(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】酸素富化型高炉操業方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
C21B5/00 316
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542299
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2022138698
(87)【国際公開番号】W WO2023134369
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210030003.4
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524266227
【氏名又は名称】新疆八一▲鋼▼▲鉄▼股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田宝山
(72)【発明者】
【氏名】田庄
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼永想
(72)【発明者】
【氏名】臧疆文
(72)【発明者】
【氏名】安志▲慶▼
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012BD04
(57)【要約】
本発明は、酸素富化型高炉操業方法を開示し、当該方法では、炉暖めの後、チャージを仕込み、加熱された窒素ガスを羽口から吹き込んで予熱し、その後、熱い石炭ガスおよび酸素ガスを羽口から送り、理論上の燃焼温度が2350~2400℃であるように制御し、炉缶内の理論上の鉄量が正常安全許容鉄量の60%に達したときに、出銑し、それに続いて、入炉負荷を徐々に増加し、還元用ガスおよび酸素ガスの入炉量を増加し、正常な出銑および炉内の負荷調整を図り、当該段階における理論上の燃焼温度が2400~2500℃である。本発明では、原料に対して、加熱された窒素ガスで吹き付けて、原料の乾燥および原料温度の上昇を迅速的かつ効果的に行い、高炉石炭ガスシステムを惰性化することができ、また、加熱された還元用石炭ガスを羽口から吹き込むことで、高温高還元性の石炭ガスが炉内に入ってから、上部におけるチャージとの還元反応に直ちに参加することができ、そして、吹き込まれた酸素ガスとともに燃焼されたことで、大量の熱量を放出し、炉缶の温度を迅速的に上昇させ、高炉操業時間を短縮させ、原燃料の消費量を効果的に低減することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉を暖めた後、チャージを仕込み、加熱された窒素ガスを羽口から5時間吹き込んで、チャージの予熱および高炉石炭ガスシステムの惰性化を行い、
その後、熱い石炭ガスおよび酸素ガスを前記羽口から送り、理論上の燃焼温度が2350~2400℃であるように制御し、
炉缶内の理論上の鉄量が正常安全許容鉄量の60%に達したときに、出銑し、
それに続いて、入炉負荷を徐々に増加し、入炉還元用ガス量を増加し、当該段階における理論上の燃焼温度が2400~2500℃であるように制御し、正常な出銑および炉内の負荷調整を図る、
ことを特徴とする酸素富化型高炉操業方法。
【請求項2】
熱風炉によって、加熱圧縮された空気を入れて、24時間の炉暖めを行う炉暖め作業(S1)と、
前記炉暖めが終わった後、チャージの仕込みを開始し、まず、純コークス1バッチを炉底に入れてから、出銑口から石炭ガスを導出するためのコイル管を配管して、純コークスを入れ、前記炉缶に枕木を入れた後、炉体の中下部に負荷チャージを入れて、コークス比を1500~1800kg/tとし、前記炉体の中部に負荷チャージ付きコークスを入れ、コークス比を1100~1300kg/tとし、前記炉体の上部に負荷チャージ付きコークスを入れ、コークス比を800~1000kg/tとし、炉スロートおよび前記炉体の上部に正常チャージを入れて、コークス比を500~600kg/tとし、操業用チャージの総合的なコークス比を800~900kg/tとするチャージ仕込み作業(S2)と、
