(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】プロセス制御のための人工知能モデルの生成方法、人工知能モデルに基づくプロセス制御システムおよびこれを含む反応器
(51)【国際特許分類】
G05B 11/36 20060101AFI20250107BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20250107BHJP
G05B 13/02 20060101ALI20250107BHJP
G05B 13/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G05B11/36 Z
B01J19/00 321
G05B13/02 M
G05B13/02 J
G05B13/04
B01J19/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515296
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2022061797
(87)【国際公開番号】W WO2023105392
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0173790
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520060977
【氏名又は名称】サビック エスケー ネクスレン カンパニー ピーティーイー. エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】SABIC SK NEXLENE COMPANY PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】クァク ドン フン
(72)【発明者】
【氏名】パク ビョン オン
(72)【発明者】
【氏名】シン デ ホ
(72)【発明者】
【氏名】シム チュン シク
(72)【発明者】
【氏名】パク ドン ギュ
【テーマコード(参考)】
4G075
5H004
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075AA62
4G075AA63
4G075AA65
4G075AA67
4G075CA54
4G075EB01
4G075EB21
4G075EC11
5H004GB02
5H004HA01
5H004HA02
5H004HA03
5H004HA20
5H004HB20
5H004JA01
5H004KC01
5H004KD51
(57)【要約】
本発明は、プロセス制御のための人工知能モデルの生成方法、人工知能モデルに基づくプロセス制御システムおよびこれを含む反応器に関し、予め設定された複数の反応器のプロセスデータを格納するデータ格納部110、前記格納された反応器のプロセスデータの外れ値を除去した学習データを生成するデータ補正部120および前記生成された学習データから学習されて反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出すデータ導出部130を含む人工知能制御モデル部100と、反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値を含むデータを得て、前記人工知能制御モデル部100に提供する入力部200と、前記人工知能制御モデル部100から前記反応器の目的運転条件および前記生成物の目的物性値を満たすための最適の反応器の投入条件の提供を受け、前記最適の反応器の投入条件で反応器の投入を制御する出力部300とを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された複数の反応器のプロセスデータを格納するデータ格納部(110)、前記格納された反応器のプロセスデータの外れ値を除去した学習データを生成するデータ補正部(120)および前記生成された学習データから学習されて、反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出すデータ導出部(130)を含む人工知能制御モデル部(100)と、
反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値を含むデータを得て、前記人工知能制御モデル部(100)に提供する入力部(200)と、
前記人工知能制御モデル部(100)から前記反応器の目的運転条件および前記生成物の目的物性値を満たすための最適の反応器の投入条件の提供を受け、前記最適の反応器の投入条件で反応器の投入を制御する出力部(300)とを含み、
前記反応器の投入条件は、下記(a)を含むことを特徴とする、人工知能モデルに基づくプロセス制御システム。
(a)前記反応器に投入される原料の組成、温度、流量、圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【請求項2】
前記反応器の投入条件は、下記(b)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工知能モデルに基づくプロセス制御システム。
(b)前記反応器に投入される触媒の組成、温度、流量、圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【請求項3】
前記予め設定された複数の反応器のプロセスデータは、
反応器の実際の投入条件、反応器の実際の運転条件および反応器による生成物の実際の物性値;またはシミュレーションによる計算結果;を含む、請求項1に記載の人工知能モデルに基づくプロセス制御システム。
【請求項4】
