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特表2025-500813カンナビジオール誘導体、その調製方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】カンナビジオール誘導体、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/26 20060101AFI20250107BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 31/223 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20250107BHJP
   C07D 295/15 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C07C229/26 CSP
A61P25/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P9/00
A61P25/04
A61P29/00
A61P1/16
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P35/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61K31/223
A61K31/5377
C07D295/15
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534529
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2022132587
(87)【国際公開番号】W WO2023103734
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111506679.8
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520013755
【氏名又は名称】徳義制薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】DEYI PHARMACEUTICAL LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 916, Floor 9, Unit 2, Building 1-2, Hongshengda Yuexing Commercial Center, Xishan District, Kunming, Yunnan 650100 China
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】王曙賓
(72)【発明者】
【氏名】杜業松
(72)【発明者】
【氏名】張平平
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC73
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206FA53
4C206KA01
4C206KA15
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA08
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZA22
4C206ZA36
4C206ZA68
4C206ZA75
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB15
4C206ZB26
4C206ZB27
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB21
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BT16
4H006NB23
(57)【要約】
本発明は、カンナビジオール誘導体、その調製方法、及び使用、特に神経系疾患(例えば
、パーキンソン病)の予防及び治療におけるその使用を開示する。上記のカンナビジオー
ル誘導体は、一連の合成誘導体からスクリーニングされるものであり、動物実験の結果、
上記のカンナビジオール誘導体は、パーキンソン病モデル動物のバランスビームスコアを
低下させ、ドーパミンレベルと脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(T
H)細胞の陽性率を向上させることができ、てんかん、パーキンソン病などのさまざまな
疾患の治療薬の開発や研究に有用であり、応用価値が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物又はその薬学的に許容される塩、共晶、立体異性体、プロドラ
ッグ、溶媒和物、代謝産物。
(I)
(ここで、
は、-NH、-Hから選択され、
及びXは、独立して、単結合、アルキレン、1つ又は複数の置換基で置換されたア
ルキレン、1つ又は複数の-C(=O)O-によって隔てられたアルキレン、1つ又は複
数の-OC(=O)-によって隔てられたアルキレン、1つ又は複数のアルキルイミノに
よって隔てられたアルキレン、1つ又は複数の-OC(=O)O-によって隔てられたア
ルキレン、以上のスペーサー基の組み合わせによって隔てられたアルキレンから選択され
、前記置換基は、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アリール、シクロアルキル、チオア
ルコキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルから選択さ
れ、ここで、C原子上のHが、ハロゲン、-OC0~10アルキル、C1~10直鎖/分
岐アルキル、ニトロ、シアノ、アミノで置換されてもよく、
及びRは、独立して、-H、
、-OH、








、アルコキシから選択され、ここで、Xは、N、O、Sから選択され、好ましくは、R
及びRは、独立して、



から選択され、
及びRは、それぞれ独立して、-H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリ
ール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルから選択され、
、R、及びRは、それぞれ独立して、-H、-OH、ハロゲン、-NO、-C
N、アルキル、シクロアルキルから選択され、
又は、一般式(I)は、任意に1つ又は複数のD原子で置換される。)
【請求項2】
前記立体異性体は以下の構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
(II)
【請求項3】
