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特表2025-500706コンタクトレンズ及びそれに関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20241226BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/06
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024542307
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 GB2023050062
(87)【国際公開番号】W WO2023139348
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/300,662
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム バスカール
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド デヴィッド エス
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB07
2H006BC03
2H006BC07
2H006BD01
(57)【要約】
コンタクトレンズ(201)は、光軸(219)上に中心合わせされた光学ゾーン(202)と、前記光学ゾーン(202)を取り囲む周辺ゾーン(204)と、を備える。子午線に沿って取られる前記光学ゾーン(202)の断面スライスは、半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する一連の連続的な複数の円弧(203a~203h)を含む。当該半径方向の曲率屈折力プロファイルは、前記光軸(219)からの半径方向の距離に伴って単調に増加する。各円弧(203a~203h)の中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記光軸上の1点(215)に向かって収束し、各円弧(203a~203h)について、当該円弧(203a~203h)を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記光軸から第1距離にある1点(216)に向かって収束する。このようなコンタクトレンズ(201)を設計及び製造する方法も、記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、
前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、
を備え、
子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスは、前記光軸からの半径方向の距離に伴って単調に増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する一連の連続的な複数の円弧を含んでおり、
各円弧の中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記第1光軸上の1点に向かって収束し、
各円弧について、当該円弧を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記光軸から第1距離にある1点に向かって収束する
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記一連の連続的な複数の円弧における各円弧は、当該円弧内で、一定の曲率を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記一連の連続的な複数の円弧における各円弧は、当該円弧内で、当該レンズの前記中心からの半径方向の距離に伴って増加する曲率を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記一連の連続的な複数の円弧は、前記光軸上に中心合わせされた一連の対称的な複数の円弧である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記一連の連続的な複数の円弧は、少なくとも6個の円弧を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記光学ゾーンの任意の子午線に沿って取られる断面スライスが、実質的に同一の半径方向の曲率プロファイルを有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記光学ゾーンの任意の子午線に沿って取られる断面スライスが、実質的に同一の半径方向のサジタル屈折力プロファイルを有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記光学ゾーンの周方向の曲率屈折力プロファイルが、当該レンズの周りの子午線に伴って変化する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記光学ゾーンのサジタル屈折力プロファイルが、当該レンズの周りの子午線に伴って変化する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記光学ゾーンの中心において、当該レンズは、-0.25D~-15.0Dの間のベース屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記一連の連続的な複数の円弧は、+0.5D~+20.0Dの間の追加屈折力を提供する曲率を有する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記光学ゾーンは、当該レンズの前面及び/または後面の曲率から生じる曲率屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
当該レンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの混合物、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
コンタクトレンズの製造方法であって、
請求項1乃至13のいずれかに記載のコンタクトレンズを形成する工程
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項15】
コンタクトレンズを設計する方法であって、
コンタクトレンズをモデル化する工程
を備え、
前記レンズは、
光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、
前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、
を含み、
子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスは、前記光軸からの半径方向の距離に伴って単調に増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有しており、
当該方法は、更に、
前記モデル内において、前記光学ゾーンの前記断面スライスを、前記光軸上に中心合わせされた中央円弧を初めとして半径方向外側に広がっていく一連の連続的な複数の円弧に分割する工程と、
前記モデル内において、前記一連の連続的な複数の円弧における各々の円弧を、当該円弧の中点回りに傾斜させて、各円弧の当該中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線が前記光軸上の1点に向かって収束するようにする一方で、各円弧についての当該円弧を通過する複数の光線が前記光軸から第1距離にある1点に向かって収束するようにする工程と、
前記モデル化されたレンズに基づいてレンズを設計する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズに関する。本発明は、特に(排他的では無く)、近視の進行を遅らせるためのコンタクトレンズに関する。本発明は、特に(排他的では無く)、老眼者による使用のためのコンタクトレンズに関する。本発明はまた、そのようなレンズを製造する方法、及び、そのようなレンズを設計する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子供と大人とを含む多くの人が、近視(近眼)を矯正するためにコンタクトレンズを必要としており、多くの大人が老眼(加齢に伴う調節能力の低下により近くの物体に焦点を合わせることができない状態)を矯正するためにレンズを必要とし得る。
