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特表2025-500785高性能ハイブリッドフルオロポリマー複合材料膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】高性能ハイブリッドフルオロポリマー複合材料膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/42 20060101AFI20250107BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20250107BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250107BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20250107BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20250107BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20250107BHJP
【FI】
C08F8/42
C08F214/18
C08J5/18 CEW
H01M10/0565
H01G11/86
H01G11/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534201
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022084810
(87)【国際公開番号】W WO2023104890
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21213289.8
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524170522
【氏名又は名称】サイエンスコ エスアー
(71)【出願人】
【識別番号】506075182
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ トリノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ アー.
(72)【発明者】
【氏名】バッテガッツォーレ, ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナゴッツィ, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】フラッチェ, アルベールト
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ, アントーニオ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J100
5E078
5H029
【Fターム(参考)】
4F071AA26X
4F071AA78
4F071AA88
4F071AB26
4F071AF15
4F071AF20
4F071AF21
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4F071BA02
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4J100AC21P
4J100AC23P
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4J100AC26P
4J100AC27P
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4J100AJ02Q
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4J100CA05
4J100CA31
4J100HA08
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4J100HC83
4J100HC84
4J100HD07
4J100HD08
4J100HD09
4J100JA43
5E078AB06
5E078DA12
5E078DA18
5H029AJ11
5H029AJ14
5H029AM07
5H029AM16
5H029CJ02
5H029CJ06
5H029CJ08
5H029EJ14
5H029HJ02
5H029HJ04
(57)【要約】
本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造方法、前記フルオロポリマーに基づく高分子電解質膜、及び様々な用途、特に電気化学用途における前記電解質膜の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]の製造方法であって、
(i)液体媒体[媒体(L)]と少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とを含有する組成物[組成物(C1)]を準備する工程であって、前記ポリマー(F)が、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、
- ヒドロキシル基、アミン、カルボキシル、チオール、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]に由来する繰り返し単位と
を含む工程;
(ii)組成物(C1)を、式(I)の少なくとも第1の金属化合物[化合物(M1)]:
4-mAY (I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1つのXは、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む)
と接触させて、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の少なくとも一部を化合物(M1)の少なくとも一部と反応させ、それにより-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2)]を得る工程;
(iii)組成物(C2)を、化合物(M1)とは異なる式(II)の少なくとも1種の第2の金属化合物[化合物(M2)]:
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、m’は1~4の整数であり、A’は、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Y’の各存在は加水分解性基であり、X’の各存在は炭化水素基であり、任意選択的に基(FX)とは異なる少なくとも1つの官能基[基(FX’)]を含む)
と接触させて、化合物(M2)の少なくとも一部をポリマー(F-j)の前記-AYペンダント基の少なくとも一部と反応させ、
それにより、-A’Y’ペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-g)]を含む組成物[組成物(C3)]を得る工程;並びに
(iv)ポリマー(F-g)の前記-A’Y’ペンダント基を加水分解及び/又は縮合し、それによって少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物[組成物(C4)]を得る工程;
を含む方法。
【請求項2】
モノマー(FPM)が、式(III):
【化1】

(式中、
、R及びRは、互いに等しいか又は異なり、水素原子及びC~C炭化水素基から独立して選択され、
は、ヒドロキシル基、アミン、カルボン酸基、チオール基、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含むC~C20炭化水素部位である)
の水素化モノマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノマー(FPM)が、式(IV):
【化2】
(式中、R、R及びRは、互いに等しいか又は異なり、水素原子及びC~C炭化水素基から独立して選択され、RHは、水素原子であるか、又はヒドロキシル基、アミン、カルボキシル基、チオール基、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含むC~C20炭化水素部位である)
の(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
モノマー(FPM)が、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレート、アクリル酸(AA)、及びコハク酸1-[2-(アクリロイルオキシ)プロピル]エステルからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
モノマー(FM)が、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー(F)が半結晶性であり、ジメチルホルムアミド中で25℃で測定される0.05l/g~0.80l/g、より好ましくは0.10l/g~0.50l/g、さらに好ましくは0.2l/g~0.4l/gに含まれる固有粘度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
媒体(L)が、有機カーボネート、イオン液体(IL)、溶媒(S)、又はそれらの混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
溶媒(S)が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、脂肪族ケトン、脂環式ケトン、脂環式エステルからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー(F)が、
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)と、
(b)任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~10モル%、より好ましくは0.1モル%~5モル%の、フッ化ビニル(VF1)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1種のモノマー(FM)と、
で表される少なくとも1種の式(I)の化合物又はその塩;
(c)0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~2モル%のアクリル酸(AA)と、
を含み、
