(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】中等度から最重度の眉間皺及び外眼角皺の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20241226BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241226BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241226BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241226BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K47/02
A61K9/08
A61K47/18
A61P17/00
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542123
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-09-12
(86)【国際出願番号】 GB2023050061
(87)【国際公開番号】W WO2023135428
(87)【国際公開日】2023-07-20
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517242544
【氏名又は名称】ガルデルマ・ホールディング・エスアー
(71)【出願人】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】アクセン, エーファ
(72)【発明者】
【氏名】リン, シャオミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインベルク, フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】マグワイア, コートニー
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン, アンナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC18
4C076DD07
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4C076DD26Z
4C076DD51Q
4C076FF16
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4C076FF67
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
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4C084BA26
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4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA07
4C084ZA011
4C084ZA891
(57)【要約】
本明細書では、液体ボツリヌス神経毒組成物を用いた眉間皺及び外眼角皺の治療方法を開示する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低い眼瞼下垂リスクでヒト対象において眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、
ボツリヌス神経毒を含む液体組成物を治療有効量で上記対象に投与し、それによってGL、LCL、又はそれらの組み合わせの外観を軽減させることを含み、
上記ボツリヌス神経毒は、酵素活性がより低い又は比活性がより低いボツリヌス神経毒製品より眼瞼下垂を発症させる可能性が低い、方法。
【請求項2】
低い眼瞼下垂リスクでヒト対象において眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、又はそれらの組み合わせを治療する方法に使用するためのボツリヌス神経毒を含む液体組成物であって、
上記方法は、治療有効量の上記液体組成物を上記対象に投与し、それによってGL、LCL、又はそれらの組み合わせの外観を軽減させることを含み、
上記ボツリヌス神経毒は、酵素活性がより低い又は比活性がより低いボツリヌス神経毒製品より眼瞼下垂を発症させる可能性が低い、液体組成物。
【請求項3】
上記対象は重篤な有害事象を経験しない、請求項1に記載の方法、又は請求項2に記載の液体組成物。
【請求項4】
上記対象は、BOTOX COSMETIC(登録商標)、XEOMIN(登録商標)、及びJEUVEAU(登録商標)より選択されるボツリヌス神経毒製品での治療と比較して眼瞼下垂を経験する可能性が低い、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項5】
上記酵素活性がより低いボツリヌス神経毒製品は、BOTOX COSMETIC(登録商標)、XEOMIN(登録商標)、及びJEUVEAU(登録商標)より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項6】
ヒト対象において眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、
ボツリヌス神経毒を含む液体組成物を治療有効量で上記対象に投与し、それによってGL、LCL、又はそれらの組み合わせの外観を軽減させることを含み、
(i)上記液体組成物は、少なくとも約97BU/ml以上の活性を有する、方法。
【請求項7】
ヒト対象において眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、又はそれらの組み合わせを治療する方法に使用するためのボツリヌス神経毒を含む液体組成物であって、
上記方法は、治療有効量の上記液体組成物を上記対象に投与し、それによってGL、LCL、又はそれらの組み合わせの外観を軽減させることを含み、
(i)上記液体組成物は、少なくとも約97BU/ml以上の活性を有する、液体組成物。
【請求項8】
該液体製剤は、約2.0×10
8U/総タンパク質mgのBoNT比活性を有し、上記比活性(U/mg)は、μBCA法で決定されたタンパク質総量(mg/ml)で除算したU/ml単位のマウスLD50効力を使用して任意に測定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項9】
該液体製剤は、少なくとも約1.10BU/RBU又は少なくとも約0.17BU/pgのボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性を有し、上記ボツリヌス神経毒の上記酵素活性は、BOTEST
TMを使用して任意に決定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項10】
該液体製剤は、少なくとも約1.35CBpA単位/BoNTのボツリヌス神経毒濃度で正規化された相対的効力を有し、上記ボツリヌス神経毒の該酵素活性は、細胞ベースのアッセイを使用して決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項11】
該液体製剤は、ヒト又は動物由来の賦形剤を含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項12】
眼瞼下垂の発生は、2%未満、1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満、又は0.9%と同等に低い、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項13】
上記対象は眼瞼下垂を経験しない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項14】
上記対象は、BOTOX COSMETIC(登録商標)、XEOMIN(登録商標)、及びJEUVEAU(登録商標)より選択されるボツリヌス神経毒製品での治療と比較して眼瞼下垂を経験する可能性が低い、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項15】
GL、LCL、又はそれらの組み合わせは、中等度から重度である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項16】
GL、LCL、又はそれらの組み合わせは、重度又は最重度である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項17】
上記ボツリヌス神経毒を含む液体組成物は、動物タンパク質又はコンパニオンタンパク質を含まない、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項18】
上記対象はGLを有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項19】
上記対象はLCLを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項20】
上記対象は、GL及びLCLの組み合わせを有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項21】
上記治療は、BOTOX COSMETIC(登録商標)より高い奏効率を提供する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項22】
上記液体組成物は少なくとも4種の緩衝剤を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項23】
上記液体組成物は、約100~約300mMの濃度又は約0.1~10mg/mLの濃度で存在する第1の緩衝剤を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項24】
上記液体組成物は、約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度で存在する第2の緩衝剤を含む、請求項23に記載の方法又は液体組成物。
【請求項25】
上記液体組成物は、約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度で存在する第3の緩衝剤を含む、請求項24に記載の方法又は液体組成物。
【請求項26】
上記液体組成物は、約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度で存在する第4の緩衝剤を含む、請求項25に記載の方法又は液体組成物。
【請求項27】
上記液体組成物は、約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度で存在する第5の緩衝剤を含む、請求項26に記載の方法又は液体組成物。
【請求項28】
上記緩衝剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、及びリン酸二水素ナトリウム二水和物からなる群より選択される、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項29】
上記液体組成物は、アミノ酸であってもよい少なくとも1種の安定剤を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項30】
上記アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンからなる群より選択される、請求項29に記載の方法又は液体組成物。
【請求項31】
上記アミノ酸は、Dアイソフォーム又はLアイソフォームである、請求項29又は30に記載の方法又は液体組成物。
【請求項32】
上記アミノ酸は、約0.1~約3.0mg/mLの濃度で存在する、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項33】
上記液体組成物は、非イオン性界面活性剤であってもよい少なくとも1種の界面活性剤を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項34】
上記非イオン性界面活性剤は、約0.01%(v/v)~約5.0%(v/v)の濃度又は約0.1~約3.0mg/mLの濃度で存在する、請求項33に記載の方法又は液体組成物。
【請求項35】
上記ボツリヌス神経毒は、ボツリヌス神経毒A型、B型、C型、D型、E型、F型、及びG型からなる群より選択される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項36】
上記ボツリヌス神経毒はボツリヌス神経毒A型である、請求項35に記載の方法又は液体組成物。
【請求項37】
上記液体組成物のpHは6.6~6.9である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項38】
上記ボツリヌス神経毒は、約150kDaの分子量を有する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項39】
上記液体組成物の浸透圧は270mosm/kg~310mosm/kgである、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項40】
1~100単位のボツリヌス毒素が上記対象に投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項41】
10~75単位のボツリヌス毒素が上記対象に投与される、請求項40に記載の方法又は液体組成物。
【請求項42】
25~75単位のボツリヌス毒素が上記対象に投与される、請求項40に記載の方法又は液体組成物。
【請求項43】
10、25、30、45、50、60、75、又は90単位のボツリヌス毒素が上記対象に投与される、請求項40に記載の方法又は液体組成物。
【請求項44】
上記液体組成物が注射により投与される、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項45】
上記注射は、皮下、経皮、皮内、又は筋肉内である、請求項44に記載の方法又は液体組成物。
【請求項46】
上記対象は、眉間領域に複数回注射される、請求項44又は45に記載の方法又は液体組成物。
【請求項47】
隣接する注射箇所が約0.5~約10cm離れている、請求項46に記載の方法又は液体組成物。
【請求項48】
隣接する注射箇所が約1.5~約3cm離れている、請求項46に記載の方法又は液体組成物。
【請求項49】
上記注射は、鼻根筋と顔の片側又は両側の皺眉筋とに行われる、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項50】
上記注射は、最初に鼻根筋に、続いて顔の片側又は両側の皺眉筋に、正中部から外側に移動して行われる、請求項49に記載の方法又は液体組成物。
【請求項51】
すべての上記注射が、眼窩上縁の約1cm上で、瞳孔中心線に対して内側に行われる、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項52】
すべての上記注射が、眉毛の中央又は骨の眼窩上隆起の少なくとも1cm上に行われる、請求項46~51のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項53】
上記対象は、外眼角の下に、眼輪筋の外側部分に、及び/又は眼窩縁から1~2cmのところに複数回注射される、請求項44又は45に記載の方法又は液体組成物。
【請求項54】
上記対象は、外眼角の下に、眼輪筋の外側部分に、及び/又は眼窩縁から1~2cmのところにさらに複数回注射される、請求項44~53のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項55】
上記方法を約1ヶ月~約6ヶ月の間隔で繰り返して、GL、LCL、又はそれらの組み合わせの再発を抑制する、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法又は液体組成物。
【請求項56】
上記方法を約3ヶ月~約6ヶ月の間隔で繰り返す、請求項55に記載の方法又は液体組成物。
【請求項57】
上記方法を約4ヶ月の間隔で繰り返す、請求項56に記載の方法又は液体組成物。
【請求項58】
本明細書に開示されるような対象において眉間皺及び/又は外眼角皺を治療するのに使用するためのボツリヌス神経毒を含む液体組成物。
【請求項59】
本明細書に開示されるような眉間皺及び/又は外眼角皺を治療するためのボツリヌス神経毒を含む液体組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照ステートメント
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2022年1月14日に出願された米国仮特許出願第63/299,705号及び2022年8月18日に出願された米国仮特許出願第63/399,127号の優先権を主張する。これらの仮出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書では、ボツリヌス神経毒製剤を使用して中等度から重度及び最重度の眉間皺(GL)及び外眼角皺(LCL)を治療するための方法及び組成物が記載されている。また、液体ボツリヌス神経毒製剤及び組成物も提供される。
【背景技術】
【0003】
本技術の背景技術に関する以下の説明は、単に本技術の理解を助けるために提供されるものであり、本技術の先行技術を説明するものや構成するものとは認められない。
【0004】
一般的に免疫学的に異なる7つのボツリヌス神経毒(ボツリヌス神経毒血清型A、B、C、D、E、F、及びG)が特徴付けられており、それぞれが型特異的な抗体による中和によって区別されている。一例として、BOTOX(登録商標)は、Allergan社(カリフォルニア州アーバイン)から市販されているボツリヌス毒素A型(BoNT-A)精製神経毒複合体の商標である。BOTOX(登録商標)は、細かい皺の外観を一時的に軽減させる注射による美容トリートメントとして人気がある。
【0005】
現在米国で承認されている4種類のBoNT-A製品、すなわちBOTOX COSMETIC(登録商標)、DYSPORT(登録商標)、XEOMIN(登録商標)、及びJEUVEAU(登録商標)がある。これらの製品はすべて、安定性の観点から凍結乾燥又はフリーズドライの状態で保存されている。各製品が活性成分としてBoNT-Aを含有するにもかかわらず、各製品の活性、安定性、及び安全性は同じではない。反対に、これらの製品の多くは比較的変わりやすい活性、安定性、及び安全性を有し、それらすべては、前述した製品を投与する前に医師が再調製する必要があることからさらに複雑になっている。
【0006】