前記データ導出部(130)は、前記入力部(200)から提供された反応器の投入条件に基づいて、反応器の予測運転条件および反応器による生成物の予測物性値を導出し、
前記人工知能制御モデル部(100)は、前記データ格納部(110)または前記データ補正部(120)での反応器の実際の運転条件および生成物の実際の物性値と、前記データ導出部(130)で導き出される反応器の予測運転条件および生成物の予測物性値とを比較するデータ分析部(140)と、
前記データ分析部(140)から提供された比較結果が、下記条件(1)または条件(2)を満たす場合、データ導出部(130)を再学習させるデータ再学習部(150)とをさらに含む、請求項3に記載の人工知能モデルに基づくプロセス制御システム。
(1)前記反応器の実際の運転条件と前記反応器の予測運転条件との誤差率が予め設定された許容値を超える場合
(2)前記生成物の実際の物性値と前記生成物の予測物性値との誤差率が予め設定された許容値を超える場合
【請求項5】
前記データ導出部(130)は、
前記入力部(200)から提供された目的物性値が反応器運転途中に変更される場合において、前記目的物性値が変更される時点から変更された目的物性値に逹するための反応器の投入条件の動特性を分析して、新たな最適の反応器の投入条件を導き出すことを特徴とする、請求項1に記載の人工知能モデルに基づくプロセス制御システム。
【請求項6】
前記人工知能制御モデル部(100)は、線形回帰(linear regression)、ロジスティック回帰(logistic regression)、ディシジョンツリー(decision tree)、ランダムフォレスト(random forest)、サポートベクターマシン(support vector machine)、勾配ブースティング(gradient boosting)、畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network)、回帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network)、長・短期記憶(long-short term memory)、注意機構(attention model)、トランスフォーマー(transformer)、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network)、強化型機械学習(reinforcement learning)のうち一つ以上の方式またはこれらの組み合わせ(ensemble)によって学習される、請求項1に記載の人工知能モデルに基づくプロセス制御システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の人工知能に基づくプロセス制御システムを含む、反応器。
【請求項8】
前記反応器は、
管型反応器、塔型反応器、撹拌槽型反応器、流動層型反応器、ループ型反応器のうち一つである、請求項7に記載の反応器。
【請求項9】
前記反応器は、複数個で構成され、互いに同一または相違しており、それぞれ独立して、管型反応器、塔型反応器、撹拌槽型反応器、流動層型反応器、ループ型反応器のうち一つである、請求項7に記載の反応器。
【請求項10】
反応器の実際の投入条件、反応器の実際の運転条件および反応器による生成物の実際の物性値;またはシミュレーションによる計算結果;を含む複数の反応器のプロセスデータを格納するステップと、
前記格納された反応器のプロセスデータの外れ値を除去して、学習データを生成するステップと、
前記生成された学習データを学習して、反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出す人工知能アルゴリズムを含む人工知能モデルを生成するステップとを含み、
前記反応器の投入条件は、下記(a)を含むことを特徴とする、プロセス制御のための人工知能モデルの生成方法。
(a)前記反応器に投入される原料の組成、流量、部分圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【請求項11】
前記反応器の投入条件は、下記(b)をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載のプロセス制御のための人工知能モデルの生成方法。
(b)前記反応器に投入される触媒の組成、温度、流量、圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【請求項12】
前記人工知能アルゴリズムにおいて、
前記生成物の物性値が反応器運転途中に変更されると、前記物性値が変更される時点から変更された物性値に逹するための反応器の投入条件の動特性を分析して、新たな最適の反応器の投入条件を導き出すことを特徴とする、請求項10に記載のプロセス制御のための人工知能モデルの生成方法。
【請求項13】
前記人工知能モデルを生成するステップは、
