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特表2025-500828金属切削工具経路サイクルを生成するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】金属切削工具経路サイクルを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/00 20060101AFI20250107BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20250107BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B23Q15/00 301K
B23B1/00 N
B23B27/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535198
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022085800
(87)【国際公開番号】W WO2023110987
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21214960.3
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レフ, ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, アダム
【テーマコード(参考)】
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C045EA04
3C046CC01
3C046PP01
(57)【要約】
旋削工具(1)を用いて素材(12)をブランク材から除去するための工具経路サイクルを生成するためのコンピュータ実装方法であって、旋削工具(1)が、事前定義された標的形状(5)が形成されるように、凸状ノーズ切れ刃(4)によって接続された第1および第2の切れ刃(2、3)を備え、ブランク材形状(10)の入力を受信するステップと、標的形状(5)の入力を受信するステップと、オフセット距離(m)を設定するステップと、旋削工具(1)の入力を受信するステップと、第1の切削方向(25)および第2の切削方向(26)を設定するステップと、第1の層(11)を、境界線(19、20)によって分離されたセグメント(16、17、18)に分割するステップであって、セグメントの1つの長手方向セット(11、18、43)が長手方向部分(9、21、39)に隣接するようにし、セグメントの1つの径方向セット(17、42、44)が径方向部分(8、38、40)に隣接するようにする、第1の層をセグメントに分割するステップと、第1の切削方向(25)がZ軸に沿っている場合、セグメントの長手方向セット(11、18、43)を除去し、続いてセグメントの径方向セット(17、42、44)を除去するステップと、第1の切削方向(25)がX軸に沿っている場合、セグメントの径方向セット(17、42、44)を除去し、続いてセグメントの長手方向セット(11、18、43)を除去するステップとを含む、方法。
【選択図】図42
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋削工具(1)を用いて素材(12)をブランク材から除去するための工具経路サイクルを生成するためのコンピュータ実装方法であって、前記旋削工具(1)が、事前定義された標的形状(5)が形成されるように、凸状ノーズ切れ刃(4)によって接続された第1および第2の切れ刃(2、3)を備え、前記ブランク材が、Z軸によって表される回転軸を中心にして回転可能であり、X軸が前記Z軸に直交するとともに径方向を表し、
前記標的形状(5)が複数の部分(6、7、8、9、21、24、27、28、38、39、40)を備え、前記複数の部分(6、7、8、9、21、24、27、28、38、39、40)が、1つまたは複数の凸状部分(6、27、28)と1つまたは複数の凹状部分(7、24)とを備え、
少なくとも1つの径方向部分(8、38、40)が前記Z軸よりもかなり前記X軸に沿って延在し、
少なくとも1つの長手方向部分(9、21、39)が前記X軸よりもかなり前記Z軸に沿って延在し、
前記標的形状(5)の前記凹状部分(7、24)のうちの1つまたは複数が、前記ノーズ切れ刃(4)の曲率半径以上の曲率半径を有する弧状部分(7)を備え、前記弧状部分(7)が1つの径方向部分(8)および1つの長手方向部分(9)を接続し、
ブランク材形状(10)の入力を受信するステップと、
前記標的形状(5)の入力を受信するステップとを含む、前記方法において、
前記方法が、
オフセット距離(m)を設定するさらなるステップと、
旋削工具(1)の入力を受信するさらなるステップと、
第1の切削方向(25)および第2の切削方向(26)を設定するさらなるステップであって、
前記第1および第2の切削方向(25、26)のうちの一方が、前記X軸に沿った前記旋削工具(1)の移動方向を表し、一方が前記Z軸に沿った前記旋削工具(1)の移動方向を表す、切削方向を設定するさらなるステップと、
完全にまたは部分的に前記素材(12)内に第1の層(11)を生成するさらなるステップであって、
前記第1の層(11)が前記標的形状(5)および第1の層の外側境界(13)によって境界を定められ、
前記第1の層の外側境界(13)が前記オフセット距離(m)の分、前記標的形状(5)から離隔され、
前記第1の層の外側境界(13)が、1つまたは複数の凸状部分(14、46、48)と1つまたは複数の凹状部分(15、47)とを備える、第1の層を生成するさらなるステップと、
前記Z軸に平行および/または前記X軸に平行に、境界線(19、20、29、30、41)を配置するさらなるステップであって、
前記境界線(19、20、29、30、41)がそれぞれ、前記標的形状(5)と前記第1の層の外側境界(13)との間に延在し、前記第1の層の外側境界(13)の凹状部分(15、47)、または前記標的形状(5)の凸状部分(6、27、28)のどちらかと交差するようにする、境界線を配置するさらなるステップと、
結果として、前記第1の層(11)を、前記境界線(19、20、29、30、41)によって分離されたセグメント(16、17、18、42、43、44)に分割するさらなるステップであって、
1つの長手方向セグメント(11、18、43)が各長手方向部分(9、21、39)に隣接するようにし、
1つの径方向セグメント(17、42、44)が各径方向部分(8、38、40)に隣接するようにし、
1つの境界線(19)が、前記境界線(19)が前記第1の層の外側境界(13)の前記凹状部分(15)と交差することによって、前記弧状部分が前記径方向および長手方向セグメント(17、16)のうちの一方と境界を接するように、径方向セグメント(17)および長手方向セグメント(16)を分離するように配置される、第1の層をセグメントに分割するさらなるステップと、
前記1つのセグメントに隣接する前記セグメントの後に、前記弧状部分と境界を接する前記1つのセグメントが除去されるように、すべてのセグメント(16、17、18、42、43、44)を除去するさらなるステップであって、1つまたは複数の前記長手方向セグメント(11、18、43)を除去するとき、前記旋削工具(1)が前記Z軸に沿って1つの方向に移動されるようにし、また1つまたは複数の前記径方向セグメント(17、42、44)を除去するとき、前記旋削工具(1)が前記X軸に沿って1つの方向に移動されるようにし、
前記X軸および前記Z軸に沿った前記方向が両方とも、両方が前記凹状部分(7、24)に向かうか、または両方が前記凹状部分(7、24)から離れる方向である、すべてのセグメントを除去するさらなるステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の切削方向(25)が前記Z軸に沿っている場合、前記標的形状(5)の前記凸状部分(6、25、26)と交差する1つの境界線(20、29、30)を前記Z軸に平行に配置し、
前記第1の層の外側境界(13)の前記凹状部分(15、47)と交差する1つの境界線(19、41)を前記X軸に平行に配置するさらなるステップと、
前記第1の切削方向(25)が前記X軸に沿っている場合、前記標的形状(5)の前記凸状部分(6、27、28)と交差する1つの境界線(20、29、30)を前記X軸に平行に配置し、前記第1の層の外側境界(13)の前記凹状部分(15、47)と交差する1つの境界線(19、41)を前記Z軸に平行に配置するさらなるステップと、
前記第1の切削方向(25)が前記Z軸に沿っている場合、前記1つまたは複数の長手方向セグメント(11、18、43)を除去し、続いて前記1つまたは複数の径方向セグメント(17、42、44)を除去するさらなるステップと、
前記第1の切削方向(25)が前記X軸に沿っている場合、前記1つまたは複数の径方向セグメント(17、42、44)を除去し、続いて前記1つまたは複数の長手方向セグメント(11、18、43)を除去するさらなるステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の切削方向(25)が前記Z軸に沿っている場合、前記旋削工具(1)を前記Z軸に沿って1つの方向に移動することによって、前記1つまたは複数の長手方向セグメント(11、18、43)を除去し、続いて前記旋削工具(1)を前記X軸に沿って1つの方向に移動することによって、前記1つまたは複数の径方向セグメント(17、42、44)を除去し、
前記第1の切削方向(25)が前記X軸に沿っている場合、前記旋削工具(1)を前記X軸に沿って1つの方向に移動することによって、前記1つまたは複数の径方向セグメント(17、42、44)を除去し、続いて前記旋削工具(1)を前記Z軸に沿って1つの方向に移動することによって、前記1つまたは複数の長手方向セグメント(11、18、42)を除去する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記径方向部分(8、38、40)が前記X軸に平行であり、前記長手方向部分(9、21、39)が前記Z軸に平行であり、
前記径方向部分および前記長手方向部分(8、38、40;9、21、39)のうちの一方が単一のパスによって形成される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記標的形状(5)がさらなる長手方向部分(21)を備え、
前記さらなる長手方向部分(21)および前記径方向部分(8)が、弧状部分(6)の形態の前記凸状部分(6)によって接続され、
第3のセグメント(18)が前記さらなる長手方向部分(21)によって境界を定められる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
X方向のオフセット距離(Ox)およびZ方向のオフセット距離(Oz)を表す、1つのパラメータまたは2つのパラメータ(Ox、Oz)の入力を受信するさらなるステップ
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記凸状部分(6)が、前記径方向部分(8)を前記X軸に平行に、および、さらなる長手方向部分(21)を前記Z軸に平行に接続し、
