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特表2025-500774傷の可視性が低い微細構造化表面及び物品並びに方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】傷の可視性が低い微細構造化表面及び物品並びに方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20250107BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20250107BHJP
   A61L 2/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B29C59/02 B
G02B3/08
A61L2/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533971
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 IB2022061717
(87)【国際公開番号】W WO2023105372
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/286,648
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/351,926
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/402,623
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ヴィヴィアン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】カーンレイ,ゴードン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィールドン,ジョーゼフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,クンイ
(72)【発明者】
【氏名】コネル,ジョディ エル.
(72)【発明者】
【氏名】エルドレッジ,アレクサンダー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ツー,リジュン
(72)【発明者】
【氏名】ロリモー,リン イー.
(72)【発明者】
【氏名】バイ,フェン
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン,ジュニア,オレスター
【テーマコード(参考)】
4C058
4F209
【Fターム(参考)】
4C058AA01
4C058BB02
4C058BB10
4F209AA01
4F209AA03
4F209AA15
4F209AA16
4F209AA24
4F209AA28
4F209AA31
4F209AA33
4F209AA40
4F209AA44
4F209AD03
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG05
4F209AH63
4F209AH73
4F209AR13
4F209PA03
4F209PC05
4F209PH21
4F209PQ01
4F209PW41
(57)【要約】
構造化表面が記載される。一実施形態では、構造化表面は、構造体の少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%が10度より大きい傾斜を有し、構造体の80%未満が35度より大きい傾斜を有するように、相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)を有する複数の構造体を含む。他の実施形態では、構造体は、デカルト座標系によって画定される山部及び谷部を含み、山部及び谷部が、x-y平面における幅及び長さ並びにz方向における高さを有し、山部及び/又は谷部の少なくとも一部分が、y方向及び/又はx方向において平均高さの少なくとも10%だけ高さが変動する。物品及び方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)を有する複数の構造体を備える構造化表面であって、
前記構造体の少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%が、10度より大きい傾斜を有し、前記構造体の80%未満が、35度より大きい傾斜を有する、構造化表面。
【請求項2】
前記構造体が、デカルト座標系によって画定される山部及び谷部を含み、前記山部及び前記谷部が、x-y平面における幅及び長さ並びにz方向における高さを有し、前記山部及び/又は前記谷部の少なくとも一部分が、y方向において平均高さの少なくとも10%だけ高さが変動する、請求項1に記載の構造化表面。
【請求項3】
前記構造体が、デカルト座標系によって画定される山部及び谷部を含み、前記山部及び前記谷部が、x-y平面における幅及び長さ並びにz方向における高さを有し、前記山部及び/又は前記谷部の少なくとも一部分が、x方向において平均高さの少なくとも10%だけ高さが変動する、請求項1~2に記載の構造化表面。
【請求項4】
前記構造体が、2つ以上のファセットを含む、請求項1~3に記載の構造化表面。
【請求項5】
前記ファセットが、同じ方向に連続した又は半連続した表面を形成している、請求項4に記載の構造化表面。
【請求項6】
前記構造体が、鋭い、丸みを帯びた、又は切頭状である頂点を有する山部を含む、請求項1~5に記載の構造化表面。
【請求項7】
前記構造化表面が、頂点が丸みを帯びた修正プリズムの配列を含む、請求項1~6に記載の構造化表面。
【請求項8】
前記構造化表面が、平面状のベース層に平行な平坦表面積を50、40、30、20、又は10%未満だけ含む、請求項1~7に記載の構造化表面。
【請求項9】
前記構造化表面が、交差する壁を欠く谷部を含む、請求項1~8に記載の構造化表面。
【請求項10】
前記構造化表面が、1ミクロン~10mm、又は1ミクロン~1mm、又は1ミクロン~500ミクロンの範囲の平均幅を有する谷部を含む、請求項1~9に記載の構造化表面。
【請求項11】
前記構造化表面が、3より大きく90未満であるSbi/Sviを有する、請求項1~10に記載の構造化表面。
【請求項12】
前記構造化表面が平面状のベース層上に配置され、前記構造化表面及び前記平面状のベース層が有機ポリマー材料を含む、請求項1~11に記載の構造化表面。
【請求項13】
前記構造化表面が、単独で又は前記平面状のベース層と組み合わせて、透明である、光透過性である、又は不透明である、請求項1~12に記載の構造化表面。
【請求項14】
前記構造化表面が、単独で又は前記平面状のベース層と組み合わせて、以下:
線形プリズムフィルムよりも視覚的に明らかな傷が少ない;
少なくとも90又は95%の透過率;
10、5、又は1未満の透明度;
20度での10又は5未満の光沢度;
85度での10又は5未満の光沢度;
-40度~+40度の範囲の視野角に対して、0度での10、11、又は12cd/mより大きい輝度;
-40~+40度の範囲の視野角に対して、90度での10、11、又は12cd/mより大きい輝度;
-40度~+40度の範囲の視野角に対して、0度及び/又は90度での5、4、3、2、又は1cd/m未満だけ変動する輝度;から選択される1つ以上の特性を有する、請求項1~13に記載の構造化表面。
【請求項15】
相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)を有する複数の構造体を備える構造化表面であって、
前記構造体の少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%が、10度より大きい傾斜を有し、以下の基準:
i)構造体の少なくとも10、20、又は30%が、50度より大きい傾斜を有する;
ii)構造体の少なくとも10又は20%が、60度より大きい傾斜を有する;
iii)構造体の70、60、又は50%未満が、40度より大きい傾斜を有する;
iv)構造体の90又は80%未満が、30度より大きい傾斜を有する;及び
v)構造体の90%未満が、20度より大きい傾斜を有する、のうちの1つ以上を有する、構造化表面。
【請求項16】
相補累積傾斜大きさ分布(Xcc)を有する複数の構造体を含む構造化表面であって、
前記構造体の少なくとも45、50、又は60%が、30度又は35度より大きい傾斜を有し、
前記構造体の85又は80%未満が、40度より大きい傾斜を有する、構造化表面。
【請求項17】
相補累積勾配大きさ分布(Ycc)を有する複数の構造体を含む構造化表面であって、
前記構造体の少なくとも20、25、30、35、40、45、又は50%が、10度より大きい傾斜を有し、
前記構造体の55、50、45、40、35、30、25、又は20%未満が、30度より大きい傾斜を有する、構造化表面。
【請求項18】
前記構造化表面が、請求項2~28によって更に特徴付けられる、請求項15~17に記載の構造化表面。
【請求項19】
構造化表面を作製する方法であって、請求項1~18に記載の構造化表面を含むツールを提供することと、フィルム又は物品上に前記構造化表面を付与するために前記ツールを利用することとを含む、方法。
【請求項20】
前記ツールを利用することが、前記ツールの前記構造化表面で表面をエンボス加工すること、前記ツールの前記構造化表面上に重合性樹脂を鋳造及び硬化すること、又は前記ツールの前記構造化表面上にポリマーを熱押出しすることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~20に記載の構造化表面を含む、物品。
【請求項22】
前記物品が、前記平面状のベース層の反対面上に接着剤を更に含むフィルム又はテープである、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記接着剤が、除去可能な感圧接着剤である、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記フィルム又はテープが、グラフィック物品、包装物品、保護物品、又はそれらの組み合わせである、請求項21~23に記載の物品。
【請求項25】
前記構造化表面が、
触れられる、又は
人及び/又は動物と接触する、又は
通常の使用中に洗浄される、又は
それらの組み合わせに供する、請求項21~24に記載の物品。
【請求項26】
前記構造化表面が、微生物の接触移動の少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、又は99%の低減をもたらす、請求項21~25に記載の物品。
【請求項27】
前記構造化表面が、洗浄後に少なくとも2、3、4、5、6、7、又は8の微生物(例えば、細菌)のlog10の低減をもたらす、請求項21~26に記載の物品。
【請求項28】
前記微生物が、バクテリオファージ又はウイルスである、請求項26~27に記載の物品。
【請求項29】
前記物品が、医療用物品、歯科矯正用物品、車両、建物、(例えば、電子)機器のハウジング若しくはケース、又は家具である、請求項21~28に記載の物品。
【請求項30】
接触移動が低減される及び/又は洗浄された際の微生物除去が向上する微細構造化表面を含む物品であって、山部構造及び隣接する谷部の配列を含み、前記谷部が、1ミクロン~1000ミクロンの範囲の最大幅を有し、前記山部がデカルト座標系によって画定され、前記山部が、x-y平面における幅及び長さ並びにz方向における高さを有し、前記山部の少なくとも一部分が、y方向において平均高さの少なくとも10%だけ高さ又は傾斜が変動する、物品。
【請求項31】
前記微細構造化表面が、表面分析によって決定される、10、15、20、25、30度より大きい平均傾斜を有する、請求項30に記載の物品。
【請求項32】
前記山部構造が、修正線形プリズムを含む、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
前記物品が、請求項22~29により更に特徴付けられる、請求項30~32に記載の物品。
【請求項34】
接触移動が低減される及び/又は洗浄された際の微生物除去が向上する表面を有する物品を提供する方法であって、物品上に微細構造化表面を提供することを含み、前記微細構造化表面又は前記物品が請求項1~33により更に特徴付けられる、方法。
【請求項35】
前記微細構造化表面が、前記微細構造化表面を含むフィルムを前記物品の表面上に接着することによって提供される、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国特許出願公開第2017/0100332号(要約)は、第1の複数の間隔が空いた特徴部を含む物品を記載している。間隔が空いた特徴部は複数のグループになるように配置され、特徴部のグループは繰り返し単位を含み、1つのグループ内の間隔が空いた特徴部同士は約1ナノメートル~約500マイクロメートルの平均距離で間隔が空いており、各特徴部は隣接する特徴部上の表面と実質的に平行である表面を有し、各特徴部はその隣接する特徴部から離されており、特徴部のグループは蛇行経路を画定するように互いに対して配置されている。複数の間隔が空いた特徴部は、物品に、加工粗さ指数約5~約20をもたらす。
【0002】
国際公開第2013/003373号及び同第2012/058605号は、特に医療用物品上の、バイオフィルム形成に抵抗し、それを低減するための表面を記載している。表面は、複数の微細構造特徴部を含む。
【0003】
国際公開第2021/033151号に記載されるように、特定の微細構造特徴部を有する物品は、特に医療用物品の場合には、バイオフィルムの初期形成を減少させるのに有用であるが、他の物品の場合、そのような微細構造化表面は、洗浄が難しい場合がある。これは、少なくとも部分的には、ブラシの毛材又は(例えば、不織布)拭き取り布の繊維が微細構造体間のスペースよりも大きいためであると推測される。驚くべきことに、いくつかの種類の微細構造化表面は、平滑な表面と比較しても、洗浄された際により良好な微生物(例えば、細菌)除去を示すことが見出された。そのような微細構造化表面は、微生物の接触移動(touch transfer)の減少をもたらすことも見出された。
【発明の概要】
【0004】
国際公開第2021/033151号に記載されているような微細構造化表面は、使用中に損傷を受ける可能性がある。例えば、微細構造化表面は、傷がつけられる場合がある。そのような傷の形状及び寸法に応じて、傷は、洗浄性又は接触移動特性を実質的に損なう場合もあり、損なわない場合もある。例えば、微細構造化表面の小さな部分が損傷した場合、微細構造化表面は、その洗浄性及び接触移動特性を実質的に保持し得る。しかしながら、傷などの損傷の可視性は、審美的に魅力が薄れる可能性がある。したがって、産業界は、この問題に対処する微細構造化表面に利点を見出すであろう。
【0005】
一実施形態では、構造体の少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%が10度より大きい傾斜を有し、構造体の80%未満が35度より大きい傾斜を有するように、相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)を有する複数の構造体を含む構造化表面が記載される。
【0006】
いくつかの実施形態では、構造体は、デカルト座標系によって画定される山部及び谷部を含み、山部及び谷部が、x-y平面における幅及び長さ並びにz方向における高さを有し、山部及び/又は谷部の少なくとも一部分が、y方向において平均高さの少なくとも10%だけ高さが変動する。
【0007】
いくつかの実施形態では、構造体は、デカルト座標系によって画定される山部及び谷部を含み、山部及び谷部が、x-y平面における幅及び長さ並びにz方向における高さを有し、山部及び/又は谷部の少なくとも一部分が、x方向において平均高さの少なくとも10%だけ高さが変動する。
【0008】
いくつかの実施形態では、構造体は、同じ方向に連続又は半連続表面を形成するファセット(facets:切子面)を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、構造化表面は、平面状のベース層に平行な平坦表面積を50、40、30、20、又は10%未満だけ含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、構造化表面は、交差する壁を欠く谷部を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、構造化表面は、1ミクロン~1mmの範囲の平均幅を有する谷部を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、構造化表面は、平面状のベース層上に配置される。構造化表面及び平面状のベース層は、有機ポリマー材料を含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、構造化表面は、単独で又は平面状のベース層と組み合わせて、以下:
線状プリズムフィルムよりも視覚的に明らかな傷が少ない;
少なくとも90又は95%の透過率;
10、5、又は1未満の透明度;
20度での10又は5未満の光沢度;
85度での10又は5未満の光沢度;
-40から+40度の範囲の極角に対して、0度での少なくとも12カンデラ/平方メートル(cd/m)+/-1の輝度;
-40度~+40度の範囲の極角に対して、90度での少なくとも12cd/m+/-1の輝度、から選択される1つ以上の特性を有する。
【0014】
別の実施形態では、相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)を有する複数の構造体を含む構造化表面であって、構造体の少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%が10度より大きい傾斜を有し、以下の基準:
i)構造体の少なくとも10、20、又は30%が、50度より大きい傾斜を有する;
ii)構造体の少なくとも10又は20%が、60度より大きい傾斜を有する;
iii)構造体の70、60、又は50%未満が、40度より大きい傾斜を有する;
iv)構造体の90又は80%未満が、30度より大きい傾斜を有する;及び
v)構造体の90%未満が、20度より大きい傾斜を有する、のうちの1つ以上を有する、構造化表面が記載される。
【0015】
別の実施形態では、相補累積傾斜大きさ分布(Xcc)を有する複数の構造体を含む構造化表面であって、構造体の少なくとも45、50、又は60%が30又は35度より大きい傾斜を有し、構造体の85又は80%未満が40度より大きい傾斜を有する、構造化表面が記載される。
【0016】
別の実施形態では、相補累積傾斜大きさ分布(Ycc)を有する複数の構造体を含む構造化表面であって、構造体の少なくとも20、25、30、35、40、45、又は50%が10度より大きい傾斜を有し、構造体の55、50、45、40、35、30、25、又は20%未満が30度より大きい傾斜を有する、構造化表面が記載される。
【0017】
別の実施形態では、構造化表面を作製する方法であって、先行する請求項の構造化表面を含むツールを提供することと、フィルム又は物品上に構造化表面を付与するためにツールを利用することとを含む、方法が記載される。いくつかの実施形態では、ツールを利用することは、ツールで表面をエンボス加工すること、ツール上に重合性樹脂を鋳造及び硬化させること、又はツールの構造化表面上にポリマーを熱押出しすることを含む。
【0018】
他の実施形態では、本明細書に記載の構造化表面を含む物品が記載される。いくつかの実施形態では、物品は、平面状のベース層の反対の面上に(例えば、恒久的又は除去可能な)接着剤を更に含むフィルム又はテープである。いくつかの実施形態では、構造化表面は、人及び/若しくは動物に触れられる、若しくは接触する、又は通常の使用中に洗浄される、又はこれらの組み合わせに供される。いくつかの実施形態では、構造化表面は、微生物の接触移動の少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、又は99%の低減をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、洗浄後に、少なくとも2、3、4、5、6、7、又は8の微生物(例えば、細菌)のlog10の低減をもたらすことができる。
【0019】
別の実施形態では、山部構造及び隣接する谷部の配列を含む微細構造化表面を含む物品であって、谷部が、1ミクロン~1000ミクロンの範囲の最大幅を有し、山部がデカルト座標系によって画定され、山部がx-y平面において幅及び長さを有し、z方向において高さを有し、山部の少なくとも一部分がy方向において高さ又は傾斜が変動する、物品が記載される。好ましい実施形態では、物品は、前述したように、洗浄後に微生物接触移動の低減及び/又は微生物(例えば、細菌)のlog10の低減をもたらすのに好適である。
