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特表2025-500751早発性子癇前症の予後についてのバイオマーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】早発性子癇前症の予後についてのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20250107BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532212
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022085007
(87)【国際公開番号】W WO2023104975
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21213234.4
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508093584
【氏名又は名称】ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】517325825
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ラヴァル
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ブジョルド エマニュエル
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA27
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB07
2G045CB15
2G045DA13
2G045DA16
2G045DA20
2G045DA35
2G045DA36
2G045DA42
2G045DA53
2G045DA66
2G045DA80
2G045DB01
2G045DB06
(57)【要約】
本発明は、妊娠対象における子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、当該妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含む、方法に関する。本発明は更に、妊娠対象における早発性子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、当該妊娠対象から単離された試料中の(sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含み、試料が在胎第12週の終わりの前に対象から単離され、当該sFlt-1又はその断片レベルが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す、方法に関する。本発明は更に、任意選択的に、母体年齢、肥満度指数、子宮動脈ドップラー測定及び/又は平均動脈圧(MAP)から選択される1つ以上の更なる因子の考慮と組み合わせた、sFlt-1及びPlGFの組み合わされた測定に関する。本発明は、本発明の方法を実施するためのキットであって、対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ任意選択的に、本明細書に記載される少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定するための、検出試薬を含む、キットに更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠対象における早発性子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、
a.前記妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含み、
b.前記試料が、在胎第12週の終わりの前に対象から単離され、
c.前記sFlt-1又はその断片のレベルが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す、方法。
【請求項2】
更に、
d.前記対象から単離された前記試料中の胎盤成長因子(PlGF)又はその断片のレベルを決定することを含み、
e.前記sFlt-1又はその断片のレベルと前記PlGF又はその断片のレベルとの組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、在胎第9週~第11週にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、前記在胎第11週にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
更に、
a.前記対象の母体年齢、肥満度指数及び/又は子宮動脈ドップラー測定値を決定又は提供することを含み、
b.好ましくはPlGF又はその断片のレベルと組み合わせたsFlt-1又はその断片のレベルの、前記対象の母体年齢、肥満度指数及び/又は子宮動脈ドップラー測定値との前記組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
更に、
a.前記対象の平均動脈圧(MAP)のレベルを決定又は提供することを含み、
b.好ましくはPlGF又はその断片のレベルと組み合わせたsFlt-1又はその断片のレベルの、前記対象のMAPのレベルとの前記組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
a.前記対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定すること、及びPIGF又はその断片のレベルを決定することと、
b.前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)を決定又は提供することと、を含み、
c.前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベル、並びに前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)の組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
a.対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定すること、及びPIGF又はその断片のレベルを決定することと、
b.前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び平均動脈圧(MAP)、並びに任意選択的に、子宮動脈ドップラー測定値を決定又は提供することと、を含み、
前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベルと、前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び平均動脈圧(MAP)、並びに任意選択的に、子宮動脈ドップラー測定値との組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記試料中で決定された前記sFlt-1又はその断片のレベルが、参照レベル、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値と比較され、前記参照レベル以下のsFlt-1又はその断片のレベルが、早発性子癇前症の高リスクを示す、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試料中で決定された前記PlGF又はその断片のレベルが、参照レベル、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値と比較され、前記参照レベルを上回るPlGF又はその断片のレベルが、早発性子癇前症の高リスクを示す、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記sFlt-1又はその断片のレベル、好ましくは前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベルと、前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)との組み合わせが、在胎第20週の始まり並びに在胎第33週の終わりから起こる子癇前症の早期発症を示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記sFlt-1又はその断片のレベル、好ましくは前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベルと、前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)との組み合わせが、子宮内胎児死亡(IUFD)のその後の発生を更に示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記母体年齢が、18~34、又は34超である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、体液試料、例えば血液試料、例えば静脈血試料、毛細管血試料、血清試料、血漿試料、膣液試料、唾液試料又は羊水試料、好ましくは血液、血清又は血漿試料である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象の前記sFlt-1又はその断片のレベル、並びに任意選択的に、PlGF若しくはその断片のレベル、母体年齢、肥満度指数(BMI)、子宮動脈ドップラー測定値、及び/又は平均動脈圧(MAP)が、例えば、胎盤発達における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を低下させることによって、子癇前症を発症するリスクを低下させ、発症の時点を遅延させ、かつ/又は子癇前症の重症度を低下させ、かつ/又は腎臓及び/若しくは肝臓などの臓器機能を保護するために、前記対象の治療を開始又は改変することを示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療が、1つ以上の利尿薬、β遮断薬、エース阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、α遮断薬、メチルドパ、中枢アゴニスト、及び血管拡張薬、VEGF、PLGF、スタチン、アルギニンバソプレシン受容体アンタゴニスト、L-アルギニン、シトルリン、アルギナーゼ(nor-NOHA)の阻害剤、鉄キレート剤(デフェロキサミン)、ヘパリン、硫酸マグネシウム、ジアゼパム、フェニトイン、ビタミンD、カルシウム、分子のセレン阻害、体外抽出(例えば、アフェレーシス)、生活スタイル推奨、外来モニタリング、母体及び胎児モニタリングの頻度を増加させる、好ましくは低用量アセチルサリチル酸からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記治療がアセチルサリチル酸の投与を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が未経産である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、1回以上の以前の妊娠を有した、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、多胎妊娠を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、染色体異常を有する胎児を妊娠している疑いがある、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、甲状腺機能低下、甲状腺機能亢進、24を超えるBMI、初妊娠、子癇前症の病歴、リスク障害を有する民族、多胎妊娠、片頭痛、狼瘡、血液凝固障害、例えば凝固増加、炎症性疾患、心臓予備障害、糖尿病、慢性腎疾患、及び慢性高血圧からなる群から選択される1つ以上のリスク因子を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカー又はその断片のレベルを決定することを更に含み、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、βhCG、コペプチン、バソプレシン、トロポニン、BNP、ANP、CRP、トロンボサイト/白血球、IL6、IL11、MR-proADM、VEGF、PAPP-A、PIGF、エンドグリン、プロ-Epil、PP-13、ADAM-12、ビタミンD、インヒビン-a、アクチビン-a、ペントラキシン-3、p-セレクチン、遊離胎児ヘモグロビン、α-1-ミクログロブリン、非抱合型エストリオール、α-フェトプロテイン、GDF15、ニューロフィジンII、LNPEP、ESM1、HGF、ピカチュリン、ヘモペキシン、pp13、uE3、CT-proET1、ADAM12、sTNFαR1、RBP4、ICAM、細胞遊離胎児DNA、FSTL3、ビスファチン、AFP、MMP9、TIMP1、Flt1、PCT、SHGB、クレアチニン、GBP1、IGFALS、尿蛋白、PAI1/PAI2、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ(COMT)、ヘムの分解産物(ビリルビン、ビリベルジン、一酸化炭素、フェリチン)、アルギニンの分解産物(尿素、オルニチン、シトルリン、アポリポタンパク質H、アルギノコハク酸、アンモニア)、子宮動脈ドップラー(UtA-Pi)、拡張期ノッチ、MAP、血圧、喫煙、レプチン、遺伝子情報及びアルギニンからなる群から選択され、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベル及び前記sFlt-1又はその断片のレベルが、前記在胎第33週の終わりの前の早発性子癇前症を示す、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の方法を実行するためのキットであって、
-対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつPIGF又はその断片のレベルを決定するための検出試薬と、
-コンピュータ実行可能コードであって、
i.sFlt-1又はその断片の決定されたレベル及びPlGF又はその断片の決定されたレベルを、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する1つ以上の参照レベルと比較することと、
ii.前記対象の母体年齢、肥満度指数、MAP及び/又は子宮動脈ドップラー測定値を、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する1つ以上の参照レベルと比較することと、を行うように構成された、コンピュータ実行可能コードの形態のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータソフトウェアと、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的状態、特に子癇前症(preeclampsia、PE)についての臨床的及び分子的診断及び予後診断の分野におけるものである。
【0002】
したがって、本発明は、妊娠対象における子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、当該妊娠対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定することを含み、当該sFlt-1又はその断片のレベルが、子癇前症の可能性を示す、方法に関する。
【0003】
本発明は更に、妊娠対象における早発性子癇前症(early onset preeclampsia、EO-PE)の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、当該妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(soluble fms-like tyrosine kinase-1、sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含み、試料が在胎第12週の終わりの前に対象から単離され、当該sFlt-1又はその断片のレベルが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す、方法に関する。
【0004】
本発明は更に、妊娠対象における早発性子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、当該妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片のレベル及び胎盤成長因子(placental growth factor、PlGF)又はその断片のレベルを決定することを含む、方法に関する。本発明は更に、母体年齢、肥満度指数、子宮動脈ドップラー測定及び/又は平均動脈圧(mean arterial pressure、MAP)から選択される1つ以上の更なる因子の考慮と組み合わせた、sFlt-1及びPlGFの測定に関する。
【0005】
本発明は、本発明の方法を実施するためのキットであって、対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ任意選択的に、PlGFなどの本明細書に記載される少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定するための検出試薬を含む、キットに更に関する。
【背景技術】
【0006】
子癇前症(PE)は、妊娠に特異的な高血庄性障害であり、世界中の母体及び周産期の罹患及び死亡の主因である。世界保健機関(The World Health Organization、WHO)は、世界の母体死亡率の16%(年間約63000人の母体死亡)がPE単独によるものであると推定している。幼児もリスクがある。子癇前症は、全妊娠の約2~8パーセントを悪化させ、世界中の母体及び胎児の死亡の主要な原因である(Duley 2009,Semin Perinatal:33:130-37)。子癇前症は一般に、在胎第20週後に発症する妊娠関連又は誘発高血圧及びタンパク尿として定義される。早発性子癇前症(EO-PE)は、子癇前症症例の低罹患率サブグループであり、全妊娠の0.2~0.4%で起こり、子宮内胎児死亡(intra-uterine fetal death、IUFD)及び高周産期死亡率などの様々な有害な周産期転帰に関連する。
【0007】
母体死亡のリスクは、リソースが限られた設定でははるかに高い。主要な母体及び胎児の罹患率に関与する最も頻繁に認識される要因は、子癇前症を適時に認識できないことである。その結果、妊娠女性は、血圧上昇及びタンパク尿を含む障害に関連する合併症が発症した後、長期間を経過するまで、有効なモニタリング又は治療を受けることができない。更に、そのような障害を発症するリスクがほとんどないか又は全くない妊娠女性は、介護者が妊娠の初期段階において彼らをリスクから除外し得る有効な手段がないので、妊娠女性の妊娠を通して症状について不必要な試験を受けなければならない。
【0008】
国際公開第2008/103202(A2)は、COMT、HIF-1α、EPO、LDH-A、ET-I、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、及びFlk-I、遊離VEGF、総VEGF、sFlt-1、PlGFを測定することによって、妊娠に関連する高血庄性障害を診断する方法を開示している。参照レベルと比較したこれらのポリペプチドの変化した発現は、妊娠に関連する高血庄性障害の指標である。
【0009】
国際公開第2006/069373(A2)は、妊娠女性が高血庄性障害を有するか又は発症しやすいと診断する方法を開示している。尿試料中のsFlt-1及び胎盤成長因子(PlGF)のレベルを測定する。sFlt-1発現対PlGF発現の比は、女性が高血庄性障害を発症するリスクがあるかどうかに関する指標として使用される。
【0010】
国際公開第2004/008946(A2)は、可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)に結合することができる化合物を投与するステップを含む、対象における子癇前症又は子癇を治療又は予防する方法を開示している。子癇前症の発症前の患者におけるより高いsFlt-1濃度は、臨床疾患の発症前5週間以内のsFlt-1の急性上昇によるものであることが更に開示された。
【0011】