前記第1の層の外側境界(13)の径方向部分が、前記径方向部分(8)に平行であり、前記Z方向に前記オフセット距離の分(Oz)離隔され、
前記第1の層の外側境界(13)の長手方向部分が、前記さらなる長手方向部分(21)に平行であり、前記X方向に前記オフセット距離の分(Ox)離隔され、
前記第1の層の外側境界(13)の前記第1の部分および長手方向部分が、前記第1の層の外側境界(13)の凸状部分(14)で交差し、前記凸状部分(14)が90°の角の形態である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
分割角度(α)を設定するさらなるステップと、
前記Z軸に対して前記分割角度(α)に等しい角度を形成する法線を有する、凸状部分(6、27、28)のポイントから前記凸状部分(6、27、28)と交差する前記境界線(20、29、30)を配置するさらなるステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分割角度(α)をarctan(Ox/Oz)に等しく設定するさらなるステップ
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記X方向およびZ方向の前記オフセット距離を表す前記パラメータ(Ox、Oz)から、前記オフセット距離(m)を計算するさらなるステップと、
前記標的形状(5)から前記オフセット距離(m)の分垂直方向に離隔された、前記第1の層の外側境界(13)を配置するさらなるステップとを含み、
前記オフセット距離(m)が次式に従って計算され、
m=((90-β)・Ox+β・Oz)/90
式中、前記角度(β)が、前記標的形状が前記Z軸に対して形成する角度である、
請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記標的形状(5)の各凹状部分(7、24)のポイントから、前記Z軸に対して前記分割角度(α)に等しい角度で(自身の)法線を形成する垂直な補助線(31、32、49)を生成するさらなるステップと、
前記境界線(20、29、30)が前記ポイントと交差するように、前記標的形状(5)の凸状部分(6、27、28)と交差する、前記1つまたは複数の前記境界線(20、29、30)を配置するさらなるステップと、
前記境界線(19、41)がそれぞれ、1つの補助線(31、32、49)と前記第1の層の外側境界(13)との交点と交差するように、前記第1の層の外側境界(13)の凹状部分(7、24)と交差する、前記1つまたは複数の境界線(19、41)を配置するさらなるステップと
を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
各セグメント(16、17、18、42、43、44)内のすべての素材(12)を供給速度で除去した直後または実質的に直後に、前記旋削工具(1)を、前記供給速度よりも速い速度で後続のセグメントまで移動するさらなるステップ
を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
すべてのセグメント(16、17、18、42、43、44)を除去するとき、前記第1の切れ刃(2)が前記Z軸に対して一定の角度を形成するように、前記旋削工具(1)を配置するさらなるステップを含み、
前記旋削工具(1)が、工具本体と旋削インサート(50)とを備え、
前記工具本体が、前端と後端との間に延在する自身の長手方向軸線(A1)に沿って延在し、
前記後端が、CNC旋盤のマシンインターフェース(51)に接続され、
前記旋削インサート(50)が、前記工具本体の前記前端に接続され、
前記長手方向軸線(A1)が前記X軸に平行に配置される、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1および第2の切削方向(25、26)を設定する前に、前記旋削工具(1)を設定するさらなるステップと、
前記旋削工具(1)のノーズ角度が60°超過であり、前記第1および第2の切れ刃(2、3)がそれぞれ、上面図で前記オフセット距離(m)を上回る長さを有する場合、前記第1および第2の切削方向(25、26)を前記1つまたは複数の凹状部分(7、24)に向かって設定するさらなるステップと
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記旋削工具(1)を設定する前に、前記第1および第2の切削方向(25、26)を設定するさらなるステップと、
前記第1および第2の切削方向(25、26)のうちの一方または両方が前記1つまたは複数の凹状部分(7、24)から離れる方向に設定されている場合、前記旋削工具(1)のノーズ角度が60°超過以下の角度を形成するように、または前記旋削工具が、60°以下の角度を間に形成する第3および第4の切れ刃(64、65)を備えるように、前記旋削工具(1)を設定するステップであって、前記第3および第4の切れ刃(64、65)が、前記オフセット距離(m)未満の距離の分、前記ノーズ切れ刃(4)から離隔される、旋削工具を設定するさらなるステップと
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ブランク材形状(10)が少なくとも部分的に前記第1の層の外側境界(13)の外側にある場合、生成されたすべての層(34、35)が前記素材(12)から完全に離隔されるまで、前記標的形状からさらに離れた1つまたは複数のさらなる層(34、35)を生成するさらなるステップであって、
さらなる層(34、35)がそれぞれ、内側境界および外側境界(36、37)によって限定され、
さらなる層(34、35)それぞれに関して、前記それぞれの外側境界(36、37)が、前記オフセット距離(m)の分、前記それぞれの内側境界から離隔される、さらなる層を生成するさらなるステップと、
さらなる層(34、35)それぞれを、境界線によって分離されたセグメント(52~57;58~63)のセットに分割するさらなるステップであって、
セグメント(52~57;58~63)の前記セットがそれぞれ、前記第1の層(11)の前記セグメント(16、17、18、42、43、44)のセットに対応し、
前記境界線がそれぞれ、前記第1の層(11)の境界線(19、20、29、30、41)に対応する、さらなる層それぞれを分割するさらなるステップと、
前記第1の層(11)が残るまで、素材(12)を含むすべてのセグメント(58~63)を最上位層(35)から除去し、続いて素材(12)を含むすべてのセグメント(52~57)を後続の各層(34)から除去するように、前記旋削工具(1)に指示するさらなるステップと
を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
コンピューティングデバイスまたはシステムによって実行されると、前記コンピューティングデバイスまたはシステムに、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を有する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に属する。より具体的には、本発明は、工具経路サイクルを生成するためのコンピュータ実装方法の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる方法に言及する。換言すれば、本発明は、旋削工具を用いてブランク材から素材(stock)を除去するための工具経路サイクルを生成するためのコンピュータ実装方法に関し、旋削工具は、事前定義された標的形状が形成されるように、凸状ノーズ切れ刃によって接続された第1および第2の切れ刃を備え、ブランク材は、Z軸によって表される回転軸を中心にして回転可能であり、X軸はZ軸に直交するとともに径方向を表し、標的形状は複数の部分を備え、複数の部分は、1つまたは複数の凸状部分と1つまたは複数の凹状部分とを備え、少なくとも1つの径方向部分はZ軸よりもかなりX軸に沿って延在し、少なくとも1つの長手方向部分はX軸よりもかなりZ軸に沿って延在し、標的形状の前記凹状部分のうちの1つまたは複数は、ノーズ切れ刃の曲率半径以上の曲率半径を有する弧状部分を備え、前記弧状部分は1つの径方向部分および1つの長手方向部分を接続し、方法は、ブランク材形状の入力を受信するステップと、標的形状の入力を受信するステップとを含む。
【0003】
金属切削では、旋削は一般的な作業である。CNC旋盤が一般的に使用される。通常、複雑な形状は、ブランク材としても知られる金属ワークピースから機械加工される。クランプ締めされ、標的形状が形成されるまで、旋削工具を用いて材料が除去される。ブランク材から除去される材料は、一般に素材として知られている。旋削では、金属切削作業をどのように実施すべきかを手動で指示するのが一般的である。手動の指示は、異なるパスをどのように、またどの順序で実施するかを含む。パスとは、切削に入るところから切削を終えるところまでである。手動の指示は、機械加工時間、工具寿命、表面仕上げ、および他の要因などのパラメータに関して、非常に高効率から低効率にまで及ぶ可能性がある。CNC工具に指示を与えるのが非常に熟練した人である場合、または多数の試行錯誤実験が実施される場合、指示は非常に高効率の機械加工をもたらすことができる。しかしながら、場合によっては、工具経路サイクルを自動または半自動で生成する必要がある。例えば、理想的には、かかる自動または半自動の工具経路生成方法は、広範囲の金属切削作業、例えばブランク材形状および標的形状のばらつきに対する、例えば機械加工時間および工具寿命に関して、良好な性能を達成することができる。かかる方法は、手動プログラミングよりも掛かる時間が大幅に少ない。
【0004】
EP 3 702 853 A1は、旋削作業のための制御コマンドデータを生成するための方法を開示している。かかる方法は良好な結果をもたらすが、本発明者らは、さらなる改善の必要性を見出している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの目的は、工具寿命を増加させる、工具経路サイクルを生成するための改善されたコンピュータ実装方法を提供することである。
【0006】