線形回帰(linear regression)、ロジスティック回帰(logistic regression)、ディシジョンツリー(decision tree)、ランダムフォレスト(random forest)、サポートベクターマシン(support vector machine)、勾配ブースティング(gradient boosting)、畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network)、回帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network)、長・短期記憶(long-short term memory)、注意機構(attention model)、トランスフォーマー(transformer)、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network)、強化型機械学習(reinforcement learning)のうち一つ以上の方式またはこれらの組み合わせ(ensemble)によって前記人工知能モデルを生成することを特徴とする、請求項10に記載のプロセス制御のための人工知能モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス制御のための人工知能モデルの生成方法、人工知能モデルに基づくプロセス制御システムおよびこれを含む反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プロセスは、各種の物質が反応を行い、温度、圧力、組成などの条件に応じて相違する反応性が現れる。また、一つの工場で各種の生産物を生産することが多いため、生産物に対する化学プロセスをすべて把握することが困難であり、測定が不可能であるか、測定結果を確認するのに長い時間がかかる。
【0003】
そのため、化学プロセスの制御は、難易度が高く、不良品(off-spec)が発生し、無駄なエネルギーが消費される。また、このような不良品の生産条件で正常品(on-spec)生産条件に訂正するために、投入条件をユーザが任意に変更すると、試行錯誤(trial and error)する可能性が高い問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2021-0027668号(公開日2021.03.11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題を解決するために、本発明は、プロセス制御のための人工知能モデルの生成方法、人工知能モデルに基づくプロセス制御システムおよびこれを含む反応器を提供することにより、反応器による生成物の製造時に発生する不良品の比率を下げ、正常品の比率を高めることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するための一手段として、本発明の一実施形態によると、予め設定された複数の反応器のプロセスデータを格納するデータ格納部110、前記格納された反応器のプロセスデータの外れ値を除去した学習データを生成するデータ補正部120および前記生成された学習データから学習されて反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出すデータ導出部130を含む人工知能制御モデル部100と、反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値を含むデータを得て、前記人工知能制御モデル部100に提供する入力部200と、前記人工知能制御モデル部100から前記反応器の目的運転条件および前記生成物の目的物性値を満たすための最適の反応器の投入条件の提供を受け、前記最適の反応器の投入条件で反応器の投入を制御する出力部300とを含み、前記反応器の投入条件は、下記(a)を含むことを特徴とする人工知能モデルに基づくプロセス制御システムを提供することができる。
(a)前記反応器に投入される原料の組成、温度、流量、圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【0007】
また、本発明の一実施形態によると、前記反応器の投入条件は、下記(b)をさらに含むことを特徴とすることができる。
(b)前記反応器に投入される触媒の組成、温度、流量、圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【0008】
また、本発明の一実施形態によると、前記予め設定された複数の反応器のプロセスデータは、反応器の実際の投入条件、反応器の実際の運転条件および反応器による生成物の実際の物性値を含むことができる。
【0009】
また、本発明の一実施形態によると、前記データ導出部130は、前記入力部200から提供された反応器の投入条件に基づいて、反応器の予測運転条件および反応器による生成物の予測物性値を導出し、前記人工知能制御モデル部100は、前記データ格納部110または前記データ補正部120での反応器の実際の運転条件および生成物の実際の物性値と、前記データ導出部130で導き出される反応器の予測運転条件および生成物の予測物性値とを比較するデータ分析部140と、前記データ分析部140から提供された比較結果が、下記条件(1)または条件(2)を満たす場合、データ導出部130を再学習させるデータ再学習部150とをさらに含むことができる。
(1)前記反応器の実際の運転条件と前記反応器の予測運転条件との誤差率が予め設定された許容値を超える場合
(2)前記生成物の実際の物性値と前記生成物の予測物性値との誤差率が予め設定された許容値を超える場合
【0010】