【0020】
別の実施形態では、洗浄時に接触移動が低減する及び/又は微生物除去が向上する表面を有する物品を提供する方法が記載され、この方法は、物品上に本明細書に記載の微細構造化表面を提供することを含む。一実施形態では、微細構造化表面は、微細構造化表面を含むフィルムを物品の表面上に接着することによって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】様々な微細構造化表面を説明するために利用され得る表面のデカルト座標系の斜視レビューである。
図2】微細構造化表面の断面図である。
図2A】微細構造化表面の斜視図である。
図3】プリズムの線形配列を含む微細構造化表面の斜視図である。
図4A】配列又は山部構造を含む微細構造化表面の三次元地形図である。
図4B】配列又は山部構造を含む微細構造化表面の三次元地形図である。
図5A】配列又は山部構造を含む微細構造化表面の三次元地形図である。
図5B】配列又は山部構造を含む微細構造化表面の三次元地形図である。
図5C】配列又は山部構造を含む微細構造化表面の三次元地形図である。
図6】様々な頂角を有する山部構造の断面図である。
図7】丸みを帯びた頂上を有する山部構造の断面図である。
図8】相補累積勾配(すなわち、傾斜)大きさ分布(Fcc)のプロットである。
図9】相補累積X傾斜(Ycc)のプロットである。
図10】相補累積Y傾斜(Xcc)のプロットである。
図11】切断ツールシステムの概略側面図である。
図12A】種々のカッターの概略側面図である。
図12B】種々のカッターの概略側面図である。
図12C】種々のカッターの概略側面図である。
図12D】種々のカッターの概略側面図である。
図13A】極視野角の関数としての輝度のプロットである。
図13B】極視野角の関数としての輝度のプロットである。
図14】構造体の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、微細構造化表面は、デカルト座標系をその構造に重ね合わせることによって、三次元空間で特徴付けることができる。第1の基準面124は、主表面112と114との間の中心にある。y-z平面と称される第1の基準面124は、その法線ベクトルとしてx軸を有する。x-y平面と称される第2の基準面126は、表面116と実質的に同一平面上に延びており、その法線ベクトルとしてz軸を有する。x-z平面と称される第3の基準面128は、第1の端面120と第2の端面122との間の中心にあり、その法線ベクトルとしてy軸を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、物品は、マクロスケールで三次元である。ただし、マイクロスケール(例えば、少なくとも2つの隣接する微細構造体と、それらの微細構造体間に配置された谷部又はチャネルとを含む表面領域)では、ベース層/ベース部材は、微細構造体に対して平面であると見なすことができる。微細構造体の幅及び長さは、x-y平面にあり、微細構造体の高さは、z方向にある。更に、ベース層は、x-y平面に平行であり、z平面に直交している。
【0024】
図2は、微細構造化表面200の例示的な断面図である。このような断面は、複数の個別の(例えば、ポスト又はリブ)微細構造体220を表す。微細構造体は、(例えば、加工)平坦面216(基準面126と平行である図1の表面116)に隣接するベース部212を含む。上(例えば、平面状の)面208(表面216及び図1の基準面26に平行)は、微細構造体の高さ(「H」)だけベース部212から間隔が空いている。微細構造体220の側壁221は、平坦面216に垂直である。側壁221が平坦面216に垂直であるとき、微細構造体は、側壁角度が0度である。垂直側壁の場合、ある山部微細構造体の垂直側壁は互いに平行であり、垂直側壁を有する隣接する微細構造体とも平行である。あるいは、微細構造体230は、平坦面216に対して垂直ではなく角度付けされた側壁231を有する。側壁角度232は、側壁231と平坦面216に垂直な基準面233(図1の基準面126に垂直であり、基準面128に平行)との交点によって画定することができる。米国特許第9,335,449号に記載されているようなプライバシーフィルムの場合、壁角度は、典型的には、10、9、8、7、6、又は5度未満である。プライバシーフィルムのチャネルは光吸収材料を含むため、壁角度が大きくなると透過率が低減する可能性がある。しかしながら、国際公開第2021/033151号に記載されるように、壁角度が0度に近づくと、洗浄することがより困難にもなる。
【0025】
国際公開第2021/033151号は、微生物除去に適した十分に高い側壁角度を有する微細構造を含む微細構造化表面を記載している。微細構造化表面は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10度より大きい側壁角度を有する微細構造体を含む。いくつかの実施形態では、側壁角度は、少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20度である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30度である。例えば、いくつかの実施形態では、微細構造体は、30度の側壁角度を有するキューブコーナー山部構造である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、又は45度である。例えば、いくつかの実施形態では、微細構造体は、45度の側壁角度を有するプリズム構造である。他の実施形態では、側壁角度は、少なくとも46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60度である。側壁のいくつかがより低い側壁角度を有する場合でも、微細構造化表面は有益であろうことが理解される。例えば、山部構造の配列の半分が所望の範囲内の側壁角度を有する場合、改善された微生物(例えば、細菌)除去の利点の約半分が得られ得る。したがって、いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1度未満の側壁角度を有する。いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、30、25、20、又は15度未満の側壁角度を有する。いくつかの実施形態では、山部構造の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、40、35、又は30度未満の側壁角度を有する。あるいは、上述のように、山部構造の少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%が、十分に大きな側壁角度を有する。
【0026】
国際公開第2021/033151号に記載されるように、好適な側面角度を有する一実施形態の微細構造化表面は、輝度向上フィルムと同じ表面を有する。図3を参照すると、このような微細構造化表面300は、規則的な直角プリズム320の直線配列を含む。各プリズムは、第1のファセット321と第2のファセット322とを有する。プリズムは、典型的には、(例えば、予め形成されたポリマーフィルム)ベース部材310上に形成され、このベース部材310は、その上にプリズムが形成される、(基準面126と平行である)第1の平坦面331と、実質的に平ら又は平坦であり、かつ第1の面の反対側の第2の表面332と、を有する。直角プリズムは、頂角θ340が、典型的には約90度であることを意味する。しかしながら、この角度は、70度~120度の範囲とすることができ、80度~100度の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、頂角は、60、65、70、75、80、又は85度より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、頂角は、150、145、140、135、130、125、120、110、又は100度未満でもよい。これらの頂上は、(示されるように)鋭利であるか、(図7に示されるように)丸みを帯びているか、又は切頭状であり得る。いくつかの実施形態では、谷部の夾角は、頂角と同じ範囲内である。(例えば、プリズム)山部同士の間の間隔は、ピッチ(「P」)として特徴付けられ得る。この実施形態では、ピッチは、谷部の最大幅にも等しい。したがって、ピッチは、前述のように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ミクロンより大きく、最大250ミクロンまでの範囲である。(例えば、プリズムの)微細構造体の長さ(「L」)は、典型的には最大寸法であり、微細構造化表面、フィルム、又は物品の寸法全体に延び得る。プリズムファセットは同一である必要はなく、プリズムは、図6に示すように互いに対して傾斜していてもよい。
【0027】
図3に示すような微細構造化表面は、微細構造体の規則的な繰り返しパターンを有するものとして説明することができる。
【0028】
ここで説明するのは、図4A図4B及び図5A図5Cに示すような、より複雑な微細構造化表面である。微細構造化表面は、任意の好適な作製方法を使用して製造することができる。例えば、微細構造体は、ツールからの高精細化を使用して製造することができる。ツールは、任意の適切な作製方法を使用して、例えばエングレービング又はダイヤモンド切削を使用することによって作製することができる。例示的な方法は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,888,333号、国際公開第2000/048037号、米国特許第7,140,812号、同第7,350,442号、及び同第7,328,638号(Gardiner)に記載されているように、当該技術分野で公知である。
【0029】
図7は、本開示の微細構造化表面を有するフィルムを製造するために使用することができるツールを切断するために使用され得る切断ツールシステム1000の概略側面図である。切断ツールシステム1000は、ねじ切り旋盤旋削処理により、駆動体1030によって中心軸1020の周囲を回転する、及び/又はこれに沿って移動することができるロール1010と、ロール材料を切断するためのカッター1040とを含む。カッターは、サーボ1050に装着され、駆動体1060によってx方向に沿ってロールの中、及び/又はロール沿いに移動させることができる。一般的に、カッター1040は、ロール及び中心軸1020に対して垂直に装着され、ロールが中心軸の周りを回転する際にロール1010の刻装可能な材料に送り込むことができる。次に、中心軸に平行にカッターを駆動し、ねじ切りを行うことができる。カッター1040は、高頻度かつ低変位で同時に作動して、例えば、高精細化時に本開示の微細構造化表面をもたらす特徴をロール内に生成することができる。
【0030】
サーボ1050は、高速ツールサーボ(FTS)であり、固体圧電(PZT)装置(PZTスタックと称されることが多い)を含むことができるが、このPZTスタックは、カッター1040の位置を迅速に調節する。FTS1050によって、カッター1040のx方向、y方向、及び/若しくはz方向、又は軸外方向での高精密な高速動作が可能になる。サーボ1050は、静止位置に関して制御された動作を生じうる、任意の高品質変位サーボであってもよい。いくつかの実施形態では、サーボ1050は、少なくとも約0.1ミクロンの分解能で0~約20ミクロンの範囲内の変位を確実にかつ繰り返しもたらすことができる。しかしながら、より大きな変位、したがってより大きな高さの構造を収容するために、より大きな切断ツールシステムを作製することができることが理解される。より良好な分解能を有する切断ツールシステムは、より小さい構造(例えば、1ミクロン)のために使用され得ることも理解される。
【0031】
駆動体1060は、カッター1040をx方向に沿って中心軸1020と平行に移動させることができる。場合によっては、駆動体1060の変位分解能は、少なくとも約0.1ミクロンである、又は少なくとも約0.01ミクロンである。駆動体1030により生じる回転運動は、駆動体1060により生じる並進運動と同期して、結果として得られる微細構造体160の形状を正確に制御する。ロール1010の彫刻可能な材料は、カッター1040により刻装できる任意の材料でもよい。例示的なロール材料としては、銅などの金属、様々なポリマー、及び様々なガラス材料が挙げられる。図4A図5Dの例示的な微細構造化フィルム表面を作製するためのツールを準備するために、カッター1040を、1~3ミクロンの範囲の半径及び80度(±5度)の頂角βを有する丸みを帯びた先端を有するカッター1120(図12B)のように成形した。ツールの表面は、典型的には、50、40、30、又は20nm未満の表面粗さを有する。したがって、微細構造体の表面は、この同じ表面粗さを有することができる。微細構造体のツール/表面の表面粗さは、微細構造体によって寄与される粗さを含まず、したがって、微細構造化表面の粗さと同じではないことが理解される。
【0032】
図7に戻って参照すると、中心軸1020に沿ったロール1010の回転と、ロール材料を切断する間のx方向に沿ったカッター1040の移動とは、中心軸に沿ってピッチPを有するロールの周りのねじ山経路を画定する。カッターがロール表面に垂直な方向に沿って移動してロール材料を切断するとき、カッターによって切断される材料の幅は、カッターが移動するか又は出入りするにつれて変化する。カッター1040は、前に生成された波状の擬似ランダムパターンの部分を排除するオーバーカットの何らかの要素を有し得るねじ山経路を生成するように、角度調整され、垂直に変位される。ロール1010の表面全体にパターンを彫刻するために、この角度調整及び垂直変位のプロセスが3~7回繰り返されるが、多くが必要とされる。微細構造化ツール表面の調製に関する追加の詳細は、以下の実施例に見出すことができる。彫刻ロール1010は、ツールの微細構造化表面のネガ型複製である微細構造化表面を有するフィルムを調製するためのツールとして機能する。
【0033】
この切断方法はロールの回転に関して説明されているが、y方向の変位をランダム化すること、及び/又はx方向の変位をランダム化することを利用して平面を切断することもできる。同様に、オーバーカットを利用して平面を切断することもできる。
【0034】
切断ツールによって形成されるねじ山経路のいくつかは、ランダム化された変位又はオーバーカットを組み込まなくてもよいことも理解される。例えば、図4A図5Dの配列の部分は、図3に示されるようなプリズムの線形配列などの規則的な繰り返しパターンを備えてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、微細構造体の配列を切断するために単一のカッターが使用される。他の実施形態では、微細構造体の配列を切断するために、2つ以上のカッターが使用される。例えば、高い山部は、丸みを帯びた先端を有するカッターを用いて形成されてもよく、短い山部は、鋭利な又はあまり丸みを帯びていない先端を有するカッターを用いて形成されてもよい。
【0036】
更に、この切断方法は、線形プリズムの配列の製造を修正することに関して例示されているが、y方向のみの変位をランダム化する、及び/又はx方向の変位をランダム化する、及び/又はオーバーカットするこれらの同じ原理を利用して、好ましい幾何形状のキューブコーナー要素を含むキューブコーナー要素などの他の微細構造化配列の製作を修正することもでき、これらの両方は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2021/033151号に記載されている。この実施形態では、微細構造化表面は、修正されたキューブコーナー構造体又は修正された好ましい幾何形状のキューブコーナー構造体を含むものとして特徴付けることができる。
【0037】
図4A図4B及び図5A図5Cは、本発明による山部構造の配列を含む例示的な(例えば微細)構造化表面の斜視図である。特に、これらの表面は、図3と比較して類似点と相違点の両方を有する。
【0038】
注目すべきことに、図3及び図4の線形プリズムと図4A図4B及び図5A図5Cの線形プリズムの両方の山部構造の断面図は、三角形の断面を有する。いくつかの実施形態では、図4A図4B及び図5A図5Cの表面は、「修正」線形プリズムとして特徴付けられてもよい。図3及び図4A図4B及び図5A図5Cの線形プリズムの両方の山部構造は、同じ方向に連続面を形成するファセット、言い換えれば、面を含む。微細構造化表面が修正キューブコーナー構造体の配列を含む場合、山部構造は、国際公開第2021/033151号に記載されているように、同じ方向に半連続表面を形成するファセットを含む。微細構造化表面が、修正された好ましい幾何学的形状のキューブコーナー構造体の配列を含む場合、山部構造は、国際公開第2021/033151号に記載されるように、同じ方向に連続表面及び半連続表面の両方を形成するファセットを含む。
【0039】
微細構造化表面が、図3に示すような規則的な繰り返しパターンを含む場合、山部高さ及び最大谷部幅を有するような様々な寸法は、y軸に直交する断面によって決定することができる。また、y軸に直交する断面によって、頂角や側壁角などの各種角度を決定することもできる。しかしながら、微細構造化表面が規則的な繰り返しパターンでない場合、言い換えれば、より複雑な微細構造化表面である場合、複数の断面を利用してこれらのパラメータを決定してもよい。
【0040】
更に、微細構造表面が異なる山部高さ、異なる谷部深さ、異なる角度などを有する山部及び谷部を含む場合、これらのパラメータは、より一般的には、例えば、最小値、最大値、又は平均値によって表され得る。図4A図4B及び図5A図5Cによって示されるような(微細)構造表面は、図3の線形プリズムと比較して、より大きな変動性、言い換えればより大きなランダム性を有するものとして特徴付けることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、より大きなランダム性は、光学特性に寄与する。例えば、図13A及び図13Bは、極視野角の関数としての輝度のプロットである。特に、図4A図4B及び図5A図5Bによって示される実施例1~4の(微細)構造化フィルムは、-40度から+40度の範囲の視野角(単数又は複数)に対して、90度での10、11、又は12cd/mより大きい輝度を有する。実施例1~4はまた、-40~+40度の範囲の視野角(単数又は複数)に対して、0度で10、11、又は12cd/mより大きい輝度を有する。特に、図3に示される比較例Bのプリズムフィルムは、90度でより低い輝度を有する。更に、比較例Bは、約-30度~+30度の範囲の視野角に対して0度でより低い輝度を有し、約-30度~-60度及び+30度~+60度の範囲の視野角に対して有意に高い輝度を有する。記載された(例えば、実施例1~4の)(微細)構造化フィルムの0度での輝度は、-40~+40度の範囲の視野角に対して、5、4、3、2、又は1cd/m未満だけ変動する。したがって、記載された(微細)構造表面は、比較例Bのプリズムフィルムと比較して、より均一な輝度を有する。いくつかの実施形態では、図4A図4B及び図5A図5Bによって示される記載された(微細)構造化表面は、以下の実施例でより詳細に記載されるように、図3の線形プリズムフィルムよりも少ない視覚的に明らかな傷を示す。
【0042】
図3に示される線形プリズムは、名目上同じ深さを有する谷部を含む。更に、図3に示される線形プリズムは、名目上同じ幅を有する谷部を含む。
【0043】
対照的に、図4A図4B及び図5A図5Cの(例えば、修正線形プリズム)微細構造化表面は、異なる高さの山部及び/又は谷部を含む。更に、図4A図4B及び図5A図5Cの(例えば、修正線形プリズム)微細構造化表面は、異なる幅の山部及び/又は谷部を含む。図4A図4B及び図5A図5Bの微細構造化表面の最小谷部高さ、最大谷部高さ、最小谷部幅、最大谷部幅、最大山部高さ、最小山部高さ、最大山部幅、及び最小山部幅を、以下の表に報告する。
【表1】
【0044】
特に、谷部構造は、少なくとも1、2、3、4又は5ミクロンだけ高さが変動する(最小と最大との間の差)。いくつかの実施形態では、谷部構造は、20、10、15、又は5ミクロン以下だけ高さが変動する。特に、谷部構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ミクロンだけ幅が変動する(最小と最大との間の差)。いくつかの実施形態では、谷部構造は、20、10、15、又は5ミクロン以下だけ高さが変動する。
【表2】
【0045】
特に、山部構造は、少なくとも1、2、3、4、又は5ミクロンだけ高さが変動する(最小と最大との間の差)。いくつかの実施形態では、山部構造は、20、10、15、又は5ミクロン以下だけ高さが変動する。特に、山部構造は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ミクロンだけ幅が変動する(最小と最大との間の差)。いくつかの実施形態では、山部構造は、20、10、15、又は5ミクロン以下だけ高さが変動する。