前記Rは-NHであり、前記X及びXは、独立して、C1~5アルキレン、1つ
又は複数の置換基で置換されたアルキレンから選択され、前記置換基は、アルキル、ヒド
ロキシ、ハロゲン、アリール、シクロアルキル、チオアルコキシ、ニトロ、シアノ、アミ
ノ、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルから選択され、ここで、C原子上のHが、ハ
ロゲン、-OC0~10アルキル、C1~10直鎖/分岐アルキル、ニトロ、シアノ、ア
ミノで置換されてもよく、前記R及びRは、いずれも-Hであり、前記Rは、-H
又は-OHから選択され、前記R及びRは、いずれも-Hであり、前記R及びR
は、独立して、-NH、-OH、







、アルコキシから選択され、ここで、Xは、N、O、Sから選択され、好ましくは、X
はOである、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記R及びRは、独立して、-NH
から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記R及びRは、いずれも-NHである、ことを特徴とする請求項1に記載の化合
物。
【請求項6】
前記X及びXは、-CH-、-CHCH-、-(CHCH-、-(C
CH-、-CHCH(CH-、-(CHCH-、-CH(C
)CHCH-、-CH(OH)CH-から選択される、ことを特徴とする請求
項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記X及びXは、いずれも-(CHCH-である、ことを特徴とする請求項
1に記載の化合物。
【請求項8】
以下の構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
又は
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、共晶、立体
異性体、プロドラッグ、溶媒和物、代謝産物と、1種又は複数種の薬学的に許容される補
助材料と、を含む、医薬組成物。
【請求項10】
疾患を予防及び/又は治療する薬物の調製における、請求項1~7のいずれか1項に記載
の化合物又はその薬学的に許容される塩、共晶、立体異性体、プロドラッグ、溶媒和物、
代謝産物の使用であって、
前記疾患は、神経系疾患、がん、自己免疫疾患、心血管疾患、疼痛、炎症、肝損傷から選
択される1種又は複数種であり、好ましくは、前記疾患は、神経系疾患である、使用。
【請求項11】
前記神経系疾患は、神経退行性疾患又はてんかんであり、前記神経退行性疾患は、パーキ
ンソン病、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、多発性硬
化症から選択され、好ましくは、前記神経退行性疾患はパーキンソン病であり、
前記がんは、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、胃食道腺が
ん、食道がん、小腸がん、噴門がん、子宮内膜がん、卵巣がん、卵管がん、外陰がん、精
巣がん、前立腺がん、白血病、神経膠腫から選択され、
前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性結
腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎から選択される、ことを特徴とする請求項10に記載
の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学医薬の技術分野に関し、具体的には、カンナビジオール誘導体、その調製
方法及び使用、特に、神経系疾患(例えば、パーキンソン病)の予防及び治療における使
用に関する。
【背景技術】
【0002】
カンナビジオールは、CBDと略称しており、大麻の花や葉から抽出され、医薬品、化粧
品、健康食品などに有用な、無毒で付加価値の高いフェノール系物質である。その化学名
は、2-[(1R,6R)-3-メチル-6-(1-メチルビニル)-2-シクロヘキセ
ン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオールであり、CAS登録番号が1
3956-29-1であり、化学構造が以下に示される。
【0003】
現代の医学研究は、CBDが抗てんかん、抗ストレス、抗炎症などの点において顕著な効
果があることを示している。CBDは、てんかんの治療、及び気分改善や抗不安のための
栄養補助食として米国食品医薬品局によって承認されている。
【0004】
しかし、カンナビノイドは、水溶性が低く、経口バイオアベイラビリティが低いため、薬
物の開発や利用には適していない。したがって、CBDの高純度を確保しながら、水溶性
も優れ、バイオアベイラビリティをさらに向上させ、医療分野での使用を拡大するように
、新たなカンナビジオール誘導体、その製造方法及び使用を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点を解決するために、本発明は、カンナビジオール誘導体、その調製方法及
び使用、特に、神経系疾患(例えば、パーキンソン病)の予防及び治療における使用を提
供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様では、以下の構造を有する化合物を提供する。
(I)
(ここで、
は、-NH、-Hから選択され、好ましくは、Rは、-NHであり、
及びXは、独立して、単結合、アルキレン(例えば、C1~15アルキレン、C
~10アルキレン、C1~5アルキレン)、1つ又は複数の置換基で置換されたアルキレ
ン、1つ又は複数の-C(=O)O-によって隔てられたアルキレン、1つ又は複数の-
OC(=O)-によって隔てられたアルキレン、1つ又は複数のアルキルイミノによって
隔てられたアルキレン、1つ又は複数の-OC(=O)O-によって隔てられたアルキレ
ン、以上のスペーサー基の組み合わせによって隔てられたアルキレンから選択され、前記
置換基は、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アリール、シクロアルキル、チオアルコキ
シ、ニトロ、シアノ、アミノ、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルから選択され、こ
こで、C原子上のHが、ハロゲン、-OC0~10アルキル、C1~10直鎖/分岐アル
キル、ニトロ、シアノ、アミノで置換されてもよく、
さらに、X及びXは、独立して、C1~5アルキレン、1つ又は複数の置換基で置換
されたアルキレンから選択され、前記置換基は、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アリ