また、本発明の一実施形態によると、前記データ導出部130は、前記入力部200から提供された目的物性値が反応器運転途中に変更される場合において、前記目的物性値が変更される時点から変更された目的物性値に逹するための反応器の投入条件の動特性を分析して、新たな最適の反応器の投入条件を導き出すことを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明の一実施形態によると、前記人工知能制御モデル部100は、線形回帰(linear regression)、ロジスティック回帰(logistic regression)、ディシジョンツリー(decision tree)、ランダムフォレスト(random forest)、サポートベクターマシン(support vector machine)、勾配ブースティング(gradient boosting)、畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network)、回帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network)、長・短期記憶(long-short term memory)、注意機構(attention model)、トランスフォーマー(transformer)、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network)、強化型機械学習(reinforcement learning)のうち一つ以上の方式またはこれらの組み合わせ(ensemble)によって学習されることができる。一例によると、前記人工知能制御モデル部100は、上述の学習方式に基づいて発展したモデルであることができる。
【0012】
また、上述の目的を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によると、上記の人工知能に基づくプロセス制御システムを含む反応器を提供することができる。
【0013】
また、本発明の一実施形態によると、前記反応器は、管型反応器、塔型反応器、撹拌槽型反応器、流動層型反応器、ループ型反応器のうち一つであることができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態によると、前記反応器は、複数個で構成され、互いに同一または相違しており、それぞれ独立して、管型反応器、塔型反応器、撹拌槽型反応器、流動層型反応器、ループ型反応器のうち一つであることができる。
【0015】
また、上述の目的を達成するための他の一手段として、本発明の一実施形態によると、反応器の実際の投入条件、反応器の実際の運転条件および反応器による生成物の実際の物性値;またはシミュレーションによる計算結果;を含む複数の反応器のプロセスデータを格納するステップと、前記格納された反応器のプロセスデータの外れ値を除去して、学習データを生成するステップと、前記生成された学習データを学習して、反応器の予測運転条件、生成物の予測物性値と反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出す人工知能アルゴリズムを含む人工知能モデルを生成するステップとを含み、前記反応器の投入条件は、下記(a)を含むことを特徴とするプロセス制御のための人工知能モデルの生成方法を提供することができる。
(a)前記反応器に投入される原料の組成、流量、部分圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【0016】
また、本発明の一実施形態によると、前記反応器の投入条件は、下記(b)をさらに含むことができる。
(b)前記反応器に投入される触媒の組成、温度、流量、圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【0017】
また、本発明の一実施形態によると、前記人工知能アルゴリズムにおいて、前記生成物の物性値が反応器運転途中に変更されると、前記物性値が変更される時点から変更された物性値に逹するための反応器の投入条件の動特性を分析して、新たな最適の反応器の投入条件を導き出すことを特徴とすることができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態によると、前記人工知能モデルを生成するステップは、線形回帰(linear regression)、ロジスティック回帰(logistic regression)、ディシジョンツリー(decision tree)、ランダムフォレスト(random forest)、サポートベクターマシン(support vector machine)、勾配ブースティング(gradient boosting)、畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network)、回帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network)、長・短期記憶(long-short term memory)、注意機構(attention model)、トランスフォーマー(transformer)、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network)、強化型機械学習(reinforcement learning)のうち一つ以上の方式またはこれらの組み合わせ(ensemble)によって前記人工知能モデルを生成することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によると、本発明は、人工知能モデルを用いて、反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を容易に導き出すことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、前記最適の反応器の投入条件で反応器の投入を制御することができ、生成物の生産に要する単価、時間などを低減することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によると人工知能モデルを用いてプロセスを制御することにより、外部ユーザ(管理者など)の介入を最小化することができ、試行錯誤を低減することができ、信頼性の高い反応器生成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態によるプロセス制御のための人工知能モデルの生成方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態による人工知能モデルプロセス制御システムを示す構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態による人工知能制御モデル部100の再学習構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本出願で使用する用語は、単に特定の例示を説明するために使用されるものである。