(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】再生可能なアンモニアを生成するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C01C 1/04 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
C01C1/04 G
C01C1/04 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529128
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022081624
(87)【国際公開番号】W WO2023114890
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524181805
【氏名又は名称】リーモ エナジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラダエリ, グイード
(72)【発明者】
【氏名】ブッダギリ, スリニバス アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー, スコット
(57)【要約】
再生可能なアンモニアを生成するための方法が開示される。方法を実施するためのシステムもまた、開示される。一実施形態では、アンモニア(NH3)を生成するための方法であって、a.電気分解を使用して水素(H2)を生成することと;b.窒素(N2)を少なくとも約95%の濃度に富化することと;c.H2およびN2を合わせ、脱酸素化して、供給原料ストリームを生成することと;d.約80bar未満の圧力で合成反応器において供給原料ストリームからNH3を合成することと含む、方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア(NH
3)を生成するための方法であって、
a. 電気分解を使用して水素(H
2)を生成することと;
b. 窒素(N
2)を少なくとも約95%の濃度に富化することと;
c. 前記H
2および前記N
2を合わせ、脱酸素化して、供給原料ストリームを生成することと;
d. 約80bar未満の圧力で合成反応器において前記供給原料ストリームからNH
3を合成することと
を含む、方法。
【請求項2】
約-20℃未満の温度でNH
3を凝縮させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NH
3が、約-25℃未満の温度で凝縮される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NH
3が、アンモニアを冷却媒体として使用するスクリュー圧縮機を使用して凝縮される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記NH
3が、エコノマイザーを使用して凝縮される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
凝縮されたアンモニアが、冷媒ストリームを冷却することによって加熱される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記NH
3が、閉ループ冷却モジュールを使用して凝縮される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記冷却モジュールが、冷却流体としてプロパンまたはプロピレンを使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記凝縮されたNH
3を周囲温度および約15bar~約25barの間の圧力で保存することをさらに含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
未反応のH
2およびN
2を前記合成反応器に再循環させることをさらに含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記再循環されたH
2およびN
2が、単段圧縮機を使用して前記合成反応器の圧力に加圧される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電気分解が、再生可能エネルギーを使用して電力供給される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記N
2が空気から富化される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記N
2が、圧力スイング吸着(PSA)を使用して富化される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記N
2が、空気分離ユニット(ASU)を使用して富化される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記N
2が、膜を使用して富化される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記N
2が、脱酸素化の前に約1%~約2%の間の酸素(O
2)を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記H
2および/または前記N
2が、H
2をO
2と反応させることによって脱酸素化される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記H
2を生成するために使用される電解装置が、脱酸素モジュールと統合されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記H
2およびN
2が、単一の反応器において脱酸素化される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記H
2および/または前記N
2が、白金族金属を含む触媒を使用して脱酸素化される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記H
2および/または前記N
2が、約400℃未満の温度で脱酸素化される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記合成反応器がホットシェルを有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