眼瞼下垂(eyelid ptosis)(「眼瞼下垂(blepharoptosis)」)は、多くのBoNT-A臨床試験での有害事象として記録されており、その発生率は治療群でばらつきがある。重要なことに、眼瞼下垂は、あらゆるプラセボ群では起こらなかったため、ボツリヌス毒素の注射に直接起因し得ることを示している。合計で8000名を超える患者での試験の検討では、眼瞼下垂率は約2.5%であることが分かった。具体的には、眼瞼下垂の発生率はBotox(3%)及びJeuveau(2%)について認められた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、現在、眼瞼下垂を発症しない、又は眼瞼下垂を発症させる頻度がより少なく、重度がより低い安全なボツリヌス神経毒製剤であって、好ましくは保存及び治療での使用に適した液体形態のボツリヌス神経毒製剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一般に、外眼角皺(LCL)、額皺、及び眉間皺(GL)等の皺(lines、wrinkles)を治療するボツリヌス神経毒の組成物及び方法に関する。
【0009】
一態様では、本開示は、低い眼瞼下垂リスクでヒト対象において顔面上部の皺(例えば、眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、額皺、又はそれらの組み合わせ)を治療する方法であって、ボツリヌス神経毒を含む液体組成物を治療有効量で対象に投与し、それによってGL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせの外観を軽減させることを含み、上記ボツリヌス神経毒は、酵素活性がより低い又は比活性がより低いボツリヌス神経毒製品より眼瞼下垂を発症させる可能性が低い、方法を提供する。言い換えれば、低い眼瞼下垂リスクでヒト対象において顔面上部の皺(例えば、眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、額皺、又はそれらの組み合わせ)を治療するためにボツリヌス神経毒を含む液体組成物であって、上記治療は、ボツリヌス神経毒を含む液体組成物を治療有効量で対象に投与し、それによって顔面上部の皺(例えば、GL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせ)の外観を軽減させることを含み、上記ボツリヌス神経毒は、酵素活性がより低い又は比活性がより低いボツリヌス神経毒製品より眼瞼下垂を発症させる可能性が低い、液体組成物が提供される。「酵素活性」という用語は、代替的に本明細書で「L鎖タンパク質分解活性」と呼ばれ得るが、例えば、ボツリヌス神経毒のL鎖が、標的(SNARE)タンパク質を切断するプロテアーゼドメインを含むことを示す。
【0010】
ボツリヌス神経毒を顔面上部の皺(先に記載したもの)を治療するために利用する場合、効力が比較的高い(例えば酵素活性が比較的高い、又は比活性が比較的高い)ボツリヌス神経毒が、効力が比較的低い(例えば酵素活性が比較的低い、又は比活性が比較的低い)ボツリヌス神経毒製品より眼瞼下垂を発症させる可能性が高いと予測され得ることから、この見解は驚くべきものである。ボツリヌス神経毒が意図した標的筋肉から近接する眼瞼の筋肉まで広がり、その弛緩性麻痺(下垂)を発症させる場合に眼瞼下垂が起こる。したがって、効力が比較的高いボツリヌス神経毒は、高い美容効果を達成するためには望ましかもしれないが、このようなアプローチの予想される弱点の1つは、上記ボツリヌス神経毒が眼瞼下垂を発症させる可能性がより高くなり得ることである。
【0011】
別の態様は、低い眼瞼下垂リスクでヒト対象において顔面上部の皺(例えば、眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、額皺、又はそれらの組み合わせ)を治療する美容方法であって、ボツリヌス神経毒を含む液体組成物を治療有効量で対象に投与し、それによって顔面上部の皺(例えば、GL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせ)の外観を軽減させることを含み、上記ボツリヌス神経毒は、酵素活性がより低い又は比活性がより低いボツリヌス神経毒製品より眼瞼下垂を発症させる可能性が低い、美容方法を提供する。
【0012】
別の態様は、対象の顔面上部の皺(例えば、GL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせ)を治療する方法であって、ボツリヌス神経毒(好ましくはボツリヌス神経毒を含む液体組成物)を治療有効量で対象に投与することを含み、上記顔面の皺の重症度は低減され、上記対象が経験する眼瞼下垂の発生率が低下する、方法を提供する。別の態様は、対象の顔面上部の皺(例えば、GL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせ)を治療する方法であって、ボツリヌス神経毒(好ましくはボツリヌス神経毒を含む液体組成物)を治療有効量で対象に投与することを含み、上記顔面の皺の重症度が低減され、上記対象が経験する眼瞼下垂の発生率は、酵素活性がより低い又は比活性がより低い代替的なボツリヌス神経毒製品で治療した対象における眼瞼下垂の発生率と比較して低下する、方法を提供する。言い換えれば、対象の顔面上部の皺(例えば、GL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせ)を治療するためのボツリヌス神経毒(好ましくはボツリヌス神経毒を含む液体組成物)であって、上記顔面の皺の重症度が低減され、上記対象が経験する眼瞼下垂の発生率が低下する、ボツリヌス神経毒を提供する。別の態様は、対象の顔面上部の皺(例えば、GL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせ)を治療するためのボツリヌス神経毒(好ましくはボツリヌス神経毒を含む液体組成物)であって、上記顔面の皺の重症度が低減され、上記対象が経験する眼瞼下垂の発生率は、酵素活性がより低い又は比活性がより低い代替的なボツリヌス神経毒製品で治療した対象における眼瞼下垂の発生率と比較して低下する、ボツリヌス神経毒を提供する。
【0013】
眉間皺を治療する場合、ボツリヌス神経毒は典型的には、皺眉筋の最大2か所及び鼻根筋の1か所に投与される。
【0014】
額皺を治療する場合、ボツリヌス神経毒は典型的には、前頭筋の最大5か所に投与される。
【0015】
外眼角皺を治療する場合、ボツリヌス神経毒は典型的には、眼輪筋の外側部分の最大3か所に投与される。
【0016】
顔面上部の皺は眉間皺であってもよい。顔面の皺は、中等度~重度の顔面の皺、例えば中等度の顔面の皺又は重度の顔面の皺であってもよい。眼瞼下垂の発生率は、1%未満、好ましくは0.9%以下であってもよい。眉間皺を治療するために投与されるボツリヌス神経毒の総用量(診察/受診/日当たり)は、40~60U(好ましくは50U)であってもよく、ここで1単位は、マウスにおいて算出した致死量(LD50)の中央値に相当するボツリヌス神経毒の量である。外眼角皺を治療するために投与されるボツリヌス神経毒の総用量(診察/受診/日当たり)は、50~70U(好ましくは60U)であってもよく、ここで1単位は、マウスにおいて算出した致死量(LD50)の中央値に相当するBoNT/Aの量である。
【0017】
いくつかの実施形態では、対象は重篤な有害事象を経験しない。いくつかの実施形態では、対象は、Botox Cosmetic(登録商標)、Xeomin(登録商標)、及びJeuveau(登録商標)より選択されるボツリヌス神経毒製品での治療と比較して眼瞼下垂を経験する可能性が低い。いくつかの実施形態では、酵素活性がより低いボツリヌス神経毒製品は、Botox Cosmetic(登録商標)、Xeomin(登録商標)、及びJeuveau(登録商標)より選択される。
【0018】
ボツリヌス神経毒は、約1.16BU/BoNTのボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性を有してもよい。さらに又はあるいは、本開示は、必要としているヒト対象において低い眼瞼下垂リスクで眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、額皺、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、ボツリヌス神経毒を含む液体組成物を治療有効量で対象に投与し、それによってGL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせの外観を軽減させることを含み、上記ボツリヌス神経毒は、約1.16BU/BoNTのボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性を有する、方法を提供する。ヒト対象は、ボツリヌス神経毒(例えば、1.16BU/BoNT未満のボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性、又は約2.0×108U/mg未満の比活性を有するボツリヌス神経毒製剤、例えばBotox Cosmetic(登録商標)、Xeomin(登録商標)、及びJeuveau(登録商標))を投与する際に眼瞼下垂を発症するリスクがあるか、又は発症する可能性が高いと考えられる対象であってもよい。ヒト対象はまた、ボツリヌス神経毒を投与する際に眼瞼下垂に罹患しており、及び/又は眼瞼下垂を発症した病歴を有する対象であってもよい。別の実施形態では、ヒト対象は、任意の用量又は酵素活性のボツリヌス神経毒を投与する際に(i)眼瞼下垂を発症するリスクがなく、(ii)眼瞼下垂に罹患しておらず、かつ/又は(iii)眼瞼下垂を発症した病歴を有していない対象ではない。
【0019】
液体組成物は、約97BU/ml以上の活性を有し得て、任意で、液体組成物は、約10のボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性を有し得る。別の態様では、本開示は、ヒト対象において眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、額皺、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、ボツリヌス神経毒を含む液体組成物を治療有効量で対象に投与し、それによってGL、LCL、額皺、又はそれらの組み合わせの外観を軽減させることを含み、(i)上記液体組成物は、約97BU/ml以上の活性を有し、任意で、上記液体組成物は、約10のボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性を有する、方法を提供する。
【0020】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体製剤は、約2.0×108U/総タンパク質mgのBoNT比活性を有し、比活性(U/mg)は、μBCA法(mg/ml)で決定されたタンパク質総量で除算したU/ml単位のマウスLD50効力を使用して任意に測定される。
【0021】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体製剤は、約1.16BU/BoNTのボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性を有し、ボツリヌス神経毒の酵素活性は、BOTESTTMを使用して任意に決定される。
【0022】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体製剤は、約1.20単位/BoNTのボツリヌス神経毒濃度で正規化された相対的効力を有し、ボツリヌス神経毒の酵素活性は、細胞ベースのアッセイを使用して決定される。
【0023】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体製剤は、ヒト又は動物由来の賦形剤を含まない。
【0024】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、眼瞼下垂の発生は2%未満であり得る。本明細書で言及される眼瞼下垂の百分率は、好ましくは、眼瞼下垂を示すコホート(例えば、少なくとも50名の患者のコホート)の患者の百分率に相当し、コホートの各患者は、BoNT製剤を投与される。これは、本明細書に記載の液体組成物が対象としたコホートに投与される場合、上記コホートの2%未満が眼瞼下垂を経験することを意味する。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、眼瞼下垂の発生は、2%未満、1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満、又は0.9%と同等に低い。例えば、眼瞼下垂の発生は1.0%以下であり得る。好ましくは、眼瞼下垂の発生は0.9%以下であり得る。したがって、代替的なボツリヌス神経毒製品(例えば、酵素活性がより低い又は比活性がより低いボツリヌス神経毒製品)での治療後の眼瞼下垂の発生は2%を超え得る。
【0025】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は眼瞼下垂を経験しない。
【0026】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、Botox Cosmetic(登録商標)、Xeomin(登録商標)、及びJeuveau(登録商標)より選択されるボツリヌス神経毒製品での治療と比較して眼瞼下垂を経験する可能性が低い。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、乾燥形態(例えば凍結乾燥粉末形態)で保存され、対象に投与するために再調製された代替的なボツリヌス神経毒製品での治療と比較して眼瞼下垂を経験する可能性が低い。
【0027】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、GL、LCL、又はそれらの組み合わせは中等度から重度である。
【0028】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、GL、LCL、又はそれらの組み合わせは重度又は最重度である。
【0029】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、ボツリヌス神経毒を含む液体組成物は、動物タンパク質又はコンパニオンタンパク質(companion protein)を含まない。
【0030】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、対象はGLのみが治療される。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、対象はLCLのみが治療される。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、対象はGL及びLCLの組み合わせが治療される。これらの実施形態のいずれでも、GL及び/又はLCLは、対象の顔の片側又は両側であってもよい。
【0031】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療は、Botox Cosmetic(登録商標)より高い奏効率を提供する。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、治療は、乾燥形態(例えば凍結乾燥粉末形態)で保存され、対象に投与するために再調製された代替的なボツリヌス神経毒製品より高い奏効率を提供する。
【0032】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体組成物は約4種の緩衝剤を含む。例えば、液体組成物は、約100~約300mMの濃度又は約0.1~10mg/mLの濃度で存在する第1の緩衝剤を含んでもよい。液体組成物は、約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度で存在する第2の緩衝剤を含んでもよい。液体組成物は、約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度で存在する第3の緩衝剤を含んでもよい。液体組成物は、約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度で存在する、第4の緩衝剤を含んでもよい。液体組成物は、約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度で存在する第5の緩衝剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、上記緩衝剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、及びリン酸二水素ナトリウム二水和物からなる群から選択される。
【0033】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体組成物は、アミノ酸であってもよい約1種の安定剤を含む。例えば、アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンからなる群より選択することができる。いくつかの実施形態では、アミノ酸はDアイソフォーム又はLアイソフォームである。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、約0.1~約3.0mg/mLの濃度で存在する。
【0034】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体組成物は、非イオン性界面活性剤であってもよい約1種の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、約0.01%(v/v)~約5.0%(v/v)の濃度又は約0.1~約3.0mg/mLの濃度で存在する。
【0035】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、ボツリヌス神経毒は、ボツリヌス神経毒A型、B型、C型、D型、E型、F型、及びG型からなる群より選択される。特に、ボツリヌス神経毒はボツリヌス神経毒A型であってもよい。
【0036】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体組成物のpHは6.6~6.9である。いくつかの実施形態では、pHは6.75又は約6.75であってもよい。
【0037】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、ボツリヌス神経毒は、約150kDaの分子量を有する。
【0038】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体組成物の浸透圧は270mosm/kg~310mosm/kgである。
