(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】高選択のKCNQ4カリウムチャネル作動薬、その製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
C07C 271/38 20060101AFI20241226BHJP
C07C 269/06 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20241226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20241226BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20241226BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241226BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241226BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 15/06 20060101ALI20241226BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20241226BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C07C271/38 CSP
C07C269/06
A61K31/27
A61P43/00 111
A61P21/00
A61P29/00
A61P1/14
A61P1/00
A61P13/10
A61P9/12
A61P11/00
A61P9/00
A61P11/06
A61P25/00
A61P15/06
A61P17/04
A61P15/00
A61P27/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542083
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 CN2023071587
(87)【国際公開番号】W WO2023134673
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210041774.3
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520442748
【氏名又は名称】シャンハイ インスティテュート オブ マテリア メディカ、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】ナン,ファジュン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ジャオビン
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ウーヘン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユエミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,シャオユー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フアナン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ハイヤン
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206HA22
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA08
4C206ZA21
4C206ZA34
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA69
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZC02
4C206ZC41
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006RA38
4H006RB34
(57)【要約】
本発明は、式I記載の高選択のKCNQ4カリウムチャネル作動薬、その製造方法および使用を提供する。本発明の化合物はKCNQ4作動活性をさらに高めるだけでなく、KCNQ2作動活性を失わせ、依然として良好なKCNQ4/KCNQ2選択性を有する。本発明により提供されたこのような新規な選択的KCNQ4アゴニストは、従来のカリウムチャネル作動薬に存在する選択性不良の欠点が克服され、活性が向上され、毒性が明らかに低下され、しかも構造がより簡単で、生産コストがより低いという利点があるため、より良い発展の見通しがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその薬理学的に許容される塩であって、
【化1】
その中、
R
1とR
2が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C
1-C
6アルコキシ基、ハロC
1-C
6アルコキシ基、C
1-C
6アルキルスルファニル基、C
4-C
6-tert-アルキル基、ハロC