前記チャージ仕込み作業が終わった後、窒素ガスを低温化・高温化して吹き付け、窒素ガスは、その圧力や流量が制御弁群によって調整された後、加熱装置に入り、送風ヘッダ管、囲い管、分岐管を経てから、前記羽口から高炉に入り、まず、常温窒素ガスを吹き込んでチャージを1時間吹き付け、その後、前記加熱装置を起動させて、窒素ガスの温度を300℃/hのレートで上昇させ、2.5時間が経過した後、入炉された窒素ガスの温度が900~1200℃以上にも達し、その場合、原料に対して加熱後の窒素ガスを2~4時間吹き付けることで、原料の温度を迅速的かつ効果的に上昇させ、その期間において、前記高炉が通気可能に開放して、石炭ガス管路網に対して窒素ガスを通して吹き付けることで、炉内および前記石炭ガス管路網に吹き付け、前記出銑口における石炭ガスを導出する管を開け、前記出銑口に対する除塵機能を発揮させるステップ(S3)と、
900~1200℃の高温窒素ガスを恒温で2~4時間吹き付けた後、前記羽口における還元用石炭ガス吹込みシステムを起動させ、前記還元用石炭ガス吹込みシステムの弁群を、定められた流量10000~20000m
3/hで起動しはじめ、還元用石炭ガス迅速切替弁、流量調節弁をオンにすることで、還元用石炭ガスが前記加熱装置に入り、窒素ガスと混合して加熱した上で、前記送風ヘッダ管、前記囲い管、前記分岐管を経てから、前記羽口から前記高炉に入るようになり、且つ、加熱目標温度を900~1200℃に設定し、還元用石炭ガスを加熱してから前記羽口から吹込み、高温還元用石炭ガスだけで、前記炉缶の温度を迅速に上昇させるという目的を達成させることができ、また、高温還元用石炭ガスが炉内に入ってから、上部の負荷チャージとの還元反応に直ちに参加することができ、原料における酸素鉄が還元された後、金属鉄の形態で前記炉缶に入ることが確保され、前記出銑口には、2~3個のトーチが設けられたことで、石炭ガスが前記出銑口から湧いてから、全部燃焼できることが確保され、環境に対する領域別の石炭ガス監視措置および石炭ガスの中毒防止対策を講じるステップ(S4)と、
900℃以上の高温還元用石炭ガスを入炉して1~2時間吹き込んだ後、前記羽口における酸素ガス吹込みシステムを起動させ、前記羽口に対して酸素ガスを15000~25000m
3/hで吹き込むステップ(S5)と、
前記酸素ガス吹込みシステムの起動後、酸素ガスは、酸素ガス弁台によって圧力や流量が調整された後、前記羽口における小スリーブの通路にて高温還元用石炭ガス、高温窒素ガスと混合して、前記高炉に入り、前記小スリーブの先端に高温石炭ガスおよび前記羽口前のコークスを点火させる点火作業(S6)と、
前記羽口での点火が成功した後、窒素ガスの吹込み量を減少しはじめ、その期間において、前記羽口における全体的な吹込み量の酸素含有量が75~100%であるように調整するとともに、石炭ガスの吹込み量を徐々に増加し、石炭ガスの加熱温度を1100~1200℃に上昇させて、前記羽口前の理論上の燃焼温度が2350~2400℃の範囲内にあるように制御するステップ(S7)と、
炉頂における石炭ガス成分を持続的に監視し、O
2の含有量が1%未満で、COの含有量が16%超過となった後に、出力された石炭ガスは、管路網に回収する条件を満たしたとみなし、系統連系眼鏡型弁、切断弁をオンにして、前記炉頂を通気不可にさせることで、石炭ガスを前記管路網に導入する作業を完成し、石炭ガスの導入が終わった後、頂部の圧力を60~100Kpaに上昇させはじめ、前記羽口領域における初期的な高温石炭ガスを前記出銑口から吹き出し、前記炉缶および炉缶内の原料を加熱する目的を達成させるステップ(S8)と、