【0003】
近視の目は、遠くの物体からの入射光を網膜の前方の位置に焦点合わせする。その結果、光は網膜の前方の平面に向かって収束し、網膜に向かって発散し、網膜に到達する時には焦点が外れている。近視を矯正するための従来のレンズ(例えば、眼鏡レンズやコンタクトレンズ)は、遠くの物体からの入射光が目に到達する前に、光の収束を低減し(コンタクトレンズの場合)、または、当該入射光の発散をもたらし(眼鏡の場合)、これにより、焦点の位置が網膜上に移動される。
【0004】
老眼の目は、近くの物体に合わせて形を効果的に変えることができない。このため、老眼の人は、近くの物体に焦点を合わせることができない。老眼を矯正するための従来のレンズ(例えば、眼鏡レンズやコンタクトレンズ)は、二重焦点レンズや累進レンズを含み、それらは、近くを見るのに最適化された領域と、遠くを見るのに最適化された領域と、を含む。老眼は、また、二重焦点レンズや多焦点レンズを使用して、あるいは、モノビジョンレンズ(一方の目に遠くを見るレンズが提供され、他方の目に近くを見るレンズが提供される等、それぞれの目に異なる処方が提供される)を使用して、治療され得る。
【0005】
数十年前に、子供や若者の近視の進行は、過小矯正、すなわち、焦点を網膜に近づけるが完全に網膜上にまでは近づけない、によって、遅らせたり予防したりできることが提案された。しかしながら、当該アプローチは、必然的に、近視を完全に矯正するレンズで得られる視力と比較して、遠方視力の低下をもたらす。更に、近視の進行を制御するのに過小矯正が有効であるというのは、現在では疑わしいと見なされている。近視を矯正するためのより最近のアプローチは、遠方視力の完全な矯正を提供する1または複数の領域と、過小矯正すなわち意図的に近視性デフォーカスを誘導する1または複数の領域と、の両方を有するレンズを提供することである。当該アプローチは、良好な遠方視力を提供しながら、子供や若者の近視の発症または進行を予防または遅らせることができる、と示唆されている。デフォーカス(焦点ぼけ)を提供する領域を有するレンズの場合、遠方視力の完全な矯正を提供する領域は、通常、ベース屈折力領域と呼ばれ、過小矯正を提供するかまたは意図的に近視性デフォーカスを誘導する領域は、通常、近視性デフォーカス領域または追加屈折力領域と呼ばれる(屈折力が、遠方領域の屈折力(視度)よりも、より正であるか、より少ない負である)。
【0006】
追加屈折力領域の表面(典型的には前面)は、遠方屈折力領域の曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、従って、より正またはより少ない負の屈折力(度数)を目に提供する。追加屈折力領域は、入ってくる平行光(すなわち、遠くからの光)を網膜の前方(すなわち、水晶体により近い)の眼中に集束させるように設計される。遠方屈折力領域は、光を集束させて網膜に像を形成するように設計される(すなわち、水晶体からより通い)。
【0007】
近視の進行を低減する公知のタイプのコンタクトレンズは、MISIGHT(CooperVision, Inc.)の名前で入手できる、二重焦点コンタクトレンズである。この二重焦点レンズは、老眼の視力を改善するように構成された二焦点コンタクトレンズや多焦点コンタクトレンズとは異なり、遠くの物体と近くの物体との両方を見るために、遠方矯正(すなわち、ベース屈折力)の使用を提供できる所定の光学的寸法で構成される。追加屈折力を有する二重焦点レンズの治療ゾーンは、遠くと近くの両方の視距離で近視性デフォーカスな像を提供する。
【0008】
これらのレンズは、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに有益であることが見出されているが、環状の追加屈折力領域は、不所望の視覚的副作用を引き起こし得る。網膜の前方に環状の追加屈折力領域によって集束される光は、焦点から発散して、網膜にデフォーカスされた(焦点がずれた)輪を形成する。従って、これらのレンズの着用者は、特に街灯や車のヘッドライトなどの小さくて明るい物体の場合、網膜上に形成される像の周囲にリングまたは「ハロー」が見える場合がある。また、近くの物体に焦点を合わせるために、目の自然な遠近調節(すなわち、焦点距離を変える目の自然な能力)を使用するのではなく、理論的には、着用者は、近くの物体に焦点を合わせるために、環状の追加屈折力領域から生じる網膜の前方の追加の焦点を利用し得てしまう。これは、換言すれば、着用者が、老視矯正レンズが使用されるのと同じ態様でレンズを無意識に(気付かずに)使用し得ることになり、これは、若い対象者にとって望ましくない。
【0009】
近視の治療のために、追加的な近視性デフォーカスを導入するレンズを提供することが有益であり得ると認識されている。老眼の治療のために、焦点深度を拡張するレンズを提供することが有益であり得る。本開示は、追加的な近視性デフォーカスを導入して、前述のような軸外(オフ軸)結像技術によって可能とされる改善された画質の恩恵を受ける、改善されたレンズを提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様によれば、本開示は、光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、を備えたコンタクトレンズを提供する。子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスが、前記光軸からの半径方向の距離に伴って単調に増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する一連の連続的な複数の円弧を含んでいる。各円弧の中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記第1光軸上の1点に向かって収束する。各円弧について、当該円弧を通過する複数の光線は、前記光軸から第1距離にある1点に向かって収束する。
【0011】
第2の態様によれば、本開示は、レンズを製造する方法を提供する。当該方法は、本発明の第1の態様のレンズを形成する工程を備える。
【0012】
第3の態様によれば、本開示は、コンタクトレンズを設計する方法を提供する。当該方法は、コンタクトレンズをモデル化する工程を備え、当該レンズは、光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、を含む。子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスは、前記光軸からの半径方向の距離に伴って単調に増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する。当該方法は、更に、前記モデル内において、前記光学ゾーンの前記断面スライスを、前記光軸上に中心合わせされた中央円弧を初めとして半径方向外側に広がっていく一連の連続的な複数の円弧に分割する工程を備える。当該方法は、更に、前記モデル内において、前記一連の連続的な複数の円弧における各々の円弧を、当該円弧の中点回りに傾斜させて、各円弧の当該中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線が前記光軸上の1点に向かって収束するようにする一方で、各円弧についての当該円弧を通過する複数の光線が前記光軸から第1距離にある1点に向かって収束するようにする工程を備える。当該方法は、更に、前記モデル化されたレンズに基づいてレンズを設計する工程を備える。
【0013】
もちろん、本開示の一態様に関連して説明される特徴が、本開示の他の態様に組み込まれ得ることが、理解されるであろう。例えば、本開示の方法は、本開示の装置を参照して説明された特徴を組み込み得るし、その逆もまた同様である。
【0014】
ここで、添付の概略図を参照して、例示のみを目的として、本発明の実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、近視の進行を低減するために近視性デフォーカス像を提供する治療ゾーンを用いる、コンタクトレンズの平面図である。
【0016】
