(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】免疫細胞培養物を産生するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20250107BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20250107BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250107BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250107BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20250107BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20250107BHJP
【FI】
C12N5/078
C12N1/00 A
A61K35/17
A61P35/00
C12N5/10
C12N5/0735
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522079
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022081271
(87)【国際公開番号】W WO2023114693
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512190365
【氏名又は名称】ロンザ ウォーカーズヴィル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ラマスワミ, センディル
(72)【発明者】
【氏名】ガトラ, ヒマバンス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA30
4B065BC50
4B065BD09
4B065BD15
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA20
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、完全閉鎖系を利用して免疫細胞培養物を産生する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全閉鎖系において免疫細胞培養物を産生する方法であって、
a)免疫細胞を得ることと、
b)前記免疫細胞を、免疫細胞完全培地を含む撹拌タンクバイオリアクタに導入することと、
c)前記撹拌タンクバイオリアクタにおいて、前記免疫細胞を活性化試薬で活性化して、活性化された免疫細胞を産生することと、
d)前記撹拌タンクバイオリアクタにおいて、前記活性化された免疫細胞を増殖させて、増殖した免疫細胞培養物を産生することと、
e)前記バイオリアクタに接続された交互接線流濾過(ATF)を介して、定義された量の新鮮な培地を使用済み培地と交換することと、
f)前記撹拌タンクバイオリアクタにおいて、前記(d)の増殖した免疫細胞培養物を枯渇させて、枯渇した免疫細胞培養物を産生することと、
g)前記完全閉鎖系において、前記(f)の枯渇した免疫細胞培養物を採取して、採取された免疫細胞培養物を産生することと、
h)前記完全閉鎖系において、前記(g)の採取された免疫細胞培養物を濃縮することと、を含み、
前記方法が、前記免疫細胞培養物の1%未満の損失をもたらす、方法。
【請求項2】
前記免疫細胞完全培地が、緩衝剤、アミノ酸、微量元素、ビタミン、無機塩、グルコース、及び血清を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記撹拌タンクバイオリアクタが、約1L~約2000Lの体積容量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫細胞が、a)において前記免疫細胞を得る直前に末梢血単核細胞(PBMC)の集団から単離されるか、又はPBMCの集団から単離され、長期間保管され、次いで、a)において前記免疫細胞を得る前に解凍される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫細胞が、多能性幹細胞の集団に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多能性幹細胞の集団が、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚幹細胞(ESC)、又はそれらの組み合わせの集団である、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫細胞を単離することが、a)前記PBMCを、抗体複合体及び磁性粒子を含む溶液で洗浄して、前記PBMC及び単離されたT細胞を含む溶液を生成することと、b)前記単離されたT細胞を前記溶液から磁石で分離することと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
0.25×10
6T細胞/mL~2×10
6T細胞/mLが、前記バイオリアクタに導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、約10×10
6細胞/mL~約90×10
6細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、少なくとも約1億個の生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記活性化試薬が、可溶性抗体複合体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫細胞を活性化することが、前記培地を前記活性化試薬とともに約72時間の期間、37℃で撹拌することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫細胞培養物が、0.15~0.5回転/分(RPM)の先端速度で撹拌される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記培地が、前記活性化期間中、約pH5.0~約pH7.5のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記増殖させることが、
i)(c)における活性化期間の後で、新鮮な培地を前記バイオリアクタに添加することと、
ii)前記免疫細胞培養物の温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、及び光学密度センサのうちの1つ以上を監視することと、
iii)前記監視に基づいて、前記免疫細胞培養物の温度、pHレベル、グルコースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、及び光学密度のうちの1つ以上を調整することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記増殖させることが、iv)増殖する前記免疫細胞培養物を試料採取することと、v)増殖するT細胞培養物の細胞成長及び増殖倍率を決定することと、vi)前記細胞成長及び増殖倍率に基づいて、定義された量の新鮮な培地を使用済み培地と交換することと、を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記新鮮な培地が、前記増殖する免疫細胞培養物の生存細胞密度が1.5×10
6細胞/mLよりも大きい場合に、1容器体積/日(VVD)の速度で使用済み培地と交換される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記枯渇させることが、
i)d)における前記増殖後に、表面活性化された磁気ビーズを前記免疫細胞培養物に添加することと、
ii)前記増殖した免疫細胞培養物及びビーズを約30分間撹拌することと、
iii)磁石を用いて、前記増殖した免疫細胞培養物から標的細胞の集団を単離することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ビーズが、1:1のビーズ対細胞の比で前記バイオリアクタに添加される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記採取することが、i)前記免疫細胞培養物を、前記撹拌感謝バイオリアクタから、前記撹拌タンクバイオリアクタに接続された滅菌容器にポンプ輸送することと、ii)前記免疫細胞培養物を、前記ATFから、前記ATFの採取ラインに接続された前記滅菌容器中にポンプ輸送することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記撹拌タンクバイオリアクタと前記ATFとの間の前記接続が閉鎖されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記撹拌タンクバイオリアクタから前記滅菌容器への前記細胞培養物の前記ポンプ輸送が、前記免疫細胞培養物が、前記撹拌タンクバイオリアクタにおいて連続的に撹拌されながら、実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記採取することが、約14日の全細胞培養の後に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記濃縮することが、前記採取された細胞培養物の遠心分離、沈殿後の上清除去、濾過、音響細胞処理、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記採取された細胞培養物が、約250G~3,000Gで約60分間、遠心分離される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記採取された細胞培養物の遠心分離が、約20mL/分~約30mL/分の流速で所望の細胞のバイオマスを含む流動床を生成する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記流動床が、採取及び/又は保管のために、滅菌及び密閉された容器中にポンプ輸送される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記音響細胞処理が、前記採取された細胞培養物を、120ワット及び約50mL/分~約80mL/分の流速で音響流動床を通して循環させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記撹拌タンクバイオリアクタにおける前記免疫細胞の前記活性化及び前記増殖が、5つ超のサイトカインを産生し、かつ75%超の中央記憶T細胞、10%未満のエフェクター記憶T細胞、及び10%超のナイーブ/幹記憶T細胞を有するT細胞培養物をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
