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特表2025-500716肺障害を処置するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-14
(54)【発明の名称】肺障害を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/222 20060101AFI20250106BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20250106BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250106BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
A61K31/222
A61K31/196
A61K45/00
A61K31/573
A61K31/58
A61K31/167
A61K31/137
A61K31/439
A61K31/404
A61K31/381
A61K31/522
A61K31/495
A61K31/445
A61K39/395 N
A61K31/4704
A61K31/40
A61P11/06
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538988
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 IB2022000821
(87)【国際公開番号】W WO2023156808
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】63/294,132
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505274379
【氏名又は名称】ジーエヌティー ファーマ カンパニー, リミテッド
【住所又は居所原語表記】(Hagal-dong)23,Yonggu-daero 1855beon-gil,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17096 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ソジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジンファン
(72)【発明者】
【氏名】アン,チュン サン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,サン イ
(72)【発明者】
【氏名】グワグ,ビョン,ジュ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB081
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC082
4C084ZC122
4C084ZC132
4C084ZC202
4C084ZC412
4C084ZC422
4C084ZC452
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086BB03
4C086BC07
4C086BC13
4C086BC21
4C086BC28
4C086BC50
4C086CB05
4C086CB07
4C086CB17
4C086CB22
4C086DA10
4C086DA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZC08
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA05
4C206FA32
4C206GA01
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB08
4C206ZB11
4C206ZB21
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息及びCOPDのオーバーラップ症候群(ACOD)又は任意の他の呼吸器疾患を含む肺障害を処置するのに有用な、式(I)の2-ヒドロキシ安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物及び方法に関する。式(I)の2-ヒドロキシ安息香酸誘導体の投与は、喘息及びCOPDの動物モデルにおいて、気道組織損傷及び炎症を有意に緩和する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喘息、COPD、ACOD、肺線維症、肺炎及び肺がんから選択される少なくとも1つの肺疾患を、それらに罹患した患者において処置するための組成物であって、薬学的に許容される賦形剤及び化学式1により表される治療有効量の化合物
【化1】
(式中、
Xは、CO、SO2及び(CH2)nから選択され、
R1は、水素、C1~C6アルキル及びC1~C6アルカノイルから選択され、
R2は、水素及びC1~C6アルキルから選択され、
R3は、水素及びC1~C5アルカノイル基から選択され、
R4は、フェノキシ基、及び非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基から選択され、
nは両端を含む1~5の整数である)又はその薬学的に許容される塩を含む、組成物。
【請求項2】
Xが(CH2)nであり、
R1がC1~C6アルカノイルであり、
R2が水素であり、
R3が水素であり、
R4が、非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基であり、
nが両端を含む1~5の整数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記5~10員のアリール基がフェニル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、2-ヒドロキシ-5-フェネチルアミノ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(3-トリフルオロメチルフェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(3,5-ビス(-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(2-ニトロ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(4-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(3,4-ジフルオロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(3,4-ジクロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(4-フルオロ-2-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ安息香酸、5-[2-(2-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-メトキシ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(2-o-トリル-エチルアミノ)-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(3-フェニル-プロピルアミノ)-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[3-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-プロピルアミノ]-安息香酸、5-[3-(4-フルオロフェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[3-(3,4-ジクロロ-フェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(3-p-トリル-プロピルアミノ)-安息香酸、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(2-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-ベンジルアミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-クロロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-トリフルオロメチルベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-フルオロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-メトキシベンジル)アミノサリチル酸、5-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンジル)アミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-アセトキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンゾイル)アミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンゼンスルホニル)アミノサリチル酸、5-[2-(4-ニトロフェニル)-エチル]アミノサリチル酸及び5-[3-(4-ニトロ-フェニル)-nプロピル]アミノサリチル酸から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物18、ATPB)及び2-ヒドロキシ-5-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物2)から選択され、前記少なくとも1つの肺疾患が、喘息、COPD及びACODから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(ATPB)であり、前記少なくとも1つの肺疾患が、喘息、COPD及びAOCDから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が薬学的に許容される塩である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
散剤の形態である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
経口投与に適する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
喘息、COPD、ACOD、肺線維症、肺炎及び肺がんから選択される少なくとも1つの肺疾患を、それらに罹患した対象において処置する方法であって、前記少なくとも1つの肺疾患を有する前記患者に、化学式1により表される治療有効量の化合物
【化2】
(式中、Xは、CO、SO2及び(CH2)nから選択され、
R1は、水素、C1~C6アルキル及びC1~C6アルカノイルから選択され、
R2は、水素及びC1~C6アルキルから選択され、
R3は、水素及びC1~C5アルカノイル基から選択され、
R4は、フェノキシ基、及び非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基から選択され、
nは両端を含む1~5の整数である)又はその薬学的に許容される塩
を投与するステップを含む、方法。
【請求項11】
Xは(CH2)nであり、
R1はC1~C6アルカノイルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4は、非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基であり、
nは両端を含む1~5の整数である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記5~10員のアリール基がフェニル基である、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記式(I)の化合物が、2-ヒドロキシ-5-フェネチルアミノ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(3-トリフルオロメチルフェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(3,5-ビス(-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(2-ニトロ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(4-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(3,4-ジフルオロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(3,4-ジクロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(4-フルオロ-2-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ安息香酸、5-[2-(2-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-メトキシ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(2-o-トリル-エチルアミノ)-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(3-フェニル-プロピルアミノ)-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[3-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-プロピルアミノ]-安息香酸、5-[3-(4-フルオロフェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[3-(3,4-ジクロロ-フェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(3-p-トリル-プロピルアミノ)-安息香酸、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(2-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-ベンジルアミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-クロロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-トリフルオロメチルベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-フルオロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-メトキシベンジル)アミノサリチル酸、5-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンジル)アミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-アセトキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンゾイル)アミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンゼンスルホニル)アミノサリチル酸、5-[2-(4-ニトロフェニル)-エチル]アミノサリチル酸及び5-[3-(4-ニトロ-フェニル)-nプロピル]アミノサリチル酸からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(I)の化合物が、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物18、ATPB)及び2-ヒドロキシ-5-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物2)から選択され、前記少なくとも1つの肺疾患が、喘息、COPD及びACODから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(I)の化合物が2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(ATPB)であり、少なくとも1つの肺疾患が、喘息、COPD及びAOCDから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記式(I)の化合物が薬学的に許容される塩である、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が薬学的に許容される賦形剤も含む組成物で存在する、請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が散剤の形態である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が経口投与される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの肺疾患が喘息である、請求項10から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記喘息が、グルココルチコイド抵抗性喘息及び小児喘息から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者に喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤を併せて投与するステップを更に含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が、コルチコステロイド(例えばヒドロコルチゾン、ブデソニド、メチルプレドニゾロン、フルチカゾン、モメタゾン及びデキサメタゾン)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が、β2アゴニスト(例えば短時間作用型又は長時間作用型気管支拡張剤、例えばホルモテロール及びサルメテロール)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が、抗コリン薬(例えばイプラトロピウム、オキシトロピウム及びチオトロピウム)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト(例えばモンテルカスト、ザフィルルカスト)又は5-リポキシゲナーゼ阻害剤(例えばジロイトン)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が、経口キサンチン(例えばテオフィリン及びアミノフィリン)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が、抗ヒスタミン薬(例えばレボセチリジン、フェキソフェナジン)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が、抗IgE抗体療法(例えばオマリズマブ)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が抗インターロイキン-5療法(例えばベンラリズマブ、メポリズマブ、レスリズマブ)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤が、コルチコステロイド、β2アゴニスト、抗コリン薬、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、経口キサンチン、抗ヒスタミン薬、抗IgE抗体療法及び抗インターロイキン-5療法から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの肺疾患がCOPD又はACODである、請求項10から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者にCOPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤を併せて投与するステップを更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤が、コルチコステロイド(例えばベクロメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フルチカゾン)から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤が、短時間作用型又は長時間作用型気管支拡張を伴うβ2アゴニスト(例えばフェノテロール、サルブタモール、ホルモテロール、サルメテロール及びインダカテロール)から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤が、抗コリン薬(例えばイプラトロピウム)から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤が、長時間作用型ムスカリン受容体アンタゴニスト(LAMA)(例えばチオトロピウム臭化物、グリコピロニウム臭化物及びアクリジニウム臭化物)から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤が、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤(例えばロフルミラスト)から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤が、コルチコステロイド、短時間作用型又は長時間作用型気管支拡張を伴うβ2アゴニスト、抗コリン薬、LAMA及びPDE4阻害剤(例えばフルチカゾン/サルメテロール、ブデソニド/ホルモテロール及びイプラトロピウム/β2アゴニスト)から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記処置が、前記患者において任意の病理学的に増加したTH2サイトカイン(例えばTNF-α、IL-6、及び/又はMCP-1)を減少させることを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記処置が、前記患者において任意の病理学的に増加したTH2サイトカイン(例えばTNF-α、IL-6、及び/又はMCP-1)を減少させることを含む、請求項10から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記処置が、前記患者において任意の病理学的に増加したTH2サイトカイン(例えばIL-4及び/又はIL-5)を減少させることを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記処置が、前記患者において任意の病理学的に増加したTH2サイトカイン(例えばIL-4及び/又はIL-5)を減少させることを含む、請求項10から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記患者を処置するための前記化合物の投薬量が1日あたりおよそ1μg/kg~およそ200mg/kgである、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
1日あたり約1μg/kg~約200mg/kgの投薬量の前記化合物が前記患者に投与される、請求項10から39のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年12月28日に出願された米国仮特許出願第63/294,132号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、式(I)の2-ヒドロキシ安息香酸誘導体又はその薬学的に許容される塩を含む、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)並びに喘息及びCOPDのオーバーラップ症候群(ACOD)の処置を補助するための医薬組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
喘息
喘息は世界中で最も一般的な慢性の状態であり、世界中で3億人超が罹患し、様々な国における2018年の有病率は1%~16%である[www.globalasthmanetwork.orgからの「The Global Asthma Report」]。致死的であることはめったにないが、処方薬のコスト、保健医療の利用及び生産性の損失を含む直接及び間接的な医療コストに起因して、喘息に関連する経済的負担は重い。
【0004】
喘息は、慢性の気道の炎症、気管支の過反応性、可逆的な気道閉塞及び様々な刺激に対する気道の過反応性を特徴とする。気道の炎症は喘息の顕著な特徴であり、喘息気道において見られる病態生理学的変化の多くを明確に示し、喘息の特徴的な症状、例えば、喘鳴、息切れ、胸部絞扼感及び咳嗽が生じる。
【0005】
気道周囲の筋肉を弛緩させ肺から粘液を除去することにより症状を緩和させるために、気管支拡張剤、例えばβ2アゴニスト及び抗コリン剤が処方される。ロイコトリエン受容体アンタゴニストは、呼吸障害、例えば咳嗽、胸及び喉の余分な粘液並びに喘鳴を予防する。
【0006】
喘息患者における気道炎症は、吸入コルチコステロイド(ICS)を使用して制御することができる。重度喘息を有する患者は、ICSにあまり応答しない。更に、一部の喘息患者はICSに抵抗性である。コルチコステロイドの経口投与は、重度喘息を処置するために使用することができるが、大半の患者において副作用を引き起こし、アドヒアランス(adherence)及び生活の質が不良となるおそれがある。
【0007】
システイニルロイコトリエンは、アラキドン酸の5-リポキシゲナーゼ経路を通して形成される気管支喘息の極めて重要な炎症性脂質メディエータであり、喘息増悪中に増加し、気管支収縮、粘液分泌、組織の浮腫及び白血球浸潤を促進することにより喘息の発病における役割を果たす。これを支持して、5-リポキシゲナーゼ阻害剤及びシステイニルロイコトリエン受容体-1アンタゴニスト(LTRA)は、気流機能を改善し、喘息増悪の頻度を減少させる。
【0008】
非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)は、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害による強力な抗炎症活性を有する。しかし、NSAIDはCOX-1及びCOX-2を阻害し、重度の副作用、例えば胃腸(GI)毒性及び心筋梗塞を引き起こす。更に、NSAIDは気管支痙攣を誘発し、喘息症状を増悪させる可能性がある。PGE2下流誘発性合成酵素の膜結合型プロスタグランジンE合成酵素(mPGES)-1の選択的阻害は、副作用を減少させるための新規の戦略として出現した。興味深いことに、LTRAは、COX活性に影響を与えることなくmPGES-1活性及びPGE2産生を阻害し、これはLTRAがmPGES-1媒介性炎症性経路を阻害することにより抗炎症効果を発揮し得ることを示唆する。
【0009】
喘息患者においては、気道及び全身循環において酸化ストレスが増加し、粘液分泌、平滑筋収縮及び血管透過性を増大し得る気道閉塞及び炎症の原因となる可能性が高い。酸化ストレスはグルココルチコイド受容体(GR)シグナル伝達を妨害し、ICS非感受性をもたらす可能性が高い[1]。
【0010】
COPD
COPDは進行性の気流閉塞を特徴とし、主として喫煙及び他の汚染物質の吸入に起因する。これにより2019年に323万人が死亡し、世界中で相当な社会的及び経済的負担が生じた[www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/the-top-10-causes-of-deathref]。
【0011】
吸入された煙及び汚染物質の毒性粒子は、異常な気道炎症、気道壁組織のリモデリング及び肥厚、気道上皮細胞における遺伝子リプログラミング、肺構造細胞の老化及び死、並びに酸化ストレスを含む、COPDにおける様々な病態生理学的事象を誘発する[2~4]。そのような病理学的事象は、COPDの症状、例えば呼吸困難、咳嗽、粘液産生及び喘鳴を伴う。COPDは治癒しないが、その症状及び合併症は処置可能である。COPD及び喘息を処置するために使用される現在の薬品の種類は、依然として気管支拡張剤及びコルチコステロイドの使用に依存している。気管支拡張剤は、粘性仕事量(resistive work)と気道抵抗を減少させることによって呼吸困難を緩和する。コルチコステロイドは喘息患者において炎症をある程度減少させるが、COPD患者はこれらへの応答が不良である。そのようなコルチコステロイドに対する無感受性は、グルココルチコイド受容体活性を抑制するヒストン脱アセチル化酵素2の不活化に起因する。
【0012】
気道炎症を減少させるホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害剤であるロフルミラストは、COPD増悪のリスクを減少させるために承認されている。過去20年にわたり、COPD患者をより十分に処置するための新規の抗炎症薬理学的手法の発見に向けて、薬理学的研究が進められてきた。残念ながら、PDE-4酵素を阻害するロフルミラストを除き、特定のサイトカイン又はケモカインを標的とする手法の多くは臨床開発段階に達することができなかったか、又は臨床試験において失敗している[5]。事実、COPDにおいて、疾患に関与する優勢なサイトカイン又はケモカインは存在しない。したがって、全ての経路において、単一の標的は有効にはなり得ない。炎症性エンドタイプを、現在開発中のより正確な抗炎症処置に対する臨床転帰及び応答と関連付けるためには、より多くの研究が必要である[6]。したがって、以前の失敗に基づき、COPDの進行及び増悪を減少させるための有効且つ安全な抗炎症薬が緊急に必要とされている。
【0013】
酸化ストレスは、グルココルチコイド受容体活性を抑制し、病原体に対する応答を妨げ気道炎症を悪化させることによりCOPDを増悪させることによって、コルチコステロイド抵抗性に関連する。酸化ストレスを標的とする手法は、COPDの動物モデルにおいて有益な効果を有し、COPDを処置するための潜在的な治療候補として考えられている。チオールベースの抗酸化剤、例えばN-アセチルシステインの有益な効果は、COPD患者に対して行った12の臨床試験において依然として議論が分かれているが[7]、N-アセチルシステイン、エルドステイン及びカルボシステインで処置されたCOPD患者は増悪の低減及び健康状態の改善を示した[8]。抗酸化剤ビタミンは、COPD患者における肺機能にプラスにもマイナスにも関連する(Rahman、2009年)。とりわけ、試験集団、投薬及び追加の処置における不均質性のために、抗酸化剤に感受性である標的のCOPD患者は特定されなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Lewis, B.W., et al., Oxidative Stress Promotes Corticosteroid Insensitivity in Asthma and COPD. Antioxidants (Basel), 2021. 10(9).