【0039】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、1~100単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、10~75単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、25~75単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、10、25、30、45、50、60、75、又は90単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。
【0040】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、液体組成物は注射により投与される。注射は、例えば、皮下、経皮、皮内、又は筋肉内であってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、眉間領域に複数回注射される。いくつかの実施形態では、隣接する注射箇所が約0.5~約10cm離れている。いくつかの実施形態では、隣接する注射箇所が約1.5~約3cm離れている。いくつかの実施形態では、注射は、鼻根筋と顔の片側又は両側の皺眉筋とに行われる。いくつかの実施形態では、注射は、最初に鼻根筋に、続いて顔の片側又は両側の皺眉筋に、正中部から外側に移動して行われる。いくつかの実施形態では、すべての注射は、眼窩上縁の約1cm上で、瞳孔中心線に対して内側に行われる。いくつかの実施形態では、すべての注射は、眉毛の中央又は骨の眼窩上隆起の約1cm上に行われる。いくつかの実施形態では、対象は、外眼角の下に、眼輪筋の外側部分に、及び/又は眼窩縁から1~2cmのところに複数回注射される。いくつかの実施形態では、対象は、外眼角の下に、眼輪筋の外側部分に、及び/又は眼窩縁から1~2cmのところにさらに複数回注射される。
【0041】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、上記方法を約1ヶ月~約6ヶ月の間隔で繰り返して、GL、LCL、又はそれらの組み合わせの再発を抑制する。いくつかの実施形態では、上記再発を抑制するために、上記方法を約3ヶ月~約6ヶ月の間隔で繰り返す。いくつかの実施形態では、上記再発を抑制するために、上記方法を約4ヶ月の間隔で繰り返す。
【0042】
本開示はまた、本明細書に開示されたように対象において眉間皺及び/又は外眼角皺を治療するのに使用するためのボツリヌス神経毒を含む液体組成物を提供する。
【0043】
本開示はまた、本明細書に開示されたように眉間皺及び/又は外眼角皺を治療するためのボツリヌス神経毒を含む液体組成物の使用を提供する。
【0044】
以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的であるが、限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、MAS GLスケール(安静時)及びMAS GLスケール(動的)を示す。
【0046】
【
図2】
図2は、眉間皺の重症度スコアリングマトリクスを示す。
【0047】
【
図3】
図3は、経時的な眉間皺QM1114-DP試験の対象のILA奏効者率の結果を示す。
【0048】
【
図4】
図4は、経時的な眉間皺QM1114-DP試験の対象のグローバル美的改善スコア(GAIS)解析を示す。
【0049】
【
図5】
図5は、眉間皺QM1114-DP試験の安全性結果(関連有害事象)を示す。
【0050】
【
図6】
図6は、外眼角皺の重症度スコアリングマトリクスを示す。
【0051】
【
図7】
図7は、経時的な外眼角皺QM1114-DP試験の対象のILA奏効者率の結果を示す。
【0052】
【
図8】
図8は、経時的な外眼角皺QM1114-DP試験の対象のグローバル美的改善スコア(GAIS)解析を示す。
【0053】
【
図9】
図9は、外眼角皺QM1114-DP試験の安全性結果(関連有害事象)を示す。
【0054】
【
図10】
図10は、経時的な眉間皺のILA奏効者率の結果を示す。
【0055】
【
図11】
図11は、経時的な外眼角皺のILA奏効者率の結果を示す。
【0056】
【
図12】
図12は、グローバル美的改善スコア(GAIS)解析を示す。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【
図17】
図17は、BoTest
TMを使用して測定した酵素活性を示す。
【0062】
【
図18】
図18は、BoNT-A特異的ELISA(BOLISA
TM)で正規化されたBoTest
TMを使用して測定された比活性を示す。上段は、BoTest U/RBUである単位での比活性実験の1回の反復からの結果を示す。下段はU/pgを示す。
【0063】
【
図19】
図19は、BoNT-A濃度で正規化された細胞ベースのアッセイからの相対的効力を示す。
【0064】
【
図20】
図20は、UPLC-SECの主ピークにおける高レベルの純度(98%超)の製剤(QM-1114)を示す。
【0065】
【
図21】
図21は、検出可能な不純物が観察されないが、BoNT-A1から予想されるバンドのみ観察されたSDS-PAGE解析からの結果を示す。
【0066】
【
図22】
図22は、最大笑顔時のILA及びSLA評価に基づく1ヶ月目のLCLの複合2等級奏効者を示す。QM-1114で治療した26名の対象及びプラセボで治療した4名の対象に対して1ヶ月目の評価をリモートで行い、この解析には含めなかった。CMH、コクランマンテルヘンツェル;ILA、治験責任医師ライブ評価;LCL、外眼角皺;SLA、対象ライブ評価。
【0067】
【
図23】
図23は、治療効果の発現時間を示す。具体的には、対象の日記に基づいたLCL治療の開始に対する時間。
【0068】
【
図24】
図24は、最大笑顔時の治験責任医師評価に基づいた奏効者率を示す。
【0069】
【
図25】
図25は、最大笑顔時の治験責任医師報告型奏効者率がLCL重症度で1等級以上の改善であったことを示す。
【0070】
【
図26】
図26は、外眼角皺(LCL)が治療後にベースラインスコアまで戻る時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本開示に従う実施形態は、以下により十分に記載される。しかしながら、本開示の態様は、異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に明記された実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。本明細書の記載において使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず、限定することは意図していない。
【0072】
別段文脈が示さない限り、本明細書に記載の方法の様々な特徴が任意の組み合わせで使用され得ることが具体的に意図されている。また、本開示は、いくつかの実施形態では、本明細書に明記された任意の特徴又は特徴の組み合わせが除外又は省略され得ることも企図している。説明すると、本明細書において、方法が工程A、B、及びCを含むと述べられている場合、A、B、若しくはCのいずれか、又はそれらの組み合わせが、単独又は任意の組み合わせで省略及び放棄されてもよいことが具体的に意図されている。
【0073】
別段明示的に示されない限り、すべての特定の実施形態、特徴、及び用語は、記載された実施形態、特徴、又は用語、及びそれらの生物学的等価物を含むことを意図している。
【0074】
I.定義
本明細書で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、単数形のみを示すことが明確に述べられない限り、単数形及び複数形の両方を表す。
【0075】
常に明示されないものの、すべての数値的指定には「約」という用語が先行することを理解されたい。「約」という用語は、包含される数が、本明細書に明記された数きっかりに限定されず、本発明の範囲から逸脱することがない限り、記載された数の実質的に付近にある数を指すことを意図していることを意味する。本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈である程度変動する。この用語の使用が、それが使用される文脈を考慮して当業者にとって明確ではない場合、「約」は、特定の用語の最大でプラスマイナス15%、10%、5%、1%、又は0.1%までを意味する。
【0076】
また、本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ以上のありとあらゆる可能性のある組み合わせの他、代替案(「又は」)で解釈される場合、組み合わせの欠如も指し、それらを包含する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与」、又は「投与すること」は、(1)例えば医療従事者又はその者の委任代理人のいずれかによって、あるいはその者の指導によって、提供し、与え、投薬し、かつ/又は処方すること、及び(2)例えば医療従事者又は対象によって、取り入れるか、服用するか、又は消費することを指す。投与は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内注射若しくは注入、皮下注射、又は移植)、経鼻の吸入噴霧、腟内、直腸内、舌下、尿道(例えば尿道坐剤)、あるいは局所投与経路(例えば、ゲル、軟膏、クリーム、エアロゾル等)による投与を非限定的に含むものとし、各投与経路に適切な従来の無毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、及びビヒクルを含む好適な投薬量単位製剤で単独で又は一緒に製剤化することができる。本発明は、投与経路、処方、又は投薬計画によって限定されない。本明細書で開示される医薬組成物は「局所投与される」(局所投与)、すなわち、治療の結果が望まれる部位又はその近傍に投与される。投与は、所定の患者の必要に応じて、片側又は両側であってもよい。
【0078】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、眉間皺(GL)及び/又は外眼角皺(LCL)又はそれらの1つ以上の症状の外観を軽減させる又は改善することを含み、GL又はLCLが「治った」又は「除かれた」と見なされるか否かに関わらず、かつすべての症状が解消されるか否かに関わらない。これらの用語はまた、GL、LCL、及び/又はそれらの1つ以上の症状の進行を抑制又は予防すること、並びに治療的及び/又は予防的利益を達成することも含む。
【0079】
「ボツリヌス毒素」という用語は、純粋な毒素(すなわち、分子量約150kDaの神経毒成分)として、又はボツリヌス毒素複合体(分子量約300~約900kDa)としてのボツリヌス神経毒A型、B型、C型、D型、E型、F型、又はG型を意味し、組換え、キメラ、ハイブリッド、リターゲッティング、及びアミノ酸配列改変ボツリヌス神経毒を含むが、細胞傷害性ボツリヌス毒素C2及びC3等の神経毒ではないボツリヌス毒素は含まない。
【0080】
「局所投与」とは、非全身的な経路によって医薬剤を標的組織、筋肉、若しくは皮下、又はその近傍に投与すること(すなわち、皮下(subcutaneous)、筋肉内、皮下(subdermal)、皮内、皮下(subcutaneous)、器官内(例えば、膀胱壁や前立腺体内に注入)、又は経皮経路による投与)を意味する。したがって、局所投与は、静脈内投与や経口投与等の全身的な(すなわち血液循環系への)投与経路を除く。末梢投与とは、内臓又は腸(すなわち内臓への)投与とは対照的に、周辺部(すなわち、患者の顔、四肢、体幹、又は頭部の表面又は内部)への投与を意味する。
【0081】
「医薬組成物」とは、活性成分(活性剤)がボツリヌス神経毒であり得る製剤を意味する。「製剤」とは、活性剤の他に少なくとも1種の追加成分が医薬組成物に存在することを意味する。したがって、医薬組成物は、ヒトの患者等の対象への美容的、診断的、又は治療的な投与(すなわち、皮下又は筋肉内注射)に適した製剤である。
【0082】
「有効量」とは、眉間皺及び/又は外眼角皺を薄くしたり、滑らかにしたり、伸ばしたりする等の有益な又は望ましい結果をもたらすのに十分な量である。本明細書で使用される有効量は、眉間皺又は外眼角皺の形成が悪化することを防止するか、又は既存の眉間皺の形成を逆進させるのに十分な量も含むであろう。したがって、正確な「有効量」を特定することはできない。有効量は、1回以上の投与、塗布、又は投薬で投与することができる。このような送達は、個々の投与量単位が使用される期間、薬剤の投与場所、眉間皺の重症度、投与経路等を含む多くの変数に依存する。しかし、特定の対象に対する本開示の治療剤の特定の用量レベルは、採用された特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、及び食事、投与時間、排泄率、薬剤の組み合わせ、及び治療される特定の障害の重症度と投与形態を含む様々な要因に依存することが理解される。治療投与量は一般的に、安全性と有効性を最適化するために調整することができる。投与量は、医師によって決定され、必要に応じて、治療の観察された効果に合わせて調整することができる。好ましくは、有効量は副作用(例えば眼瞼下垂)を発症させない。
【0083】
II.BoNTの液体組成物
本明細書では、ボツリヌス神経毒(BoNT)及び緩衝剤を含む液体組成物であって、液体として保存するのに適しており、さらに再調製又は混和することなく眉間皺の治療に適している液体組成物が提供される。言い換えれば、開示された液体組成物は、「すぐに使える」ものであり、現在市販されている他のBoNT製品とは異なり、あらゆる種類の特殊な調製を必要としない。したがって、本発明の液体組成物は、乾燥形態(例えば凍結乾燥粉末形態)で保存され、対象に投与するために再調製する必要がある代替的なボツリヌス神経毒製品と対照的であり得る。
【0084】
ボツリヌス神経毒(BoNT)は、100kDaの重鎖と50kDaの軽鎖とからなる150キロダルトン(kDa)のタンパク質二量体である。この2つの鎖は、2つのシステイン残基のジスルフィド結合で結ばれている。軽鎖は、25kDaのシナプトソーム関連タンパク質(SNAP-25)を切断する酵素である。重鎖は、毒素タンパク質の結合と内在化を仲介する。他の市販のBoNTとは異なり、本液体組成物(その例示的実施形態は本明細書ではQM1114と呼ばれる)中のボツリヌス神経毒は、液体形態で安定しており、使用前に再調製又は混和する必要はない。いくつかの実施形態では、液体組成物に処方されるBoNTはボツリヌス神経毒A型(BoNT-A1)である。実施例に概説されるように、本液体組成物の例示的実施形態はヒト臨床試験で調査されたが、QM1114(又はQM1114-DP)と呼ばれる。したがって、QM1114は、以下にその賦形剤及び特性を参照してより詳細に説明する本発明の液体組成物の代表的な実施形態である。
【0085】
また、本開示のために、液体組成物(例えばQM1114)は、いかなるヒト又は動物由来の賦形剤も含まず、このような製剤は、濾過及び/又はクロマトグラフィーを使用して高レベルの純度で全体として動物質を含まないプロセスを用いて製造することができる。プロセスは、沈殿の工程又は凍結乾燥を含まなくてもよい。製剤は、中性又はほぼ中性のpH(例えば、6.5、6.6、6.7、6.75、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5のpH)を有してもよい。いくつかの実施形態では、pHは約6.75であってもよい。
【0086】
液体組成物(例えばQM1114)の比活性は、競合製品と同じくらい高いか、又はそれよりも高い。比活性は、ある特定の量の毒素がどのくらい活性であるかを指し得るが、活性の測定値(例えば、細胞ベースの効力アッセイ又はBOTESTTM)を活性の測定中に存在する酵素の量の測定値(例えばBOLISA(登録商標))で除算することによって確認することができる。例えば、BoNT比活性は、約1.5×108、約1.6×108、約1.7×108、約1.8×108、約1.9×108、約2.0×108、約2.1×108、約2.2×108、約2.3×108、約2.4×108、又は約2.5×108U/総タンパク質mg以上であり得るが、比活性(U/mg)は、μBCA法で決定されたタンパク質総量(mg/ml)で除算したU/ml単位のマウスLD50効力を使用して測定される。いくつかの実施形態では、比活性は約2.0×108U/総タンパク質mgであり得る。いくつかの実施形態では、開示された液体組成物(例えばQM1114)は、Botox Cosmetic(登録商標)、Xeomin(登録商標)、及びJeuveau(登録商標)等の他の臨床BoNT製剤より高い比活性を有する。いくつかの実施形態では、開示された液体組成物(例えばQM1114)は、乾燥形態(例えば凍結乾燥粉末形態)で保存され、対象に投与するために再調製する必要がある他の臨床BoNT製剤より高い比活性を有する。
【0087】
液体組成物(例えばQM1114)は、ナトリウムイオン、塩化物イオン、及び/又はリン酸イオンを含む緩衝剤を含み得る。このようなイオンの添加は通常、緩衝塩の添加によって行われる。いくつかの実施形態では、製剤は、生理食塩水リン酸緩衝液を含んでもよく、いくつかの実施形態では、ヒト又は動物由来の賦形剤は存在しなくてもよい。
【0088】
例えば、液体組成物(例えばQM1114)は、少なくとも1種の塩化物イオン源、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、又は別の塩化物イオン源を約100~約300mMの濃度、例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、若しくは300mMの濃度で含んでいてもよく、又は約1~約25mMの濃度、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mMの濃度で含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物(例えばQM1114)は、複数の塩化物イオン源を同じ又は異なる濃度で含んでいてもよく、例えば、塩化ナトリウム又は別のナトリウム若しくは塩化物イオン源を約100~約300mMの濃度、例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300mMの濃度で、塩化カリウム又は別の塩化物イオン源を約1~約25mMの濃度、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mMの濃度で含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、1種以上のナトリウム/塩化物イオン源は、約0.1~10mg/mLの範囲の同じ又は異なる濃度、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、若しくは10mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で存在していてもよい。