【0046】
変動の量は、サイズの関数であり得ることが理解される。別の言い方をすれば、変動の量は、典型的には、平均寸法(例えば、山部高さ、山部幅、谷部高さ、谷部幅など)の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、又は50%である。いくつかの実施形態では、変動の量は、45、40、35、30、25、20、15%未満である。したがって、微細構造表面が10ミクロンの平均寸法を有する場合、変動の量は、典型的には1~5ミクロンの範囲である。同様に、微細構造表面が1ミクロンの平均寸法を有する場合、変動の量は、典型的には0.1~0.5ミクロンの範囲である。
【0047】
図5Cは、図5Bの表面のネガ型複製、言い換えれば反転である。ネガ型複製は、例えば、重合性樹脂を金属ツール上に鋳造及び硬化させることによって作製することができる。硬化した重合性樹脂を金属ツールから除去すると、得られるフィルムは高精細化表面を有することになり、ツールの山部構造はフィルム内の谷部、すなわち、キャビティに対応し、ツールの谷部はフィルム内の山部構造に対応する。この実施形態では、図5Cの構造化表面の山部寸法は、図5Bの実施例4で説明した谷部寸法と同じである。更に、図5Cの構造化表面の谷部寸法は、図5Bによって示される実施例4の山部寸法と同じである。
【0048】
本発明の複合表面は、表面分析を用いて特徴付けた。トポグラフィックデータを、VK-200 Keyenceレーザー走査共焦点顕微鏡(Keyence Corporation,Itasca,IL)を使用して収集した。顕微鏡と共に提供されるネイティブ画像アセンブリソフトウェアを使用して、ステッチ画像を生成した。35個の個々の画像の配列(150X Nikon対物レンズを使用)を使用して、およそ300×600マイクロメートルのデータセットを生成した。ソフトウェアパッケージDigital Surf Mountain Map(Digital Surf.Besancon,France)を使用してデータセットを更に分析して、表面粗さパラメータを測定し、図4A図4B及び図5A図5Cの三次元表面プロットを作成した。
【0049】
図14は、(微細)構造化表面120の(微細)構造体160の概略側面図である。構造体160は、構造体の表面にわたる傾斜分布を有する。例えば、構造体は、場所510の傾斜θを有し、ここで、θは、場所510の構造面と垂直な(α=90度)垂線520と、同じ場所の微細構造表面と接する接線530との間の角度である。傾斜θは、接線530と微細構造化層の主面142との間の角度でもある。
【0050】
(微細)構造体の傾斜、(微細)構造化表面120の傾斜は、最初にx方向に沿って取られ、次にy方向に沿って取られた。
【数1】
【数2】
式中、H(x,y)は、表面の高さプロファイルである。
【0051】
平均x勾配及びy勾配は、各ピクセルを中心とする2ミクロン間隔で評価された。異なる実施形態では、微細構造サイズに対して十分な分解能で一定の間隔が使用される限り、ミクロン間隔は、より小さく又はより大きくなるように選択されてもよい。選択される間隔は、構造体の最小ピーク幅未満である。いくつかの実施形態では、間隔対最小山部幅の比は、少なくとも3:1、4:1、又は5:1である。したがって、より小さな構造体に対してはより小さな間隔が選択され、より大きな構造体に対しては典型的にはより大きな間隔が選択される。各ピクセルは傾斜を有し、各構造体は典型的には、2つ以上のセットのx、y座標、したがって2つ以上の計算された傾斜値を有する。ミクロサイズの間隔が微細構造化表面の傾斜を評価するために選択される場合、ナノ構造の存在は、典型的には、微細構造化表面のFccを著しく変化させない。例えば、200nmのナノ構造は、10ミクロンの微細構造の座標を2%変化させる。x傾斜及びy傾斜のデータから、以下の式3から勾配の大きさを決定することが可能である。
【数3】
【0052】
次に、平均勾配大きさを、各ピクセルを中心とする6μm×6μmのボックスにおいて評価することができた。勾配大きさは、0.5度のビンサイズ内で生成された。勾配大きさ分布は、Nと書くことができる。上記の値に対応するx傾斜角、y傾斜角、及び勾配大きさの角度の角度値を見出すために、式1、式2、及び式3の値の逆正接を取るべきであると理解されたい。表面の別の特徴付けは、特定の角度θ以上である勾配大きさの割合(又は割合に100%を乗じることによるパーセンテージ)として定義される相補累積分布(FCC(θ))である。相補累積分布(FCC(θ))は、次のように定義される。
【数4】
【0053】
したがって、構造化表面の特定の割合が、特定の度数未満である傾斜の大きさを有すると述べられる場合、この特徴付けは、式4のFCC(θ)から導き出される。勾配大きさは、x傾斜とy傾斜との組み合わせに対応し、したがって、勾配大きさは、全体的な傾斜大きさとして理解され得る。「勾配大きさ」及び「傾斜大きさ」という用語は、本明細書を通じて交換可能に使用されてもよく、これらの用語は同じ意味を有すると理解されるべきであることを理解されたい。図4A図4B及び図5A図5Cに示すように、表面全体が微細構造化され、選択された間隔が、前述のように微細構造の最小山部幅未満である場合、全表面のFccは、微細構造化表面のFcc及び微細構造のFccでもある。
【0054】
X傾斜分布(Xcc)、Y傾斜分布(Ycc)及びF(cc)は、図4A図4B及び図5A図5Cに示されるような具現化された微細構造化表面について計算された。
【0055】
図8は、比較例と比較して、図4A図4B及び図5A図5Bの表面のトポグラフィックデータから計算された相補累積勾配(すなわち、傾斜)大きさ分布(Fcc)のプロットである。比較例Aは、代表的な輝度向上フィルム(例えば、国際公開第2021/033162号の実施例1)である。比較例Dは、代表的なキューブコーナーフィルム(例えば、国際公開第2021/033162号の実施例20)である。特に、これらの比較例の微細構造化表面の微細構造体は、狭い傾斜分布を有する。比較例A及びDの表面の微細構造の90%は、少なくとも30度の傾斜を有する。比較例Aの表面の微細構造体の80%は、少なくとも45度(すなわち、頂角の半分)の傾斜を有し、一方、比較例Dの微細構造化表面の微細構造体の80%は、少なくとも40度(すなわち、頂角の半分)の傾斜を有する。比較例A及びDの両方の微細構造体の5%未満が、20度未満の傾斜を有する。更に、微細構造体の5%未満が、50度より大きい傾斜を有する。比較例A及びDなどの規則的な繰り返しパターンでは、表面分析から得られたトポグラフィックデータから計算された傾斜は、断面から計算することができる側壁角度と実質的に同じであり得る。
【0056】
特に、図4A図4B及び図5A図5Cに示される表面は、はるかに広い傾斜分布を有する。特に、構造化表面は、構造体の少なくとも30、40、50、60、70、80、又は90%が10度より大きい傾斜を有するような相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)を有する複数の構造体を含む。対照的に、比較例Cの艶消し表面の複数の構造体は、20度未満の傾斜を有する。更に、いくつかの実施形態では、構造体の80%未満が、35度より大きい傾斜を有する。いくつかの実施形態では、図4A図4B及び図5A図5Cによって示される本明細書に記載される構造化表面は、複数の構造体を含み、構造体は、以下の基準:
a)構造体の少なくとも10、20、30、40、50、60、70又は80%が、20度より大きい傾斜を有する;
b)構造体の少なくとも10、20、30、40、50、60、又は70%が、30度より大きい傾斜を有する;
c)構造体の少なくとも10、20、30、40又は50%が、40度より大きい傾斜を有する;;
d)構造の少なくとも10、20、又は30%が、50度より大きい傾斜を有する;
e)構造体の少なくとも10又は20%が、60度より大きい傾斜を有する;
f)構造体の20、10%未満が、70度より大きい傾斜を有する;
g)構造体の50、40、30又は20%未満が、60度より大きい傾斜を有する;
h)構造体の50又は40%未満が、50度より大きい傾斜を有する;
i)構造体の70、60、又は50%未満が、40度より大きい傾斜を有する;
j)構造体の90又は80%未満が、30度より大きい傾斜を有する;
k)構造体の90%未満が、20度より大きい傾斜を有する;のうちの1つ以上を満たす相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)を有する。
【0057】
図5Cの相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)、すなわち、図5Bのネガ型複製も、直前に説明したのと同じ相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)基準によって特徴付けることができる。図4A図4B及び図5A図5Cに示される構造化表面は、直前に記載された相補累積傾斜大きさ分布(Fcc)基準の様々な組み合わせによって特徴付けられてもよく、いくつかの実施形態では、直前に記載された全ての基準によって特徴付けられてもよい。
【0058】
図9は、図4A図4B及び図5A図5Bに示される構造化表面の相補累積勾配(すなわち、傾斜)大きさ分布(Ycc)のプロットである。これらの表面は、相補累積傾斜大きさ分布(Ycc)を有する複数の構造体を含み、構造体の少なくとも20、25、30、35、40、45、又は50%が10度より大きい傾斜を有し、構造体の55、50、45、40、35、30、25、又は20%未満が30度より大きい傾斜を有する。いくつかの実施形態では、図4A図4B及び図5A図5Bによって示される、本明細書に記載される構造化表面は、相補累積傾斜大きさ分布(Ycc)を有する複数の構造体を含み、構造体は、以下の基準:
a)構造体の少なくとも10又は20%が、20度より大きい傾斜を有する;
b)構造体の少なくとも10又は20%が、30度より大きい傾斜を有する;
c)構造体の少なくとも10又は15%が、40度より大きい傾斜を有する;
d)構造体の少なくとも10%が、50度より大きい傾斜を有する;
e)構造体の少なくとも5%が、60度より大きい傾斜を有する;
f)構造体の10又は5%未満が、70度より大きい傾斜を有する;
g)構造体の20~10%未満が、60度より大きい傾斜を有する;
h)構造体の50、40、30、20、又は10%未満が、50度より大きい傾斜を有する;
i)構造体の90、80、70、60、50、40、30、又は20%未満が、40度より大きい傾斜を有する;
j)構造体の90、80、70、60、50、40、又は30%未満の構造が、20度より大きい傾斜を有する;
k)構造体の90、80、70、60、50、40、又は30%が、10度より大きい傾斜を有する;のうちの1つ以上を満たす。
【0059】
図10は、図4A図4B及び図5A図5Bに示される、構造化表面の相補累積勾配(すなわち、傾斜)大きさ分布(Xcc)のプロットである。これらの表面は、相補累積傾斜大きさ分布(Xcc)を有する複数の構造体を含み、構造体の少なくとも45、50、又は60%が30又は35度より大きい傾斜を有し、構造の85又は80%未満が40度より大きい傾斜を有する。いくつかの実施形態では、図4A図4B及び図5A図5Bによって示される本明細書に記載される構造化表面は、相補累積傾斜大きさ分布(Xcc)を有する複数の構造体を含み、構造体は以下の基準:
a)構造体の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、又は80%が、10度より大きい傾斜を有する;
b)構造体の少なくとも10、20、30、40、50、60、又は70%が、20度より大きい傾斜を有する;
c)構造体の少なくとも10、20、30、40、50、又は60%が、40度より大きい傾斜を有する;
d)構造体の少なくとも10又は20%が、50度より大きい傾斜を有する;
e)構造体の少なくとも10%が、60度より大きい傾斜を有する;
f)構造体の20、10%未満が、70度より大きい傾斜を有する;
g)構造体の50、40、30又は20%未満が、60度より大きい傾斜を有する;
h)構造体の50、40、又は30%未満が、50度より大きい傾斜を有する;
i)構造体の90、80、又は70%未満が、30度より大きい傾斜を有する;
j)構造体の90又は80%未満が、20度より大きい傾斜を有する;のうちの1つ以上を満たす。
【0060】
図5Cの構造化表面はまた、直前に説明したものと同じ相補累積傾斜大きさ分布(Xcc)及び(Ycc)基準によって特徴付けることができることが理解される。
【0061】
様々な他の表面粗さパラメータである、Sa(粗さ平均)、Sq(二乗平均平方根)、及びSbi(表面ベアリング指数)、Sku(表面クルトシス)、Svi(谷部流体保持指数)を、トポグラフィ画像(3D)から計算した。粗さを計算する前に、平面補正を使用した「減算平面」(一次平面フィッティングフォームの除去)。
【0062】
以下の表は、いくつかの代表的な実施例及び比較例のSパラメータを説明するものである。特に、比較例のいくつかは、国際公開第2021/033151号にも記載されている。
【表3】
【0063】
粗さ平均Saは、次のように定義される。
【数5】
式中、M及びNは、データ点X及びYの数である。
【0064】
平滑な表面では、Saがゼロに近づくことがあるが、洗浄後に微生物除去が不十分であることが見出された比較例の平滑な表面は、少なくとも10、15、20、25、又は30nmの平均表面粗さSaを有していた。比較例の平滑な表面の平均表面粗さSaは、1000nm(1ミクロン)未満であった。いくつかの実施形態では、比較例の平滑な表面のSaは、少なくとも50、75、100、125、150、200、250、300、又は350nmであった。いくつかの実施形態では、比較例の平滑な表面のSaは、900、800、700、600、500、又は400nm以下であった。
【0065】
洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面の平均表面粗さSaは、1ミクロン(1000nm)以上であった。いくつかの実施形態では、Saは、少なくとも1100nm、1200nm、1300nm、1400nm、1500nm、1600nm、1700nm、1800nm、1900nm、又は2000nm(2ミクロン)であった。いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、少なくとも2500nm、3000nm、3500nm、4000nm、又は5000nmであった。いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、少なくとも10,000nm、15,000nm、20,000nm、又は25,000nmであった。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面のSaは、40,000nm(40ミクロン)、35,000nm、30,000nm、15,000nm、10,000nm、又は5,000nm以下であった。
【0066】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも2倍又は3倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも4、5、6、7、8、9、又は10倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍である。他の実施形態では、微細構造化表面のSaは、平滑な表面のSaの少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000倍である。
【0067】
二乗平均平方根(RMS)パラメータSqは、次のように定義される。
【数6】
式中、M及びNは、データ点X及びYの数である。
【0068】
Sq値はSa値よりもわずかに高いが、Sq値もまたSa値について説明された範囲と同じ範囲内にある。
【0069】
表面尖度Skuは、表面トポグラフィの「尖度」を表し、以下のように定義される。
【数7】
【表4】
【0070】
特に、実施例1~4は、比較例A、B、及びDよりも大きいSkuを有する。いくつかの実施形態では、Skuは、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、又は2.75よりも大きい。いくつかの実施形態では、Skuは、3.00、2.95、2.90、2.85、2.80、2.75、2.70、2.65、2.60、又は2.55、又は2.50、又は2、45未満である。
【0071】
表面ベアリング指数Sbiは、次のように定義される。
【数8】
式中、Z0.05は、5%のベアリング面積での表面高さである。
【0072】
谷部流体保持指数Sviは、次のように定義される。
【数9】
式中、Vv(h0.80)は、80~100%のベアリング面積内の谷部ゾーンでの空隙体積である。
【0073】
上記のSパラメータ表に記載されているように、比較例の平滑な試料のSbi/Svi比は、1及び3であった。洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、3又は3より大きいSbi/Svi比を有していた。微細構造化表面は、少なくとも4、5、又は6であるSbi/Svi比を有する。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、少なくとも7、8、9、又は10であるSbi/Svi比を有していた。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、少なくとも15、20、25、30、35、40、又は45であるSbi/Svi比を有していた。洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、比較例の方形波状微細構造化表面よりも小さいSbi/Svi比を有していた。したがって、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、90、85、80、75、70、又は65未満であるSbi/Svi比を有していた。いくつかの実施形態では、洗浄後の微生物除去が改善された微細構造化表面は、60、55、50、45、40、35、30、25、20、又は10未満であるSbi/Svi比を有していた。
【0074】
トポグラフィマップを使用して、微細構造化表面の他の特徴部を測定することもできる。例えば、山部高さ(特に同じ高さの繰り返し山部)は、ソフトウェアの高さヒストグラム関数から決定することができる。方形波状フィルムの「平坦な領域」のパーセントを計算するためには、特定の形状(この場合は、微細構造化方形波状フィルムの「平坦な頂部」)を識別する、SPIPの粒子細孔分析機能を使用して「平坦な領域」を識別することができる。
【0075】
本明細書に記載される表面は、表面の構造体の寸法にかかわらず、新しい工学的表面(すなわち、天然に存在しない)であると推測される。一実施形態では、表面は、(例えば、装飾的な)マクロ構造化表面であってもよい。マクロ構造化表面は、典型的には、顕微鏡によって拡大することなく見ることができる。いくつかの実施形態では、マクロ構造体の平均幅は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mmである。いくつかの実施形態では、マクロ構造体の平均長さは、平均幅と同じ範囲であり得るか、又は幅よりも大幅に大きいこともあり得る。例えば、マクロ構造体がドアによく見られるような木目調の微細構造体である場合、マクロ構造体の長さは(例えば、ドア)物品の全長にわたって延びることがある。マクロ構造体の高さは、典型的には幅よりも小さい。いくつかの実施形態では、高さは、5、4、3、2、1又は0.5mm未満である。
【0076】