前記ポリマー(F)が、ジメチルホルムアミド中で25℃で測定される0.2l/g~0.4l/gに含まれる固有粘度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法により得られるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]。
【請求項11】
グラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]であって、
(i)液体媒体[媒体(L)]と少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とを含有する組成物[組成物(C1)]を準備する工程であって、前記ポリマー(F)が、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、
- ヒドロキシル基、アミン、カルボキシル、チオール、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]に由来する繰り返し単位と、を含む工程;
(ii)組成物(C1)を、式(I)の少なくとも第1の金属化合物[化合物(M1)]:
4-mAY (I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1つのXは、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む)
と接触させて、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の少なくとも一部を化合物(M1)の少なくとも一部と反応させ、それにより-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2)]を得る工程;
(iib)組成物(C2)を濾過することによってフルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を固体として単離し、固体を極性溶媒で洗浄し、乾燥して乾燥ポリマー(F-j)を回収する工程;
を含む方法によって得られるグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]。
【請求項12】
請求項11に記載の少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含むフルオロポリマーフィルム。
【請求項13】
5~300ミクロン、好ましくは10~50ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項12に記載のフルオロポリマーフィルム。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含むフルオロポリマーフィルムの製造方法であって、
(i)液体媒体[媒体(L)]と少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とを含有する組成物[組成物(C1)]を準備する工程であって、前記ポリマー(F)が、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、
- ヒドロキシル基、アミン、カルボキシル、チオール、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]に由来する繰り返し単位と、
を含む工程;
(ii)組成物(C1)を、式(I)の少なくとも第1の金属化合物[化合物(M1)]:
4-mAY (I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1つのXは、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む)
と接触させて、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の少なくとも一部を化合物(M1)の少なくとも一部と反応させ、それにより-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2)]を得る工程;
(iii)組成物(C2)を、化合物(M1)とは異なる式(II)の少なくとも1種の第2の金属化合物[化合物(M2)]:
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、m’は1~4の整数であり、A’は、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Y’の各存在は加水分解性基であり、X’の各存在は炭化水素基であり、任意選択的に基(FX)とは異なる少なくとも1つの官能基[基(FX’)]を含む)
と接触させて、化合物(M2)の少なくとも一部をポリマー(F-j)の前記-AYペンダント基の少なくとも一部と反応させ、
それにより、-A’Y’ペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-g)]を含む組成物[組成物(C3)]を得る工程;並びに
(iv)ポリマー(F-g)の前記-A’Y’ペンダント基を加水分解及び/又は縮合し、それによって少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物[組成物(C4)]を得る工程;
(v)工程(iv)で得られた少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物(C4)をフィルムへと加工する工程;及び
(vi)工程(v)で得られたフィルムを乾燥させる工程;
を含む方法。
【請求項15】
高分子電解質膜の製造方法であって、
(i)液体媒体[媒体(L)]と少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とを含有する組成物[組成物(C5)]を準備する工程であって、前記ポリマー(F)が、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、
- ヒドロキシル基、アミン、カルボキシル、チオール、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]に由来する繰り返し単位と、を含み、
前記液体媒体(L)が少なくとも1種の金属塩(S)も含む工程;
(ii)組成物(C5)を、式(I)の少なくとも第1の金属化合物[化合物(M1)]:
4-mAY (I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1つのXは、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む)
と接触させて、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の前記基(FX)の少なくとも一部を化合物(M1)の少なくとも一部と反応させ、それにより-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2’)]を得る工程;
(iii)組成物(C2’)を、化合物(M1)とは異なる式(II)の少なくとも1種の第2の金属化合物[化合物(M2)]:
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、m’は1~4の整数であり、A’は、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Y’の各存在は加水分解性基であり、X’の各存在は炭化水素基であり、任意選択的に基(FX)とは異なる少なくとも1つの官能基[基(FX’)]を含む)
と接触させて、化合物(M2)の少なくとも一部をポリマー(F-j)の前記-AYペンダント基の少なくとも一部と反応させ、
それにより、-A’Y’ペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-g)]を含む組成物[組成物(C3’)]を得る工程;
(iv)ポリマー(F-g)の前記-A’Y’ペンダント基を加水分解及び/又は縮合し、それにより、少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物[組成物(C4’)]を得る工程;
(v)組成物(C4’)をフィルムへと加工する工程;並びに
(vi)工程(v)で得られたフィルムを乾燥させる工程;
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の高分子電解質膜を含む電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月9日出願の欧州特許出願第21213289.8号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造方法、前記フルオロポリマーに基づく高分子電解質膜、及び様々な用途、特に電気化学用途における前記電解質膜の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノレベル又は分子レベルで無機固体が有機ポリマー中に分散している有機-無機ポリマーハイブリッドは、それらの独特な特性のため、多大な科学的、技術的及び工業的関心を集めている。
【0004】
有機-無機ポリマーハイブリッド複合材料を作り出すために、金属アルコキシドを使用するゾルゲル法が最も有用且つ重要な手法である。
【0005】
予め形成された有機ポリマーの存在下において、金属アルコキシド、特にアルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)又はテトラエトキシシラン(TEOS))の加水分解及び重縮合の反応条件を適切に制御することにより、元の化合物と比べて特性が改善されたハイブリッドを得ることが可能である。ポリマーは、さもなければ脆い無機材料の靭性及び加工性を向上させることができ、ここで、無機ネットワークは、前記ハイブリッドの耐引掻性、機械的特性及び表面特性を向上させることができる。
【0006】
フルオロポリマー、特にフッ化ビニリデンポリマーから出発するゾルゲル手法により製造されるハイブリッドは、当該技術分野において公知である。
【0007】
例えば、国際公開第2013/160240号パンフレットは、液体媒体を安定に含んで保持し且つ傑出したイオン伝導性を有する自立型フルオロポリマー膜を提供するための、液体媒体の存在下でのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造を開示している。ハイブリッド有機/無機複合材料は、液体媒体及び1種の電解塩の存在下で、特定の官能化フルオロポリマーの-OH官能基をシリルイソシアネート及びアルコキシシランと反応させ、次いで前記混合物を加水分解及び/又は重縮合することを含む方法によって得ることができる。その後、得られた液体混合物は、溶媒キャスティング手順によって膜に加工され、乾燥されることで膜が得られる。前記膜は、二次電池などの電気化学デバイスにおいて使用するのに適したポリマー膜として使用することができる。シリルイソシアネートの使用は、有機カーボネートを液体媒体として使用する方法において必須であるとされている。