現在までの子癇前症の最も侵襲的な治療は、早産の経腟出産又は帝王切開出産のいずれかによる妊娠の終了である。前述したように、在胎週34以前の子癇前症の場合、母体のリスク及び胎児の生存率は著しく損なわれる。したがって、出産を遅らせ、それによって新生児の生存を改善する試みがなされるべきである。Tsakiridis et al.(Volume 76,Number 10,Obstetrical and Gynecological Survey)は、高リスク患者における、理想的には分娩までの第1期(first trimester)又は在胎第36~第37週における低用量アスピリンの早期投与を記載する妊娠関連ガイドラインの内容を強調した。
【0012】
臨床的に無症候性であるか、又は子癇前症を有する若しくは発症している疑いがある女性における子癇前症の第1期内の予後を改善することは、臨床的に非常に重要である。
【0013】
早発性PEなどの最も重篤な形態では、できるだけ早く、理想的には妊娠第11週にできるだけ早く治療を開始することが必要であるが、早期治療は、妊娠第12週~第15週など、その後に開始してもよい。現在、約60~66%の早期PE及び約70%の早発性PEがFMFアルゴリズムで検出されている。Fetal Medicine Foundation(FMF)スクリーニングアルゴリズムは、血圧、妊娠関連血漿タンパク質A及び胎盤成長因子、頭殿長、並びに子宮動脈拍動指数などの因子を含む、複数の母体の特徴及び病歴の考慮を含む。しかしながら、FMFアルゴリズムは複雑であり、子宮動脈ドップラー測定に依存しており、この技術は全ての妊娠対象に一般的に利用可能ではない。子癇前症、特に早発性子癇前症のリスクを妊娠の初期段階で決定するための改善され簡略化された手段が、当該分野において緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
先行技術に照らして、本発明の根底にある技術的課題は、妊娠対象における子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための改善された又は代替的な手段を提供することである。本発明の更なる目的は、子癇前症の早期予後又はリスク評価のための手段を提供することである。本発明の更なる目的は、妊娠第1期内の子癇前症のリスク評価に対する予後アプローチを提供することである。本発明の更なる目的は、感度を増加させ、好ましくは子宮動脈ドップラー測定を必要としない、妊娠の初期段階における早発性子癇前症のスクリーニング又は予後を改善及び/又は簡略化する手段を提供することに関する。
【0015】
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によって提供される。
【0016】
したがって、本発明は、妊娠対象における早発性子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、
a.当該妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含み、
b.試料が在胎第12週の終わりの前(90日GAの前)に対象から単離され、
c.当該sFlt-1又はその断片のレベルが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す、方法に関する。
【0017】
したがって、本明細書に記載の方法は、妊娠の初期段階でのEO-PEリスク評価を可能にし、したがって、妊娠の非常に初期段階で適切な予防的治療を開始する可能性を臨床医に提供する。EO-PEなどの最も重篤な形態のPEでは、できるだけ早く、好ましくは妊娠第11週に早く治療を開始することが勧められる。本発明の時点まで、PE予後のために分子分析が利用可能であったが、EO-PEの初期段階の予後は、主に子宮動脈ドップラー測定を用いるFMFアルゴリズムに依存していた。したがって、本発明は、非常に初期の在胎齢(gestational age、GA)においてEO-PEのリスクがある対象を同定することに向けた、単純かつ信頼できる分子診断及び/又は予後アプローチを可能にする。
【0018】
注目すべきは、sFlt-1測定が、第1期全体を通して得られた複数の試料から決定された場合、EO-PEとの統計的に関連する相関を提供しないことである(図2、下記)。更に注目すべきは、sFlt-1測定は、GAの12 6/7週後に得られた複数の試料から決定された場合、EO-PEとの統計的に関連する相関も提供しないことである(図3図4、下記)。驚くべきことに、在胎第12週以内又は90日以内のsFlt-1の測定は、EO-PEとの有意な相関、特に、EO-PEとの逆相関を示す(図5図6)。したがって、90日GA以内にsFlt-1を決定することは、初期時点でのEO-PEの信頼できる予後を可能にする。
【0019】
本発明の様々な態様は、第12週の終わり前、例えば90日GA前のGAの妊娠対象由来の試料中のsFlt-1又はその断片のレベルが、早発性子癇前症の可能性を示すという共通の知見によって統一され、それから利益を受け、それに基づき、かつ/又はそれによって関連付けられる。
【0020】
本発明は、医師、看護師、救急科の職員などの医療従事者が、妊娠している対象がPEを発症する可能性を迅速かつ正確に評価するための効率的かつ信頼性のある試験を提供する。典型的には、そのような障害を発症するリスクがほとんどないか全くない妊娠女性は、介護者が妊娠の初期段階において彼らをリスクから除外し得る有効な手段がないので、妊娠女性の妊娠全体を通して症状について不必要な試験を受けなければならない。
【0021】
高レベルの胎盤可溶性fms様チロシンキナーゼ(sFlt-1)は、妊娠の第2期(在胎第14週~第27週)及び第3期(在胎第28週から出産まで)におけるPEと強く関連する。驚くべきことに、本発明によれば、妊娠の最初の90日におけるsFlt-1又はその断片のレベルは、早発性PEとも関連しており、低いsFlt-1レベルは、EO-PEを示す。
【0022】
この驚くべき発見に基づき、本発明は、EO-PEを発症するリスクが増加している又は高い妊娠対象を同定するための手段を提供し、また、患者から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定することによって、そのような合併症の発症の可能性が低いか、又はそのような合併症の発症を実質的に除外することができる患者を同定するための手段を提供する。
【0023】
この驚くべき発見の効果として生じる更なる利点は、PEを予後診断するためのバイオマーカー、臨床パラメータ及び画像化手順の従来の組み合わせに加えて、予後マーカーsFlt-1が、子宮動脈拍動指数(UAPI)を測定するためのデバイスが利用可能であるかどうかにかかわらず、いずれの医療現場においても使用され得ることであり、そのために、特別な超音波検査デバイス及びデバイスを操作し、測定を行うための専門家が典型的には必要とされる。したがって、簡単で低侵襲性の試験が可能になる。
【0024】
更に注目すべきは、在胎第11週~第14週から在胎第37週までアスピリン又はプラセボを受けるように無作為化されたFMFアルゴリズムに従って、早発性PEのリスクが高いと同定された女性を含む多施設試験である、エビデンスに基づく子癇前症予防のためのアスピリン(Aspirin for Evidence-Based Preeclampsia Prevention、ASPRE)試験は、プラセボ群と比較して、毎日の低用量アスピリンによる早発性PEの62%の減少を示した(相対リスク、0.38;95%信頼区間[confidence interval、CI]、0.20-0.74)。
【0025】
妊娠の最初の12週間にEO-PEを発症するリスクが高いと正確に予測することができれば、この効率的な治療を妊娠初期の妊娠対象に適用することができる。これは、EO-PEを発症する高いリスクが妊娠の第1期において予測され得るという驚くべき発見に基づく別の利点をもたらし、その結果、PEを発症する高いリスクを有すると予測された対象に対して、予防のための軽度の治療、投薬、又は更にはベッド上安静、及び任意の重大な手段(例えば、妊娠の後期においてPEを発症した後の妊娠の早期終了)の代わりの頻繁なモニタリングが行われ得る。
【0026】
一実施形態では、本方法は、
a.対象から単離された試料中の胎盤成長因子(PlGF)又はその断片のレベルを決定することを更に含み、
b.sFlt-1又はその断片のレベルとPlGF又はその断片の当該レベルとの組み合わせが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す。
【0027】
以下により詳細に示されるように、sFlt-1及びPlGFの併用は、試料が妊娠初期、例えば在胎第12週の終わりの前(90日GAの前)に得られる場合、EO-PEの統計的に改善された予後をもたらす。注目すべきことに、PlGFは、典型的には、90日GA後に測定された場合にEO-PEを予後診断するのに有効であるが、sFlt-1は、90日GA後の単一の測定から信頼できる予後診断ステートメントを可能にしないようである(図7)。驚くべきことに、sFlt-1及びPlGFの両方は、12週間(90日以内)GAの終わりの前に測定された場合、EO-PE予後を可能にする。しかしながら、sFlt-1は、同等の特異性値、好ましくは0.6を超える値で、より大きな感度を提供するようである(図8)。また驚くべきことに、sFlt-1及びPlGFの組み合わせ分析は、90日GAの前に測定された場合、EO-PE予後における予想外の相乗的増強を示す(図9)。
【0028】
本方法の実施形態では、対象は在胎第9週~第11週にある。
【0029】
本方法の実施形態では、対象は在胎第11週にある。
【0030】
本方法の実施形態では、対象は、在胎齢(GA)が50~90日、好ましくは60~90日、又は70~90日、例えば63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、又は90日GAである。
【0031】
上述したように、サンプリング及び試験のこれらの初期時点は、早期の治療開始を可能にし、これは、重症型のPEの発生に効果的に対処及び/又は予防するのに重要であり得る。
【0032】
実施形態では、本方法は、
a.対象の母体年齢、肥満度指数及び/又は子宮動脈ドップラー測定値を決定又は提供することを更に含み、
b.好ましくはPlGF又はその断片のレベルと組み合わせたsFlt-1又はその断片のレベルの、対象の母体年齢、肥満度指数及び/又は子宮動脈ドップラー測定値との組み合わせが、在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す。
【0033】
実施形態では、本方法は、
a.対象の平均動脈圧(MAP)のレベルを決定又は提供することを更に含み、
b.好ましくはPlGF又はその断片のレベルと組み合わせたsFlt-1又はその断片のレベルの、対象のMAPのレベルとの組み合わせが、在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す。
【0034】
以下の図10に示すように、sFlt-1及びPlGF測定の組み合わせは、追加の子宮動脈ドップラー測定と組み合わせた場合、診断能力の更なる改善を示す。
【0035】
実施形態では、本方法は、
a.対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定すること、及びPlGF又はその断片のレベルを決定することと、
b.対象の母体年齢、肥満度指数(body mass index、BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)を決定又は提供することと、を含み、
c.当該sFlt-1又はその断片のレベル、当該PlGF又はその断片のレベル、並びに対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)の組み合わせが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す。
【0036】
実施形態では、本方法は、
a.対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定すること、及びPIGF又はその断片のレベルを決定することと、
b.対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び平均動脈圧(MAP)、並びに任意選択的に、子宮動脈ドップラー測定値を決定又は提供すことと、を含み、
c.当該sFlt-1又はその断片のレベル、当該PlGF又はその断片のレベルと、対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び平均動脈圧(MAP)、並びに任意選択的に、子宮動脈ドップラー測定値との組み合わせが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す。
【0037】
本発明の実施形態では、試料中で決定されたsFlt-1又はその断片のレベルは、参照レベル、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値と比較され、参照レベル以下のsFlt-1又はその断片のレベルは、早発性子癇前症のリスク、例えば高リスクを示す。
【0038】
実施形態では、参照レベルは、同じGAからの健常な妊娠、又はEO-PEを発症しない妊娠の集団から決定される。
【0039】
本発明の実施形態では、試料中で決定されたPlGF又はその断片のレベルは、参照レベル、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値と比較され、参照レベルを上回るPlGF又はその断片のレベルは、早発性子癇前症のリスク、例えば高リスクを示す。
【0040】
本発明の実施形態では、sFlt-1又はその断片のレベル、好ましくは当該sFlt-1又はその断片のレベル、当該PlGF又はその断片のレベルと、対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)との組み合わせは、在胎第20週の始まり並びに在胎第33週の終わりから起こる子癇前症の早期発症を示す。
【0041】
本発明の更なる実施形態及び態様は、子宮内胎児死亡(IUFD)の指標のために使用される、本明細書に記載の方法に関する。
【0042】
本発明の実施形態は、IUFDの予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化に関する。IUFDの予後は、EO-PEの予後診断とは独立していてもよいか、又はこれと組み合わされていてもよい。換言すれば、EO-PEはIUFDと組み合わせて生じてもよいか、又はIUFDはEO-PEとは独立して生じてもよい。EO-PEの予後に関して本明細書に記載される方法及びキットの特徴は、IUFDの予後に等しく適用され、逆もまた同様である。
【0043】
以下により詳細に示すように、sFlt-1及びPlGFの併用は、試料が90~100日GAの間に得られた場合にIUFDの予後をもたらし(図11)、試料がGA 90日前に得られた場合にIUFDの予後の統計学的改善を示す(図12)。
【0044】
本発明の実施形態では、sFlt-1又はその断片のレベル、好ましくは当該sFlt-1又はその断片のレベル、当該PlGF又はその断片のレベルと、対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)との組み合わせが、子宮内胎児死亡(IUFD)のその後の発生を更に示す。
【0045】
本発明の実施形態では、試料は、体液試料、例えば血液試料、例えば静脈血試料、毛細管血試料、血清試料、血漿試料、膣液試料、唾液試料又は羊水試料、好ましくは血液、血清又は血漿試料である。
【0046】
本発明の実施形態では、対象のsFlt-1又はその断片のレベル、並びに任意選択的に、PlGF若しくはその断片のレベル、母体年齢、肥満度指数(BMI)、子宮動脈ドップラー測定値、及び/又は平均動脈圧(MAP)は、例えば、胎盤発達における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を低下させることによって、子癇前症を発症するリスクを低下させ、発症の時点を遅延させ、かつ/又は子癇前症の重症度を低下させ、かつ/又は腎臓及び/若しくは肝臓などの臓器機能を保護するために、対象の治療を開始又は改変することを示す。
【0047】
本発明の実施形態では、治療は、1つ以上の利尿薬、β遮断薬、エース(ace)阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、α遮断薬、メチルドパ、中枢アゴニスト、及び血管拡張薬、VEGF、PLGF、スタチン、アルギニンバソプレシン受容体アンタゴニスト、L-アルギニン、シトルリン、アルギナーゼ(nor-NOHA)の阻害剤、鉄キレート剤(デフェロキサミン)、ヘパリン、硫酸マグネシウム、ジアゼパム、フェニトイン、ビタミンD、カルシウム、分子のセレン阻害、体外抽出(例えば、アフェレーシス)、生活スタイル推奨、外来モニタリング、母体及び胎児モニタリングの頻度を増加させる、好ましくは低用量アセチルサリチル酸又はメトホルミンからなる群から選択される。
【0048】
本発明の実施形態では、治療はアセチルサリチル酸の投与を含む。
【0049】
本発明の実施形態では、治療はメトホルミンの投与を含む。
【0050】
したがって、本発明は、早発性子癇前症のリスクを低下させるために妊娠対象を治療する方法であって、
a.
-当該妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含み、
-試料が、在胎第12週の終わりの前(90日GAの前)に対象から単離され、
-当該sFlt-1又はその断片のレベルが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す、妊娠対象における早発性子癇前症の予後診断、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化と、
b.子癇前症を発症するリスクを低下させ、発症の時点を遅延させ、かつ/又は子癇前症の重症度を低下させるための治療を対象に投与することと、を含む、方法に関する。
【0051】
実施形態では、施される処置は、胎盤発生における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を低下させること、並びに/又は腎臓及び/若しくは肝臓などの臓器機能を保護することに関するか、又はそれを含む。
【0052】
治療方法の実施形態では、治療は、1つ以上の利尿薬、β遮断薬、エース阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、α遮断薬、メチルドパ、中枢アゴニスト、及び血管拡張薬、VEGF、PLGF、スタチン、アルギニンバソプレシン受容体アンタゴニスト、L-アルギニン、シトルリン、アルギナーゼ(nor-NOHA)の阻害剤、鉄キレート剤(デフェロキサミン)、ヘパリン、硫酸マグネシウム、ジアゼパム、フェニトイン、ビタミンD、カルシウム、分子のセレン阻害、体外抽出(例えば、アフェレーシス)、生活スタイル推奨、外来モニタリング、母体及び胎児モニタリングの頻度を増加させる、好ましくは低用量アセチルサリチル酸又はメトホルミンからなる群から選択される。
【0053】
治療方法の実施形態では、治療はアセチルサリチル酸の投与を含む。
【0054】
治療方法の実施形態では、治療はメトホルミンの投与を含む。
【0055】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも6%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、胎盤発達における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を下げること、腎臓若しくは肝臓などから臓器機能を保護することなど、PEを発症するリスクを低下させるか、発症の時点を遅延させるか、又はPEの重症度を少なくとも低下させるために、対象の治療を開始又は改変することを示す。
【0056】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも8%低い、又は参照試料よりも12%低い、15%低い、若しくは20%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、胎盤発達における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を低下させること、腎臓若しくは肝臓などから臓器機能を保護することなど、PEを発症するリスクを低下させるか、発症の時点を遅延させるか、又はPEの重症度を少なくとも低下させるために、対象の治療を開始又は改変することを示す。
【0057】
婦人科医及び/又は医師は、危険因子を伴うか又は伴わない現在の状態に従って、対象のための好適な治療を決定し得る。実施形態では、参照試料よりも少なくとも8%低い、又は参照試料よりも12%低い、15%低い、若しくは20%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、胎盤発達における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を低下させること、腎臓若しくは肝臓などから臓器機能を保護することなど、PEを発症するリスクを低下させるか、発症の時点を遅延させるか、又はPEの重症度を少なくとも低下させるために、対象の治療を開始又は改変することを示す。