図1B図1Bは、図1Aのコンタクトレンズの側面図である。
【0017】
図2A図2Aは、図1Aのレンズの光線図である。
【0018】
図2B図2Bは、遠方の点源から形成された、図1Aのレンズの近位焦点面における光パターンを示す。
【0019】
図2C図2Cは、遠方の点源から形成された、図1Aのレンズの遠位焦点面における光パターンを示す。
【0020】
図3図3は、図1A及び図1Bのレンズの部分光線図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(一点鎖線)と環状の追加領域(破線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0021】
図4A図4Aは、図1A及び図1Bに示されるレンズの半径方向のサジタル屈折力の変化を示すプロット(グラフ)である。
【0022】
図4B図4Bは、図1A及び図1Bに示されるレンズの半径方向の曲率屈折力の変化を示すプロット(グラフ)である。
【0023】
図5A図5Aは、非同軸光学系を有する別のコンタクトレンズの平面図である。
【0024】
図5B図5Bは、図5Aのコンタクトレンズの側面図である。
【0025】
図6A図6Aは、図5A及び図5Bのレンズの光線図である。
【0026】
図6B図6Bは、遠方の点源から形成された、図5A及び図5Bのレンズの近位焦点面における光パターンを示す。
【0027】
図6C図6Cは、遠方の点源から形成された、図5A及び図5Bのレンズの遠位焦点面における光パターンを示す。
【0028】
図6D図6Dは、図5A及び図5Bのレンズの部分光線図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(一点鎖線)と環状の追加領域(破線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0029】
図7A図7Aは、図5A及び図5Bに示されるレンズの半径方向のサジタル屈折力の変化を示すプロット(グラフ)である。
【0030】
図7B図7Bは、図5A及び図5Bに示されるレンズの半径方向の曲率屈折力の変化を示すプロット(グラフ)である。
【0031】
図8A図8Aは、本開示の一実施形態に係るレンズの平面図である。
【0032】
図8B図8Bは、図8Aのレンズの光学ゾーンを通過する、子午線A-Aに沿った断面スライスである。
【0033】
図9図9は、図8Aのレンズの部分光線図であり、中央領域及び複数の同心環状領域を通過する複数の光線の焦点を示している。
【0034】
図10図10は、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズを設計する方法を示すフローチャートである。
【0035】
図11A図11Aは、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズを設計する方法の第1工程でモデル化されるコンタクトレンズの概略平面図である。
【0036】
図11B図11Bは、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズを設計する方法を使用してモデル化されるコンタクトレンズの子午線ビューに沿った断面スライスである。
【0037】
図11C図11Cは、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズを設計する方法を使用してモデル化される最終的なコンタクトレンズの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
第1の態様によって、本開示は、コンタクトレンズを提供する。当該レンズは、光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、を備える。子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスが、前記光軸からの半径方向の距離に伴って単調に増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する一連の連続的な複数の円弧を含んでいる。各円弧の中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記第1光軸上の1点に向かって収束する。各円弧について、当該円弧を通過する複数の光線は、前記光軸から第1距離にある1点に向かって収束する。
【0039】
本明細書で使用される場合、コンタクトレンズという用語は、眼の前面に配置され得る眼科用レンズを指す。そのようなコンタクトレンズは、臨床的に許容可能な眼上の(on-eye)動きを提供し、人の眼に結合しない、ことが理解されるであろう。コンタクトレンズは、角膜レンズ(例えば、眼の角膜上に載るレンズ)の形態であり得る。コンタクトレンズは、ヒドロゲルコンタクトレンズまたはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどのソフトコンタクトレンズであり得る。レンズは、近視の発症または進行を予防または遅らせるために使用されるレンズであり得て、また、レンズは、近視の目に拡張された焦点深度を提供するために使用されるものであり得る。
【0040】
本開示によるコンタクトレンズは、光学ゾーンを備える。光学ゾーンは、光学的機能を有するレンズ部分を包含する。光学ゾーンは、使用時に眼の瞳孔上に位置決めされるように構成される。光学ゾーンは、光軸上に中心合わせされている。光軸は、レンズの中心線に沿って存在し得る。任意の子午線に沿って光軸から半径方向外側に延びる一連の連続的な複数の円弧に加えて、一定の半径方向の曲率屈折力を有する中心円弧が、光軸上に中心合わせされ得る。代替的に、一定の半径方向の曲率屈折力を有する2つの中央円弧部分が、光軸から外側に対向方向(反対方向)に延びていてもよい。当該レンズは、光軸上に中心合わせされた中央領域を含み得て、中央円弧または複数の中央円弧部分は、当該中央領域の直径に沿って存在し得る。当該レンズの中央領域は、中央円弧または中央円弧部分が跨っている領域であるが、遠方の点物体からの光を、第1光軸上で、遠位焦点面で第1光軸上のスポットに、焦点合わせ(集束)させ得る。本明細書で使用される場合、面という用語は、物理的な表面を指すのではなく、遠方の物体からの光が焦点合わせされる点を通って描かれ得る面を指す。このような面は、像面(曲面であり得る)またはイメージシェルとも呼ばれる。目は、曲がった網膜上に光を焦点合わせする。完全に焦点が合った目では、イメージシェルの曲率は、網膜の曲率と一致する。従って、目は、光を平坦な数学上の平面には集束させない。そうでありながら、当該技術分野では、網膜の曲面は、一般に(平)面と呼ばれる。
【0041】
本開示の文脈では、一連の複数の円弧とは、端と端とが結合(接続)されていて、直列に配置された複数の円弧を指す。本開示の文脈では、当該複数の円弧は、3D(3次元)レンズの子午線に沿って取られる2D(2次元)スライスを表す。各円弧をリンク(接続)する遷移部分が存在してもよい。一連の複数の円弧における各円弧は、その長さの半分の点(中点)の回りに中央円弧に対して傾斜され得る。一連の複数の円弧において、当該複数の円弧の曲率は、光軸からの距離が増加するにつれて単調に増加する。このため、レンズを3Dで考えると、当該レンズの半径方向の曲率は、光軸からの半径方向の距離が増加するにつれて単調に増加する。
【0042】
全ての円弧について考えると、各円弧の中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線が、第1光軸上の1点に収束する。当該点は、光軸に沿って焦点合わせされる光によって形成されるスポットと一致する。
【0043】
所与の子午線に沿った単一の円弧について考えると、当該単一の円弧を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、光軸上の点には収束しない。単一の円弧を通過する複数の光線は、光軸から第1距離にある1点(当該円弧の焦点)に収束する。第1距離は、ゼロ以外の距離である。これは、当該円弧の長さの半分の点の回りの、当該円弧の相対的な傾斜の結果である。光軸からの当該距離は、レンズの中心または光軸からの当該円弧の半径距離に依存するであろう。レンズの中心に近い円弧の場合、当該円弧を通過する複数の光線が収束する点は、レンズの中心から遠い円弧の場合よりも、半径方向に光軸に近いであろう。単一の円弧を通過する複数の光線は、遠位焦点面の前方(すなわち、レンズに近い側)にある1点に収束する。