濃縮されたT細胞が、凍結保存される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法によって産生されたT細胞の集団。
【請求項32】
請求項1に記載の方法によって産生されたT細胞を含む、T細胞ベースの療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、完全閉鎖系において免疫細胞培養物を産生するための方法を提供する。特に、本開示は、免疫細胞培養物の上流の産生及び下流の処理のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫細胞療法は、遺伝子操作された免疫細胞を使用して、がん細胞を効率的に標的化し、破壊する疾患治療のクラスである。例えば、養子細胞療法は、がん細胞上のある特定のタンパク質に結合するように設計されたキメラ抗原受容体を発現するCAR T細胞を使用する。がんの治療におけるCAR T細胞の使用は、顕著な腫瘍特異性及び堅牢な抗腫瘍免疫応答を示し、完全な応答をもたらした。現在までに、FDAは、以下の4つの自家CAR T細胞療法製品を承認している:急性リンパ芽球性白血病のためのチサゲンレクルユーセル(Novartis、2017)、大細胞型B細胞リンパ腫のためのアキシカブタゲンシロルユーセル(Gilead、2017)、2020年にマントル細胞リンパ腫及び2021年に再発性又は難治性B細胞前駆体急性リンパ芽球性白血病(ALL)のためのブレクスカブタジェンアウトルーセル(Gilead)、並びに再発性又は難治性大細胞型B細胞リンパ腫のためのリソカブタゲンマラルユーセル(Bristol Myers Squibb、2021)(Young,C.M.,C.Quinn,and M.R.Trusheim,Durable cell and gene therapy potential patient and financial impact:US projections of product approvals,patients treated,and product revenues.Drug Discov Today,2021)。
【0003】
自家CAR T細胞療法は、顕著な有効性を示すが、いくつかの制限を受ける。自家CAR T細胞療法は、患者からのT細胞採取、続いて、CARを発現するように遺伝子改変及び増殖が必要であり、少なくとも2週間かかる可能性がある。このプロセス中、T細胞の増殖は、インプットの品質特性に依存し、患者のT細胞の品質を最適化することができないことが収率の低下につながる可能性があるため、侵襲性腫瘍の進行が、致命的となる可能性がある。腫瘍浸潤白血球の増殖は、リンパ球が複数の腫瘍関連抗原に対してプライミングされるため、魅力的な戦略を提供する。しかしながら、それらは表現型が枯渇し及び複製能力が限定されるために、それらのエクスビボでの増殖は、効果的ではない。上記に加えて、手術の法外なコストが、自家細胞療法にとって重大な課題となる。
【0004】
対照的に、同種異系細胞療法は、自家細胞療法の課題に対処する「既製の」製品として利用可能であり得る。HLA-A、-B、及び-DRの一致により、移植片対宿主疾患(GVHD)が潜在的に無効になる可能性があるため、選択された個体から生成された細胞療法産物は、より広範な集団に適用可能である可能性がある。したがって、細胞バンクは、健康な個体の最適なT細胞亜集団から生成されることができ、適用性及び有効性を増加させながら製造コストを減少させる。したがって、同種異系細胞療法は、自家細胞療法の制限を打破する可能性を有する。同種異系細胞療法の有望性により、様々な腫瘍関連抗原を標的とする、同種異系の「既製の」、CAR T細胞の有効性を評価する臨床試験が進行中である。細胞療法、特に同種異系の前線の進歩を考慮すると、T細胞産物の工業スケールの産生の必要性は避けられない。
【0005】
用量当たりのCAR T細胞の数は異なるが、推定は、血液悪性腫瘍を治療するために年当たり3兆個のCAR T細胞、及び固形腫瘍悪性腫瘍のための150兆個のCAR T細胞の必要性を示唆する。必要なバッチサイズを満たすために、静置の2Dフラスコベースの培養をスケールアップすると、追加の労働、実験室の設置面積、変動性、汚染のリスク、及び不十分なプロセス制御がもたらされるであろう。スケールアップ移行動力学は、撹拌タンクバイオリアクタ(STR)についてよく特徴付けられているため、需要を満たす優れたオプションを提供する。更に、STRは、プロセス内制御を有する、閉鎖され、自動化されたGMP互換性のある系であるため、STRにおけるT細胞製造は、労働、バッチ間の変動、及び汚染リスクを顕著に減少させる。T細胞は、非接着性であり、本質的に、単一細胞として懸濁液中で培養される。これにより、懸濁液ベースのバイオリアクタは、人工的にそれらを懸濁液培養条件に適合させ、凝集体で、又は担体に付着させて培養する必要なく、それらの増殖に適している。他の細胞型と同様に、T細胞の増殖は、培養培地中でのアンモニア及び乳酸塩などの細胞代謝産物の蓄積に感受性であり、したがって、培地の補充を必要とする。流加培養を使用して、新鮮な栄養素が供給され、代謝産物が除去されるにもかかわらず、阻害剤が、流加培地交換の間の間隔で蓄積し、成長を阻害する可能性があり、灌流を介して連続的な培地交換を保証している。T細胞を3Dベースの懸濁培養での増殖に好適にする特性もまた、自動化された連続的な培地交換の課題を提示している。T細胞の直径は、5~10mmの範囲であるため、T細胞培養の灌流は困難であり、主な要因は頻繁なフィルタの汚れ及び細胞の漏出である。したがって、T細胞増殖を可能にする連続的な培地灌流を備えたスケールアップ技術が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態では、完全閉鎖系において免疫細胞培養物を産生する方法であって、免疫細胞を得ることと、免疫細胞を、免疫細胞完全培地を含む撹拌タンクバイオリアクタに導入することと、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、免疫細胞を活性化試薬で活性化して、活性化された免疫細胞を産生することと、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、活性化された免疫細胞を増殖させて、増殖した免疫細胞培養物を産生することと、バイオリアクタに接続された交互接線流濾過(ATF)を介して、定義された量の新鮮な培地を使用済み培地と交換することと、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、増殖した免疫細胞培養物を枯渇させて、枯渇した免疫細胞培養物を産生することと、完全閉鎖系において、枯渇した免疫細胞培養物を採取して、採取された免疫細胞培養物を産生することと、完全閉鎖系において、採取された免疫細胞培養物を濃縮することと、を含み、方法が、免疫細胞培養物の1%未満の損失をもたらす、方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本明細書の実施形態による免疫細胞培養物の産生のためのフロー図を示す。
【
図2A】本明細書において実施形態に記載の2D静置培養と比較した、撹拌におけるT細胞の増殖を示す。
【
図2B】本明細書において実施形態に記載の2D静置培養と比較した、撹拌におけるT細胞の増殖を示す。
【
図2C】本明細書において実施形態に記載の2D静置培養と比較した、撹拌におけるT細胞の増殖を示す。
【
図3A】本明細書の実施形態に記載の撹拌タンクバイオリアクタ及び連続的な細胞培養培地灌流における活性化されたT細胞の増殖を示す。
【
図3B】本明細書の実施形態に記載の撹拌タンクバイオリアクタ及び連続的な細胞培養培地灌流における活性化されたT細胞の増殖を示す。
【
図3C】本明細書の実施形態に記載の撹拌タンクバイオリアクタ及び連続的な細胞培養培地灌流における活性化されたT細胞の増殖を示す。
【
図3D】本明細書の実施形態に記載の撹拌タンクバイオリアクタ及び連続的な細胞培養培地灌流における活性化されたT細胞の増殖を示す。
【
図3E】本明細書の実施形態に記載の撹拌タンクバイオリアクタ及び連続的な細胞培養培地灌流における活性化されたT細胞の増殖を示す。
【
図4A】本明細書の実施形態に記載のATF媒介連続灌流を有する撹拌タンクバイオリアクタにおいて活性化されたT細胞の表現型特性を示す。
【
図4B】本明細書の実施形態に記載のATF媒介連続灌流を有する撹拌タンクバイオリアクタにおいて活性化されたT細胞の表現型特性を示す。
【
図4C】本明細書の実施形態に記載のATF媒介連続灌流を有する撹拌タンクバイオリアクタにおいて活性化されたT細胞の表現型特性を示す。
【
図5A】本明細書に記載のATF媒介連続灌流を有する撹拌タンクバイオリアクタにおいて活性化されたT細胞の機能状態を示す。
【
図5B】本明細書に記載のATF媒介連続灌流を有する撹拌タンクバイオリアクタにおいて活性化されたT細胞の機能状態を示す。
【
図5C】本明細書に記載のATF媒介連続灌流を有する撹拌タンクバイオリアクタにおいて活性化されたT細胞の機能状態を示す。
【
図5D】本明細書に記載のATF媒介連続灌流を有する撹拌タンクバイオリアクタにおいて活性化されたT細胞の機能状態を示す。
【
図6A】本明細書の実施形態による閉鎖系におけるT細胞の枯渇の効率を示す。
【
図6B】本明細書の実施形態による閉鎖系におけるT細胞の枯渇の効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
同種異系T細胞は、がん及び他の臨床的適応症と戦うための重要な免疫治療細胞である。患者当たりの高いT細胞用量及び患者数の増加は、多数の同種異系T細胞の臨床的需要をもたらす。これには、細胞の品質を保持しながら、スケールアップされ得る製造プラットフォームが必要である。同種異系CAR T細胞は、「既製」の細胞療法として使用され得、細胞療法産物の集団への適用性をより広範囲で増加させることが期待される。現在の推定は、血液学的及び固形腫瘍悪性腫瘍に使用されるCAR T細胞の需要を満たすために、2000Lのバッチサイズの必要性を示唆している。静置2D培養における大きな設置面積、汚染のリスク、変動性、及び不十分なプロセス制御を考慮すると、撹拌タンクバイオリアクタは、T細胞の細胞増殖のための優れたプラットフォームを提供し、十分に特徴付けられたスケールアップ動力学、プロセス中の制御、及び低い汚染のリスクを提供する。撹拌タンクバイオリアクタにおける2D増殖プロセスを3D増殖に変換することは、接着細胞の場合に成功裏に示された。しかしながら、STRの固有の灌流能力の不在、及びT細胞の小さいサイズ(直径5~10mM)は、STRにおけるT細胞の高収率を達成するための厄介な障害であることが判明した。
