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特表2025-500826慢性腎疾患を処置するためのアルドステロンシンターゼ阻害薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】慢性腎疾患を処置するためのアルドステロンシンターゼ阻害薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4188 20060101AFI20250107BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61K31/4188
A61P13/12
A61K31/4709
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/351
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534762
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 US2022052631
(87)【国際公開番号】W WO2023114170
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/289,177
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】クローニン リサ ヴイ
(72)【発明者】
【氏名】ハウスケ シビレ ジェニー
(72)【発明者】
【氏名】リュッテン ハートムット
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC352
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086CB22
4C086GA02
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、Cy、R1及びR2が本明細書に定義された通りである、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩をそれを必要とする患者に投与することによる慢性腎疾患の処置に関する。本発明は、式(I)の化合物の、ナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬との併用に更に関する。

(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性及び非糖尿病性慢性腎疾患(CKD)を処置する方法であって、医薬有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩をそれを必要とする患者に投与することを含む方法。
【化1】
I
(式中、
Cyは、C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールから選択される単環式又は二環式環系であり、
前記C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、-C1-3アルキル、-OC1-3アルキル、-CF3、シアノ、オキソ、-N(C1-3アルキル)2、-NH(C1-3アルキル)、-NHCOC1-3アルキル、-C(O)C1-3アルキル、-C(O)OC1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル又はヘテロアリールから選択される1、2又は3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
1及びR2は、H、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-CH2OC(O)C1-4アルキル、-C(O)OC1-4アルキル、-C(O)H、-COOH、-C(O)NHC1-4アルキル及びC(O)N(C1-4アルキル)2から独立して選択されるか、又は
1及びR2は一緒になってC3-6シクロアルキル若しくはC3-6ヘテロシクリルを形成する)
【請求項2】
Cyがフェニル、シクロヘキシル、インダニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル又はテトラヒドロキノリニル基であり、それぞれが-Cl、-F、C1-3アルキル、オキソ及びCNから独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、
1及びR2がH、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-C(O)N(C1-4アルキル)2及び-CH2OC(O)C1-4アルキルから独立して選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Cyが-Cl、-F、C1-3アルキル及びCNから独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Cyが、CNで置換されており、Cl、-F及びC1-3アルキルから独立して選択される1又は2個の追加の基で置換されていてもよい、フェニルであり、
1が-CH3であり、
2が-CH3又は-CH2OHである
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2が-CH2OHである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
2が-CH3である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
式(I)の化合物が以下からなる群又はその薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の方法。
【化2】





【請求項8】
式(I)の化合物が、化合物番号1~11、13、15、18、19、22、23、26、28、29A、29B、30~33、35、39、41、42、45及び46からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
疾患が糖尿病性慢性腎疾患である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
疾患が非糖尿病性慢性腎疾患である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
患者がステージ1のCKD、又はステージ2のCKD、又はステージ3のCKD、又はステージ4のCKD、又はステージ5のCKDを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
医薬有効量のSGLT2阻害薬又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを更に含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
SGLT2阻害薬がエンパグリフロジンである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
糖尿病性及び非糖尿病性慢性腎疾患の処置において使用するための、ナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬と組み合わせてもよいアルドステロンシンターゼ阻害薬又はその薬学的に許容される塩であって、前記アルドステロンシンターゼ化合物が式(I)の化合物である、アルドステロンシンターゼ阻害薬及びその薬学的に許容される塩。
【化3】
I
(式中、
Cyは、C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールから選択される単環式又は二環式環系であり、
前記C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、-C1-3-アルキル、-OC1-3-アルキル、-CF3、シアノ、オキソ、-N(C1-3-アルキル)2、-NH(C1-3-アルキル)、-NHCOC1-3-アルキル、-C(O)C1-3-アルキル、-C(O)OC1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、又はヘテロアリールから選択される1、2又は3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
1及びR2はH、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-CH2OC(O)C1-4アルキル、-C(O)OC1-4アルキル、-C(O)H、-COOH、-C(O)NHC1-4アルキル及びC(O)N(C1-4アルキル)2から独立して選択されるか、又は
1及びR2は一緒になってC3-6シクロアルキル若しくはC3-6ヘテロシクリルを形成する)
【請求項15】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化4】
【請求項16】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化5】
【請求項17】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化6】
【請求項18】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化7】
【請求項19】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化8】
【請求項20】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化9】
【請求項21】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化10】
【請求項22】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化11】
【請求項23】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化12】
【請求項24】
式(I)の化合物が以下の化合物である、請求項1に記載の方法又は請求項14に記載の使用。
【化13】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性及び非糖尿病性慢性腎疾患を含むある特定の障害を処置するためのある特定のアルドステロンシンターゼ阻害薬の使用に関する。本発明は、アルドステロンシンターゼ阻害薬の、ナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬と組み合わせての使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎疾患(CKD)は、腎障害及び末期腎疾患(ESRD)の主因である。透析患者の5年生存率は35%であり、糖尿病性透析患者の5年生存率はわずか25%に低下する。結果的に、CKDは世界の医療制度に大きな負担を与え、例えば米国における患者1人当たりの年間コストは75,000ドルを超える。腎に対する直接的な結果に加えて、腎臓機能の低下は、心血管イベントの主な引き金でもある。総じて、ヨーロッパの母集団の約12%がCKDステージ3~5を有し、国によってばらつきが激しく、4.1%~25.5%に及ぶ。
