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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】超高酸素富化型低炭素製錬方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
C21B5/00 316
C21B5/00 311
C21B5/00 319
C21B5/00 321
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542291
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2022138696
(87)【国際公開番号】W WO2023134368
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210029116.2
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524266227
【氏名又は名称】新疆八一▲鋼▼▲鉄▼股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲徳▼▲栄▼
(72)【発明者】
【氏名】田宝山
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼磊
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼永想
(72)【発明者】
【氏名】李涛
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012BA01
4K012BA02
4K012BA04
4K012BD01
4K012BD03
4K012BD04
4K012BE01
4K012BE06
4K012BF02
4K012BF08
(57)【要約】
超高酸素富化型低炭素製錬方法が提供され、当該超高酸素富化型低炭素製錬方法は、仕込み工程と、高炉製錬工程と、を含み、高炉酸素富化率が40%~50%であり、熱風炉部分の酸素富化率が15~20%にも達し、風温が900~1000℃の範囲内にあり、足りない部分について、送風口から冷たい酸素を吹き込み、送風口から、微粉炭、高還元性石炭ガス、および、コークス炉ガスを吹き込むことで、送風口での理論上の燃焼温度が2350~2500℃の範囲内にあるように維持しており、その期間において、吹込み炭比を、コークス炉ガスが0.3~0.35kg/mである石炭ガス置換率で低下させ、または、コークス比を脱炭素石炭ガスが0.28~0.3kg/mである置換率で210kg/t以下となるように低下させることによって、高炉における高酸化富化の場合に生じる「上が冷たく、下が熱い」という問題を解決し、コークスの消費量を低下させるという目的を達成させた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕込みプロセスと、高炉製錬プロセスと、を含む超高酸素富化型低炭素製錬方法であって、
60~80%の焼結鉱、20~40%のペレット、0~5%の原鉱石およびコークスという組成を有する鉱石チャージを高炉内に階層別で充填する仕込み工程(S1)と、
溶鉄1トンあたりの高炉吹込み量が570~690m/tであり、風温が900~1000℃の範囲内にあるように制御し、純酸素を前記高炉内に吹き込むことで、前記高炉において超高酸素富化の製錬作業状況が形成され、ここで、熱風炉前に15~20%の酸素富化をしているが、足りない部分について、送風口から冷たい酸素を吹き込むようにし、前記送風口から、微粉炭、高還元性石炭ガス、および、コークス炉ガスを吹き込むことで、前記送風口での理論上の燃焼温度が2350~2500℃の範囲内にあるように維持しており、その期間において、吹込み炭比を、前記コークス炉ガスが0.3~0.35kg/mである石炭ガス置換率で低下させ、または、コークス比を脱炭素石炭ガスが0.28~0.3kg/mである置換率で210kg/t以下となるように低下させる高炉製錬工程(S2)と、を含む、
ことを特徴とする超高酸素富化型低炭素製錬方法。
【請求項2】
吹込み総量における酸素富化率が40%~50%に達する、ことを特徴とする請求項1に記載の超高酸素富化型低炭素製錬方法。
【請求項3】
前記15~20%の酸素富化は、熱風炉加熱システムを介して、900~1000℃までの温度に加熱される、ことを特徴とする請求項1に記載の超高酸素富化型低炭素製錬方法。
【請求項4】
前記高還元性石炭ガスの溶鉄1トンあたりの吹込み量は、200~300m/tである、ことを特徴とする請求項1に記載の超高酸素富化型低炭素製錬方法。
【請求項5】
前記コークス炉ガスの溶鉄1トンあたりの吹込み量は、210~230m/tである、ことを特徴とする請求項1に記載の超高酸素富化型低炭素製錬方法。
【請求項6】