ール、シクロアルキル、チオアルコキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、ヘテロアリール、ヘ
テロシクロアルキルから選択され、ここで、C原子上のHが、ハロゲン、-OC0~10
アルキル、C1~10直鎖/分岐アルキル、ニトロ、シアノ、アミノで置換されてもよく

さらに、X及びXは、独立して、-CH-、-CHCH-、-(CH
-、-(CHCH-、-CHCH(CH-、-(CHCH
-、-CH(CH)CHCH-、-CH(OH)CH-から選択され、
好ましくは、X及びXは、いずれも、-(CHCH-であり、
及びRは、独立して、-H、
、-OH、








、アルコキシから選択され、ここで、Xは、N、O、Sから選択され、好ましくは、R
及びRは、独立して、



から選択され、
及びRは、それぞれ独立して、-H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリ
ール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルから選択され、好ましくは、R及びR
は、いずれも-Hであり、
、R、及びRは、それぞれ独立して、-H、-OH、ハロゲン、-NO、-C
N、アルキル、シクロアルキルから選択され、好ましくは、Rは、-H又は-OHから
選択され、R及びRは、いずれも-Hである。)
【0007】
さらに、R及びRは、独立して、-NH、-OH、







、アルコキシから選択され、ここで、Xは、N、O、Sから選択され、好ましくは、X
は、Oであり、好ましくは、R及びRは、独立して、-NH
から選択され、より好ましくは、R及びRは、いずれも-NHである。
【0008】
本発明の一実施例では、R及びRは、いずれも-NHである。
【0009】
任意に、一般式(I)は、1つ又は複数のD原子で置換されてもよい。
【0010】
本発明の一実施例では、上記の化合物は、以下の構造を有する。

【0011】
本発明の第2態様では、以下の構造を有する第1態様に記載の化合物の立体異性体を提供
する。
(II)
(ここで、X、X、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、本発
明の第1態様に記載の定義を有する。)
【0012】
さらに、前記立体異性体は、以下の構造を有する。
(III)
【0013】
本発明のいくつかの実施例では、上記の立体異性体は、以下の構造を有する。

【0014】
本発明の第3態様では、第1態様に記載の化合物又は第2態様に記載の立体異性体の塩又
は共晶、特に薬学的に許容される塩又は共晶を提供する。
【0015】
さらに、この塩は、塩基付加塩又は酸付加塩であり、前記塩基付加塩は、金属又はアミン
と化合物とで形成されてもよく、特に塩基金属塩、塩基土類金属塩、例えばナトリウム塩
、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、特にナトリウム塩であり、前記酸付加塩
は、無機酸又は有機酸と化合物とで形成され、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩
、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、メ
タンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、特にメタンスルホン酸塩である。本発明
の第4態様では、第1態様に記載の化合物のプロドラッグ、溶媒和物、代謝産物を提供す
る。本発明の第5態様では、第1態様に記載の化合物の調製方法を提供する。
【0016】
さらに、この調製方法は、以下の反応ステップを含んでもよい。
【0017】
さらに、R’、R’’は、アミノ保護基、例えば、アルコキシカルボニル類(例えば、-
Boc)、アシル類、アルキル類である。
【0018】
さらに、上記反応の温度は、20~30℃、例えば室温である。
【0019】
本発明の第6態様では、本発明の第1態様に記載の化合物、又はその薬学的に許容される
塩、共晶、立体異性体、プロドラッグ、溶媒和物、代謝産物と、1種又は複数種の薬学的
に許容される補助材料と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0020】
さらに、薬学的に許容される補助材料は、充填剤、接着剤、滑剤、崩壊剤、酸化防止剤、
緩衝剤、懸濁助剤、溶解補助剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤等から選択される1種又は
複数種であってもよい。
【0021】
さらに、この医薬組成物は、胃腸投与又は、例えば、静脈内投与、筋肉内、皮内及び皮下
経路などの非経口投与によって投与され得る。
【0022】
さらに、この医薬組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、シロ
ップ剤、ゲル剤、乳剤、懸濁剤、放出制御製剤、エアゾール剤、パウダーミスト剤、フィ
ルム剤、注射剤、点滴剤、経皮吸収剤、軟膏剤、ローション剤、貼付剤、座剤、点鼻剤製
、肺製剤などの剤形に製剤化され得る。
【0023】
さらに、上記医薬組成物の各種の剤形は、薬学分野の一般的な方法で調製することができ
る。
【0024】
さらに、この医薬組成物は、同一又は異なる適応症に対する1種又は複数種の他の活性成
分を含んでもよい。
【0025】
本発明の第7態様では、疾患を予防及び/又は治療する薬物の調製における、本発明の第
1態様に記載の記化合物、又はその薬学的に許容される塩、共晶、立体異性体、プロドラ
ッグ、溶媒和物、代謝産物、第6態様に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0026】
さらに、上記疾患は、神経系疾患、がん、自己免疫疾患、心血管疾患、疼痛、炎症、肝損
傷から選択される1種又は複数種であり、好ましくは、前記疾患は、神経系疾患である。
【0027】
さらに、前記神経系疾患は、神経退行性疾患又はてんかんであり、前記神経退行性疾患は
、パーキンソン病、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、
多発性硬化症から選択され、好ましくは、前記神経退行性疾患は、パーキンソン病である
【0028】
さらに、がんは、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、胃食道
腺がん、食道がん、小腸がん、噴門がん、子宮内膜がん、卵巣がん、卵管がん、外陰がん
、精巣がん、前立腺がん、白血病、神経膠腫などを含むが、これらに限定されない。
【0029】
さらに、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍
性結腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎などを含むが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の第8態様では、本発明の第1態様に記載の化合物、若しくはその薬学的に許容さ
れる塩、共晶、立体異性体、プロドラッグ、溶媒和物、代謝産物、又は第6態様に記載の
医薬組成物を、これを必要とする被験者に投与するステップを含む、疾患を予防及び/又
は治療する方法を提供する。
【0031】
さらに、上記疾患は、神経系疾患、がん、自己免疫疾患、心血管疾患、疼痛、炎症、肝損
傷から選択される1種又は複数種であり、好ましくは、前記疾患は、神経系疾患である。
【0032】
さらに、前記神経系疾患は、神経退行性疾患又はてんかんであり、前記神経退行性疾患は
、パーキンソン病、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、
多発性硬化症から選択され、好ましくは、前記神経退行性疾患は、パーキンソン病である
【0033】
さらに、がんは、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、胃食道
腺がん、食道がん、小腸がん、噴門がん、子宮内膜がん、卵巣がん、卵管がん、外陰がん
、精巣がん、前立腺がん、白血病、神経膠腫などを含むが、これらに限定されない。
【0034】
さらに、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍
性結腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎などを含むが、これらに限定されない。
【0035】
さらに、被験者は、哺乳動物、例えば、ヒト、オランウータン、サル、犬、ウサギ、ネズ
ミなど、特にヒトであってもよい。
【0036】
本発明の発明者らは、カンナビジオールを基にして構造修飾を行い、一連の合成誘導体に
対してスクリーニングをかけて本発明の化合物を得た。動物実験の結果、上記のカンナビ
ジオール誘導体は、パーキンソン病モデル動物のバランスビームスコアを低下させ、ドー
パミンレベルと脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の陽性
率を向上させることができ、パーキンソン病などのさまざまな疾患の治療薬の開発や研究
に有用であり、応用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】パーキンソン病モデルの行動バランスビームスコアの結果を示す。
図2】治療後のパーキンソン病モデルにおける線条体中のドーパミン含有量の検出結果を示す。
図3】脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の陽性率を示す。
図4】脳の黒質(SubN)のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
別段の定義がない限り、本発明で使用されるすべての科学的及び技術的用語は、当業者が
一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0039】
「アルキル」という用語は、分子の他の部分と単結合で結合されている、不飽和結合を含
まない直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を指す。本明細書で使用されるアルキルは、一般的に
、1~12(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12)個の炭
素原子を含み、好ましくは、1~6の炭素原子を含む(すなわち、C1~6アルキル)。
前記アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル
、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル
、n-ヘキシル、イソヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
「アルキレン」という用語は、アルカン分子が2つの水素原子を失った炭化水素基(2価
のアルキル)を指し、それは、分子の他の部分と単結合で結合されている、直鎖又は分岐
鎖のものであってもよい。本明細書における典型的なアルキレンは、1~12(例えば、
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12)個の炭素原子、好ましくは、
1~6個の炭素原子を含み、アルキレンの例としては、メチレン(-CH2-)、エチレ
ン、プロピレン、ブチレンなどが含まれる。
【0041】
「アルコキシ」という用語は、ヒドロキシ中の水素がアルキルで置換された置換基を指す
。本明細書で使用されるアルコキシは、一般的に、1~12(例えば、1、2、3、4、
5、6、7、8、9、10、11、12)個の炭素原子、好ましくは、1~6個の炭素原
子を含む(すなわち、C1~6アルコキシ)。前記アルコキシの例としては、メトキシ、
エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
「シクロアルキル」という用語は、例えば、1~4個の単環及び/又は縮合環を含み、3
~18個の炭素原子、好ましくは3~10(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10
)個の炭素原子を含む脂環式炭化水素を指し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、
シクロペンチル、シクロヘキシル、又はアダマンチルなどである。
【0043】
「アリール」という用語は、単純な芳香環から誘導される任意の官能基又は置換基であっ
て、例えば、1~3個の環を含む、単環又は縮合環の6~18(例えば、6、8、10、
12、14、16、18)個の炭素環原子を有する単環のアリール基及び/又は縮合環の
アリール基を指す。本明細書で使用されるアリールは、一般的に、1~2個の環を含む単
環又は縮合環で、6~12個の炭素環原子を有するアリール(すなわち、C6~12アリ
ール)を指し、ここで、炭素原子上のHが、例えばアルキル、ハロゲン基などで置換され
ていてもよい。前記アリールの例としては、フェニル、p-ヒドロキシフェニルなどが含
まれるが、これらに限定されない。
【0044】
「薬学的に許容される塩」という用語は、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。
【0045】
「共晶」という用語は、本発明の化合物と、他の生理学的に許容される酸、塩基、非イオ
ン性化合物とが、水素結合、ファンデルワールス力、π-πスタッキング作用、ハロゲン
結合等の非共有結合により結合した結晶を指す。
【0046】