【0089】
さらに又はあるいは、液体組成物(例えばQM1114)は、少なくとも1種のリン酸イオン源、例えばリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、又は別のリン酸イオン源を約1~約50mM又は約5~約15mMの濃度、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50mMの濃度で含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物は、複数のリン酸イオン源を同じ又は異なる濃度で含んでいてもよく、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、又は別のリン酸イオン源を約1~約50mM又は約5~約15mMの濃度、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50mMの濃度で、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、又は別のリン酸イオン源から選択される異なるリン酸イオン源を約1~約50mM又は約5~約15mMの濃度、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50mMの濃度で含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、1種以上のリン酸イオン源は、約0.1~1.0mg/mLの範囲の同じ又は異なる濃度、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、若しくは1.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で存在してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、液体組成物(例えばQM1114)は、1~5種以上の緩衝剤を含んでいてもよい。したがって、液体組成物(例えばQM1114)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物を含むがこれらに限定されない1、2、3、4、又は5種以上の緩衝剤を含んでもよい。1、2、3、4、又は5種以上の緩衝剤は、同じ又は異なる濃度で存在してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第1の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物)は、約100~約300mMの濃度、例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300mMの濃度で存在してもよく、又は約0.1~10mg/mLの濃度、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、若しくは10mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、第2の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物)は、約1~約25mMの濃度、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mMの濃度で存在してもよく、又は約0.1~1.0mg/mLの濃度、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、若しくは1.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、第3の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物)は、約1~約25mMの濃度、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mMの濃度で存在してもよく、又は約0.1~1.0mg/mLの濃度、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、若しくは1.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、第4の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物)は、約1~約25mMの濃度、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mMの濃度で存在してもよく、又は約0.1~1.0mg/mLの濃度、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、若しくは1.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、第5の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物)は、約1~約25mMの濃度、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25mMの濃度で存在してもよく、又は約0.1~1.0mg/mLの濃度、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、若しくは1.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で存在してもよい。
【0091】
組成物の安定性又は他の特性を改善するために、他の成分が液体組成物に含まれてもよい。例えば、適用可能な安定剤としては、アミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リジンヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸)、亜硫酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム又は他のクエン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、疎水性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)であってもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸はDアイソフォームであってもよく、いくつかの実施形態では、アミノ酸はLアイソフォームであってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、液体組成物は、少なくとも1種のD-又はL-アミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リジンヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸)を約0.1~約3.0mg/mL、約0.5~約2.5mg/mL、又は約0.75~約2.25mg/mLの濃度で含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物は、少なくとも1種のD-又はL-アミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リジンヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸)を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物は、少なくとも1種のD-又はL-アミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リジンヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸)を約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、若しくは約3.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で含んでいてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、液体組成物(例えばQM1114)は、1種以上の界面活性剤(例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20)又はノノキシノールのような非イオン性界面活性剤;ドキュセートのようなアニオン性界面活性剤;又は第四級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤)をさらに含んでもよい。したがって、いくつかの実施形態では、液体組成物は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20)又はノノキシノールを含むがこれらに限定されない非イオン性界面活性剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物は、ドキュセートを含むがこれに限定されないアニオン性界面活性剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物は、第四級アンモニウム塩を含むがこれに限定されないカチオン性界面活性剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約0.01%(v/v)~約5.0%(v/v)、約0.05%(v/v)~約2.5%(v/v)、又は約0.1%(v/v)~約1.5%(v/v)の濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、若しくは5.0%(v/v)、又はその間の任意の値の濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、約0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、若しくは約5.0%(v/v)、又はその間の任意の値の濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、若しくは約3.0mg/mL、又はその間の任意の値の濃度で含んでいてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、液体組成物は、1種以上の乳化剤(例えば大豆レシチン)、湿潤剤、賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、及びデンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L-ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びセルロースカルシウムグリコレート等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム等)、膨潤剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、及びグァーガム等)、膨潤アジュバント(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸塩、及びアルギニン等)、及び/又は可溶化剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等)をさらに含んでいてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、液体組成物は、1~5種以上の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物);1種以上の安定剤(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リジンヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸);及び1種以上の界面活性剤(例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20)又はノノキシノールのような非イオン性界面活性剤;ドキュセートのようなアニオン性界面活性剤;又は第四級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、液体組成物は、(i)約100~約300mMの濃度又は約0.1~10mg/mLの濃度の第1の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物);(ii)約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度の第2の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物);(iii)約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度の第3の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物);(iv)約1~約25mMの濃度又は約0.1~1.0mg/mLの濃度の第4の緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、又はリン酸二水素ナトリウム二水和物);(v)約0.1~約3.0mg/mLの濃度の1種以上の安定剤(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リジンヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸、又はグルタミン酸);及び(vi)約0.05%(v/v)~約2.5%(v/v)の濃度又は約0.1~約3.0mg/mLの濃度の1種以上の界面活性剤(例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20)又はノノキシノールのような非イオン性界面活性剤;ドキュセートのようなアニオン性界面活性剤;又は第四級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、安定剤はアミノ酸であってもよく、いくつかの実施形態では、界面活性剤はポリソルベート等の非イオン性界面活性剤であってもよい。本開示のために、QM1114-医薬品(本明細書で「QM1114-DP」又は単に「QM1114」とも呼ばれる)が前述の実施形態のいずれか又は以下の実施形態のいずれかを例示し得ることを理解すべきである。
【0095】
液体組成物(例えばQM1114)は、5.5~8のpHを有してもよい。いくつかの実施形態では、pHは6.0~7.5、例えば、約6.3、6.35、6.4、6.45、6.5、6.55、6.6、6.65、6.7、6.75、6.8、6.85、6.9、6.95、7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、7.4、7.45、又は7.5である。いくつかの実施形態では、pHは6.6~6.9である。好ましくは、液体組成物は水性希釈剤、より好ましくは水、例えば滅菌水、注射用水、精製水、及び注射用滅菌水を含む。
【0096】
液体組成物は、保存時に安定なBoNTの液体製剤を提供するために、(例えばBoNTに加えて)以下の成分:
a.100~300mMの濃度のNaCL、及び1~25mMの濃度のKClより選択される塩化物イオン源;
b.1~50mMの濃度の、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、及びリン酸二水素ナトリウム二水和物より選択される複数のリン酸イオン源;
c.0.01~5%(v/v)の濃度の非イオン性界面活性剤;並びに
d.0.1~3mg/mlの濃度の、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンより選択されるアミノ酸安定剤
を含んでいてもよい。
【0097】
本発明に係る液体組成物は、トリプトファン及び/又はチロシンであるアミノ酸を含んでもよい。理論に拘束されることを望むわけではないが、トリプトファン及び/又はチロシンが、活性タンパク質を機能しないようにし得る該タンパク質の酸化を防止することができると仮定される。実際、神経毒よりモル過剰で添加したアミノ酸が最初に酸化され、神経毒が保持されると考えられる。トリプトファン又はチロシンが、ポリソルベート等の界面活性剤の反応分解生成物を中和することができるとも仮定される。好ましくは、アミノ酸はトリプトファンである。より好ましくは、アミノ酸はL-トリプトファンである。
【0098】
アミノ酸濃度は、約0.1~5mg/ml、例えば0.1~5mg/ml、0.25~3mg/ml、例えば、約0.25、0.5、1、1.5、2、又は3mg/mlであり得る。好ましくは、アミノ酸(例えばトリプトファン及び/又はチロシン)濃度は0.5mg/mlより大きい。例えば、アミノ酸濃度は、下限が0.5mg/mlより大きく、上限が1、1.5、2、3、4、5、6、7、又は8mg/mlであり得る。有利には、5mg/mlより大きい濃度は僅少濃度のアミノ酸を表し得るが、その濃度にわたって安定化効果が特に優勢になり得る。参照によって本明細書に組み込まれるWO2017/203038A1の実施例を参照のこと。
【0099】
液体組成物は経時的に安定であり得る。例えば、液体組成物は2~8℃で2ヶ月間安定であり得る。一実施形態によると、液体組成物は2~8℃、例えば5℃で3ヶ月間安定である。好ましい実施形態によると、液体組成物は2~8℃、例えば5℃で6ヶ月間安定である。一実施形態によると、液体組成物は2~8℃、例えば5℃で12ヶ月間安定である。一実施形態によると、液体組成物は2~8℃、例えば5℃で18ヶ月間安定である。一実施形態によると、液体組成物は2~8℃、例えば5℃で24ヶ月間安定である。一実施形態によると、液体組成物は2~8℃、例えば5℃で36ヶ月間安定である。一実施形態によると、液体組成物は室温、例えば25℃で3ヶ月間安定である。一実施形態によると、液体組成物は室温、例えば25℃で6ヶ月間安定である。一実施形態によると、37℃で2ヶ月間安定である。
【0100】
