹き付けられることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
冷却されたREPFED(4)上に窒素ガス(N)を吹き付けるかまたは噴霧する間、包装材(5)の開口側(6)に蓋(7)を被せて包装材(5)を密封し、これにより冷却されたREPFED(4)と蓋(7)との間の空間(8)に、窒素ガス(N)が封入されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
プロセスBにおいて、保存されるREPFED(2)がオーム加熱によって加熱されることを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
保存されるREPFED(2)を予熱する前および/または予熱の間(プロセスA)、保存されるREPFED(2)を混合することを特徴とする請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
保存されるREPFED(2)の予熱(プロセスA)は、前記REPFED(2)を、40℃~80℃、より好ましくは50℃~70℃、最も好ましくは55℃~65℃の温度に加熱することを特徴とする請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法(1)におけるステップcとステップdを逆の順序で行う場合であって、冷却されたREPFED(4)は、無菌包装(プロセスD)の前に、110℃~12℃、より好ましくは100℃~60℃、最も好ましくは83℃~87℃に予冷(プロセスE)されることを特徴とする請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、「長期保存可能な冷蔵加工食品」としても知られる生鮮食品、および冷蔵庫に貯蔵された生鮮食品の保存方法に関する。
【0002】
生鮮食品を保存して保存期間を延ばすためのさまざまな方法が知られている。
【0003】
生鮮食品には、工業規模で生産される「長期保存が可能な冷蔵加工食品(REPFED)」とも呼ばれる冷蔵食品が含まれると理解されている。REPFEDという用語は、科学文献では一般的に知られている用語であり、本明細書においては、生鮮食品とREPFEDは同義語とみなすことができる。
【0004】
2014年にs.Samapundoらによって発表された科学論文「ベルギーで生産されたさまざまなREPFEDにおける低温耐性胞子形成菌の胞子の発生率、多様性および特性」には、REPFEDにおける微生物およびその胞子に関する既知の問題が明らかにされている。
REFPEDの微生物学的保存期間は欧州の法律によって定められており、特定の微生物についてはその存在と量に関する法的基準が定められている。
【0005】
欧州の法律では次のように規定されている。
【0006】
一般的に、セレウス菌(bacillus cereus)の濃度が10CFU/g(胞子または細胞)を超えると許容されないとされている(Langeveld et al., 1996年)。その理由としては、動物およびヒトを対象としたアウトブレイクの評価とボランティアによる研究で、10CFU/gで食中毒を引き起こす可能性があることが示されており、また、このようなセレウス菌数の増加は適正製造衛生基準(GMP/GHP)の原則に準拠していないことが挙げられる(Notermans et al.,1997 年、Lund et al.,2000年)。したがって、この研究では、10CFU/gを超えるすべての製品は人間の健康にリスクがあると認められた。しかし、細胞と胞子は区別された。製造中(低温殺菌前)のいずれかの時点で10胞子/gが含まれていても、低温殺菌によってその濃度が 10胞子/g未満に低下した場合、保存温度が十分保たれていることで、リスクはない。しかし、最終製品中(つまり、保存期間中)に10個/gの濃度の胞子が存在すれば、リスクがある。胞子は栄養細胞よりも胃を通過しやすく、その後発芽して腸に定着し、エンテロトキシンを生成する。細胞の場合、状況は異なる。製造中または保存期間中のいずれかの段階で製品に10個の細胞/gが含まれる場合、分解毒素が生成される可能性がある。そして、この毒素は耐熱性があるため、低温殺菌後も存在し続ける(Rajkovic et al., 2008年)。つまり、製造中(製品が市場に出る前)の10胞子/gはリスクとはみなされない。ただし、最終製品(市場に出ている)はリスクとみなされる。さらに、10個の栄養細胞/gは、分解毒素が生成される可能性があるため、あらゆる段階(製造または流通)でリスクがあるとみなされる。