この目的は、最初に定義した方法によって達成されるものであり、方法は、オフセット距離を設定するさらなるステップと、旋削工具の入力を受信するさらなるステップと、第1の切削方向および第2の切削方向を設定するさらなるステップであって、第1および第2の切削方向のうちの一方がX軸に沿った旋削工具の移動方向を表し、一方がZ軸に沿った旋削工具の移動方向を表す、第1の切削方向および第2の切削方向を設定するさらなるステップと、完全にまたは部分的に素材内に第1の層を生成するさらなるステップであって、第1の層が標的形状および第1の層の外側境界によって境界を定められ、第1の層の外側境界がオフセット距離の分、標的形状から離隔され、第1の層の外側境界が、1つまたは複数の凸状部分と1つまたは複数の凹状部分とを備える、第1の層を生成するさらなるステップと、Z軸に平行かつX軸に平行に境界線を配置するさらなるステップであって、前記境界線がそれぞれ、標的形状と第1の層の外側境界との間に延在し、第1の層の外側境界の凹状部分、または標的形状の凸状部分のどちらかと交差するようにする、境界線を配置するさらなるステップと、結果として、第1の層を、境界線によって分離されたセグメントに分割するさらなるステップであって、1つの長手方向セグメントが各長手方向部分に隣接するようにし、1つの径方向セグメントが各径方向部分に隣接するようにし、1つの境界線が、前記境界線が第1の層の外側境界の凹状部分と交差することによって、弧状部分が前記径方向および長手方向セグメントのうちの一方と境界を接するように、径方向セグメントおよび長手方向セグメントを分離するように配置される、第1の層をセグメントに分割するさらなるステップと、前記1つのセグメントに隣接するセグメントの後に、弧状部分と境界を接する前記1つのセグメントが除去されるように、すべてのセグメントを除去するさらなるステップであって、1つまたは複数の長手方向セグメントを除去するとき、旋削工具がZ軸に沿って1つの方向に移動されるようにし、また1つまたは複数の径方向セグメントを除去するとき、旋削工具(1)がX軸に沿った1つの方向に移動されるようにし、X軸およびZ軸に沿った前記方向が両方とも、両方が凹状部分に向かうか、または両方が凹状部分から離れる方向である、すべてのセグメントを除去するさらなるステップとを含む。
【0007】
凹状部分に隣接する材料を何ら前もって除去することなく前記凹状部分を機械加工すると、インサート破損のリスクが増加することを本発明者らは見出しているので、かかる方法によってインサート破損のリスクを低減することができる。リスクの増加は、本発明者らによれば、過剰な切削深さおよび/またはチップハンマリングのリスク増加によるものであり得る。特に、内部肩部または凹状部分に隣接する材料を前もって除去することなく、前記内部肩部または凹状部分に向かって旋削すると、インサート破損のリスクが増加することを本発明者らは見出している。この問題は、標的形状の形状に実質的に従う1つまたは複数の層がセグメントに分割されることによって、隣接セグメントを分離している境界が凹状部分の中点から離隔される、方法によって低減されることが見出されている。
【0008】
かかる方法によって、形状が非常に様々である旋削構成要素に対する限定された数の入力データに基づいて、工具経路を生成することができ、例えば、工具寿命および/またはサイクル時間および/または表面仕上げに関して効率的に、機械加工を実施することができる。
【0009】
コンピュータ実装方法は、CNC旋盤を制御する命令を生成するなど、工具経路サイクルまたは切削サイクルを生成するためのものである。工具経路は、供給方向およびパスの順序など、ワークピースまたはブランク材に対する旋削工具の移動を制御するためのものである。旋削工具は、素材をブランク材から除去するのに適している。旋削工具1は、ノーズ切れ刃を生成する凸状表面によって接続される、第1および第2の切れ刃を備える。ノーズ切れ刃は、好ましくは、上面図で弧状であり、例えば0.1~1.6mmの曲率半径を有する。第1および第2の切れ刃は、上面図で少なくとも部分的に線形であり、好ましくは、上面図で、好ましくは15~85°、さらにより好ましくは25~83°の鋭角を形成する。
【0010】
第1の切削方向がX軸に平行に設定された場合、ノーズ角度は好ましくは50°以下であり、または第1および第2の切れ刃の形状が上面図で真っ直ぐではない場合、二等分線に対する第1または第2の切れ刃のアクティブ部分の間の角度は25°以下である。これは、凹状部分を機械加工する際のチップ詰まりのリスクを低減するためである。
【0011】
第1および第2の切れ刃の間の二等分線は、Z軸に対して、好ましくは40°~50°、さらにより好ましくは45°度の角度を形成する。
【0012】
工具経路サイクルは、金属切削を通して、事前定義された標的形状を形成するためのものである。ブランク材は、Z軸に沿って長手方向に、即ち軸線方向に延在し、またX軸に沿って径方向に延在する。Z軸は回転軸を表し、ブランク材は回転軸を中心にして回転可能である。X軸はZ軸に直交する。ブランク材またはブランク材形状は、第1および第2のブランク材エンドポイントの間に延在する連続線によって、X-Z面に表される。
【0013】
標的形状は、第1および第2の標的エンドポイントの間に延在する連続線によってX-Z面に表され、接続され共同で標的形状を形成する部分のセット、即ち下位部分のセットを備える。部分は線形または曲線であってもよい。線形部分は2つの端部の間に延在する。端部は、標的形状のエンドポイントであるか、または標的形状が線形部分の線形性から逸脱するところである。弧状部分は自身の曲率半径を有し、エンドポイントの間に、または線形部分もしくは異なる曲率半径を有する部分など、標的形状が前記曲率から逸脱するところに延在する。
【0014】
前記弧状部分のあるポイントの法線は、Z軸に対して45°の角度を形成する。弧状部分が、Z軸に平行な1つの長手方向部分およびX軸に平行な1つの径方向部分を接続する場合、前記ポイントは前記弧状部分の中点である。
【0015】
部分のセットは、1つまたは複数の凸状部分、または角、ポイント、もしくはセクションと、1つまたは複数の凹状部分とを備える。標的形状は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの凸状および/もしくは凹状部分を備えてもよい。
【0016】
部分のセットは、Z軸よりもかなりX軸に沿って延在する少なくとも1つの径方向部分をさらに備える。径方向部分は、Z軸に対して45°超過の角度で傾斜する。前記径方向部分は、例えば、線形であってX軸に平行であってもよい。径方向部分のすべてのポイントについて、法線はZ軸に対して45°より小さい角度を形成する。部分のセットは、X軸よりもかなりZ軸に沿って延在する少なくとも1つの長手方向部分をさらに備える。前記長手方向部分は、例えば、線形であってZ軸に平行であってもよい。長手方向部分は、Z軸に対して45°未満の角度で傾斜する。長手方向部分のすべてのポイントについて、法線はZ軸に対して45°超過の角度を形成する。
【0017】
径方向部分に関して、前記部分のエンドポイントの間の距離は、Z軸に沿うよりもX軸に沿う方が長く、長手方向部分に関しては逆が真である。前記エンドポイントは標的形状の一部である。
【0018】
標的形状は、ノーズ切れ刃の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する凹状部分を何ら備えていない。凹状部分の少なくとも1つは、ノーズ切れ刃の曲率半径以上の曲率半径を有する弧状部分の形態である。前記弧は好ましくは円弧である。
【0019】
標的形状は、X-Z面における標的形状の各ポイントが、X-Z面で少なくとも1つのポイントから見通し線内にあるようなものである。換言すれば、X-Z面における標的形状の各ポイントは、X-Z面の1つのポイントに面している。
【0020】
方法は、ブランク材または開始形状の入力を受信するステップと、標的形状の入力を受信するステップと、オフセット距離、つまりオフセット距離関数の入力を設定するステップと、第1の切削方向および第2の切削方向を設定するステップとを含む。除去される素材または材料は、ブランク材形状と標的形状との差として定義される。前記入力はユーザ入力の形態であってもよい。あるいは、ブランク材形状に関して受信される入力は、測定デバイスからの測定データの形態であってもよい。標的形状に関して受信される入力は、1つまたは複数の描画のデータベースからのデータの形態であってもよい。オフセット距離またはオフセット距離関数は、例えば、ユーザ入力から、コンピュータプログラムからのプリセット値もしくは関数から、または切削データ推奨を包含するデータベースから、手動で設定されてもよい。オフセット距離は、オフセット距離が計算される基である複数のパラメータから設定されてもよい。前記第1および第2の切削方向は、X軸およびZ軸に沿っており、ユーザ入力を通して選択されてもよく、あるいは旋削工具特性および/または標的形状などのパラメータに基づいて選択されてもよい。
【0021】
方法は、例えば、選択された標的形状を形成するようにブランク材を旋削するのに適した旋削工具の特性が選択されるように、旋削工具のユーザ入力を受信することを通して、旋削工具の入力を受信するステップを含んでもよい。旋削工具は、工具データベースから選択されてもよく、ユーザによって選択されてもよく、または標的形状、第1の切削方向、および第2の切削方向などのパラメータに基づいて設定されてもよい。
【0022】
ブランク材形状および標的形状は、ブランク材の回転軸を表すZ軸に関して対称である。前記形状はX-Z面における表現の形態である。
【0023】
方法は、完全にまたは部分的に素材内で、第1の層もしくは第1の層形状を生成または配置するステップを含む。第1の層は、オフセット距離またはオフセット距離関数の分、標的形状から垂直に離隔された、第1の層の内側境界および第1の層の外側境界を画定する、標的形状によって境界を定められる。第1の層は、第1および第2の標的エンドポイントの間に連続して延在する。オフセット距離は、標的形状から第1の層の外側境界までの垂直距離である。前記オフセット距離は、定数、即ち特定の値、または範囲、または関数であってもよい。第1の層の外側境界はX-Z面における慎重線(cautious line)である。第1の層の外側境界の形状は、標的形状の形状に実質的に対応する。これは、第1の層の外側境界のすべてまたは実質的にすべての部分が、標的形状の部分に対応することを意味する。例えば、凸状部分および凹状部分の数は、標的形状と第1の層の外側境界とで等しい。第1の層の外側境界の各ポイントから標的形状までの最短距離は一定であってもよく、または変動してもよいが、好ましくは事前定義値以下である。
【0024】
第1の層は、ともに第1の層を形成するセグメントに分割される。第1の層は単一の旋削パスでは機械加工されず、第1の層のセグメント化は、第1の層を、即ち第1の層の内部にある素材を、機械加工する順序および方向の設定を支援するためである。セグメントは、仮想境界線のセットによって分離または分割される。前記境界線はそれぞれ、Z軸に平行またはX軸に平行のどちらかで配置される。すべての境界線がX軸に平行であってもよい。あるいは、すべての境界線がZ軸に平行である。あるいは、少なくとも1つの境界線がX軸に平行であり、少なくとも1つの境界線がZ軸に平行である。前記境界線は、標的形状と第1の層の外側境界との間に延在する。
【0025】
1つの長手方向セグメントは長手方向部分に隣接する。標的形状が2つ以上の長手方向部分を備える場合、少なくとも、長手方向部分の長手方向長さ、即ちZ軸に沿った延在が十分に長い場合、標的形状は2つ以上の長手方向セグメントを備えてもよい。
【0026】
1つの径方向セグメントは径方向部分に隣接する。標的形状が2つ以上の径方向部分を備える場合、少なくとも、径方向部分の径方向長さ、即ちX軸に沿った延在が十分に長い場合、標的形状は2つ以上の径方向セグメントを備えてもよい。
【0027】
セグメント化は、弧状部分全体がちょうど1つのセグメント内にあるようなものである。
【0028】
方法は、セグメントの数に等しい数のいくつかのパスを通して、すべてのセグメントを、より具体的にはすべてのセグメント内部の素材または材料を除去するように、旋削工具に指示するステップを含む。このように、セグメントを除去することは、素材のうち前記セグメント内にある部分を除去することを意味する。
