(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電気化学デバイスのモニタリング
(51)【国際特許分類】
G01R 33/032 20060101AFI20250107BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20250107BHJP
G01R 33/12 20060101ALI20250107BHJP
G01R 33/10 20060101ALI20250107BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20250107BHJP
G01R 15/24 20060101ALI20250107BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20250107BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20250107BHJP
H01M 8/04 20160101ALN20250107BHJP
H01M 8/04537 20160101ALN20250107BHJP
【FI】
G01R33/032
G01R31/392
G01R33/12 Z
G01R33/10
G01R33/02 K
G01R15/24 D
G01N27/72
H01M10/42 P
H01M8/04 Z
H01M8/04537
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534086
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 GB2022053124
(87)【国際公開番号】W WO2023105223
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514314897
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ・オヴ・ニューカッスル・アポン・タイン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・マムルーク
(72)【発明者】
【氏名】キース・スコット
【テーマコード(参考)】
2G017
2G025
2G053
2G216
5H030
5H127
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA08
2G017AD12
2G017AD15
2G017CB03
2G025AA04
2G025AB10
2G053AA11
2G053AA14
2G053AB13
2G053BA02
2G053CA09
2G053CB29
2G053DA01
2G216BA21
2G216BB09
5H030AA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF41
5H127DB53
5H127DB64
5H127EE27
(57)【要約】
システムが開示される。このシステムは、磁場を発生させる電気化学デバイスと感知デバイスとを備え、この感知デバイスは、磁気光学媒体、この磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発するように構成された電磁放射源、および磁気光学媒体を通過した偏光電磁放射を受け取るように構成されたセンサを備える。感知デバイスは、電気化学デバイスの磁場が磁気光学媒体を通過するように、電気化学デバイスに対して配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生させる電気化学デバイスと、
感知デバイスであって、
磁気光学媒体、
前記磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発するように構成された電磁放射源、および
前記磁気光学媒体を通過した偏光電磁放射を受け取るように構成されたセンサ
を備える、感知デバイスと
を備え、
前記感知デバイスは、前記電気化学デバイスの前記磁場が前記磁気光学媒体を通過するように、前記電気化学デバイスに対して配置される、システム。
【請求項2】
前記磁気光学媒体は、前記電気化学デバイスの前記磁場が前記磁気光学媒体と相互作用することにより、前記電気化学デバイスの特徴に基づき前記偏光電磁放射の偏光面を回転させるように位置決めされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電磁放射源は、前記発せられた偏光電磁放射が前記電気化学デバイスの前記発生された磁場に対して平行になるように、前記電気化学デバイスに対して配置される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記磁気光学媒体は、前記電磁放射源と一体である、または
前記磁気光学媒体は、前記電気化学デバイスに対して結合された層である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記磁気光学媒体は、薄膜磁気光学結晶を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記感知デバイスは、前記薄膜磁気光学結晶を保護するための絶縁ポリマーもしくはガラスフィルムの保護層をさらに備える、または前記磁気光学結晶は、前記薄膜磁気光学結晶を保護するためのポリマーもしくはガラス繊維内に埋め込まれる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記磁気光学結晶は、高いベルデ定数もしくは低い光吸収性を有する、または
前記磁気光学結晶は、バリウムヘキサフェライト、テルビウムガリウムガーネット、ビスマス置換希土類鉄ガーネット、Na
2Ce(MoO
4)
2、またはCeAlO
3の中の少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
磁場を発生させる前記電気化学デバイスは、複数のセルを備えるバッテリであり、
前記システムは、前記複数のセルの中の1つとそれぞれが関連づけられた複数の電磁放射源を備え、
前記システムは、前記複数のセルの中の1つとそれぞれが関連づけられた複数の磁気光学媒体をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、前記複数の電磁放射源を順次動作させるように構成され、
前記センサは、前記電磁放射源のそれぞれから前記複数の磁気光学媒体の中の1つを通過した偏光電磁放射を受け取るように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは、前記複数の電磁放射源に関連づけられた複数のセンサをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、制御モジュールを備え、前記制御モジュールは、
前記発せられた電磁放射の第1の偏光面を判定するか、または前記発せられた電磁放射の所定の偏光面を記憶し、
前記磁気光学媒体を通過した前記電磁放射の第2の偏光面を判定し、
前記第1の偏光面と前記第2の偏光面との間の回転角度を判定し、
前記判定された回転角度に基づき前記電気化学デバイスの磁場強度を判定し、
前記判定された磁場強度に基づき前記電気化学デバイスの電流分布を判定する
ように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の前記システムを用意するステップと、
前記電磁放射源から前記磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発するステップと、
前記磁気光学媒体を通過した前記偏光電磁放射を前記センサにより受け取るステップと
を含む、感知方法。
【請求項13】
反射された前記電磁放射の偏光面の回転角度を判定するステップ
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記判定された回転角度に基づき電気化学デバイスの前記磁場強度を判定するステップと、