REPFEDの正確な保存期間は、リステリア・モノサイトゲネス、糞便連鎖球菌、および/または低温性非タンパク質分解性ボツリヌス菌などの病原菌のコロニー形成単位約100,000の基準によって決定される。
【0007】
前述の病原菌に加えて、REPFEDには、セレウス菌の胞子が頻繁に発生し、そのようなREPFEDは、消費者の健康にリスクをもたらすことが一般的に知られている。より具体的には、REPFEDではセレウス菌の低温性菌株がますます多く見つかるようになっている。このようなセレウス菌の低温性菌株は、6℃以上の温度で増殖できるため、冷蔵庫内でも増殖できる。セレウス菌の低温性菌株とその胞子の最適成長温度は30℃から37℃の間であり、また、セレウス菌の低温性菌株とその胞子はpH値4.9~9.0で増殖することができ、最適pH値は6.0~7.0である。
【0008】
セレウス菌の胞子が細菌自体に発育すると、セレウス菌は消費者に食品感染症や食中毒を引き起こすおそれがある。
【0009】
前述のREPFEDを保存するために使用されるいくつかの方法を以下に示す。
【0010】
既知の保存方法は、REPFEDの製造時に適用される穏やかな熱処理に基づいており、REPFEDの栄養細菌を不活性化するのに役立つ。
【0011】
通常、食品業界ではpH値が4.5を超える食品は殺菌される。このプロセス中、生鮮食品は強力に加熱され、栄養微生物およびその胞子は死滅する。殺菌は約121.1℃で行われ、超高温殺菌(UHT殺菌)は約140℃で短時間(数秒)加熱して殺菌する。このような食品は通常、缶詰に包装され、室温で保存されるため、非常に長い保存期間がある。しかしながら、これらの食品の品質は著しく低下しているので、殺菌に適さない食品も多くある。
【0012】
一方、食品を短時間加熱する、最大pH値4.5の食品の低温殺菌法が知られている。低温殺菌とは、食品を分子的および構造的にあまり変化させずに、食品を短時間加熱することで食品内の栄養細菌を殺す食品産業におけるプロセスである。pH値4.5以上で殺菌できない食品には、まず添加剤を加えてpH値を下げる。このような添加剤は酸であってもよい。その一例がフムスである。ひよこ豆のpH値は4.5より高いが、実際には、ひよこ豆にマヨネーズやレモン汁を加えることでpH値4.5未満に下がり、フムスを低温殺菌することができる。
【0013】
胞子は低温殺菌処理後も生き残ることが知られている。冷蔵庫内でのpH値4.5を超える製品では、細菌が再び栄養成長して増殖する可能性がある。したがって、REPFEDは冷蔵庫内での保存期間は限定的である。
【0014】
低温殺菌技術には3種類あり、それぞれによって食品の保存期間が異なる。
【0015】
1つ目の低温殺菌技術では、食品を包装し、その後、包装されたまま90℃で少なくとも10分間低温殺菌する。低温殺菌された食品には、リステリア・モノサイトゲネス、糞便連鎖球菌、および/または低温性非タンパク質分解性ボツリヌス菌は含まれない。
【0016】
前記低温殺菌技術の欠点は、特にセレウス菌、ボツリヌス菌、その他の胞子形成細菌の胞子が生存できることである。ただし、通常、冷蔵庫内でのこれらの菌の増殖は、前記低温殺菌を行わない場合よりも限定的である。
【0017】
さらなる欠点としては、食品が比較的高温で長期間低温殺菌されるため、食品の品質がかなり低下することである。
【0018】
2つ目の低温殺菌技術は、食品を包装した後、包装された状態で、70℃で少なくとも2分間低温殺菌する。
【0019】
この低温殺菌技術はそれほど強力ではなく、6Dリステリア・モノサイトゲネスを得ることを意図している。他の病原菌はこの処理後も生き残ることができる。特に、セレウス菌やボツリヌス菌などの胞子形成細菌の胞子は、この低温殺菌処理後でも生き残っている。
【0020】
2番目の低温殺菌技術の欠点は、さまざまな病原菌とその胞子が処理後も生存しているため、低温殺菌された食品の保存期間が冷蔵庫内で数日間に限定されることである。
【0021】
ここでの冷蔵とは、低温殺菌された食品が0℃から10℃の間で保管されることを意味する。
【0022】
最後の一つとして、3つ目の低温殺菌技術は、食品を低温殺菌した後に包装するというものである。
【0023】
この低温殺菌では、食品は90℃で少なくとも10分間、または70℃で少なくとも2分間低温殺菌することができ、低温殺菌後に食品は包装または再包装される(オープン低温殺菌とも呼ばれる)。
【0024】
低温殺菌後に食品がリステリア・モノサイトゲネスやその他の病原菌に汚染される大きなリスクがある。
【0025】
したがって、このような低温殺菌食品は、冷蔵庫で保存できる期間が数日間と非常に短くなる。