【0029】
除去は、ノーズ切れ刃、ならびに第1の切れ刃および/または第2の切れ刃を用いて達成されるように設定される。
【0030】
パスの数は、径方向および長手方向セグメントの数に等しい。
【0031】
ノーズ切れ刃は機械加工表面を生成する。換言すれば、ノーズ切れ刃は標的形状に沿って移動する。
【0032】
第1の層内の素材を除去するとき、切削深さは変動してもよい。少なくとも1つのパスに対して、即ち1つのセグメント内の素材を除去するとき、第1の切れ刃がアクティブであり、また少なくとも他の1つのパスに対して、第2の切れ刃がアクティブであり、即ち、切削状態にある。
【0033】
このように、第1の層のすべてのセグメントが除去され、即ち第1の層内のすべての素材が除去され、標的形状が形成される。
【0034】
標的形状または第1の層の外側境界の凹状または凸状部分は、例えば、1つの円弧または1つの明確な角の形態であることができる。
【0035】
セグメントの1つの径方向セットは径方向部分に隣接する。換言すれば、各径方向セグメントは径方向部分に隣接する。1つの径方向セグメントのみが、単一の径方向部分に隣接していてもよい。
【0036】
1つの境界線は、前記境界線が第1の層の外側境界の凹状部分と交差するように配置される。好ましくは、第1の層の外側境界の各凹状部分には境界線が交差し、前記境界線は平行である。
【0037】
凹状部分に隣接する部分をそれぞれ備える、径方向セグメントおよび長手方向セグメントは、弧状部分が前記径方向および長手方向セグメントのうちの一方と境界を接するように、前記1つの境界線によって分離される。前記1つの境界線がX軸に平行である場合、径方向セグメントは前記弧状部分を備える。前記1つの境界線がZ軸に平行である場合、長手方向セグメントは前記弧状部分を備える。旋削工具を用いてすべてのセグメントを除去する順序は、弧状部分と境界を接する前記1つのセグメントが、前記1つのセグメントに隣接するセグメントの後に除去されるような順序である。換言すれば、前記1つの境界線がZ軸に平行である場合、径方向セグメントが長手方向セグメントの前に除去される。前記1つの境界線がX軸に平行である場合、長手方向セグメントが径方向セグメントの前に除去される。
【0038】
セグメントの除去は、長手方向セグメントまたは1つもしくは複数の長手方向セグメントを除去するとき、即ち第1および第2の切れ刃のうちの一方がアクティブのとき、Z軸に沿った1つの方向で旋削工具を移動するようなものである。1つまたは複数の径方向セグメントを除去するとき、即ち第1および第2の切れ刃のうちの一方がアクティブのときは、X軸に沿った1つの方向で旋削工具を移動する。
【0039】
X軸およびZ軸に沿った前記方向は両方とも、両方が凹状部分に向かうか、または両方が凹状部分から離れるかのどちらかである。これにより、前記長手方向セグメントを除去するときに第1の切れ刃がアクティブである場合、前記径方向セグメントを除去するときに第2の切れ刃がアクティブであり、またはその逆である。これにより、インサートの摩耗が切れ刃に沿ってより均等に分散される。
【0040】
一実施形態によれば、方法は、第1の切削方向がZ軸に沿っている場合、標的形状の凸状部分と交差する1つの境界線をZ軸に平行に配置し、第1の層の外側境界の凹状部分と交差する1つの境界線をX軸に平行に配置するさらなるステップと、第1の切削方向がX軸に沿っている場合、標的形状の凸状部分と交差する1つの境界線をX軸に平行に配置し、第1の層の外側境界の凹状部分と交差する1つの境界線をZ軸に平行に配置するさらなるステップと、第1の切削方向がZ軸に沿っている場合、1つまたは複数の長手方向セグメントを除去し、続いて1つまたは複数の径方向セグメントを除去するさらなるステップと、第1の切削方向がX軸に沿っている場合、1つまたは複数の径方向セグメントを除去し、続いて1つまたは複数の長手方向セグメントを除去するさらなるステップとを含む。
【0041】
かかる方法を用いて、ユーザは、長手方向および径方向の両方で切削方向を選択することができる。方法を様々な旋削工具に使用することができるので、これは利点である。一部の旋削工具は、1つの径方向および1つの長手方向のみの機械加工に適しており、他の旋削工具を、反対の長手方向および径方向に使用することができる。旋削工具に応じて、工具寿命を最大限にするために、切削方向は異なることがある。
【0042】
かかる方法によって、比較的少ないパスによって標的形状が生成され、したがってカスプの数が低減されるので、表面仕上げを許容可能なレベルで保つことができる。
【0043】
前記境界線の配置は、選択された第1の切削方向に応じて決まる。設定される第1の切削方向がZ軸に沿っている場合、Z軸に平行な境界線が、前記境界線が標的形状の凸状部分と交差するように配置される。標的形状が2つ以上の凸状部分を備える場合、それぞれの凸状部分がZ軸に平行な1つの境界線と交差する。したがって、境界線の数は凸状部分の数に等しい。さらに、設定される第1の切削方向がZ軸に沿っている場合、X軸に平行な1つの境界線が、第1の層の外側境界の凹状部分と交差するように、また標的形状の1つの長手方向部分と交差するように配置される。第1の層の外側境界が2つ以上の凹状部分を備える場合、前記凹状部分のすべてがX軸に平行な1つの境界線と交差する。
【0044】
第1の切削方向がX軸に沿っている場合、1つの境界線が、前記境界線が標的形状の凸状部分と交差するように配置され、前記境界線はX軸に平行である。さらに、1つの境界線が、前記境界線が第1の層の外側境界の凹状部分と交差し、また径方向部分と交差するように配置され、前記境界線はZ軸に平行である。第1の層の外側境界が2つ以上の凹状部分を備える場合、前記部分はそれぞれZ軸に平行な境界線と交差する。
【0045】
第1の切削方向がZ軸に沿っている場合、旋削工具をZ軸に沿って移動することによって、長手方向セグメントまたは1つもしくはセグメントが最初に除去される。Z軸に沿った移動は、第1の切削方向によって設定されるようなZ軸に沿った方向で、移動方向の1つの成分がZ軸に沿っていると理解されるべきである。すべての長手方向セグメントが除去された後、移動方向の1つの成分が第2の切削方向にあるように、旋削工具をX軸に沿って移動することによって、すべての径方向セグメントが除去される。
【0046】
第1の切削方向がX軸に沿っている場合、長手方向セグメントの前に径方向セグメントがすべて除去される。旋削工具の移動方向は上述の通りであり、即ち、径方向セグメントの場合はX軸に沿っており、長手方向セグメントの場合はZ軸に沿っている。
【0047】
第1の切削方向がX軸に沿っているかまたはZ軸に沿っているかにかかわらず、除去される第1のセグメントは、好ましくは、第1の標的エンドポイントまたは第2の標的エンドポイントに隣接するセグメントである。
【0048】
第1の切削方向および第2の切削方向は両方とも、両方が凹状部分に向かうか、または両方が凹状部分から離れるかのどちらかである。
【0049】
一実施形態によれば、第1の切削方向がZ軸に沿っている場合、旋削工具をZ軸に沿って1つの方向に移動することによって、1つまたは複数の長手方向セグメントを除去し、続いて旋削工具をX軸に沿って1つの方向に移動することによって、1つまたは複数の径方向セグメントを除去し、第1の切削方向がX軸に沿っている場合、旋削工具をX軸に沿って1つの方向に移動することによって、1つまたは複数の径方向セグメントを除去し、続いて旋削工具をZ軸に沿って1つの方向に移動することによって、1つまたは複数の長手方向セグメントを除去する。
【0050】
かかる方法によって、セグメントの各セットに対して、旋削工具をX軸およびZ軸それぞれに沿って1つの方向にのみ移動するので、機械加工時間を比較的少なく保つことができる。セグメントの各セットは、ここでは、セグメントの径方向セット、即ち1つまたは複数の径方向セグメント、およびセグメントの長手方向セット、即ち1つまたは複数の長手方向セグメントを指す。このように、切削工具の空中移動(air movements)または早送りの時間、即ちパス間における旋削工具の移動の時間を、比較的少なく保つことができる。
【0051】
一実施形態によれば、第1の切削方向および第2の切削方向は両方とも、両方が凹状部分に向かうか、または両方が凹状部分から離れるかのどちらかである。
【0052】
かかる方法によって、摩耗は切れ刃のより長い部分全体に拡散される。より正確には、第1および第2の切れ刃は両方とも摩耗する。このように、工具寿命を増加させることができる。
【0053】
1つまたは複数の径方向セグメントは、ノーズ切れ刃および第1の切れ刃を用いて除去され、1つまたは複数の長手方向セグメントは、ノーズ切れ刃および第2の切れ刃を用いて除去される。あるいは、1つまたは複数の長手方向セグメントは、ノーズ切れ刃および第1の切れ刃を用いて除去され、1つまたは複数の径方向セグメントは、ノーズ切れ刃および第2の切れ刃を用いて除去される。
【0054】
好ましくは、第1の切削方向および第2の切削方向は両方とも、両方が凹状部分から離れる方向にある。かかる方法によって、ノーズ切れ刃の摩耗をさらに低減することができ、それによって工具寿命が増加する。
【0055】
一実施形態によれば、径方向部分はX軸に平行であり、長手方向部分はZ軸に平行であり、径方向部分および長手方向部分のうちの一方は単一のパスによって形成される。
【0056】
標的形状の径方向部分はX軸に平行であり、標的形状の長手方向部分はZ軸に平行であり、したがって90°の内角を形成する。
【0057】
弧状部分の形態である凹状部分に隣接する、第1の部分および長手方向部分のうちの一方は、単一のパスによって形成される。第1の切削方向がX軸に平行である場合、長手方向部分が単一のパスによって形成される。第1の切削方向がZ軸に平行である場合、径方向部分が単一のパスによって形成される。
【0058】
かかる方法によって、表面仕上げが改善される。標的形状の前記第1の部分および長手方向部分のうちのどちらかの全体が、単一のパスによって形成される。前記第1の部分および長手方向部分はそれぞれ、標的形状が前記軸のうちの一方に平行な状態から逸脱するまで、または標的形状が終了するまで、X軸またはZ軸のどちらかに平行に延在する。
【0059】
一実施形態によれば、標的形状はさらなる長手方向部分を備え、さらなる長手方向部分および径方向部分は、弧状部分の形態の凸状部分によって接続され、第3のセグメントはさらなる長手方向部分によって境界を定められる。
【0060】
第3のセグメントは、さらなる長手方向部分によって境界を定められるかまたはそれに隣接する。旋削工具は、長手方向セグメントを除去するとき、Z軸に沿って同じ方向に移動し、前記長手方向セグメントは連続して次々に除去される。径方向セグメントは、前記長手方向セグメントの両方の後または前に除去される。
【0061】
さらなる長手方向部分は、例えば、長手方向部分に平行であり、Z軸から異なる距離に、例えばより遠い距離にあってもよい。
【0062】
かかる方法によって、第1および第2のセグメントの除去の間のZ軸に沿った旋削工具の移動が最小限に抑えられるので、サイクル時間が低減される。
【0063】
一実施形態によれば、方法は、X方向のオフセット距離およびZ方向のオフセット距離を表す、1つのパラメータまたは2つのパラメータの入力を受信するさらなるステップを含む。