安定性は、経時的にボツリヌス神経毒の活性を比較することによって評価することができる。ボツリヌス神経毒の活性は、ボツリヌス神経毒が細胞上のその標的受容体に結合し、細胞内に軽鎖を移行させ、かつ/又はその標的SNAREタンパク質を切断する活性の能力を指し得る。ボツリヌス神経毒活性を測定するための方法は当該技術分野で周知である。ボツリヌス神経毒活性は、例えば、上記に記載されたようなマウス致死アッセイ(LD50)、マウス横隔神経片側横隔膜アッセイ等の筋肉組織ベースのアッセイ(例えば、Bigalke,H.and Rummel A.,Toxins 7.12(201S):489S-490Sに記載)、細胞ベースのアッセイ(例えば、WO201349508若しくはWO2012166943に記載)、又はBoTest(登録商標)(BioSentinel社から入手可能なボツリヌス神経毒検出キット)等の細胞外タンパク質分解活性アッセイを使用することによって評価することができる。
【0101】
好ましくは、本発明に係る組成物は、所定の期間にわたって所定の温度で所定の活性損失率以下である場合に安定であると考えられる。
【0102】
一実施形態によると、本発明に係る組成物は、3、6、12、18、24、又は36ヶ月間にわたって2~8℃で細胞外タンパク質分解活性の損失が30%以下、例えば6ヶ月間にわたって5℃で細胞外タンパク質分解活性の損失が30%以下である場合に安定であると考えられる。好ましくは、本発明に係る組成物は、3ヶ月間にわたって5℃で、より好ましくは6、12、18、24、又は36ヶ月間にわたって5℃で細胞外タンパク質分解活性の損失が20%以下である場合に安定であると考えられる。別の実施形態によると、本発明に係る組成物は、3ヶ月間にわたって室温、例えば25℃で細胞外タンパク質分解活性の損失が40%以下である場合に安定であると考えられる。好ましくは、本発明に係る組成物は、3ヶ月間にわたって25℃で、より好ましくは6ヶ月間にわたって25℃で細胞外タンパク質分解活性の損失が30%以下である場合に安定であると考えられる。別の実施形態によると、本発明に係る組成物は、2ヶ月間にわたって37℃で細胞外タンパク質分解活性の損失が50%以下である場合に安定であると考えられる。細胞外タンパク質分解活性は、BoTest(登録商標)アッセイで測定することができる。
【0103】
一実施形態によると、本発明に係る組成物は、2、3、6、12、18、24、又は36ヶ月間にわたって2~8℃でMLD50単位の損失が30%以下、例えば6ヶ月間にわたって5℃でMLD50単位の損失が30%以下である場合に安定であると考えられる。好ましくは、本発明に係る組成物は、2ヶ月間にわたって5℃で、より好ましくは3、6、12、18、24、又は36ヶ月間にわたって5℃でMLD50単位の損失が20%以下である場合に安定であると考えられる。別の実施形態によると、本発明に係る組成物は、2ヶ月又は3ヶ月間にわたって室温、例えば25℃でMLD50単位の損失が40%以下である場合に安定であると考えられる。好ましくは、本発明に係る組成物は、3ヶ月間にわたって25℃で、より好ましくは6ヶ月間にわたって25℃でMLD50単位の損失が30%以下である場合に安定であると考えられる。別の実施形態によると、本発明に係る組成物は、2ヶ月間にわたって37℃でMLD50単位の損失が50%以下である場合に安定であると考えられる。MLD50単位は、上記に示したように測定することができる。
【0104】
液体組成物は、患者、特にヒト患者への注射に適したものであり得る。ボツリヌス神経毒の量は一般的に、マウスの腹腔内致死量の中央値として定義されるマウスLD50(致死量50)単位で表される。ボツリヌス毒素のマウスLD50(MLD50)単位は標準化された単位ではない。実際、市販されている毒素のメーカーごとに使用されているアッセイは、特に希釈緩衝液の選択において異なっている。例えば、BOTOX(登録商標)に使用される試験では、生理食塩水が希釈剤として使用されている。ゼラチン緩衝液は、LD50アッセイで使用される高希釈において毒素を保護すると考えられている。一方、生理食塩水を希釈剤として使用すると、効力が幾分失われると考えられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、マウスLD50を決定するために使用される希釈緩衝液はゼラチンリン酸緩衝液である。例えば、マウスLD50は、Hambleton,P.et al.Production,purification and toxoiding of Clostridium botulinum type A toxin.Eds.G.E.Jr Lewis,and P.S.Angel.Academic Press,Inc.,New York,USA,1981,p.248に記載されているように決定することができる。簡単にいうと、ボツリヌス毒素試料を0.2%(w/v)ゼラチン0.07M Na2HPO4緩衝液(pH6.5)に連続的に段階希釈する。体重約20gのマウス群(例えば、1群当たり4~8匹)に、希釈した毒素の試料(例えば、1匹当たり0.5ml)を腹腔内に注射する。50%致死量に及ぶように希釈群、例えば5つの希釈群を選択する。マウスを最大72時間観察し、マウス致死量50(MLD50)を推定する。
【0106】
本発明に係る液体組成物は、好ましくは1mL当たり4~10000LD50単位のボツリヌス神経毒を含み、より好ましくは1mL当たり10~200LD50単位のボツリヌス神経毒を含み、例えば1mL当たり10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200LD50単位のボツリヌス神経毒を含む。ボツリヌス神経毒の量は、ngで表すこともできる。
【0107】
本発明に係る液体組成物は、200~400mosm/kg、好ましくは270~310mosm/kg、例えば、270、275、280、285、290、295、300、305、若しくは310mosm/kg、又はその間の任意の値の浸透圧を有する。
【0108】
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- 1ml当たり4~10000LD50単位のボツリヌス神経毒、
- 0.001~15%v/vのポリソルベート、
- 0.1~5mg/mlのトリプトファン、
- 10~500mMのNaCl、
- 1~50mMのKCl、
- 1~100mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
5.5~8のpHを有し、5℃で2ヶ月間(例えば6ヶ月間)安定である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- 1ml当たり4~10000LD50単位のボツリヌス神経毒、
- 0.001~15%v/vのポリソルベート、
- 0.1~5mg/mlのトリプトファン、
- 10~500mMのNaCl、
- 1~50mMのKCl、
- 1~100mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
5.5~8のpHを有し、5℃で2ヶ月間(例えば6ヶ月間)安定である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- 1ml当たり10~2000LD50単位のボツリヌス神経毒、
- 0.005~2%v/vのポリソルベート、
- 0.1~5mg/mlのトリプトファン、
- 25~300mMのNaCl、
- 1~10mMのKCl、
- 2~50mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
6.0~7.5のpHを有し、5℃で12ヶ月間安定である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- 1ml当たり10~2000LD50単位のボツリヌス神経毒、
- 0.005~2%v/vのポリソルベート、
- 0.1~5mg/mlのトリプトファン、
- 25~300mMのNaCl、
- 1~10mMのKCl、
- 2~50mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
6.0~7.5のpHを有し、5℃で12ヶ月間安定である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- 1ml当たり10~2000LD50単位のボツリヌス神経毒、
- 0.05~0.2%v/vのポリソルベート80、
- 0.1~5mg/mlのトリプトファン、
- 25~300mMのNaCl、
- 1~10mMのKCl、
- 2~50mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
6.0~7.5のpHを有し、5℃で12ヶ月間安定である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- 1ml当たり10~2000LD50単位のボツリヌス神経毒、
- 0.05~0.2%v/vのポリソルベート80、
- 0.1~5mg/mlのトリプトファン、
- 25~300mMのNaCl、
- 1~10mMのKCl、
- 2~50mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
6.0~7.5のpHを有し、5℃で12ヶ月間安定である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.2%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.6である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.2%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.6である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.04%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.9である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.04%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.9である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒B、
- 0.25%v/vのポリソルベート20、
- 4mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.4である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒B、
- 0.25%v/vのポリソルベート20、
- 4mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.4である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.01%v/vのポリソルベート80、
- 0.25mg/mlのトリプトファン、
- 255mMのNaCl、
- 2mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.2である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.01%v/vのポリソルベート80、
- 0.25mg/mlのトリプトファン、
- 255mMのNaCl、
- 10mMのKCl、
- 50mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.3である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 1%v/vのポリソルベート80、
- 0.25mg/mlのトリプトファン、
- 255mMのNaCl、
- 50mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.3である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 1%v/vのポリソルベート80、
- 3mg/mlのトリプトファン、
- 255mMのNaCl、
- 10mMのKCl、
- 50mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.2である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 1%v/vのポリソルベート80、
- 3mg/mlのトリプトファン、
- 255mMのNaCl、
- 10mMのKCl、
- 50mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.2である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.1%v/vのポリソルベート80、
- 1.625mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.75である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.1%v/vのポリソルベート80、
- 1.625mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.75である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.01%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.75である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.01%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.75である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.1%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.75である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 0.1%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.75である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 1%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.75である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒A、
- 1%v/vのポリソルベート80、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約6.75である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒B、
- 15%v/vのポリソルベート20、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.4である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒B、
- 15%v/vのポリソルベート20、
- 1mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.4である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒B、
- 15%v/vのポリソルベート20、
- 4mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.4である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒B、
- 15%v/vのポリソルベート20、
- 4mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.4である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒B、
- 0.25%v/vのポリソルベート20、
- 4mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸ナトリウム
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.4である。
一実施形態によると、本発明に係る液体組成物は、
- ボツリヌス神経毒B、
- 0.25%v/vのポリソルベート20、
- 4mg/mlのトリプトファン、
- 140mMのNaCl、
- 3mMのKCl、
- 10mMのリン酸水素二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム二水和物
を含むか、又はそれらから本質的になっていてもよく、
上記組成物のpHは約7.4である。
【0109】