【0044】
レンズは、光軸上に中心合わせされ、中央円弧が跨っている中央領域を有し得る。中央領域は、形状が実質的に円形であり得て、約2mm~約9mm、好ましくは2~7mm、の直径を有し得る。中央領域は、形状が実質的に楕円形であってもよい。
【0045】
光学ゾーンは、周辺ゾーンによって取り囲まれ得る。周辺ゾーンは、光学ゾーンの一部ではないが、レンズが着用される時に光学ゾーンの外側で虹彩の上方に位置し、例えば、レンズのサイズを増大して当該レンズをより扱いやすくしたり、レンズの回転を防止するためのバラストを提供したり、及び/または、レンズ着用者の快適性を改善する形状領域を提供したり、といった機械的機能を提供する。周辺ゾーンは、コンタクトレンズの縁部まで延在し得る。
【0046】
本開示の一実施形態によるコンタクトレンズは、着用者の眼上に位置決めされる時にレンズを方向付けるためのバラストを含み得る。バラストをコンタクトレンズに組み込んだ本開示の実施形態は、着用者の眼上に配置される時、着用者の瞼の作用で所定の安息角まで回転する。例えば、バラストは楔であり得て、回転は、当該楔上の瞼の作用によって生じ得る。コンタクトレンズを方向付けるためにコンタクトレンズをバラストすることは、当該技術分野で良く知られている。例えば、トーリックコンタクトレンズは、当該レンズによって提供される直交円筒矯正が着用者の眼の乱視に対して正確に整列するように、レンズを方向付けるべくバラストされている。本開示のコンタクトレンズは、所与の向きで着用者に特定の利益を提供し得る。例えば、コンタクトレンズは、最大追加屈折力子午線が特定の方向にある時に、着用者に特定の利益を提供し得る。
【0047】
コンタクトレンズは、形状が実質的に円形であり得て、約4mm~約20mmの直径を有し得る。光学ゾーンは、形状が実質的に円形であり得て、約2mm~約10mmの直径を有し得る。幾つかの実施形態では、コンタクトレンズは、13mm~15mmの直径を有し、光学ゾーンは、7mm~9mmまでの直径を有する。
【0048】
本開示の文脈では、光学ゾーンの任意の点における当該レンズの屈折力は、半径方向の曲率屈折力、周方向の曲率屈折力、平均の曲率屈折力(半径方向の曲率屈折力と周方向の曲率屈折力との平均である)、半径方向のサジタル屈折力、周方向のサジタル屈折力、及び、平均のサジタル屈折力(半径方向のサジタル屈折力と周方向のサジタル屈折力との平均である)、として定義され得る。
【0049】
曲率屈折力とサジタル屈折力とは、以下のように定義される。
【0050】
ある波面Wの場合、当該波面の中心に垂直な線から半径方向距離r(瞳孔半径)の点において、
W(r) = A*r2
ここで、Aは関数である。
【0051】
波面曲率、または、曲率屈折力Pcは、波面の二次導関数の関数である。波面スロープ、または、スロープベースの屈折力Psは、波面の一次導関数の関数であって、波面のスロープ(勾配)によって変化する。
【0052】
単純な球面レンズの場合、曲率屈折力Pcは、以下のように定義される。
スロープベースの屈折力Psは、以下のように定義される。
すなわち、近軸(パラキシャル)を仮定した単純なレンズの場合、Pc=Psである。
【0053】
半径方向の曲率屈折力とは、レンズの曲率中心から半径方向外側に延びる方向での曲率屈折力である。周方向の曲率屈折力とは、レンズの周に沿って延びる、一定の半径座標における、曲率屈折力である。
【0054】
半径方向のサジタル屈折力とは、レンズの中心から半径方向外側に延びる方向でのサジタル屈折力である。周方向のサジタル屈折力とは、レンズの周に沿って延びる、一定の半径座標における、サジタル屈折力である。
【0055】
一連の連続的な複数の円弧における各円弧は、当該円弧に沿ったレンズの半径方向の曲率屈折力に比例する半径方向曲率(すなわち、その長さに沿った曲率)を有するであろう。光学ゾーンは、レンズの前面または後面の曲率から帰結する曲率屈折力を有し得る。各円弧弧の曲率は、レンズの前面の曲率であり得て、あるいは、レンズの後面の曲率であり得る。各円弧に沿ったレンズの半径方向の曲率屈折力は、レンズの後面の曲率とレンズの前面の曲率との組み合わせから帰結し得る。
【0056】
本開示の幾つかの実施形態によるレンズの場合、半径方向の曲率屈折力は、子午線に沿って、レンズの中心から半径方向外側に向かって単調に増加する。レンズの中心から半径方向外側に延びる半径方向の曲率屈折力の当該増加は、球面収差を増大させ得る。
【0057】
半径方向の曲率屈折力の増加は、連続的な増加であり得るし、段階的または非連続的な態様の増加であってもよい。従って、所与の子午線に沿った連続的な複数の円弧は、レンズの中心から外側に向かって半径方向の曲率屈折力が増加し得て、レンズの中心に近い円弧は半径方向の曲率屈折力が(相対的に)より小さくなり得て、レンズの中心から遠い円弧は半径方向の曲率屈折力が(相対的に)より大きくなり得る。
【0058】
一連の連続的な複数の円弧における各円弧は、その長さに沿った半分の点(中点)の回りに傾斜され得て、当該円弧の半径方向のサジタル屈折力は減少されるが、当該円弧の半径方向の曲率屈折力は変化しない。一連の連続的な複数の円弧における各円弧の局所的な傾斜の結果として、所与の円弧を通過する光の焦点は光軸からずれることになる。
【0059】
一連の連続的な複数の円弧における各円弧は、当該円弧内で一定の半径方向の曲率を有し得る。従って、各円弧の長さに沿った半径方向の曲率屈折力は、一定であり得る。
【0060】
任意の子午線に沿って、中心円弧が存在し得る。当該中心円弧は、光軸上に中心合わせされ、一定の半径方向の曲率と一定の半径方向の曲率屈折力とを有し得る。あるいは、任意の子午線に沿って、2つの中央円弧部分が存在し得て、それらは、光軸から半径方向外側に対向方向(反対方向)に延びる。任意の子午線に沿った中心円弧または中心円弧部分の半径方向の曲率屈折力は、レンズのベース屈折力を提供し得る。ベース屈折力は、+0.5D~-15.0Dの間であり得て、好ましくは、約-0.25D~-15.0Dの間であり得る。
【0061】
所与の子午線に沿った一連の連続的な複数の円弧のうちのいずれかの円弧または全ての円弧が、当該円弧の長さに沿って、一定の半径方向の曲率を有し得る。レンズの中心から外側に向かって移動すると、連続する複数の円弧の半径方向の曲率及び半径方向の曲率屈折力が増加する。連続する各円弧の間の接合部において、半径方向の曲率の段階的な増加が存在してもよい。連続する円弧の間に遷移領域が存在してもよい。当該遷移領域は、連続する円弧の間の各接合部において、半径方向の曲率屈折力の連続的または非連続的な増加をもたらしてもよい。
【0062】
子午線に沿って各円弧によって提供される半径方向の曲率屈折力は、追加屈折力を提供し得る。追加屈折力は、+0.5D~+20.0Dの間、好ましくは+0.5D~+10.0Dの間であり得る。円弧に沿った正味の屈折力は、ベース屈折力と追加屈折力との和であり得る。レンズの中心に近い円弧は、より小さな追加屈折力を提供し、レンズの中心から遠い円弧は、より大きな追加屈折力を提供し得る。
【0063】
一連の複数の円弧における各円弧は、当該円弧内において、レンズの中心からの半径距離に伴って増加する曲率を有し得る。
【0064】
各円弧の長さに沿った半径方向の曲率は、一定でなくてもよく、レンズの中心からの半径方向の距離に伴って増加し得る。従って、任意の所与の円弧の長さに沿った半径方向の曲率屈折力は、中心円弧からの半径方向の距離の増大に伴って増加し得る。これは、任意の所与の子午線に沿って半径方向外側に延びる半径方向の曲率屈折力の連続的な増加をもたらし得る。光軸から外側に延びる半径方向の曲率屈折力の増加は、半径方向の曲率屈折力の線形の増加であり得る。光軸上に中心合わせされた中央円弧、または、任意の所与の子午線に沿って光軸から半径方向外側に延びる2つの対向する中央円弧部分は、一定の半径方向の曲率を有し得て、これがベース屈折力を提供し得る。中央円弧または中央円弧部分から半径方向外側に延びる一連の複数の円弧における他の円弧は、レンズの中心からの半径方向距離の増大につれて増加する曲率を有し得る。従って、レンズの中央領域(中央円弧または中央円弧部分が跨り得る)は、一定の屈折力を有し得て、光学領域の残部は、中央領域から半径方向外側に延びるにつれて増加する追加屈折力を有し得る。
【0065】