そのため、例えば、単数の表現は、文脈上明白に単数でなればならないものではない限り、複数の表現を含む。さらに、本出願で使用される「含む」または「備える」などの用語は、明細書上に記載の特徴、ステップ、機能、構成要素またはこれらの組み合わせが存在することを明確に指すために使用されるものであって、他の特徴やステップ、機能、構成要素またはこれらの組み合わせの存在を予め排除するために使用されるものではないことに留意すべきである。
【0024】
一方、他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものと見なすべきである。したがって、本明細書で明確に定義しない限り、特定の用語が過剰に理想的もしくは形式的な意味に解釈されてはならない。
【0025】
また、本明細書の「約」、「実質的に」などは、言及した意味に固有の製造および物質許容誤差が提示される時に、その数値でまたはその数値に近接した意味に使用され、本発明の理解を容易にするために、正確もしくは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0026】
また、本明細書において「システム」は、必要な機能を行うために組織化し規則的に相互作用する装置、ツールおよび手段などを含む構成要素の集合を意味する用語である。
【0027】
また、本明細書において「部(part)」は、一つ以上の機能や動作を行う構成要素を指すための用語であり、このような構成要素は、ハードウェアまたはソフトウェアにより実現されるか、ハードウェアおよびソフトウェアの結合により実現されることができる。
【0028】
また、本明細書において、「予め設定された(predetermined)」と言う用語は、外部ユーザ(管理者など)によって予め設定されたことを意味する。
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態による人工知能モデルに基づくプロセス制御システムについて詳細に説明する。以下に開示する図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために、例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態に具体化することもできる。また、明細書の全般にわたり、同じ参照番号は、同じ構成要素を示す。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態によるプロセス制御のための人工知能モデルの生成方法のフローチャートである。以下では、
図1を参照して、プロセス制御のための人工知能モデルの生成方法について詳細に説明する。
【0031】
本発明の一実施形態によるプロセス制御のための人工知能モデルの生成方法は、反応器の実際の投入条件、反応器の実際の運転条件および反応器による生成物の実際の物性値またはシミュレーションによる計算結果を含む複数の反応器のプロセスデータを格納するステップ(S100)と、前記格納された反応器のプロセスデータの外れ値を除去して、学習データを生成するステップ(S200)と、前記生成された学習データを学習して、反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出す人工知能アルゴリズムを含む人工知能モデルを生成するステップ(S300)とを含むことができる。
【0032】
反応器の投入条件は、下記(a)を含むことができる。
【0033】
(a)反応器に投入される原料の組成、温度、流量、圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【0034】
反応器に触媒が投入される場合、調整される反応器の投入条件は、下記(b)をさらに含むことができる。
【0035】
(b)反応器に投入される触媒の組成、温度、流量、圧力のうち一つ以上またはこれらの組み合わせ
【0036】
反応器の投入条件(a)において、原料の組成は、原料を構成する化合物の種類と含量を含むことができ、ここで、含量は、重量、体積などの絶対的な数値もしくは、重量比、体積比などの相対的な数値とすることができる。原料の温度は反応器への投入時に原料の温度を意味することができ、原料の流量は反応器に投入される全体投入物のうち原料の流量を意味することができ、原料の圧力は反応器に投入される全体投入物のうち原料の圧力を意味することができる。
【0037】
反応器をより精密に制御するための観点で、反応器の投入条件(a)は、例えば、原料の組成および温度、または原料の組成および流量、または原料の組成および圧力、または原料の温度および流量、または原料の温度および圧力、または原料の流量および圧力とすることができ、例えば、原料の組成、温度および流量、または原料の組成、温度および圧力、または原料の温度、流量および圧力とすることができ、例えば、原料の組成、温度、流量および圧力とすることができる。
【0038】