【0064】
入力は、例えば、ユーザ入力の形態であってもよく、または旋削工具に対する前記1つもしくは複数のパラメータが格納される、デジタル工具データベースから入力されてもよい。前記オフセット距離は、旋削工具および切削方向の両方の関数として設定されてもよい。例えば、オフセット距離は、特定の旋削工具に関して、Z軸に沿ったどの方向に第1の切削方向が向けられるかに応じて、異なる値を有してもよい。
【0065】
オフセット距離を設定するためのパラメータは、オフセットx値、即ちX軸に沿ったオフセット距離、およびオフセットz値、即ちZ軸に沿ったオフセット距離を備える。
【0066】
1つのパラメータ、即ち1つの値は、X方向およびZ方向両方のオフセット距離を表してもよい。換言すれば、前記オフセット距離は等しい。あるいは、前記オフセット距離は等しくなく、したがって2つの異なる値が設定される。前記値は、好ましくは0.2~8.0mm、さらにより好ましくは0.5~5.0mmの範囲内である。
【0067】
かかる方法によって、対称的ではない旋削工具、例えば、Z軸に対して45°の角度を形成する第1および第2の切れ刃の間の二等分線を有さないか、または径方向および長手方向の旋削に等しく適していないインサートに適するように、切削深さを選択することができる。
【0068】
一実施形態によれば、凸状部分は、径方向部分をX軸に平行に、および、さらなる長手方向部分をZ軸に平行に接続し、第1の層の外側境界の径方向部分は、径方向部分に平行であり、Z方向にオフセット距離の分、離隔され、第1の層の外側境界の長手方向部分は、さらなる長手方向部分に平行であり、X方向にオフセット距離の分、離隔され、第1の層の外側境界の第1の部分および長手方向部分は、第1の層の外側境界の凸状部分で交差し、前記凸状部分は90°の角の形態である。
【0069】
方法は、好ましくは、標的形状の凸状部分の曲率半径が事前定義値未満のときのみ、またはその場合、上述のステップを含む。前記事前定義値は、好ましくは、0.4~3.0mmの範囲内である。
【0070】
方法は、好ましくは、事前定義された最大切削深さ値を設定するステップを含んでもよく、前記値は、手動で設定、即ちユーザによって入力されてもよく、または切削工具に対する最大切削深さ値を含むデータベースから自動的に設定されてもよい。1つの境界線。標的形状の凸状部分と交差する1つの境界線から第1の層の外側境界までの垂直距離は、前記最大切削深さ値以下であるように設定される。
【0071】
第1の層の外側境界は径方向部分を備え、前記径方向部分はX軸に平行である。第1の層の外側境界の前記径方向部分は、標的形状の径方向部分の一部分に平行であり、Z方向にオフセット距離の分、離隔される。
【0072】
第1の層の外側境界の凸状部分は、ちょうど90°の角、即ち曲率を有さない角の形態である。前記角は、第1の層の外側境界の部分を接続し、上記部分はそれぞれ、X軸に平行、およびZ軸に平行である。
【0073】
一実施形態によれば、方法は、分割角度を設定するステップと、Z軸に対して分割角度に等しい角度を形成する法線を有する、前記凸状部分のポイントから凸状部分と交差する境界線を配置するさらなるステップとを含む。
【0074】
このように、方法は、例えば、分割角度であるユーザからの入力を受信することにより、分割角度を設定するステップを含む。あるいは、前記角度は、既定値、好ましくは45°に設定することができる。あるいは、前記角度はパラメータから計算されてもよい。
【0075】
かかる方法によって、凹状部分の周囲または近傍のセグメント化を、制御された形で選択することができる。
【0076】
分割角度は好ましくは45°に設定される。かかる事例で、第1の切削方向25がZ軸に沿っている場合、長手方向部分は各ポイントで、Z軸に対して45°以下である角度を形成する。かかる事例で、第1の切削方向25がX軸に沿っている場合、径方向部分は各ポイントで、Z軸に対して45°以上である角度を形成する。
【0077】
一実施形態によれば、方法は、分割角度をarctan(Ox/Oz)に等しく設定するさらなるステップを含む。
【0078】
このように、前記分割角度は、X方向のオフセット距離をZ方向のオフセット距離で割ったもののarctanに等しく設定される。
【0079】
かかる方法によって、凹状部分に隣接する各セグメントは、より均一な厚さを有するようになり、切削深さがオフセット距離を上回るリスクが低減される。
【0080】
一実施形態によれば、方法は、X方向およびZ方向のオフセット距離を表す前記パラメータOx、Ozから、オフセット距離を計算するさらなるステップと、
標的形状からオフセット距離の分垂直方向に離隔された、第1の層の外側境界を配置するさらなるステップとを含み、
オフセット距離mは次式に従って計算され、
m=((90-β)・Ox+β・Oz)/90
式中、角度βは、標的形状がZ軸に対して形成する角度である。
【0081】
前記角度は度で表される。前記角度は、標的形状の各ポイントがZ軸に対して形成する角度である。
【0082】
かかる方法によって、先細部分を備える標的形状など、より複雑な形状の標的形状に関しても、径方向および長手方向の旋削に関して異なる特性を有する旋削工具に対して、第1の層の外側境界までの距離を計算することができる。
【0083】
一実施形態によれば、方法は、標的形状の各凹状部分のポイントから、Z軸に対して分割角度に等しい角度で法線を形成する垂直な補助線を生成するさらなるステップと、前記境界線が前記ポイントと交差するように、標的形状の凸状部分と交差する、1つまたは複数の境界線を配置するさらなるステップと、前記境界線がそれぞれ、1つの補助線と第1の層の外側境界との交点と交差するように、第1の層の外側境界の凹状部分と交差する、1つまたは複数の境界線を配置するさらなるステップとを含む。
【0084】
分割角度は、好ましくは、arctan(Ox/Oz)に等しい。
【0085】
一実施形態によれば、方法は、各セグメント内のすべての素材を供給速度で除去した直後または実質的に直後に、旋削工具を、前記供給速度よりも速い速度で後続のセグメントまで移動するさらなるステップを含む。
【0086】
セグメントの除去は、旋削工具のノーズ切れ刃が前記セグメントの内側境界線に沿って、即ち第1の層に対する標的形状に沿って移動することによって達成される。移動は、通常はワークピースの1回転当たりの指定距離に設定される、通常は1回転当たり0.05~8.0mmの範囲の、フィードと呼ばれるものによる。各セグメントを除去した直後または実質的に直後に、旋削工具を、前記セグメントの内側境界線から離れる方向に、供給速度よりも速い速度で、後続のセグメントの開始位置に向かって移動する。かかる高速移動は、空中移動または早送りとしても知られている。
【0087】
旋削工具のかかる除去は、好ましくは、2番目以上の層に関して、前記セグメント内のすべての素材が除去された直後または実質的に直後である。直後とは、前記セグメント内のすべての素材が除去された後、3秒未満、好ましくは2秒未満の時間と理解されるべきである。
【0088】
かかる方法によって、サイクル時間が低減される。
【0089】
一実施形態によれば、方法は、すべてのセグメントを除去するとき、第1の切れ刃がZ軸に対して一定の角度を形成するように、旋削工具を配置するさらなるステップを含み、旋削工具は、工具本体と旋削インサートとを備え、工具本体は、前端と後端との間に延在する自身の長手方向軸線に沿って延在し、後端は、CNC旋盤のマシンインターフェースに接続され、旋削インサートは、工具本体の前端に接続され、長手方向軸線はX軸に平行に配置される。
【0090】
旋削工具は、好ましくは、第1および第2の切れ刃の中間に延在する二等分線が、Z軸に対して45°の角度を形成するように選択される。
【0091】
一実施形態によれば、方法は、第1および第2の切削方向を設定する前に、旋削工具を設定するさらなるステップと、旋削工具のノーズ角度が60°超過であり、第1および第2の切れ刃がそれぞれ、上面図でオフセット距離を上回る長さを有する場合、第1および第2の切削方向を1つまたは複数の凹状部分に向かって設定するさらなるステップとを含む。
【0092】
かかる方法によって、インサート破損のリスクがさらに低減される。本発明者らは、凹状部分に向かう、特に90°の凹角に向かう旋削は、80°のノーズ角度を有するタイプCNMGのインサートなど、比較的大きいノーズ角度を有する旋削インサートに関して、インサート破損のリスクが増加することを見出している。
【0093】
上面図では、第1および第2の切れ刃はそれぞれ、オフセット距離を上回る長さ、あるいは5mmを上回る長さ、さらにより好ましくは7mmを上回る長さを有する。
【0094】
ノーズ角度は、上面図で第1および第2の切れ刃の間の角度として定義される。旋削工具は、好ましくは、旋削インサートを備える。
【0095】
一実施形態によれば、方法は、旋削工具を設定する前に、第1および第2の切削方向を設定するさらなるステップと、第1および第2の切削方向のうちの一方または両方が1つまたは複数の凹状部分から離れる方向に設定されている場合、旋削工具のノーズ角度が60°超過以下の角度を形成するように、または旋削工具が、60°以下の角度を間に形成する第3および第4の切れ刃を備えるように、旋削工具を設定するさらなるステップであって、前記第3および第4の切れ刃が、オフセット距離未満の距離の分、ノーズ切れ刃から離隔される、旋削工具を設定するさらなるステップとを含む。
【0096】
本発明者らは、凹状部分から離れる方向に切削するとき、80°のノーズ角度を有するタイプCNMGのインサートなど、比較的大きいノーズ角度を有する旋削インサートに関して、インサート破損のリスクが増加すること、ならびに上述した旋削工具のいずれかによってこのリスクが低減されることを見出している。
【0097】
ノーズ角度は、上面図で第1および第2の切れ刃の間の角度として定義される。旋削工具は、好ましくは、旋削インサートを備える。2番目に言及した旋削工具は、好ましくは、第1および第2の切れ刃を接続するノーズ切れ刃を備える旋削インサートを備えてもよく、第1および第2の切れ刃は70~85°のノーズ角度を形成し、第1の切れ刃はノーズ切れ刃と第3の切れ刃との間にあり、第2の切れ刃はノーズカッティングと第4の切れ刃との間にあり、第3および第4の切れ刃は50°未満の角度を形成する。第3の切れ刃の一部分および第4の切れ刃の一部分は、オフセット距離未満の距離の分、あるいは6mm未満、好ましくは5mm未満の距離の分、ノーズ切れ刃から離隔される。
【0098】
一実施形態によれば、方法は、ブランク材形状が少なくとも部分的に第1の層の外側境界の外側にある場合、生成されたすべての層が素材から完全に離隔されるまで、標的形状からさらに離れた1つまたは複数のさらなる層を生成するさらなるステップであって、さらなる層がそれぞれ、内側境界および外側境界によって限定され、さらなる層それぞれに関して、それぞれの外側境界が、オフセット距離の分、それぞれの内側境界から離隔される、さらなる層を生成するさらなるステップと、さらなる層それぞれを、境界線によって分離されたセグメントのセットに分割するさらなるステップであって、セグメントの前記セットがそれぞれ、第1の層のセグメントのセットに対応し、前記境界線がそれぞれ、第1の層の境界線に対応する、さらなる層それぞれを分割するさらなるステップと、第1の層が残るまで、素材を含むすべてのセグメントを最上位層から除去し、続いて素材を含むすべてのセグメントを後続の各層から除去するように、旋削工具に指示するさらなるステップとを含む。