【0058】
婦人科医及び/又は医師は、危険因子を伴うか又は伴わない現在の状態に従って、対象のための好適な治療を決定し得る。
【0059】
実施形態では、アスピリン治療は、早発性PEの顕著な減少と関連付けられている在胎第16週前に開始され得る。在胎第11週~第14週から在胎第37週までアスピリン又はプラセボを受けるように無作為化されたFMFアルゴリズムに従って、早発性PEのリスクが高いと同定された女性を含む多施設試験である、エビデンスに基づく子癇前症予防のためのアスピリン(ASPRE)試験は、プラセボ群と比較して、毎日の低用量アスピリンによる早発性PEの62%の減少を示した(相対リスク、0.38;95%信頼区間[CI]、0.20-0.74)。
【0060】
本発明の実施形態では、対象は、甲状腺機能低下、甲状腺機能亢進、24を超えるBMI、初妊娠、子癇前症の病歴、リスク障害を有する民族、多胎妊娠、片頭痛、狼瘡、血液凝固障害、例えば凝固増加、炎症性疾患、心臓予備障害、糖尿病、慢性腎疾患、及び慢性高血圧からなる群から選択される1つ以上のリスク因子を有する。
【0061】
本発明の実施形態では、方法は、当該患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカー又はその断片のレベルを決定することを更に含み、少なくとも1つの追加のバイオマーカーは、βhCG、コペプチン、バソプレシン、トロポニン、BNP、ANP、CRP、トロンボサイト(trombocyte)/白血球、IL6、IL11、MR-proADM、VEGF、PAPP-A、PIGF、エンドグリン、プロ-Epil、PP-13、ADAM-12、ビタミンD、インヒビン-a、アクチビン-a、ペントラキシン-3、p-セレクチン、遊離胎児ヘモグロビン、α-1-ミクログロブリン、非抱合型エストリオール、α-フェトプロテイン、GDF15、ニューロフィジンII、LNPEP、ESM1、HGF、ピカチュリン、ヘモペキシン、pp13、uE3、CT-proET1、ADAM12、sTNFαR1、RBP4、ICAM、細胞遊離胎児DNA、FSTL3、ビスファチン、AFP、MMP9、TIMP1、Flt1、PCT、SHGB、クレアチニン、GBP1、IGFALS、尿蛋白、PAI1/PAI2、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ(catechol-o-methyltransferase、COMT)、ヘムの分解産物(ビリルビン、ビリベルジン、一酸化炭素、フェリチン)、アルギニンの分解産物(尿素、オルニチン、シトルリン、アポリポタンパク質H、アルギノコハク酸、アンモニア)、子宮動脈ドップラー(Uterine artery Doppler、UtA-Pi)、拡張期ノッチ、MAP、血圧、喫煙、レプチン、遺伝子情報及びアルギニンからなる群から選択され、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベル及びsFlt-1又はその断片のレベルは、在胎第33週の終わりの前の早発性子癇前症を示す。
【0062】
実施形態では、追加のマーカーPAPP-A及び/又はPIGFをsFlt-1と組み合わせて使用する。
【0063】
実施形態では、追加のマーカーMAP、PAPP-A及び/又はPlGFをsFlt-1と組み合わせて使用する。
【0064】
実施形態では、追加のマーカーMAP、PAPP-A、βhGC及び/又はPlGFをsFlt-1と組み合わせて使用する。
【0065】
本発明の実施形態では、対象は未経産である。
【0066】
本発明の実施形態では、対象は、1回以上の以前の妊娠を有した。
【0067】
本発明の実施形態では、対象は多胎妊娠を有する。
【0068】
本発明の実施形態では、対象は、染色体異常を有する胎児を妊娠している疑いがある。
【0069】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載される方法を実行するためのキットに関する。
【0070】
実施形態では、キットは、
-対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ/又はPIGF又はその断片のレベルを決定するための検出試薬と、
-EO-PEリスクを決定するのに有用な分析を行うように構成された、コンピュータ実行可能コードの形態のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータソフトウェアと、を含む。
【0071】
実施形態では、コンピュータ実行可能コードの形態のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータソフトウェアは、
i.sFlt-1又はその断片の決定されたレベル及びPlGF又はその断片の決定されたレベルを、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する1つ以上の参照レベルと比較することと、
ii.対象の母体年齢、肥満度指数、MAP及び/又は子宮動脈ドップラー測定値を、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する1つ以上の参照レベルと比較することと、を行うように構成されている。
【0072】
本発明の実施形態では、キット中のソフトウェア、又はキットが接続するように構成されているソフトウェアは、本明細書に記載されているものなどの決定された分子マーカーの比較を可能にし、90日GA以内に得られた試料に基づくEO-PEリスクに関する予後ステートメントを提供する。
【0073】
本発明の実施形態では、キットは、当該ソフトウェアを有する物理的ディスク又はコンピュータ可読媒体を含み、あるいは、キットは、インターネットを介してサーバとの接続を誘導及び/又は提供するのに好適なリンク又はQRコード(登録商標)などの他のコードを提供し、適切なソフトウェアが維持され、かつ/又は実行され得る。
【0074】
本発明の更なる態様及び実施形態:
本発明は、妊娠対象における子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、
a.当該妊娠対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定することを含み、
b.当該sFlt-1又はその断片のレベルが、子癇前症の可能性を示す、方法に関する。
【0075】
本発明は、本発明の方法を実施するためのキットであって、対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ任意選択的に、本明細書に記載の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定するための検出試薬を含み、キットが、子癇前症の高リスク又は低リスクを示す参照レベルに対応する1つ以上のカットオフレベルなどの参照レベルを更に含む、キットに更に関する。
【0076】
したがって、本発明は更に、妊娠対象における子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、
a.当該妊娠対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定することを含み、
b.当該sFlt-1又はその断片のレベルが、子癇前症の可能性を示し、
c.試料が、妊娠第12週の終わりまでに対象から単離される、方法に関する。
【0077】
一実施形態では、対象は、妊娠第9週~第11週、好ましくは妊娠第11週にある。
【0078】
驚くべきことに、在胎第11週、在胎第12週及び在胎第13週に募集された女性の間で、早発性PEに対するsFlt-1の予測値(AUC値)の有意差が観察された。在胎第11週の対象の試料中のsFlt-1レベルの早発性PEを予測するためのAUC値は、0.82に達する。在胎第12週の対象の試料中のsFlt-1レベルの早発性PEを予測するためのAUC値は、0.62に達する。在胎第13週の対象の試料中のsFlt-1レベルの早発性PEを予測するためのAUC値は、0.50に達する。同様の傾向が、驚くべきことに、中期発症PEの予測について観察された。
【0079】
驚くべき発見に基づく利点は、妊娠初期、特に在胎第11週におけるsFlt-1又はその断片のレベルを決定することによって、PEを発症する可能性を正確に予測できることである。
【0080】
実施形態では、母体年齢は18未満である。
【0081】
実施形態では、母体年齢は18~34である。
【0082】
実施形態では、母体年齢は34超である。
【0083】
驚くべきことに、母体年齢18~34及び34超についてのsFlt-1の予測値(AUC値)の差が観察された。
【0084】
34以上の母体年齢を有する妊娠対象は、早期出産、高血圧、併発PE、重症PE、及び絨毛羊膜炎のリスクの減少についてより大きな確率を有し得る。
【0085】
40以上の母体年齢を有する妊娠対象は、軽度のPE、胎児ジストレス、及び低い胎児成長についての増加した確率を有し得る。
【0086】
18未満、34以上、及び40以上の母体年齢を含む示されたリスク群の対象が、在胎第12週の終わりの前又は終わりまでの時点で子癇前症の正確な予後を知ることができることは非常に有利である。
【0087】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、以下を含む。
a.試料中で決定されたsFlt-1又はその断片のレベルが、参照試料に由来する参照レベルと比較される。
b.ここで、参照レベル以下のsFlt-1若しくはその断片のレベルが、子癇前症の高リスクを示すか、又は
c.参照レベルを上回るsFlt-1又はその断片のレベルが、子癇前症の低リスクを示す。
【0088】
実施形態では、参照レベルは、PE又は子癇などの任意の妊娠に関連する高血庄性障害を有していないか又は罹患していない妊娠対象から単離された参照試料に由来する。
【0089】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも2~5%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも2%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの低リスクを示す。
【0090】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも5.8%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも5.8%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの低リスクを示す。
【0091】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも8%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも8%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの低リスクを示す。
【0092】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも12%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも12%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの低リスクを示す。
【0093】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも15%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも15%未満低いsFlt-1又は、その断片のレベルは、PEの低リスクを示す。
【0094】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも20%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも20%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの低リスクを示す。
【0095】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも5.8%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、終期PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも5.8%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、終期PEの低リスクを示す。
【0096】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも8.8%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、終期PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも8.8%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、終期PEの低リスクを示す。
【0097】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも11%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、終期PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも11%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、終期PEの低リスクを示す。
【0098】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも14.7%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、早発性PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも14.7%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、早発性PEの低リスクを示す。
【0099】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも16.7%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、早発性PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも16.7%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、早発性PEの低リスクを示す。
【0100】
実施形態では、参照試料よりも少なくとも20%低いsFlt-1又はその断片のレベルは、早発性PEの高リスクを示す。実施形態では、参照試料よりも20%未満低いsFlt-1又はその断片のレベルは、早発性PEの低リスクを示す。
【0101】
実施形態では、sFlt-1又はその断片のレベルは、在胎第20週の始まりから在胎第33週の終わりまでに起こるPEの早期発症、又は在胎第34週の始まりから在胎第36週の終わりまでに起こるPEの中期発症を示す。
【0102】
実施形態では、参照レベルよりも少なくとも15%、好ましくは20%低い試料中のsFlt-1又はその断片のレベルは、在胎第20週の始まりから在胎第33週の終わりまでに起こるPEの早期発症を示す。
【0103】
実施形態では、参照レベルより15%未満低い試料中のsFlt-1又はその断片のレベルは、PEの早期発症の低リスクを示す。
【0104】
実施形態では、参照レベルよりも少なくとも6%、好ましくは12%低い試料中のsFlt-1又はその断片のレベルは、在胎第20週の始まりから在胎第33週の終わりまでに起こるPEの早期発症、又は在胎第34週の始まりから在胎第36第週の終わりまでに起こるPEの中期発症を示す。
【0105】
実施形態では、更なるリスクパラメータは、胎児の性別である。驚くべきことに、少なくとも女子胎児又は少なくとも男子胎児を有する対象の試料におけるsFlt-1レベルの予測値(AUC値)の有意差、並びに参照レベルと比較したsFlt-1レベルの有意な低下を観察することができる。実施形態では、対象の試料中のsFlt-1のレベルは、参照レベルと比較して少なくとも6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%又は25%低下する。この驚くべき発見に基づいて、そのようなリスクパラメータを保有する対象は、PEのリスクを有すると予測され得る。
【0106】
本発明の一態様は、本発明の方法を実行するためのキットであって、
-対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ任意選択的に、本明細書に記載の少なくとも1つの追加のバイオマーカー、好ましくはPAPP-A及び/又はPIGFのレベルを決定するための検出試薬と、
-子癇前症の高リスク又は低リスクを示す参照レベルに対応する、1つ以上のカットオフレベルなどの参照レベルと、を含む、キットに関する。
【0107】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法を実行するためのキットであって、
-対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ任意選択的に、本明細書に記載の少なくとも1つの追加のバイオマーカー、好ましくはPAPP-A及び/又はPIGFのレベルを決定するための検出試薬と、
-参照レベル、例えば1つ以上のカットオフレベルであって、
子癇前症のリスクを示す最大18歳の対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、
子癇前症のリスクを示す18~34歳の対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
子癇前症のリスクを示す34歳を超える対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベルに対応する、参照レベルと、を含み、
当該参照レベルが、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/又はsFlt-1又はその断片の決定されたレベル、及び任意選択的に、少なくとも1つの追加のバイオマーカーの決定されたレベルを、当該参照レベルと比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形式で用いられる、キットに関する。
【0108】
一実施形態では、本明細書に記載の方法を実行するためのキットは、
-対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ任意選択的に、本明細書に記載の少なくとも1つの追加のバイオマーカー、好ましくはPAPP-A及び/又はPIGFのレベルを決定するための検出試薬と、
-参照レベル、例えば1つ以上のカットオフレベルであって、
子癇前症のリスクを示す血液型ABを有する対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
子癇前症のリスクを示す血液型Rh陰性を有する対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
血液型Rh陰性であり、かつ子癇前症のリスクを示すRh陽性の胎児の生物学的父親を有する対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
子癇前症のリスクを示す少なくとも1人の女子胎児を妊娠している対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
子癇前症のリスクを示す少なくとも1人の男子胎児を妊娠している対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
子癇前症のリスクを示す未経産の対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
子癇前症のリスクを示す1回以上の以前の妊娠を有する対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は子癇前症のリスクを示す多胎妊娠を有する対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