前記判定された磁場強度に基づき前記電気化学デバイスの電流分布を判定するステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電気化学デバイスの前記電流分布を判定する前記ステップを周期的にまたは前記電気化学デバイス上の複数の位置に対して反復するステップと、前記電気化学デバイスの電流分布情報の時間的または空間的な変化を判定するステップとをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記磁気光学媒体に通して前記偏光電磁放射を発する前記ステップは、複数の光ファイバケーブルから前記電磁放射を発するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電磁放射は、あるパターンでまたは順次に前記磁気光学媒体に対して入射するようにある期間にわたり前記複数の光ファイバケーブルから個別に発せられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電磁放射は、前記複数の光ファイバケーブルから同時に発せられ、前記複数の光ファイバケーブルは、隣接する光ファイバケーブルとは異なる波長の電磁放射を発するように構成される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記システムは、電流分布情報の前記変化を受け取るように構成された制御モジュールを備え、
前記制御モジュールは、電流分布情報の前記変化に基づき前記電気化学デバイスのパラメータを変更するように構成される、または
前記制御モジュールは、電流分布情報の前記変化に基づきアラームを発動するように構成される、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
磁気光学媒体と、
前記磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発するように構成された電磁放射源と、
前記磁気光学媒体を通り前記電磁放射源から反射された偏光電磁放射を受け取るように構成されたセンサと
を備え、
前記電磁放射源は、第1の複数の光ファイバケーブルを備える、または前記センサは、第2の複数の光ファイバケーブルを備える、感知デバイス。
【請求項21】
反射層または保護媒体の少なくとも一方をさらに備える、請求項18に記載の感知デバイス。
【請求項22】
前記第1の複数の光ファイバケーブルおよび前記第2の複数の光ファイバケーブルは、メッシュアレイ状または織成アレイ状に配置される、請求項18に記載の感知デバイス。
【請求項23】
前記第1の複数の光ファイバケーブルまたは前記第2の複数の光ファイバケーブルの少なくとも一方が、前記電気化学デバイスの内部に埋設されるように構成される、請求項20に記載の感知デバイス。
【請求項24】
前記第1の複数の光ファイバケーブルは、前記電磁放射があるパターンでまたは順次に前記磁気光学媒体に対して入射するようにある期間にわたり電磁放射を個別に発するように構成される、または
前記電磁放射は、前記第1の複数の光ファイバケーブルから同時に発せられ、前記第1の複数の光ファイバケーブルは、隣接する光ファイバケーブルとは異なる波長の電磁放射を発するように構成される、請求項20または21に記載の感知デバイス。
【請求項25】
偏光電磁放射を発するための第1の複数の光ファイバケーブルを備える電磁放射源と、
偏光電磁放射を受け取るように構成されたセンサであって、前記電磁放射源からの前記偏光電磁放射が通過するような磁気光学媒体を備えるセンサと
を備える、感知デバイス。
【請求項26】
前記センサは、第2の複数の光ファイバケーブルを備え、
前記第2の複数の光ファイバケーブルは、前記磁気光学媒体を含む、請求項23に記載の感知デバイス。
【請求項27】
前記少なくとも1つの光ファイバケーブルが、反射層を備える、請求項24に記載の感知デバイス。
【請求項28】
前記第1の複数の光ファイバケーブルおよび前記第2の複数の光ファイバケーブルは、メッシュアレイ状または織成アレイ状に配置される、請求項23から25のいずれか一項に記載の感知デバイス。
【請求項29】
前記第1の複数の光ファイバケーブルおよび前記第2の複数の光ファイバケーブルの少なくとも一方が、前記電気化学デバイスの内部に埋設されるように構成される、請求項26に記載の感知デバイス。
【請求項30】
前記第1の複数の光ファイバケーブルは、ある期間にわたり電磁放射を個別に発するように構成される、または
前記電磁放射は、前記第1の複数の光ファイバケーブルから同時に発せられ、前記第1の複数の光ファイバケーブルは、隣接する光ファイバケーブルとは異なる波長の電磁放射を発するように構成される、請求項25から29のいずれか一項に記載の感知デバイス。
【請求項31】
電気化学デバイスにおける電流変化を判定するための請求項18から30のいずれか一項に記載の感知デバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイスのモニタリングに関し、詳細には、限定するものではないが、ファラデー効果を利用して電気化学デバイスの特性をモニタリングすることに適したシステムに関する。本発明の態様は、システム、モニタリング方法、および様々なセンサ構成に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学デバイスにおける電流分布計測値は、それらのデバイスの動作および耐久性にとって極めて重要である。これらの計測値は、製造上の欠陥(例えば活性材料の不均質な混合もしくは堆積)または高電流密度での濃度勾配(例えば燃料電池のフラッディングもしくは酸素欠乏)から生じる場合がある。さらに、様々な業界で使用される一部の電気化学デバイスは、より高出力へと向かいつつあり、したがってより高い電流密度を必要とする。
【0003】
現行では、電力管理システムは、数百個のセルにわたり個々のセル電圧を計測することにより、燃料電池、バッテリ、または電解装置などの電気化学デバイスをモニタリングする。計測される電流(または反応速度)は、特に電極の小さな領域が電極の他の領域に比べて大幅に高い電流密度で動作し得る高電流レートにおいては、セル全体にわたって均一には分布していない。標準的な技術では、これらの変化を検出することができない。セルはスタックおよびモジュールに組み立てられているため、これらのセルの中の1つが故障すると、隣接するセルに対して、および場合によってはバッテリモジュール全体またはセルのスタック全体に対して影響を及ぼし支障をきたす可能性がある。さらに重要なことには、セルの中の1つが熱暴走し始めると、これが伝播することによってシステム全体に破局的な故障をもたらすおそれがある。アセンブリ内の各電気化学セル(例えばバッテリ)の厳格な品質管理および検査にもかかわらず、電気自動車では、故障した1つのバッテリを発端とする破局的な故障およびバッテリ火災が依然として生じる。
【0004】
電極アレイ内のセル内における電流分布を計測することが可能である。このためには、1つのセルを小セルのアレイに細分化し、電極アレイ内にわたり様々な位置における温度変化を記録することが必要となる。セル電極をより小さい電極アレイから構築すると、ユニットセルのサイズにより解像度が制限される。さらに、この方法は複雑であり多大な費用がかかる。さらに、この方法で電流分布をモニタリングすることにより、電極アレイ内で漏電および抵抗が生じる可能性が高まり、これにより電極の有効性が低下する可能性がある。また、通常ではバッテリおよびセルは温度が均一になるように冷却されるため、温度変化の利用にも実施上の制限がある。
【0005】