子午線に沿って、一連の連続的な複数の円弧は、光軸上に中心合わせされた一連の対称的な複数の円弧を有し得る。子午線に沿った一連の複数の円弧は、光軸から半径方向外側に延びる少なくとも6個の円弧を有し得る。子午線に沿った一連の複数の円弧は、光軸から半径方向外側に延びる少なくとも10個の円弧を有し得る。子午線に沿った一連の連続的な複数の円弧は、光軸の両側の各々で半径方向外側に延びる少なくとも3個の円弧を有し得る。子午線に沿った一連の連続的な複数の円弧は、光軸の両側の各々で半径方向外側に延びる少なくとも5個の円弧を有し得る。一連の連続的な複数の円弧における各円弧は、同一の長さを有し得る。代替的に、一連の複数の円弧における幾つかの円弧が、異なる長さを有してもよい。
【0066】
光学ゾーンの全ての子午線に沿って取られる全ての断面スライスが、実質的に同一の曲率プロファイルを有し得る。従って、中心円弧が跨るレンズの中心領域の周方向の曲率屈折力、及び選択的に周方向のサジタル屈折力は、レンズの中心から一定の半径距離で一定であり得る。各子午線に沿った中心円弧は、一定の半径方向の曲率屈折力を有し得る。中心領域全体の曲率屈折力は、各子午線に沿った中心円弧が跨り得て、一定であり得る。
【0067】
各子午線に沿って、半径方向の曲率屈折力プロファイルは、同一であり得て、この場合、レンズ周りの周方向の曲率屈折力は、レンズの中心から一定の半径方向距離について一定であり得る。代替的に、異なる子午線に沿って、半径方向の曲率屈折力プロファイルは、複数の円弧の数及び長さが変化する時、及び/または、複数の円弧の曲率が変化する時、異なり得る。この場合、光学ゾーン周りの周方向の曲率屈折力プロファイルは、レンズ周りの子午線に応じて変化し得る。光学ゾーン周りの周方向の曲率屈折力は、周期的または非周期的に変化し得る。周方向の曲率屈折力は、最大値と最小値との間で振動し得る。周方向の曲率屈折力プロファイルは、正弦波、鋸歯状、または、階段状、のプロファイルで振動し得る。
【0068】
各子午線に沿った2D断面スライスを合計することで形成される3Dレンズを考えると、一連の複数の円弧が合計され得て、中心領域から外側に広がる一連の同心の複数の環状領域が形成され得る。各連の複数の円弧の各々が実質的に同一の半径方向の曲率プロファイルを有する場合、それらの円弧は、レンズの中心から外側に延びる円形の同心の環状領域を形成し得る。各子午線に沿った複数の円弧が同一の長さであれば、各々の同心円状の環状領域は、同一の幅を有し得る。各子午線に沿った一連の複数の円弧は、異なる半径方向の曲率屈折力プロファイルを有し得る。これは、レンズの周囲の周りに部分的に広がる同心円状の環状領域、または、長円形または楕円形の環状領域、に帰結し得る。
【0069】
光学ゾーンの任意の子午線に沿って取られる断面スライスは、実質的に同一のサジタル屈折力プロファイルを有し得る。所与の子午線に沿って、一連の連続的な複数の円弧の各円弧は、その長さの中間点の回りに傾斜され得て、当該一連の円弧に沿った半径方向のサジタル屈折力プロファイルが生じ得る。各子午線に沿って、半径方向のサジタル屈折力プロファイルは、同一であり得て、この場合、レンズ周りの周方向のサジタル屈折力は一定である。代替的に、異なる子午線に沿って、半径方向のサジタル屈折力プロファイルは、各連の複数の円弧が異なる量だけ傾斜される時、または、複数の円弧の数及び長さが変化する時、異なり得る。この場合、光学ゾーン周りの周方向のサジタル屈折力プロファイルは、レンズ周りの子午線に応じて変化し得る。光学ゾーン周りの周方向のサジタル屈折力は、周期的または非周期的に変化し得る。周方向のサジタル屈折力は、最大値と最小値との間で振動し得る。周方向のサジタル屈折力プロファイルは、正弦波、鋸歯状、または、階段状、のプロファイルで振動し得る。
【0070】
コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの組み合わせ、を含み得る。コンタクトレンズの分野で理解されているように、ヒドロゲルは、水を平衡状態に保持し、シリコーン含有化合物を含まない材料である。シリコーンヒドロゲルは、シリコーン含有化合物を含むヒドロゲルである。本開示の文脈で説明されるように、ヒドロゲル材料及びシリコーンヒドロゲル材料は、少なくとも10%~約90%(wt/wt)の平衡含水率(EWC)を有する。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル材料またはシリコーンヒドロゲル材料は、約30%~約70%(wt/wt)のEWCを有する。比較すると、本開示の文脈で説明されるように、シリコーンエラストマー材料は、約0%~10%未満(wt/wt)の含水率を有する。典型的には、本方法または本装置で使用されるシリコーンエラストマー材料は、0.1%~3%(wt/wt)の含水率を有する。好適なレンズ製剤(組成)の例は、以下の米国一般名(USAN)を有するものを含む:メタフィルコン(methafilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)B、オキュフィルコン(ocufilcon)C、オキュフィルコン(ocufilcon)D、オマフィルコン(omafilcon)A、オマフィルコン(omafilcon)B、コムフィルコン(comfilcon)A、エンフィルコン(enfilcon)A、ステンフィルコン(stenfilcon)A、ファンフィルコン(fanfilcon)A、エタフィルコン(etafilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)B、セノフィルコン(senofilcon)C、ナラフィルコン(narafilcon)A、ナラフィルコン(narafilcon)B、バラフィルコン(balafilcon)A、サムフィルコン(samfilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)B、ソモフィルコン(somofilcon)A、リオフィルコン(riofilcon)A、デレフィルコン(delefilcon)A、ベロフィルコン(verofilcon)A、カリフィルコン(kalifilcon)A、等。
【0071】
代替的に、レンズは、シリコーンエラストマー材料を、含み得る、本質的にそれからなり得る、または、それからなり得る。例えば、レンズは、3~50のショアA硬度を有するシリコーンエラストマー材料を、含み得る、本質的にそれからなり得る、または、それからなり得る。ショアA硬度は、当業者によって理解されているように、従来方法を使用して(例えば、方法DIN53505を使用して)決定され得る。他のシリコーンエラストマー材料が、例えば、NuSil Technology、または、Dow Chemical Company、から取得され得る。
【0072】
第2の態様によって、本開示は、コンタクトレンズを製造する方法を提供する。当該方法は、コンタクトレンズを形成する工程を備え得て、当該コンタクトレンズは、光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、を含む。子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスが、前記光軸から半径方向外側に延びる一連の連続的な複数の円弧を含んでいる。各円弧の中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記第1光軸上の1点に向かって収束する。各円弧について、当該円弧を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記光軸から第1距離にある1点に向かって収束する。
【0073】
レンズは、本開示の第1の態様に関して前述された特徴のいずれかを含み得る。
【0074】
当該製造方法は、凹レンズ形成面を有する雌型部材と、凸レンズ形成面を有する雄型部材と、を形成する工程を含み得る。当該方法は、雌型部材と雄型部材との間のギャップをバルクレンズ材料で充填する工程を含み得る。当該方法は、バルクレンズ材料を硬化させてレンズを形成する工程を更に含み得る。
【0075】
コンタクトレンズは、旋盤加工を用いて形成され得る。レンズは、キャスト成形プロセス、スピンキャスト成形プロセス、または、旋盤加工プロセス、あるいは、それらの組み合わせ、によって形成され得る。当業者によって理解されているように、キャスト成形とは、凹レンズ部材形成面を有する雌型成形部材と凸レンズ部材形成面を有する雄型成形部材との間にレンズ成形材料を入れることでレンズを成形する工程を指す。
