IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェネンテック, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2025-500769MHC-ペプチド-TCRの相互作用及び動態を評価するための細胞アッセイ及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】MHC-ペプチド-TCRの相互作用及び動態を評価するための細胞アッセイ及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/557 20060101AFI20250107BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20250107BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20250107BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20250107BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20250107BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20250107BHJP
   C07K 14/74 20060101ALI20250107BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250107BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20250107BHJP
   C07K 17/06 20060101ALI20250107BHJP
   C07K 17/08 20060101ALI20250107BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20250107BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20250107BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G01N33/557
C12Q1/02
C12M1/34 A
C12M1/34 F
C12N5/0783
C12N5/0781
C12N5/0786
C12N5/0784
C07K14/74
C07K19/00
C07K1/13
C07K17/06
C07K17/08
C07K14/725
C07K7/06
C07K7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533937
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 US2022081066
(87)【国際公開番号】W WO2023107985
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,012
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/397,325
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オルロヴァ, ダリア ユリエフナ
(72)【発明者】
【氏名】クルス トレウガブロワ, マイラ
(72)【発明者】
【氏名】ダルウィーシュ, マーティン アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジャンヌ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029BB15
4B029BB17
4B029FA12
4B029FA15
4B063QA05
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR56
4B063QR77
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BB19
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA40
4H045BA41
4H045BA62
4H045BA70
4H045DA50
4H045DA86
4H045EA50
4H045EA54
4H045FA74
(57)【要約】
受容体分子とMHC分子の結合速度動態を定量化するための組成物、システム及び方法が提供される。生成される定量的データは、予測モデルの生成に適した精度及び量のものでありうる。具体的には、本明細書に記載されるアッセイは、多様なMHC関連ペプチドの分析に対応することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物動力学アッセイにおける使用のための組成物であって、
抗原結合領域を含むポリペプチド分子;
ポリペプチド分子に連結した1つ又は複数のフルオロフォア;及び
ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチド
を含む組成物。
【請求項2】
生物動力学アッセイにおける使用のための組成物であって、
抗原結合領域を含むポリペプチド分子;
ポリペプチド分子に連結した1つ又は複数のフルオロフォア;及び
UV切断可能なアミノ酸を含む、ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチド
を含む組成物。
【請求項3】
ポリペプチド分子が、単一ポリペプチド鎖を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリペプチド分子が、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抗原結合領域が、ポリペプチド分子の第1のポリペプチド鎖の少なくとも一部分を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
第1のポリペプチド鎖が、αドメイン及びαドメインを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
第1のポリペプチド鎖が、αドメインを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
第1のポリペプチド鎖が、組み換えヒト白血球抗原のアミノ酸配列を含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
第1のポリペプチド鎖が、組み換えマウス組織適合系2のアミノ酸配列を含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
第2のポリペプチド鎖が、第1のポリペプチド鎖のαドメインに連結している、請求項6から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
第2のポリペプチド鎖が、β-ミクログロブリン分子のアミノ酸配列を含む、請求項3から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
抗原結合領域が、第1のポリペプチド鎖の少なくとも一部分及び第2のポリペプチド鎖の少なくとも一部分を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
第1のポリペプチド鎖の一部分がαドメインを含み、第2のポリペプチド鎖の一部分がβドメインを含み、αドメインとβドメインが抗原結合領域を形成する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
第1のポリペプチド鎖が、αドメインをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
第2のポリペプチド鎖が、βドメインをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
第1のポリペプチド鎖が、組み換えヒト白血球抗原のアミノ酸配列を含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
第2のポリペプチド鎖が、組み換えヒト白血球抗原のポリペプチド配列を含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
抗原結合領域が、少なくとも1つのαヘリックスを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
抗原結合領域が、少なくとも1つのβシートを含む、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
1つ又は複数のフルオロフォアが、ポリペプチド分子に共有結合的に連結している、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
共有結合的連結が、エステルを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
1つ又は複数のフルオロフォアが、ポリペプチド分子の、溶媒に露出した1つ又は複数の表面リジン残基に共有結合的に連結している、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖が、非共有結合的に連結している、請求項3から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖が、共有結合的に連結している、請求項3から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
ポリペプチド分子が、抗原提示細胞代替物に結合している、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
抗原提示細胞代替物が、ビーズを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
ポリペプチド分子が、リンカーにより抗原提示細胞代替物に結合している、請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項28】
リンカーが、ポリエチレングリコール(PEG)分子を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した受容体をさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
生きたリンパ球をさらに含み、受容体の少なくとも一部分が、生きたリンパ球の細胞膜上にある、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
生きたリンパ球の細胞膜上に共受容体をさらに含み、共受容体が、ポリペプチド分子の一部分に結合している、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
生きたリンパ球がT細胞であり、受容体がT細胞受容体(TCR)である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
共受容体が、CD8分子を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
共受容体が、CD4分子を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
生きたリンパ球がB細胞であり、受容体がB細胞受容体(BCR)である、請求項31に記載の組成物。
【請求項36】
生細胞がマクロファージを含み、受容体がケモカイン受容体を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
生細胞が樹状細胞を含み、受容体がパターン認識受容体(PRR)を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項38】
抗原性ペプチドが、8~11個のアミノ酸残基にわたる長さを有する、請求項1から37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
抗原性ペプチドが、15~24個の残基にわたる長さを有する、請求項1から37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
抗原性ペプチドが、UV部分を含む、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
生物動力学アッセイにおける使用のためのプローブ複合体を生成するための反応混合物であって、
請求項40に記載の組成物;及び
標的抗原性ペプチド
を含む反応混合物。
【請求項42】
標的抗原性ペプチドが、ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドと比較して、モル過剰の濃度で存在する、請求項41に記載の反応混合物。
【請求項43】
標的抗原性ペプチドの濃度が、抗原性ペプチドの濃度の25倍である、請求項41又は42に記載の反応混合物。
【請求項44】
25mMのTRISを含む、請求項41から43のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項45】
pH8.0である、請求項41から44のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項46】
150mMのNaClを含む、請求項41から45のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項47】
4mMのEDTAを含む、請求項41から46のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項48】
5%のエチレングリコールを含む、請求項41から47のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項49】
単量体プローブ複合体を生成する方法であって、
抗原結合領域を含むポリペプチド分子を第1の抗原性ペプチドと接触させて、抗原提示複合体を生成すること;
抗原提示複合体を複数のフルオロフォア分子と接触させて、フルオロフォア標識抗原提示複合体を生成すること;
フルオロフォア標識抗原提示複合体に共有結合したフルオロフォア分子の量を決定すること;及び
第1の抗原性ペプチドを第2の抗原性ペプチドと交換して、単量体プローブ複合体を生成すること
を含む方法。
【請求項50】
第1の抗原性ペプチドを第2の抗原性ペプチドと交換することが、第1の抗原性ペプチドを切断して切断された第1の抗原性ペプチドを生成することを含み、切断された第1の抗原性ペプチドが、第1の抗原性ペプチドより低い、抗原結合領域に対する結合親和性を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
第1の抗原性ペプチドを切断することが、UV照射を適用することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
第2の抗原性ペプチドが、切断された第1の抗原性ペプチドより高い、抗原結合領域に対する親和性を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
UV照射が、365ナノメートルの波長を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
抗原提示複合体を複数のフルオロフォア分子と接触させて、フルオロフォア標識抗原提示複合体を生成する工程が、ポリペプチド分子の、溶媒に露出した1つ又は複数の表面リジン残基を、フルオロフォア分子の1つ又は複数に共有結合的に連結させることを含む、請求項49から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
1つ又は複数の非コンジュゲートフルオロフォアを、標識された単量体プローブ複合体から分離することをさらに含む、請求項49から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
複数の標識された単量体プローブ複合体の量を決定することをさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
複数の標識された単量体プローブ複合体の各々にコンジュゲートしたフルオロフォアの平均数を決定することをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
複数の標識された単量体プローブ複合体の各々にコンジュゲートしたフルオロフォアの平均数を決定する工程が、各々が異なる数のコンジュゲートしたフルオロフォアに対応する、複数の相対的存在量の値を使用することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
複数の相対的存在量の値の各々が、質量分析を使用して決定される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
生細胞の活性化を評価するための結合速度データを収集するための方法であって、
複数の生細胞を、複数の、請求項1から29のいずれか一項に記載の組成物と、一定の濃度で接触させることを含み、複数の生細胞の各々が、細胞膜上に複数の受容体分子を含む、複数の生細胞を接触させること;
受容体分子を、一定の時間間隔にわたって組成物に結合させて、複数の受容体-プローブ複合体を形成することであって、各受容体-プローブ複合体が、1つの受容体に結合した1つの組成物を含む、受容体分子を結合させること;
複数の生細胞の少なくとも2つの試料を、前記時間間隔にわたって異なる時点で収集すること;
少なくとも2つの試料の各々中の生細胞を、固定剤と接触させて、受容体-プローブ複合体を保存し、受容体分子と組成物との間のさらなる結合を防ぐこと;
各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を決定すること;及び
各試料中の各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を分析し、結合速度データを収集すること
を含む方法。
【請求項61】
生細胞の活性化を評価するための解離速度データを収集するための方法であって、
複数の生細胞を、複数の、請求項1から29のいずれか一項に記載の組成物と、一定の濃度で接触させることを含み、複数の生細胞の各々が、細胞膜上に複数の受容体分子を含む、複数の生細胞を接触させること;
受容体分子を組成物に結合させて、平衡状態が達成されるまで複数の受容体-プローブ複合体を形成することであって、各受容体-プローブ複合体が、1つの受容体に結合した1つの組成物を含む、受容体分子を結合させること;
受容体-プローブ複合体の一部分を、組成物の濃度を低下させることにより、一定の時間間隔にわたって解離させること;
複数の生細胞の少なくとも2つの試料を、前記時間間隔にわたって異なる時点で収集すること;
少なくとも2つの試料の各々中の生細胞を、固定剤と接触させて、受容体-プローブ複合体を保存し、受容体分子と組成物との間のさらなる結合を防ぐこと;
各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を決定すること;及び
各試料中の各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を分析し、結合速度データを収集すること
を含む方法。
【請求項62】
