(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ及びそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20250107BHJP
G02C 7/06 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/06
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024529974
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 GB2022053241
(87)【国際公開番号】W WO2023118813
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム バスカール
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド デヴィッド エス
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン ポール
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BC03
(57)【要約】
コンタクトレンズ(201)、及び、そのようなレンズを製造する方法が、記載される。レンズ(201)は、光学ゾーン(202)を含む。光学ゾーン(202)は、中央領域(205)を含み、当該中央領域(205)は、第1光軸(219)と、ベースの半径方向の曲率屈折力と、ベースの半径方向のサジタル屈折力と、第1光軸上にある曲率中心と、を有する。光学ゾーン(202)は、環状領域(203)を含み、当該環状領域(203)の幅の中間の点において、環状領域(203)はXの半径方向の曲率屈折力を有し、当該Xはベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。環状領域(203)は、光軸(219)から第1距離である軸外曲率中心を有しており、その幅の中間の点において、環状領域(203)は、Yのサジタル屈折力を有しており、当該Yは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きく、当該Yは前記Xよりも小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
中央領域と、
環状領域と、
を備えた光学ゾーンを備え、
前記中央領域は、第1光軸と、ベースの半径方向の曲率屈折力と、ベースの半径方向のサジタル屈折力と、前記第1光軸上にある曲率中心と、を有しており、
前記環状領域の幅の中間の点において、当該環状領域は、Xの半径方向の曲率屈折力を有しており、当該Xは、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きく、
前記環状領域は、前記光軸から第1距離である軸外曲率中心を有しており、その幅の中間の点において、当該環状領域は、Yの半径方向のサジタル屈折力を有しており、当該Yは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きく、
前記Yは、前記Xよりも小さい
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記環状領域の半径方向のサジタル屈折力が、前記環状領域の幅に亘って、前記中央領域の半径方向のサジタル屈折力よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記環状領域の半径方向のサジタル屈折力が、前記環状領域の幅に亘って、半径方向外側に向かって増大する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記Xが、+0.5D~+20.0Dの間である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記Yが、+0.5D~+10.0Dの間である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記半径方向の曲率屈折力は、前記環状領域の周りの子午線に沿って、最小値X1と最大値X2との間で変化する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記X1及び前記X2の両方が、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい
ことを特徴とする請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記半径方向の曲率屈折力は、環状領域の周りで周期的に変化する
ことを特徴とする請求項6または7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記周期的変化は、正弦波状波形、三角状波形、または、鋸歯状波形、によって定義される
ことを特徴とする請求項8に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記環状領域の前記半径方向のサジタル屈折力は、前記環状領域の周りの子午線に沿って、最大値Y1と最小値Y2との間で変化する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記Y1及び前記Y2の両方が、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きい
ことを特徴とする請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記半径方向のサジタル屈折力は、環状領域の周りで周期的に変化する
ことを特徴とする請求項10または11に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記変化は、正弦波状波形、三角状波形、または、鋸歯状波形、によって定義される
ことを特徴とする請求項12に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記レンズの前記ベースの屈折力は、0.5D~-15.0Dの間である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記中央領域の前記ベース屈折力は、前記レンズの前面及び/または後面の曲率から帰結する
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記環状領域の前記半径方向の曲率屈折力は、当該レンズの前面及び/または後面の曲率から帰結する
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
当該レンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの混合物、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記レンズは、旋盤加工法または鋳造成形法を使用して形成される
ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
コンタクトレンズの製造方法であって、
請求項1乃至18のいずれかに記載のコンタクトレンズを形成する工程
を備えたことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズに関する。本発明は、特に(排他的では無く)、近視の進行を遅らせるためのコンタクトレンズに関する。本発明は、特に(排他的では無く)、老眼者による使用のためのコンタクトレンズに関する。本発明はまた、そのようなレンズを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子供と大人とを含む多くの人が、近視(近眼)を矯正するためにコンタクトレンズを必要としており、多くの大人が老眼(加齢に伴う調節能力の低下により近くの物体に焦点を合わせることができない状態)を矯正するためにレンズを必要とし得る。
【0003】
近視の目は、遠くの物体からの入射光を網膜の前方の位置に焦点合わせする。その結果、光は網膜の前方の平面に向かって収束し、網膜に向かって発散し、網膜に到達する時には焦点が外れている。近視を矯正するための従来のレンズ(例えば、眼鏡レンズやコンタクトレンズ)は、遠くの物体からの入射光が目に到達する前に、光の収束を低減し(コンタクトレンズの場合)、または、当該入射光の発散をもたらし(眼鏡の場合)、これにより、焦点の位置が網膜上に移動される。
【0004】
老眼の目は、近くの物体に合わせて形を効果的に変えることができない。このため、老眼の人は、近くの物体に焦点を合わせることができない。老眼を矯正するための従来のレンズ(例えば、眼鏡レンズやコンタクトレンズ)は、二重焦点レンズや累進レンズを含み、それらは、近くを見るのに最適化された領域と、遠くを見るのに最適化された領域と、を含む。老眼は、また、二重焦点レンズや多焦点レンズを使用して、あるいは、モノビジョンレンズ(一方の目に遠くを見るレンズが提供され、他方の目に近くを見るレンズが提供される等、それぞれの目に異なる処方が提供される)を使用して、治療され得る。
【0005】
数十年前に、子供や若者の近視の進行は、過小矯正、すなわち、焦点を網膜に近づけるが完全に網膜上にまでは近づけない、によって、遅らせたり予防したりできることが提案された。しかしながら、当該アプローチは、必然的に、近視を完全に矯正するレンズで得られる視力と比較して、遠方視力の低下をもたらす。更に、近視の進行を制御するのに過小矯正が有効であるというのは、現在では疑わしいと見なされている。近視を矯正するためのより最近のアプローチは、遠方視力の完全な矯正を提供する1または複数の領域と、過小矯正すなわち意図的に近視性デフォーカスを誘導する1または複数の領域と、の両方を有するレンズを提供することである。当該アプローチは、良好な遠方視力を提供しながら、子供や若者の近視の発症または進行を予防または遅らせることができる、と示唆されている。デフォーカス(焦点ぼけ)を提供する領域を有するレンズの場合、遠方視力の完全な矯正を提供する領域は、通常、ベース屈折力領域と呼ばれ、過小矯正を提供するかまたは意図的に近視性デフォーカスを誘導する領域は、通常、近視性デフォーカス領域または追加屈折力領域と呼ばれる(屈折力が、遠方領域の屈折力(視度)よりも、より正であるか、より少ない負である)。
【0006】