WO2021/019405A1は、バッテリ液を抽出することによりバッテリを化学的にサンプリングし得る感知装置について説明している。この場合に、この抽出された流体は、バッテリの健康状態を判定するために既知の分光法を利用して分析される。これについては、Grey,C.およびBaumberg,J.、「In-operando battery chemistry monitoring.」、[online]、University of Cambridge Enterprise、[2021年10月27日検索]、〈URL: https://www.enterprise.cam.ac.uk/opportunities/commercial-opportunity-in-operando-battery-chemistry-monitoring/〉でさらに論じられている。したがって、この方法では、バッテリの健康状態のモニタリングを行うために流体抽出が必要となる。非流体バッテリを含むあらゆる電気化学デバイスの健康状態を非侵襲的に判断する方法を提供することが有益である。かような非侵襲的方法は、バッテリの健康状態のリアルタイムモニタリングとしてオペレーティングシステムにおいて使用可能であるが、バッテリの製造後にスタック/モジュールの組立て前の品質管理検証に対して使用することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Grey,C.およびBaumberg,J.、「In-operando battery chemistry monitoring.」、[online]、University of Cambridge Enterprise、[2021年10月27日検索]、〈URL: https://www.enterprise.cam.ac.uk/opportunities/commercial-opportunity-in-operando-battery-chemistry-monitoring/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のいくつかの実施例の1つの目的は、先行技術に関連する問題または欠点の中の少なくとも1つを少なくとも部分的に解決、緩和、または回避することである。いくつかの実施例は、以降において述べる利点の中の少なくとも1つを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、添付の特許請求の範囲において請求されるようなシステム、方法、およびセンサを提供する。
【0010】
本発明の一態様によれば、磁場を発生させる電気化学デバイスと感知デバイスとを備えるシステムが提供される。この感知デバイスは、磁気光学媒体と、磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発するように構成された電磁放射源と、磁気光学媒体を通過した偏光電磁放射を受け取るように構成されたセンサとを備える。感知デバイスは、電気化学デバイスの磁場が磁気光学媒体を通過するように、電気化学デバイスに対して配置される。
【0011】
このシステムは、磁気光学媒体を備えてもよく、この磁気光学媒体は、電気化学デバイスの磁場が磁気光学媒体と相互作用することにより、電気化学デバイスの特徴に基づき偏光電磁放射の偏光面を回転させるように位置決めされる。
【0012】
このシステムは、電磁放射源を備えてもよく、この電磁放射源は、発せられた偏光電磁放射が電気化学デバイスの発生された磁場に対して平行になるように、電気化学デバイスに対して配置される。
【0013】
このシステムは、電磁放射源と一体である磁気光学媒体を備えてもよい。
【0014】
このシステムは、電気化学デバイスに対して結合された層として前出の磁気光学媒体を備えてもよい。
【0015】
磁気光学媒体は、薄膜磁気光学結晶を備えてもよい。
【0016】
感知デバイスは、薄膜磁気光学結晶を保護するための絶縁ポリマーまたはガラスフィルムの保護層をさらに備えてもよい。磁気光学結晶は、薄膜磁気光学結晶を保護するためのポリマーまたはガラス繊維内に埋め込まれてもよい。
【0017】
磁気光学結晶は、高いベルデ定数もしくは低い光吸収性を有してもよい。
【0018】
磁気光学結晶は、バリウムヘキサフェライト、テルビウムガリウムガーネット、ビスマス置換希土類鉄ガーネット、Na2Ce(MoO4)2、またはCeAlO3の中の少なくとも1つを含んでもよい。
【0019】
磁場を発生させる電気化学デバイスは、複数のセルを備えるバッテリであってもよく、システムは、複数のセルの中の1つとそれぞれが関連づけられた複数の電磁放射源を備えてもよい。システムは、複数のセルの中の1つとそれぞれが関連づけられた複数の磁気光学媒体をさらに備えてもよい。
【0020】
このシステムは、複数の電磁放射源を順次動作させるように構成されてもよい。
【0021】
センサは、電磁放射源のそれぞれから複数の磁気光学媒体の中の1つを通過した偏光電磁放射を受け取るように構成されてもよい。
【0022】
このシステムは、複数の電磁放射源に関連づけられた複数のセンサをさらに備えてもよい。
【0023】
システムは、制御モジュールを備えてもよく、この制御モジュールは、発せられた電磁放射の第1の偏光面を判定するか、または発せられた電磁放射の所定の偏光面を記憶し、磁気光学媒体を通過した電磁放射の第2の偏光面を判定し、第1の偏光面と第2の偏光面との間の回転角度を判定し、判定された回転角度に基づき電気化学デバイスの磁場強度を判定し、判定された磁場強度に基づき電気化学デバイスの電流分布を判定するように構成される。
【0024】
本発明の一態様によれば、感知方法が提供される。この感知方法は、上述のシステムを用意するステップと、電磁放射源から磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発するステップと、磁気光学媒体を通過した偏光電磁放射をセンサにより受け取るステップとを含む。
【0025】
この方法は、反射された電磁放射の偏光面の回転角度を判定するステップをさらに含んでもよい。
【0026】
この方法は、判定された回転角度に基づき電気化学デバイスの磁場強度を判定するステップと、判定された磁場強度に基づき電気化学デバイスの電流分布を判定するステップとをさらに含んでもよい。
【0027】
この方法は、電気化学デバイスの電流分布を判定するステップを周期的にまたは電気化学デバイス上の複数の位置に対して反復するステップと、電気化学デバイスの電流分布情報の時間的または空間的な変化を判定するステップとをさらに含んでもよい。
【0028】
磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発するステップは、複数の光ファイバケーブルから電磁放射を発するステップを含んでもよい。
【0029】
電磁放射は、あるパターンでまたは順次に磁気光学媒体に対して入射するようにある期間にわたり複数の光ファイバケーブルから個別に発せられてもよい。
【0030】
電磁放射は、複数の光ファイバケーブルから同時に発せられてもよく、複数の光ファイバケーブルは、隣接する光ファイバケーブルとは異なる波長の電磁放射を発するように構成されてもよい。
【0031】
システムは、電流分布情報の変化を受け取るように構成された制御モジュールを備えてもよく、制御モジュールは、電流分布情報の変化に基づき電気化学デバイスのパラメータを変更するように構成されてもよい。制御モジュールは、電流分布情報の変化に基づきアラームを発動するように構成されてもよい。
【0032】
本発明の一態様によれば、感知デバイスが提供される。この感知デバイスは、磁気光学媒体と、この磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発するように構成された電磁放射源と、磁気光学媒体を通り電磁放射源から反射された偏光電磁放射を受け取るように構成されたセンサとを備える。電磁放射源は、第1の複数の光ファイバケーブルを備える、またはセンサは、第2の複数の光ファイバケーブルを備える。
【0033】
感知デバイスは、反射層または保護媒体の少なくとも一方をさらに備えてもよい。
【0034】
第1の複数の光ファイバケーブルおよび第2の複数の光ファイバケーブルは、メッシュアレイ状または織成アレイ状に配置されてもよい。
【0035】
第1の複数の光ファイバケーブルまたは第2の複数の光ファイバケーブルの少なくとも一方が、電気化学デバイスの内部に埋設されるように構成されてもよい。
【0036】
第1の複数の光ファイバケーブルは、電磁放射があるパターンでまたは順次に磁気光学媒体に対して入射するようにある期間にわたり電磁放射を個別に発するように構成されてもよい。
【0037】
電磁放射は、第1の複数の光ファイバケーブルから同時に発せられ、第1の複数の光ファイバケーブルは、隣接する光ファイバケーブルとは異なる波長の電磁放射を発するように構成されてもよい。
【0038】
本発明の一態様によれば、感知デバイスが提供される。この感知デバイスは、偏光電磁放射を発するための第1の複数の光ファイバケーブルを備える電磁放射源と、偏光電磁放射を受け取るように構成されたセンサであって、電磁放射源からの偏光電磁放射が通過するような磁気光学媒体を備えるセンサとを備える。
【0039】
このセンサは、第2の複数の光ファイバケーブルを備えてもよい。これらの第2の複数の光ファイバケーブルは、磁気光学媒体を含んでもよい。
【0040】
少なくとも1つの光ファイバケーブルが、反射層を備えてもよい。
【0041】
第1の複数の光ファイバケーブルは、ある期間にわたり電磁放射を個別に発するように構成されてもよい。