触媒が圧力容器と直接接触している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記圧力容器が、アンモニア合成反応の平衡温度で水素を安全に収容することができる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記合成反応器がアキシャル型反応器である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ガスが、触媒床に対して下向きに流れる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記合成反応器が管状反応器である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記合成反応器が、シェルまたは複数の管に触媒を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記合成反応器が、前記反応器へのガス供給物である冷却媒体、熱油、ボイラ給水(BFW)、または蒸気を使用する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記合成反応器が、触媒がシェルに収容されたプレート冷却式反応器である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記合成反応器が、前記反応器へのガス供給物である冷却媒体、熱油、ボイラ給水(BFW)、または蒸気を使用する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記合成反応器が、約3ミリメートル(mm)未満のペレット直径を有する触媒を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記触媒が、酸化鉄を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記酸化鉄が、ウスタイトまたはマグネタイトを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記触媒が、ルテニウムまたはコバルトを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記触媒がナノ構造化されており、ナノチューブまたはナノファイバーを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、生成されるNH
3の単位質量当たりおよそ一定比の電力消費でNH
3を生成することができる、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記比が、NH
3生成速度が、最大生成速度から少なくとも約30%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%減少した場合におよそ一定である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
NH
3の生成速度が、毎分少なくとも約10%増加または減少し得る、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記合成反応器が、約60bar未満の圧力で操作される、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記合成反応器が約40barの圧力で操作される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
アンモニア(NH
3)を生成するためのシステムであって、
e. 空気を、酸素(O
2)を含む第1のストリームおよび窒素(N
2)を含む第2のストリームに分離するように構成された空気分離モジュールと;
f. 電力を使用して、水(H
2O)を、O
2を含む第3のストリームおよび水素(H
2)を含む第4のストリームに分割するように構成された電気分解モジュールと;
g. 前記第2のストリーム、前記第4のストリーム、またはそれらの任意の組合せから酸素を除去するように構成された脱酸素モジュールと;
h. 前記第2のストリームからの前記N
2を前記第4のストリームからの前記H
2と反応させてNH
3を生成するように構成されたアンモニア合成モジュールであって、約80bar未満の圧力で動作するように構成された合成反応器を備える、アンモニア合成モジュールと
を備える、システム。
【請求項44】
約-20℃未満の温度でNH
3を凝縮させるように構成された凝縮モジュールをさらに備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記凝縮モジュールが、アンモニアを冷却媒体として使用するスクリュー圧縮機を使用する、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記凝縮モジュールがエコノマイザーを含む、請求項44に記載のシステム。
【請求項47】
凝縮されたアンモニアが、冷媒ストリームを冷却することによって加熱される、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記凝縮モジュールが、閉ループ冷却ユニットを備える、請求項44に記載のシステム。
【請求項49】
前記凝縮されたNH
3を周囲温度および約15~約25barの間の圧力で保存するように構成された保存モジュールをさらに備える、請求項44~48のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項50】
未反応のH
2およびN
2を前記合成反応器に再循環させるように構成された単段圧縮機をさらに備える、請求項43~49のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項51】
前記電気分解モジュールが、再生可能エネルギーを使用して電力供給される、請求項43~50のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項52】
前記空気分離モジュールが、圧力スイング吸着(PSA)を使用する、請求項43~51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項53】
前記空気分離モジュールが、膜を使用する、請求項43~51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項54】
前記空気分離モジュールが、約1%~約2%の間の酸素(O
2)を含むN
2を生成する、請求項43~53の一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記脱酸素モジュールが、H
2をO
2と反応させるように構成されている、請求項43~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記電気分解モジュールが、前記脱酸素モジュールと統合されている、請求項43~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記脱酸素モジュールが単一の反応器を備える、請求項43~56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記脱酸素モジュールが、白金族金属を含む触媒を含む、請求項43~57のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項59】