酸素ガスの入炉量を調整し、前記羽口からの高温石炭ガスの吹込み量を同期的に調整することで、前記羽口における風速が200~250m/sであり、前記羽口での理論上の燃焼温度が2350~2400℃であるように維持し、前記炉缶内の理論上の鉄量が正常安全許容鉄量の60%に達したことが算出された場合、前記出銑口を開けて一回目の出銑を行うステップ(S9)と、
入炉負荷を徐々に増加し、還元石炭ガスの入炉量を増加して、前記羽口での理論上の燃焼温度を2400~2500℃に調整するステップ(S10)と、
続いて、算出された理論上の溶銑生産量および高炉安全許容鉄量に従って、正常な出銑および炉内の負荷調整を図り、溶銑のシリコン削減作業を完成して、酸素富化型高炉の安全化の操業目標を実現させるステップ(S11)と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の酸素富化型高炉操業方法。
【請求項3】
高炉操業前に、まず、原料および石炭ガスシステムに対して冷たい窒素ガスで吹き付けてから、さらに、加熱器を起動させて、窒素ガスを加熱して、チャージを吹き付けて予熱し、
その後、CO:60~75%、CO
2:5%、H
2:10~15%、O
2:0.5%という組成を有する還元用石炭ガスを用いて、チャージを予熱して還元させ、最後に、酸素ガスを吹き込んで点火させることで、高炉操業を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の酸素富化型高炉操業方法。
【請求項4】
炉内の原料に対して、熱い窒素ガスで吹き付けてから、熱い石炭ガスで吹き付けて還元させ、酸素ガスを前記羽口から直接に吹き込むことで、前記炉内のコークスおよび還元用石炭ガスを点火させて、高炉操業のための点火を実現させるとともに、
前記炉内における還元用石炭ガス、窒素ガスの吹込み量を調整することで、前記羽口での理論上の燃焼温度が2350~2400℃であるようにさせた後、合理的な範囲内において、酸素ガスを入れる同時に、還元用石炭ガスの吹込み量を徐々に増加して、窒素ガスの入炉量を低下させることで、前記羽口における全酸素ガスおよび還元用石炭ガスによる吹込み型製錬モードを徐々に実現させ、
高炉操業が正常に行われた後、溶鉄1トンあたりの酸素ガス吹込み量が200~300m
3/tであり、溶鉄1トンあたりの還元用石炭ガス吹込み量が500~750m
3/tであり、還元用石炭ガスの温度が900~1200℃である、
ことを特徴とする請求項1に記載の酸素富化型高炉操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉製鉄の技術分野に属し、具体的に、酸素富化によって石炭ガスを吹き込む高炉操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高炉操業では、焼結鉱、ペレット、コークス、溶剤を一定の割合で混合してチャージを構成し、チャージを炉頂から炉内に仕込んでから、高炉羽口から熱風を吹き込む。チャージが高炉の炉内で熱風と接触して動いていると、熱伝導および酸化還元反応が生じて、石炭ガスを発生させる。石炭ガスは、上向きに動いて、上昇管を介して高炉から離れる。高炉原料は、反応過程で溶融し、溶銑およびスラグとして滴下し、液体スラグが出銑口を介して高炉から排出される。従来の高炉操業では、初期には、炉缶の蓄熱過程が遅く、石炭ガスの発熱量が低く、石炭ガスの使用率が大きく波動しており、間接的な還元過程が足りないという難点があった。高炉操業者は、操業過程において、高炉内の酸素還元反応の速度を加速するために、コークス量を増加して、超軽量負荷のチャージを用いて操業することが一般的である。ただし、当該方式で操業すると、燃料消費量が大きく、反応周期が長くなる一方、炉缶には、極冷・極熱プロセスを経る必要があるので、炉前作業の難易度が高く、リスクも大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高炉操業の安全化、高効率化の実現、炭素排出量の削減および経済的な操業目標の実現を確保するために、新しい酸素富化型高炉操業方法を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を提供する。