「立体異性体」という用語は、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何異性体の形
で存在するものを含む。
【0047】
「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物と1種又は複数種の溶媒分子との物理的結合
を指す。この物理的結合は、水素結合を含む種々の程度のイオン結合及び共有結合を含む
。いくつかの場合には、溶媒和物は、例えば、1つ又は複数の溶媒分子が結晶性固体の格
子中に取り込まれるときに分離されてもよい。溶媒和物は、溶液相と分離可能な溶媒和物
とを含む。代表的な溶媒和物としては、エタノラートやメタノラート等が含まれる。
【0048】
「代謝産物」という用語は、本発明の化合物を生体内の生理学的条件下で化学的に分解し
て得られる産物を指す。
【0049】
「プロドラッグ」という用語は、過剰な毒性、刺激性やアレルギー反応等がなく、患者へ
の投与に適した、意図された目的に有効であるアセタール、エステル及び両性イオンの形
態を含む式Iの化合物の形態を指す。プロドラッグは、例えば血液中で加水分解すること
により、インビボで変換され、母体化合物が得られる。
【0050】
本発明では、「D」とは、重水素を指す。「重水素で置換される」とは、1つ又は複数の
水素原子が相応する数の重水素原子で置換されたことを指す。
【0051】
「被験者」という用語は、インビトロであるかインサイチュであるかを問わず、本明細書
に記載の方法を受け入れる任意の動物又はその細胞を指す。さらに、前記動物は、哺乳動
物、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、イヌ、サル、オランウータン、又は
ヒト、特にヒトを含む。
【0052】
「治療」という用語は、疾患の発症後における疾患の1つ又は複数の臨床症状の予防、治
癒、逆転、緩和、軽減、最小化、抑制、阻止、及び/又は停止を指す。
【0053】
「予防」という用語は、疾患の発症前に、疾患の発症や進行を回避、最小限に抑える、又
はより困難にするために治療を行うことを指す。
【0054】
本明細書で引用される様々な刊行物、特許、及び公開された特許明細書の開示は、その全
体が参照により組み込まれる。
【0055】
以下では、本発明の実施例を参照して、本発明の技術的解決手段を明確かつ完全に説明す
るが、説明される実施例は、本発明の実施例の一部にすぎず、すべての実施例ではないこ
とは明らかである。本発明の実施例に基づいて当業者が創造的な労働をせずに取得した他
の実施例は、すべて本発明の保護範囲に属する。
実施例1化合物3の調製
【0056】
1.合成スキーム
2.合成方法
【0057】
(1)化合物2の調製
1000mL1つ口フラスコに化合物1(CBD、10g、31.85mmol)及び塩
化メチレン(500mL)を加え、撹拌して溶解した後、Nα,Nε-ビス(Boc)-
L-リジン(23.14g、66.88mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(
13.78g、66.88mmol)、及び4-ジメチルアミノピリジン(8.16g、
66.88mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応により生成された不溶物を濾別
し、濾液を飽和食塩水で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧
して濃縮し、油状粗品41gを得た。粗品をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-
ヘキサン:酢酸エチル=5:1~3:1)にかけて、泡沫状の固体化合物2(13.5g
)を得た。MS(ESI):988[M+NH
(2)化合物3の調製
【0058】
250mL1つ口フラスコに化合物2(5.7g、5.88mmol)及び1,4-ジオ
キサン(60mL)を加え、撹拌して溶解し、窒素保護下で、反応フラスコにメタンスル
ホン酸(3.8ml、58.8mmol)を加え、添加終了後、室温で一晩撹拌した。反
応フラスコに高粘度の固体を生成した。上清を捨てて、残った固体を真空乾燥させ、粗品
6.8gを得た。粗品C18をカラムクロマトグラフィー(アセトニトリル:水=2:1
00~4:100)により精製し、HPLCによりクロマトグラフィー溶液を検出し、収
集して凍結乾燥し、白色泡沫状の固体化合物3(2.5g)を得て、この純度は92%で
あった。MS(ESI):286[(M+2H)/2]
実施例2パーキンソン病の治療の研究
【0059】
1.実験動物及び一部の試薬
C57/BL6マウス、SPFグレード、体重18~20g、週齢6~8、雄、上海斯莱
克実験動物有限責任公司から購入。飼育環境では、温度は22±1℃、湿度は65~70
%、明暗周期は12時間とし、水は自由に摂取させた。
MPTPは、Sigma社から購入し、アマンタジンは、Sigma社から購入し、無水
エタノールは、国薬集団化学試剤有限公司から購入した。
【0060】
2.実験の群分け
実験動物を空白群、モデル群、陽性薬物群、化合物群の4群に8匹ずつ無作為に分けた。
【0061】
3.実験方法
(1)6~8週齢のSPFグレードのC57マウス32匹を購入し、適応的に1週間飼育
し、モデリングを開始した。
(2)MPTP(25mg/kg)を1日1回、連続して7日間腹腔内注射した。空白群
は処理されなかった。
(3)モデリングが完了したら、投与を開始した。陽性薬物群はアマンタジン(40mg
/kg)、化合物群(100mg/kg)は化合物3(実施例1で調製)を所定の用量で
1日1回、連続して14日間胃内投与した。
【0062】
(4)行動学的検定を先に行う:バランスビーム検出スコア
長さ80cm、幅2.5cmの木の棒をテーブルから10cmの高さに水平に固定し、そ
の上を動物に歩かせた。
バランスビームに飛び乗ることができ、倒れることなく自由に歩くことができる場合は、
0点、動物はバランスビームに飛び乗ることができるが、バランスビームの上を歩くとき
に落ちる可能性があるが、落ちる確率が50%未満である場合は、1点、動物はバランス
ビームに飛び乗ることができるが、バランスビームの上で歩くときに落ちる可能性がある
が、落ちる確率が50%を超える場合は、2点、動物は体の正常な側を利用してバランス
ビームに飛び乗ることができるが、麻痺した側の後肢は体を前に動かすのを助けることが
できない場合は、3点、動物はバランスビームの上を歩くことはできないが、木の棒の上
に座ることはできる場合は、4点、動物を木の棒の上に置くと、動物がすぐに倒れる場合
は、5点とする。
【0063】
(5)スコア終了後、材料の採取を開始した。
マウスを迅速に殺した後、マウスの脳を採取し、マウスの大脳皮質(CP)を分離した。
マウスの脳線条体を露出させた後、線条体を採取して秤量し、PBSを所定の割合で添加