【0008】
残念なことに、特異的な反応性及び反応条件のため、イソシアネートを利用する方法では、フルオロポリマーの選択肢が、ヒドロキシル官能基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含むものに限定される。
【0009】
したがって、この分野では、異なるグレードのフルオロポリマーを含む複合材料の調製に適したフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を製造する方法が求められている。
【0010】
本発明者らは、予期しなかったことに、特定の汎用金属化合物をグラフト剤として利用する本発明の方法によって、多様なフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を適切に調製することができ、改善された機械的特性及び柔軟性を有する複合材料を得られるという追加の利点も得られることを実証した。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]の製造方法であり、前記方法は、
(i)液体媒体[媒体(L)]と少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とを含む組成物[組成物(C1)]を準備する工程であって、前記ポリマー(F)が、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、
- ヒドロキシル基、アミン、カルボキシル、チオール、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]に由来する繰り返し単位と、を含む工程;
(ii)組成物(C1)を、式(I)の少なくとも第1の金属化合物
[化合物(M1)]:
4-mAY (I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1つのXは、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む)
と接触させて、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の少なくとも一部を化合物(M1)の少なくとも一部と反応させ、それにより-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2)]を得る工程;
(iii)組成物(C2)を、
化合物(M1)とは異なる式(II)の少なくとも1種の第2の金属化合物[化合物(M2)]:
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、m’は1~4の整数であり、A’は、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Y’の各存在は加水分解性基であり、X’の各存在は炭化水素基であり、任意選択的に基(FX’)とは異なる少なくとも1つの官能基[基(FX’)]を含む)
と接触させて、化合物(M2)の少なくとも一部をポリマー(F-j)の-AYペンダント基の少なくとも一部と反応させ、それにより、-A’Y’ペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-g)]を含む組成物[組成物(C3)]を得る工程;並びに
(iv)ポリマー(F-g)の-A’Y’ペンダント基を加水分解及び/又は縮合し、それによって少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物[組成物(C4)]を得る工程;
を含む。
【0012】
本発明の第2の目的は、本発明の方法によって得られるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]に関する。
【0013】
本発明の方法の工程(ii)で形成されるポリマー(F-j)は新規であり、本発明のさらなる態様を表す。
【0014】
別の目的では、本発明は、本発明による少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含むフルオロポリマーフィルムを提供する。
【0015】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含むフルオロポリマーフィルムの製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリマー(F)は、典型的には、少なくとも1種のモノマー(FM)と少なくとも1種のモノマー(FPM)との重合によって得られる。
【0017】
モノマー(FPM)は、少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む(全)フッ素化モノマー及び水素化モノマーから選択することができる。
【0018】
適切な水素化モノマー(FPM)は、式(III)のモノマーである:
【化1】
(式中、
、R及びRは、互いに等しいか又は異なり、水素原子及びC~C炭化水素基から独立して選択され、
は、ヒドロキシル基、アミン、カルボン酸基、チオール基、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含むC~C20炭化水素部位である)。
【0019】
Rxは、基(FX)とは異なる他の官能基を含んでいてもよく、またヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0020】
用語「フッ素化モノマー(FM)」とは、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0021】
用語「少なくとも1種のフッ素化モノマー」は、ポリマー(F)が、1種又は2種以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のためには、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上で定義されたような1種又は2種以上のフッ素化モノマーの両方を意味する。
【0022】
好適なモノマー(FM)の非限定的な例としては、とりわけ、
- C~Cパーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレン;
- C~C水素化フルオロオレフィン、例えばフッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキルである)のパーフルオロアルキルエチレン;
- クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル、例えばCF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- CF=CFOX(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、C~C12アルキル基、C~C12オキシアルキル基又はパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基などの1つ以上のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基である);
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、C、又は-C-O-CFなどの、1個若しくは複数のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル基である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキル基若しくは(パー)フルオロアルキル基、C~C12オキシアルキル基又は1つ以上のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、Yは、その酸、酸ハライド又は塩の形態でカルボン酸又はスルホン酸基を含む)の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソールが挙げられる。
【0023】
好ましいポリマー(F)は、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(FM)に由来する繰り返し単位を含むものである。
【0024】
ポリマー(F)は、典型的には、式(III)の少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]:
【化2】
(式中、
、R及びRは、互いに等しいか又は異なり、水素原子及びC~C炭化水素基から独立して選択され、
は、ヒドロキシル基、アミン、カルボン酸基、チオール基、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含むC~C20炭化水素部位である)に由来する繰り返し単位を0.02モル%~5.0モル%含み、
前記モルパーセントは、ポリマー(F)の繰り返し単位の総モル数に関するものである。
Rxは、基(FX)とは異なる他の官能基を含んでいてもよく、またヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0025】
モノマー(FPM)は、特に、式(IV)の(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される:
【化3】
(式中、R、R、及びRは上で定義した通りであり、RHは、水素原子であるか、又はヒドロキシル基、アミン、カルボキシル基、チオール基、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含むC~C20炭化水素部位である)。より好ましくは、前記官能基(FX)は、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群から選択される。
【0026】
モノマー(FPM)の非限定的な例としては、特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレート、アクリル酸(AA)、及びコハク酸1-[2-(アクリロイルオキシ)プロピル]エステルが挙げられる。
【0027】
モノマー(FPM)中の官能基(FX)がアミンである場合、それは第一級及び第二級アミンから適切に選択することができる。前記アミンは、脂肪族アミンと芳香族アミンの両方であってもよい。
【0028】