BoNTの酵素活性はまた、最適化した反応緩衝液中のBoNTタンパク質分解活性の検出を提供するアッセイであるBOTESTTM(例えば、BOTESTTMマトリクスAボツリヌス神経毒検出キット;BioSentinel製のカタログ番号A1015)によって決定することができる。BOTESTTMの意図した用途としては、BoNT医薬製剤の定量化及び特性評価、創薬、ハイスループットスクリーニング用途、及び検出用途が挙げられる。BOTESTTMは、BoNT/A及びEの天然に存在する基質であるSNAP-25の残基141~206からなるレポーターを含む。基質は、2種の蛍光タンパク質であるシアン蛍光タンパク質(CFP)誘導体及び黄色蛍光タンパク質(YFP)誘導体の間に挟まれる。CFP及びYFP部分はドナー/アクセプターフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)対を形成する。BoNTのための基質によって分離されたFRETドナー/アクセプター対の使用により、BoNTタンパク質分解活性の検出が可能になる。BoNTの不在下では、レポーターは無傷であり、CFP及びYFP部分は近接している。CFPが励起されると、FRETによってYFPにエネルギー移動が起こる。結果として、CFP発光は消光し、YFPはFRETによって蛍光を発する。BoNTの存在下では、レポーターがBoNTのタンパク質分解活性によって切断される。CFP及びYFP部分は物理的に分離され、FRETはもはや生じることはない。CFP発光は回復し、YFP発光は減少する。このように、BOTESTTMは、BoNTによって特異的に切断された場合にレシオメトリック応答をもたらす蛍光レポーターを利用しており、これにより、相対蛍光単位(RFU)又は発光比としてのアウトプットが提供される。これらのアウトプットを使用して、ボツリヌス単位(「BU」、酵素単位「U」若しくは国際単位「IU」と同義であり得る)/ml又はBU/BoNT濃度(例えばmg)を算出することができる。言い換えれば、BoNTの酵素活性は、最適化した反応緩衝液中のBoNTタンパク質分解活性の検出を提供するものなど、第1の細胞ベースのアッセイによって決定することもできる。このような第1の細胞ベースのアッセイは、BoNT/A及びEの天然に存在する基質であるSNAP-25の残基141~206からなるレポーターを含む。基質は、2種の蛍光タンパク質であるシアン蛍光タンパク質(CFP)誘導体及び黄色蛍光タンパク質(YFP)誘導体の間に挟まれる。CFP及びYFP部分は、ドナー/アクセプターフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)対を形成する。BoNTのための基質によって分離されたFRETドナー/アクセプター対の使用により、BoNTタンパク質分解活性の検出が可能になる。BoNTの不在下では、レポーターは無傷であり、CFP及びYFP部分は近接している。CFPが励起されると、FRETによってYFPにエネルギー移動が起こる。結果として、CFP発光は消光し、YFPはFRETによって蛍光を発する。BoNTの存在下では、レポーターはBoNTのタンパク質分解活性によって切断される。CFP及びYFP部分は物理的に分離され、FRETはもはや生じることはない。CFP発光は回復し、YFP発光は減少する。このように、第1の細胞ベースのアッセイは、BoNTによって特異的に切断された場合にレシオメトリック応答をもたらす蛍光レポーターを利用しており、これにより、相対蛍光単位(RFU)又は発光比としてのアウトプットが提供される。これらのアウトプットを使用して、ボツリヌス単位(「BU」、酵素単位「U」若しくは国際単位「IU」と同義であり得る)/ml又はBU/BoNT濃度(例えばmg)を算出することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、製剤の活性又は比活性は、BOTESTTMマトリクスAボツリヌス神経毒検出キット(BioSentinel製のカタログ番号A1015)を使用して確認することができる。BOTESTTMマトリクスAボツリヌス神経毒(BoNT)検出キットは、血清、血液、食物、水、細菌上清、及び医薬試料等の複合的マトリクス中のBoNT血清型A(BoNT/A)の検出及び定量化のためのin vitroアッセイである。BOTESTTMマトリクスAキットは、2種の一次試薬であるマトリクスAビーズ及びBOTESTTMA/Eレポーターからなる。マトリクスAビーズは、100μl~50mlのサイズ範囲である試料から複合的マトリクス中のBoNT/A複合体又はホロトキシンを捕捉、濃縮、及び単離する。そして、BOTESTTMA/Eレポーターは捕捉したBoNT/Aの量を検出し、BoNT/Aの活性及び量の評価を提供する。マトリクス組成物及び試料サイズに応じて、ピコモル感度は3時間未満で達成でき、フェムトモル感度は24時間で達成できる。マトリクスAビーズは、商標や特許で保護された磁気ビーズに共有結合した抗BoNT/A抗体からなる。これらのビーズをBoNT/Aを含む試料に添加し、インキュベートすることで、BoNT/A結合が生じる。BoNT/A活性の決定を妨げかねない干渉化合物は、マトリクスAビーズを洗浄することによって除去される。BOTESTTMA/Eレポーターは、タンパク質分解BoNTの天然に存在する基質をモデルとしており、BoNT/Aのエンドペプチダーゼ活性を検出する。BOTESTTMA/Eレポーターは、SNAP-25のアミノ酸141~206を含み、BoNT/Aの非活性結合部位と切断部位の両方を包含する。レポーターは、BoNT/Aに対して親和性が高く、マトリクスAビーズに結合したBoNT/Aと共にインキュベートすると、迅速かつ高感度にBoNT/Aタンパク質分解活性を検出する。このキットに好適な1つのプロトコルを以下の実施例で説明する。言い換えれば、製剤の活性又は比活性は、血清、血液、食物、水、細菌上清、及び医薬試料等の複合的マトリクス中のBoNT血清型A(BoNT/A)の検出及び定量化のためのものなど、第2の細胞ベースのアッセイを使用して確認することができる。第2の細胞ベースのアッセイは、2種の一次試薬であるビーズ(磁気ビーズに共有結合した抗BoNT/A抗体からなる)、及びタンパク質分解BoNTの天然に存在する基質をモデルとしたポリペプチドであり、BoNT/Aのエンドペプチダーゼ活性を検出するレポーターからなる。ビーズは、100μl~50mlのサイズ範囲である試料から複合的マトリクス中のBoNT/A複合体又はホロトキシンを捕捉、濃縮、及び単離する。そして、レポーターは捕捉したBoNT/Aの量を検出し、BoNT/Aの活性及び量の評価を提供する。マトリクス組成物及び試料サイズに応じて、ピコモル感度は3時間未満で達成でき、フェムトモル感度は24時間で達成できる。上記で言及したように、ビーズは、磁気ビーズに共有結合した抗BoNT/A抗体からなる。これらのビーズを、BoNT/Aを含む試料に添加し、インキュベートすることで、BoNT/A結合が生じる。BoNT/A活性の決定を妨げかねない干渉化合物は、ビーズを洗浄することによって除去される。レポーターは、タンパク質分解BoNTの天然に存在する基質をモデルとしており、BoNT/Aのエンドペプチダーゼ活性を検出する。レポーターは、SNAP-25のアミノ酸141~206を含み、BoNT/Aの非活性結合部位と切断部位の両方を包含する。レポーターは、BoNT/Aに対して親和性が高く、ビーズに結合したBoNT/Aと共にインキュベートすると、迅速かつ高感度にBoNT/Aタンパク質分解活性を検出する。このキットに好適な1つのプロトコルを以下の実施例で説明する。
【0111】
本開示のために、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、上記及び実施例に記載されるようにBOTESTTMで決定した場合(言い換えれば、第1の細胞ベースのアッセイで決定した場合)、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、少なくとも100、少なくとも101、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも110、少なくとも111、少なくとも112、少なくとも113、少なくとも114、又は少なくとも115BU/mlの酵素活性を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、BOTESTTMで決定した場合(言い換えれば、第1の細胞ベースのアッセイで決定した場合)、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約101、約102、約103、約104、約105、約106、約107、約108、約109、約110、約111、約112、約113、約114、又は約115BU/mlの酵素活性を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、BOTESTTMで決定した場合(言い換えれば、第1の細胞ベースのアッセイで決定した場合)、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、又は115BU/mlの酵素活性を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、BOTESTTMで決定した場合(言い換えれば、第1の細胞ベースのアッセイで決定した場合)、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約101、約102、約103、約104、約105、約106、約107、約108、約109、約110、約111、約112、約113、約114、又は約115BU/mlの酵素活性を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、BOTESTTMで決定した場合(言い換えれば、第1の細胞ベースのアッセイで決定した場合)、95~100、96~100、97~100、98~100、99~100、96~99、97~99、98~99、又は97~98BU/mlの酵素活性を有し得る。
【0112】
いくつかの態様では、酵素活性は、異なるBoNT酵素の相対的活性レベル(すなわち、比活性の算出)を考慮に入れるために所定の製剤中のBoNT濃度で正規化されてもよい。例えば、比活性又は正規化された活性は、BOTESTTM(例えば、BOTESTTMマトリクスAボツリヌス神経毒検出キット;BioSentinel製のカタログ番号A1015)の結果を試験する製剤中のBoNTの濃度又は量で除算することによって算出してもよい。例えば、比活性又は正規化された活性は、第1の細胞ベースのアッセイ又は第2の細胞ベースのアッセイの結果を試験する製剤中のBoNTの濃度又は量で除算することによって算出してもよい。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、少なくとも0.98、少なくとも0.99、少なくとも1.00、少なくとも1.01、少なくとも1.02、少なくとも1.03、少なくとも1.04、少なくとも1.05、少なくとも1.06、少なくとも1.07、少なくとも1.08、少なくとも1.09、少なくとも1.10、少なくとも1.11、少なくとも1.12、少なくとも1.13、少なくとも1.14、少なくとも1.15、少なくとも1.16、少なくとも1.17、少なくとも1.18、少なくとも1.19、又は少なくとも1.20BU/BoNTのRBUのBoNT濃度(すなわち比活性)で正規化された酵素活性を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、約0.98、約0.99、約1.00、約1.01、約1.02、約1.03、約1.04、約1.05、約1.06、約1.07、約1.08、約1.09、約1.10、約1.11、約1.12、約1.13、約1.14、約1.15、約1.16、約1.17、約1.18、約1.19、又は約1.20BU/BoNTのRBUのBoNT濃度で正規化された酵素活性を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、0.98、0.99、1.00、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.10、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、又は1.20BU/BoNTのRBUのBoNT濃度で正規化された酵素活性を有し得る。さらに又はあるいは、いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、少なくとも0.12、少なくとも0.13、少なくとも0.14、少なくとも0.15、少なくとも0.16、少なくとも0.17、少なくとも0.18、少なくとも0.19、少なくとも0.20、少なくとも0.21、少なくとも0.22、少なくとも0.23、少なくとも0.24、又は少なくとも0.25BU/BoNTのpgのBoNT濃度(すなわち比活性)で正規化された酵素活性を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、約0.12、約0.13、約0.14、約0.15、約0.16、約0.17、約0.18、約0.19、約0.20、約0.21、約0.22、約0.23、約0.24、又は約0.25BU/BoNTのpgのBoNT濃度で正規化された酵素活性を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、又は0.25BU/BoNTのpgのBoNT濃度で正規化された酵素活性を有し得る。濃度で正規化された活性のために、活性は、BOTESTTMによって決定し、BoNT濃度で除算することができ、BoNT濃度は、BoNT特異的ELISA(例えばBOLISA(登録商標))等を使用して決定することができる。
【0113】
BOLISA(登録商標)又はボツリヌス神経毒サンドイッチELISAを用いて、伝統的なサンドイッチELISAアプローチを使用して液体マトリクスからBoNTの総質量を検出し、定量化することができる。いくつかの異なるBOLISA(登録商標)キットが、BioSentinel社から様々な血清型(例えば、BoNT/Aカタログ番号A1029;BoNT/Bカタログ番号A1045;BoNT/B4カタログ番号A1048;BoNT/Cカタログ番号A1042;BoNT/Eカタログ番号A1034)について利用可能である。BOLISA(登録商標)キット(言い換えれば、BoNT特異的ELISA)では、抗BoNT抗体を固体支持体に結合させ、BoNTを含む試料を支持体と接触させる。試料中に存在するBoNTを抗体に結合させ、すべての他の材料を除去するか、又は洗い流す。BoNTの同じ血清型に結合する第2の検出可能に標識された抗体を添加し、試料中のBoNT量を、検出可能な標識(例えば、蛍光、酵素活性、比色変化等)のアウトプットを検出又は定量化することによって決定することができる。比活性(すなわち、製剤中のBoNT濃度で除算した製剤中の活性レベル)を算出するために、BOLISA(登録商標)アッセイ(言い換えれば、BoNT特異的ELISA)は特に有用である。BOLISA(登録商標)アッセイ(言い換えれば、BoNT特異的ELISA)のアウトプットは、重量/ml(例えば、mg、μg、若しくはpg/ml)又は相対的BOLISA(登録商標)単位(RBU)/mlであり得る。
【0114】
相対的効力又は酵素活性は、細胞ベースの効力アッセイ(CBPA)を使用して決定することもできる。CBPAは、BoNT作用の重要な工程:受容体結合、内在化-移行、及び触媒活性を評価することができ、したがって、上記に記載した標準的なマウスバイオアッセイの代わりに使用することができる。例えば、特に有用な1つのCBPAは、PCT/IB2021/056210(WO2022/009182)に記載されており、(a)およそ2つの異なるBoNT試料を、SNAP25タンパク質を発現する細胞を含むおよそ2つの容器に分配することであって、第1のBoNT試料が既知の効力の参照試料であり、第2のBoNT試料が未知の効力の試験試料である、ことと、(b)ある期間、細胞をBoNTと共にインキュベートすることと、(c)参照試料及び試験試料に相当する切断したSNAP25タンパク質と未切断のSNAP25タンパク質との比を決定することと、(d)参照試料と比べた試験試料の効力を特定することとを含む。任意で、既知の効力の品質管理試料である第3のBoNT試料を第3の容器に分配し、陽性対照として利用することができる。いくつかの実施形態では、(c)は、切断したSNAP25タンパク質及び未切断のSNAP25タンパク質をウエスタンブロット及びデンシトメトリーによる定量化に供することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ある期間は、約6、12、16、20、24、32、40、48、又は56時間である。いくつかの実施形態では、およそ2つの容器はそれぞれ複数のウェルを含む。いくつかの実施形態では、およそ2つの異なるBoNT試料は、複数のウェルに段階希釈される。いくつかの態様では、およそ2つの容器は組織培養プレートである。いくつかの実施形態では、およそ2つの容器は48ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、又は1536ウェルプレートである。いくつかの実施形態では、細胞はおよそ2つの容器に接着又は付着される。いくつかの実施形態では、細胞は天然にSNAP25を発現する。いくつかの実施形態では、細胞は異種SNAP25を発現する。いくつかの実施形態では、細胞は非神経細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、細胞は神経細胞である。いくつかの実施形態では、神経細胞は運動ニューロンである。いくつかの実施形態では、細胞は非増殖剤で処理される。いくつかの実施形態では、非増殖剤はγ-セクレターゼを阻害する。いくつかの態様では、非増殖剤はDAPTである。いくつかの実施形態では、(b)の終了時、プロテアーゼ阻害剤をおよそ2つの容器に添加する。いくつかの実施形態では、細胞をBoNTと共にインキュベートした後、細胞を溶解する。いくつかの実施形態では、細胞を音波処理によって溶解する。いくつかの実施形態では、溶解剤を添加することによって細胞を溶解する。いくつかの実施形態では、溶解剤は洗剤を含む。このアッセイにより、マウスでのLD50実験に依存する必要なく、現在の動物ベースの効力アッセイと同じ効力データが提供される。
【0115】
別の可能なCBPAは、運動ニューロン由来のヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)、及びウエスタンブロットによって検出されるSNAP25切断を利用することができる。別の例は、分化したヒト神経芽腫SiMa細胞を利用するCBPAであり、切断したSNAP25のBoNT/A依存性細胞内増加を測定するサンドイッチELISAを使用して効力を決定できる。Salas et al.,Botulinum neurotoxin serotype A specific cell-based potency assay to replace the mouse bioassay,PLOS ONE,2012,7(11):e49516等において、このような例示的なアッセイが開示されている。
【0116】
いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)の相対的効力は、細胞ベースのアッセイ(例えば、上記で述べたようなhiPSCベースのアッセイ又はSiMa細胞ベースのアッセイ)で決定した場合、約115、約116、約117、約118、約119、約120、約121、約122、約123、約124、約125、約126、約127、約128、約129、約130、約131、約132、約133、約134、約135、約136、約137、約138、約139、又は約140CBpA単位であり得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)の相対的効力は、細胞ベースのELISAで決定した場合、少なくとも115、少なくとも116、少なくとも117、少なくとも118、少なくとも119、少なくとも120、少なくとも121、少なくとも122、少なくとも123、少なくとも124、少なくとも125、少なくとも126、少なくとも127、少なくとも128、少なくとも129、少なくとも130、少なくとも131、少なくとも132、少なくとも133、少なくとも134、少なくとも135、少なくとも136、少なくとも137、少なくとも138、少なくとも139、又は少なくとも140CBpA単位であり得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)の相対的効力は、細胞ベースのアッセイ(例えば、上記で述べたようなhiPSCベースのアッセイ又はSiMa細胞ベースのアッセイ)で決定した場合、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、又は140単位であり得る。