【0076】
第3の態様によって、本開示は、コンタクトレンズを設計する方法を提供する。当該方法は、コンタクトレンズをモデル化する工程を備える。当該レンズは、光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、を含む。子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスは、前記光軸からの半径方向の距離に伴って増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する。当該方法は、更に、前記モデル内において、前記光学ゾーンの前記断面スライスを、前記光軸上に中心合わせされた中央円弧を初めとして半径方向外側に広がっていく一連の連続的な複数の円弧に分割する工程を備える。当該方法は、更に、前記モデル内において、前記一連の連続的な複数の円弧における各々の円弧を、当該円弧の中点回りに傾斜させて、各円弧の当該中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線が前記光軸上の1点に向かって収束するようにする一方で、各円弧についての当該円弧を通過する複数の光線が前記光軸から第1距離にある1点に向かって収束するようにする工程を備える。当該方法は、更に、前記モデル化されたレンズに基づいてレンズを設計する工程を備える。
【0077】
当該レンズは、モデリング(モデル化)を使用して設計され得て、当該モデリングは、コンピュータで実装されるモデリングであり得る。設計されるレンズは、前述の特徴のいずれかを含み得る。
【0078】
図1Aは、近視の進行を低減するために近視性デフォーカス像を提供する治療ゾーンを用いるコンタクトレンズの概略平面図を示す。図1Bは、図1Aのコンタクトレンズの概略側面図である。レンズ1は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン2と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン4と、を備える。周辺ゾーン4は、レンズのサイズを増大して当該レンズ1をより扱いやすくし、当該レンズ1の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ1の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン2は、レンズ1の光学機能を提供し、当該光学ゾーン2は、環状領域3及び中央領域5を含む。レンズ1は、ベースの半径方向の曲率屈折力を有し、それは、ベースの半径方向のサジタル屈折力と等しい。ベースの屈折力は、レンズ1の表面の曲率半径から帰結する。中央領域5の曲率中心は、(図2Aに示される)第1光軸19上にある。環状領域3は、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい半径方向の曲率屈折力を有する。環状領域3の半径方向の曲率屈折力は、環状領域3の曲率半径6によって提供され、当該曲率半径6は、図3に示されるように、中央領域5の曲率半径7よりも小さい。環状領域3の曲率中心は、第1光軸19上にある。環状領域3は、中央領域5よりも大きい屈折力を有する。図2Aに示されるように、環状領域3の焦点11及び中央領域5の焦点15は、共通の光軸19を共有する。環状領域3の焦点11は、近位焦点面13上にあり、中央領域5の焦点は、遠位焦点面17上にあり、当該遠位焦点面17は、レンズの後面から更に離れている。図2Cに示されるように、無限遠の点源の場合、中央領域5によって焦点合わせされる光線は、遠位焦点面17において焦点画像(焦点合わせされた像)23を形成する。中央領域5によって焦点合わせされる光線は、また、近位焦点面13において焦点が合っていない(焦点合わせされていない)ぼやけ(blur)スポット27を生成する。
【0079】
図2Bに示されるように、環状領域3によって焦点合わせされる光線は、近位焦点面13において焦点画像21を形成する。環状領域3によって焦点合わせされる光線は、近位焦点面13の後で発散し、当該発散光線は、遠位焦点面17において焦点が合っていない(焦点合わせされていない)環状(輪状)画像25を生成する。前述のように、焦点が合っていない環状画像25は、レンズ1の着用者が焦点の合った遠方画像の周りに「ハロー」を見る結果となり得る。
【0080】
図4Aは、図1A及び図1Bに示されるレンズ1の半径方向のサジタル屈折力の変化を示すプロット(グラフ)31であり、図4Bは、図1A及び図1Bに示されるレンズ1の半径方向の曲率屈折力の変化を示すプロット(グラフ)33である。図4A及び図4Bは、レンズ1の半径方向の直径に沿った屈折力変化を示す。このレンズ1の場合、環状領域3が中央領域5よりも大きい屈折力を有するため、及び、環状領域3が軸上曲率中心を有するため、半径方向のサジタル屈折力(曲線35によって示される)は、中央領域5に亘るよりも環状領域3に亘る方が大きい。半径方向の曲率屈折力(曲線37によって示される)も、中央領域5に亘るよりも環状領域3に亘る方が大きい。
【0081】
図5Aは、近視の進行を低減するための非共軸光学系を有するコンタクトレンズ101の概略平面図を示す。このレンズ101は、軸外(オフ軸)曲率中心の処理が施されており、近位焦点面で軸上画像を形成しない。図5Bは、図5Aのレンズの概略側面図を示している。図1A及び図1Bのレンズ1と同様に、レンズ101は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン102と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン104と、を備える。レンズ101は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン102と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン104と、を備える。周辺ゾーン104は、レンズのサイズを増大して当該レンズ101をより扱いやすくし、当該レンズ101の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ101の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン102は、レンズ101の光学機能を提供し、当該光学ゾーン102は、環状領域103及び中央領域105を含む。レンズ101は、ベースの半径方向の曲率屈折力を有し、それは、ベースの半径方向のサジタル屈折力と等しい。ベースの屈折力は、レンズ101の表面の曲率半径から帰結する。中央領域105の曲率中心は、(図6Aに示される)第1光軸119上にある。環状領域103は、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい半径方向の曲率屈折力を有する。環状領域103の半径方向の曲率屈折力は、環状領域103の曲率半径によって提供され、当該曲率半径は、中央領域105の曲率半径よりも小さい。しかしながら、図1Aのレンズ1とは対照的に、図5A及び図5Bに示されるレンズ101の場合、環状領域103の曲率は、単一の球面によって規定されることができず、環状領域103の曲率中心は、第1光軸119上にない。これは、図6Dに示されている。環状領域103は、中央領域105に対して傾斜されており、環状領域103の外縁は、その内縁に対して、図1A及び図1Bのレンズ1の場合におけるよりも高い(図5B参照)。このことが、環状領域103の半径方向のサジタル屈折力を変化させるが、環状領域103の半径方向の曲率屈折力は変化させない。図6Dに示されるように、中央領域105の前面は、より大きな半径の球体107の表面の一部を規定する。環状領域103の前面は、より小さい半径を有する湾曲した環状面106を規定する。
【0082】
遠位焦点面117で、中央領域105を通過する光線が焦点合わせ(集束)される。環状領域103は、光学的ビームストップとして作用し、これは、図6Cに示されるように、遠位焦点面117において光の小さなスポットサイズ124をもたらす。
【0083】