【0042】
この電磁放射は、第1の複数の光ファイバケーブルから同時に発せられてもよく、第1の複数の光ファイバケーブルは、隣接する光ファイバケーブルとは異なる波長の電磁放射を発するように構成されてもよい。
【0043】
本発明の一態様によれば、電気化学デバイスにおける電流変化を判定するための感知デバイスの使用が提供される。
【0044】
以降では添付の図面を参照として本発明の例をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】電気化学デバイスをモニタリングするための一例のシステムの概略図である。
【
図2】電気化学デバイスをモニタリングするための別の例のシステムの概略図である。
【
図4】光ファイバを用いて電気化学デバイスをモニタリングするための別の例のシステムの概略図である。
【
図5】光ファイバを用いて電気化学デバイスをモニタリングするための別の例のシステムの概略図である。
【
図6】光ファイバを用いて電気化学デバイスをモニタリングするためのさらに別の例のシステムの概略図である。
【
図7】電気化学デバイスをモニタリングする一例の方法を示す図である。
【
図8】回転角度の決定をさらに含む
図7の方法を示す図である。
【
図9】電気化学デバイスの電流分布の決定をさらに含む
図8の方法を示す図である。
【
図10A】2000mAhリチウムパウチセルにおける電流の不均一性の結果例を示す図である。
【
図10B】4000mAhリチウムパウチセルにおける電流の不均一性の結果例を示す図である。
【
図11A】
図9の方法論を使用して判定された磁場マップの一例を示す図である。
【
図11B】10、300、600、および800秒後の放電率2C(8A)または同等である99.7、91.7、83.3、および77.8%の充電状態における4000mAhリチウムイオンバッテリの20.5mm×15.5mmの小セクションの最初の放電サイクルの最中の磁場マッピングの経時変化を示す図である。
【
図11C】10、300、600、および800秒後の放電率2C(8A)における4000mAhリチウムイオンバッテリの20.5mm×15.5mmの小セクションの40回目の放電サイクルの最中の磁場マッピングの経時変化を示す図である。
【
図11D】60、120、および180秒後の放電率8Aにおける4000mAhリチウムイオンバッテリの20.5mm×15.5mmの小セクションの1回目および40回目の放電サイクルの磁場マップの比較を示す図である。
【
図12】8Aにおける4000mAhリチウムイオンバッテリの1回目および40回目の放電サイクルの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
同様の数字は同様の機能を示す。
【0047】
本発明の例は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの組合せの形態で実現され得る点が理解されよう。かようなソフトウェアはいずれも、例えば消去可能もしくは書換え可能であるか否かに関わらず例えばROMのようなストレージデバイスなどの揮発性ストレージもしくは不揮発性ストレージの形態で、または例えばRAM、メモリチップ、デバイス、もしくは集積回路などのメモリの形態で、または例えばCD、DVD、磁気ディスク、もしくは磁気テープなどの光学的または磁気的に読み取り可能な媒体上に格納され得る。ストレージデバイスおよびストレージメディアは、実行された場合に本発明の例を実現する命令を含む1つまたは複数のプログラムを格納するのに適した機械可読ストレージの例である点が理解されよう。
【0048】
したがって、いくつかの例は、本明細書の特許請求の範囲の中のいずれか一項において特許請求される装置または方法を実現するためのコードを含むプログラムと、かかるプログラムを格納する機械可読ストレージとを提供する。さらに、かかるプログラムは、例えば有線または無線接続を介して伝送される通信信号などの任意の媒体を経由して電子的に伝達されてもよく、いくつかの例は、これらを適切に包含する。
【0049】
本明細書全体を通じて、電気化学デバイスを参照とする。電気化学デバイスは、化学反応から電気を発生させ得るまたは電気エネルギーを利用して化学反応を引き起こし得るあらゆるデバイスを包含するように意図される。これには、バッテリおよびそれらのセル、電解装置、センサ、燃料電池、水電解装置、等が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明は、ファラデー効果(またはファラデー回転)を利用することにより電気化学デバイスの電流分布のマッピングを行う。電気化学デバイスは、電流の方向に対して垂直な平面内に磁場を有する。偏光電磁放射が材料を通過する場合に、偏光面は磁場強度に比例した角度だけ回転される。偏光の回転角度と材料内の磁場との間の関係は、次のベクレルの公式により表される:
等式1 β=VBd
βは回転角度(ラジアン)であり、Bは伝播方向における磁束密度(テスラ)であり、dは電磁放射および磁場が相互作用する経路の長さ(メートル)であり、Vは材料のベルデ定数である。この経験的比例定数(単位はラジアン/テスラ/メートル)は、波長および温度により変化し、様々な材料に関して一覧表にまとめられている。正のベルデ定数は、伝播方向が磁場に対して平行である場合にはL回転(反時計回り方向)に相当し、伝播方向が逆平行である場合にはR回転(時計回り方向)に相当する。したがって、電磁放射の光線が材料を通過しこの材料を経由して反射されると、回転は2倍になる。
【0051】
ベルデ定数が高い(正または負において)材料は、結果として回転角度が大きくなる。ベルデ定数は、反磁性材料の場合には正の値を、常磁性材料の場合には負の値を有する。本明細書全体を通じて、絶対値が使用される。高いベルデ定数を持つ材料の例としては、バリウムヘキサフェライト、テルビウムガリウムガーネット、およびビスマス置換希土類鉄ガーネットがある。例えば、テルビウムガリウムガーネット(TGG)のベルデ定数は、632nmの電磁放射に対して約-134rad/(T*m)である。CeAlO3のベルデ定数は、632nmの電磁放射で270rad/(T*m)となり、NaCe(MoO4)2のベルデ定数は、632nmの電磁放射で204rad/(T*m)となる。内部磁化を有する強磁性体材料またはフェリ磁性体材料では、距離lにわたりかかる材料を通過して移動する光波の合計ファラデー旋光度は、次の等式により表される:
【0052】
【0053】
M0zは材料内の既存の磁化であり、Msは材料の飽和磁化である。
【0054】
ファラデー回転は、磁気光学層を磁化することになる周囲の磁場によって決定される。材料が磁化されてその飽和磁化に達すると、回転は最大になる。
【0055】
ファラデー比旋光度の絶対値PFは、1550nmの電磁放射において、イットリウム鉄ガーネットでは216°/cmであり、YbyBixY3-x-yFe5O12では404°/cm(x=1.03、y=1.12)であり、ビスマスイットリウム鉄ガーネットでは1250°/cmであり、セリウムイットリウム鉄ガーネットでは1310°/cmである。さらに、ファラデー比旋光度の絶対値PFは、(Bi、Y、Gd、Tm、Lu、Ca)3(Fe、Si)5O12では725nmの電磁放射において6500°/cmであり、(YYbBi)3Fe5O12では800nmの電磁放射において5000°/cmであり、ビスマスイットリウム鉄ガーネットでは590nmの電磁放射において20,000°/cmである。ビスマスイットリウム鉄ガーネットは、1550nmの電磁放射において2.7dBcm-1という最も低い吸収係数を有する。
【0056】
図1および
図2は、ファラデー効果を利用して電気化学デバイスの電流分布をモニタリングするためのシステム100、200の概略的な例を示す。電流の方向は矢印112で示され、対応する磁場方向は矢印114で示される。このシステムは、電磁放射源120、センサ122、222、および磁気光学媒体130を備える。
【0057】
電磁放射源120は、偏光電磁放射124を磁気光学媒体130に通過させて送るように構成される。換言すれば、電磁放射源120は、偏光電磁放射124を磁気光学媒体130に向けて発する。
図1に示す例では、電磁放射は、磁気光学媒体130を通過し、反射されて磁気光学媒体を通過しセンサ122へと戻る。したがって、システム100は反射層132を備えてもよく、いくつかの例では電気化学デバイス110が反射性を有してもよく、または反射層132および電気化学デバイス110が一体であってもよい。反射層132は、例えばアルミニウムなどの任意の反射性材料から形成されてもよい。