【0009】
本開示において提示されるのは、臨床的需要を満たすためのT細胞製造のための閉鎖されたスケーラブルなプラットフォームである。T細胞の活性化及び増殖の上流の製造ステップは、撹拌タンクバイオリアクタにおいて容器内で行われる。CAR-Tベースの療法に必要であるT細胞の選択は、バイオリアクタ自体において行われ、したがって、選択ステップを介して最適な培養条件を維持する。プラットフォームの自動化の特性、並びに容器内でのT細胞の活性化、増殖、及び選択のステップを実行することは、プロセス制御の向上、細胞品質、並びに手作業及び汚染リスクの低減に大きく貢献する。加えて、閉鎖され、自動化された、細胞濃縮の下流プロセスを統合する実行可能性が実証される。提示されたT細胞製造プラットフォームは、細胞品質及びプロセス制御の重要な要因を保持しながら、スケールアップ能力を有する。本開示は、灌流可能なSTRにおけるT細胞増殖のためのGMP互換性で、閉鎖された、スケーラブルなプラットフォームを提供する。加えて、本開示は、ユニット内及び潜在的にスケーラブルな細胞枯渇磁気技術を提供し、ユニット操作を回避し、汚染及び労働のリスクを低下させる。
【0010】
本明細書で言及される公開特許、特許出願、ウェブサイト、会社名、及び科学文献は、各々が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される任意の参照と本明細書の特定の教示との間に任意の矛盾がある場合、後者のために解決されるものとする。同様に、本明細書で具体的に教示されている単語又は語句の技術分野の定義と単語又は語句の定義との間に任意の矛盾がある場合、後者のために解決されるものとする。
【0011】
「a」又は「an」という単語の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む」という用語とともに使用される場合、「1つ」を意味してもよいが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つ超」の意味とも一致してもよい。
【0012】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、その値を決定するために用いられる方法/デバイスについての誤差の固有の変動を含むことを示すために使用される。典型的には、この用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、若しくは20%、又は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、若しくは20%未満の変動を含むことを意味する。
【0013】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されるか又はその代替物が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲(複数可)で使用される場合、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの任意の形態の含む)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの任意の形態の有する)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの任意の形態の含む)又は「含有する(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの任意の形態の含有する)という単語は、包括的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法、デバイス、系、及び/又は組成物に関して実装され得ることが企図される。
【0015】
本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、別段定義されない限り、本出願に関連する当業者によって一般的に理解されている意味を有する。本明細書では、当業者に既知の種々の方法論及び材料が参照される。
【0016】
実施形態では、完全閉鎖系において免疫細胞培養物を産生するための方法が本明細書で提供される。好適には、方法は、免疫細胞培養物の自動化された上流の産生及び下流の処理のためのものである。
【0017】
実施形態では、本明細書には、免疫細胞を、免疫細胞完全培地を含む撹拌タンクバイオリアクタに導入するための方法が本明細書で提供される。
【0018】
本明細書で言及される場合、「導入すること」という単語は、撹拌タンクバイオリアクタに免疫細胞を添加することを意味し得るか、又は方法を開始する前に、撹拌タンクバイオリアクタ内に免疫細胞が存在することを示し得る。
【0019】
方法の上流の産生及び下流の処理によって産生及び処理される「免疫細胞」は、それぞれ、(例えば、抗原提示細胞との共培養を介して)改変又はプライミングされ、ヒトを含む動物における1つ以上の疾患の治療、予防、又は改善に有用な所望の表現型を有する細胞をもたらす免疫系の細胞を指す。本明細書で使用される場合、「免疫細胞培養物」は、本明細書に記載の方法によって調製された細胞の収集物を指し、研究又は臨床試験における使用のため、及び医学療法のためにヒト患者を含む哺乳動物に投与するための細胞集団を含み得る。本明細書に記載の方法を使用して産生され得る遺伝子改変された免疫細胞培養物は、肥満細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、B細胞、T細胞などを含み得る。
【0020】
例示的な実施形態では、方法は、免疫細胞を活性化試薬で活性化して、活性化された免疫細胞を産生することと、免疫細胞を増殖させることと、バイオリアクタに接続された交互接線流濾過(ATF)を介して、定義された量の新鮮な培地を使用済み培地と交換することと、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、増殖した免疫細胞培養物を枯渇させて、枯渇した免疫細胞培養物を産生することと、完全閉鎖系において、枯渇した免疫細胞培養物を採取して、採取された免疫細胞培養物を産生することと、完全閉鎖系において、採取された免疫細胞培養物を濃縮することと、を含み、方法が、免疫細胞培養物の1%未満の損失をもたらす。
【0021】
実施形態では、得られる免疫細胞培養物の損失は、0.99%未満、0.95%未満、0.9%、0.85%未満、0.80%未満、0.75%未満、0.70%未満、0.65%未満、0.60%未満、0.55%未満、0.50%未満、0.45%未満、0.40%未満、0.35%未満、0.30%未満、0.25%未満、0.20%未満、0.15%未満、及び0.10%未満である。
【0022】
実施形態では、免疫細胞は、免疫細胞を得る直前に末梢血単核細胞(PBMC)の集団から単離されるか、又はPBMCの集団から単離され、長期間保管され、次いで、免疫細胞を得る前に解凍される。
【0023】
本明細書で言及される場合、免疫細胞を「単離する」ことは、産物が産生されるマトリックス(細胞、組織、流体など)から免疫細胞を分離することを意味する。好適には、免疫細胞の単離は、免疫細胞を、洗浄、磁気適用、カラム、濾過、膜、遠心分離機、及び当該技術分野で既知の他の単離プロセスを含むがこれらに限定されない一連のメカニズムに供することを含み得る。「単離する」という単語は、本出願において、「精製する」という単語と同義である。
【0024】
実施形態では、免疫細胞は、多能性幹細胞の集団に由来する。更なる実施形態では、多能性幹細胞の集団は、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚幹細胞(ESC)、又はそれらの組み合わせの集団である。
【0025】
本明細書で言及される場合、多能性幹細胞の集団から免疫細胞を「誘導する」ことは、骨髄内の造血帯に存在する造血前駆細胞からインビトロから免疫細胞を生成することを意味する。
【0026】
実施形態では、0.25×106T細胞/mL~2×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、0.1×106T細胞/mL~0.5×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、0.2×106T細胞/mL~0.5×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、0.3×106T細胞/mL~0.6×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、0.4×106T細胞/mL~0.7×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、0.5×106T細胞/mL~0.8×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、0.6×106T細胞/mL~0.9×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、0.7×106T細胞/mL~1.0×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、1.0×106T細胞/mL~1.5×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、1.5×106T細胞/mL~1.7×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。他の実施形態では、1.7×106T細胞/mL~2.0×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される。
【0027】