追加屈折力領域の表面(典型的には前面)は、遠方屈折力領域の曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、従って、より正またはより少ない負の屈折力(度数)を目に提供する。追加屈折力領域は、入ってくる平行光(すなわち、遠くからの光)を網膜の前方(すなわち、水晶体により近い)の眼中に集束させるように設計される。遠方屈折力領域は、光を集束させて網膜に像を形成するように設計される(すなわち、水晶体からより通い)。
【0007】
近視の進行を低減する公知のタイプのコンタクトレンズは、MISIGHT(CooperVision, Inc.)の名前で入手できる、二重焦点コンタクトレンズである。この二重焦点レンズは、老眼の視力を改善するように構成された二焦点コンタクトレンズや多焦点コンタクトレンズとは異なり、遠くの物体と近くの物体との両方を見るために、遠方矯正(すなわち、ベース屈折力)の使用を提供できる所定の光学的寸法で構成される。追加屈折力を有する二重焦点レンズの治療ゾーンは、遠くと近くの両方の視距離で近視性デフォーカスな像を提供する。
【0008】
これらのレンズは、近視の発症または進行を予防または遅らせるのに有益であることが見出されているが、環状の追加屈折力領域は、不所望の視覚的副作用を引き起こし得る。網膜の前方に環状の追加屈折力領域によって集束される光は、焦点から発散して、網膜にデフォーカスされた(焦点がずれた)輪を形成する。従って、これらのレンズの着用者は、特に街灯や車のヘッドライトなどの小さくて明るい物体の場合、網膜上に形成される像の周囲にリングまたは「ハロー」が見える場合がある。また、近くの物体に焦点を合わせるために、目の自然な遠近調節(すなわち、焦点距離を変える目の自然な能力)を使用するのではなく、理論的には、着用者は、近くの物体に焦点を合わせるために、環状の追加屈折力領域から生じる網膜の前方の追加の焦点を利用し得てしまう。これは、換言すれば、着用者が、老視矯正レンズが使用されるのと同じ態様でレンズを無意識に(気付かずに)使用し得ることになり、これは、若い対象者にとって望ましくない。
【0009】
近視の治療に使用され得て、MISIGHT(CooperVision,Inc.)レンズ及び前述の他の同様のレンズにおいて焦点距離画像の周りに観察されるハローを排除するように設計された、更なるレンズが開発された。当該レンズでは、環状の領域が、軸上画像が網膜の前方に形成されないように構成され、それにより、近くの目標に眼が順応する必要を避けるようにそのような画像が使用されてしまうことを防止する。むしろ、遠方の点光源が、環状の領域によって、近くの追加屈折力焦点面でリング状の焦線に結像され、遠方焦点面の網膜上で、周囲の「ハロー」効果なしに、小さなスポットサイズの光となる。
【0010】
近視の治療のために、追加的な近視性デフォーカスを導入するレンズを提供することが有益であり得ると認識されている。老眼の治療のために、焦点深度を拡張するレンズを提供することが有益であり得る。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様によれば、本開示は、光学ゾーンを含むコンタクトレンズを提供する。光学ゾーンは、中央領域を含み、当該中央領域は、第1光軸と、ベースの半径方向の(ラジアル)曲率屈折力と、ベースの半径方向の(ラジアル)サジタル屈折力と、を有する。中央領域は、第1光軸上にある曲率中心を有する。光学ゾーンは、環状領域を含み、当該環状領域の幅の中間の点において、環状領域は、Xの半径方向の曲率屈折力を有し、当該Xは、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。環状領域は、光軸から第1距離である軸外曲率中心を有している。その幅の中間の点において、環状領域は、Yの半径方向のサジタル屈折力を有しており、当該Yは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きく、当該Yは前記Xよりも小さい。
【0012】
第2の態様によれば、本開示は、レンズを製造する方法を提供する。当該方法は、本発明の第1の態様のコンタクトレンズを形成する工程を備える。
【0013】
もちろん、本開示の一態様に関連して説明される特徴が、本開示の他の態様に組み込まれ得ることが、理解されるであろう。例えば、本開示の方法は、本開示の装置を参照して説明された特徴を組み込み得るし、その逆もまた同様である。
【0014】
ここで、添付の概略図を参照して、例示のみを目的として、本発明の実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、近視の進行を低減するために近視性デフォーカス像を提供する治療ゾーンを用いる、コンタクトレンズの概略平面図である。
【0016】
【0017】
【0018】
【
図2B】
図2Bは、遠方の点源から形成された、
図1Aのレンズの近位焦点面における光パターンを示す。
【0019】
【
図2C】
図2Cは、遠方の点源から形成された、
図1Aのレンズの遠位焦点面における光パターンを示す。
【0020】
【
図3】
図3は、
図1A及び
図1Bのレンズの部分光線図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(一点鎖線)と環状の追加領域(破線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0021】
【0022】
【0023】
【
図5A】
図5Aは、非同軸光学系を有する別のコンタクトレンズの平面図である。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【
図6D】
図6Dは、
図5A及び
図5Bのレンズの部分光線図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(一点鎖線)と環状の追加領域(破線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0029】
【0030】
【0031】
【
図8A】
図8Aは、本開示の一実施形態に係るレンズの平面図である。
【0032】
【0033】
【
図9】
図9は、
図8A及び
図8Bのレンズの部分光線図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(一点鎖線)と環状の追加領域(破線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【
図12A】
図12Aは、半径方向の曲率屈折力の変化を有する、本開示の一実施形態に係るレンズの平面図である。
【0041】
【0042】
【
図13A】
図13Aは、
図12A及び
図12BのレンズのE-E線断面概略図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(一点鎖線)と環状の追加領域(破線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0043】
【
図13B】
図13Bは、
図12A及び
図12BのレンズのF-F線断面概略図である。当該コンタクトレンズの中央の遠方用領域(一点鎖線)と環状の追加領域(破線)との曲率半径を示す円が共に図示されている。
【0044】
【
図14】
図14は、
図12A及び
図12Bに示されるレンズの環状領域の周りの角度θについての、半径方向の曲率屈折力の正弦波状変化を示す概略グラフである。
【0045】
【
図15A】
図15Aは、本開示の一実施形態に係るレンズの環状領域の周りの角度θについての、正弦波状に変化する屈折力を示す概略グラフである。
【0046】
【
図15B】
図15Bは、本開示の一実施形態に係るレンズの環状領域の周りの角度θについての、鋸歯状に変化する屈折力を示す概略グラフである。
【0047】
【
図15C】
図15Cは、本開示の一実施形態に係るレンズの環状領域の周りの角度θについての、矩形波状に変化する屈折力を示す概略グラフである。
【0048】
【
図16】
図16は、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズの設計方法を示すフローチャートである。
【0049】
【
図17】
図17は、
図16で説明された方法を使用してモデル化された3つのモデルレンズの一部を通る半径方向断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
第1の態様によって、本開示は、コンタクトレンズを提供する。当該レンズは、中央領域を含む光学ゾーンを備え、当該中央領域は、第1光軸と、ベースの半径方向の曲率屈折力と、ベースの半径方向のサジタル屈折力と、第1光軸上にある曲率中心と、を有する。光学ゾーンは、環状領域を含む。当該環状領域の幅の中間の点において、環状領域は、Xの半径方向の曲率屈折力を有する。当該Xは、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。環状領域は、光軸から第1距離である軸外曲率中心を有し、その幅の中間の点において、環状領域は、Yの半径方向のサジタル屈折力を有しており、当該Yは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きく、当該Yは前記Xよりも小さい。
【0051】
本明細書で使用される場合、コンタクトレンズという用語は、眼の前面に配置され得る眼科用レンズを指す。そのようなコンタクトレンズは、臨床的に許容可能な眼上の(on-eye)動きを提供し、人の眼に結合しない、ことが理解されるであろう。コンタクトレンズは、角膜レンズ(例えば、眼の角膜上に載るレンズ)の形態であり得る。コンタクトレンズは、ヒドロゲルコンタクトレンズまたはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどのソフトコンタクトレンズであり得る。レンズは、近視の発症または進行を予防または遅らせるために使用されるレンズであり得て、また、レンズは、近視の目に拡張された焦点深度を提供するために使用されるものであり得る。
【0052】
本開示によるコンタクトレンズは、光学ゾーンを備える。光学ゾーンは、光学的機能を有するレンズ部分を包含する。光学ゾーンは、使用時に眼の瞳孔上に位置決めされるように構成される。本開示によるコンタクトレンズの場合、光学ゾーンは、中央領域と、中央領域を取り囲む環状領域(単数または複数)と、を含む。光学ゾーンは、周辺ゾーンによって取り囲まれている。周辺ゾーンは、光学ゾーンの一部ではないが、レンズが着用される時に光学ゾーンの外側で虹彩の上方に位置し、例えば、レンズのサイズを増大して当該レンズをより扱いやすくしたり、レンズの回転を防止するためのバラストを提供したり、及び/または、レンズ着用者の快適性を改善する形状領域を提供したり、といった機械的機能を提供する。周辺ゾーンは、コンタクトレンズの縁部まで延在し得る。
【0053】