他の実施形態では、本明細書に記載される表面は、微細構造化表面である。微細構造化表面は、少なくとも1つ(例えば、幅又は高さ)、典型的には少なくとも2つ(例えば、幅及び高さ)の最大1mmの寸法を有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、構造化表面は、谷部の最大幅が、少なくとも1、2、3、又は4ミクロン、より典型的には5、6、7、8、9、又は10ミクロンより大きく、最大250ミクロンまでの範囲の微細構造体を含む。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも30、35、40、45、又は50ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、50ミクロンより大きい。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも55、60、65、70、75、85、85、90、95又は100ミクロンである。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、少なくとも125、150、175、200、225、又は250ミクロンである。谷部の幅が大きいほど、汚れの除去により適し得る。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、1000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、225、200、175、150、125、100、75、又は50ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、谷部の最大幅は、45、40、35、30、25、20、又は15ミクロン以下である。谷部のいくつかが最大幅よりも小さい場合でも、微細構造化表面が有益であろうことが理解される。例えば、微細構造化表面の谷部の総数の半分が所望の範囲内にある場合、約半分の利点が得られ得る。したがって、いくつかの実施形態では、谷部の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満が、10、9、8、7、6、又は5ミクロン未満の最大幅を有する。あるいは、上述のように、谷部の少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%が最大幅を有する。いくつかの実施形態では、例えば、微細構造化表面が異なる幅を有する谷部を含む場合、最小幅及び平均幅は、直前に記載した寸法内に含まれ得る。
【0078】
典型的な実施形態では、微細構造体の最大幅は、谷部について説明したのと同じ範囲内にある。他の実施形態では、谷部の幅は、微細構造体の幅よりも大きくてもよい。
【0079】
微細構造体(例えば、山部)の高さは、前述のように、谷部の最大幅と同じ範囲内にある。いくつかの実施形態では、山部構造は、典型的には、1~125ミクロンの範囲の高さ(H)を有する。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、少なくとも2、3、4、又は5ミクロンである。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、少なくとも6、7、8、9、又は10ミクロンである。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、100、90、80、70、60又は50ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、45、40、35、30、又は25ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、微細構造体の高さは、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10ミクロン以下である。典型的な実施形態では、谷部又はチャネルの高さは、山部構造について説明したのと同じ範囲内である。いくつかの実施形態では、山部構造及び谷部は、同じ高さを有する。他の実施形態では、山部構造は、高さが様々であり得る。例えば、微細構造化表面は、平面状の表面上ではなく、マクロ構造化表面上又は微細構造化表面上に配置される。山部の高さが異なる場合、山部の高さは、平均山部高さとして表すことができる。したがって、平均山部高さは、直前に説明した高さ基準に該当し得る。
【0080】
谷部のアスペクト比は、谷部の高さ(微細構造体の山部高さと同じとすることができる)を谷部の最大幅で割ったものである。いくつかの実施形態では、谷部のアスペクト比は、少なくとも0.1、0.15、0.2、又は0.25である。いくつかの実施形態では、谷部のアスペクト比は、1、0.9、0.8、0.7、0.6、又は0.5以下である。したがって、いくつかの実施形態では、谷部の高さは、典型的には、谷部の最大幅以下であり、より典型的には、谷部の最大幅よりも小さい。
【0081】
各微細構造体のベース部は、任意選択で角が丸みを帯びた平行四辺形、矩形、正方形、円、半円、半楕円、三角形、台形、他の多角形(例えば、五角形、六角形、八角形など、及びそれらの組み合わせ)を含むがこれらに限定されない、様々な断面形状を含み得る。
【0082】
一実施形態では、本明細書に記載される微細構造化表面は、洗浄後の微生物の存在の低減及び/又は微生物接触移動の低減を提供することができる。
【0083】
本明細書に記載の微細構造化表面は、典型的には、微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、又はφ6バクテリオファージなどの細菌)が微細構造化表面上に存在することを防止しない、又は言い換えれば、バイオフィルムを形成することを防止しない。国際公開第202133162号によって証明されるように、本明細書に記載の平滑な平坦面及び微細構造化表面の両方には、洗浄前には、ほぼ同じ量、すなわち、80コロニー形成単位を超える微生物(例えば、細菌)が存在していた。したがって、本明細書に記載される微細構造化表面は、無菌インプラント型医療用デバイスに有益であるとは期待されないであろう。
【0084】
しかしながら、以下の実施例によっても証明されるように、本明細書に記載される微細構造化表面は、洗浄がより容易であり、洗浄後に存在する微生物(例えば、細菌)は少量である。理論に束縛されることを意図するものではないが、走査型電子顕微鏡画像は、大きな連続したバイオフィルムが、典型的には平滑な表面上に形成されることを示唆している。しかしながら、山部及び谷部が、微生物(例えば、細菌)よりもはるかに大きい場合でも、微細構造化表面によって、バイオフィルムは分断される。いくつかの実施形態では、バイオフィルム(洗浄前)は、連続したバイオフィルムではなく、微細構造化表面上に不連続な凝集体及び細胞の小さなグループとして存在する。洗浄後、小さなパッチの状態のバイオフィルム凝集体が平滑な表面を覆う。しかしながら、微細構造化表面は、洗浄後、少量の細胞のグループ及び個々の細胞のみを有することが観察された。好ましい実施形態では、微細構造化表面が、洗浄後に、少なくとも2、3、4、5、6、7、又は8の微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、又はφ6バクテリオファージなどの細菌)のlog10減少をもたらした。いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、試験方法に従って調製された高度に汚染された表面について、洗浄後の微生物の回収コロニー形成単位の平均log10が、6、5、4、又は3未満であった。典型的な表面は、初期汚染が少ないことが多く、したがって、洗浄後の回収コロニー形成単位が更に少ないと予想される。これらの特性についての試験方法は、実施例において説明される。
【0085】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、同じポリマー(例えば、熱可塑性、熱硬化性、又は重合樹脂)材料の平滑な表面と比較して、水性又は(例えば、イソプロパノール)アルコール系洗浄溶液が玉形成する(beading up)のを防ぐことができる。洗浄溶液が玉形成する、又は言い換えれば、ディウェッティングする場合、消毒剤は、微生物を死滅させるのに十分な時間、微生物と接触しない可能性がある。しかしながら、洗浄溶液を微細構造化表面に適用した1分後、2分後、及び3分後に、微細構造化表面の少なくとも50、60、70、80、又は90%は、(実施例に記載の試験方法に従って)洗浄溶液を含み得ることが見出された。
【0086】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面が、微生物(例えば、ストレプトコッカスミュータンス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、又はφ6バクテリオファージなどの細菌)の接触移動の減少をもたらす。微生物の接触移動の減少は、同じ平滑な(例えば、非構造化)表面と比較して、少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、又は99%であり得る。この特性についての試験方法は、実施例において説明される。
【0087】
国際公開第2021/033151号に記載されるように、側壁角度が小さすぎる場合、及び/又は谷部の最大幅が小さすぎる場合、及び/又は微細構造化表面が、過剰な平坦な表面領域を含む場合、微細構造化表面は、(例えば、細菌及び汚れの)洗浄がより困難になることが見出された。
【0088】
微細構造化表面は、ナノ構造を含んでも含まなくてもよい。
【0089】
ナノ構造を含むより小さな構造体は、バイオフィルム形成を防止することができるが、小さな谷部及び/又は側壁角度が不十分な谷が多数存在すると、汚れの除去を含む洗浄性が妨げられる可能性がある。更に、より大きな微細構造体及び谷部を有する微細構造化表面は、典型的には、より速い速度で製造することができる。したがって、典型的な実施形態では、微細構造体の寸法はそれぞれ、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15ミクロンである、又は前述のように15ミクロンを超える。更に、いくつかの有利な実施形態では、少なくとも50、60、70、80、90、95、又は99%の微細構造体の寸法はいずれも、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ミクロン未満ではない。
【0090】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、典型的には、1ミクロン未満の幅を有するナノ構造を含めて、5、4、3、2、又は1ミクロン未満の幅を有する微細構造体を実質的に含まない。ナノ構造を更に含む微細構造化表面のいくつかの例は、先に引用された国際公開第2012/058605号に記載されている。ナノ構造は、典型的には、1ミクロンを超えない少なくとも1つ又は2つの寸法(例えば、幅及び高さ)を含み、典型的には、1ミクロン未満の1つ又は2つの寸法を含む。いくつかの実施形態では、ナノ構造の全ての寸法は、1ミクロンを超えないか、又は1ミクロン未満である。
【0091】
実質的に含まないとは、そのような微細構造体が、全く存在しないか、又は後に記載されるようにその存在が(例えば、洗浄性)特性を損なわないことを条件に、いくつかが存在し得ることを意味する。したがって、微細構造化表面又はその微細構造体は、本明細書に記載されるように、微細構造化表面が洗浄後の微生物の存在の低減及び/又は微生物接触移動の低減を提供するという条件で、ナノ構造を更に含んでもよい。更に、この実施形態では、より小さい微細構造体及び/又はナノ構造の存在は、バイオフィルムの形成を防止しないか、又は有意に低減しない。
【0092】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、ナノ構造を更に含んでもよい。ナノ構造を更に含む他の微細構造化表面が既知である。例えば、Zhangらの米国特許出願公開第2013/0216784号は、谷部によって離間された平坦面を含む超疎水性フィルムを記載している。谷部及び面は、ナノ構造によって覆われてもよい。超疎水性フィルムは、少なくとも140、145、又は145度の静的水接触角を有する。このようなナノ構造は、典型的には、少なくとも約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、又は6:1のアスペクト比を有する。図面に示すように、ナノ構造対微細構造体の比は、約20:1である。
【0093】
微細構造化表面がナノ構造をほとんど又は全く含まない他の実施形態では、ナノ構造対微細構造の比は、20:1、15:1、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1:1未満である。
【0094】
他の実施形態では、微細構造化表面は、Aronsonらの国際公開第2009/079275号に記載されるように、ランダムに分布した凹部を更に含んでもよい。ランダムに分布した凹部の存在は、そのような凹部を欠く同じ微細構造化表面と比較して、拡散を改善する。
【0095】
ナノ構造及び凹部の存在は、汚れ、特に1ミクロン未満の粒径を有する粘土を捕捉する可能性がある。しかしながら、微細構造化表面は、微細構造化表面がディスプレイの内部で利用される実施形態又は微細構造化表面が洗浄されない他の用途のために、ナノ構造及びランダムに分布した凹部を含んでもよい。
【0096】
微細構造体のファセットが、頂上と谷部とが鋭利である又は丸みを帯びているが、切頭状ではないように接合される場合、微細構造化表面は、平面状のベース層と平行である平坦な表面を含まないことを特徴とすることができる。しかしながら、頂上及び/又は谷部が切頂されている場合、微細構造化表面は、典型的には、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、又は1%未満の平坦な表面領域を有し、平坦な表面領域は平面状のベース層と実質的に平行である。一実施形態では、谷部は、平坦な表面を有してもよく、山部の側壁のうちの1つのみが、図2Aに示されるように角度付けされている。しかしながら、好ましい実施形態では、谷部(複数可)を画定している隣接する山部同士の両方の側壁は、前述のように、互いに向かって角度が付けられている。したがって、谷部の両側の側壁は、互いに平行ではない。
【0097】
国際公開第2021/033151号の図9は、不連続な谷部を有する比較例の微細構造化表面を示す。そのような表面はまた、蛇行経路を画定するように互いに対して配置された特徴部のグループを有するものとして説明されている。むしろ、谷部は壁により分割され、個別のセルの配列を形成しており、各セルは壁に囲まれている。セルのいくつかは約3ミクロンの長さであり、一方、他のセルは約11ミクロンの長さである。
【0098】
対照的に、本明細書に記載された微細構造化表面の谷部は、交差する側壁又は谷部に対する他の障害物を実質的に含まない。実質的に含まないとは、側壁又は他の障害物が、谷部内に存在しないか、又は後に記載されるようにその存在が洗浄性特性を損なわないことを条件に、いくつかが存在し得ることを意味する。谷部は、典型的には、少なくとも1つの方向に連続的である。これは、谷部を通る洗浄溶液の流れを円滑にすることができる。したがって、山部の配置は、典型的には、蛇行経路を画定しない。
【0099】
方法
微細構造化フィルム及び物品は、重合性樹脂のコーティング、鋳造及び硬化、射出成形、並びに/又は圧縮技術を含むがこれらに限定されない、様々な高精細方法を含む様々な方法によって形成することができる。例えば、(例えば、加工)表面の微細構造化は、(1)微細構造パターンを有するツールを使用して溶融熱可塑性樹脂を鋳造すること(すなわち、熱可塑性押出)、(2)微細構造パターンを有するツール上に流体をコーティングすること、その流体を凝固させること、及び得られたフィルムを取り外すこと、(3)熱可塑性フィルムをニップロールに通して、微細構造パターンを有するツールに押し付けて圧縮すること(すなわち、エンボス加工)、及び/又は(4)揮発性溶媒中のポリマーの溶液又は分散体を、微細構造パターンを有するツールに接触させ、例えば、蒸発によって溶媒を除去すること、のうちの少なくとも1つによって達成することができる。
【0100】
ツールは、当業者に知られている任意の適切なアディティブ法及び/又はサブトラクティブ法を使用して形成することができる。ツールは、ニッケル、ニッケルめっきが施された銅、又は黄銅などの金属製であってもよく、あるいは重合条件下で安定であり、かつ、マスターからの重合材料のきれいな除去を可能にする表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性材料であってもよい。ベースフィルムの表面のうちの1つ以上は、任意選択的に、プライマー処理されるか、又はそうしない場合は、ベース部への光学層の接着を促進するように処理されてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、ツールは、前述のように、切断ツールシステム1000を使用して調製される金属ツールである。いくつかの実施形態では、ツール表面は、図4A図4B及び図5A図5Cによって示されるように、修正線形プリズムのネガ型複製を含む。ツール表面のポジ及びネガ型複製は、ツール表面上への重合性樹脂の電気メッキ又は鋳造及び硬化などの様々な他の技術を使用して作製することができる。
【0102】
(例えば、加工)微細構造化表面を形成するための材料及び様々なプロセスに関する追加情報は、例えば、Halversonらの国際公開第2007/070310号及び米国特許出願公開第2007/0134784号、Hanschenらの米国特許出願公開第2003/0235677号、Grahamらの国際公開第2004/000569号、Ylitaloらの米国特許第6,386,699号、Johnstonらの米国特許出願公開第2002/0128578号及び米国特許第6,420,622号、同第6,867,342号、同第7,223,364号、並びにScholzらの米国特許第7,309,519号に見ることができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、物品の表面の少なくとも一部に組み込まれる。この実施形態では、微細構造化表面は、典型的には、物品の製造中に形成される。いくつかの実施形態では、これは、(例えば、熱可塑性、熱硬化性、又は重合性)樹脂の成形、(例えば、熱硬化性又は熱可塑性)シートの圧縮成形、又は微細構造化シートの熱成形によって達成される。
【0104】
一実施形態では、携帯電話のケース又はハウジングなどの物品又はその構成要素は、液体(例えば、熱可塑性、熱硬化性、又は重合性)樹脂を金型内に鋳造することによって調製することができ、モールド面は、微細構造化表面のネガ複製を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、物品又はその構成要素は、国際公開第2012058605号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、液体エポキシ樹脂組成物を型に鋳造するか、又はエポキシ樹脂シートを圧縮成形することによって形成することができる。
【0106】
微細構造化フィルム又はシートを形成する方法
いくつかの実施形態では、山部構造及び(例えば、平坦な)ベース部材は、異なる材料を含む。例えば、Luらの特許米国特許第5,175,030号、及びLuの米国特許第5,183,597号に記載されるように、微細構造を有する物品(例えば、輝度向上フィルム)は、(a)重合性組成物を調製する工程と、(b)マスターネガ微細構造モールド面上に、マスターの空洞を充填するのに、かろうじて十分な量で重合性組成物を堆積させる工程と、(c)重合性組成物のビーズを(モノリシック、又は多層(例えばPETフィルム)などの)予め形成されたベース部とマスターとの間で(そのうちの少なくとも1つが可撓性である)移動させることによって空洞を充填する工程と、(d)組成物を硬化する工程と、を含む、方法によって調製することができる。
【0107】
このような鋳造及び硬化方法を利用して、微細構造化フィルムを形成することができる。このような方法を利用して、熱成形可能な微細構造化ベース部材(例えば、シート又はプレート)を形成することもできる。
【0108】
一実施形態では、微細構造化表面を含むベース部材(例えば、シート又はプレート)を提供する工程を含む、物品の製造方法が記載される。ベース部材は、熱可塑性又は熱硬化性材料を含む。山部構造は、山部構造がベース部材よりも高い溶融温度を有するように、ベース部材とは異なる材料を含む。山部構造は、典型的には、硬化した重合性樹脂を含む。この方法は、微細構造化ベース部材(例えば、フィルム、シート、又はプレート)を、山部構造の溶融温度未満の温度で物品に熱成形することを含む。いくつかの実施形態では、真空形成が、二重真空熱成形(DVT)としても知られる熱成形と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、熱成形物品は、酸素マスク又は(例えば、内装の)自動車トリム部品などの三次元シェルであり得る。
【0109】