【0099】
1つまたは複数の前記さらなる層の前記外側境界の形状は、第1の層の外側境界の形状に対応するか、または実質的に対応する。1つまたは複数の前記さらなる層の前記外側境界は、第1の層の外側境界と等しい数の凸状部分および凹状部分を備える。
【0100】
前記さらなる層はそれぞれ、少なくとも部分的に素材内にある。
【0101】
下位層の外側境界は、1つ上位の層の内側境界と同じ、即ちそれに対応するか、または一致する。上位層の外側境界は下位層の外側境界から離隔される。
【0102】
1つまたは複数のさらなる層の境界線は、第1の層の境界線に対応する形で描写または生成される。したがって、第1の切削方向がZ軸に沿っている場合、それぞれの層の内側境界の1つまたは複数の凸状部分と交差する1つまたは複数の境界線は、Z軸に平行に配置され、それぞれの層の外側境界の1つまたは複数の凹状部分と交差する1つまたは複数の境界線は、X軸に平行に配置される。あるいは、第1の切削方向がX軸に沿っている場合、それぞれの層の内側境界の1つまたは複数の凸状部分と交差する1つまたは複数の境界線は、X軸に平行に配置され、それぞれの層の外側境界の1つまたは複数の凹状部分と交差する1つまたは複数の境界線は、Z軸に平行に配置される。
【0103】
さらなる層それぞれに関して、素材を含むセグメントを除去する順序は、第1の層の対応するセグメントを除去する順序に対応するか、または実質的に対応する。
【0104】
さらなる層それぞれの前記セグメントの除去は、旋削工具の移動方向に対して、第1の層の対応するセグメントに関するものと対応する。
【0105】
素材を含むセグメントは層の順序で除去され、即ち、外側の層のすべてのセグメントが最初に機械加工され、次に第2の外側の層のすべてのセグメントが機械加工される、などである。
【0106】
素材を含む各セグメントは、旋削工具によって1パスで除去される。パスの数は素材を含むセグメントの数に等しい。
【0107】
標的形状の少なくともいくつかのポイントに関して、標的形状から、第2、第3などの層の外側境界までの垂直距離は、標的形状から第1の層の外側境界までの垂直距離の倍数である。換言すれば、層は少なくとも部分的に均等な厚さを有し、層の厚さは、それぞれの層の内側境界と外側境界との間の垂直距離によって定義される。
【0108】
オフセット距離またはオフセット距離関数は、すべての層に関して同じであり、即ち対応する形で計算または設定される。
【0109】
一実施形態によれば、コンピューティングデバイスまたはシステムによって実行されると、コンピューティングデバイスまたはシステムに、上述した方法のいずれか1つによる方法を実施させる命令を有する、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0110】
以下、本発明について、本発明の実施形態の記載および添付図面の参照によって、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1】第1の層が標的形状に隣接して部分的に素材内にどのように配置されるかを示す概略図である。
図2図1の標的形状に隣接して配置された代替の第1の層を示す概略図である。
図3図1の第1の層がどのようにセグメントに分割されるかを示す概略図である。
図4図1の第1の層における代替のセグメント化を示す概略図である。
図5図2の第1の層がどのようにセグメントに分割されるかを示す概略図である。
図6図2の第1の層における代替のセグメント化を示す概略図である。
図7図5のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図8図5のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図9図5のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図10図5のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図11図5のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図12図5のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図13図5のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図14図5のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図15図5のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図16図5のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図17図5のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図18図5のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図19図6のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図20図6のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図21図6のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図22図6のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図23図6のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図24図6のセグメントが旋削工具を用いて除去されるステップを示す概略図である。
図25図6のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図26図6のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図27図6のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図28図6のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図29図6のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図30図6のセグメントを除去するステップの代替順序を示す概略図である。
図31】第1の層が代替の標的形状に隣接して素材内にどのように配置されるかを示す概略図である。
図32】第2の層が追加された図31の標的形状を示す概略図である。
図33】第1、第2、および第3の層がセグメント化された図31の標的形状を示す概略図である。
図34図33の層における代替のセグメント化を示す概略図である。
図35】代替の第1の層が図31の標的形状に隣接してどのように配置されるかを示す概略図である。
図36】第2の層が図35にどのように追加されるかを示す概略図である。
図37】第1、第2、および第3の層がセグメント化された、図36に追加された第3の層を示す概略図である。
図38図37の層における代替のセグメント化を示す概略図である。
図39】セグメント化された第1の層がさらなる代替の標的形状に隣接して部分的に素材内にどのように配置されるかを示す概略図である。
図40図39の第1の層の代替のセグメント化を示す概略図である。
図41】第1および第2の層がセグメント化された、図1の標的形状および代替のブランク形状を示す概略図である。
図42図41の層の代替のセグメント化を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0112】
旋削工具1と、ブランク材形状10を有するブランク材の部分とを示す、図1を参照する。旋削工具1は、CNC旋盤(図示なし)の一部であるマシンインターフェース51に接続される。数値制御装置(図示なし)は、旋削工具1の移動、および回転軸を中心にしたブランク材の回転を指示し、それにより、素材12を除去することによって標的形状5を形成する。ブランク材形状10、即ちブランク材の外側境界、および標的形状5はX-Z面で示されており、ブランク材の回転軸はZ軸によって表され、X軸はブランク材の径方向を表し、X軸はZ軸に直交する。標的形状5は、第1および第2の標的エンドポイント22、23の間に連続的に延在し、複数の部分6、7、8、9、21によって形成される。標的形状5は、Z軸に平行な2つの長手方向部分9、21と、X軸に平行な1つの径方向部分8と、1つの弧状凸状部分6と、1つの弧状凹状部分7とを備える。前記弧状部6、7は円弧状部6、7である。旋削工具1は、工具本体と旋削インサート50とを備える。旋削インサートは、圧締め手段(図示なし)によって、工具本体に形成されたインサート座に装着される。工具本体は、前端と後端との間に延在する自身の長手方向軸線A1に沿って延在する。インサート座は前端に形成され、後端はマシンインターフェース51に接続される。長手方向軸線A1はX軸に平行である。旋削インサート50は、上面図で示されており、切れ刃を生成する表面である弧状部を有する凸状ノーズ切れ刃4によって接続された、第1および第2の切れ刃2、3を備える。ノーズ角度は、第1および第2の切れ刃2、3の間の角度として定義され、前記ノーズ角度は鋭角である。弧状ノーズ切れ刃4は弧状凹状部分7よりも小さい曲率半径を有する。図1は、標的形状5と第1の層の外側境界13との間に延在する、仮想の第1の層11がどのように生成されるかの一例を示している。第1の層11は部分的に素材12内にある。X-Z面における素材12の面積は、第1の層の対応する面積よりも小さい。素材12は、第1の層11の外側には延在しない。第1の層の外側境界13は、オフセット距離mの分、標的形状5から離隔されている。オフセット距離mは、旋削インサート50の最大切削深さ以下である。オフセット距離mは一定値であり、つまり、標的形状5から第1の層の外側境界13までの垂直距離は一定値である。これは、X方向のオフセット距離OxがZ方向のオフセット距離Ozに等しく、それがオフセット距離mに等しいことを意味する。したがって、厚さが標的形状5から垂直に測定される、第1の層11の厚さは均一である。第1の層の外側境界13は、標的形状5の凸状部分6に対応する1つの凸状部分14と、標的形状5の凹状部分7に対応する明確な内角の形態である1つの凹状部分15とを備える。第1の層の外側境界13は、標的形状5の2つの長手方向部分9、21に平行でありそれらに対応する長手方向部分と、標的形状の径方向部分8に対応するそれに平行な1つの径方向部分とをさらに備える。
【0113】
旋削工具1の形状および向きは、標的形状5が形成されるように素材12を除去できるようなものである。標的形状5は、標的形状5の各ポイントが、X-Z面の少なくとも1つのポイント、例えばマシンインターフェース51を表す面積内のポイントからの、見通し線内にあるようなものである。換言すれば、X-Z面における標的形状の各ポイントは、X-Z面の1つのポイントに面している。