ポリマー(F)中のモノマー(FRM)繰り返し単位の平均モルパーセントの決定は、任意の好適な方法によって行うことができる。特に、酸-塩基滴定法(例えばカルボン酸含有量の決定に適切である)、NMR法(側鎖に脂肪族水素原子を含むモノマー(FPM)の定量化に適切である)、ポリマー(F)製造中の全ての供給されたモノマー(FPM)及び未反応の残留モノマー(FPM)に基づく重量バランスを挙げることができる。
【0029】
特定の好ましい実施形態では、モノマー(FPM)はポリマー(F)中にランダムに分布している。前記実施形態では、モノマー(FPM)の少なくとも40%の割合が前記ポリマー(F)中にランダムに分布している。
【0030】
「ポリマー(F)中にランダムに分布している」という表現は、モノマー(FM)に由来する2つの繰り返し単位の間にあるモノマー(FPM)配列の平均数(%)と、モノマー(FPM)繰り返し単位の平均総数(%)との間のパーセント比を、以下の式に従って表すことが意図されている:
【数1】
【0031】
(FPM)繰り返し単位のそれぞれが、孤立している、すなわち、モノマー(FM)の2つの繰り返し単位の間に含まれている場合、(FPM)配列の平均数は、(FPM)繰り返し単位の平均総数に等しく、したがってランダムに分布した単位(FPM)の割合は100%であり:この値は、(FPM)繰り返し単位の完全にランダムな分布に対応する。
【0032】
したがって、上記のように、(FPM)単位の総数に対して孤立した(FPM)単位の数が大きければ大きいほど、ランダムに分布した単位(FPM)の部分のパーセント割合の値は高くなるであろう。
【0033】
ポリマー(F)は、アモルファス又は半結晶性であり得る。
【0034】
用語「アモルファス」は、ASTM D-3418-08に従って測定される、5J/g未満、好ましくは3J/g未満、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0035】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定される、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0036】
ポリマー(F)は、好ましくは、半結晶性である。
【0037】
好ましくは、25℃でジメチルホルムアミド中で測定されるポリマー(F)の固有粘度は、0.05l/g~0.80l/g、より好ましくは0.10l/g~0.50l/g、さらにより好ましくは0.2l/g~0.4l/gに含まれる。
【0038】
好ましいポリマー(F)は、1つ以上の骨格鎖を含むものであり、前記骨格鎖は、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(FM)に由来する繰り返し単位を含む。
【0039】
ポリマー(F)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(FPM)に由来する単位と、上に定義した少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する単位とを含み、任意選択的にはVDFとは異なる少なくとも1種の追加のモノマー(FM)に由来する繰り返し単位も含む。ポリマー(F)中の追加のモノマー(FM)は、好ましくはHFPである。
【0040】
ポリマー(F)は好ましくは:
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)と、
(b)任意選択的な、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.5モル%~10モル%、より好ましくは1モル%~5モル%の、フッ化ビニル(VF1)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1種のモノマー(FM)と、
(c)0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~2モル%の、上で定義した式(III)の少なくとも1種のモノマー(FPM)と
を含む。
【0041】
ポリマー(F)は、典型的には、乳化重合又は懸濁重合によって得られる。
【0042】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法で使用されるポリマー(F)は、
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)と、
(b)任意選択的な、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.5モル%~10モル%、より好ましくは1モル%~5モル%の、フッ化ビニル(VF1)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1種のモノマー(FM)と、
(c)0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~2モル%のアクリル酸(AA)と
を含み、
前記ポリマー(F)は、ジメチルホルムアミド中で25℃で測定される0.2l/g~0.4l/gに含まれる固有粘度を有する。
【0043】
本発明の目的のためには、用語「液体媒体[媒体(L)]」は、大気圧下で20℃で液体状態の1種以上の物質を含む組成物を指すことが本明細書では意図されている。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記媒体(L)は、好ましくは、有機カーボネート、イオン液体(IL)、溶媒(S)、又はそれらの混合物から選択される。
【0045】
本発明内では、溶媒(S)は、上で定義したポリマー(F)を溶解するのに適した溶媒を示すことを意図する。この目的のためには、溶媒(S)は、典型的には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、脂肪族ケトン、脂環式ケトン、及び脂環式エステルからなる群から選択される。これらの溶媒は、単独で又は2つ以上の化学種の混合物で使用され得る。
【0046】
本発明の第1の実施形態によれば、前記媒体(L)は、唯一の媒体(L)として少なくとも1つの有機カーボネートを含む。
【0047】
適切な有機カーボネートの非限定的な例としては、特に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
本発明の第2の実施形態によれば、前記媒体(L)は、唯一の媒体(L)として少なくとも1種のイオン液体(IL)を含む。
【0049】
「イオン液体(IL)」という用語は、本明細書では大気圧下で100℃未満の温度で液体状態で存在する、正に帯電したカチオンと負に帯電したアニオンとの組み合わせによって形成される化合物を示すことを意図する。
【0050】
イオン液体(IL)は、プロトン性イオン液体(IL)、非プロトン性イオン液体(IL)、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0051】
「プロトン性イオン液体(IL)」という用語は、本明細書では、カチオンが1つ以上のH水素イオンを含むイオン液体を示すことを意図する。
【0052】
1つ以上のH水素イオンを含むカチオンの非限定的な例としては、特に、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、又はピペリジニウム環が挙げられ、正電荷を有する窒素原子はH水素イオンに結合している。
【0053】
「非プロトン性イオン液体(IL)」という用語は、本明細書では、カチオンがH水素イオンを含まないイオン液体を示すことを意図する。
【0054】
イオン液体(IL)は、典型的には、カチオンとしてスルホニウムイオン、又はイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジウム環、又はピペリジウム環(前記環は任意選択で窒素原子において置換されていてもよく、特には1~8の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよく、又炭素原子において特には1~30の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよい)を含むものから選択される。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、前記媒体(L)は、上で定義した少なくとも1種の有機カーボネートと、上で定義した少なくとも1種のイオン液体(IL)との混合物を含む。
【0056】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記媒体(L)は、上で定義した少なくとも1種の有機溶媒と、上で定義した少なくとも1種の有機カーボネート及び/又は上で定義した少なくとも1種のイオン液体(IL)との混合物を含む。この実施形態による液体媒体(L)は、以降「媒体(LS)」と呼ばれる。
【0057】
組成物(C1)中の媒体(L)は、少なくとも1種の金属塩(S)をさらに含み得る。用語「金属塩(S)」は、導電性イオンを含む金属塩を意味することを本明細書では意図する。
【0058】
様々な金属塩が金属塩(S)として用いられ得る。選択される液体媒体(L)中で安定であり、可溶である金属塩が一般に使用される。
【0059】
好適な金属塩(S)の非限定的な例としては、とりわけ、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(CIO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、RがC、C、CFOCFCFであるMe[N(CFSO)(RSO)]、Me(AsF、Me[C(CFSO、Me(式中、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくは、Meは、Li、Na、K、Csであり、nは、前記金属の原子価であり、典型的には、nは、1又は2である)が挙げられる。
【0060】
好ましい金属塩(S)は、以下:LiI、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCFSO、LiN(CFSO(「LiTFSI」)、LiN(CSO、RがC、C、CFOCFCFであるM[N(CFSO)(RSO)]、LiAsF、LiC(CFSO、Li及びこれらの組み合わせから選択される。
【0061】
組成物(C1)中の媒体(L)は、1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0062】
1種以上の添加剤が液体媒体中に存在する場合、好適な添加剤の非限定的な例としては、とりわけ、液体媒体に可溶であるものが挙げられる。
【0063】