本開示の一実施形態によるコンタクトレンズは、着用者の眼上に位置決めされる時にレンズを方向付けるためのバラストを含み得る。バラストをコンタクトレンズに組み込んだ本開示の実施形態は、着用者の眼上に配置される時、着用者の瞼の作用で所定の安息角まで回転する。例えば、バラストは楔であり得て、回転は、当該楔上の瞼の作用によって生じ得る。コンタクトレンズを方向付けるためにコンタクトレンズをバラストすることは、当該技術分野で良く知られている。例えば、トーリックコンタクトレンズは、当該レンズによって提供される直交円筒矯正が着用者の眼の乱視に対して正確に整列するように、レンズを方向付けるべくバラストされている。本開示のコンタクトレンズは、所与の向きで着用者に特定の利益を提供し得る。例えば、コンタクトレンズは、最大追加屈折力子午線が特定の方向にある時に、着用者に特定の利益を提供し得る。
【0054】
コンタクトレンズは、形状が実質的に円形であり得て、約4mm~約20mmの直径を有し得る。光学ゾーンは、形状が実質的に円形であり得て、約2mm~約10mmの直径を有し得る。幾つかの実施形態では、コンタクトレンズは、13mm~15mmの直径を有し、光学ゾーンは、7mm~9mmまでの直径を有する。
【0055】
第1光軸は、レンズの中心線に沿って存在し得る。中央領域は、遠方の点物体からの光を、第1光軸上で、遠位焦点面で第1光軸上のスポットに、焦点合わせ(集束)させ得る。本明細書で使用される場合、面という用語は、物理的な表面を指すのではなく、遠方の物体からの光が焦点合わせされる点を通って描かれ得る面を指す。このような面は、像面(曲面であり得る)またはイメージシェルとも呼ばれる。目は、曲がった網膜上に光を焦点合わせする。完全に焦点が合った目では、イメージシェルの曲率は、網膜の曲率と一致する。従って、目は、光を平坦な数学上の平面には集束させない。そうでありながら、当該技術分野では、網膜の曲面は、一般に(平)面と呼ばれる。
【0056】
中央領域は、形状が実質的に円形であり得て、約2mm~約9mm、好ましくは2~7mm、の直径を有し得る。中央領域は、形状が実質的に楕円形であってもよい。環状領域は、中央領域の周縁から半径方向外側に約0.1mm~約4mmの間、好ましくは約0.5mm~約1.5mmの間、延在し得る。例えば、環状領域の半径方向幅は、約0.1mm~約4mm、好ましくは約0.5mm~約1.5mm、であり得る。中央領域の周縁は、中央領域と環状領域との間の境界を定義(画定)し得て、従って、環状領域は中央領域に隣接(adjacent)し得る。
【0057】
環状領域は、中央領域に隣接(abut)し得る。ブレンディング(混合)領域が、中央領域と環状領域との間に設けられてもよい。ブレンディング領域は、中央領域及び環状領域によって提供される光学系に実質的に影響を与えるべきではなく、当該ブレンディング領域は、0.05mm以下の半径方向幅を有し得る。もっとも、それは、幾つか実施形態では、0.2mm程度の幅であり得るし、あるいは、0.5mm程度の幅であり得る。
【0058】
本開示の文脈では、レンズの中央領域及び環状領域の屈折力は、半径方向の曲率屈折力、周方向の曲率屈折力、平均の曲率屈折力(半径方向の曲率屈折力と周方向の曲率屈折力との平均である)、半径方向のサジタル屈折力、周方向のサジタル屈折力、及び、平均のサジタル屈折力(半径方向のサジタル屈折力と周方向のサジタル屈折力との平均である)、として定義され得る。
【0059】
曲率屈折力とサジタル屈折力とは、以下のように定義される。
【0060】
ある波面Wの場合、当該波面の中心に垂直な線から半径方向距離r(瞳孔半径)の点において、
W(r) = A*r2
ここで、Aは関数である。
【0061】
波面曲率、または、曲率屈折力Pcは、波面の二次導関数の関数である。波面スロープ、または、スロープベースの屈折力Psは、波面の一次導関数の関数であって、波面のスロープ(勾配)によって変化する。
【0062】
単純な球面レンズの場合、曲率屈折力Pcは、以下のように定義される。
スロープベースの屈折力Psは、以下のように定義される。
すなわち、近軸(パラキシャル)を仮定した単純なレンズの場合、Pc=Psである。
【0063】
半径方向の曲率屈折力とは、レンズの曲率中心から半径方向外側に延びる方向での曲率屈折力である。周方向の曲率屈折力とは、レンズの周に沿って延びる、一定の半径座標における、曲率屈折力である。平均の曲率屈折力は、半径方向の曲率屈折力と周方向の曲率屈折力との平均を提供する。
【0064】
半径方向のサジタル屈折力とは、レンズの中心から半径方向外側に延びる方向でのサジタル屈折力である。周方向のサジタル屈折力とは、レンズの周に沿って延びる、一定の半径座標における、サジタル屈折力である。
【0065】
中央領域は、サジタル屈折力と同一の曲率屈折力を有し得る。これが、ここでは、ベース曲率屈折力、ベースサジタル屈折力、または、ベース屈折力、と称される。中央領域の公称屈折力は、コンタクトレンズのパッケージ上に提供されるようなコンタクトレンズのラベル付けされた屈折力(度数)に対応するであろう(もっとも、実践上は、同一の値を有しない場合もある)。これは、中央領域(の全体)に亘って測定される平均サジタル屈折力または平均曲率屈折力であろう。中央領域の測定される屈折力は、中央領域(の全体)に亘って直接的に測定される平均曲率屈折力または平均サジタル屈折力である。これは、公称屈折力とは異なり得る。
【0066】
近視の治療に使用されるレンズの場合、ベース屈折力は、負であるか、あるいは、ゼロの近傍であって、中央領域が遠方視力を矯正する。ベース屈折力は、0.5ディオプトリ(D)と-15.0ディオプトリとの間であり得る。ベース屈折力は、-0.25D~-15.0Dであり得る。
【0067】
中央領域のベース屈折力は、レンズの表面の曲率から帰結し得る。当該ベース屈折力は、レンズの前面の曲率、及び/または、レンズの後面の曲率、から帰結し得る。
【0068】
本開示の文脈において、環状領域は、光学ゾーンを取り囲む実質的に環状の領域である。それは、実質的に円形、または、実質的に楕円形、を有し得る。それは、光学ゾーンを完全に取り囲み得る。それは、光学ゾーンを部分的に取り囲み得る。
【0069】
本開示の実施形態では、環状領域の半径方向の曲率屈折力は、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。
【0070】
環状領域の半径方向の曲率曲率力は、当該環状領域の少なくとも1つの表面の曲率によって決定され得る。環状領域の半径方向の曲率屈折力は、レンズの前面及び/または後面の曲率から帰結し得る。環状領域は、中央領域よりも、大きい曲率、すなわち、小さい曲率半径、を有し得る。環状領域の前面が、中央領域の曲率よりも大きい曲率、すなわち、小さい曲率半径、を有し得る。代替的または追加的に、環状領域の後面が、中央領域の曲率よりも大きい曲率を有し得る。
【0071】
半径方向の曲率屈折力は、環状領域に亘って変化し得る。環状領域の幅の中間の点において、環状領域の半径方向の曲率屈折力は、Xである。半径方向の曲率屈折力は、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも、より正の屈折力(またはより負の屈折力)であろう。環状領域の正味の半径方向の曲率屈折力は、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力と、環状領域の半径方向の曲率追加屈折力と、の合計である。例えば、ベースの半径方向の曲率屈折力が-3.0Dであって、環状領域の半径方向の曲率追加屈折力が+4.0Dである場合、環状領域の正味の半径方向の曲率屈折力は+1.0Dである。
【0072】
Xの値は、+0.5D~+20.0Dの間であり得る。Xの値は、ベースの半径方向の曲率屈折力より、+10.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向の曲率追加屈折力が、+10.0Dであり得る)。Xの値は、ベースの半径方向の曲率屈折力より、+11.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向の曲率追加屈折力が、+11.0Dであり得る)。Xの値は、ベースの半径方向の曲率屈折力より、+12.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向の曲率追加屈折力が、+12.0Dであり得る)。
【0073】
環状領域は中央領域に対して傾斜されている、と理解され得る。本明細書で使用される場合、環状領域の傾斜とは、横方向の傾斜ではなく、円対称の傾斜を意味する。環状領域は、レンズの周に沿って延びる曲線回りに傾斜されており、環状領域の外側縁が第1方向に移動し、環状領域の内側縁が反対方向に移動している。環状領域の傾斜は、環状領域の半径方向のサジタル屈折力を変化させるであろう。なぜなら、これは、波面の1次導関数の関数であるからである。もっとも、それは、環状領域の半径方向の曲率屈折力は変化させないであろう。なぜなら、これは、波面の2次導関数の関数だからである。環状領域を中央領域に対して傾けることは、環状領域の曲率中心が中央領域の第1光軸から第1距離だけシフトされることを意味する。環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、本開示の実施形態では、環状領域の幅に亘って変化し得る。環状領域の幅の中間の点において、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、Yである。Yは、中央領域のベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きくいであろうが、YはX(環状領域の幅の中間の点における環状領域の半径方向の曲率屈折力)よりも小さいであろう。環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、中央領域のサジタル屈折力よりも、より正であろう。環状領域の正味の半径方向のサジタル屈折力は、ベースの半径方向のサジタル屈折力と、環状領域の半径方向のサジタル追加屈折力と、の合計である。Yの値は、+0.5D~+10.0Dの間であり得る。Yの値は、ベースの半径方向のサジタル屈折力より、+2.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向のサジタル追加屈折力が、+2.0Dであり得る)。Yの値は、ベースの半径方向のサジタル屈折力より、+4.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向のサジタル追加屈折力が、+4.0Dであり得る)。Yの値は、ベースの半径方向のサジタル屈折力より、+3.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向のサジタル追加屈折力が、+3.0Dであり得る)。