【0026】
食品を低温殺菌または滅菌すると、処理をしない場合と比べて食品をより長く保存できるようになる。
【0027】
さまざまな食品を保存する場合、保存期間をさらに延長するために、酸(ソルビン酸カリウム、安息香酸など)などの防腐剤が添加されることはよくある。
【0028】
また、上記細菌の中には、セレウス菌の低温性菌株など、熱に対して非常に耐性のある低温性細菌が存在することが知られている。これらの細菌は、前述の低温殺菌技術の後でも生き残り、増殖する可能性がある。こうした病原菌の生存と増殖は、REPFEDとしても知られる、工業的に生産され低温殺菌された冷蔵食品において健康上のリスクとなる。
【0029】
前述の低温殺菌技術は、セレウス菌の低温性菌株および/またはその胞子からREPFEDを保護するのに適さない。REPFEDを低温殺菌または保存する温度が低すぎて、また処理時間が短すぎて、セレウス菌の低温性菌株やその胞子を殺すことができず、胞子が成長できなくなるほど致命的な損傷を与えることはできない。
【0030】
本発明の目的は、前述の欠点およびその他の欠点の少なくとも1つに対する解決策を提供することである。
【発明の概要】
【0031】
このため、本発明は、pH値4.6以上の長期保存可能な冷蔵加工食品(REPFED)の提供を目的とし、これにより、0℃から10℃の温度のREPFEDには、殺菌された栄養型のリステリア・モノサイトゲネスおよび/または糞便連鎖球菌および/またはボツリヌス菌およびセレウス菌が存在せず、これにより、前記細菌の胞子が少なくとも致命的に損傷され、胞子がもはや関連する細菌に栄養成長できなくなる。
【0032】
この利点は、冷蔵庫内のREPFEDのpH値が少なくとも4.6、より好ましくは4.6~7.0、最も好ましくは4.6~6.0であることから、REPFEDの品質が維持されるか、または低下しても最小限にとどまるため、はるかに長い保存期間が得られる。前記REPFEDの保存期間は数週間から数か月まで延長することができる。さらに良いことに、REFPEDの保存期間は、細菌によるREFPEDの腐敗ではなく、REFPEDの官能特性によって決まる。
【0033】
前記REPFEDのさらに別の利点は、冷蔵庫内で少なくとも栄養性の低温性セレウス菌、好ましくはその胞子に対して微生物学的に商業的に無菌であること、またはそれによって胞子が少なくとも致命的に損傷される。
【0034】
ここで商業的無菌とは、「公衆衛生上重要な微生物の生存形態、および通常の非冷蔵の保管および流通条件下で食品内で繁殖する可能性のある健康上重要ではない微生物を食品から排除する加熱によって達成される状態」を意味すると理解される(出典:英国公衆衛生省、1994年)。
【0035】
この利点は、セレウス菌の胞子が殺され、または損傷されるため、冷蔵庫内のpH値4.6~7.0のREPFEDでは、胞子がセレウス菌に栄養成長できなくなるか、または非常にゆっくりとしか成長しなくなる。
【0036】
さらに、本発明は、冷蔵庫に保管される前述の生鮮食品を保存する方法に関し、この方法は少なくとも以下のステップを含む。
a)保存する食品を予熱する。
b)保存する食品を110℃~115℃で少なくとも10秒~60秒間加熱する。
c)加熱した食品を0℃~10℃に冷却する。
d)食品を密封可能な包装で酸素濃度1パーセント未満で無菌包装、超クリーン包装、またはクリーン包装する。
ステップcとステップdは入れ替えて実行することもできる。
【0037】
この方法は、ウーストロマイジング(oostromising)と称する新規で独創的な保存方法である。
【0038】
生鮮食品とは、食料品、より具体的には「耐久性の高い冷蔵加工食品(REPFED)」とも呼ばれる調理済み食品を意味すると理解されている。
【0039】
この方法はウーストロマイジング(oostromising)と称する、新規で独創的な保存方法であり、その利点を以下に説明する。
【0040】
この方法の利点は、食品の保存期間が最大10℃で7~11日から90日に延長されることである。
【0041】
さらに、この方法では、前述の食品を保存するために防腐剤を使用しないという利点もある。
【0042】
もう1つの利点は、食品を予熱することにより、食品のさまざまな成分の温度が、食品が110℃~115℃に加熱される前と同じ温度、または実質的に同じになることである。
【0043】
その結果、食品の異なる凝集状態間での温度差を防止できる。
【0044】
本発明の方法は、リステリア・モノサイトゲネス、糞便連鎖球菌、および/または低温性非タンパク質分解性ボツリヌス菌を殺菌および/または不活性化するだけでなく、低温性セレウス菌の胞子も殺菌および/または不活性化する。