【0003】
糖尿病はほとんどの国でCKDの主な原因であり、新たな症例の40%以上を占める。糸球体濾過量(GFR)が低下するにつれて、死亡率が直線的に増加し、GFR>60mL/分/1.73m2の患者と比較して、GFR<45mL/分/1.73m2の患者では2~5倍増加する。腎機能の低下は冠動脈心疾患、発作及び心不全のリスクの増加に関連する。糖尿病性腎症は、腎障害及び末期腎疾患(ESRD)の主因であり、透析を受けている患者の>40%を占める。透析を受けている患者の5年生存率は35%であり、透析を受けている糖尿病患者の5年生存率はわずか25%である。
【0004】
現在、限られた数の治療選択肢しか、CKD患者の腎低下を遅らせるのに利用できない。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(ACEi)及びアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)はアルブミン尿を減少させ、タンパク尿性腎症の進行速度を遅くすることができる。しかし、糖尿病性腎症患者の臨床試験において、試験における全死因死亡、ESRD及び血清クレアチニンの倍加の複合主要評価項目の相対リスクの低減が中程度でしかなかった(RENAAL試験では16%及びIDNT試験では19%)。近年、ナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬エンパグリフロジンは、2型糖尿病を有する人の腎疾患進行のリスクを低減することが示された。EMPA-REG OUTCOME試験の探索的分析は、エンパグリフロジンが、クレアチニンの倍加、腎代替療法の開始の必要性又は腎死の複合アウトカムの発生率を46%低減することを示した(HR0.54、95%CI0.40~0.75)。これらの利点は、ベースラインのACEi又はARBの使用に関わらず同様であり、高カリウム血症又は急性腎傷害のリスク増加のエビデンスはなかった。(Wanner C, et al, EMPA-REG OUTCOME Investigators; Empagliflozin and progression of kidney disease in type 2 diabetes. New England Journal of Medicine, published June 14, 2016, p. 323-334を参照のこと。)駆出率の低下を有する心不全患者で行われたEMPEROR-Reduced試験において、エンパグリフロジンは、探索的複合腎評価項目(慢性透析、腎臓移植又はeGFRの持続的低下)のリスクを試験集団全体で50%低減した。これは、ベースラインでCKDを有する及び有さない患者においても一貫していた。エンパグリフロジンの心臓腎臓利点は、現在進行中のEMPA-KIDNEY研究においてCKDを有し且つ進行リスクの高い患者で現在調査中である。(Herrington WG, et al., The potential for improving cardio-renal outcomes by sodium-glucose co-transporter-2 inhibition in people with chronic kidney disease: a rationale for the EMPA-KIDNEY study. Clinical Kidney Journal, Published: 25 October 2018を参照のこと。)
【0005】
エビデンスの増加は、SGLT2阻害薬が広範なCKD表現型にわたって患者の新しい処置選択肢になる可能性があることを示している。SGLT2阻害薬カナグリフロジンは、糖尿病性腎疾患患者の処置についてFDAの承認を受けた。CREDENCE試験において、カナグリフロジンは、標準治療に追加して(on top of standard of care)、血清クレアチニンの倍加、ESRD又は腎/CV死の複合評価項目について30%の相対リスク低減をもたらす。CKD(2型糖尿病を有する又は有さない)患者においてSGLT2阻害薬ダパグリフロジンを評価する大規模臨床アウトカム試験(DAPA-CKD)は、圧倒的な有効性により早期に中止された。2020年8月に報告されたデータは、ダパグリフロジンが複合主要評価項目(≧50%のeGFR低下/ESKD/腎又はCV死)について39%の相対リスク低減(RRR)をもたらすことを示した。ダパグリフロジンは、CV死及びHF入院の複合副次評価項目について39%のRRR及び全死因死亡率について31%のRRRももたらした。
【0006】
現在の指針は、CKD又はCVリスクを有する2型糖尿病患者の処置レジメンの不可欠な部分として実証された利点を有するSGLT2阻害薬を推奨することにより、この新しいエビデンスを組み込み始めた。(de Boer IH、Caramori L, Chan JCN, et al. KDIGO 2020 clinical practice guideline for diabetes management in chronic kidney disease. Kidney Int Suppl 2020. 98:S1-S115を参照のこと。)非糖尿病性腎疾患についての推奨は、次の新しいエビデンスを踏まえてすぐに続く見込みである。この進展にも関わらず、患者の残存する腎及び心血管リスクは、CKD患者については許容できないほど高いままであり、特にリスクがかなり高い(GFR低下>3mL/分/1.73m2/年を有する)急速進行性患者については新しい処置を提供するための継続的な努力を必要とする。
【0007】
エンパグリフロジンは、2型糖尿病(Type 2 Diabetes Mellitus (T2DM))患者の血中ブドウ糖の低下に、並びにT2DM及び既存のCV疾患を有する患者の心血管(CV)死のリスク低減に適応される経口利用可能なSGLT2阻害薬である。近年、エンパグリフロジンは、2型糖尿病を有する人において腎疾患進行のリスクを低減することが示された。EMPAREG OUTOCOME試験の探索的分析は、エンパグリフロジンが、クレアチニンの倍加、腎代替療法の開始の必要性又は腎死の複合アウトカムの発生率を46%低減する(HR0.54、95%CI0.40~0.75)ことを示した。これらの利点は、ベースラインのACEi又はARBの使用に関わらず同様であり、高カリウム血症又は急性腎傷害のリスク増加のエビデンスはなかった。エンパグリフロジンは進行中のEMPA-KIDNEY腎アウトカム試験においてCKDの処置について現在調査中である。
SGLT2阻害薬処置による臨床アウトカムの顕著な改善にも関わらず、CKD患者には更なる進行に対する高いリスクが残存する。特に、持続急速進行性患者は、不良な臨床アウトカムに対するリスクが過大であり、標準治療(即ちRAAS阻害薬及びSGLT2阻害薬)に加えて追加された場合に安全で有効である更なる処置選択肢に対する満たされていない高い必要性が存在する。特に、持続急速進行性患者は、不良な臨床アウトカムに対するリスクが過大であり、標準治療(即ちRAASi及びSGLT2i)に加えて追加された場合に安全で有効である更なる処置選択肢に対する満たされていない高い必要性が存在する。
疾患進行のリスクが高いCKD患者、とりわけ急速進行性患者(例えばeGFR低下>3ml/分/年)のための新しい処置が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、治療有効量のアルドステロンシンターゼ阻害薬(「AS阻害薬」)を任意にSGLT2阻害薬と組み合わせてそれを必要とする患者に投与することを含むCKDを処置する方法(「本発明の方法」)に関する。
【0009】
WO2016/014736及びWO2016/061161は、ヒトアルドステロンシンターゼの経口小分子阻害薬を記載する。アルドステロンの阻害/遮断は、慢性腎疾患(CKD)及び糖尿病性腎症のモデルにおいて腎線維化を低減し、糸球体濾過量及びアルブミン尿を改善するのに有用であると報告されている。
本発明の一実施形態において、本発明の方法で使用するAS阻害薬は式(I)の化合物又はその塩である。
【0010】
【化1】
(I)
(式中、
Cyは、C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールから選択される単環式又は二環式環系であり、
前記C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、-C1-3-アルキル、-OC1-3-アルキル、-CF3、シアノ、オキソ、-N(C1-3-アルキル)2、-NH(C1-3-アルキル)、-NHCOC1-3-アルキル、-C(O)C1-3-アルキル、-C(O)OC1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、又はヘテロアリールから選択される1、2又は3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
1及びR2はH、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-CH2OC(O)C1-4アルキル、-C(O)OC1-4アルキル、-C(O)H、-COOH、-C(O)NHC1-4アルキル及びC(O)N(C1-4アルキル)2から独立して選択されるか、又は
1及びR2は一緒になってC3-6シクロアルキル若しくはC3-6ヘテロシクリルを形成する)
特に明記しない限り、「式(I)の化合物」及び「本発明のAS阻害薬」という用語は交換可能に用いられる。
【0011】
別の実施形態において、本発明の方法は、上記実施形態に従って記載される式(I)の化合物の使用であって、
Cyがフェニル、シクロヘキシル、インダニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル又はテトラヒドロキノリニル基であり、それぞれが、-Cl、-F、C1-3アルキル、オキソ及びCNから独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、
1及びR2がH、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-C(O)N(C1-4アルキル)2及び-CH2OC(O)C1-4アルキルから独立して選択される、
使用に関する。
【0012】
別の実施形態において、本発明の方法は、上記実施形態のいずれかによる式(I)の化合物の使用であって、
Cyが、-Cl、-F、C1-3アルキル及びCNから独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、
使用に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明の方法は、上記実施形態のいずれかに従って記載される式(I)の化合物の使用であって、