前記高還元性石炭ガスの組成は、CO:65~75%、H:10~18%、N:6~15%、その他:5~12%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の超高酸素富化型低炭素製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉製鉄の技術分野に属し、具体的には、超高酸素富化型低炭素製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業におけるエネルギー消費の70%は、製鉄工程に集中して発生しているため、製鉄工程にかかる炭素消費量の低減は、鉄鋼業における石炭の減量化を図る主な手段である。現在、炭素排出量の削減は、高炉技術の発展上の技術的ボトルネックとなっている。溶鉄の燃料消費量をさらに低下させる許容空間は、非常に限られたもので、高炉の大型化及び生産効率の向上には、限界が来ている。現在の高炉溶鉄製錬にかかる燃料消費量は、溶鉄1トンあたりに550kg程度である場合が多いが、中国の低炭素化・脱炭素化が進んでいる背景下、従来の高炉による炭素排出量の削減という目標の達成には、まだ長い道のりがあると思われる。
【0003】
従来の高炉製鉄工程は、主に以下の通りである。焼結鉱、ペレット、コークス、溶剤を一定の割合で混合してチャージを構成し、チャージを炉頂から炉内に仕込んでから、高炉送風口から、熱風、酸素ガス、微粉炭を吹き込んで加湿させる。チャージが高炉の炉内で熱風と接触して動いていると、熱伝導および酸化還元反応が生じて、石炭ガスを発生させる。石炭ガスは、上向きに動いて、上昇管を介して高炉から離れる。高炉原料は、反応過程で溶融し、溶鉄およびスラグとして滴下し、液体スラグが銑口を介して高炉から排出される。従来の高炉では、高酸素富化している場合、炉体内の温度が「上が冷たく、下が熱く」なるように分布しているので、製錬工程の展開が難しい。同時に、炉内の鉄元素は、炭素による直接還元に依存するものが約35%~40%を占めているので、コークスの消費量が大きい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記背景技術に挙げられた炉内の温度が「上が冷たく、下が熱く」なるように分布している問題を解決するために、直接的な還元の割合を低減し、間接的な還元の割合を上げて、工程にかかるコークスの消費量を低下させることができる、超高酸素富化型低炭素製錬方法を提供することを目的にしている。
【0005】
上記目的を実現するために、本発明は、以下の技術案を提供する。
【0006】
超高酸素富化型低炭素製錬方法であって、
60~80%の焼結鉱、20~40%のペレット、0~5%の原鉱石およびコークスという組成を有する鉱石チャージを高炉内に階層別で充填する仕込み工程(S1)と、
溶鉄1トンあたりの高炉吹込み量が570~690m/tであり、風温が900~1000℃の範囲内にあるように制御し、純酸素を前記高炉内に吹き込むことで、前記高炉において超高酸素富化の製錬作業状況が形成され、ここで、熱風炉前に15~20%の酸素富化をしているが、足りない部分について、送風口から冷たい酸素を吹き込むようにし、前記送風口から、微粉炭、高還元性石炭ガス、および、コークス炉ガスを吹き込むことで、前記送風口での理論上の燃焼温度が2350~2500℃の範囲内にあるように維持し、その期間において、吹込み炭比を、前記コークス炉ガスが0.3~0.35kg/mである石炭ガス置換率で低下させ、または、コークス比を、脱炭素石炭ガスが0.28~0.3kg/mである置換率で210kg/t以下となるように低下させる高炉製錬工程(S2)と、を含む。
【0007】
前記高炉内に吹き込まれる純酸素は、2部分に分けられ、そのうちの一部分が前記熱風炉によって加熱された酸素ガスであって、吹き込まれるガスの総量の15~20%を占めており、入炉温度が900~1000℃であり、入炉吹込み総量の酸素含有量が40~50%であるが、残りの部分の酸素ガスは、冷たい酸素による入炉である。高還元性石炭ガスは、COが抜けた高炉石炭ガスであって、その組成がCO:65~75%、H:10~18%、N:6~15%、その他:5~12%である。高炉石炭ガスにおいて、COの割合が大部分を占めているので、COが抜けた後、COおよびHなどの還元性ガスの割合が著しく高められるようになり、また、その溶鉄1トンあたりの吹込み量は、200~300m/tであり、コークス炉ガスの溶鉄1トンあたりの吹込み量は、210~230m/tである。
【0008】
従来技術と比べて、本発明による有益な効果は以下の通りである。
【0009】
高炉酸素富化率が40~50%である場合、高炉製錬の強度が高められ、生産量が20%高められる。しかも、熱風炉酸素富化率が15~20%に達するため、その部分の酸素ガスが900~1000℃の温度で入炉されたことに相当し、酸素富化でもたらされた熱量が増加し、高炉内の炭素消費量を効果的に低下させることができる。送風口から、高還元性石炭ガスおよびコークス炉ガスが吹き込まれたことで、炉内の還元反応に参加することができ、石炭ガスの発熱量を高めて、上部におけるチャージの予熱および還元反応を強化して、「上が冷たく、下が熱く」ならないようにしている。また、送風口から、高還元性石炭ガスが吹き込まれると同時に、高酸素富化している送風口での理論上の燃焼温度を調整することができ、炉内工程が順調に行われるように確保された。しかも、コークス炉ガスは、水素ガスを主な成分としたものであり、その分子量が小さく、通気性が優れており、COよりも、鉄酸化物との還元反応が生じやすいので、間接的還元度が高められ、コークスの消費量を低下させることができる。