【0117】
いくつかの態様では、効力又は活性は、異なるBoNT酵素の相対的活性レベル(すなわち、比活性の算出)を考慮に入れるために所定の製剤中のBoNT濃度で正規化され得る。例えば、いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、少なくとも1.20、少なくとも1.21、少なくとも1.22、少なくとも1.23、少なくとも1.24、少なくとも1.25、少なくとも1.26、少なくとも1.27、少なくとも1.28、少なくとも1.29、少なくとも1.30、少なくとも1.31、少なくとも1.32、少なくとも1.33、少なくとも1.34、少なくとも1.35、少なくとも1.36、少なくとも1.37、少なくとも1.38、少なくとも1.39、又は少なくとも1.40CBpA単位/BoNT濃度(例えばmg)のBoNT濃度で正規化された効力を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、約1.20、約1.21、約1.22、約1.23、約1.24、約1.25、約1.26、約1.27、約1.28、約1.29、約1.30、約1.31、約1.32、約1.33、約1.34、約1.35、約1.36、約1.37、約1.38、約1.39、又は約1.40CBpA単位/BoNT濃度(例えばmg)のBoNT濃度で正規化された効力を有し得る。いくつかの実施形態では、開示された治療に適した液体組成物(例えばQM1114)は、1.20、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.30、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、又は1.40CBpA単位/BoNT濃度(例えばmg)のBoNT濃度で正規化された効力を有し得る。濃度で正規化された効力/活性のために、効力又は活性は、細胞ベースのアッセイ(例えば、上記に述べたようにPCT/IB2021/056210に開示される細胞ベースのアッセイ)によって決定することができ、製剤の濃度は、ELISAアッセイ(例えばBOLISA(登録商標))等によって決定することができる。
【0118】
III.治療
本明細書では、ヒト対象において中等度から重度の眉間皺及び/又は外眼角皺を治療する方法であって、ボツリヌス神経毒を含む液体組成物(例えば、QM1114又は「すぐに使える」液体組成物)を治療有効量で対象に投与し、それによって中等度から重度の眉間皺の外観を軽減させることを含む方法が提供される。液体組成物は、上記のII.に開示された前述の実施形態のいずれかに相当し得る。
【0119】
再調製又は混和する必要がない「すぐに使える」液体組成物(例えばQM1114)を利用することに加えて、開示された治療は、液体組成物が、製剤中のBoNT濃度で正規化された場合、競合製品(例えば、XEOMIN(登録商標)、BOTOX(登録商標))より酵素的に活性であるBoNT(例えばBoNT/A)を含むという点で、従来のBoNTベースの治療に対してさらに区別できる。本明細書に記載の「競合製品」は、乾燥形態(例えば凍結乾燥粉末形態)で保存され、対象に投与するために再調製する必要があるBoNT製剤と呼ぶこともできる。結果として、液体組成物(例えばQM1114)は、競合製品より少なくBoNTを含むことができ、そのため、一般により安全となり、眼瞼下垂等の有害事象又は副作用を生じさせる可能性が低くなる。したがって、本明細書に開示の方法及び使用は、眼瞼下垂を発症するリスクがある対象、以前に眼瞼下垂に罹患した対象、又は以前にBoNT製剤で(例えば、GL、LCL、若しくはそれらの組み合わせが)治療され、眼瞼下垂を経験した対象を選択する工程を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法及び使用は、以前にBoNT製剤で(例えば、GL、LCL、若しくはそれらの組み合わせが)治療されていない対象を選択する工程を含み得る。
【0120】
液体組成物(例えばQM1114)における酵素活性レベルが高いほど、競合製品(例えば、XEOMIN(登録商標)、BOTOX(登録商標))と比較して(BoNT濃度で正規化された場合)相対的効力も高くなる。より高い活性及びより高い効力により、開示された方法は、競合製品(例えば、XEOMIN(登録商標)、BOTOX(登録商標))と比較して、GL及びLCLの減少という点で結果がより迅速に発現し、結果がより長く持続し、副作用(例えば下垂)の発生が少なくなる。
【0121】
したがって、本開示は、QM1114等のBoNTでGL及びLCLを治療する方法であって、競合製品(例えば、BOTOX COSMETIC(登録商標)、XEOMIN(登録商標)、及びJEUVEAU(登録商標))と比べてより安全であり、かつ/又は副作用がより少ないか、若しくはより重症ではない方法を提供する。本開示はまた、QM1114等のBoNTでGL及びLCLを治療する方法であって、競合製品(例えば、BOTOX COSMETIC(登録商標)、XEOMIN(登録商標)、及びJEUVEAU(登録商標))より眼瞼下垂を発症させる可能性が低い方法を提供する。本開示はまた、QM1114等のBoNTでGL及びLCLを治療する方法であって、競合製品(例えば、BOTOX COSMETIC(登録商標)、XEOMIN(登録商標)、及びJEUVEAU(登録商標))より治療効果を迅速に発現させる方法を提供する。本開示はまた、QM1114等のBoNTでGL及びLCLを治療する方法であって、競合製品(例えば、BOTOX COSMETIC(登録商標)、XEOMIN(登録商標)、及びJEUVEAU(登録商標))より長い期間、治療効果を提供する方法を提供する。
【0122】
さらに又はあるいは、本開示は、必要としているヒト対象において低い眼瞼下垂リスクで眉間皺(GL)、外眼角皺(LCL)、又はそれらの組み合わせを治療する方法であって、ボツリヌス神経毒を含む液体組成物を治療有効量で対象に投与し、それによってGL、LCL、又はそれらの組み合わせの外観を軽減させることを含み、上記ボツリヌス神経毒は、少なくとも1.16BU/BoNTのボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性を有する、方法を提供する。ヒト対象は、ボツリヌス神経毒(例えば、1.16BU/BoNT未満のボツリヌス神経毒濃度で正規化された酵素活性、又は約2.0×108U/mg未満の比活性を有するボツリヌス神経毒製剤、例えば、Botox Cosmetic(登録商標)、Xeomin(登録商標)、及びJeuveau(登録商標))を投与する際に眼瞼下垂を発症するリスクがあるか、又は発症する可能性が高いと考えられる対象であってもよい。ヒト対象はまた、ボツリヌス神経毒を投与する際に眼瞼下垂に罹患しており、及び/又は眼瞼下垂を発症した病歴を有する対象であってもよい。別の実施形態では、ヒト対象は、任意の用量又は酵素活性のボツリヌス神経毒を投与する際に(i)眼瞼下垂を発症するリスクがなく、(ii)眼瞼下垂に罹患しておらず、かつ/又は(iii)眼瞼下垂を発症した病歴を有していない対象ではない。
【0123】
具体的に眼瞼下垂に関して、本開示は、他の競合製品で観察されるものより著しく低いQM1114による眼瞼下垂率の証拠を提供する。例えば、合計で8000名を超える患者での試験の検討では、眼瞼下垂率は約2.5%であることが分かった。具体的には、眼瞼下垂の発生率はBotox(3%)及びJeuveau(2%)について確認された。実施例1に示すように、QM1114でLCL/GLを治療する場合に確認された眼瞼下垂率は、一部の試験において0.9%と同等に低かった。したがって、開示された治療(LCL、GL、又はそれらの組み合わせのための治療)のいくつかの実施形態では、眼瞼下垂率は、2%未満、1.9%未満、1.8%未満、1.7%未満、1.5%未満、1.4%未満、1.3%未満、1.2%未満、1.1%未満、1.0%未満、又は0.9%と同等に低くてもよい。開示された治療(LCL、GL、又はそれらの組み合わせのための治療)のいくつかの実施形態では、眼瞼下垂率は、約2%、約1.9%、約1.8%、約1.7%、約1.5%、約1.4%、約1.3%、約1.2%、約1.1%、約1.0%、又は約0.9%であってもよい。開示された治療(LCL、GL、又はそれらの組み合わせのための治療)のいくつかの実施形態では、眼瞼下垂率は、1.9%、1.8%、1.7%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%、又は0.9%以下であってもよい。
【0124】
さらに、いくつかの実施形態では、本開示は、対象において外眼角皺(LCL)を治療する方法であって、BoNTの液体組成物(例えばQM1114)を投与することを含み、該治療は、BOTOX COSMETIC(登録商標)(言い換えれば、乾燥形態(例えば凍結乾燥粉末形態)で保存され、対象に投与するために再調製する必要があるBoNT製剤)でLCLを治療する奏効率より高い、方法を提供する。
【0125】
いくつかの実施形態では、1~100単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、10~75単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、25~75単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、50~250単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、75~200単位のボツリヌス毒素が対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与される液体組成物の濃度は、ボツリヌス毒素1~300単位/mL、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、又は300単位/mLである。
【0126】
いくつかの実施形態では、組成物は注射により投与される。いくつかの実施形態では、注射は、皮下、経皮、皮内、又は筋肉内である。いくつかの実施形態では、方法は、眉間領域に複数の注射を行うことを含む。いくつかの実施形態では、隣接する注射の部位は約0.5~10cm離れている。いくつかの実施形態では、隣接する注射の部位は約1.5~3cm離れている。いくつかの実施形態では、注射は片側であってもよい。いくつかの実施形態では、注射は両側であってもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、注射は、鼻根筋と顔の各側の皺眉筋とに行われ、いくつかの実施形態では、注射は、特定の順序で行われ、例えば、最初に鼻根筋に、続いて顔の各側の皺眉筋に、正中部から外側に移動して行われる。いくつかの実施形態では、すべての注射は、眼窩上縁の約1cm上で、瞳孔中心線に対して内側に行われる。
【0128】
いくつかの実施形態では、すべての注射は、眉毛の中央又は骨の眼窩上隆起の少なくとも1cm上に行われる。
【0129】
いくつかの実施形態では、組成物は、外眼角皺(LCL)を治療、予防、又は改善するために投与されてもよい。いくつかの実施形態では、治療は約3回の注射(注射部位ごとに1回の注射)を含んでもよい。例えば、治療は、1、2、3、4、又は5回の注射を含んでいてもよい。注射の位置は、個々の対象のLCL皺パターンに応じて調整されてもよい。個々の対象の皺パターンに応じて、LCL領域の皺が外眼角の上下にある場合、例えば
図12Aに記載されるように注射を行った。あるいは、個々の対象のLCLの皺が主に外眼角の下にある場合、例えば
図12Bに記載されるように注射を行った。いくつかの実施形態では、注射点は、眼輪筋の外側部分であってもよく、該当する場合には、眼窩縁から約1~2cmのところであってもよい。いくつかの実施形態は、顔の各側に投与される等量(100μl)の3回の注射(すなわち、合計6回の注射)を含んでもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、組成物は、GL及びLCLを共に(すなわち同時に)治療、予防、又は改善するために投与されてもよい。いくつかの実施形態では、治療は、例えば、GL領域(5回の注射)及びLCL領域(顔の各側に3回の注射)に投与される等量(100μl)の11回の注射(注射部位ごとに1回の注射)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、GL及びLCLの同時治療は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14回以上の注射を含んでいてもよい。例えば、GLについては、5つの注射部位が、各皺眉筋に2回の注射、鼻根筋に1回の注射を含んでもよく、LCLについては、注射の位置は、個々の対象のLCL皺パターンに応じて調整されてもよい。個々の対象の皺パターンに応じて、LCL領域の皺が外眼角の上下にあった場合、
図12Aに記載されるように注射を行ってもよい。あるいは、個々の対象のLCLの皺が主に外眼角の下にあった場合、
図12Bに記載されるように注射を行ってもよい。いくつかの実施形態では、LCLを治療するための注射点は、眼輪筋の外側部分であってもよく、該当する場合には、眼窩縁から約1~2cmのところであってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、上記再発を抑制するために、方法を約3ヶ月~約6ヶ月の間隔で繰り返す。いくつかの実施形態では、上記再発を抑制するために、方法を約4ヶ月の間隔で繰り返す。
【0132】
本明細書で提供される方法は、対象における眉間皺及び/又は外眼角皺の外観の一時的な軽減をもたらす。治療の有効性は、当業者に公知の方法で評価することができる。例示的な評価方法は、以下及び実施例で示される。
【0133】
a.眉間皺の重症度の4点写真スケール:治験責任医師ライブ評価(GL-ILA)
有効な眉間皺重症度の4点写真スケールには2つの等級付けシステム:最大しかめ面時の治験責任医師ライブ評価のためのもの及び安静時の治験責任医師ライブ評価のためのものが含まれる。このスケールは眉間皺の重症度をなし(等級0)から、軽度(等級1)、中等度(等級2)、重度の眉間皺(等級3)まで表す。また、それぞれの等級は個別の写真と説明文で示される。治験責任医師は、4点写真スケールの使用についてトレーニングを受ける。治験責任医師は、スクリーニング時、ベースライン時(治療前)、及び治療後のすべての診察時に対象の顔と直接、実物で比較するために4点写真スケールを使用する。対象は、治験責任医師の評価とは独立して、自身の眉間皺の重症度の評価を行う。対象は、静的4点カテゴリースケールを用いてスクリーニング時、ベースライン時(治療前)、及び治療後のすべての診察時に自身の最大しかめ面時の眉間皺を評価するよう求められる。
【表1】
【0134】
b.グローバル美的改善スケール(GAIS)
対象は、治療後のすべての診察時に以下のカテゴリースケールを用いて、自身の治療前の外観と比較して自身の最大しかめ面時の眉間皺のグローバル美的改善を評価する。
【表2】
【0135】
対象は、「注射の直前と比較してあなたの最大しかめ面時の眉間皺(眉毛間の皺)の外観の変化をどのように評価しますか?」と尋ねられる。
【0136】
対象は、ベースラインと比較して自身の最大しかめ面時の眉間皺の外観が変化した度合いを最もよく表す評価を1つ選択するように指示される。対象は、評価しやすくなるようにベースラインの写真を見直すことができる。
【0137】
c.日記カード
対象は、治療の翌日(1日目)から7日目(試験診察3回目)まで自身の試験治療反応の評価を日記カードに記録するよう求められる。対象は、以下の質問に「はい」又は「いいえ」で回答するよう求められる:「注射を受けてから、あなたの眉間皺(眉毛間の皺)の外観が改善したことに気付きましたか?」。対象は、毎日日記カードに記入し、7日目の診察時に日記を試験センターに返却する。
【0138】
d.FACE-Q
FACE-Qは、美容的顔面処置の経験と成果を対象の視点から評価するための患者報告型アウトカムツールである。FACE-Qは、40以上のスケールで構成されており、4つの領域(顔の外観の満足度、健康関連の生活の質、副作用、及びケアプロセス)をカバーしている。各領域には、独立して機能するスケールが1つ以上ある。本試験ために、かつ治療される状態を考慮して、評価スケジュールに記載された時点で対象が記入するように心理的機能スケールを選択した。
【0139】
e.顔の皺治療満足度質問票
これらの質問は、対象に、直近の処置で治療された顔の領域について考えてもらうものである。対象は、与えられた文にどの程度同意するかについて最も一致する回答を選択する。例示的な質問表を以下に示す。各質問に対する回答は1つだけである。
【表3】
【0140】
f.皺の満足度(SWL)質問票
ベースライン時(治療前)及び治療後のすべての診察時に、対象は、Galderma社によって開発された有効なSWL質問票を記入するように求められる。
【0141】
g.独立写真審査員(IPR)
対象の無作為化治療について盲検化された3名のIPRが、有効な眉間皺重症度の4点写真スケールを用いて各対象の最大しかめ面時のGLの写真評価を行う。IPRによる評価は、試験終了時に全対象に対して行われる。IPRは、ベースライン時及び治療後の各診察時に各対象の最大しかめ面時のGLの写真と比較するためにスケールを使用する。IPRスコアは、3名の審査員のスコアの中央値として決定される。IPRは、試験の他のいかなる側面にも関与しない。
【実施例】
【0142】
実施例1 中等度から重度の眉間皺の治療に対するQM1114-DPの有効性及び安全性(試験43QM1602)
多施設。中等度から重度の眉間皺の治療に対するQM1114医薬品(DP)の有効性及び安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を、米国及びカナダの10か所で300名の対象に実施した。QM1114-DPは、上記の説明に概説した少なくとも4種の緩衝剤を含む本発明のボツリヌス神経毒(例えばBoNT/A)の液体組成物の例である。したがって、これらの例全体でQM1114-DPに言及する場合、本発明の例示的な「ボツリヌス神経毒を含む液体組成物」を指す。群1(治療群)は、ベースライン時にQM1114-DP(5単位)の単一治療を受けた225名の対象からなっていた。群2(プラセボ群)は、ベースライン時に単一プラセボ治療を受けた75名の対象からなっていた。治療の有効性及び安全性は、投与後の7日目、14日目、並びに1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目、5ヶ月目、及び6ヶ月目にフォローアップ診察で測定した。
【0143】
一次的有効性評価項目は、眉間皺についての「複合奏効者率」を使用して測定した。眉間皺の複合奏効者率は、1ヶ月目の最大しかめ面時に2種の評価スケール:治験責任医師ライブ評価(ILA)4点写真スケール及び対象自己評価(SSA)静的4点カテゴリースケールを使用して評価する。「複合奏効者」とは、眉間皺の重症度で0又は1のスコアと、同時にULAスケール及びSSAスケールの両方でベースラインから少なくとも2等級の改善とを達成する対象を指す。