Cyが、-Cl、-F、C1-3アルキル及びCNから独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されているフェニルである、
使用に関する。
別の実施形態において、本発明の方法は、上記実施形態のいずれかに従って記載される式(I)の化合物の使用であって、
Cyが、CNで置換されており、Cl、-F及びC1-3アルキルから独立して選択される1又は2個の追加の基で置換されていてもよい、フェニルである、
使用に関する。
【0014】
別の実施形態において、本発明の方法は、上記実施形態のいずれかに従って記載される式(I)の化合物の使用であって、
1が-CH3であり、
2が-CH3又は-CH2OHである、
使用に関する。
別の実施形態において、本発明の方法は、上記実施形態のいずれかに従って記載される式(I)の化合物の使用であって、
1が-CH3であり、
2が-CH2OHである、
使用に関する。
【0015】
別の実施形態において、本発明の方法は、上記実施形態のいずれかに従って記載される式(I)の化合物の使用であって、
1が-CH3であり、
2が-CH3である、
使用に関する。
表1は、本発明の方法に従って使用できる本発明の代表的な化合物を示す。
【0016】
【表1】









【0017】
一実施形態において、本発明の方法は、上記表1に示した化合物1~46及びそれらの薬学的に許容される塩の使用に関する。
別の実施形態において、本発明の方法は、上記表1に示した化合物1~11、13、15、18、19、22、23、26、28、29A、29B、30~33、35、39、41、42、45及び46並びにそれらの薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0018】
一実施形態において、本発明の方法で使用するSLGT阻害薬はエンパグリフロジン、ダパグリフロジン及びカナグリフロジンからなる群から選択される。
別の実施形態において、本発明の方法で使用するSLGT阻害薬はエンパグリフロジンである。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、治療有効量の本発明のAS阻害薬又はその薬学的に許容される塩を任意にエンパグリフロジンと組み合わせてそれを必要とする患者に投与することを含むCKDを処置する方法に関する。
別の実施形態において、本発明は、治療有効量の本発明のAS阻害薬又はその薬学的に許容される塩をエンパグリフロジンと組み合わせてそれを必要とする患者に投与することを含むCKDを処置する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
略語
【表2】
【0021】
具体的な指示のない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、所与の化学式又は名称は、互変異性体並びに全ての立体、光学及び幾何異性体(例えば鏡像異性体、ジアステレオマー、E/Z異性体等)及びそれらのラセミ体、並びに別個の鏡像異性体の異なる割合での混合物、ジアステレオマーの混合物又はこのような異性体及び鏡像異性体が存在する前述の形態のいずれかの混合物、並びにその薬学的に許容される塩を含む塩及び遊離化合物の溶媒和物又は化合物の塩の溶媒和物を含む、例えば水和物等のその溶媒和物を包含するものとする。
【0022】
式(I)の化合物の一部は、1個超の互変異性形態で存在してもよい。本発明はこのような互変異性体全てを使用する方法を含む。
式(I)の化合物はその同位体標識形態も含む。本発明の組合せの活性薬剤の同位体標識形態は、前記活性薬剤の1個以上の原子が自然界で通常見出される前記原子の原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子で置き換えられているという事実を除き、前記活性薬剤と同一である。既に市販されており、十分に確立された手順に従って本発明の組合せの活性薬剤に組み込むことができる同位体の例には水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clが含まれる。上述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体のうちの1つ以上を含有する本発明の組合せの活性薬剤、そのプロドラッグ又は薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内であることが企図される。
【0023】
本発明の方法は、式(I)の化合物の薬学的に許容される誘導体も含む。「薬学的に許容される誘導体」は、あらゆる薬学的に許容される塩若しくはエステル、又は患者に投与すると、本発明に有用な化合物を(直接又は間接的に)提供することが可能であるあらゆる他の化合物、又はその薬理学的に活性な代謝産物若しくは薬理学的に活性な残基を指す。薬理学的に活性な代謝産物は、酵素的又は化学的に代謝されることが可能な本発明のあらゆる化合物を意味すると理解されるものとする。これには、例えば式(I)のヒドロキシル化又は酸化誘導体化合物が含まれる。
【0024】
本明細書で使用する「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸又は塩基塩を製造することにより改変される開示化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例には、アミン等の塩基性残基の鉱酸又は有機酸塩、カルボン酸等の酸性残基のアルカリ又は有機塩等が含まれるが、これらに限定されない。例えば、このような塩には酢酸塩(アセテート)、アスコルビン酸塩(アスコルベート)、ベンゼンスルホン酸塩(ベンゼンスルホネート)、安息香酸塩(ベンゾエート)、ベシル酸塩(ベシレート)、炭酸水素塩(ビカルボネート)、酒石酸水素塩(ビタルトレート)、臭化物塩/臭化水素酸塩(ブロミド/ヒドロブロミド)、エデト酸塩(エデテート)、カンシル酸塩(カンシレート)、炭酸塩(カルボネート)、塩化物塩/塩酸塩(クロリド/ヒドロクロリド)、クエン酸塩(シトレート)、エジシル酸塩(エジシレート)、エタンジスルホン酸塩(エタンジスルホネート)、エストール酸塩(エストレート(estolates))、エシル酸塩(エシレート(esylates))、フマル酸塩(フマレート)、グルセプト酸塩(グルセプテート)、グルコン酸塩(グルコネート)、グルタミン酸塩(グルタメート)、グリコール酸塩(グリコレート)、グリコリルアルスニレート(glycollylarsnilates)、ヘキシルレゾルシン酸塩(ヘキシルレゾルシネート)、ヒドラバミン、ヒドロキシマレイン酸塩(ヒドロキシマレエート)、ヒドロキシナフトエ酸塩(ヒドロキシナフトエート(hydroxynaphthoates))、ヨウ化物塩(アイオダイド(iodides))、イソチオン酸塩(イソチオネート)、乳酸塩(ラクテート)、ラクトビオン酸塩(ラクトビオネート)、リンゴ酸塩(マレート)、マレイン酸塩(マレエート)、マンデル酸塩(マンデレート)、メタンスルホン酸塩(メタンスルホネート)、臭化メチル(メチルブロミド(methylbromides))、硝酸メチル(メチルナイトレート(methylnitrates))、硫酸メチル(メチルサルフェート(methylsulfates))、ムケート(mucates)、ナプシル酸塩(ナプシレート)、硝酸塩(ニトレート)、シュウ酸塩(オキサレート)、パモ酸塩(パモエート)、パントテン酸塩(パントテネート)、フェニルアセテート(phenylacetates)、リン酸塩/二リン酸塩(ホスフェート/ジホスフェート)、ポリガラクツロ酸塩(ポリガラクツロネート)、プロピオン酸塩(プロピオネート)、サリチル酸塩(サリチレート)、ステアリン酸塩(ステアレート)、塩基性酢酸塩(サブアセテート(subacetates))、コハク酸塩(サクシネート)、スルファミド、硫酸塩(サルフェート)、タンニン酸塩(タンネート)、酒石酸塩(タルトレート)、テオクル酸塩(テオクレート)、トルエンスルホン酸塩(トルエンスルホネート)、トリエチオジド(triethiodides)、アンモニウム、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン及びプロカインが含まれる。更なる薬学的に許容される塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等のような金属由来のカチオンで形成することができる(Pharmaceutical salts, Birge, S.M. et al., J. Pharm. Sci., (1977), 66, 1-19も参照のこと)。
【0025】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、遊離酸又は塩基形態のこれらの化合物を十分な量の適切な塩基又は酸と、水中或いはエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール若しくはアセトニトリル又はこれらの混合物のような有機希釈剤中で反応させることにより調製することができる。
例えば本発明の化合物を精製するか、又は単離するのに有用な上述のもの以外の酸の塩(例えばトリフルオロ酢酸塩)も本発明の一部を構成する。
加えて、式(I)の化合物のプロドラッグの使用は本発明の範囲内である。プロドラッグには、単純な化学変換で改変されて本発明の化合物を生成する化合物が含まれる。単純な化学変換には加水分解、酸化及び還元が含まれる。具体的には、プロドラッグは患者に投与されると、本明細書で上に開示された化合物に変換され得、それにより所望の薬理作用を与えることができる。
式(I)の化合物は、当業者に理解されるように「化学的に安定」であることが企図される化合物のみである。例えば、過酸化物又は「ダングリング原子価」若しくは「カルボアニオン」を有する化合物は、本明細書に開示される発明方法によって企図される化合物ではない。
【0026】
本出願で本明細書の上に開示された全ての化合物について、命名法が構造式と矛盾する場合、化合物は構造式によって定義されると理解されるものとする。
本明細書で使用する全ての用語は、特に指定されない限り、当技術分野で公知のそれらの普通の意味で理解されるものとする。例えば、「C1-4アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル又はt-ブチル等の1~4個の炭素を含有する一価の飽和脂肪族炭化水素基であり、「C1-4アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の末端酸素を有するC1-4アルキルである。全てのアルキル、アルケニル及びアルキニル基は、構造的に可能であり、特に指定されない限り、分岐又は非分岐、環状又は非環状であると理解されるものとする。他のより具体的な定義は以下の通りである。
【0027】