生細胞が、T細胞を含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
生細胞が、B細胞を含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項64】
生細胞が、マクロファージを含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項65】
生細胞が、樹状細胞を含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項66】
組成物のシグナル強度が、分析機器を使用して測定される、請求項60から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
分析機器が、フローサイトメーターを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
分析機器が、蛍光光度計を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
固定剤が、パラホルムアルデヒドを含む、請求項60から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
受容体-プローブ複合体の温度を低下させることにより、受容体の内部移行を防ぐことをさらに含む、請求項60から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
温度を、4℃まで低下させる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
1つ又は複数の未結合の組成物を、複数の生細胞から分離することをさらに含む、請求項60から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
受容体-プローブ複合体の各々が、CD8分子を含む、請求項60から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
受容体-プローブ複合体の各々が、CD4分子を含む、請求項60から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
各細胞の細胞膜を透過性にすることをさらに含む、請求項60から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
生細胞の各々の細胞内ドメインのリン酸化のレベルを検出するための検出試薬を適用することをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
細胞内ドメインが、ζドメインを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
検出試薬が、抗体を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
生細胞の活性化を評価するための結合動態を測定するためのシステムであって、
分析チャンバを含む分析機器を含み、分析チャンバが、請求項1から40のいずれか一項に記載の組成物を含む、システム。
【請求項80】
生細胞の活性化を評価するための結合動態を測定するためのシステムであって、
分析チャンバを含む分析機器を含み、分析チャンバが、請求項41から48のいずれか一項に記載の反応混合物を含む、システム。
【請求項81】
分析機器が、
分析チャンバを調べるための光源;及び
シグナルを検出するための検出器
を含む、請求項79又は80に記載のシステム。
【請求項82】
非一時的なコンピューター可読記憶媒体を含むコンピューターシステムをさらに含み、非一時的なコンピューター可読記憶媒体が、シグナルを分析するための命令を含む、請求項81に記載のシステム。
【請求項83】
シグナルを分析することが、シグナルを、前もって決定する較正値に正規化することを含む、請求項82に記載のシステム。
【請求項84】
分析チャンバが、フローセルを含む、請求項79から83のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項85】
分析機器が、フローサイトメーターを含む、請求項80から84のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項86】
分析機器が、蛍光光度計を含む、請求項80から84のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項87】
分析機器が、顕微鏡を含む、請求項80から84のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項88】
分析機器が、質量分析計を含む、請求項80から84のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項89】
T細胞受容体(TCR)とペプチド-主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)の結合速度定数を評価するための生物物理学的パラメーターデータを収集するための方法であって、
一組の単量体プローブを生成することであって、各単量体プローブが、1つの検出分子と、1つのペプチドを含む1つのMHCとを含む、一組の単量体プローブを生成すること;
TCR分子を、単量体プローブと1対1の対応で結合させて、一定の時間間隔にわたってTCR-単量体-プローブ複合体を形成すること;
前記時間間隔にわたってTCR-単量体-プローブ複合体の2つ以上のサブセットをサンプリングすることであって、各サブセットが異なる時点で取られる、2つ以上のサブセットをサンプリングすること;
それらの対応する時点で、各サブセット内での新規TCR-単量体-プローブ複合体の形成を防ぐこと;及び
分析機器を使用して、各サブセット内の検出分子からのシグナル強度を測定すること
を含む方法。
【請求項90】
TCR分子が、T細胞上に発現される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
検出分子が、蛍光分子を含む、請求項89又は90に記載の方法。
【請求項92】
検出分子とMHCがリンカーで結合されている、請求項89から91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
リンカーが、ビオチン化構造を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
リンカーが、PEGを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
分析機器が、フローサイトメーターを含む、請求項89から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
防ぐ工程が、固定バッファーの使用を含む、請求項89から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
防ぐ工程に続いて温度を低下させることをさらに含む、請求項89から96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
温度が、4℃である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
未結合の単量体プローブを、TCR分子から分離することをさらに含む、請求項89から98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記時間間隔が、TCR-単量体-プローブ複合体の平衡状態に先立って開始される、請求項89から99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
単量体プローブが、CD8複合体をさらに含む、請求項89から100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
T細胞受容体(TCR)とペプチド-主要組織適合性遺伝子複合体(pMHC)との解離速度定数を評価するための生物物理学的パラメーターデータを収集するための方法であって、
一組の単量体プローブを生成することであって、各単量体プローブが、1つの検出分子と、1つのペプチドを含む1つのMHCとを含む、一組の単量体プローブを生成すること;
TCR分子を、単量体プローブと1対1の対応で結合させて、TCR-単量体-プローブ複合体を形成すること;
一定の時間間隔にわたって、TCR-単量体-プローブ複合体を、単量体プローブとTCRとに解離させること;
前記時間間隔にわたってTCR-単量体-プローブ複合体の2つ以上のサブセットをサンプリングすることであって、各サブセットが異なる時点で取られる、2つ以上のサブセットをサンプリングすること;
それらの対応する時点で、各サブセット内でのさらなるTCR-単量体-プローブ複合体の解離を防ぐこと;及び
ハイスループット分析機器を使用して、各サブセット内の検出分子からのシグナル強度を測定すること
を含む方法。
【請求項103】
TCR分子が、T細胞上に発現される、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
検出分子が、蛍光分子を含む、請求項102又は103に記載の方法。
【請求項105】
検出分子とMHCがリンカーで結合されている、請求項102から104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
リンカーが、ビオチン化構造を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
リンカーが、PEGを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
分析機器が、フローサイトメーターを含む、請求項102から107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
防ぐ工程が、固定バッファーの使用を含む、請求項102から108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
防ぐ工程に続いて温度を低下させることをさらに含む、請求項102から109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
温度が、4℃である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
未結合の単量体プローブを、TCR分子から分離することをさらに含む、請求項102から111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記時間間隔が、TCR-単量体-プローブ複合体の平衡状態において開始される、請求項102から112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
解離工程が、緩衝剤を使用して、TCR-単量体-プローブ複合体を含む溶液を希釈する、請求項102から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
単量体プローブが、CD8複合体をさらに含む、請求項102から114のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2021年12月7日出願の米国特許仮出願番号63/287,012号の出願日の利益を主張し、その開示内容は参照により本明細書にその全体が援用される。本出願はまた、2022年8月11日出願の米国特許仮出願番号63/397,325号の出願ビの利益を主張し、その開示内容は参照により本明細書にその全体が援用される。
【0002】
発明の分野
[0002]本明細書の記載は、概して、主要組織適合性遺伝子複合体提示ペプチド(pMHC)とT細胞受容体との相互作用及び動態を評価するための方法及びアッセイを目的とする。具体的には、本記載は、細胞ベースのアッセイを使用した選択及び活性化の状況において、pMHCと受容体の結合動態を評価することを目的としている。
【背景技術】
【0003】
[0003]適応免疫応答が活性化される条件を正確に予測することは、科学者と医師にとって依然として困難な課題である。免疫療法技術を適用するとき、対象がどのように応答するかを正確に予測できる既存の技術はない。例えば、患者の20%~40%のみが免疫療法に応答する。加えて、既存の薬物は、時に広範な免疫細胞を活性化し、時に自己免疫反応をトリガーする。Sharma P,Hu-Lieskovan S,Wargo JA,Ribas A.Primary,Adaptive,and Acquired Resistance to Cancer Immunotherapy.Cell.2017 Feb 9;168(4):707-723.doi:10.1016/j.cell.2017.01.017.PMID:28187290;PMCID:PMC5391692。
【0004】
[0004]抗原提示細胞(APC)とT細胞との間の相互作用及び動態についての理解は、APCの様々な表面分子がT細胞の様々な表面分子と相互作用するために、限定されている。また、最近になって、これら相互作用の一部がin vitro又は非生体系において再現されえないことが明らかとなった。例えば、表面プラズモン共鳴ベースのアッセイは、生細胞に関連付けられる結合動態に対する寄与因子を考慮することができない。四量体染色は、T細胞の特異性を評価するための現在のゴールドスタンダードであるが、結合動態に関する比較可能な速度定数データを収集する術を持たない。加えて、予測モデルは大量のデータを必要とし、そのような技術にはとてつもなく膨大な時間投資が必要になる。
【0005】
[0005]したがって、抗原提示細胞(APC)とT細胞との間の動態を迅速にかつ比較可能なデータを低コストで生成する方法で測定するための、細胞ベースのアッセイに対する需要が存在する。また、このようなアッセイは、患者により高い応答率をもたらすと同時に、自己免疫反応の重症度を低減するか又は自己免疫反応を排除するであろう。本開示は、このような需要及び他の需要に対処するものである。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本発明の態様は、生物動力学アッセイにおける使用のための組成物を含み、この組成物は、抗原結合領域を含むポリペプチド分子;ポリペプチド分子に連結した1つ又は複数のフルオロフォア;及びポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドを含む
【0007】
[0007]本発明の態様は、生物動力学アッセイにおける使用のための組成物を含み、この組成物は、抗原結合領域を含むポリペプチド分子;ポリペプチド分子に連結した1つ又は複数のフルオロフォア;及びUV切断可能なアミノ酸を含む、ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドを含む。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態では、ポリペプチド分子は、単一ポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチド分子は、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含む。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、ポリペプチド分子の第1のポリペプチド鎖の少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、αドメイン及びαドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、αドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、組み換えヒト白血球抗原のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、組み換えマウス組織適合系2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、第1のポリペプチド鎖のαドメインに連結している。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、β-ミクログロブリン分子のアミノ酸配列を含む。β
【0010】
[0010]いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、第1のポリペプチド鎖の少なくとも一部分及び第2のポリペプチド鎖の少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖の一部分はαドメインを含み、第2のポリペプチド鎖の一部分はβドメインを含み、αドメインとβドメインは抗原結合領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、αドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、βドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、組み換えヒト白血球 抗原のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、組み換えヒト白血球抗原のポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、少なくとも1つのαヘリックスを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、少なくとも1つのβシートを含む。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態では、1つ又は複数のフルオロフォアは、ポリペプチド分子に共有結合的に連結している。いくつかの実施形態では、共有結合的連結はエステルを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のフルオロフォアは、ポリペプチド分子の、溶媒に露出した1つ又は複数の表面リジン残基に共有結合的に連結している。
【0012】
[0012]いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、非共有結合的に連結している。代替的及び追加的実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は共有結合的に連結している。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態では、ポリペプチド分子は、抗原提示細胞代替物に結合している。いくつかの実施形態では、抗原提示細胞代替物は、ビーズを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチド分子は、リンカーにより抗原提示細胞代替物に結合している。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)分子を含む。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態では、組成物は、ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した受容体を含む。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態では、組成物は、生きたリンパ球を含む。いくつかの実施形態では、受容体の少なくとも一部分は、生きたリンパ球の細胞膜上にある。いくつかの実施形態では、組成物は、生きたリンパ球の細胞膜上に共受容体を含む。いくつかの実施形態では、共受容体は、ポリペプチド分子の一部分に結合している。いくつかの実施形態では、生きたリンパ球はT細胞であり、受容体はT細胞受容体(TCR)である。いくつかの実施形態では、共受容体は、CD8分子を含む。いくつかの実施形態では、生きたリンパ球はB細胞であり、受容体はB細胞受容体(BCR)である。いくつかの実施形態では、共受容体は、CD4分子を含む。いくつかの実施形態では、生細胞はマクロファージを含み、受容体はケモカイン受容体を含む。いくつかの実施形態では、生細胞は樹状細胞を含み、受容体はパターン認識受容体(PRR)を含む。