有用なベース部材材料としては、例えばスチレン-アクリロニトリル、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸に基づくコポリマー又はブレンド、ポリシクロオレフィン、ポリイミド、シリコーン及びフッ素化フィルム、並びにガラスが挙げられる。任意選択で、ベース材料は、これらの材料の混合物又は組み合わせを含有することができる。一実施形態では、ベース部は多層であってもよく、又は連続相中に懸濁若しくは分散された分散成分を含有してもよい。有用なPETフィルムの例としては、DuPont Film(Wilmington,Del)から入手可能なフォトグレードポリエチレンテレフタレート及びMELINEX(商標)PETが挙げられる。有用な熱成形可能材料の例は、VIVAK PETGとして市販されているポリエチレンテレフタレート(グリコールを含むポリエステル)である。このような材料は、5000~10,000psi(ASTM D638)の範囲の引張強度及び5,000~15,000の曲げ強度(ASTM D-790)を有することを特徴とする。このような材料は、178°F(ASTM D-3418)のガラス転移温度を有する。
【0110】
微細構造化フィルムの製造に好適な様々な重合性樹脂が記載される。典型的な実施形態では、重合性樹脂は、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基(例えば、Photomer 6210)及び(例えば、マルチ(メタ)アクリレート)架橋剤(例えば、HDDA)を含む少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを含む。代表的な重合性樹脂の1つを、PHOTOMER 6210脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(75部)、SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25部)、及びLUCIRIN TPO光開始剤(0.5%)から調製した。
【0111】
いくつかの実施形態では、(微細)構造化表面層は、単独で又は
平面状のベース層と組み合わせて、典型的には85、90、又は95%より大きい高い可視光透過率を有する。いくつかの実施形態では、(微細)構造化表面層は、単独で又は平面状のベース層と組み合わせて、10、5、又は1未満の透明度を有する。いくつかの実施形態では、(微細)構造化表面層は、単独で又は平面状のベース層と組み合わせて、20度で10又は5未満の光沢度を有する。いくつかの実施形態では、(微細)構造化表面層は、単独で又は平面状のベース層と組み合わせて、85度で10又は5未満の光沢度を有する。他の実施形態では、(微細)構造化表面層は、単独で又は平面状のベース層と組み合わせて、不透明であってもよい。光透過性及び不透明の両方の実施形態は、着色されてもよく、及び/又は印刷されたグラフィックを更に含んでもよい。
【0112】
代替的実施形態では、微細構造体及び(例えば平面状の)ベース部材の材料は、本明細書に記載の改善された微生物除去及び/又は減少された接触移動に加えて、特定の光学特性を提供するように選択され得る。
【0113】
例えば、一実施形態では、(例えば平面状の)ベース部材は、少なくとも複数の交互の第1及び第2の光学層を含む多層光学フィルムであって、第1及び第2の光学層が、0度、30度、45度、60度、又は75度の入射光角度のうちの少なくとも1つで、100ナノメートル~280ナノメートルの波長範囲における少なくとも30ナノメートル波長反射帯域幅にわたって入射紫外光の少なくとも30パーセントを合計で反射する、多層光学フィルムを含む。このような多層光学フィルムは、国際公開第2020/070589号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれ、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ、及びUV-C光コンセントレータとして有用である。いくつかの実施形態では、少なくとも複数の交互の第1及び第2の光学層を通る入射可視光透過率は、少なくとも400ナノメートル~750ナノメートルの波長範囲内の少なくとも30ナノメートルの波長反射帯域幅にわたって30パーセントを超える。第1の光学層は、少なくとも1つのポリエチレンコポリマーを含み得る。第2の光学層は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンを含むコポリマー、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンを含むコポリマー、又はペルフルオロアルコキシアルカンのうちの少なくとも1つを含み得る。第1の光学層は、チタニア、ジルコニア、酸窒化ジルコニウム、ハフニア、又はアルミナを含み得る。第2の光学層は、シリカ、フッ化アルミニウム、又はフッ化マグネシウムのうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、微細構造体は、多層光学フィルムと共に、可視光透過性UV-C(例えば、反射)保護層、又は言い換えればUV-Cシールドを提供する。UVC光を使用して表面を消毒することができるが、これらの波長は、有機材料を損傷し、望ましくない変色を引き起こす可能性がある。本明細書に記載の微細構造化表面をUV-Cシールドと組み合わせることにより、表面は、UVC光及び従来の洗浄法(例えば、拭き取り、こすり取り、及び/又は抗菌溶液の適用)の両方を用いて清浄にされ、微細構造化表面を消毒することができる。
【0114】
図3に示されているように、連続するランド層360は、チャネル又は谷部の底部と(例えば平面状の)ベース部材310の上面331との間に存在することができる。いくつかの実施形態では、微細構造化表面が重合性樹脂組成物を鋳造及び硬化させることから調製される場合、ランド層の厚さは、典型的には、少なくとも0.5、1、2、3、4、又は5ミクロンで、最大50ミクロンまでの範囲である。いくつかの実施形態では、ランド層の厚さは、45、40、35、30、25、20、15、又は10ミクロン以下である。硬化した微細構造化材料の伸び及びランド層の厚さに応じて、ランド層は、微細構造化フィルムが延伸されたときに、特に引張及び伸び試験中に破断し、したがって不連続になる場合がある。
【0115】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面(例えば、少なくともその山部構造)は、少なくとも25℃のガラス転移温度(示差走査熱量計で測定される)を有する有機ポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、有機ポリマー材料は、少なくとも30、35、40、45、50、55、又は60℃のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、有機ポリマー材料は、少なくとも100、95、90、85、80、又は75℃のガラス転移温度を有する。他の実施形態では、微細構造化表面(例えば、少なくともその山部構造)は、示差走査熱量計で測定された25℃未満又は10℃未満のガラス転移温度を有する有機ポリマー材料を含む。少なくともいくつかの実施形態では、微細構造体は、エラストマーであってもよい。エラストマーは、他の材料と比較して、一般に、好適に低いヤング率及び高い降伏歪みを有する粘弾性(又は弾性)の特性を有するポリマーとして理解され得る。この用語は、多くの場合、ゴムという用語と同じ意味で使用されるが、架橋ポリマーを指す場合には、後者が好ましい。
【0116】
有機ポリマー材料はまた、好適な有機又は無機充填剤で充填されてもよく、特定の用途において、充填剤は放射線不透過性である。
【0117】
一実施形態では、微細構造体又は微細構造化表面は、硬化可能な熱硬化性材料で作製され得る。溶融及び固化が熱的に可逆的である熱可塑性材料とは異なり、熱硬化性プラスチックは、加熱後に硬化するため、最初は熱可塑性だが、硬化後に再溶融できなくなるか、又は硬化後に溶融温度が著しく高くなる。
【0118】
いくつかの実施形態では、熱硬化性材料は、重量基準で大半がシリコーンポリマーである。少なくともいくつかの実施形態では、シリコーンポリマーは、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)などのポリジアルコキシシロキサンであって、微細構造体は、重量基準で大半がPDMSである材料から作製される。より具体的には、微細構造体は、全て又は実質的に全てがPDMSであってもよい。例えば、微細構造体はそれぞれ、95重量%を上回るPDMSであってもよい。ある特定の実施形態では、PDMSは、ビニル官能性PDMSなどの不飽和官能性PDMSとのシリコーン水素化物(Si-H)官能性PDMSのヒドロシリル化によって形成された、硬化した熱硬化性組成物である。Si-H及び不飽和基は、末端、ペンダント、又はそれらの両方であってもよい。他の実施形態において、PDMSは、アルコキシシラン末端PDMSなどの湿気硬化型であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、PDMS以外の他のシリコーンポリマーが有用であってもよく、例えば、ケイ素原子のうちのいくつかは、アリール、例えば、フェニル、アルキル、例えば、エチル、プロピル、ブチル、又はオクチル、フルオロアルキル、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル、又はアリールアルキル、例えば、2-フェニルプロピルであってもよい他の基を有するシリコーンがある。シリコーンポリマーはまた、ビニル、水素化ケイ素(Si-H)、シラノール(Si-OH)、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、イソシアネート、無水物、メルカプト、及びクロロアルキルなどの反応基を含有し得る。これらのシリコーンは、熱可塑性であってもよく、又は例えば、縮合硬化、ビニル及びSi-H基の付加硬化、又はペンダントアクリレート基のフリーラジカル硬化によって硬化されてもよい。それらはまた、過酸化物の使用で架橋されてもよい。そのような硬化は、熱又は化学線の追加によって達成され得る。
【0120】
微細構造体又は微細構造化表面に有用な他のポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーであってもよく、ポリウレタン、メタロセンポリオレフィンを含むポリオレフィン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンメタクリレートコポリマー;ポリエステル(エラストマーポリエステル(例えば、Hytrel)など)、生分解性ポリエステル(ポリ乳酸、ポリ乳酸/グリコール酸、コハク酸とジオールとのコポリマー、及び同等物など)、フルオロエラストマーを含むフルオロポリマー、アクリル(ポリアクリレート及びポリメタクリレート)が含まれる。
【0121】
ポリウレタンは、線状であってもよく、熱可塑性又は熱硬化性であってもよい。ポリウレタンは、ポリエステルポリオール若しくはポリエーテルポリオールと又はそれらの組み合わせと、組み合わせた芳香族又は脂肪族イソシアネートから形成されてもよい。
【0122】
代表的なフルオロポリマーには、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF);ポリフッ化ビニリデン(PVDF);エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE);テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデン(THV)のコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びフッ化ビニリデン(VDF)由来のサブユニットを含むポリエチレンコポリマー;並びにフッ素化エチレンプロピレン(FEP)コポリマーが含まれる。フルオロポリマーは、Dyneon LLC(Oakdale,MN)、Daikin Industries,Ltd.(Osaka,Japan);Asahi Glass Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)及び E.I.du Pont de Nemours and Co.(Willmington,DE)から市販されている。
【0123】
いくつかの実施形態では、微細構造化フィルム又は微細構造化表面層は、先に引用された国際公開第2020/070589号に記載されているようなフルオロポリマーを含む多層フィルムを含む。このような多層フィルムは、例えば、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ、及びUV-C光集光器として有用である。他の実施形態では、微細構造化フィルム又は微細構造化表面層は、UV-Cシールド、UV-C光コリメータ及びUV-C光集光器として有用ではないモノリシック又は多層フルオロポリマー(例えば保護)層を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、微細構造体又は微細構造化表面は、微細構造化表面がより親水性であるように改質され得る。微細構造化表面は、一般に、改質された微細構造化表面と同じ材料の平坦な有機ポリマーフィルム表面が、脱イオン水と45度以下の前進接触角又は後退接触角を呈するように、改質され得る。そのような改質がない場合、微細構造化表面と同じ材料の平坦な有機ポリマーフィルム表面は、典型的には、脱イオン水と45、50、55、又は60度を超える前進接触角又は後退接触角を呈する。
【0125】
親水性を有する微細構造化表面を実現するために、任意の好適な既知の方法を利用してよい。プラズマ処理、真空蒸着、親水性モノマーの重合、フィルム表面への親水性部分のグラフト化、コロナ又は火炎処理などの表面処理を使用してもよい。特定の実施形態では、親水性表面処理は、双性イオン性シランを含み、また特定の実施形態では、親水性表面処理は、非双性イオン性シランを含む。非双性イオン性シランとしては、例えば、非双性イオン性アニオン性シランが挙げられる。
【0126】
他の実施形態では、親水性表面処理は、少なくとも1つのケイ酸塩を更に含み、例えば、これらに限定されないが、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、テトラエチルオルトシリケート、ポリ(ジエトキシシロキサン)、又はこれらの組み合わせを含む。1つ以上のケイ酸塩は、微細構造化表面への適用のために、親水性シラン化合物を含有する溶液中に混合されてもよい。
【0127】
任意選択的に、界面活性剤又は他の好適な薬剤を、微細構造化表面を形成するために利用される有機ポリマー組成物に添加してもよい。例えば、親水性アクリレート及び開始剤を重合性組成物に添加し、熱又は化学線によって重合させることができる。あるいは、微細構造化表面は、親水性ポリマーから形成することができ、親水性ポリマーとしては、エチレン酸化物のホモ及びコポリマー;ビニルピロリドン、カルボン酸、スルホン酸、又はアクリル酸などのホスホン酸官能性アクリレートなどのビニル不飽和モノマーを組み込む親水性ポリマー、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル及びその加水分解誘導体(例えばポリビニルアルコール)、アクリルアミド、ポリエトキシル化アクリレートなどのヒドロキシ官能性アクリレート;親水性改質セルロース、並びにデンプン及び改質デンプン、デキストランなどの多糖類などが挙げられる。
【0128】
このような親水性表面は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0045284号に記載されるように、流体制御フィルムに使用するために記載されている。
【0129】
任意選択の添加剤及びコーティング
微細構造化表面の有機ポリマー材料は、抗菌剤(殺菌剤及び抗生物質を含む)、染料、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、熱及び光安定剤(紫外線(UV)吸収剤を含む)、充填剤、顔料などを含む他の添加剤を含有し得る。
【0130】
好適な抗菌剤を、ポリマーに組み込むか、又はポリマー上に堆積することができる。好適な好ましい抗菌剤としては、Scholzらの米国特許出願公開第2005/0089539号及び同第2006/0051384号、及びScholzの米国特許出願公開第2006/0052452号及び同第2006/0051385号に記載されているものが挙げられる。本発明の微細構造体はまた、Aliらの国際出願PCT/US2011/37966号に開示されているものなどの抗菌剤コーティングでコーティングされ得る。
【0131】
典型的な実施形態では、微細構造化表面は、(例えば、フッ素化(例えば、フルオロポリマー)又はPDMS)低表面エネルギー材料からは調製されず、低表面エネルギーコーティングを含まず、平坦な表面上の材料又はコーティングは、90、95、100、105、又は110度を超える水との後退接触角を有する。この実施形態では、材料の低表面エネルギーは、洗浄性に寄与しない。むしろ、洗浄性の改善は、微細構造化表面の特徴に起因する。この実施形態では、微細構造化表面は、ある材料から調製され、その材料の平坦な表面が、典型的には、90、85、又は80度未満の水との後退接触角を有するように、調製される。
【0132】
他の実施形態では、低表面エネルギーコーティングを微細構造体に適用してもよい。使用され得る例示的な低表面エネルギーコーティング材料としては、いくつか例を挙げると、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)、又はオルガノシラン(例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、アクリルシラン、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)及びフッ素含有オルガノシラン)などの材料を挙げることができる。当該技術分野で既知の特定のコーティングの例は、例えば、米国特許出願公開第2008/0090010号、及び同一所有者の公開である、米国特許公開第2007/0298216号に見出すことができる。コーティングが微細構造体に適用される実施形態の場合、スパッタリング、蒸着、スピンコーティング、ディップコーティング、ロール・ツー・ロールコーティング、又は他の任意の数の適切な方法など、任意の適切なコーティング方法によって適用され得る。
【0133】
微細構造体の忠実度を維持するために、微細構造体を形成するために使用される組成物中に表面エネルギー改質化合物を含むことも可能であり、多くの場合で好ましい。いくつかの実施形態では、ブルーム添加剤は、ベース部組成物の結晶化を遅延又は防止し得る。好適なブルーム添加剤は、例えば、Scholzらの国際公開第2009/152345号、及びKlunらの米国特許第7,879,746号に見出すことができる。
【0134】
微細構造化表面の洗浄
一実施形態では、洗浄時の微生物(例えば、細菌)除去が向上した表面を有する物品を提供する方法が記載されている。微細構造化表面は、例えば、微細構造化表面を織布又は不織布材料で拭き取るか、又は微細構造化表面をブラシでこすることによって、機械的に洗浄することができる。いくつかの実施形態では、織布材料又は不織布材料の繊維は、谷部の最大幅よりも小さい繊維径を有する。いくつかの実施形態では、ブラシの毛材は、谷部の最大幅よりも小さい直径を有する。あるいは、微細構造化表面は、微細構造化表面に水又は抗菌溶液を適用することによって洗浄されてもよい。更に、微細構造化表面はまた、(例えば、紫外線)放射型の消毒によって洗浄され得る。そのような洗浄技術の組み合わせを使用することができる。
【0135】
抗菌溶液は、殺菌成分を含有してもよい。様々な殺菌成分が知られており、例えば、クロルヘキシジン及びその様々な塩(ジグルコネート、ジアセテート、ジメトサルフェート、及びジラクテート塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)、ポリヘキサメチレンビグアニドなどの高分子第四級アンモニウム化合物などのビグアニド及びビスビグアニド;銀及び様々な銀錯体;小分子第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム(benzalkoium)及びアルキル置換誘導体など);ジ-長鎖アルキル(C8~C18)第四級アンモニウム化合物;ハロゲン化セチルピリジニウム及びその誘導体;塩化ベンゼトニウム及びそのアルキル置換誘導体;オクテニジン、及びこれらの適合性のある組み合わせなどが挙げられる。他の実施形態では、抗菌成分は、過酸化水素、過酢酸、漂白剤などのカチオン性抗菌剤又は酸化剤であってもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗菌成分は、小分子第四級アンモニウム化合物である。好ましい第四級アンモニウム殺菌剤の例としては、C8~C18、より好ましくはC12~C16のアルキル鎖長、及び最も好ましくは鎖長の混合を有するベンザルコニウムハロゲン化物が挙げられる。例えば、典型的な塩化ベンザルコニウム試料は、40%のC12アルキル鎖、50%のC14アルキル鎖、及び10%のC16アルキル鎖から構成され得る。これらは、Lonza社(Barquat MB-50)を含む多数の供給源から市販されており、ベンザルコニウムハロゲン化物はフェニル環上でアルキル基で置換されている。市販の例は、Lonza社から入手可能なBarquat 4250であり、アルキル基がC8~C18の鎖長を有するジメチルジアルキルアンモニウムハライドである。鎖長の混合(ジオクチル、ジラウリル、及びジオクタデシルの混合など)が特に有用であり得る。例示的な化合物は、Lonza社製のBardac2050、205M、及び2250;Cepacol ChlorideとしてMerrell labsから入手可能な塩化セチルピリジニウムなどのセチルピリジニウムハロゲン化物;Rohm and Haas社から入手可能なHyamine1622及びHyamine10Xなどのベンゼトニウムハロゲン化物及びアルキル置換ベンゼトニウムハロゲン化物;オクテニジンなどが市販されている。