【0074】
X及びYの値の例示的な組み合わせが、以下に示される。当業者であれば、X値とY値の他の多くの組み合わせが本開示の範囲内に含まれることを、直ちに理解するであろう。
【0075】
Xの値は、ベースの半径方向の曲率屈折力より、+10.0D大きくてよく(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向の曲率追加屈折力が、+10.0Dであり得る)、Yの値は、ベースの半径方向のサジタル屈折力より、+2.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向のサジタル追加屈折力が、+2.0Dであり得る)。
【0076】
Xの値は、ベースの半径方向の曲率屈折力より、+12.0D大きくてよく(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向の曲率追加屈折力が、+12.0Dであり得る)、Yの値は、ベースの半径方向のサジタル屈折力より、+4.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向のサジタル追加屈折力が、+4.0Dであり得る)。
【0077】
Xの値は、ベースの半径方向の曲率屈折力より、+10.0D大きくてよく(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向の曲率追加屈折力が、+10.0Dであり得る)、Yの値は、ベースの半径方向のサジタル屈折力より、+3.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向のサジタル追加屈折力が、+3.0Dであり得る)。
【0078】
Xの値は、ベースの半径方向の曲率屈折力より、+11.0D大きくてよく(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向の曲率追加屈折力が、+11.0Dであり得る)、Yの値は、ベースの半径方向のサジタル屈折力より、+3.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向のサジタル追加屈折力が、+3.0Dであり得る)。
【0079】
Xの値は、ベースの半径方向の曲率屈折力より、+12.0D大きくてよく(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向の曲率追加屈折力が、+12.0Dであり得る)、Yの値は、ベースの半径方向のサジタル屈折力より、+3.0D大きくてよい(すなわち、環状領域の幅の中間の点における半径方向のサジタル追加屈折力が、+3.0Dであり得る)。
【0080】
環状領域の半径方向の曲率屈折力は、環状領域の周方向の曲率屈折力よりも大きい場合がある。環状領域の周方向の曲率屈折力は、ベースの周方向の曲率屈折力と同一であり得る。環状領域の周方向のサジタル屈折力は、周方向のベースサジタル屈折力と同一であり得る。
【0081】
環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、環状領域の幅に亘って、中央領域の半径方向のサジタル屈折力よりも大きい場合がある。追加屈折力を提供する環状領域を有する既知の中央距離レンズ設計であって、環状領域の曲率中心が中央領域の光軸と一致している場合(これは、軸上(オン軸)環状領域と呼ばれ得る)、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、環状領域の幅に亘って中央領域の半径方向のサジタル屈折力よりも大きいであろう。追加屈折力を提供する環状領域を有する既知の中央距離レンズ設計であって、環状領域の曲率中心が中央領域の光軸からずれている場合(これは、軸外(オフ軸)環状領域と呼ばれ得る)、環状領域が中央領域に対して傾斜している結果として、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、環状領域の最も内側の縁において、中央領域の半径方向のサジタル屈折力よりも低い場合がある。半径方向のサジタル屈折力は、環状領域の外側縁に向かって半径方向距離が増大するにつれて、増大し得る。これらの既知の設計では、環状領域は、中央領域に対して半径方向に傾斜され得て、環状領域の幅の中間点における半径方向のサジタル屈折力が、中央領域が当該中間点まで延長されたならば有するであろう半径方向のサジタル屈折力と一致し得る。レンズは、環状領域の中間点において半径方向のサジタル屈折力を有し得て、当該半径方向のサジタル屈折力は、中央領域が当該中間点まで延長されたならば有するであろう半径方向のサジタル屈折力と一致し得る。
【0082】
中央領域に対して傾斜された環状領域と、環状領域の曲率半径が小さいことと、の複合効果は、環状領域の半径方向のサジタル屈折力が、環状領域の全幅に亘って、中央領域の半径方向のサジタル屈折力よりも大きくなり得る、ということを意味する。代替的に、中央領域と環状領域との間の境界に向かって、環状領域のサジタル屈折力において、ディップ(へこみ)が存在し得る。
【0083】
半径方向のサジタル屈折力は、環状領域の幅に亘って、半径方向外側に向かって増大し得る。環状領域の最も内側の縁から半径方向外側に向かっての、半径方向のサジタル屈折力の増大は、直線的増大であり得る。
【0084】
半径方向の曲率屈折力は、所与の子午線に沿って、環状領域の内縁から半径方向外側に向かって一定であり得るし、あるいは、所定の子午線に沿って、環状領域の内縁から半径方向外側に向かって増大し得る。
【0085】
半径方向の曲率屈折力は、環状領域の周りの子午線に関して、最小値X1と最大値X2との間で変化し得て、当該X1及びX2は、両方とも、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。当該X1及びX2は、両方とも、ベースの曲率屈折力よりも大きくてよい。半径方向の曲率屈折力は、環状領域の周りで周期的に変化し得る。当該変化は、正弦波状波形、三角形状波形、四角形(方形)状波形、または、鋸歯状波形、によって定義され得る。半径方向の曲率屈折力は、X1とX2との間で連続的に変化し得る。環状領域の周に沿った(周方向の)位置を角度θによって定義すると、θは0°~360°の間で変化し、90°ごと、45°ごと、20°ごと、または、10°ごとに、半径方向の曲率屈折力に最大値が存在し得る。X1は、+0.5D~+10.0Dの間であり得る。X2は、+2.0D~+20.0Dの間であり得る。
【0086】
代替的及び/または付加的に、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、環状領域の周りの子午線に関して、最小値Y1と最大値Y2との間で変化し得て、当該Y1及びY2は、両方とも、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きい。当該Y1及びY2は、両方とも、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きくてよい。半径方向のサジタル屈折力は、環状領域の周りで周期的に変化し得る。半径方向のサジタル屈折力の当該周期的変化は、環状領域の全体周りで変改し得るし、あるいは、環状領域の一部周りで変化し得る。当該変化は、正弦波状波形、三角形状波形、または、鋸歯状波形、によって定義され得る。半径方向の曲率屈折力は、Y1とY2との間で連続的に変化し得る。環状領域の周に沿った(周方向の)位置を角度θによって定義すると、θは0°~360°の間で変化し、90°ごと、45°ごと、20°ごと、または、10°ごとに、半径方向のサジタル屈折力に最大値が存在し得る。Y1は、+0.5D~+9.0Dの間であり得る。Y2は、+2.0D~+19.0Dの間であり得る。
【0087】
環状領域の半径方向の曲率屈折力が最小値X1と最大値X2との間で変化する本開示の実施形態では、当該X1及びX2は、両方とも、Yより大きい場合がある。環状領域の半径方向のサジタル屈折力が最小値Y1と最大値Y2との間で変化する本開示の実施形態では、当該Y1及びY2は、両方とも、Xより小さい場合がある。環状領域の半径方向の曲率屈折力が最小値X1と最大値X2との間で変化して環状領域の半径方向のサジタル屈折力が最小値Y1と最大値Y2との間で変化する本開示の実施形態では、半径方向の曲率屈折力及び半径方向のサジタル屈折力の変化は、同位相または異位相であり得る。環状領域の周りの任意の子午線において、半径方向の曲率屈折力は、半径方向のサジタル屈折力よりも大きい場合がある。レンズの半径方向の曲率屈折力が環状領域の周りで一定または略一定を維持するように、環状領域の半径方向のサジタル屈折力と曲率半径との両方が、環状領域の周りの子午線に関して変化し得る。例えば、レンズが+3.0Dの一定の半径方向の曲率屈折力を有する場合、環状領域の周りの子午線に関して、半径方向のサジタル屈折力は、+2.0D~+3.0Dの間で変化し得る。+3.0Dの半径方向のサジタル屈折力を有する領域の場合、環状領域の曲率半径は第1光軸上に中心合わせされるであろう。+2.0Dの半径方向のサジタル屈折力を有する領域の場合、環状領域の曲率中心は第1光軸から離れるようにシフトされ、環状領域の曲率半径は変化し得る。
【0088】
コンタクトレンズは、少なくとも2つの同心の環状領域を含み得る。少なくとも2つの環状領域の各々について、環状領域の幅の中間の点において、環状領域は、Xの半径方向の曲率屈折力を有し、当該Xは、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。少なくとも2つの環状領域の各々は、光軸から第1距離にある軸外曲率中心を有し得て、その幅の中間の点において、環状領域は、Yの半径方向のサジタル屈折力を有し、当該Yは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きく、当該Yは前記Xよりも小さい。各環状領域は、前述の環状領域の特徴のいずれかを含み得る。少なくとも2つの同心の環状領域を有する実施形態では、各環状領域は、同一の半径方向の曲率屈折力プロファイルと、同一の半径方向のサジタル屈折力プロファイルと、を有し得る、あるいは、各同心環状領域は、異なる半径方向の曲率屈折力プロファイル及び/または半径方向のサジタル屈折力プロファイルを有し得る。少なくとも2つの同心の環状領域を有する実施形態では、環状領域は、ベースの屈折力(すなわち、中央領域と同一の屈折力)を有する領域によって分離され得る。
【0089】
コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの組み合わせ、を含み得る。コンタクトレンズの分野で理解されているように、ヒドロゲルは、水を平衡状態に保持し、シリコーン含有化合物を含まない材料である。シリコーンヒドロゲルは、シリコーン含有化合物を含むヒドロゲルである。本開示の文脈で説明されるように、ヒドロゲル材料及びシリコーンヒドロゲル材料は、少なくとも10%~約90%(wt/wt)の平衡含水率(EWC)を有する。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル材料またはシリコーンヒドロゲル材料は、約30%~約70%(wt/wt)のEWCを有する。比較すると、本開示の文脈で説明されるように、シリコーンエラストマー材料は、約0%~10%未満(wt/wt)の含水率を有する。典型的には、本方法または本装置で使用されるシリコーンエラストマー材料は、0.1%~3%(wt/wt)の含水率を有する。好適なレンズ製剤(組成)の例は、以下の米国一般名(USAN)を有するものを含む:メタフィルコン(methafilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)B、オキュフィルコン(ocufilcon)C、オキュフィルコン(ocufilcon)D、オマフィルコン(omafilcon)A、オマフィルコン(omafilcon)B、コムフィルコン(comfilcon)A、エンフィルコン(enfilcon)A、ステンフィルコン(stenfilcon)A、ファンフィルコン(fanfilcon)A、エタフィルコン(etafilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)B、セノフィルコン(senofilcon)C、ナラフィルコン(narafilcon)A、ナラフィルコン(narafilcon)B、バラフィルコン(balafilcon)A、サムフィルコン(samfilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)B、ソモフィルコン(somofilcon)A、リオフィルコン(riofilcon)A、デレフィルコン(delefilcon)A、ベロフィルコン(verofilcon)A、カリフィルコン(kalifilcon)A、等。
【0090】
代替的に、レンズは、シリコーンエラストマー材料を、含み得る、本質的にそれからなり得る、または、それからなり得る。例えば、レンズは、3~50のショアA硬度を有するシリコーンエラストマー材料を、含み得る、本質的にそれからなり得る、または、それからなり得る。ショアA硬度は、当業者によって理解されているように、従来方法を使用して(例えば、方法DIN53505を使用して)決定され得る。他のシリコーンエラストマー材料が、例えば、NuSil Technology、または、Dow Chemical Company、から取得され得る。
【0091】
第2の態様によって、本開示は、レンズを製造する方法を提供する。当該方法は、中央領域を備えたコンタクトレンズを形成する工程を備え得て、当該中央領域は、第1光軸と、ベース曲率屈折力と、ベースサジタル屈折力と、を有しており、第1光軸上にある曲率中心に中心合わせされている。当該レンズは、環状領域をも備える。環状領域は、Xの半径方向の曲率屈折力を有する。当該Xは、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。環状領域は、光軸から第1距離である軸外曲率中心を有しており、その幅の中間の点において、環状領域は、Yの半径方向のサジタル屈折力を有しており、当該Yは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きく、当該Yは前記Xよりも小さい。
【0092】
レンズは、前述の特徴のいずれかを含み得る。
【0093】
当該製造方法は、凹レンズ形成面を有する雌型部材と、凸レンズ形成面を有する雄型部材と、を形成する工程を含み得る。当該方法は、雌型部材と雄型部材との間のギャップをバルクレンズ材料で充填する工程を含み得る。当該方法は、バルクレンズ材料を硬化させてレンズを形成する工程を更に含み得る。
【0094】
コンタクトレンズは、旋盤加工を用いて形成され得る。レンズは、キャスト成形プロセス、スピンキャスト成形プロセス、または、旋盤加工プロセス、あるいは、それらの組み合わせ、によって形成され得る。当業者によって理解されているように、キャスト成形とは、凹レンズ部材形成面を有する雌型成形部材と凸レンズ部材形成面を有する雄型成形部材との間にレンズ成形材料を入れることでレンズを成形する工程を指す。
【0095】
レンズを製造する方法は、コンタクトレンズを設計する工程を備え得て、設計されるレンズは、本開示の一実施形態に従ったレンズであり、前述の特徴のいずれかを含む。当該レンズは、モデリング(モデル化)を使用して設計され得て、当該モデリングは、コンピュータで実装されるモデリングであり得る。
【0096】
当該方法は、第1コンタクトレンズをモデリングする工程を備え得る。第1コンタクトレンズは、中央領域を有し得て、当該中央領域は、第1光軸を有する。当該中央領域は、ベース屈折力を有し得て、第1光軸上にある曲率中心上に中心合わせされ得る。第1コンタクトレンズは、中央領域を取り囲む環状領域を有し得る。環状領域は、第1光軸上に中心合わせされた曲率半径を有し得て、環状領域の当該曲率が追加屈折力を生じさせ、環状領域の正味の屈折力は、ベース屈折力と追加屈折力との合計である。当該方法は、第2コンタクトレンズをモデリングする工程を備え得る。第2コンタクトレンズは、第1コンタクトレンズと同一の中央領域を有し得る。第2レンズの中央領域は、第1レンズと同一のベース屈折力を有し得て、第1光軸上にある曲率中心上に中心合わせされ得る。第2コンタクトレンズは、中央領域を取り囲む環状領域を有し得る。第2レンズの環状領域は、第1光軸上に中心合わせされた曲率半径を有し得て、第2レンズの第2環状領域の当該曲率が、第1コンタクトレンズの追加屈折力よりも大きい追加屈折力を生じさせ得る。第2レンズの正味の屈折力は、第2レンズのベース屈折力と追加屈折力との合計である。第2レンズの正味の屈折力は、第1レンズの正味の屈折力よりも大きい場合がある。レンズを設計する方法は、モデル内で、当該環状領域の内側の縁が固定された状態を維持しながら、当該環状領域の外周または外縁が第1レンズの環状領域の外縁に一致するように、第2レンズの環状領域を傾斜させる工程を含み得る。第2レンズの環状領域を傾けると、当該環状領域の曲率中心は第1光軸から離れる。第2レンズの環状領域を傾けると、第3のモデル化されたレンズ、すなわち、傾斜された第2レンズが生じるであろう。第3レンズ、すなわち、傾斜された第2レンズは、傾斜されていない第2コンタクトレンズと同一の正味の屈折力を生じさせる環状領域を有するが、軸外の曲率中心を伴う。
【0097】
レンズを製造する方法は、モデル化された第3コンタクトレンズ(すなわち、傾斜された第2レンズ)に基づいてレンズを製造する工程を備え得る。第3のモデル化されたレンズに基づくレンズは、第1のモデル化されたレンズに基づくレンズよりも高い曲率を有するため、当該レンズはより高い正の球面収差を有し得る。第3のコンタクトレンズ設計に基づいて製造されるレンズは、また、第1または第2のモデル化されたレンズに基づくレンズと比較して、拡張された焦点深度を有し得る。
【0098】
図1Aは、近視の進行を低減するために近視性デフォーカス像を提供する治療ゾーンを用いるコンタクトレンズの概略平面図を示す。
図1Bは、
図1Aのレンズの概略側面図である。レンズ1は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン2と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン4と、を備える。周辺ゾーン4は、レンズのサイズを増大して当該レンズ1をより扱いやすくし、当該レンズ1の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ1の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン2は、レンズ1の光学機能を提供し、当該光学ゾーン2は、環状領域3及び中央領域5を含む。レンズ1は、ベースの半径方向の曲率屈折力を有し、それは、ベースの半径方向のサジタル屈折力と等しい。ベースの屈折力は、レンズ1の表面の曲率半径から帰結する。中央領域5の曲率中心は、(
図2Aに示される)第1光軸19上にある。環状領域3は、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい半径方向の曲率屈折力を有する。環状領域3の半径方向の曲率屈折力は、環状領域3の曲率半径6によって提供され、当該曲率半径6は、
図3に示されるように、中央領域5の曲率半径7よりも小さい。環状領域3の曲率中心は、第1光軸19上にある。環状領域3は、中央領域5よりも大きい屈折力を有する。
図2Aに示されるように、環状領域3の焦点11及び中央領域5の焦点15は、共通の光軸19を共有する。環状領域3の焦点11は、近位焦点面13上にあり、中央領域5の焦点は、遠位焦点面17上にあり、当該遠位焦点面17は、レンズの後面から更に離れている。
図2Cに示されるように、無限遠の点源の場合、中央領域5によって焦点合わせされる光線は、遠位焦点面17において焦点画像(焦点合わせされた像)23を形成する。中央領域5によって焦点合わせされる光線は、また、近位焦点面13において焦点が合っていない(焦点合わせされていない)ぼやけ(blur)スポット27を生成する。
【0099】
図2Bに示されるように、環状領域3によって焦点合わせされる光線は、近位焦点面13において焦点画像21を形成する。環状領域3によって焦点合わせされる光線は、近位焦点面13の後で発散し、当該発散光線は、遠位焦点面17において焦点が合っていない(焦点合わせされていない)環状(輪状)画像25を生成する。前述のように、焦点が合っていない環状画像25は、レンズ1の着用者が焦点の合った遠方画像の周りに「ハロー」を見る結果となり得る。
【0100】
図4Aは、
図1A及び
図1Bに示されるレンズ1の半径方向のサジタル屈折力の変化を示すプロット(グラフ)31であり、
図4Bは、
図1A及び
図1Bに示されるレンズ1の半径方向の曲率屈折力の変化を示すプロット(グラフ)33である。
図4A及び
図4Bは、レンズ1の半径方向の直径に沿った屈折力変化を示す。このレンズ1の場合、環状領域3が中央領域5よりも大きい屈折力を有するため、及び、環状領域3が軸上曲率中心を有するため、半径方向のサジタル屈折力(曲線35によって示される)は、中央領域5に亘るよりも環状領域3に亘る方が大きい。半径方向の曲率屈折力(曲線37によって示される)も、中央領域5に亘るよりも環状領域3に亘る方が大きい。
【0101】
図5Aは、非共軸光学系を有する別のコンタクトレンズ101の概略平面図を示す。