【0005】
酸素富化型高炉操業方法であって、
炉暖め作業(S1)であって、1)混合ガス弁を全開させて冷風を送り、送風後、炉頂における圧力を10kpaに設定し、風量を300m3/minに設定すること、2)風温および前記風量が安定化された後、ガス混合弁を手動で調節して、温度上昇曲線に従って実際の風温の上昇を制御し、羽口の先端における温度に準じて、送風温度が150℃に安定化された後、前記風量を400~500m3/minに指定し、前記送風温度が400℃超過となると、前記風量を500m3/minに指定し、温度下降の期間において、前記送風温度が400℃以下となると、温度下降の末期となるまで、前記風量を400m3/minに指定して保持させ、温度上昇または風量増加の過程において、炉頂における温度が250℃以下であり、気密ボックスの温度が50℃以下であるように確保し、前記炉頂における温度が250℃超過となると、前記風量を50m3/min/回減少して、24~26時間が経過した段階において、前記風量の平均値が0となるように徐々に減少すること、を含む炉暖め作業(S1)と、
チャージ仕込み作業(S2)であって、炉暖めが終わった後、チャージの仕込みを開始し、まず、純コークス1バッチを炉底に入れてから、出銑口から石炭ガスを導出するためのコイル管を配管して、純コークス1バッチを入れ、炉缶に枕木を入れた後、炉体の中下部に負荷チャージを入れて、コークス比を1500~1800kg/tとし、炉体の中部に負荷チャージ付きコークスを入れ、コークス比を1100~1300kg/tとし、炉体の上部に負荷チャージ付きコークスを入れ、コークス比を800~1000kg/tとし、炉スロートおよび炉体の上部に正常チャージを入れて、コークス比を500~600kg/tとするチャージ仕込み作業(S2)と、
チャージ仕込み作業が終わった後、窒素ガスを低温化・高温化して吹き付け、前記窒素ガスは、その圧力や流量が制御弁群によって調整された後、加熱装置に入り、送風ヘッダ管、囲い管、分岐管を経てから、前記羽口から高炉に入り、まず、常温窒素ガスを吹き込んでチャージを1時間吹き付け、その後、前記加熱装置を起動させて、窒素ガスの温度を300℃/hのレートで上昇させ、2.5時間が経過した後、入炉された窒素ガスの温度が900以上に達した場合、原料に対して加熱後の窒素ガスを2時間吹き付けることで、原料の温度を迅速的かつ効果的に上昇させ、その期間において、前記高炉が通気可能に開放して、石炭ガス管路網に対して窒素ガスを通して吹き付けることで、炉内および前記石炭ガス管路網に吹き付け、前記出銑口における石炭ガスを導出する管を開け、前記出銑口に対する除塵機能を発揮させるステップ(S3)と、
900~1200℃の高温窒素ガスを恒温で2~4時間吹き付けた後、前記羽口における還元用石炭ガス吹込みシステムを起動させ、還元用石炭ガスは、CO:60~75%、CO2:5%、H2:10~15%、O2:0.5%という組成を有し、前記還元用石炭ガス吹込みシステムの弁群を、定められた流量(10000~15000m3/h)で起動しはじめ、還元用石炭ガス迅速切替弁、流量調節弁をオンにすることで、還元用石炭ガスが前記加熱装置に入り、窒素ガスと混合して加熱した上で、前記送風ヘッダ管、前記囲い管、前記分岐管を経てから、前記羽口から前記高炉に入るようになり、且つ、加熱目標温度を900~1200℃に設定し、還元用石炭ガスを加熱してから前記羽口から吹込み、高温還元用石炭ガスだけで、炉缶の温度を迅速に上昇させるという目的を達成させることができ、また、高温還元用石炭ガスが炉内に入ってから、上部の負荷チャージとの還元反応に直ちに参加することができ、原料における酸素鉄が還元された後、金属鉄の形態で炉缶に入ることが確保され、前記出銑口には、2~3個のトーチが設けられたことで、石炭ガスが前記出銑口から湧いてから、全部が燃焼できることが確保され、環境に対する領域別の石炭ガス監視措置および石炭ガスの中毒防止対策を講じるステップ(S4)と、