実施形態では、方法は、約10×106細胞/mL~約90×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。実施形態では、方法は、約90×106細胞/mL~約100×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。実施形態では、方法は、約100×106細胞/mL~約200×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。実施形態では、方法は、約200×106細胞/mL~約300×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。実施形態では、方法は、約300×106細胞/mL~約400×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。実施形態では、方法は、約500×106細胞/mL~約600×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。実施形態では、方法は、約600×106細胞/mL~約700×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。実施形態では、方法は、約800×106細胞/mL~約900×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。実施形態では、方法は、約1.0×107細胞/mL~約2.0×107細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する。
【0028】
実施形態では、免疫細胞は、撹拌タンクバイオリアクタにおいて活性化試薬で活性化され、活性化された免疫細胞を産生する。更なる実施形態では、免疫細胞を活性化することは、37℃で約72時間の期間、活性化試薬とともに培地を撹拌することを含む。実施形態では、免疫細胞培養物は、0.15~0.5回転/分(RPM)の先端速度で撹拌される。実施形態では、免疫細胞培養物は、0.6~0.8回転/分(RPM)の先端速度で撹拌される。実施形態では、免疫細胞培養物は、0.8~1.0回転/分(RPM)の先端速度で撹拌される。
【0029】
実施形態では、免疫細胞培養培地は、活性化期間中、約pH5.0~約pH7.5のpHを有する。実施形態では、免疫細胞培養培地は、活性化期間中、約pH5.0~約pH5.5のpHを有する。実施形態では、免疫細胞培養培地は、活性化期間中、約pH5.5~約pH6.0のpHを有する。実施形態では、免疫細胞培養培地は、活性化期間中、約pH6.0~約pH6.5のpHを有する。実施形態では、免疫細胞培養培地は、活性化期間中、約pH6.5~約pH7.0のpHを有する。実施形態では、免疫細胞培養培地は、活性化期間中、約pH7.0~約pH7.5のpHを有する。
【0030】
好適には、活性化試薬は、可溶性抗体複合体を含む。実施形態では、活性化試薬は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体のうちの少なくとも1つを含む、可溶性抗体である抗体を含む。例示的な抗体には、OKT3が挙げられる。
【0031】
他の実施形態では、活性化試薬は、抗体又は樹状細胞を含む。実施形態では、抗体は、ポリスチレンプラスチック、シリコーン、又は例えば、ビーズの表面を含む他の表面を含み得る表面上に固定化される。
【0032】
実施形態では、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、活性化された免疫細胞を増殖して、増殖した免疫細胞培養物を産生する。本明細書に記載のように、細胞を増殖する方法は、好適には、バイオリアクタに新鮮な培地を添加すること、供給すること、洗浄すること、監視すること、及び免疫細胞培養物の条件を調整することのうちの少なくとも1つ以上を含む。更なる実施形態では、増殖させることは、増殖する免疫細胞培養物を試料採取することと、増殖するT細胞培養物の細胞成長及び増殖倍率を決定することと、細胞成長及び増殖倍率に基づいて、定義された量の新鮮な培地を使用済み培地と交換することと、を更に含む。例示的な条件としては、温度、pHレベル、グルコースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、及び光学密度が挙げられる。
【0033】
本明細書に記載の様々な方法は、増殖免疫細胞培養物の酸素レベルが免疫細胞培養物に対して最適化されるような方法で実施される。この最適化は、本明細書に記載のように、所望の細胞表現型の促進を含む、所望の表現型特性を有する多数の生存細胞の産生を可能にする。実施形態では、酸素レベル又は濃度は、ステップ(d)~(f)のうちの1つ以上の間に、酸素化構成要素を介してT細胞完全培地を再循環させる交互接線流濾過系によって最適化される。
【0034】
更なる実施形態では、交互接線流濾過系は、様々な方法プロセス中に、栄養素、老廃物、放出サイトカイン、及び/又は溶解ガスを再循環させる。この再循環は、所望の表現型(複数可)を有する多数の生存細胞の産生を補助する。
【0035】
細胞の増殖条件を最適化するための他のメカニズムとして、細胞に提供される培地の流量を改変及び制御することが含まれる。細胞が成長し始めるにつれて、提供される培地の循環速度が増加し、ガス交換が改善され、条件に応じて酸素及び二酸化炭素が細胞培養物に出入りできるようになる。
【0036】
実施形態では、系は、供給、洗浄、及び監視、並びに実施形態では、増殖した免疫細胞培養物の選択のうちの1つ以上の数回のラウンドを実施するように構成される。これらの様々な作業は、任意の順序で実施され得、単独で実施され得るか、又は別の行動と組み合わせて実施され得る。実施形態では、細胞の濃縮には、遠心分離、沈殿後の上清除去、又は濾過が含まれる。好適には、最適化プロセスは、自己調整プロセスにおいて好適に遠心分離又は濾過のパラメータを調整することを更に含む。増殖した細胞培養物の枯渇は、例えば、磁気分離、濾過、ビーズ、プラスチック、又は他の基質への接着などによって行われ得る。
【0037】
実施形態では、新鮮な培地は、増殖する免疫細胞培養物の生存細胞密度が1.5×106細胞/mLよりも大きい場合に、1容器体積/日(VVD)の速度で使用済み培地と交換される。実施形態では、新鮮な培地は、増殖する免疫細胞培養物の生存細胞密度が1.4×106細胞/mLよりも大きい場合に、1容器体積/日(VVD)の速度で使用済み培地と交換される。実施形態では、新鮮な培地は、増殖する免疫細胞培養物の生存細胞密度が1.3×106細胞/mLよりも大きい場合に、1容器体積/日(VVD)の速度で使用済み培地と交換される。実施形態では、新鮮な培地は、増殖する免疫細胞培養物の生存細胞密度が1.2×106細胞/mLよりも大きい場合に、1容器体積/日(VVD)の速度で使用済み培地と交換される。実施形態では、新鮮な培地は、増殖する免疫細胞培養物の生存細胞密度が1.0×106細胞/mLよりも大きい場合に、1容器体積/日(VVD)の速度で使用済み培地と交換される。
【0038】
実施形態では、免疫細胞培養物を枯渇させることは、増殖後に表面活性化された磁気ビーズを免疫細胞培養物に添加すること、増殖した免疫細胞培養物及びビーズを約30分間撹拌すること、標的細胞の集団を増殖した免疫細胞培養物から磁石で単離することを含む。他の実施形態では、免疫細胞培養物を枯渇させることは、対向流遠心溶出、密度勾配での分画、又はレクチンによる分別凝集、続く羊の赤血球でのリセットを使用すること含む、当該技術分野で既知の物理的分離方法を含む。他の実施形態では、免疫細胞培養物を枯渇させることは、単独で、T細胞に対して指向される相同、異種、又はウサギ補体因子と併せのいずれかで、抗体を利用する当該技術分野で既知の免疫学的方法を含む。他の実施形態では、免疫細胞培養物を枯渇させることは、本明細書に記載の物理的分離方法及び免疫学的方法の組み合わせを使用することを含む。
【0039】
例示的な実施形態では、撹拌タンクバイオリアクタは、方法を開始する前に免疫細胞培養培地を含有する。他の実施形態では、新鮮な免疫細胞培養培地は、産生方法の開始後、又はプロセス中の任意の好適な時間に、別々に添加され得る。
【0040】
他の実施形態では、免疫細胞培養物の好ましい表現型を促進するための方法であって、方法は、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、免疫細胞培養物を活性化して、活性化された免疫細胞培養物を産生することと、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、活性化された免疫細胞を増殖させて、増殖した免疫細胞培養物を産生することと、を含み、活性化及び増殖条件は、免疫細胞培養物の表現型及び機能状態を促進する、方法が本明細書で提供される。例示的な表現型としては、幹性、サイトカインを産生する能力、中央記憶、エフェクター記憶、及びナイーブ/幹記憶が挙げられる。例示的な機能状態としては、サイトカイン産生が挙げられる。本明細書に記載のように、方法は、完全閉鎖自動化細胞工学系によって好適に実施される。
【0041】
実施形態では、活性化条件は、活性化試薬と免疫細胞培養物との間の安定した接触を可能にする実質的にかき乱されない免疫細胞培養物を提供する。本明細書に記載のように、撹拌タンクバイオリアクタの使用を介して、細胞を実質的にかき乱されない条件下で活性化することを可能にすることは、細胞が活性化試薬と均質に接触されることができ、及び所望の促進された表現型を達成するために、必要な栄養素、溶解ガスなどと相互作用することができる環境を提供することが見出されている。
【0042】
本明細書に記載の方法は、好ましい表現型を提供するために適切な活性化方法を選択することによって、最終的な免疫細胞培養産物の特性に影響を与えることができる。例えば、本明細書に記載のビーズベースのプロセスを利用する活性化は、よりバランスのとれたCD4:CD8比を促進するが、可溶性抗CD3の使用は、CD4よりも高いCD8の集団を促進する。他のレベルのCD8及びCD4もまた、本明細書に記載の方法を使用して提供し得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載のように、方法を利用して、CAR T細胞を調製し得る。好適には、本方法を利用して、約0.5:1~約5:1、約0.8:~約3:1、又は約1:1、約2:1などのCD8+細胞対CD4+細胞の比率を含む、約0.1:1~約10:1のCD8+細胞対CD4+細胞の比を有するCAR T細胞の表現型を促進し得る。
【0043】