子癇前症のリスクを示す染色体異常を有する胎児を妊娠している疑いのある対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベルに対応する、参照レベルと、を含み、
当該参照レベルが、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/又はsFlt-1若しくはその断片の決定されたレベル、及び任意選択的に、少なくとも1つの追加のバイオマーカーの決定されたレベルを、当該参照レベルと比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形式で用いられる。
【0109】
一実施形態では、本明細書に記載の方法を実行するためのキットは、
-対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ任意選択的に、本明細書に記載の少なくとも1つの追加のバイオマーカー、好ましくはPAPP-A及び/又はPIGFのレベルを決定するための検出試薬と、
-参照レベル、例えば1つ以上のカットオフレベルであって、
在胎第20週の始まりから在胎第33週の終わりまでに起こる子癇前症の早期発症のリスクを示す、対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、
在胎第34週の始まりから在胎第36週の終わりまでに起こる子癇前症の中期発症の子癇前症のリスクを示す対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベル、又は
子癇前症を発症する低リスクを示す対象から単離された試料中のsFlt-1若しくはその断片のレベルに対応する参照レベルと、を含み、
当該参照レベルが、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/又はsFlt-1若しくはその断片の決定されたレベル、及び任意選択的に、少なくとも1つの追加のバイオマーカーの決定されたレベルを、当該参照レベルと比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形式で用いられる。
【0110】
本発明は、早発性子癇前症(在胎第33週の終わりの前に起こる)のリスクがある対象を同定し、当該対象を治療するための方法であって、
(a)妊娠対象における早発性子癇前症の診断、予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化であって、
-当該妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含み、
-試料が、在胎第12週の終わりの前(90日GAの前)に対象から単離され、
-当該sFlt-1又はその断片のレベルが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す、診断、予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化と、
(b)早発性子癇前症のための治療又は早発性子癇前症のリスクを低減するための治療を当該対象に投与することと、を含む、方法に更に関する。
【0111】
本発明は、対象に由来する試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片を検出するための方法であって、
-sFlt-1又はその断片に対する少なくとも1つの結合剤を含む複合体を有する、対象の試料、好ましくは血液試料又は血液試料に由来する試料を提供すること、及び好ましくは、PlGF若しくはその断片に対する少なくとも1つの結合剤を含む複合体を有する、対象の試料、好ましくは血液試料又は血液試料に由来する試料を提供することを含み、
-試料が、閾値、例えば、本明細書に開示される任意の閾値、好ましくは、それぞれの患者集団における任意の所与の時点での正常妊娠からのsFlt-1レベルの集団平均及び/又は集団中央値を下回る又は上回るsFlt-1、好ましくはPlGFのレベルを有する、方法に更に関する。
【0112】
本発明は、在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を治療する及び/若しくは早発性子癇前症のリスクを低減するための、又は早発性子癇前症のための治療を対象に投与するための方法であって、
-早発性子癇前症のための治療を対象に投与することを含み、
-当該対象は、対象の体液試料、好ましくは血液試料又は血液試料に由来する試料において、それぞれの患者集団における任意の所与の時点での正常妊娠からのsFlt-1、好ましくはPlGFのレベルの閾値、例えば本明細書に開示される任意の閾値、好ましくは集団平均及び/又は集団中央値を下回る又は上回るsFlt-1、好ましくはPlGFのレベルを有すると決定されている、方法に更に関する。
【0113】
本発明の方法を記載する実施形態は、本発明のキットを記載するために使用され得、逆もまた同様である。本方法のいくつかの実施形態において開示される特徴はまた、本方法の他の実施形態又は本発明の他の方法を特徴付けるために使用され得る。本発明は、12週(90日)GAまでに得られた試料においてEO-PEを発症するリスクを示すための予後マーカーsFlt-1の新規かつ有益な使用によって統合される。したがって、一態様について本明細書に記載される関連する特徴は、当業者の理解に従う方法で、本発明の任意の所与の態様を記載するために使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0114】
特許及び非特許文献の全ての引用文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
本発明は、妊娠対象における子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、a)当該妊娠対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定することを含み、b)当該sFlt-1又はその断片のレベルが子癇前症の可能性を示す、方法に関する。
【0116】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、哺乳動物(ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、又はネコ)が挙げられるが、これらに限定されない)を意味する。この定義に含まれるのは、妊娠哺乳動物、分娩後哺乳動物、及び非妊娠哺乳動物である。
【0117】
本発明において、「リスク評価」及び「リスク層別化」という用語は、対象を対象の更なる予後に従って異なるリスク群にグループ分けすることに関する。リスク評価はまた、予防的及び/又は治療措置を適用するための層別化に関する。「療法層別化」という用語は、特に、患者を、患者の分類に応じてある特定の異なる治療措置を受けるリスク群又は治療群などの、異なる群にグループ分け又は分類することに関する。
【0118】
本明細書中で使用される場合、「予後」は、PEを発症する対象の転帰又は特定のリスクの予測に関する。これはまた、当該対象についての回復の見込み又は有害な転帰の見込みの推定が含み得る。また、PEの重症度の評価は、「予後」又は「リスク評価」又は「リスク層別化」という用語に包含され得る。
【0119】
本明細書中で使用される場合、「子癇前症」(PE)は、その通常の意味で使用される。PEは、血圧が少なくとも140/90mmHgであり、24時間の尿タンパク質排泄において少なくとも0.3グラムのタンパク質の尿排泄(又はディップスティック試験で少なくとも+1以上)であり、それぞれ4~6時間離れた2回の場合など、十分に確立された基準に従って定義することができる。
【0120】
子癇前症は、タンパク尿若しくは浮腫、又はその両方を伴う高血圧、糸球体機能不全、脳浮腫、肝臓浮腫、又は妊娠若しくは最近の妊娠の影響による凝固異常を特徴とする多系障害と考えられる。子癇前症は、一般的に、在胎第20週以降に起こる。子癇前症は、一般に、以下の症状のいくつかの組み合わせとして定義される:(1)在胎第20週後の収縮期血圧(blood pressure、BP)>140mmHg及び拡張期BP>90mmHg(一般に、4~168時間間隔で2回測定される)、(2)新たに発症したタンパク尿(尿検査時のディップスティックによる1+、24時間尿収集物中のタンパク質>300mg、又はタンパク質/クレアチニン比>0.3を有する単一の無作為尿試料)、並びに(3)分娩後12週までの高血圧及びタンパク尿の消散。重篤な子癇前症は、一般に、(1)拡張期BP>110mmHg(一般に、4~168時間間隔で2回測定される)又は(2)24時間尿収集物中の3.5g以上のタンパク質の測定若しくはディップスティックによる少なくとも3+のタンパク質を有する2つの無作為尿検体によって特徴付けられるタンパク尿として定義される。
【0121】
子癇前症では、高血圧及びタンパク尿は、一般に、互いに7日以内に起こる。重篤な妊娠高血圧腎症において、重篤な高血圧、重篤なタンパク尿及びHELLP症候群(溶血、上昇した肝酵素、低血小板)又は子癇は、同時に又は一度に1つの症状のみで起こり得る。時折、重篤な子癇前症は、発作の発症をもたらし得る。この重篤な形態の症候群は子癇と呼ばれる。「子癇」はまた、肝臓(例えば、肝細胞障害、門脈周囲壊死)及び中枢神経系(例えば、脳浮腫及び脳出血)などのいくつかの器官又は組織に対する機能不全又は損傷を含み得る。発作の病因は、脳浮腫及び腎臓における小血管の限局性痙攣の発症に続発すると考えられる。
【0122】
「重篤な子癇前症」又は「高重症度子癇前症」はまた、確立された基準に従って、6時間間隔で少なくとも2回の場合の少なくとも160/110mmHgの血圧、及び24時間尿タンパク質排泄における5グラムを超えるタンパク質、又はディップスティック試験での持続性+3タンパク尿として定義される。
【0123】
重篤な子癇前症には、HELLP症候群(溶血、肝酵素の上昇、低血小板数)が含まれ得る。重篤な子癇前症の他の要素には、米国人口統計による10%パーセンタイル未満の子宮内成長制限(in-utero growth restriction、IUGR)、持続性神経症状(頭痛、視覚障害)、心窩部痛、乏尿(500mL/24時間未満)、1.0mg/dL超の血清クレアチニン、上昇した肝酵素(正常の2倍超)、血小板減少症(<100,000細胞/[mu]L)が含まれ得る。
【0124】
本明細書中で使用される場合、「早産」は、在胎第37週前の出産として定義される。
【0125】
本明細書中で使用される場合、「早発性PE」は、在胎第37週前に出産するPEとして定義される。
【0126】
本明細書中で使用される場合、「子癇前症の早期発症」は、子癇前症の症状が在胎第20週の始まりから在胎第33週の終わりまでに起こることを意味するものとする。実施形態では、子癇前症の早期発症は、在胎第34週前に出産した症例を指す。
【0127】
本明細書で使用される場合、「子癇前症の中期発症」は、子癇前症の症状が在胎第34週の始まりから在胎第36週の終わりまでに起こることを意味するものとする。
【0128】
本明細書で使用される場合、「子癇前症の好機発症」は、子癇前症の症状が在胎第37週から起こることを意味するものとする。
【0129】
例として、「子癇前症の症状」は、以下を指し得る:(1)在胎第20週後の収縮期血圧(BP)>140mmHg及び拡張期BP>90mmHg、(2)新たに発症したタンパク尿(尿検査のディップスティックによる1+、24時間尿収集物中の>300mgのタンパク質、又はランダム尿蛋白/クレアチニン比>0.3)、及び(3)分娩後12週までの高血圧及びタンパク尿の消散。子癇前症の症状はまた、腎機能障害及び糸球体内皮症又は肥大を含み得る。
【0130】
本明細書で使用される場合、「子癇の症状」は、妊娠又は最近の妊娠の影響による以下の症状のいずれかの発症、すなわち発作、昏睡、血小板減少症、肝臓浮腫、肺浮腫、及び脳浮腫を指す。
【0131】
子癇前症又は子癇などの妊娠に関連する高血庄性障害を「発症するリスクがある」とは、妊娠に関連する高血庄性障害を現在有していないが、発症する可能性が平均よりも高い対象を指す。そのようなリスクのある対象には、参照レベルと比較して、少なくとも6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%又は25%、これらに限定されないが、減少した血中sFlt-1レベルを有する妊娠対象が含まれる。患者は、いくつかの実施形態において、子癇前症などの妊娠に関連する高血庄性障害の他の徴候を示さなくてもよい。
【0132】
本明細書で使用される場合、「子癇前症の可能性を示す」という用語は、子癇前症を現在有していないが、子癇前症を発症する可能性が平均より大きい対象を指す。そのような予後又はリスク評価は、sFlt-1又はその断片の決定されたレベルに基づく。sFlt-1又はその断片のレベルは、子癇前症を発症する可能性を示す。一実施形態では、試料中で決定されたsFlt-1又はその断片のレベルを参照レベルと比較し、参照レベル以下のsFlt-1又はその断片のレベルは、子癇前症の高リスクを示し、又は参照レベルを超えるsFlt-1又はその断片のレベルは、子癇前症の低リスクを示す。
【0133】
本明細書で使用される場合、「子癇前症の高リスク」は、子癇前症を発症する高リスクを意味するが、現在子癇前症を有していない。
【0134】
本明細書で使用される場合、「子癇前症の低リスク」は、子癇前症を発症する低リスクを意味するが、現在子癇前症を有していない。
【0135】
「妊娠に関連する高血庄性障害」とは、血圧の上昇に関連するか、又は血圧の上昇を特徴とする妊娠中の任意の状態又は疾患を意味するものとする。これらの状態及び疾患には、子癇前症(早産の子癇前症、重篤な子癇前症を含む)、子癇、在胎高血圧、HELLP症候群(溶血、肝酵素の上昇、低血小板)、胎盤早期剥離、妊娠中の慢性高血圧、子宮内成長制限を伴う妊娠、及び在胎不当過小(small for gestational age、SGA)児を伴う妊娠が含まれる。
【0136】
本明細書で使用される場合、「可溶性Flt-1(sFlt-1)」(可溶性fms様チロシンキナーゼ1、sVEGF-RIとしても知られる)という用語は、GenBank受託番号U01134又はUniProt P17948又は登録名VGFR1_HUMANによって定義されるタンパク質と相同であり、sFlt-1生物活性を有する、Flt-1受容体の可溶性形態を指す。sFlt-1ポリペプチドの生物活性は、任意の標準的な方法を使用して、VEGFへのsFlt-1結合をアッセイすることによってアッセイすることができる。sFlt-1は、Flt-1受容体の膜貫通ドメイン及び細胞質チロシンキナーゼドメインを欠いている。sFlt-1は、高い親和性でVEGF及びPlGFに結合することができるが、増殖又は血管新生を誘導することができず、したがって、Flt-1及びKDR受容体とは機能的に異なる。sFlt-1は、最初にヒト臍帯内皮細胞から精製され、後に、インビボでトロホブラスト細胞によって産生されることが示された。本明細書で使用される場合、sFlt-1は、任意のsFlt-1ファミリーメンバー又はアイソフォームを含む。
【0137】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という用語とは、ポリペプチド(すなわち、sFlt-1又はその任意の断片)を認識及び結合するが、試料(例えば、sFLt-1のポリペプチド又はその任意の断片を天然に含む生物学的試料)中の他の分子を実質的に認識及び結合しない化合物又は抗体又は任意の検出試薬をいう。一実施形態では、sFlt-1に特異的に結合する抗体は、Flt-1に結合しない。
【0138】
本明細書で使用される場合、「検出試薬」などは、本明細書に記載のマーカー、例えば、sFlt-1、PAPP-A、PIGFを決定するのに好適な試薬である。そのような例示的な検出試薬は、例えば、本明細書に記載のマーカーのペプチド又はエピトープに特異的に結合するリガンド、例えば抗体又はその断片である。そのようなリガンドは、上記のようにイムノアッセイに使用され得る。マーカーのレベルを判定するためにイムノアッセイで用いられる更なる試薬もキットに含まれ得、本明細書において検出試薬とみなされる。検出試薬はまた、質量分析に基づく方法によってマーカー若しくはその断片を検出するために用いられる試薬にも関係し得る。したがって、そのような検出試薬はまた、MS分析のために試料を調製するために使用される試薬、例えば酵素、化学物質、緩衝剤などであり得る。質量分析計も検出試薬とみなすことができる。本発明による検出試薬はまた、例えば、マーカーのレベルを決定及び比較するために使用され得る較正溶液であり得る。
【0139】
本発明によると、抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。特に、少なくともsFlt-1若しくはその断片に特異的に結合する抗体が使用される。
【0140】
目的の分子、例えばsFlt-1若しくはその断片に対するその親和性が、目的の分子を含有する試料中に含まれる他の分子に対するよりも、少なくとも50倍高い、好ましくは100倍高い、最も好ましくは少なくとも1000倍高い場合、抗体は特異的であるとみなされる。所与の特異性を有する抗体をどのように開発し選択するかは、当該技術分野において周知である。本発明の文脈では、検出試薬としてのモノクローナル抗体が好ましい。抗体又は抗体結合断片は、本明細書に定義されたマーカー若しくはその断片に特異的に結合する。特に、抗体又は抗体結合断片は、本明細書で定義されたsFlt-1のペプチドに結合する。したがって、本明細書に定義されたペプチドはまた、抗体が特異的に結合するエピトープであり得る。更に、本発明の方法及びキットにおいて、sFlt-1若しくはその断片に特異的に結合する抗体又は抗体結合断片が使用される。
【0141】
更に、本発明の方法及びキットにおいて、sFlt-1若しくはその断片に特異的に結合し、及び任意選択的に、PAPP-A若しくはPIGFなどの本発明の他のマーカーに特異的に結合する抗体又は抗体結合断片が使用される。
【0142】
例示的なイムノアッセイは、発光イムノアッセイ(luminescence immunoassay、LIA)、ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay、RIA)、化学発光及び蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(chemiluminescence-and fluorescence-immunoassays,enzyme immunoassay、EIA)、酵素結合イムノアッセイ(Enzyme-linked immunoassays、ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験フォーマット、希土類クリプテートアッセイであり得る。更に、ポイントオブケア試験、及び例えば免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験形式に好適なアッセイを用いることができる。B・R・A・H・M・S KRYPTORアッセイなどの自動化されたイムノアッセイも意図される。
【0143】
代替的に、抗体の代わりに、sFlt-1を特異的及び/又は選択的に認識する他の捕捉分子又は分子足場が、本発明の範囲に包含され得る。本明細書では、「捕捉分子」又は「分子足場」という用語は、試料からの標的分子又は目的の分子、すなわち分析物(例えば、sFlt-1)に結合するために使用され得る分子を含む。このため、捕捉分子は、空間的にも、表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体及び/又は受容体の存在又は不在などの表面の特徴に関しても適切に成形され、標的分子又は目的の分子に特異的に結合する必要がある。これにより、結合は、例えば、イオン、ファンデルワールス力、パイ-パイ、シグマ-パイ、疎水性若しくは水素結合相互作用、又は捕捉分子若しくは分子足場と標的分子若しくは目的の分子との間の先述の相互作用又は共有結合性相互作用のうちの2つ以上の組み合わせによって媒介されてもよい。本発明の文脈において、捕捉分子又は分子足場は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、ペプチド、及び糖タンパク質からなる群から選択され得る。捕捉分子又は分子足場は、例えば、アプタマー、DARピン(Designed Ankyrin Repeat Protein)を含む。アフィマーなどが含まれる。
【0144】