1-C
6アルキル基、ニトロ基またはシアノ基からなる群より選ばれ;
R
3とR
4が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C
1-C
6アルキル基からなる群より選ばれ;
R
5が、C
1-C
6アルキル基、C
1-C
3アルコキシ基、C
4-C
14-tert-アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基からなる群より選ばれ;R
5が、好ましくは、C
1-C
3アルコキシ基、C
4-C
6-tert-アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基であり;R
5が、さらに好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基であり;R
5が、最も好ましくは、tert-ブトキシ基である、
化合物またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1とR
2が、それぞれ独立して、ハロゲン、C
1-C
6アルコキシ基、ハロC
1-C
6アルコキシ基、C
1-C
6アルキルスルファニル基、tert-ブチル基、ニトロ基、シアノ基またはトリフルオロメチル基からなる群より選ばれ;
好ましくは、R
3とR
4が、それぞれ独立して、水素である、
請求項1記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
式Iの化合物は、以下の式IIの化合物からなる群より選ばれ、
【化2】
その中、R
1、R
2、R
3、R
4とR
5の定義が、対応する請求項と同じである、
請求項1記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
式Iの化合物は、以下の式IIIの化合物からなる群より選ばれ、
【化3】
その中、R
1、R
2の定義が、対応する請求項と同じであり;
R
6が、C
4-C
6-tert-アルキル基であり;
好ましくは、式Iの化合物が、以下の式cの化合物からなる群より選ばれ、
【化4】
その中、R
1、R
2の定義が、対応する請求項と同じである、
請求項1記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
式Iの化合物は、以下の化合物からなる群より選ばれる、
【表1】
請求項1記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか記載の化合物の製造方法であって、
前記化合物は、式cの化合物からなる群より選ばれ、
【化5】
その中、R
1、R
2の定義が、対応する請求項と同じであり、
前記製造方法は、1,4-フェニレンジアミンとジカルボン酸ジ-tert-ブチルが反応してN-(tert-ブトキシカルボニル)-1,4-フェニレンジアミンを生成し;N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,4-フェニレンジアミンとプロパルギルブロミドが置換反応して中間体aを得て;中間体aと化合物bが反応して化合物cを生成する工程を含む、
製造方法。
【請求項7】
請求項1-5のいずれか記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩と任意の薬理学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物。
【請求項8】
請求項1-5のいずれか記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩または請求項7記載の医薬組成物の、KCNQ4カリウムチャネル作動薬の製造における使用。
【請求項9】
請求項1-5のいずれか記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩または請求項7記載の医薬組成物の、平滑筋または骨格筋の関連疾患を治療する医薬の製造における使用。
【請求項10】
前記平滑筋または骨格筋の関連疾患は、内蔵痛、消化不良、過敏性腸症候群、過活動膀胱症候群、高血圧症、肺動脈性高血圧症、冠動脈疾患、脳血管攣縮、喘息、慢性閉塞性肺疾患、前駆陣痛、そう痒症、性機能障害、難聴のような平滑筋または骨格筋などの関連疾患を含む、
請求項9記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動薬合成技術分野に関し、特に、一種類の新規な高選択のKCNQ4カリウムチャネル作動薬、その製造方法、および、内蔵痛、消化不良、過敏性腸症候群、過活動膀胱症候群、高血圧症、肺動脈性高血圧症、冠動脈疾患、脳血管攣縮、喘息、慢性閉塞性肺疾患、前駆陣痛、そう痒症、性機能障害、難聴のような平滑筋または骨格筋などの関連疾患を治療する医薬の製造におけるこのようなカリウムチャネル作動薬の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電位依存性カリウムイオンチャネル(Kvチャネル)は、12メンバー(Kv1.X-Kv12.X)を有する、現在発見された最も豊富なイオンチャネルのファミリーである。KCNQチャネルは、Kvチャネルの第7サブファミリー(Kv7)であり、KCNQ1-KCNQ5の5つのアイソフォームを含む。