【0016】
[0016]いくつかの実施形態では、抗原性ペプチドは、8~11個のアミノ酸残基にわたる長さを有する。他の実施形態では、抗原性ペプチドは、15~24個の残基にわたる長さを有する。いくつかの実施形態では、抗原性ペプチドは、UV切断可能な部分を含む。
【0017】
[0017]本発明の態様は、生物動力学アッセイにおける使用のためのプローブ複合体を生成するための反応混合物を含み、混合物は、上記及び本明細書の組成物のいずれかと、標的抗原性ペプチドとを含む。
【0018】
[0018]いくつかの実施形態では、標的抗原性ペプチドは、ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドと比較して、モル過剰の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、標的抗原性ペプチドの濃度は、抗原性ペプチドの濃度の25倍である。
【0019】
[0019]いくつかの実施形態では、反応混合物は、25mMのTRISを含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、pH8.0である。いくつかの実施形態では、反応混合物は、150mMのNaClである。いくつかの実施形態では、反応混合物は、4mMのEDTAである。いくつかの実施形態では、反応混合物は、5%のエチレングリコールを含む。
【0020】
[0020]本発明の態様は、単量体プローブ複合体を生成する方法を含み、この方法は、抗原結合領域を含むポリペプチド分子を第1の抗原性ペプチドと接触させて、抗原提示複合体を生成すること;抗原提示複合体を複数のフルオロフォア分子と接触させて、フルオロフォア標識抗原提示複合体を生成すること;フルオロフォア標識抗原提示複合体に共有結合したフルオロフォア分子の量を決定すること;及び第1の抗原性ペプチドを第2の抗原性ペプチドと交換して、単量体プローブ複合体を生成することを含む。
【0021】
[0021]いくつかの実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、第1の抗原性ペプチドを第2の抗原性ペプチドと交換することを含み、第1の抗原性ペプチドを切断して切断された第1の抗原性ペプチドを生成することを含む。いくつかの実施形態では、切断された第1の抗原性ペプチドは、第1の抗原性ペプチドより低い、抗原結合領域への結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、第2の抗原性ペプチドは、切断された第1の抗原性ペプチドより高い、抗原結合領域に対する親和性を有する。
【0022】
[0022]いくつかの実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、第1の抗原性ペプチドを切断することを含み、UV照射を適用することを含む。いくつかの実施形態では、UV照射は、365ナノメートルの波長を含む。
【0023】
[0023]いくつかの実施形態では、抗原提示複合体を複数のフルオロフォア分子と接触させて、フルオロフォア標識抗原提示複合体を生成する工程は、ポリペプチド分子の、溶媒に露出した1つ又は複数の表面リジン残基を、フルオロフォア分子の1つ又は複数に共有結合的に連結させることを含む。
【0024】
[0024]いくつかの実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、1つ又は複数の非コンジュゲートフルオロフォアを、標識された単量体プローブ複合体から分離することを含む。いくつかの実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、複数の標識された単量体プローブ複合体の濃度を決定することを含む。
【0025】
[0025]いくつかの実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、複数の標識された単量体プローブ複合体の各々にコンジュゲートしたフルオロフォアの平均数を決定することを含む。いくつかの実施形態では、複数の標識された単量体プローブ複合体の各々にコンジュゲートしたフルオロフォアの平均数を決定する工程は、各々が異なる数のコンジュゲートしたフルオロフォアに対応する、複数の相対的存在量の値を使用することを含む。いくつかの実施形態では、複数の相対的存在量の値の各々が、質量分析を使用して決定される。
【0026】
[0026]本発明の態様は、生細胞の活性化を評価するための結合速度データを収集するための方法を含み、この方法は、複数の生細胞を、本明細書及び上記に記載される組成物のいずれか1つの複数の組成物と、一定の濃度で接触させることであって、複数の生細胞の各々が、複数の受容体分子を細胞膜上に含む、複数の生細胞を接触させること;受容体分子を、一定の時間間隔にわたって組成物に結合させて、複数の受容体-プローブ複合体を形成することであって、受容体-プローブ複合体の各々が、1つの受容体に結合した1つの組成物を含む、受容体分子を結合させること;複数の生細胞の少なくとも2つの試料を、一定の時間間隔にわたって異なる時点で収集すること;少なくとも2つの試料の各々中の生細胞を、固定剤と接触させて、受容体-プローブ複合体を保存し、受容体分子と組成物との間のさらなる結合を防ぐこと;各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を決定すること;及び各試料中の各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を分析し、結合速度データを収集することを含む。
【0027】
[0027]いくつかの実施形態では、生細胞は、T細胞を含む。いくつかの実施形態では、生細胞は、B細胞を含む。いくつかの実施形態では、生細胞は、マクロファージを含む。いくつかの実施形態では、生細胞は、樹状細胞を含む。
【0028】
[0028]いくつかの実施形態では、シグナル強度は、分析機器を使用して測定される。いくつかの実施形態では、分析機器は、フローサイトメーターを含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、蛍光光度計を含む。
【0029】
[0029]いくつかの実施形態では、固化剤は、パラホルムアルデヒドを含む。いくつかの実施形態では、方法は、受容体-プローブ複合体の温度を低下させることにより、受容体の内部移行を防ぐことを含む。いくつかの実施形態では、温度は、4℃まで低下させる。いくつかの実施形態では、方法は、1つ又は複数の未結合の組成物を、複数の生細胞から分離することを含む。
【0030】
[0030]いくつかの実施形態では、受容体-プローブ複合体の各々は、CD8分子を含む。いくつかの実施形態では、受容体-プローブ複合体の各々は、CD4分子を含む。
【0031】
[0031]本発明の態様は、生細胞の活性化を評価するための解離速度データを収集するための方法を含み、この方法は、複数の生細胞を、本明細書及び上記に記載される組成物のいずれかの複数と、一定の濃度で接触させることであって、複数の生細胞の各々が、細胞膜上に複数の受容体分子を含む、複数の生細胞を接触させること;受容体分子を組成物に結合させて、平衡状態が達成されるまで複数の受容体-プローブ複合体を形成することであって、各受容体-プローブ複合体が、1つの受容体に結合した1つの組成物を含む、受容体分子を結合させること;受容体-プローブ複合体の一部分を、組成物の濃度を低下させることにより、一定の時間間隔にわたって解離させること;複数の生細胞の少なくとも2つの試料を、一定の時間間隔にわたって異なる時点で収集すること;少なくとも2つの試料の各々中の生細胞を、固定剤と接触させて、受容体-プローブ複合体を保存し、受容体分子と組成物との間のさらなる結合を防ぐこと;各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を決定すること;及び各試料中の各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を分析し、結合速度データを収集することを含む。
【0032】
[0032]いくつかの実施形態では、生細胞は、T細胞を含む。いくつかの実施形態では、生細胞は、B細胞を含む。いくつかの実施形態では、生細胞は、マクロファージを含む。いくつかの実施形態では、生細胞は、樹状細胞を含む。いくつかの実施形態では、シグナル強度は、分析機器を使用して測定される。いくつかの実施形態では、分析機器は、フローサイトメーターを含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、蛍光光度計を含む。いくつかの実施形態では、固化剤は、パラホルムアルデヒドを含む。
【0033】
[0033]いくつかの実施形態では、方法は、受容体-プローブ複合体の温度を低下させることにより、受容体の内部移行を防ぐことを含む。いくつかの実施形態では、温度は、4℃まで低下させる。
【0034】
[0034]いくつかの実施形態では、方法は、1つ又は複数の未結合の組成物を、複数の生細胞から分離することを含む。いくつかの実施形態では、受容体-プローブ複合体の各々は、CD8分子を含む。いくつかの実施形態では、受容体-プローブ複合体の各々は、CD4分子を含む。
【0035】
[0035]いくつかの実施形態では、方法は、各細胞の細胞膜を透過性にすることをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、生細胞の各々の細胞内ドメインのリン酸化のレベルを検出するための検出試薬を適用することをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、ζドメインを含む。いくつかの実施形態では、検出試薬は、抗体を含む。
【0036】
[0036]本発明の態様は、生細胞の活性化を評価するための結合動態を測定するためのシステムを含み、このシステムは、分析チャンバを含む分析機器を含む。いくつかの実施形態では、分析チャンバは、上記及び本明細書に記載される組成物を含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、分析チャンバを調べるための光源;及びシグナルを検出するための検出器を含む。
【0037】
[0037]いくつかの実施形態では、システムは、非一時的なコンピューター可読記憶媒体を含むコンピューターシステムをさらに含み、非一時的なコンピューター可読記憶媒体は、シグナルを分析するための命令を含む。いくつかの実施形態では、シグナルを分析することは、シグナルを、前もって決定する較正値に正規化することを含む。
【0038】
[0038]いくつかの実施形態では、分析チャンバは、フローセルを含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、フローサイトメーターを含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、蛍光光度計を含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、顕微鏡を含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、質量分析計を含む。
【0039】
[0039]本発明の態様は、生細胞の活性化を評価するための結合動態を測定するためのシステムを含み、このシステムは、分析チャンバを含む分析機器を含む。いくつかの実施形態では、分析チャンバは、上記及び本明細書に記載される反応混合物を含む。
【0040】
[0040]いくつかの実施形態では、分析機器は、分析チャンバを調べるための光源;及びシグナルを検出するための検出器を含む。
【0041】
[0041]いくつかの実施形態では、システムは、非一時的なコンピューター可読記憶媒体を含むコンピューターシステムをさらに含み、非一時的なコンピューター可読記憶媒体は、シグナルを分析するための命令を含む。いくつかの実施形態では、シグナルを分析することは、シグナルを、前もって決定する較正値に正規化することを含む。
【0042】
[0042]いくつかの実施形態では、分析チャンバは、フローセルを含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、フローサイトメーターを含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、蛍光光度計を含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、顕微鏡を含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、質量分析計を含む。
【0043】
[0043]一態様では、T細胞受容体(TCR)とペプチド-主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)の結合速度定数を評価するための生物物理学的パラメーターデータを収集するための方法が、種々の実施形態に従って記載される。種々の実施形態では、方法は、一組の単量体プローブを生成することを含む。種々の実施形態では、各単量体プローブは、1つの検出分子と、ペプチドを含む1つのMHCとを含む。種々の実施形態では、方法は、TCR分子を、単量体プローブと1対1の対応で結合させて、一定の時間間隔にわたってTCR-単量体-プローブ複合体を形成することを含む。種々の実施形態では、一定の時間間隔にわたるTCR-単量体-プローブ複合体の2つ以上のサブセット。種々の実施形態では、各サブセットは、異なる時点で取られる。種々の実施形態では、方法は、それらの対応する時点での各サブセット内での新規TCR-単量体-プローブ複合体の形成を防ぐことを含む。種々の実施形態では、方法は、分析機器を使用して、各サブセット内の検出分子からのシグナル強度を測定することを含む。
【0044】
[0044]一態様では、T細胞受容体(TCR)とペプチド-主要組織適合性遺伝子複合体(pMHC)との解離速度定数を評価するための生物物理学的パラメーターデータを収集するための方法が、種々の実施形態に従って記載される。種々の実施形態では、方法は、一組の単量体プローブを生成することを含み、各単量体プローブは、1つの検出分子と、ペプチドを含む1つのMHCとを含む。種々の実施形態では、方法は、TCR分子を、単量体プローブと1対1の対応で結合させて、TCR-単量体-プローブ複合体を形成することを含む。種々の実施形態では、方法は、TCR-単量体-プローブ複合体を、単量体プローブとTCRとに、一定の時間間隔にわたって解離させることを含む。種々の実施形態では、方法は、TCR-単量体-プローブ複合体の2つ以上のサブセットを、一定の時間間隔にわたってサンプリングすることを含む。種々の実施形態では、各サブセットは、異なる時点で取られる。種々の実施形態では、方法は、それらの対応する時点での各サブセット内でのさらなるTCR-単量体-プローブ複合体の解離を防ぐことを含む。種々の実施形態では、方法は、ハイスループット分析機器を使用して、各サブセット内の検出分子からのシグナル強度を測定することを含む。
【0045】
[0045]上記の及びさらなる態様は、実施例を含む本開示の残りの部分でさらに説明される。
【0046】
参照による援用
[0046]本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の刊行物、特許、又は特許出願がそれぞれ参照により援用されることが具体的にかつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に援用される。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する部分について、本明細書は、そのような矛盾する材料に取って代わる及び/又は優先することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
[0047]本技術の特徴は、特許請求の範囲に詳細に示される。本技術の特徴及び利点は、本技術の原理が利用される例示的実施形態、及び添付図面(本明細書では「図」ともいう)を示す以下の詳細な記載を参照することにより、さらに理解されるであろう。添付図面は、実際の縮尺通りに描かれてはいない。種々の図面内の類似の参照番号及び記号は、類似の要素を示している。明確性のために、すべての図面のすべての構成要素がラベル付けされているわけではない。
【0048】
図1】[0048]種々の実施形態による、胸腺において起こるT細胞選択を図式的に示している。
図2】[0049]種々の実施形態による、T細胞の細胞表面タンパク質に結合する抗原提示細胞のポリペプチド分子の概略図である。
図3】[0050]種々の実施形態による、結合又は解離速度を決定するための細胞ベースのアッセイからの、一定の時間間隔にわたる異なる時点の結合シグナル強度を示すグラフである。
図4】[0051]種々の実施形態による、リンパ球及び単量体プローブの一実施例を示す概略図である。
図5A】[0052]種々の実施形態による、生細胞の活性化を評価するための結合速度データを収集するためのプロセスのフロー図である。
図5B】[0053]種々の実施形態による、結合アッセイのためのプロセスのフロー図である。
図6A】[0054]種々の実施形態による、生細胞の活性化を評価するための解離速度データを収集するためのプロセスのフロー図である。
図6B】[0055]種々の実施形態による、解離アッセイのためのプロセスのフロー図である。
図7A】[0056]種々の実施形態による、結合アッセイからのグラフ形式の例示的データである。
図7B】[0057]種々の実施形態による、結合アッセイからのグラフ形式の例示的データである。
図8A】[0058]種々の実施形態による、解離アッセイからのグラフ形式の例示的データである。
図8B】[0059]種々の実施形態による、解離アッセイからのグラフ形式の例示的データである。
図9A】[0060]種々の実施形態による、細胞膜内部に位置する複数のタンパク質を含むT細胞受容体複合体を示す図である。
図9B】[0061]種々の実施形態による、細胞膜内部に位置するCD8複合体を示す図である。
図9C】[0062]種々の実施形態による、細胞膜内部に位置するCD4分子を示す図である。
図10A】[0063]種々の実施形態による、細胞膜内部に位置するペプチドに関連付けられる多タンパク質複合体を含むpMHCクラスI分子を示す図である。
図10B】[0064]種々の実施形態による、細胞膜内部に位置するペプチドに関連付けられる多タンパク質複合体を含むpMHCクラスII分子を示す図である。
図11】[0065]種々の実施形態による、ペプチド提示経路の細胞経路プロセスである。
図12】[0066]種々の実施形態による、UV切断可能なペプチドを含むMHC複合体を生成する例示的方法の図である。
図13】[0067]種々の実施形態による、UV切断可能なペプチドを対象のペプチドペプチドと交換する例示的方法の図である。
図14】[0068]種々の実施形態による、生細胞の活性化を評価するための結合動態を測定するためのシステムの概略図である。
【0049】