【0045】
低温微生物および/またはセレウス菌の胞子は、リステリア・モノサイトゲネス、糞便連鎖球菌、および/または低温性非タンパク質分解性ボツリヌス菌よりも耐熱性が高いため、これらも死滅する。前記細菌の胞子は、冷蔵庫内のREPFED内で細菌として栄養成長できなくなるほど、死滅するか致命的な損傷を受ける可能性がある。
【0046】
この方法の利点は、セレウス菌の胞子が殺され、または損傷されるため、冷蔵庫内のpH値4.6~7.0のREPFEDでは、胞子はセレウス菌に栄養成長できなくなるか、または非常にゆっくりとしか成長しなくなることである。
【0047】
さらなる利点は、前述の方法に従って保存されたREPFEDは、品質の極端な劣化がないことである。
【0048】
本発明の特徴をより良く示すために、添付の図面を参照して、本発明に従った生鮮食品の保存方法のいくつかの好ましい変形例を、限定することなく例として以下に説明する。
【0049】
図1は、本発明の方法の概略図である。
図2図1のプロセスDの変形例を示している。
図3図4図1の変形した方法を示している。
【0050】
本発明は、長期保存が可能な冷蔵加工食品(REPFED)に関する。前記REPFEDは、pH値4.6以上、0℃~10℃の温度で、栄養性リステリア・モノサイトゲネスおよび/または糞便連鎖球菌および/またはボツリヌス菌および低温性セレウス菌を含まない。
【0051】
好ましくは、冷蔵庫内の前述のREPFEDには前述の細菌の胞子が含まれず、および/またはそれらの胞子は致命的に損傷されており、もはや細菌に栄養成長できない状態になっている。これを「致命的に損傷した」胞子と称することが知られている。
【0052】
好ましい実施形態では、冷蔵庫内のREPFEDには栄養性の低温性セレウス菌も存在せず、その胞子は少なくとも致命的に損傷されている。
【0053】
好ましくは、冷蔵庫内のREPFEDは、少なくとも4.6、より好ましくは4.6~7.0、最も好ましくは4.6~6.0のpH値を含む。
【0054】
上述のREPFEDの利点は、冷蔵庫内では、REPFEDが少なくとも栄養低温性セレウス菌に対して、また好ましくはその胞子に対しても微生物学的に商業的に無菌であることである。
【0055】
ここで、微生物学的に商業的に無菌であるとは、上記の条件下でのREPFEDには、栄養性リステリア・モノサイトゲネスおよび/または糞便連鎖球菌および/またはボツリヌス菌および低温性セレウス菌が存在せず、それらの胞子が少なくとも致命的に損傷されていることを意味するものと理解される。
【0056】
好ましくは、前述のREPFEDには、酸、ソルビン酸およびソルビン酸塩(E200-E203)、安息香酸および安息香酸塩(E210-E219)、亜硫酸塩(E221-E228)、亜硝酸塩、硝酸塩などの防腐剤が含まれていない。
【0057】
図1は、冷蔵庫に保管されている生鮮食品2を保存し、栄養微生物および/またはセレウス菌の胞子を殺す方法1を概略的に示している。
【0058】
生鮮食品は、REPFEDとも称される、冷蔵庫に保存された産業用の調理済み食品をいう。例えば、冷蔵食品、冷蔵食事、調理済み食品などが挙げられる。当該REPFEDは微生物学的に不安定であり、そのため限られた期間しか保存できないことが知られている。本発明による方法は、防腐剤を添加せずにREPFEDを保存するために使用することができ、それによって、栄養性のリステリア・モノサイトゲネスおよび/または糞便連鎖球菌および/またはボツリヌス菌および低温性セレウス菌が死滅し、それによって、前記細菌の胞子が致命的に損傷されて、もはや栄養的に細菌に成長することができなくなる。これの利点は、冷蔵庫内でのREPFEDの保存期間を延長できる。
したがって、セレウス菌には、耐熱性が非常に高いセレウス菌のグループ、より具体的には、低温性セレウス菌が含まれる。下記の方法により、pH値が4.6を超えるREPFEDを保存した後、冷蔵庫内のREPFEDには栄養性の低温性セレウス菌が存在せず、その胞子は死滅するか、致命的に損傷する。セレウス菌の特定の菌株は、10℃以上または12℃以上の温度で増殖できることが知られており、これらの菌株は非常に耐熱性がある。
【0059】
このような方法1には、少なくとも以下のステップが含まれる。
a)保存するREPFED2を予熱する。
b)保存するREPFED2を110℃~115℃で少なくとも10~60秒間加熱する。
c)加熱されたREPFED3を0℃~12℃に冷却する。
d)冷却されたREPFED4を密封可能な包装材5で酸素濃度1%未満の無菌包装する。
ここで、ステップcとステップdとは入れ替えて行ってもよい。