前記脱酸素モジュールが、約400℃未満の温度で動作するように構成されている、請求項43~58のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記合成反応器がホットシェルを有する、請求項43~59のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
触媒が圧力容器と直接接触している、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記圧力容器が、アンモニア合成反応の平衡温度で水素を安全に収容することができる、請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記合成反応器がアキシャル型反応器である、請求項43~62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項64】
ガスが、触媒床に対して下向きに流れる、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
前記合成反応器が、約3ミリメートル(mm)未満のペレット直径を有する触媒を含む、請求項43~64のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項66】
前記触媒が、酸化鉄を含む、請求項65に記載のシステム。
【請求項67】
前記酸化鉄がウスタイトまたはマグネタイトを含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
前記システムが、生成されるNH
3の単位質量当たりおよそ一定比の電力消費でNH
3を生成することができる、請求項43~67のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項69】
前記比が、NH
3生成速度が、最大生成速度から少なくとも約30%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%減少した場合におよそ一定である、請求項68に記載のシステム。
【請求項70】
NH
3の生成速度が、毎分少なくとも約10%増加または減少し得る、請求項43~69のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項71】
前記システムが、年間約50メガワット(MW)未満の電力を消費する、請求項43~70のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項72】
前記システムが、年間少なくとも約1,000メートルトンのNH
3を生成するための生産能力を有する、請求項43~71のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項73】
前記システムが、年間約100,000メートルトン未満のNH
3を生成するための生産能力を有する、請求項43~72のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項74】
前記第2のストリームおよび/または前記第4のストリームの圧力を増加させるブースト圧縮機をさらに備える、請求項43~73のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
技術分野
本開示は、一般に、再生可能なアンモニアを生成するための方法、およびこれに関連するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
2018年には世界でおよそ1億7千5百万メートルトンのアンモニア(NH3)が生成され、そのうちおよそ88%が肥料として使用された。残りは、主に、窒素化合物の生成の前駆体として使用される。アンモニアは、典型的には、およそ450℃および高圧(約100bar)での水素(H2)と窒素(N2)との発熱性の気相反応を含むハーバーボッシュ法を使用して生成される。この方法のためのH2は、典型的には、化石燃料から、たとえば、天然ガスの水蒸気改質、メタンの部分酸化、または石炭ガス化によって生成される。いくつかの測定によると、アンモニアおよびその誘導体の生成は、世界の温室効果ガス(GHG)排出のおよそ3~5%を占める。したがって、アンモニアの持続可能な(すなわち、低減されたまたは無視できるGHG排出での)生成への重大な必要性が存在している。本開示は、この利点および関連する技術的な利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
簡潔な概要
アンモニアの生成のための現在の技術は、(たとえば、電気分解によって生成された水素からの)持続可能な生成に十分には適していない。世界規模のアンモニアプラントは、1日当たり最大およそ5,000トンを生成することができ、安価な天然ガスの地域に位置しており、生成物はかなりの距離を輸送される。これとは対照的に、本明細書に記載のシステムは、年間最大約100,000トンを生成するように設計され、(たとえば、太陽光または風力からの)安価な再生可能電力の、理想的には生成物の最終消費者に近い地帯に位置する。
【0004】
本開示の発明者らは、伝統的なハーバーボッシュ法を単純に規模縮小し、水の電気分解から生成されたH2を使用することが、多数の理由で実用的かつ理想的な解決法ではないことを認識した。第1に、そのような設計からのアンモニア生成の速度は、伝統的な方法の高い操作圧力を実現するために必要な圧縮機の性質により、風力および太陽光からの再生可能エネルギー生成の変動性に一致するように加速および減速させること(すなわち、負荷追従)ができない。第2に、これらの高圧(約80bar超)での操作には、コールドシェル(触媒が圧力容器に直接接触しない)、ならびに水素脆化、熱水素の攻撃および窒化によって弱くならない高価な特殊用途材料を備えた複雑な反応器ユニットが必要である。これらの材料は、より小規模では実用的でも経済的でもない。
【0005】
直感に反して、本明細書に記載のシステムは、より低圧(約80bar未満、約60bar未満、または約40bar未満)で動作する。これらの圧力では、反応N2+3H2→2NH3は、より高圧におけるほどには好都合ではない。しかしながら、この不利益は、他の利益により十二分に補われる。つまり、本明細書に記載のシステムは、電気分解ユニットの出口圧力により近く一致する圧力で操作することができ、これにより、80barを超える反応圧力に達するために必要とされる圧縮機を排除する。この排除された圧縮機は、典型的には、費用がかかり、プロセスを迅速に加速および減速するのを妨げる多段遠心圧縮機であった。第2に、より低い圧力により、より単純な反応器設計(たとえば、ホットシェルアキシャル型反応器)が可能であり、これは、従来のコールドシェルアンモニア合成変換器よりもはるかに安価である。より低圧では、合成反応器は、疑似等温設計を使用することもできる。たとえば、従来の材料(たとえば、炭素鋼またはステンレス鋼)で作製された管状反応器は、熱水素の攻撃に起因した冶金分解を招くことなく使用することができる。あるいは、プレート冷却式反応器も、低圧でのアンモニア合成のために使用することができる。さらに、より低圧は、水素脆化、熱水素の攻撃および窒化の重大度を低減し、アンモニア合成ループの熱セクション全体にわたってより低コストの材料での建設が可能である。さらに、単一の脱酸素反応器を使用して、反応ガスストリームを精製することでき、炭化水素改質に基づく伝統的な設計のシフト反応器、CO2除去およびメタン化ユニットが排除される。さらに、アンモニア生成物は、約-20℃未満の温度で凝縮することができ、これは、伝統的な開ループ設計の多段遠心圧縮機ではなくスクリュー圧縮機を使用する閉ループ冷却サイクルにより実現することができる。