近位焦点面113には、単一の像は形成されない。図6Bに示されるように、近位焦点面113では、無限遠の点源に対して、中央領域105を通過する光線は、図1A乃至図2Bのレンズと同様、ぼやけ(blur)円128を生成する。一方、環状領域103を通過する遠方の点源からの光線は、焦点合わせされた環122を生成し、これは、図6Bに示されるように、ぼやけ円128を取り囲んでいる。図6Bは、遠方の点源に対して生成される光パターンを示している。図1A及び図1Bのレンズ1とは対照的に、図5A及び図5Bのレンズ101は、近位物体に目が順応する必要性を回避するために使用され得るであろう、近位焦点面113における単一画像または軸上画像を生成することがない。遠方にある拡張物体の場合、近位焦点面113において形成される焦点画像は、(i)環状領域103の屈折力を有する従来のレンズで得られるであろう当該拡張物体の焦点画像と、(ii)環状領域103の光学効果を表す光学伝達関数と、の畳み込みである。
【0084】
図1A及び図1Bのレンズとは対照的に、環状または「ハロー」効果は、遠位焦点面117において発生しない。
【0085】
図7Aは、図5A及び図5Bに示されたレンズ101の半径方向のサジタル屈折力の変化を示すプロット(グラフ)131である。図7Bは、図5A及び図5Bに示されたレンズ101の半径方向の曲率屈折力の変化を示すプロット(グラフ)133である。図7A及び図7Bは、レンズ101の半径方向の直径に沿った屈折力変化を示す。このレンズ101の場合、環状領域103が中央領域105よりも大きい屈折力を有するため、これは、半径方向の曲率屈折力(曲線137によって示される)が、中央領域105に亘るよりも環状領域103に亘る方が大きい、ということを意味する。しかしながら、環状領域103は中央領域105に対して傾斜されて、環状領域103は軸外曲率中心を有している。中央領域105に対する環状領域103の傾斜は、曲線135によって示されるように、中央領域105と環状領域103との間の境界において、半径方向のサジタル屈折力が中央領域105の半径方向のサジタル屈折力よりも更に負であることを意味する。半径方向のサジタル屈折力は、環状領域103の外縁に向かう半径方向距離の増大に応じて増大し得る。
【0086】
図8Aは、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズ201の概略平面図である。図1A及び図1Bのレンズ1並びに図5A及び図5Bのレンズ101と同様に、レンズ201は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン202と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン204と、を備える。周辺ゾーン204は、レンズ201のサイズを増大して当該レンズ201をより扱いやすくし、当該レンズ201の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ201の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン202は、レンズ201の光学機能を提供する。当該光学ゾーン202は、中央領域205と、一連の同心円状の環状領域203’、203”、203”’、203””と、を含む。
【0087】
図8Bは、図8Aに示されるレンズ201の光学ゾーン202の、A-A線に沿って取られる断面スライスを示している。2D(2次元)で、光学ゾーン202の当該断面スライスが、中央領域205を跨る中央円弧205aを示している。中央円弧205aは、ベースの半径方向の曲率屈折力を提供する半径方向の曲率プロファイルを有している。曲率は、中央円弧205aの長さに沿って一定である。一連の連続的な複数の円弧203a~203hは、中央領域205から対称的に半径方向外側に延びている。各円弧203a~203hは、その長さに沿って、一定の半径方向の曲率プロファイルを有しているが、連続的な複数の円弧の半径方向の曲率は、中心円弧205aから外側に向かって増加しており、そのため、最も内側の円弧203a、203eは、最も外側の円弧203h、203dよりも、曲率半径が大きく、従って半径方向の曲率屈折力が小さくなっている。従って、光学ゾーン202の半径方向の曲率屈折力は、レンズ201の中央領域205から外側に向かって増加する。半径方向の曲率屈折力プロファイルは、各円弧203a~203hの間の接合部で段階的な増加を示している。
【0088】
各円弧203a~203hは、その長さの半分の点の回りに傾斜されており、円弧203aについて当該点に符号Xが付されている。各円弧230a~203hをその中点回りに傾斜することは、円弧203a~203hの長さに沿った半径方向のサジタル屈折力を減少させるが、円弧203a~203hの長さに沿った半径方向の曲率屈折力は変化させない。
【0089】
図8Aに示されるレンズの場合、任意の子午線に沿って取られる断面スライスは、同一の曲率プロファイルを生成する。従って、光学領域202を3D(3次元)で考えると、当該光学領域202は、中央円弧205aによって跨られている中央領域205と、中央領域205から半径方向外側に延びる連続的な複数の円弧203a~203hから形成された一連の同心円状の環状領域203’、203”、203”’、203””と、で構成さている。図8A及び図8Bに示されるレンズの場合、各円弧230a~203hは同一の長さである。同心円状の環状領域203’、203”、203”’、203””は、円形であり、実質的に同一の半径方向幅を有する。
【0090】
図9は、図8A及び図8Bのレンズ201の部分光線図を示している。遠方の点光源から中央領域205(中央円弧205aによって表されている)を通過する複数の光線は、遠位焦点面217の光軸219上のスポット215に向かって収束する。遠方の点光源から各円弧203a~203hの中点を通過する複数の光線(一点鎖線)も、遠位焦点面217の光軸219上の同一のスポット215に向かって収束する。所与の円弧203eの場合、遠方の点光源から当該円弧を通過する複数の光線(破線)は、遠位焦点面217よりも前方(すなわち、レンズに近い側)にある焦点面において、光軸219から第1距離(符号Yで示されている)にある点216に向かって収束する。
【0091】
図10は、コンタクトレンズを設計する方法501を示しており、当該レンズは、本開示の一実施形態に従うレンズである。最初の工程503で、本方法は、コンタクトレンズをモデル化する工程を含む。レンズは、光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、当該光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、を含む。子午線に沿って取られる光学ゾーンの断面スライスは、光軸からの半径距離に伴って増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する。2番目の工程505で、本方法は、モデル内において、光学ゾーンの断面スライスを、光軸上に中心合わせされた中心円弧から半径方向外側に延びる一連の連続的な複数の円弧に分割する工程を含む。3番目の工程507で、本方法は、モデル内において、一連の連続的な複数の円弧における各円弧を当該円弧の中点の回りに傾斜させる工程であって、各円弧の当該中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線が光軸上の1点に向かって収束するようにし、且つ、各円弧について当該円弧を通過する複数の光線が光軸から第1距離にある1点に向かって収束するようにする工程を備える。
【0092】