【0060】
さらに、プロセスAの予熱中および/または予熱前に、保存するREPFED2を混合してもよい。
【0061】
無菌、クリーン、または超クリーン包装する工程(プロセスD)では、冷却されたREPFED4をバッグ、カップ、容器、その他の包装材料などの無菌、超クリーン、またはクリーン包装材に挿入し、真空密封すればよい。無菌包装またはクリーン包装の目的は、事後の汚染を防ぐことである。無菌包装、クリーン包装、超クリーン包装は、制御された環境での挿入および密封を含み、これにより、微生物および/またはその胞子によるREPFEDの事後汚染を防ぐことができる。
【0062】
図2に別の変形例を示す。冷却されたREPFED4の無菌包装工程(プロセスD)において、冷却されたREPFED4の上に窒素ガス(N)を噴霧または吹き付けて、冷却されたREPFED4の上方の空気を排除する。また、REFPED2を冷却するために、REFPED2の内部または上部に窒素を事前に噴霧することもできる。
【0063】
したがって、無菌またはクリーンまたは超クリーン包装(プロセスD)において冷却されたREPFED4は、密封可能な包装材5に適用することができ、前記包装材5は、図示の例では容器であり、その後、窒素ガス(N)が容器の開口側6に吹き付けられるか、または噴霧される。
【0064】
窒素ガス(N)を吹き付けたり、噴霧したりしながら、容器の開口面6に蓋7を被せて包装材5を密封し、これにより、食品4と蓋7との間の空間8に窒素ガス(N)を閉じ込める。
【0065】
好ましくは、冷却されたREPFED4は、窒素ガス(N)による無菌包装またはクリーン包装または超クリーン包装(プロセスD)の前ではまだ温かい状態にあり、それによって、冷却されたREPFED4は、窒素ガス(N)による包装(プロセスD)の間および包装プロセスDの後に急速に冷却される。
【0066】
この方法では、REPFED2を非常に速く冷却できる。具体的には、REPFEDは数分以内に最大10℃まで冷却できる。したがって、REPFED2は5分以内に10℃以下に冷却できる。
【0067】
冷却されたREPFED4の実際の実施形態では、食品4の無菌包装(プロセスD)は密閉可能なチャンバー9内で行われ、冷却されたREPFED4に吹き付けられたり噴霧されたりした窒素ガス(N)が収集され、チャンバー9内が過圧状態になる。過圧状態とすることで、冷却中にパッケージが変形しないという利点がある。
【0068】
その後、チャンバー9内には空気と窒素ガス(N)の混合ガスが存在する。
【0069】
図3に示すように、方法のステップcとステップdを入れ替えて行う場合、冷却されたREPFED4を無菌包装(プロセスD)の前に10℃~12℃の温度に予冷(プロセスE)を行うことも可能である。
【0070】
この場合、食品4は、包装(プロセスD)の後、最大12℃、好ましくは10℃まで冷却することができる。
【0071】
好ましくは、REPFEDの包装(プロセスD)中の温度は100℃未満であり、より好ましくは70℃から95℃であり、最も好ましくは82℃から92℃である。
【0072】
好ましくは、保存されるREPFED2は、例えばオーム加熱によって加熱(プロセスB)される。
【0073】
好ましい実施形態では、保存されるREPFED2は、予熱(プロセスA)中に、40℃~80℃、より好ましくは50℃~70℃、最も好ましくは60℃~65℃に加熱される。
【0074】
別の実施形態では、図4に示すように、冷却されたREPFED4は、事後汚染を防ぐために、無菌、クリーン、または超クリーン包装のステップの後に包装される。栄養性のリステリア・モノサイトゲネスおよび/または糞便連鎖球菌および/またはボツリヌス菌およびセレウス菌は死滅し、これらの細菌の胞子は致命的に損傷を受け、もはや栄養的に細菌に成長できなくなる。プロセスDとプロセスFを入れ替えて、さらに最大12℃、できれば10℃まで冷却してもよい。
【0075】
好ましくは、本発明の方法は、リステリア・モノサイトゲネス、糞便連鎖球菌および/または低温性非タンパク質分解性ボツリヌス菌を殺菌および/または不活性化するだけでなく、低温性セレウス菌および/またはリステリア・モノサイトゲネスおよび/または糞便連鎖球菌および/または低温性非タンパク質分解性ボツリヌス菌の胞子も殺菌および/または不活性化する。
【0076】
本発明は、上記のような特性を有するREPFEDにも関し、REPFEDは上記のような方法から得られる。
【0077】
好ましくは、微生物の致死性および/または不活性化を決定するために、BE2022/5016に規定される装置および/または方法および/または使用が使用される。