nが2~nの整数である「C1-nアルキル」という用語は、単独で又は別の基と組み合わせて、1~n個のC原子を有する非環式、飽和、分岐又は直鎖炭化水素基を表す。例えば、C1-5アルキルという用語は基H3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH(CH3)-CH2-、H3C-C(CH32-、H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-、H3C-CH2-C(CH32-、H3C-C(CH32-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-及びH3C-CH2-CH(CH2CH3)-を包含する。
【0028】
nが1~nの整数である「C1-nアルキレン」という用語は、単独で又は別の基と組み合わせて、1~n個の炭素原子を含有する二価の非環式、直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。例えば、C1-4アルキレンという用語は-(CH2)-、-(CH2-CH2)-、-(CH(CH3))-、-(CH2-CH2-CH2)-、-(C(CH32)-、-(CH(CH2CH3))-、-(CH(CH3)-CH2)-、-(CH2-CH(CH3))-、-(CH2-CH2-CH2-CH2)-、-(CH2-CH2-CH(CH3))-、-(CH(CH3)-CH2-CH2)-、-(CH2-CH(CH3)-CH2)-、-(CH2-C(CH32)-、-(C(CH32-CH2)-、-(CH(CH3)-CH(CH3))-、-(CH2-CH(CH2CH3))-、-(CH(CH2CH3)-CH2)-、-(CH(CH2CH2CH3))-、-(CHCH(CH32)-及び-C(CH3)(CH2CH3)-を含む。
【0029】
nが4~nの整数である「C3-nシクロアルキル」という用語は、単独で又は別の基と組み合わせて、3~n個のC原子を有する環式、飽和、非分岐炭化水素基を表す。例えば、C3-7シクロアルキルという用語はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを含む。
本明細書で使用する「ヘテロ原子」という用語はO、N、S及びP等の炭素以外の原子を意味すると理解されるものとする。
全てのアルキル基又は炭素鎖において、1個以上の炭素原子はヘテロ原子O、S又はNで置き換えられていてもよく、Nが置換されていない場合、これはNHであると理解されるものとし、またヘテロ原子は分岐又は非分岐炭素鎖内の末端炭素原子又は内部炭素原子のいずれかに置き換わってもよいと理解されるものとする。このような基は、これらに限定されないがアルコキシカルボニル、アシル、アミド及びチオキソ等の定義をもたらすようにオキソ等の基で本明細書で上に記載されたように置換されていてもよい。
【0030】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、単独で又は別の基と組み合わせて、芳香族であっても、飽和であっても、不飽和であってもよい第2の5又は6員炭素環式基に更に縮合されていてもよい、6個の炭素原子を含有する炭素環式芳香族単環式基を表す。アリールにはフェニル、インダニル、インデニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、テトラヒドロナフチル及びジヒドロナフチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
「ヘテロアリール」という用語は芳香族5~6員単環式ヘテロアリール又は環の少なくとも1つが芳香族である芳香族7~11員二環式ヘテロアリール環を意味し、ヘテロアリール環はN、O及びS等の1~4個のヘテロ原子を含有する。5~6員単環式ヘテロアリール環の非限定的な例にはフラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、テトラゾリル、トリアゾリル、チエニル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、及びプリニルが含まれる。7~11員ヘテロアリール二環式ヘテロアリール環の非限定的な例にはベンズイミダゾリル、キノリニル、ジヒドロ-2H-キノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、インダゾリル、チエノ[2,3-d]ピリミジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル及びベンゾチアゾリルが含まれる。
【0032】
「ヘテロシクリル」という用語は、安定した非芳香族4~8員単環式複素環式基又は安定した非芳香族6~11員縮合二環式、架橋二環式若しくはスピロ環式複素環式基を意味する。5~11員複素環は、炭素原子並びに窒素、酸素及び硫黄から選択される1個以上の、好ましくは1~4個のヘテロ原子からなる。複素環は飽和であっても、部分不飽和であってもよい。非芳香族4~8員単環式複素環式基の非限定的な例にはテトラヒドロフラニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-1λ6-チオモルホリニル、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル及びアゼピニルが含まれる。非芳香族6~11員縮合二環式基の非限定的な例には、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロベンゾフラニル及びオクタヒドロベンゾチオフェニルが含まれる。非芳香族6~11員架橋二環式基の非限定的な例には2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル及び3-アザビシクロ[3.2.1]オクタニルが含まれる。非芳香族6~11員スピロ環式複素環式基の非限定的な例には7-アザスピロ[3,3]ヘプタニル、7-スピロ[3,4]オクタニル及び7-アザスピロ[3,4]オクタニルが含まれる。「ヘテロシクリル」という用語は、全ての可能な異性形態を含むことが意図される。
【0033】
本明細書で使用する「ハロゲン」という用語は臭素、塩素、フッ素又はヨウ素を意味すると理解されるものとする。「ハロゲン化された」、「部分的又は完全にハロゲン化された」、部分的又は完全にフッ素化された、「1個以上のハロゲン原子で置換された」という定義は、例えば1個以上の炭素原子上のモノ、ジ又はトリハロ誘導体を含む。アルキルについての非限定的な例は-CH2CHF2、-CF3等である。
本明細書に記載する各アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール若しくはヘテロアリール又はその類似体は、部分的に又は完全にハロゲン化されていてもよいと理解されるものとする。
本明細書で使用する「窒素」又はN及び「硫黄」又はSは、窒素及び硫黄のあらゆる酸化形態並びにあらゆる塩基性窒素の四級化形態を含む。例えば-S-C1-6アルキル基について、特に明記しない限り、これは、-S(O)-C1-6アルキル及びS(O)2-C1-6アルキルを含むと理解されるものとし、同様に、-S-Raは、Raがフェニルであるとき、フェニル-S(O)m-と表されてもよく、mは0、1又は2である。
【0034】
基本合成方法
本発明の方法で使用する式(I)の化合物はWO2016/014736に記載の方法及び例によって調製することができる。
治療的使用方法
本明細書で特に定義されない限り、「慢性腎疾患」又は「CKD」という用語は、少なくとも3カ月間の腎障害又は60mL/分/1.73m2未満の低下した糸球体濾過量(GFR)いずれかを指す。CKDのステージ又は重症度は以下に記載するGFR値に基づく:
ステージ1:正常GFR又は増大したGFR(>90mL/分/1.73m2)を伴う腎障害
ステージ2:軽度のGFR低下(60~89mL/分/1.73m2)
ステージ3a:中等度のGFR低下(45~59mL/分/1.73m2)
ステージ3b:中等度のGFR低下(30~44mL/分/1.73m2)
ステージ4:重度のGFR低下(15~29mL/分/1.73m2)
ステージ5:腎不全(GFR<15mL/分/1.73m2又は透析)
【0035】
本明細書で使用する「末期腎疾患」という用語は、<15mL/分/1.73m2のeGFRを下回る腎臓機能低下及び/又は腎臓移植若しくは透析による腎代替療法を必要とすることのいずれかを指す。
一実施形態において、患者はステージ1のCKD、又はステージ2のCDK、又はステージ3のCKD、又はステージ4のCKD、又はステージ5のCKDを有する。
別の実施形態において、患者は末期腎疾患を有する。
一実施形態において、本発明は、急速進行性患者(例えば>3ml/分/年のeGFR低下)を含む疾患進行のリスクが高い成人CKD患者の慢性腎疾患進行、末期腎疾患、腎死又は心血管死を処置する、予防する及び/又はそのリスクを低減する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を任意にエンパグリフロジンと組み合わせてそれを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
別の実施形態において、CKD患者は、>3ml/分/年のeGFR低下を有するか、又はそのリスクがある。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、成人患者の慢性腎疾患進行、末期腎疾患、腎死又は心血管死を処置する、予防する及び/又はそのリスクを低減する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を任意にエンパグリフロジンと組み合わせてそれを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
【0037】
ASの直接的な阻害は、アルドステロンのMR依存性作用とMR非依存性作用の両方に起因する有害な影響を低減するポテンシャルがある。AS阻害薬はMR依存性作用に影響を与えるため、高カリウム血症の潜在的リスクがある。したがって、臨床試験の別の側面は、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンと組み合わせたAS阻害薬によるCKDの処置に関する。SGLT2阻害薬との組合せ処置は、あるAS阻害薬の高カリウム血症を軽減し、それにより高カリウム血症に対するバランスの取れた安全性と共に高用量のAS阻害薬を可能にする。この二重の機序は、有効性がMR依存性電解質調節に対する影響が少ない用量で発揮されるべきであるため、ミネラルコルチコイド受容体(MR)アンタゴニストより高い治療利点をもたらし、高カリウム血症のリスクが低いことも期待される。一実施形態において、SGLT2阻害薬はエンパグリフロジンである。
【0038】
一実施形態において、本発明は、成人患者における腎疾患進行、末期腎疾患、腎死又は心血管死を処置する、予防する及び/又はそのリスクを低減する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩をエンパグリフロジンと組み合わせてそれを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