900~1200℃以上の高温還元用石炭ガスを入炉して1~2時間吹き込んだ後、前記羽口における酸素ガス吹込みシステムを起動させ、羽口に対して酸素ガスを15000~25000m3/hで吹き込むステップ(S5)と、
前記酸素ガス吹込みシステムの起動後、酸素ガスは、酸素ガス弁台によって圧力や流量が調整された後、前記羽口における小スリーブの通路にて高温還元用石炭ガス、高温窒素ガスと混合して、前記高炉に入り、小スリーブの先端に高温石炭ガスおよび前記羽口前のコークスを点火させる点火作業(S6)と、
前記羽口での点火が成功した後、窒素ガスの吹込み量を減少しはじめ、その期間において、前記羽口における全体的な吹込み量の酸素含有量が75~100%であるように調整するとともに、石炭ガスの吹込み量を徐々に増加し、石炭ガスの加熱温度を1100~1200℃に上昇させて、前記羽口前の理論上の燃焼温度が2350~2400℃の範囲内にあるように制御するステップ(S7)と、
前記炉頂における石炭ガス成分を持続的に監視し、O2の含有量が1%未満で、COの含有量が16%超過となった後に、出力された石炭ガスは、管路網に回収する条件を満たしたとみなし、系統連系眼鏡型弁、切断弁をオンにして、前記炉頂を通気不可にさせることで、石炭ガスを前記管路網に導入する作業を完成し、石炭ガスの導入が終わった後、頂部の圧力を60~100Kpaに上昇させはじめ、羽口領域における初期的な高温石炭ガスをなるべく多く前記出銑口から吹き出し、炉缶および炉缶内の原料を加熱する目的を達成させるステップ(S8)と、
酸素ガスの入炉量を安定化し、前記羽口からの高温石炭ガスの吹込み量を増加することで、前記羽口における風速が200~250m/sであり、前記羽口での理論上の燃焼温度が2350~2400℃であるように維持し、炉缶内の理論上の鉄量が正常安全許容鉄量の60%に達したことを算出された場合、前記出銑口を開けて一回目の出銑を行うステップ(S9)と、
入炉負荷を徐々に増加し、還元石炭ガスの入炉量を増加して、前記羽口での理論上の燃焼温度を2400~2500℃に調整するステップ(S10)と、
続いて、算出された理論上の溶銑生産量および高炉安全許容鉄量に従って、正常な出銑および炉内の負荷調整を図り、溶銑のシリコン削減作業を完成して、酸素富化型高炉の安全化の操業目標を実現させるステップ(S11)と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
従来技術と比べて、本発明による有益な効果は以下の通りである。
【0007】
本発明にかかる方法では、原料を加熱後の窒素ガスで吹き付けることで、原料の乾燥および原料温度の上昇を迅速的かつ効果的に行うことができ、後続の段階における炉缶の熱量が十分であること、および、高還元性の還元用石炭ガスによる還元反応が高効率で行われることが確保された。また、熱い窒素ガスを羽口から吹き込んでチャージの予熱を行い、チャージの乾燥を行う同時に、システムを惰性化させることで、窒素ガスや石炭ガスの送気のための準備を整える。そして、還元用石炭ガスを加熱してから羽口から吹き込むという技術手段によれば、炉缶温度を迅速的に上昇させる目的を達成させることができ、且つ、高温高還元性の石炭ガスが炉内に入ってから、上部におけるチャージとの還元反応に直ちに参加することができるため、負荷チャージが炉缶に入った後に発生されたスラグの温度が十分であるように確保され、製錬にわたる工程全体が安定的かつ効率的に行われることが可能となる。熱い石炭ガスが送られると、還元性ガスが直ちにチャージとの酸素化還元反応を行い、熱量を発する。