[0069]図は必ずしも実際の寸法通りに描かれてはおらず、また図内のオブジェクトは必ずしも互いに対する関係において実際の寸法通りではないことを理解されたい。図は、本明細書に開示される装置、システム、及び方法の種々の実施形態の明瞭性及び理解をもたらすことを意図して示されている。可能な限り、同じ又は同様の部分を指すために図面全体を通して同じ参照番号が使用される。さらに、図面はいかなる意味でも本教示の範囲を限定することを意図していないことを諒解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[0070]本明細書は、リガンド(例えば、主要組織適合性遺伝子複合体提示ペプチド[pMHC]、共受容体[例えば、CD4、CD8)など]及び受容体(例えば、T細胞受容体[TCR]、B細胞受容体[BCR]など)の相互作用及び動態を評価するための技術の種々の実施形態を記載する。このような技術は、研究者及び医師が、結合の相互作用及び動態を最適化して所望の適応免疫応答を得ることを可能にする。しかしながら、本開示は、これら例示的な実施態様及び用途、又は例示的な実施態様及び用途が本明細書において動作する又は記載される様式に限定されない。さらに、図は、簡略化されたビュー又は部分的なビューを示していることがあり、図中の要素の寸法は、誇張されているか又は実際の寸法通りでないことがある。
【0051】
[0071]加えて、要素のリスト(例えば、要素a、b、c)を参照する場合、そのような参照は、リスト化された要素のいずれか1つそれ自体、リスト化された要素のすべてより少ないもの任意の組み合わせ、及び/又はリスト化された要素のすべての組み合わせを含むことが意図されている。本明細書におけるセクション分割は、見易くするためにすぎず、説明される要素の任意の組み合わせを限定しない。
【0052】
[0072]値が範囲として記載されている場合、そのような開示は、特定の数値又は特定の部分範囲が明示的に記載されているかどうかにかかわらず、そのような範囲内のすべての可能な部分範囲、及びそのような範囲内に入る特定の数値の開示を含むことが理解されよう。
【0053】
[0073]本明細書における小見出しの使用はいずれも、構成的な目的のためと理解すべきであり、それら小見出の下の特徴が本明細書の種々の実施形態への適用に限定されると解釈されるべきではない。本明細書に記載されるすべての特徴は、本明細書で説明される種々の実施形態すべてにおいて適用可能かつ使用可能であり、本明細書に記載されるすべての特徴は、本明細書に記載される特定の例示的実施形態に関係なく、企図されるあらゆる組み合わせにおいて使用することができる。さらに、特定の特徴の例示的記載は、主に情報提供を目的として使用されているのであり、いかなる意味においても、具体的に記載される特徴の設計、部分的特徴、及び機能性を限定するものではないことに留意されたい。
【0054】
[0074]別途指定のない限り、本明細書に記載される本発明の教示に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって共通に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。一般的に、本明細書に記載される化学、生化学、分子生物学、薬理学及び毒物学に関連して利用される命名法、並びに本明細書に記載される化学、生化学、分子生物学、薬理学及び毒物学の教示は、当技術分野で利用可能であり、かつ共通に使用されているものである。
【0055】
定義:
[0075]本明細書で使用される用語「アミノ酸」は概して、カルボキシα-アミノ酸の群を指し、これらは、直接的に又は前駆体の形態で、核酸によりコードされうる。個々のアミノ酸は、3つのヌクレオチドからなる核酸、いわゆるコドン又は塩基トリプレットによってコードされる。各アミノ酸は、少なくとも1つのコドンによってコードされる。これは、「遺伝子コードの変性」として知られている。本出願内で使用される用語「アミノ酸」は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、及びバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシα-アミノ酸を意味する。
【0056】
[0076]用語「抗原」は、「ペプチド」と交換可能に使用することができ、種々の実施形態により主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)と関連付けることができる。種々の実施形態では、MHCは、適切なリンパ球(例えば、T細胞、B細胞)による認識のためのペプチドを表示することができる。いくつかの実施形態では、MHCと受容体(例えば、T細胞受容体 [TCR]又はB細胞受容体 [BCR])との間の結合動態は、ペプチドの特性(例えばペプチド配列、二次構造、三次構造、及びそれよりも高次の構造)に基づいて変化しうる。種々の実施形態では、ペプチドは、アミノ酸のポリマーを含むことができる。
【0057】
[0077]本明細書で使用される用語「抗原提示細胞」は概して、何らかの方法で抗原を提示することのできる細胞を指す。抗原提示細胞(APC)は、プロフェッショナルAPC及び非プロフェッショナルAPCを含むことができる。
【0058】
[0078]プロフェッショナルAPCは、抗原をT細胞に提示することに特化させることができる。種々の実施形態では、プロフェッショナルAPCは、マクロファージ、B細胞、及び樹状細胞を含みうる。プロフェッショナルAPCは、食作用(例えばマクロファージ)により又は受容体媒介性エンドサイトーシス(B細胞)により病原体又は異質粒子(例えばがん細胞、細菌細胞など)を吸収しうる。状況によっては、病原体又は異質粒子は、タンパク質分解により処理され、結果として生じたペプチド断片(例えば、抗原)は、MHC分子に結合してMHC複合体を形成しうる。ペプチド断片を含むMHC複合体は、次いで細胞膜に移動して、T細胞による認識及び相互作用のためにその表面上に表示されうる。プロフェッショナルAPCは一般的に、共刺激分子とMHCクラスIIを含みうる。プロフェッショナルAPCの非限定的な例には、樹状細胞、マクロファージ、及びB細胞が含まれる。
【0059】
[0079]非プロフェッショナルAPCは、対象のすべての有核細胞型を含みうる。いくつかの事例では、非プロフェッショナルAPCは、β-2ミクログロブリンに結合して内因性のペプチドをその細胞膜上に表示するMHCクラスIの分子を含みうる。
【0060】
[0080]本明細書で使用される用語「ビーズ」は概して、粒子を指す。ビーズは、固体又は半固体の粒子でありうる。ビーズは、ゲルビーズでもよい。ゲルビーズは、ポリマーマトリックス(例えば、重合又は架橋により形成されるマトリックス)を含むことができる。ポリマーマトリックスは、1つ又は複数のポリマー(例えば、異なる官能基又は反復単位を有するポリマー)を含むことができる。ポリマーマトリックス中のポリマーは、無作為に、例えばランダム共重合体に構成することができる、及び/又はブロック共重合体などの秩序ある構造を有することができる。架橋は、共有結合的な、イオン性の、又は誘導的な、相互作用、又は物理的な絡み合いを介したものでありうる。ビーズは、巨大分子でありうる。ビーズは、互いに結合又はハイブリダイズした核酸分子から形成することができる。ビーズは、単量体又はポリマーのような分子(例えば、巨大分子)の、共有結合的又は非共有結合的アセンブリを介して形成されてもよい。このようなポリマー又は単量体は、天然のものであっても合成されたものであってもよい。このようなポリマー又は単量体は、例えば、核酸分子(例えば、DNA又はRNA)であるか、又は核酸分子を含むことができる。ビーズは、ポリマー材料から形成することができる。ビーズは、磁性でも非磁性でもよい。ビーズは、剛性でもよい。ビーズは、柔軟性及び/又は圧縮可能にすることができる。ビーズは、破壊可能又は溶解可能にすることができる。ビーズは、1つ又は複数のポリマーを含むコーティングで覆われた固体粒子(例えば、酸化鉄、金又は銀を含むがこれらに限定されない金属系の粒子)とすることができる。このようなコーティングは、破壊可能又は溶解可能にすることができる。
【0061】
[0081]種々の実施形態では、ビーズは、固体支持体の下位範疇でありうる。他の固体支持体には、プレートの表面(例えば、96ウェルプレートのウェルの表面)、バイアルの表面、顕微鏡スライドの表面などが含まれうる。いくつかの実施形態では、表面は、受容体及び/又は共受容体と相互作用するように化学的に処理されてもよい。
【0062】
[0082]本明細書で使用される用語「結合親和性」は概して、分子の単一の結合部位(例えば、TCR又はBCR)とその結合パートナー(例えば、pMHC)との間の非共有結合的相互作用の総和の強度を指す。別途指示がない限り、本明細書で使用される「結合親和性」は、結合対(例えば、pMHCとTCR、pMHCとBCR)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。種々の実施形態では、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、通常、解離定数(kd)によって表すことができる。種々の実施形態では、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、通常、滞留時間を含むことができる。いくつかの実施形態では、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、通常、解離定数(kd)によって表すことができる。いくつかの実施形態では、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、通常、複合体形成の速度を含むことができる。いくつかの実施形態では、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、通常、解離定数(Kd)及び結合定数(Ka)によって表すことができる。いくつかの実施形態では、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、通常、相互作用の頻度及び継続時間によって表すことができる。
【0063】
[0083]用語「結合部位」は、用語「抗原結合領域」と交換可能であり、本明細書では概して標的(例えばpMHC)に特異的に結合できる部分を指す。例示的な結合部位には、ペプチド、抗体断片、ドメイン抗体、又は単鎖抗体の可変ドメインが含まれうる。いくつかの実施形態では、TCRは、結合部位を含む。いくつかの実施形態では、BCRは、結合部位を含む。抗原結合部位は、天然に存在する結合部位又は操作された抗原結合部位でありうる。操作された抗原結合部位の例は、DARPIN、ドメイン交換抗体又はドメイン交換抗体断片、及び二重可変ドメイン抗体である。
【0064】
[0084]本明細書で使用される用語「生物学的粒子」は概して、生物学的試料から得られた個別の生物系を指す。生物学的粒子は、巨大分子でありうる。生物学的粒子は、小分子でありうる。生物学的粒子は、ウイルスでありうる。生物学的粒子は、細胞又は細胞の誘導体でありうる。生物学的粒子は、小器官でありうる。生物学的粒子は、細胞核でありうる。生物学的粒子は、細胞集団由来の希少細胞でありうる。生物学的粒子は、単一細胞由来であるか又は多細胞生物由来であるかに関係なく、原核細胞、真核細胞、細菌、真菌、植物、哺乳動物、若しくは他の動物の細胞型、マイコプラズマ、正常組織細胞、腫瘍細胞、又は他の任意の細胞型を含むがこれらに限定されない任意の細胞型でありうる。生物学的粒子は、細胞の構成物でありうる。生物学的粒子は、DNA、RNA、小器官、タンパク質、若しくはその任意の組み合わせでありうるか、又はDNA、RNA、小器官、タンパク質、若しくはその任意の組み合わせを含みうる。生物学的粒子は、細胞又は細胞由来の1つ又は複数の構成物(例えば、細胞ビーズ)、例えば、細胞由来のDNA、RNA、小器官、タンパク質、又はそれらの任意の組み合わせを含むマトリックス(例えば、ゲル又はポリマーマトリックス)でありうるか、又はそのようなマトリックスを含みうる。生物学的粒子は、対象の組織から得ることができる。生物学的粒子は、硬化した細胞でありうる。このような硬化した細胞は、細胞壁又は細胞膜を含んでも含まなくともよい。生物学的粒子は、細胞の1つ又は複数の構成物を含みうるが、細胞の他の構成物を含まなくともよい。このような構成物の例は、核又は小器官である。細胞は、生細胞でありうる。生細胞は、培養することができ、例えば、ゲル若しくはポリマーマトリックスに包まれるときに培養されうるか、又はゲル若しくはポリマーマトリックスを含むときに培養されうる。
【0065】
[0085]本明細書で使用される用語「生物物理学的パラメーターデータ」は、生物学的粒子の、又は生物学的粒子に関するあらゆる測定若しくは観察を含むことができる。いくつかの実施形態では、生物物理学的パラメーターデータは、結合動態(例えばT細胞:pMHC及び/又はB細胞:pMHCの速度及び速度定数)の、又は結合動態に関するあらゆる測定若しくは特性を含むことができる。
【0066】
[0086]本明細書で使用される用語「含む/有する(“comprise”、“comprises”、“comprising”、“contain”、“contains”、“containing”、“have”、“having”、“include”、“includes”、及び“including”並びにそれらの変形)は、限定的であることを意図しておらず、包括的であるか又は制限を有さず、記述されないさらなる追加物、成分、整数、要素又は方法の工程を排除しない。例えば、一連の特徴を含むプロセス、方法、システム、組成物、キット、又は装置は、必ずしもそれら特徴のみに限定されず、明示的に列挙されていない他の特徴、又はそのようなプロセス、方法、システム、組成物、キット、又は装置に本来備わっている他の特徴を含みうる。
【0067】
[0087]用語「希釈バッファー」は概して、試料体積を増加させることのできるバッファーを指す。種々の実施形態では、希釈バッファーは、試料体積を、元の試料体積の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、又は100倍に増加させることができる。いくつかの実施形態では、希釈バッファーは、試料を含むバッファーと同じ化学特性を含むことができる。
【0068】
[0088]用語「固化剤」と「固定バッファー」は、交換可能に使用され、概して、実験のために細胞を特定の状態に保つことのできる薬剤を指す。種々の実施形態では、固定バッファーは、変質を防ぐことができる。いくつかの実施形態では、固定バッファーは、サンプリング工程において使用することができる。いくつかの実施形態では、固定バッファーは、反応(例えばpMHCとTCRの相互作用及び/又はpMHCとBCRの相互作用)を止めるために使用することができる。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)溶液は、いくつかの実施形態に従って固定バッファーとして使用することができる。
【0069】
[0089]本明細書で使用される用語「結合」、「連結」、「コンジュゲート」、「接続」又は「融合」は、本明細書において交換可能に使用することができ、概して、1つの分子(例えば、ポリペプチド、受容体、被分析物など)が別の分子(例えば、ポリペプチド、受容体、被分析物など)に結合又は接続(例えば、化学的に結合)することを指す。本明細書に記載される種々の実施形態では、「連結」は、共有結合的連結又は非共有結合的連結を含む。
【0070】
[0090]本明細書で使用される用語「リンカー」は、用語「スペーサー」と交換可能に使用することができ、2つ以上の分子をまとめて保持することのできる不活性ポリマーを意味する。種々の実施形態では、リンカーは、2つの分子を互いから遠ざけるように作用しうる。種々の実施形態では、リンカーの長さは、特定の用途のために選択されうる。種々の実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(PHPMA)、ポリオキサゾリン(POZs)、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、又は2つの分子を接続する若しくは分子を互いに接続することのできる、他の任意の既知の若しくは有用な非反応性分子を含む。本明細書で使用されるリンカーは、オリゴヌクレオチドを、切断可能な基質に接続するために使用されうる。
【0071】
[0091]本明細書で使用される用語「主要組織適合性遺伝子複合体」(「MHC」)は概して、免疫応答に参画する細胞表面上のタンパク質の群を指す。MHC分子の機能は、病原体から得られたペプチド断片に結合し、それらを細胞の表面上に表示することでありうる。本明細書で使用される用語「pMHC」は概して、MHCと複合体化したペプチドを指す。種々の実施形態では、MHCは、MHCクラスIを含む。種々の実施形態では、MHCは、MHCクラスIIを含む。
【0072】
[0092]本明細書で使用される用語「もの(ones)」は、1つより多いものを意味する。
【0073】
[0093]本明細書で使用される用語「複数」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれより多数でありうる。
【0074】
[0094]本明細書で使用される用語「検出分子」は概して、シグナルを生成しうる又は検出されうるあらゆるものを意味する。具体的には、検出分子は、蛍光分子を含むことができる。いくつかの実施形態では、検出分子は、固定プロセス(例えば固定バッファーを使用するもの)を経ても劣化しない蛍光分子を含むことができる。検出分子は、外因性又は内因性とすることができる。検出分子は、酵素的、化学的又は他の既知の標識方法を使用して、タンパク質、抗体、アプタマー、又はアミノ酸などの巨大分子構成物に結合させることができる。検出分子は、ビオチン化構造(例えばアビジン、ストレプトアビジン、ビオチン)に結合させることができる。検出分子は、ビーズに結合させることができる。
【0075】
[0095]種々の実施形態では、検出分子は、NHS-エステルフルオロフォアを含みうる。多くの実施形態において、NHS-エステルフルオロフォアは、アミノ酸配列の溶媒露出表面のリジン残基に共有結合的にコンジュゲートさせることができる。このようなアミノ酸配列は、MHC分子(例えば、MHCクラスI又はMHCクラスII)の配列でありうる。本明細書で使用される蛍光分子は、TCR又はBCRに結合するプローブを測定するために選択されうる。種々の実施形態では、フルオロフォアは、UV照射に対するそれらの耐性に基づいて選択されうる。
【0076】
[0096]本明細書で使用される用語「実質的に」は、意図された目的のために働くのに十分であることを意味する。したがって、「実質的に」という用語は、当業者によって予想されるが、全体的パフォーマンスに眼に見える影響を及ぼさないものなど、絶対的又は完全な、状態、寸法、測定値、又は結果などからの、小さな、有意でない変動を許容する。数値、又は数値として表現することのできるパラメーター若しくは特性に関して使用されるとき、「実質的に」とは、10パーセント以内を意味する。
【0077】
[0097]T細胞受容体(TCR)及びB細胞受容体(BCR)に関連して使用される用語「可変」は、TCR及びBCRの可変ドメインの特定の部分が、TCR及びBCR中において配列を大きく異にしており、各特定のTCR及びBCRの、その特定のペプチド(例えばMHCクラスIに関連付けられるペプチド、MHCクラスIIに関連付けられるペプチド)に対する結合及び特異性に使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、TCR及びBCRの可変ドメイン全体に均一に分布しているのではない。それは、軽鎖及び重鎖の可変ドメイン双方の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々が4つのFRを含み、大部分がβシート構成をとり、3つの超可変領域により接続されており、これらは、βシート構造に接続し、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖における超可変領域は、FRにより極めて近接して一緒に保持され、他の鎖由来の超可変領域と共に、抗原/pMHC結合部位の形成に寄与する。
