(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電気自動車用電池及びその電池セルインタフェース材料
(51)【国際特許分類】
H01M 50/293 20210101AFI20250107BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20250107BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20250107BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20250107BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20250107BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20250107BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20250107BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20250107BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250107BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20250107BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20250107BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20250107BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M50/289 101
H01M50/249
H01M50/204 401H
H01M50/242
H01M50/262 E
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/204 401F
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6551
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534501
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 US2022081230
(87)【国際公開番号】W WO2023108099
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524217942
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル パワートレイン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ティアンチー
(72)【発明者】
【氏名】マクファーランド スコット
(72)【発明者】
【氏名】ザンビーノ メイソン アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】ボートライト ジョーダン
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE03
5H031KK02
5H040AA01
5H040AA28
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040LL04
5H040LL10
5H040NN01
5H043AA04
5H043AA05
5H043AA09
5H043AA13
5H043CA04
5H043CA08
5H043CA21
5H043GA23
5H043GA26
5H043KA13
5H043KA14
5H043KA15
5H043LA02
(57)【要約】
電気自動車用電池パックの隣接セル間に複数種類の保護を与える電池セルインタフェース材料が提供される。インタフェース材料は、一体型壁組立体であり、この一体型壁組立体は、絡み合った多繊維難燃糸又は不織材料の一方で構成され、反対側の側面を有する中央壁と;一対の中間層であって、各中間層が中央壁の反対側の側面の異なる側面に接着される一対の中間層と、一対の外層と;を有する。外層の各々は、各中間層が一対の外層の一方と布地中央壁との間に挟まれるように、一対の中間層の異なる層に接着され、電気自動車用電池のセル壁に面する各外層は、そのセル壁に直接接着されるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車用電池のための電池セルインタフェース材料であって、
一体型壁組立体を備え、
前記一体型壁組立体は、
絡み合った多繊維難燃糸又は不織材料の一方で構成され、反対側の側面を有する中央壁と、
一対の中間層であって、当該中間層の各々が前記中央壁の前記反対側の側面の異なる側面に接着される、前記一対の中間層と、
一対の外層と、
を備え、
前記外層の各々は、前記中間層の各々が前記一対の外層の一方と前記布地中央壁との間に挟み込まれるように、前記一対の中間層の異なる層に接着され、前記電気自動車用電池のセル壁に面する前記外層の各々は、前記セル壁に直接接着されるように構成されている、電池セルインタフェース材料。
【請求項2】
前記一対の外層は、両面感圧性粘着材として提供され、前記感圧性粘着材の各々の一方の側面は、前記一対の中間層の一方に接着され、前記感圧性粘着材の各々の他方の側面は、電池セル壁の外面に接着されるように構成されている、請求項1に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項3】
前記中央壁は、0.5mmと5.0mmの間の厚さを有する、請求項2に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項4】
前記中央壁は、織成層、編成層又は不織層のうちの1つである、請求項2に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項5】
前記中央壁は、互いに重なり合う一対の織成層又は編成層を含む、請求項2に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項6】
前記中央壁は鉱物糸から織られる又は編まれる、請求項2に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項7】
前記中央壁は、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、及びバサルト繊維のうちの少なくとも1つを含んで形成された不織層である、請求項2に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項8】
前記一対の中間層は、前記中央壁の外周部を越えて延びる外周部を有し、前記中間層の前記外周部は、互いに接着されて、前記中間層の前記外周部を包み込む、請求項2に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項9】
前記一対の中間層は雲母系材料から構成される、請求項2に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項10】
前記一対の中間層の各々は、1.0mm未満の厚さを有する、請求項9に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項11】
前記中間層には感圧性粘着材が接着され、前記感圧性粘着材は、前記中央壁に接着される、請求項9に記載の電池セルインタフェース材料。
【請求項12】
電気自動車用電池のための電池セルインタフェース材料であって、
一体型壁組立体を備え、
前記一体型壁組立体は、
絡み合った多繊維難燃糸又は不織材料の一方で構成され、反対側の側面を有する中央壁と、
一対の中間層であって、当該中間層の各々が1.0mm未満の厚さを有し、前記布地中央壁の前記反対側の側面の異なる側面に直接接着される、前記一対の中間層と、
一対の外層と、
を備え、
前記外層の各々は、前記中間層の各々が前記一対の外層の一方と前記中央壁との間に挟み込まれるように、前記一対の中間層の異なる層に接着される自己粘着材を有し、前記電気自動車用電池のセル壁に面する前記外層の各々は、前記セル壁に直接接着される自己粘着材を有する、電池セルインタフェース材料。
【請求項13】
電気自動車用の電池パックであって、
隣接するセルが互いに向き合うセル壁を有する複数のセルと、
一体型壁組立体と、
を備え、
前記一体型壁組立体は、
織成又は編成の多繊維難燃糸或いは不織材料の一方で構成され、反対側の側面を有する中央壁と、
一対の中間層であって、当該中間層の各々が前記中央壁の前記反対側の側面の異なる側面に接着される、前記一対の中間層と、
一対の外層と、
を備え、
前記外層の各々は、前記中間層の各々が前記一対の外層の一方と前記中央壁との間に挟み込まれるように、前記一対の中間層の異なる層に接着され、前記セル壁の1つに面する前記外層の各々は、前記セル壁に接着される、電池パック。
【請求項14】
前記中央壁は、互いに重なり合う一対の織成層又は編成層を含む、請求項13に記載の電池パック。
【請求項15】
前記難燃糸は、鉱物糸である、請求項13に記載の電池パック。
【請求項16】
前記鉱物糸は、ガラス繊維糸、セラミック糸、シリカ糸、及びバサルト糸のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の電池パック。
【請求項17】