本発明による方法は、均質な方法として更に具体化することができ、検出される抗体/複数の抗体、及びマーカー、sFlt-1若しくはその断片によって形成されているサンドイッチ複合体が、液相中で懸濁されたままである。この場合、2つの抗体が使用されるときに、両方の抗体が検出系の一部で標識され、それにより、両方の抗体が単一のサンドイッチに統合される場合にシグナルの発生又はシグナルの誘発がもたらされることが好ましい。そのような技術は、特に蛍光増強又は蛍光消光検出方法として具体化されるべきである。特に好ましい態様は、例えば、US4882733、EP0180492、又はEP0539477、及びそれらで引用される従来技術に記載のものなど、対で使用される検出試薬の使用に関する。このようにして、反応混合物中の単一の免疫複合体中に直接両方の標識構成要素を含む反応生成物のみが検出される測定が可能になる。例えば、そのような技術は、上で引用した出願の教示を実装する、商標名TRACE(商標)(時間分解増幅クリプテート放出)、又はKRYPTOR(商標)として提供される。したがって、特に好ましい態様では、本明細書で提供される方法を実行するために診断デバイスが使用される。例えば、sFlt-1若しくはその断片のレベル、及び/又はPAPP-A、PIGFなど、本明細書で提供される方法の任意の更なるマーカーのレベルが判定される。特に好ましい態様では、診断デバイスは、B・R・A・H・M・S KRYPTORである。
【0145】
実施形態では、sFlt-1の定量的決定は、自動化免疫蛍光アッセイB・R・A・H・M・S sFlt-1 KRYPTORアッセイによって、好ましくはB・R・A・H・M・S PlGF+KRYPTORアッセイと一緒に行うことができる。22000及び90000pg/mL B・R・A・H・M・S sFlt-1 KRYPTORの検出下限及び検出上限により、妊娠中を通じて臨床的sFlt-1値の信頼できる検出に必要な測定範囲が提供される。対象から単離された8μLの血清試料のみがアッセイに必要とされる。
【0146】
当業者は、上記のsFlt-1分子、若しくはその断片若しくは変異体のうちのいずれか1つ、並びに標準分子の生物学的実践に従った本発明の他のマーカーの識別、測定、判定、及び/又は定量化のための手段を得るか又は開発することが可能である。
【0147】
本発明のマーカー、例えばsFlt-1若しくはその断片、PAPP-A若しくはその断片、又は他のマーカーのレベルは、質量分析(mass spectrometric、MS)に基づく方法によっても判定することができる。そのような方法は、当該生物学的試料又は例えば当該試料からのタンパク質消化物(例えばトリプシン消化物)中の例えばsFlt-1又はPAPP-A、PIGFの1つ以上の修飾又は未修飾フラグメントペプチドの存在、量又は濃度を検出することと、任意選択的に、クロマトグラフィー法を用いて試料を分離することと、調製され、かつ任意選択的に分離された試料をMS分析にかけることと、を含み得る。例えば、特にsFlt-1若しくはその断片の量を判定するために、選択反応モニタリング(selected reaction monitoring、SRM)、多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring、MRM)又は並列反応モニタリング(parallel reaction monitoring、PRM)質量分析が、MS分析において使用され得る。
【0148】
本明細書において、「質量分析」又は「MS」という用語は、化合物をそれらの質量によって識別するための分析技術を指す。質量分析の質量分解及び質量判定能力を高めるために、試料は、MS分析の前に処理することができる。
【0149】
したがって、本発明は、免疫濃縮技術と組み合わせることができるMS検出方法、試料調製に関する方法及び/又はクロマトグラフィー方法、好ましくは液体クロマトグラフィー(liquid chromatography、LC)を用いた方法、より好ましくは高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、HPLC)若しくは超高速液体クロマトグラフィー(ultra-high performance liquid chromatography、UHPLC)を用いたクロマトグラフィー方法に関する。
【0150】
試料調製方法は、溶解、分画、ペプチドへの試料の消化、枯渇、濃縮、透析、脱塩、アルキル化、及び/又はペプチド還元のための技法を含む。しかしながら、これらのステップは、任意選択的である。分析物イオンの選択的検出は、タンデム質量分析(MS/MS)を用いて行われ得る。タンデム質量分析は、質量選択ステップ(本明細書で使用される場合、「質量選択」という用語は、特定のm/z又は狭い範囲のm/z/sを有するイオンの単離を意味する)、続いて選択されたイオンの断片化、及び得られた生成物(断片)イオンの質量分析によって特徴付けられる。
【0151】
本明細書で使用される場合、「sFlt-1及びその断片に特異的に結合する検出試薬」という用語は、検出試薬が、sFLt-1のポリペプチド及びその断片を認識及び結合するが、試料、例えば、sFlt-1のポリペプチドを天然に含む生物学的試料中の他の分子を実質的に認識及び結合しないことを意味するものとする。
【0152】
sFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつ任意選択的にPAPP-A、PIGF及び/又はその断片のレベルを決定するための検出試薬は、好ましくは、方法を実施するのに必要なもの、例えばsFlt-1に指向されている抗体、蛍光標識などの好適な標識、好ましくはKRYPTORアッセイでの用途に好適な2つの別個の蛍光標識、試料収集チューブから選択される。
【0153】
本明細書で使用される場合、「試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定する」という用語は、sFlt-1又はその断片を決定する任意の手段を指す。
【0154】
本明細書で使用される場合、「断片」は、ポリペプチド又は核酸分子の一部を意味するものとする。この部分は、好ましくは、参照核酸分子又はポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%を含有する。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100、200、300、400、500、600、700、800、813若しくはそれ以上のヌクレオチド、又は10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、186、200、250、271若しくはそれ以上のアミノ酸を含有し得る。好ましい断片は、sFlt-1生物活性を有する。
【0155】
診断試験及び/又は予後試験の感度及び特異性は、試験の分析「品質」だけに依存するのではなく、それらはまた、異常な結果を構成するものの定義にも依存する。実際には、受信者動作特性曲線(ROC曲線)は、典型的には、「正常」集団(すなわち、明らかに感染を有しない明らかに健康な個人)、及び「疾患」集団、例えば感染を有する対象における、その相対頻度に対する変数の値をプロットすることによって計算される。(sFlt-1のような)任意の特定のマーカーについて、疾患/状態の有無にかかわらず対象についてのマーカーレベルの分布は重複する可能性があるであろう。そのような条件下では、試験は、正常と疾患とを100%の正確性で完全に区別することはなく、重複の領域は、試験が正常と疾患とを区別できない部分を示し得る。それより下では試験が異常であるとみなされ、それより上では試験が正常であるとみなされ、又はそれを下回るかあるいは上回ると試験が特定の条件、例えば感染を示す、閾値が選択される。ROC曲線下面積は、知覚された測定値が状態の正しい識別を可能にするであろう確率の尺度である。試験結果が必ずしも正確な数を付与しない場合でも、ROC曲線を使用することができる。結果をランク付けできる限り、ROC曲線を作成することができる。例えば、「疾患」試料に対する試験の結果は、程度に応じてランク付けされ得る(例えば、1=低い、2=正常、及び3=高い)。このランク付けは、「正常な」集団の結果と相関し得、ROC曲線が作成され得る。これらの利点は、当技術分野で周知である。例えば、Hanley et al.1982.Radiology 143:29-36を参照されたい。好ましくは、閾値は、約0.5より大きい、より好ましくは約0.7より大きい、更により好ましくは約0.8より大きい、なおより好ましくは約0.85より大きい、最も好ましくは約0.9より大きいROC曲線面積を提供するように選択される。この文脈における「約」という用語は、所与の測定値の+/-5%を指す。
【0156】
ROC曲線の横軸は(1-特異性)を表し、これは偽陽性率とともに増加する。曲線の縦軸は感度を表し、これは真陽性率とともに増加する。このため、選択された特定のカットオフについて、(1-特異性)の値が決定されてもよく、対応する感度が得られてもよい。ROC曲線下面積は、測定されたマーカーレベルが疾患又は状態の正確な識別を可能にするであろう確率の尺度である。このため、ROC曲線下面積は試験の有効性を判定するために使用することができる。AUC(曲線下面積)は、1つのROC曲線を別のものと比較することを容易にする。AUCがより大きいROC曲線は、ロジスティック回帰を表す。
【0157】
本明細書で使用される場合、「マーカー」、「代理」、「予後診断マーカー」、「因子」、又は「バイオマーカー」若しくは「生物学的マーカー」などの用語は、互換的に使用され、疾患/障害/臨床状態リスク、好ましくは有害事象などの健康及び生理学に関連する評価の指数として機能する測定可能かつ定量化可能な生物学的マーカー(例えば、特定のタンパク質若しくは酵素濃度、若しくはその断片、特定のホルモン濃度若しくはその断片、又は生物学的物質若しくはその断片の存在)に関する。マーカー又はバイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、又は療法的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定及び評価され得る特徴として定義される。バイオマーカーは、試料中で(血液、血漿、尿、又は組織試験として)測定され得る。
【0158】
本明細書に記載の方法が実施され得る妊娠の段階は、対象の全体的な健康及び子癇前症の症状の重症度を含む様々な臨床因子に依存する。
【0159】
ある特定の実施形態では、本方法は、在胎第12週の終わりまでに対象に対して実施される。在胎第12週の終わりは、在胎第12週の最終日、又は在胎第12週の最終第2日、最終第3日又は最終第4日を意味するものとする。
【0160】
いくつかの実施形態では、本方法は、在胎第9週の対象に対して実施される。一実施形態では、本方法は、在胎第10週に実施される。一実施形態では、本方法は、在胎第11週に実施される。実施形態では、本方法は、在胎第12週より後に実施される。実施形態では、本方法は、在胎第13週に実施される。実施形態では、本方法は、在胎第14週に実施される。実施形態では、本方法は、在胎第15週及び第20週を含め、それらの間に実施される。
【0161】
本明細書で使用される場合、「試料」は、体液試料、例えば血液試料、例えば静脈血試料、毛細管血試料、血清試料、血漿試料、膣液試料、唾液試料又は羊水試料、脳脊髄液、好ましくは血液、血清又は血漿試料を意味するものとする。
【0162】
本発明の文脈における「血漿」は、遠心分離後に得られる抗凝固剤を含有する血液の実質的に細胞を含まない上清である。例示的な抗凝血剤には、EDTA又はシトラートなどのカルシウムイオン結合化合物、及びヘパナート(heparinate)又はヒルジンなどのトロンビン阻害剤が含まれる。無細胞血漿は、抗凝固処理された血液(例えば、シトラート処理された、EDTA又はヘパリン処理された血液)を、例えば、2000~3000gで少なくとも15分間遠心分離することによって得ることができる。
【0163】
本発明の文脈における「血清」は、血液を凝固させた後に収集される全血の液体画分である。凝固した血液(血餅)が遠心分離されると、血清を上清として得ることができる。
【0164】
「試料」は更に、組織生検(例えば、胎盤組織)、絨毛膜絨毛試料、細胞、又は対象から得られた他の検体を指す。望ましくは、生物学的試料は、sFlt-1核酸分子若しくはポリペプチド又はその両方を含む。
【0165】
本明細書で使用される場合、「参照試料」という用語は、比較目的のために使用される任意の試料、標準、又はレベルを意味する。「正常参照試料」は、同じ対象から採取された以前の試料、子癇前症又は子癇のような妊娠に関連する高血庄性障害を全く有しない妊娠対象からの試料、妊娠しているが試料が妊娠の初期(例えば、第1若しくは第2期又は子癇前症若しくは子癇のような妊娠に関連する高血庄性障害の検出前)に採取された対象、妊娠しており子癇前症若しくは子癇のような妊娠に関連する高血庄性障害の病歴を有しない対象、妊娠していない対象、既知の正常濃度の精製された参照ポリペプチドの試料(すなわち、子癇前症又は子癇のような妊娠に関連する高血庄性障害を示さない)であり得る。
【0166】
本明細書で使用される場合、「参照レベル」という用語は、参照試料に由来する値又は数を指す。正常参照標準又はレベルは、正常な対象に由来する値又は数であり得る。望ましくは、全ての参照試料、標準、及びレベルは、以下の基準、すなわち胎児の在胎齢、母体年齢、妊娠前の母体血圧、妊娠中の母体血圧、母体のBMI、胎児の体重、妊娠に関連する高血庄性障害の以前の診断、及び妊娠に関連する高血庄性障害の家族病歴のうちの少なくとも1つによって試料対象に適合される。
【0167】
一実施形態では、参照レベルは、子癇前症又は妊娠に関連する高血庄性障害を発症していない(例えば、第1若しくは第2期にある、又は子癇前症若しくは子癇などの妊娠に関連する高血庄性障害が検出される前の)妊娠対象に由来する値に関する。
【0168】
実施形態では、参照レベルは、子癇前症又は子癇などの妊娠に関連する高血庄性障害の病歴を有しない妊娠対象に由来する値を指す。
【0169】
一実施形態では、本明細書で使用される参照レベル及び決定される対象からのレベルは、好ましくは、Thermo Scientific B・R・A・H・M・S KRYPTORアッセイによる、子癇前症を発症していない妊娠対象から得られた血液試料、好ましくは全血試料又は血漿若しくは血清試料中のsFlt-1又はその断片のタンパク質レベルの測定値を指す。したがって、本明細書に開示の値は、用いられる検出/測定方法に応じてある程度変動し得、本明細書に開示の特定の値は、他の方法によって判定される対応する値を読み取ることも意図している。本発明の実施形態では、PEを発症する低リスクから高リスクへの移行を定義し得る参照レベルと比較したsFlt-1又はその断片のレベルの低下は、参照レベルと比較した6%~20%の範囲の任意の低下であり得る。この範囲内の任意の値は、高及び低リスクのsFlt-1レベルの適切な参照レベルとみなすことができる。更に、そのような参照レベル以下の値は、子癇前症の高リスクを示し得、そのような参照レベルを超える値は、子癇前症の低リスクを示し得る。本発明の文脈において使用され得る適切なカットオフレベルは、参照レベルと比較して、少なくとも6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%又は25%の変化を含むが、これらに限定されない。
【0170】
本明細書で使用される場合、「陽性参照」試料、標準又は値という用語は、子癇前症又は子癇などの妊娠に関連する高血庄性障害を有するか又は有していたことが知られている対象に由来する試料又は値又は数である。参照標準又はレベルはまた、文脈に応じて、正常参照対象又は陽性参照対象からの核酸、ポリペプチド、又は小分子のレベルの平均又は平均値を反映し得る。参照はまた、妊娠の任意の及び/又は全ての段階(例えば、毎週)におけるポリペプチド、核酸、又は小分子の正常参照レベルを表すチャート、グラフ、又は標準曲線であり得る。望ましくは、全ての参照試料、標準、及びレベルは、以下の基準、すなわち胎児の在胎齢、母体年齢、妊娠前の母体血圧、妊娠中の母体血圧、母体のBMI、胎児の体重、妊娠に関連する高血庄性障害の以前の診断、及び妊娠に関連する高血庄性障害の家族病歴のうちの少なくとも1つによって試料対象に適合される。
【0171】
本明細書中で使用される場合、「妊娠に関連する高血庄性障害の病歴」という用語は、対象自身又は関連する家族メンバーにおける妊娠に関連する高血庄性障害(例えば、子癇前症又は子癇又は在胎高血圧)の以前の診断を意味するものとする。
【0172】
本明細書で使用される場合、「在胎齢」は、母親の最終月経期間の初日から数えた胎児の齢への言及を意味するものとする。それはまた、当技術分野におけるより正確な方法によって推定される対応する在胎年齢も意味するものとする。体外受精の場合、受精からの既知の期間に加えて14日である。在胎齢は、産科超音波検査によって決定することができる。
【0173】
本明細書で使用される場合、「母体年齢」は、出産時の妊娠対象の年齢を意味するものとする。
【0174】
本明細書で使用される場合、「在胎高血圧」という用語は、妊娠第20週後にタンパク尿を伴わない高血圧の発症を意味するものとする。
【0175】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指し、特定の長さを指すものではない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義内に含まれる。
【0176】
「含む(including)」という用語は、本明細書では、「含むが、それに限定されない」という句を意味するために使用され、それと互換的に使用される。
【0177】
「など」という用語は、本明細書では、「などであるが、それに限定されない」という句を意味するために使用され、それと互換的に使用される。
【0178】
本明細書で使用される場合、「リスクパラメータ」又は「リスク因子」という用語は、妊娠対象が子癇前症を発症する素因となる健康状態を指す。リスクパラメータの1つは、親の血液型、好ましくは生物学的父親又は生物学的母親ABの血液型である。更に好ましい血液型は、特に妊娠対象がRh陰性であり、胎児の生物学的父親がRh陽性である場合、親のRh因子である。リスクパラメータは、限定されるものではないが、甲状腺機能低下、甲状腺機能亢進、24を超えるBMI、初妊娠、子癇前症の病歴、リスク障害を有する民族、多胎妊娠、片頭痛、狼瘡、血液凝固障害、例えば凝固増加、炎症性疾患、心臓予備障害、糖尿病、慢性腎疾患、及び慢性高血圧を含む。
【0179】
本明細書に記載の方法、参照レベル以下のsFlt-1のレベルは、胎盤発達における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を低下させること、腎臓若しくは肝臓などから臓器機能を保護することなど、子癇前症を発症するリスクを低下させるか、発症の時点を遅延させるか、又は子癇前症の重症度を少なくとも低下させるために、対象の治療を開始又は改変することを示す。
【0180】
実施形態では、参照レベル以下のsFlt-1のレベルは、胎盤発達における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を低下させること、腎臓又は肝臓などから臓器機能を保護することなど、子癇前症を発症するリスクを減少させるか、発症の時点を遅延させるか、又は子癇前症の重症度を少なくとも低減させるための対象の治療を開始又は改変することを示す。このような治療はまた、出産前監視、生活様式の改変、栄養補給、ベッド上安静、活動又は定期的運動の制限、塩分摂取量の低減などの栄養対策、並びにビタミンC及びE、ニンニク、魚油などの抗酸化剤にも関連する。
【0181】
本明細書で使用される場合、「未経産」という用語は、対象が出産したことがないことを指す。「初産」は、対象が1回出産したことを意味するものとし、「一度に2人の子孫を産むこと(biparous)」は、対象が2回出産したことを意味するものとする。「多産」は、対象が2回超出産したことを意味するものとする。
【0182】
本明細書で使用される場合、「染色体異常」という用語は、胎児の発生の間に起こり得る染色体における差異を意味するものとする。それらは、胎児に固有であり得るか、又は親から遺伝され得る。異常は2つのカテゴリーに分けられる。数的とは、モノソミー又はトリソミーなどの予想されるものとは異なる数の染色体を指し、構造的とは、転座、欠失、重複、染色体の一部が分裂した結果としての環の形成、染色体の逆位を指す。染色体異常としては、ダウン症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、トリソミー13、トリソミー14、トリプルX症候群、XYY症候群、脆弱X症候群、Cri-Du-Chat症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
本発明は更に、キット、キットの使用、及びそのようなキットが使用される方法に関する。本発明は、本明細書の上記及び下記に提供される方法を実行するためのキットに関する。本明細書に提供される定義、例えば方法に関して提供される定義はまた、本発明のキットにも適用される。キットは、キャリブレータ、対照、緩衝試薬も含有する医療デバイスの一部であってもよく、診断機器及び/又はソフトウェアに関連して使用することができる。特に、本発明は、患者の健康におけるその後の有害事象の予後、リスク評価又はリスク層別化を含む治療モニタリングのためのキットに関し、当該キットは、sFlt-1又はその断片のレベルを決定するための検出試薬、及び任意選択的に、対象からの試料中の更なるバイオマーカーのレベルを決定するための追加の試薬、並びにsFlt-1リスクレベル及び任意選択的に、更なるバイオマーカーレベルに対応する参照レベルなどの参照データを含み、当該参照データは、好ましくは、コンピュータ可読媒体に保存され、かつ/又はsFlt-1又はその断片の決定されたレベル及び任意選択的に、更に、更なるバイオマーカー又はその断片の決定されたレベルを当該参照データと比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で使用される。