別の実施形態において、本発明は、制御不良のCKD進行(>3mL/分/1.73m2/年のeGFR低下)を有する成人患者における腎疾患進行、末期腎疾患、腎死又は心血管死を処置する、予防する及び/又はそのリスクを低減する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩をエンパグリフロジンと組み合わせてそれを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
別の実施形態において、本発明は、成人患者における腎疾患進行、末期腎疾患、腎死又は心血管死を処置する、予防する及び/又はそのリスクを低減する方法であって、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩をエンパグリフロジンと組み合わせてそれを必要とする患者に投与することを含み、エンパグリフロジンによる処置がエンパグリフロジンなしで処置された患者と比較して高カリウム血症のリスクを低減する方法に関する。
【0039】
別の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、慢性腎疾患を処置するための医薬の調製に用いられてもよく、別の実施形態において、医薬はSGLT2阻害薬を含み、別の実施形態において、医薬はエンパグリフロジンであるSGLT2阻害薬を含む。
治療的使用のために、式(I)の化合物及びSGLT2阻害薬の各々は、あらゆる従来の方式であらゆる従来の医薬剤形の医薬組成物を介して投与されてもよい。従来の剤形は典型的には、選択された特定の剤形に適した薬学的に許容される担体を含む。投与経路には静脈内、筋肉内、皮下、滑膜内、注入、舌下、経皮、経口、局所又は吸入が含まれるが、これらに限定されない。好ましい投与様式は経口及び静脈内である。
【0040】
式(I)の化合物及び任意にSGLT2阻害薬は、単独で、又は阻害薬の安定性を高める、ある実施形態においてこれらを含有する医薬組成物の投与を促進する、溶解性若しくは分散性を高める、阻害活性を高める、補助療法を提供する等のアジュバント、これには他の活性成分が含まれる、と組み合わせて投与されてもよい。一実施形態において、例えば、本発明の複数の化合物が投与されてもよい。有利には、このような組合せ療法は、少ない投薬量の従来の治療薬を利用し、したがってこれらの薬剤が単独療法として用いられた場合に被る毒性及び有害な副作用の可能性が回避される。本発明の化合物は、従来の治療薬又は他のアジュバントと物理的に組み合わされて、単一の医薬組成物にしてもよい。有利には、次いで、化合物は単一の剤形で一緒に投与されてもよい。一部の実施形態において、化合物のこのような組合せを含む医薬組成物は式(I)の化合物(w/w)又はその組合せを少なくとも約5%、しかしより好ましくは少なくとも約20%含有する。本発明の化合物の最適なパーセンテージ(w/w)は変動してもよく、当業者の範囲内である。代替的には、本発明の化合物及び従来の治療薬又は他のアジュバントは別個に(連続して又は並行して)投与されてもよい。別個の服用は服用レジメンの多大な柔軟性を可能にする。
【0041】
上記のように、本発明の式(I)の化合物及び任意のSGLT2阻害薬の剤形の各々は、当業者に公知であり、剤形に好適である薬学的に許容される担体及びアジュバントを含んでもよい。これらの担体及びアジュバントには、例えばイオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、緩衝物質、水、塩又は電解質及びセルロースベースの物質が含まれる。好ましい剤形には錠剤、カプセル、カプレット、液剤、溶液、懸濁液、エマルジョン、ロゼンジ、シロップ、再構成可能な散剤、顆粒、坐剤及び経皮パッチが含まれる。このような剤形を調製する方法は公知である(例えばH.C. Ansel及びN.G. Popovish、Pharmaceutical Dosage Forms及びDrug Delivery Systems、5th ed.、Lea及びFebiger (1990)を参照のこと)。本発明の化合物の投薬量レベル及び要件は、特定の患者に好適な利用可能な方法及び技術から当業者によって選択されてもよい。一部の実施形態において、投薬量レベルは、70kgの患者では約1~1000mg/用量(ドーズ、dose)の範囲である。1日当たり1用量で十分であり得るが、1日当たり最大5用量が与えられてもよい。経口用量については、最大2000mg/日が必要とされる場合がある。当業者が理解するように、より低い又はより高い用量が、特定の因子に応じて必要とされる場合がある。例えば、具体的な投薬量及び処置レジメンは、患者の全身健康プロファイル、患者の障害の重症度及び経過又はその性質(disposition)、並びに担当医の判断等の因子に依存する。
【0042】
本発明の範囲内で、本発明によるAS阻害薬及びSGLT2阻害薬の組合せ又は組合わせ使用は治療成分の同時、逐次又は別個の投与を想定し得ることが理解されるべきである。
これに関連して、本発明の意味内の「組合せ」又は「組み合わされた」には、固定された及び固定されていない(例えば自由な)形態(キット、又は他の投与形態、適用形態若しくは剤形を含む)並びに例えばAS阻害薬及びSGLT2阻害薬の同時、逐次又は別個の使用等の使用が含まれ得るが、これらに限定されない。
本発明の組合せ投与又は適用は、例えば1種の単一又は2種の別個の製剤で治療成分を同時に投与する等、治療成分を一緒に投与することにより行われてもよい。代替的には、投与は、治療成分を、例えば2種の別個の製剤で連続的に投与する等、逐次投与することによって行われてもよい。
【0043】
本発明の組合せ療法のために、治療成分は別個に投与されてもよく(これは治療成分が別個に製剤化されることを意味する)、まとめて製剤化されてもよい(これは治療成分が同じ調製物に製剤化されることを意味する)。したがって、本発明の組合せの1つの要素の投与は、組合せの他の要素の投与の前であっても、それと同時であっても、その後であってもよい。
本発明の別の態様において、患者は第3の治療薬で処置されてもよい。任意の第3の治療薬の非限定的な例にはACE阻害薬及びARBが含まれる。ACE阻害薬の非限定的な例にはベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル及びトランドラプリルが含まれる。ARBの非限定的な例にはイルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン及びバルサルタンが含まれる。
【0044】
臨床試験プロトコル
式(I)の化合物の単独での及びSGLT2阻害薬との組合せでの有効性及び安全性が以下の臨床試験プロトコルに従って研究される。要約すれば、患者は14週間にわたってAS阻害薬3用量のうちの1用量が投与される。この第II相用量設定試験において、AS阻害薬は、単独で及びエンパグリフロジンと組み合わせて、糖尿病性及び非糖尿病性CKDを有する男性及び女性患者に用いられる。
【0045】
試験評価項目
主要評価項目は、14週間後の朝一番の排尿(First Morning Void urine)で測定された対数変換尿アルブミンクレアチニン比(UACR)のベースラインからの変化である。
副次評価項目
・ UACR応答I、ベースラインから14週間での朝一番の排尿のUACRの少なくとも30%の絶対変化の減少として定義
・ UACR応答II、ベースラインから14週間での朝一番の排尿のUACRの少なくとも15%の絶対変化の減少として定義
【0046】
試験設計
糖尿病性及び非糖尿病性慢性腎疾患患者において、14週間にわたるAS阻害薬3用量の単独での又はエンパグリフロジンとの組合せでの効果を調査するための無作為化、二重盲検、並行用量群、プラセボ対照第II相臨床試験。試験は、エンパグリフロジン10mg/プラセボに関する8週間の1:1無作為化導入期間、続いてAS阻害薬/プラセボの単独又はエンパグリフロジンとの組合せに関する14週間の無作為化処置期間を含む。
無作為化される患者総数:少なくとも552人。
処置群当たりの患者数:処置期間に1群当たり最低60人の患者が完了、全体で480人の患者が完了。
【0047】
診断:糖尿病性又は非糖尿病性慢性腎疾患
主な組み入れ及び除外基準:
組み入れ:
・ 同意時の年齢≧18歳の男性又は女性患者
・ eGFR≧30及び<90mL/分/1.73m2
・ UACR≧200及び<5000mg/g
・ ACEi又はARBのいずれか(両方ではない)による安定した処置
・ 血清カリウム≦4.8mmol/L
除外:
・ 現在の又は予定されているSGLT2阻害薬/SGLT1/2阻害薬処置
・ 1型糖尿病
【0048】
試験製品:AS阻害薬及びエンパグリフロジン
用量:
・ AS阻害薬1日3mg(1日1回(QD))又は1日10mg(1日1回(QD))又は1日20mg(1日1回(QD))
・ エンパグリフロジン1日10mg(1日1回(QD))
投与様式:経口(p.o.)(口から摂取)
比較製品:AS阻害薬とエンパグリフロジンの各用量に適合するプラセボ
用量:該当なし
投与様式:p.o.
処置期間:14週間(エンパグリフロジン/プラセボによる8週間の導入及びAS阻害薬/プラセボを単独で又はエンパグリフロジン/プラセボと組み合わせた14週間の処置)
統計的方法:反復測定混合効果モデル(MMRM)が、連続評価項目の処置効果のベースラインからの調整済み平均変化を得るために用いられる。このMMRMモデルは、カテゴリー変数として処置の固定効果、及び連続変数として各訪問時のベースラインの固定効果を含む。訪問は、患者内のばらつきに対して無構造の共分散構造を用いた反復測定と考える。用量設定のために、各用量群の予想平均応答及びMMRMからの推定共分散マトリックスが、多重比較手順とモデリング(MCPMod)分析に用いられる。幾つかの可能な用量応答パターンがMCPModで評価されて、更なる開発のための最も適したモデル及び最適用量を同定する。
【0049】
試験は、(無作為化導入中に確立される)バックグラウンド療法としてエンパグリフロジン又はプラセボに無作為化された糖尿病性及び非糖尿病性CKD患者においてAS阻害薬3用量をプラセボと比較する。
試験は、3用量及びプラセボを評価することにより、糖尿病性及び非糖尿病性CKD患者におけるAS阻害薬の用量応答曲線を特徴付ける。応答は、14週間後の朝一番の排尿で測定された対数変換UACRの処置期間ベースラインからの変化である。主要目的は(1)用量応答曲線が平坦でないことを実証し、定量的な処置効果の大きさを評価し、用量応答関係性を評価すること、(2)14週間後の朝一番の排尿で測定された対数変換UACRの処置期間ベースラインからの変化をAS阻害薬3用量とプラセボとの間で比較することにより、AS阻害薬の最適用量を決定することである。
一連の副次目的は、(1)プラセボバックグラウンド療法(2)エンパグリフロジンバックグラウンド療法の亜集団におけることを除き上記の通りである。
これらの分析は、SGLT2阻害薬の同時使用における変化に関わらず、AS阻害薬中止前、AS阻害薬の漸減(down-titration)前又は死亡前の全てのデータを含む。
【0050】
主要評価項目
14週間後の朝一番の排尿で測定された対数変換尿アルブミンクレアチニン比(UACR)の処置期間ベースラインからの変化
副次評価項目
・ UACR応答I、処置期間ベースラインから14週間での朝一番の排尿のUACRの少なくとも30%の絶対変化の減少として定義