前記布地中央壁は、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、及びバサルト繊維のうちの少なくとも1つを含んで形成された不織材である、請求項13に記載の電池パック。
【請求項18】
前記一対の中間層は、前記中央壁の外周部を超えて延びる外周部を有し、前記中間層の前記外周部は、互いに接着されて、前記中央壁の前記外周部を包み込む、請求項13に記載の電池パック。
【請求項19】
前記一対の中間層は、雲母系材料から構成される、請求項13に記載の電池パック。
【請求項20】
前記中間層には感圧性粘着材が接着され、前記感圧性粘着材が前記中間壁に接着される、請求項19に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月9日出願の米国特許仮出願第63/287879号の利益並びに2022年12月8日出願の米国特許出願第18/077629号に対する優先権を主張するものであり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に電気自動車用電池に関し、より詳細には電気自動車用電池セルインタフェース材料に関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車用電池の個々の電池セルを介在する材料壁で互いに分離することが知られている。しかしながら、単一構成要素の、異なる材料の介在壁組立体を提供し、それによって組立中に複数の別々の材料壁を重ね合わせる必要性を回避すると同時に、相対的に薄くすることで電気自動車用電池の全体サイズの増加を回避することが依然として求められている。さらに、個々の電池セルに亘って一定の積層圧を維持する能力を有する介在壁を提供し、それによって各セルが膨張及び収縮する時に最適化された電気化学反応を各セル内で生じさせる必要がある。その上さらに、電池の動作中にセルから熱を放散して介在壁の平面内で熱伝達を可能にする能力を持つと同時に、その平面全体に亘って熱及び電気の絶縁を提供し、一方で誘電性の火災抑制保護も提供し、それによって隣接するセル間の火炎伝播及び熱暴走の可能性を最小限に抑え、電池内で1又は2以上のセルの熱暴走状態が生じた後、電池システムからの電力で少なくとも5分間は電気自動車を依然として運転可能にすることができ、適切な駐車位置まで安全に動かして車両から退避するのに十二分な時間を車両の運転者に与えるようにする介在壁を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の1つの目的は、電池セルインタフェース材料に関して上述した要求を少なくとも実現する、単一構成要素の多層壁組立体を提供することである。
【0005】
本開示の別の目的は、積層多層壁を有する電池セルインタフェース材料を提供することであり、この積層多層壁は、相対的に薄く、実質的に一定の撓み圧縮力を提供し、積層多層壁の平面内で熱伝導性があり、積層多層壁誘電体の平面を横切る方向に熱絶縁性があり、熱暴走及び火災伝播に対する保護を提供し、誘電特性及び電気絶縁特性を持つ。
【0006】
本開示の別の目的は、電気自動車用電池システムが電気自動車に5分以上電力を供給できるようにするのを助ける、電池セルインタフェース材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これら及び他の目的に従って、電気自動車用電池パックの隣接セル間に複数種類の保護を与える電池セルインタフェース材料が提供される。インタフェース材料は、一体型壁組立体であり、一体型壁組立体は、絡み合った多繊維難燃糸又は不織材料の一方で構成され、反対側の側面を有する中央壁と;一対の中間層であって、各中間層が中央壁の反対側の側面の異なる側面に接着される一対の中間層と;一対の外層と、を有する。外層の各々は、各中間層が一対の外層の一方と布地中央壁との間に挟まれるように、一対の中間層の異なる層に接着され、電気自動車用電池のセル壁に面する各外層は、そのセル壁に直接接着されるように構成されている。
【0008】
本発明の別の態様によれば、中央壁は、0.5mmと10.0mmの間の範囲にある厚さを有する。
【0009】
本発明の別の態様によれば、中央壁は、0.5mmと5.0mmの間の範囲にある厚さを有する。
【0010】
本発明の別の態様によれば、中央壁は、0.5mmと3.0mmの間の範囲にある厚さを有する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、中央壁の厚さは、加熱及び冷却時に隣接する電池セルの膨れ、収縮及び膨張に耐え、これらに適応するため、並びに、加熱及び冷却サイクル中に電池セルに一定又は実質的に一定の圧縮力及び膨張力を与えるために、容易に圧縮可能であり、それによって、電池セル内のセル媒体は望ましい均一で実質的に一定の力の下に留まり、その結果、セル媒体への応力を最小限に抑えて、電池パックの耐用寿命を最適化する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、中央壁は、内部に空気を閉じ込めて熱絶縁性を強化し、中央壁の片側にある電池セルから中央壁の反対側にある別の電池セルへの熱伝達を抑制するように構成されている。