【非特許文献2】Crystal, R.G., Airway basal cells. The "smoking gun" of chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med, 2014. 190(12): p. 1355-62.
【非特許文献3】Pauwels, R.A., et al., Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease: National Heart, Lung, and Blood Institute and World Health Organization Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD): executive summary. Respir Care, 2001. 46(8): p. 798-825.
【非特許文献4】Walters, E.H., et al., Fully integrating pathophysiological insights in COPD: an updated working disease model to broaden therapeutic vision. Eur Respir Rev, 2021. 30(160).
【非特許文献5】Rabe, K.F., et al., Effect of roflumilast in patients with severe COPD and a history of hospitalisation. Eur Respir J, 2017. 50(1).
【非特許文献6】Barnes, P.J., Inflammatory endotypes in COPD. Allergy, 2019. 74(7): p. 1249-1256.
【非特許文献7】Fowdar, K., et al., The effect of N-acetylcysteine on exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease: A meta-analysis and systematic review. Heart Lung, 2017. 46(2): p. 120-128.
【非特許文献8】Rogliani, P., et al., Efficacy and safety profile of mucolytic/antioxidant agents in chronic obstructive pulmonary disease: a comparative analysis across erdosteine, carbocysteine, and N-acetylcysteine. Respir Res, 2019. 20(1): p. 104.
【非特許文献9】Ryu, B.R., et al., The novel neuroprotective action of sulfasalazine through blockade of NMDA receptors. J Pharmacol Exp Ther, 2003. 305(1): p. 48-56.
【非特許文献10】Vane, J.R. and R.M. Botting, The mechanism of action of aspirin. Thromb Res, 2003. 110(5-6): p. 255-8.
【非特許文献11】Wu, K.K., Aspirin and other cyclooxygenase inhibitors: new therapeutic insights. Semin Vasc Med, 2003. 3(2): p. 107-12.
【非特許文献12】Lee, J.H., et al., Prevention effects of ND-07, a novel drug candidate with a potent antioxidative action and anti-inflammatory action, in animal models of severe acute pancreatitis. Eur J Pharmacol, 2012. 687(1-3): p. 28-38.
【非特許文献13】Hosseini, M., et al., Global prevalence of asthma-COPD overlap (ACO) in the general population: a systematic review and meta-analysis. Respir Res, 2019. 20(1): p. 229.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
2-アセトキシ-5-(2-4-(トリフルオロメチル)-フェネチルアミノ)-安息香酸(ATPB)及びその誘導体
ATPBは、抗酸化剤活性及び抗炎症活性を有するスルファサラジン[9]、並びに抗炎症、解熱及び抗疼痛活性を有するアスピリン[10、11]をベースとするリード構造から合成される、新規の化合物である。ATPB[別のコード名として「ND-07」、化学名2-アセトキシ-5-(2-4-(トリフルオロメチル)-フェネチルアミノ)-安息香酸]は、プロスタグランジン-E2(PGE2)生合成の終末酵素であるmPGES-1の阻害による強力な抗炎症作用、及びヒドロキシルラジカル捕捉による抗酸化作用を示す[12]。
【0016】
ATPBは、喘息及びCOPDのげっ歯類モデルにおいて、気道組織損傷及び炎症を効果的に減少させる。本発明は、肺疾患、例えば喘息、COPD及びACODを処置するための薬理学的組成物及び方法に関する。
【0017】
本発明は、肺疾患、例えば喘息又はCOPDの処置のための調節因子としての、ATPB又はその誘導体を提供する。本発明はまた、喘息又はCOPDの増悪中の補体ステロイド処置(complement steroid treatment)又はコルチコステロイド補充処置(replace corticosteroid treatment)のための、ATPB又はその誘導体を提供する。
【0018】
したがって、本発明の第一の態様は、薬学的に許容される賦形剤及び化学式1により表される治療有効量の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、肺疾患を処置するための組成物を含む。
【0019】
本発明の第二の態様は、肺疾患に罹患した対象の肺疾患を処置する方法であって、患者に化学式1により表される治療有効量の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、方法を含む。
【0020】
一部の実施形態では、化学式1は以下に記載されるもの
【化1】
(式中、Xは、CO、SO2及び(CH2)nから選択され、
R1は、水素、C1~C6アルキル及びC1~C6アルカノイルから選択され、
R2は、水素及びC1~C6アルキルから選択され、
R3は、水素及びC1~C5アルカノイル基から選択され、
R4は、フェニル、フェノキシ、及び非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基から選択され、
nは両端を含む1~5の整数である)
又はその薬学的に許容される塩である。
【0021】
一部の実施形態では、気道障害は喘息であり、ATPBは喘息を処置するために使用される。別の実施形態では、気道障害はCOPDであり、ATPBはCOPDを処置するために使用される。
【0022】
他の実施形態では、気道障害は気道の増悪であり、ATPBは気道増悪又は疾患を処置又は制御するのに使用される。
【0023】
喘息及びCOPDは最も広く認められている慢性呼吸器疾患であり、最近数十年にわたり増加している。これらの2つの疾患は多くの類似点及び相違点を有し、これらの診断及び管理の妨げとなる場合がある。喘息-COPD ACODは、患者が喘息及びCOPDの両方の特徴を有する場合に現れる。喘息、COPD及びACODの世界的な有病率は、それぞれ6.2%、4.9%及び2.0%であると推定される[13]。
【0024】
現在、喘息及びCOPDの治癒はあり得ず、ある程度の症候的管理のための薬品のみが利用可能である。したがって、喘息、COPD及びACODを有する患者のためのより良好な有効性及び安全性を有する新規の処置は、満たされていない医学的必要性であり続けている。
【0025】
本発明は、添付の図面に示すように、以下のいくつかのその特定の実施形態の説明を参照することによって、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】血清免疫グロブリンE(IgE)レベルのオボアルブミン(OVA)誘発性上方制御に対するATPBの効果を示すグラフである。血清を最終OVAエアロゾル負荷の24時間後に収集した。OVA特異的IgE及び総IgEのレベルを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により分析した。ATPBはOVA特異的IgEレベルを有意に低下させ、Th2応答のOVA特異的阻害を示した。
図2】OVA誘発性気管支肺胞洗浄液(BALF)のサイトカインレベルに対するATPBの効果を最終OVAエアロゾル負荷の24時間後に収集したグラフである。インターロイキン(IL)-4及びIL-5のレベルを、ELISAを使用して分析した。
図3】BALF細胞浸潤に対するATPBの効果を示すグラフである。BALF中の炎症性細胞数を、生理食塩水エアロゾル又は1-0mg/mLのOVA負荷の後に得た。ATPBは、OVA誘発性炎症性細胞数を有意に減少させた。細胞数は、好酸球(EO)、単球(MO)、好中球(NE)及びリンパ球(LY)を特定するために最小細胞において行った。
図4】肺組織好酸球増多症及び粘液産生に対するATPBの効果を示す図である。生理食塩水OVAエアロゾル又はOVAエアロゾル+10mg/kgのATPBを用いた最終負荷後の、肺組織好酸球増多症の組織学的評価(上のパネル、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色、倍率)を示す図である。
図5】BALF細胞浸潤に対するATPBの効果を示すグラフである。
図6】肺組織好酸球増多症及び粘液産生に対するATPBの効果を示す図である。喫煙誘発性COPD及び喫煙誘発性COPD+ATPB 10mg/kgの3か月後の、肺組織好酸球増多症の組織学的調査(上のパネル、H&E染色、倍率×400)及び粘液分泌(右のパネル、PAS染色、倍率×400)。