KCNQ1は、主に心臓系に分布し、補助サブユニットKCNQ1とともに、心筋活動電位の再分極を担う心筋活動電位のIKs電流を形成する。KCNQ2-KCNQ5は、主に中枢および末梢神経系に分布し、神経KCNQチャネルとも呼ばれ、膜電位レベルおよび神経興奮性を制御する(Brownら,Br J Pharmacol. 2009,156(8):1185-1195)。KCNQ4およびKCNQ5チャネルは、平滑筋、骨格筋にも分布しており、膜電位レベルに影響を与えることで筋収縮と拡張を調節している(Stottら,Drug Discov Today. 2014,19(4):413-424)。人類遺伝学の研究によると、KCNQ遺伝子の突然変異は不整脈、てんかんと先天性難聴を引き起こす可能性がある(Jentsch,Nat Rev Neurosci.2000,1(1):21-30)。KCNQチャネルは、電流活性化の閾値が低く(~60mVの閾値下電位で開口)、活性化が遅く、活性化後に不活性化しないため、興奮性細胞の電気的興奮性において基本的な役割を果たしている。発現分布、遺伝学的および薬理学的研究はすべて、強化された非選択的KCNQ2-KCNQ5チャネル作動薬が、体の痛み、内蔵痛、炎症性の痛み、および神経障害性疼痛の疾患治療、緩和、または制御のための医薬として使用できるという考えを支持している(Duら,Br J Pharmacol. 2018,175(12):2158-2172)。非選択的KCNQチャネル作動薬であるフルピルチン(Flupirtine)は、欧州では1984年以来、急性または慢性疼痛の治療薬として承認されている(Szelenyi,Inflamm Res.2013,62(3):251-258)。
【0003】
KCNQ4チャネルは、内臓の様々な臓器や組織で特異的に高発現しており、中枢神経系ではほとんど発現していない。この特異的な組織分布は、KCNQ4チャネルの標的制御、ひいては関連疾患の治療のための構造的基盤を提供している。検査された内臓組織の大部分はKCNQ4アイソフォームの高発現傾向を呈し、例えば、マウスの多種の血管動脈平滑筋中のKCNQチャンネル発現を分析すると、5つのアイソフォームの発現量の大きさはKCNQ4>KCNQ5>>KCNQ1の順であり、KCNQ2とKCNQ3の発現量は極めて低い(Yeungら,Br J Pharmacol. 2007,151(6):758-770)。結腸、空腸、胃洞、胃底など胃腸平滑筋の異なる部位では、KCNQ4の発現量がいずれも最も高い(Ipavecら,Pharmacol Res. 2011,64(4):397-409)。齧歯類動物の気道平滑筋と子宮平滑筋にはKCNQ4チャンネルの豊富な発現がある(Evseevら,Front Physiol. 2013,4:277)。同時に、ヒト内臓組織KCNQ分布研究の結果もKCNQ4の高発現を示した(Ngら,Br J Pharmacol. 2011,162(1):42-53)。KCNQ4を特異的に標的すると、他のアイソフォームを興奮させる副作用を避けることができ、例えば、KCNQ1チャンネルとそれを介して誘導されるIKs電流による長QT間隔症候群を抑制し(Terrenoireら,Circ Res. 2005,96(5):e25-34)、中枢神経KCNQ2とKCNQ3チャンネルの増強による鎮静、眠気などの副作用も効果的に回避できる(Orhanら,Expert Opin Pharmacother. 2012,13(12):1807-16)。現在、KCNQ作動薬は普遍的に選択性不良の問題があり、特にKCNQ2、KCNQ4とKCNQ5チャンネルの選択性不良の問題がある。すべての発見されたKCNQ2作動薬は同時にKCNQ4チャンネルに影響を与え、そのうちRL648_81(エチル(2-アミノ-3-フルオロ-4-)((4-(トリフルオロメチル)ベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート)は、KCNQ2チャネルのみを増強させ、KCNQ4チャンネルには影響を与えない(Kumarら,Mol Pharmacol. 2016,89(6):667-677)。現在、従来のKCNQ4作動薬の選択性はすべて理想的ではなく、2016年11月にXuan Zhangらが報告した血管拡張剤ファスジル(fasudil)がKCNQ4/KCNQ5チャンネルの相対的選択性作動効果を持つ以外、他のKCNQ4選択的作動薬は報告されていない(Zhangら,Br J Pharmacol. 2016,173(24):3480-3491)。
【0004】
KCNQ4チャンネルの神経および平滑筋系における重要な役割を考えると、KCNQ4チャンネル作動薬は内蔵痛、消化不良、過敏性腸症候群、過活動膀胱症候群、高血圧症、肺動脈性高血圧症、冠動脈疾患、脳血管攣縮、喘息、慢性閉塞性肺疾患、前駆陣痛、そう痒症、性機能障害、難聴などを含む(ただし、これらに限定しない)疾患の治療に使用できる(Haickら,Pharmacol Ther.2016,165:14-25;Barreseら,Annu Rev Pharmacol Toxicol. 2018, 58:625-648)。
【0005】
報告されたKCNQカリウムチャネル作動薬は、主に、以下の数種類がある。
【0006】
1)特許US5384330には、以下の構造を持つ一連の化合物が開示されている。
【化1】
【0007】
その構造的特徴として、o-ジアミノ基で置換されるベンゼン環を一つ含む。
【0008】