本明細書に記載のように、驚くべきことに、細胞が震盪されない(すなわち、細胞が互いの上を流れるように回転又は震盪されない)条件下で細胞を増殖させることを可能にすることで、方法が、高い生存細胞収率及び所望の表現型を含む最適な細胞特性を提供することが見出されている。大型の震盪しない細胞培養チャンバは、細胞の老廃物を除去しながら、所望の結果を達成するために細胞を震盪又はかき乱す必要なしに、必要な試薬、栄養素、ガス交換などへの細胞の均質なアクセスを提供することができることが確定されている。実際、本明細書に記載のように、遺伝子改変された免疫細胞の自動化産生のためのそのような方法は、例えば、Miltenyi et al.,“Sample Processing System and Methods,”米国特許第8,727,132号に記載のような、細胞震盪を利用する方法と比較して、より多くの生存細胞、より多くの数/比率の所望の細胞型、及びより堅牢な細胞特性を生成することが見出された。
【0044】
実施形態では、本方法の様々なステップは、完全閉鎖系によって実施され、免疫細胞培養物を産生するプロセスを介して最適化される。
【0045】
好適には、本明細書に記載の方法は、以下、免疫細胞培養物の温度、pHレベル、グルコースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、及び光学密度のうちの1つ以上を検出及び/又は調整するための1つ以上のセンサ及び/又はメカニズムを含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「バイオリアクタ」は、発酵器若しくは発酵ユニット、又は任意の他の反応容器を含み得る。例えば、いくつかの態様では、例示的なバイオリアクタユニットは、以下、栄養素及び/又は炭素源の供給、好適な気体(例えば、酸素)の注入、発酵又は細胞培養培地の流入及び流出、気相及び液相の分離、温度の維持、酸素及びCO2レベルの維持、pHレベルの維持、撹拌(agitation)(例えば、撹拌(stirring))、並びに/又は洗浄/滅菌のうちの1つ以上又は全てを実施し得る。本明細書に記載の方法は、撹拌タンク、気泡ポンプ、繊維、マイクロ繊維、中空繊維、セラミックマトリックス、流動床、固定床、及び/又は噴流床バイオリアクタを含むが、これらに限定されない、任意の好適なバイオリアクタと併せて利用され得る。任意の好適なリアクタ直径が使用され得る。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、その中での連続的で反復的な移動による液体培地の撹拌又は混合を可能にする。
【0047】
実施形態では、バイオリアクタは、約1L~約2000Lの体積容量を有し得る。非限定的な例としては、100mL、250mL、500mL、750mL、1リットル、2リットル、3リットル、4リットル、5リットル、6リットル、7リットル、8リットル、9リットル、10リットル、15リットル、20リットル、25リットル、30リットル、40リットル、50リットル、60リットル、70リットル、80リットル、90リットル、100リットル、150リットル、200リットル、250リットル、300リットル、350リットル、400リットル、450リットル、500リットル、550リットル、600リットル、650リットル、700リットル、750リットル、800リットル、850リットル、900リットル、950リットル、1000リットル、1500リットル、2000リットル、2500リットル、3000リットル、3500リットル、4000リットル、4500リットル、5000リットル、6000リットル、7000リットル、8000リットル、9000リットル、10,000リットル、15,000リットル、20,000リットル、及び/又は50,000リットルの体積容量が挙げられる。更に、好適なリアクタは、多回使用、単回試用、使い捨て、又は非使い捨てであり得、ステンレス鋼(例えば、316L又は任意の他の好適なステンレス鋼)及びインコネルなどの金属合金、プラスチック、並びに/又はガラスを含む任意の好適な材料で形成され得る。
【0048】
撹拌タンクバイオリアクタは、ガス及び栄養素の均一な分布を確保するメカニズムとして撹拌を利用する。T細胞が撹拌で増殖し得るかどうかを決定するために、スピナーフラスコにおいて異なる撹拌速度で活性化及び培養されたT細胞を、2D静置フラスコにおいて増殖した細胞と比較した。実行全体を通して様々な時点で実施された細胞計数は、2D静置培養物中の生存細胞密度(VCD)及びT細胞の総数が撹拌条件よりも一貫して低いことを示した(
図2A及び2B)。一定の75RPMでの撹拌は、撹拌が50RPMで開始され、5日目に100RPMに増加した場合のVCDと比較して、T細胞のより高いVCDをもたらした(
図2A)。更に、75RPMでの撹拌は、撹拌が50RPMで開始され、100RPMに増加した場合に観察された10倍の細胞増殖と比較して、15倍のT細胞増殖をもたらした(
図2B)。流加培地交換レジーム及びスピナーフラスコにおいて試験された先端速度の範囲を維持して、1L撹拌タンクバイオリアクタ(STR)におけるT細胞の増殖を2つの異なる撹拌速度で評価した。
図2Cに示されるように、88RPMでの撹拌は、65RPMでの撹拌と比較して、T細胞のより高い生存細胞密度をもたらした。
【0049】
細胞密度の増加は、栄養素の枯渇及び阻害代謝産物の蓄積を伴う。連続的な培地灌流は、最適な培養条件を提供し、細胞の増殖を可能にする。細胞損失なしに交互接線流(ATF)を使用して連続培地灌流が実施され得るかどうかを評価するために、3LのSTRにおける2Lの培養培地中に3.0×10
6細胞/mLで接種されたT細胞に対するATFによる24時間培地灌流の効果を試験した。表1に示されるように、T細胞のVCDの顕著な減少は、灌流の24時間後には観察されなかった。これは、廃棄物バッグ中のT細胞の非存在を伴い、ATF媒介性培地交換が細胞損失をもたらさなかったことを示した。更に、灌流の24時間後の廃棄物バッグの重量の評価は、フィルタの汚れなく、1容器体積/日(1VVD)の連続的な培地灌流が達成されたことを示した。連続的な培地灌流でSTRにおいてT細胞の増殖が達成され得るかどうかを評価するために、CD3+T細胞を末梢血単核細胞(PBMNC)から単離し、撹拌タンクバイオリアクタに接種し、材料及び方法に記載のとおりに活性化した。単離後の細胞の表現型評価は、細胞の98%がCD3+であり(
図3A)、生存率が98%超である(データは示さず)ことを示した。STRにおける接種及び活性化後、14日間にわたるT細胞の増殖を監視し、8日目にT細胞VCDが2.0×10
6細胞/mLに達することを示した(
図3B)。細胞密度の増加とともに、乳酸塩レベルの同時増加が観察された(
図3C)。1VVDでのATFを使用した細胞保持及び培地交換は、乳酸塩蓄積を抑制し、生存細胞密度が14日目に33.5×10
6細胞/mLに達することを可能にした(
図3C)。比較すると、同じドナーから単離され、G-Rex(登録商標)において静置モードで培養されたT細胞は、14日目に3.4×10
6細胞/mLのVCDをもたらした(
図3B)。
図3Dの細胞増殖中の安定したグルコースレベルによって示されるように、乳酸塩蓄積を回避することに加えて、1VVDでのATF媒介灌流は、栄養補充を可能にした。更に、ATF媒介細胞移動と組み合わせた撹拌タンクバイオリアクタ内の撹拌は、細胞死をもたらさず、安定した96%超の細胞生存率を介して実証された(
図3E)。
【0050】
高い細胞増殖倍率を達成することは、プロセスのスケールアップの鍵である。しかし、この特性は、細胞の品質が最適でない場合にパフォーマンスを達成することを約束するものではない。撹拌タンクバイオリアクタにおいて増殖したT細胞のCD4:CD8T細胞比率の評価は、接種時のCD4:CD8T細胞比が、経時的にCD8+T細胞に向かって徐々にシフトしながら増殖中に維持されたことを示した(
図4A)。撹拌タンクバイオリアクタにおける増殖のT細胞の表現型に対する影響を決定するために、増殖中及び増殖後のT細胞表現型を、接種前のT細胞表現型と比較して評価した。
図4Bに示されるように、T細胞の増殖は、約80%の中央記憶T細胞、10%未満のエフェクター記憶サブセット、及び約15%のナイーブ/幹記憶サブセットをもたらした。更に、増殖は、末端分化T細胞(
図4B)、老化T細胞、又は消耗T細胞の蓄積をもたらさなかった(
図4C)。
【0051】
撹拌タンクバイオリアクタにおける増殖後のT細胞の機能状態を評価するために、刺激後にサイトカインを産生するT細胞の能力を評価した。0日目及び14日目に得られたT細胞試料からのCD4+及びCD8+T細胞の単離により、98%超の純粋な集団が得られた(
図5A)。細胞を、材料及び方法に記載のように、刺激し、染色し、サイトカイン産生について評価した。
図5Bに示されるように、多機能性を示す複数のサイトカインを産生する細胞の数は、増殖全体を通して維持されている。0日目と比較して、14日目の試料は、5個超のサイトカインを産生する細胞の数の増加を示した。低頻度であるが、14日目のT細胞は、最も多くのサイトカインを産生し、CD4+T細胞は、11個のサイトカインを産生し、CD8+T細胞は、9個のサイトカインを産生した(
図5C)。更に、細胞型のサイトカインシグネチャベースの分類は、刺激性シグネチャを保持しながら、エフェクター多機能強度指数の増加を示唆する(
図5D)。
【0052】
上で言及されるように、TCR陽性細胞の枯渇は、同種異系CAR T細胞ベースの療法を可能にするために必要である。望ましくないT細胞の濃度は、細胞編集技術及び送達プラットフォームに基づいて変化し、増殖後に低又は高濃度をもたらし得る。概念の証明として、低濃度(17%)及び高濃度(52%)でのCD4+T細胞の枯渇を評価した。独自の磁気技術を使用した30分のCD4+T細胞の枯渇は、より低い細胞濃度で99%超の枯渇及びより高い濃度で約97%の枯渇をもたらした(表2及び
図6A)。より高い密度で、CD4+T細胞及びビーズを枯渇させるのに必要な時間を評価するために、ビーズの枯渇の時間経過を実施した。
図5Bに示されるように、90分間の磁場の印加は、試料採取後、視覚的なビーズ数によって示されるように、ビーズを枯渇させる。残存ビーズパーセンテージの評価は、細胞生存率及びCD8+T細胞の損失なしに、磁石を用いたビーズの枯渇の120分後に、0.001%未満のビーズの存在をもたらすことを示した(表3及び
図6B)。
【0053】
2つの相互に排他的な系、ekkoTM(Millipore-Sigma)及びkSep400(Sartorius)を、閉鎖された採取後の細胞濃度について評価した。STRから採取バッグへの閉鎖された細胞採取を、材料及び方法に記載のように行った。バッグからの細胞を閉鎖された方法で濃縮装置の各々に移した。表4に示されるように、ekkoTMを使用した細胞濃度は、7倍の濃度、細胞生存率の0%の損失をもたらし、最終的な細胞生存率は98.5%、細胞回収率は79%であった。同様に、kSep 400を使用した細胞濃度は、7.65倍の濃度、細胞生存率の6%の損失をもたらし、最終的な細胞生存率は89.4%、細胞回収率は69%であった。