【0078】
[0098]本明細書で使用されるとき、用語「超可変領域」は、抗原/pMHC-結合を担うTCR、BCR、又は抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、通常、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基及び/又は「超可変ループ」由来のそれら残基を含む。いくつかの実施形態では、「CDR」は、TCR、BCR、又は抗体の相補性決定領域を意味する。「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域/CDR残基以外のそれら可変ドメイン残基である。
【0079】
[0099]別途指定のない限り、本明細書に記載される本発明の教示に関連して使用される化学的及び技術的用語は、当業者によって共通に理解される意味を有する者とする。さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。概して、本明細書に記載される細胞及び組織培養物、分子生物学、タンパク質及びオリゴ又はポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法、並びにそれらの技術は、当技術分野で利用可能であり、かつ一般的に使用されるものである。標準的な技術が、例えば、核酸の精製及び調製、化学分析、組み換え核酸、及びオリゴヌクレオチド合成のために使用される。酵素反応及び精製技術は、製造者の仕様に従って又は当技術分野で一般に遂行されているように又は本明細書に記載されるように実施される。本明細書に記載される技術及び手順は、通常、当技術分野において周知の従来の方法に従って、本明細書を通して引用及び説明される種々の全般的及び具体的な参照に記載されているように、実施される。例えば、Barbas III et al.,Phage Display,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2000)を参照のこと。本明細書に関連して利用される命名法、並びに本明細書に記載される実験室手順及び技術は、当技術分野において利用可能でありかつ一般的に使用されるものである。
【0080】
I.概要
[0100]免疫システムは、異常を検出するため及び宿主生物を保護するための高い応答能力を有している。高い検出能力は、ペプチド-主要組織適合性遺伝子複合体(pMHC)と相互作用するTCRのα及びβ鎖又はδ及びγ鎖の高度に可変の相補性決定領域(CDR)により達成されうる。種々の実施形態では、pMHCのペプチド配列と組み合わせたCDRが、TCR:pMHC結合親和性に実質的に寄与することができる。本明細書に記載されるアッセイは、ハイスループット方式で、TCR:pMHC及びBCR:pMHC結合事象を定量的に測定することができる。
【0081】
[0101]図1には、胸腺のリンパ球(例えば、T細胞)のポジティブ及びネガティブ選択の概念が示されている。T細胞成熟プロセスにおいては、狭帯域のT細胞のみがポジティブに選択される。T細胞のT細胞受容体(TCR)が、胸腺に位置する宿主/自己pMHCに対する親和性をほとんど又はまったく有さないとき、それらT細胞は、ネガティブ選択され、無視されて死滅するであろう(例えば成熟プロセスを継続しない)。T細胞が、胸腺に位置する宿主/自己pMHCに対する高い親和性を有すると、それらT細胞は、ネガティブ選択され、アポトーシスを介して破壊されるであろう。ポジティブに選択されるT細胞は、許容される親和性範囲内で宿主/自己pMHCに結合できるTCRを含む。図1に示されるものは親和性閾値仮説として知られており、胸腺選択は、自己pMHCに対するT細胞受容体の親和性に依存する。したがって、生体系は、概ね自己寛容であるがそれでも外来の侵入物(例えば、ウイルス及びがん細胞)を特定して除去することのできるT細胞を生成することができる。
【0082】
[0102]種々の生物体において、TCRの多様性は、RAG1及びRAG2リコンビナーゼを使用した体細胞V(D)J組み換えと呼ばれる機序を使用する個々の体細胞性T細胞におけるDNAコード化セグメントの遺伝子組み換えから生じうる。種々の実施形態では、V(D)J組み換えは、胸腺における成熟の早期段階でのT細胞の発達中に起こる。いくつかの実施形態では、V(D)J組み換えは、適応免疫応答の必要な特徴でありうる。種々の生物体において、BCRの多様性は、同様の組み換え法を使用して生じうる。
【0083】
[0103]ヒト及び他の哺乳類のV(D)J組み換えは、リンパ器官において起こりうる。種々の実施形態では、リンパ器官は、胸腺を含むことができる。種々の生物システムにおいて、V(D)J組み換えは、可変(V)セグメントと、結合(J)セグメントと、場合によっては多様性(D)遺伝子セグメントを、ほぼ無作為に再配置することができる。種々の実施形態では、V(D)J組み換えは、CDR領域の修飾をもたらしうる。いくつかの実施形態では、V(D)J組み換えにより、新規のアミノ酸配列を含むCDRを得ることができる。
【0084】
[0104]ポジティブに選択されたT細胞は、このとき、適応免疫応答の一部として宿主生物全体を移動することができる。図2に示すように、T細胞214の細胞表面タンパク質210(例えば、受容体、TCR)と、他の細胞(例えば、抗原提示細胞202)の細胞表面タンパク質(例えば、pMHCなどのポリペプチド分子204の抗原結合領域206に結合した抗原性ペプチド208)との間の相互作用は、T細胞214がポジティブに選択され、その後活性化されて結合した細胞を破壊することを助けるかどうかを決定することを助ける。いくつかの実施形態では、T細胞214のCD4又はCD8といった共受容体212は、ポリペプチド分子204の領域に結合して選択プロセスを支援することができる。このような相互作用は、侵入又は悪性細胞と対比して宿主細胞(例えば、自己)を認識するT細胞214の能力に関与しうるため(上記ポジティブ選択を参照)、特に重要でありうる。具体的には、一定の時間間隔の間に起こる総TCR相互作用の数は、T細胞の応答を決定することができる。
【0085】
[0105]宿主細胞は一般的に、各々がT細胞認識のためのペプチドを含むことのできるそれらの細胞表面上に主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)を発現する。具体的には、T細胞は、他の細胞のMHC分子を認識することのできるそれらの表面上にT細胞受容体(TCR)を含むことができる。MHCペプチドは、適応免疫応答を制御するMHC/TCR複合体の結合速度及び解離速度(例えば、結合親和性)の決定に参画する。
【0086】
[0106]自然系では、MHC分子に結合するペプチドは、主に、プロテアソームによる細胞質タンパク質の分解から生成されうる。その後、MHC:ペプチド複合体は、小胞体を介して外部の原形質膜に挿入されうる。したがって、MHC分子は、細胞内タンパク質を細胞傷害性T細胞に対して表示するように機能する。
【0087】
[0107]健康な細胞は、正常な細胞タンパク質の代謝回転からのペプチドを表示し、T細胞は活性化されないであろう。しかしながら、細胞が外来のタンパク質(例えば、ウイルス感染に起因するもの)を発現するとき、MHC:ペプチド複合体に特異的なTCRは、細胞死を認識し、細胞死を引き起こすであろう。
【0088】
[0108]細胞ベースのアッセイは、結合速度及び解離速度を左右するパラメーターの一部が生細胞相互作用に依存しうるため、有用である。それら依存性の非限定的な例には、力が加わるとより強く結合するキャッチ結合、及び力の下で破裂するスリップ結合が含まれる。したがって、細胞ベースのアッセイは、in-vitroアッセイよりうまく実施される可能性がある。現在の細胞ベースの選択肢(例えば、四量体染色)は、多くの場合低スループットであり、速度定数関連データを生成しない。具体的には、単一のフルオロフォアに関連付けられる単一のMHC分子又はフルオロフォアの既知の量を有することで、細胞膜内部における共受容体の存在下でpMHC:受容体相互作用の研究が可能になるため、定量的データは速度結合情報を含むことができる。これらの及び他の理由により、細胞ベースのアッセイは、pMHC:TCR及び/又はpMHC:BCR間の結合動態及び相互作用、並びに他のリガンド-受容体の結合動態及び相互作用を研究するために理想的である。本開示は、結合速度定数及び解離速度定数を決定するためのデータを迅速かつ正確に測定するためのアッセイ及び方法を含む。
【0089】
II.組成物
[0109]本発明は、生物動力学アッセイにおける使用のための組成物を提供する。組成物の一例には、ポリペプチド分子に連結した1つ又は複数のフルオロフォアと、ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドとの抗原結合領域を有するポリペプチド分子が含まれうる。組成物の別の例には、抗原結合領域を含むポリペプチド分子、ポリペプチド分子に連結した1つ又は複数のフルオロフォア、及びポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドが含まれ、抗原性ペプチドはUV切断可能なアミノ酸を含む。
【0090】
[0110]種々の実施形態では、ポリペプチド分子は、単一のポリペプチド分子(例えば、第1のポリペプチド鎖)を含みうる。代替的実施形態では、ポリペプチド分子は、2つ以上のポリペプチド分子を含みうる。多くの実施形態では、ポリペプチド分子は、第1のポリペプチド分子(例えば、第1のポリペプチド鎖)及び第2のポリペプチド分子(例えば、第2のポリペプチド鎖)を含みうる。
【0091】
主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)I
[0111]T細胞免疫応答の態様は、T細胞によるペプチド(例えば、抗原)の認識を含む。種々の実施形態では、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)の役割は、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)によるTCR認識のためにペプチドを細胞表面へと動員することでありうる。
【0092】
[0112]図10には、種々の実施形態による、細胞膜1020内部に包埋されたペプチド:MHCクラスI(pMHC I)1000が示されている。多くの実施形態では、pMHCクラスI 1000は、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含むことができる。第1のポリペプチド鎖は、α鎖(例えば、α1004、α1006、及びα1008)を含みうる。第2のポリペプチド鎖は、β鎖1010を含みうる。種々の実施形態では、pMHCクラスI 1000は、抗原として機能するペプチドとして機能することのできるペプチド1002を含むことができる。種々の組成物において、α鎖とβ鎖1010は、非共有結合を使用して結合させることができる。いくつかの組成物では、α鎖とβ鎖1010は、共有結合を使用して結合させることができる。種々の組成物において、α鎖は、組み換えヒト白血球抗原のアミノ酸配列を含みうる。いくつかの組成物では、α鎖は、組み換えマウス組織適合系2のアミノ酸配列を含みうる。
【0093】
[0113]種々の実施形態では、α鎖は、概ね350個のアミノ酸を含み、3つの球状ドメイン1004、1006、1008を含むことができる。種々の実施形態では、3つの球状ドメインは、α1004、α1006、及びα1008と指定されうる。
【0094】
[0114]種々の実施形態では、α鎖のN末端は、α1004の球状ドメインに位置させることができる。種々の実施形態では、α1004及びα1006は、細胞外区画(例えば、細胞外液内部)に位置させることができる。いくつかの実施形態では、α1004及びα1006は、各々が凡そ90個のアミノ酸を含むことができる。種々の実施形態では、α1006は、63個のアミノ酸のループを含むことができ、ジスルフィド結合を使用して形成を容易にすることができる。種々の実施形態では、αとαは、相互作用してpMHC1000の抗原結合領域を形成することができる。
【0095】
[0115]種々の組成物において、抗原結合領域は、ポリペプチド分子の第1のポリペプチド鎖(例えば、α鎖)の少なくとも一部分を含みうる。他の組成物では、第1のポリペプチド鎖は、αドメイン及びαドメインを含みうる。
【0096】
[0116]種々の実施形態では、α鎖は、pMHC1000を細胞膜1020に繋留する膜貫通セグメント1012を含むことのできるα1008を含むことができる。いくつかの実施形態では、膜貫通セグメント1012は、26個のアミノ酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、α1008は、86個のアミノ酸を囲んでループ構造を形成するジスルフィド結合を含むことができる。多くの組成物において、第1のポリペプチド鎖は、αドメインを含みうる。
【0097】
[0117]種々の実施形態では、α1008球状ドメインは、共受容体(例えば、T細胞のCD8共受容体)と相互作用することができる。いくつかの実施形態では、α-共受容体相互作用は、pMHCクラスI 1000を適切な位置に保持することができ、T細胞の細胞膜表面上のTCRは、α-αヘテロ二量体リガンドに結合することができる。いくつかの実施形態では、α-CD8相互作用は、α-αヘテロ二量体リガンドが、抗原性についてMHC関連ペプチドを調べることを可能にしうる。種々の実施形態では、α鎖のC末端は、α1004の球状ドメインに位置させることができる。本明細書に記載されるいくつかのアッセイでは、抗CD8抗体の遮断が使用されうる。
【0098】
[0118]CD8の細胞質体尾部は、Lck(リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ)と相互作用することができ、Lckは、CD3の細胞質部分及びTCR複合体のζ鎖(本明細書ではζドメインとも呼ばれる)をリン酸化することができる。CD3及びζ鎖のリン酸化は、最終的にシグナル伝達カスケードの下流の一部の遺伝子の発現に影響することのできる様々な転写因子(例えば、NFAT、NF-κB、及びAP-1)の活性化に繋がりうる。
【0099】
[0119]種々の組成物において、第2のポリペプチド鎖は、本明細書に記載される第1のポリペプチド鎖に連結しうる。例えば、第2のポリペプチド鎖(例えば、β鎖1010)は、第1のポリペプチドのαに連結しうる。種々の実施形態では、pMHCクラスIのβ鎖1010は、ジスルフィドループを含むことができる。種々の実施形態では、β鎖1010は、α1008の球状ドメインと非共有結合的に相互作用することができる。
【0100】
[0120]図11は、ペプチド提示経路の例示的プロセス1100を示している。種々の実施形態では、MHCクラスI分子は、抗原分子(例えば、ペプチド)に結合することができ、このとき複合体全体が細胞表面へと動員されうる。いくつかの実施形態では、ペプチド1110は、8個のアミノ酸から約10個のアミノ酸にわたりうる。他の実施形態では、ペプチドは、10個より多いアミノ酸を含むことができる。
【0101】
[0121]種々の実施形態では、MHCクラスI 1116は、細胞内タンパク質1106から得られるペプチド1110に結合し、細胞1102外部のT細胞による認識のためにペプチド1110を表示することができる。いくつかの天然に存在する条件下において、細胞内タンパク質1106のソースは、以前に細胞に侵入したウイルスのタンパク質を含むことができる。他の天然に存在する条件において、細胞内タンパク質1106のソースは、感染細胞から得られるタンパク質を含むことができる。別の条件においては、細胞内タンパク質1106のソースは、がん性細胞由来のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞内タンパク質1106のソースは、健常細胞由来のタンパク質を含むことができ、一般的に、免疫応答は、宿主生物が自己免疫異常又は他の何らかの病気を有さない限り起こらない。
【0102】
[0122]種々の生物システムにおいて、プロテアソーム1108は、タンパク質分解によりタンパク質を分解することのできるタンパク質複合体を含む。種々の実施形態では、プロテアソーム1108は、プロテアーゼを使用して細胞内タンパク質1106のペプチド結合を分断し、ペプチド1110を生成することができる。
【0103】
[0123]種々の生物システムにおいて、抗原ペプチド輸送体(TAP)1112複合体は、細胞質ペプチドを小胞体1116中へ送達することができる。いくつかの実施形態では、TAP1112構造は、2つのタンパク質(例えば、TAP-1及びTAP-2)を含むことができる。
【0104】
[0124]ペプチド提示経路のプロセス1100のいくつかの態様では、TAP1112輸送体は、ペプチドローディング複合体と結合させることができる。いくつかの実施形態では、ペプチドローディング複合体は、βミクログロブリン(例えば、MHC鎖)、カルレチクリン、ERp57、TAP1112、タパシン、及びMHC分子(例えば、MHCクラスI)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ペプチドローディング複合体は、MHC分子を、それらがペプチド1112と結合し、それによりpMHC1116を形成するまで、適切な位置に保持することができる。種々の組成物において、第2のポリペプチド鎖(例えば、β鎖)は、βミクログロブリン分子の配列を含みうる。
【0105】
[0125]種々の実施形態では、ペプチド提示経路1100は、pMHC1116がゴルジ1118へと移動することのできる分泌経路を含むことができる。いくつかの実施形態では、ゴルジ1118は、さらなる輸送のためにpMHC1116を分泌小胞1120中にパッケージ化することができる。
【0106】
[0126]種々の実施形態では、pMHC1116を含む分泌小胞1120は、細胞1102の細胞膜1104に融合し、T細胞認識のためにペプチド1110を細胞外空間に対して提示することができる。
【0107】
主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)II
[0127]T細胞免疫応答の態様は、T細胞によるペプチド(例えば、抗原)の認識を含む。種々の実施形態では、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)の役割は、T細胞(例えば、ヘルパーT細胞)によるTCR認識のためにペプチドを細胞表面へと動員することでありうる。
【0108】
[0128]図10Bには、種々の実施形態による、細胞膜1020内部に包埋されたペプチド-MHCクラスII(pMHC II)1050が示されている。多くの実施形態では、pMHCクラスII 1050は、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含むことができる。第1のポリペプチド鎖は、α鎖(例えば、α1054及びα1060)を含みうる。第2のポリペプチド鎖は、β鎖(例えば、β1056及びβ1058)を含みうる。種々の実施形態では、pMHCクラスII 1050は、抗原として機能するペプチドとして機能することのできるペプチド1052を含むことができる。種々の組成物において、α鎖とβ鎖は、非共有結合を使用して結合させることができる。いくつかの組成物では、α鎖とβ鎖は、共有結合を使用して結合させることができる。種々の組成物において、α鎖は、組み換えヒト白血球抗原のアミノ酸配列を含みうる。