2)特許WO2005/087754には、以下の構造のKCNQカリウムチャネル作動薬が記載されている。
【化2】
【0009】
その構造的特徴として、p-ジアミノ基で置換されるベンゼン環を含み、かつ、その中の一つの窒素が一つの飽和環(W=Oである場合、複素環であってもよい。)にもあり、もう一つの窒素が隣接する位置でR1、R2が置換している。
【0010】
3)特許WO2008024398には、以下の構造が記載されている。
【化3】
【0011】
このような化合物の構造は、特許WO2005/087754の構造と類似するが、窒素複素環に別の縮合ベンゼン環構造単位がさらに導入される。
【0012】
臨床的に最も代表的なKCNQカリウムチャネル作動薬は、GSK(グラクソ・スミスクライン)社が開発し、2011年から承認されている抗てんかん薬レチガビン(略称RTG)であり、以下の構造を持つ。
【化4】
【0013】
レチガビンは、KCNQ2-5を活性化するKCNQカリウムチャネル作動薬として初めて系統的に研究され、主に成人部分てんかん患者の治療に使用されている。
【0014】
レチガビンの構造には、三つのアミノ基で置換された電子リッチなベンゼン環が含まれており、この構造の特徴により、レチガビンは合成や保存の際に特に酸化・変質しやすくなる。同時に、臨床応用においてレチガビンの副作用は比較的に多く、眩暈、眠気、疲労無力、意識錯乱、振戦、協調性障害、複視、視力朦朧、注意障害、記憶力減退、運動失調、失語症、発音困難、バランス失調、食欲増加、幻覚、ミオクロニー、末梢性浮腫、運動機能減退、口乾、嚥下困難などを含む。排尿異常は、膀胱腫脹、膀胱壁の肥厚、尿貯留など、レチガビンでよく見られる毒副反応でもある。2013年4月26日、FDA薬物安全委員会はレチガビンが臨床応用時に、皮膚の青色、網膜色素の変化などの色素反応が現れることを発表したが、その具体的な作用機序は不明であり、この薬を服用しているすべての患者に定期的に眼科検査に参加することを推奨した(S. Jankovicら,Expert Opinion on Drug Discovery,2013,8(11),1-9;F. Rodeら, European Journal of Pharmacology, 2010,638,121-127)。
【0015】
発明者らは、前の発表(WO2013060097)で以下のような構造のKCNQカリウムチャネル作動薬を開示した。
【化5】
【0016】
その中、R3がアリル基またはプロパルギル基である場合、化合物はKCNQカリウムチャネルの作動活性がレチガビンと同等またはそれ以上に優れているだけでなく、体内の抗てんかん効果が顕著であり、保護効果はレチガビンと同等である。マウスの初歩的な薬物動態学研究によると、このような化合物はレチガビンに比べてより優れた脳曝露量を有する。しかし、さらなる安全評価研究により、WO2013060097に開示された化合物は神経毒性が大きいことがわかった。
【0017】
発明者らは、次の発表(CN105017085A)で、以下のような構造のKCNQカリウムチャネル作動薬を開示した。
【化6】
【0018】
その中、R4、R5に導入された置換基がメチル基で代表されるアルキル基である場合(例えば、HN37)、得られた化合物は物性が安定で、脳組織の吸収が良好であるだけでなく、KCNQ2の作動活性が大幅に向上する。しかし、KCNQ2の作動活性の増加に伴い、それに応じてKCNQ4の作動活性も増加している。
【0019】
本発明の発明者らは、従来の報告をまとめた上に、従来のKCNQ作動薬は、普遍的に選択性不良の問題があり、特にKCNQ2、KCNQ4とKCNQ5チャンネルの選択性不良の問題がある。発見されたすべてのKCNQ2作動薬は同時にKCNQ4チャンネルに影響を与え、そのうちRL648_81(エチル(2-アミノ-3-フルオロ-4-)((4-(トリフルオロメチル)ベンジル)アミノ)フェニル)カルバメート)は、KCNQ2チャネルのみを増強させ、KCNQ4チャンネルには影響を与えない(Kumarら,Mol Pharmacol. 2016,89(6):667-677)。現在、従来のKCNQ4作動薬の選択性はすべて理想的ではなく、2016年11月にXuan Zhangらが報告した血管拡張剤ファスジル(fasudil)がKCNQ4/KCNQ5チャンネルの相対的選択性作動効果を持つ以外、他のKCNQ4選択的作動薬は報告されていない(Zhangら,Br J Pharmacol. 2016,173(24):3480-3491)。以上のような従来のKCNQカリウムチャネル作動薬には選択性が悪いという欠点があるため、内蔵痛、消化不良、過敏性腸症候群、過活動膀胱症候群、高血圧症、肺動脈性高血圧症、冠動脈疾患、脳血管攣縮、喘息、慢性閉塞性肺疾患、前駆陣痛、そう痒症、性機能障害、難聴などの疾患の新規な医薬に用いられる、より選択性の良い新規なKCNQ4カリウムチャネル作動薬を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0020】
本発明の第1の目的は、高選択のKCNQ4カリウムチャネル作動薬とする、新規な化合物を提供することにある。
【0021】
本発明の第2の目的は、上記化合物の製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の第3の目的は、有効成分である前記化合物またはその薬理学的に許容される塩と、任意の薬理学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物を提供することにある。