そのような過程では、従来の高炉操業における石炭ガスの発生工程の流れをスキップして、熱い石炭ガスをチャージと直接に反応させるとともに、羽口から酸素ガスを吹き込んで、石炭ガスと反応させて、酸素化還元反応のプロセスを激化するため、従来の高炉よりも、原燃料の消費量が60%減少し、高炉操業における綜合的な燃料比が800kg/tとなる。そして、高炉操業の過程では、全酸素で石炭ガスを吹き付けることにより行われるため、炉内の石炭ガス量が従来の高炉における石炭ガス量よりも小さく、高炉操業がスムーズに行われることができる。また、点火操作が更に簡素化されたことで、酸素ガスが送られただけで、点火操作を完成することができ、同じく純酸素製錬に該当するCOREX工程と比べて、作業者による羽口での点火操作が不要であって、優れている。最後に、酸素ガスが羽口から炉内に直接に吹き込まれて、羽口前の理論上の燃焼温度が2350~2400℃の範囲内にあるように維持され、羽口における小スリーブの通路にて酸素ガスと還元用石炭ガスが混合されて炉内に吹き込まれたことで、製錬の強度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下は、本発明の実施例の技術案を明確かつ完全に説明する。明らかなことに、説明されている実施例は、ただ本発明の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。本発明の実施例を基にして、当業者が創造的な労力を払わないことを前提に得られる全ての他の実施例は、全部、本発明の保護範囲に入っている。
【0010】
本発明は、以下の技術案を提供する。
【0011】
酸素富化型高炉操業方法では、以下のステップを含む。
炉暖め作業(S1)では、
1)混合ガス弁を全開させて冷風を送り、送風後、炉頂における圧力を10kpaに設定し、風量を300m
3/minに設定すること、
2)風温および風量が安定化された後、ガス混合弁を手動で調節して、温度上昇曲線に従って実際な風温の上昇を制御し、羽口の先端における温度に準じ、温度上昇曲線は
図1で示す通りであり、送風温度が150℃に安定化された後、風量を400~500m
3/minに指定し、送風温度が400℃超過となると、風量を500m
3/minに指定し、温度下降の期間において、送風温度が400℃以下となると、温度下降の末期となるまで、風量を400m
3/minに指定して保持させ、温度上昇または風量増加の過程において、炉頂における温度が250℃以下であり、気密ボックスの温度が50℃以下であるように確保し、炉頂における温度が250℃超過となると、風量を50m
3/min/回減少して、24~26時間が経過した段階において、風量の平均値が0となるように徐々に減少すること、を含む。
【0012】
チャージ仕込み作業(S2)では、炉暖めが終わった後、チャージの仕込みを開始し、まず、純コークス1バッチを炉底に入れてから、出銑口から石炭ガスを導出するためのコイル管を配管して、純コークス1バッチを入れ、炉缶に枕木を入れた後、炉体の中下部に負荷チャージを入れて、コークス比を1500~1800kg/tとし、炉体の中部に負荷チャージ付きコークスを入れ、コークス比を1100~1300kg/tとし、炉体の上部に負荷チャージ付きコークスを入れ、コークス比を800~1000kg/tとし、炉スロートおよび炉体の上部に正常チャージを入れて、コークス比を500~600kg/tとする。
【0013】
ステップ(S3)では、チャージ仕込み作業が終わった後、窒素ガスを低温化・高温化して吹き付け、窒素ガスは、その圧力や流量が制御弁群によって調整された後、加熱装置に入り、送風ヘッダ管、囲い管、分岐管を経てから、羽口から高炉に入り、まず、常温窒素ガスを吹き込んでチャージを1時間吹き付け、その後、加熱装置を起動させて、窒素ガスの温度を300℃/hのレートで上昇させ、2.5時間が経過した後、入炉された窒素ガスの温度が900以上に達した場合、原料に対して加熱後の窒素ガスを2時間吹き付けることで、原料の温度を迅速的かつ効果的に上昇させ、その期間において、高炉が通気可能に開放して、石炭ガス管路網に対して窒素ガスを通して吹き付けることで、炉内および石炭ガス管路網に吹き付け、出銑口における石炭ガスを導出する管を開け、出銑口に対する除塵機能を発揮させる。