【0058】
電磁放射124は、電気化学デバイス110により発生される磁場114の方向に対して平行な方向へと電磁放射源120から発せられ得る。電磁放射124は、発生される際に偏光されてもよい。いくつかの例では、電磁放射源120は、電磁放射124を偏光するための偏光フィルタ(図示せず)を備えてもよい。電磁放射124は、直線偏光化されてもよい。
【0059】
偏光電磁放射124は、磁気光学媒体130を通り進み、その偏光面が上述のようにファラデー効果により回転される。電気化学デバイス110の電流112の局所的な変化が、磁場114に比例的な変化を結果としてもたらす。したがって、磁場のこれらの変化は、磁気光学媒体130を通り進む電磁放射の偏光面の回転角度に対して影響を与える。
【0060】
図1に示すシステム100の例では、電磁放射124はセンサ122へと反射される。すなわち、センサ122は、磁気光学媒体130を通過した反射された電磁放射を受け取るため、その偏光面は回転されている。次いで、センサ122または制御システム(図示せず)は、磁気光学媒体130を通過した受け取られた電磁放射126に基づき電気化学デバイスの特性を判定することが可能となる。これについては、
図7~
図9に記載の方法を参照として以降においてさらに詳細に説明する。
【0061】
システム100は、反射層132を含むことができる。いくつかの例では、磁気光学媒体130は反射層132を備えてもよく、反射面が電気化学デバイス110に対して他の方法で適用されてもよい。いくつかの例では、電気化学デバイス110は反射性を有してもよく、それにより反射層132を必要としなくてもよい。
【0062】
図2は、
図1の代替的なレイアウトを有する一例のシステム200を示す。この例では、システム200は、磁気光学媒体130と電気化学デバイス110の間に位置決めされたセンサ222を有する。この例では、電磁放射124は、磁気光学媒体を通りセンサ222へ進む。すなわち、
図2に示すシステムでは、電磁放射124は反射されない。
【0063】
図1および
図2のシステム100、200において、磁気光学媒体130は、電気化学デバイス110の磁場114が磁気光学媒体130と相互作用することにより偏光電磁放射124の偏光面を回転させ得るように位置決めされる。例えば、磁気光学媒体と電気化学デバイス110との間の距離は、0.1μm~1000μmであってもよい。適切には、この距離は1μm~750μmであり、より適切には5μm~500μmであってもよい。
【0064】
いくつかの例では、磁気光学媒体130は電気化学デバイス110に対して結合され得る。例えば、磁気光学媒体130は、電気化学デバイス110または反射層132の表面に対して接着された層であることが可能である。他の例では、磁気光学媒体130は、電気化学デバイスと一体化されてもよい。この例では、偏光電磁放射124は、磁気光学媒体130として機能する電気化学デバイス110の一部を通過し、その後センサ122にて受領される。
【0065】
電磁放射源120は、偏光電磁放射を発することが可能な任意のデバイスであってもよい。いくつかの例では、電磁放射源120は、外部ソースから電磁放射124を伝送する光ファイバケーブルであってもよい。いくつかの例では、これらの光ファイバケーブルは、偏光フィルタを備えてもよい。
【0066】
センサ122は、偏光電磁放射を受け取りそこから磁場114の特性を取得することのできる任意のデバイスであってもよい。例えば、センサ122はカメラデバイスであってもよい。他の例では、センサ122は、磁気光学媒体130を通過した例えば偏光電磁放射126などのデータを捕捉し、それを制御デバイス(図示せず)へと送出する送出デバイスであってもよい。例えば、光ファイバケーブル。
【0067】
センサ122は、電気化学デバイス110の特性を判定することが可能であってもよく、例えばセンサ122は、電気化学デバイス110にわたる電流分布を判定するために以降において説明される方法を実施することが可能であってもよい。これを目的として、センサ122は、受け取った偏光電磁放射126に基づき磁場データを取得し得る統合型制御デバイスを備えてもよい。
【0068】
磁気光学媒体130は、電磁放射を通過させて伝播し得る媒体である。例えば、磁気光学媒体130は透明な材料であってもよい。いくつかの例では、磁気光学媒体130は、電気化学デバイスに対して結合される層であってもよい。他の例では、磁気光学媒体130は、光ファイバケーブルの芯線の一部であってもよい。磁気光学媒体130は、0.01μm~750μmの間の厚さを有してもよい。適切には、磁気光学媒体130は、0.1μm~500μmの間の厚さであってもよく、より適切には0.6μm~10μmの間の厚さであってもよい。
【0069】
いくつかの例では、磁気光学媒体130は薄膜磁気光学結晶を備えてもよい。この磁気光学結晶は、例えばポリマーまたはガラス繊維などの透明な材料内に埋め込まれてもよい。これらの薄膜磁気光学結晶は、高いベルデ定数を有する結晶であってもよい。磁気光学媒体130が強磁性体材料またはフェリ磁性体材料である例では、磁気光学媒体130は、高い比旋光度および低い光吸収係数を、または前者対後者において10を上回る高い性能指数比を有し得る。いくつかの例では、磁気光学結晶としては、バリウムヘキサフェライト、テルビウムガリウムガーネット、およびビスマス置換希土類鉄ガーネットの中の少なくとも1つが含まれる。さらなる代替材料としては、Na2Ce(MoO4)2またはCeAlO3がある。鉄ガーネット材料は、他の既知の材料と比較して高い感度を有するため使用することができる。
【0070】
いくつかの例では、システム100、200は、
図1に示す1つまたは複数の保護層134をさらに備えてもよい。この保護層134は、追加的な保護を与えるために磁気光学媒体130を覆うように構成され得る。したがって、保護層134は、電磁放射124に対する透過性を有してもよい。いくつかの例では、保護層134は、保護層134内における電磁放射124の偏光面の回転が無視し得る低さとなるような低いベルデ定数を有していてもよい。
【0071】
保護層134は、絶縁ポリマーまたはガラスフィルムであってもよい。磁気光学媒体が磁気光学結晶を含む例では、磁気光学結晶は、ポリマーまたはガラス繊維内に埋め込まれることが可能である。換言すれば、保護層134は磁気光学媒体130と一体であってもよい。
【0072】
電磁放射源120は、所定の波長の放射を発してもよい。この放射の波長は、使用される磁気光学媒体130に応じて決定され得る。適切には、電磁放射124は可視スペクトル内であってもよい。適切な波長の例としては、400nm~800nmが含まれ、適切には500nm~700nmが、より適切には550nm~600nmが含まれるが、これに限定するものではない。例えば、590nmの電磁波長が使用されてもよい。
【0073】
さらに、いくつかの例では、電気化学デバイス110は、複数のセルを備えるバッテリであってもよい。複数のセルのそれぞれが、関連づけられた電磁放射源120および磁気光学媒体130を有してもよい。このようにすることで、システム100、200は、複数のセルおよび複数の磁気光学媒体の中の1つにそれぞれが関連づけられた複数の電磁放射源120であって、これらの複数の磁気光学媒体がこれらの複数のセルの中の1つにそれぞれが関連づけられた、複数の電磁放射源120を備えることができる。これらの例では、単一のセンサ122が、各電磁放射源120から複数の磁気光学媒体130の中の1つを通過した電磁放射124を受け取ることが可能であってもよい。あるいは、複数のセルのそれぞれが、関連づけられたセンサ122を有してもよい。システム100、200は、各セルが個別にモニタリングされるように複数の電磁放射源120を順次動作させて、バッテリ中にわたる電流分布の画像を構築してもよい。同様に、システム100、200は、関連づけられたセンサ122および磁気光学媒体130を有する複数のセルと、単一の電磁放射源とを備えてもよい。これらの構成物により、非常に短い期間で異なるセルをマッピングすることが可能となる。
【0074】
いくつかの例では、電磁放射源320またはセンサ322の一方または両方が、複数の光ファイバケーブル340、342であってもよい。光ファイバケーブル340、342の構成の一例を