図5Bは、
図5Aのレンズ101の概略側面図である。
図1Aのレンズ1と同様に、レンズ101は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン102と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン104と、を備える。レンズ101は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン102と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン104と、を備える。周辺ゾーン104は、レンズのサイズを増大して当該レンズ101をより扱いやすくし、当該レンズ101の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ101の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン102は、レンズ101の光学機能を提供し、当該光学ゾーン102は、環状領域103及び中央領域105を含む。レンズ101は、ベースの半径方向の曲率屈折力を有し、それは、ベースの半径方向のサジタル屈折力と等しい。ベースの屈折力は、レンズ101の表面の曲率半径から帰結する。中央領域105の曲率中心は、(
図6Aに示される)第1光軸119上にある。環状領域103は、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい半径方向の曲率屈折力を有する。環状領域103の半径方向の曲率屈折力は、環状領域103の曲率半径によって提供され、当該曲率半径は、中央領域105の曲率半径よりも小さい。しかしながら、
図1Aのレンズ1とは対照的に、
図5A及び
図5Bに示されるレンズ101の場合、環状領域103の曲率は、単一の球面によって規定されることができず、環状領域103の曲率中心は、第1光軸119上にない。これは、
図6Dに示されている。環状領域103は、中央領域105に対して傾斜されており、環状領域103の外縁は、その内縁に対して、
図1A及び
図1Bのレンズ1の場合におけるよりも高い(
図5B参照)。このことが、環状領域103の半径方向のサジタル屈折力を変化させるが、環状領域103の半径方向の曲率屈折力は変化させない。
図6Dに示されるように、中央領域105の前面は、より大きな半径の球体107の表面の一部を規定する。環状領域103の前面は、より小さい半径を有する湾曲した環状面106を規定する。
【0102】
遠位焦点面117で、中央領域105を通過する光線が焦点合わせ(集束)される。環状領域103は、光学的ビームストップとして作用し、これは、
図6Cに示されるように、遠位焦点面117において光124の小さなスポットサイズ133をもたらす。
【0103】
近位焦点面113には、単一の像は形成されない。
図6Bに示されるように、近位焦点面113では、無限遠の点源に対して、中央領域105を通過する光線は、
図1A及び
図1B並びに
図2A及び
図2Bのレンズと同様、ぼやけ(blur)円128を生成する。一方、環状領域103を通過する遠方の点源からの光線は、焦点合わせされた環122を生成し、これは、
図6Bに示されるように、ぼやけ円128を取り囲んでいる。
図6Bは、遠方の点源に対して生成される光パターンを示している。
図1A及び
図1Bのレンズ1とは対照的に、
図5A及び
図5Bのレンズ101は、近位物体に目が順応する必要性を回避するために使用され得るであろう、近位焦点面113における単一画像または軸上画像を生成することがない。遠方にある拡張物体の場合、近位焦点面113において形成される焦点画像は、(i)環状領域103の屈折力を有する従来のレンズで得られるであろう当該拡張物体の焦点画像と、(ii)環状領域103の光学効果を表す光学伝達関数と、の畳み込みである。
【0104】
図1A及び
図1Bのレンズとは対照的に、環状または「ハロー」効果は、遠位焦点面117において発生しない。
【0105】
図7Aは、
図5A及び
図5Bに示されたレンズ101の半径方向のサジタル屈折力の変化を示すプロット(グラフ)131である。
図7Bは、
図5A及び
図5Bに示されたレンズ101の半径方向の曲率屈折力の変化を示すプロット(グラフ)133である。
図7A及び
図7Bは、レンズ101の半径方向の直径に沿った屈折力変化を示す。このレンズ101の場合、環状領域103が中央領域105よりも大きい屈折力を有するため、これは、半径方向の曲率屈折力(曲線137によって示される)が、中央領域105に亘るよりも環状領域103に亘る方が大きい、ということを意味する。しかしながら、環状領域103は中央領域105に対して傾斜されて、環状領域103は軸外曲率中心を有している。中央領域105に対する環状領域103の傾斜は、曲線135によって示されるように、中央領域105と環状領域103との間の境界において、半径方向のサジタル屈折力が中央領域の半径方向のサジタル屈折力よりも更に負であることを意味する。半径方向のサジタル屈折力は、環状領域103の外縁に向かう半径方向距離の増大に応じて増大し得る。
【0106】
図8Aは、本開示の一実施形態に係るコンタクトレンズ201の概略平面図である。
図1A及び
図1Bのレンズ1並びに
図5A及び
図5Bのレンズ101と同様に、レンズ201は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン202と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン204と、を備える。周辺ゾーン204は、レンズのサイズを増大して当該レンズ201をより扱いやすくし、当該レンズ201の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ201の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン202は、レンズ201の光学機能を提供し、当該光学ゾーン202は、環状領域203及び中央領域205を含む。レンズ201の中央領域205は、ベースの半径方向の曲率屈折力を有し、それは、ベースの半径方向のサジタル屈折力と等しい。本開示のこの例示的な実施形態では、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力は、0.0Dであり、これは、中央領域205のベースの半径方向のサジタル屈折力に等しい。このベースの屈折力は、レンズ201の表面の曲率半径から帰結する。中央領域205の曲率中心244は、(
図9に示される)第1光軸219上にある。環状領域203は、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい半径方向の曲率屈折力を有する。環状領域203の半径方向の曲率屈折力は、環状領域203の曲率半径によって提供され、当該曲率半径は、中央領域205の曲率半径よりも小さい。
【0107】
環状領域の幅の中間の点A(
図8A及び
図8Bに示されている)において、環状領域の半径方向の曲率屈折力は、約+3.5Dの値を有する。
図8A及び
図8Bに示されている例示的なレンズ201の場合、半径方向の曲率屈折力は、所与の半径方向位置において、環状領域203の周りの全ての子午線で一定である。これは、
図8A及び
図8Bに示される破線曲線241に沿って、半径方向の曲率屈折力が、環状領域203の幅の中間の点において、同一値を有することを意味する。破線曲線241は、環状領域203の周りに延びる曲線である。本開示のこの例示的な実施形態では、Xは約+3.5Dである。
図5A及び
図5Bに示されるレンズと同様に、レンズ201の環状領域203は、中央領域205に対して傾斜されており、環状領域203の曲率中心243は、第1光軸219からオフセットされている。これは、
図9に示されている。環状領域203を中央領域205に対して傾斜させることは、中央領域205と環状領域203との間の境界における半径方向のサジタル屈折力を減少させる。環状領域203の幅の中間の点Aにおいて、半径方向のサジタル屈折力は値Yを有しており、これは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きいが、Xよりも小さい。この例示的な実施形態の場合、Yは約+2.25Dであり、半径方向のサジタル屈折力は、所与の半径方向位置において、環状領域203の周りの全ての子午線で一定である。これは、
図8A及び
図8Bに示される破線曲線241に沿って、半径方向のサジタル屈折力が同一値を有することを意味する。破線曲線241は、環状領域203の周りに延びる曲線である。
【0108】
遠位焦点面217では、中央領域205を通過する光線が焦点を合わせられる。環状領域203を通過する光線は、サジタル追加焦点面218に向けて案内される。
【0109】
図10Aは、
図8A及び
図8Bに示されるレンズ201の半径方向の(ラジアル)直径に亘る曲率屈折力の変化を示すプロット(グラフ)231である。このプロット231は、半径方向及び周方向の曲率屈折力の平均を示す。中央領域205の全体に亘って、レンズ201の曲率屈折力は一定であり、概ねゼロである。中心領域205と環状領域203との間の境界では、曲線235によって示されるように、曲率屈折力が急激な増大を示す。これは、半径方向の曲率屈折力が増大するためである。中央領域205と環状領域203との間の境界では、周方向の曲率屈折力は大きく変化しないが、半径方向の曲率屈折力は増大するため、中央領域205との間の当該境界で、平均の曲率屈折力(曲線235によって示される)は、周方向の曲率屈折力と半径方向の曲率屈折力との平均まで増大する。
【0110】
図10Bは、
図8A及び
図8Bに示されるレンズ201の半径方向の(ラジアル)直径に亘るサジタル屈折力の変化を示すプロット(グラフ)233である。このプロット233は、半径方向及び周方向のサジタル屈折力の平均を示す。レンズ201の中央領域205の全体に亘って、サジタル屈折力は一定であり、0.0Dの値を有する。中心領域205と環状領域203との間の境界では、曲線237によって示されるように、半径方向のサジタル屈折力の増大のために、環状領域203のサジタル屈折力は急激に増大する。半径方向のサジタル屈折力は、環状領域203の幅に亘って半径方向外側に、概ね直線的に増大する。軸外追加屈折力環状領域203を有するレンズの
図7Aに示されるサジタル屈折力曲線とは対照的に、中央領域205と環状領域203との間の境界でサジタル屈折力にディップ(へこみ)は存在しない。これは、中央領域205と環状領域203との間の境界において半径方向のサジタル屈折力を増大するように、環状領域203が中央領域に対して傾斜されているためである。中央領域205と環状領域205との間の境界におけるサジタル屈折力の増大は、(例えば、