【0023】
本発明の第4の目的は、KCNQ4カリウムチャネル作動薬の製造における、上記化合物またはその薬理学的に許容される塩またはそれを含む組成物の使用を提供することにある。
【0024】
本発明の第5の目的は、平滑筋または骨格筋などの関連疾患を治療する医薬の製造における、上記化合物またはその薬理学的に許容される塩またはそれを含む組成物の使用を提供することにある。
【0025】
本発明の一態様では、式Iの化合物またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
【化7】
【0026】
その中、
R1とR2が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-C6アルコキシ基、ハロC1-C6アルコキシ基、C1-C6アルキルスルファニル基、C4-C6-tert-アルキル基、ハロC1-C6アルキル基、ニトロ基またはシアノ基からなる群より選ばれ;R1とR2が、好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン、tert-ブチル基、ニトロ基、シアノ基またはトリフルオロメチル基からなる群より選ばれ;
R3とR4が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-C6アルキル基からなる群より選ばれ;R3とR4が、好ましくは、それぞれ独立して、水素であり;
R5が、C1-C6アルキル基、C1-C3アルコキシ基、C4-C14-tert-アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基からなる群より選ばれ;R5が、好ましくは、C1-C3アルコキシ基、C4-C6-tert-アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基であり;R5が、さらに好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基であり;R5が、最も好ましくは、tert-ブトキシ基である。
【0027】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、以下の式IIの化合物からなる群より選ばれる。
【化8】
【0028】
その中、R1、R2、R3、R4とR5の定義が、前記と同じである。
【0029】
いくつかの実施形態では、式I化合物が、以下の式IIIの化合物からなる群より選ばれる。
【化9】
【0030】
その中、R1、R2の定義が、前記と同じであり、
R6が、C4-C6-tert-アルキル基であり;R6が、好ましくは、tert-ブチル基である。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態では、式Iの化合物は、以下の式cの化合物からなる群より選ばれる。
【化10】
【0032】
その中、R1、R2の定義が、前記と同じである。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、式Iの化合物は、以下の化合物からなる群より選ばれる。
【表1】
【0034】
本発明における用語の定義は、以下の通りである。
【0035】
前記「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であってもよい。
【0036】
前記「C1-C6アルキル基」とは、1-6個の炭素原子を有する鎖状アルキル基を意味し;その具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、正ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基および類似の基を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0037】
前記「ハロC1-C6アルキル基」とは、少なくとも一個の水素がハロゲンで置換されるC1-C6複素鎖状アルキル基を意味し;その具体例が、トリフルオロメチル基などを含む。
【0038】
前記「C4-C6-tert-アルキル基」とは、4-6個の炭素原子を有する二つの分岐鎖を持つアルキル基を意味し;その具体例は、tert-ブチル基、tert-ペンチル基などを含んでもよい。
【0039】
前記「C1-C3アルコキシ基」とは、RO-基であって、Rが上記のようなC1-C14アルキル基である基を意味する。アルコキシ基の具体例が、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基などを含む。
【0040】
前記「C4-C6-tert-アルコキシ基」とは、4-6個の炭素原子を有する二つの分岐鎖を持つアルコキシ基を意味し;その具体例は、tert-ブトキシ基、tert-ペンチルオキシ基などを含んでもよい。C4-C14-tert-アルコキシ基の定義は、同じようにする。
【0041】