図3に示す。この例では、電磁放射源320は、第1の複数の光ファイバケーブル340であり、センサ322は、第2の複数の光ファイバケーブル342である。例えば、第1の複数の光ファイバケーブル340は、外部の電磁放射源に対して接続され、システムに対して偏光電磁放射を伝送するように構成され得る。同様に、第2の複数の光ファイバケーブル342は、磁気光学媒体330を通過した偏光電磁放射を外部センサへと伝送するように構成され得る。
【0075】
第1の複数の光ファイバケーブル340および第2の複数の光ファイバケーブル342は、メッシュアレイ状または織成アレイ状に配置されてもよい。光ファイバケーブル340、342は、磁気光学媒体330および電気化学デバイス310に隣接して位置決めすることが可能である。
【0076】
光ファイバケーブル340、342は、磁気光学媒体330が電磁放射源320(第1の複数の光ファイバケーブル340)とセンサ322(第2の複数の光ファイバケーブル342)との間に挟まれるように配置されてもよい。代替的には、電磁放射源320(第1の複数の光ファイバケーブル340)およびセンサ322(第2の複数の光ファイバケーブル342)は、織り混ぜられるメッシュアレイまたは織成アレイであってもよい。いくつかの例では、第1の複数の光ファイバケーブル340または第2の複数の光ファイバケーブル342の一方または両方が、電気化学デバイス310の内部に埋設されることが可能である。
【0077】
いくつかの例では、光ファイバケーブル340、342は、反射層で部分的にまたは完全に被覆されてもよく、これは、環境への電磁放射損失を最小限に抑えるのに有効であり、これにより捕捉された電磁放射のほとんどが光ファイバに沿って外部センサへ進み戻ることが確保される。
【0078】
さらに他の例の構成では、磁気光学媒体330に磁気光学結晶を備えてもよい。この例では、光ファイバケーブル340、342および磁気光学結晶が、電気化学セルセパレータまたは固体電解質内に埋設され得る。また、磁気光学媒体330は、センサ322の光ファイバケーブル内に収容することもできる(
図5および
図6を参照)。
【0079】
電磁放射源320が複数の光ファイバケーブル340である例では、磁気光学媒体330(および電気化学デバイス310)は、順次照射されてもよい。例えば電磁放射源320は、複数の光ファイバ340a~340hであってもよい。センサ322は、電磁放射源320を形成する複数の光ファイバ340a~340hに対して垂直に配置された複数の光ファイバ342a~342fであってもよい。これらの光ファイバケーブル340a~340h、342a~342fは、磁気光学媒体330を覆う。次いで電磁放射源320は、第1の光ファイバケーブル340aから電磁放射を発し、次いで第2の光ファイバケーブル340bから電磁放射を発し、等々となり得る。このようにすることで、磁気光学媒体330の一部分が、表面全体にわたって順次照射される。次いで、センサ322は電磁放射を受け取り、電気化学デバイス上の電流分布がマッピングされ得る。
【0080】
この逐次的な照射は任意の順序であってもよく、例えば複数のケーブルが同時に放射を行っても、または単一のケーブルのみが放射を行ってもよい。放射順序を制御することのできるコントローラ(図示せず)が、システムに備えられてもよい。
【0081】
別の例では、磁気光学媒体330(および電気化学デバイス310)は、光ファイバケーブル340a~340hにより照射されてもよく、この場合に光ファイバケーブル340a~340hのうちの1つまたは複数が、異なる波長の電磁放射を発するように構成される。例えば、電磁放射源320は、第1の光ファイバケーブル340aからある波長で電磁放射を発し、同時に第2の光ファイバケーブル340bから異なる波長で電磁放射を発してもよい。したがって、これらの異なる波長により電流分布の位置マッピングを改善することが可能となり得る。
【0082】
いくつかの例では、光ファイバケーブル340a~340hのグループが、それぞれ異なる波長で順次照射されてもよい。例えば、5本の隣接し合う光ファイバケーブル340a~340hがそれぞれ異なる波長で同時に照射され、次いで照射が停止され、次いで次の5本が、再度それぞれ異なる波長で照射される、等々となり得る。
【0083】
複数の光ファイバケーブル340、342は、1μm~100μmの直径を有してもよく、適切には3μm~75μmの直径を、より適切には5μm~50μmの直径を有し得る。複数の光ファイバケーブル340、342は、1cmの磁気光学媒体の表面積中に1~10,000本の光ファイバケーブル340、342が含まれるように配置されてもよく、適切には1cmの磁気光学媒体の表面積中に10~1000本の光ファイバケーブル340、342が含まれるように配置されてもよい。例えば、10μmの光学解像度が必要とされる場合には、10μmの直径を有する1000本のファイバが、1cmの磁気光学媒体の表面積中に配置される。
【0084】
電磁放射源320またはセンサ322の一方または両方に対して光ファイバケーブルを使用することにより、磁場の詳細なマップを、およびしたがって電気化学デバイス310の電流分布の詳細なマップを構築することが可能である。さらに、システムが電池セルまたは電解槽スタックなどの複数の電気化学デバイス310から構成される例では、光ファイバケーブルを使用することにより、デバイス全体のサイズを大幅に増大させることなくモニタリングシステムを設置することが可能となる。
【0085】
次に
図4~
図6を参照すると、光ファイバケーブルを備えるシステム400、500、600の例示的な構成が概略的に示される。これらの図は、明瞭化のために単一の光ファイバケーブル442、542、642を図示するが、図示されている各実施形態に対して複数の光ファイバケーブルが使用されることも可能である点を理解されたい。
【0086】
図4に示す例では、システム400は、上述したように電磁放射源または光ファイバケーブルアレイであってもよい電磁放射源420を備える。電磁放射源420は、磁気光学媒体430に向けて偏光電磁放射424を発するように構成される。この場合に、磁気光学媒体430は、電気化学デバイス410に隣接し、この電気化学デバイス410は、電流412がデバイス410にわたり流れ、したがって垂直方向磁場414を生成する。
図4の例では、磁気光学媒体430は電気化学デバイス410に結合さる。反射層432は、磁気光学媒体430と電気化学デバイス410との間に挟まれる。反射層432は、偏光電磁放射424が磁気光学媒体430を2度通過するように、磁気光学媒体430を通して偏光電磁放射424を反射させて戻す。反射された偏光電磁放射426は、光ファイバケーブル442であるセンサ422によって受領される。
【0087】
図5に示す例では、システム500は、
図4と同様の構成を備える。しかしこの例では、センサ422は、磁気光学媒体530を備える光ファイバケーブル542である。この例では、電磁放射源420は、電気化学デバイス410に対して結合された反射層432へと偏光電磁放射424を発する。反射された偏光電磁放射426は、光ファイバケーブル542内の磁気光学媒体530を通過する。すなわち、偏光電磁放射424は、(反射後に)1度だけ磁気光学媒体530を通過する。
【0088】
図6に示す例では、センサ422は、
図5の場合と同様に磁気光学媒体630を備える光ファイバケーブル642である。追加的に、光ファイバケーブル642は、光ファイバケーブル642を部分的に覆い得る反射層632を備える。この例では、電磁放射源420は、光ファイバケーブル642を部分的に覆う反射層432へ偏光電磁放射424を発する。
【0089】
反射された偏光電磁放射426は、光ファイバケーブル642内の磁気光学媒体630を通過する。このようにすることで、光ファイバケーブル642は、電気化学デバイス410の付近に配置されることだけが必要となる。すなわち、光ファイバケーブル642は、磁気光学媒体630が磁場414と相互作用することにより偏光電磁放射424の偏光面が回転され得るように、電気化学デバイス410に対して十分な近くに位置決めされなければならない。反射層432は、磁気光学媒体630の上に位置決めされてもよい。このようにすることで、電磁放射は、磁気光学媒体630を2度通過し、1度目は入射ビームとして、2度目は反射ビームとして通過する。
【0090】