・ UACR応答II、処置期間ベースラインから14週間での朝一番の排尿のUACRの少なくとも15%の絶対変化の減少として定義
更なる目的
更なる目的は、CKD患者における14週間の試験処置後のプラセボと比較したAS阻害薬3用量の有効性、安全性、PK及びPDを含む。
更なる評価項目
・ 14週間後のeGFRのベースラインからの変化。
・ eGFR勾配
・ 14週間後の血清カリウムのベースラインからの変化。
・ 14週間後の血圧及び脈拍のベースラインからの変化。
・ 14週間後の体重のベースラインからの変化。
【0051】
更なる評価項目は、標的関与及び標的選択性を評価するための血漿アルドステロン、その前駆体コルチコステロン及び11-デオキシコルチコステロン、コルチゾール及びその前駆体11-デオキシコルチゾールのベースラインからの変化を含み、これは、選択された訪問間のこれらのマーカーの時間プロファイルの比較を含む(AS阻害薬のPKサンプリング時点に主として対応する2~3時間にわたる連続測定)。更なる評価項目は炎症、線維化、尿細管間質傷害、酸化ストレス、糸球体傷害及び内皮機能不全等の腎臓病態生理の重要な機序を表すバイオマーカーのベースラインからの変化も含む。
PKパラメーターは更なる評価項目として評価される。
評価項目に関連して、「ベースライン」という用語は、処置期間のAS阻害薬試験医薬の初回摂取前の最後の観察を指し、ベースラインが無作為化導入期間の-2週目から処置期間の試験医薬の初回摂取前までの全ての非欠測評価(non-missing assessments)の平均と定義される朝一番の排尿は除く。ベースラインには、スクリーニング時のスポット尿で測定されたUACRは含まれない。更なる詳細及び追加の更なる評価項目は、試験統計分析計画書(TSAP)に定義され得る。
【0052】
設計及び試験集団の説明
全体的な試験設計
この試験は、ACEi又はARBのいずれかによるバックグラウンド処置を受けている糖尿病性及び非糖尿病性CKD患者におけるAS阻害薬3用量の単独での及びエンパグリフロジンとの組合せでの効果を調査するための多施設、無作為化、二重盲検、並行用量群、プラセボ対照第II相臨床試験である。エンパグリフロジン対プラセボの使用は、1:1無作為化導入期間中に確立される。
【0053】
患者はインフォームドコンセントに署名した後、試験でスクリーニングされる。患者は、初回スクリーニング評価時から最大2週間のスクリーニング期間を経る。スクリーニングで患者の適格性が確認された後、患者は無作為化導入期間に入る。患者は、エンパグリフロジン10mg又はエンパグリフロジン10mgに適合するプラセボのいずれかを受けるように1:1の比で等しく無作為化され、割り当てられた研究処置を8週間受け続ける。導入期間の8週間の処置後、患者は処置期間に入る。導入期間にエンパグリフロジンを受けた患者は、AS阻害薬3用量(3mgQD、10mgQD又は20mgQD)のうちの1用量をエンパグリフロジンと組み合わせて又はエンパグリフロジンを単独で(エンパグリフロジンにAS阻害薬に適合するプラセボを加えて)受けるように、並行用量群4群のうちの1群に1:1:1:1の比で等しく無作為化される(図3.1:1を参照のこと)。導入期間にプラセボを受けた患者は、AS阻害薬3用量(3mgQD、10mgQD又は20mgQD)のうちの1用量又はプラセボを受けるように、並行用量群4群のうちの1群に1:1:1:1の比で等しく無作為化される。患者は割り当てられた処置を14週間受け続ける。
研究は、エンパグリフロジンとAS阻害薬の両方に盲検化される。用量強度の異なるAS阻害薬フィルムコーティング錠(3及び10mg)及びエンパグリフロジンは、潜在的な観察者バイアスを最小化し、研究が用量群全体にわたって盲検化されることを確実にするために異なる大きさを有するので、患者はそれぞれ、処置期間中1日4錠を服用する。
【0054】
適格患者は、前糖尿病、eGFR及びUACR等の予後変数に関して処置群間のバランスを確保する一助となる層別化アルゴリズムを用いて処置に無作為化される。最低40%の患者が、導入期間中に各病型:糖尿病性腎疾患及び非糖尿病性腎疾患に無作為化される必要がある。糖尿病患者は糖尿病性腎疾患を有する場合も、非糖尿病性CKDの病因(aetiologies)を有する場合も、組合せを有する場合もあり、層別化のために、患者は糖尿病性腎疾患を有すると分類される。
スクリーニング開始から試験終了までの様々な時点で、患者はUACRの分析のために尿を採取する。朝一番の排尿は、研究医薬の毎日の投与前に採取される。施設への物理的な訪問が予見されない時点ごとに、患者には、朝一番の排尿から尿をサンプリングするための採尿容器が用意される。患者の負担を低減するために、国の規制で許可される場合、訪問間に自宅で採取されたサンプルは分析のために患者の自宅から中央検査室に輸送される。これが不可能な場合、サンプルを治験施設に収容する等の代替手段がなされる。物理的な訪問前に施設で直接採取されたサンプルは、施設に収容されて施設のスタッフによって処理される。
【0055】
安全性の分析以外に、この試験の尿及び血液サンプルは、UACRを含むバイオマーカー分析に役立つ。
処置期間後又は導入期間若しくは処置期間の試験処置が永久に中止された時点で、患者は、処置終了(EoT)訪問を行う。この後に4週間の無処置フォローアップ期間が続く。少なくとも7日後の初回フォローアップ訪問(FUp1)は残存効果期間(REP)の終了と考える。REPの終了まで、全てのAE及び併用医薬への変更は収集され、文書化され、報告される必要がある。導入期間中に早期に中止する患者は、少なくともFUp1に参加しなければならない。他の患者は全て、全フォローアップ期間を完了することが奨励されるべきである。
フォローアップ期間中、患者は試験医薬では処置されないが、可能な場合、患者が受けているあらゆるバックグラウンド処置を継続すべきであり、追加の尿を自宅で採取する。4週間のフォローアップ期間後、患者は最終訪問を行い、血液及び尿サンプルが再び採集される。この訪問が終わると、個々の患者の試験参加が完了する。
【0056】
AS阻害薬による処置下での血清カリウムの上昇及びeGFRの低下は除外できない。したがって、患者は、AS阻害薬又は適合プラセボによる処置開始後綿密に(週1回を2週間)、その後定期的にモニタリングされる。将来の科学的疑問に対処することができるように、患者は、バンキング用の検体を自発的に寄付することが求められる。患者が合意した場合、バンキングされたサンプルは、例えば処置から恩恵を受ける可能性若しくは有害事象(AE)を経験する可能性が高い患者を同定するか、又は薬物効果の機構的若しくは遺伝的理解を得、それにより患者を治療法により良好に適合させるための将来のバイオマーカー研究及び薬物開発プロジェクトに使用できる。
処置開始前3年間にわたる過去の腎臓関連のデータ(血清クレアチニンデータ、eGFR値及び過去のAKIデータを含む)が試験で収集される。これは、CKD進行速度の分類が異なる患者におけるAS阻害薬の利点を探索するために将来的に用いられ得る。
【0057】
対照群の選択を含む試験設計の考察
この用量設定試験は、臨床現場で開始される可能性があるAS阻害薬の単独での及びエンパグリフロジンとの組合せでの有効性及び安全性を評価するために設計された。用量設定試験は、将来の開発に用いられるAS阻害薬のそれ自体で及び/又はエンパグリフロジンとの固定用量の組合せとしての最適用量を設定する機会も与える。
患者は無作為化導入期間に8週間のエンパグリフロジン又はプラセボを最初に開始し、次いでエンパグリフロジン又はプラセボ処置に加えて処置期間に14週間のAS阻害薬又はプラセボによる処置を受ける。エンパグリフロジンとAS阻害薬の両方の薬物が潜在的に類似した血行動態作用を有するため、患者は安全性の理由からAS阻害薬による処置を開始する前に最初にエンパグリフロジンを服用する(run in)ことが重要である。AS阻害薬の開始前8週間のエンパグリフロジン処置は、安定した血行動態レベルに到達するのに十分であると考える。
【0058】
並行群設計は、AS阻害薬の3種類の用量レジメンを単独で及びエンパグリフロジンと組み合わせて調査するために選択された。第1の並行群は、AS阻害薬の3種類の異なる用量レジメン及びプラセボを調査する。第2の並行群は、エンパグリフロジン+プラセボに対しての、エンパグリフロジンと組み合わせてのAS阻害薬の3種類の異なる用量レジメンを調査する。プラセボは観察者及び対象バイアスを制御するために用いられ、無作為化は割当バイアスを制御するために用いられる。
研究設計は、2種の無作為化を含む。エンパグリフロジン及びプラセボへの初回導入無作為化は、2つの目的に必要とされる。第一に、導入無作為化はエンパグリフロジン群及びプラセボ群への、続いて2回目の無作為化は処置群への患者集団の均等な分布を確実にする。第二に、導入期間中にエンパグリフロジンを開始し、続いてAS阻害薬をその後開始する交互の手法は、患者の安全性を高めるために選択された。エンパグリフロジン及びAS阻害薬はいずれも、eGFRの急激な低下につながる血行動態作用を有する。交互の処置開始は、このような作用を低減するために予定される。
【0059】
UACRは、CKDにおける他者による以前の第II相試験において、感受性があり、異なる用量を区別し、その動態範囲が広く、処置開始後の合理的な時間内で安定したプラトーに到達することが示されたため、主要評価項目(朝一番の排尿の採取)及び副次評価項目(応答者率)として選択された。UACRはCKDの用量設定バイオマーカーとして当局によって受け入れられている。更に、UACRの変化は長期の臨床及び患者関連のアウトカムに相関する。
【0060】
UACRは経時的に個人内で変動するパラメーターであるため、複数の測定値が、処置期間ベースラインで及び処置期間中、とりわけ薬物に対する安定した応答が達成されるべきである処置終了に向かって必要とされる。したがって、UACR測定値は、処置期間ベースラインについては-2週目~0週目、処置期間中は12週目~14週目の3時点、2日連続(合計6回の測定値)で収集される。4週間のフォローアップ期間中の尿の逐次採取は、応答安定性及び潜在的なリバウンド効果についての探索的結果をもたらすことができる。
血行動態作用を更に特徴付けるために、血清クレアチニンは探索的分析のために定期的に測定される。
データ監視委員会(DMC)は、安全性データを定期的に見直すために設立される。
【0061】
試験集団の選択
約200施設からの少なくとも552人の患者が無作為化導入期間に無作為化されると見込まれる。治験責任医師(investigators)は腎臓学者、内分泌学者又は一般医となる見込みである。この試験の患者のスクリーニングは競合的である、即ち試験のスクリーニングは、十分な数の患者がスクリーニングされた時点で全ての施設で同時に停止される。治験責任医師は、スクリーニング完了について通知され、その後この試験のために追加の患者をスクリーニングすることは許可されない。この時点で既にスクリーニング中の患者は、適格である場合、無作為化の継続が許可される。サンプルサイズを増やすことにより検定力を維持するために、最低552人の患者が導入期間に無作為化されて、少なくとも480人の患者が研究処置を完了することを確実にする。研究実施中、ドロップアウト率が計画より高い場合、必要な数の患者が処置を完了するまで、補充が継続されてもよい。試験に登録された(即ちインフォームドコンセントに署名した)全患者のログは、患者が治験薬で処置されたかどうかに関わらず、治験実施施設ファイル(ISF)に保持される。