反応器の投入条件(b)において、触媒の組成は、触媒を構成する化合物の種類と含量を含むことができ、ここで、含量は、重量、体積などの絶対的な数値もしくは、重量比、体積比などのような相対的な数値とすることができる。触媒の温度は、反応器への投入時に触媒の温度を意味することができ、触媒の流量は、反応器に投入される全体投入物のうち触媒の流量を意味することができ、触媒の部分圧力は、反応器に投入される全体投入物のうち触媒の圧力を意味することができる。
【0039】
反応器をより精密に運転するための観点で、反応器の投入条件(b)は、例えば、触媒の組成および温度、または触媒の組成および流量、または触媒の組成および圧力、または触媒の温度および流量、または触媒の温度および圧力、または触媒の流量および圧力とすることができ、例えば、触媒の組成、温度および流量、または触媒の組成、温度および圧力、または触媒の温度、流量および圧力とすることができ、例えば、触媒の組成、温度、流量および圧力とすることができる。
【0040】
以降、言及される反応器の投入条件は、上述と同様であるため、便宜上、説明を省略する。
【0041】
前記人工知能モデルを生成するステップ(S300)により生成された人工知能モデルは、反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出す人工知能アルゴリズムA1を含めばよく、構成において、特に制限されない。例えば、前記人工知能モデルは、反応器のプロセスの様々な結果を予測するアルゴリズムを含むことができる。
【0042】
一実施形態による人工知能モデルは、反応器の投入条件に基づいて、反応器の予測運転条件または反応器による生成物の予測物性値を導き出す人工知能アルゴリズムA2を含むことができる。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記人工知能アルゴリズムA2により導き出された反応器の予測運転条件または反応器による生成物の予測物性値を人工知能アルゴリズムA1に提供して、前記反応器の予測運転条件または前記反応器の予測物性値に基づいて、最適の反応器の投入条件を導き出すことができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記人工知能アルゴリズムA1において、前記生成物の物性値が反応器の運転途中に変更されると、前記物性値が変更される時点から変更された物性値に逹するための反応器の投入条件の動特性を分析して、新たな最適の反応器の投入条件を導き出すことを特徴とすることができる。
【0045】
動特性(dynamic characteristic)の分析は、物性値が時系列的に変更される過程で現れ得る反応器を含むプロセス内の物理的、化学的変化を予測するために行われ、変更された物性値に逹する過程における過程別の最適の反応器の投入条件を導き出すことができる。過程別に過程の単位を分ける基準は、外部ユーザ(管理者など)によって予め設定されることができる。例えば、時間を基準に分けることができ、例えば、生成された生成物の総量を基準に分けることができる。しかし、上述の例示は、理解を容易にするための例示に過ぎず、前記基準は、上述の例示に限定されないことを留意すべきである。上述の反応過程別の最適の反応器の投入条件に基づいて、より迅速且つ安定的に変更時点の状態から変更後の物性値まで逹することができる。
【0046】
前記人工知能モデルを生成するステップ(S300)は、線形回帰(linear regression)、ロジスティック回帰(logistic regression)、ディシジョンツリー(decision tree)、ランダムフォレスト(random forest)、サポートベクターマシン(support vector machine)、勾配ブースティング(gradient boosting)、畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network)、回帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network)、長・短期記憶(long-short term memory)、注意機構(attention model)、トランスフォーマー(transformer)、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network)、強化型機械学習(reinforcement learning)のうち一つ以上の方式またはこれらの組み合わせ(ensemble)により前記人工知能モデルを生成することを特徴とすることができる。
【0047】
添付の
図2は、人工知能モデルに基づくプロセス制御システムを示す構成図である。
【0048】
本発明の一実施形態による人工知能モデルに基づくプロセス制御システムは、
図2に図示されているように、人工知能制御モデル部100、入力部200、出力部300を含むことができ、人工知能制御モデル部100、入力部200、出力部300により得られた反応器の投入条件で、反応器の投入を制御することができる。
【0049】
以下、本発明の実施形態による人工知能モデルに基づくプロセス制御システムの各構成について詳細に述べる。
【0050】
人工知能制御モデル部100は、データ格納部110、データ補正部120、データ導出部130を含むことができる。
【0051】
データ格納部110は、予め設定された複数の反応器のプロセスデータを格納することができる。予め設定された複数の反応器のプロセスデータは、実験室、パイロット工場、商業工場などから収集した反応器の実際の投入条件、反応器の実際の運転条件および反応器による生成物の実際の物性値;またはシミュレーションによる計算結果;を含む複数の実験データとして、人工知能モデルを学習させるためのロー(raw)データに該当する。反応器の運転条件は、例えば、反応器内の温度、圧力を意味することができるが、これに限定されない。シミュレーションによる計算結果は、反応器のプロセスのシミュレーションを行って出た結果であり、計算結果は、プロセスのすべてのデータを含むことができる。計算結果は、例えば、シミュレーションによって導き出された反応器の投入条件、反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を含むことができる。