【0184】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、本方法は、sFlt-1若しくはその断片の決定されたレベルを、PEに罹患するリスクがある患者における参照レベル、閾値、及び/又はsFlt-1又はその断片に対応する集団平均と比較することを更に含み、当該比較することは、コンピュータ実行可能コードを使用してコンピュータプロセッサで実行される。
【0185】
本発明の方法は、部分的にコンピュータで実行され得る。例えば、バイオマーカー、例えばsFlt-1又はその断片の検出されたレベルを参照レベルと比較するステップは、コンピュータシステムで実施することができる。コンピュータシステムでは、予後、リスク評価、及び/又はリスク層別化のための指標であるスコアを計算するために、バイオマーカーの決定されたレベルを、対象の他のバイオマーカーレベル及び/又は臨床パラメータと組み合わせることができる。例えば、判定された値は、コンピュータシステムに入力され得る(医療従事者によって手動で、又はそれぞれのマーカーレベルが判定されたデバイスから自動で、のいずれか)。コンピュータシステムは、ポイントオブケア(例えば、プライマリケア、病院又は家庭環境)に直接あり得るか、又はコンピュータネットワークを介して(例えば、インターネット、若しくは任意選択的に病院情報システム(hospital information systems、HIS)などの他のITシステム若しくはプラットフォームと組み合わせ可能な特化された医療クラウドシステムを介して)接続される遠隔地にあり得る。典型的には、コンピュータシステムは、値(例えば、バイオマーカーレベル、又は年齢、血圧、体重、性別などの臨床パラメータなど、又はUAPI、FMFアルゴリズムなどの妊娠パラメータ、VOCALスコア、BMIなどのスコアなど)をコンピュータ可読媒体に記憶し、事前に定義及び/又は事前に記憶された参照レベル又は参照値に基づきスコアを計算することになる。得られたスコアは、ユーザ(典型的には医師又は患者などの医療従事者)のために表示及び/又は印刷されることになる。代替的に、又は加えて、関連する予後、評価、治療指針、患者管理指針、又は層別化が、ユーザ(典型的には医師又は患者などの医療従事者)のために表示及び/又は印刷されることになる。
【0186】
本発明の一実施形態では、好ましくは、電子健康記録(electronic health record、EHR)からのデータを使用して、PEのリスクがある患者を識別するために機械学習アルゴリズムが存在するソフトウェアシステムを用いることができる。機械学習アプローチは、患者からのEHRデータ(検査結果、バイオマーカーの発現、バイタル、人口統計など)を使用して、ランダムフォレスト分類器でトレーニングすることができる。機械学習は、ルールに基づく単純なシステムとは異なり、明示的にプログラムされなくても、コンピュータにデータの複雑なパターンを学習する能力を提供する一種の人工知能である。以前の研究では、電子健康記録データを使用して警告を誘発して、一般的な臨床的悪化を検出していた。本発明の一実施形態では、sFlt-1レベルの処理は、既存のデータセットとの比較のために適切なソフトウェアに組み込むことができ、例えば、sFlt-1レベルは、PEの発生の予後診断を支援する機械学習ソフトウェアで処理され得る。
【0187】
「PAPP-A」は、妊娠関連血漿タンパク質A、パパリシン-1であり、在胎第8週~第14週の間にスクリーニング試験として使用される血漿タンパク質を指す。減少したレベルのタンパク質は、ダウン症候群、子宮内胎児成長遅延、子癇前症及び死産の増加したリスクを示唆する。
【0188】
「PlGF」は、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)ファミリーのメンバーである胎盤成長因子(UniprotKB-Q6IB04)である。PlGFは、糖脂質生合成の一部であるグリコシルホスファチジルイノシトール-アルコール生合成経路に関与する。PlGFのレベルは、子癇前症を発症することになっている妊娠対象において低下する。
【0189】
本明細書で使用される場合、参照データ、例えば、母体年齢が18まで、18~34の間、34超の患者群、任意選択的に、本明細書に記載の追加マーカー、好ましくは、PAPP-A及び/又はPIGFレベルに対応する参照レベルであって、当該参照データは、好ましくはコンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/あるいはsFlt-1又はその断片の決定されたレベル、並びに任意選択的に、加えてPIGF又はその断片の決定されたレベル、任意選択的に、更に、PAPP-A及び/又はPIGF若しくはその断片の決定されたレベルを当該参照データと比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形式で用いられる、参照データ。「参照日」は、血液型ABを有し、血液型Rh陰性を有し、血液型Rh陰性及び胎児の生物学的父親Rh陽性を有し、少なくとも1人の女子胎児を妊娠しており、少なくとも1人の男子胎児を妊娠しており、未経産であり、1回以上の以前の妊娠を有し、かつ/又は染色体異常を有する胎児を妊娠している疑いのある、患者群に対応する更なる参照レベルを含む。参照データはまた、本発明のキットの使用方法の取扱説明書を含むことができる。
【0190】
キットは、血液試料などの試料を取得するのに有用なアイテムを更に含むことができ、例えば、キットは、容器を含むことができ、ここで、当該容器は、当該容器を、例えば、あらかじめ決められた容積の試料を当該容器に引き込むのに好適である、血液単離に好適であり、かつ気圧よりも低い内圧を示すシリンジであるカニューレ若しくはシリンジに取り付けるためのデバイスを含み、かつ/又は界面活性剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ阻害剤、イソチオシアン酸グアニジニウム、塩酸グアニジニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、RNAse阻害タンパク質及びそれらの混合物などのキレート剤と、ニトロセルロース、シリカマトリックス、強磁性球体、カップ回収スピルオーバー、トレハロース、フルクトース、ラクトース、マンノース、ポリエチレングリコール、グリセロール、EDTA、TRIS、リモネン、キシレン、ベンゾイル、フェノール、鉱油、アニリン、ピロール、シトラート、及びそれらの混合物を含むフィルターシステムと、を更に含む。
図面により、本発明を更に説明する。それらは、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0191】
図1】EO-PEあり又はなしの対象におけるレベルを比較する、90日GA前、90~100日GAの間、又は140~154日GAの間のsFlt-1のレベルを表す箱ひげ図である。研究は、第1期に募集された11952人の女性、PEを有しない11918人、早発性PEを有する34人を含んでいた。在胎90日前に、EO-PEを有する女性(N=10)の全ての症例は、中央値未満のsFlt-1レベルを有していた(p<0.01)。平均して在胎90~100日の間に、EO-PEを有する女性(N=24)は、平均してsFlt-1レベルを有した。在胎140~154日の間に、EO-PEを有する全ての女性(N=4)は、中央値を超えるsFlt-1を有した。
図2】第1期に試料が得られた対象におけるsFlt-1レベルの統計的評価である。研究は、第1期に募集された11952人の女性、PEを有しない11918人、早発性PEを有する34人を含んでいた。観察され得るように、第1期におけるSFlt-1は、EO-PEと関連していない(EO-PE:0.98MoM対対照:1.00 MoM、p=0.09)。
図3】試料が12 6/7週GA後に得られた対象におけるsFlt-1レベルの統計的評価である。研究は、在胎90日後に募集された7409人の女性、PEを有しない7385人、早発性PEを有する24人を含んでいた。観察され得るように、12 6/7週後のsFlt-1は、EO-PEと関連していない(EO-PE:1.00 MoM対対照:1.00 MoM、p=0.40)。
図4】12 6/7週後のsFlt-1がEO-PEと関連していないことが示される、図3に提示されたデータのROC曲線である。
図5】試料が12 6/7週GA前(90日GA前)に得られた対象におけるsFlt-1レベルの統計的評価である。研究は、在胎90日前に募集された4543人の女性、PEを有しない4533人、早発性PEを有する10人を含んでいだ。観察され得るように、12 6/7週前のsFlt-1は、EO-PEと逆相関している(EO-PE:0.94MoM対対照:1.00MoM、p=0.003)。
図6】12 6/7週前のsFlt-1がEO-PEと相関することが示される、図5に提示されたデータのROC曲線である。sFlt-1(在胎齢-MoMに対して調整された)及びsFlt-1(在胎齢-生に対して調整されていない)の測定は、両方とも早発性PEを予測し、早発性PEのマーカーとして使用することができる(AUC:0.74(95%CI:0.64~0.84、p<0.01))。
図7】試料が12 6/7週GA後(90日GA後)に得られた対象におけるsFlt-1及びPlGFレベルについてのデータのROC曲線である。在胎90日後、PlGFはEO-PEの強力なマーカーであるが、sFlt-1はそうではない。
図8】試料が12 6/7週GA前(90日GA前)に得られた対象におけるsFlt-1及びPlGFレベルについてのデータのROC曲線である。在胎90日前:sFlt-1はEO-PEの強力なマーカーであるが、PlGFは90日後ほど良好ではない。
図9】試料が12 6/7週GA前(90日GA前)に得られた対象におけるsFlt-1及びPlGFレベルについてのデータのROC曲線である。更に、ROC曲線は、sFlt-1及びPlGFレベルの両方についての組み合わされたデータを使用して示される。ROC曲線は、PlGF:0.70(95%CI:0.56-0.85)、sFlt-1:0.74(95%CI:0.64-0.84)、及び両方のマーカーの組み合わせ:0.85(95%CI:0.78-0.92)についてのAUC値を示す。
図10】試料が12 6/7週GA前(90日GA前)に得られた対象におけるsFlt-1及びPlGFレベルについてのデータのROC曲線である。更に、本研究で得られた子宮動脈ドップラー測定のデータを分析に組み合わせた。ROC曲線は、sFlt-1及びPlGFレベルの両方についての組み合わされたデータを使用して示され、加えて、これらの組み合わされたレベルは、ドップラーデータと更に組み合わされる。ROC曲線は、ドップラー組み合わせについて0.87(95%CI:0.80-0.94)のAUC値を示す。
図11】試料が90~100日GAの間に得られた対象におけるsFlt-1及びPlGFレベルについてのデータのROC曲線である。sFlt-1及びPlGFの組み合わせは、90~100日の間のIUFDのいくつかの症例を予測する。
図12】試料が90日GA前に得られた対象におけるsFlt-1及びPlGFレベルについてのデータのROC曲線である。sFlt-1及びPlGFの組み合わせは、IUFDを予測し、それによって、関連は、在胎90~100日の間と比較して、在胎90日前により強い(AUC:0.72 95%、CI:0.60~0.84)。
図13】FMFアルゴリズムを使用して決定された推定高リスク又は低リスクを有する対象におけるsFlt-1レベル(90日GA前に測定された)間の相関を示すボックスプロット及びROC曲線である。図から分かるように、FMFアルゴリズムで決定されるような高リスクを有する患者は、90日のGAの前に有意に低いsFlt-1レベルを有する。
【実施例
【0192】
実施例1:
研究デザイン:
妊娠女性を在胎第11週~第14週に募集し、出産まで追跡した。sFlt-1を、Thermo Scientific B.R.A.H.M.S KRYPTORを使用し募集時に測定し、在胎齢について調整した中央値の倍数(multiple of median、MoM)で報告した。sFIt1の中央値レベルを、早発性PE(<34週)、中期発症PE(34~36週)、遅発性PE(37週以上)、及びPEなし(対照)を発症した女性の間で比較した。ROC曲線下面積(AUC)を使用して、PEに対するsFlt-1の潜在的な予測値を推定した。
【0193】
結果:
我々は、在胎第16週後に出産した12383人の参加者を含め、そのうち33人(0.3%)が早発性PEを発症し、65人(0.5%)及び400人(4.0%)が遅発性PEを発症した。我々は、第1期sFlt-1が、早発性又は中期発症PE(p=0.02)を発症した参加者においてより低いことを観察したが、より重要なことには、差が主に妊娠の初期に募集された参加者に存在することが観察された。
【0194】
妊娠第11週(AUC:0.82、95%CI:0.72-0.92、p<0.001)、妊娠第12週(AUC:0.62、95%CI:0.49-0.74;p=0.06)に募集された女性間の早発性PEの予測値の有意差が観察され、妊娠第13週(AUC:0.50、95%CI:.32-0.67、p=0.97)に観察された。同様の傾向が、中期発症PEの予測についても観察された。
【0195】
結論:
第1期の母体sFlt-1は、終期(<37週)前にPEを発症する女性において減少する。その予測値は、在胎第12週又はその前に収集された場合に顕著に改善され、この特殊性は、以前の研究間の矛盾する結果を説明することができる。
【0196】
実施例2:
研究デザイン:
我々は、在胎第11週~第14週に募集した未経産女性の前向きコホート研究の二次分析を行った。母体の特徴、平均動脈血圧、母体血清バイオマーカー(妊娠関連血漿タンパク質-A、胎盤成長因子、2つのリスクカットオフ(FMFアルゴリズムから70分の1及び100分の1)、sFlt-1及び平均子宮動脈拍動指数のレベルを得て、早発性又は終期PEを発症しなかった参照群と比較した早発性PE及び終期PEのリスクを計算した。検出率、偽陽性率、並びに陽性及び陰性予測値を、胎盤媒介性合併症としての終期及び早期PEについて計算及び算定した。アスピリンを毎日服用したと報告された女性は除外した。PAPP-A、PIGF、sFlt-1濃度を、Thermo Scientific B.R.A.H.M.S KRYPTOR自動化アッセイを使用することによって測定した。早発性PEは、在胎第37週以前に出産したPEとして定義され、早発性PEは、在胎第34週以前に出産した症例を指す。分析は、SAS統計ソフトウェアパッケージ(バージョン9.3、SAS Institute Inc、Cary,NC)を使用して実施された。5%のI型誤差を全ての分析において考慮した。
【0197】
結果:
我々は、完全な観察を有する4575人の参加者を含めた。29人の患者が早発性PEを発症した一方で、194人の女性が終期PEを発症し、3705人の女性が胎盤媒介合併症を発症しなかった(参照群)。参照群の中央値sFlt-1値は1023pg/mLであり、Q1~Q3値は771~1373pg/mLであった。発症期PEの女性についてのsFlt-1値及びQ1~Q3の中央値は、933pg/mL(726~1221pg/ml)であった。したがって、満期PEを発症した妊娠女性は、8.8%のsFlt-1レベル中央値の減少及び0.91の中央値の倍数変化(fold change、FC)を示した。
【0198】
早発性PEを発症している女性のsFlt-1値及びQ1~Q3の中央値は、852pg/mL(658~1095pg/ml)であった。したがって、早発性PEを発症した妊娠女性は、参照群と比較して、在胎第11週~第14週に16.7%のsFlt-1減少中央値及び0.83の中央値の倍数変化(FC)を有する終期PE群として、より高いsFlt-1減少を示した。
【0199】
参照群と比較した早発性PEのsFlt-1レベルのQ1は、14.7%の減少を伴う0,85のFCを示した。
【0200】
参照群と比較した終期PEのsFlt-1レベルのQ1は、5.8%の減少を伴う0,94のFCを示した。
【0201】
参照群と比較した早発性PEのsFlt-1レベルのQ3は、20%の減少を伴う0.8のFCを示した。
【0202】
参照群と比較した終期PEのsFlt-1レベルのQ3は、11%の減少を伴う0,89のFCを示した。
【0203】
結論:
在胎第11週~第14週の間に検出されたsFlt-1中央値の減少が少なくとも8.8%である未経産女性は、終期PEを発症するリスクが高く、sFlt-1中央値の減少が少なくとも16.7%であると、早発性PEを発症するリスクが高い。
【0204】
実施例3:
妊娠第1期における早期子癇前症及び早産の予測(予測研究):
子癇前症は、妊娠女性の2~5%が罹患する妊娠の合併症である。これは、世界における母体及び新生児死亡率並びに罹患率の主な原因の1つである。早発性子癇前症は、妊娠第34週の前に出産を必要とし、非常に重大な周産期罹患率に関連するものである。
【0205】
妊娠の第1期において測定された生物物理学的因子(年齢、BMI、BP、病歴)、超音波因子(子宮動脈ドップラー)及び生化学的因子(PlGF及びPAPP-A)を組み合わせたオンラインソフトウェア(Fetal Medicine Foundation)が現在利用可能であり、初期子癇前症の90%超が10%未満の偽陽性率で予測され得ることを示唆している。
【0206】
sFlt-1、PAPP-A又はPlGFなどのバイオマーカーと子癇前症との間の相関を探索するために、AB、Rh陰性などのいくつかのまれな血液型を有し、多胎妊娠を有し、それが存在し、1回以上の以前の妊娠を経験し、形成異常若しくは多形成異常症候群が存在し、及び/又は染色体異常(非常に高い項部透過性)を有する胎児を妊娠していることが疑われる若しくはそれが存在する、18歳未満の患者などの追加の患者群が更に含まれ、本発見研究において調査される。
【0207】
目的:
1)早期子癇前症及び他の胎盤関連の妊娠障害(早発性子癇前症、IUGR<3パーセンタイル、周産期死亡)について、妊娠第11週~第13週の間にFMFスクリーニングツールを検証すること。
2)子宮動脈ドップラー測定を使用するスクリーニングツールと使用しないスクリーニングツールとを比較すること。
3)子癇前症の予測のための潜在的マーカー(血清中sFlt-1、血清中ADAM-12、血清中PP-13、胎盤及び胎盤下容積、胎盤血管分布)の効力を調査すること。
【0208】
方法論:
前向き観察研究。1回の妊娠及び致死的異常のない胎児を有する未経産妊娠女性を、妊娠第11 3/7週~第13 6/7週の間に募集した。生活様式アンケートを完成させた。BMI及びBP測定並びに血液試料(20mL)を採取した。子宮動脈のドップラー超音波及び胎盤の3D評価が来院を完了した。医療記録の追跡調査は、出産予定日の約1ヶ月後に行った。
【0209】
PAPP-A、PIGF、sFIt1、fbHCG及びAFPの募集から10日以内に、Thermo Scientific B・R・A・H・M・S KRYPTOR自動化アッセイを使用して血清を分析した。残りの血清は、3D超音波によって評価された胎盤容積及び血管分布を含む有望なマーカーを用いて予測モデルを改善する可能性を評価するために、プロジェクトの最後に更なる分析(PP-13、ADAM-12、ビタミンD)のために-80℃で保存した。各参加者について、初期子癇前症及び全体的子癇前症のリスクの計算を、FMFソフトウェアを用いて計算したが、参加者に開示した。ツールの最適な感度及び特異性は、ROC曲線を使用して評価される。
【0210】
我々は、我々の未経産集団(Quebec及びMontreal)において早発性子癇前症(<34週)の0.7%の発生率を推定した。我々は、7554人の女性を募集して、FMFスクリーニングツールが、95%感受性及び92%特異的であると予想される場合に、少なくとも80%感受性及び90%特異的であることを実証した。
【0211】
目的
主目的
妊娠第11週~第13週の間にFMF初期子癇前症スクリーニングツールを検証する。
【0212】
二次目的
1)子癇前症の全ての症例の予測及び他の胎盤関連の妊娠障害(初期及び重度子癇前症、IUGR<3パーセンタイル、周産期死亡)の予測におけるFMF試験の成績を評価すること。
2)子宮動脈ドップラーを用いた場合と用いない場合のスクリーニングツールを比較する。
3)FMFスクリーニングツールが我々の集団において肯定的に検証されない場合、各バイオマーカーの予測値を個々に評価し、それらが異なる予測モデルにおいて使用され得るかどうかを評価する。各バイオマーカーの予測値を個々に評価し、それらが異なる予測モデルにおいて使用され得るかどうかを評価する。
4)早発性子癇前症の潜在的バイオマーカー(sFlt-1、PP13、ADAM-12、25-OH-ビタミンD、胎盤容積及び胎盤/胎盤下血管分布、sFlt-1)の予測値を評価する。