【実施例】
【0054】
PBMCからのT細胞の単離
ヒトPBMC(Lonzaカタログ番号4W-270C)を、バイアル内に少量の氷を残すまで、37℃の水浴中で迅速に解凍した。解凍した細胞をEasySepTM緩衝液(Stem Cell Technologiesカタログ番号20144)に滴加した。細胞を室温(RT)で5分間、300RCFで遠心分離した。上清を廃棄し、細胞を50mLのEasySepTM緩衝液中で再構成した。細胞濃度及び生存率をNucleoCounter NC-200(Chemometec、Denmark)を使用して評価した。細胞を再びRTで5分間、300RCFで遠心分離した。上清を廃棄し、細胞を、X-VIVOTM15無血清造血細胞培地(Lonzaカタログ番号04-418Q)中で、50×106細胞/mLで再構成した。試料を免疫表現型染色のためにアリコートした。T細胞を、T細胞単離キット(Stem Cell Technologiesカタログ番号17951)を使用して、製造業者のプロトコルに従って単離した。T細胞単離後、細胞濃度及び生存率を、NucleoCounter NC-200(Chemometec、Denmark)を使用して評価し、試料を、免疫表現型染色のためにアリコートした。
【0055】
スピナーフラスコにおけるT細胞の活性化及び増殖
T細胞完全培地を、ヒトAB血清(Sigmaカタログ番号H4522)を5%の最終濃度に、及び組換えヒトIL-2(Peprotechカタログ番号200-02)を50ng/mLの最終濃度になるように、X-VIVOTM15(Lonzaカタログ番号04-418Q)に添加することによって調製した。T細胞単離後(4.1に記載のように)、細胞を、スピナーフラスコにおいて、40mLのT細胞完全培地中で1×106細胞/mLで播種した。細胞を、ImmunoCultTM ヒトCD3/CD28T細胞活性化剤(Stem Cell Technologiesカタログ番号10991)で、製造業者の指示に従って3日間刺激した。細胞密度を1×106細胞/mLに調節するために、培地を5日目に添加し、培地を8日目に2倍にした。スピナーフラスコの一方の条件における撹拌を、11日間全体で75RPMで維持し、他方の条件における撹拌を、50RPMで開始して、1~4日目まで、続いて5~11日目まで100RPMで行った。培養4、7、8、及び11日目に試料採取することによって、細胞数及び生存率を決定した。
【0056】
G-Rex(登録商標)におけるT細胞の活性化及び増殖
T細胞完全培地を、ヒトAB血清(Sigmaカタログ番号H4522)を5%の最終濃度に、及び組換えヒトIL-2(Peprotechカタログ番号200-02)を50ng/mLの最終濃度になるように、X-VIVOTM15(Lonzaカタログ番号04-418Q)に添加することによって調製した。T細胞の単離(4.1に記載)後、1LのG-Rex(登録商標)(Wilson Wolfカタログ番号G-Rex(登録商標)100M-CS)を、300mLのT細胞完全培地中の0.5×106細胞/mLのT細胞で接種した。T細胞活性化を、ImmunoCultTM ヒトCD3/CD28T細胞活性化剤(Stem Cell Technologiesカタログ番号10991)を使用して、製造業者の指示に従って、3日間、G-Rex(登録商標)において実施した。G-Rex(登録商標)におけるT細胞培養物を、37℃、5%のCO2加湿雰囲気で維持した。T細胞を3日間活性化した後、700mLのT細胞完全培地を添加し、14日目まで培養した。
【0057】
撹拌タンクバイオリアクタにおけるT細胞の活性化及び増殖
BioBlu単回使用バイオリアクタ容器を、製造業者の指示に従って構成した(Eppendorf、1386000300)。簡潔に述べると、1Lの容器には、溶解酸素(DO)のパーセンテージ、pH、及び温度を含む重要なパラメータのオンライン監視のために必要なプローブ(Mettler Toledo)が装備された。バイオリアクタを、G3Labユニバーサル制御装置(Thermo Fisher Scientific)を使用して制御した。T細胞完全培地を、ヒトAB血清(Sigmaカタログ番号H4522)を5%の最終濃度に、及び組換えヒトIL-2(Peprotechカタログ番号200-02)を50ng/mLの最終濃度になるように、X-VIVOTM15(Lonzaカタログ番号04-418Q)に添加することによって調製した。接種前に、400mLのT細胞完全培地をバイオリアクタに導入し、空気で平衡化した。T細胞単離後、バイオリアクタを、0.5×106細胞/mLの播種密度で200×106個のT細胞と接種させた。T細胞活性化を、ImmunoCultTM ヒトCD3/CD28T細胞活性化剤(Stem Cell Technologiesカタログ番号10991)を使用して、製造業者の指示に従って、3日間、バイオリアクタにおいて実施した。バイオリアクタにおけるT細胞培養物を、37℃、88RPM撹拌(別段の言及を除く)、及びpH<7.2で維持した。T細胞を3日間活性化した後、600mLのT細胞完全培地を添加した。細胞成長及び増殖倍率を決定するために、15mLの試料を、実行に沿った様々な時点で二重に採取し、Nucle-oCounter NC-200(Chemometec、Denmark)を使用して、細胞数及び生存率を測定した。T細胞の生存細胞密度が2.0×106細胞/mLに達したとき、新鮮なT細胞完全培地での灌流を、1容器体積/日(VVD)の速度で開始した。示された日に、試料を、免疫表現型分析、及び単一細胞セクレトーム分析に使用した。主要代謝産物の変化を監視するために、5mLの試料を、実行に沿って様々な時点でバイオリアクタから採取した。pH及び主要な栄養素などのパラメータの変化を決定するためのオフライン監視は、BioProfile FLEX Analyzer(Nova Biomedical)を使用して実施された。表1に示されるように、細胞濃度、生存率、廃棄物バッグ中の細胞の存在、及びバイオリアクタ内外の体積を評価した。
【表1】
【0058】
連続培地灌流
細胞保持及び連続培地灌流を、XcellTM ATF 2単回使用デバイス(Repligenカタログ番号suATF2-S02PES)を使用して実施した。ATFを0日目にバイオリアクタに無菌的に接続し、ATFカラムを、X-VIVOTM15無血清造血細胞培地(Lonzaカタログ番号04-418Q)を使用して湿潤させた。8日目に、細胞が2.0×106細胞/mLに達したとき、0.5リットル/分(LPM)のATF速度で灌流を可能にした。培地入及び培地出を0.7mL/分に設定し、1VVDを維持した。
【0059】
CD4+T細胞の枯渇
細胞増殖後、14日目に、灌流を停止し、必要数のDynabeadsTM CD4(Thermo Fisher Scientificカタログ番号11145D)を、製造業者の指示に従って、単離緩衝液(0.1%のヒトAB血清及び2mMのEDTAを補充したDPBS)中で洗浄した。ビーズをバイオリアクタに添加し、撹拌しながら30分間インキュベーションした。必要な期間、磁石でのインキュベーションを実施した。示された時間に、10mLの試料を、Rebel光学顕微鏡(Echo、USA)の20×倍率下での写真撮影、残存ビーズ濃度の計算(4.9を参照されたい)、免疫表現型分析のための染色(4.8を参照されたい)、生存細胞濃度及び細胞生存率の評価(NucleoCounter NC-200)のために、バイオリアクタから抜き取った。表2に見られるように、低濃度及び高濃度での30分間のCD4+T細胞の枯渇の効率を評価した。
【表2】
【0060】
表3は、ビーズの枯渇の効率を示す。残存ビーズのパーセンテージ、細胞生存率の損失、及びCD8+T細胞の時間経過を評価した。
【表3】
【0061】
撹拌タンクバイオリアクタからのT細胞の採取
1Lのバイオリアクタ内のT細胞を、全細胞培養の14日目に収集した。バイオリアクタとATFとの間の接続を閉じ、連続撹拌しながら、バイオリアクタ内の細胞溶液を滅菌された1Lのバッグ内にポンプ輸送した。同じ1LのバッグをATFの採取ラインに接続し、ATFに存在する細胞溶液を採取した。採取バッグ中の15mLの細胞溶液を、免疫表現型分析(4.8を参照されたい)、生存細胞濃度及び細胞生存率の評価(NucleoCounter NC-200)のために試料採取した。
【0062】
下流の処理
バイオリアクタから採取されたT細胞懸濁液を含有するバッグを三重に試料採取し、次いでNucleoCounter NC-200を使用して生存率及び細胞密度を決定した。平均生存細胞密度(VCD)を使用して、kSepによって採取されるであろう濃縮体積を計算した(式1、付録Aを参照されたい)。kSep(Sartorius)には、400.50ローターが取り付けられており、kSep400の1/3.5スケールダウンモデルとして機能する。次いで、関連する400.50の単回使用キット(チャンバセット及びバルブセット)を取り付けた。PlasmaLyte-A(Baxter)及び(0.25%)ヒトAB血清(Sigmaカタログ番号H4522)の溶液を使用して、系をプライミングした。1000gの静的遠心分離速度を使用した。流動床を24mL/分の流速で60分間確立し、120mL/分で採取バッグに採取した。濃縮プロセス全体で、kSepチャンバを出る流れから5mLの試料を引き出し、NucleoCounter NC-200(Chemometec、Denmark)を使用して試験して、流動床から漏れ出る細胞の量を監視した。1Lの細胞懸濁液を処理した後、濃縮された細胞を採取した。濃縮物の体積を検証し、試料を採取して生存率及び細胞密度を決定した。残りの濃縮物を凍結保存した。
【0063】
ekkoTMによる濃縮のために、ekkoTM単回使用カートリッジを取り付け、チャンバを100mLの洗浄緩衝液(PlasmaLyte-A(Baxter)及び(0.25%)ヒトAB血清(Sigmaカタログ番号H4522)の溶液でプライミングした。供給物を、120W及び70mL/分の流量で音響流体床からに再循環させた。1Lの細胞懸濁液を処理した後、濃縮細胞を2サイクルで採取した。濃縮物の体積を検証し、試料を採取して生存率及び細胞密度を決定した。残りの濃縮物を凍結保存した。
表4は、閉鎖系を使用した細胞の濃度を示す。濃度倍率、細胞生存率、及び回収%を評価した。
【表4】
【0064】
凍結保存
ヒトT細胞を凍結保存液(CS10、Biolife Solutions Inc、210102))に懸濁した。凍結バイアルを、Cryomed(商標)制御定格冷凍庫(Thermo Fisher Scientific、モデル7456)によって凍結保存し、続いて使用するまで液体窒素中に保存した。