【0114】
図2は、第1の層の外側境界13の形状が異なる点、およびオフセット距離mが一定ではない点で、図1と異なる。より具体的には、第1の層の外側境界13の凸状部分14は、ちょうど90°の角14の形態である。前記90°の角14は、標的形状5の長手方向部分21および径方向部分8にそれぞれ対応する、第1の層の外側境界13の長手方向部分および径方向部分を延在させることによって形成される。標的形状5の前記長手方向部分21および径方向部分8は、標的形状5の凸状部分6によって分離されている。部分の前記延在部は線形状である。オフセット距離mは、オフセット距離mがより長い標的形状5の凸状部分6を除いて一定値を有し、即ち、オフセット距離は標的形状5の凸状部分6で増加している。
【0115】
図3は、図1における第1の層11のセグメント化の1つの代替例を示している。より具体的には、図3は、第1の切削方向25がZ軸に沿うものと設定されたときのセグメント化を示している。第1の層11は、長手方向16、18および径方向17のセグメントに分割される。第1の切削方向25は、図3では、Z軸に平行に、右側に向かって設定され、第2の切削方向26は、X軸に平行に、上向きの方向に設定される。第1の切削方向25は、長手方向セグメント16、18が径方向セグメント17の前か後かで除去されるべきかを決定する。図3では、第1の切削方向25がZ軸に沿うものと設定されており、長手方向セグメント16、18が最初に除去される。
【0116】
X方向のオフセット距離OxはZ方向のオフセット距離Ozに等しいので、分割角度αは45°に設定される。
【0117】
1つの補助線31は、分割角度αに等しい、Z軸に対する角度を形成する。前記補助線31は、標的形状5の凹状部分7のポイントから垂直に延在して、45°の、即ちZ軸に対して分割角度αに等しい法線を形成する。
【0118】
他方の第2の補助線32は、第1の上記した補助線31に平行であり、Z軸に対して45°の法線を形成する、標的形状5の凸状部分8のポイントから垂直に延在する。
【0119】
セグメント化は、X軸に平行な1つの境界線19が、前記境界線19が第1の層の外側境界13の凹状部分15と交差し、かつ標的形状5の1つの長手方向部分9と交差するように、配置されるようなものである。前記境界線19は凹状部分7の中点から離隔される。前記境界線19は、補助線31が第1の層の外側境界13と交差するポイントと交差する。第1の切削方向がZ軸に沿っているので、第1の層の外側境界13の凹状部分15と交差する境界線19は、X軸に平行であるように設定される。
【0120】
第2の境界線20は、標的形状5と第1の層の外側境界13との間に延在し、Z軸に平行に延在する。前記境界線20は、第2の補助線32と同じポイントを起点にして、標的形状5から延在する。第1の切削方向がZ軸に沿っているので、第2の境界線20はZ軸に平行に延在する。
【0121】
このように、第1の層11は、境界線19、20によって3つのセグメント16、17、18に分割され、2つのセグメント16、18は長手方向セグメントであり、1つのセグメント17は径方向セグメントである。第1の標的エンドポイント22から第2の標的エンドポイント23までの1つおきのセグメントが、長手方向セグメント16、18である。セグメント化は、第1の切削方向25が左側に向かう場合であっても、第2の切削方向26が図面内で下向きであっても同じであろう。
【0122】
図4は、第1の切削方向25がX軸に沿うものと設定されたときの第1の層11のセグメント化を示している。このように、図4は、第1の切削方向がX軸に沿っており、そのため異なるセグメント化となる点で、図3と異なる。補助線31、32は図3と同様に描かれている。境界線19、20は、図3と同じポイントから描かれている。第1の補助線31が第1の層の外側境界13と交差するところから描かれる境界線19は、Z軸に平行であるように設定される。第2の補助線32が標的形状5と交差するところから描かれる境界線20は、X軸に平行であるように設定される。
【0123】
図5は、第1の層11の厚さが一定ではない点のみが図3と異なる。むしろ、オフセット距離は図2と同様に設定されている。図2と同様に、第1の層の外側境界13は、X軸およびZ軸それぞれに平行に延在する、第1の層の外側境界13の部分を延在させることによって形成される、ちょうど90°の凸状角14を備える。境界線19、20は図3と同様に描かれており、第1の層11は3つのセグメント16、17、18に分割される。
【0124】
図6は、第1の切削方向25がX軸に沿っており、結果として境界線19、20が図4の境界線に対応するような形で描かれている点で、図5と異なる。
【0125】
図7図12は、図5の第1の層11内の素材が図1の旋削工具1を用いて除去される、第1の機械加工シーケンスを示している。第1の切削方向25はZ軸に沿って設定され、第2の切削方向26はX軸に沿って設定されている。したがって、長手方向セグメント16、18(より正確には、長手方向セグメント16、18それぞれの中の素材)は、径方向セグメント17の前に除去される。第1の切削方向25は左側に向かって設定される。したがって、長手方向セグメント16、18は、旋削工具1を左側に向かって移動させることによって除去される。図7は、第1のセグメント16を除去するときの旋削工具の開始位置を示し、図8は終了位置を示している。このように、第1のパスは、図7および図8によって示されており、第1のパスの間、旋削工具1は左側に向かって移動する。
【0126】
図9および図10はそれぞれ、第2のパスにおける旋削工具1の開始位置および終了位置を示している。再び、旋削工具1は左側に向かって移動する。
【0127】
図11および図12は、第3および最終パスにおける旋削工具1の反応的な開始位置および終了位置を示している。第2の切削方向26が下向きであり、即ちブランク材の回転軸(図示なし)に向かっているので、旋削工具1は下側に移動する。
【0128】
長手方向セグメント16、18が除去されるとき、第1の切れ刃2がアクティブであり、径方向セグメント17を除去するとき、第2の切れ刃3がアクティブである。したがって、摩耗は切れ刃のより長い部分にわたって分散される。旋削工具1を図12の終了位置に向かって移動するとき、切削深さは比較的深い。換言すれば、アクティブである、即ち切削状態にある、第2の切れ刃3の部分は比較的浅い。これは、セグメント16が第3のパスの前に除去されているという事実によるものである。したがって、インサート破損のリスクを低減することができる。
【0129】
図13図18は、第1の層が3つのパスを通して除去される、第2の機械加工シーケンスを示している。第1の切削方向25がZ軸に沿っており、第2の切削方向26がX軸に沿っているので、第1の層のセグメント化は第1の機械加工シーケンスの場合と同じである。第1の機械加工シーケンスの場合、長手方向セグメント16、18は径方向セグメント17の前に除去される。第1の切削方向25が右側に向かっているので、長手方向セグメント16、18はそれぞれ、旋削工具1を右側に向かって移動することによって除去される。第1のパスでは、旋削工具1の開始位置および終了位置が示される図13および図14で分かるように、1つの長手方向セグメント18が除去される。他方の長手方向セグメント16が除去される第2のパスは、図15および図16に示されている。図17および図18に示される第3および最終パスでは、径方向セグメント17が除去される。第2の切削方向26は上向き、即ちブランク材の回転軸(図示なし)から離れる方向なので、旋削工具1は上向きに移動する。旋削工具1を、図17に示される第3のパスの開始位置に向かって移動するとき、長いアクティブな第2の切れ刃3は回避され、それによってインサート破損のリスクが低減される。第2の切れ刃3は、第1および第2のパス(図13図16を参照)の間アクティブであり、第1の切れ刃2は、第3のパス(図17および図18を参照)の間アクティブである。さらに、ノーズ切れ刃4のアクティブ部分は、第1および第2のパスと比較して第3のパスの方が重なりの程度が少なく、それによって工具寿命が増加する。第1、第2、および第3のパスの少なくともほとんどの間、進入角度は鋭角であり、インサート摩耗がさらに低減することを本発明者らが見出している。
【0130】
図19図24は、図6の第1の層11内の素材が図1の旋削工具1を用いて除去される、第3の機械加工シーケンスを示している。第1の切削方向25はX軸に沿って設定され、第2の切削方向26はZ軸に沿って設定されている。第1の切削方向25がX軸に沿うものと設定されているので、径方向セグメント17が最初に除去される。第1の切削方向25は下向き、即ち回転軸(図示なし)に向かっているので、旋削工具1は、図19および図20で分かるように、第1のパスの間、下側に移動する。その後、図21図24に示される第2および第3のパスを通して、長手方向セグメント16、18が除去される。第2のパスの終了に向かって、図22に示される終了位置付近では、径方向セグメント17が第2のパスの前に除去されていない場合と比較して、切削深さを比較的深く保つことができる。第2の切れ刃は、第1のパスの間アクティブであり、即ち切削状態にあり、第1の切れ刃は、第2および第3のパスの間アクティブである。それにより、摩耗は切れ刃のより長い部分にわたって分散され、工具寿命の点で有益である。
【0131】
図25図30は、図6の第1の層11内の素材が図1の旋削工具1を用いて除去される、第4の機械加工シーケンスを示している。第1の切削方向25はX軸に沿って設定され、第2の切削方向26はZ軸に沿って設定されている。第1の切削方向25はX軸に沿うものと設定されるので、径方向セグメント17が最初に除去される。第1の切削方向25は上向き、即ち回転軸(図示なし)から離れる方向なので、旋削工具1は、図25および図26で分かるように、第1のパスの間、上向きに移動する。その後、図27図30に示される第2および第3のパスを通して、長手方向セグメント16、18が除去される。第1の切れ刃は、第1のパスの間アクティブであり、即ち切削状態にあり、第2の切れ刃は、第2および第3のパスの間アクティブである。それにより、摩耗は切れ刃のより長い部分にわたって分散され、ノーズ切れ刃に関して重なりの程度が少なく、工具寿命の点で有益である。第1、第2、および第3のパスの少なくともほとんどの間、進入角度は鋭角であり、インサート摩耗がさらに低減することを本発明者らが見出している。
【0132】
次に、図1の旋削工具と同じ特性を有する旋削工具1と、図1とは異なるブランク材形状10を有するブランク材とを示す、図31を参照する。標的形状5も図1とは異なる。標的形状5は、第1および第2の標的エンドポイント22、23の間に連続的に延在し、複数の部分6、7、8、9、21によって形成される。標的形状5は、Z軸に平行な3つの長手方向部分9、21、39と、X軸に平行な3つの径方向部分8、38、40と、3つの弧状凸状部分6、27、28と、2つの弧状凹状部分7、24とを備える。
【0133】