5)早期出産のための妊娠の第1期の子宮頸部測定の予測値を評価すること。
【0213】
I.研究引用
これは、妊娠の第1期に募集された未経産妊娠女性における前向き観察研究であり、その時点で、多数のバイオマーカーが収集及び分析され、出産まで追跡されて、我々の一次転帰及び二次転帰の存在が検証された。
【0214】
II.集団及び選択基準
包含基準の研究セット:
・第11 3/7週~第13 6/7週の間の生きた単胎妊娠女性。
・未経産女性(理由にかかわらず、在胎第20/7週までの妊娠歴がない)
【0215】
除外基準の研究セット:
・18歳未満の女子
・インフォームドコンセントを与えることができない(例えば、英語又はフランス語を理解しない)女性。
・参加センター外で出産することを計画した女性(Hotel-Dieu de Levisで出産する女性であって、同意書を介してこの機関で女性のファイルを相談させることに同意するのでプロジェクトに適格であった、女性を除く)
・HIV又はC型肝炎又は慢性B型肝炎に陽性の女性(治癒していない)
【0216】
更なる包含基準の研究セット:
・多胎妊娠(2人の胎児を有し、そのうちの1人が成長を停止した女性は適格ではない)
・胎児形成異常症候群又は多形成異常症候群の存在
・染色体異常及び/又は心臓奇形の非常に高いリスクに関連し、血清中PAPP-A値に影響を及ぼし得る、3.5mmを超える項部透光性測定値の存在。
・募集来院日の胎児心臓陰性
【0217】
III.研究の実施
11 3/7週~13 6/7週
看護師宛の来院(11 3/7週~13 6/7週)
最初に、研究看護師は静脈穿刺によって血液検体を収集した(2×5mLチューブ、BD Vacutainer SST)。チューブを穏やかに5回反転させて、試薬を血液とよく混合させた。治療まで(最小30分、最大2時間)、チューブを暗箱中に直立位置で静置した。第2のステップにおいて、研究看護師は患者の血圧を測定した。患者は、測定前に話すことなく、5分間、非交差脚で座位安静しなければならなかった。血圧は、あらかじめプログラムされたMicrolife電気血圧モニター(モデル33603)によって、両腕(袖のないベスト)で同時に3回測定した。
【0218】
患者の病歴及び産科の家族歴、並びに生年月日、人体測定、固執する傾向(tagabism)などを含む社会経済的背景を知るために、患者についてアンケートを行った(添付のアンケートを参照されたい)。看護師との総面会は最大30分であった。
【0219】
技術者宛の来院(11 3/7~13 6/7週)
看護師との面会に続いて、全ての患者は、研究チームの放射線技術者によってインタビューされ、4~8MHzトランスデューサを備えたVoluson E8 Expert(GE Medical Systems、Milwaukee,WI,USA)を使用して超音波検査取得を実行するために、項部透光性測定について認証された。機器設定は、全ての患者について同じであった、すなわち、「アンギオモード」=100であった。「滑らか」=4/5、FRQ=低、品質=正常、密度=6、「増強」=16、バランス=175、WMF=低1、「実際の電力」=2dB、「パルス繰り返し周波数」=0.6kHz、利得色=-7.2dB
【0220】
超音波を実施して、プロジェクトの適格性基準を確認した。
1)頭尾長(cephalocaudal length、CCL)が77mm以上である場合、頭尾長(CCL)及び頭頂径を使用して在胎齢を確認する。
2)項部透光性測定は、Fetal Medicine Foundationの基準に従って行った。参加者が項部透過性測定の処方を有していた場合、結果を伴うレポートが提供された。
3)奇形症候群、多胎妊娠、項部透光性≧3.5mm及び/又は胎児心臓陰性が存在する場合、患者に通知され、プロジェクトを担当する医師の1人又は代理人が診察した可能性がある。結果を伴う超音波レポートが患者の委託医師に送られた。
【0221】
技術者はそれに従って適格性シートを完成させた。除外基準のうちの少なくとも1つを満たす参加者は、任意の他の参加者として扱われた、すなわち、参加者の血液試料が分析され、すでに採取された全てのデータ、又は出産までに採取される予定の全てのデータは保持された。これらの参加者からの全てのデータは、主要分析から除外した。
【0222】
妊娠第11 3/7週~第13 6/7週の間の来院ウィンドウは重要であり、ある特定のデータ(生化学及び超音波)の有効性を保証するために尊重された。したがって、超音波日付試験が在胎齢を確認する場合、以下の通りである。
【0223】
a)<11 3/7週(LCC<45mm):来院は、11 3/7週~13 6/7週の間の日に再スケジュールされた。血液サンプリング及び超音波をこの時点で繰り返した。両方の試料を保持したが、第2の試料のみを主要分析に使用した。これらの患者の最小数(n≧5)が早期子癇前症を示す場合、第1の試料を分析し、症例対照研究において第2の試料と比較した。
【0224】
繰り返し来院のために戻るか否かの参加者の意思が尊重された。参加者が2回目の来院を拒否した場合、収集されたデータは保持されたが、主要分析から除外された。
b)>14週(CCL>84mm):血液試料、超音波データ及びアンケートデータをそのまま保持した。更なる来院は予定されなかった。これらの患者は、主要目的のために分析から除外した。
【0225】
次に、以下の超音波測定を研究目的で行った。
4)ドップラー超音波を使用して、左右の子宮動脈を可視化し、FMF基準に従って拍動指数測定を行った。子宮動脈を内頚骨のレベルで検査し、拍動指数を、3つの後続の同様の心周期の拍動流曲線を使用して機械によって自動的に計算した。測定は矢状方向及び横断方向で行い、2つの技法の再現性、持続時間及び効率を評価するために、約1000症例の試料について2つの間の差を評価した。ノッチの存在及び非存在を両側で記録した(初期拡張期切開が各周期で起こる場合、ノッチは存在すると考えられる)。
5)ドップラーを用いた及び用いない胎盤及び胎盤下領域の3D超音波検査。この検査は約30秒間かかる。
【0226】
募集の終わりに、症例対照分析のために、臨床データを知らされていない技術者が、以下の容積測定及び計算を行った。VOCAL(Virtual Organ Computer-aided Analysis)と、平面A及びB上で水平に前のものからそれぞれ30度回転させた胎盤の一連の6つの切片とを使用して、子宮壁を除外するように注意しながら胎盤輪郭を手動で描いた。同様に、胎盤と十二指腸子宮筋層との間の境界から子宮筋層の全厚さ(最大1cm厚さ)まで、胎盤下子宮筋層の容積を評価した。これらの容積測定取得は、以下の変数で測定された。
a.胎盤容積
b.胎盤指数(placental quotient)(PQ=1/4%胎盤容積/LCC)。
c.胎盤及び十二指腸-子宮筋層領域の血管分布指数(vascularity index、VI)、フロー指数(flow index、FI)及び血流指数(vascular flow index、VFI)を、VOCALソフトウェアを使用して評価する。VFIは、研究された容積中の染色されたボクセルの数を表す(パーセンテージとして表される)。FIは、血流の平均強度を表す全ての染色されたボクセルの平均色値である(0~100の絶対値として表される)。VIFは、研究された領域における全てのボクセルの色の平均値である(灰色及び有色、0~100の絶対値として表される)。
6)子宮頸部の長さ:膣(膣内プローブ)。Quebec CityのCHUのみで行われたこの検査は、FMFアルゴリズムにも存在する早期出産の予測を検証した。これは、全ての参加者において系統的に行われたのではなく、主治医による処方に基づいて行われた。
7)腹部領域の超音波検査取得も実施して、腹直筋の内側境界と腹部大動脈の前壁との間にある内臓脂肪組織の厚さを帰納的に測定した。この超音波測定は、子癇前症の予測において、BMIよりも大きな予測力を有し得る。この取得に要する時間はほんの数秒である。
【0227】
全ての超音測定波取得に必要な合計時間は15~35分であった。研究技術者は、Fetal Medicine Foundation(FMF)及びPQDT21によって、項部透光性及び子宮頸部測定のために認証及び認可された。参加者は、参加者の参加に対する感謝として、胎児の画像を有するDVD又はUSBスティックを受け取った。
【0228】
妊娠中のモニタリング(34 0/7週~35 6/7週)
調査(電子形式で、参加者に電子メールで送信される)を妊娠第34e週に行った。これは、患者の投薬が妊娠中に変化したかどうかを検証し、妊娠が正常に進行しているかどうか、移動したかどうか、又は現在までに何らかの合併症があったかどうかを確認した。調査が完了しなかった場合、電子メールリマインダが1週間後に自動的に送信された。その後調査に応答しなかった者に電話連絡を行った。
【0229】
分娩後追跡調査(DPAの6週間後)
第2の電子調査(参加者に電子メールで送信される)は、参加者の出産予定日の約6週間後に行われた。これにより、我々は、参加者又はその乳児が出生後に何らかの困難を経験したかどうかを検証することができた。とりわけ、我々は、分娩後子癇前症の症例、周産期又は母体死亡のまれな症例(これらの事象が起こった病院にかかわらず)について知りたいと考えた。調査が完了しなかった場合、電子メールリマインダが1週間後に自動的に送信された。その後調査に応答しなかった者に電話連絡を行った。処置は、不都合を回避するために、終了、子宮内死亡又は他の有害な合併症(34週調査において言及された)を有した参加者が、必要でない場合、46週に再び連絡されないことを確実にするために行われた。
【0230】
妊娠終了時(DPAの1ヶ月後)の追跡調査
妊娠(在胎高血圧、子癇前症、周産期死亡など)、出産(在胎齢など)及び新生児(性別、出生時体重など)に関するデータは、出産後に研究看護師によってCristalNetソフトウェアを介して患者の医療記録から収集された。患者が非参加センター(CHUL、HSFA、又はLevisではない)で出産したというまれな事象では、患者に連絡して、出産場所でこの情報を入手する許可を要求した。子癇前症が疑われた全ての症例及び37週前に出産した症例(<10%、すなわち、CHU-Qアーカイブから検索された532未満の記録及びCHUSJアーカイブから検索された228未満の記録)について、医師(EB、KG、FA又はそれらの代理人)によって、医療記録から直接、データの第2のレビューを行った。
【0231】
血液検体
血液検体を室温の箱に入れて実験室に輸送し、穿刺後2時間未満であるが穿刺後30分を超えて遠心分離した。
【0232】
遠心分離(1200×g、室温で10分間)後に収集した血清を1mLアリコートに移し、次いで、FMFによって検証された市販のキットを使用して、PAPP-A、PlGF、sFlt-1、遊離bHCG及び母体血清AFPを測定するために使用した。CHU de Quebec(CHUL及びHSFA)については、アッセイが24時間以内に行われるまで、試料を4℃で保存した。CHU Ste-Justineについては、アリコートを-20℃で保存し、分析及び保存のために、ドライアイス上の書留郵便によって月に2回CHU de Quebecに送った。一次分析(血清PAPP-A、PIGF及びsFlt-1アッセイ)後、残りの血清を-80℃で凍結保存し、主試験の最後に実施した症例コホート副試験においてPP13、ADAM12及びビタミンDを測定するために使用した。
【0233】
症例コホート研究
主コホート内にネストされた症例コホート研究は、早期子癇前症の予測に対する潜在的バイオマーカーの予測効果を評価した。母体血清sFlt-1、ADAM-12、PP-13及びビタミンDを、無作為に選択された女性のサブグループ(およそ236人の女性)及び初期子癇前症の全ての症例(およそ45人)において、研究の終わりに市販のキットを使用して測定した。この同じ症例コホートを、以下の変数について分析した。すなわち、胎盤容積(placental volume、PV)、胎盤及び胎盤下血管分布指数(IV)、フロー指数(FI)、並びに血流インデックス(VFI)である。
【0234】
IV.判定基準
一次エンドポイント:最終月経日(DMD)又は11~13週超音波検査(後者がDMD法で≧5日の差を示した場合)によって決定される在胎齢に基づいて妊娠第34週前に出産を必要とする子癇前症。以下の基準に従って診断された子癇前症:1)在胎高血圧≧140収縮期及び/又は≧90拡張期(4時間以内に2回)を、以下の状態:成長遅延<10eパーセンタイル、血小板減少症<100、正常な値の2倍を超えるAST及び/又はALT、拡張期血圧≧110mmHg、及び/又はタンパク尿(スティック上で≧2+又は300mg/24時間を超える)のいずれかと組み合わせた。
【0235】
二次エンドポイント:
出産<37週(妊娠第37週前の自然分娩又はPPROM)
出産<34週(妊娠第34週前の自然分娩又はPPROM)
【0236】
子癇前症:
早産の子癇前症<37週
重篤な子癇前症(その状態のいずれかを有する:1)4時間の安静後に≧160mmHgの収縮期及び≧110mmHgの拡張期、2)タンパク尿≧5g/24時間又はロッド上で≧3+、3)乏尿≦400mL/24時間、視覚又は脳障害、心窩部痛、肺浮腫又はチアノーゼ、血小板減少症<100,000mm3。
周産期死亡(分娩前、出生後7日まで)
カナダ基準値に基づく成長遅延(<10eパーセンタイル)
カナダ基準値に基づく、重篤な失神(<3eパーセンタイル)
出生時体重<2500グラム
出生時体重<1500グラム
平均出生時体重
【0237】
V.データ分析計画
主な分析:研究の最後に、初期子癇前症及び子癇前症のリスクの計算を、子宮ドップラー測定値を含む全ての必要な収集データを使用して、FMFソフトウェアによって自動的に行った。リスク計算は、子宮ドップラー測定を除く全ての適格な参加者について自動的に繰り返された。
【0238】
2つのスクリーニング方法の曲線下面積、感度、特異性、陽性予測値及び陰性予測値を報告し、ROC曲線及び異なるカットオフ値を使用して計算した。
【0239】
結果:
図1図12から分かるように、PREDICTION研究から得られたデータは、90日GAの前に得られた試料を分析した場合、EO-PE及び/又はIUFDのリスクがある患者を同定する際のsFlt-1の予後能力を支持する。
【0240】
図1から分かるように、在胎90日前に、EO-PEを有する女性(N=10)は、中央値未満のsFlt-1レベルを有していた(p<0.01)。平均して在胎90~100日の間に、EO-PEを有する女性(N=24)は、平均してsFlt-1レベルを有した。在胎140~154日の間に、EO-PEを有する女性(N=4)は、中央値を超えるsFlt-1を有した。この研究により、我々は、sFlt-1のレベルが、早期子癇前症(34週前)を発症する女性において妊娠初期(在胎90日前)に異常に減少し、進行的に増加して第1期(90~100日)の終わりに正常になり、その後(在胎140日後)に異常に増加すると結論付けることができる。
【0241】
しかしながら、sFlt-1測定は、第1期全体を通して得られた試料から決定された場合、EO-PEとの統計的に関連する相関を提供しない(図2)。更に注目すべきは、sFlt-1測定は、GAの12 6/7週後に得られた複数の試料から決定された場合、EO-PEとの統計的に関連する相関も提供しないことである(図3図4)。
【0242】
驚くべきことに、在胎12週以内又は90日以内のsFlt-1の測定は、EO-PEとの有意な相関、特にEO-PEとの逆相関を示す(図5図6)。したがって、GAから90日以内にsFlt-1を決定することは、初期時点でのEA-PEの信頼できる予後を可能にする。
【0243】
sFlt-1及びPlGFの併用は、試料が妊娠初期に、例えば在胎第12週(90日GA前)の終わり前に得られる場合、EO-PEの予後の統計的改善をもたらす。注目すべきことに、PlGFは、典型的には、90日GA後に測定された場合にEO-PEを予後診断するのに有効であるが、sFlt-1は、90日GA後の単一の測定から信頼できる予後診断ステートメントを可能にしないようである(図7)。驚くべきことに、sFlt-1及びPlGFの両方は、12週間(90日以内)GAの終わりの前に測定された場合、EO-PE予後を可能にする。しかしながら、sFlt-1は、同等の特異性値、好ましくは0.6を超える値で、より大きな感度を提供するようである(図8)。また驚くべきことに、sFlt-1及びPlGFの組み合わせ分析は、90日GAの前に測定された場合、EO-PE予後における予想外の相乗的増強を示す(図9)。
【0244】
また、この研究を通して、子宮動脈ドップラー測定の併用、好ましくはsFlt-1、PlGF、母体年齢及びBMIと組み合わせた併用が、sFlt-1又はPlGF単独と比較して、対象におけるEO-PEの改善された予測力を示すことが見出された(図10)。
【0245】
sFlt-1及びPlGFの併用はまた、試料が90~11日GAの間に得られた場合にIUFDの予後をもたらし(図11)、試料が90日GA前に得られた場合にIUFDの予後の統計学的改善を示す(図12)。
【0246】
更に、本明細書に記載のFMFアルゴリズム及びsFlt-1分析を使用して得られたデータセットにおける比較は、2つの予後手順が互いに強い相関を示すことを明らかにする。図13から分かるように、FMFアルゴリズムで決定されるような高リスクを有する患者は、90日GAの前に、有意に低いsFlt-1レベルを有する。FMFスクリーニングアルゴリズムが、血圧、妊娠関連血漿タンパク質A及び胎盤成長因子、頭殿長、並びに子宮動脈拍動指数などの因子を含む、複数の母体特性及び病歴の考慮を含むことを考慮すると、本発見は、比較可能なリスク評価を可能にする予後アプローチにおける顕著な単純化を表し、それによって、より複雑なFMFアプローチを潜在的に回避する。90日前のsFlt-1の分析は、実際に、ドップラー子宮動脈評価を必要とすることなく、陽性FMF試験を受ける妊娠女性の予測を可能にし得る。
【0247】
結論として、この研究により、我々は、早発性子癇前症を発症する妊娠女性の大部分において、sFLt-1が在胎90日前に減少するが、その後増加して同じ妊娠女性の妊娠第2期において異常に高くなると結論付けることができた。したがって、妊娠90日前のsFlt-1は、特にPlGF及び/又は子宮動脈ドップラー(10%のFPRに対して40%の検出率)と組み合わせた場合に、早期発症PEを予測することを可能にする。更に、我々はまた、2つのマーカーの組み合わせが、10%の偽陽性率について約35%のUFDIsを予測することができることも観察した。
【0248】
この情報の重要性は、第1期における初期のアスピリン又は同様の療法が、EO-PEに対処し、潜在的にEO-PEを回避する試みにおいて開始され、治療がより有効であるため、重要である。したがって、本発明は、妊娠初期、90日GA前という早期に得られた試料のバイオマーカー分析、並びにその後の治療開始及び指導を使用することによって、EO-PEのリスクがある患者を同定するための代替的かつ改善された診断アプローチを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2025-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠対象における早発性子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、
a.前記妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含み、
b.前記試料が、在胎第12週の終わりの前に対象から単離され、
c.前記sFlt-1又はその断片のレベルが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す、方法。
【請求項2】
更に、
.前記対象から単離された前記試料中の胎盤成長因子(PlGF)又はその断片のレベルを決定することを含み、
.前記sFlt-1又はその断片のレベルと前記PlGF又はその断片のレベルとの組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、在胎第9週~第11週にある、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、前記在胎第11週にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
更に、
a.前記対象の母体年齢、肥満度指数及び/又は子宮動脈ドップラー測定値を決定又は提供することを含み、
b.Flt-1又はその断片のレベルの、前記対象の母体年齢、肥満度指数及び/又は子宮動脈ドップラー測定値との前記組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す、請求項1記載の方法。
【請求項6】
更に、
a.前記対象の平均動脈圧(MAP)のレベルを決定又は提供することを含み、
b.Flt-1又はその断片のレベルの、前記対象のMAPのレベルとの前記組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す、請求項1記載の方法。
【請求項7】
a.前記対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定すること、及びPGF又はその断片のレベルを決定することと、