【0052】
データ補正部120は、前記格納された実験データの外れ値(outlier date)を除去して、学習データを生成することができる。学習データは、人工知能モデルを学習させるためのデータとして活用される。さらに他の一実施形態によるとデータ補正部120は、外れ値を除去した後、スケール(scale)を標準化して、学習データを生成することができる。
【0053】
データ導出部130は、前記生成された学習データから学習して、反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出すことができる。データ導出部130の構成は、物性予測人工知能モデル、制御最適化人工知能モデルおよびその他の人工知能モデルのうち一つ以上またはこれらの組み合わせ、またはこれらが統合された人工知能モデルとすることができる。ここで、導き出された最適の反応器の投入条件は、データ導出部130または別のデータ提供部により出力部300に提供されることができる。
【0054】
最適の反応器の投入条件は、外部ユーザ(管理者など)が、人工知能モデルに基づくプロセス制御システムを介して得ようとする目的を予め設定して導き出されることができる。前記人工知能モデルに基づくプロセス制御システムを介して得ようとする目的は、例えば、投入される原料の低減、投入される触媒の低減、生産製品変更(grade change)時間の減少、不良品(off-spec)の減少、生成物取得率の増大、生成物生産量の増大、ユーティリティ使用量の減少、運転費用の減少、生産コストの削減のいずれか一つ以上の目的またはこれらの組み合わせとすることができるが、これに限定されない。
【0055】
一例によると、データ導出部130は、前記最適の反応器の投入条件だけでなく、入力部200から提供されたデータに基づいて、反応器の予測運転条件または反応器による生成物の予測物性値を導き出すことができる。一例によると、前記導き出された予測運転条件または予測物性値は、外部ユーザ(管理者など)がリアルタイムで確認することができるように、モニタなど、一般的に通用しているディスプレイ装置を介して表示されることができる。
【0056】
人工知能制御モデル部100は、入力部200から反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値を含むデータの提供を受けることができる。前記データは、一例によると、反応器の投入条件、反応器の運転条件、生成物の物性値などを含む制御対象である反応器のすべてのプロセスデータとすることができる。反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値は、外部ユーザ(管理者など)によって予め設定されることができる。
【0057】
人工知能制御モデル部100は、データ導出部130を介して提供された反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値を満たすための最適の反応器の投入条件を導き出すことができ、このときに導き出された最適の反応器の投入条件は、データ導出部130または別のデータ提供部を介して出力部300に提供されることができる。
【0058】
データ導出部130は、一例によると、入力部200から提供された目的物性値が反応器運転途中に変更される場合に、前記目的物性値が変更される時点から変更された目的物性値に逹するための反応器の投入条件の動特性を分析して、新たな最適の反応器の投入条件を導き出すことができる。
【0059】
動特性の分析は、目的物性値に逹するための前記反応器の投入条件(a)または(b)だけでなく、物性値が時系列的に変更される過程で現れ得る反応器内の物理的、化学的変化を予測するために行われ、これにより、より迅速且つ安定的に変更時点の状態から目的物性値まで逹することができる。
【0060】
図3は、本発明の一実施形態による人工知能制御モデル部100の再学習構成図である。
【0061】
本発明の一実施形態によると、前記人工知能制御モデル部100は、人工知能モデルを再学習させるためにデータ分析部140およびデータ再学習部150をさらに含むことができる。
【0062】
一例によると、データ導出部130は、入力部200から提供された反応器の投入条件に基づいて、反応器の予測運転条件および反応器による生成物の予測物性値を導き出すことができる。導き出された反応器の予測運転条件および生成物の予測物性値は、データ導出部130または別のデータ提供部を介してデータ分析部140に提供されることができる。
【0063】
一例によると、データ分析部140は、データ格納部110またはデータ補正部120から提供された反応器の実際の運転条件および生成物の実際の物性値(1)と、データ導出部130で導き出される反応器の予測運転条件および生成物の予測物性値(2)とを比較する。比較された結果は、データ分析部140または別のデータ提供部を介してデータ再学習部150に提供されることができる。
【0064】
前記反応器の実際の運転条件および生成物の実際の物性値(1)は、データ格納部110またはデータ補正部120から提供されることができ、データ補正部120から提供される場合には、データ格納部110に格納された反応器のプロセスデータの外れ値を除去して設けられた反応器の実際の運転条件および生成物の実際の物性値とすることができる。