【0006】
相乗的に、本明細書に記載のシステムのモジュールは、予想外の利益を実現するように働く。システムは、モジュラー型(すなわち、一度設計され、複数回構築および配置される)であり得、規模を一致させ、再生可能電力生産、電解装置出力およびアンモニア消費に必要な経済性を実現する。したがって、一実施形態では、アンモニア(NH3)を生成するための方法であって、
a. 電気分解を使用して水素(H2)を生成することと;
b. 窒素(N2)を少なくとも約95%の濃度に富化することと;
c. H2およびN2を合わせ、脱酸素化して、供給原料ストリームを生成することと;
d. 約80bar未満の圧力で合成反応器において供給原料ストリームからNH3を合成することと
を含む、方法が提供される。
【0007】
一部の実施形態では、方法は、約-20℃未満、たとえば約-25℃未満の温度でNH3を凝縮させることをさらに含む。
【0008】
異なる実施形態では、NH3は、アンモニアを冷却媒体として使用するスクリュー圧縮機を使用して凝縮される。
【0009】
他の態様では、NH3は、エコノマイザーを使用して凝縮される。たとえば、一部の例では、凝縮されたアンモニアは、冷媒ストリームを冷却することによって加熱される。
【0010】
他の異なる実施形態では、NH3は、閉ループ冷却モジュールを使用して凝縮される。たとえば、冷却モジュールは、ある特定の実施形態では、冷却流体としてプロパンまたはプロピレンを使用する。
【0011】
前述の実施形態の他のものでは、方法は、凝縮されたNH3を周囲温度および約15bar~約25barの間の圧力で保存することをさらに含む。
【0012】
前述の実施形態のより多くでは、方法は、未反応のH2およびN2を合成反応器に再循環させることをさらに含む。たとえば、再循環されたH2およびN2は、単段圧縮機を使用して合成反応器の圧力に加圧されてもよい。
【0013】
さらなる実施形態では、電気分解は、再生可能エネルギーを使用して電力供給される。
【0014】
ある特定の実施形態では、N2は空気から富化される。異なる実施形態では、N2は、圧力スイング吸着(PSA)を使用して富化される。一部の他の実施形態では、N2は、空気分離ユニット(ASU)を使用して富化される。他の異なる実施形態では、N2は、膜を使用して富化される。
【0015】
一部の実施形態では、N2は、脱酸素化の前に約1%~約2%の間の酸素(O2)を含む。
【0016】
ある特定の態様では、H2および/またはN2は、H2をO2と反応させることによって脱酸素化される。
【0017】
様々な実施形態では、H2を生成するために使用される電解装置は、脱酸素モジュールと統合されている。
【0018】
なおさらなる実施形態では、H2およびN2は、単一の反応器において脱酸素化される。これらの実施形態のいくつかでは、H2および/またはN2は、白金族金属を含む触媒を使用して脱酸素化される。他の実施形態では、H2および/またはN2は、約400℃未満の温度で脱酸素化される。
【0019】
異なる実施形態では、合成反応器はホットシェルを有する。たとえば、一部の実施形態では、触媒は圧力容器と直接接触している。他の実施形態では、圧力容器は、アンモニア合成反応の平衡温度で水素を安全に収容することができる。
【0020】
一部のさらなる実施形態では、合成反応器はアキシャル型反応器である。たとえば、一部の実施形態では、ガスは、触媒床に対して下向きに流れる。
【0021】
他の異なる実施形態では、合成反応器は管状反応器である。たとえば、合成反応器は、シェルまたは複数の管に触媒を有し得る。他の実施形態では、合成反応器は、反応器へのガス供給物である冷却媒体、熱油、ボイラ給水(BFW)、または蒸気を使用する。
【0022】
一部の他の実施形態では、合成反応器は、触媒がシェルに収容されたプレート冷却式反応器である。たとえば、一部の実施形態では、合成反応器は、反応器へのガス供給物である冷却媒体、熱油、ボイラ給水(BFW)、または蒸気を使用する。
【0023】
他の実施形態では、合成反応器は、約3ミリメートル(mm)未満のペレット直径を有する触媒を含む。たとえば、一部の実施形態では、触媒は、酸化鉄、たとえば、ウスタイトまたはマグネタイトを含む酸化鉄を含む。他の実施形態では、触媒は、ルテニウムまたはコバルトを含む。なお異なる実施形態では、触媒はナノ構造化されており、ナノチューブまたはナノファイバーを有する。
【0024】
一部の実施形態では、方法は、生成されるNH3の単位質量当たりおよそ一定比の電力消費でNH3を生成することができる。たとえば、比は、NH3生成速度が、最大生成速度から少なくとも約30%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%減少した場合におよそ一定であり得る。
【0025】
異なる実施形態では、NH3の生成速度は、毎分少なくとも約10%増加または減少し得る。
【0026】
他の態様では、合成反応器は、約60bar未満の圧力で操作される。
【0027】
一部の他の実施形態では、合成反応器は約40barの圧力で操作される。
【0028】
なおさらなる実施形態では、本開示は、アンモニア(NH3)を生成するためのシステムであって、
a. 空気を、酸素(O2)を含む第1のストリームおよび窒素(N2)を含む第2のストリームに分離するように構成された空気分離モジュールと;
b. 電力を使用して、水(H2O)を、O2を含む第3のストリームおよび水素(H2)を含む第4のストリームに分割するように構成された電気分解モジュールと;
c. 第2のストリーム、第4のストリーム、またはそれらの任意の組合せから酸素を除去するように構成された脱酸素モジュールと;
d. 第2のストリームからのN2を第4のストリームからのH2と反応させてNH3を生成するように構成されたアンモニア合成モジュールであって、約80bar未満の圧力で動作するように構成された合成反応器を備える、アンモニア合成モジュールと
を備える、システムを提供する。
【0029】
一部の実施形態では、システムは、約-20℃未満の温度でNH3を凝縮させるように構成された凝縮モジュールをさらに備える。一部の実施形態では、凝縮モジュールは、アンモニアを冷却媒体として使用するスクリュー圧縮機を使用する。他の実施形態では、凝縮モジュールはエコノマイザーを含む。たとえば、凝縮されたアンモニアは、冷媒ストリームを冷却することによって加熱されてもよい。前述の実施形態の他のものでは、凝縮モジュールは、閉ループ冷却ユニットを備える。
【0030】
一部の実施形態では、システムは、凝縮されたNH3を周囲温度および約15~約25barの間の圧力で保存するように構成された保存モジュールをさらに備える。