した後、粉砕してホモジナイズを行った。その後、上清を分離して脳線条体中のドーパミ
ン含有量を検出した。
【0064】
4.キット法による脳線条体中のドーパミン含有量の検出
4.1キットと一部の機器は次の表のとおりである。
【0065】
[表1]キットの情報

[表2]主要機器及び消耗品
【0066】
4.2タンパク質の定量化
(1)検量線の作成:酵素プレートを1枚用意し、以下の表に従って試薬を加えた。
[表3]試薬
(2)サンプルの数に応じて、BCA試薬Aと試薬Bを体積比50:1で混合して適切な
量のBCA作動液を調製し、よく混合した。
(3)160μlのBCA作動液を各ウェルに加えた。
(4)プレートをオシレータ上に置き、30sec振盪し、37℃で30分間静置した後
、562nmの吸光度を測定した。横軸に吸光度、縦軸にタンパク質濃度(μg/μl)
をとって標準曲線を作成した。
(5)試験対象のタンパク質2μlとPBS(10倍希釈)18μlをプレートに加え、
BCA作動液160μlを加え、プレートをオシレータ上に置き、30sec振盪し、3
7℃で30分間静置した。その後、562nmの吸光度を測定した。
(6)測定されたサンプルの吸光度値に基づいて、標準曲線上で対応するタンパク質濃度
(μg/μl)を求め、これにサンプル希釈係数(10)を乗算すると、サンプルの実際
の濃度(単位:μg/μl)を得た。
(7)マウスのドーパミン検出実験の操作及び方法については、キットの説明書を参照し
た。
【0067】
5.脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の免疫組織化学的
測定
5.1実験材料
【0068】
[表4]主要試薬
【0069】
[表5]主要機器及び消耗品
【0070】
溶液の調製
(1)PBS溶液
ddHO600mlにNaCl8g、KCl0.2g、NaHPO1.44g、及
びKHPO0.24gを溶解し、HClを用いて溶液のpHを7.4に調整し、1L
まで定容し、フィルタで濾過した後、オートクレーブを行い、室温で保存した。
(2)0.1mol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液
0.1mol/Lクエン酸3.8ml、0.1mol/Lクエン酸ナトリウム16.2m
l。
クエン酸C・HO:分子量210.14;0.1mol/L溶液は21.0
1g/L。
クエン酸ナトリウムNa・2HO:分子量294.12;0.1mol
/L溶液は29.41g/mL。
【0071】
5.2実験方法
【0072】
5.2.1サンプルの包埋と固定化
(1)材料の採取と固定化
組織を切断するときは、鋭利なナイフ又はハサミを使用した。組織塊を切断するときは、
ナイフの根元から後方に引いて組織を切断した。組織塊の厚さは約0.2~0.3cm、
大きさは1.5cm×1.5cm×0.3cmが適当である。採取した組織塊を10%ホ
ルマリン中で48時間固定化した。
【0073】
(2)洗浄と脱水
固定化した組織を流水ですすぎ、残留固定化剤や不純物を取り除いた。異なる濃度のエタ
ノールを用いて、純粋なアルコール(無水エタノール)になるまで50%、70%、85
%、95%と段階的に2時間ずつ脱水した。高濃度エタノールが空気中の水分を吸収して
濃度が低下し、脱水が不完全になるのを防ぐように、脱水は、蓋付きの瓶において行う必
要がある。保存が必要な材料は、70%エタノールまで脱水して静置することができ、長
期保存が必要な場合は、同量のグリセリンを添加する。
【0074】
(3)透明化
組織塊を純粋なエタノールとキシレンの等量の混合液に入れて、2時間そのままにした後
、純粋なキシレンに入れて、2時間そのままにし、再度純粋なキシレンに入れて、2時間
そのままにした。材料が透明化すると、前のステップの脱水の効果が明らかになる。脱水
が十分であれば、組織は透明な状態になり、組織に白い雲状のものがある場合、脱水が十
分ではなく、やり直す必要があることを示し、ただし、やり直す場合、効果はよくないこ
とがよくある。キシレンを使用して透明化を行う場合、キシレンが揮発して空気中の水分
を吸収することを回避し、キシレンを無水状態に保持する必要がある。
【0075】
(4)パラフィン浸透
パラフィン浸透は恒温オーブンで行う必要がある。まず、組織材料塊を溶融パラフィンと
キシレンの等量の混合液に1~2時間浸漬し、次に、2つの溶融パラフィン液に移し、そ
れぞれ約3時間浸漬した。
【0076】
(5)包埋
包埋には、パラフィンに十分に浸した組織塊をパラフィンで包んだ。具体的な方法は次の
とおりである。まず、紙箱を用意し、溶融蝋を箱に注いで、あらかじめ温めたピンセット
を使って組織塊を素早く持ち上げ、切断面を下にして紙箱の底に平らに置き、次に、紙箱
をゆっくりと持ち上げて、冷水の中に平らに置いた。表面のパラフィンが固まったら、す
ぐに紙箱を水の中に押し込み、冷却して急速に固まらせ、30min後に取り出した。
【0077】
(6)スライス
スライスする前に、パラフィンブロックを-20℃で冷蔵庫に少なくとも30min静置
し、硬度を高めた。スライサのナイフホルダーにスライスナイフを取り付けてしっかりと
固定し、パラフィンブロックのベース又はパラフィンブロックを固定し、パラフィンブロ
ックとナイフを適切な位置に調整し、ブレードとパラフィンブロックの表面が5度の角を
なすようにした。スライサ上の切片の厚さを4~7μmに調整してからスライスした。
【0078】
5.2.2免疫組織化学染色
【0079】
(1)ベーキングと脱蝋
スライドを恒温オーブンに入れて65℃で30minベーキングした。キシレンIに15
min浸し、次にキシレンIIに15min浸した。
【0080】
(2)水和
脱パラフィン切片を100%アルコール、95%アルコール、85%アルコール、75%
アルコールにそれぞれ5min浸し、水道水で10min洗い流した。
【0081】
(3)抗原修復
0.01Mクエン酸ナトリウム緩衝液で15min高圧修復し、自然冷却後、0.02M
PBSで3min×3回洗浄した。
【0082】
(4)ブロッキング
スライドを3%H2O2に置き、加湿ボックス内で10minインキュベートして、内因
性ペルオキシダーゼ活性を解消した。0.02MPBSで3min×3回洗浄した。
【0083】
(5)一次抗体インキュベート
一次抗体(1:2000希釈)を滴下し、加湿ボックス内でインキュベートし、室温で1
時間静置した(又は4℃で一晩インキュベート)。0.02MPBSで3min×3回洗
浄した。
【0084】
(6)二抗インキュベート
HRP標識広域スペクトル二次抗体を滴下し、加湿ボックス内でインキュベートし、室温
で20~30min静置した。0.02MPBSで3min×3回洗浄した。
【0085】
(7)発色
DAB染色後、切片に変色が認められた場合は、直ちに水道水で染色液を洗い流した。
【0086】
(8)ヘマトキシリン染色