組成物(C1)の媒体(L)中のポリマー(F)の濃度は、有利には40%未満、より好ましくは20%未満である。
【0064】
本発明の方法の工程(ii)において、組成物(C1)は、式(I):X4-mAY(I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1個のXは、少なくとも1個のエポキシ官能基を含む)
の少なくとも1種の第1の金属化合物[化合物(M1)]と接触する。
【0065】
ポリマー(F)と金属化合物(M1)は、典型的には20℃~250℃に含まれる温度で反応する。
【0066】
当業者であれば、媒体(L)の沸点、方法における反応に使用される装置及び技術に応じて、温度を適切に選択するであろう。
【0067】
本発明の方法の工程(ii)では、組成物(C1)は、有利には、少なくとも1種の触媒をさらに含む。
【0068】
ポリマー(F)と金属化合物(M1)とのグラフト化反応のための触媒は、好ましくは、アルミニウムトリフルオロメタンスルホネートなどの有機アルミニウム化合物からなる群から選択される。
【0069】
通常、工程(ii)で添加される化合物(M1)のモル量は、組成物(C1)中に存在するモノマー(FPM)のモル量に対応する。
【0070】
本発明の方法の工程(ii)では、触媒は、典型的には、化合物(M1)の総モル量を基準として0.1モル%~50モル%、好ましくは0.3モル%~20モル%、より好ましくは0.5モル%~10モル%に含まれる量で組成物(C1)に添加される。
【0071】
工程(ii)では、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の少なくとも一部が、化合物(M1)の少なくとも一部と反応し、それによって、-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2)]が得られる。
【0072】
方法の工程(iii)では、工程(ii)で得られた組成物(C2)が金属化合物(M2)と接触する。
【0073】
化合物(M1)とは異なる化合物(M2)は、式(II)の化合物である:
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、m’は1~4の整数であり、A’は、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Y’の各存在は加水分解性基であり、X’の各存在は炭化水素基であり、任意選択的にモノマー(FPM)の基(FX)とは異なる少なくとも1つの官能基[基(FX’)]を含む)。
【0074】
官能基(FX’)の非限定的な例としては、とりわけ、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハライドの形態)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩又はハライドの形態)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、又はハライドの形態)、チオール基、アミン基、第四級アンモニウム基、エチレン系不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、オルガノシラン基、芳香族基が挙げられる。
【0075】
好ましくは、金属化合物(M2)におけるX’は、C~C18炭化水素基から選択され、任意選択的には1つ以上の官能基を含む。より好ましくは、金属化合物(M2)におけるX’は、C~C12炭化水素基であり、任意選択的には1つ以上の官能基を含む。
【0076】
式(I)の金属化合物の加水分解性基Yの選択は、適切な条件下で-O-A≡結合を形成できるものであれば特に限定されず、前記加水分解性基は、特に、ハロゲン(特に塩素原子)、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基又はヒドロキシル基であってよい。
【0077】
官能性金属化合物(M2)の例は、特に、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
【化4】

の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、
式:
【化5】

のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
式:
【化6】

のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
【化7】

のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
【化8】

のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
式:HNCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール及びそのナトリウム塩、式:
【化9】

のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、
式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸及びそのナトリウム塩、式:
【化10】

の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(A)(OR)(式中、Aは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rは、アルキル基であり、x及びyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0078】
非官能性化合物(M2)の例は、特に、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0079】
方法の工程(iii)で添加される化合物(M2)の量は、モノマー(M1)及びポリマー(F)の総重量に対して通常1重量%~90重量%に含まれる。
【0080】
化合物(M2)は、固体化合物の形で、或いは以降で定義される酸触媒を含む可能性のある水性媒体(A)との混合物として、工程(ii)で得られる反応混合物に適切に添加することができる。
【0081】
「水性媒体」という用語は、本明細書では、大気圧で20℃で液体状態である、水を含む液体媒体を意味することが意図されている。
【0082】
水性媒体(A)は、より好ましくは、水及び1種以上のアルコールからなる。媒体(A)に含まれるアルコールは、好ましくは、エタノールである。
【0083】
工程(iii)は、工程(ii)に使用した装置と同じ装置で、同じ温度及び濃度の条件で行うことができる。
【0084】
工程(ii)の処理条件について上で説明した全ての詳細事項は、工程(iii)を定義するためにここで適用することができる。
【0085】
工程(iii)では、化合物(M2)の少なくとも一部がポリマー(F-j)の-AYペンダント基の少なくとも一部と反応し、
それによって-A’Y’ペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-g)]を含む組成物[組成物(C3)]が得られる。
【0086】
化合物(M2)は、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の残留部分とさらに反応することができる。
【0087】
化合物(M2)とポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の残留部分との起こり得る反応性は、前の工程で使用された反応条件及び液体媒体に依存する。
【0088】
本発明の方法の工程(iv)では、ポリマー(F-g)のペンダント基-A’Y’mが加水分解及び/又は縮合を受け、それによってフルオロポリマードメインと無機ドメインとを含む少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物[組成物(C4)]が得られる。
【0089】
工程(iv)の加水分解及び/又は縮合反応は、本発明の方法の工程(ii)の間に既に反応系内で開始されていてもよく、本発明の方法の工程(iii)及び(iv)のいずれか1つの間継続され得ることが理解される。
【0090】
これは当業者により理解されるように、加水分解及び/又は縮合は通常、化合物(M1)の性質、及び任意選択には化合物(M2)の性質に応じて、とりわけ水又はアルコールであり得る低分子量副生成物を生成する。
【0091】
酸触媒は、典型的には、本発明の方法の工程(iii)又は(iv)のいずれか1つの組成物に添加される。
【0092】
酸触媒の選択は、特に限定されない。酸触媒は、典型的には、有機酸及び無機酸からなる群から選択される。
【0093】
酸触媒は、典型的には、組成物(M2)の総重量を基準として0.01重量%~100重量%、好ましくは0.5重量%~60重量%に含まれる量で、本発明の方法の工程(iii)又は(iv)のいずれか1つの組成物に添加される。
【0094】
酸触媒は、好ましくは、クエン酸、酢酸、及びギ酸などの有機酸からなる群から選択される。
【0095】
ギ酸及びクエン酸で非常に良好な結果が得られている。
【0096】
本発明の一実施形態では、工程(ii)と工程(iii)は同時に行われる。
【0097】
「同時に行われる」という用語は、金属化合物(M1)と金属化合物(M2)が組成物(C1)に一緒に添加されることを意図している。
【0098】
この理論に拘束されるものではないが、出願人は、反応条件で、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)が最初に金属化合物(M1)と反応し、その結果-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]が得られ、次いで化合物(M2)の少なくとも一部がポリマー(F-j)の-AYペンダント基の少なくとも一部と反応し、それによって、-A’Y’mペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-g)]を含む組成物[組成物(C4)]が得られると考えている。
【0099】
本発明の別の実施形態によれば、工程(ii)と工程(iii)は逐次的に行われる。
【0100】
本発明の前記実施形態によれば、工程(ii)の後にポリマー(F-j)を組成物(C2)から単離することができる。この実施形態では、工程(ii)の終了時に得られる、-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む[組成物(C2)]は、さらに工程(iib):
(iib)組成物(C2)を濾過することによってフルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を固体として単離し、固体を極性溶媒で洗浄し、乾燥して乾燥ポリマー(F-j)を回収する工程