【0065】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーを使用して、T細胞分化、老化、及び消耗状態の定量的検出を行った。簡潔に述べると、300,000個の細胞を、以下の細胞表面マーカーについて生染色した:CD62L(Biolegendカタログ番号304806)、CD45RA(Biolegendカタログ番号304108)、CD45RO(Biolegendカタログ番号304218)、CD3(BD Biosciencesカタログ番号564713)、CD4(CD Biosciencesカタログ番号560158)、CD8(Biolegendカタログ番号301028)、KLRG1(Biolegendカタログ番号367716)、CTLA4(BD Bio-sciencesカタログ番号563931)、PD-1(BD Biosciencesカタログ番号564324)、CD57(Biolegendカタログ番号393304)、及びZOMBIE421(Biolegendカタログ番号423114)。試料をFACS CelestaTM(Becton Dickinson)を使用して処理し、BD FACS Divaソフトウェアを使用してデータを取得し、続いて、FlowJo v10ソフトウェア(FlowJo)を使用して分析した。
【0066】
残存ビーズのパーセンテージ
各試料から、1mlを3つのチューブの各々に分配した。チューブを室温で5分間、700RCFで遠心分離した。細胞ペレットを1mLのDPBSに再懸濁した。細胞溶液に、4mLの溶解緩衝液(1:1の比のDPBS及び次亜塩素酸ナトリウム)を添加し、混合し、室温で5分間放置した。チューブを室温で5分間、700RCFで遠心分離し、4.95mLの上清を除去した。残りの50μLをよく混合し、10μLを血球計の各側面に分配した。4つの角の正方形中のビーズの数を計数した。血球計の第2の側面について、計数を繰り返した。チューブ内の残りの溶液をよく混合し、チューブ内の溶液が完全に計数されるまで計数を行った。残存ビーズ数を、式2を使用して計算し、付録Aを参照されたい。試料の生存細胞密度に対する残存ビーズのパーセンテージを、式3を使用して計算し、付録Aを参照されたい。
【0067】
Isoplexisを試用したT細胞多機能性分析
バイオリアクタの実行中に、多数の分析のために15mlの試料を採取した。示された時点で、1mLの溶液を、室温で5分間、500RCFで遠心分離した。上清を新しい無菌の1.5mLの無菌チューブに移し、ペレットをセクション4.7に記載のように凍結保存した。細胞を4.1に記載のように解凍し、10ng/mLのヒト組換えIL-2を補充したT細胞完全培地中で、5%CO2及び37℃で一晩回収した。CD4+及びCD8+細胞濃縮を、4.13に記載されているように実施した。2つの特徴的なT細胞集団を、50ng/mLのホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)(Sigma-Aldrichカタログ番号P8139)及び1ug/mLのイオノマイシン(Sigma-Aldrichカタログ番号I0634)中で5時間刺激した。細胞を、単一細胞セクレトームバーコードチップ(Isoplexisカタログ番号PANEL-1001-8)に担持して、単一細胞セクレトミクス評価を行った。各T細胞型について、単一の細胞機能プロファイルを決定した。プロファイルを、エフェクター(グランザイムB、IFN-g、MIP-1a、パーフォリン、TNF-a、TNF-b)、刺激性(GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IL-15、IL-21)、調節性(IL-4、IL-10、IL-13、IL-22、TGF-b1、sCD137、sCD40L)、化学誘引性(CCL-11、IP-10、MIP-1b、RANTES)、及び炎症性(IL-1b、IL-6、IL-17A、IL-17F、MCP-1、MCP-4)群に分類した。
【0068】
CD4+及びCD8+T細胞の単離
CD4+及びCD8+T細胞は、CD4+マイクロビーズ、ヒト(Miltenyi Biotecカタログ番号130-045-101)及びCD8+マイクロビーズ、ヒト(Miltenyi Biotecカタログ番号130-045-201)を使用して、CD3+T細胞から単離した。簡潔に述べると、細胞を特定の微粒子で標識し、mi-diMACS分離機(Miltenyi Biotecカタログ番号130-042-401)及びMACSマルチスタンド(Miltenyi Biotecカタログ番号130-042-302)上に配置したMACS LSカラム(Miltenyi Biotecカタログ番号130-042-303)を通過させた。カラムに捕捉された濃縮された細胞を新鮮な収集チューブに投入し、洗浄し、T細胞完全培地中に再懸濁した。4.10に記載のように、フローサイトメトリー分析のために、分離の前後に試料を収集した。
【0069】
スピナーフラスコにおける撹拌条件下でのT細胞の増殖は、静置2D培養と比較して高いことがわかった(
図2A及び2B)。Costariolらは、自動化STRにおいて、初代T細胞の増殖が撹拌速度とともに増加することを示した。一致して、STRにおいて、より高い撹拌速度でのT細胞増殖収率の増加が観察された(
図2C)。栄養素の摂取を伴う細胞成長は、細胞培養物中の乳酸塩の蓄積をもたらし、効率的な細胞成長及び最終的な細胞療法産物の品質を阻害する。連続的な培地灌流は、細胞を保持しながら、栄養素の新鮮な供給及び有害な代謝産物の除去を可能にする。しかしながら、T細胞の5~10mmの直径のため、細胞の漏出及びフィルタの汚れが、T細胞培養培地灌流に関連する主要な問題である。接線流濾過系は、細胞保持系として魅力的な解決策を提供し、流体の動きが、汚れなしで培地灌流を可能にする。更に、ATFは、交互流のバックフラッシュによって誘導される自己クリーニングの追加の利点を提供する。RepligenのATFにおける中空繊維の孔径が0.2mmであるため、ATFは、STRにおける連続培地灌流のための細胞保持デバイスとして用いられた。細胞保持及び培地交換のためのATFの初期試験は、フィルタの汚れ及び細胞損失を伴わない1VVDの灌流の成功をもたらした(表1)。0.5×10
6細胞/mLのT細胞でのSTRの接種後、T細胞を、組換えヒトIL-2の存在下でCD3+28で3日間活性化した。3日間の活性化後、細胞を、組換えヒトIL-2を含有するX-VIVO(商標)15培地中で増殖させた。乳酸塩レベルを監視すると、7日目~8日目までの乳酸塩レベルの3倍の増加が観察された(
図3C)。これは、生細胞密度の2.1×10
6細胞/mLへの増加(
図3B)、及び7日目の6.3mMから8日目の5.4mMへのグルコース濃度の低下(
図3D)を伴い、培地灌流を保証する。8日目に培地灌流を可能にすることは、グルコース及び乳酸塩の定常状態レベルをもたらした(
図3C及び3D)。更に、連続的な培地灌流は、T細胞の指数関数的成長を可能にし、最終的なVCDとして約35×10
6細胞/mLが得られた。対照的に、1LのG-Rex(登録商標)において、同じドナー由来のT細胞を活性化させ、増殖させた。G-Rex(登録商標)におけるT細胞の増殖は、14日目に3.4×10
6細胞/mLのVCDをもたらし、T細胞の28倍の増殖が得られた。ATF媒介灌流を有するSTRにおける14日間の培養は、T細胞の167倍の増殖をもたらした(
図3B)。加えて、ATF媒介細胞移動と組み合わせたSTRにおける撹拌は、細胞生存率又は細胞増殖を減少させないことが観察された(
図3E)。
【0070】
Turtleらは、1:1のCD4:CD8T細胞比でのCAR T細胞療法は、患者の93%の骨髄寛解の達成をもたらしたことを臨床試験で報告した[18]。
図4Aは、14日間の増殖にわたるSTRにおけるCD4:CD8T細胞比の維持を示し、1:1の播種比が採取まで維持されることを示唆する。証拠の増加は、より高いパーセンテージのエフェクター記憶サブセットを含有するCAR T細胞産物において観察されたより低い有効性と比較して、最終的なCAR T細胞療法産物における多くのナイーブ、幹細胞記憶、及びセントラル記憶T細胞の存在が再発のない寛解をもたらしたことを示唆している。試験された条件でのT細胞の増殖は、約80%の中央記憶サブセット、約15%のナイーブ及び幹細胞記憶サブセット、10%未満のエフェクター記憶及び末端分化サブセットを含有する最終的なT細胞亜型組成物をもたらすことが示されている(
図4B)。この表現型は、活性化時に複製及び分化するナイーブT細胞及び幹細胞記憶T細胞のより高い複製能によって説明することができる。中央記憶T細胞のより高い複製能と組み合わせたナイーブ及びT記憶幹細胞(Tscm)からのより高い分化は、中央記憶T細胞のより高いパーセンテージをもたらし得る。最終的なT細胞亜型の濃度は、最初のT細胞組成に依存するが、量子におけるT細胞の増殖は、同様の表現型の結果をもたらした。最終的な医薬品中の老化及び疲弊したT細胞の存在は、それぞれ、複製能の低下及びT細胞の機能不全状態によって説明される低い有効性をもたらす。STRにおけるT細胞の増殖は、5%超の老化(CD57+KLRG1+)又は枯渇T細胞(CTLA4+/PD-1+)をもたらすことが示された(
図4C)。T細胞の多機能強度指数(商標)(PSI)は、急性骨髄性白血病における臨床応答の予測であり、免疫療法においてバイオマーカーとして使用される可能性があった。免疫細胞のPSIは、各細胞によって産生されるサイトカインの数に、各サイトカインの量を乗じて計算される。5時間の刺激後のCD4+及びCD8+T細胞のPSIの評価は、0日目~14日目のエフェクターCD4+及びCD8+T細胞の増加を示唆した。エフェクターシグネチャの増加に加えて、特にCD8+T細胞における刺激性シグネチャの増加が観察された(
図5D)。多機能性T細胞は、抗原での刺激時に2+のサイトカインを産生することが可能であり、重要な機能的特徴とみなされる。複数のサイトカインを産生する細胞の割合の評価は、複数のサイトカイン、具体的には5+のサイトカインを産生するCD4+及びCD8+T細胞のパーセンテージの増加を示唆した(
図5B)。更に、約1%のCD4+T細胞が11個のサイトカインを産生し、約1%のCD8+T細胞が活性化時に9つのサイトカインを産生した(
図5C)。T細胞の表現型特性によって評価されるように、中央記憶表現型の増加は、複数のサイトカインを産生する細胞の数の増加に翻訳される可能性があった。
【0071】