【0031】
一部の異なる実施形態では、システムは、未反応のH2およびN2を合成反応器に再循環させるように構成された単段圧縮機をさらに備える。
【0032】
一部の実施形態では、電気分解モジュールは、再生可能エネルギーを使用して電力供給される。
【0033】
他の実施形態では、空気分離モジュールは、圧力スイング吸着(PSA)を使用する。一部の他の実施形態では、空気分離モジュールは、膜を使用する。さらに異なる実施形態では、空気分離モジュールは、約1%~約2%の間の酸素(O2)を含むN2を生成する。
【0034】
一部の実施形態では、脱酸素モジュールは、H2をO2と反応させるように構成されている。
【0035】
他の実施形態では、電気分解モジュールは、脱酸素モジュールと統合されている。
【0036】
一部の実施形態では、脱酸素モジュールは単一の反応器を備える。一部の他の実施形態では、脱酸素モジュールは、白金族金属を含む触媒を含む。
【0037】
異なる実施形態では、脱酸素モジュールは、約400℃未満の温度で動作するように構成されている。
【0038】
一部の実施形態では、合成反応器はホットシェルを有する。たとえば、一部のそのような実施形態では、触媒は圧力容器と直接接触している。例示的な実施形態では、圧力容器は、アンモニア合成反応の平衡温度で水素を安全に収容することができる。
【0039】
一部の実施形態では、合成反応器はアキシャル型反応器である。これらの例のいくつかでは、ガスは、触媒床に対して下向きに流れる。
【0040】
他の実施形態では、合成反応器は、約3ミリメートル(mm)未満のペレット直径を有する触媒を含む。これらの実施形態のいくつかでは、触媒は、酸化鉄、たとえば、ウスタイトまたはマグネタイトを含む酸化鉄を含む。
【0041】
異なる実施形態では、システムは、生成されるNH3の単位質量当たりおよそ一定比の電力消費、たとえば、NH3生成速度が、最大生成速度から少なくとも約30%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%減少した場合におよそ一定である比で、NH3を生成することができる。
【0042】
一部の実施形態では、NH3の生成速度は、毎分少なくとも約10%増加または減少し得る。
【0043】
一部の異なる実施形態では、システムは、年間約50メガワット(MW)未満の電力を消費する。
【0044】
なお他の実施形態では、システムは、年間少なくとも約1,000メートルトンのNH3を生成する生産能力を有する。
【0045】
なおさらなる実施形態では、システムは、年間約100,000メートルトン未満のNH3を生成する生産能力を有する。
【0046】
異なる実施形態では、システムは、第2のストリームおよび/または第4のストリームの圧力を増加させるブースト圧縮機をさらに備える。
【0047】
前述の概念および下記でより詳細に論じる追加の概念のすべての組合せは(そのような概念が互いに矛盾しないことを条件として)、本明細書に開示される本発明の主題の一部であることが企図されることが認識されるべきである。特に、本開示内の主題のすべての組合せは、本明細書に開示される本発明の主題の一部であることが企図される。
【0048】
なお他の態様、例、ならびにこれらの例示的な態様および例の利点について、下記で詳細に論じる。さらに、前述の情報および以下の詳細な記載の両方は、様々な態様および例の単なる例示的な例であり、特許請求される態様および例の性質および特性を理解するための概要またはフレームワークを提供することが意図されることを理解されたい。本明細書に開示される任意の例は、本明細書に開示される対象、目的および必要性のうちの少なくとも1つと一致する任意の方式で任意の他の例と組み合わせられてもよく、「例」、「一部の例」、「代替例」、「様々な例」、「一例」、「少なくとも1つの例」、または「このおよび他の例」などへの参照は、必ずしも互いに排他的であるとは限らず、その例と関連して記載される特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの例に含まれ得ることを示すことが意図される。本明細書におけるそのような用語の出現は、必ずしもすべてが同じ例を指すとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本明細書に記載のシステムおよび方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な記載
合成アンモニアおよびその誘導体の生成は、集約農業の世界的な発展を可能にする重要な要素の1つである。合成窒素肥料なしに現在の食糧生産需要を維持するためには、世界で3~4倍多くの耕地が必要であると推定される。
【0051】
合成アンモニアの商業的生産は、工業的に可能な条件、通常、数百気圧の圧力および400℃超の温度で水素を窒素と反応させることが可能な鉄系触媒の発見によって可能となった。この伝統的なプロセスにおいて、水素供給物は、炭化水素の水蒸気改質を介して生成され、天然ガスが最も一般的に利用される炭化水素である。窒素は空気の形態でプロセスに導入され、酸素は炭化水素の画分と一緒に燃焼されて、水蒸気改質に必要な熱の一部を発生する。
【0052】
上記の基本的なプロセスは、何十年も前の合成アンモニアの最初の商業的生産から大幅には変化していない。長年にわたって、技術開発は主に2つの方向に進んでいる:(a)ますます洗練された熱および質量の統合を介した炭化水素供給物に含有されたエネルギー利用の段階的改善を実現するための連続最適化;ならびに(b)1日当たり3,500メートルトン(MTD)超の現在の世界規模の生産能力への最大単一トレーンサイズを増加させる連続した規模拡大の努力。
【0053】
これらの2つの開発戦略から得られた商業的生産プロセスは、とりわけ水素供給物が再生可能エネルギーにより電力供給された水の電気分解を介して生成される場合、再生可能アンモニアの生成に容易に適合および配置することができない。実際、再生可能電力からのアンモニア生成は、炭化水素供給物を含まず、典型的には、本質的に非常に分散している。
【0054】
これとは対照的に、本明細書に記載のプロセスは、電気分解を使用して水素(H2)を生成し、窒素(N2)を少なくとも約95%の濃度に富化し、H2およびN2を脱酸素化して合わせて供給原料ストリームを生成し、約80bar未満の圧力で合成反応器において供給原料ストリームからNH3を合成する。
【0055】
図1を参照すると、アンモニア(NH
3)を生成するための本明細書に記載のシステムの実施形態は、空気102を、酸素(O
2)を含む第1のストリーム104および窒素(N
2)を含む第2のストリーム106に分離するように構成された空気分離モジュール100を備え得る。システムは、電力110を使用して、水(H
2O)112を、O
2を含む第3のストリーム114および水素(H
2)を含む第4のストリーム116に分割するように構成された電気分解モジュール108を含み得る。システムは、第2のストリームおよび/または第4のストリームから酸素を除去するように構成された脱酸素モジュール118と、第2のストリームからのN