【0013】
本発明の別の態様によれば、中央壁は織ることができる。
【0014】
本発明の別の態様によれば、織成壁は、互いに重なり合う複数の層を含むことができる。
【0015】
本発明の別の態様によれば、織成壁は、1つの層から糸(複数可)が他の層の糸(複数可)と織り合わされて互いに絡み合った複数の層を含むことができる。
【0016】
本発明の別の態様によれば、中央壁は編むことができる。
【0017】
本発明の別の態様によれば、編成壁は、編み目が1つの層から対向する層に移動しながら互いに絡み合った複数の層を含むことができる。
【0018】
本発明の別の態様によれば、中央壁は不織層とすることができ、この不織層では、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、及びバサルト繊維などの鉱物繊維などの難燃繊維がいずれかも適切な不織布製造工程によって互いに絡み合っている。
【0019】
本発明の別の態様によれば、中央壁の難燃糸は鉱物糸である。
【0020】
本発明の別の態様によれば、鉱物糸は、ガラス繊維糸、セラミック糸、シリカ糸、及びバサルト糸のうちの少なくとも1つとして提供することができる。
【0021】
本発明の別の態様によれば、中間層はシリカ系又は雲母系の材料から構成することができる。
【0022】
本発明の別の態様によれば、中間層は1.0mm未満の厚さを有する。
【0023】
本発明の別の態様によれば、中間層の反対側の側面の少なくとも1つには感圧性粘着材を接着することができ、その感圧性粘着材は中央壁に直接接着されている。
【0024】
本発明の別の態様によれば、中間層に接着される感圧性粘着材は、アクリル系又はシリコーン系の材料とすることができる。
【0025】
本発明の別の態様によれば、中間層の外周部は、中央壁の外周部を越えて延びるようにサイズ設定することができるので、一方の中間層の外周部に隣接する感圧性粘着層は、他方の中間層の外周部に隣接する感圧性粘着層に接着することができ、それにより、中間層の外周部が互いに直接接着されることによって中間層の間に中央壁が包み込まれる。
【0026】
本発明の別の態様によれば、熱伝導性充填材を含んで外層を構成し、熱が隣接電池セルから離れて外層の平面内で、電池の冷却板などのヒートシンク部材へ移動するのを促進することができる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、外層は1.0mm未満の厚さを有する。
【0028】
本発明の別の態様によれば、外層は、中央壁を中間層と外層との間に密封関係で包み込むのを容易にするために、中間壁の外周部と同じサイズ及び形状の外周部を有することができる。
【0029】
本発明の別の態様によれば、電気自動車用電池のための電池セルインタフェース材料は、一体型壁組立体を備え、一体型壁組立体は、絡み合った多繊維難燃糸又は不織材料の一方で構成され、反対側の側面を有する中央壁と;一対の中間層であって、各中間層が1.0mm未満の厚さを有し、布地中央壁の反対側の側面の異なる側面に直接接着される一対の中間層と;一対の外層と;を含む。各外層は、各中間層が一対の外層の一方と中央壁との間に挟み込まれるように、一対の中間層の異なる層に接着される自己粘着材を有し、電気自動車用電池のセル壁に面する各外層は、そのセル壁に直接接着されるように構成された自己粘着材を有する。
【0030】
本発明の別の態様によれば、電気自動車用の電池パックは複数のセルを含み、隣接するセルは互いに向き合うセル壁を有する。一体型壁組立体は、織成又は編成の多繊維難燃糸或いは不織材料の一方で構成され、反対側の側面を有する中央壁と;一対の中間層であって、各中間層が中央壁の対向する側面の異なる側面に接着される一対の中間層と;一対の外層と;含む。各外層は、各中間層が一対の外層の一方と中央壁との間に挟み込まれるように、一対の中間層の異なる層に接着され、セル壁の1つに面する各外層は、そのセル壁に接着される。
【0031】
これら及び他の態様、特徴及び利点は、現在好ましい実施形態及び最良の形態、添付の請求項、及び添付の図面に関する以下の詳細な説明を考慮すると、当業者には容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本開示の一態様に従って組み立てられた電池セルインタフェース材料を含む電気自動車用電池を有する電気自動車の斜視図である。
【
図1A】隣接する電池セル間に挟み込まれて、隣接する電池セルを互いに熱的に絶縁し隔離する電池セルインタフェース材料を示す、
図1の電気自動車用電池の概略部分平面図である。
【
図2】本開示の一態様による、
図1の電気自動車用電池の電池セルインタフェース材料の分解斜視図である。
【
図2A】
図2の電池セルインタフェース材料の部分断面図である。