図7】肺組織中のサイトカイン及びケモカインレベルに対するATPBの効果を示すグラフである。肺組織を、喫煙の3か月後に収集した。IL-1β、TNFα及び走化性タンパク質-1(MCP-1)レベルを、定量化ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して分析した。
図8】BALF細胞浸潤に対するATPBの後処置の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
気道障害、例えばCOPD及び喘息には、複数の炎症性細胞及び様々なメディエータが関与する。ATPBは、ラットCOPDモデルにおいて、BALFへの喫煙誘発性炎症性細胞リクルートメント、並びに肺組織中のTNF-αレベル、IL-6レベル及びMCP-1遺伝子発現、肺好酸球増多症及び粘液分泌過多を効果的に減少させる。ATPBは、マウス喘息モデルにおいて、BALFへのOVA誘発性炎症性細胞リクルートメント、IL-4、IL-5、エオタキシン産生、血清IgE合成、肺好酸球増多症及び粘液分泌過多を減弱させた。本発明者らの知見は、気道障害を処置するためのATPBの新規の治療的使用を支持するものである。
【0028】
本発明は、気道障害、例えば喘息又はCOPDの処置のための調節因子としてのATPBを提供する。本研究は、喘息又はCOPDの増悪中の補体ステロイド処置又はステロイド補充処置のためのATPBを提供する。
【0029】
本発明の組成物及び方法
この目的を達成するために、本発明は、喘息、COPD及び/又はACODから選択される少なくとも1つの肺疾患を、それらに罹患した患者において処置するための組成物であって、薬学的に許容される賦形剤及び化学式1により表される治療有効量の化合物又はその薬学的に許容される塩
【化2】
(式中、Xは、CO、SO2及び(CH2)nから選択され、
R1は、水素、C1~C6アルキル及びC1~C6アルカノイルから選択され、
R2は、水素及びC1~C6アルキルから選択され、
R3は、水素及びC1~C5アルカノイル基から選択され、
R4は、フェノキシ基、及び非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基から選択され、
nは1~5の整数である)
を含む、組成物を提供する。
【0030】
ある特定の実施形態では、
Xは(CH2)nであり、
R1はC1~C6アルカノイルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4は、非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基であり、
nは両端を含む1~5の整数である。
【0031】
ある特定の実施形態では、5~10員のアリール基はフェニル基である。ある特定の実施形態では、フェニルは置換されている。他の実施形態では、フェニルは非置換である。
【0032】
ある特定の実施形態では、nは2である。
【0033】
ある特定の実施形態では、R2は水素である。
【0034】
ある特定の実施形態では、R1は水素又は-C(O)アルキルである。他の実施形態では、R1は水素である。他の実施形態では、R1は-C(O)アルキルである。他の実施形態では、R1は-C(O)CH3である。いくつかのこの式(I)の化合物は調製及び評価された。ある特定の実施形態では、組成物及び方法は、5-ベンジルアミノサリチル酸、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、5-ベンジルアミノサリチル酸化合物は5-ベンジルアミノサリチル酸である。
【0036】
5-ベンジルアミノサリチル酸化合物の好ましい例には、2-ヒドロキシ-5-フェネチルアミノ-安息香酸(化合物1)、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物2)、2-ヒドロキシ-5-[2-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物3)、5-[2-(3,5-ビストリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物4)、2-ヒドロキシ-5-[2-(2-ニトロ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物5)、5-[2-(4-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物6)、5-[2-(3,4-ジフルオロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物7)、5-[2-(3,4-ジクロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物8)、5-[2-(4-フルオロ-2-トリフルオロメチルフェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物9)、5-[2-(2-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物10)、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-メトキシ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物11)、2-ヒドロキシ-5-(2-o-トリルエチルアミノ)-安息香酸(化合物12)、2-ヒドロキシ-5-(3-フェニル-プロピルアミノ)-安息香酸(化合物13)、2-ヒドロキシ-5-[3-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-プロピルアミノ]-安息香酸(化合物14)、5-[3-(4-フルオロ-フェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物15)、5-[3-(3,4-ジクロロ-フェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物16)、2-ヒドロキシ-5-(3-p-トリル-プロピルアミノ)-安息香酸(化合物17)、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物18)、5-[2-(2-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸(化合物19)、5-ベンジルアミノサリチル酸(化合物20)、5-(4-ニトロベンジル)アミノサリチル酸(化合物21)、5-(4-クロロベンジル)アミノサリチル酸(化合物22)、5-(4-トリフルオロメチルベンジル)アミノサリチル酸(化合物23)、5-(4-フルオロベンジル)アミノサリチル酸(化合物24)、5-(4-メトキシベンジル)アミノサリチル酸(化合物25)、5-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)アミノサリチル酸(化合物26)、5-(4-ニトロベンジル)アミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエート(化合物27)、5-(4-ニトロベンジル)-Nアセチルアミノ-2-ヒドロキシメチルベンゾエート(化合物28)、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-アセトキシエチルベンゾエート(化合物29)、5-(4-ニトロベンゾイル)アミノサリチル酸(化合物30)、5-(4-ニトロベンゼンスルホニル)アミノサリチル酸(化合物31)、5-[2-(4-ニトロフェニル)-エチル]アミノサリチル酸(化合物32)及び5-[3-(4-ニトロ-フェニル)-nプロピル]アミノサリチル酸(化合物33)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
ある特定の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、喘息、COPD及びACODを処置するための治療剤としての化合物18、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、又はその薬学的に許容される塩である。一部の実施形態では、式(I)を有する化合物は、構造2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物18)
【化3】
を有する。
【0038】
ある特定の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、2,2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸(化合物2)又はその薬学的に許容される塩である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、以下の構造を有する。
【0039】
【化4】
【0040】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物18、ATPB)及び2-ヒドロキシ-5-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物2)から選択され、少なくとも1つの肺疾患は、喘息、COPD及びACODから選択される。
【0041】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(ATPB)であり、少なくとも1つの肺疾患は、喘息、COPD及びAOCDから選択される。
【0042】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は薬学的に許容される塩である。
【0043】
ある特定の実施形態では、組成物は散剤の形態である。
【0044】
ある特定の実施形態では、組成物は経口投与に適する。
【0045】
ある特定の実施形態では、組成物は医薬組成物である。
【0046】
本発明は、喘息、COPD、ACOD、肺線維症、肺炎及び肺がんから選択される少なくとも1つの肺疾患を、それらに罹患した対象において処置する方法であって、少なくとも1つの肺疾患を有する患者に、化学式1により表される治療有効量の化合物
【化5】
(式中、Xは、CO、SO2及び(CH2)nから選択され、
R1は、水素、C1~C6アルキル及びC1~C6アルカノイルから選択され、
R2は、水素及びC1~C6アルキルから選択され、
R3は、水素及びC1~C5アルカノイル基から選択され、
R4は、フェノキシ基、及び非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基から選択され、