標的形状5と第1の層の外側境界13との間に延在する、第1の層11が生成される。第1の層の外側境界13は標的形状5から離隔される。第1の層11は図1に対応する形で生成され、つまりオフセット距離は一定値である。X方向のオフセット距離Oxはz方向のオフセット距離Ozに等しく、第1の層11の厚さは均一である。分割角度αは45°に設定される。第1の層の外側境界13は、標的形状5の凸状部分6、27、28に対応する3つの凸状部分14、46、47と、明確な内角の形態の1つ2つの凹状部分15、47とを備える。第1の層11は完全に素材内にある。
【0134】
第1の層11の外側に素材があるので、図32に示される第2の層34が生成される。第2の層の内側境界は第1の層の13の外側境界と等価である。第2の層34は第1の層11と同じように生成される。第2の層34の外側境界は、第1の層の外側境界13が標的形状5に関連するのと同じように、第1の層の外側境界13に関連する。第2の層の外側境界は、一定値の分、第1の層の外側境界13から離隔され、つまり、第1の層の外側境界13から第2の層の外側境界13までの垂直距離は一定値であり、第1の層の外側境界13の場合と同じ値またはオフセット距離である。このように、第1および第2の層11、34は同じ厚さを有する。第2の層34は部分的に素材内にある。ブランク材形状10は、部分的に第2の層の外側境界の外側に延在する。
【0135】
図33に示される第3の層35が生成される。第3の層35の外側境界は、完全にブランク材形状10の外側にある。したがって、さらなる層は生成されない。第3の層35は、第1および第2の層11、34と同じように生成される。その後、層11、34、35はそれぞれセグメントに分割される。第1の層に関する境界線19、20、29、30、41は、図3の手順に従って配置される。第1の切削方向25はZ軸に沿っているので、標的形状5の凸状部分6、27、28それぞれと交差する各境界線20、29、30はZ軸に平行に配置される。第1の層の外側境界13の凹状部分と交差する各境界線19、41はX軸に平行である。第2および第3の層34、35内の境界線は、対応する方式で生成される。セグメントの数は、層11、34、35それぞれで等しい。第1の標的エンドポイント22に隣接するセグメント18から、1つおきのセグメントが長手方向セグメント18、11、43であり、1つおきのセグメントが径方向セグメント17、42、44である。第2および第3の層34、35それぞれの同じ端部から、長手方向セグメントと径方向セグメントの間に対応する交互性がある。素材を含む、即ちブランク材形状10が交差する、第3の層のすべてのセグメントを除去することによって、第3の層35である外側層が最初に除去される。図33では、これには1つの長手方向セグメント62を除くすべてのセグメントが含まれる。第1の切削方向25はZ軸に沿っているので、素材を含む第3の層35のすべての長手方向セグメント58、60が最初に除去され、その後、第3の層35のすべての径方向セグメント59、61、63が除去される。第1の切削方向25は左側に向かっているので、長手方向セグメント58、60はそれぞれ、旋削工具(図示なし)を左側に向かって移動することによって除去される。好ましくは、空中時間を低減するため、セグメント60がセグメント58の前に除去される。その後、旋削工具(図示なし)を下側に、即ち各セグメントに関して第2の切削方向26に移動することによって、径方向セグメント59、61、63が除去される。好ましくは、除去の順序は、セグメント59が最初であり、その後にセグメント61、セグメント63が最後である。その後、第2の層34の素材を含むすべてのセグメントが対応する方式で除去される。除去の順序は、好ましくは、セグメント56、セグメント54、セグメント52、セグメント53、セグメント55、セグメント57の順序である。その後、第1の層11の素材を含むすべてのセグメントが対応する方式で除去される。除去の順序は、好ましくは、セグメント43、セグメント16、セグメント18、セグメント17、セグメント42、セグメント44の順序である。
【0136】
図34は、第1および第2の切削方向25、26が異なるように設定された場合、図33と同じ層11、34、35を有する同じブランク材形状10から、同じ標的形状5をどのように生成することができるかを示している。図34では、第1の切削方向25は、X軸に沿って下向き、即ち回転軸(図示なし)に向かっている。第2の切削方向26は、Z軸に沿って左側に向かっている。第1の切削方向25はX軸に沿っているので、境界線19、20、29、30、41は、すべての層11、34、35に関して、図4と同じ方式で配置される。すべてのセグメントが素材を含んでおり、除去の順序は、好ましくは、セグメント59、セグメント61、セグメント63、セグメント62、セグメント60、セグメント58、セグメント53、セグメント55、セグメント57、セグメント56、セグメント54、セグメント52、セグメント17、セグメント42、セグメント44、セグメント43、セグメント16、セグメント18の順序である。図33および図34に記載される方法の旋削工具(図示なし)は、図31の旋削工具に対応する。
【0137】
図35図38は、層11、34、35が異なる方式で生成された場合、同じブランク形状10から、図31図34の場合と同じ標的形状5をどのように生成することができるかを示している。図31図34との違いは、第1の層の外側境界13が、標的形状5の凹状部分6、27、28と関連付けられた明確な凸状角14を備える点である。前記角14は、図5および図6に関して記載したのと同じように生成される。さらなる層34、35はそれぞれ、図36図38に示されるのに対応する方式で生成される。
【0138】
図37では、第1の切削方向はZ軸に沿っている。したがって、境界線19、20、30、41は図5の場合と同じように生成される。第2および第3の層34、35に関する境界線は、第1の層11の場合と同じように生成される。第2の切削方向26は、X軸に沿って上向き、即ちブランク材の回転軸(図示なし)から離れる方向である。1つの長手方向セグメント62を除くすべてのセグメントが素材を含む。セグメントは、図33の場合と同じ順序で除去される。すべての長手方向セグメント58、60、52、54、56、18、16、43は、旋削工具を右側に向かって移動することによって除去される。すべての径方向セグメント63、61、59、57、55、52、44、42、17は、旋削工具を上向きに移動することによって除去される。
【0139】
図38では、第1の切削方向はX軸に沿っている。したがって、境界線19、20、30、41は図6の場合と同じように生成される。第2および第3の層34、35に関する境界線は、第1の層11の場合と同じように生成される。セグメントは、図33の場合と同じ順序で除去される。
【0140】
図39は、上述してきたものとは異なる形状を有する、標的形状5およびブランク材形状10を示している。部分的に素材内にある第1の層11は、第1の層の外側境界13が一定のオフセット距離の分、標的形状5から離隔されるように生成される。前記距離は、標的形状5から第1の層の外側境界13まで垂直に測定される。分割角度αは45°に設定される。標的形状5および第1の層の外側境界13を接続する補助線31、32、49は、前記境界線31、32、49がそれぞれ、Z軸に対して分割角度αに等しい角度を形成するように配置される。2つの補助線32、49はそれぞれ、標的形状のそれぞれの凸状部分6、27と交差する。1つの補助線31は標的形状の凸状部分7と交差する。第1の切削方向25はZ軸に沿っているので、凸状部分6、27と交差する境界線20、29はZ軸に平行に配置される。前記境界線20、29はそれぞれ、標的形状5でそれぞれの補助線32、49と交差する。1つの境界線19は、X軸に平行に配置され、第1の層の外側境界13で1つの補助線31と交差する。境界線19、20、29は、交互の長手方向セグメントおよび径方向セグメント18、16;17を分離する。標的形状5がZ軸に対して形成する角度βは、すべての長手方向セグメント16、18に関して、45°以下である。この場合、標的形状5は、具体的には、それぞれの長手方向セグメント16、18の内側境界を意味する。
【0141】
旋削工具1は、第1および第2の切れ刃2、3が相対的に短い点、ならびに旋削インサート50が、オフセット距離よりも短い距離の分、ノーズ切れ刃4から離隔された第3および第4の切れ刃64、65を備える点で、上述の旋削工具とは異なる。第3および第4の切れ刃64、65は、60°以下の角度を形成する。セグメントは、除去の順序が、長手方向セグメント18および16、次に径方向セグメント42および17であるように除去される。長手方向セグメント18、16それぞれを除去する間、旋削工具1は右側に向かって移動している。径方向セグメント42、17を除去するとき、旋削工具1は上向きに移動する。
【0142】
図40は、第1および第2の切削方向が入れ替えられている点で図39とは異なる。したがって、境界線19、20、29は異なる方式で配置される。境界線20、29は、図39の場合と同じポイントで標的形状5と交差するが、X軸に平行に配置される。境界線19は、図39の場合と同じポイントで第1の層の外側境界13と交差するが、Z軸に平行に配置される。径方向セグメント42、17は、長手方向セグメント18、16の前に除去される。セグメント42、17、18、16を除去する間、旋削工具1が移動する方向は、図39の場合と同じである。
【0143】
図41は、標的形状5および旋削工具1は図1と同一であるが、ブランク材形状10が異なる、さらなる例を示している。第1の切削方向25が同じ軸、即ちX軸に沿っているので、第1の層11は、図6と同様に生成されセグメント化される。ブランク材形状10は第1の層の外側境界13を越えて延在する。第2の層34は、第1の層11に対応する方式で生成されセグメント化される。第2の層34のセグメントは、旋削工具1を回転軸(図示なし)から離れる方向に移動することによって、第1の径方向セグメント53が最初に除去されるように除去される。第二に、旋削工具1を右側に向かって移動することによって、長手方向セグメント54が除去される。上述のパスはそれぞれ、それぞれの切削方向25、26に残っている素材がないと終了する。ノーズ切れ刃4の曲率半径により、前記セグメント53、54それぞれの中にわずかに素材が残っていることがある。しかしながら、かかる残りの素材は、続く層、即ち第1の層11のセグメント16、17、18を除去する間に除去される。第2の層34の後、第1の層11のセグメント17、18、16が、図6の順序および方向に従って除去される。
【0144】
図42は、図41と同様であるが、第1および第2の切削方向25、26が入れ替えられている、ブランク材形状10を示している。第1および第2の層11、34は図41と同様に生成される。第2の層34の1つのセグメント53のみが素材を含んでいる。前記セグメント53は、旋削工具を上向きの方向に、即ち第2の切削方向26に移動することによって除去される。その後、図5に従って、第1の層11のセグメント18、16、17が除去される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
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図39
図40
図41
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【国際調査報告】