【0065】
一例によると、データ再学習部150は、データ分析部140から提供された比較結果が下記条件(1)または条件(2)を満たす場合、データ導出部130を再学習させることができる。
【0066】
(1)前記反応器の実際の運転条件と前記反応器任意運転条件との誤差率が許容値を超える場合
(2)前記生成物の実際の物性値と前記反応器による生成物の任意物性値との誤差率が許容値を超える場合
【0067】
ここで、誤差率の許容値は、プロセスの種類、反応物の種類、制御器の種類などを考慮して、外部ユーザ(管理者など)によって予め設定されることができる。誤差率の許容値は、例えば、30%以下、または20%以下、または15%以下、または10%以下、または5%以下とすることができる。
【0068】
本発明によると、上述の再学習過程により、人工知能制御モデル部100の正確度をさらに高めることができる。結果、人工知能制御モデル部100から導き出される反応器の運転条件および反応器による生成物の物性値を満たすための最適の反応器の投入条件の信頼性は、より向上する。
【0069】
本発明の一実施形態によると、前記人工知能制御モデル部100は、線形回帰(linear regression)、ロジスティック回帰(logistic regression)、ディシジョンツリー(decision tree)、ランダムフォレスト(random forest)、サポートベクターマシン(support vector machine)、勾配ブースティング(gradient boosting)、畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network)、回帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network)、長・短期記憶(long-short term memory)、注意機構(attention model)、トランスフォーマー(transformer)、敵対的生成ネットワーク(generative adversarial network)、強化型機械学習(reinforcement learning)のうち一つ以上の方式またはこれらの組み合わせ(ensemble)により学習されることができる。
【0070】
入力部200は、反応器の投入条件、反応器の運転条件および生成物の物性値を含むプロセス運転条件と、反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値を含むデータを得て、人工知能制御モデル部100に提供することができる。一例によると、前記データは、上述の内容をはじめ、制御対象である反応器のすべてのプロセスデータを含むことができる。一例によると、前記データは、工場の反応器からリアルタイムで収集されることができる。一例によると、入力部200で得られる反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値は、外部ユーザ(管理者など)から予め設定されることができる。
【0071】
出力部300は、前記人工知能制御モデル部100から前記反応器の目的運転条件および反応器による生成物の目的物性値を満たすための最適の反応器の投入条件の提供を受け、前記最適の反応器の投入条件で、反応器の投入を制御することができる。
【0072】
本発明の一実施形態によると、上述の人工知能に基づくプロセス制御システムを含む反応器を提供することができる。
【0073】
反応器は、例えば、管型反応器、塔型反応器、撹拌槽型反応器、流動層型反応器、ループ型反応器のうちの一つとすることができる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、前記反応器は、複数個で構成され、互いに同一または相違しており、それぞれ独立して、管型反応器、塔型反応器、撹拌槽型反応器、流動層型反応器、ループ型反応器のうちの一つとすることができる。反応器が複数個で構成される場合、これらの間の連結方式は、特に制限されない。例えば、並列に連結されることができるが、これに限定されない。
【0075】
本発明の一実施形態によると、本発明は、人工知能モデルを用いて、反応器の目的運転条件と、反応器による生成物の目的物性値を達成するための最適の反応器の投入条件を容易に導き出すことができる。
【0076】
本発明の一実施形態によると、前記最適の反応器の投入条件で反応器の投入を制御することができ、生成物の生産に要する単価、時間などを低減することができる。
【0077】
本発明の一実施形態によると、人工知能モデルを用いてプロセスを制御することにより、外部ユーザ(管理者など)の介入を最小化することができ、試行錯誤を低減することができ、信頼性の高い反応器生成物を得ることができる。
【0078】
本発明の人工知能に基づくプロセス制御システムは、各種の石油化学プロセス、精油プロセス、ケミカルプロセスなどに適用されることができ、詳細には、ポリマープロセス、より詳細には、炭素数C2~C12個を有するオレフィンモノマーを使用するポーリオレフィンプロセス、さらに詳細には、溶液重合方式を使用する(solution process)ポリエチレンプロセスに適用されることができ、産業上の利用可能性がある。
【0079】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明しているが、本発明は、これに限定されず、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、以下に記載する請求の範囲の概念と範囲から逸脱しない範囲内で、様々な変更および変形が可能であることを理解することができる。
【国際調査報告】