【0137】
一実施形態では、(例えば、消毒)抗菌溶液は、エンベロープウイルス(例えば、ヘルペスウイルス、インフルエンザ、B型肝炎)、非エンベロープウイルス(例えば、パピローマウイルス、ノロウイルス、ライノウイルス、ロトウイルス)、DNAウイルス(例えば、ポックスウイルス)、RNAウイルス(例えば、コロナウイルス、ノロウイルス)、レトロウイルス(例えば、HIV-1)、MRSA、VRE、KPC、アシネトバクター、及び他の病原体を3分で死滅させる。水性消毒剤溶液には、ベンジル-C12-16-アルキルジメチルアンモニウムクロリド(8.9重量%)、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド(6.67重量%)、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド(2.67重量%)、界面活性剤(5~10%)、エチルアルコール(1~3重量%)、及びpH1~3に調整されたキレート剤(7~10重量%)を含有する消毒剤濃縮物の1:256の希釈液が含有され得る。
【0138】
物品
本発明の目的は、洗浄したときに微生物(例えば、細菌)除去が向上する表面を有する物品を提供することであり、物品は、典型的には、鼻腔栄養チューブ、創傷接触層、血流カテーテル、ステント、ペースメーカーシェル、心臓弁、整形外科用インプラント(股関節、膝、肩など)、歯周インプラント、義歯、歯冠、コンタクトレンズ、眼内レンズ、軟組織インプラント(乳房インプラント、陰茎インプラント、顔面及び手インプラントなど)、外科用器具、縫合糸(分解性縫合糸を含む)、蝸牛インプラント、鼓室形成チューブ、シャント(水痘症用シャントを含む)、術後廃液チューブ及び廃液デバイス、尿道カテーテル、気管内チューブ、心臓弁、創傷包帯、他のインプラント型デバイス、並びに他の留置デバイスなどの(例えば、殺菌された)医療用物品ではない。いくつかの実施形態では、物品はまた、歯科矯正装置でも歯科矯正ブラケットでもない。
【0139】
記載した医療用物品は、単回使用物品として特徴付けられることができ、すなわち、物品は一度使用された後、廃棄される。上記の物品はまた、単一個人(例えば、患者)用物品として特徴付けられることができる。したがって、そのような物品は、典型的には、洗浄(滅菌ではなく)されず、他の患者に再利用されない。
【0140】
しかしながら、他のタイプの医療用物品は、物品の通常の使用中に洗浄され、したがって、洗浄された際の微生物(例えば、細菌)の除去が向上する表面を有することによって利益を得る。1つの代表的な物品は、歯科用トレイである。「歯科用トレイ」は、1つ以上の歯、歯肉、又は歯科用インプラントを少なくとも部分的に覆うように成形された物品を含んでもよい。いくつかの実施形態では、歯科用トレイは、アーチ形状を有する。本明細書で使用される場合、「アーチ」という用語は、半円形状を指す。例えば、歯科用トレイは、歯科用アライナ(例えば、歯列矯正アライナ又は保持具)、ナイトガード、マウスガード、治療トレイ、完全義歯又は部分義歯、歯キャップなどであってもよい。歯科用アライナは、美容上の外観及び/又は歯の機能を改善するために、整列していない歯を再配置することを可能にし得る。ナイトガードは、歯10のきしりを防止するためにユーザによって装着され得る。マウスガードは、例えば、熱でユーザの口に合わせて形成されてもされなくてもよいスポーツ用マウスガードであってもよい。治療トレイは、口腔表面への薬剤の投与、例えば、歯のホワイトニング、再石灰化、歯肉疾患の治療などを可能にし得る。いくつかの実施形態では、歯科用トレイは、色(例えば、ホワイトニング)を提供することによって審美的魅力を提供することができる。別の実施形態では、医療用物品は、歯科用スプリント、口蓋拡張器、睡眠時無呼吸口腔装具、又は侵害受容性三叉神経抑制張力抑制システム(NTI-tss)であってもよい。
【0141】
他の実施形態では、物品は、非埋め込み型医療診断デバイス又はその構成要素であってもよい。本明細書で使用される場合、医療診断デバイスとは、人間又は他の動物における、疾患若しくはその他の症状の診断、又は疾患の治療、緩和、処置、若しくは予防に使用するように意図された機器、装置、器具、機械(構成要素、部品、付属品を含む)を指す。医療診断デバイスは、一般に、人間又は他の動物の体内又は体表での化学作用によってその本来の目的を達成するものではなく、また、その本来の目的を達成するために代謝されることに依存することはない。
【0142】
いくつかの実施形態では、医療診断デバイスは、光の特性を利用する光センサ、又は聴覚を含む音の特性を利用する音響センサなどのセンサを備える。音響構成要素を備える1つの例示的な医療診断装置は、聴診器である。ダイアフラムは、通常の使用中に複数の患者と接触するため、ダイアフラムの少なくとも外側(例えば、皮膚接触)面が、本明細書に記載されるように微細構造化表面を含むことが好ましい。可撓性又は剛性のチューブ及びイヤーチップなどの聴診器の他の構成要素もまた、任意選択で、本明細書に記載の微細構造化表面を含み得る。音響構成要素を含む別の例示的な医療診断デバイスは、超音波又はプローブなどその構成要素である。いくつかの実施形態では、プローブキャップの内面及び/又は外面は、本明細書に記載されるように、微細構造化表面を含んでもよい。
【0143】
本明細書に記載されるような微細構造化表面を有することによって利益を得るであろう他の(例えば、非インプラント型)医療診断物品には、例えば、耳鏡(耳の中を見るのに使用される)、検眼鏡(患者の目の中を見るのに使用される)、食道聴診器、内視鏡、結腸鏡等を含む種々の再使用可能な医療診断スコープ、パルスオキシメータ(患者の血液の酸素飽和度及び皮膚の血液量の変化を監視する)、(例えば、デジタル指)血圧計及び(例えば、再使用可能な又は使い捨ての)血圧計カフ、電子体温計を含む温度プローブ(例えば、額、口、脇の下、直腸、若しくは耳など、測定する身体の特定の部位にセットされる)、水分又は汗を監視するセンサ、並びに磁気共鳴画像(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、コンピュータ軸断層撮影(CAT)スキャン、及びX線診断用物品の表面が含まれる。
【0144】
典型的には非滅菌であり、通常の使用中に洗浄されるいくつかの医療用物品は、参照により本明細書に組み込まれる特許出願第PCT/IB2022/051004号(代理人整理番号82415WO008)及び国際公開第2021/236429号(代理人整理番号83075WO006)に更に記載されている。本明細書に記載の物品及び表面は、微細構造化表面が周囲(例えば、屋内又は屋外)環境に曝露され、(例えば、複数の)人及び/又は動物、並びに他の汚染物質(例えば、汚れ)に触れるか、又はさもなければ接触しやすいものを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、物品の微細構造化表面は、物品の通常の使用中に(例えば、複数の)人々及び/又は動物と直接(例えば、皮膚)接触する。他の実施形態では、微細構造化表面は、直接(例えば、皮膚)接触がない場合、(例えば、複数の)人/又は動物に近接し得る。しかしながら、微細構造化表面は近接するので、そのような物品表面は、微生物(例えば、細菌)で容易に汚染される可能性があり、したがって、微生物が他に広がるのを防ぐために洗浄される。
【0146】
通常の使用中に洗浄されるであろう、及び/又は(例えば、除去可能な)保護フィルムと共に使用するのに適している、若しくは微細構造化表面を物品の表面に統合している代表的な物品には、以下の様々な内装又は外装の表面又は構成要素が含まれ、
a)乗り物(例えば、自動車、バス、電車、飛行機、ボート、救急車、船)の表面又は構成要素、及び自動車、スクーター、自転車などの電動及び非電動の共有される乗り物(ヘッドレスト、ダッシュボード、ドアパネル、(例えば、航空機の)窓シャッター、ギアシフタ、シートベルトバックル、装置及びボタンパネル、(例えば、プラスチックの)シートバックトレイ及びアームレスト、手すり、客室壁板、荷物室、ステアリングホイール、ハンドルバー;
b)電子デバイス(例えば、電話、ラップトップ、タブレット、又はコンピュータ)のハウジング及びケース、キーボード及びマウス(マウスパッドを含む)、タッチスクリーン、プロジェクタ、プリンタ、リモートコントロールデバイス、ロック、充電器(コード及びドッキングステーションを含む)、フォブ、ビデオ及びアーケードゲーム、スロットマシン、自動テラーマシン;(例えば、手持ち式)スキャナ、キーカード、クレジットカードリーダ、キーパッド、スタイリスト、レジ、バーコードスキャナ、支払いキオスクなどのPOS電子機器;
c)包装フィルム(例えば、食品又は医療製品用)、及びラベル、封筒、箱、トートバッグ、及び気泡シートを含むポリマー製輸送用製品;
d)ギャレー、カート、カッティングボード、ランチボックス、サーモス、電化製品(電子レンジ、ストーブ、オーブン、ブレンダー、トースター、コーヒーメーカー、棚や引き出しを含む冷蔵庫など)、飲料ディスペンサ、グリル、器具(例えば、特にそのハンドル)、メニュー、調味料ボトル、塩及び胡椒シェーカ、テーブルトップ及び椅子(特にレストラン、寮、老人ホーム、及び刑務所での公共の食事用)、ゴミ箱及びリサイクル可能容器を含む、食品の調理及びダイニングの表面、容器(プレート、ボウル、カブ、水筒を含む)、並びにフィルム;
e)医療、歯科、若しくは実験室施設、又は医療、歯科、若しくは実験室用機器の(例えば、非無菌の)表面(例えば、除細動器、人工呼吸器、及びCPAP(特にそのマスク)、フェイスシールド、松葉杖、車椅子、ベッド手すり、搾乳ポンプ装置、IVポール及びバッグ、(例えば、歯科材料用)硬化ライト、検査台、(例えば、喘息)吸入器、マッサージデバイスの表面;
f)家具の表面又は構成要素(例えば、デスク、テーブル、椅子、シート、及びアームレスト);
g)家具、建物のドア、ターンスタイルゲート、電化製品、乗り物、ショッピングカート及びバスケット、運動器具、(例えば調理用)器具、ツール、ハンドルバー、窓ブラインドのレバー、マイクロフォン、荷物などを含む、物品のハンドル(例えば、ノブ、取っ手、ロックを含むレバー);
h)建物の表面(エスカレータ及びエレベータを含む)、例えば、ドア、手すり、壁、床、カウンタートップ、デスクトップ、キャビネット、ロッカー、窓(例えば、枠)、呼び鈴、電気変調器(例:電灯のスイッチ、調光器、及びそれらのプレートを含む差し込み口)など;
i)化粧室の表面及び構成要素(例えば、シンク、トイレ表面(例えば、レバー)、排水キャップ、シャワー壁、浴槽、洗面化粧台、カウンタートップ);
j)スイミングプール又は屋根材の表面又はライナー;
k)歯ブラシ、眼鏡フレーム、靴、衣類、ヘルメット、ヘッドバンド、ハードハット、ヘッドフォン、履物(例えば、靴及びブーツ)、ハンドバッグ、バックパックを含む個人的物品;
l)おもちゃ、おしゃぶり、ボトル、歯固め、チャイルドシート、ベビーベッド、おむつ交換台、遊具などの子供用物品;
m)掃除用品(掃除機、モップ、スクラブブラシ、ダスター、便器クリーナー、プランジャー、ほうきなど);
n)運動及びスポーツ用の保護用品(例えば、サッカー、バスケットボール、サッカー、ゴルフなどの様々なスポーツ用のヘルメット、ガード、ボール);
o)エクササイズ、スパ、及びサロン(例えば、ヘアスタイリング及びネイル)の設備(例えば、ウェイト、ヨガマット);
p)筆記具(例えば、鉛筆、ペン、マーカー)、書き込み可能な表面(フィルム及びホワイトボードを含む)、消しゴム、ファイルフォルダ、本及びノートブックカバー、スキャナ及びコピー機を含むオフィス及び学校の用品及び設備;
q)コンベヤベルト、(例えば、組立ラインの)機械操作のための制御パネルを含む、製造表面及び設備。
【0147】
微細構造化表面は、軍用住宅、刑務所、寮、老人ホーム、アパート、ホテルなどの集合生活施設;オフィス、学校、アリーナ、カジノ、ボーリング場、ゴルフコース、アーケード、ジム、サロン、スパ、ショッピングセンター、空港、駅などの公共の場所;及び公共交通機関に特に好都合である。
【0148】
いくつかの実施形態では、乗り物又は建物の表面などに適用するためのフィルムは、建築用、装飾用、又はグラフィック用のフィルムとして特徴付けられ得る。グラフィックフィルムは、典型的には、パターン、画像、又は他の視覚的なインダイシア(indicia)を含む。グラフィックフィルムは、印刷されたフィルムであってもよく、又はグラフィックは、印刷以外の手段によって作成されていてもよい。例えば、グラフィックフィルムは、パターン化された穿孔状態の穿孔された反射フィルムであってもよい。
【0149】
グラフィックフィルムは、本明細書に記載される様々な方法によって調製される。いくつかの実施形態では、グラフィックフィルムは、(例えば、市販の)グラフィックフィルムの表面をエンボス加工することによって調製される。例示的な(例えば、建築用)グラフィックフィルム(本明細書に記載される微細構造化表面を欠く)は、3M Company,St.Paul,MNによる商品名「3M(商標)DI-NOC(商標)Architectural Finishes」で入手可能である。このようなフィルムは、前述したような有機ポリマー層を含む。いくつかの実施形態では、有機ポリマー層は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、又はポリエステルを含む。有機ポリマー層は、例えば、木材、皮革、金属、コンクリート、セラミックの外観、並びに様々な(例えば、抽象的な)デザインを有するデザインパターンを更に含む。表面仕上げは、典型的には艶消し又は光沢がある。いくつかの例において、フィルムは、本明細書に記載される微細構造と組み合わせて、前述のような(例えば、可視)マクロ構造を有してもよい。
【0150】
再び図2図4及び図6を参照すると、本明細書に記載の物品は、典型的には、ベース部材(210、310、410、610)上に配置された(例えば、加工)微細構造化表面(200、300、400、600)を含む。物品がフィルム(例えば、シート)である場合、ベース部材は、平坦(例えば、基準面126に平行)である。ベース部材の厚さは、典型的には、少なくとも10、15、20又は25ミクロン(1ミル)、かつ典型的には500ミクロン(20ミル)以下の厚さである。いくつかの実施形態では、ベース部材の厚さは、400、300、200、又は100ミクロン以下である。(例えば、フィルム)ベース部材の幅は、少なくとも30インチ(122cm)であり、好ましくは少なくとも48インチ(76cm)であり得る。(例えば、フィルム)ベース部材は、その長さが最大約50ヤード(45.5m)~100ヤード(91m)で連続的であってもよく、これにより、微細構造化フィルムは、便利に取り扱われるロール商品の状態で提供される。しかしながら、代替的に、(例えば、フィルム)ベース部材は、ロール商品ではなく個々のシート又はストリップ(例えば、テープ)であってもよい。
【0151】
熱成形可能な微細構造化ベース部材は、典型的には、少なくとも50、100、200、300、400、又は500ミクロンの厚さを有する。熱成形可能な微細構造化ベース部材は、最大3、4、又は5mm以上の厚さを有し得る。
【0152】
物品が三次元物体である場合、シートバックトレイの場合などでは、ベース部材は平坦であってもよい。他の実施形態では、三次元ベース部材は、玩具の場合などでは、湾曲面又は複雑なトポグラフィを有する表面を有する非平坦であってもよい。
【0153】
ベース部材は、金属、合金、有機ポリマー材料、又は前述のうちの少なくとも1つを含む組み合わせなどの様々な材料から形成することができる。具体的には、ガラス、セラミック、金属又はポリマー材料、並びにセラミックコーティングされたポリマー、セラミックコーティングされた金属、ポリマーコーティングされた金属、金属コーティングされたポリマーなどの他の好適な代替物及びそれらの組み合わせが適切であり得る。ベース部材は、いくつかの実装形態では、個別の細孔及び/又は連通した細孔を含むことができる。ベース部材の厚さは、用途に応じて様々に異なり得る。
【0154】
ベース部材の有機ポリマー材料は、微細構造化表面について前述したのと同じ有機ポリマー材料(例えば、熱可塑性、熱硬化性)であり得る。更に、繊維強化ポリマー及び/又は粒子強化ポリマーも使用することができる。
【0155】
平坦又は非平坦なベース部材用の好適な非生分解性ポリマーの非限定的な例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリイソブチレンコポリマー)、スチレンブロックコポリマー(例えば、スチレン-イソブチレン-スチレン-tert-ブロックコポリマー(SIBS)などのスチレン-イソブチレン-スチレンブロックコポリマー);ポリビニルピロリドン(架橋ポリビニルピロリドンを含む);ポリビニルアルコール;ビニルモノマーのコポリマー(EVAなど)及びポリ塩化ビニル(PVC);ポリビニルエーテル;ポリビニル芳香族;ポリエチレン酸化物;ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど);ポリアミド;ポリアクリルアミド;ポリエーテル(ポリエーテルスルホンなど);ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン、高度に架橋されたポリエチレン、及び高又は超高分子量ポリエチレンなど);ポリウレタン;ポリカーボネート;シリコーン;シロキサンポリマー;天然ベースのポリマー(任意選択で改質された多糖体及びタンパク質などであって、これらに限定されないが、セルロースポリマー及びセルロースエステル(セルロースアセテートなど)が含まれる);前述のポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。組み合わせは、混和性及び非混和性ブレンド、並びに積層体を含み得る。
【0156】
ベース(例えば、平坦又は非平坦な)部材は、生分解性材料から構成されてもよい。好適な生分解性ポリマーの非制限的例としては、ポリカルボン酸;ポリ無水物(無水マレイン酸ポリマーなど);ポリオルトエステル;ポリ-アミノ酸;ポリエチレンオキシド;ポリホスファゼン;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、並びにコポリマー及びその混合物(ポリ(L乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L,ラクチド)、ポリ(乳酸-コーグリコール酸)、及び50/50重量比の(D,L,ラクチド-コーグリコール酸));ポリジオキサノン;フマル酸ポリプロピレン;ポリデプシペプチド;ポリカプロラクトン及びコポリマー、並びにそれらの混合物(ポリ(D,L,ラクチド-カプロラクトン)及びポリカプロラクトン・コ-ブチルアクリレートなど);ポリヒドロキシブチレートバレレート及びその混合物;ポリカルボネート(チロシン由来ポリカルボネート及びアリレート、ポリイミノカルボネート、並びにポリジメチルトリメチルカルボネート);シアノアクリレート;リン酸カルシウム;ポリグリコサミングリカン;巨大分子(ポリサッカライド(ヒアルロン酸を含む)、セルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);ゼラチン;スターチ;デキストラン;並びにアルギン酸及びその誘導体、タンパク質及びポリペプチド;並びに前述のいずれかの混合物及びコポリマーが挙げられる。生分解性ポリマーはまた、ポリヒドロキシブチレート及びそのコポリマーなどの表面侵食性ポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ無水物(結晶性及び非晶質の両方)、及び無水マレイン酸であり得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、微細構造化表面は、物品又はその構成要素の少なくとも一部と一体化されてもよい。他の実施形態では、(例えば、加工)微細構造化表面は、フィルム又はテープとして提供され、ベース部材に固定され得る。こうした実施形態では、微細構造体は、ベース部材と同じ材料で作製されても異なる材料で作製されてもよい。固定は、機械的結合、接着剤、熱溶接、超音波溶接、RF溶接などの熱処理、又はそれらの組み合わせを使用して提供され得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、可撓性を有する。いくつかの実施形態では、(例えば、グラフィック)フィルムは、フィルムが複雑な湾曲(例えば、三次元)面に適用されることができる(例えば、接着剤で接着される)ように、十分に可撓性があり、形状適合性がある。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、少なくとも25、50、75、100、125、150、又は200%の伸びを有する。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、又は250%以下の伸びを有する。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、1000、750、500MPa以下の引張弾性率を有する。引張弾性率は、典型的には、少なくとも100、150、又は200MPaである。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムと同様に(例えば、平面状の)ベース部材は、70、65、60、55、50、45、40、35、又は30MPa以下の引張強度を有する。引張強度は、典型的には、少なくとも5、10、15、20、25、又は30MPaである。いくつかの実施形態では、引張試験は、初期グリップ距離1インチ、速度1インチ/分又は100%歪み/分を有するASTM D882-10に従って決定される。他の実施形態では、引張特性及び伸び特性は、(実施例において更に記載されるように)12インチ/分の速度でASTM D3759-05に従って決定される。