2を第4のストリームからのH
2と反応させてNH
3を生成するように構成されたアンモニア合成モジュール120とをさらに含み得る。アンモニア合成モジュールは、約80bar未満の圧力で動作するように構成された合成反応器122を備える。
【0056】
システムは、約-20℃未満の温度でNH3を凝縮するように構成された凝縮モジュール124をさらに備え得る。凝縮モジュールは、アンモニアを冷却媒体として使用する(たとえば、アンモニアを蒸発および再圧縮する)スクリュー圧縮機126を使用し得る。保存モジュール128は、凝縮されたNH3を約15~約25barの間の圧力および周囲温度で保存するように構成され得る。一部の場合には、単段圧縮機130は、未反応のH2およびN2を合成反応器122に再循環させるように構成されている。
【0057】
一部の場合には、電解装置出口の圧力は、アンモニア合成モジュールの圧力未満である。そのような場合には、ブースト圧縮機を使用して、アンモニア合成モジュールの前の圧力を増加させることができる。電解装置出口の圧力は、任意の好適な圧力、たとえば、約15bar、約20bar、約25bar、約30bar、約35bar、約40bar、約50bar、約60bar、または約80barであり得る。一部の場合には、電解装置の出口圧力は、約20~約30barの間である。電解装置は、ポリマー電解質膜(PEM)またはアルカリ電解装置であり得る。
【0058】
アンモニア合成に必要な水素は、電力を利用して水を水素および酸素に変換する電解装置によってもたらされ得る。アンモニア生成物は、電解装置に供給される電力の一部が再生可能資源もしくは炭素不含資源、たとえば原子力に全体的もしくは部分的に由来する場合、またはそのような電力が、再生可能電力証書もしくは同様の金融証書の獲得と組み合わせた送電網もしくは任意の他の資源から供給される場合、再生可能であると考えることができる。本明細書に記載のシステムおよび方法の場合、最終酸素除去が脱酸素(別名、水素化)反応器において実施されるため、電解装置は、酸素不純物を除去するための水素精製ユニットを必要としない。しかしながら、一部の実施形態では、水素精製ユニットは有益であり得る。
【0059】
アンモニア合成に必要な窒素は、空気からの窒素の分離から、または空気中の窒素の富化から生成することができる。たとえば、そのような富化は、膜の使用を介して得ることができ、これにより、80%molを超える窒素を含むストリームを生成することができる。あるいは、圧力スイング吸着剤(PSA)または真空PSA(VPSA)を利用して、80%molを超える窒素濃度を有する窒素富化ストリームを生成することもできる。あるいは、空気分離ユニット(ASU)を利用して、空気の液化および/または蒸留を介して空気から窒素を分離することもできる。空気から窒素を分離する、または空気中の窒素を富化する任意の他の手段を、このプロセスに利用して、得られるストリーム中の窒素濃度を80%mol超にすることができる。
【0060】
一部の場合には、窒素濃度は、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99%、約99.5%、約99.9%、約99.95%、または約99.99%である。一部の場合には、窒素濃度は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.95%、または少なくとも約99.99%である。
【0061】
水素および窒素ストリームは一緒に混合して、原料合成ガス(「合成ガス(syngas)」)ストリームを生成することができ、これは、水素、窒素および他の微量不純物に加えて酸素を含有する。本明細書で使用される場合、「合成ガス」という用語は、アンモニアを作製するために使用されるガスストリームを記載する。本明細書で使用される合成ガスは、典型的には、感知可能な量の一酸化炭素(CO)を含有しない。原料合成ガスは、脱酸素反応器に必要な入口温度、通常、利用される水素化触媒の正確な種類および組成に応じて、周囲温度~300℃の間の温度に予備加熱される。予備加熱は、外部エネルギー源(たとえば、電気加熱器)を用いて、または熱交換を介してプロセス内の適切なストリームから熱を回収することによってのいずれかで実施することができる。
【0062】
脱酸素反応器は、標準の水素化触媒を用いる固定床反応器、たとえば、電解槽からの水素精製に利用されるものであり得る。たとえば、白金またはパラジウムを含有する触媒が、従来、これらの用途に利用されている。反応器の設計は、単段断熱の、たとえば、1種の触媒を収容する容器であり得る。あるいは、反応器は、たとえば、各触媒床間の熱交換機と直列に、触媒(同じ触媒または必要に応じて、反応器の各セクションに最適化された異なる触媒)の複数のセクションを有する多段断熱反応器であり得る。反応器はまた、触媒床内部の熱交換をもたらす任意の手段を含む等温または疑似等温反応器であり得る。一部の実施形態では、反応器はまた、そのような設計の組合せであり得る。
【0063】
脱酸素反応器からの排出物は、湿合成ガスストリームであり得、これは、水素、窒素、微量不純物、ならびに反応器における水素および酸素の化合によって生成された水を含有する。湿合成ガスストリームは、他のプロセスストリームとの熱交換、水冷、空冷、水による直接クエンチを介して周囲温度に、もしくは別の冷流体(たとえば、アンモニアもしくは任意のアンモニア含有ストリーム)との熱交換によってさらには周囲温度未満に、またはそれらの任意の組合せで冷却することができる。湿合成ガスストリームは乾燥させることができる。
【0064】
水は湿合成ガスから除去することができる。一部の場合には、合成ガスは、脱水ユニットにおいて乾燥され、これは、温度スイング吸着(TSA)サイクルにおいて操作される。2つまたはそれよりも多い容器に、水への高い親和性を有する吸着剤材料(たとえば、分子篩)が充填され得る。1つまたは複数の容器は、ガスストリームが床を通して流れる間に湿合成ガス中の水が吸着剤によって吸着される吸着モードで操作され得る。吸着剤が水で飽和したら、容器は再生モードに切り替えられ得る。一部の容器が吸着モードで操作される間に、残りは再生モードで操作され、パージガスストリームが好適な温度(通常、150~350℃の間)に加熱され、飽和吸着剤材料に通されて、吸着剤に含有された水が蒸発する。合成ループのパージ抽出の配置は、特定の設計および操作条件に応じて様々であり得る。たとえば、パージは、主凝縮器の下流の排出物から、または脱水ユニット自体によって生成された乾燥合成ガスから抽出され得る。
【0065】
乾燥合成ガスストリームは、アンモニア合成および/または含酸素化合物に感受性であり得る触媒の損傷または毒害のリスクなしにアンモニア合成反応器に供給することができる。いくつかの設計が、アンモニア合成反応器に適合され得る。一部の場合には、複数層の触媒を有する多段断熱反応器は、熱交換機によって分離され得る。触媒床は、別々の容器に収容されても単一の容器に収容されてもよく、熱交換機は、容器外であり得るか、または容器内部に収容され得る。触媒床は、アキシャル型、アキシャル-ラジアル型、またはラジアル型設計を有し得る。一部の場合には、反応器はアキシャル型反応器である。
【0066】