【0014】
ステップ(S4)では、900~1200℃の高温窒素ガスを恒温で2~4時間吹き付けた後、羽口における還元用石炭ガス吹込みシステムを起動させ、還元用石炭ガス吹込みシステムの弁群を、定められた流量(10000~15000m3/h)で起動しはじめ、還元用石炭ガス迅速切替弁、流量調節弁をオンにすることで、還元用石炭ガスが加熱装置に入り、窒素ガスと混合して加熱した上で、送風ヘッダ管、囲い管、分岐管を経てから、羽口から高炉に入るようになり、且つ、加熱目標温度を900~1200℃に設定し、還元用石炭ガスを加熱してから羽口から吹込み、高温還元用石炭ガスだけでは、炉缶の温度を迅速に上昇させるという目的を達成させることができ、また、高温還元用石炭ガスが炉内に入ってから、上部の負荷チャージとの還元反応に直ちに参加することができ、原料における酸素鉄が還元された後、金属鉄の形態で炉缶に入ることが確保され、出銑口には、2~3個のトーチが設けられたことで、石炭ガスが出銑口から湧いてから、全部、燃焼できることが確保され、環境に対する領域別の石炭ガス監視措置および石炭ガスの中毒防止対策を講じる。
【0015】
ステップ(S5)では、900~1200℃以上の高温還元用石炭ガスを入炉して1~2時間吹き込んだ後、羽口における酸素ガス吹込みシステムを起動させ、羽口に対して酸素ガスを15000~25000m3/hで吹き込む。
【0016】
点火作業(S6)では、酸素ガス吹込みシステムの起動後、酸素ガスは、酸素ガス弁台によって圧力や流量が調整された後、羽口における小スリーブの通路にて高温還元用石炭ガス、高温窒素ガスと混合して、高炉に入り、小スリーブの先端に高温石炭ガスおよび羽口前のコークスを点火させる。
【0017】
ステップ(S7)では、羽口での点火が成功した後、窒素ガスの吹込み量を減少しはじめ、その期間において、羽口における全体的な吹込み量の酸素含有量が75~100%であるように調整するとともに、石炭ガスの吹込み量を徐々に増加し、石炭ガスの加熱温度を1100~1200℃に上昇させて、羽口前の理論上の燃焼温度が2350~2400℃の範囲内にあるように制御する。
【0018】
ステップ(S8)では、炉頂における石炭ガス成分を持続的に監視し、O2の含有量が1%未満で、COの含有量が16%超過となった場合、出力された石炭ガスは、管路網に回収する条件を満たしたとみなし、系統連系眼鏡型弁、切断弁をオンにして、炉頂を通気不可にさせることで、石炭ガスを管路網に導入する作業を完成し、石炭ガスの導入が終わった後、頂部の圧力を60~100Kpaに上昇させはじめ、羽口領域における初期的な高温石炭ガスをなるべく多く出銑口から吹き出し、炉缶および炉缶内の原料を加熱する目的を達成させる。
【0019】
ステップ(S9)では、酸素ガスの入炉量を安定化し、羽口からの高温石炭ガスの吹込み量を増加することで、羽口における風速が200~250m/sであり、羽口での理論上の燃焼温度が2350~2400℃であるように維持し、炉缶内の理論上の鉄量が正常安全許容鉄量の60%に達したことを算出された場合、出銑口を開けて一回目の出銑を行う。
【0020】
ステップ(S10)では、入炉負荷を徐々に増加し、還元石炭ガスの入炉量を増加して、羽口での理論上の燃焼温度を2400~2500℃に調整する。
【0021】
ステップ(S11)では、続いて、算出された理論上の溶銑生産量および高炉安全許容鉄量に従って、正常な出銑および炉内の負荷調整を図り、溶銑のシリコン削減作業を完成して、酸素富化型高炉の安全化の操業目標を実現させる。
【国際調査報告】