本発明に記載される化合物の薬理学的に許容される塩は、上記化合物と酸からなる塩であってもよく、前記酸が、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、樟脳酸、カンファースルホン酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、乳酸、グルコン酸、アスコルビン酸、没食子酸、アーモンド酸、リンゴ酸、ソルビン酸、トリフルオロ酢酸、タウリン、ヒポタウリン、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、桂皮酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸および過塩素酸からなる群より選ばれる。
【0042】
本出願が対象とする化合物およびその薬理学的に許容される塩は、光学異性体(ジアステレオ異性体およびエナンチオマーを含む)、アトロプ異性体、幾何異性体(シス-トランス異性体)、配座異性体、互変異性体、およびそれらの混合物などの異性体またはラセミ体を有していてもよいが、これらに限定されない。これらの異性体も本発明の特許請求の範囲によって限定される範囲に含まれる。
【0043】
本発明者らは、これまでの研究において、アミノ基に結合したベンゼン環に異なる置換基を導入した場合、特に導入した置換基が2個のメチル基で表されるアルキル基である場合(例えば、HN37、CN105017085A)、KCNQ2の作動薬活性を大幅に増強できることを見出した。本発明において、本発明者らは、さらに、HN37の全体骨格を保持することを基本として、末端窒素原子上の置換基をカルボン酸メチルの代わりにカルボン酸tert-ブチルに置換した場合、KCNQ4の作動薬活性を大幅に増強できることを見出し、さらに研究することで、末端窒素原子における置換基をカルボン酸tert-ブチルのままとし、アミノ基と連結するベンゼン環における置換基を除去した場合、得られた化合物K31は、良好なKCNQ4作動薬活性を有するだけでなく、KCNQ2作動薬活性も消失し、選択性を有することが判明した。次に、これを基に、アミノ基に結合したベンジル基のベンゼン環に異なる置換基を導入した場合、特に、導入した置換基がtert-ブチル基に代表される電子豊富な置換基であった場合、得られた化合物は、KCNQ4作動薬活性をさらに増大させるだけでなく、やはりKCNQ2作動薬活性の消失を引き起こし、依然として非常に良好なKCNQ4/KCNQ2選択性を有することが見出された。以上をまとめると、本発明により提供される新規な選択的KCNQ4作動薬は、従来のカリウムチャネル作動薬の選択性が低いという欠点を克服し、活性が改善され、毒性が有意に低減され、構造がより単純で製造コストが低いという利点を有するので、より良好な開発見込みを有する。
【0044】
本発明の別の態様では、以下の反応スキームにより実現する、上記式c化合物の製造方法を提供する:
【化11】
【0045】
本発明の製造方法において、R1とR2の定義が、前記と同じである。
【0046】
1,4-フェニレンジアミンおよびジカルボン酸ジ-tert-ブチルが反応してN-(tert-ブトキシカルボニル)-1,4-フェニレンジアミンを生成し、N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,4-フェニレンジアミンとプロパルギルブロミドが置換反応し、中間体aを得て、中間体aと化合物bが反応して、化合物cを生成する。
【0047】
本発明の別の態様では、有効成分である本発明に係る化合物またはその薬理学的に許容される塩と任意の薬理学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0048】
本発明の別の態様では、本発明に係る化合物またはその薬理学的に許容される塩または者本発明に係る医薬組成物の、KCNQ4カリウムチャネル作動薬の製造における使用を提供する。
【0049】
本発明の別の態様では、本発明に係る化合物またはその薬理学的に許容される塩またはこれらのいずれかを含む医薬組成物の、平滑筋または骨格筋などの関連疾患を治療する医薬の製造における使用を提供する。
【0050】
本発明の別の態様では、神経性疾患を治療する方法であって、平滑筋または骨格筋などの関連疾患を患っている受験者に、本発明に係る化合物またはその薬理学的に許容される塩または本発明に係る医薬組成物を投与する方法を提供し;
【0051】
前記平滑筋または骨格筋関連疾患が、内蔵痛、消化不良、過敏性腸症候群、過活動膀胱症候群、高血圧症、肺動脈性高血圧症、冠動脈疾患、脳血管攣縮、喘息、慢性閉塞性肺疾患、前駆陣痛、そう痒症、性機能障害、難聴などのような平滑筋または骨格筋などの関連疾患を含む。
【0052】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0053】
従来のKCNQ作動薬と比較して、本発明により提供される化合物は、KCNQ2に対するKCNQ4の選択性が大幅に改善されている。例えば、体外電気生理学的実験において、化合物K31-K43はいずれもKCNQ2に対するKCNQ4の優れた選択性を有し、いずれもKCNO2には影響を及ぼさず、KCNQ4に対してのみ作動薬活性を有する。
【0054】
本発明により提供される化合物は、その構造中に遊離アミノ基が存在しないため、既存の医薬であるレチガビンよりも物理的に安定であり、酸化劣化しにくくなる。このことは、このような化合物の溶液が空気に晒されても酸化変色しにくいことからも明らかである。
【0055】
以上をまとめると、本発明によって提供される化合物は、従来の作動薬の選択性が低いという欠点を克服し、安定した物性と高い活性を有するだけでなく、良好な選択性と大幅に低減された毒性を有し、したがって、より大きな治療ウィンドウとより優れた治療効果を有し、良好な応用の見通しを示した。