【0109】
[0129]種々の実施形態では、α鎖は、2つの球状ドメイン1054、1060を含む。種々の実施形態では、2つの球状ドメインは、α1054及びα1060と指定されうる。
【0110】
[0130]種々の実施形態では、β鎖は、2つの球状ドメイン1056、1068を含む。種々の実施形態では、2つの球状ドメインは、α1054及びα1060と指定されうる。
【0111】
[0131]種々の実施形態では、α鎖のN末端は、α1054球状ドメインに位置させることができる。種々の実施形態では、β1056及びβ1058は、細胞外区画(例えば、細胞外液内部)に位置させることができる。
【0112】
[0132]種々の組成物において、抗原結合領域は、ポリペプチド分子の第1のポリペプチド鎖(例えば、α鎖)の少なくとも一部分及び第2のポリペプチド鎖(例えば、β鎖)の少なくとも一部分を含みうる。
【0113】
[0133]種々の実施形態では、α鎖は、pMHCクラスII 1050を細胞膜1020に繋留する膜貫通セグメント1064を含むことのできるα1060を含むことができる。種々の実施形態では、β鎖は、pMHCクラスII 1050を細胞膜1020に繋留する膜貫通セグメント1062を含むことのできるβ1058を含むことができる。
【0114】
[0134]種々の実施形態では、共受容体(例えば、CD4分子)は、MHCクラスII分子のβドメインと、そのD1ドメインを通して相互作用しうる。
【0115】
[0135]CD4の細胞質体尾部は、Lck(リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ)と相互作用することができ、Lckは、CD3の細胞質タンパク質及びTCR複合体のζ鎖をリン酸化することができる。CD3及びζ鎖のリン酸化は、最終的にシグナル伝達カスケードの顆粒の一部の遺伝子の発現に影響することのできる様々な転写因子(例えば、NFAT、NF-κB、及びAP-1)の活性化に繋がりうる。
【0116】
[0136]種々の組成物において、第2のポリペプチド鎖は、本明細書に記載される第1のポリペプチド鎖に連結しうる。例えば、第2のポリペプチド鎖(例えば、β鎖)は、第1のポリペプチド(例えば、α鎖)に連結しうる。
【0117】
T細胞受容体(TCR)
[0137]適応免疫応答システムの態様は、膜関連TCRを含むT細胞を含む。いくつかの実施形態では、適応免疫応答は、共刺激シグナルを提供するためのCD28を含む。図9Aには、T細胞膜950に包埋されたT細胞受容体(TCR)-CD3複合体900が示されている。種々の実施形態では、TCR-CD3複合体900は、ジスルフィド連結した膜繋留ヘテロ二量体タンパク質を含むことができる。多くの実施形態では、ジスルフィド連結した膜繋留ヘテロ二量体タンパク質は、アルファ(α)鎖902及びベータ(β)鎖904を含むことができる。種々の実施形態では、TCR-CD3複合体900は、ガンマ(γ)鎖とデルタ(δ)鎖により形成された別の受容体を含むことができる。種々の実施形態では、TCR-CD3複合体900のα鎖902及びβ鎖904は、抗原-結合部位(例えば、pMHC結合部位906)の構造を形成する。
【0118】
[0138]種々のT細胞立体構造において、α鎖902は、可変領域908及び定常領域910を含む2つの細胞外ドメインを含むことができる。種々の実施形態では、β鎖904は、可変領域912及び定常領域914を含む2つの細胞外ドメインを含むことができる。いくつかの立体構造では、定常領域910、914は、細胞膜950に隣接することができる。いくつかの立体構造では、可変領域908、912は、pMHC結合部位906を形成することができ、pMHCに結合することができる。
【0119】
[0139]TCR鎖902、904の各々は、可変領域908、912を含むことができ、各可変領域908、912は、3つの超可変又は相補性決定領域(CDR)を含むことができる。いくつかの実施形態では、CDR1、CDR2、及びCDR3は、TCR900の可変ドメイン908、912のアミノ酸配列上に非連続的に配置されうる。いくつかの実施形態では、CDR3は、pMHCの処理された抗原性ペプチドを認識するための主要領域でありうる。
【0120】
[0140]免疫応答の態様は、T細胞活性化を引き起こすシグナルを伝播するためにTCR-CD3複合体900を必要としうる。種々の実施形態では、CD3分子916、918は、各々が、シグナル伝達を生じさせることのできるα鎖902及びβ鎖904より長い細胞質体尾部を有する。種々の実施形態では、TCR-CD3複合体900は、ε鎖と結合したγ鎖を含む第1のCD3分子916を含む。種々の実施形態では、TCR-CD3複合体900は、ε鎖と結合したδ鎖を含む第2のCD3分子918を含む。
【0121】
[0141]種々の実施形態では、TCR-CD3複合体900のζ鎖920は、ペプチド認識を、T細胞活性化を含む複数の細胞内シグナル伝達経路に結合することができる。
【0122】
[0142]図9Bに示すように、CD8 960は、T細胞膜950に包埋された一対のCD8鎖962、964を含む二量体を形成することができる。種々の実施形態では、CD8 960は、CD8-α 962及びCD8-β 964鎖を含み、それにより、ヘテロ二量体を形成する。代替的実施形態では、CDは、2つのCD8-α鎖を含み、それにより、ホモ二量体を形成する。種々の実施形態では、CD8 960は、pMHCと相互作用することができる。種々の実施形態では、CD8 960のCD8-α 962鎖は、pMHCのα球状ドメインと相互作用することができる。種々の実施形態では、本明細書に記載されるアッセイは、CD8:pMHC結合特性を特徴づけることができる。
【0123】
[0143]種々の実施形態では、CD8鎖962、964は、ジスルフィド結合を通して連結しうる。加えて、CD8鎖962、964は、各々が、膜貫通領域及びサイトゾル領域を含むことができる。種々の実施形態では、CD8:pMHC相互作用は、細胞外でありうる。
【0124】
[0144]図9Cに示すように、CD4 970は、4つの細胞外ドメイン(D 972、D 974、D 976、及びD 978)を含む。D 972及びD 976は、可変ドメインでありうる。D 974及びD 978は、定常ドメインでもよい。種々の実施形態では、CD4 970は、MHCクラスII分子のβドメインと、そのD 972ドメインを通して相互作用しうる。D 972は、2つのβシートに、7つのβストランドを有するβサンドイッチホールドを含みうる。CD4 970の細胞質尾部980は、チロシンキナーゼLckと相互作用し、それにより、シグナルカスケードを引き起こしうる。
【0125】
III.細胞ベースのリガンド-受容体動力学的結合アッセイ
[0145]種々の実施形態では、本明細書で詳述される組成物は、リガンド-受容体結合アッセイに使用することができる。例えば、単量体プローブは、本明細書に記載されるポリペプチド分子フルオロフォアの組み合わせのうちの1つ又は複数を含みうる。
【0126】
[0146]図3には、結合速度定数又は解離速度定数を決定するための細胞ベースのアッセイが示されている。図3は、TCRに結合する単量体が増える際にシグナル強度(例えば、検出分子から生じる)が増加する結合時点の全体的外観を示している。当業者には、曲線の外観が、グラフが結合を示すか又は解離を示すかに基づいて、異なることを理解するであろう。図4は、図3に示される結合相互作用に関与する分子の模式図である。具体的には、関連する受容体(例えば、TCR、BRC)を有するT細胞は、単量体プローブに結合することができる。
【0127】
[0147]種々の実施形態では、結合速度定数を決定するための細胞ベースのアッセイは、一定の時間間隔にわたる所与の時点で単量体(例えばペプチド+MHC+検出分子)と相互作用するMHC分子に結合していないリンパ球(例えば、T細胞、B細胞)を含みうる。いくつかの実施形態では、それら時点は、0分に開始し、受容体に結合したMHC分子が平衡に到達するまで又は到達した後で、徐々に増加する。いくつかの態様では、0分から平衡までの間に複数の時点を取ることで、アッセイの精度を向上させることができる。曲線データを処理して、生細胞を表す結合速度定数を決定することができる。
【0128】
[0148]種々の実施形態では、解離速度を決定するための細胞ベースのアッセイが記載される。リンパ球は、平衡状態に到達するまで(例えば、結合の速度が解離の速度と等しい)単量体(例えば、ペプチド+MHC+検出分子)と相互作用することができる。いくつかの実施形態では、一定の時間間隔にわたってリンパ球から単量体を除去することのできる薬剤を加えることができる。除去薬剤の非限定的な例は、希釈バッファー、化学薬剤、環境条件(例えば、温度)を含むことができる。
【0129】
[0149]種々の実施形態では、試料は、一定の時間にわたり複数の時点で収集されうる。いくつかの実施形態では、それら時点は、平衡(例えば、0分)と検出可能な単量体が無い状態との間を含みうる。いくつかの実施形態では、それら時点は、平衡(例えば、0分)と2回目の平衡との間を含みうる。いくつかの実施形態では、2回目の平衡は、受容体/MHC相互作用の低下率を含むことができる。いくつかの態様では、0分(例えば、1回目の平衡)と2回目の平衡との間に複数の時点を取ることで、アッセイの精度を向上させることができる。曲線データを処理して、生細胞を表す結合速度定数を決定することができる。
【0130】
単量体プローブ
[0150]現在、四量体プローブは、四量体染色アッセイに使用することができる。四量体は、複数のT細胞受容体に結合することができることによって、T細胞への結合活性を増大させる。結合活性の増大という特性は、検出能力の上昇をもたらす。問題は、プローブが複数のTCRに同時に結合できるようになるということは、pMHC:TCR生細胞結合動態に関する情報(例えば、二分子の1TCR 1pMHCについての情報)が失われることを意味することである。
【0131】
[0151]本開示の態様は、種々の実施形態による、細胞ベースの動力学アッセイに適した単量体プローブを記載する。種々の実施形態では、単量体プローブは、各プローブが結合できる受容体(例えば、TCR、BCR)が1つのみであることにより、速度結合特性(例えば、結合速度定数及び解離速度定数)の調査を可能にしうる。1:1(pMHC:受容体)の結合比を含めることにより、蛍光を多数のpMHC:受容体結合事象に対応させることができる。重要なことに、本明細書に記載される、単量体プローブを利用するアッセイは、二分子の反応(1つの受容体と1つのリガンド(例えば、pMHC分子))についてkon及びkoffを取得することができる。したがって、本明細書に記載される種々のアッセイは、単量体プローブを含むことができる。
【0132】
[0152]本開示の態様は、本明細書に記載される種々の細胞ベースのアッセイにおいて使用される単量体プローブの実施形態を含む。本明細書に記載される組成物に加えて、単量体プローブ402のさらなる非限定的実施例を図4に示す。単量体プローブ402の目的は、細胞上の抗原提示複合体(例えば、pMHC)を模倣し、抗原(例えば、ペプチド)を認識することのできるT細胞412に結合することでありうる。
【0133】
[0153]種々の実施形態では、単量体プローブは、MHC分子404に連結した検出分子408を含むことができる。
【0134】
[0154]種々の実施形態では、MHC分子404は、クラスI MHC分子を含むことができる。種々の実施形態では、MHC分子404は、クラスII MHC分子を含むことができる。種々の実施形態では、MHC分子404は、ペプチド410に結合することができる。種々の実施形態では、ペプチドの特性は、MHC分子404と受容体分子414との間の結合動態の決定に寄与することができる。いくつかの実施形態では、MHC分子404と受容体分子414の結合動態は、T細胞412が、活性化されて、MHC分子404に関連しうる細胞の細胞死を引き起こすかどうかを決定することができる。
【0135】
[0155]種々の実施形態では、MHC分子404は、リンカー406を通して検出分子408に連結されうる。実施例のセクションを含め、種々の実施形態では、リンカー406は、リジン残基を含むことができ、検出分子408は、本明細書に記載されるリジン残基に結合したフルオロフォアを含みうる。
【0136】
[0156]いくつかの実施形態では、結合は、直接的なものであるか、又は中間物を通したものでありうる。種々の実施形態では、検出分子408は、アビジン又はストレプトアビジンを含むことができ、MHC分子404は、ビオチンを含むことができる。種々の実施形態では、検出分子408は、ビオチンを含むことができ、MHC分子404は、アビジン又はストレプトアビジンを含むことができる。いくつかの態様では、ストレプトアビジンへのビオチンの結合は、単量体プローブ402の形成を引き起こす。上述の部分において、ビオチン及び(ストレプトアビジン又はアビジン)は、リンカー406を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカー406は、単一の分子を含むことができる。他の実施形態では、リンカー406は、1つより多い分子(例えば、ビオチン及び(ストレプトアビジン又はアビジン))を含むことができる。
【0137】
[0157]検出分子408の非限定的な例は、フルオロフォア、クエンチ剤蛍光共鳴エネルギー移動システム(例えば、FRET)、又は定量化可能に調べることのできる他の分子を含むことができる。
【0138】
[0158]種々の実施形態では、生物動力学アッセイにおける使用のための組成物は、抗原結合領域を含むポリペプチド分子、ポリペプチド分子に連結した1つ又は複数のフルオロフォア、及びポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドを含みうる。
【0139】
[0159]種々の実施形態では、生物動力学アッセイにおける使用のための組成物は、抗原結合領域を含むポリペプチド分子、ポリペプチド分子に連結した1つ又は複数のフルオロフォア、及びポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドを含むことができ、抗原性ペプチドはUV切断可能なアミノ酸を含む。
【0140】
[0160]いくつかの実施形態では、ポリペプチド分子は、単一ポリペプチド鎖を含む。他の実施形態では、ポリペプチド分子は、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を含みうる。
【0141】
[0161]種々の実施形態では、ポリペプチド分子の抗原結合領域は、ポリペプチド分子の第1のポリペプチド鎖の少なくとも一部分を含みうる。
【0142】
[0162]いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、αドメイン及びαドメインを含みうる。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、αドメインを含みうる。
【0143】
[0163]種々の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、組み換えヒト白血球抗原のアミノ酸配列を含みうる。
【0144】
[0164]種々の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、組み換えマウス組織適合系2のアミノ酸配列を含みうる。
【0145】
[0165]種々の実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、第1のポリペプチド鎖のαドメインに連結しうる。
【0146】
[0166]種々の実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、β-ミクログロブリン分子のアミノ酸配列を含む。
【0147】
[0167]種々の実施形態では、抗原結合領域は、第1のポリペプチド鎖の少なくとも一部分及び第2のポリペプチド鎖の少なくとも一部分を含む。
【0148】
[0168]種々の実施形態では、第1のポリペプチド鎖の一部分はαドメインを含み、第2のポリペプチド鎖の一部分はβドメインを含み、αドメインとβドメインは抗原結合領域を形成する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、αドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、βドメインをさらに含む。多くの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、組み換えヒト白血球抗原のアミノ酸配列を含む。多くの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、組み換えヒト白血球抗原のポリペプチド配列を含む。
【0149】
[0169]種々の実施形態では、抗原結合領域は、少なくとも1つのαヘリックスを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、少なくとも1つのβシートを含む。
【0150】
[0170]種々の実施形態では、1つ又は複数のフルオロフォアは、ポリペプチド分子に共有結合的に連結している。いくつかの実施形態では、共有結合的連結はエステルを含む。種々の実施形態では、1つ又は複数のフルオロフォアは、ポリペプチド分子の、溶媒に露出した1つ又は複数の表面リジン残基に共有結合的に連結している。
【0151】
[0171]種々の実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、非共有結合的に連結している。代替的実施形態では、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、共有結合的に連結している。
【0152】
[0172]種々の実施形態では、ポリペプチド分子は、抗原提示細胞代替物に結合していてもよい。種々の実施形態では、抗原提示細胞代替物は、ビーズを含む。種々の実施形態では、ポリペプチド分子は、リンカーにより抗原提示細胞代替物に結合している。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)分子を含む。
【0153】
[0173]多くの実施形態では、組成物は、ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した受容体をさらに含む。
【0154】
[0174]種々の実施形態では、組成物は、生きたリンパ球を含む。いくつかの実施形態では、受容体の少なくとも一部分は、生きたリンパ球の細胞膜上にある。いくつかの実施形態では、共受容体は、生きたリンパ球の細胞膜上に位置していてもよい。いくつかの実施形態では、共受容体は、ポリペプチド分子の一部分に結合している。種々の実施形態では、生きたリンパ球はT細胞であり、受容体はT細胞受容体(TCR)である。種々の実施形態では、共受容体は、CD8分子を含む。他の実施形態では、生きたリンパ球はB細胞であり、受容体はB細胞受容体(BCR)である。いくつかの実施形態では、共受容体は、CD4分子を含む。他の実施形態に加えて、生細胞はマクロファージを含み、受容体はケモカイン受容体を含む。他の実施形態に加えて、生細胞は樹状細胞を含み、受容体はパターン認識受容体(PRR)を含む。
【0155】
[0175]アッセイの種々の実施形態では、天然に存在するペプチド410を調べることができる。いくつかの実施形態では、人工的につくられた(例えば、合成、発現ベクターなど)ペプチド410を調べることができる。当業者であれば、本明細書の実施形態が、既存のペプチドライブラリーの恩恵を受けることができることを理解するであろう。追加の実施形態は、ペプチドライブラリーの製造を含むことができる。
【0156】