nは閾値を含む1~5の整数である)又はその薬学的に許容される塩
を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0047】
ある特定の実施形態では、
Xは(CH2)nであり、
R1はC1~C6アルカノイルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4は、非置換であるか又はニトロ、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、C1~C5アルコキシ及びC1~C5ハロアルコキシから独立して選択される1つ以上の基と置換されている5~10員のアリール基であり、
nは両端を含む1~5の整数である。
【0048】
ある特定の実施形態では、5~10員のアリール基はフェニル基である。ある特定の実施形態では、フェニルは置換されている。他の実施形態では、フェニルは非置換である。
【0049】
ある特定の実施形態では、nは2である。
【0050】
ある特定の実施形態では、R2は水素である。
【0051】
ある特定の実施形態では、R1は水素又は-C(O)アルキルである。他の実施形態では、R1は水素である。他の実施形態では、R1は-C(O)アルキルである。他の実施形態では、R1は-C(O)CH3である。
【0052】
いくつかのこの式(I)の化合物は調製及び評価されている。ある特定の実施形態では、組成物及び方法は、5-ベンジルアミノサリチル酸、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は、2-ヒドロキシ-5-フェネチルアミノ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(3-トリフルオロメチルフェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(3,5-ビス(-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(2-ニトロ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(4-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(3,4-ジフルオロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(3,4-ジクロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[2-(4-フルオロ-2-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ安息香酸、5-[2-(2-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-メトキシ-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(2-o-トリル-エチルアミノ)-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(3-フェニル-プロピルアミノ)-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-[3-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-プロピルアミノ]-安息香酸、5-[3-(4-フルオロフェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-[3-(3,4-ジクロロ-フェニル)-プロピルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、2-ヒドロキシ-5-(3-p-トリル-プロピルアミノ)-安息香酸、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-安息香酸、5-[2-(2-クロロ-フェニル)-エチルアミノ]-2-ヒドロキシ-安息香酸、5-ベンジルアミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-クロロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-トリフルオロメチルベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-フルオロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-メトキシベンジル)アミノサリチル酸、5-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)アミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンジル)アミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-ヒドロキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンジル)-N-アセチルアミノ-2-アセトキシエチルベンゾエート、5-(4-ニトロベンゾイル)アミノサリチル酸、5-(4-ニトロベンゼンスルホニル)アミノサリチル酸、5-[2-(4-ニトロフェニル)-エチル]アミノサリチル酸及び5-[3-(4-ニトロ-フェニル)-nプロピル]アミノサリチル酸からなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は、2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物18、ATPB)及び2-ヒドロキシ-5-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物2)から選択され、少なくとも1つの肺疾患は、喘息、COPD及びACODから選択される。
【0054】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は2-アセトキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(ATPB)であり、少なくとも1つの肺疾患は、喘息、COPD及びAOCDから選択される。
【0055】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は薬学的に許容される塩である。
【0056】
方法のある特定の実施形態では、化合物は、薬学的に許容される賦形剤も含む組成物で存在する。
【0057】
ある特定の実施形態では、組成物は散剤の形態である。
【0058】
ある特定の実施形態では、組成物は経口投与される。
【0059】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの肺疾患は喘息である。
【0060】
ある特定の実施形態では、喘息は、グルココルチコイド抵抗性喘息及び小児喘息から選択される。
【0061】
ある特定の実施形態では、患者の喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤と組み合わせた、喘息を処置するための組成物。
【0062】
ある特定の実施形態では、方法は、患者に喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤を併せて又は同時に投与するステップを更に含む。
【0063】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は、コルチコステロイド(例えばヒドロコルチゾン、ブデソニド、メチルプレドニゾロン、フルチカゾン、モメタゾン及びデキサメタゾン)から選択される。
【0064】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は、β2アゴニスト(例えば短時間作用型又は長時間作用型気管支拡張剤、例えばホルモテロール及びサルメテロール)から選択される。
【0065】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は、抗コリン薬(例えばイプラトロピウム、オキシトロピウム及びチオトロピウム)から選択される。
【0066】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト(例えばモンテルカスト、ザフィルルカスト)又は5-リポキシゲナーゼ阻害剤(例えばジロイトン)から選択される。
【0067】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は、経口キサンチン(例えばテオフィリン及びアミノフィリン)から選択される。
【0068】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は、抗ヒスタミン薬(例えばレボセチリジン、フェキソフェナジン)から選択される。
【0069】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は、抗IgE抗体療法(例えばオマリズマブ)から選択される。
【0070】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は抗インターロイキン-5療法(例えばベンラリズマブ、メポリズマブ、レスリズマブ)から選択される。
【0071】
ある特定の実施形態では、喘息を処置するための1つ以上の追加の治療剤は、コルチコステロイド、β2アゴニスト、抗コリン薬、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、経口キサンチン、抗ヒスタミン薬、抗IgE抗体療法及び抗インターロイキン-5療法から選択される。
【0072】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの肺疾患はCOPD及びACODである。
【0073】
ある特定の実施形態では、患者におけるCOPD又はACODのための1つ以上の追加の治療剤と組み合わせた、COPD又はACODを処置するための組成物。
【0074】
ある特定の実施形態では、方法は、患者にCOPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤を併せて又は同時に投与するステップを更に含む。
【0075】