【0159】
いくつかの実施形態では、可撓性の平面状のベース層又は微細構造化フィルムは、低引張強度と組み合わせて十分に高い伸びを有する適合性として特徴付けられてもよい。適合可能な平面状のベース層及び微細構造化フィルムはまた、0.25インチの固定伸びで50ニュートン未満の荷重を有するとして特徴付けられてもよい。0.25インチの固定伸びでの荷重は、典型的には少なくとも5又は10ニュートンである。いくつかの実施形態では、0.25インチの固定伸びでの荷重は、45、40、35、30、25、20、15、又は10ニュートン以下である。
【0160】
可撓性(例えば、適合性)の平面状のベース層フィルムは、種々の材料から形成することができる。好適な材料としては、例えば、ポリウレタン;ポリ塩化ビニル(PVC);例えば、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)、及びエチレンアクリル酸(EAA)を含むポリオレフィン及びオレフィンコポリマー;(メタ)アクリルフィルム;並びにポリ乳酸系ポリマー及びPETgなどのポリエステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、平面状のベース層フィルムは、生分解性ポリマーを含んでもよい。ベース層は、このようなポリマーの2つ以上の層を含む多層フィルムとすることができる。更に、繊維強化ポリマー及び/又は粒子強化ポリマーも使用することができる。
【0161】
種々の材料及びフィルムの引張特性及び伸び特性は、文献に報告されているか、又は上記のASTM試験方法を用いて測定することができる。
【0162】
微細構造体が、可撓性の平面状のベース層フィルム上に「より硬い」より可撓性の低い材料(例えば、鋳造及び硬化された)を含む場合。この実施形態では、平面状のベース層フィルムは、微細構造化フィルムの伸びより大きい伸びを有する。換言すれば、微細構造化フィルムの伸びは、平面状のベース層フィルムの伸び未満である。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムは、450、400、350、300、又は250%以下の伸びを有する。いくつかの好ましい実施形態では、微細構造化フィルムは、250、225、200、175、150、125、又は100%以下の伸びを有する。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムの伸びは、少なくとも25、30、35、40、又は50%である。
【0163】
いくつかの実施形態では、可撓性の平面状のベース層を有する微細構造化フィルムは、160、150、140、又は130MPa以下の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムは、125、100、75、又は50MPa以下の引張強度を有する。いくつかの実施形態では、引張強度は、少なくとも10、15、20、25、又は30MPaである。
【0164】
微細構造化表面層の存在は、平面状のベース層の伸び及び/又は引張強度を減少させ得るが、微細構造化フィルムは、微細構造化表面の複製忠実性及び耐久性を改善しながら、十分に可撓性(例えば、適合性)であり得る。
【0165】
一実施形態では、本明細書に記載の平面状のベース層上に配置される微細構造化表面を含むフィルム(例えば、テープ)が提供される。フィルム(例えば、テープ)は、フィルムの反対の面上に感圧接着剤(例えば、図3の350)を含む。微細構造化表面は、接着剤コーティングされたフィルムを提供し、そのフィルムを(例えば、感圧)接着剤で表面又は物品に接着することによって、表面又は物品上に提供することができる。
【0166】
ベース(例えば、平坦又は非平坦な)部材は、隣接する(例えば、感圧)接着層とより良好に接着するために、通常の表面処理を受けても良い。更に、ベース部材は、下にあるベース部材への(例えば、鋳造及び硬化された)微細構造化層のより良好な接着のために、通常の表面処理を受けてもよい。表面処理としては、例えば、オゾンへの曝露、火炎への曝露、高圧電撃曝露、電離放射線処理、及び他の化学的又は物理的な酸化処理が挙げられる。化学的表面処理としてはプライマーが挙げられる。好適なプライマーの例としては、塩素化ポリオレフィン、ポリアミド、米国特許第5,677,376号、同第5,623,010号に開示されている改質ポリマー、並びに国際公開第98/15601号及び国際公開第99/03907号に開示されているもの、並びに他の改質アクリルポリマーが挙げられる。一実施形態では、プライマーは、3M Companyから「3M(登録商標)Primer94」として入手可能な、アクリレートポリマー、塩素化ポリオレフィン及びエポキシ樹脂を含む、有機溶媒系プライマーである。
【0167】
微細構造化フィルムは、様々な(例えば、感圧)接着剤を含んでよく、例えば、天然又は合成のゴム系感圧接着剤、アクリル感圧接着剤、ビニルアルキルエーテル感圧接着剤、シリコーン感圧接着剤、ポリエステル感圧接着剤、ポリアミド感圧接着剤、ポリα-オレフィン、ポリウレタン感圧接着剤、及びスチレンブロックコポリマー系感圧接着剤などを含んでよい。感圧性接着剤は一般に、室温(25℃)で動的粘弾性測定により測定することができる、1Hzの周波数での3×10ダイン/cm未満の貯蔵弾性率(E’)を有する。
【0168】
(例えば、感圧)接着剤は、有機溶媒系、水性エマルジョン、ホットメルト(例えば米国特許第6,294,249号に記載されているものなど)、及び化学線(例えば電子ビーム、紫外線)硬化性の(例えば、感圧)接着剤であってもよい。
【0169】
いくつかの実施形態では、接着剤層は除去可能である。除去可能な接着剤は、50、60、70、80、90、100、又は120℃(248°F)で4時間エージングした後、基材又は表面(例えば、ガラス又はポリプロピレンパネル)に一時的に接着され、その後25℃に平衡化され、約20インチ/分の除去速度で、基材又は表面からきれい除去される。
【0170】
いくつかの実施形態では、この接着層は、再配置可能な接着層である。用語「再配置可能」とは、少なくとも初期において、接着能を実質的に損なわずに、基材に繰り返し接着し、取り外すことが可能であることを指す。再配置可能な接着剤は通常、少なくとも初期において、従来の強力な粘着性のPSAの剥離強度よりも低い、基材表面に対する剥離強度を有する。好適な再配置可能な接着剤としては、両方とも3M Company(St.Paul,Minnesota,USA)により製造されたCONTROLTAC Plus Filmブランド及びSCOTCHLITE Plus Sheetingブランドで使用される接着剤の種類が挙げられる。
【0171】
接着層は、構造化した接着層、又は少なくとも1つの微細構造化した表面を有する接着層も有し得る。このような構造化した接着層を含むフィルム物品を、基材表面に適用すると、チャネル又は同様構造のネットワークがフィルム物品と基材表面との間に存在する。このようなチャネル又は同様構造の存在により、接着層を通って水平方向に空気が通り抜けることができ、これにより、適用中のフィルム物品及び表面基材の下から空気を抜くことができる。
【0172】
剥離ライナーは、典型的には、オルガノシリコーン化合物、フルオロポリマー、ポリウレタン及びポリオレフィンなどの低表面エネルギー化合物でコーティング又は改質された、紙又はフィルムを含む。この剥離ライナーはまた、接着剤をはじく化合物を添加したか、又は添加していない、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ポリエステルから製造されたポリマーシートであり得る。上述のように、剥離ライナーは、接着層に対して構造を付与するための、微細構造化した模様又は微細エンボスパターンを有し得る。微細構造化剥離ライナーを使用して、微細構造化表面を付与し、微細構造化表面を標的表面又は物品への適用前又は適用中に損傷から保護することもできる。
【0173】
接着層は、前述のように様々な表面に接着することができる。表面は、木材、金属、並びに様々な有機ポリマー材料を含み得る。フィルムは、接着剤がないため、家具及び衣類のテキスタイル(例えば、合成皮革)としての使用にも好適であり得る。
【0174】
接着剤に関する更なる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2021/033151号に記載されている。
【0175】
「微生物」という用語は、一般に、1つ以上の細菌(例えば、運動性若しくは非運動性、生長性若しくは休眠性、グラム陽性若しくはグラム陰性、プランクトン性若しくはバイオフィルム生息性)、細菌胞子又は内胞子、藻類、真菌類(例えば、酵母、糸状菌類、真菌胞子)、マイコプラズマ、及び原生動物、並びにそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の原核生物又は真核生物の微視的生物を指すために使用される。場合によっては、特に対象となる微生物は病原性を有するものであり、「病原体」という用語は、任意の病原性微生物を指すために使用される。病原体の例には、これらに限定されないが、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方、真菌、及びウイルスが含まれ、腸内細菌科のメンバー、又はミクロコッカス科若しくはミクロコッカス属のメンバー、又はブドウ球菌属種、連鎖球菌種、シュードモナス種、アシネトバクター種、腸球菌種、サルモネラ種、レジオネラ種、赤痢菌種、エルシニア種、エンテロバクター種、エシェリキア種、バチルス種、リステリア種、カンピロバクター種、アシネトバクター種、ビブリオ種、クロストリジウム種、クレブシェラ属、プロテウス属、アスペルギルス属、カンジダ属、及びコリネバクテリウム属が含まれる。病原体の特定の例としては、腸管出血性大腸菌を含むエシェリキア・コライ、例えば、血清型O157:H7、O129:H11;緑膿菌;セレウス菌;炭疽菌;サルモネラ腸炎菌;ネズミチフス菌;リステリア・モノサイトゲネス;ボツリヌス菌;ウェルシュ菌;黄色ブドウ球菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌;カルバペネム耐性腸内細菌科細菌、カンピロバクター・ジェジュニ;腸炎エルシニア菌;ビブリオ・バルニフィカス;クロストリジウム・ディフィシル;バンコマイシン耐性腸球菌;クレブシエラ・ニューモニエ;プロテウス・ミラビリス;及びエンテロバクター[クロノバクター]・サカザキを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0176】
本発明の利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【実施例
【0177】
材料及び方法
【表5】
【0178】
UV硬化性樹脂
UV硬化性樹脂を、PHOTOMER 6210脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(75部)、SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25部)、及びLUCIRIN TPO光開始剤(0.5%)から調製した。構成成分を高速ミキサーでブレンドし、約70℃のオーブン内で24時間加熱し、次いで室温に冷却した。
【0179】
細菌培養
トリプシンソイブロス(TSB、Becton,Dickinson and Company(Franklin Lakes,NJ)から入手)を脱イオン水中に溶解し、製造業者の指示に従ってろ過滅菌した。
【0180】
緑膿菌(ATCC 15442)のストリークプレートを、Tryptic Soy Agarの凍結ストックから調製した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。プレートから1個のコロニーを10mLの滅菌TSBに移した。培養物を毎分250回転及び37℃で一晩振とうした。接種試料を、培養物(約10コロニー形成単位(cfu)/mL)をTSB中で1:100に希釈することによって調製した。
【0181】
微細構造化フィルムを調製するための手順
UV硬化性樹脂(上述)を、スロットダイを使用してポリエチレンテレフタレート(PET)支持フィルム上にコーティングした。樹脂コーティングされたフィルムを、回転ニップロールによって提供される圧力を使用して微細構造化表面を有するツールと接触させた。樹脂がツールと接触している間に、100~1000mJ/cmの範囲のUV-A(315~400nm)を有する高強度Fusion Systems「D」ランプ(Fusion UV Curing Systems,Rockville,MD製)を使用して樹脂を硬化させた。
【0182】
対照フィルム
UV硬化性樹脂を、PHOTOMER 6210脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー(75部)、SR238 1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25部)、及びLUCIRIN TPO光開始剤(0.5%)から調製した。構成成分を高速ミキサーでブレンドし、約70℃のオーブン内で24時間加熱し、次いで室温に冷却した。平滑な(すなわち、非微細構造化)表面を有する銅ボタン(直径約2インチ(5.08cm))を使用して、フィルムを調製した。ボタン及び配合樹脂を両方とも約70℃のオーブン内で15分間加熱した。温められたボタンの中央に、トランスファーピペットを使用して、約6滴の加温された(上述の)UV硬化性樹脂を適用した。MELINEX 618 PET支持フィルム[3インチ×4インチ(7.62cm×10.16cm)、厚さ5ミル]の断片を、適用された樹脂を覆うように置き、続いてガラスプレートを置いた。PETフィルムのプライマー処理された表面を、樹脂と接触するように向けた。樹脂がボタンの表面を完全に覆うまで、ガラスプレートを手で押して所定の位置に保持した。ガラスプレートを慎重に取り外した。気泡が入った場合、ゴムハンドローラを使用してそれらを除去した。
【0183】
試料を、窒素雰囲気下で15.2メートル/分(50フィート/分)の速度でUVプロセッサ(RPC Industries(Plainfield,IL)から入手した、2つのHg蒸気ランプを備えたモデルQC 120233AN)に2回通過させることにより、試料をUV光で硬化させた。滑らかな樹脂表面を有する硬化したフィルムを、90度の角度でそっと引き離すことによって、銅テンプレートから取り外した。あるいは、UV硬化性樹脂をPETフィルム上にコーティングし、滑らかなロールにニップし、次いでUV光で硬化させる鋳造及び硬化方法によって、フィルムのより大きな切片を調製した。
【0184】
比較例A及び比較例Bのフィルム
比較例A及び比較例Bの線形プリズム微細構造化フィルムを、国際公開第2021/033162号(Connell)の実施例1及び実施例2にそれぞれ記載されている手順に従って調製した。剥離ライナー裏打ち接着剤層は、傷可視化、透過率、透明度、光沢度、及び輝度プロファイル測定のために使用されるフィルムに適用されなかった。微細構造化フィルムの特徴を表1に報告する。
【表6】
【0185】
試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法
剥離ライナーで裏張りされた接着剤層(厚さ8ミル、3M Corporation(St.Paul,MN)製の3M 8188 Optically Clear Adhesiveとして入手)を、ハンドローラを使用してPET支持フィルムの裏面(すなわち、非微細構造化表面)に適用した。直径34mmの中空パンチを使用して、微細構造化フィルム及び対照フィルムから個々のディスクを切り出した。1つのディスクを、滅菌6ウェルマイクロプレートの各ウェル内に配置し、ディスクの微細構造化表面がウェル開口部に面し、剥離ライナーがウェル底部に面するように向けた。次いで、プレートにイソプロピルアルコールのミストを噴霧して、試料を消毒し、乾燥させた。
【0186】
緑膿菌培養物(上記)の接種試料(4mL)を、ディスクの入った6ウェルマイクロプレートの各ウェルに添加した。6ウェルマイクロプレートに蓋を載せて、プレートをPARAFILM M 実験室フィルム(Bemis Company(Oshkosh,WI)から入手)で包んだ。包んだプレートを、湿った紙タオルを含むプラスチックバッグに入れ、密封したバッグを37℃のインキュベータ内に置いた。7時間後、プレートをインキュベータから取り出し、ピペットを用いて各ウェルから液体培地を除去した。新しい滅菌TSB(4mL)を各ウェルに添加し、プレートの蓋を取り付けた。そのプレートをPARAFILM M 実験室フィルムで再び包み、湿った紙タオルと共にバッグに密封し、インキュベータに戻した。17時間後、プレートをインキュベータから取り出した。液体培地を各ウェルから(ピペットを使用して)取り出し、4mLの滅菌脱イオン水と交換した。その水を取り除き、4mLずつの滅菌脱イオン水と更に2回交換した。最後の分の水を各ウェルから取り除き、次いでディスクを取り出した。ライナー層を各ディスクから剥離して、接着剤バッキングを露出させた。中空パンチを使用して、各ディスクから小さい直径12.7mmのディスクを切り出した。ディスクのうちのいくつか(n=3)を、ディスク上のコロニーカウント(cfu)について分析し、ディスクのうちのいくつか(n=3)を、洗浄手順工程に進ませた。
【0187】
試料ディスク洗浄手順
直径12.7mmの各ディスクを、ディスクの接着剤バッキングを介してElcometer Model 1720 Abrasion and Washability Tester(Elcometer Incorporated(Warren,MI))の洗浄レーンに取り付けた。試験では2つの異なる種類の湿らせた拭き取り布(5.08cm×12.7cm)を使用した。第1の湿らせた拭き取り布は、脱イオン水中にTWEEN20(0.05%)を含有する溶液中に浸漬されたSONTARA 8000不織布シートであった。第2の湿らせた拭き取り布は、PALMOLIVE石鹸(Colgate-Palmolive Company,New York,NY)(水50mLにつき1滴)を含有した脱イオン水に浸したWypALL L30 General Purpose Wiper(Kimberly-Clark Corporation,Irving,TXから入手)であった。各拭き取り布から液体を手で絞ることによって、全ての拭き取り布から余分な液体を除去した。それぞれの湿らせた拭き取り布をUniversal Material Clamp Tool(450g)の周りに個々に固定し、このツールを装置のキャリッジに取り付けた。装置を、60サイクル/分の速度で15キャリッジサイクルで動作するように設定した(総洗浄時間=15秒)。
【0188】
試料ディスクコロニーカウント方法