【0056】
以上、本発明を詳細に説明したが、上記の実施態様は、単に例示的なものに過ぎず、本発明を限定する旨のものではない。さらに、本願は、前記の先行技術や、発明の概要や、以下の実施例に記載される理論によって限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、実施例により以下にさらに説明されるが、以下の実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、本発明の請求される保護範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【0058】
特に断らない限り、実施例で採用される原料、試薬、方法などは、当技術分野における通常のものである。
【0059】
化合物の製造例
以下の製造例中、核磁気共鳴(NMR)は、Bruker社製のBruker NMR Spectrometer 400M装置を使用して測定し、NMR校正:δH7.26ppm(CDCl3)、2.50ppm(DMSO-d6)、3.15ppm(CD3OD)であった。
【0060】
試薬は、おもにShanghai BiDe PharmaTech Coから提供されたものである。
【0061】
薄層クロマトグラフィー(TLC)のシリカゲルプレートは、山東煙台華友シリカゲル開発有限公司により生産され、型番がHSGF254である。
【0062】
化合物の精製に使用した順相カラムクロマトグラフィーシリカゲルは、山東青島海洋化学工場分工場により生産され、型番がzcx-11、200-300メッシュである。
製造例:
製造例1:4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-フェニルアミノカルボン酸tert-ブチル(K31)の合成
【化12】
【0063】
化合物N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,4-フェニレンジアミンK31-a(1.25g,6.0mmol)をDMF(20mL)およびジイソプロピルエチルアミン(1.16g,9.0mmol)に溶解し、プロパルギルブロミド(0.71g,6.0mmol)を加入し、65℃まで加熱して12時間反応した。反応が完了した後、室温までに冷却し、酢酸エチル(50mL)を加入し、有機層を順次に水で一回洗浄し(15mL)、飽和食塩水で一回洗浄し(15mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した後、粗品をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離剤が石油エーテル/酢酸エチル=5:1)、白色固体である生成物K31-bが得られ(1.21g、収率82%)、そのまま次の工程の反応に用いた。
【0064】
上記工程で得られた化合物K31-b(73.89mg,0.3mmol)をDMF(3mL)およびジイソプロピルエチルアミン(0.1mL,0.6mmol)に溶解し、p-フルオロベンジルブロマイド(68.05mg,0.36mmol)を加入し、65℃まで加熱して12時間反応した。反応が完了した後、室温までに冷却し、酢酸エチル(20mL)を加入し、有機層を順次に水で一回洗浄し(5mL)、飽和食塩水で一回洗浄し(5mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した後、粗品をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離剤が石油エーテル/酢酸エチル=20:1)、白色固体である生成物K31が得られた(0.95g、収率90%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3):δ 7.30-7.27(m,2H),7.24-7.22(d,J=8.0Hz,2H),7.01(t,J=8.0Hz,2H),6.86-6.84(d,J=8.0Hz,2H),6.30(dr,1H),4.43(s,2H),3.93(s,2H),2.22(t,J=4.0Hz,1H),1.59(s,9H)。
【0065】
製造例1と同じようにして、以下の化合物を製造した。
【表2】
【0066】
電気生理学的実験例
電気生理学的実験例1:
電気生理学的実験に使用した細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞株(CHO-K1)である。KCNQ cDNAは、大腸菌の形質転換により、大腸菌での発現、そしてプラスミド抽出と配列決定によって確認された。
【0067】
1.細胞培養とトランスフェクション