図11A乃至図11Cは、図10で説明された方法501を使用してモデル化されたレンズ601の一例を示している。最初の工程503で、図11Aに示されるレンズ601がモデル化される。レンズ601は、光軸619上に中心合わせされた光学ゾーン602と、光学ゾーン602を取り囲む周辺ゾーン604と、を含む。光学ゾーン602は、光軸上に中心合わせされた中央領域605を有する。中央領域605を通過する遠方の点光源からの光は、遠位焦点面617の光軸上の点615に向かって収束する。図11Bは、子午線に沿って取られた光学ゾーン602の断面スライスを示しており、破線曲線701は、最初の工程503でモデル化されたレンズ601の半径方向の曲率プロファイルを示している。中央円弧705aは、レンズの中央領域605に跨っている。レンズ601の半径方向の曲率屈折力プロファイルは、光軸619からの半径方向距離に伴って増加する。2番目の工程505で、モデル内において、レンズ601の断面スライスが一連の連続的な複数の円弧に分割され、3番目の工程507で、モデル内において、当該一連の連続的な複数の円弧における各円弧が、当該円弧の中点の回りに傾斜される。これにより、図11Bに示される赤い曲線801が生成される。この曲線は、最初の工程でモデル化されたレンズの中央円弧705aから変更されていない中央円弧805aと、一連の連続的な複数の傾斜円弧805a~805hと、を含む。円弧805a~805hを傾けても、当該円弧805a~805hの半径方向の曲率屈折力は変化しない。このため、各円弧805a~805hの中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線(一点鎖線で示されている)は、遠位焦点面617の光軸619上の点に向かって収束する。円弧805a~805hを傾けると、当該円弧805a~805hの半径方向のサジタル屈折力が減少するため、各円弧805a~805hについて、当該円弧を通過する複数の光線(点線で示されている)は、光軸619から第1距離(符号Hで示されている)にある点816に向かって収束する。図11Cは、点線曲線801に基づいて設計されたレンズ901の概略平面図を示す。レンズ901は、瞳孔をほぼ覆う光学ゾーン902と、虹彩の上方に着座する周辺ゾーン904と、を有する。光学ゾーン902は、レンズ901の光学機能を提供する。光学ゾーン902は、中央領域905と、図11Bに示される曲線801の半径方向曲率を有する一連の同心円状の環状領域903’、903”、903”’、903””と、を有する。
【0093】
これらの例示的な実施形態の特徴は、本開示の範囲内にある他の実施形態において組み合わされ得ることが、当業者には理解されるであろう。
【0094】
前述の説明では、既知の自明または予測可能な等価物を有する完全体(integer)または要素が言及されているが、そのような等価物は、本明細書に個別に記載されているかの如く、本明細書に組み込まれているものである。本開示の真の範囲を決定するためには、特許請求の範囲への参照がなされるべきである。特許請求の範囲は、あらゆるそのような等価物を包含するものと解釈されるべきである。また、有利であったり便利であったり等と説明されている本開示の完全体または特徴が、選択的なものであって、独立請求項の範囲を限定するものではないことも、読者には理解されるであろう。更に、そのような選択的な完全体または特徴は、本開示の幾つかの実施形態では有益である可能性があるが、他の実施形態では望ましくない場合があり得て、従って、他の実施形態では存在しない場合がある、ことが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2A-2C】
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A-6C】
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、
前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、
を備え、
子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスは、前記光軸からの半径方向の距離に伴って単調に増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する一連の連続的な複数の円弧を含んでおり、
各円弧の中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線は、前記光軸上の第1点に向かって収束し、
各円弧について、当該円弧を通過する前記遠方の点光源からの複数の光線は、前記光軸からそれぞれ第1距離にあるそれぞれの第2点に向かって収束する
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記一連の連続的な複数の円弧は、端と端とが結合されている
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記一連の連続的な複数の円弧における各円弧は、当該円弧内で、一定の曲率を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記一連の連続的な複数の円弧における各円弧は、当該円弧内で、当該レンズの中心からの半径方向の距離に伴って増加する曲率を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記一連の連続的な複数の円弧は、前記光軸上に中心合わせされた一連の対称的な複数の円弧である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記一連の連続的な複数の円弧は、少なくとも6個の円弧を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記一連の連続的な複数の円弧は、少なくとも10個の円弧を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記光学ゾーンの任意の子午線に沿って取られる断面スライスが、実質的に同一の半径方向の曲率屈折力プロファイルを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記光学ゾーンの任意の子午線に沿って取られる断面スライスが、実質的に同一の半径方向のサジタル屈折力プロファイルを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記光学ゾーンの周方向の曲率屈折力プロファイルが、当該レンズの周りの子午線に伴って変化する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記光学ゾーンのサジタル屈折力プロファイルが、当該レンズの周りの子午線に伴って変化する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記光学ゾーンの中心において、当該レンズは、-0.25D~-15.0Dの間のベース屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記一連の連続的な複数の円弧は、+0.5D~+20.0Dの間の追加屈折力を提供する曲率を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記光学ゾーンは、当該レンズの前面及び/または後面の曲率から生じる曲率屈折力を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
当該レンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの混合物、を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
コンタクトレンズの製造方法であって、
請求項1または2に記載のコンタクトレンズを形成する工程
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項17】
コンタクトレンズを設計する方法であって、
コンタクトレンズをモデル化する工程
を備え、
前記レンズは、
光軸上に中心合わせされた光学ゾーンと、
前記光学ゾーンを取り囲む周辺ゾーンと、
を含み、
子午線に沿って取られる前記光学ゾーンの断面スライスは、前記光軸からの半径方向の距離に伴って単調に増加する半径方向の曲率屈折力プロファイルを有しており、
当該方法は、更に、
前記モデル内において、前記光学ゾーンの前記断面スライスを、前記光軸上に中心合わせされた中央円弧を初めとして半径方向外側に広がっていく一連の連続的な複数の円弧に分割する工程と、
前記モデル内において、前記一連の連続的な複数の円弧における各々の円弧を、当該円弧の中点回りに傾斜させて、各円弧の当該中点を通過する遠方の点光源からの複数の光線が前記光軸上の第1点に向かって収束するようにする一方で、各円弧についての当該円弧を通過する前記遠方の点光源からの複数の光線が前記光軸からそれぞれ第1距離にあるそれぞれの第2点に向かって収束するようにする工程と、
前記モデル化されたレンズに基づいてレンズを設計する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【国際調査報告】