[0176]記載されるシステム及び方法の態様は、様々な異なる受容体をアッセイすることを含むことができる。種々の実施形態では、ペプチドは、アッセイされる特定の受容体に基づいて選択されうる。例えば、複数のペプチドは、異なる強度でOT-1 TCRに結合することが知られている。したがって、いくつかの実施形態では、既知のペプチド配列をアッセイすることができる。
【0157】
[0177]種々の実施形態では、製造されたペプチドをアッセイすることができる。ペプチドを製造するためのプロセスの非限定的な実施例は、固相ペプチド合成(SPPS)を含むことができる。いくつかの実施形態では、SPPSは、支持体(例えば、不溶性多孔質支持体)上でのアミノ酸誘導体の連続反応を通してペプチド鎖を組み立てることができる。
【0158】
[0178]いくつかの実施形態では、特徴づけされた結合特性を有するペプチド410は、特徴づけに基づいて治療法のために展開することができる。他の実施形態では、研究開発は、特徴づけされた結合特性を有するペプチド410を展開可能であることの恩恵を受けることができる。
【0159】
[0179]種々の実施形態では、抗原性ペプチドは、8~11個のアミノ酸残基にわたる長さを有する。他の実施形態では、抗原性ペプチドは、15~24個の残基にわたる長さを有する。いくつかの実施形態では、抗原性ペプチドは、UV部分を含む。
【0160】
反応混合物
[0180]本発明は、生物動力学アッセイにおける使用のための、プローブ複合体を生成するための反応混合物を提供する。種々の実施形態では、反応混合物は、本明細書に記載される組成物のうちの1つ又は複数と標的抗原性ペプチドとを含みうる。種々の反応において、標的抗原性ペプチドは、ポリペプチド分子の抗原結合領域に結合した抗原性ペプチドと比較して、モル過剰の濃度で存在しうる。種々の反応混合物において、標的抗原性ペプチドの濃度は、抗原性ペプチドの濃度の25倍である。種々の反応混合物は、25mMのTRISを含みうる。種々の反応混合物は、8.0のpHを含みうる。種々の反応混合物は、150mMのNaClを含みうる。種々の反応混合物は、4mMのEDTAを含みうる。種々の反応混合物は、5%のエチレングリコールを含みうる。
【0161】
計器系
[0181]本開示の態様は、定量的データを収集するための計器系の恩恵を受けることができる。種々の実施形態では、被分析物(例えば、リガンド-受容体)は、計器系により検出可能でありうる検出分子で標識することができる。種々の実施形態では、計器系は、検出系を含むことができる。種々の実施形態では、計器系は、光学系の部品を含むことができる。種々の実施形態では、計器系は、流体系の部品を含むことができる。種々の実施形態では、計器系は、制御系の部品を含むことができる。
【0162】
[0182]本明細書に記載される方法は、リガンドと受容体との間の結合動態を定量化可能に分析すること(例えば、検出分子からのシグナル強度を測定すること)のできる任意の計器系で実施することができる。いくつかの実施形態は、フローサイトメトリーを含むハイスループット系の恩恵を受ける。
【0163】
[0183]フローサイトメーターは、極めて高い速度で検出領域に細胞を通過させることにより、細胞の大集団を分析するように設計される。付随する方法において、細胞の集団を、時間間隔に沿った様々な時点での調査のために調製して、結合曲線又は解離曲線を生成することができる。大量の結合動態データは、曲線に寄与する速度定数を正確に特徴づけするために必要でありうる。したがって、T細胞のTCRに結合した単量体プローブ(例えば、pMHC及び結合した検出分子)は、フローサイトメトリー分析によく適合しうる。
【0164】
[0184]図14は、種々の実施形態による、生細胞の活性化を評価するための結合動態を測定するためのシステムの概略図である。種々の実施形態では、システムは、分析チャンバ1404を含む分析機器1400を含み、分析チャンバ1404は、本明細書に記載される組成物を含む。本発明は、生細胞の活性化を評価するための結合動態を測定するためのシステムを提供し、このシステムは分析チャンバ1404を含む分析機器1400を含み、分析チャンバ1404は、本明細書に記載される反応混合物を含む。種々のシステムにおいて、分析機器1400は、分析チャンバ1404を調べるための光源1402と、シグナルを検出するための検出器1406を含む。
【0165】
[0185]種々の実施形態では、コンピューターシステム1408は、非一時的なコンピューター可読記憶媒体を含み、非一時的なコンピューター可読記憶媒体は、シグナルを分析するための命令を含む。
【0166】
[0186]種々の実施形態では、シグナルを分析することは、前もって決定する較正値にシグナルを正規化することを含む。
【0167】
[0187]種々の実施形態では、分析チャンバ1404は、フローセルを含む。
【0168】
[0188]種々の実施形態では、分析機器1400は、フローサイトメーターを含む。種々の実施形態では、分析機器1400は、蛍光光度計を含む。種々の実施形態では、分析機器1400は、顕微鏡を含む。種々の実施形態では、分析機器1400は、質量分析計を含む。
【0169】
方法-単量体プローブ複合体の生成
[0189]本発明は、単量体プローブ複合体を生成する方法を提供する。種々の方法は、抗原結合領域を含むポリペプチド分子を第1の抗原性ペプチドと接触させて、抗原提示複合体を生成すること、抗原提示複合体を複数のフルオロフォア分子と接触させて、フルオロフォア標識抗原提示複合体を生成すること、フルオロフォア標識抗原提示複合体に共有結合したフルオロフォア分子の濃度を決定すること、及び第1の抗原性ペプチドを第2の抗原性ペプチドと交換し、単量体プローブ複合体を生成することを含む。
【0170】
[0190]種々の実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、第1の抗原性ペプチドを第2の抗原性ペプチドと交換する工程を含み、第1の抗原性ペプチドを切断し、切断された第1の抗原性ペプチドを生成することを含む。
【0171】
[0191]種々の実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、第1の抗原性ペプチドを切断する工程を含み、UV照射を適用することを含む。
【0172】
[0192]種々の方法では、第2の抗原性ペプチドは、切断された第1の抗原性ペプチドより高い、抗原結合領域に対する親和性を有する。
【0173】
[0193]種々の方法では、UV照射は、365ナノメートルの波長を含む。
【0174】
[0194]種々の実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、抗原提示複合体を複数のフルオロフォア分子と接触させて、フルオロフォア標識抗原提示複合体を生成する工程を含み、ポリペプチド分子の、溶媒に露出した1つ又は複数の表面リジン残基を、フルオロフォア分子の1つ又は複数に共有結合的に連結させることを含む。
【0175】
[0195]種々の実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、1つ又は複数の非コンジュゲートフルオロフォアを標識された単量体プローブ複合体から分離する工程を含む。
【0176】
[0196]種々の実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、複数の標識された単量体プローブ複合体の濃度を決定することを含む。
【0177】
[0197]種々の実施形態では、単量体プローブ複合体を生成する方法は、複数の標識された単量体プローブ複合体の各々にコンジュゲートしたフルオロフォアの平均数を決定することを含む。いくつかの実施形態では、複数の標識された単量体プローブ複合体の各々にコンジュゲートしたフルオロフォアの平均数を決定する工程は、各々が異なる数のコンジュゲートしたフルオロフォアに対応する、複数の相対的存在量の値を使用することを含む。いくつかの実施形態では、複数の相対的存在量の値の各々が、質量分析を使用して決定される。
【0178】
方法-結合
[0198]図5Aは、種々の実施形態による、生細胞の活性化を評価するための結合速度データを収集するためのプロセス550のフロー図である。
【0179】
[0199]工程552は、複数の生細胞を、一定の濃度で複数の組成物と接触させることを含み、複数の生細胞の各々は、細胞膜上に複数の受容体分子を含む。種々の実施形態では、生細胞は、T細胞を含む。種々の実施形態では、生細胞は、B細胞を含む。種々の実施形態では、生細胞は、マクロファージを含む。種々の実施形態では、生細胞は、樹状細胞を含む。
【0180】
[0200]工程554は、受容体分子を、一定の時間間隔にわたって組成物に結合させて、複数の受容体-プローブ複合体を形成することを含み、各受容体-プローブ複合体は、1つの受容体に結合した1つの組成物を含む。いくつかの実施形態では、受容体-プローブ複合体の各々は、CD8分子を含む。いくつかの実施形態では、受容体-プローブ複合体の各々は、CD4分子を含む。
【0181】
[0201]工程556は、複数の生細胞の少なくとも2つの試料を、前記時間間隔にわたって異なる時点で収集することを含む。
【0182】
[0202]工程558は、少なくとも2つの試料の各々中の生細胞を、固定剤と接触させて、受容体-プローブ複合体を保存し、受容体分子と組成物との間のさらなる結合を防ぐことを含む。種々の実施形態では、固定剤は、パラホルムアルデヒドを含む。
【0183】
[0203]工程560は、各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を決定することを含む。
【0184】
[0204]工程562は、各試料中の各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を分析し、結合速度データを収集することを含む。
【0185】
[0205]種々の実施形態では、組成物のシグナル強度は、分析機器を使用して測定される。種々の実施形態では、分析機器は、フローサイトメーターを含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、蛍光光度計を含む。
【0186】
[0206]種々の実施形態では、プロセスは、受容体-プローブ複合体の温度を低下させることにより、受容体の内部移行を防ぐことを含みうる。多くの実施形態では、温度を4℃まで低下させる。
【0187】
[0207]種々の実施形態では、プロセスは、複数の生細胞から1つ又は複数の未結合の組成物を分離することを含みうる。
【0188】
[0208]図5Bは、いくつかの実施形態により、T細胞受容体(TCR)とペプチド-主要組織適合性遺伝子複合体(pMHC)結合速度を評価するための、生物物理学的パラメーターデータを収集するためのプロセス500のフロー図である。
【0189】
[0209]種々の実施形態では、TCR分子は、T細胞に発現されうる。非限定的な例として、TCR分子は、T細胞の細胞膜内に、細胞膜に、又は細胞膜の近くに位置させることができる。
【0190】
[0210]工程502は、一組の単量体プローブを生成することを含み、各単量体プローブは、1つの検出分子と、1つのペプチドを含む1つのMHCとを含む。
【0191】
[0211]工程504は、TCR分子を、単量体プローブと1対1の対応で結合させて、一定の時間間隔にわたってTCR-単量体-プローブ複合体を形成することを含む。いくつかの実施形態では、時間間隔は、TCR-単量体-プローブ複合体の平衡状態に先立って開始することができる。
【0192】
[0212]工程506は、前記時間間隔にわたってTCR-単量体-プローブ複合体の2つ以上のサブセットをサンプリングすることを含み、各サブセットは異なる時点で取られる。
【0193】
[0213]工程508は、各サブセット内での新規TCR-単量体-プローブ複合体の形成を、それらの対応する時点で防ぐことを含む。いくつかの態様では、防ぐ工程は、固定バッファーの使用を含むことができる。固定バッファーは、いくつかの実施形態により、反応が進行することを防ぐことができる。いくつかの実施形態では、PBS中4%のPFA溶液を、固定バッファーとして使用することができる。状況によっては、実施形態は、防ぐ工程に続いて温度を低下させることを含むことができる。プロトコールへのこの追加工程は、形成をさらに防ぐことができ、試料を保存するように機能しうる。いくつかの実施形態では、温度は、4℃とすることができる。
【0194】
[0214]工程510は、分析機器を使用して、各サブセット内の検出分子からのシグナル強度を測定することを含む。
【0195】
[0215]種々の実施形態では、検出分子は蛍光分子を含む。いくつかの実施形態では、検出分子は、クエンチ剤を含むことができる。種々の実施形態では、検出分子とMHCは、リンカーを用いて結合させることができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、ビオチン化構造を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は任意の数の分子を含むことができる。多分子リンカーの非限定的な実施例は、アビジン又はストレプトアビジンに結合したビオチンを含む。代替的実施形態では、リンカーは、PEGを含む。
【0196】
[0216]種々の実施形態では、分析機器は、フローサイトメーターを含む。いくつかの実施形態では、フローサイトメーターの分析特性は、適切に適用されうる。分析特性の非限定的な実施例は、高速度でフローセルを通して細胞を担持する液体を流すことにより、ハイスループット能力を備えることができる。
【0197】
[0217]種々の実施形態では、方法は、結合していない単量体プローブをTCR分子から分離する工程をさらに含むことができる。非限定的な実施例は、1つ又は複数の洗浄工程を含むことができる。
【0198】
方法-解離
[0218]図6Aは、種々の実施形態による、生細胞の活性化を評価するための解離速度データを収集するためのプロセスのフロー図である。
【0199】
[0219]工程652は、複数の生細胞を、一定の濃度で複数の組成物と接触させることを含み、複数の生細胞の各々は、細胞膜上に複数の受容体分子を含む。種々の実施形態では、生細胞は、T細胞を含む。種々の実施形態では、生細胞は、B細胞を含む。種々の実施形態では、生細胞は、マクロファージを含む。種々の実施形態では、生細胞は、樹状細胞を含む。
【0200】
[0220]工程654は、受容体分子を組成物に結合させて、平衡状態が達成されるまで、複数の受容体-プローブ複合体を形成することを含み、各受容体-プローブ複合体は、1つの受容体に結合した1つの組成物を含む。いくつかの実施形態では、受容体-プローブ複合体の各々は、CD8分子を含む。いくつかの実施形態では、受容体-プローブ複合体の各々は、CD4分子を含む。
【0201】
[0221]工程656は、受容体-プローブ複合体の一部分を、組成物の濃度を低下させることにより、一定の時間間隔にわたって解離させることを含む。
【0202】
[0222]工程658は、複数の生細胞の少なくとも2つの試料を、前記時間間隔にわたって異なる時点で収集することを含む。
【0203】
[0223]工程660は、少なくとも2つの試料の各々中の生細胞を、固定剤と接触させて、受容体-プローブ複合体を保存し、受容体分子と組成物との間のさらなる結合を防ぐことを含む。種々の実施形態では、固定剤は、パラホルムアルデヒドを含む。
【0204】
[0224]工程662は、各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を決定することを含む。
【0205】
[0225]工程664は、各試料中の各細胞の細胞膜上の受容体-プローブ複合体の数を分析し、結合速度データを収集することを含む。
【0206】
[0226]種々の実施形態では、組成物のシグナル強度は、分析機器を使用して測定される。種々の実施形態では、分析機器は、フローサイトメーターを含む。いくつかの実施形態では、分析機器は、蛍光光度計を含む。
【0207】
[0227]種々の実施形態では、プロセスは、受容体-プローブ複合体の温度を低下させることにより、受容体の内部移行を防ぐことを含みうる。多くの実施形態では、温度を4℃まで低下させる。
【0208】
[0228]種々の実施形態では、プロセスは、複数の生細胞から1つ又は複数の未結合の組成物を分離することを含みうる。
【0209】
[0229]図6Bには、いくつかの実施形態による、T細胞受容体(TCR)とペプチド-主要組織適合性遺伝子複合体(pMHC)の解離速度を評価するための生物物理学的パラメーターデータを収集するための方法が示されている。種々の実施形態では、TCR分子は、T細胞上に発現されうる。
【0210】
[0230]工程602は、一組の単量体プローブを生成することを含む。種々の単量体プローブの例示的実施形態の「単量体プローブ」のセクションを参照されたい。いくつかの実施形態では、各単量体プローブは、1つの検出分子と、1つのペプチドを含む1つのMHCとを含む。種々の実施形態では、検出分子は、蛍光分子を含むことができる。いくつかの実施形態では、検出分子とMHCは、リンカーを用いて結合させることができる。リンカーの非限定的な例は、ビオチン、アビジン、及びストレプトアビジンを含むビオチン化構造を含むことができる。代替的な実施例では、リンカーはPEGを含むことができる。
【0211】
[0231]工程604は、TCR分子を、単量体プローブと1対1の対応で結合させて、TCR-単量体-プローブ複合体を形成することを含む。いくつかの実施形態では、TCR分子は、T細胞受容体分子を含むことができる。
【0212】
[0232]工程606は、一定の時間間隔にわたって、TCR-単量体-プローブ複合体を、単量体プローブとTCRとに解離させることを含む。種々の実施形態では、前記時間間隔は、TCR-単量体-プローブ複合体の平衡状態において開始することができる。いくつかの実施形態では、TCR分子と単量体プローブは、プレインキュベートして平衡状態に到達させることができる。方法は、TCR-単量体-プローブ複合体を含む溶液を希釈し、それにより解離を引き起こす緩衝剤の使用をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、希釈バッファーを含むことができる。
【0213】
[0233]工程608は、前記時間間隔にわたってTCR-単量体-プローブ複合体の2つ以上のサブセットをサンプリングすることを含み、各サブセットは異なる時点で取られる。
【0214】
[0234]工程610は、それらの対応する時点での各サブセット内でのさらなるTCR-単量体-プローブ複合体の解離を防ぐことを含む。いくつかの態様では、防ぐ工程は、固定バッファーの使用を含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、防ぐ工程に続いて温度を低下させる工程をさらに含むことができる。温度の非限定的な実施例は、4℃を含む。
【0215】
[0235]工程612は、ハイスループット分析機器を使用して、各サブセット内の検出分子からのシグナル強度を測定することを含む。種々の実施形態では、分析機器は、フローサイトメーターを含むことができる。
【0216】
[0236]方法の実施形態は、結合していない単量体プローブをTCR分子から分離する追加の工程を含むことができる。いくつかの実施形態では、分離することは、洗浄することを含むことができる。
【実施例
【0217】
実施例1:プローブ複合体の成分
[0237]組み換えヒトβ-ミクログロブリン(B2M)。B2Mは、ヒト白血球抗原(HLA)又はマウス組織適合系2と結合し、αドメインとの相互作用を通して非共有結合複合体を形成する。その結果得られるヘテロ二量体は、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)クラスIであった。ヒトB2Mをヒト及びマウス両方のMHCに使用するための十分な配列相同性が存在した。