図1A及び
図1Bに示されるような)軸上追加屈折力環状領域を有するレンズの場合ほど大きくない。
【0111】
図11Aに示されるように、
図8A及び
図8Bに示されるレンズ201の場合、遠位焦点面217において、中央領域205を通過する光線が、
図11Bに示されるように、焦点の合った(焦点合わせされた)画像223を形成する。環状領域203を通過する光線は、遠位焦点面217において、焦点の合っていない環225を生成する。
図11Cに示されるように、無限遠の点光源について、第1近位焦点面218において、中心領域205を通過する光線が第1ぼやけ円227を生成し、環状領域203を通過する光線が第2ぼやけ円229を生成する。
図11Dに示されるように、第2近位焦点面220において、中心領域205を通過する光線が第3ぼやけ円231を生成し、環状領域203を通過する光線が第3ぼやけ円231内に焦点の合った環233を生成する。
図12Aは、本開示の一実施形態によるコンタクトレンズ301の概略平面図を示している。
図8A及び
図8Bのレンズ201と同様に、レンズ301は、概ね瞳孔を覆う光学ゾーン302と、虹彩の上方に位置する周辺ゾーン304と、を備える。周辺ゾーン304は、レンズのサイズを増大して当該レンズ301をより扱いやすくし、当該レンズ301の回転を防止するためのバラストを提供し、及び、レンズ301の着用者の快適性を改善する形状領域を提供する、といったことを含む機械的機能を提供する。光学ゾーン302は、レンズ301の光学機能を提供し、当該光学ゾーン302は、環状領域303及び中央領域305を含む。レンズ301は、ベースの半径方向の曲率屈折力を有し、それは、ベースの半径方向のサジタル屈折力と等しい。本開示のこの例示的な実施形態では、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力は、-2.0Dであり、中央領域205のベースの半径方向のサジタル屈折力も、-2.0Dである。ベースの屈折力は、レンズ301の表面の曲率半径から帰結する。中央領域305の曲率中心は、第1光軸上にある。環状領域303は、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい半径方向の曲率屈折力を有する。環状領域303の半径方向の曲率屈折力は、環状領域303の周りの子午線によって変化する。この例示的な実施形態では、半径方向の曲率屈折力は、任意の子午線に沿って半径方向外側に概ね一定である。
図12A及び
図12Bの破線341によって示される、環状領域303の幅の中間で環状領域3030を周回する曲線に沿って、半径方向の曲率屈折力は、最小値X1と最大値X2との間で変化する。当該X1及びX2は、両方とも、中央領域305のベースの曲率屈折力よりも大きい。XIは、+2.0Dであり、X2は、+10.0Dである。半径方向の曲率屈折力は、環状領域の周りで正弦波状に変化し、そのプロファイルが
図14に示されている。環状領域303の周に沿った(周方向の)位置を角度θを用いて定義すると、θは0°~360°の間で変化し、この例示的な実施形態では、180°ごとに、半径方向の曲率屈折力が、環状領域303の幅の中間の点において、最大値X2を有し、すなわち、点A及び点Cにおいて半径方向の曲率がX2である。半径方向の曲率屈折力は、180°ごとに、環状領域303の幅の中間の点において、最小値X1を有し、すなわち、点B及び点Dにおいて半径方向の曲率がX1である。
【0112】
環状領域303の半径方向の曲率屈折力は、環状領域303の表面の曲率から帰結する。環状領域303の周りの全ての点において、環状領域303の曲率半径は、中央領域305の曲率半径307よりも小さい。環状領域303の周りの全ての点において、環状領域303は軸外曲率中心を有する。この例示的な実施形態では、環状領域303の曲率半径は子午線によって変化し、これが、変化する半径方向の曲率屈折力を生じさせる。
図13Aに示されるように、半径方向の曲率が最大値を有する半径方向直径(
図12Aの線E-E)に沿って、環状領域303の曲率半径306eは最小となる(
図13A)。
図13Bに示されるように、半径方向の曲率が最小値を有する半径方向直径(
図12Aの線F-F)に沿って、環状領域303の曲率半径306fは最大となる。
【0113】
このレンズ301の場合、環状領域303の幅の中間の点において、環状領域303の周りで半径方向のサジタル屈折力は一定値Yである。
図14に模式的に示されるように、YはXより小さいが、Yはレンズ301の中央領域305のベース屈折力より大きい。
【0114】
本開示の他の実施形態(不図示)では、レンズは、
図8A乃至
図11Dに示されて説明されたレンズと同様であるが、環状領域の幅の中間の点A(
図8A及び
図8Bに示される)において、環状領域の半径方向の曲率屈折力は、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力よりも約+10.0D大きく(すなわち、半径方向の曲率追加屈折力は約+10.0Dである)、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、中央領域のベースの半径方向のサジタル屈折力よりも約+2.0D大きい(すなわち、半径方向のサジタル追加屈折力は約+2.0Dである)。
【0115】
本開示の他の実施形態(不図示)では、レンズは、
図8A乃至
図11Dに示されて説明されたレンズと同様であるが、環状領域の幅の中間の点Aにおいて、環状領域の半径方向の曲率屈折力は、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力よりも約+12.0D大きく(すなわち、半径方向の曲率追加屈折力は約+12.0Dである)、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、中央領域のベースの半径方向のサジタル屈折力よりも約+4.0D大きい(すなわち、半径方向のサジタル追加屈折力は約+4.0Dである)。有利なことに、このようなレンズは、中央領域と環状領域との間の境界において半径方向のサジタル屈折力に急激な増大を示す。半径方向のサジタル屈折力の増大は、+2.0Dを超える場合がある。比較的小さい瞳孔径を有するレンズ着用者(例えば、若いレンズ着用者)の場合、中央領域と環状領域との間の境界での半径方向のサジタル屈折力のこの急激な増大が、環状領域の治療効果を改善させ得る。
【0116】
本開示の他の実施形態(不図示)では、レンズは、
図8A乃至
図11Dに示されて説明されたレンズと同様であるが、環状領域の幅の中間の点A(
図8A及び
図8Bに示される)において、環状領域の半径方向の曲率屈折力は、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力よりも約+11.0D大きく(すなわち、半径方向の曲率追加屈折力は約+11.0Dである)、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、中央領域のベースの半径方向のサジタル屈折力よりも約+3.0D大きい(すなわち、半径方向のサジタル追加屈折力は約+3.0Dである)。
【0117】
本開示の他の実施形態(不図示)では、レンズは、
図8A乃至
図11Dに示されて説明されたレンズと同様であるが、環状領域の幅の中間の点A(
図8A及び
図8Bに示される)において、環状領域の半径方向の曲率屈折力は、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力よりも約+12.0D大きく(すなわち、半径方向の曲率追加屈折力は約+12.0Dである)、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、中央領域のベースの半径方向のサジタル屈折力よりも約+3.0D大きい(すなわち、半径方向のサジタル追加屈折力は約+3.0Dである)。
【0118】
本開示の他の実施形態(不図示)では、レンズは、
図8A乃至
図11Dに示されて説明されたレンズと同様であるが、環状領域の幅の中間の点A(
図8A及び
図8Bに示される)において、環状領域の半径方向の曲率屈折力は、中央領域のベースの半径方向の曲率屈折力よりも約+10.0D大きく(すなわち、半径方向の曲率追加屈折力は約+10.0Dである)、環状領域の半径方向のサジタル屈折力は、中央領域のベースの半径方向のサジタル屈折力よりも約+3.0D大きい(すなわち、半径方向のサジタル追加屈折力は約+3.0Dである)。本開示の他の実施形態では、レンズは、子午線に沿って段階的(ステップワイズ)にまたは鋸歯状に変化する半径方向の曲率屈折力を有する環状領域を備え得る。当該変化は、周期的であっても非周期的であってもよい。半径方向の曲率屈折力のピークは、180°ごと、90°ごと、20°ごと、10°ごと、または、5°ごと、に存在し得る。例として、半径方向の屈折力の周期的な変化(半径方向のサジタル屈折力または曲率屈折力の変化であり得る)が、
図15A乃至
図15Cに示されている。
【0119】
本開示の他の実施形態では、半径方向の曲率屈折力と半径方向のサジタル屈折力との両方が、環状領域の周りの子午線によって変化し得る。半径方向のサジタル屈折力の変化は、半径方向の曲率屈折力の変化と同位相であってもよいし、異位相であってもよい。環状領域の周の全ての点において、半径方向のサジタル屈折力は半径方向の曲率屈折力よりも小さくてよいが、中央領域のベースの屈折力よりも大きくてよい。
【0120】
本開示の他の実施形態では、レンズは、2以上の同心の環状領域を含み得る。当該環状領域の各々について、環状領域の幅の中間の点において、環状領域は、Xの半径方向の曲率屈折力を有し、当該Xは、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。少なくとも2つの環状領域の各々が、光軸から第1距離にある軸外曲率中心を有し得て、その幅の中間の点において、環状領域は、半径方向のサジタル屈折力Yを有し、当該Yは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きく、当該Yは前記Xよりも小さい。各同心環状領域は、ベース屈折力(すなわち、中央領域と同一の屈折力)を有する領域によって分離され得る。
【0121】
本開示の他の実施形態では、レンズは、2以上の同心の環状領域を含み得る。当該環状領域の少なくとも1つが、
図5A及び
図6Aに示されるような環状領域であり、残りの環状領域の少なくとも1つが、環状領域の幅の中間の点において、Xの半径方向の曲率屈折力を有し、当該Xは、ベースの半径方向の曲率屈折力よりも大きい。当該少なくとも2つの環状領域の各々が、光軸から第1距離にある軸外曲率中心を有し得て、その幅の中間の点において、環状領域は、半径方向のサジタル屈折力Yを有し、当該Yは、ベースの半径方向のサジタル屈折力よりも大きく、当該Yは前記Xよりも小さい。