患者が誤って無作為化された(=全ての組み入れ基準を満たしてはいないか、又は1つ若しくは複数の除外基準を満たす)場合、治験依頼者又は代理人にすぐに連絡を取る必要がある。個人の利点リスク評価に基づき、試験参加の継続が可能かどうかの決定がなされる。
【0062】
試験参加のための主な診断
慢性腎疾患
参加者が優勢な地域、国家又は国際指針に関連してエンパグリフロジン(又はあらゆる他のSGLT-2若しくはSGLT-1/2阻害薬)を受ける必要があると治験責任医師が判断した場合、該患者は、試験においてプラセボが単独で割り当てられ得るリスクがあるため、試験に含まれるべきではない。
エンパグリフロジン(又は他のSGLT2若しくはSGLT-1/2阻害薬)で現在処置されている潜在的な参加者は、適格性基準を満たすためにこの治療法を取りやめるべきではない。
【0063】
組み入れ基準
1.試験への参加前にICH-GCP及び現地法に従って書面のインフォームドコンセントに署名し、日付を付する。
2.同意時の年齢が≧18歳の男性又は女性患者。
3.中央検査室分析による訪問1のeGFR(慢性腎疾患疫学共同[CKD-EPI]式)≧30及び<90mL/分/1.73m2。
4.中央検査室分析による訪問1.1のスポット尿(中間尿サンプル)中のUACR≧200及び<5,000mg/g。
5.患者が以下の医薬:降圧薬、NSAID、エンドセリン受容体アンタゴニスト、低用量全身ステロイド(例えばプレドニゾロン≦10mg又は当量(equivalent))のいずれかを服用している場合、試験中の治療の計画的な変更なしに、訪問1前の少なくとも4週間及び導入期前の初回無作為化まで安定した用量であるべきである。
【0064】
6.試験中の治療の計画的な変更なしに、訪問1前の≧4週間及び初回無作為化までACEi又はARBのいずれか(しかし両方を一緒にではない)の臨床的に適切な安定した用量による処置。
7.治験責任医師の見解で、以下の基礎腎疾患のうちの1種又は複数が起因する:
・ 糖尿病性腎疾患。これらの患者は2型糖尿病を有していなくてはならず、訪問1前の4週間以内及び導入期前の初回無作為化まで、その処置(GLP1受容体アゴニストを含む)は変更されるべきではないか、又は(治験責任医師の判断に従って)変更が軽微であると考える。
・ 高血圧性腎疾患
・ 以下のうちの1種として定義される慢性糸球体腎炎:
・ IgA腎症、
・ 膜性腎症
・ 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)
8.中央検査室によって測定される訪問1での糖化ヘモグロビン(HbAlc)<10.0%
9.中央検査室によって測定される訪問1での血清カリウム≦4.8mmol/L
10.訪問1での座位SBP≧110及び≦160mmHg並びにDBP≧65及び≦110mmHg(3つのBP測定値の平均値)、並びに地域の標準治療及び治験責任医師の判断に従った最適化された降圧処置。
11.訪問1での肥満度指数(BMI)≧18.5及び<50kg/m2。
12.妊娠可能な女性2(WOCBP)は、効果の高い避妊方法を使用する準備がなくてはならず、それを使用できねばならない。このような方法は試験を通じて用いられるべきである。男性は、そのパートナーがWOCBPである場合、精管切除しなければならないか、又はコンドームを使用する意思がなくてはならず、それを使用できねばならない。
【0065】
2回目の無作為化(処置期間の開始)前に評価される追加の組み入れ基準
1.無作為化前7日以内から処置期間までに地域の又は中央検査室によって測定される血清カリウム≦4.8mmol/L
2.無作為化前7日以内から処置期間までに地域の又は中央検査室によって測定されるeGFR(慢性腎疾患疫学共同[CKD-EPI]式)≧20mL/分/1.73m2
【0066】
除外基準
1.初回無作為化前7日以内又は試験処置段階で予定されているアルドステロン媒介作用阻害薬(例えばスピロノラクトン等のミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト)による処置又は他のカリウム保持性利尿薬(例えばアミロライド)の摂取。
2.訪問1前4週間以内及びスクリーニングを通じて又は試験中に予定されている他のレニンアンジオテンシンアルドステロン系(RAAS)の介入(ACEi又はARBのいずれかとは別)による処置。制限された医薬又は試験の安全な実施を妨げる可能性があると考えられるあらゆる薬物の摂取を継続しなければならないか、又はそれを希望する患者も除外される。
3.1型糖尿病、又は他の自己免疫性糖尿病(例えばLADA)の病歴
4.治験責任医師の見解で、ケトアシドーシスのリスクが高い患者。
5.SGLT2若しくはSGLT1/2阻害薬を現在受けているか、又は試験中、その開始が予定されている。
6.訪問1から72時間以内の又は試験中に予定されている、ビオチン(ビタミンB7、ビタミンH又は補酵素R)の用量≧5mg/日(栄養補助食品を含む)での使用。
7.地域の又は中央検査室で測定される、訪問1でのACTHの注射の30分後(±5分)の絶対コルチゾール値<18μg/dL(496.6nmol/L)。
8.初回無作為化前に治験責任医師により判断される重度の症候性起立性調節障害の公知の病歴。3
9.ペースメーカで処置されていない、間欠的又は持続的2度又は3度房室ブロック、洞結節機能不全で臨床的に有意な徐脈又は洞停止を伴うもの
【0067】
10.治験責任医師の判断において、患者を更なるリスクにさらす訪問1での又は初回無作為化までの血清コルチゾール<5μg/dL(138.0nmol/L)又はあらゆる臨床的に関連のある異常検査値。
11.訪問1前の直近3カ月におけるあらゆる免疫抑制療法又は免疫療法。これは、経口プレドニゾロン≦10mg又は当量を除く全身性ステロイドも該当する。
12.訪問1前の30日における又は初回無作為化までの「腎疾患:改善グローバルアウトカム(KDIGO)」の定義による急性腎傷害(AKI)。
13.訪問1での又は初回無作為化前の末期腎疾患、維持透析、機能性腎臓移植;試験中の予定された腎臓移植又は慢性腎代替療法。
14.心不全、医学的処置によって補われないNYHA III/IV又は冠動脈心疾患患者。
【0068】
15.訪問1から初回無作為化までのSARS-CoV-2への活動性感染、又は訪問1前4週間以内の陽性急性感染確認試験。
16.スクリーニング時点でのあらゆる文書化された活動性の悪性腫瘍若しくはその疑い、又は訪問1前2年以内に確認された悪性腫瘍の病歴(適切に処置された皮膚基底細胞癌、in situ子宮頸癌及び低悪性度[T1又はT2]前立腺がんを除く)、又は訪問1前2年以内のがんの処置。
17.試験中に予定されている大手術(治験責任医師の判断)
18.治験製品/プラセボ/テトラコサクチド(ACTH試験のための注射剤)又はこれらの賦形剤(例えばラクトース一水和物)に対するアレルギーを含む試験参加を妨げる臨床関連アレルギー/過敏症の病歴。
19.治験責任医師の見解で、患者を安全上のリスクにさらすか、又は試験の目的を妨げる可能性があるあらゆる他の医学的状態。
【0069】
20.この試験中の以前の無作為化。
21.別の治験機器若しくは治験薬の試験に現在登録されているか、或いは別の治験機器若しくは治験薬の試験を終了してから又は他の治験処置を受けてから訪問1まで30日又は5半減期未満(いずれか長い方)。
22.慢性アルコール若しくは薬物乱用、又は治験医師の見解で信頼性を欠く試験参加者にするか、若しくは試験を完了する可能性が低くなるあらゆる状態。
23.妊娠している、授乳中である又は試験中に妊娠を予定している女性。
【0070】
患者の処置の中止
患者は、以下に記載するようにかなり異なる影響がある場合、試験処置を中止するか、又は試験参加の同意を全面的に撤回することができる(「同意の撤回」)。処置上可能な場合、患者を試験に留まらせるあらゆる努力がなされるべきである。撤回率を制御する手段には慎重な患者選択、試験登録前の試験要件及び手順の適切な説明、並びに撤回の結果の説明が含まれる。試験処置を中止するか、又は試験参加への同意を撤回する決定及びその理由は、患者のファイル及びCRFに文書化されねばならない。該当する場合、有害事象収集報告の要件を考慮する。
【0071】
試験処置の中止
永久的な中止
以下の場合、個々の患者は、全ての無作為化試験処置を永久的に中止する:
1.患者が、治験責任医師による臨床判断に基づき及び/又は「腎疾患:改善グローバルアウトカム(KDIGO)」の定義(Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Acute Kidney Injury Work Group; KIDGO clinical practice guideline for acute kidney injury. Kidney Int Suppl 2012 ; 2(1) ; 1-138を参照のこと)に従って急性腎傷害を発症する。
2.患者がeGFRの低下を経験する:
・ 処置期間中処置開始から1週間以内で≧30%;及び/又は
・ 処置期間開始以降のあらゆる時点で≧40%。
3.患者が、eGFR<15mL/分/1.73m2を下回る腎臓機能低下及び/又は腎臓移植若しくは透析による腎代替療法を必要とすることのいずれかによって定義される末期腎疾患に進行する。
4.患者が試験処置の中止を希望する。患者は理由の説明が求められるが、回答を拒否する権利を有する。
5.患者が重要な試験手順の不遵守を繰り返し示し、治験責任医師と治験依頼者の担当者の両方の見解で、患者の安全性が、患者が今後試験の要件を遵守する意思がないか、遵守できないため保証できない。
6.患者が、許可されていない併用医薬を服用する必要がある。しかし、患者が用量を修正する必要がある場合で、安定した用量のみ許可される場合、中止が自動的に要求されることはない。この場合、治験依頼者に相談するべきである。
7.患者が、もはや手術、試験薬に起因し得る深刻な若しくは重度の薬物性肝傷害、他の有害事象又は他の疾患などの医学的理由で試験処置を受けることができない。
8.患者ががんの処置を必要とする。例えば基底細胞癌については一部の除外が適用される。治験依頼者と話し合う。
9.女性患者が妊娠した。患者は、出生まで又はさもなければ妊娠の完了までフォローアップされる。
【0072】
以下の場合、個々の患者はAS阻害薬/プラセボを永久的に中止する:
1.患者の血清カリウムが中央又はあらゆる地域の検査室により≧6.0mmol/L、又は漸減が不適切と考えられる場合は≧5.6mmol/Lと測定される。
2.患者がクッシング症候群、副腎不全(ACTH適用後のコルチゾールレベル<18μg/dL 30分(±5分)を含む)を発症するか、又は患者のコルチゾールレベルが試験中のあらゆる時点で<3μg/dL(82.8nmol/L)である。患者は、事象の解決まで地域の指針に従ってフォローされるべきであり、事象は治験依頼者に報告されるべきである。
以下の場合、個々の患者はエンパグリフロジン/プラセボを永久的に中止する:
1.ケトアシドーシスが疑われる。
2.フルニエ壊死が疑われる。