一部の場合には、反応器は、触媒床に挿入された、管またはプレートなどの熱交換要素を特徴とする、触媒の1つまたは複数の層を有する疑似等温反応器である。触媒床は、別々の容器に収容されても単一の容器に収容されてもよく、アキシャル型、アキシャル-ラジアル型、またはラジアル型設計を有し得る。一部の場合には、反応器はアキシャル型反応器である。
【0067】
本明細書に記載の方法に使用される合成反応器は、ホットシェルを有し得る。ホットシェル反応器において、触媒は、圧力容器と直接接触している。これは、より低圧(およびより低温)でのアンモニア合成モジュールの操作により、ここで実現され得る。これは、触媒を圧力容器から分離する、より費用のかかるコールドシェル反応器とは対照的である。圧力容器は、アンモニア合成反応の平衡温度で水素を安全に収容することができる。合成反応器はアキシャル型反応器であり得る。アキシャル型反応器では、ガスは、触媒床に対して下向きに流れ得る。
【0068】
本明細書に記載の方法において使用される合成反応器は、触媒と直接接触して配置された従来の冶金(たとえば、炭素またはステンレス鋼)で作製された熱交換要素(たとえば、管またはプレート)を含み得る。これは、より低圧(およびより低温)でのアンモニア合成モジュールの操作により、実現され得る。
【0069】
アンモニア合成触媒は、酸化鉄を含み得る。一部の場合には、酸化鉄は、ウスタイトまたはマグネタイトを含む。触媒は、任意の好適な促進剤、希釈剤、バインダー、賦形剤を含有し得、任意の好適な形態に形成され得る。一部の場合には、触媒は、約10ミリメートル(mm)、約7mm、約5mm、約3mm、約2mm、または約1mmのペレット直径を有する。一部の場合には、触媒は、約10ミリメートル(mm)未満、約7mm未満、約5mm未満、約3mm未満、約2mm未満、または約1mm未満のペレット直径を有する。これとは対照的に、世界規模の設計は、典型的には、高断面積を実現するためにラジアル型反応器を使用する。本明細書に記載の反応器設計は、独特に、これらの小さい触媒形態を使用するために利用可能である。
【0070】
アンモニア合成触媒はまた、低圧での操作に最適化された配合物に基づき得る。たとえば、触媒は、ルテニウム(Ru)などの非常に活性な材料、またはコバルト(Co)などの促進剤を含有してもよい。これらの低圧触媒はまた、非常に大きな有効表面積を有するナノ構造体、たとえば、ナノチューブまたはナノファイバー(たとえば、酸化ランタンの沈殿によって得られるナノ構造体)に基づき得る。
【0071】
NH3の合成は、任意の好適な圧力で行われ得る。一部の場合には、合成反応器は、約100bar、約80bar、約70bar、約60bar、約50bar、約40bar、または約30barの圧力で操作される。一部の場合には、合成反応器は、約100bar未満、約80bar未満、約70bar未満、約60bar未満、約50bar未満、約40bar未満、または約30bar未満の圧力で操作される。
【0072】
アンモニア合成反応器排出物は、別のプロセスストリームまたは外部ストリーム、たとえば水もしくは空気、またはそれらの任意の組合せとの熱交換を介して冷却され得る。さらなる冷却は、反応器排出物への冷アンモニアの直接注入(すなわち、直接クエンチ)により、またはアンモニア冷却装置(たとえば、蒸気によるアンモニア蒸発によって生じる間接的冷却)を介して、もたらされ得る。
【0073】
アンモニア合成の主凝縮器の操作圧力および温度に応じて、反応器排出物に含有されるアンモニアの0%~80%の間の範囲の部分は、凝縮し、無水アンモニアの液体ストリームを形成し、これは、気液分離器において合成ガスストリームから分離される。
【0074】
無水アンモニアの圧力は、通常、好適に設計されたバルブおよび気液分離器で実施される、1回または複数回の断熱膨張で低下し得る。一部の実施形態では、圧力低下は、膨張機、または膨張機および断熱フラッシュの任意の組合せで行われ得る。最終無水アンモニア生成物は、(i)周囲温度および対応する蒸気圧(通常15~20気圧)超の圧力、または(ii)極低温条件(-33℃)下で周囲圧力、または(iii)周囲気圧と15~20気圧との間の任意の中間圧力のいずれかで保存することができる。
【0075】
回収モジュールは、NH3を回収し、エコノマイザーを利用することが可能であり得る。最終アンモニア生成物が、合成ループに適合された凝縮温度(たとえば、周囲温度)よりも高い温度で保存および/または利用される場合、エコノマイザーを使用することができる。エコノマイザーにおいて、凝縮アンモニア生成物ストリームは、冷媒ストリームをさらに冷却することによって加熱される。
【0076】
プロセスは、リサイクルループを用いて操作することができる。たとえば、未反応のH2およびN2を合成反応器に再循環させることによる。再循環されたH2およびN2は、単段圧縮機を使用して合成反応器の圧力に加圧され得る。
【0077】
一部の場合には、このプロセスには空気、水、および電力のみが投入され、最終生成物は、水性および無水アンモニアであり、これは、プロセスのために選択された設計および操作パラメーターに依存する任意の組合せで生成され得る。
【0078】
方法は、生成されるNH3の単位質量当たりおよそ一定比の電力消費でNH3を生成することができる。比は、NH3生成速度が、最大生成速度から少なくとも約20%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%減少した場合におよそ一定である。
【0079】
プロセスは、迅速に加速または減速することができる(たとえば、再生可能エネルギーの変動する生成に順応するため)。NH3の生成速度は、毎分少なくとも約10%増加または減少し得る。
【0080】
システムは、年間約300メガワット(MW)、約200MW、約100MW、約80MW、約80MW、約60MW、約40MW、約20MW、または約10MWの電力を消費し得る。一部の場合には、システムは、年間約300メガワット(MW)未満、約200MW未満、約100MW未満、約80MW未満、約80MW未満、約60MW未満、約40MW未満、約20MW未満、または約10MW未満の電力を消費する。
【0081】
本明細書に記載のシステムは、NH3を生成するための任意の好適な生産能力を有し得る。一部の場合には、システムは、年間約1,000、約5,000、約10,000、約50,000、または約100,000メートルトンのNH3を生成するための生産能力を有する。一部の実施形態では、システムは、年間少なくとも約1,000、少なくとも約5,000、少なくとも約10,000、少なくとも約50,000、または少なくとも約100,000メートルトンのNH3を生成するための生産能力を有する。一部の場合には、システムは、年間最大約1,000、最大約5,000、最大約10,000、最大約50,000、または最大約100,000メートルトンのNH3を生成するための生産能力を有する。
【0082】