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(中国科学院細胞バンク、中国)を使用し、培地配合:50/50 DMEM/F-12(ギブコ)、10%ウシ胎児血清(FBS)(ギブコ、オーストラリア)、2mM L-グルタミン(インビトロジェン)であった。トランスフェクションおよびKCNQチャネルの発現:トランスフェクションの24時間前に、トリプシン(シグマ、中国)で消化し、6ウェルプレートに接種した。トランスフェクションは、Lipofectamine2000TM試薬(Invitrogen社製)を用いて行われ、その提供された手順に従って実験が行われた。トランスフェクションから24時間後、細胞は消化され、ポリ-L-リジン(Sigma)浸漬スライド上に再び広げた。GFP(緑色蛍光タンパク質)との共導入により、蛍光顕微鏡(オリンパス)でトランスフェクト細胞の確認として用いた。使用したヒトKCNQ2プラスミド(NCBI:NM_172107.4)およびヒトKCNQ4プラスミド(NCBI:NM_004700.4)は、Beijing Liuhui Huada社によって合成され、pcDNA3.1(+)ベクタープラスミド中に構築された。KCNQ2およびKCNQ4プラスミドは、DH5α大腸菌を形質転換した後、プラスミド抽出と配列決定によって確認された。
【0068】
2、CHO細胞上の電気生理記録:
室温(23~25℃)で、全細胞電圧クランプ実験を行い、Axopatch-700Bアンプ(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)、デジタルアナログ変換器はDigidata 1440A(Molecular Devices社)を採用し、信号収集はpClamp 10.0ソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA))を応用し、フィルタリングは2 kHz、サンプリング周波数は10 kHz、直列抵抗補償は60%であった。ホウケイ酸塩ガラス毛細管(World Precision Instrunents,Sarasota,FL)を引っ張って電極を作り、電極内に細胞内液を充填した後の電気抵抗は3-5MΩであった。灌流投与系はBPS-8(ALA Scientific Instruments、Westburg、NY)であり、速度は約1mL/minであった。
【0069】
電気生理実験細胞内液処方:145mM KCl、1mM MgCl2、5mM EGTA、10mM HEPES、5mM MgATP(KOHでpH=7.3に調整)。
【0070】
電気生理実験細胞外液処方:140mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、1.5mM MgCl2、10mM HEPES、10mMグルコース(NaOHでpH=7.4に調整)。
【0071】
KCNQ2とKCNQ4チャンネル電流誘発刺激方案:クランプ電圧-120mV、その後-10mV、時間1500msの方形波刺激を与え、刺激周波数は0.1Hzであった。
【0072】
3、化合物の溶解と調製
一定質量の化合物をDMSOで溶解し、20mMのDMSO母液を調製し、-20℃で凍結保存した。試験当日、20mMの化合物母液を細胞外液で試験が必要な最終濃度まで勾配希釈し、被験薬物溶液中のDMSO含有量が0.5%以下であり、この濃度のDMSOが試験のKCNQチャンネル電流に影響しないことを保証した。例えば、100 nMと1μMの化合物溶液を調制する場合、その勾配希釈方法は、先に5 μL DMSO母液を吸い取って10mLの細胞外液に加え、均一に溶解して10 μMの化合物溶液を得て;さらに、10 μM の化合物1mLを吸い取って、9mLの細胞外液に加え、均一に溶解し、1 μMの化合物溶液を得て;さらに、1mLの1 μM 化合物を吸い取って、9mLの細胞外液に加え、均一に溶解させ、100 nMの化合物溶液が得られた。
【0073】
4、実験結果とデータ分析
データ収集分析処理はpClamp10(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)、 GraphPad Prism 5(GraphPad Software,San Diego,CA)およびExcel(Microsoft社)のソフトを採用し、すべてのデータは平均値±標準誤差(Mean±SEM)で表され、顕著性分析は非ペアt検定(unpaired student’s t-test)を採用し、P<0.05の場合、両グループ間の差異は統計学的意義があると考えられた。化合物が電流に与える影響は以下の式で計算される。
増強倍数=IDrug/IControl;
【0074】
ここで、I
Controlは、細胞に空白外液を投与した後、-10mVのテスト電圧刺激下で発生する電流ピーク値の定常最大値であり、I
Drugは、化合物を灌流した後、-10mVの刺激電圧下で発生する電流ピーク値の定常最大値であり、I
Drug/I
Control>1は増強作用があることを示し、I
Drug/I
Control<1は抑製作用があることを示す。nは試験された細胞数である。
【表3】
【0075】
結果と検討:上記電気生理試験の結果から、本発明で開示化合物はKCNQ4カリウムチャネルの作動活性を良好に維持しているだけでなく、すべての化合物がKCNQ2に対して不活性であり、良好な選択性を示すことがわかった。
【0076】
以上の各実施例は、本発明の技術的手段を例示するためのものであり、これに限定するものではない。上記各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、本発明の特許請求の範囲によって規定する精神と実質的範囲から逸脱しない範囲で、上記各実施例に記載された技術的手段を修正してもよいし、その一部または全部の技術的特徴を同等に置き換えるもよく、これらの修正または置換は依然として本発明の特許請求の範囲内にあることを理解すべきである。
【国際調査報告】