そして、一部の高還元性石炭ガスおよびコークス炉ガスは、熱源として、燃焼して熱量を放出させることができ、コークスの消費量を低下するという目的を達成した。ここで、コークスの総合的な消費量は10~15%低下することが可能となる。さらに、送風口から、大量の高還元性石炭ガスやコークス炉ガスが吹き込まれたので、高炉の上部における間接的な還元が十分に行われるようになり、高炉の下部における間接的な還元にかかる炭素消費量が大幅に低下した。そうすると、高炉による炭素排出量の削減および燃料比の低下という目的を達成し、50%の高酸素富化製錬の作業状況に、高炉による生産量が20%高められ、全体的な炭素消費量が15%低下した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下は、本発明の実施例の技術案を明確かつ完全に説明する。明らかなことに、説明されている実施例は、ただ本発明の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。本発明の実施例を基にして、当業者が創造的な労力を払わないことを前提に得られる全ての他の実施例は、全部、本発明の保護範囲に入っている。
【0011】
本発明は、以下の技術案を提供する。
【0012】
超高酸素富化型低炭素製錬方法では、
焼結鉱:60~80%、ペレット:20~40%、原鉱石:0~5%という組成を有する鉱石チャージを炉頂に上昇させて仕込みし、チャージラインの深さが1.1~1.6mであるように制御する仕込み工程(S1)と、
高炉吹込み量が500~600m/minであり、風温が900~1000℃の範囲内にあるように制御し、ここで、熱風炉前に15~20%の酸素富化を徐々に増加して行い、総酸素富化率が40~50%程度であるようにしており、熱風炉の酸素富化が標準に達した後、足りない部分について、送風口から冷たい酸素を吹き込み、送風口から、微粉炭およびコークス炉ガス(0~250m/t)を吹き込むことで、熱風炉前の酸素富化を増加させる同時に、高還元性石炭ガスの吹き込み量(0~250m/t)を同期的に増加させて、送風口での理論上の燃焼温度が2250~2350℃の範囲内にあり、炉内石炭ガス量が1200~1400m/tであるように維持し、その期間において、吹込み炭比を、0.3~0.55kg/mである石炭ガス置換率で低下させ、または、コークス比を0.25~0.5kg/mの置換率で低下させる高炉製錬工程(S2)と、を含む。
【0013】
高還元性石炭ガスが吹き込まれたことで、送風口での理論上の燃焼温度を調整することができ、炉体の下部の温度が高すぎないようにしている。また、コークス炉ガスを入れる目的は、コークス炉ガスを鉄の還元反応に参加させて、鉄を直接に還元するコークスの消費量を低下させることにある。コークス炉ガスには、大量のCOが含まれるので、一部のコークスの代わりに、鉄鉱石との反応のために用いられても良い。
【0014】
酸素富化の場合には、熱風炉前の酸素富化を優先的に増加すべきである。そうすると、その部分の酸素ガスは、900~1000℃以上の風温で入炉されることに相当し、吹込みによってもたらされた熱量が増加し、高炉工程にかかる炭素消費量を効果的に低下させることができる。熱風炉前の酸素富化が20%に達した後、送風口から冷たい酸素を吹き込むようになる。
【0015】
[実施例]
従来の高炉製錬方法の制御パラメータは、以下の通りである。
【0016】
【表1】
従来の製錬方法における高炉経済的技術指標は、以下の通りである。
【0017】
【表2】
本発明にかかる方法が用いられた場合の高炉制御パラメータは、以下の通りである。
【0018】
【表3】
本発明にかかる方法によって制御される高炉経済的技術指標は、以下の通りである。
【0019】
【表4】
従来の高炉制御方法における経済的技術指標と、本発明における方法によって制御される高炉経済的技術指標とを比較したところ、本発明における方法が用いられた場合、高炉の送風口から、高還元性石炭ガスまたはコークス炉ガスが吹き込まれると、吹き込まれた石炭ガスが高炉の上部におけるチャージと直ちに接触して還元反応が生じ、炉内における間接的な還元反応が強化し、高炉製錬過程における燃料消費量を効果的に低下させることができ、また、高炉における酸素富化によれば、製錬が強化し、高炉におけるコークス比および燃料比が明らかに低下した場合、高炉溶鉄の生産量も高められ、すなわち、燃料が減少した場合においても、溶鉄の生産量が従来の高炉製鉄方法と比べて、少し高くなった、ということが明らかになった。
【0020】
ここで説明すべきなのは、本明細書では、「含む」、「包含」という用語又は他の変形は、非排除性の「含む」を意図的にカバーするものであり、それにより、一連の要素を含むプロセス、方法、物品または機器はそれらの要素を含むだけではなく、明確に挙げられていない他の要素、又は、そのようなプロセス、方法、物品または機器の固有の要素も含む。あまり多くの制限がない場合、「1つの……を含む」という文章で限定された要素について、前記要素を含むプロセス、方法、物品または機器には、他の同様の要素がさらに存在することを排除できない。
【0021】
以上の説明は、本発明の技術案を説明するためのものに過ぎず、制限するものではない。当業者による本発明の技術案への他の補正または同等の置き換えは、本発明の技術案の精神や範囲から逸脱しないものであれば、本発明が特許請求する範囲内に入っているはずである。
【国際調査報告】