【
図2B】本開示の別の態様に従って組み立てられた電池セルインタフェース材料の部分断面図である。
【
図2C】本開示のさらに別の態様に従って組み立てられた電池セルインタフェース材料の部分断面図である。
【
図3】
図2A~2Cの電池セルインタフェース材料のいずれか1つの外周部を通る部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面を詳細に参照すると、
図1は、以下で電池Bと呼ぶ電気自動車用電池パックを有する電気自動車EVを示しており、電池Bは、以下でインタフェース材料10と呼ぶ電池セルインタフェース材料の1又は2以上のユニット化要素を有し(
図1Aに模式的に示す)、この場合、インタフェース材料10は、電気自動車用電池Bの複数のセル12に対して、並びに隣接するセル12間に複数種類の保護をもたらす。インタフェース材料10は、一体型壁組立体11として設けられている(一体型とは、壁組立体を単一の材料要素として扱い、組立体の個々の材料要素を互いに動作可能に固定して、個々の層の相互分離を防止できることを意味する)。壁組立体11は、絡み合わせた多繊維難燃糸15によって、少なくとも部分的に又は全体として形成された中央壁14を含む。壁組立体11はさらに、一対の中間層16を含み、中間層16のそれぞれが中央壁14の対向する側面18、19に接着される。中間層16は難燃性であり、一体型壁組立体11の対向する側面20、21に隣接して位置する電池セル12間の熱伝達を抑制する機能を果たす。壁組立体11はさらに、以下で外層22と呼ぶ一対の最外層を含み、各外層22は、中間層16の外向き側面24に直接接着されており、中間層16の各々は、外層22の1つと中央壁14との間に挟まれるようになっている。外層22は両面感圧性粘着テープとして提供され、感圧性粘着テープ22の一方の側面S1は中間層14のそれぞれの側面に直接接着され、感圧性粘着テープ22のもう一方の側面S2は電池セル壁13の外面26に直接接着される。隣接するセル12は互いに向き合うセル壁13を有し、一体型壁組立体11の外層22は各セル壁13に直接接着される。
【0034】
インタフェース材料10は、例示的に及び非限定的に、例えば車両衝突時に受ける衝撃力から、並びに汚染物質の侵入からセル12を保護し、さらに、セル12の熱膨張及び収縮時に一定又は実質的に一定(ほぼ一定を意味する)の撓み圧縮力を提供する。従って、インタフェース材料10は、膨張し加熱された隣接セル12の間で圧縮されると、圧縮下で一定又は実質的に一定の力を与え、その後、セル12の冷却収縮中に弾性的に膨張することができ、それによって、セル12は、使用中に過度の応力を伴うことなく膨張及び収縮することが可能となり、インタフェース材料10は、隣接するセル壁13との接触を維持して、セル12から外方への熱伝導及び熱放散を最適化することができる。インタフェース材料10はさらに、壁組立体11の外層22の平面P内で平面Pに沿って熱伝導性をさらに提供するので、熱を外層22に沿ってセル12からヒートシンク部材23に伝達することができ、例えば、例示的に及び非限定的に、電池Bの台座などの、必要に応じて設置できる冷却板に伝達することができる。外層22が電池セル壁13の外面26に直接接着されているので、セル12内の熱を伝導して、セル12から平面Pに沿って外部環境まで、及び設けられている場合にはヒートシンク部材23まで、外向きに放散するための直接経路を提供することによって、熱伝導が最適化される。インタフェース材料10は、その上さらに、平面Pを横切って延びる方向に熱絶縁特性を提供する一方で、電気絶縁性と、電池Bのセル12のうちの1又は2以上が熱暴走した場合などに火炎伝播を熱的に抑制する付加的な特性とをさらに提供し、これにより、電気自動車EVを依然として電池で5分以上給電することができ、電気自動車EVを安全に駐車位置まで運転することが可能となり、そこで運転者は電気自動車EVから退避することができる。
【0035】
本発明の別の態様によれば、中央壁14は、用途の詳細に応じて0.5mmと10.0mmの間、好ましくは0.5mmと5mmの間の範囲にある所望の厚さ(t1)を有して組み立てられ、これにより相対的に薄い壁組立体11がもたらされる。壁組立体11の厚さt1を制御し、全厚t1を最小限に抑えることにより、電池パックB内でセル12に割り当てられるスペースが増加するので、最大個数のセル12を設けることが可能となり、これによって、電池寿命を犠牲にすることなく、また電池パックBの全体サイズ及び重量を増やすことなく、電池パックBのエネルギ密度が高くなる。中央壁14は、上述のように、隣接する電池セル12の膨張及び収縮に耐えられるように、その厚さを横切る方向に圧縮可能である。中央壁14は、その布地構造によって内部に空気を閉じ込めて、熱絶縁性を強化し、中央壁14の片側にある電池12から中央壁14の反対側にある別の電池セル12への熱伝達を抑制するように構成される。中央壁14は、例示的に及び非限定的に、平織りパターンなどのいずれかの望ましい織りパターンを用いて、材料の単一層(