を受けることができる。
【0101】
洗浄に使用される極性溶媒は、ポリマー(F-j)を可溶化できない溶媒から適切に選択される。極性溶媒は、典型的にはアルコールから選択することができる。
【0102】
本発明の方法の工程(v)では、濾過及び洗浄後のポリマー(F-j)が、典型的には25℃~200℃に含まれる温度で乾燥される。
【0103】
乾燥は、大気圧下又は真空下で行うことができる。或いは、乾燥は、手が加えられた雰囲気下で、例えば、典型的には特には水分が除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含量)不活性ガス下で行うことができる。
【0104】
前記ポリマー(F-h)を調製するための方法における中間体である、方法の間に形成されるポリマー(F-j)は新規であり、本発明のさらなる態様をなす。
【0105】
したがって、一態様では、本発明は、以下の工程を含む方法によって得られるグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を提供する:
(i)液体媒体[媒体(L)]と少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とを含む組成物[組成物(C1)]を準備する工程であって、前記ポリマー(F)が、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、
- ヒドロキシル基、アミン、カルボキシル、チオール、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]に由来する繰り返し単位と、を含む工程;
(ii)組成物(C1)を、式(I)の少なくとも第1の金属化合物[化合物(M1)]:
4-mAY (I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1つのXは、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む)
と接触させて、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の少なくとも一部を化合物(M1)の少なくとも一部と反応させ、それにより-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2)]を得る工程;
(iib)組成物(C2)を濾過することによってフルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を固体として単離し、固体を極性溶媒で洗浄し、乾燥して乾燥ポリマー(F-j)を回収する工程。
【0106】
本発明の方法の工程(iib)で得られるポリマー(F-j)は、その後の使用のためにさらに粉砕して粉末成分として単離することができる。
【0107】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-g)]の製造方法の第1の変形形態[変形形態(A)]によれば、組成物(C1)中の媒体(L)は、上で定義された媒体(LS)である。
【0108】
その結果、変形形態(A)の工程(iv)の終了時に得られる組成物(C4)は、ポリマー(F-g)と少なくとも1種の有機溶媒(S)とを含む。
【0109】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-g)]の製造方法の第2の変形形態[変形形態(B)]によれば、工程i)で得られる組成物(C1)中の媒体(L)は、上で定義される溶媒(S)を含まない。
【0110】
その結果、変形形態(B)の工程(iv)の終了時に得られる組成物(C4)は、ポリマー(F-g)と、有機溶媒(S)を含まない液体媒体(L)とを含む。
【0111】
別の目的では、本発明は、本発明による少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含むフルオロポリマーフィルムを提供する。
【0112】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含むフルオロポリマーフィルムの製造方法に関し、前記方法は以下の工程を含む:
(i)液体媒体[媒体(L)]と少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とを含む組成物[組成物(C1)]を準備する工程であって、前記ポリマー(F)が、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、
- ヒドロキシル基、アミン、カルボキシル、チオール、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]に由来する繰り返し単位と、を含む工程;
(ii)組成物(C1)を、式(I)の少なくとも第1の金属化合物[化合物(M1)]:
4-mAY (I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1つのXは、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む)
と接触させて、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の少なくとも一部を化合物(M1)の少なくとも一部と反応させ、それにより-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2)]を得る工程;
(iii)組成物(C2)を、化合物(M1)とは異なる式(II)の少なくとも1種の第2の金属化合物[化合物(M2)]:
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、m’は1~4の整数であり、A’は、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Y’の各存在は加水分解性基であり、X’の各存在は炭化水素基であり、任意選択的に基(FX)とは異なる少なくとも1つの官能基[基(FX’)]を含む)
と接触させて、化合物(M2)の少なくとも一部をポリマー(F-j)の-AYペンダント基の少なくとも一部と反応させ、
それにより、-A’Y’ペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-g)]を含む組成物[組成物(C3)]を得る工程;並びに
(iv)ポリマー(F-g)の-A’Y’ペンダント基を加水分解及び/又は縮合し、それによって少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物[組成物(C4)]を得る工程;
(v)上で定義した少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物(C4)をフィルムへと加工する工程;及び
(vi)工程(v)で得られたフィルムを乾燥させる工程。
【0113】
本発明の目的のためには、用語「フィルム」は、連続的な、一般に薄いシートを意味することを意図する。
【0114】
ポリマー(F-h)を得るための方法が、上で定義した変形形態(A)に従って行われる場合、工程(iv)の終わりに得られる組成物(C4)は少なくとも1種の有機溶媒(S)を含んでおり、前記組成物(C4)は、任意の標準的なキャスティング法を用いてキャスティングして薄いフィルムを製造するために適している。
【0115】
したがって、組成物(C4)が変形形態(A)に従って得られる場合、工程(v)において前記組成物(C4)をフィルムへと加工することは、典型的には、当該技術分野において一般的に知られている技術を使用して行われる。
【0116】
好適な技術の非限定的な例としては、キャスティング、ドクターブレードコーティング、メータリングロッド(又はMeyerロッド)コーティング、スロットダイコーティング、ナイフオーバーロールコーティング又は「ギャップ」コーティングなどが挙げられる。
【0117】
本発明の方法の変形形態(A)によれば、工程(vi)では、工程(v)で得られるフィルムが、典型的には25℃~200℃に含まれる温度で乾燥される。
【0118】
乾燥は、大気圧下又は真空下で行うことができる。或いは、乾燥は、手が加えられた雰囲気下で、例えば、典型的には特には水分が除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含量)不活性ガス下で行うことができる。
【0119】
乾燥温度は、本発明の方法の工程(iv)で提供される媒体(L)中の溶媒(S)が蒸発によって除去されるように選択されるであろう。
【0120】
ポリマー(F-h)を得るための方法が、上で定義した変形形態(B)に従って行われる場合、工程(iv)の終了時に得られる組成物(C4)は溶媒(S)を含まない。
【0121】
前記変形形態(B)によれば、本発明の方法の工程(i)~(iv)は、反応器などの密閉装置中で、又は押出機などの半密閉装置中で適切に行うことができる。前記場合のいずれも、工程(i)~(iv)の反応は、液体媒体(L)に溶解した溶融状態のポリマー(F)の存在下で高温で行われる。
【0122】
前記密閉装置における滞留時間は、使用する装置及び系の反応性に依存する。当業者であれば、反応を完了するための適切なタイミングを選択するであろう。密閉装置の利点は、滞留時間を数分から数時間又は数日まで選択できることである。押出機のような半密閉装置ではこれは不可能である。以下の実施例では、この場合を例示する。
【0123】
工程(i)~(iv)が押出機のような半密閉装置で行われる場合、反応時間は、装置の構造及び毎分回転数(rpm)に合わせて調整されることになる。押出機のような半密閉装置における滞留時間は、典型的には、10分未満、好ましくは5分未満である。
【0124】
前記変形形態(B)によれば、工程(i)~(iv)が密閉装置内で行われる場合、組成物(C4)は、工程(v)において、圧縮成形により又は押出機内でフィルムへと加工することができる。いずれの場合も、工程(iv)の終了時に密閉装置から取り出された組成物(C4)は、好ましくは工程(v)を受ける前に粉砕される。
【0125】
変形形態(B)によれば、工程(i)~(iv)が半密閉装置内で行われる場合、工程(v)及び工程(vi)は、同じ装置で行うことができ、したがって、フィルムは押出機のダイから直接得ることができる。或いは、半密閉装置から出た材料は、高品質なフィルム又は高分子電解質膜を得るために特別に設計された第2の押出機に供給することができる。
【0126】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]のフィルムの製造方法において、上で定義した変形形態のいずれかに従って工程(v)又は(vi)の後に得られたフィルムを同時ラミネートする追加の工程を適用して、フィルムの厚さを減らすことができる。