まとめると、本明細書に記載のシステムおよび方法は、規模、不連続操作(たとえば、これは、標準的でないユニットの使用を可能にする)、およびプロセス統合のために設計される。限定なしに、ある特定の設計因子は、特定の資本支出($/メートルトン)を1日当たり200メートルトン未満の生産能力(100メガワット未満に等価)で最小化する。これらの設計パラメーターは、1日当たり1,000メートルトンを超える伝統的な規模では技術的にも経済的にも不可能である。
【0083】
第1に、低圧操作は、特別仕様の2バレル合成ガス圧縮機の必要なしに(伝統的な設計の資本支出に大きく影響する要素を不要として)、ポリマー電解質膜(PEM)電解装置の送達圧力にほぼ一致し得る。一部の場合には、圧縮機は使用しなくてもよいか、またはより小型でより単純な圧縮機を使用することができる。この選択は、合成ループにおける体積循環流量が大きすぎることから、1日当たり1,000メートルトン(MTD)超では不可能である。
【0084】
第2に、安価で単純なホットシェルアキシャル型反応器の使用により、内部ラジアルカートリッジおよび交換機を備えた数百万のコールドシェル変換器の必要性が排除される。この選択は、(i)操作圧力が、(高い平衡Tに起因して)ホットシェルの使用を妨げること、および(ii)アキシャル型設計が、(循環流を収容するために必要な断面積に起因して)不可能なほど大きな容器直径を必要とすることから、約1,000MTD超では実用的でない。
【0085】
第3に、循環器は、合成ガス圧縮機と統合された特別仕様の遠心段階の必要のない安価な(たとえば、Sundyne(商標))機器であり得る。この因子は、標準の機器では大きさが不十分であり、操作圧力を取扱うことができないことから、>1,000MTDでは不可能である。
【0086】
第4に、本明細書に記載のシステムおよび方法は、冷却スクリュー圧縮機を使用し得る。これは、特別仕様の多段遠心機の必要性を排除する。この選択は、これらの機器は十分には大きくないことから、>1,000MTDでは実用的ではない。実際、それらを適合させるには、100MWで2機必要である。
【0087】
第5に、一部の場合には、合成ループを含むシステムのいずれの場所でも熱回収がない。これは、蒸気システム(これは、資本支出に大きく影響する要素である)の必要性を排除し得る。
【0088】
第6に、本明細書に記載のシステムおよび方法は、アンモニアを約20barおよび周囲温度で生成し、保存する選択肢を有する。この結果、極低温アンモニア生成に対して、資本支出および運転費の節約となり得る。この設計特徴は、そのような体積の保存および物流管理が極低温アンモニアでのみ可能であることから、>1,000MTDでは不可能である。
【0089】
上記の実施形態は、多数の方法のうちの任意のもので実施することができる。たとえば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せを使用して実施され得る。ソフトウェアで実施される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピューターで提供されるか、または複数のコンピューターに分散されて提供されるかにかかわらず、任意の好適なプロセッサまたはプロセッサの集合で実行され得る。上記の機能を実施するための任意の成分または成分の集合は、一般に、上で論じた機能を制御する1つまたは複数のコントローラーと考えられ得ることが認識されるべきである。1つまたは複数のコントローラーは、多数の方法で、たとえば、専用ハードウェア、または上で列挙した機能を実施するためのマイクロコードもしくはソフトウェアを使用してプログラムされた1つもしくは複数のプロセッサにより実施され得る。
【0090】
これに関して、本発明の実施形態の1つの実施は、コンピュータープログラム(すなわち、複数の命令)によりコードされた少なくとも1つの非一時的なコンピューター可読保存媒体(たとえば、コンピューターメモリ、ポータブルメモリ、コンパクトディスクなど)を含み、これは、プロセッサで実行された場合、本発明の実施形態の上で論じた機能を実施することが認識されるべきである。コンピューター可読保存媒体は、そこに保存されたプログラムが、本明細書で論じられる本発明の態様を実施する任意のコンピューターリソースにロードされ得るように、持ち運び可能であり得る。さらに、実行された場合、上で論じた機能を実施するコンピュータープログラムへの参照は、ホストコンピューターで実行されるアプリケーションプログラムに限定されないことが認識されるべきである。むしろ、コンピュータープログラムという用語は、本明細書において、本発明の上で論じた態様を実施するためのプロセッサをプログラムするために用いられ得る任意の種類のコンピューターコード(たとえば、ソフトウェアまたはマイクロコード)を参照する一般的な意味で使用される。
【0091】
本発明の様々な態様は、単独で、組合せで、または前述に記載された実施形態において具体的には論じられていない様々な配置構成で使用されてもよく、したがって、それらの適用は前述の記載に示されたか、または図面に例示された詳細および成分の配置構成に限定されない。たとえば、一実施形態に記載の態様は、他の実施形態に記載の態様と任意の方式で組み合わせられてもよい。
【0092】
また、本発明の実施形態は、例が提供されている1つまたは複数の方法として実施されてもよい。方法(複数可)の一部として実施される動作は、任意の好適な方法で順序付けられてもよい。したがって、動作が例示されたものとは異なる順序で実施される実施形態が構築されてもよく、これは、たとえ例示的な実施形態では逐次動作として示されていても、いくつかの動作を同時に実施することを含んでもよい。
【0093】
特許請求の範囲における請求要素を修飾する「第1の」、「第2の」、「第3の」などの順序を表す用語の使用は、それ自体は、1つの請求要素の別の要素に対する優先度、先行もしくは序列、または方法の動作が実施される時間順序を含意しない。そのような用語は、単に、ある特定の名称を有する1つの請求要素を、(順序を示す用語の使用がなければ)同じ名称を有する別の要素と区別するためのラベルとして使用される。
【0094】
本明細書で使用される語法および用語は、説明を目的としており、限定とみなされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する」、「含有する」、「含む(involving)」、およびそれらの変化形の使用は、その後に列挙された項目および追加の項目を包含することを意味する。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を詳細に記載しているが、当業者は様々な変形および改善を容易に想到するであろう。そのような変形および改善は、本発明の趣旨および範囲内であることが意図される。したがって、前述の記載は例に過ぎず、限定することは意図されない。本発明は、以下の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される通りにのみ限定される。
【0096】
本出願が優先権を主張する2021年12月17日に出願された米国特許仮出願第63/290,945号、および2022年4月7日に出願された第63/328,632号は、これによりそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】