ある特定の実施形態では、COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤は、コルチコステロイド(例えばベクロメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フルチカゾン)から選択される。
【0076】
ある特定の実施形態では、COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤は、短時間作用型又は長時間作用型気管支拡張を伴うβ2アゴニスト(例えばフェノテロール、サルブタモール、ホルモテロール、サルメテロール及びインダカテロール)から選択される。
【0077】
ある特定の実施形態では、COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤は、抗コリン薬(例えばイプラトロピウム)から選択される。
【0078】
ある特定の実施形態では、COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤は、長時間作用型ムスカリン受容体アンタゴニスト(LAMA)(例えばチオトロピウム臭化物、グリコピロニウム臭化物及びアクリジニウム臭化物)から選択される。
【0079】
ある特定の実施形態では、COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤(例えばロフルミラスト)から選択される。
【0080】
ある特定の実施形態では、COPD又はACODを処置するための1つ以上の追加の治療剤は、コルチコステロイド、短時間作用型又は長時間作用型気管支拡張を伴うβ2アゴニスト、抗コリン薬、LAMA及びPDE4阻害剤(例えばフルチカゾン/サルメテロール、ブデソニド/ホルモテロール及びイプラトロピウム/β2アゴニスト)から選択される。
【0081】
ある特定の実施形態では、処置するための組成物であって、処置が、患者において任意の病理学的に増加したTH2サイトカイン(例えばTNF-α、IL-6、及び/又はMCP-1)を減少させることを含む、組成物。
【0082】
ある特定の実施形態では、処置が、患者において任意の病理学的に増加したTH2サイトカイン(例えばTNF-α、IL-6、及び/又はMCP-1)を減少させることを含む、方法。
【0083】
ある特定の実施形態では、処置するための組成物であって、処置が、患者において任意の病理学的に増加したTH2サイトカイン(例えばIL-4及び/又はIL-5)を減少させることを含む、組成物。
【0084】
ある特定の実施形態では、処置が、患者において任意の病理学的に増加したTH2サイトカイン(例えばIL-4及び/又はIL-5)を減少させることを含む、方法。
【0085】
ある特定の実施形態では、処置するための組成物であって、患者を処置するための化合物の投薬量が1日あたりおよそ1μg/kg~およそ200mg/kgである、組成物。
【0086】
ある特定の実施形態では、1日あたり約1μg/kg~約200mg/kgの投薬量の化合物が患者に投与される、方法。
【0087】
本開示の5-ベンジルアミノサリチル酸化合物又はその薬学的に許容される塩は、限定されるものではないが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,573,402号明細書に示される反応スキームにより調製することができる。
【0088】
本発明の好ましい例である2-アセトキシ-5-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物18)は、限定されるものではないが、各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,598,383号明細書及び米国特許第8,686,185号明細書に示される反応スキームにより調製することができる。
【0089】
本発明の好ましい例である2-ヒドロキシ-5-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ-安息香酸(化合物2)は、限定されるものではないが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,598,383号明細書に示される反応スキームにより調製することができる。
【0090】
次に、COPD及び喘息を処置又は予防するための医薬組成物、並びにCOPD及び喘息を処置又は予防する方法を、更に詳細に説明する。
【0091】
定義
以下に記載する用語の定義は、独立した又は他の用語と組み合わせた用語の使用に適用する。
【0092】
用語「アセトキシ」は、一般式ヒドロカルビルC(O)O-、好ましくはアルキルC(O)O-により表される基を指す。
【0093】
用語「アセチル」は、一般式CH3 C(O)により表される基を指す。「アルキル」基(ハロアルキルの「アルキル」を含む)又は「アルカン」は、完全に飽和した直鎖又は分岐鎖の非芳香族炭化水素である。典型的に、直鎖又は分岐鎖アルキル基は、別途定義されない限り、1~およそ20個、好ましくは1~およそ10個の炭素原子を有する。C1~C6直鎖又は分岐鎖アルキル基は「低級アルキル」基と呼ばれる。一部の実施形態では、アルキルはC1~C5アルキル、好ましくはC1~C3アルキルである。より具体的には、好ましいアルキル基には、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルが挙げられる。
【0094】
更に、用語「アルキル」(又は「低級アルキル」)は、本明細書、実施例及び特許請求の範囲を通して使用される場合、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含むことを意図しており、後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置き換えた置換基を有するアルキル部分を指す。別途特定されない場合、そのような置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル又はアシル、例えばアルキルC(O)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオアセテート又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、シリルエーテル、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくは複素環式芳香族部分を挙げることができる。適切な場合、炭化水素鎖上の置換されている部分はそれ自身置換され得ることが、当業者により理解されるであろう。例えば、置換アルキルの置換基には、置換及び非置換形態のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含む)及びシリル基、並びにエーテル、アルキルチオール、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート及びエステルを含む)、-CF3及び-CNを挙げることができる。代表的な置換アルキルを以下に記載する。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、-CF3、-CN等と更に置換されていてもよい。
【0095】
用語「Cx~y」は、化学的部分、例えばアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシと合わせて使用される場合、鎖中にx~y個の炭素を含有する基を含めることを示す。例えば、「Cx~yアルキル」は、例えばハロアルキル基、例えばトリフルオロメチル及び2,2,2-トリフルオロエチル(tirfluoroethyl)等を含む、鎖中にx~y個の炭素を含有する直鎖アルキル及び分岐鎖アルキル基を含む置換又は非置換の飽和炭化水素基を指す。C0アルキルは、基が末端位置にある場合には水素を、内部の場合には結合を示す。用語「C2-アルケニル」及び「C2-アルキニル」は、上記に記載したアルキルと長さ及び可能な置換が類似しているが、それぞれ少なくとも1つの二重又は三重結合を含有する、置換又は非置換の不飽和脂肪族基を指す。
【0096】
用語「アルカノイル」は、一般式ヒドロカルビル-C(O)、好ましくはアルキル-C(O)-により示される基を指す。
【0097】
用語「アルコキシ」(ハロアルコキシの「アルコキシ」を含む)は酸素がそれらに結合しているアルキル基、好ましくは低級アルキル基を指す。一部の実施形態では、好ましくは、アルコキシはC1~C5アルコキシ、より好ましくはC1~C3アルコキシである。より具体的には、好ましいアルコキシには、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ及びプロパノキシが挙げられる。ハロゲンには、限定されるものではないが、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物が挙げられる。好ましくは、アルカノイルはC2~C10アルカノイル、より好ましくはC3~C5アルカノイルである。より具体的には、好ましいアルカノイルには、限定されるものではないが、エタノイル、プロパノイル及びシクロヘキサンカルボニルが挙げられる。
【0098】
用語「アミン」及び「アミノ」は当該技術分野で認識されており、非置換及び置換の両方のアミン及びその塩、例えば
【化6】
(式中、各R10は独立して、水素若しくはヒドロカルビル基を示すか、又は2つのR10は、それらが結合するN原子と一緒になって、環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成させる)
により置き換えられ得る部分を指す。
【0099】
用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、環の各原子が炭素である置換又は非置換の単環芳香族基を含む。好ましくは、環は5~10員環であり、より好ましくは6~10員環又は6員環である。用語「アリール」はまた、2個又はそれを超える環式環を有し、2個又はそれを超える炭素が2つの隣接している環と共有されており、環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/又はヘテロシクリルであり得る、多環系を含む。アリール基には、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリン等が挙げられる。アリール基上の代表的な置換基には、例えば、ハロゲン、ハロアルキル、例えばトリフルオロメチル、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル、例えばアルキルC(O))、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、シリルエーテル、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくは複素環式芳香族部分が挙げられる。