同種異系CAR T細胞の生成は、TCRアルファコードTRAC遺伝子座の欠失を必要とする。TRAC遺伝子座を削除するために種々の戦略が用いられ、それらは、効率が大きく異なる。CRISPR/Cas9は、70~80%の効率を示し、TALEN-60~80%、ジンクフィンガーヌクレアーゼ-20~40%であり、及びmegaTALは、75%の効率を示す。同種異系細胞療法産物中のTCR陽性T細胞の存在は、GVHDをもたらし、濃縮及び製剤化の前に枯渇させる必要がある。TCR陽性T細胞の枯渇は、STRからT細胞を採取し、排他的なユニットを介して処理することを必要とし、これは、最適化されていない条件下での細胞の汚染及びインキュベーションの可能性を増加させる。最適化された条件を維持しながら、STRにおける細胞の枯渇を促進する独自の磁気技術が開発された。加えて、STRにおける細胞の枯渇は、追加の単位操作の必要性を回避し、汚染の可能性を減少させる。原理の証明として、CD4+T細胞は、T細胞増殖後に枯渇した。
図6A及び表2に示されるように、30分間の磁気細胞枯渇は、より低いパーセンテージ(>99%)及びより高いパーセンテージ(97%)でCD4+T細胞を効果的に枯渇させる。FDAガイドラインは、系におけるビーズの効果を最小限に抑えることを確実にする、最終的な細胞療法産物中、0.003%未満の残存ビーズのパーセンテージを要求している。磁気枯渇を120分間使用すると、細胞損失及び生存率の顕著な低下なしで、残存ビーズのパーセンテージの0.001%への減少が示されている(
図6B及び表3)。更に、独自の磁気技術は、異なるスケールで同様の結果を得るために潜在的にスケーリングされることができた。
【0072】
望ましくないT細胞の枯渇後、濃縮及び製剤化を実施して、治療的使用に友好的な体積まで減少させる。細胞処理及び濃縮のための2つの自動化され、相互に排他的な閉鎖系を評価した。ekko(商標)は、音響技術を使用して濃縮を実施し、kSepは、遠心力を使用した流動床形成によって細胞を濃縮する。表4に示されるように、細胞を少なくとも7倍濃縮し、細胞生存率を有意に低下させることなく70%超の細胞を回収した。
【0073】
これまでのところ、これは、T細胞製造における細胞保持及び培地灌流のためのATFの成功した応用を説明する最初の研究である。まとめると、このデータは、T細胞を臨床的に関連する用量に増殖すること、細胞培養物を精製すること、細胞産物の濃度及び製剤化における、閉鎖GMP適合性のエンドツーエンドプラットフォームの能力を実証している(
図1)。
【0074】
追加の例示的な実施形態
実施形態1は、完全閉鎖系において免疫細胞培養物を産生する方法であって、免疫細胞を得ることと、免疫細胞を、免疫細胞完全培地を含む撹拌タンクバイオリアクタに導入することと、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、免疫細胞を活性化試薬で活性化して、活性化された免疫細胞を産生することと、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、活性化された免疫細胞を増殖させて、増殖した免疫細胞培養物を産生することと、バイオリアクタに接続された交互接線流濾過(ATF)を介して、定義された量の新鮮な培地を使用済み培地と交換することと、撹拌タンクバイオリアクタにおいて、増殖した免疫細胞培養物を枯渇させて、枯渇した免疫細胞培養物を産生することと、完全閉鎖系において、その枯渇した免疫細胞培養物を採取して、採取された免疫細胞培養物を産生することと、完全閉鎖系において、(g)の採取された免疫細胞培養物を濃縮することと、を含み、方法が、免疫細胞培養物の1%未満の損失をもたらす、方法である。
【0075】
実施形態2は、免疫細胞完全培地が、緩衝剤、アミノ酸、微量元素、ビタミン、無機塩、グルコース、及び血清を含む、実施形態1の方法を含む。
【0076】
実施形態3は、撹拌タンクバイオリアクタが、約1L~約2000Lの体積容量を有する、実施形態1の方法を含む。
【0077】
実施形態4は、免疫細胞が、免疫細胞を得る直前に末梢血単核細胞(PBMC)の集団から単離されるか、又はPBMCの集団から単離され、長期間保管され、次いで、免疫細胞を得る前に解凍される、実施形態1の方法を含む。
【0078】
実施形態5は、免疫細胞が、多能性幹細胞の集団に由来する、実施形態1の方法を含む。
【0079】
実施形態6は、多能性幹細胞の集団が、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚幹細胞(ESC)、又はそれらの組み合わせの集団である、実施形態5の方法を含む。
【0080】
実施形態7は、免疫細胞を単離することが、PBMCを、抗体複合体及び磁性粒子を含む溶液で洗浄して、PBMC及び単離されたT細胞を含む溶液を生成することと、単離されたT細胞を溶液から磁石で分離することと、を含む、実施形態4の方法を含む
【0081】
実施形態8は、0.25×106T細胞/mL~2×106T細胞/mLが、バイオリアクタに導入される、実施形態1の方法を含む。
【0082】
実施形態9は、方法が、約10×106細胞/mL~約90×106細胞/mLの生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する、実施形態1の方法を含む。
【0083】
実施形態10は、方法が、少なくとも約1億個の生存免疫細胞を含む免疫細胞培養物を産生する、実施形態1の方法を含む。
【0084】
実施形態11は、活性化試薬が、可溶性抗体複合体を含む、実施形態1の方法を含む。
【0085】
実施形態12は、免疫細胞を活性化することが、培地を活性化試薬とともに約72時間の期間、37℃で撹拌することを含む、実施形態1の方法を含む。
【0086】
実施形態13は、免疫細胞培養物が、0.15~0.5回転/分(RPM)の先端速度で撹拌される、実施形態12の方法を含む。
【0087】
実施形態14は、培地が、活性化期間中、約pH5.0~約pH7.5のpHを有する、実施形態1の方法を含む。
【0088】
実施形態15は、増殖させることが、活性化期間後に新鮮な培地をバイオリアクタに添加することと、免疫細胞培養物の温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、及び光学密度センサのうちの1つ以上を監視することと、監視に基づいて、免疫細胞培養物の温度、pHレベル、グルコースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、及び光学密度のうちの1つ以上を調整することと、を含む、実施形態1の方法を含む。
【0089】
実施形態16は、増殖させることが、増殖する免疫細胞培養物を試料採取することと、増殖するT細胞培養物の細胞成長及び増殖倍率を決定することと、細胞成長及び増殖倍率に基づいて、定義された量の新鮮な培地を使用済み培地と交換することと、を更に含む、実施形態15の方法を含む。
【0090】
実施形態17は、新鮮な培地が、増殖する免疫細胞培養物の生存細胞密度が1.5×106細胞/mLよりも大きい場合に、1容器体積/日(VVD)の速度で使用済み培地と交換される、実施形態16の方法を含む。
【0091】
実施形態18は、免疫細胞培養物を枯渇させることが、増殖後に表面活性化された磁気ビーズを免疫細胞培養物に添加することと、増殖した免疫細胞培養物及びビーズを約30分間撹拌することと、標的細胞の集団を増殖した免疫細胞培養物から磁石で単離することと、を含む、実施形態1のうちのいずれかの方法を含む。
【0092】
実施形態19は、ビーズが、1:1のビーズ対細胞の比でバイオリアクタに添加される、実施形態18の方法を含む。
【0093】
実施形態20は、採取することが、免疫細胞培養物を、撹拌感謝バイオリアクタから、撹拌タンクバイオリアクタに接続された滅菌容器にポンプ輸送することと、免疫細胞培養物を、ATFから、ATFの採取ラインに接続された滅菌容器中にポンプ輸送することと、を含む、実施形態1の方法を含む。
【0094】
実施形態21は、撹拌タンクバイオリアクタとATFとの間の接続が閉鎖されている、実施形態20の方法を含む。
【0095】
実施形態22は、撹拌タンクバイオリアクタから滅菌容器への細胞培養物のポンプ輸送が、免疫細胞培養物が、撹拌タンクバイオリアクタにおいて連続的に撹拌されながら、実施される、実施形態20の方法を含む。
【0096】
実施形態23は、採取することが、約14日の全細胞培養の後に生じる、実施形態1の方法を含む。
【0097】
実施形態24は、濃縮することが、採取された細胞培養物の遠心分離、沈殿後の上清除去、濾過、音響細胞処理、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1の方法を含む。
【0098】
実施形態25は、採取された細胞培養物が、約250G~3,000Gで約60分間、遠心分離される、実施形態24の方法を含む。
【0099】
実施形態26は、採取された細胞培養物の遠心分離が、約20mL/分~約30mL/分の流速で所望の細胞のバイオマスを含む流動床を生成する、実施形態25の方法を含む。
【0100】
実施形態27は、流動床が、採取及び/又は保管のために、滅菌及び密閉された容器にポンプ輸送される、実施形態26の方法を含む。
【0101】
実施形態28は、音響細胞処理が、採取された細胞培養物を、120ワット及び約50mL/分~約80mL/分の流速で音響流動床を通して循環させることを含む、実施形態24の方法を含む。
【0102】
実施形態29は、撹拌タンクバイオリアクタにおいて免疫細胞の活性化及び増殖が、5つ超のサイトカインを産生し、かつ75%超の中央記憶T細胞、10%未満のエフェクター記憶T細胞、及び10%超のナイーブ/幹記憶T細胞を有するT細胞培養物をもたらす、実施形態1の方法を含む。
【0103】
実施形態30は、濃縮されたT細胞が、凍結保存される、実施形態1のうちのいずれかの方法を含む。
【0104】
実施形態31は、実施形態1の方法によって産生されたT細胞の集団である。
【0105】
実施形態32は、実施形態1の方法によって産生されたT細胞を含む、T細胞ベースの療法である。
【0106】
本明細書では特定の実施形態を例示及び記載しているが、特許請求の範囲は、記載及び図示される部分の特定の形態又はアレンジメントに限定されるべきではないことが理解されるべきである。本明細書では、例示的な実施形態が開示され、特定の用語が用いられるが、それらは、限定の目的ではなく、一般的かつ説明的な意味でのみ使用される。上記の教示に照らして、実施形態の修正及び変形が可能である。したがって、実施形態は、具体的に記載される以外の方法で実施され得ると理解されるべきである。
【0107】
本明細書中に言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されるのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】