ヘマトキシリンで3min対比染色し、1%塩酸アルコールで分化し、顕微鏡で観察して
染色度合いをコントロールした。水道水で10min洗い流し、65℃のオーブンに入れ
て水分を乾燥させた。
【0087】
(9)透明化及びマウント
スライドをキシレンに入れて3min×2回透明化し、中性樹脂でマウントし、65℃の
オーブンに15min静置した。
【0088】
5.2.3画像の収集と分析
顕微鏡で写真を撮り、サンプルの関連部分を収集して分析し、陽性領域を計算した。
【0089】
6.実験結果
(1)パーキンソン病モデルの行動バランスビームスコアの結果を以下の表と図1に示す
【0090】
[表6]パーキンソン病モデルの行動バランスビームスコアの結果
【0091】
マウスにMPTPを腹腔内注射することによってパーキンソン病モデルを作成し、バラン
スビームスコアによる行動評価を実施した。MPTPの腹腔内注射の7日後、バランスビ
ームスコアを実行した。空白群についてモデリングは実行されず、バランスビームスコア
は0であった。それを除いた群では、マウスのスコアはすべて5~6点であり、各群は、
空白群と比較して、P≦0.05であり、統計的に有意であり、モデルの成功が証明され
た。
【0092】
その後、陽性薬物群及び化合物群による治療を行った後、モデル群のバランスビームスコ
アは4~5点であり、陽性薬物のバランスビームスコアは2~3点であった。化合物群の
バランスビームスコアは3~4点であった。陽性薬物群及び化合物群では、モデル群と比
較して、有意な下降傾向があり、P≦0.05であり、統計的に有意であった。
【0093】
治療後の各群のスコアは、空白群<陽性薬剤群<化合物群<モデル群となった。
【0094】
(2)治療後のパーキンソン病モデルにおける線条体のドーパミン含有量を以下の表と図
2に示す。
【0095】
[表7]治療後のパーキンソン病モデルにおける線条体のドーパミン含有量
【0096】
神経伝達物質としてのドーパミンは、中枢神経系のさまざまな生理学的機能を調節するも
のである。治療したマウスのパーキンソン病モデルの線条体中のドーパミン含有量を検出
することにより、パーキンソン病モデルに対する薬物治療の効果を確認した。
【0097】
各群のドーパミン含有量を空白群のドーパミン含有量と比較して、モデルにおけるドーパ
ミンの減少の程度を判断した結果、陽性薬物群を除いて、化合物群のドーパミン含有量が
有意に減少し、P≦0.05であり、統計的に有意であった。
【0098】
次に、化合物群のドーパミン含有量をモデル群のドーパミン含有量と比較した結果、ドー
パミン含有量は、モデル群と比較して増加しており、P≦0.01であり、統計的に有意
であり、化合物群が脳内のドーパミン含有量を増加させる効果があることが示された。
線条体のドーパミン含有量は、空白群>陽性薬剤群>化合物群>モデル群となった。
【0099】
(3)脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の免疫組織化学
的測定の実験結果を、以下の表、図3及び図4に示す。
【0100】
[表8]脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の免疫組織化
学的測定の実験結果
【0101】
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)は、モノオキシゲナーゼであり、生物自身のL-ドー
パミン(DA)を合成する一連の反応の最初のステップを触媒する律速酵素であり、細胞
質のみで発現する。ニューロンにはTHが豊富であり、中脳にはドーパミン-β-ヒドロ
キシラーゼが欠如しているため、中脳のTH免疫反応陽性ニューロンはDAニューロンで
あり、脳内のドーパミンニューロンのマーカーとして使用できる。体は、チロシンヒドロ
キシラーゼの触媒作用下でL-チロシンを使用してレボドパを生成し、芳香族脱炭酸酵素
による触媒によりレボドパからカルボキシルが除去され、最終的にレボドパミンを生成し
た。チロシンヒドロキシラーゼはドーパミンの合成において重要な役割を果たすため、そ
の機能の欠如又は不十分な発現はドーパミンの合成及び分泌に直接影響を与える。ドーパ
ミンは、重要な神経伝達物質であり、ドーパミン作動性ニューロンによるドーパミンの合
成故障や分泌不足は、パーキンソン病の発症につながる。
【0102】
この実験の結果、MPTPの腹腔内注射によって作成されたマウスパーキンソン病モデル
では、マウスの脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の陽性
率が低下し、P≦0.05であり、統計的に有意であることが示された。モデル群と比較
して、陽性薬剤群では、脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細
胞の陽性率が有意に向上し、モデリングが成功したことが示された。
【0103】
マウスパーキンソン病モデルを化合物群で処理した後、モデル群と比較して、化合物群で
は、脳の黒質(SubN)のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の陽性率が向上した
。その中で、化合物群では、脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH
)細胞の陽性率をモデル群と比較したところ、P≦0.01であり、統計的に有意であっ
た。
【0104】
治療後の各群の脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の陽性
率を比較すると、空白群>陽性薬物群>化合物群>モデル群となった。
【0105】
7.実験のまとめ
この実験では、MPTP(25mg/kg)を1日1回、連続して7日間腹腔内注射して
マウスパーキンソンモデルを作成した。バランスビームスコアによってマウスパーキンソ
ンモデルに対してスクリーニングをかけた。
【0106】
続いて、陽性薬物群及び化合物群をモデルマウスに14日間継続して胃内投与した。治療
後の各群のバランスビームスコアを分析し、ELISAによって線条体のドーパミン含有
量を検出し、脳の黒質(SubN)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の陽性率
を免疫組織化学的に検出することにより、化合物群と空白群やモデル群との違いを確認し
、次に、統計分析を行い、化合物3の有効性を分析した。
【0107】
治療後のバランスビームスコアによって確認した結果、モデル群と比較して、陽性薬物群
と化合物群では、有意な下降傾向があり、P≦0.05であり、統計的に有意であった。
【0108】
次に、化合物群のドーパミン含有量をモデル群のドーパミン含有量と比較したところ、化
合物群のドーパミン含有量は増加しており、P≦0.01であり、統計的に有意であった
【0109】