【0122】
図16は、コンタクトレンズを設計する方法501を示しており、当該レンズは、本開示の一実施形態に従ったレンズである。最初の工程503において、当該方法は、第1コンタクトレンズをモデリングする(モデル化する)工程を含む。第1コンタクトレンズは、中央領域を有し、当該中央領域は、第1光軸を有する。中央領域は、ベース屈折力を有しており、第1光軸上にある曲率中心に中心合わせされている。この例では、第1コンタクトレンズの中央領域は、-3.0Dのベース屈折力を有している。第1コンタクトレンズは、中央領域を取り囲む環状領域を有している。当該環状領域は、第1光軸上に中心合わせされた曲率半径を有する。当該環状領域の曲率が、追加屈折力を生じさせる。この例では、環状領域は、+2.0Dの追加屈折力を生じさせる曲率を有する。環状領域の正味の屈折力は、ベース屈折力と追加屈折力との合計であり、この例では、環状領域の正味の屈折力は、-1.0Dである。
2番目の工程505において、当該方法は、第2コンタクトレンズをモデリングする工程を含む。第2コンタクトレンズは、第1コンタクトレンズと同一の中央領域を有しており、従って、この例では、第2コンタクトレンズは、-3.0Dのベース屈折力を有している。第2コンタクトレンズも、第1光軸上にある曲率中心に中心合わせされている。第2コンタクトレンズも、中央領域を取り囲む環状領域を有している。第2レンズの環状領域は、第1光軸上に中心合わせされた曲率半径を有するが、当該環状領域の曲率は、第1レンズの追加屈折力よりも大きな追加屈折力を生じさせる。この例では、第2環状領域の曲率は、+4.0Dの追加屈折力を生じさせる。第2レンズの正味の屈折力は、ベース屈折力と追加屈折力との合計であり、この例では、第2レンズの正味の屈折力は、+1.0Dである。3番目の工程507において、当該方法は、モデル内で、第2環状領域の内縁を固定したまま、第2環状領域の外縁が第1レンズの環状領域の外縁と一致するように第2レンズの環状領域を傾斜させる工程を含む。これは、傾斜されていない第2レンズと同一の正味の屈折力を伴う環状領域を備えた第3レンズ(傾斜された第2レンズに対応)を生成する。この例では、第3レンズ、すなわち、傾斜された第2レンズが、+1.0Dの正味の屈折力を有する環状領域を備えるが、曲率中心は第1光軸上にはない。
【0123】
図17は、前述のレンズを設計する方法の一部としてモデル化された3つのモデル化レンズ601、603、605の概略図である。当該3つのレンズは、第1光軸上に中心合わせされた、-3.0Dのベース屈折力を提供する曲率を有する、共通の中央領域607を共有する。第1レンズ601は、+2.0Dの追加屈折力を生じさせる曲率を有する環状領域601aを備え、当該環状領域の正味の屈折力は、-1.0Dである。第1レンズ601の環状領域601aの曲率中心は、第1光軸上に中心合わせされている。第2レンズ603は、+4.0Dの追加屈折力を生じさせる曲率を有する環状領域603aを備え、当該環状領域の正味の屈折力は、+1.0Dである。第2レンズ603の環状領域603aの曲率中心も、第1光軸上に中心合わせされている。第1レンズ601の環状領域601aの内縁と、第2レンズ603の環状領域603aの内縁とは、点607において一致する。第3レンズ605は、第2レンズ603の傾斜バージョンである。第3レンズ605の環状領域605aは、+4.0Dの追加屈折力を生じさせる曲率を有し、第2レンズ603と同一の追加屈折力及び同一の正味の屈折力を有する。第3レンズの環状領域605aの内縁は、第1レンズ601及び第2レンズ603と同一の点607で一致するが、第3レンズ605の環状領域605aの外縁は、点611において第1レンズ601の環状領域601aの外縁と一致するように傾斜されている。第3レンズ605の環状領域605aは、+1.0Dの正味の屈折力を有するが、曲率中心は第1光軸上にない。
【0124】
これらの例示的な実施形態の特徴は、本開示の範囲内にある他の実施形態において組み合わされ得ることが、当業者には理解されるであろう。
【0125】
前述の説明では、既知の自明または予測可能な等価物を有する完全体(integer)または要素が言及されているが、そのような等価物は、本明細書に個別に記載されているかの如く、本明細書に組み込まれているものである。本開示の真の範囲を決定するためには、特許請求の範囲への参照がなされるべきである。特許請求の範囲は、あらゆるそのような等価物を包含するものと解釈されるべきである。また、有利であったり便利であったり等と説明されている本開示の完全体または特徴が、選択的なものであって、独立請求項の範囲を限定するものではないことも、読者には理解されるであろう。更に、そのような選択的な完全体または特徴は、本開示の幾つかの実施形態では有益である可能性があるが、他の実施形態では望ましくない場合があり得て、従って、他の実施形態では存在しない場合がある、ことが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
中央領域と、
環状領域と、
を備えた光学ゾーンを備え、
前記中央領域は、ベース屈折力を有しており、
前記中央領域を通過する複数の光線は、遠位焦点面において焦点の合った画像を形成し、
前記環状領域を通過する複数の光線は、前記遠位焦点面において焦点の合っていない環を形成し、
前記遠位焦点面よりも当該レンズに近い第1近位焦点面において、前記中央領域を通過する複数の光線が第1ぼやけ円を生成し、前記環状領域を通過する複数の光線が第2ぼやけ円を生成し、
前記第1近位焦点面よりも当該レンズに近い第2近位焦点面において、前記中央領域を通過する複数の光線が第3ぼやけ円を生成し、前記環状領域を通過する複数の光線が前記第3ぼやけ円の内部に焦点の合った環を生成する
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項2】
コンタクトレンズであって、
中央領域と、
環状領域と、
を備えた光学ゾーンを備え、
前記中央領域は、第1光軸と、ベース屈折力と、前記第1光軸上にある曲率中心と、第1曲率半径と、を有しており、
前記環状領域は、前記第1光軸から第1距離だけシフトされた曲率中心と、前記第1曲率半径より小さい第2曲率半径と、を有しており、
前記中央領域を通過する複数の光線は、遠位焦点面において焦点の合った画像を形成し、
前記環状領域を通過する複数の光線は、前記遠位焦点面において焦点の合っていない環を形成する
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項3】
コンタクトレンズであって、
中央領域と、
環状領域と、
を備えた光学ゾーンを備え、
前記中央領域は、第1光軸と、ベース屈折力と、前記第1光軸上にある曲率中心と、第1曲率半径と、を有しており、
前記環状領域は、前記中央領域に対して傾斜されており、前記ベース屈折力よりも大きい半径方向の曲率追加屈折力を有しており、
前記中央領域を通過する複数の光線は、遠位焦点面において焦点の合った画像を形成し、
前記環状領域を通過する複数の光線は、前記遠位焦点面において光のスポットを形成しない
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記中央領域の前記ベース屈折力は、当該レンズの前面及び/または後面の曲率から帰結する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記環状領域の前記半径方向の曲率屈折力は、当該レンズの前面及び/または後面の曲率から帰結する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記環状領域の半径方向の幅の中間の点において、前記環状領域は、前記ベース屈折力より約+10.0D大きい半径方向の曲率屈折力を有している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
当該レンズの前記ベース屈折力は、0.5D~-15.0Dの間である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
当該レンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、または、シリコーンヒドロゲル材料、あるいは、それらの混合物、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記レンズは、旋盤加工法または鋳造成形法を使用して形成される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
コンタクトレンズの製造方法であって、
請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトレンズを形成する工程
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記コンタクトレンズを設計する工程
を更に備え、
前記コンタクトレンズを設計する工程は、
(a)第1コンタクトレンズをモデル化する工程と、
(b)第2コンタクトレンズをモデル化する工程と、
を有し、
前記第1コンタクトレンズは、
中央領域と、
環状領域と、
を有し、
前記中央領域は、ベース屈折力と、第1光軸上にある曲率中心と、を有しており、前記環状領域は、前記第1光軸上に中心合わせされた曲率半径を有しており、前記環状領域の曲率が、前記ベース屈折力より大きい第1追加屈折力を生じさせ、
前記第2コンタクトレンズは、
前記第1コンタクトレンズと同一の中央領域と、
前記中央領域を取り囲む環状領域と、
を有し、
前記第2コンタクトレンズの当該環状領域は、前記第1光軸上に中心合わせされた曲率半径を有しており、第2コンタクトレンズの当該環状領域の曲率が、前記第1コンタクトレンズの前記第1追加屈折力より大きい第2追加屈折力を生じさせ、
前記コンタクトレンズを設計する工程は、更に、
(c)前記モデル内において、前記第2コンタクトレンズの環状領域の外縁が前記第1コンタクトレンズの環状領域の外縁と一致するように、前記第2コンタクトレンズの環状領域を傾斜させて、第3コンタクトレンズをモデル化する工程
を更に有し、
前記第3コンタクトレンズの環状領域は、前記第2コンタクトレンズの環状領域の第2追加屈折力と、前記第1光軸から第1距離にある曲率中心と、を有する
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モデル化された第3コンタクトレンズに基づいて、コンタクトレンズを製造する工程
を備えたことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】