洗浄手順に続いて、各ディスクを、PBS緩衝液中にTWEEN 20(0.05%)を含有した1mLずつの溶液で5回洗浄した。洗浄した各ディスクを、個別に、PBS緩衝液(10mL)中にTWEEN 20(0.05%)の溶液を含有した別個の50mL円錐バイアルに移した。各チューブを1分間連続的にボルテックスし、Branson2510 Ultrasonic Cleaning Bath(Branson Ultrasonics(Danbury,CT))を使用して1分間超音波処理し、次いで、1分間ボルテックスした。各チューブからの溶液をバターフィールド緩衝液(3M Corporationから入手)で段階希釈し(約8希釈)、3M PETRIFILM Aerobic Count Plate(3M Corporation)のカウント範囲内のコロニー形成単位(cfu)数をもたらす緑膿菌濃度レベルを得た。希釈した各試料のアリコート(1mL)を、製造業者の指示に従って、別個の3M PETRIFILM Aerobic Count Plateにプレーティングした。カウントプレートを37℃で48時間にわたってインキュベートした。インキュベーション期間後、3M PETRIFILM Plate Reader(3M Corporation)を使用して、各プレート上のcfuの数をカウントした。カウント値を使用して、ディスクから回収したcfuの総数を計算した。結果は、3つのディスクについて決定された平均cfuカウントとして報告される。洗浄手順を受けなかったディスクを、同じ記載の手順を使用してコロニーカウント(cfu)について分析した。
【0189】
実施例1
図4Aの微細構造化フィルムを作製するためのツールを、図11の説明に従って調製した。z方向に平行なカッター1040(図11)を使用して、17.5マイクロメートルのx方向のピッチで波状の擬似ランダム運動を有する初期ねじ山経路t0を作成した。次に、カッター1040をロール1010に沿ってその開始位置に戻し、z方向から+6度だけ角度調整して、t0に対するピッチが+17.5マイクロメートルであり、波状の擬似ランダム運動がロール1010の周りでt0まで円周方向に同期するように、隣接するねじ山経路t1を作成した。次いで、カッター1040をロール1010に沿ってその開始位置に戻し、z方向から-6度角度調整して、t0に対するそのピッチが-17.5マイクロメートルであり、その波状の擬似ランダム運動がロール1010の周りでt0まで円周方向に同期するように、隣接するねじ山経路t2を作成した。ロール表面上のねじ山経路(すなわち、ねじ山経路t0、t1、及びt2)内の単一特徴に沿った最大円周方向振幅変動は、6マイクロメートルであった。図4Aの微細構造化フィルムは、「Casting Procedure for Preparing Microstructured Films」に記載されるプロセスに従って、ツールとして彫刻ロール1010を使用して調製した。
【0190】
実施例2
図4Bの微細構造化フィルムを作製するためのツールは、ねじ山経路t0が35マイクロメートルのx方向のピッチで波状の擬似ランダム運動を有し、2つの追加のねじ山経路(t3及びt4)がねじ山経路t2の作製に続いて彫刻されたことを除いて、実施例1の説明に従って調製された。ねじ山経路t2を切断した後、カッター1040をロール1010に沿ってその開始位置に戻し、z方向から+10度だけ角度調整して、t1に対するピッチが+17.5マイクロメートルであり、波状の擬似ランダム運動がロール1010の周りでt0まで円周方向に同期するように、隣接するねじ山経路t3を作成した。次いで、カッター1040をロール1010に沿ってその開始位置に戻し、z方向から-10度角度調整して、t2に対するそのピッチが-17.5マイクロメートルであり、その波状の擬似ランダム運動がロール1010の周りでt0まで円周方向に同期するように、隣接するねじ山経路t4を作成した。ロール表面上のねじ山経路(すなわち、ねじ山経路t0、t1、t2、t3、及びt4)内の単一特徴に沿った最大円周方向振幅変動は、5マイクロメートルであった。図4Bの微細構造化フィルムは、「Casting Procedure for Preparing Microstructured Films」に記載されるプロセスに従って、ツールとして彫刻ロール1010を使用して調製した。
【0191】
実施例3
図5Aの微細構造化フィルムを作製するためのツールは、ねじ山経路t0が70マイクロメートルのx方向のピッチで波状の擬似ランダム運動を有し、2つの追加のねじ山経路(t5及びt6)がねじ山経路t4の作製に続いて彫刻されたことを除いて、実施例2の説明に従って調製された。ねじ山経路t4を切断した後、カッター1040をロール1010に沿ってその開始位置に戻し、z方向から+11度だけ角度調整して、t3に対するピッチが+17.5マイクロメートルであり、波状の擬似ランダム運動がロール1010の周りでt0まで円周方向に同期するように、隣接するねじ山経路t5を作成した。次いで、カッター1040をロール1010に沿ってその開始位置に戻し、z方向から-11度角度調整して、t4に対するそのピッチが-17.5マイクロメートルであり、その波状の擬似ランダム運動がロール1010の周りでt0まで円周方向に同期するように、隣接するねじ山経路t6を作成した。ロール表面上のねじ山経路(すなわち、ねじ山経路t0、t1、t2、t3、t4、t5、及びt6)内の単一特徴に沿った最大円周方向振幅変動は、6マイクロメートルであった。図5Aの微細構造化フィルムは、「Casting Procedure for Preparing Microstructured Films」に記載されるプロセスに従って、ツールとして彫刻ロール1010を使用して調製した。
【0192】
実施例4
図5Bの微細構造化フィルムを作製するためのツールを、ロール表面上のねじ山経路(すなわち、ねじ山経路t0、t1、t2、t3、t4、t5、及びt6)内の単一の特徴に沿った最大円周方向振幅変動が10マイクロメートルであったことを除いて、実施例3の説明に従って調製した。図5Bの微細構造化フィルムは、「Casting Procedure for Preparing Microstructured Films」に記載されるプロセスに従って、ツールとして彫刻ロール1010を使用して調製した。
【0193】
実施例5
緑膿菌を接種した実施例1~4、比較例A、及び対照フィルムのディスク(12.7mm)を、「試料ディスク接種、インキュベーション、及び洗浄方法」(上記)に記載されたように調製した。ディスクを「試料ディスク洗浄手順B」(上述)に従って洗浄した。洗浄したディスクを「試料ディスクコロニーカウント方法」(上記)に従って分析した。平均log10cfuカウントを、ディスクを洗浄することによって達成される計算されたlog10cfuの低減と共に表2及び表3に報告する。表2の結果は、試験拭き取り布として脱イオン水中にTWEEN20(0.05%)を含有する溶液中に浸漬されたSONTARA 8000不織布シートを使用して得られた。表3の結果は、PALMOLIVE石鹸(水50mL当たり1滴)を含有した脱イオン水に浸したWypALL L30 General Purpose Wiperを試験拭き取り布として使用して得られた。
【表7】
【表8】
【0194】
実施例6.微生物接触移動の減少
3つの異なる接種溶液(A~C)を調製した。接種溶液A(黄色ブドウ球菌)は、37℃で一晩インキュベートしたトリプシン大豆寒天(BD236930、Becton,Dickinson and Company,Franklin Lakes,NJ)上の黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)のストリークプレートから調製した。プレートからの2つのコロニーを使用して、9mLの滅菌バターフィールド緩衝液(3M Corporation)に接種した。光学密度(吸光度)を600nmで読み取り、読み取り値が0.040±0.010であることを確認した。必要に応じて、培養物をこの範囲内になるように調整した。培養物の一部(1.5mL)を滅菌50mLコニカルチューブ中のバターフィールド緩衝液45mLに添加して、接触移動実験用の接種溶液を作製した。
【0195】
接種溶液B(クロストリジウム・スポロゲネス)を、滅菌50mLコニカルチューブ中で解凍し、バターフィールド緩衝液で約1×10胞子/mLの濃度に希釈した、約1×10胞子/mLを含有するクロストリジウム・スポロゲネス(ATCC 3584)の1mL凍結ストックから調製した。接種溶液C(アスペルギルス・ブラジリエンシス)を、滅菌50mLコニカルチューブ中で解凍し、バターフィールド緩衝液で約1×105胞子/mLの濃度に希釈した、約1×10胞子/mLを含有するアスペルギルス・ブラジリエンシス(ATCC16404)の1mL凍結ストックから調製した。
【0196】
3つの接種溶液の連続希釈試料を、バターフィールド緩衝液を使用して調製した。希釈試料を3M PETRIFILM Aerobic Countプレート(3M Corporation)にプレーティングし、製造業者の指示に従って評価し、各実験で使用した細胞濃度を確認した。
【0197】
実施例1~4、比較例Bの微細構造化フィルム及び対照フィルムの試料(40mm×50mm)を調製し、両面テープを使用して滅菌100mmペトリ皿の内部底面に個別に接着した。各ペトリ皿には1つの試料が入っており、各微細構造化フィルム試料は、微細構造化表面が露出されるように取り付けられていた。各微細構造化試料及び対照試料の露出表面を、95%イソプロピルアルコール溶液で湿潤させたKIMWIPE拭き取り布(Kimberly-Clark Corporation(Irving,TX))を使用して3回拭き取った。試料を、ファンをオンにした状態で、バイオ安全キャビネット内で15分間風乾した。次いで、UV光による照射を使用して、キャビネット内で試料を30分間滅菌した。
【0198】
接種溶液(接種溶液A~Cから選択した25mL)を滅菌ペトリ皿(100mm)に注いだ。微細構造化試料ごとに、オートクレーブ滅菌したWhatman Filter Paper(グレード2、直径42.5mm;GE Healthcare(Marborough,MA))の円形ディスクを、火炎滅菌したピンセットを使用して掴み、接種溶液が入ったペトリ皿に5秒間浸した。その紙を取り出し、25秒間皿の上方で保持して、余分な接種菌液を紙から排出させた。接種した紙ディスクを微細構造化試料の上に置き、新しいオートクレーブ滅菌されたWhatman Filter紙片(グレード2、60×60mm)を、その接種した紙ディスクを覆うように置いた。滅菌したコンラージ棒をその積層物の上部紙表面に押し付けて、表面を横切るように垂直方向に2回移動させた。積層物を2分間維持した。次いで、滅菌ピンセットを使用して、両方のフィルタ紙片を微細構造化試料から取り外した。試料を室温で5分間風乾させた。各試料の微細構造化表面からの微生物試料の接触移動を、RODACプレート(Trypticase Soy Agar with Lecithin and Polysorbate 80;Thermo Fisher Scientific製)を均一な圧力(約300g)で5秒間フィルム試料に均等に押し付けることによって判定した。個々のRODACプレートを、黄色ブドウ球菌試料については好気的に37℃で一晩インキュベートし、C.スポロゲネス試料については嫌気的に37℃で一晩インキュベートし、A.ブラジリエンシス試料については30℃で48時間好気的にインキュベートした。インキュベーション期間に続いて、プレートごとにコロニー形成単位(cfu)をカウントした。黄色ブドウ球菌及びA.ブラジリエンシス試料の各々について3つのフィルム試料を使用して、報告された平均カウント値を有するフィルム試料を試験した。平均カウント値が報告された9個のフィルム試料を使用して、C.スポロゲネス試料を試験した。
【0199】
RODACプレートごとの平均cfuカウントをlog10スケールに変換した。接触移動によるcfuカウントのlog10の低減を、対応する対照試料(対照フィルムから調製された滑らかな表面を有する試料)で得られたlog10カウント値から微細構造化試料で得られたlog10カウント値を差し引くことによって決定した。接触移動の平均低減%を、式Aによって計算した。結果を表4~表6に報告する。
【0200】
式A:接触移動の低減%=(1-10(-log 10 低減値))×100
【表9】
【表10】
【表11】
【0201】
実施例7.微細構造化フィルムの傷可視化試験
実施例1~4及び比較例Bの微細構造化フィルムの試料を、TABER Model 5750 Linear Abraser(Taber Industries,North Tonawanda,NY)を使用して個別に試験した。SCOTCH-BRITE Power Pad 2000(3M Corporation(St.Paul,MN))の2.54cm×2.54cmの部分を、装置試験アームの底部に接着剤で取り付け、試験において研磨材料として使用した。各微細構造化試料(3.8cm×12.7cm)を、微細構造化表面が研磨パッドと接触するように露出した状態で、水平に配置したガラス表面に接着剤で取り付けた。操作において、研磨パッドを微細構造化表面と接触させて配置し、試験アームの上端に取り付けられた75gの荷重で50サイクル(60サイクル/分の頻度)にわたって微細構造化表面を横切る直線往復運動で操作した。各試験の完了時に、微細構造化フィルム試料を黒色水平表面上に平坦に置いた。微細構造化表面を、周囲室内照明を使用して、水平面に対してほぼ垂直な角度で傷について視覚的に検査した。実施例1~4の微細構造化フィルム試料については、微細構造化表面のいずれにも傷は観察されなかった。比較例Bの微細構造化フィルムでは、微細構造化表面上に多くの傷が観察された。
【0202】
実施例8.微細構造化フィルムの傷可視化試験
研磨パッドを微細構造化表面と接触させて配置し、試験アームの上端に取り付けた75gの荷重で100サイクル(60サイクル/分の頻度)にわたって微細構造化表面を横切る直線往復運動で操作したことを除いて、実施例7に記載したのと同じ手順に従った。実施例1~4の微細構造化フィルム試料については、微細構造化表面のいずれにも傷は観察されなかった。比較例Bの微細構造化フィルムでは、微細構造化表面上に多くの深い傷が観察された。
【0203】
実施例9.微細構造化フィルムの傷可視化試験
研磨パッドを微細構造化表面と接触させて配置し、試験アームの上端に取り付けた325gの荷重で50サイクル(60サイクル/分の頻度)にわたって微細構造化表面を横切る直線往復運動で操作したことを除いて、実施例7に記載したのと同じ手順に従った。実施例1~4の微細構造化フィルム試料では、微細構造化表面の各々にいくつかの表面的な傷が観察された。比較例Bの微細構造化フィルムでは、微細構造化表面上に多くの深い傷が観察された。
【0204】
実施例10.透過率、透明度、及び光沢度の測定
実施例1~4及び比較例Bの微細構造化フィルムについて、BYK Haze-Gard plus meter(BYK-Gardner USA,Columbia,MD)をASTM D1003標準方法設定で使用して、透過率及び透明度を測定した。微細構造化表面が光源に面するように各フィルムを配向させて、フィルム試料を個々に機器ホルダに配置した。結果を表7に呈示する。
【0205】
実施例1~4及び比較例Bの微細構造化フィルムの光沢度測定値を、BYK Micro-Tri-Glossメーター(BYK-Gardner)を使用して得た。測定のために、微細構造化表面が光沢計に面するように各フィルムを配向させて、フィルムを黒色ガラス板上に置いた。結果を表8に呈示する。
【表12】
【表13】
【0206】
実施例11.輝度プロファイル
実施例1~4及び比較例Bの微細構造化フィルムを、ランバート光源上に個別に配置した。Eldim L80コノスコープ(Eldim SA,Herouville-Saint-Clair,France)を使用して、全ての極性及び方位角で、半球型に同時に光出力が検出された。微細構造化表面が、コノスコープに面するように各フィルムを向けた。検出後、特に指示されていない限り、透過率(例えば輝度[brightness])読み取り値の断面は、ルーバーの方向(0度配向角度として示されている)に対して直交する方向に取られた。相対透過率(すなわち可視光の輝度)は、フィルムがある場合の読み取り値とフィルムがない場合の読み取り値との間の、特定の視野角における軸上輝度の百分率として定義した。
【0207】
ライトボックスは、厚さ約6mmの拡散ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)プレートから製造された約12.5cm×12.5cm×11.5cm(L×W×H)の6面中空立方体であった。このボックスの1つの面が試料表面として選択された。この中空ライトボックスは、その試料表面で測定した場合、約0.83の拡散反射率を有するものであった(すなわち、400~700nmの波長範囲にわたって平均した場合、約83%)。試験の間、このボックスは、ボックスの底(試料表面の反対側であり、光は内側から試料表面に向かって導かれる)の1cmの円形孔を介して内側から照明された。照明は、光を導くために使用される光ファイバ束に取り付けられた安定化広帯域白熱光源を使用して提供された(Schott-Fostec LLC,Auburn,NY製の、直径1cmのファイバ束延長部分を有するFostec DCR-II)。測定された90度及び0度の輝度断面データは図13A及び図13Bに報告されている。
【0208】
実施例12.
建築仕上げフィルム(3M Corporationから入手した3M DI-NOC建築仕上げST-1586)のシートを、実施例1~4から選択された単一のツールを使用して個別にエンボス加工した。3M DI-NOC仕上げST-1586を、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム最上層と、中間層として装飾印刷を有するビニル系フィルムと、感圧接着剤バッキングとを有する積層(8ミル厚)フィルムとして得た。感圧接着剤バッキングを剥離ライナーで覆った。フィルムを軟化させるために、金属ロールを118℃に加熱し、フィルムで部分的に包んだ。微細構造化ツールロールを4000lbsの圧力で加熱ロールにニップした。ロールを0.3メートル/分でゆっくりと回転させて、フィルムの最上層への微細構造化特徴のエンボス加工(すなわちネガ型複製)をもたらした。
【0209】
実施例13.
PET支持フィルムをポリ塩化ビニル(PVC)支持フィルムで置き換えたことを除いて、実施例4に記載の手順に従って微細構造化フィルムを調製した。PVC支持フィルムは、片面に感圧接着剤を含有する3M SCOTCHCAL Gloss Overlaminate 8518フィルム(2ミル)(3M Corporationから入手)であった。得られた微細構造化フィルムの総厚は3ミルであった。
【0210】
3M SCOTCHCAL Gloss Overlaminate 8518フィルムの試料を適合性フィルムの例として使用し、試験のための比較例Eとして指定した。3M Durable Protective Film 7760AM(片面に感圧接着剤を有する2ミルのPETフィルム、3M Corporationから入手)の試料を、非適合性フィルムの例として使用し、試験のための比較例Fとして指定した。剥離ライナーは、試験前に全ての試料の接着剤側から除去した。
【0211】
フィルムの引張及び伸び試験は、ASTM D3759-05「Standard Test Method for Breaking Strength and Elongation of Pressure-Sensitive Tape」に従って行った。フィルム試料(幅1インチ(2.54cm))を、初期グリップ距離2インチ(5.08cm)及び速度12インチ/分(30.5cm/分)で操作したInstron Universal Test Machine(Illinois Tool Works,Glenview,IL)を使用して23℃で試験した。伸び率、引張強度(MPs)、及び0.25インチ(6.35mm)固定伸びでの荷重(N)の測定値を各試料について表7に報告する。
【表14】
【0212】
実施例14.
PET支持フィルムをポリウレタン(PUR)支持フィルムで置き換えたことを除いて、実施例4に記載の手順に従って微細構造化フィルムを調製した。PUR支持フィルムは、片面に感圧接着剤を含有する3M ENVISION Gloss Wrap Overlaminate 8548フィルム(2ミル)(3M Corporationから入手)であった。得られた微細構造化フィルムの総厚は3ミルであった。3M ENVISION Gloss Wrap Overlaminate 8548フィルムの試料を、適合性フィルムの例として使用し、試験のために比較例Hとして指定した。
【0213】
フィルムの引張及び伸び試験を実施例13に記載したように行った。伸び率、引張強度(MPa)、及び0.25インチ(6.35mm)固定伸びでの荷重(N)の測定値を各試料について表8に報告する。
【表15】
図1
図2
図2A
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14
【国際調査報告】