マウスパーキンソン病モデルを化合物群と陽性薬剤で処理した後、陽性薬剤群と化合物群
の陽性率をモデル群の陽性率と比較した。その中で、化合物群では、脳の黒質(SubN
)中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)細胞の陽性率をモデル群の陽性率と比較したと
ころ、P≦0.01であり、統計的に有意であった。
【0110】
化合物群をモデル群と比較して全体的に分析し、さまざまな検出指標を比較すると、化合
物3がより優れた治療効果を有することが判明した。
【0111】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定することを意図するものではな
く、本発明の精神及び原理内で行われるあらゆる修正、等価な置換等は、本発明の保護範
囲に含まれるものとする。
【0112】
本発明に記載の前述の実施例及び方法は、当業者の能力、経験及び好みに基づいて変更す
ることができる。
【0113】
本発明においては、方法のステップは特定の順序で列挙されるにすぎず、これは、方法の
ステップの順序を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物又はその薬学的に許容される塩、共晶、立体異性体、プロドラ
ッグ、溶媒和物、代謝産物。
(I)
(ここで、
は、-NH、-Hから選択され、
及びXは、独立して、単結合、アルキレン、1つ又は複数の置換基によって置換さ
れたアルキレン、1つ又は複数の-C(=O)O-によって隔てられたアルキレン、1つ
又は複数の-OC(=O)-によって隔てられたアルキレン、1つ又は複数のアルキルイ
ミドによって隔てられたアルキレン、1つ又は複数の-OC(=O)O-によって隔てら
れたアルキレン、以上のスペーサー基の組み合わせによって隔てられたアルキレンから選
択され、前記置換基は、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アリール、シクロアルキル、
チオアルコキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルから
選択され、ここで、C原子上のHは、ハロゲン、-OC0~10アルキル、C1~10
鎖/分岐アルキル、ニトロ、シアノ、アミノによって置換されてもよく、
及びRは、独立して、-H、
、-OH、








、アルコキシから選択され、ここで、、Xは、N、O、Sから選択され、
又は、一般式(I)は、任意に1つ又は複数のD原子によって置換される。)
【請求項2】
及びR は、独立して、



から選択され、
及びR は、それぞれ独立して、-H、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリ
ール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルから選択され、
、R 、及びR は、それぞれ独立して、-H、-OH、ハロゲン、-NO 、-C
N、アルキル、シクロアルキルから選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の化合
物。
【請求項3】
前記立体異性体は以下の構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
(II)
【請求項4】
前記Rは-NHであり、前記X及びXは、独立して、C1~5アルキレン、1つ
又は複数の置換基によって置換されたアルキレンから選択され、前記置換基は、アルキル
、ヒドロキシ、ハロゲン、アリール、シクロアルキル、チオアルコキシ、ニトロ、シアノ
、アミノ、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルから選択され、ここで、C原子上のH
は、ハロゲン、-OC0~10アルキル、C1~10直鎖/分岐アルキル、ニトロ、シア
ノ、アミノによって置換されてもよく、前記R及びRは、いずれも-Hであり、前記
は、-H又は-OHから選択され、前記R及びRは、いずれも-Hであり、前記
及びRは、独立して、-NH、-OH、







、アルコキシから選択され、ここで、、Xは、N、O、Sから選択され、ことを特徴
とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記R及びRは、独立して、-NH
から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記R及びRは、いずれも-NHである、ことを特徴とする請求項1に記載の化合
物。
【請求項7】
前記X及びXは、-CH-、-CHCH-、-(CHCH-、-(C
CH-、-CHCH(CH-、-(CHCH-、-CH(C
)CHCH-、-CH(OH)CH-から選択される、ことを特徴とする請求
項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記X及びXは、いずれも-(CHCH-である、ことを特徴とする請求項
1に記載の化合物。
【請求項9】
以下の構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
又は
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、共晶、立体
異性体、プロドラッグ、溶媒和物、代謝産物と、1種又は複数種の薬学的に許容される補
助材料と、を含む、医薬組成物。
【請求項11】
疾患を予防及び/又は治療する薬物の調製における、請求項1~のいずれか1項に記載
の化合物又はその薬学的に許容される塩、共晶、立体異性体、プロドラッグ、溶媒和物、
代謝産物の使用であって、
前記疾患は、神経系疾患、がん、自己免疫疾患、心血管疾患、疼痛、炎症、肝損傷から選
択される1種又は複数種である、使用。
【請求項12】
前記神経系疾患は、神経変性疾患又はてんかんであり、前記神経変性疾患は、パーキンソ
ン病、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、多発性硬化症
から選択される、ことを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記がんは、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、胃食道腺が
ん、食道がん、小腸がん、噴門がん、子宮内膜がん、卵巣がん、卵管がん、外陰がん、精
巣がん、前立腺がん、白血病、神経膠腫から選択される、ことを特徴とする請求項12に
記載の使用。
【請求項14】
前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性結
腸炎、クローン病、自己免疫性肝炎から選択される、ことを特徴とする請求項12に記載
の使用。
【国際調査報告】