これらの場合、研究医薬(エンパグリフロジン/プラセボ又はAS阻害薬/プラセボのいずれか)のうちの1種が永久的に中止される場合には、患者は他の研究医薬による処置を受け続けてもよい。
【0073】
処置中断
以下の場合、全ての無作為化研究医薬が中断されねばならない:
・ 重度のSARS-COV-2感染
以下の場合、エンパグリフロジン/プラセボが中断されねばならない:
・ 合併UTI
・ 症候性の体液欠乏(symptomatic volume depletion)
以下の場合、AS阻害薬/プラセボが中断されねばならない:
・ 血清カリウム≧5.6mmol/L
・ 血清カリウム≧5mmol/L、患者が治験施設に戻ることができないか、又はそれを望まない場合
これらの場合、試験処置は、医学的に正当化される場合、回復時に再開できる。
【0074】
本発明の非限定的な実施形態
特許請求されているもの:
実施形態1.糖尿病性及び非糖尿病性慢性腎疾患(CKD)を処置する方法であって、医薬有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩をそれを必要とする患者に投与することを含む方法。
【0075】
【化2】
I
(式中、
Cyは、C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールから選択される単環式又は二環式環系であり、
前記C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、-C1-3アルキル、-OC1-3アルキル、-CF3、シアノ、オキソ、-N(C1-3アルキル)2、-NH(C1-3アルキル)、-NHCOC1-3アルキル、-C(O)C1-3アルキル、-C(O)OC1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル又はヘテロアリールから選択される1、2又は3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
1及びR2はH、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-CH2OC(O)C1-4アルキル、-C(O)OC1-4アルキル、-C(O)H、-COOH、-C(O)NHC1-4アルキル及びC(O)N(C1-4アルキル)2から独立して選択されるか、又は
1及びR2は一緒になってC3-6シクロアルキル若しくはC3-6ヘテロシクリルを形成する)
【0076】
実施形態2.Cyがフェニル、シクロヘキシル、インダニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル又はテトラヒドロキノリニル基であり、それぞれが、-Cl、-F、C1-3アルキル、オキソ及びCNから独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよく、
1及びR2がH、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-C(O)N(C1-4アルキル)2及び-CH2OC(O)C1-4アルキルから独立して選択される、
実施形態1の方法。
【0077】
実施形態3.Cyが-Cl、-F、C1-3アルキル及びCNから独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、
実施形態1の方法。
実施形態4.Cyが、CNで置換されており、Cl、-F及びC1-3アルキルから独立して選択される1又は2個の追加の基で置換されていてもよい、フェニルであり、
1が-CH3であり、
2が-CH3又は-CH2OHである
実施形態1の方法。
【0078】
実施形態5.R2が-CH2OHである
実施形態4の方法。
実施形態6.R2が-CH3である
実施形態4の方法。
実施形態7.式(I)の化合物が、化合物1~46からなる群又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される、実施形態1の方法。
実施形態8.式(I)の化合物が、化合物番号1~11、13、15、18、19、22、23、26、28、29A、29B、30~33、35、39、41、42、45及び46からなる群から選択される、実施形態7の方法。
実施形態9.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0079】
【化3】
実施形態10.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0080】
【化4】
実施形態11.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0081】
【化5】
実施形態12.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0082】
【化6】
実施形態13.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0083】
【化7】
実施形態14.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0084】
【化8】
実施形態15.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0085】
【化9】
実施形態16.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0086】
【化10】
実施形態17.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0087】
【化11】
実施形態18.式(I)の化合物が以下の化合物である、実施形態7の方法。
【0088】
【化12】
実施形態19.疾患が糖尿病性慢性腎疾患である、実施形態1~18のいずれか1つによる方法。
【0089】
実施形態20.疾患が非糖尿病性慢性腎疾患である、実施形態1~18のいずれか1つによる方法。
実施形態21.患者がステージ1のCKD、又はステージ2のCKD、又はステージ3のCKD、又はステージ4のCKD、又はステージ5のCKDを有する、実施形態1~20のいずれか1つによる方法。
実施形態22.医薬有効量のSGLT2阻害薬又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを更に含む、実施形態1~21のいずれか1つによる方法。
実施形態23.SGLT2阻害薬がエンパグリフロジンである、実施形態1~22のいずれか1つによる方法。
実施形態24.AS阻害薬が1日量0.1~100mg、又は0.1~30mg、又は1mg~25mg、又は3mg~20mgで投与される、実施形態1~23のいずれか1つによる方法。
【0090】
実施形態25.AS阻害薬が1日量3mg、又は10mg、又は20mgで投与される、実施形態1~24のいずれか1つによる方法。
実施形態26.エンパグリフロジンが1日量10mg又は25mgで投与される、実施形態23による方法。
実施形態27.エンパグリフロジンが1日量10mgで投与される、実施形態30による方法。
実施形態28.アルドステロンシンターゼ阻害薬が1日1回3mg、又は10mg、又は20mgの量で投与され、エンパグリフロジンが1日1回10mgの量で投与される、実施形態23による方法。
実施形態29.糖尿病性及び非糖尿病性慢性腎疾患を処置する方法であって、医薬有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、並びに薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物を用いて、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【0091】
【化13】
I
(式中、
Cyは、C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールから選択される単環式又は二環式環系であり、
前記C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、-C1-3-アルキル、-OC1-3-アルキル、-CF3、シアノ、オキソ、-N(C1-3-アルキル)2、-NH(C1-3-アルキル)、-NHCOC1-3-アルキル、-C(O)C1-3-アルキル、-C(O)OC1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、又はヘテロアリールから選択される1、2又は3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
1及びR2はH、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-CH2OC(O)C1-4アルキル、-C(O)OC1-4アルキル、-C(O)H、-COOH、-C(O)NHC1-4アルキル及びC(O)N(C1-4アルキル)2から独立して選択されるか、又は
1及びR2は一緒になってC3-6シクロアルキル若しくはC3-6ヘテロシクリルを形成する)
【0092】
実施形態30.医薬有効量のナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを更に含む、実施形態29による方法。
実施形態31.SGLT2阻害薬がエンパグリフロジンである、実施形態30による方法。
【0093】
実施形態32.糖尿病性及び非糖尿病性慢性腎疾患の処置において使用するための、ナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害薬と組み合わせてもよい、アルドステロンシンターゼ阻害薬又はその薬学的に許容される塩であって、アルドステロンシンターゼ化合物が式(I)の化合物である、アルドステロンシンターゼ阻害薬及びその薬学的に許容される塩。
【0094】
【化14】
I
(式中、
Cyは、C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールから選択される単環式又は二環式環系であり、
前記C3-10シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、-C1-3-アルキル、-OC1-3-アルキル、-CF3、シアノ、オキソ、-N(C1-3-アルキル)2、-NH(C1-3-アルキル)、-NHCOC1-3-アルキル、-C(O)C1-3-アルキル、-C(O)OC1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、又はヘテロアリールから選択される1、2又は3個の置換基で独立して置換されていてもよく、
1及びR2はH、C1-3アルキル、ヒドロキシC1-3アルキル、-CH2NHC(O)OC1-4アルキル、-CH2OC(O)C1-4アルキル、-C(O)OC1-4アルキル、-C(O)H、-COOH、-C(O)NHC1-4アルキル及びC(O)N(C1-4アルキル)2から独立して選択されるか、又は
1及びR2は一緒になってC3-6シクロアルキル若しくはC3-6ヘテロシクリルを形成する)
【国際調査報告】