図2は、眉間皺の重症度スコアリングマトリクスを示す。
【0144】
本試験の一次的有効性評価項目は、治療群の82.9%の対象(165/199)が複合奏効者であったのに対して、プラセボ群の対象は誰も(0%:0/67)複合奏効者ではなかったことを示した。1ヶ月目に測定した一次的有効性評価項目(複合率)は、プラセボと比較して高く、統計的に有意な結果(p<0.001)を示した。
【0145】
二次的有効性を解析するために、経時的なILA奏効者率を測定した。
図3は、経時的なILA奏効者率の結果を示す。あらゆる時点で、治療群は、プラセボ群と比較して著しく高いILA奏効率(p<0.001)を示した。
図3を参照のこと。
【0146】
次に、探索的な有効性の解析を、対象にグローバル美的改善スコア(GAIS)解析を使用して実施した。この解析では、奏効者は、対象GAISについて「改善した」、「かなり改善した」、又は「非常に改善した」と反応する対象である。この例では、GAISについての対象奏効率は高かった(大部分は、6ヶ月を通して改善した又は良好になったと評価した)。
図4を参照のこと。治療群の対象は、早くも0日目で効果発現を報告した。治療群の反応発現の中央値は2日であった。
【0147】
安全性:有害事象(AE)の全体的発生率はプラセボと同等であった。すべての重篤な有害事象(SAE)は、試験薬又は注射処置と無関係に評価した。すべての治療下で発現した有害事象(TEAE-「関連有害事象」ともいう)は強度が軽度又は中程度であり、頻度が最も高いTEAEは、頭痛、眼瞼下垂、及びあざであった。
図5を参照のこと。死亡した対象、又は早期の試験中止に至るTEAEを経験した対象はいなかった。
【0148】
結論
有効性:QM-1114-DPは、対象の眉間皺の減少において一次的評価項目及び二次的評価項目でプラセボに対する統計的に有意な差を示した。
【0149】
発現:治療群の対象は、早くも0日目で有益な効果に気付いたと報告し、発現の中央値は2日であった。
【0150】
安全性:QM-1114-DPの全体的安全性は、好ましいリスク/ベネフィットプロファイルで許容できる。治療群は非常に低い眼瞼下垂率(0.9%)を示した。
【0151】
実施例2 中等度から重度の外眼角皺の治療に対するQM1114-DPの有効性及び安全性(試験43QM1901)
多施設。中等度から重度の外眼角皺の治療に対するQM1114-DPの有効性及び安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を、米国及びカナダの10か所で300名の対象に実施した。群1(治療群)は、ベースライン時にQM1114-DP(5単位)の単一治療を受けた225名の対象からなっていた。群2(プラセボ群)は、ベースライン時に単一プラセボ治療を受けた75名の対象からなっていた。治療の有効性及び安全性は、投与後の7日目、14日目、並びに1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目、5ヶ月目、及び6ヶ月目にフォローアップ診察で測定した。
【0152】
一次的有効性評価項目は、外眼角皺についての「複合奏効者率」を使用して測定した。外眼角皺の複合奏効者率は、1ヶ月目の最大笑顔時に2種の評価スケール:治験責任医師ライブ評価(ILA)4点写真スケール及び対象ライブ評価(SLA)静的4点カテゴリースケールを使用して評価する。「複合奏効者」は、外眼角皺の重症度で0又は1のスコアと、同時にULAスケール及びSSAスケールの両方でベースラインから少なくとも2等級の改善とを達成する対象を指す。
図6は、外眼角皺の重症度スコアリングマトリクスを示す。
【0153】
本試験の一次的有効性評価項目は、治療群の51.8%の対象(106/204)が複合奏効者であったのに対して、プラセボ群の1.4%の対象(1/69)だけが複合奏効者であったことを示した。1ヶ月目に測定した一次的有効性評価項目(複合率)は、プラセボと比較して高く、統計的に有意な結果(p<0.001)を示した。
【0154】
二次的な有効性を解析するために、経時的なILA奏効者率を測定した。
図7は、経時的なILA奏効者率の結果を示す。あらゆる時点で、治療群は、プラセボ群と比較して有意に高いILA奏効率(p<0.001)を示した。
図7を参照のこと。
【0155】
次に、探索的な有効性の解析を、対象にグローバル美的改善スコア(GAIS)解析を使用して実施した。この解析では、奏効者は、対象GAISについて「改善した」、「かなり改善した」、又は「非常に改善した」と反応する対象である。この例では、GAISについての対象奏効者率は高かった(大部分は、6ヶ月を通して改善した又は良好になったと評価した)。
図8を参照のこと。治療群の対象は、早くも0日目で効果発現を報告した。治療群の反応発現の中央値は2日であった。
【0156】
安全性:有害事象(AE)の全体的発生率はプラセボと同等であった。すべての重篤な有害事象(SAE)は、試験薬又は注射処置と無関係に評価した。すべての治療下で発現した有害事象(TEAE-「関連有害事象」ともいう)は強度が軽度又は中程度であり、頻度が最も高いTEAEは注射部位のあざであった。
図9を参照のこと。死亡した対象、又は早期の試験中止に至るTEAEを経験した対象はいなかった。
【0157】
結論
有効性:QM-1114-DPは、対象の外眼角皺の減少において一次的評価項目及び二次的評価項目でプラセボに対する統計的に有意な差を示した。
【0158】
発現:治療群の対象は、早くも0日目で有益な効果に気付いたと報告し、発現の中央値は2日であった。
【0159】
安全性:QM-1114-DPの全体的安全性は、好ましいリスク/ベネフィットプロファイルで許容できる。最も一般的な関連AEは注射部位のあざであった(治療群での4.8%に対してプラセボ群では4.1%)。
【0160】
実施例3 中等度から重度の外眼角皺及び眉間皺(単独又は組み合わせ)の治療に対するQM1114-DPの有効性及び安全性(試験43QM1902)
多施設。中等度から重度の外眼角皺(LCL)及び眉間皺(GL)(単独又は組み合わせ)の治療に対するQM1114-DPの有効性及び安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を、米国及びカナダの12か所で413名の対象に実施した。群A(LCL単独治療群)は、ベースライン時にLCLへのQM1114-DP(5単位)の単一治療、及びGLへの単一プラセボ治療を受けた118名の対象からなっていた。群B(GL単独治療群)は、ベースライン時にGLへのQM1114-DP(5単位)の単一治療、LCLへの単一プラセボ治療を受けた118名の対象からなっていた。群C(LCL/GL組み合わせ治療群)は、ベースライン時にLCLへのQM1114-DP(5単位)の単一治療、及びGLへのQM1114-DP(5単位)の単一治療を受けた118名の対象からなっていた。最後に、群D(プラセボ群)は、ベースライン時にLCLへのプラセボの単一治療、及びGLへのプラセボの単一治療を受けた59名の対象からなっていた。治療の有効性及び安全性は、投与後の7日目、14日目、並びに1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目、5ヶ月目、及び6ヶ月目にフォローアップ診察で測定した。
【0161】
眉間皺の一次的有効性評価項目は、眉間皺についての「複合奏効者率」を使用して測定した。眉間皺の複合奏効者率は、1ヶ月目の最大しかめ面時に2種の評価スケール:治験責任医師ライブ評価(ILA)4点写真スケール及び対象自己評価(SSA)静的4点カテゴリースケールを使用して評価する。「複合奏効者」は、眉間皺の重症度で0又は1のスコアと、同時にULAスケール及びSSAスケールの両方でベースラインから少なくとも2等級の改善とを達成する対象を指す。
図2は、眉間皺の重症度スコアリングマトリクスを示す。
【0162】
眉間皺の一次的有効性評価項目は、GL単独治療群の71.1%の対象(75/106)が複合奏効者であり、LCL/GL組み合わせ治療群の72%の対象(78/108)が複合奏効者であったのに対して、プラセボ群の対象は誰も(0%:0/55)複合奏効者ではなかったことを示した。1ヶ月目に測定した一次的有効性評価項目(複合率)は、プラセボと比較して高く、統計的に有意な結果(p<0.001)を示した。
【0163】
外眼角皺の一次的有効性評価項目は、外眼角皺についての「複合奏効者率」を使用して測定した。外眼角皺の複合奏効者率は、1ヶ月目の最大笑顔時に2種の評価スケール:治験責任医師ライブ評価(ILA)4点写真スケール及び対象ライブ評価(SLA)静的4点カテゴリースケールを使用して評価する。「複合奏効者」は、外眼角皺の重症度で0又は1のスコアと、同時にULAスケール及びSSAスケールの両方でベースラインから少なくとも2等級の改善とを達成する対象を指す。
図6は、外眼角皺の重症度スコアリングマトリクスを示す。
【0164】
外眼角皺の一次的有効性評価項目は、LCL単独治療群の45.1%の対象(53/117)が複合奏効者であり、LCL/GL組み合わせ治療群の55%の対象(59/108)が複合奏効者であったのに対して、プラセボ群の対象は誰も(0%:0/55)複合奏効者ではなかったことを示した。1ヶ月目に測定した一次的有効性評価項目(複合率)は、プラセボと比較して高く、統計的に有意な結果(p<0.001)を示した。
【0165】
眉間皺の二次的有効性を解析するために、経時的なILA奏効者率を測定した。
図10は、経時的な眉間皺のILA奏効者率の結果を示す。あらゆる時点で、治療群(GL単独治療群及びGL/LCL組み合わせ治療群の両方)は、プラセボ群と比較して著しく高いILA奏効率(p<0.001)を示した。
図10を参照のこと。
【0166】
外眼角皺の二次的有効性を解析するために、経時的なILA奏効者率を測定した。
図11は、経時的な外眼角皺のILA奏効者率の結果を示す。あらゆる時点で、治療群(LCL単独治療群及びGL/LCL組み合わせ治療群の両方)は、プラセボ群と比較して著しく高いILA奏効率(p<0.001)を示した。
図11を参照のこと。
【0167】
次に、探索的な有効性の解析を、対象にグローバル美的改善スコア(GAIS)解析を使用して実施した。この解析では、奏効者は、対象GAISについて「改善した」、「かなり改善した」、又は「非常に改善した」と反応する対象である。この例では、GAISでのGL及びLCLの両方の対象奏効者率は、プラセボ対照と比較して高かった(大部分は、5ヶ月を通して改善した又は良好になったと評価した)。
図12を参照のこと。治療群の対象は、早くも0日目で効果発現を報告した。治療群の反応発現の中央値は2~4日であった。
【0168】
安全性:有害事象(AE)の全体的発生率はプラセボと同等であった。すべての重篤な有害事象(SAE)は、試験薬又は注射処置と無関係に評価した。すべての治療下で発現した有害事象(TEAE-「関連有害事象」ともいう)は強度が軽度又は中程度であり、頻度が最も高いTEAEは、頭痛(4.3%)、注射部位のあざ(2.6%)、及び眼瞼下垂(1.7%、GL単独治療群でのみ確認)であった。死亡した対象、又は早期の試験中止に至るTEAEを経験した対象はいなかった。
【0169】
実施例4 眉間皺へのQM-114-DP及び他のボツリヌス毒素の効果の比較
比較試験では、QM-1114-DPを他の利用可能なボツリヌス毒素製品と比較した。
【0170】
眉間皺の複合2等級改善:QM-1114-DPは、Daxi40U(ダキシボツリヌムトキシンA)及びJeuveau EV-002(プラボツリナムトキシンA)と比較して4週目(30日目)に眉間皺の優れた複合2等級改善を示した。簡単にいうと、QM-1114-DPは、眉間皺の複合2等級改善が約82.9%であったのに対して、Daxi40Uは73.8%、Jeuveau EV-002は70.4%であった。
図13を参照のこと。
【0171】
眉間皺の治験責任医師スコア:QM-1114-DPは、Daxi40U及びBotoxと比較した場合、最大で24週間(150日間)、眉間皺についてなしから軽度という持続する同等の治験責任医師スコアを示した。
図14を参照のこと。
【0172】
外眼角皺の複合2等級改善:QM-1114-DPは、Botoxと比較して4週目(30日目)に外眼角皺の優れた複合2等級改善を示した。
図15を参照のこと。
【0173】
眉間皺の治験責任医師スコア:QM-1114-DPは、Daxi40U及びBotox(オナボツリヌムトキシンA)と比較した場合、最大で24週間(150日間)、眉間皺についてなしから軽度という持続する同等の治験責任医師スコアを示した。興味深いことに、Daxi40U及びBotoxでは4週間後になし又は軽度の治験責任医師スコアを有する対象はいなかったことが確認された。
図16を参照のこと。
【0174】
酵素活性の比較:酵素活性は、BoTest
TMを使用して測定した(
図17及び
図18を参照のこと)。BoTest
TMアッセイ(BOTEST
TMマトリクスAボツリヌス神経毒検出キット;BioSentinel製のカタログ番号A1015)では、一般的な緩衝液をすべての毒素に使用して、賦形剤由来のすべての効果を排除し、毒素だけを見た。簡単にいうと、試料をマイクロタイターウェルに分注し、マトリクス結合緩衝液を各試料に添加した。再懸濁したマトリクスAビーズを、試料を含む各ウェルに分注し、プレートをインキュベートした。マトリクスビーズをマトリクス洗浄緩衝液で洗浄した。洗浄緩衝液を除去し、DTTを含有するBoTest
TM反応緩衝液と置き換えた。BoTest
TMマスターストックを添加してから、プレートを覆ってインキュベートし、続いて蛍光読取りを行った。観察した酵素活性パターンは、両方のアッセイで非常に類似して見えた。
【0175】
図18では、各製品の正規化された値(すなわち比活性)を、BoNT-A特異的ELISA(BOLISA(登録商標))を使用して決定される製剤中のBoNT量で活性(U/ml)を除算することによって算出した。
【0176】
酵素活性の実験を2回繰り返した結果を下記の表に示す。
【表4】
【表5】
【0177】
相対的効力の比較:本発明者らはまた、ウエスタンブロットを介して検出される切断したSNAP25のBoNT/A依存性の細胞内増加についてhiPSCが評価される細胞ベースのアッセイを使用して、QM1114-DP及び競合品にどの程度の毒素タンパク質が存在するかを解析した。一般的な緩衝液をCBA試験で使用した。ボツリヌス神経毒A型の量は、BoNT-A特異的ELISAを使用して決定した(一般的な緩衝液も使用)。(活性及び効力を毒素量で除算することによって)活性及び効力を正規化した場合、QM1114-DPが毒素分子当たり最良の効力を有することが分かる。したがって、QM1114-DPは、他の毒素よりさらに効力が高い毒素である(例えば、Botoxより90%良好)。
図19を参照のこと。
【0178】
図19では、相対的効力は、一般的な緩衝剤で実施した細胞ベースのアッセイを使用して決定し、各製品のタンパク質量について正規化した。U/pgは、BoNT-A特異的ELISA(BOLISA(登録商標))を使用して決定される製剤中のBoNT量で相対的効力を除算することによって算出した。
【0179】
結論
QM1114-DPは、他のボツリヌス毒素(例えば、Daxi40U、Jeuveau EV-002、及びBotox)より優れている。特に、QM1114-DPは、効力及び活性の観点からXeomin及びBotoxの両方より性能が優れていた。例えば、QM1114-DPは、他のボツリヌス毒素よりも、LCL及びGLを治療するための奏効者率が良好である。QM1114-DPはまた、眼瞼下垂等の有害な副作用を生じさせる可能性が低いか、又は他のボツリヌス毒素より低い重度の眼瞼下垂しか発症させない。単位(IU)当たりの毒素活性は、QM1114-DPの方が高いので、より少ないQM1114-DPを使用して同程度の治療が得られるので、あらゆる潜在的な有害事象の確率又は重症度が最小化され得る。最終的に、QM1114-DPは、他の試験した毒素よりも効果発現が速く、効果期間が長い。
【0180】
実施例5 QM1114-DPは純度が高く、複合体を含まない
QM-1114-DPは、超高速液体クロマトグラフィーサイズ排除クロマトグラフィー(UPLC-SEC)及びSDS-PAGEを使用してタンパク質純度について分析した。UPLC-SEC分析では、QM-1114-DPがWater BEHTMSECカラムで分離され、吸光度(A280)を使用して解析されたことが示された。SDS-PAGEは、還元材料及び非還元材料の両方で行い、不純物の定量化を可能にするコロイドクーマシーで染色した。
【0181】
図20及び
図21に示すように、QM-1114-DPの製剤は、純度が高く、複合体を含まず、BoNT-Aは、SDS-PAGE分析で観察される予想されたバンドのみを表す。
【0182】
実施例6 外眼角皺(LCL)の治療
QM-1114-DPは、1ヶ月目で眉間皺の治療に対して高い複合2等級以上奏効者率(83%)を有し、最大で6ヶ月間の効果期間及び1日目で1/3を超える対象の発現を有することが示された。そのため、中等度から重度のLCLの治療についてプラセボと比較して60UのQM-1114-DPの単回投与を評価するためにさらなる試験を行った。
【0183】
中等度~重度のLCLを有する対象(N=303)を、QM-1114-DP60U又はプラセボに3:1で無作為化した。LCL重症度は、LCL治験責任医師ライブ評価(LCL-ILA)4点写真スケール、LCL対象ライブ評価(LCL-SLA)4点写真スケール、及び対象報告型の効果発現、対象の満足度によって評価した。有害事象もまた追跡した。試験の一次的評価項目は、1ヶ月目の最大笑顔時にLCL-ILA及びLCL-SLAを使用して評価した複合2等級奏効者率であった。LCL重症度でなし(0)又は軽度(1)のスコアを達成し、かつ最大笑顔時のLCL-ILAスケール及びLCL-SLAスケールの両方でベースラインから少なくとも2等級改善を有した対象を複合2等級奏効者と定義した。
【0184】
LCL複合2等級奏効者率は、プラセボに対してrelaBoNT-Aでより高かった(51.8%対1.4%、P<0.001)(
図22)。効果発現の時間の中央値は2日であり、34%の対象は1日目に発現を報告した(
図23)。治験責任医師は、1ヶ月目に88%の対象においてなし又は軽度の重症度を報告し、効果は、6ヶ月目に23%で維持された(
図24)。治験責任医師は、1ヶ月目に93%の対象において1等級以上の改善を報告し、効果は、6ヶ月目に36%で維持された(
図25)。
【0185】
さらに、1つの探索的評価項目は、ベースラインに戻る時間であった。この評価項目は、最大笑顔時にLCL-ILA4点写真スケール及びLCL-SLA4点写真スケールの両方で0又は1のスコアを達成した対象で評価した。
図26に示すように、ILA及びSLAで同時にベースラインに戻る時間の中央値は173日(24.7週間)であった。このように、QM-1114-DPは長続きするLCLの治療を提供する。
【国際調査報告】