反射層432は、光ファイバケーブル642の外側部を反射コーティングでコーティングすることによりこのファイバ上に備えられてもよい。これにより、電磁放射がセンサ422へと戻る効率が改善され、他の場所に放射される電磁放射量が減少する。換言すれば、電気化学デバイス410に対面する光ファイバケーブル642のセクションは、反射コーティングを有さず、電気化学デバイス410から離れる方向を向くセクションは、反射層432を有する。
【0091】
図7を参照すると、上述のシステムを利用する一例の方法が示される。第1のステップS750は、電磁放射源から磁気光学媒体を通して偏光電磁放射を発することを含む。この磁気光学媒体は、電流が流れている電気化学デバイスに対して、この電流により発生した磁場が磁気光学媒体と相互作用するように位置決めされる。この磁気光学媒体により、電磁放射の偏光面がファラデー効果によって回転されることになる。この回転は、電気化学デバイスの磁場強度に比例する。次いで、ステップS752にて、センサが、磁気光学媒体を通過した(したがって回転された)偏光電磁放射を受け取る。偏光電磁放射の回転量は、電気化学デバイスにわたる電流分布の変化に応じて変化することになる。この方法は、電気化学デバイスの複数の位置にて同時に実施されることが可能であり、いくつかの場合ではこの方法は、電気化学デバイスの複数の位置にて繰り返されてもよい。
【0092】
次いで、
図8に示すように、ステップS754では電磁放射の偏光面の回転角度が判定され得る。偏光面の回転角度は、受け取られた電磁放射の偏光面を発せられた既知の偏光面と比較することによって判定され得る。また、この回転角度は、電磁放射が磁気光学媒体を通過する回数によっても左右され得る。例えば、センサへの反射を利用するシステムでは、磁気光学媒体が偏光面を2倍回転させ得る。したがって、回転角度の計算はシステムの構成により異なることになる。いくつかの例では、システムは、これらの計算を実施するためのコントローラを備えてもよい。
【0093】
したがって
図9に示すように、ステップS756では、磁場の強度が偏光面の回転角度に基づき判定され得る。この磁場は、ベクレルの公式を使用して判定され得る。したがって、磁場の変化は、回転角度の違いによって示されることになる。これにより、0mT~10mTの感度を有する、適切には0mT~5mTの感度を有する、および最も適切には0mT~2.5mTの感度を有するシステムが可能になる。この磁場の変化は、電気化学デバイスにわたって位置的にマッピングされ得る。有利には、これにより、
図10A~11Dに示すように電気化学デバイスの磁束密度マップを生成することが可能となる。
【0094】
次いでステップS758では、マッピングされた領域内の対応する局所電流が、判定された磁場強度に基づき計算され得る。次いで、これは電流密度分布マップに変換され得る。この変換は、バッテリ全体の記録された平均磁場磁束に対する放電(または充電電流)の比率で磁束密度マップをスケーリングすることによって実施されることが可能である。
図11Bおよび11Cの例では、これは40倍(4A/0.1mT)となる。この例における平均磁束密度は、バッテリ全体ではなくバッテリの小セクションを分析する(従来の方法を利用して)ことにより取得され得る。
【0095】
代替的には、より正確な変換が、空気/アルミニウムの約10-6H/mの材料透磁率を利用して磁束密度を磁場強度に変換することによって実現され得る。0.1mTの磁束密度は100A/mに変換できる。センサの磁気光学層からバッテリ電極までの距離が例えば220μmであると判明した場合には、22mAの等価電流が、磁束密度が検出されたマッピング領域において電極電流コレクタに流れ込んでいるということができる。電流をその電流が検出された面積で除算することにより、電流密度が算出され得る。
【0096】
これらの電流分布マップは、経時的に生成することが可能であり、例えば
図11Aおよび
図11Bはそれぞれ、異なる期間における4つの電流分布マップを示す。
図11Aは1回目の放電における電気化学デバイスを示し、
図11Bは40回目の放電における電気化学デバイスを示す。これらの図から分かるように、電流分布マップは、バッテリが古くなりサイクルが進むにつれて変化する。これは、1回目のサイクルの最高データと40回目のサイクル後の最低データとを比較することにより、電流密度の不均一性と経年による電気化学デバイスとの直接的な相関関係を示す。これにより、例えば
図11Dに示すような電流ホットスポット1160の特定が可能となる。ホットスポット1160は、周囲と比較して例えば平均値の30%を上回るなど非常に高い局所磁束を有する領域と見なされてもよい。ホットスポット形成およびデンドライト形成は、特に長期間にわたり同一領域において継続的に検出される場合には熱暴走リスクを示唆する。また、これらの形成は、バッテリ製造の欠陥を示唆する場合があり、品質管理評価のために利用することが可能である。
【0097】
したがって、電流密度のこの変化をモニタリングすることにより、デバイス製造の品質管理の評価、経年劣化の検出、耐用寿命の推定、故障モードの予測、またはシステム制御を介した是正措置の実施を行うことが可能となる。例えば、この方法は、局所電流密度の変化とバッテリの経年劣化との間に直接的な相関関係が見られる場合には、燃料電池のフラッディングまたはバッテリの経年劣化を検出することが可能である。さらに、この方法は、差し迫った故障と相関関係がある場合のある電流密度が非常に高いまたは低い領域を強調表示することが可能である。この情報は、制御システムへとフィードバックされ、それにより例えばバッテリの充電率もしくは放電率の低さなどにおいて緩和措置をとるまたはサービスアラームを発動することが可能となる。また、この情報は、セルの大型パックから故障セルを位置特定しさらにセル自体内の領域を位置特定するために、または製造後におけるバッテリの品質管理評価のためにも利用できる。
【0098】
実施例
2つのLi-ionパウチ型および角柱型セルを試験した。2000mAhおよび4000mAhの容量を有するセルを試験した。2000mAhセルは、40×55×5.8mm(高さ、幅、厚さ)の外寸を有し、電極の総面積は、440cm
2(80×5.5cm、ラップ済み)であった。
図10Aに示すように、磁束密度マップを2C(4A)から検出することができた。これは4/440=90mAcm
-2の電流密度と言い換えることができる。同様に、
図10Bの4000mAhバッテリの場合には、磁場マッピングは、4A以上の電流から、すなわち1Cの放電率または4/870=46mAcm
-2相当の電流密度から視認可能であった。セルは、50×100×5mm(高さ、幅、厚さ)の寸法を有し、電極の総面積は870cm
2(87×100cm、ラップ済み)であった。
【0099】
角柱型セルの外部絶縁体の厚さは220μmであった。70μmの合計厚さを有するグラフェンのアノード活性層が、50μmの銅フォイルの両側に隔てられた。45μmの合計厚さを有するニッケル-マンガン-コバルト酸化物層のカソード活性層が、25μmのアルミニウムフォイルの両側に被覆された。バッテリは、1-4Cのレートで充電および放電された。
【0100】
4000mAhバッテリの一部を、20.5mm×15.5mmのセンサ上に平置し、このセンサは、薄い磁気光学コーティング(保護ポリマー表面を有する5μmのアルミニウム反射層が頂部に載置されたPF>1°/μm(すなわち590nmの電磁放射にて10,000°/cm)のファラデー比旋光度を有する1~10μmのビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶フィルム層)で被覆されたガラス基板から構成される。置換鉄ガーネットフィルムは、可視化装置として使用されるあらゆる磁気光学材料の中で最高の磁気分解能を有し、下は10A/mまでの磁場または0.01mTの磁場磁束が検出され得る(M.R.KoblischkaおよびR.J.Wijngaarden、「Magneto-optical investigations of superconductors」、Supercond. Sci. Technol.、8:199、1995年)。センサの飽和範囲は、0.05~2.0mTの動作範囲を有する約10-6H/mの透磁率(空気、銅、アルミニウムの場合)を考慮した場合、2mTの磁束密度または2kA/mの磁場強度の付近であった。
【0101】