b.前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)を決定又は提供することと、を含み、
c.前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベル、並びに前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)の組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、請求項1記載の方法。
【請求項8】
a.対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定すること、及びPGF又はその断片のレベルを決定することと、
b.前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び平均動脈圧(MAP)、並びに任意選択的に、子宮動脈ドップラー測定値を決定又は提供することと、を含み、
c.前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベルと、前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び平均動脈圧(MAP)、並びに任意選択的に、子宮動脈ドップラー測定値との組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記試料中で決定された前記sFlt-1又はその断片のレベルが、常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する参照レベルと比較され、前記参照レベル以下のsFlt-1又はその断片のレベルが、早発性子癇前症の高リスクを示す、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記試料中で決定された前記PlGF又はその断片のレベルが、常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する参照レベルと比較され、前記参照レベルを上回るPlGF又はその断片のレベルが、早発性子癇前症の高リスクを示す、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記sFlt-1又はその断片のレベル、在胎第20週の始まり並びに在胎第33週の終わりから起こる子癇前症の早期発症を示す、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記sFlt-1又はその断片のレベル、子宮内胎児死亡(IUFD)のその後の発生を更に示す、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記対象の前記母体年齢が、18~34、又は34超である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、液試料、脈血試料、毛細管血試料、血清試料、血漿試料、膣液試料、唾液試料及び羊水試料からなる群から選択される体液試料である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記対象の前記sFlt-1又はその断片のレベル、並びに任意選択的に、PlGF若しくはその断片のレベル、母体年齢、肥満度指数(BMI)、子宮動脈ドップラー測定値、及び/又は平均動脈圧(MAP)が、圧を低下させること、かつ/又は臓器機能を保護することによって、子癇前症を発症するリスクを低下させ、子癇前症の発症の時点を遅延させ、かつ/又は子癇前症の重症度を低下させために、前記対象の治療を開始又は改変することを示す、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記治療が、1つ以上の利尿薬、β遮断薬、エース阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、α遮断薬、メチルドパ、中枢アゴニスト、及び血管拡張薬、VEGF、PLGF、スタチン、アルギニンバソプレシン受容体アンタゴニスト、L-アルギニン、シトルリン、アルギナーゼ阻害剤、鉄キレート剤ヘパリン、硫酸マグネシウム、ジアゼパム、フェニトイン、ビタミンD、カルシウム、分子のセレン阻害、体外抽出生活スタイル推奨、外来モニタリング、母体及び胎児モニタリングの頻度増加、並びに低用量アセチルサリチル酸からなる群から選択される、請求項記載の方法。
【請求項17】
前記治療がアセチルサリチル酸の投与を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
a.前記対象が未経産である、
b.前記対象が、1回以上の以前の妊娠を有した、
c.前記対象が、多胎妊娠を有する、及び/又は
d.前記対象が、染色体異常を有する胎児を妊娠している疑いがある、
請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、甲状腺機能低下、甲状腺機能亢進、24を超えるBMI、初妊娠、子癇前症の病歴、リスク障害を有する民族、多胎妊娠、片頭痛、狼瘡、血液凝固障害、症性疾患、心臓予備障害、糖尿病、慢性腎疾患、及び慢性高血圧からなる群から選択される1つ以上のリスク因子を有する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記対象からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカー又はその断片のレベルを決定することを更に含み、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、βhCG、コペプチン、バソプレシン、トロポニン、BNP、ANP、CRP、トロンボサイト/白血球、IL6、IL11、MR-proADM、VEGF、PAPP-A、PGF、エンドグリン、プロ-Epil、PP-13、ADAM-12、ビタミンD、インヒビン-a、アクチビン-a、ペントラキシン-3、p-セレクチン、遊離胎児ヘモグロビン、α-1-ミクログロブリン、非抱合型エストリオール、α-フェトプロテイン、GDF15、ニューロフィジンII、LNPEP、ESM1、HGF、ピカチュリン、ヘモペキシン、pp13、uE3、CT-proET1、ADAM12、sTNFαR1、RBP4、ICAM、細胞遊離胎児DNA、FSTL3、ビスファチン、AFP、MMP9、TIMP1、Flt1、PCT、SHGB、クレアチニン、GBP1、IGFALS、尿蛋白、PAI1/PAI2、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ(COMT)、ヘムの分解産物アルギニンの分解産物子宮動脈ドップラー(UtA-Pi)、拡張期ノッチ、MAP、血圧、喫煙、レプチン、遺伝子情報及びアルギニンからなる群から選択され、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベル及び前記sFlt-1又はその断片のレベルが、前記在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す、請求項1記載の方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法を実行するためのキットであって、
-対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための検出試薬及びPlGF又はその断片のレベルを決定するための検出試薬と、
-コンピュータ実行可能コードの形態のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータソフトウェアであって、コンピュータ実行可能コードが、
i.sFlt-1又はその断片の決定されたレベル及びPlGF又はその断片の決定されたレベルを、常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する1つ以上の参照レベルと比較することと、
ii.前記対象の母体年齢、肥満度指数、MAP及び/又は子宮動脈ドップラー測定値を、常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する1つ以上の参照レベルと比較することと、
を行うように構成されている、コンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータソフトウェアと、
を含む、キット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0248
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0248】
この情報の重要性は、第1期における初期のアスピリン又は同様の療法が、EO-PEに対処し、潜在的にEO-PEを回避する試みにおいて開始され、治療がより有効であるため、重要である。したがって、本発明は、妊娠初期、90日GA前という早期に得られた試料のバイオマーカー分析、並びにその後の治療開始及び指導を使用することによって、EO-PEのリスクがある患者を同定するための代替的かつ改善された診断アプローチを可能にする。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕妊娠対象における早発性子癇前症の予後、予測、リスク評価及び/又はリスク層別化のための方法であって、
a.前記妊娠対象から単離された試料中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)又はその断片のレベルを決定することを含み、
b.前記試料が、在胎第12週の終わりの前に対象から単離され、
c.前記sFlt-1又はその断片のレベルが、在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる可能性を示す、方法。
〔2〕更に、
d.前記対象から単離された前記試料中の胎盤成長因子(PlGF)又はその断片のレベルを決定することを含み、
e.前記sFlt-1又はその断片のレベルと前記PlGF又はその断片のレベルとの組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記対象が、在胎第9週~第11週にある、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記対象が、前記在胎第11週にある、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕更に、
a.前記対象の母体年齢、肥満度指数及び/又は子宮動脈ドップラー測定値を決定又は提供することを含み、
b.好ましくはPlGF又はその断片のレベルと組み合わせたsFlt-1又はその断片のレベルの、前記対象の母体年齢、肥満度指数及び/又は子宮動脈ドップラー測定値との前記組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔6〕更に、
a.前記対象の平均動脈圧(MAP)のレベルを決定又は提供することを含み、
b.好ましくはPlGF又はその断片のレベルと組み合わせたsFlt-1又はその断片のレベルの、前記対象のMAPのレベルとの前記組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に起こる早発性子癇前症を示す、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕a.前記対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定すること、及びPIGF又はその断片のレベルを決定することと、
b.前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)を決定又は提供することと、を含み、
c.前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベル、並びに前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)の組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の方法。
〔8〕a.対象から単離された試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定すること、及びPIGF又はその断片のレベルを決定することと、
b.前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び平均動脈圧(MAP)、並びに任意選択的に、子宮動脈ドップラー測定値を決定又は提供することと、を含み、
前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベルと、前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び平均動脈圧(MAP)、並びに任意選択的に、子宮動脈ドップラー測定値との組み合わせが、前記在胎第33週の終わりの前に早発性子癇前症が起こる前記可能性を示す、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の方法。
〔9〕前記試料中で決定された前記sFlt-1又はその断片のレベルが、参照レベル、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値と比較され、前記参照レベル以下のsFlt-1又はその断片のレベルが、早発性子癇前症の高リスクを示す、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔10〕前記試料中で決定された前記PlGF又はその断片のレベルが、参照レベル、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値と比較され、前記参照レベルを上回るPlGF又はその断片のレベルが、早発性子癇前症の高リスクを示す、前記〔2〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔11〕前記sFlt-1又はその断片のレベル、好ましくは前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベルと、前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)との組み合わせが、在胎第20週の始まり並びに在胎第33週の終わりから起こる子癇前症の早期発症を示す、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の方法。
〔12〕前記sFlt-1又はその断片のレベル、好ましくは前記sFlt-1又はその断片のレベル、前記PlGF又はその断片のレベルと、前記対象の母体年齢、肥満度指数(BMI)及び子宮動脈ドップラー測定値、並びに任意選択的に、平均動脈圧(MAP)との組み合わせが、子宮内胎児死亡(IUFD)のその後の発生を更に示す、前記〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の方法。
〔13〕前記母体年齢が、18~34、又は34超である、前記〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の方法。
〔14〕前記試料が、体液試料、例えば血液試料、例えば静脈血試料、毛細管血試料、血清試料、血漿試料、膣液試料、唾液試料又は羊水試料、好ましくは血液、血清又は血漿試料である、前記〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載の方法。
〔15〕前記対象の前記sFlt-1又はその断片のレベル、並びに任意選択的に、PlGF若しくはその断片のレベル、母体年齢、肥満度指数(BMI)、子宮動脈ドップラー測定値、及び/又は平均動脈圧(MAP)が、例えば、胎盤発達における血管新生/抗血管新生プロセスのバランスをとること、血圧を低下させることによって、子癇前症を発症するリスクを低下させ、発症の時点を遅延させ、かつ/又は子癇前症の重症度を低下させ、かつ/又は腎臓及び/若しくは肝臓などの臓器機能を保護するために、前記対象の治療を開始又は改変することを示す、前記〔1〕~〔14〕のいずれか一項に記載の方法。
〔16〕前記治療が、1つ以上の利尿薬、β遮断薬、エース阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、α遮断薬、メチルドパ、中枢アゴニスト、及び血管拡張薬、VEGF、PLGF、スタチン、アルギニンバソプレシン受容体アンタゴニスト、L-アルギニン、シトルリン、アルギナーゼ(nor-NOHA)の阻害剤、鉄キレート剤(デフェロキサミン)、ヘパリン、硫酸マグネシウム、ジアゼパム、フェニトイン、ビタミンD、カルシウム、分子のセレン阻害、体外抽出(例えば、アフェレーシス)、生活スタイル推奨、外来モニタリング、母体及び胎児モニタリングの頻度を増加させる、好ましくは低用量アセチルサリチル酸からなる群から選択される、前記〔1〕~〔15〕のいずれか一項に記載の方法。
〔17〕前記治療がアセチルサリチル酸の投与を含む、前記〔14〕に記載の方法。
〔18〕前記対象が未経産である、前記〔1〕~〔17〕のいずれか一項に記載の方法。
〔19〕前記対象が、1回以上の以前の妊娠を有した、前記〔1〕~〔18〕のいずれか一項に記載の方法。
〔20〕前記対象が、多胎妊娠を有する、前記〔1〕~〔19〕のいずれか一項に記載の方法。
〔21〕前記対象が、染色体異常を有する胎児を妊娠している疑いがある、前記〔1〕~〔20〕のいずれか一項に記載の方法。
〔22〕前記対象が、甲状腺機能低下、甲状腺機能亢進、24を超えるBMI、初妊娠、子癇前症の病歴、リスク障害を有する民族、多胎妊娠、片頭痛、狼瘡、血液凝固障害、例えば凝固増加、炎症性疾患、心臓予備障害、糖尿病、慢性腎疾患、及び慢性高血圧からなる群から選択される1つ以上のリスク因子を有する、前記〔1〕~〔21〕のいずれか一項に記載の方法。
〔23〕前記患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカー又はその断片のレベルを決定することを更に含み、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、βhCG、コペプチン、バソプレシン、トロポニン、BNP、ANP、CRP、トロンボサイト/白血球、IL6、IL11、MR-proADM、VEGF、PAPP-A、PIGF、エンドグリン、プロ-Epil、PP-13、ADAM-12、ビタミンD、インヒビン-a、アクチビン-a、ペントラキシン-3、p-セレクチン、遊離胎児ヘモグロビン、α-1-ミクログロブリン、非抱合型エストリオール、α-フェトプロテイン、GDF15、ニューロフィジンII、LNPEP、ESM1、HGF、ピカチュリン、ヘモペキシン、pp13、uE3、CT-proET1、ADAM12、sTNFαR1、RBP4、ICAM、細胞遊離胎児DNA、FSTL3、ビスファチン、AFP、MMP9、TIMP1、Flt1、PCT、SHGB、クレアチニン、GBP1、IGFALS、尿蛋白、PAI1/PAI2、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ(COMT)、ヘムの分解産物(ビリルビン、ビリベルジン、一酸化炭素、フェリチン)、アルギニンの分解産物(尿素、オルニチン、シトルリン、アポリポタンパク質H、アルギノコハク酸、アンモニア)、子宮動脈ドップラー(UtA-Pi)、拡張期ノッチ、MAP、血圧、喫煙、レプチン、遺伝子情報及びアルギニンからなる群から選択され、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベル及び前記sFlt-1又はその断片のレベルが、前記在胎第33週の終わりの前の早発性子癇前症を示す、前記〔1〕~〔22〕のいずれか一項に記載の方法。
〔24〕前記〔1〕~〔23〕のいずれか一項に記載の方法を実行するためのキットであって、
-対象からの試料中のsFlt-1又はその断片のレベルを決定するための、かつPIGF又はその断片のレベルを決定するための検出試薬と、
-コンピュータ実行可能コードであって、
i.sFlt-1又はその断片の決定されたレベル及びPlGF又はその断片の決定されたレベルを、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する1つ以上の参照レベルと比較することと、
ii.前記対象の母体年齢、肥満度指数、MAP及び/又は子宮動脈ドップラー測定値を、好ましくは健常集団についての集団平均及び/又は中央値に対応する1つ以上の参照レベルと比較することと、を行うように構成された、コンピュータ実行可能コードの形態のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータソフトウェアと、を含む、キット。
【国際調査報告】