【0127】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]のフィルムは、好ましくは5~300ミクロン、好ましくは10~50ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0128】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]のフィルムの製造方法では、工程(vi)の後、又は任意選択的に同時ラミネートされた後に得られたフィルムに対して追加の後処理工程を適用することで、通常は方法の前の工程で既に開始されている架橋を完了させることができる。前記架橋後処理は、前記フィルムを上で定義された酸触媒と接触させることを含む。フィルムを酸触媒と接触させることは、架橋を完了するのに十分な時間、酸触媒飽和雰囲気中で適切に行うことができる。
【0129】
或いは、架橋後処理は、約8~12MPaの圧力で80℃~120℃の範囲の温度で2~10分間など、加圧下での加熱処理を含むことができる。後処理は、フィルムの厚さを減らす又は減らさないホットカレンダーで行うこともできる。
【0130】
さらなる代替形態において、架橋後処理は、フィルムをマイクロ波放射に曝露することによって得ることができる。
【0131】
本発明の方法の工程(i)では、組成物(C1)は、少なくとも1種の金属塩を含む電解質媒体[媒体(E)]をさらに含み得る。
【0132】
本発明によるフィルムの製造方法において、媒体(E)が組成物(C1)中に存在する場合、上で定義された方法によって得られるフィルムは、高分子電解質膜の製造に適している。この実施形態による組成物(C1)は、本明細書では以降「組成物(C5)」と呼ぶ。
【0133】
したがって、別の態様では、本発明は、本発明の方法によって得られる高分子電解質膜に関する。
【0134】
本発明の目的のためには、「膜」という用語は、これに接触する化学種の浸透を緩和する、別個の、一般に薄い界面を示すことを意図する。
【0135】
したがって、一態様では、本発明は、高分子電解質膜の製造方法を提供し、前記方法は以下を含む:
(i)液体媒体[媒体(L)]と少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]とを含む組成物[組成物(C5)]を準備する工程であって、前記ポリマー(F)が、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、
- ヒドロキシル基、アミン、カルボキシル、チオール、及び無水物からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[基(FX)]を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(FPM)]に由来する繰り返し単位と、を含み、
液体媒体(L)が少なくとも1種の金属塩(S)も含む工程;
(ii)組成物(C5)を、式(I)の少なくとも第1の金属化合物[化合物(M1)]:
4-mAY (I)
(式中、mは1~3の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yの各存在は加水分解性基であり、Xの各存在は炭化水素基であり、少なくとも1つのXは、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む)
と接触させて、ポリマー(F)のモノマー(FPM)の基(FX)の少なくとも一部を化合物(M1)の少なくとも一部と反応させ、それにより-AYペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-j)]を含む組成物[組成物(C2’)]を得る工程;
(iii)組成物(C2’)を、
化合物(M1)とは異なる式(II)の少なくとも1種の第2の金属化合物[化合物(M2)]:
X’4-m’A’Y’m’ (II)
(式中、m’は1~4の整数であり、A’は、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Y’の各存在は加水分解性基であり、X’の各存在は炭化水素基であり、任意選択的に基(FX’)とは異なる少なくとも1つの官能基[基(FX’)]を含む)
と接触させて、化合物(M2)の少なくとも一部をポリマー(F-j)の-AYペンダント基の少なくとも一部と反応させ、
それにより、-A’Y’ <2945ペンダント基を有する少なくとも1種のグラフト化フルオロポリマー[ポリマー(F-g)]を含む組成物[組成物(C3’)]を得る工程;
(iv)ポリマー(F-g)の-A’Y’ <2957ペンダント基を加水分解及び/又は縮合し、それによって少なくとも1種のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]を含む組成物[組成物(C4’)]を得る工程;
(v)組成物(C4’)をフィルムへと加工する工程;並びに
(vi)工程(v)で得られたフィルムを乾燥させる工程。
【0136】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料[ポリマー(F-h)]のフィルムの製造方法について上述した全ての詳細事項及び特徴を、本発明の高分子電解質膜の製造方法を定義するためにここで適用することができる。
【0137】
本発明の高分子電解質膜は、有利なことには、傑出した架橋密度特性を備えているため、自立型高分子電解質膜として適切に使用される優れた機械的特性を首尾よく示す。
【0138】
本発明のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の架橋密度の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は典型的には、特有の温度で好適な溶媒中で膨潤し、質量の変化か容積の変化かのどちらかが測定される。
【0139】
驚くべきことに、本発明の自立型高分子電解質膜は、傑出した機械的特性及び優れたイオン伝導特性を維持しながらも、高い割合の電解質を安定に含んで保持できることが見出された。
【0140】
さらなる態様では、本発明は、本発明の高分子電解質膜を含む電気化学デバイスに関する。
【0141】
好適な電気化学デバイスの非限定的な例としては、とりわけ、二次電池、特に、リチウムイオン電池などのアルカリ又はアルカリ土類二次電池、及びキャパシタ、特にリチウムイオンキャパシタが挙げられる。
【0142】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度にまで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0143】
ここで、本発明は、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0144】
実験の部
原材料
ポリマー(F-1):25℃のDMF中で0.11l/gの固有粘度を有するVDF/HEA(0.4モル%)/HFP(2.5モル%)コポリマー
ポリマー(F-2):25℃のDMF中で0.30l/gの粘度を有するVDF-AA(0.9モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
エポキシシラン(EPP-1):[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン。
エポキシシラン(EPP-2):[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリエトキシシラン。
触媒(ATS):アルミニウムトリフルオロメタンスルホネート。
LiTFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩。
媒体(EL-1):エチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)(重量比1/1)。
媒体(EL-2):エチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)(重量比1/1)中のLiTFSI(1mol/L)の溶液。
TEOS:Si(OC
【0145】
半密閉装置内で押出材料を調製するための基本手順:
15mlの二軸混錬機(DSM Xplore)(Miniextruder)を使用した。全ての試験は100rpmで行った。全ての試験において、滞留時間は2分であった。
【0146】
圧縮成形によりフィルムを製造するための基本手順:
Collin P200Tプレスを使用する圧縮成形によりフィルムを得た。材料を90℃に加熱し、0barで3分間プレスする。次いで、プレスを脱気し、90℃のまま2分間100barの圧力を設定する。その後、プレス機を冷却し、約30~40℃で開ける。
【0147】
ポリマー(F)の固有粘度の決定
固有粘度(η)[dl/g]は、Ubbelhode粘度計を用いてポリマー(F)を約0.2g/dlの濃度でN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させることによって得られた溶液の、25℃での落下時間に基づいて以下の式:
【数2】
(式中、cは、ポリマー濃度[g/dl]であり、ηは、相対粘度、すなわち、試料溶液の落下時間と、溶媒の落下時間との間の比であり、ηspは、比粘度、すなわち、η-1であり、Γは、ポリマー(F)については3に相当する、実験因子である)
を用いて測定した。
【0148】
溶解試験
約5~10mgの膜サンプルを約10mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の中に室温で60分間入れた。
【0149】
DMFは、ポリマー(F)用の非常によい溶媒である。膜の架橋密度が高ければ高いほど、DMFでの膜のより多い膨潤及びより少ない溶解が達成できる。逆に、架橋が不十分な膜では、DMF中で膜のほとんどが溶解することになる。
【0150】
実施例1-溶媒キャスト法による、F-1を用いたフルオロポリマーフィルムの製造(変形形態A)
ポリマー(F-1)(0.8g)を室温でアセトン7.2gに溶解し、それによってポリマー(F-1)を10重量%含む溶液を得た。溶液は均一であった。次いで、この溶液に、2.8gのEL-1、6.4mgのATS、0.16gのEPP-1をこの順序で添加した。溶液を約10分間混合し、1.38gのTEOS及び0.76gのギ酸を添加した。次いで、それを80×15mmのペトリ皿に注ぎ入れ、室温でフードに一晩置いてアセトンを蒸発させた。その後、約300ミクロンのフィルムが得られた。溶解法に従ってDMF中で試験した結果、DMF中で溶解は観察されなかった。