【0100】
用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、本明細書で使用される場合、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む。
【0101】
用語「低級」は、化学部分、例えばアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシと併せて使用される場合、置換基中に10個以下、好ましくは6個以下の非水素原子が存在する基を含む。「低級アルキル」は、例えば10個以下、好ましくは6個以下の炭素原子を含有するアルキル基を指す。ある特定の好ましい実施形態では、本明細書において定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシ置換基は、それぞれ、単独で又は列挙中の他の置換基、例えばヒドロキシアルキル及びアラルキルと組み合わせて(この場合、例えば、アルキル置換基中の炭素原子を数える場合にはアリール基中の原子は数えられない)のいずれかで出現する低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル又は低級アルコキシである。
【0102】
用語「置換されている」は、骨格の1つ以上の炭素原子上で水素原子を置き換える置換基を含有する部分を指す。用語「置換」及び「と置換されている」は、そのような置換が許容される置換されている原子及び置換基の原子価に従う限り、及び置換が安定した化合物、例えば転位、環化又は脱離等により自発的に変換しないものを生じる限り、暗に含む。本明細書で使用される場合、「置換されている」は、有機化合物における全ての許容可能な置換基を含む。幅広い態様では、許容可能な置換基は、有機化合物の、非環状又は環状、分岐鎖及び非分岐鎖の、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族置換基を含む。許容可能な置換基は、1つ以上であり、適切な有機化合物について同じ又は異なるものであることができる。本発明について、ヘテロ原子、例えば窒素は、水素置換基、又はヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書において記載されている有機化合物の任意の許容可能な置換基を有してもよい。置換基には、本明細書において記載されている任意の置換基、例えばハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル又はアシル)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオアセテート又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ,スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、又は芳香族若しくは複素環式芳香族部分を挙げることができる。適切な場合、置換基はそれ自身置換され得ることが、当業者により理解されるであろう。「非置換の」と具体的に示されない限り、本明細書における化学的部分への参照は置換されているバリアントを含む。例えば、「アリール」基又は部分への言及は、置換されている及び非置換のバリアントを暗に含む。
【0103】
句「併用投与(conjoint administration)」は、本明細書で使用される場合、前に投与された治療剤が身体内で依然として有効である間に第2の薬剤が投与される(例えば、2つの薬剤は患者内で同時に有効であり、2つの薬剤の相乗的効果を含み得る)ような、2つ以上の異なる治療剤の任意の形態の投与を指す。例えば、異なる治療化合物は、同じ製剤又は別の製剤中で同時に又は順次に投与することができる。したがって、そのような処置を受けている個体は、異なる治療剤の組み合わせ効果の利益を受けることができる。
【0104】
用語「薬学的に許容される塩」は、本開示において使用される場合、非毒性又は毒性が僅かな酸又は塩基により製造された塩を指す。薬学的に許容される塩基付加塩には、限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム又は有機アミノにより作製された塩が挙げられる。本開示の化合物が塩基性である場合、化合物の酸付加塩は、化合物の遊離塩基を十分な量の所望される酸及び十分な不活性溶媒と反応させることにより作製することができる。薬学的に許容される酸付加塩には、限定されるものではないが、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、塩酸、臭素酸、硝酸、カルボン酸、一水素カルボン酸、リン酸、一水素-リン酸、二水素-リン酸、硫酸、一水素-硫酸、水素ヨウ化物及び亜リン酸が挙げられる。加えて、本開示の薬学的に許容される塩には、限定されるものではないが、アミノ酸の塩、例えばアルギン酸塩、及び有機酸の類似体、例えばグルグロン酸又はガラクツロン酸が挙げられる。
【0105】
例えば、本開示の好ましい例である2-ヒドロキシ-5-[2-(4-トリフルオロメチルフェニル)-エチルアミノ]-安息香酸(化合物2)の薬学的に許容される塩は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,598,383号に記載されている方法を使用して調製することができる。しかし、以下の反応方法は例示により提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0106】
本開示の化合物のいくつかは水和されていてもよく、溶媒和物又は非溶媒和形態で存在してもよい。本開示によると、化合物のいくつかは結晶又はアモルファス形態で存在し、任意の物理的形態が本開示の範囲内に含まれる。更に、いくつかの本開示の化合物は、1つ以上の不斉的炭素原子又は二重結合を含有し得る。したがって、これらは、2つ以上の立体異性体形態、例えばラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何異性体等で存在し得る。本開示は、これらの個々の立体異性体を含む。
【0107】
組成物
本開示はまた、喘息、COPD及びACODのための、上記の化学式(I)により示される5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される賦形剤若しくは添加剤を含む組成物を提供する。本開示の上記の化学式(I)により示される5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体又はその薬学的に許容される塩は、単独で投与されてもよい。一部の実施形態では、式(I)の化合物を含む組成物は、簡便な担体、希釈剤等とともに投与される。
【0108】
一部の実施形態では、組成物の投薬量は、1日あたりおよそ1μg/kg~200mg/kgの式(I)の化合物の範囲である。一部の実施形態では、組成物の投薬量は、1日あたりおよそ10μg/kg~10mg/kgの式(I)の範囲である。しかし、投薬量は、患者の状態又は特徴(年齢、性別、体重等)、それを必要とする患者の重症度、使用される有効成分、及び食事により変動し得る。本発明の化合物は、1日1回、又は必要な場合には分割用量で1日数回、投与され得る。
【0109】
一部の実施形態では、製剤は単回用量又は複数回用量単位として投与され得る。一部の実施形態では、組成物は単回用量単位を含む。一部の実施形態では、組成物は複数回用量単位を含む。
本開示の経口投与のための組成物は、固体又は液体形態で製剤化され得る。固体製剤には、限定されるものではないが、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤及び坐剤が挙げられる。更に、固体製剤は、限定されるものではないが、希釈剤、香料、結合剤、保存剤、崩壊剤、滑沢剤、充填剤、可塑剤等を更に含み得る。液体製剤には、限定されるものではないが、液剤、例えば水溶液剤及びプロピレングリコール溶液剤、懸濁剤及び乳剤が挙げられ、適切な添加剤、例えば着色剤、香料、安定剤及び増稠剤を添加することにより調製され得る。一部の実施形態では、組成物は、カプセル剤、錠剤、散剤及び溶液から選択される形態で投与される。一部の実施形態では、組成物は栄養補助食品と混合することにより投与される。一部の実施形態では、組成物は栄養補助食品として投与される。一部の実施形態では、組成物は食品と混合することにより投与される。一部の実施形態では、組成物は食品組成物として投与される。一部の実施形態では、組成物は水に溶解することにより投与される。一部の実施形態では、組成物はカプセル剤として水とともに投与される。一部の実施形態では、組成物はチュアブル錠剤として投与される。
【0110】
例えば、散剤は、本開示の5-ベンジルアミノサリチル酸誘導体と薬学的に許容される賦形剤、例えばラクトース、デンプン及び微結晶セルロースとを混合することにより、調製することができる。顆粒剤は、化合物を薬学的に許容される賦形剤と混合することにより調製することができる。一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤及び/又は薬学的に許容される結合剤を含む。一部の実施形態では、結合剤はポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等である。
【0111】
一部の実施形態では、組成物は、十分な溶媒、例えば水、エタノール及びイソプロパノールを用いた湿式造粒により形成される。一部の実施形態では、組成物は圧縮力(compression power)を用いた直接打錠により形成される。加えて、錠剤は、顆粒を薬学的に許容される滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムと混合し、混合物を打錠することにより調製することができる。
【0112】
本開示の医薬組成物は、限定されるものではないが、処置される障害及び動物の状態に応じて、経口製剤、注射可能製剤(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、点滴、皮下、インプラント)、吸入、鼻腔内、膣、直腸、舌下、経皮、局所等の形態で投与され得る。本開示の組成物は、投与経路に応じて、全て当該技術分野において一般的に使用される薬学的に許容される非毒性の担体、添加剤及び/又はビヒクルを含む適切な投薬単位で製剤化され得る。所望される時間で連続的に薬物を放出することができるデポ型の製剤も、本開示の範囲内に含まれる。