【0218】
[0238]組み換えヒト白血球抗原(HLA)又は組み換えマウス組織適合系2(H-2)(MHCクラスI複合体のα鎖)。β-ミクログロブリンと複合すると、αドメインとαドメインは、8~11アミノ酸長の特定のペプチドに非共有結合することのできるペプチド結合溝を形成する。
【0219】
[0239]ペプチド。合成8~11merペプチドを、ヒト、マウスの、ニワトリ、又はウイルスのタンパク質から得た。ペプチドは、ナノモルからマイクロモルの親和性でβ-ミクログロブリンと複合したHLAのα及びαドメインのペプチド結合溝に結合する。MHCクラスIへのペプチド結合は、組み換え非共有結合複合体を安定させる。エピトープペプチドは、MHCクラスIに結合し、T細胞受容体(TCR)により認識される抗原を形成する。
【0220】
[0240]N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)-エステルフルオロフォア。最適な反応条件においてモル過剰で付加されると、NHS-エステルフルオロフォア(Alexa FluorTM 488 NHSエステル)は、溶媒に露出したMHCクラスIの表面リジン残基に共有結合的にコンジュゲートし、TCRに対するプローブ結合の蛍光性の測定を可能にする。NHS-エステルフルオロフォアが、UV耐性に基づいて選択された。
【0221】
実施例2:プローブ合成方法のための開始成分
[0241]UV-MHCクラスI又はペプチド-MHCクラスI。組み換えMHCクラスIは、非天然のUV切断可能なアミノ酸を含む高親和性の8~11個のオリゴマー ペプチド又は対象のエピトープペプチドを用いてリフォールディングされた。ペプチドは、市販されているものを取得したか、又は社内で生成した。ペプチドは、例えば、Grotenbreg,Gijsbert M.,et al.,“Discovery of CD8+T cell epitopes in Chlamydia trachomatis infection through use of caged class I MHC tetramers.” PNAS 2008.Vol.105,no.10、pages 3831-3838のものであり、この文献の開示内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。プロセスは、図12に図解式に示されている。
【0222】
[0242]UV-MHCクラスI複合体の場合、UV切断可能なペプチドは、対象のエピトープペプチドが複合体のペプチド結合溝へと交換されることを可能にする条件付きリガンドであった。プロセスは、図13に図解式に示されている。
【0223】
[0243]UV-MHC又はペプチド-MHCクラスI分子は、フルオロフォアで標識される。次いでUV-MHCクラスI分子は、UV媒介性交換により対象のペプチドでローディングされて、最終プローブを形成する。
【0224】
[0244]ペプチド。8~11アミノ酸長及び純度>90%の、凍結乾燥された合成ペプチドが使用された。対象のペプチドは、複合体(図13参照)へのUV媒介性交換のためにモル過剰で特定のUV-MHCに付加されたか、又はB2M及びHLAをリフォールディングすることによりペプチド-MHCクラスI分子を生成するために直接使用された。
【0225】
[0245]NHS-エステルフルオロフォア。NHS-エステルフルオロフォアを、表面に露出したリジン残基へのコンジュゲーションのために、UV-MHCクラスI分子又はペプチド-MHCクラスI分子にモル過剰で加えた。選択されるフルオロフォアは、365nmのUV光への下流での露出に耐えることのできるものでなければならない。使用されたフルオロフォアの一例は、Alexa FluorTM 488であった。
【0226】
実施例3:プローブ合成方法
[0246]フルオロフォアでのUV-MHCの標識。所望の対立遺伝子のUV-MHCを、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.42)中2~20X過剰モルのNHS-フルオロフォアとともに2時間室温でインキュベートした。過剰な非コンジュゲートフルオロフォアを、透析により除去した。試料を、10K分子量のカットオフ透析カセット(Slide-A-LyzerTM 10K MWCOカセット、Thermo FisherTM)中にローディングし、25mMのTRIS(pH8.0)、150mMのNaCl、4mMのEDA中に、試料:透析液の比1:2000で置いた。試料と透析液とを、電磁攪拌プレートを使用して継続的に混合しながら4℃で8時間インキュベートした。次いで透析液を廃棄し、交換して、攪拌しながら4℃でさらに8時間のインキュベーションを行った。2回目の透析の後、試料を回収し、タンパク質濃度を、UV可視分光光度計を使用して決定し、280nmでの吸収度へのフルオロフォアの寄与について修正した。
【0227】
[0247]フルオロフォア標識の決定された度合。フルオロフォア標識の度合を、逆相液体クロマトグラフィー質量分析(RP LC-MS)により決定した。2-3μgのMHC-フルオロフォアコンジュゲーション反応物を、Agilent 6230TM飛行時間型エレクトロスプレーイオン化質量分析計と連携させたAgilentTM 1290 InfinityTMシリーズHPLCに注入した。試料を、逆相カラム(AgilentTM PLRP-S 1000Å、8μm、50×2.1mm)に注入した。カラムを、5分で25~45%のグラジエントの移動相Bに、80℃に加熱したカラムを用いて0.50mL/分で露出させた。移動相Aは、0.05%のTFAであった。移動相Bは、アセトニトリル中0.05%のTFAであった。カラム溶出剤を、質量分析データ取得のためにLC-MSに送った。フルオロフォアコンジュゲーションの度合は、B2M及びHLAに対応するピークのデコンボリューションされた質量スペクトルを使用することにより、決定することができる。pMHCクラスI分子1つ当たりのフルオロフォアの平均数を、各タンパク質種への異なる数のフルオロフォア付加物に対応する各質量の相対的な存在量を使用し、複合体の加重平均を決定することにより、計算した。
【0228】
[0248]UV媒介性ペプチド交換。ペプチドを、エチレングリコール中で20mg/mLの濃度に可溶化し、25Xモル過剰でフルオロフォア標識ペプチド-MHC I分子に加えた。ペプチド交換反応は、25mMのTRIS(pH8.0)、150mMのNaCl、4mMのEDTA中で実施され、ペプチドの付加後に5%のエチレングリコールv/vを含んでいた。交換反応物中のペプチド-MHC I分子の最終濃度は2.0mg/mLであった。ペプチド-反応混合は、体積15mLまで、UV透過96ウェルプレート、又は透明無色の試料管で実施された。
【0229】
[0249]次いでペプチド-交換反応物を、365nmに設定されたUV光(AnalytikjenaTM UVP 3UV Lamp)下で20分間インキュベートした。ランプは、試料容器の可能な限り近くに配置された。UV光への露出後、交換反応は、室温で最低4時間進行させたか、又は一晩インキュベートした。
【0230】
[0250]MHCへのペプチド結合の決定。2次元液体クロマトグラフィー質量分析(2D LC-MS)法を使用して、MHCクラスI複合体へのペプチド結合を特徴付けた。2-3μgのMHCクラスI-ペプチド混合物を、機器に注入し、1次元カラムに送った。1次元LC法は、分析用サイズ排除カラム(SEC)(AgilentTM AdvanceBioTM SEC 300Å、2.7um、4.6×15mm)を用いて、インタクトな複合体を、25mMのTRIS(pH8.0)、150mMのNaCl中0.7ml/分の等濃度流で流される過剰なペプチドから、10分間にわたる280nmでのシグナル捕捉により分離した。サンプリングバルブは、160μLの容量で1.90~2.13分溶出された複合体ピークの全体を収集し、それを2次元逆相カラム(AgilentTM PLRP-STM 1000Å、8um、50×2.1mm)に注入する。2次元カラムを、4.7分で5~50%のグラジエントの移動相Bに、80℃に加熱したカラムを用いて0.55ml/分で露出させた。移動相Aは、0.05%のTFAであった。移動相Bは、アセトニトリル中0.05%のTFAであった。カラム溶出剤を、質量分析データ取得のためにAgilent 6224 TOF LCMSに送った。
【0231】
実施例4:pMHC-OVA結合アッセイ
[0251]TCR結合アッセイでは、MHCクラスI拘束性のオボアルブミン特異的CD8+T細胞(OT-I細胞)を生成するマウス遺伝子導入系を起源とするOT-I細胞が使用された。OT-I細胞は、単一の導入遺伝子を介して継承されるα鎖可変領域2(Vα)及びβ鎖可変領域5(Vβ5)からなるT細胞抗原受容体を有していた。
【0232】
[0252]まずOT-I細胞をカウントした。OT-I細胞は、82%の生存率を有し、いくつかの死細胞破片を含んでいた。OT-I細胞を、バッファー(例えば、1×PBS、0.5%のBSA+2mMのEDTA又は1×PBS、0.5%のBSA+0.05%アジ化ナトリウム)中、1mL当たり4百万個で再懸濁し、抗TCRβ(H57-597 1/600)及び生存率染料(1/1000)で染色した。次いでOT-I細胞を、96ウェルプレートの各ウェル中に100μLずつ分注した。次いでOT-I細胞を、150μLの1×PBS、0.5%のBSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファーを加え、1400rpmで2.5分間遠心沈殿させることにより洗浄した。また、細胞表面の受容体数を測定する方法として、較正ビーズを染色した。
【0233】
[0253]リガンドペプチドを含む単量体プローブ複合体、及びIgG抗体を含む溶液は、以下のように調製された:
【0234】
[0254]1.N4単量体100μg/mL=30μLの2mg/mL単量体+570μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0235】
[0255]2.N4単量体50μg/mL=15μLの2mg/mL単量体+585μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0236】
[0256]3.N4単量体20μg/mL=6μLの2mg/mL単量体+594μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0237】
[0257]4.T4単量体100μg/mL=30μLの2mg/mL単量体+570μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0238】
[0258]5.T4単量体50μg/mL=15μLの2mg/mL単量体+585μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05% アジ化ナトリウムバッファー
【0239】
[0259]6.T4単量体20μg/mL=6μLの2mg/mL単量体+594μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0240】
[0260]7.V4単量体100μg/mL=30μLの2mg/mL単量体+570μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0241】
[0261]8.V4単量体50μg/mL=15μLの2mg/mL単量体+585μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05% アジ化ナトリウムバッファー
【0242】
[0262]9.V4単量体20μg/mL=6μLの2mg/mL単量体+594μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0243】
[0263]10.IgG抗体(染色ビーズのための)100μg/mL=33μLの1.8mg/mL+557μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0244】
[0264]11.ペプチドのみ100μg/mL=14.3μLの4.2mg/mL+586μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0245】
[0265]単量体、ペプチド、及び抗体を含む、120μLの溶液を、96ウェルプレートに加えた(移す前の試薬のために保持プレートを使用した)。多チャネルピペットを使用して、溶液の各々につき100μLを細胞に移した。細胞を、0、3、9、27、及び81分の時点で染色した。各時点で、150μLのCytofixTMバッファーをウェルに加えて反応を停止させ、細胞を別のプレートに移した。次いで細胞を、20から40分間4度でインキュベートした。各時点での固定が完了したら、1500rpmで2.5分間動作する遠心分離を使用して細胞を遠心沈殿させ、次いで200μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファーを加えた。すべての細胞を、フローサイトメーターで実行するために、染色と同じテンプレートで1つのプレートに合わせた。細胞を、1500rpmで2.5分間動作する遠心分離を使用して遠心沈殿させ、次いで130μLのバッファーを加えた。細胞を含む100μLの溶液を、1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムに1秒当たり0.5μLの速度で処理した(1秒当たり1μLが使用されうる)。データが収集され、N4の例示的データが図7A及び7Bのグラフに示されている。
【0246】
[0266]TCRのζドメインのリン酸化のレベルを検出するために、細胞を、1×permバッファー中で30分間室温で1:50に希釈された抗pCD247 CD3ζ Tyr142 APC(Thermo Fisher ScientificTM 17-2478-42)とのインキュベーションに先立ち、1×透過処理バッファー(Thermo Fisher ScientificTM 00-8333-56)で洗浄した。次いで細胞を、その後のサイトメトリー分析のために、1×透過処理バッファーで洗浄し、バッファー(例えば、1×PBS、0.5% BSA+2mM EDTA又は1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウム)に再懸濁した。
【0247】
実施例5:pMHC-OVA解離アッセイ
[0267]TCR解離アッセイにおいて、まずOT-I細胞をカウントした。OT-I細胞は、50%の生存率を有していた。死細胞除去キットを使用して、死細胞を除去した。次いで細胞を再度カウントしたところ、生存率は75%であった。
【0248】
[0268]次いで40万個の細胞を、96ウェルプレートの各ウェル中に分配した(すべてのウェルが使用されたわけではなかった)。細胞を、遠心分離を使用して遠心沈殿させ、抗TCRβ(H57-597 1/600)で染色し、1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー中の生存率染料(1/1000)を、ウェル当たり100μLで各々に加えた。細胞を、20分間室温でインキュベートし、次いで150μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファーを加え、細胞を、遠心分離を使用して遠心沈殿させた。
【0249】
[0269]リガンドペプチドを含む単量体プローブ複合体、及びIgG抗体を含む溶液は、以下のように調製された:
【0250】
[0270]1.N4単量体100μg/mL=30μLの2mg/mL単量体+570μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0251】
[0271]2.T4単量体100μg/mL=30μLの2mg/mL単量体+570μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0252】
[0272]3.V4単量体100μg/mL=30μLの2mg/mL単量体+570μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0253】
[0273]4.IgG抗体(ビーズ用)100μg/mL=33μLの1.8mg/mL+557μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0254】
[0274]5.ペプチドのみ100μg/mL=14.3μLの4.2mg/mL+586μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファー
【0255】
[0275]次いで100μLの試料を、時間差を最小限に抑えるために多チャネルピペットを使用して、細胞を含むプレートに移した。次いで細胞を、室温で1時間インキュベートした。試料の上にバッファーをかけ、遠心分離を使用して遠心沈殿させた。200μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファーを使用して、さらに2回の洗浄を完了した。
【0256】
[0276]次いで試料を、0、3、9、27、及び81分の時点について室温でインキュベートした。これら時点で、300μLのCytofixTMバッファーを加え、各試料と混合した。次いで試料を新しいプレートに移し、20~40分間固定し、遠心分離を使用して遠心沈殿させ,(例えば、1×PBS、0.5% BSA+2mM EDTA又は1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウム)バッファーに再懸濁した。
【0257】
[0277]TCRのζドメインのリン酸化のレベルを検出するために、細胞を、1×パーマバッファー中で30分間室温で1:50に希釈された抗pCD247 CD3ζ Tyr142 APC(Thermo Fisher ScientificTM 17-2478-42)とのインキュベーションに先立ち、1×透過処理バッファー(Thermo Fisher ScientificTM 00-8333-56)で洗浄した。次いで細胞を、その後のサイトメトリー分析のために、1×透過処理バッファーで洗浄し、(例えば、1×PBS、0.5% BSA+2mM EDTA又は1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウム)バッファーに再懸濁した。
【0258】
[0278]次いで細胞を、遠心分離を使用して遠心沈殿させ、130μLの1×PBS、0.5% BSA+0.05%アジ化ナトリウムバッファーに再懸濁した。次いで試料を、1秒当たり0.5μLでプレートリーダーを使用して、BD SymphonyTMで処理した。データが収集され、N4の例示的データが図8A及び8Bのグラフに示されている。
【0259】
[0279]本教示は、種々の実施形態に関連させて記載されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。反対に、本教示は、当業者であれば理解するように、様々な変更、修正、及び等価物を包含する。
【0260】
[0280]種々の実施形態の記載において、本明細書は、特定の連続工程として方法及び/又はプロセスを提示することができた。しかしながら、方法又はプロセスが、本明細書に示される工程の特定の順序に依拠しない範囲で、方法又はプロセスは、記載された特定のシーケンスの工程に限定されるべきでなく、当業者であれば、シーケンスが、変更可能であり、それでも種々の実施形態の趣旨及び範囲内に含まれうることを容易に理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】