波長590nmの偏光を使用した場合のファラデー回転は、室温にてセンサを通過する反射光が1度の通過する場合に1.5°/mT、または2度通過する場合には(実質的に2倍の移動距離または層厚さ)3°/mTに相当する。使用されるセンサの検出下限の磁束密度が0.05mTの場合に、0.15°の偏光の回転が検出されることになる。590nmの波長を有する偏光が、ガラス基板の裏側表面に、すなわちバッテリが配置された面の反対側表面に入射した。この光は、ガラスおよび磁気光学層を通過し、次いでアルミニウムミラー層によって反射されて、局所磁束密度に応じて異なる回転角度で磁気光学層およびガラスを二度通過する。次いで、この反射光は、アナライザ-偏光フィルタモジュールを経由し、次いで5MP CCDカメラへ進んで、25μmの光学解像度でバッテリの磁場分布マップを表示する強度コントラスト画像を生成する。時間および充放電サイクル(1および40)による磁束密度マップの漸進的変化が、
図11Bおよび
図11Cにおいて分かる。2Cの適度な電流密度および充電率にもかかわらず、バッテリ電極における電流分布の大きな変化を反映した磁束密度マップの良好な検出を得ることができたことが分かる。
【0102】
電気自動車の場合には、急速充電による4~10Cというはるかに高い充電率が望ましい。マップを分析すると、経時的に磁束密度の低い領域(平均の20%未満)と、経時的に磁束密度の高い領域(平均の20%超)とを識別することができる。また、この分析により、所与のサイクルにおける電極の放電または充電の不均一性が示され、すなわちこのサイクルの最中に経時的に最も活性の高い領域が最初に放電(または充電)を開始して、バッテリ電圧の低下(または上昇)につれて時間と共に最初により活性の低い領域へと移動する様式が示される。非常に高い局所磁束(平均値の50%超)を有する小領域が、長期間にわたり同一領域において継続的に検出される場合には、この領域は、熱暴走リスクを伴うホットスポット形成およびデンドライト形成を示唆する可能性がある。例えば
図11Dでは、ホットスポット1160の領域が60秒(40回目の放電)にて検出される。この高い活性は、それ以前となる放電開始から10秒の時点(
図11C)またはその後となる120秒の時点(
図11D)では検出されなかった。したがって、この高活性は、バッテリが放電開始状態にあることを前提した場合にここで予期されるデンドライト形成リスクとは見なされない。
【0103】
他方において、充電サイクルの終了に向かって100秒間にわたりホットスポットが長期的に検出される場合には、これは、デンドライト形成または差し迫った重大バッテリ故障を連続的に示唆するものとなり得る。例えばマップ内の磁束密度の最小値/最大値および平均値などキャプチャされたマップ/データに対して、様々な分析を行うことが可能である。これは、X軸またはY軸におけるある特定の領域または線を選択することによって行い得る。x軸方向に磁束密度の変化を示すy軸の中間に位置する線を選択することによる簡単な分析の一例が示される。
図11Cおよび11Dに示す簡単な分析から、バッテリの経年劣化に伴う磁場磁束密度の標準偏差の増大が明らかである。マッピング領域全体をさらに複雑に分析するほど、さらに有用なものになる。例えば、
図11B~
図11Dによれば、経年劣化により電極全体にわたる磁場分布が不均一になり、電極のモニタリングされた領域の上側および左上側に向かって密度がより高くなることが明らかである。
図12では、1回目のサイクルと40回目のサイクルとの間において8Aの放電率にて3400mAhから2200mAhへの大幅な容量損失が生じることが明確に理解できる。
【0104】
本明細書では複数のシステム構成を説明したが、ファラデー効果を利用して電気化学デバイスの電流分布を計測することのできるあらゆる構成が、本特許請求の範囲に含まれることが予期される。さらに、単一の例のみに関連して説明される特徴は、別様の指定がない限り他の例に含まれてもよい。
【0105】
図面全体を通じて、電流が左から右に流れることにより結果として上方向磁場(ページにおいて見た場合)が生じるものとして示されるが、この電流の方向は任意の方向であることが可能であり、したがって結果的に得られる磁場は任意の垂直方向であることが可能である点を理解されたい。
【0106】
上述のセンサは、電気化学デバイスに対して後から装着されてもよく、または電気化学デバイスと共に使用されるように別個に用意されてもよい。
【0107】
有利には、上述のシステム、センサ、および方法は、電気化学デバイスに対して非侵襲的である改良されたモニタリング方法を提供する。さらに、上述のシステム、センサ、および方法は、電気化学デバイスの変化を検出することが可能であり、したがって電気化学デバイスが非均質性を有する場合であっても他の場合であれば未検出のままとなり得る問題が明らかになる。
【0108】
本明細書全体を通じて、「備える」および「含む」という語ならびにその変形語は、「含むがそれらに限定されない」を意味し、他の構成要素、完全体、またはステップを排除するように意図されるものではない(および排除しない)。本明細書全体を通じて、単数形は、文脈上において別段の必要性がない限り複数形を包含する。特に不定冠詞が使用されている場合には、文脈上において別段の必要性がない限り、本明細書は複数形のみならず単数形も想定するものとして理解されたい。本明細書全体を通じて、「約」という語は、所与の数値が端点を「若干上回り」得るまたは「若干下回り」得ることを提示することによって範囲の端点に自由度を与えるために使用される。この用語の自由度は、その特定の変数により決定され得るものであり、経験および本明細書における関連説明に基づき決定され得る。
【0109】
本発明のある特定の態様または例との組合せにおいて説明される特徴、完全体、または特性は、矛盾のない限り、本明細書において説明される任意の他の態様または例に対して適用可能である点を理解されたい。本明細書において開示されるすべての特徴、および/または本明細書において開示される任意の方法もしくはプロセスのすべてのステップは、かかる特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いては、任意の組合せで組み合わされてもよい。本発明は、いかなる前出の例の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書において開示される任意の新規の特徴または特徴の組合せにまで及ぶ。また、本明細書全体を通じて、「YのためのX」(ここでYは何らかの行為、活動、またはステップであり、Xはかかる行為、活動、またはステップを実施するための何らかの手段である)という一般的な形式の表現は、特にしかし限定するものではないがYを行うために適合化または構成された手段Xを包含する点を理解されたい。
【0110】
本明細書において開示される各特徴は、別様のことが明示されない限り、同一、同等、または同様の目的を果たす代替的な特徴に置き換えられてもよい。したがって、別様のことが明示されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または同様の特徴の中の1つの例にすぎない。
【0111】
読者の注意は、本願に関連して本明細書と同時にまたはそれ以前に出願され、本明細書と共に公開されているすべての論文および文献に対して向けられ、かかるすべての論文および文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0112】
100 システム
110 電気化学デバイス
112 電流、電流の方向
114 磁場、磁場方向
120 電磁放射源
122 センサ
124 偏光電磁放射
126 受け取った偏光電磁放射
130 磁気光学媒体
132 反射層
134 保護層
200 システム
222 センサ
310 電気化学デバイス
320 電磁放射源
322 センサ
330 磁気光学媒体
340 第1の複数の光ファイバケーブル
342 第2の複数の光ファイバケーブル
400 システム
410 電気化学デバイス
412 電流
414 垂直方向磁場
420 電磁放射源
422 センサ
424 偏光電磁放射
426 偏光電磁放射
430 磁気光学媒体
432 反射層
442 光ファイバケーブル
500 システム
530 磁気光学媒体
542 光ファイバケーブル
630 磁気光学媒体
632 反射層
642 光ファイバケーブル
1160 電流ホットスポット
340a 光ファイバ、光ファイバケーブル
340b 光ファイバ、光ファイバケーブル
340c 光ファイバ、光ファイバケーブル
340d 光ファイバ、光ファイバケーブル
340e 光ファイバ、光ファイバケーブル
340f 光ファイバ、光ファイバケーブル
340g 光ファイバ、光ファイバケーブル
340h 光ファイバ、光ファイバケーブル
【国際調査報告】