【実施例
【0113】
本発明を、以下の実施例を参照してここで説明する。これらの実施例は例示目的のみで提供され、本発明はこれらの実施例に限定されるとはけっして解釈されず、むしろ、本明細書において提供される教示の結果として明らかとなる、ありとあらゆる変形形態を包含すると解釈されるべきである。これらの実施例において使用される材料及び方法は、以下の通りである。
【0114】
材料及び方法
喘息
7週齢の雌Balb/Cマウスを、0、7及び14日目に、硫酸アルミニウムカリウムと複合体化した100μgのOVAの腹腔内注入(IP、200μL/マウス)により感作した。26、27及び28日目に、マウスに48mLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の5%のエアロゾル化OVAを負荷した。対照群に、硫酸アルミニウムカリウムを有する滅菌PBSをIP経路で0、7、14日目に投与し、48mLのエアロゾル化滅菌PBSを26、27及び28日目に投与した。22、27、28及び29日目に、ATPB群のマウスに10mg/kgのATPBを1日2回経口投与した。
【0115】
COPD
前に説明したように、COPDのラットモデルを、煙曝露及びリポ多糖(LPS)の気管内点滴により確立した。COPD及び薬物処置群(10mg/kgのATPB)を含む実験ラットに、タバコ煙室(90×40×30cm、Plexiglas製)中で、1日2回、2時間の無煙間隔を伴った10本のタバコからのタバコ煙の全身曝露を、毎日12週間行った。
【0116】
2つの煙曝露群からの動物に、180μg/180μLのLPS溶液を、タバコ煙曝露の初日及び14日目の2回の機会に気管内投与した。加えて、ATPB群のラットにATPB(10mg/kgのATPB)を経口投与した。全てのラットを91日目に屠殺した。
【0117】
ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)誘発性気腫モデルを使用して、COPDモデルマウスにおけるATPBの後処置の効果を測定した。C57BL/6Jマウスに、PBS中のPPE(マウスあたり0.8U)をマイクロピペットで気管内注射した。マウスを無作為に4つの群に分けた。(A)気管内PPEに曝露した気腫群、(B)気腫+ATPB(5mg/kgのATPB、PO、1日2回)、(C)気腫+ATPB(10mg/kgのATPB、PO、1日2回)、(D)気腫+ロフルミラスト(10mg/kg、PO、1日1回)、及び(E)気腫+プレドニゾロン(1mg/kg、PO、1日1回)。全ての処置をPPE注射の3日後に開始した。マウスをPPE注射の21日後に屠殺した。
【0118】
BALFの調製及び細胞数
ラット及びマウスを屠殺し、気管をカニューレ処置し2mLのDPBSで3回洗浄することにより、BALFを得た。BALF細胞を1000×gで10分、4℃で遠心分離にかけた。上清を収集し、-80℃で保管して、炎症性因子を測定した。ペレット化したBALF細胞を1mLのPBS中で再懸濁し、血液学的分析器(Mindray Medical International Ltd.、Shenzhen、China)を使用して定量化した。
【0119】
遺伝子発現のためのRNA単離及びリアルタイムPCR
肺組織からの総RNAを、製造元の使用説明書に従ってTRIzol試薬(Invitrogen)を使用して抽出した。cDNAを、cDNA合成キット(Life Technologies)を使用して合成した。SYBRグリーンマスターミックス(Thermo Fisher)を、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)でのPCR増幅のために使用した。特異的プライマーを、表1に示すように設計した。
【0120】
病理組織学
ラットの肺を12週目に除去し、病理組織学的分析のために10%中性緩衝ホルマリンで固定した。ホルマリン固定組織をパラフィンに包埋し、3~5mmの薄片を作製し、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)並びにアルシアンブルー過ヨウ素酸シッフ(alcian blue periodic acid-Schiff、AB-PAS)で染色して、病理組織学的病変を明らかにした。
【0121】
統計分析
全ての統計分析にGraphPad Prism5.0を使用した。1元配置分散分析(ANOVA)、続けてテューキーの多重比較検定(複数の群について)を使用して、群間の差を分析した。全てのデータを、平均±平均の標準誤差として示した。
【0122】
結果
ATPBでの処置は血清中のIgEの産生を減弱させる
ELISAを行って、IgE産生に対するATPBの効果を評価した。結果から、血清中のIgEの産生が、正常対照マウスよりもOVA負荷マウスにおいて高かったことが明らかになった(図1)。しかし、IgEのレベルの増加は、OVA負荷マウスと比較してATPB処置マウスにおいて有意に減少した。
【0123】
ATPBでの処置は、BALF中のTh2サイトカインのレベルを低減する
Th2サイトカインはアレルギー喘息における気道の炎症応答に関与するため、ELISAを使用してIL-4及びIL-5を含むTh2サイトカインの産生を調べた。OVA負荷マウスは、正常対照マウスと比較して、IL-4及びIL-5産生の有意な増加を示した。しかし、このレベルはATPB処置群において有意に下方制御された(図2)。
【0124】
ATPBでの処置は、喘息マウスのBALFにおいて炎症性細胞を減弱させた
OVA群は、BALF中(p<.05)、正常群と比較して、WBC、LY、MO及びEOを含む、有意に増加した数の炎症性細胞を有した(図3)。ATPB群は、ビヒクル群と比較して、WBC、LY、MO及びEO、特に好酸球の細胞数の有意な減少を示した。
【0125】
ATPBでの処置は、肺における炎症性細胞流入及び粘液分泌過多を阻害する
H&E染色を行って、ATPBがOVAにより誘発される炎症性細胞リクルートメントに影響を与えるかどうかを決定した。OVA負荷マウスでは、気管支周囲の(peribranchial)肺病変への細胞浸潤は著しく増加した。しかし、この細胞浸潤は、ATPB処置マウスにおいて顕著に下方制御された。PAS染色を行って、粘液産生に対するATPBの効果を評価した。結果により、OVA負荷マウスの気管支気道における粘液分泌過多が明らかになった。とりわけ、このレベルは、OVA負荷マウスの肺のレベルと比較して、ATPB処置群のマウスの肺において減弱した(図4)。これらの結果は、ATPBが炎症性細胞リクルートメント及び粘液産生の抑制により気道炎症に有用であり得ることを示す(図4)。
【0126】
ATPBは、BALF中の炎症性細胞の数を低減する
ATPBが肺における炎症に影響を与えたかどうかを評価するために、BALF中の炎症性細胞の数を分析した。図5に示すように、LPS及びCS(慢性的喫煙)負荷により、対照群と比較して、BALF中の総WBC数の増加が生じた。ビヒクル群と比較して、ATPB群は顕著に減少したWBC数を示した。
【0127】
ATPBはラットCOPDモデルにおける肺炎症応答を減少させる
肺胞構造の破壊に対する慢性的喫煙の影響を評価した。ヘマトキシリン及びエオシン染色肺切片の病理組織学的調査により、慢性的喫煙群における気管支の粘膜上皮細胞壊死が明らかになった。肺胞嚢及び肺胞腔は拡張し、肺胞壁は肥厚した(図6)。ATPBでの処置後、肺胞嚢及び肺胞腔は、COPD群における肺胞嚢及び肺胞腔と比較して回復した(図6)。ATPBは、肺において、慢性的喫煙誘発性の病理学的破壊及び炎症性浸潤から保護した。
【0128】
気管上皮中の杯生成物(Goblet products)をPASにより染色し、次に陽性のPAS染色面積を測定し、杯化生(goblet metaplasia)及び粘液分泌として分析した。組織学的評価によると、タバコ煙により誘発される胚細胞増殖及び粘液閉塞は、ATPB群と比較して、慢性的喫煙誘発ラットモデルにおいて有意に増加した(図6)。しかし、ATPB(10mg/kg)で処理したラットは、COPDラットと比較して、粘液分泌のレベルの減少、及び胚細胞増殖(PAS+細胞)の減少を示した(図6)。
【0129】
ATPB処置は、TNF-α、IL-1β及びMCP-1のmRNAを減少させる
肺におけるTNF-α、IL-6及びMCP-1の遺伝子発現を、RT-PCRを使用して評価した。COPD群では、TNF-α、IL-6及びMCP-1をコードする遺伝子のmRNA発現レベルは、対照群よりも有意に高かった(図7、P<0.01又はP<0.05)。COPD群と比較して、TNF-α、IL-6及びMCP-1の遺伝子発現レベルは、全てのATPB処置群及びプレドニゾロン群において低減した(図7、P<0.01又はP<0.05)。
【0130】
ATPB後処置は、マウスCOPDモデルにおいて肺炎症応答を減少させる
BALF中のWBCの数を比較して、PPE誘発性COPDにおける気腫の誘発後の、ATPB、ロフルミラスト又はプレドニゾロンでの後処置の効果を比較した(図8、P<0.05)。各薬物をPPE処置の後d日から投与し、マウスを21日目に屠殺した。ビヒクル群と比較して、10mg/kgのATPB群は有意に減少したWBC数を示した。ロフルミラストもプレドニゾロンも、WBC数を減少させなかった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本試験は、呼吸器疾患、例えば喘息、COPD及びACODを処置するための、化合物18(ATPB)を含む化合物及び治療有効量の化合物18を投与する方法を明らかにする。本開示の組成物及び方法は、肺疾患における組織障害を処置するのに有用である。
【0132】
参照による組込み
本明細書において言及される全ての刊行物及び特許は、各刊行物又は特許が具体的に且つ個別に参照により組み込まれていることを示すように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書における任意の定義を含め、本出願が優先する。
【0133】
等価物
対象の発明の特定の実施形態を議論してきたが、上記の詳述は例示的であり、限定的ではない。本発明の多くの変形形態が、本明細書及び以下の特許請求の範囲を検討することで当業者に明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、それらの等価物及び本明細書の完全な範囲並びにそのような変形形態とともに、特許請求の範囲の参照により決定されるべきである。
【0134】
参考文献
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】