【0078】
前記方法および/または装置および/またはそれらの使用により、前述の食品保存方法における微生物の致死性および/または不活性化を非常に正確に模倣することができ、食品中の微生物の致死性および/または不活性化の正確な判定が得られる。胞子の回復または増殖も判定することができ、それによって、REPFEDの加熱、保持および冷却の時間と温度の両方をシミュレートすることができる。
【0079】
本発明は、例として説明され、図に示された変形例に決して限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる変形例に従ってこのような方法を実現することができる。


図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期保存可能な冷蔵加工食品(REPFED)」を保存する方法(1)であって、少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)保存するREPFED(2)を予熱する;
b)保存するREPFED(2)を110℃~115℃で10~60秒間加熱する;
c)加熱されたREPFED(3)を0℃~12℃で5分間以内冷却する;
d)REPFED(4)を密封可能な包装材(5)に入れて酸素濃度1%未満で無菌包装または超クリーン包装またはクリーン包装する。
ここで、ステップcとステップdは逆の順序で実行することもできる。
【請求項2】
冷却されたREPFED(4)の無菌包装(D)の間に、冷却されたREPFED(4)上に窒素ガス(N)を噴霧または吹き付けて、冷却されたREPFED(4)上の空気を置換することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
冷却されたREPFED(4)の無菌包装(D)の間に、窒素ガス(N)が冷却されたREPFED(4)上に噴霧または吹き付けられることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
冷却されたREPFED(4)上に窒素ガス(N)を吹き付けるかまたは噴霧する間、包装材(5)の開口側(6)に蓋(7)を被せて包装材(5)を密封し、これにより冷却されたREPFED(4)と蓋(7)との間の空間(8)に、窒素ガス(N)が封入されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
プロセスBにおいて、保存されるREPFED(2)がオーム加熱によって加熱されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
保存されるREPFED(2)を予熱する前および/または予熱の間(プロセスA)、保存されるREPFED(2)を混合することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
保存されるREPFED(2)の予熱(プロセスA)は、前記REPFED(2)を、40℃~80℃に加熱することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法(1)におけるステップcとステップdを逆の順序で行う場合であって、冷却されたREPFED(4)は、無菌包装(プロセスD)の前に、110℃~12℃に予冷(プロセスE)されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法により得られる長期保存が可能な冷蔵加工食品(REPFED)であって、REPFEDのpH値が4.6以上で、0℃から10℃の温度のREPFEDには、殺菌された栄養型のリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)および糞便連鎖球菌(faecal streptococci)およびボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびレウス菌(Bacillus cereus)が存在せず、それにより前記細菌の胞子が致命的に損傷されていて、もはや関連する細菌に栄養成長できない冷蔵加工食品。
【請求項10】
冷蔵庫内のREPFEDには栄養性の低温性セレウス菌が存在せず、その胞子が少なくとも致命的に損傷されていることを特徴とする請求項に記載の冷蔵加工食品
【請求項11】
冷蔵庫内のREPFEDのpH値が4.6~7.0であることを特徴とする前記請求項に記載の冷蔵加工食品
【請求項12】
REPFEDは防腐剤を含まないことを特徴とする請求項に記載の冷蔵加工食品
【国際調査報告】