図2A)として織ることができ、或いは、中央壁14’は、一対の層(
図2B)として示す、互いに当接して重なり合う複数の織成層として設けることができる。中央壁14’の複数層は、単一の織成工程で絡み合わせることができ、必要に応じて、当接層14a、14bの緯糸及び/又は経糸が互いに織り込まれた関係で織られる。複数層によって内部に空気を閉じ込める能力が提供され、これにより、中央壁14’の熱絶縁特性が向上する。
【0036】
本発明の別の態様によれば、中央壁14は、いずれかの所望のニット型の編み目(stitch)を用いて編むことができる。編成壁14は、(
図2Aに示すような)単一の層、或いは、単一の編成工程で当接する編成層の間に編み目が延びる状態に互いに絡み合わせた(
図2Bに示すような)複数の層を含むことができる。
【0037】
本発明の別の態様によれば、中央壁14の難燃糸は鉱物糸として提供することができる。鉱物糸は、ガラス繊維糸、セラミック糸、シリカ糸、及びバサルト糸のうちの少なくとも1つとして提供することができる。中央壁14、14’は、鉱物糸の種類とサイズ、絡み合わせの種類(織成又は編成)、並びに絡み合わせに使用されるそれぞれの織成又は編成パターンを慎重に選択することによって、隣接するセル12間に所望の圧縮力を提供するように正確に適合させることができ、これにより、異なったセル化学特性を持つセルの膨張特性に耐え、それに適応するように、製造時にインタフェース材料10、10’を個別化することができる。
【0038】
本発明の別の態様によれば、
図2Cに示すように、中央壁14”は不織層として設けることができ、不織層14”は、例えばガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、及びバサルト繊維のうちの少なくとも1つを含む鉱物繊維などの難燃繊維を、いずれかの適切な不織布製造工程によって互いに絡み合わせて形成される。
【0039】
本発明の別の態様によれば、中間層16は雲母系材料から構成することができる。中間層16は1.0mm未満の厚さ(t2)を有し、これにより相対的に厚さの薄い壁組立体11がもたらされる。中間層16の反対側の側面24、25には感圧性粘着材28を接着することができ、一方の側面25の感圧性粘着材28は、中央壁14に接着される。中間層16に接着される感圧性粘着材28は、アクリル系又はシリコーン系の材料とすることができ、従って耐熱性を有する。
【0040】
本発明の別の態様によれば、
図3に示すように、中間層16の外周部は、中央壁14の外周部30を越えて延びるようにサイズ設定することができるので、一方の中間層16の感圧性粘着層28が他方の中間層16の感圧性粘着層28に接着され、それによって、中間層16の間に中央壁14を包み込む、接着された密封外周区画32を形成することができる。
【0041】
本発明の別の態様によれば、外層22は、熱伝導性充填材を含んで構成することができ、熱が、隣接電池セル12から離れ、外層22の平面P内で平面Pに沿って、電池Bの冷却板など、上述のヒートシンク部材23へ移動するのを促進するようになっている。外層22は1.0mm未満の厚さ(t3)を有し、これによってさらに相対的に薄い厚さ(t4)の壁組立体11がもたらされる。外層22は、中間壁16と同じ外周形状及びサイズを有することができ、中間壁16と鏡像関係で一致することで、中間層16及び外層22の外周部を互いに接着して、それによって中央壁14を中間層16と外層22との間に密封関係で包み込むのを容易にすることができる。
【0042】
本発明の別の態様によれば、上記のように電池セルインタフェース材料10によって互いに隔離された複数の電池セル12を有する電気自動車用電池Bが提供される。インタフェース材料10によって提供される隔離は、上述のように、隣接するセル12間に一定の撓み圧縮力を提供し、隣接するセル12の間に画定された平面Pに沿ってヒートシンク23までの熱伝導用経路を提供し、隣接するセル12の間に画定された平面Pに対して斜めに又は横切って延びる方向に熱絶縁を提供し、隣接するセル12の間の熱暴走(火炎伝播)保護を提供し、それによって1つのセル12が別のセル12に熱的影響を与えること又は爆発炎上するのを抑制し、隣接するセル12の間に電気絶縁を提供する。
【0043】
明らかに、上記の教示に照らして、本発明について多くの修正及び変形が可能である。全ての請求項及び全ての実施形態に関する全ての特徴は、そのような組み合わせが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができると考えられる。それゆえ、添付の特許請求の範囲内で、具体的に説明したのとは別の方法で本発明を実践することができるということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0044】
23 ヒートシンク部材
B 電気自動車用電池パック
【国際調査報告】