【0151】
実施例2-溶媒キャストによる、F-2を用いたフルオロポリマーフィルムの製造(変形形態A)
実施例1と同じ手順に従ったが、F-2ポリマーとEPP-2(実施例1のEPP-1と同量)を使用した。その後、約300ミクロンのフィルムが得られた。溶解法に従ってDMF中で試験した結果、DMF中で溶解は観察されなかった。
【0152】
溶媒キャストによる比較例1
実施例1と同じ手順に従ってフィルムを製造したが、EPP-1及びATSは導入しなかった。このフィルムは、溶解試験でDMF中に溶解した。
【0153】
実施例3-溶融状態で処理することによる、F-1を用いたフルオロポリマーフィルムの製造(変形形態B)
反応は、以下の特徴を有するBuechiglasusterの反応器Novoclave中で行った:
BuechiglasusterのNovoclave-実験室用高圧/高温反応器(HPHT)。反応器容積:100~600ml、圧力:最大1500bar、温度:-20℃~+500℃。迅速で正確な温度制御のための自動水道水冷却とプログラム可能なPID制御とを内蔵した電気加熱。マグネチックスターラー駆動により、プロセス媒体の効率的な混合及び撹拌並びに優れた熱伝達が保証される。材質:ステンレス鋼。
【0154】
以下の成分:ポリマー(F-1)(9.6g)、EL-1(33.6g)、ATS(6.4mg)、EPP-1(0.64g)を反応器に供給し、最後にTEOS(16.56g)、水(5.74g)、エタノール(4.14g)、及びクエン酸(0.22g)によって形成された均一な溶液を添加した。次いで、反応器を110℃にし、1000rpmで撹拌しながらその温度で24時間保持した。その後、反応器から取り出し、得られた生成物を粉砕し、40℃で1時間乾燥した。この材料の一部を、上で定義した小型押出機に供給し、90℃で処理した。得られた押出材料を、上述した装置及び条件で圧縮成形した。その後、約100ミクロンのフィルムを得た。DMF中で試験したところ、DMF中で溶解は観察されなかった。
【0155】
実施例4-溶融状態で処理することによる、F-2を用いたフルオロポリマーフィルムの製造
実施例3と同じ手順に従ったが、EPP-1の代わりにF-2ポリマーとEPP-2を使用した。小型押出機での押し出しは、90℃の代わりに110℃で行った。その後、約100ミクロンのフィルムを得た。溶解法に従ってDMF中で試験した結果、DMF中で溶解は観察されなかった。
【0156】
溶融状態で処理することによる比較例2
実施例3と同じ手順に従ってフィルムを製造したが、EPP-1及びATSを導入しなかった。フィルムはDMFに溶解した。
【0157】
実施例5-溶融状態で処理することによる、F-1を用いたフルオロポリマーフィルムの製造
以下の成分:ポリマー(F-1)(9.6g)、EL-1(33.6g)、ATS(6.4mg)、EPP-1(0.64g)を上述した反応器に入れた。次いで、反応器を90℃にし、1000rpmで撹拌しながらその温度で30分保持した。その後、反応器を50℃まで冷却し、TEOS(16.56g)、水(5.74g)、エタノール(4.14g)、及びクエン酸(0.22g)から形成された以下の均一な溶液を入れた。次いで、反応器を再度110℃にし、1000rpmで撹拌しながらその温度に24時間保った。その後、反応器から取り出し、得られた生成物を粉砕し、40℃で1時間乾燥した。この材料の一部を、上述した小型押出機に供給し、90℃で処理した。得られた押出材料を、上述した装置及び条件で圧縮成形した。その後、約100ミクロンのフィルムを得た。DMF中で試験した結果、DMF中で溶解は観察されなかった。
【0158】
溶融状態で処理することによる比較例3
実施例4と同じ手順に従ってフィルムを製造したが、EPP-2及びATSを導入しなかった。フィルムはDMFに溶解した。
【0159】
実施例6-溶融状態で処理することによる、F-2を用いたフルオロポリマー(F-j)の製造
以下の成分:ポリマー(F-2)(9.6g)、EL-1(33.6g)、ATS(6.4mg)、EPP-2(0.64g)を上述した反応器に入れた。次いで、反応器を110℃にし、1000rpmで撹拌しながらその温度に4時間保った。その後、反応器から取り出し、得られた生成物を70℃で48時間乾燥した。
【0160】
実施例7-溶融状態で処理することによる、F-2を用いたフルオロポリマー(F-j)の製造
以下の成分:ポリマー(F-2)(9.6g)、EL-2(33.6g)、ATS(6.4mg)、EPP-2(0.64g)を上述した反応器に入れ、最後にTEOS(16.56g)、水(5.74g)、エタノール(4.14g)、及びクエン酸(0.22g)によって形成された均一な溶液を入れた。次いで、反応器を110℃にし、1000rpmで撹拌しながらその温度に24時間保った。その後、反応器から取り出し、得られた生成物を粉砕し、40℃で1時間乾燥した。この材料の一部を、上述した小型押出機に供給し、110℃で処理した。得られた押出材料を、上述した装置及び条件で圧縮成形した。その後、約100ミクロンのフィルムを得た。DMF中で試験した結果、DMF中で溶解は観察されなかった。
【0161】
このフィルムは金属塩を含むため、膜自体がイオン伝導性である。
【0162】
実施例8-溶融状態で処理してから硬化処理を行うことによる、F-2を用いたフルオロポリマーフィルムの製造
以下の成分:ポリマー(F-2)(9.6g)、EL-1(33.6g)、ATS(6.4mg)、EPP-2(0.64g)を実施例3に記載の反応器(BuechiglasusterのNovoclave)に供給し、最後にTEOS(16.56g)、水(5.74g)、エタノール(4.14g)、及びクエン酸(0.22g)によって形成された均一な溶液を供給した。次いで、反応器から取り出し、得られた生成物を粉砕し、40℃で1時間乾燥し、次いで粉砕して粉末にした。押出機に供給するのに十分な材料を得るために、この工程を数回(少なくとも6回)繰り返した。同方向回転二軸押出機(Leistritz ZSE 18HP、スクリュー径D18mm、スクリュー長720mm(40D))を使用した。押出機は、メインフィーダー、第2フィーダー、及び脱ガスユニットを備えていた。バレルは、所望の温度プロファイルに設定することを可能にする、8つの温度制御ゾーンと1つの冷却ゾーン(供給装置での)とから構成されていた。溶融ポリマーは、厚さ1mm長さ40mmの扁平形状からなるダイから押し出した。押出物は、直径100mm、幅100mmの2本の低温のシリンダーの間で、100~500μmのギャップで引き伸ばした。押出物は空気中で冷却した。温度プロファイルは、全ての加熱ゾーンで110℃に設定し、押出機の回転速度は250rpmに調節した。
【0163】
その後、100~300ミクロンのフィルムを得た。
【0164】
フィルムのサンプルに対し、加熱したカレンダーをシミュレートして硬化した押出フィルムを得るために10MPaの圧力のプレス機で90℃で2~5分間処理する、又は800Wで30秒間マイクロ波処理する、のいずれかの後処理を行った。
【0165】
後処理なしのフィルムのサンプル(未硬化の押出フィルム)はDMFにほぼ完全に溶解したが、硬化した押出フィルムでは溶解は観察されなかった。250Nの空気圧グリップを備えたInstrom5966機を用いて、ゲージ長20mmの未硬化の及び硬化した押出フィルム(1cm×4cm)に対して、室温で引張試験を行った。2kNのロードセル(誤差<0.25%)を使用し、測定パラメータは1mm/分のひずみ速度である。
【0166】
各配合物について3つの試験片を使用し、ヤング率、破壊応力、及び破断伸びの平均値及び対応する標準偏差を計算し、表1に報告した。
【0167】
【表1】
【0168】
実施例9-F-2を用いたフルオロポリマーフィルムの製造;溶融状態で別の処理
(a)以下の成分:EL-1(20g)、TEOS(16.56g)、水(5.74g)、エタノール(4.14g)、及びクエン酸(0.22g)を反応器に入れた。次いで、反応器を110℃にし、1000rpmで撹拌しながらその温度に24時間保った。その後、反応器から取り出し、得られた生成物を粉砕し、40℃で1時間乾燥した。
(b)以下の成分:EL-1(10.64g)、ATS(14.2mg)、EPP-2(1.42g)、ポリマー(F-2)(7.09g)を110℃で小型押出機(上述したDSM Xplore)に入れた。得られた生成物をVariCutペレタイザー(Thermo Fisher Scientific)でペレット化した。
(c)工程(a)及び工程(b)から得られた生成物を、2つの異なるフィーダーで単一の入口フィーダーに供給し、上で詳述した実施例8で行った通りに押し出した。その後、約100~200ミクロンのフィルムを得た。
【0169】
フィルムのサンプルに対し、加熱したカレンダーをシミュレートして硬化した押出フィルムを得るために10MPaの圧力のプレス機で90℃で2~5分間処理する、又は800Wで30秒間マイクロ波処理する、のいずれかの後処理を行った。
【0170】
後処理なしのフィルムのサンプル(未硬化の押出フィルム)はDMFにほぼ完全に溶解したが、硬化した押出フィルムでは溶解は観察されなかった。250Nの空気圧グリップを備えたInstrom5966機を用いて、ゲージ長20mmの未硬化の及び硬化した押出フィルム(1cm×4cm)に対して、室温で引張試験を行った。2kNのロードセル(誤差<0.25%)を使用し、測定パラメータは1mm/分のひずみ速度である。
【0171】
未硬化の押出フィルムはDMFにほぼ完全に溶解したが、硬化した押出フィルムでは溶解は観察されなかった。
【0172】
未硬化の及び硬化した押出フィルム(1cm×4cm)に対して、実施例8に記載の通りに引張試験を行った。ヤング率、破壊応力、及び破断伸びの平均値及び標準偏差が表2に報告されている。
【0173】
【表2】
【0174】
実施例10-溶融状態での別の処理による、F-2を用いたフルオロポリマーフィルムの製造
以下の成分:EL-1(13.79g)、ATS(2.6mg)、EPP-2(0.26g)、及びポリマー(F-2)(3.94g)を小型押出機(上述したDSM Xplore)に110℃で供給した。得られた生成物をVariCutペレタイザー(Thermo Fisher Scientific)でペレット化した。
【0175】
ペレット化した中間体(29.45g)と、以下の成分:TEOS(12.56g)、水(4.35g)、エタノール(3.14g)、クエン酸(0.17g)を反応器に入れた。反応器を110℃にし、1000rpmで撹拌しながらその温度に6時間保った。その後、反応器から取り出し、得られた生成物を粉砕し、40℃で1時間乾燥した。この材料を前述した小型押出機に供給し、110℃で処理した。得られた押出材料を、前述した装置及び条件で圧縮成形した。その後、約100ミクロンのフィルムが得られ、これをDMF中で試験した。ポリマーの溶解は観察されなかった。
【国際調査報告】